春香「アイドルマスター!(物理)」(638)


春香「トップアイドルってなんだろう」

千早「……Sランクアイドルの春香がそれを言うの?」

春香「千早ちゃんだってSランクアイドルでしょ?
 千早ちゃんはトップアイドルってどんな感じか想像出来る?」

 765プロの快進撃は今や生ける伝説となっていた。
 所属しているアイドルが全てSランクアイドルの化け物事務所として業界に知れ渡った765プロは、今や話題が話題を呼ぶ状態で、凄まじい人気と利益を生み出す存在となっていたのだ。


千早「私は歌だけだから……トップアイドルが何かなんて考えたことも無いわ」

春香「……アイドル……アイドルを極めれば何でも出来ると思ってた……でも、実際はここまで来てもなにもままならないんだよ。千早ちゃん。
 これだけの地位を手にしても手に入らない物がある。
 千早ちゃんも分かるよね?」

千早「……えぇ、分かるわ。それで?」

春香「Sランクアイドルは同時に存在することもあるけど、トップアイドルはそうじゃありません!
 私はトップを決めたい。
 トップを決めて……私は、私は――」

P「おはよう、みんな!」ガチャ

春香「……おはようございます。プロデューサーさん!」

千早「おはようございます」

P「あれ? 二人だけか?」

春香「そうですけど」

P「おかしいなー。社長に呼び出されて来たんだけど」

春香「私もです」

P「なんの用事か聞いてるか?
 こっちは何も聞かされてないんだが」

春香「聞いてますよ。プロデューサーさんにとってはお楽しみみたいなものですから、今ここでその内容を言ったりしませんけど」

千早「……みんな来たみたい」

 千早がそう言うと事務所の入り口が慌ただしくなった。
 かなりの人数の足音が聞こえる。

社長「キミぃぃぃぃ!! すごいよぉ! どうしたら良いのか分からないくらいすごいよぉ!」ガチャ

 始めに事務所に飛び込んで来たのは社長であった。
 彼は765プロのアイドル達がもたらした膨大な資金を目の当たりにしたその日から、少し精神をやられてしまっていた。
 一般人では一生かかっても使い切れないほどの大金を生み出すアイドルが12人。
 事務所にもたらされる利益は尋常なものでは無かった。
 儲けることを第一に考えてこなかった765プロの社長にとっては、度を過ぎた金はむしろ毒であったのだ。


P「落ち着いて下さい社長。今度は何があったんです?」

社長「しゅごいいいいい!」

P「分かりました。後は俺が何とかするので安心して下さい」

社長「頼むよキミぃ! 君だけが便りなんだ!」

 社長に続いて入って来たのは音無小鳥。
 765プロの事務員をやっている2×歳だ。

小鳥「ピヨ……しゃ、社長……人員増やしてください」

 彼女はやつれていた。
 忙しすぎる事務所のスケジュールに忙殺される寸前であった。

社長「でもティンと来る人材がいないんだよ。
 今までの倍の給料を払うから頑張ってくれたまえ」

小鳥「その台詞聞き飽きましたよ……倍倍倍……いくらお金もらっても体は一つなんですよ!
 もう限界なんです! 休みが欲しいんです!
 こみ……お祭りに行く程度の休みは欲しいんです!」

P「小鳥さん……なんでそんなに追い詰められてるんですか……」


小鳥「プロデューサーさんみたいな化け物には分かりませんよ。
 24時間働き通してもクマ一つ出来ないプロデューサーさんには」

P「ドーピングで限界突破してますからね」

小鳥「あやしい薬じゃ無いですよね?」

P「至って普通の栄養剤をフルミックスして飲んでるだけですよ」

小鳥「フルミックスって……大丈夫なんですか!?」

P「俺は大丈夫なんですよ」

小鳥「どう反応したら良いのか分かりません」

P「それに小鳥さん。仕事の負担を減らす方法は色々ありますよ。
 例えば、音無さんが個人的に人員を雇うとか」

小鳥「早くそれをいって下さい」

 音無小鳥は膝をついて泣いた。


P「律子はそうしてたから音無さんも当然やってると思ってました」

小鳥「そういう発想が思い浮かぶ暇もありませんでした」

P「……社長が社員を増員してくれたら一番手間が掛からないんですけどねぇ」

社長「びゃああああああああああああ!」

P「ティンと来るような人材は絶対に近づいてこない人間と化してしまいましたからね」

小鳥「早く正気を取り戻して下さい……社長」

P「セレブ御用達の高級料亭とかでリハビリをしてるんですけどね。
 根が貧乏性なのか成果が見られなくて……」

小鳥「プロデューサーさんは大金が舞い込んでも変わりませんね」

P「栄養剤のおかげですかね」

小鳥「本当に大丈夫ですか? プロデューサーさん」

支援はしよう。だから必ず完結させるのだ


美希「小鳥、後ろがつっかえてるの」

小鳥「ご、ごめんね」

美希「ハニー! 会いたかったのー!」

 美希はPに飛びついた。

P「毎日のように会ってるじゃないか」

美希「美希的には毎日じゃ無くて毎秒会っていたいな」

 美希に続いて765プロのアイドルがぞろぞろと事務所内に入ってきた。
 どうやら全員揃っているようだ。

亜美「あ→! 真美隊員、ミキミキが実にけしからんことをしていますぞ!」

真美「……これは罰が必要だね」

亜美「それが妥当でしょうな→!
 して、どうしてやりますかな?」

真美「今は必要ないYO。
 これで、決めるの」

 そう言うと真美はポケットから一枚の紙を取り出した。

亜美「我慢が出来る女ですな→。真美は」

社長「全員揃ったみたいだね。では諸君。例のお題は考えてきてくれたかね?」

 アイドル達が一斉に頷いた。

P「お題?」

社長「トップアイドルを決めるのに相応しいお題だよ。
 彼女たちに考えてきて貰った」

P「すでにみんなトップアイドルじゃないですか」

社長「みんながトップアイドルというのは、おかしいと思わんのかね。
 トップは一人だけなんだよ。キミ」

P「だからトップを決めるお題を考えてきて貰ったと?
 事務所内で争ってなにになるって言うんです?」

社長「勘違いをして貰っては困る。
 これは私では無く、彼女たちが望んだ事だ」

P「そんな……本当なのかお前達」

 アイドルの中に口を開く者はいなかったが、社長の言葉を否定しないという単純な行動がそれを事実だと告げていた。


P「馬鹿げてる。一体なにになるって言うんだ、そんなことをして。
 お前達は同じ事務所の仲間じゃ無いか」

貴音「仲間だからこそ」

P「……貴音」

貴音「認め合った仲間だからこそです」

真「ライバルとも思ってなければ、こんなことしませんよ。
 自分がトップアイドルだと確信していたらこんなことする必要なんてないですから」

雪歩「お互いに認め合った最高の仲間だからこそ決めたいんですぅ」

やよい「自信が無いんですっ。自分が最高のアイドルだって言うことに」

あずさ「周りはみんな頂点に手を伸ばしてる子たちばかりですからね~」

P「お前達……そんなことを考えて……」

            ノヘ,_
    ,へ_ _, ,-==し/:. 入
  ノ"ミメ/".::::::::::::::::. ゙ヮ-‐ミ

  // ̄ソ .::::::::::: lヾlヽ::ヽ:::::¦
  |.:./:7(.:::::|:::|ヽ」lLH:_::::i::::: ゙l
 ノ:::|:::l{::.|」ム‐ ゛ ,,-、|::|:|:::: ノ   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
 ヽ::::::人::l. f´i  _l :i |:|リ:ζ  _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
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 ヽ(_  lt|゙'ゝ┬ イ (τ"

       ,、ヘ__>}ト、
      .'::l1>===<l|:::::l

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社長「……では、お題を書いてきた紙をこのミカン箱に入れたまえ!」

 アイドルのみんなは各々紙を取り出し、社長の持つミカン箱へとそれを投入していった。

社長「ふぁああああああああああ!」

 社長は箱をよく振りそれを混ぜ合わせる。

社長「キミぃ! 引きたまえ!」

P「俺がですか?」

社長「ここまで彼女たちを育てたキミが一番相応しい!
 引きたまえ!」

律子「わ、私の努力も……まあ、プロデューサー殿の働きに比べれば微々たるものですが」

 Pはミカン箱から紙を一つ取り出す。
 二つ折りになっているその紙のお題はまだ何か分からない。

社長「広げたまえ!」

P「……はい」

 その紙に書いてあったお題とは――。


P「……え!?」

社長「読み上げたまえ!」

P「でも……これは」

社長「早くしたまえ!」

P「お題は、拳で決める……です」

社長「紙をそこの机に置いておきたまえ!」

P「この場合はどうなるんですか?」

社長「常識的に考えたまえ!
 多数決に決まっているだろう! キミぃ!」

P(12人で自由に課題を決めてくるんだったんだよな? 多数決って……)

 Pはもう一度箱の中に手を入れた。

P(誰かがふざけて入れてたみたいだけど、今度はまともなお題が出てくれよ。
 歌とかダンスとかいくらでもあるだろ)

社長「選び取りたまえ! そして、広げたまえ! そして、読み上げたまえ!」

P「な!?」

 Pは紙を開いて驚愕した。

P「ちょっと、社長すいません!」

社長「や、止めたまえ!」

 Pは無理やり社長から箱を奪い取ると中身を全て確認し始めた。

P「これも……これも、これも!
 どれもこれも肉体的な対決だ!」

社長「返したまえ!」

 社長はミカン箱をPから取り返すと満足そうに小脇に抱える。


P「……お前達はいつから格闘家になったんだ?
 俺が育ててたのはアイドルだったと思うんだが」

春香「プロデューサーさん。アイドルってなんですか?」

P「そりゃあ、芸能界で歌手やタレントをやって人に夢を与えてる奴のことだろ」

春香「なら、芸能界に所属していない一般人で私たちの誰よりも可愛くて、私たちの誰よりも歌が上手くて、私たちの誰よりも演技が上手で、私たちの誰よりも人気がある女の子はアイドルじゃないんですか?」

P「アイドル……かな? アイドル候補か?
 まあ、いないだろそんな奴」

春香「アイドルは……理想のアイドル像は突き詰めていけば千差万別です。
 でも、人に夢を与えることが出来なければアイドルじゃないんですよ」

P「だったら少なくともSランクアイドルの春香は立派なアイドルっていう事になるな」

春香「いいえ。
 夢を見ることを恐れてしまった人間が夢を与える仕事なんて出来るはずありません。
 最近の私は立派なアイドルだって胸を張ることが出来ないんです」


P「どういうことだ?
 仕事が辛くなったのか?」

春香「違います。
 ただの気持ちの持ちようです。
 トップを決めたいんです。
 トップが決まれば確固たる自信か上を目指す力かのどちらかを必ず得るはずなんです!
 自分の見る景色が変わってくるはずなんです!」

P「だからって何で肉弾戦なんだよ。
 おかしいと思わないのか? みんな!」

千早「思いません。
 ……健全な魂は健全な肉体に宿る。
 私たちの誰がアイドルに相応しい気持ちと肉体の持ち主なのか、それを計るのには一番適した方法です。
 みんなそれぞれ得意分野に違いがありますし、歌やダンスで勝負をして採点するとしても、人の好みなどの裁量が入ります。
 でも、拳が奏でる戦いは違うんです。
 最後まで立っていた人間が健全なる肉体と健全ならる魂を持っていたという事になる。
 最後まで立っていたという単純な事実がトップであるという紛れも無い証になるんです!」


P「12人全員がそう思ってるのか?」

 アイドルは無言で瞳に闘志を燃やした。

P「相談もなにも無しでみんなこの方法を選んだのか?」

 少しの間、皆が顔を見合わせる。
 そして頷いた。

春香「分かってましたから。
 これが唯一にして絶対の方法だって」

P「…………よし! わかった!
 止めても無駄そうだしな。このお題を実行しよう。
 ただし、最低限のルールを設けさして貰うぞ。
 期日は一ヶ月後に控えてる大型連休だ。
 それで良いな!」

社長「はい!」


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 一ヶ月後。
 765プロの面々は車で長い距離を移動し、ある場所へと訪れていた。

P「……ここだな」

響「かなり古くさい旅館だぞ。
 ……ん? 海、海の匂いがする!」

P「この旅館の向こう側はすぐに海だからな。
 ……ここはかつてリゾート開発が行われていた場所なんだが、見事に失敗してすっかり寂れてしまっている。
 貸し切りだ」

響「やった! 貸し切りだ! 海だ!」

P「泳げないけどな」

響「え?」

P「この辺りは波が激しいんだ」

響「……ぬか喜びさせないで欲しいぞ」


P「さて、今日は長旅の疲れをここで癒すぞ。
 本番は明日からだ。
 今日はお題実行に当たっての会場とルールの説明を行う」

響「会場?」

P「俺が準備した会場だ。
 その説明は後だ。とりあえず、チェックインを済ませるぞ」

 旅館の中は外観と違い小奇麗であった。
 そこそこ広い旅館であるが、老人達が数人で切り盛りしている。

BBA「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。
 貸し切られていますので、部屋はご自由にお使い下さい」

P「後は大丈夫です。
 もうここも30回目ですから」

BBA「はぁ……そうですか?」

美希「こんな旅館に30回も来てたの?
 なにしに来てたの?」

P「こら美希!
 こんな旅館とはなんだ!」

BBA「構いませんよ」カーッ!ペッ!

美希「危ないの! 唾を吐いてくるとか狂気の沙汰なの!」

伊織とかやよいとかは体格差から打撃が不利だからサブミッション専攻とかかな

あくまでも「スポーツ」なのか「喧嘩」なのか、本気でやるには優劣が決まり過ぎる

琉球や柔道と本気で路上喧嘩とか死人が出るレベル


BBA「では失礼いたします」

 老婆はよぼよぼとその場を後にした。

P「部屋はみんな好きな場所を使ってくれて構わないが、まずは大広間だ」

美希「そこに何があるの? 料理?」

P「料理も頼めばいくらでも持って来てくれるぞ。
 でも、まずは……これを見て欲しかったんだ」

 そういうとPは襖の前に立ち、大きく開け放った。

美希「な、なにこれ?」

P「Computer」

美希「発音超良いの!!」

 60畳ほどのだっだぴろい大広間の一角に備え付けられているのは多数のモニターとそれを制御しているとおぼしき機械であった。


P「見ての通りコンピューターだ。
 みんな入ってくれ」

やよい「プロデューサー、これ何に使うんですかー?」

P「隣にある高い建物があるのが窓から見えるだろ?
 このコンピューターはあの建物のなかに設置されたカメラの制御を行う為のものなんだ」

 Pがコンピューターを起動させると、建物の中のハイビジョンな映像が用意されているいくつもの画面に映し出された。

P「明日、お前達にはあのビルの中でサバイバルマッチを行って貰う」

やよい「うっうー! プロデューサーがノリノリですー」

P「早く見せたかったんだ。
 この一ヶ月間頑張って準備してたから」

やよい「どういうことですかぁー?
 プロデューサーはこの一ヶ月お仕事がいっぱいでしたよね?」

なんかエアマスターとか思い出す支援


P「仕事が終わった後に毎日ここに来て準備してた。
 機材の持ち込みや設置、電源の確保から何から何まで全てやった」

やよい「すごいです!」

P「だからちょっと楽しみだったんだよな。この日が来るのが」

伊織「所でサバイバルマッチってどういう事なの?」

亜美「いおりんはせっかちですな→」

真美「ストレスがたまりますぞ→」

伊織「うるちゃい!」

真美「亜美隊員。どこかの間抜けが自分の舌を噛んだようです!」

亜美「甘噛みだ。奴はまだ生きている!」


P「で、ルールなんだが」

亜美「華麗にスルー!」

P「先も言ったように勝負形式はサバイバルマッチ。
 お前達にはビルの中で自由に戦いあって貰う。最後の一人が決まるまでな。
 相手が死にかねない攻撃やトラップの設置は禁止。
 あと、顔面への攻撃は無しだ。アイドルだからな」

貴音「質問があります」

P「なんだ?」

貴音「武器の使用は規定の範疇でしょうか?」

P「みんなが良いんなら良いんじゃないか?
 どうだ? みんな」


春香「武器が無い武術なんて……」

千早「問題ありません。真っ向から叩き伏せます」

P「構わないようだな」

貴音「分かりました」

P「俺は明日ここでお前達の戦いの全貌を見ておくからな」

美希「絶対にトップアイドルになるから見ててねハニー」

P「HAHAHA! 期待して見てるぞ!」

 それからは皆で食事を取り温泉にも入り765プロ特有の和気藹々とした様子で時間が流れていった。
 しかし、Pにはそれが嵐の前の静けさであることが分かっていた。

P「そういえば社長は?」

小鳥「さぁ? 一緒の車に乗って宿の前で降りたはずですけど」


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 翌日。
 ビル一階に集結したのは総勢14名。
 中は所々風化が見られたが、深刻的なまでの酷い劣化は見られない。

P『よし、こっちの準備はOKだ』

 ビルの一階に館内放送の容量でPの声が響いた。
 集音機のみならず、スピーカーも至る所に取り付けられていた。

美希「ハニー、聞こえてるー?」

P『聞こえてるぞ。大枚叩いて買った高感度カメラもそこら中に設置してあるからな。
 そろそろ始めたいと思うんだが……音無さん、律子、なにやってんだ?』

音無&律子「え?」

P『え? じゃないだろ。なんでそっちにいるんだよ』

律子「だって私も参加しますし」

音無「同じく」

876組とか即死させられそうないきおいだな


P『トップアイドルを決める戦いなんですけど。
 ……得に音無さん。なにやってるんですか』

 小鳥は両膝と両手をついて震えた。

小鳥「わ、私には参加資格が無いって言うんですかー!
 トップアイドルになる資格は無いって言うんですかー!」

P『アイドルじゃ無いでしょ。
 まあ、別に構いませんけど。美人ですし十分にアイドルの素質はあると思いますから』

小鳥「でしょー?」

美希「……潰すの」ボソ

P『なにやら不穏な言葉をマイクが拾ったが今日はそれが目的だから良いか。
 くれぐれもやり過ぎるなよ。
 だったらみんな20分間の猶予を与えるからバラバラに散ってくれ。
 本番の合図をするからそこからが潰し合いの始まりだ』


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 一方その頃。

社長「心が洗われるようだ。
 激しい波の飛沫が心に染みるようだよ」

 社長は堤防に昇り海を眺めていた。

社長「砂浜がある場所に行ってみたい。少し歩けばあるだろうか?
 ……ん? あれは……」

 社長は少し離れた場所に同じよう海を眺める美女を見つけた。
 その美女は海をぼんやりと眺め溜息をついては海の方へと足を踏み出しては引っ込めていた。

社長「ティンときた。
 あれは自殺だ。
 そうと決まれば……」

美女「はぁ……」

 美女がまたもや海に足を踏み出したとき――

社長「びゃああああああああ!」

美女「きゃああああああああ!」


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 大広間

P「さて、スタートのひぶたは切ったが、今のところ動きは無いな」

 Pは大広間で浴衣を着てくつろいでいた。
 モニターの前でビールとつまみを用意し、完全に観戦モードである。

P「今更だが……やっぱりこれでトップアイドルが決まる気がしない」

 Pがそう呟いたとき、モニターの一つに動きがあった。
 そのモニターには美希と小鳥が同時に映っている。
 Pはテレビでも操作するようにチャンネルで一番大きな画面にそれを映し出した。


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美希「見つけたの小鳥」

小鳥「美希ちゃん……私も始めに戦うのは美希ちゃんだとぁ!?」

 問答無用で殴りかかった美希の拳を間一髪で小鳥が回避する。

小鳥「顔面! 顔面はルール的にアウトですよ!?」

美希「牽制だから良いの。当てる気は無いの」

小鳥「でたー! 拡大解釈!!」

美希「いくよ小鳥。ここからは本気なの」

小鳥「……フフ」

美希「……何がおかしいの?」

小鳥「私がなんの勝算もなくこの戦いに参加するとでも?
 美希ちゃん。あなたに勝ち目はないですよ!」

美希「……」


小鳥「今それを……証明してあげます」

 小鳥はそう言うと左足を大きく前に出し、姿勢を低くした。
 両手は握り拳をつくり顔の前に持って来ている。

P『……これはっ!』

小鳥「ふふっ、プロデューサーさんはこれがなんだか分かってるようですね」

P『パンツが丸見えじゃ無いですかぁ! やったー!
 なんで小鳥さんはいつもの服なんです?』

小鳥「……あ、あまり見ないで下さい」

美希「小鳥! お色気作戦とは卑怯なの!」

 美希は小鳥に猛然と迫った。
 美希が拳を振り上げた瞬間、小鳥の太股がミキリと音を立てる。
 爆発的な筋力で放たれた蹴りが美希の側頭部を襲った。

美希「にょわ!?」

 間一髪躱した美希であったが、驚くべきことが起きていた。

P『これはっ――!』


 小鳥は蹴りを放った状態で大きく宙へと跳び上がっていたのだ。
 黒の下着はもちろん、スジまで見えている状態である。

P『カラリパヤットゥ!』

 地に降り立った小鳥は低い姿勢でゆらゆらと体を動かしていた。

美希「あ、あぶなかったの。危うく首を持って行かれるところだったの」

P『美希。お前に勝ち目は無いと思うぞー』

美希「なんでそんなこと言うの!?」

P『だって小鳥さん結構ガチじゃん』

美希「……頭に来たの。美希の本気を見せてあげるね」

小鳥「大けがする前に棄権した方が良いですよ?」


美希「カランパッツァンだかカリントーだか知らないけど調子に乗らないで欲しいの」

P『カラリパヤットゥな。インドの南部発祥の武術だ。その動きは――』

 小鳥が再び美希に飛び掛かった。

P『鳥人とも評される』

 脅威的な跳躍力と共に繰り出される蹴りはまさに必殺であった。
 その一撃が美希の胸を抉る。……かと思われた瞬間、それはまたもや空を切った。

小鳥「ピヨッ!?」

美希「残像なの」

P『残像か』

 いつの間にか小鳥の背後に回り込んでいた美希は小鳥の首を足首で挟んだ。

美希「美希が一番好きな格闘技教えてあげるね!」


 足の力で地面に投げつけられた小鳥は衝撃に耐えきれず突っ伏した。

美希「一番華やかで一番格好いいキラキラできる格闘技!
 それが――!」

 小鳥の背中に美希が体を投げ出す。
 全体重を受け、小鳥は肺の中の空気を全部吐き出した。

美希「ルチャ・リブレなの!」

P『つまりはメキシカンプロレスか』

小鳥「ちょ……これ、きつ……」ガク

美希「勝利!」


 ――小鳥敗退


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 一方その頃。

社長「そうか……夫が浮気を」

美女「彼はイケメンだし石油王だし優しいし完璧なの。だからこんな事もいつかはあり得るかも知れないって決心はしてたのに」シクシク

 社長と美女は一緒に海を眺めていた。

社長「まあ、待ちたまえ。
 まだ浮気をしていると決まった訳では無いのだろう?」

美女「絶対に浮気よ!
 最近は私にこそこそして何かやってるし、彼は石油王なのよ!?」

社長「まあまあ、海でも見て心を落ち着けようじゃないか。
 マジックをみたいかね? 得意なんだが」

美女「結構よ」

社長「……そうかね」

美女「……ところであなたは何故こんな場所に?
 それと、その箱は?」

社長「社内旅行でね。
 この箱はミカン箱だよ」

美女「……?」


黒服「いたぞ!」

美女「え? あ!」

社長「どうしたんだい」

 社長は美女の目線を追い、にこちらへ駆け寄ってくる3人の黒服に気がついた。

社長「君の知り合いかね」

美女「…………いいえ。知らないわ。
 でも、私は石油王の妻だから。敵対している組織が私の命を狙っているのかも」

社長「組織? 殺し屋かね!?」

美女「あいつらに捕まるときっと私の命は無いわ! 助けて!」


社長「と、とりあえず110番に連絡を――」

美女「やめて! 私の夫は石油王なのよ!」

社長「ど、どういう意味かね?」

黒服1「ようやく追い詰めましたよ」

 黒服の三人組は荒い呼吸で社長と美女を取り囲んだ。

社長「びゃあああああああああああああああああああ!」


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 大広間

小鳥「」ガラ

P「お帰りなさい」

小鳥「絶対に優勝出来ると思ったのに」シクシク

P「カラリパヤットゥなんてどこでならったんですか?」

小鳥「通信教育で……ダイエットのためにともう何年も続けてます」

P「それで不摂生をしてるのにその体型を維持できてるんですか。
 まあ、通信教育だと底が知れてますよね」


小鳥「まさか美希ちゃんがあそこまで動けるとは」

P「アイドルですからね」

小鳥「アイドルって凄い」

P「あ、こっちでも始まりそうだな」

小鳥「私も観戦しよっと。
 ビールとおつまみ追加で」


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 貴音と響は壁も無くデパートのように広い空間で対峙していた。

貴音「まさか、始めに出会うのが響とは……これも運命でしょうか」

響「うぅ……貴音とか」

貴音「いざ尋常に」スラ

響「ちょっとまったー!!
 スラってなに!?
 手に持ってるそれなに!?」

貴音「? 刀ですが」

響「」ガタガタガタガタ

貴音「大丈夫です刃は潰してありますし、先も丸めてあります」

響「なんだ。吃驚したぞ」ホッ

P『馬鹿かー? まともに当たったら死ぬぞー』

響「プロデューサー! 自分大丈夫だぞ! 見ててね!」


貴音「痛みを感じぬように仕留めてあげます」

P『仕留めるなよ?』

響「貴音には悪いけど。
 勝つのは自分さー」

 響は両手を前に出し、やや内股気味に構えた。

小鳥『響ちゃん、完全にビビってますね』

P『いや……これはもしかして』

貴音「お覚悟ッ!!」

 貴音が響に上段から斬りかかった。

小鳥『早い!』

 早々に勝負がついたかのように見えたその瞬間、刀の軌道は響の脳天から逸れていた。
 刀の軌道が逸れたまさにその直後、同時に響の体が前に進む。

P『受け流した! やっぱりこれはっ――!』


響「ハッ!!」

 気合いと共に響の正拳突きが唸る。

P『これは琉球空手か!?』

 鈍い音がビルを振動させる。
 反撃に出たと思われた響が仰向けで倒れていた。

P『ん?』

小鳥『あれ?』

 追い打ちを貴音が掛けるが、響はそれを転がって躱す。

響「うわぁ!?」

小鳥『プロデューサーさん。これは一体……』

P『……投げ技ですかね。刀に気を取られていましたが、刀を持っているからと言って超接近戦が出来なくなるわけじゃない。
 おそらく、貴音は剣術以外にも合気道のような技を使えるのでしょう』

小鳥『つけ込む隙を与えませんねぇ』


響「ぐっ!」

貴音「はぁっ!」

 貴音が一方的に攻めて何とか響が凌いでいる状態が続く。

貴音「ここまで凌ぎきるとは!」

響「か、空手は元々、刀との戦闘を考えて作られている部分もあるんだぞ。
 だから当然さー!」

P『想定するなら誰にでも出来るけどな。
 やっぱり武器相手だと押し切られるのがオチか』

響「ちょっ!? 自分の流派は時代の変化の影響を受けつつも、最もトーディーに近いと言われてるんだぞ!
 だから対武器戦は慣れてるの!」

小鳥『トーディー?』

P『大陸から沖縄に伝わった空手の原型ですよ』


貴音「なるほど。ならもう少しペースを上げても良さそうですね」

響「あぁ!? ちょ!? 無理ぃぃ!!。
 う、うぅ……チョープ!」

 貴音はそのチョップを紙一枚の距離で躱して見せた。
 腕を振り下ろした響に完全な隙が生まれる。
 貴音は響の攻撃を避けると同時に、すでに刀を振り上げていた。

貴音「幕です」

 響の脳天に高速の刀が振り下ろされる。

ハム蔵「ヂュ!」

貴音「!?」ピタァ

 刀は響の頭に現われたハムスターの存在によって止まった。


響「ハム蔵!? ちゃんとプロデューサーとお留守番してろって言ってたじゃないか!」

ハム蔵「ヂュ!」

響「でも……」

ハム蔵「デュ!」バチーン

響「いたぁ!?」

 ハムスターにビンタを食らって響が床に転がる。

ハム蔵「デュ!」

響「うぅ……分かったぞ。
 もう出し惜しみは止めるさー」

貴音「……響、あなたが奥の手を隠しているのは分かっておりました。
 始めにあなたを地面へと叩きつけた際、妙な感触が腕に伝わって来ましたので。
 ……背中に隠している物……見せて貰いましょうか」

響「トンファーさー」スッ


貴音「なるほど。
 では、ここからが本番……と言うことでよろしいのですね?」

響「ここぞという所で格好良く出す作戦だったのに……。
 ハム蔵、離れた場所で見てて」

 響の構えはトンファーを持って全く変わらなかった。
 貴音は正眼で構え、間合いを計る。

小鳥『……実際、トンファーってどうなんでしょうね。
 間合いも変わりませんし、空手家のように鍛えられた拳があれば無用の長物なのでは?』

P『響がどこまでトンファーを使いこなせるか。
 そこが勝負所ですね。
 貴音の絶対有利はそうそう揺らぎませんよ』

貴音「わたくしの方が有利だそうなので、こちらから攻めますね」

小鳥『え?』

 響が間合いを調節していたため、刀の攻撃範囲でもあと数歩はいると思われていた状態から貴音が仕掛けた。


P『貴音のあの長いスカートに間合いを誤魔化されましたね。袴みたいな物です。
 貴音は間合いでの勝負で勝ってから打って出ましたよ。これは……早々に勝負が決まるか?』

 響は上段からの攻撃をトンファーで真っ向から受け止めた。

小鳥『受けが強い!』

響「トンファーの一撃はまさに無双。
 トンファー……」

 上からの衝撃を膝を曲げて吸収した響の脚は莫大な力を蓄えていた。

響「キック!!」ドゴォ

貴音「っ!?」

 鳩尾に前蹴りを食らった貴音が後ろへと吹き飛ぶ。

小鳥『トンファー関係ない!?』

P『いえ、トンファーに意識を集中させることが出来た時点でトンファーの持っている可能性を引き出したと言えます』


 トンファーを回しながら響が一気に間合いを詰める。

P『一気に決めるつもりか!』

響「トンファーが全てを貫く!
 トンファー抜き手!」ボッ

貴音「むっ!」

 貴音は間一髪で抜き手の軌道を刀で逸らしたが、洋服の肩の部分が弾け飛んだ。

小鳥『トンファーなのに抜き手?』

P『凄い! 今、抜き手を放つ為に一瞬トンファーから手を離した!』

小鳥『それってトンファーの意味あるんですか!?』

P『えぇ、手を離したトンファーを地面に落とさないために、抜き手をして再度トンファーを掴まないといけませんから。
 精神的な要素が加わってスピードは段違いですよ』


貴音「面妖なっ!」

 貴音の小手から面への連続技が響を捕らえた。
 面を受け損ねた響が崩れ落ちる。
 と、思われた。

響「トンファーが作り出す幻影は達人の目すら誤魔化す。
 トンファー肩すかし!」

P『残像だ!』

小鳥『残像って……』

P『貴音の上段からの攻撃をトンファーで受けると見せかけて素早く躱していたんです。
 これは並の努力では出来ない芸当ですよ』

小鳥『すでに人間の動きを越えてきてません?』

唐手なら唐手刀とかサイとか使えばいいのに何故カラテの武器である手を殺す拐なんてつかってるんだ響……


響「トンファーのトンファーによるトンファーのためのトンファー!
 トンファーマストクラッシュ!」

 高速回転するトンファーが貴音の肩に叩きつけられる。
 同時に、貴音の胴への攻撃が響に決まった。

響「がっ!?」

P『トンファーの攻撃は意外と軽い。捨て身で来る相手には弱いんです』

小鳥『トンファーって一体……』

貴音「手の内は読めました。
 終わりにしましょう。響っ!」

 貴音は刀を鞘へと戻したが、威圧は数倍増した。
 その威圧に押された響が後ろへと下がる。

響「うっ……。
 す、全ての道はトンファーへと通ずる!
 トンファーブーメラン!」

P『馬鹿!』


 貴音は右足を僅かに出した状態で両足を揃え、膝と腰を曲げた。
 頭上を唸るトンファーが通りすぎる。
 それを見た響が拳を脇に構えて間合いを素早く詰め始めた。

響「躱しても無駄さー!
 トンファーはどこまでも追いかけて――」

貴音「一の太刀・虎乱」

 膝を曲げ、腰を曲げた状態から貴音は爆発的な勢いで響へと間合いを詰めていた。
 いきなり目の前に現われた貴音に響の目が丸まった。
 鞘から抜き放たれた白刃が一閃される。
 その体捌きは獰猛な虎、白刃は強靱な爪のようであった。

響「うがぁぁ!?」

 響はそれを断末魔に床へと崩れる。

P『なんて馬鹿な子なんだ』


貴音「……トンファー……なんと恐ろしい武器だったのでしょうか」

 貴音は背後から迫ってきたトンファーを刀で払い落とした。

P『……トンファーの力に溺れた者の末路だな。
 あそこでトンファーを手放さなければ響にも可能性は――』

貴音「……あなた様」

P『なんだ?』

貴音「少し響贔屓が過ぎるのではないでしょうか」

P『え? そ、そうか?』

貴音「実況がずっと響よりでした」

P『貴音の方が強そうだったからなぁ。刀持ってるし』


貴音「左様ですか」パラ

P『ブッ!?』

貴音「あなた様?」

小鳥『貴音ちゃん。服が両肩とも破れて見えてますよ!』

P『おまえ、なんでブラジャーしてないんだ!?』

貴音「それはトップシークレットです」

 貴音は片腕で胸を隠しながら人差し指を唇に当てた。


 ――小鳥退場


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 一方その頃。

社長「びゃあああああブン!」

 社長の叫びと共に振り下ろされた箱の角が、黒服の脳天を捕らえる。

黒服1「ぐあわぁ!?」

黒服2「!? なにをする!」

黒服1「痛い! 以外に堅いぞ!」

社長「こっちだ! 来たまえ!」

 社長は美女の腕を引っ張り道路へと走り出した。
 そこへ計ったようにタクシーが滑り込んでくる。

社長「早くのって!」

 後ろを確認すれば、黒服の三人も黒塗りの車に乗り込んでいる所であった。

社長「後ろから追いかけてくる男達から逃げたいんだ。
 早く出してくれ!」

美女「馬力が違う! 絶対に追いつかれるわ!」


運転手「おっとお嬢さん。そいつは心外だねぇ」

社長「良いから早く出したまえ!」

運転手「やれやれ、せっかちなお客さんだ。
 しかし、俺の運転は――もっとせっかちだがな」

 運転手がそう言うとタクシーは飛ぶように進み始めた。

運転手「お客様。シートベルトの着用をお願いします。
 あと、万が一の紙袋はご用意していませんのでご了承下さい」

 黒服とタクシー運転手の壮絶なカーチェイスの火ぶたが切って落とされた。

社長「びゃああああああああああ!」

美女「きゃああああああああああ!」


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 大広間

響「」ガラ

P「お帰り」

響「トンファーの力を過信しすぎたぞ」

P「あの貴音相手に良くやったと思うけどな。
 二人とも化け物みたいな動きしてたし」

響「自分、トップアイドルになるためにもっと鍛錬するね」

小鳥「響ちゃん。なにかお料理食べる?」

響「食べたい! もう腹ぺこだぞ」

P「さて……次は……」


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 ビルの屋上に近い階でこの戦いは繰り広げられていた。

真「このぉ!」ブン

亜美「双海亜美!」

真美「双海真美!」

亜美&真美「どぅえ→す!」

 真は双子の動きに翻弄されてどうにも手が出せない状態であった。

真「二人がかりって卑怯じゃ無いか!」

亜美「ルール違反ではありませ→ん!!」

真美「屋上近くで待ってれば間抜けが引っ掛かると思っていましたが、その通りでしたな→」

真「ぜあッ!」

 真の正拳突きが亜美を襲う。
 亜美は軽やかに身を翻してそれを躱した。
 真美の蹴りが後ろから真に叩き込まれる。

真「っ!?」


P『おぉーやってるなー』

真「ぷ、プロデューサー! 二人がかりってありなんですか!」

P「別にルール違反でも何でも無いが。そもそもサバイバルマッチだし」

真「くそー!」

真美「にょほほほほほ」

亜美「頭脳戦勝ちですな→」

 亜美と真美の動きは左右にリズムを取るゲームでも見慣れた同じ地味のアレだった。

P『カポエイラか』

真美「ダンスをやっている人間の嗜みですな」

真「僕もダンスやってるけどカポエイラなんてやってないぞ!」

ビルでの闘いだから床とかって剥き出しのコンクリートなのかな。だとしたら柔道ヤバい


カポエラは足場がしっかりしてるところだと受けも捌きもできないからヘタすりゃ死ぬ

そもそも両手を拘束された囚人が看守から逃げ切る為に編み出した技術で、『出会ったら必ず殺す』ために“手加減のできない足技”を極めたものだから。
 ただ亜美真美は体格的に『重量』が必要なカポエラに向いていない……どうなる!?

支援


 真の上段突きのフェイントから中段突きへの連続技が亜美に迫る。

亜美「うわっ! あぶな!」

 それを回避に専念して亜美は避けた。

P『真は空手か』

響『自分の空手とはなんか違うぞ。間合いが広いね』

P『伝統空手だな』

響『寸止めのやつか?』

P『まあ、寸止めと称して競技者を増やそうとしてるだけで、本当は結構ガチで当ててるって聞くけどな。
 勢いのある攻撃が特徴的だな。体ごと突きに行ってるって感じだ』

響『自分のは居座って仕留めることが多いからなー』

小鳥『真ちゃん押されてますね』

P『真美も亜美もそうとうのやり手ですからね。二対一だとやっぱりきついでしょう』

深淵


雪歩「真ちゃん!」

P『あれは!』

亜美&真美「むむ?」

 階段を登ってきた雪歩は涙ぐみながら真美に迫った。
 スコップを持って。

雪歩「ひーん。二対一なんて卑怯ですぅ!」ザク

真美「あぶなぁ! ちょ、洒落になってないっしょ→!」

雪歩「だ、大丈夫です。大人しくやられて下さい!」ジリ…

真美「ちょっ!?」

亜美「真美!」

真「亜美の相手は……僕だぁ!」

 真の上段への攻撃が喉元に二発決まった。

亜美「ぐふぅ!?」

小鳥『……プロデューサーさん。もはやアイドルの戦いじゃありませんよ』

P『そんなこと、最初に小鳥さんと美希の戦いを見たときから気付いてましたけど』


 真の中段への蹴りが亜美に決まり後ろへと吹き飛ぶ。

亜美「ぐっ!!」

真「へへっ、やりぃ!」

真美「亜美!」

雪歩「行かせませんよぉ」ジリ

真美「どけてよぉ!」

 焦ったのか真美は無造作に間合いを詰めた。
 スコップが横へとなぎ払われる。

真美「メーアルーアジコンパッソ!」

 真美は低くなってそれを躱すと同時に片手を地面に付け、踵での蹴りを雪歩に放った。

雪歩「危ないですぅ!」ガキン

P『うそん』

小鳥『どうしたんです?』


P『なぎ払ってからスコップでガードするまでの時間を考えてみて下さいよ。
 どう考えても雪歩は――』

 雪歩はスコップの足を掛ける部分で床に突いて真美の手を引っ掛け転ばせた。

雪歩「本当はここで刺し殺すんだけど……エイッ!」

 盛大に床に転げたところにスコップの面が振り下ろされる。

真美「うわぁ!?」

 真美は腕で地面を押してそれを避ける。

P『素人じゃ無いですよ。雪歩は。
 何かスコップの技術に精通した……そんな格闘技。いや、殺人術を修めている気がします』

雪歩「は、はい。お父さんの社員に国を追われたって言う人がいるんですけど。
 その人が護身にって教えてくれたんですぅ。
 今ではすっかりお父さんのお気に入りで、片腕です。
 確か名前は……システム?」

スコップくらいの大きさなら短槍として使えるな


P『……たぶんシステマだな。
 ロシアの軍格闘術だ』

雪歩「ひーん。それです。間違ってごめんなさい。私本当に駄目駄目で――。
 と、とにかく、システマのスコップ応用技術を特化させたのが私のシステマなんですぅ!」

真美「なんだか良く分からないけど勝つのは真美だよ!」

 真美はカポエイラ独特のジンガのリズムをとり始めた。
 雪歩はスコップを前にジリジリと間合いを詰める。

雪歩「いきますよ」ボソ

 スコップの先端が鬼のような勢いで突き出される。

雪歩「安心して下さいぃ! 先は潰してありますから!」

真美「そんな心配してないよ! そもそも当たらないし!」

 真美は低い姿勢から更に低くなった。


真美「ハステーラ!」

 地面を這うような蹴りが低空をなぎ払う。

雪歩「っ!?」

 それにバランスをクズされた雪歩に真美は更に追い打ちを掛ける。

真美「ボンテイラ!」

 前蹴りが雪歩の鳩尾を捕らえる。

雪歩「うっ!」

 頭が下がったところに――。

真美「クイシャーダ!」

 真美の内側から回すような蹴りが雪歩の側頭部に叩き込まれた。

雪歩「あうぅ!」

 よろけた雪歩のスコップが頼りなく真美の足に引っ掛かった。
 それは一見ひ弱に見えたが、真美の体が宙に踊ったことでそうではないことが証明された。

真美「!?」


雪歩「いきますよぉ」

 振るわれたスコップを真美は宙に舞いながらも間一髪両腕でガードした。
 叩きつけられた部分がスコップの端であればここで勝負は決まっていたかも知れないが、雪歩が叩きつけたのはスコップの面の部分であった。

真美「いつぅ!」ドサ

雪歩「こ、これ以上は残虐ファイトになります! 降参して下さい!」

真美「い、嫌だYO!」

雪歩「わ、分からずやぁ!」

 雪歩はスコップを振り上げて真美に迫る。
 そこに真美の前蹴りが喉元に突き刺さる。

P『うわぁ……』


真美「シャーパ!」

 更に雪歩の腹に側頭部が。

真美「クイシャーダ! ボンテイラ!」

P『激しい!』

小鳥『だ、大丈夫かな。雪歩ちゃん』

真美「アルマーダぁ!」

 真美は体を回転させるとその勢いで薙ぎ払うような蹴りを雪歩の側頭部に叩き込んだ。

P『き、決まったか!?』

響『まだだぞ!』

 響の行った通り、雪歩は確りとした踏み込みで真美へと距離を詰めた。
 スコップの柄を真美の喉元に差し込みそのまま押し倒す。

雪歩「絞め技は危ないから使いたくなかったんだけど……。
 ごめんね」

P『なんてタフネスだ!』


真美「ぐ、うぁあ!
 ま、真美はトップアイドル……に。
 そして――」

雪歩「……」グッ

P『これは終わったな。
 頸動脈にがっちり決まってる。
 あと、数秒で落ちるわ』

小鳥『ちょ!?
 スーパーお漏らしタイムに入ってません!?』

 真美は足を震わせながら失禁していた。

P『くそぉ! ベストアングルはどこだ!?』

響『やめろぉプロデューサー!』

小鳥『そうですよ。真美ちゃんが可哀想です!』

P『何が可哀想なものか! これは勝負なんだ!』

響『一体プロデューサーは何と戦っているんだ!?』


 真美の体からガクリと力が抜けた。

雪歩「……ほっ」

P『……ちっ』

小鳥『なに舌打ちしてるんですか』

雪歩「さてと、真ちゃんの加勢に……」

 雪歩は真美を置いて真と亜美が戦っている方へと歩みを進めた。

真「雪歩ぉ! 後ろ!」

 亜美と壮絶なバトルを繰り広げていた真が叫ぶ。

雪歩「へっ?」

 振り返った瞬間に、またもや雪歩の側頭部に蹴りが叩き込まれた。

雪歩「ひーん。痛いですぅ!」

響『そんな! 真美は落ちたはず!』


P『……おそらく。体に染みついた動きと気持ちが今の真美を動かしているんだろう。
 見てみろ。目はどこも見ていない』

小鳥『もう真美ちゃんに勝ち目はないんじゃ……』

P『さあ、分かりませんよ。
 今の真美は――』

 真美ほ激しい蹴りが雪歩の脇腹に突き刺さった。
 ガードし遅れた雪歩が泡を食う。

響『早い! 先より数段早いぞ!』

P『意識が飛んでリミッターも飛んでるんだ。今の真美は本来の実力以上の力が出すぞ』

小鳥『それでも……』

P『えぇ、雪歩を倒すことは難しいでしょうね』

雪歩「痛ぁ!? うぅ……早いですぅ」

 いくら蹴りを叩き込まれようと雪歩にダメージらしいダメージは見られなかった。

響『なんか化け物みたいだぞ』

雪歩「ひ、ひどいよ響ちゃん!」

響『ご、ごめん』


雪歩「でも、これどうすれば……そうだ!」

 雪歩は前に出るとスコップを真美の肩へと引っ掛けた。
 そのまま押し倒し、スコップを使って両腕を固定する。

雪歩「拘束しておけば――」

真「雪歩!」

雪歩「へ?」

 振り上げられた蹴りが雪歩の脳天に突き刺さった。
 柔軟な体は頭もとにいる雪歩にも蹴りによっての攻撃を容易に加えることができたのだ。

雪歩「ふ、ふらふらしますぅ~」バタン

P『うお!?』

響『倒れた!』

小鳥『しかも起き上がってきませんよ! 相打ち!?』

グラビアはしばらくできないな……


P『いや、そっちじゃ無くて!
 真美のパンツ透けてないか!?』

響『それ自分も思ったけど今は放っておこうよ!』

P『うっすらと毛が生えてないか?』

響『最低だー!』

真「同意っ!」

 真はそう言うと前に出ながら凄まじい正拳突きを放った。

亜美「くっ! 避けるのがやっとだYO!」

真「あっちの戦いも終わったことだし、こっちもそろそろ終わらせよう!」

亜美「も、もうちょっと続けても良いんじゃないかな?」

真「問答無用! いくぞ!」

亜美「ちょちょちょちょちょ!」


真「山突き!」

 左右の拳が亜美の喉元と鳩尾に同時に突き刺さる。

真「引き手交差猿臂!」

 真は更に亜美の腕を掴むとそれを引き寄せながら側頭部に肘を叩き込んだ。

真「エアッ!」ゴッ

亜美「どわぁ!?」

 亜美は地面を転がると、ガクリと力を抜いた。

小鳥『……うわー』

P『激しい戦いだったな。一気に脱落者3人か』

真「プロデューサー! 見てましたか!
 僕、勝ちましたよ!」

P『みんな頑張ってるのに、あまり褒めてあげたくないのは何故だろう。
 ……それとな、真も後ろには気を付けた方が良いぞ』


真「へ?」

 真は振り返ることも許されず、首を捻られた。
 無言のまま床に崩れ落ちる。

P『実況者として公平な立場に立ってるから積極的に注意喚起はしなかったけどな。
 後ろに春香がいるから。
 ってもう遅いか』

 春香は真が完全に気絶していることを確認するとその場を去った。

響『なんだったんだ?』

小鳥『漁夫の利ってレベルじゃ無いですね』


 ――真敗退
 ――雪歩敗退
 ――真美敗退
 ――亜美敗退


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 そんな戦いが行われていた一方。
 大画面モニターとは別の小さいモニターで、ひっそりと行われた戦いがあった。

律子「伊織……あんたには怪我をさせたくなかったけど……ここで負けて貰うわ。
 私のボクシングでね!」

伊織「……」

律子「上半身だけなら最強と名高いボクシングの力!
 あなたに見せて――」

 律子は車にでも轢かれたかのように吹き飛んだ。
 そして、壁にぶつかるとピクリとも動かなくなる。

伊織「ペンチャックシラットにかなうもの無し」


 ――律子退場


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特別参加枠なのに律っちゃんも小鳥さんも咬ませ犬すぎるだろwwww










この律っちゃんの扱いには告訴もじさない


 一方その頃。

社長&運転手&美女「ヒーハー!」

 都市開発の失敗で完全に寂れた街の中を失踪する車が二つあった。
 ゴーストタウンと呼んで良いこの街での争いを当時者以外に知るものはいない。

運転手「ちぃ! やっこさんなかなかやりやがる!」

美女「何か物でも投げて足止め出来れば」ジー

社長「や、止めたまえ!」

 社長は箱を体の後ろへと隠した。

美女「大事なの? その箱」

社長「当たり前だよキミぃ!」

美女「思いでの品とか?」

社長「理由は言えない。しかし……大切な物なんだ」


美女「……ふふっ、気が向いたら教えて頂戴ね。社長さん」

運転手「へぇー。あんたも社長なのかい。俺もそうだ」

美女「タクシー会社の?」

運転手「いや、もっと違う仕事さ。一人社長なんだ」

美女「それって――」

運転手「おっと、物騒な物が出てきましたよぉ!」

 ゴーストタウンに銃声が響き渡った。

社長「びゃあああああ!」

美人「きゃあああああ!」


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 大広間

真「」

雪歩「」

亜美「」

真美「」

P「そう気を落とすなって。
 みんな凄かったぞ」

真「春香に全部持って行かれた……あそこで油断なんてしてなければ……」ドヨーン

雪歩「やっぱ私は駄目駄目ですぅ」ドヨーン

亜美「見せ場が無かった」ドヨーン

真美「」

P「先生助けて! 真美が呼吸をしてないの!」

小鳥「プロデューサーさんのせいですけどね!」

P「え!?」


小鳥「なにおどろいてるんですか!?」

響「プロデューサーがパンツパンツ言うから」

真美「うぅ」ドヨーン

P「気にするな! 可愛いパンツだったぞ。それ以上に目の保養が出来る物も見れたし、そう落ち込むようなこと無いさ」

真美「ぱ、パンツだけならまだしもお漏らししてその上透け――うわあああああん!!」

P「すぐ忘れるから安心しろ」

響「プロデューサーの目が凄く優しいぞ。優しすぎて逆に気持ちが悪いぞ」

小鳥「絶対に脳内メモリに焼き付けてる目ですねこれは」

真美「うわあああああん!
 せ、せめてもっともっと違うシチュエーションなら――」

律子「」ガラ

律子以外「え?」

律子「え?」

P「え?」

律子「え?」


P「どうしたんだ? 棄権か?」

律子「いやいやいや。負けたので帰って来ました」

P「いやいやいや。嘘だろ?」

律子「本当ですよ」

P「いつ?」

律子「さっき」

P「どこで?」

律子「四階の廊下で」

P「嘘だろ……」

 Pはコンピューターを操作し始めた。
 モニターの一つが巻き戻される。

小鳥「こんな事も出来るんですね」

P「ええ。
 ……あ、これか」

律子以外「――――――――これはwwwwwww」


小鳥「もう一回巻き戻してもらえます?www」

雪歩「え? なんでしょうかぁ? 律子さん何か言ってません?」

P「上半身だけなら最強だとか何とか言ってるなwww」

亜美「というより、いおりんすげ→!!www」

真「事故レベルですよこれwwww」

響「いや、でもこれは実際に笑えないレベルで凄いぞwww」

真美「ちゅうも→く! りっちゃんがまだ何か言ってま→す!www」

真「台詞の途中でwww」

P「伊織ww空気よめよww」

律子「」

P「真美の元気も出たみたいだし雪歩と真美戦でも見てみるかww」

真美「やめてよぉぉ!」


----------------------------------------


やよい「よろしくおねがいしまーすっ!」

あずさ「あらあら~。困ったわね~」

やよい「どうしたんですかー?」

あずさ「やりにくいわ~」

やよい「えへへー」

あずさ「うふふ~」

P『何してるんですか』

あずさ「あっ、プロデューサーさん。やよいちゃんと遭遇したんですけど、ちょっと闘いづらくって」

P『そんなこと言われても……。
 やよいー。大丈夫か? なんなら棄権しても良いんだぞ。
 棄権しても全然恥ずかしくない。もっと恥ずかしい人がこっちにはいるから』

律子『誰のことですか!』


やよい「大丈夫です、プロデューサー。見てて下さいね!
 ゼータイにトップアイドルになって見せますからっ!」

あずさ「困ったわね~。
 ここで闘わないのはやよいちゃんを馬鹿にしていることになるし。
 せめて……一瞬で方をつけてあげるのが人情なのかしらぁ」

 そう言うとあずさは両足を広げて構えを低くしていった。

律子『プロデューサー殿。これって――』

P『あぁ、どっからどう見ても――』

あずさ「ふっ!!」

 あずさは地面に一瞬拳を触れると脅威的な勢いで前へと突進する。

P『相撲だな』

やよい「わっ!?」

 やよいは間一髪あずさの突進を避けた。
 あずさの頭突きがコンクリートの壁を陥没させ、亀裂を生じさせた。

真『なんて威力だ!』

やよい「す、すごいですっ!」


雪歩『あの……プロデューサー。止めた方が良いんじゃ……だってやよいちゃん――』

亜美『うん。完全に素人っしょ→』

響『避けるときの体捌きがなー。構えも全然なってないぞ』

P『お前ら何ものだよ。
 ……やよいー。降参するなら今のうちだぞー』

やよい「うぅー。だ、大丈夫です。
 見てて下さいよぉ」

 あずさが壁から頭を抜いてやよいへと振り返った。
 埃を震いながら笑みを向ける。

あずさ「私ね、相撲取りになりたかったの」

P『何言ってるんっすか』

やよい「もしかして笑うところですかー?」

あずさ「いいえ。本気よ」

P『余計質が悪いですよ』


あずさ「本気だったと言うべきかしら。
 子供の頃にぼんやりと相撲取りになりたいな~って思ってたの~。
 女の人はプロになれないって分かってから止めましたけど」

P『あずささんが肉達磨になるとか……嫌ですねぇ』

亜美『すでに結構な肉が二つついてるっしょ→』

真美『凄いよね』

あずさ「いくら食べても体重は増えずに胸ばかりにいくし……もともと相撲取りの才能は無かったんでしょうね~」ポヨン

P『千早が聞いたら発狂しそうですね』

あずさ「でも、ずっと相撲の稽古だけは続けてきたわ」

P『マジでなにやってるんっすか』

あずさ「日の目も当たらないはずの相撲を続けてきたのは……今日、このためだったのかしら!」

 またもやあずさの突進が壁に亀裂を産んだ。
 やよいが身を放り出して緊急回避する。

やよい「あいたー」


あずさ「やよいちゃん。覚悟して貰うわよ」

やよい「うぅー」

 やよいは立ち上がって服の埃を払った。

やよい「よかったですっ!
 あずささん、とーっても丈夫そうで!」

 やよいはそう言うとへっぴり腰で構えた。

小鳥『構え?』

真『になってませんね。重心がまるで安定してない。完全に素人です』

あずさ「ごめんねやよいちゃん。
 これは勝負だから」

 そう言うとあずさは上着とズボンを脱ぎ始める。

P『何やってるんですか(並々ならぬ興味)』

 あずさは下半身に回しを、上半身にサラシを巻いていた。


P『……』ジー

亜美『兄ちゃんの目が血走ってる……』

真美『兄ちゃん……』

律子『あのパツパツのズボンの下に回しが収まってたのはおかしいわ』

あずさ「行くわよ! やよいちゃん!」

真『早い!』

 先程の突進の倍以上の速さであった。
 二つの影が交錯する。

やよい「ゴンラーマスーンコワンクワン!(斧を振る雷神)」

大広間勢『え?』


 影が交錯した瞬間、やよいはあずさに飛び掛かり肘を脳天に叩き込んでいた。
 その激しい一撃にあずさが蹌踉めく。

響『ありえないぞ! あの突進を止めるなんて!』

真『微妙に横に躱してるね。
 やよいは力を隠してた?
 構えから防御まで全部素人の演技だったってこと?』

P『……それなない。そこまで器用な芸当が出来るようなやつじゃない』

 あずさはたたらを踏みながらも何とか踏みとどまる。

律子『あの一撃を貰って立ってるだなんて!』

雪歩『私でもあれは辛いですぅ』

あずさ「吃驚したわ~。
 まさかこんな力をやよいちゃんが隠してただなんて」


やよい「うっうー! ずっと昔に家の前に倒れてたおじいさんにもやしをあげたら教えてくれたんですっ!
 攻撃の技だけでしたけどヤクザさんも追い払えてとーっても助かりましたー!
 ムエホームランって言うんですよー!」

小鳥『ムエホームラン?』

P『恐らくムエボーランの事でしょう。
 古式ムエタイですよ』

小鳥『先から詳しいですね』

P『プロデューサーですから』

小鳥『プロデューサーって何だろう』

あずさ「あらあら~不思議な人もいたものね~」

やよい「そうなんですよーっ!
 技を教えてくれたら才能があるとか言っていつの間にか消えてましたし。
 またいつか会えたら一緒にもやしパーティーがしたいなーって!」

P『……やよいの家が貧乏だった頃に借金取りが一人も近寄ってこなかったのはそういうことか』

真美『今は超金持ちだけど、あの頃に借金取りの「し」の字も聞かないのはおかしかったよね→』

それにしても>>1の格闘技知識が凄すぎる


やよい「うっうー! いきますよー!
 プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

あずさ「うっ」メキメキ

 やよいの足元が爆ぜたかと思うと、あずさの鳩尾に膝が脳天に肘が同時に突き刺さった。

小鳥『うっわー。……早めに退場出来ててよかったぁ』

律子『あずささん! 無理は禁物ですよ!』

真『なるほど構えや防御が出来て無かったのは攻撃しか習ってなかったからか』

響『攻撃だけ異常に鋭いぞ』

真美『こ、殺しに来てるよねアレ』ガタガタ

P『漏らすなよ』

真美『漏らさないYO!!』


あずさ「上手投げ!」

やよい「わっ!」ビターン

P『受け身もとれずにモロだな』

小鳥『ちょ!? あずささん何しようとしてるんですか!?』

あずさ「うふふ~。四股を踏もうと思って。
 やよいちゃんの上でっ!」

 やよいがその言葉に反応して地面を転がる。
 間一髪の所であずさの足はコンクリートを踏み砕くだけに留まった。

律子『当たったら洒落になりませんよ……』

あずさ「大丈夫です。
 当たったら手加減するんで~」

律子『……伊織にやられて良かった。今はそんな気がするわ』


やよい「うっうー!」ドカッメキッ

あずさ「うふふ~」ミシッバキッ

 互いに防御無用のど突き合いが始まった。

小鳥『ちょおおおおおお!?
 余裕で放送禁止レベルですよ!』

P『放送しないし良いんじゃないですかね?
 それに見て見て下さいよ、あずささんの胸を』

あずさ「うふふ~」バルンバルン!

P『宇宙を感じませんか?』

響『自分だってあれくらい出来るぞ!』ボヨンボヨン

 響は一生懸命ジャンプをしはじめた。

P『けしからんっ!』

律子『けしからんのはプロデューサーですよ』


やよい「……辛そうですっ。あずささん」メキッバキッ

あずさ「……」バターンバシィッ

やよい「楽にして上げますねっ!」

あずさ「くぅ!」

 あずさは鬼気迫る勢いで突進した。
 その勢いは今までで最速で最も強靱なものだった。
 それにあわせてやよいが大きく跳躍する。

やよい「チャーンプラサーンンガー!!(牙を突き合わせる象)」

 やよいの両肘があずさの頭上に振り下ろされる。
 骨と骨がぶつかる激しい音がビル内に響き渡った。

亜美『うわぁ……』

あずさ「……」ヨロッ

やよい「うぅー」


あずさ「楽しかったわ~。本気で相撲が出来て。
 相撲同士じゃ無かったのはちょっと残念だけど」ニコ

やよい「あずささん……ごめんなさーいっ」

あずさ「」バタッ

小鳥『始まったときはあずささんが倒れる所なんて想像出来なかったのに……』

P『あずささんは一撃必殺を繰り出すやよいとは相性が最悪でしたね。
 動きが直線的な上に防御なんてしませんから大技を貰いたい放題でしたし』

真『なんだかんだで微妙な手加減が見え隠れしてましたしね』

やよい「いぇい! 勝利ですっ!」


 ――あずさ退場


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 一方その頃。

美女「あり得ないわ! まさか撃ってくるなんて!
 何考えてるのよあの馬鹿ども!」

社長「だだだだ大丈夫。上空に向けて発砲しただけだからね!」

運転手「掴まってっ!」

 急カーブを曲がったタクシーの車体が傾く。
 車体は傾いたまま進み、細い路地に入り込んだ。
 普通に走っている車では到底追って来れはしない細い路地だ。

社長&運転手&美女「ヒーハー!」

運転手「このまま海までいくぜ!」


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 大広間

あずさ「ただいま戻りました~」

P「回しじゃないんですか!?」

あずさ「うふふっ。違います」

 あずさは浴衣に着替えていた。

P「……これはこれで良いですね」

あずさ「さっぱりして来ちゃいました」

真美「あずさお姉ちゃん、よく無事で帰って来たね」

亜美「途中殺されるんじゃないかと思ったよ→!」

あずさ「私自身、何回か危ないと思ったわ~。
 見た目以上に技が重いのよね~」

響「あの見た目以上に技が重いってどんななんだ?」

真「事故だよ」

ここまで肉弾戦がほとんどだけど、
もっと武器vs武器をみたいところやな…


ところでこのタクシーの運ちゃんは天上天下に出てくるあのオッチャンか何かなのか
肝座りすぎる


P「まあ、実際、倒れると思えなかったあずささんが沈んだしな。
 やよいの一撃必殺は要注意だろ」

律子「私が始めにやよいと当たってたらどうなってたんでしょうか」

P「殺されてたんじゃね?」

律子「」

小鳥「手加減出来てない節がありましたしねー」

P「あずささんが頑丈で良かったとか言ってたしな。
 あの大技だ。中途半端な気持ちで出したら自分が危ないからな。
 まさに必殺の気持ちでやってるんだろう」

小鳥「危なくないですか?」

P「うーん。あまりにも危険だったら失格にしますけど……ここまで残ってる奴らですからね。大丈夫でしょう」

あずさ「あ、私もビールいいですか?」


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千早「……やっと人に会えた。
 このまま誰とも会わずに終わるんじゃ無いかって思ってた所よ」

貴音「寂しい思いをさせてしまったようですね。
 ですが、もう心配することはありません」スラ

千早「……ところで四条さん……服がぼろぼろで胸が……見えそうなんですけど。良いのかしら」

 貴音は首の後ろで布を結ぶことで上半身を隠していた。
 それ故、脇の部分やや背中はかなり露出していたのである。

P『私は一向に構わんッ!!』

千早「……プロデューサーには聞いてません」

貴音「私も構いませんよ。
 見られて困るという人はいませんし、激闘の末の名誉の証ですから。
 この服は帰ったら保存します」

千早「なんだか悪いわね。
 こっちはまだ一戦もしてないのに」

貴音「ふふっ、構いません。
 私はこの通り……武器がありますし」

まださるくらうのか
支援が足りない


肝臓打ちとかのテクニックが見たい


千早「じゃあ……遠慮無くやらせてもらうわ」

 千早はそう言うと、拳を軽く握って正中線に両手を構えた。

真『空手の構えに似ている……けど、なにか違いますね』

P『まあ、見てれば分かるだろ。
 全くの素人って可能性もあり得るぞ。
 お前達が普通に格闘技やってるのにこっちは驚いてるんだから』

真『えっ? そうなんですか?』

P『うん。もっと泥沼のキャットファイトみたいなのを想像してた』

律子『私もです。そこで空気も読まずに暴れ回ってやろうと思ってたのに……』

P『残念だったなwww』

律子『この――』

貴音「はっ!」

 貴音が気合いと共に真っ向から斬りかかった。

そういや美希は影も形も出てないな
千早が早々にリタイアしてなくてよかったな、さっきの敗者隔離部屋に千早がいたら死んでたかもな

>>228
 ピヨがなぜ負けたのか


P『また間合いを誤魔化したか!』

響『客観的に見てても驚くぞ。やっぱり相当な使い手だね、貴音は』

P『響も良い線いってたんだけどなぁ。
 あそこでトンファーブーメランだもんなー』

響『うぅ……』

律子『なんですかトンファーブーメランってwwww』

P『内容は結構ガチだから笑えないぞ』

律子『……』

 千早も貴音が前に出るのに会わせて出てきた。

小鳥『相打ち覚悟!?』


 刃が千早の脳天を捕らえたと思われた瞬間、千早は半身になることによってそれを躱す。

P『なにぃ!? ギリギリだっ!』

響『あと1cmでも胸が大きかったら当たってるぞ!』

千早「くっ…………破ッッッ!!!!!!!!」

P『うるせぇ!』

律子『何て馬鹿でかい声なの!?』

あずさ『プロデューサーさん、見て下さい! そんなことより――っ!』

P『!? 直撃っ!?』

響『うそぉ!?』

貴音「くぅっ!!」メキメキメキ

 貴音は刀を薙ぎ払い、千早と距離を取った。

P『貴音がもらうような一撃には見えなかったが』


貴音「面妖なっ!」

千早「邪ッッッ!!!!!!」

P『マジでうるせぇ!
 コップが割れるくらい振動してるんだが!?』

あずさ『こっちは割れました』

P『ほんとだ!』

響『プロデューサー! また!』

貴音「ぐはっ!!」

 貴音は千早の剛の一撃をまともに受け、後ろへと蹌踉めいた。

真『……分かった。声だ』

律子『声?』

真『千早はあの大きな声で相手に隙を作ってるんだよ』


響『貴音を馬鹿にしないでほしいぞ。それって貴音が千早の気合いに驚いてるってことだよね?』

真『気合いで肉体的な硬直を作り出してるんじゃいよ。
 ……千早ほどの大声になればもはや――』

千早「亜ッッッ!!!!!!!!!!!!」

貴音「かはっ!!」

 貴音が脇腹を押さえて後ろへと後退する。

真『物理的に痛いんだよ。
 声が目に響くんだ。視界を奪った一瞬を千早は攻撃してるんだと思う』

真美『人間じゃ無いYO……』

P『お前らみんな同じようなものだけどな』チラ

律子『……』

P『輝いてるな』

律子『うるさいですよ!!』


千早「破ァッッッ!!!!!」

貴音「むっ!?」

 貴音は自分が目を閉じてしまった一瞬、後ろに跳んだ。
 千早の一撃が空を切る。

響『あの構えは!!』

 納刀した状態で右足を少しだし膝と腰を曲げた貴音は、闘気膨らませた。
 モニター越しでも伝わってくるその気は鬼気迫っていた。

律子『伝わってくる緊張で吐きそうです』

亜美『よかったね→、律ちゃん。
 運が良かったYO』

律子『否定出来ないのが悔しいっ』

小鳥『でも?』

律子『悔しいだけですよ!!』

スキがないならつくりだす……

セクシーコマンドーだな!!!

貴音「一の太刀・虎乱!」

 千早と離したはずの間合いが、一瞬で詰まった。

真『うわぁ!? 化け物ですか?』

雪歩『あの距離を一瞬で……早すぎますぅ!』

 胴へと薙ぎ払われた一撃に対して千早はさらに前に出て対処した。
 神速の一撃を前に出ることによって勢いを殺し、両手で貴音の腕を押さえることで技を完全に殺していた。
 手元を押さえられた貴音と押さえた千早の視線が近距離で交錯する。

千早「双纒手ッッ!!!!!!」

 千早の両の掌が押さえた腕ごと体を押した。
 ごく近距離からの攻撃とは思えないほどの衝撃が貴音を襲ったことは一目で分かった。
 貴音は背中から地面に転がると、転がりながら壁に激突する。

小鳥『これってもしかすると……八極拳?』

P『そのようですね』

合気の流れを組んでるなら八極拳はむしろ相性良いはず

孤高の女王vs孤独の歌姫


響『八極拳? なにそれ?』

P『知らないのか? 日本では漫画とかで割と有名な武術なんだけどな。
 中国拳法の一つだ。
 中国では超マイナーの武術だけど日本では人気があったりするんだ』

響『強いのか?
 まあ、強いんだろうな。貴音があそこまでやられるって事は』

P『客観的に見て八極拳って武術はな……』

響『うんうん』

P『C級アイドル用のダンスだ』

響『……え?』

P『普通に考えれば使えないって事は分かるよな。
 ボクシングなんかとやったりしたらボコボコにされるのがオチだ』チラ

律子『こっち見ないで下さい!』


P『日本ではメディアのおかげで人気が出てるけど、実際、アレで戦える奴なんてそうはいないぞ』

響『で、でも、千早は凄く強いぞ』

P『千早は強いぞ。何をやっても強いだろうな。
 空手でもボクシングでもカポエラでも。あの声があれば攻撃を当て放題じゃ無いか。
 強い千早がたまたま八極拳を使ってるだけだ』

あずさ『でもあの一撃は……』

P『そうですね。かなり強力です。
 本来当たるような技じゃないんですけど、声で隙を作らせて当ててきますからね。
 これはかなり厄介ですよ』

千早「解説ありがとうございますっ!!!!!!!!!
 プロデューサー!!!!!!!!」

P『あ、眼鏡割れた』パリーン


 貴音は千早の攻撃を辛くも回避した。

貴音「千早……よもやこれほどまでの実力だとは……」

千早「私には……歌と……八極拳だけですから」

P『…………違う。……これじゃない。
 俺がプロデュースした千早はこれじゃない』

小鳥『これなんですよ、プロデューサーさん。現実を受け止めて下さい』

貴音「ところでそのような技……一体どこで?」

千早「……通信教育で」

P『通信教育!?』

小鳥『……ピヨ』

千早「月20万円です」

P『ぼったくられてる!?』


貴音「なにやら負けてはならぬ気がして参りました」

千早「こっちも負けるつもりは無いわ」

貴音「出し惜しみはしませんよ」

千早「全力で来て下さい。正面から叩き伏せます」

貴音「二の太刀・暗夜剣」

 貴音はゆっくりと剣先を持ち上げた。
 その剣先は天を差しやがて貴音の斜め後方上空を指し、更に肩に担がれて後方を差した。
 そして、ついには完全に後ろへと担がれ剣先は地面を差した。

真『上段? いや、さらに上段!? これはもう……上段じゃ無い!』

小鳥『冗談じゃ無い』

千早「…………んふふ」

貴音「はぁっ!」

千早「しまっ――」

 小鳥のつまらない冗談に千早が気を取られた一瞬、貴音は飛び出した。


真『早いけどこれは……』

雪歩『距離が遠すぎますぅ』

真『これなら対処出来ないことはないね』

あずさ『あらあら~。焦っちゃったのかしら』

 千早が息を大きく吸うのと、貴音が刃を振り下ろしたのは同時であった。

真『やっぱり遠いよ』

雪歩『突きへの変化って可能性も……』

 しかし、次の瞬間驚くべき現象が起きた。
 剣先が伸びたのである。
 到底届かないであろうと思われた場所から、貴音は刃を千早へと届かせて見せたのだ。

真美『うそぉ!?』

亜美『何これ。伸びるおもちゃ?』

あずさ『これは――っ!』


 刃が届いた理由は至極単純。
 左足で床を蹴り出し、右手を前に出して刀を振り下ろす。
 その際、半身となり、柄を脅威的な握力でもって端のギリギリを握る。
 踏み込み、半身、柄を持つ部分。
 この三つの要素で間合いを最大限まで伸ばしていたのだ。
 そして、この一撃は――。

真『千早はこれを貰ったら不味いですよ!!』

雪歩『片手打ちの威力じゃ無いですぅ!』

P『この威力を出すためにあそこまで担いだのか』

千早「だけど、そこまで担がれれば上段からの攻撃は当然警戒する――っ!!」

 千早はまたもや半身となり、神速の一撃をギリギリで躱せて見せた。

亜美『スレンダースぎっしょ→。亜美でも半身になってもあたるよ→』

千早「くっ」

貴音「避けると……そう、思っていましたよ」


千早「片手打ちの状態からでは、どう足掻こうと私の方が早い!」

貴音「三の太刀・月光掬い!」

 貴音は身を縮めると、峰の部分を掌で持ち上げ、刃を千早へと押し上げた。

千早「凄いですね、四条さん。
 でも、四条さんが一手で終わるような人じゃ無いって……予想してましたよ!」

 千早はそう言うと猛烈な勢いで間合いを詰めた。
 刃でも鍔に近い部分が千早の脇腹を抉る。
 真剣ならばこれでも良かったのかも知れないが、貴音が使っているのは刃を潰してある刀である。これでは決定力不足であった。
 仕留めるためには確実に勢いのついた先端を叩き込む必要があったのだ。

貴音「なんとっ!?」

千早「絶招・猛虎硬把山ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」

律子『こっちの眼鏡も割れました』パリーン

 虎が山を掻き崩すような動作で、貴音の体が千早へと引き寄せられた。
 その勢いと千早の前へと進む勢いがぶつかり合う。
 千早の掌が貴音の脇腹へと突き刺さった。

貴音「くぁあ!?」

 貴音は後方へと吹き飛ぶと、一度立ち上がろうとして……仰向けで倒れた。


小鳥『私の通信教育となにかが違う……なんだろう……もっと課金するべきなのかしら……』

千早「……空しいものね。
 先までは心が躍っていたのに……終わってしまえば何ものこらない」

P『……ふぅ……まったくだ。
 まったく持って空しい』

響『千早ー!! 貴音の胸を隠してあげて欲しいぞ!!』

千早「え?……あっ!
 ご、ごめんなさい。四条さん!」

 貴音は戦いの最中にどこかに引っ掛けたのか、結び目が解けて完全に上半身を露出している状態となっていた。

P『こんな戦い、どうかしている。
 人はなぜ闘うんだ』

亜美『兄ちゃんが哲学者になっちゃったYO!』


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 一方その頃。

社長「荒々しい……まるで人生のようじゃ無いか」

 社長と美女、タクシー運転手は日が傾き始めた浜辺で黄昏れていた。

美女「本当に……力強くて美しい……石油王みたい」

社長「この海はおよげるのかね?」

美女「やめておいた方が良いわ。泳ぐ理由も無いし結構波が強いもの」

運転手「ハードな海水浴になりそうだねぇ」

社長「そうだねぇ。箱も濡れると不味いし……」

美女「ふふ、本当にその箱が大切なのね」

社長「そうでも無いのだがね。ただの箱だから」

美女「嘘、嘘。だって社長さん子犬みたいにその箱を抱きかかえてるし。
 初めは何か大切な物が入ってるのかと思ったけど空だから、きっとその箱自体が大切な宝物なのね」

社長「大切と言えば大切だね」


運転手「……ふん。早いな」

美女「なにを言って――あっ!」

黒服1「奥様ー!!」

黒服2「そいつからー!!」

黒服3「離れてー!!」

社長「……殺し屋と聞いていたが……知り合いかね?」

美女「……騙しててごめんなさい。SPなの。石油王の」

社長「しかし、それなら何故銃なんて撃ったのだろうか」

美女「分からないわ。怒ってるのかも」

運転手「違うな。どうしても止めたかったんだよ」

社長「それにしては手荒な――って、あの連中、物騒な物を持ってないかね!?」

美女「ど、どういうつもりよ!?
 銃なんか持って……。
 おーい!! もう逃げないから銃をしまってー!」


黒服「奥様ー! そいつから離れてー!」

美女「何? よく聞こえない」

 数十メートル先から叫んでいる黒服の声は、波の音に掻き消されて正確に美女の耳にまで届いていなかった。
 もちろん、歳をくっている社長の耳にも。
 しかし、黒服の言葉を完璧に聞き取っていた者が一人だけいた。

運転手「…………凶悪な犯罪者がそばにいるからこの場を離れろ……だとよ」カチャ

 運転手の掌には黒服が持っている物と同じ形状の物が握られていた。

社長「どういうことだってばよ」

運転手「こういうことさ。動くなよ?」


黒服1「その銃を捨てろ!」

 黒服はようやく社長達のいる場所にまで辿り着いた。
 その距離はおよそ10メートル。
 銃口を運転手へと向ける。

運転手「やれやれ、問答無用で俺を撃ってればお前達の勝ちだったかも知れないのに……悲しいねぇ……」

 運転手は美女の背後へと回った。
 そして、美女の後頭部へと銃口を突きつける。

運転手「銃を捨てるのはそっちだ。
 可愛い子の頭の中なんて見たくないだろ?」


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 大広間。

貴音「ただいま戻りました」ガラ

響「おつかれ、貴音」

貴音「すみません。響を倒してまで目指した頂点……掴めませんでした」

響「そんなこと気にしなくて良いぞ。一緒に頂点を目指して……また闘おうね!」

貴音「響」ジーン

P「一応言っておくが、アイドルだからな。お前達」

貴音「乗越えるべき壁は高いですよ」

亜美「しかし薄い」

貴音「再度挑戦しても勝てるかどうか……」

響「そんなに強かったの?」

貴音「自分の長所を最大限使ってくるといった感じですね。
 あの声は来ると分かっていても目を開けていられません」


真「負ける姿が想像出来ないよね。
 なんだかもう残りのメンバー全員そんな感じだよ」

P「まだまともに闘ってない奴もいるしな」

小鳥「春香ちゃんと伊織ちゃんは底を見せてませんよねー」

P「闘ってるんですけど、瞬殺ですからねー」

真&律子「」

小鳥「春香ちゃんが一番謎ですね。伊織ちゃんはほら……ペンチャックシラットって武術の名前を言ってますし」

あずさ「一体どんな武術なんでしょうか~」

P「インドネシアの伝統武道ですね。なぜそんなものを伊織が使えるのかは知りませんけど」

響「……なんでそんなこと知ってるのか、もはや疑問にも思わなくなってきたぞ」

小鳥「プロデューサーですからね」

P「どんな武術かは良く知らないんだけどな。
 まあ、いずれ分かる事さ」


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美希「あっ、でこちゃん発見」

伊織「でこちゃん言うな!」

美希「ラリアットなのっ!!」

伊織「!?」

 伊織は美希のラリアットは身を屈めて躱した。

伊織「いきなりご挨拶ね!
 というかラリアットって……美希、あんたプロレスで勝負するわけ?」

美希「ルチャ・リブレなの」

伊織「ルチャ?
 ……あぁ、メキシコ式プロレスの事ね。あの八百長が日常茶飯事の」

美希「」ピク

伊織「実戦性の欠片も無い見世物だから仕方が無いと思うけど」

美希「……違うの」ボソ


伊織「何? 何か言った?」

美希「ルチャ・リブレは一番華やかで一番格好いいキラキラできる格闘技なの!
 八百長呼ばわりされたくない!」

伊織「……怒らなくても良いじゃない。
 本当の事なんだし」

美希「むきぃー! もう怒ったの! マスク剥ぎデスマッチを所望するの!!」

伊織「マスク剥ぎって……マスクなんてお互いして無いじゃない」

P『……パンツを剥いでみてはどうだろうか』

美希「それ良いの! さすがハニー!」

伊織「……馬鹿馬鹿しい。あんたもいきなり何言ってるのよ」

P『って、ことでパンツ剥ぎデスマッチスタートだ』

伊織「ちょっ!? この変態!」

美希「泣いてわびるの! 八百長呼ばわりしたことを後悔させてあげる!」


 美希は伊織へと走り寄った。
 服を掴むと体を投げ出す勢いで地面へと伊織を叩きつける。

美希「続いてフライイングボディプレスなの!」

 倒れた伊織に向かって美希がのし掛かる。
 美希は体の下で伊織の肉体が軋むのを感じた。

美希「決まったの! ハニー! ミキ、キラキラしてたー?」

P『決まってないようだが?
 パンツ剥ぎはどうしたんだ』

美希「今から剥ぐの」

伊織「剥がせるかこのド変態!」

美希「うわぁ! まだ起きてるの!」

P『だから決まってないって言っただろ。
 とっととパンツ剥げよ』

小鳥『プロデューサーさん……あなた疲れてるのよ』

伊織「ルチャ・リブレだっけ?
 受けてみてあげたけど、やっぱりたいしたことなかったわね」

美希「む」ピク


伊織「やっぱり台本がないと勝てないのがプロレスね」

美希「そんなことは無いの!
 ルチャ・リブレは一番華やかで一番格好いいキラキラできる格闘技!
 ミキ的には最強の格闘技なの!」

伊織「だったら私の一撃を受ける勇気はある?
 私はあんたの攻撃をもう一回受けてあげても良いけど。
 美希にその勇気はあるかしら。
 その自信も無いのに最強とは片腹痛いわね」

美希「むむむっ……」

P『おーい。簡単に誘導されるなよ。言っておくが伊織は律子を瞬殺してるんだぞ。
 良いからパンツをだな――』

真美『兄ちゃん、休もう。お仕事少し休もう。ごめんね、働かせ過ぎちゃったね』

響『沖縄がいいぞ。沖縄は良いとこだぞー』

美希「律子…さんがやれたのはどうでもいいとして、ここまで言われて引き下がる訳にはいかないの」

 美希は立ち上がると胸を張って仁王立ちになった。

美希「プロレスの受けの凄さを見せてあげる!」


P『タフそうには見えないけどなぁ……大人しくパンツを剥いでれば勝てただろうに……』

美希「ミキの打たれ強さは折紙付きなの。ハニーも驚くと思うよ!
 ルチャドールは打たれ弱かったらやってられないの」

伊織「ふーん?」

 伊織は立ち上がって埃を払った。

美希「さぁ、どこからでも掛かってくるの!!
 ハニーにすごーい! って言わせたいから大技出来てね」

伊織「……承知したわ」

 伊織は胸の前で合唱すると蛇が滑るような足取りで左足を前に出した。
 重心は後ろの右足に9割が乗っているような状態でかなり低い。
 正中線に構えるその様子は構えを極端に低くした空手のようでもあった。

伊織「一つ教えておいてあげるわ。
 ペンチャックシラットは最強の武術よ」


 低い構えからの溜が解放され、猛獣のような勢いで伊織が美希へと迫る。

伊織「足のジュルス!」

 伊織は足の裏全体で押すような前蹴りを放った。

小鳥『ジュルス?』

P『たしか形って意味だったと思いますけど』

美希「あっ、これ危ないの」ヒョイ

伊織「!?」スカァァ

真『避けた!?』

亜美『ミキミキ、約束が違うっしょ→!』

真美『避けて正解だったとは思うけど、なんか納得いかないYO』

伊織「美希! 約束が違うわよ!」

美希「ごめんなさいなの。
 凄く嫌な予感がするからその約束は無かったことにするの」


P『自由すぎるだろ』

伊織「べ、別に良いけどね」ピクピク

美希「血管が切れそうなの。大丈夫?」

伊織「」ブチィ

美希「あっ」

伊織「手のジュルス!」

 猛然と迫った伊織は腕を横へと無造作に払った。

美希「うわっと! とったの!」ガシィ

伊織「こっちがね!」

 次の瞬間、美希は手首を極めた伊織は身を沈め込ませた。

美希「イタタタタ!?」

 折れないために美希は自ら地面に転がった。
 そこに伊織が追撃し、頭を押さえて肘を振り下ろす。

美希「それは危なすぎ!」パシィ


 両手で肘を受け止められると、伊織の腕が伸びて美希の肩を掴んだ。
 俯せにひっくり返し、首に伊織の腕がまわる。

美希「締まる締まるのー!」

 美希は前転の勢いで跳び上がると、伊織を首の力で弾き飛ばす。

伊織「無茶しすぎよ!
 首を痛めるわよ!?」

美希「無茶苦茶してるのはでこちゃんの方。
 そろそろ無茶苦茶にされて欲しいの!」

伊織「力ずくでやってみなさい!
 足のジュルス!!」

 伊織は初めの蹴りをまたもや繰り出した。

美希「見切ったの!」

 美希はそれに会わせてラリアットを繰り出す。

伊織「手のジュルス!!」

 軸足を蹴り出し更に加速した伊織は、美希のラリアットを正面から両手で受け止めた。
 勢いの乗っていた伊織に押され、美希は後ろへと蹌踉めく。
 そこをラリアットの腕を掴んだ伊織が地面へと引き倒した。


伊織「次こそは決まったわ!」

 俯せに倒れた美希の背中に乗った伊織が後頭部へと肘を叩き込んだ。

P『アイドルは特殊な訓練を受けています。よい子は絶対に真似しないでね』

小鳥『決まったんじゃ無いですか!? これ!』

真『ペンチャックシラット……打撃から関節への移行が素早い武術ですね。
 留めが激しいですし、仕留めることが大前提みたいな武術です』

雪歩『怖いですぅ!』

真美『……』

伊織「……ふん」

 伊織は立ち上がるとその場を後にしようとした。

美希「……待つの」

伊織「っ!?」

美希「……まだ勝負はついてないの」

 ふらつきながら立ち上がった美希を見て伊織は溜息を吐く。


伊織「……ルチャドールはタフだってのは嘘じゃ無かったようね。
 上手に気絶させるのも楽じゃないんだから寝てれば良いのに。
 これ以上やると怪我をするわよ」

律子『プロデューサー、怪我ってなんですっけ?』

P『俺も分からなくなった。
 だけど、先の戦いで怪我をした奴は居ないらしい』

律子『そんな馬鹿な』

美希「まだ……まだ終わってないの。
 パンツを剥ぎ取った方が勝ちだから!」

P『ブラボー!』パチパチ

あずさ『上手いわね~。パンツを剥ぎ取るだけならどっちが勝つか分からなくなるわ~』

小鳥『純粋な実力だけだと伊織ちゃんの方が上っぽいですもんね』

伊織「プロデューサー! 美希を病院に連れて行ってあげて。頭を少し強く叩きすぎたみたいなの」

P『病院に行くのは君の方だよ。伊織。
 そろそろ現実を受けいれたらどうだ?』


伊織「こんのぉ……変態プロデューサー!!」

P『んふふ』ニヤニヤ

律子『うっわー。今日一番の笑顔ですよ』

亜美『うわぁ……』

真美『真美のパンツ見てもそんな顔しなかったのに……』

伊織「……仕方が無いわねー。今回だけよ。こんな馬鹿なルールで闘うのは」

P『さすが伊織。話が分かる』

美希「正直吃驚したの。伊織がここまで強いだなんて。
 なんでこんなに強いの?」

伊織「……昔、誘拐されかけたことがあってね。
 それが切っ掛けで護身術を習う事になったのよ。
 パパが世界中から名だたる格闘家を集めて闘わせたの。
 そして最後に残った武術を護身術として覚え込まされた。
 それが、ペンチャックシラットだったってわけ」

美希「……護身術のレベルじゃ無いの」


伊織「時間稼ぎはもう終わり?
 まだふらついてるみたいだけど」

美希「も、もう少し質問があるの。
 ジュースっていくつあるの?」

伊織「……ジュルスね。
 三つよ。三つの基本となるジュルスから派生していったらいくつもの技になるんだけど、基本的な動きは三つだけ」

美希「手と足と……膝?」

伊織「膝は足のジュルスに含まれるわ」

美希「三つ目のジュルスも教えて欲しいなー……なんて」

伊織「……いやよ」

美希「ミキの奥の手はカスティゴなの。
 拷問って意味があるの。とりあえず痛い関節技。
 今から伊織にかけて苦しめようと思ってるの」

伊織「なに勝手に話してるの!?」

美希「はい。ミキの奥の手教えたからでこちゃんも教えて」

伊織「はぁ!?」


美希「教えて欲しいの」

伊織「いやよ。あんたが勝手に聞かせて来ただけなのに、何でこっちもまで手の内を明かさないといけなくなるのよ!」

美希「でこちゃん♪」

伊織「……自分で考えなさいよ。手と足と来たらもうあの部分しか残ってないでしょ」

美希「教えて欲しいなー」

伊織「……イのジュルス」

美希「え?」

伊織「……タイのジュルス」

美希「聞こえないの」

伊織「額のジュルスよ!」

美希「…………でこちゃんwww冗談はやめて欲しいのwwww」


伊織「……本気よ」

美希「でこちゃんwwww」

伊織「……本気よ」

美希「デコのジュルスは無いのww」

伊織「……だから言いたくなかったのよ……」

美希「冗談きついのwwwwww
 ……あれ?
 …………本気……なの?」

P『絶対に笑ってはいけない。そんな気はしていた』ギリッッ

真美『兄ちゃんが奥歯が砕けるほど歯を食いしばって耐えてるYO!』

伊織「……」

美希「…………ごめんなさいなの。
 でもデコのジュルスって……」

伊織「額のジュルスね」


美希「頭のジュルスとか言えば良かったと思うなー」

伊織「頭はまた別じゃない。
 額という固い部分を使うのが第三にして最後のジュルス」

美希「子供の頃から頑張りすぎたんだね……でこちゃん」

伊織「これは自前よ!!
 足のジュルス!」

美希「いきなり来たの!?
 しかもデコのジュルスじゃ無いの!」

 美希は伊織の蹴りを後ろへと跳んで躱した。

伊織「そんなに見たいなら見せてあげるわよ!
 額のジュルス!!」

 前蹴りをした足が着地すると同時に、伊織は前方へと飛び出した。
 腹部へと突撃した伊織はそのまま地面へと美希を押し倒す。

美希「これ、トペ・スイシーダなの!!
 ルチャの技を使ったら駄目なのー!!」

伊織「知らないわよ! そんな技!」


美希「痛いのぉ!!」

 伊織はまたもや手首を極めると、肘、肩と極めて行き、地面へと膝で固定した。

伊織「失神させるのはもう面倒だわ。
 これ以上叩きたくも無いし」

 美希の頬に汗が伝った。

美希「ノーなの! ルール変更なの!
 じゃんけんで勝負なの!」

P『駄目だ』

伊織「ってことでパンツを剥ぐわよ」

美希「やめて欲しいのー!!」

伊織「あんたの提案じゃ無い」

美希「よく考えたら、今日可愛いやつだったか覚えてないの!」

伊織「大丈夫なんじゃない?」ピラ

美希「イヤン……なの。
 どんなやつ?」


伊織「ピンクのフリフリ」

美希「あーあれかー。微妙だけど及第点かなー。
 ……汚れてない?」

伊織「……あんたねぇ……大丈夫だから……剥ぐわよ」

美希「恥ずかしいの。ハニーの前でこんな目に遭わされるなんて」ウルウル

伊織「……うぅ」

美希「あ、隙ありなの」ドカァ

伊織「ぐっ!!」

 美希は拘束が緩んだ瞬間、突然立ち上がってそれをほどいた。
 伊織の肩を蹴り飛ばし地面に転がす。

P『これは美希が悪い。
 あんな姑息な手を使ってまで負けたくないのか。
 それが甚だ疑問でならない』

律子『血涙を流してる人がここにいまーす』

あずさ『765プロのプロデューサーさんで~す』

美希「よっと」ヌギッ

律子『何やってんの!?』

美希「シャツででこちゃんを拘束するの」

 美希はそう言うと上半身はブラジャーだけとなった。
 伊織にのし掛かり、手早く腕を拘束していく。

P『……』ホッコリ

亜美『菩薩のような笑みを浮かべている人がいま→す』

真美『765プロのプロデューサーで→す』

伊織「このっ! 卑怯者!」

美希「?」

伊織「なんで本気で首かしげてるの!?」

美希「なんででこちゃんが怒ってるのか良く分からないの」


伊織「このっ! 足のジュルス!!」

 伊織が立ち上がり前蹴りを美希がいなす。

美希「ラリアットなの!」

伊織「額のジュルス!」

美希「やっぱやめてトペ・スイシーダのお返しなの!」

伊織「!?」ドゴォ

 頭から相手に突き刺さるように飛び込んだ美希は、伊織を地面へと倒した。
 今度こそ伊織は美希のコントロール下にあった。

美希「カスティゴの時間なの!」

小鳥『たしか美希ちゃんが言うには拷問って言う意味があるんでしたっけ?』

律子『やりすぎなければ良いけど』

美希「まあ、カスティゴは技の総称だから適当にやっていくね!
 まずはサソリ固めからいくの」

P『素晴らしい!』

真『スタンディングオベーションしてる人がここにいまーす』

雪歩『765プロのプロデューサーさんなんですぅ』


美希「あまり本気でかけ過ぎると靱帯を痛めるからオリジナル技でいくの」

 美希は伊織の背中に乗ると両足を両脇に抱えて体を反らした。

伊織「イタタタタタタ!!」

美希「お返し! これは手のジュルスの分なの!」

 本来、サソリ固めは相手の股の間に足を入れて腰に乗る技だが、美希のそれは単純に腕力と背筋で両足を後ろに反らせているだけであった。
 それゆえに、伊織のスカートの中はバッチリと見えていた。

P『……』

響『ここに目を血走らせてモニターを凝視してる人がいるぞ』

貴音『残念なお知らせがあります。765プロのプロデューサーですよ』

響『沖縄に行こう……プロデューサーに必要なのは安息だぞ』

伊織「ちょっと響っ!
 先から聞いてれば沖縄へ誘導しようとするのは止めなさいよ!
 かってにプロデューサーを連れて行こうとするんじゃ――イタタタタ!」


美希「よっと」コロン

 美希は更に伊織の足首に自分の足首を引っ掛けると、床を転がって上に伊織を持ち上げた。
 その状態で、足を開く。
 強制的に足を開かされた伊織が喚く。

伊織「ちょっとこれどこにもきいてないんだけど!?
 やめなさいよ馬鹿ぁ!」

美希「精神にきいてるの」

伊織「あんたもパンツ見えてるじゃない!」

美希「ミキは可愛いやつ穿いてるから大丈夫。
 でこちゃんは知らないけど」

伊織「こんのぉ……覚えてなさいよ!」

美希「5分だけは覚えておいてあげるの。
 ほーら、これは足のジュルスのお礼なの」

伊織「やめろ馬鹿ぁぁ!」

 伊織は体を揺すられていいように美希にコントロールされていた。


美希「そしてこれが――」

 美希は伊織を持ち上げると、逆さにして肩へとのせた。
 腕は相手の膝に回っている。

美希「デコのジュルスのお礼なの!
 名付けてミキバスター!」

伊織「ぐふっ!」

美希「そして固めるの」

 膝を抱えたままの状態で美希は後ろへと転がった。

伊織「やめ、やめぇえぇぇぇぇ!!」

P『ほほう。これは興味深いですねぇ』

 Pが伊織の盛り上がった部分から目を離さずに呟いた。

小鳥『ちょっと知的に見えてきた! 不思議!』

あずさ『脳内補正ってやつですね~』


美希「……飽きたの」ポイ

P『!?』

美希「立つのぉ!!」ブン

伊織「うわっ!」

 美希の蹴りを避けようとして伊織が立ち上がった。
 そこへ美希が飛び掛かる。
 伊織の体の周りをまとわりつくように二回転して頭を足で挟み込み、そして全身の勢いを使って壁へと伊織を投げつける。

伊織「ぐぅ!?」

美希「ミキティヘラ! どう? キラキラしてた?」

真『ここでそんな大技きめちゃうのが美希らしいなぁ』

伊織「うぅ」

 壁に叩きつけられた伊織は――

伊織「痛いわねぇ!
 この馬鹿!」

 まだピンピンしていた。


あずさ『あらあら~伊織ちゃんもかなり頑丈ね~』

美希「……驚いたの。鉄で出来てるの?」

伊織「骨と肉と血よ!」

美希「興味ないの。もうパンツ剥いじゃうね。失神させるのは大変そうだし」スタスタ

伊織「や、やめぇ! 来るなぁ!」

美希「そんなに嫌なら棄権すれば良いのに」

伊織「……そ、それも嫌」

美希「脱がすの」ジリ

伊織「やーめーろー!!」パラ

 美希が伊織に手を伸ばしているその時だった。
 伊織の腕の拘束が解けたのは。

美希&伊織「……あっ」

律子『あれだけ暴れればねぇ』


美希「あわわわわわ!」

伊織「てて、手のジュルスっ!!」

 熊手のように指を立てられた腕が振るわれる。
 それは美希の腕に引っ掛かり、尋常では無い力で床へと引きずり倒した。
 同時に飛び掛かった伊織の肘が美希の側頭部に叩き込まれる。

美希「のっ!?」…バタン

 美希は一瞬で意識を刈り取られた。

伊織「はぁはぁ……勝った……」

響『一瞬だったぞ』

貴音『正面からぶつかり合えばこうなるでしょう。
 ……おや? あなた様、どうなされたのですか?』

P『これじゃ無い……俺が見たかったのはこれじゃないんだ……』

伊織「……この変態」


 ――美希脱落


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 一方その頃。

社長「びゃああああああああああ!」

運転手「動くなよ社長。あんたも生かして連れて帰りたい。
 ……765プロの社長さん」

美女「ほ、本当に社長だったんだ。冗談だと持ってた。
 それに765プロって……」

運転手「そう、生ける伝説のアイドル事務所だ」

社長「びゃああああああああああああ!」

美女「あれがその……」

社長「びゃあああああああああ?」

美女「社長?」

運転手「彼は765プロという存在がもたらす重圧で精神を病んだとの情報もある。
 ……しかし、こんな所で思わぬ収穫だったな。今日はついてる」


社長「なぜこんなことを!」

運転手「こっちが本職だからな」

黒服1「そいつは世界中で指名手配されてる極悪誘拐犯なんです!
 そいつの車に乗ったときはもう終わったかと思いましたよ!」

黒服2「その男が最近我々の周辺をうろついているとの情報は得ていましたが、まさか本当にこんな事になるだなんて」

社長「なぜこんなことを!」

運転手「当然、身代金目的さ。あんた達二人ならたんまり手に入るだろうよ」

社長「逃げられると思っているのかね!」

運転手「一旦海外まで逃げるつもりだ。
 一々、警察組織がわりと確りしている国でやる必要も無いしな。
 賄賂のきく国でゆっくりとやるさ」

社長「逃げられると思っているのかね!」

運転手「その準備はもうしてある。
 じきここにボートで協力者がここに来る手はずになっている。
 ……ほら、来たぞ」

 水平面上にモーター音を響かせながら一隻のボートがこちらへと近づいてきた。


運転手「SPどもがあんたたちに近づいたときはもうチャンスは無いと思ったが、まさかおれの車に乗ってくれるとは思いもしなかったぜ。
 ついてるってのはこういうことを言うんだろうな」

美女「ご、ごめんなさい社長さん。
 私のせいでこんな目に……」

社長「いいんだよ。私もSPの頭をブッ叩いて逃げたんだし」

運転手「さて、SPにはもう用は無いな。
 ここで死んで貰うか」

美女「!?」

運転手「銃を捨てろ。いつまで銃を握ってんだ
 5……」

黒服1,2,3「くっ!」

運転手「4,3,2,1――」

黒服1「くそっ!」

 SPたちは銃を足元に放り出して両手を挙げた。

社長「逃げたまえ!
 私たちは大事な身代金の元だ! 危害を加えられることは無い!」


黒服3「し、しかし奥様を置いて逃げるわけには!

美女「逃げて!」

運転手「ハハ、おせぇよ。
 ……ってなんかモーター音が近すぎないか――あぁっ!?」

 運転手が海に目を向けた瞬間、ボートノンブレーキで砂浜に乗り上がってきた。

運転手「うおおおおおおおお!?」

美女「きゃああああああああ!?」

社長「びゃああああああああ!!」

 ボートから浅黒い男が運転手に向かって飛び掛かる。

石油王「石油王デース!!」バキィ

 見事なパンチが運転手の頬に決まる。

運転手「ぐっ!」ドサァ

美女「あ、あなた!?」

石油王「向カエニ来マシタ」

運転手「て、てめぇ……どうしてここに!」


石油王「アナタノ協力者ハ、モウコチラデ確保シマシタ。
 終ワリデス」

運転手「捕まってたまるかぁ!!」

 そういって美女に銃口を向けた運転手に――

社長「びゃあああああああああブン!」

 社長の箱が炸裂した。

運転手「イテェけどそれだけだ馬鹿が!」

 運転手は箱を奪い海へと投げ捨てる。

美女「は、箱が!!」

社長「市ねカスなにやってんだ」バキッ

 社長の拳が運転手の顎を抉った。
 運転手は銃から手を離し、柔らかな砂浜に抱かれた。


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誰か美女サイドの話まとめて


 大広間

美希「ただいまなの」ガラ

P「頑張ったな美希。見てたぞ」

律子「血走った目でね」

美希「ハニー! ミキ、キラキラしてたぁ?」

P「してたぞ」

美希「ハニー!」ダキ

P「HAHAHA!」

美希「もう終わりに近かったんだね」

 美希は大広間にいるアイドルを見渡していった。

美希「あと残ってるのは……春香、千早さん、やよい、でこちゃん?
 ミキ的には、やよいが残ってるのは意外だったなー。
 やよいはまだ誰とも闘ってないの?」


P「あずささんとやったぞ」

あずさ「うふ」

美希「え!? わ、わざと負けてあげた?」

あずさ「正面からぶつかり合って正面から叩き伏せられたわ~」

美希「どういうことなの?」

P「見てれば分かるさ。
 あとは4人だ。すぐだろ」

小鳥「ここに来て未だに謎の存在もいますしね」

P「春香ですか」

小鳥「えぇ、真ちゃんを背後から一瞬……それだけでしたからね」

真「くそぉ!」

P「次ぎ辺りは春香の闘いが見たいですね」


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やよい「うっうー! 二人目発見ですっ!」

千早「高槻さん? 残ってたのね」

やよい「はいっ! 頑張ってます!」

千早「…………棄権しようかしら」

やよい「だ、駄目ですよぉ!
 みんな真面目にトップアイドルを目指してるんですからぁ!」

千早「……ごめんなさい。
 高槻さんにも失礼なことを言ってしまったわね」

やよい「うっうー! 気にしてません!」

P『千早ー。やよいを舐めてると痛い目をみるぞ』

千早「プロデューサー。……油断は、しません。
 ですが……」

やよい「じゃあ早速いっちゃいます!」

 そう言うとやよいは戦隊もののヒーローのように構えた。

千早「……あの、プロデューサー。
 本当に大丈夫なんでしょうか」


P『自分の心配をした方が良いぞ』

やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

千早「へ?――きゃあぁ!?」

 千早は辛うじてやよいの肘と膝を避けた。

千早「ど、どういうことですか!?
 これ!」

プロデューサー『だから痛い目を見るって言っただろ』

美希『どういうことなの?』

プロデューサー『やよいは諸事情で攻撃特化なんだ。
 ムエボーランの使い手で一撃必殺で来るから気を付けろよ』

千早「くっ――破ッッッ!!!」


やよい「ゴンラーマスーンコワンクワン!(斧を振る雷神)」ゴシャァ

 やよいは千早の一撃を横に躱しながら肘を打ち下ろした。
 強力な一撃が千早を襲う。

貴音『なんと!』

真『合わせた!?』

雪歩『ありえないですぅ!!』

千早「あうぅぅ!?」ドサ

やよい「うっうー!」

 千早は地面に突っ伏して立てないでいる。

P『……どういう事なんだ……確かに千早は声で視界を奪ったはずなのに』

律子『千早の声が効いてない?』


やよい「千早さんの声にはすっごく吃驚しましたっ!」

律子『ならなんで――っ!』

やよい「うぅー? 必殺ってそう言うものなんじゃないんですかぁー?」

律子『……?』

やよい「自分が一番危ないときに出すのが必殺技ですっ!」

P『なるほど……わからん』

真『防御無用の捨て身の必殺ですからね。
 千早とは相性が良いのかも知れません』

P『終わったな、千早』

千早「か、勝手に終わらせないで下さい」プルプル

 千早はゆっくりと立ち上がった。


千早「高槻さんがここまで出来るだなんて……でも、突破口は見えたわ」

P『攻略早いな』

やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

千早「ちょ!? まだ話のとちゅ――」ズサァァ

 千早は車との正面衝突を避けるかのような焦りようで横に跳んだ。

やよい「いきますよーっ!!
 プンホーッ! プンホーッ! プンホーッ!」

千早「きゃあああああああああああ!?」

 千早は地面を転がり埃まみれになって避け続けた。

美希『……一方的すぎるの』

千早「くっ……こっちからもいくわよ!!
 提肘ッッッ!!!」

 千早は腕を振り上げると大きく前に出た。
 やよいに肘を前に出してぶつかって行く。

やよい「うっうー! ここですっ!」


 やよいは両肘を振り上げて跳躍する。

あずさ『これは私がやられた技ね~』

千早「……亜ッッッ!!!」

やよい「チャーンプラサーンンガー!!(牙を突き合わせる象)」スカァァァァ

美希『外したの!』

やよい「う!?」

 大技を空ぶったやよいの肩に千早の肘が突き刺さる。
 体重の乗った一撃がやよいを吹き飛ばした。

やよい「いたたたたぁ~」

 立ち上がったやよいに千早が迫る。

千早「破ッッッ!!!」

やよい「ハヌマンタワイウェン!!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」

 やよいは両の拳を突き出して前に飛び出した。


千早「覇王折江ッッッ!!!」

 やよいの拳は千早に届いたが、間合いが遠い過ぎたのか威力は軽いものであった。
 それをあえて身で受けた千早は両方の腕と前に出した膝でやよいを挟み込み、地面へと叩きつける。

P『これは一体……』

貴音『おそらく、千早はやよいの必殺のタイミングを、声でずらしているのでしょう』

P『なーる』

千早「一気に決める!!
 鉄山――」

やよい「マーディーットカローク!(ヤシの実を蹴る馬)」

 やよいは側転をする要領で千早に蹴りを放った。
 今までのわざと比べれば格段に威力が無い技であったが、それが脇腹に命中すると千早の顔が苦痛で大きく歪んだ。

千早「くっ」

 千早は後ろへと跳び退り、大きくやよいと距離を取る。


P『そういえば貴音との闘いで最後にもってたな。脇腹に』

貴音『痛めているのでしょうか』

P『まあ、あれだけやれば痛めてないはずがないだろうな』

やよい「……うっうー!
 千早さんとーっても強いですっ!」

千早「……ありがとう。高槻さんもとっても強いわ」

やよい「ありがとうございますっ!
 そしてごめんなさーい!」

千早「……え?」

やよい「今からとーっても痛いことしちゃうかも知れません!
 だから先に謝っておきますっ!」

千早「そ、そう」

 やよいは両足をそろえると胸の前で合唱した。
 気温が一気に下がったような錯覚を見ているも者全員が感じた。

やよい「ルークマイ(隠し技)」

http://www.fureai-ch.ne.jp/~sol/F4U2/index.html
こんなものが


 やよいはそう言うと、右手を天を突くように掲げた。

千早「……」

 千早の額に珠のような汗が浮かぶ。

亜美『だ、大丈夫かな千早お姉ちゃん』

真美『大丈夫でしょ……多分』

P『やよいー。くれぐれもやり過ぎるなよー』

千早「……勝つ……私が勝つ……凌ぐだなんて考えない!
 真っ向から叩き伏せる!
 絶招ッッッッ!!!!!! 」

 千早は叫びながらやよいへ猛然と間合いを詰めた。

千早「猛虎硬把――」

やよい「あぁー!? よく考えたら顔面はルール違反でしたぁ!
 やっぱやめますねっ!!」

>>200まで読んだしえん


千早「えっ……えぇ!?」

やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」ゴシャ

千早「くぁ!?」

やよい「ハヌマンタワイウェン!!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」バキィィ

千早「ちょ――!?」

 二つの拳を喉元にもらった千早は錐揉みしながら後ろへと転がっていった。
 そして、ピクリとも動かなくなる。

やよい「……うっうー! いぇい!
 やりましたよープロデューサー!」

 やよいは満面の笑顔でカメラにVサインをした。

P『お、おう』

美希『やよい……恐ろしい子なの……』

律子『天然の残虐性が垣間見えましたね。美希に似てました』

美希『ミキはそんなんじゃないの』

真『……伊織との一件を詳細に思い出してみようよ。
 そしたら――ってあぁ!?』


亜美『これは』

真美『うっわ→』

真『後ろ後ろ後ろ後ろぉぉ!!』

やよい「うぅー?」

春香「凄いねやよいちゃん。吃驚しちゃった。
 ……おやすみ……」

 春香は背後からやよいにチョークスリーパーを掛けた。
 後退しながらそれを行い、脱出する隙を与えないでいる。

やよい「うぅー!?」ジタバタ

春香「……」グッ

やよい「……」ガク

P『春香wwwおまっwww』


小鳥『プロデューサーさんww気づきましょうよww』

P『カメラの死角に入ってて気がつきませんでしたwww』

響『……これはないぞ……』

美希『サバイバルマッチだからこういうのも、たまにはありかなー』

雪歩『本日二回目ですぅ』

真『しかも両方とも春香だよ』

美希『ないのwww』

P『え? ということは未だ未知数の春香と伊織の対決がとりか』

春香「あれ? あと伊織だけなんですか?」

 その場を後にしようとしていた春香が立ち止まった。

P『そうだ』

春香ぁ…


春香「あっ……だったらこれで終わりってことですね」

P『え?』

 春香はそう言うと近くの柱に身を潜めた。
 直後、階段を伊織が下りてくる。

伊織「この辺で音が聞こえてたと思うんだけど」

あずさ『あらあら~』

伊織「あれ、ここに大広間の音声が通じてるって事は――えっ!?
 やよい!!」

 伊織は倒れているやよいを見つけて血相を変えた。

真『伊織っ!! 気を付けて! 春香が隠れてるんだ!』

 伊織はそんなことに全く耳を傾けず、やよいの元に駆け寄る。

P『やばいwwこれは決まったwww』


伊織「大丈夫!? やよい!」

響『うがああああああ! 止めろぉ春香ぁ!』

貴音『勝負とはなんと無情なものなのでしょう』

 音も無く背後に忍び寄った春香の腕が、伊織の喉元に縄のように絡みついた。
 そして、振り回すようにして回転すると、一瞬で伊織の意識をブラックアウトさせる。

貴音『なんという手際!』

春香「プロデューサーさん! 勝利ですよ! 勝利!」

P『お前という奴はwwww』


 ――千早敗退
 ――やよい敗退
 ――伊織敗退


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ワロタ


 一方その頃。

石油王「アリガトウゴザイマス」

社長「なに、やれることをやったまでですよ」

石油王「……モシカシテ、アタナハ765プロノ社長デハ?」

社長「そうですが?」

石油王「ワタシ、ジツハ765プロノアイドルニ感謝シテモ仕切レナイ恩ガアリマス」

社長「うちのアイドルに?」

社長「エェ……後カラ知ッタコトデスガ」

黒服「奥様! なにを!?」

 黒服の声に釣られてそちらを見ると、美女が海に腰までつかって箱を追いかけているところであった。

美女「大切な箱なの!」

石油王「……ソウナノデスカ?」

社長「どちらかと言えば。
 ……ん? なんだねあの影は!!」


黒服「まずい! 鮫だ!」

社長「鮫!? 日本のこんな場所で鮫!?
 もともとは都市開発が行われていたような場所で鮫!?
 えぇい! そんなこと言ってる場合ではない!」ダッ

石油王「マズイ!」ダッ

美女「よっと」

 美女は鮫に気がついておらず、波に漂う箱を取り上げたところであった。

社長「キミぃ!」

美女「あ、社長さん!
 箱は無事ですよ!」

 美女は箱を社長に投げて渡す。
 社長はそれを受けてると箱を振り上げて猛然と美女に迫った。

美女「え?」

社長「びゃああああああああ!!」

美女「きゃああああああああ!?」


 社長は美女を横にはね除けた。
 直後、鮫が水面から躍りかかる。

社長「びゃああああああブン!!」

 社長の腕と鮫の牙が交錯する。
 激しい音と共に段ボールクズが宙を舞った。

石油王「糞フカヒレガ!」バキィ

 続けざまに、水しぶきを上げて着水した鮫の鼻頭に石油王の拳が突き刺さった。

石油王「ドウデス? 効クデショウ!! 六億円ノコブシハ!!」

 石油王の指で宝石がぎらりと輝く。
 鮫は痙攣すると海の彼方へと逃げていった。


美女「社長っ!!!」

 夕焼けに染まる海に美女の嗚咽が響いた。

社長「恩に着るよ。私の大切なもののために危険を侵してくれたことを」

美女「社長ぅ!!」

社長「泣かないでくれたまえ」

美女「でも、社長っ……箱がぁ!!」ドン

 社長の手には鮫に食いちぎられ見るも無惨な姿になった段ボールが握られていた。


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春閣下だったら


 大広間

春香「という訳で、トップアイドルはこの天海春香に決定しました! パチパチパチー!」

P「微妙に納得いかない所もあるけど、勝ち星も一番なんだよなぁ」

春香「3勝ですよ! 3勝!」

P「うーん。トップアイドルおめでとう」

春香「ありがとうございます。プロデューサーさん!」

真「悔しすぎる……だけど油断した僕が悪いんだ」ギリィ

やよい「いつの間にか眠らされてましたぁ」

亜美「まあ、仕方が無いね。
 みんな同じルールでやったんだし。
 今回の優勝者ははるるんだよ」

真美「さ、再戦を!
 再戦を所望する!」

P「そうホイホイこんなことが出来るか。
 今回の優勝者は春香ってことで納得しような」


美希「仕方が無いの」

あずさ「でもまたやりたいわね~」

P「一年後とかにまたやりますか?」

律子「私はもう結構です」

小鳥「……私も」

P「じゃあ、残りの余暇はゆっくりと――」

伊織「ちょぉぉっと待ったぁぁぁぁ!」

P「え?」

伊織「納得がいかないわ! やり直しよ!」

P「納得しような」

伊織「うるさいうるさいうるちゃい!」

響「どーどーどー」

不意打ちはあかん
次あったら真っ先に狙われる


伊織「春香! あなたトップアイドルになって何がしたいの?」

春香「え? 特にないですけど?」

 春香はPに向かってちらちらと目線を送った。

春香「強いていえばお礼……ですかね。
 トップアイドルにしてくれたプロデューサーさんに。
 問題は無いよね」

伊織「得意げな顔がむかつくわ……。
 み、みんなはこれで良いわけ?」

美希「落ち着くのでこちゃん。
 この結果に良いも悪いもなの」

やよい「そうだよ伊織ちゃん。
 トップアイドルは決まっちゃいましたけど……勝負はまだ決まってないんだから落ち着こうよっ!」


春香「圧倒的有利!」

伊織「うわああああああああ!!」

 伊織はプロデューサーに突進すると襟首を掴んで窓をぶち破った。
 意表を突かれた面々が出遅れながらも後を追う。

伊織「やってられるかぁ!!」

 伊織にヘリがやって来た。
 そのヘリから提げられた、はしごに掴まりどんどん高度を上げていく。

春香「プロデューサーさん!」

P「じゃあの」ビュン

 伊織とPは、ヘリと共に彼方へと消えた。


----------------------------------------


 一方その頃。

石油王「本当ニアナタニハナント感謝スレバ良イノカ。
 コノ恩ハ必ズ返シマス」

社長「気になさらずとも結構ですよ」

石油王「サア、帰リマショウ」

美女「……嫌よ!」

石油王「……ドウシテ家出ナンテシタンデスカ?」

美女「だってあなたが悪いんじゃ無い!
 あなたが浮気なんてするから!」

石油王「……全ク身ニ覚エガ無イノデスガ」

美女「嘘よ!
 私に隠れてこそこそしてたじゃ無い!」

石油王「……ドウヤラ誤解ガ生ジタヨウデスネ。
 最近、僕ガコソコソシテイタノハ、アナタノタメノサプライズヲ用意シテイタカラデス」

じゃあのワロタ
このPもう諦めてるな


美女「う、嘘よ。
 だって石油王なのよ!?
 お金が有り余ってる人がやる事なんて同じじゃない!」

石油王「嘘ジャ無イデス。
 アナタノ誕生日ハ盛大ナ物ニセズ僕ダケガ祝イタカッタ。
 ソノ準備ヲ僕ノ手デシテイタンデス」

美女「やだ格好いい……これが勝ち組? 石油王なの?」ポッ

石油王「デモ、ソレガ原因デ君ヲコンナ目ニ遭ワセテシマウナンテ……僕ハ間違ッテイタンデショウネ」

美女「……ううん。間違ってないわ。
 アナタだけが祝って頂戴。私の……誕生日」

石油王「……光栄デス」

運転手「やだやだ。寒いねぇ……」

 運転手はロープで縛られ、SPに拘束されている状態であった。

石油王「……帰リマショウ」

美女「はいっ!」


運転手「ちょっと待った!
 これから俺はどうなるんだよ!」

黒服1「こちらが銃を持っているのを見られた。
 だから、お前は警察には突き出せん」

運転手「……なんだよ。ここでデッドエンドってことかよ」

石油王「違イマス。アナタニハ僕ノ知リ合イノ元デ働イテ貰イマス」

運転手「強制肉体労働か?
 炭鉱で酸欠になりながら働けとでも?
 ……やなこった。殺せよ」

石油王「大丈夫デス。彼ハトッテモ男ノ人ニ優シイ(意味深)」

運転手「……嘘だと言ってくれよ(絶望)」

黒服1「来い!」

運転手「糞がぁ! ファックだ! 夜道に気を付けろよ石油王!」

石油王「……アナタハ背後ニ気ヲ付ケテオイテ下サイ」

運転手「いや、マジ勘弁します!
 何でもしますから!」

>>443
なんだここはアイマススレじゃなかったのか(絶望)


 タクシー運転手……もとい誘拐犯は、ほとんど引きずられるようにして屈強なSPに連れられていった。

石油王「オット、危ウク忘レルトコロデシタ」

 ぼんやりとそれを見送っていた石油王が懐に手を入れながら社長に近づいた。
 小切手を取り出し、ペンでさらさらと記入する。

石油王「765プロニハ大キクオ礼ヲスルトシテ、マズハ今回ノ感謝ノアカシデス。
 コウイウモノデシカ感謝出来ナイ私ヲユルシテ下サイ」

美女「じゃあね。社長さん」

 二人の背中を見送ってから始めて社長は小切手へと目を落とした。
 そこに書いてある金額を見て社長は――

社長「びゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!??」

 完全に壊れてしまった。


----------------------------------------


 一週間後。
 765プロの事務所は慌ただしかった。
 765プロの大型連休も明けて普段ならアイドル達は仕事に精を出しているはずなのだが、消えたプロデューサーの捜索に全力を挙げていおり仕事は全部すっぽかしていた。
 そのため事務所には激怒の電話が絶えずかかってきており、事務員の小鳥が半泣きになりつつもそれに一つ一つ対処してる状態である。

小鳥「765プロ終わった……これ二度と仕事来ないわ……」ガクガクガク

あずさ「プロデューサーさん、どこへ連れて行かれたんでしょうね~」

貴音「おそらく水瀬財閥の力が及んでいるどこかかと」

亜美「探偵って意外と役にたたないんだね→」

真美「もう一週間も経ってるのに有力な情報が一つも無いとか……」

貴音「それは酷というものでしょう。一週間で人捜しなど」

美希「ハニー……ハニー……」

やよい「美希さん、大丈夫ですかぁ?」

真「こんな時に社長はどこに行ってるんだよ!!」

雪歩「社長ももう一週間見てません」

社長「やっぱり朝マックは最高だな!」

第2回大会開催決定フラグ

そして……

P「アイドルを統べるプロデューサーがアイドルより弱いと思ったか?」

>>455
知識豊富だからありそう
てか全部極めてそう


千早「……社長と一緒に出かけた記憶はあるのだけれど、一緒に帰った記憶が無いのだけれど」

響「まだあっちにいるのかも知れないぞ」

律子「みんな、待たせたわね」バン

美希「そ、その自信……何か情報を得たの!?」

律子「えぇ、プロデューサーはやっぱり水瀬財閥の力で隠匿されていたわ。
 これがプロデューサーがいるビルよ。
 地図と写真付き!」

 律子は得意げに携帯電話を掲げて見せた。

美希「す、すごいの!
 こんな情報どこで手に入れたの?」

律子「……まぁ、伊織から直接メールが来たんだけど」


美希「そんなところだろうと思ってたの」

律子「あんたねぇ……」

亜美「罠くさいですぞ→」

春香「罠があっても――」

 いつの間にか律子の背後に回っていいた春香が携帯に手を伸ばす。
 画面を数秒見つめ、ゆっくりと皆に目を向けた。

春香「叩き潰すだけです」


----------------------------------------


 水瀬財閥が保有するビルの一つに春香たちはやって来ていた。
 ビル内の各事務所は通常営業しており、とてもプロデューサーが連れ去られた場所のようには思えない。

美希「なんか凄く目立ってるの」

律子「それは765プロのアイドルが勢揃いしてるからね」

 そして、事務員風の小鳥は比較的声が掛けやすいとでも思われたのか、社員に食事に誘われていたりした。

小鳥「そんな時間あるかぁ! 消えろカス!」

亜美「ピヨちゃん落ち着いて!」

小鳥「見てんじゃねぇ!!」

真美「ぴ、ピヨちゃんが壊れた」

貴音「小鳥嬢にも十分な休息が必要なのでしょうね」

春香「……ここの最上階にプロデューサーさんが」

> 小鳥「そんな時間あるかぁ! 消えろカス!」
> 小鳥「見てんじゃねぇ!!」
ワロタ


貴音「穏便に済めばいいですが」

亜美「刀を持ってきている人が言うようなことじゃないYO!」

 エレベーターで最上階に登ると、そこは別世界であった。
 ざわつきは一切無く、高級ホテルのような内装である。

律子「一番奥の部屋ね。行きましょう」

 一際大きく重厚な扉の前で律子が表情を引き締めた。

律子「いい? 出来るだけ問題を起こさないように、穏便にことを解決するのよ?
 暴力で何もかもが解決すると思ったら――」

春香「お邪魔しまーす!!」ドガァ

律子「ちょっとぉ!?」

 律子の話の途中で春香が扉を蹴破った。
 中に広がっていた光景は――

春香「プロデューサーさん!」

P「春香!」


春香「プロデューサーさん! なんで裸なんですか!?」

P「話せば長くなる!」

 プロデューサーは後ろ手に手錠を掛けられ、足にも鉄の塊のような枷が掛けられていた。
 そのプロデューサーが柵を隔てた向こう側にいる。
 部屋の中もホテルのようであったが、中央部分から部屋を鉄の柵で仕切ってあり、その向こう側にプロデューサーがいるのである。
 伊織もその柵の向こう側にいた。

響「なんでプロデューサーが裸なんだ!?
 変態だぞ!!」チラチラ

真美「全く持って変態ですな→!」チラチラ

春香「伊織……プロデューサーさんに何ってことしてるの?」

伊織「逃げ出さないようにちょっと手錠を掛けてるだけじゃない。
 不便は内容にして上げてるわよ」

春香「最低だよ」

P「お前ら逃げろ! これは罠だ!」

       ,、-‐''"´   ,','
  ,、-‐''"´        ,','ニニニニニニニニニニニノ  
''"´ィ! , ; .      ,','          ____    )
iヽ ._  /i .  .   //        /⌒春 ⌒\ ろ お邪魔しまーす!!
レ’|/-/ iー .'7   //       /(●)  (●) \).
/! \/∠/ .  ,イ   .  /   (__人__)  . \  ,ィ⌒ヽ、
 ̄/\ ,ヘ/.   ,'.i      .|      |r┬ |      | .(   ノ
くi k_./i,イ/ .  i .|    .  \    .l| .| l     /⌒/   i
\k、 .リ   .  |.|      /ヾニニニ`ー'´ ニニニシ\ ,'`ー '´i、
 r' .〉'´ iン  . .|    .,ィ'´ ̄`ヽ    |○      |     'i⌒i
tァ ̄ .  、|.l.||,,. |    ./三三.互.',ヽ  |        i    ,′.| i.|
 ..  \ i| ! |..`|... . i三三三三 i i  |○   /`ヽ、',   /.. .| i.|
  ‐   |´ j,       ..l三三三三| l  |    ,'    `'ー'´.... .| i.|
   ‐.´'.l| !,  |!,   ノ/ ̄ ̄ ̄!,' ! .|○   i..          .| i.|
     / !.| |!!´i  . | . ̄ ̄ ̄ i  ',_|__ , |           .| i.|
       . .!´"', ',   .ヽ三三三,'   f..  . リ           .| i.|
          .', ',  .  ゞ三シ⌒ヽ.、 ノ  ... |            .| i.|ドガァ
          . ヽヾ、 ..      ヽ.     |            .| i.|
             ヽヾ、 .. .     ヽ、 . |     . .. . .| i.|
              ヽヾ、  .......   .ヽ  . |      .    | i.|


伊織「はい。注目!
 宣言するわ!
 このスーパーアイドル伊織ちゃんがこの場に立っている最後のアイドルになると言うことを!
 あんた達を倒して私がトップアイドルになるわ!」

貴音「……一人で私たちの相手を?」

響「調子に乗りすぎだぞ!」

伊織「ふふふ、自分の力を過信しているわけでも、あなた達の力を過小評価してるわけでも無いわ。
 私には秘策があるの!」

響「秘策?」

伊織「これよ!」

響「そのプロデューサーがどうしたの?」


伊織「知らないの?
 プロデューサーが特異体質なことを」

響「特異体質……ってどういう意味?」

伊織「……プロデューサーは特異体質なのよ律子」

響「自分との会話じゃ無いことにされた!?」

律子「プロデューサー殿が特異体質?」

伊織「疑問に感じたことは無いのかしら。
 ほとんど眠らずに働くプロデューサーに。
 多数の栄養剤を同時に大量摂取しているプロデューサーに」

律子「凄すぎて考えすぎないようにしてたけど」

伊織「水瀬財閥の調べで、プロデューサーが薬物の負の効果を打ち消す体質だって事は随分前に分かっていたわ」

律子「いつの間にそんなことを。
 本当なんですか? プロデューサー殿」

まさかのドーピング


P「本当だ。薬を飲み過ぎようと組み合わせが悪かろうと体に良い効果しか出ないのは昔からの体質だ。
 おまけに薬物反応が尿からも血液からも検出されず、薬物の効果が完全に自分の体の一部として馴染むから、あらゆるスポーツ大会で出場禁止だった」

律子「血を売るだけで生活が出来そうな話ですね」

伊織「そこで水瀬財閥は考えたの。
 この特異体質の恩恵をどうにかして他の人間にも与えられないかと。
 そして、その方法を見つけたわ。
 これよ――」

 伊織はプロデューサーの股の間に顔を埋めると、陰茎に舌を這わせた。

美希「のおおおおおおおおお!?
 このデコ! ふざけないで!!」

伊織「美希はそこで指でもくわえてなさい」

 伊織は亀頭を中心に丹念に陰茎を攻めた。

真「プロデューサー!! 勃ったら玉を潰しますからね!」

雪歩「スコップで!」

ツンデレだと思ったらヤンデレだった


P「ごめん……立っちゃった」

 Pの股間は血管もバキバキに浮くほど硬直していた。

貴音「ふんっ!!」ガキィン

P「」ビクゥ!

 貴音が部屋を隔てている柵に刀をぶつけるが、ビクともしない。

あずさ「このっ……堅いわ~この柵っ!」

 あずさも柵に手を掛けて隙間を押し広げようとする。

伊織「ここからが本番よ!」

 伊織は更にPのブツにローションを塗りたくった。

P「ヤメロー伊織ヤメロー」

響「抵抗が薄いぞ!」

千早「本当に玉を潰されるべきじゃないかしら」


 伊織はスカートをたくし上げると、小さな面積を隠している布を取り払った。
 そしてPの亀頭を自分の筋に這わせる。
 スカートを持ち上げ、柵の向こう側にいるアイドルに見せつけるように。

美希「それだけは止めるの!! 冗談で済まないの!!」

伊織「美希はそこで指をくわえてみてなさいって――言ったでしょ!!」ズズズズ

 伊織は一気に腰を下ろした。

伊織「つぅぅ……さすがにきついわね」

美希「いやあああああああ――って、えええええ??」

P「おまっ!? なんで前じゃなくて後ろなんだよ!」

伊織「それはこれから説明してあげるわよ!」ズン

P「あふん」

 ゆっくりと腰を持ち上げ、伊織は根元まで再度くわえ込んだ。
 それを何度も何度も繰り返す。


伊織「数え切れない薬物、栄養剤を精密なバランスで配合し」

 時に自分の体内をかき混ぜるように伊織は腰を動かした。

伊織「プロデューサーに摂取させオナ禁させること七日七晩!!」

 伊織は自分の肉体も軋ませながらPのモノを受け入れていた。
 Pのモノが出たり入ったりするたびに、薄紅色の肉が乱れる。

伊織「血液や尿からは決して検出されず!!」

 伊織の腰を叩きつけるペース上がる。

伊織「なおかつ全ての薬物の効果は数倍……腸から注入(たべ)ることでさらに数倍!!」

 伊織の腰が大きく持ち上がった。
 Pのモノが抜けてしまうのではないかと思えるほどに。

P「くぅっ!」

伊織「これが水瀬財閥の研究の結果たどりついた……究極の栄養剤!!」

 一際激しく情熱的に腰が叩きつけられる。

P「ぐわああああああ!」ドピュウ!!

伊織「ドーPング濃厚精子だ」

美希「馬鹿じゃないの?」

ワロタ

DNSエラー


貴音「――いえ! 闘気が尋常ではありません!」

 伊織は見た目さえ変わって無かったが、身に纏う闘気は尋常で無い物となっていた。

伊織「くぅ……ふぅ」ズズズ

 Pのモノを抜くと白い液体が大量に太股を伝う。

伊織「さぁ、始めましょうか」クパァ

 伊織は柵にゆっくりと近づくと、両手を掛けて一気に左右へと押し広げた。

あずさ「そんな!?」

伊織「手のジュルス!」

 伊織は風を巻き上げながら腕を振るった。

あずさ「ぐっ!?」

 直撃を受けたあずさが床を数メートル転がる。

エロかとおもったらやっぱり格闘技だった


亜美「りっちゃんみたいに吹き飛んだYO!」

真美「あのあずさお姉ちゃんが!」

律子「あんた達――」

伊織「足のジュルス!」

 豪快な前蹴りを受けた律子が亜美と真美を巻き込みながら床に転がる。

貴音「これは非常にまずいですよ」

伊織「ふん……他愛もないわね」

春香「調子に乗らないでよね」

 背後に回った春香が言った。

伊織「――っ!? また後ろから!」

春香「遅い!」

 春香の腕が伊織の首に回る。


伊織「……馬鹿の一つ覚えってこのことなのかしら」

 伊織は完璧に決まったチョークを、片腕のみで引きはがした。

春香「くっ!? なんて力っ……!」

伊織「春香には借りがあったわね……返すわよ!
 額のジュ――」

貴音「一の太刀・虎乱!」

響「トンファーが全てを貫く!
 トンファー抜き手!」

伊織「ちぃ!」

 伊織は貴音と響の攻撃を避けるため春香から手を離し、後ろへと跳んだ。

貴音「大丈夫ですか? 春香。
 共に力を合わせましょう。伊織の間違いを正してあげなければならぬ時です」

響「ぶっ飛ばしてやるさー」

春香「うん。……こんなの絶対におかしいもの。
 伊織を正気に戻してあげないと……傷つくばかりだよ。……みんな」

一番正気も糞もなかったお方がなにを


伊織「私は正気よ。
 あんた達もプロデューサーは私の物になったんだから、もう無駄なあがきは止め――」

P「ぐわああああああああああああ!
 やめろおおおおおおおおお! やよいぃぃ!!」ドピュゥ!

やよい「うっうー! 特濃搾りですっ!」

伊織&春香&貴音&響「!?」

 プロデューサーいた方向に目を向けた四人が見たのは、数人に囲まれたプロデューサーがやよいに顔射している光景であった。

伊織「は?」

 やよいはプロデューサーの精液を舐めると元気いっぱいに立ち上がった。

やよい「これでパワーアップですっ!」

(アカン)


雪歩「つ、次は私が」

真「や、止めなよ雪歩。間違ってるよ、こんなこと」チラチラ

雪歩「一緒にしようよぉ、真ちゃん
 一人じゃ勇気が出ないの」ウルウル

真「えぇ!? 二人でこれを舐めるの!?
 む、無理だよぉ!」

美希「じゃあ、ミキがするの」

小鳥「私の順番はまだですか」

P「オマエラヤメロー
 ヤメルンダー」

 プロデューサーは最高の笑顔で精液を搾り取られていた。

貴音「……あぁ、腸から吸収すれば効果が更に数倍になると言うだけの話でしたね。
 口から摂取しても身体能力向上の効果はあるという事ですか」

響「ま、またしてもプロデューサーのが」

春香「……」


伊織「ちょっとあんた達! なにを勝手に――っ」

やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

伊織「がはぁ!?」メキメキメキ

 やよいの足元の床が爆ぜ伊織に膝が突き刺さった。

伊織「や、やよい! あんたこんなに強かったの!?」

やよい「うっうー! お仕置きです伊織ちゃん!
 ハヌマンタワイウェン!!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」

 やよいは両の拳を突き出した。
 風を切る音が室内に響く。

伊織「くぅ! 手のジュルス!」

 やよいの攻撃をいなし、薙ぎ払われた伊織の手が肩へと掛かり、やよいを床へと引きずり倒した。


やよい「マーディーットカローク!(ヤシの実を蹴る馬)」

 やよいは倒れながらも側転の要領で蹴りを放つ。
 足先が伊織の頬を捕らえた。

伊織「ちょ!? 顔は無しでしょ!?」

やよい「そんなルールこの闘いにはありませんっ!」

伊織「この……足のジュルス!」

 伊織の前蹴りを横に躱しながら伊織は跳躍し、片腕を振り上げた。

伊織「ちょ!?」

やよい「ゴンラーマスーンコワンクワン!(斧を振る雷神)」

 容赦ない肘が伊織を襲う。

伊織「が、ガチじゃない!!
 友達を殺す気!?」


やよい「友達が間違ってるときに本気で止めてあげるのが本当の友達なんですっ!」

伊織「死んじゃったらどうするのよ!?
 私、これでも色々と加減してるのよ!?」

やよい「…………プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

伊織「答えの代わりに膝が返ってきた!?」サッ

 伊織は素早く横に避けた。

伊織「でも私は身体能力を数倍の更に数倍強化してるのよ。
 数倍しか強化出来てないやよいが勝てる道理は無いわ。
 悪いけどこのままやってても勝つのは私よ!」

やよい「うぅー」

伊織「悪かったわね。やよいが強いのは認めるけどそれが現実よ」

やよい「……ルークマイ(隠し技)」

伊織「」ゾク

ぅゎょぅじょっょぃ

ちょっとウォーズマン的な倍化理論な気がしないでもない

ぅゎゃょぃっょぃ


 やよいは両足を揃え、両手を胸の前で合わせた。
 伊織はそれを見た瞬間に全身から汗が噴き出すのを感じた。

伊織「……OK分かったわ。やよい、手を組みましょう。
 たまにならやよいにもプロデューサーを貸して上げる。
 やよいなら特別に良いわよ?」

 やよいの右腕が大きく天をつく。

伊織「……月四回……いえ、週一回かしてあげる」

 さらにやよいは両足を前後に大きく開き、膝を深く曲げた。

伊織「分かった! 週二回!」

やよい「」ピク

伊織「しゅ、週三回?」

やよい「……うっうー! 伊織ちゃんは大切なお友達ですっ!
 仲良く半分こなら問題ありません!」

伊織「週三回でキッチリ別けて残りの一日は二人で使いましょ」

やよい「うっうー!」

>>527
その手段が精液とか悲しくないのかこいつらは


貴音「何やら珍妙な展開になりましたね」

 貴音は口元をハンカチで拭きながら進み出てきた。

伊織「っ!? 貴音……もしかしてあんた……!」

貴音「精液というのは珍味ですね」

響「うえ……喉に引っ掛かるぞぉ」

伊織「私のプロデューサーに何かってなことしてるのよ!」

 伊織とやよいに残りのアイドル+事務員が対峙した。
 全員が異様な闘気に包まれ、その後ろには干涸らびテクノブレイク寸前のプロデューサーが虫の息で痙攣していた。

伊織「いくら身体強化にアドバンテージがあると言っても……こ、これはマズイかしら」

やよい「ルークマイ(隠し技)」スッ

貴音「やる気ですか」


律子「あの技はもうなんども見た!
 技が発動する前に一気に叩きつぶ――」

やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

律子「」メキメキメキ

 やよいの膝を受けて律子は吹き飛んで行った。

亜美「りっちゃんまた瞬殺!?」

真「連続正拳!!」

やよい「ゴンラーマスーンコワンクワン!(斧を振る雷神)」

真「ぐっ!」

雪歩「真ちゃん!」

やよい「ハヌマンタワイウェン!!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」

雪歩「きゃぁ!?」

伊織「……うわぁ……手を組んで良かった」

 やよいが暴れる光景を見て伊織がしみじみと言った。


春香「それは良かったね!」ブン

伊織「!?」サッ

 伊織は殴りかかってきた春香の一撃を避ける。

千早「伊織の相手は……」

貴音「わたくしたちが……」

響「ちょっと本気で頭に来てるぞ」

美希「デコの面積を広げてやるの」

 5人に囲まれた伊織は薄く笑った。

伊織「良いわよ。まとめて掛かってきなさい」


----------------------------------------

※全員Sランクです


真「くっそー!」ガク

 やよいの周りに唯一立っていた真が膝をついた。
 辺りは死屍累々と言った様子である。

亜美「つ、強すぎっしょ→」

真美「真美たちも兄ちゃんのおかげで数倍強化されてるはずなのに……どうして?」

あずさ「……伊織ちゃん以外はみんな同じ分だけ強化されてるはずだから、やよいちゃんには普段の状態でもこのメンツだと勝てないってことなんでしょうね~」

真美「そ、そんな→」

小鳥「ぴ、ピヨ……腰に来たピヨ……」

律子「」シーン

雪歩「ルークマイ……これをどうにかしないことには……」

やよい「ルークマイはまだ使って無いですよぉ?」

雪歩「っ!? そんなぁ!」

やよい「だって使う前に倒れちゃうじゃないですかぁ。一撃で技に当たってるんじゃ使えませんよぉー」


亜美「か、勝てる気がしないって言うのはこう言うことなのですかな→」

真美「でも勝たないと兄ちゃんが……うぅ」

真「……もう一回だ……もう一回やよいに挑戦する!」

やよい「そうやって何回挑戦するつもりですかぁ?」

真「何回でもっ!」

 真の声に呼応して皆が立ち上がった。
 律子を以外の皆が。

やよい「……何度でも叩き伏せる技。
 それが私のルークマイですっ!」

真「ルークマイも正面からぶち破る!!」

やよい「っ!?」

 やよいは真の視線を正面から見つめ返すことが出来ず、足元へと視線を逸らした。

やよい「……ルークマイは避けれませんよ。
 最後まで立っていたら必ず必殺の技を見ることになりますっ」

真「来い! やよい!」


小鳥「暴れ回るだだっ子を大人が止める図ですね」

あずさ「あらあら~。なら、大人らしくびしっと決めようかしら~」

小鳥「私はもう腰が限界迎えてるんで見学させて下さい」^^

亜美「まこちんは来いと言ったけどね!」

真美「こっちからも行くYO!」

 やよいを挟み込むようにして亜美と真美が迫った。

亜美「マルテロ!」

真美「クィシャーダ!」

 亜美の中段を狙った蹴りと、真美の上段を狙った蹴りが同時に放たれる。

やよい「ウィルホッカッ!(倒れる増上天)」

 やよいは亜美へと間合いを詰め、中段の蹴りを激しく蹴り落とした。
 そのあまりの勢いに亜美は前転するように倒れる。

真美「亜美っ!」

※忘れそうですがSランクなのは戦闘力じゃなくてアイドルのランクです。あくまでアイドルで…あれアイドルって戦闘員って意味の日本語だっけ?


やよい「ハヌマンタワイウェン!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」

 亜美に間合いを詰めたと言うことは同時に真美との間合いを取ったと言うことだった。
 蹴りを完全に空振りした真美に二つの拳が同時に襲ってきた。

真美「きゃ!?」ドサ

やよい「……」

真「何をぼんやりと立ってるんだ! やよい!」

 真は飛び込むようにして間合いを詰めると、上段蹴りを放つ。

やよい「……チャンチックマイ(大木を裂く象)」

 やよいはその蹴りを正面から受け止めると、蹴り足に肘を落とした。

真「ぐぅ!」

 さらに受け止めた足を掴んだまま、体を回転させて真を投げ飛ばす。

やよい「使いますよっ! ルークマイ(隠し技)!」

真「こ、来いっ!」

 真は素早く立ち上がって言った。

>>548
アイドルならこれくらいできて当然
全盛期のま○んちゃんも誰も見てない隙にパンチングマシーンで最高得点をダブルスコアで出したりしてるんだよきっと


やよい「プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

 やよいの突進力を生かした膝と肘が真を襲う。

真「そう何度も当たらないよ!」

やよい「当たるんですよっ」

 真はやよいの攻撃を避けながら違和感を感じた。
 やよいの視線である。
 やよいはまるで真がそこへ避けることを知っていたかのようであった。

やよい「ハヌマンタワイウェン!(指輪をささげる猿王ハヌマン)」

真「これももう――っ!?」

 真は自分の避けた後の着地点をやよいが見ている事に気がついた。
 気がついたと同時にやよいは両肘を振り上げて跳躍する。

やよい「チャーンプラサーンンガー!(牙を突き合わせる象)」

真「くそぉ! 流水!」

 真は体の力を抜き、上からの激しい衝撃を最小限に抑える。


やよい「マーディーットカローク!(ヤシの実を蹴る馬)」

 膝が崩れた所に間髪入れずにやよいが側転のような蹴りを加える。
 真はこれを上体を反らせて避けた。
 さらに距離を取って体制を立て直そうとするが、自分の腕が何ものかによって掴まれていることに気がつく。
 もちろん。やよいによってだ。

やよい「一番好きな必殺技が最高のタイミングで当たるように必殺技で誘導する……それがルークマイですっ!」

真「しまっ――」

やよい「ゴンハヌマーンカームローンカー!!(鬼の都ランカを渡る猿王ハヌマン)」

 やよいの足元が爆ぜ、跳躍しつつの膝が真の顔面に向かって放たれた。

        ヾ  /    < 仮面ライダー555が >
       ,. -ヤ'''カー、   /Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Yヾ
 ー―ァ  /r⌒|:::|⌒ヾ
   _ノ オ{(  |0|  )} オオオォォォォ!!!!!
     __,ヽ,ヾ,_|V|,_ノ、/ ,r-,,=
    ,゛==ゝ_ViV_ノ~i/ 〃 `ー―-、

    /  /⌒`//´⌒c/^^^ ))))))))))
 ,,―イ  {ー''"~{ {~゛`ー`/'`'~/ー--―'
))   ,./ゝ_/∧ゝ_ノ  ノ

 ー''"  |ロ  ロ    |
       ,人,_,人,_,人,_,_,人,_,人,
      <>>555ゲットだ!! >

支援

アイドルマスターやったことないけどこんなゲームなん?

>>556
並の男より強いのとかいるよ


雪歩「駄目ですぅ!!」

 雪歩がやよいに体当たりをする。
 やよいは呆気なく吹き飛ばされた。

やよい「うぅー」

あずさ「なるほどね~。薬物で身体能力は上がっても打たれ強さはそうそう変わらないものね」

やよい「っ!?
 プンホーッ!(ヤリを突き刺す)」

 やよいは反射的に振り返ると膝をあずさに叩き込んだ。

あずさ「くぅっ!!」

やよい「あ……」

 完全に後ろを取っていたにもかかわらず、あずさは無防備に技を受けた。
 そしてそれを受けきり正面からあずさはやよいの頭に掌を置いた。
 手を置くだけであった。

やよい「う、うぅー」

 それに違和感を感じないやよいではない。
 そのやよいに後ろから力強い腕が回る。


律子「やよい!」

やよい「……」

 ただ力強いだけの抱擁である。

律子「もう止めなさい」

やよい「…………うぅ……ご、ごめんなさ~いっ!!」

 やよいは大粒の涙を流した。

真「えぇ!? お、終わった?
 ……お、終わったぞぉぉぉ!!」ガク

 真は仰向けに倒れて叫んだ。

律子「こんなの間違っていたのよ」

小鳥「そんな事は初めから分かってますけど。
 アイドル同士で殴り合おうって発想がどうして生まれたんでしょうか」


----------------------------------------


春香「……あっちは終わったみたいだけど」

伊織「……やよい」

春香「もう気付こうよ。
 これは遊びの範疇を超えてるし間違ったことだって」

響「越えちゃ行けないライン、考えろよ」

伊織「威勢だけは良いわね。手も足も出ないのに」

 伊織の言った通り、春香たちは満身創痍であったが伊織はまだ涼しげな表情を浮かべていた。

美希「でこちゃんのデコのジュルス強すぎなの。
 ……もう動けないの」グテー

貴音「私も刀を折られてしまいましたし……これ以上は足手纏いになりそうですね」

美希「デコで折るとは思わなかったの」

貴音「吃驚でした」

伊織「もう諦めたらどう?」


春香「そんなことを軽々しく言えるから、こんなことが出来るんだよ。伊織ちゃん。
 勝負に負けたらそのステージから逃げ出して……こんなことまでして……。
 そんな挑戦する気持ちを忘れた伊織が、本当に勝てると思ってるの?」

伊織「春香に説教なんてされたくないわよ。後ろからの不意打ちしか出来ないくせに。
 正面からやり合えばほら! ボロボロじゃない!」

 春香は5人の中でも重点的に痛めつけられており、服はボロボロでアザだらけであった。

千早「伊織。今あなたは私を本気で怒らせてるわ」

伊織「で?」

千早「大人しくッッッ!!! この技でも受けて反省しなさいッッッ!!!
 破ッッッッッッ!!!!!!」

伊織「ぐぅ! 凄い声ね」

 千早は荒々しく伊織へと間合いを詰めた。

伊織「手のジュルス」

 掌を突き出すような一撃が唸る。
 千早はそれをいなし、腕と肩に手を掛けた。


千早「猛虎硬把山ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

 室内のコップが砕け、窓ガラスが全て弾ける。

伊織「額のジュルス」

 伊織は千早に引き寄せられるのに逆らわず、勢いよく前に出て頭突きを放った。
 千早の額と伊織の額がぶつかり合い、鈍い音を立てる。

千早「くっ!」

 それでも千早はその場に留まった。

伊織「額のジュルスからの変化はこれが初めてかしら?」

 伊織は千早の胸(?)に額を押しつけると、足と腹筋の力を使い地面の方へと押した。
 お辞儀をするような要領で地面へと千早は叩き伏せられる。
 伊織は間髪入れずに側頭部に肘を落とした。

千早「うっ!?」ガク

響「千早! この……っ!
 トンファーキック!」

伊織「……響、先から言おうと思ってたんだけど」サッ

壁さんは千早じゃないだろいいかげんにしろ(憤怒)


響「トンファー抜き手!」

伊織「トンファー関係なくない!?」

 響は顔を掴まれると地面へと叩きつけられ、意識を奪われた。

響「きゅ~」ガク

貴音「伊織は強い……ですがトンファーの奥深さは理解していないようですね」

美希「ミキにも理解出来ないの」グテー

伊織「さて、あと戦えそうなのは春香だけよ」

美希「春香っ! 時間を稼ぐの! 時間を稼げれば真あたりは戦えそうなの。
 やよいも泣き止んだら、でこちゃんをしばき上げるのを手伝って貰うの」

春香「そんな必要ないよ。
 私が勝つから」

美希「だ、大丈夫なの?」

 春香は無言で親指を立てた。

閣下「いよいよもって死ぬがよい、そしてさようなら」


春香「負ける気がしない。
 それが今の私の気持ち!」

 春香は前に出て凄まじい突きを放った。
 顔に当たれば首の骨をも砕きそうな一撃である。

伊織「額のジュルス」

 その突きに合わせて伊織が前に出た。
 額と拳が直線上で結ばれる。

伊織「その拳! 貰ったわ!」

春香「甘いよ!」

 春香は拳から掌に変化させ、伊織の額を受け止めた。

伊織「甘いのはそっちよ!」

 伊織は更に押し込もうとす圧力を増した。
 春香の腕が力に負け、曲がる。
 その瞬間を利用するように春香の肘が一閃した。

伊織「いたぁ!?」

 肘が側頭部を跳ね飛ばした。
 視線が逸れたその瞬間に春香は伊織の腕を取りに行く。


伊織「手のジュルス!」

 お互いが片手で手首を極め合った。

貴音「なにやら春香と伊織の動きは似ていますね」

美希「もしかして春香もペンチャックシラットなの?」

P「いや、違うな」ズリズリ

美希「あ、ハニー!」

P「よう」

 Pは地面を芋虫のように這い、ここまでやって来たのだった。

P「この手錠堅すぎるな。
 俺も薬物の効果は出てるんだけど、引きちぎれる気がしないよ」

美希「ここでハニーを連れて帰ったらミキたちの勝ちじゃない?」

P「ここは春香を信じて勝負に決着が着くのを待とう。
 この状態で外に連れ出されたくも無いし」

美希「了解なの」


貴音「あなた様、先程は申し訳ございません。
 急を要していたからとはいえ、搾り取るような真似をしてしまって……随分と辛そうでしたが大丈夫ですか?」

P「俺としては謝って貰うようなことはされてないけどな。
 むしろ得したくらいだ。
 だけど、連続は止めてくれよ。心臓に負担が掛かりすぎて死ぬかと思った」

貴音「なんと。
 そのようなことがあるのですか?」

P「あぁ、テクノブレイク一歩手前だった」

貴音「次から気を付けますね」

美希「次はないの。消えるの」

貴音「あなた様……春香は勝てるでしょうか」

美希「無視なの?」

P「春香は勝つよ。前回のビルでの一件はあまりにもアレだったからトップアイドルだってことにいまいち納得出来なかったけど、やっぱりあの結果は正しかったんだと今では思う。
 少なくとも今現在の時点では」


 春香は伊織と互角の勝負を繰り広げていたが、明らかに疲労とダメージが蓄積していた。

伊織「意外にしぶといわね」

春香「……」

伊織「……認めてあげても良いわよ。もし、私と同等の身体強化が出来ていれば、私を倒せていたかも知れないって」

 伊織は重心を後ろに、低い構えをとった。

伊織「だけど、どんな手を使おうと結果が全てよ。あらゆる努力を惜しまない結果だもの。
 ……次で仕留める」

春香「……」

 春香は肩で息をしながら、構えをとった。
 ボクシングの構えに似ている。

伊織「いくわよ! 額のジュルス!」

 伊織が床を砕いて前に飛び出した。

美希「春香は律子…さんと同じボクシングなの?」

P「律子がボクシングを使えるかは分からないだろ」

美希「そうだったの。誰も律子…さんがボクシングをしているところを見たことがないの」


貴音「春香は絞め技や関節も使いますしボクシングではないでしょう」

P「そうだな。それに俺は春香の技に心当たりがある。
 あの近代的な構えと打撃は膝も肘もあり、それにあの容赦ない絞め技と来れば春香が使っているのは……コマンドサンボだ」

 春香は伊織の突進に膝を合わせにいった。

伊織「手のジュルス!」

 伊織は両手でそれを受け止め、身を沈めてすかさず膝を極めようとする。
 その伊織に春香は肘を落とした。

伊織「痛ぅ! このっ……いい加減やられなさいよ!」

春香「ヴァイ!」

 激しい打撃の応酬と関節の取り合いが始まる。
 近距離で立ち位置を激しく入れ替えての攻防は、そこに下手に介入する者がいれば一瞬でミンチになりそうな勢いであった。

貴音「やはり伊織の方が力で勝っていますか」

 同じような攻防に見えても春香に蓄積されるダメージは段違いで会った。


P「まあ、伊織は身体強化を数倍の更に数倍強化してるからな。当然だろ」

貴音「春香も同じ条件ならば勝っていたのでは無いでしょうか」

P「すでに負けたように話すなよww
 それに条件は春香の方が数倍の更に数倍悪いんだぞ」

貴音「それは一体どういう……」

P「この中に1人身体強化をしてない人がいまーすwwwwww
 そーれーはーwwwwwww」

美希「ミキじゃないのwww」

貴音「わたくしでもありませんね」

千早「……しましたけどなにか?」

響「千早……回復早いね。これも身体強化のおかげかぁ?」

伊織「…………」

 伊織は正面からぶつかってくる相手をまじまじと見た。
 烈火のような闘志を燃やした春香がそれを見つめ返す。

伊織「う、嘘よ!」


P「嘘じゃありませーんwwww」

美希「ハニーのテンションキモイのwwww」

貴音「皆あなた様から精液を搾り取ったものと思っていました」

伊織「あんたこれだけの力を持っときながら、何であの時は不意打ちだなんてマネを――!」

春香「ルールの範疇だよ。効率的な方法をとっただけ。
 みんな同じルールで闘ったじゃない」

伊織「でも――」

春香「アイドルに必要なのはっ!!」

伊織「うっ」

 伊織が春香の迫力に押されて甘い突きを放つ。

春香「夢を与えようという気持ち!」

 その甘い突きを春香は下に払い、払った手で肘を側頭部に叩き込んだ。


伊織「つぅ! このっ!! 足のジュルス!」

春香「健全なる肉体!」

 春香はそれを正面から受けたが、距離が詰まっていたために十分な威力では無かった。

伊織「かかったわね! 終わりよ! 額のジュルス!」

 近距離からの頭突きが春香を襲う。

春香「健全なる精神!」

 春香はそれを避けると同時に、伊織の頭を脇の下で固定しつつ首を締め上げた。

伊織「こんなものぉ!」

 伊織は引きはがそうと首に掛かった腕に手を伸ばす。

表春香でこの力!


裏春香になったらいったい・・・

>>595
ジャンプだけで10階越えのビルの屋上につくレベル


春香「勝負の結果を受け入れず逃げ出すような伊織ちゃんは初めから負けてるよ。
 いくら闘っても――勝てるわけないじゃない!」

 伊織の手が腕にかかろうとした刹那、春香は体を回転させると遠心力で一気に伊織を締め上げた。

P「何度も申し上げておりますが、アイドルは特別な訓練を受けています。
 マネをしないで下さい」

 一瞬にして意識を奪われた伊織が春香の足元に倒れた。

春香「……また一からみんなでやり直そう。
 私も少し頭を冷やすよ」


----------------------------------------


 数日後。
 P監禁事件の後、伊織とやよいは皆にこってりと絞られ、今は律子が従来比8割増の厳しさでプロデュースされていた。
 しかし、この処置で済んでしまったことに負い目を感じているのか、伊織とやよいは自らも積極的に仕事に打ちこみ、人一倍自分に厳しい環境に身を置いていた。

P「一時はどうなるかと思いましたね」

小鳥「仕事もドタキャンの連続でしたし、絶対に業界を干されると思いましたよ」

P「アイドルと一緒に謝って回って何とかなりましたけど。
 怪我をだってごり押ししたら割と簡単に許してくれましたね」

小鳥「まあ、あれだけ青あざ作ってれば……でも、それだけじゃないですよ。
 何故か一部経済界が765プロをバックアップしてくれたんですよね」

P「あれって何だったんでしょうか」

小鳥「さぁ?
 でもあのおかげで話がスムーズに進みましたし、ラッキーだと思っておきましょうよ」

社長「びゃあああああああああ!
 ひゃぁあああああああああ!
 んぎいいいいいいいいい!!」

P「……これで社長が正気を取り戻してくれれば765プロ完全復活なんですが……」

小鳥「どうしちゃったんでしょう。ふらりと帰って来たと思ったらずっとあの調子ですよ」


春香「おはようございます!」ガチャ

P「おう、春香。おはよう」

春香「クッキーを焼いてきたんで、皆さんどうぞ!」

P「うまそうだな」

社長「ぬうううううん!!」

 Pがクッキーに手を伸ばしかけた所に社長が割り込み、クッキーを全て口に放り込んだ。

春香「……」

社長「どや!」

春香「…………チッ」

社長「」ビクゥ

小鳥「と、ところで春香ちゃん」

春香「なんです?」


小鳥「春香ちゃんはコマンドサンボなんてどこで習ったの?」

春香「通信教育です」

小鳥「通信教育!?
 ……私のカラリパヤットゥと何が違うの? ……私もその通信教育やりたい……」

P「小鳥さんはカラリパヤットゥを続けるべきですよ。
 構えとか凄く格好いいじゃ無いですか!」

小鳥「そ、そうですかね?」

P「そうですよ。ちょっとやってみて下さい!」

小鳥「ピヨ!」

P「……良いですねぇ」

春香「小鳥さん……パンツ見えてますけど。
 プロデューサーさん、私の構えを見せて上げましょうか?」

P「……いや、結構です」

小鳥「ところで春香ちゃん。まだ聞いてなかったんだけど、トップアイドルになった感想は?」


春香「やってることは変わらないんですけど、自信がつきました!
 みんなに追い抜かれないようにこれからも頑張ります!」

P「テンプレ通りの答えだな」

春香「そ、そんなことありませんよ!」

小鳥「普通ですね」

春香「……まあ、それは今後の抱負として、とりあえずプロデューサーさんにお礼がしたいってのはありますね。
 ここまで来られたのはプロデューサーさんのおかげですし!」

P「旅館でもそんなこと言ってたな。気を遣わなくて良いのに」


春香「いえいえ、私の気が収まりませんから。是非とも貰って下さい。
 まあ、迷惑だったら断ってくれても結構ですけど」

P「迷惑になるような物なのか?」

春香「場合によっては。
 ……一応、業界最高レベルのお礼のはずなんですけど。
 今は時期が悪いのでまた落ち着いたときの話ですね。これは」

P「なんか凄そうだな。そのお礼って何なんだ?」

 春香はいたずらな笑みを浮かべた。

春香「秘密ですよ。秘密」


fin.


社長ワロタ春香さんこわい千早壁小鳥さん可愛い

乙!

そして本性を現すコテの俺

ここまで読んでくれてありがとう
ドーPング濃厚精子がやりたかっただけなのになんか長くなっちゃいました

ということで
以前書いた↓もよろしく!
キョン「長門の肛門を徹底的に犯す」
岡部「クリスティーナを無視ししつつも愛情をそそぐ」.
天王寺「何やってんだ?岡部」鈴羽「あぅ…ぁ…ぁぁ…」
鈴羽「またあたしのお尻なの…?」
岡部「精力増強剤?」ダル「うん」
P「やっぱ響はイジメがいがあるな」響「うぅ……やめて欲しいぞ」

クソコテ晒さなきゃ最後まで綺麗に終われたのに

>>616
悔しいか?悔しいだろ?
お前達の大嫌いなクソコテ様のSSを読み切ってしまって

悔しいついでに次回作のリクエストもしても良いのよ?

てめ-か
小鳥さんがだらだらしてる奴読みたい

このレスから10レス以内の多数決で次ぎに書くSSのジャンル決めたいです
アイマススレだからアイマス有利だろうけど常識のあるおまえらなら空気読めるよな?
落ちたらその時点での集計が結果

小鳥さんだらだら

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