御坂「私は、アイテムなのよ」 (20)

注意事項等・

・御坂さんがアイテムに入っていたらというストーリー。

・グロ表現有り

・CP等は今のところ未定




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暗い路地裏の闇を吹き飛ばすほどの閃光が迸る。それに伴い、男達の呻き声と悲鳴が響き渡った。
路地の奥の壁は貫かれ、転がっている死体は全てどこかの部位を吹き飛ばされている。

発火能力でもなく、風力使いでもなく、分類されるとすれば電撃使い。エレクトロマスター。
粒子にも波形にもならない、曖昧なまま固定された電子を強制的に操る力。
放たれた速度のまま対象を貫く特殊な電子線を高速で叩きつけることで、強引に引き裂き、焼き尽くす粒機波形高速砲。

学園都市で七人しか居ないと言われる、超能力者。序列は第四位。『原子崩し』。
名前は麦野沈利。非公式治安維持部隊『アイテム』のリーダーである。

麦野「これで終わりー?」

絹旗「後は二十七研究所に超立て籠もってる馬鹿達ですが、あそこはまあ」

麦野「滝壺とフレンダ、それに御坂に任せとけば問題ないか」

絹旗「そうですね。というか、超汗かきました……。早くお風呂に入りたいです」

話している二人に、黒光りする拳銃が向けられた。死体の山に隠れていた生き残りだった。
麦野と絹旗が反応する前に、引き金は引かれる。銃弾は麦野を掠め、絹旗へと飛ぶ。
しかしグシャリ、と銃弾は押しつぶされたかのような形に変形し、絹旗の体に届くこと無く地面に転がった。


絹旗「私の窒素装甲はそんなチンケなオモチャじゃ、超貫けませんので」

麦野「ったく、詰めが甘いってあんまりフレンダや御坂に言えねえな。私も相当、甘いか」


再び引き金を引こうとする男に、粒機波形高速砲をブチ込んだ。
綺麗さっぱり吹き飛んだ男に、特に思い入れもないのか溜息を吐きながら掠めた部分の応急処置を行うのだった。

…………*

「はあ、どこまで逃げんのよ。こういうのは麦野に任せたほうが良かったんじゃない?」


薄いブラウン色のプリーツスカートのポケットから、メダルゲームのコインを一枚取り出した。
ピンッ、と親指でコインを弾き、ローレンツ力で音速の三倍程度のスピードに加速させ、彼女の能力の代名詞である『超電磁砲』を射出する。
マッハ3の速さで移動するコインはソニックブームという余波を発生させながら、目標の分厚い壁を容易に貫く。
圧倒的な破壊力を目の当たりにした金髪の少女は、清々しい顔をしている茶髪の少女へ視線を向けた。


「さ、流石ってワケよ……麦野に負けず劣らずのあの超電磁砲……」

「あんまり褒めないで頂戴。さっ、それよりもフレンダ、滝壺さん、とっとと終わらせちゃいましょう」

フレンダ「あー、サバ缶食べたい……」

滝壺「……麦野と絹旗は終わったみたいだね」

「あれ、案外早いな」

滝壺「!……御坂、前!」


滝壺が指をさした先に、標的の男がナイフを持って突然目の前に現れた。学園都市でも希少な能力カテゴリである『空間移動系能力者』だ。
しかし、御坂は男の攻撃を容易に躱し、プリーツスカートの中にあるアイボリー色のホルダーから麻酔銃を取り出し、首元に打ち込む。
卓越した戦闘センス。これが学園都市、第三位の超電磁砲と呼ばれている御坂美琴なのである。


御坂「はい、これで終わり。私は下部組織に命令してくるから、先に帰ってて」

フレンダ「了解ー」

滝壺「分かったよ」


二人の姿が研究所から消え、御坂は時折呻き声をあげるテレポーターの男を一瞥した。
この男の末路はどうなるのだろうか。と、御坂は考えてしまう。
研究所に連れて行かれ、モルモット同然の扱いを受けて『科学の発展』の礎となる事は、明白なのだが。
どう考えようが、結局は自己完結してしまう。

気持ちを落ち着かせるために持ち歩いているミント味のガムを噛みながら、下部組織の人間達の到着を待った。
しかし数十分経ってもその姿は見えず、少しイライラしながら麦野沈利にコールする。


麦野『ちっ、来てねえだと? 御坂、取り敢えずターゲット地上に連れてけ。私が直接取りに行く』

御坂「了解」

何らかの不手際だろうか。御坂は起きる様子のない男を担いで、階段を登り地上に出た。
研究所は蟻の巣のように地下に広がっており、地上は割りと大きな商店街になっていたりする。
こそこそとした様子で御坂は裏路地の更に奥深くへ男を担いでいき、そこで男を降ろす。
麦野沈利にGPSの位置情報を送信し、そこで待機する。

そんなときだった。
スキルアウトの男達がぞろぞろと蟻のようにどこからか現れ、下卑た笑みを浮かべながら御坂へと詰め寄っていく。


「おっと、お嬢ちゃんこんなところで何してるワケ?」

「もしかして誘ってる? でも、見た感じ中学生だろ? マセたガキだぜ」

スッ、と。御坂は右手を振り下ろした。怪訝そうな表情を浮かべるスキルアウト達は次の一秒後には焼かれていた。
手加減したつもりではあったが、何人かは気絶しているようだ。
冷めた目で男達を見下ろす御坂を、まだ意識がある男の一人は悔しそうに歯軋りしながら御坂を見上げて言った。


「こ、高位能力者ッ……!」

御坂「はあ、私疲れてんの。手間掛けさせないでよね」

「く、クソッ。お前みたいな奴が一番っ!」


立ち上がり、殴りかかろうとする男に向けて御坂が電撃で迎撃しようとしたその時だった。
「待てよ!」とつんつん頭の少年が男か御坂に向けて叫んだ。


「だせえよ! こんな女の子相手に殴りかかろうとするなんて!」

御坂「……? アンタ誰?」

「お前、絡まれてたんだろ? なんかされたか?」

御坂「されてないけど……ていうかさ、危ないから離れといた方がいいと思うけど」

そう御坂が言い終わる前に、空気を裂くような音と共に裏路地の闇を掻き消す光の塊が二つ。彼の目の前を通り過ぎていった。
地響きが背後から鳴り、彼が振り向く前にスキルアウトの男の悲鳴がけたたましく裏路地に鳴り響いた。
男の右腕が無くなっている。綺麗さっぱり吹き飛ばされて、右腕があった場所からは滝のように血液が吹き出していた。


見たこともない光景だった。血は裏路地の壁にまで飛び、血溜まりの中で男が悲鳴をあげながらのたうち回っている。
呆然としている彼は再び、路地裏が照らされていることに気付く。
慌てて振り向くと、茶髪の女が面倒くさそうな表情を浮かべながら、緑色の光の玉を手のひらに浮かべていた。


ブンッ、と空気が引き裂かれ、その光は彼を目掛けて飛んできた。回避方法をしくじれば、ここで死ぬ。
ならば、と彼は右手を光線へと近づけ、そのまま体を押し倒して光線へ右手を突っ込んだ。
ガラスが割れたような音が鳴り響き、光線は辺り一面に霧散する。


麦野「ん?」

御坂「レーザーが消えた?」

「………はは。そうだよ、俺にはこれがあるじゃねえか」


彼は右手を握りしめ、怯えきっていた先ほどの目つきとは打って変わって自身のある目つきへと変化した。
麦野はハァ、と溜息をついてポケットから三角形状の模様が幾つにも配置された一枚のカードを取り出して、それにレーザー……粒機波形高速砲を打ち付けた。
弾幕を張れないという弱点をカバーするための、一つの策。


麦野「拡散支援半導体。こいつは防げるかなあ?」


拡散支援半導体……シリコンバーンに粒機波形高速砲が打ち込まれると、粒機波形高速砲は幾つにも拡散し弾幕を張った。
彼は再び右手をかざし対処しようと体勢を入れ替えるが、弾幕を消し切ることが出来ず、拡散した粒機波形高速砲が直撃した。
拡散しているからか多少威力は落ちているが、彼の服はところどころ焼け、そこから露出した肌には火傷があった。
それなりに威力はあったらしく、時折呻き声をあげるが立ち上がることは出来ないようだ。

麦野「なんだ? つまんねえな。そこそこ使える能力なら下部組織で使ってやろうと思ったけど……。やっぱ死ね」

御坂「待って。殺さなくてもいいじゃない。それにクライアント様も待ち侘びてるわよ」

麦野「あん? だからってコイツのここでの事を公的機関にベラベラ喋られるとまた『電話の女』から嫌味小言を言われ続けるだろうが」

麦野「ここで消しとくのが最適解だと私は思うけど」

御坂「ったくなんでアンタはそんなに血の気が多いの?」

麦野「……はいはいわかりましたよ。………こいつらの処理は下部組織に任して、とっととコイツ運ぶか」

御坂「そうね。車は用意してある?」

麦野「そこに白塗りのワンボックスカーを止めてあるから、そこへ積んで」


二人の会話をかろうじて聞いていた彼は、自分の命が助かったことに安堵する反面、全く歯が立たなかった事に、歯噛みすることしか出来なかった。
白塗りのワンボックスカーと思われる車のエンジン音が遠ざかっていくと同時に、力尽きてそこで彼の意識は途絶えた。



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月06日 (火) 18:43:29   ID: 1fKz3D67

なんだこりゃ?
たったの10スレ書いただけで投げ出すとか意味不明

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