勇者「魔王も倒したし、ようやく帰宅できるな」(316)

勇者「魔法使いは俺の攻撃力アップ! 僧侶は全体保護!」

戦士「うおーーーー!!!!」

ザシュ!

魔王「ぐおお!!」

魔法使い「かけたぞ!」

僧侶「こちらも終わりました!」

勇者「いくぞ!!!!」

勇者「でやーーーーーーー!!!!!!!!」

魔王「ぐわああああああぁあああっぁあぁぁぁぁっぁぁっ―――――――――!!!!!!」

戦士「やった!!!」

魔法使い「魔王をようやく倒した!!」

僧侶「これで世界にも平和が……」グスッ

勇者「……」

勇者「あ―――、じゃあ終わったことだし、そろそろ帰ろうか」

戦士「なんだよ勇者! 余韻にくらい浸らせろよ!!」

バシバシ

勇者「ああ、まぁ」

魔法使い「いや、勇者様の言うとおりだろう。一刻も早く魔王討伐の報を知らせないといけない」

僧侶「その必要はありません。ほら、空を見上げてください!」

戦士「ああ!!! 空が!!  晴れていく!!!!!」

勇者「……」

勇者「ああ、うん、そうだね」

勇者「じゃあそろそろ帰るってことでいい?」

戦士「それより平和になった街を見て帰ろうぜ」

魔法使い「はやく吉報を伝えに行くって行ったはず。相変わらず戦士は……」ハァー

戦士「なんだとぅ!!」

僧侶「まあまあ、まずは王様に報告してからにしましょうよ」

戦士「異議なし!」

魔法使い「……まあ、いっか」

勇者「帰るってことでいいね。んじゃいくよ」

→お城のある故郷まで

戦士「ふぅ、やっとついたが、魔物が少ない分行きと比べて楽だったな」

魔法使い「それより自分達の実力がアップしたと考えるべき」

僧侶「この後神父様に帰還の報告をしないといけませんね」

勇者「……」

戦士「どうした勇者?」

勇者「そろそろ帰っていい?」

魔法使い「その前にお城に行って王様に報告しないと」

僧侶「まあまあ、勇者様もお疲れのようですし、明日でもかまわないのでは?」

勇者「じゃあ解散っていうことで」

戦士「ああ、また明日な! 俺は飲み明かすかな!!」

魔法使い「では私は学院の寮へ旅の成果を纏めておきましょう」

僧侶「私は協会に戻ります。皆さんまた明日」

勇者「ただいまー」

母「勇者! あなた! 勇者が帰ってきたわ!!」

父「おお! 勇者!! 旅はどうだった!?」

勇者「おなかすいたからご飯先食べたい」

父「おお、そうだな! 母さん今日はご馳走だ!!」

母「ええ、腕によりをかけて作りますわ!!」


勇者「……」モグモグ

父「それで旅はどうだったんだ?」

勇者「んーまあ普通」

父「普通って……旅なんだぞ? 何も無かったのか?」

母「普通が一番よ。怪我もしなかったようだし」

父「おお、そうだな。普通が一番だ。うん、普通が一番……仲間の方達はどうしたんだ?」

勇者「知らない。家に帰ったんじゃないの?」

母「一度家に連れてきなさいよ! ご馳走したいわ」

勇者「やだよめんどい」

・次の日

コンコン

ガチャ

僧侶「すみません。僧侶というものです。勇者さんを呼んでくださいませんか」

母「いらっしゃい。勇者の仲間の僧侶さんね。ちょっと待っててくださいね」

母「勇者――――――――」


2階勇者の部屋

母「勇者、僧侶さんがいらっしゃったわよ」

勇者「そう? うーん……今いないって言っておいて」

母「またそんなこと言って。僧侶さんも困っちゃうわよ」

勇者「でも今日あんまり外出たくないし……」

母「もう……」


母「ごめんなさいね。勇者、なんだか起きられないみたいで……」

僧侶「そうですか……。わかりました、王様への報告は私たちで済ませますので、勇者様はゆっくりお休みくださいますよお伝えください」

戦士「よう僧侶! あれっ? 勇者は?」

僧侶「それが日ごろの疲れが溜まっているのか、ぐっすり眠っているようでして」

戦士「なんだよそりゃー! しょうがねぇ、後でお見舞いに行こうぜ」

魔法使い「ならば私たち3人で王様に報告に上がることになる」

僧侶「仕方ありません。勇者様には後日面会して頂くということで」


・王城 玉座の間

王「良くぞ無事生還を果たした! まずは生きて帰ったこと、大変うれしく思うぞ!」

戦士「ははっ! 身に余るお言葉、ありがたく頂戴いたします」

僧侶(ふふっ、魔王を倒してもまず私たちの身の心配ですか)

魔法使い(良き王として、私たちをずっとバックアップしてくれた)

王「噂はもうこの城までもちきりだ! よく魔王討伐の任を果たしてくれた! 皆の者に代わって、わし個人として礼を言わせてくれ!」

戦士「ははっ!」

王「して、一人足りないようじゃが、勇者殿はいかがされた?」

僧侶「それが、その、旅の疲れが出たらしく、王城へは後日ご報告をと……」

王「おお、そうか! それはそれは、苛烈きわまる旅と戦い、無理からぬことよのぅ……」ジワリ…

戦士「王様……」

王「あいわかった! では式典は勇者殿の来た日に執り行うとして、今日はその前祝として宴を催そうぞ!」

衛兵達『ワー!!』『ワー!!』『ワー!!』


・宴の席

戦士「グビグビグビ……プハー」

魔法使い「戦士、酒臭い」

戦士「なんだぁ? お前も貧相ななりでも一応大人なんだから飲めんだろ? 飲め飲め!」

魔法使い「…」ムカッ

僧侶「ふふ、みなさん楽しんでおられますね」

ワー----

戦士「なんだなんだ?」

王「娘が来たな。姫! こちらへ来て彼らをねぎらいなさい!」

姫「はい、お父様」

姫「みなさま、此度のご活躍、感謝の言葉もございません。かつて私を救っていただいたのと同様、本当に全ての人々を救ってくださったのですね」

戦士「いやーはははは・・・たいしたことないっスよ・・・いてっ!」

魔法使い「デレデレしない!」

僧侶「これも神のご加護と、王様たちや皆さんのお力添えがあったからです」

姫「勇者様はお疲れのようですね。再開を楽しみにしていますとお伝え願えますか?」ポッ

僧侶「……はい、確かに承りました」

王「勇者には姫がさらわれたとき、救い出してくれた恩もあって、勇者は何をしているのかしつこく聞いてくるでな。うるさくてかなわぬ!」

姫「もうお父様! 人聞きの悪いことは言わないでくださいましっ!!」

戦士「なんだよ勇者ばっかり」

魔法使い「ははははっ!!」

戦士「笑うなよ! ちぇー! でも勇者がいれば一緒にうまい酒が飲めたのによ!!」

・勇者卓

カチャカチャ

勇者「……」モグモグ

父「……」

父「なぁ、勇者、お城では今日、宴が催されているようだな」

勇者「……」モグモグ

父「お前は行かなくていいのか? みんなが待っているじゃないのか?」

母「そうよぉ。今日迎えに来てくれた僧侶ちゃん、とっても礼儀正しくて、お母さん気に入っちゃったし。あんな子とは仲良くしておくのよ」

勇者「……別に」

父「ほう、勇者にもそんな娘がなぁ…。こんど家に連れてきなさい」

勇者「別にそんなんじゃないし。うるさいなぁ」

父「勇者! 親に向かってうるさいとはなんだ!」

勇者「……チッ」

母「勇者! ご飯まだ残ってるわよ!」

勇者「もういらない!」

・一週間後

コンコン

カチャ

僧侶「あの、今日は勇者様のご機嫌はいかがでしょうか……?」

母「ごめんねぇ僧侶ちゃん、あの子、まだ出たくないみたい」

僧侶「わかりました……明日も参ります……」


母「ちょっと勇者! 僧侶ちゃん今日も来てくれたのよ! もう一週間ずっとよ!」

勇者「ふーん……」

母「僧侶ちゃんだけじゃない、戦士くんも魔法使いちゃんも来るし、みんな一緒にお祝いしたがってるのよ!」

勇者「関係ねーし」

母「もう……無理にとは言わないわよ。でもね、ずっと部屋に閉じこもってると体に悪いわよ?」

勇者「誰か知り合いにあったら面倒くさいし」

母「困った子だねぇ……。お父さんに言いつけるよ!」

勇者「チッ……わかった、どこか出かけてくる」

母「夕飯まで帰ってくるんじゃないよ!」

・訓練場

兵士1「ぐわーーーー!!」

戦士「次!」

兵士2「お願いしますっ!」

キンッ!

戦士「振りが荒いぞ! もっとこまめに揺さぶれ!」

ガッ!

兵士2「まっ参りました!」

戦士「次!」

戦士(稽古をつけるのもいいんだが、なんだか退屈なんだよなぁ……)

戦士(やっぱり勇者がいないと、どうにもつまらん)

戦士(あいつ、今何してんのかなぁ・・・)

・魔法院 学舎

魔法使い「以上で研究発表を終わります」

パチパチパチ……

スバラシイ!!  
    マサカコンナハッケンガ!!

ガヤガヤガヤ

院長「魔法使いクン、素晴らしい研究の成果だったよ」

魔法使い「いえ、これもみんなや勇者様のお力添えのおかげです」

院長「私は最初、体の弱い君を冒険の旅に送り出すことに反対したこと、あれは間違いであった。謝らせておくれ」

魔法使い「客観的にみて私の体力が劣っていたのは事実ですし、院長先生の反対は私の身を案じてのこと。謝罪をされるいわれがないので、受けることはできません」

院長「まったく君の頑固さは旅が終わっても変わる事はなかったようだね。もっともそうでなければ君は旅にでなかったしね」

院長「思い出すね。君が旅の意義や勇者様のすばらしさについて熱く語って冒険についていきたいと訴えたことを」

魔法使い「先生……忘れてください……」

魔法使い(そうだった……私が世界を見て回れたのも勇者のおかげ……)

魔法使い(勇者……今何をしているのかな?)

・教会

神父「僧侶――! 僧侶や――――!!!」

僧侶「は―――い!! ここです神父様!!!」

神父「ここにいたのか。実はまた大司教様じきじきの……」

僧侶「それはもうお断りしたはずですよ、神父様。私はここにいます。司教就任はお断りします、と」

神父「はぁ―――。大出世だというのにねぇ……。僧侶の意思がここまで強いと、また断るしかないかのう」

僧侶「ごめんなさい神父様。でも私はもうみんなと、勇者様と一緒に世界を見て回ってしまいました。その上で、ここが一番だと思ってしまったので」

神父「そうかい。神託を授かれる巫女なんて僧侶ひとりだけなのに、もったいないねぇ……。でもねぇ僧侶」

神父「わしはお前にここに残るって言って貰えて、嬉しいんだよ」

僧侶「神父様……ほら、まだ今日のお仕事が残っていますよ!」

神父「ああ、そうだね」

僧侶(勇者様……、私たちは勇者様のおかげでこんなにも穏やかな毎日をおくれています)

僧侶(勇者様……勇者様は今何を考えておられるのでしょうか?)

勇者「はぁ……家には居づらいし、どこいこうかな……」

勇者「顔見知りには会いたくないし……それに昼間に働いてないところも見られたくないし……」

勇者「ハァ……なんだか面倒だなぁ……。とりあえず人気の少ない郊外に行こうっと」

テクテク

ワー…
         アハハハ…
    キャー…

勇者「ん? 子どもの声?」

子ども1「おーい、ここにいるぞ」

子ども2「見つかった! やべっ!」

子ども3「最後の一人! 頑張ってー!」

勇者「……おーい! ここは魔物が出て危ないぞ!!」

子ども4「……おいちゃん、だえ?」

勇者「おいちゃ……(そういえば髭も全然そってなかったっけ)。誰でもいいだろ。それよりこの辺は魔物が出るって教わらなかったのか?」

子ども5「おっちゃんだせー!! この辺は安全になったって大人も言ってたぜー」

子ども6「情弱の極み、乙」

勇者「は? 何言ってるんだ? いきなり安全になるわけないだろう」

子ども7「本当に知らないの? もうあんまり魔物に注意しなくてよくなったんだよ?」

勇者「あ、ひょっとして、それって……」

子ども8「しょうがねーから俺が教えてやるよ。勇者様が魔王を倒してくれたんで、それでこの辺でも遊べるようになったんだぜ!」

子ども9「勇者様ってねー、すっごく格好良くって! すっごく強くて! 私将来勇者様と結婚するの!」

勇者「ふ、ふーん……」

勇者「ん……じゃ、いいや、ばいばい」

子ども10「うん? ばいばい……」

書き込み押そうとしたら、まちがってやめるボタン押して消えちゃった・・・

「みんな―――――お昼ごはんができたよ―――――――」

子ども1「もうそんな時間か」

子ども2「急いで戻ろうぜ!」

勇者「もう昼時か――夕飯まで帰ってくるなって言われたしなぁ……」グゥ……

子ども4「……おいたん、おなかすいてぅの?」

勇者「……まあ、少し……」

子ども5「だったら付いて来いよ! 昼飯くらいおごってやるぜ?」

子ども8「お前が作ったんじゃねーだろ」

子ども7「いつも多めに作ってあるし、一人分くらいは残ると思うけど」

勇者「うーん……」

勇者(大人にあうのは面倒くさいなぁ……でも腹は減ったし……)

子ども6「情弱のおっちゃんに教えてやるとだな! なんとこのお昼ご飯をつくっている人はだな! なんと!」

ガサガサ

「も――――なんでなかなか来ないの! 早くしないと冷めちゃうよ……あ、あれ?」

勇者(ゲ……やば……)

俺「私だ」

僧侶「ひょっとして……ゆ
勇者「あ――!! 初めての街に来て、道に迷っちゃったなぁ!」

僧侶「えっ? でもこの街に家がある
勇者「よし! あっちに行ってみよう!」

僧侶「え、ちょっと! ちょっと待ってください!」

ガシッ

勇者「……」

僧侶「ゆ、勇者様ですよね? 何故逃げるような真似を?」

子ども9「えー!? 僧侶さま、何言ってるの? 髭ボーボーのおじちゃんが勇者様なわけないじゃん?」

勇者「そ……その子の言っているとおり、人違い……じゃ、ないですか……ね?」

僧侶「……」ジー

僧侶「はぁ……わかりました……その代わりと言ってはなんですが、お昼ご飯をご一緒していただけませんか?」

勇者「え……あ、……いや、それはちょっと……家で……」

子ども4「さっき、いえにかえれないっていってたよ?」

勇者「あ、いや……この後、予定が……」

僧侶「……」ニコッ

はよ

勇者(ああ、面倒くさいことになったなぁ……)

勇者(なんだかうまくいかない……)

勇者(ああ早く帰りたい……)

勇者「……」グゥ……

子ども1「そんなに催促するなよwwww」

子ども2「慌てんなwwww食えるぜwwwww」

勇者(クッ……まあ昼飯だけ食っていけばいいだけだし……それにたしかに旨そうだし)

僧侶「ではみんなで神様にお祈りしましょう」

みんな「「「はーい!!」」」

「「「…………」」」

僧侶「では、いただきます」

みんな「「「いただきます!!」」」

勇者「……」モグモグ

勇者(久しぶりに歩いたからかな……。たくさん食べられそうだ)

僧侶(……)ジー

僧侶「どうでしょうか旅の方。お口に合いますか?」

勇者「うん……まあ……」ボソボソ……

僧侶「それは良かったです」

僧侶(勇者様、一体どうしちゃったんでしょうか? 旅の間はあんなにはつらつとしていらっしゃったのに……)

子ども10「シチューに豆入ってるー」

僧侶「こら、残さず食べなさい」

子ども10「えーー」

勇者「……」チラッ

勇者(僧侶は教会の、孤児院か教会学校かは知らないが、子どもの世話か……)

勇者(向いてるっちゃ向いてるが……なんだかもう別世界のようだな……)

ガチャ

勇者「ごちそうさまでした。では私はこれで
僧侶「待ってください! ただで食事を出したわけではないのですが?」

勇者「……え?」

僧侶「昼食分、働いてもらわないと困ります」

勇者(……え~~)

僧侶「働かないで食べるご飯はおいしいですか?」

子ども8「おせーぞおっちゃん! みんなもう向こうにいっちゃったぞ!」

勇者「食べたばっかりだぞ! もう少し休ませろ!」

子ども4「まっててあげる」

勇者(働くって、こういうことね……。簡単で助かったというか面倒ごとを押し付けられたというか……)

勇者(さて、久しぶりに本気で走ってみようかな)

ヒョイ

子ども4「? おんぶしてくれるの?」

勇者「舌をかまないように注意しておくんだぞ」

子ども4「? うん」

勇者「さ、て、と、……」

子ども1「おーい、こっちだぞ ……!!」

子ども2「なんだこのおじさん! すげーはえー!!!」

勇者「とうちゃく、と」

子ども4「……」ポカーン

勇者(夕飯まで適当に時間つぶすか……。一応、迷子や怪我はださないようにしとかないとな)

こども3「先生さようなら――――!」

僧侶「気をつけて帰るのよ―――!」

子ども9「は――い!!」

勇者「……」

バタン

僧侶「旅の方、今日一日お疲れ様でした。夕餉は自宅で食されるのでしたっけ?」

勇者「ええ……まぁ……」

僧侶「そうですか……」

僧侶「今日一日子ども達の世話をしてみてどうでしたか?」

勇者「ん……まあ、久しぶりに運動して、疲れました」

僧侶「あの子達、少し前まではろくに外に出れなくて……。外に自由に出ても良いようになって、ここ数日おおはしゃぎなんですよ」

勇者「……」

僧侶「本当に、本当に勇者様には感謝してもしきれません」

僧侶「……」チラッ

勇者「……」

買い物するから適当に感想

僧侶(うーん……)

僧侶「ですので、例えばこの先勇者様が一生何もしなくても、許しちゃうでしょう」

僧侶「王様でも、大司教様でも、大富豪でも、世界中のありとあらゆる人が許しちゃうでしょう」

勇者「……」

僧侶「でも、逆に勇者様が借りのある相手、例えば勇者様のお仲間なら……」

勇者「……?」

僧侶「怒っちゃうでしょう」

勇者「え? な、なんで!? 世界を救ったのに!?」

僧侶「その驚きようはなんですか? あなたは勇者様とは無関係なのでしょう?」

勇者「クッ……、そうでしたね……」

僧侶「例えば、お仲間に剣が得意な方が居れば、『おい勇者! お前がいないせいでつまんねーぞ!! どう落とし前つけてくれるんだ!!』」

僧侶「なんてお怒りになって、遊びに修行に連れ出されるでしょうね」

勇者「……なんでそんなのに付き合わないといけない」

僧侶「それはその方に、勇者様との楽しい思い出を作らせてしまわれたからでしょう。そしてその方から、さらに多くの楽しみを受けてしまったからでしょう」

僧侶「ほら? 勇者様には付き合う義務がありますよね?」

勇者「……憶測だ」

僧侶「例えばお仲間に魔法の得意な頭の良い方がいらっしゃったなら、『勇者、伝説の魔道書の所在を突き止めた。ちょっと手伝って』」

僧侶「なんて依頼を押し付けられるかもしれませんね」

勇者「それもそいつのわがままだろ?」

僧侶「それはその方に、本の中だけで完結しない、世界とのつながりとその広さ、その面白さを教えてしまったからでしょう。そしてその方から、さらに多くの本の楽しみを受けてしまったからでしょう」

勇者「……」

僧侶「ほら? 勇者様には付き合う義務がありますよね?」

勇者「……最後のは?」

僧侶「最後?」

勇者「例えば、神の加護で仲間を守っている奴がいたら、どんなイチャモンをつけてくるんだ?」

僧侶「……うーん、きっとその方は奥ゆかしくて、面と向かっては何も言えないのではないでしょうか?」

勇者(よく言うわ……)

僧侶「ですが、どんなことを思っているかは想像がつきます」

勇者「ふーん……?」

僧侶「働けって思いっきり引っ叩きます」

勇者「……言動どころか行動で示してね?」

僧侶「いくら慈悲深い方でも、想いが行動に現れることもあるでしょう」

勇者「……………ふぅ」

勇者(とは言ってもなぁ…………)

僧侶「あの、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

勇者「……なに?」

僧侶「私は勇者様のことを冒険中……冒険譚の中でしか知りません。それ以前はどのような方であったのか、ご存知でありませんか?」

勇者「………………」

勇者(………………)

勇者「………………きっと、特に興味もわかせないような面白みの無い人間だったんじゃないかな?」

僧侶「そのような方が世界を?」

勇者「誰にでもある気の迷いだったんだろ? そして引き返せないところまできてしまった。例えば無理して仲間を作ってしまった、とかさ?」

僧侶「無理して、ですか?」

勇者「きっとな。だから素に戻れば会うのも怖くなるのさ」

僧侶「……」

勇者「もう……いいかい?」

僧侶「はい、長々とお引止めしてすみませんでした」

勇者「昼飯、ご馳走様。なんだか懐かしい味がしたよ」

勇者「また会えるかどうかわからないけど、お元気で」

僧侶「はい、あっ、あの!」

勇者「……まだ何か?」

僧侶「私っ! 神託を受けたことがあるんです! 一度だけですけど!」

勇者「……」

僧侶「勇者様をお助けしなさいと! 勇者様のイメージが流れてきました!」

勇者「……ああ、確か……英雄譚だと、僧侶が勇者を見出したんだったな」

勇者「でも、もう僧侶も自由だろ」

僧侶「それでですね、私、それが終わったというのを、まだ聞いてないのを思い出しました!」

勇者「……なに?」

僧侶「私はまだ、勇者様をお助けしないといけないということです!!」

勇者「……さすがにこじつけだろ」

僧侶「そんなことはありません! 神様もそれをしろとおっしゃっていることでしょう!」

勇者「……帰る」

僧侶「はい、お気をつけてお帰りくださいね。もしも勇者様に会うことがあれば、そろそろ自由時間はおしまいだとお伝えくださいね」

勇者「……………フン」

バタン

僧侶「そうだそうだ、そうでした! 私にはまだまだやることが残っていました!!」

コツッコツッ

神父「おや? 僧侶や、何か楽しいことでもあったのかい?」

僧侶「神父様。ええ、とっても大切なことを思い出しまして」

神父「そうかい、良かったねぇ」

僧侶「それで、神父様、少しやりたい事ができたので、教会のお仕事、あまりお手伝いできなくなるかもしれません」

神父「ええ、ええ。僧侶の好きなようにおやり」

僧侶「ありがとうございます!」

僧侶「さて、そうと決まったら早速準備に取り掛からないと!」

・勇者宅

バタン

勇者「ただいま」

母「おかえり。夕食できてるわよ」

勇者「おなか空いたからすぐに食べる」

父「勇者、おまえ今日外に出たんだって? 腹減ったろうからたくさん食べなさい」

勇者「うん」

母「今日はどこまで行ってきたの?」

勇者「別に……」

父「友達に会ったか?」

勇者「別に……。いないし……友達とか……」

母「……あの、今日の野菜は取れたてのが買えたの。おいしかったらおかわりもあるから!」

父「ああ、たくさん食べろよ……」

勇者「フン…………」モグモブ


コンコン……

母「はい、少々お待ちください……」

「…………」ボソボソ

母「はい、ええ、ちょっと聞いてみます。あなた――――――」

父「なんだ? ええ、はい…………そういうことでしたら……」


勇者「? なんなんだいったい?」


バタン


勇者「一体なんの用だったの? 俺に関係のある話?」

父「いや、たいしたことじゃ無いんだ」

母「そうそう。夕飯の続きをしましょ?」

勇者(何か? 隠してる?)

勇者(……まあ、どうでもいっか)

勇者「もういいや、ごちそうさま」

父「なんだ少し残すのか」

勇者「うん。もう寝る。おやすみなさい」

勇者「さて、もう寝るか……」

勇者(今日は少し変わった日だったけど、それは今日でおしまい)

勇者(魔王もいないから、もう避難も訓練もしなくて良い……)

勇者(明日からは、また何も無い日々……)

勇者(冒険に出る前の、何も無い、日々……)

勇者(1ヵ月後、一年後、十年後……)

勇者(誰とも会わず、誰とも話さず、ただ、起きて、食べて、だらだらすごして、寝る。そんな日々……)

勇者(ずっとずっと続けて、誰からも忘れられて……)

勇者(戦士も魔法使いも、僧侶も、やがては自分の生活に忙しくなって……)

勇者(…………)

勇者(俺は一人、ここで朽ちて)

勇者(消えてくゆく……)

勇者(……)

……


ド―――――――――――――ッッッン!!!!!!!!

ガバッ!!

勇者「!! 一体何だ!? 敵襲かっ!?」


戦士「お―――――!!! 勇者が顔を出したぞ!!」

魔法使い「久しぶりにみたな。冒険時よりひどい面になってるな」

姫「そんなことはありません! 勇者様は今でも素敵です!!」


王「さて、皆の者! 今宵の宴は魔王討伐の功労者、勇者殿を無理やり交えての祭りぞ!」

王「大臣、ありったけの酒を料理を持って参れ! 一切の出し惜しみは厳禁じゃぞ!」

大臣「国宝の酒も持ってきますか?」

王「う……む……、よし、わしも一国の王、一度口にしたことを飲んだりせぬ! 城にある全ての酒を持って参れ!」

大臣「ははっ」


僧侶「勇者様、私の初手はどうですか?」

僧侶「剣ではあなたでもかなわなかった戦士、魔法ではあなたでもかなわなかった魔法使い」

僧侶「今日はそれ以上の、あなたが打倒魔王に借りた力、その全てが敵に回っている……」

僧侶「フフ……聖戦の幕開けです」

勇者「俺の家の前で、なんで宴会!? 王様に姫様まで!?」

勇者「クソッ! こんな馬鹿なことするやつは……いた! やっぱりこいつらか!!」

勇者「戦士! 魔法使い!! ……今日言ってたのはこういうことか! 僧侶!!!」


戦士「これが国宝級の酒!?」

国王「級じゃないわい! 紛れも無い国宝じゃわい!! 流石のわしでも開栓には手が震えるわい……」

魔法使い「何年ものなのでしょうか?」

国王「知らん! ただ、建国時にはすでにあったらしいぞい!」

戦士「……」ゴクリ……

大臣「民も集まってきています。いかがいたしましょう」

国王「よし、酒に料理にたくさん振舞え! 今日は出し惜しみするなよ!」

大臣「はっ!」


勇者「うるせ―――――!!!!」

勇者「クソッ! 王様も居たんじゃ怒鳴りもできねーし……」

勇者「僧侶のやつ……クソがッ!!」

勇者「思い通りになってたまるか!」

勇者「意地でも寝てやるわ!!」


戦士「うおぉぉぉっっっつつ!!!!! 何だこれ? 味しね――――――――」

魔法使い「水? ……のようね。古すぎて変化してしまったのかも」

国王「そんな馬鹿な!? ……本当だのう」ショボーン

大臣「皆様方、まだまだ酒の用意もございます」

戦士「よし! じゃんじゃん持ってこ―――――――い!!!」


勇者「クソッ!! 戦士の奴、相変わらず声でけ――――よっ!!!」

勇者「こうなったら……薬の力に頼らざるをえんな……えーと、睡眠草は……」

勇者「これか……」ハミハミ

勇者「…………………全然眠くならんね。なんでだ……ハッ!?」


魔法使い「~~~~~~~~~~~~~~」


勇者「魔法使いの野郎! 覚醒の魔法を唱えやがってる!! 相変わらずなんつー感の良さだ!!!!!!」


、/ /ヽ  |       :::::::::::::::::::::::/  / \ ∧/
 、 /  /,、 |       ::::::::::::::::::::/ __ |    | /   ___    _  __ _
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 ‐フ _ ,-、 ゙i:     ...::::::::::::/   ,,-、 ゙'─|     フ 广| ┌'<,,''>「゙二゙了
 ‐' / i ヽ '__ |;    ...::::::::::/  __ ヽ !,. /|    .く_//"o .ヽ,冫>| .= |
 、 ゙、 | / ノ \  .:::::::::/   ゙‐',,-‐゙'´ く  |      ゙''‐-^ヽ'ヽ' l」゙アノ
 .\ ゙'´ ヽ/ ,-、 ゙i; .::::/ ,,,,,;;;-=ニ、'"、ァ  ,二|      />   l二二l
 ::゙i,\ レ _゙‐''´ ン‐'",,,;;;;-''''''く~´  ノ  / .::|     //   ゙--,  ノ
 :...゙i ゙!、 リ  ,イ´ ''",へ ,;ァ  \/  く  .::::|     \\   /  L,,,
 ゙、::゙l,. ゙!、  |    ヽ,,ノ ,-‐、  /フ \,;-‐|      ,,,,\>  ヽ/ヽ-┘
 . 1.::ヽ、ヽメ .i|   ,ヘ   <.,,,,,ノ  `"_,,,,,-==|    ┌┘└─┐┌──┐
  |.i..::;;i´\゙i込、,, ゙"  _,,,,,;;-==〒''O ノ  .|    フ 广| ┌‐'  ゙'フ ,-‐┘
  | ゙i ::| ヽ、゙'゙'l;、 ゙ヽ-‐'''"ヽ!,    `ヽ-‐'"   |    く_/ /"o .ヽ  ( (__
  | !;,:|  ゙'',;゙'''''''二 ,,;- ヾ-────┬==|     ,-゙‐-''^''   ゙‐--┘
  | |..i|   / ,,‐'",,,  ヾ==≡ニニ    \ .:::|    ,┘ヽ' ̄l
  ゙! ゙| i| /,;‐''"~               i| .::|    ゙フ /| |
  .! ゙!:}'" _.,,,,,       ,,,,,_     / .:::!、   ヽl |  | ‐フ
  ゙i, |:::゙i''=;,、;;;/   _,,,,;;-=、 ヾ,i   / ..::::::\.   └'  ゙'''"
  ゙!, ゙ヽ,゙i, '!ヽ_=─'''"    ,__)  /  ./ ..:::::::::::`>   _ _
   ゙i,. ヽ'i ゙i ::フ二ナ──'''",,,,i'  "  / ..::::::::∠-''フ. / // /
   .入 !i  |/二/''"''ヽ-‐'" / ,,   / ....::::::::::::::/ / // /
   / \ l| |‐、/       /  /  ./  ...:::::::::::/  /_//_/
  ./   ヽ| | |''      ,‐''i  "  ./  ..::::::::::::く  /フ /フ

大臣「次の出し物は武道です」

戦士「おういいね! 踊りとかの出し物はあるの? 踊り子さん!!! 痛って――――――っ!!!」

戦士「なんでお前にどつかれなきゃいけないの!?」

魔法使い「偶然どついちゃっただけだ。気にすんな」

戦士「お前の腕は偶然人をどついちゃうの!?」

僧侶「まぁまぁ、今日くらいは良いじゃありませんか」


勇者「あいつらなんでここでラブコメるんだよ……」

勇者「超うぜ―――――」

勇者「クソッ!!! イライラが収まらん!!!!」


姫「それで勇者様は私を抱きかかえて、敵に敢然と立ち向かったのですわ!」

従者「ほう、それでそれで!」


勇者「あの腐れアマ! 平然と嘘付きやがって! お前ら嘘を指摘してやれよ!!」

勇者「要所要所であいつに目を塞がれて、俺は何度も死に掛けたんだぞ!!!」

戦士「お―――――――しっ!!! 次の酒持ってこ――――――いっ!!」

魔法使い「少しは自重しろ」

僧侶「まぁまぁ、今日はよろしいじゃありませんか」

王様「そうじゃぞ。今日ばかりは、ほれ、そこのちっこいのも羽目を外さんか!」

魔法使い「ち、ちっこいの? むぅ……」

戦士「ははは!!!! ちっこいの……痛っっっ―――――――――って――――――――!!!!!!!!!!!」


勇者「……」イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ

勇者「……」イライライライライラ………

勇者「……」プツ………

勇者「……」


勇者「ウガ―――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」


ダダダダダッ!!!!!!!!

バタン!!!!!!

勇者「てめぇら!!うるせぇよ―――――――――!!!!!!!!!!!!!!!」

勇者「ハァハァハァ………………………………」

戦士「あれ? お前勇者じゃん」

戦士「いたの?」

勇者「ウガ――――――――――!!!!!!!!」

魔法使い「やだ……このひと……混乱状態……?」

勇者「そりゃ居るわい!!! なんせ家の目の前だからな!!!!!!!!」

戦士「ふーん…………あ、その鶏肉とって」

勇者「聞けよ!!!!!」

戦士「何だよおまえ……うるせぇ奴だなぁ……。宴会の邪魔すんなよ」

勇者「俺の家の目の前でだよ? 喧嘩売ってるの?」

戦士「一度も俺に勝てたことないくせに、何強気になってんの? いいよ? 買っちゃうよ? そして勝っちゃうよ?」

国王「それについては問題ない。すでにご尊父とご母堂に許可を得ている」

戦士「へっ! そういうこった! お駄賃上げるから宿借りて寝てくれば?」

勇者「クソッ! あの時かっ!! クソ爺クソ婆!!」

国王「コリャ! 勇者殿と言えど、今まで育ててくれたご両親にそんなこと言っちゃいかん!!」

勇者(なんでここに国王まで……、クソッ! やりづれぇ……)

勇者「……すみませんでした」

国王「よし、許す」

戦士「ぶっはっぁぁぁぁっぁ――――――――――――!!! 叱られてる――――――――!!!!!!!!!!!」

魔法使い「笑っちゃ可愛そうよ……まだやんちゃしたい年頃なんだから……」

勇者「……」イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ

勇者「……」

ドンッ

戦士「あ?」

勇者「戦士、久しぶりに飲み比べしようや」

戦士「それも俺に勝った事ないのに? お前いつのまにか度胸だけはついたなぁ……」

勇者「構わねーよ。それで負けた方が土下座な? 罪状は俺の家の前で騒いだ罪で」

戦士「じゃあお前は親に反抗した罪で土下座な」

魔法使い「ぷっ……パパとママにしっかり謝るのよ。『クソ爺クソ婆って言ってごめんなさい』って」

勇者「チッ……ほら、なんでもいいから始めようや」

戦士「OK! 今まで飲んできた分はハンデでくれてやるぜ!」

戦士(相変わらず青いね~。酒の席での約束事なんか守るわけねーだろ! お前には守らせるけどな!!)

勇者「まずはこの酒からいこうぜ」

勇者(ハンデとか調子に乗りすぎだろ。この差から始めたらすでに決着がついてるぜ)

ドン!

勇者・戦士「あ?」

魔法使い「僧侶?」

僧侶「私も参戦します。よろしいでしょうか?」

戦士「それはまぁ……構わないが。確かお酒とかご法度なんじゃなかったっけ?」

僧侶「そうなんですけどね。神託の方が優先されますからね」

勇者「……お前の飲酒が俺を助けることになるって? 神託ってものをそんないい加減に扱ってもいいのか?」

僧侶「解釈なんて、こちらの都合でどうとでもなります。例え首を掻っ切っても、ある意味助けたことになるのですから」

勇者「……おまえ、結構融通の利く性格だったんだな」

魔法使い「勇者はしらなかったの?」

勇者「………………思い当たる節はある」

僧侶「では私が勝ったらですね。勇者様には今まで避けていた人に、『今まで避けていてごめんね。これからは避けないようにします』って謝ってくれますか?」

勇者「……」

勇者(やはりそうきたか……。しかし僧侶が今まで酒を飲んだところなんて見たこと無い。これが初めてなら雑魚同然)

勇者「わかった。俺が勝ったら俺に必要以上にかかわるな」

僧侶「わかりました」

僧侶(神託がある以上、そちらが優先されますけどね)

魔法使い「全員分そろいました。では始めましょう」


    「「「わ―――――――――――!!!!!」


戦士「グビグビグビ……プハ―――――――!!!」

戦士「どうだ勇者、まだ倒れねーか……ヒクッ」

勇者「余裕だね」

僧侶「ゴクゴクゴク……」

勇者(僧侶のやつ、そんなに一気にのんで大丈夫なのか?)

戦士「へへ……よしっ! 次だ! 次もってこ――――いっ!!」

戦士「グビグビグビ……くそ……だんだんきつくなってきたぞ」

勇者「初黒星まで後一歩ってところ、どんな気分だ戦士?」

戦士「ほざけ……ああ、もうだめっぽいな……」

戦士「……勇者、そういえばさ、おまえ……」

勇者「なんだ?」

戦士「怒ったところ……変わってねーじゃねーか」

勇者「……」

戦士「……冷めてんじゃねーよ。あれもお前なんだからな……結構……あつ…………い……………」

ガクッ……

ユサユサ……

魔法使い「戦士、泥酔確認!」

勇者「チッ……宿行って寝るか……」

グイ……

勇者「何……?」

僧侶「どこへ行くんですか? 勝負はまだ付いていませんよ」

勇者「あ、ああ……」

勇者(なんだこいつ? 今日が初飲酒だろ?)

僧侶「勇者さんは不思議に思っていますね?」

勇者「あ、ああ、……もしかして酒豪だったりするのか?」

僧侶「さあ、わかりません。でも私が負けるはずないじゃないですか?」

勇者「グビグビ……なんでそんなに自信あんだ……ヒクッ」

僧侶「私は今、神の代行者です。ですので、絶対に勝ちます」

勇者「なんだそりゃ……何でそんなわけのわからないものに……俺が…………」

ガクッ……

ユサユサ……

魔法使い「勇者、泥酔確認!」


    「「「わ―――――――――――!!!!!」


僧侶「ふう……さすがに無理しすぎたみたいね。ありがとう魔法使い…………」

魔法使い「僧侶も良く頑張った。覚醒しかかかってないから、吐いてから寝たほうが良いわよ……」

風呂

・次の日

勇者「今まで避けていてごめんね。これからは避けないようにします」

魔法使い(うわぁ……まるでコピペしてきたみたいな心のこもってなさ。反省してないの丸わかり……)

魔法使い「わかってくれればいい。これからも仲良くしようね」

勇者「ああ」

勇者(こいつ、ちょろいな)

魔法使い(僧侶は次はどんな手を打ってくるのかな? ん? まだ秘密っぽい?)

僧侶「……」コクコク

勇者「次は戦士のところだろ? さっさと行こうぜ」



勇者「今まで避けていてごめんね。これからは避けないようにします」

戦士「ん? 俺、避けられていたのか? 全然気づかなかったぜwwwww」

勇者「……」イライライライライライラ

僧侶「最後に王様にも行かないとね」

勇者「王様もかよ……会いに行きづらいんだが……」

勇者「今まで避けていてごめんね。これからは避けないようにします」

王様(わしの前でもそのコピペで貫き通すか。ある意味天晴れじゃ)

王様「よいよい、それより勇者に僧侶。昨夜は大酒を飲んで追ったが、体の調子は大丈夫なようじゃな」

僧侶「はい、おかげさまで」

勇者「二日酔いがひどいので、早めに帰りたいです……痛っ」

王様「そうかそうか。それはすまんのう。姫も会いたがっておったが、無理もいえんな」

僧侶「すみません。私もやや酒が残っていることも否めませんので」

王様「あいわかった。養生して、元気になったらまた顔を見せに来ておくれ」

勇者「はい。それでは失礼します」


勇者「それじゃ、俺はここで、おつかれ」

ガシッ

勇者「……何?」

僧侶「まだ一人残ってますよ?」

勇者「え? 誰?」

僧侶「私です」

勇者「……」

勇者「今まで避けていてごめんね。これからは避けないようにします」

勇者「じゃ」

ガシッ

僧侶「これからは避けないんですよね?」

勇者「…………ああ」

僧侶「実はこれからお付き合いしてほしい場所がありましてね。まあ教会なんですけど」

勇者「……時間かかりそう? 早く家に帰りたいんだけど」

僧侶「すぐに済みますよ」


子ども1「おっちゃんまた来たの?」

子ども2「しょうがねぇな、また遊んでやるか!」

勇者「……」

僧侶「ごめんなさい勇者様、ちょっとお仕事が溜まってしまいまして、それを片付ける間子どもたちの相手をお願いできるでしょうか?」

勇者(クソッ! やっぱりはめられた。また1日がかりじゃないだろうな。しかし断ろうにも、この子たちを前にして……クッ)

勇者「わかった。僧侶の仕事が終わるまで、だな?」

コツッコツッコツッ

神父「あの青年が勇者様かい?」

僧侶「神父様……ええ、あの方が勇者様です」

神父「ふふ……勇者と聞くと猛々しいが、あの顔、子ども達に振り回されてるのが板について見えるねぇ……」

僧侶「ええ、まったく……」

僧侶「神父様……私はざんげをしなくてはならないかもしれません」

神父「どうしたのですか?」

僧侶「勇者様はもともと魔王討伐の旅に出るような方ではなかったのかもしれません」

神父「……」

僧侶「ただ、私が見つけてしまったばかりに……。仲間が出来てしまったばかりに、仲間の目を気にして、逃げられず最後まで行ってしまったのかも……」

神父「……そうだったのかい」

僧侶「神託ゆえ間違ったと言う事はできません。事実、多くの人々が救われました。しかし、私が勇者様を追い込んでしまったことも、否定できません」

僧侶「勇者様は身を粉にして他者に手を差し伸べてこられました。しかしそれが素養でなく、逃げから来たのでは、と……」

神父「……お前はこう言いたいのだね」

神父「勇者様が他者を助けられるほど強いのではなく、他者の助けを断れないほど弱かったのだ、と」

僧侶「はい……」

神父「だとしたら、それは君の間違いだ。もっと簡単に考えなさい」

神父「弱き者を助けようとするのは善であり、助けられるのは剛である。それは間違いないよ」

僧侶「あ……」

神父「そして彼は責任感の強い青年だ。最後まで君達を決して裏切らなかったし、今もこうして子ども達の世話をしている。これが強さじゃなくてなんだろうね?」

僧侶「……はい、そうですね」

僧侶「しかし彼は、その様なことを望んでいないのも事実なようです……」

神父「それはどうだろうか? 今の彼の顔に、何か不満があるかい?」

僧侶「……見えませんね」

神父「そうでしょう。最初はいやいやだったのに、今は楽しそうに見える」

僧侶「では彼の何が、心を閉ざしているのでしょうか?」

神父「それはね、君、勇気だよ」

僧侶「……勇気? 勇者とほど遠い言葉に思えますが?」

神父「勇気と言っても色々ある。強大な悪に立ち向かう勇気。自分をさらけ出す勇気。全てが同じものとは言えないだろう?」

僧侶「はい……。では、彼には人と接する勇気が足りないのでしょうか?」

神父「恐らくは……」

僧侶「それを克服することは?」

神父「可能ではあるでしょう……。しかし、良いではありませんか。欠点くらいあっても、神はお許しになられますよ」

僧侶「それはそうでしょうが、しかし生き辛いようにも見えます」

神父「あなたは仲間と一緒に旅を続けてきましたね? 仲間がいる最大の利点はなんでしたか?」

僧侶「…………互いの欠点を補い合うこと、です」

神父「なら、補っておあげなさいよ。あなたはまだまだ、勇者様の仲間なのですから」

僧侶「……………………そうですね。そうです。わかりました」


子ども4「あ―――――んッッ!!!!」

勇者「おい、おまえちょっとこい」

子ども8「うう……その……」

勇者「人のものを取ったら駄目だろ?」

子ども8「う……うん……」


僧侶「そうですね……」

子ども8「先生さようなら~。新しい先生もさようなら~~」

勇者「……さよなら」

バタン

僧侶「勇者様、今日も一日ありがとうございました」

勇者「あんな感じでよかったのか?」

僧侶「はい、良かったです」

勇者「じゃあそろそろ帰るから」

ガシッ

勇者「……………………何か」

僧侶「あ、いえ…………その、あ、そうだ、2・3日したら魔法使いと戦士が行くと思いますが、逃げないでくださいね」

勇者「…………ああ、わかった」


バタン


僧侶「ふう…………」

神父「やれやれ、君も勇気が必要だねぇ……」

・勇者宅

勇者「ただいま~」

母「おかえり勇者や。夕食がもうできているから、早くたべなさいね」

勇者「うん」

父「遅かったな勇者。今日は何かあったか?」

勇者「べつ……そういえば教会に行ってきた」

母「教会? 何してきたの?」

勇者「子どもと遊んできた」

父「教会学校のか?」

母「まあ、良かったじゃない」

勇者「うん。暇があったらまた行って来るよ」

………

……



Fin.

寝る

残ってたら何か書くかも
または咲SSの続きかもしれんが

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