まどか「魔法少女まどか☆マギカ対!」かずみ「魔法少女かずみ☆マギカ!」 (75)

注意

・魔法少女まどか☆マギカとかずみ☆マギカのクロスです。時間軸はなんか適当です。
・オリジナル設定がちょこっと入ります。例えば見滝原とあすなろ市がとなり町だったり、まどかパパと立花さんが同年代で知り合いだったり、みたいな。
・更新は遅めだと思います。
・ギャグですので、キャラが壊れてる子もいます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386687665

 


――夢。


 

 


――私、鹿目まどかは、その日夢を……夢を見ていました。


 

 


――その夢の中で、私は、打ちひしがれていたのです。


 

 


――傍らには親友のさやかちゃんが倒れ伏しています。


――尊敬する先輩のマミさんは静かに突っ伏して、意識がないのか目を瞑っています。


――私はそんな二人を見て呆然と立ちすくみ。


――杏子ちゃんはそんな私達を置いてどこかへ行ってしまっていました。


――ほむらちゃんが、真っ赤に染まった私を強く、強く抱きしめていて……。


――全身が熱い。


――熱いよ。熱い。とっても、熱い。


 

 


――ほむらちゃんの涙が、私の肩に落ちる。そこからほむらちゃんの体温が伝わって、じんわりと肌に溶ける。その熱は全身を襲う熱よりもっと、まるで火のように熱い。


――まるで霧がかったようにおぼろげな意識の中、私は、ほむらちゃんが私と同じように真っ赤な液体で染まっているのに気付きます。


――ほむらちゃんが必死に声を振り絞りながら私に謝っているのが聞こえました。


――「ごめんなさい。ごめんなさい」


――その悲痛な叫びに、私の軋んだ心が更に痛みを増します。だから、「大丈夫だよ」って、声をかけてあげて安心させてあげたかったのに。


――私の喉は動かなくて……。ほむらちゃんが、くしゃくしゃになった泣き顔でなおも叫びつづけています。


――うつろなひとみがしょうてんをあわせることすらかなわなくなったころ……


――ほむらちゃんのなきがおのおくに、あのこのかおが……


――それをみて勝ち誇ったような、憐れむような、そんなあの子の顔が……!!


――その時、私は生まれて初めて思ったのです。


――…………してやる。


――絶対に


 

 



――絶対に、道連れにしてやる。



 

まどか「…」ムクッ

まどか「…」ボケー

まどか「…?」

まどか「……夢かぁ」ハァ

すみません、今日はとりあえずこれだけです
ちゃんとお話が始まるのは次から

1年くらいぶりにss書くこと再開しようと決めたんで、まずスレ立てるって事をやりたかったのです

お昼休み
見滝原中学校屋上にて

さやか「へ~。なんだかハードな夢見たんだね」

ほむら「まどかと私が血まみれで、美樹さやかと巴マミが倒れ伏していて、か……」

まどか「うん……内容はおぼろげにしか覚えてないんだけど、すっごくリアルな夢だったよ」モグモグ

マミ「なんだか不吉な夢ね。鹿目さん、最近魔女退治の時に危ない目に遭ったりしたかしら?もしかしたらそれが深層心理に何かしらの影響を与えているのかも」

まどか「いえ、最近は危ない目にも遭って無いです。この間使い魔に不意打ちを受けそうになった時も、杏子ちゃんが守ってくれたし」

さやか「杏子といえば、夢の中じゃ杏子は私ら置いて逃げちゃってたんでしょ?くっそー、あの薄情者め!」

マミ「こらこら美樹さん。夢の中の佐倉さんに文句言っても仕方ないって」

さやか「うー……そ、それはそうですけど」

ほむら「というより、最初からあの子がいなかった可能性もあり得るんじゃないかしら?一緒に戦っていれば、仮とはいえ共闘している仲間を置いて逃げ出すような子では無いと思うのだけど」

さやか「ああ、あいつ基本的には一匹狼だからな~」

ほむら「こっちに来た時は一緒に戦うけれど、相変わらず基本的には風見野を縄張りにしてるみたいだしね」

マミ「そうなのよ。本格的に見滝原に来て一緒に戦わないかって誘っても、『私は一匹狼の方が性に合ってるのさ』って……危なっかしいわ」

ほむら「それよりも問題なのは、フラッと自分の縄張りから出て魔女狩りしているらしいことよ。見滝原だけならまだしも、他のとなり町にも行ってるって話じゃない」

マミ「そうねぇ。あんまり他の街の魔法少女の狩場を荒らしてトラブルにならなければいいのだけれど」

さやか「あいつなら自分が悪かろうと売られた喧嘩は言い値で買いそうだからなぁ」

まどか「…」モグモグ

ほむら「まどか?どうしたの?そんな青ざめた顔をして」

まどか「思い出した。ちょっとだけ……」

ほむら「え?」

まどか「私、その夢の中で、何か大事なものを見たような気がするの、大事な何かを」

ほむら「大事な何か?ひょっとして、戦っていた魔女についてか何かかしら」

さやか「それだったら気になるな。ま、どうせまどかの夢の話だし、取り越し苦労な気もするけど」

マミ「良かったら特徴を教えてくれるかしら?夢とはいえ、強力な魔女みたいだし、ただの夢と言い切れない何かがあるかもしれない。一応注意しておくに越したことはないわ」

まどか「違うんです」

ほむら「違う?」

さやか「って、何が?」

まどか「私が見たのは、魔女じゃなくって、同年代の女の子……ううん」

まどか「魔法少女……だった……ような」

マミ「!」

さやか「!」

ほむら「!?」


 



1話 夢の中で食べた、ような……




  

まどか「…」モグモグ

マミ「…」

さやか「…」

ほむら「……貴女たち、なんでそこで私の顔を見るのよ」

マミ「ご、ごめんなさい」プイッ

さやか「いやぁ。あんたならこう、やりかねんというか……。あと夢で謝ってるのも意味深だよね」

ほむら「はっ倒すわよ」ゲシッ

さやか「もう殴られてます!」

ほむら「なんで私が貴女や巴マミならともかくまどかを傷付けなきゃいけないのよ……!」ギリギリ

さやか「ぎゃあああああ!アイアンクロー止め!ジョークジョーク!さやかちゃんジョーク!!」ジタバタ

マミ(というか私と美樹さんは傷付けるのいいの……?)

まどか「ほ、ほむらちゃんじゃないよぅ!」

ほむら「わかってるわ、まどか。私がそんなことを」スッ

さやか「こ、このやろう。おぼえてろよ……」フラフラ

まどか「ほむらちゃん……さやかちゃん……」

マミ「こ、こほん!さ、さあみんな!もうそろそろお昼ごはんにしないかしら?お昼休みは有限よ?」

ほむら「それもそうね。茶番はこのくらいにしておきましょう」

さやか「茶番で頭蓋骨壊されると思ったわ」

まどか「あ、あははは……」モグモグ

ほむら「あとまどか、さっきから一人だけお弁当食べてるけど、真面目なお話中は自重しなさい」

まどか「いやぁ、でもやっぱり夢の話だし。そんなに深刻に取られても困るよー」モグモグ

ほむら「…」

マミ「意外にくいしんぼよね、鹿目さんって」クスクス

さやか「まどかパパのお弁当美味しいからなぁ」

まどか「パ、パパのお弁当が美味しすぎるだけで、普段からそんなにくいしんぼじゃないですよ!」

さやか「普段3食作ってくれてる人のごはんが美味しすぎるってんなら、普段からくいしんぼってことじゃん」

まどか「なぅ……」

マミ「見事に論破されちゃったわね」

ほむら「完膚なきまでにね」

まどか「うぅ~…」

さやか「ちなみにまどかさんの今日のお弁当のメニューは?」

まどか「えーっとね、もう半分くらい食べちゃったけど、チキンロール、生厚揚げのバジルソテー、人参とクルミの和え物、エビとパプリカのサラダミニトマト添え、あと……」

さやか「ぐう。相変わらずなんてうまそうなメニュー。これは確かに私でもくいしんぼになりかねん」

まどか「だから私はくいしんぼじゃないよぉ!」

さやか「はいはい」

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「……もうお昼休み半分くらいだわ」

マミ「私達もそろそろお弁当出そっか」

まどか「あ、あとね、あとね、こっちの小さい容器にフルーツヨーグルトもあるよ!」

さやか「さて、まどかのくいしんぼごはんチェックしたことだし、他のみんなのご飯も拝見させていただきますかなぁ」

まどか「さ、さやかちゃん、だから……もう~‥…」

ほむら「美樹さやか。はしたないわ」

さやか「いいじゃんいいじゃんー。みんなが健康的な食生活を送っているかどうかをチェックするのも、見滝原の平和の使者さやかちゃんの役割ですよ~」

ほむら「いっつも母親にお弁当作ってもらってるくせに偉そうに……」

さやか「むっ!いいじゃんべつに!たまには私だって自分で作ってるんだぞ!お前も知ってるくせに!」

ほむら「ええ知ってるわ。微妙な味付けのロールキャベツとポテサラとかね。あの節はごちそうさま。上条くんに渡すにはもう少し精進が必要ね。まあ、それよりも渡す勇気を身に付ける方がよっぽど道のり長そうだけど」

さやか「なにおう!コンビニ飯ばっか食ってるお前を不憫に思って恵んでやったのにその言い草はなんだ!もう作ってきてもおかず分けてあげないんだかんね!」

マミ「まあまあ二人とも。仲いいのは結構だけど、その調子で喧嘩してたら残り少ないお昼休みが終わっちゃうわよ」

さやか「おっ、マミさんはバゲットサンドですね!具はアボカド、トマト、タマゴ、チーズ、ベーコンってとこですか?うまそっ!」

ほむら「…」

マミ「そういう美樹さんは、ご飯がピラフじゃない。おかずはオクラのカツオ和え、マカロニサラダ、ウインナー、ブロッコリーのマヨネーズがけ、卵焼きね。いいなぁ、お母さんの味って感じで」

ほむら「…」

さやか「たはは……このピラフ、昨日の残り物なんですけどね~」

マミ「そういうやりくりが上手なのが素敵なのよ。ねえ美樹さん、こっちのバゲットサンド一切れと卵焼き交換しない?」

さやか「いいんですか!?やったー!それじゃあウインナーも一個付けちゃいますよ!」

マミ「あらお買い得」

さやか「それはこっちのセリフですって!」

ほむら「…」

まどか「う~ん、これも美味しい!ありがとうパパ♪」

さやか「ん?どれどれ?お、その厚揚げいいね~!」

まどか「えへへへ……うん、私の自慢のパパのお弁当だからね。さやかちゃんも一口食べる?」

さやか「やった!じゃあまどかにも代わりにウインナーあげよう」

まどか「ありがとー♪」

さやか「早速パクっ!うん、うまい!うますぎる!!さっすがパパさん!」モグモグ

まどか「ウインナーもおいひーよー」モグモグ

ほむら「…」

マミ「……暁美さん?どうしたの?さっきから静かだけど」

ほむら「…」

さやか「で、ほむらー。あんたのお昼は?」

ほむら「……これよ」スッ

さやか「こっ!」

マミ「これは!」

まどか「ほむらちゃん……」ホロリ

ほむら「たらこおにぎり(コンビニ)1個とカップヌードル(シーフード)」

さやか「おいおい……おいおいおい……」

マミ「大丈夫なの?暁美さん」

ほむら「問題ないわ。ちゃんとお湯は魔法瓶に入れてきてあるから」チョロチョロ

マミ「いやそういうことじゃなくて……」

ほむら「大丈夫よ。もう慣れたし。っていうか、これ早くて便利なのよ」

さやか「あんたってやっぱ一人暮らし向いてないわ。……ああもう、仕方ないなあ」

ほむら「……何よ」

さやか「あんたにタンパク質はもったいないから、ブロッコリーあげる。ちゃんと食べなさいよ?」ヒョイッ

ほむら「……礼を言うべきか言わないべきか随分悩ませるチョイスをしてくれるわね。でも一応礼を言っておくわ」

マミ「なら私も。はい、バゲットサンド一切れ」ヒョイッ

ほむら「ありがとうございます、巴先輩」

マミ「あら、私には素直?っていうか巴先輩なんて暁美さんの口から初めて聞いたわ」

ほむら「それは、まあ……物が物だし」

さやか「お前もなかなか愉快な対応をしてくれる。でもわざとだろお前」

ほむら「うるさいわね。お互い様でしょ。でもお返しくらいするわよ。ほら、巴先輩。ラーメンとスープ一口ずつどうぞ。美樹さやかにはこの謎の小エビと、おにぎりの包装取る時に千切れた海苔あげるわ。栄養も考えて」

マミ「あ、あはは……うーんどうしよっかなぁ」

さやか「くそ、こいつがどこまで本気かわからんから怒ろうにも怒りづらい」

まどか「えーっと、ほむらちゃん?」ニコッ

ほむら「まどか……」

まどか「もうあんまりないけど……どれが食べたい?」ニコッ

ほむら「まどか……女神……」ジーン

マミ「そしてこの対応の差だわ」

さやか「言っとくけどまどかは食わせねーよ!?」ドヤッ

ほむら「けど、申し訳ないわ」ゲシッ

さやか「痛い!!」

まどか「もう~!そうやって遠慮する!そんなほむらちゃんには罰としてこのチキンロール食べてもらいます!」

ほむら「そんな。それはメインディッシュじゃない。それなら私はそっちのミニトマトで……」

マミ「ふふふ。あら暁美さん。折角の鹿目さんの好意を無碍にしちゃうの?」

ほむら「けど……」

まどか「駄目だよ、ほむらちゃん。ちゃんと美味しいもの食べないと。いくら魔法少女だって身体もたないよ?」

さやか「こらほむらー!お前ー!まどかに対してそれだけ遠慮するくらいなら、さやかちゃんに対してももう少し思いやりを……」

ほむら「まどか……うん、ごめんなさい。ありがたくいただくわ」ゲシッ

さやか「あふん!」

放課後
帰り道

さやか「おー、いちち。いまだに頭痛むわ」

まどか「さやかちゃん大丈夫?」

さやか「あの馬鹿ほむら、2度も魔法瓶で殴りやがって、いくらさやかちゃんが丈夫だからってちょっと扱い悪すぎるんじゃないんですかねぇ」

まどか「あ、あはは……」

さやか「笑い事じゃないよも~。あんにゃろ、いつかとっちめてギッタンギタンに畳んでギャフンと言わせてポーイしてやるんだから」

まどか「魔法で痛いの治したら?」

さやか「やだよ、そんなことに魔法使うの。それにあいつだって怪我させられるくらいは強くやってきてないし」

まどか「さやかちゃん、最近ほむらちゃんと仲良いよね……」

さやか「どこがっ!……っと、もうここまで来ちゃったか。んじゃ私はここで」

まどか「うん。さやかちゃん、また夜のパトロールでね」

さやか「ん~。まどか、体調悪かったら今日は休んでも良いんだぞ~?」

まどか「え?」

さやか「いや、だってさ。昨日変な夢見たんだろ?そういうのって、よくわかんないけど身体が不調を訴えてるとか、そういうのかもしんないじゃん?」

まどか「いや、そんなことは……ないと思うけど……」

さやか「最近は特にハードだしさ。みんなには私から言っておいてやるから」

まどか「だ、大丈夫だよ!そんなこと……ない……よ……多分」

さやか「ほんとか~?まどか、今日の5時間目とか珍しくうつらうつらしてたでしょ」

まどか「見てたんだ。てっきりさやかちゃんも寝てるものだと……って、あれは、昨日の夢見が悪かったからで!」

さやか「それで寝不足?」

まどか「それは……でももう元気だよ!」

さやか「まあ、あんたがそう言うんなら私だってあんまとやかくいう気にはなんないけど。でも念のためちょっと昼寝しときな」

まどか「はーい」

さやか「うむ!それじゃ、また夜にね!まどか!」

まどか「うん!またあとで!さやかちゃん!」

まどか「……ふう」

まどか(心配かけちゃったかなぁ)

まどか「早く帰ってお昼寝しよっと」

鹿目家

知久「おや、まどかおかえり」

まどか「ただいまー、パパ。タツヤは?」

知久「タツヤはお昼寝してる。今日のお弁当はどうだった?」

まどか「すっごくおいしかった!とくにあのチキンロール!お野菜もいっぱい入ってて、お肉がジューシーで!」

知久「そう、それは良かった。まどかがよろこんでくれるとパパも料理のしがいがあるよ」

まどか「あー。思い出したらお腹減ってきちゃったよ~。パパ、今日のお夕飯は?」

知久「今日のお夕飯はビーフストロガノフだ」

まどか「うわ!すっごく楽しみ!」

知久「ははは。それじゃあ、パパはそろそろ仕込みに戻るから。まどかはうがいと手洗いしておいで」

まどか「うん。あと、私もちょっとお昼寝するからご飯になったら教えてくれる?」

知久「勿論さ。お疲れ様。まどか」

まどかの部屋

まどか「ふう。それじゃあ、ちょっと横になって置かないと。みんなに迷惑かけたらいけないし」

まどか「…」ボフッ

まどか「…」

まどか「…」

まどか「……ビーフストロガノフかぁ~」

まどか「楽しみだなぁ」ニマニマ

まどか「今日のお弁当も美味しかったし」

まどか「さやかちゃんも喜んでくれたし、ほむらちゃんなんて食べた後ちょっと目がうるんでたし」

まどか「あの後マミさんと交換したバゲットサンドも美味しかったけど、マミさんだって『このフルーツヨーグルト最高!』って大絶賛だったもんな~」

まどか「でも、マミさんもやっぱり凄いよね。あのヨーグルトの隠し味が生クリームだってすぐ看破したもん。私全然知らなかったよ」

まどか「あのお料理上手のマミさんが勉強になるって言うくらいなんだから、パパって凄い」

まどか「ほんと……パパのご飯は……世界……一……だよね…」ウトウト

まどか「ああ、今日のお夕飯も待ち……遠……し……」

まどか「……すー……すー…………」


 


――そして、夢。



  

 



――私は、また夢を見る。



 

 



――今朝とは違う夢。



  

 



――いつかの、どこかの、誰かの夢を。



 

 



――ちょっと殺風景などこかのお部屋。


――キッチン。


――目の前には、とても美味しそうなビーフストロガノフと、紅茶の入ったティーカップが2つ。


――それと、少しだけ冷たい印象の、お兄さん。


――とてもお腹が空いている。


――お兄さんが、自分の目の前にある方のティーカップに口をつける。


――私の喉が鳴る。


――ついでにお腹も鳴る。


――お兄さんは、私を殺す理由なんて無い。


――なら、このご飯は、食べていい。


―― 一口。
 

――とても、美味しい。


――私の空っぽのお腹が、幸せで、満たされる。


――残りのごはんをお腹に一気にかきこむ。


――心が、満たされる。


――それは、その味は。初めて味わう味で。


――美味しくて。美味しくて。とても美味しくて。


――私の初めて食べる味。


――私の、初めて、食べる、味。



 

まどか「…」ムクッ

まどか「…」

まどか「…」

まどか「また夢……」

まどか「…」

まどか「……はぁ」

まどか「お腹すいた」グー

まどか「あう~……。ちょっと私~。いくらビーフストロガノフ楽しみだからって、夢でまで見ることないじゃない~」ボフッ

まどか「最近ちょっと食い意地張りすぎかなぁ」ガックリ

まどか「そういえばこの間計ったら体重も1キロ増えてたし、う~ん」ゴロゴロ

まどか「せ、成長期だからセーフ、だよね?うん、これから縦に伸びるかもだし」

まどか「そ、そうそう!セーフ!セーフ!」ガバッ

まどか「そうと決まったら、お、お腹空いてきちゃった!お夕飯はまだかな~……」ソワソワ


コンコン


まどか「!」


知久の声「まどか?起きてるかい?ご飯だよ」


まどか「は~い!今行きまーす!」

まどか(さすがパパ!ナイスタイミングだよ!)

                ,.: ': ¨: : : :¨'': : .、
              ,.': : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ
            /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ハ
           ./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :゙i,
       ''ー-,--: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::i

         /: : : : : : : :i: : : : : : : λ: : : : : : : : : : : : : ::i 
       ./: : :/: : : : :/|: : : :/|: : ハ: : : : : : : : : : : : : 、i
    _,。_',, .‐''7: : : : :/_|: : :/ |::/_i_ : |: : : : : : : : : : ::゙iゝ、    「魔法少女まどか☆マギカ対」

         /: :i,: : :,'´ .|:_:/  .|/_  、`iト: : : : : : : : : : : ゙i,
        / : : i,: / __|_'_   ゙__ .゙'|: : : /: : : : : : : i、::\
        /: : /|∨'i.´ {::}   ´{:::::} ` .i: : :/i : : : : : : : :i >-''-
       /:/ .|: : : i ,,`´,,   ,,`´,,  i: :/ i: : : : : /: : ::゙i,
          |: ,: : i   '      .i::/,,斗: : ::,イ: :、: : :゙i,

          |/|: : :ゝ .,   _   . ,, i/´ i: : ::/八: : i\::゙i,
           .|: : : : : / i≧:`- ''ヤ .x:、,i: :/=-‐ ヽ、i  `'''
            |: : : : / i: : / _r'.}'^゙  .i:/      \
            |: : ::/  |::/,{i≫≪i} '´  . ヽ,     ゙i,
            .|: :/   |// ∥|/       i      ゙i,


            _
         ,.''´ ,-,`ヘ
        (    ゝ- '゙   ,,. --- 、
          ヽ、,___., へ´:::::::::::::::::::::::::`マ=‐'´
       |      /::i:::l:::::\::::::::::ー-::;; ___::゙、
     _人_   ./:::/゙i:::ト、::::ゝ:::::::::::<_:_::::::::ヘ_ ,,.'
      `Y´   ,'::::/ .l:::l ` ー- ;;;;;;;;;;;;_:_:_:::l::::ハ

       |    .|::i::l ヽ、\゙、 .__ノ   |::::::::::l::::::|
            .i:::l:|___  \` __,,=-,l:::::::/:::::人_   「魔法少女かずみ☆マギカ!」
            l::::l.゙ i;;;ノ    ´゙::::ノ  l:::::/::::::/
            .l::、::、゙゙      ゙゙ =<:::/ )::/
            .l::ヘゝ-   ノ   .l::/イ:::l
             .l:::ト.、  `   ,.::<::::::::l::|
             ゙`l:::;;;≧i .´レ ノ;;;べー-゙`

               |l /;;;;;\/;;;;;;;;;;;;;;ハ
               ./;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l

まどか「あ~むっ!」

まどか「~♪」パクパク

知久「おいしいかい?まどか」

まどか「うんっ!パパのビーフストロガノフ最高!ね?たっくん!」

タツヤ「あーい!」

まどか「ママも一緒だったらもっとよかったんだけどな~」

タツヤ「ママは~?」

知久「ママは今日遅くなるって。先に食べておいてって、さっき電話あったよ」

まどか「そっか……大変だなぁ」

知久「まあ、今はこれまで取り組んできたプロジェクトの大詰めらしいからね。それももう少ししたら終わるらしいから、そうしたらみんなでお祝いしようか」

まどか「お祝い?」

知久「ああ。ごちそうを用意するよ。ケーキもね」

まどか「ケーキ!」

タツヤ「ケーキ!」

まどか「うわー!ケーキだってたっくん!楽しみだね~!」

タツヤ「うー!」

まどか「ごちそうも楽しみだなー。パパ、何作るの?」

知久「ははは。さあ、何を作ろうかな。いろいろ考えておくよ」

まどか「期待してるね」

知久「ああ。さあ、二人とも。今日のお夕飯も忘れないでくれよ。おかわりもあるから、いっぱい食べるんだよ」

まどか「は~い」

タツヤ「うー!」

知久「…」ニコニコ

まどか「はふはふ」モグモグ

知久「……おっ、そうだ。ねえ、まどか」

まどか「んむ?」モグモグ

タツヤ「あい?」モグモグ

知久「ごちそうで思い出したんだけど」

まどか「何?」

知久「明日は、寄り道せずに帰ってくるんだよ」

まどか「……へ?」

同時刻
あすなろ市
カフェ『レパ・マチュカ』

宗一郎「……」ハァ

かずみ「はむはむはむ」パクパクパク

宗一郎「かずみ、お前なぁ……」

かずみ「むぐもご、うーん、あいかわらモグはひばなはんのムシャごはんはハムおいひいねぇモグモグ」

宗一郎「褒められて悪い気はしないが、食べるか喋るかどっちかにしろ」

かずみ「モグモグモグモグモグモグモグ」

宗一郎「……まあ、そっち選ぶんだろうとは思っていた」

かずみ「ムグッ!モグモゴゴ!!ガツガツガツ」

宗一郎「やれやれ。もうちょっとゆっくり味わって食べる気はないのか」

かずみ「ひははないへひょ!いほいへるんははら!」ガツガツガツ

宗一郎「急いでるから仕方ないって?ああ、夕食時には少し早いだろうって店の休憩時間にふらっとやってきたと思ったら、パパっと作れる物で急いで用意して欲しいとか言ってたな確かに。だがなぁ」

かずみ「モゴ!モゴモグ!ゴガガッガガガ!!」

宗一郎「驚くくらい早く用意してくれたから助かった?ちょうど試作品作ってたからな。後で感想聞かせろよ」

かずみ「モガゴグ!」

宗一郎「最高!って、それじゃあ参考にならな……」

かずみ「ぷはぁ!ごちそうさま!すっごい美味しかった!!」

宗一郎「……もういい」

かずみ「ありがとう立花さん!チーズハンバーグもオムライスのデミグラスソース掛けもコーンサラダも、本当に美味しかったよ!お代はおいくら?」

宗一郎「今回は試作品だし別に無料で構わない」ムスッ

かずみ「ほんと!?ラッキー!それで、ごめんなさい!待ち合わせに遅れたらみんなに怒られちゃうの!感想はまた今度ゆっくり答えるから!」

宗一郎「友達と待ち合わせしてたのか?それなら別にそれで構わないが、あれだけ急いでたならこんなとこで食べてる場合じゃなかっただろうに」

かずみ「ノンノン!腹が減ってはいくさは出来ないんだよ!それもなるべくおいしい物がいい!」

宗一郎「いくさって」

かずみ「そうだなぁ……味を忘れないうちのほうがいいから、明日もういっかい来てもいい!?」

宗一郎「それは構わないが、待ち合わせはいいのか」

かずみ「あっ!いっけない!それじゃあもう行くね!」

宗一郎「…」

かずみ「立花さん!明日楽しみにしててね!チャオ!」タッタッタ

カラーン

宗一郎「相変わらず台風のようなやつだ」

宗一郎「あ。そういえば、明日は夜の営業時間の終わった後にアイツと会う約束をしていたんだったか」

宗一郎「同じタイミングで来られたらその間は相手してやれんな」

宗一郎「・・・・・・まあ、いくらかずみでも営業時間後には来ないか」

宗一郎「今日も休憩時間に来たし、その前も営業時間終わる直前に来たんだけどな」

宗一郎「…」

宗一郎「……いいか。かずみなら」

 




かずみ「よーし!おいしい物お腹にいっぱい詰めて、元気満タン!今日も魔女退治がんばるぞ~~!!」




 

数十分後
再び戻って見滝原市
公園

さやか「おっ、来た来た!」

まどか「みんな~!ごめんなさい!遅くなっちゃったー!」ハァハァ

杏子「遅刻だぞまどかー」

まどか「あっ、杏子ちゃん!うう、ごめんなさい~……」

ほむら「何言ってるの。約束の時間にはまだ2分あるわよ」

マミ「そうよ?佐倉さん。私達がちょっと早く着いたからって意地悪言わないの」

杏子「ははっ、わりーわりー」

まどか「杏子ちゃんは、今日からしばらくはこっちに?」

杏子「いんや。今日はたまたま。マミんちで飯食ってくついでにな~」

マミ「この子、自分はグリーフシードにまだ余裕あるからって、ご飯食べた後私のベッドに潜り込んで居眠り決め込もうとしてたのよ。呆れたから無理やり連行して来たんだから」

さやか「なんだそりゃ!おい杏子!」

杏子「いやぁ。腹一杯になったら眠くなっちゃってさぁ」

さやか「なんて友達甲斐のない……」ワナワナ

杏子「や、やだなぁさやか。冗談に決まってんじゃん。ちゃんと最後にはマミと一緒に家出るつもりだったから……」

さやか「マミさんのベッドに勝手に潜り込むとかうらやまけしからーーん!!」

杏子「そっちかよ!!」

ほむら「あなた達、もういい加減茶番はその辺にしておくのが賢明だと思うわよ。馬鹿みたいだし」

さやか「ぐう」

杏子「ぬぐ」

まどか「あ、あはは……」

マミ「そ、それじゃあそろそろ今日のパトロールを始めましょうか。いつも通り2人2組…今日は佐倉さんがいるから、2人と3人に別れましょう。チーム分けはどうする?」

さやか「グッパーでいいんじゃないですか?それじゃあいくよ。グッとっパーで合った人ー」

更に数十分後
見滝原市繁華街

まどか「そして今、私は杏子ちゃんと二人きりで繁華街を歩いているのでした、っと」

杏子「なんだ?まどか、私と二人じゃ不満かい?」

まどか「あ、いやそういうわけじゃないよ?」アセアセ

杏子「ふーん」

まどか「ただ、杏子ちゃんと二人って今までなかなか無かったし、新鮮だなーと」

杏子「……それもそーだね」

まどか「あと、あっちの班は大丈夫かなーとか」

杏子「さやかとほむら仲悪いからなー。まあ、マミのやつがいるから大丈夫だろ」

まどか「うーん……あの二人、仲悪いのかなぁ。意地の張り合いしてるだけな気もするんだけど」

杏子「知らねーよそんなの」

まどか「まあ、マミさんいるから平気だよね?」

杏子「おう、マミいるしへーきだろ」

まどか「…」

杏子「…」

まどか「……えーっと」

杏子「あー……」

まどか「…」

杏子「あ、そ、そーだ!なあまどか!」

まどか「は、はいぃ!?」

杏子「……なんでそこでビビったような声出すんだよ」

まどか「い、いやなんとなくっていうか……うん、杏子ちゃんって、繁華街が凄く似合うよね……」

杏子「お前が私に対してどう思ってるかよくわかったぞ!悪かったな、ガラ悪くて!」

まどか「ひーん!ごめんなさ~い!」

杏子「ったく、まあいいけどさぁ」ブツブツ

まどか「…」ショボン

杏子「……あ~。その、なんだ?まあ、今まであんまりお話したこと無かったしね」

まどか「うん。ごめんね?杏子ちゃんがすっごく良い子だっていうのは知ってるんだけど……」

杏子「良い子でもねえ!?」

まどか「ひうっ!?」

杏子「あ、わ、わり。でっかい声出しちゃった」

まどか「あ、ううん。私こそごめんね……」

杏子「…」

まどか「…」

まどか(う、うう~……なんだか居心地悪いよぉ……)

杏子「あー……」

まどか「…」

杏子「……い、いやぁ、見滝原はでっかい街だよな~」

まどか「……へ?」

杏子「ほ、ほら。あっちのビルとか見てみろよ。私の地元の風見野じゃあんなカッコいいビルなんて一個もねーぞ」

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「飯屋だってこっちみたいに沢山無いしさ。行きつけの美味いラーメン屋はあるんだけど……」

まどか(もしかして、私にも話しやすい話題を探してくれてる?)

まどか「そ、そうなの?私はあんまりお外にご飯食べに行かないからわかんないや。あ、でも……」

杏子「えー?そりゃもったいない!旨くて大盛りの店とかも結構あるから、こっち来たらよく食べてるぞ、私は」

まどか「……そ、そうなんだ。あ、でも私もカフェとかファーストフード店とかはよく行くよ?さやかちゃん仁美ほむらちゃんとかと」

杏子「チッチッチ。そんなどこにでもあるような店じゃ外食は語れないね。もしかして、私のがアンタより見滝原の旨い店について詳しいんじゃねぇの?」

まどか「あ~……。で、でも…………そうかも」

杏子「ふふん。だったら、今度オススメの店連れてってやるよ。見滝原中の近場で良いトコ知ってんだ」

まどか「え?本当?」

杏子「ああ!そんかわし奢れよ?」

まどか「えー……。でもお小遣い少ないよ?私」

杏子「なんだよそれくらいいいだろー」

まどか「うーん……あ、そうだ。だったらさ、杏子ちゃん」

杏子「ん?」

まどか「今度、私の家に遊びに来ない?杏子ちゃんオススメのお店に連れてって貰う代わりに、私はパパにお願いして、ご飯作ってもらうから」

杏子「まどかの親父さん……?」

まどか「う、うん。パパのご飯、すっごく美味しいから。杏子ちゃんもびっくりすると思う。クリームシチューとか、多分世界一」

杏子「お、おう…」

まどか「今日もビーフストロガノフ作ってくれてね?すっごく美味しくっておかわりしちゃって……」

杏子「……そっか、親父さんの飯、そんなうめーのか。いいな……」

まどか(あ……。そういえば杏子ちゃんって家族……)

まどか「あ、あう。ご、ごめん……」

杏子「あー、いや。バカ、そんな顔すんなって。私こそ悪かった」

まどか「けど……」

杏子「…」

まどか(わ、私のばかーーー!!)

杏子「……いいな。家庭料理」ボソッ

まどか「え?」

杏子「マミの飯もいいんだけどさ。アイツなんか最近気取ってんのか小洒落たもんばっか作ってんだよ。野菜中心だし、一人前の量も少なめだし」

まどか「えーっと……」

杏子「親父さん、中華とか作れる?肉料理とか」

まどか「それは、うん。ママが結構食べる人だし、うちには男の人もいるし、私もそこそこ食べるから……」

杏子「だったら決まりだね。私を呼んでくれる時は前もって親父さんに肉多め、味付け濃い目で中華料理作ってもらうように頼んでよ」

まどか「あ……」

杏子「な?」ニカッ

まどか「う、うん!パパにお願いしておくよ!!」

更に更に数十分後
元の公園

さやか「あ。戻ってきた」

ほむら「今日は何も無し、か。最近グリーフシードが心許ないから出来れば欲しかったのだけど」

マミ「まあこんな日もいいじゃない。平和なのが一番よ」

さやか「そういえば今思ったけど、まどかと杏子が二人きりって初めてじゃない?大丈夫だったんだろうか」

ほむら「言われてみれば確かにそうね。会話が途切れて気まずくなってたりしてないでしょうね。心配だわ」

マミ「私はあなた達の口喧嘩に付き合わさせられてとっても苦労したんだけどね」

さやか「おーい!まどかー!杏子ー!こっちだぞー」

杏子「それでそこのカツ屋のロースカツがすっげーでっかい上にジューシーでさぁー」

まどか「うわー、おいしそ~!揚げ物は揚げたてで衣がサクってしてるのがいいよね!」

杏子「そうそう!衣もキツネ色でサクッとしてて、キャベツが食べ放題!特製ソースがまた適度な甘みと酸味で旨いのなんのって」

まどか「揚げ物と言ったら、パパの作る揚げ物もおいしいんだよ?私は、ママがお酒飲む時におつまみで作ってもらってるタコのフリッターが一番好きかな。サクサクのプリプリのホックホク!」

杏子「おお、そういうのもいいなー!居酒屋メニューみたいなやつ!私らまだ子供だから居酒屋にはいけねーしなー」

まどか「でしょー」

杏子「うーん。中華も捨てがたいけど、揚げ物もやっぱりいいなー。どうすっかなー」

まどか「えへへへ……それじゃあいろいろ作ってもらうようにお願いしてみるよ」

杏子「まどか~~。お前いい奴だな~」ギューッ

まどか「きゃ~~♪」


さやか「めっちゃ仲良くなっとる」

ほむら「ほむっ!?」ガーーン

まどか「あ、みんなはもう到着してたんだ」

マミ「おかえり、二人とも。今日は穏やかな夜ね」

ほむら「私は今ちょっと心穏やかじゃないのだけれど……何も無いようなら、今晩は解散かしら」

さやか「そうだねー。宿題しなくっちゃ」

まどか「あ、そうだね。杏子ちゃんは?」

杏子「そうだなー。私も今日はさっさと帰るかな」

ほむら「帰るって、風見野に?それとも巴部屋?」

マミ「そこ。人の部屋のこと変な言い方しない。風見野行き、もう終バス無くなるんじゃないかしら?今日くらいは泊めてあげてもいいわよ」

さやか「なんだったら私んちもいいぞ」

杏子「いやだよ。マミのとこ行ったら明日もこっちで魔女退治手伝わされそうだし、さやかんとこなんて、行ったら宿題手伝わさせられそうだ」

さやか「アンタに私の宿題なんか手伝えんのか」

杏子「それに、今日帰るのは風見野じゃないよ。あすなろの方のヤサだ」

さやか「無視だとう!?」

まどか「あすなろって、あすなろ市?」

杏子「そ。見滝原のとなり町のあすなろ市のこと。あっちの方のバスは風見野行きより遅くまで出てるんだ」

杏子「明日から数日くらい、あっち拠点に活動しようかなーって思ってたからさ」

さやか「アンタ、また他所のとこの魔法少女の縄張り荒らしてるわけ?」

ほむら「そのうち痛い目に合うわよ」

マミ「まったくだわ。みんな私達みたいな魔法少女じゃないのよ。一番わかってるくせに」

杏子「あそこは大丈夫だよ」

まどか「えーっと……」

さやか「まどか?」

ほむら「どうかしたの?まどか」

まどか「あ、いや、ううん」

ほむら「?」

マミ「鹿目さん?」

まどか(杏子ちゃん、明日はあすなろ市かぁ)

まどか「ねえ、みんな。明日は私もおうちの用事で来れないんだけど大丈夫かな?」

さやか「ありゃ、杏子はともかくとしてまどかも?」

ほむら「家の用事なら仕方ないわ」

マミ「そうね。構わないわよ。3人もいれば楽勝だしね」

まどか「すみません……」

さやか「いいっていいって。私だってどーしても補習終わんなくって休ませてもらったことあるし」

マミ「私だってみんなとチーム組むようになってからは、たまにお休み貰ってるわ」

ほむら「私なんてこの間連休貰ったわ。だから気にしないでいいのよ。まどか」

まどか「……えへへ。それじゃあお言葉に甘えて」

さやか「ちなみに、用事ってなんなのさ?」

まどか「んー。ちょっとね」

さやか「?」

知久『明日は、寄り道せずに帰ってくるんだよ』

まどか『……へ?』

知久『おや、もしかして用事でもあったかい?』

まどか『それは……まだわからないや。みんなに相談してみる。どうしたの?パパ』

知久『うん。良かったら、家族でおでかけしないかなって』

まどか『おでかけ?』

知久『そう。今日の昼間に旧い友人から電話があってね。まあ、ちょっとした複雑な経緯がある奴だったんだけど、最近新しく自分のお店を持ったっていうんだ』

まどか『お店?パパのお友達が?』

知久『ああ。とっても腕の良い料理人だ』

まどか『えっと……』

知久『ちょっと遠いんだけどね。ママが帰ってきたら、みんなで行こうよ。昔話に花が咲いて、急だけど良かったら食べに来ないかって言うから』

まどか『それは、どこ?』

知久『うん。あすなろ市のレパ・マチュカっていうところさ』

まどか(もしあっちで偶然杏子ちゃん見かけたら、びっくりさせちゃおうかなー、なーんて)ニマニマ

さやか「何にやけてんのさ」ギュー

まどか「むぎゅっ!」

ほむら「美樹さやか。まどかのほっぺ抓るの止めなさい」

マミ「鹿目さんのほっぺ、柔らかいのね。すっごい伸びてるわ」

さやか「ほれほれ~。白状しろ~」

杏子「……そんじゃあ私は間に合わなくなるのヤだからもう行くぞ」

さやか「はいは~い。あんま酷い目に合う前にこっちに戻ってこいよ?」

杏子「だから大丈夫だって。……んじゃあな。まどか、約束忘れんなよ?」

ほむら「約束?」ボソッ

まどか「はーい!まはへ~」ヒラヒラ

まどか「……はやひゃひゃん!ほろほろはなひへよ!」

さやか「あ、悪い悪い」パッ

まどか「またね、杏子ちゃん!」

杏子「おー。じゃあね、みんな!」

マミ「……行っちゃった」

さやか「それじゃ、私らも解散しよっか」

ほむら「約束って?」ボソッ

まどか「あ、もうこんな時間だ。帰ってお風呂入んなきゃ」

さやか「で、まどか。明日の用事って?」

マミ「もう。美樹さん。そんなに何度も聞くようなものじゃないわよ」

ほむら「まどか、約束って?」ブツブツ

まどか「あ、いいですよマミさん。杏子ちゃんもう行っちゃったし」

マミ「え?」

さやか「お?杏子にだけは隠しておきたい感じだったの?なになに?どんなの?」

まどか「えへへ、実はですね。私の明日の用事もあすなろ市絡みで…」

さやか「ふんふん」

ほむら「ねえまどか、約束って何をしたの?」ブツブツブツ

ほむら「まどか?」

ほむら「ねえまどか……」

ほむら「まどかああああああああああああああああああああああ!!!!」

さやか「喧しいわ!!!!!」

翌日夜
あすなろ市
カフェ『レパ・マチュカ』

宗一郎「やあ、よく来たな。知久。それに、詢子さん」

詢子「ういーっす」

知久「やあ宗一郎。久し振りだね」

宗一郎「それと、娘さんか」

まどか「あ、ど、どうも」ペコリ

知久「ああ。まどかっていうんだ。それと、息子のタツヤ」

タツヤ「こんにちわー!」

宗一郎「こんにちわ。そうか。二人も子供がいたのか」

知久「あはは。まあ、ね」

宗一郎「娘さんはもう随分大きいな。そうか、もうそんなに経つのか……

知久「ああ。そうだね、最後に会ったのは娘が生まれる前か。随分懐かしいなぁ」

まどか(どういう関係なんだろう……)

詢子「で、それよりさ。なんだっけ?レパ・マチュカ。可愛い猫、か。随分お前さんに似合わない名前の店名じゃねーか」ニヤニヤ

宗一郎「……知り合いのオーナーから店ごと任されたんだよ。前の店は騙し取られたんでな」

知久「それも聞いてたよ。力になってやれなくてすまなかったね」

宗一郎「まあ、気にするな。もう済んだことだ」

詢子「さて、と。それじゃあ、昔話もこの辺にして、うちらとっくに腹ペコだしさ。早速シェフ・立花のご自慢の料理を振る舞って貰いたいもんだ。って言いてーとこだ、け、ど、だ」チラッ

宗一郎「…」チラッ

知久「……はは」チラッ

まどか「…」チラッ

タツヤ「あいー?」

かずみ「……むっすー」プクー

宗一郎「はぁー……」

詢子「そこのふくれっ面でテーブル陣取ってるお嬢ちゃんは、娘さん?」

知久「確かに、まどかと同年代くらいかな?」

宗一郎「いや、お前ら夫婦と一緒にするな。超早期結婚カップルめが」

かずみ「ぶー……」

宗一郎「おい、かずみ」

かずみ「つーーん」

宗一郎「今はまだ仕事中だからな。待っててくれ。あとでちゃんと相手してやるから」

かずみ「ぷーーーん」

宗一郎「おい。何をそんなにむくれてるんだ。フグみたいに」

かずみ「知りませーーーん」

宗一郎「参ったな……」

知久「どうしたんだい?」

詢子「お前何やらかしたんだよ、こんな娘みたいな年頃の子に」

宗一郎「だからお前ら夫婦を基準にするな。……ああ、なんだ。最近良く来る子なんだが、よくわからんが拗ねている」

かずみ「むっ!!」

知久「あ、怒った」

詢子「年頃の女の子に今の言い方はまずかったな、立花。減点1だ」

宗一郎「はぁ?」

かずみ「なにさなにさ!立花さんのバカ!!なんでお店の営業時間外に私に黙って他のお客さん入れてるの!?」

宗一郎「いや。別に黙ってたつもりはないが。というかお前、関係ないだろ……」

詢子「はい、減点2」

かずみ「なにをーーーー!?」

宗一郎「いや、知らんが」

まどか(なんだろうこれ……)

かずみ「せっかく人が昨日の試作メニューの感想をいっぱい、いーーーっぱい!考えてきたのに!お客さん入れてるなんて知らなかったよ!」

宗一郎「ああ、それで怒ってるのか。悪かったな。こちらのお客さんは俺の友人家族なんだ。すまない、伝え忘れていた。とりあえず今日は帰るか?」

詢子「減点3」

かずみ「むーーーっ!!わざわざここまで来て、私に何も食べずに帰れっていうの!?立花さんのご飯楽しみにしてたのに!立花さんの鬼!悪魔!カイショーなし!」

宗一郎「だったら営業時間終わってからじゃなくて営業時間内に来い。あと、言おう言おうと思っていたんだが、休憩時間もやめろ」

かずみ「むううううううううう!!!」

宗一郎「やれやれ、なにをそんなに怒ってるのかさっぱりわからん」

詢子「減点4。ついでに5。あーあ、こりゃ駄目だ」

知久「君はまったく変わらないねぇ」クスクス

宗一郎「……よくわからんが、とりあえず鹿目夫妻も俺に非があると思っているのは分かった。君も同意見か?」

まどか「え?あ、はあ……私もよくわからないです」

宗一郎「まあ、普通はそうだよなぁ」

かずみ「むぅううううううううううううう!!!」ジタバタ

宗一郎「仕方ないな……腹が立って気が立っているのか?すまない、知久。こいつも相席させてやってくれるか。物怖じしない子なんで一緒にいて悪い心地はしないと思うから」

知久「僕らは別に構わないけど」

詢子「そうだな。私も別にいいぜ。な?まどか」

まどか「あ、う、うん」

かずみ「だから、むうううううううううううううううう!!そうやって人を子供扱いしてーーーー!!」

宗一郎「なんだ、いらんのか?あと、いつまでお客にみっともないところ見せるつもりだ」

かずみ「ガルルルル……って、ううー。ごちそうになります。相席すみません……」

知久「はい、どうぞ」

かずみ「えっと……」

詢子「まあ、堅っ苦しいこと気にすんなよ。嬢ちゃん、年いくつ?見りゃだいたい分かるか。まどかとタメくらい」

まどか「えっ?」

かずみ「えっと……」

かずみ「あー……その……」

宗一郎「それじゃあすまない、俺は料理始めるよ。かずみ、自己紹介くらいしておけ」

かずみ「あ、う、うんわかった……」

知久「はい、行ってらっしゃい」

詢子「楽しみにしてるぜ。なー?タツヤー」

タツヤ「あーい!」

まどか「…」

かずみ「えっと……」

まどか(……あれ?)

かずみ「それじゃあ、自己紹介……」キラッ

まどか(あのイヤリングって……)

かずみ「私、かずみって言います」

まどか(もしかして……でも……あれ?なんかちょっと変わってる気もするけど……)

かずみ「苗字は……えへへ、実は忘れちゃいました!ちょっと記憶喪失気味で。なので、今は苗字の無い、かずみ。かずみって呼んでください!!」

まどか(ソウルジェム!?)

今日はここまで
思ったより時間が取れないんで更新遅くて申し訳ないです

ところで、かずみキャラって知ってる人少ないと思うんですが、簡単な特徴とか説明した方がいいんでしょうか
そもそもかずみ読んでない人がこのss来ることないか?
そこんとこどうなんだろ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom