のび太「同窓会?」 (44)

武「ああ、せっかく久し振りに会えたんだからな」

数年ぶりに帰って来たこの街でジャイアンに出会った。
もう社会人になって何年経っただろうか。

のび太「しかし武くんも変わらないね」

武「のび太こそ冴えねえ顔は相変わらずだな!」

のび太「同窓会……だっけ?二人で?」

武「スネ夫とは先月も呑んだんだけどな。なんだ二人じゃ不満か?」

一軒くらいならいいか。
僕はそんな気持ちでその誘いに乗った。



こんな感じでゆっくりやるよー

小さな居酒屋。
あの頃はこんな店尻もしなかった。お酒なんて縁のないものだと思ってた。

のび太「今度はみんなで集まれるといいね」

武「そんときゃ俺の嫁さんも連れてきてやるよ!」

ドラえもんは無理だけど…
ジャイアンにスネ夫、出来杉なんかも一緒に集まりたい。
きっと集まれる、そんな気がする。


……もちろんしずかちゃんも。

のび太「新婚旅行の写真でしか見たことないから楽しみだなあ」

武「あの時はジャイ子が店番してくれてよ。全く泣かせるぜ!」

確かハンガリーだった気がする。
昔の冒険からしたら小さなものかもしれないけど幸せそうだったのを覚えている。

のび太「女優さんみたいに美人さんだったね」

武「嫁さんはやらんぞ?」

のび太「僕が独り身だからってそりゃないや」

しずかちゃんへの想いを断ち切れず未だ独り身。
ちょっとの希望といえばしずかちゃんも独り身なことかな?
立派なキャリアウーマンさ。

武「のび太も早く結婚しろよ」

のび太「分かってるくせに聞かないでよ」

ニヤニヤが隠し切れてないジャイアンは昔の面影を感じさせる。
でもあの頃と違うのは優しさが含まれていることだ。

武「まーだしずかちゃんに首ったけだもんな。一途なやつだぜ」

のび太「昔だったらジャイ子ちゃんと結婚させようとしてたもんね」

思わず苦笑する。
ジャイ子ちゃんは漫画家になれたんだったかな。
あまり漫画は読まなくなっちゃったから分からないや。

ちなみに書き溜めもないしマジキチになる予定もないです

のび太「あれ?ジャイアン、グラスが空いてるよ」

武「おお、すまねえな。のび太ももっと呑めよ」

のび太「武くんみたいに焼酎を呑んでたら吐いちゃうよ」

焼酎。ジャイアンらしいお酒だ。
とはいえザル過ぎるんだよね。

武「嫁さんについでもらえる酒は格別だぜ?のび太も早く追いついてこいよ」

のび太「はは、同棲中ではあるんだけどね」

武「しずかちゃんというものがありながら!ことによってはギッタンギッタンに!」

のび太「ごめんごめん!冗談だよ!」

同棲……といっても猫を飼い始めたのだ。
捨て猫を見ていられなくて。

のび太「まああの後一人でいる時間が増えたからね。ネコと暮らしてるのさ」

武「ああ……すまん」

のび太「クビになっちゃったのは武のせいじゃないさ」

都会の会社をクビになってはや一年。
しずかちゃんを追って行った都会だけど、結局天と地ほどの差になっちゃったな。

武「電話で聞いてたのに不用意な発言だったな」

のび太「もうちょっと明るい話にしよう!湿っぽいのは嫌だよ」

武「だな」

武「その猫ってのはドラえもん似なのか?」

ドラえもん似の猫って考えてみると割と酷いな。
ドラえもんには悪いけど耳もなくて、青い色なんてロボットじゃなきゃ……ね。
テレビにでも取り上げられてしまいそうだ。

のび太「うーん、どちらかというとミーちゃん似かな」

武「ドラえもんが好きだった?」

のび太「そうそう!毛並みも綺麗でね。まるで娘ができた気分さ」

家にいると僕から離れないあたり愛らしく感じてしまう。
本当の子供だったら親離れして行ってしまうのだろうけど。

武「子供は良いもんだぜ?」

のび太「まるで子供がいるみたいな反応じゃないか」

武「ははっ!まあ今日呑みに誘ったのもそのことでな」

武「何ヶ月か前にうちにも可愛い我が子ができたぜ!」

のび太「なにそれ!?聞いてないよ!」

武「まあ、のび太に気を使わせたくなくてな。でもこっちに戻ってきたんだから伝えとこうと思って」

奥さんに似てくれているのを願うばかりだ。
子供、そんな年齢に僕らもなってるのか。
もしかしたら遅いくらいかもしれない。

のび太「将来が楽しみだね」

武「ああ、嫁さん似の美人さんだぞ!」

のび太「それは良かった!」

武「のび太!それはどういう意味だ!」

声を荒げるジャイアンをなだめつつ、その子に思いを馳せる。
元気さはジャイアンに似てもいいかもしれない。
美人で元気な女の子。僕らのクラスにはいなかったなあ。

武「あいつには音楽とか習わせようと思ってな」

のび太「はは……音楽ね。僕も時間あるし初めてみようかな」

ジャイアンの歌、しずかちゃんのヴァイオリン…
僕は音楽とはまるで縁がなかった気もする。

武「のび太のセンスじゃなぁ」

のび太「それを言われると耳が痛いね」

武「お、もう瓶が空になっちまった!」

のび太「じゃあそろそろお開きかな?」

武「なに言ってんだ!次の店行くぞ!」

うげげ!洋服掴まれて首が締まってるよ!
服が伸びる!

武「あっちでしずかちゃんとの進展があったかどうかも聞かないといけないしな!」

のび太「分かったよ!行くから離して!」

のび太「ああもう、ジャイアンは変わらないなあ!」

ジャイアン「俺はジャイアン!ガキ大将!ってな!」



「よし!次の店行くぞ!」
「うん!こうなったら最後まで付き合うぞー!」



僕らの声はあの頃と変わらない夜空に消えて行った。

おーしまい

終わりです。お疲れ様でした!
切ないような懐かしいような優しい話が書きたかった!

トイレ行ってくる!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom