P「別に響とイチャイチャなんてしてないだろ」(82)

P「なあ、響」

響「そうだぞ。自分たち、アイドルとプロデューサーなのに。そんなわけないじゃん」

P「まったくだ。どこをどう見たらイチャイチャしてるように見えるんだ?」

響「仕事上の付き合いだけだよね」

P「そうそう」

律子「………………」

響「どっちかっていうと、仲悪い方だよ。ね、プロデューサー」

P「ああ。趣味とか全然あわないしな」

響「この間プロデューサーと買い物に行ったんだけど、あの時プロデューサーが選んだ服ときたら酷かったさー」

P「それ言うなよ……あの時は、響が選べって言ったから選んだのに」

律子「一緒に買い物に行ったの?」

響「うん。日曜日に二人で行ったんだ」

律子「……それって、仲いいんじゃ……」

P「いや、全然。仕事の服選びだし」

響「だよね」

律子「…………」

P「それを言うなら響も酷いだろ。あんな見えてる地雷、普通踏むか?」

響「うっ……あ、あれは広告に騙されたの!」

律子「……何の話ですか?」

P「ああ、映画だよ映画。買い物の後、映画に行ったんだよ、遠出したついでに」

律子「へぇ」

P「ただなぁ……まさか響が、あんな前評判の悪い映画を観たいと言い出すとは」

響「でもCMの映像は良かったじゃん!」

P「それにしたって、俳優の演技が酷いとか声が棒読みだとか、結構騒がれたのに……」

律子「……二人とも、やっぱり仲良くないですか? 二人で映画って……」

P「服選びのついでだよ。暇だったし」

響「うん。せっかくの休みを家で過ごすのも退屈だしなー」

律子「…………」

P「まあそんなわけで、とにかく俺と響の趣味は合わないわけだ」

響「プロデューサーがおかしいんだよ。なんなの、あの服」

P「いや、響がおかしいんだろ。なんだよ、あの映画」

響「なにさー」

P「なんだよー」

律子「……今まさに、イチャイチャしてません?」

P「してないって。しつこいな、律子も」

響「うん、あの時食べたハンバーグみたいにしつこいぞ」

P「あー、あれな! まあ俺はあれくらいでもいいんだけどな」

響「そうなの? 自分はもうちょっと油控えめの方が良かったかなー」

律子「……今度は何の話です?」

P「映画を見に行ったってさっき話しただろ。その後、メシ食いに行ったんだ」

響「ローカルな定食屋だったんだけど、ハンバーグ定食のハンバーグがしつこくてさー」

律子「それも二人で?」

P「ああ。まあ二人でってのはどうでもよくて、問題は味なんだよ。響は意外と薄味が好きだからな」

響「うん。だから、実はあんまりチャンプルとかも食べないんだ」

律子「……響、そんなのプロフィールとかに書いてた?」

響「ううん、書いてないぞ。そういえば、プロデューサーにしか言ってないかも」

P「まあ、別にあえて周りに言うことでもないしな」

響「そうだよね」

律子「………………」

律子「一応お聞きしますけど、夕食の後はさすがに解散したんですよね?」

P「え。なんで?」

律子「……なんでって……じゃあ、まだ二人でいたんですか?」

P「いた、ってほどの話でもないけど、夜も遅かったから響をマンションまで送っていった。それが普通じゃないか?」

律子「タクシーで帰らせるとか……」

P「それでも良かったんだけど、響がゴネたからな」

響「しょうがないじゃん。なんか誰かと歩きたい気分だったの!」

P「これだから響は……そういうわけで無理やり付き合わされてな。ほら、俺たち仲悪いだろ」

律子「はぁ。そうですね」

響「それで、いくら仲が悪いって言っても、ウチまで送ってくれた人をそのまま返すのは嫌でしょ」

律子「そうね」

響「だからしぶしぶプロデューサーをウチにあげて、お茶まで出してあげたんだ。なのにプロデューサー、文句言うしさー」

P「俺は緑茶よりウーロン茶が好きなんだよ! なんで2Lペットボトルのウーロン茶があるのに、わざわざ急須で緑茶を……」

響「でもおいしいって言ってたじゃん!」

P「……そりゃあ、うまかったけど。温かい緑茶をゆっくり飲むには、動物がいっぱいいて落ち着かなかったんだよ」

響「あっ、そうだったのか?」

P「今まで誰も指摘しなかったのか。友達とか」

響「……言っとくけど自分の部屋にあがった人って、プロデューサーだけだからな」

P「ぷっ。友達いないのか?」

響「いーまーすー」

P「うそだぁー」

律子「………………」

律子「…………で?」

P「?」

律子「まだ何かあるんですよね、この流れだと」

P「いや……無いけど。てかなんだよ、流れって」

響「律子、今日どうしたんだ? 疲れてるの?」

P「今日は早めに帰って休んだ方がいいんじゃないか」

律子「………………」

P「まあ……後はいつも通りで、さほど珍しいことも無かったな」

響「うん。一緒にお風呂入ったくらい?」

P「あ、それがあったな。よく覚えてるな」

響「プロデューサーの記憶力が悪すぎるんじゃないの?」

P「こいつめ」

律子「はぁ………………は?」

律子「え……お風呂って、えっ?」

P「あ、風呂の話? いつもは二人別々に入るんだけど、その日は9時から観たいテレビがあったからな」

響「それまでにお風呂済ませちゃおうって、二人で一緒に入ったんだ」

P「そういえば、一緒に入るのって何気に初めてだったよな」

響「うん。プロデューサー、意外と筋肉ついててびっくりしたぞ。思わずぺちぺち叩いちゃったしな」

P「いやいや、響の低身長+巨乳という属性には負けるよ。まさかあんなにデカいとは」

響「あー、セクハラ! セクハラプロデューサー!」

P「な、なんで俺だけ!?」

響「プロデューサーはサイテーだぞ! 律子もそう思わない!?」

律子「そうね」

P「で、テレビを観てから……」

響「後はいつも通り、歯を磨いて寝ただけだぞ」

P「あ……歯を磨くといえば、確か俺の歯ブラシがそろそろ限界なんだよな」

響「それなら、ちゃんとこの間新しいの買っておいたぞ?」

P「お、おお!? マジか……響にしては気が利くな」

響「ふふん。どこかのプロデューサーがだらしないからね」

律子「あの……」

P「ん?」

律子「至極普通の疑問だと思うんですけど……どうして、響の家にプロデューサーの歯ブラシが?」

P「ああ、それか。何かにつけて響に呼び出されるから、いつの間にか泊まることも増えてきてな」

響「もういっそ歯ブラシとかコップとか置いとけば? って自分が言ったんだ」

P「逆に、俺の家も響の私物だらけだし、別に珍しいことでもないだろ?」

律子「そーですね」

律子「……さすがに、寝る時は別の布団ですよね?」

響「ううん、同じだよ?」

律子「……やっぱりイチャイチャしてるわよね?」

響「してない!」

律子「なら、どうして同じ布団に……」

P「最初は別の布団で寝てたんだけどな。響がいつも潜り込んでくるから、そのうち一緒の布団で寝るようになった」

響「うう……だって自分、何かに抱きついてないと寝られないんだ……」

P「イヌ美でいいだろ、モフモフしてるし」

響「今まではそうしてたんだけど……プロデューサーが泊まるようになってから、一緒に寝てくれなくなったんさ」

P「イヌ美が俺を彼氏だと勘違いして気を使った、とか……」

響「えぇ~? よりにもよってプロデューサーを彼氏と勘違いするかなぁ」

P「だよな。こんな仲悪いのにありえないよな」

律子「………………」

律子「……念のためだけど、一つ聞かせて」

響「なに?」

律子「あなた達……まさか、キスとかしてないでしょうね?」

響「す、するわけないでしょ!」

P「頭腐ってんのか律子」

律子「ですよね……良かった」

P「ガチのキスなんか一回もしてないよな?」

響「うん。練習とか、その場のノリとかでやったことは何回もあるけど」

P「あんなの全部ノーカンだ。子供相手とか、人工呼吸とか、そういうのと同じだろ」

響「だよねー」

律子「…………」

P「やっぱ本気の気持ちでキスできないってことは、俺達は相性が悪いんだろうな」

響「遊びでならいくらでもできるのに……プロデューサー、んー」

P「はいはい……」チュッ

響「……あれっ、一回だけ? いつも何十回もするのにさ」

P「ほら、律子が見てるから。人前だとちょっと恥ずかしいし」

響「あ……そっ、そうだな!」

律子「はぁ…………お気になさらず」

P「……おい律子、大丈夫か? 何かを諦めたような顔になってるけど」

響「やっぱり調子悪いの? 病院とか行った方がいいんじゃないか?」

律子「………………」

律子「……で、私が最初にした質問は『二人はイチャイチャしすぎじゃないですか?』だったんですが」

P「これだけ話せば、よく分かっただろ」

律子「よく分かりました。式には呼んでください」

P「……いやいや。これだけ仲悪いからって、そんな理由で殺すわけないだろ」

響「ホントだぞ! 葬式に呼べなんて縁起でもないさ!」

律子「け・っ・こ・ん・し・き、です! なんでお葬式になるんですか!」

響「結婚式って……誰の? ピヨちゃん?」

P「それはたぶん、もうちょっと先の話だな……」

律子「だから! プロデューサーと響はそのうち結婚するんでしょう!?」

響「えっ」

律子「どう考えてもカップルそのものです! もうさっさと結婚してください!」

P「……だってさ。響、律子もこう言ってるし、結婚するか?」

響「うん」

律子「ほ……ほらぁ、あっさり成立するじゃないですか!」

響「そ、そうだけど……プロデューサーはこう見えて優しいから、誰が言っても結婚してくれると思うぞ」

律子「じゃあプロデューサー! 私と結婚してください!」

P「ごめん無理」

律子「ごふっ……ひ、響……!」

響「あ、あれ? おかしいぞ……自分がワガママ行った時も、たいていは聞いてくれるのに」

P「ワガママにも限度があるだろ……」

P「響、あっさり承諾してるけど本当にいいのか? アイドル辞めなきゃいけないかもしれないけど」

律子「……それにプロデューサーは、あなたが言うところの『仲が悪い』人なんでしょう?」

響「でも、一番よく話してるし……趣味は違うけど、逆に言うとお互いの趣味をよく理解してるし」

P「そうだな。好きな食べ物から下着の色までお互い知ってるからな……」

響「だから結婚するならそういう人がいいと思うけど……きっとそんな人、一生に何度も会えないと思うぞ」

P「…………」

響「……ちなみに、プロデューサーは?」

P「俺も概ね同じだな。そうでなきゃノリもあったとはいえ、担当アイドルにプロポーズしたりしない」

響「だよね……プロデューサー、んー」

P「……しょうがないヤツ」チュッ


律子「………………」

響「でもプロデューサー。プロデューサーって、自分のこと好きなのか?」

P「……響と結婚したいとは思ってるんだけど……正直、分からない。すまん」

響「そっか……自分もそうなんだ。こういう人と一緒にいられたらいいとは思うんだけど」

P「それ分かるな。傍にいるのが当たり前すぎていまいちピンとこない。後は喜びを共有したいとか」

響「そうそう、そんな感じ! うーん、どうなんだろう。自分ってプロデューサーのこと、好きなのかな……」

P「キスもしたし一緒に風呂にも入ったし、しょっちゅう抱き合って寝てるけど、よくわからないよな……」

響「律子はどう思う?」

P「俺たち、このまま結婚してもいいと思うか?」

律子「(どうでも)いいんじゃないですか」

翌日―――


P「……いや、だからイチャイチャなんてしてないって」

千早「そうでしょうか……我那覇さんは、最近のプロデューサーとの関係についてどう思っているの?」

響「別に……いつも通りだと思うけど」

千早「事務所で突拍子もなくキスをしたり抱き合ったりするのがいつも通りなの?」

響「うん、毎日家だとそんな感じだぞ。ただ……」

千早「ただ?」

響「最近はなんでか分からないけど、事務所にいる時でもしたくてしょうがない時があるんだ。それで、つい……」

千早「いえ、もういいわ。仲が良いのはよく分かったから」

P「……俺たち、仲良いか?」

響「そんなことないと思うけど。むしろ仲悪いもん、ねっ、プロデューサー」

P「なー、響」

千早「…………爆発すればいいのに」


終わり。

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