ちなつ「結衣先輩、王様ゲームしましょうよ!」(115)

結衣「えっ?」

ちなつ「あ、その、嫌だったらいいんですけど……」

結衣「ううん、ちなつちゃんからこういう事をしようって、なんか新鮮だったから」

ちなつ「ふふ、いつもは京子先輩が遊びの内容考えてましたもんね」

結衣「そうそう、だからちょっとビックリしただけだよ」

ちなつ「そうですか、良かったぁ……」ゴソゴソ

結衣「あかりと京子の他にも生徒会の人が来たら盛り上がりそうだね、ふふ」

ちなつ「結衣先輩、どうぞお先に割り箸引いてくださいっ!」ニコッ

結衣「ふ、二人きりで王様ゲームするの!?」

ちなつ「えっ?」

すみません、コンビニ行ってました何でもするんで許して下さい

ちなつ「あの、私なにか変なこと言いましたか……?」

結衣「えっと、べつに変なことを言ったとは思わないけど」

ちなつ「はぁ、良かったてっきり嫌われちゃったのかと……」グスッ

結衣「嫌いになるなんてとんでもないよ、らしくないよちなつちゃん」

ちなつ「……そうですよね、もっと押せ押せで行きますよ!」ニコッ

結衣「……ふふ、いつものちなつちゃんだね、良かった」

ちなつ「さぁやりましょう、何でもありの王様ゲームですよっ!」

結衣「あはは……ほんとにやるんだ」

ちなつ「さぁさぁ引きましたか、王様だーれだ!」

ちなつ「……きゃっ、いきなり私ですね♪」

ちなつ「どんなことにしようかな、えーっと、うふふ」ニコニコ

結衣「……楽しそうだなぁ、ふふ」

結衣「まぁちなつちゃんと交友を深めると思えば、悪いことでもないよね」

結衣「そんなハードなことをするってこともないだろうし――」

ちなつ「王様と一番がキスしちゃいます……」モジモジ

結衣「……」

結衣「あの、熱とか引いていないよね……」ピトッ

ちなつ「あわわわわっ、おでこくっ付けてもらえるなんて……」

結衣「キスって、あのキスだよね?」

ちなつ「……は、はい、たぶんそのキスですっ」カァー

結衣「分かった、……王様ゲームの命令は絶対だもんね」

ちなつ「……ごくっ」

結衣「それじゃ今から釣りに行こうか」ニコッ

ちなつ「えっ?」

ちなつ「あの結衣先輩、どうしたんです?」

結衣「キスは天ぷらにすると美味しいよね、よく実家の食卓に出たんだ」

結衣「でも自信ないな、そもそもキスってこの時期釣れるんだろうか……?」

ちなつ「……もう結衣先輩、そっちのキスじゃないですよ!?」

結衣「……ほ、ほんとにするの?」

ちなつ「……お、王様ゲームは絶対ですから」

結衣「……で、でも、私そんなことしたことないし」

ちなつ「私だってキスなんてしたことないですよっ!!(大嘘)」

結衣「そうだよね、キスなんてお互いしたこと……」

結衣「……」ジトッ

ちなつ「はっ、はぅ、そんな見つめないでください……」

結衣「ちなつちゃん、去年の夏あかりとお家の玄関先でしてなかったっけ?」

ちなつ「……」グスッ

ちなつ「実は転んだときあかりちゃんに覆いかぶさってしまって……」

ちなつ「故意では無かったんです、……お互い納得いかないままで」

結衣「……ちなつちゃん」

ちなつ(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……)

結衣「そっか、そうだよね……」ギュッ

ちなつ「あっ、……はぁ、結衣先輩」

結衣「ゴメンね疑ったりなんかして、……ただ分かってほしいんだ」

ちなつ「……?」

結衣「……私やっぱりそういうことするのまだ怖くて」ギュッ

結衣「あはは、私の方が一つ上のお姉さんなのに情けないよね」

ちなつ「……結衣先輩、声震えてます」

結衣「わ、私にとって、初めてのキスだから……」

ちなつ「……で、でも結衣先輩も池田先輩と」

結衣「……」ギュッ

ちなつ「わっ、ぷ……えへへ、温かいなぁ」

結衣「自分の意思でしようとするのは、これが初めてってことだよ」

ちなつ「ふふ、あのときは大変でしたね……」

結衣「……最後に聞かせてほしいな」

結衣「私で本当にいいのかな、……他にしたい人がいるんだったら」

ちなつ「……鈍すぎますよ、したくないならこんなゲーム提案しません」ギュッ

結衣「……そっか」

ちなつ「……わ、私はっ、いつでもおっけーです」

結衣「……」ドキドキ

ちなつ「結衣先輩の匂いっ、頭くらくら、しちゃいます……」

結衣「……あれ、ちなつちゃん、王様と一番がキスするんだよね?」

ちなつ「はい、えへへ……幸せ」スリスリ

結衣「私が引いたこの割り箸二番なんだけど」

ちなつ「……は?」

結衣「あはは……」

ちなつ「えっ、え、そんなのウソですよぉ……」グスッ

結衣「おっちょこちょいだなぁ、次やるときは気を付けようね」

ちなつ「……」

ちなつ「も、もう一回王様ゲームしますよね、ね?」

結衣「もちろんだよ、ちなつちゃんも気が済まないだろうし」ニコッ

ちなつ「結衣せんぱ~い……」グスッ

ちなつ「それじゃお互いもう一回割り箸を引いて……」

京あか「こんにちはー、遅れてゴメンねっ!」ガラッ

ちなつ「……」

京子「やーん、やっとちなちゅに会えたよ!」ガバッ

あかり「ふふ、暑いのによくやるよね京子ちゃんも」

ちなつ「……ふふ」ジワッ

ちなつ「あはは……」ポロポロ

京子「ち、ちなつちゃん、笑いながら泣いてどうしたの!?」

ちなつ「あははっ、そうですよねこれが日ごろの行いですよね!」

あかり「……ゆ、結衣ちゃん、なにかあったの?」

結衣「……いやー、こればっかりは説明できないかな」

あかり「それでねぇ、京子ちゃんってばあかりのお団子馬鹿にするんだよ……」

結衣「あまりイジワルしちゃダメだよ、まったく」

京子「あはは、愛情の裏返しさあかり」

あかり「そ、そんな愛情いらないよぉ……」グスッ

結衣「……」チラッ

ちなつ(そうだよね、これはきっとウソを付いた罰かな)

ちなつ(私があかりちゃんのことを押し倒したのに、偶然だなんて)

ちなつ(……こんな悪い子には、神様もプンプンかな)

ちなつ(……でもこんなの諦めきれないよ)

ちなつ(あと少しだったのに、……もうチャンスなんてないかもしれないのに)

ちなつ「っ……」ジワッ

結衣「ちなつちゃん、具合でも悪いの……?」

ちなつ「えっ、えへへ、大丈夫ですよっ、ちょっとゴミが」クシクシ

結衣「でもとっても辛そうだよ、ほんとになにもない――」

ちなつ「……ほ、放っておいてくださいよ、平気ですから!!」

結衣「……ご、ゴメン」

ちなつ「あっ……わ、私ちょっと用事あるんで学校の方に行ってきます」スッ

バタンッ……

京子「ちなつちゃん何があったんだろうね~」

あかり「そうだねぇ、何があったんだろうね~」

結衣「……」ズズッ

京あか「……」ジッ

結衣「な、なぁに二人とも、私の顔に何かついてるかな?」

京子「ちなつちゃんとケンカでもした?」

結衣「……し、してないよ」

あかり「それならどうしてあかりたちから目を離すの?」

結衣「……逸らしてなんかないよ~」

京子「ちなつちゃんちょっと泣いてたね」

あかり「そうだねぇ、ちょっと涙ぐんでたね」

結衣「……」ズズッ

京あか「……」ジッ

結衣「もう、私の顔見ても面白くないだろ……」

京子「ちなつちゃんに何かひどいことでもしたの?」

結衣「……分からない」

あかり「心当たりはあるんだ?」

結衣「……」

結衣「なんとなくだけど、自分がちなつちゃんを悲しませてるのかなって……」

あかり「それなら結衣ちゃんが隣にいてあげなきゃ」ニコッ

京子「……今日だけだからね」

結衣「えっ?」

京子「今日一日だけはちなつちゃんのこと貸してあげる!」

結衣「もー、お前はちなつちゃんのなんなんだよ……」

京子「えへへ……上手い言葉が思いつかないなら、側にいてあげるだけでもいいと思う」

あかり「うんうん、きっと喜んでくれるよ」

結衣「……」

ちなつ「……はぁ」

結衣「ふふ、あまりため息ついてたら幸せも逃げちゃうよ」

ちなつ「うひゃあっ!?」ビクッ

結衣「わっ!……ご、ごめん驚かせちゃったかな」

ちなつ「……」フルフル

結衣「風邪とか引いてないよね、……ほんとに心配で」

ちなつ「大丈夫ですよ、体はいたって健康ですから!」

結衣「……」ホッ

ちなつ「……」

結衣「ちなつちゃん、ちょっとこっち来てくれるかな」グイッ

ちなつ「へっ!?」

結衣「きっと喜んでくれる、秘密の場所があるんだ」グイグイ

ちなつ「あわわわっ、結衣先輩どこ行くんですか~」

結衣「……先生に見つかったらきっと怒られちゃうかも、ふふ」

バタンッ!

ちなつ「わぁ、きれいな夕日……」

結衣「屋上なんて普通は立ち入り禁止なんだけどね、……二人だけの秘密だよ」ニコッ

ちなつ「……結衣先輩」

結衣「ふふ、風が本当に気持ちいいよね」

ちなつ「はい……」

結衣「……やっぱり、まだその顔してる」

ちなつ「えっ?」

結衣「私じゃちなつちゃんを笑顔には出来ないのかな……」

ちなつ「いえ、……私、結衣先輩にウソついてしまったんです」

結衣「……」

ちなつ「自分がしたことなのに、偶然だって最低な言い逃れしてしまって……」グスッ

ちなつ「私、ほんとうはっ無理やり……」

結衣「……」ギュッ

ちなつ「あっ……」

ちなつ「わ、わたしっ、悪い子で、……ひっ……ウソつきでっ……」グスッ

結衣「ちなつちゃんは悪い子なんかじゃないよ、絶対に」

ちなつ「でっ、でも……」ポロポロ

結衣「本当に悪い子だったら正直に言ったりしないからね……」ギュッ

結衣「誰もちなつちゃんを責めたりなんかしない、……だから泣かないで」

ちなつ「……うっ、う……」グスッ

ちなつ「……」ギュッ

結衣「誰だって多かれ少なかれウソを付くことはあると思うんだ」

結衣「ふふ、私だって何回もあるしね」

ちなつ「……ほんとですか?」

結衣「お母さんに怒られるのが嫌で、ネギを食べたふりして庭に捨てたり……」ボソッ

ちなつ「……ぷっ、ふふ」

結衣「ちなつちゃん、いま笑ったでしょ!?」

ちなつ「……そのあとちゃんと謝りましたか?」

結衣「うん、やっぱり隠し事するのはモヤモヤしちゃって……」

ちなつ「……私、もう一回あかりちゃんに謝ります」

結衣「……うん、どんなことをしたのかは聞かないけど、それがいいと思うよ」

結衣「あかりは優しいから、きっと分かってくれる……」ギュッ

ちなつ「はい……えへへ、ありがとうございます」ニコッ

結衣「良かった、やっとちなつちゃんの笑顔が見られたね」

ちなつ「みなさんにいらない心配かけちゃいましたね、戻りましょうか!」

結衣「……ちょ、ちょっと待って」

ちなつ「どうしたんです、早く行かないと京子先輩がぐずっちゃいますよ」ニコニコ

ちなつ「結衣先輩……?」

結衣「さっきははぐらかせてゴメンね、……ちなつちゃん」スッ

ちなつ「えっ、えっ、綺麗なお顔が近づいて、キス――」

ガッツン!!

結ちな「……」ヒリヒリ

結衣「……ご、ごめんなさい」

ちなつ「ぷっ、あはははは、目を閉じるタイミングが早すぎますよ~」

結衣「そ、そんな笑わなくても……」カァー

ちなつ「私がずーっと目をつぶってるので、……お願いしますね」

結衣「うん……」

結衣「すぅ……はっ……」チュッ

ちなつ「んっ……」ギュッ

ちなつ(やっぱり、結衣先輩のことを好きなんだろうな)

ちなつ(誰よりも優しくて、誰よりもカッコよくて、……でもちょっと頼りなくて)

ちなつ(大人みたいで子供みたいな、そんな結衣先輩が……)

ちなつ(憧れなんかじゃない、これは恋してるってこと)

ちなつ(……大好き)ギュッ

ちなつ「……くふふ、顔真っ赤ですね」

結衣「ゆ、夕日のせいだから、絶対そう……」

ちなつ「……」ギュッ

結衣「帰るんじゃなかったのかな、ふふ」

ちなつ「あと五分だけでいいんです、それで満足ですから」

結衣「……本当に五分だけでいいの?」

ちなつ「結衣先輩ってけっこう意地が悪いですよね……」ギュッ

ちなつ「……初心なくせに」

結衣「……ふふ」

結衣「なんかさ、とっても嬉しいんだ……」

ちなつ「……?」

結衣「ちなつちゃんって私に対しては堅苦しいところがあったから」

結衣「今みたいにちょっと憎まれ口を叩いてくれるのが……」

ちなつ「……やっと隣に立てたんです、今までは一歩下がってましたから」

結衣「これからも出来ればそうしてくれるとありがたい、かな」

ちなつ「分かりましたっ、これからはもう容赦しませんからね?」ギュッ

結衣「……ふふ」

結衣「ほんと、きれいな夕日だよねぇ」

ちなつ「……隙あり」チュッ

結衣「あっ……もう、不意打ちはダメだよ、めっ」

ちなつ「それじゃあ、前もって言ったらいくらでもしていいんです?」

結衣「うー……なんか振り回されてるな、私」

ちなつ「ふふ、結衣先輩への態度は変わっちゃいますけど……」スッ

結衣「ち、ちなつちゃん、あまり立ち上がったら先生に見つかるよ!?」

ちなつ「見つかってなんぼのもんです……すぅ」

ちなつ「結衣先輩、だあああああああいすきいいいいいいいいいい!!!」

ちなつ「……あはは、すっきりしたー!」

結衣「う、うわっ、絶対誰かに聞かれたよ……!!」カァー

ちなつ「いいんですよ、そっちのが好都合です」

ちなつ「……この気持ちだけは、ずーっと変わりませんから」ギュッ

結衣「……うん」

ちなつ「何年でも何十年でも、私はずーっと待ってますからね」

結衣「……」フルフル

結衣「わたっ、わたしも、ちなつちゃんが――」



おしまい

たまにはちなつちゃんが活躍するSSもいいと思った(小学生並みの感想)

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