あまくさっ☆〜�姉弟。 (958)


  にゃーん・・・・・


香焼「ただいまー……って、大分久々に帰った気がする」ガチャッ...

ステイル「君は何を言ってるんだ?」ズカズカ...

香焼「いや何でもない……って、家に入る時ぐらい煙草消してよ」チラッ

ステイル「あの3馬鹿姉妹(神裂、五和、浦上)に何言われようと、知った事じゃないさ。君ん家は僕の喫煙所」ズカズカ・・・プカー

香焼「おまえなぁ。後で自分が姉さん達に文句言われるんすよ」ブー・・・

ステイル「じゃあ上司権限で黙らせる」フンッ

香焼「うわぁ横暴。まぁ五和と浦上程じゃないか、、、ただいまー―――」ガチャッ



 ≪第13回:サブキャラ及びモブキャラの地位向上を訴える会(主に私ら)≫



五和「―――だーかーらっ! もっと大胆にアピールしなきゃ駄目なんですって! 姉さんイロモノでしょう!」ビシッ!

神裂「だ、誰がイロモノですかっ!! 自分でやりなさい、自分で!」ガーッ!

五和「嫌ですよ! 上条さんに変な目で見られたらどうするんですか!」ブー

神裂「てめっ……ふんっ! 最早手遅れでは無いのでしょうか、ねっ」フンッ

五和「あー言ったなー! 言いましたね!? そういう事言います?! 信っじられない!」ムキー!

浦上「あらら、何か本題から反れてる気が……って、おかえりー」チラッ

香焼「―――……て、は? 何この横断幕?? 何してんすか???」ジトー...

浦上「メタな話で新約に入ってから出番がまるで無いサブのお姉(五和)、そして私や香焼みたいなモブを―――」

香焼「そこまでだ」ピッ・・・

ステイル「―――……まぁレギュラー(?)だった筈の僕や神裂まで出番が無いからね」ハハハ...

香焼「そ・こ・ま・で・だっ!!」タラー・・・

浦上「アハハ。とりあえず、今は本題そっちのけでいつもの様に上条さんめぐって上姉2人がバタバタ中ですヨ」チラッ

五和「―――あーもう! そこまで言うなら勝負です! 勝負! 浦上(ウラ)、PS6とスト7準備!」バッ!!

神裂「―――ハッ! 良い度胸です! 麦野さんと固法さん指導の下、極限まで鍛えたサ○ットで叩きのめしてやります!」ムンッ!

ステイル「神裂。大分ゲーマーになったな」ハァ・・・

香焼「友人の影響というか……まぁ多少俗っぽくなったのは『人』として良い事っすけど」ポリポリ・・・

浦上「何にせよ、2人が本気で勝負する度据え置き機が壊れるんですけどネー」ニャハハ・・・

香焼「それ自分の実機なんすけど」タラー・・・

神裂・五和「「ウガぁーーーーっ!!」」ドーンッ!! ドンガラガッシャーン・・・

ステイル・浦上「「あ」」タラー・・・

香焼「……はぁ」フコウダー・・・





    あまくさっ☆~④姉弟。





もあい「にゃー」ハジマルヨー!


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1366383141

どーも。殆どの方ははじめまして。極稀で前スレを覚えている方はホンットにお久しぶりです。
この物語は『とある魔術の禁書目録』及び『とある科学の超電磁砲』の二次創作SSで原作崩壊・厨二等含む駄文でございます。
約1年越しの忘れた頃に新スレ……書くなら新しい話書けよ、とか言わんで欲しいです。

昔に比べリアルが無理ゲーレベルでハードになってるんで、週一もしくは隔週更新になると思います。
文章スタイル・システムは、偶に地の文入りの短編モノSSになるかと。因みに、劇場版及びPSP版はまだ観てないし未プレイです。

あと重要な点で……今まで時系列無視でしたが、一応今回から『WWⅢ以降』という設定とします。
まぁ主な違いは『フレンダ・垣根死亡済み』といった辺りです。ただ垣根は、未元体垣根(カブトムシさん)として出すかもしれません。



以下、大まかな設定。

・メインは天草式十字凄教の……香焼、五和、浦上、そして神裂。

・基本皆ほのぼの。性格は本編より丸い。  例) ステイルが14歳相応。神裂が18歳相応。禁書目録が左2人とそれほど仲違いしてない。

・大きく二分して「学園都市編」と「英国編」。ラブラブ、エロエロは未定。

・組織設定や社会背景等はやたらリアル思考……だけど駄文。凡ミス多々。

・アンケートやリクエスト、偶に安価の御協力お願いします。



※前作を先に見て頂けると色々早いです。




<勝手な設定>

・天草式の若手数名は偽戸籍(ダミーID)で学園都市の学校・生徒の中へ紛れ込んでいる。所謂、潜入任務である。
 コレは英国清教の命であり、また、アレイスター(あちら)側の意向。
 表向き――無論、一般的には裏である――英国側としては学園都市の動向を探るスパイ。
 しかし裏向きには――若手には悪いが――……アレイスター監視下の人質でもあった。

・神裂は土御門からの呼び出し、禁書目録の『監視』という名のお世話(加え、上条当麻に会いに)、教徒の活動視察で学園都市に来る。

・カルテッ娘・・・必要悪の協会(ネセサリウス)に所属・使者・嘱託として出入りする(やかましい)少女達。
        基本、食堂や女子寮の応接間(サロン)、ステイルの個室兼執務室に屯してる。  
        面子:アニェーゼ、アンジェレネ、サーシャ、レッサー(予備娘:ランシス)。

・必要悪の教会女子寮・・・その名の通り。寮長(仮)はオルソラさん。どんどん人が増えるよ!

・姫様・・・英国王女3姉妹。何故か香焼やカルテッ娘と仲良し。特にキャーリサ姫は暇してると食堂で一緒にトランプ等してる。

・もあい・・・絹旗最愛が拾い、香焼が預かって半ば飼っているぬこ。決して絹旗本人ではない。

・⑦・・・削板軍覇。読み方は根性、正義、バカ。週4くらいのペースで香焼宅に入り浸ってる。

・学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』・・・理事校指定の高級マンション。香焼宅(天草本部と教会の金で借りてます)。

・火織姉さん18歳・・・歳相応。お友達はむぎのんとこのりんとあわきん。五和や浦上も混ざって香焼宅で騒いでる(※浦上除く17~19歳組)。

・新制アイテム・・・仕事抜きで香焼宅と仲良し。最愛とむぎのんは週4くらいのペースで入り浸ってる。

・グループ・・・既に解体済みの暗部班の筈だが、何故かボチボチ招集する仲良しクラブ(無論、本人らは全員否定)。

・メンヘラ少年ステイル君14歳・・・必要悪の協会№1ツンデレ。都市では神裂と類似行動。何故かかなり暇人。香焼と仲良し(本人は否定)。

・カミやん病・・・読んで字の如し。『彼』っぽくなる。

・早朝ランニング・・・週に2,3回、香焼と佐天が行ってる。走ったりストレッチしたりお茶飲んだり逢いb……一緒にトレーニング。

・神崎 香(こうざき かおる)・・・誰かさんの女装姿。僕っ娘。所属は常盤台中学。超能力者第5位:心理掌握(食蜂操祈)に気に入られてる。

・土御門&海原With妹達(※主に御坂蛇:17600号)・・・香焼の『暗殺』及び『潜入』修行の師匠分。

・上条当麻&禁書目録Withスフィンクス・・・憧れのお兄さんと居候's。主役さんは出番が少ない。禁書さんは神裂目的でよく遊びに来る。


また追々捕捉してきます。分からない事や意見があればドンドン質問やコメしてください!


それでは……ボチボチ投下!

 ―――とある日、PM06:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・・



日没が早くなってきた今日この頃。自分――天草式十字凄教の学生信徒……香焼は、無人バスの中にいた。


バスアナウンス『次は第1学区学生住宅街一丁目、学生住宅街一丁目ー。御降りのお客様は―――』


ボタンを押す。


香焼「んー……眠い」ハァ・・・


学園都市の未来を担う理事候補生の養成学校で、基本的には朝8時から夕方6時まで缶詰状態。
自分が通う学校は、この街で珍しい文系メインの私立学校だ。

無論、理事になりたいが為に通っている訳ではない。『潜入任務』という名目である。
ただし折角、学費を天草本部及び英国清教から負担して貰っているのだからダラダラと過ごすのは勿体無い。
得られる知識は得ておこう。きっと自分の将来に役立つ。


香焼「でも最近、勉強ついていけなくなってきたかもしれないっすね……正直、シンド―――ん」チラッ


玄関前に都市製のバイク(新型ビッグスクーター)が置いてある事に気付く。


香焼「まぁいつもの事か」ハァ・・・


ちょっと前までの自分なら急いでエレベーターに跳び乗り、7階のボタンを押して、一番奥の我が家へとダッシュしていただろう。
だが今やそれが日常。慣れた、というより色々諦めた。


香焼「さて……頼むから、あんまり馬鹿な事してるなよ」テクテク・・・


適度な速度で歩き、エントランスの鍵を開けエレベーターに乗る。
余談だが、ボタンを押さなくても鍵の認証だけで目的の階に止まってくれるタイプなので両手が塞がってたりすると大分楽だ。
さておき、7階到着……大丈夫、我が家の方から声は漏れてない。

というのも、先日同じフロアの住人から苦情がきた。勿論僕が居ない時の苦情だが内容は単純。『五月蠅い!』と。
全く、都市制の完全防音部屋の壁貫いて騒げる馬鹿共に花を送りたい。


香焼「やれやれ。今日は何人居る事やら」テクテク・・・


部屋の家主は無論僕なのだが、鍵が開いてる事が殆ど。
因みに鍵の所有者は僕、姉3人、ステイル、土御門、建宮さん。ただ彼らは『僕の知る限り』だ。もっと増えてるかもしれない。

上記は身内やら同僚・上司だから止むを得無しとしても噂だと姉さんの友人らや、上条さんまで持ってるとか……あくまで噂だが。
やはり早めに鍵回収しなきゃ駄目か。でも鍵無しでも入れる能力者さん達もチラホラ居るから困る。


香焼「あれ? 相当危険?」ハハハ・・・


まぁ一同、人格者の筈、と信じたい、うん、多分。

兎角、家の前でアレコレ悩むのも傍から見れば変人なので、意を決してドアノブに手を伸ばす……やはり開いてた。問題は靴の数だが―――


香焼「……6,7,8足……8人も」ハァ・・・


―――大分多い。姉3人と姉の友人3人、そして僕の友人2人の靴だ。
しかし、様子がおかしい。いつもこの人数であれば頗(すこぶ)る喧しい筈なのだが、妙に静かである。テレビの音一つ聞こえない。
あの面子が揃って、大人しく出来る筈がないのにこの沈黙。


香焼「…………、」ゴクッ・・・


いくつかのケースが考えられた。僕を驚かす為に一同がこそこそ悪巧みしてたり、喋ったら負けな遊びをしている、とか。

もしくは……敵襲。
面子がメンツなだけに、襲われる可能性なら十分ある。ただ、もしそうだった場合、その面子が『負ける』筈も無いのだが。
しかし最悪、彼彼女らよりも強く恐ろしい『誰か(何か)』が敵だったとしたら。


香焼「ゾッとしないっすね」スッ・・・


その『最悪』に備え、制服裏の短刀に手を伸ばしておく。そして、居間のドアノブを掴み……静かに様子を伺った。そこには―――


神裂「……、」ゴゴゴゴ・・・

絹旗「……、」ドドドド・・・


―――意味不明な光景が―――


五和「う、ぅ」グデェ・・・

浦上「きゅー」グルグル・・・

麦野「痛ちち……くっそ」ビジバジ・・・

結標「あー……もー」ブラーン・・・

ステイル・削板「「」」チーン・・・


―――広がっていた。


香焼「な、な……なんじゃこりゃああああああぁ!!?」ギョッ!!

固法「あ! こ、香焼くん。おかえり……えぇっと、その、あのね」タラー・・・

もあい「みー」ポリポリ・・・


敵襲か! やっぱ敵襲なのか!? 魔術師の仕業?! それとも都市側からの刺客か!!?


固法「な、何言ってるかよく分からないけど色々あって……その、ごめんなさい」アハハ・・・

香焼「…………、」ダラダラ・・・

もあい「にゃう!」パフパフッ! ジタバタッ!


とりあえず現状説明が欲しい。あと固法さん。ウチの猫(もあい)をそんなに強く抱えないで下さい。谷間で窒息しかけてます。


固法「ご、ごめんなさい!」ハッ!

香焼「いえ。で、その……姉さん? 最愛?」チラッ・・・

神裂・絹旗「「…………、」」ゴゴゴゴ・・・


なぁにこれぇ。

とりあえず、本人らに声を掛けてみるか。


香焼「カオリ姉さーん。女教皇様ー」タラー・・・

神裂「香焼。おかえりなさい……あと、家(ココ)では教皇扱い禁止でしょう」ゴゴゴゴ・・・

香焼「は、はぁ……最愛さん?」タラー・・・

絹旗「香焼……少し静かにしてて下さい。今、超集中してるんです」ドドドド・・・


何にさ?

因みに……今カオリ姉さんの対面に居る少女は僕の友人、絹旗最愛。僕と同い歳だが凄腕の能力者さん。
とある雨の日に出会い(第2話)、子猫(もあい)をきっかけに仲良くなった。

かなりの人見知りだが、仲良くなると面倒見がよくなる。ただし年下や動物など、純粋で慾の少ないモノに対しては幾らか心を開く様だ。
もうちょい付け足すと……怒ると、手がつけられない程、恐ろしい破壊魔に変わる。
趣味はB級映画等の観賞、浜面さんイジメ、猫とじゃれること。

WWⅢ以前は色々『危険な事』をしていたが今は普通の女の子、、、の筈。


固法「うーん、何といいますか……多分御覧の通り」ハハハ・・・

香焼「腕相撲っすか」ジー・・・

固法「うん」ポリポリ・・・


テーブルの上に右肘を乗せ、左手で角を掴み、右手を組んでいる。
正確には、最愛は不可視の『装甲(アーマー)』をグローブ・肘当ての様に展開しているので、
姉さんの手とテーブルから約2センチ程『離れて』いる。これが彼女の能力……窒素装甲(オフェンスアーマー)。


香焼「じゃあ、そっちのグデってる面子は」チラッ・・・

固法「あはは……負け組? トーナメント形式だったから、うん」タラー・・・

もあい「なぅ」ベシベシッ

敗者's『……、』チーン・・・


誰が誰に負けたかは分からないが、酷い有様だ。
野郎二人は完全に白目向いて気絶状態。てか軍覇、何処から入った。玄関に靴無かったぞ。


固法「ベランダから」チラッ・・・

香焼「サラッと言ってますけど、此処7階っすからね」ハァ・・・

削板「」ボーン・・・


非常識にも程があるが、此処に居る全員が非常識の塊だから納得するしかない。

彼の名は削板軍覇。学園都市230万人の頂(いただき)たる超能力者(レベル5)の第7位であり至高の『原石』。
ひょんな事(第8話)から彼もまた友人となった。年齢は僕の一つ上。ステイルと同い歳……らしい。何故か毎回年齢を誤魔化されてしまう。

性格は一言で、熱い。単純で脳筋気質な所はあるが馬鹿では無い。『正義』や『根性』で世界が回ってると信じてやまないタイプ。
基本、情で動くが考えるのが面倒になってしまうととりあえず暴走してしまうのが偶に疵。能力は……不明。

さておき……五和は肩を抑えて苦悶の表情。肘から先、プラプラしてるんだが大丈夫か?
浦上は野郎二人同様、目を回して気絶中。当分気が付きそうもない。
淡希さんは氷いっぱいのバケツに手を突っ込んでる。よくよく見ると異様に膨れ上がってた。
そして麦野さんは―――


麦野「くっそ……マジ、バケモンよ」ビリ・・・ビリ・・・

香焼「……えっと」ダラダラ・・・

固法「軽くホラーよね」アハハ・・・


―――肘から先、左手もげてる。しかも接続部(?)がビリビリいってるし。


香焼「いやいやいやいや! 軽くない! ってかホラーじゃ済まないっすよ!? だ、大丈夫なんすか?!」アタフタ・・・

麦野「っさいわね……二日で直(治)るわよ。それよか、風呂場借りるわ」グデェ・・・

香焼「え、あ、はい?」タラー・・・

麦野「サポーター取っちゃうのよ。肩から外す為に服脱がなきゃなんねぇから風呂場借りるっつってんの。良いわね」テクテク・・・

香焼「さ、ぽーたー?」ポカーン・・・


言葉の意味がよく分からないが、義手を根元(肩部)から外してしまうという事だろうか。


麦野「そ。流石に壊したままつけとくの拙いから……美偉、ちと手伝って」チラッ・・・

固法「あ、うん」スッ・・・


確かに、片手になったら何かと不便なのだろう。という訳で状況説明してくれる筈の固法さんが消えてしまった。
そういえば何で固法さんは無事なんだ?


結標「あの牛乳メガネ(うしちち)が、こういう力勝負する訳ないでしょう」ハァ・・・

絹旗「てか姉貴さんに何かあったら兄貴さんに殺されます」ジー・・・


兄貴さんというと、確か固法さんの彼氏さんか。てか殺すって、物騒な。


結標「あの喧嘩屋は老若男女強弱関係無しに、固法(彼女)ヤられたらブチギレるわよ……ぃ痛っ!」ヒリヒリ・・・

香焼「はぁ……大丈夫っすか」タラー・・・

結標「あーもぅ無理。痛い。絶対骨折れてる。手の肉ミンチってる。血管破裂してる」ジトー・・・

絹旗「さっきビービーギャーギャー超煩いですね。超手加減したんです。超大袈裟ですよ」フンッ

結標「チッ! アンタねぇ! 自分が負けるかもしれないからってあんな反則手を―――ッッ!!」イダダッ!!

香焼「あ、淡希さん! 暴れないで」アワワ・・・


どんな『手』だったかは分からないが、淡希さんは最愛に負けたらしい。

この3人は、姉さん達の友人(淡希さんは僕の友人でもあるが)の先輩方。
左手がポロリしちゃってるワイルド(?)なお嬢様っぽい人は軍覇同様、超能力者で第4位の原子崩し(メルトダウナー)、麦野沈利さん。
最愛の姉分(上司)で、WWⅢ(第3次世界大戦)以前は色々『危険な事』をしていた筆頭さんとか何とか。

眼鏡の清楚な巨乳さんは固法美偉さん。風紀委員の支部長さんで、皆の纏め役。カオリ姉さんと麦野さんを止められる唯一の人。
強能力者(レベル3)の透視能力(クレアボイアンス)使いだが、その実、元武装無能力者集団(スキルアウト)出身の元ヤンさんらしい。

そして先程から氷水入りのバケツに手を突っ込んで最愛を罵っている露出の多い女性は大能力者、結標淡希さん。
彼女もWWⅢ(第3次世界大戦)以前色んな『危険な事』をしていた元学生運動(テロ屋)のリーダーさん。能力は座標移動(ムーブポイント)。

皆さん、しょっちゅう此処(ウチ)に足を運ぶ面々だ。

しかしまぁ腕相撲じゃ淡希さんに勝ち目は無いだろうけど、どんな戦い方したんだろう。


結標「負けてないわよ。アイツの反則負け!」キーッ!

絹旗「超負け犬の遠吠えですね。先に反則手使ってたのはそっちでしょう。まったく、こんなのが同じ大能力者だとは」フンッ

結標「このガキャ……私は白井さん以外の同強度(レベル)に負け認めないわよっ! って、痛たたっ」クゥ・・・

神裂「結標さん、暴れると悪化しますよ」チラッ・・・

絹旗「やれやれ。じゃあもう一方の手で勝負しますか?」ジトー・・・

結標「鬼! 悪魔! コミュ障! ロリータ!」ムキーッ!


だから暴れないで下さいっての。最愛も挑発しない。


絹旗「そうですね。少々大人げなかったです」ジー・・・

神裂「さて……ではそろそろ」チラッ・・・

絹旗「ええ」コクッ・・・


再び、何かよく分からないプレッシャーがぶつかり合う。
『ゴゴゴゴ・・・』とか『ドドドド・・・』とか、変な擬音が目に見えるんだけど、ヤバくね?


香焼「って、ちょっと待った! この惨状で続ける気っすか!? 駄目駄目! ストップ!」アワワワ・・・

五和「……無駄よ、コウちゃん」ジー・・・

香焼「なんでさ」タラー・・・

五和「これはね、士(もののふ)の戦い。避けられないのよ」ジーン・・・


意味不明。


五和「これは聖戦。振り返れば数十分前の出来事。でも遙か昔から確約されていた戦いでもある」シミジミ・・・

香焼「五和……救急車呼ぼう。頭がピンチみたいっすね」ジトー・・・

五和「そう、顧みれば各々の絶対に譲れないプライドが、そこにあった……―――」カイソー!

香焼「いつもなら『コウちゃん酷っ!』とか言うくせにスルーしやがった!? てか勝手に回想?!」ハァ!?

もあい「みゃう」ペシペシッ


聞いても無いのに回想スタート。まぁ知りたかったから助かるが……なんか阿呆臭い予感しかしない。

 ―――とある日、PM04:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・五和side・・・





五和「―――ただいま帰りましたー」ガチャッ

浦上「右に同じくー」テクテク


授業が終わり、待ち合わせをしていた浦上(ウラ)を拾ってバイクで帰宅。
私達の潜入担当地区の第7学区と香焼宅(コウちゃん家)がある第1学区は隣合わせなのだが、結構距離がある。
というのも、23区中最も広い第7学区の南方にある『学舎の園』に私達の学校(潜入担当地区)はあるので、
それなりの移動距離になってしまうのだ。まぁ望んで学舎の園勤務にしたのだが……やっぱ距離があると面倒。

勿論、第7学区に私の寮&浦上のアパートはあるが、香焼宅(こっち)に集まるのが習慣となっている。理由は特になし!


神裂「おかえりなさい」テクテク

もあい「んなー」フシフシッ


我らが女教皇様(プリエステス)―――もとい、長姉殿が出迎える。
英国に居る事が多いが、最大主教様&マグヌス主教補佐のお使いや、土御門or統括理事長やらに呼び出されて学園都市に来る事もチラホラ。
そんでもって、都市の指定ホテルに居座るより香焼宅(ココ)で主婦業をする事の方が多い。


浦上「ただいまです。っと……お客さんですか?」チラッ

神裂「ええ、いつもの面々で」コクッ

五和「じゃあ早めにご飯作っちゃった方が良いですよね?」スッ

神裂「いえ、下準備は済ませてますから。とりあえず荷物を置いて来なさい」テクテク


今日は私の夕飯当番なのに、姉さんにやらせてしまった様だ。申し訳無い。
リビングに入ると、見知った顔がテーブルを囲んでいた。


五和「こんにちわ」ペコッ

絹旗「こんにちは。お邪魔してます」ペコッ

麦野「うぃー……んー、此処の扉か?」カチャカチャッ・・・

結標「違うわ、そっちの奥の……お邪魔ー」チラッ


もあいを抱え礼儀正しく頭を下げる香焼の友達と、テーブルに突っ伏し携帯ゲーム機カチャカチャ動かす姉さんの友人(?)2人。


絹旗「んもー。2人とも、超失礼ですよ」ジトー・・・

麦野・結標「「あぃあぃ」」カチャカチャ・・・

絹旗「はぁ……すいません」ペコッ

浦上「にゃはは。いつもの事ですネ」クスクスッ


香焼宅(ウチ)に来て、好き勝手遊んで、食べて、だべって、帰る。いつもの事。


麦野「てか火織。アンタも早くミッション戻りなさいよ」カチャカチャ・・・

結標「もうちょいで隠しステージ解禁よ。さっさとして」カチャカチャ・・・

神裂「はいはい」テクテク


携帯ゲーム機を手に、FPSでセミオートショットガンぶっ放す女教皇様の姿。
本部(天草式十字凄教)のお偉いさん(ジジイ)達に見せたらショック死するだろう。

だがかつての女教皇様とは思えぬ程に『人間』らしい……少なくとも私や前線で働く教徒達はこれで良いと思っている。

そういえば固法さんがまだ来ていないが。風紀委員(ジャッジメント)の仕事だろうか。


神裂「終わったら寄ると言ってましたよ……あ、やばっ」カチャッ

麦野「黒妻くん、今日夜勤らしいから彼のアパート(アッチ)には寄らないそうね……ほぃ、回復」カチャッ

結標「夜勤ってあのチンピラ、今何のバイトしてんの? 現場(工事)とか呑み屋とか? って……そっち逃げたわ」カチャッ

麦野「警備員よ。警備員(アンチスキル)じゃなくて『警備員』のバイト……うっし。ヘッドショット」タンッ

五和「ははは、ややこしいですね」ポリポリ・・・


とりあえず、ご飯は多めに準備しとこう。まだ固法さん以外にも来客あるだろうし。


絹旗「あ、手伝います」ヒョコッ

五和「ありがと。でもまだ良いかな……とりあえずお手伝い必要な時お願いするから、今はもあいと遊んでてあげて」フフッ

もあい「なー」コロコロッ

絹旗「ん……分かりました」コクッ


流石、コウちゃんの花嫁候補。気が効くという点ではカルテッ娘より上だ。


浦上「どちらかといえば、香焼が『嫁(ヒロイン)』って感じですけどネ」ハハハ

五和「確かに……皆、コウちゃんより強いしなぁ」ハハハ

神裂「本人が聞いてたら、さぞオカンムリでしょうね」ハァ


と言いつつ、姉さんも否定しない。確かに中一男子にしては幼いし、何より可愛い……無論、『男の娘』的な意味で。

しかし、それは香焼に限った事では無いかもしれない。


麦野「んー、ウチの浜面? あー……いや、ヒロインは無ぇな」ジトー・・・

絹旗「浜面がヒロインとか、世も末です。超有り得ません。超キモいです」コロコロッ

もあい「なぅ」ペシペシッ


言いたい放題。多分、本人目の前でも言うんだろうなぁ。


結標「とか何とか言いつつ、コイツらなりの愛情表現で……っておわぁ!? ちょ!? フレンドリーファイヤ?!」ギョッ!

麦野「おほほほ。丁度、射軸上に居たモノでぇ」カチャカチャ・・・

結標「くっ……陰険な……てか、アンタら。最近毎日香焼くん家(此処)で夕飯喰ってってるそうじゃない。自分家で喰わないの?」チラッ

絹旗「超余計な世話です。というか、どの口言いますか?」ジトー・・・

結標「私は月詠宅(家)で半分、外食と此処半分くらいよ。アンタら、他の2人(+α)と飯喰わないの?」


そういえば、最近浜面さんと滝壺さんと一緒に行動する機会が減ってるとか。


麦野「まぁ別に四六時中一緒に居る訳でも無いし……色々、ね」カチャカチャ・・・

絹旗「そうそう、超色々あるんですよ」ゴロンッ

結標「ふーん……私にゃ関係無いわね」カチャカチャ・・・


成程、空気を読んでる訳か。浜面さんも幸せモノだな。


絹旗「というか、私らが邪魔しなくともフレメア(おチビ)が超邪魔してるでしょうから」ケケケケ・・・

結標「あっそ」カチャカチャ・・・

神裂「では、フレメア嬢もココに連れてくれば良いのでは?」フム・・・

麦野「駄目よ」ジトー・・・

神裂「え?」キョトン・・・

麦野「兎に角、駄目よ。あの娘の面倒は浜面が見る。これは決定事項なのよ」フンッ

絹旗「といいますか、浜面以外に懐きませんからね。あとは……滝壺さんの貞操の為に」ボソッ・・・

五和「貞操って」タラー・・・

浦上「まぁ男の子女の子ですからー」フフフ・・・

神裂「う、浦上……とりあえず、深くは触れないでおきましょう」チラッ

五和「ん」コクッ


身内の情事か。私だってあまり上条さん云々で姉さんと口論したくない。

今日は此処までです。明日……ってもう今日だけど、続き投下します。

ホント、久々のSSなんで多々至らぬ点はあると思いますが御勘弁下さい。

あと、今後の意見リクエスト質問感想罵倒を頂けると嬉しいです。

ではまた次回! おやすみ!

こんばんわ。続き、投下します。

 ―――とある日、PM05:20、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・五和side・・・





適当な頃合いで夕飯の準備に取り掛かる。下準備は姉さんがしてくれたのでパパパッと拵えるだけだ。
コウちゃんのエプロンを装着した絹旗助手に意見を聞く。


五和「ご飯はタイマー掛ってるし、汁物もOKっと……最愛ちゃん、今日は何食べたい?」パパパッ

絹旗「お任せしますよ。五和さんの料理は超プロ級ですから」コクッ

麦野「じゃあ、むにえるー。鮭のー」カチャカチャ・・・

結標「やきにくー。上カルビー」カチャカチャ・・・

絹旗「……駅前の定食屋にでも行って下さい」ハァ・・・


確かに、作り甲斐が無いチョイス。花嫁修業的にはもうちょい捻ったメニューにしたいところ。


五和「あはは。えっと、サーモンあったかなぁ……あとはお肉で……よしっと」フムフム・・・

絹旗「決まりましたか?」チラッ

五和「うん。冷蔵庫にあるモノで適当に」ガサガサ・・・

浦上「流っ石お姉ですネ。一家に一人助かります」フフッ

結標「ほんっと、ウチにも欲しいわー。五和ー、結婚してー」カチャカチャ・・・


嬉しい事言ってくれますけど、姉さん程じゃないですよ。あと、私は結婚を前提にお付き合い(?)している方がいますので(一方的に)。


麦野「いや、どっちもレベル高いわよ……でも火織は私の嫁だから」カチャカチャ・・・

神裂「じゃあ、せめて私より稼いで下さいね」ニコッ

麦野「くっ……無理難題を。というか、スルー力が上がってる」ハァ・・・

神裂「御蔭さまで。あ、2人とも……そこトラップが」ヤバッ・・・

麦野・結標「「え」」ピタッ・・・


『ちゅどーん』と爽快な音。一寸沈黙の後、姉さんへの友軍射撃が始まった。
因みに、姉さんの年収は軽く小国の国家予算並みとか何とか。でも多分、麦野さんもそのくらい稼げそうな予感がする。

さておき、そろそろ包丁を握ろう。今日の献立はサーモンのカルパッチョに海藻と肉のサラダ。
私が鮭を下ろしている間に、最愛ちゃんが野菜を切る。


絹旗「よいしょ……こんなもんで良いですか?」シャキシャキ・・・

五和「うん、大丈夫です。最愛ちゃん、大分上手になったね」スッ・・・スッ・・・

絹旗「五和さんや姉貴さんの御蔭です」フフフッ


ちょっと前までは大根のブツ切りくらいしか出来なかったのだが、最近ではキャベツの千切りくらいは出来る様になってきた最愛ちゃん。
それからある程度、調理を済ませ盛り付けの手前で終わらせる。
家主殿(コウちゃん)が帰ってくる時間は早ければそろそろだし、遅ければあと2時間くらいだ。
普通なら準備が早いくらいだが都市製の冷蔵庫の御蔭で、作った料理の鮮度が長持ちする。ホント、技術の賜物。

一段落終え、一服しようかと時計を見た。


五和「んー、そろそろかな」チラッ

絹旗「え……ああ」ジー・・・


5時半過ぎ。そろそろ、別の客人が現れる。


麦野「美偉もそろそろ着くって……ってかさぁ、何で『アイツ』まで入り浸ってんのよ」ハァ・・・

神裂「まぁまぁ。仲良くしましょう。同じ超能力者でしょう」ハハハ・・・

麦野「うわぁ『同じ』とか言われたし。かーなーり、心外だわ」ジトー・・・

結標「いやいや、超能力者(アンタら)総じて人格破綻者じゃ……ってにょわぁ!? RPG!!」ドカーン!!


そんなに悪い子じゃないんですけどね、と噂をすれば何とやら。インターホンと窓を叩く音が同時に鳴った。


絹旗「うげっ。野郎二人が同時に来ました」タラー・・・

神裂「あははは……玄関は私が行きましょう。もしかしたら固法さんも一緒かもしれませんし」テクテク・・・

浦上「そんじゃ私はベランダで」トコトコ・・・


2人同時に行動。そして、ほぼ同時に現れる男子(?)2人。


削板「こんばんはー! 腹が減りました!」ドーンッ!

ステイル「ん……邪魔する」テクテク・・・

絹旗「超喧しいのと超根暗いのが来ました」ウゲェ・・・

削板「うっせぇ超小っこいの。って、香焼まだ帰ってきてないのか?」キョロキョロ・・・

ステイル「見れば分かるだろう阿呆。というか、君はまたベランダ(そこ)から侵入したのか」ジトー・・・

削板「ベランダ(此処)が俺の玄関です。つーか、テメェいつもどうやって玄関から入ってんだ? オートロックだろ?」ジトー・・・

絹旗「そういえば……いつもエントランスの施錠無しで入ってきてますよね? 何で?」キョトン・・・

ステイル「いや、何でも何も……ほら」スッ・・・


カードキー。所謂、合い鍵。


絹旗・削板「「なっ!?」」ジー

ステイル「そういう事だ。五和、コーヒーを頼んで良いか」テクテク

五和「あ、はい」コクッ

削板「ちょ、待て! 何でテメェが香焼ん家の鍵持ってんだよ!」ジトー・・・

絹旗「ズルいです! 超ズルい!」ジトー・・・

ステイル「いや、ズルいも何も……まぁそれだけ彼から信頼されてるって事じゃないのか? 君達よりもな」ニヤリ・・・

絹旗・削板「「」」チーン・・・


いやいや、また適当な事を。2人がショックで真っ白くなってますよ。

とりあえず姉さんがフォロー。


神裂「まったく、意地の悪い事を。ステイルはこの部屋の賃貸契約の関係上、鍵を持っているだけですよ。他に他意はありません」ヤレヤレ・・・

ステイル「ま、そういう事だ」ハハハ

削板「ぐっ……騙しやがって」グヌヌ・・・・

絹旗「そ、そうですよね。超冷静に考えれば、この超不良似非神父が私より信頼厚い訳が無いです」フンッ

ステイル「いやいやいや、それはそれ。これはこれ」フフフ・・・


何か、こう、見えない火花が散ってます。
マグヌスさん、自分ではコウちゃんの『友達ちゃうわ』とか言ってるクセに、本人居ないとこだとデレるんだから。


結標「良いなぁ。私も香焼くん家の鍵欲しい。あ、そうだ。後で合いカギ作らせて貰おー」ニヤッ

絹旗「なっ!? だ、駄目です! 絶対駄目!! 超々チョー駄目ですっ!!」バンッ!

結標「あら、何故?」フフフ・・・

絹旗「駄目なモノは駄目です! アンタに鍵渡したら香焼が色々超ピンチになります!」アタフタッ

削板「てか、コイツの場合本気出せば不法侵入し放題だよな」ジトー・・・

結標「人聞き悪い事言わないでよ。まるで私が変態みたいな――」

麦野「変態っしょ?」キョトン・・・

結標「――……アンタねぇ」ジトー・・・

神裂「こらこら、喧嘩しない」メッ


不満げに引き下がる一同。
確かに結標さんは能力的に本気出せば不法侵入し放題だろうけど、易々と本気『出せない』らしいから。その点信用してます。


五和「確かに何も知らない人からしてみれば不信がりますよね。あ、マグヌスさん。コーヒーです」アハハ・・・

ステイル「まったく、人が増え過ぎるというのも難だな……ん」スッ・・・カチッ・・・

一同『…………、』ジトー・・・


煙草を取り出したマグヌスさんに、全員からの無言の圧力。


削板「おまえ、相っ変わらず自己中だよな」ジトー・・・

絹旗「未成年のくせして……まぁ未成年って方が超嘘っぽいですけど」ジトー・・・

麦野「てか、よく喫わない面子の前で堂々と喫おうと思えるわよね」ジトー・・・

結標「これだから喫煙者は。せめて分煙出来れば叩かれないでしょうに」ジトー・・・

3姉妹「「「あはは」」」ジトー・・・

ステイル「……う」タラー・・・


流石に気拙くなったのか、無言で姉さんに助けを求める14歳男子(主教補佐)。
そんでもって、シレッとベランダの方を指差す18歳女子(補佐代行)。『喫うな』と言わない辺りが温情か。
トボトボとコーヒーカップを持って、無言でベランダへ出張る上司殿。肩身の狭い事で。

サーシャってロシアの人じゃなかった?
必要悪の教会に移籍したのかな?

ベランダに常備してある灰皿(もあいの猫缶)に灰を落とす我らが上司。態々『ステイル専用』と書いてある。
リアルな意味で窓際族とは……前線で見せる鬼神の如きオーラがこれっぽっちもありません。いと憐れ。


削板「よしっ。悪は去った」フンッ

絹旗「残る悪はアンタですね……あと、ついでにそこの2人も」ボソッ

削板「はぁ? 悪はテメェだろ。どっからどう見ても俺は正義だ」ドーンッ

麦野「そうそ……って、絹旗ちゃーん。今ちゃっかり私も悪にカウントしなかったかぃ??」ギロリ・・・

絹旗「さぁて。何のことやら」ポカーン・・・

浦上「はははは。最愛ちゃんも言う様になりましたネ」クスクス・・・

結標「ほんと、近くに居ると口の悪さは似るのね」チラッ

麦野「ほざけ」ジトー・・・


また険悪に……また姉さんが注意しようとした時、インターフォンが鳴った。今度はエントランスからだ。


固法『こんばんは。ごめんなさい、遅くなっちゃった』ペコッ

五和「いえいえ、今開けまーす」ポチッ


仲裁役登場。流石風紀委員というべきか、一同頭が上がらない人。
姉さんも麦野さんも結標さんも姐御肌ではあるのだが、3人共物騒な意味での姐御肌だからなぁ……日常的には彼女が強いのだろう。

という訳で、一同ピリピリムードから普通に戻る。


固法「お邪魔しまーす。はい、お土産」スッ・・・

五和「ありがとうございます。態々すいません」ペコッ

固法「良いの良いの。いつもご飯作って貰ってばっかだから……あら、今日は勢揃いね」フフッ

麦野「大分掛ったじゃない。何か面倒な事件でもあったの?」チラッ

固法「ちょっとね……解決はしたんだけど、また御坂さんが」ハハハ・・・


一同『また超電磁砲(アイツ)か』といった顔。


固法「詰め所で大人しくしてなさいって言ったところで聞かないのよね……ホント、私と白井さんだけで十分なのに」ヤレヤレ・・・

麦野「んでもって、例の如くヤリ過ぎで警備員に怒られてきたっと。目に見えるわ」ハハハ

固法「笑い事じゃないわよ。その後、上条くん見つけるなり消えるし。それ追っかけて白井さんも消える……全部私と初春さんに押し付け」ンモー

結標「相変わらず幻想殺しと白井さんは大変ね……って、五和?」チラッ

浦上「アハハハ……お姉。姉様。顔、顔」ニャハハハ・・・


いけないいけない。顔に出てた。
しかし、あの超能力者第3位さん。些か『上条約』違反が目立つ気がする。その内、罰が下りそうだ。


絹旗「しかし、最近事件多いですよね。昨今、そんなに治安悪化してるんですか?」フム・・・

固法「件数だけで見ればそうでもないんだけど、性質の悪い犯罪が増えててね。WWⅢ(第3次世界大戦)後、特に」ハァ・・・

神裂「性質が悪い、というと?」キョトン・・・

固法「テロ紛いとか武器密輸・技術売買とか、兎に角、ちょっと前まで大々的に見えなかった事件が明るみに出てきたっていうか」ポリポリ・・・

麦野・結標「「…………、」」フーン・・・


原因の一つは『彼女達(元暗部)』だろう。都市に仇為す輩に対する抑止力だった『彼女達』が引退した所為もあってか、
表際で粛清してきた犯罪を表立たせてしまっているのだと考えられる。

>>24・・・サーシャはロシアからの使者としてしょっちゅう英国に足を運んでる、という勝手な設定です。


   * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


無論、『新入生』達も奮闘している様だが、所詮は出来合の新人(ルーキー)。玄人達(ベテラン)程上手く立ち回れない。
故に、水面下で防げなかったツケが風紀委員や警備員に負担が回って来ている訳だ。因みに、これは土御門の論。


麦野「まぁ怪我しない程度に頑張りなさい。テロ屋っつっても、コイツみたいなスカポンが犯罪のリーダーやってたりすんだから」クイッ

結標「誰がスカポンよ。それに元よ、元。あとテロ屋じゃない」フンッ

絹旗「でも技術売買しようとしたんでしょ」ジトー・・・

結標「まぁそれはそれ。てかアンタらだって……―――」フンッ

麦野「……ん」チラッ

結標「―――……はぁ」ポリポリ・・・


何かを言い掛けて止める結標さん。何を言うつもりだったかは分からないが、言わない方が良かろう。
私達(天草の潜入学徒)は土御門経由や独自の情報網で、学園都市の表裏情勢をある程度把握しているが、
固法さんの様な一般人に話す様な話では無い。

ただ、元武装能力者集団出身という事もあってか、この都市の『闇』についてある程度知識はあるらしい。


削板「ふんっ! まぁ大抵の悪党共は俺が退治してやるけどな」ムンッ

絹旗「超頼りなりませんから。姉貴さん、もし何かあったら私を呼んで下さいよ。超助っ人します」ムンッ

固法「ありがとう。気持ちは受け取っておくわ」フフッ

麦野「アンタらの手伝いは超電磁砲(レールガン)並に有難迷惑だってさ」ハハハ

絹旗・削板「「何をっ!」」ウガーッ!

神裂「こらこら」ヤレヤレ・・・


本当に仲良い事で。


麦野「とりあえず、まだ坊や帰ってこないらしいから美偉も参加しなさい」カチャカチャ・・・

固法「あ、うん」テクテク・・・

浦上「固法さん、何か飲みます?」チラッ・・・

固法「ありがとう。じゃあいつもので」ペコッ

結標「……また牛乳」タラー・・・

固法「別に良いでしょ」ブーブー

麦野「アンタも見習いなさい。美偉の胸の5割は牛乳詰まってんのよ。残り半分は彼氏に揉まべぼわぁ!?」ゴチンッ!!

固法「っ~~~~~ッ! 変態っ!!」カアアアァ///


超能力者相手にクッション投げつける固法さん。そういえばまた胸が大きくなったとか何とか。
姉さん程大きくは無いが、未だに成長してるバストの秘密は牛乳か……それとも彼氏の存在か。何にせよ羨ましい。


結標「そいやぁ何でこの家の冷蔵庫、こんなに牛乳入ってんの? こいつの為?」チラッ・・・

浦上「あはは、いえいえ。まぁ固法さんもですケド、あのですねぇ……牛乳神話を信じてる人がいますので」ニャハハ


身長を伸ばしたい人がいるんですよ。
あと、最愛ちゃん。思い出したかの様に牛乳ガブ飲みしないで下さい。急に胸も身長も大きくなったりしないし、お腹下しますよ。

 ―――とある日、PM05:40、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・浦上side・・・





そろそろ削板くんのお腹の虫が三重奏を奏で始めた。姉様達もゲームに飽きてきた頃合い。


削板「―――ったく、香焼遅いなぁ」グルルゥ・・・

結標「仕方ないっしょ。アンタと違って真面目に学校通ってんだから」グデェ・・・

麦野「だからー、アンタも人の事言えないでしょー」グデェ・・・

絹旗「総じて『お前が言うな』って返ってきますよ」ヤレヤレ・・・


この中で真面目に学校通ってるのは私とお姉と固法さんくらいだ。
尤も、天草の潜入学徒が『真面目』に通ってるかと言われれば疑わしいのだが。


神裂「しかし、皆さんは学校へ行かなくとも単位が貰えるのでしょう?」フム・・・

麦野「まぁね。優等生だから」ハハハ

結標「少しは謙遜しなさいっての。とりあえずレポート書いて席置いてりゃ学校(アッチ)も満足だかんね」コクッ


学校側としてみれば高い強度(レベル)の生徒が在籍してくれているだけで見栄が張れる。
都市外の高校・中学的に言えば『名門高校(大学)進学率○%!』と謳う様なモノか。確かに宣伝効果はあるので合理的かもしれない。


ステイル「生々しい話だ。まるで学生とは思えん……商品扱いだな」ヤレヤレ・・・

絹旗「超余計なお世話ですよ。ってか、そういうアンタこそ学校出てるんですか? 自称14歳なんでしょう?」ジトー・・・

ステイル「自称じゃなく本当に14だ。僕は飛び級で大学出てる。博士号まで終えてるよ。証拠もある」フンッ

削板「ウソ臭ぇ。どうせ碌でも無ぇ方法で卒業してんだろ? 金で単位買ったとか」ジトー・・・

ステイル「些か心外だな。まぁどうとでも言え……神裂だって同じ要領で博士号まで終えてるよ」チラッ

神裂「え。ま、まぁ……あはは」ポリポリ・・・


確かに、姉様は天性の天才だ。勉強云々は15前後で終えてた筈。


結標「でもそれって、所詮『外』の勉強レベルでしょ。学園都市の勉強レベルじゃ中学生レベルなんじゃない?」フーン・・・

五和「えっと、都市は能力開発や理数系には特化してますけど。文・体育・技術・芸術系は外と大して変わりませんよ」コクッ

ステイル「というかそれ以下の部分も多い。現に……例えばおチビ君。喜望峰(ケープホーン)の場所、分からないだろ?」チラッ

絹旗「け、けーぷほーん? 角? 動物ですか?」キョトン・・・

ステイル「じゃあ……バルト三国、3つ全て言えるかい?」チラッ

結標「わ、私!? ば、ばとる? さんごく……三国志? 中国?」タラー・・・


最愛ちゃん、結標さん……可哀想な目を向けざるを得ない。


ステイル「はぁ……五大湖、全部」チラッ

削板「上流から順にスペリオル湖、ミシガン湖、ヒューロン湖、エリー湖、オンタリオ湖。馬鹿にすんな。一般常識だろ」ジトー・・・

麦野「因みに喜望峰は南アのケープタウンにある岬。バルト三国はエストニア、ラトビア、リトアニア……そいつらのオツムが弱いだけよ」ハァ・・・

ステイル「ほぅ……一緒にするな、だそうだ」チラッ

絹旗・結標「「うっ」」タラー・・・


これが超能力者(レベル5)と大能力者(レベル4)の差か。

悔しそうな2人にフォローを入れる眼鏡天使さん。


固法「まぁ2人とも社会が苦手なだけよね」ハハハ・・・

結標「そ、そうよ! それに、そんなの覚えたって将来役に立たないわ!」タラー・・・

絹旗「え、ええ! 理数系さえ出来ればこの街で生きる分には事欠きません!」タラー・・・

ステイル「一般常識だって、さっきそこの⑦(根性)馬鹿が宣たが」ジトー・・・

絹旗・結標「「ぐっ」」タラー・・・

麦野「まぁそいつら一般人じゃないから。ヒッキー的な意味で」ハハハ

絹旗・結標「「ヒッキーちゃうわ!」」ムキーッ!


確かに、どんなに凄い論文書けても地図読めなきゃ生きていけないって本で書いてあったな。
そういう意味でも、この街の人間は箱庭(都市)の外へは出れないのかもしれない。


神裂「まぁまぁ。そういうステイルだってエクセルやらパワポやら、PC業務苦手でしょう。確か物理や高校数学も完璧では無かったと」チラッ

ステイル「余計な事を……そんな事務作業、僕の仕事じゃない。というか神裂、君もPC作業苦手だろ」フンッ

絹旗「わぁ超ダサいです。現代人とは思えません。もしかしてワードのレイアウト設定も出来ないとか?」プフー!

結標「今時小学生でも出来るわよねー。一般的な、都市の外の、小学生でも」ジトー・・・

ステイル「そ、それくらい出来る! ただ、僕の場合はそういう資料を作る必要が無いんだ」フンッ

五和「基本、ハンコ押す側ですからね……14歳なのに」ハハハ・・・ジトー


資料作る側筆頭(お姉)の妬み声。確かに、こんな中学生は嫌だ。


削板「どっちもどっちだな」フンッ

絹旗「ぐぅ……非常識の塊に常識語られると、超腹立ちますね」グヌヌ・・・

麦野「超能力者なんて輩は常識兼ね備えた上で非常識やってんのよ」サラッ・・・

神裂「麦野さんが言うと説得力ありますね」ポリポリ・・・


本人曰く『私は超能力者の中でも常識ある方』だそうだ。即座に『超嘘です』と最愛ちゃんに返されたが、ゲンコツで黙らせてた。
まぁ他の6人はどうなってんだろう。


固法「でも御坂さんは、結構常識あると思うんだけどなぁ」ポリポリ・・・

麦野「えー」ジトー・・・

結標「うーん」ジトー・・・

絹旗「えっと……あー」ジトー・・・

削板「……無いな」ジトー・・・

固法「あらら」ハハハ・・・


この場に本人が居なくて良かったと思う。

それにしても御坂さんとやら。あまり面識は無いがどんな人なのだろう。


麦野「んー。あの娘、結構手ぇ早いじゃない。戦闘狂(バトルジャンキー)の類じゃね?」チラッ

削板「まぁ俺らが言えた義理じゃないけどな……あれも血に飢えてる感じはする」チラッ

結標「御坂さん、まるっきり『オレより強いヤツに会いに行く』とか『敗北を知りたい』とか言うタイプでしょ」チラッ

絹旗「喧嘩っ早いという点では麦野以上な気も。まぁ麦野は『殺す』と思った時には行動しちゃってるタイプなんで超危険ですが」チラッ

麦野「人を三大兄貴みたいに言うなボケ」バシッ

固法「う、うーん……そう言われると否定できない」タラー・・・

浦上「で、でもそれ以上に義理人情に厚いんでしょう? そういう点でも有名ですし」ハハハ・・・

固法「そうね。そういう点では確かに……でも、うーん」ポリポリ・・・


拙い。無理矢理話を逸らそう。固法さんが御坂さんのフォロー出来なくなる前に。


浦上「そ、そーいえば、この前香焼が家の鍵集めなきゃとか言ってましたヨ」アハハハ・・・

神裂「む? と言いますと?」キョトン・・・

五和「あ、姉さんにまだ言ってませんでしたね。契約の関係上、半年置きに鍵を交換しなくちゃならないそうです」コクッ


セキュリティーの関係上、定期的に鍵交換を行うそうだ。
家主が住み続けてるのに交換するのは変な気もするが、それだけ防犯には五月蠅いのだろう。流石最新鋭のマンション。


浦上「まだ先の話ですけど、近々お二人の鍵も香焼に渡して下さいネ」チラッ

ステイル「面倒な……まぁ更新の関係なら止むを得ないが」フム・・・

神裂「仕方無いでしょう。土御門からは受け取ってあるんですか?」ジー・・・

五和「近い内、コウちゃんに渡すそうです」コクッ

結標「は? 何で土御門?」ポカーン・・・


何でと言われても、彼が鍵を持ってるからとしか。


結標「いやいや、何でアイツが持ってんのよって事」ジトー・・・

五和「えっと……賃貸契約の名義上?」アハハ・・・

結標「……ふーん」ジトー・・・


皆が居る手前、上司とは言い辛い。彼は色んな意味で有名人過ぎる。


削板「しっかし、納得いかねぇな。何で来もしないヤツや不良神父が鍵持ってんのに、俺が持ってないんだ」ジトー・・・

ステイル「その理屈はおかしい」ハァ・・・

絹旗「いや、でも確かに。超腑に落ちませんね」ムゥ・・・

結標「確かに、来ない人間(土御門)が持ってるくらいなら私が持っときたいわね」フム・・・

ステイル「願望云々の話じゃなかろう。これは契約上の」ハァ・・・

削板「はいはい、契約契約……んでもまぁ、香焼が良いって言えば俺も合い鍵作って良いんだろ?」チラッ

五和「え? うーん……どうだろう」ハハハ・・・

絹旗「そうなんですか!?」ジー・・・


難とも言えないけど、香焼なら何だかんだでOK出しそう。

合い鍵計画で話が盛り上がる最中、空気を読めない上司殿がぼやいた。


ステイル「いや、駄目だろ」ジトー・・・

削板「何でだよ。お前の意見関係無いだろ」フンッ

絹旗・結標「「そーだそーだ」」ブーブー

ステイル「じゃあ君達は、他人に自分の家の鍵を易々渡せるか?」ジトー・・・


確かに、それを言われると弱い……―――


削板「は? 鍵なんか持ってねぇし」サラッ

絹旗「私は渡せますよ」サラッ

結標「同じく」サラッ

ステイル「…………、」ポカーン・・・


―――……筈なんだけどなぁ。常識通用しないらしい。


固法「こらこら、困らせないの。えっと、ステイルくん。多分彼女達、『自分名義の部屋』の鍵は渡せるって意味で言ってるだけだから」ハハハ・・・

ステイル「……は?」ポカーン・・・

麦野「まぁ使ってない部屋の鍵だったら渡したって問題無いわよね」ハハハ

五和「あぁ。2人とも半ば居候ですしね。削板くんは研究所住みだから鍵要らないんですよね」チラッ

削板「そーゆーことです」ムンッ


成程。じゃあ居候宅の鍵は?


結標「絶っっっ対、渡さない」キリッ

絹旗「私は渡しても良いですよ」サラッ

麦野「はははは、殺すわよ」ニッコリ


此処ら辺、人間性が出る。というより宿主と居候人の信頼関係か。


ステイル「ったく……兎に角、そういう事だ。普通はプライバシー云々言って他人にホイホイ鍵なんか渡さない」ハァ・・・

削板「まったく分からん。何がそういう事なんだ」ムンッ

ステイル「……お前は論外だ、人類皆兄弟思考(根性バカ)」ジトー・・・

絹旗「むー……でも、無理矢理貰おうって言ってる訳じゃなくて、もし可能ならって意味で」ジー・・・


じゃあ、逆に考えてみたら如何だろう。


絹旗「へ?」キョトン・・・

五和「もし、コウちゃんが最愛ちゃん家の鍵頂戴って言ったらって事かな」チラッ

絹旗「え、いや、だから私は麦野と同棲状態ですから」キョトン・・・

麦野「んー……もしアンタが一人暮らしに戻って、その家の鍵を坊やがくれって言ったら?」ニヤリ・・・

絹旗「ぇ……なっ!?」ギョッ///


あからさまにキョドる最愛ちゃん。予想通り過ぎる反応をどうも。

恥ずかしさと悔しさで真っ赤になる最愛ちゃんにちょっかいかける大人なお姉さん。


結標「あらら、ふふふ。まぁ私は渡せるけどね」ニヤリ・・・

絹旗「んなぁ!?」バッ///

削板「俺も構わないが」サラッ

絹旗「ぐっ……わ、私だって、も、問題にゃいです」グヌヌ・・・///


野郎2人以外、ニヤニヤ。可愛いのう。


固法「こらこら。あんまり意地悪言わないの。兎に角、本人がこの場に居ないと何ともね」ヨシヨシ

神裂「そうですね。ただ、合い鍵作れる数に上限があった筈ですからそれを踏まえて」フム・・・


本鍵(香焼)、スペアキー×2(姉様が建宮さんから預かってるモノ&土御門)、合い鍵(私、お姉、マグヌスさん)。計6つ。
合い鍵だけでいえば3つまでか……でも確か上限以上に量産してた気もする。でも誰が持ってたか忘れてしまった。


削板「ふむふむ……じゃあ新しい合い鍵はステイルに替わり俺だな」ムンッ

ステイル「だから、話聞いてたか? いや、聞いてないんだろうね」ハァ・・・

結標「じゃあ土御門のスペアは私が貰うわね」ニコッ

ステイル「だから……はぁ」グデェ・・・

絹旗「わ、私は、えっと……うーん」チラッ・・・チラッ・・・


私とお姉、姉様を見遣る子猫ちゃん。


五和「あははは。じゃあ私とウラが兼用するから最愛ちゃんに一つですね」クスッ

絹旗「あ、ありがとうございます!」パアアァ!

ステイル「……君らも悪乗りが好きだな」ヤレヤレ・・・

麦野「じゃあ私と火織と美偉の兼用キーが一つね。これで全部かしら」ハッハッハ

ステイル「…………、」ジトー・・・


あからさまに呆れ顔する主教補佐殿。ニコチン切れたのかな。


ステイル「はぁ……兎に角、一度僕か土御門が管理して、そこから配布した方が良さそうだな」ヤレヤレ・・・

五和「え? いや、冗談ですよ。そんなに真に受けなくても」チラッ

絹旗「じょ、冗談なんですか」ガーン・・・

五和「あ、いえ、その……あははは」タラー・・・

ステイル「いや、君と浦上が兼用するという点では構わないだろう。ついでに、神裂も共に兼用だ」サラッ

神裂「はい? 何故私まで?」キョトン・・・

ステイル「しょっちゅう来る訳でも無い。香焼、五和、浦上の3人の内誰かが持ってれば十分だろ。残りは土御門か僕で管理しよう」コクッ


いきなり横暴な事を宣う上司。何これ新手のパワハラ?


ステイル「あのだなぁ……香焼のプライバシー云々以前に『分かる』ね? 3人共」チラッ

3姉妹『ぅ……、』タラー・・・


香焼宅(ココ)は仮住まいとはいえ『必要悪の教会(ネセサリウス)』と『天草式』のセーフハウス的な機能も持っている。
情報管理はしっかりしているとはいえ、漏洩してはいけないデータ諸々がある事も確かだ。

しかし、腑に落ちない。


五和「で、でもコウちゃんがOKしてる以上問題無いんじゃ」ムゥ・・・

ステイル「家主とはいえ借主ではない。皆まで言わせるな」フンッ

神裂「しかしですね。あの子はこの家で何より平穏を大事にしています」ジー・・・

ステイル「その点は目を瞑ってやってるだろう。問題はそこではなくセキュリティーの話だ」ヤレヤレ・・・


言ってる事は御尤もだが……何か、嫌だなぁ。


削板「おいおい、さっきから黙って聞いてりゃ偉そうに」ジトー・・・

ステイル「部外者は黙っててくれ」フンッ

削板「意味分かんねぇ。この家的にいえば部外者はテメェの方だろ? 香焼の姉ちゃん達に比べりゃお前の方がよっぽど部外者だっつの」ケッ

ステイル「は?」ジトー・・・

絹旗「確かに、香焼のお姉さん達はアンタに比べて超頻繁に来てます。てかアンタ、此処に居る誰よりも来る回数少ないでしょう」ベー

ステイル「来る来ないの問題ではなく、賃貸契約の話だ。僕がそれに関わっている以上は筋が―――」

結標「またそれ? ほんっと、図体の割に器小さい男ね」ハァ・・・

ステイル「―――……む」ムスー・・・


何だかまた険悪な感じ。マグヌスさん、そろそろ手(火)が出そうな雰囲気。


固法「え、と……とりあえず、そろそろ香焼くん帰ってくる事だし本人の意見も聞いてからでも遅くないでしょ。ね?」ポリポリ・・・

ステイル「いや、これはアイツの意見よりも本来僕や神裂が決めねばならない事だ」ジトー・・・

神裂「う、うーん」タラー・・・

麦野「はははは。坊やの意見を聞きたくないのは、自分に不利な応えが返ってくるって分かってるからよねー」フフフ・・・

ステイル「う……、」タラー・・・


この重い空気の中、唯一展開を楽しんでる超能力者第4位さん。削板くんじゃないけど、ほんと、良い根性してます。


麦野「ま、でもアンタにゃアンタの考えがあるんだろうし、所詮他人の私らが如何こう言えないのも確かよね」フフッ

絹旗「麦野はどっちの味方なんですか」ジトー・・・

麦野「どっちでも無いわよ。ただ、此処に遊び来れなくなるのは困るわよね。丁度良い屯(たむろ)場所だし」ムーン・・・

削板「適当な女だなぁ。何か解決法ある訳じゃないのかよ」ッタク・・・

麦野「別にー……まぁ適当に、鍵賭けてジャンケンかクジ引きでもすりゃ良いんじゃね」ハハハ


そんな単純フランクな方法で納得する訳―――


絹旗・削板「「それか!」」ビシッ・・・


―――……えー。マジですか。

流石にこれは、苦笑せざるをえない。


ステイル「はぁ……馬鹿共が」ヤレヤレ・・・

削板「うっせ! 勝負だ、勝負!! ジャンケンか? それともあみだくじか?」ビシッ!

絹旗「私的には運任せの勝負は好きじゃありません。此処は超公平にゲームで勝負です!」バッ!

ステイル「僕は機械のゲームは苦手だし、そもそも他人の家の鍵を賭けて勝負なんてする気にもならん」タラー・・・

削板「因みに、俺もあんまゲームしないから最愛の意見は却下な」ムンッ

絹旗「むぅ。じゃあ何なら良いんですか?」ジトー・・・

ステイル「だから、しないと……ん。そうだな」ニヤリ・・・


何やら不敵な笑みを浮かべるマグヌスさん。重たそうに立ち上がり、外套(マント)からカードの束を取り出した。


ステイル「これなら良いよ」スッ・・・

絹旗・削板「「トランプ?」」キョトン・・・

ステイル「万人に分かり易く『公平』だろう。ポーカーでも良いし、大富豪・大貧民でも良い。好きなので良いぞ」フフッ

絹旗「まぁそれなら……でも、内容を何にするかで超変わってきますね」ウーン・・・

削板「ババ抜きとか、神経衰弱とかか?」ポリポリ・・・


マジメに悩む2人。それを見て意地悪く微笑む神父さん。見るに兼ねた姉様が口を挟む。


神裂「はぁ……駄目です」ヤレヤレ・・・

絹旗「はい?」キョトン・・・

神裂「ステイルに大抵のカードゲームで勝てませんよ」マッタク・・・

削板「は? 何で?」ポカーン・・・

ステイル「おい、神裂。余計な事を言うな」ジトー・・・


だって、カード扱わせたら英国でも屈指に入る人ですから。


結標「んー。どゆこと?」ポカーン・・・

五和「あはははは……何と言いますか、言葉が悪いですけど、イカサマの天才です」ポリポリ・・・

絹旗・削板「「なっ!?」」バッ・・・

ステイル「チッ……余計な事を」ボソッ・・・


彼とトランプ勝負してカモになった必要悪の教会の人々は数知れず。
本当はタブーだが賭け事をした連中のトータル巻き上げ額は、云百万円。因みに主教様と女王陛下、第二王女もカモになってます。


削板「てめっ! 鼻っから勝ち目無い勝負させる気だったのか!?」バンッ

ステイル「やれやれ……さて? 何の事かな?」シレット・・・

絹旗「超根暗! 超陰険です! 超性格最っ悪です!」ガー!

ステイル「何とでも言え。兎に角、元より勝負する気なんかないんだから茶番仕立てでも構わないだろ」フンッ・・・

削板「ぐぬぬぅ……オマエなぁ……こうなったら『真剣』に、勝負でもすっかコラ」ジー・・・

ステイル「ほぉ……それは分かり易いな。そういうのなら、乗ってやっても良いぞ」ニヤリ・・・


うわ、拙い。非常にまっずい。

男子2人が立ち上がり、ついでに最愛ちゃんも肩を回し出す。そして楽しそうな麦野さんの顔。


ステイル「2人同時でも構わないよ。香焼が帰ってくる前にベランダに干しといてやろう」サラッ・・・

削板「あんだと?」キッ・・・

絹旗「超能力者(根性バカ)と大能力者(私)相手に、よくそんな口が聞けますね。無能力者(レベル0)さん」ジトー・・・

ステイル「僕は能力者に負ける程、落ちぶれちゃいないよ。さて……外に出るか? 根性脳筋に強化人間」ニヤリ・・・

削板・絹旗「「…………、」」ピリピリ・・・

固法「こ、こら! 止めなさい!」タラー・・・

絹旗「姉貴さん……止めないで下さい」スタッ・・・

削板「コイツ、一度根性叩き直さねぇとなんねぇみたいだ」スッ・・・


ヤバい。空気がかなり、ヤバい……もう鍵とか如何でもよくなってただの喧嘩前になってる。


麦野「ノッポが勝つにカルパッチョ2枚」フフフ・・・

結標「いや、野郎二人は何だかんだで女に甘そうだからジャリガールが勝つっしょ。カルパッチョ3枚」ジー・・・


麦野さん、結標さん。誰が勝つとか賭けしないで下さい。
三人が玄関に向かおうと、立ち上がった刹那―――


神裂「ステイル」ジー・・・

ステイル「なに、ものの数分で片付けて」スッ・・・

神裂「ステイル」ジトー・・・

ステイル「くる、か……ら」ピタッ・・・

神裂「……、」ゴゴゴゴ・・・

ステイル「……ぅ」タラー・・・


姉様の いあつ。 マグヌス神父は うごきがとまった。


神裂「絹旗さん、削板さんも……喧嘩の末、誰かが怪我したら『誰が』一番悲しみますか?」ジー・・・

絹旗・削板「「うっ」」タラー・・・


流石姉様。説教はお手の物。


麦野「ちぇっ。つまんねーの」ブーブー

固法「……麦野さん」ニコリ・・・

麦野「じょ、冗談よ。コイツがノリノリだったからついね」アハハ・・・

結標「おま、人の所為にすんなし!」タラー・・・


こっちも解決。


神裂「まったく……兎に角、この件は香焼が来るまで保留です」ハァ・・・

ステイル「しかし、だなぁ」ムゥ・・・

神裂「ステイル。あの子も馬鹿じゃありません。『分』は弁えて判断を下すと思いますよ」コクッ

ステイル「ふむ……まぁ」ポリポリ・・・


些かマグヌスさんが不利になる気はしますけどね。

渋い顔をするマグヌスさんの横で、同じく口をへの字にするお姉。


五和「因みに、私らも微妙に不利になる気もするかな」ウーン・・・

結標「ん? 私らって?」チラッ

五和「私とウラです」ハハハ・・・


確かに、香焼なら私かお姉の鍵を没収するとも言いかねない。それは色々不便で困る。


神裂「それならそれで止むを得無しでしょう。あの子が家主です」コクッ

五和「うーん、でもそれだと面倒なんですよ」ハァ・・・

結標「じゃあそん時は私が部屋に飛ばしたげるわ」フフッ

五和「あ、その手があったか」ピンッ

麦野「流石『案内人』は伊達じゃないってか。そういう意味じゃ便利ねー、アンタの能力」フーン・・・

結標「もっと褒めても良いのよ」ニッコリ

絹旗「でも自分自身は『移動』出来ないくせに。超欠陥能力ですよね」ブー

結標「くっ……アンタは絶対飛ばしたげない。もしくは壁の中に埋める」ジトー・・・


相変わらずこの2人、相性悪いな。


削板「うーん……でもなぁ」ハァ・・・

ステイル「なんだ。まだ腑に落ちないのか」ジー・・・

削板「だってよぉ……不利っちゃ不利じゃん。香焼、頭良いから理屈捏ねて俺に鍵くれない気がする」ウーン・・・

絹旗「あら。自覚あるんですね。自分が鍵貰えないって」フーン・・・

削板「俺だけじゃなくお前もだよアホ。やっぱ身内じゃないとダメなのかなぁってな」ポリポリ・・・

絹旗「う、うーん」タラー・・・


当たり前の事だが納得いかない様子。最早、此処に居る全員が不安になっていた……あ、何故か楽しんでる麦野さん除いて。


固法「えっと、こ、香焼くん遅いわね。やっぱ授業大変なのかしら」ハハハ・・・

一同『……、』シーン・・・

固法「あー……うん」ポリポリ・・・

麦野「美偉が場を盛り上げるのに失敗しましたー」ハハハ

固法「む、麦野さん。何とかしてよ」タラー・・・

麦野「え? この死刑宣告待つ感じ、良いじゃん」フフフ・・・

結標「やっぱ歪んでるわね」ハァ・・・

麦野「うっせ。とりあえず、ゲームでもして待っとく?」スッ・・・

結標「んな、ふいんきじゃないでしょ」ヤレヤレ・・・

絹旗「麦野はふいんき関係無いですから。超KYですし」ハァ・・・

麦野「テメェら……雰囲気(ふんいき)も読めないオツム弱いヤツらに空気云々言われたかねぇわ」チッ


余計空気が重たくなった。これ、誰かが発言する度に場が暗くなるパターンだ。

全員がボーっとする最中、お姉が無茶ぶりしてきた。


五和「ちょっと、ウラ。さっきから傍観してないで何か考えないの」ボソボソ・・・

浦上「え? あーうーん。そうですネー……とりあえず、さっきの続きでこの中での勝負はつけといたら如何です?」フム

ステイル「は?」ポカーン・・・

削板「どういう事だ?」キョトン・・・


だから、香焼の判断云々は置いといて。この面子で鍵候補を決めておくという事だ。


絹旗「でもさっき、神裂さんがダメって」チラッ

浦上「勿論、危ないのは駄目ですヨ。だから危なくないの。方法は、そうですネー」ジー・・・


ゲームは出来ない人が居るし、カードはマグヌスさんと固法さんの独壇場になる。
運任せでも良い気はするけど、納得いかない人が出てくる。

となると、このスペースでし易い勝負といえば―――


浦上「腕相撲とか」ピンッ

一同『え』ポカーン・・・


―――これだ。何だかんだで、皆力は強い。『自力』が弱くても能力等で補える。
私と固法さんがちょい不利だけど、まぁ私らは負けても問題無い気がするからOK。


麦野「おー、良いじゃん。流石キレ者浦上ちゃん」フフフ・・・

絹旗「まぁそれなら……って、麦野も参加するんですか!?」ゲッ・・・

麦野「当ったり前じゃん。こんな楽しそうな事、私が傍観してるとでも?」フフフ・・・

結標「ふーん……まぁ如何とでもやり様はあるかしら」フムフム・・・

削板「うん、分かり易い。シンプルで良いな」ムンッ

固法「危険な気もするけど……まぁタイマンよりは大丈夫、かな」ポリポリ・・・


よし、科学(そっち)サイドはOK。

あとは魔術(こっち)組。


五和「あはは。私は構いませんけど……姉さん、有利過ぎなんじゃ」チラッ

神裂「無論、手加減しますよ。私が本気を出したら怪我人出ますからね」コクッ

ステイル「鍵の数からしておかしい勝負な気もするが……まぁ良い。女子供に負けないだろ」サラッ


あ。


絹旗「ほぉ」ピクッ

麦野「あら」ピクッ

結標「言うじゃない」フフフ・・・


おめでとう、マグヌスさんにフラグが立ちました。


ステイル「え」タラー・・・

固法「まったく。とりあえず、本気で能力使っちゃ駄目よ。特に麦野さん。分かった?」ジトー・・・

麦野「あいよー。フフフ……楽しみだわー」ニコニコ・・・

固法「駄目だ聞いてない」ハァ・・・

結標「てか、中坊2人は手加減云々の能力じゃないっしょ。大丈夫なの?」ジー・・・

絹旗「安心して下さい。怪我しない程度に、超瞬殺してあげますから」ニッコリ

削板「よく分からんが、安全第一で全力全壊します」ウン


物騒だが大丈夫だろう。ギャグパートだし。


浦上「それじゃあ組み合わせですけど、9人だから……1人シードでクジ作って」カキカキ・・・

固法「あ、私抜いて良いわよ。審判するわ」チラッ

麦野「そうね、美偉に怪我させらんないもん」フムフム・・・


曰く、固法さんにけがさせると泣いたり笑ったり出来なくなるとか。


固法「誰も怪我しちゃいけません。その為の審判です」ンモー・・・

結標「牛乳(うしちち)なら確実か。能力的にも風紀委員的にも」ウム・・・


さーて、ではクジを作りましょう。

 ―――とある日、PM06:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・五和side・・・






クジ引きの結果……Aブロック一回戦:姉さんvs削板くん。二回戦:麦野さんvsマグヌスさん。
Bブロック一回戦:ウラvs最愛ちゃん。二回戦:私vs結標さん……となった。

なんか初っ端から事実上、決勝な気がする。


削板「一番上の姉ちゃんか。まぁこん中の女子連中じゃ一番強そうだな」フム・・・

神裂「さぁ。どうでしょう」フフフ・・・


どっちも化け物で常識破り。規格外過ぎて勝敗の想像がつかない。


固法「じゃあルールだけど、基本は一般的な腕相撲ね。能力は怪我しない程度に使用可能。OK?」チラッ

削板「はいはい。まぁ意図せずして能力出ちまうんだけどな……って、姉ちゃん能力者なのか?」キョトン・・・

神裂「さぁ」ジー・・・

麦野「ふふふふ。見モノね」ニヤニヤ・・・


さっきから意味深な事を仄めかす麦野さん。姉さんの強さ知ってるのだろうか。


麦野「私は前に火織と腕相撲した事あるもの」フフッ

絹旗「え? 結果は?」キョトン・・・

麦野「なーいしょ。まぁ私並には力あるわよ。(ホントは負けたけど……『今』の私の『左手』なら負けっこ無いわ)」ニヤリ・・・

ステイル「神裂並に、だと?」タラー・・・


麦野さんも能力抜きで常人じゃないらしい。


固法「さて、じゃあ準備は良いかしら。肘から先が何処かでも触れたら負けよ」ジー・・・

神裂「はい。では、お手柔らかに。右で良いですか」スッ・・・

削板「あいよ。あ、手洗ってきた方良いですか?」スッ・・・

神裂「別に気にしませんよ」フフッ

削板「では失礼……見た目の割にゴッツい手だな。(こりゃ様子見無しでいった方が良いな)」スッ・・・ガシッ

神裂「あら、女性に対して失礼ですよ。(やはり、見た目通り握力も強い。多少、本気を出しますか)」


固法さんが2人の手の上に掌を乗せ……セット。


固法「レディ……ゴーっ!」バッ

削板「フンッ!!」ガッ!!

神裂「っ……ほぉ」ギギギ・・・


いきなりピタリと止まった。


削板「ぐっ……ぬぬぅ」ギリギリ・・・

神裂「強い、ですね」ムゥ・・・


大分力んで根気の入った顔の削板くん。反面、余裕シャキシャキの姉さん。多少、真剣な顔か。

しかし『何も』知らない人間からしてみれば、不可解極まりない事。


絹旗「え? へ?!」ポカーン・・・

結標「第7位相手に余裕あるとか……オカシイわよね」タラー・・・

麦野「しかも本気出してないし」ハハハ・・・


姉さんが本気出したらテーブル壊れます。


ステイル「神裂、大人げないぞ。さっさと終わらせろ」ハァ・・・

神裂「えっと、あはは」クイッ・・・

削板「ぬをっ!?」グイッ・・・


徐々に不利になる削板くん。やはり能力者といえど力で『超人』には勝てないか。


削板「ぐぅ……こん……じょおおおおおおぉだあああああぁ!!」ドドドド・・・

神裂「お?」ピタッ


姉さんの勢いが止まる。そして、削板くんの背後から謎の炎(?)がメラメラいいだした。


結標「うっわ。暑苦しい」ジトー・・・

絹旗「アイツの馬鹿力の度合い、謎のエフェクトで変わりますから超分かり易いんですよね」ハァ・・・

ステイル「ふむ。能力なのか? というか、アイツの能力自体謎か」ジー・・・

麦野「まぁ自分自身、能力どんなモンか分かってないっぽいからね。自分だけの現実(パーソナルリアリティ)崩壊よ」ッタク・・・


自分だけの現実……分かり易く言えば、能力者一人ひとりが持つ固有の能力発生源。
その『現実』が自中確固となればなるほど『強度(レベル)』は高くなると授業で習った。

しかし削板くんにはその『自分だけの現実』が無い。いや、無い訳ではないがそれが他の能力者の『現実』の定義には当て嵌まらない。

そういう意味で正体不明。これほど怖いモノは無い……香焼曰く『軍覇に限界は無い』との事。
気分が最高潮に盛り上がれば神様でも殴れるし、逆に最低に落ち込めば蟻の子にも負けるとか。


削板「ふんぬっ! な、め、るなぁっ!!」ドーンッ!

神裂「くっ……確かに、失礼を」ググググ・・・


謎の爆発エフェクト。特撮の戦隊モノでみるアレだ。因みに、熱かったり物が壊れたりしない不思議。


浦上「ありゃりゃ……形勢逆転」ホー・・・

麦野「火事場の糞力ってヤツかしら? まぁ気力次第で上限無いんでしょうけど」ハハハ・・・


しかし、姉さんはまだ本気を出してない。


神裂「くっ……やはり、凄いですね。麦野さんといい貴方といい、超能力者は途轍も無い力を秘めてます」グッ・・・

削板「ぐぐぅ……ふんっ!!」ギリギリ・・・

神裂「では、私も……『人』として最大限の力で応えましょう」グイッ!


素(人として)の力のMAXを出すらしい。

因みに、姉さんの全力全開は『聖人』の力と『魔術』による身体強化の双方を使った時だ。


削板「ぬっ……だああぁ!!」イギギギ・・・

神裂「っ……フンッ!!」カッ!!

削板「いぃっ!! づぉっ!!?」グラッ・・・


一瞬―――


削板「おっぱおっ!!!」ゴガンッ!!

一同『っ!?』ギョッ・・・


―――まさに、一撃だった。


神裂「ふぅ……削板くん、君はもっと強い筈でしょう。遊び事では嫌が応にも全力は出せませんか」スッ・・・

削板「」チーン・・・


ヒーローに負けた怪人の爆破宜しく撃沈した削板くん。ピクリとも動かなくなった。
怪我は無い様だが精神的なショックが大きかったのだろう。

それより、あーあ……机にヒビ入った。知ーらないっと。


神裂「固法さん」チラッ

固法「え、あ、うん……神裂さんの勝ち」タラー・・・

麦野「まったくもって、予想通りね。でもちょいと大人げ無いわよ」ハハハ

神裂「仮にも勝負事ですから、手加減し過ぎるのも失礼でしょう。それに……うん」フフッ

削板「」プシュー・・・

麦野「まぁね。アレがマジで本気なったら、どうなるか分からないものね」ハハハ・・・


私やウラなら確実に負けてた。身体強化の魔術使っても勝てない相手だったろう。


麦野「さーて、じゃあ次は私とノッポくんね」チラッ

ステイル「ふむ」コクッ


普通に考えれば体格と魔術による筋力強化でマグヌスさんだろうけど、相手は麦野さんだしなぁ。


絹旗「麦野。これは『腕相撲』ですからね。分かってますか?」ジー・・・

麦野「はいはい。まぁ彼が何かしらの『ズル』しなきゃね。それ以外は『自力』で戦うわよ」フフッ

ステイル「……、」ジー・・・


問題はマグヌスさんが何処まで『力』を使うかだ。


固法「じゃあ、右手で良いかしら? というか右手にしましょう」チラッ

ステイル「ん? まぁどっちでも良いが」キョトン・・・

麦野「別に『左』でも良いわよ」フフフ・・・

神裂「……右にしてください」ハァ・・・


姉さん達は何かを憂いてる様だが、何だろう。左右の問題? 利き腕?

問うてみても、ただただ苦笑い。


結標「まぁ、その……多分後で分かるわ」ハハハ・・・

浦上「もしかしてアレですか? 『沈まれ! 私の左腕!』的な」ニヤニヤ

絹旗「超近いです。性質が悪いのは、その左手を制御しちゃってるところでしょうか」ハァ・・・


なにそれこわい。


固法「えっと、それじゃあ怪我しない程度に……準備良いかしら」スッ・・・

ステイル「ん。(様子見はいらないな。神裂と並ぶなら手は抜けまい)」コクッ

麦野「あいよん。(さぁてと、どの程度かしら)」コクッ

固法「それじゃあ、レディ……ファイッ!」カンッ


手が離れ―――


ステイル「むっ?」グッ・・・

麦野「わっ」グググ・・・


―――ステイルさんが押した。


浦上「おー、マグヌスさん。初っ端から全力カナ? (全力で身体強化しちゃってらぁ)」ハハハ・・・

絹旗「うそ! 麦野が一般人に押されてます!?」キョトン・・・

結標「一般人じゃないっしょ」ハハハ・・・


この場に一般人はいません。


ステイル「チッ……化け物か」ギリギリ・・・

麦野「いやいや、アンタこそ……じゃあ割と本気出させて貰うわっ」グッ!

ステイル「っ!?」ググググ・・・


魔力で強化した筋力相手に互角を張る麦野さん。マジ怖ぇ。
まぁ元々、マグヌスさんはステゴロでブイブイ言わせるタイプじゃないから元の筋力は弱いのかもしれない。


ステイル「くっ……拙い」ググググ・・・

麦野「ほらほらー。自称14歳くーん。お姉さんに負けちゃうぞー」ニヤニヤ・・・

ステイル「こ、の……っ」カチッ・・・

麦野「んー? どったのー?」グイグイッ

ステイル「……、」ブツブツ・・・


何かモゴモゴ言い出したマグヌスさん……って!?


麦野「うを熱っ!!?」グラッ!

神裂「ステイルっ!!」ギロッ!

麦野「なっ……テメェ、何かしやがったわね?」ググググ・・・

ステイル「ふん……さぁね」グイッ・・・


マジ大人げない。

麦野さんの劣勢に不審がった最愛ちゃんが尋ねてきた。


絹旗「あー、例の『マジック』ですか?」ジー・・・

結標「アンタらの『それ』は、私ら理解出来ないものね」ヤレヤレ・・・


一応、最愛ちゃんには魔術に関して適当に誤魔化して伝えてある。
結標さんは土御門と関わっているので微妙に詳しいのかもしれないが、理解は出来てない筈。
さておき。多分先程はマグヌスさんが『発火』か何かで、掌から火か熱を出したっぽい。
様子を見るに火傷するレベルのモノではないらしいが、麦野さんを怯ませるには十分だったようだ。


麦野「そう……そっちがその気なら!」キュイイイイィン・・・

ステイル「むっ!? ぐっ……なっ!?」ジュウウゥ・・・

神裂「む、麦野さん!?」ギョッ・・・


2人の手の間から煙が上がってる!?


結標「あはは。アツアツねぇ」ニヤニヤ・・・

絹旗「そういう問題じゃないでしょう……てか、麦野!」タラー・・・

固法「もぅ! 怪我する様なら両者負けよ!」タラー・・・


噂に聞く『原子崩し』の能力か。だとしたら、ある意味マグヌスさんと相性が良い能力かもしれない。だが、あくまでこれは腕相撲です!


麦野「チッ……まぁ良い……かっ!」グイッ・・・

ステイル「むぎっ!」グググググ・・・カチッ

麦野「熱っ! って、アンタまだ手から何か出してんのね……頭キた……ドラアアアァーーーzッ!!」プッツン・・・

ステイル「ぃっ!?」ググググ・・・

絹旗「あ。麦野がプッツンしました」タラー・・・


純粋なゴリ押し。優雅さの欠片も無い。


ステイル「なっ……人間の力か!?」ダラダラ・・・

麦野「オラオラオラオラッ!! 貧弱だぞッ!! 男の子だろぉっ! キン○マ付いてんの……かッ!!!」グンッ!!

ステイル「ヴェッダァ!!!」バキンッ!!


ズルしたのに、負けた。正直恰好悪い。


ステイル「」チーン・・・

固法「しょ、勝者……見ての通り」アハハ・・・

麦野「ふぅ……熱ちっ。まぁ浜面よか強かったわ」フーフー

神裂「まったく、無茶をして……手は大丈夫ですか?」スッ・・・

麦野「へーきへーき。ちょっと赤くなったくらいよ。少し冷やせば問題無いわ」サラッ

結標「やれやれ……てか、アンタさっき何したのよ」ジトー・・・

麦野「ないしょー♪」ニヤリ・・・

絹旗「アッチの手を融解させようとしたか、もしくは単純にビームで手をブチ抜こうとしたのかと」ハァ・・・

麦野「さぁねー。まぁこれ以上粘ってたらもしかしてそうしてたかもしれないけど」フフフ・・・


素直に負けといて良かったですネ、マグヌスさん。

とりあえずうつ伏せで再起不能ってる男子2人は捨て置いて、と。


浦上「次は私と最愛ちゃんですネ……あー、手加減宜しく」ニャハハ・・・

絹旗「ええ。0,2秒で終わりにしてお茶飲みましょう」コクッ

浦上「ウヒャー。おっかなーい!」キャー!


多分、如何足掻いてもウラは負けるだろうな。


絹旗「右でも左でも良いですよ。あ、先に言いますけど私は能力使いますからね」ジー・・・

浦上「ははは……怖いなぁもぅ……能力無しじゃ駄目カナ?」チラッ

絹旗「駄目です。超駄目」ムンッ

浦上「えー何でー?」ツンツン・・・


確かに、負けそうになったら能力展開すれば良いのでは?


麦野「そしたら、その子瞬殺よ。能力出す前に負けるわ」ハハハ

浦上「え」キョトン・・・

絹旗「麦野……余計な事言わなくて良いですって」ジトー・・・

固法「あはは……うーん、最愛ちゃん。能力無しだと私はおろか、打ち止めちゃんにも苦戦するから」ハハハ・・・

絹旗「あ、姉貴さんまで! 余計な事言わないで下さいって言ってるでしょう!」カアアァ///


なるほど。噂通り、能力に頼りっきりのタイプか……って小学低学年クラスに苦戦て、どれだけ自力弱いんだ。


絹旗「と、兎に角! 能力は使わせて貰います!」ムンッ!

浦上「にゃははは。しゃーないですネ」ポリポリ・・・スッ


準備OK。ウラがどれだけ持つか楽しみだ。


固法「それじゃ、レディ……ゴッ!」カンッ

浦上「ふんぬーっ!!」ウラー!

絹旗「……うん」ポリポリ・・・


やはりビクともしない。勿論、ウラは全力で魔術による筋力強化してる筈。
対して最愛ちゃんは頬を掻く余裕すら見せてる。


浦上「ヤッバ! 何これ!? 壁押してるみたいなんですケド?!」ズーン・・・

絹旗「えっと……押して良いですか?」ハハハ・・・

浦上「ちょ、まっ……こ、こうなったら!!」バッ!


何か秘策があるのか。


浦上「カモーンっ! もあーい!!」ニャー!!

一同『え』キョトン・・・

絹旗「は?」ポカーン・・・


何故に猫(もあい)を?

ウラに呼ばれ、とことこと歩を進める子猫さん。


もあい「なぅ?」トコトコ・・・

浦上「もあい! テーブル上がって……此処にお座り!」ピッ

もあい「にゃ」スタッ・・・ペタッ

絹旗「へ……あ!?」ギョッ・・・


今の状況。もし最愛ちゃんが勝ったら、もあいがペチャンコ。
つまりウラの負け判定ゾーンに、もあいが居座ってます。


絹旗「な、何て恐ろしい真似を!? 超鬼畜ですよ! 浦上さん! 人間のやる事じゃない!!」ガーン・・・

浦上「ふはははっ! 勝てばよかろうなのだーっ!!」ニャハハハ!

もあい「みー」ジー・・・


でもウラが勝てないのも変わりない。所謂、千日手状態だ。


固法「まったく……決着つかないので、こっち来ましょうねー」ヒョイッ

もあい「にゃ!」ピョンッ

一同『あ』タラー・・・


まぁそうなるわな。


浦上「ちょ、えっ! も、もあい!? お、オカしいですヨ! 固法さああああぁんっ!!」ニャー!!

絹旗「……ふんっ!!」グンッ

浦上「ごとらたんっ!!」チュバーンッ!!


凄い勢いで負けた。しかも何故かフッ飛ばされた……まぁ私も最愛ちゃん相手だったらああなってただろう。


固法「やれやれ。勝負アリ」ピッ

絹旗「同情しませんよ。もあいを使った罰です」ムンッ

浦上「きゅー」グルグル・・・

もあい「んなー」ペシペシッ


流石、大能力者。パワーが段違い。
さて、次は私と結標さん。此方も大能力者ではあるが、最愛ちゃんと違ってパワー型では無い。


麦野「五和ー。頑張んなさいよー。そいつ純粋な力は美偉くらいだから」ハハハ

結標「いきなり私に不利な情報教えんな!」ウガー!

神裂「では結標さんにもアドバイスを……その子は香焼の3倍は強いですよ」サラッ

結標「あら、どーも……って! それかなりピンチよね!?」タラー・・・

絹旗「香焼超弱っちいですから比較対象になりませんよ」サラッ

五和「あははは、コウちゃん可哀想」タラー・・・

結標「アンタは香焼くんの厄介さしらないからそんな事言えんのよ」ハァ・・・


何だかんだでコウちゃんと喧嘩する事多いらしいからな。それなりに、あの子の実力を知っているのだろう。

しかし私とて潜入部隊の長。情報収集という点では負けはしない。結標さんの能力については知り尽くしている。


結標「まぁ良いわ……悪いけど、私も最初から能力使うわよ」ハァ・・・

五和「じゃあ私も全力でいきます」コクッ


下手に能力行使される前に押し倒した方が無難だろう。という訳で、セット。


固法「それじゃあ、レディ……ゴー―――」

五和「っ」グイッ


開幕と同時に倒す。


五和「獲った!」グイッ

結標「ん」スッ・・・

麦野「ありゃりゃ。もう終わりかよ」ジー・・・

結標「いえ、獲ったんじゃない……『獲られた』のよ」ブンッ・・・


刹那―――


五和「……え」パッ・・・

結標「よいしょ。審判私の勝ちでしょ」サラッ

固法「―――え」キョトン・・・

一同『は?』ポカーン・・・


―――身体が宙に浮いて……落ちた。


五和「とんびっ!!?」イタタタッ!

固法「え、あ、えっと……あれ?」タラー・・・

麦野「えー……意味分からんわ。何で? アンタ、ズル過ぎよ」ジトー・・・


要するに、私の身体を座標移動(ムーブポイント)で飛ばしたのだ。意表を突かれて肩から落ちた……かなり痛い。
しかしこれでは勝負も何も無いだろう。寧ろ、結標さんの戦意喪失により負けなのではなかろうか。


結標「あら。私は腕相撲のルールに則って戦ったまでよ」サラッ

絹旗「超意味分かんないです」ハ?

結標「最初に審判が言ったじゃない。『基本は一般的な腕相撲』って」チラッ

固法「言ったけど……でも、うーん」ポリポリ・・・

結標「やれやれ……腕相撲ってのは、肘が浮いた時点で負けじゃないの?」フフフ・・・

神裂「た、確かに」タラー・・・


そういう事か。私が結標さんの腕を倒すより早く、座標移動させられたから……私の負けと。


五和「痛たぁ……えー」ジトー・・・

結標「だって、こうでもしないと勝てないでしょー私。まぁあと何手か考えてたけど、全部同じ様な戦法よ」フンッ


まったく困ったモノだ。審判も判定し辛かろう。

案の定、固法さんは小首を傾げて頬を掻いていた。


固法「えーっと、うーん。仕切り直しが一番でしょうけど、五和さん肩打っちゃったっぽいし」タラー・・・

五和「はぁ……私の負けで良いですよ」ヤレヤレ・・・

結標「あら、ありがとう」フフッ

絹旗「えー。超ずるーいでーす」ジトー・・・


もし反則勝ちしても、この肩では次の勝負で最愛ちゃんには勝てっこない。潔く引くべきだろう。


固法「じゃあ、結標さんの勝ちという事で。次は準決勝ね」チラッ

麦野「はいはーい」ニヤリ・・・

神裂「ええ」コクッ


結局、勝ち残ったのは能力者3人と姉さんか。野郎共と私ら、情けない。


固法「じゃあ準備を……の前に」チラッ

神裂・麦野「「ん?」」キョトン・・・

固法「場合によっては、強制的に止めます」キッパリ

麦野「は? なんでよ?」ポカーン・・・

固法「貴女達2人の勝負は危ないから」ジトー・・・

神裂「いや、怪我しない程度にやりますって」フム・・・

麦野「そーそー。美偉は心配性なんだから」ハハハ

固法「心配、で済めば良いんですけど」ハァ・・・


確かに、この2人が全力でぶつかると色々拙い。統括理事長直々にストップ入れにきそうな組み合わせ。


固法「じゃあ、準備して」ヤレヤレ・・・

麦野「あいよー……じゃあ……左で」スッ・・・

神裂「分かりました」スッ・・・

固法「はい、ストップ」ピタッ

麦野「なんでよ!」エー・・・

固法「駄目なモノは駄目。そうでしょ、最愛ちゃん」ハァ・・・

絹旗「そうですね。超危険です」ジトー・・・


そんなに拙いのか。例の『左手』は。


麦野「大丈夫よー。ね、火織」フフッ

神裂「私は気にしませんけど」サラッ

麦野「ほーら」ニヤニヤ・・・

固法「うーん」ポリポリ・・・

絹旗「いや、神裂さん。麦野の左手は右手の数倍、超危険なんですって」ハァ・・・

神裂「知ってますが」サラッ


え。

何を、知ってるんだ?


麦野「ま、美偉と火織は『左手』と『右目』見たからね」サラッ

絹旗「ぇ……そうなんですか」タラー・・・

固法「ええ。何でそうなったかは深く聞いてないけど」ハァ・・・

神裂「……、」チラッ・・・


姉さんから『貴女も深くは聞くな』と目で合図された。皆さん、色々あった様で。


麦野「安心なさい。手加減してあげるから」ニヤリ・・・

神裂「む」ピクッ


あー、ヤバい。ああ見えて姉さんも負けず嫌いだ。今ので火が点いたぞ。


神裂「良いでしょう。受けて立ちます……固法さん、審判を」スッ・・・

麦野「ほれほれ。準備OK」ガシッ・・・

固法「んもー……危なかったら止めに入るからね」スッ・・・

神裂「構いません。(握力は以前と大差無い様に思えますが……都市製の義手がどの程度のモノなのか)」ガシッ

麦野「あいよー……火織ちゃーん。様子見なんかしたら、負けるわよ」フフフ・・・


レディ……ファイっ!


神裂「っ……ッッ?!」グッ・・・ピタッ!

麦野「ふふ……ふふふふっ!」ピタッ・・・


姉さんが、押せない!?


麦野「うふふふふ……あーっはっはっはっはっ!!」ピタッ・・・

神裂「くっ……これ程までに、強固とは」グググ・・・

麦野「いーひひひひっ! 火織ちゃーん……昔の私とは違うのよーん」ニヤリ・・・

絹旗「麦野、超悪の親玉みたいです。まぁ悪ですけど」ジトー・・・

麦野「うっせ! ほらほら、本気じゃないでしょう? もっと力みなさい……じゃないとっ!」グイッ!

神裂「っ……ふっ!!」ググググ・・・ピタッ

麦野「負けちゃうわよー。あ、そうだ……負けたら3日間、着せ替え人形ね」ニヤリ・・・

神裂「それは……困る……っ」プルプル・・・


それはそれで見てみたい気もする。
さておき、アレほど本気な姉さんは久しぶりに見た。多分、魔術抜きでの本気だろう。さて、身体強化を使うのか。


麦野「ほらほら。奥の手、使いなさいよー。じゃないと……ほれっ」グイッ!

結標「うわぁ……悪い顔」タラー・・・

絹旗「まさに麦野ですね……てか、今麦野何割ですか?」ジー・・・

麦野「7割ってとこかしら」サラッ

絹旗「へー……神裂さん超凄いですね」ジー・・・


麦野さんはまだ全力じゃないのに、何が凄いのだろう。

最愛ちゃんが解説を始める。


絹旗「麦野の左手の7割8割っていったら、私の能力の5割くらいですよ」ヘー・・・

結標「それ、凄いの?」ポカーン・・・

絹旗「私の5割は、アスファルトの地面殴って直径10mくらいのクレーター作れます」サラッ

固法・結標「「……、」」タラー・・・


それで人間殴ったら一溜りも無いんだろうなー……でもそれと競ってる姉さんも、やはり化け物だ。


神裂「っ……五和」プルプル・・・

五和「は、はい!」バッ

神裂「ステイルは……まだ、気絶、してますか?」プルプル・・・


未だにうつ伏せで倒れてます。


麦野「まーだ軽口開ける余裕があるのね……じゃあ、一気に潰すわよー……んッッ♪」ガッ!!

神裂「なら……良いでしょう……フンっ!!」ググググ・・・・ガッ!

麦野「うをっ!?」ピタッ・・・

神裂「……。(まさか、並の人間相手に魔力を使うとは)」グイッ・・・

麦野「なっ……ちょ、最新型の駆動鎧(パワードアーマー)並の馬力を!?」ググググ・・・

神裂「……麦野さん」ボソッ・・・

麦野「こ、こうなったら……トップギアでっ!!」キュイイイイィン・・・

神裂「っ……その義手は、丈夫ですか?」ググググ・・・

麦野「う、ぐぅ……都市製の、最新型って……言ったでしょ……うぎぎぎっ!」ググググ・・・


あ、ヤバい。


神裂「なら、大丈夫ですね……スペアもあるのでしょう―――」スッ・・・カッ!

五和「ねねねね、ね、姉さんストップ!!」アワワワ・・・

神裂「――――ッ―――」ガオンッ!!


機械が、壊れる音。


麦野「ぁ……い、痛だだだだだだぁ!!」キュルルルルッ・・・バキンッ・・・ビジバジビリビリ・・・

神裂「―――あ」バリイッ!!

固法「ちょ、そ、それまで!!」アワワワ・・・


麦野さんの左手が、もげた。それでもって、ターミネーターの映画みたいになってる!?


神裂「む、麦野さん!? ご、ごめんなさい!!」アタフタ・・・

麦野「いっっっってえええええぇ!! うぎゃあああぁっ!!」ジタバタッ!

絹旗「む、麦野! 超落ち着いて下さい! まず義手との神経回路シャットダウンして!」アタフタ・・・

固法「え、えっと、救急車呼んだ方が良いのかしら」アワワワ・・・

結標「すぷらったーっ!!? この惨状なんて説明すんのよ! と、とりあえず何とかなんないの?」ダラダラ・・・


この死愚累々の光景を見られるのは確かに拙い。兎に角、麦野さんの応急措置(?)に掛った。

上腕から漏れてる謎の発光物質を止め、今にも暴れ回りそうな麦野さんを総出で抑え込み……何とか収拾。


麦野「あー痛てて……負けたー」グデーン・・・

神裂「す、すいません」タラー・・・

麦野「謝んないでよー。負けた私が憐れじゃない……にしても、ホント強いわね」ジトー・・・

結標「要は駆動鎧と腕相撲して勝ったっつー様なモンでしょ? 有り得なくない?」タラー・・・

絹旗「私は勝てますけど」サラッ

結標「アンタは論外よ。まぁ皆バケモンって事ね」ハァ・・・


流石、我が姉にして教皇様。これが世界に20人といない聖人か。やはり人外もいいとこだ。


固法「はぁ。とりあえず、今の勝負神裂さんの勝ちだけど……もう終わりにしない?」ジー・・・

絹旗「え! 何でですか!?」エー・・・

固法「もう少しで香焼くん帰って来るもの。この有り様見たらどうなる事やら」タラー・・・


確かに。驚愕のあまり気絶しかねない。


結標「私は賛成」サラッ

神裂「やっといて難ですが……私も構いません」コクッ

絹旗「えー」ブーブー・・・


最愛ちゃんは消化不良な御様子。


絹旗「すぐ終わりますって。超即行で終わらせますから!」ネーネー!

結標「聞き分けのない子ね」ハァ・・・

絹旗「ふーんだ。負けるのが怖いからって逃げるんですか」ベー!

結標「……ええ、それで結構」フンッ

絹旗「きーっ! 大人ぶって! それでも同じ大能力者ですか!」ニャー!!

固法「意味が分からない……とりあえず、気絶してる皆起して夕飯に備えておきましょう」アハハ・・・

絹旗「むぅ」ジトー・・・


何だか可哀想だが止むを得まい。麦野さんからも何か一言。


麦野「まぁストレス発散として帰ってから浜面サンドバック替わりにすんのも程々にな」ビリビリ・・・

絹旗「しませんよ……脛蹴るくらいしか」ムゥ・・・

麦野「アンタ、この前も『肩パンくらい』とか言って骨にヒビ入れかけたじゃない」ヤレヤレ・・・

一同『……、』タラー・・・


あちゃー。このままだと浜面さんがピンチ。

姉さんと固法さんは無言で視線を合わせ、口を開いた。


神裂「え、えっと、あと一回だけ勝負してあげては?」タラー・・・

固法「そ、そうね。浜面くんの為にも」アハハ・・・

絹旗「え、良いんですか!」パアアァ!

結標「……えー」タラー・・・


ここはわざと負けて、さっさと夕飯の準備するのが手かと。


結標「はぁ……しゃーないわね」ヤレヤレ・・・

絹旗「うっし!」バンッ!

固法「準備早っ! えっと、じゃあ怪我しない程度にね」ポリポリ・・・


面倒臭そうな結標さん。反面、ノリノリでスタンバる最愛ちゃん。


麦野「あはは……悪いわね」ボソッ・・・

結標「ったく、カルパッチョ2枚よ」ヤレヤレ・・・

絹旗「何話してんですか! 超パパパッと片付けちゃいますから早くしてください」ウキウキ・・・

結標「はぁ……まぁやるからには勝つけどね」フフッ


先程と同じ手使うのか。


結標「一度見られた技使う程馬鹿じゃないわよ、私は」サラッ

絹旗「何でも良いですよ。私は負けませんから」フフフ・・・

結標「随分自信満々ね。私の能力とじゃ相性悪いでしょうに」クスクス・・・

絹旗「相性とか能力とか関係無しに勝つ方法がありますので……さぁ! 勝負です」スッ・・・


秘策アリ、か。


固法「それじゃあ、用意良いわね……ホント、お互い怪我させちゃ駄目よ」ジトー・・・

絹旗「……、」ジー・・・

結標「はいはい」スチャ・・・


始めっから軍用懐中電灯を準備する結標さん。能力使う気満々だ。


固法「えっと……最愛ちゃん、良いのかしら?」チラッ

絹旗「超構いません。超秘策がありますので」ジー・・・

結標「ふーん……そ。じゃあ遠慮しないわ。(居合い勝負って訳ね)」フフフ・・・


どちらが先に能力を使うかが勝敗の分け目か。


神裂「しかし、絹旗さんの秘策とは何なんでしょう? 心当たりありますか?」チラッ

麦野「あ? んー……あの力馬鹿がねぇ。まぁ言葉通り即行で倒すとかじゃないの? あの子、結構単純だから」ジー・・・


だがそれでは勝てない。現に私は負けた。

スピード勝負では神経伝達速度の関係上、勝てっこない。もしそれを上回るとすれば、それはフライングしかない。


固法「では……レディ……―――」

結標「……ふふっ」スチャッ・・・

絹旗「…………、」ニギュッ!

結標「……え」ピタッ・・・


今何か変な音した。


固法「―――ゴー!」カンッ!

絹旗「んっ」グイッ・・・


ぽてっ。


麦野「は?」ポカーン・・・

神裂「え?」キョトン・・・

固法「あ、れ? えっと……最愛ちゃんの勝ち」タラー・・・

絹旗「……、」パッパッ・・・


呆気無さ過ぎる。八百長試合の如く、結標さんが負けた。しかも両者力も入れず。


麦野「ありゃ。何だかんだ言って大人ね。アンタ」ジー・・・

結標「……、」プルプル・・・

神裂「ん……結標さん?」スッ・・・

結標「……ぃ」プルプル・・・

固法「え?」キョトン・・・

結標「いっ………………いったああああああぁあああああぁいぃっ!!」ウギャアアアァ!!

一同『っ!?』ビクッ!?


何が起きた。


結標「痛い痛い痛い痛いいったああぁいっ!! うわあああぁーん!!」ジタバタッ!

固法「け、結標さん!! どうしたの!?」アタフタ・・・


右手を抑えて転げ回る結標さん。


絹旗「あーあー。超大袈裟ですね」フンッ

麦野「アンタ……何したのよ」ジトー・・・

絹旗「別に。ちょっと力んだだけです」サラッ

麦野「ちょっとって」チラッ


結標さんの右手は、真っ赤に膨れ上がっていた。


結標「アンタ、ねぇ……っ……痛ぃ……マジ、ふざけんな」グヌヌゥ・・・ギロッ・・・

神裂「あ、暴れないで。急いで冷やしましょう。五和氷を!」ジー・・・


バケツに水とありったけの氷を準備して、結標さんの右手を突っ込む。簡易な応急措置だが、しないよりマシだろう。

結標さんがギャーギャー騒ぐ中、固法さんが最愛ちゃんに怒りの目を向ける。


固法「最愛ちゃん! 何したの!?」タラー・・・

絹旗「べ、別にそんなに怒らなくても……ただ、ホントに、ちょこっと力を込めただけで」ムゥ・・・

結標「っ……そいつ、『ゴー』の前に……握りやがって。痛たた……御蔭でこの様よ」プラーン・・・


所謂『握撃』。右手を握り潰そうとしたのか。だから開始直前、変な音がした訳だ。


麦野「アンタ、相変わらず手加減下手糞ね」ハァ・・・

絹旗「ほ、ほんとに超手加減しましたって! ソイツが超大袈裟なんです」タラー・・・

固法「最愛ちゃん」ジー・・・

絹旗「ほ、ホントですって。だって3割も出してな――」

固法「最愛ちゃん」ジトー・・・

絹旗「――い、で……す、よ」ムゥ・・・


固法さんに怒られてしょげる最愛ちゃん。


固法「もぅ……結標さん。右手、出して」スチャッ・・・キイイィ・・・

結標「っ」グッ・・・

固法「骨は……折れてないわ。ただヒビと剥離の可能性があるかも。とりあえず今は冷やして」スチャッ・・・

結標「あいよ……はぁ。マジ最悪だわ……こりゃ日常生活支障出るわね」ジトー・・・

絹旗「うっ」タラー・・・


固法さんの透視能力(クレアボイアンス)で骨の具合を見る。
尤も、固法さんの強度は強能力(レベル3)程なので大まかに骨が折れてるか如何かの判別くらいしかできないとか。

さておき、どうしたものやら。


神裂「五和」ボソッ・・・

五和「あ、はい」スッ・・・

神裂「結標さんに『治癒』を。簡易なモノで構いません」ボソッ・・・

五和「え、でも、良いんですか? 魔術による治癒は後々ばれると厄介ですよ」ボソッ・・・

神裂「だからばれない程度に……もし身内にばれたら私が適当に誤魔化しますから」コクッ


身内とは土御門やそこに転がってるマグヌスさんの事。
秘匿すべき魔術を滅多矢鱈に使うべきではない。ばれたら怒られるだろう……でもまぁばれなきゃOKです。


固法「最愛ちゃん。ごめんなさいは」ジー・・・

絹旗「……だって、ホントに手加減したんですよ」モジモジ・・・

固法「でも怪我しちゃったのよ」メッ・・・

絹旗「……、」ムゥ・・・

麦野「はぁ……頭下げる事覚えなさい。これからは『そういう生き方』も覚えてか無きゃなんないでしょ」チラッ

絹旗「……でも」ジー・・・

結標「別に良いわよ……でも、気をつけなさいよ。アンタの能力は意図せずしてこういう能力なんだから」ハァ・・・

絹旗「……言われなくても分かってますよ」ムスー・・・


反省してるが……謝りたくない御年頃なのだろう。しかし困った能力だ。『守る』面では便利だが『攻撃』の面では危険すぎる。

とりあえずこれ以上は危険と判断。固法さんが終了を指示する。


固法「もぅ……とりあえず皆起して夕飯の準備するわよ。麦野さんと結標さんはすぐ応急処置して」ハァ・・・

神裂「待って下さい」ジー・・・

固法「え」ピタッ・・・

神裂「……絹旗さん」チラッ

絹旗「え、あ、はい」キョトン・・・

神裂「此方へ」ジー・・・

一同『??』ポカーン・・・


テーブルの前に坐す姉さん。何をする気だ……まさか説教じゃあるまい。


絹旗「えっと、その」ポリポリ・・・

神裂「……決勝です」スッ・・・

固法「なっ!?」ギョッ・・・


まだ続けますか!?


麦野「ちょっと火織!?」タラー・・・

神裂「絹旗さん。貴女はきっと、腕相撲で負けた事がないのでしょう……いや、腕相撲だけの話では無い」ジー・・・

絹旗「は……何を」キョトン・・・

神裂「今から私が『本気』でも裕には勝てない相手になりましょう」スッ・・・

麦野「ちょ、か、火織! その子の本気の馬鹿力はホントにヤバいわよ。第一位(白モヤシ)にプレスされる様なもんで」タラー・・・

神裂「天使級が相手でも、私なら数分は持ちます。来なさい、絹旗さん」ジー・・・

絹旗「えっと……マジで言ってるんですか?」タラー・・・チラッ

固法「はぁ。私的には是が非でも止めたいのだけれども」ジトー・・・


姉さんに全力全開出されると困るのだが。だが、説教モードの姉さんは何を言っても聞き入れない。


神裂「すいません。しかし、こればかりは引けません」ジー・・・

固法「もぅ。最愛ちゃん」チラッ

絹旗「むぅ……麦野とそこの⑦。どっちが強かったですか?」ジー・・・

神裂「どっちもどっちです。能力の底力は削板くんでしょうが、素の力はサイボーグたる麦野さんの方が上でした」コクッ

麦野「サイボーグ言うなし。義手だ、義手」ハァ・・・

絹旗「じゃあ私はその両方を兼ね備えた超パワー型ですよ? その意味、分かりますよね」ジー・・・


最愛ちゃんの能力の本質は『守り』らしいのだが、鎧と盾を打撃武器にして戦うタイプ。
それも超重量級の防具(鈍器)を軽々振り回すので、攻勢で考えてもとても危険だ。


神裂「しかし絹旗さん。貴女は井の中の蛙です」コクッ

絹旗「え」ピタッ・・・

神裂「貴女は確かに学園都市の中では指折りの力持ちなのでしょう。しかし『世界』には貴女レベルの存在は最低20人はいます」ジー・・・

絹旗「へぇ。そんな連中とやりあった事があるんですか?」ジー・・・


『かもしれません』とテーブルに肘を置き、準備をする姉さん。固法さんはもう諦めた御様子。

最愛ちゃんも流石に止めようと思っていた様だが、これだけ啖呵を切られては引く気になれない。


絹旗「まぁ良いでしょう。麦野の左を倒せるなら良い勝負は出来るのかもしれませんし」スッ・・・

神裂「結構……加減は無用です。もしかしたら、私が胸を借りる立場になるかもしれませんけどね」ガシッ


始めっから身体強化アリでいく気だろう。最愛ちゃんも目が本気だ。2人が手を伸ばし、ポジションを取る。


神裂「固法さん、ジャッジを。(これが『装甲』ですか。魔術の衣(ベール)を纏った魔術師と対した事はありますけど、これは違う)」ジー・・・

絹旗「っ……準備OKです。(『籠手』に掛る負荷が大きい……相当な握力ですね)」グッ・・・

固法「え、まだ私が審判するの」タラー・・・


戸惑う固法さん。難儀な事で。それから硬直状態が続き……数分後、部屋のドアが開いた―――





 ―――回想終了・・・香焼side・・・





香焼「―――色々ツッコミたい事だらけなんすけど」ドヨーン・・・


鍵やら何やら。


香焼「兎に角、2人を止めないと」ハァ・・・

五和「あれ? コウちゃん、話聞いてた?」キョトン・・・


勿論聞いてた。でも納得できない。


麦野「甘ちゃんが」ベシッ

香焼「あうっ!? む、麦野さん?!」ビクッ

麦野「アンタの姉ちゃんが直々にウチの力馬鹿説教してくれるってんだから、黙ってみてなさいよ」ハァ・・・

固法「麦野さん、ちゃんと服着て! 男の子の前よ」アタフタ・・・

麦野「この子は半分女だから良いのよ」サラッ

香焼「じ、自分は正真正銘男っすよ!」アタフタ・・・


義手を外してきて、服を切るのが面倒だったのかかなり際どい恰好の麦野さん。上半身、下着とYシャツだけでかなり肌蹴てる。
って……勝手に人を女子扱いしないで欲しい。あくまで『香(カオル)』は仕事上の変装姿だ。


麦野「私の胸チラ見て欲情しないインポ野郎は女で十分よ……それより邪魔しちゃ駄目だからね」ジー・・・

香焼「イン……ったく」ハァ・・・


話を聞く限り、姉さんは最愛に『敗北』を教えたいみたいだが……実際どうだろう。
失礼ながら、内心『私も本気を出せそうです(ワクワク)』とか思ってるんじゃなかろうか。結構バトルジャンキー気質あるからなぁ。


神裂「香焼、あとで説教」チラッ

香焼「な、何も言ってないでしょう!」アタフタ・・・

神裂「顔に書いてあります」ジトー・・・


心の声(地の文)を読まないで下さい。

ホント、貴女は読心能力持ちですかっての。


五和「コウちゃん。基本、心の声が全部漏れてると思った方が良いよ」ハハハ

香焼「そんなんあって堪るか! というか、もう自分帰って来たんだからご飯にしましょうよ。他の皆も起して、ね」タラー・・・

麦野「くどい」グイッ・・・

香焼「あうわっ!?」モフンッ!

麦野「良いから黙って見てなさい」ジー・・・

香焼「う、うがっ! ふ、ふぎほはん! くふひい!(麦野さん、苦しい)」ジタバタッ

五和「あー、コウちゃんがまたラッキースケベってるー。アニェーゼ達に言ってやろー」フフフ・・・


腋でチョークを固められた。五和が何か言ってるが苦しくて良く分からない。


結標「てか、いつまで硬直してんのよ。さっさと始めたら」ジー・・・

神裂「……固法さんが」チラッ

固法「え」ピタッ・・・

絹旗「姉貴さん。いつ合図を出すんですか?」チラッ


何だ、律義に審判待ってたのか。


固法「えっと……ホント、これ以上怪我人出しちゃ駄目よ」ハァ・・・

神裂・絹旗「「……、」」ジー・・・

固法「んもぅ……それじゃあ……レディ……、」ジー・・・


空気が張り詰める。そして……嫌な予感がする。


固法「……ごー」カンッ!

神裂「フンッ!!」グイッ!

絹旗「っ!? ホントに……強いんですね」ギョッ・・・グググ・・・

神裂「っ……ムンッ!」グイッ!

絹旗「私、6割は出してるんですけど……流石、麦野の左に勝っただけはあります」ジー・・・


初手は姉さんがリード。多分、最愛は油断したのだろう。でもまだ余裕がある。


絹旗「ですが、やはり私には勝て―――」

神裂「お喋りが過ぎます……よっ!!」グイッ!

絹旗「―――ッっ?!」ギギギ・・・


姉さんもまだ全力では無かった様だ。最愛は慌ててギアを上げる。


結標「よく分かんないけど……凄いってのは分かるわ」タラー・・・

固法「だ、大丈夫よね。2人とも、怪我しないわよね」ハラハラ・・・

麦野「問題無いわ。2人とも、そこの⑦(根性馬鹿)並に頑丈だから」チラッ

五和「問題は……テーブルが」タラー・・・


え。

嫌な音がする。


神裂「ぐっ……ッ!!」ググググ・・・ギシギシ・・・

絹旗「んっ……くーっ!!」ピタッ・・・ミシミシ・・・


うそーん。


結標「お、チビが巻き返してきたわ」ホー・・・

麦野「7,8割かしら……というかこれ以上力出したら、あの子『反転』するわよ」ジー・・・

固法「は、『反転』って?」キョトン・・・

麦野「どこぞの白髪ネギ(セロリ)みたくなんのよ」チラッ


確か能力使用時に精神が高ぶると一方通行(アクセラレータ)さんみたいになるんだった。
F(ファッキン)口調を多用して……あれ? そういえば姉さんもキレるとF口調多用するよね。


五和「姉さんのF口調は素ですから」ハハハ

結標「え? アイツ、粗暴な言葉使うの?」キョトン・・・

五和「滅多に言いませんけどね。マジギレすると言いますよ」タラー・・・

結標「マジで? どんな感じに?」ヘー・・・

結標「それこそさっきの麦野さんみたいな口調とか、『るっせんだよ、ド素人がぁ!!』とか」ハハハ・・・

麦野・固法「「嘘っ?!」」ギョッ・・・


またオマエは余計な事を。姉さん、横目で睨んでるぞ。


絹旗「ぐっ……ンぎぎィ!! 本気で……超、強いンですね……っ」ググググ・・・グイッ!

神裂「をっ!? っ……いよいよ、本気ですか……ッ!!」ピタッ・・・

絹旗「う、ぐゥ……むンッ!!(マジ、人間ですか?! 私の『装甲』と張り合うとか超有り得ないですけどっ)」グガンッ!

神裂「チィっ! ぉ……これ程の、力とはっ。(純粋な力と考えれば『後方』並……いや、それ以上かっ)」グギャンッ!

絹旗「うゥっ!(六枚羽の特攻よりも、強い……ッ……ですねッ)」グゴンッ!!

神裂「ぐっ……ハァっ!!(末恐ろしい……だからこそ、この子を勝たせてはいけないっ)」ガギンッ!


凄い音が鳴り響いてる。何だ、これ。


五和「何って……テーブルの悲鳴でしょ」ジー・・・

香焼「え……ええぇ!? ちょ、な、ま……審判!?」バッ・・・

固法「香焼くん……ごめん、無理。私あの2人止める自信無いな」アハハ・・・

香焼「え、う、うそ……麦野さん、淡希さん!」バッ・・・

麦野・結標「「むりー」」ビシッ

香焼「……うぇ」ドヨーン・・・

五和「わ、私に頼ってくれても良いのよ」チラッ・・・

香焼「一番頼んなんねぇ」フンッ

五和「」チーン・・・


ヒビとか凹みとか、凄い事になってるんだけど。兎に角……って、もう手遅れっぽい!

咄嗟に止めに入ろうとしたが、無理だった。


神裂「ぐっ……チェストオオオオォッ!!」グワラゴワガキーン!!

絹旗「にっ……ドォルラアアアアァッ!!」ドガラガッシャーン!!

香焼「つ、机が二つに割れたあああぁ!!」ギャアアァ!!


それでもなお止めない2人。


香焼「ちょ、床で勝負すんのは無し! 下の住人が!!」アワワワ・・・

固法「えっと、大丈夫。下は空き部屋よ」キュイイイイィン・・・

香焼「冷静に能力使わないで下さい、そしてその情報2人に伝えないで下さーいっ!!」ウワーン!


上半身を器用にそのままの姿勢で垂直移動し、勝負続行する2人……早速肘の下、床凹んでるし!?


神裂「ぬ、おおおおおぉ!!(術式開放っ!! 全魔力を右腕と右肘にぃ!!)」ミシミシ・・・

絹旗「は、あああああァ!!(『装甲』を全て『籠手』と『肘甲冑』にぃ!!)」バキバキ・・・


力は互角。ただし重機と重機がぶつかり合っている様なモノ。これは床が持たない! 助けて上条さーん! 浜面さーん!


麦野「うっせ。ビービーギャーギャー泣いてんじゃないわよ。そんなんだから女扱いされんの」ジー・・・

固法「あははは……2人は今頃ご飯食べてるんでしょうねー」トオイメー・・・

五和「英雄は、ギャグパートには、現れず。コウちゃん心の俳句」サラッ


メタい事言ってんじゃねぇ。


神裂「ぐっ……ッッッ!!(っ!? 多少、力が弱まった?!)」グググ・・・グイッ!

絹旗「うっ……っっ(くぅ……疲れ、が)」ピタッ・・・ミシミシ・・・


最愛が微妙に押され始めた。一体何が起きたんだ?


麦野「あー……弱点出たわね」ハハハ・・・

結標「弱点?」チラッ

麦野「素の力よ。見ての通り、あの子は能力に頼りっきりだから素の力は歳相応以下なの」ジー・・・


それは知ってる。だがそれを能力でカバー出来るんじゃないのか。


麦野「普通ならね。でも、そうそう有り得ないけど相手が自分と互角またはそれ以上の時は、スタミナの消費が激しくなる」クイッ

結標「ふーん……じゃあ純粋にガソリン切れ?」ジー・・・

麦野「そゆこと」ハハハ・・・


確かに……前に佐天さんと一緒にやってる早朝ランニングに連れて行ったが、1km過ぎた辺りでバテてた。


神裂「(好機!)っ……フンッ!!」グイッ!

絹旗「う、にゃ……くっ!」プルプル・・・

神裂「っ……貴女は、十分強い! しかし、それでも勝てぬ相手もいるのです。私の様な無能力者(レベル0)にさえ、勝てない!」グググ・・・

一同『いやいや』ビシッ


誰も貴女の事を『無能力』だと思ってませんから。

最愛が踏ん張る。もう折れる寸前だが、意地で支えてるのだろう。


神裂「しかし……これで終わりですッッ!」グワンッ!!

絹旗「ッッ……く、そぅ」ウニャァ・・・


勝敗が決まる。漸く、終わる。


結標「……ほら」ツンツン・・・

香焼「え」キョトン・・・

結標「応援したげたら」ジー・・・

香焼「え、な、何を」ポカーン・・・

結標「友達なんでしょ」フフフ・・・

香焼「はえ。い、いや……まぁ、そうっすけど……いやいや、それとこれとは」ポリポリ・・・

五和「コウちゃん、薄情者ねー」ブーブー

香焼「おま」ジトー・・・

五和「ははは。まぁカオリ姉さんは応援しなくても怒らないわよ。それより……最愛ちゃんね」フフフ・・・

香焼「……、」ジー・・・


僕が如何こうしたからって、変わりはしないだろう。というか終わるならさっさと終わって欲しいのだが。


麦野「喧しい。応援なさい」ガシッ

香焼「うわっ!?」アタタ・・・

麦野「ほれー、絹旗ちゃーん。こっちの坊やが応援してるわよー」オーイ

香焼「ちょ、む、麦野さん!」アタフタ・・・

絹旗「っ!?」チラッ


目が合った。必死な顔。此処まで苦しそうな最愛はマラソンの時以来だ。


結標「ほれほれ」ツンツン・・・

香焼「え、あ、うん……頑張れ、最愛」コクッ

絹旗「っ……んっ」グッ・・・

神裂「……ふっ」ググググ・・・ピタッ・・・


多分、此処で負けたらこれから待ち受ける『日常』でのハードルにも、簡単に屈してしまうだろう。


香焼「負けても良いよ……でも、諦めるな」ジー・・・

絹旗「くっ……言われなくても……っ……そうしますよっ!! てか……負けませんッッ!!」ウギギ・・・

神裂「……、」フフフ・・・


寸前の所で、最愛が巻き返す。ただ、姉さんの余裕な表情を見るに手心を加えている様だ。

早く終わって欲しいとは思うものの、やはり簡単には諦めて欲しくない。


麦野「へぇ」ニヤニヤ・・・

香焼「……何すか」ムゥ・・・

麦野「別にぃ。ただ、あの子の扱い方上手になってきたわね」フフフ・・・

香焼「扱ってなんかいません。普通に応援しただけっす」ジー・・・

結標「まぁまぁ。初々しいわね。甘酸っぱー」ニヤニヤ・・・

五和「良いですねー。少年漫画っぽくて」フフフ・・・


勝手に言ってろ。


絹旗「んっ……うにゃああぁっ!!」ググググ・・・

神裂「っ……ふふっ」クスクス・・・

絹旗「う、ぎぎ……負ける、もんですかぁ……っ!!」ググググ・・・

神裂「……、(信頼ですか……確実に『救いの手』は伸びている様ですね、香焼)」フフッ


最愛が巻き返す。ただ姉さんの余裕な表情を見るに手心を加えている様だ。


神裂「……絹旗さん」ジー・・・

絹旗「ぐぅ……ふんっ!!」ググググ・・・

神裂「頑張って基礎体力をつけなさい。せめて、一般的な女子中学生くらいに」ジー・・・

絹旗「むっ……ハァッ!!」ググググ・・・

神裂「さすれば……今の倍は強くなる筈です……頑張りなさい―――」ガオンッ!!


そう言って、姉さんは……力を込めた。


絹旗「―――あ」バンッ・・・


決着がつく。最後は何とも、呆気無かった。

 ―――とある日、PM07:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・・






その後、気絶してる連中を起し後片付けを終え、夕飯に。


絹旗「はぁ」ドヨーン・・・

香焼「最愛」ジー・・・

絹旗「……ん」モグモグ・・・


負けたのがショックだったのか、箸の動くスピードが遅い。


ステイル「まったく、テーブル無しの食卓とは……民度が低いにも程がある」ヤレヤレ・・・

神裂「床で団食を取る国は結構ありますよ。馬鹿にしない」モグモグ・・・

削板「そうだぞ。まぁ宴会みたいで良いじゃねぇか」モグモグ・・・

ステイル「割れたテーブルが部屋の端にあるのに呑気だな。というか、床まで凹んでるし」ジー・・・

浦上「私達が気絶してる間に何があったんですかネ」ハハハ


それはそれは、悲惨な光景が。


五和「まぁまぁ。とりあえず業者にお願いして床修理しましょう。あと、新しいテーブルも調達して」コクッ

麦野「知り合いのインテリアショップから安値で仕入れといてあげるわ。カタログ持ってくるから選びなさい」モグモグ・・・

結標「あ、私もそのカタログ見たい。小萌の部屋、昭和の家具しかなくて困ってんのよ」モグモグ・・・

削板「良いじゃねぇか、趣があって。ん……カルパッチョ、喰わねえなら貰うぞ」チラッ

絹旗「……、」モグモグ・・・

削板「おーい……貰うぞー」チラッ

絹旗「……どーぞ」モグモグ・・・

削板「お、おぅ」スッ・・・

固法「削板くん」チラッ

削板「あ……うぃ」ピタッ・・・


調子狂うなぁ。


ステイル「おい……何があった」ボソッ・・・

香焼「ん……最愛、全力出して姉さんに負けたんだ」ボソッ・・・

ステイル「いや、普通神裂に勝てないだろ」チラッ

香焼「姉さんも全力出した。身体強化もフルスロットルで」コクッ

ステイル「……あの娘、バケモノか」タラー・・・


普通の子だよ。能力がちょっと強力なだけ。

無口な最愛の姿を見て、溜息をつく麦野さん。


麦野「ったく、偶に負けるとホント暗くなるんだから……あ、火織。サラダちょーだい」アーン・・・

神裂「はいはい……って、何故私が親鳥みたいな真似を」スッ・・・

麦野「アンタが左手ブッ壊したからでしょ。因みに、治(直)るまで私の片腕(恋人)だから」パクッ・・・ニヤリ

神裂「はぁ!? というか、麦野さん右利きでしょう!」ジトー・・・

麦野「細けぇ事は良いのよ。次、米ちょーだい」フフフ・・・

結標「じゃあ私も右手痛いから……香焼くん、あーん」アー

香焼「はい?」ポカーン・・・

結標「あーん……だって利き手痛いんだもん。だからー」アー

香焼「……はぁ」スッ・・・

絹旗「ふんっ」ズビシッ!

結標「ぐえっ!?」ゲホゲホッ

絹旗「私のせいなんだから、私が喰わせますよ……次はツマヨウジで良いですか」ジトー・・・

結標「てめ、マジふざけ……あ、嘘。自分で食べます」タラー・・・


そうしてください。じゃないと口の中穴だらけになります。因みに五和の『治癒』の効果もあって淡希さんの右手は腫れ以外、殆ど治っている。


五和「私は肩痛いままなんだけどなぁ」アハハ・・・

固法「あははは……まぁそこまで強く打ってないと思うけど、介助必要?」チラッ

五和「あ、いえ、大丈夫です」ポリポリ・・・

麦野「あー、美偉が浮気したって黒妻くんに言ったろー。しかも相手は五和だって。ショック受けるわよー」ヒヒヒッ

固法「意味分かんないわ。第一、五和さんは……あ、うん」ジトー・・・

五和「……、」モグモグ・・・

神裂「……、」パクパク・・・


暗黙の了解。この2人が一緒に居る時に好きな人の話題を振らない事。


麦野「え、と……ほら、じゃあ怪我させたの結標だし、アンタが介助すりゃ良いんじゃね」ハハハ・・・

結標「訳分かんないわ。私も右手痛いのにどうやって」ハァ・・・

麦野「そりゃ能力で、ヒョイッと」スッ・・・

結標「んな下らん事の為に能力使いたかないわよ……しかも微妙にズレたら珍妙な事故に繋がるわ」ジトー・・・


確かに、頬からカルパッチョとワカメが飛び出てる五和を見たくはな……あ、やっぱ見たいかも。


五和「コウちゃん酷っ!」ジトー・・・

浦上「んでもって、それ写メって建宮さん達に送りましょう! きっと大ウケ間違い無しですヨ」フフフ・・・

五和「う、ウラ!!」ムギギ・・・


皆が笑う。やっといつもの調子に……一人除いて。


絹旗「……、」モグモグ・・・

香焼「……むぅ」ジー・・・


やれやれ、難しいな。

 ―――とある日、PM08:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・・





最終下校時刻は当に過ぎた。男子2人と身内(3姉妹)以外は帰り支度を始める。


麦野「浜面、あと15分くらいで来るって。ったく、さっさと迎え来いっつの」フンッ

固法「いやいや、結構距離あるのに15分は早いでしょ……そんなに飛ばして来ないでよ」タラー・・・

結標「にしても、相変わらず悪いわね。送って貰っちゃって」チラッ

麦野「美偉のついでよ。じゃなきゃ放り投げてるわ」サラッ

固法「こらこら」ハァ・・・


毎度毎度タクシー代わりに呼び出される浜面さんも不憫だな。さておき、未だに静かな猫さん一匹。


もあい「なぅ」ペシペシッ

絹旗「……、」ニャー・・・


困ったな。どうしたものか。


削板「……おい、香焼」ツンツン・・・

香焼「あ、うん」ポリポリ・・・

ステイル「君の仕事だろ、ああいうのは」テクテク・・・

香焼「うーん」ポリポリ・・・


と言われても。


ステイル「やれやれ……一服して来る」ガララ・・・

香焼「え、はい」コクッ

削板「そんじゃ……俺は帰っかな。そろそろ俺の助けを必要とする連中が増える時間帯だ」ヨイショッ


相変わらず自警活動か。毎日欠かさず続けて、ホント、軍覇は凄い。


削板「日課だしな。俺にしか出来ない事よ……ま、お前にしか出来ない事もあるだろ、香焼」ポンッ

香焼「え」キョトン・・・

削板「じゃあな。また来るぜ」ガララ・・・バッ!


颯爽とベランダから消える第7位。ビルからビルへと飛び移って行った……これまた危険な真似を。
さて、五和と浦上は食器を片付けてるし、姉さんは麦野さんの帰り支度の手伝い。

残ったのは、僕ら2人。


香焼「ん……最愛。もう浜面さん、迎え来ちゃうよ」チラッ

絹旗「……はい」ジー・・・

もあい「みー」チラッ


覇気の無い声が返ってくる。とても気拙い。

仕方ない……率直に聞くか。


香焼「えっと、その……負けたのが悔しい?」ジー・・・

絹旗「……どうなんでしょう」ムゥ・・・

香焼「分からない?」ジー・・・

絹旗「……、」コクッ・・・


複雑な心境らしい。素直に負けを認められないのだろうか。


絹旗「いえ、負けは負けです。超完敗でした」ジー・・・

香焼「そう、かな。頑張ってたじゃないか」コクッ

絹旗「確かに、頑張りました。超頑張りました」ムゥ・・・

香焼「だから、悔しいんでしょ」スッ・・・

もあい「にゃっ」スタッ・・・

絹旗「でも……何て言うのか」ジー・・・

香焼「ん?」キョトン・・・


何かを言い淀み、ボソボソ呟き始めた。


絹旗「負けるのは、初めてじゃないんです。というか、私はしょっちゅう負けてますよ」ムゥ・・・

香焼「……そうなの?」ポカーン・・・


無敵要塞の最愛でも負けるのか。


絹旗「まぁ私は、何だかんだで弱点だらけですからね。そこを突かれれば負けます」コクッ

香焼「確かに物事に絶対は無いからね」コクッ

絹旗「でも、純粋な『力』勝負で負けたのは初めてでした。しかも能力云々抜きでの人間相手にです」ハァ・・・

香焼「カオリ姉さんは……規格外だから」ハハハ・・・

絹旗「でも、負けは負けです」ムゥ・・・


絶対的な自信があった。だから『自力』勝負で負けた事が悔しいのか。


絹旗「もしこれが殺し合いなら私は―――」

香焼「最愛」ジー・・・

絹旗「―――っ……ごめんなさい」ビクッ・・・


もう、君は『卒業生』だ。


絹旗「すいません。ただ……もしこれから先、何らかの自体で神裂さん程の力の持ち主が現れたら、私の装甲では耐えきれませんよね」ハハハ・・・

香焼「……、」コクッ

絹旗「でも、それは良いんです。負けそうになったら別の手を使えば良いし、最悪逃げれば良い。超恰好悪いですけどね」ポリポリ・・・

香焼「生きてなんぼでしょ。行き恥云々言うのは戦人だけっす」ジー・・・

絹旗「ええ。まったくです。私は騎士道とか武士道とか、そんなの語る気サラサラありませんから」ジー・・・


では、何故そこまで悩む。

一寸の無言の後、ボソリボソリと恥ずかしそうに口を開いた。


絹旗「……から」ボソッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

絹旗「応援、してもらったのに……負けちゃいましたから」モジモジ・・・

香焼「……ぁー」ポリポリ・・・


成程。


絹旗「折角、応援してもらったのに……超情けないですよね」ハハハ・・・

香焼「最愛」ジー・・・

絹旗「あーもう……ごめんなさい」ハァ・・・

香焼「……まったく」ポンッ

絹旗「っ!?」ビクッ・・・


そんな事で悩んでたのか。


絹旗「そ、そんな事って……むぅ」ムスー・・・

香焼「ははは。まぁさっき、姉さんも言ってたでしょ。まだまだ伸びるって」フフッ

絹旗「……うーん」ジー・・・

香焼「頑張ろう。最愛」フフッ


今まで、大した努力もしてこなかったのにこれだけ強いんだ。努力を重ねればもっともっと強くなる。
それこそ、超能力者(レベル5)に近付ける程に。


香焼「自分も、最愛に負けないくらい頑張るよ。だから一緒に努力しよう」フフッ

絹旗「……はい」フフッ・・・

香焼「頭に『大』より、『超』が付いてた方が最愛らしいよ」クスクス・・・

絹旗「んもー。馬鹿にして」フフフッ


それで良い。お互い頑張ろう。


神裂「調子が戻った様ですね」テクテク・・・

香焼「姉さん」チラッ

絹旗「ええ。大分、ショックでしたが、何とか」フフッ

神裂「結構。その意気です」フフッ・・・ポンッ


力強く頭を撫でた。


絹旗「次は負けませんよ」フンッ

神裂「ふふっ。一朝一鍛で抜ける程、私は弱くありませんよ……励みなさい」クスッ

絹旗「ええ。絶対、勝ってみせます」ニカッ!


姉さんに勝てるようになったら、世界でも屈指のパワーリストになるだろう。

尤も、力だけが全てでは無い。知恵や精神力も必要だ。
全てにおいて完璧な姉さんに勝つには、そういった点でも成長しなければなるまい。


神裂「ふふふっ。では、そうですね……こういうのはどうでしょう―――」ボソッ・・・

絹旗「え……―――っ!!?」カアアァ///

香焼「ん?」ポカーン・・・

神裂「―――……ふふっ。そういう事で」クスクス・・・

絹旗「わ、にゃ……が、頑張ります! 超頑張ります!」ニャー///


姉さん、何を言ったんだ?


神裂・絹旗「「内緒です」」フフフッ

香焼「えー」ポリポリ・・・


気になるなぁ。


神裂「さて。そろそろ迎えが来ますよ。支度をなさい」クスクス・・・

絹旗「はい!」パタパタ・・・

もあい「みゃー」パタパタ・・・

香焼「はぁ……姉さん、何言ったんすか?」チラッ

神裂「さぁ。とりあえず、頑張れとね」フフフ・・・

香焼「もぅ、誤魔化して」ジトー・・・

神裂「2人だけの秘密です……さておき、香焼」チラッ

香焼「何すか」ジー・・・

神裂「伸ばした『手』を、きちんと掴んで貰ってる様ですね」フフッ

香焼「……、」ピタッ・・・


救いの手。ただ伸ばすだけではなく……その手を掴んで貰わねば意味が無い。


神裂「きっと、あの子だけではない。貴方が伸ばした『手』は、確実に皆に届いているのでしょう」ポンッ

香焼「だと、良いんすけど」ハハハ・・・///

神裂「ええ……これからも頑張りなさい。彼女もますます強くなる様です。負けぬ様に、ね」フフッ

香焼「ははは、厳しいっすね」ポリポリ・・・


一度掴んだ手は離さぬ様、放されぬ様。


神裂「その『手』は何れ『環』を為します……いつかは『彼』程に、大きくなるやもしれません」コクッ


歯が浮く様な台詞だが、姉さん(女教皇様)が言うと重みがある。

皆の英雄になりたいだなんて思わない。でも、せめて目に見える範囲の救えるモノは『手』を伸ばしたい。
どんなに困難でも、諦めない。それが、平穏の中でしか『手』を伸ばせない、ちっぽけな僕の願いだ……―――

<おまけっ!>



五和「さてさて、お客人は帰りましたか……あ! 思い出した!」ピンッ!

浦上「お姉、どったの?」チラッ

五和「鍵!」ビシッ

一同『あ』ピタッ・・・

浦上「そいやぁ、そんな話題してましたネ。てかそれが切欠か」ニャハハ

五和「コウちゃん、どうする?」チラッ

香焼「どうするも何も……ステイルの言う通りで良いんじゃないのかな」コクッ

五和・浦上「「」」チーン・・・

ステイル「Yes!!」ビシッ

神裂「ふむ……それだと、今までの夕飯当番のローテーションが崩れますよ」ジー・・・

五和「お風呂掃除当番とか洗濯当番もズレちゃうよ! 良いの!?」ビシッ

香焼「あ、うーん……それは確かに困るな」ポリポリ・・・

ステイル「と、当番って……君達、ホント兄弟姉妹みたいな事を」タラー・・・

五和「そりゃ姉弟ですから!」ムンッ!

浦上「それじゃあ……マグヌスさんも参加します。家事のローテー」ニヤリ・・・

ステイル「ぐっ……仕方ない。この件は保留だ」タラー・・・

五和・浦上「「いやったー!!」」ヒャッホー!

神裂「助かりましたね」ハハハ

香焼(ステイル、とことん日常色に弱いなぁ)ハハハ・・・



 ―――一方……



固法「―――浜面くん。どうも、ありがとうね」バタンッ

浜面「いえいえ、兄貴によろしく。それでは……―――……はぁ。俺はいつから無賃タクシー屋に」ハァ・・・

絹旗「昔からでしょー。ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふーん♪」ウキウキ・・・

麦野「アンタ、どったのよ。ドンヨリしてたと思ったら急にテンション上げちゃって」ジー・・・

絹旗「ふふふ。何でもありませんよー」フフフッ

麦野「はぁ。まぁ良いけど……そいやぁさっき、火織と何話してたの?」チラッ

絹旗「んふふー。内緒ー♪」ニコニコッ

麦野「……いらっとするわね。片腕だけど暴れるわよ」ジトー・・・

浜面「お願い、暴れないで! 車換えたばっかりなんです!!」ウワアアァ・・・


 ギャーギャー・・・・


絹旗(ふふふ……『私に勝ったら、鍵を譲りましょう』……ふふっ! 超楽しみです!)ニコニコッ

  ≪おまけっ!!≫


アニェーゼ「はーい。という訳で私達も腕相撲しまーす」ビシッ

カルテッ娘『いえーい!』ヤー!

香焼「何が、という訳なんだろう」タラー・・・

ステイル「知るか。というかまた僕の部屋で」ハァ・・・

レッサー「最初の組み合わせは言い出しっぺのアニェーゼと……コウヤギでーす!」ビシッ

アニェーゼ「うっし! ボコります!」フンッ!

香焼「えー……危険な魔術使うの無しっすよ」タラー・・・

サーシャ「無論です。第一の確認ですが、基本、使って良いのは身体強化だけですよ」コクッ

アンジェレネ「大丈夫。誰かさんみたいに、負けそうになったからって掌から火焔なんて出しませんよー」フフフッ

ステイル「ぐっ……何故それを」タラー・・・

レッサー「さーさー。さっさと始めましょう! それじゃあセット!」ジー・・・

香焼・アニェーゼ「「ん」」スッ・・・ガシッ

サーシャ「第一の予測ですが、純粋な力ならコーヤギーでしょうね。だけど、アニェーゼの方が魔術師としての格は上です」ジー・・・

アンジェレネ「でも、身体強化特化って訳じゃないですからね。その点、普段使い慣れてるコォヤギくんに分があるかな」コクッ

レッサー「レディ……ンゴー!!」カンッ!

香焼「んっ!」グイッ

アニェーゼ「ん、ぎっ!」ググググ・・・

ステイル「やはり香焼の方が有利か」プカプカ・・・

サーシャ「ですね……って、第一の忠告ですがドサクサ紛れて煙草喫わないでくれます?」ジトー・・・

アンジェレネ「『此処は僕の部屋だ』って言うのも無しですよ」ジトー・・・

ステイル「此処は僕の……チィ!」ケシケシ・・・

アニェーゼ「外野五月蠅ぇです! くぅ……わんこに負けるなんてぇ……ぐぅ!」ギギギ・・・

レッサー「悔しい!(ビクンビクンッ!) でも感じちょばぁわっ!!」ゴツンッ

アニェーゼ「うっせ!! 黙れ淫売女!!」ウガアアァ///

レッサー「うぎぎ……仕方ない。援護しますか……ねぇ、コウヤギ」チラッ

香焼「んっ……何、さ……ふんっ!」グイッ

レッサー「最後に右手で○○○○ったの、いつですか?」サラッ

香焼「ぶをっ!?」カアアァ///

アニェーゼ「し……死ねええええぇ!!!」ゴガンッ!!

香焼「ぬわぁ! って痛たたたたたぁっ!! 負けた! 自分負けたからああぁ!! もう放してえええぇ!」ギャー!!

アニェーゼ「五月蠅い!! 変態犬!! 盛り犬!! 去勢しやがれってんです!!」ガンガンガンッ・・・カアアァ///

香焼「何で自分があああぁ!!」フコーダー!!

レッサー「ふひひwwさーせんwww」ケラケラケラ!

アニェーゼ「テメェも死ねええええぇ!!」グオンッ!!

レッサー「んぎゃあああぁ!! ハイキイイィック!!」アベシッ!!

ステイル・アン・サーシャ(((馬鹿だ)))ハァ・・・




白い甲虫さん「おわるよ」ビシッ!

はい。以上です。

久々のSSだったので、リハビリがてらでした。多々不備があったと思いますが御了承を。
今後ですが、超スローペースでの投稿となると思います。書き溜めするか思い付きで書くかは未定です。

因みに、次回の話はアバウトにしか決まってません。特に英国編はどうしようかなーと。
ただし基本主役は香焼でサブは3姉妹&ステイル。加え、都市編は絹旗。英国編はカルテッ娘がサブ。
場合によっては香焼以外の3姉妹が主役もありです。



とりあえず次回のアンケート!

①都市編:折角超電磁砲2期やってるんで、黒子の話。

②都市編:WWⅢ後という事で、海鳥の話。

③英国編:現状思い付かないので、カルテッ娘の内の誰かをメインにした話。

④その他:都市でも英国でも、それ以外の国やキャラでも、何でもリクエストをどうぞ。(劇場版以外)



それではアンケート協力、今後の意見、リクエスト、質問、感想、罵倒を頂けると嬉しいです。
んじゃまた次回! ノシ”

>>73…だったら「あまくさっ」の中での違う出会いを見てみたいな。
アニェーゼと絹旗の絡み(香焼関係での)がまた見たいし

こんばんわ。アンケは……②の黒夜話かな。黒子と英国はまた次回以降に。

>>75・・・やるとしたら別シュチュにすべきか、それとも以前のをリスペクトして書き直した方が良いでしょうか?

それではボチボチ投下します!

 ―――とある日、PM05:00、学園都市第7学区、とある仮眠室(レストハウス)・・・黒夜side・・・




電話の女『―――……だーかーらっ! 何でもっと上手にやれないのよ! このスカタンっ!!』ガーガー!!


あーもう。ホント……五月蠅い。


電話の女『はぁ……マジメに聞いてる? どうせ聞いてないんでしょうねーっ。こいつときたらっ! 第一ねぇ……―――』ガミガミ・・・


喧しい。これだから年増(オバン)のヒスは嫌なんだ。
研究所時代からそう。野郎の研究者より女の研究者の方が色々面倒。無駄にネチっこかったり声荒げたり陰険だったり。
やっと肩身が楽になったかなーと思った矢先、これだ。変な『上司』さんとやらが上につきやがって。


電話の女『―――って、ちょっと! ホント聞いてんのかしらーっ?! 黒夜! 銀十字!』ギャーギャー!

黒夜「……聞いてるっつの」ハァ・・・

シルバークロース「同じく……あと、人の名を和訳するな。しかも十字じゃない」ハァ・・・

電話の女『だったら云とか寸とか言ったらどうなの! こいつときたらっ!』キー!


だるー。仮眠2時間くらいは取ったけど、実質夜勤明けでこの声は頭響くわ。


電話の女『アンタらねぇ……ったく。いいかしら? もう一度しか言わないわよ』チッ・・・

黒夜「あーうんうん。大丈夫ー。全部聞いてたからー。何度も言わないでOKでーす」ボウヨミー

電話の女『お黙るっ! 例え聞いてても同じ失敗何度も繰り返されてんだからアンタらの耳にタコ出来るまで言うわよーっ!!』コイツトキタラッ!

シルバークロース「分かった分かった。だから電話越しに叫ばないでくれ」ハァ・・・

電話の女『チッ。まずは昨日までの件だけど……―――』アーダコーダ・・・


何でこんなヤツが上司なんだ。今まで通り私がトップ、サブ(という名の駒)に銀幕(コイツ)の二人組で良いだろう。
確かに『あの日のミス』は上の連中からしてみりゃ痛かったのかもしれんが、
だからといって監督役を付けたからって如何こうなるものでも無いだろう。寧ろ精神衛生的に悪い。自由にノビノビやらせてくれー。


電話の女『―――って事なの。分かる?』コイツトキタラー

シルバークロース「十分理解してるさ」グデェ・・・

電話の女『じゃあ何故出来ないのよっ! こいつらときたらっ!』ムキー!

黒夜「ケッ……っせぇなぁ」チッ

電話の女『あーん……黒夜ちゃーん。何ですって?』キッ・・・

シルバークロース「……はぁ」ダルー・・・


いい加減、ヒスに付き合うのも嫌になってきた。

大体、こういうガミガミ叫ぶ女の言う事は不条理極まりないと相場が決まってる。


電話の女『あのねぇ……アンタらがもっと上手くやれば―――』

黒夜「いやいやいやいや。テメェ含め『上』は馬鹿か? まぁ馬鹿なんだろうけどよぉ」ジトー・・・

電話の女『―――っ!? こ、こいつときたらっ』キリキリ・・・

黒夜「良いか。正直に言うぞ……私は優秀で、何だかんだで銀幕(コイツ)も優秀だ。仕事はキッチンとこなしてやってる」フンッ

電話の女『はあ? こいつ……何言ってるの? 今までの私の話聞いてた? 仕事出来てないから、こうやって説教してんのよっ』ムンッ

シルバークロース「やれやれ。この拷問染みた爆音怒号が『説教』とはな」ハァ・・・

電話の女『こ、の……じゃあもっとスピーカーの音量上げてやりましょうか?』コイツトキタラ・・・

シルバークロース「勘弁だ」グデェ・・・


この女(アマ)、ただ単にストレス発散の為に私らに当たり散らしてるだけなんじゃなかろうか。そうとしか思えない。


黒夜「はいはい、分ーった分ーった……テメェの言い分も譲歩してやる。確かに私らの仕事は完璧じゃねぇかもしれん」ジー・・・

電話の女『ふんっ。珍しく物分かりが良いわね。だったら―――』

黒夜「問題は『上(そっち)』が私ら(こっち)に振ってくる仕事の量だっつのボケナスがぁ!!」ウガー!!

電話の女『―――なん、で……ん……え』キョトン・・・


いやいや、黙るなよ。


黒夜「チッ……多過ぎだ阿呆。幾ら私らが優秀な暗部で、セミオート駆動鎧(パワードアーマー)を頭数に入れられるっつってもよぉ」ギロッ・・・

シルバークロース「流石に仕事の件数が多過ぎる。加え、ペースも早い。機械である以上、メンテナンスは必要なのだぞ」ハァ・・・

電話の女『そ、そのくらい分かってるわよ』コイツトキタラ・・・


分かってないな、こりゃ。


黒夜「あのさぁ……色々物騒なのは分かるぜ。WWⅢ(第三次世界大戦)終戦後で、都市の立場は悪くなる一方だしさぁ」ハァ・・・

黒夜「でもこんだけ『仕事』が多いってのぁ異常じゃねぇか? 統括理事会、真面目に政治してんの?」ジトー・・・

電話の女『んな事、駒であるアンタの知った事じゃないでしょ。余計な御世話』コイツトキタラ・・・

黒夜「へぇへぇ。でもなぁ……この一週間に10件って如何いうこった? 頭おかしいだろ?」ケッ・・・

シルバークロース「単純計算で一日1,2件、私達(暗部)を要する事件が起きてるという事だ。異常以外の何物でもない」フンッ


対テロ仕事に粛清・暗殺。密輸入防止にお薬(?)の発送護衛。
ホントに要人だか如何だか分からんヤツのSP・警護にパーティー会場のセッティング、等など。

前々(都市設立当初)からこの街でテロやら何やらが多かったのはガキでも分かる事。
昨今の情勢の変化で学園都市に牙を剥く輩、この機を利用して悪巧みをしてやろうという連中が更に増えたのは確かだ。
その為、風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)で手が回らない事件、
もしくは彼らに任せられない『仕事』も増えた、という単純計算になる。


黒夜「てか、別に私らの仕事じゃなくても良いモン多々あんだろ! 何だよパーティーのセッティングって!!」ウガー!

シルバークロース「一昨日の子猫探し……正直、『暗部』の存在意義を見詰め直したぞ」ジトー・・・

電話の女『こいつときたら……私だって頭痛いのよ。意味分からん仕事振られて対応困るのがアンタらだけだと思わないでっ!』キーッ!


なんだ。結局コイツも左遷組って事か。きっと『クーデター』の時に厄介な側に付いてたんだろうな。

しかしまぁ今の暗部も大幅に『人事異動』があった様だ。
多くの『卒業生』の所為でそれなりの『新入生』が人材補強に当てられ、機能を失った旧暗部組が再構成されたらしい。


シルバークロース「やれやれ。とりあえず、せめて突発的な仕事は減らしてくれ。此方も準備がある」コクッ

電話の女『出来ればしてるわ。でもやり易い仕事はぜーんぶ「木原」の連中とか心理定規(メジャーハート)の班に持ってかれるし』コイツトキタラ!!

黒夜「ケッ。古参(オールド)共が優先ってか。まったく、新人(ルーキー)は辛ぇわな」フンッ

電話の女『古参じゃなくてアッチは玄人(ベテラン)なのよ。アンタ達はまだまだ素人』ハァ・・・


言ってくれる。電話越しじゃなかったら身体中串刺しにしてやってるのに。


電話の女『あーもぅ……ほんっと、麦野の頃は楽だったのに……なーんでこんなショッボい班に回されたかなぁ』ジトー・・・

黒夜「あ?」ギロッ・・・


麦野……麦野沈利か。


電話の女『ええ。アンタが大っ好きな旧「アイテム」の皆さん。特にあの子は敏腕だったわ……キレるとマジ面倒だけど』ハハハ・・・

黒夜「……私が、アイツより劣ってると?」ジトー・・・

電話の女『当ったり前じゃない。全てにおいてよ、全部全部。強度(レベル)もカリスマもビジネススキルも』コイツトキタラ・・・

黒夜「何、を……くっ」ギリッ・・・

シルバークロース(反論出来ないな)チラッ・・・


確かに、あの全身光学砲台女(ゲー○ルク)に比べたら私は強度もカリスマも低いかもしれない。
しかしヤツよりも『強い』筈だし『上手く』仕事をこなせる自信もある。

不幸なのは『現状』だ。もし私がWWⅢやクーデター以前に暗部の一角として名を連ねていたら、
間違いなくヤツより名を馳せていただろう。その逆に、ヤツが今の私の立場なら3日で『プッツン』して一人大反乱してたと思う。


電話の女『……はぁ』アンタトキタラ・・・

黒夜「んだよ」ジトー・・・

電話の女『無理ね。アンタは精々駒の一人。リーダー格は無理。実際現状分かってんでしょ?』ヤレヤレ・・・

シルバークロース「確かに……私もだが、人を惹っ張るタイプでは無いな。ドチラかといえば一、兵器として導入され成果を発揮する」コクッ

黒夜「……チッ」ギリッ・・・


そんな事は分かってる。私にカリスマなんかない。だがしかし、例え一人相撲でも何人分もの戦力になる。
『新入生』といえども、その自負と誇りはある。


電話の女『まぁその点は認めるわ。でも所詮、駒は駒。リーダークラスも駒は駒』サラッ・・・

黒夜「ハッキリ言うねぇ。ま、下手に誤魔化されるよかスッキリすっけどさ」フンッ

電話の女『でも、あの子は「飛」とか「角」級の駒。アンタ達は精々「馬」か「銀」ってとこよね』ハハハ

黒夜「……あんまハッキリ言うのも、身ぃ滅ぼすぞ」ジトー・・・

電話の女『でもそうなのよ。もし仮に、アンタが旧「アイテム」にいても所詮は麦野以外の他人員の代わり程度……意味、分かる?』ニヤリ・・・

黒夜「っ」ピキッ・・・


私が、あの『ノロマ』と同程度だと?

何故優秀な私が、アイツみたいな粗悪品と同列に見られなきゃならんのだ。


電話の女『ま、そう言われたくないんなら仕事頑張りなさい』キッパリ・・・

黒夜「ざけんな、ボケ……いつか殺すかんな」ギリッ・・・

電話の女『はいはい。とりあえず今の段階で分かってる仕事はメールしとくから上手く処理なさい』カタカタカタカタ・・・

シルバークロース「ああ……って、待て待て。まだ此方の言い分が終わってないぞ」ピタッ

電話の女『え?』キョトン・・・

シルバークロース「まず扱える下請けの武装無能力者集団(スキルアウト)の人数だが、少な過ぎる。せめて今の倍を―――」アーダコーダ・・・

電話の女『うーん、それもアンタ達で調達して欲しいんだけどなぁ。現に「木原」の連中やら心理定規の班は―――』アーダコーダ・・・

黒夜「……糞っ」ガタッ・・・テクテクテク・・・


胸糞悪い。


シルバークロース「―――しかしだな、此方としてはまだ勝手も……おい、黒夜。何処に行く」チラッ

黒夜「知らん。帰る。あと任せた」テクテク・・・

電話の女『―――ちょっと、こいつときたら……まぁ良いわ。せめて最低限の仕事はして頂戴よ。私の評価も懸かってるんだからね』ハァ・・・

シルバークロース「いや、待て。勝手にOKするな……黒夜、私に押し付ける気か? この仕事量を!?」タラー・・・

黒夜「わー。ありがとー。流石シルバークロースさまー。マジかっけー」ボウヨミー

シルバークロース「意味が分からん! って、オイ! 待て! このっ……はぁ。何を言っても無駄か」ドヨーン・・・

電話の女『ったく。所詮はガキね……ま、頑張りなさい。男の子でしょ』コイツトキタラー

シルバークロース「……私だって、退院したてで本調子じゃないのだが」ハァ・・・


後ろでゴチャゴチャ煩いが、もう仕事する気分じゃない。帰ってシャワー浴びてとっとと寝たい。そんでもって明日は仕事休む。
一週間休み無しとか馬鹿だろ。コンプライアンス的にアウトじゃボケ。


黒夜「ケッ……面白くねぇ……オイ、誰かいないのか。帰るから車出せ」テクテクテク・・・


無音、、、あれ? スキルアウトは?


黒夜「おーい! 誰かー……返事しろっつってんだ下っ端共っ!!」ガンガンッ!!


しーん。


黒夜「こ、の……っ」プルプルプル・・・

シルバークロース「―――黒夜! 喧しいぞ! 帰るならさっさと帰れ! 気が散る!」バンッ!

黒夜「っせ!! スキルアウト共どうした!? 1人2人、残ってたろ!!」ガンッ!


何で誰も居ないんだ。暗部と下請スキルアウトはセットだろうが。

当たり散らすイライラMAXの私に、シルバークロースはとても冷ややかな目を向け宣うた。


シルバークロース「え……帰ったろ」ジトー・・・

黒夜「かえ……はぁ!? 挨拶も無しに?!」ピキッ・・・

シルバークロース「いやいやいや。挨拶していったさ。私は止めたのに、君が上の空で適当に『うぃ~』とか言って帰したんだろう」ジトー・・・


え、マジで?


シルバークロース「……はぁ。駄目だコイツ」ヤレヤレ・・・

黒夜「うっ……で、でもよぉ。不良(スキルアウト)やってんなら私らの言う事は絶対で」タラー・・・

シルバークロース「私達にそんな人望無いだろう。仕事中は畏怖の念で動かしているが……オフは近付きたくも無かろうに」ジー・・・


確かに。好き好んで暗部の輩と仲良子良ししたがるスキルアウトなんかいる訳がない。


黒夜「でも家に帰るまでが暗部だろうが」ブーブー

シルバークロース「子どもか? あ、いや、子どもか」ハァ・・・

黒夜「ぶっ殺すぞ!?」キー!

シルバークロース「はいはい……兎に角、2人とも忙しかったそうだ。仕方無かろう」クルッ・・・


スキルアウトのくせに忙しいも糞もあるか。


シルバークロース「一人はバイト。もう一人は定時制の高校らしいな。夜勤明けからオールで御苦労さまだ」フンッ

黒夜「不良なのに内心は真面目くん達だったの!? 何それヤダ!!」エー・・・


意味分からん。上は何でそんな手合いを寄越すか。やはり嘗められてる。


シルバークロース「ハァ……兎に角、さっさと帰れ。ただし家でPC作業くらいはしてこい。全部私に押し付けたりするなよ」ジトー・・・

黒夜「うー……あいあいさー」チッ・・・


面倒臭いが、やるしかない。
暗部として生きていく以上、出だし(今)が正念場だ……どんなに面倒臭かろうが、やる事はやる。

それで全てを見返す。それだけだ。


シルバークロース「あ、それとタクシー使って帰るなよ」ガチャッ

黒夜「は? 何で?」ピタッ

シルバークロース「経費削減」サラッ

黒夜「コイツ細けぇっ!」ウガー!


何かもう、悲しくなってきた。

 ―――とある日、PM05:30、学園都市第7学区、とある公園(イカれ自販機在中)・・・黒夜side・・・





面倒臭ぇ面倒臭ぇとボヤきながら帰路に付く。辺りはホドホド暗くなり歩いている学生も少なくなってきた。
自費でタクシー乗って仮屋まで帰ろうと考えたがマネーカードの残額が少ない事に気付き、諦めて徒歩帰宅する羽目に。
途中コンビニか何処かでチャージしようとも思ったが、チャージする為の金を下ろすATMが見つからなかった。

もう色々ツいてない。マジ泣きそう。


黒夜「……もう散々」トボトボ・・・


如何して暗部の私が、こんな惨めな思いをせにゃならんのだ。学園都市『暗部』のエージェント様だぞ。


黒夜「こりゃブラック企業だな……何処訴えれば良いんだろ」ハァ・・・


何処訴えても無駄なのは分かってるが、遣る瀬無い気持ちでいっぱいである。
ふと、目の前に自販機を発見……喉が渇いている事に気付く。そういえば飲まず食わずで仕事してた。

少ない残高だが、ジュース一本買うくらいの金額は残っているだろう。
そう考え電子マネーのボタンを押し、カードを近付け……―――


黒夜「……ん?」キョトン・・・


―――……反応無し。おかしい。


黒夜「何でだよ……って、はぁ?」ピタッ・・・


電子パネルに『電子マネー使用中止』と流れている。どうしてこう……ふざけてる。
こっちは色々と疲れとイライラが募っているというのに。


黒夜「何とかなんねぇのかよ……けっ!」ジトー・・・


生憎、余計な金(札・小銭)は持ち合わせていない。持ってたらタクシー使ってる。


黒夜「チッ! ざけんなっつの! テメェもアイツらも、嘗め腐りやがって!」ガンッ!


辺りを気にせずモノに当たる。正直、イライラの限界だった。
最近無駄に『良い子ちゃん』を演じてた所為もあってか、ストレスはマックス状態。

これ以上やったら風紀委員や警備員、警備ロボが来てしまうだろうという事すら忘れ、自販機を蹴り捲った。


黒夜「何だよもぅ! 何で私がこんな目に!!」ゲシゲシッ!

??「ちょっと、君!」パタパタッ!

黒夜「このっ……え、あ、ヤベ」ピタッ・・・・


此方に近付いてくる声と足音で我に帰る。こんな事で補導されたらシルバークロースや『上』に何て小言言われるか分かったもんじゃない。
幾ら無敵の海鳥ちゃんといえど、泣く子と白昼公道での警察組織には勝てない。

急いで此処から面駆らないと、、、と走りだそうとした時だった。


??「なぁに自販機相手にストリートファイトしてんですかね。これだから短気な超お子様は」ヤレヤレ・・・

黒夜「……あ」ピタッ・・・

??「最愛、そんな事言ってないで止めなよ。警備員来てからじゃ遅いよ」ハァ・・・


見知った声。

最大級にムカつく声。一っ番聞きたくなかったヤツかもしれない。
何故かって? 思わずブッ殺したくなるから♪


黒夜「チッ……なんだ、チビか」ホッ・・・

絹旗「そっくりそのままお返ししますよ、超チビ」フンッ

黒夜「あん?」ジトー・・・


絹旗最愛……不幸にも私の姉妹分。勿論、私の方が優れてるから姉方。


絹旗「何ですか、その目は。折角人が止めてやったというのに。それともこのまま不良少女宜しく補導されてた方が良かったんでしょうか」フンッ

黒夜「ピーピーギャーギャー饒舌なこって。どうしたら黙る? 口に待針でも刺しといてやっか?」ケッ・・・

絹旗「やれやれ。人の善意すら分からない程に激おこプンプン丸って訳ですか。超ガキですね。何でもかんでも反抗したいお年頃?」ハンッ

黒夜「なんだ、テメェの辞書の中に善意なんてモンが載ってたのか。てっきり悪意の塊なんだと思ってたぜ。暴力女」ケケケッ

絹旗「アンタねぇ……、」ジトー・・・

黒夜「あんだよ……やるのか」ジトー・・・


丁度良い。コイツをボコボコにしてストレス発散してやろう、そうしよう。
一寸の無言の後、掌を絹旗に向け……―――


??「こらこら、喧嘩しないの」ッタク・・・

黒夜「……は?」チラッ

絹旗「してません。コイツが超勝手にキレてるだけですよ」チラッ

??「それでもそれに乗っかる最愛も悪い」メッ

絹旗「むぅ」ジー・・・


―――……何だ、コイツ。


??「えっと……確か、前に会ったよね?」ジー・・・

黒夜「は? おい絹旗。コイツ、誰だ?」チラッ

絹旗「一度病院で会ったでしょう。その時、香焼は入院してて、アンタが勝手に見舞いに付いて来ました」ハァ・・・

黒夜「あー……そういえば」ポリポリ・・・


あの時(第18話)の。


黒夜「お前のセフrエンドレぇっ!!? 危な!!」ヒョイッ!

絹旗「あ、アンタマジブッ飛ばしますよっ!! 何言ってんですか!!」カアアアァ///

黒夜「だからって地面刳る程殴んなアホ……まぁまぁ真っ赤になんなしー。彼氏の前だからって恥ずかしがんなよー」フフフ・・・

絹旗「にゃにゅがぁ!! 殺す!!」ムキー!!

香焼「こらこら」ハハハ・・・


女男が絹旗を宥める。見せつけやがって。

怒りで全身の毛が逆立ってる猫みたいな怒り方をする愚妹ちゃん。ホント、ガキだなぁ。


絹旗「ふしゃー!」グルルル・・・

香焼「どうどう……えっと、それで……黒海さん」チラッ

黒夜「黒夜だ、間違えんな」フンッ

香焼「あ、ごめん」コクッ

絹旗「そうですよ、いくら何でも名前間違えるなんて夜鳥に超失礼です」コクッ

黒夜「今のワザとだよね? お前、やっぱ喧嘩したいんだな……イースター島の巨顔」ジトー・・・


一寸沈黙。


絹旗「???」キョトン・・・

香焼「えっと」タラー・・・

黒夜「あーそっか。そいつ馬鹿だったな。説明してやんないと……いいか、絹旗ちゃん。イースター島ってのがあって―――」

絹旗「はいはい」コクコクッ

香焼「……、」アハハ・・・


少女説明中。


黒夜「―――という意味だ。つまり、私が言いたい事分かった?」アーユーOK?

絹旗「ふむふむ……って、誰がモアイですかああぁ!!」ムキー!

黒夜「やっと分かったか」ハァ・・・

香焼「理解すんの遅っ!? あと自分で言った! って、だから喧嘩しないでよー」ンモー・・・


優男が割って入る。くっそー、コイツいなけりゃ今頃ストレス発散してるんだけどなぁ。


香焼「はぁ……で、黒夜さん。自販機蹴っちゃ駄目っすよ。ただでさえ、この自販機壊れかけてるんすから」クイッ

黒夜「知るか。商品買えないこのポンコツが悪い」フンッ

絹旗「だからって自販機に当たるなんて超野蛮ですよね」ヤーイ

香焼「そういう最愛も、前にこれ殴ってたでしょ」ジトー・・・

絹旗「うっ」タラー・・・


オマエが言うな状態。


香焼「まったく……それで、何で買えなかったんすか?」ジー・・・

絹旗「きっと自販機に超嫌われてるんですよ。もしくは二千円札とか超稀有なヤツ突っ込んだとか」チラッ

香焼「上条さんじゃあるまい……で?」チラッ

黒夜「……ん」クイッ


話してやる義理も無いが、これ以上巻き込まれるのも厄介なのでさっさと話を終わらせよう。

電子マネーのパネルを指差す。優男と絹旗は表示を見詰め、何やら納得した。


絹旗「成程……アンタ、超ツいてないですね」ハハハ

黒夜「っせぇわ」ケッ

香焼「確か昨日の夕方、上条さん追い駆けて御坂さんが色々ブっ放してたから、その所為で調子狂っちゃったのかな」ジー・・・

黒夜「は?」ポカーン・・・

絹旗「また超電磁砲ですか……さっさと逮捕しろって話です」ジトー・・・


何が何だかサッパリだ。何で第3位と幻想殺しの名前が出てくる?


香焼「で、小銭は持ってないの?」チラッ

黒夜「無ぇよ。マネーカードだけだ」フンッ

絹旗「超馬鹿ですね。全部が全部電子マネー使える場所じゃないのに」ハハハ

黒夜「うぜぇなぁ。オマエは私に一々突っかかんなきゃ気が済まんのか? ボケ」ジトー・・・

香焼「だからもぅ……とりあえず分かったから、喧嘩すんな」メッ


この委員長というか優等生キャラもウザいな。この手の輩は苦手だ。


香焼「それで、何が飲みたかったの?」チラッ

黒夜「は?」キョトン・・・

香焼「どのジュース?」ジー・・・

黒夜「どのって……これだ」クイッ


コーヒーソーダ-粗引きブラック味。


香焼「……、」タラー・・・

黒夜「んだよ」ジトー・・・

香焼「い、いや、その……相変わらず凄い自販機だなぁと」ハハハ・・・

絹旗「香焼。素直に『舌オカシイんじゃないの』って言ってやればいいんです」コクッ

黒夜「お前、マジ煩いわ。ホント黙れ」チッ

香焼「だから、もぅ……喧嘩する程仲が良いのかなぁ」チャリン・・・

絹旗・黒夜「「はぁ!?」」ギロッ・・・

香焼「睨まないでよ……よいしょ」ポチッ・・・ガタンッ


って……何してんだ、コイツ。


香焼「はい」スッ・・・

黒夜「は?」キョトン・・・

香焼「だから、ジュース。お目当ての」コクッ

黒夜「……、」ポカーン・・・


何故に?

私が買いたかったジュースを手に、突きつけてくるチビ男。何のつもりだろう。


香焼「何故って言われてもなぁ……とりあえず、これが欲しかったんでしょ。だからもう自販機蹴らないでよ」スッ

黒夜「え……あ、うん……っていやいやいや!」ポカーン・・・ハッ!

絹旗「香焼! 超狡いです! コイツ甘やかしちゃ駄目ですよ!」ニャー!

香焼「じゃあほら、最愛も選んで良いから」チャリン・・・

絹旗「わーい……って! それとこれとは話が違います!」ポチッ・・・ガタンッ

香焼「でもちゃっかり買ってるし」ハハハ・・・


冷たい坦々スープ。それ絶対美味しくないだろ。


絹旗「お前が言うな! 何ですかそのコーヒーソーダって。味覚まで第一位(白モヤシ)リスペクトしちゃってるんですか?」ウゲェ・・・

黒夜「いやいやいや。坦々スープって温かいから美味しいんだろ? しかもそれスープ単体で飲むモンじゃねぇし」タラー・・・

香焼(どっちもどっちだよね)ハハハ・・・

絹旗「まったく……って、そうじゃない! だからコイツを甘やかしちゃ駄目ですって」ムンッ

香焼「別に甘やかしてないよ。困ってたから助けただけっす」チラッ

黒夜「……別に困ってねぇよ」フンッ


とんだお節介焼きだな。


絹旗「ぐぬぬ。カミやん病の弊害が……こんにゃろー。感謝の一言も無しですか。これだから育ちの悪い子は!」ンモー!

黒夜「え? テメェと同じ研究所(場所)で育ってんだけど? あと、オマエだってありがとうの一言も言ってねぇぞ」ジトー・・・

絹旗「うっ……そ、そうでしたっけ……ジュースありがとー、香焼ー。ほら、言いました!」ヒューヒュー・・・

黒夜「都合いいヤツだな。こんなんに付き合ってて、オマエも大変だろ」フンッ

香焼「あははは。慣れたっす」コクッ

絹旗「誰がこんなんですか! 香焼も否定して下さい! このぅ……兎に角、お礼言わないならそのジュース寄越しなさい!」ブンッ!

黒夜「……、」ヒョイッ

絹旗「ふんっ!」バッ!

黒夜「やだ」ヒョイッ

絹旗「こいつっ!!」シュバッ!

黒夜「いーやーだ」ヒョイッ


ガキかコイツは……ガキだったな。
あれ? デジャビュ?


香焼「最愛、いいから」ヤレヤレ

黒夜「けっ……貰っといてやる」フンッ

絹旗「こ、のぉ!」ムキー!

香焼「最愛」ポンッ

絹旗「くっ……超覚えてなさい」ムググ・・・

黒夜「はい忘れた」ポカーン・・・


この阿呆を串刺しにしてやるつもりだったが、ジュースに免じて許してやろう。

しかしまぁ絹旗のこの体たらく。腑抜けたモンだなオイ。


絹旗「あー言えばこー言う……香焼! 行きますよ!」プンスカッ!

香焼「はいはい」ハハハ・・・

黒夜「……何処行くんだ」ジー・・・

絹旗「何処行こうが私達の勝手でしょう」フンッ

黒夜「ラブhおぶねっ!?」ゴガンッ!

絹旗「あ、あああ、ああ、あ、あ、アンタねぇ!!」カアアアァ///


コイツ取り乱してまた能力乱用を……図星か?


絹旗「んな訳無いでしょう! 超変態バカ夜!」ムキー///

香焼「ウチでご飯食べるんすよ。最愛、一人にしておくとファミレスばっかっすからね」コクッ

絹旗「ご、ご飯くらい炊けますよ! あとふりかけとインスタントのお味噌汁があれば」アタフタ・・・

香焼「結局、マトモな食事じゃないっしょ。身体壊すって」ヤレヤレ・・・

絹旗「む、むぅ」ポリポリ・・・


随分とアットホームな御様子で。コイツは絹旗の主婦(おかん)か何かか?
もしかして学校、繚乱? 男子って通えたっけ? あ、実はコイツ女男じゃなくて男女だったとか……それなら納得だな。


黒夜「ふーん……まぁ不純異性交遊も程々にな。いや、不純同性交遊か」テクテク・・・

絹旗「しませんっ! あと、ど、同棲なんか出来ませんよ!」ムキイィ///

黒夜「ははは。まぁ絹旗ちゃんにビアンの気があっても私は気にしないぜー」ケラケラッ

絹旗「さっきから超淫乱な言葉ばっか使ってぇ……変態! 超変態!」フシャアアアァ///

香焼「最愛……多分、同棲じゃなくて同性。同じ性別って事……また女と間違えられた」ハァ・・・


なんだ。違うのか。


絹旗「え? ああ、そういう……なら仕方ないですね。香焼は超女々しいですから」ウンウン・・・

黒夜「オマエ、フォローする気0だな。しっかし、単身男の家に飯食いに行くとはオマセさんだねぇ」フーン・・・

香焼「ウチには姉が居るし他の知り合いも来るから、その点問題無いっすよ。最近、夕飯は結構な人数で団囲むしね」コクッ

黒夜「あっそ。賑やかなこって」フーン


楽しそうな顔。最早、暗部の面影も無い……やっぱなんかムカつく。


??「といっても、増え過ぎな気もするぞ。あ、香焼。俺はこの『100%無塩野菜ジュース(ホット)』で」クイッ

??「君もその一端なのでは? 香焼、僕は『果肉入りコーヒー』だ」クイッ

絹旗「うをっ!?」ビクッ!

黒夜「な、何だコイツら!? どっから出てきた!?」ギョッ・・・

香焼「ステイル、軍覇……いきなり現れて、しかも当たり前の様にジュース奢らせないでよ」ハァ・・・


黒い外套着たバカデカいロン毛の外人と、見るからに暑苦しい鉢巻き白ラン野郎。

って……資料で見た事ある顔が居る。あの暑苦しいヤツは、あの有名な超能力者第7位(根性バカ)だ。


削板「女共には奢るのに、俺らには奢れないってか? 酷ぇぞ香焼」ショボーン・・・

香焼「あーはいはい。奢りますよー……いつから居たのさ?」チラッ

ステイル「君がそこの少女に説教始めた辺りから」チラッ

絹旗「全っ然気付かなかったんですけど」タラー・・・

ステイル「根性バカが『今出たら気拙いから隠れるぞ』と雑木林の方に……何故僕まで」ハァ・・・

削板「だって絹旗が喧嘩してるっぽかったしー。まぁもし香焼が2人の喧嘩に巻き込まれてピンチになったら助けに出て行ったけどな」ムンッ

絹旗「超必要ありません。香焼を守るのは私一人で十分です!」ムンムンッ!

削板「バーカ。香焼を守るのは俺の役目だっつの」フンッ

絹旗「世迷言を。アンタじゃオツムが超弱くて守れません。私が引き受けます」ベー


何でコイツら騎士気取りしてんの? しかもお姫様はこの優男?
あと絹旗ちゃん、貴女も頭残念な方だよね。お姉ちゃんちょっと心配よ。


ステイル「君は相変わらずヒロインなんだね」ハハハ

香焼「まったくもって嬉しくないっす」ハァ・・・

削板「遠慮すんなよ香焼。とりあえず、そろそろマンション向かおうぜ。お腹の虫が限界で……あ、ジュースは買ってね」クイッ

絹旗「自分で買いなさい。お金あるでしょう……というか貴方達今日もご飯食べに来るんですか?」ジトー・・・

削板「はい、定時です」キリッ

絹旗「何が『キリッ』ですか。超図々しいですね」ジー・・・

ステイル「お前が言うな、と言って欲しいのか?」カチッ・・・ジジジ・・・フゥ・・・

香焼「ステイル、公園で煙草喫わないでよ」ンモー・・・


わんやわんやと騒がしいヤツらだ。これ以上巻き込まれるのも厄介だし、そろそろ退散しよう。


香焼「―――あ、帰るの?」チラッ

黒夜「ん……これ、どーもな」テクテク・・・

香焼「うん。あ、黒夜さんも良かったらご飯一緒に」ジー・・・

黒夜「結構。帰って寝る」テクテク・・・

香焼「……そっか。じゃあ気を付けて」コクッ


喧しい連中に見送られながらこの場を後にする。
ほんと、ああいう和気藹々とした雰囲気は苦手だ。一気に毒抜けしてしまう……現に仕事の事、忘れちまった。

しかし、ふと思い出す。確かあの優男も私と『同類』だった筈では?
以前、絹旗のヤツが暗部に居たという事を知っていたとか何とか言ってたと記憶している。

それなのに……あの抜けっぷり。どういう事なのだろう。


黒夜「あーもー……さっさと寝よー」テクテク・・・


考えても無駄か。私に害が無いなら関係の無い事。とりあえず、コーヒーソーダの蓋を開ける。


黒夜「うん。拙い」ウィー・・・


だがこの味がクセになる。
兎に角、今日の事は忘れてとっとと寝よう。それに限る。

 ―――4馬鹿side―――



削板「―――あー、早く着かねぇかなぁ」テクテク・・・ギュルルルル・・・

絹旗「一々煩いですね。あと、それお腹下った時の音じゃないですか?」テクテク・・・

削板「正真正銘腹の虫です……って、不良神父。歩き煙草すんな」テクテク・・・ジトー・・・

ステイル「ん?」テクテク・・・プカー・・・

絹旗「これだから喫煙者は」ヤダヤダ・・・

ステイル「別に迷惑掛けてないだろ」ワッカッカ・・・

削板「大アリだ。受動喫煙だ、受動喫煙。あと風紀委員や警備員に補導されんなら俺ら巻き込むなよ」ケホケホッ

香焼「因みに、喫煙地区以外での喫煙が警備ロボに見つかったら通報されるからね。マジで気を付けた方が良いっすよ」チラッ

ステイル「だ、大丈夫だろ」タラー・・・

香焼(煙草が原因で都市側に補導されたら、姉さんや土御門がブチ切れるだろうなぁ)ハハハ・・・

絹旗「ふーん……あ、警備ロボ」ピッ

ステイル「っ!?」バッ!! タバコポイッ!!


 しーん・・・・・


ステイル「……え」キョトン・・・

削板「おwwwまwwww」プルプルプルプル・・・

絹旗「超wwwビwwビwwリwww」ニャハハハ!

ステイル「な! ま、や、喧しい!!」マッカッカアァ///

香焼(まんま不良ぶってる中学生っすよ)クスッ



 にゃーん・・・・・



削板「ところで、さっきの誰だ?」チラッ

香焼「え。うーん、何というか……最愛の姉妹分」チラッ

ステイル「彼女の? 全く似てなかったが、何の姉妹分なんだ?」フム・・・

絹旗「……超色々あるんですよ。オイエジジョーってヤツです」テクテク・・・フンッ・・・

削板「ふーん……因みに、どっちが姉ちゃん?」ハテ・・・

絹旗「私です」キッパリ!

香焼「そうなの?」キョトン・・・

絹旗「誰が何と言おうと、私が姉です」ハッキリ!

ステイル「ん? 理由は?」チラッ

絹旗「ありませんが、私が超上です」ムンッ!

野郎's『……、』ジー・・・

絹旗「な、何ですかその目は」ウッ・・・

削板「いや、別に。(絹旗が妹だな)」テクテク・・・

ステイル「双子、という事で纏めておこう。(此方が妹だろうね)」テクテク・・・

香焼「ま、まぁ姉妹なら仲良くしないとね。(最愛お姉ちゃん……無いわー)」テクテク・・・

絹旗「あれ、何これ?! 超馬鹿にされた気がします!!」フシャー!!

すいません、短いですが今日は此処まで。
なんか絹旗がお馬鹿キャラになってる……どっかで汚名返上させないと!

今回はギャグ路線でいきたいんですが、正直アヤフヤなプロットなので、安価協力お願いするかもしれません。

とりあえず、また次回! ノシ”

乙かれ
>>77その辺とやるかやらないかめおまかせするけど
もう出会ってる設定なら回想になるよね?

こんばんわ。ボチボチ、がんばるん。
あと適当に安価協力頼むかも。

>>92・・・回想はさっくりやりますよ。ほんとサラリと。

 ―――とある休日、AM10:30、学園都市第7学区、とある公園(イカれ自販機在中)・・・香焼side・・・




世間様でいう休日の御昼前。公園には学生達が疎ら疎らに足を運んでいる。
ある者はボール遊びを、ある者はかくれんぼを、またある者は近道がてら通り過ぎるだけだったり。
そんな中、僕は最早定位置(ポジション)と言っても過言ではない自販機近くのベンチに座っていた。


香焼「……もうちょい時間掛るみたいだ」カチカチ・・・

もあい「みゃー」ゴロゴロ・・・


目的は友人との待ち合わせ。今日は映画を見に行く予定だ。
馬鹿姉からは『今日もデート?』とか茶化されたが、別にそんなのではない。寧ろ―――友人には失礼だが―――苦行だ。
彼女が観る映画は正直……酷い。何が酷いかというと、全部。兎に角総じて面白くない。

既に何度か彼女の映画に付き合ったのだが、精神力が削れた。観るに堪えない。

本来、彼女と映画を観に行く筈の兄貴分がいたのだが『頼む、代わってくれ……無理ならせめてローテーションで!』と懇願された為、
現状に至っている。最初は泣く程嫌なのか、と苦笑していたが……甘かった。付き添えば分かる。アレは地獄だ。


香焼「他に一緒に行く人いないのかなぁ」ハァ・・・


彼女―――絹旗最愛の交友関係を考えてみる。残念ながら、友人が多い方では無い。
元々極度な人見知りな上に、人と接する機会が少なかった彼女。友達と呼べる人間が少ないのも仕方のない話か。
しかし、最近は多少心を開いている様で、ボチボチ友と呼べる人間を増やしている。

だが流石に、彼女の『周りにはちょっと理解出来ない趣味』に付き合える程、親しい友人はまだいないっぽい。


香焼「まぁ別に自分か浜面さんが時間作れば良いだけの話だもんね」ハハハ・・・

もあい「にゃう?」チラッ・・・


基本的に自主的な行動を取らない彼女。変な趣味とはいえ、自発的になるチャンスを潰してやるのは勿体無い。
普段は誰かが誘わなければ家から出ようともしないのだが、WWⅢ後『仕事』を辞めた今、このままヒッキーちゃんになられても難だ。
折角、日の下に立てるチャンスが廻って来たのだ。存分横臥させないと。


香焼「自分に出来る事なんてタカが知れてるっすけどね」ポリポリ・・・


せめて一緒に居てやれるくらい。あとはまぁ苦手分野の勉強教えたり、子猫(こいつ)を預かったり。
尤も、自分も暇人では無いので常に一緒に居てやれる訳ではない。僕の『仕事』と先約が無い時に限る。

ただ、最近は戦争ムードが終結した御蔭か大分任務は楽になってきてる。
都市内では、都市の動向間諜よりも重要監視(保護)対象―――禁書目録と上条当麻さんの見張り(という名の遠巻きな護衛)が主となっている。
英国に戻っても、都市での報告書きと教会関係者(お偉いさん)の慰安訪問護衛など、簡単な任務が殆ど。
偶に厄介な『魔術(場合によっては科学や軍事)結社』を相手にする仕事もあるが、大体は短期決戦で片付けるので時間は掛らない。


香焼「まぁ、自分は大抵後方支援だからなぁ……はぁ」ジー・・・

もあい「なぅ」ペシペシッ


天草式の教徒の中でも若輩者たる自分は一介の戦力としているには、まだまだ小っぽけ過ぎる。


香焼「もっともっと頑張らないとね」ボー・・・


アンニュイ、、、上の空でボンヤリもあいを撫でている……そんな時だった。


??「ん? よぉ」テクテク・・・

香焼「ぇあ?」ポカーン・・・

??「香焼じゃないか」テクテク・・・


足音が近付いてくる。やはり僕を呼ぶ声。そしてこの声の主は……


上条「うっす」テクテク・・・

香焼「上条さん」ペコッ


……我らが英雄殿。上条当麻氏。


上条「どうしたんだ、こんなとこで」ノシ

香焼「ちょっと待ち合わせを。上条さんは……あー」ジー・・・


休日なのに制服姿。学園都市じゃ休日も私服という校則がある学校も珍しくは無いが、彼の場合は違うだろう。


上条「おいおい、勝手に補習って決めつけんなよ」ハハハ

香焼「あれ? 違うんすか?」キョトン・・・

上条「まぁ、うん。半分当たりなんだけどな……朝一で提出物置いてきただけだ。ったく、休日なのに先生も人が悪い」フコウダ・・・

香焼「……あははは」ポリポリ・・・


月詠さんも忙しい事で。


香焼「それじゃあ今からお帰りで」ジー・・・

上条「ああ。まぁ今日は風斬がインデックスの事見ててくれてるからゆっくり帰るよ……隣良いか?」ヨイショッ

香焼「あ、はい」アタフタ・・・

もあい「にゃ」スタッ


ベンチを占領していたもあいが僕の膝の上に乗り、上条さんがそこに座る。何だか緊張するなぁ。


上条「あー平和だー」ボケー・・・

香焼「そうっすね」ハハハ・・・

上条「当たり前の事なんだろうけどなぁ」ボケー・・・

香焼「その筈なんすけどね」アハハ・・・


幸か不幸か、何故か常にその対極に居るのがこの人だ。


上条「そいやぁ最近如何だ。姉達と上手くやってるのか?」チラッ

香焼「ええ。それなりに……五和と浦上の破天荒にはボチボチ慣れました」ポリポリ・・・

上条「そっか。でも五和が破天荒ってのは未だに信じられないな」ウーン・・・


アイツ、超猫被ってますよ……とは言わないでおいてやる。感謝しろ。


上条「神裂は?」フムフム・・・

香焼「姉さんは相変わらずっすけど、丸くなりましたね。良い意味で」フフッ

上条「確かに。でもそれはやっぱ香焼とか五和達の御蔭だろ?」チラッ

香焼「だと嬉しいんすけど。都市での友達の影響も大きい様で」コクッ

上条「ああ、麦野さんとか固法さんとかか……しっかし、この繋がりも統一性無いよな」ハハハ

香焼「そうっすね」クスッ


片や一、宗派の教皇。片や、元暗部のリーダー。片や、風紀委員の支部長。
何というか……恐ろしくベクトルの違う三人が仲良くやってる。

三者三様だからこそ上手くやっているのかもしれない。とりあえず、要は『一般人』たる固法さんか。
彼女が中に居てくれるからこそ、姉さんと麦野さんとのバランスが取れているのだと思う。


上条「ま、色々あるけど人間臭くなったんだろ」ニカッ

香焼「はい」フフッ


それはそれは、嬉しい事。
人として生まれ落ちたものの、その身に背負った運命はあまりに大き過ぎた。故に人の心を殺し、祀られるがまま聖人を全うしてきた。

教徒である僕らは何も出来ず、指を咥えて見てるだけ……しかし、新しい風が舞い込んだ。


香焼「一番は、上条さんの御蔭っすよ」コクッ

上条「ははは。俺は大した事してないさ。思った通り動いたらこうなっただけ」ポリポリ・・・

香焼「でも結果的に、凄い事っす」ジー・・・


誰にも出来なかった事だ。あの方の心を開いた。人としての心を取り戻してくれたのだ。
姉さんだけじゃない。あの偏屈なステイルも同じ。少しずつだが、歳相応になってきている。


上条「そうだな。現に2人ともインデックスとの蟠(わだかま)りが解けてきてるっぽいし……ステイルはもうちょい掛るか」ハハハ・・・

香焼「ええ。アイツは意固地っすから」フフッ


それでも普通に話せる程度には戻った。


上条「何でもアニェーゼ達が説教したとか聞いたけど、マジか?」フム・・・

香焼「え? あー、うーん……説教っちゃ説教っすかね」ハハハ・・・

上条「特にアニェーゼだけど、アイツら犬猿の仲なのに。よくステイルが黙って聞いたな」タラー・・・

香焼「黙ってなかったっすよー。もう一触即発寸前で大変だったんすから」ハァ・・・


悲劇のダークヒーローを気取る不良神父に、それ以上の不幸な過去を持つ彼女が喝を入れた。(第9話参照)


上条「ん。不幸を天秤に図るのは難だけど、確かにアニェーゼやアンジェレネ達の過去の方が悲惨そうだよな」ジー・・・

香焼「深くは聞いてないっすけど、一人の女性から忘れ去られる辛さと、家族を殺された辛さ……傍から聞けば、ね」フム・・・


とりあえず、ステイルを説得出来るだけの弁だった。ただ納得は出来てなかった様子だが。


上条「お固いこって」ハハハ・・・

香焼「でも、大分柔らかくなったんすよ……頑固なのは子どもだからかな」フフッ

上条「アイツの事、同年代扱い出来るお前も凄いよ」コクッ

香焼「仕事抜けばステイルはガキっすよ。身長と煙草のせいでそう見えませんけど、結構流行りの話とかしますし」ウンウン

上条「想像付かない」キョトン・・・

香焼「元のイメージがイメージなんで仕方ないのかと。姉さんも同じ理由っすね」アハハ・・・

上条「神裂もか……でも最近はインデックスとメールしてるってんだからビックリだよな」クスッ


最近じゃ普通に携帯弄るし、ゲームもする様になった姉さん。聖人が俗っぽくなって如何すんのと上から怒られそうな体たらく。
でも、その姿こそ、僕らが望んでいたモノ。

ただ『そうあれかし』と紡いでいるだけじゃ何も始まらない。


香焼「……そういう風に皆を引っ張ってくれたのは貴方っす」チラッ

上条「買い被り過ぎだよ。さっきも言った通り、俺は我儘通しただけ」ポンポンッ

香焼「その我儘を通すってのが難しいんすよ」ウーン・・・

上条「そうかなぁ……普通だよ、普通」ポンポンッ


この我儘こそ最大の武器。『幻想殺し(右手)』も勿論の事ながら、彼の一番の強さは折れない心。
ある種の超人。何物にも干渉されない右手、何者にも干渉されない心。


上条「いやいや。そんな化け物みたいな……まぁ敢えていうなら究極に人間臭いだけだろ、俺って。あれ? これ自虐?」ポリポリ・・・

香焼「でも皆そこに魅かれるんでしょう」フフッ

上条「うーん……生意気なヤツ。中坊のクセに理屈っぽいわ」クシャクシャ・・・

香焼「えへへ、すいません」ポリポリ・・・


よく言われます。


上条「でもさ、俺からしてみりゃお前も凄いよ」ポンポンッ

香焼「え」キョトン・・・

上条「だってさぁ。自分で言うのも難だけど、俺って正直やりたい事やったらその後ブン投げるタイプじゃん」アハハ・・・

香焼「そ、そんな事無いっすよ!」ブンブンッ

上条「いや、そうだと思うぞ。インデックスは別として、殆どの事件のアフターケアなんてしてないだろ」コクッ


そう言われてみると……そんな気も。
しかし、彼に感化された連中は皆目一同『更生』しているので、そんなにアフターケアなど必要としない。


上条「メンタルな話はそうかもしれない。でも終わった事は必要悪の教会だったり土御門だったりゲコ太先生(冥土帰し)に任せっぱだ」タラー・・・

香焼「それは……だって、上条さんは元々一般人っす。そこまでやってもらう義理は無い」チラッ

上条「だから、そこなんだよ。そういう点で俺は卑怯だと思うぞ。一応、気には掛けてるけど基本、投げっ放しの無責任」ポリポリ・・・

香焼「いやいやいや」ブンブンッ


確かに……そう言われると反論できない。
それでも、彼の場合。彼のフォローをしてくれる仲間が居るという強みもある。

発起から事後処理まで含め、彼の『勢力』が動く。それも世界規模で動くというトンデモない仕組みだ。


上条「はぁ……煽てるのが好きだな、香焼」ポンポンッ

香焼「いや、本当の事言ったまでっすよ」コクッ

上条「はいはい……話戻すけど、お前の凄いとこは『今』じゃなく『後の事』を考えてるとこ」ポンポンッ

香焼「……え?」キョトン・・・


何だそりゃ。

何て言えばいいのかな、と小首を傾げ、閃いた様に言葉を発した。


上条「そう! 後先考えつつも、立場上色々大変なのに頑張って『平穏』してるってとこだよ」フフッ

香焼「そ、そんなそんな! 上条さんに比べれば自分なんて!」アタフタ・・・

上条「俺は無能力者(レベル0)の一、学生だから自由に動けるんだ。土御門がそんな事言ってたよ。まぁ動かし易いとも言えるか」ハハハ・・・

香焼「い、いやぁ……そこは自分の口からは何とも」ポリポリ・・・


仮に、上条さんの『幻想殺し』に強度(レベル)が付いてたら『学園都市の能力者(所有物)』として厄介な扱いになっていただろう。
あの超能力者第一位(レベル5最強)の一方通行を倒した件だって、彼が無能力者(レベル0)だったからこそ。
でなければ量産型能力者(レディオノイズ)計画が根本から覆される事は無かった……のだと思う。


上条「お前は魔術師ながらもこの都市で任務こなし、学生して、色んな連中と『日常』『平穏』してる」ポンッ

香焼「それは他の潜入学徒達も一緒っす」ムゥ・・・

上条「確かに香焼以外の天草の学徒陣もそうしてるのかもしれない。でも基本『任務だから』やってるだろ」ジー・・・

香焼「自分も、任務っすよ」ウーン・・・


別段、他の学徒と違いは無い。


上条「ふーん……じゃあ、神裂やステイル。浜面んとこの絹旗とかと仲良くしてるのも任務だからか?」チラッ

香焼「そ、そんな訳ないでしょう」ジー・・・

上条「だよな。体裁だけで考えりゃお前は一介の教徒だろ。でもって、あの2人は雲の上程偉い『位』の筈」コクッ


主教補佐に己が教皇。実は五和でさえ若衆筆頭で、自分が気軽に話せるレベルでは無い。


上条「でもお前は家族として、友達としてアイツらを支えてる。俺とは比べ物にならないくらい親密にな」ポンッ

香焼「で、でも上条さんは特別で」アタフタ・・・

上条「だったら香焼だって特別さ……お前も頑固だな。少しは自分の事認めてやれよ」ナデナデ・・・

香焼「そんな! 恐れ多いっす」カアアアァ///


恐縮。自分はそんな大層な人間じゃない。


上条「絹旗だって、今はもう『卒業』したらしいけど、昔は『暗部』ってヤツの一員だったんだろ」ジー・・・

香焼「え、あ、その……はい」ムゥ・・・

上条「その時から仲良くして、どうにか『表』に引き上げ様と頑張ってた。結標さんもそうだったか」チラッ

香焼「でも、結局どうにかなっちゃいましたね」アハハ・・・


WWⅢ終戦後、僕やカオリ姉さんが何をするでもなく暗部としての『アイテム』は解散してた。
結標さんも一線から足を洗ったと見える。


上条「それでも凄いのは我慢した香焼だよ」ポンポンッ

香焼「よく分かりません」キョトン・・・

上条「正直、俺が香焼と同じ立場だったら我慢出来ずに麦野さんに喧嘩売ってただろうな」ハハハ・・・

香焼「……そうっすか」ジー・・・


確かに、愚直なまでに己が信念を曲げないこの人なら麦野さんと殺し合いになっても暗部を解体させようとしただろう。
でもきっと、成功する。この人は麦野さんを殺さずに、麦野さんに殺されずに全てを解決する……そう思う。

そうなってたなら、きっとフレンダさんだって……


上条「香焼」ジー・・・

香焼「あ……すいません」ムゥ・・・


死者は生き返らない。


上条「IFの話は無駄だよ……兎に角、暗部の『現状』に関しちゃ浜面や一方通行が頑張った結果だろ」ポンポンッ

香焼「はい……感謝してます。上条さんと同じくらい」コクッ

上条「うん……ただ」ピッ

香焼「え?」キョトン・・・


話戻すけど、と苦笑した。


上条「あの2人も俺と同じで、後の事までは深く考えなかったと思うぞ」アハハ・・・

香焼「後の事、といいますと?」ポカーン・・・

上条「例えば絹旗だけど……浜面から聞いたんだが、アイテム以外に友達居ないだって? あ、いや、居なかったのか」チラッ


今は僕や軍覇、佐天さん達が親しくしているが……確かに最愛は人とコミュニケーションを取るのが苦手だ。
初対面の人だと尚の事。基本的に無愛想なまで沈黙してるか、その場から逃げ出す。もしくはプッツン切れて……危険な状態に。


上条「自分が友達になってやるだけなら簡単だ。でも、お前はその『先』を考えてる」ポンッ

香焼「……分かりません」ムゥ・・・

上条「出来るだけ『普通の少女』に。せめて学校に通える程に更生してやろうとしている。違うのか?」

上条「滝壺は同じ事を考えてるかもしれないけど浜面はそこまで考えてなかったと思うぞ」コクッ

香焼「お、大袈裟な。そういうのは月詠さんや黄泉川さんの仕事っすよ。自分は……浜面さんと同じっす」ハハハ・・・

上条「……謙遜だな」ポンポンッ

香焼「いえいえ」モジモジ・・・

上条「絹旗だけじゃない。ステイルや第7位(削板)。英国に居るアニェーゼやレッサーも……全部含めて『平穏』にしようとしてる」コクッ


強くも何ともない自分には『一般人(ガキんちょ)レベル』で、皆と仲良くする事くらいしか出来ない。


上条「そういうの大事だと思うぞ。例えば、アニェーゼの部隊やレッサー達のチームは外様(とざま)で居心地悪い筈だ」

香焼「そんな事無いっすよ。ステイルや女教皇様始め、皆良くしてるっす」

上条「でもインデックスや土御門が言うには、英国も一枚岩じゃないんだろ?」


確かに、皆が皆そういう目で彼女らを見てないだろう。外様は何処までいっても外様だ。
女子寮の方々や姫様達は基本良い人だが……教会及び協会、騎士団の『右派』辺りからの外様に対する風当たりは厳しい。

現にアニェーゼ部隊や嘱託結社の新たなる光に与えられる仕事は、本隊がやりたがらない汚れ仕事や面倒仕事が殆ど。
因みに、天草式(ウチ)の部隊は教皇が英国教会の中でも良いボジションに居るので、まだマシな仕事が回って来る。


上条「難しい話はよく分かんないけど、そういうイザコザって嫌だよな」ポリポリ・・・

香焼「ええ。顔も分からない背広組(大人)が勝手に決めてる事っすからね」ハァ・・・


それに関しては自分や五和レベルが如何こう言ったところで変わらない。どうしようもない事。
だからせめて、日常くらいは子供らしく暮らしたいのだ。

子供が子供らしく、そうありたいだけ。


上条「子供は『子供らしく』なんて、客観的な事考えないぜ。まぁでもアニェーゼ達からしてみりゃ嬉しいんだと思うよ」ナデナデ・・・

上条「要は同年代として……同級生(クラスメイト)的なノリで接してくれる人が居るって事だ」ハハハ


成程、分かり易い。


上条「しっかし、お前らに『子供らしい』云々言うのは難だよな。魔術師に年齢なんて関係無いんだろうけど」フム・・・

香焼「基本、秘匿性さえしっかりすれば関係無いっすからね」コクッ

上条「へぇ……まぁそれ抜きにしても、お前はガキっぽくないな。やろうとしてる事は『普通の子供』のそれなのに、考え方が大人だ」ポンポンッ

香焼「うーん……まぁ理事校でチャイルドソルジャーの人口増について学んだりすると、考えさせられちゃいますから」ポリポリ・・・

上条「中学生でそんな授業すんのかよ」タラー・・・

香焼「専攻次第っすけどね。自分は宗教論と国際政治メインなんで。副専攻は都市運営っす」

上条「……理事校パネぇわ」アハハ・・・


WWⅢ前後での子供兵士の率は異常だ。20世紀末のおよそ2倍。尤も、これは隠れていた数字が咋(あからさま)になったとも捉えられる。
それはこの街の暗部や、各宗教の戦闘修道士(魔術師)達の年齢比率を考えれば顕著に分かる。


香焼「この世界は異常っす。子供が戦場に立ち過ぎる」ジー・・・

上条「お前が言うなって言われそうだな」ハハハ

香焼「た、確かにそうなんすけど……えっと、未成年が武器を持つ時代なんて20世紀で終わりの筈だったんすけどね」

上条「そうなのか? うーん……とりあえず、単純に考えて子供が戦うってのは良くないよな」

香焼「はい。自分らが大人になって、自分らの子供が出来る頃には『子供兵士』なんて言葉を無くしたいっすね」


到底不可能だろうけど、ちっぽけな僕の願い。前線に立つ未成年の魔術師や暗部を減らしたい。
ついでに、実験動物の様に人身売買される子供達や、この街の社会現象たる『置き去り(チャイルドエラー)』なんかも無くしたい。


上条「だから、まずは身近なところから……だろ? やっぱ『先』の事考えてるじゃないか」ポンッ

香焼「……、」モジモジ・・・///


『先』とか『後の事』とか、あんまり意識はしてなかったが、そうなのかな。


上条「ははは。まぁ頑張れよ」ポンポンッ

香焼「……あ、ありがとうございます」モジモジ・・・///

上条「しっかし、俺も頭が良かったらお前とか土御門みたいに10手100手先まで見通して動けるんだけどなぁ」ハハハ

香焼「考える前に行動しちゃうって事っすか?」チラッ

上条「そうそう。お前らは考えてから行動するだろ? よく分からんけど、インデックスとか御坂にもそれで怒られるかな」ポリポリ・・・

香焼「土御門は確かにそうかもしれないっすけど……自分は考え過ぎで動けなくなったりしますから」アハハ・・・


そういう点では勘だけで動ける軍覇や、考えながら行動出来る最愛やステイル、
思いっきりで勝負に出るレッサーやアンジェレネ、物事を即決断できるアニェーゼやサーシャは羨ましい。


上条「はははは。頭の回転が良いのも困ったもんだ」ポンポンッ

香焼「これが任務なら命取りっすよ」モー・・・

上条「そうだなぁ……まぁでも任務中に動けなくなる様な事はそうそうないだろ」ツンツン・・・


そう願いたい。誰しも、うっかりミスなんかで死にたくはない。

魔術師が人並みに死ねると思うな、とステイルは謳っているが……別に普通に天寿を全うしても構わないと思う。
『今』の姉さんを見てれば、特にそう思える。

魔術師だろうが能力者だろうが、人間だもの。


上条「どうも、ステイルやら一方通行やら……ああいう手合いのヤツらは地獄に行きたがるよな」ハハハ・・・

香焼「第1位さんは分かりませんが、ステイルは厨ニっすから。年齢的にも」クスクスッ

上条「だな」アッハッハ


存外、地獄も良い所なのかもしれない。


上条「まー、アイツは戦闘とかじゃなくて肺癌で死ぬと思うのは上条さんだけでしょうか?」ニヤニヤ・・・

香焼「いえいえ、皆言ってます」クスクスッ


でも本人は、本望だ、とか言うから困ったもんだ。


上条「でも周りが気に掛けてくれてるんだからアイツも幸せモンだよ」ジー・・・

香焼「ええ」コクッ


死んだら悲しんでくれる人がいるってのは、救いなんだろう。


上条「『さよならだけが人生だ』ってヤツか。授業でやった様な」ウーン・・・

香焼「井伏鱒二っすか……それ使い所違いますよ」アハハ・・・

上条「え、マジ?」タラー・・・


『さよならだけが人生だから、今この出会い、時間を大切にしよう』という意味だが……まぁこの人らしい。


上条「か、上条さん馬鹿だから分からんのですよ」チーン・・・

香焼「ま、まぁまぁ」ハハハ・・・

上条「賢ぶって難しそうな詩を使ってみたら、中学生に違うよと指摘されたでござる……ってか」ハハハ

香焼「何キャラっすか」プッ


面白い人だ。


香焼「……でも、良いな」ボソッ

上条「ん?」チラッ

香焼「あ、いや何でも」アハハ・・・


やはり、男の人と一緒に居るのはホッとする。普段が女ばかりだからかな。


上条「ははは、確かに。香焼は女家族の末っ子長男って感じだもんな」ポンッ

香焼「ええ……久しぶりに建宮さん達と同部屋になったりするとはしゃぎたくなったりします。変っすかね」アハハ・・・

上条「んー、環境じゃねぇか? そういう上条さんも、ほら。普段(居候)が普段(女の子)だし……気持ちは分かるぞ」ポンポンッ

香焼「そ、そうっすよね! やっぱり!」ウンウン!


良かった。この人はステイルとか軍覇みたいに、馬鹿にしたり呆れたりしない。やっぱ英雄さんだ!

大袈裟だな、と苦笑する上条さん。しかし共感して下さるだけで嬉しいのですよ。


上条「色々悩んでんだな。ま、いつでも相談しろよ」ナデナデ・・・

香焼「ありがとうございます」エヘヘッ///


天草式の兄貴分達と違う感じの……お兄ちゃん、的な……い、いやいやいや! 何考えてるんだ僕!
そんなそんな恐れ多い事を! この人は英雄さんだ。『お兄ちゃん』だなんておこがましいにも程がある。


上条「ん? どうした? 何赤くなってんだよ」ツンツンッ

香焼「うぇ!? い、いえ! 何でも……あはははは」ポリポリ・・・///

上条「???」キョトン・・・


いけないいけない。


上条「まぁ良いが……何か俺ばっか色々聞いちゃったな。お前も色々聞いていいぜ。力になるか如何か分からないけど、話くらいは聞くよ」ポンッ

香焼「え!? あ、えっと……その」ウーン・・・

上条「何でもいいさ。仕事の悩みでも日常の悩みでも愚痴でも。応えられる範囲なら質問でも」ポンポンッ

香焼「し、質問っすか?」ジー・・・


聞きたい事は山ほどあるのだが、どうしよう……とりあえず―――



・安価          >>105        



女の子の扱いについて

―――じゃあ、そうだな。


香焼「ざっくばらんっすけど、上条さんは女性に如何接してますか?」ジー・・・

上条「え?」キョトン・・・

香焼「えっと、何ていうのかな。心持とか、実際の対応とか」ポリポリ・・・

上条「いや、それを聞かれましても……上条さんが聞きたいくらいなんですが」アハハ・・・


どの口言いますか。


香焼「じゃあ、例えば禁書目録に対しては?」

上条「インデックス? あいつの扱いかぁ……『飯』だな」キッパリ・・・


言うと思ったが、それ以外で。


上条「それ以外ねぇ。まぁなんだ……一番はやっぱり、危険な事に巻き込ませたくないよな」ウン・・・

香焼「それは女の子だからというより、『禁書目録(あの子)』だからっすか」フム・・・

上条「あいつに関しては、ちょいと特別だしな。応えるのは難しいかもしれない」ハハハ・・・

香焼「じゃあ仮に、彼女を『女の子』として見て、如何接してます?」ジー・・・


これ、皆結構気になってる所。


上条「む、難しいな……うーん、あいつを女の子としてねぇ……、」ポリポリ・・・


『ウーン・・・ムゥ・・・』と大分唸っている。そんなに悩む事なのか。


上条「えっと……悪い。あいつに関してはあんまそういう事考えたくないんだわ」ポンッ

香焼「え」ポカーン・・・

上条「その、さ。一緒に暮らしている以上、男だとか女だとか考え出すと……な」ポリポリ・・・

香焼「……あー」フムフム・・・

上条「お前だってそうだろ? 五和達は姉弟みたいだからっつっても、正直血は繋がってない訳だから色々意識しちゃうと――」ハハハ・・・

香焼「ありません」キッパリ

上条「――居辛、く……え?」ポカーン・・・

香焼「ありません」キッパリ・・・

上条「ま、マジ? あ、でも上司と部下っていう関係あるから公私がしっかりと―――」

香焼「カオリ姉さんはそうかもしれないっすけど、五和と浦上はありえません」キッパリ・・・

上条「―――そ、そうか」タラー・・・


申し訳無いが『僕と五和&浦上』と『上条さんと禁書目録』との関係とは大違いだ。

しかし、まぁ……上条さんが彼女に対して『そういう感情(意識)』を持ち合わせているのだと分かっただけでも吃驚だ。
『意識はしない様にしてる』という事は、可能性は0では無いんだろう。


上条「でもインデックスは俺の事、男子として見てないだろうからなー。俺の心配は杞憂だろうよ」ハハハ

香焼「……、」フフッ


そんな訳が無かろう。この話を聞いたら禁書目録はこの人に噛み付きつつも、ニヤニヤしてしまうだろう。

いや、しかし例えの相手が悪かった。


香焼「それじゃあ御坂さんは? しょっちゅう絡んでくるでしょう」ビリビリト

上条「御坂の扱い? 適当だよ」サラッ

香焼「はい?」キョトン・・・


アンタ何言ってますの?


上条「いや、だって基本喧嘩売ってくるし。だから適当に相手したり、忙しかったら流したり逃げたり」ウンウンッ


こればかりは、普段の御坂さんが悪いな。


香焼「じゃ、じゃあ喧嘩以外で」アハハ・・・

上条「喧嘩以外って……罰ゲームとか俺の事荷物持ちに使ったりとか?」ウーン・・・


それをデートと言うんですよ。


香焼「ええっと……『女子』として、御坂さんとの接し方は?」ハハハ・・・

上条「御坂を女子としてみる? うーん……御坂、かぁ」ポリポリ・・・

香焼「禁書目録もっすけど、容姿端麗で才色兼備な方だと思いますよ」コクッ

上条「……2人とも『黙ってれば』な」タラー・・・

香焼「う」タラー・・・


否定してやれない。ごめんなさい、2人とも。




 ***********


御坂「―――黒子」カチッカチカチカチッカチッ・・・ボソッ・・・

白井「今の今までカチカチカチカチとリ○ム天国やってたくせに、急に真面目な顔して何ですの?」キョトン・・・

御坂「……私、クーデレキャラ目指してみる」サラッ・・・

白井「は? ぇ……そーですか。ご健闘をお祈りします。(いつもの病気か……ツンデレの権化が何を言ってんですの?)」ボウヨミー・・・



 ***********



禁書「―――ひょうか」モグモグッ

風斬「えっと、口の中に物を入れた状態で話をするのは……よくないかな」インデックスノオクチフキフキ・・・

禁書「んぐっ! ぷはー……私、クールビューティーに教えを請うてみたくなったんだよ」キリッ・・・

風斬「え、あ、そ、そう……頑張ってね。(何を真似るのかな? 上条くんの為に……小食見習うの、かな?)」アハハ・・・

兎に角! そういう事を聞きたいのではない!


香焼「じゃあ彼女も仮に『女の子』として見ると、でいいっすから」ハァ・・・

上条「むー……じゃあやっぱり『適当』だよ」コクッ

香焼「ホントに?」エ・・・


随分と冷淡だ。


上条「いや、『適当(ゾンザイ)』に扱うって訳じゃないさ。『適当(取り繕う必要も無し)』に相手出来るって意味だ」コクッ

上条「あいつは気兼ね無く何でも話せるよ。勿論、魔術サイドに関しては控えるけど、それ以外なら何でも」ウンウンッ

香焼「……信用してるんすね」フムフム・・・

上条「信頼さ」ハハッ


しかし、この感情は一方通行さんや浜面さん達に似た想いなのではなかろうか。


上条「あ、そうだ。それだわ」ピンッ

香焼「はい?」ポカーン・・・

上条「女子としてだろ? 何だかんだいっても、あいつは女の子だ。だから野郎達とは違うよ」コクッ

香焼「といいますと?」フム・・・

上条「あんまり戦わせたくないよな。あとガサツな事もして欲しくない。男以上に男勝りだろ、あれ」ハハハ

香焼「確かに」ハハハ

上条「さっき子供らしくって言ってたけど、あいつの場合は『女の子』らしくして欲しい……かな」ポリポリ・・・

香焼「御淑やかにしてろ、って事っすか?」

上条「性格上そりゃ無理だろうからさ。だから、常に前に立っててやらないととは思う。騎士気取りって訳じゃないが守ってやんなきゃな」コクッ


真っ直ぐな目で『それが男だろ』と告げた。


上条「ははっ……古臭いかな。今時女性は男の後ろに居なきゃ駄目なんだって考え」ポンッ

香焼「いえ、恰好良いっす」コクッ

上条「そういう点では神裂とか五和にも、同じ事考えちゃうよ。勿論、皆俺なんかよりも強い女性ばっかなんだけどさ」アハハ

香焼「いえ、上条さんは強いっす」フフッ

上条「いやいや。まぁ総括すると……俺は流され易い。特に女性には頭が上がらない。こればかりは『血』だからしゃーないな」ハハハ・・・

上条「でも、何だかんだいっても女性は弱いんだ……いや、強いんだけど、弱い……んー、説明難しいな」エット・・・


ニュアンスは分かる。精神的な沸融点が低いのは女性だと本で読んだ覚えがある。
加えて、当たり前だが男性に比べて女性の身体能力は下がる。


上条「簡単にいえば、時に寛容に。時に厳しく……だな。当たり前過ぎたか」ハハハ

香焼「いえ。参考になります」ペコッ


言うは易し。起すは難し……この人の様に、実行できる器になりたい。


上条「あ。でも正直最近やり過ぎかなぁって反省したりもするんだわ……やっぱ女性殴っちゃ駄目だよなー」アハハ・・・

香焼「え、えっと……あはは」タラー・・・


残念ながら自分にはその度胸がありません。出来るものならやってみたいが……返り撃ちだろうな。

こんばんわ。遅くなってすいません、、、ボチボチ投下!


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―――……それじゃあ今度は、男友達について。


上条「はぁ。これまた普通な質問を」

香焼「話とか遊びとか、参考にしたいんで是非教えて欲しいっす」

上条「参考っていってもなぁ。普通だぞ、普通。多分お前と同じ様なもんかと」チラッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

上条「……香焼?」キョトン・・・


その……何というか……えっと……うん。察して下さい。


上条「……え」タラー・・・

香焼「……、」ジー・・・

上条「い、いや、いやいやいや。お前、天草式では男の仲間多いだろ」アハハ・・・

香焼「男性陣の殆どは年上っす。学徒の面々も自分より年上で、友達っていうより先輩のイメージが」ジー・・・

上条「が、学校のクラスメイトとか!」ホラ!

香焼「理事校の学生は仲良子良しなんてしません。故郷での友達には此処数年会えてないっすね」ジー・・・

上条「うっ」タラー・・・


あー……男友達欲しい。


上条「じゃ、じゃあこの質問意味無いんじゃ」ボソッ・・・

香焼「……、」ウルウル・・・

上条「あ、あー! ほらっ! アレな! ステイルとか削板とかとの付き合い方って事だよな!」アタフタ!

香焼「……はい」コクッ・・・

上条「そ、そうだなぁ。うん。(不登校の親戚持った気分だ)」タラー・・・


寧ろ男友達の増やし方を教えてもらいたい気もするが……現実(原作)的に考えて、知人に僕と同年代の男子がいないので無理だろう。


上条「んー……世間話とか学校の話とか、昨日のTVの話題とか新作のゲームの話とか―――有り体な感じだよ。お前らと変わんないって」コクッ

香焼「ありてい、っすか」フム・・・

上条「基本的に男も女も変わんないだろ。同じ様な話すりゃいいんだ」ピッ

香焼「でも、男女じゃ話題も違うんじゃ」ウーン・・・

上条「変なとこで意固地だな。サーシャみたいなヤツ……ま、違いがあるとしたら『馬鹿な話』するかしないかじゃないか」ビシッ


馬鹿な話?


上条「んっと……あー」ポリポリ・・・

香焼「上条さん?」ジー・・・

上条「その、だな……そういえばお前、中坊だから教えて良い事と悪い事ある様な気がして」アハハ・・・

香焼「はい?」キョトン・・・

上条「俺が変な事教えて、神裂とか五和に怒られるのも難だしなぁ」ポリポリ・・・


どゆこと?

姉さんや五和に怒られる様な話……と、よくよく考えれば分かる事か。


香焼「あー、そういう」ポリポリ・・・

上条「分かったか」ハハハ


確かに『破廉恥な』とか『男子って馬鹿ですねー』とか言われそう。
正直、自分もそういう話は得意ではない。


上条「香焼、ムッツリだな」プニッ

香焼「ふぇ?」ムニュッ

上条「まぁでも、そうだよなぁ。建宮とか牛深とかの近くに居れば嫌が応にも聞こえてくるか」ハハハ


あの人達はまさに『男』ですから。一応既婚者だけど野母崎(ノモ)さんも混じって馬鹿な会話してるし。


上条「なんだ。目の前に良い例が居るじゃないか」フムッ

香焼「え……でも、あの人達は」タラー・・・

上条「きっと俺も同じ様な話してるよ。土御門とか青ピとかと普通の話や馬鹿な話」ハハハ

香焼「上条さんが?」キョトン・・・

上条「おいおい、上条さんを聖人君主だなんて思ってくれるなよー。普通の高校生だ、普通の。女子のタイプの話もすればエロ話だってする」


確かに。この人はあくまで『一般人』代表だった。


上条「それこそ、性別は違うけどレッサーのノリで馬鹿やる2人が親友だぜ」ハハハ

香焼「……羨ましいっす」フフッ

上条「お前だってステイルや削板とそういう……ステイルは無理か」ウーン・・・


アイツは『女なんてどれも一緒だろ』とか流すし、
軍覇も『そんな事より根性と正義の関係について!』とか熱く語り出すから話にならない。


上条「頑張れ。2,3年もすりゃそういう話出来る様になると思うぞ」アハハ・・・

香焼「そう願います」ハァ・・・

上条「うん……まぁ話戻すけど、基本は男女共に同じ様な会話だろ。あとは如何に異性には話せない事を駄弁るかじゃないか」ポンッ

香焼「……参考にします」ペコッ


異性には話せない事。同性内だからこそ話せる事か。


香焼「……自分も」ムゥ・・・

上条「ん? 何か隠してる事あるのか?」ニヤニヤ・・・

香焼「い、いえいえ! そんな事は!」アタフタ・・・///

上条「なんだよー。上条お兄さんに話してくれてもいいんだぜー」ツンツンッ

香焼「な、無いっすよ!」アワワワ・・・///

上条「ほら。気になる女子とか、えっちぃ本の隠し場所とか」プニプニッ

香焼「いーませーん! そ、そんな本も持ってませんから!」カアアァ///

上条「またまたぁ。中一ならそういう話とかあってもおかしくないっしょー。一方通行みたいに『知らン、ボケ』で通すの無しだぜ」フフフ・・・

香焼「あわにゃにゃ……―――」///


その後、色々と詰問されて姉さん達にも内緒にしている事は話したり教えてもらったり……やっぱり中学生と高校生は違うのだなぁと実感した。


上条「―――んで、そんなとこだな……って、おい」ポンッ

香焼「ふぇあ!?」///


内容が過激過ぎて途中から聞いてなかった。一応、自分を中学生と見做してフィルター掛けて話す建宮さん達とは違い、
歳が幾分かしか違わないこの人は包み隠さず『色々』話してきた。


上条「ははは。建宮達に揉まれてきたっつってもやっぱ中学生だな」ツンツンッ

香焼「べ、別にそういう話ばっかじゃないっすから……あと、そんなに子供扱いしないで下さいよー」ムゥ///

上条「ははは、子供子供。きっとガチで土御門とエロ話してみたら気失うぞ」アハハ


一生するつもりはないのでご安心を。


上条「しっかし、意中の女子がいないってのは意外だな。アレだけ周りに女子ばっかなのに?」フム・・・


お ま え が い う な。


上条「まだ中学生だしな。高校生にもなれば彼女の一人も欲しくなるのですよ……あーリア充なりてー」ハァ・・・

香焼「いやいやいや。リア充じゃないにしても女性に関しては事欠かないんじゃ」ジトー・・・

上条「はい?」キョトン・・・


駄目だこの人、やっぱ自覚無い。


上条「いやいやー。上条さんの事を彼氏にしてくれる物好きなんてそうそう居ませんって」アハハ


いつもこのノリだ。ネガティブなのか、それとも『分かってて』このノリを貫いているのか……僕には判断つかない。
しかし―――ふと、意地悪な疑問が浮かんでしまった。


香焼「じゃあ……仮に」ボソッ

上条「ん?」チラッ

香焼「仮に……五和か、カオリ姉さん。恋人かお嫁にするなら?」チラッ

上条「はひ?」ポカーン・・・


なんか凄い事聞いちゃった気がする。





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 <同刻、学園都市第1学区、ディレクターズマンション>


神裂・五和「「――――っ!!?」」バンッ!!

浦上「姉様!? お姉!? どったんですか!?」タラー・・・

神裂「いえ……何やら不穏な感じが」ギリギリ・・・

五和「私らの知らぬところで(上)条約違反が行われている様な」

浦上「ふーん……誰かが逢引でもしてるんじゃないカナ。もしかしたら……案外、身内が」ニヤニヤ・・・

神裂・五和「「っ?!」」ギョッ・・・


上条「神裂と五和を? いやいや、そんな無理難題を」アハハ・・・

香焼「2人とも、そういう目では見れないっすか?」フムフム・・・

上条「そういう事じゃないけど……うーん」ポリポリ・・・


やっぱり意地悪な質問だったか。とりあえず、仮にだ。仮に。


上条「仮に、ねぇ……だって2人とも完璧超人みたいな女性だろ。上条さんには勿体無い限りで」ハハハ・・・

香焼「どこが」エー・・・

上条「え?」チラッ

香焼「え」キョトン・・・


何か変な事言いました?


上条「え、あ、いや、聞かなかった事にする……しかし、あの2人となるとなぁ」ポリポリ・・・

香焼「兎に角、あの2人限定で」キッパリ

上条「料理は完璧だし、文武両道。おまけに超が付く程べっぴんさんでボインさん」ムゥ・・・


全て認めるが、性格面を考慮して無い。


上条「確かに2人ともキレるとヤバいな」ハハハ・・・

香焼「キレたらオカシくなるのは確かにっすけど、五和は常に馬鹿っすから。姉さんはまだちょっと常識が足りない感じもしますね」

上条「お前よく言うけど、その『五和が馬鹿』ってのが未だに信じられないんだよなぁ」ウーン・・・

香焼「……とりあえず、身内からしてみりゃお転婆極まりないっす」


猫を被ってる、とは言わないでおいてやる。それを言ってしまうとフェアではないからな。


上条「神裂は……常識無いっていうより、古臭いっていうのかちょっとオバサン臭いとこあるよな」ポリポリ・・・

香焼「確かに」ハハハ・・・

上条「五和は五和で、俺が知る限り女子として無防備過ぎる様なとこもあるし」フムフム・・・


そこだ。アイツは基本恥らいが無い。
服装的には姉さんも恥らいが無いけど、魔力を練るのに左右非対称が云々言い出すのでその点は諦めてる。


香焼「あ、でも最近の姉さんは固法さんとか麦野さんの御蔭で普通の服着る様になりましたよ」

上条「そうだな……あー」ポリポリ・・・

香焼「どうっすか?」フムフム・・・

上条「……うん」ムゥ・・・


この前着てたロングスカートとセーターに髪降ろしてた時の恰好なんて、上条さんの好みの女性のタイプからしてみれば、
ド真ん中ストライクゾーンぶち抜けて求婚レベルモノだと思うのだが。


上条「確かに……あれはクラッときた」コクコクッ

香焼「年上で、寮の管理人さん……とはいきませんけど、オルソラさんの補佐みたいな感じで切り盛りしてますしね」ハハハ

上条「あれ? 実は超ストライクゾーン?」キョトン・・・


おお! これは遂に脈アリきたのか!?


神裂「ふふ……ふふふふふっ」ドヤァ・・・

五和「うぎぎぎぃ」ギリギリ・・・

浦上「お姉怖っ!? あと、いきなりニヤけ出してドヤ顔する姉様も怖いですヨ」タラー・・・

五和「こうなったら……私! 今から寮の管理人さんとして潜入します!」バッ!!

神裂「ちょ、待てこら! 唯一出来た私のアイデンティティ奪う気ですか?」ガシッ!

浦上「というか、何処行く気なの?」チラッ

五和「無論! 上条さんのアパートの管理人として潜入を!! あくまで任務なので止むを得なく! はい!」ズルズル・・・

神裂「させるかこの女(アマ)ぁ! そんな任務にハンコ押しません! てか上条約モロ違反だ阿呆!!」ガッシリッ!

五和「いーやーだー! 私も管理人さんになーるんでーすっ!!」ウガー!

神裂「面白がって建宮が許可しても私は許可しませんっ!! ってオイ! 勝手に稟議書書き直すなー!」ウガー!


 ギャーギャー!


浦上「ありゃりゃ……――Pi――……あ、もしもし。対馬さん? まーたお姉と姉様が馬鹿な喧嘩始めたので止めてもらえます?」ハハハ




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割と近くで大喧嘩始まってそうな気もするけど、特に気にしない。


上条「でも神裂、たまにしかあの恰好しないしなぁ」ポリポリ・・・

香焼「あー、はい。普段はどうしても『いつもの恰好』しちゃってますね」アハハ・・・

上条「そういう点も考えると、やっぱ五和か」ウーン・・・

香焼「……ふーん」

上条「ま、恋人(身近)が五和。嫁(理想)が神裂……の私服Verって感じかな」ビシッ


なるほど。無難な回答をどうも。


上条「でもまぁ、あくまで仮の話だ。俺にはあの2人は勿体無いよ」アハハ

香焼「そんな事無いっすよ。寧ろ貰ってやって下さい」ペコッ

上条「あはは、変なヤツ。お姉さん達に怒られるぞ」ポンッ

香焼「大丈夫っす。この話は秘密にしとくんで」ニヤニヤ・・・

上条「やれやれ……ま、身近って意味なら浦上もお前も恋人にできそうだけどな」ハハハ

香焼「浦上はやめと、いた、ほ……ぅ……え」ピタッ・・・


今、意味不明な発言が。


上条「え? だからお前ら姉弟全員。気を使わないで済むし」コクッ

香焼「……はわっち?! じ、自分も!?」カアアァ///

上条「あ、そっか。あははは。間違えた間違えた……まぁ香焼が『彼女』だったらアレだな。危ないな、ははは」ポンポンッ

香焼「」キュウウゥ///


その、なんだ……嬉しいけど、恥ずかしいです……じゃなくて! 駄目です! おかしいです! あぶのーまるです!


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神裂「……なんだか」ピキッ

五和「無性に……コウちゃんを」ピキッ

浦上「にゃはは……あーあー、知ーらない」フフフ・・・


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ふざける上条さんをテレ隠し(?)がてらポカポカ叩く。


上条「あっはっは。悪い悪い。ま、とりあえずお前らは強いからなさっきも言ったけど彼女とか恋人とかって意識するのは難しいよ」ハハハ

香焼「んもー、自分は男っすよ。『お前ら』に一括りしないで欲しいっす……姉さんや五和は『戦友』みたいな感じっすか?」チラッ

上条「そういうのもまた違う。何ていうのか難しいけどな。でもまぁ神裂や天草式の連中は俺の意図せずして戦いに出るだろ」ポンッ


急に真面目な話に戻ったが教義がある故、それを全うするべく動くのが教徒の役目だ。


上条「家庭的な彼女を作るには、今の俺の現状じゃ難しいだろ」ハァ・・・

香焼「どうしても戦いの中心に居ますからね」コクッ

上条「昔は意図せずしてだったかもしれないけど、今は進んで戦火に飛び込んでる……少しでも早く火を消す為に」ジー・・・


でも、あくまで独り善がりだけどなと、悲しく微笑んだ。


上条「魔術と科学。グレムリンとか魔人とか聖人とか超能力者とか原石とか……統括理事とか色んな教会とか、そのトップとか」ハァ・・・


皆、仲良く……とまでは言わないけど、互いの妥協点を探し合わなきゃ平和にはならない。


上条「妥協点って言い方は変かな。『譲り合う』とか『認め合う』心って大事だろ……兎に角、それを模索しないと」ジー・・・


この国の美徳、尊重と謙譲。やはりこの人も日本人なのだ。


上条「んー。そんな平穏が訪れるまでは上条さんに家庭的な彼女が出来る事は無いかな」ハハハ


結局、この人は『恋人』を作る事を望んで無いのかもしれない。
あくまで現状は、だけど、平和になって初めて自分の幸せにも甘んじるのだろうか。


上条「買い被り。実際、もてないから彼女が出来ない。ただそれだけの事ですよーだ」アハハ

香焼「……ふふっ」

上条「守れるモノは守ってきたつもりだ……だからこれからは、ボチボチ攻めなきゃ駄目かもしれない」ポンッ


この人は益々強くなる。そして周りも引っ張られ、勢力が拡大する……でもそれは上条さんの望むところでは無い。


香焼「じゃあ……守るべき人が、戦う姿は?」ジー・・・

上条「……、」ポンッ・・・


姉さんや五和は天草式という大義で戦えるが……禁書目録や御坂さんが、自分の為に戦うのは……如何考えているのだろう。




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すいません。此処まで……寝まふ。

(男の子にフラグ立てちゃ)いかんのか?

こんばんわ。続きを。ぽちぽち。

>>124-125・・・(同性として)いかんでしょ


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一寸、空を仰いで、呟いた。


上条「やっぱ、嫌だよ」フム・・・

香焼「貴方の為でも?」

上条「尚更嫌だ」コクッ


自分を思って戦ってくれるのが、嫌なのか。


上条「だって、戦うって事は傷ついたり傷つけられたりするだろ……自分の大切な人達がそういうのに巻き込まれていくのは、宜しくないよ」

上条「確かに、御坂は俺より強いしインデックスだって俺なんかよりずっと頭がキレる」

上条「盾にしかなれない俺よか、2人の方がかなりの役には立つ筈だ」


御坂さんの『矛(雷)』と禁書目録の『頭脳(知識)』。もはや戦術級のそれを過小評価する輩は何処にもいない。
それでも、この人は……やはり『盾(守る側)』なのだろう。

御坂さんは、この人の方に『正義がある』と決めつけ、何と託けても彼の『勢力(側)』に入り込もうとする。
禁書目録に至っては、この人が……『全て』といっても過言ではない。故に彼の『勢力(傍)』から離れる事は無い。

信頼してくれるだけなら嬉しい筈だ。しかし、戦いの渦中に巻き込む状況はこの人の良しとするところでは無いのだろう。


上条「でも、嫌だよ」ポンッ

香焼「御坂さんは『ついてくるな』って言っても、ついてきちゃいますけどね」ハハハ・・・

上条「御坂はなぁ……その点、インデックスには感謝してるよ」ポリポリ・・・

香焼「感謝?」キョトン・・・


戦いが起こる度、毎度毎度家に置き去りにしていく事を『感謝』できるか。


上条「申し訳無いとは思いたくないな。何だかんだ言って、待っててくれるんだ。俺の帰る場所で」ニカッ


勿論、帰る度に『勝手に出て行ってごめん』とは言うのだろう。それでもって禁書目録はいつも通り、この人に噛み付く。
それが日常。ちょっとバイオレンスかもしれないがこの人なりの『平穏』。

ごめんなさい、より、ありがとう。

前に固法さんが言っていた『居場所』について……自分が自分らしく居られる場所。それが『居場所』だ。
やっぱり、禁書目録が待つあの学生寮の一部屋が、上条当麻が上条当麻で居られる場所なんだ。


上条「黒妻さんにも同じ事言われた気がするな。流石夫婦」ハハハ

香焼「そうっすね……でも、そういう意味では御坂さんも同じなんじゃ」チラッ

上条「え」キョトン・・・


彼女が常に、隣に、共に立ってくれているからこそ……戦いの中であっても、上条当麻が上条当麻で居られる。
御坂美琴という『日常』が傍に居て戦ってくれるからこそ、上条当麻は『常』を忘れず右手を奮える。


上条「あー……そういう風には考えた事無かったな。でも、うん……そうかもしれない」ポリポリ・・・


姉さん達には申し訳ないが、彼の左右には―――いつも、あの2人が居る。
幸か不幸か……いや、この人はきっと『幸せな事だよ』と応えるのだろう。

しかし、この人はやっぱり古いタイプの日本男児的な考えを持った人なのだなぁと感じた。
声を大にして言いはしないが、戦場に女子は立つべからず、といった心情なのだろう。


上条「だって、嫌だろ? 女の子が戦う姿ってさぁ」ウーン・・・

香焼「えっと、あはは……天草式(ウチ)は女教皇様が魁(さきがけ)るタイプなので」ポリポリ・・・

上条「お前はそれを可憐だとか恰好良いと思うか?」フム・・・

香焼「それはまぁ、その……ちょっとは」ハハハ・・・


現に戦場を駆ける女教皇様は恰好良い。五和だって、普段はアレだが、戦場では輝いて見える。
綺麗な服を身に纏う女性らしい彼女達も可憐だとは思うが……やはり剣を握ってこそ、華がある御方だ。


上条「ふーん……じゃあやっぱ、そこが俺とお前との違いかな」ポンッ

香焼「残念ながら」アハハ・・・

上条「出来れば、神裂や五和にも戦場には立って欲しくないよ……まぁ信念があるんだろうから如何こう言えないけどさ」ハハハ


申し訳無いが、戦場に立つ教皇としての姉さんは『女性』としてではなく、寧ろ『大将』として見てしまう。
此処が職業魔術師と一般人との違いだろう。何だかんだいっても……僕は魔道を行く者だ。感性は異なる。


上条「天草式の面々は同僚とか先輩として見てしまうから仕方ないかもしれない。でもさ」ポンポンッ

香焼「はい」キョトン・・・

上条「……アニェーゼ達は?」チラッ

香焼「え」ピタッ

上条「必要悪の教会の連中……の中でも、お前と親しい同年代の娘達。そいつらが戦うのは如何だ?」ジー・・・

香焼「そ、それは」タラー・・・

上条「教会の面子じゃないけど、レッサーやサーシャは?」ジー・・・


沈黙。


香焼「……皆、魔術師だから」ボソッ

上条「魔術師だから、仕方ないのか?」ハァ・・・

香焼「彼女達にも、主義主張があります……自分はそれについて如何こう言えた立場じゃないっすよ」コクッ

上条「汚れ仕事でも?」フム・・・


意地悪な質問だ。


香焼「……上条さん」シュン・・・

上条「あー……悪い悪い。ちと卑怯な質問だったな」ナデナデ・・・


僕が『応えられない』のを分かってて聞いてきた。


上条「『魔術師だから仕方ない』で片付けるのは楽さ。現にステイル辺りはそう割り切ってるだろ」ポンッ

香焼「はい」ショボーン・・・

上条「でも、お前は割り切れない。別に良いじゃないか」ポンポンッ

香焼「それじゃあ魔術師として半人前っす。だから、いつまで経っても『危険な仕事(メイン)』や『汚れ仕事』を任せてもらえない」ムゥ・・・

上条「落ち込むなよ。まだ子供だって事だ……今はそれに甘んじとくべきだと思うぜ」コクッ


子供で居られる間は、というが……現に僕の身の回りの同年代は皆『最前線』に居る。
姉さんや建宮さん、そしてこの人にも怒られるとは思うが―――僕もそこに立ちたい。立って、彼女達の負担を少しでも減らしたい。

しかし、いや、やはりというべきか……彼は難しい表情をしていた。


上条「……分からないな」ハァ・・・

香焼「あはは……分かっちゃったら困りますよ」ポリポリ・・・

上条「魔術師とか、この街の暗部? だっけか……やっぱ変だよ」ジー・・・


そう感じるのが普通。一般から見ての悪―――故に、必要悪。


上条「目には目をってか……ハンブラビだっけ?」ウーン・・・

香焼「海ヘビ?」キョトン・・・

上条「いや、違……あーどーせ上条さんは馬鹿ですから良いですよ! じゃなくて!」ツンツン・・・

香焼「ほふぇん」ムキュ


ほっぺ押さないで下さい。喋れません。


上条「兎に角、必要悪の『必要性』について。否定はしないけど肯定も出来ないな」ポンッ

香焼「ぷはっ……ふー……それで良いと思いますよ」コクッ

上条「で、それから……出来ればお前にも肯定して欲しくない」ポンポンッ

香焼「……、」ムッ・・・

上条「魔術師としてのプライドはあるんだろうけどさ。違うベクトルから『救い』ってのを差し伸べるのも手だと思う」ナデナデ・・・


難しい事を仰る。


上条「魔術師の全員が一生涯、魔道に足突っ込んでる訳じゃないだろ。能力者だって一般企業に就職する人だっている」コクッ

香焼「はい」ジー・・・

上条「だから、香焼も香焼らしい将来を見つければ良い。そうすればお前がさっき言ってた『子供が武器を握らない世界』だって作れるよ」

香焼「そんなもんすかね」ムゥ・・・

上条「そんなもんだ」ナデナデ・・・


しかし、やっぱり、今はまだ魔術師でありたい。堂々と『表』に立つのは、自分が今の仕事に納得してからだ。


香焼「自分はまだ何も知らないっすから……全部、見極めたいなって」コクッ

上条「『汚れた』仕事も?」ジー・・・

香焼「じゃないと、ステイルやアニェーゼ達と同じ土台に立てないっす。それに……最愛も」コクッ

上条「元暗部だろ。今は平気なんじゃないのか」キョトン・・・

香焼「……、」ウーン・・・


彼女は、もし、浜面さんや仲間がピンチの時は戦うだろう。今の最愛ならきっと相手を殺さない様、努力して戦う。


香焼「でも、一番恐れてるのは……彼女がまた『堕ちる』様な事があったら」タラー・・・

上条「成程。だから『表裏』全部知った上で『表』の方から引っ張り上げてやるってか」ジー・・・

香焼「可能なら、はい」コクッ

上条「なんだ。やっぱお前だって女子に戦ってほしくないんじゃないか」ハハハ


こればかしは、難とも。
男としての意地と、魔術師としてのプライド……ハリネズミのジレンマだ。

 ―――とある休日、PM00:00、学園都市第7学区、とある公園(イカれ自販機在中)・・・香焼side・・・





気が付けば正午を回っていた。上条さんと話し込んでいて時間をすっかり忘れてしまっていた。


上条「―――っと、もうこんな時間か」チラッ

香焼「あ、ホントだ。長々すいません」ペコッ

上条「いやいや、此方こそ」ポンッ


この人とサシで話せる時間は貴重だ。きっと姉さん達に知れたら妬まれるな。


香焼「それにしても、最愛遅いなぁ」ウーン・・・

上条「そいやぁ待ち合わせしてたんだっけな」ポンポンッ

香焼「はい」コクッ

上条「何時の待ち合わせだったんだ?」ナデナデ・・・

香焼「10時半だったんすけど、何か立て込んでるみたいで」ポリポリ・・・

上条「そっか」プニプニ・・・

香焼「ふぁい」コクッ

上条「……、」ツンツン・・・

香焼「……、」ジー・・・

上条「…………、」ナデナデ・・・

香焼「…………、」ジー・・・

上条「………………、」ワシャワシャ・・・

香焼「………………、」ジー・・・

上条「……………………、」ナデナデ・・・

香焼「……………………、」チラッ

上条「………………………………………………………………、」ナデナデ・・・

香焼「………………………………………………………………、」モジモジ・・・

上条「………………………………………………………………………………………………………………………………、」ナデナデ・・・

香焼「………………………………………………………………………………………………………………………………あ、あの!」モジモジ・・・///

上条「………………………………………………………………………………………………………………………………………………あ、うん?」チラッ


えっと。


香焼「さっきから、ずっと気になってたんすけど」モジモジ・・・///

上条「うんうん」ポンポンッ


何でずっと、僕の頭撫でてるんだろう。割と最初の方から。


上条「え?」キョトン・・・

香焼「え」ポカーン・・・

上条「……………………………………………………………………………………………………………………何でだろ?」ウーン・・・


えー。

この人、無意識で人の頭撫でるのかな。


上条「いやいや、流石にそんな性癖ないですよ」アハハ

香焼「じゃあ、自分が魔術使うのを防ぐ為とか?」チラッ

上条「それも違う。てか、何で魔術使う必要あるんだよ」ポンポンッ


まぁ確かに……って言ってる傍から、ほら、まただ。


上条「え……あはは。マジだ」ポンポンッ

香焼「な、何なんすか」ムゥ・・・///

上条「うーん。可愛いから?」ハッハッハッ

香焼「なっ!? ば、馬鹿にしてっ!!」カアアアァ///

上条「冗談だよ、冗談」ナデナデ・・・


ホント、訳が分からない。


上条「まぁアレだ。撫で易い高さに頭があったんだ」ポンッ

香焼「む……チビって言いたいんすか」ムスー

上条「違う違う。何ていうのかなぁ……とりあえず撫で易いんだって」ポンポンッ

香焼「……何だかなぁ」ハァ・・・///

上条「同性だし年下だし、気兼ね無くタッチ出来るって意味だ。まぁ兄貴分のスキンシップだと思え」ハハハ

香焼「うーん」ポリポリ・・・///

上条「あ、でも嫌だったか?」ピタッ

香焼「いや、その……むぅ」モジモジ・・・///


嫌では無い。寧ろ……嬉しいかも。
そういえば、よくよく考えると建宮さん達にも頭撫でられる……そんなに撫で易い頭なのかなぁ。


上条「上条さんは妹分は沢山いるけど、弟分がいないからなぁ。そういう意味でも丁度良いのかも」ハハハ

香焼「お、弟」チラッ・・・///

上条「その点、お前は弟妹が少ないよな。知り合いの年下ってアンジェレネとランシスくらいか?」ポンポンッ

香焼「え、ええ」コクッ・・・///

上条「そっか。まぁ逆に姉貴兄貴分は多いもんな」ナデナデ・・・


多いのだが……上条さんの様に『普通の兄』的な人はいない。


上条「確かに、兄とも父とも取れる連中多いよな。あとは同僚だし、俺みたいなのとはなんか違うか」ポンポンッ

香焼「は、はい」ムキュゥ・・・///

上条「じゃあ……試しに『当麻兄ちゃん』って呼んでみ」ニヤニヤ・・・

香焼「にゃい!?」ギョッ///

上条「もしくは『兄貴』でも『にーに』でも可。好きに呼んでみ」ハハハ

香焼「そ、そんなそんな!!」カアアァ///


な……なんぞ、これ!? 上条さん! 土御門ともう一人の親友さん(青ピ)に毒され過ぎなんじゃないっすか!?

弟願望が強いのか、それとも単に僕が恥ずかしがる姿を見たいのか……どっちにしろ意地悪だ。


上条「ほれほれ」ナデナデ・・・

香焼「くっ」ムゥ・・・///

上条「言ったら手ー放してやるぞー」ニヤニヤ


いや、撫でられるのは満更でもn……いやいや! 恥ずかしいから止めて下さい!


上条「言えば楽になるって、ほらー。そんな恥ずかしがる事でもないだろ」ポンポンッ

香焼「……お」モジモジ・・・///

上条「お?」ニヤニヤ・・・

香焼「お……お、おに」モジモジ・・・///

上条「んー?」フフフ・・・

香焼「お……にぃ……い――――――――――――――








                         とう、ま、おにい








                            ――――――――――――――――ぃー、、、やっぱ無理っす!!」カアアァ///

上条「あーなんだこんにゃろー! 散々期待させといてー!」ガシッ! ワシャワシャ!!

香焼「にゃいあらん!!?」ボンッ//////////////

上条「はははは。まぁ面白いもん見れたから満足だな」ムニムニッ

香焼「ひ、酷いっすよー! てか、離してください! はーなーしーてー! んー! んー!!」ジタバタ・・・///

上条「こやつめこやつめ」グニグニッ


ガッチリとホールドされて捏ね繰り回された……もうお婿に行けない。


上条「はっはっはっは。まぁこのくらいで勘弁してやろう」ポンッ

香焼「うー……乱暴された……責任取って下さいよ」クスンッ・・・///

上条「はいはい、お嫁にでも何にでも貰ってやらぁ」ハハハ

香焼「また馬鹿にして」ムゥ・・・///

上条「まぁその内、土御門と一緒になってからかってやろう」フフフッ

香焼「もー。勘弁して下さいよぅ」ハァ・・・///


相変わらず、この人には勝てないな。

またわしゃわしゃと僕の頭を撫で始めた直後、上条さんの携帯が鳴った。


上条「はいはい……――Prrrrrr!――と、電話……げっ。インデックス」タラー・・・


暴食シスターが暴れ出す時間だ。


上条「あー、休日の昼飯時は風斬に任せっぱは拙いな」アチャー・・・

香焼「何でもかんでも食い散らかし出しますね」アハハ・・・

上条「やれやれ……まぁ案の定、神裂からアイツの分の食費は仕送りしてもらってるからな。助かってるよ」コクッ


当たり前だ。そのくらいしなければ此方として申し訳が立たない。


上条「でも、最近ちょっと額が多い気もするんだけど……間違ってない? 後から返せとか言われるんじゃ」ポリポリ・・・

香焼「いえ、きっと姉さんとステイルが気持ち多めに振り込んでるんだと……受け取って下さい」ペコッ

上条「なんか悪いな……とりあえず今は甘んじるよ。ありがとうっ言っといて」ポンッ


こういう所は現金な人だ。まぁ人間臭くて良いと思う。


上条「さーてっと……とりあえず、また何かあったら気軽に相談して来いよ」スッ・・・

香焼「はい」コクッ

上条「仕事のアドバイスとかは出来ないけど、今日みたいに私生活のアレコレとか愚痴は聞くぜ」ポンッ

香焼「ありがとうございます」フフッ

上条「じゃあな……――Pi!――……あーはいはい。風斬か……え? インデックスがキレてる? あー空腹限界かー」タラー・・・

上条「って……え? お腹空いたじゃなくて兎に角、俺に怒ってるって? なんでさ!?」ウーン・・・

上条「は? 枕齧りながら『女側として絶望級のフラグおっ立ててるんだよ!!』って叫んでる? 意味が分からない……―――」テクテクテク・・・


よく分からないが、大変そうだな。でも、これもまた『日常』……頑張れ、上条さん。


香焼「でも、当麻お兄ちゃん、か……えへへ……―――って、あれ?」ニヤニヤ・・・ピタッ

御坂「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」ダダダダダ・・・


あ。今度は御坂さんだ……如何して鬼の形相で、かなりの電気を帯びながら走ってるんだろう?


御坂「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――、」ピタッ・・・ビリビリ・・・

香焼「ん?」ジー・・・

御坂「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」ビジバジッ!!!

香焼「ひ、うぇっ!?」ギョッ・・・

御坂「っ……チッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。。。」ダダダダダ・・・


一瞬、もの凄いガンが飛んできた……何だったんだろう。くわばらくわばら。



                ~~~一方、時は遡り~~~



 ―――とある休日、AM10:30、学園都市第7学区、とある公園(イカれ自販機在中)・・・黒夜side・・・




世間様でいう休日の御昼前。公園には学生達が疎ら疎らに足を運んでいる。
ある者はボール遊びを、ある者はかくれんぼを、またある者は近道がてら通り過ぎるだけだったり。
そんな中、私は……何をする訳でも無く適当に散歩していた。


黒夜「……あー、めんどー」カチカチ・・・


目的なんか無い。所謂、通行人K状態。
実のところ、休日のサービス残業をシルバークロースに全部押し付けて逃げ出してきたのだ。


黒夜「やーってられっかっての」ハァ・・・


暗部になりゃ好き勝手出来ると思ってるヤツがいるとすりゃ、ソイツは脳内お花畑のハッピーちゃんだ。
実際は公僕の延長。汚れ仕事な分、警備員やら理事職員に比べて性質が悪い。


黒夜「……ほんと、何してんだか」ボー・・・


自分でも何がしたいんだか、よく分からなくなってきた。
嘗ての『誰かさん』みたいに無敵になりたい訳でもないし、かといって平穏を望んでる訳でもなし。

今の私、宙ぶらりんな存在。


黒夜「あー……アホくさ」ケッ・・・


アンニュイ……おセンチにもなる。


黒夜「……ん」ピタッ


ふと、先日色々あった『自販機』の前で―――アイツを見つけた。
絹旗のヤツがベッタリだった女男。名前は何といったか……呼び名なんて如何でも良いか。

しかし、アイツが私と『同業者』だってのは未だに信じられない。ただの青臭いガキじゃないか。

ただ、この仕事をやってる上で気付かされるのだが、人は見た目に依らない。
実はアイツも私や絹旗同様、凄腕の殺し屋だったりするのかもしれない。


黒夜「……ふーん」ジー・・・


一人でベンチに座ってるのを見る限り、誰かと待ち合わせでもしているのだろう。
まさか私みたいにボッt……孤高なキャラではあるまい。もしくは日向ぼっこが趣味の老人嗜好なボケガキか。

何にしろ暇だし……気分転換にからかってやろう。そんな事を考えた刹那―――、一番苦手なヤツが現れた。


黒夜「うげっ!? 幻想殺し!」タラー・・・


優男の傍に近寄り、隣に座るウニ頭。そういえばこの前、知り合いみたいな話してたけどマジで関係者だったのか。
しかし、だとすると女男が『同業者』だというのにも納得出来る。『幻想殺し』の周りに一般人はいない……この業界での噂の一つだ。


黒夜「……、」キョロキョロ・・・ススス・・・


自然にアイツらにばれない様、背後の草繁に回り込んでしまった。自分でも何でこんな行動を取ったか分からない。
究極に暇だった所為か、それともアイツらに興味を持ってしまった所為か……『攻め』の思考の代表たる、好奇心に突き動かされた所為か。

兎も角、ヤツらの言動に耳を傾けてしまった。

はい、今日は此処まで。やっとメインに入れる。
しかし香焼を上条さんとイチャイチャさせ過ぎた……悪かったと思う、、、でも謝りません。

とりあえず適当に質問意見感想リクエスト罵倒等々お願いします。それではまた次回! ノシ”



「上条当麻 痴情のもつれで全身を食いちぎられて死亡」
「香焼?? 八つ当たりで暴行を受け感電死」

黒いノートにこんな一文を書いたかのような展開
(香焼のフルネームわかんなかった‥)
‥にならなくて良かった

ヒロイン(笑)共が何をしでかそうがこのss内なら一向に構わんが
連中の手でデッドエンド(強制終了)ってのは無いことを願う
(逆なら(このssには合わないけど)ともかく)

何だこのかわいい生き物はw

とにかく乙です。
次も楽しみにしてます

やだ、カップリングでもないのにインさんとみこっちゃんが女子扱い受けてる‥‥上条さんイケメソ
あとわんこーやぎカワイイ。流石メインヒロインww

>>136
的確すぎる…

新約キャラはもっと出ますか?トールとかバードウェイとか出せるなら出してほしいかも

こんばんわ……PCの電源落ちて書き溜めた分が全部トンだ。泣きたい。やっぱ定期的に保存しなきゃ駄目だな。


>>136 >>139・・・デッドエンドはありませんよ。基本ギャグSS(のつもり)なんで。

>>137 >>138・・・だってヒロインだもの!

>>140・・・出します。主に英国編かな。


とりあえず、頑張って書き直したモノをボチボチ投下します。

スニーキングゲームのプレイヤーキャラよろしく、ヤツらの背後まで迫る私。
辺りの雑多音やら風で繁みが揺れる音で皆までハッキリ聞こえる訳ではないので、
それなりに声が拾える良い位置に着くまでボチボチ時間が掛ってしまった。

さーて、何の話をしてるやら。


上条『―――――――と上手くやってるのか?』

香焼『ええ。それなりに……五和と浦上の――――――慣れました』

上条『―――でも五和が――――――信じられないな』


まだよく聞こえない。でも、これ以上近付くと気付かれ兼ねない。此処らで妥協しよう。


上条『神裂は?』

香焼『―――相変わらずっすけど、丸くなりましたね―――』

上条『―――でもそれはやっぱ香焼とか五和達の御蔭だろ?』

香焼『だと嬉しいんすけど―――影響も大きい様で』

上条『ああ、麦野さんとか固法さんとかか……―――――統一性無いよな』

香焼『そうっすね』


今、第4位の名前が出た。もしかして『仕事』の話か?
いや、幻想殺しはあくまでフリーランス。何処の組織にも属さない筈だ。
しかし……この情報もいつのモノか定かではない。という事は何か新たな展開が起きて、今コイツと繋がっているという可能性もありえる。

色々考えている最中、話は進む。


香焼『―――上条さんの御蔭っすよ』

上条『ははは―――――――思った通り動いたらこうなっただけ』

香焼『でも結果的に――――――』


朗らかな雰囲気。おかしい……なんか、おかしい。


上条『そうだな――――――インデックスとの蟠(わだかま)りが解けてきてるっぽいし……―――もうちょい掛るか』

香焼『ええ。アイツは――――』


目次(インデックス)とは何かの隠語だろうか。
ちょいちょい意味不明な単語が出てくる。あと横文字が多い。人の名前なのか物事の名称なのかよく分からない。

とりあえず、気になってしまう。


黒夜(しっかし……楽しそうに話してんのな)ジー・・・


時折真面目な表情はするものの、基本ほんわか喋ってる。

もしかして……単なる世間話か何かだったりして。


香焼『……――――――貴方っす』

上条『買い被り過ぎだよ―――――――――我儘通しただけ』ポンポンッ


ん?


香焼『――――――難しいんすよ』

上条『―――……普通だよ、普通』ポンポンッ


あれ……ん?


上条『―――そんな化け物みたいな……まぁ敢えて――――――だけだろ、俺って――――――』

香焼『でも皆そこに――――――』

上条『うーん……―――――――――理屈っぽいわ』クシャクシャ・・・

香焼『えへへ、すいません』


ちょっと、おかしい。何がおかしいかっていうと。


上条『でもさ――――――お前も凄いよ』ポンポンッ

香焼『え』


なんで、アイツらイチャイチャしてんの?


黒夜(え? いや……男子でもこんな風にベタベタするもんなのかな)ジー・・・


正直、私は『日常』から掛け離れた生活を送っている為、一般的な男子同士の交流について詳しくない。
漫画やTV等でのは知識はあるが、実際どんなものなのかは見た事が無かった。

よく女子(笑)同士だと過剰にスキンシップを取ったりしてると漫画では読んだ事があるが……男子もそうなのだろうか。


上条『メンタルな話は――――――でも終わった事は必要悪の教会だったり土御門だったり――――――』

香焼『――――――上条さんは元々一般人っす―――義理は無い』


なんか結構真面目話してるけど、2人の行動が気になって耳に入らない。


上条『はぁ……―――好きだな、香焼』ポンポンッ

香焼『―――本当の事言ったまでっすよ』

上条『はいはい……――――――お前の凄いとこは『今』じゃなく『後の事』を―――』ポンポンッ

香焼『え?』


また頭撫でた。


黒夜(チビ男の方も嫌がってないし、もしかしてこれが普通?)ウーン・・・


やはり私が一般常識に疎いだけなのかもしれない。

もうちょい様子を見てみるか。


上条『お前は魔術師ながらもこの都市で任務こなし――――――『日常』『平穏』してる』ポンッ

香焼『それは他の潜入学徒達も―――』

上条『確かに香焼以外の天草の学徒陣も――――――でも基本『任務だから』―――』

香焼『自分も、任務っすよ』


やっぱ満更でも無い顔。幻想殺しも幻想殺しで自然な手つきで頭を撫でる。
あと……今なんか重要な単語が聞こえた様な気がしたけど、まぁ良いか。


上条『ふーん……――――――浜面んとこの絹旗とかと仲良くしてるのも任務だからか?』チラッ

香焼『そ、そんな訳ないでしょう』ジー・・・

上条『だよな――――――お前は一介の教徒だろ――――――偉い『位』の筈』コクッ


見詰めってる……えっと、これも普通?
あとやっぱ重要な文言が耳に入ってるけど、ヤツらの一挙一動の方が気になって言葉が耳に入らなかった。


上条『でもお前は――――――アイツらを支えてる。俺とは比べ物にならないくらい――――――』ポンッ・・・

香焼『―――上条さんは特別で』アタフタ・・・

上条『―――香焼だって特別さ……――――――少しは自分の事―――』ナデナデ・・・

香焼『―――――――――』カアアアァ///

黒夜(!?!?!?)マジマジーッ・・・


赤くなったぞ。これでも普通か!? 特別とか言ってますけど?!


上条『絹旗だって―――――――――昔は『暗部』ってヤツの一員だったんだろ』

香焼『え―――……はい』

上条『―――仲良くして、どうにか『表』に――――――結標さんもそうだったか』

香焼『―――結局どうにかなっちゃいましたね』


ちょいちょい絹旗の名前が出てきてる気がするが最早どうでもいい。
それより幻想殺しの手の動きと優男の表情が気になってしょうがない。


上条『それでも凄いのは我慢した―――』ポンポンッ

香焼『よく分かりません』

上条『――――――香焼と同じ立場だったら我慢出来ずに麦野さんに――――――』


もしかして、噂の『右手』で女男の『何か』を打ち消してる?
いや、しかし、そんな感じはしない。寧ろ幸せオーラ的な何かが出てる様な気もする。


上条『IFの話は無駄だよ……兎に角、暗部の『現状』に関しちゃ浜面や一方通行が頑張った結果だろ』ポンポンッ

香焼『はい……感謝してます。上条さんと同じくらい』


もしや、理解し難いのだが……俗にいう同性愛とかいうヤツか。


黒夜(いや、でも流石にそりゃ無いか)


これも風の噂だが、幻想殺しは一夫多妻制を企める程の女っ誑しだと聞く。
あのチワワ男子も傍から見る限り、絹旗と良い感じだったと思う。

兎に角、私の中で『健全男子の語り合い』説と『割とアブノーマル』なイメージが鬩ぎ合っていた。
その所為か変な妄想が止まらない……如何いう事だ、これ。第一位(白モヤシ)の思考パターンの弊害?


上条『――――――――――――』ポンッ

香焼『――――――』

上条『――――――――――――』

香焼『――――――』

上条『―――――――――――』ポンポンッ

香焼『―――』モジモジ・・・


全っ然、会話が頭に入らない。
なんでチビ君はモジモジしてるの? やっぱそうなの? 『びーえる時空』的なモノなの? 

暫く観察してみたが、やっぱりモジモジしてる。あと赤くなってる。これは確定事項か? (※黒夜視点です)


香焼『……でも、良いな』

上条『ん?』

香焼『あ、いや何でも……(男の人と)一緒に居るのは(普段が周りが女性ばかりなので)ホッとします』


やっぱり! そうなのか!?    (※黒夜視点ですよ)


上条『ははは、確かに。香焼は――――――感じだもんな』ポンッ

香焼『ええ……久しぶりに―――同部屋になったりするとはしゃぎたくなったりします―――』

上条『んー――――――そういう上条さんも、ほら。普段(??)が普段(???)だし……―――』ポンポンッ

香焼『そ、そうっすよね! やっぱり!』ウンウン!


何か凄く良い雰囲気。バラとか見えそう。(※あくまで黒夜視点です)


上条『色々悩んでんだな――――――』ナデナデ・・・

香焼『ありがとうございます』エヘヘッ///


えっらく嬉しそうだな、ちっこい方。コイツ女なんじゃないかと思うくらい乙女チックな笑顔。  (※勿論、黒夜視点)


黒夜(あ、でもそれなら全部納得いくか)ドキドキ・・・


『女男』じゃなくて『男女』か……しかし、例えそうだとしてもベタベタ過ぎる。何にしろ変だ。


上条『ん? どうした? 何赤くなってんだよ』ツンツンッ

香焼『うぇ!? い、いえ! 何でも……あはははは』ポリポリ・・・///

上条『???』キョトン・・・

黒夜(!!!???)ギョッ


頬をつついた。そして照れた。


黒夜(こりゃ予想確定か)マジマジ・・・


既にそういう『目』でしか彼らを見れなくなってしまった。
思考植え付けられるのって怖いね。      (※一通さんの思考回路は全く以て関係ありません)

さておき、どうやら今から幻想殺しに質問をする様だ。
もしかして『大胆質問でカレの気を引いちゃえ♪』的なスイーツ(笑)展開が起きるかも……と期待した時―――


 Prrrrrrr!


黒夜「い”っ!?」ギョッ・・・


―――電話が鳴る。何故マナーモードにしておかなかったのだ、私!
兎に角、2人に気付かれる前に急いでその場を離れる。


黒夜「糞っ……良い所で、誰だっつの!」パタパタパタ・・・サササッ……チッ・・・


って、決まってる。


黒夜「あんの機械オタク野郎ぉ」ギリギリ・・・


無視っても良いが、どうせまた掛けてくる。
電源オフにしたらオフにしたで別の手段使ってでも連絡取りにき兼ねない。止む追えず通話ボタンを押した。


黒夜「チッ……あんだよ!」Pi!

シルバークロース『何を怒っているのか分からないが、ブチ切れたいのは私の方だと理解して貰いたい』ギリギリ・・・

黒夜「……ケッ」フンッ・・・

シルバークロース『黒夜、お前は何処で油を売っている? 私に全て押し付けて……さっさと戻ってこいっ!!』バンッ!

黒夜「っせぇなぁ……面倒ならテメェもふけ込みゃいいだろ」グデェ・・・

シルバークロース『出来れば当にやっている! お前が逃げた後、監視を付けられたのだ! あの女(アマ)ぁ……ふざけおって』チッ・・・


勿論『女』とは私の事じゃ無く、私達の上司(仮)の『電話の女』の事である。ホント、ふざけてるよな。うん。


シルバークロース『お前もだ、オマエも! さっさと戻って来て手伝え、阿呆!』ガー!

黒夜「チッ……んな監視、蹴散らせんだろぉが」ハァ・・・

シルバークロース『やったら反逆罪で粛清対象だ。ガキでも分かるだろう!』キッ


いや、ガキは暗部やらんし。


シルバークロース『そういう屁理屈捏ねるヤツがガキなんだ……で、お前は暗部。つまり暗部にもガキはいる』フンッ

黒夜「テメェはテメェで理屈臭ぇわ、ボケ! あとちゃっかり人の事子供扱いすんな、殺すぞ」ウガー!

シルバークロース『では与えられた仕事はこなせ! でなければいつまで経ってもガキだ、莫迦者!』ギロッ

黒夜「うっ……、」タラー・・・


畜生、口でコイツにゃ勝てん。

仕方ない。下手に言い訳しないで適当言っておくか。


黒夜「ファッキン……もうちょいしたら帰るから」フンッ・・・

シルバークロース『今すぐだ』キッパリ・・・

黒夜「大目に見ろ! 私はガキなんだろ!」フシャー!

シルバークロース『くっ……開き直りおって……兎に角、さっさと帰ってこい!』チッ・・・


じーざす。いいとこだったのに……あ、そうだ。


黒夜「……なぁ、シルバークロース」ボソッ

シルバークロース『あ? 遅延の言い訳する様ならスキルアウト共にお前を探しに行かせるぞ。その人件費はお前の給料から天引きで――』

黒夜「違ぇよ阿呆。ただ聞きたい事があるだけだ」フンッ

シルバークロース『――……なんだ? 仕事の件かい』ジー・・・

黒夜「いや、仕事じゃねぇんだけど……その、私にゃよく分からん話でさ」ポリポリ・・・

シルバークロース『……ん?』ポカーン・・・


自分が世俗に疎い事を承知で聞く。


黒夜「男子って、ベタベタとスキンシップ取るもんなの?」サラッ・・・

シルバークロース『……は?』ポカーン・・・

黒夜「いや、だから男子は男子同士で頭撫でたり頬突いたりすんのか?」ポリポリ・・・

シルバークロース『……はぃ?』キョトン・・・


沈黙。アッチも意味不明な事聞かれて呆けてるだろうけど、私もこれ以上聞くのが気拙い。


シルバークロース『あー……すまん。もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれない』タラー・・・

黒夜「男子って、いや『男』でも『男子』でもどっちでも良いんだけど、頭撫でたり――」

シルバークロース『オーライ。もういい……私の耳が腐ってた訳じゃなかった様だ』ハァ・・・

黒夜「――……じゃあ、教えて」コクッ・・・

シルバークロース『……、』ウーン・・・


何故黙る。


シルバークロース『その……申し訳無いのだが、今一、質問の意味と意図と意義とシュチュエーションがつかめない』


意味はそのまま。意図は好奇心。意義は無い。シュチュエーションは詳細説明する。


黒夜「かくかくしかじか」シカクイムーブ・・・

シルバークロース『……、』タラー・・・

黒夜「おい、何か言えよ」ムゥ・・・

シルバークロース『……黒夜、お前何してるんだ?』タラー・・・

黒夜「質問に質問で返すなよ、マヌケ。真剣に聞いてんのに」ウー・・・

シルバークロース『真剣、という言葉が本当なら尚性質が悪い』ハァ・・・


あーもう……聞いた私が馬鹿だった。ユーモアの無いコイツがマトモに返してくれる筈が無かったな。

よくよく考えりゃコイツも私同様に友達なんてものはいない。応えられないのも仕方ないか。


シルバークロース『いやいや。申し訳無いが、私以外の誰に同じ質問をしても同じ様な返しがくると思う』コクッ

黒夜「そうなの?」フム・・・

シルバークロース『やれやれ……とりあえず、真面目に応えるが』ジー・・・

黒夜「うん」コクッ

シルバークロース『一般的、客観的に考えてもオカシイ』タラー・・・

黒夜「や、やっぱそうだよな! 私が常識知らずな訳じゃないんだよな!」ホッ・・・

シルバークロース『お前の非常識っぷりは否定しないが、そのシュチュエーションの方がよっぽど常識外れだろう』フム・・・


だよな。私が変なんじゃないよな。


シルバークロース『仮にその2人が仲の良い兄弟か幼馴染だというなら、まぁ考えられなくもないのだろうが』ムゥ・・・

黒夜「例えそうなら、頬赤く染めたり撫でられて嬉しそうにモジモジするのか?」ウーン・・・

シルバークロース『ありえん』キッパリ・・・

黒夜「そっか……じゃあ、アイツらは」チラッ・・・

シルバークロース『話を聞く限り、中学生男子の方は……惚れてそうだな。しかし実際この目で見てないから絶対とは言えない』タラー・・・

黒夜「うん。じゃあ幻想殺(イマジンブレ)……高校生の方は?」

シルバークロース『此方に関しては先程言った「気の良い兄貴(分)」かもしれない』


成程。つまり、チビ男の『片想い』ってヤツか。


黒夜「ふむふむ……とりあえずありがとう。なんとなく分かったかも」スッ・・・

シルバークロース『どういた……いやいや、待て黒夜。お前、マジで何をしている? というかさっさと帰ってこ―――』Pi!

黒夜「……よしっ」グッ・・・


やはりこの目で事の真偽を確かめる必要がある。案の定、2人はまだ話中の様だ。
自分でもよく分からない決心に突き動かされ、私は2人の後ろの草繁に戻った。


黒夜(大分、間合いちゃったけど何してるか……っ!)ドキッ!

香焼『……自分も』ムゥ・・・

上条『―――何か隠してる事あるのか?』ニヤニヤ・・・

香焼『い、いえいえ! そんな事は!』アタフタ・・・///

上条『なんだよー。上条お兄さんに話してくれてもいいんだぜー』ツンツンッ

香焼『な、無いっすよ!』アワワワ・・・///

上条『ほら。気になる女子とか、えっちぃ本の隠し場所とか』プニプニッ

香焼『いーませーん! そ、そんな本も持ってませんから!』カアアァ///

上条『またまたぁ。中一ならそういう話とかあってもおかしくないっしょー。一方通行みたいに「知らン、ボケ」で通すの無しだぜ』フフフ・・・

香焼『あわにゃにゃ……―――』///


なんつー話を……というか、先程以上にイチャイチャしてる。加えて猥談とか、やっぱコイツら危ない匂いがする。


上条『―――んで、そんなとこだな……って、おい』ポンッ

香焼『ふぇあ!?』///

黒夜「……ふぇにゃ」モジモジ・・・///


幻想殺しのえっちぃ話に聞き入ってしまった……中学生相手になんて過激な内容を!


黒夜(だ、男子高校生ってあんな会話するのか……大人だわ)モジモジ・・・///

上条『ははは――――――やっぱ中学生だな』ツンツンッ

香焼『―――そういう話ばっか――――――そんなに子供扱いしないで下さいよー』ムゥ///

黒夜(が、ガキ扱いすんなっつの! 別に恥ずかしくねぇよーだ)ムギギ・・・///

上条『ははは、子供子供―――土御門とエロ話してみたら―――」アハハ


更に上がいるの!? ふ、不潔だ!


上条『しっかし、意中の女子がいないってのは意外だな。アレだけ周りに女子ばっかなのに?』フム・・・


お ま え が い う な。


上条『―――高校生にもなれば彼女の一人も欲しくなるのですよ……あーリア充なりてー』ハァ・・・

香焼『いやいやいや――――――女性に関しては事欠かないんじゃ』ジトー・・・

上条『――――――上条さんの事を彼氏にしてくれる物好きなんて――――――』アハハ・・・


絹旗ちゃん風に言うなら『超朴念仁ですね』ってヤツだな。
それからまた暫くよく分かんない会話が続いた……相変わらず頭は撫でている。幻想殺しの意図が分からん。


上条『あはは――――――お姉さん達に怒られるぞ』ポンッ

香焼『―――この話は秘密にしとくんで』ニヤニヤ・・・

上条『やれやれ……―――――――――お前も恋人にできそうだけどな』ハハハ

香焼『浦上はやめと、いた、ほ……ぅ……え』ピタッ・・・


え?


上条『え―――――――――気を使わないで済むし』コクッ

香焼『……はわっち?! じ、自分も!?』カアアァ///

上条『あ、そっか――――――……まぁ香焼が『彼女』だったらアレだな――――――』ポンポンッ

香焼『』キュウウゥ///


今、幻想殺しがちっこいのの事『恋人』とか『彼女』とか言わなかったか?
聞き間違いかと思ったが、チビ男が真っ赤になってポカポカ叩いてるところを見るに、間違いない様だ。


黒夜(い、いや、待て待て! からかっただけかもしれない!)マジマジ・・・///


逸る気持ちを抑え、ヤツらの様子を見守る……何か色々ゴチャゴチャ言ってるがよく分からない。

魔術とかグレムリンとか魔人とか聖人とか超能力者とか原石とか統括理事とか色んな教会とか暗部とか汚れ仕事とか殺しとか。
重要そうな事言ってるけど、2人の仕草やらイチャイチャ発言が気になって他が頭に入らない。


黒夜(で、でも……どうしよう)アタフタ・・・///


この『秘密』を知った所で、如何すれば良いのだろう。

正直、私は先程いった通り一般生活やら日常生活やら『平穏』には疎い方だ。その代名詞たる『恋愛』云々は尚の事。
しかもいきなりノーマルぶち抜けてアウトローというかビーンボール級のシュチュエーション。


黒夜(というかこの2人の関係、他の奴ら知ってんのかな)ドキドキ・・・///


特に、絹旗。あの女男と仲良さそうだったけど、この関係知ってて一緒に居るのかな。
もし知らないのだとしたら、とても……『面白い』――【悲しい】……話だと思う。

私個人的にはかなり……『楽しそうな』――【腹立たしい】……結果が待ち受けてそうだ。

あーだこーだ色々考えている内に、気が付けば正午を回っていた。随分と長くイチャイチャするもんだな、あの2人。


上条『―――』プニプニ・・・

香焼『―――』コクッ

上条『―――』ツンツン・・・

香焼『―――』ジー・・・

上条『…………、』ナデナデ・・・

香焼『…………、』ジー・・・

上条『………………、』ワシャワシャ・・・

香焼『………………、』ジー・・・

上条『……………………、』ナデナデ・・・

香焼『……………………、』チラッ

上条『………………………………………………………………、』ナデナデ・・・

香焼『………………………………………………………………、』モジモジ・・・

上条『………………………………………………………………………………………………………………………………、』ナデナデ・・・

香焼『……………………………………………………………………………………………………………………………あ、あの!』モジモジ・・・///

上条『…………………………………………………………………………………………………………………………………………あ、うん?』チラッ


長ぇよ! いつまで無言でナデナデしてんだ!

誰に見られてる訳じゃないが……まぁ私はずっと見てるんだけど……いい加減恥ずかしくなったようだ。


香焼『さっきから、ずっと――――――』モジモジ・・・///

上条『うんうん』ポンポンッ


白昼堂々イチャイチャするもんじゃありません。しかも男同士で。


上条『え……あはは―――』ポンポンッ

香焼『な、何なんすか』ムゥ・・・///

上条『うーん。可愛いから?』ハッハッハッ

香焼『なっ!? ―――――』カアアアァ///

上条『――――――』ナデナデ・・・

黒夜(っ!!!?)アワワワ・・・///


か、可愛いって言った!


黒夜(やっぱコイツら……うん)モジモジ・・・///


複雑な感情。
別に同性愛について如何こうイチャモンつける気は無い。ただそれは否定はしないという意味で、その一方肯定もしないという意味合いだ。
私に『その(ビアン)っ気』は無いし、巷でいうとこの『腐女子』という訳でもない。

ただ、もしコイツらの片方が女であっても……多分、私が今抱いている複雑な思いは変わらないのだろう。


黒夜(……むー)ジトー・・・///


これはやはり、見なかった事にして帰るのも手ではなかろうか。そんな事を考えた刹那―――


    Prrrrrrr!


黒夜「うをっ!?」ドキッ!!


―――電源落とすのに忘れてた!


黒夜(ヤバいヤバいっ!!)Pi! Pi!

シルバークロース『黒夜、貴さm―――』ガチャッ・・・ツーツーツー・・・

黒夜(くっ……ば、ばれたか?)ハラハラ・・・タラー・・・


急いで電話を即切り。今度は間違いなく電源を落とす。
そして、恐る恐る2人の様子を伺う……大丈夫だ、ばれてない。


上条『―――――――――散々期待させといてー!』ガシッ! ワシャワシャ!!

香焼『にゃいあらん!!?』ボンッ//////////////

黒夜(っ!!?)オワァ///


なんか凄いハードな事してらっしゃる。

例え普通の男女カップルでも、こうはイチャイチャしないんじゃないかなぁ。
いや、女子同士ならふざけてこういう事するのかもしれないけど……やっぱ野郎同士じゃおかしいだろ。


上条『はははは――――――満足だな』ムニムニッ

香焼『ひ、酷いっすよー! てか、離してください! はーなーしーてー! んー! んー!!』ジタバタ・・・///

上条『こやつめこやつめ』グニグニッ


ガッシリと抱きかかえられ全身弄り撫で回されるちっこいの……昼間っから大胆だ。


上条『――――――まぁこのくらいで勘弁してやろう』ポンッ

香焼『うー……乱暴された……責任取って下さいよ』クスンッ・・・///

上条『―――お嫁にでも何にでも貰ってやらぁ』ハハハ

香焼『また馬鹿にして』ムゥ・・・///

黒夜(お、お嫁って!)アワワワ・・・///


これは確定ですね。間違いない。


黒夜(……、)タラー・・・///


とりあえず、これ以上の出刃亀行為は不要だろう。
私は空気の読める女だ。あとは若い2人に任せてこの場を去ろう。無論、この事は私の胸中にしまっておいてやる。


黒夜(感謝しろよ)コソコソ・・・

???「にゃー」ツンツン・・・

黒夜(……ん)ピタッ・・・

???「なーぅ」フシフシッ

黒夜(猫?)キョトン・・・


野良猫? いや、首輪してるから飼い猫か。


???「みぃ」ペロペロ・・・

黒夜「……、」ムゥ・・・

???「みゃー」スリスリ・・・

黒夜「……、」ナデナデ・・・

???「にゃーん」キモチー・・・

黒夜(……かわいい)ホンワカ・・・


子猫は可愛いなぁ……じゃない。んな事してる場合じゃなかった。さっさとこの場から撤退を―――


香焼『もあいー』オーイ・・・

???「なぅ?」チラッ・・・

黒夜(ん?)チラッ・・・


―――アイツら、逢引終わったのか。じゃあ尚の事、さっさと離脱しないと。

しかし、事もあろうか不都合な展開が。


香焼『もあい。出ておいでー』オーイ・・・

???「みゃーう」コッチコッチ・・・

香焼『……ん? こっち?』ガサガサ・・・

黒夜(うぇ!? な、何でコッチ来るんだよ!)ギョッ・・・


何故か此方(背後の草繁)の方に入ってくるチビ男。ヤバい、急いで逃げろ!


???「なぅ」ヨジヨジ・・・

黒夜(ちょっ!? おま、肩登るな!!)シッシッ!

???「にゃっ」ブラブラ・・・

黒夜(はーなーれーてー!)アタフタ・・・

???「にゃんっ」アソンデー

香焼『もあい? こっち?』ガサガサッ・・・

黒夜(ぃやばっ!)バババッ・・・


猫を払おうとするも、中々離れてくれない。こうなったら猫と一緒にエスケープを!


???「みゃっ」ガシッ・・・モゾモゾ・・・グイッ・・・

黒夜「ひゃあぁ!?」ギョッ・・・


全く以ての余談だが、私の服は両脇腹が紐閉じのクロスになっている。
そこが猫の『爪砥ぎ』なんかに見えなくも無いんだが……いや、でも常識的に考えて猫が爪引っ掛けてくるとは思わなんだ。


黒夜「や、止めろっての……ひんっ! く、くすぐったっ!」ゾクゾクッ・・・

???「にゃーぅ!」ココカ?ココガイイノカ?

黒夜「うひゃひゃひゃっ! ちょ、おまっ、にゃ!」ビクビクッ!

???「なーぉ!」ウヒョー!

香焼『もあい? こっち……って」ガサガサ・・・ピタッ・・・


あ。


香焼「……え」ピタッ・・・

黒夜「……う」ピタッ・・・


あちゃー。


???「にゃん」ツンッ

黒夜「ひっ! だ、だから離れろ!」ジタバタッ・・・

???「にゃー?」クシクシッ

黒夜「ウィヒヒッ! や、止めろっつーの!」モゾモゾッ

香焼「……もあい。おいで」スッ・・・

もあい「にゃ?」チラッ・・・スタッ・・・


もあいって、その猫の名前かよ! ネーミングセンス無ぇな!

って、それどころではない!


香焼「……黒夜、さん?」ジー・・・

黒夜「あー……えっと」タラー・・・

香焼「……何してたの?」キョトン・・・

黒夜「そ、そのだな……あの、うん」ダラダラ・・・


アチラからしてみれば、今さっきまで自分らが座っていたベンチの後ろの草繁で、己がペットと戯れるおかしな娘が居ると目に映るだろう。
問題は『いつ』から居たのか、といったところだろう。さて、どうしたものか……そうだ!


黒夜「こ、この前のお返しをと思ってな!」アハハハ・・・

香焼「はい?」キョトン・・・

黒夜「じゅ、ジュースを! お、奢ってもらったろ! だから、恩返しをさぁ! うん!」アタフタ・・・


この場に居た事は誤魔化して自販機の方へ向かう。些か強引だとは思うが、さっさとこの場から逃げねば!


香焼「……、」ジトー・・・

黒夜「きょ、今日は私が奢る。何が良い?」アハハハ・・・

香焼「……、」ジトー・・・

黒夜「ほ、ほら! 折角人が奢ってやるっつってんだ。さっさと選べよ」タラー・・・

香焼「……、」テクテク・・・

黒夜「よし、待ってろ。今マネーカードを……って、あれ」ピタッ・・・


反応無し。


黒夜「あ、れ……えぃ」ピタッ・・・シーン・・・

香焼「……、」テクテク・・・

黒夜「このっ……なんでっ」ピタッ・・・ピタッ・・・シーン・・・


電子マネーが使えない!


香焼「まだマネーカード使用中止みたいっすよ」テクテク・・・チャリンチャリン・・・

黒夜「はぁ!? 業者何やってんだよ!」タラー・・・

香焼「……選んで良いっすよ」ジー・・・

黒夜「え、あ、どうも……って」ピッ・・・ガタンッ・・・


反射的に『コーヒーソーダ-粗引きブラック味』を押してしまった。


黒夜「……、」ヤッチマッタ・・・

香焼「はい」スッ・・・

黒夜「……くっ! は、払えば良いんだろ! 払えば!」ゴソゴソ・・・

香焼「……、」ジー・・・

黒夜「あー畜生! また小銭持ってねぇ!!」キー!


私の馬鹿! これじゃあ言い訳出来ないし、逃げれない! 誰か助けろ!

 ~~~~~~~~~~・・・香焼side・・・~~~~~~~~~~~




正直、僕自身状況が掴めなかった。目の前には知人の少女。急ぐ様にアタフタしている。


黒夜「あー畜生! また小銭持ってねぇ!!」キー!

香焼「黒夜さん」ジー・・・

黒夜「な、なんだよ。(ま、拙い)」タラー・・・


冷静に状況を整理しよう。
先程まで僕は上条さんと話をしていた。 → 話が終わったのでもあいを探した。 → 草繁の中にもあいと黒夜さんが居た。

うん、疑問は二つ。


香焼「何で、草繁の中に居たの?」ジー・・・

黒夜「うっ……えーっと。(出刃亀してましたー、だなんて言えねぇよ!)」ポリポリ・・・

香焼「……いつから、居た?」ジトー・・・

黒夜「……っ。(最初っから居ましたー……怒ってるのか?)」ダラダラ・・・


僕の中で最悪のケースが浮かんだ。もしかして、上条さんとの話を聞かれていたか?
この街の人間に聞かれてしまっては拙い『魔術』やら『任務』の話もしていた。特に彼女は『暗部』の人間……非常にヤバい。


香焼「ねぇ。いつから」ジー・・・

黒夜「さ、さぁ。気付いたら居たなぁ。(誤魔化せ、私!)」ヒューヒュー・・・

香焼「……、」ジー・・・

黒夜「な、何だよ。(無理か……どうやって逃げよう)」タラー・・・

香焼「聞いてたの?」ジトー・・・

黒夜「なっ!? (何でばれた!?)」ドキッ・・・

香焼「(顔に出てる……)聞いてたんだ」タラー・・・


抜かった……せめて『仕事』の話をする時くらい周囲に気を付けるべきだった。


黒夜「な、何も見てないし聞いてないぞ。(コイツ、読心能力を!)」アタフタ・・・

香焼「いつから?」タラー・・・

黒夜「だ、だから見てないっつの!(無理矢理逃げても良いが、追いかけられたら面倒だし)」ウーン・・・

香焼「……誰かの指示?」タラー・・・

黒夜「違うよ! 偶然だ、偶然。ホント! (能力使って張っ倒して逃げるのは……昼間っからは拙いよねぇ)」アタフタ・・・


気拙い沈黙……こうなったら腹を割って話す他無い。本当に偶然ならまだしも、もし何かしらの諜報作業なら手を打たなきゃならないし。


香焼「……ちょっと、お話しよう」クイッ・・・

黒夜「うっ……わ、分かった。(しゃーない。こうなりゃコッチも色々聞いちゃるか)」コクッ・・・

黒夜(幻想殺しとの『関係』について……本当にデキてるのか如何か問い質してやる)フム・・・


案の定、素直に付いてきてくれた。どうやら偶然というのは嘘では無いらしい。
もし諜報だったら、どんな手を使ってでもこの場から離脱して情報を持ち帰る筈。

そうでないのなら、何とかして口止めしなきゃ……ベラベラ喋られたら堪ったものではない。

しかしこの時、素直に逃がしておけば良かったと後悔するのは、もうちょい後になってからだった……―――

今回は此処までで。次回からサブタイ通りの展開に入っていきます。
ボチボチ安価とか取っていくかもしれないので、その時は宜しくお願いします。

それではまた次回! ノシ”

こんばんわ・・・・・私事だけど、ネタならまだしも実際にホモ扱いされんのって困るし怖いんよー。

ボチボチ投下します。

   ―――一方、AM10:00、とあるマンション一室、絹旗side・・・・・





絹旗「―――あーもぅ! 何で私まで手伝わなきゃならないんですかっ! 今日は用事あるって事前に言ってたでしょ!」フシャー!

浜面「んな事言ってもしゃーないだろ。本人もプライド捨てて頼み込んでるみたいだし」チラッ・・・

フレメア「……お願いします、、、にゃー」ドゲザァ・・・

絹旗「プライド捨てた人間は語尾に超あざとく『にゃー』なんてつけません! 土下座で何もかも許されると思ってるのは外人だけですよ」キー!

浜面「そう言ってやんな。とりあえず明後日までにこの量の宿題片付けないと先公から倍プッシュ食らうらしいしよ」ハァ・・・

絹旗「超自業自得でしょう。今までこんなに宿題溜め込んでた自分の不肖を超呪うべきですねっ」フンッ

浜面「そりゃそうなんだが、此処最近色々あって学業疎かになってたのも確かだし」ポリポリ・・・

絹旗「……、」チラッ・・・

フレメア「うー……お願いします」ドゲザザザァ・・・

絹旗(この子には『普通』の少女として、普通の学生生活を送らせたい……ですか)ハァ・・・

絹旗「ったく……それにしても超多過ぎでしょ。夏冬休みの宿題を休日二日で片付けろって言ってる様なもんです」ジトー・・・

フレメア「うん。実際『冬休みのとも』で終わり切らなかった分も上乗せで入ってるよ」キッパリ

絹旗「この糞ガキゃあああぁっ!!」シャー!!

浜面「落ち着けバーロー! 皆まで手伝えとは言わんから! な!」ドードー・・・

絹旗「ふーふー……チッ……てか、麦野と滝壺さん超ずるくないですか? コレ分かってたら私も早々出発してましたよ」ジトー・・・

浜面「麦野は昨夜から『用事』で、滝壺は病院で検査だ。仕方ない」コクッ

絹旗「私だって映画の約束会ったんですよ。劇場版『銅力彩未(どうりきあやみ)の暴走』観に行く予定がっ!」ムゥ・・・

浜面「(うわぁ、俺の番じゃなくて良かったぁ。坊主、死ぬなよ)まぁ、その……運(タイミング)が悪かったと思って付き合ってくれ」ポンッ

フレメア「(何その映画、爆死確定)どうか……よろしくお願いします」ペコッ

絹旗「んもー……てか、何で冬休みの宿題まで終わってないんですか? ホント、超馬鹿な娘なの? 死ぬの?」ジトー・・・

フレメア「それは……、」シュン・・・

絹旗「ん」ジー・・・

フレメア「お姉ちゃんが、毎年手伝ってくれてたから……今年も手伝って貰おうと思ってた……のに」ショボーン・・・

絹旗「ぐっ……超シリアルな」タラー・・・

浜面「(シリアスだぞ、お馬鹿)とりあえず頼むよ。正直俺一人じゃ間に合いそうも無くてさ」ポリポリ・・・

フレメア「浜面のオツムじゃ小学生レベルの宿題でも悪戦苦闘しちゃうからにゃあああぁ痛たたたたたーっ! ほ、ほっぺがー!!」フギャー!

浜面「お嬢さーん……あんまり調子乗るなよー? 何一つ手伝わないで追い出してやっても良いんだぜ」ニコニコ・・・ギリギリ・・・

フレメア「ふ、ふいにゃへん……ふにゃっ! 痛つぅ……と、兎に角お願いします! そっちも!」ペコッ・・・

絹旗「……、」ハァ・・・

フレメア「……絹旗『お姉さん』。お願いします」ウルウル・・・

絹旗「お、お姉さっ……ちょ、超しょうがないですねぇ。私は『お・ね・え・さ・ん』ですからねぇ」エッヘンッ!

フレメア「ありがとうにゃー! (ふふふ……超チョロいんにゃあ)」ワーイ・・・フフフ・・・

浜面「(コイツ、普段年下扱いされてばっかだから弟妹キャラに弱いよなぁ)すまん、助かるよ」ハハハ・・・

  ―――とある休日、PM00:30、学園都市第7学区、とある公園(イカれ自販機在中)・・・・・





並んでベンチに座る少年と少女。お互い何を話して良いのか分からず、初々しくもモジモジしてジュースを啜ってる―――


香焼・黒夜「「……、」」モジモジ・・・


―――傍から見ればそんな風に見えるだろう。
しかし正味は全然異なる。気拙いといえば確かに気拙いのだが、実際は恋慕云々のそれではないのだ。


香焼・黒夜((ど、どうしよう))タラー・・・


少年は危惧していた。彼女は先程の話を『何処まで聞いてしまったのか』を。
魔術やら英国やら潜入学徒の任務やら、人に聞かれては拙い話がわんさかあった。
加え、よりによって相手は『この娘』という事態。一般人に聞かれてもアウトな会話を、更に厄介な暗部の人間に聞かれた。


香焼(……兎に角、冷静に聞き出そう)ゴクリ・・・


何処まで知ったか。それが重要だ。
その上で、自分だけで対処するのか、上司(五和や土御門)に相談するのか、次の行動を判断しよう。

一方、少女は悩んでいた。コイツは本当に『幻想殺しと恋仲なのか』を。
何故こんな事に興味を持ってしまったかは分からない。普段の自分からしてみれば酷く如何でもよい、下らない事なのだ。
しかし、見てしまった人物が人物なのだ。


黒夜(だってさぁ……コイツと上条当麻だぞ?)チラッ・・・


片や、知人全ての『中心』といっても過言ではない英雄。片や、不肖ながらも『愚妹』と懇意にしている少年。
この関係を知って如何こうするつもりもないのだが、兎に角、気になって仕方がなかった。


香焼・黒夜「「……、」」ゴクリ・・・


互いに緊張しているのか、喉を鳴らす。
周囲は休日を満喫する子供達の遊び声や、野良猫達が戯れる鳴き声で賑やかだったが、そんなモノは耳に入らなかった。

どちらが先に口火を切るか。お互い無言の牽制……しかし、このままでは埒が明かない。
勝負を掛けるなら一気に行くしかないのだと―――


香焼・黒夜((……よしっ))グッ・・・


―――言葉を発す。


香焼「あのさっ。黒夜さん!」バッ

黒夜「あのにゃ……っ!」グッ・・・

香焼(よしっ……てか、今噛んだよね。『あのにゃ』って……『にゃ』って)タラー・・・

黒夜(先言われた! あと噛んじまったああああぁ!! 『にゃ』って何だよ! んなキャラちゃうだろ私ぃっ!!)グヌヌゥ・・・


駆け引きの勝敗は少年に上がる。
普段なら『お先にどうぞ』などと譲ったりもするのだが、今回ばかしは譲れない……にゃ。


香焼「えっと、とりあえず……今日は何してたの? お休み?」チラッ

黒夜「……ああ」コクッ

香焼「そっか。自分もっすよ」ジー・・・


非常に下らない会話から入ってしまったが、この雰囲気でいきなり不仕付けな質問をするよりは幾分マシだろう。

しかし、此処で問題が生じる。


香焼「晴れて良かったっすね」ジー・・・

黒夜「そうだな」コクッ

香焼「うん。そのジュース、美味しいんすか?」チラッ

黒夜「普通」コクッ

香焼「普通、かぁ。あー……猫好き?」チラッ

黒夜「割と」コクッ

香焼「そ、そうなんだ……休みの日は、よく此処(公園)来るんすか?」ジー・・・

黒夜「来たり来なかったりだ」コクッ

香焼「へ、へぇ……うん」タラー・・・


会話が続かない!
元々自分らは共通の友人(?)が居る程度の知人であって、馬鹿なテンションであーだこーだ聞ける間柄ではないのだ。
返事が返ってくるだけマシだが、こんな会話の壁打ち状態では気拙い雰囲気から脱け出せない。


香焼(出会った頃の最愛相手にしてるみたいだ)アハハ・・・


今でこそ積極的に絡んでくる例の『共通の友人』さんだが、昔はまんま、隣に座るこの少女と同じ対応だった。
会話の一方通行とは言ったモノだ……第一位の思考回路っぽいだけに。

ただし、目の前の少女と友人の違いは『攻め』か『守り』かというところにある。
かつての友人であれば初対面の相手に対し無言(守り)を貫き通すのだが、隣の少女は違った……彼女は初対面だろうが質問(攻撃)する。


黒夜「……なぁ」チラッ

香焼「あ、うん」ピクッ

黒夜「……あのよ」ポリポリ・・・


だがしかし、残念な事に言葉が出ない。いや、言葉を選んでいるが故に質問しかねている。
率直に聞くべきか、それとも彼の様に当たり障り無い会話から入るべきか……それは無理だ。
何だかんだいっても、絹旗最愛の姉妹分。育った環境は同じな訳で、コミュニケーション力に欠けるのだ。一般会話なんて苦手もいいところ。


黒夜「……、」タラー・・・

香焼「く、黒夜さん」ジー・・・

黒夜「な、何でもねぇよ。(くそっ! 何聞きゃ良いんだっつの!)」アタフタ・・・


普段の彼女であればアバズレビッチ宜しく、F口調全開で遠慮構わず突っ掛かる筈なのだが、ケースがケース。
無意識に妙な気を使ってしまうので下手に騒ぎ立てる事は出来なかった。


香焼・黒夜「「……、」」タラー・・・


結局、無言。更に雰囲気が悪くなったので余計性質が悪かった。
このままでは平行線で無為に時間だけが過ぎて行ってしまう……少年は意を決した。


香焼「ハァ……黒夜さん」チラッ

黒夜「お"、お”ぅ!?」ビクッ・・・

香焼「(何だ今の声?)……腹割って話そう」ハハハ・・・

黒夜「え、あ、うん。(変な声出しちまった!)」タラー・・・


少女は固唾を飲んで、少年の言葉に耳を貸した。


香焼「じゃあ、真面目に聞くけど……何処から聞いてんすか?」ジー・・・

黒夜「え。う、うーん……そうだなぁ」タラー・・・

香焼「誤魔化さなくて良いっすよ。聞かれた自分が悪いんだし、怒んないっすから」コクッ

黒夜「……、」ポリポリ・・・


彼女が本当に『偶然』この場に居合わせたなら、怒る必要は無い。
盗み耳立てた行為については褒められたものではないが、こればかりは此方の落ち度。
ただ、彼女が諜報活動を誤魔化す為に嘘を吐いているのだとしたら……やはり考え物だ。

尤も、暗部の諜報活動であればあんな明から様な出刃亀スニーキングをする訳もなかろう。


黒夜「……ぶっちゃけ」ボソッ

香焼「うん」コクッ

黒夜「最初から」タラー・・・

香焼「……そっか」ハァ・・・

黒夜「じゅ、純粋に興味だったんだ。知り合いが二人揃って何か話してるなぁって思ってよ」タラー・・・


少女の言葉に嘘はない。
確かに最初はこの少年が『同業者』だと聞いていたので、仕事の話やらを盗み聞きしてやろうと考えた。
しかし、実際(?)はただの合瀬だった……『ただの』ではないか。


香焼「初めから、自分と上条さんを付けてた訳じゃないんすね?」ムゥ・・・

黒夜「最初見っけたのはお前だけだ。そん時はからかってやろうと思ってたけど、後から幻想殺しが来て……その、うん」モジモジ・・・

香焼「ハァ……声掛ければ良かったのに。(見た目に依らずシャイなのかなぁ)」ヤレヤレ・・・

黒夜「で、出来る訳ないだろアホ!(あんなイチャイチャしといて、邪魔できるかっつの!)」アタフタ・・・

香焼「……因みに、全部聞こえたんすか?」ジー・・・


重要なのは此処。別段、聞かれても問題無い他愛無い話が多かったが、仕事関係の話もボチボチしていた。
故に、もし聞かれていたなら対処を考えねばならない。


黒夜「聞こえたり、聞こえなかったり……ホントだって! 嘘じゃねぇよ!」アタフタ・・・

香焼「……信じるよ」タラー・・・


ならばこれ以上、下手に此方から口を開かない方が良かろう。
変に疑いを掛けて盗み聞きされていなかった事まで勘付かれては難だ。

ただ、確認として尋ねておく。


香焼「それじゃあ、何か質問は?」チラッ

黒夜「え」キョトン・・・

香焼「応えられる範囲で応えるっす。勿論、無理なのは黙秘させてもらうけど」ジー・・・

黒夜「お、おぅ」ウーン・・・


駆け引きだ。アチラの質問から何処まで聞いたかを把握する。
そして、アチラが外部に漏らすか如何かの意図を確かめる。

一方……少女からしてみれば意味が分からなかった。やけにオープンだ。何故?


黒夜(開き直ったのか? てか、もしかしてコイツらの関係って私が知らなかっただけで結構有名なの?)タラー・・・


何にしろ、少年の真面目な顔。アチラは覚悟を決めた様だ。では此方も覚悟して聞く。


黒夜「お前と、幻想殺し……上条当麻の関係は、その」モジモジ・・・

香焼「……歯切れが悪いね」ジー・・・

黒夜「う、うっせぇな! ええっと……さっき見た通り『そういう(恋愛)関係』なのか?」チラッ

香焼「(『そういう関係』と誤魔化して聞いてくるって事は確信は掴めてないのか。なら此方も誤魔化す)……聞いてた通りかと」ジー・・・

黒夜「そ、そうなのか」ムゥ・・・


アバウトな返答にも納得する少女。という事は、やはり全て聞かれていたのかと後悔する少年。
他方、少女も後悔した……何故か胸が痛む。聞くべきでは無かった。世間一般でいう『片想いしてた憧れの先輩が彼女持ちだった』的な感覚。


黒夜「いつから(付き合ってた)?」チラッ

香焼「(これ以上、下手に応えると拙い)……答えたくないっす」キッパリ・・・

黒夜「そう……じゃあ、アイツとの付き合いは長いのか?」

香焼「(これくらいは、大丈夫か)半年経ったくらいかと)」

黒夜「半年、か。(学生カップルとしちゃ長からず短過ぎず、なのかな)」


自分の話を聞かれないという事は、『狙い』は彼なのか。


黒夜「でもよ。ぶっちゃけ、その……お前にゃ悪ぃが『アブノーマル(同性愛)』な世界だろ? お互い納得してんのか?」モジモジ・・・///

香焼「アブノーマル(危険)? そんな事言う君だって『そういう世界(暗部)』の人間じゃなかったの?」ジトー・・・

黒夜「はぁ!? お、お前と一緒にすんな! 私は『別の世界(ノーマル)』の住人だっつの!」アタフタ・・・///

香焼「別の世界(もっと危険)ねぇ」ヤレヤレ・・・


ぶっちゃけ秘匿性でいえば、この街の暗部より魔術師の存在の方が『深い場所』にあるのだが。
ただ、彼の安全の為にこれだけは言っておく。


香焼「上条さんはあくまで『一般人』っすよ」キッパリ

黒夜「はぁ!? 一般人(ノンケ)だぁ!?」ポカーン・・・

香焼「信じられないかもしれないっすけど、彼は嫌が応にも自分らの世界に巻き込まれて、今の状況に置かれてるだけっす」コクッ

黒夜「お前ら(ホモ)の世界に巻き込まれたって……意味分かんねぇ」アタフタ・・・///

香焼「まぁ有名な話っすけど、上条さん、そういう(不幸)体質っすからね」ハハハ・・・

黒夜「そ、そういう(ゲイ)体質っ!!?」カアアァ///

香焼「え? 知らなかったの」キョトン・・・

黒夜「し、知らねぇよ……有名なのか」タラー・・・///


先天性の同性愛者……もしかしたら、性同一性障害なのか。ドチラにしろ、信じられない。


黒夜「えっと……お前らの出会いは?」モジモジ・・・///

香焼「それは応えられないっす」キッパリ・・・

黒夜「じゃあ、どっちから(告ったん)だ? お前から? アイツから?」モジモジ・・・///

香焼「どっちからって訳じゃないっす。彼は相変わらず色々巻き込まれて、自分は自分らの立ち位置に居ただけっすよ」ジー・・・

黒夜「『お前らの立ち位置(ホモ)』に巻き込まれたって事は、やっぱお前から(告白したの)か」ムゥ・・・///

香焼「(魔術の世界に)巻き込んでしまったと考えれば確かにそうっすね」コクッ

黒夜「お、お前。見掛けに依らず大胆だな」ボソッ・・・///


そして幻想殺しはコイツを受け入れた訳か……凄い世界だな。


香焼「でも……そっち(都市側)だって、上条さんの事巻き込んでるでしょ」ジー・・・

黒夜「ま、巻き込んで無ぇよ! てか私とアイツ、そんなに面識無ぇし。どっちかってと苦手で……まぁ多少借りはあっけどよ」モジモジ・・・

香焼「ふーん」ジー・・・

黒夜「わ、私の話なんか如何でもいいんだ! とりあえず、その……もういい」スッ・・・

香焼「え」キョトン・・・


こんな問答で納得したのか、と少年は呆気に取られた。


黒夜「でも……お前らの(恋人)関係が有名だってのは正直驚いた」ハァ・・・

香焼「え。いや、上条さんの関係(魔術との関わり)は有名じゃないっすよ」キッパリ

黒夜「え、だってさっき」ポカーン・・・

香焼「有名なのは彼の『体質』で、自分らとの関係は秘密っすよ」タラー・・・

黒夜「あ、そういう」コクッ


いや、それでも驚きなのだが。


黒夜「じゃあさ……お前が『そういう人間(同性愛者)』だって知ってるヤツは多いのか?」チラッ

香焼「(魔術の存在を知る人は)殆ど居ないっすよ。秘匿されるべきモノだから」ジー・・・

黒夜「そりゃそうだよな。大っぴらに言えたモンじゃねぇ……じゃあ私は特別か」ハハハ・・・

香焼「そうなるね」タラー・・・


コイツの弱みを握った訳か。まぁ誰に言う訳でも無いのだが……しかし、ふと、とある人物が頭に浮かんだ。
それは少年と少女にとって、共通の知人。


黒夜「……絹旗のヤツは」チラッ

香焼「え」ピタッ・・・

黒夜「アイツは、知ってんのか?」ジー・・・

香焼「さ、最愛は……その」タラー・・・

黒夜「知らねぇのか……へぇ。ふーん……まぁそりゃ後ろめたいもんなぁ」ニヤリ・・・

香焼「う、後ろめたいって訳じゃ」タラー・・・

黒夜「じゃあ何で言わないんだ? お前はアイツの秘密(暗部)知ってたのに?」ジトー・・・

香焼「っ」グッ・・・


少年の苦悶の表情。
これを見るやいなや、少女は先程の出刃亀行為の後ろめたさから一転して、嗜虐心が沸き上がってきた。


黒夜「へぇ……黙ってるんだ。友達なのにぃ。アイツ、お前には心開いてたっぽいのになぁ……隠し事されてたんだぁ」ニヤニヤ・・・

香焼「し、知らなくたって良い事だってあるっすよ」キッ・・・

黒夜「確かにな。でも、お前はアイツの事色々知ってて、アイツはお前の事を知らない……卑怯臭ぇな」フフフ・・・

香焼「っ……い、いずれ、時が来たら言うつもりっす」タラー・・・

黒夜「そ」ニヤニヤ・・・


良い顔。純粋にそう思ってしまった。
少女の思考は第一位の鋭利な部分を植え付けられている。故に、少々……いや、かなり性格が歪んでいる。

そして少女は、彼が今、尤もして欲しくない事を告げる。


黒夜「……言って良い?」ニヤリ・・・

香焼「ぇ」ピタッ・・・

黒夜「大事な大事な絹旗ちゃんに……アンタの事」ニヤニヤ・・・

香焼「っ!」ズキッ・・・


あぁ、素敵な顔。


香焼「だ、だから自分で言うって。てか、他人に言うつもりはないって最初に言ってただろ!」キッ・・・

黒夜「気が変わった、とは言わないが……まぁもし仮にだ。絹旗のヤツがお前と同じ様に『何故か』お前の秘密知っちゃったら?」フフフ・・・

香焼「オマエっ!」グッ・・・

黒夜「おっと、言葉には気を付けた方が良いんじゃないのぉ? まぁあくまで止むを得ずって具合に……例えば」ニヤリ・・・


その現場を見てしまった。匿名のメール。出処不明な噂が広まってしまった……など。


香焼「……、」ダラダラ・・・

黒夜(イッヒッヒッ! 堪らないなぁホント。虐め最高)ニヤニヤ・・・


無論、実際にそんな事するつもりはない。それをしてしまえば幻想殺しを敵に回し兼ねないからだ。
アレを敵にすると、色々拙い。純粋に相性は悪いし、上からは怒られるし……あとは借りがあるし。

コイツと絹旗についてもそんなに興味は無いので、正直、如何でもいい。


香焼「……お願い。黙っててくれ」ペコッ

黒夜「あるぇ? 敬語はー?」フンッ

香焼「っ……お願いします。さっきの話は他言無用でお願いします」ペコッ

黒夜「ふふふふ……如何すっかなぁ」ニヤニヤ・・・


まぁ、これ以上虐めると幻想殺しに告げ口され兼ねないから、このくらいにしとこうか。
そんな事を考えた刹那、少年の携帯が鳴った。


香焼「……、」Prrrr・・・

黒夜「あ、出ていいぞ」コクッ

香焼「……、」スッ・・・

黒夜「でも、この場で出ろ。逃げたら殺す……社会的な意味で」ニヤリ・・・

香焼「くっ」チラッ・・・


着信の相手を見る……最悪なタイミングだ。


黒夜「ん……どうした、出ろよ。別に会話の邪魔なんかしねぇって。私ぁTPOは弁えるタイプでっさぁ」フフフ・・・

香焼「……、」ダラダラ・・・

黒夜「……ん?」ジー・・・

香焼「な、何さ」タラー・・・

黒夜「おい、相手誰だよ?」ジトー・・・

香焼「姉っす」ジー・・・

黒夜「へー」ジー・・・


沈黙……そして―――


黒夜「貸しな」バッ!

香焼「ちょっ!!?」ギョッ・・・


―――一気に奪う。画面に表示されている名前は……あぁ、最高。


黒夜「ふふふ、やっぱそういう事ねぇ……あ、もしもし。絹旗ちゃーん?」Pi!

香焼「オマエっ!!」バッ!

絹旗『もしも……ぇ』ピタッ・・・


携帯を奪い返そうとする少年を目で牽制する少女。その意味は、言わずもがな。


黒夜「私、私。私だけどー」フフフ・・・

絹旗『……何してんですか。冗談にも程がありますよ』ジトー・・・

黒夜「ところがどっこい、冗談じゃないんだよねぇ。何の用? デートの御誘いだった?」ヒヒヒ・・・

絹旗『超喧しいです。良いからさっさと香焼に替わって下さい、この超アバズレ女が』ギリッ・・・

黒夜「だからぁ、今愛しの香焼ちゃんは忙しくて出られないの。代わりに私が伝言っといてやるよ」ウンウンッ

絹旗『超意味不明です。何これ電波ジャック? それとも新手のドッキリですか? 超性質悪いんですけど』ジトー・・・

黒夜「マジ超現実。しゃーないなぁ、それじゃあ替わってやるよ……終わったら切らずに私に寄越せ。切ったら……分かってるよな?」ニヤリ・・・

香焼「っ」コクッ


少年は受け取り、嫌な汗を掻きながら電話に出た。


香焼「……もしもし」スッ・・・

絹旗『香焼? ホント、何なんですか? 超意味不明です』ハァ・・・

香焼「自分も訳分かんないよ。何でこうなったんだか」ハァ・・・

絹旗『大丈夫ですか? もし何かされてる様なら直ぐにでも助け行きますよ』ジー・・・

香焼「今は大丈夫かな……それで、如何したの?」チラッ

絹旗『あ、はい……超申し訳無いんですが、待ち合わせに超遅れそうで。超緊急の問題が山積みに押し寄せてきちゃいました』ヤレヤレ・・・

香焼「そうなんだ。まぁ仕方ないよ……とりあえず映画は無理そうだね」ホッ・・・

絹旗『ええ、超残念です』ムゥ・・・


彼女には悪いが言わせてもらう。神様、ありがとう。


絹旗『一応超頑張って課題終わらせるんで……迷惑じゃなきゃ夕方辺りにでもお伺いして良いですか?』ペコッ

香焼「うん、待ってるよ」コクッ

絹旗『ホント、すいません。それじゃあまた後で』スッ・・・

黒夜「おい」クイッ

香焼「あ、ちょ、ちょっと待って!」アタフタ・・・

絹旗『え?』キョトン・・・

香焼「……黒夜さんが替われって。何か話があるみたい」ハァ・・・

絹旗『私は超無いんですが』エー・・・

香焼「自分を助けるためだと思って、お願い」ペコッ


明から様に嫌そうな嘆息が聞こえたが、止むを得ず電話を続けた。


絹旗『あー、通話代が超勿体無いです』ジトー・・・

黒夜「そういうなって。折角御姉様が電話してやってんのに」ニヤニヤ・・・

絹旗『誰が姉だ。私が姉だっつの』フンッ

黒夜「はぁ? マジ有り得ねぇ。オマエ妹、私姉。これこの世の摂理。OK?」

香焼(ホント、こういうとこは姉妹だなぁ)タラー・・・


下らない姉妹論争が暫く続き、少女は本題に入る。それはそれは……唐突な爆撃。


黒夜「―――あ、そうそう。面白ぇ事教えてやるよ」ニヤリ・・・

絹旗『は? 超C級映画のエンドロールにつく下らないNG集並に超ツマラナイ黒夜がどんな面白い話振ってくれるんですか?』

黒夜「今からコイツ私の奴隷になったから」ニヤリ・・・


沈黙数秒。そして、少年と電話越しの少女が口を揃えて告げた。


香焼・絹旗『「は?」』キョトン・・・

黒夜「だから奴隷。私の従者。下僕くん一号……あ、一号は銀幕(シルバークロース)の野郎だから二号か」アハハ

絹旗『超絶! 理解不能なんですけど!?』ハァ!?

香焼「い、いやいやいやいや! 意味分からない! 何言ってんのさ! ふざけな―――」タラー・・・

黒夜「おい……奴隷のクセに、生意気だぞ? なぁ……いいのか?」チラッ・・・ボソッ・・・

香焼「―――っ」グッ・・・


何も言えない。


絹旗『……黒夜。アンタ、いい加減にしなさいよ』ギッ・・・

黒夜「あららぁ? おこなの? プンプン丸なの?」ニヤニヤ・・・

絹旗『オイ!』ガンッ!

黒夜「ま、決定事項だから文句つけんなよ。そんじゃ私は以上で……奴隷くんから何かある?」スッ・・・

香焼「……もしもし」スッ・・・

絹旗『ちょっと香焼!』キッ・・・

香焼「ごめん、後でちゃんと説明するよ……心配しないで……っていうのは無理だろうけど、自分は大丈夫だから」タラー・・・

絹旗『私が全っ然大丈夫じゃないんですよ!』フシャー!

香焼「……兎に角、ごめん。また後で、夕方時に」スッ・・・

絹旗『香焼! ちょっとまだ、待っ―――』Pi! ツー・・・ツー・・・


電話を切る……そして、隣でニヤニヤ微笑む少女を睨みつけた。


香焼「地獄に堕ちろ」ギロッ・・・

黒夜「ふふふふ……良い子だな。専ら、そのつもりさ」ハハハ


少女は楽しそうに歩き出す。


黒夜「さぁ、連いといで。犬っころ。逃げたら殺すかんなー」ヒヒヒッ!

香焼「……あんまりだ」フコウダー・・・


意地悪を通り越して悪魔の所業。涙目になりながら、渋々とリアル小悪魔少女の後を追った……―――


以上です。如何転んでもバッドエンドな予感!
まぁでもシリアスじゃないから死にはしないのでOKって事で。

とりあえず、黒夜と香焼に『何処』行きたいか『何』させたいかリクエスト取ります。
安価じゃないので適当にリクお願いします。

それじゃあ例の如く、質問意見感想罵倒等々お願いします。ではまた次回! ノシ”

おつ!やはり香やんも上条さんと同じで女難の相が出ておるww
とりあえずリクは夜の街で夜遊びしてたら番外さんとバッタリなんてシチュはアリですかね?

日本語って難しいwww

乙!

乙! いわゆるアンジャッ臭って訳ねww

ゲーセンでUFOキャッチャーとか良いんじゃない キャラに似合わずカワイイ物好き‥‥でも全部破裂させるよみたいな
んで、イライラMAXのみこっちゃんにバッタリと!

番外さんに(香焼とお揃いで)ネコ耳とか装備させられちゃう黒にゃんお願いします
あと黒妻にーさんに「教育」されるのもいいかも



黒夜の偏見が更に曲解して伝わり

上条と香焼 vs 女子連合(魔術と科学の結合組織状態)

みたいな事になりそうだな
(ギャグ補正皆無で)
だが
そんな状況で上条達の方に味方する女子が現れれば
まさにそんな彼女こそ真のヒロインだろう

ビオランテ「‥フフフ‥」
イルカ「」
無個性「?」

「上条×香焼」じゃなくて「上条と香焼」な

スフィンクスともあい「「にゃー」」

おおっ!!戦力外にもほどがあるけど味方いたよ!
「人間じゃない」だぁ!?贅沢ぬかすな!!


スレが来てたことに気付かなかったぜ

こんばんは。ボチボチ書きます。


>>171・・・カミやん病患者だから仕方ないね。やっぱワーストさん&黒にゃんの組み合わせは人気なのかな

>>172・・・難しくも美しいのが日本語ですよー

>>173・・・ウチの御坂さんは暴走キャラ筆頭だから何しでかすか分かりゃん

>>174・・・猫耳香焼とか誰得?w 黒妻さんねぇ……新約で如何絡ませるか悩みどころ。第6位(仮)さんとは知り合いだったりしないのかな?

>>175・・・上条約に則り香焼の勝ちという事で女子達は潔く引き下がるべし!w あと……■■さんの事を無個性と言ったな? 訴訟も辞さない

>>176・・・ひっそり書かせて貰ってますんよ


では投下どー。

  ―――とある休日、PM01:00、学園都市第7学区、商店街・・・香焼side・・・





黒夜「ふんふふ。ふんふふ。ふんふーふーん♪」テクテク・・・


割と上機嫌な黒夜さんの後ろを歩く。今のところ、特に酷い事を命令されたり強制されたりはしてない。
正直、こういう風に傍から見ている分には至って普通の少女っぽい。
多少、服装は独特だがこの街には彼女も薄れて見える程のファッションセンスの持ち主が闊歩してたりするので、別段問題無かろう。


黒夜「さーて、どーすっかなぁ」ヒヒヒ!

香焼「……、」ハァ・・・


まぁいい。コレを機に、彼女や今の暗部についても色々聞き出そう。
もしかしたら彼女も嘗ての最愛同様に『救いの手』を差し伸べるべく存在なのかもしれない。


黒夜「とりあえず、腹減ったな……おいポチ」チラッ・・・

香焼「……、」テクテク・・・

黒夜「おい、ポチ」ゲシッ!

香焼「あ痛っ! え、じ、自分?」ポカーン・・・

黒夜「そうだよ。奴隷のポチだ」ベシッ!

香焼「うわっ! ちょ、意味分かんない。あと、一々叩かないでよ」ジトー・・・

黒夜「生意気だぞ? そういう口の聞き方して良いと思ってるのか?」ニヤリ・・・


面倒な……アニェーゼの粗暴さとレッサーの我儘っぷりを足した感じだ。


香焼「自分には香焼って名前があるんすよ」ッタク・・・

黒夜「じゃあ、わんこーやぎで」フーン・・・


どっかの女子寮でチビッ子シスターが立ち上がった気がした。


香焼「それは止めておいた方が良い……じゃあ自分は何て呼べば良いんすか? 黒夜さま? それともお嬢様とか?」ジトー・・・

黒夜「うわぁキモい」ジトー・・・

香焼「オマエなぁ」ハァ・・・

黒夜「今まで通りで良いっつの。ま、私はテメェの事は好きに呼ばせて貰う」フフッ

香焼「お手柔らかに」ヤレヤレ・・・


兎に角、機嫌さえ損ねさせなければ問題なかろう。


黒夜「それより、腹減ったわ」チラッ

香焼「あー、うん……そういえば自分もお昼まだだ」コクッ

黒夜「テメェん腹具合なんか如何でも良いわ」ケッ

香焼「はいはい、そーっすね」ハァ・・・

黒夜「……こいつ」ゲシッ

香焼「わっ! 何で蹴るのさ」ズサッ

黒夜「その空かした態度が気に食わねぇの。もっと愛想良く出来ないのか?」フンッ


お前が言うな、と反論してやりたかった。

本来であれば最愛と映画を観に行った後、適当にご飯を食べる予定だった。
ぶっちゃけ、彼女が選ぶ映画の種類によっては鑑賞後ご飯が喉を通らなかったりする。

前に『空飛ぶスパゲッティ教団』題材のC級ホラーを観たのだが……数日間、スパゲッティが喰えなくなった。


黒夜「どうすっかなぁ。徹夜ばっかでピザとかジャンクフードとか、出前モンみたいな味は飽きたしよー」ウーン・・・

香焼「ちゃんとした料理は食べないの?」チラッ

黒夜「ピザとかバーガーだって料理だろうが。馬鹿にすんなし」ポカッ

香焼「痛っ……また叩く……そういう意味じゃなくて、栄養のバランス考えてご飯食べないと」ハァ・・・

黒夜「うっせ。お前は私のオカンか」ケッ!


こんな不良娘要りません。


黒夜「何か言ったか?」ギロッ・・・

香焼「何も……しかしまぁ、此処まで最愛と同じとはね」ハハハ・・・

黒夜「あ?」グイッ・・・

香焼「最愛も、放っておいたらファミレスとかレトルトばっか食べてるんだ。基本、自炊出来ないっぽいし」ハァ・・・

黒夜「だっせ」ハッ

香焼「そういう黒夜は自炊出来るの?」チラッ

黒夜「……うっせ」ゲシッ


予想通りだ。出来る訳無いか。


黒夜「ほんっと、生意気なヤツ。鞭か何かで引っ叩かないと駄目か?」ジトー・・・

香焼「勘弁願いたいっすね」ハァ・・・

黒夜「ふんっ。だったら従順に愛想良く尻尾振ってろっつーの。じゃねぇと首輪とリード付けるぞ」

香焼「自分にそんな趣味は無いっすよ」ヤレヤレ・・・

黒夜「チッ……あーとりあえず、飯だ」テクテク・・・


ズカズカ進む黒い少女。何処へ向かうやら。


黒夜「あー……お前、この辺の良い店知らねぇか?」チラッ

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「飯屋だよ、飯。何でも良いから」フンッ

香焼「えっと……何で?」ポカーン・・・

黒夜「ケッ……私ぁジャンクフードとかコンビニくらいしか行かねぇから、喰いモン屋なんぞ知らねぇんだよ」


だから僕に聞いたと……さっきジャンクやレトルトでも良いと言わなかったか?


黒夜「う、うっせ! さっさと案内しろ」ケッ!

香焼「はいはい……じゃあどうしようか。何食べたいの?」チラッ

黒夜「だから任せるって。好き嫌い無ぇから早くしろ」フンッ

香焼「急に言われても困る」ウーン・・・

黒夜「はーやーくー」ブーブー


しかし、自分もお腹が減ってるし……適当に食べに行こう。それじゃあ折角だし――― >>181 ―――に行こうか。

ちょっと高そうな洋食屋

このssシリーズでは割とヒロインしてる姫神さんを無個性なんて言いませんよ
そもそも「ホモが嫌いな(ry」な更なる異次元の住人ズと並べて書く道理がない

まあ‥並び順がおかしかったかもしれませんけど
ちなみに「無個性」以外では
・ゼロ
・体力優秀者
・金属バット
・not第四
このあたりが候補でした

すんません、寝ちまいました……ボチボチ投下。


**************************************


―――近くにレストランがあったと思う。そこに行こうか。


黒夜「ん。まぁ任せるけど……結構歩くのか?」チラッ

香焼「そうでもないよ。すぐ着く筈」テクテク・・・


尤も、この店の存在は僕が見つけた訳ではない。
五和と浦上が食べ歩きで見つけてきた店だ。ホント、任務の合間に何やってんだか。

大通りから数分歩いた所で大人びた雰囲気の小道に入る。そこで小洒落た洋食屋を発見。
この通り自体、人の入りは多くは無いが、立ち並ぶ店々は老舗の雰囲気を醸し出していて一見さんは入り辛い感じがする。


香焼「此処っすね」テクテク・・・

黒夜「へぇ……やってんのか?」キョロキョロ・・・

香焼「土日にクローズ出してる飲食店なんてそうそう無いっすよ。とりあえず入ろう」カランカラン・・・


店内のイメージはレトロ。正直、中学生2人が入る様な店では無いのかもしれない。
現に年輩の夫婦が奥に一組、研究者っぽいダンディな男性がカウンター席に一人座ってる程度。これまた常連さんな感じ。

僕らは適当な席に座る。カウンター奥から御冷とおしぼりを持ってきた妙齢のマスターさんに頭を下げメニューを開いた。


黒夜「……あんまり品数は無ぇんだな」ジー・・・

香焼「ファミレス主体の昨今で、こういうお店は少ないっすよね」ハハハ

黒夜「しかも結構高ぇし。カレーが1,000円超すのかよ」タラー・・・

香焼「それだけ美味しいんじゃないのかな」コクッ・・・


とりあえず、ランチタイムという事で適当にAランチ・Bランチを注文した。
さて……料理が出来るまで暫し対面。何を話そうか。


香焼「……ねぇ」ジー・・・

黒夜「あん?」チラッ

香焼「黒夜さんは、学校行ってるの?」

黒夜「行ってる訳無ぇだろ。てか暗部所属の人間で学校行ってるヤツの方が稀だわ」フンッ

香焼「そっか。でも所属してる学校はあるんでしょ?」

黒夜「一応は。絹旗のヤツと同じな筈」ジー・・・


長点上機だか霧ヶ丘付属の中学か。あくまで書類上の在籍と。


黒夜「お前は?」チラッ

香焼「前にも言ったけど理事会付属の中学校っすよ」コクッ

黒夜「……は? 理事会付属だぁ?」ポカーン・・・

香焼「『▲▲▲学院中等部』っす。知ってる?」スッ・・・

黒夜「この街住んでて、理事会付属の学校知らねぇヤツはモグリか何かだろ……へー。学生証マジモンか。ボンボンなのな」ジー・・・

香焼「そんなんじゃないっすよ。色々あってね」ハハハ・・・

黒夜「……ま、便利だろ。コネとかセキュリティとか駆使できるし」フーン・・・


興味があるのか、僕のIDカードをクルクルと回しながら眺めていた。

それからICチップの辺りや磁気コードを指でなぞった後、満足したのか学生証を返した。


黒夜「しかしまぁ、よく学生やってんのな。信じられねぇ」スッ・・・

香焼「一応、年齢的にも学生っすからね。そういえば黒夜さん何歳なの?」

黒夜「……女性に歳聞くとは、失礼なヤツだな」ジトー・・・

香焼「まぁまぁ」ハハハ・・・

黒夜「ったく……お前と同い年だよ」フンッ


という事は12歳か。いや、もう13歳になったのだろうか。ドチラにしろ、僕や最愛と同学年なのだろう。


黒夜「てかよ」ジー・・・

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「『さん』付け止めろ」ジトー・・・

香焼「……え」ポカーン・・・

黒夜「なんか、こう……むず痒いわ」ハァ・・・


さっきまで奴隷だの敬語云々言ってたくせに。


黒夜「っせぇ。言う事聞け!」ゲシッ

香焼「ちょ! テーブル下で蹴らないでよ!」イタタ・・・

黒夜「チッ……調子狂うわ」フンッ・・・


何故か気拙そうに窓の外を眺める黒夜。こう、大人しく座っている限りでは歳相応の少女にしか見えなかった。


黒夜「……何だよ。人の顔ジロジロと、気持ち悪い」チラッ

香焼「あ、いや。あはは」ポリポリ・・・

黒夜「……けっ」ツーン・・・


とりあえず常時不機嫌そうなのはデフォなのだろう。


香焼「……そういえば、黒夜さんも――」

黒夜「『さん』付けすんな」ゲシッ

香焼「――痛っ……ごめん。黒夜も能力者なんでしょ。どんな能力なの?」ジー・・・

黒夜「……絹旗のヤツから聞いてねぇのか?」チラッ

香焼「特には」コクッ

黒夜「じゃあ教えねぇ」フンッ

香焼「じゃあ勝手に聞く」フフッ・・・

黒夜「ぐっ……お前なぁ」ジトー・・・


きっと最愛なら教えてくれるだろう。


黒夜「チッ……聞いたらアイツにお前の秘密ばらすぞ」ジトー・・・

香焼「じゃあ聞かないから黒夜の口から教えて。別に誰に言う訳でも無いんだからさ」ジー・・・

黒夜「おま……は? 意味分からねぇ……マジ調子狂うわ」タラー・・・


面倒臭そうに御冷を啜る黒夜。別に変な事聞いてる訳じゃないんだけどなぁ。

一寸の無言の後、コップの中から氷を舌で拾い、口の中でボリボリ砕き始めた黒夜。
そして大きな嘆息を吐いた後、ポツリと告げた。


黒夜「ハァ……絹旗のヤツと似た様な能力だよ」ボリボリ・・・

香焼「最愛と似た?」キョトン・・・


大能力(レベル4)の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』に似た能力というと。


香焼「何かを『装甲』化して身に纏うタイプの能力?」フム・・・

黒夜「逆だ、逆。装甲の方じゃねぇ」フンッ

香焼「それじゃあ……オフェンス? それとも窒素?」フムフム・・・

黒夜「まぁそんなとこだ……ってかアイツ、お前にそこまで能力教えたのか?」ジー・・・

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「お前とアイツの仲がどんだけ親しいかは知らんけど、アイツがそうベラベラ自分の能力について話すとは思えねぇんだが」ジトー・・・

香焼「……あー」タラー・・・


確かに、僕は最愛本人の口からハッキリと能力の説明を受けた事は無い。
教わったのは能力名と強度(レベル)、それからざっくりな概要だけだ。

しかし実際は、カオリ姉さんと土御門の資料を読ませて貰っているので、彼女の『能力開花課程』についてアバウトに知ってたりもする。


黒夜「……テメェ、勝手に調べたな?」ジトー・・・

香焼「ち、違うよ! 自分はざっくりな概要しか知らないから」アタフタ・・・

黒夜「アイテム。暗闇の五月計画」サラッ・・・

香焼「っ!」ドキッ・・・

黒夜「ふーん……なるほど……そしてお前が『知ってる』という事を、絹旗ちゃんは『知らない』と」ジー・・・

香焼「な、何の事かなぁ」タラー・・・

黒夜「嘘が下手糞だな」ハッ


参ったな。


黒夜「ふむふむ。お前がどんなヤツか分かってきたぞ。後ろめたいクセに首突っ込んで後悔するタイプか」ハハハ

香焼「と、兎に角! いずれ自分から言うっすから、その……最愛には内緒にしててよ」タラー・・・

黒夜「ま、お前の態度次第だな。あんまり私を怒らせんなよ」フフッ

香焼「うー……自分も調子狂いっぱなしっす」ハァ・・・

黒夜「お互い様だ。まぁとりあえず……こんな能力だ」スッ・・・ピタッ

香焼「え」ポカーン・・・

黒夜「ばーんっ」ドッ・・・


僕の肩の辺りに掌を向ける黒夜。そして―――



 

       ガオンッ





―――……え。

一瞬、何が起きたのか分からなかった。変な射出音の様なモノが聞こえたけど、別段変わった様子は無い。
僕が呆気に取られていると、黒夜は面白そうに自信の首の辺りを叩いてサラリと告げた。


黒夜「ククククッ。此処此処」ポンポンッ

香焼「え」キョトン・・・


自信の首回りを探ってみる。すると……パーカーのフード部分に小さな穴が開いていた。


黒夜「ハハハ。ま、こんな感じの能力だ。驚いたか?」ニヤニヤ・・・

香焼「お、驚くも何も……意味が分からない」タラー・・・

黒夜「だろうな。とりあえず、やろうと思えば服だけじゃなくてお前の呼吸器の風通しを良くしてやる事だって可能って訳だ」ニヤリ・・・

香焼「……、」ポカーン・・・


如何いう事?


黒夜「しょうがねぇな。オツムの弱い香焼ちゃんの為に説明してやるけどよぉ」フフン・・・

香焼「い、いやいやいや……そういう問題じゃなくて」タラー・・・

黒夜「あ?」ポカーン・・・

香焼「今、何? 攻撃したって事?」タラー・・・

黒夜「そ。服に穴開けたった。いやぁ久々に手加減したなぁ。3m以下に抑えんのって精密作業だから逆に大変なんだぜ」ハハハ


つまり……口で説明するより、実際見せた方が早いと判断した訳か。


香焼「……、」ハァ・・・

黒夜「なんだよ」ジー・・・

香焼「いや、もういい」ハァ・・・

黒夜「……はぁ」キョトン・・・

香焼「もう良いよ。他人に迷惑掛けそうだから」ジトー・・・


多分彼女は、心の中で『やる』と決めた時には既に行動しているタイプだ。
今は軽い自己紹介みたいなノリで能力を使用したけど、もし本気で攻撃しようとした際には……かなり危険だろう。


黒夜「んだよ……つまんねぇ」ケッ・・・

香焼「場所考えなって……まぁその、黒夜の能力に興味持ったのは自分っすから、教えようとしてくれた君に悪気は無いんだろうけど」ポリポリ・・・

黒夜「……ふんっ」プイッ・・・

香焼「えっと、とりあえず……射出系の能力かな。窒素弾丸とか」ハハハ・・・

黒夜「……さぁね」ジー・・・


何故かムスっとしてしまった。まるで楽しみを止められた子供だな。

如何こうしている最中、マスターがランチを運んできた。
僕が頼んだAランチは海老フライや蟹クリームコロッケ等のフライ定食。
黒夜のBランチはハンバーグやチキンソテー、豚の生姜焼き等の肉定食。

ドチラもランチメニューなのでライスとサラダとスープがセット。食後にコーヒーが付くらしい。


香焼「結構多いね」ジー・・・

黒夜「……ん」ジー・・・


冷める前に頂こう。

僕がナイフとフォークでコロッケを切り始めた時、まだ彼女は動かないままだった。
何か苦手なモノでも入っていたのだろうか。先程は好き嫌いは無いと言っていたけど。


香焼「黒夜?」チラッ

黒夜「……、」ポリポリ・・・

香焼「……あぁ」ピンッ


なるほど。


香焼「すいません」チラッ

マスター「はい」テクテク・・・

香焼「御箸を一膳お願いします」ペコッ

黒夜「え」キョトン・・・

マスター「かしこまりました」コクッ


割り箸を受け取り、黒夜に渡した。


黒夜「……何だよ」ジトー・・・

香焼「別に」スッ・・・

黒夜「……チッ」パシッ


別にナイフを使えなくても恥ずかしい事では無い。
僕だって昔はテーブルマナーのテの字も理解出来ず、普通に箸を使っていた。


黒夜「……ふんっ」モグモグ・・・

香焼「こういう時は素直に頼んでも良いんすよ」クスッ

黒夜「っせぇな。日本なんだから箸だけ置いときゃ良いんだよ」ケッ

香焼「はいはい」フフッ


見栄っ張りは姉妹同じか。


黒夜「お前は慣れてんだな。流石ボンボン学校出身って訳か」フンッ

香焼「いや、自分は海外生活長いから」モグモグ・・・

黒夜「は? 帰国子女?」チラッ

香焼「うーん……何というか」モグモグ・・・


英国暮らし半分、都市生活半分といった具合……この話は盗み聞きされてなかったのか。


香焼「交換留学みたいな感じかな。学園都市と英国って仲良いでしょ。だから行ったり来たりで」コクッ

黒夜「へぇ。知らんかった」モグモグ・・・


適当に誤魔化す。ちょっと考えれば嘘だと分かる事だが、あまり興味が無いのか、あっさり信用してくれた。


黒夜「理事養成学校ねぇ……『私ら』にとっちゃ、いずれ上司になる連中か」ジー・・・

香焼「いやいや。何だそりゃ」ハハハ・・・

黒夜「しらばっくれやがって」モグモグ・・・


確かに、一部の『理事役員』はそういう汚れ仕事も受け持つが、そんなのは微々たるモノ。基本は都市運営で忙しい筈だ。

そもそも、暗部の上下関係について全てを理解している訳ではない。
それは駒たる彼女も同様の筈。土御門辺りなら知っているのかもしれないが、まだそこまで教えて貰っていない。

箸を受け取ってガッツく様にランチを平らげた黒夜は、サービスのコーヒーを啜りながら窓の外を眺めていた。


香焼「食べるの速いね」チラッ

黒夜「誰かさんみたいにお上品に食べれないんでね……ふむふむ」スッ・・・


砂糖もミルクも入れないまま、豆本来の味を楽しんでいるらしい。
僕にはまだブラックの良さが分からない。素直に大人だと感じた。


黒夜「ところで」チラッ

香焼「はいはい」モグモグ・・・

黒夜「前に言ってたが……お前もシノギなんだろ」ジー・・・


さっきまでその件で問答していたのに、今更それを聞くのか。


黒夜「じゃあ、お前も能力者なのか? 前に私と絹旗のヤツをワイヤーみたいなので縛ってたけどさ(※)」ジー・・・

※ただいま:第⑥話(17話)参照。

香焼「前に無能力者(レベル0)って言った筈だけど」モグモグ・・・

黒夜「おいおい、無能力者に出来る芸当とは思えないんだがなぁ……私に隠し事して良いと思ってんの?」ジトー・・・

香焼「……、」ジー・・・


厄介な……しかし、これで先程『魔術』について聞かれてないという事が分かった。


香焼「確かに、さっき能力を見せて貰った以上、イーブンじゃないっすね」モグモグ・・・

黒夜「物分かりが良いじゃない」フフッ

香焼「でも、大っ平に見せれたもんでもないよ。色々危険だから」モグモグ・・・

黒夜「じゃあ口で説明しろよ。誰も見せろなんて言ってねぇだろ」ジー・・・

香焼「……マジック」ボソッ

黒夜「あ?」キョトン・・・

香焼「マジックだよ、手品。種も仕掛けも『ある』マジック。この前使ったのはそれ」モグモグ・・・ゴチソウサマデシタ・・・


嘘は吐いていない。実際、魔術はそういうものだ。


黒夜「……意味分からん」ポカーン・・・

香焼「理解したら拙いんすよ。能力者が理解して良いモノではないから……あ、砂糖とミルク取って」チラッ

黒夜「アバウトな。抽象的過ぎんよ。隠し事すんなっつってんじゃん……ん」スッ・・・

香焼「どうも……といっても、理解出来ないと思うよ」ハハハ・・・


魔術を理解するという事は、オカルトを信じろという様なモノだ。
超現実主義・科学信仰のこの街の住人では理解はおろか、認識すら出来ないだろう。


香焼「じゃあ一つ、教えるけど……自分は十字教徒っす」ゴクゴクッ・・・

黒夜「……マジ?」タラー・・・

香焼「ははは。やっぱそういう目で見られちゃうよね」クスッ


オカルト以前に『宗教』云々を毛嫌いするのが学園都市。これでは到底、魔術について理解し得ないだろう。

勿論、宗教色の無い魔術というモノも存在するが、それは僕の知る魔術とは『基盤』が違うので、魔術とは呼べないかもしれない。
実際、大陸の『仙術』やら『气道』なんかは十字教のそれとは基盤が違う。

禁書目録に語らせれば『起源』は同じらしいのだが、やはり理解はできない。


香焼「ま、そんな感じで理解出来ないんすよ」ハハハ

黒夜「……邪道ってヤツか?」ウーン・・・

香焼「確かに。この街の人間からしてみれば、そうかもしれないっすね」コクッ


ただ、真の一般人からしてみれば能力者だろうが魔術師だろうが異能は異能。
都市外の人々の言葉を借りれば……突然変異者だ。


黒夜「はっ。私らが『ミュータント』ねぇ。言い得て妙だな」ハハハ

香焼「怒らないの?」チラッ

黒夜「別にー。言わせときゃいい。持たざる者の僻みさ」フフッ


確かに。能力者は『才能ある者』だ。選ばれなかった者達からしてみれば僻みなのかもしれない。
ただ……現在、能力者の迫害問題も深刻化している。一般社会(世界)に馴染めない人々……いや、人権すら認めてもらえない事も屡。

結局、この街の中で生きていくか、もしくは能力を一生使わず世間に溶け込むかの二択となる。


黒夜「小難しい話だな。んな考えするだけ無駄ってモンだ」フンッ

香焼「そうかな」ムゥ・・・

黒夜「今を楽しく生きれりゃそれに越した事はねぇ。先の事なんざ今日生き延びたら考えればいい」ジー・・・

香焼「ゲリラ難民とかチャイルドソルジャーみたいな考えっすね」スッ・・・

黒夜「現にそうだろ。未成年ばっか暗部に起用する……ま、そういう風にしか生きられない私ら……同情するか?」チラッ

香焼「……、」ジー・・・


以前、一方通行さんが言っていた……『殺し以外での生計の立て方を知らねェガキ共だっているンだ』と。
この子も最愛同様、という訳か。


黒夜「そういう目すんなや。お前だって同業だろ……身内から娼婦扱いされる事程惨めなモンは無いよ」ボー・・・

香焼「……ごめん」コクッ

黒夜「ふんっ……とりあえず出るか。まぁまぁ上手かった」スッ・・・


席を立つ少女。
結局、この子も昔の最愛と同じなのか。志云々を抜けば、現状のサーシャとも同じだろう。

ああ、駄目だ……如何して僕はそういう『目』で見てしまうのだろう。これではいつまで経っても、同じ土台に立てない。


黒夜「ごちそうさん。お勘定お願い」テクテク・・・

マスター「お粗末さまです。お会計は別々で」チラッ

黒夜「一緒で良いよ。電子マネーで」スッ・・・

マスター「あー……申し訳無い。ウチ、現金のみなんだ」ポリポリ・・・

黒夜「此処もかよ!」エー・・・

香焼「……あはは」スッ・・・


結局、僕の奢りか。マスターさんが同情してくれたのか幾分、易くなったのが不幸中の幸いである。

  ―――とある休日、PM02:30、学園都市第7学区、商店街・・・香焼side・・・




お店を後にして商店街に戻る。休日の昼下がりというだけあって、かなりの混み様だ。


香焼「……それで、何処行くの?」チラッ

黒夜「さぁ」テクテク・・・

香焼「さぁって……じゃあ帰って良い?」ハァ・・・

黒夜「駄ー目」フンッ


何がしたいんだか。


香焼「普段、こういう風に街中ブラブラするの?」テクテク・・・

黒夜「ボチボチな。お前は?」チラッ

香焼「割と。一人では来ないけどね」コクッ

黒夜「ふーん……お前、ダチ多そうだもんな」テクテク・・・

香焼「そうでもないよ。黒夜は……あー」ポリポリ・・・

黒夜「うっせ。殺すぞ」ゲシッ


まぁ友達居ないよな。居ても友達と認めなさそう。


香焼「でも、同僚の人とかとご飯食べたりしないの?」テクテク・・・

黒夜「同僚らしい同僚なんて一人しか居ないっつの。そいつもそいつで根暗だから、あんま一緒に行動しねぇ」フンッ


どんな職場だ。精神病みそうだな。


黒夜「仕事はあくまで仕事だ。割り切るのは当然だろ」チラッ

香焼「そうっすけど」ウーン・・・

黒夜「はっ。お前は仕事に私情持ち込みそうなタイプだもんな。見た目で分かる」ニヤリ・・・

香焼「そ、そんな事は無いよ」ムゥ・・・

黒夜「どうだか」フンッ


意地の悪い顔。


黒夜「さて、と……歩き疲れたわ。どっか座る場所無い?」チラッ

香焼「え? うーん……噴水広場の辺りなら」コクッ

黒夜「じゃあそこ行く。案内しろ」テクテク・・・


さっきから何がしたいんだかよく分からない。とりあえず彼女が満足するまで付き合うしかないか。
一寸後……目的地に到着。ワゴンカーでアイスやクレープが売っているので結構な人の数だ。

座る場所は、丁度噴水の円周か。


黒夜「まぁ良いか……コーヒー買ってきて」クイッ

香焼「さも当たり前の様に命令するし……あーはいはい。買ってくるよ」テクテク・・・

黒夜「ふんっ……ほら、カード。奢られるのは性に合わねぇんだ。ついでにお前の分も買え」スッ・・・


こういうとこは気前が良いんだな……でも、案の定、またしてもマネーカードは使えず。結局僕の自腹となった。

アイスコーヒーと抹茶オレを持って彼女の待つ噴水へ戻る。何をする訳でも無く、ポケーっと上の空な黒夜。


香焼「はい」スッ・・・

黒夜「あ……おぅ」コクッ


乱暴ではあるが、最愛に比べたら割と社交的なのかもしれない。
さて……またしても二人並んで座ってる状況な訳だが、何を聞こう。そろそろ思い切った事を聞いても大丈夫かな。


香焼「ねぇ」チラッ

黒夜「……んー」チューチュー・・・

香焼「黒夜の仕事って、どんなの?」ジー・・・

黒夜「ご想像通りじゃね」チューチュー・・・


ざっくばらんだな。


黒夜「お前や絹旗のヤツと同じ様な仕事内容だろ。まぁお前がどこまで汚れ仕事してるかは知らんし、絹旗に至っては『元』だからな」フンッ

香焼「……なるほど」コクッ

黒夜「そういう、お前は?」チラッ

香焼「……多分、同じく想像通りっす」チューチュー・・・


アチラが曖昧に誤魔化す以上、此方も適当に応える。


黒夜「全然想像出来ない」サラッ

香焼「ありゃ」ポカーン・・・

黒夜「だってお前暗部っぽくないし」キッパリ・・・

香焼「くっ……言わないで欲しいっす」ハァ・・・

黒夜「んだよ。溜息なんて吐くな」ジトー・・・


上条さんにも言われたけど、そんなに『裏』っぽくないかなぁ。
まぁ日常に溶け込む戦術を主とする天草式にとっては褒め言葉なのかもしれないけど……それでもガックリくる。


黒夜「なるほど。『迫』を付けたい訳か。でも、殺気プンプン醸し出してるヤツなんか仕事になんねぇよ」ハンッ

香焼「いや、そういう問題じゃないんすけど……とりあえず甘ちゃんじゃないのになぁ」ウーン・・・

黒夜「ベイビーフェイスはベイビーフェイスで武器になんよ。私や絹旗ちゃんだってパッと見、殺し屋だって判断出来ねぇだろ」フフッ


そうだけど、何か違う。この問答に疑問を感じてしまう。


黒夜「ま、お前と私とドッチが先に『処女(童貞)』切ってるかは知らねぇが、そんな悩む事でも無ぇんじゃね」ジー・・・

香焼「そういう表現、嫌いっす」ムゥ・・・


口にはしないが現に僕は『童貞』を切ってない。そういう意味で同業者達からしてみれば……卑怯者なのだと思う。


黒夜「あらら、お上品なこって。とりあえず躊躇ったら殺られる世界に居る以上、下らねぇ事で悩んでんじゃねぇよ」フンッ

香焼「……はぁ」ジー・・・

黒夜「冗談抜きで同業者からのアドバイスだと思っとけ。もしかしたら敵対すっかもしれねぇがよ」ハハハ

香焼「御免蒙りたいね」ハハハ・・・


これが彼女の……いや、暗部の『覚悟』か。先程感じた『凄み』がそれなのだろう。

それから暫く無言だった。特に話したい事も無いし、下手に口を開けば互いにボロが出るかもしれない。
僕らしくないかもしれないが、妙に慎重になってしまっていた。

土御門や淡希さん、海原さんと暗部について話す機会は多かったが、どうも彼女は雰囲気が違う。
根っからの闇というか、何というか。形容し難い何かを纏っている感じ。

あれやこれや考えている最中、彼女がポツリと告げた。


黒夜「……つまんねぇか?」ボソッ

香焼「え」ピタッ・・・

黒夜「悪かったな。幻想殺しみたいに楽しくお話出来なくてよ」フンッ

香焼「あ、いや……こっちこそ」ポリポリ・・・


気を使わせてしまった。まったく、駄目だな。


黒夜「……どうも、日和った世界は苦手だ」ハァ・・・

香焼「自分の友人にも、似た様な事言うヤツ居るよ。多分、黒夜より捻くれてる」ハハハ

黒夜「私より歪んでるヤツが居るとしたら、そりゃ大層な社会不適合者だわ」フンッ


確かに、ステイルは日常生活に溶け込むのが苦手である。
しかし、立場上公の場に出て愛想笑いしたりしなければならなかったりするので頑張っているとは思う。


香焼「黒夜だって、公の場に出て相応を演じたりしなきゃならない事だってあるんじゃないの?」チラッ

黒夜「私はそういうの嫌いだから、全部相方に任せてる」ジー・・・

香焼「ははは……最愛も演じるのとかは無理だもんね」ポリポリ・・・


そういう仕事は全部麦野さんやフレンダさんに任せてたと聞く。


黒夜「……私の前で麦野沈利の名前は出すな。胸糞悪い」ケッ・・・

香焼「え……苦手なの?」チラッ

黒夜「違う。嫌いなんだ」チッ・・・

香焼「あー……ははは。正直、自分も昔は嫌いだったよ」ポリポリ・・・


今は丸くなったけど、昔は自分の中で完全な『悪』だった。ぶっちゃけ、今でも苦手である。


黒夜「……なぁ。こんなん聞くのは変かもしれんが、そのお前が嫌いだった頃のアイツと私の違いは何だ?」チラッ

香焼「違い?」キョトン・・・

黒夜「強度(レベル)とか見た目以外で。ハッキリ言ってくれていい」チラッ


これまたおかしな質問を。ただ、真面目な顔で聞かれている以上、真面目に答えねばなるまい。


香焼「あの人は……完璧っす」ムゥ・・・

黒夜「何が?」フム・・・

香焼「全てにおいて。能力容姿は勿論、カリスマ性や処世術、人心把握までも」コクッ

黒夜「私には何が足りない?」ジー・・・

香焼「うーん……自分は黒夜って人物をよく知らないから違いは分からないけど……正直、黒夜は最愛に近いでしょ」チラッ

黒夜「っ……やっぱ、そうなのか」ムゥ・・・


一瞬、凄い形相で睨まれたが、直後に怒られた後の子猫の様に萎んだ。

彼女も彼女なりに、コンプレックスがあるのだろうか。


香焼「えっと、殆どの人間が麦野さんと比べたら劣っちゃうよ」ポリポリ・・・

黒夜「それじゃ駄目だ。私はアイツ以上になんなきゃなんねぇ」ジー・・・

香焼「……超能力者(レベル5)になりたいの?」フム・・・

黒夜「違ぇよ。能力者にとって大事なのは強度(レベル)より、能力とその使い方だ」フンッ


確かに。幾ら高い強度の能力を持っていたとしても使い方が杜撰なら宝の持ち腐れだ。


黒夜「そういう話をしてんじゃねぇ。要は暗部に居る上で、アイツ以上の力を持つ為にはって事だ」グッ

香焼「麦野さん以上に、かぁ……何でそんなに比べたがるの?」キョトン・・・

黒夜「単純に、見下されんのが気に食わねぇ」チッ・・・

香焼「見下すって……誰から?」ムゥ・・・

黒夜「『上』の連中や同業者、それから『卒業生』の連中からだ。言わなくても分かるだろ」フンッ


成程。望むのは最強か。それも暗部という暗く狭い世界の中で。


香焼「……そこまで、やりがいを持ってるんだ」ジー・・・

黒夜「やりがいじゃねぇ。全てだ」コクッ・・・

香焼「じゃあ、そこも違いだと思う」フム・・・

黒夜「は?」ポカーン・・・

香焼「だって、あの人は暗部を『遊び場』程度にしか考えてなかったと思うよ」サラッ・・・

黒夜「……、」キョトン・・・


直接聞いた訳ではないが、あの人の話しっぷりと性格上、望まず暗部堕ちした訳ではないっぽい。
寧ろ実験の為か、自分の実力を測る為か……喜んで闇の中へダイブしていったタイプだ。
超能力者(レベル5)は総じて人格破綻者と聞くが、彼女はその最たる例だろう。


香焼「だから、真面目に考えるだけ無駄な様な」ポリポリ・・・

黒夜「ざけんな……遊び? 意味分かんねぇ」ギロッ・・・

香焼「いや、本人に聞いた訳じゃないから確実ではないけど。少なくとも、楽しんでた感が否めないっす」ムゥ・・・


申し訳無いが、当時の彼女についてはそういう目でしか見られなかった。


香焼「それでも彼女は、飴と鞭を使い分けて、能力と性格の恐怖で全てを仕切ってたんじゃないかな」ポリポリ・・・

黒夜「飴と鞭、か」フム・・・

香焼「うん。人間は鞭だけじゃ動かないっすからね」コクッ

黒夜「私には飴が無ぇってか」チッ・・・

香焼「どうだろう。ただ、人心掌握に必要なのは鞭よりも飴だから……もしくは理想とか主義っすね」ジー・・・


これはアニェーゼの弁。僕とそう歳は変わらないのだが、252人の精鋭部隊を率いる若きカリスマの論。


黒夜「……私には難しいな」チッ・・・

香焼「鞭よりは簡単なんだけどね。てか、今更なんすけど……黒夜ってリーダーなの?」ジー・・・

黒夜「一応な」フンッ


成程……しかし、残念ながら、そうは見えなかった。先天的にも後天的にも、彼女は指導者タイプではないと見える。

優秀な兵士が優秀な指導者とは限らない。その逆もまた然り。


香焼「因みに、お金の為じゃないよね?」ジー・・・

黒夜「んなモン要らねぇよ。馬鹿にすんな」ジトー・・・

香焼「そう……正直、どうしてそこまで暗部に傾倒するのか分からないな。別に暗部じゃなくても力を証明出来る場所はあるにに」

黒夜「お前にそこまで教える義理は無ぇよ」フンッ


そう言われてしまえばお終いだ。


黒夜「……私も話してて分かったが、お前は基本『悪』じゃねぇな」チラッ

香焼「っ……別に、悪だろうが善だろうが構わないっす」ジー・・・

黒夜「ふんっ。暗部を毛嫌いする様な発言ばっかじゃねぇか。ホントにシノギかよ」ジトー・・・

香焼「自分は、そういう括りは嫌いなんすよ」ジー・・・

黒夜「日の下と日蔭の線引きが出来ないヤツ程、危険なモンは無ぇよ」フンッ


ステイルにも、全く同じ事を言われる。だがしかし、自分だって魔術師だ。


香焼「『必要悪』の必要性ぐらい、理解してるよ」ムゥ・・・

黒夜「でも納得できてないんだろ。危険なヤツ」チラッ

香焼「……快楽主義で暗部に居る様な人に言われたくないっす」ムスー・・・

黒夜「快楽主義ねぇ。否定はしないが、私もある程度の誇りは持って仕事してる……あんまり嘗めた口聞くなよ」ジトー・・・

香焼「誇りって、なんすか」チラッ

黒夜「暗部が『全て(誇り)』なんだ。それ以上でも以下でも無ぇ。『裏(この世界)』に居る人間が悪の頂点を望んで何が悪い」ムンッ


ああ、そうか。疑問が分かった。


香焼「なんで、悪が全てなの?」ジー・・・

黒夜「なんでって……応える必要は無ぇ」フンッ

香焼「応えられないんだ」フーン・・・

黒夜「なっ……応える義理が無ぇだろ! ただそれだけだ」チッ・・・


彼女は『悪』に対して崇高な幻想を抱いているだけなんだ。
此処まで狂信しているという事は、先天的に悪なのか、もしくは洗脳・植え付けられた感情によるもの。
これを解除するには更なる上書き洗脳か、もしくは幻想を砕く他無い。

ただ……これをしようとは思わない。何故か分からないけど、彼女に『救いの手』が必要だとは思えなかったから。

そしてもう一つの疑問。もしかしたら、この言葉で、彼女の幻想は軽く崩壊してしまうかもしれない。


香焼「暗部が、悪の頂点?」チラッ

黒夜「んだよ」ジトー・・・

香焼「……狭いっすね」ハァ・・・

黒夜「あ?」ピクッ・・・

香焼「世界には……もっともっとオゾマシイ『闇』が渦巻いてるっすよ。この街の闇が悪のトップだなんて……了見が狭過ぎる」ジー・・・

黒夜「何を偉そうな」ジトー・・・

香焼「……もし、暗部を続けるなら何れ分かる筈だよ」コクッ


それはそれは残酷な世界。少なくとも、魔術の存在を知らない彼女はまだ平穏なのかもしれない。

淡々と喋る僕の言葉に、何かを感じたのか、口籠る黒夜。


黒夜「い、意味分からねぇ。脅しのつもりか」フンッ・・・

香焼「脅し……で済めば良いっすね」コクッ

黒夜「……、」タラー・・・


彼女の方が危険な『人間』かもしれないが、僕の方が危険な『世界』に居る。これは確かだろう。
兎に角、これ以上は何も言うまい。忠告はした。


香焼「えっと……ごめんね。嚇しちゃった」ハハハ

黒夜「……ただの甘ちゃんじゃねぇってのは分かったよ」フンッ

香焼「そりゃどうも」フフッ


仮にも『必要悪』の人間だ。時が来れば躊躇いはしない。


黒夜「……てか、もしかしてさ」チラッ

香焼「はい」コクッ

黒夜「幻想殺しも、お前と同じくその『世界』に居るのか?」ジー・・・

香焼「あの人は、最深部まで行ってるよ。自分なんてまだまだ浅い部分っす」ハハハ・・・

黒夜「……じゃあ私は、もっと浅いって訳か」ムッ・・・

香焼「どうだろうね……ただ、さっきから言ってるけど、比べる様なモノではないよ」コクッ


暗部の殺し屋たる彼女は井の中の蛙。魔術師だけど生温い僕は世界の裏側を見てる。
最も一般人の筈の上条さんが全ての最深部にまで足を突っ込んでいる。

変な理(ことわり)だ。


香焼「何が凄いとか、何が危険とか……そういう次元じゃなくなるよ。あの人基準にしちゃうとね」ハハハ・・・

黒夜「ふーん」ジー・・・

香焼「自分も偉そうな事言える程、浸かっちゃいないけどさ……って、何?」チラッ


先程の据わった目とは打って変わって、生温かい目。


黒夜「いや……やっぱ、アイツの話する時は楽しそうなんだな。お前」ジー・・・

香焼「え。いや、そんな事は」ポリポリ・・・

黒夜「そんなに好きなの?」ジー・・・

香焼「す、好き!? い、いやいやいやいや! 恐れ多い!」アタフタ・・・///

黒夜「何を今更。別に文句つけるつもりは無ぇよ……多少抵抗はあるけど」フンッ・・・


抵抗って何だよ。


黒夜「とりあえず、アイツについては元々興味があったが……やっぱお前にも興味が沸いてきた」スタッ・・・

香焼「は?」キョトン・・・

黒夜「次、行くぞ。ついてこい」テクテク・・・

香焼「……はぁ」ポカーン・・・


意味が分からないよ。
兎に角、流されるがまま彼女の後を追った。一体如何なる事やら……―――

はい、今回以上。なんか話が進まない。
何故暗部談義してるんだ、コイツら。というツッコミは無しで。

次は安価取ったりしてく予定です。出演キャラとか移動場所とか……協力宜しく。

それではまた次回! ノシ”

こんばんわ。ボチボチ書きます……寝落ちたらゴメンね。

  ―――とある休日、PM03:15、学園都市第7学区、商店街・・・香焼side・・・





何をする訳でも無くブラブラ歩くパンクな少女の後を追う。
ぶっちゃけ気配遮断の術式で、フラリと消えても気付かれない様な気もするが、バレた時が厄介なのでそれはできない。


香焼「ねぇ」テクテク・・・

黒夜「何処行くの? ってか。お前さっきからそれしか聞かねぇな」テクテク・・・

香焼「だって教えてくれないんだもん」ジトー・・・

黒夜「教える必要ねぇし。黙って連いてくりゃ良いんだよ」フンッ


横暴な事を宣う……実際行く場所決まってないだけなんじゃないのかな。
というか、この子はこの辺詳しいだろうか。さっきも土地勘無い様な発言してたけど。


黒夜「……嘗めんな。都市の地図くらい頭に入ってるっつの」ケッ

香焼「地図は入ってても詳細マッピングされてなきゃ意味無いっすよ」ジー・・・

黒夜「……、」タラー・・・


成程。必要最低限の『道』と『目印』くらいしか把握して無いといった感じか。


香焼「はぁ……行きたい場所あるなら案内するよ。自分、此処の学区なら殆ど把握してるから」ヤレヤレ・・・

黒夜「う、うるさい! 命令すんなっ」キッ・・・

香焼「はいはい」ハァ・・・


まさに徒労だ。これでは日が暮れてしまう……というか、日が暮れたら帰してくれるのかな。
先行きを案じていると、黒夜はピタリと止まった。


香焼「目的地?」チラッ

黒夜「……ん」クイッ


彼女が指をさしたのは―――



①最新のゲームセンター

②セブンスマート

③ペットショップ

④その他(具体的に)



   安価 >>206

―――ゲーセン?


香焼「へぇ。ああいうとこ行くんだ」ジー・・・

黒夜「……、」テクテク・・・

香焼「あ、ちょっと」テクテク・・・


無言で歩き出す黒夜。今一掴みどころが無いな。


香焼「もぅ……黒夜もゲームとかするんだね」チラッ

黒夜「私は据え置きか携帯機専門だ。箱とかPCゲはしねぇよ」テクテク・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

黒夜「良いから黙って連いて来い」フンッ


そそくさと先へ進む。何がしたいんだか。

そういえば此処は最近出来たゲームセンター。敷地面積はそれほど広く無いが、立体的に高いのでそれなりに大きい様だ。
箱モノにしろシューティングにしろカードゲーにしろ、諸々の最新機種が揃っているのでそれなりにウケは良いらしい。

因みにこれ、浦上情報。


黒夜「チッ。喧しいな」テクテク・・・

香焼「まぁゲーセンだからね」ハハハ・・・


休日という事もあってか人も音も混み合っている。
特に1Fはプリクラやクレーンゲーム、子供向けのコインゲームのコーナーなので賑やかさ満載だ。

そんな中、黒夜は周りに目もくれずスタスタとエレベーターの方へ向かって行った。
目的のゲームが上の階にあるのか、と思いきや……最上階のボタンを押す。その階は何も無いんだけど。


香焼「……何処行くの?」ジー・・・

黒夜「見てりゃ分かる」フンッ

香焼「まさか、違法カジノとかじゃないよね」タラー・・・

黒夜「んなモンこの学区にゃねぇ。第3学区と第10学区に殆どだ」ジー・・・

香焼「第3学区のは合法でしょ……第10のは確かに違法だけど」ハハハ・・・


この街には公的資金で運営する公称綺麗なカジノから、
昔シノギ的なヤのつく人達が仕切るブラックな賭博場まで様々なギャンブル場が存在する。子供主体の街なのにおかしな話だ。

さておき、最上階……8Fに到着。通常停まらない筈のその階で、扉が開いたその先には。


香焼「……スタッフルーム?」キョトン・・・

黒夜「見ての通り」テクテク・・・


真っ直ぐ扉へ向かう。え? 何で?


黒夜「まぁ営業みたいなモンだ。深くは聞くな」テクテク・・・

香焼「え、営業?」ポカーン・・・

黒夜「こういうのも暗部の立派なシノギだ。聞いた事ねぇのか?」チラッ

香焼「いや、その……はい?」ポカーン・・・

黒夜「……まぁ黙って私の後ろに居りゃ良いんだ」コンコンッ・・・ガチャッ・・・


意味が分からない……休みじゃなかったのか?

唖然としている僕にはお構いなし。我が物顔でズカズカとスタッフルームに乗り込む黒夜。
いきなり扉を開けられ中に居たスタッフは、驚きのあまり椅子をずらした。


黒夜「……煙草臭ぇな」フンッ

店長「あ、アンタか」ドキッ・・・

黒夜「んだよ。自分のシマの見周りに来ちゃ悪ぃか」ズカズカ・・・

店長「いや……しかし、来る前に一報欲しかったよ」ハァ・・・

黒夜「見られちゃ拙いモンでもあったか」フンッ

店長「そんなもんはないが……こう、心の準備がだな」ヤレヤレ・・・


大きな溜息を吐き、紫煙を揉み消す店長さん。まさに雇われ店長といった感じの30前後の男性。
周りに居たスタッフは気を使ったのか、そそくさと部屋から出て行く。

僕の事を黒夜の部下だと勘違いしたのか、一同、僕に一礼してエレベーターに乗り込んだ。何だか申し訳無い。


黒夜「けっ。茶の一つも出さねぇのかよ」フンッ

店長「そう言わんでくれ。分かるだろ? 皆アンタが怖いんだ」ハァ・・・

黒夜「私がいつ、この店に実害加えたよ」チッ・・・

店長「そういう問題じゃない……あくまでバイトの子達は一般人だ。アンタみたいなシノギの連中が怖いのは当たり前だろ」ジー・・・


つまり、ヤクザ屋さんでいうとこの『守(もり)』商な訳か。もしかして上がり金とか守代とか受け取ってるのかな。


店長「……ところで、其方の彼は?」チラッ

黒夜「ツレだ。気にすんな」ドサッ・・・

店長「と言われてもねぇ……一応、部外者厳禁なんだが」ジトー・・・

香焼「あ、えっと。すいません」タラー・・・

黒夜「そいつも私の同業だ。おい、突っ立ってねぇで座れ」クイッ


勝手にこの場を仕切る黒夜。僕と店長さんの気拙さったらありゃしない。
とりあえず、申し訳無い気持ちでいっぱいだが、黒夜の言うとおりソファに坐した。

それから暫く店長さんと黒夜が小難しい話を始めたので、僕は放置状態。
一応、適当な缶ジュースを渡されたのが唯一の救いか……多分これ、景品の余りだろう。

数分後、話を終えたらしい黒夜は僕の斜め向いのソファに転げこんだ。店長さんは元居た席に戻りモニターの監視っぽい事をしている。


香焼「あの……色々聞きたい事が山積みなんすけど」タラー・・・

黒夜「あん?」ゴロン・・・

香焼「何しに来たの?」チラッ

黒夜「見て分かんないか?」ゴロゴロ・・・

香焼「分かりません……営業? 仕事? 休みって言ったよね?」ジトー・・・

黒夜「まぁ暇潰しがてらの顔出しだ。此処、休憩室代わりにも使ったりするし」ゴロニャー・・・


尚更意味が分からない。


黒夜「簡単に言えば、同僚騙す為に仕事してるフリでもしねぇと拙いんでね。だからダミー営業」ハハハ

香焼「……やっぱ意味不明」タラー・・・

店長「同じく。とばっちりでシルバークロースさん(彼)に怒られるのは勘弁だよ」ハァ・・・


この人も苦労人っぽいな。あーめん。

唖然としている僕にはお構いなし。我が物顔でズカズカとスタッフルームに乗り込む黒夜。
いきなり扉を開けられ中に居たスタッフは、驚きのあまり椅子をずらした。


黒夜「……煙草臭ぇな」フンッ

店長「あ、アンタか」ドキッ・・・

黒夜「んだよ。自分のシマの見周りに来ちゃ悪ぃか」ズカズカ・・・

店長「いや……しかし、来る前に一報欲しかったよ」ハァ・・・

黒夜「見られちゃ拙いモンでもあったか」フンッ

店長「そんなもんはないが……こう、心の準備がだな」ヤレヤレ・・・


大きな溜息を吐き、紫煙を揉み消す店長さん。まさに雇われ店長といった感じの30前後の男性。
周りに居たスタッフは気を使ったのか、そそくさと部屋から出て行く。

僕の事を黒夜の部下だと勘違いしたのか、一同、僕に一礼してエレベーターに乗り込んだ。何だか申し訳無い。


黒夜「けっ。茶の一つも出さねぇのかよ」フンッ

店長「そう言わんでくれ。分かるだろ? 皆アンタが怖いんだ」ハァ・・・

黒夜「私がいつ、この店に実害加えたよ」チッ・・・

店長「そういう問題じゃない……あくまでバイトの子達は一般人だ。アンタみたいなシノギの連中が怖いのは当たり前だろ」ジー・・・


つまり、ヤクザ屋さんでいうとこの『守(もり)』商な訳か。もしかして上がり金とか守代とか受け取ってるのかな。


店長「……ところで、其方の彼は?」チラッ

黒夜「ツレだ。気にすんな」ドサッ・・・

店長「と言われてもねぇ……一応、部外者厳禁なんだが」ジトー・・・

香焼「あ、えっと。すいません」タラー・・・

黒夜「そいつも私の同業だ。おい、突っ立ってねぇで座れ」クイッ


勝手にこの場を仕切る黒夜。僕と店長さんの気拙さったらありゃしない。
とりあえず、申し訳無い気持ちでいっぱいだが、黒夜の言うとおりソファに坐した。

それから暫く店長さんと黒夜が小難しい話を始めたので、僕は放置状態。
一応、適当な缶ジュースを渡されたのが唯一の救いか……多分これ、景品の余りだろう。

数分後、話を終えたらしい黒夜は僕の斜め向いのソファに転げこんだ。店長さんは元居た席に戻りモニターの監視っぽい事をしている。


香焼「あの……色々聞きたい事が山積みなんすけど」タラー・・・

黒夜「あん?」ゴロン・・・

香焼「何しに来たの?」チラッ

黒夜「見て分かんないか?」ゴロゴロ・・・

香焼「分かりません……営業? 仕事? 休みって言ったよね?」ジトー・・・

黒夜「まぁ暇潰しがてらの顔出しだ。此処、休憩室代わりにも使ったりするし」ゴロニャー・・・


尚更意味が分からない。


黒夜「簡単に言えば、同僚騙す為に仕事してるフリでもしねぇと拙いんでね。だからダミー営業」ハハハ

香焼「……やっぱ意味不明」タラー・・・

店長「同じく。とばっちりでシルバークロースさん(彼)に怒られるのは勘弁だよ」ハァ・・・


この人も苦労人っぽいな。あーめん。

兎に角、さしつかえなければ今此処で何をしに来たのか教えてもらいたい。
暇潰しで、という事ではなくて『仕事』として今、何しに来たのか。


黒夜「何ってそりゃ、さっき言った通りよ」フンッ

香焼「守(もり)?」ジトー・・・

黒夜「守っつぅか……一応、経営だ」フンッ

香焼「け、経営?」ポカーン・・・

黒夜「此処は暗部(私ら)の資金源だからな。出資も上がりも私らで運営」コクッ


そういう仕組みか。よくヤクザドラマに在る様な不条理なショバ代要求とかって訳じゃないんだ。


黒夜「やっても良いが……無理だな。老舗のゲーセンとかパチ屋は警備員(アンチスキル)が守やってるし」チッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「おいおい、都市運営で習わなかったか? 都市の風営法。仮にも理事校生なんだろ」ジトー・・・

香焼「都市の、風営法」ウーン・・・


そういうグレーな部分は、実地研修に入る高等部に上がってから習う予定。


黒夜「鈍間なカリキュラムだな……要は、こういう大衆娯楽施設とかってのは縄張り争いあんの」フンッ

香焼「暗部間だけじゃなくて?」キョトン・・・

黒夜「暗部間での縄張り争いなんて少ねぇさ。区分けは『上』がするからな。警備員も同様。身内でのイザコザは無し」コクッ

香焼「でも、警備員の『上』も暗部の『上』も同じ理事役員の背広組なんじゃないの?」キョトン・・・

黒夜「だからその背広組同士で場所取り合戦してんだよ。駒は私ら現場。警備員でいえば所轄」ピッ


まんま都市外の警察とインテリヤクザの縄張り争いだな。


黒夜「ただ、暗部は最近一度『崩壊』しただろ。だから殆ど縄張り持ってねぇ」ケッ・・・

香焼「あー。だからこういう新店の守くらいしか持ってないんだね」コクッ

黒夜「そゆこと。老舗やら元々暗部の持ちモンだった店のケツ持ちは殆ど警備員に持ってかれた……ったく、金あるクセによぉ」フンッ


暗部の仕事も一筋縄ではいかないんだね。


黒夜「加えて……此処の学区は武装無能力者集団(スキルアウト)が顔を利かせている。所謂、第3勢力だ」チッ・・・

香焼「第3勢力……ショバ代縄張り争いの?」フム・・・

黒夜「ああ。まるでギャング気取りでよぉ。警備員も黙認しやがって」ゴロン・・・


スキルアウトの自警団か。噂には聞いた事がある。
頭(ヘッド)の名前は、確か『ハンゾウ』とかいったか。天草式(ウチ)の重要チェックリストにも名前が上がる程のキレ者らしい。


香焼「何で黙認するんすか? 警備員とスキルアウトっていったら水と油でしょ」ムゥ・・・

黒夜「さぁな。他の学区の馬鹿なスキルアウトならまだしも、この学区の最大勢力のアイツらはヘマしないらしい」フンッ

店長「それに義賊扱いされてんだよ。風紀委員や警備員の目の届かない所まで自警活動してるからな」チラッ

香焼「弱者の味方って訳っすね。風紀委員や警備員が黙認する程にウケが良いと」ヘェ・・・

黒夜「何様か知らねぇが調子乗りやがって……命令で止められてなきゃ即座にブッ潰すのによぉ」ケッ・・・

店長「そしたらアンタは一気に悪者扱いだな。義賊(弱者の味方)を崩壊させた暗部の狗として」チラッ


イメージ戦略とは怖いものだ。非公認組織が英雄視されるのは理事会からしてみれば目の上のたんこぶだろう。

すいません、全然進まなかったけど寝ます。

次回は普通にゲーセンで遊ばせます。また安価取ったら宜しくです。では!ノシ”

こんばんわ。ゆるーり投下します。

ブラックコーヒーで一服した黒夜は、其処ら辺に置いてあった雑誌をパラパラと流し読みし、かったるそうに立ち上がった。
そして、のらりくらりと壁のグラフやポスター等を眺めながらぶらり部屋を一周し、店長に一言。


黒夜「じゃ、帰るわ」チラッ

香焼「……は?」キョトン・・・

店長「あいよ。御苦労さんです」ノ”


ほんと、何しに来たのだ。マジでただの視察というか休憩がてら寄っただけかい。


店長「そいつ、いつもそうだぞ」ハハッ

黒夜「うっせ。こう見えてちゃんと業績とかクレームノートとか見てんだよ」フンッ

香焼「へぇ。意外っすね」ポカーン・・・

店長「基本見るだけで俺に任せっ放しだけどな」ジトー・・・

黒夜「やかましいわ。マネジメントはお前の仕事だろ。私は守と出資専門」チッ

店長「さいですか。そんじゃガキがいると煙草喫えなくて仕事集中出来ないからお帰り下さい」ピッ


暗部相手に随分言う人だな。
短気な黒夜なら即座にプッツンしてしまいそうだが、鼻を鳴らすだけで何も言わなかった。これまた意外。


黒夜「……んだよ。その顔」チラッ

香焼「え。あ、いや、随分と度胸のある店長さんだなぁって」ハハハ・・・

黒夜「恐れ知らずなだけだ」フンッ

店長「はいはい。まぁ上司とはいえ、その人まだ中坊だしな。こちとらオッサンだし、ヘコヘコ謙りたくないんだよ」チラッ


もしかして、黒夜が暗部という事を知らないのだろうか。

疑念と不安の目で黒夜と店長さんと流し見る。すると、此方の意を察したのか店長さんは苦笑して告げた。


店長「ははっ。知らない訳ないでしょ。俺は仮にもスキルアウト出身で、しかも昔は下請けもしてたからな」コクッ

黒夜「今も下請けみたいなモンだろ」ハハッ

店長「言ってくれる。まぁ割とこの仕事が気に入ってるから構わねぇけど」フフッ


スキルアウトや暗部の下請け出身でも、結果的にこういう形で仕事に就けるのであればまだ良い方なのかもしれない。


黒夜「ま、こういうガキの遊び場の切盛りが上手なのは褒めてやるよ。今んとこ、お前の代わりは居ねぇからな。頑張れ社畜」ハハハ

店長「褒めてんだか貶してんだか」ヤレヤレ・・・


多分、素直に人を褒める事が出来ないタイプの黒夜からしてみれば最高の賛辞なんだと思う。
さておき、此方に目配せをした黒夜はこれ以上何も言わず扉へ向かった。
僕は店長さんに缶ジュースのお礼を述べ、急いで黒夜の後を追う。

彼女がドアノブに手を掛けたその時、煙草に火を点けた店長さんがポツりと呟いた。


店長「偶にはアンタも金落としてけ」カチッ・・・フゥ・・・

黒夜「あー?」ピタッ

店長「遊んでけっつってんの、自分の店(ゲーセン)で。現場体験も大事だぜ」モクモク・・・

黒夜「意味分かんね」フンッ

店長「その坊主、連れか何かは知らんけど……デートなんだろ」ニヤッ・・・


ありえません。


黒夜「おい、額で煙草喫いてぇなら早くそう言えよ」ピキッ・・・

店長「おー怖。まぁ冗談さておき、率先垂範って言葉もある。アンタが金落としてってると分かりゃバイトだってウチの台で遊ぶぞ」フンッ

黒夜「……、」チッ・・・

店長「それとも、アレか。ゲーム苦手か?」フフフ・・・

黒夜「てめ……分ーったよ。適当に遊んでったる」ズカズカ・・・

店長「まいどー」プカー・・・フフフ・・・


面白い人。言葉も巧みだし、並のスキルアウト上がりには思えないな。


店長「あと、坊主。ウチのオーナーさんの事宜しく頼むぜー。友達少ねぇからな」ハハハ

香焼「あ、はい」コクッ

黒夜「だ、黙りゃ! お前も返事してんじゃねぇよ、このボケっ!」ゲシッ!

香焼「あ痛っ!」ゴンッ


店長さんの笑い声と煙草の匂いに見送られながら、僕らはスタッフルームを後にした。

不機嫌そうな黒夜と2人きりのエレベーター。特に話す間もなく、次の階(7F)で降車した。
そこは少々年齢層高めの人が遊んでいるコーナー。所謂、換金無しの御遊びパチンコ台や競馬ゲーム、電子ルーレット的なモノが集まっている。


香焼「こういうとこで遊ぶの?」チラッ

黒夜「は? 遊ばねぇよ。やり方知らねぇし」フンッ

香焼「じゃあ何で」キョトン・・・

黒夜「適当にブラブラ回ればアイツも文句言わねぇだろ」テクテク・・・

香焼「遊ぶ気無いんだ」アハハ・・・


何だか店長さんに申し訳無い。
話は変わるが、偶にゲーセンのコイン・メダルゲームで景品交換出来たりする場所がある。あれって大丈夫なのかな。
換金は出来ないけど景品と交換可能って、風営法とかで引っ掛かりそうな気がする。

現に此処もメダルで景品と交換可能だ。そこんとこ如何なのだろう。


黒夜「外は知らねぇが、学園都市は日本の治外法権みたいなモンだ。一緒にされても困るだろ」テクテク・・・

香焼「でも子供主体の街でそれをやると破綻するお馬鹿さんも出てくるんじゃ」ウーン・・・

黒夜「だからだろ。学生以外から金巻き上げれねぇんだから、学生相手にパチとか競馬の真似事するしかねぇ」コクッ


勿論レートは低めだけど、と付け加えておく。
しかし、社会問題にもなっているが『学生ローン』的なモノも存在する。下手すりゃ若くして自己破綻コースだ。


香焼「そういうのって暗部が切盛りしてたり?」チラッ

黒夜「一部はな。だけど、貸出上限も金利も低い。決してアコギ商法って訳じゃねぇさ」コクッ

香焼「成程、勉強なります……でも、賭博施設と金融業の大本が同じってマッチポンプ的な気も」アハハ・・・

黒夜「考え過ぎだ。別に強制してんじゃねぇんだし、そこは自己責任よ。破綻の沼に嵌まるヤツは勝手に沈んでく」フンッ


確かに。破綻したくなきゃ借りなきゃ良いんだし、それ以前にこういうゲームをしなければ良い。
ホント、ギャンブル中毒とは怖いモノだ……建宮さんとか大丈夫かな。


黒夜「しっかしまぁ、ジャラジャラジャラジャラと煩ぇわ」テクテク・・・

香焼「自分もこういう場所苦手っす」アハハ・・・


おまけに煙草臭い。まんまパチ屋的な雰囲気だ。


香焼「でもやっぱり大学生とかスキルアウトが殆どって感じかな」キョロキョロ・・・

黒夜「大人もチラホラ居っけど、馬鹿そうなヤツらばっかだ。スロットとか玉弾きがそんなに楽しいのかねぇ」ジトー・・・

香焼「やらないから何ともね……って、あれ?」ピタッ・・・

黒夜「ん?」チラッ


今、スロットコーナーに……在り得ない人が。

ぶっちゃけ、現実逃避。早くこの場を立ち去ろう。


黒夜「どったん?」チラッ

香焼「い、いや。何でもない……見間違いだよね」ハハハ・・・

黒夜「何だ? 知り合い?」ジー・・・

香焼「ううん。多分、見間違い。あの人が居る訳無いから」ポリポリ・・・

黒夜「スロットコーナーか……あー。アイツの事か」ピッ

香焼「……え」ジー・・・


えっと……まぁじで?





















御坂「チッ……ゲコ美リーチ終わり早過ぎよ」Pi・・・PON、PON、PON!






















香焼「」

黒夜「なぁ、アレって第3位じゃね」ジー・・・

香焼「」

黒夜「……おい」ベシッ


痛い……という事は、現実か。信じられん。
少々古い機種のスロット『ゲコ太の拳 仁 』の前に一人ポツリと座り、右・左・中のボタンをリズム良く押す御坂さん。何故か機嫌悪そう。

直視してしまった現実に、僕は唖然とする外なかった。


黒夜「ふーん。常盤台の超電磁砲(レールガン)がスロットゲームに興じてるたぁ……ふふふ」スッ・・・

香焼「ちょ! 携帯取り出して何する気さ!」アタフタ・・・

黒夜「拡散」ニヤリ・・・

香焼「だ、駄目だよ!」ブンブンッ!

黒夜「なーんだよー。邪魔すんなってー」ニヤニヤ・・・


何としても阻止せねば……彼女の風体の為に! あと白井さんをショック死させない為にも!
黒夜にシャッターを切らせまいと、携帯カメラの前で手をブンブン振って邪魔をする。
しかし、残念ながら黒夜の持っている携帯は都市の最新機種。どんなブレも何のそのな瞬間撮影機能付き。

僕の妨害も虚しく、シャッターが切られる―――刹那。


???「おいこら」グイッ

黒夜「んにゃに!?」パシャッ・・・

香焼「あ」ブンブン・・・

???「何してんだか知らないけど、盗撮はNGじゃん」グッ


長身の女性が黒夜の手首を掴み持ち上げた。この人は確か……警備員の。


香焼「黄泉川さん」ジー・・・

黄泉川「ん? 少年、私の事知ってるじゃん?」チラッ


そりゃもう良い意味で重要チェックリストですから。あとは、月詠さんから噂は兼々。


黒夜「うげっ……お前かよ」タラー・・・

黄泉川「これはこれは、DQNなカップルが騒いでると思いきや番外個体の友達じゃん。今日は彼氏連れ?」チラッ

黒夜「ワースt……うわぁ。あのアバズレの友達扱いされんのは、コイツの彼女扱いされんのと同じくらい嫌だっつの!」フシャー!

黄泉川「基準が今一分からないじゃん。さておき、いくら御坂が有名人とはいえ盗撮は駄目じゃんよ」スッ・・・

黒夜「けっ。うっせーばばぁ―――」フンッ

黄泉川「……ふんっ」ゴツンッ

黒夜「―――ぃッッ~~ーーー~~つぅ~~~~ーー~~~ーーーー~~~~ー~~ッッ!!」グギギ・・・


黒夜にゲンコツ振るうなんて、トンデく恐ろしい真似を。
しかし、黒夜は涙目で睨みつけるだけで何もしない。この人の事を怖がってるのだろうか。


黒夜「くそぅ……覚えてろよ」ウギギ・・・

黄泉川「はいはい、忘れたじゃん。さーてと、そんじゃ戻るかなー」キョロキョロ・・・

黒夜「チッ……この不良警備員が。教師がパチンコして良いのかよ」ジトー・・・

黄泉川「教師だって人間じゃん。休日余暇の過ごし方まで御上に決められないじゃんよ」フフッ


無論、あくまで業務に支障のない程度にだろう。

ゲンコツが響いたのか、うっすら涙目の黒夜。存外、子供っぽいなぁ。


黒夜「詭弁を……てか、お前一人で来たのかよ。休日に女一人パチンコって」ハンッ!

黄泉川「相変わらず生意気なガキだこと……一人じゃないじゃん。ほれ、そこ」クイッ

香焼・黒夜「「え」」チラッ・・・






月詠「―――……黒妻ちゃん、相変わらずジャ○ラーとか渋いの打っちゃってるんですねー」Pi・・・PON、PON、PON!

黒妻「つまんねぇですけど一番稼ぎ易いっしょ。月詠さんの打ってる『カナミン 2 』よりは……あ、火借りて良いっすか」Pi・・・PON、PON、PON!

月詠「はいはい。いやぁしかし、午前中は参っちまったのですよ。今日もお馬鹿ちゃん達の為にサービス出勤してー―――」Pi・・・PON、PON、PON!

黒妻「でも好きでやってるんでしょ。オレなんか美偉に『休日も平日も家でゴロゴロしてるんですね』ってさぁ―――」Pi・・・PON、PON、PON!






幼女とヤンキーが並んでスロット打ってる。


黄泉川「パチ仲間じゃん。他にも浜面とか半蔵誘ったんだけど忙しいらしくて……桔梗も最近勉強忙しくて付き合い悪いし」ブーブー

黒妻「浜面だぁ? アイツもパチンカスかよ……つくづく救えねぇな」ハァ・・・

黄泉川「カス言うなし。でもアイツ、彼女出来てから不良っぽい事から離れてってんな……つまんないじゃん」ハァ・・・


そこは喜びましょうよ、教師として。


黄泉川「あ、そういえば番外個体が『もし黒にゃん見かけたら教えて』とか言ってたじゃん。最近会ってないの?」チラッ

黒夜「勘弁して下さい会いたくないです」キッパリ・・・


その『ワースト』って人の事どんだけ苦手なんだ。


香焼「ま、まぁ……って月詠さん!?」タラー・・・

黄泉川「今更? てか知り合いじゃん?」チラッ

香焼「え、ええ。色々と……(第4話参照)」ポリポリ・・・

黄泉川「へぇ。見た目はアレだけど酒も煙草もギャンブルも並以上やるからね……おーい、小萌先生ー」ノ"


態々呼ばなくても良いのに……というか、こんな場所で知人と会うの気拙いだろ。


月詠「―――だから黒妻ちゃんはガツンと固法ちゃんに……って、はい?」チラッ

黄泉川「ん」クイッ

香焼「……あはは」ペコッ

月詠「あら!」ピタッ・・・

黒夜「ん?」ピタッ・・・


椅子から降りテトテトと此方に寄ってくる年齢不詳の幼女教師。
ついでにヤンキーさんも連いてきた。確かこの人は……固法さんの彼氏さん(※ヒモ)だっけ。

※あくまで麦野さんと結標さん曰くです。

僕が大人の遊び場(ギャンブルコーナー)に居る事を怒るでもなく、まして自分がこんな場所に居る事を悪びれる訳でもなく、
満面の笑みで此方に寄って来た月詠さん。律義に煙草は消している。

この事、淡希さん知ってるのかな?


月詠「これはこれは香焼ちゃん! 珍しいとこで会っちゃいましたね。まさか香焼ちゃんも台選びに」フフフッ

香焼「こ、こんにちは。残念ながら自分はパチもスロもやった事無いんで。とりあえず興味がてら覗いただけっす」ペコッ

月詠「成程なるほど。まぁやらないに越した事はないのですが、もし始めても程々にするのですよ。それと、此方は?」チラッ

黒夜「……何だこの生物」タラー・・・

香焼「く、黒夜!」バッ・・・

黄泉川「一方通行みたいな事言うじゃん」ハハハ

月詠「ひ、酷いのですよ……まぁ言われ慣れてますけど」ハァ・・・


確かに永遠の謎だけど、聞くに聞けない問題。とりあえず、黒夜の紹介と此処に居る理由を適当に誤魔化しておく。


月詠「―――ふむふむ……しかし、香焼ちゃんも誰かちゃんみたいに女の子の知り合いが多いのですね。その内モゲちゃいますよ」フフフ・・・

香焼「モゲるって何が?」キョトン・・・

黒夜「ナニがだろ」キッパリ

黄泉川「ナニがじゃん」ハッキリ

黒妻「おいこら女性陣」ハァ・・・


三人に何故かツッコむ黒妻さん……モゲる?

そういえばこの人とはチャリティ演奏会の時(※すんどめ。第三話:20話)以来久しぶりか。
あの時は『香(かおる)』だったっけ。固法さんがばらしてた所為で即行女装がばれたな。


黒妻「ったく……とりあえず、年齢制限は無ぇけどガキが長居して良い様なフロアじゃねぇよ。早めに降りな」コクッ

香焼「あ、はい。そろそろ行きます」コクッ

黒夜「チッ。ガキガキって……全員して嘗めやがってよ」ジトー・・・

黄泉川「ガキは何処まで行ってもガキじゃん。まぁ大人になりゃそう言われてる内が羨ましく思えてきたりもするじゃんよ」フフッ

黒夜「訳分かんね。つーか、アイツは良いのかよ」クイッ


そういえば忘れてた。








御坂「ハァ……台、変えようかしら。今日は駄目ね―――」Pi・・・PON、PON、PON!








一寸真顔になった後、顔を見合わせ、苦笑する大人三人。何なのだ?

人差し指を立て、小声で呟く黄泉川さん。


黄泉川「ははは。御坂はよくスロット打ってるじゃんよ。今に始まった事じゃないからな」シー・・・

黒夜「常盤台のお嬢様がねぇ。意外だわ」ジー・・・

月詠「本人曰く『硬貨(メダル)を集めるのに一番効率が良い』そうなのですよ。だからあんまり景品交換もしないみたいで」チラッ

黒夜「景品交換もしねぇのにメダル稼ぎだ? 何の為?」キョトン・・・


成程。そういう事か。


香焼「超電磁砲の『弾丸(コイン)』調達っすね。(スロットでメダル馬鹿稼ぎとか、どんだけ超電磁砲ブっ放してるんだろう)」ハハハ・・・

黒夜「あーそゆこと……でも当たればデカいが外れりゃスッカラカンじゃね。(機嫌悪そうだし『誰か』に乱射でもしてきたんだろ)」フーン・・・

月詠「超能力者の頭脳ならそうそう負け越さないと思うのですよ。パチもスロも確率モノなので」コクッ

黒妻「まぁぶっちゃけ余所に見せられたもんじゃねぇわな。身内にもあんま見せらんねぇけど」ククク・・・


学園都市の看板娘(アイドル)が、ゲーセンの煙たいパチンコフロアでブツクサ言いながらイライラとスロット打ってる姿。
御世辞にも華やかとは言えないだろう。ぶっちゃけ幻滅もいいところ。
重ねて言うが、白井さんがショック死するレベル。ついでに打ち止めちゃんもグレるレベル。


黄泉川「兎に角、内密に頼むじゃんよ」ポンッ

黒夜「けっ。知った事か……馴れ馴れしく触んなっつの」フンッ

黄泉川「やれやれ、相変わらずパンクしてるじゃん。そっちの少年、この子の事頼むじゃんよ」コクッ

香焼「ええ、言わせませんから」ハハハ・・・

黒夜「……ふんっ」ゲシッ!


だから一々ヤツ当たりで蹴らないで下さい。そろそろ本気で、脹脛痛くてしゃーないです。


黄泉川「そんじゃそろそろ戻るじゃんよ」スッ・・・

月詠「また遊びに来て下さいね、香焼ちゃん」フフッ


挨拶の後、元居た台に戻る2人。


黒妻「じゃあオレは一匹狼んとこ行ってくるかなー……いよ! お嬢ちゃん。なんか機嫌悪そうだな」カツカツ・・・

御坂「―――……あ、どうも。ちょっと色々と……またパチンコですか?」チラッ

黒妻「まーた上条か? オレもスロだよ。ゲコ太か……出てる?」ジー・・・

御坂「ち、ち・が・い・ま・すっ!! もぅ……今日は駄目みたいですね。先輩の先輩は?」ジャラジャラ・・・

黒妻「駄目っつー割にはドル箱重ねてんじゃねぇかよ。オレはボチボチかな。5,000円勝ちくらい」コクッ

御坂「なら良いですけど、程々にしてくださいよ。固法先輩、一昨日も愚痴ってましたから」ジトー・・・

黒妻「あの前の日は偶々調子悪かっただけだ。トータル勝ってっから問題無ぇよ」フンッ

御坂「そういう人に限って破滅するんですよ。いい加減定職就かないとホントに先輩に捨てられますよ―――」Pi・・・PON、PON、PON!

黒妻「くっ……中坊のクセに生意気な。言われなくても分かってらぁ―――」Pi・・・PON、PON、PON!


固法さんがこの光景見たら無言で血涙流しそうだな。


黒夜「阿呆が2人」ハハッ

香焼「……ノーコメントで」タラー・・・


とりあえずこれ以上用も無いので、このフロアを後にする事にした。

すまん。飯食ってきます。


安価! 2人が次にゲーセンで遊ぶモノは?



>>225











おれの夕飯の安価じゃないよ!

ガンダム extream vs

ただいま。伊勢海老なんて殻にグラタン詰めたヤツしか喰った事ねぇわw




*****************************************************




階段を使って下に降りる黒夜。このままだとそそくさ外に出てしまうだろう。
それでは何となく店長さんに申し訳無い。


香焼「ねぇ黒夜」チラッ

黒夜「ん」テクテク・・・

香焼「折角だし、何でも良いから遊んで行こうよ」コクッ

黒夜「意味分からん。ゲーセンで遊ぶくらいなら家で据え置きやってた方が良いだろ」フンッ


だからそういう問題じゃないんだけど。
さておき、3階まで降りた辺りでフロアを眺めてみる。此処は格ゲーコーナーの様だ。


香焼「……ねー」テクテク・・・

黒夜「お前もしつけぇな。やんねぇったらやんねぇ」フンッ

香焼「まだ何も言って無いじゃん」ムゥ・・・

黒夜「どうせ『寄ってこう』とか言うんだろ」ケッ

香焼「……箱モノ苦手だからやりたくない、と」ジー・・・

黒夜「何とでも言え。やらんもんはやらん」テクテク・・・


残念。最愛や軍覇なら今の挑発でノってくるのだが、彼女はそんなに甘くはない様だ。
こうなれば……止むを得ない。


香焼「……じゃあ、自分だけちょこっと遊んでくる」スッ・・・

黒夜「ハァ?」チラッ

香焼「ゲームしてくる。面倒なら帰って良いっすよ」テクテク・・・

黒夜「ちょ、お前、待て!」ジトー


あーだこーだ言われる前に格ゲーコーナーに入り込む。
『秘密ばらすぞ!』とか『奴隷のクセに!』とか騒がれる前に100円入れてしまえばコッチのものだ。

ただ、仮に呆れて帰られたらそれはそれで危険なのだが……


黒夜「チッ。てめぇなぁ」テクテク・・・


……案の定、連いてきてくれた。案外、構ってちゃんなのかもしれない。


香焼「ふふっ。ありがと」ニカッ

黒夜「うっせ。ホント、腹立つガキだ」ジトー・・・

香焼「黒夜だってガキでしょ。あ、折角だから対戦する?」フフッ

黒夜「誰がやるかって―――」

香焼「負けた方が勝った方の言う事一つ聞くっての如何? あ、勿論横暴過ぎない程度のを」ニヤリ・・・

黒夜「―――……む」ピクッ・・・


よし! 乗っかった。これで僕が勝てば一石二鳥だ。

とはいえ、並の口約束で勝っても仕方ない。
黒夜が全く知らない台で勝負して勝っても『今のは無効だ!』とか怒りかねない。最悪、プッツンして秘密をばらすかも。
此処は平等に、寧ろ相手に有利な状況下で勝ってこそ、約束に在り付けるというモノだ。


香焼「台は黒夜が選んで良いよ」フフッ

黒夜「……随分、気前良いじゃねぇか」ジトー・・・

香焼「まぁノリ気じゃない黒夜を無理に誘ったのは自分っすからね」コクッ


とか言いつつ、内心ニヤける。彼女には悪いが、天草式の先輩方の御蔭で古今殆どの格ゲーはやりこんでいるのだ。
主に五和、浦上の御蔭(所為)で……ぶっちゃけサンドバック代わりの練習相手は辛かった。アイツらやり込み過ぎ。

さておき、彼女は一体何を選ぶのだろう。


黒夜「じゃあ……それ」ピッ

香焼「へぇ。これまた何で?」ジー・・・

黒夜「据え置きで、相方とよく対戦すっからな。お前はやった事あるのか?」チラッ

香焼「うん。据え置きも携帯も両方やった事ある」テクテク・・・

黒夜「じゃあ決まりだ」テクテク・・・


彼女が選んだゲームは……『機動戦士○ンダム EXTREME VS. ALL LEGEND』。
所謂『ガ●ダム VS.』シリーズの第10世代で、歴代のサブからモブまで殆どの機体(MS・MA)が参戦している。

空いている対面席に座り硬貨を入れる。因みに、硬貨を持っていない黒夜に100円を渡したのは言うまでもない。


黒夜「……因みによ」チラッ

香焼「ん?」チャリン・・・

黒夜「負けたら何でも言う事聞くって嘘じゃねぇな?」チャリン・・・

香焼「男に二言はないっす」フフッ

黒夜「女男がよく言うわ……ふふふ。お前、更に奴隷街道まっしぐらよ」ニヤリ・・・

香焼「女扱いしてられるのも今の内だよ。あと、黒夜こそ、負けたら約束守りなよ」カチャカチャカチャ・・・

黒夜「勿の論よ。ま、お前が勝ったらの話だけどな……さぁてどんな恥ずかしい命令してやっかなぁ」クスクス・・・


余裕の表情。家で相当やりこんでると見た。
だがしかし……此方はゲーセンでサンドバックにされてきたのだ。易々勝てると思ったら大間違い。

さて、キャラクター選択。


黒夜「私は……―――」カチャカチャ・・・ポチッ

香焼「自分は……―――」カチャカチャ・・・ポチッ


両者機体決定。そして……互いの手の動きが止まる。


香焼「え……『シルヴァ・バレト』? そんな機体あったっけ?」タラー・・・

黒夜「あ、『アマクサ』だぁ? 聞いた事無ぇぞ?」タラー・・・


黒夜が選んだ機体に戸惑う。こんな機体見た事無いんだが。
現状、分かるのはコストが2500という事。あと見た目が青っぽくてガンダムタイプ、あとはUC世代というロゴだけ。

一方、黒夜もキョトン顔。
コストは同じく2500。此方も見た目はガンダムっぽいが、カメラが木星型ゴーグルである。ロゴはクロスボーン。

お互い知らないのも無理はない。第10世代ともなれば機体が多過ぎて、コアなファン(ガノタ)でもない限り、皆まで把握出来ないのだ。


周りの客(うわぁ……あの2人、マニアックな機体選ぶなぁ)ジー・・・

お互い戸惑いを隠せないままバトル開始。因みにCPUは無し。


香焼(とりあえず、様子見かな?)カチャカチャ・・・

黒夜(訳分からんが……関係無ぇ)トンッ・・・


距離を置いてライフルで牽制する。黒夜も特に動きは無い様なので同じ考えなのか……と思いきや。


香焼「っ!!」バリッ!


いきなり機体がスタンした。


香焼「なっ……何、今の!?」カチャカチャ・・・

黒夜「遅ぇ」フフフ・・・


追撃のビームが2発。あっけなくダウンを取られた。
出処が分からない所を見るとファンネル・ビット、もしくはインコムか。


黒夜「教えるかっつの。立ち上がったら即叩くわ」ニヤリ・・・

香焼「……なるほど」カチャッ・・・


何となくだが、相手が中遠距離型だという事が分かった。ならば……近付くまで。


黒夜「はいはい。ビリビリっと」カチャッ・・・

香焼(要は『海ヘビ』みたいな武器も持ってるんすね。両手が分離するのを見る限り……Mk-Ⅴ系か)タンッ・・・

黒夜「ちょこまか逃げるか。本人みたいな機体だな」ハハハッ

香焼「……まぁスピードなら負けないよ」カチャッ・・・


動き回り距離を詰める。兎に角、ブースト吹かしておけばビット系やら有線式に捉えられる事はない。
勿論、易々近付かれまいとライフルやミサイルを撃ってくるが、直線的な武器なら簡単に避けれる。


黒夜「チッ……まぁ近距離でもやれらぁ」カチャッ・・・


サーベルを持ち出し、切り掛ってくる黒夜の機体(シルヴァ・バレト)。
此方も同じタイミングになり、切り離し状態になった。


黒夜「だったら!」タンッ!

香焼「っ! シールドにランチャー付きか」スッ・・・

黒夜「逃がさねぇよ」カタカタッ

香焼(有線ハンド! 捕まったらスタンで追い打ち掛けられる……だったら!)カチャカチャッ


奥の手を。

先程同様に有線武器を多用しようとする黒夜。


黒夜「そのまま、そっこーインコムで削ってや―――」トンッ

香焼「……よいしょ」バンッ・・・グルグルグル・・・

黒夜「―――や……るってうぇえええぇ!?」ギョッ・・・


シールドに付いてるハイパーハンマー射出。近距離で振り回す事でHPをガリガリ削った。


黒夜「んだそりゃ!? アリかよ、そんなの!」アタフタ・・・

香焼「インコムと有線式ハンド持ちに言われたくないっす」ハハハ


アマクサの基本装備はビームライフルとビームサーベルのみ。
近距離になれば色々トリッキーな技が出来るが、黒夜の機体に比べれば武器や技は少ない。


香焼(まぁゲームのシステム上、サーベルの出力は関係無いから世代が違っても打ち合いが切り払いになっちゃうのが辛いかな)ハハハ・・・


本来、世紀が異なればジェネレーターやらスラスターの出力も違うので、圧倒的な差が生まれる筈なのだが、そこはゲーム。


黒夜(チッ……近距離戦考えるんだったらドーベン・ウルフ選らんどきゃ良かった)ハァ・・・


近距離でハンマーの振り回しに勝てる武器がない。
シルヴァ・バレトの一世代前たるドーベン・ウルフなら腹部メガ粒子砲や大型対艦ミサイルが付いていたので何とかなったかもしれない。
今回は機動性を優先してしまったので、この始末。


黒夜「だが……それ振り回してる最中は鈍足だろ。有線ハンドで止めてやらぁ」カチャカチャ・・・

香焼「甘いっすよ」フフッ


両手が離れた瞬間、ハンマーをキャンセル。そのままシールドクローを展開。


黒夜「ま、まだ隠し武器!?」ゲッ!

香焼「ほい」ガシッ・・・バキンッ!

黒夜「ちょ、待っ!」アタフタ・・・

香焼「はいはい」ザンザンッ!

黒夜「しかも連撃モーションかよ! このぅ……頭来た」グヌヌ・・・


黒夜のHPは残り僅か。これなら一度撃破出来るだろう。


黒夜「だったら……逃げ回ってりゃ有線武器が勝手に何とかしてくれる!」ガチャガチャ・・・

香焼「なら追い駆けるまで」タンッ・・・


再び距離を取る黒夜。反して距離を詰める僕。
お互い直線武器に当たらぬ様、変則的な動きをしているが有線武器に追われている僕の方が大幅に移動している。
尤も、一発当てれば撃破可能なこの状況で……不利なのは彼女の方だった。


香焼「―――そこっ」タンッ

黒夜「にょわっ!?」ドカーン・・・

香焼「一回撃破っと」フゥ・・・

黒夜「うぐぅ……もう墜ちねぇぞ」ギリギリ・・・


復活後、一切此方には近付かずインコムと有線ハンドを飛ばしてくる黒夜。何とか近付こうとするのだが、逃げられる。
結局、偶に近付いてダメージを与えられるものの、基本は此方がインコムでチマチマ削られて一進一退の状況になっていた。

一旦此処まで。起きたら再開。


安価! 勝者は香焼と黒夜どっち!?



>>234



因みに質問受けます。特に『VS.』の展開についてとか、もし参戦したらという独自妄想なんで。
あ、興味ある方はシルヴァ・バレトとアマクサについてググって調べてみてね。

こんばんわ。ボチボチ投下しやす。

なんやかんやで数分後……―――


黒夜「ぐっ! こっちくんな!」ガチャガチャ・・・

香焼「……ほい」タンッ!

黒夜「うぎゃっ!?」バンッ!


―――爆音。そして、戦闘終了。


香焼「自分の勝ちっすね」フフッ

黒夜「畜っ生!」フシャー!


ラストは時間切れを狙って逃げ回っていた黒夜だが、オーバーラインまで追いつめればコッチのもの。
インコムと有線式ハンドを避けて近接格闘のパターンで圧倒出来た。

悔しそうに立ち上がった黒夜はウギギと僕を睨みつけ、踵を翻そうとした。


香焼「あれ? どうしたの?」ニヤニヤ・・・

黒夜「帰る!」フンッ!

香焼「はいはい。でも、その前に」ニヤリ・・・

黒夜「うっ」タラー・・・


約束は約束だ。


黒夜「あ、あのなぁ」ダラダラ・・・

香焼「うん」ニコニコッ

黒夜「……チッ」ギリリ・・・


大見栄切った以上、彼女も逃げはしまい。
とりあえず、後ろで順番待ちをしている人も居たので僕も立ち上がり彼女の方へ向かった。


香焼「まぁ、下に降りよっか」フフッ

黒夜「ぐっ……この野郎」イライラ・・・

香焼「さっきの約束は外出てから決めるよ」テクテク・・・

黒夜「こいつ……覚えてろ」チッ・・・


今にも蹴りが飛んできそうだったが、周りの目があってか、彼女も自重してくれた。


黒夜「た、偶々だ! 機体の相性悪かったんだっつの。次やったら勝つ!」フンッ!

香焼「はいはい。じゃあもう1ゲームする? 今度は対等になるようお互いジム辺りで」ニヤッ・・・

黒夜「じ、ジムだと」タラー・・・


特徴も何も無い機体で勝負した場合、勝敗はやり込みの具合で決まる。
インコムやらビットに頼りっ放しでライフルやら近接等、基本操作が苦手そうな黒夜では、
五和と浦上に徹底指導された僕には勝てっこないだろう。


黒夜「じゃあ、他のゲームで!」ウギギ・・・

香焼「ははは。負けず嫌いっすね」ポリポリ・・・

黒夜「うっせ! 勝負しろ! 私が勝つまで!」ウニャー!


いい性格してるよ。そういう諦めが悪い所、最愛そっくりだ。

でもまぁ……此方にも言い分がある。


香焼「別に良いけど、自分はこれ以上お金出さないっすよ」チラッ

黒夜「は?」ジトー・・・

香焼「黒夜、小銭持ってるの?」ジー・・・

黒夜「」チーン・・・


貴女マネーカードしか持ってないでしょう。正直、これ以上奢るの厳しいです。


黒夜「……ケチ」ムスー・・・

香焼「ケチじゃない。この前から合わせてどれだけ集る気っすか」ハァ・・・

黒夜「……くそっ」テクテク・・・


意気消沈。ドヨーンという効果音が目に見えそうな具合で階段へ向かう黒夜。被害者僕の筈なのに、なんか申し訳無く感じる。
何とも言えない雰囲気のまま、1階に降りる。調子狂うなぁ。


香焼「えっと、黒夜」チラッ・・・

黒夜「……んだよ」テクテク・・・

香焼「あー……その」ポリポリ・・・

黒夜「何でございますか何なりとご命令下さいご主人様」ジトー・・・


開き直りやがった。


黒夜「私に命令してぇんだろゲスい事してぇんだろエロい事してぇんだろ!? 同人誌みたいに! 安価みたいに!!」ギロリ・・・

香焼「何言ってんのこの人!」タラー・・・

黒夜「ふんっ……まぁでも、お前はそっち(ホモ)だから私(女)にゃ興味無ぇか」テクテク・・・

香焼「意味分かんないっす」ハァ・・・


ギクシャクしながらゲーセンを出る。いつの間にか空が茜色に変わっていた。
ふと、彼女が自動ドアの辺りで立ち止まった。何を見ているのかと思いきや……店の外にあるガシャポンだった。


黒夜「……、」ジー・・・

香焼「どうしたんすか?」チラッ・・・


何を見詰めているのかと思いきや、最近女子に流行りの『キルぬこー』のガシャポンだった。
血塗れ包帯姿のデフォルメにゃんこがキモ可愛いとかで人気だとか。浦上も携帯のストラップとしてブら下げてたっけ。


香焼「欲しいの?」チラッ・・・

黒夜「……何でもねぇよ」フンッ

香焼「ふーん」ジー・・・

黒夜「……行くぞ」スタッ・・・


何だかんだいっても12,3歳の女の子って訳か。
そういえば猫が割と好きとか言ってたし、ファッションを見るにパンク系という事もあってか、このマスコットは弩ストライクなのかも。


香焼「ちょっと待って」スッ・・・チャリン・・・

黒夜「……は?」ピタッ・・・


我ながら甘いなぁと感じる。

何か言おうとする黒夜を後目に、有無を言わさずレバーを回した。


香焼「よいしょ」ガタンッ・・・コロン・・・

黒夜「おま―――」

香焼「んー……これ、似た様なストラップ持ってるし……もう一回」ガチャン・・・

黒夜「―――え、な……ぃ」キョトン・・・

香焼「あー、これなら良いかな。缶バッチ」コロンッ・・・


2回分。


香焼「うーん。このストラップ如何しよう。要らないけど、捨てるの勿体無いし」チラッ・・・

黒夜「……お前」ジトー・・・

香焼「ふふっ。どうぞ」スッ・・・


我ながら下手な演技だ。黒夜は無言で手を伸ばし……先日のジュースの時の様に受け取った。


黒夜「……馬鹿じゃねぇの」フンッ

香焼「あはは。素直にありがとうは言ってくれないんだね」フフッ

黒夜「……ばか」ムゥ・・・


歳より幼く見える程に、子供染みた表情。ああ、そうか……この子もやっぱり。


黒夜「……、」ギュッ・・・


ストラップが入ったままのガシャポンのケースを強く握るその小さな手が、やっと……『救い』を求める手に見えた。


香焼「ねぇ黒夜」チラッ・・・

黒夜「……行くぞ」テクテク・・・

香焼「うん」コクッ・・・


何処に行くかは分からない。だけど引き続き、この『子供らしくない子供』の後を追う事にした。


香焼(……あ、何か忘れてる様な)チラッ・・・


無意識に取り出した缶バッチの黒猫を見詰め、何かを思い出そうとするが……何だろう。とりま、今は彼女を追う事が先決か。




 ~~~~~~~~~~~~~~~~一方、その頃、とある公園(イカれ自販機在中)~~~~~~~~~~~~~~~~~




もあい「―――……にゃぅ」トボトボ・・・ア!ゴシュジンサマ!

絹旗「―――超遅くなってしまいました……あ! も、もあい! 香焼は何処に!?」アタフタ・・・

もあい「……みゃ」スリスリ・・・イヤードコデショー・・・

絹旗「や、やっぱりあの超アバズレが香焼を拉致ったんですね!?」ダラダラ・・・

もあい「なぅ」ヒョイッ・・・コクッ

絹旗「どどどどうしましょう、香焼が超酷い事されちゃいます! 同人誌みたいに! 安価みたいに! だ、誰かに助けて貰わないと!」アワワワ・・・

もあい「……にゃー」アワテスギーハナシコジレルー!

  ―――とある休日、PM05:00、学園都市第7学区、郊外・・・香焼side・・・





小学生くらいの子供達が寮へ帰り始める中、特に何を話す訳でもなくトコトコ進む僕達。
彼女に行く宛てがあるのかは分からない。もしかしたら自然に別れても、もう何も言わないかもしれない。

しかし、何故か、彼女から離れられない自分が居た。


黒夜「……なぁ」ボソッ

香焼「うん」テクテク・・・


お互い顔を合わせない。


黒夜「何でついてくるんだ」テクテク・・・

香焼「何でって……ついてこいって言ったのは誰かな」ハハハ・・・

黒夜「……律義なこって」フンッ


やはり、もう奴隷扱いするつもりはないのだろう。


黒夜「命令」チラッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「負けた方が言う事聞くってヤツ。忘れたのか?」テクテク・・・

香焼「あー……そういえば」ポリポリ・・・

黒夜「抜けてんな。もう『奴隷扱い』すんなって言えば終わりだぞ」ハッ・・・

香焼「確かにそうだけど……でもそしたら『秘密』ばらされるかもしれないでしょ」テクテク・・・

黒夜「……、」フム・・・


最早そんな卑怯な真似はしないと思うが、気が変わったとか言ってベラベラ喋られても厄介だ。


黒夜「そうだな……そうかもな」フンッ・・・


少々不機嫌な様子で歩足を速める黒夜。一体何処に行きたいのだろう。


黒夜「別に、行きたい場所なんざねぇさ」スタスタ・・・

香焼「そっか」テクテク・・・

黒夜「それよか、お前こそ帰らなくて良いのか? きっと絹旗のヤツ、お前の事探し回ってんぞ」スタスタ・・・

香焼「多分、大丈夫かな」コクッ・・・

黒夜「嘘吐け。さっきから携帯鳴ってっけど、絶対ぇ絹旗だろ」フンッ


最愛には申し訳ないが、先程から無視を決め込んでる。
もし電話に出たら出たで、黒夜がちょっかい出し兼ねないだろう。兎に角、今は黒夜に付いて回りたい。


黒夜「邪魔しねぇよ。てかお前、意外と粘着質なのな。ストーカー気質アリか?」ジトー・・・

香焼「何だよ、いきなり」ムゥ・・・

黒夜「……んでもねぇよ」チッ・・・

香焼「変なの」テクテク・・・


また暫く無言が続く。しかし、最初の頃に比べ、そんなに居心地の悪いモノではなくなっていた。

北上する事、数分後……商店街を外れマンション街にポツリとコンビニが見えた。
正直、かなり歩いたので休憩したい所なのだが。


黒夜「……何か買うか」チラッ・・・

香焼「え。あ、うん」コクッ・・・


此方の意を察してくれたのか多くは言わずに店内に向かった黒夜。意外と気配りが出来る。
バイトの気だるい挨拶に迎えられ、適当にお茶を選び、レジに持って行こうとしたら商品を黒夜に奪われた。今度こそ彼女が奢るつもりらしい。
プライベートブランドの緑茶とブラック缶2本をマネーカードで支払いコンビニを出た黒夜は、特に何も言わず店舗前のベンチに腰かけた。
とりあえず一言感謝の意を伝え、横に座る。


香焼・黒夜「「……、」」ボー・・・


虚ろな目で缶コーヒーを啜る黒夜。何を考えているやら。


黒夜「……お前さ」チラッ・・・

香焼「ん」キュポッ・・・ゴクゴク・・・

黒夜「アイツの何処が好きなんだ?」ジー・・・

香焼「ぶふぁ!? な、何を?!」ダラダラ・・・


いきなり訳の分からない事を。


香焼「てか、アイツって誰っすか」フキフキ・・・

黒夜「決まってんだろ……幻想殺し」ジー・・・

香焼「うぇ!」///


意味不明。何故いきなり上条さんが。


黒夜「今更取り繕うのか? さっきの話の続きだろ」フンッ・・・

香焼「あ、うん。忘れてなかったのね」ポリポリ・・・

黒夜「……で?」ジー・・・


要領を得ない質問な気もする。というか『好き』って。


香焼「好きというか、尊敬に近いっす」コクッ・・・

黒夜「尊敬ねぇ。あんだけ(イチャイチャ)話してたのに?」ジー・・・

香焼「それはその……確かに当たりを気にせずする(裏側の)話では無かったかも。現に見られちゃったし」タラー・・・

黒夜「一応常識はあるんだな。まぁそれだけ(イチャイチャ)熱中するって事は、それだけの仲(バカップル)なんだろうけどよ」フンッ

香焼「……だったら良いな」ハハハ・・・///

黒夜「けっ。ノロケかよ」チッ・・・

香焼「は?」キョトン・・・

黒夜「なんでもねぇよ。あーブラックが甘ぇ」ジトー・・・


不機嫌そうにコーヒーを啜る黒夜。


黒夜「んで……何処が好きなんだ? まぁ尊敬ってんなら尊敬でも良いけどよ」ジー・・・

香焼「含みのある言い方っすね……まぁ、その、色々『恩人』だから。あとは全てにおいて『折れない』所かな」コクッ・・・


今度は素直に納得する黒夜。やはり彼女も上条さんの魅力は理解しているのか。

何やら勝手に自己解決(満足?)したらしい彼女は、これ以上何も言わなかった。
では此方からも質問させて貰う。


黒夜「ん?」ゴクゴク・・・

香焼「答えたくなかったら別に良いんだけど……黒夜が暗部に入ったのは最近なんでしょ」チラッ・・・

黒夜「まぁ最近っちゃ最近だな。尤も『本格的』にはって意味ではだけど」ボー・・・

香焼「WWⅢ以前も、危ない事してたの?」ジー・・・

黒夜「危ない事っつーかさ。私自身が『危ないモノ』だったからよ」ハハハ


自身をモノ扱いする彼女。


黒夜「兎に角、私を制御できる科学者が居なかったんだわ。常に暴走状態(ビーストモード)ってヤツ?」フフッ

香焼「……乱雑解放(ポルターガイスト)?」タラー・・・

黒夜「違ぇよ。能力の制御じゃねぇ。『思考』の制御さ」フンッ


例の『暗闇の五月計画』というヤツか。


香焼「でも、最愛は正常なんでしょ。黒夜だって問題無い様に思えるけど」キョトン・・・

黒夜「だから当時はだっつの……まぁ認めたかねぇが、暴走したんだよ。凶暴化ってヤツ」ジー・・・

香焼「何、それ」ポカーン・・・

黒夜「さぁ。んな時の事なんざ覚えてねぇ。理性ブッ飛んでたからな」ケッ・・・


じゃあ彼女は悪くない。悪いのは科学者(大人)だ。そいつらが報いを受けただけ。


黒夜「へぇ……お前、意外と冷淡だな」フーン・・・

香焼「だって如何聞いても黒夜悪くないじゃん。寧ろ被害者だと思う。自業自得」コクッ・・・


根本が十字教思想の僕らからしてみれば、生命倫理を冒涜し、利己主義に奔った末路と言えよう。
シェリーさんや、ローマの前方のヴェントの怒りも理解できる。


黒夜「別に悲劇のヒロイン気取る気は毛頭無ぇよ……ま、ブッ殺しちまったけど一応感謝してんだぜ。あの科学者(馬鹿)共には」ハハハ

香焼「現状?」ジー・・・

黒夜「そゆ事。『優等生』っ言われてきた絹旗ちゃんよりも、ずっと強くなったからなぁ。暗部で働くのは便利この上ない」ニヒヒッ


劣等感から優越感に。人間であれば誰しも喜ぶもの……彼女の場合は歪んでいるが、思考の問題だろう。止むを得まい。


香焼「でも、その……断らなかったの?」チラッ・・・

黒夜「実験を? ハッ……10にも満たねぇ『置き去り(チャイルドエラー)』のガキは、研究者共からしてみりゃモルモットさ」ハハハ

黒夜「親に捨てられ夢も希望も無く、胸の真ん中にポッカリ穴空いたガキに、まともな思考が出来ると思うか?」フンッ

香焼「必要とされるだけ、マシだと?」ジトー・・・

黒夜「それが『救い』さ」グググ・・・


そんな『救い』は認めない。


黒夜「脳味噌弄られたり劇薬飲まされたり注射されたり身体中に管ブッ刺されたり、あまつさえ『人』としての機能を捥がれても」ジー・・・

黒夜「それでも『君の力が必要だ』なんて甘く囁かれたら……普通のガキなら目ぇキラキラさせて大人に縋るわ」コクッ・・・


間違っている。間違っているけど……これが現実。これが、学園都市の研究者(大人)なのか。

勿論、月詠さんや黄泉川さん、鉄装さんの様な人格者も居る。だが、この街ではそういう大人がマイノリティな気がしてならない。


黒夜「とりま、最初の質問に答えっけど……目立った行動はしてなかったさ。大人しく檻の中に居た」フンッ

香焼「檻?」キョトン・・・

黒夜「AIMジャマーとCD(キャパシティダウン)、ガンガン効かせた部屋ん中だ。ま、御蔭で色々制御出来る様になった」ゴクゴク・・・


何から何まで非人道的だ。彼女も彼女で割り切ってるのがいけないのだろうけど。
この時、僕がどんな表情をしていたかは分からない。ただ彼女にはこれが滑稽に見えたのだろう。意地の悪い笑みを浮かべ、愉しそうに囁いた。


黒夜「絹旗ちゃんも私と似た様な事されてんぜ。いやぁ私より優秀だったから、もしかして私より酷ぇ事されてたかもしんねぇなぁ」ニヤニヤ・・・

香焼「な……っ……べ、別に、良いよ。言わなくて」ブルッ・・・


黒夜に対する怒りより、寒気が奔った。背筋に刃物を突き付けられた様な悪寒。


黒夜「例えばぁ、全身の表面剥がして皮膚呼吸でCO2じゃなくN2出せる様にしたり、穴という穴から液体窒素流し込んでみた―――」

香焼「や、止めてよ!」ガタッ・・・

黒夜「―――り……ふーん。想像しちゃった? へぇ……やっぱ、特別なのな。アイツ」ニヤニヤ・・・

香焼「違う……そういう事じゃない。兎に角止めて」ブルッ・・・

黒夜「はいはい」フフッ


オゾマシイ……そんな事考えたくない。やっぱり彼女は歪んでる。人の不幸が蜜の味なのか。


黒夜「ま、お前が想像した以上の事されてっかもしんねぇ。此処はそういう街だ。分かってんだろ?」ゴクゴク・・・

香焼「分かってても、許容出来ないっす」フルフル・・・

黒夜「潔癖症だな。いや、それが普通か。例え『裏』の人間でも容認出来無ぇ事もあらぁ」ハハッ

香焼「……もう止めよう」ゴクゴク・・・


嫌な汗が出た。異様に喉が渇く。精神衛生上、していい話ではない。
それから暫く、彼女は隣でニヤニヤしていたが、気持ち悪い想像が駆け巡って僕は気が気ではなかった。


黒夜「面白いヤツ。やっぱ同業とは思えねぇ」ククク・・・

香焼「……今の話聞いて、割り切れる方が異常っすよ」タラー・・・

黒夜「そうかそうか。そんだけ絹旗ちゃんのショックがデカかったんだな」フフフ・・・

香焼「最愛はだけじゃ無いっす……黒夜の話も含め全部だよ」グッ・・・

黒夜「さいですか。お優しいこって。まぁこれ以上は虐めねぇさ」ニヤニヤ・・・


ホント、スイッチが入るとトコトン悪人面になる。勘弁して欲しい。
兎に角、嫌な話を忘れよう。何か明るい話でも……と頭を切り替えた時―――





????「―――ん? おやおやぁ……あーっ! やっぱクロにゃんだぁーっ!!」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「は……な! ま、ちょ、うげぇっ!!?」ギョッ!





―――遠くから獲物を見つけたジャッカルの様に満面の笑みを浮かべ、電光石火の如く猛ダッシュしてくる女性が見えた。

今回は此処までです。次回はやっとあの人登場。さて、誰かな?

とりあえず例の如く、質問意見感想罵倒等々受け付けます。そんでは! ノシ”

数十メートル先から奇声なのか歓喜の声なのか、よく分からない大声を上げて此方に猪突猛進してくる女性。
それを見るや否や、黒夜は立ち上がり僕の事もお構い無しに逃げ去ろうとした。

しかし……もう遅い。


????「ボオオオオオォルテッカアアアアァ!!」ビリビリビリ――z__ッ!

黒夜「ぴかちゅあっ!!」ドゲフゥ!!

香焼「く、黒夜っ!?」ギョッ!


電気ネズミ宜しく、光の速さで体当たりブチ咬ます女性。
吐血の如くブラックコーヒーを吹き出しながら、黒夜はベンチ脇に押し倒された。


????「ふふふふふ……ミサカから逃げようったって一億と二千年早いよーぅ」ガッシリ!

黒夜「ぐ、ぉ……お前、や、やめろ!」ジタバタ・・・

????「イッヒッヒッヒッ! いやぁ此処で会ったが百年目ってヤツ? 最近中々黒にゃんに会えなくて色々溜まってたのよねー」ニヤニヤ・・・

黒夜「ひぃ!」ダラダラ・・・


咋(あからさま)にビビってる黒夜。誰だ、この人。


????「さぁて……如何してくれようか」ワキワキ・・・

黒夜「ちょ、待っ! お、おい! 助けろ!」バッ!

香焼「え、あ、はい?」キョトン・・・


助けろと言われても余りに唐突な事態過ぎて、現状に付いていけないんだけど。
ポカンと呆気に取られている僕に気付いたのか、スウェットを着た目付きの悪い女性は小首を傾げ、黒夜に尋ねた。


????「何あれ?」クイッ

黒夜「うっせ! まず退けよ、お前!」ジタバタ・・・

香焼「えぇっと……初めまして」ペコッ

????「あー……うん。どーも」コクッ

黒夜「だから、私に跨りながら平然と挨拶交してんじゃねぇよボケっ!」フシャー!


ぬくりと立ち上がり、僕の全身をジロジロと見詰め……ポツリ一言。


????「彼氏?」チラッ

黒夜「違ぇよアホっ!」ウニャー!

????「酷い! ミサカというものがありながら……これはもう調教する外無いよね!」ギランッ!

黒夜「だから話聞けぃ!!」ワーワー!


傍から見てると面白いが、黒夜が必死過ぎて憐れになってきた。仕方ない、助けてやろう。


香焼「自分は彼氏じゃないっすよ。黒夜の友達で香焼っていいます」ペコッ

????「あ、御丁寧にどうも。ミサカは黒夜ちゃんのご主人さまで番外個体(ミサカワースト)と……って、友達っ!?」ポカーン・・・

香焼「え、あ、はい。(『ミサカ』ワースト? 妹達の一人?)」コクッ

番外個体「う、嘘……コミュ障の黒夜にミサカ以外の友達なんて出来る訳無いじゃん!」バッ!

黒夜「誰がコミュ障じゃ……ダチじゃねぇよ。連れだ、連れ。あと勝手にテメェと私をダチにすんなし」フンッ


そういえば先程ゲーセンで黄泉川さんが『ワースト』が如何こう言ってた気がする。
成程、きっと彼女の事だろう。何となく仲が良さそうだ。

確かに、よくよく見ると御坂さんに似ている。言っちゃ難だが機嫌が悪い時の御坂さん。
ただ、本人や他の妹達に比べ少々大人びてる感じがする……まぁ家庭の事情で色々あるのだろう。
機会があれば、海原さんか御坂蛇(プロスネーク:17600号)さんに聞いてみよう。


番外個体「いやぁしっかし、まさか黒にゃんに会えるとは思わなんだ。きっとミサカの日頃の行いが良い御蔭ね!」ニッコリ

黒夜「じゃあ私は日頃の行いが悪いんだろうな……いつもアオザイだから目立って見付け易いのに、何で今日に限ってスウェットで」ハァ・・・

番外個体「んもーツンデレなんだからー。そりゃ毎日毎日民族衣装なんて着てられませんよーだ」ニヤニヤ・・・ワキワキ・・・

黒夜「ちょ、な、寄るな! 近付くな! ドたま穴開けっぞ!」アタフタ・・・

番外個体「さぁて、どうしようかなぁ……あんな事やこんな事を……ぎゃはっ☆」ワキワキ・・・

黒夜「う、撃つぞ! それ以上こっち来たらブッ放すかんな!」ブンブンッ


黒夜でもあそこまで必死になる事があるのか。両手をワーストさんに向けて威嚇している。
そして、先程まで散々からかってた僕に対してすら、縋る様な目で助けを求めていた。


香焼「えっと、嫌がってますけど」タラー・・・

番外個体「いやー、嫌よ嫌よも好きの内ってねぇ。この子、実はマゾだからミサカの『可愛がり』喜んでるのよ」ビリビリ・・・

黒夜「誰がマゾじゃ! ちょ、ホント、止めろ!」スッ・・・

番外個体「ほーれ。超電磁バンザーイ」クイッ!

黒夜「こんばとにゃーっ?!」バンザーイ!


マヌケな掛け声と共に、黒夜が万歳した。何事?


番外個体「キヒヒッ! サイボーグの腕が仇となったねー。嫌が応にも金具入っちゃってるでしょん?」ビリビリ・・・

香焼「あー、なるほど。磁界操作っすか」ヘー

黒夜「冷静に納得してんじゃねぇよボケっ! 頼むから助けろ……このままじゃ何されるか分からん!」ガクブル・・・

番外個体「んふふっ♪ 黒にゃんは既に、マグ●ートーを前にしたウルヴァ○ン状態だよん。あ、私がマグニー◎ーね」ニヤニヤ・・・

黒夜「全身骨抜き!? 嫌あああぁ! 助けろおおおぉ!」ジタバタ・・・


そんな大袈裟な。精々こちょがす程度でしょう。とりあえず、生温かい目で◎ムとジェ○ー的なやり取りを眺めてよう。


番外個体「そんじゃあ……今日はこの黒ぶち猫耳をー」スッ・・・

黒夜「どっから出した!? い、嫌! 止めて!」ジタバタ・・・


ギャーギャー騒ぐも虚しく、強制的に猫耳装着。


番外個体「ぎゃはははっ! 似合ってんぜー。どうよ、坊や」ウリウリ!

香焼「え。あ、はい。可愛いっすね」ハハハ・・・

黒夜「おま、後で殺すからにゃ……にゃ?!」ギョッ・・・


『にゃ』って……そこまで役作りしなくても。


番外個体「おー。猫耳追加オプションの『口調がぬこ化』機能は働くみたいだね」アッハッハッ

香焼「何その無駄オプション!? 誰得っすか? ってか何の為に誰が作ったの?」タラー・・・

黒夜「羞恥心で死にゃる……いっそ殺せ」ニャ・・・

番外個体「ぷふー。真っ赤っかー。いやぁ頭イカれた科学者達も、少しは良い仕事するねぇ。皆死んでっけど」ギャハッ

黒夜「殺して正解だったにゃ……にゃだ。この語尾」ウニャ・・・


赤面涙目の黒夜。こうまで一方的だと可哀想になってくるな……可愛いけど。

とりあえず助け舟を出しますか。


香焼「あー……自分らそろそろ行かなきゃなんないんすけど」ポリポリ・・・

番外個体「じゃあ次は何にしようかなぁ。色々試したいパーツ沢山あるのよねー」ゴチャゴチャ・・・

黒夜「何で常に持ち歩いてんだにゃ! てかどっから出したにょ?!」ダラダラ・・・


聞いてないし。


番外個体「この肉球パーツっての面白そうじゃね? 取り付けてみよー」グイッ・・・

黒夜「おい馬鹿止めろ!」ガクブル・・・ウニャー!

香焼「あのー、ワーストさーん」オーイ・・・

番外個体「んー……あれ? これどうやって付けるの? あ、そっか……手首から先で差し替えか」ガシッ

黒夜「ちょ!」ギョッ・・・

香焼「え」キョトン・・・


愕然。この人は何の躊躇いもなく……黒夜の手を『捥ぎ』取った。


黒夜「いっっっっー――――――っっっってええええええええええぇ!!」ウニャアアアアァ!!

香焼「ちょ、く、黒夜!?」アタフタ・・・

番外個体「あ、いっけねー。痛覚遮断すんの忘れてた」アハハ・・・

香焼「わ、ワーストさん!!」ガシッ!


余りにも非常識な行動に思わず腕を掴んでしまった。というか常識非常識のレベルじゃない。最早猟奇的だろ。


番外個体「あーダイジョブ大丈夫。この子の手、義肢だから。あれ? 知らなかった?」チラッ

香焼「そういう問題じゃないっすよ! 何考えてるんすか!」ギロッ・・・

番外個体「うーん……愉しい事?」ハハハッ


駄目だ、この人も歪んでる。


黒夜「痛い痛い痛い痛い痛ああああぁい! うにゃああああぁん!」ニャー・・・

番外個体「ありゃりゃ、泣いちゃった。これだから痛みに慣れてないお子ちゃまは困る」ハァ・・・

香焼「御託はいいから! 兎に角、急いで戻して下さい!」アタフタ・・・

番外個体「はいはい。えーっと―――」カチャカチャ・・・


にゃーにゃー泣き喚く黒夜。最早クールさもパンクさも無い。先程とは別人過ぎる。
まるで注射を嫌がる様な、ただただ普通の少女にしか見えない。

一寸後……手首から先が戻った。しかし。


番外個体「―――……おしっ。OKかな」カチッ

黒夜「うぅ……ひっく……みゃ……ぅぅ」ポロポロ・・・

香焼「……、」タラー・・・


何故、猫の手?

未だ啜り泣く黒夜をニヤニヤ眺めながら、クスクス微笑みポツりと告げた。


番外個体「あーまちがえたー(棒)」ニヤリ・・・

香焼「ワーストさん!」タラー・・・

黒夜「うにゃぅ……っ……お前……殺すっ」グッ!

香焼「っ!」ギョッ・・・


明確な殺気。
拙い。黒夜がキレた。掌(肉球)をワーストさんに向け―――


香焼「黒夜!」バッ!

黒夜「マジで死にェ!」フシャー!

番外個体「……、」ジー・・・


―――ぽふんっ。


香焼・黒夜「「…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」」キョトン・・・

番外個体「……ぷっ」プルプル・・・


窒素の槍が、出ない。その代わり……マシュマロの様に凄く柔らかそうな『何か』がワーストさんに当たった。


番外個体「くっ……ギャハハハハハハハハハッ! ぽ、『ぽふんっ』だって! 『ぽふんっ』て!」ゲラゲラゲラゲラッ!

黒夜「て、テメェ……何しやがったァ!?」ニャー!!

番外個体「うーひっひっひっ! っべー! マジウケるっ……あー可笑しい。だーっははははっ!」プルプル・・・

黒夜「ッ~~~~~っ!!」ポカポカポカポカッ!


笑い転げるワーストさんを肉球で只管(ひたすら)乱打する黒夜。とても痛くなさそう。
正直、何が何やら訳ワカメ。ふと、ワーストさんのポケットから紙が一枚落ちたので拾い上げてみる……取扱説明書だ。


香焼「『肉球パーツ』……被検体が暴走した場合、このパーツを取り付ける事によって事態の鎮火を図る……何これ」タラー・・・

番外個体「あひゃひゃひゃ! と、とりあえず、爆発する槍出す代わりに……ぷふっ……やんわか肉球を射出するんでしょ」プルプル・・・

黒夜「マジ……ざけンにゃよ」ウギギギ・・・///


もう猫のコスプレにしか見えない。これで『暗部の人間です』と言っても誰も信用しないだろう。


番外個体「あー面白い。これだから黒にゃんはネタキャラとして最高なのよ。ミサカマジ満足」ウィヒヒッ!

黒夜「っせェ……ホント、戻ったら殺すかンなァ」ギロリ・・・///


黒夜さん……残念ながら睨んでも怖くないです。


黒夜「黙りゃ!」ゲシッ!!

香焼「あ痛っ! な、何で蹴るのさ!」ウワッ

黒夜「ニヤニヤしてンじゃねェよ……もぅ、やだ」ウニャァ・・・


明らかにテンションがガタ落ち。興奮冷めてダウナーなってらっしゃる。

本気で可哀想なので、そろそろ戻して下さい。
そう頼もうとしたのだが……ワーストさんはまだ何かをしでかそうとしてた。


番外個体「そんじゃあ次はこの尻尾をー」スッ・・・

香焼「ま、まだ虐める気っすか!?」ギョッ・・・

番外個体「え? 虐めじゃないよ。ミサカと黒にゃんは遊んでるだけ」ハハハ


虐めっ子は大抵そう言うんです。


黒夜「もぅ、勘弁してよ」ミー・・・

番外個体「これって……尻に刺すのかな? それとも黒にゃん、尾骶骨にジョイント付いてる?」チラッ

黒夜「ひぃ」ガタガタ・・・

番外個体「という訳でミサカがヒン剥いて調べちゃおー! さぁ、お尻出しなさーい」ワーイ!

黒夜「い、いやぁ!!」バッ!

香焼「わっ!」ドンッ


耐えきれなくなったのか、僕の後ろに隠れガタガタ震える黒夜。全く以て人前での最愛みたいだ。


番外個体「ちょっとー、黒夜ちゃーん」ブーブー・・・

香焼「はぁ……そろそろ本気で嫌がってますから止めましょう」ジー・・・

黒夜「……、」ウニャァ・・・

番外個体「何だよ」ジトー・・・


玩具を取り上げられた様な目で此方を睨むワーストさん。


番外個体「ふーん。嫌だって言ったら?」ジー・・・

香焼「止めます……まだ黒夜の事、無理矢理玩具にする気っすか?」チラッ

番外個体「だとしたら?」ニヤリ・・・

香焼「質問に質問で返されても困るっす。禅問答じゃないんすから。兎に角、もう止めて下さい」ペコッ

番外個体「……ケッ。正義の味方気取りかよ」ジトー・・・


面白くなさそうにガンくれるワーストさん。
元々の目付きと、カオリ姉さん程ではないが女性にしては身長が高い所為か、威圧感が大きかった。

暫時無言で睨み合う。黒夜は未だにワーストさんとは顔を合わせず、僕の後ろで震えたまま。


番外個体「クッソ生意気なチビだなぁ。調子乗らないでくれる? ミサカ怒らすと怖いよ」ジー・・・

香焼「脅しっすか? これ以上やるなら黄泉川さんに言います」ジトー・・・

番外個体「うっ……そ、それは困る」タラー・・・

香焼「だったら止めて下さい。自分らはもう行くので邪魔しないで」コクッ

黒夜「……、」チラッ・・・

番外個体「……チッ」ジトー・・・

香焼「失礼します。行くよ、黒夜」グイッ・・・

黒夜「あ……うん」テクテク・・・


険悪な雰囲気だが、これ以上構ってられない。
黒夜の『両手』を拾い、彼女の手(肉球)を引いて彼女の脇を抜ける。

・訂正:>>254・・・彼女の手(肉球)を引いて彼女の脇を抜ける。 ⇒ 彼女の手(肉球)を引いてワーストさんの脇を抜ける。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


しかし、その刹那。


番外個体「待てよ」ガシッ

香焼「っ」ドキッ・・・


肩を掴まれた。五和並に強い握力。


香焼「何すか。通して下さい。もう満足したでしょう」ジー・・・

番外個体「確かに、満足したかもしれない」ジトー・・・

香焼「だったら」クイッ・・・

番外個体「でも、ミサカはねぇ……嘗められるのが大っ嫌いなんだ。特に、お前みたいなチビで英雄気取りのガキんちょだと尚更」グッ・・・


離してくれない。困った。喧嘩する気はないのに。
黒夜は僕の後ろで如何して良いか分からない様な顔をしている。


香焼「殴って気が済むならどうぞ」ジー・・・

番外個体「そういう偽善チックなのもマジ腹立つんだけど。ミサカの性格的に超NGだわ」グイッ・・・

香焼「っ」ウッ・・・

黒夜「ちょ、止めろよ」アタフタ・・・ウニャー・・・


胸倉を掴まれた。本気で殴ってきそうだ……まぁ挑発染みた事を言ってしまった自分にも非はある。仕方ない。


番外個体「何だよ、その目……気に食わない。気持ち悪い」ジトー・・・

香焼「……、」ジー・・・

番外個体「……チッ」グググッ・・・

黒夜「おい、止めろって!」オドオド・・・ニャウ!


右手で抜き手を取るワーストさん。中段突きか……我慢しよう。
歯を食いしばって腹部への衝撃を覚悟した―――瞬間。


????「阿呆ンだら」ゴツンッ!

番外個体「いぃ~~~~~~~~~~~~~~~っつぅ~~~~~~~~~~~~っ!!」ジーン・・・

香焼・黒夜「「えっ」」ギョッ・・・


ワーストさんの後方から一撃、チョップが下る。その場でしゃがみ込み悶絶する彼女の後ろには……見知った顔が2人。


一方通行「何店の前でビービーギャーギャー騒いでやがンですか? 恥ずかしいったらありゃしねェ」ジトー・・・

打ち止め「んもー。番外個体はいっつもいっつも問題行動ばっか起してー……ミサカはミサカは心底呆れてみたり」ハァ・・・

黒夜「にゃ……一方通行」タラー・・・

一方通行「ン……テメェはテメェで何とも愉快な恰好してやがンな」ハンッ

打ち止め「おー、クロにゃん可愛い! ってミサカはミサカは携帯取り出してパシャる準備をしてみたり!」スッ・・・

黒夜「や、止めてくれにゃ」アタフタ・・・


本気で泣きそうなので止めたげてよぅ。

今回は以上で。あ、『窒素肉球』のルビで良いの有ります? 募集しますw

それではまた次回! ノシ”

こんばんわ。今日こそボチボチ投下します。



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とりあえず険悪な雰囲気は解消。何事もなく帰れそうだ。
頭を抱えて蹲(うずくま)ってるワーストさんを捨て置き、謝礼を述べる。


香焼「ありがとうございます」ペコッ

一方通行「あ? テメェは……ン?」ジー・・・

打ち止め「クロにゃんの彼氏? ってミサカはミサカは興味津津に聞いてみる」キラキラ・・・

黒夜「違うっつの……何度目だ、このやり取り」ニャァ・・・


一応、二人とは面識がある。
一方通行さんとは淡希さんの家出の件で。 (すんどめ。第四話:21話参照)
打ち止めちゃんとはチャリティコンサートで……尤も、この時僕は『香(かおる)』だった。(すんどめ。第三話:20話参照)

一寸ばかし僕の顔を見詰めた一方通行さんはボソリと告げた。


一方通行「あァ思い出した。確かお前、結標のペットか」フム・・・

打ち止め「え? アワキンのペット?」キョトン・・・

香焼「違います、友達っす」ハァ・・・

一方通行「まァ何でも良いが」チラッ・・・

黒夜「にゃ、にゃんだよ」タラー・・・

一方通行「……ふーン」ジー・・・


先程から感嘆詞ばかりの第一位さん。ハッキリ言わない人だな。まぁ何を言いたいのかは想像出来るけど。


一方通行「オイ、ガキ。先に店ン中入って菓子とジュース選ンでろ」クイッ

打ち止め「ふぇ?」キョトン・・・

一方通行「今日は奮発してやる。700円分籠入れといて良いぞ」スッ・・・

打ち止め「え!? いつもは400円までなのに!?」キランッ

一方通行「はいはい。はよ行け」シッシッ

打ち止め「うっひょい! 何かよく分からないけど今日は太っ腹ね! ってミサカはミサカは受け取った千円札を握りしめ店内突入ー!!」ウヒャー!

一方通行「700円までだ。それ以上買ったら明日のオヤツは黄泉川特製『炊飯器たくあン』オンリーだからな」ジトー・・・

打ち止め「分かってまーす。それじゃあミサカはミサカは『うまか棒』を1本×70回買う準備をしてみたり!」タタタタッ・・・


色々ツッコみたかったが我慢しよう。

しかし、あのくらいの年代が可愛い盛りだ。


一方通行「そう思える内が華だ。毎日アレに振り回されてっと嫌になる……さァて」チラッ・・・

黒夜「だから、にゃによ」ジー・・・

一方通行「なァに、コミュ障のテメェがツレと居るってェのが新鮮に思えてなァ。ダチなンざ浜面とコイツ(番外個体)だけかと思ってたぜ」ハンッ

黒夜「ふんっ。誰かさんに似ちまった御蔭でダチは居にぇえよ」ニャハハッ

一方通行「だろォな」ケケケッ

黒夜「あとコイツと浜面とソイツ(ワースト)が私のダチに見えんなら眼下行った方が良いにゃ」フンッ


何この口の悪い自虐兄妹。ぶっちゃけ、黒夜が『ぬこ語』使ってなかったらタダの罵り合いに聞こえていただろう。
さておき、先程から気になっていた事を黒夜が尋ねた。


黒夜「てか何でテメェがこんなとこに居るんにゃ」ジトー・・・

一方通行「そりゃコッチのセリフだ。何でウチ(ファミリーサイド)の近所ウロウロしてやがる」フンッ

黒夜「……別に私の勝手にゃろ」チッ・・・

香焼「いや、自分も何で此処まで来たのか知りたい」ジー・・・

黒夜「え」チラッ・・・タラー・・・


この様子じゃ、また何も考えずに歩いてたな。


黒夜「き、企業秘密にゃっつの!」フンッ

一方通行「あーはいはい。マジで偶々な」ハッ

黒夜「企業秘密っ!」フシャー!

番外個体「痛てて……んもぅ。ツンデレさんめ。ぬこ語で凄んでも可愛いだけだぞ♪」チラッ

一方通行「お前入っとややこしくなっからもうちょいヘコンでろ」ビシッ

番外個体「ふーちぇぃんっ!!」イデェ!


一見軽そうに見えるチョップなのだが、そんなに痛いのだろうか。例のベクトル操作ってヤツかな。
さておき、ノラリクラリと首を動かし、蚊帳の外で苦笑していた僕に視線を向ける一方通行さん。
先程の気だるそうな雰囲気から一転、低めのトーンで尋ねてきた。


一方通行「ンで……そっちの」チラッ・・・

香焼「え」ピタッ

一方通行「ダチじゃねェとなりゃ何だ」ジー・・・

香焼「はい?」キョトン・・・

一方通行「しらばっくれンのは勝手だが、オレが温厚な内にゲロっちまった方が見の為だぜ」ジー・・・


と言われても困る。

一応、僕は友達のつもりなのだけど。


一方通行「……、」チラッ・・・

黒夜「コッチ見んにゃし。ソイツが勝手に言ってるだけにゃ」フンッ・・・

一方通行「ふン。じゃあ何なンだ」ジトー・・・

黒夜「ただの……『連れ』だ」ケッ・・・


歯切れの悪い黒夜を疑う第一位さん。


一方通行「『タダの』ねェ……結標とお友達でテメェや土御門と仲良しって時点で『ただの』人間な筈無ェンだが」チラッ・・・

香焼「それは、その」タラー・・・

一方通行「加えて結標とタメ張れる程の力量。まさかとは思うがよォ―――」ジー・・・

黒夜「それは無い」キッパリ・・・


突然口を挟む黒夜。何が『それは無い』のだ?


黒夜「ソイツが『新入生』かって事だろ? そりゃ見当違いだ。もしかして『同業』なのかもしれないけど、仲間じゃねぇよ」ジー・・・

一方通行「―――……、」フーン・・・


成程。彼は僕が敵意ある者か如何か疑っている。


一方通行「じゃあ、何モンだ」ジー・・・

香焼「あー、敵意は無いっすよ。寧ろ仲良くしたいなぁって」アハハ・・・

一方通行「疑わしくは罰せよ、なンつゥ言葉もあるな」ジトー・・・

香焼「困ったなぁ」タラー・・・


本当にこのままでは何をされるか分からない。此処は、仕方あるまい。


香焼「とりあえず、同業者かもっていう件は否定しないっす。ただ」ジー・・・

一方通行「ン」ジトー・・・

香焼「自分は『上条さん』の味方っす。直接彼に聞いたって良い」ボソッ

一方通行「……そォか」スッ・・・

黒夜(やっぱコイツ、アイツの事を)ジー・・・


上条さんの味方と告げた瞬間、言葉から圧力が消える。何とか納得して貰えた様だ。


一方通行「なら、如何でも良い。悪ガキ同士仲良しごっこやってろ」クルッ・・・テクテク・・・

香焼「はぁ」ポリポリ・・・

黒夜「だから仲良しとかそんにゃんじゃねぇっつーの」ケッ・・・

一方通行「はいはい。精々痛い目見ねェ様にな……オイ、いつまで寝てンだ」ゲシッ

番外個体「痛っ! 自分でやっといてからにぃ。このサド男! シスコン! ロリコン! ミサコン!」グハッ

一方通行「だから喧しい。店ン前で大声上げンなボケ」ビシッ

番外個体「だうわっっ!!」ゴツンッ


馬鹿だ、この人。まるで学習してない。

頭を抱えて声にならない悲鳴を上げるワーストさんを後目に、黒夜が毒づく。


黒夜「ソイツのロリコンは認めるが、シスコンは止めろにゃ。私とソイツが兄妹みてぇじゃにぇか」ジトー・・・

一方通行「殺すぞ。あとミサコンって何だ、ミサコンって」ハァ・・・

黒夜「ミサコンはミサコンにゃ」フンッ


土御門曰く、『御坂美琴とその周りコンプレックス』だったか。上条さんや海原さん、白井さんもそれだとか。
さておき興が反れたのか、これ以上何も言わずコンビニも向かう一方通行さん。その後ろ姿に悪態吐きつつヨロヨロと立ち上がるワーストさん。


番外個体「ちぇっ。つまんねぇのー」チラッ

黒夜「っ……何にゃよ」タラー・・・

番外個体「別にぃ。ま、次はバレない様に上手くやるから楽しみにしてて♪ 路地裏とか公衆トイレとか」ニヤリ・・・

黒夜「死ねゲス女(おんにゃ)! あと早く猫耳(コレ)外せ!」フシャー!

番外個体「えー面白い(カワイイ)のにー」ブーブー

黒夜「良いから!」ンニャー!

番外個体「ふーんだ。自分で外せよ」ベー

黒夜「出来たらとっくにやってるにゃ! 肉球の所為でモノ上手く掴めねぇんだよ」シャー!


確かにその手じゃ日常生活に支障が出る。


番外個体「じゃあその坊主にやってもらいな」ケケッ

香焼・黒夜「「は?」」ピタッ・・・

番外個体「という訳でミサカはコンビニ入りまーす。バイバ~イ」テクテク・・・


逃げる様にこの場から立ち去ろうとするワーストさん。いや、それはおかしい。


香焼「ちょ、待って下さい」アタフタ・・・

番外個体「待たねぇよー。精々恥掻きなさーい」イッヒッヒッ

香焼「自分、外したり付けたりなんか出来ないっすよ」タラー・・・

番外個体「だーから、黒にゃん(本人)に文字通り『手取り足取り』教えて貰いな」フンッ

黒夜「んにゃっ!?」ギョッ・・・


とことん意地悪な人だ。


番外個体「あ、そうだ――」ピタッ

香焼・黒夜「「え」」チラッ

番外個体「―――アンタの顔、覚えたからな。まぁ夜道は気をつけるこったね」ジー・・・

香焼「な! ま、まだ怒ってるんすか。人間小さいっすね」タラー・・・

番外個体「怒ってるんじゃない。目ぇ付けたのさ……黒夜ちゃんみたいにね」ニヤリ・・・


ゾクリと、悪寒が奔る。

無言の圧力。しかし、脅しには屈しない。


香焼「……お好きにどうぞ」ジトー・・・

番外個体「ケッ! いけ好かないガキ。大人ぶりやがって」イラッ

香焼「増せガキですいません。黒夜、行こう」チラッ

黒夜「お、おぅ」ニャウ・・・

番外個体「……、」ジー・・・


再度、黒夜の手(肉球)を引いてコンビニから離れようとした―――刹那。


番外個体「……、」ガシッ

香焼「っ……問題行動を起せば一方通行さんが―――」バッ

番外個体「ふんっ!」スパッ!

香焼・黒夜「「―――っ!?」」ギョッ・・・


有無を言わさず頭を叩かれた……いや、違う。頭に『何か』された。


香焼「な、何を!?」ビクッ・・・

番外個体「ふふーんだ。今日はこれくらいで勘弁してやる」テクテク・・・


引き留めようとしたがそそくさと店内に入って行ってしまった。別に痛くはなかったが勝手に因縁付けられた。しかも凄く馬鹿にされた気がする。
正直、追い駆けて文句を言いたかったが、大人げないので止めておこう。


香焼「ったく。って、黒夜。どうしたの?」チラッ

黒夜「あ、いや、その……あははは」タラー・・・

香焼「え」キョトン・・・


苦笑しながら僕の頭上を指差す黒夜。そういえば何かされた様な。恐る恐る手を伸ばし、髪を触ると―――


香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?」ピクッ・・・

黒夜「お前も、やられたにゃ」ハァ・・・


―――そこには『何か』が生えてた。急いでコンビニのガラスで自分の姿を確認すると、頭に……耳が。


香焼「な、何じゃこりゃああぁ!?」ギョッ・・・

黒夜「うっせぇ……とりあえず、騒ぐにゃ」タラー・・・


所謂、犬耳。急いで外そうとするが何故か取れない。


香焼「な、何これ。カチューシャじゃない」アタフタ・・・

黒夜「多分それ、ウィッグの一種にゃ。それだけならまだしも、何か接着剤みたいなの付いてる……無理に取ろうとすると髪抜けるぞ」ハハハ・・・

香焼「黒夜のもそうなの!?」ガーン・・・

黒夜「私のは磁力によるジョイント式。それこそカチューシャみたいなモンだから外すのは楽にゃ」フンッ

香焼「じゃあ何で自分のはそうじゃないの!」エー・・・

黒夜「何でって……それ、私のオプションパーツじゃにゃいからっしょ」ジー・・・


じゃあ何か……あの人、常にこういう悪戯道具持ち歩いてるのか。


黒夜「まぁ私と同じで悪意の塊みたいなヤツだからにゃ。いっつも何かしら悪さ考えてたり、誰かに迷惑掛けようと思ってる女にゃ」ハァ・・・

香焼「性質が悪い……あーもぅ。これ髪洗った時落ちるのかなぁ」ハァ・・・

黒夜「暫くはそのままだにゃ」ハハハ

香焼「人事だと思ってー」ウー・・・

黒夜「いや、他人事とは思えにゃんだ……とりあえず行こうぜ。今更だが、人の目につく」チラッ


人気は少ないが、先程から騒いでいた所為で野次馬が沸き兼ねない。この場から去ろうという意見には同意したい。


香焼「あ、でも一方通行さんなら耳なんとかしてくれるかも」ア・・・

黒夜「期待すんにゃ。アイツは嗜虐スイッチ入ると私とか番外個体(バンコ)以上にサディストになるから」チラッ

香焼「え」ピタッ


店内で幼女と姉キャラに引っ張られてる彼が?


黒夜「アイツは人格破綻者(レベル5)の筆頭(第一位)。キチガイの頂点だ」フンッ

香焼「そうは見えないけど」ウーン・・・

黒夜「他の超能力者、見た事あるか? ソイツらの例で考えてみろ」テクテク・・・

香焼「……あー」タラー・・・


第二位、第六位以外の超能力者全員を知っているが、確かに(残念ながら)、スイッチが入ると危険になる人が多い。
結局、彼もそうなのか。


香焼「で、でも打ち止めちゃんが居れば」パッ

黒夜「その頭(犬耳)をMNW(ミサカネットワーク)にアップされても良いならにゃ」テクテク・・・

香焼「」チーン・・・


それは拙い。御坂蛇(プロスネーク)さんに見られた日には……何されるか分からない。


黒夜「分かったら行くぞ。あ、とりあえず私の耳外してくれにゃ」チラッ

香焼「……、」ジトー・・・

黒夜「あ? にゃんだよ」ジー・・・

香焼「黒夜だけ外す気っすか?」ムゥ・・・

黒夜「当たり前ににゃろ。恥ずかしいったらありゃしにゃい」ハァ・・・

香焼「……狡い」ウー・・・

黒夜「はぁ!? コッチは手まで猫になってんだよ! 狡いも卑怯も無ぇだろ!」フシャー!

香焼「自分が外すまで、一緒に付けててよ」ジー・・・

黒夜「にゃにをっ!?」イラッ・・・


一人だけこんな恰好じゃ恥ずかしいし。どっちにしろ僕が外してあげなきゃ黒夜は自力で外せない。


黒夜「おま……今更ガキみてぇな事言ってんじゃにゃいぞ」ウギギ・・・

香焼「フード被せてあげるから」ファサッ

黒夜「ちょ、おまっ!」アワワワ・・・///


僕も黒夜も幸いな事にパーカー族。頭を隠すのに困らなかった。
人間の『両手』を抱えた僕と『猫娘(黒夜)』は、人気の無い空き地か公園を見つける為、夜道を歩いた。

   ―――一方その頃、絹旗side・・・・・



絹旗「―――ぐぬぬぬぅ。香焼が電話に出ません。きっと黒夜から超酷い虐めを受けてて電話に出られないんですね」フシャー!

絹旗「このまま右往左往してる間にも黒夜の超悪質な嫌がらせが続いてしまう筈……どうすれば」タラー・・・

もあい「なぅ」トコトコ・・・

絹旗「はぁ。滝壺さんが居れば超即行見付けられるんですけど、病院ですし。力を借りられない以上、自力で見つけなきゃ」ムンッ・・・

もあい「にゃ?」チラッ・・・

絹旗「おまえ(もあい)が香焼の匂いを探り当てられるならそれを信じますが、学園都市は超広いですしね」ジー・・・

もあい「みゃぅ」ジー・・・

絹旗「誰かの力を借りましょうか。でも……誰の力を」ウーン・・・


ざっと頭に浮かぶのは……削板(根性バカ)、ステイル(不良ノッポ)。


絹旗「あー……超駄目ですね、頼りなりません」ムゥ・・・


他には、佐天や初春、春上達だが。


絹旗「私にだって、黒夜相手に巻き込んで良い人間と駄目な人間の区別くらいつきます」フム・・・


となると……浜面か。しかしまだフレメア(おチビ)の付き合いで忙しいだろう。
黒妻(兄貴さん)や那由他も、新入生相手に巻き込んで良いものか如何か。

では、あの結標(アバズレ女)は?


絹旗「力を借りるのは超癪ですけど、香焼のピンチとなれば手伝ってくれそうな気もします! さっそく……って」ア・・・

もあい「みぃ?」キョトン・・・


連絡先を知らんかった。


絹旗「あーもぅ! 超使えませんねっ!」ムギギィ・・・

もあい「にゃん」ジトー・・・

絹旗「超仕方ありません。香焼の言い付け通り、マンションで待ちましょうか」ハァ・・・

もあい「みゃう」トコトコ・・・

絹旗「でも、五和さん達になんて説明すれば良いですか……あ」ピタッ・・・

もあい「なー?」キョトン・・・

絹旗「そっか! 香焼のお姉さん達に相談すればいいんです! その方が超早い!」バッ!

もあい「にゃっ」ガシッ

絹旗「もあい、超急ぎますよ! しっかり掴まっててください!」シュバッ!

もあい「んなぅ!?」アーレー・・・

  ―――とある休日、PM06:00、学園都市第7学区、郊外の公園・・・黒夜side・・・





コンビニから数分歩いた所、人気の無い公園を見つけた。
遊具や花壇もない空き地に近いその場所で、ポツンと置いてある古びたベンチに私らは腰掛ける。


黒夜「此処なら良いにゃろ」キョロキョロ・・・

香焼「でも、道路から丸見えっすよ」チラッ・・・

黒夜「その程度は我慢するっきゃにゃいだろ。さぁ、さっさと取ってくれ」チラッ・・・


パーカーのフードを下ろし、猫耳を曝け出す。やっとこれで変な口調が直る。
香焼は私の頭上の突起を掴み、ゆっくりとそれを持ち上げた。


香焼「よいしょ。これで大丈夫?」スッ・・・

黒夜「ん……あーあー……大丈夫っぽい。助かったわ」ホッ・・・

香焼「良かったね」フフッ


しかし、まだ手(肉球)が残ってる。問題はコッチだ。


香焼「えっと、これはどうやって外すの?」ジー・・・

黒夜「手首の辺りに薄くボタンみたいなの付いてるだろ。それ押しながら取り外してくれ」クイッ・・・

香焼「分かった。あ、でも」チラッ・・・

黒夜「ん?」キョトン・・・


困った様な顔をする犬耳野郎。何事か。


香焼「その……痛くないの? さっき手捥がれた時、痛がってたじゃん」ジー・・・

黒夜「ああ、そういう。気にすんな」ハハッ


さっきは痛覚遮断する間もなく、無理矢理外されたから泣く程痛かったのだ。
今回は前もって外すと分かっている。色々と準備は可能だ。


黒夜「ほれ。頼む」ピョコッ

香焼「そっか……じゃあ、外すよ」カチャッ・・・


私の手首を掴み、ボタンを押しながらゆっくり、引っ張る。


黒夜「……うっ」ピクッ・・・

香焼「ご、ごめん。痛かった?」タラー・・・

黒夜「良いから……続けろ」ジー・・・

香焼「う、うん。分かった」グッ・・・

黒夜「……ぁ」ピクッ・・・

香焼「あ!」アタフタ・・・

黒夜「ぅっ……っ……一々、止めんな……一気にやれ」フゥ・・・

香焼「そ、そうだね」ハラハラ・・・


中途半端に止められるとムズムズする。変な感覚だ……だから余計なオプションパーツは付けたくない。

やっとの事、肉球が外れる。あとは通常の手を付ければ終わり。


黒夜「―――ふぅ……次は填める方だ。やり方は同じ様にボタンを押しながら取り付ければ良い」チラッ・・・

香焼「このジョイント部分を差し込めば良いんだね」クイッ・・・

黒夜「そゆこと。さ、お願い」スッ・・・


手首から先の無い腕を挙げる。これでやっと……と思った矢先、香焼の動きが止まった。


黒夜「ん?」チラッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

黒夜「どうした?」キョトン・・・


しかめっ面で何かを考えている様だった。そして、何を言うのかと思いきや。


香焼「ねぇ」ジー・・・

黒夜「あ?」ハァ・・・

香焼「もし、これ(手)を付けなかったら、黒夜は能力を使えないの?」ジー・・・

黒夜「……は?」ポカーン・・・


言うに事欠いて、そんな事。


黒夜「だったら何なんだ」ジトー・・・

香焼「……、」チラッ・・・

黒夜「悪ぃが、メインハンド(それ)が無くても予備(スペア)がある。それに私は『無数』に掌を準備出来る」フンッ

香焼「……そっか」スッ・・・


何を思ったかは知らんが、下らない。引き続き接続作業に移る。


香焼「能力者って便利だね」カチッ・・・グググ・・・

黒夜「んっ……ぁ……そうでも、ねぇよ……あぅ……っ」ピクッ・・・

香焼「やっぱり痛い?」チラッ・・・

黒夜「途中で、止めるな……んっ……さっきも言ったが、一気にやれ……ふぅ」ビクッ・・・

香焼「ご、ごめんね」グイッ・・・ガチャンッ・・・

黒夜「っ……まぁ、こんな事出来るのは能力者だからっつーより……ぁ……サイボーグだからだな……ぅ!」ギリッ・・・


やはり取る時より、填める方が痛む。
手首から先が戻った右手の痛覚を戻し、グーパー握り締め、異常が無いか確認する。

上空に向かって『槍』を射出してみる……問題無い様だ。


黒夜「続きやって」ヒダリテ・・・

香焼「うん」ギュッ・・・

黒夜「でもよ。何で……んっ……そんな事聞く?」チラッ・・・

香焼「……分かんない」グググ・・・

黒夜「ふーん……ふ、ぁ……ぅっ……まぁ、良いけど」ピクッ・・・


やっと両手が戻った。これで何もかも元通り。

なんだかドッと疲れがきた。もう歩ける気がしない。


黒夜「はぁ、災難だった」グデーン・・・

香焼「あはは。御苦労さま」ポリポリ・・・

黒夜「ホントにな。ま、お前はまだ苦労しそうだけどよ」チラッ・・・

香焼「……そうだね」ハァ・・・


未だにフードで耳を隠してるわんこ君。気持ちは分からんでも無いが、何故か悪戯したくなる。


黒夜「ふむふむ……えいっ」ガシッ・・・

香焼「えっ!?」ギョッ・・・

黒夜「んー。感覚あるの?」ニギニギ・・・

香焼「は?」キョトン・・・


犬耳を握ったり引っ張ったりしてみるが、特に反応は無い。
そりゃそうか。普通の人間は、私のオプションパーツ(猫耳)と違って感覚までリンクする筈が無い。


黒夜「あったら面白かったんだけどなぁ」ハハハ

香焼「冗談キツいね。君を含め、周りに何されるか分かったもんじゃない」タラー・・・

黒夜「まぁ現状でもしっかり弄られそうだけどな」ニヤニヤ・・・

香焼「やれやれ……もう良いでしょ。フード被らせて」ジトー・・・

黒夜「首輪似合いそうだな。コーギーの尻尾とか合いそう」フムフム・・・

香焼「嫌だよ。恥ずかしい」ムゥ・・・


私の手を払い除け、早々とフードを被った。勿体無い。


香焼「ったく……まぁでも」チラッ・・・

黒夜「ん?」キョトン・・・

香焼「黒夜も泣くんだね」フフッ

黒夜「んなっ!?」カアアァ///

香焼「あそこまでわんわん泣くとは思わなかったよ。そんなに嫌だったんだ」ニヤッ

黒夜「わ、忘れろ!」ウギギ///

香焼「あははは。はいはい」クスクスッ


畜生、嘗めやがって。さっきの借りが無きゃブッ飛ばしてたのに。


香焼「いやぁ最愛も黒夜も、普段はクールなのにね。やっぱ普通の年頃なのかな」チラッ

黒夜「うっせ。一緒にすんな」ケッ・・・///

香焼「でも、自分はそっちの方が好きだな。子供っぽい方が可愛いよ」フフッ

黒夜「んなっ……べ、別にお前に好かれたって嬉しかねぇわ」ジトー・・・///

香焼「やれやれ。意固地だね」クスッ

黒夜「勝手に言ってろ。あほ」ムゥ・・・///


何故そんな歯が浮く様な事をサラリと言えるのか、信じられん。

とりあえず、そろそろ辺りも暗くなってきたし、アジトへ戻るべきか。
そんな事を考えた時、わんこ系男子がポツリと尋ねてきた。


香焼「そういえばさっき、無数に手が出せるとか言ってたけど」チラッ・・・

黒夜「手が出せるっつぅか、操れるんだ。今は専用のオプションパーツ持ってねぇから無理だけどな」コクッ

香焼「えっと……触手的な?」タラー・・・

黒夜「違ぇよ、変態」ジトー・・・


あくまで『発射口』を増やすだけ。手(スレイブ)の一本一本をマニュピレーター代わり(精密操作)に使用する事は不可能だ。
まぁパーツを弄れば出来ない事もないのだが、現状しようとは思わない。


香焼「ふーん。やっぱ便利っすね」ジー・・・

黒夜「さっきも言ったが、こりゃ機械の身体だから出来る芸当だ。能力者云々じゃねぇさ」コキコキ・・・

香焼「機械の、身体かぁ」フム・・・

黒夜「なんだ。お前も欲しいのか? 銀○鉄道乗っちゃいたい系?」ジー・・・

香焼「い、いや、その」アハハ・・・


好き好んで自分の体弄る一般人なんかそうそういない。
私だって『きっかけ』が無ければ普通に五体満足な健常者だったかもしれない。


黒夜「ま、私はこの身体を気に入ってる。やろうと思えばどんどんグレードアップ出来るしな」コクッ

香焼「もっと、身体を弄るの?」ジー・・・

黒夜「必要ならな。脳味噌以外は機械に変えてもいい」フンッ

香焼「なっ」ギョッ・・・

黒夜「人間の身体なんてのは所詮、脳味噌以外は付属物だ。心(自分)が脳味噌にあるなら、それ以外は変えても平気だろ」サラッ


驚いた顔……無理も無い。常人にゃ理解出来まい。
それから、わんこ君は暫く考え込んでいた。そして、一言。


香焼「身体髪膚親より生ず 敢えて毀傷せざるは孝の始め也」ボソッ・・・

黒夜「は?」キョトン・・・

香焼「孔子の言葉。身体は父母からの賜り物なのだから大事にしなくちゃいけない」ジー・・・


なんだ、そんな事。


香焼「己の身体を傷つけないって事が親孝行の始まりって意味っすよ―――」

黒夜「親なんていない」フンッ

香焼「―――ぁ」ピタッ・・・

黒夜「顔も知らねぇし声も知らない。まして名前すら知らねぇわ」ボー・・・


子供を捨てた親に義理立てする程、人間できちゃいない。


香焼「……ごめん」シュン・・・

黒夜「別に。まぁ置き去り出身(チャイルドエラー)っての抜きにしても、私は異常な方さ」ハハハ

香焼「……そっか」ポリポリ・・・

黒夜「おう。だからそういう顔すんな。同情してんじゃねぇよ、ボケ」クスクスッ


まったく、とんだお人好し。

兎に角、この後だが。


黒夜「あー……そろそろシルバークロースがプッツンするな」チラッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

黒夜「同僚だ。仕事抜け出してきたっつたろ―――お前は、絹旗大丈夫なのか?」ポリポリ・・・

香焼「……あ」タラー・・・


忘れてたのか。危機感無いヤツ。アイツ、キレさせると厄介だぞ。


香焼「着信履歴がヤバいっす」アチャ・・・

黒夜「私は……そうでもないな」アレ・・・


電源切ってたから、途中で諦めたのか。まぁそれならそれで助かる……帰ってから面倒だけど。


香焼「どうしよう。多分、怒ってるよね」ハァ・・・

黒夜「安心しろ。怒りの対象は私で、お前はただ心配されてるだろうよ」ハハッ

香焼「それはそれで嫌だなぁ」ウーン・・・

黒夜「庇護対象になりたくないってか? 残念ながら絹旗ちゃんはお前より強ぇよ」ハハハ

香焼「いや、そういう事じゃなくて。それもだけど」ポリポリ・・・


眉をしかめ、私の方を向いて一言。


香焼「ケンカにならない?」ムゥ・・・

黒夜「……は?」ポカーン・・・

香焼「最愛と、喧嘩しないでね」ジー・・・


そんな事を気にしてんのか。


黒夜「馬鹿か、お前」ハァ・・・

香焼「いや、仲良くしなきゃ。姉妹なんでしょ」ジー・・・

黒夜「お前が思ってる様なユルふわ姉妹じゃねぇよ。さっきも言った通り血み泥関係っつー意味で姉妹なだけだ」ッタク・・・

香焼「うーん……でも」ジー・・・

黒夜「チッ。お前は、ほんと甘ちゃんだな……とりあえず奴隷は終わり。帰って良いぞ。安心しろ、秘密はばらさない」スッ・・・


ふいに、先程買って貰ったガシャポンの存在に気付いき……色々考えた後、立ち上がって一眼もくれず歩き出した。
まったく、少々コイツの『毒気』に振れ過ぎた。このままじゃ日和って馬鹿になってしまう。
これ以上は何も話すまい。さっさとこの場を―――


香焼「待って」ジー・・・

黒夜「……何だよ」ピタッ・・・

香焼「思い出した。自分はまだ『命令』してなかった」コクッ


―――そういえば、そんな約束してたっけ。ホント、今更だな。


黒夜「ったく……はいはい。何でございますか。何か買って欲しいモノでもある? それともやっぱ男らしく馬鹿な願望?」ヤレヤレ・・・

香焼「そんなんじゃないよ……じゃあ、黒夜。今から―――」スッ・・・


そして、コイツは有り得ない事を宣った……―――

今回はここまで。次回で終わりに出来たら良いけど、亀スレだから無理かな。

とりあえず次の話のリクでも取り始めようかと。希望あれば書いて下さい。そこからアンケートするかも。

例の如く質問意見感想罵倒リクエスト、お願いします。では! ノシ"

こんばんわ。ボチボチ投下。

 ―――とある日、PM06:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・絹旗side・・・




第七学区のいつもの公園から南北線に乗り、最寄りの駅から超ダッシュで香焼の家へ向かう。
もしかしたら既に黒夜から解放され自宅へ帰っているかも、なんて淡い期待も抱いてみるが、多分それは無いだろう。
彼の性格なら、事が終われば私に一報入れている筈。

兎角、急いで彼の部屋のインタホーンを鳴らす。外に白のビックスクーターがあったという事は彼のお姉さんが居る筈だ。


絹旗「あー……超早く出て下さいっ」アタフタ・・・

もあい「にゃぅ」フシフシッ


ガチャリとノイズ混じりの接続音。


五和『はいはい。ドチラ様で……って、あら。最愛ちゃん』ジー・・・

絹旗「はい。私です!」コクッ

五和『あれ? 今日、コウちゃんと一緒に映画行ってたんじゃなかったの?』キョトン・・・

絹旗「その件で超色々トラブル生じまして……中で説明させて貰えませんか」パタパタ・・・

五和『はいはい。分かりました』Pi!


日頃の信頼関係もあってか、すんなりとオートロックを解除しエレベーターを降ろしてくれた。
頭の上の子猫を振り落とさない様に、超急いで彼の部屋へ向かう。
7階のランプが点き、エレベーターを降りると既に部屋のドアを開け、五和さんが待っててくれた。


五和「こんばんは、最愛ちゃん。どうしたの? そんなに慌てて」キョトン・・・

絹旗「ハァハァ……ふぅ。こんばんは。えっと、その」アタフタ・・・

五和「とりあえず中に入ってくださいな。一服ついてゆっくり話しましょう」スッ・・・


促されるまま部屋に上がる。靴の数からして、今日はお姉さん達だけみたいだ。


絹旗「削板とかステイル、姉貴(固法)さん達は?」チラッ・・・

五和「今日は来てないですね。削板くんはいつ現れるか分からないけど」ハハハ


内心ホッとする。正直、黒夜……というか新入生関連の話はあまり多くの人には聞かれたくない。
加え、不幸にも『身内』の恥だ。信用に値する人以外には話せない。

玄関で、もあいを下ろしリビングへ向かうと、彼の長姉と末姉が坐していた。
キッチンからは夕飯の香ばしい匂いがするけれども、其方について如何こう言ってる暇はない。


浦上「ありゃま。マジで最愛ちゃん一人ですネ」キョトン・・・

神裂「ふむ。女の子を一人放っぽり出す様な子では無い筈なのですが」ジー・・・

絹旗「あ、え、と。その」アタフタ・・・

五和「あーもしかして……喧嘩しちゃったとか?」アハハ・・・

絹旗「ち、違います。あの……うーん」タラー・・・

3姉妹「「「ん?」」」ポカーン・・・


しまった。急いでいて何を如何説明すべきか考えてなかった。

あーうー言いながら超テンパってる私に三人は苦笑しつつ、まずは座る様促してきた。。


浦上「んー。とりあえず、麦茶でも飲んで落ち着いてくださいナ」スッ・・・

絹旗「は、はい」ペコッ・・・

五和「ささ、座って。あ、お鍋の火止めておこう。最愛ちゃんも食べてくでしょ?」チラッ

絹旗「頂けるなら、超喜んで」コクッ・・・ゴクゴク・・・


コップ一杯分一気飲み。そして大きく息を吐いた後、ポツポツ口を開いた。


絹旗「あの、まず……私は今日、香焼と映画行ってません」フゥ・・・

五和「……へ?」キョトン・・・

絹旗「だから映画には行ってないんです。折角、劇場版『銅力彩未(どうりきあやみ)の暴走』観に行く予定だったのに」ハァ・・・

神裂「え。(うわぁ……逃げましたね、香焼)」タラー・・・

五和「あっ。(心中お察しします……逃げたんだね、コウちゃん)」タラー・・・

浦上「にゃはは。(何その映画。逆に観てみたい)」タラー・・・


ウルトラZ級という事で超絶楽しみにしていたのに。だが、観れなかったモノは仕方あるまい。


神裂「えっと、うん。どんな理由があろうとも約束は守るべきですよね」フム・・・

五和「そ、そうですね。(逃げたくなる気持ちは分からんでもないけど)」ポリポリ・・・

浦上「男の子としてアウトですヨ。まぁ最近女々しくなり過ぎてその誇りが消えかけてるかもしれないですケド」ハハハ

絹旗「その、そうじゃなくて……香焼が来れなくなった理由がありまして」タラー・・・

神裂「ん?」フム・・・


視線が集まる。何と説明したものか。


絹旗「実は……超ハッキリ言ってしまうと、私の妹分に連れ攫われました」ハァ・・・

五和「は?」ポカーン・・・

浦上「い、いもうと? 最愛ちゃんの?」キョトン・・・

神裂「それは、噂に聞くセイヴェルン嬢の事ですか?」フム・・・

絹旗「いえ、フレメアさん(おチビ)ではありません。私の……姉妹分です」ジー・・・


3人揃って呆気に取られた顔。無理も無い。殆どの人が知らない事実だ。


五和「えっと『姉妹分』って言うからにはウチ(天草4姉弟)みたいに血は繋がってないけど家族分って事かな?(NTRシュチュ?)」ジー・・・

絹旗「それもそうなんですけど、此処とは超違います。そんな生易しい関係じゃありません」ムゥ・・・

神裂「姉妹分なのに生易しくない?(英国王女姉妹みたいな感じでしょうか?)」ウーン・・・

浦上「仲の悪い姉妹なんですか。(お姉と姉様もある意味『ライバル』でしょ)」ハハハ・・・

絹旗「どっちかっていうと超犬猿の仲です。犬猿どころじゃなく……えっと……そう!」ウーン・・・


超分かり易く言うと多分、超アバズレビッチ(結標)と超変態淑女(白井)みたいな関係。

結構有名な噂だが、あの二人は超因縁の仲だと聞く。しかし三人は雁首揃えて否定してきた。


神裂「いや……白井さんとやらをよく知りませんが、その例えがオカシイ事だけは分かります」キッパリ・・・

五和「それだと片方(結標さん)が一方的に歪んだ愛情押し付けてる感じになります」ハハハ・・・

浦上「ぶっちゃけあの関係って、白井さんが○ムロで、結標さんはシャ○ですからネ」ニャハハ・・・

絹旗「へぇ。あのアバズレ、白井の事好きなんですか……って、そうじゃない!」アタフタ・・・


例えは外れたみたいだが、兎に角、私と黒夜は超危険な関係なのだ。


絹旗「私と顔合わせるなり何かと超イチャモンつけて超喧嘩しようとしてくるんです。超性格歪んでるんで超危険なんですって」タラー・・・

五和「いやぁ、でもコウちゃんなら並大抵の女の子懐柔させますよ。(それより会話に『超』が多過ぎて読解し辛いんですけど)」HAHAHA!

浦上「カミやん病ェ……香焼爆発しろ!(しゃーないですヨ。最愛ちゃんのアイデンティティですしおすし)」ヒャー!


駄目だ。香焼の超甘ちゃんっぷりが際立ち過ぎて、黒夜の超危険性が伝わらない。


神裂「まぁまぁ二人とも。彼女の顔は真剣です。少々真面目に」チラッ

五和・浦上「「はーい」」コクッ

神裂「さて……貴女がこんなに取り乱してるのも珍しい。どうやらその姉妹分とやらは『訳アリ』の様ですね」ジー・・・

絹旗「うっ」ピタッ・・・


吸込まれる様な眼。姉貴(固法)さんの裸眼にも負けないくらい、何もかもを見透かしている様だ。
超色々端折って話してしまうのも手だが、何処まで説明出来たものか。

正直なところ―――腹を割って話してはいないが、香焼を含めこの家の住人が『一般人』でない事は気付いている。
多分逆に、彼女達も私(を含め麦野や結標)が『一般人』でない事を知っているだろう。

しかしだ……この家の中ではあくまで日常を貫かなくてはならない暗黙のルールがある。それはあの麦野でさえ守っているのだ。


絹旗「と、兎に角、あの子は超危険なんです。一度目を付けたら飽きるまで玩具の様に超酷使します」タラー・・・

五和「そういうのはアニェーゼとかレッサーで慣れてるから大丈夫だと思うんだけど。飽きたら解放されるんじゃないの?」フム・・・

絹旗「なら良いんですが。最悪、機嫌を損ねた場合は怪我じゃ済まないんです」タラー・・・

3姉妹「「「……、」」」ピタッ・・・


三人の雰囲気が変わった。


神裂「絹旗さん。こんな聞き方をしたら失礼かもしれませんが、その姉妹分とやらは麦野さんとドチラが『危険』ですか」ジー・・・

絹旗「え……ふ、沸点の低さだけで言えば黒夜の方が超低いです。キレた後でいったら麦野が超倍ヤバいですけど」コクッ・・・

五和「その『黒夜』さんっていうのが、姉妹分さんなのね?」ジー・・・

絹旗「はい。黒夜海鳥。私と同じく大能力者(レベル4)です」コクン・・・


三人は顔を見合わせ、2,3目配せをした後、上姉2人が立ち上がりサラリと告げた。


神裂「少々失礼……五和―――」チラッ・・・クイッ

五和「はい。あ、ウラ。最愛ちゃんと夕飯の準備やっといてくれる? すぐ戻るから―――」ニコッ

浦上「あいあいまむ。さぁて、そんじゃパパッとやっちゃいましょうネ」ポンッ

絹旗「え、あ」キョトン・・・


二人は笑顔で立ち上がり、そそくさとベランダへ消えた。

私は二つの意味で戸惑った。
一つは私お構い無しで何かを『決め』に行った事。もう一つは……この三人が一瞬醸し出した『雰囲気』に。


浦上「ふふふっ。まぁまぁ、お姉達に任せておきんしゃい。何も心配する事なかですヨー」グイグイッ

絹旗「え、あ、はぁ」タラー・・・

もあい「なぅ」トコトコ・・・


笑顔の浦上さんに背を押されキッチンへ。
何だか超有耶無耶にされた気がするけど……麦野より凄腕の神裂さんが居るなら大丈夫かもしれない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ベランダ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



神裂「―――やれやれ。あの子は、また」ハァ・・・

五和「まぁ今回は自発的というより捕まった様ですし、止むを得ずなんでしょう」ハハハ・・・

神裂「ですかね……それで、今香焼が一緒に居る少女については?」ジー・・・

五和「最新版の要チェックリストに名前が挙がっています。黒夜海鳥……暗部ですね。例の『新入生』の一人」コクッ

神裂「『新入生』ですか……此処はやはり土御門の指示を仰ぐべきですかね」フム・・・

五和「そうすべきなんでしょうけど、また怒鳴られますよ」ハァ・・・

神裂「仕方ないでしょう。事が事です……因みに、彼女の『姉妹分』というのは?」クイッ

五和「あー……確か同じ研究施設の出です。置き去り(チャイルドエラー)を実験に使用した、第一位の思考回路植え付け云々の」ボソッ・・・

神裂「シェリーが聞いたら発狂しそうな下衆い真似を……成程、だから彼女も口淀んだ訳ですか。律義な子です」ジー・・・

五和「腹を割らずに収めたいのでしょう。香焼と互いに『正体』を明かすまでは……それで、如何します?」コクッ

神裂「教皇として、というより必要悪の教会(ネセサリウス)的には、やはり土御門に一報すべきなのでしょうけど……貴女的には?」ジー・・・

五和「あら。進言しても良いんですか?」ポリポリ・・・

神裂「現場を指揮してるのは若衆筆頭たる五和でしょう。意見があるならどうぞ」フフッ

五和「あはは。じゃあ、その、ぶっちゃけ放置で良いかと」ハハハ・・・

神裂「……、」フム・・・

五和「これはあくまで若衆筆頭というより『姉』としての意見なんですけどね。あの子はそんじょそこらの闇なんかに負けませんって」フフッ

神裂「……ふっ」クスッ・・・

五和「あ、笑いましたね。結構真面目に答えたんですよ。女教皇様酷ー」ムゥ・・・

神裂「いえ、ふふっ。そうですね。教会とか教皇という立場を抜きにしたら……私個人も同感です」ニコッ

五和「あはは。姉馬鹿ですね、お互い」クスクスッ

神裂「ええ―――とりあえず責任は私が取ります。土御門に指示を仰ぐのは最後という事で」コクッ

五和「恐れ入ります。今は電話か直帰を待ちましょう―――姉さん」コクッ

神裂「ふふっ。それでは中へ戻りましょうか。絹旗さんを不安がらせない為にも」スッ・・・



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~リビング~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一寸後、思っていたより割と早めに二人が戻ってきた。

何か告げるのかと思いきや、別段何も言わず、先程の様に夕飯の準備を再開したり雑誌を読み直したりしだした。


五和「さーて、料理の続き続きっと。ウラ、最愛ちゃん。ありがとうございます」テクテク・・・

神裂「よいしょっ……あ、栞挟むの忘れてた」ドコカラダッケ・・・

絹旗「あれ……えっと」チラッ

浦上「ん? 何じゃね?」カチャカチャ・・・

絹旗「……、」ウーン・・・

浦上「あははは。まぁ気持ちは分からんでも無いですけど、あの二人が『そうする(待つべし)』って判断したならそうなんでしょう」コクン・・・

絹旗「そ、そんな!」アタフタ・・・

浦上「まぁまぁ。何だかんだいっても、香焼は男の子ですからダイジョブでしょ」フフッ


でも、超弱っちい。


浦上「そりゃーあの子はこの中の誰よりも弱いですヨ」ハハハ

絹旗「じゃあ!」グッ・・・

浦上「でもネ。男の子って不思議な生き物でして、女の子の理屈じゃ測れない何かを持ってるんです」ピッ

絹旗「はい?」タラー・・・

浦上「まぁその逆も然りなんですけど。とりあえず、信じてみましょ」クスクスッ


今一理解できない。


浦上「うーん、じゃあ私達の弟ですしうすしお」ビシッ

絹旗「超余計に訳ワカメです」ポカーン・・・

浦上「にゃはは。それじゃあ……そうだネ。最愛ちゃんの知る香焼って、そんなに弱いカナ?」チラッ

絹旗「え」ピタッ・・・

浦上「勿論、純粋な力とか能力如何こうの話じゃないですヨ」フフフ・・・


私が知る彼。


絹旗「……よく、分かりません」ムゥ・・・

浦上「ありゃ」フムフム・・・

絹旗「香焼は私に超隠し事ばかりしてます。自分は人の心にズカズカ踏み込んでくるクセに」ムゥ・・・

浦上「あはは、そですね」ポリポリ・・・


彼自身はあまり己をオープンにしない。


絹旗「でも」ジー・・・

浦上「うん」チラッ

絹旗「たまぁに……超偶にですけど」ムゥ・・・///


本気になった時の浜面の様に『強く』なる。普段は周りの誰よりも超弱いクセに、スイッチが入ると不意に、超頼れる存在となる。
それこそ力、能力云々じゃない―――心がだ。

些か削板の様な根性論だとは思うが、こればかしは確かに理屈じゃない。

色々想い悩む私を傍目に、何やら愉しそうな……というより意地悪な笑みを浮かべる浦上さん。


浦上「んふふっ」ニヤニヤ・・・

絹旗「な、何ですか」タラー・・・///

浦上「いんやぁ。なんでも」クスクスッ

絹旗「……んもー」グヌヌゥ・・・///


なんか馬鹿にされた気がする。


浦上「とりあえず待ちましょ。もし帰って来なかったら来なかったで……姉様と五和が直で出張る筈だから」

絹旗「そ、そうなったら私も!」バッ

浦上「うーん……それは多分、止めといた方が良いですネ」ジー・・・

絹旗「私だって力になります。そんじょそこらの輩とは比べ物にならないくらい―――」キッ

浦上「……香焼は多分、最愛ちゃんが戦う姿見たくないと思いますヨ」サラッ

絹旗「―――ぇ」ピタッ・・・

浦上「これまた、その逆も然り。仮にだけど……自分が戦ってる姿を最愛ちゃんに見られたくないと思う」コクッ


何故。


浦上「そりゃ男の子だから」フフンッ

絹旗「……浦上さん、さっきからそればっかです」ムゥ・・・

浦上「じゃあ最愛ちゃんは自分が戦ってる姿を香焼に見られたい?」ジー・・・


それは……まぁ『仕事』じゃないのなら見られても構わない。『嘗て』の私ならいざ知らず『今』の私なら能力を見られても問題は無い。


浦上「にゃはは、意地っ張り。まぁでも……あの子は女の子が戦ってる姿を嫌うタイプですよ。あ、私ら(天草衆)は別か」ハハハ

絹旗「超意味不明です」ウーン・・・

浦上「ま、その辺は追々。さておき、あの子は二つの意味で己の戦ってる姿を見て欲しくないと思いますネ」コクッ

絹旗「2つ?」キョトン・・・

浦上「一つは、己の『戦い方』を最愛ちゃんに見せたくないから」ピッ


香焼の戦い方……そういえば、彼が本気で戦ってる姿を見た事は無い。
一度『マジック』とやらで障壁だかバリア(?)っぽいのを張った所は見た事があるけど、所謂『暴力』を奮っているのは見た事が無い。


浦上「んで、もう一つは……さっきも言った通り、あの子はやっぱり弱いから」アハハ・・・

絹旗「え」ピクッ・・・

浦上「頭は回るけど、実力が伴わないタイプ。自分が負ける姿を他人に見せたがる人間なんて居やしないでしょ」ポリポリ・・・


やっぱり、弱いのか。


浦上「まぁでも、頭は回るから賢しい手を使えば『能力者』相手には勝てるかもしれませんネ」フフフ・・・

絹旗「はい?」キョトン・・・

浦上「ふふふ。私から聞いたってのは内緒にしてくださいネ……実はあの子、結標さんと互角張ったんですヨ」ニヤリ・・・

絹旗「っ!」ギョッ・・・


普段から馬鹿にしてはいるものの、あの結標淡希の実力は私だって認めている。
大能力者として頭打ちになっている私に比べ、滝壺さん同様、超能力者(レベル5)候補といわれる逸材だ。

いつのまにか続編きてたー!!!!!!!!!!!

素直にうれしい!

その実力者たる座標移動(ムーブポイント)と拮抗した? あの甘ちゃんが?


浦上「まぁ条件付きの勝負でしたけど……おっと、これ以上ばらすと怒られます」シー・・・

絹旗「……、」ムゥ・・・

浦上「兎に角、やり様によっちゃ勝てる子なんです……それでも地力の弱さは否めませんから」ハハハ

絹旗「……そうですか」ウーン・・・


やっぱり、私はまだまだ彼の事を知らない。


浦上「負ける確率が高い以上、やっぱり見られたくないでしょ」チラッ

絹旗「……はぁ」ポリポリ・・・

浦上「ま、ドンと構えて帰りを待っててあげるのも女子力ってヤツです」クスッ

絹旗「そんな女子力聞いた事ありません」フフッ・・・

浦上「ははは。長崎限定の女子力だったかな」クスクスッ


学園都市という名の『鳥かご』で育った私にとって、都市の『外』の話は貴重だ。参考にさせて貰う。
とりあえず、いつ彼が帰って来ても良い様に、私も手伝いを―――






     「ただいまー」







―――……噂をすれば何とやら。


絹旗「っ!」ハッ!

浦上「ほら」ニカッ

神裂「ふふっ……五和の進言に従っておいて正解でしたね」クスッ

五和「いえいえ。あ、最愛ちゃん。お馬鹿ちゃんのお出迎え頼めるかしら」パチッ

絹旗「は、はいっ!」パタパタ・・・

もあい「にゃ」トコトコ・・・


全く超心配掛けてくれて……超説教してやろう。この野郎。

>>285・・・超ありがとうございます!




 ―――とある日、PM07:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』・・・香焼side・・・




我が家に帰ると、姉達以外の靴が一足分多くにあった。サイズからして確実に最愛のモノだ。そして予想通り、彼女の声が聞こえる。
『ただいま』の一寸後、パタパタとスリッパの音が此方に向かってきた。


絹旗「香焼!」タタタタ・・・

香焼「最愛、ただいま」コクッ

絹旗「まったくもう! 超心配したん、です、か……ら……、」ピタッ・・・


僕の顔を見るなり挙動が止まった最愛。いや、僕の顔の延長上―――後ろの人物を見て止まったのだろう。
予想はしてたが、まぁ無理も無い。


黒夜「……よぉ」ジー・・・

絹旗「ぇ……なっ」タラー・・・


唖然の表情の最愛。気拙そうな相貌の黒夜。


絹旗「こ、香焼」チラッ・・・

香焼「あーえっと」アハハ・・・

絹旗「っ……もしかして、何か脅されてるんですか?」ギロッ・・・

香焼「違う違う」ポリポリ・・・


何と説明したものか。


香焼「とりあえず、居間に行こうか」チラッ

黒夜「けっ」ハァ・・・

絹旗「ま、待ちなさい!」バッ・・・

黒夜「あん? ったく……だから言ったろ。予想通りじゃねぇか」ジトー・・・

香焼「あはは……最愛。兎に角、居間で話そう」チラッ


宥めようと試みるが聞く耳持たず。黒夜の前に手で敷居を作り、一歩も動こうとはしない最愛。


絹旗「香焼……私、前に超言いましたよね。ソイツは超危険なヤツなんだって」ジー・・・

香焼「うん、言ってたね。でもそうでもないかも」チラッ

黒夜「チッ。嘗めやがって」ジトー・・・

絹旗「何があったんですか? 場合によっちゃ、私が『超解決』しますから」ギロッ・・・

香焼「最愛、だから勘違いしないで」ハァ・・・

黒夜「あのよぉ絹旗ちゃん……コッチだって被害者なんだわ」ヤレヤレ・・・

絹旗「言い訳超無用です!」グッ・・・

黒夜「マジだっつの、超マジ。誰が好き好んでこんなヤツの家にお呼ばれせにゃならんのだ」ジトー・・・

香焼「あはは。酷いなぁ」ポリポリ・・・


話は戻るが……先程僕は彼女に『ウチで一緒にご飯食べよう』と命令したのだ。

案の定、それを聞いた彼女は呆気に取られ絶句していたが、反論しようにも約束が約束の為、渋々此処まで連いてきたという現状。


絹旗「……え」キョトン・・・

香焼「本当っすよ。自分が招待したっす」コクッ

絹旗「う、そ」ジー・・・

黒夜「これが演技で、私がコイツ脅して家まで上がり込んでる様に見えんのか?」ッタク・・・

絹旗「……、」グッ・・・

香焼「だから、最愛。まずはリビングで話を」スッ・・・

絹旗「っ」ギロッ・・・

香焼「な……何で睨むのさ」タラー・・・

黒夜「おー怖っ」ヤダヤダ・・・


先程まで黒夜を睨んでいた双眼が、今度は僕を睨んできた。何を言いたいのかは分からないが、えらく怒ってらっしゃる。
それから暫く無言の険悪ムードが続く……さておき、話は替わるが―――


浦上「奥さん、何アレ? 隣の香焼さん家、修羅場ですか? んもーやぁねぇ」ヒソヒソ・・・コソコソ・・・

五和「あらあらまぁまぁ……アレ絶対、旦那さんが悪いのよ。奥さん騙して浮気したに決まってますわ」チラチラ・・・ボソボソ・・・

神裂「ひ、昼ドラ展開というヤツですか……麦野さんや固法さんが好きそうな話ですね」ハラハラ・・・ドキドキ・・・


―――おい3馬鹿姉妹。アホ言ってないで早く助けろ。


五和「ヒソヒソ…―――…あ、コウちゃんが目でSOSサイン出してる」チラッ

浦上「えー。面白そうなのにー」ブー・・・

神裂「あはは……とりあえず、あの場で膠着されても困るので何とかしましょう」スッ・・・


やっとの事、姉さんが此方に歩み寄ってきた。


絹旗・黒夜「「……、」」ゴゴゴゴ・・・

神裂「あーもし。お二人とも」コホンッ

絹旗「あ」ピタッ・・・

黒夜「……ん」チラッ

神裂「其方のお嬢さんははじめましてですね。私は彼の姉分で神裂火織といいます」ニコッ


知らない人物に話を振られて驚いたのか、言葉に詰まる黒夜。『あーえー』とか悩んだ後、僕の方を向いて尋ねてきた。


黒夜「おい……アレ、マジでお前の姉ちゃんか?」チラッ

香焼「あくまで姉弟分っすよ。血は繋がってない」コクッ

黒夜「だよな、似てねぇし。それにあの恰好……何よ?」ボソボソ・・・

香焼「あー……ファッション?」タラー・・・

黒夜「痴女か? 痴女なのか? スタイリッシュ残念美人?」ボソボソ・・・

香焼「……あはは」チラッ・・・

神裂「」ピキッ・・・


今日は麦野さん指定の私服ではなく、いつもの左右非対称着な姉さん。
とりあえず思っても言わないであげて。あの人、聖人耳(地獄耳の亜種)で丸聞こえだから……現に笑顔だけど眉と口端がピクピクいってる。

ぶっちゃけ姉さんが爆発しないかどうかハラハラしていたが、そこはやっぱり聖人様。
多少眉間に皺を寄せた後、平静を保ち、最愛に告げた。


神裂「と、とりあえず中へどうぞ。絹旗さんも……彼女とどんな関係か深くは聞きませんが、そう邪険にしないでください」ポンッ

絹旗「……、」ジトー・・・

黒夜「別に暴れるつもりはねぇよ。お前が喧嘩売ってこねぇ限りはな」フンッ

香焼「最愛、自分からもお願いっす」コクッ


一寸の間の後、視線を姉さんに移し……踵を翻す。漸くリビングへ引き返してくれるようだ。


絹旗「もし、少しでも超馬鹿な真似をしたら追い出しますからね」ギロッ・・・テクテク・・・

黒夜「はいはい。お邪魔しまーす」ペコッ


最愛。此処、君ん家じゃないよ。


香焼「ふぅ……あ、姉さん。すいません。遅くなりました」ペコッ

神裂「おかえり。まったく貴方は相変わらず……まぁ良いでしょう。成り行きは如何あれ、貴方なりに考えがあるのでしょうね」ハァ・・・

香焼「あはは。考えは、あんまりないんすけど」ポリポリ・・・

神裂「放っておけなくて、ですか?」フム・・・

香焼「そんなとこっす」コクッ

神裂「やれやれ。とりあえず……彼女が『どのような』人間か、分かっての行動なのですね?」ジー・・・


やはり姉さん達も黒夜の事は知っていたか―――そりゃそうだろう。暗部の新体制については嫌が応にも耳に入る重要事項だ。
とりあえず、姉さんの問いに、無言で頷く。


神裂「では、何も言いません。あくまで『友人』を招いただけなのであれば、土御門への報告も必要無いでしょう」クルッ・・・テクテク・・・

香焼「ありがとうございます」ペコッ

神裂「感謝されるいわれは無いですよ……お腹が減ったでしょう? 夕餉の準備は出来てます」フフッ


ホント、頭が上がらない。


黒夜「……ん」チラッ・・・

五和「こんばんは」ペコッ

黒夜「ども」コクッ・・・

浦上「どもども。いやぁ香焼の知り合いの女の子の中では珍しいタイプの娘ですネー。ドライっていうかパンク系?」ジー・・・

五和「ささ、中へ。私達の自己紹介は後ほど……あ、おしぼりどうぞ」スッ・・・

黒夜「え、あ、うん。ありがとう。(おしぼり? どっから出した?)」コクン・・・


馬鹿二人が廊下で絡み出した。さっさと居間へ向かえというに。


絹旗「香焼! 超早く来なさい!」フシャー!

香焼「あーはいはい……ヤバいなぁ。かなり怒ってる」テクテク・・・

神裂「超(マジ)オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームというヤツですかね」テクテク・・・

香焼「ぇ……姉さん?」タラー・・・

神裂「はい? 何か?」キョトン・・・


また麦野さんか淡希さんが馬鹿な事教えたな……まぁ聞かなかった事にしよう。

さて……中へ入ったのは良いが部屋の空気がお通夜というか冷戦状態。最愛の不可視の装甲が心成しかモヤモヤと赤黒く沸いている様に見えた。

一方の黒夜は些か面倒臭そうに頬杖付いて反対側に座っている。

余談だが先日(前回)誰かさんの所為でテーブルがブッ壊れた為、新しい食卓を買った。
麦野さんの紹介もあってか、デザイン性の高いオシャレな大型卓机。


絹旗「……、」イライラ・・・

黒夜「ふんっ」チッ・・・


気拙い。五和と浦上に目で合図して助けを求める。


五和「(やれやれ)……あー、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は五和といって姉さんと同じく香焼の姉貴分です。んで、こっちも」クイッ

浦上「浦上です。よろしくネ……えっとー」チラッ・・・

黒夜「黒夜、です」ウィ・・・

浦上「そんなに畏まらなくて良いですヨ。聞くからに敬語苦手なんでしょ?」フフッ

五和「フランクで大丈夫です。私達、海外暮らし長いのでそういうの気にしませんから」コクッ

黒夜「……じゃあ、そうさせて貰う」チラッ・・・


黒夜は馬鹿二人に任せておけば大丈夫そうだ。問題は……もう一方か。


絹旗「……、」メラメラァ・・・

香焼「最愛……そんなに怒らないでよ。忠告聞かなかった自分も悪いんだろうけど、何でそんなに怒るのさ。そこまで黒夜が嫌いなの?」ムゥ・・・

絹旗「っ……ばか」ジトー・・・

香焼「もぅ。分からず屋」ヤレヤレ・・・

絹旗「どっちがですか。取り返し付かない事になっても知りませんからね」フンッ・・・


変なとこで頑固なんだから。カオリ姉さんが居るこの場で『万が一』が起きる可能性は0に等しい。


香焼「ったく。どうすれば機嫌直してくれるの?」ジー・・・

絹旗「……知りません」フンッ

香焼「じゃあ今から黒夜追い出す? そんな真似出来るの?」ハァ・・・

絹旗「知りませんって。私の家じゃないんでしょ。香焼の勝手にすれば良いでしょう」ムスー・・・

香焼「な、ん」イラッ・・・


前に建宮さんが言ってた事を思い出した―――『女は機嫌損ねると理不尽な怒り方するのよな。女人須らく、ヒステリックの傾向はあるぞ』と。
だからこそ『男が寛容になってやらにゃならん』と既婚の野母崎(ノモ)さん談。とりあえず、此方が怒鳴ったり手を出したら負けだ。


香焼「ハァ……確かに、相談しなかったのは悪かったっす。その点は素直に謝るよ」コクッ・・・

絹旗「ふんっ。そういう問題じゃないんです」プイッ

香焼「兎に角、自分が悪い。認めるよ……だから機嫌直して。あと、黒夜と仲良くしろとは言わないから邪険にしないでよ」ペコッ・・・

絹旗「何でそう、卑下して……誰も香焼が悪いだなんて言ってないじゃないですか。貴方の博愛主義は今に始まった事じゃないです」イライラ・・・

香焼「……・・・・・・・・・・・ごめん」ペコッ

絹旗「だから、謝るなって言ってるのに……悪いのは黒夜であって貴方じゃないでしょう……あーもぅ! そんな顔しないで下さい」ッタク・・・


漸く折れてくれた。上条さんの助言通り『暫く黙って、様子見て、真剣な顔で謝り続けろ』作戦成功。
流石、女性慣れしてる人のアドバイスだ。効果覿面っぽい。

最愛が落ち着いた所でやっとご飯に移れる。
因みにカオリ姉さん……僕らの様子見て生温かい目しないで下さい。そのニヤニヤ、イラっときます。

はい、寝ます。次で終われば良いな

引き続き次回のリクエスト募集。今んところ英国編多いかな。とりあえずリクエストからアンケとりますんで

それではまたネ! ノシ”

こんばんわ。ノロノロ投下します。

夕飯の準備が整った。
今晩の献立は、野菜たっぷりトマトカレー・水菜と大根と新玉葱のサラダ・冷やしパンプキンスープ。
最愛と黒夜は目の前のプロ級の料理に目を丸くし『おぉ』と嘆息を漏らしていた。そんな二人の様子に、五和も御満悦。


神裂「では、いただきましょうか」コクッ


合掌。そしてスプーンが動く。


絹旗「んー。トマトとカレーって合うんですね」モグモグ・・・

五和「ええ。もう少しトマトピューレの分量増やすとハヤシライスみたいな味になるかな」コクッ・・・

神裂「この冷スープは市販のモノを?」スッ・・・

五和「いえ、南瓜を『こす』とこから作りましたよ。まぁ数日前から準備してたんで、今日は煮込んで冷やしただけです」カチャ・・・

浦上「あ。この新玉(玉ねぎ)は実家から送られてきたヤツですネ?」シャキシャキ・・・

五和「そうそう。十分甘いから湯掻く必要無し」ピッ


流石の腕前なだけはある。まぁ黙ってれば女子力高いからな。


香焼「黒夜、おいしい?」チラッ・・・

黒夜「ん……あぁ。普通に旨い」モグモグ・・・ムシャムシャ・・・


簡潔な感想だが、その反面、スプーンを動かすスピードはかなりのハイペース。おかわりしそうな勢いだ。
さて、このまま何事も無く食事が済めば良いのだが。


香焼「……、」チラッ・・・

絹旗・黒夜「「……、」」モグモグ・・・


とりあえず互いに意識しない様にしているっぽい。


浦上(何かこう……水面下でドロドロしてそうですネ)チラッ・・・

神裂(下手に此方から触れない方がいいでしょう。空気を読んで何事も無く済めばそれに越した事はありません)チラッ・・・

五和(でもこの空気……ピリピリしてないけど、いつ爆発するか分からない感じが嫌です)チラッ・・・


我が家にN2爆弾を二発転がしている様なモノ。ただ、最愛が冷静になってくれた御蔭で火は入ってない。
無言という訳ではないが、少々気拙い雰囲気は継続。そんな中、空気お構い無しな動物さんが行動を開始した。


もあい「にゃん」トコトコ・・・

香焼「あ。もあい、駄目だよ。自分の餌あるでしょ」スッ・・・

もあい「なっ」ヒョイッ・・・スタッ

黒夜「ん」モグモグ・・・

もあい「みー」トコトコ・・・スリスリ・・・


胡坐を掻いてカレーを頬張ってる黒夜の膝の上に乗っかった。


もあい「みゃっ」ジー・・・

黒夜「……おぅ」ポフポフ・・・

もあい「にゃー」フシフシッ

黒夜「……ふふっ」ニャー・・・


そういえば猫好きって言ってたな。

幾分か和んだ様に思えた……が―――


絹旗「もあい。コッチきなさい」モグモグ・・・

もあい「なぅ?」チラッ・・・

4姉弟『っ!?』ピタッ・・・

絹旗「そいつは超危険ですから、近寄っちゃ駄目です」チラッ・・・モグモグ・・・

黒夜「あん?」モグモグ・・・

絹旗「……もあい」モグモグ・・・


―――最愛さん、勘弁して下さい。僕と姉さん達は顔を見合わせ息を飲んだ。


もあい「みゃん」ジー・・・

黒夜「ふっ……ははは、私から離れたくないってよ。残念だったな、絹旗」フフッ

絹旗「……は?」イラッ・・・

黒夜「おーよしよしっ。お前良い子だな。飼い主さまに似なくて良かったわ」ナデナデ・・・

もあい「にゃあ」フシフシッ

絹旗「……チッ」ミシッ・・・

4姉弟『……、』ハラハラ・・・


スチールスプーンがヒン曲がる音。
もあい、とりあえず退きなさい。お前の所為で部屋中に窒素充満してる気がします。


香焼「さ、最愛。今ご飯中」タラー・・・

絹旗「分かってますよ……ふんっ」ガバガバッ!

黒夜「やれやれ、品の無ぇ喰い方だ。どっちが猫だか分かんねぇな」モグモグ・・・

絹旗「ひゃんへふっふぇ!(何ですって!)」ムガー!

もあい「にゃっ」ビクッ

香焼「だから最愛!」タラー・・・

絹旗「ふぁっふぇほいふふぁ!(だってコイツが!)」ギロッ・・・

香焼「口に物含んで喋らないの……黒夜も。挑発しない」チラッ・・・

黒夜「別にー。本当の事言ったまでだ」フンッ

香焼「言い訳しないの」ハァ・・・

絹旗・黒夜「「……、」」ジトー・・・

もあい「……にゃう」ヒョイッ・・・トコトコ・・・


流石に猫も空気を読んだ。しかし、やっぱこうなるか。


神裂(……説教したくはないのですが、怒るべきでしょうか)チラッ・・・

浦上(いや、香焼がしてますから姉様は控えた方が……それより、お姉。空気変えてヨ)チラッ・・・

五和(わ、私!? え、えーっとぉ……無茶振りだなぁ)タラー・・・


姉達が何とかしてくれそうな予感。

睨み合う二人の間に手を伸ばし、何かを訴えようとする五和。


五和「―――……こっ」スッ・・・

神裂・浦上((やるんだな!?))バッ・・・

絹旗・黒夜「「ん?」」チラッ・・・

五和「こ……コウちゃんによる! 上条さんのモノマネまで!」ビシッ!!

一同『……え』ピタッ・・・


は?


五和「3,2,1!」バッ!

香焼「……、」モグモグ・・・

五和「んーっ……どうぞっ!」ババッ!!

香焼「……、」スススッ・・・

五和「どーぞっ!!」ズバッ!

香焼「最愛、スプーン換えた方が良いでしょ。持ってくるよ」スッ・・・

絹旗「え、あ、はい」チラッ・・・

五和「さ、3,2,1……どーーーーぞっ!!」ドンッ!

香焼「黒夜。もあい撫でちゃったから一回手洗った方が良いよ……最愛。はい、スプーン」チラッ・・・

黒夜「ん、お、おぅ。洗面所借りる」チラッ・・・

絹旗「あ、ありがとうございます」チラッ・・・


流石、五和だ。空気ブッ壊すプロは伊達じゃない。


五和「さ……3! 2! 1!」アタフタ・・・

香焼「さて、御馳走様でした。おいしかったよ、五和」ペコッ・・・

五和「ど、どうぞぉっ!!」ビシッ!

香焼「あ、最愛と黒夜は食べ終わったらそのままで良いよ。自分運ぶから」コクッ

黒夜「あ、あぁ」チラッ・・・

絹旗「じ、自分でやります。それより……えっと」チラッ・・・




五和「さ、さーん!! にぃー!! いーーーーーちぃ!!」ズバシッ!!




香焼「……、」ジトー・・・


まだやってんの?


浦上「香焼……やったげなよ。お姉、恥ずかしくて後に引けなくなってますヨ」ボソボソ・・・

神裂「そうですね。見るからに可哀想です」ボソボソ・・・


正直、ツッコみたくないんだが……――― >>301(安価)


 ①仕方ない。モノマネしてやる        ②勿論、スルーで        ③いや、お前がやれよ

―――……スルー一択。


五和「さ、3! 2! 1!」バッ!

香焼「……、」シレッ・・・

五和「ど、どー……ぞ……ぅ」ダラダラ・・・

浦上「お姉ェ……頑張った」ポンッ・・・

神裂「奈何せん、そのフリ方には無理がありましたね」ポンッ・・・

五和「う、うぅ」ドヨーン・・・


コイツ、馬鹿だ。


絹旗「あーその、超どんまいです」ハハハ・・・

黒夜「わ、私は面白かったと思うぞ」タラー・・・

もあい「にゃう」ジー・・・


元凶二人の必死なフォロー。五和が血涙流しそうな顔してるが、結果オーライ。
とりあえず、まず山一つ越えたといったところか。


絹旗「ごちそうさまでした」ペコッ

黒夜「でした」ペコッ

五和「……お粗末さまでした」アハハ・・・

絹旗「げ、元気出して下さいよ。香焼が超冷めてるのなんていつもの事でしょ」ポリポリ・・・

黒夜「代わりに絹旗が浜ちゃんの真似するってから安心しろ」コクッ

絹旗「し、しませんよ! アンタがしてください!」ハァ・・・

黒夜「じゃあ第4位の真似しろ」サラッ

絹旗「む、麦野の真似!? え、えっと……って! しませんから!」タラー・・・


最愛による麦野さんの真似……見てみたいかも。


五和「じゃあ姉さん、やってください」チラッ・・・

神裂「麦野さんの真似ですか? んー……あー」ムゥ・・・

浦上「え! やるんですか!?」タラー・・・

神裂「『鮭喰いたい』とか『ブッ殺す』って言ってればモノマネになるんじゃないですか?」サラッ・・・

絹旗「あー。確かに」プフフッ・・・


この場に本人居なくて良かったですね。


浦上「じゃあ建宮さんのモノマネ」チラッ・・・

五和「あ、それなら。あーこほんっ……『帰してくれんかぁ、長崎に帰してくれんかぁ』」グデェ・・・

神裂・浦上「「ぶはっwwww」」プルプル・・・

絹旗・黒夜「「へ?」」ポカーン・・・

五和「『なにしてんだよぉ、帰りたいんだよ。俺は』」サラッ・・・

神裂・浦上「「あひゃはははははっwww」」ゲラゲラゲラッ!


五和さん、天草ローカルネタは止めましょう。最愛と黒夜が唖然としてます。

 ―――とある日、PM08:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』・・・香焼side・・・





全員が食事を終え、団欒タイム―――といきたい所なのだが、そうは問屋が卸してくれなかった。
片付けを手伝おうとした僕は最愛に捕まり『お話』する事に。勿論、黒夜も同席だ。
姉さん達は空気を読んだつもりか、総出で片付けやらお風呂沸かしにやらに動いた。


香焼「……あの」チラッ・・・

絹旗「さて」スッ・・・

黒夜「んだよ」ジー・・・


僕・最愛・黒夜の順に座っている。


絹旗「さっきは超アヤフヤにしてしまいましたが、今度こそ超ハッキリ答えて貰いましょう」ジー・・・

香焼「え。さっき言った通りなんだけど」ウーン・・・

絹旗「さっきのじゃ超不十分です。香焼が黒夜連れてきたって事しか分かりませんでしたし」チラッ・・・

黒夜「んだっつの。それで十分じゃねぇのか」フンッ

絹旗「いえ、超説明不足ですね」ジトー・・・

香焼「さ、最愛」タラー・・・

絹旗「喧嘩する気はありませんよ。部屋の中ですし、皆さんに超迷惑かけちゃいますから」フンッ


あくまで冷静を装いお茶を啜る最愛さん。それでは何が聞きたい。


絹旗「まず黒夜。アンタ、何で香焼の事拉致ったんですか?」ジー・・・

黒夜「……、」ジー・・・

絹旗「答えられないと……じゃあ香焼。教えて下さい」チラッ・・・

香焼「え。あ、うん……その」ポリポリ・・・


参った。『秘密』を握られたから止むを得ず命令に従っただなんて言えない。


黒夜「……暇潰しがてら散歩してたらコイツ見っけた。んで、面白そうだから嫌がらせに奴隷として遊んだ。それだけだ」フンッ

香焼「え」ピタッ・・・

絹旗「……本当ですか」ジトー・・・

香焼「あ、えっと……奴隷っていうか」タラー・・・

黒夜「お前なんて奴隷で十分だ」ケッ・・・

絹旗「……分かりました。要は私と香焼への超嫌がらせって訳ですね」ッタク・・・

黒夜「ケケケッ。そーゆーこった」ニヤッ・・・


彼女は何故か僕を庇った。『秘密』の事を隠してくれた。
さっきまで散々、この事を最愛にばらすと脅していたのに……何故だ。


絹旗「じゃあ何を如何奴隷にしてたんですか。単に虐めまくったとか?」ジトー・・・

黒夜「さぁ。御想像に任せる」シレッ・・・

絹旗「っ……香焼!」ジロッ・・・


何でそう悪役ぶるのかなぁ。そんなやり方、最愛を怒らせるだけじゃないか。

申し訳無いがハッキリ言わせてもらう。


香焼「普通にご飯食べたりゲーセン行ったり、コンビニ寄ったり……ブラブラしてただけっすよ」サラッ・・・

黒夜「チッ……(余計な事を)」フンッ

絹旗「え……こ、香焼。黒夜の事庇う必要なんてないんですよ」ゴゴゴゴ・・・

香焼「本当だよ。別に虐められてなんかない」フルフル・・・

絹旗「じゃあ……何で」スッ・・・


僕の顔、いや頭を指差す最愛。


絹旗「『犬耳』なんて付けてるんですか! 絶対無理矢理付けさせられたんでしょ!!」ビシッ!

香焼・黒夜「「あ。(忘れてた)」」ピタッ・・・

3姉妹(((つ、遂に聞いた!)))ドキドキ・・・


そういえばずっと付けっ放しだった。てか取れないし。


絹旗「何ですか、それ。どうせ悪戯で超強制されてたんでしょ」フンッ

香焼「じ、自分の趣味でぇ」タラー・・・

絹旗「だとしたら明日から香焼との接し方考えさせて貰います」ジトー・・・

香焼「そ、その」アタフタ・・・

黒夜「チッ……そうだ。私が被せたんだよ」フンッ

香焼「違う! ハッキリ言うよ……やったのは黒夜じゃなくて一方通行さんのツレの目付きの悪いミサカさんっす」チラッ・・・

絹旗「番外個体が? 何で?」タラー・・・


余計な事言うな、という目で黒夜に睨まれた。


黒夜「……あのアバズレ女に絡まれたんだ。んで、こうなった」フンッ

絹旗「証拠は?」ジトー・・・

香焼「証拠っていうか、彼か打ち止めちゃんに聞けば分かるっす」コクッ

絹旗「……超言いきるって事は嘘ではない様ですね」ジトー・・・

香焼「うん。あと、ゲーセンとか行ってきた証拠に……ほら」スッ・・・


『キルぬこー』の缶バッチ。


香焼「ガシャポンで買ったっす。黒夜にも同じシリーズのキーホルダーを―――」

黒夜「ちょ、馬鹿! 言うな!」バッ!

香焼「―――むごっ」

絹旗「……、」イラッ・・・


説明しようとしたら慌てて口を抑えられた。何故止める?


五和(要は黒夜ちゃんとデートしてきてプレゼントまで買ったと)ハァ・・・

浦上(でも本人にはその自覚無し。ばれると恥ずかしいし、最愛ちゃんキレるから隠そうとしてるんですネ)ハハハ・・・

神裂(犬猿の仲による修羅場と思いきや、カミやん病による修羅場だったとは……香焼、貴方という子は)タラー・・・


遠くから変な視線。なんかよく分からないけど馬鹿にされた気がする。

とりあえず言える範囲は全部言った。


絹旗「……分かりました」ジトー・・・

香焼「あ、うん。良かった」ホッ・・・

絹旗「本当に超何もしてない様ですね」チラッ・・・

黒夜「ったく。だからさっきからそう言ってんだろ」フンッ

絹旗「アナタの普段が普段なんですよ」ジトー・・・

黒夜「はいはい。ま、安心しろ。お前はデートか何かと勘違いしてっかもしんねぇがそんなんじゃねぇからさ」ニヤッ

絹旗「にゃ!? し、してませんからっ!?」アタフタ・・・///


デートって大袈裟な。


黒夜「それからよぉ……お前も知ってる通りコイツは多分、『誰』であろうがお構い無しにズカズカと人の心に踏み込んで来やがる」ジトー・・・

香焼「え」キョトン・・・

絹旗「……、」ピタッ・・・

黒夜「多くは言わねぇが……私と絹旗の『違い』なんて、微々たるモンだろ。少なくともコイツにとっては如何でも良いみてぇだ」クイッ・・・

絹旗「そうですか……いや、そうですね」ハァ・・・


何やら二人だけで納得してる御様子。僕、おいてけぼり。


黒夜「それに……幸か不幸か、コイツは私を『そういう目』では見れないそうだ」ハハッ・・・

絹旗「えっ」ドキッ・・・

黒夜「……ま、お前は如何だかな。自分で聞け」フンッ・・・

絹旗「く、黒夜」タラー・・・


『そういう目』って何だろう。冷ややかな雰囲気は消え去ったが、モヤモヤとした空気が漂っている。


香焼「あーその……とりあえず、デザートでも食べない? カップゼリーあるよ」ポリポリ・・・

絹旗・黒夜「「……、」」ジー・・・


困った。また無言……頼りの姉さん達は。


神裂「……、」ポリポリ・・・

五和「……あー」フイッ・・・

浦上「にゃはは」タラー・・・


駄目か。


香焼(仕方ない)ハァ・・・


何か質問してみよう。皆まで聞けなくても、二人の関係について『腹の内』を聞いてみたいし……―――



      >>307(安価)・・・絹旗と黒夜に質問


二人が窒素に関係する能力を持っているけど何か関係があるのかな…

―――それじゃあ『腹』を割って聞いてしまうか。


香焼「二人は姉妹分なんでしょ」チラッ・・・

絹旗「……ええ」ジー・・・

黒夜「不幸にもな」フンッ

香焼「それは、その……如何いった意味で?」ジー・・・


途端、最愛に睨まれた。


絹旗「……超色々あるんです」ジトー・・・

香焼「あ、うん。ごめん」タラー・・・

黒夜(知ってるクセに)ケッ・・・


黒夜とは先程話したが、最愛的にはタブーな話題だったか。


黒夜「……聞きてぇ事あんならハッキリ聞けよ」フンッ

絹旗「黒夜!」バッ!

黒夜「別に良いだろ。ただの甘ちゃん坊やじゃねぇみてぇだし」サラッ・・・

絹旗「っ」チラッ・・・


無論、まだ最愛と互いに『正体』を明かす気は無いので皆まで聞く気はない。


香焼「最愛の能力は大能力(レベル4)の窒素装甲(オフェンスアーマー)だったよね」チラッ・・・

絹旗「……はい」ジー・・・

香焼「黒夜のは……窒素爆猫(ボンバーにゃんこ)だっけ?」キョトン・・・

黒夜「にゃっ!? ぼ、窒素爆槍(ボンバーランス)だ! ブッ殺すぞ!」カアアァ///

香焼「あ、ごめん」アハハ・・・

絹旗「にゃんこ?」ポカーン・・・


肉球のインパクトが大きくて、つい。


香焼「さておき……二人が窒素に関係する能力を持っているけど何か関係があるのかな」チラッ・・・

絹旗「っ」グッ・・・

黒夜「……、」フンッ・・・

香焼「答えたくなかったら良いけど……もしかして『能力』的な意味で姉妹って事で合ってる?」ジー・・・

絹旗「……そんな感じです」ボソッ・・・


成程、黒夜の言う事は本当だったか。
疑う訳ではないが『暗闇の五月計画』なんてダーティーな計画、俄かには信じがたい。例え土御門の資料を見たとしてもだ。


香焼「研究所が一緒だった、みたいな?」ジー・・・

絹旗「はい……もう良いでしょう。ただそれだけの関係です」タラー・・・

黒夜「酷ぇ言い分だな。全く似た様な能力開発課程(カリキュラム)受けてきたっつーのに」ハハッ

絹旗「私と貴女とじゃ超違います! 現に『考え方』が真逆でしょう!」キッ・・・


攻守『思考』の差、か。

激情する最愛を見て何を思ったか黒く微笑む黒夜。


黒夜「どうだか。『根本』が一緒だと『過程』は如何あれ『結果』が同じとこに行きついてるんじゃねぇか」ニヤッ・・・

絹旗「っ……一緒にしないでください。超不快です」ギリッ・・・

黒夜「はいはい。良い子ちゃんぶって……『私はもう超潔白です』とでも言う気か? 偽善者」ジトー・・・

絹旗「黒夜っ!」バンッ!


立ち上がり拳を握る最愛。対して冷静に右掌を向ける黒夜……拙い。


香焼「ご、ごめん。自分が変な事聞いたからいけなかったっす……もう止めよう」タラー・・・

絹旗「……、」ギロッ・・・

黒夜「……ふんっ」スッ・・・


互いに視線を逸らし、嘆息を吐く。いくらカオリ姉さんが監視してるとはいえ言い過ぎた。


黒夜「……てかよぉ。お前もデリカシー無ぇな」チラッ・・・

香焼「だからゴメンって」タラー・・・

黒夜「忘れんなよ。私はお前の『秘密』握ってんだ」ジトー・・・

香焼「っ……わ、分かってるっすよ」ゴクリ・・・

絹旗「……え」ジー・・・


大人しくしてたから忘れてたが、この場でばらされたくない。特に最愛が居る今は。


絹旗「……香焼」ジー・・・

香焼「あ、うん……ごめん」コクッ・・・

絹旗「いえ……此方こそ」ペコッ・・・


互いに……聞くに聞くに聞けない。もはやいつ腹を割れば良いのか分からなくなっている。
暗部の『クーデター』以前に出会い、WWⅢ(第三次世界大戦)を越え、今に至るが……それでも尚、明かせない事実。


黒夜「ふんっ。お前ら気持ち悪ぃ関係だな」ジトー・・・

香焼・絹旗「「……、」」ジー・・・

黒夜「何ビビってやがんの? 隠し事ばっかの友達で満足?」サラッ・・・

絹旗「黒夜には……関係無いでしょう」ズキッ・・・

黒夜「はいはい。そーですね……まぁ私はお前らの『秘密』しってっから如何でも良いけど」チラッ・・・チラッ・・・

香焼・絹旗「「っ」」ギョッ・・・


お願いだから、急かさないでくれ。僕らは僕らのタイミングで『告白』したい。




神裂(やはり、拙いですか。ばれてる様ですね)チラッ・・・

五和(やれやれ……彼女が帰ったら土御門に連絡を?)チラッ・・・

神裂(そうすべきなのでしょうが、彼女はベラベラと他人に言い触らすタイプでは無いと思います)ジー・・・

浦上(まぁこれ以上、香焼が問題行動起すと本格的に『粛清』され兼ねないですからネ……黙っておけるなら黙ってた方が)ポリポリ・・・

神裂(……とりあえず責任は私が取ります。『もしも』があった際は、彼女の記憶操作を)チラッ・・・

五和(了解。結界の準備は出来てますからいつでも)コクッ・・・

ふと、疑問が浮かんだ。

僕は独自の調べで最愛の『素性』を知っている。その上で、彼女の口から真相を聞くまでは何も尋ねないつもりだ。
だが逆に、彼女は如何なのだろう。もしかしたら僕と同様、何かしらの方法で僕の『素性』を知り得ているかもしれない。
例えそうじゃなくても、最低限、僕が一般人ではないという事は勘付いてる。

だとしたら……彼女は僕の口から『告白』を聞きたいのだろうか。それとも、何も知らない普通の友人関係のままで居たいのだろうか。


香焼・絹旗「「……、」」ジー・・・


分からない。でも、分からないままでも良い様な気はする。


黒夜「……じれってぇ」イライラ・・・

香焼「黒夜」チラッ・・・

黒夜「んだよ、テメェら。ロミオとジュリエットでも気取ってんの? そういう訳じゃねぇんだろ」ジトー・・・

絹旗「黒夜には、関係ありません」シュン・・・

黒夜「ああ、関係無いね。だけど私はお前らの『秘密』を知ってるし、お前らは私の事を知ってる」チッ・・・


最愛が驚いた様子で此方を見る。僕は無言で頷いた。


絹旗「な……何処まで、聞いたんですか」ボソッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

黒夜「『殆ど』だ……コイツの姉ちゃん達が居るこの場では詳細は言わねぇが」ボソッ・・・


駄目だ、ばれてしまう。


香焼「黒夜。もう終わりにしよう……無理矢理誘って悪かった」チラッ・・・

黒夜「いつまで逃げる気だ。こんな事言う柄じゃねぇが、隠し続けて傷付くのは絹旗だぞ」クイッ・・・

絹旗「っ! わ、私は!」アタフタ・・・

黒夜「多分、コイツはお前の事を殆ど知らねぇ。それでもお前の事をそれなりに慕ってる。健気なモンだ」フンッ・・・

香焼「っ」グッ・・・

黒夜「だが『秘密』を知ったら、かなりショック受けるだろうよ……そういう意味では言わない方が良いかもしれん」チラッ・・・

絹旗「え」ピタッ・・・


余計な事を。


黒夜「お節介焼きたい訳じゃねぇが……私はな、絹旗。お前が知りたいっつーなら、コイツの『秘密』を教えてやっても良い」クイッ・・・

香焼「なっ」ギョッ・・・

黒夜「自分でも何でこんな事言うのかは分からない。だが、一方的に知らないお前があまりに憐れに思えちまう」ジー・・・

絹旗「そ、そんな」グッ・・・

黒夜「お前らは互いに隠し事してるつもりかもしんねぇけど、実は一方的だぜ。他方は『知ってる』ぞ」チラッ・・・


お願いだ。これ以上、僕らの心を掻き回さないでくれ。


黒夜「さぁ絹旗、どうする。このまま『おともだち』で十分か? それとも『秘密』を聞いて対等な関係になりたいか?」ジー・・・

香焼「黒夜!」バッ!

黒夜「お前は黙っとけ。さぁ絹旗……知ったら残酷な結果しか待ってねぇこの関係、お前は如何したい?」ジー・・・


幸か不幸か、彼女は情が沸き過ぎたのだ。僕と、彼女の姉妹分に。だからこそ……隠しておけないと判断したのだろう。

そして、この情が沸いた悪魔の囁きに……耳を傾けてしまった少女。


絹旗「……し、知りたい、です」ボソッ・・・

香焼「っ……最愛」タラー・・・

絹旗「私、貴方の事……何も知りません」ジー・・・

香焼「そ、そんな事無い。一緒に遊んで、映画見て、ご飯食べて……都市では家族同然に暮らしてるじゃないか」グッ・・・

絹旗「でも! それでも……私は、貴方を知らない。香焼は隠し事が超多過ぎて」ジー・・・

香焼「っ」ダラダラ・・・


拙い。


香焼「か、必ず言う。だから今は!」アタフタ・・・

絹旗「貴方はいつもそうやって誤魔化します……超言わない気なんでしょう?」ムゥ・・・

黒夜「……決まりだな」フンッ・・・


この場で言う気か。今、此処で。


絹旗「黒夜……教えて下さい。『秘密』とやらを」ジー・・・

黒夜「良いんだな? 多分、かなりキツい事実だぜ……ショックじゃ済まねぇかもしんねぇぞ」チラッ・・・

香焼「最愛っ! 黒夜っ!」バッ!

黒夜「黙ってろ」スッ!


掌を僕に向ける彼女。しかも今回は最愛が止める事はない。


絹旗「ええ……本当は香焼本人の口から超聞きたかったんですが、超腹を決めます」ジー・・・

黒夜「ああ、じゃあ教えてやる……動くなよ、甘ちゃん」コクッ・・・

香焼「チッ!」チラッ・・・


姉さん……いや、女教皇様達に視線を送る。
僕が何を言う訳でもなく、五和と浦上が人払いの結界を張り、姉さんが此方に歩み寄って来てた。


神裂「……黒夜さん」テクテク・・・

黒夜「その様子じゃアンタも知ってんだろうが、私は言う」チラッ・・・

神裂「あくまでこの子達の意志を尊重したい。私と麦野さんの中で決めている事です……それを貴女が崩すのは度し難い」テクテク・・・

黒夜「アンタらの意見なんざ知らん。というか、アンタも香焼(コイツ)の『秘密』知ってて黙ってんならイカれてんよ」ジトー・・・

神裂「だとすれば、私の所為です。だから止めなさい(やはり魔術師としての正体がばれましたか)」ハァ・・・

黒夜「アンタの所為だ? アンタの所為でコイツが『その道』に奔ったのか?(腐女子の究極系か)」タラー・・・

神裂「そうとも言えるでしょう。ですから彼らの意志・タイミングに任せたい(自分から絹旗さんに打ち明けるのなら止めはしません)」コクッ・・・

香焼「姉さん! 黒夜、違う! 姉さんの所為じゃない!」アタフタ・・・

黒夜「(自分の『嗜好』の為に弟分をBLに奔らせるとは、正真正銘腐ってんな)……私が知ったこっちゃねぇ」チラッ・・・


そして彼女は、姉妹分に向き直った。


黒夜「いいか。コイツは……―――」


こうなれば力尽くでも止めるしかない。
僕は『消音』の魔術を展開し、最愛に詰め寄る。女教皇様は『忘却』の術式を展開させ、黒夜に手を伸ばす……そして。

彼女は告げた。











黒夜「幻想殺しと……上条当麻と付き合ってんだよ!」バンッ!!











え。


絹旗「……え」ピタッ・・・

神裂「は」ピタッ・・・

五和「んなっ!?」ピタッ・・・

浦上「うほっ!?」ホモォ・・・

もあい「にゃー」キョトン・・・


何、それ。怖い。


黒夜「上条当麻とコイツ、恋人同士なんだよ……公園で逢引してんの見ちまってな」ハァ・・・

絹旗「う、そ」ガーン・・・

黒夜「嘘じゃねぇよ。辺り気にせずイチャイチャしてた。ソイツ自身も認めてるし」コクッ・・・

香焼「」


意味不明。


神裂「……香、焼」ギギギギ・・・

五和「……コウ、ちゃん」ガガガガ・・・


おい、待て。


香焼「ちょ、待、え? うぇ!? えええええええええぇ!?」ギョッ・・・

黒夜「何だよ……私は別に同性愛云々否定しねぇよ。付き合ってもう半年くらい経つって言ってただろ」ジトー・・・

香焼「い、言ってない!」アタフタ・・・

黒夜「上条当麻はノンケだったのに、お前がアブノーマルな世界に巻き込んだって。お前から告白したとも言ってた」ジー・・・

香焼「な、何だよそれ!? 言ってな…―――…あ」ピタッ・・・


少々振りかえる――― >>164-167 ―――まさか。


香焼「……そ、そういう事?」ダラダラ・・・


全てを悟った。そして……黒夜に向けられていた女教皇様の、いや、カオリ姉さんの手が此方に向かってきた。

逃げ様にも逃げられない。僕の右肩をガッチリ万力ホールド。


香焼「ね、姉さん?」ダラダラ・・・

神裂「……香焼」ガシッ・・・

香焼「ご、誤解っす! その、説明すると長くなりますが……ちょ、マジで!!」アタフタ・・・


ヤバい。まぁじでピンチ。


香焼「く、黒夜! あれはそういう意味で言ったんじゃない! 互いに意味を取り違えてただけだ!」バッ!

黒夜「今更見苦しいぜ……現に撫でられて頬染めてたり、抱きついたり、あげくには『お嫁に貰ってやらぁ』とか言われてたクセに」ジトー・・・

香焼「言われて……なっ!?」ダラダラ・・・


※言われました。


香焼「違っ! そういうアレじゃなくて! こう、ふざけて! じゃれあった延長で! って姉さん痛たたたたったたたあぁっ!!」ウギャー!

神裂「……香焼」ギリギリギリギリ・・・

香焼「あががががががぁ……さ、最愛! 助けて! 今黒夜言ったの間違いだからぁ!!」ジタバタッ・・・

絹旗「……、」ジー・・・

香焼「さ、最愛さん!!」ダラダラ・・・


此方に伸びる救いの手―――


絹旗「……、」ガシッ・・・

香焼「え」ギョッ・・・


―――ではない。何故僕の頭を掴むの?


絹旗「……香焼」ガシッ・・・ミシミシミシミシッ・・・

香焼「痛だだだだだだだだだだだだぁっ!! ちょ、さ、ざいあいっ!!」アバババババ・・・

黒夜「やっぱり怒るか……幾ら私が非日常の人間だからっていっても、お前の気持ちは分かるぜ。乙女心を弄ばれたんだもんな」ポンッ・・・

香焼「おまっ! 何間違った解釈しやがったクセに悟った様な事をぼばばばばばっ!!」ギャースッ!!

黒夜「……遅かれ早かれ、自分で告白したってこうなってたんだ。別に介錯してやった私に感謝する必要はないぞ」フゥ・・・

香焼「しないよ! 絶対しない! 寧ろ逆!!」ウギャアアァ!!


握力90kgオーバーの二人に万力される僕の体。ヤバい。死ぬ。


五和「あは、あははは……コウちゃんが、上条さんと……あははは、ははははははははっははははははっははっ!!」ビー・・・

浦上「あ、お姉が壊れた」タラー・・・

五和「あははっはははははっはっはははっははは、はは……コウちゃんと上条さん殺して私も死ぬ」スッ・・・

香焼「お前は包丁置けええええぇ!! ってか浦上ぃ!! お前大体察してんだろ!! 助けろやああぁ!!」ダラダラダラ・・・

浦上「安心して! 人払いの結界張ってるから何とかなりますヨ♪ (まぁ最近調子乗ってたから良い薬でしょ)」ニッコリ・・・

香焼「やめっ……って、姉さ……最あ……い……がっ……ぁ」コキャッ・・・

神裂・絹旗「「……、」」ギリギリギリギリ・・・メキョッ・・・

黒夜「……あーめん」ナムナム・・・


神様、世界って残酷ですね……―――……結局、僕は気絶してしまい、誤解が解けるのは日を跨いでからになってしまった。

はい、今回は以上。次回で第Ⅱ話は終わりです。

引き続きⅢ話のリクエスト募集。今のとこ英国編が有望かな?

とりあえず質問意見感想罵倒などなど、よろしくお願いします。では! ノシ”

こんばんわ。今回で終わらせ・・・たい。

      ―――翌朝・・・・・




目が覚めた。


香焼「―――……、」ン・・・


寝てしまったのか、気絶してしまったのか思い出せない。


香焼「……ぁ」ギシッ・・・


とても寒い。身体が軋む様に痛い。まるで世界が逆転して見える。


香焼「……ん?」ピタッ・・・


世界が逆転して―――って。


香焼「ちょ……ぎゃああああぁ!!」バッ!!


何故僕は逆さ宙吊りされてるんだ? そりゃ寒い筈だ。そりゃ痛い筈だ。そりゃ反対に見える筈だ。
慌てて身体を揺らし現在地を確認する……どうやら自部屋のベランダの様だ。
因みに、日の方角と高さから換算するに朝8時くらいといったところか。

これが『昨日の明日』ならまだ休日なので何とかなるが、丸一日以上気が付かなかったとなると今日はもう平日。それは拙い。


香焼「だ、誰か! おーい!」ガタガタガタガタ・・・


部屋に向かって叫んでみる。兎に角現状を打開しないと。


香焼「おーい……呼んでもこないか。じゃあ縄を―――って」ミシッ・・・


縄抜けしようと思ったが、案の定拷問縛りでガッツリ固定されてる。
それならばナイフで切ってやろうと考えたのだが、全ての装備が取り外されていた。


香焼「やられた……あーもぅ」ブラーン・・・


少々落ち着こう。まずは状況整理だ……何故こんな事になってるのか。誰がこんな事をしたのか。いつから吊られているのか。


香焼「……考えるまでも無いか」ハァ・・・


残念ながら、昨日の事はハッキリと覚えている。あれが夢であってくれればどれだけ嬉しいか。
大きな溜息を吐き我が身の不幸を嘆いて天を、いや地を仰ぐ。


香焼「……ぁ」ガタガタ・・・


タマヒュン状態になった。これ、縄抜けしないまま落ちたら頭からズドンだわ。


香焼「冗談、キツいよ」アワワワ・・・


今の状態を歩行者に見られたら確実に通報されてしまう。
申し訳ないがこんな馬鹿な成り行きの近所迷惑で固法さんや白井さんの厄介になりたくはない。


香焼「ほんと、誰かー! 姉さーん。五和ー。浦上ー」ガクブル・・・


駄目元で叫ぶ―――一寸後、幸か不幸か、ベランダの窓が開いた。

鬱血的な意味で頭に血が上る中、顔を出したのは……末姉殿。


浦上「ふぁ~……おはよ。うー、やっぱ朝方は寒いですネー」ムニャムニャ・・・

香焼「おま……いや、御託は結構。まずは助けて」ガタガタ・・・

浦上「んー……どーしよっかなぁ」ジー・・・

香焼「ホント、マジ、助けろ……助けろ、ください、っす」ブルブル・・・

浦上「あはは。言語機能に異常発生ってヤツ?」ニヤニヤ・・・


ふざけるのも大概にしてくれ。


浦上「はいはい。傍から見てる分には面白いのになぁ」クスクス・・・

香焼「そういうの、いいから……お願い」ブルブル・・・ブラーンブラーン・・・

浦上「でもー。勝手に助けちゃったら姉様やお姉達に怒られるし」フーン・・・


姉さん、貴女を犯人です。


浦上「にゃっはっはっ! 香焼が壊れたー」ジー・・・

香焼「……、」ガクブル・・・

浦上「……ありゃ。ツッコむ気力も無いか」ジー・・・


頼むから早くしてくれ。


浦上「しゃーないですネ。まぁでも縄は解きませんよ」グイッ・・・

香焼「寒くなきゃ、何でもいい。早く、部屋、中に」ガクガク・・・

浦上「はいはい」グイッ・・・グイッ・・・


乱暴に引き上げられる。吊るされた冷凍マグロの気持ちってこんな感じだろうか。
さておき、残り1m程で漸くベランダから解放される……と安堵した時だった。


     『浦上さーん』


部屋の中から声。


浦上「ん? はーい」パッ・・・

香焼「え」ギョッ・・・

浦上「……あ」チラッ・・・


急降下……いや、何故か重力に従って落下してる筈なのだが、不思議な事に天に昇ってる様な気持ちになる。
なるほど、飛び降り自殺者が最後に見る光景ってこんな風なんだなぁ。


香焼「……、」ヒュンッ・・・

浦上「ちょ! あ、ヤベッ……てへっ☆」ペロッ♪


あ、これ死んだわ。


香焼「――――――――。」


思えば短いけど濃い一生だったなぁ……お父さん、お母さん。先立つ不孝をお許しくださ―――







   『ふんっ!』ガシッ!!






―――る必要ないみたいです。


香焼「ぐふぇっ!!?」ギチュッ!!


地上2,3mくらいの所で急ブレーキ。とりあえず頭蓋粉砕の危機は免れたが、内臓がはみ出そうになる。
そしてそのまま……急上昇。





   『そいやっと!』グンッ!





無反動から凄い勢いで逆バンジー。怖すぎて逆に絶叫出来なかった。


香焼「っ~~~~~~~~~~~~~ッ!!?」アガガガガガガ・・・


勢い余り、7階通り越して屋上まで飛ばされる。そしてまた、自由落下。
このまま人間ヨーヨー状態が続くのかと恐怖したが、今度はそんな事はなく、7階を通過(降下)する寸前で足を掴まれた。


浦上「おー! ナイスキャッチ」パチパチパチ・・・

絹旗「まったく、超馬鹿野郎ですね」ガシッ・・・

香焼「」チーン・・・


寝起きの所為か、昨日の所為かは分からないが機嫌が悪そうな寝間着姿の最愛に助けられた……でも正直、少しチビッた。


絹旗「……ふんっ」ジトー・・・

香焼「」オハヨウ・・・

浦上「えっとー。とりま、部屋の中に連行しましょうか」クイッ・・・

絹旗「分かりました」ドサッ・・・ズルズル・・・

香焼「ぐへっ」イタイ・・・


引きずられながら室内に入る。敷居の部分が非常に痛かった。
さておき、やっとの事温かい場所に。自分の部屋なのに楽園に思えた。


絹旗「何処置いときましょうか」チラッ

浦上「その辺適当にで良いんじゃない? ソファの上にでも投げとけば?」コクッ

絹旗「了解です」ポイッ

香焼「むふぁっ」ボフンッ・・・


最早モノ扱い。あんまりの仕打ちだ……特に浦上。お前、大体察してるだろう。

とりあえず、縛られた状態であっても部屋の中に入れたのは嬉しい。
ぶっちゃけこのまま寝たいのだが……そうも言ってられないだろう。


香焼「……ねぇ」チラッ・・・

絹旗「……、」シラー・・・

香焼「最愛」ジー・・・

絹旗「……、」フンッ・・・


駄目だ。昨日の事を根に持ってる。


浦上「にゃははは。まぁ自業自得ってヤツですヨ」ニヤニヤ・・・

香焼「この道化……そういえば姉さん達は?」キョロキョロ・・・

浦上「ああ、姉様とお姉なら」クイッ・・・


窓の外を指差す。何事?


浦上「上条さんとこかな」ハハハ・・・

香焼「え」ピタッ・・・

浦上「今頃上条さん、必死こいて都市から脱出図ろうとしてますヨ。聖人やら超能力者やらに追っ駆けられて……死ぬ気で鬼ごっこ的な」ハハハ・・・


姉さん達だけじゃなくて御坂さんまでと……何故拡散したし。


浦上「んー……何ででしょうネ」ニヤニヤ・・・

香焼「お前だな。お前が発端だな」ジトー・・・

浦上「にゃんのことかね?」フフーン


ゲスい真似を……上条さん、僕は味方ですからね。


浦上「あっはっは。まぁ面白ければ結果オーライですって」ニヤリ・・・

香焼「悪乗りが過ぎる……お前、ホント良い根性してるよ」ハァ・・・

浦上「削板くん程じゃないけどネ」アハハ


構うだけ無駄か。最早コイツを仲介に最愛と交渉するだなんて考えは止めた方が良いだろう。
となると元凶たる黒夜本人の誤解を解いてからじゃなければ。


香焼「そういえば……黒夜は? 帰ったの?」チラッ・・・

絹旗「……、」クイッ・・・

香焼「え」キョトン・・・


無言で僕の下―――ソファの下の方を指差す最愛。死角になって見えなかったが、そこには布団が敷いてあり。


黒夜「……ん」ゴロン・・・

香焼「な……泊まったの?」タラー・・・

浦上「えぐざくとりー」コクッ

香焼「最愛は平気だったの? その……黒夜と一緒でも」チラッ・・・

絹旗「別に。基本、会話さえしなければ喧嘩もしませんから」フンッ・・・


僕のハーパンとパーカーを着て寝ている黒夜が居た。

何故黒夜が泊まったかはさておき、彼女に起きて貰いたいのだが、この様子を見るに無理だろう。
無理矢理起しても良いが、機嫌を損ねて&寝惚けて能力ブッ放されても困る。あと見るからに低血圧そうだから可哀想。となると……―――


絹旗「……、」ジトー・・・


―――此方と向き合う外無い。


香焼「……最愛」ジー・・・

絹旗「……、」フンッ・・・

香焼「口も聞いてくれないの…―――…浦上」チラッ・・・

浦上「んー?」フム・・・

香焼「マジで風邪引きそうなくらい身体が冷え切ってる。お風呂沸かして来てくれないか?」ジー・・・

浦上「えー、めんどー」ブー

香焼「……おねがい」ジー・・・

浦上「(ありゃ……真面目なお話する気カナ)……へいへい。丁度良い湯加減になる様じっくり調節してきますヨ」ヤレヤレ・・・


何とか空気を読んでくれた。


浦上「あ、香(かおる)ちゃんとデート一回で手を打つって事で」ニヤリ・・・

香焼「ぐっ……は、早く行け!」グヌヌゥ・・・

浦上「にゃっはっはっ。楽しみですネー」トコトコ・・・


抜け目ないヤツ……さて、と。


香焼「今から、独り言を言うっす」ボソッ・・・

絹旗「……、」エ・・・


何処から話そう。


香焼「まず結論から言ってしまうと、昨日の自分と黒夜の話は完全に会話のキャッチボールミスっす」コクッ・・・

絹旗「……、」フンッ・・・

香焼「ホントは、上条さんと自分はもっと重要な話してたんすけど黒夜に勘違いされちゃって……内容は、言えないけど」ポリポリ・・・

絹旗「……、」ピクッ・・・

香焼「それを聞かれたと思ってたから。それで昨日は終始最愛に『ばらすぞ』って脅されたから、その事ばらされると勘違いして」ウーン・・・

絹旗「……何で」ジー・・・

香焼「でも実際、黒夜は自分らの話聞いてたんじゃなくて、お馬鹿にもイチャイチャしてるとか勘違いを―――って、え」キョトン・・・

絹旗「何で……言えないんですか。それじゃあ、本当か嘘か超分かりませんよ」ジトー・・・


仰る通りだ。しかし。


香焼「……ごめん。今は、まだ言えない」タラー・・・

絹旗「結局それ……もぅ……超同道巡りじゃないですか」ハァ・・・

香焼「必ず言う、約束する。でも今は言えない……キチンと真面目に聞いて欲しいから、今は言えないんだ」ジー・・・

絹旗「……、」ムゥ・・・


その時には勿論、お互いに、腹を割って、話したい。それが予てからの願いでもある。

すいません。寝落ちてました・・・続きは夜に!

復活してたばかりか更新が早くて嬉しい

お疲れっすー

寝落ちはともかく
ヒロインズが登場する度に自分の株を暴落させんのは
何かのうさばらしですか?

「もっとやれ!ミコト株のライフはとっくにゼロよ!」
なんて言われかねませんよ

‥え?間違ってる?

こんばんわ。寝落ちないよう頑張る。


>>324・・・でも亀スレですいません

>>325・・・このSSでみこっちゃんはヒロインちゃいます、ヒーローです!(言い訳)

今告げた事は言い訳がましくも本心である。尤も、上条さんとの関係についての弁解にはなってないが察して欲しい。
暫時、無言が続いた。これ以上、此方から下手に言う事も無い。


絹旗「じゃあ……私も独り言を」ボソッ・・・

香焼「え」ピクッ・・・


僕の横(足元)に腰掛け、未だ夢の中にいる黒夜を見詰めながらボソリと呟いた。


絹旗「私は数ヶ月前まで……この子と『同じ事』をしていました」ジー・・・

香焼「っ」バッ・・・

黒夜「……むぅ」スヤスヤ・・・


超唐突。


絹旗「黒夜が今どんな事を―――というより『どんな世界』で生きているか、知っていますか」チラッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

絹旗「……そう」ハァ・・・


無言は肯定。


絹旗「正直、これを告げたら貴方と『さようなら』しなきゃならないと思ってます」チラッ・・・

香焼「……最愛」ムゥ・・・

絹旗「散々『この子は超危険だ』とか『この子に近付いちゃ駄目』とか言ってたクセに……実のところ、私だって五十歩百歩なんです」シュン・・・

香焼「……っ」グッ・・・

絹旗「誰かさんの口癖を借りれば『結局、私の手だって超汚れてる訳』です」ジー・・・


否定、できない。


香焼「何で、そんな事」タラー・・・

絹旗「超急に言うのかって? 何故でしょうね。自分でもよく分かりません……もしかしたら、いや、超確実に嫌われる事なのに」ジー・・・

香焼「……っ」ゴクッ・・・

絹旗「でも、こんな言い方したくはありませんが……香焼。貴方―――気付いてたんでしょう」サラッ・・・


え。


絹旗「ほら、やっぱり。超顔に書いてますよ」ハハハ・・・

香焼「っ」タラー・・・

絹旗「それでも。私が『卑しい女』と分かってても、友達でいてくれてた……違いますか?」チラッ・・・

香焼「い、卑しいだなんて思った事無いよ!」グッ・・・

絹旗「……ええ、そうですね。貴方はそんな事考えない超甘ちゃんでしたね」フフッ・・・


心底悲しそうな笑み。


絹旗「なんでかなぁ」ボー・・・

香焼「……最愛」ジー・・・


虚空を見詰める彼女が何を考えているのか、僕には分からなかった。

今から彼女が何を言おうとするかは分からない。だけど、これだけは言える。


絹旗「香焼―――」

香焼「さよなら、なんて言わせない」キッパリ・・・

絹旗「―――っ……、」


僕は友達の『手』を離す様な真似はしたくない。


香焼「最愛が何をしてたかなんて、知らない。そんな告白も如何でも良い。今君は日の下にいる……それで十分」チラッ・・・

絹旗「……、」ジー・・・

香焼「反省、してるか如何かは分からないけど、二度と踏み外したくないって思ってるんでしょ?」ジー・・・

絹旗「……、」コクッ・・・

香焼「だったら自分は今の最愛を褒めもしないし貶しもしない。今まで通りだ……もし仮に、尊敬するのであれば、それは―――」


浜面さんにだ。


絹旗「っ!? ま、まったく……何処までも知ってるんですね」ハァ・・・

香焼「ごめん。でも、上条さんと同じくらい尊敬してるっす」コクッ

絹旗「あんな超バカ面、敬う必要ありませんって」アハハ・・・

香焼「全く、素直じゃないっすね。感謝してるクセに」フフッ


苦笑する最愛は幾分か気分が和らいでいる様に見えた。


香焼「兎に角、皆まで言う必要はないっす……今はこれ以上聞きたくない」フルフル・・・

絹旗「……でも」ムゥ・・・

香焼「自分がそんなに潔癖症に見える?」チラッ・・・

絹旗「……分かりません。でも、超粘着質なのは知ってます」ポリポリ・・・

香焼「せめて諦めが悪いと言って欲しいな」アハハ・・・


地獄に落ちる事が確定している人間にだって友達は居ても良い筈。
此処で最愛を切り捨てるという事は……ステイルやアニェーゼ達と縁を切るとも同義だ。そんな真似は出来ない。


絹旗「貴方の性格上こうなる事は分かってましたけど、逆に超モヤモヤしますね……いっその事、突き放してくれた方が超楽なのに」ムゥ・・・

香焼「うん、許(はな)さないから安心して」ニコッ

絹旗「……変態」ハァ・・・///


一段落だが―――彼女が『一つ』吐露した以上、此方も『一つ』打ち明けねばなるまい。


香焼「……最愛」ジー・・・

絹旗「何ですか? 『実は本当にホモなんだ』とかだったら聞きたくないですよ」ジトー・・・

香焼「ざけんなっての……じゃなくて、質問させて」チラッ・・・

絹旗「ええ、どうぞ」コクッ・・・

香焼「君は……さっき自分が『君がどんな事をしていたのか』知っていた様に、君も『香焼(自分)がどんな事をしているのか』知ってるの?」

絹旗「……、」ム・・・


険しい顔をする最愛。この顔は肯定というよりも『勘付いてた』といった感じか。

言葉に困っている様なので、これ以上は聞かない。


絹旗「とりあえず、一般人じゃないってのは何となく」コクッ・・・

香焼「うん……黙っててゴメン」ペコッ・・・

絹旗「いえ、私だって隠してたんですから御相子です」ハハハ・・・


ドチラかといえば僕の方が知り得ていたので天秤は吊り合ってないのだが、秘匿性の関係上止むを得ない。


絹旗「でも気になる事が……香焼は、その……私達と同じ『暗部』なんですか?」チラッ・・・

香焼「そうとも言えるし、違うとも言える」ジー・・・

絹旗「また超曖昧に誤魔化す」ムゥ・・・

香焼「ただ一つ言える事は……自分らは君達と違って都市・理事会の『影』ではないよ」ボソッ・・・

絹旗「え」ピタッ・・・


戸惑いの顔。
そりゃそうか。都市or理事の直下でないとしたら、それは部外者の、余所者が潜入してるという事に結びつく。


絹旗「テロリストか運動家? それに『自分ら』って事は、もしかして」チラッ・・・

香焼「テロ屋ではないよ。どっちかといえば都市の味方よりだし……あー『自分ら』っていうのは多分、お察しの通りっす」コクッ・・・

絹旗「やっぱり……普通の姉弟ではないと思ってましたが、そうだったんですね」ムゥ・・・

香焼「うん……あ、姉さん達にはこの話を」ボソッ・・・

絹旗「分かってます。超他言無用で」コクッ・・・


多分、浦上は聞き耳立ててるだろうが空気を読んで聞かなかった事にしてくれるだろう。


香焼「兎に角、昨日黒夜が勘違いした『上条さんと自分』の話は、この内容だったんすよ」ハァ・・・

絹旗「といいますと……仕事の話? え、でも幻想殺し(イマジンブレイカー)は」キョトン・・・

香焼「彼は一般人っすけど、誰よりも『深い所』に居るからね。都市の暗部なんか生温い程の『闇』にすら触れてる」コクッ・・・

絹旗「暗部より深いって……いや、その前に、何で貴方はそんな事を知ってるんですか?」ジー・・・

香焼「……あー」ポリポリ・・・


拙い。言い過ぎたか。流石に魔術の事は隠したいのだが……仕方ない。嘘を吐かずに誤魔化そう。


絹旗「上条当麻が超『重要人物』だって事は暗部に携わってれば気が付きます。でも、貴方は、いや貴方達は何故」ジー・・・

香焼「えっと……恩人なんすよ、上条さんは。詳しくは話せないけど……カオリ姉さんを救ってくれた」コクッ・・


勿論僕ら、一介の教徒も『法の書』の際に助けられてはいるが、一番はあの女教皇様の心の荷を軽くしてくれた事だ。


絹旗「……よく分かりません」ウーン・・・

香焼「要は最愛達(アイテム)でいう浜面さんみたいな感じっす」ピッ

絹旗「はあ。何となく……つまりは英雄(ヒーロー)ってヤツですね」フム・・・

香焼「そんな感じかな。成り行きは如何あれ、結果的に救われたんすよ」コクッ・・・

絹旗「ふーん……だから今でも親交が合って、仕事の話をしちゃったと」フムフム・・・

香焼「大体そゆこと」コクッ・・・


漸く誤解が解けそうだ。

お互い、まだまだ色んな事を隠しているし、本当は最後まで応答したい。
だけどそれはまた今度。場に流されて仕方なしにではなく、場を設け面と向かって真剣に、腹を割りたい。


香焼「とりあえず、納得してくれた?」ジー・・・

絹旗「ええ、ある程度」フフッ


やっと普通に笑ってくれた。これで縄を解いて貰えるだろう。


香焼「じゃあ、最愛―――」

絹旗「あ、でも最後に」ピッ・・・

香焼「―――え」


真面目な顔で、しかし恥ずかしそうに質問される。


絹旗「ほ、本当に……ホモじゃないんですよね?」チラッ・・・///

香焼「」


まだ言うか。


絹旗「だ、だって、そっちの超誤解は晴れてませんし」モジモジ・・・///

香焼「いやいや。そんなんどうやって証拠見せろってのさ」ハァ・・・

絹旗「じゃあ、その……付き合ってる子とか、いるんですか?」ポリポリ・・・///

香焼「は?」ポカーン・・・


何故そうなる。


絹旗「も、もし好きな子がいたら疑惑が超晴れるじゃないですか。勿論女子ならですけど」コホンッ・・・///

香焼「成程ね……でも、困ったなぁ」ウーン・・・


現状、彼女なんていない。残念ながら好きな子もいない。
僕の周りの女性陣は皆魅力的だし、甲乙つけがたい限りだ。どうしたものかな。


絹旗「じゃ、じゃあ好きなタイプは?」ドキドキ・・・///

香焼「急に言われても……うーん、好きなタイプねぇ」ムゥ・・・

絹旗「……、」ジー・・・///


さっきから質問の方向性が可笑しい気がするが、最愛が満足するなら答えるか。


香焼「じゃあ……理想はカオリ姉さん。ただ、変なファッションじゃなく多少俗っぽくて今日みたいにブッ壊れてない時の」サラッ・・・

絹旗「と、年上好きですか!?」ガーン・・・

香焼「いやいや、そういう意味じゃなくてほら、姉さんって容姿端麗才色兼備文武両道の完璧超人でしょ」ハハハ

絹旗(た、確かに……ハードルが超高すぎる)ウーン・・・

香焼「まぁでも、あくまで理想。実際付き合うなら同年代っすね。お互い気を使わなくても大丈夫だろうから」コクッ・・・

絹旗「……ふむふむ。(つまり将来的には神裂さんみたいになる幼馴染であれば超OKという訳ですか)」ウッシ・・・

香焼「てな感じで、おーけー?」ジー・・・

絹旗「ええ、まぁ。私的には」コクッ・・・


満足した御様子。これで疑惑も晴れたかな。

兎に角、一刻も早く解縛して欲しい。正直身体の節々が痛くてしょうがない。
幸いにも浦上はまだ戻ってきてないし、今の内に外して貰おう。


香焼「最愛。そろそろ縄を」チラッ・・・

絹旗「え、あ、そうですね。超忘れてました」グッ・・・


正直結び目が強固過ぎて解くのは難しそうなので、直接縄を無理矢理引き千切ろうと最愛が踏ん張った……しかし中々千切れない。
因みに今僕を締め付けているこの縄は普通の縄ではなく、任務や戦闘で用いる鋼糸(ワイヤー)である。しかも一番太い番号のモノ。


香焼「痛っ」ギュウウゥ・・・

絹旗「え。あーちょっと我慢して下さい」ギチギチギチギチ・・・

香焼「も、もうちょっと、優しく出来ないかな」フー・・・

絹旗「分かりました……んっ」ミヂッ・・・

香焼「っ!」ビクッ・・・

絹旗「す、すいません……一度離しましょうか?」スッ・・・

香焼「だ、大丈夫だよ……っ……思いっきりやっちゃって」ン・・・

絹旗「……すぐ終わります。超我慢して下さい」フンヌッ・・・


ブチッ・・・


香焼「いっ~~~~~~っ……くぅ」ハァハァ・・・

絹旗「やっと少し千切れました……って、香焼。血が」ア・・・

香焼「だい、じょぶ……だけど、もうちょい優しくしてくれると……嬉しいな」ハァハァ・・・

絹旗「ごめんなさい。加減が超難しくて」ムゥ・・・

香焼「気にしなくて良いよ……いっ……あと数回で、外れると思うから」コクッ・・・


ハサミやナイフで切れれば良いのだが、柔な刃物では刃毀れしてしまうほど堅い鋼糸だ。
姉さん達なら魔術で外す事が出来るが、多分そう易々と解いてくれないだろうから……最愛の馬鹿力を頼る外無い。


香焼「思いっきりきていいっす」チラッ・・・

絹旗「……分かりました。手加減しません」ヌッ・・・

香焼「うん……ぁんっ!」ビクッ・・・


我慢する事数分―――やっと解けた。服はボロボロで、身体中に縄の後が残ってる。所々血も出ていて我ながら痛々しい姿。


絹旗「大丈夫ですか? 超グロッキーなってますけど」タラー・・・

香焼「ハァハァ……ありがと……んっ……大丈夫、じゃないかも」グデェ・・・アハハ・・・

絹旗「身体起こせます? 一人で歩けますか?」アタフタ・・・

香焼「そのくらいは、平気っすよ」フゥ・・・


さて、ではソファから身体を起して―――


黒夜「……、」モジモジ・・・///

香焼「……あ」チラッ・・・

黒夜「っ!」ギョッ・・・///


真下で寝ていた黒夜と目があった。なんだ、起きてたのか。

おはようと一言声を掛けたが、様子がおかしい。
なんかモジモジしていて顔が赤く、此方と目を合わせようとしない。まるで昨日公園であった時の様な。


絹旗「黒夜、起きてたんですか」ジー・・・

黒夜「お、おぅ……そ、その」モジモジ・・・///

絹旗「まぁ見ての通り蟠りは超解消しましたよ。要はアンタの超勘違いだったんですね」ヤレヤレ・・・

黒夜「……、」モジモジ・・・///

香焼「黒夜?」キョトン・・・


意図的に僕達と目を合わせない。やっぱり変だ。
いつから起きてたかは分からないが、もしかして勘違いした事がそんなに恥ずかしかったのだろうか。


黒夜「……えっと、さ」モジモジ・・・///

絹旗「はい?」キョトン・・・

黒夜「その……仲直りするのは結構だが、朝から『お盛ん』過ぎやしねぇか」チラッ・・・///

香焼・絹旗「「……は?」」ポカーン・・・


超意味不明。


黒夜「いや、流石に直視できなかったけどさ……真後ろで、えっと……『そんな事』されてたら、目ぇ覚めちまうよ」モジモジ・・・///

香焼「……何言ってんの?」ハイ?

黒夜「せめて、人が居ないとこで『そういう事』はしてくれよ……安心しろ、黙っとくから」ムゥ・・・///

絹旗「超理解不能なんですけど、何が言いたいんです?」ハァ・・・

黒夜「……言わせんな、変態共」カアアァ///


変態って、何でさ。


浦上「それはこういう事さ!」バンッ!!

香焼・絹旗・黒夜「「「っ!!?」」」ギョッ!


いきなりリビングに飛び込んでくる馬鹿2号。(1号=五和、V3=カオリ姉さん)
手には携帯。何をするかと思えば、レコーダー機能を起動し再生しだした。



『―――痛っ』ギュウウゥ・・・     『え。あーちょっと我慢して下さい』ギチギチギチギチ・・・

『も、もうちょっと、優しく出来ないかな』フー・・・   『分かりました……んっ』ミヂッ・・・

『っ!』ビクッ・・・   『す、すいません……一度離しましょうか?』スッ・・・

『だ、大丈夫だよ……っ……思いっきりやっちゃって』ン・・・  『……すぐ終わります。超我慢して下さい―――』フンヌッ・・・


                   ブチッ・・・


『―――いっ~~~~~~っ……くぅ』ハァハァ・・・   やっと少し千切れました……って、香焼。血が』ア・・・

『だい、じょぶ……だけど、もうちょい優しくしてくれると……嬉しいな』ハァハァ・・・  『ごめんなさい。加減が超難しくて』ムゥ・・・

『気にしなくて良いよ……いっ……あと数回で、外れると思うから』コクッ・・・



香焼・絹旗「「」」チーン・・・


何だ、これ。

唖然とする僕ら。反面、ニヤニヤし続ける浦上。そして茹でダコ並に真っ赤な黒夜。


香焼「……つまり?」ギギギギ・・・

浦上「そうちょう から おたのしみ でしたネ」ニッコリ

香焼・絹旗「「んなっ!?」」カアアァ///


何を如何間違えたらどうなる。


浦上「いやぁ音声だけ聞いたらR-18SSですヨ。しかもドッチが男だか分かりませんネ」ハハハ

香焼「ちょ、おまっ!? 訳分からん!」エー・・・

黒夜「やっぱお前、ホモ違うかもしれんな」コホンッ・・///

香焼「初めっからそう言ってるだろ! でも決めつける根拠がオカシイ!」アタフタ・・・

絹旗「そ、そうです! てか黒夜も浦上さんも見てたんでしょ! だったら、ただ縄を解いてただけだって分かる筈です!」カアアァ///

黒夜「私、音しか聞いてなかったから……その、うん。香焼(お前)両刀(バイ)なんだな」チラッ・・・///

香焼「なんでそーなるの?!」ハァ!?


コイツまた勘違いしてやがる。


絹旗「う、浦上さん!!」アワワワ・・・///

浦上「最愛ちゃん……既成事実」ボソッ・・・

絹旗「……っ!!?」ボンッ/////////

香焼「さ、最愛!? 浦上、お前何言った!!」ギョッ・・・

浦上「さーねぇ」フフフ・・・


今度は最愛の様子までおかしくなった。フリーズして動かない。


浦上「あ、因みに既にお姉と麦野さんには送信済みですのでご安心を」ンフフ・・・

香焼「不安しかねぇよ! よりによって麦野さんまで……お前マジ性格腐ってんな!!」ガアアァ!!

黒夜「煩ぇヤツ……テレ隠ししたい気持ちは分かるけど、少し落ち着けよ」モジモジ・・・///

香焼「黒夜が勘違いしなきゃ全部纏まってたんすよ!」ンモー!

絹旗「む、麦野にまで、き、既成……事実……あはは」ガクガク・・・///

香焼「最愛が壊れた!」ウワーン!


結局、二重の誤解を解くまで一ヶ月は要する事になった。
今回の教訓は……暗部といっても普通のガキでした。いや、普通じゃないか。


黒夜「お前ら……私と同い年なのに、大人だなぁ」モジモジ・・・///


発情期間近で妄想力高め&勘違い多めの増せガキさんでした。あー不幸だ。












もあい「にゃぅ」オワレ!

以上です。やっぱ一話辺りが長くなる傾向を直したいですね。


それでは次話のアンケート!


①英国編:アンジェレネメイン(真面目orほのぼの)

②英国編:アニェーゼメイン(真面目orしんみり)

③都市編:黒子メイン(真面目&ピリピリ)

④その他(具体的にお願いします)


※()内は未定です。


もしかしたら明日、第Ⅱ話のおまけだけでも投下するかも。
それでは質問意見感想罵倒アンケート協力よろしくお願いします! ノシ”

こんばんわ。アンケは1になりそうかな?

ちょこっとⅡ話のおまけやります!

        <おまけ!>


 ―――第7学区、とあるオンボロアパート一室・・・・・



 コンコンッ・・・


上条「」ビクッ!!


 ガチャッ・・・


上条「だ、誰でせうか」ガクブルガクブル・・・ボソッ・・・


 ギイイィ・・・


浜面「―――……うーっす。大丈夫か?」ガチャッ・・・

上条「は、浜面か……良かった」ホッ・・・

浜面「ビビり過ぎだぞ、アンタ。まぁ境遇が境遇だからしゃーないかもしんないけど」ハハハ・・・

上条「お前なら分かるだろ。女性の恐ろしさってヤツ」ガタガタ・・・

浜面「あははは……しかし難儀なモンだな。昨夜いきなり『助けてくれ』ってメール着た時は何事かと思ったぞ」ドサッ

上条「俺だって訳分かんないさ。いきなり知人の女性達が襲いかかってきて……マジで死ぬかと思ったわ」タラー・・・

浜面「何したのか本当に心当たりねぇの? 幾ら特級フラグ建築士のアンタでも、そんな理不尽な事そうそうありゃしないぜ」フム・・・

上条「分かれば苦労しないって……始まりはいきなりインデックスが噛み付いてきたんだが、これがもう怖くて怖くて」ブルブル・・・

浜面「いつもの事じゃないの?」ハテ・・・

上条「今回の噛みつきは普通じゃなかった。アレだ、噛み千切るとか噛み砕くとかの顎レベル。ぶっちゃけ喰われるかと思った」ガタガタ・・・

浜面「あの暴食シスター、遂に居候主まで食料として見做したか……しっかし何でそんな奇行に奔ったかねぇ」タラー・・・

上条「分からないんだって。直前まで神裂とメールしてたみたいなんだけど、突然『その不貞は万死に値するんだよ!』とか叫び出して」ハァ・・・

浜面「不貞? あー……エロ本か何か見つかったとか?」チラッ・・・

上条「残念ながら上条さん家にそんなもんありません。インデックスさんが居候している間は全部携帯のムービーかネットの動画です」キリッ

浜面「『キリッ』じゃねぇよ……まぁ俺も同居人仲間(アイテム)が女性ばっかだから似た様なモンだけどさ」ハハハ・・・

上条「それはさておき、この騒動を早く解決せにゃ上条さんは明日から学校にも通えませんよ」トホホ・・・

浜面「お馬鹿なのに真面目ちゃんだな。ま、このアパートは好きなだけ使ってくれ。スキルアウト仲間の廃屋アパートだから家賃もいらん」コクッ

上条「ホント、恩にきります。何れ恩返しはしたい……俺が生きてたら」ペコッ

浜面「不吉な事を……とりあえず食料・水は持ってきた。電気も無理矢理引っ張ってきてるから好きに使って良いぞ」コクッ

上条「何から何まですまないな。やっぱ持つべきモノは男の友達だわ」ウルウル・・・

浜面「アホな事で感動する暇あったらさっさと原因を探した方が良―――」


 ガチャッ・・・


上条・浜面「「―――っ!!」」ビクッ・・・


 ギイイィ・・・


一方通行「……、」スッ・・・

上条「あ、一方通行か! ビビらせんなっつの」ホッ・・・

浜面「ノックぐらいしてくれよ。心臓に悪過ぎる」ハァ・・・

一方通行「……、」ユラユラ・・・

上条「いや、しかし時間掛ったな。すぐそこのコンビニ行ってくるって言ってから一時間以上経ったぞ」チラッ・・・

浜面「どうせコーヒー棚買いして店員困らせたんだろ」ヤレヤレ・・・

上条「そのお金の羽振りが羨ましいです……そういえば頼んだ下着買ってきてくれたか?」フム・・・

浜面「冗談で女性物下着とか買ってきてたらアンタの事見直す」ハハッ

上条「ざけんなアホ。お前や土御門じゃあるまい……なぁ一方通行」ヤレヤレ・・・

一方通行「……、」ジー・・・

上条「ほら、呆れてモノも言えないってさ」フンッ

浜面「ったく、それだけ軽口叩けりゃもう外歩いても大丈夫だな」ジトー・・・

上条「ちょ、おま、み、見捨てる気か!?」アタフタ・・・

浜面「冗談だよ。今アンタの事、外に放っぽり出したら第三位辺りに取っ捕まって電気椅子に掛けられかねないからな」ハハハ・・・

上条「ま、真っ黒焦げになるのは白井の特許で」ガクガク・・・

浜面「ははは。ビリビリ中学生も何だかんだで人格破綻者(レベル5)だからな。『プッツン』したら麦野と同じで何しでかすか分かんねぇ」コクッ

上条「えー。麦野さん優しいだろ。偶に御茶目だけどクールで品があって大人な女性的な感じ」ピッ

浜面「馬鹿お前、アイツの事何も分かってねぇな。確かに今は大分丸くなったけど、それでも『クール』とは真逆にいる女だぞ、アレは」タラー・・・

上条「マジで? 信じられん」タラー・・・

浜面「タイショーはあんまり麦野に絡まれてないからそんな事言えんだって」ヤレヤレ・・・

上条「んー。まぁ浜面の仲間&神裂の友達っていう感じでしか会ってないからな」フム・・・

浜面「付き合い続けりゃその内分かるさ……って、一方通行さんや。あんさんいつまで玄関に突っ立ってんの? 早く上がれって」チラッ・・・

一方通行「……、」フラリ・・・フラッ・・・


 ドサッ・・・


上条・浜面「「え」」ピタッ・・・









御坂「―――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見ィツケタ」ニッコリ











上条「ひぃぎゃあああああぁああああああああぁあああぁ!!」ドンガラガッシャーン・・・

浜面「っ~~~~~~~~~~~~~ッッ!!?(声にならない恐怖)」バッタンキュー・・・

上条「あ、あああ、あ、一方通行っ!?」ギョッ・・・

御坂「まさかコンビニでバッタリ出会えるとは思わなんだわ……御蔭で私が『一番乗り』ね」フフフフ・・・

浜面「お、おまっ……ど、どど、どうやって第一位を」ガクブル・・・

御坂「そりゃあの手この手を。主に打ち止め懐柔したんだけどね」フフフ・・・

浜面「こんの地獄姉妹があぁ!!」ダラダラ・・・

朝7時に寝落ちか?
内容はどっかのおバカさんの「もっとやれ」への返信か

警備員か寮監様の出番と
それに伴う激レア展開、
ヒロイン?の逮捕エンドによる脱落に期待

無いとは思うが
主人公補正がなくなったことで死亡からの
土御門辺りがあわただしくなる展開なら
本編でお願いします

おまけは寝落ち?

アンケは1のほのぼのを切に希望します

こんばんわ・・・ヤバい。寝落ち癖が再発しだしてる。


>>343・・・基本、上条さんに関するカップリング要素は皆無だと思って下しあ

>>344・・・寝落ちゴメンなさい。次オチたらR-18書きま―――


それじゃボチボチ投下。

御坂「さぁて……御望み通り、鉄の椅子に縛り付けて高圧電流流してあげる」フフフフ・・・

上条「っ!!?」ギョッ・・・

浜面「ちょ、ま、待てよ嬢ちゃん! マジでコイツが何したってんだ!?」タラー・・・

上条「そ、そうだ! もし話合いで解決できるのなら、それを望む!」ダラダラ・・・

御坂「さぁ……自分の胸に聞いてみれば?」ゴゴゴゴ・・・

浜面「ひっ……お、おい、やっぱアンタ何かしたんだって! 思い出せよ!」チラッ・・・ハラハラ・・・

上条「そ、んな事言われてもマジで身に覚えが無いんだって」ダラダラ・・・

御坂「身に覚えが無いと……そうよね。アンタ自身に悪気なんかある訳無いものね」ドドドド・・・

浜面「ほら絶対ぇ何かしてんだよ! アレか? また無意識で女誑しこんだか!?」ジトー・・・

上条「意味分かんねぇよ! 兎に角逃げるぞ!」バッ!

浜面「第一位は!?」チラッ・・・

上条「御坂も死人に鞭打ったりしない筈」チラッ・・・

一方通行(死ンでねェよボケ。馬鹿姉妹(美琴&打ち止め)に電極制圧されて動けねェンだ)ジー・・・

上条「早く窓から脱出を!」ガラララ・・・

浜面「ちょ、早―――」







禁書目録「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁい」ニッコリ







上条・浜面「「ぎゃああああああぁあああああぁ!!」」ギョッ・・・

禁書目録「うふふふ……まさか廃ビル内のアパートに隠れてるとは思わなかったんだよ」ニコニコ・・・

上条「い、インデックスさん。ど、どうして此処が」ガクガクガクガク・・・

禁書目録「『協力者』にお願いしたんだよ」フフフ・・・クイッ・・・

上条「きょ、協力者だと……まさか風斬がこんな馬鹿騒ぎに手を貸したっていうのか!?」タラー・・・

禁書目録「ひょうかじゃないんだよ。お願いしようと思ったけどいつの間にか帰っちゃってた」フム・・・

上条「じゃあ誰が……まさか神裂&五和と手を組んだんじゃなかろうな」ダラダラ・・・

禁書目録「かおり達はかおり達で動いてるからね……私がお願いしたのは……彼女なんだよ」スッ・・・

上条・浜面「「え」」ピタッ・・・






滝壺「うぃー」ピースピース






上条・浜面「「んなぁ!?」」ギョッ・・・

滝壺「やっほーはまづら。貞操は無事かな?」ジー・・・

浜面「な、何で……え? はい? 滝壺さん?!」オドオド・・・

寝落ち?

だったらR-18よりほのぼの短編のほうがうれしいなあ

R-18はレッサーがまだだったよね?

上条「お、おい浜面。何でお前の彼女さん、ウチの居候に手ぇ貸してんでしょうか」チラッ・・・ダラダラ・・・

浜面「こ、コッチが知りてぇんだけど……てか貞操って何よ」チラッ・・・ダラダラ・・・

滝壺「いんでっくすに『しあげの貞操の危機なんだよ!』って言われて居ても経ってもいられず協力した」コクッ

浜面「だからその『貞操の危機』ってのが意味分からん! あと滝壺。お前、その暴食シスターと知り合いだったのか?」タラー・・・

滝壺「きぬはた経由でメル友だよ」チラッ・・・

浜面「そ、そうなの? てか絹旗も知り合いかよ」エー・・・

上条「もうゴチャゴチャで訳分からん……てか、何で此処分かったんだ? 滝壺の能力(AIMストーカー)?」チラッ・・・ダラダラ・・・

浜面「いや、でも身体に負荷掛る能力だから広範囲索敵とかは控えてた筈なんだが……まさか!?」ギョッ・・・

滝壺「違うよ、はまづら。広範囲索敵なんか使ってない」フルフル・・・

浜面「じゃ、じゃあ何なんだ?」タラー・・・

滝壺「そこの彼……かみじょうはこの街で二番目に『発見』し易いの。だから思考を研ぎ澄まさなくても見付けるのは簡単」チラッ・・・

上条・浜面「「え」」キョトン・・・

滝壺「かみじょうは一寸たりともAIM拡散力場を発してない。だから彼の周辺は不自然な程に真っ白透明な信号になる」コクッ

上条「え、マジで? 俺ってAIM拡散力場発生してねぇの? それってこの街の人間としてアウトなんじゃ」タラー・・・

滝壺「因みに一番発見し易いのは、はまづら。理由は単純で、これでもかっていうくらい信号を覚えたから」ジー・・・///

浜面「お、おぅ」ポリポリ・・・///

上条・御坂・禁書「「「」」」イラッ・・・

浜面「あーコホンッ……でも何で俺がタイショウと一緒だなんて分かったんだ?」タラー・・・

禁書目録「とうまは本気で困るとあくせられーたかしあげ、もしくはもとはるに相談するでしょ。つまり私の勘は当たった」コクッ・・・

浜面「そういう……逃げらん無くね? 向こうに滝壺居る以上逃げても無駄な気が」タラー・・・

上条「ぜ、前門の虎。後門の狼状態……詰んだか……いや、だったらまだ上と下が!!」バッ・・・





五和「ところがどっこい、インしたお」カパッ!

神裂「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんばんは」カパッ・・・





上条「どっから出てきたオイ!?」ギョッ・・・

浜面「ゆ、床から包丁持った虚ろな目の女性が!? 天井からはスタイリッシュ痴女が!?」ギョッ・・・

神裂「失礼な……さておき、よくもまぁウチの末弟に不埒な真似を」ゴゴゴゴ・・・

五和「上条さんとコウちゃん殺して私も死ぬ上条さんとコウちゃん殺して私も死ぬ上条さんとコウちゃん殺して私も死ぬ……――」ブツブツブツ・・・

上条「一人冗談抜きで怖い人がいる!!」ダラダラ・・・

浜面「もう何が出てきても驚かない……って、コウちゃんって誰だ?」チラッ・・・

上条「え? 多分、香焼の事かと」タラー・・・

浜面「絹旗と仲良いエリート坊主? ソイツも如何かしたのか」キョトン・・・

上条「さ、さぁ。この前公園で会ったけどそれっきりで―――」ダラダラ・・・

女性一同『』ギロッ・・・

上条・浜面「「ひぃ!!?」」ダラダラ・・・

神裂「あくまで白を切る気ですか……ならば宜しい。『上条約』約定第5ノ2項により、粛清を開始します」ドドドドド・・・

五和「殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ――」ブツブツブツ・・・


 ドドドドドドドドドドド・・・・・・


浜面「ちょ、オイ。どうすんだ」チラッ・・・ダラダラ・・・

上条「ど、どうするって……どうしようもない気が」チラッ・・・ハラハラ・・・

一方通行(頼むから早く解放してくれェ)チーン・・・

浜面「そうだ! お、オイ滝壺! お前からそいつらに話合いに乗る様交渉を!」アタフタ・・・

滝壺「出来ると思う?」タラー・・・

浜面「……ですよねー」チーン・・・


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・


浜面「あ、アレじゃねぇの!? 香焼っつー坊主関係してんじゃね?」ダラダラ・・・

上条「香焼が? わ、分かった……おい、神裂!」バッ!

神裂「……、」ジトー・・・

上条「香焼が如何したんだ!? オレ、香焼に何かしたか?! マジで身に覚えが無いんだよ!」タラー・・・

神裂「……これはルチア的に言えば去勢モノですね」シャキッ・・・

五和「して死ぬ殺し死ぬ殺し死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬ殺して死ぬて死ぬ殺て死ぬ殺して死殺して死ぬ――」トテトテトテトテ・・・

御坂「香(かおる)ちゃんの兄貴分とはいえ……『その道』に奔った以上、アンタを含め葬らせて貰うわ」ビジバジ・・・

禁書目録「小便は済ませた? 神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタ震えてないで命乞いをした方が良いんじゃないかな?」ギンッ・・・

上条「あばばばばばばば……、」ガクブル・・・

浜面「こ、これやっぱ俺にもトバッチリくる系!?」ギョッ・・・

滝壺「大丈夫、はまづら。そんな浜面の死に水は拾ってあげる」ナムナム・・・

浜面「」チーン・・・

一方通行(あのォ。いい加減放置されんのシンドいンですけどォ……特にそこの雌ラ●チュウ、お前絶対ェ後で説教な)ジー・・・

上条「ど、どうしてこうなった」フコウダー・・・

滝壺「その血(不幸)の運命的な?」ウーン・・・

浜面「世界が二巡しても続きそうな不幸って何だよ! あーもぅ! 当の坊主は絹旗と朝チュン疑惑あるってのに!」ウガー!

女性一同『……え』ピタッ・・・

禁書目録「こうやぎともあいが」チラッ・・・

御坂「朝チュン……だと」ピタッ・・・

浜面「あれ……え?」キョトン・・・

滝壺「はまづら、何それ」ジトー・・・

浜面「え、あ、いや。さっき黒夜からメールが来て―――」


 少年説明中・・・・・


浜面「―――って訳ですが」タラー・・・

女性一同『……、』シーン・・・

上条「な、何なんだ……てか香焼、アイツまた誤解を招く様な事を。アレだけ注意しろって言ったのに」ハァ・・・

一方通行(お前が言うな)ハァ・・・

神裂「……これは」ピタッ・・・

五和「一時保留ですかね」チラッ・・・

浜面「……おい。アイツらの動き止まったぞ。今の内に逃げるか?」チラッ・・・ボソッ

一方通行(忘れ去られてるっぽいけど、頼むからオレも連れてけよ)ジー・・・

禁書目録「……とうま」チラッ・・・

上条「は、ふぁい!?」ビクッ・・・

御坂「アンタ……ノンケ? それとも黒子や結標と同じ部類?」ジトー・・・

上条「い、意味分からんが、白井や結標さんと同じ人種扱いされんのは心外ですよ」タラー・・・

神裂「ではハッキリ問いましょう、上条当麻。貴方は……香焼と付き合ってるんですか?」ジー・・・

上条「」リカウフノウ・・・

浜面「……大将、固まってんだけど」タラー・・・

一方通行(そりゃいきなりホモ疑惑フッ掛けられたら困惑すンべ)ヤレヤレ・・・

上条「いや―――――いーやいやいやいやいやいやいやいや! 上条さん、ホモでもショタでも無いですよ! 何その質問怖い!」ダラダラ・・・

五和「しかし昨日コウちゃんと公園で逢引していたとの情報が」シュン・・・

上条「逢引だぁ? ベンチ座ってくっちゃべるのが逢引っつーのかよ」ハァ・・・

五和「火の無い所に煙は起たないって言いますが……姉さん、これ『白』っぽいですよ」チラッ・・・

滝壺「その情報ソース何処?」ジトー・・・

神裂「……黒夜さんの話は間違いという事でしょうか」タラー・・・

一方通行(あのガキ、間違った事しか言わなくね? 思考がアレな所為か、決めつけたらそれしか見えねェヤツだし)ジー・・・

浜面「じゃあこの『朝チュン』情報も疑わしいな」フム・・・


 わおーん・・・・・


御坂「……か」ボソッ・・・

上条「え」キョトン・・・

御坂「解散っ!!」バッ!!

上条・浜面「「は?」」ポカーン・・・

五和「やれやれ……とりあえず一難去りましたね。あ、コウちゃん干しっ放し(物理的に)だ。早く下ろしてあげないと」アセアセ・・・

禁書目録「まったくもー。人騒がせなんだよ……あ、かおりー。今から昼ごはんお邪魔して良いー?」テクテク・・・

神裂「はいはい、どうぞ」ニコッ

上条「へ?」キョトン・・・

浜面「あ、むぎのが家に一人だ……まぁいっか。夜まで寝てるだろうし、絹旗も帰り遅いよな。滝壺、どっか寄ってから帰るか」ハァ・・・

滝壺「うん」ウキウキッ

上条「あ、れ?」ウーン?

御坂「ったくもー……ほら、アンタいつまで寝てんのよ。邪魔になるから帰るわよ」ズルズルズルズル・・・

一方通行(ぐべェ!? チョーカー引っ張んな!! お、ま、後で絶対ェ殺すかンな! あ、ちょ、マジで首〆るっ!!)ピチピチ・・・


  カー・・・カー・・・・・


上条「んー……何だ、これ」アボーン・・・チーン・・・







かぶとむしさん「おわりますよ」ピヨピヨッ

はい、gdgdったけど以上です。
黒夜の後日談が書けなかったけど、需要あるんだか無いんだか。まぁ別の機会に。


>>347・・・1レス短編とか上手に書ける様になりたいですね。その内別スレか携帯からやってみようかな。

>>348・・・カルテッ娘だとサーシャとレッサーのアフターがまだですね。あ、親戚のSSだけど!



引き続き第Ⅲ話のアンケート!


①英国編:アンジェレネメイン(真面目orほのぼの)

②英国編:アニェーゼメイン(真面目orしんみり)

③都市編:黒子メイン(真面目&ピリピリ)

④その他(具体的にお願いします)


※()内は未定です。


もし見てらっしゃる方で未回答いらっしゃったら協力お願いします。
それでは質問意見感想罵倒もよろしく! じゃあまたね! ノシ”

ここのカルテッ娘が見たいから常駐してる人もいるんですよ!俺みたいに!

ということでカルテッ娘スピンオフ期待

春上さんとか

駒場さん出すなら変にキャラを変えてほしくないな

超電磁砲Sの特典小説、まさかの天草式がメインとか

・原作者・鎌池和馬書き下ろし小説(イラスト/はいむらきよたか)
  「とある魔術の禁書目録SS -『必要悪の教会』特別編入試験編-」
  全巻集めると、なんと電撃文庫二冊分のボリュームに!
  天草式十字凄教の面々は、イギリス清教の一員になれるのか……?
  原作小説7巻後の、知られざるエピソードを描く!

こんばんわ、お久しぶりです。
近々ネットの回線が変わるかもしんないのでちょっと書き溜めする事になるかもしれません。

スピンオフというか携帯からの投稿については追々書こうかと。


レス返信!
>>358-359・・・確かにカルテッ娘出したいですね。出来ればやっぱ香焼関係無くってのがベターかな

>>360・・・春上さんメインかぁ。どんなんだろう? 『よつばと』的なノリで皆と絡ませるとかw

>>361・・・私の書く『駒場さん』だと、どうしても二面性になってしまうのが難点ですね。駒場さん本人でSS書くのは難しいかも

>>362・・・まぁじで!? しかしDVD集めるのは……うーん(苦笑)



とりあえず、書き溜め分ある程度投下します!

 ―――とある日、AM10:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』敷地内、多目的グラウンド・・・・・






『魔術師』と言われてパッと思い付く印象は『根暗』だったり『陰湿』だったり、ドチラかというとインドアなイメージが先考してしまう。
実際に『真理』やら『根源』に近付く為、引き籠り気質の研究者タイプな魔術師も少なくはない。
『協会』の魔術師なんかはそういう輩が多いと聞く。確かに魔術を極める上では其方の方が正しいのかもしれない。

だがしかし、そんなタイプの魔術師は非生産的で、現場からしてみれば―――ただの自慰行為に励むオタクにしか思えない。
逆に彼らからしてみれば現場で活躍する魔術師を『野蛮』とか『品が無い』とかいうのかもしれないが……話が逸れたか。

兎に角、僕ら―――必要悪の教会(ネセサリウス)の人間は前者のヒッキー型魔術師ではない。
故に一般教養・常識は必要不可欠だし、MP的な魔力以外にHP的な体力(スタミナ)も底上げしとかなければならないのだ。


建宮「―――よーし、香焼。浦上。もう少しピッチ上げるのよな」ピーッ・・・

香焼「はい」タッタッタッタッ・・・

浦上「はいはーい」タッタッタッタッタッ・・・


何をしているかというと、英国教会及び騎士派での若手合同トレーニングというモノ。
主に基礎体力及び体術、それから応用で魔術・術式指導といった形である。今はアップがてらの長距離走の最中だ。

因みにこれは主教や騎士団長主催のモノなので若手の魔術師や騎士見習いはほぼ強制参加。
中堅所や玄人・年輩(ベテラン)陣の多くは指導側に回っている。


神裂「ふむ……やはり天草式(ウチ)の教徒は体力面では優秀ですね」フフッ

建宮「でなけりゃゲリラ戦法なんかやってられんのよね」ジー・・・

諫早「昔ながらそうですからなぁ……私から見りゃ、建宮。お前も参加する側なんだが」チラッ

建宮「じっさん。そりゃ勘弁なのよね」ハハハ・・・


我らが天草式の女教皇様(プリエステス)と教皇代理、及び相談役(諫早さん)、他数名は所謂講師陣。
他にはというと―――


騎士団長「流石St.神裂の教徒といったところですね。あのスタミナは羨ましい」コクッ・・・

神裂「いえいえ。騎士派の見習い達も中々優秀ですよ。常日頃から鍛錬が為ってる様ですね」チラッ

騎士団長「ははは。仮にも『騎士』を名乗る以上それ相応のモノを身につけて貰わねば。日本で言うところの『ブシドー』というヤツです」ムンッ

オルソラ「あらあら。相変わらず騎士団長殿と神裂は仲の良い限りでございますね」ニコッ

騎士団長「そ、そうですか! いやぁ難とも」ハハハ

シェリー「……単純な野郎だ」ジトー・・・

建宮「騎士道だの武士道だの、古臭い人なのよね」ジトー・・・

対馬「お馬鹿、聞こえるわよ」ヤレヤレ・・・


―――あんな感じ。


諫早「やれやれ。まだまだ若いな……おい、牛深ー! 野母崎(ノモ)ー! 周回遅れだぞー!」キッ!

牛深「あいあい……何でオレらはトレーニング側(コッチ)なんだか。普通指導側(アッチ)っしょ」ダラダラ・・・

野母崎「てか、建宮と対馬がアッチってのが気に食わん。コッチ来やがれ、アラサー組」ダラダラ・・・

諫早「馬鹿共! 無駄口叩いてると10週くらい追加するぞ!」ガーッ!

牛深・野母崎「「勘弁してくれ」」ウヘェ・・・


何故か若手と混じってトレーニングしてる兄貴分2人。先日羽目外して呑み屋で粗相した罰だとか何とか。

そんな彼らを後目に黙々と走る自分。それから隣で軽口叩く馬鹿二号。


浦上「にゃはは。あの2人は相変わらずですネー。建宮さんは良い様に逃げたのカナ?」フフッ・・・

香焼「お前、随分余裕だな」ハァハァ・・・

浦上「んにゃ。んな事ぁ無いですヨ」ニコッ

香焼「嘘吐け……何で自分のペースに合わせてんのか知らんけど、もうちょい前の連中辺りに付けよ」ジトー・・・

浦上「いやぁ此処で無理すると後々大変ですからネ。香焼のペースくらいが丁度良いんですって」♪


腹立つ事を。コイツはコイツでいつも上手に抜き所を選んでる。
僕の持久走ペースは並の中学男子のちょい早いくらいだが、天草式の若衆の中ではケツの方。
でも浦上は実際、中学三年にして超高校級のアスリートレベルだったりする。若衆の中ではそれこそトップクラスの筈。


浦上「まぁお姉達程じゃないですけど」チラッ

香焼「……、」タッタッタッタッ・・・


若手の先導集団―――騎士派の男子と並走する我らが若衆筆頭殿……と、嘱託結社のリーダーさん。そして武装修道女部隊の参謀殿。


若手エリート騎士's「―――」タタタタタタッ・・・

五和「―――」スタタタタタタッ・・・フゥ・・・

ベイロープ「―――」スタタタタタッ・・・ムッ・・・

ルチア「―――」スタタタタタッ・・・ハァハァ・・・


マジでプロの陸上選手かってくらい早い。今からアスリートとして転向してもやってけるだろう。


香焼「騎士派のエリート候補の人達も凄いけど……あの三人も男性に負けてない辺り、ヤバいよね」ハハハ・・・

浦上「いやはや。凄いスゴい」ヒョー

レッサー「フゥ……追い付いたぁ。なぁにが凄いんですか?」ピョコッ

浦上「およ? あら、レッサー」キョトン・・・


丁度僕らの真後ろからピッチを上げて詰め寄ってきた3人。


アニェーゼ「ハァハァ……アンタら早過ぎんですよ」タッタッタッタッ・・・

レッサー「アニェーゼっちー。無理に私に付いてくる必要無いですよ。それでも周回遅れしてるんですから」チラッ

アニェーゼ「うっせ……フゥ……こちとら部隊長っつー面子があるんですよ。ある程度キバんねぇと下に示しが付かねぇんです」ハァハァ・・・

浦上「頑張りますネー、隊長さんは。まぁそれでも部隊の中では真ん中くらいみたいですけど」フフッ

アニェーゼ「言ってくれるなっ……ハァハァ……これでもまだ12(歳)なんです……アンタらのペースが早過ぎなんですよ」グデェ・・・

レッサー「と言いますが私と貴女じゃ1,2歳程度しか変わらないんですよ。まぁ肉体派魔術師じゃないですからしゃーないか」フム・・・

アニェーゼ「くっそー……余裕ブッこきやがってぇ」ハァハァ・・・


いつの間にかアニェーゼのペースに合わせてる僕達。建宮さんに目付けられそうで怖いな。
さておき、先程から一緒に付いてきてたもう一人はというと―――


フロリス「……かったりぃ」ダラダラ・・・

浦上「にゃははは。ですよネー」ポリポリ・・・


―――不良娘2トップが並んでしまった。これは指導者側の目に入る。

しかし中堅の目も気にせず、グダグダと他愛無い話を続ける姉貴ーズ。


フロリス「ルチアっちは相変わらず真面目過ぎんだよ。こんな訓練、給料にもならねぇんだから手ぇ抜けっつの」ジトー・・・

浦上「まぁでも、お宅のリーダーと五和はガチであのスピードなんだろうけどネ」ジー・・・

レッサー「んー? 堅ブツさん(ルチア)は違うんですか?」チラッ

アニェーゼ「ふぅ……あの子、根性で付いて行ってるんですよ。実際のペースはもっと遅い筈です」ハァハァ・・・


では何故、後先考えずアップがてらのこのランニングで飛ばしているのだろう。


アニェーゼ「真面目なのもありますが単に負けず嫌いなんですよ、あの子。あとまぁ騎士派、ってか男性に負けたくないんでしょう」ジー・・・

フロリス「なるへそ」ヘー・・・

浦上「『女嘗めんな』って感じですかネ……いや『アニェーゼ(ウチの)部隊嘗めんな!』って方かな?」フーン・・・

フロリス「どっちもじゃないか」チラッ

アニェーゼ「さぁ、どうでしょ……ハァハァ……もうヤバい。あと何周ですか?」グデェ・・・

香焼「自分らがあと1周半だから……アニーは2周半かな。頑張ろ」フゥ・・・

アニェーゼ「うぃ」ハァハァ・・・


今更だが、この多目的グランドは並の陸上競技場程の広さがある。(400mトラック程)
加えて外周は、それなりの距離のランニングコースになっているのでアップには丁度良い感じだ。とりあえずペースを崩さない様にしないと。


浦上「え? もうあと2周なの?」キョトン・・・

香焼「おま……適当なペースで走ってるから確認してなかったな?」ジトー・・・

フロリス「んなモン必要無いっての……ったく。リーダーも何でこんな面倒訓練参加するなんて言い出すかなぁ」ハァ・・・

レッサー「うーん……あの人も変に真面目なとこありますからね」ハァハァ・・・

アニェーゼ「当たり前です。上に立つ輩が適当じゃ……ハァハァ……組織が成り立ちませんよ」フゥ・・・


説得力のあるお言葉。


アニェーゼ「ハァハァ……とりあえず、ウラカミ。フロリス」チラッ・・・

浦上・フロリス「「ん?」」キョトン・・・

アニェーゼ「アンタら、そろそろ真面目に走った方が身の為ですよ」フゥ・・・

浦上・フロリス「「え?」」ポカーン・・・


指導陣の方を顎で指す。そこには……怒髪天のクワガタ頭。


建宮「ウラぁー! フロリスー! 手ぇ抜いてんじゃねぇのよなーっ!」ウガーッ!

浦上・フロリス「「うげっ」」ギョッ・・・

神裂「まったくあの子達は」ハァ・・・

対馬「気持ちは分かりますけどね……2人とも! 前の集団追い越せなかったら騎士団長に一本入れるまで終わらない模擬戦だからね!」バッ

騎士団長「え」ポカーン・・・

シェリー「おうおう、キッツいねぇ」フフフッ

オルソラ「まぁまぁ。あの子達は最近お痛が過ぎているのでございますので……良い薬かと」ニッコリ・・・


ほれ見た事か。ざまぁみろ。

戸惑う騎士団長を余所に、勝手に話が進んでる様だ。勿論、困るのは騎士団長だけではない。


浦上「え、何それ!? ムリゲー!!」タラー・・・

フロリス「なっ……わ、私は別にアンタらの言う事聞く義理無いし―――」


五和「―――よっと。男女混合で7着……結構好タイムですね。でもベイロープに負けちゃいましたか」Pi!

ルチア「ハァハァ……ゲホゲホッ……流石に、疲れましたね……あー、私何着でしょう?」ヨロヨロ・・・

ベイロープ「ふぅ。何とか体裁は保てそうね……ルチアは12着。頑張ったじゃない……あ、騎士団長。フロリスお願いしますね」チラッ・・・

騎士団長「あ、はい」コクッ

五和「浦上もしっかり扱いてやってくださいね」ニッコリ

騎士団長「え、うん」コクッ


浦上・フロリス「「―――……、」」タラー・・・


突如、700m地点から無言で猛ダッシュを掛ける2人。速過ぎだ、アイツら。あからさまに手抜きがばれる。


レッサー「コウヤギ。そんじゃ私達も競争と行きましょうか? 私に負けたらスパッツかブルマ穿いて貰いますね」ニヤリ・・・

香焼「っ!?」ギョッ・・・

アニェーゼ「ぜぇぜぇ……アンタらも余裕あんじゃねぇですか」ジトー・・・


とりあえずブルマやらはさておき、女教皇様の前で無様な順位を晒すのは嫌なので400m地点でスパートを掛けた。
因みに……何とか勝てました。(レッサーの尻尾掴みました。反省はしてない、でも一応謝ってやる)



  ――一寸後・・・・・



香焼「ふぅ……疲れる」グデェ・・・

浦上「うげぇ……マジ危なかったぁ」ダラダラ・・・

フロリス「ホント、冗談キツいわ」ダラダラ・・・

レッサー「ふにゅぁ」ダラダラ・・・


休憩がてらのストレッチで多くの若手が愚痴っていた。
一応この訓練にもタイムスケジュール的なモノはある訳で、速くゴールした連中の方が必然的に長く休める事になる。
僕やレッサーは丁度真ん中の方なので比較的普通の休憩時間となった。

兎に角、今から始まるハードなスケジュールで節々を痛めぬ様、息を整えながら念入りにストレッチをしておく。
そんな僕らの近くに、スポドリを持った友人が駆け寄ってきた。


サーシャ「皆さん、お疲れ様です。とりあえず第一の補給ですよ」トコトコ・・・

香焼「あ、うん。ありがとう」コクッ


一応ロシアからの使者たる彼女は今回の訓練とは無関係。
しかし、義理堅いというか友人想いの彼女は参加はせずとも給水救護等の手伝いをしていた。


レッサー「サーシャぁ……貴女だけ参加しないなんてズルいですってー」ジトー・・・

サーシャ「と言われても。第一の回答ですが、仮にも一線を置いてる身なので」ハハハ・・・

香焼「そうだよ。こうやって水持ってきてくれるだけでも感謝しなきゃ」コクッ

レッサー「うぃ……あ。アニェーゼっちが到着ですね」チラッ・・・


ヨロヨロと此方に歩み寄ってくる部隊長殿。歳相応以下の体躯の割には頑張った方だと思う。

サーシャを見るや否や一目散に水を受け取り、ガブ飲みした後その場に転げ込む。


アニェーゼ「ハァハァ……ふぅ……きっつー」ゴロン・・・

サーシャ「お疲れ様です。第一の助言ですが、キチンとストレッチしないと硬くなりますよ。怪我の元です」スッ・・・

アニェーゼ「あんがと……ふぅ。まぁボチボチやりますよ」グググ・・・

フロリス「しっかし、こんな真面目な訓練すんのなんて始めてだな。アップでこれとは……キッツいぞ」フゥ・・・

レッサー「所詮、新たなる光(私ら)は結社ですからね。魔術以外の訓練なんてマトモにした事無いですよ……其方は?」チラッ

アニェーゼ「ふー……部隊(ウチ)はローマ時からこういう訓練してましたけど、やっぱ騎士派(野郎共)が居ると違いますね」ジトー・・・

浦上「天草式(ウチ)は基本男女混合でスポ根連中が多いですから」ポリポリ・・・


聖人たる女教皇様筆頭に、建宮さんや五和など、頭脳派より肉体派が多い部隊だ。
加え高校大学生くらいの年代も多い為、こういう基礎訓練では周りより秀でる事が多い。

まぁ……そん中でも僕くらいに半端な実力の者いるけど。


サーシャ「また卑下を。第一の意見ですが、コーヤギーはまだ身体が出来てないでしょう。所謂成長期真っ只中です」ピッ!

レッサー「今無理しちゃうとタダでさえちっこい身長が現状ストップしちゃいますよ。それはそれでショタキャラ貫けるでしょうけど」ニヒヒッ

香焼「むっ……レッサーやサーシャだってそんなに大きい訳じゃないじゃん」ジトー・・・

レッサー「べっつにー。私は女子ですから小柄で可愛い系でも通せますよーん」フフッ

サーシャ「馬鹿の意見はさておき、第一の反論ですが、お国の血筋柄多少無理をしても身長は伸びますので」ツンッ


畜生。日本人がチビなのが裏目かしい。
そんなこんなしてる内に、後続組が続々到着。時間的にもそろそろゴールしとかないと次の訓練を迎えるのに厳しい頃だ。


建宮「―――さて、と。殆どゴールしたみたいなのよな」ジー・・・

対馬「残り数名ね。リスト見る限りでは、まぁ予想通りの面子かしら」ハハハ・・・

騎士団長「どれどれ。んー……流石に男子は居ない様だな」フム・・・


指導者陣が次の訓練の準備に入る様だ。それにしても、まだゴールしてない人が居るのか。


浦上「流石に天草式(ウチ)の連中じゃないと思いますけど……あー」チラッ・・・

アニェーゼ「……はぁ」ポリポリ・・・

フロリス「やれやれ」フゥ・・・


よくよく考えたら、僕らの友人に体力事が苦手な娘も居たな。


香焼「……アニー」チラッ・・・

アニェーゼ「まぁあの子は、ホントこういうの苦手ですから。本人なりに頑張ってんでしょうけど」ムゥ・・・

レッサー「ウチのお嬢も持久力無いですからね」ハハハ


人には向き不向きがある。仕方あるまい。
そんなこんなやっている内に、次の課目が始まる時間帯。ボチボチ整列を開始いた辺りで……漸く彼女達が現れた。


アンジェレネ「ハァハァ……うー」ヘタヘタ・・・

ランシス「ゼェゼェ……もう、だめ」クタクタ・・・


ビリっけつ。ゴールと同時に芝生へ蔕り込んだ。

そんな2人の姿を見てか、整列の中から嘲笑がこぼれるのが聞こえた。


サーシャ「2人とも、お疲れ様です。と言いたいところですが……第一の報告です。もう次の課目ですよ」ポリポリ・・・

アン・ラン「「むきゅぅ」」グヘェ・・・


 クスクス・・・ アレ ドコノブタイダヨ  フフッ ローマダロ  アト、ショクタクノ・・・ クスクス・・・


ルチア「っ」ギリッ・・・

ベイロープ「ったく……あの子は」ヤレヤレ・・・

騎士団長「静粛に」キッ・・・

一同『……、』ピタッ・・・

騎士団長「アップがてらの長距離走御苦労。少しは堪えた様だな。えー、では次の訓練だが―――」


此方に向けて一言。団長さんが皆の意識を逸らしてくれた。
考えようには、二人を捨て置いて次のメニューに入ったといっても過言ではないかもしれないが……止むを得まい。


オルソラ「あらあら。クタクタでございますね。少々休んでから次のメニューに参加なさった方が宜しいと思いますよ」スッ・・・

アンジェレネ「だ、大丈夫……ハァハァ……です」グッ・・・

ランシス「むぅ……私は、ちょっと休むよ」クタァ・・・

サーシャ「アンジェレネ。第一の助言ですが、無茶をしないで。自分のペースで参加するべきですよ」トンッ

アンジェレネ「ふぅ……ありがとう、サーシャちゃん。ホント大丈夫だから。心配しないで下さい」ニコッ・・・


ヨレヨレと危なっかしい足取りで整列に加わるアンジェレネ。結局、碌に休憩も取らずに次の瞬発力・筋力トレーニングに参加していた。


神裂「やれやれ……対馬」フフッ

対馬「はいさ。いつでも救護出来る様にしておきます」コクッ

シェリー「タダの悪戯娘じゃねぇってこったな。ま、今日は旨いモン喰わせてやっか」ハハッ


あの根性は評価に値する、といった感じかな。


サーシャ「もぅ……第一の予想ですが、この場合貴女の判断が正しいと思いますよ。ランシス」チラッ・・・

ランシス「別に正しいとか間違ってるとかじゃないでしょ。とりあえず私はベストを尽くせる状態まで調子戻ったら参加するよ」フゥ・・・

サーシャ「賢いですね。まぁ因みに……第一の気休めですが、貴女がビリじゃないので悪しからず」コクッ


外周の方を指差すサーシャ。そこには―――


ステイル「ぜぇぜぇ……ハァハァ……ゲホゲホッ」グデリグダリ・・・

一同((((……えー))))タラー・・・


―――主教補佐殿の姿。


諫早「あー、主教補佐。あと4周残ってるぞ」ポリポリ・・・

ステイル「ぐぅ……何故……僕が、こんな学生の体育の授業みたいな事を……ゲホゲホッ!」ガビーン・・・

建宮「やれやれ。ステイルは特別メニューで午前いっぱいランニングさせる、で良かったのよな?」チラッ・・・

神裂「ええ、あの子は……ローラからそう指示されてます。今日一日でニコチン全部絞り出すくらい走らせろと」ジトー・・・


偶には運動しろ。軍覇を見習え。

 ―――とある日、PM04:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』敷地内、多目的グラウンド・・・・・





一通りの訓練が終了し、女教皇様が閉講宣言をした。騎士見習いも魔術師も若手一同は皆グッタリしている。
そんな中、ある者は律義に自主トレを始め、ある者は講師陣には内密に合コンのセッティングを始めたりしてる。

僕はというと……とりあえずステイルの介護。


香焼「んもー。だらしない」ハァ・・・

ステイル「」ウッセ・・・

香焼「何で外周8周に半日掛るのさ。仮にも教徒が見てる前でしょ」パタパタッ・・・

ステイル「」スキデ サンカ シタンジャ ナイ・・・ローラガ・・・コロス アノアマ・・・

香焼「何言ってるか分かんないっすよ。とりあえず今のステイルの姿、軍覇と最愛に写メ送って良い?」ジー・・・

ステイル「……勘弁しろ」グダグダ・・・


やっとの事身体を起すステイル。そのまま何処から取り出したのやら、煙草を咥えた。


ステイル「火」チラッ・・・

香焼「無いよアホ。てか此処禁煙だ」ハァ・・・

ステイル「知るか。あーもぅ……魔力練るのもダルいな」ボッ・・・

香焼(今喫ったら、きっと―――)

ステイル「っ……ゲホゲホッ! ゴホゴハッ!!」グラグラ・・・


―――言わんこっちゃない。気管支へのダメージとヤニクラの所為で再度ヘタり込むノッポ馬鹿。
相当むせたのか、嫌な咳が止まらない様子。良い薬だと思いつつも、可哀想なので水を渡してやった。


ステイル「ッ~~……う”ぅ……死ねる」ダラダラ・・・

香焼「ニコチンとタールに殺されるなら本望だとか言ってなかったっけ?」ヤレヤレ・・・

ステイル「喧しい、ぼけ」グデェ・・・

香焼「言葉に迫が無いっすよ。まったく、女教皇様に見つかったら何言われるか」ハァ・・・


未だ建宮さんや騎士団長達と今日の指導の総括やら振り返りをしているコーチ陣の方を見遣る。
すると、其方の方からトコトコ歩み寄ってくる影が見えた。


アニェーゼ「あら。まだ残ってやがったんですか。二人でひっそりホモホモしいこって」テクテク・・・

香焼「アニー……勘弁してよ」ハァ・・・


ホモ疑惑はこりごりです。


レッサー「え? でも……コウヤギはカミジョーと付き合ってるって皆言ってますけど……ねぇ」モジモジ・・・///

香焼「まだ言うか。尻尾捥ぐぞ」ジトー・・・

サーシャ「それについては追々聞きますが……先にマグヌス。第一の所感ですが、ダラしなさ過ぎます」ジトー・・・

ステイル「煩い。余計な御世話だ」フンッ・・・

アニェーゼ「主教補佐殿が下々の者と共に訓練に参加するなんて聞いてたんで、どんな鼓舞かと思いきや……呆れますね」ハハッ

ステイル「……黙ってろ」ムスー・・・


反論したくともまだまだ疲労が残っていて言い返す気力も無いステイルさん14歳。

さておき、そういう三人もまだ残ってたのか。


アニェーゼ「私は部隊長として、サーシャは今日の手伝い要員として訓練の総括に参加してたんです」クイッ

サーシャ「まったく、St.オルソラに捕まらなければ補給救護班の手伝いなどしなかったモノの」ハァ・・・

レッサー「とか言いつつ、模擬戦とか参加したくてウズウズしてた口じゃないんですかー?」ニヤッ・・・

サーシャ「だ、第一の反論ですが人を何処ぞの戦闘狂みたいに言わないで下さい!」ムゥ・・・


高位の魔術師とか高強度の能力者って、何故か分からないけど『心躍る闘い』みたいなのを求めるからなぁ。


レッサー「因みに私はリーダーを待ってました。今日はフロリスの車で来たんで全員揃わないと帰れませんでしたから」コクッ

香焼「成程……あ、そういえばアンとランシスは?」キョロキョロ・・・


出だしで遅れた所為か、その後の訓練も本調子では無かった二人。
ランシスのは瞬発力・筋力トレーニングをガッツリ休んでた御蔭で、その後の基礎魔術訓練やら模擬戦はボチボチ参加できてたが、
アンジェレネの場合、根性で最後まで付いて行こうとしてたのでダラダラと全力を出せないまま最後まで訓練に参加していた。


レッサー「ランシスは基礎魔術で気になった所があるみたいなんで講師陣に質問しに行きましたよ。まったく、私に聞けば良いモノの」ヤレヤレ・・・

サーシャ「第五の意見ですが、貴女は天才肌なのでモノを教えるのに向かないでしょう」チラッ・・・

アニェーゼ「天才肌なのは認めますが……それ抜きにして、レッサーからモノ教わろうなんて気にはならねぇですね」ハハッ

ステイル「珍しく同意しよう」コクッ

レッサー「酷っ! いやでもある意味褒められた?」ムーン・・・


僕から言わせれば此処に居る4人は一同、十代にしてエース級の『天才』と呼ばれる神童達だ。
才能無き者が有る者に追い付く為の『魔術』とはいわれるモノの、その『魔術』を開花・磨くという点で秀でている彼ら。
僕がどんなに努力した所で魔術師としては追い越すは愚か、追い付く事も出来ないだろう。


ステイル「……それで、アンジェレネは?」チラッ・・・

アニェーゼ「アンは……まぁ、うん」ポリポリ・・・

サーシャ「第四の返答ですが、先程までルチアにお説教を受けていましたね」アハハ・・・

レッサー「ほーんと、可哀想に。人には向き不向きあるんですから仕方ないですよ。ねぇ、スタミナGの主教補佐さん」ニヤッ・・・

ステイル「だから黙れ。弱点丸出し女郎」ニギッ

レッサー「ふ、ふにゃああぁっ!? し、しっぽはらめてくらさああぁいいぃっ!!」ミギャアアァ!!


武器にして弱点って如何なんだろう。諸刃の剣ってヤツかな。さておき、アンジェレネだが……今もルチアさんの説教を受けてるんだろうか。


サーシャ「いや、それは無い筈です。第二の解説ですが、先程ルチアはウラカミとフロリスに連れ去られてました」コクッ

レッサー「引き離したんでしょう。『普段の生活態度が現れてる』だとか『精進が足りない』とか憐れになる様な事言ってましたから」ハァ・・・

アニェーゼ「ったく。ルチア(あの子)は頭硬くて困ります。自分にも他人にも厳しいですから……美徳っちゃ美徳なんでしょうけど」ヤレヤレ・・・


五和や浦上もそんな事言ってたっけ。


レッサー「あ。でもさっきルチア、騎士派のイケメン'sに声掛けられまくってましたよね」ニヤリ・・・

アニェーゼ「あの子は絵に描いた様な敬虔なクリスチャンですからね。身内贔屓抜きでも容姿もベッピンさんですから」フゥ・・・

サーシャ「第三の補足ですが、スタイルも良いですしね。しかも色んな意味で『強い』女性……魅かれる男性は多いのでしょう」コクッ

レッサー「そのまま合コンでも行ってくりゃ良いのに。現にウラカミとフロリスに連れてかれそうになってましたけど」フフフ・・・

ステイル「フロリスが合コン行ったら、君ら車(アシ)無くなるんじゃないのか?」ヤレヤレ・・・


それ抜きで、浦上のヤツ……またもやルチアさんを悪い道に引き吊り込もうとしたがって。姉さんに言いつけてやる。

それは後にするとして……問題のアンジェレネさんは如何したのだ。


アニェーゼ「自主トレだと。アンジェレネ(あの子)はあの子で、思い込んだらとことん思い詰めるタイプですから」ハァ・・・

香焼「自主トレ……何処で? グランド内には見えないけど」キョロキョロ・・・

サーシャ「第五の返答ですが、外周をランニングしてます。律義にも苦手分野を特訓するんだそうで」コクッ

レッサー「クールダウンならまだしも、終わってからのマラソンだなんて……ぶっちゃけマゾもいいとこですよ」ヤレヤレ・・・


難とも根性論的思考。レッサーが言うとおり、まるで意味が無い。


ステイル「やれやれ。そんな無理をしなくともランシスの様に他に学ぶべき事があるんじゃないかい」フゥ・・・

サーシャ「同意します。第六の意見ですが、あまりに非効率かと。これでは徒労ですよ、部隊長殿(アニェーゼ)」チラッ


ポリポリと頬を掻き、困った顔をするアニー。言いたい事は何となく分かる。
頑固なアンに言っても無駄だし、何より彼女の意志を尊重したいといったところだろう。


アニェーゼ「まぁ夕飯までには戻る様、付き合うつもりですよ。それ以上続けるようなら耳引っ張ってでも連れ帰ります」ハァ・・・

レッサー「御苦労な事で……あ、リーダー終わったみたいです。じゃあ私はこの辺で」アハハ・・・

サーシャ「お疲れさまでした。また明日」コクッ

アニェーゼ「あいよ。お疲れさん……さーて、じゃあ私も―――」フゥ・・・


部隊長というより『お姉ちゃん』として『妹』を心配する様な顔。


アニェーゼ「―――ほれ、わんこーやぎ」グイッ

香焼「へ? ぐほっ!?」ゴロッ・・・

アニェーゼ「私だけ走んのも難ですから。連いてきなさい」ハリー!

香焼「は……えぇ? そ、そこの二人は?」タラー・・・

サーシャ「あ、わ、私はこの後大使としての仕事がー」ヒューヒュー・・・

ステイル「……そいやぁ仕事が溜ってるなぁ」キョロキョロ・・・

香焼「お、お前ら……自分も天草の仕事が―――」

アニェーゼ「かーんーざーきー! たーてーみーやー!」オーイ!

香焼「―――ちょ、アニー!?」タラー・・・


 ハイハーイ。  ナンナノヨナー?

アニェーゼ「わーんこー、借ーりまーすよー」ノ"

 ドーゾー。  チャント カエスノヨネー。


アニェーゼ「うぃ。良いって」クイッ

香焼「」チーン・・・


おー人事。おー人事。


アニェーゼ「そんじゃ行きましょうか」ズルズル・・・

ステイル(どなどなどーな~、ど~な~)ノシ

サーシャ(コヤギを乗ーせーて~)ノシ


やれやれ、薄情者共め……まぁやるからには頑張りましょうか。友人の為にも。

はい、今日は以上で。サブタイなのにアンジェレネが全然出ない謎。因みに、また書き溜めるかもしれません。

携帯投下については来週からの通勤時間と仕事内容に因りますので悪しからず。
因みに、クロスオーバーとかは割とやり尽くされてますよね。


それでは例の如く質問意見感想罵倒リクエストなど等、よろしくお願いします! ノシ”

こんばんわ。ボチボチ投下。寝落ちたらスマソ。

あ……私まだ劇場版見てないです……

まぁでも噂程度にどんなキャラかってのは知ってますので、差し支えない程度に弟子魔女やらアリサさん達をニュアンス出しします。
そんじゃよろしく。

 ―――とある後日、AM10:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、主教補佐執務室兼私室・・・・・



  カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「―――……ふぅ」ドサッ・・・

ステイル「流石に仕事を溜め過ぎたね」ヤレヤレ・・・

ステイル「しかしまぁ書類が多過ぎる。一応、僕のメインはデスクワークではなく現場の人間なんだが」ハァ・・・


  カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・


ステイル「チッ。ローラの奴、少しは自分で判を押せっての。僕と神裂に任せっ放じゃないか」カキカキ・・・

ステイル「ホント、『主教補佐』だなんて大それた肩書きが怨めかしいな。というか望んで就いた訳じゃないのにな」グデェ・・・

ステイル「なぁにが『それ相応のラベルがありける方が迫が出たもうてよ』だボケ。結局、仕事押し付ける為だろ」ポリポリ・・・スッ・・・


  カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・


ステイル「ったく、火が点かん……遣る瀬無い。とりあえず一服だな。コーヒーでも……おい、香や―――」チラッ・・・


    シーン・・・


ステイル「―――って……馬鹿か、僕は」ハァ・・・

ステイル「……、」ウーン・・・

ステイル「今日は香焼(アイツ)、都市に居るのか。じゃあ神裂も一緒だな」ムゥ・・・

ステイル「いっその事ローラに茶でも淹れさせるか……いや、止めとこう。何を盛られるか分かったもんじゃない」ハァ・・・

ステイル「あーもぅ……しっかし、この間の筋肉痛がまだ取れないな」コキコキ・・・

ステイル「運動不足、じゃない筈なんだけどね。定期的に身体は動かしてるし……何故だかなぁ」フム・・・


   Prrrrrrrrr!


ステイル「ん? 内線……じゃないな。携帯でも無い……あー」ジー・・・


   Prrrrrrrrr!


ステイル「PCのテレビ通話か。如何使うんだったかなぁ……おーい、香y―――だから僕は馬鹿か」ポリポリ・・・

ステイル「というか誰からだ? アドレス登録の仕方分からないから香焼とレッサー、サーシャ以外は非通知だし……無視ろうか」フム・・・


   Prrrrrrrrr!


ステイル「……、」ジー・・・プカー・・・


   Prrrrrrrrr!


ステイル「……、」ジー・・・プカプカ・・・


   Prrrrrrrrr!


ステイル「……だぁもう! 此処か? クリックするだけで良かったか?」Pi!


  ピコーン・・・・・


ステイル「あーはい。此方ステイル=マグヌス。ドチラさまで?」カチッ・・・

?????『あ! やっと出ました! おーい、ステイルさーん』ノシ”

ステイル「……え」ピタッ・・・ポカーン・・・

?????『もしもーし……あれ? 無反応? ちょっとお姉さーん。これちゃんと繋がってるー?』チラッ

??????『んー……おーい、根暗メンヘラツンデレロリコン公害煙スタミナG木偶の坊似非神父34歳。聞こえてるかー?』カチカチッ

ステイル「……聞こえないから切るぞ」スッ・・・

??????『何だ。聞こえてるじゃないか。というか通話に出るまで1分近く掛けるとか阿呆か、貴様は』ヤレヤレ・・・

?????『もう、お姉さん。そういう口の悪い言い方しないの! ごめんなさいね、ステイルさん』ペコッ・・・

ステイル「いや……君は悪くないよ、パトリシア。悪いのはそっちの性悪ブラコン黒幕気取り似非カリスマ10ちゃいな姉の方だ」ハァ・・・

レイヴィニア『よしっ。その喧嘩買った』グイッ

パトリシア『んもー。だから売り言葉に買い言葉は駄目ですって! 二人とも子供なんだからぁ』ムゥ・・・

ステイル・レイヴィニア「『むっ』」ポリポリ・・・

パトリシア『やれやれです……あ、それよりいきなり電話しちゃってすいません。お時間大丈夫ですか?』チラッ

レイヴィニア『大丈夫だ、暇に決まってる。コイツは忙しかったら英国に居ないからな』フンッ

ステイル「まぁ多少は。どうしたんだい、パトリシア。何か用があって連絡してきたのだろ」サラッ

パトリシア『あ、いや、特に用という用という訳じゃないんですけど……迷惑でしたか?』テヘッ

レイヴィニア『迷惑な訳が無いだろう。私らはコイツのお得意様なんだ。無碍には出来んて』フンヌッ!

ステイル「迷惑という訳ではないが……まぁいいさ。丁度コーヒーでも飲もうかと思ってた所だからね」フム・・・

パトリシア『ふふっ、ありがとうございます。あ、実は今私達ムンバイに居まして』エヘヘ

レイヴィニア『クルーズの上だぞ、クルーズの。勿論「私」の船だ。わ・た・し・の!』ドヤァ・・・

ステイル「インドに? じゃあ其方は昼過ぎくらいか。これまた何故?」ホゥ・・・

パトリシア『お姉さんの付き添いでちょっとした旅行(?)的なモノです。これからスリランカに向かいます』コクッ

レイヴィニア『いやぁ船旅は良いぞ。お前は基本飛行機だろうが、船は良い。視野が広まるな』ウンウン・・・

ステイル「過保護な君の姉の事だ。一時たりとも離れたくないんだろう」フフッ

パトリシア『ええ。お姉さんは私が居ないと寂しがってダメダメな兎さんですからね』クスクスッ

ステイル「そういう事か。立派な妹君だよ、パトリシア」ハハハ

レイヴィニア『なっ!』ギョッ・・・

パトリシア『お褒めに預かりありがとうござます。いやー、でもインドって凄いですね。近代的っちゃ近代的部分も多いんですけど』ジー・・・

ステイル「未だに時代錯誤してる部分も多いかい? まぁ宗教的な問題だろうね。多宗教多神教だと色々難しいさ」コクッ

レイヴィニア『同じ多宗教多神教でも日本の場合は先進国だぞ。まぁアソコの場合は今や無宗教無神論が主立ってしまっているか』フンッ

パトリシア『そうそう。でもあのカースト制度って嫌ですね……同じ人間なのに、未だに奴隷みたいな人が居ましたよ』ウーン・・・

ステイル「そういう国だからな。しかし、今の渡世では下の階級の者もITを極めれば成り上れるシステムの様だ―――」ウンヌン・・・

パトリシア『へぇ。じゃあ努力した分、報われるんですね。まぁでもそれを学ぶ環境が無いと―――』カンヌン・・・

レイヴィニア『それは前に教えたぞ、パトリシア……って……、』ジー・・・

 キャッキャウフフムッキュンムッキュン・・・・

レイヴィニア『……あれ?』キョトン・・・

 アーダコーダソーダヨーダ・・・

レイヴィニア『うっ……うーうー! ま、マークー! おい、マークっ! 二人が私の事無視するぞー! 何とかしろーっ!』ウキャパー!!


   ――一寸後・・・・・


レイヴィニア『―――……、』ムスー・・・

パトリシア『もぅお姉さん。一緒にお話したいなら偉そうにせず普通に喋ってくださいよ』メッ

レイヴィニア『別に良いもん』ムスー・・・

ステイル「ガキか君は……ガキだったな。まったく、どっちが姉か分からん」ハハハ・・・

レイヴィニア『喧しい。貴様だってガキだろ』グスンッ

パトリシア『あらあら、涙目になっちゃって。大丈夫、お姉さんは私の自慢のお姉さんですからねー』ヨシヨシ

レイヴィニア『お、おま! ヤツが見てる前で何て真似を!』ヤメローッ///

ステイル「……ははは」ポリポリ・・・

レイヴィニア『後で泣かす……いや、今ステイルの前で泣かせてやろうか』ジトー・・・

パトリシア『まぁ大変。それじゃあ私はそろそろ退散しましょうかねー』フフッ

ステイル(……ん?)ピタッ・・・

パトリシア『あ、今日は元々お姉さんからステイルさんに話があって連絡させて貰ったんですよ。だから私は「ついで」だったんです』エヘッ

ステイル「あぁ。そういう事か……いや、中々面白い話だったよ。パトリシア」コクッ

パトリシア『此方こそ、ありがとうございました。今度お土産持って行きますので受け取って下さいね。楽しみに待ってて下さい』フフッ

ステイル「態々手渡しじゃなくとも郵送で構わないよ。手間が掛ってしまうだろうに」ポリポリ・・・

パトリシア『良いんですっ。じゃあ約束ですよ。また英国でお会いしましょう。私も楽しみにしてますからね』ノシ”

ステイル「やれやれ……またな」フフフ・・・


  シーン・・・


レイヴィニア『あ、こら……―――……人様の妹を目の前でデートに誘うとは大した度胸だな、主教補佐殿』ジトー・・・

ステイル「いきなりマジな顔になるなよ、妹馬鹿。あとデートに誘われたのは僕の方なんだが」ハァ・・・

レイヴィニア『五月蠅い黙れ。あの子を傷モノにしたら殺す。泣かせても殺す。触れても殺す。近付いても殺っす。殺っかす』ギロッ

ステイル「……全身硬化のロシア人?」キョトン・・・

レイヴィニア『うっさい。さておき……真面目な話だ。態々5時間も離れた場所から顔見せ連絡してやってるんだからちゃんと聞けよ』フンッ

ステイル「いや、別に電話で良いんじゃないか」ジトー・・・

レイヴィニア『こういうのは気分だ。些細な事……とりあえずスリランカで私が行う仕事をPDFで送った。後で見ろ』クイッ

ステイル「P、DF? あー……え、ああ。うん。PDFね。PDF」タラー・・・

レイヴィニア『おま……まぁ良い。とりあえず概要だが、タミル人過激派が我が社の東インド支社に協力要請を出してきてな』フム・・・

ステイル「むっ……君のとこの結社はいつから傭兵業なんぞに手を出したんだ?」ジトー・・・

レイヴィニア『話は最後まで聞け、莫迦者。無論、私を含め多くの首脳陣は断固拒否しているのだが』フンッ

ステイル「だが?」コクッ・・・

レイヴィニア『正直、ウチは大きくなり過ぎてフランチャイズ的になってしまった部分が多い。今回の件もそうだ』ムゥ・・・

ステイル「……要は、身内の恥の始末か」フム・・・

レイヴィニア『物分かりが良くて助かる。駐屯部署の数名が勝手な動きをしてしまった。故に私自ら「粛清」をしに行く』ハァ・・・

ステイル「御苦労な事だ……で? それと必要悪の教会(僕)と何の関係がある」ジー・・・

レイヴィニア『処刑(ロンドン)塔の一牢を貸してほしい。ソイツらを収容したい』ジー・・・

ステイル「収容? 殺さないのか?」キョトン・・・

レイヴィニア『正確に難有りなのだが、殺すには惜しいカリスマでね。「更生」猶予期間を設けたいんだよ……優しいだろ、私』ニヤリ・・・

ステイル「なるほど。まぁいっそ死ねた方がマシかもな……しかし、何故処刑塔なんだ? 君だったら私刑務所くらい持ってそうだが」ジー・・・

レイヴィニア『残念ながら調教用の牢が「何処」も万床でね。ま、私のとこの牢が空くまで期間其方で預かってほしい』コクッ

ステイル「ふむ……まぁ上(ローラ)には言ってみるが、此方としてのメリットは?」フンッ

レイヴィニア『必要悪の教会(そちら)の人手が足りなくなった際に嘱託で魔術師を派遣しよう。加え、其方からの人事交流も受け入れる』スッ

ステイル「『明け色の陽射し』との人事交流か。ま、良いカードかもしれないね……ただ」ピタッ・・・

レイヴィニア『ん?』チラッ

ステイル「正直、君のやり方を快く思ってない輩は清教の中でも多い。その点を含めローラが如何判断するかだな」フゥ・・・

レイヴィニア『そこんとこの口利きは宜しく頼むよ。対価はパトリシアのお土産だ』ハハッ

ステイル「随分と軽い対価だこと」ヤレヤレ・・・

レイヴィニア『は? 軽いだと? 貴様には勿体無い程だ! 本来ならお前の様な不良と顔を合わせる事もさせたくないというに!』ギャーギャー!

ステイル「はいはい。で、話は以上か?」ハァ・・・

レイヴィニア『ぐぬぬぅ。流しおって……あぁ。詳しくはファイルを見てくれ……一応確認しておくが、PCの添付ファイルの開き方は』ジトー・・・

ステイル「分かる」キッパリ・・・

レイヴィニア『……信じるぞ』タラー・・・

ステイル(うん、後で香焼に聞こう)ポリポリ・・・

レイヴィニア『なら話は以上……だが』ジー・・・

ステイル「まだ何か」フム・・・

レイヴィニア『まぁな。なぁステイル。最近、お前ら合同演習か何かしなかったか?』ジー・・・

ステイル「え」ピタッ・・・

レイヴィニア『したよな』ハハハ

ステイル「……何故、それを」タラー・・・

レイヴィニア『いやぁ知人が色々教えてくれてね。一応、総合・項目別順位と目ぼしい連中の成績も見させて貰ったよ』フフッ

ステイル「おいおい、一応個人情報なんだが……誰だ、漏らしたのは」ジトー・・・

レイヴィニア『それこそ個人情報だ。しかし流石天下の騎士派のエリートルーキーは凄い。あのマークが部下に欲しがってた程に』フムフム

ステイル「無理だぞ。騎士なんて連中は忠義どうこう面倒だからな。皆、騎士団長の飼い子だ」フンッ

レイヴィニア『分かってるよ。まぁ次いで、結社予備軍の輩は良いな。あとは神裂のとこの若衆筆頭も捨て難い。それからローマの―――』コクッ

ステイル「引き抜き如何こうを僕に言わないでくれよ。そういうのは得意じゃないんだ」ヤレヤレ・・・

レイヴィニア『―――ああ、そうだな。帰属意識の低いお前に言う話じゃないか。あくまで「英国の狗」と』フフッ

ステイル「言ってくれる。まぁ否定はしないよ」サラッ

レイヴィニア『つまらんヤツ。それはそうと……あ、風の噂なんだが』ジー・・・

ステイル「何だよ」ムッ・・・

レイヴィニア『お前、弟子取ってるらしいな。いやはや、孤高の狗かと思いきやねぇ。しかも女子ばかりとは、ハーレム願望ってヤツ?』ニヤニヤ・・・

ステイル「お前……マジ、どっからそんな情報を」ピキッ・・・

レイヴィニア『おお、こわいこわい。怒るなよ。まぁ中々優秀じゃないか。彼女達も上位に食い込んでる。師が良いお陰かな』クスクスッ

ステイル「あの馬鹿弟子共なら君にやっても良いぞ」ケッ・・・

レイヴィニア『はいはい、ツンデレツンデレ。しっかし……当の師匠がまさか……ぷぷっ』プルプル・・・

ステイル「切るぞ」イラッ・・・

レイヴィニア『ビリって何だ、ビリって! あははははっ! 成績評価不可能って! いひひひひっ!』ケラケラケラッ!

ステイル「……、」スッ・・・

レイヴィニア『待て待て、切るな切るな』フフフフ・・・

レイヴィニア『やれやれ、短気だこと。カルシウム足りてるか? ニコチンとタール以外のモノも摂取しろよ』ジー・・・

ステイル「余計な御世話だ……で?」ジー・・・

レイヴィニア『まぁマラソン以外してないっては如何いう事なのか知りたくてな。他の項目ならお前はトップクラスの筈だろ』フンッ

ステイル「……知るか。上の判断だ。特別カリキュラムだと」ハァ・・・

レイヴィニア『身体から毒素を抜け、か。妥当だな』ハハッ

ステイル「それこそ余計な御世話だ」チッ・・・

レイヴィニア『いざって時にスタミナ切れしたんじゃ堪らんぞ。まぁ超短期決戦タイプの魔術師ならではなのかな』フフッ

ステイル「……、」フンッ

レイヴィニア『ま、少しは身体を労れ。上の判断は正しいぞ。もし自分で管理出来んのなら、そういう輩を雇うのもアリだよ』ジー・・・

ステイル「必要無いね」チッ・・・

レイヴィニア『自己管理だけの話じゃないさ。アドバイス程度に聞いとけ……お前の立場で使用人の一人も居ないのは厳しいぞ』フム・・・

ステイル「使用人ねぇ」ムゥ・・・

レイヴィニア『呼び方は何でも良い。秘書でも側近でも給士でも手伝いでも。仮にも、不服でも、一宗派の主教補佐役なら必要さ』コクッ

ステイル「……むぅ」ポリポリ・・・

レイヴィニア『丁度良く弟子が居るんだろ。ソイツらを傍女として常に置いても良いと思うが』ジー・・・

ステイル「アイツらを? 秘書代わりに―――」タラー・・・


マリーベート(この資料何処だっけ……あ、ししょー。このクッキーしけってまーす。新しいの買ってきてくださーい)モグモグ・・・

メアリエ(あれれ? さっきからPC動かないんだけど、何でですかー? あ、ジェーン。チャンネル変えないでよー)カチカチッ・・・

ジェーン(この番組つまんない……ってアレ? 私のお菓子が消えてる!? 誰か食べましたか?!)アワワワ・・・


  ギャーギャーギャー・・・


ステイル「―――……これにアニェーゼとレッサーが混じったら地獄だな」ダラダラ・・・

レイヴィニア『どんな妄想したかは分からんが、随分とハーレムだな』ハハッ

ステイル「そう思えるのは脳味噌お花畑な馬鹿野郎だ。とりあえずアイツらは無理。というか現状必要無いかな」フンッ

レイヴィニア『そう言うな。其方の宗教や補佐代行の神裂だって側近を雇ってるだろう』ジー・・・

ステイル「ローラは無論、神裂も一教皇だ。雇わざるを得まい。その点僕は身軽でね。こうやって好き勝手出来る」ノビノビ・・・

レイヴィニア『やれやれ、困ったモノだな。保管人のチャールズ氏などは如何だ? 良い執事タイプだろう』ピンッ

ステイル「彼はローラの側近といった感じだよ。敏腕という点で尊敬してるが、やはりローラの近くに居て貰わねば困るかな」フム・・・

レイヴィニア『他人を見る目はあるのに自分を客観視出来んタイプだな、ステイル。よく言われないか?』ジトー・・・

ステイル「そっくりそのまま君に返すよ。まぁ君の場合は客観視できないっぽいキャラ(それ)すら演じてるんだろうけど」ハハッ

レイヴィニア『言ってくれる……まぁ助言程度に覚えておけ。話は以上だ』コクッ

ステイル「はいはい。それじゃあパトリシアとマークに宜しく……あ、君こそマークを酷使し過ぎるなよ」ジトー・・・

レイヴィニア『大丈夫だ。アレはそう簡単には壊れん』フフッ

ステイル「やれやれ、可哀想に……それじゃあな。また近い内に」スッ・・・

レイヴィニア『ん……あ、ちゃんとファイルを見てくれよ。分からないなら正直に分かる人間に聞け。良いな』ジー・・・

ステイル「うぃ。では―――ふぅ」Pi!


  シーン・・・ 


ステイル「無駄に疲れた。今何時だ? あー……もう昼前か。適当に飯でも食おう」ノソノソ・・・

うぃ。ステイルとバードウェイ姉妹の独壇場でした。次回からアンが登場予定!

それじゃあ練る錬る寝るね! おやすみ!

乙。
リクエスト答えてくださりありがとうございました。
ステイル爆発しないかなマジで
弟子三人とパトリシアと小萌先生がいながら男の友情最優先ですかい

こんばんわ。ネットの回線が変わりました! こういう時ってトリも変わるのかな?

>>383・・・何だかんだ言って、中学生相応の歳ですからねー。男子同士でツルみたいんじゃないかなぁと!

そんじゃボチボチ投下!

 ―――とある後日、AM11:50、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、主教補佐執務室兼私室・・・・・



   カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「―――それにしても、私用の『牢』が万床とは。レイヴィニアのヤツ、どれだけ謀反されてんだか」フンッ・・・

ステイル「まぁアイツのやり方は暴君タイプだし……仕方ないのかもね」ヤレヤレ・・・

ステイル「とりあえず食堂に……いや、此処でトーストとコーヒーくらいで良いか。そんなに腹が減ってる訳ではないからな」スッ・・・


   ピンポーン・・・・・


ステイル「っと。今度は誰だ」ハァ・・・


     Pi!


ステイル「……あいよ」グデェ・・・

アンジェレネ『あ、居た』キョトン・・・

ステイル「ん。アンジェレネ? 一人かい?」ポカーン・・・

アンジェレネ『はい。アニェーゼちゃん達は居ないですよ』コクッ

ステイル「そうか。どうした?」フム・・・

アンジェレネ『えっと、今朝からステイルくんの事見ないなぁって。あとコーヤギくんから様子見てきてくれって頼まれちゃいました』ペコッ

ステイル「様子って……アイツは僕の保護者気取りか」ハァ・・・

アンジェレネ『あはは。とりあえず、大丈夫そうですね。内線繋がんなかったからちょっと心配しちゃってました』フフッ

ステイル「ああ、内線鳴らしてたのか。電話中で気付かなかったよ」ポリポリ・・・

アンジェレネ『忙しかったんですね……入って良いですか?』ジー・・・

ステイル「はいはい、どうぞ」カチッ

アンジェレネ『お邪魔しまーす―――』ガチャッ



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



アンジェレネ「―――こんにちは。って、寝巻きのままだ。髪もボサボサで大変な事になってる」キョトン・・・

ステイル「今日はデスクワークメインだからね。普段外回りしてる分、こういう日は部屋でグータラ仕事させて貰うよ」コクッ

アンジェレネ「なるほど。主教補佐ってのも大変ですね」フフッ

ステイル「そんな肩書き要らないんだけどな……何か飲むか?」スッ・・・

アンジェレネ「あ、私が淹れますから座ってて。勝手に冷蔵庫開けますよ……コーヒーで?」テクテク・・・

ステイル「む。すまないね」フム・・・

アンジェレネ「作り置きのアイスコーヒーで良いですか? あ、シロップ無しのミルクだけで良かったですよね」ガチャッ・・・

ステイル「ああ。カウンター棚にビスケットがあったと思う。適当に食べて良いよ」チラッ

アンジェレネ「ビスケットとクッキーはトースターの横ですよ。この前レッサーちゃんが移動しちゃったじゃないですか」フフッ

ステイル「そうだったか。あの小悪魔は毎度毎度、人の部屋の物を勝手に」ハァ・・・

アンジェレネ「まぁまぁ。私はアイスティー貰いますね……―――」コポコポコポ・・・

アンジェレネ「―――……はい、おまたせしました」コトッ

ステイル「助かるよ。適当に座ってくれ」クイッ

アンジェレネ「うん。あ、お昼食べたんですか?」チラッ

ステイル「まだだよ。今から取ろうかと思ってた。君は?」ゴクゴク・・・

アンジェレネ「私もまだです。ビスケットだけじゃ足りないでしょう。サンドイッチでも作りましょうか?」スッ・・・

ステイル「いや、そこまでして貰うのは悪いよ」コトッ

アンジェレネ「遠慮しなくて良いですよ。元々コーヤギくんから不摂生してないか見て来るよう頼まれたんですし」アハハ

ステイル「……難だかなぁ」ポリポリ・・・

アンジェレネ「それに、丁度暇してましたから。平の教徒として、このくらいはやりますよ」フフッ

ステイル「教派は違う筈なんだけどね……それじゃお言葉に甘えるよ。ただ、手の掛るモノは要らないよ。サラッとで良い」ペコッ

アンジェレネ「ええ。コーヤギくんみたいに本格的なモノは作れないですし、サンドイッチとレトルトのスープくらいで」ガチャッ・・・

ステイル「ありがとう。何から何まで申し訳無い」ムゥ・・・

アンジェレネ「良いの良いの。あ、とりあえずシャワーでも浴びてきちゃって下さい。その間に準備しときますから」ニコッ

ステイル「すまんな―――」コクッ・・・テクテク・・・



   カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「―――待たせた」ガチャッ・・・

アンジェレネ「ううん、今出来たとこです。髪ちゃんと乾かしました?」チラッ

ステイル「ボチボチ。今日は結ぶから問題無いよ」グイッ・・・キュッ・・・

アンジェレネ「そっか……普段から結んでた方が良いと思いますよ。ポニテ(そっち)の方が動き易いじゃないですか」ジー・・・

ステイル「そうなんだろうけど、頭が締め付けられる感覚が嫌でね。あとは髪型変えると馬鹿にする連中が居るからな」フンッ

アンジェレネ「じゃあ短くしちゃえば良いのに。あ、でもそこまで伸ばしてるのに勿体無いかなぁ」ジー・・・

ステイル「どうだろうね。兎に角、今のところは切る予定は無いし結うつもりも無いさ……さて、頂くよ」スッ・・・

アンジェレネ「あ、うん。召し上がれ」コクッ



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「ん……むぐ、もきゅ……そういえば他の娘共は?」シャクシャク・・・

アンジェレネ「他のって、アニェーゼちゃん達?」チラッ

ステイル「ああ。君一人とは珍しい」モグモグ・・・

アンジェレネ「確かに誰かしら一緒に居る事が殆どですね。アニェーゼちゃんはステイルくんと同じくデスクの缶詰」アハハ・・・

ステイル「アイツも書類を溜め込むタイプだろうからな」フフッ

アンジェレネ「レッサーちゃんとランシスちゃんは今日聖堂に来てないです。サーシャちゃんとコーヤギくんはお国に」コクッ

ステイル「成程な。フリーは君だけと……しかしルチア辺りに怒られないか?」フム・・・

アンジェレネ「今日はウラカミに引っ張られて外遊びに行きました。だから部隊の子は皆羽を伸ばしてます」フフッ

ステイル「部隊長より怖い参謀殿だからな。人種は違えど、アレの厳粛さと狂信っぷりには敬意と畏怖を覚えるよ」ハハハ

アンジェレネ「ルチアちゃんも昔はもうちょっと丸かったんですけどねー……どうしてああなった」ハァ・・・

ステイル「変わらない人間なんか居ないからな……ん、御馳走様。皿くらいは僕が洗うから流しに浸けておいてくれ」スッ・・・

アンジェレネ「あ、うん。ありがと」ペコッ


     カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「―――さてと、洗うか。適当に寛いでいてくれ」ジャー・・・カチッ・・・

アンジェレネ「うん。って、洗い物しながら煙草喫わないの。危ないよ」ンモー・・・

ステイル「煙草喫う事自体は止めないか」ハハハ

アンジェレネ「言っても無駄なのはもう分かってるから諦めました。でも本数減らさなきゃ駄目だよ」ヤレヤレ・・・

ステイル「潔くて結構。本数は、まぁ善処しよう」ククク・・・

アンジェレネ「まったく。一度健康診断か何かで引っ掛かんなきゃ駄目なんだね」ハァ・・・

ステイル「案の定、こう見えて僕の肺は健康そのものでね。肺活量は並異常さ」ニヤッ・・・

アンジェレネ「それって瞬間的な肺活量でしょ。持久走、私より遅いだなんて恥ずかしくない?」ジトー・・・

ステイル「ぐっ……それを言うな」タラー・・・

アンジェレネ「言われたくなかったらもっと健康的な生活してください。あ、パソコン借りて良いですか?」ヤレヤレ・・・

ステイル「はいはい。あ、メールや機密ファイルやらは勝手に見るなよ」チラッ

アンジェレネ「分かってます。ちょっとネット使いたいので」カチッ・・・

ステイル「なら構わないが……女子寮のPCを使えば良いのでは?」フム・・・

アンジェレネ「このPC、都市製の最新型なので処理速度段違いなんですよ。あと、アッチのネット回線に比べて此処のは凄く速いんです」ピッ

ステイル「回線が? 同じ敷地内なのに?」ポカーン・・・

アンジェレネ「アッチは一般回線ですけど、此処の執務室の回線は学園都市と同じ衛星使ってるそうです。イツワが言ってました」コクッ

ステイル「あー。そういえばアレイスターがそんな事言ってたね」ポリポリ・・・

アンジェレネ「詳しい事情は分かりませんけど、諸方面のお偉い様方とやり取りする関係上必要なんじゃないんですか」カタカタ・・・

ステイル「そんなものか……しかし詳しいな。誰からか教わったのか?」ホゥ・・・

アンジェレネ「コーヤギくんとか天草式の皆さんから色々と。流石日本人って感じです」フフッ

ステイル「日本人やら韓国人ってのはその分野に長けるからね。まぁ神裂は別だけど」ハハハ

アンジェレネ「でも最近はスマートフォンも使いこなしてますよ。都市の友人としょっちゅうLineしてるみたいですし」カタカタッ

ステイル「……線(ライン)?」キョトン・・・

アンジェレネ「スマートフォン専用のアプリですよ。無料通話とかチャット形式とか……ステイルくんはやってないの?」チラッ

ステイル「僕の携帯はあくまで通話とメール用だからね。電波さえ良ければPHSでも構わないよ」フム・・・

アンジェレネ「ありゃりゃ。これじゃカンザキよりロートルですよ」アハハ・・・

ステイル「むっ。心外だな……後で香焼か軍覇に教わるか」ウーン・・・

アンジェレネ「ふふっ、頑張って下さい。あーでもやっぱり携帯欲しいなぁ……上から、教徒一人ひとりに支給してくれないんですか?」チラッ

ステイル「予てからそういう声は上がってるよ。僕も賛成はしているんだが、経理部がな」ポリポリ・・・

アンジェレネ「ハァ。いっその事お給金で買おうかなぁ。でもプライベートだと未成年だけの購入は難しいからなぁ」ウーン・・・

ステイル「そこはローラ次第だな。一応君らは預かりの身だから、彼女が総括的な身元引受人扱いになる」コクッ

アンジェレネ「色々と厄介ですね……あれ? 新着メール来てますよ」チラッ

ステイル「ああ、さっきの。レイヴィニアと書いてあるか?」フキフキ・・・

アンジェレネ「えぇっと、見て良いんですか?」ポリポリ・・・

ステイル「あ、拙いか。ちょっと貸してくれ……うん、アイツからだ」テクテク・・・カチッ

アンジェレネ「お仕事?」ジー・・・

ステイル「一応そうなる。あ、これが添付資料……ん? 開けん。クリックだけじゃ駄目なのかな」ムゥ・・・

アンジェレネ「ダウンロードエラーですか?」チラッ

ステイル「よく分からんが、PDFを開くには……云々カンヌンと」タラー・・・

アンジェレネ「PDF? ちょっと失礼……Adobe Readerは……あれ? ダウンロードしてないじゃないですか」ハハハ・・・

ステイル「あどび?」キョトン・・・

アンジェレネ「最近じゃ標準装備な筈なんだけどなー。もしくはAcrobatを……ま、良っか。少し待ってくれたら開ける様に出来ますよ」コクッ

ステイル「そうなのか? よく分からんが、お願いするよ」コクッ

アンジェレネ「分かりました。少々お待ちを……―――」カチカチカチ・・・カチャカチャ・・・



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



アンジェレネ「―――……よいしょ。インストール完了っと。これで開ける筈です」カチッ・・・

ステイル「すまないね。んー……お、開いた」オォ・・・

アンジェレネ「お役に立てて光栄です」フフッ

ステイル「いやいや、助かったよ。意外な才能だな、アンジェレネ。君がこういうの得意だとは」フムフム・・・

アンジェレネ「そんなそんな大袈裟な。今時の子なら誰でも出来ますよ」ポリポリ・・・///

ステイル「そうか……一応僕も今時の『子』な筈なんだけどね」ハハハ・・・

アンジェレネ「ま、まぁ人には向き不向きありますから」ハハハ・・・

ステイル「そ、そうだな。そう言って貰えると気休め程度にはなるよ―――洗い物が途中だったか。引き続き好きに使っててくれ」クルッ

アンジェレネ「はい。とりあえずコレは最小化しておくので後で見て下さい」タンッ・・・



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



ステイル「―――ふむ」プカー・・・ジー・・・

アンジェレネ「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ~ん」ジー・・・ホンワカ・・・

ステイル「何を見ているんだい?」チラッ・・・

アンジェレネ「んー。Y●u Tube」ジー・・・

ステイル「動画か。何か面白いモノでもあったのか」プカプカ・・・

アンジェレネ「まぁ色々と。退屈凌ぎには良いですよねー」フフッ

ステイル「そういうモノか……って、アンジェレネ。時間は大丈夫か?」チラッ

アンジェレネ「え? あー……多分まだ大丈夫かな。当分ルチアちゃん帰って来ないし。家事の当番日でも無いですし」カチッ・・・

ステイル「そうか。なら好きに寛いでくれ」プッカッカー・・・

アンジェレネ「ありがと。でも、もしかしてお邪魔だったりします?」チラッ

ステイル「ん?」キョトン・・・

アンジェレネ「いや、私が居て仕事集中出来ないとかウザったいとか」ジー・・・

ステイル「いや、アニェーゼ達に比べたら君は大人しいからね。特に問題は無いよ」コクッ

アンジェレネ「あはは……まぁ空気だと思って下さい。仰る通り騒がしくはしないので」フフッ

ステイル「……ん」ボー・・・




    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・

アンジェレネ「ふんふーん♪」フワフワ・・・

ステイル「……―――」ジー・・・


    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



『―――ねぇねぇ、すている! インターネットが繋がってれば世界中の美味しいモノが注文出来るってホントなのかな!』

『あー、でもかおりの料理とどっちが美味しいかなぁ……よしっ! 食べ比べてみれば分かるんだよ!』

『じゃあ早速ネット通販を! って、あれれ? 口座登録? すているー。これってお給金の口座で良いのかな?』

『んー……え? 駄目? なんでー! 私のお給金なんだから良いでしょー! ねーねー! すーてーいーるー! ねーねぇ―――』



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・


ステイル「―――……、」ボー・・・

アンジェレネ「―――ん……ステイルくん。ねぇ! ステイルくーん」ジー・・・トントンッ

ステイル「っうぉ!?」ビクッ・・・

アンジェレネ「やっと気付いた。んもー、ボーっとして。うたた寝でもしてたんですか?」ジトー・・・

ステイル「い、いや、すまない……ちょっと考え事をね」フゥ・・・

アンジェレネ「そう? なら良いですけど……あ、PCありがとうございます。私そろそろ戻るから」チラッ

ステイル「そうか。色々助かったよ」コクッ・・・

アンジェレネ「お安いご用です。あ、そういえばさっきの資料印刷するんですか?」カチッ・・・

ステイル「ああ。したいっちゃしたいんだがプリンタの調子がおかしくてね。何故かコードを間違えたとか何とか出てしまう」ポリポリ・・・

アンジェレネ「そうなの? うーん……って、設定がWi-Fiになってる。有線じゃなくてもいけるんじゃ」カチッ・・・

ステイル「……は? わいふぁい?」キョトン・・・

アンジェレネ「簡単に言えばPCとプリンタを繋がなくても印刷出来るって事ですよ―――はい」タンッ・・・


  ウィーン・・・・・


ステイル「え、は、な、何したんだ? 勝手に紙が出てきたぞ? Fax機能的な何かか?」ポカーン・・・

アンジェレネ「だから無線だって」ハハハ

ステイル「よ、よく分からんが……助かる。僕ももう少しPCの勉強した方が良いかな」ポリポリ・・・

アンジェレネ「私が覚えられたんだから簡単に出来ますよ」クスッ

ステイル「だと良いが、まぁ頑張ってみるよ。ありがとう」コクッ・・・

アンジェレネ「ふふっ。一応、協会的には下っ端ですし主教補佐のお手伝いくらいさせて貰いますよ」チラッ

ステイル「謙遜を。馬鹿弟子共に君の爪垢を煎じて飲ませてやりたいな」ペコッ・・・

アンジェレネ「またまたー。でも、そんなの抜きにして『友達』ですから。困った時はお互い様という事で」ニコッ

ステイル「……、」ポリポリ・・・ムゥ・・・

アンジェレネ「ふふふっ。照れてる照れてる」クスクスッ

ステイル「五月蠅いよ……ほら、戻るのだろう。遅くなるぞ」フンッ

アンジェレネ「はいはい。じゃあまたね、ステイルくん。煙草喫い過ぎちゃ駄目ですよ。あとちゃんとご飯食べてね」チラッ

ステイル「君は僕の母親かい」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「年下に向かって失礼ですねー。とりあえず『気が利く』みたいな褒め言葉として受け取っておきますよ」フフッ

ステイル「まったくポジティブなヤツ。(気が利く、か……偶にドジや悪戯はするが、確かに世話好きだな)」フム・・・



    カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



アンジェレネ「それじゃあお邪魔しま―――」

ステイル「アンジェレネ」ジー・・・

アンジェレネ「―――し、て……え?」キョトン・・・

ステイル「もし君が良ければなんだが。無論、強制じゃないよ」ジー・・・

アンジェレネ「うん?」ハテ?

ステイル「……秘書をやってみないか?」ジー・・・

アンジェレネ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」ポカーン・・・

ステイル「いや、秘書とかそんな仰々しい呼び方じゃなくて『手伝い』でも良い。主教補佐の事務的な手伝いだ」コクッ・・・

アンジェレネ「はい? え、あ、と……何ですか、それ?」ギョッ・・・

ステイル「実は最近、主教補佐(僕)の秘書の様な者を探していてな。あ、いや、無理なら良い」チラッ

アンジェレネ「ええっと……無理とかOKとか、じゃなくてその、いきなりそんな事言われても」タラー・・・

ステイル「急にとは言わないさ。君さえ良ければだ。勿論、宗派を鞍替えしろとか魔術師辞めて専属になれだなんて言わない」ジー・・・

アンジェレネ「な、何で、私?」オドオド・・・

ステイル「気が利くし事務処理も得意そうだからな。それにある程度信用をおける人物でもある」コクッ・・・

アンジェレネ「そ、そんな! 買い被り過ぎですよ!」アワワワ・・・///

ステイル「主教補佐の事務手伝いとなると多少大変だが、相応の手当は出すよ」スッ…カチッ・・・

アンジェレネ「あ……ぅ」タラー・・・

ステイル「唐突にすまないね。とりあえず、考えるだけ考えてみてくれないか。無理なら無理で別を考えるから」ペコッ

アンジェレネ「う、うん。ごめんね」ペコッ

ステイル「謝らないでくれ。返事はいつでも良い……話は以上だ。帰る手前に呼び止めてすまない」フゥ・・・

アンジェレネ「……じゃあね」ガチャッ・・・

ステイル「ああ。またな」ノ”



   パタンッ・・・・・



ステイル「……はぁ。僕も馬鹿だな。レイヴィニアに発破を掛けられてその通り動くとは」ヤレヤレ・・・プカー・・・



  カチッ・・・カチッ・・・カチッ・・・



アンジェレネ「―――ど、どうしよう……主教補佐の秘書だなんて」ドキドキ・・・

 ―――とある別日、AM10:00、英国、ウィンザー城(?)、とある一室・・・・・




   にゃーん・・・・・




リメエア「―――動物は良いわね。立場とか階級とか、そういう柵(しがらみ)すら考えないのだもの」ナデナデ・・・

エリザード『お前は何を言ってるんだ?』ハァ・・・

リメエア「人間って浅ましいわねって事よ、お母様。いっその事、万人が無感情なら良いのに」ジー・・・

エリザード『またこの子は世捨て仙人みたいな事を……てか、母親的には電話じゃなくて直接顔を合わせたいんだが』ッタク・・・

リメエア「嫌よ。大抵、もう少し公の行事に参加しろとか縁談結婚の話ばっかりじゃない」ナデナデ・・・

エリザード『一応王族として当たり前の事言ってるんだけどね。それにぶっちゃけ歳が歳でしょう、リメエア。縁談の話があっても当然じゃない』

リメエア「はいはい、王族王族。あと歳如何こう言うけど……もし私が内縁で結婚してたら如何するの」チラッ

エリザード『それならそれで母親的には構わないぞ。アンタが偽名で幸せやってんならそれもアリだ。あ、でもせめて孫の顔は見たいわ』ハハハ

リメエア「ふふっ。お母様のそういうとこ、好きよ」ニコッ

エリザード『まぁでも、それがホントでパパにバレたら怖いけどねぇ……頼むから悪い事やるなら隠し通せよ』ポリポリ・・・

リメエア「あらあら、母親というか女王の言とは思えないわ。誰に聞かれてるか分からないんだから控えてよ」ナデナデ・・・

エリザード『良いの良いの。近くに騎士団長しか居ないから。てかこの回線、本当にウィンザー城に繋がってる?』ジトー・・・

リメエア「さぁ。そうなんじゃないの。逆探知掛けても城に繋がってるでしょ」テクテク・・・

エリザード『アンタの事だから回線偽って月辺りから連絡してても私は驚かないからねぇ』ハハハ

リメエア「月……そういう手もあったか」フム・・・

エリザード『ごめん、リメエアちゃん。母ちゃん馬鹿だったわ。今の発言忘れて、そして今思い付いた事捨て去って』ダラダラ・・・

リメエア「うーん、そうね。流石に地球の外まで暗殺しかけてくる酔狂いないかしら」フフッ

エリザード『お前に手ぇ出そうだなんて肝っ玉持った輩自体稀だと思うぞ』ッタク・・・

リメエア「どうだか。暗殺者なんて、そこかしこに居そうだけど」フゥ・・・

エリザード『こんのネガティブクイーンめ……はぁ。なんか疲れる』ヤレヤレ・・・

リメエア「じゃあ通信切れば?」チラッ

エリザード『まだ電話した意図も伝えてないし……あのさぁ。これも再三言ってるけど、もうちょい顔出してよ』ンモゥ・・・

リメエア「嫌」キッパリ・・・

エリザード『二言目にはそれだ。頼むから老い先短い私に心労掛けないでくれって』タラー・・・

リメエア「いやいや、お母様は絶対私より長生きする。断言するわ」サラッ・・・

エリザード『サラッと親不孝発言を……まぁ良い。本題よ』ジー・・・

リメエア「ん」コクッ・・・

エリザード『給士の人間達からの苦情。100件到達おめでとう』88888888・・・

リメエア「……、」ポリポリ・・・

エリザード『内容はぜーんぶ【姫にお会いできません】でした。はい、如何思う?』ジトー・・・

リメエア「別に」ナデナデ・・・

エリザード『お馬鹿。一応、給士の人間だって仕事してるんだ。世話させろとまで強制しないが、せめて近くに置いておけ』ハァ・・・

リメエア「ヤダ」キッパリ・・・

エリザード『おまえ担当に配属なったの給士達が皆キャーリサか私の世話に振り分けられてる。そりゃそうだ、仕事が無いからね』ジトー・・・

リメエア「別にそれでも良いんじゃない?」ハハハ

エリザード『良い訳あるか、お馬鹿。今は給士の話だが、騎士の連中も頭を悩ませていてだな』ハァ・・・

リメエア「警護なんて要らないわ。自分の身は自分で守るから」サラッ・・・

エリザード『お前が十分強いくて賢い娘だって事は充分理解してる。でも、それでもだ』ジー・・・

リメエア「……はぁ」ポリポリ・・・

エリザード『私やキャーリサの様に傍若無人に側近を困らせろって言ってるんじゃないんだ。傍に置くだけ。簡単な事だろ』フンッ

リメエア「自分が暴れん坊女王だって認めるのね」ハハハ・・・

エリザード『お黙る。監視みたいで嫌だっていうのであれば、せめて自分が心を許せる者を給士・騎士に選びなさいな』ジー・・・

リメエア「……ふむ」ポリポリ・・・


  にゃーん・・・・・


リメエア「じゃあ、番犬か何かで」サラッ

エリザード『人間にしろ、阿呆娘。ったく、お前には口じゃ勝てないからねぇ……困ったよ』ハァ・・・

リメエア「ごめんなさいね、不良娘で。まぁキャーリサ程手の掛る娘じゃないと思ってるのだけど」フフッ

エリザード『あの子はあの子さ。とりあえず、あまり言う事聞かない様だと騎士団長とシルビアが直々に捜索しかねないからな』ジトー・・・

リメエア「あら。カクレンボは得意よ」フフフ・・・

エリザード『……もぅ』ハァ・・・

リメエア「安心して、お母様。必要最低限の公務はするし、気が向けば偶に出向くから」コクッ

エリザード『はいはい。でも、覚えておきなさい。そろそろ本気でパパの雷が落ちる頃だからね』ジトー・・・

リメエア「うっ……それは、困るわね」タラー・・・

エリザード『ったく。何で私の娘達は女王たる私よりパパの方に畏怖してるのかしら』ハァ・・・

リメエア「そりゃ日頃の行いよ。ドッチが威厳あるかしら?」フフフ・・・

エリザード『ま、まぁ、その辺は追々。兎に角、パパに教育方針云々で怒られるのは私も嫌なんだ。分かってくれ』タラー・・・

リメエア「30過ぎの娘の教育方針って変な話ね。キャーリサだってもう三十路街道でしょう」ハハハ・・・

エリザード『あの子は永遠の18歳謳ってるハッピーちゃんだから良いの。一番手間掛るけど、一番パパに懐いてるから』ポリポリ・・・

リメエア「『パパみたいな男性と結婚するって決めてるし!』って未だに騒いでるものね。可愛い限りじゃない」フフッ

エリザード『あの子は女王より元帥とか将軍になりたがってるからな。アンタは参謀長官とか下院院長とかかしら』ジー・・・

リメエア「勘弁して。政治云々は大っ嫌いよ」ジトー・・・

エリザード『頭脳(宝)の持ち腐れだな、勿体無い……話が逸れたね。兎に角、パパがガチで怒る前に自分で何とかなさい』サラッ

リメエア「……、」ポリポリ・・・

エリザード『話は以上……あ、ついでに一つ』ピッ

リメエア「ん」チラッ

エリザード『……MI:6(情報局)はアンタの私兵じゃないんだから、勝手に使わない事。長官頭悩ませてたぞ』ハァ・・・

リメエア「あのハゲ、告げ口しやがった」ボソッ・・・チッ

エリザード『陰険な事考えるのは止めなさい。アイツ、余計ハゲるから』タラー・・・

リメエア「分かったわよ。それじゃあちょっと用事があるから。またね、お母様」ノ"

エリザード『あいよ。とりあえず、次の会食までにアバウトにでも決めとけよ』ノシ"



  にゃーん・・・・・



リメエア「―――……はぁ。どうしよっかなぁ。とりあえず出かけましょうか」ポリポリ・・・

 ―――とある別日、PM02:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、食堂・・・・・



    シーン・・・・・



アンジェレネ「―――……はぁ」グデェ・・・

サーシャ「ふむ。第一の質問ですが、アンジェレネ。如何しました? 先程から浮かない表情ですよ」ジー・・・

アンジェレネ「ちょっとね」ハハハ・・・

レッサー「んもー、サーシャっちー。デリカシー無いですよー。アンジェレネは今日『そういう日』なんですって」トコトコ・・・

サーシャ「レッサー。第一の疑問ですが、そういう日とは?」ハテ・・・

レッサー「皆まで言わせないで下さいよ。ほらぁ、女の子なんですからぁ……まぁ私も気持ちは分かりますよ」ウンウン・・・

サーシャ「あっ……すいません」ピクッ・・・

アンジェレネ「いや、違うから。サーシャちゃんも変に察しないで」ジトー・・・

サーシャ「え。違いました?」キョトン・・・

アンジェレネ「違います」キッパリ・・・

レッサー「なーんだ。恋煩いで想い悩む乙女デーかと思ったのに。残念ですねー、からかえません」ムー・・・

アンジェレネ「え」ピタッ・・・

レッサー「え?」チラッ・・・

サーシャ「ん?」チラッ・・・

一同『……、』シーン・・・

アンジェレネ「そ、そういう事! うん! なるほど、あははは……ははは」タラー・・・

レッサー「アンジェっちぃ……何想像したんですか? んー? お姉さんに言って御覧なさーい?」ニヤリ・・・

アンジェレネ「べ、別にぃ! あ、ランシスちゃん来ましたよ!」ハラハラ・・・

サーシャ「ほぉ……アンジェレネ。第二の質問ですが、今さっき勘違いした事をゲロりなさい。さぁ、ほら」ニヤニヤ・・・

アンジェレネ「あわわわ。こ、こんな時に限ってアニェーゼちゃんが居ない……ら、ランシスちゃーん! 助けて下さーい」ウワーン・・・

ランシス「ん……相変わらず騒がしい」トコトコ・・・

レッサー「んふふ。ランシスー。アンジェレネったら何かイヤラシい事考えてたっぽいんですよー」フフフ・・・

アンジェレネ「し、してないよ! レッサーちゃんじゃあるまい!」カアアァ///

サーシャ「確かにレッサーが常にエロい事考えているのは同意しますが、アンジェレネが先程やましい事を想像していた事についても同意します」

ランシス「うん、レッサーの脳内がお花畑なのは認める。んで、何があってアンジェレネの疑惑に繋がったの?」キョトン・・・

レッサー「魅力あるエロスと言って貰いたいですねぇ……さておき、実は―――」



  かくかくしかじか・・・・・



レッサー「―――てな訳ですよ。ね、怪しいでしょう」ニヤリ・・・

ランシス「……怪しいというか、お前の言い方が悪い。そりゃ誘導的ってモンだよ」ジトー・・・

レッサー「え」タラー・・・

アンジェレネ「だよね! ほら見た事か!」ジトー・・・

サーシャ「うっ……す、すいません。調子に乗りました」ポリポリ・・・

レッサー「ぐぅ……初潮来てない娘共に怒られるとは、悔しいですねぇぶぎゃっ!」グヌヌゥ・・・ガンッ!!

ランシス「そ、そういう事言うな死ね変態女郎」ゲシッ///


  シーン・・・・・


レッサー「痛てて……冗談さておき、こんな人気の無い所で一人何してんだかって感じですよ」チラッ・・・

サーシャ「悩みですか? 第一の意見ですが、相談に乗りますよ」ムンッ

アンジェレネ「あはは、まぁ色々と……ありがと。でもまだ大丈夫です」ポリポリ・・・

ランシス「『まだ』ねぇ……因みに、今日は隊長さん一緒じゃないの?」キョロキョロ・・・

アンジェレネ「ステイルくんにも同じ事言われました。別にいつも一緒って訳じゃないんですけどね」アハハ・・・

レッサー「んじゃドチラに?」フム・・・

アンジェレネ「寮の方。次の仕事の件で、シスター・ルチアと話合いしてると思います」クイッ

レッサー「成程。リーダーも呼ばれてたからもしかして一緒ですかね」フムフム・・・

ランシス「用があるのはリーダーだけだったんだから、私達付いてくる事なかったのに」ヤレヤレ・・・

レッサー「それはホラ、ノリですよ。仕事入らなきゃどうせ暇でしょう、私達」ハハハ・・・

サーシャ「気持ちは分かりますよ。私も使者の任で来ているとはいえ、滞在時間の殆どは暇ですから」ポリポリ・・・

アンジェレネ「主教やステイルくん(主教補佐)と会えなきゃ仕事出来ませんもんね……まぁ私も似た様なモノかなぁ」ウーン・・・

ランシス「魔術師が暇なのは平和な証拠でしょ。良い事なんじゃないかな」グデェ・・・

サーシャ「ほぉ。第一の感想ですが中々良い事いいますね、ランシス。さながら私らは医者と同じですか」フム・・・

レッサー「んー、でもさぁ。やっぱ派手に、煌びやかに仕事したいですよねぇ!」キラキラ・・・

サーシャ「……魔術師が派手に出娑婆って如何するんですか」ヤレヤレ・・・

ランシス「レッサーはメルヘンチックな魔法少女を夢見て魔術師始めたタイプだから」ハハハ

レッサー「や、喧しいです! 女子なら誰だって最初はそういうの期待するでしょう!」ムキー///

アンジェレネ「あはは……(私らやサーシャちゃんは別だろうけどね)」ポリポリ・・・

ランシス「―――あ……そういえば」ピンッ

アンジェレネ「如何しました?」チラッ・・・

ランシス「任務って訳じゃないけど、頼まれ事があった」コクッ

レッサー「えー。それ私も一緒ですか?」タラー・・・

ランシス「勿の論。ホントは私らも迎えに行かなきゃいけなかったけど、フロリスだけで行ってるかな」ポリポリ・・・

サーシャ「第三の質問ですが、誰かの送迎ですか?」フム・・・

ランシス「うん。多分、コッチに連れてくると思う……暇だったんだって」ハハハ

アンジェレネ「暇だった? 何それ?」ポカーン・・・

レッサー「あー……成程。まったく、新たなる光(私ら)の事アッシーか何かと勘違いしてるんじゃないんですか?」ヤレヤレ・・・

ランシス「主に免許持ってるリーダーかフロリスが、だけどね。というか車持ってるんだから自分で運転してくれば良いのに」フム・・・

アン・サーシャ「「ん?」」キョトン・・・


  パタパタパタパタ・・・・・


レッサー「……あ。噂をすれば、何とやらですね。到着ですか」チラッ・・・

サーシャ「はい?」チラッ・・・


キャーリサ「―――いよーっす! 遊びに来てやったぞー! って……あんま人居ねーし」ドーンッ・・・アリャ・・・


フロリス「だから言ったでしょう……あ。レッサー、ランシス。あと任せた。私は自分の分、仕事したからな」クルッ・・・テクテク・・・

アンジェレネ「誰かと思えば……なるほど。暇人が増えましたね」クスッ



    ワンヤヤンヤ・・・ギャーギャー・・・・・




アンジェレネ(それから、暇人―――もとい姫様の遊び相手をする事数十分経ちました)


キャーリサ「―――……ほぃ。Qのトリプル! どーだ! 遂に私の上がりだろ!」バンッ!

ランシス「……Aのトリプル」ポンッ

キャーリサ「うぎゃあああぁ!! ま、待った! ちょい待ちっ!」アタフタ・・・

レッサー「んもー姫さん。待った何回目ですかー?」ジトー・・・

サーシャ「第一の代答ですが4回目です」ヤレヤレ・・・

キャーリサ「ら、ラス1! これで最後だからお願い!」ウー・・・

レッサー「えー……大人げなーい」ジトー・・・

ランシス「というか、姫様。いい加減席替えしましょう。私とアンジェレネの間挟まれてたら勝てませんって」ハァ・・・

キャーリサ「ぐぬぬぅ……この不利な状況で勝ってこそ革命家なんだし!」ギリギリ・・・

サーシャ「はぁ。第五の意見ですが『待った』掛けてる時点で不利も逆境もありませんよ……あと革命家って」フゥ・・・

アンジェレネ「ま、まぁまぁ。あと一回くらいは大目に見てあげましょう」アハハ・・・

ランシス「……ハァ」スッ・・・

キャーリサ「あんじぇい……アンタは相変わらず良い子だなぁ」ナデナデ・・・

アンジェレネ「い、いや、その、あははは……(怒って激情されても困るし)」ポリポリ・・・

レッサー「ったく。アンジェレネは姫様を甘やかし過ぎです」ジトー・・・

サーシャ「右に同意。まぁさっきから大富豪のままで余裕シャキシャキだからそんな事言えるんでしょうけど」ムー・・・

アンジェレネ「それは、ほら……運ですよ。運」アハハ・・・

ランシス「ホント、カード運良いね。それに引き換え」チラッ・・・

キャーリサ「うっ……何だよー。私だってカード運悪い訳じゃねーし」ブーブー・・・

サーシャ「では、第八の意見ですが姫君ご自身の実力が無いという事になりますよ」チラッ

キャーリサ「そ、それも違う! お前らが革命ばっかすっから私の手札が強弱定まらねーの!」ムキー!

アンジェレネ「ど、どうどう。兎に角ランシスちゃんがカード戻してくれましたからね。もう一度姫様の番ですよ」ポリポリ・・・

キャーリサ「む。そうだったな……それじゃー……6のダブルだ!」バンッ!

ランシス「8ダブルで切らせて貰います」スッ・・・

キャーリサ「なっ!?」ギョッ・・・

ランシス「次はジョーカー……そのままAのトリプル……出せる人、居ないね。4のダブルで上がりです」スパッ

キャーリサ「うぎゃあああぁ!!」ガーン・・・

レッサー「ジョーカー持ってたのランシスでしたか……そんじゃ11のダブルで逆走(バック)」ポンッ

サーシャ「感謝します。3のダブルです……そしてK」ポンッ

キャーリサ「ぐっ……ぱ、パス」タラー・・・

レッサー「お? じゃあA」スッ・・・

サーシャ「2」スパッ・・・

レッサー・キャーリサ「「うげっ」」タラー・・・

サーシャ「8切りの……7ダブルで上がりです」ニヤリ・・・

レッサー「う……ピーンチ」タラー・・・


 ざわ...ざわ...



キャーリサ「な、何とかビリからを抜け出せそーか……Qのダブル……よしっ!」グッ・・・

ランシス「姫様、やっと大貧民脱出かな」ハハハ・・・

キャーリサ「よっしゃー! あと二枚! Q!」バシッ!

レッサー「……、」ジー・・・

キャーリサ「んふふふ。出せねーの? 出せないよなー! それじゃー私の上が―――」スッ・・・

レッサー「……、」っ【K】

キャーリサ「―――」ピタッ・・・

レッサー「……んふっ」っ【5】【6】【7】

キャーリサ「」チーン・・・

レッサー「わーい。10で上ーがりーでーす!」ビシッ!

キャーリサ「」プルプルプル・・・

アンジェレネ「あはははは……(皆、手加減しようよ……人の事言えないけど)」タラー・・・

サーシャ「はは、は……(第一の分析ですが、姫君怒りボルケイノ状態ですね)」アチャー・・・

レッサー「やーいやーい! 姫さんまた大・貧・民っ! ぷふー!」ニヤニヤ・・・

ランシス「……あほ。(こんの恐れ知らずの馬鹿娘)」ダラダラ・・・

キャーリサ「も……もー一勝負だっ! いや、私が勝つまで勝負し続けろー!」ムキャー!!

アン・サシャ・ラン「「「……えー」」」ハァ・・・

レッサー「面倒臭ー」ジトー・・・



  ギャーギャー! ワーワー!!



キャーリサ「―――えぇいっ! ゲームを変える! 次はポーカーだ、ポーカー!」ムキー!

レッサー「うふふふっ。良いですよー。じゃあチップを賭けましょうか」ニヤリ・・・

キャーリサ「ジョートーだし! 言っとくけどレート高いからな」ムンッ!!

ランシス(姫様、カモになるのが目に見えるよ)アハハ・・・

アンジェレネ「か、賭け事は止めておきましょうよ。シスター・ルチアや他の大人にバレた時厄介ですから」タラー・・・

キャーリサ「私が大人」サラッ

サーシャ「失礼承知で第11の意見ですが、己のポケットマネーの管理も出来無さそうな人が大人とは……ん?」チラッ・・・

キャーリサ「何をぅ! 言ってくれるじゃねーか、赤色娘……って、何だ」ジトー・・・


ベイロープ「あ、マジでトランプしてたわ。おーい、チビっ子どもー」テクテク・・・

神裂「ベイロープ。チビっ子って」アハハ・・・


キャーリサ「こっち来たぞ」チラッ・・・

ランシス「リーダー?」キョトン・・・

レッサー「何でしょう」ポカーン

ベイロープ「あら、姫様……ガキ共の相手をしてくれてたんですね。ありがとうございます」フフッ

キャーリサ「え? あ、お、おぅ。まぁ私は大人だからな」ムンッ

サーシャ(第一の感想ですが、社交辞令上手いですね。お宅のリーダー)チラッ・・・

レッサー(伊達にあの若さで結社立ち上げやってませんからね)ボソッ・・・

キャーリサ「そんで、どーしたよ?」ジー・・・

ベイロープ「ああ。お楽しみのところ水を差す用で申し訳ないのですが、二人を借りても宜しいですか?」チラッ・・・

ランシス「んー。今から仕事?」キョトン・・・

ベイロープ「いや、次の仕事の話だけよ。30分くらいで終わると思うわ」コクッ

レッサー「えー。折角、今から姫さんをカm……ゲフンゲフンッ……姫様と真剣勝負する予定だったのにぃ」ブーブー・・・

ベイロープ「だから1時間も掛けないわ。姫様、すいません」ペコッ

キャーリサ「まぁ仕事じゃーしゃーないな……二人とも、私は暫く此処に居るから終わったら戻ってこい」クイッ

レッサー・ランシス「「はーい」」トコトコ・・・

キャーリサ「んで? そっちのオッパイ聖人は?」チラッ・・・

神裂「てめぇおっぱ……こほんっ。私はサーシャを呼びに来ました。ローラの準備が整いましたので」コクッ

サーシャ「そういえば。これはこれは、第一の反省です。熱中しててすっかり使者の使命を忘れてました」ポリポリ・・・

キャーリサ「お前も大概ドジっ子だなー」アハハ

サーシャ「失敬な……しかし、カンザキが呼びに来るとは珍しいですね。普段はマグヌスなのに」チラッ・・・

神裂「ステイルは今日も書類と格闘してますよ。何やら頑張ってPCで作業しようとしてました」フフッ

サーシャ「PC? これまた珍しいですね。第一の所感ですが、彼は貴女と同じでアナログ派だとばかり思ってましたが」フム・・・

神裂「よく分かりませんが『今時の中学生なら』とか何とか言ってましたよ。香焼に何か吹き込まれたんでしょう」ハハハ

アンジェレネ「……、」ポリポリ・・・

キャーリサ「そういやーあの主教補佐(ノッポ)って14歳だったな……嘘臭ー」タラー・・・

神裂「最近、あの子はそれなりに子供っぽいですよ。ね?」チラッ・・・

サーシャ「ええ、多分。私と同程度には」コクッ

アンジェレネ「う、うん」コクン・・・

キャーリサ「……ふーん」ジー・・・

神裂「職業柄年齢不詳に思えるだけですよ。あとは煙草か……さておき、サーシャ。そろそろ」コクッ

サーシャ「はい。それでは二人とも、会えたらまた後ほど」スッ・・・テクテク・・・

キャーリサ「あいよー。またなー」ノ"

神裂「それでは……っと、そういえばアンジェレネ」チラッ・・・

アンジェレネ「え、あ、はい」キョトン・・・

神裂「ステイルが何やら言ってましたよ」ジー・・・

アンジェレネ「……あぅ」ムゥ・・・

サーシャ「ん?」チラッ・・・キョトン・・・

キャーリサ「……、」フム・・・

神裂「私用の様でしたので詳細は聞きませんでしたけど、当人らの問題でしょうから口出しはしません。それでは」テクテク・・・

サーシャ「ふむ……アン。第一の要望ですが後で詳しく。大丈夫、私は口が堅いのでアニーやレッサーには言いませんよ」ニヤリ・・・

アンジェレネ「な、何でもないよ!」アタフタ・・・


 フフフフフ・・・・・

アンジェレネ「はぁ」グデェ・・・

キャーリサ「二人っきりになっちまったなー」ワシャワシャ・・・

アンジェレネ「あははは……そですね」ポリポリ・・・

キャーリサ「……、」ナデナデ・・・

アンジェレネ「……二人でポーカーします?」チラッ・・・

キャーリサ「いんや。それよか……アンジェ」ナデナデ・・・

アンジェレネ「はい?」キョトン・・・

キャーリサ「何があった?」ジー・・・

アンジェレネ「え」ポカーン・・・

キャーリサ「さっきあの神裂(おっぱい)が言ってた事だよ。主教補佐と、どーこーって話」ポンッ

アンジェレネ「あっ」ドキッ・・・

キャーリサ「お姫さまに話してみー。相談乗ってやるぞ」ポンポンッ

アンジェレネ「え、えっと……その」モジモジ・・・

キャーリサ(かわゆいなー)ナデナデ・・・

アンジェレネ「その、詳しくは言えないんですけど……ステイルk……マグヌスさん主教補佐に『とある事』を言われちゃって」ムゥ・・・

キャーリサ「……、」ピタッ・・・

アンジェレネ「それでちょっと困っちゃいまして。如何答えたら良いか」ウーン・・・

キャーリサ「……、」ジー・・・

アンジェレネ「私自身、唐突な事で気持ちの整理がつかなくて……って、姫様?」チラッ・・・

キャーリサ「……さん」ボソッ・・・

アンジェレネ「え」キョトン・・・

キャーリサ「あんの……ロリコン野郎ーがー! 許っっっっさんぞー!」ムキャー!!

アンジェレネ「ひ、姫様!?」ギョッ・・・

キャーリサ「あんな不良似非神父の所に、私の可愛い可愛いアンジェをくれてやれるかー!!(お舅{しゅうと}的な意味で)」ガアアァ!!

アンジェレネ「な、何を仰ってるんですか!? あと何故ロリコン?」アワワワワ・・・

キャーリサ「アンジェ……私は友達を選べとは言わねーよ。でもな、『男』はちゃんと選べ! それだけは絶対だ!」ガシッ!

アンジェレネ「え? え!? な、何の話?!」タラー・・・

キャーリサ「というか、アニェーゼがそんな話許す訳無ーし! アイツは妹分放っておいて何してんだ!」バンッ!

アンジェレネ「た、隊長には、まだこの話してませんから……というかあんまりベラベラ言えた話じゃないですし」ポリポリ・・・

キャーリサ「ぐぬぬぅ。アンジェがピュアなのを良い事に、あの糞ノッポ野郎……張っ倒してやる!」ムンッ!!

アンジェレネ「ちょ、ひ、姫様! 勝手な事しないで下さい」アタフタ・・・

キャーリサ「何故止める! というか何故すぐにアイツの誘いを断らなかった! あの木偶坊主に……って、ハッ!?」ギョッ・・・

アンジェレネ「な、何か凄ーく勘違いされてる気がするけど……何ですか?」タラー・・・

キャーリサ「ま、まさかアンジェ―――あのノッポ不健康ロン毛ニコ中神父の事が……駄目だ! お父さん許しませんよ!」アーダコーダ・・・

アンジェレネ「お、お父さんって……やっぱ勘違いしてますね」ハハハ・・・

キャーリサ「だって普通なら即行ーお断りするだろ!」ジトー・・・

アンジェレネ「……その筈なんですけどね。私自身、何であの時断らなかったのか不思議で」ハァ・・・

キャーリサ「優しいというか優柔不断というか……あのなぁ、女が少しで弱い姿見せると男って生き物はズカズカと浸け込んでくるぞ」ツンッ

アンジェレネ(姫様の体験談かな?)アハハ・・・

キャーリサ「兎に角! アレはお前とは釣り合わねーし! 自分でも分かるだろ?」キッ・・・

アンジェレネ「っ……それは、その、確かに(立場・魔術師のレベル的に)釣り合う訳無いです……けど」グッ・・・

キャーリサ「何で心揺らいでるのかは分からんが(品性・汚れ具合的に)天秤が平行になる事はねーよ」ジー・・・

アンジェレネ「分相応じゃないのは分かってますよ」ムスー・・・

キャーリサ「でもそれに納得いかないと。ハァ……まったく、変に頑固だな。アンジェは」ポンッ

アンジェレネ「……、」ムゥ・・・



  シーン・・・・・



キャーリサ「―――でもなぁ。こう考えるのは私だけじゃないと思うわ。色んな人から言われると思うよ」ナデナデ・・・

アンジェレネ「……分かってますよ。私は所詮『並』ですから」ムスー・・・

キャーリサ「怒るなよ。アンジェを貶してる訳じゃねーんだし……何でアイツにそんな懐いちまったのかは知らないが、それは―――」

アンジェレネ「じゃあ何で姫様はステイルくんの事嫌がるんですか」ジトー・・・

キャーリサ「―――何でって。いや、別に嫌ってる訳じゃねーんだけどな。ただ、一言で言えばアイツは『不良児』だ」フム・・・

アンジェレネ「魔術師やってる時点で、私達は皆不良だと思いますよ」ムゥ・・・

キャーリサ「その土台を差っ引いてもアイツは不良だ。対してアンジェは大人に好かれる典型的な『良い子』」ツンッ・・・

アンジェレネ「……、」ウーン・・・

キャーリサ「まぁ私もマグヌスの事言えないくらい『不良』だけどさー……だからこそ、直感でそう思っちゃうんだよな」ナデナデ・・・

アンジェレネ「……助言として受け取っておきます。どうも」ジー・・・

キャーリサ「納得してねーみたいだけど、とりあえず早とちりすんなよ。その場の勢いで即決しちゃうのは甚だ早計ってヤツよ」ピッ・・・

アンジェレネ「それは充分分かってるつもりです。後悔したくはないですから」コクッ・・・

キャーリサ「口煩いババァの戯言だと思ってくれていーよ。でも一応真面目に、将来ある子供を見る目で話をしてるんだ」ポンッ

アンジェレネ「……まるでステイルくんが将来ないみたいな言い方ですね」ジトー・・・

キャーリサ「残念ながらアレは未来永劫あのまんまだ。詳細は知らねーが、アイツは過去に縛られた亡者だろ?」フム・・・

アンジェレネ「……、」ピクッ・・・

キャーリサ「そして典型的な『必要悪(ネセサリウス)』だ―――話が逸れたな。兎に角、アイツは止めとけ」フルフル・・・

アンジェレネ「……難とも言えませんが、参考にします」スッ・・・

キャーリサ「何処に?」チラッ・・・

アンジェレネ「すいません、お手洗いに」トコトコ・・・

キャーリサ「あいよ。あ、戻って来てね。一人放置されんのは嫌よ」ノ"

アンジェレネ「分かってますよ」ニコッ・・・



  カツカツカツカツ・・・・・



アンジェレネ「―――……はぁ。余計分かんなくなっちゃうよ」ムゥ・・・



   シーン・・・・・



キャーリサ「―――……私らしくも無い老婆心だな。でも、あーいう子には人並みの幸せを送って貰いてーんだわなー」シミジミー・・・

>>402
いや第●波動とかじゃなくてジーンズ店とかショチトルみたいなごくごく平和な交友関係のほうな


  ガチャン・・・・・


アンジェレネ「―――ハァ……姫様の所に戻るの気拙いなぁ」トボトボ・・・

アンジェレネ「でも、戻らないのは失礼だし……ちょっと頭にきちゃったけど、善意で忠告してくれたんだろうから」ムゥ・・・

アンジェレネ「確かに、私なんかじゃステイルくんと釣り合わない。『ステイルくんが』じゃなくて『私が』、ね」ハハハ・・・

アンジェレネ「……、」トボトボ・・・

アンジェレネ「まったく、これじゃあコーヤギくんの事怒れないなぁ。私が私を卑下しちゃってる」ウーン・・・

アンジェレネ「アニェーゼちゃんにもいつ相談するべきか……やっぱ話辛いなぁ」シュン・・・

アンジェレネ「私、どうしよう―――」パッ・・・


  ドンッ!


アンジェレネ「―――え……きゃっ」コテッ・・・

????「うをっ!?」グラッ・・・

アンジェレネ「す、すいません!」アワワワ・・・

????「い、いや此方こそ。思いっきりぶつかった様だが怪我は無かったかい?」スッ・・・

アンジェレネ「大丈夫です。ちょっと考え事してて私の前方不注意ですから……って、騎士団長(ナイトリーダー)」チラッ・・・

騎士団長「君は、ローマの……一人で居るとは珍しいな。いつも仲間や友人達と一緒に居る所しか見た事無かったが。手を貸そう」グッ・・・

アンジェレネ「ありがとうございます。まぁ常に誰かと一緒って訳じゃないですから……それより、如何して聖堂に?」ジー・・・

騎士団長「ああ、探し人を。姫を見てないか?」キョロキョロ・・・

アンジェレネ「姫様? キャーリサさまなら先程から食堂に」クイッ

騎士団長「いや、じゃじゃ馬姫じゃない。あの人は何処に居るか分かり易いから把握できてる」コクッ

アンジェレネ「じゃあ、ヴィリアンさまかリメエアさま?」キョトン・・・

騎士団長「双方だ。尤も、ヴィリアン様は被害者とも言えるか……ちょいとリメエア様がヴィリアン様を拉致って消えてね」ポリポリ・・・

アンジェレネ「ら、拉致」タラー・・・

騎士団長「ったく。あの人追跡不可能だから、必然的に連れ去られたヴィリアン様まで行方不明になってしまったんだよ」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「ま、まぁ妹さまはリメエアさまが心許してる数少ない身内ですからね」アハハ・・・

騎士団長「ホント、長女次女に連れ回されてばかりのヴィリアン様には同情するよ……まぁもし見つけたら教えてくれ」クルッ・・・

アンジェレネ「はい。見かければですけど」ポリポリ・・・

騎士団長「君の様な無邪気な子供にはリメエア様も心を許す。現れんとも限らないからな。頼んだ」スタスタスタ・・・

アンジェレネ「はぁ。(無邪気な子供って、まるで私が赤子みたいな言い方を)」ウーン・・・


  カツカツカツカツ・・・シーン・・・・・


アンジェレネ「騎士団長も相変わらず大変だなぁ……とりあえずキャーリサさまの所に―――」


リメエア「あら。キャーリサ(あの子)やっぱり聖堂(此処)に居たのね」ヌッ・・・


アンジェレネ「―――ぬわぁっ!!?」ビクッ!!

リメエア「しぃっ……大声出さないで。騎士団長(アイツ)が戻ってきちゃうでしょう」ピッ

アンジェレネ「むぐぅ……す、すいません……じゃなくて! り、リメエアさま!? ヴィリアンさままで!」タラー・・・

ヴィリアン「アン。驚かしちゃってごめんなさいね。姉君、騎士団長が居なくなった頃合いで出るからって突然過ぎますよ」ハァ・・・

リメエア「大丈夫。戻って来ないから……あとヴィリアン。二人きりの時は堅苦しい呼び方は止めなさいって言ってるでしょう」チラッ・・・

ヴィリアン「はいはい。それより、いつまで隠れ鬼続ける気ですか?」ハァ・・・

リメエア「目的が終わるまでよ。それより、アンジェレネ。先程は浮かない顔をしてたみたいだけど如何したの?」チラッ・・・

アンジェレネ「え。先程って……いつから見てたんですか?」キョトン・・・

リメエア「トイレに入る前くらいから」サラッ・・・

アンジェレネ「……気付かなかった」タラー・・・

ヴィリアン「姉さんの潜入能力(スニーキング)はプロの諜報員レベルだから。あ、それより何か悩んでたの?」アハハ・・・

アンジェレネ「ま、まぁちょっと仕事と人付き合いで色々とありまして」ポリポリ・・・

リメエア「ふーん……まぁ詳しくは聞かないわ。とりあえず、愚妹が嫌がらせでもしたのかと思ってたから安心した」フフッ

ヴィリアン「キャーリサ姉さんはアン達を虐めたりしませんよ。精神年齢は一緒ですけど、数少ない遊び友達ですし」サラッ

リメエア「シレッと毒吐いたわね。聞かなかった事にしてあげるけど、本人の前ではお止しなさいよ」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「あははは……えっと、姫さま達は何用で聖堂(此方)に? もしかしてキャーリサさまと同じですか?」キョトン・・・

リメエア「私達はあの子程暇じゃないわ。本来、あの子も暇じゃないんだけど仕事飽きたらリフレッシュに時間掛けるタイプだから」ハァ・・・

ヴィリアン「姉さんも人の事言えないんじゃ……あーごめんなさい。睨まないで」ポリポリ・・・

リメエア「まったく、御淑やかな様で腹黒いんだから。ああ、質問の続き……ちょっとお父様に怒られちゃってね」ムゥ・・・

アンジェレネ「お父さまって……フィリス元帥閣下(女王陛下の旦那さま)?」ポカーン・・・

リメエア「ええ。まったく、いつまで経っても子離れ出来ないんだから」ハァ・・・

ヴィリアン「私達が迷惑掛け過ぎなんですよ。特に姉さんは王族として」ジトー・・・

リメエア「だからって結婚の心配までされる謂われは―――」

ヴィリアン「ソッチじゃないでしょう。主には従者の件です。給士と騎士」ンモー・・・

アンジェレネ「従者、ですか? リメエア様、そんなの要らないって言ってませんでしたっけ」フム・・・

リメエア「ええ。でもね、形だけでも随わせておかないと周りが五月蠅くて」ポリポリ・・・

ヴィリアン「で、先日お父様が痺れ切らしてお母様に『アイツはいつになれば王族らしくするのだ?』とか怒ったらしいの」ハハハ・・・

アンジェレネ「えっと、女王さまはいつものノリで適当に流さなかったんですか?」ポカーン・・・

リメエア「いつもは適当に宥めて擁護してくれるんだけど、さっきも言った通り『痺れ』が切れてね」ハァ・・・

ヴィリアン「基本、お母様はお父様に頭が上がらないから。因みに、私達姉妹も同様。一番目立たないけど力関係のトップはお父様的な」アハハ・・・

アンジェレネ「へぇ。意外です。イギリスの王族って女性が強いモノだとばかり」キョトン・・・

リメエア「歴代で見れば半々よ。王政ではなく『女王政』の昨今だと、そう見えてしまうのかもしれないわ」フフッ

アンジェレネ「なるほど。それで、従者が如何こうってのは?」ジー・・・

リメエア「候補探しよ。給士についてはヴィリアンに、騎士についてはキャーリサに意見を聞こうと思って」クイッ

アンジェレネ「リメエアさまが他人の意見を聞くだなんて珍しいですね」ヘー・・・

リメエア「理屈云々で決めるのは得意だけど『人間味』とか『人となり』とかを判断するのは苦手なのよ。だから、この子達」ポンッ

ヴィリアン「あははは……まぁ私は殆どの給士の方にお世話になった事ありますし、キャーリサ姉さんは騎士派を率いてきましたから」コクッ

アンジェレネ「書類上以外での実情を知ってると。本来は自分で見るべきなんでしょうけどね。百聞は一見に如かずと言いますし」チラッ・・・

リメエア「別に、条件さえ合えば良いのよ」ジー・・・

アンジェレネ「条件、ですか?」キョトン・・・

ヴィリアン「まず給士・騎士双方女性で『瀟洒である事』と『野心が無い事』そして『仕事をしない事』だそうです。ふざけてるわよね」クスクスッ

リメエア「大真面目よ。垢抜けしてて無邪気で、給士や騎士だけど世話や護衛をしなくても文句を言わない人間。形式上だけ従者」サラッ

ヴィリアン「従者っていうより番犬とかペットに近いですよね。そんな条件で納得するメイド探すコッチの身にもなって欲しいです」ハァ・・・

アンジェレネ「でも良いですね。姫さまの近くに居れば面白くて為になるお話いっぱい聞けますし、更にお給料まで頂ける。素敵だなー」ニコッ

リメエア「……ふむふむ」ジー・・・

はい、今回は以上。ねむい。。。


>>408・・・勿論、冗談ですよ。佐天さんの人柄と人望的な意味でですよね。


あんまり進まなかったけど、とりあえず次回! そんじゃ! ノシ"

こんばんわ。投下スピード亀々で申し訳ない……久々にボチボチ投下します

ヴィリアン「ふふふふ。絵本の中のお話みたいね……でも実際は―――」チラッ・・・

リメエア「……、」ポカッ

ヴィリアン「―――あ痛っ。ね、姉さん! 私、何も言ってないじゃない!」スリスリ・・・

リメエア「目は口ほどにモノを言うわ。アンジェレネ(この子)に悪い印象与えないで貰える?」ジトー・・・

アンジェレネ「し、姉妹喧嘩は駄目ですよ」アタフタ・・・

リメエア「安心なさい。今のはタダの妹教育だから」ニコッ

ヴィリアン「えー」タラー・・・

アンジェレネ(ヴィリアンさま、相変わらず不憫だなぁ)アハハ・・・

ヴィリアン「んもぅ……兎に角、さっさとキャーリサ姉さんと合流して話決めちゃいましょう」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「あ、じゃあ私はお邪魔になるでしょうから食堂から離れてますね」ペコッ・・・クルッ・・・

リメエア「……待ちなさい」スッ・・・

アンジェレネ「え」ピタッ・・・

ヴィリアン「姉さん?」キョトン・・・

リメエア「ねぇ、アンジェレネ」ジー・・・

アンジェレネ「はい? 何でしょう」ポカーン・・・

リメエア「さっき貴女は『私(姫)の従者になったら面白そう』みたいな事を言ってたけど、真面目にそう思ってる?」ジー・・・

アンジェレネ「え。あ、はい。何でそんな事を聞かれるのですか?」キョトン・・・

リメエア「ヴィリアンが言った通り、従者とは名だけの置物みたいな扱いでも?」ジー・・・

ヴィリアン「姉さん、一体何を」タラー・・・

リメエア「黙ってなさい。それこそ私に愛玩動物の様に扱われて、人として、労働者としての誇りを踏み躙られても?」ジー・・・

アンジェレネ「へ? うーん……難しいなぁ。私バカだから、姫さまが仰ってる事よく分からないです」ポリポリ・・・

リメエア「そう、ごめんなさい。じゃあ質問を変えて簡潔に―――貴女は私を、私達を如何思ってる?」ジー・・・

アンジェレネ「私達? って、リメエアさまとヴィリアンさまですか?」ホェ?

リメエア「キャーリサ含め、私ら王女三姉妹よ。教えて」コクッ

アンジェレネ「はぁ……仲良いなぁと。あとは、うーん。皆さん、優しいですし面白いですし綺麗です……他には」エットーウーント・・・

ヴィリアン(キャーリサ姉さんを優しいと言えるこの子の度胸が凄い)アハハ・・・

リメエア「じゃあ『王族』としては如何かしら?」ジー・・・

アンジェレネ「おうぞく? ざっくばらんな質問ですね……うーん」ポリポリ・・・

リメエア「正直に答えて良いわ。思ってる事を素直に教えて」コクッ

アンジェレネ「じゃあ、その……失礼ですが、ヴィリアンさま以外あんまり王族には見えないかなぁって」アハハ・・・

ヴィリアン「ええ、姉さん達に派失礼ですけどよく言われますよね」チラッ

アンジェレネ「リメエアさまとキャーリサさまは王族っていうより政治家とか軍人気質っぽくて……あ、勿論尊敬はしてますよ!」アタフタ・・・

リメエア「正直で結構よ。的を得てると思うわ」フフッ

アンジェレネ「その……私は生粋の英国人に比べたら敬意が足りないかもしれません。生まれも基督教の宗派も違いますから」ポリポリ・・・

ヴィリアン「そういえば、アンはローマ人だったわね。アニーも同じかぁ……サーシャはベルリン」コクッ

アンジェレネ「だから何と言ったらいいか。勿論、偉いのは分かりますけど、私達でいうとこの法王さま程ではないかも」コクッ

リメエア「そうよね。あくまで、貴女やアニェーゼの部隊の娘達は『清教』に借りがある訳で『英国』に借りがある訳じゃないもの」ジー・・・

アンジェレネ「えぇっと、生意気言っちゃってごめんなさい」ペコッ

リメエア「気にしてないわ。寧ろ私達を『王族』として然程意識してないってところに好感が持てる」ニコッ

アンジェレネ「王族というより、女子寮の先輩達と同じ感覚なのかなぁ……あ、す、すいません。また失礼な事を」アタフタ・・・

リメエア「そう思ってくれてた方が嬉しいわ。ね、ヴィリアン」チラッ・・・

ヴィリアン「そうですね。堅苦しいのよりは気持ちが楽です。私自身、アンとは気兼ねなくお友達でいたいしね」ニコッ

アンジェレネ「え、へへ。ありがとうございます」ニパー

リメエア「ふふっ……良しっ。決めた」フフッ

ヴィリアン「はい? 姉さん?」タラー・・・

アンジェレネ「え。一体何を?」ポカーン・・・


リメエア「ねぇ、アン―――私の側近になってくれないかしら」サラッ・・・


ヴィリアン「」

アンジェレネ「」

リメエア「勿論、強制ではないわ。待遇も要相談するし、別に『正教』から鞍替えしろとも『英国』に帰化しろとも言わない」キッパリ

ヴィリアン「」チラッ・・・

アンジェレネ「」ポカーン・・・

リメエア「アニェーゼの部隊から外れろとも言わない。寧ろ、実質残ったままでも良いわ」

ヴィリアン「……ちょっと、姉さん」タラー・・・

アンジェレネ「」キョトーン・・・

リメエア「偶に、公的な用事で出かける時とかに側近として居てくれたり、暇な時話相手になってくれればそれでOKよ」コクッ

アンジェレネ「」チョウチョー・・・

リメエア「部隊以外に『第一王女侍女』の肩書が増えるだけ、程度に考えてくれれば良い。仕事は私一人で殆どするか―――」

ヴィリアン「姉さん、マジでストップです」ピッ!

リメエア「―――……何よ」ジトー・・・

ヴィリアン「アンが固まってます」クイッ

リメエア「……、」チラッ・・・

アンジェレネ「」ピヨピヨ・・・

リメエア「……何故に」ハテ・・・

ヴィリアン「唐突過ぎるんですよ。何考えてるんですか! いきなり『側近やれ』だなんて言われたら困るに決まっているでしょう」ハァ・・・

リメエア「いや、一応順を追って説明してるつもりだけど」サラッ

ヴィリアン「本気でそう言ってるならやっぱり神経疑いますって。とりあえず、アンを正気に戻さなきゃ……アンジェレネ!」トントンッ

アンジェレネ「                                       ひゃいっ!? 」ビクッ!

ヴィリアン「大丈夫? 姉さんが馬鹿な事言ってごめんなさいね」ヤレヤレ・・・

リメエア「ヴィリアン、随分言ってくれるじゃない。私は大真面目よ」ジトー・・・

ヴィリアン「なら、尚更性質が悪いです」マッタク・・・

アンジェレネ「あ、あの、その、えっと……ええぇ!?」アタフタ・・・

リメエア「アンジェレネ。私の話、理解できた?」ジー・・・

アンジェレネ「り、理解って、うーん……えっと……な、何で、私が」タラー・・・

リメエア「貴女は私が知り得る知人の中で最も若い女性で、尤も無邪気。しかもそれなりに仲が良い」ポンッ

アンジェレネ「そ、それは、でも、そんなの……私、駄目駄目で、弱くておっちょこちょいで、護衛とか給士とか出来ないですし」ダラダラ・・・

リメエア「別に守って貰う必要はないし、身の世話をして貰うつもりも無いわ。さっきも言った通り『側近』であれば充分なの」コクッ

アンジェレネ「……うぅ」タラー・・・

リメエア「それとも、やっぱり私の従者は嫌かしら?」ジー・・・

アンジェレネ「い、イヤって訳じゃ無くて! 何というか、恐れ多いといいますか……えっと、その」アワワワ・・・

リメエア「さっき法王程敬ってはいないって言ってたじゃない。それとも、やっぱり私が陰険根暗ヒッキー年増姫だから?」ジー・・・

ヴィリアン(あ、自覚あるんだ)チラッ・・・

アンジェレネ「う、敬ってない訳じゃないです! それに、私はリメエアさまの事陰険とか根暗だななんて思ってませんよ」ムゥ・・・

リメエア「良かった。じゃあ」スッ・・・

ヴィリアン「ちょ、ね、姉さん! 唐突の上、早急過ぎですってば! アンも困ってますから」タラー・・・

アンジェレネ「……、」タラー・・・

ヴィリアン「それに、そういう暗示誘導染みた勧誘は卑怯ですよ。アニーに申し訳が立たないでしょうに」ヤレヤレ・・・

リメエア「そうね……まぁ急いだりしないわ。リミットは今度お父様と食事する時までだし」フム・・・

ヴィリアン「まったくもぅ。えっと、アン。無理だったらキッパリ無理って言って良いからね。姉さん、無理強いしてる訳じゃないから」ポンッ

リメエア「無理強いはしてないけど、強気でスカウトはしてるわ」キッパリ・・・

ヴィリアン「姉さん黙ってて! アンが余計に混乱しちゃうでしょ……兎に角、思い詰める程悩まないでね」ナデナデ・・・

アンジェレネ「……はい」ムゥ・・・

ヴィリアン「それから、キチンとアニーに相談しなさい。その上で判断するのよ」チラッ・・・

リメエア「それとも、私からアニェーゼに話をしても良いかしら?」ジー・・・

アンジェレネ「じ、自分でします! だから、その……姫さまは何も言わないで。お願いします」ペコッ・・・

リメエア「そう……分かった。良い返事を期待してるわ。またね、アンジェレネ」クルッ・・・テクテク・・・

ヴィリアン「まったく……ってちょっと、姉さん! 何処行くの!?」パッ

リメエア「帰る。用は済んだもの」テクテク・・・

ヴィリアン「済んだって、まだ決まってないじゃない。それにキャーリサ姉さんは?」チラッ・・・

リメエア「アンジェレネが肩書で戦闘魔術師語れるんだから護衛に騎士なんて必要無いじゃない」クイッ

アンジェレネ「うぇ」ドキッ・・・

ヴィリアン「お、横暴過ぎます」ハァ・・・

リメエア「それよりヴィリアン。貴女の車で来たんだから送ってきなさい。帰りはリバプールの方よ―――」テクテク・・・



  シーン・・・・・



ヴィリアン「ハァ。アン、ごめんなさい」ポリポリ・・・

アンジェレネ「いえ……ヴィリアンさまが謝られる必要は無いです」アハハ・・・

ヴィリアン「ホント、我儘……でも嫌いにならないであげて。あのリメエア姉さんが此処まで心許すのは珍しいから」ナデナデ・・・

アンジェレネ「はぁ。でも、やっぱり……私みたいな乞食修道女が姫様の従者だなんて」タラー・・・

ヴィリアン「卑下し過ぎよ。それに今時の側近に生まれ階級は関係無いわ。シルビアだってそんなものよ」フフッ

アンジェレネ「し、シルビアさんは聖人でもありますから、私なんかと比べちゃ申し訳無いです」アタフタ・・・

ヴィリアン「本人も私達も聖人だの何だの気にしてないって。あと姉さん、要は近くに置くなら友達が良いってだけだから」ポンポンッ

アンジェレネ「とも、だち」ムゥ・・・

ヴィリアン「そう。まぁ下手すれば母と娘程離れてるけどね。兎に角、あまり深く考えないで」ナデナデ・・・

アンジェレネ「……ステイルくんも、同じなのかな」ボソッ・・・

ヴィリアン「え? マグヌスさん?」キョトン・・・

アンジェレネ「あ……い、いえ、何でもないです」アタフタ・・・

ヴィリアン「……、(何だかなぁ)」ムゥ・・・



 ガチャッ・・・・・



ヴィリアン「っ!」ビクッ

キャーリサ「―――……食堂の前でゴチャゴチャと喧しい声が聞こえるなーとか思ったら、ヴィリアンかよ」ムンッ

アンジェレネ「キャーリサさま」アッ・・・

ヴィリアン「あ、姉さん。忘れてた」アハハ・・・

キャーリサ「まったく。しかも、こんな所でアンジェが捕まってるたーな」ムゥ・・・

アンジェレネ「ご、ごめんなさい」ペコッ

ヴィリアン「アンは悪くないわ。引き留めたのは私……というかリメエア姉さんだから」ヤレヤレ・・・

キャーリサ「は? 姉上? 何処に?」キョロキョロ・・・

ヴィリアン「今さっきまで此処に居たんですよ。ただ、気が済んだみたいで……ちょっと色々ね」チラッ・・・

キャーリサ「んー?」ポカーン・・・

アンジェレネ「……あの、キャーリサさま。すいません。戻って早々なんですが」ジー・・・

キャーリサ「どうした? まさか姉上に虐められたか?」チラッ・・・

アンジェレネ「ち、違いますよ! えっと……寮に戻らせて貰います」シュン・・・

キャーリサ「え……何でだ―――」ムッ・・・

ヴィリアン「姉さん」ジー・・・クイッ・・・

アンジェレネ「……、」シュン・・・

キャーリサ「―――だ……あっ……そう」コクッ・・・

アンジェレネ「すいません。また今度、トランプのお相手お願いします……失礼します」ペコッ・・・トボトボトボ・・・・・



 シーン・・・・・



キャーリサ「……おい、ヴィリアン」ジー・・・

ヴィリアン「ちゃんと説明します。それより、今からリバプール行くけど一緒に行きますか?」チラッ・・・

キャーリサ「ああ、暇だから行く。姉上も一緒か?」キョロキョロ・・・

ヴィリアン「はい。とりあえず、歩きならが説明しますね―――」

キャーリサ「あいあい」テクテク・・・




   カツカツカツカツ・・・・・




騎士団長「―――まったく何処行ったんだ、あのお転婆姫達は……キャーリサさままで消えおってからに」キョロキョロ・・・ハァ・・・

アンジェレネ「―――」トボトボ・・・

騎士団長「あーもぅ……と、おや。おーい、シスター・アンジェレネ。やはり君の所に姫様達は現れなか―――」ノ"

アンジェレネ「―――」トボトボ・・・

騎士団長「―――った……声を掛けられる雰囲気じゃないな。思い詰めた様子だが大丈夫か? 後でSt.神裂に報告しておこう」ジー・・・

 ―――そのまた後日、AM11:30、英国、ロンドン郊外、とある教会近くのアパート・・・・・


  キャーキャーワーワー ワンヤヤンヤ ドタバタジタバタ・・・・・


シルビア「―――こらああああぁ! こんの糞ガキ共ぉ! 昼飯前に泥遊びしてくんなっつっただろっ!!」ウガー!

男の子A「うっせーばーか!」ワーワー!

男の子B「こどもはあそぶのがしごとだもんねー。しゃーないしゃーない」バタバタッ

シルビア「お黙る! てかその服のまま玄関上がらないの! まったく……今着替え持ってくるから待ってろ」プンスカッ

女の子C「シルビアー。Dちゃんがひざすりむいちゃったー」トコトコ・・・

女の子D「……、」ウルウル・・・

シルビア「あーはいはい。唾ツケときゃ治る……って言いたいとこだけど、大分痛々しいわね。ちょっとオッレルスー」アリャリャ・・・

オッレルス「……んー」コトコト・・・グツグツ・・・

シルビア「昼飯の準備で忙しいか……まったく、人手が足りない。あ、こら! 男子共! まずは着替えろと言うに!」ハァ・・・

オッレルス「あははは。まるっきり『おっかさん』だね」クスッ

シルビア「喧しい駄阿呆! 誰の所為だと思ってる!」ギロッ・・・

オッレルス「おー怖っ。子供達が怖がっちゃうから止めて下さいねー」フフッ

シルビア「てめっ……てか、穀潰し1号2号は如何したのよ! アンタらに付いてったでしょ?」ジトー・・・

オッレルス「せめて居候1号2号にしてあげようよ……A、デッカい兄ちゃん達は?」グツグツ・・・

A「おれらといっしょにあそんでたぜ。もうそろそろEたちとかえってくるとおもう」コクッ

B「あいつら、こどもあいてに『てかげん』しないんだよー。ふざけてるよねー」ハハハ

シルビア「~~~~~っ」アタマイタイ・・・

オッレルス「まぁアイツららしいけどさ。あ、そろそろ『お手伝いさん』が来る頃じゃないかな」チラッ・・・

A「え? きょう、だれかくんの?」キョトン・・・

オッレルス「ふふっ。誰だろうねー。もしかしたらヴィリアン様かもしれないぞ」ニヤッ

B「ほ、ほんと!?」パアアァ!

C「じゃあはやくきがえなきゃ! こんなきたないカッコじゃわらわれちゃう」アタフタ・・・

シルビア「ハァ……姫様が来る訳無いだろ……とりあえず、全員風呂に行け! まとめて洗濯してやる! あ、Dは上がったら消毒ね」ポンッ

D「うん」トコトコ・・・

オッレルス「ふふっ。流石シルビアだね……おっと。第二陣が帰ってくる前に昼飯仕上げるか」スッ・・・


    パタパタッ! ワーワー!! ドタバタ―――ピンポーン・・・・・


オッレルス「ありゃりゃ? もしかして帰って来ちゃったか……開いてるよー」チラッ・・・


アンジェレネ「こんにちわー」ガチャッ

香焼「遅くなりました。すいません」ヒョコッ


オッレルス「お。こんにちは。お手伝いの方が先に着いたか」ハハッ

アンジェレネ「あれ? シルビアさんは?」チラッ・・・

オッレルス「子供達をお風呂に入れてるよ。あれ? 今日は一人だっけ?」ジー・・・

香焼「いえ。後から――― >>419 >>420 ―――も来ますよ」クイッ・・・



※安価 : 必要悪の教会・女子寮・カルテッ娘・天草式・嘱託魔術師など関係者の中から2人

レッサー

神裂

オッレルス「―――へぇ。神裂も……レッサーてのは始めてくる子かな」キョトン・・・

香焼「はい。女教皇様は何やらお話したい事がある様で。あとはまぁ……色々」チラッ・・・

アンジェレネ「え」キョトン・・・

オッレルス「ふーん。しかし、アニェーゼが一緒じゃないのは珍しいね」グツグツ・・・

アンジェレネ「隊長はステイルく―――主教補佐と処刑(ロンドン)塔に行きました」コクッ

オッレルス「仕事か。仕方ないね……あ、ごめん。今昼飯出来あがったから配膳手伝って貰える?」スッ・・・

アンジェレネ「はい。何人分?」キョロキョロ・・・

オッレルス「1,2,3,4……18皿を3組ずつかな。大皿は5つお願い」クルッ・・・

香焼「了解っす」テクテク・・・


  パタパタッ・・・・・


オッレルス「―――♪~」カチャカチャ・・・


アンジェレネ「……、」チラッ・・・

香焼「アン、どうしたの?」カチャカチャ・・・

アンジェレネ「いや、その……相変わらず一般人っぽい人だなぁって」アハハハ・・・

香焼「確かに。オッレルスさん、傍から見ると児童福祉施設の職員にしか見えないかな」クスッ・・・

アンジェレネ「アレで『魔神』崩れってのが信じられないですよね……あ、だから『崩れ』なのかな?」キョトン・・・

香焼「失礼な事を。それより―――大丈夫なんすか?」ジー・・・

アンジェレネ「……ん」カチャカチャ・・・

香焼「朝から……というか此処数日、調子悪かったんでしょ? アニーから聞いてるっすよ」カチャカチャ・・・

アンジェレネ「大丈夫。心配掛けちゃってゴメンね」ニコッ・・・

香焼「なら、良いけど……偶に上の空な感じだったからさ」テクテク・・・

アンジェレネ「気にしないで下さい―――オッレルスさん、大皿は先に並べちゃいますよ」スチャッ・・・

オッレルス「ありがと。あ、それからチビ用の『前掛け』を外から取って来て貰えるかな。干してあるヤツ3つ」コトコト・・・

香焼「玄関先に干されてたヤツですね」チラッ・・・

オッレルス「そうそう。頼んだ―――っと」パッ・・・


 キャーキャーワーワー ワンヤヤンヤ ドタバタジタバタ・・・・・


オッレルス「あー……第二陣帰って来ちゃったか」アハハ・・・

アンジェレネ「まだ全員帰って来てなかったんですね」タラー・・・

オッレルス「うん。あ、悪いんだけど、皆泥んこで帰ってくるから玄関から先上がらせないでおいて」アハハ・・・

香焼「全員お風呂に担いで行けば良いんすよね」クスッ

オッレルス「そゆこと。泥を撒き散らさせない様にシルビアんとこまで運んでちょーだい。大変だけど頑張って」コクッ

アンジェレネ「あははは。まさに『防衛線死守』かな」フフッ

オッレルス「うん。まったく、無邪気な子供達を相手にするのは魔術師やら超能力者相手にするより疲れるよ」ハハハ

アンジェレネ「ふふふ。でも、可愛い盛りの子供達ばっかり」ニコッ

オッレルス「うん。あの究極の人間不信たる第一王女様にも気に入られてるからね。ウチのやんちゃっ子達は」クスクスッ

アンジェレネ「っ……あはは。そうなんですか」ポリポリ・・・

香焼(……ん?)チラッ・・・キョトン・・・

オッレルス「さーて。コッチも一段落着いたとこだし、俺も待ち構えるかなーっと。俺が3,4人担ぐから残りお願いね」テクテク・・・

香焼「ははは、流石っす」ポリポリ・・・

オッレルス「まぁアンジェレネはもう慣れっこかな。宜しく」

アンジェレネ「一応頑張ります」ポリポリ・・・


  パタパタパタパタ・・・・・


男の子E・F・G『ただいまー!』ドッ!

オッレルス「いよっと! おかえりー」ガシッ! ガシッ! ガシッ!

E「おわっ」ヒョイッ・・・

F「あにゃ」パシッ・・・

G「うをぅ」ブラーン・・・

オッレルス「お捕まえたぞー。前らはお風呂直行な。アンジェレネ、香焼。あと2,3人だから捕まえて連れて来てね」テクテク・・・

E・F・G『おーろーせー!』ジタバタ・・・

オッレルス「はいはい、暴れない暴れない。シルビアに洗って貰ってこーい」ガチャッ・・・テクテク・・・


  ギャーギャーギャー!!


香焼「あははは。慣れてるなぁ」タラー・・・

アンジェレネ「ですね……っと、来ましたよ」チラッ・・・

女の子H「ただいまー。あ! アン!」パタパタッ・・・ギュー!

アンジェレネ「はいはい、おかえりー。お邪魔してます」ポンッ

女の子I「アンおねいちゃん! あそびにきたの? アニーおねいちゃんとかは?」キョロキョロ・・・

アンジェレネ「今日は私一人ですよ。あ、他にも何人か居るけど今来てるのはコォヤギくんだけかな」チラッ・・・

H「あ、わんこだ。ひさしぶりー」ヨッ!

I「わんこー。あとでまた『がくえんとし』のおはなしきかせて!」ワクワク・・・

香焼「あははは、うん。じゃあまずキレイキレイしてからね。(アニェーゼの所為で『わんこ』が通称になってしまってる)」ポリポリ・・・

H・I「「はーい」」コクッ

アンジェレネ「それじゃあ靴と靴下、あと上着を玄関(此処)で脱いでお風呂場行こうか」ポンッ

H「ひとりでいけるー!」ヌギヌギ・・・

I「きれいきれいしたらご飯なの? じゃあ、わんこ! そのとき、おはなしね! このまえのつづき!」ヌギヌギ・・・

香焼「はいはい。あ、脱ぎっ放しにしちゃ駄目っすよ。えっと……このバスケットの中に入れてね」スッ・・・

H・I「「わかったー」」ポイッ・・・テクテク・・・

アンジェレネ「ふふっ……あの子達は大人しい方だから助かるよ。それにしても、いつもの如く学園都市の話は人気ですね」フフッ

香焼「子供達の憧れらしいからね。超能力が羨ましいんだか近未来風な都市が羨ましいんだか。どっちもかな」フム・・・

アンジェレネ「どうだろね。あ、最後の子供達が来、た……よ……、」ピタッ・・・


フィアンマ「―――」ドロンコー・・・

トール「―――」ビシャビシャー・・・

男の子J「~♪」キャッキャッ!


アンジェレネ「」タラー・・・

香焼「泥で全身真っ茶の『右』に、子供を肩車したズブ濡れ『魔神』……何この……シュールな絵面のラスボス級」エー・・・

すません・・・書いてる途中落ちてた……またあんまり進まんかった

ごめん、寝まふ


にゃーん......


アンジェレネ「ねぇ、コォヤギくん‥‥こういう時、如何したらいいのかなぁ」

香焼「笑えば良いとお.....いや、笑えないか」


男の子J「たか~い! とおる! もっとはやくー!」dtbt!

トール「あのなぁ、俺疲れてんだよ。誰かさんが意地になって歳も気にせずハメ外してた所為でさぁ」

フィアンマ「貴様.....人のことを言えた口か? 率先して川にダイブしてたのは何処のロン毛だ」

トール「別にぃ。俺はコイツらと純水に遊びたかったから言い訳しねぇよー。なー」Pon!

J「なー」ahaha!

フィアンマ「くっ! お、俺様は大人としてガキ共との格の違いをだなぁ」;;;

J「とおるー。『カクノチガイ』って、なぁにー?」

トール「んー。何だろうねー。とりあえずフィアンマおいたんは凄いって事かな」hahaha!

フィアンマ「お、おいたん!? 馬鹿にするのも大概にしろよ、男女! 呼ぶなら『叔父様』と呼べ!」

香焼(オジサン扱いされんのは別に良いんすね?)

トール「えー。どうする、J?」

J「えっとねー。ふぃあまんが『どろがっせん』でおれらにかてたらいいよー」

トール「だってよ、フィアマンおいたん」Pon...

フィアンマ「‥‥..、」

トール「あ。無視良くない」

J「いくなーい」Pon!

フィアンマ「あーもぅ喧しいっ‼ 引き千切るぞクソガキ共‼」Grrrrrh!

トール「そう言ってさっきもガキンチョ達に集中攻撃喰らったんだよなぁ。んで全身泥塗れ」huhuhu...

フィアンマ「黙りゃ!」

アンジェレネ(あ。噛んだ)

フィアンマ・トール「「……、」」

J「ねーねー。『だまりゃ!』ってなーに??」

トール「ぷっ‥‥きっと、フィアマンおいたんの母国の言葉なんだよ」huhuhu...

フィアンマ「……全身ずぶ濡れでは済まさんぞ」

トール「そんなに怒るなよ。小物に見えるぜ」

フィアンマ「ほざけ、『ンー』。神気取り匹夫が」

トール「.....おい、今何て言った」bhrrrrgh...

フィアンマ「ん? 何だったかなぁ。そー……んー。ンー。ん~?」huhuhu...

アンジェレネ(あわわわ。何かヤバいよー!)

香焼(『ンー』って……『ソー(トール)』のジャパニーズスラングなんだけどなぁ。何処で覚えたんだろ)

J「えーっと、『んーさん』って? よくわかんないけど、けんかいくないよ。シルビアおこるよー」PonPon.

フィアンマ・トール「「うっ」」;

香焼(……おっかさん、強ぇっす)





・・・・・・・・・・・・・・|ω・`)チラ




|ω・`) ・・・・・ 寝落チ、ゴメンネ




||)彡サッ




|ノ_-)ノ (((~ ボチボチ 投下シマス...

J「なかよししようねー。って……あっ! アンねえちゃんだ! あとわんこ!」ビシッ

フィアンマ・トール「「ん」」チラッ

アンジェレネ「ひっ!?」ビクッ

香焼「アン、ビビり過ぎ……えっと、こんにちわ」コクッ

J「こんにちはー。とおる、おろしてー」パタパタッ

トール「おう。あー多分、風呂直行しないと怒られるんじゃないか?」スッ・・・

香焼「仰る通りっす」ハハハ・・・

J「えーめんどー」ブーブー

アンジェレネ「だ、駄目だよ。汚れたまま入ったらシルビアに怒られ、ま……す―――」チラッ・・・


フィアンマ「あー」ドロダラケー・・・

   ↓ ※ アンジェレネ目線

フィアンマ『……あ”んっ?!』ブッコロッ!!


アンジェレネ「―――ょ……ぅぅ」スッ・・・

香焼「何故自分の後ろに隠れる? (んな咋に意識しないでも)」タラー・・・

トール「そりゃそこの元上司の赤毛不良司祭が怖いからっしょ」クイッ

フィアンマ「は?」ポカーン・・・ → ※『ハァアアァ!?』ギョロリッ・・・

アンジェレネ「っ~~~ッッ!!」ビクッ・・・

トール「ほれ見ろ」ハハハ

香焼「と、トールさん? (ハッキリ言うの止めて下さい)」タラー・・・

J「これじゃあ『ふぃあーまん(Fear-man)』だね」ハハハ

トール「ぷふー! Jが上手い事言った! これオッレルスにも教えよーっと」ニヤニヤ・・・

フィアンマ「……ふんっ!」ベチャッ! ワシワシッ!!

トール「んぎゃあああぁ! 泥塗れの手で髪撫でられたああぁ!! 色んな意味でキんモおおおぉいい!!」ゾクゾクッ・・・

フィアンマ「ふんっ! ふんっふんっふんっふんっふんっ!!」ワシャワシャワシャワシャッ

トール「ちょぁ!? ま、や、おい! ガチで止めろ!! テメェの髪アフロにすっぞ!」パシッ!!

香焼(あーあ……綺麗な金髪が茶髪に変わってく)ジー・・・

アンジェレネ「と、とりあえず……J。コッチおいで。服脱がなきゃ家に上がれないよ」コソコソ・・・

J「えー。なんでー」ムー

アンジェレネ「みんな、身体綺麗にしてからお昼ご飯食べるからね。だから、その……えっと」チラッ・・・

J「じゃあ、ふたりもシャワーあびるの?」クイッ

アンジェレネ「……、」ウッ・・・


トール「―――おまっ! ベタベタ触んな! 男に抱きつかれる趣味は無いっ!」パシパシパシパシッ!!

フィアンマ「―――貴様も! 泥塗れに! なれいっ!」ヌヲオオオオォッ!!


アンジェレネ「……そ、そうかな?」チラッ・・・

香焼「だから何故自分を頼るんすか」ハァ・・・

アンジェレネ「わ、私じゃ難とも出来ないよぉ! コォヤギくん、何とかしてー」ダラダラ・・・

J「わんこー。なんとかしろー」ジー・・・

香焼「……はぁ」ヤレヤレ・・・


 ギャーギャー ガーガー ビリビリウジュウジュ・・・・・


アンジェレネ「あわわわわ……本格的にヤバそうだよぉ」ダラダラ・・・

J「おー! なんかビリビリいってる! あとモヤモヤしてるー!」キラキラ・・・

香焼「大人げない……って、そんな場合じゃないっての。お、お二人とも!」タラー・・・


トール「―――マジふざけんなっ! 態々『第三の腕』出してまで泥着けようとすんなぅをっ危なっ!!?」スパークッ!!

フィアンマ「―――貴様こそ身体強化したその握力で俺様のコメカミ掴んでアイアンクローするんじゃないだだだだだぁっ!!?」グオンッ!!


香焼「……ごゆっくり」クルッ・・・

アンジェレネ「ヘタれっ!」グッ

J「へたれー」ハハハ

香焼「いやいやいやいやっ! アレ何とか出来るの最低限聖人並の力が必要だからね。自分じゃ無理でしょ常識的に考えて」タラー・・・

アンジェレネ「あははは……とりあえずお二人は無視って中に行こうか」ポリポリ・・・

香焼「そだね。あ、Jは此処で服脱ぐ事。アン、お願い」ガシッ

J「きゃー! わんこのえっちー!」キャッキャッ

アンジェレネ「はいはい―――っと、ほら。お風呂場行ってらっしゃい」ポンッ

J「んもー。ごういんなんだからー」ペタペタ・・・

アンジェレネ「おませさんめ。それじゃあ私達も中に……入って良いのかな?」チラッ・・・

香焼「大丈夫。まぁ一応一言告げとこ……あのー。その汚れた服で家ん中入らないで下さいねー……はい、行こう」ボウヨミー

アンジェレネ「うん。あ、洗濯物分けとかなきゃね」テクテク・・・

香焼「全部泥付いてるし、水に浸けておこうか。手洗いも必要かも」テクテク・・・

アンジェレネ「こういう時、都市製の家電あると便利なのになぁ。ステイルくんの部屋にある、あの『ボロ雑巾がハンカチに!』的な洗濯機」コクッ

香焼「仕上がりが別物になって出てくるから止めとこうよ―――あ、前掛け忘れるとこだった」アハハ・・・


 ギャーギャー ドタバタッ ドンガラガッシャーン・・・・・


アンジェレネ「ただいま帰りましたー」ガチャッ

A「アンだ!」パタパタッ

B「わんこもいっしょだ。あー……ヴィリアンさまじゃねーじゃん! オッレルスのうそつき!」グイッ

オッレルス「こら、まだ動くな。あー、お疲れ様。あれ? デカいの2人は?」チラッ・・・

香焼「外でじゃれ合ってます」クイッ

オッレルス「じゃあ飯抜きかな……あ、悪いんだけど子供達の身体拭くのと着替え手伝って」ゴシゴシッ

アンジェレネ「はい。C、D。おいで。髪乾かしてあげる」ポンポンッ

C「ありがと! あ、そのまえにDがケガしちゃってるからショウドクしてー」チラッ・・・

D「……、」ジー・・・

アンジェレネ「そうなんだ。それじゃ傷薬っと―――はい、おわり。泣かなかったねー。偉いですよー」ナデナデ

D「えへへ」モジモジ・・・

C「アン! はやくかみのけ、とかしてー」グイグイッ

アンジェレネ「はいはい。あ、HとIも上がったね。コッチおいで」ゴシゴシッ

H・I「「はーい」」テクテク・・・

香焼「……、」フフッ

A「じょしばっかズルいぞ」ブーブー

B「おれもオッレルスじゃなくてアンがいいなー」ブーブー

オッレルス「はいはい。そんな事言ってると将来碌な大人になれないぞ」ゴシゴシッ

E「『ろくなおとな』ってなにー?」チラッ・・・

香焼「え? うーん……立派な大人って事かな」ポンッ

F「ヴィリアンさまみたいな大人!?」パッ

G「ぼく、おとこだけどヴィリアンさまみたいになれたらいいとおもう!」キラキラ・・・

香焼「あーうん。そーだねー。(人気だなぁ。何故女王陛下差し置いてヴィリアン様なんだろうねー)」ハハハ・・・

オッレルス「兎に角だ。言う事聞かないとフィアンマとかトールみたいな大人になっちゃうぞ」ビシッ

子供達『いやだー』ブー

アンジェレネ「……ラスボス()」ポリポリ・・・

香焼「ま、まぁ強い人って大抵人格破綻者だし」ボソッ・・


 ガチャッ・・・・・


シルビア「もしくはそこのヒョロ男みたいな大人になっちまうよ」バンッ

J「よ!」バンッ

オッレルス「」

子供達『やだー』ブーブー

アンジェレネ「……ら、ラスボス?」チラッ・・・

香焼「つ、強い人は大抵……って、シルビアさん! 服着てから上がって来て下さい!」アワワワ・・・///

アンジェレネ「とか言いつつ、ちゃっかり見てるし」ジトー・・・

シルビア「ちゃんとバスタオル一枚巻いてるだろう。それに、コイツと坊やに見られたとこで如何って事無いさ」ハハハ

C「シルビア、おとこまえー」ヒュー

H「かっこいー。キャーリサさまみたいだー」ヒュー

E「キャーリサさまよりおっぱいないけどな」ハハハ

トール「いやぁ同じくらいじゃね? まぁシルビアの方が普段露出少ない分希少(レア)だと思うぞ」マジマジー

F「ぼくたちはいっつもみてるけどね」ムンッ

フィアンマ「なんと羨まs、ゲフンゲフンッ、けしからん。まぁガキだから仕方ないか……あ、ヴェントよかデカいな」ジージー・・・

G「べんとー?」キョトン・・・

香焼・アン「「……あ」」タラー・・・

シルビア「……、」ピタッ・・・

トール「え? お前、前方の裸見た事あるの?」kwsk!

フィアンマ「誰が教えるか。貴様がグレムリンの連中の諸々教えれば答えんでも無いがな」フフフ・・・

トール「んー。ウチの連中、貧乳ばっかだぞ。でも小ぶりだけど形は良かったな。はい教えた。次フィアンマな」クイッ

フィアンマ「なっ!? こ、コイツ、何の躊躇いも無く元同僚の(おっぱい)情報売りおった……しかし俺様は応えんぞ」フンスッ

トール「ずっけー! 約束守れよ! これだから枢軸国の連中は……あ、話変わるけど神裂のデカいよな……なっ!」バッ!

香焼「……え」ピタッ・・・

フィアンマ「貴様だ、極東の坊主。あの(おっぱい)聖人の所の教徒なのだろう? 答えろ。形は如何なのだ?」クイッ

香焼「かた……えっ!?」アタフタ・・・チラッ・・・

アンジェレネ「わ、私の方見ないでよ!」タラー・・・

トール「おい、ワンコくん。些か失礼だぞ。その子はまだ成長期だ……その、うん。これから膨らむ」ウンウン・・・

アンジェレネ「んなっ!?」カアアァ///

香焼「そ、そういう意味で見たんじゃないっすよ!!」ギョッ・・・///

C「そうなのー?」ペタペタッ

D「アン……ふくらみかけ」ペタペタッ

香焼「ぶっ!!」カアアァ///

アンジェレネ「こ、こらあぁ!! 馬鹿な事しないのっ!!」マッカッカァ///

A「でもアンってまだブラジャーしてないだろ」ツンツンッ

B「タンクトップだったよねー」ツンツンッ

アンジェレネ「や、やめなさいってば!!」アワワワワ・・・///

フィアンマ「ははは。まだまだガキって事だな……おぅ坊主。何故赤くなっているのだ? んー?」ニヤニヤ・・・

香焼「そ、その……こほんっ」///

J「こら、ふぃあまん。デリカシーがないぞ」メッ!

フィアンマ「デリカシーとはこれまた難しい言葉を知ってるな。だがガキんちょ相手に……って、え」チラッ・・・

トール「どったの右方の? ん?」チラッ・・・


シルビア「……―――」ガシッ・・・

オッレルス「え」グググ・・・

香焼(シルビアさんがオッレルスさんの頭を鷲掴みにして、持ち上げて……振り被って……あ、トルネード投法か)タラー・・・

シルビア「―――こんの……泥んこのまま上がってくんなぁ! このド変態スケベ親父共がああああぁ!!」ブオンッ!!

オッレルス「ひでぉおおおおぉ!!?」ビュンッ!!

フィアンマ・トール「「のもおおおぉ!!?」」ギョッ!!

アンジェレネ「人間剛速球!?」アワワワ・・・


 ドンガラガッシャーン・・・・・


北欧・右・雷『』チーン・・・

シルビア「暫く家に入ってくるな駄目大人共がっ!!」ムギギギィ/// パサッ・・・

C「あ、シルビアのバスタオルがおちた」ジー・・・

E「んー。やっぱおおきいか?」マジマジ・・・

F「シルビア、しんちょうもおおきいからねー」ジー・・・

シルビア「喧しい糞ガキ共! さっさと着替えろ! お前らも飯抜きにされたいか!?」ウギギィ・・・

G「おーこわいこわい……わんこ、シルビアのはだかのかんそうは?」チラッ・・・

香焼「はぁ!?」タラー・・・///

アンジェレネ「こ、コォヤギくん! 見ちゃ駄目!」ギュウウゥ・・・

香焼「え、な―――ぎゃあああぁ! 目が潰れるっ!! アンジェレネ、ち、力入れ過ぎだああぁ!!」ピギャアアァッ!!


 ギャーギャー ワーワー キャッキャキャッキャッ!!


D「……ばかばーっか」フフッ




オッレルス「……オレ、とばっちりじゃね」フコウダー・・・

 ―――そのまた後日、PM00:45、英国、ロンドン郊外、とある教会近くのアパート・・・・・



   にゃーん・・・・・



シルビア「―――そんじゃ、食べましょう」スッ・・・

子供達『はーい』カチャカチャッ・・・

シルビア「ほら、男子共。行儀良く食べなさい。あ、H。前掛け外れてる……アンジェレネ。Dを手伝ってあげて」チラッ・・・

アンジェレネ「はい。D、椅子をもうちょっと前出そうか」クイッ

香焼「……、」フフフッ

A「なぁわんこ! はなしのつづきー」モグモグ・・・

香焼「え、あ、うん。そうだったね……この前何処まで話したっけ?」ポリポリ・・・

B「『れーるがん』がチョーこうそうビルを、ゼンリョクシッソウでかけのぼったところまで!」キラキラ・・・

E「それで『あくせられーた』がまたトバッチリをうけたんでしょ!」キラキラ・・・

香焼「そこかぁ……えっと、御坂さん(超電磁砲)が悪ノリした白井さん(後輩)を追い駆けてね。第一位さん(一方通行)が―――」コクッ・・・


 チョーカーノ バッテリーガ ショートシテ アーダコーダ・・・コンコンッ・・・ガチャッ・・・・・


シルビア「ん」チラッ・・・

神裂「お邪魔します。遅くなりました」ペコッ

レッサー「やっほー、ガキどもー」ノ"

F「あ、レッサーだ」ゲー

G「ビッチがきたぞ、ビッチがー」ウゲー

レッサー「酷い言われ様ですが気にしませんよーだ。私はガキんちょ共とは違って大人(アダルティ)ですからねぇ」フフーン

H「またヘンなこといってるよー」ハハハ

I「オッパイのオバちゃんもこんにちわ」ペコー

神裂「おぱ……オバ……こ、こんにちわ」ヒクッ・・・

レッサー「ぷふー! 聖人のカンザキ様も、ガキ共からすれば胸垂れてるオバちゃんに見えるんでしょうねぉあ痛たたたたぁっ!!」ギュウウゥ!!

香焼(……馬鹿だ)ハァ・・・

アンジェレネ(レッサーちゃん……思った事、すぐ口にしちゃダメだよ)タラー・・・

シルビア「ハハハハハ! まだまだティーンエイジャーなのになぁ。あ、頼んでたモン持って来てくれたかい?」チラッ・・・

神裂「ええ。新型のミシンです……ところで、外に、その……うん」チラッ・・・

レッサー「パンツ一丁で文字通り『天日干し』されてる変態野郎三人組は何なんですか?」ハハハ

シルビア「ガキ以下の馬鹿騒ぎしてたから干してんの」キッパリ・・・

香焼(物理的にね。オッレルスさんはトバッチリっすけど)タラー・・・

神裂「はぁ。アレが世界でも10本指に入るレベルの高位魔術師連中とは……世も末ですね」ポリポリ・・・

レッサー「あ、そうだ。私達の分のお昼あります? ハムサンドくらいしか食べて無くてお腹空いてるんですよ」キュウ・・・

シルビア「あるよ。誰かさんが多めに準備してたみたいだからね」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「今準備しますね。手を洗って待ってて下さい」コクッ

神裂「ありがとうございます、アンジェレネ……そういえば、シルビア」チラッ・・・

シルビア「ん? あぁ……ワンコくんから聞いてたよ。後でブリュンヒルドも来るからそん時に詳しくな……まずは飯喰え」クイッ

レッサー「そーしましょ。そーしましょー」ヨイショッ!


  ワンヤワンヤ ガヤガヤ キャーキャーワーワー ニャオーン・・・・・



シルビア「―――さぁてと。全員食べ終えたか。次は昼寝させないとね」フゥ・・・

神裂「いやはや、大変ですね。侍女の仕事と、彼(オッレルス)の『手伝い』と、保母さん代わりと」フフッ

シルビア「……まぁ何だかんだ好きでやってるから何も言えんさ。あ、アン達。悪いんだけど洗い物とガキの相手頼める?」チラッ

アンジェレネ「分かりました……って、既に皆コォヤギくんの話の虫ですけど」チラリ・・・ハハハ・・・


香焼「―――で、友人とステ……マグヌス主教補佐が『好きなパスタの種類』で『タラコソース』と『アラビアータ』喧嘩しだしたんだ」ピッ

A「おれはミートソースがいちばん『おーどー』だとおもうんだけどー……って、たらこソースってなんだ?」キョトン・・・

香焼「タラの卵(salted cod roe)とクリームのソースだよ。さておき、2人は自分の問い質してきた……『ドチラが正しいか』ってね」ハァ・・・

B「ドチラもなにも、そんなのひとそれぞれだろ?」ポカーン・・・

香焼「Bの言うとおりだと思う。でもあのお馬鹿2人は『あの超プチプチ感が至高なんです!』とか『刺激物が一番だ常考』とか」グデェ・・・

C「うわぁ。わんこ、ロンドンにいても『とし』にいても、くろうするんだね」ヤレヤレ・・・

香焼「ハハハ……で、2人は自分に詰め寄ってくる。『君(貴方)は僕(私)の味方……裏切ったら分かってるね?』、、、そんな感じ」ハァ・・・

D「……わんこ、もてもて?」キョトン・・・

香焼「そういうアレじゃないんだ。もっとオゾマシイ、独占欲……いや、服従させようみたいな……あ、ごめん。難しいよね」ポリポリ・・・

E「んー。とりあえず、つづきは?」トントンッ

香焼「うん。マグヌス主教が煙草の火を近付け、最あ……友人が手首を握り粉砕しようと脅す最中……『英雄』がやってきたんだ」グッ

F「ヒーロー!」キラキラ・・・

香焼「カラフルな爆発と共に颯爽と現れたのが……超能力者の……第7位!」コクッ

G「『すごパ』のレベル5だー!」キャー!

香焼「そうだね。彼は自分の事を2人から救出し、こう叫んだ―――『いや、根性的に和風パスタだろ!』……はぁ」ドヨーン・・・

H「ど、どうレベルのバカだった」エー・・・

香焼「それでまた三つ巴で喧嘩始めて。超能力者と大能力者と英国でも最強クラスの魔じゅ……喧嘩屋が自分の部屋で暴れ始めて」ダラダラ・・・

I「へや、ぶじだったの?」タラー・・・

香焼「色々ボロボロ……まぁ結局、解決したのは英国のシスター・禁書目録(インデックス)なんだ」ハハハ・・・

J「うそだー! あの『ぼうしょくまじん』がー?」キョトン・・・

香焼「3人が取っ組み合う中、彼女は微笑み告げた。『食べ物に優劣があってはいけません。神の下では皆、同列平等に食べ物なんだよ』と」コクッ

子供達『おぉ』ホッ・・・


レッサー「……ちょっとお姉さん。あれ実話?」チラッ

神裂「ええ。珍しくあの子(インデックス)がその場を沈めました」ハハハ・・・

アンジェレネ「禁書目録が言うと説得力ありますね」ハハハ・・・

シルビア「にしても、必要悪の教会の主教補佐と超能力者第7位が何で仲良し子良しやってんのさ……まぁ良いか。アイツもガキだし」フッ・・・

神裂「ええ。実際レッサーと同い年ですからね」ポンッ

レッサー「うわぁ。将来的にアイツと幼馴染的なポジションとか勘弁して欲しいんですけどー」ウゲェ・・・

アンジェレネ「カルテッ娘(私達)的にはもう遅いでしょ。既に友達だし」ポリポリ・・・

レッサー「うーん……まぁ私がアイツにデレる事は無いので問題ナッシングですかね」ムンッ

神裂「今までツンも無いでしょうに……おっと、シルビア。そろそろブリュンヒルド達が着くそうです」チラッ

シルビア「おうよ。おーい、ガキ共ー。そろそろお眠の時間だろー。上行って香焼の話聞きながら昼寝してこーい」クイッ


 ―――一方、外の物干し・・・・・


オッレルス「―――……はぁ」ドヨーン・・・

トール「なーんで溜息なんて吐いてんだよ。幸せ逃げるぞ。上条リスペクト?」チラッ

オッレルス「馬鹿言え。俺はカミやん病に感染した覚えはないって」ハァ・・・

トール「まぁアンタの場合、地で不幸気質あるしな。どっちかってーと……うん」チラリ・・・

フィアンマ「……あん?」ジトー・・・

オッレルス「確かに、コイツが一番影響受けてるかもね。オマエの場合は逆に上条当麻に影響与える側ぽいし」ハハハ

フィアンマ「ふざけろ。俺様がいつ、彼奴の影響を受けた」フンッ

トール「いや、アンタ丸くなってんじゃん。噂で聞いてたアンタって、魔王的なイメージだったんだけど」ハハッ

フィアンマ「聖職者の鑑たる俺様が魔王な訳ないだろ。お前馬鹿か? ああ、馬鹿だったな」ハッ

トール「……そういう軽口吐く辺り丸くなってんじゃねーの。有無を言わさず攻撃してくるイメージだったってこったよ」ケケケッ

フィアンマ「むっ」ジトー・・・

オッレルス「まぁまぁ。元々悪人って訳でもないしね。少なくとも今は『ウチ』のファミリーさ」フフッ

フィアンマ「……うっせ」チッ・・・

トール「あんれぇ? フィアンマたんテレてんのー?」ニヤニヤ・・・

フィアンマ「うっせぇ! 喧しいわ阿呆!」ガー!

トール「わっ! ちょ、蹴るな。おかっぱ!」ブンブンッ

オッレルス「お前ら、暴れるな! 物干し竿が揺れる! あぶ危ないないなななあbbbb」グラグラッ

  ※現在、3人の両袖に物干し竿を通して外に天日干ししてます。

トール「この、こぬぉう!」ゲシゲシッ

フィアンマ「ていっ、てぇゑゐぃ!!」ゲシゲシッ

オッレルス「やあぁめえぇてえぇよおぉ!!」グラグラグラグラッッ・・・


 ギャーギャー ガオーガオー!!


オッレルス「ちょ、マジ、揺れ……あばぃっ!!?」グラリ・・・

フィアンマ・トール「「このっ……うぇ」」グラグラリ・・・・・


 ドシーン・・・・・


オレ・右・ソー『ぐべっ!?』ゴチーン・・・


ブリュンヒルド「―――……なぁにあれぇ」タラー・・・

ジーンズ屋「知らない知りたくない見たくない関わりたくない」ハァ・・・

ブリュンヒルド「ラスボス団子三兄弟がジャッキー・チェンのアクション映画に出てきそうなマヌケな倒れ方してるんだが」ジー・・・

ジーンズ屋「確かにジャッキーならあの状態で戦闘しそうだけどさぁ……いや、そういう問題じゃねぇよ」チラッ・・・

ブリュンヒルド「とりあえず全員顔面強打で気絶してるっぽいし、2人で両端担いで中入るかい?」テクテク・・・

ジーンズ屋「なにそのマンモス担ぐ原始人的思考!? 如何考えてもスルー一択だって」アリャリャ・・・

ブリュンヒルド「いやでも、コイツら居ないと話始まらないでしょ。仕方ない、私一人で担ぐか―――よいしょっ」グンッ!

オレ・右・ソー『ぎゃっ?!』 ← ※三色団子を片一方に詰めた感じで

ジーンズ屋「相変わらず馬鹿力だな。あと恐れ知らず……あ、ちょ、待て! マジでそのまま入ろうとすんなよ!」アタフタッ・・・

こんばんわ。ダラダラ投下します。


   わおーん・・・・・


ブリュンヒルド「―――邪魔する事よ……って、扉に男子(だんご)が突っ掛かって入れない」ガチャッ・・・ガンガンッ!

シルビア「ん? もう着いたのかい……おいおい。変なモン担いで部屋の中入らないでくれよ」ハァ・・・

オレ・右・ソー『 』チーン・・・

神裂「ちょ! 何故に気絶を?」タラー・・・

ブリュンヒルド「知らなーい。モンティパイソン宜しく、愉快な恰好で並んで倒れてたにつき、運んだ次第だ」ググググ・・・

オレ・右・ソー『   』チーン・・・ ギチギチ・・・

ジーンズ屋「おま、そろそろマジで止めたげて! 外から見ると野郎三人の圧迫状態が酷い有り様だ!」アタフタ・・・

レッサー「おまけに首絞まって真っ青なってますし。最高峰の魔術師がガキんちょに捕まったヒキガエルみたいですね」ハハハ

アンジェレネ「レッサーちゃん、笑ってる場合じゃないよ」アワワワ・・・

ブリュンヒルド「ん? あぁ、確かに拙い状態につき……よいしょっ」ドサッ

オレ・右・ソー『      』チーン・・・ゴロンッ・・・

神裂「まるで生きた人間には見えない」アリャリャ・・・

シルビア「その内勝手に立ち直るから放っておきなさい。それより……ほれ、ガキ共。上に行ってお昼寝なさい」クイッ

A「えー。せっかく『おっぱいセイジン2ごう』がきたのにー」ブー

B「あそびたーい。もうちょっとだけー」ブー

シルビア「だーめ。おっぱいセイジンは1号も2号も今から仕事なんだ。アンジェレネ達と一緒に上行きなさい」ムンッ

神裂「……シルビア?」ギョロッ

レッサー「あっはっはっ。斯く言うシルビアも、おっぱいセイジンV3だったりうきゃぱっ!!」ゴチンッ!

アンジェレネ「また余計な事を」

ブリュンヒルド「ははは。私は構わないぞ。何をして遊ぶ事か?」フフッ

J「ほらー。『うしちち』がいいっていってるもん」ブー

神裂「……固法さん」チラッ・・・

香焼(姉さん、『牛乳(うしちち)』って聞いただけで固法さん思い浮かべるのは止めましょうね)ハァ・・・

シルビア「喧しい。駄目なモンは駄目だ。言う事聞かないヤツは馬鹿野郎共と同じ様に天日干しにしてやるぞ。もしくは三角木馬の刑!」ギロッ!

子供達『おやすみなさーい!』バババッ・・・


 ドタバタ ワーワー・・・・・


シルビア「ったく……疲れるねぇ。こっちが昼寝したいくらいだってのに」ヤレヤレ・・・

神裂「シエスタって柄じゃないでしょうに。さて、彼らが起きたら始めますか」チラッ・・・

オレ・右・ソー『 』

シルビア「そうだね……っと、その前に……おチビ三人」チラッ・・・

アンジェレネ「え、あ、はい」キョトン・・・

シルビア「えっと、だな」ポリポリ・・・

香焼「……アン。レッサー。上に行って子供達を寝かせつけよう」テクテク・・・

レッサー「んー……はいはい」テクテク・・・

神裂「……すいません」ペコッ

香焼「いえいえ。全員寝かしつけたら散歩にでも行ってきますので」コクッ・・・

アンジェレネ「え……ぁ」ムゥ・・・

レッサー「さーて、じゃあ私もお昼寝しちゃいましょうか」フンフーン・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「……アン。邪魔しちゃダメだよ」クイッ・・・

アンジェレネ「……分かってますよ」ムスー・・・


  カツカツカツ・・・・・


シルビア「……なんだか、申し訳無いね」チラッ・・・

ブリュンヒルド「何の事を?」キョトン・・・

シルビア「アンタにゃ関係無いさ……なぁ神裂」ジー・・・

神裂「……、」ムゥ・・・

シルビア「……まぁ良いさ。それよか、アンジェレネの方が心配だね」クイッ

神裂「そうですね。アニェーゼやルチアも、あの子の様子がおかしいと最近悩んでいました」コクッ

シルビア「何が如何おかしいのかは知らないけど、思春期ってヤツかな。こういう『大人の話』に混ざりたがるのは」フフッ

神裂「彼女の場合、歳の近い周りの友人達が優秀過ぎますからね……香焼以外は」ジー・・・

ブリュンヒルド「ふむ。身内につき、辛辣な事かい?」チラッ・・・

神裂「いえ。如何身内贔屓しても、あの子は弱いですから……申し訳ありませんが、アンジェレネもね」コクッ

シルビア「厳しいね。で、気になるのは、何であの坊やはあんなに『良い子ちゃん』なんだい?」チラッ・・・

神裂「それが分かれば苦労しませんよ……あの子は物分かりが良過ぎます」ハァ・・・

シルビア「思春期の男子でそれは如何なんだろうねぇ」チラッ・・・

ジーンズ屋「ん? いや、俺に振られてもなぁ。まぁ人それぞれじゃねぇか。俺は普通に反抗期しまくりだったけど」ポリポリ・・・

ブリュンヒルド「普段が普段につき、容易に想像する事が出来るね」ハハハ

ジーンズ屋「うっせ。まぁ魔術師なんて奇特なモンやってるんだし、少々感情押し殺しててもおかしかないんじゃねぇか」テクテク・・・

神裂「……そういうものでしょうか」チラッ・・・

オレ・右・ソー『……、』ゴロンッ・・・

シルビア「コイツらは更に特殊だから参考にならないよ。思春期があったのか如何かすら疑わしい」ハハッ

ブリュンヒルド「というより、若い内から魔術師してたら灰色の青春しか送れない事は……私ら全員理解してるんじゃなくて?」トントンッ

ジーンズ屋「俺を一緒にすんなよ。まぁでも、何となくは分かるけどさ……男子女子なんてモンは関係無いのかも」フーン・・・

神裂「……やはり、私は姉には向かないのかもしれませんね」ボソッ

シルビア「何考えてんだか知らないけど、会議前にネガティブならないでね」トンッ

神裂「ええ、すいません……さて、そこの三人はまだ目覚めませんか?」チラッ・・・

シルビア「……どうせもう起きてる」ジトー・・・

ブリュンヒルド「顔面踏みつければ起きるにつき」スッ・・・

オレ・右・ソー『ふんっ!!』バリッ!!

ジーンズ屋「うわぁ起き上がり方気持ち悪い。人間の動きじゃねぇ」タラー・・・

トール「言ってくれるな……空気読んで寝てたら危険だったでござる」フゥ・・・

オッレルス「あと勝手に『思春期を殺した少年』みたいに言わないで欲しいでござる」ヤレヤレ・・・

フィアンマ「思春期ならちゃんとあったぞ。主に『好き勝手』やってたでござる」ムンッ!

シルビア「そのウザい口調を止めろ。また干されたいか!」ガー!!

神裂「やれやれ……とりあえず、さっさと話を始めましょう―――」クイッ・・・


 ワイワイ ガヤガヤ キャーキャー ウーンムーン グースー ムニャムニャ Zzz...


子供達『Zzz...』スヤスヤ・・・

香焼「―――ふぅ……やっと寝着いたね」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

レッサー「ムニャムニャ……ふ、フロリス……そこはらめぇ……ひぎぃ……スヤスヤ」Zzz...

香焼「レッサーも寝ちゃったか。どんな夢見てるんだか」ハハハ・・・

アンジェレネ「……、」クルッ・・・テクテク・・・

香焼「アンジェレネ?」チラッ・・・

アンジェレネ「……下、行く」テクテク・・・

香焼「自分も行くよ。女教皇様達の邪魔にならない様に行かないと」ヨイショッ・・・

アンジェレネ「何で、私達が参加しちゃダメなのかな」チラッ・・・

香焼「え」キョトン・・・

アンジェレネ「……冗談ですよ」テクテク・・・

香焼「……アン」ジー・・・


 ガヤガヤ・・・・アーダコーダ・・・ネセサリウス・・・グレムリン・・・・・ローマ・・・ベヘツレム・・・・・モスクワ・・・・・ハワイ・・・・レベル5・・・・・ワヤワサ・・・・・


神裂(ふぅ。平行線ですね―――……ん? アンジェレネ?)チラッ・・・

アンジェレネ「―――」テクテク・・・ガチャッ・・・

香焼「―――」アタフタ・・・チラッ・・・

神裂(子供達は寝着いた様ですが……やれやれ……すいません、香焼。頼みます)コクッ・・・

香焼「―――」コクッ・・・ガチャッ・・・


シルビア「―――ったく。殆どがタカ派だから主義主張が纏まらないよ……って、神裂」チラッ・・・
 
神裂「え、あ、はい」ピクッ・・・

シルビア「アンタとオッレルスしか穏健思考いないんだから頼むよ」トンッ

神裂「ええ……しかし、この会議にはもう少し人が居ても良いと思うのですが」チラッ・・・

シルビア「まぁね。主教殿やロシアの魔女は、ちとアレだが……マグヌスや『後方』が居ても良いとは思う」コクッ

オッレルス「―――マグヌスは、何だかんだで子供だからね。あまり関わらせたくは無いよ」チラッ・・・

神裂「子供、と」チラッ・・・

ブリュンヒルド「一教派の主教補佐殿をガキ扱いとは、お優しい事で」フフッ

トール「それに、この話合いは国やら派閥云々抜きだろう。あの不良神父くんは英国に偏りが大き過ぎる」コクッ

フィアンマ「それからアックアの奴は俺様と顔を合わせるのが嫌なのだろう。それ抜きにしても、奴は『傭兵』気質だからな」フンッ

ジーンズ屋「んな事言ったら俺はしがない情報屋なんだけど」ハァ・・・

オッレルス「君は会議には必要さ。後方の彼は逆に現場で必要でしょ。一応、俺らに賛同はしてくれてる」コクッ

トール「ま、ウィリアムさんってのは後から文句付けるタイプでも無いんだろ。だったら問題無ぇ」フフーン

フィアンマ「問題は……あのチビカリスマ(笑)だろう。今はインドに居るとか言ってたか」フンッ・・・

シルビア「バードウェイの情報と財力には頭が上がらないからね。多少の主導権は譲らないと」ポリポリ・・・

フィアンマ「ケッ……気に食わん」チッ・・・

神裂「まぁまぁ。とりあえず、今決められる事を決めておきましょう……大人として、ね―――」コクッ・・・

 ―――そのまた後日、PM02:30、英国、ロンドン郊外、とある教会近くのアパート裏・・・・・



  にゃーん・・・・・


アンジェレネ「……、」テクテク・・・スッ・・・

香焼「……アン」テクテク・・・

アンジェレネ「……何?」チラッ・・・

香焼「いや、その……どうしたの?」スッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「言えない事? 様子が変っすよ」トンッ・・・

アンジェレネ「……いつも通りです」ジー・・・

香焼「そうかな。心成しか、いつもより食べる量少なかったし、さっきから元気無いし」ムゥ・・・

アンジェレネ「女の子には色々あるんです」ジー・・・

香焼「……はぁ」ポリポリ・・・


 シーン・・・・・


香焼「もしかして、ルチアさんと喧嘩したの? それともアニーと?」チラッ・・・

アンジェレネ「してない。コォヤギくんには関係無いです」ムゥ・・・

香焼「はいはい……まるで子供だよ」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「……自分だって子供のクセに」ムスー・・・

香焼「そうっすね。自分は子供っす」ゴロンッ

アンジェレネ「なんでそう、物分かりが良いの? 子供なのに」ジトー・・・

香焼「子供だから、物分かりが良いんすよ。変に大人ぶるとステイルみたいに捻くれて見えるでしょ」フフッ

アンジェレネ「私からしたら逆ですよ。捻くれてる方が子供っぽい」ムゥ・・・

香焼「反抗期っすか? 勿論、自分だって反抗してるっすよ。あくまで五和と浦上限定っすけど」ハハハッ

アンジェレネ「ふざけてるなぁ。私が言いたいのはそういう事じゃなくて……もぅ」ムスー・・・

香焼「ごめんごめん。それで……喧嘩じゃないとしたら、どうしたのさ?」チラッ・・・

アンジェレネ「……別に」モジモジ・・・

香焼「自分には言えない事?」ジー・・・

アンジェレネ「……そういう訳じゃないけど」ムゥ・・・

香焼「少なくとも、自分一人で悩んでるみたいっすね……その様子だと多分、アニーにも相談してないんでしょう」フム・・・

アンジェレネ「……アニェーゼちゃんは関係無いよ」ボー・・・

香焼「そっか。因みに、さっきの会議は関係ある?」クイッ

アンジェレネ「関係無い」ジー・・・

香焼「でも、気になる様子だったね」コクッ

アンジェレネ「……気になるくらい良いでしょう。私は誰かさんみたいに物分かりが良くないんです」ムゥ・・・

香焼「いやいや、自分だって気にはなるよ。でもまぁ一応、末端の魔術師だからね。方針云々を決める場に居合わせちゃいけないよ」ポリポリ・・・

アンジェレネ「その物分かりの良さ。私嫌いです」ムスー・・・

香焼「それ、ただのヤツ当たりみたいだ。困ったなぁ」ウーン・・・

アンジェレネ「む……言い過ぎました。確かにいくらなんでも、子供っぽ過ぎたね。ごめん」コクッ・・・


  わおーん・・・・・


アンジェレネ「コォヤギくんは……アニェーゼちゃんやステイルくんくらい強かったり、偉くなったりしたいとは思わないの」ジー・・・

香焼「え……どうだろう。強くなりたいとは思うけど急いでもしょうがないし、今のところ出世欲も無いかな……アンは?」コクッ

アンジェレネ「……分かりません」ジー・・・

香焼「そう……何となく、言いたい事は分かるよ。でもアニーもステイルも、サーシャやレッサーだって同じじゃないかな」チラッ・・・

アンジェレネ「例え気持ちは同じでも、現実、スタートラインが違うでしょ。皆、私達よりずっと先にいる」ムゥ・・・

香焼「厳しいね。でも、今に始まった事じゃないっす……それが納得いかない?」フム・・・

アンジェレネ「寧ろ、納得いってるコォヤギくんが異常だと思うよ」チラッ・・・

香焼「……同じ事、都市でも言われたよ。その子は自分と同い年の無能力者(レベル0)の娘なんだけどね」ハハハ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「アン。今ちょっと安堵したでしょ。無能力者って聞いて、きっと魔術師として下っ端の自分達以下だと思った」ニヤリ・・・

アンジェレネ「そ、そんな事無いよ!」アタフタ・・・

香焼「ふふっ。まぁ一般人からしてみれば魔術師は力有る者っすよ……でもね。その子は、並の能力者や魔術師より心が強いと思うよ」コクッ

アンジェレネ「……よく分からないな。コンプレックスが無いの?」ジー・・・

香焼「いや、コンプレックスは人一倍あるんじゃないかな。でもその子はそういうの抜きにしても、能力者に負けてない」ジー・・・

アンジェレネ「如何いう事?」キョトン・・・

香焼「カリスマ性っちゃカリスマ性なんじゃないかな。リーダー気質だと思う。あと、努力を惜しまず自分に出来る事を精一杯やってる」フフッ

アンジェレネ「……、」ウーン・・・

香焼「兎に角、凄腕の魔術師だろうが無能力者の学生だろうが、出来る事を一所懸命やってれば結果が付いてくるでしょ」コクッ

アンジェレネ「結果が出ない場合は?」ジー・・・

香焼「今はまだその時じゃないって割り切るべきなんじゃない? 苦しいけど、そう考えないと報われないよ」ハハハ・・・

アンジェレネ「……もし、その逆の場合は?」ジー・・・

香焼「え?」ポカーン・・・

アンジェレネ「例えば……それ相応の結果以上のモノが、いきなり訪れたら。如何対応すれば良いかな」ムゥ・・・

香焼「言ってる意味がよく分からないんだけど」ポリポリ・・・

アンジェレネ「……分相応以上の仕事を任されたり、スカウトされたり」ボソボソ・・・

香焼「うーん。チャンスだと思ってやりきってみせるべきじゃない」コクッ

アンジェレネ「それが幾つもの選択肢だとしたら」ムゥ・・・

香焼「……アン?」キョトン・・・

アンジェレネ「それが、今の立場から一転、大役を任されて……アニェーゼちゃん達から離れなければいけなくなるとしたら」ムゥ・・・

香焼「あ、アンジェレネ。一体、如何したの」タラー・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「何か大きな事があったんだね。その所為で最近悩んでたんだ……話し辛い事?」ジー・・・


アンジェレネ「きっと……―――おちこぼれの私には、贅沢な悩みです」シュン・・・

香焼「分からないけど、卑下しないで。過程は分からないけど、今までの努力の結果であれば―――そんな事無いっすよ」コクッ


アンジェレネ「はははは。変なの。話すつもりなかったのになぁ……ねぇ、コォヤギくん。他の人には内緒にして下さいね」スッ・・・

香焼「……―――」コクッ・・・

以上です。相変わらず亀ですいません。

とりあえず、明日書ければ書きます。では! ノシ”


 ―――一寸後・・・・・


アンジェレネ「―――……てな事がありました」カクカクシカジカ・・・

香焼「……、」シカクイムーブ・・・

アンジェレネ「正直、如何して良いか分からないの」シュン・・・

香焼「そっか……姫様の我儘気質の所為ってのはまだしも、まさかステイルも原因だったなんて」ウーン・・・

アンジェレネ「勿論、二人とも嫌いな訳じゃないし、寧ろ好きな人達だから断り辛いってのもあって」ハァ・・・

香焼「……因みに、その2人だけだよね?」チラッ・・・

アンジェレネ「え? 何が」キョトン・・・

香焼「いや、スカウトというかヘッドハンティングというか」ポリポリ・・・

アンジェレネ「う、うーん……実は」モジモジ・・・

香焼「……、」タラー・・・

アンジェレネ「食堂のおばちゃんとか、処刑(ロンドン)塔の衛生救護課の先生とか、博物館の魔術職員さんとか、他には」アタフタ・・・

香焼「ストップ……なるほど。悩まない方がおかしい」ダラダラ・・・

アンジェレネ「皆、何度かお手伝いに行ってる内に仕事手伝って欲しいって……多分、本気じゃなくお世辞だとは思うんですけどね」アハハ・・・

香焼(何割かはマジでスカウトしてるんだろうなぁ。アンは看板娘というかマスコットとして持ってこいだし)ハハハ・・・

アンジェレネ「ただ、今回みたいに真剣に考えてくれって言われたのは初めてで……はぁ」ムゥ・・・

香焼「アニェーゼには、相談して無いんすよね」フム・・・

アンジェレネ「……言えないよ。コォヤギくんが同じ立場なら、すぐさまイツワ達に相談出来る?」シュン・・・

香焼「アレと浦上は別として……確かに、真っ先天草式(身内)には相談し辛いよね。女教皇様―――というかカオリ姉さんなら尚更」ハハハ・・・

アンジェレネ「でしょ……特に、隊長―――ううん。アニェーゼちゃんとルチアちゃんだと、そう」ムゥ・・・

香焼「うん……ただ他人事だからサッパリ言っちゃうけど、突き詰めれば要はアンが如何したいかじゃないの?」チラッ・・・

アンジェレネ「簡単に言ってくれるね」ハハハ・・・

香焼「信用して話してくれたと思って敢えて言わせてもらうけど、アニェーゼは勿論の事、ルチアさんだって今や束縛してないじゃん」コクッ

アンジェレネ「うん。部隊の娘、誰も束縛なんかしてない……でも、誰も辞めない」フルフル・・・

香焼「それは仲間としての絆故?」チラッ・・・

アンジェレネ「家族ですよ。孤児院時代からの」ジー・・・

香焼「……そっか」フフッ

アンジェレネ「多分、部隊外の人達からしてみると、私達はルチアちゃんの叱責が怖くて誰も部隊を抜けてないとか思われてるかもしれない」

アンジェレネ「確かに、ローマ時代はそんな感じはあったけど、今は違いますよ。ルチアちゃん、寡黙だから言わないだけで色々考えてます」

アンジェレネ「それを吐露するのはアニェーゼちゃんだけだけど……私達は、皆気付いてますしね」フフフ・・・

香焼「それを知った上で、皆辞めない……というより家族の下に居る」フム・・・

アンジェレネ「抜けたって、家族である事には変わりないってのは分かってるんですけどね……皆マンモーニ(ママっ子)なのかな」クスッ

香焼「かもね。素敵だと思うよ……あー、話を戻すけど……やっぱりアニーかルチアさんに相談すべきだと思う」コクッ

アンジェレネ「……え」キョトン・・・

香焼「話し辛いのは分かるけど、このままじゃ平行線だよ。もし言い辛かったら間にオルソラさんやカオリ姉さんを置いても良いと思う」ジー・・・

アンジェレネ「……、」ムゥ・・・

香焼「それに今回の話は、アンの将来的にも大きく関わる話だからね。腹を据えて、ちょっと真面目に考えても良いんじゃないかな」フム・・・

アンジェレネ「じゃあ、コォヤギくんは……ドチラかの手伝いをした方が良いと思うんですか?」ジー・・・

香焼「え、いや、うーん。ぶっちゃけあの2人ってので不安。でもあの2人だからこそ安定はするよね……不安で安定って、変かな」ハハハ・・・

アンジェレネ「もぅ。相変わらず優柔不断だね……人の事言えないけど」クスッ

香焼「ごめんごめん。兎に角、自分一人では決まらなそうだし、相談しなって」コクッ

アンジェレネ「うん。分かりました……ありがとね」フフッ・・・

香焼「いえいえ。でも、アンらしいね。周りの好意を無碍に出来ないから、こんなに悩むんでしょ」フフッ

アンジェレネ「そ、そんな大層な理由じゃないよ。私は優柔不断で、弱虫なだけ」モジモジ・・・

香焼「謙遜を。話変わるけど五和も結構スカウトされるんだよ。アイツ、表面はピュアガール()だから」ハハハ・・・

アンジェレネ「あー確かに。イツワは何処に行っても人気者ですし、人ウケが良いですからね」フフッ

香焼「まだアン達には猫被ってるからね。実際は……うん」タラー・・・

アンジェレネ「邪険にし過ぎじゃない? 天草の人には気を使わないからそう見えるんじゃないかな。特にコォヤギくんとかタテミヤには」コクッ

香焼「えー」ジトー・・・

アンジェレネ「私達だって、多少はイツワの『素』を見てますけど、それ抜きにしても天真爛漫な女学生って感じだよ」フフッ

香焼「……うーん」ポリポリ・・・

アンジェレネ「もう少し、優しくしてあげても良いんじゃない? ん……話逸れちゃったね。それで?」チラッ・・・

香焼「……とりま、アイツもスカウトされるんだけど、二言目には『私、専業主婦願望なので!』だよ」ハァ・・・

アンジェレネ「」ポカーン・・・

香焼「うん、呆れて物言えないよね」グデェ・・・

アンジェレネ「……あの競争倍率で、それを断言できる根性が凄い」ハハハ・・・

香焼「建宮さんも他の皆も唖然か苦笑だからね。その点、やっぱりアンは偉いよ」フフッ

アンジェレネ「何だか比べられる対象がオカシイ気がするけど、とりあえずありがと」ポリポリ・・・

香焼「ははは、ごめんね―――さて、それじゃあ帰ったら早速アニーに相談かな。それともルチアさん?」チラッ・・・

アンジェレネ「ルチアちゃんは……やっぱりちょっと怖いかな。アニェーゼちゃんにします」コクッ

香焼「よし。じゃあ頑張って。自分は応援しか出来ないっすけど、アンにとって最善になる事を願うよ」ポンッ

アンジェレネ「ふみゅっ……んもぅ」ンー・・・///

香焼「ふふっ。あ、でもホントに大丈夫かな……やっぱオルソラさんに中持って貰った方が」ポンポンッ

アンジェレネ「むぅ。心配性なんだから」ジトー・・・///

香焼「だって、ステイルの名前が出てきた瞬間、アニーがブチギレそうな気も」タラー・・・

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、そこまで鬼じゃないです……そんなん言うなら」ジー・・・///

香焼「ん?」キョトン・・・

アンジェレネ「……コォヤギくんが―――」


  ガチャッ・・・・・


香焼・アン「「―――っ!?」」ビクッ!


レッサー「ふぁああぁ……ん。居ました」チラッ・・・

アンジェレネ「お、おはよう」アハハ・・・

レッサー「あまりに陽気だったんで一緒に寝てしまいましたよ……ふみゃあぁ……あー何してるんです? 逢引的な?」ジー・・・ムフフッ

アンジェレネ「ち、違うよ! ちょ、ちょっと色々と」アタフタ・・・

レッサー「怪すぃ……実は人目を忍んで白昼あばんちゅーる? バレるかバレないかのギリスリルを楽しんじゃぁバザハァットぉ!?」ゴガンッ!!

アンジェレネ「っ~~~~ッッ!! 変態っ!!」カアアァ///

香焼(レッサーはブレないなぁ)ハハハ・・・

レッサー「痛つぅ……タライ投げる事ぁ無いじゃないですか。タライですよ? 普通上から降って来るものです」ンモー・・・

香焼「いや、あくまで洗濯用品だからね」ジトー・・・

レッサー「マジレス乙です。あー、そんな事より……本題はコッチです。ほれ、出ておいで」クイッ・・・

香焼・アン「「え」」キョトン・・・


D「……、」トコトコ・・・

アンジェレネ「Dちゃん? 如何したの?」スッ・・・

D「……ん」ギュッ・・・

アンジェレネ「おわっ。あらら、あまえんぼさん」ナデナデ・・・

D「……、」ギュウゥ・・・


レッサー「あらら、コウヤギちゃん。アンジェレネお姉ちゃんが取られちゃいましたね」フフッ

香焼「訳が分からない事言うなよ……で、如何したんすか」チラッ・・・

レッサー「んー。Dの啜り泣きに起されちゃいましてね。私じゃ良く分かんないんで、分かる人んとこ連れてきた所存でーす」ジー・・・

香焼「なるほど」ジー・・・


アンジェレネ「……怖い夢でも見ちゃったのかな」ポンポンッ・・・

D「……、」ギュウゥ・・・

アンジェレネ「よしよし。良い子良い子」トンッ・・・トンッ・・・

D「……、」グスッ・・・ギュッ・・・

アンジェレネ「大丈夫ですよー。Dちゃんは一人じゃないよー」トンッ・・・トンッ・・・

D「……ぅん」グッ・・・ギュウゥ・・・


香焼「……、」ジー・・・

レッサー「……こういうの見ちゃうと、人には向き不向きあるんだなぁって思い知らされちゃいますよね」スッ・・・

香焼「ちょっと、背中乗っかんないでよ……まぁ確かに、アンは上手だよ」ジー・・・

レッサー「アニェーゼも上手ですけど、アンジェっち程じゃないですからね。私やランシス、サーシャはテンパりますし」ハハハ・・・グデェ・・・

香焼「体重乗せるな……男性だと、相当親しくない限りは怖がられるよ。自分からしてみれば、やっぱ凄いと思う」ムネ アタッテンゾ・・・

レッサー「カンザキやシルビアがやったらタダの母性(オッカさん)ですし、先天的に得意なんでしょうね。慈愛(マリア)チック?」アテテンデス・・・

香焼「単に先天的では無いんじゃないかな。多分、ローマ時代から孤児院とかで世話してきてるんだろうから」タイシテ ムネ ナイクセニ・・・

レッサー「『同じ境遇』故なのかもしれませんけど……知ってます? アニェーゼ、未だに夜泣きしてるんですよ……んっ!」ムッ・・・ハムッ!

香焼「おまっ、耳甘噛みすんなっ! ひぅっ……し、知ってるよ……んっ……夜泣きって言い方は……ぁっ……語弊だと、思うけど」ビクッ・・・///

レッサー「うまうま……夢に見るんですってね。トラウマってんでしょうか……あむあむ……『パパママ』言ってるんでしょ」ペロッ・・・ジュルルッ・・・

香焼「ぁ、ぅ……それを、ぁ、アンが慰めてる……ぃっ……本人か、聞いた、じゃ、ないけど……ァン……から、聞いちゃたから、ね」グッ・・・///

レッサー「んーっ……からかうにも、からかえないネタですからねぇ……は、ぁっ……無理矢理聞き出したの、私ですし……深刻過ぎて」ヌギッ・・・

香焼「ひゃ、ぅ…………………………―――……って! ドサクサ紛れて何してんだオマエはっ!!? 何故ジャケット脱いでる!?」バッ!!

レッサー「えー。今折角良い感じだったじゃないですかー。宛らベット上の二回戦前ピロートーク的な」ブー・・・

香焼「人が真面目な話してんの良い事に……何考えてんのさ」ンモー・・・///

レッサー「いやぁつい。えへっ☆」ポリポリ・・・ハハハ

香焼「『えへっ☆』じゃねぇよ! ったく、油断も隙もあったもんじゃない……ベイロープさんに言いつけるぞ」ジトー・・・///

レッサー「勘弁願いたいですけど説得力ありませんね。発情わんこの童貞ショタちんちん勃ってますよ」チラッ・・・ハッ・・・

香焼「う、五月蠅い!! 死ね!!」グルルルルッ・・・///

レッサー「おーこわっ。きゃー襲われちゃいまーす。発情犬に犯されるー。あ、初条件と発情犬ってゴロ似ててドッチもエロいです」ピンッ!

香焼「軍覇みたいなノリを……ってか、英国人が日本語の駄洒落言ってんじゃねぇ! あと、いい加減離れろ!」ギャーギャー///

レッサー「えー。一人だけ気持ち良くなって私はイカず終いですかー? 男としてそれ如何なんです?」ブーブー

香焼「こんのピンク脳がぁ……そんなにお望みなら幾らでもヤったるぞ!」ガシッ!!

レッサー「うわちょっ!? 尻尾は駄目でぅひゃあああああぁっ!! ひ、ひっぽにまにょくはらめええぇえぇっ!!」ジタバタッ!! ビクッビクンッ///


 ギャーギャー! ワーワー!! ウキャパアアアァ!! ピギャアアアァ!! ラメエエエェ! ヒギイイイィ!!


D「……むぅ」スヤスヤ・・・

アンジェレネ「……、」トンッ・・・トンッ・・・フゥ・・・


レッサー「ごめ、ごめんなひゃああぁいっ!! も、もうしにゃい! おねがいっ! ん~~~~~ッ!!」ピクピクッ///

香焼「喧しい! 最近大人しくしてたの思って甘やかしてたらコレっす! 今日という今日は徹底的に!」ジワジワジワジワ・・・

アンジェレネ「……五月蠅いんですけど」イラッ・・・ギロリ・・・

香焼・レッサー「「……ぁ」」ピタッ・・・

アンジェレネ「D、折角寝たのに、起きちゃうよね?」ゴゴゴゴ・・・

香焼・レッサー「「……、」」コクコクッ・・・

アンジェレネ「……今の一部始終、アニェーゼちゃんに報告ね」ゴゴゴゴ・・・

香焼「い、いや、だって、今のは、その……レッサーが。(普段怒らない人が怒ると怖いなぁ)」ダラダラ・・・

レッサー「こ、コウヤギが、その……度が過ぎてましたよ。(将来的にオルソラっぽく育ちそうで怖いですね、この娘)」ダラダラ・・・

アンジェレネ「言い訳?」ギロギロッ・・・

香焼・レッサー「「」」サーセン・・・

アンジェレネ「もぅ……私、Dの事ベットに連れてくけど、また騒いでたら本気でオルソラさんかシルビアさんに言うからね」ギロッ・・・

香焼・レッサー「「」」アイマム・・・

D「むにゃ……むぅ」Zzz...

アンジェレネ「はぁ、ホント、大人しくしてて下さいよ」ヨイショ・・・トコトコ・・・

香焼・レッサー「「」」ホッ・・・

アンジェレネ「……それから、コォヤギくん」チラッ・・・

香焼「え、はい!」ビシッ!

アンジェレネ「何で敬礼……そんな畏まんないで良いから……さっきの話の続き」ボソッ・・・

香焼「……うん」ジー・・・

アンジェレネ「私の相談乗ったからには……責任取って、一緒に連いてきて下さいね」ニコッ

香焼「え。自分が!?」ギョッ・・・

アンジェレネ「勿論です。言い訳は聞きません。それじゃあ大人しくしてるんだよ」フフッ・・・トコトコ・・・

香焼「……、」タラー・・・

レッサー「……なぁにしでかしたんですか?」チラッ・・・

香焼「……あはは」ダラダラ・・・


   シーン・・・・・


レッサー「……静かに、えっちぃ事します?」チラッ・・・クイッ・・・

香焼「なんでさ」ハァ・・・バカダ・・・

アンジェレネ「まったくもぅ」トコトコ・・・チラッ・・・

D「……ふみゅ」スヤスヤ・・・

アンジェレネ「あー……ふふっ」ポンポンッ・・・


 ―――一方、アパート室内・・・・・


シルビア「……、」ジー・・・クスッ・・・

神裂「―――シルビア」チラッ・・・

シルビア「ん? あぁ、悪い。呆けてたよ」ポリポリ・・・

神裂「……アンジェレネ、ですか」ジー・・・

シルビア「ああ。あの子は……何でもない」フフフッ

神裂「そうですね。これ以上、スカウトは止めてあげて下さい」クスッ

シルビア「なんだ。アンタも聞き耳立ててたんじゃないか」ニヤッ・・・

神裂「聖人ともなると嫌が応にも色々聞こえてしまうんですよ。宛ら、地獄耳ならぬ聖人耳とでも言いましょうか」チラッ・・・

シルビア「それだけコッチの会議が耳に入ってないって事ね。ま、大抵は野郎共が勝手に決めるからな」ハハッ

神裂「バードウェイの案を自分らなりに如何アレンジするかで必死ですからね。彼らにとって、彼女の意のまま思い通りは癪みたいですし」ハハハ・・・

シルビア「男はいつまで経ってもガキよ。まぁレイヴィニア(アレ)もまだまだガキなのにねぇ……にしても、マグヌス坊やも思い切る」ジー・・・

神裂「薄々勘付いてはいましたが、まさかアンジェレネ(あの子)に直接言い寄っていたとは。アニェーゼを通さないのは彼らしいですね」フフッ

シルビア「アニェーゼ嬢に話したら、アンを渡すとでも? まぁ確かに将来的にみれば主教補佐の秘書なら安寧だけど……うーん」ポリポリ・・・

神裂「いや、そういう事ではなく。単にステイル(あの子)はアニェーゼを恐れてるんですよ」チラッ・・・

シルビア「恐れてる? あのデカブツが、おチビのアニェーゼを?」キョトン・・・

神裂「巨躯矮躯の差と、器量の差は別物です。アニェーゼはあの年代で考え方が誰よりも大人ですからね。仕事の面ではありませんよ」コクッ

シルビア「交友関係でって事? あの子らの常に近くに居る訳じゃないから、私にゃよく分からん」ポリポリ・・・

神裂「ステイルは……『過去』に縛られっ放しですから。『先へ先へ』目を向けるアニェーゼが怖くて仕方ないんです」フフッ・・・

シルビア「なるへそ。そりゃ怖いわな」ハハハ・・・

神裂「兎角、他の娘達より幾分か自分に懐いてくれてるアンジェレネに直接アプローチを掛けたのは……色々考える所があったのでしょう」ジー・・・

シルビア「【誰かさん】に『面影』を重ねてるだけだとしたら、これ以上に失礼な事は無いと思うんだけど」チラッ・・・

神裂「私は一歩前進したと褒めますよ……『【あの子】の為だけ』の人生を、ステイル=マグヌス『自身』の人生に変えて欲しい」フイッ・・・

シルビア「ほぉ。アンタも気苦労が絶えないね、皆の姉貴分さん」フフッ

神裂「お互い様でしょう。とりあえず―――アンジェレネをスカウトするのは無しでお願いします」コクッ

シルビア「ちぇっ。狡いねぇ……まぁ相手が姫様とマグヌス坊やじゃ分が悪いか。所詮は保母さん役だしね」ポリポリ・・・

神裂「いえいえ、彼女は本気で頼まれれば真剣に悩むでしょう。此処の孤児達相手なら尚更です」チラッ・・・

シルビア「……じゃあ」ムゥ・・・

神裂「シルビア、分かるでしょう。あの子はまだ『巣立ち』ませんよ」フフッ

シルビア「やれやれ。厳しいね……まぁでも、将来の就職先の一つとしては立候補させて貰ってもいいかしら?」ニヤッ

神裂「それは勿論。あの子も願ったりでしょう」クスクスッ・・・

シルビア「ははは。アンタ、その歳(18)で子供達の就職斡旋する側たぁ世の就活人が泣くわよ」ハハハッ

神裂「おや、私ももしかしてこの先、一般企業なんかに就職するかもしれませんよ。それこそ庶務とか業務で」フフッ

シルビア「ねーよ」ハハハ


オッレルス「―――とまぁ、この辺が妥協点か……って、話聞いてる? ねぇ? あ、2人以外寝てる……駄目だコイツら」ハァ・・・

あい。此処まで。あと二回くらいでⅢ話終わるかな。
IDが変わったのはEモバの所為です。すません。

何故かレッサー暴走させちまった。やっぱもっとアンジェレネのほのぼの欲しいかな?

とりま、例の如く質問意見感想罵倒その他諸々お願いします。そんじゃまた! ノシ”

こんばんわ。ちょこっと書きます。

・ほのぼのはおまけで安価取ってやりましょう!

・男から見た恰好良い漢と、女性から見た恰好良い男性は別なんでしょうね。どっちにしろ、ねーちんは理解者だと思います。

そんじゃ亀投下。

 ―――はたまた後日、AM11:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、中庭・・・・・





アニェーゼ「―――……やれやれ。んで? 一体何の御用ですか」チラッ・・・

アンジェレネ「あの、えっと」モジモジ・・・

アニェーゼ「ったく。とりあえず座りなさい。昼休みも有限なんです……そっちのわんこも」チラッ・・・

香焼「うん。アン、落ち着いて」トンッ・・・

アンジェレネ「は、はい」トコトコ・・・スッ・・・


  にゃーん・・・・・


アンジェレネ「……、」ジー・・・

アニェーゼ「無言じゃ伝わんねぇんですけど。それとも……わんこが通訳すんですか?」チラッ・・・

香焼「……あはは」ポリポリ・・・

アニェーゼ「ハァ。昨夜深刻な顔して『ちょっと真面目なお話が』とか言われたんで何事かと思えば、コーヤギ関係ですか?」ジトー・・・

アンジェレネ「ち、違います!」アタフタ・・・

アニェーゼ「ふーん。でも、態々同室の私に、その場で言えねぇ事なんでしょう。でもって、何故かわんこが一緒」フンッ・・・

香焼「自分は、アンの相談に乗ってたから。あくまでサポートっすよ」コクッ・・・

アニェーゼ「あっそ。実は孕ませましたとかいうオチだったら即行ルチアに報告してやったんですけどねぇ」フフフ・・・

アンジェレネ「レッサーちゃんみたいな事言わないでよ!」カアアァ///

アニェーゼ「いひひっ。さーせん……ほんで?」ジー・・・

アンジェレネ「えっと、あのね」モジモジ・・・

アニェーゼ「……、」コクッ・・・

アンジェレネ「実は、此処数日で色んな人から、その、声が掛って」ムゥ・・・

アニェーゼ「声? ナンパって事ですか?」ハァ?

アンジェレネ「ち、違いますよ! その、ステイルくんとかリメエアさまとか」モジモジ・・・

アニェーゼ「ステイルに姫さん? 意味が分からない……もうちょいハッキリお願いします」ポカーン・・・

アンジェレネ「……スカウト、っていうのかな」ボソボソッ・・・

アニェーゼ「……、」キョトン・・・

アンジェレネ「ええっと、その、つまりは!」アワワワ・・・

アニェーゼ「……おーらい。ちょっと落ち着いて下さい。わんこ、補足プリーズ」チラッ・・・

香焼「はいはい。かくかくしかじか―――」ウンヌン・・・

アニェーゼ「―――まるまるもりもり、と」カンヌン・・・

アンジェレネ(え)キョトン・・・

アニェーゼ「なるへそね……そんで?」ジー・・・

アンジェレネ「あ、はい!」ビクッ・・・

アニェーゼ「一々ビクってんじゃねぇですよ。犬猫じゃあるまいに……私に何が言いたかったんですか?」ジー・・・

アンジェレネ「……え、と」モジモジ・・・

アニェーゼ「それ以前に、アンタは『部隊長』としての私と『アニェーゼ=サンクティス』個人としての私、どっちと話してぇんですか?」ジー・・・

アンジェレネ「多分、アニェーゼちゃん個人、です」ペコッ・・・

アニェーゼ「そ。じゃあそんな身構えてんじゃねぇですよ……あーちょい長くなりそうですかね。わんこ、飲みモン持ってきて下さい」クイッ・・・


  わんわんお・・・・・



アニェーゼ「―――さて、と。どうしましょうか」ジー・・・

アンジェレネ「う、うん」コクッ・・・

アニェーゼ「始めに言っときますけど、別に私は怒らねぇですし止めねぇですよ。ま、分かってるとは思いますけどね」ハハハ

アンジェレネ「そう言うと思ってました」ムゥ・・・

アニェーゼ「それを踏まえた上で、私に何を言いたいんですか?」ジー・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

アニェーゼ「因みに『どうしよう』とか『どうしたら良いんでしょうか』とか、そういう曖昧なのは聞かねぇですよ」ボー・・・

アンジェレネ「え」キョトン・・・

アニェーゼ「自分で決めなさい。自分が決めなさい。いつまでも私やルチアの影に隠れてんのがアンの人生じゃねぇんです」ボー・・・

アンジェレネ「っ」グッ・・・

香焼「アニー。アンは態々選択を任せる為に、君と話がしたいんじゃないんすよ」ジー・・・

アニェーゼ「なら、結構。まぁもしそうなら私個人じゃなく部隊長としての私に話をしにきてる筈ですからね」フフッ

アンジェレネ「うん……私の中で答えは決まったから」コクッ・・・

アニェーゼ「ふーん。つまり、決意表明って訳ですか?」チラッ・・・

アンジェレネ「そんな大それたモノじゃないけど……あとは、その、懺悔でもあります」モジモジ・・・

アニェーゼ「……、」フム・・・

アンジェレネ「色々、考えちゃいました。私は皆と違って頭も良くないし、体力も無いし、魔術師としての腕も未熟だし、階級も無いです」ジー・・・

アニェーゼ「客観的に見りゃそうですね。まぁそれだけが全てじゃねぇですけど」ポンッ・・・

アンジェレネ「そう言ってくれるのは素直に嬉しいです。でもやっぱり、悩んじゃいました」シュン・・・

アンジェレネ「もし、この話を受ければ、私にもアニェーゼちゃん達と同じくらいの役職が就くし、将来も安泰です」ジー・・・

アンジェレネ「でも、それはある意味目先の慾に釣られそうになったと同じ事……修道女(シスター)にあるまじき思考です」ムゥ・・・

アニェーゼ「敬虔信者(クリスチャン)ねぇ。そういうのも大事でしょうけどそれ以前に人間です。考えようによっちゃ向上心でしょ」グデェ・・・

アンジェレネ「でも、それでも……悩んでしまいました」コクッ・・・

アニェーゼ「だから悪い事じゃねぇですって。姫さんの御付きなんつったら大層な仕事です。それこそ修道女より大変な仕事ですよ」コクッ・・・

アニェーゼ「ステイルも……本人の性格はアレですが、まぁ何だかんだで偉いのは認めます。仕事もそこそこ出来るみてぇですし」フンッ・・・

香焼「本来、あの役職(主教補佐)で秘書の一人も居ないのはオカシイからね……弟子は居るみたいだけど、ちょっとアレだし」アハハ・・・

アニェーゼ「師匠が師匠なら弟子も弟子です。さておき、アイツの下で働きたいって言っても私は怒りませんよ」フンッ・・・

アニェーゼ「ただ、間違って、アイツと付き合う云々言ったらブン殴りますけど。んでもってアイツは去勢します」ジトー・・・

アンジェレネ「あははは……と、とりあえず、アニェーゼちゃんに内緒で色々考えちゃった事は謝ります。ごめんなさい」ペコッ・・・

アニェーゼ「……何だかなぁ」ポリポリ・・・

香焼「アニー。君にとっては『そんな事で』かもしれないけど、アンはかなり悩んだんだよ」ジー・・・

アニェーゼ「んな事ぁ分ーってますよ。何年この子のお姉ちゃんやってると思ってんですか」ワシワシッ

アンジェレネ「はわわっ」モジモジ・・・

アニェーゼ「ったく……で、結局、ウチの部隊残留希望と?」ジー・・・

アンジェレネ「だ、駄目ですか?」オドオド・・・

アニェーゼ「駄目も何も、アンタがFA対象になってただなんて知りませんでしたよ。初耳初耳」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「そ、そうだよね。ごめんなさい」タラー・・・

アニェーゼ「まぁ今まで通りっつー事なんですけど……ただですねぇ」チラッ・・・

アンジェレネ「え」キョトン・・・

アニェーゼ「やっぱ今の話聞くと、勿体無い気がしますよ。謂わばチャンスっちゃチャンスですから」ジー・・・

アンジェレネ「チャンス、ですか」ピタッ・・・

アニェーゼ「部隊長としてみりゃ隊員が抜けるのは痛手ですけど、姉として見れば……妹のエリートコースですよ」ポンッ

アンジェレネ「え、エリートって、そんな! 私は……おちこぼれだし」ムゥ・・・

アニェーゼ「……そぉい!」ビシッ!

アンジェレネ「ふぉあっ!?」イタッ!

アニェーゼ「次それ言ったらゲンコツな」ジトー・・・

香焼(言う前にかましてんじゃん)ハハハ・・・

アニェーゼ「あのですねぇ。実力だろうが運だろうが『おこぼれ』だろうがコネだろうが、チャンスはチャンスでしょう。違いますか?」ジー・・・

アンジェレネ「……はい」ムゥ・・・

アニェーゼ「それを手にするって事は、幸せな事なんですよ。妹の、家族の幸せを望まない姉は居ませんって」ポンポンッ

アンジェレネ「アニェーゼちゃん」ッ・・・

アニェーゼ「勿論、部隊としちゃアンタはそれなりに重要なポジションに居ますから離れられると痛手ですけどね」ハハハ・・・

アンジェレネ「私は、離れませんよ」フフッ・・・

アニェーゼ「……ん」ナデナデ・・・

アンジェレネ「えへへ」フシフシッ

アニェーゼ「ま、今回の件は人生経験ってか勉強の一つだと思っときなさい。私も、色々考えさせられました」ポンポンッ

アンジェレネ「はい、分かりました」ペコッ

アニェーゼ「でも、もしこの先、将来的に別の仕事をしてぇって時は遠慮せずに言いやがって下さいよ」ジー・・・

アンジェレネ「うーん、どうだろう……とりあえず、今はまだ、アニェーゼちゃん達から離れたくないです」ギュッ・・・

アニェーゼ「……んもぅ。ママっ子め」フフフッ

アンジェレネ「ママじゃないですけどね。まだ『お家』から出たくないんですよー」ニコッ

アニェーゼ「やれやれ。世話の焼ける隊員(ガキ共)です……話は以上ですか?」ポンポンッ

アンジェレネ「はい。目茶苦茶言ってごめんなさい。これからもよろしくね」ギュウゥ・・・

アニェーゼ「はいはい」フフフッ・・・

香焼「……ふふっ」ホッコリ・・・



  カー・・・カー・・・・・



アニェーゼ「―――それじゃあ戻りましょう。早くしねぇと昼休み終わっちまいます」クイッ・・・

アンジェレネ「うん、そうだね」コクッ・・・

アニェーゼ「っと……その前に、先に命令しときますか。シスター・アンジェレネ」チラッ・・・

アンジェレネ「え、あ、はい」キョトン・・・

アニェーゼ「午後は、マグヌス主教補佐とリメエア第一王女に報告書と親書を届けやがって下さい。お使いプリーズ」テクテク・・・

アンジェレネ「え」ピタッ・・・

香焼「要は、自分の口で決めた事を伝えてこいって事だよ」フフッ

アニェーゼ「……、」ポリポリ・・・

アンジェレネ「あ……は、はい! お気遣い、ありがとうございます! って、感謝するのは変かな」エヘヘ・・・

アニェーゼ「それと、ルチアにこの話は?」チラッ・・・

アンジェレネ「え、いや、その……しなきゃ駄目ですか」タラー・・・

アニェーゼ「いんや。してねぇなら別に良いです―――それじゃあ、アン。先食堂行ってて下さい。ちょっと部屋寄ってから行きます」チラッ・・・

アンジェレネ「一緒に行きますよ」テクテク・・・

アニェーゼ「すぐ終わる用ですから先に席取ってて下さい。あと、ルチアと同じ班員には私からの使いで午後は居ないって自分で伝えて」コクッ・・・

アンジェレネ「分かりました。それじゃお先行きますね」パタパタパタ・・・

アニェーゼ「……ふぅ」グデェ・・・

香焼「お疲れ様。それじゃあ自分も」スッ・・・

アニェーゼ「待ちやがれ」グッ・・・

香焼「え」ピタッ・・・

アニェーゼ「ちょいと話を。歩きながらで良いです」ジー・・・

香焼「……分かった」テクテク・・・



  シーン・・・・・



アニェーゼ「―――ったく。遣る瀬無ぇですね」テクテク・・・

香焼「相談が無かったのがショックっすか?」チラッ・・・

アニェーゼ「如何なんでしょう。よく分かんねぇですよ……とりあえず、コーヤギの方が相談役には適任だったんでしょう」ハァ・・・

香焼「適任、か。まぁそうっすよね。アンの境遇的に一番近いのは自分だし」ポリポリ・・・

アニェーゼ「……すいません」コクッ・・・

香焼「謝んないでよ。らしくないなぁ……平で凡だって事は、自分でも自覚してるから」アハハ・・・

アニェーゼ「本来卑下するなって説教入れるとこなんでしょうけど、ね。正直、助かりましたよ」ポリポリ・・・

香焼「ううん。困った時はお互い様っす。自分には自分にしか出来ない事があるから」テクテク・・・

アニェーゼ「……優しさとか思いやりとか、そういう面では、アンとコーヤギはトップクラスですよ」チラッ・・・

香焼「ありがと。アニーも、優しいと思うよ」フフッ

アニェーゼ「そりゃどーも。しかし、ステイルにリメエア様ねぇ」ポリポリ・・・

香焼「二人に怒ってる?」ジー・・・

アニェーゼ「いや、寧ろ感謝してますよ……ステイルに対しては癪ですけど。あの子を必要としてくれたんですからね」ボー・・・

香焼「そうだね、アンは人気者だから。知ってると思うけど、アン、色んなとこからお声掛ってるよ。カタギが多いけどさ」テクテク・・・

アニェーゼ「ええ、ぶっちゃけあの子はカタギ向きの性格してやがりますから……アンタもね」フフッ

香焼「馬鹿にして」ムゥ・・・

アニェーゼ「褒めてんですよ。逆に、私には出来無ぇ事ですから」ニコッ・・・

香焼「……アニェーゼ」チラッ・・・

アニェーゼ「しょーもない愚痴ですけどね。私は、汚れ過ぎてます……戦果は部隊のモノでも、責任は隊長(私)のモノですから」フフッ・・・

香焼「アニー。そういう話は止めようよ」テクテク・・・

アニェーゼ「潔癖症……綺麗なモノしか見たくねぇですか?」テクテク・・・

香焼「そういう問題じゃない。君だって他の子達だって、まだ未来があるでしょ……あのステイルだってそうだ。決めつけるのは早計っす」コクッ

アニェーゼ「お人好し。そんなんだから土御門に制裁(※)されんです。都市の暗部にも首突っ込みやがって」ムスー・・・ ※第17話『ただいま』⑥話

香焼「あははは……ま、まぁ色々とご存知で」ポリポリ・・・

アニェーゼ「嘱託扱いとはいえ、仮にも私は部隊長クラスなんですからね。入る情報は入るんですよ」ヤレヤレ・・・

香焼「そりゃ恥ずかしい……どんなん知られてるのかなぁ」アハハ・・・

アニェーゼ「ふふっ。兎角、アンタは無理に手ぇ汚す必要無ぇんです。綺麗な手のままアンやらレッサーやらを引き上げてやって下さい」チラッ・・・

香焼「別にそんな考え持ってないけど……それはそれとして、どうして自身を勘定に入れないのさ」テクテク・・・

アニェーゼ「私やサーシャやステイルは、無理なんです。さっきも言ったでしょう。引き返せないレベルまで足突っ込んでますから」フンッ・・・

香焼「はぁ……馬鹿みたい」テクテク・・・

アニェーゼ「は?」キョトン・・・

香焼「ステイルには偉そうに説教しといて、自分の事になったらそれっすか。呆れるね」ヤレヤレ・・・

アニェーゼ「うっ……わ、私は別にアイツみたいに不貞腐れて言ってる訳じゃねぇです。割り切った上で尚且つ、日常も送ろうと」ムゥ・・・

香焼「詭弁っすよ」ハァ・・・

アニェーゼ「こ、の……イラッとくる言い方しやがりますね」ジトー・・・

香焼「図星でしょ。結局、ダークヒーロー気取りじゃん……いつものポジティブさは如何したのさ。悲観的なアニー、嫌いだな」ジトー・・・

アニェーゼ「チッ……―――……誰だって、常に強く明るくなんて居られねぇんですよ。ちょっとくらい弱音吐いても良いじゃねぇですか」ムゥ・・・

香焼「っ! ご、ごめん」タラー・・・

アニェーゼ「いえ……コーヤギの言うとおりです。私らしくねぇですね。これじゃニコ中メンヘラ木偶の坊と変わりゃしません」ハハハ・・・

香焼「……、」ポリポリ・・・

アニェーゼ「はぁ……小さな頃は、花屋とかパン屋とか、お嫁さんとか……そんなんにも憧れてたりしてた様な気もするんですけどね」ボソッ・・・

香焼「今からだって、遅くないんじゃないかな」コクッ・・・

アニェーゼ「ははは。如何だか……でもまぁWWⅢ以後、都市じゃ暗部解体されたって聞きますしね。『誰かさん』も日の下ですか?」チラッ・・・

香焼「……誰の事やら」ポリポリ・・・

アニェーゼ「恍けやがって―――……さておき、部隊がある以上、隊長の私はそれを放棄できねぇんです」ポリポリ・・・

香焼「あ、うん。分かってる、つもり」チラッ・・・

アニェーゼ「なら、良いんです……ただ、それと同時に人並みの幸福だって欲してます。例え無理だと分かっていてもね」テクテク・・・

香焼「……だからさぁ」ムッ・・・

アニェーゼ「おっと、怒るな。これはネガティブじゃなく『事実』です。人を殺っちまった事がある以上、天国にゃ行けませんから」クイッ・・・

香焼「じゃあせめて、生きてる内に幸せになろうよ。好きな仕事して、好きなモノ食べて、好きな事して……地獄に行けばいい」ジー・・・

アニェーゼ「ははは。そうします……あーもう、キャラじゃねぇですね。しんみりしちまいました……オマエの所為だっ」ゲシッ

香焼「あ痛っ。理不尽だなぁもぅ」ムゥ・・・

アニェーゼ「うっせ。兎に角! またアンが悩んでたら相談乗ってやって下さい。私じゃ話し辛い事でも、アンタにゃ話せる事もあんでしょう」

香焼「言われなくてもそうします」ヤレヤレ・・・

アニェーゼ「よろしい。そんじゃ、食堂行きますか」グイグイッ・・・

香焼「押すな押すな。もぅ」ポリポリ・・・

アニェーゼ「フンだ。アンニュイにさせた罰です。おかず一品寄越せ」ブーッ

香焼「ったく、がめついんだから……―――……ねぇ」テクテク・・・

アニェーゼ「ん」テクテク・・・

香焼「アニーも……あんまり溜め込まないでね。自分なんかで良ければ愚痴というか、弱音聞くからさ。頑張り過ぎないで」ポンッ・・・

アニェーゼ「っ……うるさい。人の事言えた口ですか、馬鹿わんこ」ムスー・・・

香焼「あはは。自分はそんなに悩み無いからなぁ。アニー程の錘(おもり)は無いよ」チラッ・・・

アニェーゼ「……あほ」フンッ・・・

香焼「馬鹿でもアホでも結構。兎に角、潰れる程抱えちゃ駄目だよ。サンドバック代わりにしかならないかもだけど、相手するからさ」ポンポンッ

アニェーゼ「……ぼけ」プイッ・・・///

はい、以上。次でⅢ話終わりたい。
もう寝落ちはしませんよー! これ以上寝落ちたらR-18モノ書くって罰を課してますから!w

さて、そろそろ次話のアンケかな……とりあえず色々考えてますんで次回以降に、、、まぁ盆明けにでも。

そんじゃまた次回! ノシ”

こんばんわ。少しだけ投下します。

佐天さん書きたいですねー……ただ消化してないキャラ多過ぎて順序如何するかが悩みの種です。

 ―――はたまた後日、PM02:00、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、女子寮・・・・・


    パタパタ ガヤガヤ ワイワイ・・・・・


アニェーゼ「―――そんじゃ、この封書を。コッチがステイルで、コッチが姫さんです」スッ・・・

アンジェレネ「分かりました……むぅ」モジモジ・・・

アニェーゼ「……私は手伝いませんから。自分でケジメつけなさい」ジー・・・

アンジェレネ「わ、分かってます」ゴクッ・・・

アニェーゼ「まぁ、もし強制だの命令だのされた時は言いなさい。私がブン殴りに行ってやりますから」フフッ

アンジェレネ「だ、大丈夫です! 一人で行けます」アワワワ・・・

アニェーゼ「ははっ。冗談ですよ―――さて、どっちから行くんです?」チラッ

アンジェレネ「リメエアさまを先に……ステイルくんはいつでも会えるから、もし今日お会いできるようなら姫さまを優先します」コクッ

アニェーゼ「宜しい。んじゃ『おつかい』頼みましたよ」ノ”

アンジェレネ「は、はい! 行ってきます」グッ・・・テクテク・・・


ルチア「―――……、」ジー・・・

浦上「んにゃ? どったのルチア?」キョトン・・・

ルチア「……いえ、何でも」クルッ・・・テクテク・・・

浦上「ふむぅ?」ジー・・・

五和「あ、ウラ。今日書類手伝ってくれるって言ってたでし……ん? 何々? ルチア、どうかしたの?」チラッ・・・

浦上「んー。何でしょネ? フロリス辺りは知ってんのかなぁ?」キョトン・・・

五和「アンニュイ……っぽいのはいつもの事だけど、何でしょうね。雰囲気変です」ジー・・・

ルチア「……―――、」ジー・・・


アニェーゼ「……はぁ」ポリポリ・・・

レッサー「あんれぇ? 盛大に溜息なんか吐いちゃってどったんですかぁ?」ヒョコッ

アニェーゼ「……クソ暑いなぁと思ったんですよ」グデェ・・・

レッサー「ふーん。ところで、アンは? 仕事?」キョロキョロ・・・

アニェーゼ「ええ。特使の任を与えました。今日一日は帰って来ねぇかもしんねぇです」ジー・・・

レッサー「特使ぃ? あのアンジェっちがぁ? キャラじゃないですねー」フーン・・・

アニェーゼ「……うっせ」フンッ

レッサー「あらら、アンニュイ……ま、余所様の御事情ですから深くはツッコミませんよ」フッ

アニェーゼ「へいへい…―――…ん」チラッ・・・


ルチア「―――、」チラッ・・・フイッ・・・


アニェーゼ「……ったく」ヤレヤレ・・・

レッサー「いやぁしかし、今日のアニェーゼは大人しいですね。というか寮全体が静かな感じが」ウーン・・・

アニェーゼ「レッサー。今日、平日。皆仕事してんですよ。静かに決まってんでしょ」ガタッ・・・

レッサー「およ? ドチラへ?」キョトン・・・

アニェーゼ「だから仕事です。アンタも仕事だから教会(ここ)来たんでしょう」テクテク・・・

レッサー「いえ。仕事無いから暇潰しに」キッパリ・・・

アニェーゼ「……学校行きやがれってんです、不良娘」フンッ


ルチア「―――……、」トボトボ・・・


アニェーゼ「ルチア」テクテク・・・

ルチア「っ! た、隊長。どうしました」ピタッ・・・

アニェーゼ「それはコッチの台詞です。どうしやがりました?」ジー・・・

ルチア「え」ジー・・・

アニェーゼ「様子おかしいですよ」クイッ・・・

ルチア「い、いえ、その……何と申せば良いか」ポリポリ・・・

アニェーゼ「……二人揃ってハッキリしねぇヤツですね、私の右腕左腕は」チッ・・・

ルチア「はい?」ポカーン・・・

アニェーゼ「何でもねぇです。んで?」ジトー・・・

ルチア「あ、はい……実はシスター・アンジェレネの事で」ムゥ・・・

アニェーゼ「アンジェレネ? あの子、アンタに何か言ったんですか?」ホェ?

ルチア「いえ。ただ、直接では無いのですが……噂が」ジー・・・

アニェーゼ「噂、ね……ふん。大体察しましたよ」ハハッ

ルチア「ご存知で?」チラッ・・・

アニェーゼ「まぁね」ハハハ・・・

ルチア「それは……隊長はあの子と直接、何かお話を」ムッ・・・

アニェーゼ「ボチボチ。多分、アンタよか把握してるつもりです」フフッ

ルチア「では、噂は真という事でしょうか」ジー・・・

アニェーゼ「……ルチア。アンタ、アン(あの子)と腹割って話しましたか?」チラッ・・・

ルチア「意味が分かりませんが、多分、してませんよ」ムゥ・・・

アニェーゼ「何故? お節介焼き、というか口煩く思われたくなかったからですか?」フム・・・

ルチア「……、」ポリポリ・・・

アニェーゼ「それとも、それを聞いて小事しか言えず、喧嘩になるのが怖かったとか?」ニヤッ

ルチア「……意地が悪い。分かってるなら皆まで言わないで下さい」ムッ・・・

アニェーゼ「ははは。悪ぃ悪ぃ。しっかし、んな事ビビってるなんてらしくもねぇですね」フフッ

ルチア「……、」ジー・・・

アニェーゼ「存外、一番の『ママっ子』はアンタですよね……安心なさい。アンタが危惧ってる様な事にゃなりませんよ」ポンッ

ルチア「え」キョトン・・・

アニェーゼ「あの子は、まだまだ『シスコン』です。特に私やらアンタやらからは離れられないでしょう」テクテク・・・

ルチア「し、シスター・アニェーゼ。それは如何いう」タラー・・・

アニェーゼ「精々、その堅ぇ頭で色々考えやがって下さい。それから、偶には皆に飴を与えなさい」チラッ・・・

ルチア「……難しい事を」ハァ・・・

アニェーゼ「頭ごなしに怒るよか簡単ですよ。特に、アンに対しては上手く付き合ってあげなさい……何だかんだで、一番仲が良いでしょう」フフッ

ルチア「意地悪です、アニェーゼ……年下のクセに、大人ぶって」ムゥ・・・

アニェーゼ「ははは。イジケねぇでください。頼りにしてんですから。ま、アンタも甘えたきゃ甘えて良いんですよー」バッチコーイ

ルチア「ハァ。生意気」コツンッ

アニェーゼ「あ痛っ」アハハ

ルチア「まったく……心配掛けてすいません。そうですね、あの子と直接話をしてみますよ。出来るだけ、温厚にね」フフッ・・・テクテク・・・

   ―――一方、アンジェレネside・・・・・


アンジェレネ「―――先にリメエアさまに会って来るとは言ったモノの、如何やって会えばいいのかなぁ」タラー・・・

アンジェレネ「普通にアポは取れない人だし、ウィンザー城行っても会える確率低いし」ウーン・・・

アンジェレネ「誰かに連絡取って貰うにも、リメエアさまの携帯知ってる人なんて居るのかな……やっぱ先にステイルくんのとこかぁ」ポリポリ・・・


神裂「ん? アンジェレネ」テクテク・・・

建宮「門先で何してるのよね」テクテク・・・

アンジェレネ「あ、ど、どうも」アタフタ・・・

神裂「何をしているのですか? 貴女の部隊、今日は書類仕事か慰安訪問の打ち合わせだった筈では」ジー・・・

アンジェレネ「お、おつかいで。人探しを」ポリポリ・・・

建宮「誰を?」キョトン・・・

アンジェレネ「え、と……隊長に頼まれて、リメエア姫の所に行きたいんですけど」アハハ・・・

神裂「第一王女? あぁ。(なるほど。例の件ですか)」フム・・・

建宮「あの引き籠り姫ならウィンザー城に居るんじゃないのか? あ、やっぱ、何処居るか分からんのよね。誰も連絡つけれんし」ハハハ・・・

アンジェレネ「はい。だから如何しようかなぁって」ウーン・・・

神裂「リメエア姫と連絡を取りたいならプライベート回線……私用携帯の電話番号を持っている人でなければ無理でしょうね」コクッ

建宮「だったら騎士団長辺りに」クイッ・・・

神裂「残念ながら無駄でしょう。以前、騎士団長は公用の携帯番号しか知らないと言っていましたので」コクッ

アンジェレネ「あはは……じゃあ、女王さまかキャーリサさま、ヴィリアンさま辺りしか知らないのかなぁ」ポリポリ・・・

神裂「王族の方々は御存知でしょうけど、今日は教会(此方)に顔を出されていませんので……うーん、困りましたね」フム・・・

建宮「オルソラかオリアナ、あとは主教辺りなら知ってそうですけど」チラッ・・・

神裂「ローラとオリアナは如何だか知りませんが、オルソラは公用番号しか知らない筈です。シルビアも同じくでしょう」コクッ

アンジェレネ「……どうしよう」ムゥ・・・

神裂「あー……すいません、お役に立てなくて」ポリポリ・・・

建宮「ま、まぁもし王族か知ってる人見かけたら教えるのよね」ポンッ

アンジェレネ「ありがとうございます……それじゃあ、別用の方を済ませちゃいま―――」スッ・・・

五和「―――女教皇様ー、代理ー。ハンコくださーい。あと麦野さんから『火織と電話繋がんねぇんだけど(怒)』ってメール来ました」パタパタッ

浦上「お姉、急ぎだからって何の書類か言わないと判貰えないでしょ……って、おや? アン?」ヤレヤレ・・・

神裂「ん……あ、電源切ってた。あー怒られる」ヤベッ・・・

建宮「三馬鹿姉妹(おまえら)、此処都市のマンションじゃねぇのよな」ハァ・・・

アンジェレネ「……あはは」ポリポリ・・・

五和「ははは、すいません。んで……アンは如何したの?」チラッ・・・

浦上「女教皇様。今北三単語」チラッ・・・

神裂「おつかい。リメエア姫。見つからない……今のOKですか?」カチカチ・・・

五和「把握しますた」ビシッ

建宮「……頭痛い」ハァ・・・

アンジェレネ「カンザキが今風になってます」タラー・・・

浦上「んー。つまりリメエア様と連絡取れる人間が居れば問題無し、と」チラッ・・・

五和「なるほどなるほど……居るじゃないですか、身近に」フフッ

神裂・建宮・アン「「「は?」」」ポカーン・・・


 ぱおーん・・・・・


五和「と、いう訳で呼んできましたー」グイッ

浦上「これで解決ですネ」ニッコリ


香焼「あ、ありのまま今起こった事を話すっす。ステイルに呼び出されて廊下を歩いてたら鋼糸で縛られ拉致られた。何を言って(ry」ブラーン・・・


建宮「……お前、相変わらず苦労人なのよな」ホロリ・・・

アンジェレネ「ええっと……コォヤギくんが?」キョトン・・・

神裂「あー、香焼。自分が何故連れて来られたか分かります?」タラー・・・

香焼「やぁ、アンジェレネ。数時間ぶり……見当皆目つきません」キッパリ・・・

五和「コウちゃん、嘘はいけないよ。どんな大罪犯したか、自分の口からハッキリ告白しなきゃ駄目じゃない」フゥ・・・

浦上「さぁさぁ! 今までの悪の所業の数々、女教皇様にお告げなさい! 私達は生温かい目で見ててあげますから」ニヤニヤ・・・

香焼「……建宮さん?」チラッ・・・

建宮「俺に振るな。強く生きろ」ハァ・・・

香焼「えぇ」ドヨーン・・・

神裂「こらこら、二人とも。連れて来てくれたのは感謝しますが、やり方があるでしょう。これじゃあ誤解されます」ヤレヤレ・・・

五和「あはははは。すいません、いつものノリで。ただ、コウちゃん、マジでリメエア様の連絡先知ってますよ」ポリポリ・・・

浦上「偶ぁに家でも電話してますからネー。仲良さそうに……んーでもぉ懺悔の一つや二つ、あるんじゃないカナ? ねぇ香焼ー」ツンツン・・・

香焼「は?」イラッ・・・

五和「それはまぁ、男の子だもんねぇ。大丈夫、姉ちゃん達怒らないから言ってみ、言ってみ」ツンツン・・・

香焼「おま……じゃあ、この前。冷凍庫に入ってた胡麻蜜ソフト、本人の許可無く勝手に食べてました……誰かさんが」ジトー・・・

五和「ちょ!?」ギョッ・・・

神裂「……ほぉ。だから無くなってたんですか」ピクッ・・・

香焼「あと、黒●スのアンソロコミとテ○プリの薄い本。本人の許可無く勝手に淡希さんと固法さんに貸してました……誰かさんが」ジトー・・・

浦上「い”っ!?」ギョッ・・・

五和「……ウラ。アレ、人に見せるなって言ってたよね」ピクッ・・・

香焼「それから、周りに触発されてゲームを欲しがってた禁書目録に、本人の許可なく勝手に初期DSあげてました……誰かさんが」ジトー・・・

神裂「んなっ!?」ギョッ・・・

浦上「……それ、まだ現役なんですケド。ポケモン用で」ピクッ・・・


三姉妹『……、』ゴゴゴゴ・・・


 ギャーギャー ワーワー コンノコンノゥ ダブーレップーケッ ウーッワウーッワウーッワ・・・・・


建宮「諸君……俺ぁ帰って良いかなぁ、なぁ。長崎に帰るのよ、俺ぁ」グデェ・・・

アンジェレネ「あは、ははは……ええっと、その、コォヤギくん」ポリポリ・・・

香焼「馬鹿姉共め……あ、うん。ごめんごめん、怖がらせたね。それで、リメエアさまだっけ」チラッ・・・

アンジェレネ「はい。連絡できる? あ、用件は」ジー・・・

香焼「分かってる。さっきの通りなんでしょ。あ、因みに自分が姫様の連絡先知ってる事内密にね。一応、プライベートだから」コクッ・・・

アンジェレネ「わ、分かった。(何でプライベートで姫さまの連絡先知ってるのかなぁ……も、もしや! 例のペットの件!?)」ドキドキ・・・///

香焼「何故赤くなる…―――…あ、もしもし。すいません、少々お話が……あ、自分じゃないんすけど、アンが……はい……―――」Pi・・・

今回は以上で。次回で終わらせたい……とりあえず、寝ます。おやすみ!


 ギャーギャー ハドーケッ バーンナッコーッ オップッバッ キャーキャーキャー...


香焼「―――はい……それじゃあお願いします―――車でこっち来てくれるらしいっす。南門の辺りで待っててって」ペコッ・・・Pi!

アンジェレネ「えっ! 姫さまにご足労掛けるなんて、申し訳無い様な」タラー・・・

香焼「あはは。まぁ好き勝手やってる人だから気にしなくて良いと思うよ」コクッ

アンジェレネ「なら、良いけど……どれくらいで此方に着くって?」ムゥ・・・

香焼「30分もしないってさ。早めに行って待っておきなよ」クイッ・・・

アンジェレネ「うん、そうします。あぅ、緊張するなぁ」ペコッ・・・

香焼「ふふっ、頑張って。自分の口からハッキリ宣言するんでしょ。それじゃあ自分はこれで」スッ・・・

アンジェレネ「え」ピタッ・・・

香焼「ん?」キョトン・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

香焼「え……どったの?」ポカーン・・・

アンジェレネ「……一緒に、行ってくれないの?」モジモジ・・・

香焼「……は?」ピタッ・・・

アンジェレネ「……、」ウー・・・

香焼「……へ???」キョトン・・・

アンジェレネ「ねぇ……お願い」モジモジ・・・

香焼「え、あ、うーん。一人じゃ心細いってのは分かるけど……でも」チラッ・・・

アンジェレネ「……お仕事?」ムゥ・・・

香焼「うん。対馬さんの手伝い抜け出してきちゃったから、戻らないといけないんだ……ごめん」コクッ・・・

香焼(それに―――あまり甘やかし過ぎるのも良くない気がする。少しは自分だけの力で行動させないと、駄目だよね……うん)ポリポリ・・・

アンジェレネ「そっか……ううん。私こそ、ごめん。迷惑掛けちゃって」シュン・・・

香焼「……、」ムゥ・・・


建宮「―――はぁ……お前ら、はよ行け」ポンッ・・・


香焼・アン「「え」」ビクッ・・・

建宮「対馬には俺から伝えておくのよね。詳しい事は分からんが、お前は最後までケツ持って見届けてやれ」ワシャワシャ・・・

アンジェレネ「タテミヤ……良いんですか?」パアァ!

建宮「良くない―――でもまぁ、半端はもっと良くねぇ。兎に角、俺の気が変わらん内にさっさと済ませてくるのよな」トンッ・・・

香焼「……すいません、建宮さん。終わったらすぐ戻ります―――アン」ペコッ・・・タタタッ・・・

アンジェレネ「タテミヤ、ありがとうございます。行きましょう、コォヤギくん!」パッ・・・タタタタッ・・・


建宮「やれやれ……若いって良いのよなぁ―――さて。対馬んとこ行く前に、まずは」チラッ・・・


五和「―――だぁからっ!! ウラは何でいつもそうやって話逸らすの!! 流石の姉ちゃんもブッチしちゃうわ!!」ギャーギャー!!

神裂「―――五和! 人の事言える立場ですか!! 最近の貴女の体たらくは目に余る所業です! そこに直れ!!」ガーガー!!

浦上「―――ふーん……姉様こそ堕落し過ぎなんじゃないんデスかぁ? シナリオ進めたいからって徹夜する聖人ってネェ?」ネチネチ・・・


 ワーワー! ウガー! フンガー!! キシャー!! ドリャードリャー!! チェストー・・・チェストー・・・・・


建宮「……馬鹿姉妹共の説教だな」ハァ・・・ギロリ・・・


 ―――一寸後、教会南門・・・・・


香焼「そろそろかな」ジー・・・

アンジェレネ「うん……コォヤギくん。私、甘え過ぎだよね」アハハ・・・

香焼「え」チラッ・・・

アンジェレネ「ホントは全部一人でやらなきゃいけないのに、何から何まで手伝って貰っちゃって。ごめんなさい」ムゥ・・・

香焼「……、」ポリポリ・・・

アンジェレネ「私は臆病者だね。それと、卑怯者」フフフ・・・

香焼「ぅ……アン、その、困らせないで」ムゥ・・・

アンジェレネ「うん。ごめん。貴方の優しさにいっぱい浸け込んじゃいました……ホント、ありがとね」ペコッ・・・

香焼「大した事はしてないっすよ。それに、アニェーゼからも頼まれてるしさ」ポリポリ・・・

アンジェレネ「謙虚ね―――何か、やっぱりズルいなぁ私。抜け駆けしてばっか」ボソッ・・・

香焼「ん?」ポカーン・・・

アンジェレネ「い、いや、何でも……あ、来たかも」ピッ

香焼「え。あ、多分あのロールス・ロイスで合ってる」コクッ


   バタンッ・・・・・


リメエア「―――お待たせしました。あら、坊やも一緒なの?」ガチャッ・・・

アンジェレネ「は、はい。態々ご足労掛けてしまい申し訳ありません! (す、スーツ着てる!?)」ペコッ・・・

リメエア「そんなに畏まらなくて良いですわ。いつも通りで。あ、これお土産」スッ・・・

アンジェレネ「え、あ、はぁ……杏仁豆腐?」ポカーン・・・

香焼「一体何処行ってきたんすか?」ジー・・・

リメエア「内緒。まぁ出先とだけ。一応仕事です」フフフ・・・

香焼「はいはい。女中や騎士団長に内緒の仕事っすね」ヤレヤレ・・・

リメエア「そゆ事。さぁてと……とりあえず、何処か座ってお茶でも飲みながら話しましょうか―――答え、下さるのでしょう?」フフッ・・・

アンジェレネ「……はい」コクン・・・


  にゃーん・・・・・


リメエア「―――相変わらず、缶ジュースってのは危険よね。中見えないし、缶自体が凶器にもなるし」マジマジ・・・

香焼「リメエア様こそ、相変わらず被害妄想半端ないっすね。ベンダー会社に申し訳無いっすよ」ヤレヤレ・・・

リメエア「言うわね、坊や。ベンダーだろうが新規ベンチャーだろうが、王族を良く思ってない輩は……まぁ今は良いっか」チラッ・・・


アンジェレネ「……、」ジー・・・


リメエア「……アン。大丈夫かしら」トンッ・・・

アンジェレネ「ふぁ!? は、はい! えと、その……大丈夫です」ゴクリ・・・

香焼「……、」ポリポリ・・・

リメエア「そう。じゃあ、そんなに堅くならないで。貴女がどんな回答をしてくれるか分からないけど、貴女の意志を尊重しますから」フフッ・・・

アンジェレネ「あ、ありがとうございます。ふぅ……リメエアさま」グッ・・・

リメエア「はい」コクッ・・・

アンジェレネ「私の事、お誘いくださってありがとうございました。凄く感謝してます……私は―――」スッ・・・

こんばんば。今日で終わらせたい……うん。


 ―――一寸後・・・・・


アンジェレネ「―――……私は、まだ、隊を離れられません。ですから、折角の御誘いですが、申し訳ありません」ペコッ・・・

リメエア「そう……残念です」フフッ・・・

アンジェレネ「ごめんなさい」ムゥ・・・

リメエア「謝らないで頂戴。寧ろ、色々悩ませてしまってごめんなさいね」ポンッ・・・

アンジェレネ「いえ、お声を掛けて貰えた事は感謝してます。私なんかが恐れ多い」シュン・・・

リメエア「卑屈にならないで。それとも、それは貴女を目に掛けた私の目に狂いがあったって事かしら?」クスッ

アンジェレネ「い、いえ、その」アタフタ・・・

リメエア「ふふっ。冗談よ―――ただ、一応言わせて貰うけど。私は『部隊に所属したままで構わない』って言ったわよね」チラッ・・・

アンジェレネ「……はい、覚えています」コクッ・・・

リメエア「それでも?」ジー・・・

アンジェレネ「……半端な真似は、姫さまにも、部隊の皆にも失礼だと思いまして」ペコッ・・・

リメエア「律義ね。そういうの、嫌いじゃないわ……あーあ。でも、ホント残念」フゥ・・・

アンジェレネ「す、すいません。出来る限りのお手伝いはします。勿論、開いてる時間で都合が合えばですけど」ポリポリ・・・

リメエア「……ふふっ、ありがと」ナデナデ・・・

アンジェレネ「此方こそ、ありがとうございます」///

リメエア「まぁ、今回の件があったからって気拙くならないで頂戴ね。今まで通り、純粋なアンのまま、接してくれると嬉しいから」クスッ

アンジェレネ「勿論、私の方こそ宜しくお願いします」ペコッ・・・

リメエア「よしよしっ。あ、でも……貴女が変わらないままなら、いつでも『この件』は歓迎します。気が向いたら教えてね」ニヤリ・・・

アンジェレネ「あははは。ありがとうございます」エヘヘ・・・


 ぎゃおーん・・・・・


リメエア「―――……とりあえず、返事が聞けて良かったわ。もしかしてアヤフヤにされるかもって思ってたから」クスッ

アンジェレネ「そ、そんな失礼な真似しませんよ」アハハ・・・

リメエア「そうね、貴女はそんな娘じゃなかったわね。さて、それじゃあそろそろ私は行くわ。まだ仕事が終わってないから」スッ・・・

アンジェレネ「はい。お忙しい所ありがとうございました……あ、そうだ。これ、隊長からです」スッ・・・

リメエア「封書……アニーから?」チラッ・・・

アンジェレネ「中身は分かりません。もしかしたら、私が外に出る為の単なる口実かもしれません」ポリポリ・・・

リメエア「帰ってから開けてみます……『勝手に人の妹分に手ぇ掛けるたぁ良い根性してやがりますね、この根暗』とか書いてるかも」フフッ

アンジェレネ「そ、そんな失礼な事書かない、と思います、けど、うーん」タラー・・・

リメエア「ふふふっ。あの娘なら書くわよ。楽しみに持ち帰ってみるわ」クスッ

アンジェレネ「あははは……もし失礼な事が書いてあっても、その」タラー・・・

リメエア「安心なさい。子供の癇癪だと思って受け止めるから」フフッ

アンジェレネ「すいません」ポリポリ・・・

リメエア「さぁて、それじゃあ―――またね。近い内、またご飯でも食べましょう。勿論、プライベートで」ニコッ

アンジェレネ「はい! 楽しみにしてます」ニパー!

リメエア「ええ。あ、と……坊や。ちょっと」チラッ・・・クイッ・・・

香焼「え、あ、はいはい。ごめん、アン。少し待っててね」テクテク・・・

アンジェレネ「え? あ、うん」コクッ・・・


 にゃんにゃんお!


香焼「―――何用で?」ハァ・・・

リメエア「……貴方の入れ知恵?」チラッ・・・

香焼「いやいやいや。違いますよ。そんなんで疑わないで下さい」ヤレヤレ・・・

リメエア「……信じるわ」ムゥ・・・

香焼「ったく。そんなにショックっすか?」ジー・・・

リメエア「まぁ、ボチボチ」ムゥ・・・

香焼「ははは。お気に入りっすもんね―――ただ、まだアニェーゼの傍から離れられないっすよ」チラッ・・・

リメエア「だからこそ、むず痒いのよ。アニーも嫌いになれない娘だから。いっその事二人とも従者にしたいし」ハァ・・・

香焼「強欲な……なんなら、アニェーゼの部隊を自分の専属の隊にしちゃえば良いんじゃないっすか」ヤレヤレ・・・

リメエア「……その手があったわね」キランッ・・・

香焼「じょ、冗談っすよ」タラー・・・

リメエア「……、」ニヤリ・・・

香焼「うっ。せ、せめて嘱託で。直属は駄目っすよ。ややこしくなるから」タラー・・・

リメエア「ふふふ、分かってるわよ。素敵なアイデアありがとう。坊やの頭の良さは相変わらずね」ニヤニヤ・・・

香焼(胃が、痛い)タラー・・・

リメエア「……とりあえず、また何かあったら連絡してね。大人共の連絡は着拒だけど、坊やならすぐさま出るわ」コクッ・・・

香焼「ありがとうございます。勿論、プライベート以外では掛けませんよ……やっぱなんか変な関係っすね」ポリポリ・・・

リメエア「疑問視しないの。坊やが子供だから、私は信用してるのよ。あと数年もすれば電話帳から消すから」ニコッ

香焼「……はぁ。聞き様によっちゃ危ないお姉さんっすね」ヤレヤレ・・・

リメエア「あら、おませさん。そういうのに興味が出る御年頃かしら? 残念ながら私はお姉さんっていうよりオバさんよ」クスッ

香焼「あー話が逸れる……自分はリメエア様に欲情なんかしませんので、安心して下さい」ハァ・・・

リメエア「それはそれでレディに対して失礼よ―――さて、と。それじゃあそろそろ行くわ」スッ・・・

香焼「これからまた仕事っすか」ジー・・・

リメエア「ええ。公の仕事じゃないわよ。あ、分かってると思うけど」チラッ・・・

香焼「『此処に来た事をバラすな』っすね。分かってます……さておき、危険な仕事っすか?」ジー・・・

リメエア「さぁ。どうでしょうね。教えても良いわよ。坊やが私の『パートナー』になる気あるなら」フフフッ

香焼「命が幾つあっても足りなそうっすね」ダラダラ・・・

リメエア「ふふっ。ただし、ジェームズ・ボンド並のスリルを味わえるわよ」ニヤリ・・・

香焼「魔術師以上のスリルは要らないっすよ」ハハハ・・・

リメエア「賢い選択。それでこそ坊やね―――じゃあ、アン達の事宜しく」テクテク・・・

香焼「はいはい。難とも荷が重いっすよ」クルッ・・・

リメエア「纏め役でしょ。『友達』の」バタンッ・・・

香焼「……『友達』に纏め役も下っ端も無いっすよ」ヤレヤレ・・・


  ブロロロロォ・・・・・


香焼「相変わらず嵐の様な人だなぁ―――おまたせ」テクテク・・・

アンジェレネ「ううん……何の話?」チラッ・・・

香焼「んー……引き続き仲良くしろってさ。友達を大事にってね」フフッ・・・


香焼「さて。次は……ステイルんとこでしょ?」チラッ・・・

アンジェレネ「うん」コクッ・・・

香焼「一人で―――」ジー・・・

アンジェレネ「……、」ムゥ・・・

香焼「―――……ハァ。一緒に行くけど、さっきと同じで口出ししないからね」ポリポリ・・・

アンジェレネ「……ありがと」ペコッ・・・

香焼(甘やかし云々というより、僕が甘いだけだね)ヤレヤレ・・・



 ―――はたまた後日、PM03:30、英国、イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』内、主教補佐執務室兼私室・・・・・



  カチッ・・・カチッ・・・フゥ・・・・・


ステイル「……、」カタカタカタ・・・

ステイル「……、」プカー・・・

ステイル「……ん」カチッ・・・

ステイル「……、」カタカタカタ・・・

ステイル「……メール、溜ってるか」カチッ・・・

ステイル「……うわ。見たくねぇ」スッ・・・カチカチ・・・

ステイル「……、」プカー・・・チラッ・・・


 Prrrr・・・・・


ステイル「電話……外線か……無視無視」カタカタカタ・・・

ステイル「……、」カタカタカタ・・・


 Prrrr・・・・・


ステイル「……、」カタカタカタ・・・チラッ・・・

ステイル「……チッ」スッ・・・


 ・着信先:馬鹿弟子1号(マリーベート)


ステイル「はい、無視」クルッ・・・テクテク・・・プハー・・・

ステイル「……、」カタカタカタ・・・


 Prrrr・・・・・Pi!


ステイル「……あれ、今日何曜日だっけ」チラッ・・・

ステイル「確か……土曜? あ、いや、まだ平日か? あーでも外静かだからなぁ……まぁどっちでも良いか」カタカタカタ・・・

ステイル「……、」カタカタカタ・・・プカー・・・ケシケシッ・・・

ステイル「ふぅ……あ……煙草、切れた」スッ・・・ピタッ・・・

ステイル「チッ……糞っ」カタカタカタ・・・イライラ・・・

ステイル「……、」カタカタカタ・・・イライラ・・・

ステイル「……っ! あーもぅ! ミスった! 糞っタレ! 僕にデスクワークやらせんなっつの!!」グワァ!!


ステイル「ったく……もうヤメだヤメだっ……寝る!」フンッ・・・ゴロンッ・・・


 ピンポーン・・・・・


ステイル「……ぇ?」ジトー・・・

ステイル「んー……無視だ、無視」フンッ・・・

ステイル「……、」ゴロンッ・・・ガバッ・・・


 ピンポーン・・・・・


ステイル「……、」グーッ・・・

ステイル「……ローラか? いや、馬鹿弟子共か……どっちでも良い。早く帰れ」グヌヌゥ・・・


 ピンポーン・・・・・


ステイル「……、」イラッ・・・
 

 ピンポーン・・・・・


ステイル「……、」イライライラ・・・


 ピンポー―――


ステイル「ああぁもぅ! 喧しい、誰だ!?」ガンッ!!


   Pi!


香焼・アン『『』』ビクッ・・・


ステイル「……ぁ?」ジー・・・

アンジェレネ『こ、こんにちは』ガクブル・・・

香焼『で、出直そうか?』ダラダラ・・・

ステイル「……いや、君らなら構わない。上がってくれ」ハァ・・・テクテク・・・


  ガチャッ・・・・・


アンジェレネ「お、お邪魔します」ペコッ・・・

ステイル「悪いが散らかってるよ。あと別段持て成したりしないから好きに使ってくれ」グデェ・・・

香焼「ありゃりゃ。缶詰でデスクだったの?」キョロキョロ・・・

ステイル「3徹? 4徹くらいか……もう時間感覚が分からないよ」テクテク・・・ドサッ・・・

アンジェレネ「ちゃんとご飯食べてたの? というか、洗濯物も溜めちゃって」タラー・・・

ステイル「飯は喉通らないな。出張開けでデスク詰めだったから選択する余裕も無い……んもー眠い」グデグデェ・・・

香焼「……因みに、シャワーは?」ジトー・・・

ステイル「……3日前」ゴロゴロ・・・

香焼「ハァ……まず浴びてきなよ。それから寝なって」ヤレヤレ・・・

ステイル「シャンプー切れてる」ムスー・・・

アンジェレネ「替えはトイレの棚に一式あるよ……やっぱテプラで何処に何あるか書いといてあげないと駄目かな」ハァ・・・


 カチャカチャ ブイイイィン ジャアアァ ゴゴゴゴゴ・・・・・


アンジェレネ「―――うーん。一通り片付いたかな」ゴシゴシッ

香焼「綺麗好きのステイルが此処まで部屋片付さないのも珍しいね……それだけ仕事忙しいのかな」キュッキュッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・


 ガチャッ・・・・・


ステイル「ふぅ……すまないな。ホストが持て成しもせずシャワー浴びて」テクテク・・・

香焼「いえいえ。主教補佐殿―――ぶっちゃけ臭ってたよ」フフッ

ステイル「うっせ」ゴロンッ・・・

アンジェレネ「やっぱり、忙しいの?」チラッ・・・

ステイル「……まぁボチボチね。それより、煙草喫いたい」ドヨーン・・・

香焼「ハァ……ん」スッ・・・っ『ラキストのカートン』

ステイル「っ!!」パアアァ!!

アンジェレネ「えっ」ジトー・・・

香焼「そんな目しないで……勿論、自分は喫わないっすよ。コイツの使い」タラー・・・

ステイル「お前が天使だ。早く寄越せ!」ワクワク・・・

アンジェレネ「……んもぅ」ジトー・・・

香焼「はいはい。ったく、毎度毎度年齢確認されて偽装免許出すコッチの身にもなれっての」ハァ・・・

ステイル「金はやってるだろ……ふぅ……生き返ったぁ」カチッ・・・プカー・・・

アンジェレネ「……早死にしますよ」ブゥ・・・

ステイル「一足お先にニコチンとタールの天国へ召されるだけさ。さぁて、これで安眠できる」グダァ・・・プカプカ・・・

香焼「この若年性ヤニ中め……んな事より、用事が合ってきたんだけど」チラッ・・・

ステイル「ん? 煙草(これ)の差し入れじゃないのか?」プカプカ・・・フガフガ・・・

香焼「それだけなら仕事中に来ないっす。メインは自分じゃ無くて、アン」クイッ・・・

ステイル「……あぁ」チラッ・・・

アンジェレネ「……、」ジー・・・

ステイル「……ふむ」スッ・・・テクテク・・・

香焼「自分がコーヒー淹れるよ。2人は座ってて」テクテク・・・

ステイル「……すまない」ピタッ・・・スッ・・・

アンジェレネ「……、」ポリポリ・・・

ステイル「では、とりあえず……アンジェレネ。座ってくれ」クイッ・・・

アンジェレネ「は、はい」チョコン・・・


 コトコトコト・・・・・


香焼(……とは言ったモノの)チラッ・・・


ステイル「―――」プカプカ・・・チラッ・・・

アンジェレネ「―――」オドオド・・・チラッ・・・


香焼(まぁこうなるよね)ハハハ・・・


 プカプカ・・・モクモク・・・・・


アンジェレネ(ど、どうしよう……やっぱり言い出し辛いなぁ)タラー・・・

ステイル「―――アンジェレネ」フゥ・・・タバコケシケシ・・・

アンジェレネ「ひゃいっ!?」ビクッ・・・

ステイル「……そんなに怯えられると困るのだが」ポリポリ・・・

アンジェレネ「い、あ、ご、ごめん」タラー・・・

ステイル「ふむ……この前の件、という事で良いんだよね?」ジー・・・

アンジェレネ「は、はい」コクッ・・・

ステイル「そうか……それで、答えは?」ジー・・・

アンジェレネ「……ごめんなさい。私はまだ、隊から離れるつもりはありません」ペコッ・・・

ステイル「うん、そうか。まぁ仕方ないね」ポリポリ・・・

アンジェレネ「……理由、聞かないの?」チラッ・・・

ステイル「差し詰め、まだアニェーゼから離れたくないのだろう。例え兼任役だとしても、半端は嫌かな」フフッ

アンジェレネ「……はい」コクッ・・・

ステイル(尤も、神裂の受け売りだけどね……あのお節介焼きめ、何処でこの件を耳にしたのやら)ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「ごめんね。でも、感謝してるよ」コクッ・・・

ステイル「いや、僕の方こそ無茶を言って困らせただろう。こんな事の為に真剣に悩んでくれた事に感謝する」ペコッ・・・

アンジェレネ「い、いえ。頭を上げて下さい」アワワワ・・・

ステイル「ん……君ならいつでも歓迎する。もしアニェーゼに愛想を尽かす様な事があれば言ってくれ」フフッ・・・

アンジェレネ「あはは。そうだね、多分、当分先の話になるかもしれないけど」ポリポリ・・・

ステイル「……因みに、ちゃんと第一王妃には頭を下げに行ったのかい?」ニヤッ・・・

アンジェレネ「え!? し、知ってたの?」タラー・・・

ステイル「これでもそれなりに情報は入ってくる方なんだ。もしかしたら彼女の従者の件を受けるのかなぁとも推測した」クスッ

アンジェレネ「あ、ぅ」タラー・・・

ステイル「でもまぁ、結局はアニェーゼの下のままか。それなら止むを得無しで納得さ」コクッ・・・

アンジェレネ「ごめんね……でも、大丈夫?」ジー・・・

ステイル「ん?」キョトン・・・

アンジェレネ「お仕事、やっぱり大変なんでしょう」ジー・・・

ステイル「ふふっ。心配してくれるのは有難いが、気にする必要は無い。君はもう選んだんだろう」カチッ・・・フゥ・・・

アンジェレネ「……、」ムゥ・・・

ステイル「だったら、自分の事だけ考えてればいい。他人の心配は二の次にすべきさ」プカー・・・

アンジェレネ「……はぁ」ジトー・・・

ステイル「と言っても、君や香焼(アイツ)みたいなお節介焼きには何を言っても無駄なのだろうけどな」フフッ・・・

アンジェレネ「ええ、そうですよ」ジトー・・・

ステイル「困った部下だ―――兎角、今まで通り頼むよ。正直、君や香焼が家事の手伝いやらをしてくれるのは非常に助かるんだ」コクッ・・・

アンジェレネ「言われなくても。友達ですから」ニコッ

ステイル「……やれやれ」ポリポリ・・・

アンジェレネ「ふふふっ。困ったらいつでも頼ってね。肩書秘書じゃなくても、お手伝いはしますから」ニパー!


香焼(……終わったみたいだね)フフッ・・・


 メルメルメェ・・・・・


アンジェレネ「―――じゃあ、これ。アニェーゼちゃんからです」スッ・・・

ステイル「これ以上、仕事増やされても困るんだが」ハァ・・・

アンジェレネ「あはは。多分、私を外に出す為の口実だろうから深い内容じゃないと思う」コクッ・・・

ステイル「だと良いけどな。さて―――そろそろ僕は寝るよ」ファアァ・・・

アンジェレネ「あ、うん。長居しちゃってごめんね」スッ・・・

ステイル「構わないよ。元々、僕から振った案件だ」テクテク・・・ゴロンッ・・・

アンジェレネ「……しっかり休んでね。無理し過ぎちゃダメだよ」ジー・・・

ステイル「元より、気ままに仕事してる。大丈夫さ」グデェ・・・

アンジェレネ「如何だか……とりあえず、また来ます」チラッ・・・

香焼「ん―――じゃあ自分も行くよ。根詰めし過ぎんなよ」テクテク・・・

ステイル「ああ……ホントは神裂がもう少しデスク覚えてくれれば助かるんだけどな」ジトー・・・

香焼「自分に言われてもね」ハハハ・・・

ステイル「アイツ本人に言っても意味無いから君に愚痴ってんだ」ヤレヤレ・・・

アンジェレネ「ふふっ……それじゃあ、またね。ステイルくん」テクテク・・・

香焼「極力起こさない様、皆に言っとくっす。とことん寝ろよ」テクテク・・・ガチャッ・・・

ステイル「そうさせて貰う……またな―――」ノ"


 バタンッ・・・・・


アンジェレネ「―――ふぅ」クテェ・・・

香焼「お疲れ様。頑張ったね」テクテク・・・

アンジェレネ「……色々ありがと」ペコッ・・・

香焼「どういたしまして」フフッ・・・


 カツカツカツカツ・・・・・


アンジェレネ「……私」ボソッ・・・

香焼「ん」チラッ・・・

アンジェレネ「間違ってないよね」テクテク・・・

香焼「……さぁ」テクテク・・・

アンジェレネ「あはは……嘘でも、うんって言って欲しいかな」ポリポリ・・・

香焼「適当な事は言えないよ。それに、判断するのはアン自身でしょ」コクッ・・・

アンジェレネ「……厳しいなぁ」ムゥ・・・

香焼「当然。ただ、少なくとも、今の決断に未練は無いんじゃない?」ジー・・・

香焼「『こんな筈じゃなかった』とか『ああしとけば良かった』とか、他人の所為にする事は無いんじゃないかな。自分で決めた事でしょ」フフッ

アンジェレネ「……そだね」クスッ

香焼「だからこそ、頑張ろうよ。アニェーゼやステイルにも負けないくらい力を付けて……そしてまた、先の事を考えよう」ポンッ・・・

アンジェレネ「うん。お互いに、ね」クスッ・・・

香焼「ふふっ。それじゃあ此処で別れよう。また夕飯時に食堂で……アニーにしっかり報告するんだよ」テクテク・・・

アンジェレネ「ええ。タテミヤ達にもお礼言っておいてね……じゃあ、また―――」ペコッ・・・

 ―――一寸後、ステイルside・・・・・


ステイル「―――はぁ……ん」グデェ・・・チラッ・・・スッ・・・Prrrr・・・・・

  ガチャッ・・・・・

ステイル「……もしもし」Pi!


リメエア『―――あら……珍しい。どうしたのかしら』フフッ

ステイル「いえ、大した用では無いんですが、少々お話を。まぁ愚痴ですね」ハハハ・・・

リメエア『それはそれは。清教派の二番手が王室派のブレインに何用かしら?』クスクス・・・

ステイル「分かり切ってるクセに。同じくフラれた者同士でしょう」ヤレヤレ・・・

リメエア『ふふっ。貴方もフラれたのね―――自信あったの? そんなにショック?』ニヤニヤ・・・

ステイル「ある訳無いでしょう。駄目元ですよ。ショックか否かと聞かれれば……まぁ多少は」ポリポリ・・・

リメエア『あらあら。珍しく素直ね。お酒でも入れてるのかしら?』フフッ

ステイル「酒は入ってませんが、眠気が一周して微妙にハイですよ……素面で貴女に電話など出来ませんから」フフッ

リメエア『随分ね……まぁそれは良いとして、ぶっちゃけ私だってショックだからね。我儘言えば、側近欲しかったもの』ムゥ・・・

ステイル「御愁傷様ですね。ま、早く別の子見付けて下さい」ハハハ

リメエア『現状居れば苦労しないわ。あの子程、純粋で裏表無く優しい子、周りに居ないもの―――一応「候補」は居るけどね』ハァ・・・クスッ・・・

ステイル「視野というか引き出しが狭いと大変ですね」フフッ

リメエア『言うわね。人の事言えないでしょうに』ジトー・・・

ステイル「ええ、御尤も。暫くは独りで頑張る外無い様ですね」ヤレヤレ・・・

リメエア『独りは楽よ。でも、貴方の歳でそれを言う様になったらオシマイね……早めに全うな人間関係築いときなさい。じゃないと』クスクスッ

ステイル「貴女の様になる、と……重々承知してます。覚悟もしてますけどね」フフッ・・・

リメエア『お馬鹿。これ以上捻くれたら私以上の変人になるわよ』ヤレヤレ・・・

ステイル「それは大変だ。気を付けますよ―――話は変わりますが、アニェーゼからの封書は開けましたか?」ジー・・・

リメエア『ええ。驚いたわね』クスッ

ステイル「『妹をお誘い頂き、ありがとうございます』ときた……正直罵倒されるものかとばかり」ハハハ

リメエア『一応身内の出世話だものね。姉妹揃って律義なんだから。血は繋がってないけど、それ以上に固い絆よ』ジー・・・

ステイル「家族であり、共に死線を潜る仲間ですからね。尚更なのでしょう」フフッ・・・カチッ・・・フゥ・・・

リメエア『そうね―――何れ、あの子が来たいと言ったら、受け入れるけど……貴方は?』ジー・・・

ステイル「忙しい限りなので、今すぐにでも可能ですが……そうですね。急かしはしません。自由意思、選択の一つとして」コクッ・・・モクモク・・・

リメエア『そう。まぁ彼女が将来何を選ぶのか、楽しみね。彼女、引く手数多みたいだから』フフフッ

ステイル「出来れば我が手に、ですか。キツいドラフトだ―――さて、突然の電話失礼しました。幾分か発散出来ましたよ」ペコッ・・・

リメエア『いえいえ。仕事以外の話ならいつでもウェルカムよ。例え、主教補佐(貴方)でもね』ニヤリ・・・

ステイル「全く、変わった御方だ―――それではまた」スッ・・・プカー・・・

リメエア『ええ、また近い内に。あ、因みに次の「候補」も……貴方と同じかもね―――』フフッ・・・


   Pi!


ステイル「はぁ……―――……暫くは、『アイツ』で我慢するか。どうせあの人と被るんだろうけどな」ハハハ・・・モクモク・・・グデェ・・・Zzz...





イノケンティウスさん「煙草は消して寝ましょうね」ボッ・・・ジュウゥ・・・オワリッ!

はい。一応、Ⅲ話終了です。あとは、ちょいとおまけ書いたらⅣ話いきます。
おまけは安価取ってカルテッ娘で1レス単発ほのぼのを少々書きます。

さて、次回ですが都市編か引き続き英国編か、それとも姉主体か……後日アンケ取ります。

それでは例の如く質問意見感想罵倒リクエストなど等、お願いします。ではまた次回! ノシ"

こんばんわ。予告通り安価で「ほのぼの(?)カルテッ娘」書きます……需要あんのかな?

とりあえずエロ無しで適当に御題くだせぇ。

   >>515

↑で!


 イラッシャッセー・・・

アニェーゼ「へぇ。中々シャレ乙なお店じゃねぇですか」キョロキョロ・・・

レッサー「ふっふ~ん。私の女子力を嘗めて貰っちゃぁ困りますよ。こういうのには目敏いんです」ドヤァ・・・

サーシャ「まぁ実は私達の中で一番一般人してますからね。ところで、第一の疑問ですが……本当にバイキングコースやってるんですか?」チラッ

レッサー「っぽいですよ。小洒落たカフェに見えますけど、土日の午後1時から3時までで、丸一時間バイキングタイム取れるそうです」ピッ!

アンジェレネ「あ、本当だ。店員さんが準備してる」ジー・・・

アニェーゼ「んじゃボチボチ食べに行きますか。エレガントゥに」テクテク・・・

サーシャ「優雅の真逆に居る人間が何を抜かしてあ痛ぃ」ポカッ・・・

 ザワザワ・・・ガヤガヤ・・・

アンジェレネ「―――結構人居ますね。新しい店だから尚更なのかな……ん……紅茶おいしい」フゥ・・・

アニェーゼ「ふぃんふぉふぉふふぉふふぁふぃふぁふぁ、ふうふっふんふぇふぇいふぇんふぃふぁふぁふぃふぁふふぇ!」フガフガフガ・・・

レッサー「……なぁに言ってんだろ、このハイヒール奇面っ娘」モグモグ・・・

サーシャ「第一の解読ですが―――『禁書目録が居たら、数十分で閉店しやがりますね!』かと……あちっ」ピリピリ・・・

アニェーゼ「んぐっ……ふぅ。正解です、サーシャ。あー口の中もっさもっさしやがります」ンガー・・・

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、マカロンの早食いって如何なの? あとサーシャちゃん、猫舌なんだからソフトドリンクにしようね」タラー・・・

レッサー「はっはっは。やっぱ品の欠片もありませんね―――んー、アニェーゼ。そのババロア貰います」ヒョイッ・・・パクッ!

アニェーゼ「ちょ、テメェ! 人のストック分を!?」ギロッ・・・

レッサー「溜め込み過ぎなんですよ。こういうのは必要な分だけ取って食うんです」フンフーン♪

サーシャ「ふむふむ……では、第5の注文ですが、このバニラコークフロートパフェを。二つほど」テンインサーン!

レッサー「サーシャさーん、それバイキングメニュー違いますよー。別料ー金ですよー……アニェーゼっち、そのプリン頂戴」アララ・・・パクッ!

アニェーゼ「ふぉふぇぇえ!! ふぁふぇんふぁふぇふぇふぇふ!!」モキュモキュモキュ・・・ペペペッ!

アンジェレネ「アニェーゼちゃん、口の中からメレンゲ飛び散ってる。行儀悪いし汚いし……私ら被害蒙ってるし」ジトー・・・ベトベト・・・

サーシャ「うーん……第3の感想ですが……んー……化粧品の味がする」ウッヘェ・・・

レッサー「こっちはこっちで注文きちゃいましたよ。しかも心成しか不満げ―――あと化粧品の味って何ですか」タラー・・・

アニェーゼ「ふごっ……ふー……レッサー。アンタのそのパンナコッタ貰います」ヒョイッ!

レッサー「んなっ! こ、この泥女ぁ!!」ンキー!!

アンジェレネ「どっちもどっちでしょ。あとサーシャちゃん、何でパフェに紅茶流し込んでるのかなぁ」タラー・・・

サーシャ「えっと、頭キーンってなるので……第4の感想ですが、メッ○ールっぽい味がします―――レッサー、残り食べて」スッ・・・

レッサー「絶対不味いでしょ。てか人に劇薬勧めないで下さい! 私は(アニェーゼの)ベリータルト食べるので忙しいんです」ムガムガ・・・

アニェーゼ「テメェよぉ……店員さーん! 別料金でメガハニートースト! 因みに、この悪趣味マフラーに付けて下さいねー!」ギロッ・・・

レッサー「ハァ!? ふ、ふざけおってぇ……店員ちゃーん! ついでにブブ漬けお願ーい。このF口調ロリータにー」フンヌッ!

アニェーゼ「」ピキッ・・・クイッ・・・

レッサー「なーんですかぁ? 喧嘩売ったのそっちでしょぉ!!」ギラギラギラ・・・


 ギャーギャーギャー!! キャー! ミセガー! ニゲロー!! テンチョー! ダレカオトコノヒトヨンデー!! ドンガラガッシャーン・・・・・


サーシャ「はぁ……ぽんぽん痛い」キュウゥ・・・

アンジェレネ「自業自得だよ―――あ、店員さん。何ですか―――え? 出禁!? それに、弁償!?」ガーン・・・

サーシャ「あー……第6の注文ですが、英国清教の主教補佐宛てに領収書お願いします。あと……胃薬下さい」ギュルルルルゥ・・・


アニー・レッサー「「フシャアアアァー!!」」ゲシゲシッ!ポカポカッ!

こんなノリでおk?

次・・・ >>518

カルテッ娘なら夏ということでなぜか浴衣を着て花火をすることになるも
花火の一部に魔術が仕込んだあった結果…な話


 キャッキャウフフムッキュンムッキュン!!

五和「―――よいしょっ! 着付け出来ました、よっと」ポンッ

アンジェレネ「はい、ありがとうござます!」キラキラ・・・

神裂「ふふっ。皆、似合いますね」ニコニコッ

アニェーゼ「そりゃモデルが良いんです。当然でしょう」エッヘンッ!

サーシャ「第1の見解ですが、和服は胴の起伏が無い方が似合うのでしょう? じゃあ似合って当然です」キッパリ・・・

レッサー「……サーシャ。言ってて悲しくなりませんか」ハァ・・・

ベイロープ「その理屈でいくと、一番似合うのはウチのランシスかマグヌスんとこの妖精弟子(ジェーン)だね」ハハハ

ランシス「リーダーしね」ジトー・・・

フロリス「ははは。言われてやんの。でも逆にぃ……似合わないのはぁ」グワシッ!!

ルチア「っ!!?」ボヨンッ!!

浦上「ルチアっちですネぇ……えっろぉ!」モミモミ・・・

ルチア「ッ~~~~~~~~~~~~っ、死に曝せええええぇえええぇ!!!」ゴガガガガガァッ!!

 キャーキャーッ!! ッテ、チョ、、、ギャアアアアァ・・・・・

オルソラ「まぁまぁ。皆さん、馬子にも衣装でございますね」フフフッ

シェリー「本心なんだか茶目っ気発言なんだか良く分からん事言うなよ」ハァ・・・

オリアナ「んー。お姉さん的には日本の『ゲイシャ』とか『オイラン』ファッションの方が興味あるんだけどなぁ……神裂、今度着てみて」ニコッ

神裂「自分で着やがってくださいな」ニッコリ

レッサー「あ! はいはーい! 私着てみたいでーす! 『オダイカンサマー』ってヤツですよね!」キラキラ・・・

アンジェレネ「多分違うよね―――さておき、私達が着ちゃっても良かったんですか? 大事な民族衣装なんでしょう?」オドオド・・・

対馬「民族衣装だなんて大袈裟な。まぁ押入れの中にしまっておくよか有意義よ……私達のお下がりで申し訳無いけどね」フフッ・・・

サーシャ「いえ、感謝します。第1の感想ですが、普段の服装の数万倍マシです」シミジミ・・・

アニェーゼ「上司に恵まれないと苦労しますね―――ところで、さっきから気になってたんですけど」チラッ・・・

 ~~~~ 柵 ~~~~

野郎共『―――』チラチラッ・・・


アニェーゼ「なんか、ゲスい目が……ちゃっかり騎士派の連中まで居やがりますし」ジトー・・・

サーシャ「第1の見解ですが、下心と物珍しさでしょう。女性陣の殆どがユカタを着てますからね。何処から情報が漏れたかはさておき」ハハハ・・・

アンジェレネ「女子寮で企画してたのに漏れたという事は十中八九、天草式の面子ですよね」チラッ・・・

五和「あははは……まぁ建宮さん達もシミ抜きとか手伝ってくれましたし」ポリポリ・・・

レッサー「まぁまぁ。こういうのは見せる為にある様なモンですしね! おや、そういえば……大小コンビは?」キョロキョロ・・・

アニェーゼ「そういえばアイツら見てねぇですね……折角、着替えてやったのに」ムスー

サーシャ「ツンデレ頂きまし痛ぃ」ゲシッ!

アンジェレネ「あははは……あ! そろそろ花火上がる頃ですよ!」キラキラ・・・


 ヒュ~~ン・・・・・パアアアァンッ!! パラパラパラパラ・・・・・ オオオォ!! キレィ・・・ワーワー・・・・・


ステイル「―――ん……次の玉、寄越せ」パシュッ・・・パシュッ・・・

香焼「あ、うん……いやいやいやいや。なんでさ。自分らが砲台役っておかしいよね」ハァ・・・

ステイル「ローラの馬鹿が下らん命令するからだ。怨むなら奴を恨め……あと、お前のその恰好何だ?(軍覇と絹旗に写メ送ろ)」チラッ・・・チラッ・・・


うぃ……あれ? 何か違う?w

次ー → >>522
 

おっさんの下トークに巻き込まれ、席を立つのも子供っぽい気がして居心地悪い思いをしながら聞くステイル


 ギャハハハッ ガハハハッ イーッヒッヒッヒッ! ウヒャヒャヒャ・・・・・

ステイル「……、」ハァ・・・

土御門「―――んー? どったんステイルぅ。お酒進んでないですぜぃ」ツンツン・・・

ステイル「……いや、呑んでるよ。君こそ未成年のクセに呑み過ぎじゃないのか?」チラッ・・・

牛深「ワインは神の血。ノーカンノーカン……あ、そいやぁワインといやぁ斎字よぉ……あの呑み屋の子、如何したのさ?」ニヤリ・・・

建宮「あー、あの子……まぁ色々と、なぁ」ムフフ・・・

野母崎「カアアアァっ!! コイツ! 絶対ぇヤったわ! 信じらんねぇ!」ツンツンッ・・・

諫早「ったく、最近大人しくなったと思いきや、お前は昔からそうだったな……で、如何だった?」ニヤリ・・・

土御門「ニャハハハ! 爺ちゃん! ノリノリじゃん!」ケラケラケラッ!

建宮「落ち着けお前ら。まぁ俺も紳士なのよな。そんなそんな『それ頂きます』みたいな事はしないのよ」フフーン・・・

トール「んー? 何か面白そうな話してんなー。何々? 日本人式、女の攻略法か?」ニヤニヤ・・・

騎士団長「ふむ……それは興味深いな。是非参考にしたい」キリッ・・・

牛深「なんか喰い付いたったwww」ゲラゲラゲラッ!

野母崎「いや、騎士団長殿が望む様な殊勝な輩じゃないですよ、コイツ。典型的な下半身脳ですし」ヒッヒッヒッ!

建宮「バーロー。紳士だっつーの……まぁ確かに、多少は下心あるけどな」ニヤリ・・・

オッレルス「そういえば建宮は噂に聞く足フェチだとか……おっぱい興味無いの?」キランッ・・・

建宮「無論、全身のバランスは大事だと思うのよ……ただし! おっぱいに興味無い男なんていません! ね! 騎士団長!」バッ!

騎士団長「え、あ、ま、まぁ……うん」ンフフ・・・

トール「ダハハハッ! ムッツリーダー! アンタ、見るからにムッツリだよなぁ! あとおっぱい星人っぽ」ケラケラッ!

ステイル「……、」スッ・・・

フィアンマ「おや? 主教補佐殿ぉ。ドチラにぃ?」ニヤニヤ・・・

オッレルス「こらこら、フィアンマ。止めたら駄目だよ……何だかんだ、まだ14歳だしな」ハハハ・・・

ステイル「っ……何でもないさ」グヌヌゥ・・・

牛深「ぷっくくくっ……いやぁ、でも斎字よぉ。あの子、ああ見えて存外ビッチだぜ。止めとけ止めとけ」ニヤリ・・・

建宮「ウシぃ、僻みかぁ? ま、別に潔癖症って訳じゃねぇから、多少の『緩み』は目を瞑るのよな」ハハハ

トール「えー。俺はガバ○ンとか無理だわー。まぁ処女も重いけど」キッパリ・・・

野母崎「うわぁ童顔イケメンから発せられる言葉だとは思えん……如何思います? 騎士団長」チラッ・・・

騎士団長「え。あ、まぁ、その……好みはそれぞれで良いのでは」ハハハ・・・

土御門「うっわー、良い子ちゃんぶってー。騎士団長殿……俺ちゃん、知ってるんだぜぃ? 若い頃のアンタの『種馬』伝説をにゃぁ」ニヤリ・・・

騎士団長「ブッフーッ!! な、何を! 適当な事にょ!?」アタフタ・・・

牛深「噛wwみww噛wwみww動揺し過ぎですわ……んでんで?」ニヤリ・・・

 ジツハー・・・―――……マジカヨ! リーダーパネェッス!! 5P!? マジ!? マチムスメハ、ミンナ「ボウシマイ」デ・・・―――・・・ヒャッハーッ!! ヤメロオオォ!!

ステイル(……おうちかえりたい)キュウゥ・・・


レッサー「」チーン・・・

アニェーゼ「野郎共の頭ん中は須らくウジ沸いてますね……んで、このビッチ予備軍は何で白くなってんですか?」チラッ・・・

サーシャ「第1の推測ですが、彼らの中に入ろうとしたのは良いものの、話に着いて行けず撃沈したのかと。ざまぁないですね」アハハ

アンジェレネ「レッサーちゃんが実はピュアガールなのは周知の事実ですからね。大人しくフロリス達辺りで留めとけば良かったのに」ハハハ

アニェーゼ「いや、ウラカミとかフロリス、オルソラ達の話の方がエグいというか生々しくて聞くに堪えねぇと思いますよ」タラー・・・

香焼「確かに……って、それはさておき、ステイル助けようよ。このままじゃ親父共のセクハラで心折れちゃうって」ハァ・・・

なんかほのぼのしてないw
はい、それじゃあラスト安価 → >>525

カルテッ娘のPVを作ろう

レッサー「ぴーぶい? あー、アレですか。18歳未満の子に際どいスケスケ水着着せてAVじゃないですって言い張ってるあの」イメビ・・・

サーシャ「お前は 何を 言ってるんだ?」ジトー・・・

香焼「いや、宣伝効果だって。清教のイメージアップの為にみたいな……今此処に純粋な清教徒が居ないだろってツッコミはNGで」タラー・・・

アニェーゼ「清教云々だったら禁書目録使えば良いでしょう。まぁそれは置いといて、私らにクリスチャンらしい何かをしろと?」フム・・・

レッサー「じゃあランシス使って企画モノの何か撮りましょうよ。修道服プレイ的なアレを……もしくは『カンザキカオリ』の」アレコレヲ・・・

サーシャ「だから黙ってろ。加え、第1の警告ですが、これ以上メタくて危険な発言すんなド阿呆」ガシッ・・・

ランシス「あと、しね」ゲシッ・・・

ステイル「まぁ例の如くローラの悪ノリだ。残念ながらサーシャの上司も一枚噛んでるらしいが……あと右方の馬鹿と第二馬鹿王女も」グデェ・・・

香焼「あはは……とりあえず、適当にカメラ回すから普段通りしててくれれば良いよ」スッ・・・カチッ・・・

アンジェレネ「あの頭オカシイ大人達は何考えてるんですか……って、え? コォヤギくんがカメラ回すんですか」ピタッ・・・

ステイル「じゃなきゃ大人共に任せるぞ」クイッ・・・

カルテッ娘『嫌です』キッパリ!

ステイル「だったら大人しく撮られとけ。悪用はしない」ヤレヤレ・・・

アニェーゼ「ぐぅ……とかいいつつチラリポロリを抜き出して素人投稿したり、高値でズリネタ取引してたらブッ殺しますからね」ギロッ・・・

アンジェレネ「アニェーゼちゃん。偶ぁに、レッサーちゃん以上に過激な発言するよね」タラー・・・

サーシャ「素が素ですから痛たたぁ!! だ、第1の意見ですが、最近、アニェーゼからの暴力の矛先が私に向いてる気がします」タラー・・・

レッサー「やれやれ。じゃあとりあえず、如何すれば良いんですか? ランシス剥きます? ロリコン狂喜乱舞な感じのを」チラッ・・・

ランシス「マジで殺すよ」ギロリ・・・

香焼「いつも通りで良いよ。食堂でくっちゃべったり、中庭でバスケしたり……自分らの事は気にしないで」●REC...

アニェーゼ「……と言われてもですねぇ。そんなん向けられて意識すんなっつぅ方が無理な話ですって」ジトー・・・

サーシャ「ですね……ふむ……では、こういうのは如何でしょう。第1の提案ですが……耳を貸して下さい」クイッ・・・

一同『え』キョトン・・・

サーシャ「あ、コーヤギーとマグヌスは後ほど。先に私達で話合いを―――」アーダコーダ・・・


 アキル クラーイ クモ カゾエターラ マタ トークニー ナガレテーッター・・・・・


ステイル「―――……如何してこうなった」ハァ・・・

アニェーゼ「はい。じゃあ続き、シーン⑦……コーヤギが廊下で壁ドンされる所から!」ビシッ!

アンジェレネ「ステイルくんは、ゆっくり外套脱ぎながらコォヤギくんに詰め寄って来てね。それから顎を掴んで……壁ドンっ!」フフッ

香焼「いやオカシイ」ダラダラ・・・

サーシャ「ふふふ。指示は『私達のPVを作れ』というモノなのでしょう。ならば、逆転の発想です」ニヤリ・・・

レッサー「成程成程。私らが作ったPVにしちゃうって事ですね……お主も悪よのぅ、サーシャっちぃ」グヘヘッ・・・

ステイル「……千歩譲って、その発想を認める。だが、このシュチュは何だ? 意味が分からない」タラー・・・

アニェーゼ「あ、因みに脚本演出総監督はランシスですから」クイッ・・・

ランシス「ふんぬっ」b"

香焼・ステイル「「」」チーン・・・

アニェーゼ「ほれ! さっさと続き撮りますよ! コレ終わったら次はステイルん私室でベットシーンです! ハリーハリー!」ハッハッハッ!!



 ギャーギャーギャー!! ワーワー!! ウガー!! イノケンティウスー!! キャアアアァ・・・・・



神裂「……なぁにやってんですか、あの子達は」オワレ・・・

はい、これにておまけ終了。ほのぼの(?)したかなw
じゃあ次回のメインキャラのアンケを取ります。


①アニェーゼ(英国編 社交界話)

②黒子(都市編 ジッジメント話)

③佐天(都市編 決まってないです)

④ねーちん・むぎのん・このりん(姉貴分達でティーンズトーク的な)

⑤その他(詳細プリーズ)


はい、こんな感じです。兎に角、亀スレですんで御了承を。
それでは質問意見感想罵倒リクエスト、アンケ協力お願いします。んではでは! ノシ"

おひさしぶりですこんばんわ。

ボチボチ書こうと思ったけど、2と4が同数...困りましたの。

とりあえず、ラスト安価でジャッジします。2(黒子)か4(ねーちん&むぎのん&このりん&あわきん)・・・




    >>546

4

4に決定です。黒子話はまた別の機会に。

もしかしたら、『あまくさっ』関係無く別スレで書くかも。あわきんと黒子の話を……需要無いか。


そんじゃ前回のおまけみたいに、安価形式でお題取ってくかもしれませんのでご協力下さい。
それではヌルヌル投下!

 ―――とある休日、AM10:30、学園都市第1学区、マンション『ファミリーサイド』(香焼宅)・・・・・



 ミーンミンミンミーン・・・ミーンミンミンミー・・・ウーサミンピークミンアールミンミンミー・・・・・



神裂「……暑い」ジリジリ・・・


麦野「言うな馬鹿」ジリジリ・・・


固法「そうね。言葉にすると余計……暑いわ」ジリジリ・・・


結標「言ってる傍から口にしてんじゃないのよ」ジリジリ・・・



 ガガガガガガガガガ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・



麦野「外、うっせぇ」ジリジリ・・・


神裂「工事中ですから……止むを得ないでしょう」ジリジリ・・・


結標「暑い中御苦労ね」ジリジリ・・・


固法「自分だって言ってるじゃない」ジリジリ・・・




 ニャーンニャンニャンニャンニャンニャー・・・ワーンワンワンワンワー・・・・・




結標「つーか、さぁ」チラッ・・・


神裂「はい」ダラーン・・・・


麦野「私も同じ事思ってる……何でクーラーぶっ壊れてんのよ」ジトー・・


神裂「……あー」ダラー・・・


固法「綺麗に、真っ二つに『斬』れてるエアコンって、レアよね」ジー・・・


神裂「な、何ででしょうねぇ」ハハハハ・・・


麦野・結標((お前の所為だろ、あれ))ジー・・・


固法「まぁこの家のモノが壊れるのはいつもの事だから、深くは聞かないけど。原因は?」チラッ・・・


神裂「……五和と浦上が、度を越した悪ふざけをしていたので」グデェ・・・


結標「んで、エアコンが真っ二つになる結果に繋がると……駄目だわ、意味分かんね」ハァァ・・・


麦野「深く考えちゃダメよ。火織だもの―――にしても、暑ぃわ」グデーン・・・


神裂「言うなって言ったクセに……あー暑いですね」ベターン・・・


  ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・・・


神裂「―――そもそも、香焼宅(此処集合)じゃなくても良かったのでは?」チラッ・・・

麦野「いや、ほら。それは何て言うか……慣習?」チラッ・・・

固法「そうね、最近ファミレスとかじゃなく神裂さん家に集まる事多いものね」グデェ・・・

結標「いや、香焼くん家っしょ……てか家主どのはー?」ダラダラー・・・

神裂「例の如く、絹旗さん達と公園で遊んでると思いますよ。五和と浦上は学校に用事があるとか」ダラーン・・・

固法「この炎天下の中、元気ね」ハハハ・・・

麦野「信じらんねぇ自殺行為よ」ウヘェ・・・

結標「日ぃ焼けちゃうわ無理無理」ウワァ・・・

神裂「日焼けといえば……固法さん」チラッ・・・

固法「何かしら」コトッ・・・ヌギヌギ・・・

神裂「あ、私も脱ご―――んしょ。あー、アレです。眼鏡焼け」ヌギヌギ・・・ジー・・・

固法「あ、あんまり見ないで」///

麦野「ははは。風物詩ってヤツよね。さっさとコンタクトにしなさいよ」ジー・・・ヌギヌギ・・・

固法「それは、ほら……色々と」ポリポリ・・・

神裂「ふーん……彼氏さんの願望ですか?」ニヤリ・・・

固法「が、願望って訳じゃないわ! でも、その……色々と」モジモジ・・・///

結標「かああああぁ!! 余計暑くなる様な事言ってんじゃないわよ! てかアンタら堂々と脱ぎ過ぎだわ!」ケェ!!

麦野「常に半裸なテメェが言うな。お前、そのサラシ取ったら絶対ぇ面白い焼け方してんだろ」ハッハッハッ・・・

神裂「それ、ちょっと見てみたいですね」ジー・・・

結標「へ、変態!! 頭沸いてんじゃないの!?」ウガアアァ・・・

麦野「騒ぐなっつの……温度上がるってば」ウッヘェ・・・

固法「そうね……大人しくしてましょう」ダラダラーン・・・



 ワーラビーモチー・・・イーシヤーキイモー・・・ターケヤーサオダケー・・・チャララーララーチャラララララー・・・・・



麦野「なぁサラシ女。試しに石焼きイモ買って来てみて。金やっから」ジー・・・

結標「色々ツッコミたいけどスルー一択」グデーン・・・

固法「ははは……しっかし、エアコンになれちゃってるから、ホントきついわね」ダラダラ・・・

神裂「ぞーでずねぇぇぇぇぇ...あづぃでずねぇぇぇぇぇ...わぁぁぁれぇぇぇわぁぁぁれぇぇぇはぁぁぁ...、」ガシッ・・・ワーレーワーレーハー・・・

麦野「何やってんだ火織。遂に壊れたの? まぁ暑いし…―――…って! ちゃっかり扇風機占領すんじゃねぇ!!」ウガアァ!!

結標「キャラらしからぬ馬鹿してるから、アンタもスルーしようかと思ったけど、そりゃNGだわ!」ギャース!!

神裂「ぶぇぇぇぇぇー?」ガッ・・・ガッ・・・ガッ・・・

固法「だから扇風機掴まないの! 首振り止めるの禁止! あと変な声出さない!!」メッ!!




  ギャーギャーギャーギャー・・・ワーワーワー・・・ゼェゼェ・・・ウー・・・・・




姉s『』チーン・・・


    シーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・・・


神裂「……ほんと、すいません。暑さで色々頭がパーになって」アハハ・・・

結標「マジ勘弁してよね」ジトジト・・・

麦野「次やったら外に放り投げるわよ」ギロリ・・・

神裂「……はい」グデェ・・・

固法「まぁまぁ、気の迷いという事で……あ、飲み物貰って良いかしら?」スッ・・・

神裂「ええ、私も手伝います」スッ・・・

固法「大丈夫よ、4人分麦茶出すから」テクテク・・・プリプリ・・・


      コトコトコトコト・・・・・


麦野「……なんか美偉エロいわ」ジー・・・

結標「そりゃ(半裸だし)そうよ」ジー・・・

麦野「そうじゃない。別にアンタに欲情しないし、火織はエロい通り越してオッパイ星人だから反応しない」ジー・・・

神裂「意味が分かりません。さておき、何故固法さんが?」ジー・・・

麦野「んー……あの子、また胸デカくなってね?」マジマジ・・・

結標「うっわー、ずっりー。彼氏の御蔭ってヤツ?」ジロジロ・・・

神裂「彼氏が出来ると胸が大きくなるのですか?」フム・・・

麦野「アンタはこれ以上デカくならなくて良いのよ。スイカ級とか肩凝り尋常じゃないっしょ……美偉くらいのメロン級が良いわね」グヘヘ・・・

神裂「す、すいか級」バイーン・・・

結標「あほ……とかいうアンタだってメロン級じゃない。いや、パイン級くらいか」ジー・・・

麦野「自分のは別物だもの。そういうアンタは……ダイダイ級?」ジー・・・

結標「……もう一声」チラッ・・・

麦野「ウリ級」フム・・・

結標「せ、せめて分かり易い果物を選んで」グデーン・・・

神裂「ではマンゴー級で」スパッ・・・

結標「何かヤダぁ」ウーン・・・

麦野「我っ儘な女だ」ケー・・・

結標「悪ぅござんした……やっぱアンタ、ドリアン級で」プププ・・・

麦野「さっきからよぉ。私の胸がトゲトゲしいとでも言いてぇのかコラ」ジトー・・・

固法「よいしょ―――こらこら、喧嘩する子には麦茶あげませんよ」メッ・・・

麦野・結標「「はーい」」ビシッ・・・

神裂「……単純ですね」ハハハ・・・



  チリンチリン・・・・・



神裂「ふぅ―――さて、そろそろ動きませんか」チラッ・・・

麦野・結標「「無☆理!」」キッパリ・・・

固法「コイツら……まぁでも、億劫なのは確かにね」ハハハ・・・

神裂「避暑しましょうよ……夕方ならなきゃ新しいエアコン届きませんからね」ハハハ・・・


麦野「うーん……どうすっかなぁ。てか、このエアコンいつ壊れたの?」チラッ・・・

神裂「一昨日の夜ですね」コクッ・・・

固法「え。クーラー無しで寝たの?」タラー・・・

神裂「ええ。もう大変でしたよ……熱帯夜の中、私・五和・浦上が居間(ココ)で寝ましたから。扇風機が無ければ確実熱中症でしたね」ハハハ・・・

結標「香焼くんは?」キョトン・・・

神裂「あの子は基本、自室で寝ますから。因みに、あの部屋にはエアコン付いてます」チラッ・・・

麦野「おま! 先に言えよ!!」バッ!!

神裂「ちょ、駄目です!!」ガシッ!!

麦野「はーーーなーーーせーーーよーーー! アイツの部屋で涼むー!!」ギャーギャー!!

神裂「あの子の部屋は、その……不可侵なんです! 私ら姉妹でさえ覗いた事すらありません!!」アワワワ・・・

結標「そいやぁ前に言ってたわね。『開かずの間』だって」フーン・・・

固法「まぁ年頃の男の子の部屋だしね。色々あるんだし、止めときなさいって」ハハハ・・・

麦野「知った事! 別にイカ臭かろうがシンナー臭かろうが涼しけりゃ何でも良いわ!」ググググ・・・

神裂「だーーーめーーーでーーーすーーーっ! そ、それに、い、イカ臭くはないと思います……あの子には、まだ早いと思いますし」タラー・・・

結標「そげぶ」ケッ・・・

神裂「え」ピタッ・・・

結標「男子なんて小学校高学年にもなりゃマス掻きだすわよ。ましてや中学生にもなりゃ……ね」フフフ・・・

神裂「い、いやでもあの子に限って」ダラダラ・・・

麦野「定型句どーも。過保護っつーか何つーか……まぁ別に使用済みのゴムさえ落ちてなきゃ良いわ。ティッシュくらいなら目ぇ瞑る」フンッ・・・

神裂「そんなモノ有り得ません!!」ウガアァ!!

固法(いやでも香焼くんならなぁ。周りに女の子多いし……実は彼女居たり……でも性格上、まだ健全な付き合いよね)ポリポリ・・・

結標「お姉ちゃん的には自分よか先に童貞(バージン)卒業して欲しくないってか」ハハハ

神裂「そういう問題じゃなく……んもぅ! 兎に角! あの子の部屋は駄目だんです!」キッ・・・

麦野「だーもー……じゃあどうすんのよ!」バンッ

固法「だから避暑しようと言ってるのに」ハァ・・・

麦野「でも外出たくねぇしー」ゲェ・・・

結標「同じーく」グデェ・・・

固法「やれやれ。じゃあ私と神裂さんだけ外行きましょうか。クーラー効いた何処かに」チラッ・・・

神裂「……そうですね。カフェかファミレス辺りにでも行きましょう。大分涼しい筈です」チラッ・・・

麦野・結標「「ぅ」」タラー・・・

固法「あ、それとも2人でツーリング行く? Tシャツ半ヘルで安全運転すれば大分涼しいわよ」ニコニコッ

神裂「良いですね。是非乗せて貰いましょうか。気持ち良さそうです」チラッ・・・

麦野・結標「「ぐぅ」」ダラー・・・

固法「いっその事、プールに―――」チラッ・・・

神裂「かき氷でも食べに行って―――」チラッ・・・

麦野「分ーったわよ! 出れば良いんでしょ! 出れば!!」ムギギ・・・

結標「ぐぬぬぅ……せめて移動はバスかタクシーにしてよね」ハァ・・・

神裂「ふふふ、素直で宜しい。さ、着替えましょうか」ニコッ


固法「それじゃあとりあえず――― >>553 ―――に行こうかしら」スッ・・・ ※安価

このりん行きつけの銭湯



 39ドノ! トロケソウナヒ! エンテンカノユメ プレイボー プレイゲー!! 



固法「―――さ。入るわよ」テクテク・・・


神裂・麦野・結標 「   」


固法「結標さんは月詠先生とよく来てるけど、麦野さんと神裂さんは此処始めてよね……って、あれ?」チラッ・・・

麦野「いやいや……、」ダラダラ・・・

神裂「このクソ暑い中、態々銭湯って」ダラダラ・・・

結標「アンタ、優等生に見えるけど偶ぁに、ちょいちょい、ナンセンスな感覚持ってるわよね」ダラダラ・・・

固法「いや、暑いからこそサッパリすべきよ。暑い時に食べるラーメンとかチゲ鍋って美味しいでしょ?」ニコッ

神裂「それとこれとはまた違う気が」ダラダラ・・・

固法「良いから良いから!」グイグイ・・・

麦野「あ、ちょ、美偉! 止めなさ―――」


固法「おばちゃーん、4人ねー」テクテク・・・チャリン・・・

番頭婆「あいよぉ」プルプル・・・

麦野「―――……うぇ」ハァ・・・


神裂「……うわぁ」タラー・・・

結標「ノリで押し切ったわね」タラー・・・

神裂「……仕方ない。行きますか」トボトボ・・・

結標「せめて区民プール行きたかった……まぁ冷たいシャワー被れれば幾分かマシかしらね」トボトボ・・・



  カポーーーーーーン・・・・・



固法「ふぅ」ザバーン・・・

神裂「ふむ……存外、悪くないですね」チャプーン・・・

固法「でしょ」フフフッ

結標「あー、私らしか居ないー……貸し切り風呂ー」プカプカ・・・

麦野「テメェ浮かんでんじゃないわよ。色々見えてんぞ」ジトー・・・

結標「べっつにー。野郎居る訳じゃないしー」ジャボンッ・・・

麦野「ばっ……水死体にすっぞゴラ!」ザバッ!

固法「お風呂で暴れないの。麦野さんこそ、立ち上がったらモロ見えよ」ハハハ・・・

麦野「けっ……あー、洗顔しちゃったし。化粧面倒臭ぇ」グデェ・・・

神裂「別にスッピンでも良いじゃないですか。まだ地肌綺麗なんですし」ジー・・・

麦野「化粧は女性のエチケットだっつの。外出っ時の基本よ、基本」フンッ・・・

結標「私ら高校生相応の筈だから、んなモンまだ必要無いわよね……ってかアンタ、化粧落とすとマジ眉毛無いわね」ジー・・・

麦野「あるっつの。眉描くっつってもベースは必要でしょ……そういうアンタは、全体的に『毛』薄いわよねぇ」ジロジロ・・・

結標「エロ親父が」バシャッ

麦野「事実述べたまでよ」フンッ



  ザブーーーーーーーーーーン・・・・・



神裂「ふぃ」ポヨン・・・

固法「……、」フムフム・・・

神裂「……何か」キョトン・・・

固法「いや、不思議だなぁと」ムゥ・・・

神裂「はい?」ポカーン・・・

麦野「んー、こんだけオッパイでっかいと浮くのね」ハハハ

神裂「……何かと思えば」ハァ・・・

結標「浮輪要らずね。でも、やっぱ肩凝りそうだわ」ジー・・・

神裂「まぁ鍛えてますので」コクッ・・・

麦野「はいはい……でも、確かに腹筋凄ぇわよね」ツンツン・・・

神裂「っ!」ビクッ・・・

麦野「んを? ぐへへへへぇ。お姉ちゃん、良い反応するじゃないか」ニヤニヤ・・・

固法「変態ね」ジトー・・・

結標「あら、知らなかったの?」チラッ・・・

麦野「っせぇボケ」バシャッ

結標「わぷっ! この……てか、そういうアンタこそ、結構マッチョよね」ジー・・・

固法「神裂さんは論外だけど、麦野さんも鍛えてるわよねー……ぶっちゃけ、並の男性より力強いだろうし」ハハハ・・・

麦野「……生意気言う口はこれかなぁ美偉ちゃーん」グニグニ・・・

固法「ふぉふぇふぉふぇえぇ」アバアバ・・・

神裂「私は論外って……これでも女子なんですが」ドヨーン・・・

結標「やれやれ……でも、何だかんだいって男子の身体ってガッチリしてるわよね」チャプン・・・

麦野「処女が何言ってんの?」ポカーン・・・

結標「うっせぇ処女―――じゃなくて、野郎共の身体よ」ジトー・・・

神裂「男子の……見た事あるんですか?」チラッ・・・

結標「ぜ、全部は無いけど、その、図体とか上半身とかは、ほら。プールとか……あと常に腹筋出してるアロハグラサンとか居るし」アハハ・・・

固法「土御門くんね」アハハ・・・

麦野「あー。幻想殺しの近くに居る金髪グラサンか。でもお前、白モヤシのとか、見た事あんじゃねぇの?」ニヤリ・・・

結標「な、何であんなのの裸見なきゃなんないのよ!」タラー・・・///

神裂「確かに土御門は私服だと腹出してる事が多いですね。ところで、しろもやし?」ポカーン・・・

固法「(神裂さん、人の事言えないわよ)……第一位の―――一方通行くんよ。結標さん、仲良いものね」フフフッ

結標「じぇ、全っ然良くにゃいしー!」フンッ!

麦野「『にゃいしー』www動揺すんなしwww」プフッ

結標「テメェ男風呂(アッチ)に座標移動させるわよ!!」ウガアアァ!!

麦野「おまっ!?」ギョッ・・・

固法「はいはい、喧嘩しない。そんなに男子の裸が見たかったら香焼くん辺りにでも頼みなさい」ヤレヤレ・・・

神裂「流石彼氏持ち。余裕の貫録が―――ぇ」ピタッ・・・

麦野「あの坊やの裸って……何だかんだ見た事あるわね。『逆カミやん病』ってヤツの所為かしら」ハハハ・・・



 ミョーンミョンミョンミョンミョーン・・・キュポンッ! ゴクッ・・・ゴクッ・・・ゴクッ・・・ゴクッ・・・・・


姉ーs『ぷはーっ』フー・・・


固法「やっぱり風呂上がりは『コレ』よね」フキフキ・・・

結標「アンタ、風呂だろうが部屋だろうが風紀委員の詰め所だろうが、何処でも飲んでんじゃん……牛乳」チビチビ・・・

麦野「まぁ美偉のアイデンティティだからな。美偉から眼鏡と胸と牛乳取ったら何も無くなるわよ」ハハハ

固法「酷っ! 他にもあるでしょ!」ジトー・・・

麦野「んー……風紀委員は超電磁砲のレズ妹分の方がイメージ強いしー……あ! 非処女!」ビシッ!

固法「」

神裂「相変わらず口が悪い」ハハハ・・・

結標「ホント、良いとこのお嬢様の筈なのにねぇ。どうしてヒン曲がったのやら」チラッ・・・

麦野「うっせ。『ですのー』とか『わたくしはー』とか『とのがたー』とか言うよかマシよ」フンッ

結標「存外、白井さん(ババア)口調似合うかもy―――― ジュッ!! ――――……アンタ、ねぇ」ツー・・・

麦野「……おーっほっほっほっ。ごめんなさいですわ。わたくしとした事が卑女の戯言に腹を立ててしまうなんて」ウフフフフ・・・

結標「こんの、ビームババアが」グルルルル・・・

麦野「お黙りなさってください、この淫売痴女さまー」フシャアアァ・・・

神裂「……二人とも」ジトー・・・

固法「あのねぇ。私(ジャッジメント)の前で暴力沙汰とか勘弁して欲しいんだけど」ジトー・・・

麦野・結標「「……ふんっ」」ギロギロギロギロ・・・

神裂「やれやれ。いつもの事ですけど、ハラハラしますね」ハハハ・・・


  カッポーーーーーーーン・・・・・


麦野「―――あー、化粧しちゃわないと……って、火織。アンタ、いつまで真っ裸でいんのよ」ローションペタペタ・・・チラッ・・・

神裂「え」スッポンポーン・・・

結標「早いとこその凶器(おっぱい)しまいなさい」パンツハキハキ・・・

神裂「あ、はい……でもその前に」ジー・・・

固法「ん? あー……それ」チラッ・・・

結標「んしょんしょ……ふー。何ったのよ? あー、珍しいモンあるわね」ジー・・・

神裂「体重計ですよね。デジタルタイプじゃないレトロな、針の」マジマジ・・・

麦野「……、」ニュウエキペタペタ・・・チラッ・・・

固法「今時レアよね。まぁ此処は都市開発前からある老舗らしいから、こういうのも名残で残してるんじゃないかしら」グググ・・・ブラガキツクナッタ・・・

神裂「んー―――」スッ・・・

麦野・固法・結標『!!?』ギョッ・・・


  グワングワン・・・ピタッ・・・


神裂「―――少々重くなりましたかね」フム・・・

固法「その身長でその体重。筋肉多いし胸大きい筈なのにオカシイ……神様不公平です」ガーン・・・

結標「っつーか、アンタ。よく躊躇いなく体重計乗れるわね」タラー・・・

麦野「相変わらず残念な女子力だわ」ジトー・・・

神裂「日々自身の健康をチェックしておくのは大事ですよ―――さて、次どうぞ」ガシャン・・・スッ・・・

麦野・固法・結標『ハァ?!』ビクッ・・・

神裂「え」キョトン・・・

固法「い、いやいや……何これ、乗る流れ?」タラー・・・

神裂「……乗らないのですか?」ショボーン・・・

結標「アホ言え。意味分かんない。逆に何故乗れと?」タラー・・・

神裂「いやぁ純粋に、これに人が乗ってる姿を見たいのです。自分の姿ではなく、他人がですけど」コクッ

固法「……ノリが小学生だわ」ハァ・・・

麦野「ったく。ほれ、結標。乗ってやりなさいよ」ホォレッ

結標「なーんでよ、テメェが乗りなさい」ジトー・・・

麦野「こういうのは私のキャラじゃねぇだろ。あと、まだ化粧終わってないし」フーン・・・

結標「こんの女郎がぁ……ねぇ牛乳(ウシチチ)女」チラッ・・・

固法「無理無理無理無理。多分、私、この中で一番重いだろうし」ダラダラ・・・

麦野「身長と筋肉の分、私の方が重いっつの。という訳で、結標、逝け」クイッ・・・

結標「いやいやいやいや。てか、態々コイツの我儘聞いてやる必要ないでしょ」ジトー・・・

神裂「……そうですか」ショボーン・・・

麦野・固法「「結標(さん)!!」」バッ!

結標「あーもぅ! 何でよぉ…―――…針見んじゃないわよ! 良いわね!」ギロッ・・・


 グワングワンッ・・・ピタッ・・・・・


結標「ぅ……(私も変わりなし、ね)」フゥ・・・

固法「神裂さん、満足かしら?」チラッ・・・

神裂「ふむ……何か違いますけど、我慢します」ウーン・・・

麦野「火織ちゃーん、何違うのー?」ヤレヤレ・・・

神裂「結標さん……殆ど、服を着ちゃってますね」ジー・・・

麦野「……脱げよ、結標」ジー・・・

結標「はぁ!? 馬鹿じゃないの!」バッ・・・

神裂「あと、余談ですが―――些か、やせ過ぎなのでは……月詠さんが忙しくても、何かしらご飯は食べないと駄目ですよ」ジー・・・

結標「あああぁーもぉおぅ!! だから針見んなって言ったのにいいぃ!!」ウキャパーッ///

麦野「はははは、火織。何キロくらいだった?」ニヤリ・・・

神裂「え。あ、まぁ……流石にそこまで言えませんよ」ポリポリ・・・

麦野「えー、良いじゃんちょっとくらーい。じゃあさ、50kgあった? いや、逆にアバラ出るくらいだし下手すりゃ30kg代なんじゃ―――」


  ヒュンッ・・・パッ・・・・・


神裂・固法「「あ、消えた」」ピタッ・・・

麦野「―――な……ふぇ……おわっ!!? てめ、結標!! 『移動』させんじゃねぇよ!」ガシャンッ・・・グワングワングワンッ・・・ピタッ・・・・・

結標「ふんっ。馬鹿にした罰よ。安心なさい、針は見ないどいてあげるから」クルンッ・・・

神裂「……この重さは、義手の分でしょうね。見た目相応の体重じゃないです」ジー・・・

固法「か、神裂さん!?」ダラダラ・・・

麦野「」チーン・・・ミラレタ・・・

すいません、全然書けませんでした……とりま、次からリクにお答えしていきます。

どっちかってとお題式の方が安価楽かな。それじゃまた次回!

こんばんわ。短レス投下します! リクとお題に応じて書けたら良いね。


   にゃーん・・・・・


麦野「―――死ね。百辺死ね」ググググ・・・

結標「あーはいはい。私が悪ぅござんした……そんなピリピリしてると折角化粧で隠したシワが浮き出ちゃうわよ」サラッ・・・

麦野「ぶ殺確」フシャアアーーーーーーァッ!!

固法「ちょ! ストップ! すとーーーっぷ!!」ガシッ!!

神裂「『そげぶ』みたいなノリで殺害宣言しないで下さい。結標さんも、これ以上挑発しない……さもないと」チラッ・・・

結標「……分ーってるわよ。私もまだ死ぬ気は無いから」ポリポリ・・・

固法「んもー…―――…とりあえず、気を取り直してっと。何処行く?」チラッ

結標「涼しいとこ」ビシッ

麦野「汗掻かないとこ」ビシッ

神裂「家電屋」ビシッ

固法「じゃあ適当にファミレs……な、家電、屋? え?」ポカーン・・・

麦野「何故に?」キョトン・・・

神裂「? 涼しいでしょう」キョトン・・・

結標「いや、そりゃ年中快適だろうけどそのチョイスの意図は? あとその『何でそんな事聞くんですか』的な顔何? おばか?」ハァ・・・

神裂「む。意図ならあります……が、ノリで言ってしまいました。やはり私的な事なので別にファミレスやカフェでも構いませんよ」フム・・・

麦野「言っといて遠慮してんじゃないわよ。何か欲しいの?」ジー・・・

神裂「欲しいというか、今日届く予定のエアコンがどんなモノか見ておきたいんです」コクッ

固法「見ておきたいんですって、選んだのは神裂さんじゃないって事?」キョトン・・・

神裂「全て五和と浦上に任せましたから。最新型とは聞くものの、実際どんなものなのかこの目で確認しておきたいなぁ、と」ウン・・・

結標「んー。どうすんの?」チラッ・・・

麦野「別に。行く宛も無いし、カフェとかは後でも良いんじゃね……ただし、一番近い店にしなさいよ。あんま移動したくない」アヅー・・・

固法「此処から一番近い電気屋さんだと……総合病院の通りね」ピッ

神裂「冥土返しの病院の近くですか。なら歩いて十数分といった所ですね」コクッ

麦野「タクシーきぼー!」バッ!

結標「同じく! 麦野(コイツ)持ちで!」バッ!

神裂「……、」タラー・・・

固法「……怠惰の極みね」ハァ・・・

神裂「……分かりました。大通りに出たらタクシーを拾いましょう。私が持ちます」テクテク・・・

麦野・結標「「ひゃっほー!」」イエーイッ!

固法「ハァ。甘やかしちゃって」ヤレヤレ・・・


 ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・マダー??? モスコシ・・・・・


固法(―――あれ? さっきから裏道通ってるけど……此処、総合病院の駐車場裏よね?)チラッ・・・

麦野「うぅー……結構歩いたわよ。てか、こんだけ歩いて大通り出ないのオカシくね?」ゼー・・・

結標「方向的には合ってる筈なんだけど……ちょっと神裂(おっぱいセイジン)。まだー?」グデェ・・・

固法(……なぁるほど)ハハハ・・・

神裂「―――あ、着いちゃいました。すいません」ピタッ・・・

麦野・結標「「」」ヤラレタ・・・


 ビーックビックビック・・・シンセイヒンガヤスイー・・・*ドバシデンキ・・・・・


麦野「してやられた……火織如きにしてやられた」ドヨーン・・・

神裂「如きってなんですか、ごときって」ムッ・・・

固法「まぁまぁ。結標さんも、グダってないで歩きましょう」ハハハ・・・

結標「ったく……しかし、アレよね。家電製品並んでんの見るとネズミーランド来た気分にならない?」ジー・・・

固法「あるある」フフッ

麦野「……なにそれ」ハァ・・・

神裂「そういうモノなのですか?」キョトン・・・

結標「けっ。これだからブルジョアは―――んで? お目当てのモノは?」チラッ・・・

神裂「エアコンコーナーだと思いますが……何階でしょうか。1Fは携帯コーナー一色の様ですが」キョロキョロ・・・

麦野「んー……3Fじゃね。大型家電コーナー」クイッ・・・

固法「じゃあ行きましょ」テクテク・・・

結標「その後、PC・ゲームコーナー行っていい?」ジー・・・

神裂「お好きにどうぞ」テクテク・・・


 ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・・・


結標「……人混み嫌ぁ」ウヘェ・・・

固法「休日だから仕方ないわよ。あの一角じゃない?」クイッ・・・

神裂「テレビコーナーの横ですか」フム・・・

結標「因みに、此処まで来たのは良いけど、どの最新型か分かりませんでしたなんてオチは無しよ」ジトー・・・

神裂「ちゃ、ちゃんと確認してますよ。兎に角、行きましょう」テクテク・・・

麦野「はいはい……って、あ」ピタッ・・・

固法「どうしたの?」キョトン・・・

麦野「……、」タラー・・・

神裂「麦野さん?」ハテ・・・

麦野「……ね、ねぇ。ちょいと遠回りしてかない?」ギギギギ・・・

結標「は? 真っ直ぐ行きゃ良いだけの話じゃない。如何したのよ?」キョトン・・・

麦野「い、良いから。出来るだけ遠回りしましょう」ダラダラ・・・

固法「うーん……そこまで言うなら」フム・・・

神裂(『何か』を危惧した? 何を……ん?)チラッ・・・

結標「意味分かんないわ。目と鼻の先なんだから、さっさと行きましょ」スタスタスタ・・・

麦野「ちょ、バッ! あー……知らね」ハァ・・・

固法「麦野さん、如何したのよ」ポカーン・・・

麦野「……いや、顔知れてるの私だけだから大丈夫だと思うけど。極力面倒事に顔突っ込みたくないのよ」タラー・・・

神裂「あぁ……『彼女』ですか」ジー・・・

麦野「か、火織、アンタ! アイツ知ってんの?」ギョッ・・・

神裂「ええ、まぁ……香焼の―――尤も、『香(カオル)』の友人ですから」ハハハ・・・

固法「女装姿の香焼くんの? え?」ポカーン・・・

麦野「深く考えたら負けだ……あーもぅ知らないわよー」タラー・・・

  お題『みさきち』


結標「ったく、何してんだか。さっさと来いっての」テクテク・・・


食蜂「―――んー……このリモコンは普通過ぎるわよねぇ。かといって、そっちの長いのは重いしぃ」ヒョイヒョイ・・・


結標(……何この客)チラッ・・・テクテク・・・

食蜂「でもぉ……どうせなら一つくらいゴッツいの持ってても良いかなぁ……あーでもキャラじゃないかぁ―――」ウーン・・・

結標(独り言デカいわね。リモコン如きで何悩んでんだか)ヤレヤレ・・・

結標(制服からして常盤台中。まぁ、お嬢様か変人かの両極端しか居ないから仕方ないわよね)フンッ・・・

食蜂「―――……、むぅー。人の事ジロジロと……しかも初見でお嬢様扱いって小市民的な人ねぇ」ピタッ・・・ボソッ・・・

結標(違うっつの。アンタはお嬢様っていうより変人の類でしょう、が……って、え)ピタッ・・・

食蜂「そして次に貴女は『な、何で心の声が!?』と言っちゃうゾ☆」ビシッ

結標「な、何で心の声が!? ぇ……ハッ!!?」ビクッ・・・

食蜂「ふふふっ。可愛らしい反応をどぉもぉ♪」ニコッ

結標「さ、読心能力者(サイコメトラー)!?」タラー・・・

食蜂「そんなチャチな輩と一括りにされてもねぇ。ま、さっきのは私の寛容力で聞き流してあげるからさっさとどっか行っちゃって★」フイッ・・・

結標(こんの、糞ガキ……御坂美琴といいコイツといい、碌なヤツが居ないわね)イラッ・・・

食蜂「あらぁ。御坂さんのお知り合い?」チラッ・・・

結標「ぐっ……だから心を読むな! 気色悪い!」ジトー・・・

食蜂「あらあら。そういう事言っちゃう? 人間、口には気を付けた方が良いわよぉ」クルクル・・・スッ・・・

結標「な、何よ」タラー・・・

食蜂「どうしよっかなぁ。純粋にお買い物ディだったから揉め事起したくないんだけどぉ……ま、私の改竄力なら如何とでもなるしぃ」ジー・・・

結標「や、やる気?」グッ・・・

食蜂「ふーん。移動能力(テレポート)……いや、白井さんより1ランク上の演算式みたいね。おっかなーい」キャー

結標「なっ!? 演算まで読めるの?!」ギョッ・・・

食蜂「頭疲れるけどねぇ。さて……それでは―――」クイッ・・・


神裂「失礼」グイッ・・・

結標「え―――ぐへぇっ!!」クビガァアアァ!!

食蜂「っ!!?」ビクッ・・・


麦野「あーもぅ。最っ悪だ」ハァ・・・

食蜂「あ、らら……これはこれは」ピタッ・・・

結標「げほげほっ……ちょっ! 何すんのよ!」ガアァ!!

神裂「すいません、麦野さんがこうすべきだと」パッ・・・

結標「ハァ!? 意味分かんないわよ!」キイィ!!

麦野「チッ。貸し一よ」ジトー・・・

結標「だから何を!」プンスカッ!

固法「『このままじゃアイツ洗脳されてフロアのド真ん中でネット中継公開(後悔)ストリップしかねない!』とか言ってたわ」ハハハ・・・

結標「」ナニソレコワイ・・・


食蜂「むぅ。無視は嫌だぞぉ★」プクー・・・


 ギャーギャーギャー・・・チョット、メダッテマス・・・アーモー・・・・・


食蜂「……あのぉ」ジー・・・

麦野「―――だぁから、テメェは毎度毎度人の言う事を……って、あぁ。悪い。いや、悪くないか」ハァ・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・

結標「ちょっと話まだ終わってないわよ! ってか、何! ソイツ知り合いなの!?」ギロッ・・・

麦野「チッ……仮にも暗部出身で大能力者(レベル4)なら、コイツの事くらい把握しとけ」ボソッ・・・

結標「……は?」キョトン・・・

食蜂(暗部、ねぇ)フム・・・

神裂「失礼。噂はかねがね聞いております。おと……妹分が世話になってる様で」ペコッ・・・

食蜂「へ?」ポカーン・・・

固法「食蜂操祈さんね。御坂さん達から色々聞いてます。尤も、彼女達の場合偏見塗れだけど」ハハハ・・・

食蜂「???」アルェ・・・

神裂「……もしもし」フム・・・

食蜂「ええぇっとぉ……え?」チラッ・・・

麦野「私見んな。説明する気は無ぇわ」フンッ・・・

食蜂「この私が混乱状況起すなんて……何これ? 新手のドッキリ? 第5位、第4位ときたら、この後御坂さん登場とかいうオチ?」アタフタ・・・

結標「は? ちょっと、誰か説明しなさいよ」チラッ・・・

固法「えっと―――カクカクシカジカ―――という事よ」ハハハ・・・

結標「」レベル5・・・ダイ5イ・・・

麦野「だから言ったじゃねぇか……まったく、とりあえず私とお前は相互不干渉だったよな。OK?」ジー・・・

結標「それは暗黙の了解だけどぉ。色々とツッコみどころ満載でぇ」チラッ・・・

固法「私は風紀委員で白井さんの先輩なの。その繋がりで御坂さんとも知り合い」コクッ

神裂「私は、先程述べた通りです。今後とも『香』を宜しくお願いします」ペコッ

食蜂「ぇ……ほわぁ!?」バッ!!

麦野「何つぅリアクションを」タラー・・・

食蜂「だ、だってぇ……てか、貴女、如何して???」ジー・・・

麦野「あぁ? 私が『友達』と一緒に居ちゃ悪いの?」フンッ・・・

食蜂「ともだ……う、裏切りもの! 貴女、私と同じでボッチ属性だったじゃない!」ビシッ!

麦野「意味分かんね。ボッチはお前と超電磁砲と垣根だけで十分だっつの」ケッ・・・

固法「御坂さんは友人多いでしょう。同年代の友達が少ないだけよ」ハハハ・・・

食蜂「ううぅ……何という敗北感。いいもん、私は孤高の存在だもん」グスン・・・

神裂「ええっと、その」アタフタ・・・

麦野「ほっとけ。下手に近付くと何されっか分からねぇぞ」ジトー・・・

食蜂「そんな節操無しじゃないわよ。これだから野蛮人は」ムスー・・・

麦野「……、」イラッ・・・

食蜂「へーんだ。心読まなくても顔に『ブッ殺してぇ』って書いてるわよ。やれるもんならやってみろぉ」フンッ

麦野「じゃあお望み通りぉあ痛ぁ!!」ゴチンッ!!

神裂「喧嘩しない。まったく、短気は損気ですよ。食蜂さんも挑発しないで下さい」ヤレヤレ・・・

固法「超能力者に説教出来る一般人って、神裂さんか上条くんくらいよね」タラー・・・


 ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・・・


食蜂「―――とりあえず、今までの流れは無かった事にするわよ」ハァ・・・

麦野「そうしなさい。私も、アンタに会わなかった事にするから」ヤレヤレ・・・

固法「随分ドライな関係ね」ポリポリ・・・

麦野「⑦(根性バカ)の次に関わりたくない相手なのよ。超電磁砲相手にしてる方がマシだわ」チッ・・・

食蜂「同感よぉ。相性力、なのかしら。人格破綻のベクトルが近いのよねぇ……真逆の御坂さんの方が扱(からか)い易いわ★」ニコッ

固法「……何それ」タラー・・・

食蜂「要は『我儘』なのよん♪ 御坂さんも多少は自己中だけど、根本的に善人だから」フフッ

神裂「正直、貴女という人物をよく知らないので難とも言えませんよ」フム・・・

食蜂「貴女も善人気質みたいね。流石香ちゃんのお姉さん♪ 話は戻るけど……あとは、能力の相性も悪いわねぇ」チラッ・・・

固法「えっと、麦野さんには貴女の能力が効かないって事?」ジー・・・

食蜂「ううん。『全力』を出せば、如何とでも出来るわよ」ニコッ・・・

麦野「ま、昔の話だけどね。今は無理でしょ」フフフ・・・

食蜂「まぁじでぇ?」ピッ・・・

麦野「ちょ―――くぁzwwsぇdcrfvtgbyhぬjみk、おl。―――いっっっっっってえええぇなぁ糞アマあぁ!!」ギロッ!!

食蜂「嘘ぉ!! 何で効かないのぉ!?」ギョッ・・・

麦野「いきなり脳味噌弄ろうとしやがったな!? 良い度胸だ、物理的に弄ってやんよ」ゴゴゴゴゴゴゴゴォ・・・

食蜂「ひいいいぃ!! 妖怪重光線級女ぁ!! 助けて香ちゃんのお姉さぁん!!」バッ!!

神裂「あー……今何が起こったのか理解が出来ないのですが」ポリポリ・・・

麦野「そこの似非中坊が私の頭ん中覗こうとしたんだ。でも、覗けなかった……でも超痛ぇ思いしたって訳だ!!」ググググ・・・

食蜂「粒子のバリア張られたら破るの手間だったんだけど今は別の『何か』が邪魔してぇ……それこそ御坂さんみたいな電子バリア力が」タラー・・・

固法(電子の……義眼の影響かしら)フム・・・

麦野「ふふふふ……ほぉれ、こっち来ーい。その無駄にデカい乳袋と[ピーーー]に光の針を数十本突き立てたるわよぉ」ギギギギ・・・

食蜂「いやああぁ!! 犯されるううぅ!!」ババッ!!

神裂「店内で馬鹿な騒ぎ起さないで下さい! 注目の的ですよ、まったく」ハァ・・・

固法「こんなのが超能力者(レベル5)だっていうんだから世も末よね」ハァ・・・

麦野「チッ……次やったら、分かってるわよね?」ギロッ・・・

食蜂「ううぅ。やっぱり貴女とは相性力最悪ね」ハァ・・・

神裂「はぁ。兎に角、これ以上事を荒立てる前に目的を成しましょう。良いですね」スッ・・・

麦野「あいよ。行くぞ、結標。いつまで固まってんだ」ゲシッ

結標「                            はっ           な、何があった!?」バッバッ!?

固法「忘れたままの方が良いと思うわ」タラー・・・

神裂「では、食蜂さん。またいつか、何処かで」ペコッ

食蜂「あ、え、はい―――あ、その前に」ポリポリ・・・

神裂「何か」フム・・・

食蜂「失礼を承知で聞くわぁ―――何で貴女、心、読めないの?」ボソッ・・・

神裂「まったく、やはり読もうとしたのですか……まぁ『無心』や『無意識』状態であれば読んだり操ったり出来ないでしょう」ボソッ・・・

食蜂「???」ポカーン・・・

神裂「超能力が全てではありませんよ。貴女はもう少し視野を広めた方が良い―――それではリモコン探し頑張って下さいね」ペコッ・・・テクテク・・・

はい、此処まで。あとでみさきち、後でまた出すかも。
個人的には・・・・・御坂>麦野>食蜂>御坂>麦野>食蜂...的な関係だと面白いかなぁとか思ってみたり!

そんじゃ次は吹寄か雲川姉か布束さんを、出せたら良いなぁ。まぁでも、キャラよりお題の方がポンポン書き易いかも。

それではお題のリクエスト適当にお願いします。んじゃ! ノシ”

乙です 学園都市のスパリゾートに来たアックア、騎士団長、ステイルら男性陣をお願いします

お久しぶりです、こんばんわ。ボチボチ書きます。

>>573・・・すいません、ウィリアム&団長殿はまた別の機会にしっかり書きたいので保留で!

とりあえず、お題1~3レス形式で書きます。


神裂「―――ふむふむ。アレは良いエアコンですね、気に入りました」コクッ・・・

結標「そいやぁ視察がメインだったわね。んで、私もゲームコーナー見終えたし、どうすんの?」チラッ・・・

固法「えっと、じゃあ」ゴソゴソ・・・

麦野「……美偉さん?」キョトン・・・

固法「はい、誰か『この箱』から一枚紙引いて」スッ・・・

神裂「え」ポカーン・・・

結標「なにそれ。というか、アンタそのサイズのボックスその鞄にしまってたの? 質量どうなってんの?」キョトン・・・

固法「細かい事は気にしなーいの。はい、じゃあ麦野さん」チラッ・・・

麦野「……ん」ヒョイッ・・・



      っ『猫カフェ』

 にゃーん・・・・みゃーん・・・・うひゃーん・・・・・


麦野「―――ねぇ。勢いに流されちゃったけど、何で私らはこの糞暑い中、こんなモフモフした畜生に囲まれながらお茶してんだ?」グデェ・・・

固法「うーん、天上の意志?」ナデナデ・・・

麦野「美偉が、こわれた」タラー・・・

結標「ツッコんだら負けよ。あぁ、でも……うん」ホンワカ・・・

固法「ふふふ、良いでしょ?」ニコニコッ

麦野「癒し云々ってのは分からなくも無いけど、何だかねぇ」ネコマミレー・・・

神裂「まぁまぁ。ウチは子猫(もあい)が居ますので慣れてますけど、皆さんは、基本ペット飼えないのでは?」ナデナデ・・・

麦野「私のマンションは絹旗(モアイ)と滝壺(ウサギ)でいっぱいいっぱいよ……あぁもう一匹いたか」ハァ

結標「私は居候だから無理ね。まぁ飼おうとも思わないけど」サラッ

固法「私も、ペット禁止のアパートだから無理ね。同居人(碧美)も居るし」コクッ

麦野「手が掛るのは旦那(黒妻くん)で目一杯ですってか?」ニヤリ・・・

結標「寧ろ、アンタが飼われてますって?」ニヤニヤ・・・

神裂「にゃんにゃーん?」ニヤニヤ・・・

固法「OK、表出ろっ」ガタッ・・・///

麦野「んははっ! 怒るな怒るな―――話変わるけど、絹旗のヤツ、ほんとネコ臭くて」ハァ・・・

神裂「公園で香焼達と野良猫集めて餌やりをしてるらしいですからね」ナデナデ・・・

結標「あのジャリガール、人間の友達より猫の友達の方が多いんじゃない?」フシフシッ

固法「結標さん……最愛ちゃんも色々学んでる筈よ」チラッ・・・

麦野「さあ。どうだかね」ジー・・・

結標「灰色の青春ねぇ。アニマルセラピーで童心復古?」ナデナデ・・・

固法「そういう訳じゃないけど。ただ、猫を通して出来る友達も居るんじゃない? 香焼くんだって、そういうキッカケだったんでしょ?」チラッ・・・

神裂「そうですね。ダンボールに入れられて捨てられていた子猫(もあい)が馴れ初めの発端だと聞いてます」コクッ

麦野「拾われたのはもあいなのか、最愛なのか、ね」ボソッ・・・

結標「……最後まで、責任持って面倒見切れるんだか」ボソッ・・・

固法「?」キョトン・・・

神裂「やれやれ―――そういえば最近は、また別の『黒猫』を拾ったみたいですよ。『モアイ』に似たタイプのね」フフフッ

麦野「あーあ。黒にゃんも取っ捕まって首輪付けられたか。良い気味ね」ハハハ


  みゃんみゃんお!


結標「―――唐突だけど、仮に、私らを動物に例えたら」ナデナデ・・・ホッコリ・・・

麦野「どうした? 脳味噌まで緩んだか?」チラッ・・・

結標「うっさいわね、仮によ! 興味無いんなら聞き流しなさい」フンッ

神裂「まぁまぁ。しかし、動物ですか……うーん」ジー・・・

麦野「美偉は言わずもがな、牛よね」ハハハ

固法「……否定したいけど、否定できない」ウーン・・・

結標「アンタは豹とかチーターとかライオンとかの類ね。もしくは蛇か猛禽類」ジー・・・

麦野「誰が肉食じゃ、誰が。だったらアンタは狼かハイエナよ。いや、野良犬とか溝鼠の方ね」ジトー・・・

結標「『動物に例えたら』って話のベクトルから、人間性の問題にシフトしてんじゃないの。てか喧嘩売ってんのね?」ジトー・・・

固法「こらこら、一々突っかかんないの。えっと、神裂さんは……あー」ジー・・・

神裂「はい、私は」ワクワク・・・

結標「(何その『待ってました!』的な目。どんだけ期待してんの?)あ、アンタは、その」ウーン・・・

神裂「はい」キラキラ・・・

麦野「(ぶっちゃけ思い浮かばねぇ。何ていうか、幻想種的なアレな気が)そ、そうね、えっと」タラー・・・

固法「(と、とりあえず考える時間を)……か、神裂さん。自分では何だと思う?」ハハハ・・・

神裂「え? あ、うーん……んー……何でしょう」ムムム・・・

麦野「(ナイス美偉!)あー……か、カマキリとか!」パッ!

神裂「っ!? こ、昆虫ですか」ショボーン・・・

結標「(ば、馬鹿!)で、でもカマキリ強いし! じゃあ、その……サメ!」パッ!

神裂「さ、魚、ですか」ショボーン・・・

固法「(何でそんな落ち込むの!? 模範解答必要!?)さ、サメも強いじゃない! えー……ティラノザウルス! なんちゃってー」ハハハ・・・

神裂「……、」ムゥ・・・

麦野「(七面倒臭ぇな、オィ!) ど、ドラゴンとか不死鳥とか……あーもぅ! そんな顔すんな!」ポリポリ・・・

神裂「す、すいません」タラー・・・

結標「んもぅ。正直、アンタは如何足掻いても類人猿から離れない気がするわ」ヤレヤレ・・・

固法「猿とかゴリラって意味じゃなく『人』以外無いかなぁって事よ。因みに、神裂さんから見た私達は?」チラッ・・・

神裂「麦野さんはグ●ビモス。結標さんはナ○ガク○ガ。固法さんはブ○ックかメ●ルーモデルの眼鏡」キッパリ!

麦野「黙れよモンハン厨がっ!!」バンッ!!

結標「アンタ! 人散々悩ませといて、ずぅっっっっとモンスターで考えてたの!? 馬鹿なの?!」グデェ・・・

固法「ハァ……百歩譲って▲ルックは良いとしても、眼鏡って、モンスターでもないし」ハアァ・・・

神裂「え、え」オドオド・・・



  ギャーギャーギャーギャー!! ニャーニャーニャーニャー!!



布束「―――何やら騒がしいですね……あ、冷汁忘れました。戻らないと」カチャカチャ・・・

ぬこ「なー」ヨジヨジ・・・

布束「よしよし……Perhaps、私は、ゲリョ■辺りでしょう」フフフ・・・

ぬこ「にゃ?」ポカーン・・・

短レスすません。次回から前置き無しで即投下にするかもです、

よりあえずお題(そんな難しいのじゃなく単純な)お願いします。では!


 っ『シェイプアップ&護身術』


結標「―――そいやぁさ。比較的、私らって並の女子に比べたら筋肉有るじゃない」モグモグ・・・

麦野「何よ、いきなり」モグモグ・・・

結標「いや、客観的に見てそうかなぁって。全員、何かしらの理由で鍛えてるし」ジー・・・

固法「そういえばそうよね。私は風紀委員で、神裂さんは武道で……あれ? そういえば麦野さんと結標さん、鍛えてるの?」キョトン・・・

麦野「私は色々やってるわよ。武術一通りにウェイトトレーニング。他にも色々」コクッ

神裂「幼少時からですか?」フム・・・

麦野「まぁ家が文武両道、うっさかったからね」グデェ・・・

結標「アンタ、お嬢様なんだからSPの一人や二人付けりゃ良いじゃない」ヤレヤレ・・・

麦野「無論居るわよ。3人程」サラッ・・・

神・固・結「「「……、」」」ジトー・・・

麦野「……何よ」タラー・・・

結標「それ、皆アンタよか弱いじゃない」ハァ・・・

固法「というか、最愛ちゃんをSP扱いって如何なのよ」ジトー・・・

麦野「あー……ええっと、ジョークよ、じょーく。あははは」ポリポリ・・・

神裂「まったく。ところで、結標さんは?」チラッ・・・

結標「んー? まぁ最低限の筋トレとか、あとはサバイバル術とかで」ズズズズ・・・プハー・・・

麦野「そういえば、元テロ屋だったわね。忘れてた」ジー・・・

結標「……『学生運動』と言いなさい。んな事言ったら、牛乳(ウシチチ)だって今は風紀委員だけど元レディースでしょ。旦那は元ヤンだし」クイッ・・・

固法「武装無能力者集団(スキルアウト)ですっ。あと、旦那じゃないっ」ハァ・・・

神裂「ふむ。話は戻りますが、護身術は覚えておいて損はありませんからね」コクッ

麦野「『護身』だけならね……それよか、私は火織の体型維持の秘密が知りたい」ジー・・・

固法「確かに、気になる。相当量運動してるみたいなのに。普通、胸から落ちてくでしょ」ジー・・・

結標「バスト100って何よ。馬鹿なの? 肩凝るってレベルじゃないでしょ。垂れたら超大変な事なるじゃない」ジー・・・

神裂「んー兎に角、只管、筋トレとストレッチですね。腕立て背筋を幾つかのバリエーションでこなし、ストレッチで柔らかい筋肉にする」ピッ

固法「無駄な筋肉が付いちゃいそうだけど」ウーン・・・

神裂「バランス良くトレーニングすれば大丈夫ですよ。あとはバランスの良い食事と睡眠をしっかり取る」コクッ

麦野「健康マニアの教科書みたいなヤツね……じゃなくて、主に胸! おっぱい! アンタのその二房の凶器の維持について知りたいの」ビシッ

神裂「はぁ……と言われましても」ウーン・・・

結標「何よ。『私、肩凝りという経験がありませんから』とか言っちゃう?」ジトー・・・

神裂「いえいえ。、そんな人間居ませんよ。ええっと」ポリポリ・・・

固法「何か言い辛い事でも?」フム・・・

神裂「いえ、言い辛い、という訳ではないのですが……その―――から」ボソッ・・・

麦野「ん?」ジー・・・

神裂「だから……―――……これでも、胸囲、減ったんです。トレーニングし過ぎで」ボソッボソッ・・・

麦・固・結 「「「 」」」

神裂「……信じませんよね」ハハハ・・・

麦野「こんのっ、バケモンおっぱい星人がああああぁ!! 元はIカップ以上だと宣うかああぁ!!」ウガアアァ!!

神裂「ええぇ」タラー・・・


 っ『人格交換』


麦野「―――だから、火織と美偉が私とか結標みたいな性格だったら珍妙な事になると思うのよね」ビシッ

固法「……はぁ」ポリポリ・・・

結標「あのさぁ。サラッと人をアンタと同格レベルの人格破綻者にしないでくれない」ジトー・・・

神裂「うーん、しかし、具体的には如何すれば良いのでしょうか。分かり易い所でいえば、口調?」フム・・・

固法「神裂さん、何気にノリ気ね……という事は、逆に、麦野さんと結標さんも私や神裂さんの性格を真似なきゃ駄目よ」チラッ

結標「……えー」タラー・・・

麦野「百歩譲って、美偉の口調は真似れるけど、火織って常に敬語じゃん。しんどくね」タラー・・・

神裂「ただの敬語ですよ」ハテ・・・

結標「普段使い慣れてないと出て来ないものよ。まぁ無理なら性格真似てみるとか」ジー・・・

麦野「火織みたいな聖人君主思考なんて真似したら脳味噌沸騰しちまうわ」グデェ・・・

神裂「大袈裟な―――とりあえず、試してみますか」コクッ

固法「じゃあ、神裂→麦野→固法→結標→神裂...の入れ替わりでいきましょ。空きがあったら反対も」ピッ

麦野「ふむふむ。私が火織を真似んのね……こほんっ……この様な喋り方で宜しいでござるか?」ムンッ

神裂「馬鹿にしてんですか?」ジトー・・・

結標「私が牛乳の真似かぁ。って、基本私ら口調近いんじゃないの? アンタの方が幾分か敬語と敬称多いくらいか」フム・・・

固法「そうよね。麦野さんの真似は……あー……偶にF口調?」タラー・・・

麦野「固法さんのF口調、興味有るでござる」キリッ

神裂「だから、馬鹿にしてんですか? え? 何その侍口調。私の真似のつもりですか?」ジトー・・・

麦野「神裂さんは結標さんの口調を真似なきゃ駄目で候」ビシッ

神裂「……、」イラッ・・・

結標「んー……とりあえず、私らだけでコレやってもよく分かんないし、身内の前で試してみるとか」ピッ

固法「え」ピタッ・・・

神裂「……身内、ですか」タラー・・・

結標「その方が反応面白いんじゃない? 私ら分かっててやってるから互いの反応薄いし」コクッ

麦野「じゃあ試してみるでごわす!」ビシッ

神裂「……いい加減、そのふざけた喋りを止めなさい」ガシッ・・・

麦野「忝しっ! 忝じいいぃ痛ででででででぇ!! アイアンクローすんなあああぁ!!」ンギャアアァ!!

固法「やれやれ。それじゃあ次会う時に、それぞれの結果報告しましょう」コクッ・・・

    <ねーちんの場合(結標の真似)>



浦上「―――それで、私はルチアに言ってやった訳ですヨ……『お前の母乳はコーヒーでも出るのか?』ってネ!」Hahaha!

五和「あひゃひゃひゃ! 確かにー! ルチアならコーラとか出そうだよねー」ケラケラッ

香焼「お前ら、飯中に何つー話を。マジ止めろって……姉さんからも何か言ってやって欲しいっす」ハァ・・・

神裂「……、(ふむ。どのタイミングで始めましょうか)」モグモグ・・・

香焼「……呆れてモノも言えないってよ」ヤレヤレ・・・

五和「いやいや。てか、姉さん、さっきからずっと黙ってませんか?」チラッ

浦上「そういえば一言も喋りませんネ。如何しました? 喉でも痛めたとか?」フム・・・

香焼「いや、常時健康な姉さんが喉風邪とか……でも、如何しました?」ジー・・・

神裂「(いざ、やってみましょう―――となると緊張して)……って、え」ピタッ・・・

五和「姉さん、私らの話聞いてましたか?」キョトン・・・

浦上「やっぱ様子が変ですネ。もしかしてー……恋煩い?」ニヤリ・・・

五和「……、」ピクッ・・・

香焼「恋煩いなら、五和、お前も人の事言えないでしょ。でも、ホント何かあったんすか?」チラッ

神裂「あ、え、いや、その―――(今でしょ!)―――こほんっ!」キュッ・・・

3姉弟『?』ポカーン・・・

神裂「あー……別に、何でもない『わよ』。それより明日のゴミ当番、私だった『わね』」サラッ・・・

3姉弟『!?』ギョッ・・・

神裂「ど、どうし『たの』?」チラッ・・・

3姉弟『?!』バッ・・・

神裂「……あー」タラー・・・

五和「ね……姉さん! びょ、病院行きましょう! 今の時間ならまだ先生(冥土返し)が居る筈です!! すぐバイク出しますから!」ダッ・・・

浦上「待ってお姉! もしかして魔術師や能力者の仕業かもしれないですヨ……一度、土御門へ指示を仰ぐべきかと」タラー・・・

神裂「な、ちょ、ま、待って」ダラダラ・・・

香焼「だったら上条さんを呼んだ方が良いかもしれないっす! あと、禁書目録の知識も必要かも」アタフタ・・・

五和「そうね。そっちは私が……ウラは教皇代理に電話を。コウちゃんはマグヌス主教補佐に連絡をお願い」バッ・・・

浦上「了解。学徒の若衆には何て伝える?」スッ・・・

五和「まだ下まで広げられる情報じゃないわ。現状、上の指示を仰がないと」ゴクリ・・・

神裂「あ、あの、御三方?」ダラダラ・・・

香焼「姉さん―――いえ、女教皇様。今は安静に! 兎に角、今は喋らなくて大丈夫っすから」アタフタ・・・

神裂「い、いや、その、実は今日、麦野さん達と」アーモゥ・・・

浦上「麦野さん? もしかして、麦野さん達もオカシクなっちゃってるんですか!?」ギョッ・・・

五和「聖人と超能力者第4位相手に、よくも……達って事は多分、固法さんもかしら」タラー・・・

香焼「あと、もしかして淡希さんも―――急いで連絡を取ります」バッ・・・

神裂「うぇ。げっ……あ、貴方達、話を、聞いて」ダラダラダラダラ・・・

浦上「姉様! 凄い汗! それに顔色も悪いですヨ!」アワワワ・・・

五和「くっ。抜かったわね……コウちゃん、香焼! まだ主教補佐に連絡は取れないの!」グッ・・・

香焼「今やってるよ! ぐぅ……駄目だ……こうなったら非常ダイアルで、主教様に直接」スッ・・・

神裂「ほ、本気で止めてええええぇ!!」アババババ・・・

   <むぎのんの場合(神裂の真似)>




浜面「―――だーもぅ。好き嫌いすんなっつの。フレメアと同レベルだぞ、絹旗」ジトー・・・

絹旗「超心外ですね。そこなお子ちゃまと超絶レディな私を同等に見るとか、超目ぇ腐ってんじゃないんですか?」モグモグ・・・

フレメア「超絶レディ(笑)にゃあ」プフー

滝壺「人の事馬鹿にする前に、自分も好き嫌いなくそうね―――むぎの? どうしたの?」チラッ・・・

麦野「(うーん……火織の真似、ね。キャラじゃねぇよなぁ)……ん」ムシャムシャ・・・

浜面「今朝からこんな調子だよな。どうした? 第2位が真っ裸でブリッジしながら追い駆けてくる夢でも見たか?」チラッ

カブトムシ『……は?』ジトー・・・

麦野「いえ……あー。(とりあえず、モノは試しね)」ジー・・・

絹旗「麦野? 調子悪いなら早めに休んだ方が良いのでは」フム・・・

麦野「……大丈夫『です』よ。絹旗『さん』」サラッ・・・

絹旗「 」ポロッ・・・

滝壺「む、ぎの?」タラー・・・

麦野「如何『しました』? 滝壺『さん』。浜面『さん』にフレメア『嬢』も、おかしな顔をして……何か『ありました』か?」モグモグ・・・

フレメア「 」ダラダラ・・・

浜面「おま、ちょ、待て」タラー・・・

麦野「はい?」キョトン・・・

滝壺「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はまづら、ちょっと来て」クイッ・・・テクテク・・・

浜面「お、おぅ」テクテク・・・

麦野「(あー……こんな反応されんのか。ちょいと面白いな)―――『二人とも』、『ドチラ』へ? 食事中『です』よ」チラッ

浜面「うっ。す、すぐ戻るよ」ガチャッ・・・バタンッ・・・


 チョットタキツボサン! アレナニ???  ムギノ、オコッテルノカモ・・・ワタシタチ、ナニカシタカナ?  ガクブルハラハラ・・・


麦野「(うっはwwww面白ぇwwww)―――絹旗『さん』。もし、絹旗『さん』。炒飯を溢して『ます』よ」チラッ・・・

絹旗「     うぇい!?    しゅ、しゅみまひぇん!!」アタフタ・・・

麦野「フレメア『嬢』も、口からスープが漏れて折角の御美足が汚れて『しまってます』よ。やれやれ、まだまだ子供『です』ね」スッ・・・フキフキ・・・

フレメア「う、うんにゃああああああぁ!!? じ、自分で拭きまアアアアぁすっ!!」シュバッ!!


  ガチャッ・・・・・


絹旗・フレメア「「―――ふぇぇ」」ウルウル・・・

麦野「(やっべwwww何この反応wwww)―――おや、戻ってきた様『です』ね」チラッ・・・


滝壺「……むぎの」スッ・・・

浜面「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいませんでしたああああぁああぁ!!」ドゲザアアァ!!

麦野「!?」ギョッ・・・

浜面「お、俺らが何か癪に障る事をしたなら謝る! だから、その……許してくれえぇ!!」ダラダラ・・・

滝壺「せめて、私かはまづらにヤツ当たりして。きぬはたとフレメアが泣きそうだから……お願いします」フカブカー・・・

麦野「え、あ、ちょ……あるぇ」タラー・・・

カブトムシ『……馬鹿でしょ。アンタ』ハァ・・・

カキネムシさんいたんだwwwwww

>>585-586・・・一応、WWⅢ後って設定ですんでんで。

   <このりんの場合(麦野の真似)>



佐天「―――だーかーらっ! 本当に見たんですって! 箒のってる魔女を!」キラキラ・・・

白井「はいはい。ハ○ー・ポッターに憧れるのは今の内だけですの」ヤレヤレ・・・

初春「まぁ非現実的ですよね。学園都市(こんな街)に住んでる私達が言うのも難ですけど」ハハハ・・・

春上「でも良いなぁ。一度で良いから単身飛行してみたいの」ホワーン・・・


  キャッキャウフフムッキュンムッキュンッ!!


固法(ハァ……この子達はまたこの詰め所をサロンか何かと勘違いして)グデェ・・・

御坂「―――でもねぇ……先輩、如何しました?」チラッ・・・

固法「え、あーうん。もう慣れた……(そういえば『各々反応を調べてこい』だっけ。麦野さんの真似、ねぇ)」ポリポリ・・・

初春「先輩が牛乳啜りながらアンニュイになるのは今に始まった事ではありませんよ」フフッ

白井「ま、明日は非番ですから彼氏さんの事でも考えてたのでは?」ボソッ・・・ニヤニヤ・・・

固法「(カッチーンと来たね、これ)……白井」ジトー・・・

白井「うっ。な、何でもありませんのー」シラジラー・・・

佐天「あはは……そういえば、固法先輩って、偶に初春と白井さんの事『さん』付け無しで呼びますよね」フム・・・

初春「ほんと偶にですけどね。相当真面目な時か、怒ってる時か」タラー・・・

固法「(うーん、このノリでやっちゃおうかなぁ)……じゃあ、『佐天』って呼ばれたいかしら?」チラッ・・・

佐天「」ゾクッ・・・

春上「な、何だか、怖いというか、ドSというか……雰囲気が。まるで別人なの」タラー・・・

白井「……実はこれが本性だったりいいぃ痛たたたいたいたいいいいぃ!!」ギリギリギリ・・・

固法「(この子は、ホント、生意気ね。今更だけど)―――もしそうだったら、どうだってぇの? ん?」キランッ・・・

御坂「せ、先、輩?」ダラダラ・・・

固法「(あードン引かれてるわね。後でちゃんとネタばらししないと) なぁに? 超電磁砲ちゃーん。そんな珍妙な顔しちゃってぇ」ニッコリ・・・

初春「……先輩が、壊れた」ダラダラ・・・

春上「も、もしかして、何らかの精神汚染みたいな能力に掛ってるんじゃ」チラッ・・・

固法「(良心が痛むわ) 初春上。随分言ってくれるわ―――お・し・お・き・カ・ク・テ・イ・ね」スッ・・・ニヤリ・・・

初春上『 』ゾゾォ・・・

御坂「っ!? せ、先輩、まさか……いやっ! アンタ、先輩じゃないわね! 正体を現しなさい!!」バッ!! ビリビリ・・・

白井「お姉さま!? 一体何を!?」タラー・・・

固法「(あー何か面倒な事になったぞー。そろそろネタバレしないと) 何言ってんだ、第三位。発情した雌猫かっつの。座れよ。売女」グッ・・・

佐天「ちょ、え、な、ほ、ホントに、固法先輩の偽物!?」バッ・・・

固法「(あははは……やっぱ私には無理ね) あー、こほんっ。ごめんなさい。実は先日、友達と―――」サラッ・・・


御坂「正体を現したわね、麦野沈利! アンタがどうやって先輩に擬態したかは知らないけど今日という今日は許さないんだから!」ビリビリッ!!


固法「―――人格、交、た、ぃ……えっ」ダラダラ・・・

御坂「くっ! 人の良い先輩に浸け入って……だから友達は選んで下さいって忠告したのに……本物の先輩は何処! 応えなさい!!」バリバリッ!!

中一娘s『 』ポカーン・・・

固法「……うぇえぇ」ダラダラ・・・

   <あわきんの場合(固法の真似)>



結標(―――ぶっちゃけ、誰の前で演技しろってのよ。小萌? それとも『チーム』の連中? どっちも無理よね……だったら)チラッ・・・

土御門「―――チッ……お前ら、ポーカーフェイス過ぎだ」タンッ・・・

御坂蛇(17600号)「ポン……何故私が面子集めで呼ばれなくてはならないのですか? とミサカは師匠を睨みます」ギロリ・・・パチンッ・・・

海原「まぁまぁ。本当は彼女(結標さん)が打てれば一番なのですが、携帯アプリでしか打った事無いそうなので、ええ」ハハハ・・・パチンッ・・・

御坂蛇「……ミサカ以外にも居たでしょう。それこそ、義妹さんとか。『道具屋』のチンピラさんとか、スキルアウトのリーダーとか」ジトー・・・

土御門「そう言うな。この面子で集まるのにも意味はある。グループは解散したとはいえ『情報網』は固定しておきたい……だろ?」チラッ・・・カチッ・・・

海原「ええ。ただ淡々と情報交換するだけだと殺伐し過ぎますからね。だから、懇親を交える意味も込め……卓を囲んでます! リーチっ」タンッ・・・

御坂蛇「はいはい。懇親、といいつつ、一人ハブってますけどね……とミサカは空かさず、チーっ」タンッ・・・

結標「(わ、私だって、あの3人相手に練習してるし!) あ、あのー、私もー」タラー・・・

土御門「んぁ? そろそろ座ってみたいか? まぁブっ跳んでカモられる勇気あんならどうぞ。次変わるぜぃ……あ、リーチー」ニヤニヤ・・・タンッ・・・

海原「その前に、チョンボは無しですよ。点数計算できないのは止むを得ませんが、有りもしない役を作られると……糞っ、まだか」タンッ・・・

御坂蛇「師匠にだけは上がられたくないですね。とミサカは毒吐きつつ安牌を切ります」タンッ・・・

一方通行「……、ン」スッ・・・

土・海・蛇「「「え」」」ピタッ・・・

一方通行「ツモ。清一色、ドラは……5か」パカッ・・・

土御門「だああぁもぅ! また負けたあぁ!! 何で今日は上がれねぇんだ!!」ンギギギィ・・・

海原「あははは……まぁそういう日もあるでしょう」ポリポリ・・・

御坂蛇「しっかし、コイツら情報交換のジョの字も見せないなーとミサカは呆れかえります」ヤレヤレ・・・

一方通行「張り合いねェな……おい、結標。代われ。コーヒー買ってくる」スッ・・・

結標「え、あ、うん。ありがとう―――(此処らで言っとくか)―――一方通行『くん』」サラッ・・・

野郎共『 』ピタッ・・・

御坂蛇「……ん?」チラッ・・・

土御門「(『くん』だぁ? き、聞き間違えかな)……ま、一々奇声上げたり泣いたりすんなよ」ジャラジャラ・・・

海原「(彼女が敬称付きで人を呼んだりする訳がありませんからね) 麻雀で能力使うのは無しですよ。親は蛇(スネーク)です」ジャラジャラ・・・

御坂蛇「了解です。とりあえず、仕切り直しの半荘で良いですね? とミサカは確認を取ります」チラッ・・・

結標「分かったわ。あと、土御門『くん』、海原『くん』……その言葉、そっくりそのままお返しするわ」ニコッ

野郎共『 』ピクッ・・・

御坂蛇(野郎共が無視決め込んでますね。いや現実逃避ですか……とミサカは女性の掌の上で踊らされてる馬鹿男共に呆れた目を向けます)ハァ・・・


  パチンッ・・・パチンッ・・・カンッ・・・パチンッ・・・カンッ・・・パチンッ・・・パチンッ・・・パチンッ・・・―――――・・・パチンッ・・・パチンッ・・・パチンッ・・・カンッ・・・パチンッ・・・


海原「(お、おかしい……いや、言動がオカシイのは確かだけど……3度のカン?)……考え過ぎか」パチンッ・・・

土御門「(ビギナーズラック。だが素人の馬鹿打ち。何でもかんでも溜まったら払い出しってか。それじゃ手が無いにゃー)……ふむ」パチンッ・・・

一方通行(この手は……こりゃ結標(素人)の打ち方じゃねェぞ。この攻め方は……『あの女』の真似か)ジー・・・タラー・・・

御坂蛇「狙いが見え見えです。しかし最後の牌が読めない以上、下手に切れませんね。とミサカは慎重になります」スッ・・・

結標「んー……―――……ツモったわ」カンッ!!

一同『っ!?』バッ・・・

結標「四槓子。ドラ……12! (うっしっ! 性格云々は上手く真似れなかったけど、牛乳眼鏡の『得意分野』は真似れたわっ!!)」キランッ・・・

一同『 』チーン・・・

ドラ以前に役満wwwwww
ってかそもそも固法先輩には中の人補正かかってるんだwwww

>>589・・・このりんの中の人は勿論、ねーちんとむぎのんの中の人も麻雀しますからねww



  < 結果報告 in 香焼宅 >

     にゃーん・・・・・

神裂「―――では、報告を……私からで良いですか」チラッ・・・

麦野「あいよ」グデェ・・・

神裂「大迷惑でした。病気だの能力だの魔j……呪いだの騒がれて、またエアコン壊れるとこでしたよ」チーン・・・

麦野・固法「「大体同じ」」チーン・・・

結標「マジ? 私、結構楽しかったわよ」ハハハ

固法「どんな風に私を真似たのよ」ハァ・・・

結標「んー……麻雀的な。昨日は無駄に勝ちまくったわ!」アッハッハッ

神裂「あー」タラー・・・

麦野「カモのアンタが? 『透視』でもしたってぇの?」ジトー・・・

結標「失礼な! 実力……では無いにしろ、不正はしてないわ。それよりアンタ達、今一詳細伝わんないんだけど」フンッ

神裂「とりあえず、ウチは救急車とか上司を呼ぼうとする3姉弟を宥めるので大変でした」ハァ・・・

麦野「目に見えるわね。ウチは浜面と滝壺が並んで土下座してきた。マジ焦ったわよ……あ、でもガキ共からかうのは愉しかったかな」フフフ・・・

固法「からかうって、最愛ちゃんとフレメアちゃん、可哀想に。私は御坂さんが『麦野さん本人が擬態した!』とか騒いじゃって」タラー・・・

結標「どんだけ似てたのよ……いや、あの子が単純なのよね」ハハハ・・・


絹旗「―――香焼んとこもだったんですね。アイテム(ウチ)も超大変でしたよ」ボソボソ・・・

香焼「ホント、性質悪い事しないで欲しいっすよね」ボソボソ・・・

もあい「にゃー」ジー・・・


神裂「……因みに、結標さん」チラッ

結標「ん?」ゴローン・・・

神裂「月詠さんの前では、やらなかったのですか?」フム・・・

結標「小萌の前でやった所で『あら、今日は他人行儀になっちゃって。何か疚しい事でもしちゃいましたか?』とか言われて終わりよ」ポリポリ・・・

神裂「目に見えますね。では、固法さん」チラッ・・・

麦野「あ、私も気になる。黒妻くんの前で、私の真似しなかったの?」ニヤリ・・・

固法「目丸くした後、苦笑して『麦野さんの真似か? 何かの罰ゲーム?』とか流されました」ハァ・・・

結標「おもしろくなーい」ブー・・・

固法「……悪かったわね」フーンダ・・・

麦野「私がキレた時のF口調で情事に励んだりとかは?」ジー・・・

神裂「お、おぅふ……それは、過激ですね。些か、海外ポルノの様な」チラチラッ・・・///

固法「しないわよっ! 神裂さんも何期待してるのよ! 馬鹿っ! ほんっと、バカっ!!」カアアァ・・・///


絹旗「海外ポルノって、そんな凄いんですか? 香焼、持ってます?」チラッ・・・

香焼「……ノーコメントで」コホンッ・・・///

もあい「なぅ!」アルヨー!


結標「―――とりあえず、次回は別の人の真似でリテイクね」フフッ

神裂「いや、勘弁して下さい」ハァ・・・


   っ『眼鏡』・・・+五和!




神裂「―――そういえば、固法さんはいつから眼鏡をしてるのですか?」チラッ・・・

固法「中学入ってからね。親も視力低いから遺伝かしら」コクッ

結標「でも、原因ってかキッカケみたいなのはあるんじゃないの? PCのし過ぎとか、ゲームのし過ぎとか」アーレーコーレー・・・

麦野「だとしたらテメェが真っ先に目ぇ悪くなる筈だろ。美偉ちゃんは真面目だから勉強のし過ぎってヤツよ」クイッ

固法「あはは、どうなのかしら。原因は単とは言えないかも。でも油断してると直ぐ視力落ちちゃうわよ」ポリポリ・・・

結標「あー確かに。私もちょいと視力落ちてさぁ。まぁ眼鏡掛ける程でも無いんだけど……アンタらは目ぇ良いのよね」チラッ・・・

神裂「ええ、人並みには」コクッ

五和「姉さん。両眼3,5は人並みとは言いません。普通は2,0です」ハハハ・・・

麦野「私、右目5,0」ドヤァ・・・

結標「バケモン……良かったわね。老眼鏡の必要無くて」タラー・・・

麦野「喧しい―――さておき、いい加減コンタクトしなさいって」チラッ・・・

神裂「目にモノを入れるのが怖いからですか?」フム・・・

固法「え、あ、うーん。そういう訳じゃないわ。現に1Dayタイプなら持ってるし……だけど、その」モジモジ・・・

神・麦・結・五『……、』ジー・・・


浦上「―――極力、彼以外に素顔を見せたくないんですよネ」ボソッ・・・ニヤリ・・・


固法「っ!?」バッ・・・///

神裂「あっ」///

麦野「お、おぅ」ジー・・・

五和「な、なるほど」///

結標「眼鏡フェチの逆バージョンみたいなモンなのかしら」フーン・・・

固法「そ、その、別に、あの……もぅ!」カアアァ///

麦野「フヒヒッ! つまーり。美偉ちゃんにとって眼鏡はブラやショーツと同じって訳だ」ニヤニヤ・・・

五和(建宮さんが前に言ってた眼鏡萌え……のギャップ裸眼バージョンという事ですか! 素顔の私デビュー的に!)メモメモ・・・

結標「これまた健気なこって。私の裸眼は貴方専用ですってか」ハハハ

固法「っ~~~~~ッ!! もぅ! だったら良いわ! 暫くコンタクトにするっ」プイッ・・・///

神裂「こ、固法さん。別に無理をしなくても」アララ・・・

固法「無理じゃないもん!」フンッ・・・

麦野「ありゃりゃ、スネちった……そんじゃ代わりに、五和。アンタ眼鏡にしなさい」チラッ・・・

五和「うぇ!? 建宮さんと同レベルの無茶ぶり要求! 何で私が!?」タラー・・・

麦野「何となく似合いそうだし、エロそうだからよ」フフフ・・・

五和「Ri・fu・ji・n! だったら麦野さんこそ似合いそうですし、掛けて下さいよ! あと姉さんもエロいですから一緒に」アタフタ・・・

神裂「そうですね。まずは自分がやってみせてか―――五和?」ギロッ・・・

結標「んじゃもぅさぁ。牛乳以外皆、眼鏡すりゃ良いんじゃないの?」サラッ・・・

神・麦・五「「「え」」」ピタッ・・・

固法「……そうね。私だけいつもと違う事するのは癪だし、皆も眼鏡しなさいよ。勿論、結標さんもね」チラッ・・・フフフ・・・

結標「Oh」グデェ・・・

   その①:香焼宅


   ヒソヒソヒソニャーンヒソヒソ・・・・・ 


神裂「……案外、インパクト無いですね。というか、何故後ろ指を指される様な状態になってるのでしょうか」タラー・・・

結標「分かんないわ。まぁガキ共相手だからそうなるんじゃないの? まぁ如何でもいいけど、目頭重い」ウーン・・・

五和「慣れないとそうなんでしょうね……固法さんは」チラッ・・・

固法「久しぶりにコンタクトしたから、凄くシバシバするわ」ハァ・・・

麦野「なーんか、思ってた程面白くないわね……よしっ! ちょっと、うーらかーみちゃーん」オイデオイデ・・・

浦上「ハイハイ。なんでしょ」ヒョコッ・・・

麦野「どうやったら面白くなるかしら?」ボソボソ・・・

浦上「んふふふ。幾つかプランを用意してますが如何しちゃいましょ?」ニヤニヤ・・・

五和「姉さん。ウラがまたワルい顔してますけど」タラー・・・

神裂「嫌な予感しかしませんね」タラー・・・

固法・結標「「……目が疲れる」」グデェ・・・


 アーダコーダウキャパーッ・・・


削板「―――眼鏡人口高ぇ。逆に、風紀委員の姉ちゃんが眼鏡じゃない違和感空間……はい、波に乗ってみました。根性的に」スチャッ・・・ドヤァ・・・

ステイル「そのビックウェーブは間違った波だぞ。というか、絶望的に似合ってないな」キッパリ・・・

絹旗「元からアホ面なのにもっと超バカ面になりましたね。ウチの浜面に負けてません」ハッ

香焼「せ、せめてハチマキ外そうよ。そしたら似合うかも」アハハ・・・

削板「ぐっ……じゃあステイル、テメェ掛けろよ! 香焼の姉ちゃん達に幾つか眼鏡借りてきたから」バッ・・・

香焼「確かにステイルの眼鏡は見てみたいかも。この眼鏡似合いそう」コクッ

ステイル「ハァ……ん」スチャッ・・・

香焼「あ、やっぱ恰好良いっす。似合う似合う」フフッ

ステイル「そ、そうか。煽てても何も出ないぞ」フンッ・・・///

絹旗「おー。⑦(根性バカ)よりは似合いますね。でも一層ふいんき怖くなりました」ジー・・・

削板「ふいんき(笑)。じゃあテメェも掛けてみろよ」ジトー・・・

絹旗「はっはーん。私が掛けたら『超絶美少女』絹旗最愛ちゃんが―――『超知的才女』絹旗最愛ちゃんに変わるだけですっ」スチャッ・・・ドヤァ・・・

削板「あー……似合ってねぇ。何か背伸びして化粧してる幼稚園児見るみてぇだ」タラー・・・

絹旗「にゃ、にゃんですと!?」フシャアァーッ!!

香焼「あはは……最愛はそういうキツそうな眼鏡じゃなくて、コッチの丸いのとか淡い色の方が可愛いと思うよ」スッ・・・

絹旗「か、可愛ぃ……そ、そこまで言うなら仕方ありませんね。掛けてあげましょう」コホンッ・・・スチャッ///

香焼「うん。似合う似合う。それじゃあ自分も何か適当なのを―――」

削板「香焼っ。お前は絶対この黒縁大枠が似合う! 掛けろ!」バッ・・・

ステイル「いや、君はこのスポーツタイプの方が合うね。さぁ、掛けてみせろ」バッ・・・

絹旗「いいえ。香焼はこの赤の逆さフレームが超合う筈です! これ、掛けますよね!」バッ・・・

香焼「―――え、は、はぁ。じゅ、順番に掛けるよ」アハハ・・・


  ヤンヤヤンヤ・・・ギャーギャー・・・ニャーニャー・・・・・


浦上(香焼ハーレムですネぇ……男女比オカシイですけど)アハハ・・・

   その②:イカれ自販機の公園


    わんわんおーん・・・・・


神裂「―――な、なぜ」タラー・・・

五和「こ、此処に」タラー・・・

麦野「浦上ちゃん曰く『此処は色んな人が集まりますカラー』だそうよ。(まぁメインは上条だけどな)」フフフ・・・

結標「誰が来るか分からないけど、色んな反応を見れるって事ね」フム・・・

固法「なんかさっきの香焼くん達と同じ反応される気がするけどなぁ」ポリポリ・・・

結標「……噂をすれば何とやら。誰か来たわよ。知り合いかしら」ジー・・・

神裂「っ! ちょ、ちょっと隠れませんか」アタフタ・・・

麦野「ルール1。誰に会っても逃げるべからず! アンタ、普段の恰好の方が恥ずいでしょ。私服に眼鏡くらい問題無いじゃない」ヤレヤレ・・・

神裂「そういう問題じゃ……あーもぅ」ダラダラ・・・

五和「……あれは」ジー・・・


青ピ「―――だから、スカートの下にジャージを穿くのは極刑に値すると僕ぁ思うんですよ。ただ、スパッツはセーフやで」ビシッ・・・

土御門「まぁ気持ちは分からんでもないにゃー。ただ、アレはアレでジャージを脱いだ時の艶気と背徳感が……ん?」チラッ・・・

吹寄「相変わらず貴様らは……上条当麻抜きで、二人だけでも威力落ちないわね」ヤレヤレ・・・

姫神「というより。元々この二人が馬鹿な妄想全開なだけで。上条くんはそれに便乗したりツッコみ入れたりしてるだけだと思う……あ」ジー・・・


神・結・五「「「 」」」

麦野「ほぅほぅ。えーんかーぅんとー」ニヤリ・・・

固法「土御門くんと……同級生の皆さんって所かしら。上条くんが居ないわね」チラッ・・・

青ピ「いや、カミやんも女子が居ないところでは大概―――ってうをぉ!? 謎の眼鏡美女集団が目の前にいいぃ!?」キラキラ・・・

吹寄「公衆の面前で叫ぶな変態! って……何処かで見た事ある様な人が」ゲシッ!

土御門・姫神「「……、」」アー・・・

神裂「せ……戦術的撤退!!」バッ!!

麦野「逃がすか」ガシッ

結標「あー、秋沙さん。こんにちは」タラー・・・

姫神「淡希……ツッコみ。必要?」ジー・・・

結標「す、スルーの方向でお願い」タラー・・・

五和「こ、こんにちは、土御門。ええっと……上条さんは?」ダラダラ・・・

土御門「小萌センセの補習組、だが……なぁにこれぇ」ジー・・・

神裂「あ、あまりジロジロと見ないで貰いたいのですが」タラー・・・

土御門「ねーちんの私服は、まぁ今に始まった事じゃねぇけど……その眼鏡は何の趣だにゃ?」ジトー・・・

青ピ「こ、こんの裏切り者!! こんな美女集団と知り合いだなんてぇ……鋼のロリコン&シスコン軍曹のプライドは何処いったんや!?」バッ!

吹寄「喧しいっ!! あー。誰かと思えば結標さんでしたか。えっと、大人っぽいですね」アハハ・・・

結標「……吹寄さん。無理に頑張って差し当たり無い言葉を掛けてくれる必要は無いわよ」ハァ・・・

土御門「とりあえず……んっ」スッ・・・カシャッ・・・

神・結・五「「「っ!?」」」ギョッ・・・

土御門「ツブヤイッターに投稿っと。お、早速建宮が『いいね!』したぜぃ。あ、海原がコメント……『何のプレイです?』って」ピローン・・・ニャハッ!

麦野「うっはww火織達真っ白なってらぁ」イヒヒヒッ!!

   その③:ファミレス『Joseph's』



神裂「もうヤダ。ニホン怖い。英国帰りたい……―――次は、Joseph'sなのですね」チラッ・・・

麦野「お前何人だよ。まぁ此処も結構知り合い溜るからな。アイテム(ウチ)の連中も来るってのが怖いけど」ハハハ・・・

五和「姉さんはおっぱいセイジnあ、いや、何でもありませんんん痛だだだだだぁ!!」ギリギリギリギリ・・・

固法「五和さんも大概(おっぱい星人)だと思うけど。さておき、現状で知り合いは……居ないわね」キョロキョロ・・・

五和「ぐぬふぅっ……頭が割れそうです……あー因みに、この中で一番顔広いのって誰なんですか?」チラッ・・・

結標「牛乳眼鏡じゃないの? あ、今眼鏡じゃないか。牛乳コンタクト」クイッ

固法「いい加減、変な渾名で呼ぶの止めてよ―――知名度的には麦野さんの方が有名だと思う」チラッ・・・

麦野「私は超電磁砲と違って『アイドル』路線じゃないから顔は知れてないわ。(まぁ暗部がらみの知り合いは多いけどねぇ)」ポリポリ・・・

五和「私は転入生(外様)ですし、姉さんは大学通ってる訳じゃなく、ビジネスでこの街に出入りしてますからね」コクッ

神裂「でも、ボチボチ知り合いは居ますよ―――っと、おや」チラッ・・・


   ラッシュラセェ・・・キツエンセキデー・・・カシコマリッシャー・・・・・


結標「ん? 知り合い?」チラッ・・・

固法「え……ぁ」ピタッ・・・

麦野「……うぇ」タラー・・・


半蔵「―――だから郭のヤツ、撒くのに時間掛ったんですって。しゃーないでしょうが」ハァ・・・

浜面「いや、でも偶に野郎だけで集まる機会に遅刻ってのは解せないぞ。そういう訳で半蔵の奢り決っ定!」ハハハ

黒妻「ゴチになりまーす」テクテク・・・

半蔵「ぐっ……これだから無収入共は―――」ハァ・・・


結標「ねぇ。アンタの旦那、無収入とか言われてるわよ」ニヤリ・・・

固法「て、定職就いてないだけだから叩かないであげて」イソイソ・・・

五和「へぇ……ってぇえ!? あの中に噂の固法さんの彼氏さんが居るんですか!? 全員コワモテ系じゃないですか!」バッ!!

神裂「あの一番背の高い、夏なのに革ジャンの彼ですよ」フフフ・・・

固法「余計な事言わないで!!」ソソクサ・・・

結標「マジ『ヤンキーくんと眼鏡ちゃん』よね。今は違うけど―――つーかアンタ、何で私の後ろ隠れんのよ。ついでに、第4位も」ジトー・・・

麦野「……何か気拙ぃ」コソコソ・・・


浜面「―――だから全うに就活中で……ん? あっ」ジー・・・

半蔵「だから黙ってウチの『頭』になれっての。もしくは兄貴が……どったの? え? 知り合い―――あー」ジー・・・

黒妻「ん……、」ジー・・・

麦野・固法「「……、」」コソコソ・・・

黒妻「(何で美偉、眼鏡してねぇの? まぁ絡まれると面倒か)……それでよぉ、黄泉川さんが酔っ払って夜中に電話掛けてきて―――」テクテク・・・

浜面「(あーOK、察しました)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダルいっすねー、それ。でもあの人偶に、俺らの事未成年だって忘れて―――」テクテク・・・

半蔵「え!? 無視!? そこ構う流れじゃないの!? 此処スルー検定会場でしたか?!」タラー・・・


神裂「ふむ。アッチの方が大人という事でしょうか」ハハハ・・・

五和「ぶっちゃけ、無言が一番応えますね」アハハ・・・

麦野・固法「「 」」チーン・・・

   その④:再び、イカれ自販機の公園



固法「―――帰ったら絶対何か言われる」ハァ・・・

麦野「浜面……私を見る目が生温かいモノに変わってきてる」ハァ・・・

結標「良かったじゃない。殺戮人形(キリングマシーン)から観賞用サイボーグにジョブチェンジよをわっちぃっ!?」ビジジジッ!!

五和「む、麦野さん、洒落にならないから止めておきましょうね」タラー・・・

神裂「お二人とも、考え過ぎですよ。とりあえず今日の反省会を香焼の家で―――」


上条「―――ん?」テクテク・・・


神裂・五和「「―――っ!?」」ピタッ・・・

麦・固・結「「「あっ」」」チラッ・・・

上条「……、」ジー・・・

神裂「か、かかかか、かみゃじょーとうみゃ!?」アbbbb・・・

五和「こここ、こ、こんにゃくわぁ!!?」アbbbb・・・

麦野「落ち着けお前ら」タラー・・・

上条「お、おぅ。あーえっと……女子会ってヤツですか? それとも眼鏡デー?」チラッ・・・

固法「ドッチもかな。今日も補習だったんだって?」フフッ

上条「固法さんだけ裸眼なんですね―――ええ、まぁ。皆さんと違って頭のデキが悪いんですよー、わたくしはー」ヘーンダッ

結標「アンタが補習に駆り出される度、小萌の煙草の本数増えるんだから何とかしなさいよ」ジトー・・・

上条「如何こうしてなるモンならなってますよーだ。それより、神裂、五和。何でお前ら固まってんの?」キョトン・・・

固法「突然の事態に思考が追い付いてないのよ」アハハ・・・

上条「???」ポカーン・・・

麦野「んー…(ちと、面白い事でもすっか!)…ねぇ。じゃあ私が勉強教えてあげようか?」クイッ・・・

上条「へ? (と、年上の家庭教師のお姉さん! しかも美人で、レベル5!?)」タラー・・・ココロノタンカ・・・

神裂・五和「「っ!!?」」バッ・・・(血眼)

麦野「(ぶっはww必死過ぎwww)―――毎度毎度、補習なんでしょ。まぁ私も暇な日多いし、常に都市居るから教えてあげても良いわよ」クイッ

神裂「あ、え、な、ど、ぴゃっ!?」ダラダラダラダラ・・・

結標「(『ぴゃっ!?』ってwwなるへそwww)―――じゃあ私も、小萌の為に一肌脱ごうかしら。手伝うわよ」ポンッ・・・

五和「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ」ウルウルウルウル・・・

固法「(五和さん、泣きそうじゃないの)……全く、冗談が過ぎるわy―――」




御坂「 ヴ ォ オ オ オ オ オ ォ ル テ ッ カ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ァ ッ !!!」ビジバジバジンッ!!




姉一同『っ!!?』ギョッ・・・


上条「え―――ぴかちゅううううぁあああああああああぁあああああああぁっ!!?」 ← 斬り籾み回転ブっ飛び。


白井「お、お姉さま!? いきなり超電磁ス○ンで公園の端から此処まで電光石火掛けるのは止めてくださいまし!!」アタフタ・・・

御坂「フシュウウウゥ……○●チュウではない……テッ●マンよ…―――…ハッ!? 私ったら一体何を!?」キョロキョロ・・・

固法(無意識なのね。御坂さん……恐ろしい娘)タラー・・・

    その⑤:オチ要員―――――上条「 」プスプスプスプス・・・




御坂「―――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上手に焼けましたー」テヘッ!

麦野「なぁ。これ、殺人の現行犯じゃねぇの?」チラッ・・・

結標「私もそう思う。白井さん、ソイツしょっ引いた方が世の為よ」チラッ・・・

白井「えっと……擁護できない」タラー・・・

御坂「か、上条せんぱーい。起きてくれないと美琴困っちゃうぞー★」アタッフタッ・・・

麦野「キャラぶれまくりだぜ、第3位。見てて痛々しいわ」ジー・・・

御坂「ぐっ! も、元はといえば! アンタらがソイツにチョッカイ掛けるから!! 黒子、コイツら公然猥褻でお縄にしなさいっ」グヌヌヌゥ・・・

結標「例えチョッカイ掛けてたとしても、御坂さん全く以て関係無いんだけど。私ら、コイツとコッチの二人からかってただけだし」クイッ

白井「……今回ばかしは結標淡希の方に分がありますの」ヤレヤレ・・・

結標「あら、うれしい。流石白井さん。この後デートする?」ニコッ

白井「図に乗るな氏ね。類人猿の様に師ね」ジトー・・・

固法「辛辣ね……って、そんな事より上条くんを―――」

神裂「や、止むを得ません……こ、こここ、ここはっ! 私が心肺蘇生をっ!!」グイッ!!

五和「い、いえっ! 私がっ! 姉さんの手は煩わせませんよっ!!」グイッグイッ!!

上条(大きな星が、揺れたり弾んだりしている……あははは……大きい! オッパイ星かな? いや違う、違うな。
    もっと、バァーって動くもんな! 暑苦しいな、ここ。ふぅ、出られないのかな? おーい、出してくださいよ! ねぇ!)ピヨピヨ・・・

神裂「い、五和! 離れなさいっ!! チィ! 邪魔ですっ!!!」グググ・・・

五和「んぎぎぃ……姉さんこそっ! そこを退いて下さいいぃっ!!」ギチギチギチ・・・

白井「―――……あぁ、先輩。固法先輩。上条当麻が……聞こえますか、先輩」タラー・・・

固法「止めて頭痛い。コンタクト乾いてる所為で余計痛い」ハァ・・・

御坂「慣れない事するから……って! わ、私も参戦せねばっ!(使命感)」バッ・・・

白井「んまっ!? お姉さまってば!?」アワワワ・・・

結標「御坂さんがAED代わりになれば早い様な……ってか、心臓停まってんの?」ジー・・・

麦野「気絶してるだけだろ。てか、最早眼鏡どうでも良くね?」ポリポリ・・・


 ギャーギャーワーワーキャッキャウフフムッキュンムッキュンッ・・・・・


一方通行「―――なァにあれェ……相変わらず不幸だな。アイツ」タラー・・・

打ち止め「ねぇねぇ! ミサカも参戦してきていい!? ってミサカはミサカは超電磁●イフーンで一っ飛びの準備を!」グルグルグルグル・・・

一方通行「止めなさい」ビシッ

打ち止め「あ痛っ。んもー、ノリ悪いなぁ……ねぇ。ミサカも眼鏡欲しいかも。あと、アナタの眼鏡姿も見てみたいかなぁって」ミサカハミサカハジー・・・

一方通行「くだンね……あ、オチが来たぞ」ジー・・・



禁書「   ガ           オ           ン       ッ ! !  」ガブリ・・・


            ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ・・・・・


打ち止め「Oh……こんがり焼けたあの人が、暴食魔神の胃袋(亜空間)に」タラー・・・

一方通行「誰か止めろよ―――なァ、眼鏡の守護天使さン」チラッ・・・

  ―― ・・ジジジ・・・ウォン・・・・・         風斬「―――えっと、私、別に保護者って訳じゃないんだけどなぁ……あはは」ポリポリ・・・

途中に超失礼。超お題下さい。
出来れば『眼鏡』とか『ペット』とか『超美少女絹旗最愛ちゃん』みたいな感じで、単語の超お題お願いします。

雲川(巨)


   っ『雲川(姉)』



貝積『―――という件なのだが、知っていたか?』ジー・・・

雲川「頗(すこぶ)る、どうでもいいけど。それより……>>599。(巨)って何だ? 今流行りの進撃か? それともセの王者か?」ハァ・・・

貝積『どっちも巨人だろう。いや、じゃなくて、如何考えても巨にゅ―――』

雲川「セクハラ。奥方と娘に非特定多数の愛人メールを送りつけるぞ」ジトー・・・

貝積『……いやしかし「アイテム」のリーダーで超能力者(レベル5)と「案内人」の組み合わせだ。おまけにVIPの神裂氏ときてる』フム・・・

雲川「無理矢理話を戻しおって……私からしてみればただのJKのお茶会だ。気にする程の事でもあるまい」グデェ・・・

貝積『楽観視して良いものか。その気になれば区の一つは消せる連中だぞ』タラー・・・

雲川「危険視し過ぎだと思うけど。何をそんなに怯える必要がある―――此方としては、彼女らの『人質』も握ってるんだけども」ヤレヤレ・・・

貝積『各々の仲間あるいは部下か……まぁそれだけ握っておけば、保険にはなるか』ハァ・・・

雲川(寧ろ、人質に手を出す状況になってしまったらコッチが最期だと思うけどね)ジトー・・・

貝積『……さておき、君は今何処に居る? 学校でも家でも無い様だが』ジー・・・

雲川「あら。私のプライベートを知る権利が貴方にあって? 私、仮にも華のJKなんだけど」フフッ

貝積『抜かせ……まぁいい。羽目を外し過ぎるなよ。あと、妹君の件だが―――』

雲川「放任主義よ。私には関係無い。心配してくれる気持ちは嬉しいけど、放っておいてあげて頂戴」フイッ

貝積『―――いや、色々と不確定要素なんだが……いや、何でもない。分かった。今は捨て置くよ』ハァ・・・

雲川「ありがと。兎に角、妹(あの子)の件も含め、勝手に行動するなよ。それでは」Pi!

貝積『いや、ちょっと待て。だから君は今何処に―――』プープープー・・・


雲川「やれやれ。相変わらず昔堅気というか何というか。まぁ甘ちゃんなのは美点でもあり欠点でもあるけど―――」チラッ・・・


上条「いだだだだぁ!! インデックスさああぁん!! そこ喉笛! 噛み千切られたら即ゲームオーバーよっ」グベベベ・・・

禁書「自業自得なんだよ! 輪廻転生して胎児からやり直して来るべき!」ガルルルルゥ!!

麦野「なぁ。如何にも十字教のシスター殿が輪廻転生とか言っちゃうのは如何なの?」チラッ・・・

固法「さ、さぁ。神裂さんの方が詳しいんじゃないかしら」ポリポリ・・・

神裂「 」

結標「未だにフリーズしてるわよ。あと五和が変な方にトランスしちゃってる」タラー・・・

五和「―――きっとこれは魔法の眼鏡で願望を写し出しちゃう呪詛が付いててだから突然上条さんが現れて黒焦げなって―――」ブツブツ・・・

麦野「あ、これ駄目なヤツだ」タラー・・・

固法「んもぅ……あ、白井さん。もう帰っても大丈夫よ」ヤレヤレ・・・

白井「と言いましても、お姉さまがあの状態ですので」ハァ・・・

御坂「―――ちょ、ちょっと! いつまで咬み付いてんのよ! 替わりなs、ゲフンゲフンッ、離れなさい! 苦しそうでしょ!」ガシッ!

禁書「ふがあがぁっふ!!」ググググ・・・

上条「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」ガクガクガクガク・・・

固法「か、上条くん死んじゃうわよ! 二人とも落ち着いて! 白井さん、結標さん! 能力で二人引き離してよ!」アワワワワ・・・

結標「んー……3人が『くんずほぐれつ』状態だからなぁ。此処を座標移動させるのは難しいわ」ポリポリ・・・

白井「残念ながら、結標……さんに出来ないものは私にも出来ませんの。あくまで『今の』私にはですけど」フンッ・・・

上条(誰でも良いから早く助けろくださいっ……あ、また一つ、大きなオッパイ星が見える……見知った、おっぱ)プツッ・・・ピー・・・


雲川「―――ま、問題ないよ。この世は須らく平和なり、かな」フフフッ♪

      っ『散髪』



神裂「―――散弾銃の暴発、ですか?」キョトン・・・

固法「ええ。何でも、警備員に配備される新型の暴徒鎮圧用のショットガンがジャムって大変な事になったらしいわ」コクッ

結標「へー。散弾銃もジャムんのね。ゲームでしかショットガン使った事無いから分かんないわ」フーン・・・

麦野「学園都市のは非致死性のゴム弾か催涙弾がメインだけど、銃の方が無駄にセミオートだったりするから複雑なのかしら」フムフム・・・


香焼「……ツッコみ不在の恐怖」タラー・・・

絹旗「姉貴さんがスルーかボケに回ると超悲惨ですね……そういえば、昔、『装甲』の強度の実験で一粒(スラッグ)弾をまともに正面から」アハハ

香焼「止めて。聞きたくないっす」ダラダラ・・・

削板「俺も去年当たり、テロ屋と対峙して顔面に多針弾頭(フレシェット)弾ブチ込まれた時は流石に泣きそうに」アハハ

香焼「だから、止めろ」マッサオ・・・

ステイル「相変わらずバケモノだな……あ、そういえばこの前、バードウェイがアスプレイを手に入れて自慢してきた。それを頭に」チラッ・・・

香焼「だから止めろよ! どうせ何も言わずゼロ距離発射してきたってオチだろそれ!」ウゥッ・・・


神裂「―――さて。冗談はさておき、皆さん、ドチラで散髪を?」ジー・・・

結標「ドチラって、普通に美容室よ。まぁそんなに高いとこじゃないけど」コクッ

麦野「あら。アンタ床屋じゃないの?」チラッ・・・

結標「女子でそれはねーわよ。何処の『うぐぅ』よ」ハァ・・・

固法「そのネタ分かる人、どのくらい居るのかしら……とりあえず、都市の美容師もピンからキリまでだからね」コクッ

神裂「ふむ。やはり皆さん、美容室なのですね」ジー・・・

麦野「おいおい……火織ちゃん。まさかテメェ、理髪屋とか自分で切ってるとか言わないわよね」タラー・・・

神裂「流石にそれはしませんよ。ただ、私が人の髪を切ったりはしますけど」コクッ

結標「それマジ? 斬られた子、憐れね」ハァ・・・

固法「漢字が違う気がする……まぁ神裂さん、器用だし、刃物の扱い得意だから大丈夫じゃない」ジー・・・

麦野「でも流石に素人が女性の髪を切るのは頂けないわね。精々、小学生女子か野郎っ子くらいでしょ」チラッ・・・


絹・ステ・削「「「……、」」」チラッ・・・

香焼「な、なんだよ。別に良いだろ。姉さん上手なんだから」タラー・・・

絹旗「いえ……なんか超納得で」フム・・・

ステイル「そういえば『あの子』の散髪も神裂がやってたな」フムフム・・・

削板「俺も香焼のねーちゃんに切って貰うかなー。タダで済みそうだし」フムフムフム・・・


麦野「やっぱりか……んで、当の自分は何処で切ってるの?」ジー・・・

神裂「あー……あれ? そういえば―――最後に髪切ったの、いつだったかなぁと」ウーン・・・

固法「えっ」タラー・・・

神裂「いや、色々と物騒なモノで紙一重で攻撃避けると自然に髪斬られたりして、それで自然に伸びて……また斬られて……うーん」ポリポリ・・・

麦・固・結「「「 」」」

神裂「ええっと……あっ! そうだ! 確か5年前に故郷で神事の際に調髪を―――」

麦野「火織! 今から美容院行くわよ! 問答無用! ついでに傷んだ髪全部トリートメントして貰うまで帰さないわ!」グイッ!!

神裂「ええぇ!? ちょ、な、何をいきなり! だ、大丈夫ですって! 私はナチュラルに……あ、待、ぐへっ!!」ズルズルズルズル・・・

固・結((……女子力ェ))ハァ・・・

はい。とりあえず、此処まで。いつの間にか600越えてたねー。
とりあえず630前後で第Ⅳ話終わらせるかな。

因みに……>>578で予告してるから、寝落ちなんてしてないよ(震え声)

あと、基本、姉一同がメインなのでお題で他キャラ出されるとキツいかも……>>605みたいに無理矢理こじつけになりかねないw

そんじゃ、また次回! ノシ”

        っ『香ちゃん』


結標「―――そういえば最近『香(カオル)』見ないけど、忙しいの?」モグモグ・・・

神・麦・固・五・浦『 えっ 』ピタッ・・・

結標「ん?」キョトン・・・


香焼「……、」ビクッ・・・タラー・・・

絹旗「如何しました? 超顔青いですよ」ジー・・・

削板「何か不味いモンでも食ったか? この前、ステイルの奴が土産で持ってきた『百味ビーンズ』の[ピーーー]味みたいなの?」チラッ・・・

ステイル「お前らが買ってこい言ったんだろ。どうして日本人はハ●ー・ポッターに熱狂するんだか」ハァ・・・


神裂「えぇっとー、そ、そうですね。色々大変みたいで。(そういえば結標さんだけ正体知りませんでしたね。あと香焼の同年代も)」タラー・・・

結標「ふーん。あの子、常盤台だっけ? この前第5位が如何こう言ってたわね。普段は寮に居るの? 白井さん達と同じとこ?」チラッ・・・

五和「あー……ど、どうでしたかねぇ。(ヤバい! 設定忘れました!)」チラッ・・・チラッ・・・

神裂「た、確か、そうだったかなぁと。(浦上! 助けて下さいっ!)」アタフタ・・・

浦上「……んふふっ」ニヤリ・・・

固法(浦上さん、何か悪い事考えてるわね)アハハ・・・

麦野(よしっ。私も浦上ちゃーんに便乗しよー)ニヤニヤ・・・

結標「アンタら薄情ねー。仮にも親戚だか『お仲間』なんでしょ」ゴローン・・・

浦上「イエイエ。親戚なのは香焼だけですヨ。ねー、香焼。今『香』ちゃん、何処に居るんでしたっけー?」ニッコリッ

香焼「うぇ!?」ドキッ!!

絹・ステ・削「「「???」」」キョトン・・・

麦野「ふふふっ。気になるわね―――ねぇ香焼(ジャリボーイ)。『香』に電話出来ないの?」ニヤニヤ・・・

香焼「ちょ?!」ギョッ・・・

結標「ん? まぁ何でも良いけど、元気なの?」チラッ・・・

香焼「そ、そうっすね! 相変わらずみたいっすよ!」ダラダラ・・・

固法「(大変ね、香焼くん)―――因みに『香ちゃん(あの子)』はいつの間に食蜂さんと仲良くなってたの? この前聞いて驚いたわ」チラッ・・・

五和「あははは……何か『色々』あったみたいで。(というより、元々彼女との接触の為にコウちゃんが女装しましたから)」ポリポリ・・・

結標「で。あの子、何処に居るの?」ジー・・・

香焼「ぅ……『香』は普段、都市外に居ますよ。病気と希少能力の検査と診察の時だけ、都市に来るっす」チラッ・・・

神裂・五和((そういう設定だったか))タラー・・・


絹旗「―――そういえば香焼と『香』が一緒に居るとこ見た事無いですね」フト・・・

神・五・固「「「っ!!?」」」ギョッ・・・

ステ・削「「「確かに」」」フム・・・

浦上・麦野「「うっはwwww」」プルプル・・・

香焼「 」ガクガクガクガク・・・

結標「もしかして……香焼くん―――」ジー・・・

香焼「    」アbbbbbbb・・・

結標「―――……香と、仲悪いの? 駄目よ、仲良くしなくちゃ。お兄ちゃんなんでしょ」フム・・・

香焼「                    えっ。   あ、あははは……そうっすね」ピタッ・・・フゥ・・・

神・五・固(((助かった)))ホッ・・・

        っ『堕天使メイド&大精霊メイド』



麦野「―――っつーコスプレ見っけてさぁ。滝壺辺りに着せて浜面のエロ面でも楽しもうかと思って」ゴロゴロ・・・

神裂・五和「「っ!?」」ビクゥッ!!

結標「どったの?」チラッ・・・

神裂・五和「「い、いえ、何でも。(と、トラウマが)」」タラー・・・

麦野「でもあの子『はまづらが喜ぶなら(ポッ)』とか言って普通に着そうだから面白くねぇわ。着る側の羞恥心も大事よね」フム・・・

固法「また馬鹿な考えを」ジトー・・・

麦野「とか言いつつー。美偉ちゃーん、この前紹介したラバーボンテージのコス、真剣に着ようか悩んでたわよねー」ニヤニヤ・・・

固法「んなっ!? 何言ってくぁwせdrftgyふじこlp;@:ッ!」ボンッ・・・カアアァ///

結標「うわぁ。リアルな意味で『コスチュームプレイ』って訳ね」アハハ・・・///

浦上「kwsk」ワクワク・・・///

麦野「色々マンネリ気味だから刺激が欲しいなーとかノロケやがってさぁ」イッヒッヒッ!

五和(しゅ、羞恥を捨てるのも恋愛には必要という事かッ!!)メモメモ・・・

麦野「あははは―――ま、リア充はさておき。結標、アンタ着てみない?」ニヤリ・・・

結標「はぁ? 意味分かんない。何のメリットあんのよ」ジトー・・・

麦野「いや、単に恥ずかしがるテメェの痴態を鑑賞したい」ニヤニヤ・・・

結標「この人格破綻者(レベル5)め……だったら、コイツら姉妹にしときなさいよ。私より『ボンッキュッボンッ』体型なんだから」クイッ

五和「うぇえええぇ!?」ダラダラ・・・

神裂「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理」ガクブル・・・

浦上「これ以上、姉様弄ると精神崩壊しますネ」アハハ・・・

麦野「ったく、皆して根性無しだねぇ」ジトー・・・

固法「じゃあ自分で着ればいいじゃない」ジトジトー・・・

麦野「私が? あっはっはっはっ―――んな公開処刑誰がするか」フンッ・・・

結標「やっぱコイツ、理不尽我儘極まりないわ。今に始まった事じゃないけど」ハァ・・・

麦野「んー、でも折角面白そうなモン見付けたんだから着せたいわね……あ! そうだ!」ピンッ!!

浦上「凄ーく悪い(イイ)顔してますネ。ドレドレ。私にも聞かせて下さい―――んほおおぉ! そりゃオモローですヨ!」ニャハハハッ!!

神裂・五和「「……嫌な予感しかしない」」タラー・・・



  にゃんにゃんおーん・・・・・数日後・・・・・―――


麦野「―――という訳で無理矢理着せちゃいましたー」ドヤァ・・・バッ!!

浦上「それじゃあドーゾー!!」グイッ!!


香焼(香)「んんンンンーッ!?(ふぇええぇ。助けてええぇ///)」ジタバタッ・・・ ← ※香ちゃん:堕天使メイドF&猿轡With手錠足枷!

麦野・浦上以外『  』ダラー・・・

麦野「ついでにオマケも準備したわ! 勃起すんじゃねぇぞ『香』ちゃーん!」ニヒヒッ・・・バッ!!


絹旗「ふァーンふァふァァッ!!(ごらァ麦野ォ! 超ふざけンなってンですよおおォ///)」ジタバタ・・・ ← 小妖精モロメイドF&(以下略)!

香焼(香)「んぁっ?!(ちょ! 最愛さんお尻近い近い近い色々見えてる見えてる見えてる見えてるっ///)」カアアアァ///


固法「―――……私、風紀委員として動いた方が良いかしら」ハァ・・・

    ☆番外編・・・っ『女子力』



佐天「香焼くんって女子力たっぷりだよね」ジー・・・

香焼「意味が分からない」ポリポリ・・・

佐天「だって家事全般出来るし、気配り出来るし、謙虚だし、同性からも好かれるし、可愛いし」ジー・・・

絹旗「まぁ私ほどじゃないですけど、可愛い方ですね」ジー・・・

香焼「後半でより一層意味が分からなくなったよ。最愛も同意しないで」ハァ・・・

佐天「やっぱ3人もお姉ちゃん居る中で生活してくと自ずとそうなるのかなぁ」フム・・・

香焼「いや、言われる程姉達と長年暮らしてないからね。彼女ら、本当の姉って訳じゃないし。あと素が女子力低い連中だし」ノーノー

絹旗「じゃあ何で香焼は女子力高いんですか? ハンメンキョーシ的な?」キョトン・・・

香焼「高くないっての。まぁ家事全般は一人暮らしや下っ端生活長いとそうならざるを得ないんすよ」ポリポリ・・・

絹旗「ふーん……そういえば浜面も下っ端やってるせいか、何気に女子力高いですからねー。全っ然、可愛くはないですけど」フムフム・・・

佐天「でも、確かに学園都市に住んでる学生って嫌が応にも一人暮らしメインだからそうなるか」ハハハ

香焼「だからある程度几帳面なら誰でも佐天さんの言う『女子力』に当て嵌まるっす」ヤレヤレ・・・

絹旗「……ぅ」タラー・・・

香焼「あっ。(家事全般が出来ない子が目の前に)」チラッ・・・

佐天「え、あ、ほ、ほら! 最愛ちゃんは可愛いでしょ! それが女子力で―――」アタフタ・・・


通りすがりのカブトムシさん(ちょい黒)『コミュ障・自立出来ない・でも基本誰かに依存して無いと生活できない超美少女さんねぇ』ブゥゥゥン・・・


絹旗「―――……、」ウルウル・・・

佐天「そ、そんな事無いよ! 最近は、ほら、友達も増えてきたしさ!」アタフタ・・・

香焼「滝壺さんとかのお手伝いもしてるんでしょ! あと、えっと、ウチで五和に料理教わったりしてるし!」タラー・・・

絹旗「……どうせ、超コミュ障ですよぉだ」ウルウル・・・

香焼「(うわぁ超ネガティブった!) 最愛は、結構世話焼きでしょ! それも女子力だってば」チラッ・・・

佐天「そ、そうだね。それに、完璧な女子よりちょっとくらい欠点あった方が可愛らしいよ」ポンポンッ・・・

絹旗「……、」ウー・・・

佐天「わ、笑ってくれないとー、佐天お姉さんが、その見えそうで見えないギリギリのミニスカ捲っちゃうぞー」ワキワキ・・・

絹旗「ッ!?」バッ///

香焼「ちょっ!」カアアァ///

佐天(んまっ! きゃわわ!)ニヤニヤ・・・

絹旗「さ、佐天は変態です……女子力というよりオヤジ力高いですよ」ジトー・・・///

佐天「んふふーっ。お嬢ちゃん可愛いねぇ、そっちのお嬢ちゃんもー。おじさん、小さい子は好きだぞぅ」ハハハ

香焼「はいはい……って、小さい言うな」ジトー・・・

絹旗「佐天は私らと同い年なのに超ガタイ良いですからね。身長も、胸も……超羨ましい。明日からガテンって呼んで良いですか」ジー・・・

佐天「地味に傷つくよ……まぁでも、小さい娘の方が好きって男子も居るしさ」チラッ・・・

絹旗「私は香焼より超デカくなる予定ですので」ムンッ!

香焼「……多分、無い」ハァ・・・

佐天「ははは。まぁ大きくなれなかったら佐天さんが最愛ちゃんの事貰ってあげるよ。私、小さい娘好きだから」ナデナデ・・・

絹旗「っ!? 佐天は白井と同類だったんですか!? 女子力のベクトル間違えちゃダメです!」アワワワ・・・///

香焼「最愛さんや、冗談だからね。佐天さんも最愛からかうの止めて。この子、何でも信じるから」ヤレヤレ・・・

   番外編☆その②・・・っ『ジコチュウ』



トール「―――だから超能力者(レベル5)ってジコチューだよな」ゴロゴロ・・・

上条「まぁ何となく納得です。まだマシなのは御坂くらいか」ゴローン・・・

トール「いやいや、ミコっちゃんも大概ジコチュウだぜ。内心読んだけど」グデェ・・・

上条「お前のその『心転身の術』みたいなの結構怖いよな……でもさぁ、そしたらトールもジコチュウな方なんじゃないのか?」チラッ・・・

トール「そうだよ。俺ってば自己共に認めるジコチュウだぜ。ミコっちゃんがピカ●ュウだとすりゃ、俺はライ●ュウだ」ビリビリ・・・

上条「『かみなり○いし』使えば御坂がお前になるのか」ハハハ・・・

トール「残念。ミコっちゃんはアニメ使用のピカ●ュウだから進化しません」フフフッ

上条「レベル5,5のスーパーミサカさんは?」フム・・・

トール「そんなんあるの? 『意識』には無かったぞ」キョトン・・・

上条「昔なったぞ。人間ヤめてた。トールも人間ヤめてるし、やっぱアレがライ●ュウモードか」フムフム・・・

トール「俺にとっての『かみなり●いし』はミョルニルだけど、ミコっちゃんにもソレがあったか……流石カミナリ属性」コクッ

上条「なんか納得してらっしゃる―――話は変わるが、ンーさん、御坂よか髪長いよな」ジー・・・

トール「触るなよ。手入れ大変なんだから……あと『ンー』言うな」ジトー・・・

上条「良いじゃん。ンーさん恰好良いだろ。お前以上にチートだし」イジゲンイドウトカ・・・

トール「いや、アレってばガチの神さん設定だろ。俺あくまで魔術師よ」ノンノン

上条「全知全能の魔術師なんて居てたまるかっての……あ、全農か」コクッ

トール「農協みたいに言わないでくれる? 話戻すけど、お前は如何なってんだ?」ジー・・・

上条「え? 俺、例えられるポ■モン居なくね?」ポカーン・・・

トール「そこまで戻すな。それについてはその内『ウニポ■モン』出るから待ってろ―――じゃなくて、髪だ。髪」ビシッ

上条「はひ?」キョトン・・・

トール「それ、どうなってんの? ワックス? 水被ったら如何なんの?」マジマジ・・・

上条「……さぁ。俺が知りたい」ポリポリ・・・

トール「アカシックレコードレベルか。凄いな。禁書目録のブラックホール胃袋並に謎パネェ」ハハハ

上条「うっせ。あの無尽蔵と形状記憶針髪を一緒にすんな……謎といえば、トオルさん、アンタ何歳なの?」ジー・・・

トール「そのイントネーションやめろ。ったく……女性に年齢聞くとか失礼なヤツだな」ハァ・・・

上条「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おん、な」ピタッ・・・ダラダラ・・・

トール「……、」ニコッ

上条「 」アbbbbbb・・・

トール「w……ぷっ! 冗談だよ。冗談! こんなダンディな女性がいるかっての。なんなら●ンコ見るか? 雷神級だぞ」アハハハ!

上条「ふざ……あーマジでビビったわ。いや、ぶっちゃけ中性的だからドッチとも取れるなぁと」タラー・・・

トール「ま、俺見た目通り『両刀』だから、カミヤンなら全然イケるぜ。しかもジコチュウだからノンケでもお構い無しに―――」ペロリ・・・

上条「   」ゾゾゾォ・・・

トール「―――喰っちま……だから冗談だっての! 真に受けるなよ、タコ。いや、ウニ」ハァ・・・

上条「お前の冗談は心臓に悪いんだよ! 真顔で冗談言うの止めてくれ!」グデェ・・・


   ヤンヤヤンヤッ! ワイヤワイヤッ!


禁書「―――……部屋の中から危険なにおいがプンプンする。迂闊に入れないんだよ」グヌヌゥ・・・

スフィンクス「にゃぅ」ビリビリ・・・イヤイヤ・・・

へい。ストック切れた……超お題プリーズします。

出来れば単語で超お願いします。人名入ると姉ーズ出し辛いんで! 超よろしくです!

     っ『秋刀魚』



結標「―――サンマ食べたい」チラッ・・・

固法「人ん家来て早々、何を抜かしてるの」ハァ・・・

結標「だって小萌んとこの台所で魚焼けないんだもん」グデェ・・・

神裂「一応、ちゃんとしたコンロありましたよね」フム・・・

結標「魚用のコンロ、油ギットギトで使えたもんじゃないわ。だから、此処で、サンマ喰いたい」チラッ・・・チラッ・・・

麦野「がめつい女。スーパーの惣菜コーナーで既製品買って我慢しろ。もしくは食堂行きなさい」ヤレヤレ・・・

結標「それじゃあ喰った気しないの。こう、家で焼いたアレが食べたいのよー」ジー・・・

神裂「うーん、秋刀魚ですか……まぁ初物を食べたい気持ちは分かりますけど、今日の献立当番は香焼ですから」ポリポリ・・・

結標「今日の食材は準備済みってか。まぁ別に今日じゃなくても良いわよ。お願ーい。勿論お金は出すからさぁ」キラキラ・・・

麦野「守銭奴のアンタが金出すとか言うと、血の雨でも降るんじゃないかって思うわ」ジトー・・・

神裂「オッカナイ事を……しかし、年々秋刀魚は値上がりしてますよね。長崎(実家)の方で、アジは結構獲れたみたいなんですが」フム・・・

麦野「都市産の養殖魚でも良いんじゃない。大きさも値段も幅広く育ててるっぽいし、安定してるわよ」コクッ

結標「ダメ。んなバイオなサンマ、喰った気しないじゃない。魚っつったら海泳いで何ぼでしょ!」フンッ!

麦野「コイツ面倒臭ぇなぁ。ならテメェで仕入れてこいよ、アホ」ジトー・・・

固法「ま、まぁ気持ちは分からなくも無いけど……確かに贅沢ね」ハハハ・・・

神裂「むぅ。では妥協点を探しましょうか。とりあえず、初物国産では無くとも良いなら多分―――」ポリポリ・・・


香焼「ただいま帰りましたー」ガチャッ・・・

絹旗「ただいまです」トコトコ・・・

もあい「にゃー」ブラブラ・・・


神裂「―――っと、夕飯係が公園から帰ってきましたね。おや? その大根は?」チラッ・・・

香焼「今日の献立で買い忘れてたんで、帰りがてら買ってきました。今支度しますね」テクテク・・・

麦野「おう、早くしろー。さっさと作れー。腹減ったー」ゴローン・・・

絹旗「何様ですか。人ん家なのに超ふてぶてしいですね。香焼、麦野の魚無しで良いですよ」ジトー・・・

結標「あはは。アンタも人の事言えないじゃない……って、今日魚なの?」キョトン・・・

香焼「はい。あ、麦野さん、すいません。焼くのにちょっと時間掛っちゃいますんで、適当にお菓子摘まんでて下さい」テクテク・・・ガチャッ・・・

固法「何のお魚?」チラッ・・・

絹旗「さんまですよ。さっき皆さん居ない時、見せて貰いましたけど、一匹あたりが超デカいです」コンナーン!

結標「っ!?」バッ!!

神・麦・固「「「……Oh」」」ハハハ・・・

香焼「宮城と岩手の親戚が同時に初物送ってきちゃって。かなり量有るんで、お刺身に降ろしたりしても余ったら皆さんに配りま―――」

結標「香焼くーん大好きーっ! 愛してるー!! 結婚しよー!!!」ガバーッ!!

香焼「―――すぉおわぁっ!!? あ、淡希さん?!」ムギュウウゥ・・・グヌヌゥ///

絹旗「ちょっ、何いきなり超発情してんですか超淫売女あぁッ! 香焼から離れなさああぁいッ!! 抱きつくなあああぁッ!!!」フシャアアァーッ!!


   ギャーギャーギャー!! ワーワーワー!! ドンガラガッシャーンッ・・・・・


麦野「難とも、ひょうきんな女だわ……あ、絹旗超ブチギレでマジ血の雨降りそうね」ヤレヤレ・・・

固法「冷静に見てないで止めるの手伝って! あ、こらっ! 香焼くん窒息しちゃうでしょ!」アタフタ・・・

    っ『じぇじぇじぇ』


固法「―――ふぅ。ごちそうさまでした。美味しかったわー」ホッコリ・・・

香焼「お粗末さまっす。お土産に何尾か持ってってくださいね。五和達の分差っ引いてもまだまだあるんで」コクッ

結標「ホントありがとね。お礼にパンツあげちゃう!(小萌の)」ニコッ

神裂「居候主泣かせる様な事は止めて下さい。あと、本気で絹旗さんに殺されますよ」ハァ・・・

麦野「ヤるなら外でヤってよ。ま、馬鹿はさておき……三陸産ねぇ」ゴロンッ・・・

絹旗「しませんよ、超馬鹿馬鹿しい―――あー、サンリクさん、って誰ですか?」キョトン・・・

香焼「陸前・陸中・陸奥―――分かり易く言えば青森、岩手、宮城の海産物って事だよ。今言った3県は前に地理教えた時覚えたよね?」チラッ・・・

絹旗「え、えっと……上の方でしょ。北海道の下の方です」タラー・・・

結標「……長野と群馬の近くよね」ボソッ・・・

固法「長野と群馬に海無いわよ。あと、最愛ちゃん。上とか下じゃなくて、北とか南で覚えましょう。因みに、東北地方ね」ハァ・・・

麦野「この子、文系課目はカラッキシだからねぇ。このまま行くと結標みたいな残念大能力者になっちゃうわよ」フフフ・・・

絹旗「っ!? こ、香焼! もっと社会と国語、教えて下さい!!」タラー・・・

結標「おい、糞道具屋共」ジトー・・・

神裂「まぁまぁ―――して、三陸産が如何しました?」チラッ・・・

麦野「ああ、ちょっと前にアッチの科学者連中が海洋調査で私の力借りたいって言って来てさ。出向したのよ……例の『汚染』について」ゴローン・・・

固法「麦野さん、放射能については専門家だものね。原子力に関しては世界一?」ジー・・・

麦野「自負してる。兎に角、適当に診断して戻ってきたわ。もうちょい東北旅行してきたかったんだけど、理事が五月蠅ぇの何の」ハァ・・・

絹旗「だからこの前2週間くらい家空けてたんですね。てか、適当って……大丈夫なんですか?」タラー・・・

麦野「どうせ私が正論書こうが、この国の官僚さんが都合良く書類書き換えるから如何でも良いのよ」ハハハ

神裂「その分野では最高権威(原子崩し)が調査したってラベルが欲しかったんでしょう。しかし真面目な役人さんかもしれませんよ」フム・・・

結標「何処の大人も似たようなモンね。ところで、実のところは如何だったの?」ジー・・・

麦野「どうせ難しい事言っても分かんないでしょ。ま、簡単に言えば……私が喰ったり泳いだりする分には平気だから問題無しよ」フフッ

固法「いや、被爆の恐れ皆無の麦野さん基準で言われても。でも、その気になれば浄化作業してくる事も出来たんじゃない?」ジー・・・

麦野「んな金にならない事やらないわよ」サラッ・・・

結標「そうね。利口だと思うわ」グデェ・・・

香焼・神裂「「……、」」ウーン・・・ハァ・・・

絹旗「そういえば話変わりますけど、確か『じぇじぇじぇ』のドラマも上の……じゃなくて北の沿岸が舞台でしたよね?」フム・・・

固法「ええ。って、最愛ちゃん、B級映画以外も見るのね」チラッ・・・

麦野「ソイツ、基本ヒッキーだからTVも見るわよ」チラッ・・・

絹旗「超余計なお世話です。それで、香焼の親戚さんは其処ら辺の海からさんまを送ってきたんですか? 潜って!?」キラキラ・・・

香焼「何を期待してるか想像は付くけど、魚を獲るのは残念ながら海女(アマ)さんの仕事じゃないよ」ハハハ

絹旗「へぇ……じゃあ生で現地の『じゃじゃじゃ』って聞いた事あるんですか!?」キラキラ・・・

香焼「『じぇっ』ね…(どうしよう。現地の人で使ってる人殆ど居ないなんて言えない)…あー、あった様な気がするよ」ポリポリ・・・

結標「じゃあ、実際あんな若い海女って居るの?」チラッ・・・

香焼「ど、どうなんでしょうね。自分は現地に居座った事無いんで難とも言えないっす」ウーン・・・


麦野「―――私、ああいう光景見た事ある。『~~出身です』って言うだけで方言話してとか伝統舞踊やって見せてとか頼まれる地方人だ」ピッ

固法「あはは……そういうのって大抵出来ないし大変よね。しかも、今は全く真逆の地方(九州なのに東北)のネタ振られてるんだから」タラー・・・

神裂「始めて英国行った時を思い出します……日本人というだけで『Sushi! Samurai! Hentai!』とか騒がれましたから」シラー・・・

        っ『楽天優勝』




神裂「―――東北といえば、楽天が遂に優勝しましたね」チラッ・・・

麦野「ああ、野球? そいやぁ騒いでたわね。おかげで楽天商品最大77%offとかやってるから助かるわ」フフッ

結標「Amazon派の私にとっちゃ如何でも良い話だわ。てか、アンタ野球見るの? 何処ファンとかあったりする系?」フーン・・・

神裂「スポーツ全般好きですよ。ファンは……強いていうならホークスでしょうか。九州出身的に」コクッ

香焼「西武との3位争いが熾烈っすからね。今年は見ててハラハラしますよ」フフッ

絹旗「そういえば浜面も似た様な事言ってましたね。まったく、私は別の番組観たいのにチャンネル離さないとか超ふざけてます」ムゥ・・・

固法「先輩も、野球中継やってる時にチャンネル変えようとすると機嫌悪くなるわ。男の子ってそうなのかしら」ハハハ・・・

麦野「面倒臭ぇ生き物だ……あ、そういえば昨日第5位の奴が『キヨシ辞めないで~。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン;』とか呟いてたわ」ハハハ・・・

香焼「横浜の監督っすね。操祈さん、大のベイスターズファンっすからね」ポリポリ・・・


浦上「―――二次で第5位さんがハマファンっていう風潮は何なんでしょうかネぇ」ニャハハ

五和「えー? なにー? バイク運転してて何言ってるか聞こえなーい!」ブロロロロロォ・・・

浦上「あと上条さんがヤクルトファン。他のキャラにバラつきあっても、この二人はこの固定が多い」フフッ


絹旗「―――……ねぇ香焼。ミサキって、誰ですか?」ジトー・・・

香焼「え? 食蜂操祈さんっすよ……あっ」ピタッ・・・

神・麦・固(((あちゃー……お馬鹿っ)))アチャー・・・

結標「香焼くん。アンタって子は、あの劇物にまでフラグ立ててたの?」ハァ・・・

香焼「え、あ、そ、その、『香』が! 食蜂さんと仲良くて! よく名前で呼び合ってるから、つい伝染っちゃって!」アタフタ・・・

絹旗「……、」ジトー・・・

香焼「うっ……は、話戻るけど! 小川監督も辞任みたいっすね。宮本も引退だし、上条さんが溜息吐いてましたよ」ハハハ・・・

神裂「ヤクルトは此処最近散々ですからね。故障が大きいんでしょうけど……しかし、バレンティンは凄いです」コクッ

麦野「何言ってっか分かんね」ポカーン・・・

固法「あんまり野球興味無い人からすればそんなモノよ」ポリポリ・・・

絹旗「あ、でも飲む方のヤクルトは超好きですよ。滝壺さんが必ず買ってくるので私も飲んでます」コクッ

麦野「あの子、薬中でヤク中(ヤクルト中毒)だから」ヤレヤレ・・・

固法「個人的にはR-1の方が高いけど好きだわ―――何で乳酸菌飲料の話に逸れてるのかしら」ハハハ・・・

結標「んな高いヤツじゃなくてビックルとか日清ヨークで充分よ。んで、野球の話だけど、実は私草野球チームの監督やってんのよ」ハッハッハッ!

神裂「意外ですね。プロ野球はそんなに興味無くても、プレイヤーとしては別だという事ですか」フム・・・

結標「まぁ形だけね。とりあえず『ウチのチーム』の連中で日向ってのがいるんだけど殆どソイツに任せっきり。私は檄を飛ばす役」フフーン・・・

香焼「ああ。あの時(『残骸』事件時の武装チーム)の……相変わらず楽しそうっすね」ハハハ

結標「あら、香焼くんならいつでも歓迎するわよ。今キャッチャーとセカンドと外野一人、それに控えピッチャー募集してる」ニコッ

絹旗「駄目です。ソイツのチーム入るくらいなら浜面の朝野球チームの手伝いしてやってください。兄貴さんも居ますから」チラッ・・・

固法「半蔵くんが監督のチームね。先輩寝坊助なくせに、朝野球だけはしっかり遅れず参加するんだから」ハァ・・・


麦野「ほぇ……私も監督なってチーム作ろうかなぁ。エースで4番でキャプテンは火織、アンタね」ニコッ

神裂「ではまず、私の球を受ける事が出来るキャッチャーを準備して下さいね―――ああ、丁度良い所に丈夫な左腕が」ジー・・・

麦野「オイ馬鹿止めろ。剛速球でこの義手壊す気だろ」タラー・・・

香焼「姉さん、120球くらい続けて150㌔台の球投げられますからね。マーくんも真っ青っすよ」ハハハ・・・

          っ『i-Phone』



固法「―――ホークスファンといえば……神裂さん、スマホじゃないわよね」ジー・・・

神裂「え? 何故ホークスファンがスマホで有る必要が?」キョトン・・・

固法「いや、ソフトバンク的に。海外生活長いんだったらi-Phoneなのかなぁって」コクッ

香焼「姉さんの中でホークスはダイエーで止まってますから。あと姉さんはDoCoMoっすよ」ハハハ

麦野「でも、今度ドコモでもi-Phone出すって話じゃない。コレを機に乗り替えたら」スッ・・・

神裂「うーん、スマホですか……難しそうで抵抗があるんですよ」ポリポリ・・・

結標「最初はそうよね。でも慣れちゃうとガラケーがうっとおしく思える程楽よ」コクッ

神裂「うーん。考えておきます。まだ二年経ってませんから、次の買い替えで視野に入れましょう……因みに皆さん、スマホですっけ」ジー・・・

固法「というより、ガラケーが希少種よ。折り畳み式でも、スマート機能付いてるのが殆どだし」ピッ

麦野「だったら、タブレットから入ってみるのは如何かしら。比較的分かり易いわよ―――ほれ、i-Pad」スッ・・・

神裂「これがですか……そういえばローラがしょっちゅう弄ってましたね」ジー・・・

香焼「主教様は結構近代的なモノ好きっすからね。てか、確か五和も持ってましたよ。あとステイルもスマホに替えてました」チラッ・・・

神裂「えっ……やはり、オールドタイプと馬鹿にされる前に替えるべきかもしれませんね」ウーン・・・

絹旗「別に馬鹿にはされないと思いますよ。電話とメールだけならガラケーでも問題無いでしょうし」コクッ

結標「アンタは逆にその機能必要無いんじゃない? 仕事以外で携帯使わないんじゃないの?」ニヤリ・・・

絹旗「如何いう意味ですか?」ギロリ・・・

固法「結標さん、喧嘩売らないの―――神裂さん。どうせなら都市製の機種に替えたら。結構良い機能付いてるわよ」コクッ

神裂「海外でも使えるんですか?」フム・・・

麦野「月面でも地底でも海中からでも使えるわよ。あと、壊れにくい。もってこいじゃない?」フフッ

神裂「確かに。結構壊す事が多いので」ムゥ・・・

香焼「姉さんの使い方荒いんすよ……あ、自分もそろそろ買い替え時だなぁ。次如何しよう」ジー・・・

固法「……そういえば、御坂さんがペアプランってので買い換えてたわね。上条くんと」チラッ・・・

神裂「 」ギチッ・・・

麦野「おい、火織。言ってる傍から携帯悲鳴上げてるわよ」タラー・・・

絹旗「(ペア、プランだと!?)……あー、私も確か、そろそろ買い替えが―――」

結標「じゃあ香焼くん。私と一緒にペアプランで替えようか?」ニコッ

香焼「え? でも、淡希さん、まだまだ携帯新しいっすよね。態々合わせなくて良いっすよ」チラッ・・・

結標「小萌のが古いから、私のあげて、私が最新機種に替えるわ。気になってた機種の最新型出たっぽくてソッチ欲しいのよ」スッ・・・

香焼「どれどれ……あっ! これ、自分も興味あったんすよ!」キラキラ・・・

固法「それ、白井さんのと同じタイプね。確かに恰好良いけど、色々面倒らしいわよ」ジー・・・

香焼「でも、魅かれるんすよねー。あの未来的な画面表示とか耳装着とか。男子的に」ジー・・・

結標「男の子じゃなくても恰好良いと思うわ。じゃあ今度―――ん?」チラッ・・・


絹旗「―――……ぐぬぬぅ」ウルウル・・・ギリギリ・・・


結標「ぅ……あー。やっぱ廉価版出るまで粘ろうかしら。良く見たら高いのね」ハハハ・・・

香焼「え? あ、そうっすね」フム・・・

神裂「今にも泣き出しそう&プッツンしそうな絹旗さんを見てペアプラン控えましたね」タラー・・・

麦野「結標のヤツ、何だかんだでガキの涙に弱いわよね。i-Phone7出る頃にはあの子の無き脅しも通用しなくなるでしょうけど」ハハハ

 ※ 微妙に劇場版ネタバレ注意!




     っ『歌姫』



麦野「―――『じぇじぇじぇ』の話題に戻るけど、あれって主人公がアイドルだったわよね」ゴローン・・・

固法「ローカルアイドルね。海女さんとアイドルと、そんな感じの」コクッ

結標「都市的にいえば、御坂さんが電力発電とアイドル兼任するみたいな?」ウーン・・・

絹旗「それは超違うと思います……そういえば、一時期『ARISA』って歌手だかアイドルが超ブームしてましたよね」ニャー・・・

神裂「……、」ピタッ・・・

麦野「そういえば凄かったわね。結構良い曲出してたみたいだけど、何処行ったのかしら」フム・・・

固法「最近は新曲出してないわね。あ、御坂さんや白井さん達と知り合いだったから聞けば分かるかも」ピンッ

香焼(鳴護アリサ……いや、シャットアウラ=セクウェンツィアか)チラッ・・・

絹旗「佐天の情報(噂)によると、未だに何処かで路上ライブ活動してるみたいですよ」コクッ

結標「路上ライブ? 『ARISA』ってメジャーデビューしたんじゃないの? なのに路上ライブ?」ポカーン・・・

固法「まぁ昔からの路線を変えずに頑張るアーティストって多いから。でも、何処で活動してるのかしらね」フム・・・

香焼(姉さん、知ってるんすか?)チラッ・・・ボソッ・・・

神裂(いえ。消息不明です。多分、アレイスターやローラでさえ足取りを掴めていません)ボソッ・・・

麦野「まぁ一発屋なんて山ほど居るしな。あ、私もプロデューサーやって一山当てようかしら!」ニヤリ・・・

結標「麦野Pとか、嫌な予感しかしないわ」タラー・・・

麦野「路線は正統派の歌姫路線と、キャッキャウフフ騒がれるアイドルグループ路線の二つ! 面子如何しようかしら」フムフム・・・

固法「まーた危ない事考えて……だからそういう事する時はまず自分が先頭立ってからにしないさいって」ハァ・・・

麦野「私はアイドルってガラじゃないの。よーし……絹旗! アンタと『香』でユニット組みなさい!」ビシッ!

香焼・絹旗「「っ!? 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理っ」」ブルブルブルブル・・・

神裂「人見知りの絹旗さんと香や……『香』を壇上に立たせるって発想が間違ってます」ハァ・・・

麦野「大きなお友達にウケりゃ良いんだよ! 『ワシャワシャ』とか『カモカモッ』とか言ってろ」ニヤリ・・・

絹旗「おい馬鹿止めろ」ダラダラ・・・

結標「じゃあ小萌も入れなさい。更にウケるわ」ハハハ

香焼「この人も駄目だ! だったらステイルに歌唄わせてた方がよっぽど王道っすよ」ハァ・・・

固法「もしくは初春さんとかね―――まぁでも、やっぱりプロの上手い人が相応の舞台に立つのが一番よね」フフッ



   ―――何処かの路地裏・・・・・


シャットアウラ「―――よろーこびーもー悲ーしみーもー・・・分ーかーち合ってさぁ重ーねてー行こー♪ ――……ありがとうございました」ペコッ・・・

  ワーワー! ガヤガヤ・・・スゲー! 8888888・・・・・

削板「おおおおぉ! 感動した! 姉ちゃん歌上手ぇな! 良い根性してたぜ!」888888!

シャットアウラ「あー……ありがとう。でも『私』はまだまだ素人なんだ。もっと頑張らないと」ポリポリ・・・///

鳴護(ふふふっ。上手上手。自信持って、表で活動すれば良いのに。あと、黒以外の服も着ようよ)クスッ・・・

シャットアウラ(う、五月蠅い。もう少し実力を付けてからだなぁ……服装については文句言うな。私の趣味だ)ムゥ・・・///

削板「いや、充分通用すると思うぞ。ところで……姉ちゃん、誰と話してたんだ?」キョトン・・・

アウラ・鳴護「(えっ!?」)ピタッ・・・タラー・・・

     っ『倍返し』



結標「―――『じぇじぇじぇ』もだけど、あと覇権握ったのは『半沢』よね」コクッ

固法「話題性半端無かったわね。些か生々しい会社事情だった気もするけど」フム・・・

麦野「実際の企業なんつったらもっと生々しいだろ。特にこの街の企業は、特許云々で周り出し抜こうとしてるし」ハハハ

神裂「都市の外からしてみれば技術が2~30年未来を行ってますからね。ただ、銀行はそう大差無いのでは?」チラッ・・・

香焼「いや、この街の銀行は凄いっすよ。お金を預けて年1,10~1,20の利率っすから。今時ありえません」ポリポリ・・・

固法「多くの予見能力者が入社してるもの。融資や投資の羽振りも良いし、金廻りが良くなって利率もあげられるのね」コクッ

絹旗・結標「「……だ、大体分かった」」タラー・・・

麦野「理系馬鹿共。無理に頭使うな……いや、でも本当は経済理論って理文の両分野なのよね。数文、か」フム・・・

神裂「お金の問題は学問というより生活に基づく事が多いので、研究には向かないのが実でしょう」チラッ・・・

固法「それでもこの街なら研究対象になるのだけどね。稀ではあるけど」ゴロン・・・

結標「お、おぅ―――さておき、アレも決め台詞みたいなのあったわよね。『○倍返しだ!』だっけ」コクッ

香焼「ありましたね……でも、正直それを言われると別なのが浮かんじゃうんすよ」ハハハ・・・

絹旗「別なの?」キョトン・・・

香焼「うん。ゲームの……最愛も『EXVS』持ってたでしょ」チラッ・・・

絹旗「ああ、ガンダムのゲームですか。アレ、浜面の借りてるだけなのでそんなにハマってないです」ジー・・・

神裂「分かりません。どのキャラですか?」キョトン・・・

固法「あー、Ez-8ね。先輩がBLU-ray BOX買ってたわ」コクッ・・・

絹旗「兄貴さん、超お金無いのにそういうのばっか買って」ハァ・・・

固法「ホント、男の子ってガンダムとか仮面ライダーとかウルトラマン好きよね。その所為で衝動買いが」ヤレヤレ・・・

麦野「せめてバイクだけにしとけっての。ただでさえヒモなのに。もう美偉がしっかり財布と通帳管理しないと駄目ね」ハァ・・・

固法「い、一応フリーターよ……そういえば、あの話の主人公の渾名も『アマちゃん』だったわね」チラッ・・・

結標「何その繋がり」ハハハ

香焼「確か名字がアマダなのと、考えが甘くて優しいから、それを掛けて『アマちゃん隊長』でしたね」コクッ

麦野「じゃあ坊やも『アマちゃん』ね。天草だか何だか出身だし」ニヤリ・・・

香焼「……何が言いたいんすか」ジトー・・・

固法「まぁまぁ。でも、実際あの名前って『天草四郎』からきてそうよね。やっぱり色々近いわね」フフッ

結標「私でも知ってるわ。隠れキリシタンだか何だかでしょ。よくゲームに出てくる。魔王役とかで」コクッ

神裂(彼の聖人が魔王、ですか)フム・・・

絹旗「因みに、香焼がよく『天草式の仲間』如何こう言ってますけど、関係あるんですか? あとキリシタンって言ってましたよね」チラッ・・・

香焼「あー……話すと長くなるからその内ね」ポリポリ・・・

麦野「そいやぁ火織も十字教徒だったわね。長崎出身だし、やっぱそこらだと教徒多いの?」フム・・・

神裂「(実は教皇なんですけどね、私)―――いえ、やはりこの国だと十字教徒はマイナーですよ。というか宗教人がマイナーでしょう」コクッ

固法「日本人は多神仏教か無神論者が殆どだものね。この街に至っては科学信仰だし……神様も涙目かしら」ハハハ・・・

絹旗「神様も泣くんですか?」キョトン・・・

香焼「どうだろう。ただ―――『神の子』は人の倍、泣き虫だと思うよ。立場上、誰にも見られず、ひっそりとしか泣けないけどさ」ニコッ・・・

神裂「むぅ……生意気」コツンッ

香焼「あ痛っ」フフッ・・・

一同『???』ポカーン・・・

  っ『カステラ』


  ブロロロロロォ・・・・・


五和「―――ただいま帰りましたー」ガチャッ・・・

神裂「お帰りなさい。随分遅かったですね」チラッ・・・

五和「いやぁ弓道部の子に誘われて少々弦を弾いてたらこんな時間に」ポリポリ・・・

浦上「ホント、お姉は色んな部活から勧誘受けますからネ。って、ありゃ……お夕飯食べ終えちゃいましたか」チラッ・・・

香焼「うん。申し訳無いけど皆お腹空いてたから。すぐ準備するから着替えてきちゃって」テクテク・・・

五和・浦上「「はーい」」ヌギヌギ・・・

香焼「此処で脱ぐな! 洗面所か寝室行け!」ビシッ!

麦・固・結(((おかんだ)))ハハハ・・・

絹旗(やっぱ超女子力高いですね)ジー・・・


 にゃーん・・・・・


浦上「―――そいやぁ、実家からお中元品届いたんでデザート代わりにでも皆さんで食べて下さい」モグモグ・・・

香焼「食べながら話すな。何処に置いたの?」チラッ・・・

浦上「私の鞄に入ってます。梱包してあるヤツですヨ」クイッ

神裂「私が取りましょう―――ほぉ。冷やしカステラ」ガチャン・・・

麦野「何それ」ジー・・・

浦上「読んで字の如くですヨ。長崎名産……といってもまだまだローカルですけど、これまた美味しいんですって」ムフフッ

五和「冷凍で届くんですけど、少し解凍してから食べるんです。アパートから持って来たんで丁度良い溶け具合かと」コクッ・・・

結標「へぇ。これまた一日に二品も美味しいモノ食えるなんて、帰りに雨でも降るんじゃないかしら」ハハハ

絹旗「頭上から鉢植えとか電線とか降ってくるんじゃないですか、日頃の行い的に」ジー・・・

結標「んなモン私の能力でヒョヒョイのヒョイよ。アンタこそ……まぁアンタも無事か」ハァ

固法「馬鹿な事言ってないで頂きましょう。切り分けてあげるから。香焼くん、包丁貸して」テクテク・・・

浦上「あ、因みにソレすんごく牛乳と合いますヨ。浸して食べると尚好し」ニャハハ

固法「……ほぉ」キランッ・・・

麦野「牛乳フェチの眼鏡に掛ったわね―――そういえば『カステラ』って和製英語なのよね」ジー・・・

絹旗「和製英語?」キョトン・・・

香焼「日本発祥の英語風日本語っすよ。例えば『アイスキャンディ』とか『サラリーマン』とか『ベビーカー』とか」アレコレ・・・

五和「能力の読み方(ルビ)も適当に取って付けた感ありますよね。さておき、カステラの場合は和製英語っていうより勘違い英語です」コクッ

神裂「正式には英語では無くポルトガル語ですね。諸説ありますがカスティーリャ地方から由来されてると思われます」ウンヌン・・・

結標「ふーん。ま、何にしろ日本に上手いモン伝えた渡来人は偉いわね」モグモグ・・・ウメェ!

麦野「そいつぁ同意する。鎖国なんてするもんじゃないわよね。視野が狭まるわ」ヤレヤレ・・・

浦上「学園都市の人間がそれを言っちゃいますか」ハハハ・・・

固法「確かに技術流出を防ぐ為とはいえ、世界の中で……日本の中で鎖国してるって状況が異常かな」ポリポリ・・・

神裂「しかし、開いたら開いたで日本政府が大きい顔し出しますから、今の在り方で丁度良いのでしょう」フム・・・

絹旗(うーん……さっきから何言ってるのか、よく分かりません)タラー・・・

香焼「(最愛が話付いていけてないな)……まぁ甘いモノが美味しければ何でも良いんじゃないっすか」チラッ・・・ハハハ・・・

一同『そうですねー』モグモグ・・・

      っ『おっぱい』


 ワンヤワンヤ・・・ガヤガヤ・・・キャッキャウフフムッキュンムッキュン・・・・・

絹旗「……、」ジー・・・チンマリ・・・


神裂「―――しかし、内定が取れないというのも大変ですね。能力主義の弊害ですか」フム・・・ドカンッ!

麦野「―――だからさぁ。素直に私のコネ使いなって。悪い様にはしないから」グデェ・・・ボヨンッ!

固法「―――うーん……でも、あくまで先輩の意志を尊重したいのよね。私から口出ししたくないというか」ハァ・・・ブルンッ!

結標「―――んな甘い事言ってるから自立しないのよ。今の時代、使えるモノ使わないと……ただでさえ中卒なんだから」ヤレヤレ・・・プリンッ!

五和「―――まぁまぁ。あ、お風呂沸かしますけど、皆さん入って行きます?」テクテク・・・タプンッ!

浦上「―――こりゃ今日はお泊まりコースですかネぇ。パジャマパーティーひゃっほぃ!」フフフッ・・・パフンッ!


絹旗「……、」ジー・・・ペタペタ・・・


神裂「―――、―――」ドッカーンッ!!

麦野「――。―――――、――」ボヨヨンッ!

固法「―――……、」ブルルーンッ!!

結標「―――! ―――、――」プリリンッ!!

五和「……―――、―――――」タプンタプンッ!!

浦上「――――――。――」パフパフーッ!!


絹旗「……、」ムゥ・・・ゴクゴク・・・


おっぱい聖人【100はあります】ズガドッカーンッ!!

おっぱいレベル5【85くらいかな!】ボヨェ~ンッ!!

牛乳(ウシチチ)【89……いや、90台突入か!?】ンモーゥッ!!

破廉恥おっぱい【82、って大きい方よね? コイツらが異常なのよ!】プルルゥンッ!!

おっぱいつわ【88。まだまだ成長中です!】タップリ~ンッ!!

秘密のおっぱい【私は……な・い・しょ♪】パッフンパッフンッ!!


絹旗「……、」グヌヌゥ・・・モミモミ・・・


香焼「……、」タラー・・・

もあい「……なぅ」チラッ・・・

絹旗「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハッ?!」バッ!!

香焼「……あー」ポリポリ・・・///

絹旗「なっ! なななな、なっ!? なぁ!!!」カアアァ///

香焼「な、何も見てないっすよ……自分、部屋に戻るから」コホンッ・・・イソイソ・・・///

もあい「にゃう」トコトコ・・・

絹旗「ちょ、待っ! 香焼! せめて一言弁明を!! もあいも空気読まないで良いですから!!」アbbbb・・・///


削板「―――なぁ。さっきからアイツ何やってんだ? 一人隅っこで牛乳ガブ呑みしたり、乳揉んだり……あ、カステラ上手ぇ」モグモグ・・・

ステイル「―――さぁ。自分の『非力さ』に打ちひしがれてたんじゃないかい? ふむ。バニラアイスに合うな」モグモグ・・・


絹旗「ッ~~~~~~~~~~~~~ッッ!!? ああ、ああ、あ、あ、貴方達ぃ?! い、いつからそこにぃ!?」プシュウウゥ・・・ボンッ///

ラストお題募集します。次の3~6個くらいで第Ⅳ話は終わりです。

それでもって、そろそろ第Ⅴ話のアンケートしますのでご協力お願いします!

     っ『彼岸』



固法「―――あっという間にお彼岸ね。この街に居ると色々忘れるわ」ボー・・・

結標「というかこの街イベント事適当過ぎんのよ。宗教色強い行事なんて尚の事適当じゃない」ゴローン・・・

麦野「火織。アンタ立場上、この時期忙しいんじゃないの? 都市来てて大丈夫?」チラッ・・・

神裂「まぁ法事の主は本部(お爺婆達)に任せてますので……それより、そろそろおはぎが出来上がる頃ですね」チラッ・・・


五和「―――で、最後に箆(ヘラ)で後ろを伸ばしてあげる。そうそう、上手上手」ペタペタッ

絹旗「こんな感じですか。ちょっと餡子が薄い気がしますけど……これは浜面にでもあげましょう」ヌリヌリ・・・

禁書「いつわー! もっと大きいサイズのおはぎ作りたいんだよ。それこそスフィンクスくらいの!」ニャー!


麦野「……何で暴食魔神まで来てんのかしら?」タラー・・・

神裂「彼が相変わらず補習ですので。あとはまぁ、多少は自分で食らうモノを作らせた方が勉強になるかと思いまして」ハハハ・・・

結標「あの子来たら糯(もちごめ)無くなるまで食らうんじゃないの」ハァ・・・

神裂「大目に準備してますので、それはないかと。それに、彼の分くらいは残して拵える筈ですよ」フフッ

固法「寛大なんだか過保護なんだか―――そういえば秋が『おはぎ』で、春が『ぼたもち』だったっけ」チラッ・・・

神裂「ええ。季節の花の違いですよ。牡丹と萩の花です……実はこれも諸説ありますが、メジャーなのは時期の違いですかね」コクッ

結標「ふーん。『はぎ』って『けだものへん』じゃない方よね。『おぎ』じゃない方」ジー・・・

麦野「けだものへん? お前は何を言ってるんだ?? まぁ馬鹿はさておき……話変わるけど、彼岸花と曼珠沙華の違いって何なの?」フム・・・

神裂「簡単にいえば仏教用語です。直訳だと『赤花』――摩訶(大きな)曼陀羅華(朝鮮アサガオ)曼珠沙華――天上の赤花となります」ジー・・・

固法「ややこしいのね。観る分には綺麗なんだけど、アレって猛毒持ちなんでしょ」コロコロ・・・

神裂「リコリンという毒がありますね。眩暈嘔吐中枢麻痺など……そういう意味合いでも、忌み嫌われる花となったのでしょう」コクン・・・

結標「綺麗な花には何とやらってか―――どうも私は彼岸っていうと『島』が浮かんじゃうのよ」ハハハ

麦野「アンタってホント、オタク気質なとこあるわよね。吸血鬼の島とか死んでも行きたくないわ」ハァ・・・

固法「あの漫画かぁ……対吸血鬼には丸太を、って発想が奇抜よね」タラー・・・

神裂「吸血鬼? 丸太?」ポカーン・・・


五和「はーい。皆さん、できましたよ」テクテク・・・

麦野「お。やっとか―――なんか随分と歪なおはぎが多いわね」ジー・・・

絹旗「う、五月蠅いですね。文句言うなら食べないで下さい」ムゥ・・・

禁書「因みにこの子猫大の三色おはぎは私のだから食べちゃダメなんだよ!」ビシッ!

結標「食べないわよ。見てるだけで胃凭れしそうだわ」タラー・・・

五和「多めに作ったので好きなだけ持ち帰って下さいね。あ、でも冷蔵庫のきなことゴマはコウちゃんとウラのなので駄目ですよ」メッ!

固法「了解。ところで、その二人は?」チラッ・・・

神裂「浦上は里帰りです。香焼は自室で宿題をしている筈です。今呼んで来ましょう」スッ・・・

絹旗「あ、私呼んできます。皆さん先に食べてて下さい」テクテク・・・


禁書「それじゃ遠慮無く―――モキュモキュ・・・ふぅ。お彼岸が終わったら十五夜だね。その次はハロウィン! フフフっ……待ち遠しいんだよ」ニコニコッ

神裂「まるで日本人の様な考えですね……ええ、好きなだけ楽しみなさい。貴女の為ならいつでもパーティを開きましょう」フフッ

禁書「ヒャッハー! かおり、ありがとーっ! だいすきー!!」モグモグッ

神裂「いえいえ」クスクスッ

一同(過保護だなぁ)ハハハ・・・

っ『バーコードバトラー』



結標「―――ってのを掘り出してきたわ。小萌の押し入れに入ってた」スッ・・・

麦野「今すぐ戻してきなさい」ハァ・・・

固法「ウチではペット禁止です的なノリね……というか、何それ。ゲーム?」ジー・・・

結標「さぁ。説明書も何も無かったから、何を如何するかも分かんない」キョトン・・・

神裂「じゃあ何故持って来たんですか?」ジー・・・

結標「いやぁ、誰か一人くらい分かるんじゃないかなぁと思って」ハハハ

麦野「で、このザマね。ちょっと待ってろ、ググるから―――あー、名前の通り適当なバーコード通して数値競うみたいだわ」フムフム・・・

固法「……それ、面白いの?」タラー・・・

麦野「さぁ。やってみないと分かんないんじゃない。とりあえず対戦モードで……火織ー、何か適当なバーコード無ーい?」チラッ・・・

神裂「では、このト●ポのバーコードを」ビリッ・・・

麦野「あいよ。結標、アンタ何かないの?」チラッ・・・

結標「その間通せるサイズの……ヴォルビ●クのラベルで良い?」スッ・・・

麦野「はいはい。じゃあ火織のからバーコード読み取って……読み取れないわよ」bbb!

固法「大分年季入ってそうだものね。何回か通してみたら」ジー・・・

麦野「ほぃ……カードスラッシュッ」bbb!

結標「またコアなネタを。もっとゆっくり通すんじゃない」ジー・・・

麦野「ダルいわね―――あ、通った。生命力2000:攻撃力1700:防御力300……これ強いの? 弱いの?」キョトン・・・

神裂「さぁ? 次のバーコード通せば分かるのでは?」ヒョイッ・・・

麦野「ヴォルビ●クね―――出た。生7300:攻1600:防200……生命力が倍近くあるんだけど」ハハハ・・・

固法「流石世界のヴォルビ●ク。それで、如何戦うの?」キョトン・・・

麦野「先行後行をルーレットで決めて、攻撃か回復かで戦うみたい。武器とかアイテムもあるらしいけど……如何使うか分かんないわ」ウーン・・・

結標「まぁ充分でしょ―――ヴォルビ●クが先行ね。じゃあ攻撃っと」ピロピロピロピロ・・・

神裂「んー……いきなり5500とか出たんですけど、もしかして1キルですか?」ポカーン・・・

麦野「みたいね。トッポ弱い……こんな感じでバーコード通して遊ぶんだとさ」ゴロン・・・

固法「正直、バトル云々で楽しむより読み取ったバーコードがどのレベルか見てみる方が楽しそうね」ハハハ・・・

結標「かもね。じゃあ適当にバーコード集めて通してみましょ―――」ワイワイ・・・


  にゃーん・・・・・


香焼・絹旗「「 」」タラー・・・

麦野「―――クっソが! 何で弱いんだよ! 絹旗の超Z級DVD!」ウガアァ!!

神裂「―――ふふふっ。この、香焼の新品パンツのタグが今のところ最強みたいですね」ニヤニヤ・・・

麦野「つっかねぇなぁオイ! こうなったら私も、アイツの卸す前のブラのバーコード切り取って戦うしか」グヌヌゥ・・・

固法「……発想が狂ってるわね」ハァ・・・

結標「大丈夫、元々よ―――あ、おかえりー。遅かったわね」チラッ・・・

香焼・絹旗「「……、」」タラー・・・ジトー・・・

神裂「……あっ」ダラダラ・・・

麦野「絹旗、お前この前新しいブラ買ってたな! 誰に見せるか分かんねぇけど艶っぽいAAカップ(ちっぱい)の! あのバーコードを―――」

絹旗「死ンねえええええええええええええええええェ!!」フシャアアアアアアアアアアァ///////

     っ『身長』



神裂「―――七夕の短冊やら正月の絵馬やらに、あの子は必ずこう書くんですよ」ハァ・・・

固法「あははは……まだ成長期だし、そんなに急ぐ必要も無いと思うんだけどなぁ」ポリポリ・・・

結標「そうね。それに、大きくなった香焼くんなんてあんまり想像したくないわ」ハハハ・・・

麦野「せんせー、結標さんがまたショタコン拗らせてまーす」ヤレヤレ・・・

結標「だからショタコンじゃないっつの。純粋に小さいモノを可愛いと捉えられるだけよ」フンッ

麦野「自覚無い分、性質が悪いわね。因みに、絹旗はそれに加えて『胸』が入るわ」ハハハ

固法「心配しなくてもまだまだ成長するわよ。私だって中一の時はそんなに大きくなかったもの」ヤレヤレ・・・

結標「アンタが非行に走る前の話ね」ニヤニヤ・・・

固法「非行言うな。まぁ否定はできないけど……良い想い出だしね」コクッ・・・

神裂「過ぎた事をぶり返しても意味はありませんよ。さておき―――身長ね」フム・・・

麦野「ぶっちゃけ、私ら女子の中でも結構タッパある方なのよね。結標は160前後で日本人だと平均くらいか」チラッ

結標「牛乳も私よりちょいデカいくらいで平均じゃない」ジー・・・

固法「あー……実は、私まだ身長伸びてる」ハハハ・・・

麦野「だから自ずと胸もデカくなる訳ね。私は義手とか義眼とか、半分機械化してる所為で止まったと思うわ」サラッ・・・

神裂「また生々しい事を。私は……そういえば14,5歳からあまり変わってませんね」フム・・・

結標「アンタ、中坊の頃からバスト100あったの!?」ギョッ・・・

固法「はははは……でも、食蜂さんとか婚后さん―――常盤台の子達もそのくらいのサイズはいるわよ。多分、私より胸大きいし」ポリポリ・・・

結標「……この世は残酷ね」ドヨーン・・・

神裂「結標さんはちゃんと栄養取れば成長しますって。倹約家と守銭奴は大違いですよ」チラッ

麦野「まぁコイツの辞書に『ふくよか』なんて文字は無ぇからな。美偉とか滝壺見習え。彼氏持ちは『ふくよか』だぞ」フフッ

固法「麦野さん?」キラッ・・・

結標「ふんっ。んな事言ったらアンタだって男居ないじゃない―――でも恋人として身長高い男性って、どのくらいまで許容範囲かしら」ウーン・・・

麦野「最低限、自分より大きい方が好ましいわよね。大体は170越えてるけど。あ、結標は小さい子の方が良いのか」ハハハ

結標「馬鹿じゃないの……因みに、牛乳の旦那ってどのくらい?」チラッ

固法「先輩は180強よ。ブーツ履いたり髪結ったりするから190越えて見えたりするわね」コクッ

神裂「ふむふむ。そういえばステイルがそろそろ2mいきそうですよ」ジー・・・

麦野「デカ過ぎ。許容範囲外。包容力通り越して恐怖すら感じるわよ」ハァ・・・

固法「言い過ぎ。そういえば、上条くんは170ちょいくらいよね」チラッ

神裂「多分、それくらいかと……何か」ムゥ・・・

固法「ふふっ、別に。あと一方通行くんは170無いくらいかしら。浜面くんは180前後よね」チラッ

結標「アイツ、ヒョロくて撫で肩だからよく分かんないわ……だから何よ」ジトー・・・

麦野「浜面のヤツは無駄にガタイだけは良いからねぇ……何だよ」グッ・・・

固法「んふふっ。なーんでもないっ。あ、そういえば都市伝説で高身長の人に顎グリすると、頭身分、身長分けて貰えるとか―――」クスクスッ


香焼・絹旗「「身長分けて下さい」」グリグリグリ・・・

ステイル「おい馬鹿止めろ。気味が悪い」ゾゾゾゾォ・・・

禁書「私も私もー」グリグリ・・・

ステイル「っ!?」ドキッ・・・///

削板「お前満更でもないのな」ハァ・・・

   っ『台風』


  ゴオオオオオオォ・・・・・


神裂「……外、凄いですね」ジー・・・

麦野「外出なくて正解だったわね。こりゃ雨止むまで泊まりコースかしら」ジー・・・

結標「替えの下着足りるかしら。最悪、浦上の借りるしか無いわね」ジー・・・

固法「いやいや、明日平日よ。学校あるで……3人は無いのか」ハァ・・・

麦野「模範優等生ちゃんは大変ね。ま、泊まり云々は冗談で車(浜面)呼ぶから乗って行きなさい」サラッ

固法「助かるわ。ホント、浜面くんには感謝ね」ポリポリ・・・

結標「頼むから私も乗せてね―――そいやぁ流石に五和と浦上は此処来れない感じなの?」チラッ

神裂「普段、学園の舎からバイクで来ますからね。この天候だと、厳しいでしょう」ウーン・・・

麦野「そうなると……坊やと二人きりか」フーン・・・

神裂「何か?」キョトン・・・

麦野「いや、あの子と火織が二人きりって……何かなぁと」ジー・・・

神裂「別段、変わった事はありませんよ。まぁ五和と浦上が居ない分、幾分か静かですけど」コクッ

結標「いやぁ、実は二人きりの時は―――」

固法「す、ストップ! 何言いだすの!?」アタフタッ///

結標「―――……は? いや、ただ香焼くんが甘えん坊になるのかなぁって聞こうと思ったんだけど」ピタッ・・・

固法「……うぇ」カアアァ///

麦野「おうおぅ美偉ちゃーん! 一体どんな妄想したのかにゃーん? お姉さんに聞かせてみー」ニヤニヤ・・・

結標「コイツ、常識人に見えて頭ん中一番エっロぃわよね。流石万年発情期の人妻学生」ウフフフ・・・

神裂「えっ……んぁ? 別にあの子は甘えたりしませんよ。私もダラしなくなったりしませんし」ポカーン・・・

麦野「そういう事じゃなくてねぇ。美偉はきっとアンタとあの坊やがチョメチョメな禁断の」イッヒッヒッ!

固法「だああああああぁ!! そ、そんな事より当の香焼くんは!?」アbbbb・・・

神裂「はぁ。あの子は……多分、外ですよ。絹旗さんと削板さんも一緒でしょう」フム・・・

結標「この嵐の中!? 馬鹿じゃないの!?」ギョッ・・・

麦野「絹旗は『装甲』利用すりゃ雨風関係無いからね。⑦(根性バカ)は気合で何でもかんでも通せそうだけど……坊やは酷ね」ハハハ・・・

神裂「あの子もそんなに柔では無いですから大丈夫でしょう……野良猫達が心配らしく、見に行った様ですよ」フム・・・

固法「優しいわね、最愛ちゃん」チラッ

麦野「ケッ。猫臭ぇのなんの。因みに、ノッポ(ステイル)は?」ヤレヤレ・・・

神裂「あの子は……まぁ何処かで雨風を凌いでいるでしょう。此処に来てないという事は、上条宅か土御門宅に避難しているのやも」コクッ

結標「土御門の家とか絶対行きたくないわ。『玄関先でTMRごっこしたら居れてやるぜぃ』とか言いそうだもん」タラー・・・

固法「もしくは『【嵐の中で輝いて】歌え』とかね―――しかし酷いわね。事故とか多そう……風紀委員の呼び出し来たら如何しようかな」ハァ・・・

麦野「そん時は火織連れてけ。宇宙でも活躍出来る女だ。暴風雨程度何て事ぁ無いでしょ」ハハハ

神裂「あぁ……流石に色々キツかったですね。二回くらい行きましたが、酸素や重力より直射日光が痛かった」ウーン・・・

結標「え、あ、アンタそれマジレス? それとも麦野(コイツ)のボケに乗ってあげてるの?」ピタッ・・・

神裂「へ? 何が?」ポカーン・・・

固法「……えっと」チラッ・・・

麦野「察しろよ。ガチで、そういう女なんだって」

神裂「流石に、自然災害(台風)には挑めませんよ。私は別に、神様って訳では無く……皆さんと同じJKなんですからね」フフッ

 ―――とある平日、AM06:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・・





おはようございます。天気は晴天、秋の澄んだ空―――さて、今日は平日。起床して、最初にする事といえば何ですか?


神裂「はい、おはようございます―――新聞を取りに行きますね。朝一の日課になってます」フム・・・

五和「ふぁあぁ……おはょ―――シャワーかな……低血圧気味だと、うん……朝シャン必須です」グデェ・・・

浦上「おっはよーございまーす―――起き開けの牛乳一杯! 目指せ固法さん級!」ゴクゴクッ・・・


成程。各々バラバラな回答。この問いに正解不正解など無い。
因みに、僕の場合はトイレに行ってその後顔を洗ってなのだが……それはさておく。

では、その次の行動は?


神裂「朝食の準備です。あ、私の当番の日はですけど。勿論、もあいのご飯も準備します」グツグツ・・・

もあい「にゃぅ」ムニャムニャ・・・

浦上「お姉の後にシャワーですネ。私、髪長い所為でお姉より時間掛っちゃいますから」ニャハハ・・・

五和「ねむぅ……事務報告のチェックかしら……上(本部)と下(若衆)からの報告まとめ。後、日報連絡」パタパタ・・・ファアァ・・・


ああ―――まだ、止むを得まい……じゃあ、次は?


神裂「揃って朝食です……が、先程から何を言いたいのですか?」フム・・・モグモグ・・・

浦上「見れば分かるでしょう。まーた、しょうも無い事ゴチャゴチャ考えてるんですネ」フフッ

五和「うーん……姉さん、教皇代理への連絡、昼前までで良いですかー」ネムネム・・・ウツラウツラ・・・

神裂「やれやれ。大目に見ますから、さっさとご飯食べてしまいなさい。お味噌汁、こぼれそうですよ」フフッ

香焼「……、」ハァ・・・


百歩譲って、此処までは許容範囲。良しとしよう―――ラストチャンス。次は如何するの?


五和「ごちそうさまでした―――ハミガキ、ウンチ。順序は決まってません」グデェ・・・サラッ・・・

浦上「お姉ー。全国の五和ファンの人達が目を逸らす様な台詞サラりと言わないで下さいヨ……でも大体そうですよネ」ハハハ・・・

神裂「食器洗浄機のボタンを押して、ハミガキ。それから洗濯、掃除、朝ドラ→昼ドラ、お昼寝、皆帰宅……最近このペースです」コクッ・・・

浦上「姉様、マジ主婦!」シャカシャカシャカシャカ・・・

五和「場合によっては麦野さんと結標さん、それから禁書目録と最愛ちゃんが遊びに来てますよね」シャカシャカシャカシャカ・・・

神裂「彼女達は学校行ってませんからね。ですが、最近は結標さんと絹旗さんに文系課目を教えてたりしますよ」シャカシャカシャカシャカ・・・


アンタら、ハミガキしながら良く喋れるな……じゃなくて! 自分が言いたいのはっ!!


香焼「着替えろよっ! 早くさぁ!!」バンッ!

3姉妹『ふぇ?』キョトン・・・

もあい「にゃん?」ポカーン・・・


マヌケな顔して『ふぇ』とか言うな。三人とも口端から泡こぼれそうだぞ。


五和「んー、とりあえずコウちゃんも歯ぁ磨いたら? 学校遅れるよ」シャカシャカ・・・


ああ、もう! 馬鹿な恰好して正論垂れてるコイツに腹が立つ!!
隣の二人も便乗して頷くな。朝っぱらから低血圧でもないのに……頭が、頭痛で、痛くなる!

止むを得ず、自分も歯を磨く。そしてなるべく三人の方を向かず、説教を続けた。


香焼「どんだけ堕落してんすか……自分、男っすよ」ムグゥ・・・シャカシャカ・・・

神裂「はぁ。分かってますよ」ポリポリ・・・

五和「まぁコウちゃんがこの手のヒス起すのはいつもの事でしょう。今回は何で怒ってるの?」ハテ・・・

香焼「腹立つ言い方っすね……言ったまんま。服着て無い事に怒ってるんすよ」ジトー・・・

浦上「てか、別に着てない訳じゃないっしょ。香焼がスケベな目ぇするのが悪いんじゃないカナ」ニヒヒッ・・・


じゃあお前ら。他の男性教徒、もしくは知人、更には―――上条さんの前で、その恰好でウロウロ出来るのか。


神裂・五和「「あはははは―――出来る訳無いでしょうッ!!?」」カアアァ///

浦上「あははは。乙っ女ー」ケラケラッ

香焼「お黙る。兎に角、自分も、その……一応は思春期なんだから、気を使って欲しいんすけど」フンッ・・・///


因みに、三人の恰好。
姉さん―――寝巻き(浴衣、下着付けず)。 五和―――下着。 浦上―――下着&Yシャツwithサイハイソックス。
無論、自分は顔を洗った後、イの一で制服に着替えてる。


浦上「はいはーい。私、キチンと着衣ってまーす」フンッ

五和「ウラぁ。その恰好は確かに、姉ちゃんから見てもエロいと思うよ。マニアック的な意味で」ウーン・・・

神裂「私は、学校も無いので、皆が出張った後に着替えても問題無いのでは?」ハテ・・・

香焼「……OK。一人ずつ、解決していこう」ヤレヤレ・・・


まず姉さん。


香焼「……直視出来ないっす」ハァ・・・///

神裂「え?」キョトン・・・

五和「姉様。確かにエロいんですよ。普段もエロいですけど、寝起きのその恰好は反則級でアウトです」ジー・・・

浦上「胸元肌蹴てますもんネぇ。あと、帯が緩まって……ぐへへぇ」ジュルリ・・・


お願いだから、着替えて下さい。もしくは、スウェットやらパジャマやら、普通の寝巻き着てください―――次、五和と浦上。


香焼「―――だらしない」ッタク・・・///

浦上「あるぇ? 直視は出来るんだぁ」ニヤニヤ・・・ツンツンッ

香焼「っ……だぁ! 触るなっ!」アタフタ・・・///

浦上「んふふっ。初のぅ初のぅ。お姉も触っちゃえー」クスクスッ

五和「あはは。まぁでも、私は気にしないよ。コウちゃんは家族だし」サラッ・・・

香焼「何度も言ってるけど、親しき仲にも礼儀ありっす。仮にも、若衆筆頭なんだから、風紀とかそういうの考えてさぁ……もぅ」ムゥ・・・///


駄目姉とはいえ、客観的に見れば、五和はナイスバディだ。中一男子からしてみると、下着一丁で居られたら目のやり場に困る。


浦上「ほぉ、真っ赤っか……お姉。香焼はお姉に対して―――」ニヤニヤ・・・ゴニョゴニョ・・・

五和「―――っ!? だ、駄目よコウちゃん! 私達、血の繋がりは無いとはいえ義姉弟でしょ。あぁ! そんな禁断の園にはっ!!」アワワワ・・・

香焼「……殴って良いっすか」ギリリリ・・・///

神裂「ま、まぁまぁ―――確かに、配慮すべきですね。最近、私までも馴染み過ぎて堕落してました。反省しましょう」アハハハ・・・


姉さんがそう言ってくれると助かる……とりあえず、その無駄にデカい二房メロンをしまえ。あと、浦上、スカート穿け。

―――という感じで注意したところで、止めるコイツらではない。

せめて姉さんだけでも気を使ってくれるだろうと期待したのだが、変わったのは寝る時に下着を着用するようになった事だけ。
結局、いつまで経っても自分を男性として見てくれる事は無いのだろうか。ホント、泣けてくる。

しかも周りの誰かに相談しても返ってくる答えの大半が『裏山死刑』だったりするので如何しようもない。
上司兼友人たるステイルに相談しても『飛び火するから我関せず』だ。あのムッツリスケベ野郎。もう禁書目録の写真やらない。

しかし、親身に相談を受けてくれた人もいた。
最愛の兄貴分―――浜面さん。彼も自分と全く同じ悩みを持っていた。
だけども、悲しいかな……彼の場合、周りの(アイテム)女性陣が強過ぎて何も言えない立場だった。心中お察しします。

あとは我らが英雄―――上条さんにも相談したかったのだが……姉さんと五和の『凄み』が効いた睨みの所為で、何も言えずじまい。
言った刹那……自分の胴体と頭がオープンゲットしかねない。せめて、あの人の前では『乙女』でありたいという『漢女』達には敵わないのだ。

兎角こんな、イライラ9割:モンモン1割の生活が続くのに慣れなくてはならない自分の心境も察して欲しい。


香焼「―――ったく……やだもぅ」ヌギヌギ・・・


さておき―――今日はいつもより、早めに起きた。といっても、周2,3回行っている早朝ランニングという訳ではない。
余談だが、自分らの普段の起床時間は6時~半くらい。早朝ランニングの日は5時前後。

そして今日の起床時間は5時半。理由は色々『支度』があるからで―――つまりは『任務』だ。


香焼「五和起きる前に、シャワー浴びようかな」テトテト・・・


今日の任務は『清潔感』も重要視される。別段、自分が臭いとは思わないのだが、やはり気を使ってしまうのだ。
パパッと髪と身体を洗い、風呂場から上がって身体を拭き、髪を乾かす。
そしてボクサーパンツを穿きタンクトップを着て―――メイン準備に取り掛かる。

いつまで経っても慣れないのだが、まずは『心(スイッチ)』の切り替えが大事だ。


香焼「いや、ぶっちゃけ現実逃避したいんすけどね―――」ハァ・・・


洗面台の鏡(姿見)を見ながら盛大な溜息。そして、嫌々ながらも―――常盤台中学(女子校)の制服に着替える。
Yシャツに『リボン』。そして上からブレザーに『スカート』……男の尊厳、さようなら。

されど着馴れてしまった虚しさを拭いつつ、次の準備に取り掛かる。
髪止めをして、下地を塗る―――といっても、最低限のボディミルク&日焼け止め程度。
余談だが肌が荒れてたり、クマが酷かったりした場合はファンデやコンシーラなどのベースメイクもするのだが、今日は特に問題無い。

眉の調整―――基本の形は既に作ってあるので、最低限の整えのみ。見た所、少々眉下が伸びてきたので軽くピンセットで抜く。
別段、眉毛が薄い訳でも濃い訳でもないので、描いたりはしない。多少丸み掛った普通の眉だ。

次に睫(まつげ)―――最早ビューラーも慣れたモノ。テキパキとカールさせ、真ん中・目頭・目尻・下睫目尻の順にマスカラを塗る。
基本、中学生のナチュラルメイク風(?)なので、シャドーやラインなど、本格的なアイメイクは行わない。

次は唇―――サラリとリップを塗り、ちょこんとグロスを乗せる。ベッタリは塗らず下唇の真ん中に置いてやり、それを軽く伸ばした。

最期は髪―――長さはどうしようもないので、ある分量で弄る。ムースを手にし、ふわふわと全体を浮かせてみた。


香焼「―――……こんなモンで良いかな」ジー・・・


目の前に別人が居る。『任務』的には評価すべき『変装』なのだが、男の尊厳が……うん。
精一杯、溜息を吐いた後、洗面所を出る。幸か不幸か、今日は自分が朝飯当番だ。3人が行動し出す前に準備してしま―――


五和「―――……んー」ガチャッ・・・チラッ・・・

香焼「っ!!?」ギョッ・・・アタフタッ///

五和「……、……おふろ」テクテク・・・ヌギヌギ・・・

香焼「おっ! まぇっ!? まだ寝惚けてっ!!」カアアァ・・・ドキドキッ///

五和「コウちゃん、邪魔……私、シャワー……ふぁあぁ」ガチャッ・・・ジャアアアァ・・・

香焼「 」プシュウウゥ・・・///


―――あぁ畜生、五和のクセにハラハラさせやがって……やっぱ、精神衛生上宜しくないなぁ。

朝一の大事故を記憶の彼方に追いやり、もあいの無邪気な寝姿で心を落ち着かせながら、朝食を準備する。
冷蔵庫から作り置きのサラダのボウルを取り出した時、客間(姉達の寝室)のドアが開いた。


浦上「―――んふぁぅ。おは……れぇ?」ピタッ・・・

香焼「おはよう。牛乳ね」バタンッ・・・

浦上「あ、うん。どもども……ん? あー……い、いや。にゃはは。ちょっと寝惚けてるかも。ちゃっちゃと風呂入っちゃいますネー」パタパタッ・・・


朝から忙しないヤツだ。さておき、一人分2枚食パンを焼き、バターを塗ってハムエッグを挟み、サンドイッチ完成。
あとは全員分のサラダを揃えコーヒーを淹れたら、準備OK―――そろそろ一同集まる頃だ。


神裂「―――んっ……おはよ、ぅ……ございます?」ピタッ・・・

香焼「あ、はい。おはようございます」ペコッ・・・

神裂「……え?」キョトン・・・

香焼「はい?」ポカーン・・・


何故固まる。続いて、五和が風呂から上がってきた。


五和「寝むぅ……うぇ」ピタッ・・・

香焼「……だから洗面所で制服着てくれよ。反応に困る」ムゥ・・・///

五和「え、あ、おぅ?」タラー・・・

香焼「しかも自分居るのに素っ裸になり出すし。寝惚けてるからって勘弁してくれよ……姉さんからも注意してやって下さい」モゥ・・・

神裂「へっ? あ、はい」アタフタ・・・

香焼「姉さん?」チラッ・・・


何だ、この空気。


神裂・五和「「……、」」チラッ・・・チラッ・・・

香焼「何すか」ジー・・・

神裂「い、いえ。あはは……(なぁにこれぇ)」チラッ・・・

五和「な、何でも無いよ……(姉さん、ツッコミお願いしますよ)」チラッ・・・


さっさと席に着けば良いのに。棒立ち二人を余所に、浦上が風呂から上がってきた。
相変わらずスカートを穿かないまま、固まってる二人を後目に、自分の斜め前に坐した。


浦上「いやぁ、スッキリしたぁ。って事は寝惚けて無いんですネ、私―――ねぇ香焼。何で朝っぱらから『香』モード?」ジー・・・

神裂・五和「「っ!!」」バッ・・・

香焼「はい?」ポカーン・・・

もあい「にゃ?」トコトコ・・・


沈黙。


香焼「えっと、昨日話したっすよね」ジー・・・

神裂・五和「「……、」」フルフル・・・

浦上「聞いてないですヨ」アハハハ・・・

神裂・五和「「……、」」コクコクッ・・・


成程。だから驚きのあまり固まってたのか。一応、昨日説明したつもりだったんだけどな。
それじゃ―――ご飯がてら説明しよう。だから服着て席に着け。

やけに余所余所しい馬鹿1号(五和)とV3(姉さん)を落ち着かせる為、説明開始。


香焼「今週と来週は、重点的に常盤台(操祈さんとこ)通う予定っす。土御門から報告書来てますよね」モグモグ・・・

神裂「そういえば、そんなのがあった気が」チラチラッ・・・

五和「最近、資料とか報告書多くて忘れてました」チラチラッ・・・


止むを得まい。忙しい二人だ。木端教徒一人分の指令なんかに一々目を通してる暇もないのだろう。

それに、この任務は最早然程重要でも無くなった。
当初、超能力者第5位―――心理掌握(メンタルアウト)、食蜂操祈さんは学内に一大派閥を築きつつも、外に向けて交友関係を持つ事は無かった。
しかし、彼女は英国(土御門の思惑)として、是非とも『上条勢力』に入っておいて貰いたい一人だった。

故に、諜報・潜入員として彼女と『仲良く』すべく、自分が選ばれた―――が、既に自分が如何こうする必要もない様に思われる。
操祈さんは上条さん(もしくは御坂さん)に、比較的、協力・友好的だ。敵対する事は無いだろう。


浦上「んじゃー、何で今更2週続けて訪問を?」キョトン・・・

香焼「それはよく分かんないっす。土御門なりに考えがあるんじゃないかなぁ」ポリポリ・・・

五和「まぁ何手先も読んでる人だから、意味はあると思いますけど」モグモグ・・・チビチビ・・・

香焼「うん。だから、2週間は朝から化粧しなきゃ駄目なんすよ」グデェ・・・

神裂「それは、その……頑張って下さい」ハハハ・・・


おかげで30分早起きしなきゃならない。尤も……操祈さんに会うのが嫌という訳じゃない。寧ろ、それは楽しみにしてる方だ。
だけど、やはり朝を早くしなきゃならない億劫さと―――男の尊厳が傷付く。


浦上「ふぅん。じゃあ……私らと一緒に登校って訳ですネ」ニヤリ・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・

浦上「だって常盤台も『学舎の園』の中でしょ。私らの学校も『園』の中だもん」フフフ・・・

五和「お、おぉ!」ガタッ・・・


何という事だ。そこまで考慮してなかった。
因みに、今までは3,4限目頃に遅れて登校していた為、二人と登校時間が被る事は無かった。
しかも幸運にも、コイツらと『園』の中でかち合った事は無い。


五和「つ、遂に私とコウちゃんが一緒に登校出来る日が来た! 姉さん、今晩は赤飯です!!」バッ!!

香焼「何の期待だ馬鹿女郎……てか、二人ともバイク通学じゃなかった?」ジトー・・・

五和・浦上「「あっ」」ピタッ・・・


本来2人は『園』の中にある寮・アパートに住んでる事になっている。
しかし、特に理由は無いのだが……我が家に入り浸る事が多いので、バイクで『園』まで通学する事が殆どになっていた。

※五和のバイク(都市製の新型ビックスクーター)は英国の予算から出てます。管理職特権羨ましい。


五和「ぐぬぬぅ……じゃ、じゃあ2週間は電車とバスで通学を」タラー・・・

神裂「今、第一学区(此処)から第七学区(『園』)まで電車で行ったら完璧に一限遅刻するのでは?」フム・・・

浦上「……Oh」タラー・・・

香焼「自分は常盤台の中で特別クラス扱いだから何限から出ても問題無いっすけど、2人は普通科だし拙いっしょ」ヤレヤレ・・・

五和「くぅ……こんちくしょー」グデェ・・・

もあい「にゃう」フシフシッ


お馬鹿なヤツ。
というか極力目立たない様にしなければいけないこの任務で、お前らと一緒に居たらサーカスのライオン宜しく目立って仕方無い。勘弁してくれ。

兎角、さっさと飯終えて家出ないと。遅刻可能とはいえ、ダラダラし過ぎるのも時間の無駄だ。有意義に過ごそう。

時間にして7時半前。そろそろ家を出なければ『待ち合わせ』に遅れるのだが―――


五和「―――コウちゃん、リボンが曲がっていてよ。ボタンもちゃんと閉めなきゃ駄目です」キュッ・・・

浦上「―――髪はもうちょっとくしゃくしゃしてても可愛いですヨ。ああ、でも毛先だけ巻いた方が最愛ちゃんみたいかな」フフフッ

神裂「―――くれぐれも言葉遣いには気を付けて。それから『女性らしく』品のある行動を」コクコクッ

香焼「……、」グデェ・・・


―――コイツら、己の事は棚に上げてこういう時ばっか女子らしくするんだから腹立つ。

さておき、自分が操祈さんと会う際には、必ず『保険』を掛ける事になっている。というのも、自分が操祈さんに操られない様、監視する為だ。
今となってはその心配は殆どしてないのだが、一応、万が一があるやもしれないので『保険』は継続となっている。

『保険』の殆どは『妹達(シスターズ)』の誰かとなる。
中でも土御門さん、海原さんと交流が深い個体番号17600号―――通称:プロスネーク(御坂蛇)さんとペアになる事が多い。


五和「ハァ。それじゃあ先に行きますけど……コウちゃん、お昼一緒しようよー」ジー・・・

香焼「イヤだ」キッパリ・・・

浦上「ザックり言いますネぇ。まぁでも帰りくらいは一緒しましょ」フフッ


極力会いたくないので、頑張って避けます。


神裂「やれやれ。仲良くなさい……ですが五和。香焼の任務の邪魔にならない様にして下さいよ」チラッ・・・

五和「分かってます。それじゃあウラ、行くよ」スッ・・・

浦上「はいはい。って、あー」チラッ・・・


自分の方を―――正確には、自分の足の方を見遣る浦上。如何した。


浦上「香焼。結構寒くなってきたから、スカートの下に何か穿いた方が良いかもしれません」マジマジ・・・

香焼「え? あー……スパッツだけじゃ駄目かな」ポリポリ・・・

五和「普段生足で慣れてれば大丈夫だけど、基本男の子って足出して歩かないでしょ。冷えるとシンドイと思うな」コクッ・・・

香焼「うーん……といっても、穿くモノ持ってないっすよ。ジャージで良い?」フム・・・

3姉妹『駄目(です)』キッパリ・・・


この人達、普段ダラしないクセにこういう所しっかりしてるんだよなぁ。それは別として、いったい如何しろと。


浦上「私の何か貸しますヨ。大体サイズ合うでしょう」ピンッ

香焼「あー、でも……良いの? 自分が穿くんすよ?」モジモジ・・・

浦上「別にぃ。『汗以外』で汚さないなら、普通に貸しますヨぉ。蒸れちゃうのは許容範囲」ニヤリ・・・

香焼「っ! 変態っ……馬鹿女郎っ」グヌヌゥ・・・///

神裂・五和「「へ?」」キョトン・・・

もあい「なぅ?」ゴロゴロ・・・


変に意識させるんじゃない。それよか、何を貸してくれるんだ。


浦上「それじゃあ―――①黒タイツ ②白ニーハイ ③ストッキング ④やっぱ貸さない―――の、どれかにしましょう」テクテク・・・

香焼「……はぁ」ポリポリ・・・

浦上「あ、因みに安価ですけど、別段選択肢によって√が如何こうなる訳じゃないですヨ」ニャハハッ


訳分かんな(メタ)い事言うな。じゃあ……―――  >>672 

はい。今日は此処まで。

久々地の文入れたけど、やっぱ無い方良いのかな? とりあえず例の如く、亀レスでgdgd投下してくので宜しくです。
あと安価協力お願いします!

それから……出来るだけ寝落ちしない様頑張ります。寝落ちしたら、うん。


それじゃまた次回! ノシ"

乙です 1

―――それじゃあ何となく温かそうなタイツ貸して下さい。


浦上「はいはい。因みに、他の二つは何で選ばなかったんですかー?」チラッ・・・

香焼「うーん。ニーハイとかストッキングって、まんま女性物じゃん。やっぱ正直、抵抗が」ポリポリ・・・

五和「なんでー? 良いじゃん、ニーハイ。きっと似合うよ」コクッ

香焼「だったら尚更嫌だ。浦上、兎に角さっさとお願い」ペコッ・・・


一寸後、新品の黒タイツを持ってきた浦上。
態々卸してないモノを貰うのは申し訳ないと思う反面、何故か残念と馬鹿な期待をした自分を殴りたい。


五和「ふむふむ。此処で敢えての60デニールを渡すとは……ウラ、分かってるね!」グッ!

浦上「そこまで深い意図は無かったんですけどネ。もしこれで寒かったら、もうちょい濃いのあげるから」スッ・・・

香焼「いや、ありがと。新品の買って返すね」ビリッ・・・

神裂「ん? そのまま穿くのですか?」ジー・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

神裂「スパッツの上から穿く気ですか、という意味です」ジー・・・


出来ればそうしたいのだが、拙いだろうか。


浦上「うーん。ちんちん抑えつける為にスパッツ穿きたいのは分かるけど、相当蒸れると思いますヨ」ビシッ

香焼「ちんt……ストレートに言うな馬鹿っ! ったく……でも、脱いだら危険じゃない?」ポリポリ・・・///

五和「穿けば分かるけど、タイツも結構圧迫感あるから大丈夫だと思うよ」コクッ

神裂「不安ならタイツの上からスパッツ穿けば良いと思いますけど……色々大変かと。あと、やはり不自然ですね」フム・・・

香焼「じゃあ」

浦上「あ。そういえば……ちゃんと穿けます?」チラッ・・・

香焼「は?」ポカーン・・・

五和「確かに。コウちゃん、タイツ一人で穿ける?」ジー・・・

香焼「ぇ……意味が分からない。さっさと穿いてくるよ」テクテク・・・

3姉妹『……ふーん』ニヤニヤ・・・


含みある微笑が気味悪い。兎に角、さっさと穿いてしまおう。
3人の前で着替えるのも恥ずかしいので、洗面所に移動。スパッツを脱ぎ、タイツを―――


 「むっ」ピタッ・・・


―――そういえば、これ、足首から先も布地になってる。


 「えっと、普通に穿けば良いか」グッ・・・


ズボンを穿く要領で、足を突っ込み……あれ?


 「……えっ」ピッチリ・・・


キツい。穿けない。サイズミス……しかし浦上が入るサイズなら自分でも穿ける筈。もう少し頑張って引き上げてみようと、奮闘した結果―――


 「いっ!」ビリッ・・・


―――……やってしまった。破けた。伝線、というヤツだろう。

折角新品を貰ったというのに、やってしまった。足の爪が長過ぎたのだろうか。
しかし、如何しよう。一人で穿けると豪語した以上、『やっちゃった☆』などとオメオメ面を出すのも恥ずかしい。

でも……此処は素直に謝ってもう一枚貸してもらうしかない―――


浦上(ほら、やっぱ伝線させたっしょ)コソコソ・・・チラチラッ・・・

五和(あらら。私は盛大にスッテーンとスッ転ぶと思ったんだけどなぁ)ポリポリ・・・チラチラッ・・・

神裂(そうなると分かってたなら無理にでも手伝ってあげれば良かったでしょうに。あの子、頑固なんですから)ヒソヒソ・・・チラチラッ・・・

香焼「ぅ……ちょっ!? うぇ?! あぶっ!!」ハッ・・・グラッ・・・ドシーンッ・・・///

五和(あ、やっぱこけた」ハハハッ

浦上(言わんこっちゃない」ニャハハッ

神裂(『スッテーン』ではなく『ドッシーン』でしたね」アハハ・・・


―――と思った矢先……洗面所のドアが微妙に開いてて、馬鹿三人がピーピングトムってた。しかも途中から隠れる気無いし。
くそぅ、くそぅ……恥ずかしい&悔しい!


浦上「やれやれ。はい、それ捨てますから居間に準備したヤツ穿いて下さい。新品じゃないけど我慢して下さいネ」フフッ

香焼「くぅ……ど、どうもっ!」グヌヌゥ・・・///

神裂・五和((意地っ張り可愛い))ニヤニヤ・・・


屈辱だが、従う外あるまい。リビングへ移動し、ソファの上にあるタイツに手を伸ばす―――が、何故か浦上に奪われた。


香焼「なんだよ」ムスゥ・・・///

浦上「だーかーらー。学習しませんネぇ……一人で穿けないんでしょ?」ジー・・・

香焼「じゃあ、教えてよ。一人で穿くから」フンッ・・・///

五和「やれやれ、ツンツンしちゃって。人が折角誠意持って教えてあげようとしてるのにぃ」フーゥ・・・

神裂「浦上、五和。言い方があるでしょう……しかし香焼も、少しは大人になりなさい」ヤレヤレ・・・


腹立つ、が、姉さんの手前だ。我慢我慢。
冷静を装い浦上の方を見る。するとタイツを腰から爪先の方まで、クシャリと両手に丸めた。


浦上「女性物の『穿きモノ』は殆ど一度丸めた方が穿き易いですヨ。ストッキングやニーハイ・オーバーニー等もそうです」クルッ・・・

五和「それでもって、爪先に揃えて上にあげて行くのよ。ロールアップ、ロールアップ」グルグル・・・

香焼「成程、ありがとう。じゃあ今度は気を付けて穿くっす」スッ・・・

浦上「……、」ジー・・・

香焼「……何か」ピタッ・・・


無言で自分の足を見詰める浦上。そして何を思ったか……自分の肩を掴み、強引にソファへ座らせた。


香焼「へっ」キョトン・・・

浦上「お座る。また破られたら流石に困るので、今日は私が穿かせちゃいますネ」グイッ・・・

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ!?」ギョッ・・・

神裂・五和「「……Oh」」マジマジ・・・

もあい「にゃん」ジー・・・


何故? Why? なにゆえ!? 如何してこうなる?!

即座に抵抗しようとしたのだが、ヤツの方が上手(うわて)。有無を言わさず爪先にタイツを当てられ、動きが取れなくなった。
暴れても良かったが、先程伝染させてしまった手前、抵抗を止めてしまった自分に拳を入れたい。


 ※以下、馬鹿1号(いつわ)&馬鹿V3(ねーちん)目線!



          にゃーん・・・・・



浦上「―――まったく、じっとして下さい。また伝線しちゃいますヨ」ピタッ・・・

香焼「じ、自分で出来るよ」モジモジ・・・

浦上「はいはい。お古のニーハイあげるからそれで練習して下さい。んで、一人でちゃんと穿ける様になってから威張って下さいな」ツツツ・・・

香焼「ぐぅ……っ!」ビクッ・・・


五和(お、おぅ)ゴクリ・・・///

神裂(これは、これで)ゴクリ・・・///


浦上「暴れちゃダメですからネ。よいしょ……うーん、香焼、相変わらず足綺麗ですネ」スベスベ・・・

香焼「まっ、余計なとこっ、触るなっ!」ビクンッ・・・///

浦上「はぁ。男のクセに無駄毛が無い。麦野さんに永久脱毛して貰ったんでしたっけ? 羨ましいですネぇ」ツツツツツ・・・

香焼「っ、ば、かぁっ」キュッ・・・

浦上「にゃはははは。女々しい声上げちゃってぇ。『香ちゃん』モードですかぁ?」ニヤリ・・・クイクイッ・・・

香焼「おまえ、が……っ……余計な事するから、だろ……ぁ、んっ」ピクッ・・・

浦上「はて? 余計な事って何です?」スッ・・・スッ・・・

香焼「っ……だろ。へんたい」ボソッ・・・///

浦上「聞こえませーんヨ」ニコニコッ・・・ツツツッ・・・

香焼「ひゃぅ! く、くすぐったいんだ! この馬鹿姉っ!!」グゥ・・・///

浦上「んふふーっ。可愛(やらし)いですネぇ……あ」ツツツ・・・ジー・・・

香焼「え……なっ! ちょ、見るなっ!!」カアアァ///

浦上「やれやれ、黒のボクサーなんて色気無いですヨぉ。単色じゃなく帯の部分が別の色だったりした方が、可愛らしいですって」クスッ・・・

香焼「何で浦上にイチャモン付けられなきゃいけないんすか。自分のパンツぐらい自分で選ぶよ……てか、見んなっ!」モゥ・・・///


神裂(お、女の子というか姉妹がじゃれ合ってる様にしか見えませんが)ドキドキッ・・・///

五和(だが男だ―――けど、それなら禁断の姉弟愛的なきゃああぁ!!)ハラハラッ・・・///


  にゃっふるにゃっふる・・・・・



浦上「―――ねぇ。もしかして……勃ってる?」チラッ・・・

香焼「た、勃ってない! だから見るな! てか、此処まで上げてくれたんならあとはもう一人でやるよ! ありがと離れろ!」アタフタ・・・///

浦上「ホント? じゃあ触っていいですよネ?」ニヤリ・・・

香焼「馬鹿言うなっ! 話を聞けえぇ!!」カアアアァ///

浦上「にゃはははっ! 真っ赤っかー。そんなんじゃレッサー受け流せないぞー」ニヤニヤ・・・スッ・・・

香焼「アイツは上辺だけのエロで、内心純情娘だから流すの容易いっての……ってもぅ! スカートの中に手ぇ入れるなぁ!」ジタバタッ・・・///


神裂(こ、こここ、これはっ! あ、姉として注意すべきなのでしょうかくぁwせdrftgyふじこlp;)ボンッ・・・///

五和(キマシタワー!? え、違う? もうどっちでも良いよぉ! ウラ、そこから押し倒して跨っちゃえぃ!!)ハァハァ・・・///  ●REC...


浦上「―――よいしょ、よいしょ。あとは皺を伸ばして……およ? 随分大人しくなりましたネ」クイクイッ・・・

香焼「……もぅ、良いや。好きにして」ハァ・・・///

浦上「えー。無理矢理が楽しいのにぃ」ブゥー・・・

香焼「変っ態。ド変態。皆に言い付けるからな」ジトー・・・///

浦上「言えるもんならどーぞ。勿論、私が『詳細』を事細かに補足してあげますからネぇ」ニヤニヤ・・・

香焼「……あほ」ムゥ・・・///

浦上「うふふっ。大丈夫、香焼ならお婿貰ってくれる人いっぱい居ますヨ。例え私に『汚されて』、『中古』になったとしても……ネ」ニヤリ・・・

香焼「おまっ……誤解招く様な発言すんなっ」ムググゥ・・・///

浦上「あはー。ほんっと『香ちゃん』状態の香焼は可愛いですネぇ……本気で食べて良いカナ? ねぇ―――」ペロリッ・・・スッ・・・

香焼「っ!?」ドキッ・・・///


神裂(す、すっす、すすすすす、スカートの中に手がああぁ!!)ムヒョーッ///

五和(そ、それ以上は駄目よ! 私達が見てると言うのに! あぁ!! コウちゃんが私と姉さんより先に大人の階段をっ!)ギラギラ・・・///


浦上「―――……はい、終わり。これでフィットした筈ですヨ。如何かな?」パッ!

香焼「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇ」ピクッ・・・ハッ・・・///

浦上「にゃっはっはっ。あれぇ? 如何したのぅ? 何か期待しちゃいましたかぁ?」ムフフッ

香焼「っ~~~~~ッッ!! もう知らない! 学校行くっ!」マッカッカァ・・・///

浦上「ありゃりゃー……やり過ぎたかな? まぁ楽しかったから、おkですネ」クスクス・・・


五和(ふぅ……朝っぱらから馬鹿な事を。若衆筆頭として、二人とも説教ね)ホッコリ・・・ ← 賢者モード

神裂(ふぅ……まったく、度し難いですね。聖職者にあるまじき行いですよ)ヤレヤレ・・・ ← 聖人モード

もあい「みゃぅ」ジトー・・・

―――結局、五和と浦上は完璧遅刻コース。慌てる浦上に反し、何故か満足げな五和……及び姉さん。訳が分からない。
忙しなく飛び出してった2人を見送り、自分も鞄を持って玄関に向かう。


香焼「それじゃあ行ってきます。理事校みたいに6限以降の居残りは無いので、帰りはいつもより早いと思います」チラッ・・・

神裂「ええ。気を付けて……ホント、気を付けて」ジー・・・

香焼「え、あ、はい。後の事、宜しくお願いします」ガチャッ・・・

もあい「にゃー」フシフシッ・・・


もあいを抱えた姉さんに見送られ家を後にする。
マンションを出た瞬間、確かに肌寒い気がした。成程、これでは生足は寒かろう。タイツにしといて正解だった。

さて……近所に知り合いは居ないのだが、何故か周りの目を気にしつつ、駅へ向かう。

余談だが、自分のマンションがある第一学区には、基本的に学生は住んでいない。
では何故自分のマンションがそこに在るかというと、単に理事校が第一学区に在るからという理由だ。
故に、そこへ通う理事校生の為、数件程、特別物件として専用マンションが建てられている。
だが不思議な事に、近所で同級生を見た事は無い。尤も、上辺だけで付き合ってる同級生の顔なんて殆ど覚えてないのだが。


 「学ぶべき事は多いんすけどね……校内の空気がなぁ」テクテク・・・


理事校に通う生徒は、謂わば都市官僚(理事)予備軍。一学年一クラス20名程の少数精鋭だが―――殆どが高飛車だ。
誰も彼もが慣れ合いなどしない。
友達よりも、将来の派閥。能力よりも、それの使用法。遊びより、理事になる為の資金繰り。そんな考え方ばかり……正直、嫌になる。
出来る事なら普通の学生生活を送りたいのだが、あくまで自分は『潜入学徒』。贅沢は言えない。


 「でもまぁ今週来週は、一、女学生っすね」ハハハ・・・


何の因果か、女子校へ足を運ぶ事に。しかもこの街の中でも屈指の名門お嬢様校たる、あの常盤台だ。
『香』として出来た友人は多い。そういう意味では理事校よりも有意義なのかもしれない。
しかし結局のところ、それは仮面付き合いだ。『香』は自分であって、自分じゃない。それから……『尊厳』の問題。


 「……そんなに女々しいかよ」ムスー・・・


好きで童顔チビやってる訳じゃない。出来る事なら、ステイルの様に高身長で、軍覇の様に男気溢れる丈夫になりたい。
だが、現実は悲しいかな。将来(遺伝)的に考えても、自分の両親ともにそれほど身長は高くない。
きっと170前後で身長が止まってしまうんだろうなと考えると……溜息しか出て来なかった。

そしてもう一つは、通学の問題で…―――…卑屈な事を考えながらトボトボ歩いて数十分、いつの間にか最寄り駅に着いてた。
此処から都市メトロ南北線で数駅進み、第二十二学区へ。そこから地上に出てバスで『学舎の園』まで向かう。


 「通学で一時間かぁ。都会は大変だよなぁ」Pi!


実家(田舎)の中学ならどんなに遠くても自転車で30分。それ以上遠ければスクールバス(何故か最寄りの幼稚園のバス)が迎えに来てくれる。
だが都会の学校だと直線距離的には同じくらいでも道路が混雑してたり態々環状線型にしてたりする為、
電車やバスの乗り継ぎ通学(通勤)だったりするので、真っ直ぐ進めず倍時間が掛かったりする。

そんな訳で、交通系電子マネーを改札に通し、ホームへ並ぶ。
この駅から乗る人間は少ないのだが、第一学区より北部の第三,四,十六学区から乗ってくる乗客がそこそこ居る為中々座る事が出来ない。
更に、第一学区を過ぎ、丁度地下へ潜る―――中央(南方)に向かうともっと大変だ。
中央の第五,七,十八学区に多くの学校・施設・研究所・会社が集まっているので、そこへ向かう人々の波でギッチギチに混んでしまう。


 「ハァ……こればっかは慣れないっすよ」グデェ・・・


殆どは学生だが、通勤通学の時間帯だと老若男女関係無い。最早隣が男なのか女なのか、人なのか犬なのか分かったもんじゃないくらい混む。
全身が軋む程に電車の中へ奥へと詰め込まれ、皆、その場を動かぬ様兎に角踏ん張る。
肌が触れたりだの、臭いがキツいだの、音が五月蠅いだの、そんなのは『我関せず』で一蹴されてしまう。

姉さん曰く『現代の奴隷船ですね』だそうだ。ああ、上手い例え。


 「着た。とりあえず、端っこキープ頑張ろ」スッ・・・


構内アナウンスと共に、銀に青緑のラインが入った電車が向かってくる。とりあえず、今日も頑張ろう―――

 ―――さる平日、AM07:50、学都メトロ南北線、南方行き電車内・・・香焼side・・・




第一学区南駅から隣の駅、第七学区最北駅に入ると、ドッと人が入り込んでくる。
此処から丁度自分が降りる第二十二学区東駅くらいまでがラッシュのピークだ。
第七学区中心部『窓の無いビル』最寄り駅と、第五学区の第三資源再生処理施設の最寄り駅くらいで多少混雑はは減るモノの、
それでも基本は常にギュウギュウ詰めで座れた試しがない。


香焼(一度で良いから座ってみたいな……でも椅子取りゲームするのも馬鹿馬鹿しいや)フゥ・・・


意地になり虎視眈々と次に空く席を狙うのは大人げない気がする。さておき……現在の状況。


 (……くぅ)ググググッ・・・


始めは何とかドアと座席脇の手擦り(取っ手)部分に寄り掛れていたのだが、人が入るに連れ、内側へと押しやられる。
最早、隣が男性なのか女性なのか大人なのか子供なのか分からないくらい、ギチギチに挟まれてしまった。


 (苦しいなぁ)ウーン・・・


秋口の筈なのだが、空調で弱冷房が回ってる。確かにこれでは汗を掻く。


 (直肌触れるのも嫌だよねぇ……おっと!)グラッ・・・


電車がカーブで揺れたり速度のアップダウンがある度、取っ手に掴まってない人達がグラりと揺れ、自ずと体制を崩される。
友人知人同士で乗った筈の人達も、乗り始めはお喋りに興じていたが、もうその余裕も無い。
携帯やゲームを弄っていた人々も、既に手を動かせず、また画面を見る余裕が無いので、下に落とさぬ様しっかりしまったり握っていた。

こうなると唯一の救いは音楽だけ。十中八九の人は耳にイヤホン・ヘッドホンを装着してる。勿論自分も然り。


 (現実逃避ってか)ハハハ・・・


一一一(ひとついはじめ)のアップテンポな新曲を聞きつつ、心の中で現状を嘆いた。

自分は一応モラルある行動を心掛けているので、音量はそれほど出さない様にしているが、かなり爆音で音漏れさせてる人も居る。
周囲の人は咋(あからさま)に嫌そうな顔。腋臭(ワキガ)やら風邪(咳)やらは生理現象で仕方ないが、これは人格が出ると思う。


(うぅ……早く降りたい)ハァ・・・


こういう時、身長が低い人間は損をする。損というか……最悪ケガする。
前後左右の人間の、肘やら手やら膝やら足やら何やらかんやら、色んな部位がぶつかり押し付けられ、痛い思いをする。
特に身長高めの人の肘が顔に当たったりするとホント辛い。あとは身長関係無く、足踏まれた時。リアルで泣ける。

今日はまだ前後から身体を押し付けられてる程度で済んでいる。
ただ、右の大学生っぽい男性の香水臭さは頂けないな。あと、後ろのオジさんが煙草臭い。
まるでステイルに挟まれてる気分……アイツ、正直、煙草&お香(ブース)臭い。

こんな感じで心の中で毒吐く事数十分、アナウンスに耳を傾けると、霧ヶ丘女学院前駅に到着したみたいだ。
此処から2,3駅で総合病院(冥土返し勤務地)前駅。此処で多少は空いてくれる―――更に2,3駅でやっと第二十二学区地下街駅に到着。


 (残り10分15分の我慢っすね)グデェ・・・


しかし此処からが長く感じる。
普段は、偶にしかラッシュアワーの地下鉄を利用しないのだが、これから2週間、乗らねばならないと考えると胃が痛くなりそうだ。

多少時間をずらしても大体同じ様な乗車率。頼むから5両編成から8両編成くらいまで増やしてくれ。
そうすれば第一学区から座れるのに……何か残念。


 (まぁもう一つ手はあるけど……これだけはしたくないしね)ハハハ・・・


最後部車両は比較的空く。理由は、所謂、女性専用車両だからだ。
きっと今よりは楽になるだろうけど……乗ったら全尊厳が散ってしまう気がする。だから絶対乗ってやらない。

数分後、総合病院前を過ぎやっと目的地が見えてきた。

車内も混み合いのピークは終わった様で、やっとの事、内側からドア際に移動する事が出来た。
といっても、まだまだ人は多いので余裕を持って吊革に捕まる事は出来ないのだが、幸運にもドア脇の手擦りに捕まる事が出来た。


 (漸く気張らずに済むな)フゥ・・・


鞄から携帯を取り出しメールやlineの返信をする。空いた時間で適当にSNSをチェックした。
しかしまぁ、鞄の中が酷い有り様。混雑してる時は周りの邪魔にならぬ様、前に抱えておくのだが、それでもやはり潰れてしまう。
いっそリュックタイプにした方が良いのかもしれないが、リュック相手に盗難事件が多発してるみたいなので、気が引ける。

手提げでも無くリュックでも無く、何か良い方法は無いのだろうか。手ぶら……は拙いかな。
とりあえず化粧品と携帯が無事だっただけでも幸いだろう。というか、他には特に壊れそうなモノ何も入ってないし。


 (早く外の空気が吸いたい)ハァ・・・


某SNSで、レッサーのお馬鹿な投稿を読みながら、日の光と自然の風に思いを馳せる。


 (もう8時半かぁ……9時前後で着けるよね)チラッ・・・


9時15分に『学舎の園』の、正面ゲート入ってすぐに在る噴水付近で、御坂蛇(17600号)さんと待ち合わせてる。
二十二学区駅から『園』まで、バスで10分くらいなので、5分前くらいに着けるだろう。

それはさておき、朝っぱらから土御門義妹殿に会ったりするのだけは勘弁願いたい。玩具にされる。


 (打ち合わせしたらさっさと図書館っすね)フム・・・


『香』用の携帯を開きメッセージを確認―――相手は、食蜂操祈さん。


 (『カオルちゃーん☆いつもの場所で合瀬ましょうねっ♪』……合瀬って)ハハハ・・・


相変わらずフランクな人だ。

話は変わるが、自分は携帯を3つ持っている。1つはプライベート用。1つは『仕事』用。そして、この『香』用だ。
敏腕ビジネスマンの様に思えるかもしれないが、これはこれで色々と面倒だ。
例えば、プライベート用と仕事用に同じ人物からメッセージがあったりすると、公私を分けた文章の打ち方や英語に切り替えたりと、厄介なのだ。

特に3つの携帯にアドレスが入ってるステイルや上条さんから連絡が来るとややこしい事この上ない。


 (いっその事、あの2人には正体バラしちゃいたいなぁ)ウーン・・・


そうすれば大分楽になるのに。何で友人と恩人に変な隠し事しなきゃならないんだろう。
あーだこーだ考えてる内に、1つ前の駅に着く。やっと地獄から解放されるぞ。


 (今日から2週間この生活かぁ……ハァ)グデェ・・・


やるっきゃない。

ふと、如何でも良い事に気付いた。『臭』から察するに、さっきの大学生男子とオジさんが真後ろに居る。
オジさんの方は風邪気味なのか、ユラユラしながら僕に寄り掛ったり口呼吸っぽい音を出してたりする。
ぶっちゃけ、隣に居るのはキツいな。早く駅に着いて欲しい。


 (―――よしっ。着いた!)スッ・・・


ドッと降りていく人々。自分も流れに乗り、改札へ一直線―――やっと電車を降りられた。
そのままそそくさとエスカレーターで地上へ向かい、日の光と外の空気を沢山浴びる。ああ、自然って素晴らしい。


 (バスは……来てる。すぐ乗っちゃおう)タッタッタッ・・・


小走りでロータリーへ。『園』行きのバスに乗り、椅子に座る―――座るってこんなに楽だったのかと実感出来た。
さぁ。改めて、お勤め参りましょう。

―――約十分後、アナウンスが鳴りバスが停車。
仰々しい門と凛々しい女性の警備員(『アンチスキル』に非ず)に守られた『学舎の園』に到着。
この『園』の殆どの関係者は女性。男性の数は両手で数える程しか居ないらしい。

警備員さんに一礼し、学生証(IDカード)をスキャンして貰い、中へ通る。
土御門が用意してくれたこの偽装カードの事を信用して無い訳ではないが、此処を通過する際のセキュリティチェックで、
毎度毎度ハラハラしてしまう。ただ、幸か不幸か、今まで一度も疑われた事が無いというのも……男として悲しい話だ。


香焼(よしっと。5分前っすね)テクテク・・・


予定通り噴水前に到着。
因みに、9時過ぎともなると基本的にどの学校も一限が始まっているので、周囲に人影は無い。


 (えっと……『蛇』さん、居ないなぁ)キョロキョロ・・・


しかし、居なきゃいけない人が居ない。一寸待って見ても、彼女らしき人物は現れない。
不安に思いつつ、中央時計を見遣る。丁度針が15分を刺した……その時―――携帯が震えた。

相手は、その人。


香焼「―――はい、もしもし」Pi!

御坂蛇(17600号:プロスネーク)『時間だ。移動を、とミサカは端的に指示を出します』コクッ・・・

香焼「……、」ポリポリ・・・

御坂蛇『ん? どうしました、カオル。とミサカは茫然と棒立ちしている「貴女」に問いかけます』ジー・・・


いや、いつもの事なのだが、貴女は何処に居るんですか。


御坂蛇『F2000R(トイソルジャー)のスコープからカオルを確認できる位置に居るとだけ言っておきましょう』ジー・・・

香焼「はぁ、そうっすか。まぁ良いや……じゃあいつもの様に自分は図書館へ向かいますね」テクテク・・・

御坂蛇『了解。それと、言葉遣いには気を付けなさい。今、「貴女」は「神埼香(コウサキカオル)」。お忘れなく』ト ミサカハ チュウコウクシマス・・・

香焼「はいはい」ヤレヤレ・・・

御坂蛇『本当に分かってますか? 電気の一つでも流してくれようか、とミサカはダラしないカオルを脅します』スッ・・・

香焼「か、勘弁してっ」タラー・・・

御坂蛇『言葉遣い。あと、電話じゃなくインカムホンに切り替えろ。とミサカは最期の注意をします』ジー・・・


Bluetoothの無線イヤホンに切り替え、歩きながら話を続けた。

因みに、このイヤホンの無線を通して対精神能力者用の電子バリアを遠隔操作出来る蛇さん。このバリア、展開と同時に電撃が奔る。
正直この電流は長く受けたくない。痛くは無いのだが、くすぐったいというか、変な気持ちになるというか……兎角、極力使いたくない。


香焼「そういえば海原さんは?」テクテク・・・

御坂蛇『師匠(マスター)は所用で暫く出払ってます。何でも、御実家に帰る用が出来たとか』ト ミサカハ ホウコクシマス・・・

香焼「中米に?」キョトン・・・

御坂蛇『「原典」二つが如何とか、封印指定がこうとか、ミサカにはよく理解出来ない事を言ってましたよ』フム・・・


そういえば海原さん―――もとい『中の人(エツァリ)』は世界中から目を付けられる程、危険な魔術師――に『為って』しまった――とか。
彼自身はそうでもないらしいが『内包したモノ』が問題らしい。それこそ、魔神レベルで腫れ者扱いに。


御坂蛇『さて……無駄口は終わり。そろそろ常盤台だ、気を付けなさい。とミサカは気が弛んでるカオルに叱咤の言葉を送ります』ジー・・・

香焼「了解っす」コクッ

御坂蛇『「了解しました。」もしくは「了解です。」でしょう。とミサカは学習能力の無いお馬鹿さんに呆れかえります』ヤレヤレ・・・


厳しい人だ。まぁそれ以上に、頼りにはなるんだけどね―――さぁ、常盤台中学へ行こうか。

常盤台中学―――学園都市の中でも5本の指に入る名門校であり、同時に世界有数のお嬢様学校。

共用地帯『学舎の園』を形成する学校の一つである。義務教育終了までに世界に通じる人材を育成する、が基本方針。
生徒数は200人弱で超能力者(レベル5)二名、大能力者(レベル4)四十七名、それ以外は全員強能力者(レベル3)。
在学条件の一つにレベル3以上である事が含まれているとんでもない学校で、
全生徒の能力干渉レベルを総合すると生身でホワイトハウスを攻略出来ると噂されている。

基本的に全寮制で、寮は学舎の園の内部と外部に一つずつ存在。また、噂では不測の事態に備え学バスは耐防爆弾仕様だと囁かれている様だ。


香焼(といっても、箱入り娘さんばっかなんすよね)


無論、彼女達に実践経験はない。無くて普通なのだが、殆どの生徒が井の中の蛙状態。
中には白井さんや御坂さん、操祈さん―――はちょっと違うか―――の様な前線気質の娘も居たりするが普通はお嬢様お嬢様してる人ばっかり。

一人ひとりが自然災害レベルの能力者でも、有効活用するか如何かは本人次第。良く云えば『能ある鷹』。悪く言えば『宝の持ち腐れ』。


 (まぁ戦争ムードも終わったし……平和ならそれで問題無いか)


『能力』を欲望の刀とするか、叡智の産物とするか。出来得る事なら後者が望ましい。平和であればある程、そうなってくれるだろう。
頭の中であーだこーだ考えている内に、後者の前に到着。蛇さんと非常時の確認を済ませ、足を進めた。

此方でも専属の守衛事務さんに一礼。


守衛「―――ん。ああ、おはよう。今日は早いのね」チラッ・・・

香焼「おはようございます。ええ、今週来週はいつもより早めに登校する予定…です」コクッ・・・

守衛「あら、そうなの。殊勝殊勝」フフッ・・・


書類上、『神埼香』は一年の特殊クラス在籍となっている。理由は正体不明の希少能力(レアスキル)で、その影響による『病』持ちだから。
故に、決まった登校時間は無いし普通の授業も受ける事は無い。特殊な能力開発と治療を受ける際にのみ、登校する―――という設定だ。

まぁこんな不良・不登校児と紙一重なモンなので、守衛さんには顔を覚えられてしまっていた。


警備員「暇だったら詰め所に遊びおいで。私も暇だからお茶でもしましょ」Pi!

香焼「あははは。その内お伺いします」ペコッ・・・


相変わらずフランクな守衛さんだ。最早顔パスで玄関を通り『彼女』が居ると思われる図書館へ向かう……それで良いのか名門校。
時刻は9時半。丁度一限目が終わる頃。極力人に会わない様心掛け、そそくさと廊下を進む。

さておき、話は戻るがこの学校には『派閥』というものが存在している。

基本的にはお遊びグループのようなものだが、同じ目的を持った者達が集まって学校から設備を借りたり資金を調達し、
研究分野などで名を残すという部活のような性質を持つ。
大きな派閥は人脈や金脈、独自の知識などまでも収めており、第一線で活躍する生徒の中にはそれらの力を借りて功績を挙げる者も多い。
そのため大きな派閥は学校の外にまで影響を及ぼす大きな力を持つ事になる。

故に大きな派閥に属する事が一種のステータスとなり、その派閥の創始者ともなれば並ではない名声を得るのだとか。


 (さて、と……行くか。)スッ・・・


そして、その最大派閥のトップこそが、この学校の超能力者が一人―――心理掌握(メンタルアウト)、食蜂操祈さん。


 (あ。図書館入る前に連絡しないと)Pi!


彼女は、自分の『領域』を勝手に踏み躙られる事を極端に嫌う。
普段他人の領域へズカズカと踏み込むクセに、その逆をやられるのは苦手な様だ。典型的な打たれ弱いドSタイプ。

その為か、この時間帯――彼女がサボりを働く時間――彼女が常駐する事が多い図書館には彼女の『結界』が張ってある。
理論は分からないが、彼女の能力を応用した広域の科学的な『人払い』だ。手間が掛らない分、魔術より効率的だと思う。
因みにこの結界内へ彼女の許可無く土足で侵入したモノは、頭が真っ白になり知らず知らず回れ右している模様。

冷静に説明しているが、自分も初めはこれに引っ掛かった口(※)である。        ※すんどめ。第二(19)話参照。

兎に角、そうならない為にも、事前にメッセージを入れてやる。
彼女と自分の信頼(?)関係であれば、すんなり入れる筈なのだが……さて―――

―――一寸後。そろそろメールが帰ってくる頃か、と携帯を開いた刹那……扉が勢いよく開いた。


香焼「っ!!?」ビクッ!!

食蜂「かぁーおぉーるぅーちゃーーーーんっ♪ いらっしゃーうぃー☆」バンッ!!

香焼「あ、あははは。おはようございます、操祈さむぎゅぅっ?!」モフンッ!!

食蜂「んもー。『園』に着いたって連絡くれれば門のとこまでお迎え行ったのにぃ」ムギュムギュッ!

香焼「あっぷぇえぇ!!」アbbbbb・・・///


目の前おっぱいのいっぱい……じゃなくて、いきなり抱き付かれた。
咄嗟の出来事に対応出来ず『フガフガッ』と操祈さんの腕と胸に挟まれながら、もがいてしまう。
宛ら『甘いの3個ほしいのか? 3個……このイヤしんぼめ!』とか角砂糖ブチ込まれそうなくらい撫で回された。
永遠に続きそうだったので、苦しさと恥ずかしさ紛れに操祈さんの腰をタップしたところ、やっと解放された。


香焼「ぷっはっ! けほけほっ……もぅ」グデェ・・・///

食蜂「あらら、ごめんなさい。嬉しさのあまり興奮力がすんごい事になっちゃってぇ」クスクスッ

香焼「んもぅ……そんなにホールドしなくても逃げませんから」ポリポリ・・・///

食蜂「えへへぇ♪ そんじゃー、こんなとこで立ち話も難だから司書室行きましょ☆」クイクイッ


招かれるがまま司書室へ。
向かう間、図書館を見回す……目が回る程膨大な本の数。一、学校の図書館とは思えない。最早国立レベル。
勿論、図書室も豪勢。冷暖房、そして監視カメラのモニターに新型PC、何故かお手洗いとキッチン、更にはシャワールーム完備。
ぶっちゃけ此処で生活出来るな。


食蜂「お紅茶でおk?」テクテク・・・

香焼「あ、僕が淹れますよ」スッ・・・

食蜂「良いの良いの。お姉さんに任せなさーい」フフッ


慣れた手つきで紅茶を準備する操祈さん。茶葉の缶やポットを見ると、やはりお嬢様校なのだと感じる。
相変わらず借りてきた猫状態でフカフカのソファに坐して待つ事数分、操祈さんは僕の横に腰掛けお茶を注いだ。


食蜂「はーい、どぉぞ。甘いの何個ほしい? 3こ? 3こなの? このイヤし―――」ワキワキ・・・

香焼「操祈さん、それ天丼」アハハ・・・

食蜂「―――ん、ぼぅ……Oh」ムゥ・・・

香焼「なんかすいません。そういえばこれ、お土産…です」スッ・・・

食蜂「あらまぁ! 素敵。英国土産?」キラキラ・・・

香焼「はい。ありきたり…ですけどキャンベルのクッキー…です。お茶受けにどうぞ」コクッ

食蜂「んふふっ。じゃあ早速頂きましょう♪」ワーイ!


テキパキと包装紙を剝ぎ、缶ケースを開く。甘いモノに目を輝かせる辺り、普通の女子なのだなぁと思える。
それよか……さっきから妙に近いのですが。てか、ひっついてるし。


食蜂「んー。糖分と一緒に香ちゃん分も補給ー」モキュモキュ・・・

香焼「はぁ。で、でも暑くない…ですか」ドキドキ・・・///

食蜂「寒いくらいよぉ。最近一気に冷え込んじゃったわよねぇ……だからもっと近ぅ寄れぃ♪」ヌクヌク・・・

香焼「うぎゅっ」アワワワ・・・///

食蜂「ふふふーっ。真っ赤っかよーん。やっぱりぃ……香ちゃんってば百合(ソッチ)の気あるのねぇ」クスクス・・・

香焼「な、無い…ですよ! んもー勘弁して下さい」モジモジ・・・///


確かに自分の恋愛対象は女性なので、強ち間違いではないが……『同性愛』の気なんてありません。僕は至ってノーマルです。

それから昼前くらいまで適当にダベったり、ゲームしたり、弄られたりした。
操祈さんは僕の事をペット感覚で撫で繰り回すので、正直、『色々』我慢するのが大変だ。

さて……そろそろ昼休み。


香焼「―――操祈さん、そろそろ図書館に人が来る頃…ですよ」チラッ・・・

食蜂「んー? まぁ、もうお昼なのね。楽しい時間ってあっという間だわぁ」アララ・・・

香焼「えっと、『派閥』の皆さんも来ちゃいますよね? そろそろ僕、帰りましょうか」

食蜂「えー! やだー!」ブーブー・・・


口を尖らせ僕の頬を突く女王蜂。子供か、この人。


香焼「とは言っても、いつもお昼は取り巻きの人達と食べてますよね」

食蜂「いつもって訳じゃないけど、殆どはそうね……でも別に毎日一緒に居る必要は無いわよ」フイッ

香焼「操祈さんはそうでも、取り巻きの人達が勝手に付いてきちゃうんじゃ」

食蜂「その辺は、ほら……ピピピッと改竄力で」ニヤリ・・・


相変わらず素敵な真似を。


食蜂「でも、ホントに一緒に居ない日だってあるのよん。研究とか『慈善事業』の日は学校に居なかったりするもの」Pi!

香焼「慈善事業?」キョトン・・・

食蜂「んー……超能力者(レベル5)ともなると、色々やらなきゃ駄目なのよ。この街から出資して貰ってる身としては、ね」ヤレヤレ・・・


能力(研究成果)の還元か。僕みたいな無能と違って、有能だと様々な場所から引っ張りダコなのだろう。
しかし操祈さんの場合、取り巻きさん達が彼女のスケジュール管理をしてたりしそうなのだが、そこんとこ如何なんでしょう。


食蜂「ざっくばらんはね。でもぉ、皆まで知らせる必要は無いでしょ。現に今、私達がこうして逢引してる事はだぁれも知らない事だし♪」フフッ

香焼「逢引って」ポリポリ・・・

食蜂「じゃあデート? あ、でも別に出歩いてる訳でも無いしぃ……うーん。合瀬?」ジー・・・

香焼「根本的に何か違う気が」ウーン・・・

食蜂「細かい事はキニシナーイ。ねぇねぇ。お昼、何処か食べに行きましょー♪」グイグイッ・・・


これまた困った。上からの指示で、基本校外での接触は避ける様に言われているのだが、如何したものか。


香焼「うーん。でも、僕、午後は検診があるん…ですよ」ポリポリ・・・

食蜂「それまでに戻ってくれば良いじゃない。それともぉ、私と一緒にお昼するのは嫌かしらん」プニプニ・・・

香焼「そ、そういう訳じゃない…です! ただ、外だと周りの目が」ムギュウゥ・・・

食蜂「あらぁ。何か気になる事でも?」ツンツンッ・・・


貴女は自分が思っている以上に有名人だという事を自覚した方がいい。
それに、僕は極力目立ちたくない。立場的にも『神埼香』は知名度が低い方が都合が良いのだ。


香焼「僕、結構人見知りなので、その……出来れば静かにご飯食べたいなぁって」ムゥ・・・

食蜂「えー。もしかして普段便所飯とかしちゃう系女子?」タラー・・・

香焼「何その新ジャンル。いえ、そういう意味じゃなくて……兎に角、お弁当持って来ちゃってますし」コクッ・・・

食蜂「あらまぁ家庭的。女子力高いのね☆」フフフッ


会話が咬み合わない人と喋るのは結構疲れるな。如何してこう、超能力者(レベル5)ってのはマイペースなのだろう。
麦野さん然り、軍覇然り、御坂さん然り……『自分だけの現実』が確立し過ぎると、唯我独尊になっちゃうのかなぁ。

何だかんだで4限終了のチャイムが鳴ってしまった。
早い所此処から移動しなければ。もし取り巻きさん達に操祈さんと2人きりで居る所を見られたら、厄介な事になる。


香焼「―――操祈さん。そろそろ時間が」チラッ・・・

食蜂「うーん、あの子達が来ちゃうわねぇ。でも今日の優先力は香ちゃんよん♪」ムギュッ

香焼「あぷぇっ! ら、来週までは日中学校に来てますから! だから、今日はっ!」ムキュウゥ///

食蜂「そうなの? じゃあ来週までイチャイチャ出来るのねっ★」ニヤリ・・・


駄目だ、この人。早く何とかしないと。


食蜂「今から適当にパンでも買ってくるから、中庭辺りでお昼しましょー」ニコニコッ

香焼「中庭って……一番目立つとこでしょう!」アタフタ・・・

食蜂「良いじゃなぁい。全校生徒に見せつけちゃいましょ★」フフフッ

香焼「」

食蜂「あ、勿論最後に皆の記憶トばしておいてあげるから安心して♪」ニヤリ・・・


あまりに想定外。このままでは『香』の存在が目立つ事に。一旦、蛇さんに相談したいのだが……どうも逃げられそうにない。


香焼「そ、それでも監視カメラに記録残っちゃいますよ」アワワワ・・・

食蜂「んもー。ホント、恥ずかしがり屋さんねぇ……これ以上我儘言うとお仕置きだぞっ」スッ・・・

香焼「い”っ! ちょ、待っ―――」ビクッ・・・

食蜂「モンドームヨー♪」Pi!

香焼「―――い、ぃひゃうんんっ!!」ビクンッ・・・


操祈さんが僕に能力を使った瞬間―――全身に電流が奔った。比喩なんかではなく、物理的な意味で。

因みにこれは、彼女の『読心(サイコメトリー)』及び『洗脳(マインドコントロール)』対策の電磁障壁(バリア)。
御坂さん(エレクトロマスター)には操祈さんの能力が効かないというデータに基づき、土御門と海原さんが発案したモノだ。

勿論、僕は無能力者で、発電系の魔術も使えない。故に『外部』からの補助が必要となる。その役目が僕と操祈さんの監視に付いてる蛇さん。
僕の背中に張ってある電子チップと鍼(ドチラも理学療法に用いるモノ)に信号を送り、電流を奔らせる。
これにより身体の内側に電気のシールドを張り、思考を強引に正常へ戻すという荒技を行っている。
ただし、この電流非常に気持ち悪い。痛くは無いのだが、熱い様な寒い様なくすぐったい様な刺激的な様な……兎に角、身体と精神に悪い。


香焼「(す、蛇さん! 少し電流強いっす)―――み、操祈さん……んっ……止めて、くださいよぉ」ビクッ・・・ビクッ・・・

食蜂「あはー★ 相変わらず難儀な病気ねぇ。突発性電気アレルギー症候群ですっけ?」Pi! Pi!

香焼「ひゃめっ、ひぐぅっ!! ちょ、んぐっ!!」ビクビクンッ!!

食蜂「私の能力が効かないなんて生意気だけどぉ……これはこれで、見てて面白いのよね♪」アハハー


サディストな女王様なんて官能の世界だけで充分です。
あと、蛇さん。何処から見てるか分からないけど、少々フライング気味で電流流すのは何故ですか。本気で狂いそうなんで勘弁してください。


香焼「ひ、ぅ……っ、こ、これ以上、虐めないで……んんっ!」

食蜂「うふふふふっ。可愛(ヤラし)いわぁ。香ちゃん、身体中を凌辱されて悶えてるみたいよ。ホント、癖になっちゃう」アハァ・・・///

香焼「や、め……っ……嫌いに、なります、よぅ……ひゃっっ!!」ビクッ・・・ジタバタッ!!

食蜂「んふふっ。それは困るわねぇ」スッ・・・ピタッ・・・

香焼「んぐぅっ……ハァハァ……もぅ! 次やったら問答無用で帰りますからねっ」ムググゥ・・・

食蜂「めんごめんご。でも言う事聞いてくれない香ちゃんも悪いっ。次生意気言ったらその素敵なタイツビリビリ破いちゃうからねっ★」ニヤッ・・・


変態力パネぇな。苦労して穿いたタイツを破られるのも困るので、言葉には気を付けておこう。

さて、この後だが……どうしよう。
本当は昼前に図書館を抜け出し、食堂でひっそりと弁当を食べる予定だったのだが、案の定、操祈さんに半拘束されてしまった。

一緒に食べても良いのだが、やはり取り巻きさん達が気になる。
蛇さんの助言を仰ぎたいが、彼女がベッタリくっついて見てる手前で携帯を弄るのは難しい。


食蜂「それじゃあ、此処で食べる? あんまりお行儀良くはないけどぉ、目立ちたくないんでしょ」ピンッ

香焼「それって結局、取り巻きさん達に見つかるんじゃ」ウーン・・・

食蜂「ダイジョブダイジョブ。『結界』解かなきゃ人入って来れないし★」ニヤリ・・・

香焼「それはそれで、図書館使いたい人達に迷惑掛かりますよ―――操祈さんは気にしなくても、僕が気にします」ムゥ・・・

食蜂「んもー。良い子なんだけど頭堅いわねぇ。しょうがない……香ちゃんの妥協点を聞きましょ」ヤレヤレ・・・


妥協点って、何それ。


食蜂「だぁかぁらぁ。何処でだったら一緒にご飯食べてくれるのん??」プニプニ・・・

香焼「そ、そういう。うーん。じゃあ逆に、この学内で目立たない場所って何処…ですか」ポリポリ・・・

食蜂「目立たない場所? そりゃあ、私が居る場所全て♪」ニヤリ・・・

香焼「それ能力使って無理矢理でしょう。そういうのじゃなくて」ハァ・・・

食蜂「はいはい。言いたい事は分かりますよーだ。でもねぇ……だったら学外出た方がまだ目立たないカナ」フム・・・

香焼「出来れば学内で」ペコッ

食蜂「チューモン多過ぎよぅ! まったくぅ……まぁ図書館(此処)の屋根裏とか、部室棟の空き部屋とか」ヤレヤレ・・・

香焼「じゃあそこで」

食蜂「衛生的にイヤよぉ。そんなバッチィとこでお昼したくないわぁ」ウェー・・・

香焼「……、」ハァ・・・


困った。手詰まり。


食蜂「んー、頭堅いクセに優柔不断ねぇ……やっぱり私が『御姉様(飼い主)』としてリードしなきゃ駄目なのね★」ムンッ・・・

香焼「へ?」キョトン・・・

食蜂「 >>693 」




①屋上れっつごー!

②中庭っ!

③いっその事、食堂(オープンテラス)へ!

3

―――なん……だと。


食蜂「はーい、じゃあ食堂行きましょ♪」グイッチョ!

香焼「待ってってーな!?」ビタッ!!

食蜂「んもー! この期に及んで何かしらん?」プンスコッ!


そんなあざとい仕草で頬を膨らましても駄目なモンは駄目です。というか、今までの話聞いてました?


食蜂「聞いてたわよん。でも、いつまでもグジグジ言ってる香ちゃんが悪いのよん」ビシッ

香焼「そ、それは謝ります。けど、僕は目立つの嫌だって言いましたよね。なのに食堂って」タラー・・・

食蜂「私の能力使って、私達の存在を大衆から意識乖離させる。これでおkでしょ! だから文句言わないのっ」ムンッ

香焼「だからそれでもカメラとかに残っちゃいますって」ハァ・・・

食蜂「そのくらい我慢なさいな。それとも、カメラに映ったら魂抜かれちゃうとかオカルトほざいちゃう系?」ジトー・・・

香焼「それ何処の射影機…ですか―――じゃなくて、もぅ!」アタフタ・・・

食蜂「『もぅ』はコッチの台詞よん。これ以上gdgd抜かすと……能力でビリビリしてから、その後物理的にタイツ破るっ」ガシッ!!

香焼「ひぃっ!!」バッ!!


マジ勘弁して下さい。


食蜂「んふふっ。やっと素直になったわねーん。よーし、さっさと行くわよぉ♪」グイグイッ・・・

香焼「あぅ……諸方面から怒られる」トボトボ・・・

食蜂「ダイジョブダイジョブ。私がチョチョイっと改竄してあげる★ それにぃ……安価力は絶対よん!」b"


メタい事言わないで下さい。そういう役は浦上と土御門だけで充分です。


食蜂「香ちゃんの態度次第ね。それじゃあ荷物持って食堂に―――」


縦ロール「女王っ! 遅くなって申し訳ありません。少々4限が長引いてしまいまして――」テクテク・・・

片メガネ「まったく! 2、3班の集まりが今日に限って何故こんなにも悪いのかしら――」テクテク・・・

黒ブーツ「隣の中学の新派閥が勢力を伸ばしている今、更なる団結が必要不可欠なのに――」テクテク・・・

その他取り巻き's「「「「「「「「「「 ~~~~~~~~~~ 」」」」」」」」」」ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・・・


食蜂「―――行、く……んー。あちゃー」ピタッ・・・ハァ・・・

香焼「……あはは」ポリポリ・・・

取り巻き一同『……ん?』ピタッ・・・


助かった……いや、ヤバいのかも。全員、僕の事を睨んでる。


縦ロール「……女王、その娘は―――」

食蜂「うぇいっ★」Pippppp!!

香焼「ぇ……ぁうっ!」ビリッ・・・

取り巻き一同『―――、』ピタッ・・・シーン・・・・・


喧騒が静まり、一同静止。そしてクルリと踵を翻し、軍の行進宜しく、綺麗に回れ右して戻って行った。
50人規模の人間を一挙に洗脳する―――心理掌握(メンタルアウト)。相変わらず恐ろしい超能力。
彼女も半ば『(上条)勢力』に含まれているとはいえ、何かの拍子に敵に回られると非常に厄介だという土御門の懸念も頷ける。

さておき……ここまでされたら行かない訳にもいくまい。目立たない様にしながら、大人しく彼女の指示に従おう。

 ―――さる平日、PM00:30、第7学区、学舎の園・常盤台中学食堂・・・香焼side・・・




中学高校の学食といえば、大衆食堂みたいなモノをイメージするだろう。
格安だが具や汁が薄いカレーやうどん。オバちゃんオジちゃん達が流れ作業ながらも生徒達へ朗らかに話しかけてる風景。
そして仲良しグループで態々一つのテーブルに集まり、狭いながらも団欒しながら弁当やら昼定食を食べる。
実際、必要悪の教会の食堂はこんなスタイルだ。僕も英国に居る時は天草式の仲間やステイル、アニー達とこんな感じでワイワイ食べてる。

だがしかし……此処は別世界。


香焼「―――……、」タラー・・・

食蜂「ふんふふ、ふんふふ、ふんふーふ~ん♪ えっとぉ、此処らで良いかしら。ちょいとソコなメイドちゃん」クイッ・・・

メイド「はい……これは食蜂様。お連れ様も無しに食堂(此方)に足を運ばれるとは珍しいですね」ペコッ・・・

食蜂「お連れは居るわよん。いつもの取り巻きちゃん達じゃないだけ。あ、適当にサンドイッチとお茶をお願いね」スッ・・・

メイド「畏まりました。其方のお嬢様は?」チラッ・・・

香焼「え、あ、ぼ、僕は……お弁当があるので」アタフタ・・・

メイド「……はぁ」チラッ・・・ポリポリ・・・

食蜂「ふふっ。此処で家庭的なお弁当を食べる娘が居ても良いでしょ。ランチにマナーはあってもルールがある訳じゃないもの」クスッ・・・

メイド「確かに。では、ティーポットとカップを二つお持ちしましょう。それで宜しいですか」ジー・・・

食蜂「ええ。空気が読めるメイドさんは好きよっ☆」フフッ


恭しく注文を受け、垢抜けしたメイドさんが調理場の方へ下がって行った。
もはや大衆食堂のレベルじゃない。謂わば5つ星レストランや超高級ホテルのランチorディナーっぽい。


香焼「なんか場違いで申し訳ない…です。でも、あのメイドさん凄い…ですね」チラッ・・・

食蜂「まぁ普通、お弁当組は教室とか中庭テラスで食べるものねぇ。でも気にする事は無いわ……凄いって何が??」フムーン?

香焼「操祈さん相手に物怖じしなかったから」フム・・・

食蜂「仮にも繚乱(家政女学院)から来てる一流研修生だもの。どんな主人だろうが瀟洒でなくては、ね。例え私みたいな変人奇人でも☆」ニコッ

香焼「へ、変人奇人って。そんな自虐的な」タラー・・・

食蜂「あら、人格破綻者第5位とか傾奇者とかの方が合ってるかしらん? まぁ私の渾名なんて一々挙げてったらキリないわね―――」ニヤリ・・・


強ち間違っては無いが、自らそう言われると難とも言い難い。
それはそうと、話は変わるが―――やはり危惧していた通り、周りの目が気になる。


 『何あの子? 派閥の娘?』 『女王と2人きりって……まさか「そういう」関係とか?』 『相当お気に入りのペットなのね』


そんな声がチラホラ。後ろ指を指される様にヒソヒソ陰口を叩かれる。僕に対しての声なのだろうが、実際、遠回しに操祈さんを馬鹿にしてる。
正直あまり良い気はしない。操祈さんもきっとそう感じているのだろうが……別段、気にも留めていない風。


食蜂「―――気になる?」フフーン・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・

食蜂「気持ちは分かるわ。誰しも動物園の檻の内側の気分なんて味わいたくないものねぇ」クスッ・・・

香焼「い、いえ。大丈夫…です」ジー・・・

食蜂「人間って、人とは違う物珍しいモノを傍から眺めて悦に至るわ。大衆心理ってヤツね……直、慣れるわよん」コクッ・・・


これは超能力者……いや、精神的超人としての達観か。それとも稀有な少女としての諦観か。ドチラにしても有名過ぎるというのも考え物だ。
やはり一方通行さんや麦野さんの様に表立たない方が本人らの為なのかもしれない。

一寸後、学生達とは違い垢抜けしたメイドさんがサンドイッチとお茶を運んできた。実に作業的に動作を終え、テキパキと後ろへ下がる。
未だに嫌な視線を感じる。操祈さんが『能力使いましょうか?』と気を使ってくれたが、
彼女が平素である以上、僕が嫌な顔をするのは彼女に対し失礼に値するだろう。あくまで僕は―――彼女と対等で居たいのだ。

極力周りを気にせず様冷静を保ち、紅茶を啜る。正直、緊張で味がよく分からないが良い匂いだという事は分かる。
本物のお嬢様や姉さん&ステイルの様に超えた味覚を持ち合わせているのであれば利き酒の如く葉っぱの種類を当てたり出来るのだろうが、
生憎、僕は庶民舌。今一それが分からない。ぶっちゃけ午○ティーと何が違うのだろう。
更にぶっちゃけると、熱い。舌火傷したかも……あと、ちょぴっとだけミルクと砂糖が欲しい。


食蜂「ふふっ」クスッ

香焼「ふぇ?」ヒリヒリ・・・

食蜂「可愛いなぁ」ニヤニヤ・・・

香焼「からかわないで下さい。どうせ庶民…ですよーだ」ムゥ・・・

食蜂「憤ける顔も可愛いわねぇ」フフフッ


貴女は僕が何をしても『可愛い可愛い』馬鹿にするだろう。まぁ今に始まった事じゃ無いのでスルーしとく。
さておき、僕の顔をオカズにしながら(?)トマト・レタス・ピクルスのサンドイッチをモキュモキュ頬張る操祈さん。
ナプキンでパンを挟んで手を汚さない様にして食べるのは、果たして品が良いと言えるのだろうか。てか、そのレースの白手袋外せば良いのに。


食蜂「食べないのん?」モキュモキュ・・・

香焼「あ、はい。頂きます」スッ・・・


こんな素敵空間でお披露目するのはかなり恥ずかしいレベルの、普通弁当。
箱も無粋。包みも特徴無し。箸もありきたり。中身も白米に昨日の残りモノの詰め合わせ―――この場からすれば完璧貧乏人だな。
辺りから嘲笑が漏れてる。まぁ止むを得まい。場違いは百も承知。


食蜂「―――、」チラッ・・・


ピタリと、笑い声が止まった。一瞬操祈さんが能力を駆使したのかと思ったがそうではない。
ただ周囲を流し見ただけ。この人は能力など使わなくとも、周りを掌握できる貫禄、というか『スゴみ』がある。
流石に一言お礼を言おうと思ったが、先と少しも変わらない微笑みを再び向けられては何も言えなかった。

とりあえず軽く食前の『礼拝』をしつつ、心の中で感謝を述べ、弁当に手を伸ばした。


食蜂「あら。私は聖母(マリア)じゃないわよん。せめて『お姉さま(グラン・スール)』と呼」フフッ

香焼「びません。せめてって何…ですか、せめてって」ハァ・・・

食蜂「んもー。ノリ悪いわねぇ。そんなに『攻めて攻めて』言うなら、この場で能力使って皆に『ビリビリ☆悶絶★香ちゃん♪』を」スッ・・・

香焼「なっ! ちょ、や、変態っ! 変態変態っ!!」カアアァ///

食蜂「んはぁあぁ♪」ゾクゾクゾク・・・


やっべぇ。この人の悪ノリのベクトル、レッサーとか麦野さん以上に性質悪い。
このままじゃ駄目だ。話の流れを戻さないと。


香焼「ハァ……話戻しますけど単に僕、十字教徒なん…です」ボソリ・・・

食蜂「……へぇ。初耳」フーン・・・

香焼「あんまり大きい声で言えませんからね。特にこの街だと、尚更」ポリポリ・・・

食蜂「そうねぇ。宗教人ってだけで異邦者扱いされちゃうし、WWⅢ(第三次世界大戦)以降は基督教徒に対する風当たりキツいものね」ジー・・・

香焼「操祈さんは嫌じゃない…ですか」チラッ・・・

食蜂「別にぃ。信仰の自由って大事よ。著名な精神学者ってのは大抵宗教携わってるもの。無神論者は心理云々語れないわ」スッ・・・コポコポコポ・・・

香焼「神と心の関係…ですか? でも昨今の日本人、特に都市の人間には程遠い考えかと思えますけど」フムフム・・・

食蜂「誰の心にも神は宿るものよ。じゃなきゃ『精神』なんて言葉は生まれないわ。勿論、何に『縋る』かの違いはあるけどねぇ」フゥ・・・

香焼「成程。勉強になります」ヘェ・・・

食蜂「んふふーっ。もっと褒めたまえー♪」ニコニコッ


ただ、この人並に心が強ければ既存の神に縋ったりはしないだろう。きっと『自分だけの神』が心に居るんだと思う。

さておき、弁当を食べよう。一応都市製の弁当箱なので保温効果は高いが蓋を開けてたら、その性能も意味が無くなる。
因みに、今日のオカズは……鯖の煮付け。南瓜と豆のサラダ。からあげの甘辛ソース―――先程いった通り、全部昨日の残りモノ。


食蜂「……香ちゃん、身体小さい割には結構食べるのねぇ。食べ方も案外ボーイッシュ」ジー・・・

香焼「え、あ、すいません」ピタッ・・・

食蜂「別に御淑やかにしろだなんて言ってないわよん。淑女力なんて求めてないから、好きに食べて頂戴な」フフッ


しまった。こういう所で『男』が出てしまう。
いくら歩き方や座り方、喋り方に気を使っていても、細かい所で詰めの甘さが残ってしまう。反省点だな。


食蜂「そんなに気にしないの。沢山食べなきゃ大きくなれないぞっ☆」ニヤリ・・・

香焼「むっ……子供扱い」ジトー・・・

食蜂「子供子供♪」ツンツン・・・

香焼「ぐぬぬぅ」ジー・・・


ホント、世の中不公平だ。チビは何処へ行ってもガキ扱い。
この人はこの人で、本当に中学生か疑わしいレベルで発育(スタイル)良いし。高校生の五和レベルとは如何いう訳だ。


食蜂「んもー。そんなにオッパイじろじろ見ても分けてあげられないわよん」クスクスッ  

香焼「えっ……あ、ご、ごめんなさい!」アタフタ・・・///

食蜂「ふふふっ。まぁブラもしてなさそうだものねぇ。興味有る? 触る?」ニヤニヤ・・・

香焼「さ、触りません!」カアアァ///

食蜂「あらあらー。ムッツリさーん。イケない娘ねぇ★ 別に気にしないのにぃ。減るもんじゃないし、女の子同士なんだからぁ」ニヤニヤ・・・

香焼「僕が気にします。それに、どうせ『じゃあ私の番ねっ♪』とか言ってブラウスの中に手を突っ込んだり脚撫で回す気でしょう」ハァ・・・///

食蜂「あらら。香ちゃん読心能力者(サイコメトラー)だっけぇ?」アルェ??


顔に出てます。てか、何故かは言えませんが冗談抜きで触法行為なので。


食蜂「んふふっ。相変わらず弄り甲斐たっぷりねぇ―――それより、そのオカズ」ジー・・・

香焼「ったく―――え?」キョトン・・・

食蜂「香ちゃんが自分で?」ジー・・・

香焼「えっと、これは姉が作ってくれた…です。昨日の残りモノ…ですけど」ハハハ・・・

食蜂「へぇ。道理で立派な。因みに私がこの前家電屋で会った人(※)でしょ? あのダイナマイトバディな」オッパイボーンッ!!   ※前話参照。

香焼「その姉じゃない…です。その姉さんも料理上手…ですけど、今日のは二番目の姉…ですよ」コクッ

食蜂「あー、そういえば姉分が3人居るんだっけぇ。あと双子のお兄ちゃんが一人と」フムフム・・・

香焼「全員血は繋がってない…ですけどね。(双子の兄ってのは自分自身なんすけどねぇ)」ハハハ・・・


まぁそれなりに仲良くやってます。


食蜂「良いわね。この街で家族と暮らせるなんて」フフッ・・・

香焼「そう…ですね。数少ない自慢…です」コクッ

食蜂「私は一人部屋だから同居って感覚も暫く感じてないもの。ま、一人は一人で楽だけどさぁ……あ。香ちゃんルームメイトに」モキュモキュ・・・

香焼「遠慮しときます」キッパリ・・・

食蜂「ツンケーン。即答は悲しいわよん」トホホ・・・


何されるか分かったモンじゃありません。妖艶に上唇を舐めないで下さい。ゾゾゾときます。
でもまぁ……自分の正体とプライドが許す限りは、彼女の数少ない友達としてある程度の我儘は我慢しようか。

割と食べ方を気にしつつ、チマチマと食を進める。
やはり煮物は時間が立った方が美味しいな。料理に関しては五和さまさま。その他日常生活は……うん。


食蜂「ねぇねぇ。そのお魚はなぁに?」ジー・・・

香焼「鯖…ですよ」モグモグ・・・

食蜂「サバちゃんかぁ」ジー・・・

香焼「はい、鯖さん」モグモグ・・・


ガン見してらっしゃる。どうしたんだろう。もしかして食べたいのかな。


香焼「鯖、好き…ですか?」ジー・・・

食蜂「好きでも嫌いでもないかな。でもそれは美味しそうねぇ」フフッ

香焼「超能力者(レベル5)って魚好き?」キョトン・・・

食蜂「会合の幕の内弁当を態々鮭弁に換えさせる程、鮭中毒なお姉さんと一緒にしないで欲しいわ」ハァ・・・

香焼「あ、やっぱり有名な話なん…ですね。あー、ちょっと食べます?」ハハハ・・・

食蜂「良いの?」チラッ・・・


そんなに興味津々に覗かれてはあげない訳にもいくまい。


食蜂「じゃあ―――あー」スッ・・・

香焼「えっ」ポカーン・・・

食蜂「あー」グイッ・・・

香焼「……へっ?」キョトン・・・


邪魔な前髪を掻き上げ、身を乗り出し、餌を待つ雛鳥の如くお口を開ける女王様……食べさせろと?


食蜂「ふんふん」アーン・・・

香焼「せ、せめて、箸渡すので自分で食べませんか」スッ・・・

食蜂「んーん~っ」イヤイヤッ!

香焼「いや、眉顰めたいのはコッチなん…ですけど」ハァ・・・


周りの目が余計に好奇なモノへ変わった。そりゃそうだ。天下の食蜂操祈がオネダリ口してるんだもの。客観的に見れば気になる気になる。
それに間接キs―――…いや、それは意識するな。他意は無い筈。
だがしかし、こうなってはガンとして動かないのが超能力者。止むを得まい。

兎に角雑念を捨て、鯖を一つまみ。極力口腔内に箸が触れない様気を付け、彼女の口へオカズを運ぶ。


食蜂「はむっ」パクッ

香焼「あっ」ドキッ・・・

食蜂「もっぐもっぐ……ごっくん…――ペロペロレロレロッ」チュパチュパ・・・

香焼「っ!?」ギョッ・・・///

食蜂「ん、ぁ……おいしいわぁ。甘美甘美♪」トローン・・・モゴモゴッ

香焼「何今の間!? てか、な、な、ななななぁ! は、箸舐め、舐めぇ!!?」カアアアァ///

食蜂「んふふぅ。どうしたのん? 美味しかったわよ、サバちゃん★」ヌチャァ・・・ニコッ♪

香焼「っ~~~~~~ッ!!」ムキュウゥ///


口から糸を引きながら箸を解放する操祈さん……冗談抜きで、そういうおフザケは下半身に毒なので即座に止めて頂きたい。
あとその変態キャラ止めないと、諸方面からクレーム来ますよ。勘弁して下さい。

少々放心状態になっていたが、我に返る。出来るだけ平然を装って食事に戻りたい。だが―――


香焼(操祈さんの……唾液)ゴクッ・・・///


―――箸の先に光るソレ。意識するなという方が無理だ……そして赤面&フリーズする僕を見てニヤニヤ微笑む元凶さん。


食蜂「あれれぇ。どうしたのん?」ニヤニヤ・・・

香焼「……意地悪」グヌヌゥ・・・///

食蜂「うふふ。可愛いなぁもぅ。やっぱり『その(百合っ)気』あるんじゃなぁい?」クスクスッ

香焼「むぅ……あ、洗ってきますっ」グッ・・・///

食蜂「ありゃりゃ。ごめんごめん。からかい過ぎたわね……箸を貸して。拭いてあげる」ポリポリ・・・

香焼「……また変な事したら絶好しますよ」ジトー・・・///

食蜂「しないしない―――はい、これで良いでしょう」フキフキ・・・


ナプキンで綺麗に涎を拭き取った。これでもまだ気になるが、これ以上百合百合馬鹿にされるのも悔しいので我慢する。


香焼「もう。操祈さん、こんなキャラでしたっけ」ハァ・・・

食蜂「まぁSSなんだから、これくらいキャラの崩壊力あっても仕方ないわよねぇ」コクッ

香焼「だからメタは止めろと」タラー・・・

食蜂「さておき。私だけ貰ってばっかは難だから……はい」スッ・・・

香焼「ふぁい?」ポカーン・・・

食蜂「はい、あーん」グイッ・・・


サンドイッチを此方に差し出してくる。しかも食べかけの。


香焼「食べろと」ダラダラ・・・

食蜂「モチのロン」ホレホレッ

香焼「嫌…です」キッパリ

食蜂「酷っ! 私の食べ欠けは汚らわしくて食べられないっていうのね」ハァ・・・

香焼「うっ……そ、そういう問題じゃなくて」タラー・・・

食蜂「じゃあ、はい」ムンッ


何故意地になる。まぁ僕もそうなんだが。


香焼「僕は、自分の弁当ありますし」アタフタ・・・

食蜂「一口くらいダイジョブでしょう」クイッ・・・

香焼「……、」ダラダラ・・・


どうしよう、言い訳が見つからない。此処は……腹を括るか。


香焼「じゃ、じゃあせめて反対側を」モジモジ・・・

食蜂「……やっぱり私の食べ欠けは」ハァ・・・

香焼「だからっ! そういうの卑怯…ですよ、もぅ」クゥ・・・

食蜂「ふふっ、めんごめんご。それじゃ反対側にしてあげるから、さぁ食べりゃんせー☆」クルッ・・・


まだ綺麗な角を僕に向ける。まったく、この人の我儘に付き合ってる取り巻きさん達を尊敬します。

最早周りの目とざわめきが気にならないくらい緊張してた。これはもう己との戦いだ。
正直、先程からタイツとパンツの下が窮屈で仕方ない。

あと、ふと気になったんだけど、この光景を蛇さん見てるんだよな。
兄(姉)弟子に失礼ながら言わせて貰う……助けろよ、オイ。


食蜂「早くー」グイグイッ・・・

香焼「はいはい。自分で持って食べますよ」スッ・・・

食蜂「イヤ。食べさせるのっ」ムッ・・・


子供か。もう何言っても無駄だろう。


香焼「……あー」スッ・・・

食蜂「えいっ★」クルリッ・・・グッ!

香焼「んぎゅっ!!?」バクッ


口に入れる瞬間、食べ欠けの方に引っ繰り返しやがった。


食蜂「あはー♪」ニヤリ・・・

香焼「……、」ダラダラ・・・///

食蜂「真っ赤っかー。そんなに長く『吸引』されると流石に恥ずかしいわねぇ」フフフッ

香焼「っ!!」バッ・・・


すぐさま噛み千切り、咀嚼もせずに紅茶で一気に流し込んだ。


食蜂「してやったりぃ」フヒヒッ♪

香焼「ゴホゴホッ……っ!」キッ・・・///

食蜂「んふっ。そんな顔して睨んでも迫力無いぞっ」ニヤニヤ・・・


この人は、ホントに。


香焼「こ、の……いい加減にして下さいっ」タンッ・・・

食蜂「あ、怒った」ジー・・・

香焼「えぇ怒ってますとも!」ムググゥ・・・

食蜂「どうどう。確かに公衆の面前で弄り過ぎたわねぇ。ごめんなさいな」フフッ

香焼「本気で怒ってるんすよ!」スッ・・・

食蜂「えっ」ピタッ・・・

香焼「一体何なんすか! だから嫌だったんすよ! こうなるの分かってた!」ジー・・・

食蜂「か、香ちゃん?」タラー・・・

香焼「こんなの、例え同性でもセクハラっすよ! 超能力者だからって何でもかんでも我儘が通ると思って―――」


  ビリッ! バリイィッ!! ビジバジバリリリリッ!!!


香焼「―――ん、ぎぃっ!!」ビクンッ!!

食蜂「ちょ、ちょっと。落ち着いて、ね」アタフタ・・・


強力な電流が奔った。蛇さんからの合図。
冷静になる。そして一寸前の自分を省みる……急に立ち上がり、素の口調モロ出しで怒鳴り出した。
更に今の自分は……この空間の注目を一同に集めている―――ヤバい。やってしまった。そりゃ蛇さんも、げきおこなるわ。

全身から血の気が引いた。
流石の操祈さんも呆気に取られた様子。操祈さんがこうなのだから、周りの一般生徒は尚更―――いても経っても居られなくなった。


香焼「っ……ご、ごめんなさい」ダラダラ・・・

食蜂「い、いえ。此方こそ」タラー・・・

香焼「……僕、もう戻ります」テキパキ・・・

食蜂「あっ」キョトン・・・


急いで食べ掛けの弁当を片付ける。そして誰とも目を合わさず、一言。


香焼「失礼しました」ペコッ・・・

お嬢様's『 』ポカーン・・・

食蜂「ちょ、ちょっと香ちゃん!」アワワワ・・・

香焼「……さようなら」テクテク・・・


振り向かず、食堂を後にした―――


 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

食蜂「……、」アゼーン・・・

お嬢様's『―――、』ヒソヒソ・・・ザワザワ・・・

食蜂「……、」スッ・・・Pipp!!

お嬢様's『 』ピタッ・・・

食蜂「ハァ……何なの、ねぇ。確かにやり過ぎちゃった感はあるけどぉ―――」タラー・・・


           カツカツカツ・・・・・


食蜂「―――ねぇ、御坂さぁん。如何いう事なの??」ダラダラ・・・

御坂「馬鹿でしょアンタ……食堂で稀有なモンが見れるっていうから来てみれば、中心はアンタだったのね。しかも喧嘩とは」ハァ・・・

食蜂「ただイチャイチャご飯食べてただけなのよ、ホント……き、嫌われた? え、嘘ぉ」オドオド・・・

御坂「これだから人の心『察せない』アホは……素直に謝りなさいよ。あと香ちゃんの言うとおり、同性でもセクハラはセクハラ」ヤレヤレ・・・

食蜂「私の変態力なんて御坂さんのルームメイト(白井さん)程じゃないと思うけど」ウーン・・・

御坂「黒子(アイツ)基準にすんなっての。で、如何するのかしら」ジトー・・・

食蜂「如何って、謝るしか」タラー・・・

御坂「そう。頑張りなさい」クルッ・・・テクテク・・・

食蜂「ちょっ! そこは手伝ってくれる流れでしょぉ!」ガシッ!

御坂「えぇいっ、離せ! 私は私で香ちゃん慰めるわ」フンッ!!

食蜂「鬼悪魔ひとでなしビリビリちっぱいアッ●ーマン! 傷心の香ちゃん慰めてペロペロする気でしょう! 同人誌みたいにっ!」ウワーンッ!

御坂「誰が貧乳腹筋系女子だ! あとどんな同人誌よっ! ったく……次いつ学校来るのよ。あの子、不定期でしょ」ハァ・・・

食蜂「……明日。来週まで毎日来るって」ウジウジ・・・

御坂「じゃあチャンスは幾らでもある。まず電話かメールで謝って次会う時にちゃんと頭下げろ……って、私はアンタのママかっつの」グデェ・・・

食蜂「ふぇえぇ」ガシッ・・・グズグズ・・・

御坂「えぇい、うっとおしい! はーなーれーろーっ! あとこの部屋の『結界』解きなさい。全員フリーズしててキモい!」ビリビリリーッ!!


  ギャーギャー! ワーワー!! フェエエエェ・・・ アーモゥ・・・・・

 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

食堂を逃げる様に後にする。行き場なんて決まってない……場所は何処だって良い。人が居なければ、何処でも。
気付くと、校庭の隅に在る用具倉庫の裏に居た。


香焼「っ……うぅ……やっちゃった」ハァアァ・・・


盛大に溜息。幾らトサカに来たとはいえ、あんな醜態。下手したら正体がばれてたかもしれない。
こんなんで明日から如何すりゃ良いんだ。


???『まったくだ―――』香焼「っ!!」ビクッ・・・


人が居る。まったく気がつかなかった。慌てて辺りを見回すが何処にも誰も、気配すら無い。


???『と、ミサカは妹弟子の無様さに怒りを通り越して呆れ返ります』ハァ・・・

香焼「へ、蛇さん!? 何処に」キョロキョロ・・・


もしやと思い、近くに在った大きめのダンボールの中を開いてみたが……居ない。


御坂蛇(17600号)『教えないぞ。まぁ場所など何処でも良い。それより……如何するつもりだ? とミサカは事の収集方法を問います』ジトー・・・

香焼「……如何しましょう」ハァ・・・

御坂蛇『ったく……とりあえず頭を冷やせ。今日はもう帰るべきだ。と、ミサカは冷静に判断します』フンッ

香焼「そうっすよね。このまま学校に居るのも気拙いし」ドヨーン・・・

御坂蛇『口調。あと仕草』ビシッ

香焼「今は自分らしか居ないんすから良いでしょう、もぅ」グデェ・・・

御坂蛇『何時何処で何が起きるか分からない。常に「仮面」を保っておけ。あと、腐るんじゃない。と、ミサカは忠告します』チッ・・・

香焼「……、」イジイジ・・・

御坂蛇『女々しいヤツ。そういう女らしさを求めてるんじゃない。と、ミサカはカマホモショタに毒吐きます』フンッ

香焼「ひ、酷いっすよ。蛇さんだって助けようと思えば助けられた筈じゃないっすか」ウゥ・・・

御坂蛇『だから口調……って、責任転嫁か? ふざけるな。と、ミサカは半ばキレます』イライラ・・・


この遣る瀬無い鬱憤を何処かにぶつけたいのだ。察して欲しい。


御坂蛇『チッ……再教育が必要だな』ジトー・・・

香焼「また電流っすか。はいはい、どうぞ」フンッ

御坂蛇『本格的に腐りおって……止むを得まい。作戦変更だ。と、ミサカは現場指揮官として指令を出します―――』Pi...

香焼「はい?」ピタッ・・・


突如、携帯を取り出し超高速でメールを打ち出す蛇さん。そして一寸後、メールが帰って来た様子。


御坂蛇『……よし。明日は「園」に来なくて良いぞ。その代わり―――』ビシッ・・・


トンデモない事を宣うた。


御坂蛇『―――「香のまま」で、明日一日は「~~~」と行動しろ! とミサカは命令します。徹底的に女としての「教育」だ』ニヤリ・・・


あぁ神様は残酷だ……このどうしようもない気持ちをあのドラム缶にでもぶつけよう。モノに当たるのは良くないが軽く蹴るくらい許してくれ。


御坂蛇(ドラム缶)『うぉっ!?』ゴワンッ・・・


うん、急いで逃げた。雷が落ちる前に。

はい、此処まで。超眠いですの。


・アンケート:翌日に香焼(香モード)と一緒に居る人!


①神裂+α(五和・浦上など)

②絹旗+β(滝壺・黒夜など)

③佐天+γ(初春・春上など)


ご協力お願いします。それではまた次回! ノシ”

 ―――さる翌日、AM03:00、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・香焼side・・




変な時間に目が覚めてしまった。


香焼「―――、」ボー・・・


きっと今の僕は酷い顔をしてるだろう。


 「あと、6時間はある」ジー・・・


モヤモヤとした気分が晴れない。モゾモゾと頭まで布団を被り、昨日のそれからの事をざっと振り返った。

―――謎のドラム缶(蛇さん)に折檻(オシオキ)を受けた後、虚ろな気持ちのまま学舎の園を後にし、第7学区をぶらついた。
何をする訳でも無くブラブラ。誰に見られて様が気にもしない。『香(カオル)』のままで、歩き回った。
幸運にも知り合いに会う事は無かったがよっぽど不思議な、もしくは不安定な子に見えたのか、オジさん3,4人から声を掛けられた。
内容は頭に入ってないがきっと心配して声を掛けてくれたのだろう。申し訳無い。

そして、一般生徒の下校時刻に合わせて電車に乗った。
今思えば早引きしたのだから下校ラッシュ前にさっさと帰れば良かったものの、何故か律義に周りに生活リズムを合わせてしまった。


 「まるで、不良息子だ」ハァ・・・


仮病で早退したのを母親に知られたくないドラ息子の様。いや、実際僕は悪い事してないんだが……いや、言い訳か。
単にカオリ姉さんに後ろめたかっただけなのかもしれない。きっと怒りはしないだろうが、それでも姉さんを心配させたくなかった。

さておき、御蔭でまたもや地下を走る鉄の箱の中に苦しい思いをして入り込む羽目に。
肌が触れたり息が掛ったり臭いがキツかったり、相変わらずの込み具合。
そんなのは慣れたモノだが、後ろの人の鞄か手が引っ掛かりスカートが捲れそうになった時は少々焦った。
だが、正直半ば放心状態だったので、少しの辛抱だと割り切り、後ろの人が降車するまで我慢した。


 「……それから」モゾモゾ・・・


寄り道せず、家に帰る。着いたのが6時半くらいだったか。
玄関を開けると、居間に居たのは姉さんだけだった。これまた幸いにも、客人達は各々の家に帰っていた。

『おかえり』に対して『ただいま』と、それだけ返した。

僕の表情と声色から何かを察したのか、姉さんは『如何しました』と尋ねてきたが『いえ、何も』と短く返答。
些か不敬だとは思うが、例え『女教皇様(プリエステス)』でも応えたくない気分だった。
尤も、この家の中では教皇扱い禁止なのだが……そういう公とか私とか全部含め、応えられない秘密だっただろう。


 「ばか、だなぁ」グゥ・・・


それから何も言わず、部屋に籠った。
夕食時になっても部屋から出られる気分じゃなく、姉さんや五和が呼びに来てくれても『気分が悪いのでごめんなさい』とツっ返してしまった。
しかし二人とも多くは言わず、僕を放っておいてくれた―――あぁ、ほんと、ガキ。我ながら恥ずかしい。
因みに、僕の分の夕飯は20時くらいに颯爽と現れる軍覇がペロリと平らげたっぽい。律義にも本人から『いただきました』メールが入ってた。


 「……携帯」チラッ・・・


ふと、携帯を見遣る。
仕事用携帯は蛇さんからの指示(SMS)が1件。プライベート用携帯には浦上と最愛、軍覇、レッサーからメール(ライン)がボチボチ。
そして『香』用携帯には―――操祈さんから着信が33件(メール・ライン・SNS含む)。録音メッセージが2件。
ホラーかと思える程の長文メール(しかも絵文字顔文字ギャル語ゴダゴダ状態)が3通。ただし、何れも解読不能。
ついでに御坂さんからも1件の着信と1通のメールが着てた―――何故か今日の悶着に関してのメールだった。

どうやら操祈さんは御坂さんに相談したらしい。


 「今更、どうしろと」ハァ・・・


昨日は完全に返信するタイミングを逃した。しかも『今週来週は学校に行く』と伝えたばかりなのに、昨日の今日で休む羽目とは。
もう頭がこんがらがって爆発しそう。とりあえず、もうひと眠りして起きたら何かしらメッセージを送ろう……―――

―――ノック音。


 「……ん」グズグズ・・・


部屋の外で誰かが何か言ってるが、眠くて何言ってるか分からない。
微かにもあいの鳴き声と扉を引っ掻く音も聞こえるが……今、何時だ?


 「……・・・・・・・・・ ・   ・    ・     っ!!」バッ!!


8時半。眠気は吹っ飛び、嫌な汗が流れた。急いで部屋のカギ(5重)を解除し、居間に出る。


 「お、おはようございます!!」アタフタ・・・


目の前には、いつもの姉さん、ともあい。


神裂「……おそようございます」ジー・・・

もあい「なぅ」ジー・・・

香焼「あ、え、と、あの、そのっ」アタフタ・・・

神裂「落ち着きなさい。別に怒りませんから」ヤレヤレ・・・


いつもと変わらず冷静な姉さん。言葉の通り、実際怒ったり呆れたりしている様子ではない。


神裂「とりあえずシャワーを浴びてきなさい。昨日お風呂に入ってないでしょう。それどころかクレンジングすら忘れて」チラッ・・・

香焼「あっ」スッ・・・

神裂「あと制服着たまま寝ましたね? くしゃくしゃですよ。せめてタイツくらい脱ぎなさい」ジー・・・

香焼「す、すいません」カアアァ・・・///


何から何まで、恥ずかしい。


香焼「す、すぐシャワー浴びてき―― グウウゥ・・・ ――ま、す……っ」/////

神裂「まったく。夕飯食べてませんものね……急がなくて良いですよ。落ち着いて湯浴みをしてきなさい。朝食は準備しておきますから」フフッ

もあい「にゃぅ」グー・・・

神裂「はいはい。もあいの餌も準備しますね」テキパキ・・・

香焼「はぅ」トコトコ・・・///


姉さんに何もかも身の回りの世話をして貰うなんて、なんと恐れ多い。
この場に他の男性教徒が居たら『FU☆KEI☆ZAIッ!!』とか言われてテムズ河に沈められてたな。

兎角、パッパと身支度を済ませ、居間に戻った。


香焼「おまたせしました」パタパタ・・・

神裂「いえ……化粧は良いのですか?」チラッ・・・

香焼「え? いや、今日は出る前にしますので」コクッ


極力、家の中では男のままで居たい。


神裂「そうですか。まぁ『香』に関しては私から口を出せませんので、お好きな様に」ポンッ

香焼「心配お掛けして申し訳無いっす」ペコッ


一通り落ち着きを取り戻した所で、遅めの朝食に移った。

少々重めに見えるが、昨夜から空腹の僕にとって昨日の残りのコロッケは優にペロリと平らげられるモノだった。
遠慮せずガツガツ腹に詰め込みつつ、目の前で粗茶を啜る姉さんに目を向けた。特に言葉は無く、時偶新聞に目を向ける程度。
ついでにもあいにも目を向けた。僕と同じ様にワサワサとペットフードを貪ってらっしゃる。

一通り食べ終え、味噌汁の最後の一滴を飲み終えたところで、姉さんが僕に目を向けた。


神裂「ん。お粗末さまです」チラッ・・・

香焼「ごちそうさまっす」ペコッ・・・


再び新聞に目を戻す姉さん。ほんとに何も、聞かないのか。


神裂「聞いて欲しいんですか」パラッ・・・

香焼「あの……すいません」スッ・・・

神裂「謝られても。貴方は何か悪い事をしたのですか? あぁ、寝坊の事は大目に見ますよ」パラッ・・・フフッ


悟った様に―――いや、実際悟ってる人なのだが……新聞を読み続けた。
正直、こういう時の姉さんは苦手だ。一応家の中なので『姉さん』で居る&(僕らも)扱いする約束なのだが、如何も『教皇』モードに思える。
食器を水で濯ぎ、食器洗い機に入れスイッチを押して、またテーブルに戻る。


香焼「姉さん」ジー・・・

神裂「んっ」パラッ・・・


新聞に目を落としたまま応える。


香焼「えっと。昨日の事、何処まで知ってるんすか?」イソイソ・・・

神裂「さぁ。全然知りませんよ。私が知ってるのは、貴方の―――いえ、『香』の今日の予定だけです」パラッ・・・

香焼「土御門から昨日の報告は?」チラッ・・・

神裂「だから今日の予定だけですって。先にも言いましたが、私は『香』に関して多くは関与しません」パラッ・・・ナデナデ・・・

もあい「みー」スタスタ・・・ゴロンッ


とか言いつつ、全部知ってるんだろうな。それ以上は何も言わずもあいを撫でる姉さん。


香焼「……今日は、最愛の所に行きます」ジー・・・

神裂「ええ、麦野さんには話は通ってます。とりあえず待ち合わせに遅れない様に」パラッ・・・

香焼「そっか。麦野さんも居るんすよね」ポリポリ・・・


『香』の正体を知る数少ない人物。そして、最愛の上司兼姉貴分。
ぶっちゃけ、僕が苦手な人ランク上位に入る超能力者(レベル5)第4位さん。


神裂「心配ですか? 安心なさい。彼女は第5学区の大学に用事があるそうなので日中居ませんよ」フフッ

香焼「そ、そうっすか」ホッ・・・

神裂「でも他のお仲間さん達は居る筈ですよ。あぁ、フレメア嬢は学校でしょうけど」ナデナデ・・・

香焼「……浜面さんと滝壺さんかぁ」ウーン・・・


所謂『アイテム』の方々。ただ、僕はこの二人(+フレメアちゃん)の事をよく知らない。
事前情報として、浜面さんは無能力者(レベル0)で武装無能力者集団(スキルアウト)の元ボスで……現在アイテムの下っ端(?)だとか。
滝壺さんは大能力者(レベル4)の中でも超能力者に近いクラスの能力―――能力追跡(AIMストーカー)の持ち主。あと常にジャージ。
あとフレメアちゃんはフレンダさんの妹という事くらいか。それと―――


神裂「あ。浜面さんは重度の『カミやん病』患者で、滝壺さんとお付き合いしているそうですよ」パラッ・・・


―――ええ、有名な話なので知ってますとも。

一服した後、化粧やら髪のセットを終え、粗方準備を終える。
問題は今日着ていく服なのだが、当たり前の事ではあるが、僕は女物の私服を持ってない。
一応サーシャがふざけて買った某アイドルグループのブレザーファッションみたいなのは持ってるが、コスプレ染みてるので着たくない。


神裂「今日絹旗さんと買ってくれば良いじゃないですか」フフッ

香焼「……試着とかそういう難関があるんすよ? いや、それ以前に自分が女物って」タラー・・・

神裂「今後の事も考えて一着二着買っておきなさい。何かあった時便利でしょう」クスッ


確かにそうなんだが、男としてのプライドが邪魔する。
あと、もし仮に、今日服買ったとしたら経費で落ちますよね?


神裂「難なら私がお小遣いあげましょうか。ただし、買った服は見せて下さいね」ニヤリ・・・

香焼「結構っす。だったら自分の金で買いますので」ジトー・・///

神裂「あらあら。残念です」クスクスッ

もあい「にゃぅ」ジー・・・


姉さんならまだしも、どうせ五和と浦上にも見られてしまうのがオチだ。それだけは勘弁願いたい。


香焼「まったく……姉さんだって麦野さん達と買った服一向に着ないクセに」ブー・・・

神裂「わ、私は別に良いんです。それより貴方が今日着ていく服ですよ」コホンッ・・・///

香焼「んー……制服は、皺クチャなっちゃいましたし。姉さん達の服はサイズ合いませんし」ムゥ・・・


『香焼(僕)』の普段着でも良い様な気がするんだけど。今時ボーイッシュな服装な女子は五万と居るし。
佐天さんなんて僕より男らしいファッションしてた事あったぞ。


神裂「(それじゃただ化粧しただけの香焼だと思われますっての。自分の童顔考えなさい)……それは勧めません、絶対に」ハァ・・・

香焼「えっ。何で? よく分かんないっすけど……困ったっすね」ウーン・・・

神裂「浦上のスカート、ベルト締めれば入るのでは? それにストッキング穿いて、上はYシャツ&カーディガンで良いと思いますけど」コクッ


確かに当たり障りない恰好だ。しかし、姉さんから『普通』の恰好の案が出てくるなんて吃驚。


神裂「私だって並の感性くらい持ってますよ」フンッ・・・

香焼「(え?)……あはは。すいません」ポリポリ・・・

神裂「まぁ敢えて女らしさを出すなら、1サイズ大きい五和のカーディガンかセーターを羽織って行けば尚女々しく見えるのでは」チラッ・・・


成程。流石、麦野さんやら固法さんにファッション研究させられてるだけの事はある。
兎に角、五和と浦上にメールして服を借りる事に―――この際、変に意識したくはないが、姉達の普段着という事は目を瞑ろう。

―――一寸後、準備完了。一見、何処にでも居そうな女子中学生っぽくなった……なってしまった自分が悲しい。
姉さん、似合ってますよ的な目を向けるのを止めて下さい。


香焼「はぁ……そろそろ時間なので出ます。後はお願いしますね」ヤレヤレ・・・

神裂「はい。あ、そうそう。本来昨日伝えておくべきだったんですが、2点。まず、今晩私は所用で居ません」コホンッ

香焼「(あー……今日上条さんとこ行く日だっけ)……そうっすか。楽しんできて下さい」ニヤニヤ・・・

神裂「な、何ですかその目は―――あとは、此方は麦野さんからの伝言」グヌヌゥ・・・///

香焼「えっ」ピタッ・・・

神裂「『私の部屋入ったら殺す。それと……滝壺はアンタの正体知ってるからね』だそうです……まぁその、頑張って下さい」ハハハ・・・

香焼「ぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぁっ!?」ギョッ・・・


最後の最後でトンデモない事宣うた。 まぁじでぇ? 何それ怖いんすけど……―――

―――昨日程、通学ラッシュの時間帯に巻き込まれてはいないが、それでも相変わらずのギュウギュウ詰めな地下鉄。
比較的空いているモノレールを使えば幾分か楽なのだろうが、割高な分、経費削減の為地下鉄使用を推奨される平教徒。

さておき、先の話を思い出す。


香焼(滝壺さんかぁ)ウーン・・・


何度か顔を合わせた事はあるが、全て挨拶程度。
最愛曰く『何考えてるか超分からないけど、アイテムの中では常識人』だそうな。
能力者としても優秀で『麦野沈利の虎の子』らしく、実際超能力者に近い位置に居る大能力者だとか。


 (でも、何で自分の正体を? 麦野さんが教えたのか? でも、何で)フム・・・


僕がボロを出さなきゃ『神埼香』の正体はそうそうばれない。現に、土御門や海原さんも出し抜いた程の変装。
自分でいうのも男として悔しいが、相当自信がある……なのに、麦野さんは何故僕の正体をばらしたのだろう。
いや、何か理由がある筈だ。もしかして麦野さんに知らされずとも知っている(知っていた)可能性だってある。

兎にも角にも、本人に確認すべきだ。でなければ、今後に響く。『香の正体』は僕にとってデメリットでしかない。


 (まぁ最悪、最愛にばれるのだけは防がないとなぁ……おわっと)ジー・・・ギュウウゥ・・・


満員電車の混雑に潰されながらこれからの事を憂う。
それにしても後ろの人、僕の方に身体押し付け過ぎじゃないか。もうちょっとくらい横にスペース取れるだろう。あと、鞄太ももに当たってる。

そして数十分後……お目当ての駅に到着。
そこからバスで数分、もしくは徒歩十数分の場所、第7学区の中でも中心部。丁度『窓のないビル』の真南辺りのマンションだ。
しかし、ぶっちゃけマンションというより、ロイヤルホテルとかグランドホテルって感じだ。
要人御用達といった様の高級マンション。流石麦野沈利(超能力者でお嬢様)。
僕の部屋(マンション)も十二分に立派だとは思うけど、マジモンとなるとレベルが段違いだ。

とりあえず、時間も時間なので一応『監視役(教育係)』に連絡を入れる。


香焼「―――……もしもし」Pi!

御坂蛇『―――遅い。もう10時前だ、とミサカは腑抜けに不抜けた馬鹿妹弟子を叱ります』フンッ!

香焼「いや、予定通りっすけど」ハァ・・・

御坂蛇『未開の地へ入る際は充分余裕を持って先廻りしろと教えたろう、とミサカはヤル気の無いアホ妹弟子に喝を入れます』フンヌッ!!

香焼「言われた事無いっす……ってか、今日はヤケに体育会系っすね。如何したんすか?」テクテク・・・

御坂蛇『昨日私は悟った……お前を甘やかし過ぎた。今日は倍厳しく行くぞ、とミサカはスコープ越しに貴女を睨みます』ギロリ・・・


いや、絶対昨日の事(ドラム缶ヤツ当たり事件)根に持ってるでしょう。


御坂蛇『喧しい! あと、口調と仕草! 今日は徹底的に「女子」の何たるかの勉強だろう。念頭に入れなさい』トミサカハ・・・

香焼「はいはい。そーっすねー」テクテク・・・

御坂蛇『この糞ガキ。一遍、路地裏の変態ホモ親父共の巣窟に手足フン縛って放りこんでやりましょうか』トミサカハ・・・

香焼「……冗談でも止めて下さい」ブルッ・・・

御坂蛇『では真面目に行動しろ。でなければ、まず電流だぞ―――とりあえず、今日の勉強は「女子」。「女子力」ではない』トミサカハ・・・


その違いが分かりません。


御坂蛇『香の……いや、貴方の「女子力」は素から十二分だ。必要なのは仕草や言語。それを徹底しなさい。良いですね』トミサカハ・・・

香焼「はいはい、トミサカ蛇さん」テクテク・・・

御坂蛇『く、そ、ガキっ……ビリッと』ポチッ!

香焼「えっ!? ちょ、待っ! ごめんなさ―――」ビジバジ・・・


早朝の高級マンション街に電気ショックによる嬌声が鳴り響いた。

 ―――さる翌日、AM10:00、学園都市第7学区、マンション『ソード・ライン』(麦野宅)・・・香焼side・・




痺れる身体に鞭を打ち、玄関へ進む。
偉く仰々しい入口。管理人、というより受付(フロント)さんが3,4人待機していた。
姉さんの話によると、この人達に『1801号室の麦野』と言えばインターホンを繋いでくれるとか。


香焼「あの、おはようございます。1801号室の麦野さんのお部屋に取り次いで貰えますか。名前は神埼(こうざき)…です」テクテク・・・

受付「はい、畏まりました。少々お待ちを―――」Pi!


まさに、ホテルとか旅館のそれだ。一寸後、受付さんが困った様に僕を見た。


受付「―――えぇっと……神埼さま、ですね。『どなたか分からない』と麦野さまは仰っているのですが」ポリポリ・・・

香焼「え。あ、じゃあ『神裂(かんざき)の弟分の香焼(こうやぎ)の従妹(いとこ)の香(かおる)』って言って貰えますか」ハハハ・・・

受付「はあ……カンザキさまの弟のコウヤギさまの従姉妹のカオルさま、でございますね」メモメモ・・・


『香』の苗字はメジャーじゃないから仕方ないか。でもこの偽名、姉さん(神裂火織)から文字らせてもらってるから覚え易い筈なんだけど。
さておき、今度はちゃんとアポが取れた様だ。


受付「お待たせしました。では此方へ……まずそこの入館書に記名をされた後、金属探知機を通って貰い、簡単な身分審査を」アーダコーダ・・・

香焼「……はい?」キョトン・・・

受付「規則ですので」キッパリ・・・


何此処怖い。てか、中に居る人達もっと危険ですけど。
冗談は置いておいて……金属探知は拙い。完璧ナイフと鋼糸(ワイヤー)が引っ掛かる。こんな事なら対磁気ケース持ってくるんだった。

困りながら、携帯やIDカードやら表立った磁気モノを小物入れに置いている最中……蛇さんからメールが着た。


 『問題無い。堂々と通りなさい、とミサカは指示します』


何かサポートしてくれるらしい。謂われた通り、何食わぬ顔で探知機の下を潜る……何も鳴らなかった。
その後の手続きはパパッと済ませ、逃げる様に最愛達の部屋を目指した。

しっかし、流石プロスネークと呼ばれるだけあって敏腕の潜入員だ。海原さんの一番弟子なだけはある。だが―――


 『貸し1。あとでカロリーマートを1カートン奢れ』


―――妹達(シスターズ)とは思えない程、現金な方だ。
迷路の様なマンション内をグルグル歩きつつ、なんやかんやでお部屋に到着。

滝壺さんの事とか色々と不安だが、動かなければ始まらない。此処で逃げ帰ったら更なる『折檻(オシオキ)』が待ってるだけ。
とりあえずインターホンに手を伸ばした。


香焼「こんにちはー」ピンポーン・・・

??『はいはい。新聞の集金って今日?』ガチャッ・・・

香焼「え、いや、新聞じゃなくて」キョトン・・・

??『あれ? じゃあメイジ? それともグリコ? あ、ヤクルトの日だっけ? 違う? 誰かピザ頼んだ?』フム・・・

香焼「……、」ポカーン・・・


何か勘違いされてそう。


??『ん? あー……ああ。ちょっと待ってて』ガチャッ・・・


パタパタと駆けてくる音。そして扉が開きそこに居たのは……家庭的な恰好(しまうまエプロン&ライオンさんスリッパ)をした浜面さんだった。

印鑑と財布を持ったまま、僕の顔を見てフリーズする浜面さん。
あーとかえーとか言ってるけど、よく分かってない御様子。まぁ『香』の状態で会うのは初めましてだし無理も無いか。


香焼「おはようございます」ペコッ・・・

浜面「……お、おぅ?」ペコリ・・・

香焼「えっと、はじめまして。神埼香…です」ペコッ・・・

浜面「え、あ、はい?」キョトン・・・


この様子から見るに、香(僕)が来る事を知らされてなかったっぽいな。


香焼「あー。今日は麦野さんに―――」

浜面「うっ……おいおいおいおい。こういう見ず知らずの女の子がいきなりやって来るってのは絶対ぇ悪い事の前触れだぞ」タラー・・・

香焼「―――えっ」ポカーン・・・

浜面「てか、こういうパターンは俺のとこじゃねぇだろ。さしづめ、上条か一方通行んとこと相場が決まってる筈だ」ダラダラ・・・

香焼「あの、もしもし」キョトン・・・

浜面「あぁもぅ! 俺は俺んとこ(アイテム+α)でいっぱいいっぱいなんだよぅ! これ以上厄介事(女)増やすなってのぉ!!」ギャースッ!!

香焼「……、」タラー・・・


よく分からないけど、苦労してるなぁ。


浜面「という訳でおかえりくだしあぶぼほぉっ!!?」ゴズンッ・・・

香焼「っ!?」ギョッ・・・

滝壺「まったく……はまづら、落ち着いて。この子はきぬはたの友達」ヤレヤレ・・・


音も無く背後から現れた女房―――もとい、恋人にルンバで殴られる浜面さん。


浜面「たき、っ、ぼ……ルンバって、ルンバって、何さ」プルプル・・・

滝壺「ルンバ(この子)もウチの家族でしょ。さて―――いらっしゃい、かおる。待ってたよ」ニコッ

香焼「は、ははは」タラー・・・

滝壺「とりあえず上がって頂戴。一応私とはまづらで掃除はしといたけど、ちょっと散らかってる。大目に見てね」フフッ

香焼「は、はい」チラッ・・・

浜面「ぐ、おぅ、ぎっ」プルプル・・・


未だに後頭部を抱えている浜面さんを後目に部屋に上がらせて貰った。大丈夫だろうか、嫌な音がしたんだけど。


滝壺「大丈夫、はまづらはそんな柔じゃない。きぬはたの8割グーパンでも額カチ割れないもの」フフフ・・・

浜面「い、や、痛いからね。頭の内出血って血ぃ出るよりヤバいのよ、滝壺さんや……てか、俺はさておき、絹旗のダチっつったか?」チラッ・・・

香焼「え、ま、まぁ一応。兄伝手の友人…ですけど」ポリポリ・・・

浜面「アイツ、極度のコミュ障だぞ。普通にダチなんて考えられないが……って、兄?」キョトン・・・

滝壺「ほら。むぎのと家族ぐるみで仲良い、こうやぎくん」チラッ・・・ニヤリ・・・

浜面「あぁ。あの坊主の……そいやぁ何処となく似てるな」ジー・・・

香焼「っ! よ、よく言われます」ビクッ・・・ハハハ・・・

滝壺「ほーんと、そっくりだよね」ニッコリ・・・


滝壺さん、心臓に悪い発言は止めて下さい。冷や汗で化粧が落ちそうです。
出だしからハラハラさせられつつ、僕は長い廊下を案内され、小さな聖堂程もある馬鹿っ広いリビングへ案内された。

並の戸建てよりもデカい一室。これを部屋と称してるんだから贅沢極まりない。
掃除とか大変そうだなぁと借りてきた猫状態で辺りをキョロキョロ眺めつつ、促されるままソファに坐した。


滝壺「さてと。まずは先に私とお話しといた方が良いかな。その方が気楽でしょ」チラッ・・・

香焼「え、そう…ですね」ポリポリ・・・

浜面「ん、茶でも入れるか。香ちゃんとやら。コーヒー紅茶緑茶麦茶その他諸々、何が良い?」テクテク・・・

香焼「では、麦茶を」ペコッ・・・

滝壺「謙虚だね。じゃあ、はまづら……クワトロベンティクラシックキャラメルバニラアーモンドヘーゼルナッツアドジェリーエキストラチョコレートチップエキストラチョコソースエキストラキャラメルソースエキストラホイップエキストラシロップノンティーを二つお願い」ニコッ

浜面・香焼「「えっ」」ピタッ・・・

滝壺「はまづら、察して」ニコニコッ・・・

浜面「あー……はいはい。クワトロ=バ●ーナなんちゃら二つね……ったく、後で聞かせろよ」ポリポリ・・・

滝壺「はまづらのえっち。がーるずとーくだからはまづらはNGだよ」クスッ

浜面「へいへい」テクテク・・・


ダイニングキッチンとは名ばかりで、大分距離があるレンジの方へ消えていく浜面さん。さて、では『お話』といこうか。


滝壺「まずは……ようこそ、私達(アイテム)の根城へ―――香焼くん。不在の主(むぎの)に代わって歓迎します」フフッ

滝壺「色々聞きたい事はあると思うけど、私も色々聞きたい事はあるの。主にきぬはたの事だけど、あとは今日の事もね」ジー・・・

香焼「そうっすね。其方から聞いて貰って良いっす――― ビリッ! ―――っ!! き、聞いて貰って、良い…ですよ。(蛇さんっ!)」ビクンッ・・・

滝壺「えっ? あ、うん。じゃあきぬはたの事は後でじっっっっくり聞くとして、まずは……今日の目的」チラッ・・・


何故、此処へ来たか。それも『香』の姿で。


滝壺「『こうやぎ某』で遊びに来るならいざ知らず、その恰好で此処へ来たのは不思議でならないかな。むぎのの道楽にしても謎が多い」ジー・・・

香焼「言う程、深い意味は無いん…ですけどね。一つは僕自身への戒めと、もう一つは……普段の最愛を知っておきたかったからかな」ポリポリ・・・


嘘は言ってない。後者は後付けだが、実際知っておきたかったのは確かだ。土御門や蛇さんの指示云々については言う必要はあるまい。


滝壺「『戒め』ってのがよく分からないけど……それだけ?」ジー・・・

香焼「ええ。まぁ、あとは『香焼』として堂々と休めない身分なので、『香』で休暇を……みたいな感じ…ですよ」ハハハ

滝壺「んー……やっぱり良く分かんないけど、私達に害が無い様なら何だって良いかな。でも話だけ聞くと、きぬはたのストーカーっぽいよ」フフッ

香焼「酷いなぁ……真面目な話、貴女達に害を為したとなっちゃ貴女達のボス(麦野)はおろか姉さんまで敵に回す事になりますから」ポリポリ・・・

滝壺「怒ったむぎの、おっかないもんね……むぎおこ! あ、これ流行らせて良いよ。今度むぎのの前でやってみて」プンスカッ!


僕には無理です。絶対無理です。どんなに脅されたって、どんなに好条件だされたって、不可能です。


滝壺「ふふふっ、ヘタレめ。はまづらならやってくれるのに―――とりあえず、私からはこの程度でOK。次は、其方がどうぞ」チラッ・・・

香焼「(浜面さん、何回殺されてるんだか……)じゃあ、いきなり…ですけど。何故『正体』を? 麦野さんに知らされて?」ムゥ・・・


待ってましたと言わんばかりに微笑む滝壺さん。優しい雰囲気だが、何処となく全てを見透かしてそうな目をしている。


滝壺「やっぱりその疑問かぁ。まず後者は正解。むぎのが事前に知らせたよ。何故かは……分かる?」ジー・・・

香焼「3つ考えてました。まず、僕をサポートさせる為。もしくは、隠しても無駄。あとは、麦野さんに知らされる前に知ってたか」コクッ

滝壺「頭が回るんだね。うん、全部正解で良いと思うよ」クスッ


余計訳が分からなくなりそうな答えを返す滝壺さん。如何いう意味だろう。
僕の悩む顔を見て苦笑する滝壺さん。そして、疑問に答える様に右の人差し指で自身の目尻をトントンと叩いた。

その仕草が何の意味があるのか分からない。
小首を傾げる僕の顔が可笑しかったのか、滝壺さんは優しく微笑んで回答をくれた。


滝壺「私の能力。きぬはたから話だけは聞いてるでしょ」ピッ

香焼「え? あ、はい。確か相手の場所が分かったりする能力だとか。しかも大能力(レベル4)の希少能力者(レアスキル)って」キョトン・・・

滝壺「強度(レベル)は関係無いけどね。詳しくは能力追跡(AIMストーカー)っていうの」コクッ

香焼「へぇ。名前からして、AIM拡散力場に関係ある…ですか?」フム・・・

滝壺「うん。分かり易くいうと、誰しも各々微弱なAIM拡散力場(それ)を発してる。例え無能力者(レベル0)でもね」フフッ


此処まで言えばあとは分かるでしょ、と浜面さんの方を見た……成程。合点。

つまり僕から出るAIM拡散力場を見れば、『香焼』だろうが『香』だろうが、同じモノとばれてしまう訳か。
だったら隠したところで意味は無い。何も知らせず下手に隠せばうっかり他の人へばらしてしまいかねない。
そういう意味もあって、麦野さんは滝壺さんへ事前に知らせたのだろう。


滝壺「尤も、今は身体の調子が悪いから能力多用は出来ないけど、此処まで接近すれば力場の『色』の判別くらいできるよ」フフッ

香焼「『色』…ですか」ポカーン・・・

滝壺「強度が高ければ高い程、『色』は濃く見えるの。あくまで私視点だけどね……まぁはまづらは別かな」フフッ

香焼「面白い…ですね。因みに、僕の『色』は何色…ですか?」ヘー・・・

滝壺「君はノイズの掛った灰色。そのノイズが何なのかは分からないなぁ。どんな無能力者でもそういう雑色は入らないんだけど」ウーン・・・


多分、魔力がノイズとなってるのかもしれない。他の魔術師もそう見えるなら、多分そうだろう。
でももし、その判別が可能だとしたら……この人はマジモンの化け物だ。因みに話題として、他の人の『色』は―――


滝壺「アイテムの皆だと、むぎのは強烈な赤。きぬはたは灰と黒の二色。はまづらはライオン色。フレメアはちょうちょ色」コクッ

香焼「えらく抽象的な『色』してる2人が気になりますけど……他には?」フム・・・

滝壺「うーん。第一位(アクセラレータ)は太極色。第二位(ダークマター)は『今』は真っ白。第三位(レールガン)は強烈な山吹色」ピッ

香焼「えっと……やっぱ分からない…です」ポリポリ・・・

滝壺「うん、多分私の『視てる世界』は誰にも理解出来ないよ。もし分かるとしたら、それは私と同じ能力の人間だけ」ウンウン・・・


じゃあ唯一無二決定だ。


滝壺「とりあえず、今日は君をサポートするよ。困ったら頼ってね」ニコッ

香焼「宜しくお願いします」ペコッ


見る限り優しそうで頼り甲斐がある人だ。僕の知り得る姉貴分達とは大違い。きっとカオリ姉さんに近いのだろう。安心してサポートを頼める。
一寸後、空気を読んで外していた浜面さんが謎の飲み物を持って此方に来た。


浜面「あいよ。麦茶と俺風クワトロなんとかコーヒー」コトッ

香焼「ありがとうございます」ペコッ

滝壺「ありがと……あまい」ウゲェ・・・

浜面「だろうな」ハハハ


胃凭れしそうな色だ。クリームだのキャラメルだの、適当ブッ込んだんだろう。


浜面「さーて。そろそろ寝坊助達を起すか」テクテク・・・

滝壺「そうだね。折角かおるが来てるのに、失礼だしね」チラッ


寝坊助って……そういえば最愛を見かけてないが、まだ寝てたのか。というか、達って?

さてと、と腕捲りをして廊下へ向かう浜面さん。何故か滝壺さんが『気を付けてー』とか言ってるけど、危険なのだろうか。


香焼「いつもこんなに寝坊助なの…ですか? 一応平日…ですけど」チラッ

滝壺「元々、暗部の仕事やってた時の名残りかな。不摂生で夜型だったから予定の無い朝は弱いよ」ポリポリ・・・

香焼「なるほど。直していかないといけませんね」ウーン・・・

滝壺「むぎのの所為でもあるんだ。悪いお手本が傍に居ると、ね。でも一応、あの子には真面目に学校へ行って貰いたいと思ってる」コクッ

香焼「僕もそう思います」フム・・・


最愛にはもっと常識と、積極性と、自立心と、友達が必要だ。


滝壺「……その為には、貴方の力が必要。私やはまづらだけでは限界があるからね」チラッ

香焼「はい。お手伝いしますよ」フフッ

滝壺「ありがとう。どうも私達(アイテム)じゃ説得力が無いから。皆学校行ってないでしょう」ハハハ・・・

香焼「まぁ、でも今からでも遅くないんじゃ」ウーン・・・

滝壺「残念ながら無理だよ。私とむぎのは霧ヶ丘みたいな研究機関所属だし、はまづらは……うん」ポリポリ・・・


確かに、制服すら持ってないんじゃ説得力はないな。浜面さんに至っては中卒、いや卒業したかどうかも怪しいみたいだし。
兎に角、その話の詳細は追々として……浜面さん、遅いな。


香焼「いつも浜面さんが起してる…ですか?」チラッ

滝壺「うん。元々私が起してたんだけど、危ないから今はむぎのかはまづらが起す事になってる」ハハハ・・・

香焼「危ない? 寝像とか寝起きが…ですか? 別段、ウチに泊まりに来た時とかは危険でもない…ですけど」キョトン・・・

滝壺「それは他人の家で『借りてきた猫』状態だからだと思う。枕が違うと寝ても起きても緊張するでしょう」ピッ

香焼「確かに。ただでさえ人見知り…ですからね。幾ら香焼家(ウチ)と仲良いとはいえ、多少は遠慮もしてますし」フム・・・

滝壺「本当に安心できる場所だと気を張る必要が無いでしょ。元だけど、職業柄、警戒心を持つ必要が無い場所って『此処』だけなの」コクッ


なんとなく理解できる。『気の休まる場所』の事を言っているんだ。
固法さん風にいえば『居場所』というヤツだろう。実際、僕自身、そういう場所がマンションの自室とロンドンのアパートだけだ。


滝壺「あの子にとって、此処は自動防御(オートガード)を解除できる唯一の場所、みたいな感じかな。だからボロを出して寝れる」フフッ

香焼「でも最愛の窒素装甲(オフェンスアーマー)って解除出来ないんじゃ」フム・・・

滝壺「モノの例えだよ……デフォで『防御(ガード)』になってるっぽいね。誰かさんの『反射(カウンター)』みたいに」ヤレヤレ・・・


ただし『意識すれば』解除出来るらしい。実際、僕も最愛に触った事あるし。


滝壺「……へんたい」ジトー・・・

香焼「え、あ、い、いやっ! 触ったっていっても、肩叩いたりとか腕引いたくらいで」アタフタ・・・

滝壺「……ほんとに、それだけ?」ニヤリ・・・

香焼「うっ、と、ぃ……手を繋いだり、頭撫でたりとかも、したかもしれませんけど……うーん」タラー・・・

滝壺「ふふっ。冗談冗談。君にそんな疚しい気持ちがあったとは思わないよ。まぁはまづらと同じでヘタレっぽい匂いがするし」ハハハ

香焼「だから度胸とかそういう問題じゃなくて……もぅ。自分と最愛は友達っすよ――― ビリッ! ―――ァウッ!? っ……ですよ」ハァ・・・

滝壺「うふふっ。初のう初のう。ま、君の場合は『誰でも』そういう事しちゃうんだろうけどね」ニヤニヤ・・・

香焼「ったく……余計なお世話っす」ムスー・・・///


お姉さんキャラ全員、こういう色恋沙汰になるとノって来るのは統一ルールなのだろうか。

さておき……浜面さん、本当に遅いな。何をしてるんだろう。

流石に遅過ぎるので、滝壺さんが様子を見て来ようと席を立った刹那―――

   『ぎゃああああぁああああああああぁっ!!』ドゴオオォンッ!!

―――爆音と浜面さんの悲鳴が木霊した。
何事かと急いで廊下の方へ向かう。非常時に備え、ナイフと鋼糸(ワイヤー)を握り締めた。


滝壺「はまづらっ」パタパタ・・・

香焼「っ!」ギョッ・・・

浜面「」チーン・・・


廊下に面した部屋の前……壊れて外れた扉と壁にサンドイッチされた浜面さんがいた。
更に扉はカトゥーンアニメに出てくるチーズの様な穴が空いている。幸い、浜面さん自身に穴は空いてない様だ。
ピヨピヨとゲームのダウン状態みたいに気絶してる浜面さんの介抱をする滝壺さんを余所に、僕は恐る恐る部屋の中を覗いた。
すると、そこには……―――


絹旗「うみゅう……超、喧しい、ですよぉ……むにゃむにゃ」Zzz...

黒夜「くぅ……まじ、うっせぇ、ぼけぇ……すやすや」Zzz...


―――可愛い顔して寝息を立ててる窒素姉妹が、仲睦まじく一緒のベットで寝ていた。
布団を剥いだりパジャマが着崩れてたりするが、割と寝像は酷くない。でも浜面さんの今の様子を見るに、無意識で能力を発動させたのだろう。


香焼「……危険な」タラー・・・

浜面「」イテェ・・・プスー・・・

滝壺「やれやれ。はまづら、傷は浅いよ……あ、こら。女の子の寝顔を凝視しちゃダメだよ。そんなに2人のおへそに見惚れちゃった?」フフッ

香焼「うぇ!? あ、いや、いやいや! 言ってる場合じゃないでしょうっ」タラー・・・///

滝壺「まったくムッツリさんだねー。さぁてと……どうやって起そうかなぁ」ニヤニヤ・・・


流石に近寄るのは危険だと分かっているので、部屋の前から起そうと試みる滝壺さん。そりゃ浜面さんの二の舞は勘弁願いたい。
しかし、声を掛けるだけで起きるのだろうか。それだけなら先程、浜面さんが起しに行った時点で起きる筈だが……如何するつもりだ?


滝壺「じゃあねぇ……きぬはたー。朝だよー」オーイ

絹旗「むきゅー」Zzz...

滝壺「ス●パーで『えびボクサー』のやってるよー。観なくて良いのー?」チラッ

絹旗「んー……録画してるんでぇ……ちょー、だーじょーぶでぇす……むにゃむにゃ」グズグズ・・・

滝壺「ありゃりゃ……じゃあ、くろよるー。よみかわさん家のわーすとさんがベットの下に潜んでるよー」オーイ

黒夜「ううぅ……やめてくれよぉ……ひいぃ……ねここわい。こわい、ねこぉ……ううぅ」ガシッ・・・ギュウウゥ・・・

絹旗「ぐうぅ……ちょーくるしー、ですぅ……むにゃむにゃ」ウググゥ・・・

滝壺「ふむふむ。もうちょいだね。あと一押し……ねぇ、きぬはた。くろよる」ジー・・・

窒素姉妹『むにゃむにゃ』Zzz...

滝壺「こうやぎくんが第七位(そぎいた)とノッポ神父さんに襲われてるよ……性的な意味で」ボソッ

香焼「はいっ!?」ギョッ・・・

絹旗「っ!? あんのぉ糞ホモ野郎共があああぁ!! 香焼の貞操は私が守りますっ!!」ガバッ!!

黒夜「っ!! お。やっぱりアイツ、ホモなのかっ!! やっぱりそうだったのかっ!!」ワクワクッ!!

滝壺「あ、起きた」ハハハ

香焼「」チーン・・・

浜面「」タキツボ・・・タスケテ・・・


理由の無い虚無感が僕を襲った。僕がホモだとか、軍覇とステイルが僕を取り合ってるとかいう風潮は何なのさ。まったく。

 ―――さる翌日、AM11:00、学園都市第7学区、マンション『ソード・ライン』(麦野宅)・・・・・





なんやかんやで、二人が起きました。


窒素姉妹『眠い...』ボー・・・

滝壺「やれやれ。夜更かしするからだよ」ポンポンッ

浜面「痛てて……コイツら昨日の夜ずっとウイイレやってたもんな。3時くらいまで。五月蠅ぇのなんの」ポリポリ・・・


12,3歳の女子が平日の深夜に何やってんだか。というか、それはさておき、少々疑問。


香焼「2人って、仲悪いんじゃなかった…ですか?」ボソッ・・・

滝壺「んー……トムとジェリー的な」ハハハ


どっちが猫で鼠なんだろう。どっちも猫な気はするが。


絹旗「ふぁああぁ……そういえば、香来る予定でしたね。超忘れてました」ムニャムニャ・・・

黒夜「んー、誰コイツ」ジー・・・

香焼「あー。はじめまして。香焼の従妹…です。(黒夜は『香』初めてだったね)」ペコッ・・・

黒夜「イトコ? あぁ、言われてみれば似てるか」マジマジ・・・


そりゃ本人ですもの。


浜面「とりあえずお前ら着換えろよ。もう昼前だぜ。いつまで寝巻きでいるつもりだ」ヤレヤレ・・・

黒夜「って、浜ちゃんオカンが言ってるぜ」チラッ・・・

絹旗「超余計なお世話です。キモ面のくせに母親ぶんないで下さい」ッタク・・・

浜面「ぐっ……糞ガキども。朝飯出さねぇぞ」ハァ・・・

滝壺「こらこら、きぬはた。普段ならそれでも別に良いけど、今日はかおる来てるんだからね」チラッ・・・

絹旗「んー。別に香なら気を使わなくても」ゴローン・・・

香焼「あはは……まぁそう…ですね」コクッ

滝壺「香。『いつもの事』だけど、甘やかしちゃダメでしょ。こうやぎくんといい、貴女といい、きぬはたに甘過ぎるよ」ジトー・・・


確かに、自覚してます。


浜面「この嬢ちゃん、あの坊主の従妹なんだろ。このダラしない恰好報告されても知んねぇぞ」テクテク・・・

絹旗「っ!?」バッ・・・

香焼「(時既に遅し、っすね)……い、言わないよ。でも着替えた方が良いと思うな」ハハハ・・・

滝壺「そうだね。もしいつまでもゴロゴロしてる様なら……私がこうやぎくんに寝像写メ送っちゃおうかなー」ニヤリ・・・

絹旗「き、着替えますよ!」バババッ・・・

黒夜「はっ。ざまぁねぇな」ケケケッ

滝壺「くろよるの写メも送るよ? ついでにわーすとにも」ニヤニヤ・・・

黒夜「ざっけんなっ!! この腹黒ジャーz…―― 滝壺「...、」スッ・・・ ――…あ、嘘です! 今すぐ着替えます!!」バタバタッ・・・

香焼・浜面「「……、」」タラ・・・


子供の扱い上手だなぁ。

一寸後―――普段着に着替えた二人。見るからに対照的なセンスだ。
淡い水色のニットワンピースの最愛。ファイヤーボール柄のペイントタイツにホットパンツ&メタリックアクセントのロングTシャツの黒夜。

これで姉妹分ってんだからよく分かんない。まぁ似通ってるのは能力的な意味だけらしいし、こんなもんなのかな。


絹旗「これで文句無いでしょう」フンヌッ

滝壺「はいはい、良い子良い子」ヨシヨシッ

浜面「初めから素直に着替えろっつの……飯如何すんだ?」チラッ・・・

黒夜「私は昼と一緒で良い」グデェ・・・

絹旗「私も」ゴロンッ・・・


着替えたところでダラしないのは変わらなかった。


浜面「こういう風に育ったのも麦野の所為だ、麦野の」ジトー・・・

滝壺「反面教師にして欲しかったんだけどね。しょうがない、早めにお昼にしちゃおうか」テクテク・・・

浜面「俺作ろうか?」スッ・・・

滝壺「朝やってくれたでしょ。お昼は私がやるよ。はまづら、少し休んでて。あ、かおるちゃん。お昼早めでも大丈夫?」テクテク・・・

香焼「ええ。お任せします」ペコッ


うさぎ柄のエプロンを身に着け、キッチンへ向かう滝壺さん。
さて……暫く滝壺さんの助けは無い。如何しようか。


浜面「洗濯は終わったし、ゴミ出しも終わった。買出しは一昨日ので明日まで持つし……天気良いから布団でも干すか」フムフム・・・

香焼「随分主夫が板についてますね。上条さんみたい…です」ハハハ・・・

浜面「ん? 上条知ってんのか。まぁアイツ程じゃねぇよ。ありゃプロの主夫だからな」ハハハ

黒夜「いやぁオマエも負けず劣らずだと思うけど」チラッ・・・

絹旗「私達(アイテム)で超鍛えましたからね」エッヘンッ!

浜面「あーそーですねー。滝壺以外、自分達の事何もしようとしないヤツらばっかだからなー。炊事洗濯どころか部屋掃除すらしねぇ」ボウヨミー

黒夜「マジガキんちょだわなぁ絹旗ちゃん。浜面パパに何でもやって貰ってるんでちゅねぇ」クククッ

絹旗「……超腹立つモノ言いですね」イラッ・・・

黒夜「睨むなよ。ま、私は一人暮らししてっからなぁ。どっかの誰かさんと違って自立できてるんですよーっと」フフッ

絹旗「ぐっ」ムググ・・・


事実だから言い返せない。


浜面「まったく、冗談抜きでフレメアよか子供だぞ」ヤレヤレ・・・

絹旗「なぁっ!! わ、私だって超本気出せば料理とか掃除くらい!!」ムギギィ・・・

黒夜「如何だか。浜ちゃんさぁ、一度コイツ一人暮らしさせてみたら? きっと3日で御近所名物ゴミ屋敷に劇的リフォームしてくれんぜ」ニヤッ

絹旗「し、しませんっ! 浜面も笑うな!!」グヌヌゥ・・・


事実だから苦笑せざるを得ないな。でも、冗談抜きでボチボチ自立する準備して行かないと、将来困る事になる。


香焼「絹旗さん。何事も練習…ですよ。兄も最初はお米すら砥げませんでしたから。徐々に…です」コクッ

絹旗「ううぅ。ありがとう……香しか味方が居ない」ドヨーン・・・

黒夜「ホント、イトコ共々甘ちゃんなのな」ヤレヤレ・・・


手間が掛る子程可愛いと言いますし、仕方なかろう。これも大分前から乗りかかった船なのだ。半端で投げ出したりはしない。

料理中の滝壺さんを余所に仲良く(?)ワイワイやる三人。ふと、此処へ来た時から気になっていた事―――何故黒夜が此方に?


浜面「あぁ。コイツら昨日、白昼堂々公園で大喧嘩しそうになってな」ジトー・・・

絹旗「浜面、余計な事言わなくて良いです」チラッ・・・


またこの子らは……大能力者同士がマジで喧嘩したら周りを巻き込んでしまうという危険性を考えないのだろうか。


浜面「運よく滝壺と麦野が近くに居たから良かったものの、少しは自重しろっつの」ハァ・・・

黒夜「うっせぇバーカ。オマエ何もしてねぇだろ」ケッ!

浜面「お黙る! 兎に角、公園で喧嘩して人様に迷惑掛けるくらいならゲームか何かで決着決めなさい、って滝壺が怒ったんだ」クイッ

香焼「へ、へぇ。(それで納得したんだ)」タラー・・・

絹旗「まぁ滝壺さんが言うなら超仕方ないですし……そういう流れでウチでウイイレとかパワプロ合戦になったんですよ」ハァ・・・

黒夜「さっき話した通り深夜までな。で、結局私が勝ち越したと」ニシシッ!

絹旗「負けそうになる度リセットボタン押したの誰でしたっけー?」ジトー・・・

黒夜「くっ……脚が滑ったんだよ。テメェこそ正攻法じゃ勝てねぇからってバグ技使ったりしてたじゃねぇか」チッ・・・


どっちもどっちです。


香焼「で、気付いたら泊まってたと」チラッ・・・

黒夜「あー、その辺覚えてない。夕飯食って、風呂入って、ゲーム始めて……ん? 私何で帰らなかったんだ?」ポカーン・・・

浜面「ゲーム途中で寝落ちしてたんだよ。ガキの癖に夜更かしすっから」ハァ・・・

香焼「で、浜面さんがベットに運んだ訳…ですね」ハハハ・・・

黒夜「うぇっ。マジかよ……一生の不覚」タラー・・・

絹旗「ぷふーっ。超お子ちゃまー。黒夜ちゃんかっわいー」クスクスッ

浜面「感謝しろ、感謝。因みに絹旗、お前も寝落ちてたぞ」チラッ・・・

絹旗「ひぇあっ!?」ギョッ・・・///

黒夜「おまいう状態」ジトー・・・


それで二人仲良く同じベットで寝たと。お揃いのパジャマで―――仲悪いとか嘘ですね、これ。


絹旗「くそぅ! くそぅ!! 浜面なんかにぃ! 黒夜と同レベルだなんてっ!!」ムギギィ・・・///

黒夜「はぁ? 同じレベルにすんじゃねぇ。私、レベル4,9くらいだし。お前、レベル4,0ジャスト程度だろ」フンッ

絹旗「なぁに超ふざけた事抜かしてるんですか? 『姉分』の私が! 『妹分』の黒夜より低い訳超々々ちょおぉおおぉ無いんですけどぉ!」ムンッ

黒夜「はいアホー。如何考えてもお前年下だわ。客観的総合的、どっから如何に見ても私の方が上ですー」ケッ

浜面「……レベル低。目くそ鼻くそ」ハァ・・・


確かに。まるで幼稚園児の喧嘩だ。だがしかし、性質が悪い事に―――この二人の喧嘩は紛争クラスの規模になってしまう。


窒素姉妹「「 ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ...ッ 」」ピキッ・・・

浜面「あーもぅ……ヤるなら外でヤれ。部屋ん中のモン壊したら俺が麦野に壊される」ハァ・・・

香焼「いやいやいやっ!? 止めましょうよ! ぼ、暴力は駄目っ」アタフタ・・・

滝壺「―――ごはん出来るからテーブル空けといてー。あ、二人はご飯無しで良いのかな?」チラッ・・・

窒素姉妹『……ちィっ!』フンッ・・・


触発寸前での一声。何とかなった……滝壺さん凄いな。マイペースなんだけどオーラがある……オルソラさんみたいな『凄み』。

滝壺さんが準備したお昼は、特製『グリーンカレーうどん』たる不思議な料理だった。
ぶっちゃけ難とも言えない味。辛いモノ好きな人には合うかもしれないが、香辛料が苦手な人はアウトだと思う。


絹旗「うーん……朝飯がてらのコレはちょっとキツかったですね。てか滝壺さん、客人来てる時は創作料理止めましょうよ」フーフー・・・

香焼「あはは。大丈夫…です。偶に姉(五和)も創作料理でやらかしますので。それに比べれば全然普通…ですよ」チュルチュル・・・

黒夜「んー。私はこの味嫌いじゃないわ。癖になるわね」ゴクゴク・・・

浜面「おま、グリーンカレー飲むなよ。喉壊すぞ」タラー・・・

滝壺「ヨーグルト置いてるから大丈夫。あ、足りない人はご飯準備してるから入れても良いよ」モグモグ・・・


チャイの代わりなのか『RG-12』とかいうヨーグルト飲料がテーブルの上に置いてあった。
確か一時期インフルエンザに掛らないとかいう噂が流れてたアレだな。流行り好きの五和が買い占めしてたっけ。

さておき、一寸後……ごちそうさまでした。


滝壺「はい、お粗末さま。お茶か何か淹れるから待ってて」スチャッ・・・

絹旗「ありがとうございます。私、ココアが良いです」ケップ・・・

黒夜「私炭酸でー……さぁて、ひと眠りすっかなぁ」グデェ・・・

浜面「ホント糞ガキだな、お前ら。絶対ぇ人の下に付く仕事出来ねぇタイプだ」ヤレヤレ・・・

滝壺「今は良いよ。まだ中学生だしね。よいしょっと」カチャカチャ・・・

香焼「あ、手伝います」カチャッ・・・

滝壺「気を使わなくて良いよ。お客さんなんだし」テクテク・・・


と言われても、染み付いた習慣で。それに御馳走なっといて何もしないのはちょっと忍びない。


浜面「見習えお前ら。アレが女子力だ」ジトー・・・

窒素姉妹『……ふンっ!』ブスー・・・

滝壺「うふふっ。『イトコ』揃って女子力高いんだね。きぬはた、くろよる。結婚して貰えば? 楽出来るよ?」ニヤニヤ・・・

香焼「なっ」ギョッ・・・///

絹旗「にゃ、にゃに言ってるんでそかぁ!?」アbbb・・・///

黒夜「もちつけ。誰もあの甘ちゃんの事だなんて言ってねぇよ。香とって意味だろJK」ヤレヤレ・・・

香焼・絹旗「「」」チーン・・・///

滝壺「んふふっ」クスクスッ


心臓に悪い。さておき……この後は如何しようか。
一応、蛇さんから指令が来てないか確認。案の定、何の指示も無い。自分で考えて行動しろという訳だ。


香焼「あの、今日のご予定は?」チラッ・・・

絹旗「特にありませんけど」コクッ

黒夜「私は寝たら帰る」ゴローン・・・

浜面「自分の家で寝ろ。ったく……基本的に、コイツらニートだからこんなんだぞ」ヤレヤレ・・・

香焼「あははは。噂には聞いてます。浜面さんと滝壺さんは?」チラッ・・・

浜面「俺は夜勤のバイト。滝壺は……今日は空きじゃねぇの。もしかしたら提出物(レポート)書いてるかもしんねぇ」クイッ

滝壺「私も今日は暇だよ。折角だし、お出かけしようか? ね。きぬはた」カチャカチャ・・・フフッ

絹旗「えっ? あーうーん……うー」ゴロゴロ・・・


相変わらず確固たる目的が無いと外に出たがらないのね。
まぁ折角だし、カオリ姉さんに言われた通り買い物に出かけても良いかもしれない。

とりあえず滝壺さんは乗ってくれたが、問題はダメJC(相応)二人。
黒夜は論外だが、最愛も返事だけで動こうとしない。


滝壺「ほら、二人とも。行くよ。準備して」テキパキッ

絹旗「えーあー、うーん」ノソノソ・・・

香焼「行きたくない?」チラッ・・・

絹旗「え。あーいやーそのー」ポリポリ・・・

浜面「超面倒臭いって。あとそいつ人混み嫌いだからな」チラッ・・・

絹旗「あ、超余計な事を」ジトー・・・

黒夜「リアルで超が付く程のコミュ障だかんなぁ絹旗ちゃん。お姉ちゃん心配……って、何サラッと私も出掛ける頭数に入れてんの?」グデェ・・・

絹旗「私が姉だっつの。えっと、黒夜と浜面が二人きりってシュチュが超心配なので私は残ります、うん」ノッソリノッソリ・・・

黒夜「ロリコン疑惑の絶えない浜ちゃんの下に妹一人置くの不安なので私は残るよ、うん」ゴロゴロ・・・

浜面「出てけ。糞ガキ共、さっさと去ね」ピキピキッ・・・

滝壺「……、」ジトー・・・


ダメだ、この姉妹。あと滝壺さん、目が笑ってません。


香焼「一緒にお買い物行けたら助かるなぁと。実は服買いたくて」チラッ・・・

絹旗「……服? 私服ですか?」ジー・・・

香焼「はい。僕、制服しか持ってなくて。今着てるのも浦上姉さんから借りたモノで」ポリポリ・・・

黒夜「一人で買いに行け。てめぇはママンと一緒じゃなきゃケツも拭けない女なの?」ゴローン・・・

香焼「あ、あまり都市内で買い物する機会が無いので何処で買っていいやら分からない…ですから」ハハハ・・・

絹旗「五和さん達と行かないんですか? 貴女のお姉さん達なら結構都市内歩き回ってるみたいですけど」フム・・・


拙い。根掘り葉掘りの問答になると色々ボロが出そうだ。
というか、そんなに外出たくないのか。僕(香焼)と公園で遊ぶ時はウキウキと目を輝かせて出てくるのに。


浜面「はぁ……まぁ出腐りはさておき、言っちゃ難だが、ソイツらにファッションセンス求めない方が良いぞ」ボソッ

香焼「えっ」キョトン・・・

絹旗「お、まっ、だから余計な事言わないで下さいっ」ムスッ・・・

浜面「はいはい、言わねぇよ」ヤレヤレ・・・


別段、変ではないが。


黒夜「ジャージしか着ない女。姉貴(第4位)に着る物全部選んで貰ってる女」ハハッ

絹旗「こ、こらああぁっ!!」カアアアァ///

滝壺「むっ。私のジャージ、馬鹿にしないで。機能性に富んでて、伸縮性・防撥水・通気性・温度調節・更には防弾防刃加工も」フンヌッ!

黒夜「と、彼女が申しておりますが。そこんとこ如何よ、浜ちゃん」チラッ・・・

浜面「う”っ……ノーコメントで」ボソッ・・・

滝壺「……、」ギギギギ・・・

絹旗「超アホ面です、ざまぁ見ろ……斯く言う黒夜も超イっちゃってるファッションですけどね」フンッ

黒夜「あ”? イケてる、の間違いだろ? まぁお子ちゃまモアイちゃんにパンク・ロックのアレコレ理解出来るとは思ってねぇけどよ」ハッ

絹旗「ぐっ……さっきから馬鹿にし過ぎです。マジブッ飛ばしますよ」ジトー・・・


4名とも険悪な雰囲気。如何してこうなる……こうなったら多少強引にでも引きずり出すか。

ピリピリとした空気の中、思考をフル回転させ、最も効果的な一撃(ひとこと)を捻り出す。


香焼「(正直、あんまりこういう手段は使いたくないけど……最愛の為でもあるしね)……あの。絹旗さん」チラッ・・・

絹旗「―――だから黒夜はアイテム(ウチ)の一員でもないのに浜面の事使い過ぎでっ……ぁ、はい」イライラ・・・

香焼「喧嘩しないで下さい。別に無理に付いてきて下さる必要はないから……一人で何とかします」ハハハ・・・

絹旗「うっ」タラー・・・

香焼「一応、地図アプリとか見れば時間掛っても行けますし。だから仲良く家で待ってて下さい」シュン・・・

絹旗「む、ぅ」タラーリ・・・


最愛の性格を考える。彼女は確かにひきこもり気質で親しくない人間に関してはトコトン冷たい。
しかし、ある程度の『仲』であれば必要以上にお節介を焼いてくる性格でもある。因みに香焼(僕)は勿論、多分『香』もそれなりの仲だ。
結果、無碍には出来ない。


滝壺(ふむふむ。流石『きぬはた使い(マスター)』レベル4なこうやぎくん。扱い方を分かってる)フムフム・・・

絹旗「……私は麦野みたいに可愛い服選びとか手伝えませんよ」ムズムズ・・・

香焼「あ、うん。でも、一緒に来てくれたら嬉しいな」ニコッ

絹旗「……行くだけです」ムゥ・・・


よし。あと黒い方。


黒夜「あらあら。さっさと行け行け。静かになって清々すんよ。私は寝ーる」ゴローン・・・

香焼「うーん」チラッ・・・

滝壺「(流石にくろよるの扱いは慣れてないか。仕方ない)―――分かった……それじゃあはまづら。セブンスミストまで送って」クイッ

浜面「ん? 歩いて行かないのか?」キョトン・・・

滝壺「……、」ジー・・・

浜面「(何か考えアリってか)……まぁ良いや。ちと待ってろ」テクテク・・・

滝壺「あ、そういえば昨日夜勤の前に昔のスキルアウト仲間に会うって言ってなかったっけ」コクッ


黒夜に見えない様、キョトン顔の浜面さんにウィンクを送る滝壺さん。なるほど。


浜面「(そゆことね)……あー、バイクの件な。いけねぇ忘れるとこだったわ。サンキュ」コクッ

滝壺「どういたしまして。さて、それじゃあきぬはた。私達は準備出来てるからパパッと用意してね」フフッ・・・

黒夜「……おい、ちょい待て」チラッ・・・

浜面「ん?」テクテク・・・

黒夜「家の住人が誰も居ないってなぁ、拙いんじゃないの? 一応、私も客よ」ジトー・・・

滝壺「うーん。困ったなぁ……あ、でももしかして夕方前にむぎの戻って来るから二人で―――」

黒夜「勘弁してくれ」ノソッ・・・

滝壺「―――……あら。じゃあ一緒に出る?」ニコニコッ


苦虫を潰した様な顔。麦野さんと二人きりか、僕らと買い物に行くか……もしくは帰るか。


浜面「やれやれ。なぁ黒夜。お前も行ってやってくれ。趣味嗜好は別として、まともに私服買ってんのお前だけだ」クイッ

香焼「お願いします」ペコッ・・・

黒夜「……けっ。私は長い買い物付き合わねぇからな」フンッ・・・ノソッ


漸く陥落。時刻にしてお昼過ぎ。最愛と黒夜の準備はポシェット程度だったので、意を決してから出発するまでに時間は掛らなかった。

 ―――さる翌日、PM01:00、学園都市第7学区、商店街、セブンスミスト・・・・・





歩いても大した距離では無い大通り。逆に車で来た方が時間掛った気がする。
セブンスミスト近くで僕らを下ろした浜面さんは、そのまま昔馴染みのスキルアウトの所へ向かうらしい。


浜面「―――じゃあ帰りはバスなり歩きで帰ってこい。頼むからこの距離でタクシーとか使うなよ」チラッ

窒素姉妹『ぶーぶー』ダラーン・・・

滝壺「こらこら。はまづら、夜勤まで一眠りするんでしょ。起さないから安心して」ニコッ

浜面「あんがとさん。そんじゃ楽しんでこい」ブルルルルル・・・


車が曲がるまで見送ると、滝壺さんは僕らを見遣った。


滝壺「さて、と。どうしようか」チラッ・・・

黒夜「如何もこうもさっさと服買って帰ろーぜ」グデェ・・・

滝壺「それだけっていうのも寂しいでしょ。かおるは何か他に買いたかったり行きたかったり、したい事ある?」ジー・・・

香焼「え。うーん……特にh――― 滝壺『……、』ジロリ・・・ ―――(あっ……拙い)い、色々回ってみたい…です」ハハハ・・・


こういう機会が無い限り外に出ない最愛の為に『何かしろ』的な目だ。


黒夜「えー……色々って何よ」ジトー・・・

香焼「色々って……色々と」ポリポリ・・・

黒夜「私、そういう『無駄』な買い物嫌なんだけど。ブラインドショッピングとかガキかっつの」ケッ・・・

滝壺「んもぅ。くろよる、女の子でしょ。こういうの楽しまないと枯れてっちゃうよ」ムンッ

黒夜「具体的には?」ジトー・・・

滝壺「某アンチスキルのYさんとか、元研究者のYさん」サラッ・・・

黒夜「うっ……あ、ああいう大人になるのはヤダな」タラー・・・

絹旗「女として超枯れますね」ウーン・・・

香焼「い、言い過ぎ」ハァ・・・


※貴女達の兄貴分の保護者です。


香焼「とりあえず、お店に入りましょう。何か目ぼしいモノがあったらブラリと寄って……みたいな感じで。如何…ですか?」チラッ

絹旗「私はお任せします」コクッ

滝壺「よしよし。良い子良い子」ナデナデ・・・

絹旗「ちょ、滝壺さん」アワアワ・・・///


元々主体性が無い最愛は、こういう状況下、同意を求めれば嫌が墺にも付いてくる。


滝壺「くろよるは?」チラッ

黒夜「……飽きたら帰るぞ」フンッ・・・

滝壺「分かった。じゃあ楽しもう」ポンッ

黒夜「……うぜっ」ムスー・・・


ほんと、子供の扱い上手いなぁ。子供という程歳は離れてないが、滝壺さんの人望というか母性的な何かがそうさせるのだろう。
兎に角、買い物開始。

さておき、服だ。基本的に『セブンスミスト』は洋服店である。
中には靴や鞄、ファンシーグッズ、雑貨、喫茶店も混じっているが、殆どが服・ファッションに関するモノ。
しかも8分の6フロアが女性物(ユニセックス含む)なので、店内の男女比が必然的に2:7くらいになってしまう所。
ぶっちゃけ来る機会は無いに等しい。

とりあえず、店内パンフを手に取りザッと眺める……が、何が何だか分からない。
というか、私服って何買えば良いの?


滝壺「……どうする?」ジー・・・

香焼「ど、如何なんでしょう」ハハハ・・・

黒夜「はぁ?」ポカーン・・・

香焼「えっと、本当にあまり私服を着る機会が無いもので。如何いうのが流行りだとか可愛いだとか分かんなくて」ウーン・・・

絹旗「麦野が居れば一番なんでしょうけど、とりあえず店員にオススメでも聞いとけば当たり障り無いんじゃないですか」チラッ

香焼「そうだね」スッ・・・


一応、携帯を確認する。案の定『ボーイッシュな恰好は認めません』とのメールが入った。
そりゃ『香』が男子っぽい恰好したら、まんま『香焼』だもの。そんな自爆しません。


香焼「じゃあ、絹旗さんみたいな服を見てみたいかな」チラッ

絹旗「えっ」ピタッ・・・

黒夜「うわっ。センス無っ―――」ジトー・・・

滝壺「くろよる。それ、むぎのに喧嘩売ってる事になるよ」ボソッ・・・

黒夜「―――ふぇい……ま、まぁ最初は右習えでも良いんじゃね」タラー・・・


大胆不敵気取ってる黒夜も麦野さんは怖いのか。しゃーない。誰だって怖い。


滝壺「それじゃあ2階から回ろうか」テクテク・・・


促されるままエスカレーターへ進む。見た所、人は少ない。そりゃそうだ。平日の真昼間だもの。
ほぼ貸し切りの女性専用(オーラ的に)フロアをテキパキ進む4名。

ふと気付いたのだが、大した人混みではない御蔭か、最愛は平然と歩いていた。
これが休日だったら……僕か滝壺さんの後ろをベッタリついて離れないだろう。


香焼「うーん……全部同じに見える」タラー・・・

黒夜「奇遇だな。私もそう見える。どの店も置いてるモン同じだろ」ハァ・・・

絹旗「いやいや、微妙に超違いますよ。パッと見は超似てますけど、柄とか素材とか値段とか」クイッ

黒夜「『微妙に超違う』っつーニュアンスが分かんねぇし。てか、どうせそれ第4位(麦野)の受け売りでしょ」ヤレヤレ・・・

絹旗「むっ! 違いますぅ! 私は超違いが分かる女なんですよーだっ」エッヘンッ!

滝壺「ふふっ。凄い凄い」クスクスッ


大概、滝壺さんも甘いよな。

それはそうと、実際さっきのが本音。此処に限らずデパート系の服のフロアは全てが同じに見えた。
僕が男だからなのか、まだ然程ファッションに興味を持ってない年頃だからなのか、原因は分からないが、男女服問わずそう思える。


黒夜「そんじゃー絹旗ちゃんよぉ。先導よろしくー」ホレホレッ

絹旗「うぇ!?」ギョッ・・・

黒夜「んだよ。違いが分かる女なんでしょ。コイツのコーディくらいしてやれよ。上手く店員の姉ちゃん交しながらさぁ」ニヤニヤ・・・

絹旗「うっ……にゃ、く、うぐぐぅ」オドオド・・・


いや、無理なの分かってるから。そういう話云々は大人しく滝壺さんに任せましょう。

まずは何処かに入ってみようという事で近場の店に。
色々と可愛い服が並んでいる。雰囲気ポピュラーな感じ。丁度最愛の服に似たモノも置いていた。


店員「いらっしゃいませ」ニコッ


今まで暇そうにレジ奥に居た店員さんが営業スマイル全開で此方に飛び出してきた。
多分、此処で即決める事は無いのでそのまま奥で携帯弄って貰ってても構いませんよ。


絹旗「もう冬服ですよね」フムフム・・・

香焼「そうだね。そういえば絹旗さん、ミニスカートとかショーパン穿いてるけど、寒くないの?」チラッ・・・

絹旗「能力使えば寒暖関係無いんで。でもファッションとして切り替えとかないと麦野が超五月蠅いんですよ。一応冬はニットとかね」ヤレヤレ・・・

香焼「へぇ……ん? でも何で短いのを?」キョトン・・・

黒夜「単純に痴女気質なんだろ」チラッ

絹旗「ば、馬鹿言わないで下さい! 超オシャレなんです! 私的チャームポイント若さの特権なんですーっ!!」フシャアアァ!!


今一よく分からないが、普段から気になっていた謎が少し判明。冬でも寒くないのは羨ましい限り。
さておき、諸々見て回っているが……何を如何して良いのか分からない。というか、根本的にサイズも分からない。
多分最愛と黒夜と同じサイズだと思うが、どのくらい?


絹旗「SSサイズですよ。香もそうでしょう?」チラッ

香焼「SSって……『150』じゃダメなのかな」ハハハ・・・

黒夜「ひゃくごじゅうwwwお子ちゃまwwww」プフーッ!

絹旗「あー……そういうのだと一気に超子供臭くなりますよ。種類もグッと超減りますし」ハァ・・・


そうなのか。正直、未だに『160(見栄)』サイズで服を買ってる香焼(僕)にとっては痛いお言葉。
もうちょっとファッション気にした方が良いのかな。今度パーカーとカーゴパンツ以外も買ってみよう。


滝壺「といっても、サイズ的には同じなんだよね。どっちも150cm以下。胸もAA」フフフ・・・

窒素姉妹『』チーン・・・

香焼「ええっと、せ、折角なのでレディースサイズ買います!」アハハハ・・・


推定M~Lサイズ(胸だけOサイズ)の大人な女性からのお言葉。
フリーズする対照的な姉妹を余所に、店内を見て回った……が、やはり今一決まらない。


香焼「うーん……如何しましょう」チラッ

滝壺「……私や店員さんに聞くより、今日はきぬはたを頼って欲しいな」ボソッ・・・

香焼「あー、そうっすn――― ビリバジッ! ビリリッ!! ―――~~ッ!! そ、そう…ですね」タラー・・・


気を抜くとコレだ。あの人(御坂蛇)マジで何処まで行っても監視してやがる。


香焼「あの、絹旗さん」チラッ

絹旗「ん?」キョトン・・・

香焼「どれが良いと思う? やっぱり僕一人だと中々決まらなくて」ポリポリ・・・

絹旗「えっ、と」チラッ

滝壺「きぬはた。助けてあげて」ニコッ

絹旗「あ、ぅ……ちょ、ちょっと待って下さい。とりあえずもうちょっと歩きましょう」アタフタ・・・

黒夜「……ヴぇー」ヤレヤレ・・・


何故か肩肘張ってキョロキョロ見回し出した最愛。変な方に空回りしなきゃ良いけど。

それから色んな店を回る事数十分。


絹旗「―――アレでも無い……コレでも無い」ブツブツ・・・

黒夜「長ぇよボケ」ハァ・・・

滝壺「まぁまぁ。じっくり選ばせてあげよう」フフッ


黒夜の気持ちも分かる。実際、これが五和と浦上相手なら僕も飽きて呆れて帰りたくなってる所だ。
しかし、折角最愛が他人の為に、ましてや僕の為にモノを選んでくれてるのだから無碍には出来ない。

とは言うモノの、流石にこれ以上間延びしては黒夜が帰ってしまいかねないか。


香焼「絹旗さん。そんなに悩まなくても良いよ」コクッ

絹旗「うーん……大丈夫です。大体目星は付けました」スッ・・・


そう言うとパンフを広げ、3ヶ所指差し僕に問うた。


絹旗「予算にもよりますが、可能なら冬用ブーツも買いましょう。アウターは欲しいですか?」ジー・・・

香焼「え。一応、多めには持ってきてるよ。と言っても、学生の多め程度だけど」ユキチニマイ・・・

絹旗「超充分です。此処(セブンスミスト)ならやりようで一万(ピン)フルセット買えます。足りなきゃ私が貸しますので」マジマジッ

黒夜「随分安上がりだな。あと気前良い」ハハッ

絹旗「超五月蠅い。とりあえず―――

 ①ゆるふわ・カジュアル系   ②ナチュラル・ガーリー系   ③清楚・お嬢サマ系

                                  ―――この中だったらどれが良いですか?」チラッ

黒夜「ほんっと今時だな。つまんね」ハァ・・・

滝壺「くろよるも意地張らないで普通の服着てみれば良いのに」ヤレヤレ・・・

黒夜「お前にだけは言われたかないねっ!」ビシッ!


パンク&ジャージはさておき……正直違いが分からない。


香焼「お、オススメは?」ウーン・・・

絹旗「こればっかしは超好みですので難とも」コクッ

香焼「……それじゃあ―――」











白いカブトムシさん『①②③で安価――― >>747 ―――よろしく。もしくはお好みのコーディ画像あればそれでもおk』ウロウロ・・・


1

香焼「―――……ゆるふわっぽいので」コクッ


何となく、名前の響きからして温かそう。


絹旗「分かりました。じゃあコッチで」テクテク・・・


最愛の後に続く―――一寸後、とあるお店の前に入り込み、辺りに目もくれず一着のコートに手を伸ばした。


絹旗「はい」スッ・・・

香焼「わぁ。もこもこ」ポフポフ・・・

滝壺「ポンチョコートかぁ。確かに温かそうだね」コクッ

絹旗「麦野が前に『可愛い系ならこういう服もアリよね』とか言ってたんで」ジー・・・


ファー付きのウール生地ポンチョコート。ピンク色というのが気になるが、そこまで濃くないので許容範囲。
                            ※参照画像・・・・・ http://item.rakuten.co.jp/southerncross/y121204a


絹旗「サイズはSSじゃなくてSでも良いかもしれません。そうすれば中学生の内は着れるでしょう……超急激に成長しなきゃですが」ポンッ

香焼「……じゃあMサイズを」スッ・・・

黒夜「見栄張んな。お前らは一生ロリ体型から抜け出せねぇよ」ハハハッ

絹旗「くっ! そういう黒夜だって!」ムギギィ・・・

黒夜「私は追々『義体』サイズアップすりゃあ良いだけだもーん」フフフ・・・


ずるい。僕も機械の身体が欲しいです。どっかに9×3号の乗車切符落ちてないかな。


滝壺「はいはい。そういう話は後で。とりあえず、如何する? これ買うの?」チラッ

香焼「はい」コクッ

絹旗「でも、一度試着した方が良いですよ。というか、それあくまでアウターですし」フルフルッ

香焼「えっ」ピタッ・・・

黒夜「いやいや。今着てる服の上からじゃそのコート合わないでしょ。私だって分かるわ」ハァ・・・


如何しろと。


絹旗「上はロンTとかの方が良いです。下は基本ショーパンか、次点でキュロットパンツですね」コクッ

香焼「……まぁじで?」タラー・・・

絹旗「『それ下穿いてるの?』って思われるラインが個人的にはベストです」b"


つまり、上は温かいけど下は寒いという訳か。てか、ショーパンって……男子の僕が穿いたらハードゲイっぽいぞ。


滝壺「……、」ニヤニヤ・・・

香焼「ぐっ…―――(滝壺さん、笑ってないで助けて下さいよっ)―――…きゅ、キュロットが良いかな。ショーパン苦手で」ハハハ・・・

絹旗「そうですか。普通はショーパンなんですけど、まぁ良いです。あ、ブーツも買った方良いですよ。茶色が無難でしょうか」ジー・・・

黒夜「ふーん。占めて一万で済むか? ブーツも買うとなりゃ結構すんぜ」ジー・・・

絹旗「二万でしょうね……ブーツ代は出しますよ。そうすれば一万前後で済みますし」コクッ

香焼「い、いやいやいや! それはダメ! だったらブーツは今度買うよ」アタフタ・・・

黒夜「安心しろ。コイツ、金持ってから」ハハハ


何故かドヤ顔の最愛。いやいや、そういう問題じゃありません。滝壺さんも止めて下さい。

何故かカードで一括払いしようとする最愛を抑え、こなくそっと言わん勢いで財布の中の諭吉さん二人とさようならした。
順番が逆になったが、その後試着。三人+店員さんに見られない様最大限注意を払い……やっとこ終了。


香焼(あーもぅ。アソコがキツい)ギューギュー・・・

黒夜「遅っい。開けるぞ」イライラ・・・

滝壺「こらっ……かおる。大丈夫? まだ掛りそう?」ジー・・・

香焼「ええ。もう終わりました」スッ・・・


お披露目。


絹旗「ふむふむ。超ゆるふわですね。超もこもこしてます」ポフポフ・・・

黒夜「ちょいと大人っぽい気もするけど、まぁさっきよかマシじゃね」モフモフ・・・

香焼「ちょ、何で触るの?」アタフタ・・・///

窒素姉妹『もこもこしてるから』グイグイッ

滝壺「ふふふっ……はーれむー。あ、この犬耳付きニット帽、私からプレゼント」ポンッ・・・

窒素姉妹『わんわん鳴いてみー』クシャクシャ・・・

香焼「勘弁してっ! ハァ……じゃあもう着替えるね」スッ・・・

絹旗「えっ。着て帰るんじゃないんですか?」キョトン・・・

香焼「あんだと?」ギョッ・・・

滝壺「確かに。折角だから着て帰りなよ」クスクスッ

黒夜「ま、さっきの服装よか私服っぽいしな」ジー・・・


OMG……最悪な事に、蛇さんからも指令という名のイジメールが入った。内容は案の定『着て帰れ』との事。


香焼「うぅ……恥ずかしい」ムギュッ

絹旗「神裂さんみたいな反応しますね。流石親戚同士です」ハハハ


あの人の非常識センスと一緒にしないで下さい。僕は男(ノーマル)なんです。


黒夜「ははっ。まぁ絹旗ちゃんコーディが恥ずかしいのは分かるが、家に帰るまで我慢しろよ」フフッ

絹旗「むっ」カチーン・・・

滝壺「またそういう事言う……きぬはた、大丈夫だよ。ね、かおる。変じゃないよね」チラッ・・・

香焼「え、ええ。可愛い……と思います」ハハハ・・・

黒夜「へいへい。女子力女子力(笑)」ヤレヤレ・・・

絹旗「……そんな事言うなら、黒夜が選んで下さいよ」ムスー・・・

黒夜「はぁ?」ポカーン・・・


何を仰る?


絹旗「……、」フンッ・・・

黒夜「何怒ってんのよ……チッ。子供かテメェは」ジトー・・・

絹旗「黒夜がでしょう。さぁ。さっさと香の服コーディネイトして下さい」プイッ・・・

香焼・滝壺((どっちも子供だ))ハァ・・・


まーた、面倒な事になってしまった。

最愛がヘソを曲げ、黒夜を煽った所為で買い物が長引く羽目に。
結局、黒夜も黒夜で勝負事になると負けるのが嫌なのか……お互い譲る精神を持ちましょうよ。


最愛「ふんっ。お手並み拝見といきましょう」プンスカッ

黒夜「ケッ。格の違い見せてやるよ。姉としてな」ズカズカッ・・・

香焼「これ、如何すりゃ良いんすか――― ビリバジジッ!! ―――っ!! ……ですか」ボソッ・・・イテテッ・・・

滝壺「うーん。本人達が満足するまでやらせるのが一番かな」ハハハ・・・

香焼「じぶ……僕、そんな予算無い…ですよ」ハァ・・・

滝壺「その点は心配しないで。この子達の迷惑費用として私が出すから心配しないで」アハハ・・・

香焼「えっ、それは」タラー・・・

滝壺「だいじょうぶ。むぎのに経費申請するから。外出交友費扱い」ニヤッ

香焼「オッカナイ人…ですね」ハァ・・・


さておき……黒夜が買う様な服、セブンスミストで売ってるのかな。


黒夜「あるモンでコーディネイトするわよ……ねぇ。多少露出あっても良いんでしょ」チラッ

香焼「正直、遠慮したいかな」タラー・・・

黒夜「……条件厳しいわ」ウーン・・・


ぶっちゃけ、普段の黒夜の恰好に近いモノを連想すると……とても着られる気がしない。


滝壺「そこはヒートテックみたいなピッチリ目のインナー着ればカバー出来ると思うよ」ニコッ

香焼「ふぇっ!?」ギョッ・・・

黒夜「あぁ。それもそうだな。スポーツ用のカラーアンダーシャツとか丁度良いだろうし……ま、好きにやらせて貰う」フフーンッ

香焼「ちょ、滝壺さん?!」タラー・・・

滝壺「んふふっ。私は中立ー」ニコニコッ


それは姉妹間の中立であって、僕に対してはアウェイでしかないですよ。
兎角、黒夜の後を追いユニセックスの階へ移動。チラホラとフロアを一周し、僕に尋ねてきた。


黒夜「んじゃー私も絹旗ちゃんに見習って質問しようかしらねー」チラッ

絹旗「……自分だって主体性無いじゃないですか」ジトー・・・

黒夜「だってフェアじゃないもの。決めようと思えば独断出来るけど、好みがあるっしょ」フンッ

絹旗「はいはい。じゃあさっさと進めて下さい」ッタク・・・

黒夜「言われなくとも。さぁて、香」ジー・・・

香焼「はい。あ、寒いのは嫌ですよ」ポリポリ・・・

黒夜「分ーってるわよ。そんじゃ……―――

 ①黒・V・ゴシック系  ②ロック・パンク系  ③スチーム・ネット系

                             ―――……どれが好み?」クイッ

香焼「全部コスプレじゃ……スチームって何?」キョトン・・・

黒夜「世界観とか好きな時代を背景に服デザインしたり組み合わせんの」コレコレッ

絹旗「黒夜のファッションセンスって、J○J○のキャラみたいですよね」ププッ

黒夜「黙ってろ。んで、如何する?」ジー・・・


それじゃあ……―――   >>753 

3

香焼「―――その、スチーム何ちゃらってので」コクッ

黒夜「あいよ……ふふふっ」ニヤリ・・・


不敵な笑み。地雷を踏んだ気がする。ニヤニヤ微笑み歩を進める黒夜が入ったのは……仄暗いくレトロな雰囲気のお店。
一応服は置いてあるのだが、やはりというかどうもというか、コスプレ臭い。
さておき、当の黒夜はテキパキと幾つかのアイテムを掻き集め、僕に押し付けた。


絹旗「此処、服屋なんですか? 超怪しいんですけど」キョロキョロ・・・

滝壺「明らかに、私達浮いてるね」ハハハ

黒夜「常に浮いてんだから気にすんな。ほれ、香。着てこい」クイッ

香焼「えっ……全く全体図見せて貰ってないんだけど。あと値段も」タラー・・・

黒夜「着れば分かるわ。値段は気にすんな。ほれ、さっさとしー」ポンッ

絹旗「まったく、超横暴ですね」ヤレヤレ・・・


為すがままに試着室へ。とりあえずハンガーからモノを外し、着替え―――ようと思ったのだが。


香焼「……黒夜さん」スッ・・・

黒夜「んー?」ジー・・・

香焼「これ、如何着るの?」クイッ


手元の服&アイテムは……黒のタートルネックのアンダーシャツ。薄ブラウンの7分ジャケット。濃ブラウンのロングレザーコルセット。
下はデニム地っぽいダメージスキニー。アウターに網上の灰色ローブ。そしてベルトやチョーカー、グローブなどアクセサリーがジャラジャラ。


黒夜「まぁ分かんねぇだろうな」ハハハ

絹旗「超意地の悪い。着せ替え人形じゃないんですよ」ジトー・・・

黒夜「へいへい。んじゃパンツとインナー、ジャケット着たら呼んで頂戴。コルセットとか着けてやるから」ジー・・・

香焼「はい……ってぇえっ!」ピタッ・・・

黒夜「あん?」キョトン・・・

滝壺(ありゃりゃ。拙いかな)ポリポリ・・・


身体に触れられるのは危険だ。


香焼「じ、自分でやるよ。着け方だけ教えて」アハハ・・・

黒夜「そう? じゃあコルセットだけ説明するけど、そこのジャージ女を例にするとだな。こういうコルセットを―――」アーダコーダ・・・

滝壺「……えっ」ピタッ・・・

黒夜「―――下からグッと持ち上げて縛るっ」ムギュッ・・・

滝壺「ぐへっ」オッパイボーンッ!!

香焼・絹旗「「っ!?」」Wao...///


とっても分かり易い例でした。てか滝壺さん、普段ジャージだから分からないけど……胸大きいな。五和くらいありそう。


滝壺「むぎゅぅ……おしおき確定。ついでに、かおるも」ガシッ・・・ジロッ・・・

黒夜「あぎゃっ!?」ミシミシッ・・・

絹旗「ぷふーっ! ざまぁー!」ニヤニヤ・・・

香焼「な、何で僕まで」フコウダァ・・・


ワザとじゃありません。不可抗力です。

―――……一寸後。

参照画像……http://スチームパンク.up.n.seesaa.net/xn--pcktay8dudufqc/image/30f97516.jpg?d=a1
  http://スチームパンク.seesaa.net/upload/detail/image/ed8c2f05.jpg.html   興味ある方は『スチームパンク』で検索してみて下さい。

マジでコスプレちっく。


黒夜「ふふーん。どうよ?」ドヤァ・・・

絹旗「いや、どうよって」ジー・・・

滝壺「恰好良いっちゃ恰好良いけど、さ」ハハハ・・・


確かに男心を燻られるカッコ良さだが、これで街中歩ける勇気は無いです。


黒夜「よしよし。じゃあ帰ろうか」クイッ

香・絹・滝「「「はい?」」」キョトン・・・

黒夜「金は払った。気が済んだし帰ろうぜ。あ、勿論それ着たままな」ニヤリ・・・

香焼「いつの間に……って、そうじゃない! お金は払うよ! あと、その……恥ずかしい」アタフタ・・・///

絹旗「そうです、超横暴です。香は私が選んだ服着て帰るんです!」ムンッ


いや、実はそれも結構恥ずかしかったりします。


窒素姉妹『フシャアアアアァ!!』ピリピリ・・・

香焼「あーもぅ」タラー・・・

滝壺「あらら……どうする?」チラッ

香焼「うーん。上は絹旗さんので、下は黒夜さんので、じゃダメ…ですか?」ポリポリ・・・


ぶっちゃけ温かさ重視で行きたいんですけど……お互い許してくれないだろうな。
これで『私が選んだのを着るんですよね!(だよな!)』とか問い詰められたら、お手上げだぞ。


滝壺「私は構わないけどね」フフッ

香焼「くっ。頼りにならない……何とかして下さいよ」ハァ・・・

滝壺「本当は貴女が決めるべきでしょ。優柔不断だね―――仕方ない。おーい、二人ともー」ジー・・・

窒素姉妹『―――っ!!』ニャルガルブルワル・・・


おぉ! 助けてくれるのか!!


滝壺「かおる、ジャージも買うからそれ着て帰るってー」ニヤリ・・・

窒素姉妹『ぇ……はぁ?!』ギロリ・・・

香焼「」ナニソレェ・・・


予想斜め上突抜けて場外ホーマーしやがった。


黒夜「おまえ、本気?」ジトー・・・

香焼「うぇ、あ、うっ」アタフタ・・・

絹旗「……滝壺さん悪く言う訳じゃありませんが、ちょっと」ジトー・・・

香焼「ぐっ……た、滝壺さん」チラッ・・・

滝壺「ひゅーひゅー」ピーヒャララー・・・


この浦上並のしらばっくれっぷり。畜生、覚えてろ。

 ―――さる翌日、PM03:30、学園都市第7学区、商店街・・・・・





結局全ての間を取り、最後に買った白っぽいジャージの上にモコモコポンチョを着て、
パンクなアクセサリーを着けるヘンテコファッションになってしまった。因みに犬耳帽子まで装着済み。
超目立ってるんですけど。勘弁してくれ。


絹旗「香って超勇者ですね。ある意味超尊敬します。絶対真似したくないですけど」チラッ・・・

香焼「……もう如何とでも言って下さい」ハァ・・・

黒夜「オマエ、絶対損する性格してるわよね。その生優しさって、ただの馬鹿だわ」ヤレヤレ・・・

滝壺「ふふふっ。美徳でもあり、短所でもありだね」クスクスッ


分かってますよーだ。さておき、この後は如何する?


黒夜「もう目的終わってんだから帰ろうぜー」グデグデ・・・

滝壺「くろよる。目的は私服購入を兼ねたブラインドショッピングだよ」ピッ

絹旗「嫌なら帰れば良いじゃないですか。別に帰る場所ウチのマンションじゃないんですから」チラッ・・・

黒夜「チッ。一々癪に障る言い方するヤツだな」イライラ・・・


兎に角最愛に対して折れるのが嫌なのか、それとも実は結構集団行動向きなのか。
どっちにしろ結果的には黒夜の社会勉強になる気がするのでOK。


滝壺「さてと。じゃあ、何かしたい事とか行きたい場所ある?」チラッ・・・

絹旗「えっ。私? うーん……特には」ジー・・・

滝壺「公園でも良いよ。猫ちゃん達居るでしょ」フフッ

絹旗「あの子達に、黒夜会わせたくないので今日は遠慮します」キッパリ・・・

黒夜「てめっ……今度その公園行って猫共『可愛がって』やっからな」フンッ・・・


あっ。冗談でもそういう事言うのはヤバい。


絹旗「―――、」ピキッ・・・ゴゴゴゴ・・・

黒夜「……ぁん?」チラッ・・・

絹旗「あの子達に手ェ出したらマジでブッ潰すンで」ドドドド・・・

黒夜「ほほぉ、そりゃ良い事聞いたわ。楽しみが増えたわねぇ」ニヤニヤ・・・


煽るな煽るな。超本気で最愛が爆発しそうだったので、無理矢理話を戻す。


香焼「えぇっと! そういえば僕行きたい場所有った様な!」アタフタ・・・

滝壺「(ナイス中断!)うん、何処?」スッ・・・

窒素姉妹『……チッ』ギリッ・・・


ほんと、危ない中一娘共。
しかし、如何したモノか。別に行きたい場所なんて無いのだが適当に行かなきゃならない流れ。


香焼「それじゃあ……―――  >>757 」ビシッ!




       ・安価:行きたい場所(第7学区の商店街に在る店の範囲で。遊園地とかプールとかはNG!)           

文房具店

香焼「―――(そうだ!)……文房具! 買いたい…です」コクッ

窒素姉妹『ぶんぼーぐ?』キョトン・・・

滝壺(ほぅほぅ。無難なとこいったね)フフッ


文房具屋なら近場にわんさかあるし、学生的に自然なチョイスだろう。


絹旗「文房具って、ペンとか鉛筆の文房具ですよね」フム・・・

香焼「うん。消耗品だから、色々欲しくて」コクッ

黒夜「消耗品? ペンとかって早々無くなんないっしょ?」キョトン・・・

香焼「え? あ、そうかな。黒夜さんはモノ持ち良いん…ですね」ハハハ

絹旗「まぁ鉛筆とか消しゴムなら一本一つあれば半年持ちますし。あ、でもああいうのってすぐどっか行っちゃうんで失くしちゃいますよね」コクッ

香焼「あるあr……ん?」ハテ・・・


おかしいなぁ。半年?


滝壺「かおる。二人とも、学校行ってないんだから」ボソッ・・・

香焼「あっ」ピタッ・・・


忘れてた。二人とも、行く必要が無いんだった。


黒夜「しっかし、文房具の専門店なんてあるんだな。業務用のモンしか使った事なかったわ」ヘー・・・

絹旗「鉛筆とか消しゴム以外に何売ってるんですかね」ウーン・・・

黒夜「名前通り『防具』とか売ってんじゃね? 鎧とか」ハハッ

絹旗「はい超馬鹿ー。何処に冒険行く気ですか」ハッ

黒夜「冗談を冗談と捉える事が出来ねぇヤツは生きる価値無ぇってどっかのお偉いさんが言ってたぞ」フンッ

絹旗「じゃあ存在自体が冗談みたいな黒夜は死んじゃいますね」ヤレヤレ・・・

滝壺「こらこら。まったく、隙有らば喧嘩するんだから」ンモー・・・


ステイルとアニェーゼみたいな仲ならまだしも、この二人は本気で殺し合いしかねないからオッカナイ。
兎にも角にも、最寄りの文具店に到着。この時間帯だとボチボチ下校途中の学生も居たりする。


絹旗「おぉ。なんか、超いっぱいペンがあるんですけど」キラキラ・・・

黒夜「何だコレ!? 匂い付き消しゴム! 凄い……マジで喰えそうな臭いするわ」キラキラ・・・

香焼・滝壺「「……あはは」」ポリポリ・・・


好奇心旺盛の子猫みたいだ―――実際、その通りなのだろう。
この二人にとっては歳相応の子供達の日常(あたりまえ)が非日常(あたりまえじゃない)で。
血生臭い日々こそが『日常』なのだ……最愛の場合は、元、だけど。しかし今現在も『あたりまえ』には程遠い生活。


滝壺「楽しそうだね。普通ならもっと小さい頃にこういう経験してる筈なんだけどな」フフッ・・・

香焼「(人殺しとして教育されてきた『置き去り【チャイルドエラー】』か)……滝壺さんは?」チラッ・・・

滝壺「私? 私は、まぁ人並みだよ。暗部に入る前は極普通のJCだったりするから」コクッ

香焼「中学……あれ? そういえば滝壺さんって幾つ…ですか?」キョトン・・・

滝壺「高校○年生。暗部に入った経緯は……ナ・イ・ショ♪」ニヤリ・・・

香焼「さいですか」ハハハ・・・


この人も謎が多いな。店内ではしゃぐ二人を余所に、僕らは必要なモノを籠に入れて回った。

ん?
香焼もAIM出てんの?
無能力者と無開発者は違くね?

一通り必要な文具は揃えた。正直恰好が恰好なので出来れば早く退店したいのだが、最愛と黒夜が超ノリノリな御様子。


香焼「(目立ってるなぁ。ぶっちゃけ帰りたいっす)……二人とも、何か良いモノありましたか?」テクテク・・・

絹旗「香! このペン30色ですよ! 30色! 超凄くないですか!?」キラキラ・・・

香焼「好きな色に入れ替えられるみたいだね。でも、そんなに必要かな」フフッ

黒夜「ほぁー……始めてマジモンの分度器っつーのを見たわ。昔の学生ってのぁこんなのに頼んなきゃ角度分かんねぇんだな」ヘェ・・・

香焼「いや、昔って。今でもバリバリ現役の文具だよ。普通目測とか計算だけじゃ分からないから」ハハハ・・・

絹旗「あっ。この定規超長いんですけど! しかも木製っぽい!」ビヨーンビヨーン・・・

香焼「それ、モノさしだよ。教務用…ですね。そこら辺のは算数とか理科の授業で使うヤツだよ」コクッ

黒夜「じゃあこの『武器』も文具なの!?」ギョッ・・・ブンッ!

香焼「それ武器じゃなくてコンパスと三角定規。文具っていうより教具かな……こらっ、二人とも! 振り回さないでっ」アタフタ・・・

絹旗「あっ……この修正テープ、フレンダが使ってた『アレ』に超似てますね! これも爆発するんでしょうか?」キラキラ・・・

香焼「修正テープが爆発する訳無いでしょ」ハァ・・・

黒夜「このペンのグリップやべぇわ! マジでグニョグニョしてんだけど! 中何入ってんだろう?」キャハハハッ!!

香焼「ちょっ! 試供品壊そうとしないで!」アワワワ・・・

滝壺「……やれやれ」フフッ


あれやこれやと目に付くモノに気になったモノ、全てを手にとって見てる。
何もかもが物珍しいのだろう。手当たり次第に籠に入れようとした。それを制止するのも一苦労。

小さな子を玩具屋に連れていく母親の心境が、今分かったよ。


香焼「―――まったく。必要無いモノは買わないで下さいよ」フゥ・・・

窒素姉妹『えー』ブーブー・・・

滝壺「我儘言わないの。興味本位で買ったのはいいけど、使わなかったら意味無いんだからね」メッ

黒夜「んな事言われたらよぉ……、」ムスー・・・

絹旗「……私達、一生使う事無いんですけど」フム・・・


そんな悲しい事言わないで欲しい。


香焼「……とりあえず、シャーペンと消しゴムくらいにしといたら如何かな」チラッ・・・

絹旗「じゃあ、この『超ロングサイズ! 1000mメジャー!』を」スッ・・・

黒夜「『食べられる紙のノート(コーラ&メントス味)』ってのにすっかな」スッ・・・

香焼「ねぇ僕の話聞いてたかな?」ハァ・・・

滝壺「あはは……まぁ自分達のお金だし、衝動買いして失敗するって経験も積ませないと」ポリポリ・・・


それも一つの考えか。しかし、安いモノなら先程のお礼でプレゼントしようと思ったが……ダメだこの子達。もう好きにしてくれ。


香焼「じゃあ買ってくるけど、絹旗さん達は別で良いの?」チラッ

窒素姉妹『アーダコーダ』ガヤガヤ・・・

香焼「……、」ハァ・・・

滝壺「ははは。聞いてないね。かおる、買っておいで」ポリポリ・・・

香焼「……はい」ヤレヤレ・・・


まったく、困ったものだ。
とりあえず僕一人でレジに向かおう―――と歩を進めた時、見知った声を姿が此方に向かってきた。

>>759・・・その辺はご都合主義として解釈を。『誰でも』力場が生じるのか、『開発を受けた者のみ』発現するのか判別出来ないので。


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大小の二人組。一人は杖をついた中性的な顔立ちの男性。もう一人は……幼い御坂さん。


打ち止め「―――ってミサカはミサカは時代遅れなアナタに……って、おややっ!」ピタッ!

香焼「あっ」ピタッ・・・

一方通行「……ン」ピタッ・・・

香焼「こ、こんにちは」タラー・・・

一方通行「……ンァ?」キョロキョロ・・・


あ、気付いてない。そりゃそうか。香の姿ではチャリティ演奏会で一度しか(※)会ってない。   ※すんどめ。第三(20)話参照。


打ち止め「んー? 確か、キヌハタ(お姉ちゃん)の友達のカオルンだよね? ってミサカはミサカはうろ覚えの記憶を呼び覚ましてみたり」ジー

香焼「はい。お久しぶり…です」ペコッ・・・

一方通行「あァ。そいやァそンなンあったな」フム・・・

打ち止め「カオルン、何だか凄い恰好だね……ってミサカはミサカは超前衛的ファッションに対して言葉を濁しつつ苦笑してみたり」ハハハ・・・


触れないで下さい。さておき、最愛達も一緒だと伝えるか。


打ち止め「あららー。お姉ちゃんも一緒なの? ってミサカはミサカは辺りを見回し……あ、居た! おーい!!」ビシッ!! パタパタッ!!

一方通行「店内走ンなボケ。第三位(オリジナル)みてェな品無ェ女になっぞ」ハァ・・・

打ち止め「良いもーんだ。ミサカはまだまだ子供の特権使えるしー」イエーイッ!

一方通行「……まだまだ躾が足りねェな」グデェ・・・


この人も振り回されるタイプだな。一方、最愛達は。


絹旗「あっ。打ち止めちゃn―――」

打ち止め「お姉ちゃーーーーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どるーんっ!!」ボ○テッカーッ!!

絹旗「―――nフンヌッ!!」キュルキュルキュル・・・

打ち止め「えへへっ。ナイスキャッチ! ってミサカはミサカはハイタッチを要求してみたりっ」イエーイッ!


ばいおれんす。パワータイプの能力者たる最愛じゃなかったら止められないだろう。


絹旗「んもーっ。狭いとこでボ○テッカーは超危険っていつも注意してるじゃないですかー」プシュー・・・

打ち止め「んへへっ。さーせん」ニパーッ

黒夜「ハチャメチャなヤツ……って、アイツも一緒か」チラッ

一方通行「……、」ジトー・・・


そりゃ打ち止めちゃん一人で外で歩くって事はそうそう無いらしいからな。


黒夜「因みに……番外個体(バンコ)一緒じゃないわよね」タラー・・・キョロキョロ・・・

打ち止め「番外個体(ワースト)は昨晩から今朝まで『はじめの独歩』既存巻読んでたから寝てるよ。ってミサカはミサカは報告してみたり」コクッ

黒夜「……なら良い」ホッ・・・


相変わらず、あの悪人相大人御坂さんのこと苦手なんだな。

しかし、文房具屋には無縁そうな二人だが、何しに来たのだろう。


打ち止め「あのねっ。お使いだよ、お使い! ってミサカはミサカは外に出たがらないヨシカワの代わりに出張ってきた事を説明してみたり」コクッ

滝壺「よしかわさんの?」キョトン・・・

一方通行「プリンターのインクが切れたンだと。あと、他にも色々と……かったりィ」ハァ・・・

黒夜「ぷふーっ。天下の第一位様が使いっパシリになってやんのー。だっせー」ニヤニヤ・・・

絹旗「こらこら、黒夜。これはきっとアレですよ。超リハビリ的な。歩行訓練と……社会復帰訓練の。ふふっ」クスクスッ

一方通行「社会不適合者のテメェらにだけは言われたくないンですけどォ」ケッ・・・

窒素姉妹『あンっ?』ジトー・・・


喧嘩しないでよ、もぅ。


絹旗「あーそういう事言っちゃいますかぁ……ねぇ『御兄様』」ジトー・・・

一方通行「……はァ?」ピタッ・・・

黒夜「ホント、酷い事言うよねぇ……私らの『御兄様』はぁ」ジトー・・・

一方通行「ちょ、何を―――」タラー・・・

絹旗「いや、よしんば私らが『社会不適合』だっていうの認めたとしますよ。でもそれを超無責任に言い放つ『御兄様』って、ねぇ」ボソボソ・・・

黒夜「『ひとでなし』なのは知ってたけど酷いよなぁ……事もあろうか『窒素姉妹(私達)』にヤツアタリだぜ、『御兄様』がさ」ボソボソ・・・

一方通行「テメェら一体何の真似で―――」ウッ・・・

絹旗「私達に、ですよ。私達に……ねぇ……わ・た・し・た・ち・にっ! お・に・い・さ・まっ!!」ジトー・・・

黒夜「あーいや。別に気にしなくて良いぜ『御兄様』。私達が勝手に言ってるだけだからよー……なぁ『御兄様』」

一方通行「」ダラダラ・・・


何この精神攻撃。『御兄様』のルビで【オリジナル】って聞こえてくるのは気の所為だろうか。


打ち止め「ふぇ? お姉ちゃん達は何であの人の事『兄』って呼んでるの? ってミサカはミサカは純粋に疑問視してみたり」ポカーン・・・

滝壺「うーん……やんごとなきお家事情的な。結構ドロドロな」ハハハ・・・


滝壺さんが言う『お家事情』とは―――『窒素姉妹(最愛&黒夜)』の能力の由縁についてだ。
『暗闇の五月計画』とかいう非人道的な能力実験があり、ある意味『原因』が一方通行さんで、『被検体(犠牲者)』がこの二人。
まぁもっと分かり易くいえば『一方通行(最強)≒窒素装甲(守り)+窒素爆槍(攻め)』―――故に、兄妹的なアレコレ。

助けたいのは山々だが『香』的には知らないフリをしなければならない。となると、滝壺さんと打ち止めちゃん頼りか。


一方通行「―――……ちょ、調子乗ンなし」グヌヌゥ・・・

絹旗「ええ、そうですね。『御兄様』、少々言い過ぎました『御兄様』」フフーン・・・

黒夜「あ、もしかして『御兄様』より『お兄ちゃん』とか『兄貴』の方が良かったかな? それとも『兄君』とか『にぃに』?」ニヤニヤ・・・

一方通行「冗談抜きで虫唾が奔るンですけど……そろそろ勘弁してくれ」ハァ・・・

窒素姉妹『えー』ニヤニヤ・・・

滝壺「こらこら。その辺にしときなさい。彼、いつもの三割増しでゲッソリしてるから―――」ヤレヤレ・・・

一方通行「……助かる」ハァ・・・

滝壺「―――せめて、何か奢って貰う程度になさい」フフフ・・・

窒素姉妹『はーい』ワーイ♪

一方通行「」チーン・・・


この人、とことん女性に弱いんだなぁ。人の事言えないけど。

 ―――さる翌日、PM05:00、学園都市第7学区、商店街付近大通り・・・・・





なんやかんやで日が暮れた。


打ち止め「―――じゃーねー! ってミサカはミサカは千切れんばかりに手を振ってお別れを名残惜しんでみるー」ノシノシ"

絹旗「ばいばーい。また兄貴さん家でー」ノシ"

黒夜「『御兄様』もまたなー」ニヤニヤ・・・

一方通行「うっせェ糞ガキ共! 二度と会わねェよ!」ケッ・・・


打ち止めちゃん達とは此処でお別れ。トコトコと元気良くバス停へ向かう打ち止めちゃんに反して、哀愁漂う最強さんの背中。


絹旗「いやぁ超大量大量」モッサリ・・・

黒夜「結構買ったなー。まぁ私の金じゃないけどね」モッサリ・・・

香焼「いやいやいやいや。それ持って帰るの?」タラー・・・

滝壺「まぁまぁ。いっぱい買って貰って良かったね」フフッ


限度があろう。そんな必要無いモノばっかり……店員さんも驚いてたぞ。


絹旗「そういえば香は何買ったんですか? 必要最低限という割には結構多い気がしますけど」ジー・・・

香焼「色々と。兄に頼まれていたモノとかもあるので……あとは贈り物的なのも」ハハハ・・・

黒夜「あの甘ちゃんが使いっパシリ頼むたぁ良い身分になったもんだ」フンッ


同一人物なんですけどね。

話は変わるが、天草式の『術式』は紙や糸を媒体にする魔術もある。特に僕はそういう類の小細工を多用するので、こういうのが消耗品となる。
経費・資材で発注申請出来るけど、いつ何時何が起こるか分からないので、纏め買い出来る時にしておきたい。
因みに『贈り物』というのは……気の迷いだ。

さておき、そろそろ時間も時間。三人は如何するのだろう。


滝壺「私は帰ろうかな。麦野も帰って来る頃だしね」チラッ

絹旗「右に同じくです」コクッ

香焼「黒夜さんは?」チラッ

黒夜「んー。眠いし私も帰るわ」グデェ・・・


それではお開きか。


滝壺「かおるは如何する? このまま帰る? ウチ寄ってっても良いよ」チラッ

香焼「麦野さん居る…ですよね。迷惑じゃありませんか」タラー・・・

絹旗「別に香なら麦野も何も言いませんよ」コクッ


いや、麦野さんが良くても僕が嫌です。絶対からかわれるんで。
しかし、よくよく考えたら今日は帰っても家に姉さんは居ない。五和と浦上ももしかしたらウチに寄らないかもしれない。
別に一人が嫌という訳ではないが、正直、今一人になってしまうと、昨日の事を思い出しそうで……気拙い。
かといって特に予定は無いので、出来れば蛇さんの指示を仰ぎたいのだが―――何の連絡も無い。つまり、自分の意思で行動しろと。


香焼「それじゃあ―――    >>766    」 ※安価!



  ①一緒に行く。     ②五和&浦上と合流する。     ③『兄』の所に帰る。

2

香焼「―――姉達と、一緒に帰ります」コクッ・・・


麦野さんにからかわれるのが嫌という訳ではなく、最愛達に気を使いたくない。
でも……やっぱり、何故か、一人になりたくない気分だった。


絹旗「そうですか」フム・・・

香焼「折角誘ってくれたのにすいません」ペコッ

滝壺「ううん。気にしないで」フフッ


ホント、今日は一日僕の我儘で申し訳無い。


黒夜「そんじゃ解散だな。寝よー……じゃーな」テクテク・・・

絹旗「はいはい。あ、昨日の勝負の続きはまた今度ですからね」ビシッ!

黒夜「あいあい。また泣かせてやるよ」ノシ"


振り向かず人混みに消えていく黒夜。何処に帰るやら……それはそうと案外、というか意外と協調性があるという事が分かった。
とりあえず僕はというと、地下鉄で第一学区まで帰るので、バスを使う二人と途中まで一緒に歩く事に。


滝壺「じゃあ私達は此処から乗るから」チラッ

香焼「はい。今日はありがとうございました」ペコッ

絹旗「いえ。お気になさらず」コクッ

滝壺「此方こそありがとね……きぬはた達も良い勉強になったよ。これからも宜しく」フフッ

絹旗「あっ。香焼に今度いつ公園行くか聞いといて貰えますか。あと、もあいの餌代の件。最近忙しいのかライン帰って来ないんで」ヤレヤレ・・・

香焼「え? 最近って、今朝方返事したと思うんだけど――― ビリビリバリバリイィッ!! ―――うぎっ!!?」ビクンッ!!

絹旗「えっ!?」ギョッ・・・


あ、ヤバい。素が出ちゃった―――んでもって今の電撃超痛い!


滝壺「ふふふっ。きぬはたはお兄さん(こうやぎ)の連絡が半日でも待ち遠しいんだって」クスッ

絹旗「にゃっ!? ち、違っ! 超違いますからっ!! そういう意味じゃありませんよ!!」アタフタ・・・///

香焼「痛つっ……痺れた……えっ? 何が?」ポカーン・・・

絹旗「にゃ、何でもありませんっ」ムググゥ・・・///

香焼「ふぇ?」キョトン・・・

滝壺「やれやれ。カミやん病カミやん病……ふふふっ」ニヤニヤッ


よく分からないが、何故か最愛が赤面してらっしゃる。変なの。


滝壺「それじゃ気を付けて帰りなよ。家着いたらきぬはたにでも連絡してね……こうやぎくんとかおると、両方で」ボソッ

香焼「ははは……ええ。それでは、また」ペコッ

絹旗「さようならー」ノシッ”


じゃあね、と手を振り駅に向かう。その前に……蛇さんへ連絡を入れた。多分色々説教食らうだろうなぁ。


香焼「……もしもし」Pi!

御坂蛇『―――御苦労様。言いたい事は山ほどあるが、メールで送る。帰るならさっさと帰りなさい。とミサカは淡々告げます。以上』Pi!


あっという間に終わった。こういうパターンだと報告書に長々と反省文加えなきゃいけないから嫌なんだけどなぁ。ちくせう。

時刻は下校ラッシュの頃合い。折角の平日休み(?)なのに満員電車で帰る羽目になるとは。
ただ、流石にこの恰好(ジャージの上にモコモコニットポンチョ&パンクアクセ)で帰るのは恥ずかしいので、
近くのコンビニのトイレで最愛にコーディネートして貰った服装に着替えた。
何故このチョイスかというと、単純に寒いからポンチョを着たかったからである。黒夜の服は着方が分かりません。

とはいいつつも、最愛の服だと下が寒い。キュロットの御蔭で腰回りは温かいが、脚が寒いのだ。そこは少しの我慢か。


香焼(はぁ……とりあえず五和に連絡するか)スッ・・・


気ノリはしないが、止むを得まい。携帯を取り出しコールする。


香焼「……もしもし」Pi!

五和『―――はい。どうしたの?』Pi!

香焼「えっと、さ……その」モジモジ・・・

五和『ん?』キョトン・・・

香焼「今、何処」ムゥ・・・

五和『え。何処って、寮だよ。自分の。何で?』ポカーン・・・


何で、と言われると困る。


香焼「……浦上は?」ポリポリ・・・

五和『ウラはまだ学校かな……ねぇコウちゃん。如何したの? 何かあった?』ジー・・・

香焼「いや、えっと……あー、やっぱ何でもないっす」アハハ・・・

五和『ホント? 最愛ちゃん達と何かあったんじゃない?』フム・・・

香焼「ううん。別に、普通だったよ。だいじょぶ」ペコッ


ウチに居ないならいいや。今日はもあいと二人(一人と一匹)で大人しくしてよう。


五和『……分かった。じゃあ、また』コクッ

香焼「うん。変な電話してごめん。また」Pi!


馬鹿な電話だ。ホント、何考えてるんだか。何がしたいんだろう、僕は。


香焼「……帰ろう」トボトボ・・・


学生たちが挙って地下に降りていく。その波に僕も続く。
平日なのに私服なので多少目立ったりはするが、ギュウギュウ詰めのこの中だと着てるモノなど関係無い。
ドチラかといえば、今抱えている多めの荷物の方が周りの邪魔になってしまうので気になるところ。
特に真後ろのオジさんの迷惑にならなきゃ良いけど……やけに詰めてくるタイプの人だと非常に困る。

などと考えている間に電車がやってきた。此処からだと約20分といった所だろう。整列乗車に従い、中に押し込まれる。
相変わらずの混雑だ。案の定、後ろに居たオジさんが僕の荷物に圧し掛かる様に詰めてきた。もう最悪。


香焼(うっ……キツっ……もぅ……あぁ。明日どうしようかな)ムギュギュゥ・・・ムゥ・・・


如何しても昨日の事を思い出してしまう。忘れ様にも忘れられない。頭の中がゴチャゴチャする。
まるでこの車内の混み合いみたい。ミシミシと音を上げる程、混み込みし過ぎて……胸が辛い。
たった一人との、他愛無い喧嘩(?)がこれほど厄介なモノだとは。本当に……苦し……い…………………………………………………んっ!?


香焼(ちょ……マジで、苦しいんだけど……何っ?!)ウググゥ・・・


気付けば数駅先。そしていつの間にか扉側に押しやられていた。
結構シンドいがあと数駅我慢すれば解放される。この首筋に当たる気持ち悪い吐息も、太ももに触れる汗ばんで湿った手も―――


香焼「ぁ……れ?」ピタッ・・・


デジャビュ。この光景、いつだかと同じな気が―――


 「ハァハァ…相変わらず可愛い、なぁ……ンフっ…全然抵抗しないんだ、君…ハァファ…いつも、傍に居るのに、ねっ…デュフッ」ボソボソ・・・ニヤニヤ・・・ペタッ・・・

香焼「っ!!?」ビクッ・・・

 「コホッ…もしかして、そういう趣味、かな…ドゥフッ……ハァハァ…臭いも覚えたから、ねっ……クフフッ…毎日触ってあげる」ボソボソ・・・モゾモゾ・・・グイッ・・・

香焼「っ?!?!」ゾゾッ・・・


今まで考えていたアンニュイな事を全て吹き飛ばされる程のオゾマシサ。咄嗟に次の駅で飛び降りてしまった。
あまりの不気味さに吐気を催したがグっと我慢した……恐る恐る過ぎ去る電車を振り返ると、
そこにはいつかのオジさんが気色悪い笑みを浮かべ手を振っていた。寒気が止まらなかった。


香焼「ぇ……あ、なっ……うぇ……えっ」ハァハァ・・・


魔術師として未熟者ではあるが、今まで死地も経験してきた。しかし、それ以上の恐怖。背筋が凍る思い。


香焼「……、」ブルッ・・・


茫然。訳が分からない。何だこれは。

呆気に取られ後から来た数本を乗り過ごしてしまったが、自分でも気付かぬ内にフラフラと電車に乗っていた。
しかし、先の気持ち悪いオジさんの所為か、今度は壁を背にしていないと怖くて立って居られなかった。

一寸後……何とか最寄り駅に到着。最早何もかも考える気力が無いので、バスにも乗らずフラフラと家まで辿り着いた。
普段はバスの距離を歩いたので、かなり時間は掛ったが気が気では無いので気にならない。辺りに目もくれず、幽鬼の様に部屋まで一直線。
エレベーターを降り、自室へ……―――


香焼「ぁ、れ」スッ・・・


―――扉に手を掛けた瞬間気付いた……鍵が、開いてる。


香焼「ぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!?」ゾゾゾッ・・・


      ハァハァ                ピチャッ                   ペタッ・・・ペタッ・・・
                                   ンフフッ
 デュフフッ               『いつも、傍に居るのに、ねっ』              クフッコホッ
               ベタベタ・・・            フゥフゥ                      オフォッ
        ヌチャッア・・・                             ハァハァ


香焼「ッ!!!」ビクビクッ・・・スチャッ・・・


扉越しにアチラから近付いてくる音が聞こえる。
僕はもう気が気ではなかった。気配を消し、息を飲み、短刀を構え……そして―――

―――当て身を仕掛け、『峰』の部分を振り下ろす。


五和「あ。お帰りぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉおわたぁっあぁっちょっええぇ!!?」ガチンッ!!

香焼「っ!?」ギョッ・・・


えっ……あっ。


五和「危なっ……何事?!」ハラハラ・・・

香焼「」


エプロン姿の五和が、菜箸で僕が振り下ろした短刀を掴んだ。


五和「ど、どうしたの!? 何、えっ?! 姉ちゃん何かした!?」アタフタ・・・

香焼「」

五和「こ、コウちゃん? えっと、その……あれ? 香焼?」ジー・・・


緊張の糸が切れた。安堵と同時に堰き止めていた諸々が崩壊し―――


香焼「」ポロポロ・・・

五和「……うぇ!?」ギョッ・・・

香焼「ううぅ……ヒック……うええぇん」ポロポロ・・・

五和「ちょ、待、えええぇっ!? な、何でぇ?!」アタフタ・・・


―――一番恥ずかしい姿を見せたくない人物に、最もみっともない姿を晒す羽目になってしまった。


香焼「うわあぁーんっ。ざいあぐだああぁ」ビエーッ!!

五和「こ、コウちゃん! えぇっと、あの、と、兎に角中入って!」アワワワ・・・


それから暫く霰も無い姿を晒す事に。涙で化粧は落ち、声も上ずり、まるで子供の様。
五和は最初こそ戸惑っていたが、次第に……『昔』の様に僕をあやした。それがまた悔しくて悔しくて……涙が止まらなかった。


五和「やれやれ。とりあえず、さっきのは不問にします。どうやら色々訳アリな状態だったみたいだからね」ハァ・・・

香焼「うぅ……ご、めん……っ……なさい」ウルウル・・・

五和「あーもぅ。男の子がいつまでもメソメソしないの。そろそろ順を追って説明して貰いますよ」ポンッ


僕が冷静になるまで待って、真面目(仕事)モードで向き合う五和。


五和「まずは、私ラインしたよね。『今から行くよ』って。まさか先に着くとは思わなかったけど、メッセージ見なかったの?」ハァ・・・

香焼「……ごめん。見てなかった」グスッ・・・

五和「バイクも置いてあったでしょ。気付かなかった? 非常事態だったのかもしれないけど、だったらまず私に相談して下さい」ジトー・・・

香焼「……ごめん、なさい」シュン・・・

五和「姉さんみたいに真面目説教染みた事は言いたくないけど、一応、香焼の直属上長は私です。仮にも天草式の若衆筆頭なんですからね」メッ!


分かってる。が、気が気ではなかった。言い訳にしかならないが……申し訳無い。


五和「分かれば宜しい。それで……何があったの? 昨日の件に関係してる? それともやっぱり最愛ちゃん達と何かあったんですか?」トンッ・・・

香焼「……、」ムゥ・・・


何から話すべきか。とりあえず、正直に昨日の事を話すか。


    にゃーん・・・・・


香焼「―――そんな感じで昨日、怒っちゃったっす」ハァ・・・

五和「……、」ポカーン・・・


温かいお茶を啜りながら昨日の件を話した。
五和は普段と違って、ふざける事無く真面目に僕の話を聞いた。先の僕を見れば無理も無いだろう。


香焼「だからちょっと頭の中ゴチャゴチャしてて……すいません」ペコッ・・・

五和「あー、それは分かった。とりあえず最愛ちゃん達は関係無いんだね」ウーン・・・

香焼「うん。全部、自分一人の問題っす」ムゥ・・・

五和「そう。まぁその件に関しては私や姉さんやウラは関与しません」フム・・・


分かってる。でも、このモヤモヤを何処にぶつけて良いか分からない。


五和「でも、愚痴なら聞くしアドバイスもします。ただ、結局は貴方が如何したいかでしょう?」ジー・・・

香焼「如何って」チラッ・・・

五和「確かに、第5位さんの行為は行き過ぎね。もし姉ちゃんがその場に居たらブッ飛ばしてた」ハハハ

香焼「ブッ飛ば……まぁ、五和なら確かに」フム・・・

五和「そこは納得しないでよ。さておき、考えようによっては犬猫相手にしてると思うべきかな」コクッ

香焼「意味分かんないっすよ」キョトン・・・

五和「この件の問題点の一つは、第5位―――いえ、食蜂操祈が純粋過ぎる事」ピッ


あの操祈さんが純粋……そうは思えないのだが。


五和「ううん、彼女は純粋よ。ただし『香(コウちゃん)』に対しては、ね」ジー・・・

香焼「自分に?」キョトン・・・

五和「本音でぶつかれる相手が今まで居なかった食蜂さんが孤高の狼だったとする」コクッ

香焼「御坂さんや麦野さんには本音で当たってるらしいっすよ」ポカーン・・・

五和「彼女らも同種、孤高の存在でしょ。でも『香』は同種でも無いのに本音でぶつかれた……友人としてね」フフッ

香焼「……まぁ、うん」ポリポリ・・・

五和「馴れ初めまでは知らないけど、兎に角友達となった時点で食蜂さんの牙は抜け、人懐っこい犬猫―――『香』の愛玩動物と化した」ピッ


で、自分が飼い主と? 変な話だ。香(僕)の事をあれだけ『飼い』たがってた彼女が、僕のペット?


五和「それこそ本人が気付かない内にね。それほど信頼……いや、依存されるなんて凄いじゃない」フフッ

香焼「それがマジだとしたら正直複雑っす」ウーン・・・

五和「だから、飼い主に甘える。過度な触れ合いだって求める。子供やペットの愛情表現と同じ様に」コクッ

香焼「でも、間接キスや太もも触ったりはまた別の形だと思うんすけど」ハァ・・・

五和「じゃあ食蜂さんがビアンだー、って言いたいの? ははは……それはそれでアレだけど」キマシタワー・・・

香焼「いやいやいや。そういう訳ではないと思うんすけど。寧ろ『香(自分)』をペットとして見てるからあんな事するんじゃないかな」ムゥ・・・

五和「うーん。話聞く限り、主導権は替わってると思うよ。弄られ云々は別として、都合(リズム)を合わせるって意味でね」ジー・・・

香焼「それは、確かに」フム・・・


実際『香(僕)』が学校に行くと連絡を入れたら、絶対に『香』が居る時間は都合を空けてくれている。

別段、派閥の人間という訳でもない。ましてや利になる存在でも無い。
しかし、僕を大事にしてくれている。それはそれは嬉しい事だし、有り難い事。


五和「『純粋』という問題に関しては、コウちゃんにとっては問題無いと思うよ。あのマグヌス主教補佐相手にしてるほどだしさ」フフッ

香焼「ははは。操祈さんに比べたらステイルは単純っすよ」ポリポリ・・・


ある意味軍覇より単純な男。パッと見、堅苦しく捻くれていて天の邪鬼ではあるが、その思考は読み易い。
アイツは僕ら同年代の中で誰よりも子供なのだが……その話はまた別に。


五和「さて、と……結局、最大の問題点は」ジー・・・

香焼「何すか」フム・・・

五和「香焼自身なんだよね」ウーン・・・

香焼「意味分かんない」キョトン・・・

五和「あーいや、コウちゃんの性格とか対応云々が悪いって言ってるんじゃないの。これはねぇ……うーん」ハァ・・・


ハッキリしない物言い。何が言いたい。


五和「率直に言うと『香焼』と『香』を切り離せてない」ビシッ

香焼「へっ?」ポカーン・・・

五和「どだい無理だと思う。香焼が男の子である以上そこを割り切るのは不可能でしょ。加えて、変にプライド高いし」ジー・・・

香焼「……、」ムゥ・・・

五和「性別の壁ばっかしは如何にもならないかなぁ。しかも、これからもそれを隠し続ける訳でしょ」ムムム・・・

香焼「今一、何が言いたいのか伝わらないっす。別に今までだって上手くやって来れたじゃないっすか」ウーン・・・

五和「でも此処に来て挫折したでしょ。『香(女の子)』で居る以上、何とかしないと」ポンッ・・・


ハグやら脚を触られるのやら頬擦りやらを我慢しろと?


五和「だってそういう娘さんなんでしょう。言って直るならとっくに止めてるんじゃない」ヤレヤレ・・・

香焼「確かに……でも」タラー・・・

五和「デモだろうがストだろうが、それが事実。ぶっちゃけ接触断つしかないんだろうけど―――そこら辺は私立ち居れない領域なので」サラッ・・・


じゃあ、如何しろと。お手上げだぞ。


五和「んー。接触しないは無理なんでしょ? メールや電話だけとか、連絡のみの関係にするってのは?」チラッ・・・

香焼「それは……酷いかな」ムゥ・・・

五和「食蜂さんに対して? それとも、自分の信条?」ジー・・・


どっちも。僕には『友達』を見限る勇気なんてない。例え偽りの自分であっても。


五和「やっぱ堅ブツね。まぁ私は関与できないラインだからさておき―――となると、慣れるっていうか我慢する外無い様な」フム・・・

香焼「……我慢」タラー・・・

五和「普段からレッサーとか結標さんにベタベタされてるでしょ。あんなモンだと思ってフレンチに割り切る」ピッ!

香焼「それとこれとは違うっすよ。それに、レッサーのセクハラが度過ぎる時は普通に怒れるし」ハァ・・・

五和「だーから、そこを割り切るっ! 男の子でしょ!」メッ!

香焼「さっき『男の子である以上そこを割り切るのは不可能』って言ったの誰だよ」ヤレヤレ・・・


結局、五和のアドバイスは『慣れろ! 我慢しろ!』の根性論なのか……こりゃ相談の意味が無い気がする。

これ以上話しても無駄だが、とりあえず彼女なりに真面目に相談に乗ってくれた事には感謝しよう。
今回も多少何処か抜けていた気はするが、普段もこれくらい真摯に話を聞いてくれれば幸いなのだが……高望みか。


香焼「あ、うん。ありがと。あとは何とかする」ハハハ・・・

五和「……、」ムッ・・・

香焼「今日は居てくれてありがとね。もし帰ってする事あるならそっち専念して貰って良いっすよ」ペコッ・・・

五和「……、」ムムムッ・・・

香焼「あ、別に追い払ってる訳じゃないっすよ。ご飯も作ってくれてるみたいだし、ゆっくりしてからでも―――」

五和「……コウちゃん」ジトー・・・

香焼「―――良いっす……え?」キョトン・・・


ジト目。何か御不満な様子。


五和「何も、解決してないじゃない」ムゥ・・・

香焼「えっ。うーん……兎に角、大丈夫だよ」ハハハ・・・

五和「何で濁すの? 独りで抱え込んで、如何するつもり」ジー・・・

香焼「ど、如何って」タラー・・・

五和「どうせまた『何とかなるっす』とか運に任せて、今まで通り、おっかなびっくり行くつもりでしょ」ジジジー・・・

香焼「うっ」ダラダラ・・・


当たらずとも遠からず。


五和「ほら、言ってみて。姉ちゃん、五月蠅いとかしつこいとか言われたくらいじゃ引き下がんないんだから!」ムンッ!

香焼「ぐっ……つ、土御門とか海原さんとか、御坂蛇(プロスネーク)さんの相談・指示を仰ごうかと」タラー・・・

五和「それっていつもと何か違うの? 違わないでしょ。それに相談したところで、多分私より根性論押し付けられるだけだと思うわ」ジー・・・

香焼「で、でも」ウー・・・

五和「縦しんば、それを真に受けて……また逃げましたー、失敗しましたー、だなんて事態になったとする。そしたら、如何なる?」ジトー・・・

香焼「別に、如何も。また仕切り直しで」ポリポリ・・・

五和「甘い。甘過ぎるわよ、コウちゃん。貴方は仮にも組織の一員で、仮にもそれは任務なんでしょう。しかも、匿名の」グイッ・・・

香焼「っ」ゴクリ・・・


本気の―――天草式(中略)若衆筆頭の顔。


五和「上の立場からすれば『使えないからクビね』で終わり。つまり未練タラタラのまま、食蜂さんとサヨナラよ」ビシッ・・・

香焼「ぇ」ビクッ・・・

五和「多分『接触禁止』ね。メールのやり取りすらシャットアウト。『神埼香』の存在は抹消」トンッ・・・トンッ・・・

香焼「……、」ダラダラ・・・

五和「即ち『上条勢力(私達)』に対し『第五位(食蜂操祈)』は友好的にはならなかった……そう判断される。貴方一人の行いで」ツツツツ・・・

香焼「お、大袈裟、な……現に操祈さんは上条さんや御坂さんとも」アタフタ・・・

五和「でも現状、彼女と交渉に当たってる『代表(エージェント)』は香焼、貴方なの。どんな形であれ、貴方が『私達』の『看板』」トンッ・・・

香焼「……、」ブルッ・・・

五和「そして貴方が何より恐れているのは、そういう立場建前じゃなく―――『サヨナラ』でしょ。何も告げずに、正体も告げずに」スッ・・・


あぁ……恐ろしい程、悔しい程、図星。
『使えない』とか『要らない』とか言われるのも勿論怖いが、それよりも、意図も容易く『縁を絶たれてしまう』事の方が恐ろしい。

無言。何も言い返せなかった……畜生、また泣きそう。


もあい「なぅ」ペロペロ・・・

香焼「ん……ごめん」ナデナデ・・・

五和「強く言い過ぎたわね。ごめんなさい。でも、今のままじゃダメ」ペコッ・・・

香焼「分かってる。分かってるけど、正直お手上げで……如何すればいいのか、もぅ」シュン・・・


五和が言った通り、努力で如何こうなる問題ではない。
再び沈黙が奔った。今度はもあいさえ、ウンともスンとも鳴かなかった。


五和「っ……分かった」ボソッ・・・

香焼「……ぇ」グズッ・・・


急に立ち上がった五和。その顔は意を決したモノ。
何故か深々と深呼吸し、何故か顔を真っ赤にし、そして何故かエプロンを脱いで……僕に向き直った。


五和「こ、コウちゃん!」バッ!!

香焼「ひゃ、はいっ!」ビシッ!

もあい「にゃっ!?」ビクッ!

五和「め、メイク! してきて!」ジー・・・///

香焼「……へっ」キョトン・・・

五和「早く! 化粧してきなさい! ついでに、髪もセットし直して! 服は最愛ちゃんが選んだそのままで良い!」ジリジリ・・・///

香焼「な、なんでさ」タラー・・・

五和「いいから! 兎に角、フルで『香』の準備してきなさい! ハリーアップっ!!」ウググゥ・・・///

香焼「い、嫌だよ。さっき折角化粧落としたのに何でまた―――」

五和「さっさとしなさーーーいっ!!」バンッ!!

香焼・もあい「「―――にゃういっ!!」」ビクンッ!!


勢いに押され、言われるがまま洗面所へ―――一寸後、準備完了。


香焼「……したよ」ハァ・・・

五和「よ、よーし」フーフー・・・///


いつの間にかリビングの卓袱台前で正座してる五和。そして何かプルプル震えてる気がするのだが、気の所為だろうか。
さておき、体面に座りなさいと促され渋々言うがままに移動した僕。


香焼「何が始まるのさ」タラー・・・

五和「こ、コウちゃん……いえ、違うわね。『香』」ジー・・・コホンッ///

香焼「えっ」キョトン・・・

五和「今から貴女はコウちゃんじゃなく『香』です。だから言葉も仕草も『香』のままで居なさい」ビシッ!

香焼「はぃ? いやいやいやいや。何で―――」

五和「四の五の言わないっ!!」バンッ!!

香焼・もあい「「ふしゃっ!?」」ビクッ・・・

五和「貴女は『香』。OK?」ジー・・・

香焼「ぁ……ぅ」コクコクッ・・・


如何して、こうなった。というか何がしたいのか意図が掴めないのだけども……主に目が怖くて何も言えない。

もう如何にでもなれと『香』モードに切り替えた。


五和「ふぅ……じゅ、準備、良いかしら?」フー・・・フー・・・///

香焼「準備って、何の準備…ですか」ハァ・・・

五和「い、今から説明するから!」コホンッ・・・///

香焼「はぁ。若干声上擦ってますけど、大丈夫…ですか」ポリポリ・・・

五和「私の事は如何でも宜し! じゃあ、その……えっと、そ、そこ、座って」クイッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

もあい「みゃ?」ポカーン・・・


もあいが坐すソファを指差す。色々言いたい事はあったが、どうせゴリ押しされるので黙って従う。
ゴメンね、ともあいを持ち上げ膝に置き待機。漸くして五和は立ち上がり、何故か僕の横に座った。先とは打って変わって、大人しい不思議。


香焼「あ、あの、五和さん?」タラー・・・

五和「……、」モジモジ・・・

香焼「何でせう」ダラダラ・・・

五和「……っ!」グッ・・・ガシッ///

香焼・もあい「「んなっ!?」」ビクッ・・・


急に僕の肩を掴み、俯く五和さん。もあいが驚いてどっか行っちゃった。
それから暫く謎の状態(ポジション)が続いたが、五和が震えた声で僕に告げた。


五和「い、今から!」プルプル・・・///

香焼「は、はぃ」タラー・・・

五和「ね、姉ちゃんが……抱きつくからっ!」マッカッカー・・・///

香焼「へ……はひっ!?」ギョッ・・・

五和「あ、暴れちゃダメだからね! 逃げてもダメ!」ガタガタガタガタ・・・///

香焼「」アンダト・・・


何言ってんだこの馬鹿1号。


五和「ふぅうーっ……コウちゃんじゃなく香。香焼じゃなく……神埼香、かおる、カオルカオルカヲルカオルカオルカオル…(ry」プルプル・・・///

香焼「ちょ、オマ―――」

五和「上条さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…(ry―――失礼っ!!」ガバアァッ!!





           むにゅんっ♪                       ぽふんっ☆





香焼・五和「「―――、」」ニャーン・・・

もあい「……にゃぉ」アチャー・・・



香焼「―――ぇ、んぃきゃあああぁっ!?」ムギュウウゥッ!!


何だ! 何だコレは!? 何が起きた!!?

正面から、抱き付かれた!? 五和にっ!!?


五和「こ、コウちゃん我ま―――じゃなく『香』! 我慢なさいっ!!」カアアァ///

香焼「ちょ、待、ねぇ、止、ふぇえええぇ!?」ジタバタ・・・///

五和「あーばーれーるーなーっ!!」プルプル・・・///

香焼「な、む、馬鹿っ! 無理無理無理無理っ!! 何してんだお前はぁっ!!?」プシュー・・・///

五和(『香』は女の子『香』は女子『香』は妹ぉ……コウちゃんは小さい頃のままコウちゃんはまだ一緒に風呂入れるくらいの子ぉ!」ポオオオォ///

香焼「だからぁなぁに言ってんのぉ!!」ムキャアアァ///


暴れる僕を事もあろうか袈裟固めでホールド。何のつもりか分からんが―――胸がっ! 胸が顔にっ!!

如何足掻いても力じゃ五和に勝てない。説得しようにも本人が気が気ではない様子。何故に乱心してまで僕に抱き付くしがみ付く!?
兎に角、このままでは拙い。男として色々セットアップしてしまう! 如何にかなるまえに誰か助けを―――



    ガチャッ・・・

香焼「っ!?」バッ・・・///
  

もあい「にゃう」トコトコ・・・


香焼(くっ、もあいか! せめてステイルか軍覇、もしくは麦野さん達が来てくれたらっ)アタフタ・・・///

五和「みぃいいいぃ!」プルプル・・・///

香焼「何言ってんだコイツは、てか何したいんだ!?」アワワワ・・・///



    カシャッ・・・

香焼「ぇ……えっ」ビクッ・・・




浦上「……、」ンー・・・パシャッ・・・




香焼「」

五和「ふうふぅふー……漸く観念したわね……ね、姉ちゃんだって恥を忍んでっ―――」




    カシャッ・・・

浦上「……、」ニコッ・・・●REC...キマシタワー?





五和「―――……ぃ」ピタッ・・・

香焼「」


浦上「ぁ……はぁーいっ★」オジャマカナ??

もあい「みー」フシフシッ


香焼・五和「「」」チーン・・・ボンッ!!


神は死んだ。

 ―――さる翌日、PM07:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・



    にゃーん・・・・・



浦上「―――そりゃお姉が完璧悪いですヨ。というか大バカ」ハハハ!

香焼・五和「「ぐぬぬぅ」」プルプル・・・///


もう大変だった。あの後、頭が冷えた―――というより血の気が引いた―――五和はすぐ僕を解放し、浦上に飛び掛かった。
意味不明な事を叫び捲り、僕らの『恥ずかしい映像』を写した浦上の携帯を握り潰そうとしたので、キャットファイト勃発。
流石にその騒ぎで放心状態の僕が立ち直り、二人の間に割って入り……何とか落ち着いた所存。

そして一同冷静になり、先の反省会という名の事実確認に入って―――今に至る。


五和「だ、だってぇ」ムゥ・・・

浦上「確かに、香焼の為に必死だったってのは分かりました……がっ! 説明も無しに袈裟固め入るのはキ●ガイの所業ですわ」ヤレヤレ・・・

五和「袈裟固めじゃなくてハグだもん」モジモジ・・・

香焼「嘘吐け! 絶対絞まってたっての! 窒息するかと思ったぞ」ハァ・・・

浦上「へー。お姉のツインドライブ(おっぱい)に圧迫されて?」ボソボソ・・・ニヤリ・・・

香焼「っ~~~ッ!!」ギロッ・・・///

五和「へっ?」ポカーン・・・


思い出させるなド阿呆!


浦上「まぁ私からしてみればどっちとも捉えられましたけどネ。それはさておき……やっぱお姉が悪いですヨ」チラッ・・・

五和「な、何で」ムッ・・・

浦上「香焼の為云々は置いといて。あーだこーだ言ってたらしいけど、香焼と『香』を区別出来てないのはお姉もじゃん」ジー・・・

五和「うっ」タラー・・・

浦上「寧ろ、香焼よか意識してるし。普段猫被ってるクセに如何して香焼とか私達身内相手じゃ演技(切り替え)出来ないかなぁ」ハァ・・・

五和「ぐっ」ダラダラ・・・


全部当たりらしい。確かにあの時、完璧に僕の事を『男』として意識してやがった。
普段その気も微塵も無いクセに、なんでこんな(女装してる)時だけ変に意識するのやら。


五和「それはその、おフザケ抜きで改めて真面目に香焼に抱き付くとか考えると……色々と、うん。あと女装してたし」ウジウジ・・・///

香焼「意味不明なんすけど」ハァ・・・

浦上「『香』がそんなに可愛かった? だから興奮して……もしかしてお姉、レズっ気あるんですか?」キマシタワー???

五和「馬ぁ鹿言わないでよ! 私は上条さん一筋ですっ!!」カアアァ///


だったら初めから馬鹿な真似しないで欲しい。僕じゃなかったら勘違いしてたぞ……あ、いや、その前に窒息か。


浦上「ったく……とりあえず、香焼も香焼でお姉が暴走しそうな時は察しなよ。真面目モードでも空回りする時はしてんだから」チラッ・・・

香焼「……はい」ポリポリ・・・

五和「酷い。姉としての尊厳が」グヌヌゥ・・・

香焼・浦上((んなモン無ぇよ))ハァ・・・

もあい「なぅ」ポリポリ・・・


仕事中は別として、プライベートでは我が家のカーストランクでビリっけつだぞ。

とりあえず馬鹿一号は放っておいて、浦上は何故ウチに?


浦上「来ちゃダメだった? もしかして実はお姉と『おねショタ』展開もっと深めたかったとか……あれ? 義姉妹百合カナ?」ムムッ・・・

香焼「黙れ馬鹿二号っ! じゃなくて、もぅ」グヌヌゥ・・・///

五和「だ、駄目よコウちゃん! 私には心に決めた人がっ!! ……あ、いや、『香』だっけ? えっ?」アタフタ・・・

香焼「オマエは暫く思考停止させとけ」ジトー・・・

浦上「にゃははっ。まぁ来ても来なくてもどっちでも良かったんですヨ。でもお姉からライン着て」チラッ・・・

香焼「……何したんだオイ」ギロリ・・・

五和「いやいやいや。ただ『私今からコウちゃんとこ行くけど、ウラは如何する?』って送っただけよ」ブンブンッ


それなら止むを得まい。この二人は最早セット感覚だし。


浦上「そう括られるのは若干心外だけど、目を瞑りましょ―――それはそうと、話を戻しますネ」チラッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

浦上「そんなマヌケな顔されても困るヨ……ねぇお姉」フム・・・

五和「ふぁ」キョトン・・・

浦上「だから顔―――まぁ良いや。結局のところ、お姉は香焼(『香』)にスキンシップ慣れして貰いたかったんですよネ?」クイッ

五和「うん。あースキンシップというより、その……割と過度な、アレで」ゴニョゴニョ・・・///

浦上「要は食蜂女史のセクハラにも耐えられる様、鍛えたかったと。OK?」ジー・・・

五和「……いぇす」ムゥ・・・///


余計な世話を。真面目に思ってくれるのはありがたいが、空回るするのは勘弁してくれ。


浦上「あいよー。分かった―――じゃあ続きしようか」コクッ

香焼「ぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・にゃんと?」ピタッ・・・

浦上「だから、さっきの続き」サラッ

五和「あんだって?」ガタッ・・・

香焼「うっさい座ってろ」ベシッ!


唐突。何を言い出す。


浦上「だから特訓。といっても、それ程大した事じゃないけどネ。香焼は普通にしてて良いよ。あ、出来れば『香』モードで普通にしてて」コクッ

香焼「意味が分からない」タラー・・・

浦上「簡単な事。さっきお姉が『しようとした事』を、正しい形で実践するんです」ビシッ

香焼・五和「「……、」」ポカーン・・・


やっぱ分かんない。


浦上「ま、言葉で言っても分かんないだろうから気にしなくて良いですヨ」ニャハハッ

香焼「い、いや。もし、浦上までさっきの五和みたいな馬鹿しようとしてるなら全力断固拒否を」ダラダラ・・・

浦上「ちゃうちゃう。じゃあ予め言っとくけど今から私、ナチュラルにスキンシップ取りますから」フフッ・・・

五和「えっ……はぅわっ!?」ギョッ・・・

浦上「もち、お姉も手伝って下さいネ。まぁちょっと過度になるかもしれないけど、そこは我慢。ダイジョブ。節度は守るから」ニコッ♪


天使の様な小悪魔の笑顔。一応本人も真面目モードらしいので、僕に拒否権は無いらしい……大丈夫か、これ。

一寸後……といっても、浦上は何もしてこなかった。特に何をする訳でも無くいつもの様に、だらーんと携帯を弄ってる様子。
何か意図があるのかもしれないが、あのポーカースマイルだと考えが読めない。


浦上「―――んー?」パタポンパタポン・・・チラッ・・・

五和「あ、あの……浦上さん?」ポリポリ・・・

浦上「あいあい」パタポンパタポン・・・

香焼「先程の宣言は?」タラー・・・

浦上「んな意識した状態で出来る訳無いでしょ。良いから二人とも、いつも通り生活して下さいヨ」ゴロンッ・・・

もあい「みゃー」ゴロゴロ・・・


と言われると、余計勘繰ってしまうのだが。


浦上「んもー。リラックスリラックス」ポンポンッ・・・

香焼「っ!」ビクッ・・・

浦上「肩触ったぐらいでビビんないの。それよりお姉ー。いい加減お腹空いたんですけどネ」チラッ・・・

五和「あ、うん。そうだね。準備するよ」テトテト・・・


五和がその場を離れた。さて、僕は如何すればいい。


浦上「如何って、とりあえず携帯でも弄ったら。朝から部屋に置きっ放なんでしょ。まーた最愛ちゃんとかにグチグチ言われますヨ」ハハハッ

香焼「ぁ……忘れてた」テクテク・・・


夕方のやり取りを思い出し急いで携帯を取りに行く。予想通り何件か通知が溜っていた。
それに加え『別の携帯』の方にも……―――


香焼「……操祈さん」ジー・・・


―――『香』用の携帯の方も光っていた。今日は敢えて持ち歩かなかった。というより、手にしていたくなかった。
いざ蓋を開けてみると……着信・メール・ラインなどの通知総じて、13件。殆どが昨日の謝罪と僕の安否を気にするメール。
そして、その中に何故か御坂さんからの電話とメッセージがあった。

 『昨日は馬鹿がしでかしたみたいでゴメンね(^^; しっかり叱っておいたよ! だから、せめて無視だけはしないであげて、、、m(ー ー;)m』

難とも云えない感情が込み上げてきた。ホント、僕は馬鹿だ。


香焼「……、」テクテク・・・


一言、二人に『大丈夫です』とメッセージを送り、二つの携帯を携えて居間に戻った。
五和は僕と浦上を交互に流し見、浦上は相変わらず寝転がりながら携帯ゲームに耽っていた。


浦上「ん。おかえり」パタポンパタポン・・・

香焼「……うん」テクテク・・・スッ・・・

浦上「どったの?」チラッ・・・

香焼「……何でもない」チョコンッ・・・

浦上「そ」パタポンパタポン・・・

もあい「なぅ」トコトコ・・・

香焼「おいで」スッ・・・

もあい「みゃ」ピョンッ・・・


ソファに寄り掛る僕の膝に乗っかるもあい。その頭を撫でてやると気持ち良さそうに喉を鳴らした。
僕もいっそ、オスもメスも関係無い愛玩動物であったならどんなに楽だろうと―――自分から避けた筈の道を想起してしまった。

宙を見詰め、物思いに耽ってしまった。僕の悪い癖だ。考え出すとキリが無いくらい頭の中が理屈塗れになる。
浦上やアニェーゼは僕のそれを『屁理屈だ』と言うが、当人からしてみればどっちでも良い。

兎に角、今は操祈さんの事が心配で仕方なかった。


香焼「……んっ」スッ・・・


ふと、気付いた。


浦上「……、」パコポンパコポン・・・


いつの間にか、隣に浦上が座っていた。一瞬身構えそうになったが、それよりも早くアチラが話しかけてきた。


浦上「また考え事?」パコポンパコポン・・・

香焼「……ボチボチ、ね」カチカチ・・・

浦上「難儀な性格だネ」パコポンパコポン・・・

香焼「そうでもないよ」カチカチ・・・


別段何かする訳でも無く相変わらずゲームをしたまま、此方を見向きもせず話し掛けてくる。
だから僕も顔を見る事なく上の空で返事をした。一安心……して良いのだろうか。


浦上「根がさぁ、真面目過ぎるんですヨ。香焼だけじゃなくお姉も姉様も、『香』もネ」チラッ・・・

香焼「……普通だって」ジー・・・

浦上「抜くとこ抜かないと折れちゃうぞ。タダでさえ弱っちいクセに意固地なんだから、何処かでリラックスしなきゃ」スッ・・・ポンッ

香焼「っ……自分なりにしてるよ」ビクッ・・・コクッ・・・


割と自然に頭に手を乗せられた。このくらいなら我慢できる範囲。


浦上「うそつけ。誰でも彼でも気ぃ遣ってるっしょ。家族だろうが他人だろうが」ポンポンッ・・・

香焼「んな事無いっす。少なくともオマエら二人には微塵も遣ってないし」ムゥ・・・

浦上「ふーん……ほんと?」ボソッ・・・

香焼「何で疑うのさ」チラッ・・・

浦上「そうは見えないからネ。普段から粗暴に扱ってはいるけど、何処か『意識』しちゃってるでしょ」ジー・・・

香焼「……、」ピタッ・・・

浦上「まぁお互い思春期迎えた男女子だし仕方ないっちゃ仕方ないかな。てか、その『一線』があるから家族として暮らせてる」ナデナデ・・・


そりゃ最低限のエチケットやルールを定めなければやっていけない。本当の姉弟でもそうあるべきだろう。


浦上「でも、だから難しいんだよネ。そうある限りいつまでも遠慮し続ける。まして……家族ごっこなら尚更」ナデナデ・・・

香焼「……そういう事言うなよ」ムゥ・・・


始めはカオリ姉さん―――女教皇様(プリエステス)の為だった。
あの方に幾らかでも『日常』を提供したい。だから僕は、僕らはこの『天草家(ウチ)』を続けてきた。
始めはぎこちなかったかもしれない。でも、次第に薄れ……今は『姉弟』としてやっていけてる。


浦上「にゃはは。ぎこちなかったのは香焼だけだヨ。だけど、うん……確かに私とお姉も何処か意識してる。薄れた筈の今でもネ」ポンッ・・・

香焼「何か、怖いの?」チラッ・・・

浦上「終わる事。例えこの生活が終わっても、仲間として有り続けるけど、でもそれは今まで以上に辛いと思うな」ボー・・・


嫌が墺にも他人に戻る怖さか。それとも『当たり前の日々』に戻れなくなる恐れか―――ドチラにしろ、それは僕も嫌だ。

姉三人に対し気を遣わなくなったのは事実だ。
この家の中では、教皇も居ないし若衆筆頭も居ない。まして平教徒だとかそういうのも関係無い。

カオリ姉さん、五和、浦上……そして僕が居る。その輪にステイルや最愛達も混ざって『日常』になってる。


浦上「もしさ、例えばだけど。それが崩壊しちゃったとします。それでもネ……思い出は消えないでしょ。勿論、輪の中心は香焼」フフッ

香焼「……臭い事言うな、ばか」フンッ・・・///

浦上「んふふー。赤くなっちゃってー。その恰好でスネたって可愛いだけだぞー!」ワシャワシャ・・・

香焼「も、もぅ! 止めろよっ」ムググッ・・・///


今更、再確認させられた。この家は皆の『居場所』だ。僕自身そうしたいから、扉を開放している。


浦上「ふふっ……だから、感謝してるヨ。私もお姉も姉様も、他の皆もネ」スッ・・・

香焼「だから、一々言うなよ。恥ずかしいヤツ」ムゥ・・・///

浦上「でもネ。我儘かもしれないけど―――やっぱり私やお姉、姉様はその中でも特別で居たいんだ。何でか分かる?」ピトッ・・・

香焼「……家族として?」ジー・・・

浦上「うん」ニコッ・・・


僕の頬を自然に触るその手の指先は少々冷たく、微かに震えている気がした。


浦上「だから他人以上に愚痴を溢して欲しいし頼って貰いたい。例え公に漏らせない事であっても、私達は絶対に秘密にするんだから」ツツツ・・・

香焼「ははは、五和にも同じ事言われたなぁ……でもそれは勇気が要るよ」ン・・・

浦上「その勇気を私達に向けてヨ。無駄にはしない。現にその為の力はあるつもり」ポンッ・・・

香焼「僕が『救われない者』と?」ハハハ・・・

浦上「うーん。そういうつもりで言ったんじゃないけど……でも考え様によっちゃそうなのかもね」トンッ・・・


僕らの教義も捉え様が難しいモノだな。


浦上「ちょっと話を戻すけどヨ。『香』の話ネ―――私は『香』って、昔の香焼でいれば良いんじゃないかと思うな」スッ・・・

香焼「え?」キョトン・・・

浦上「男女の違いはあるにしても、子供の頃の、生意気でやんちゃだった頃の香焼。私やお姉の後追っかけて回ってた頃の」フフッ

香焼「い、意味分かんない」ポリポリ・・・

浦上「そう? 分かり易い事だと思うけど」ツンッ

香焼「……、」ウーン・・・


『昔』の自分と言われても、4,5年も前の事なんて覚えてない。


浦上「たかだか数年前でしょ。何処行くにも私達の後追いてきたし、人形遊びとかも抵抗無くしてた。お風呂だって一緒に入ってた」ニャハハッ

香焼「だ、だからそんな昔の事っ」ムゥ・・・///

浦上「よくスカート捲りもされたし、抱っこしてあやしたりもしたなぁ……その頃の『若さ』なら『香』も上手くいくんじゃない?」ポンポンッ・・・

香焼「それは、でも、流石に」ウーン・・・

浦上「まぁ抵抗あるのは分かるヨ。だけどそういう『子供の気持ち』のままなら、今の香焼(自分)を誤魔化せると思う」ジー・・・

香焼「自分を、誤魔化す……気持ちの切り替えスイッチって事?」フム・・・

浦上「元々化粧とか髪型で香焼と『香』を切り替えてたんでしょ。でも、やっぱり心までは切り替えられてなかった」ツンツンッ


確かに言われてみると所詮は演技した香焼=『香』だった。というか正直、女装という時点で結構嫌々やってた。
しかし、やっぱりそれではダメなのだろう。やるからには徹底的(スペシャリスト)にやらなきゃ。彼女はそう言ってるのかもしれない。

とはいえ、いざ心のスイッチを切り替えろ、と言われても実際如何したものか。
どんな姿が理想かは想像出来るが、それに為り切るのは容易ではない。


香焼「うーん」ムムム・・・

浦上「ふふっ。悩んでるネ……香焼、ちょっと後ろ失礼」スッ・・・

香焼「え? 後ろ?」キョトン・・・

浦上「よいしょっ」グイグイッ・・・グデェ・・・

香焼「ふぇっ!?」ドキッ!!


自然な流れで―――何を思ったか、いきなり僕の背中とソファの背凭れに割り込んだ浦上。
そのまま両脚の間で僕を人形の様に挟み、両肩に腕を回して抱え込んできた。

お尻が太ももに、背中が胸に当たって……何だコレ!?


香焼「う、浦上!?」ギョッ・・・///

浦上「まぁまぁ。これ以上の大胆な事しないから安心して。第五位さんもこのくらいはするんでしょ?」ニヤニヤ・・・

香焼「す、するけどさぁ」ドキドキ・・・///

浦上「ふふっ。緊張する?」ギュッ・・・

香焼「聞くな馬鹿っ」ムググッ・・・///

浦上「にゃはは。ま、私もちょいっと恥ずかしいヨ。でも今は香焼じゃなく『香』だと思う様にするからネ」ポリポリ・・・


様は先程五和がやった凶行の強行じゃないバージョンか。


浦上「あんまりコッチ意識しないで。私の事よりさっきの話に戻るヨ」ナデナデ・・・

香焼「う、うん」ドキドキ・・・///


傍から見たら禁書目録がよくカオリ姉さんの膝に座る、その様に似ているだろう。
ぶっちゃけ逃げ出したくてしょうがないのだが……先の話もある。
それに僕が変に意識しては折角自然な流れでスキンシップを取ってくれた浦上に対して申し訳が無い。


浦上「ふふっ。お人形さんみたい。あ、ちゃんと口調も『香』の口調にして下さいネ」ポンポンッ・・・

香焼「わ、分かった」ゴクッ・・・///

浦上「堅い堅い。さて、確かに容姿と違って、気持ちを別モノにするのは簡単じゃないですネ。まるで二重人格みたいな」ハハハ・・・

香焼「そう、だね。もしくは憑依みたいに何かが入ってくれば変われるのかな。でも、それじゃあ自我を保てないっすよ―――」ポリポリ・・・///

浦上「口調」ツンッ・・・

香焼「―――で、ですよ」ウッ・・・///

浦上「宜しい。だけどさ、もしそういうのが可能なら読心能力(サイコメトリング)さえも欺けそうだネ」フムフム・・・


それは嬉しい話だ。もしそうなったら蛇さんからの電流サポートが無くて済む。


浦上「いや、第五位さんは読心以外にも洗脳とかテレパシーとかも出来るんでしょ」ジー・・・

香焼「そっか。それだけ防いでもダメ・・・ですね」アハハ・・・

浦上「ふふっ。それに超能力者(レベル5)なら深層心理まで見抜けそうだから、所詮偽りの心とかも見破られそうだヨ」トントンッ・・・

香焼「だね。となると、如何しよう」ウーン・・・

浦上「さっきの話だと、香焼のまま我慢するのはもう無理なんでしょ。じゃあやっぱ切り替えネ」ギュッ・・・

香焼「っ……難しい、ね」ゴクッ・・・///


五和同様、浦上も真面目に相談に乗ってくれている―――のだが、今一集中出来ない。主に、背中に当たるモノの所為で。


    ―――一寸後、五和side・・・・・


さて、夕飯の支度は終わった。二人の方はどんな様子に……って。


浦上「―――ふふっ。だから、相槌打ってるだけでも満足して貰えるってばー」ムギュー・・・

香焼「―――えー? そんな単純じゃないよー。それこそ『姉ちゃん』じゃん」アハハッ

浦上「あー。そういう事言っちゃうかぁ。お姉無くヨ?」ワシャワシャッ

香焼「泣かないよー。『姉ちゃん』よりカオリ姉さんの方が泣いちゃうんじゃない?」キャッキャッ

浦上「ははっ。確かに」イチャイチャ


な、何だ、アレ。


五和「う、ウラ? コウちゃん?」タラー・・・

浦上「でもやっぱ、お姉は―――んー。はいはい?」ピタッ・・・

香焼「えっ。あ、もう準備出来たの?」チラッ・・・

五和「うぇ、な、お、おぅ」タラー・・・

浦上「んふふっ……じゃあ先に食べちゃおうっか。『香』、準備手伝おー」クスクス・・・

香焼「はーい」フフッ


愕然。アレ、誰だ。


香焼「僕がお皿並べるね。『姉ちゃん』はソッチ座ってて良いよ」ヒョコッ・・・テトテト・・・

五和「……、」ポカーン・・・

香焼「……『姉ちゃん』?」ジー・・・

五和「んひぇ!? わ、私?!」ビクッ・・・

香焼「はぃ? 変な『姉ちゃん』」テクテク・・・


『姉ちゃん』って、私の事か。


浦上「ふふ、ふふふふふっ……さぁてと。私も手伝おうかなー」スッ・・・

五和「ちょ、ちょい待てっ!! ウラっ! 待ちなさい!!」バッ!!

浦上「……うぃ?」ニコニコッ

五和「ウラ……アンタ、何した?」ダラダラ・・・

浦上「特に何もー」ニャハハッ


嘘を吐け。アレは完璧に香焼じゃないぞ。


五和「……コウちゃん」チラッ・・・

香焼「ふんふふっ、ふんふふっ、ふんふーふーんっ♪」カチャカチャ・・・

五和「香焼」ジー・・・

香焼「あれ? マグカップは……あ、食器洗い機の中入れっ放しだった」スッ・・・

五和「こ、香や―――」

浦上「お姉」スッ・・・トンッ・・・


何だ。何事だ。何が起きてる。何をした?

今更だが、あの子は基本的に私の事を『五和』と呼び捨てにする。あと一人称は『自分』だ。
それが今、私の事を『姉ちゃん』と呼び自分の事を『僕』と言っていた。そうまるで……―――


浦上「昔みたいに?」フフフ・・・

五和「―――……、」タラー・・・


まるで実家に居た頃の、まだ私が平で、香焼が教徒になる以前の様。


浦上「にゃははっ。お姉ー。今は『香』って呼んであげないと反応しませんヨ」ニコッ・・・

五和「なっ……こ、香焼!」タラー・・・

香焼「ふんふふー、ふんふふ~っと♪」カチャカチャ・・・

五和「っ……かお、る」ジー・・・

香焼「んー? どうしたの? 今食器持ってくよ」テクテク・・・

五和「」チーン・・・


如何して、こうなった。


五和「……うっ」プルプル・・・

香焼・浦上「「ん?」」キョトン・・・

五和「うらあああああああああああああぁ!!」ガシッ!!

香焼・浦上「「ぉわっ!?」」ビクッ・・・

五和「アンタ何しでかしたのおおおぉ!!」ガクガクガクガク・・・

浦上「うぉあばばばばばばばばばっばばばばばばばばっばぁっ!!?」ウヒャアアァ!

五和「コウちゃんに何したあぁ!! 吐けー!! 吐きなさいこんにゃろーぉっ!!」ガクガクガクガク・・・

浦上「いいい言うううぅ! い言いううぁからあああんあああぁ!! やめや止めやめめめれえええぇ!!!」アbbbb・・・

香焼「ね、『姉ちゃん』! 何してるの!? 止めて!!」アタフタ・・・


私が暴走して『空回り』してしまう事に関しては自覚している。
しかし浦上も大概で、この子の場合は暴走で『悪ノリ』してしまうのだ。多分、その結果が今の香焼の有り様。


香焼「っ……止めてって言ってるでしょ!」ギュッ・・・

五和「んぎぎぎっ……ふぇっ……ふぇあっ!?」ビクッ・・・バッ///

浦上「むきゅ~」クテクテェ・・・

五和「こ、こここっこ、こ、コウちゃんっ!?」ギギギギ・・・///

香焼「落ち着いて! 理由は分かんないけど、喧嘩しないでっ」ギュウウゥ・・・

五和「」ホワァアアァ・・・

もあい「にゃっ?」ジトー・・・


こ、コウちゃんが! 私に!! 抱き付いた!?


五和「んぅうぃひゃああああぁあああぁああっああぁ!!?」ナンデズェ///

香焼「ね、姉ちゃん?」ジー・・・ビクッ

五和「んにゃああああぁあああぁっああぁっあああぁ!!?」アbbbb・・・///

浦上「痛ちぃ……んもぅ。お姉ぇ動揺し過ぎですヨー」ヤレヤレ・・・


するなという方が無理なのだ。いい加減状況を説明しろ、狐娘。

とりあえず落ち着こうという訳で、夕飯を食べながらの説明。


浦上「―――つまりですネ。刷り込みですヨ」モグモグ・・・

五和「刷り込み?」キョトン・・・

香焼・もあい「「???」」モグモグ・・・


そんな単純な話なのか。


浦上「今の香焼は完全に昔の香焼です。ただヤンチャ成分やらそういうのは無いですヨ。そういうのを差っ引いて」チラッ・・・

五和「……自分が『香』だと、洗脳したのね」ハァ・・・

浦上「洗脳じゃないですってー。刷り込みダヨー」ニャハハ・・・

五和「怪しい。怪し過ぎる」ジトー・・・

浦上「ホントほんと。魔術やら超能力で洗脳してる訳じゃないんですってば。現に魔力反応無いっしょ」クイッ


確かに別段特殊な魔力反応は無い。


五和「でも、どうやって」ウーン・・・

浦上「どうって、色々とお話を……うん」フイッ・・・

五和「おい何故目を逸らす」ジトー・・・

浦上「ま、まぁほら。催眠術的な」ポリポリ・・・

五和「はぁ……因みに、解けるのよね?」チラッ・・・

香焼「さっきから何の話をしてるのかな?」モグモグ・・・

もあい「なぅ?」モグモグ・・・

浦上「解こうと思えば……多分」ボソッ・・・

五和「おい多分って何だ。多分って」ギロリ・・・


ずっとこのままだとコッチまで調子が狂う。


浦上「あははは。ダイジョブだいじょぶ。とりま、今の香焼はさっきまでの悩みを完っ璧に克服してるよ」ニコッ

五和「えっ」ピタッ・・・

浦上「現にさっきサラッとお姉に抱き付いたっしょ。ある程度のスキンシップは抵抗無いだけじゃなく、自分からでも触ってけるヨ」クイッ

五和「な、なんと」タラー・・・


まるで信じられない。いつもならナイフが飛んでくるのに。


浦上「マジまじ。だって、ほら―――」スッ・・・ムギュッ・・・

香焼「んんっ。ちょっと浦上ー。食べ辛いよー」モグモグ・・・

五和「っ!?」ギョッ・・・

浦上「―――んへへっ。御覧の通りー」グイグイッ・・・

香焼「だーかーらー、食べ辛いー」ンモー・・・

五和「」

浦上「じゃあ私が食べさせてあげよっか?」ニヤリ・・・

香焼「ちょ、もぅ。恥ずかしいよぅ……赤ちゃんじゃないんだからっ」イチャイチャ・・・


自然の後ろから抱き付いてやがる。しかもそれを拒んで無い。それに、何だこの感じ……凄ーく甘ったるい。

不安な気持ちのまま夕飯終了。


香焼「ふぅ。ごちそうさま。やっぱ姉ちゃんの料理は美味しいね」クテェ・・・

五和「……おそまつさま。(いつもの半分しか食べてない)」アハハ・・・

香焼「さぁてと。僕が片付けるから座ってて。浦上はもあいの相手よろしく」ヨイショッ・・・

浦上「んふふっ。はいはい」ニヤニヤ・・・

もあい「みー」トコトコ・・・


今の香焼の精神はガチで女の子。俄かには信じられないが、先の光景を見る限り疑いようも無い。
もし男子のままならタダのスケベ野郎という事になるが、あの子に限ってそれは無かろう。


浦上「あららん? 不安なお顔」チラッ・・・

五和「……、」ウーン・・・

浦上「『香』が嫌なの?」フム・・・

五和「そういう問題じゃないわ。何というか……アレってコウちゃんが望んだ結果じゃなくない?」ジー・・・

浦上「えー。アレが理想っしょ」クイッ・・・


私にはそうとは思えない。


五和「第一、今のコウちゃん―――というか『香』って、普段の香焼から為れるものなの?」ビシッ

浦上「なれる? あぁ、スイッチ入れられるか如何かって事ネ。そりゃ無理です。私がトランスさせましたから」キッパリ・・・

五和「ダメじゃん。というかウラ、アンタさっき『刷り込み』とか言ってたけど具体的には何しでかしたの」ハァ・・・

浦上「そりゃ企業秘密というか禁則事項ですヨ―――」フッ・・・

五和「吐け」チャキッ・・・

浦上「―――じょ、徐々に懐柔して精神的に優しくなったとこで落としましたぁ!!」ダラダラ・・・


何だそれは。私は具体的にと言ったのだが如何も抽象的だぞ。


浦上「ホントにそれくらいしかしてないヨ。確かに通信講座で勉強した『ひよこでも出来る催眠術!(中ボス編)』を試しはしたけど」ウーン・・・

五和「何その胡散臭いの。そんなアヤフヤなモノをコウちゃんに試したの?」ゴゴゴゴ・・・

浦上「ま、待って! うぇいと! でも、そんなのは所詮まやかしっしょ。何と言いますか、その……現実逃避の末なんじゃないかなって」タラー・・・

五和「現実、逃避?」ポカーン・・・

浦上「うん、逃げた。もう『香焼』じゃ解決出来る問題じゃないって思ったんじゃないのかな。だから心閉ざした的な」ニャハハッ

五和「そ、それって……無理矢理二重人格形成したって事にならない!?」ギョッ・・・

浦上「如何でしょうネ。それこそ第5位さんの専門分野ですから私には難とも」アハハ・・・


殺人ウィルス作るだけ作って治療薬作らないマッドドクターみたいな思考だな、この女郎。
しかし拙いな。このままってのは正直気味が悪いし、もし香焼に戻らなかったりしたら諸方面からバッシングくらう。主に建宮さんから。
それとは別に、姉さんに今の香焼の姿を見られたら……とってもヤバい気がする。


浦上「考え過ぎですヨ。あ、ほら片付け終わったみたいです」チラッ・・・

香焼「―――余ったのは明日の朝で……よし。一服しようか」トコトコ・・・

浦上「あ、私炭酸でー」ゴロン・・・

香焼「はいはい。姉ちゃんはお茶だよね……さて、次はお風呂っと。二人とも泊まっていくよね?」ニコッ

五和「は、はい」タラー・・・


正直、今のアナタを放って家に帰ったり出来ません。

とりあえず今の状況整理。
①香焼の悩みはある意味解決。  ②しかし、それ以上に何かを失った。  ③彼を元に戻そう。  ④戻した上で、悩みは如何なるか。


五和「こんなとこね。現状、③と④に移行中と」ウーン・・・

浦上「えー。戻すのー? 勿体無ーい」ブーブー・・・

五和「お黙る! もし④で①の問題が解決してなかったら元も子も無いのよ」ハァ・・・

香焼「???」キョトン・・・


悪ノリが過ぎる。それに、相変わらず当の本人が何の問題か気付いてもいない。


五和「ったく……ねぇ。『香』。一応、確認させてね。貴女、食蜂操祈さんの事覚えてる?」チラッ・・・

香焼「え? 操祈さん…ですか。僕の学校の先輩でしょ。何でそんな事聞くの?」ポカーン・・・

五和「覚えてるっちゃ覚えてるのね。その人ってどんな人?」ジー・・・

香焼「どんなって、優しい先輩だよ。僕の事可愛がってくれるし……派閥に入ってない僕も友達として受け入れてくれてる」ニコッ


此処で疑問点。


五和「ウラ……アンタ、記憶改竄までしたでしょ」ジトー・・・

浦上「さ、さぁ」タラー・・・

五和「だからコッチを見ろ。色々と違う部分があるんだけど」ビシッ

浦上「私は弄ってないヨ。香焼が現実逃避の末、自分の中で都合良い様解釈したんじゃないかな」ハハハ・・・

五和「チッ……じゃあ、香。天草式十字凄教って言われて何か分かる?」ジー・・・

香焼「え? それって私達の教派でしょ」コクッ・・・

五和「私の役職は? あとカオリ姉さんの役職と建宮さんの役職」フム・・・

香焼「役職? 何それ? 建宮さんが神父さんとか言い出すの?」ハハハ

五和「ん? えっと……んっ?」チラッ・・・

浦上「あ、あはは」ダラダラ・・・


おい、こら。


五和「私達は戦闘教徒。それは覚えてる?」ジー・・・

香焼「先頭教徒? この街に率先して布教しに来たって事? 初耳だけど」キョトン・・・

浦上「Oh」タラー・・・

五和「待て待て待て待てぃっ! これ拙いわよ!」アタフタ・・・


今この場から『香焼』が消えた。


五和「ウラあああぁ!! アンタ、如何してくれるのおおぉ! 責任取りなさいよおおぉ!!」ダラダラ・・・

浦上「も、もちつきなさい、お姉。こういう時は素数を数えるの……1、4、9、16、25...」フゥ・・・

五和「一番パニクってんのアンタでしょ! あーもぅ……マジで如何しよう」アbbb・・・

浦上「い、色々試しましょう。とりあえず『スイッチON』の方法は分かったから後は『OFF』の方法を……って考えればポジティブです」b"

五和「こんにゃろぅ。もし戻んなくても姉さんに言い付けるからな」ギリギリ・・・

浦上「勘弁して下さいっ―――さて、じゃあ香」チラッ・・・

香焼「はい」キョトン・・・


何やら香焼に耳打ちを始める浦上。この期に及んで一体何吹き込む気だ。

一寸後、話し終えたかと思うと香焼はチラリと私の方を見て何故か頬を染めた。マジであの女郎、何言いやがった。


香焼「あの……姉ちゃん」モジモジ・・・///

五和「な、何かな」タラー・・・

香焼「……、」ウーン・・・///

浦上「ふふふっ。ほら、香。言ってあげなよ……ぷふっw」ニヤニヤ・・・

五和「てめっ……ど、如何したの? もし変な事吹き込まれたんなら忘れなきゃ駄目だよ。ウラは嘘しか言わないから」ジトー・・・

香焼「う、ううん……ね、姉ちゃん! あの!」グッ・・・///

五和「っ!?」ギョッ・・・


私の服の裾を掴み上目遣いで何かを訴えようとするコウちゃん……かわい……ハッ!


香焼「きょ、今日は僕! 一緒に寝てあげるからねっ!」ギュッ・・・///

五和「……えっ」ピタッ・・・

香焼「大丈夫。寂しくないよ。三人で一緒に寝ようね」グイッ・・・///

浦上「ブッwwwwハァwwwwww」プルプル・・・

五和「」

香焼「……あれ? 姉ちゃん?」キョトン・・・


なぁに、これぇ。


五和「ちょっ、待っ、あびゃあ!?」ボンッ・・・

香焼「え、あの、ええっと……浦上?」チラッ・・・

浦上「ウィヒヒッwwwあーヤバい……きっと久々香に甘えられたから嬉しいんだヨ」クスクス・・・

香焼「そうなの、かな。えへへ」ニコニコッ

五和「ぐっ……ウラああああぁ!! アンタ、今度は何をぉ!?」ギロリ・・・

浦上「いやぁ本人から聞いたら?」フフフ・・・


香焼の方を見ると、難とも言えない憐みの目を私に向けていた。


香焼「姉ちゃん、『好きな人(上条さん)』をカオリ姉さんに譲ったんでしょ。だから、その……寂しいだろうなって」ギュッ・・・

五和「」チーン・・・

浦上「アヒャヒャヒャヒャwwwwwやば、ヤバい! 腹筋がってグヘェッ!!」メキョッ・・・

香焼「浦上!?」ギョッ・・・


悪は滅びた。


五和「ふぅ……あのね、香。私は別に譲った訳じゃないのよ。ただ今日は順番的に姉さんの日なの。OK?」ギリギリ・・・

香焼「わ、分かった」タラー・・・

五和「まったく。まぁ気遣ってくれたのはありがと。でも変に憐れまれると逆に虚しくなっちゃうよ」ヤレヤレ・・・

香焼「でも、やっぱり意地張ってるでしょ。見れば分かるよ……姉ちゃん優しいもん」ギュッ・・・

五和「かはっ」プルプル・・・

浦上「へ、へへへ……この爆発力。ざまぁ見ろ」チーン・・・


何このカワイイ生き物。これは危ない……普段の捻くれたガキんちょコウちゃんから一転、純粋無垢な香ちゃん。マジ天使。

って、馬鹿な考えはおしまい。


五和「―――そろそろ真面目に元に戻さないと」ハァ・・・

浦上「えー。面白いのに……あと可愛いし」ボソッ・・・

五和「いい加減自重なさい。えっと、あのね香」チラッ・・・

香焼「はい?」キョトン・・・


何と伝えるべきか。


五和「いえ……香焼」ジー・・・

香焼「???」ポカーン・・・

五和「いいかしら。貴方は『香』じゃない。香焼なのよ」ポンポンッ・・・

香焼「言ってる意味が良く分からない…ですが。誰です? その香焼って」キョトン・・・

五和「だから貴方が『香焼』なの。私達の義弟で、後輩で、部下の香焼。コウちゃん」スッ・・・

香焼「えぇっと……はぁ」ポリポリ・・・


先とは別の意味で憐みの目を向ける香焼。いや、別に頭おかしくなった訳じゃないからね。寧ろおかしいの貴方だから。


五和「辛い事があって逃げ出したいのは分かる。人間誰しも嫌な事の一つや二つはあるわ」コクッ・・・

香焼「まぁ、はい」フムフム・・・

五和「でもね。だからって、自分の心を他人に変えてまで逃げちゃダメよ。貴方はあくまで『香焼』でしょ」ジー・・・

香焼「僕がこうやぎ?」ハテ・・・

五和「戻りなさい。現実と戦わなきゃ……どんな事があっても諦めないのが貴方の美徳でしょ」トンッ・・・

香焼「……、」ウーン・・・

五和「今のままでいたら、今まで築き上げてきたモノ―――それこそ友人達まで捨てる事になるわよ」フルフル・・・

香焼「……えっ」ピタッ・・・

五和「最愛ちゃんやマグヌス神父に削板くん。アニェーゼやアンジェレネ、サーシャ、レッサー。佐天さんや結標さんに黒夜さん」ジー・・・

香焼「えっ……あ、ぅ」ジー・・・

浦上「おっ。揺らいだ」フムフム・・・

五和「それに、私達だって悲しいわ……勿論『香』が嫌いって訳じゃないけど、それでも貴方は『香焼』なの」ナデナデ・・・


逃げてたって始まらない。今のままじゃ何も解決しない。


五和「食蜂さんだって、今の『香』じゃきっと怪しむ。だっていつもの『香』じゃないもの。『香』は『香焼』有り気の『香』だもの」コクッ・・・

香焼「僕、は」ボー・・・

浦上「もう一押しですヨ!」オオォ・・・

五和「だから、戻って。いつものコウちゃんに。口が悪くたって無愛想だって良い。私達の義弟に戻ってち―――」

香焼「っ!」バッ・・・ガシッ・・・

五和「―――ょおぅ!?」ギョッ・・・

浦上「な、ナニいぃー――――z____ッ!!」バーンッ・・・

香焼「……ヤだ」ギュウウゥ・・・

五和「あ、あわわわわわぁ」ガクガクガクガク・・・///


なん……だと……抱き付かれた!?

拙い。突然の事態過ぎて頭と身体が回らない。


五和「こ、こここ、コウちゃん!?」アbbbb・・・///

香焼「……、」ギュウウゥ・・・

五和「ど、どど、如何した、の」アタフタ・・・///

香焼「嫌…です」ムギュッ・・・ウルウルッ・・・

五和「ぐふぅ」カハッ・・・

浦上「うひょーっ!」キラキラ・・・


殺人的な涙目。


五和「な、何が嫌なの? そんなに、元に戻りたくないの?」ガクガクガクガク・・・

香焼「その『香焼』って人がどんな人なのか分からないけど、もしそれが僕なのだとしても……僕は『香』です」ムギュッ・・・

五和「え、あ、その」ダラダラ・・・

香焼「僕は『姉ちゃん』の妹。そうでしょう……なのに別人だなんて言われても、怖いだけ…です」ウルウル・・・

五和「コウ、ちゃん」ピタッ・・・

香焼「姉ちゃん。僕は『香』…です」ジー・・・

浦上「あらら……うーん」ポリポリ・・・


そこまで『香』の人格を形成させてしまったか。此処まで固定させた以上は『香』は一人の人間となってしまう。
戻さない訳にはいかないのだが、これはこれで罪悪感が半端無い。


浦上「いっその事、お湯ぶっ掛けてみます?」ハハハ・・・

五和「何処の漫画よ」ハァ・・・

浦上「いや、強ちお風呂に入れば戻る気もしますヨ。結構マジで」チラッ・・・

五和「ったく……分かった。『香』」ポンッ・・・

香焼「……ん」ギュウウゥ・・・チラッ・・・

五和「大丈夫。これがお別れって訳じゃないの。きっとまたすぐ会えるわ……だから今はコウちゃんを『返して』頂戴」ナデナデ・・・

香焼「返、す?」キョトン・・・

五和「そう。お願い」ジー・・・


目線を合わせ潤んだ瞳を見詰める。今にも毀れ落ちそうな涙が目尻に溜まっている……あぁもぅ可愛い。
じゃなくて―――目を逸らさず真剣に訴える。『香』は一寸、視線を落とし、そして呟いた。


香焼「……抱っこ」ボソッ・・・

五和・浦上「「ふぇっ」」ピタッ・・・

香焼「ギュって。抱っこして」ウルウル・・・

五和「はぅわっ!!」ズキュンッ・・・///

浦上「これはっ。これでっ」ズッキュン・・・///


破壊力抜群。


浦上「お姉……私が抱っこしていい?」バッ・・・

五和「黙ってろ。私がする」キリッ・・・


据え膳食わn…ゲフンゲフンッ…『香』の望みだ。叶えてあげよう。

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

プライベートが多忙故、色々遅れました...引っ越しとか転職とか……

今年もボチボチ宜しくお願いします!

涙目の香焼……いや『香』と向き合う。心成しか可愛らしいを通り越して愛おしく感じる程。
正直ドギマギが止まらないが、此処で一肌脱がねば姉としての面子が潰れる。


香焼「んっ」ジー・・・

五和「ふぅ……か、香……お、おぉ、お、おいで」ドキドキドキドキ・・・

香焼「……うん」スッ・・・

浦上「おぉ!」ワッフルワッフルッ!

もあい「にゃ?」ジー・・・


ゆっくりと、私に抱き付いて来る『香』。筋肉質の細っこい男の子の身体だが今は香焼ではなく『香』。


香焼「……姉ちゃん」ムギュッ・・・

五和「(ひやゃああああぁあわわわわわわぁあっ!!? コウちゃんがああぁ!! コウちゃんが私の腕の中にいいいぃ!!)……っ」ゴクッ・・・

浦上「むひょーっ!!」●REC...

五和(無心になれ私! 彼は女、コウちゃんは女! 『香』は女、香焼は『香』! 男は女! 彼女は香焼! 香焼は女子いいぃ!!)ドキドキ・・・

香焼「姉ちゃん……ギュッてして」ウルウル・・・

五和「」チーン・・・

浦上「ぶっはっ!!」キマシタワー・・・


これはヤバい……が、いつまでもこうしてる訳にはいかない。


五和「ふううぅ……覚悟完了ッ!!」キリッ・・・

香焼「えっ」ウルウル・・・

五和「こ、ここ、コウちゃ……『香』ううううぅッ!!」ハァハァハァッ!!

香焼「うわっ」ビクッ・・・



   ガチャっ・・・・・



五和「可愛いよおおおぉんもおおぅ!! ハァハァ! クンカクンカっ!!」グヘヘヘェ・・・

香焼「ね、姉ちゃん。苦しいよ」エヘヘ・・・

浦上「あ、またお姉の理性が吹っ飛んだ……ってありゃ」チラッ・・・



  ギイイイィ・・・・・



五和「んあああぁいいいぃ!! 普段からこんくらい可愛ければ最高なのにみゃああぁあああぅあああううぉおおぉ―――」

浦上「ちょっ……お姉。ストップした方が」タラー・・・アワワ・・・




神裂「ただぃ……まっ!?」ビタッ・・・




五和「――――ひぃやゃっはあああぁっ!! 『香』ううぅあカオルううぅかお、る……か、お…か……カオ、リ…姉さんんんんんんんんぎゃあああああぁっ?!」アビャビャビャビャビャアァーッ!!

香焼・浦上「「……、」」タラー・・・


天丼!? いやいやいや、じゃなくてっ! これはそのくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」......


  ―――神裂side・・・



    にゃーん・・・・・



本来、彼の家に泊まろうと思っていたのだが妹分から何やら深刻な連絡が入っていたので急遽香焼宅へ戻った。
彼の厚意――あくまで『彼の』厚意であって私の好意にあらず!――と、禁書目録(あの子)の残念そうな表情に尾を引かれつつも、
家族の緊急事態を黙って見過ごすわけにもいかないので、止むを得ず帰宅。

したのだが―――


五和「ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」アbbbbb・・・...

香焼「うわぁっ! ね、『姉ちゃん』……苦しいっ」ムギュギュゥ・・・

浦上「……あはは」タラー・・・


なぁにこれぇ。


神裂(じょ、状況が呑み込めない)ゴクリ・・・


暴走狂乱状態で香焼に抱き付いてる五和。やけに女々しく見える香焼。いつもの様に全部知ってるけど面白がって何も言わない浦上。
まずこういう時は落ち着いて浦上に話を聞くべきか。そう考えた矢先、香焼が私を見た。


香焼「か、カオリ姉さん助けてっ。『姉ちゃん』が壊れちゃったよ」アタフタ・・・

神裂「え、あ、は、はい……えっ」タラー・・・


はたして『姉ちゃん』とは、誰の事?


浦上「あのぉ姉様。これにはちょいと深い事情がありましてー」ニャハハ・・・

神裂「待ちなさい。うぇいと、リアルにうぇいと……まずは五和を引き剥がしましょう」オドオド・・・

五和「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!」ガクガクガクガク・・・

香焼「『姉ちゃん』苦しいよぅ! おっぱいで息ができないっ」アップアップ・・・

神裂「!?!」ピタッ・・・


違和感の正体に今気付いた。香焼はこんな事言わない。
普段なら『ざけんな馬鹿一号! その無駄な脂肪の塊退けろよ!』とか叫ぶ筈。


神裂「あの、香焼」ジー・・・

香焼「姉さんまで『その人』の事言うの!? あーもぅ兎に角早く助けてっ」ウルウル・・・

神裂「んぇっ?!」アタフタ・・・


ダメだ頭追い付かない。この子が何言ってるか理解出来ない。


浦上「やれやれ。とりあえずお姉を倒さないと……お姉ー。大丈夫、姉様まだ勘違いして無いから」オーイ・・・

五和「うぎぎぎぎぎぎぎぃ…―――…うぇっ」ピタッ…

香焼「あ、ぅ」キュウウゥ・・・

神裂「……、」キョロキョロ・・・

もあい「なぅ」ハァ・・・


漸く止まった五和。ぐったりする香焼を胸に抱え、冷静に私を見遣った。
暫く沈黙が続いたが……『てへっ♪』とか腹立つ笑顔を向けてきやがったので、とりあえず一発叩いておいた。

何だかんだで一番冷静な浦上が説明。


浦上「―――……てな流れですヨ」カクカクシカジカ・・・

神裂「俄かには信じ難いです。が、しかし」チラッ・・・

香焼「???」キョトン・・・


香焼の今の有り様を見る限り、嘘ではないのでだろう。


神裂「何つー真似を」ハァ・・・

五和「痛つぅ……ですよねー」チラッ・・・

浦上「うっ……わ、私は私なりに解決しようとした訳でして」ニャハハ・・・


有難迷惑極まりない。プラマイ0というより、明らかにマイナス方向へブチ抜けてる気がする。


神裂「それで、五和は解決しようと香や……『香』に抱き付いていたと。これも意味分かりませんが」ジトー・・・

五和「そ、それはその『香』を落ち着かせようと思ってというか香のお願いというか何というか」アハハ・・・

浦上「途中で理性ぶっ飛んでましたよネ」ジトー・・・

五和「五月蠅っ!」ビシッ!

香焼「あのぉ」オドオド・・・

神裂「っ! は、はい。何でしょう」ニコッ

香焼「結局、僕は如何すれば良いんでしょう」ムゥ・・・


と、言われても少し考える時間が欲しいのが本音。だがこの子にとっては一刻も早く終わらせたい痴情。


神裂「五和。貴女は如何するつもりだったのですか?」チラッ・・・

五和「えっ。あーえーっと……あはは」タラー・・・

神裂「何も考えてなかったのですね……浦上は」ハァ・・・

浦上「ぶっちゃけ面倒なのでヒン剥こうかと」チラッ・・・

香焼「ひっ」ビクッ・・・

五和「ちょっと『香』脅かしてんじゃないわよ!!」フシャー!!

浦上「いやぁ、実際それが手っ取り早いでしょ。洗面所の鏡の前に真っ裸で立たせりゃ解決する気しますネ」クイッ


怯える猫の様に五和の後ろへ隠れる香焼。何か可愛い。


五和「この鬼っ。悪魔っ。悪ノリした時の建宮さん! 大丈夫よ。『香』は私が守るからねっ」ギュウッ!

香焼「姉ちゃん、くすぐったいってば」アハハ・・・

神裂「……良いなぁ」ウズウズ・・・

浦上「姉様まで落ちかかってる。これはアカン」ハァ・・・

五和「正直、もぅ時間が解決してくれるってので良いかと思うんだけどダメかな」ナデナデ・・・

香焼「えっ! それで良いの!?」パアァ!!

浦上「お姉、さっきと言ってる事が一転し過ぎですって。姉様からも何か言ってやって下さいナ」ポリポリ・・・

神裂「『香』、次は私の所においd……えっ。あ、うん。そうですね」コホンッ・・・

浦上「ダメだこりゃ」ジトー・・・


拙いマズい。この子の魅惑(チャーム)の魔力に充てられる所だった。私が冷静にならなきゃ如何にもならない。

兎に角、戻す方法。


神裂「催眠やら洗脳魔術云々なら何とか出来ますが、こういう場合は、医者に連れていくという手も考えられますね」フム・・・

浦上「医者でも匙投げそうな気はしますヨ。一時的に男から女に人格逃避した患者なんて過去に例が無いでしょうし」ポリポリ・・・

香焼「だから、僕は香焼じゃなく『香』なのに」ムゥ・・・

五和「うんうん、貴女は『香』よね」ニコニコッ

神裂・浦上「「……、」」ジトー・・・

もあい「みゃぅ」ハァ・・・


コイツ、解決する気無いな。


浦上「お姉ぇ。もっと真面目に考えてよー」ビシッ

五和「んー。ぶっちゃけ今のコウちゃんが最高に可愛過ぎて」スリスリ・・・

香焼「ふふっ。ありがと。僕も姉ちゃんの事大好きだよ」ギュッ!

五和「むっふぉいっ!!」ワッフルワッフルッ♪

浦上「……、」イラッ・・・

神裂「いいなぁ」ボソッ・・・


一回で良いから、私も甘えて貰いたい。


五和「んふふっ。姉さんも素直に『香』が可愛いっていえば抱き付いてくれますよー」ニヤニヤ・・・

浦上「んな尻の軽い女みたいな。第一、香焼にベタベタされるなんて姉様も困るっしょ」ハァ・・・

五和「んな事言ってぇ。一番最初にベタベタイチャイチャしてたのウラじゃん。ねー」ナデナデ・・・

香焼「ねー」ゴロゴロッ

浦上「それはそれ。今はまた別の状況でしょ」ヤレヤレ・・・

神裂「えっ……ズルいんですけど」チラッ・・・

浦上「はっ?」キョトン・・・


私だけ香焼(『香』)とキャッキャウフフしてない。


浦上「いや。いやいやいやいや。何を仰いますのん?」エー・・・

神裂「……、」ムスー・・・

浦上「うわっ捻くれた。さっきまでの冷静さは何処に」タラー・・・

神裂「それはそれ。これはこれ、です」ムググッ・・・

五和「ふっふっふっ。やっぱり姉さんも分かってくれますよね、この気持ち」ニヤニヤ・・・


不肖ながら私とて人の子。聖人とはいえ人並に小規模な欲望はあるのだ。


香焼「んっ……カオリ姉さんもギュッとして良いの?」チラッ・・・

神裂「ムっハぁっ!?」ドキッ・・・///

五和「んー……ダメ。今は姉ちゃんが独占ちゅー」ンーッ!

香焼「えー。姉ちゃんは甘えん坊だなぁ」キャッキャッ!

神裂「おまっ、ざけんなし! こほんっ……香ー。こっちおいでー」ヨシヨーシッ


独占反対! 少しくらい私に回しなさい。あと浦上、その冷ややかな目を向けるの止めて下さい。


 ――一寸後・・・・・


香焼「えへへっ」チョコンッ

神裂「うへへっ」ニマー・・・


なんやかんやで私の膝の上に香焼が座っている。丁度普段禁書目録(あの子)が私に甘える様な感じで。


五和「うわっ。ずるーい。てかさっきまであーだこーだ言ってたクセにー!!」ジトー・・・

香焼「姉ちゃんはさっきまで僕の事抱いてたでしょ。今度は姉さんの番だよ」フフッ

神裂「ふふっ。うふふふふっ」ニヤニヤ・・・

浦上「ダメだコイツら」ハァ・・・


失敬な。こんな腑抜けた顔しているがちゃんと真面目に先の事を考えてたりするのだ。


神裂「うん……しかし、多少は五和の気持ちも分かりますね」ナデナデ・・・

五和「んでしょー。だったらさっさと『香』を返して下さい」スッ・・・

神裂「お黙る。『香』はモノではありませんよ」バシッ

香焼「喧嘩しないの。順番ね、順番」ニコッ

神裂・五和「「はーい」」ニヘラェ・・・

浦上「真面目に、建宮さんに電話しようかな」ハァ・・・


そんな事したら話の流れ的に一番困るのは貴女でしょう。


浦上「うっ……と、兎に角話が進みませんので! そろそろ本気で話合いを―――」タラー・・・

香焼「姉さんってやっぱり安心するね。姉ちゃんとまた違う柔らかさ。あと、とっても良い匂い」スリスリ・・・

神裂「っ! そ、そうですか! いやぁ照れますね」ポリポリ・・・///

五和「あーあー! ズルいズルーい!! 私は!? 私は如何なの!!」ギャーギャー!!

神裂「えぇい、大声出さない。『香』が驚くでしょう」ムギュッ・・・

香焼「わぷっ。ん、姉さん。苦しい」ボインボインッ・・・

浦上「―――……、」イライラ・・・


確かに五和の言う通りで、普段からこのくらい愛嬌があれば良いのにとは思う。


浦上「チッ……『香』が本心でそう言うって事は、普段香焼もそう思ってるって事じゃないですか」ジトー・・・

神裂・五和「「……へっ?」」ピタッ・・・

浦上「だーかーらー。香焼の本音≒『香』って事ですヨ! さっさと我に帰って下さい親バカ姉貴共!」ジトー・・・


香焼の、本音。


五和「そ、そう言われると。何だか急に」カアアァ///

神裂「恥ずかしくなってきましたね」カアアァ///

香焼「???」キョトン・・・

浦上「だからさっさと妄想(香)フィルター外して現実(香焼)見て下さいっての」ハァ・・・


夢も希望も無い事を宣う末妹さま。いや、今は『香』が末『妹』か。
しかし……名残惜しい。出来る事なら香焼とまた別に、身体を持った『香』という妹が現れないものだろうか。

冗談はこれくらいにして具体的な策を考える。


神裂「やはりこの際、病院も一種の手かと」ポンッ・・・

五和「それは拙い気がします。治るっていう確実性がありませんし、今後の任務に支障が」チラッ・・・

神裂「確かに、事が終わった後この子がこの任務から外される可能性も考えられます。しかし、背に腹は代えられないでしょう」ジー・・・

五和「はぁ……ホントは土御門の指示を仰ぐのが一番なんでしょうけど」ムゥ・・・

浦上「事の次第があの人にばれたら……、」タラー・・・


絶対、タダじゃ済みませんね。


五和・浦上「「それだけは勘弁願いたい」」ダラダラ・・・

神裂「ふむ。では彼にばれぬ様、内密に病院へ」ポンッ・・・

五和「姉さん、土御門の裏掻いて行動移せる自信あります?」ハァ・・・

神裂「うっ」タラー・・・


色々考えてみるが、どう足掻いても土御門の下に行きついてしまう。これはピンチ。


香焼「……あの」ジー・・・

神裂・五和「「はいっ」」バッ・・・

香焼「やっぱり、僕、病気なの…ですね」ショボン・・・


あぁ、そんな玩具を取り上げられた子猫の様な顔をしないで。


浦上「もうハッキリそう言ってあげた方が為ですヨ……あのね、謂わば精神障害的な―――」

五和「か、『香』は病気じゃないよ! うん、『香』は! 私嘘言ッテナイ」アタフタ・・・

神裂「そ、そうですね。『貴女』は何もオカしくないですよ! 寧ろそのままの君でいてー」ブンブンッ・・・

香焼「え、あ、うん。ありがと。やっぱり姉さんと姉ちゃんは優しいね」ニパー♪

神裂・五和「「んへへぇ」」ニタニタ・・・///


ダメだ、可愛い。思考が止まる。


浦上「―――……まだ言いますか、アンタら」イライラ・・・

神裂・五和「「うへへぇ」」ニヤニヤ・・・ナデナデ・・・

香焼「えへへ……―― チラッ・・・ニヤリ・・・・・ ――……えへへっ♪」キャッキャッ!

浦上(こ、コイツ、計算してやがる。小悪魔系男の娘とか……香焼、じゃなく『香』! 恐ろしい子ッ!)タラー・・・

香焼「んふふっ……あっ! 姉さんも姉ちゃんも、今日は一緒に寝ようね」ニッコニッコッ

神裂・五和「「カ、ハッ...」」サラサラ・・・


ヤバいです。マジで愛玩動物的なアレでコレでソレが、もぉ辛抱堪らん!
不覚にも結標さんの気持ちがちょっとだけ分かった気がする。


浦上「ぐぬぬぅ。調子に乗りおってからにぃ……斯くなる上はッッ」バッ!!

五和「ぐへへぇ香ちゃぁん。もうちょい近ぅ寄れ、近ぅに……って、ウラ!?」ギョッ・・・

香焼・もあい「「にゃっ?!」」ビクッ・・・


急に立ち上がり私達の方へ―――というより、香の方へ歩み寄る浦上。その目は『狩人』のそれ。
何をする気か分からないが、暴力的な事は止めなさい。可愛い『妹』なんですよ!

私と五和の後ろに隠れる『香』を庇いつつ、浦上を牽制する。


香焼「はわわ...」ブルブル・・・

浦上「このぉ! 人の事は言えないけど役者めぇ……二人とも、そこ退いて! ソイツ●せない!!」クワッ!!

神裂「こ、こらっ。物騒な事言わないで下さい」メッ!

五和「がるるるるるるぅ」グイグイッ!

香焼「チッ ……姉さん、姉ちゃん。浦上が怖いよぅ。助けて」ギュッ・・・ウルウル・・・

神裂・五和「「むひょおおおぉ!!」」ビンビンッ!

浦上「……、」ブチッ・・・


何だか空気が変わった―――と感じた同時に、携帯を取り出す浦上。
何を思ったか、いきなり私達の方へカメラを向け『パシャリっ』とワンクリック。


神裂・五和・香焼「「「……へっ?」」」ポカーン・・・

浦上「この写メ、上条さんへ送りますネ」ポチポチ・・・

神裂・五和「「んなっ!?」」ギョッ・・・


無表情でトンデモない事を宣う妹様。御乱心か!?


浦上「乱心してんのはどっちですか! ったく……まぁこの角度だと『香』じゃなく『香焼』に見えますから、丁度良いですネ」カチカチ・・・

五和「っーーーッ!!?」バッ・・・

神裂「な、何を、する気です?」ダラダラ・・・

浦上「……言った通り、写メを送るだけですヨ。今、この、二人の有り様を! 上条さんにネ……あーこれ完璧勘違いされるわぁ」カチカチ・・・

五和「な、何をするだあああぁ!!」ガバッ!!

神裂「そ、そんな事してみなさい!! タダじゃおきませんよ!!」ダラダラダラダラ・・・

浦上「じゃあ、条件です。私の言いたい事分かりますネ?」ニッコリ・・・

神裂・五和「「うっ」」オズオズ・・・

香焼「うぇ」タラー・・・


此処は、大人しく引き下がるしかあるまい。


香焼「クッ・・・・・ね、姉さん! 姉ちゃん!! 僕を見捨てるの?」アタフタ・・・

神裂・五和「「……、」」タラー・・・


すいません、『香(幻想)』より『彼(現実)』を取らせて頂きます。


五和「香ちゃん……大丈夫。さっきも言ったけど、またすぐ会えるよ」ニッコリ・・・

香焼「うわああぁん! 薄情者ーっ!!」アセアセ・・・

浦上「さぁて―――覚悟は良いですネ。私は出来てる」ガシッ・・・

香焼「ひっ!」ビクビクッ・・・

浦上「この小悪魔ビッチ系男の娘がぁ。女装山脈に放り投げちゃろうか」ギリギリ・・・

香焼「ひゃっ! ね、姉さん!」ダラダラ・・・

神裂「う、浦上。わ、分かってるとは思いますが暴力的なのは無しですよ。流石にそれは見逃せませんからね」タラー・・・


大丈夫です、と目で合図し『香』を立たせる浦上。私と五和はビクビクと脇でもあいを抱えながら正座してる外無い。
そして何を思ったか突然―――



浦上「ふんっ!」ガシッ!!

香焼・神裂・五和「「「っ!!?」」」ギョッ・・・


下段突きを放つ様に右手で引き手を取り、そして―――


浦上「そぉいっ!!」グッ・・・

香焼「ひっ―――ぃああああぁっ!!?」ギュンッ・・・

神裂・五和「「ぶッはぁっ!?」」カアアァ///////


  にゃーん・・・・・


香焼「う、ううう、うら、うらか、み、さん」ガクガク・・・プルプル・・・・・

浦上「……、」シーン・・・

香焼「あ、な、にゃ、にゃにを」ギギギギ・・・

浦上「……ナニよ」グッ・・・




  にぎっ・・・・・




香焼「ひゃあああぁああぁ!!」ビクビクンッ!!

五和「う、うらあああああぁ!! 何やってんのおおおおおおぉ!!?」アバババババ・・・////


―――文字通り『香』の……いや、香焼の『アレ』を握った。


五和「ちょ、ね、姉さん! あれヤバ、やばい……きゃああぁ!」カアアァ///

神裂「う、浦上っ! えっと……一応我々全員乙女な訳でしていきなりそういうその……そういう、アレを……男子の、ソレを」ゴニョゴニョ・・・///

浦上「ったく、恥ずかしいなら見なくて良いですって。これだから良い歳こいて処女貫いてるJKは面倒です」ヤレヤレ・・・ニギニギ・・・

香焼「ひ、ぎぃ」ビクンッ・・・

五和「んなぁ!?」カアアァ///

神裂「な、なんと破廉恥なっ! て、貞操も守れなくて何が聖じ―――」

浦上「はいはい、一生聖処女やってて下さい。それより……香焼。いえ、『香』でも良いです」ジー・・・ニギッ・・・

香焼「ひゃ、いっ」ピクピクッ・・・


『モノ』を握る手を離す事無く、更に香焼に詰め寄る浦上。何やら問い質している様子だが―――


神裂「あっ……そういう」ポリポリ・・・///

五和「もぅ……何なんですか」チラッチラッ・・・///


―――つまり『香』という人格に問い掛けても無駄なら『身体』に聞いてやるという戦法か。


五和「それって、その」ムムムッ・・・///

神裂「ええ。『男性と女性の最大の違い』は何か、という話ですね」タラー・・・///

五和「あー、うん。はいはい……でもウラ、大胆過ぎ」ハワワ・・・///


正直、私達には真似できない方法。相変わらずあの子の『変な方向』への行動力には恐れ入る。

とりあえず、香焼を見る限り効果はありそうだ。現に冷や汗と震えが尋常じゃない。


浦上「さぁて『香』。元々無理矢理貴女(の人格)を引っ張り出したのは私。だから一応悪いとは思ってるヨ」ニギッ・・・

香焼「……、」ダラダラ・・・

浦上「ただ、『香(これ)』は『香(これ)』。香焼(それ)は香焼(それ)」ニギュッ・・・

香焼「ぁ……ぁ」ピクピクッ・・・


今あの子の頭の中を覗いたらきっとカオスな状態になっている事だろう。


浦上「ねぇ『香』……私が握ってる『コレ』は何かな?」ニギッ・・・ニコッ・・・

香焼「ぇ、ぁ……な、ぅ」ガクガク・・・プルプル・・・

五和(傍から見てると)タラー・・・///

神裂(かぁなりヤバい光景ですね。つーか際どい)タラー・・・///


どっちが男だか分からない構図。いや、普通男だってこんな事しない。


浦上「ねぇ……『コレ』はなぁに? それと『アナタ』のお名前はぁ?」スッ・・・サワサワ・・・

香焼「ッッ!!」ビクンッ!!

神裂「ぶふぉッ!!?」カアアアァ///

浦上「ねぇ……聞こえてるんだよネ? それとも、気持ち良くなってきちゃったから話できないの?」サワサワ・・・フー・・・

香焼「っ……ぼ、くは」ピクッ・・・ピクッ・・・

五和「ううぅうぅ浦上さああぁん!! それ以上はNGよっ!!」アワワワ・・・///


私と五和の精神衛生上、悪影響この上ない。


浦上「ハァ。あのですねぇ、オリアナ姐さんとかベイロープ、フロリス辺りならこのくらいの恥辱拷問普通にやりますけどー」チラッ・・・ジトー・・・

神裂「よ、余所は余所! ウチはウチ! 兎に角、それ以上はダメです!!」ウググゥ///

浦上「んもぅ。ホントにネエネちゃんですネ……あ、ちょっと固くなってきた?」チラッ・・・

香焼「ぁ、ぃ、や……ゃだ」プルプルプル・・・

浦上「あはっ。これは、これで」ペロリ・・・

神裂・五和「「 そ こ ま で よ 」」バッ・・・/////////


申し訳無いがそれ以上(R-18)は別スレでやれ。


浦上「やれやれ。もうちょっとなのに……さておき、手は離しませんヨ。ねぇ―――香焼」ジー・・・ニギッ・・・

香焼「―――ぁ」ボー・・・

五和「ちょ、ウラ。コウちゃん大丈夫なの?」タラー・・・///

浦上「もう一押しだと思うんだけど。じゃあ、もう一回聞きますヨ。私が握ってる『コレ』って何? そして『アナタ』の名前は?」キュッ・・・

香焼「ぼ、ぼく……は……か、おる」ジー・・・

浦上「ふーん。じゃあ私の右手の中に在る『コレ』は? 『香』のモノ?」ニギニギ・・・

香焼「ひゃっ……し、知らない……それ、僕の、違う―――『自分』の、で……ゃめ―――ぼく、は、女、で……っ」ビクッ・・・

浦上「ふむふむ。もうちょい」ニヤニヤ・・・サワサワ・・・

神裂・五和「「……、」」チラッチラッ・・・ゴクリ・・・///


何故かヤらしく見える浦上の手。私達は固唾を飲んで動向を見詰めていた……決してその手腕に興奮してたとかじゃありませんのであしからず。

そろそろ香焼の顔色が真っ青になってきた。『香』の精神が限界に近いのだろう。

浦上は相変わらず呪詛の様に言葉攻めというか恥辱拷問というか、とりあえず『わっふるわっふる』してる。半分楽しんでるな、あの子。
五和はもあいを抱えながら食い入るように二人を見ていた……私? いや、冷静に茶を啜ってますよ。


五和「嘘吐け。呼吸荒いですよ。あとさっきから瞬きしてませんし」マジマジ・・・///

神裂「お黙る。私がこの程度の事で同様する訳ありません」ギラギラ・・・///

もあい「にゃう」ヤレヤレ・・・


私達の事は如何でも良いのだ。問題は、そっち。


浦上「―――……はい。じゃあもう一回質問。私が握ってる『コレ』は何? あと『アナタ』の名前は?」サワサワ・・・

香焼「ぼ、く……―――……じぶん、は……―――女、で……―――ぁ……ちが……―――じぶ、ぼ……っす」ピクピクッ・・・

浦上「んー? 聞こえないなぁ。じゃあ段々と硬くなってる『コレ』って、なぁに? 大きくなってきてますヨ? ねぇ『香』」フフフ・・・

香焼「ぃ、や……―――……ゃ、めろ……よ……―――じ、ぼ、ん……おと、おん……―――やめぇ、て、くだぁい……ッ……んゃ」アヘェ・・・

神裂・五和「「んっ?」」タラー・・・///


ちょっと雲行きが怪しい。


五和「ウラ、あのさ。そろそろ良いんじゃないかな。あとは放っておいてもコウちゃんに戻る様な気が」チラッ・・・コホンッ・・・///

浦上「甘い。それこそこの小悪魔ビッチ系別人格の思う壺ですヨ。此処は一気に退散させないと」ニギニギ・・・

香焼「ん、ぁ」ピクピクッ・・・

神裂「えっと……多分、性云々に疎い私でも分かります。今の香焼、ヤバくないですか」チラッ・・・チラッ・・・///

浦上「これくらい大丈夫ですって。たかだか勃起する程度でしょう。逆にしてくれた方が、女だっていう自覚が死にますヨ」ハハハ

神裂・五和「「ボッ!?」」カアアァ///

香焼「いぁ……や、め―――ぉね、が……助け、ぇ―――……やめ、ろ……うら、かみ……たす、いつ、ねえさ……―――がぅ、ぁ」グデェ・・・

浦上「おっ? 良い感じですネ。じゃあそろそろ―――」グッ・・・

神裂「ッ……浦上。その辺で止めなさい。これ以上はこの子の尊厳の問題です。本気で怒りますよ」パッ・・・


何をするつもりか分からないがもう充分だ。これでもし戻らなかったとしても、責任は私が取ろう。


五和「あーうん。私も同意……おっと。コウちゃん、大丈夫?」ポンポンッ・・・ギュッ・・・

香焼「……ぁ」フラフラ・・・

五和「まったくもぅ。コウちゃん、話せる? もし辛かったら今日はもう休みなさい」ポンッ・・・

香焼「……ん」グデェ・・・


ドチラに転んだかはよく分からないが、多分大丈夫だろう。明日の朝にはきっと元に戻ってい―――


香焼「あり、がと……『姉ちゃん』……もう少し、このままで。温かい、から」ムギュッ・・・ニコッ・・・

五和「そげあっ!!」ズキューンッ・・・

香焼「姉さんも……大好きだよ」ムギュッ・・・エヘッ・・・

神裂「ねぼいっ!!」バキューンッ・・・

浦上「くっ!! 抜かったわ!! 間に合えッ!!」バッ・・・ガシッ・・・


―――なくても良いや!

とか超スウィーティーな事を考えた刹那、浦上の手が伸び、香焼を私達から引き離した。
そして即座に両手で香焼のキュロットパンツを掴み、一気に―――

えっと……遅くなりました。引っ越しとか転職とか、人生色々ですね……

ボチボチ投下させて貰います。




浦上「 そ ぉ い ッッ!!!」ガバッ!!



神裂・五和「「っ?!!」」ピタッ・・・

香焼「……へっ」ポカーン・・・





  にゃーん・・・・・





五和「ず、ずずずずずずずい、ぶん、ご、ごご、ごごごごり、りっぱ、ですことっ……ねっ」カアアアアァ//////////////////////

神裂「」ボンッ・・・/////////////////////////////////////////////


―――香焼……いつの間にか、大人の階段を登り始めていたのですね。


神裂・五和「「ってぃきゃああああああああああああああああああああああああああああああああぁ!!」」ブンブンッ//////////////////////

浦上「あーもぅ喧しい! こんな毛も生えてないし皮も●●●ってない子供■■■■見て騒がないで下さいヨ!」ハァ・・・

五和「だ、だだだってぇ! そん、ちょ、待っ……いいから閉まってええぇ!!」マッカッカー///////////////////////

神裂「まじ、だっ、むっ! う、浦上ッ!! 早く穿かせなさい!! 命令ですっ!!」アbbbbbbbb//////////////////////////

浦上「はいはい……の前に。ねぇ『香』。自分の『モノ』見えたでしょ」ニコッ・・・

香焼「―――、」チーン・・・

浦上「これが『現実(香焼)』だヨ。まだまーだ小さいけど、ちゃんと勃ちもする『男性』としての証明だよネっ」ピンッ!

香焼「―――キュゥ」バタンッ・・・


気絶した。せめてパンツ穿いてから倒れて欲しかった。


神裂「浦上いいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃ!!」ガバァ///////////

浦上「あいあい、さーせんさーせん。でも結果オーライでしょう」ブンブンッ・・・

五和「あ、アンタ! もしこれでコウちゃんが元に戻らなかったら!!」ギリギリ・・・///////////

浦上「大丈夫ダイジョブ。多分、最後『我』に帰って羞恥心で気絶した筈ですから」ハハハッ


だとしても、起きた時に心の傷が。というか私達も色々とダメージが。


浦上「ったく。そんなんでもし『本番』来たら如何すんですか? 永遠にセックスできませんヨ」ヤレヤレ・・・

神裂「セッk……そ、それとこれとは話は別です! 兎に角、んもぅ!!」イギギギィ・・・///////////

五和「アンタは少し女としての慎みを持ちなさい! あと暫くオリアナさんと接触禁止!」ビシッ・・・///////////

浦上「へいへい……あっ。二人とも」チラッ・・・


今度は何だ。


浦上「今なら……悪戯出来ますヨ。香焼『の』で良ければですけどぉうらばぁ!!」ゴッチンコッ!!×2

神裂・五和「「反省しろっ!!」」ウギギィ・・・////////////////


浦上は暫く個人指導(折檻)コース決定だ。あと、とりあえず―――早く香焼の下を穿かせなさい。その後の話はこの子が起きてからだ。

 ―――さる翌日、PM10:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・





―――いつの間にか僕は寝ていた。
とても長い時間寝ていた気がする……およそ一ヶ月ちょいくらいだろうか。
実際にはそんなに経ってる訳が無いのだが、何故かとても長い眠りについていた様な感覚。


香焼「……ん」パチッ・・・


最初に目に飛び込んできた光景は―――巨大な肌色の南半球×2。


香焼「ぇ」ピクッ・・・

神裂「むっ。目を覚ましましたね」チラッ・・・

もあい「にゃう」ペチペチッ・・・


状況が把握できない。何故僕は姉さんに膝枕されている?
あと姉さんのTシャツって近くで見ると透けるんだなぁとか、顔を覗きこまれると髪が僕の顔に掛るんだねぇとか―――


香焼「ほわっ!?」バッ!!

神裂「おっと。そんな急に起きなくても」ビクッ

香焼「なっ、えっ、にゃにを」キョロキョロ・・・

神裂「ふむ。様子から察するに、『香』ではなく『香焼』の様ですね」ジー・・・

香焼「えぇ? な、何がっすか」キョトン・・・


―――戸惑う僕を余所に冷静に観察を続ける姉さん。兎に角、何が起きたのか知りたい。
一旦正座をして色々と尋ねようと思った直後、客間の奥から五和が現れた。


五和「あっ! 起きた!」パタパタッ・・・ガシッ!

香焼「うわっ!? な、何さ」タラー・・・


僕の顔を見るなり、ガッツリと頭をホールド。真剣な顔で僕に問う。


五和「Who...Who are you?」zhiiii...

香焼「近い怖い鼻息荒い。しかも何故英語? 誰って、自分は自分っすけど」タラー・・・

五和「おぅ……戻りましたね」チラッ・・・

神裂「えぇ。その様で」コクッ・・・


だから一体全体何なのさ。


神裂「香焼……よ、世の中には知らない方が己が為になる事が沢っ山ありますから」ハハハ・・・///

五和「そ、そうね。人生色々よ」ウフフ・・・///


何故頬を赤らめる。御蔭で凄く気になるのだが。


五和「な、何でもないの! それよりお風呂入ってきたら。まだ入って無かったでしょ?」チラッ・・・

香焼「え、うん。でもそれより先に聞きたい事が」ポリポリ・・・

神裂「後ほどゆっくり話しましょう。とりあえず我々にも準備が必要なので」コクッ・・・


何の準備か分からないが、今は言うとおりにしよう。因みに、カーテンの隙間から見えたサイドポニーの蓑虫はスルーする方向で。

脱衣する時に気がついたのだが、いつの間にか女装を止めていたらしい。
お風呂の中で色々考思いだそうとしたが、どうも記憶を引っ張り出せない。最後の記憶は……浦上に抱き付かれてた様な。


香焼「……まぁいいか」ブクブク・・・


何だか気拙くなってきたので急いで洗身洗髪し、風呂から上がる。
そしていつもの寝巻き(ハーパン&パーカー)を着て居間に戻った。


香焼「お待たせしました」スッ・・・

五和「いんや。お茶飲む?」チラッ・・・

香焼「ありがと―――えっと、外の、放置してて良いの?」ポリポリ・・・

神裂「構いません」ズズズ・・・


なぁにしでかしたのやら。


神裂「さておき、五和から話は聞きました」コトッ・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・

五和「姉さん。順を追って話さないと、この子も理解出来ないでしょう」チラッ・・・

神裂「そうですね。香焼、貴方何処まで覚えてます」ジー・・・


とりあえず、五和が暴走して浦上が家に来て、それで『悩み』を解決してくれようとして―――


香焼「―――そこから先があやふやっすね」ウーン・・・

五和「やっぱり完璧別人格ですね」ボソッ・・・

神裂「幸か不幸か記憶は共有していない、か」フム・・・

香焼「へ?」ポカーン・・・

五和「あー、気にしないで。ただ、解決の手口が見つかったかもなぁって感じだから」ハハハ・・・


今一理解に苦しむが、追々分かるだろう。


五和「分からない方が良いと思うけど。とりま、姉さんから何かあります?」

神裂「そうですね……根本的な解決になるかどうかは分かりませんが、嫌な事は嫌だとハッキリ伝えてみてはどうです」ジー・・・

香焼「え?」キョトン・・・

神裂「食蜂さんの件です。忘れてましたか?」フフッ

香焼「あぁ。忘れてた訳では……ただ、その、色々と混同してしまって」ポリポリ・・・


思い悩むと余計辛くて。


神裂「勘ですが、彼女も反省していると思いますよ。一度お会いしましたが、人の嫌がる事を真に喜んでする娘には見えませんでしたから」コクッ

香焼「……、」ウーン・・・

神裂「まさか謝罪の一言もありませんか?」ジー・・・


それはない。現に、僕が無視しているだけで携帯には何件ものメッセージと着信が入っている。


神裂「であれば、話が通じる筈ですよ。真剣に嫌なモノは嫌だと伝えなさい。それでも直らない様であれば」チラッ・・・

五和「……ええ。少々大人げありませんが」コクッ


私達が出張ります、ってか。勘弁してくれ。それこそ今後任務が出来なくなる。

確かに、今まで真剣に向き合ってコレが嫌だアレが嫌だと操祈さんに伝えた事は無かった。
やられるがままやられて、なあなあで『やめてくださーい』と頼むだけ。確かにこれでは真剣みに欠ける。


香焼「そうっすね。ちゃんと話してみます」ペコッ

神裂「ええ。それでももし困ったら」ジー・・・

香焼「あはは。大丈夫っすよ。姉さん達の手は煩わせません」ポリポリ・・・


モンスターペアレンツならぬモンスターシスターズ。比喩抜きでモンスター。


五和「まぁ一応、現実逃避の末、自分で奥の手(『香』)も発見したけどね」ハハハ・・・

神裂「自らコントロール出来ない奥の手(別人格)なんて捨ててしまえ」ジトー・・・

香焼「はい?」キョトン・・・

神裂・五和「「な、なんでもない」」ハハハ・・・


明らかに怪しい。が、いつもの事か。兎に角、あとは僕の向き合い方次第という事で一段落。
外に放置していた蓑虫、もとい浦上を居間に上げてやる。


浦上「ヴぉおぉざむぃいっ!」ガクブル・・・

五和「自業自得ね。反省した?」ヤレヤレ・・・

浦上「悪かった、だなんてコレっぽっちも思ってません。でも謝ります。さーせん」ヘックチ!

神裂「まったく。この子は相変わらず……香焼、あとは大丈夫ですか」チラッ・・・

香焼「ええ。とりあえずは」コクッ・・・


これ以上悩んでいても仕方あるまい。それにもう時間も時間だ。各々明日の予定があるだろう。夜更かしはさせられない。


神裂「私は別段ありませんが、五和と浦上は学校ですか」チラッ・・・

浦上「はいはい」コクッ

五和「私は土御門に渡す報告書の準備を……あーもう明後日で良いか」グデェ・・・

神裂「そんなグダグダと先延ばしにしては自分の首を絞めるだけですよ」ムゥ・・・

五和「期限は週末なんで余裕ありますから。ホントは今日中に終わらせる予定だったんですけど……まぁ色々とあったんで」ポリポリ・・・


口にはしないが、僕の所為か。申し訳無い。


五和「良いの良いの。後輩のストレスマネジメントも仕事の一環だし」ハハハ

浦上「一環=義弟のメンタルケア、ですネ。まったく、なんて良いお姉たまなんでしょー」フフフッ

五和「ははは。しっかし、コウちゃんが泣いて帰って来た時は一体何事かと」グデェ・・・

神裂・浦上「「えっ」」ピタッ・・・

香焼「」ギロッ・・・

五和「……あっ」タラー・・・


この馬鹿、余計な事を。


浦上「何それ、凄く気になります」チラチラッ

神裂「香焼が泣いたんですか? へぇ……ふーん。珍しい」チラチラッ

五和「あはは……えっと」ポリポリ・・・


兎に角知らんぷり。頼むから変な事言うなよ。

今日はここまで。続きは次のオリンピック頃に...

冗談さておき、今年度中には終わらせたいです。では、また! ノシ"

根掘り葉掘り聞こうとする浦上と無言でチラチラ此方を見てくる姉さんをスルー。
これ以上突っ込まれるのも面倒なので、もあいを抱えてそろそろ部屋に戻ろうとした矢先―――


五和「あ、そういえば」ピタッ・・・

香焼・神裂・浦上「「「えっ?」」」キョトン・・・

五和「マジな話、何で今日泣いて帰って来たの?」ジー・・・

香焼「はい?」ポカーン・・・

もあい「みゃ?」ゴロゴロ・・・


説明しなかったっけ?


五和「私が話して貰ったのは第五位さんとのイザコザだけよ。昨日までのアレコレ」コクコクッ

香焼「そうだっけ」ウーン・・・

神裂「ふむふむ。確かに相当溜め込んでいたのならまだしも、それだけで貴方が泣くとは思えませんね」チラッ・・・

浦上「つまり昨日までの事では無く、今日起きた何かが原因って事ですネ」フム・・・


そういえば……確かに思い悩んではいたが、泣く程の事ではない。


五和「私に電話したのは特に理由無いんでしょ。こんな言い方したらコウちゃん怒るだろうけど一人で居たくない気分だった。それだけ」ジー・・・

香焼「……まぁ」ポリポリ・・・///

五和「でもそれとは別に今日、何かあったんでしょ。最愛ちゃん達とも関係無しに」ジー・・・


視線が集まる。僕が泣いてた理由。それは―――




   『いつも、傍に居るのに、ねっ』 




―――思い出したと同時に寒気が奔った。


香焼「っ!!」ビクッ・・・

神裂「……どうしました」ジー・・・

浦上「顔色悪いですヨ。大丈夫ですか?」ジー・・・

香焼「で、電車で……電車の中で」ダラダラ・・・

五和「電車? 何処の?」フム・・・

香焼「地下鉄の、学園メトロ南北線の、車内で」ハァハァ・・・

神裂「香焼、無理に話さなくても大丈夫です。思い出したくないのなら無理に思い出さなくても」スッ・・・

香焼「狙われました……自分、あの、また、今度もきっと」クラッ・・・

浦上「狙われたって、ちょ、本当に! 無理しないでくださいっての!」ガシッ!


そうだ。僕は……狙われた。いや、正しくは現状も『狙われている』んだ。


五和「狙われた? 何に?」ムゥ・・・

神裂「五和、無理に思い出させない方が良い」チラッ・・・

香焼「い、いえ、大丈夫っす。少し落ち着けば……きっと話しておいた方が良いのかも」スッ・・・


もしかしたら僕だけではなく、僕に関わる周りをも狙っているかもしれない。3人には伝えておくべきだ。

何とか冷静を装い、困り顔の3人に告白する。


香焼「……今日の帰り。最愛達と別れた後っす」ジー・・・

五和「私に電話する前?」フム・・・

香焼「いや。した後の帰り途、電車内で狙われたんだ」ブルッ・・・

神裂「狙われたとは……命を? それとも何か物を?」ムゥ・・・

香焼「分かりません」フゥ・・・


奴は『全然抵抗しない』とか『傍に居る』とか言ってた。


浦上「……ん?」ハテ・・・

五和「でも仮に暗殺だったとして、何でコウちゃんが狙われるの? 身に覚えは?」ウーン・・・

香焼「全く。だからもしかして、自分を狙ったというよりは『天草式(自分ら)』を狙ったのかも」ハァ・・・

神裂「もしくは英国または『彼の側(上条勢力)』か……土御門に報告が必要ですね。しかし、今一情報不足」チラッ・・・

五和「不審な点が多過ぎますね。何故にその場で犯行予告を? しかも満員電車内で?」ポカーン・・・

神裂「何かメリットがあるのでしょう。もしくは相当の手慣れで慢心から声明を出してきたか」コクッ

五和「そいつが魔術師(コッチ側)か能力者(科学サイド)かは分かった?」フム・・・

香焼「いや……ただ『臭いを覚えた』とか言ってたかも」ブルッ・・・

五和「臭い? だとしたら言葉通り『嗅覚』に所縁のある魔術または能力を使っている、という事になりますね」クンクンッ

神裂「もしかしたら何かの隠語かもしれませんよ。何にせよ、警戒はすべきですね」ジー・・・


後手後手にしか回れない歯痒さ。せめてもう少し情報を掴めていれば良かった。


浦上「んー……ん?」アルェ・・・

香焼「ハァ、完全に自分の怠慢っすね。すいません」ムゥ・・・

五和「(えっ……あれ?)過ぎた事は仕方ない。今後気を付ける事……兎に角、他には?」ジー・・・

香焼「えっと……男性でした。多分、中年だと思います」ポリポリ・・・

神裂「(ふむ……うーん)変装という可能性も拭えませんが、大きな情報ですね。では実際如何いう感じで攻撃、というか犯行予告を?」フム・・・

香焼「……、」ブルッ・・・


思い出すだけで鳥肌が立つ。
満員電車の中、最寄りの駅まで残り少しという所で、僕はいつの間にか扉側まで追いやられていた。
気付けばヤツに拘束され……首筋に気持ちの悪い吐息を当てられ、太もも辺りを弄られ―――


香焼「うっ」ブルルッ・・・

五和「こ、コウちゃん!」アワワ・・・

神裂「香焼。無理に思い出さなくても大丈夫です。ゆっくりで構いませんよ」スッ・・・

香焼「……だ、だいじょぶっす」ダラダラ・・・


―――考えてみれば、電車に乗る前からヤツは僕の後ろに立っていた。
それだけではない。多分ヤツの話から察するに、結構前から僕はつけられていたのだ。
思い返せば心当たりはある。前の日の満員電車も、その前の日も……気が付かなかっただけで、僕は狙われていたのだ。


浦上「……えっと」ハハハ・・・

もあい「にゃう」ゴロゴロ・・・


ダメだ。思い出すと震えが止まらない。畜生、なんて未熟なんだ。

頭を垂れる僕と顔を顰める姉さん達を余所に、一人苦笑する浦上がポツリと呟いた。


浦上「あのさぁ」ポリポリ・・・

香焼・神裂・五和「「「えっ」」」ピタッ・・・

浦上「確認なんですけど……満員電車内で、汗臭いおっさんに、湿った手でスカートの中弄られたんですネ?」ジー・・・

香焼「ま、まぁ、うん」タラー・・・

浦上「それ、香焼の時もされてた?」ジトー・・・

神裂「如何いう意味です?」フム・・・

浦上「だーから、女装時以外も狙われたのか、って事ですヨ」チラッ・・・


それは、分からない。


五和「ウラ?」アー・・・

浦上「分かったっていうか何ていうか……っていうか、マジで気付かないんですか」ハァ・・・

香焼「はい?」キョトン・・・


何故か呆れ顔で苦笑する浦上。一同真剣に話し合ってるのに腹が立つ。
相手にするのもイラッとするので、無視して話を進めようとした刹那……とんでもない事を言い放った。


浦上「いやいや。それって単に―――痴漢っしょ」ジトー・・・

香焼「へっ?」ポカーン・・・


ちかん……置換?


香焼「な、何の置き換えを?」アタフタ・・・

浦上「そういうボケ要らんって。痴漢ですヨ、痴漢。意味の説明必要?」ヤレヤレ・・・

香焼「……はぇ?」ポカーン・・・

浦上「てか、お姉も姉様も気付いてたっしょ」ジトー・・・

五和「えっと……いやぁ薄々はね」ハハハ・・・

神裂「しかし、この子があまりに真剣に話すものですから、本当に危ない方かと思いまして」アハハ・・・


何だこの空気。


香焼「あ、あの……本気で言ってるの?」タラー・・・

浦上「勿の論。てかさぁ、客観的に考えてみなよ」ヤレヤレ・・・

五和「まぁ傍から見るに典型的な痴漢だよね。そこまで自白してくるのは凄いけど」タラー・・・

神裂「多分、香焼……その時は『香』の姿ですね。何をされても無抵抗なので馬鹿が思い切ったのでしょう」ハァ・・・

浦上「まったく、企画モノのAVかエロ漫画みたいな展開を希望してたんでしょうね。有り得ないですっての」グデェ・・・

香焼「うぇ……はい? いやいやいやいやっ! 意味分かんないっす!!」アタフタ・・・

3姉妹『……、』ジトー・・・

香焼「だって、自分は男っすよ?」ダラダラ・・・

3姉妹『鏡を見なさいっ!』

もあい「……なぅ」フゥ・・・


この後滅茶苦茶説教食らった。女の子が無防備過ぎるとか、女子になっても朴念仁なのかとか……散々だ。
腑に落ちないまま怒られ続け結局、気付けば朝日が昇っていた―――

 ―――さる翌々日、AM07:30、学園都市第1学区、マンション『ニューディレクターズ』(香焼宅)・・・・・





朝だ……とても眠い。


香焼「ふぁあぁ」グデェ・・・


結局居間で寝てしまった模様……ダメだ。頭が回らない。


香焼「はぁ……姉さん達は?」チラッ・・・

3姉妹『Zzz...』スヤァ・・・

もあい「にゃう」ムニャムニャ・・・


完全に遅刻だな。2週間フリーな僕と違い、五和と浦上は普通に学校だろう。
一応起こしはするが、最悪休む気だろう。因みに姉さんは主婦(?)なので問題無し。


香焼「あー五和、浦上」ジー・・・

五和・浦上(~ω~)スヤァ・・・(ーωー)スピィ・・・

香焼「寝坊だよ。学校どうする?」ヤレヤレ・・・

五和「んん……午後から出r……Zzz」ガァ・・・

浦上「気が向いたら……行くzZzzz...」グヘェ・・・

香焼「そぅ」ハハハ・・・


無理には起さない。一応、僕の為に夜更かししてくれたのだ。


香焼「姉さんは」チラッ・・・

神裂「……んっ」ゴロンッ・・・チラチラッ・・・

香焼「……寝かせておこう」フイッ・・・///


色々肌蹴て拙い事になってるのでタオルケットでも被せとく。
一応寝巻きなのだが、相変わらず下着をしないで寝る人なので目のやり場に困る。
最近は幾分注意を払ってくれるようにはなってきたのだが、やはり意識しないとブラやショーツを身に着けないみたいだ。

さておき……自分の事。


香焼「……そろそろ、向き合わなきゃね」ジー・・・


二つの携帯を手に取る。一方はプライベート用、他方は『香』用。
昨日は忙しくて何処にも返信していなかったが、プライベート用にも最愛やらステイルやら、諸処友人達からのメッセージが溜まっている模様。
軽く謝罪を入れ、それなりに返信を入れる。


香焼「よしっ、次は」Pi!


『香』用。不在の着信・伝言・メッセージを合わせて50件近く。
殆どが操祈さんだが、一件ずつ、最愛と御坂蛇(スネーク)さん……それから御坂さんから連絡が入ってた。
最愛に対しては先程同様丁重に返信。蛇さんは後で直接連絡するとして、とりあえずは御坂さんだ。


香焼「……電話、しよう」テクテク・・・

もあい「なぅ」トコトコ・・・


多分、僕の知らない所で一番迷惑を掛けた人かもしれない。主に操祈さんの相手という意味で。
自室に戻り、コールを回す。時間が時間なのでもしかしたら出ないかもしれない……そう思った矢先、電話越しから凛々しい声が聞こえた。

やっとサブタイ回収まで行けました。もうちょいで終わります。
コレ終わったら適当にオマケやって、んでもって……『アフター』かな。

とりあえず、また次回! ノシ"

第一声は冷静。


御坂『―――もしもし』Pi!

香焼「えっと……おはようございます」モジモジ・・・

御坂『うん。おはよ』キッパリ・・・


あくまでいつも通りのトーンで対応してくれる御坂さん。


香焼「……あの」アタフタ・・・

御坂『皆まで言わなくても良いわよ。分かってるから』アハハッ

香焼「あー……すいません」タラー・・・

御坂『何で謝るのよ。香ちゃん、悪くないでしょ』フフッ


全部知ってる訳か。


御坂『まったくあの馬鹿、自業自得よね。途中から見てたけどありゃドン引きよ』ヤレヤレ・・・

香焼「み、見てたんなら止めて下さいよっ」カアアァ///

御坂『ごめんごめん。あの時は出るタイミング逃してさ。こりゃ出なきゃって思った途端、香ちゃん帰っちゃったし―――』ポリポリ・・・


あの人を止められるのは御坂さんくらいだ。正直すぐにでも助けて欲しかった。
しかし、終わった事を悔やんでも仕方ない。彼女に当たるのは御角違いだろう。

さておき、本題。


御坂『―――食蜂のヤツ、乱雑解放(ポルターガイスト)起しそうなくらい病んでたわよ』アハハ・・・

香焼「え?」ピタッ・・・

御坂『というか香ちゃん、昨日何してた? 学校来る筈じゃなかったの?』ハァ・・・

香焼「その予定だった…です。けど、その」ウーン・・・

御坂『ったく、来難いのは分かるけど昨日の内に一報くらい欲しかったわね。アイツ抑えるの大変だったんだから』フゥ・・・

香焼「す、すいません!」アワワワ・・・


何でも『私の鈍感力の所為で香ちゃんが失踪しちゃったああぁ!!』とか半ば発狂してたそうな。
鈍感とかじゃねぇし大袈裟な、と言いたいところだが……迷惑を掛けた以上、僕も反省すべきだ。


御坂『今度クレープでも奢りなさいよ――― オネェサマー! オジカン ギリギリデスノー! ―――っと……こんな時間か』スッ・・・

香焼「あ。登校前に長々すいません」ペコッ

御坂『ううん、大丈夫。で、今日は学校来るの?』ジー・・・

香焼「……、」ムゥ・・・

御坂『無理強いはしないけど、長引かせない方が良いと思うわよ。こういうのって時間が経てば経つ程気拙くなるから』フフッ

香焼「ええ、早めに何とかしたい…です」コクッ

御坂『OK。とりあえず、学校来たら連絡頂戴。一人でアイツに会い辛いっしょ。多分アイツもそうだろうし』ハハハ・・・

香焼「お願いします……あ、操祈さんに連絡入れた方が良いでしょうか?」モジモジ・・・

御坂『んー、止めた方が良いよ。昨日は全校生徒「洗脳(使役)」して香ちゃん捜索するつもりだったもの』ヤレヤレ・・・

香焼「うぇ!?」ダラダラ・・・

御坂『勿論止めたわ。でも、香ちゃんの声聞いたら何しでかすか分からないぞー。良いの?』ジトー・・・


大人しく御坂さん(ストッパー)の仰る通りにします。

御坂さんとの通話を終えた後、リビングに戻り姉さん達を見遣る。そろそろ起きそうなのかモゾモゾ動いてはいるが声は掛けないでおく。
とりあえずパッパとシャワーを浴びてしまい『香』の支度する。夜更かしの所為か、いつもより化粧のノリが悪い。

しかしあーだこーだと愚痴ってはいられない。
一通り準備は済ませ静かにリビングへ戻ると……いつの間に起きていたのか、膝にもあいを乗せ黙々と新聞を読む姉さんの姿があった。


香焼「……おはようございます」ペコッ

神裂「おはよう」ジー・・・

もあい「にゃう」ゴロゴロ・・・


相変わらず新聞を読んでる最中は視線を外さない人だ。凛々しいのだが、多少怖くもある。
リビングで伸びてる五和と浦上を起さぬ様、静かにキッチンへ移動し朝食の準備をする。


神裂「常盤台へ行くのですか?」パラッ・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・

神裂「制服」チラッ・・・

香焼「あ、はい。そのつもりっす」コクッ

神裂「そうですか」フイッ・・・


多くは語らず、また新聞に目を移す。


神裂「電車は控えなさい」パラッ・・・パラッ・・・

香焼「……えっと」ポリポリ・・・

神裂「昨夜、言ったでしょう。『香』で行く以上は細心の注意を払いなさいと」パラッ・・・

香焼「ではバスで」ウーン・・・

神裂「できればタクシーで行った方が良いと思いますよ」パラッ・・・

香焼「流石にそれは」ハハハ・・・

神裂「もしくは五和が起きたらバイクで送って貰いなさい。別段、今日は急ぎという訳ではないのでしょう」トンッ・・・


確かにそうなのだが、五和に申し訳ない。


神裂「そのくらいの事なら二つ返事でしてくれる筈です。少しは甘えなさい」フフッ

香焼「……分かりました」ムゥ・・・

もあい「みゃん」コロンッ・・・


ソファの下に転がる五和と浦上を見遣る。放っておけば昼まで寝てそうだ。


神裂「貴方も少し寝たら如何です。全然寝てないのでしょう」ピッ・・・

香焼「そういう姉さんこそ」チラッ・・・

神裂「私は不眠不休で3日は動けますから。兎角一、二時間だけでも目を瞑って横になれば大分違うでしょう」クイッ

香焼「……、」ポリポリ・・・

神裂「それとも、もあいの様に膝枕でもしてあげましょうか。子守唄付きで」クスッ

香焼「なっ!」アタフタ・・・///

神裂「ふふふっ、冗談です。自室で休んで来なさい。昼前には起してあげますから」ニコッ

香焼「もぅ……では、お言葉に甘えます」ペコッ

神裂「うん。素直で宜しい」コクッ


結局、促されるがまま自室に戻った。そして御坂さんに午後から登校する旨を伝えた後、化粧を崩さぬ様横になった。

 ―――さる翌々日、PM00:30、学園都市第7学区、学舎の園・常盤台中学、中央廊下・・・???side・・・



  ワイワイガヤガヤ・・・・・キャッキャウッフフ・・・・・ムッキュンムッキュン・・・・・キャピキャピ・・・オネエサマ~・・・・・ビリバリバジンッ!!



御坂「―――やれやれ。そろそろか」チラッ・・・

白井「ケフッ……オネエサマ。ドコヘイカレマスノ」プスプス・・・

御坂「んー……って黒子、保健室行ったら? やっといて何だけど、口から煙出てるわよ」ハァ・・・

白井「ボフッ……あ”~……大丈夫ですの」ブルンブルンッ!

御坂「驚異的な回復力……まぁアンタの自業自得だしね」ジトー・・・

白井「んもぅ。フランクな抱擁くらい慣れて下さいませ。欧州では挨拶ですのよ」ンフフッ

御坂「服の上からブラのホックを外しに掛るハグがあってたまるか。次やったら口に指突っ込んで電流流す」ッタク・・・

白井「そ、それはそれで魅力的……あ、冗談デスノ」ハハハ・・・

御坂「ケッ……しかしまぁ、あの子も私くらいやり返せれば困んないのにね」ポリポリ・・・

白井「へっ?」キョトン・・・

御坂「何でもない。さてと……ついてくるの?」チラッ・・・

白井「何を今更」ジー・・・

御坂「はいはい。理由なんか無くてもついてくるものね。あ、因みに食蜂んとこよ」テクテク・・・

白井「ヴぇっ!?」ウゲェ・・・

御坂「ははは。だから言ってるのに」ケラケラッ

白井「ぐぬぬぅ……ま、まぁお姉さまのお傍から離れなければ大丈夫な筈。だから0距離で居て下さいませっぐぺっ!!」バジンッ!

御坂「お望み通り電磁バリア張ってあげたわよ。常人じゃ触れられないレベルのね」スタスタ・・・

白井「んなんのぉ……これしきぃ……だぅっ!」プルプル・・・


   にゃーん・・・・・


御坂「さぁてと、行きますか」コンコンッ・・・

白井「女王蜂の図書館(テリトリー)……碌な思い出がありませんの」ウヘェ・・・

御坂「今の食蜂はタダの蟻ん子みたいなモンよ。でも、とりあえず私から半径3m以内に居なさい―――被っ着いたら焦がすけど」ギイィ・・・

白井「あいあいまむ」ウヘヘ・・・

御坂「ホントに分かってんだか―――(ん? 人が居る……『結界』張ってないの?)―――食蜂は?」キョロキョロ・・・

白井「ふむふむ……居ませんの」ジー・・・

御坂「いつもの司書室かな―――居ない」アレ??

白井「まぁ元より気分屋で有名ですし、お腹空いたから食堂にでもフラッと足を向けたのやも」チラッ・・・

御坂「んー、今(放心状態)のアイツが此処から動くとは思えないなぁ」フム・・・

白井「では寮から出てないのでは?」ムムッ?

御坂「寮監に確認したのよ。ちゃんと登校したって言ってたわ」ウーン・・・

白井「となると、ますます分かりませんの」ポカーン・・・

御坂「どうしたものか……って、ん?」チラッ・・・


  バンッ!!


縦ロール「―――女王っ! 食蜂様っ!! ドチラに居ますかっ!!」



  ジョウオウサマー!! クイーンッ!! ショクホウサマー!! ドコデスカーッ!! ギャーギャーギャーッ・・・・・


白井「ありゃりゃ。派閥の面々もお探しで」チラッ・・・


縦ロール「―――えぇいっ! まだ見つからないのですか!」イライラ・・・

簪眼鏡「A~G班からは『未だ見つからず』との報告です……はぁ」オドオド・・・

縦ロール「情けない……これだけの人数を動員して手がかりの一つも無いとは! 何と嘆かわしいっ」ムギギッ・・・

小柄短髪「やはり、風紀委員か警備員へ連絡を入れた方が良いのでは」ボソッ・・・

縦ロール「くっ……極力それは控えたい所ですが、この際―――むっ」チラッ・・・


御坂「うわっ。目ぇ合った」タラー・・・

白井「いやいや。今は別段、お姉さまが絡まれる由縁はございませんの。もしそうだとしても私が露払いとしての真価を発k―――」

縦ロール「丁度良い所に!」テクテク・・・

御坂「うぇっ! わ、ワタシナニモシラナイヨー―――」スッ・・・

縦ロール「白井さん! 恥を忍んでお願いがあります! 女王が行方不明なのです!」テクテク・・・

白井「―――しぁ、、、ぁんですって?」キョトン・・・

小柄短髪「何て良いタイミング! さぁ白井さん! 是非ともお手伝いを!」バッ!

簪眼鏡「癪ですが風紀委員のエースたる白井さんなら力になってくれる筈ですね……さぁ行きましょう!」グイグイッ!

働き蜂's『お願いします!』ワーワーッ!!

白井「ちょっ待っつぇうぇぃいっ!! あ、お、お姉さまぁああああぁ!!」アーレー・・・


  ワッショイワッショイ・・・・・ア、ミサカサンモイタ・・・ベツニイインジャネ・・・・・ワッショイワッショイ・・・・・


御坂「―――む、無視……まぁいっか。それよりどうしよう。冷静に考えりゃ食蜂に電話すりゃ良いんだけど、連絡先知らないしなぁ」ウーン・・・


    Prrrr・・・


御坂「非通知? こんな時に誰よ……はい、もしもし。ドチラさまで」Pi!

???『―――失礼。電磁シールドを切って――せんか、と――はお願いします。磁場が強力過ぎて中和――電話が出来――んよ』ジジジ・・・

御坂「へっ? あ、忘れった……って、だから誰よ」ムッ・・・

御坂?『―――は「妹」の一人です。挨拶はさておき、食蜂操祈についてです』ピリッ・・・

御坂「妹って、妹達(シスターズ)? え? 何で? 何ったの?? しかも食蜂!?」グルグル・・・

御坂?『彼女が先程「学舎の園」から出て北へ向かったとの情報を得ました。行き先は不明です、とミサカは報告します』サラッ・・・

御坂「ま、待って! ちょっと整理させて……貴女個体番号何号? あと何で食蜂について知ってるのよ? それと何で私にその情報を―――」

御坂蛇『名は「蛇」とだけお教えします。何故知っているかは秘密事項。御姉様(オリジナル)に伝えるのは義務だから。以上です』キッパリ・・・

御坂「へ、蛇? 個体番号聞いたのに意味分かんないんだけど。しかも私の連絡先どうやって……と、兎に角私は如何すればいいの?」キョトン・・・

御坂蛇『現在彼女を追跡してるので、御姉様はミサカが送ったポイントへ向かって下さい。メールで指示します……今第一信号を送りました』Pi!

御坂「マジで来た……えっと妹を疑う真似したくないんだけど、変な罠とかじゃないわよね?」タラー・・・

御坂蛇『勘繰りは妥当だと判断します。ただこれは他愛無い人探しに過ぎません……もし不安なら御坂妹(10032号)に確認をば』コクッ

御坂「わ、分かった。信じる」ポリポリ・・・

御坂蛇『ありがとう。因みにそろそろ神埼香という少女が到着するので合流して下さい、とミサカは指示を出し電話を切ります』オーバー・・・

御坂「え、あ、ちょい待って……切れた。よく分かんない妹(娘)ね。んー、一応香ちゃんに確認取っとくか―――」Pi!


   わんわんおー・・・・・


御坂「香ちゃん、電話出れないって事は電車かバスの中ね。とりあえず綿辺先生には連絡したから午後の授業は問題無いとして―――」Pi!

御坂「―――蛇って妹、私からのコールは出ないか。しっかし何号なんだろ。メールで御坂妹(10032号)に聞いてみよ」カチカチ・・・


    ブロロロロロォ・・・・・


御坂「そいやぁ香ちゃん何処で待てば良いんだろ。校門で良いのかな……って、何アレ?」ジー・・・


五和「―――、」ブォンッ!!

香焼「――――っ!!」アbbb・・・


御坂「」Wao...


    キキイイィッ!!


五和「―――ふぅ。到着」スタッ・・・

香焼「―――……飛ばし過ぎ」グデェ・・・

五和「急いでたんでしょ。一応法定速度守って跳ばしたんだから文句言わないの」ヤレヤレ・・・

香焼「あんな細い裏道60キロ出す馬鹿が居るか! メットごと首捥げるかと思ったっての」ヨレヨレ・・・

五和「貧弱貧弱ーっ……って、あっ」ピタッ・・・


御坂「ふぇ」ピタッ・・・

香焼「えっ……御坂さんっ!? こ、こんにちは! 遅くなってすいません!」アタフタ・・・

御坂「お、おぅふ」コクッ・・・

香焼「待っててくれた…ですね。えっと……こっちは僕の姉…です?」クイッ

五和「えっ! いきなり!? しかも疑問形って……ど、どうも。噂はかねがね」ペコッ

御坂「あ、はい。こんにちは……ん? 何処かで会った事あるような」ジー・・・

五和「っ!? ま、またまたぁ。気の所為じゃないですか? (あ、あの時かっ!!)」オドオド・・・       ※16巻

香焼「あーきっと姉も学舎の園の中の高校に通ってるので見かけた事アルノカモー」シドロモドロ・・・

御坂「そう、かな? しかし……随分アグレッシブなお姉さんね。バイク通学ですか?」ハハハ・・・

五和「ちゃんと学校の許可は取ってますよ。それじゃあ、私はこれで」イソイソ・・・

香焼「うん。助かった」チラッ・・・

五和「いえいえ。じゃあまた連絡頂戴ね」ブロロロロッ・・・


  バババババババッ・・・・・


御坂「大人しそうな顔して新型の改造ビックスクーターとは。人は見た目に依らないわね」ポリポリ・・・

香焼「アレは生粋の変人…ですよ。姉の事は置いといて―――色々ご迷惑をおかけしました」ペコッ・・・

御坂「えっ。ううん大丈夫。それより食蜂なんだけど、アイツ今学校居ないみたい」ハァ・・・

香焼「はい?」ポカーン・・・

御坂「よく分かんないけど北に向かったとか。妹……じゃなくて知人の情報なんだけど。香ちゃん、もしかしてアイツに連絡した?」ハハハ・・・

香焼「(妹? 蛇さんかな……メール確認しないと)いえ、してません。どうします? 追い駆けますか」タラー・・・

御坂「そうね。とりあえずアイツに会わない事には話始まんないもんね……面倒だけど、探しましょ。授業は大丈夫?」クイッ・・・

香焼「大丈夫…です。行きましょう―――(北に向かったって……何のつもりだ? というか操祈さん、一体何考えてるんすか)」モゥ・・・

 ―――さる翌々日、PM02:30、学園都市第7学区、窓のないビル付近・・・???side・・・


     ガヤガヤ・・・ドヨドヨ・・・ワイワイ・・・・・


???『―――しかし、どういうおつもりですカ?』ヤレヤレ・・・

食蜂「……、」ジー・・・

???『いきなりこの「女性」の居所を探して欲しいと来た時は驚きましたヨ。貴女、彼女が何者か御存じデ』ジー・・・

食蜂「興味無いわ」サラッ・・・

???『では何故?』キョトン・・・

食蜂「詮索されるのは嫌いよん。今の私と貴方は依頼者(クライアント)と傭兵(アドバイザー)の関係……でしょ」トントンッ・・・

???『確かに確かに。しかし彼女は貴女の手に負える様な人物ではないか―――』

食蜂「カイツさぁん……Mr.カイツ=ノックレーベン」ピタッ・・・

カイツ『―――ト……はいはイ』フム・・・

食蜂「宜しい★ ちゃんとお金は振り込むから安心して♪」ニコッ・・・

カイツ『その点は心配していませんヨ。前金であれだけ頂ければ充分過ぎまス……しかし、だからこそ忠告させて下さイ』ハァ・・・

食蜂「あのねぇ。私は『彼女』が何者だろうと、どんな危険人物だろうがぁ知った事じゃないのよん」クルッ・・・テクテク・・・

カイツ『ですが、あの「カンザキ」という女性はタダモノではないのでス。最悪、貴女の身に危険が及ぶやも』ムゥ・・・

食蜂「だぁからっ! 別に喧嘩しに行く訳じゃないのよっ。寧ろその逆……それにあの女が『バケモノ』だってのは十も承知だわ」フフッ・・・

カイツ『会った事があるのですネ。予想ですがテレパスの類は通じないでしょウ……って、まさか友達になりに行く気じゃ』タラー・・・

食蜂「ああいう精神力が私並もしくはそれ以上の人間とお友達になる気はないわん。ちょっとした挨拶はするかもしれないけどねぇ」テクテク・・・

カイツ『だから何のおつもりデ?』ハァ・・・

食蜂「詮索は無しよぅ。まぁホントは香ちゃんの居所を探してくれれば手っ取り早かったんだけど」ムゥ・・・

カイツ『またその「カオル コウザキ」とやらですカ。そんな人物この世に「存在しない」と何度も伝えた筈でス』ヤレヤレ・・・

食蜂「……、」チッ・・・

カイツ『まったく……兎に角、無茶はしないで下さイ。貴女の存在価値は貴女一人のモノではないのですかラ』キッパリ・・・

食蜂「貴方のそういうストレートな言い方好きよ。それより今度の情報は確かなのよね? 都市立の国際ホテルには居なかったわよん」ジトー・・・

カイツ『絶対居るとは言えませン。何せ幾つも拠点(セーフハウス)を持っている「指導者」ですかラ』ジー・・・

食蜂「『指導者』か。嫌な響き」フーン・・・

カイツ『あくまで「アレクサンダー」は名前を置いている(チェックイン)場所に過ぎなかったのでしょウ』コクッ・・・

食蜂「そうみたいねぇ……とりあえず一旦切るわ。次で当たらなかったらまた電話するから―――」Pi!

カイツ『ええ。お気をつけテ』Pi!


  ピーヒョロロロロォ・・・・・


タクシーの運ちゃん「―――お姉ちゃん、そろそろ第1学区だよ。何処らで降ろせばいいの?」チラッ・・・

食蜂「第1と第7の区境のマンション……『ニューディレクターズ』―――この辺で良いわぁ。これ運賃。おつりはチップよん☆」コクッ・・・

運ちゃん「あいあい。毎度ー」ニコニコッ・・・

食蜂「まぁたねー♪ よーし―――私の探索力舐めるなよっと★」Pipp!


  ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・・・


カイツ「―――やれやれ、我儘で道楽なお姫さまですネ。困ったものでス……さて、理事に伝えるべきか否カ」ウーン・・・

カイツ「ま、プライベートという事ですし目を瞑りましょウ。多少危ない会合ではありますが自己責任ですヨ。女王蜂さン―――」グデェ・・・

  ―――一寸後・・・・・


食蜂「―――このマンションね。理事会の役員候補生達の寮かぁ」テクテク・・・チラッ・・・

食蜂「調べによると部屋の番号は712号室……さて」キョロキョロ・・・


管理人「―――、」パタパタ・・・


食蜂「あのオジちゃんを操っても良いけど……まずは正攻法で行きましょう」Pi!


 ピンポーン・・・・・


??『はい、ドチラ様でしょう』ガチャッ・・・

食蜂「(この声は……あの女ね)―――こんにちは。私、食蜂といいます」ペコッ

??『……おや?』カチャッ・・・

食蜂「香ちゃん……神埼さん、居るかしら?」ニコッ

??『いえ。先程学校へ向かいましたが、会いませんでしたか?』アララ・・・

食蜂「えっ」ピタッ・・・

??『まったく、あの子ったら……とりあえずどうぞ。今開けます』Pi!


  ウィーン・・・・・


食蜂「えっとぉ入れ違い。どうしましょ」ポリポリ・・・

食蜂「(香ちゃん、詮索する気は無いけど……これは不可抗力よね)―――お邪魔しまーす」テクテク・・・


  チーン・・・7カイデス・・・・・


食蜂「一番奥の部屋。此処ね」ジー・・・ピンポーン・・・・・


 ギャーギャー・・・ワーワー・・・・・


食蜂「随分騒がしいけどぉ……お客さんでも来てるのかしら。あ、お姉さんが3人居るって言ってたから他の二人かも!」ティンッ・・・


  ガチャッ・・・


食蜂「粗相が無い様にしなきゃねっ☆ えっとぉ、こんにち―――」


麦野「     はぁい♪     」ニコォ・・・


食蜂「―――は……ぉうふっ」バタンッ!!

食蜂「……、」ダラダラ・・・

食蜂「部屋、間違えちゃったっ★」タラー・・・


麦野「間違ってないわよ」ガシッ・・・

食蜂「きいゃあああああああああああああああああぁ!! 妖怪鮭光線婆っ!!」アbbbbb・・・・・

麦野「よしっ。死ねっ♪」キュイイイィンッ・・・

神裂「止めなさいっ! 二人とも落ち着いて!! 諸方面から怒られます!!」ヤレヤレ・・・

絹旗「超馬鹿ばっかですね」フゥー・・・

もあい「なー」グデェ・・・

  ―――一方、香焼side・・・・・


操祈さんが行方を晦ました。唐突で掴みどころが無いのはいつもの事だが、振り回される側としては堪ったモノではない。
それに、僕はまだしも御坂さんに迷惑を掛けるのは忍びないというか、ホント申し訳無い。


御坂「気にしないで。乗り掛った船だし。それよりアイツ何処行ったか見当はついてるの?」チラッ・・・

香焼「何となくは。でも確信はありません」タラー・・・

御坂「うん?」ポカーン・・・

香焼「もしかしたら僕の事探しに出たのかも」ウーン・・・

御坂「あぁ。充分考えられるわね」ハハハ・・・

香焼「とりあえず妹さんから連絡が来るまで動きは取れません。最寄駅まで歩きましょう」コクッ・・・


蛇さんの話から推測するに、タクシーで『窓のないビル』より北へ向かったという事は多分、僕(香焼)の家に向かったのだろう。
だとしたら第1学区へ戻らなくてはならない。バスや電車は使うなと注意されたが、この昼の時間なら大丈夫だろう。それに御坂さんも居る。


御坂「そうね。そういえば香ちゃん、アイツに一報入れた?」チラッ・・・

香焼「一応」ポリポリ・・・

御坂「何て?」フム・・・

香焼「その……『先日は激昂してごめんなさい』って打ちました」ムゥ・・・

御坂「それだけ?」エッ・・・

香焼「えっ? あ、はい。あとは直接会って話そうかと」コクッ・・・

御坂「ちゃんと今日登校する事伝えた?」ジー・・・

香焼「……あっ」ピタッ・・・

御坂「おばか」ヤレヤレ・・・


抜かった。


御坂「ったく。今からでも遅くないわ。連絡なさい」ハァ・・・

香焼「はい」ポリポリ・・・

御坂「あ、因みに私にもアイツの連絡先教えといて。無いとこの先不便だから」ヤレヤレ・・・

香焼「連絡先の交換してない…ですか?」キョトン・・・

御坂「だって別にプライベートで遊ぶ事無いもの。公用なら直接会ってやり取りするし」サラッ・・・


随分ドライな関係だが、皆が皆仲良しこよしという訳でもないから仕方あるまい。
さておき、電話を掛ける―――1コール、2コール、3コール……


香焼「出ませんね」フム・・・

御坂「電源切ってるか電車バスの中か。アイツ、後者だったら普通に出そうだけどね」ハハハ・・・

香焼「流石にそこまで非常識じゃないと思いますよ……あっ」Pi!

御坂「出た?」ムッ・・・

香焼「ええ。もしもし、操祈さ―――」


食蜂『香ちゃん助けてえええええぇ!!』キャアアアァッ!!


香焼・御坂「「―――っ!?」」ギョッ・・・


悲鳴。絶叫。二人して鼓膜が破れるかと思った。

電話越しに聞こえるドタバタ騒ぎ。思わず耳を遠ざけてしまったが、それどころではない。


香焼「み、操祈さん!? どうした…ですか!? 今何処に―――」アタフタ・・・

食蜂『わ、やっ! ヤバいのぉ! マジで殺されちゃうわああぁ!!』ギャアァ!!  Pipp!

??『痛っ……五月蠅ぇ黙れっつってんだろ糞女ァ!! 誰が取って食うなんつったボケぇ!!』ギャースッ!

食蜂『いやああぁ!! 犯されるううううぅ!!』ピギャアアァ!!  Pipp!

??『い”っ! あーもぅ! その壊れたスピーカーみてぇな口溶接すっぞっ!!』ギリギリ・・・


聞き慣れたF口調。


香焼「―――あー」ダラダラ・・・

御坂「うげっ……聞きたくない声ランキング上位の予感」タラー・・・


食蜂『かあああぁおるちゃあああぁんっ! へるぷみいいいぃ!!』ウキャパアアァ!!  Pipp!

??『ぐっ……あああぁ黙れゴラぁ!! いい加減にしないと目に生えたシイタケ引っこ抜くぞ駄阿呆っ!!』ギリギリ・・・


香焼「えっと……多分、ウチに居ますね」ハハハ・・・

御坂「香ちゃん家ではペット感覚で核爆弾飼ってるの?」チラッ・・・

香焼「ぼ、僕じゃなく姉が」タラー・・・

麦野『オイ聞こえてんぞ「カオル」ちゃーん……あと第3位。てめぇら後でガタガタ言わせんからな覚えてろよ』ギロリ・・・

御坂「はいはい忘れた。とりあえず冷静に話出来たりしないのかしら」ハァ・・・


姉さんに替わって貰えれば何とか話が着く。


香焼「姉さーん。聞こえてたら電話替わって下さーい」オーイ・・・

食蜂『ちょ、無視しないで! 私超ピンチな……ってオワァっ!?』ズギューンッ!!  Pipp!

神裂『ちょいとお借りしますよ。あー麦野さん、その花瓶割ったら億単位で弁償ですからね―――お待たせしました』Pi!

香焼「色々すいません。一体何が如何なってます?」タラー・・・

神裂『食蜂さんが貴女を尋ねてウチに来ました。それでもって、運悪く麦野さんとバッタリ』ハハハ・・・

香焼「……どうしましょう」タラー・・・

神裂『正直、家で会うのは止めた方が良いかと。麦野さんが居るのは拙いでしょう。加え、絹旗さんも居ますから』チラッ・・・


確かに。御坂さんが居る現状、超能力者の第3,4,5位を一同に揃えるのは色々と危険だ。


香焼「では第7学区の……『窓のないビル』前駅東口改札前。時間は大体4時半頃で」ジー・・・

神裂『分かりました。伝えます―――香や……カオル。バスや電車を使う気ですか?』ジトー・・・

香焼「えっ。いや、その、今一緒に御坂さんも居ますから大丈夫かと」ハハハ・・・

神裂『止めた方が良い。相手の素性が分からない今、閉鎖空間に踏み込むのは思う壺ですよ』キッパリ・・・

香焼「……善処します」コクッ・・・


しかし人混みの少ないこの時間に、しかも御坂さんが一緒に居て『もしも』の事態なんてそうそう有り得まい。


香焼「それでは宜しくお願いします」コクッ・・・

神裂『……承りました』Pi!


やや呆れ顔の御坂さんにこれからの算段を話し、蛇さんへ一報入れ、僕らは駅へ向かった。

 ―――一方、神裂side・・・・・



多分、あの子は電車を使う気だろう。近くに第3位が居るとはいえ、心配は心配だ。何も無ければ良いが。
さておき、まずは此方を何とかせねば。


麦野「フーッ……フーッ……手古摺らせてからに。こうちゃこまかされるとフレンダ思い出すわね」キラーン・・・

絹旗「フレンダはもっと抵抗しますよ。たかが喧嘩で爆弾とか超使いまくりますから」サラッ・・・

食蜂「あわわわわ……な、何なのよぅ! 私が何かしたの!?」ムギギィ・・・  Pipp!

麦野「ぎっ……別段何もしてないが、お前が気に入らない」キッパリ・・・

食蜂「横暴!? 私何もしてないのに!?」ガタガタ・・・  Pipp!

麦野「いづっ! あのなぁ……テメェさっきから私に能力掛けようとしてんの丸分かりなんだよカスがぁ!!」ウガアアァ!!

食蜂「ひいいいぃ! せ、正当防衛よっ! どうせ効かないんだから大丈夫でしょっ」キャアァアアァ!!  Pipp!

麦野「あ痛っ! だから痛ぇんだよっ! 主に右目と左手がぁ!!」ビリリッ・・・


さっきから一生懸命にリモコンを振ってるこの動作。
ただ駄々を捏ねている様にしか見えないのだが、麦野さん的には結構ダメージを受けているらしい。


神裂「アレ、何やってるんでしょうか?」チラッ・・・

絹旗「多分超『洗脳』とかしようとしてるんじゃないんですか。第5位はそういう能力だって聞いた事あります」ジー・・・

神裂「……リモコンをブンブン振るのが? W○i的な?」キョトン・・・

絹旗「んー。専門外なので詳しい事は分かりませんけど、電波とか粒子とか、そういう類を操ってるんじゃないかと」コクッ・・・

もあい「ふみゃ」イヤイヤ・・・

絹旗「もあいの様子から見ても、あの二人の間に電極っぽいモノが超生まれてますね」ピリット・・・


科学サイドは専門外なのでよく分からないが、要するに喧嘩してると。


絹旗「喧嘩っていうより、互いに根本からして超相容れないってだけだと思いますよ」ハハハ・・・

神裂「なるほど」フム・・・

食蜂「ちょっと冷静に分析してないで助けてよぅ!」アタフタ・・・  Pipp!

麦野「だぅっ!! だぁああぁからっ! リモコン降ろせ馬鹿女郎!! マジでド頭カチ割んぞっ」ギギギッ・・・

食蜂「いやああああぁ!!」ブンブンッ!  Pipp!

絹旗「うぇ―――っ!」ピタッ・・・

もあい「にゃっ」ビクッ・・・

神裂「へっ?」ポカーン・・・


食蜂さんのリモコンが此方に向く。と同時に、絹旗さんが石の様に固まった。


麦野「ぐぬぬぅ……やっと観念したか」フシュウウウゥ・・・

神裂「む、麦野さん。威嚇するのはそれくらいにして―――」

麦野「チッ……ゲンコツの一発でもくれてやらにゃ気が済まないんだけど。勿の論、左手で―――」


本気か冗談か分からないが、麦野さんが食蜂さんに向けて左手を挙げた瞬間……不可解な出来事。


絹旗「えっ!? あ、ちょっ!!」ディーフェンス・・・


絹旗さんが両手を広げて食蜂さんの前に立ち、麦野さんとの間に割り込んだ。

突然の事態に目を丸くする私ともあい、そして絹旗さん本人。
食蜂さんは相変わらず丸まって怯えている。他方、麦野さんは……口を閉ざし、眼を据えた。


麦野「―――おいおい、こりゃ何のつもりかしら」ジー・・・

絹旗「えっ、あっ、いやっ! ちょっと、待ってください! ウェイトっ! 超ストップ!!」アワワワ・・・

食蜂「……、」ブルブル・・・

神裂「―――えっと、なぁにこれぇ」タラー・・・

もあい「なぅ?」ポカーン・・・


状況を理解するまでに十秒近く掛った。要はアレだ。


神裂「もしかして洗脳された?」チラッ・・・

絹旗「いぃイエスっ! 超正解です! 身体の自由利きません!!」ピタッ・・・

神裂「しかし、意識はハッキリしてる様ですね。洗脳……というより『操作』といった具合でしょうか」フム・・・

食蜂(此処に居る連中、揃いも揃って洗脳出来ない?! この娘も変な『フィルター』掛って完璧制御出来ないじゃない!)アワワワ・・・

絹旗「むむむむむ麦野、ちょ、ちょうちょちょちょ超々々ーっ落ち着いて下さい! 別に私、貴女に反抗してる訳じゃないですよ!」ピタッ・・・

麦野「分ーってるわ。窒素装甲(オフェンスアーマー)の自動防御の所為で完全に洗脳しきれないんでしょ。第1位(モヤシ)様々ね」ジトー・・・

絹旗「超嬉しくないですっ! てか分かってるならさっさと助けてくださいよ―――」

麦野「オイ、第5位。今ならデコピン一発で許してやる。さっさとウチのジャリガキ解放しろ。さもねぇと―――」


こういう場合、追い詰められて半狂乱になった人間を更に追い詰めるのは逆効果なんだと悟った。


食蜂「ひいぃっ!」Pipp!

絹旗「―――い”ぃっ! さ、避けてっ!」ブォンッ!!

麦野「―――チィっ!!」ジジジ・・・

神裂「っ!?」ギョッ・・・


部屋の中のモノが風圧(?)で薙ぎ倒れた。始めてみる絹旗さんの『拳』。
彼女の馬鹿力は腕相撲で体験済みだが、もし戦闘に転用するとなると……話には聞いていたが、これほどまでに危険なモノだとは。


麦野「アッタマきた」カチーン・・・

絹旗「ひいいいいぃ!! む、麦野おおぉ!! 私悪くないですっ! 超冤罪っ!!」アbbbb・・・

麦野「動くなよ絹旗……肩貫通させてソイツのド頭風穴開けっから」チュイイイィン・・・

絹旗「いやあああぁ!! 超スプラッターフェイスっ!!」ブンブンッ!

食蜂「あわわわわっ」ガクブル・・・


まったく、堪ったモノではない。


神裂「はぁ……三人とも。あ、絹旗さんは別ですね。少々落ち着きなさい」ヤレヤレ・・・

麦野「待ってろ火織。すぐ終わっから―――」ジー・・・

絹旗「超ヤバいいいぃ!! 麦野の眼は超マジですっ!! 助けて滝壺さああぁん!! 浜面あああぁ!!」ギャースッ!!

食蜂「や、ヤられる前にヤっちゃえいっ!!」Pipp!

絹旗「ひゃああああぁっ!! 死にたくなああぁいっ!!」ブォンッ!!

麦野「―――死んどけ」カアアァ・・・


絹旗さんの見えない拳と、麦野さんの指先から光り出した『危険物』が衝突しようとする刹那―――

  ―――食蜂side・・・・・



第4位は危険。少しでも『裏』を齧っている人間なら誰もが知っている情報だ。
その能力もさる事ながら、最も危ないのはヤツの性格。人の事は言えないが、超が付く程の我儘で、しかも短気。
これに『掃除屋』という職種が加われば、危険じゃない訳が無い。

現に今も、妹分だか仲間だかよく分からないが、身内をブチ抜いて私を殺そうとしてる。


神裂「―――シッ!!」グッ・・・


突然だが、私の能力はただ人間を操るだけではなく、その能力者の記憶やパラメーターにも目を通す事も出来る。
洗脳が完璧でない場合でも、全てとはいわないが微かにでもそれらを見る事が出来た。

現に今操っているこの少女のパラメーターも、ざっくばらんにだが垣間見えている。大気操作系の大能力者。
驚いた……純粋な馬力と防御力だけでいえば都市内でも最上級の能力者だ。


絹旗「にゃっ―――ほぉわあああぁっ?!」グルンッ!!

麦野「ッッ!! ぬをぉおおおおぉっ?!」グギッ!!


この子の『盾』の力をそのまま第4位にぶつけてやれば何とかなる……そんな事を考えた私が馬鹿だった。


絹旗「ひゃっ!!」ヒョイッ!

神裂「よっと……大丈夫ですか?」ガシッ・・・ニコッ

絹旗「えっ!? なっ!? ひぁっ?!」キョトン・・・

麦野「あっ……ひゃんっ!!」ドシーンッ!!


そういうデータとか理屈とか感情とか、全てを引っ繰り返せる程のバケモノが目の前に居た。
第4位が粒機波形高速砲(ビーム)をブッ放す刹那―――もしくはすでに撃ってたかもしれない―――その指先を『握った』。
そして私が操った少女の『拳』を、もう片方の手で『掴み』、衝撃を吸収。
そのまま両手に掴んだ双方の手首を捻り、お手玉でもするかの様に宙へ放り……少女をキャッチした。因みに第4位は放置(ドッシン)。


食蜂「あっ、えっ」キョロキョロ・・・

絹旗「なっ……私、何されたんですか」ポカーン・・・

神裂「ふふっ。別段、何も」ニコッ

麦野「痛ちぃ……こぉんのバケモン女。メガ粒子握って収束させるとか……しかも思いっきし尻打ったわよ」スリスリ・・・

神裂「まったく、自業自得です。大人げないったらありゃしない。今本気で我を忘れてたでしょう……固法さんに言いつけますよ」ジトー・・・

麦野「そりゃ勘弁ね……でもさぁソイツが悪いのよ。確かにプッツンしちゃったのは反省するけど」ムゥ・・・

神裂「充分反省なさい。さて食蜂さん。もしもし、もう大丈夫ですよ。気を確かに」ポンッ・・・

食蜂「……へっ」キョトン・・・


あまりにハチャメチャ過ぎて混乱しまくり。


神裂「彼女はもう攻撃しません。ね? 麦野さん」チラッ・・・

麦野「……ソイツが先に手ぇ出さなきゃね」フンッ・・・

神裂「ふふっ。だそうです」ニコッ

食蜂「あ……ぅ」タラー・・・

絹旗「ちょ、ちょっと! 私もまだ身体の自由利かないんですけど!」グギギィ・・・

神裂「おや? では彼女も解放して下さい。大丈夫、操り人形なんか使わなくても此処には危険はありませんから」コクッ・・・


言われるがままにおチビちゃんの制御を解き、第4位に気を付けながらオドオドと三角座りしてしまった。
無理も無かろう。目の前で語りかけてくる真面目そうなこの女こそ、一番の脅威だと直感力が訴えてくるのだから。

 ―――一寸後・・・・・


  にゃーん・・・・・


神裂「―――粗茶ですが、どうぞ」コトッ・・・

食蜂「……、」コクッ・・・


今の自分の状態を例えるなら借りてきた猫。女王だの超能力者だのという肩書がチャンチャラ可笑しい。
悔しいがMr.カイツの言うとおり、目の前の女はタダモノでは無かった。


食蜂「……、」チラッ・・・チラッ・・・

神裂「安心して下さい。毒なんか入ってませんよ。それともコーヒーか紅茶の方が好みでしたか?」ジー・・・

食蜂「いや、そういう事じゃなくて」モジモジ・・・


何というか、ばつが悪い。加えて―――


麦野「ガルルルルルルルルルルルルゥ」ジトー・・・

絹旗「フシャアアアアアアアアアアアァ」ジトー・・・

もあい「なぅ?」トコトコ・・・


―――もの凄い威圧力を感じる。
図々しい態度で香ちゃんのお姉さん(カンザキ)の後ろのソファに横たわり、私を睨み続けてる第4位。
そして私の背後の和室からひょっこり頭だけを出し、怯え半分、威嚇半分で私を睨んでいるおチビちゃん。


神裂「ハァ。麦野さん」チラッ・・・

麦野「何よ。何もしてないでしょ」ジトー・・・

神裂「怖いそうです」ヤレヤレ・・・

麦野「私が怖いとか眼ぇ腐ってんじゃないの? マジでブ殺確ね」グルルルゥ・・・

食蜂「ひぃ!」スッ・・・

神裂「だから止めなさい。食蜂さんもそのリモコンしまう」マッタク・・・

麦野「チッ」フンッ・・・


相変わらず鋭い眼光は向けてくるものの唸りを止めた原子崩し。


神裂「絹旗さんも。もう彼女は何もしませんから」ヤレヤレ・・・

絹旗「超信用できません」フシャーッ・・・

神裂「では私が保証人です。もし彼女が貴女に何かをしたら彼女の首を刎ねますから」サラッ・・・

絹旗「……分かりました」ヒョコッ・・・


トコトコ此方に向かってくるおチビちゃん。今何気にトンデモ無い事言わなかったかなぁ。


食蜂「わ、私、積んだ?」ダラダラ・・・

神裂「失礼、モノの例えですよ。それに貴女に傷を付けたら香が悲しみますから」ジー・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・

神裂「とりあえず一服してください。麦野さんも、絹旗さんも、ね」チラッ・・・

麦野・絹旗「「はーい」」ゴローン・・・


何事も無かったかの様に茶碗に手を伸ばす二人―――後で聞いて驚いたが、この家ではこのくらいのトラブルは日常茶飯事だとか。

緊張していてお茶の味がよく分からない。時偶第4位やおチビちゃんに視線を振ってみるが、幸か不幸か、最早私に興味は無い様だ。


神裂「やはり紅茶の方が口に合いますか」ハハハ

食蜂「えっ。いや、そういう訳じゃ」チラチラッ・・・チビチビ・・・

麦野「存外肝小さいのな」パラッ・・・パラッ・・・

食蜂「むっ」ジトー・・・

神裂「やれやれ。口が悪い」ハァ・・・

絹旗「御淑やかな麦野とか超鳥肌立ちますよ」ゴローン・・・

神裂「まぁそれもそうですね」フフッ

もあい「にゃー」コクコクッ

麦野「被爆させっぞコラ」ギロリ・・・


第4位相手に悪態を吐けるとか、流石アウェイ。ある意味尊敬する。
さておき、この状況如何したものか。出来る事ならさっさと抜け出して香ちゃんの所へ向かいたい。


神裂「そういえば真面目に御挨拶をするのは初めてでしたね。香の従姉の神裂火織といいます」ペコッ

食蜂「あ、はい。どうも御丁寧に……食蜂操祈です」ペコッ・・・

麦野「オマエの敬語も虫唾奔んな」ブルッ・・・

食蜂「う、五月蠅いわよぉ。少し黙ってて」ウー・・・


第4位は別として、一応年上だし……可愛い後輩のお姉さんだし。あと私よりおっぱい大きいし。


神裂「ふふっ。マナーとしては正しいですが、普段通りで構いませんよ。香からは誰に対してもフランクな女性と聞いてましたから」ニコッ

食蜂「あー……じゃあそうさせて貰おうかしら」チラッ・・・

絹旗「あのー。さっきから超気になってたんですけど、第5位って香の何なんですか?」チラッ・・・

神裂「あぁ。彼女は香と同じ常盤台の先輩で―――」

麦野「アイツの『彼女』だ。『お姉さま』的な意味で」サラッ・・・


そんなところです。


絹旗「えっ……にゃあああぁんですとおおぉ!? か、香って、その、えっと『白井』的な『アレ』と同類だったんですか!?」ギョッ・・・

麦野「なんだ、アンタ知らなかったのね。香はガチレズよ。しかもクレイジーでサイコなアレ」ククククッ・・・

絹旗「Oh……人は見た目に依りませんね」///

神裂「―――こらこら、嘘吐かない。絹旗さんも真に受けないで」マッタク・・・

絹旗「うぇ? う、嘘ですか……ちょっと安心しました」ホッ・・・


この子面白い。一家に一匹欲しいタイプ。ペット的な意味でも、ボディガード的な意味でも。


神裂「あぁ。彼女は絹旗最愛さん。香と、此処の家主の香焼と同い年の友―――」

麦野「香の従兄(?)のカキタレだ」サラッ・・・

食蜂「……、」ジトー・・・

絹旗「かき、たれ? って何ですか?」ポカーン・・・

神裂「―――……もうちょいソフトな嘘吐きましょうよ」ハァ・・・


明らかに嘘だと分かるし、当の本人が理解してないので茶化しの意味を為さない。
因みに、カキタレの意味を教えてあげたが……超赤面して頭から湯気出して第4位を殴ろうとしていた。やっぱ面白い。

さておき、さっきから猫と遊んでいるおチビちゃんは絹旗最愛ちゃんというらしい。
見た目や動きは香ちゃんと似ていて可愛らしいのだが、第4位と懇意にしている所を見るに、彼女もタダモノでは無いのだろう。


絹旗「―――やっぱ麦野の脳味噌は超沸いてんですよ! 放射線で超イっちゃってんじゃないですか!!」フシャーッ///

麦野「おぅおぅ照れ隠し照れ隠し。超真っ赤よ」ニヤニヤ・・・

神裂「こらこら喧嘩しないの。ごめんなさい食蜂さん、いつもの事なのですが中々飽きない様で」ハァ・・・

食蜂「いいえ。楽しいわよん♪」フッフッフッ

絹旗「ぐっ……やっぱ超能力者って超性格悪いですっ」ムギギッ・・・


第4位と一緒にされるのは心外だ。案の定アッチも似た様な顔をしてるし。互いに視線が合い咋にガン飛ばした後、お姉さんの方を見遣る。


神裂「やれやれ……それではそろそろ真面目な話を」スッ・・・

食蜂「それは良いのだけど」チラッ・・・

麦野・絹旗「「んっ」」チラッ・・・

もあい「なぅ?」キョトン・・・


彼女達が居ると話し辛いというか何というか。


神裂「あぁ、そうですね。では其方の本題は後ほど香の所に向かう途中で話をしましょう」コクッ

食蜂「そうして貰えると助かるわぁ」ポリポリ・・・

麦野「なーによ。隠し事ですかー?」ジトー・・・

神裂「人間誰しも聞かれたくない事の一つや二つあるでしょう」チラッ・・・

麦野「……ふんっ」プイッ・・・


この女にも一応デリカシーのデの字くらい察する事が出来る訳か。


神裂「話を変えましょうか。彼女達が居ても差し支えない程度の話題で」フフッ

食蜂「それは良いんだけどぉ……さっさと香ちゃんとこ向かわないのん?」チラッ・・・

神裂「最寄りのバスが来るまでまだ時間がありますからね。あと三十分程は此方でお待ちを」コクッ


長い。第4位を目の前にして私の忍耐力が持つかどうか。


神裂「まぁそう焦らず―――学校での香はどんな感じですか?」ニコッ

食蜂「どんなって、貴女の方が知ってるんじゃないのん?」チラッ・・・

神裂「普段といいますか、家での姿は知ってます。学校での香という意味ですよ」ジー・・・

食蜂「多分普通よん。あ、でもやっぱ普通じゃないのかなぁ」ウーン・・・

神裂「と言うと?」フム・・・

食蜂「私と『仲良く』してる時点で『異常』よねぇ」フフッ・・・

神裂・麦野「「……、」」フム・・・


私を『崇拝する』働き蜂はウジャウジャ居るが『仲良く』している人間は稀少だ。


神裂「その点についても後ほど……とりあえず貴女自身から見たあの子を教えて頂けますか」ジー・・・

食蜂「うーん、随分抽象的な質問ねぇ。まぁ楽しい娘よん。一緒に居て飽きないわぁ。あとはそうねぇ……安心する」フフッ・・・


嘘偽りない本音。
それを聞いてかお姉さんは微笑んだ。他方第4位は眉を顰め、おチビちゃんは子猫と一緒に首を傾げる。

逆に、香ちゃんの家での様子を知りたい所だが。


神裂「家での香は多分、貴女と接している姿と変わりないと思いますよ」フフッ

食蜂「あのまんま?」ヘェ・・・

麦野「ヘタレで弄られキャラってか」ハハハッ

食蜂「そんな感じねぇ」フフフッ


成程。真に裏表が無いタイプか。心を読んでも読まなくても、香ちゃんは香ちゃんと。


食蜂「でもぉ正直危なっかしい娘よねぇ。警戒力が全くない気もするわぁ」チラッ・・・

神裂「ふむ。何故?」ジー・・・

食蜂「話ぶり返して悪いけどぉ。あの子、自分から危険に首突っ込むタイプでしょう? 考え有るんだか無いんだかは分からないけどねぇ」コクッ

神裂「どういう意味ですか?」キョトン・・・


言葉通り、危険に足を突っ込むという意味だ。
まずは無警戒のまま『私(腫れ者)』に近付こうとする度胸。そして、その身を被検体として常盤台に預けている無知力。


食蜂「私に懐いたのはさておき―――香ちゃん、病気なのよね?」ジー・・・

絹旗「えっ、病気?! 超初耳なんですけど」キョトン・・・

神裂「(すみません、麦野さん。合わせて下さい)―――……そうですね。原因不明ですが」チラッ・・・

麦野「(面倒臭ぇ……貸し一よ)―――絹旗、少し黙ってろ」フイッ・・・

絹旗「んー、でも」チラッ・・・

神裂「絹旗さん。あの子が偶に発作を起こすのを見た事ありませんか?」ジー・・・

絹旗「あ、そういえば……いきなり震えるというか超悶えるというか。アレですか」フム・・・


おチビちゃんには内緒の話だったか。まぁいい、続けよう。


神裂「私も専門外なので詳しい事は分かりませんが、確か脳の電気信号系の病気ですね」ジー・・・

麦野「丁度良く常盤台にはお誂え向けの超能力者様(第3,5位)が居るからな。そっちの分野の研究は得意だろ」ゴロンッ・・・

食蜂「……そうねぇ」ジー・・・


何かを隠しているのは明らかだが、心が読めない以上裏が取れない。


食蜂「正直な話ねぇ。私、理事の海原って信用してないの。その『孫』は尚の事ねぇ」ジー・・・

麦野・絹旗「「……、」」ピタッ・・・

神裂「と言われましても、そうなんですか、としか」ポリポリ・・・

食蜂「随分と適当ねぇ。無能力者の香ちゃんを常盤台に入れたのって、あの海原でしょう?」ジトー・・・

神裂「え、あ、そ、そうでしたね」ハハハ・・・


怪しい。


神裂「あー……すいません。正直私もその海原さんとやらをよく知らないのです」ポリポリ・・・

食蜂「知らないであの変態(ヤサオトコ)に香ちゃん預けたのぉ?」ジトー・・・

神裂「恥ずかしながら。ただ、海原さんを紹介してくれた人物はそれなりに信頼置ける人物でして」コクッ・・・

食蜂「それはだぁれ? って、まぁそこまで聞くのは野暮かしらねぇ」チラッ・・・


苦笑するお姉さん。胡散臭さMAXだが……聞くなら本人から聞いてやろう。

さっさと此処を発って香ちゃんに会いに行きたいのだが、こういう時に限って時計の針のペースが遅くなる。
最早一人でタクシー使って目的地に行こうかと考えたが、そういえば目的地を聞いてない事に気付いた。
お姉さんに尋ねても良いが、果たして素直に教えてくれるだろうか……多分無理だろう。この人は、私とサシで真面目な話をしたい様だし。


神裂「……、」コトッ・・・


ふと、Mr.カイツが言っていた事を思い出す。今は飄々と茶を啜っているが、トップシークレットの塊だとか何とか。
確かに先程のバケモノっぷりを見れば並ではない事くらいは分かる。

深入りする気は無いが、多少の世間話程度は構わないだろう。


食蜂「そういえば、お姉さんは何をしてる人なの?」ジー・・・

神裂「えっ」キョトン・・・

麦野・絹旗「「……、」」ピタッ・・・


空気が凍った。至ってフツーな質問をしたつもりだったが、何か拙い事を聞いたか?


神裂「ええっと」ポリポリ・・・

食蜂「あー……聞いちゃダメだったのかなぁ」チラッ・・・

麦野「私に聞かれても」ゴローン・・・

神裂「いえ、ダメではありませんが何と答えたら良いものか」ウーン・・・


悩む事なのか。


絹旗「そういえば神裂さんっていつも家に居る様な」ボソッ・・・

食蜂「学生、ではないみたいだけど」ジー・・・

麦野「見た目はな。かおりさんじゅうはっさぅいぃ痛だだだだだぁ!! あだまわれるううううううぅ!!」ギリギリギリギリ・・・

神裂「私はまごう事無き18歳ですよ」ニコニコ・・・


ぶっちゃけ単位取り切って殆ど暇な大学4年生くらいかと思ってた。


神裂「ったく……まぁ普段がこんな有り様ですから暇人に思われても仕方ありませんね」ヤレヤレ・・・

麦野「ぐぅいてぇ……手加減しろっつの。一応コイツ、飛び級で博士号持ってるぞ。しかも英国の大学の」クイッ・・・

絹旗「そ、そうなんですか!?」ギョッ・・・

神裂「余計な事を……まぁ隠してるつもりはありませんでしたよ。今まで聞かれなかったので」ポリポリ・・・

麦野「学習苑大学トんでケンブリッジ院行ったヤツがよく言う」ハハハ

絹旗「んー……がくしゅーえんとかけんぶりっじってのがよく分かりませんが、飛び級は超凄いですね」フムフム・・・


学習苑の後ケンブリッジという事は……まさかだが、皇族か。
いや、それはありえない。今の皇族に『神裂火織』なんて姓名を持った輩はいない。


神裂「いえいえ。絹旗さんの方が凄いですよ。その歳で大能力者なんて私の何倍も凄い」フフッ

絹旗「えっ! い、いやぁそれほどでも―――」ニヤニヤ・・・

麦野「私は既に超能力者だったけどね」サラッ・・・

食蜂「癪だけど同じく」サラッ・・・

絹旗「―――、」チーン・・・

神裂「……空気読んで下さいよ。大人げない」ハァ・・・


悲しいけど、これが現実なのよねぇ。あぁ残酷なり――― 素養格付(パラメータリスト)。

さておき、話の続き。実際何をしている人なのか。


神裂「今、ですか? そうですね……うーん」ポリポリ・・・

食蜂「ええ。差し支えなければ教えて貰えるかしら」ジー・・・

麦野「……、」ゴローン・・・

絹旗「えっと……麦野」ボソッ・・・

麦野「あん?」チラッ・・・

絹旗「私、席外しましょうか」タラー・・・

麦野「……、」ボー・・・


おチビちゃんが戸惑いの色を隠せない御様子。これまた怪しい。


神裂「絹旗さん、気を使って貰わなくても大丈夫ですよ」フフッ

絹旗「えっ。あ、いや、その」ポリポリ・・・

神裂「そうですね。自分で言うのも難ですが色々肩書きがありまして……名刺お渡ししましょう」スタッ・・・


立ち上がり別室へ消えるお姉さん。姿が消えた刹那、第4位が口開いた。


麦野「売女……余計な詮索すんな」ジトー・・・

食蜂「あら。私はただの世間話をしただけなのに」サラッ・・・

麦野「喧しい。もし仮にテメェが私の『日常』ブッ壊したら……分かってんだろうな」スッ・・・

食蜂「おぉ怖い怖い。深読みし過ぎよん……此処で喧嘩はタブーじゃなくてぇ?」スッ・・・

絹旗「あ、ぅ、ぇと」アタフタ・・・

もあい「みゃう」キョロキョロ・・・


それは此方としても同じ事。もし彼女が私の『領域』を脅かす者であれば、黙っていられない。


神裂「お待たせしました……と、おや」チラッ・・・

麦野「……ふんっ」ゴローン・・・

神裂「やれやれ―――はい、此方で。あ、絹旗さんも見て大丈夫ですよ」スッ・・・

食蜂・絹旗「「んー」」ジー・・・


 『 株式会社 天草興産 総務部長 神裂火織 』

 『 英国外務省 学園都市交流大使館  大使補佐 神裂火織 』


食蜂「天草、興産? それでもって……英国外務省ぉ??」キョトン・・・

神裂「ええ。学園都市と提携している企業の一つです。主な分野は食料供給ですね。あとは多少の出資でしょうか」コクッ

絹旗「そーむぶちょーって……超偉い人ですよね。あと外務省って」チラッ・・・

神裂「ふふっ。ただ暇なお姉さんって訳じゃないんですよ」クスッ

麦野「だーから前々から言ってんでしょー絹旗ちゃん。火織はガチで金持ってんのよ」クイッ・・・

神裂「貴女も負けず劣らずでしょう。因みに興産の執行役員と大使館の大使はステイルですよ」フフフッ

絹旗「う、嘘ぉ!? あの超ヤニ臭根暗陰険ノッポ似非神父が偉い訳ありません!! というか人纏めたり外交とか超無理でしょう!」タラー・・・

神裂「えっと……あはは」ポリポリ・・・


此処に居ない誰かがディスられてるみたいだけど、あまり興味無いから聞き流す。

しかし、この街の提携企業の総務部長とは恐れ入った。
学園都市と提携できる企業は、規模の大小は問わずとも、諸々の厳しい条件をクリアした敏腕組しか入り込めない。


神裂「もし疑わしければ弊社や外務省に問い合わせてください。裏は取れますよ」コクッ

食蜂「こんな大それた嘘吐くだなんて思ってないわよん……因みに、もっと肩書きがあるのね?」チラッ・・・

神裂「えぇまぁ……すいません。今はそれくらいしか名刺を持ち合わせてなくて」ポリポリ・・・

麦野「オイ」ギロッ・・・


オッカナイ人に睨まれたのでこれ以上は詮索しない。


神裂「機会があれば公的にも顔を合わせるでしょう。その時は宜しくお願いしますね」ニコッ

食蜂「ええ。是非に♪」ニコッ


一応此方も営業スマイルで返す。若くして社交慣れしてる様子だが、相当苦労を積んでるのだろう。


食蜂「あ、そういえば第4位(こっちの)とは如何いうお付き合い?」クイッ・・・

麦野「こっちの……てめっ」ギロリ・・・

食蜂「だってぇ。自分で言うのも難だけどぉ。そう易々と超能力者とお友達どころか知り合いにもなれないじゃなぁい」ジー・・・


正直、この狂犬と交友関係がある時点で疑いの眼は解けない。


神裂「本当にプライベートですよ。知り合ったキッカケも偶然で、出会った場所は第7学区の街中ですし」ハハハッ

食蜂「……、」チラッ・・・

麦野「マジよ、大マジ。その証拠にこの前、普通に買い物してたでしょ。あの時風紀委員(ジャッジメント)のダチも居たし」フンッ・・・


※前話のおまけより。電化製品店にて遭遇。


食蜂「へぇ……意外ねぇ。日和ったのん?」ジー・・・

麦野「悪い?」ケッ・・・

食蜂「いいえ。貴女も私と同じタイプだと思ってたからちょっとねぇ。ぶっちゃけ孤高気取りかと思ってたわ」フフッ・・・

麦野「ふんっ。私ってこう見えて社交的なの。どっかの誰かさんみたいに操り人形に囲まれたお山の大将とは違うのよー」ゴローン・・・

食蜂「っ……理事会の操り『道具』筆頭だったくせによく言うわねぇ。おチビちゃんもそのお仲間かしらぁ」サラッ・・・

絹旗「っ!!」グッ・・・

麦野「オマエ……殺されてぇみたいね」ピタッ・・・


神裂「二人とも」ギロッ・・・


食蜂・麦野「「……、」」チッ・・・


やはり彼女とは相容れない。


神裂「絹旗さん、気を病まずに……まったく、どうしてこう血の気が多いのやら。固法さんや香が居ないと冷静になれませんか?」ジトー・・・

絹旗「い、いえ。気にしてませんから」ハハハ・・・

麦野「ふんっ。美偉の名前出すのは反則よ」ゴローン・・・

食蜂「そうね……というか、お姉さん」ジー・・・


コイツがどういう人間か知ってて友達やってるのだろうか。
『元』とはいえ第4位は―――暗部で、汚れ仕事専門の『掃除屋』。例え都市公認だろうとも日向に居てはいけない輩だぞ。

口には出さずとも目で訴える。


神裂「食蜂さん……友達になるのに理由が居るのでしょうか」ジー・・・

食蜂「最低限の倫理さえ守れれば理由は要らないでしょうねぇ」チラッ・・・

麦野「……、」ゴローン・・・

絹旗「っ」ズキッ・・・オドオド・・・


この反応。やはり知ってるのか。


神裂「確かに、そうかもしれませんね」フム・・・

絹旗「……、」ショボーン・・・

神裂「しかし食蜂さん。一つ教えてあげましょう。香と、香焼……その従兄が最も嫌いな言葉―――」ジー・・・



         『友達は選びなさい』



神裂「―――私もそれに感化された口でしてね。現にあの子は貴女を……これ以上は言いませんよ」コクッ・・・


何も、言い返せなかった。


神裂「さて、話の途中ですがそろそろ時間です。準備を」スッ・・・

食蜂「ぁ……うん」ピクッ・・・

神裂「すいませんが二人とも、少々家を空けます。6時過ぎくらいには戻ると思いますが、どうします?」チラッ・・・

麦野「んー。留守番してっから行ってらー」ゴローン・・・

絹旗「香焼の帰りは遅いみたいですけど、五和さんと浦上さんはいつ頃帰ってきますか?」ジー・・・

神裂「五時頃には戻ると思いますよ。あぁ。結標さんかステイル、削板くんが来ても喧嘩しないで待ってて下さいね」フフッ

麦野「その前に妹か美偉が来る事を祈るんだな」ハハッ


先程までの湿った空気が一転。嘘みたいなアットホーム感。


神裂「さて、では……っと、その前に。食蜂さん」ボソッ・・・

食蜂「えっ」キョトン・・・

神裂「絹旗さんに一言添えてあげて下さい。あの子のメンタルは麦野さんほどタフじゃない……あの子はただ、純粋なだけですから」ボソッ・・・


色々と難しい間柄の様だ。察するに、第4位の妹分で家族ぐるみの付き合いではあるモノの、何も知らされてない無垢といったところか。


食蜂「はぁ……おチビちゃん。絹旗ちゃんといったかしら」チラッ・・・

絹旗「な、何か」ビクッ・・・

食蜂「貴女にまでヤツ当たりしてごめんなさいねぇ。えっとぉ……その子猫ちゃん、とーっても心配してるわ。愛されてるのねぇ」ニコッ

絹旗「もあいが……って、もあいの心も読めるんですか!?」パッ!!

食蜂「完璧に動物の言葉を訳すのは無理だけど感情力くらいは読めるわ。今は『ご主人、喉渇いたなー』って言ってるなぁ」フフッ

絹旗「おおぉ!! 今超準備します! ちょっと待ってて下さい!!」パタパタパタ・・・

神裂「あらあら」クスッ

麦野「……けっ」グデェ・・・


その後、もっと通訳してくれとせがまれたが時間が時間なので出発。
第4位が後ろで睨んでいるのもお構い無しに、何故かまた会ってくれと懇願されてしまった。まったく、不思議な縁だ―――


   ―――一寸後、神裂side・・・・・



麦野さんと絹旗さんにもあいと留守を頼んだ後、我が家を発ち食蜂さんと第7学区へ足を向ける。
先の説教が効いたのか、彼女は未だに口を閉ざしていた。
その表情から反省しているのか、ただ無心なのかは読み取れないが、考える所があるのだろう。

乗客が殆ど居ないバスの中、二人で広い最後部に座し、暫く無言が続いた。


神裂「食蜂さん」チラッ・・・

食蜂「何かしら」ボー・・・

神裂「二人きりになった事ですし、幾分か腹を割ってお話を」ジー・・・

食蜂「……そうねぇ」ボー・・・


一切視線を合わせない彼女に問う。


神裂「何故、直接ウチに?」ジー・・・

食蜂「無意識かなぁ。身体が勝手に動いちゃったの」フフッ・・・

神裂「そうですか。存外行動派なのですね」クスッ

食蜂「私、我儘だもの」ハハハ


純粋にあの子に対する罪悪感が彼女を動かしたのかもしれない。


神裂「では率直に聞きます。今回の件、反省してますか」ジー・・・

食蜂「多分、ね」ボー・・・

神裂「ふむ……分かりました。信じましょう」キッパリ・・・

食蜂「あら。意外」チラッ・・・

神裂「許されないと思いましたか?」クスッ

食蜂「うーん……よく分かんない。ぶっちゃけ他人の感情なんて如何でもいいもの。たとえ香ちゃんのお姉さんでも、ね」フイッ・・・


こうもハッキリ言われると逆に清々しい。


食蜂「香ちゃんに許されれば他は関係無いでしょ。違う?」チラッ・・・

神裂「ええ。まぁあの子が許せばですが」コクッ・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・

神裂「もし貴女の態度が以前と変わらなければ、あの子は貴女を許さないでしょう。多分……友人を止めますね」サラッ・・・

食蜂「っ……ハッキリ言うわねぇ」ポリポリ・・・

神裂「事実ですから。現に、あの子はかなり悩んで心を病んでしまいましたから」ジー・・・

食蜂「えっ」ピタッ・・・

神裂「安心して下さい。ちゃんとケアはしました……あとは貴女次第です」ニコッ・・・


彼女は明らかに動揺していた。そこまであの子が大事か。


食蜂「だって友達だもの。数少ない『私』の友達よ……誰だって友達を失いたくはないでしょ」ボソッ・・・

神裂「……ええ」コクッ


言葉に重みを感じる。何があったかは分からないが『友を失う』怖さと辛さは、私も重々理解しているつもりだ。
どんなに強者であろうとも、結局は真に孤高を愛する人間など、居やしないのだろう……―――

 ―――さる翌々日、PM04:00、学園都市第7学区、学園メトロ南北線・電車内、『窓の無いビル』前駅付近・・・香焼side・・・



  ガヤガヤ・・・ガタンゴトン・・・ザワザワ・・・ガタンゴトン・・・・・



案の定、それなりに車内が混んでしまった。例の日よりは早い時間帯だが、多分この人盛りは下校ラッシュ第一陣だろう。
色々不安は多いが幸運にも早い内に座れた。それに今は心強い先輩が隣に座っている。


香焼(大丈夫、だよね)オドオド・・・

御坂「香ちゃん? 如何したの?」チラッ・・・

香焼「えっ、あ、いや。何でもありません」ハハハ・・・


御坂さんに余計な心配は掛けたくない。このまま数駅、大人しくしていれば何事も無く目的地に着く。
染み付いた恐怖心に打ち勝とうと心の中で自分を励まし続けた。

そうだ……今はこれから会う操祈さんの事を考えないといけない。だがしかし、一体何を言えば良いのやら。


御坂「んー。『こんにちは』だけで良いんじゃないかな」サラッ・・・

香焼「へっ?」キョトン・・・

御坂「だってそうでしょ。難しく考える必要無いってば。香ちゃん悪くないんだし」チラッ・・・


アッサリ言ってくれる。隣に聞こえる程度の小さな声で話を続けた。


香焼「でも、心配掛けたのは事実…です」ムゥ・・・

御坂「じゃあ『連絡できなくてごめんなさい』。これでOK」クイッ・・・

香焼「……、」タラー・・・

御坂「あのねぇ香ちゃん。今回の件は九割九分被害者でしょう。アイツに流されてるだけじゃ駄目」ツンッ・・・

香焼「別に、流されてなんか」ウーン・・・

御坂「傍から見たら充分流されてるわ、完璧玩具にされてるじゃない……いい? あの手の輩は多少キツく当たってもヘコたれないわ」ヤレヤレ・・・

香焼「キツくって。具体的には?」キョトン・・・

御坂「参考になんないかもしれないけど、黒子に対する私の対応みたいなもんよ。あんな感じで食蜂を流せば良いの」サラッ・・・


そんなバイオレンスな事出来る訳が無い。そして返り打ちにされるのがヤマだろう。


御坂「そりゃ『私ら』のは大袈裟だけど、でももう少し『適当にあしらう』事を覚えた方が良いと思う」ハハッ

香焼「適当に…ですか」フム・・・

御坂「そうそう。オドオドするだけじゃなくスルースキルとか軽いド突きとかで返すとか。アイツにゃその程度やっても大丈夫だから」フフッ

香焼「んー……参考にします」ポリポリ・・・

御坂「勿論限度はあるから可能な範囲でね―――ただし、アイツのこれから次第でしょうけど」チラッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

御坂「ま、安心なさいな。あんな無神経女でも今回ばかしは反省してる筈よ。昨日の慌てっぷりを見る限りは相当ね」クスッ

香焼「ええ……信じてますよ」コクッ・・・

御坂「うんうん、健気でよろしい―――まーったく。黒子も香ちゃんみたいに純粋なら良いのになぁ」ウヘェ・・・

香焼「あははは……でも白井さんは白井さんで純粋な気も」ポリポリ・・・

御坂「欲望に忠実って意味ではね。まぁでもさぁ……あんなんでも可愛い後輩で、友人代表なんだよなー」ジー・・・


そして御坂さんは『それは一生モノなんだと思う』と呟いた。その言葉には素直に共感出来る。

ボチボチ話し込んでいる内に、いつの間にか目的の駅の前まで来ていた。
通称『窓のないビル』駅は都市の中心に位置する事もあって、多くの人間が乗り換えをするハブステーション。別名、学園都市の大○町駅。


御坂「さーて。降りる準備っと」スッ・・・

香焼「そう…ですね」コクッ


御坂さんが『失礼』と一言、前に立っている人に頭を下げ立ち上がる。自分も人混みに押し負けない様踏ん張って降りないと。
車内アナウンスが流れると共に鞄を持って立ち上がろうと―――


香焼「あ、れ」ピタッ・・・


―――……鞄が、動かない?


御坂「香ちゃん、行くよ」スルッ・・・

香焼「あ、はい……ちょ、えっ」グググッ・・・

御坂「如何したの? 早く……って、ぉわっ! ちょっと!」グイグイッ・・・

香焼「み、御坂さん」タラー・・・

御坂「も、もぅ! ごめん、先降りてるわよ!」アーレー・・・


目の前で乗降口の方へ流される御坂さん。自分も急いで降りようと試みたが……やはり動かない。
流石にオカシイと思い鞄を調べると、金具の部分に『何か』が引っ掛かっていた。


香焼(これ……糸?)キョトン・・・


タダの糸ではない。普通の糸なら強く引っ張れば千切れる筈。多分、天草式が使う鋼糸(ワイヤー)の様な素材。
それが器用に鞄の金具部分と、長座席の真ん中にある鉄柱に結ばさっていた。

これは明らかに人工的なモノ。

嫌な汗が噴き出した。知らず知らずに呼吸と心拍が荒くなる。蘇る恐怖心。
恐る恐る鞄から眼を離し……顔を上げると、そこに―――


???「―――んふっ」ハァハァ・・・


―――いた。


香焼「ッッ!?!」ギョッ・・・

???「フフッ……きょ、今日は、友達も一緒だったんだ、ね……オホッ……常盤台の、同じ制服、学校、の先輩かな?」デュフフッ・・・

香焼「ぁ、ぇ」ゾゾォ・・・


気持ち悪い笑みを向け、擦れる様な小声で此方に呟く男。


???「ンハッ……今日は、どうする? ハァ・・・ハァ…その体勢、で?」ニヤァ・・・


気付けば鞄を引っ張る為に中途半端に立ち上がっていた。
そしていつの間にか自分が座っていた席に、小学校低学年くらいの男の子が座っている。格好の的だ。

ならば急いで鞄を捨てて急いで降車しようと考えたが、時既に遅し。
乗降口からは乗車組の波が押し寄せて来ていた。これでは逃げられない。


???「でも、ホントに……デヒュッ……好きなんだね、こういうの。本物の、変態さん、なんだぁ……ウィヒッ」スッ・・・

香焼「ッ!!?」ビクッ・・・


この時、自分が冷静な思考であれば単純に声を上げて助けを呼んでいた。しかし、実際はその逆。あまりの恐怖に気が動転していた。
無抵抗ではいなかったものの、パニック状態の僕は何を思ったか……咄嗟に人混みへ飛び込み、男の逃げ出してしまった―――

 ―――さる翌々日、PM04:30、学園都市第7学区、学園メトロ南北線、『窓の無いビル』前駅東口改札前・・・御坂side・・・



電車内の人混みに流されて香ちゃんとはぐれてしまった。
無事降りていればプラットホームで見付けられた筈なのだが、壮絶な人の波とあの子の身長の低さの所為もあってか、簡単には発見出来ず。
その後も数分探してみたのだがやっぱり居ない。もしかして見落としたのかもと思い、上の改札口へ向かってみるが、やはり見当たらない。

一応電話をしてみるも……出ない。


御坂「ありゃ。やっぱり降りられなかったのかなぁ」ポリポリ・・・


あの子は私が『いつも一緒に居る面子』とは違って幾分弱々しい。こんな事なら多少強引にでも手を引いてあげれば良かった。
とりあえず『改札で待ってるよ!』とメッセージを送り、返事を待つ事に。

それから数分後……メッセージが入った。


御坂「って、アイツかい」ハァ・・・


香ちゃんより先に食蜂のヤツが着いてしまった。色々面倒だが止むを得ないので現在地を返信。
そしたら『こっちにきてー♪』とかふざけた事を抜かしおる……イライラを抑えながら、人混みを掻き別け、今回の元凶さんを探す事に。


御坂「あの脳味噌キラキラ星女ったら……ちゃんと反省してんのよね」スタスタ・・・


歩く事数十メートル。『不自然』に人だかりが無い空間を見つけた。間違いない、あそこだ。


御坂「まったく便利な能力よね。これで能力使う人間が人格者なら言う事無しなんだけどなぁ」テクテク・・・ピリッ・・・

食蜂「あらぁ。超能力者(レベル5)は須らく人格破綻者なのよん。モチのロン、御坂さんもねっ★」ニコッ

御坂「うぜー……って、あれ?」チラッ・・・

神裂「こんにちは」ペコッ・・・

御坂「あ、はい。えっと……はじめまして?」キョトン・・・


初めて見る人のような、そうでもないような……誰この人。
とりあえず平然と食蜂の真横に立っているのを見る限り『派閥』の人間ではないし、タダ者でもない事は確かだ。


神裂「どうも。お話は兼々聞き及んでます。御坂美琴さんですね。香の姉貴分の神裂火織と申します」ペコッ・・・

御坂「えっ! お、お姉さん!?」キョトン・・・

食蜂「保護者同伴だってぇ。どうも二人っきりにはさせられないみたいなのん……過保護力ハンパないわぁ」ヤレヤレ・・・

御坂「あー。気持ちは分かります」ハハハッ


苦笑するお姉さん。そりゃコイツ、何しでかすか分かったもんじゃないし。


食蜂「んもーひどーい。私だって常識力っていうか空気読む事くらいできるんだぞっ」ムンッ!

御坂「嘘吐けKYの代名詞」ジトー・・・

神裂「まぁまぁ。ところで、香は?」キョロキョロ・・・

御坂「あー……ちょっとはぐれちゃいまして」ポリポリ・・・

食蜂「えー。御坂さん使えなーい」ジトー・・・

御坂「ぐっ」ウギギッ・・・

食蜂「まったくー。香ちゃんの携帯と繋がらないから御坂さんに連絡したのにハズれねぇ」ブーブー・・・

御坂「喧しいっつの。いい加減怒るわよ」フンッ・・・


相変わらず一々癪に障る。同調するのは腑に落ちないが、先の第4位の激怒も納得してしまう。
しかし、コイツも香ちゃんに連絡を入れたのに返事がまだなのか。やはり乗り過ごしてしまったのかもしれない。

ブーブー文句を言う食蜂はさておき、隣のお姉さんの雰囲気が変わった。


神裂「はぐれた? それはいつ頃?」ピタッ・・・

御坂「えっ。多分、車内でかなぁと」コクッ・・・

神裂「車、内?」ジー・・・


声色まで変わる。流石の食蜂も異変に気付いたのか、口を閉ざした。


神裂「まさか電車で移動を?」ジトー・・・

御坂「え、えぇ」タラー・・・


心成しかドスの入った声。ぶっちゃけ怖い。この人何者?


食蜂「まぁ伊達に第4位とお友達してないものねぇ」ボソッ・・・

御坂「そういえば香ちゃんがそんな事言ってたっけ……って、もしかして……あっ! もしかして、固法先輩の!」ピカッ

食蜂「ほぇ? なになに?」ポカーン・・・

神裂「ええ、彼女とも仲良くしています」ジー・・・


そういえば最近、先輩から『変わった友達』が増えてるという話を聞いた覚えがある。
第4位(プッツンBBA)とか元テロ屋(サラシ痴女)とか……この人もその中の一人か。


神裂「歳も近いので色々と話が合いまして。この街に居る時は麦野さん共々懇意にしてます」コクッ・・・

御坂「そうなんですか……って、歳が近い?」エッ・・・

神裂「何か」ムッ・・・

御坂「な、何でもございません!」アハハハ・・・

神裂「……その話はまた後ほど。今は香の事を」ジトー・・・


第4位の時もそうだが、ぶっちゃけ20代後半に見えた。でも口は災いの基だし、心に留めておこう。
さておき、お姉さんが言うとおりあの子の事だ。


神裂「不仕付けですが、何故電車を? あの子は何も言わなかったのですか?」ムムッ・・・

御坂「別段、特には。如何して?」キョトン・・・

神裂「……、」フム・・・


いきなり黙り込むお姉さん。意味が分からない。


食蜂「まぁ乗り過ごしただけなら折り返して戻って来るでしょうし、もうちょっと待ちましょ」クルッ・・・

御坂「元凶のクセに呑気なこって」ヤレヤレ・・・

神裂「……何事も無ければ良いのですが」ジー・・・


お姉さんの雰囲気に飲まれ、超能力者二人して閉口。
とりあえずこの空気に耐えられないし、いつまでも不自然な空間を独占するのも難なので何処か端にでも寄ろう。
そう提案しようとした矢先……私の携帯が鳴った。もしや香ちゃんか、と思いきや案の定知らない番号。

いや、この電話番号はさっきも掛ってきたモノだ。


御坂「もしもし」Pi!

御坂蛇『―――急いで香を追って下さい、とミサカは声を荒げます!』ガガッ・・・


開口一番焦り声。相手は予想通り、先程の妹達(シスターズ)の一人からだった。

突然の事態に頭が回らず暫しフリーズ。一寸後、電話越しの『御姉様!』という声で我に返った。


御坂「ちょ、ちょい待ち! 順を追って話しなさい!」アタフタ・・・

御坂蛇『それでは遅い! 今何処に居るのですか!?』ガガガガ・・・

御坂「何処って『窓のないビル』前駅の改札口付近だけど……アンタは何処なのよ」タラー・・・

御坂蛇『チッ。真上に居たのか……ミサカはその駅の南北線プラットホームに居ます。御姉様が先程降りたホーム辺りです』ガガガガ・・・


もしかして私達を追跡けていた?


御坂蛇『後で説明します。兎角、今はアイツを助けなければ拙い!』ガガガガ・・・

御坂「た、助ける!? 何それ!」ギョッ・・・

神裂「御坂さん、失礼。変わって頂けますか」ジー・・・スッ・・・

御坂「えっ、あ、ちょっと」パッ・・・


あっという間に携帯を奪われてしまった。


神裂「もしもし、あの子の姉です。状況は?」ジー・・・

御坂蛇『貴女か……あの「男」が現れた模様。最後まで確認は取れなかったが十中八九当たりだろう、とミサカは推測します』ガガガガ・・・

神裂「っ」グッ・・・


歯を食いしばるお姉さん。一体何なのだ。


食蜂「ちょ、ちょっと。私、とぉーっても放置されてるんだけどぉ」タラー・・・

御坂「私だって何が何だか分かんないわよ」ウーン・・・

神裂「くっ……電車を追います。17600号(プロスネーク)さん、貴女は?」ジー・・・

御坂蛇『ミサカは他の妹達(MNW)の情報や、メトロのネットワークにジャックしてアイツの現在地情報を掴むつもりです』ガガガガ・・・

神裂「分かりました。引き続きサポートをお願いします」Pi!


電話を切るや否や此方を見向きもせずに電話を返し、何やらブツブツ唱え出した。


御坂「お姉さん! お願いだから説明してよ。まるで意味が分からないって」ジー・・・

食蜂「右に同じよん。貴女の思考は私でも読めないから言葉で伝えてもらう必要があるわ」ジー・・・


サラッとトンデモない事を聞いた気がするが、今はそれどころではないっぽい。戸惑う私達を見詰めた後、いきなり改札の方へ歩き出した。


食蜂「ちょっとぉ!」ムッ・・・

神裂「歩きながら話します―――率直にいえば、あの子はストーカーというか痴漢の被害に会っています」スタスタスタ・・・

御坂・食蜂「「えっ」」ピタッ・・・


二人していきなり歩を止めてしまった。しかし、お姉さんは私達なんてお構いなしにドンドン進む。


神裂「食蜂さん、私は先程バスの中で『あの子は心を病んでしまった』と言いましたよね」スタスタ・・・

食蜂「歩くの早っ! え、えぇ。そんな事言ってたわねぇ……それが?」キョトン・・・

神裂「貴女と喧嘩をした後、あの子は被害に会いました。勿論、貴女の所為ではありません。しかし僅かに影響はしています」チラッ・・・

食蜂「なっ」ギョッ・・・


衝撃の事実。何やら訳アリの様だが、此処まで首を突っ込んどいて聞かない訳にもいくまい。

私達はいつの間にか改札を潜り、地下へ降りていた。
こんなに早く降車したプラットホームに再度戻る事になるとは思ってもいなかった。


御坂「痴漢って、電車内で?」スタスタ・・・

神裂「ええ。実は前々から被害を受けていた様なのですが、気付いたのは昨日の様で」スタスタ・・・

食蜂「なにそれ」スタスタ・・・ハァハァ・・・

神裂「あの子は危機感が無いというか、鈍感なんですよ。自分が痴漢を受けている事に気付いていなかった」スタスタ・・・


故意か否かは別として、満員電車で女性のお尻に男性の掌が当たってしまった『事故』はよく聞くが、そのレベルではないのか。


神裂「話を聞く限り、完っ璧な痴漢行為を受けています。お尻を弄られたり、スカートの中に手を入れられたり」スタスタ・・・

御坂・食蜂「「ハァ!?」」ギョッ・・・

神裂「だから言ったでしょう。鈍感なんです……でも先日、漸く気付いた様で。しかも犯人から『直接』言われてですよ」ヤレヤレ・・・

御坂「な、何て?」タラー・・・

神裂「確か『相変わらず可愛い』とか『全然抵抗しないんだ』、『いつも傍に居るのに』、『毎日触ってあげる』……などなど」スタスタ・・・

御坂・食蜂「「……っ」」ゾゾォ・・・


気持ち悪い。気色悪い。悪寒がする。女の敵とかいうレベルじゃなくて人間として終わってる。


食蜂「そこまで言われて、なんで抵抗しないのよぉ」スタスタ・・・ハァハァ・・・

神裂「色々な事が重なってパニックになったのでしょう。あの子らしからず冷静さを欠いたのでしょうね」スタスタ・・・

食蜂「うっ」タラー・・・


『色々』ねぇ。だからコイツも『影響』している訳か。
そんな事を話している内にプラットホームに着いた。体力の無い食蜂はこの短い距離でヒィヒィハァハァ言っている。
さておき、相変わらず電車待ちの人間が長蛇の列を成して並んでいた……これから如何するつもりだろう。


神裂「……正直な所、私一人で解決したい」チラッ・・・

御坂「あのですねぇ……此処まで来といてそれですか。しかも一人って、意味分かんない事言わないで下さいよ」ハァ・・・

神裂「『常識』やら『倫理』やらをブチ壊せばやってのけます。言っておきますが、私は麦野さんより強いです」サラッ・・・


まーたバケモノ追加か。普通であれば疑うし驚く所だが、経験上この程度で私は動じない。
聞きたくないが、多分この人、上条(アイツ)の知り合いなんだろうな。


食蜂「ハァハァ……でも、結局、私達を連れてきたって事は考えがあるんでしょぅ」ゼェゼェ・・・

神裂「ええ。私はこの街で暴れるつもりはありませんし法を破る気もありません……というか大っぴらにやると諸方面的に大問題なので」ハァ・・・

御坂「私らも人の事言えないけど、何だか面倒な立場みたいですね」ハハハ・・・

神裂「ええ。ただしかし、救助が遅くなってしまえば、多分あの子の心は……壊れます」グッ・・・

食蜂「っ……駄目よ」キッ・・・

神裂「だから貴女達の力を借りたい」ジー・・・

御坂・食蜂「「……、」」ピタッ・・・


真剣な眼差し。


神裂「たかが一人の為に。されど一人の為にです……おとうt……妹の為に、私に助力を。よろしくお願いします」ペコッ・・・

御坂・食蜂「「……、」」コクッ・・・


断れる訳が無い。大切な後輩を、友人を助ける為だ。この超能力(チカラ)を奮う事を惜しみはしない―――

今日は此処までです。
やっと終わりが見えてきました。超gdgdになってしまいホントすいません。
900前に終わるとは思うんですが、、、予定は未定で。

一応当初の予定通り、この話終わったら前みたいにボチボチ1レスSSやって……えっちぃの書くつもりですん。

とりあえず過疎スレですが、見て下さってる方、もう少しだけお付き合いください。お願いします。
それではまた次回! ノシ"


  ―――一方、食蜂side・・・・・



この行いを贖罪だなどとは思わない。これはあくまで友人としての義務だし、私の我儘の延長。
私の懺悔はこれが終わった後、あの子に直接するモノだ。


御坂「―――で、何をする気なんですか?」チラッ・・・

神裂「正直……非常にブッ飛んだ作戦です」ジー・・・


そんなの今更だ。超能力者が二人揃ってる時点で常識なんか通用しない。


神裂「簡単にいえば香の居る電車に追い付いて、あの子を助ける。それだけです」チラッ・・・

食蜂「豪く簡単に言ってくれるわねぇ……具体的には?」フムフム・・・

神裂「御坂さんには通信(コンタクト)と妨害(ジャマー)を。食蜂さんには不可視(ステルス)を」コクッ・・・


要するに、私は十八番の『記憶改竄』に専念する訳だ。しかし、御坂さんは?


神裂「御坂さんは、常に17600号さんと連絡を取りつつ、監視カメラを誤魔化して貰いたい」クイッ・・・

御坂「……成程」フム・・・


私の改竄力は『脳有る者』にこそ効果的だが、カメラやら何やらに対しては効果が薄い。
しかし後手に回って、監視カメラの映像を観た人間を見つけ出し、記憶を改竄するのでは遅かろう。理事会にはバレる可能性が高い。
尤も『外装代脳(エクステリア)』を使えば有象無象を0にしてやれない事もないが……これも理事会の眼がある以上、止めておいた方が良い。

となると、チャフグレネード代わりに御坂さんの電磁波となるか。


食蜂「でも、そしたら妹達と連絡取れないんじゃなぁい? オリジナルたる御坂さんがMNW(ミサカネットワーク)使えれば別だけど」チラッ・・・

御坂「そんな事しなくても、特定の周波数だけ拾える様にしとけば問題無いわよ。 電撃使い(エレクトロマスター)嘗めんな」フンッ


流石第3位様。まるで電子の妖精。


神裂「この流れで人と機械の眼を誤魔化します……ただし、これでも完全には理事会を欺けないでしょう」チラッ・・・

食蜂「まぁ『あらゆる手』を使って街の人間監視してるモノねぇ。でも、だから止めますかーって? 嫌よねぇ御坂さぁん」フフフ・・・

御坂「はいはい。超能力者は総じて問題児なんでしょ。分ーってるわよ」ニヤリ・・・

食蜂「そゆ事♪ お姉さんこそ、立場上大丈夫?」チラッ・・・

神裂「ぶっちゃけ私は自身の保身など如何でもいいので……とは言いつつも色々怖くもありますが―――」スッ・・・


家族の方が大事、か。


神裂「―――そういう事ですね。まぁ偶には後先考えず突っ込むのも良いでしょう……一応保険は掛けてますし」コクッ・・・

御坂「保険、ですか」ポカーン・・・

神裂「固法さんには連絡を入れています。風紀委員に一報入れておけば幾分か大義名分は立ちますし、緩和剤程度にはなるでしょう」ポリポリ・・・

食蜂「それだけぇ」ジトー・・・

神裂「会社の人間には『部下が目の前で攫われた』と伝えます。それに五和や浦上……あの子の他の姉達も共犯になってくれそうですから」ハハハ・・・

御坂「お姉さん、存外ハッチャけてますね」クスッ・・・

神裂「他にも多少道理を捻じ曲げますが、企業秘密という事で……あー、多分、この街の色に染まってしまったのでしょうね」ニヤリ・・・

食蜂「なぁにそれ」クスクス・・・


揃いも揃って大バカだな。でも、そういうの嫌いじゃない。

さて、それでは。


食蜂「手始めにぃ此処(プラットホーム)に居る人間、全員放心状態にすれば良いのよねぇ?」スッ・・・

神裂「ええ。そのタイミングは御坂さんに任せましょう。ジャミングの時間は短い方が良い」チラッ・・・

御坂「りょーかい。たださぁ、今一理解出来ない事が一つ」ピッ・・・

神裂「はい?」フム・・・

御坂「『電車に追い付く』って、どうやって?」ジー・・・


そういえば気にはなっていた。単純に60~80㌔で走ってる地下鉄に追い付くにはそれ以上の速度が必要だ。
先の会話から察するに、トンネル内部を行く事は確定の様だが……根本的な手段が分からない。


神裂「えっ。走りますけど」サラッ・・・

御坂・食蜂「「……、」」タラー・・・


耳がおかしくなったかな。


食蜂「走るって……レール(そこ)を?」チラッ・・・

神裂「ええ。停車中の電車は如何にかして追い越します。擦れ違う電車も上手く回避しましょう」コクッ・・・

御坂「色々ツッコみ所満載ね」ウーン・・・


御坂さんならまだ分かる。彼女なら常時F-1よか速く走っても驚きはしないし、壁や天井を駆ける事も可能だ。


食蜂「でも、お姉さんは如何するつもりなのぉ? というか私はぁ?」ギョッ・・・

神裂「私が抱えて走りますよ。御坂さんは自分の仕事に集中してもらいます。食蜂さんを抱えながらでは色々と不便でしょう」コクッ・・・

御坂「……あいよ」ハァ・・・

食蜂「御坂さん!? 何で納得してるの!?」エー・・・

御坂「あのね……私、物理法則云々捻じ曲げる無能力者(レベル0)見ても驚かない様にしてるんだー」アハハ・・・


彼女は一体どんな世界を見てきたというのだ。


神裂「さて、そろそろ行きましょう。時間が惜しい」ヒョイッ・・・

食蜂「うをっ!?」ビクッ・・・

御坂「ペースは合わせます。ソイツ抱えながらだと速度落ちるでしょうし」ジー・・・

神裂「お気遣いなく……因みに、貴女が電車を降りた時間から逆算した場合、香が乗ってる電車は凡そ何本先でしょう?」チラッ・・・

御坂「5,6本かなぁ。でも、地下鉄の遅延とかトラブル具合までは読めないわよ」ポリポリ・・・

神裂「ではまず3本追い抜きましょう。もしかしたら途中下車してる可能性も否めない」テクテク・・・

食蜂「えっ! ま、待って! もう行くの!?」アタフタ・・・


所謂『お姫様だっこ』をされている状態。私の重さ程度屁でもないといった顔をしたお姉さんはヌルっと歩き出した。
待って欲しい、まだ心の準備が―――


御坂「例の『妹達』の電話番号は―――いよっし! 食蜂、私が合図したら能力使ってね」テクテク・・・

神裂「ふむ……行きますよ!」タッタッタッ・・・

御坂「食蜂! 今っ!」スタッ・・・ビビッ!!


―――まるで競技用のハードルを越える陸上選手の如く、落下防止用の策を越え、レールに着地するお姉さんと御坂さん。
同時にホーム内の電灯が不規則に点滅した。御坂さんが監視カメラにジャミングを掛ける為、何かしたのだろう。
未だ心の準備もままならないが、そんな事を言ってる場合ではない……賽は投げられた。私もリモコンを振り翳し、能力を駆使した。

私が一寸タイミングを遅らせた所為で、待合の人の眼が私達に集まってしまった。
急いで全員の記憶を改竄し、私達の存在を『無かった』事にする。


神裂「よしっ。走りますよ」スタタタタッ・・・

御坂「はいはい」スタタタタッ・・・

食蜂「にゃああぁっ!?」グワンッ!!


安堵も束の間、北方へ駆け出すお姉さん。そのスピードったら尋常じゃない。


御坂「うわぁ……人の事言えないけど人外だわぁ。その速さでスタミナ持つのかしら」バリバリバリバリ・・・

食蜂「ひぃいいいぃ!! 速いいいいいぃ!!」ギュウウゥ・・・ブルンブルンッ・・・

神裂「喋ると舌を噛みますよっ」バルンバルンッ・・・スタタタタッ・・・

御坂「スイカが、4玉揺れてる……幻覚かな」グヌヌゥ・・・


主に磁力を駆使して己の身を弾丸と化し超スピードを出してる御坂さんとは違い、純粋な脚力だけで猛スピードを出してるお姉さん。
大袈裟かもしれないが、私を抱えながら100mを5秒フラットで走ってそうな勢い。


神裂「むっ」ジー・・・

食蜂「な、何ですかっ!」アタフタ・・・

神裂「御坂さん! 前方トンネル、500m間隔で監視カメラ!」クイッ・・・

御坂「どんだけ眼ぇ良いのよ!?」スイッ・・・ビリリッ!!


とか言いつつ、一定間隔で放電を怠らない御坂さんも凄い。ちゃんとカメラがショートしていれば良いのだが、彼女に限ってミスは無かろう。


神裂「ナイスです―――っと、食蜂さん! 仕事です!」スタタタタッ・・・

食蜂「何よおおおおぉ!!」ヒイイイィ!!

神裂「約10秒後、対向電車と擦れ違います! 極力『死角』を走りますが……頼みますよ!」スタタタタッ・・・


目撃者『0』人にしろって訳か。


御坂「運転手放心状態にして事故らせんじゃないわよ!」ビリッ・・・

食蜂「ちゃ、ちゃんとやるわよ! やれば良いんでしょ!」スッ・・・


仰る通り数十秒後、対向電車の音が聞こえ、ライトが見えた。ぶっちゃけ隠れてやり過ごせと思う。しかし、この人達は止まる気はない様だ。
此処でミスる訳にはいかない。1km以上先の運転手の記憶をピンポイントで改竄。私達が『見えていない』事にする。


御坂「上手くやったのよね!?」チラッ・・・

食蜂「やったわよーぅこんちくしょーっ!!」アババババ・・・

神裂「食蜂さん、体勢を低くしますよ! 擦れ違い様の風圧に気を付けて!」グイッ・・・

食蜂「おわぁああぁ!?」キャアアァ!!


確かに『死角』には入った。しかしトンデモない風。そして熱。
擦れ違う時間は5秒も無かったが有り得ないくらい疲労した……これを後何度繰り返す事やら。


御坂「単純計算3,4回よ。気張りなさい」フフッ・・・

食蜂「もぅ嫌あぁ」グデェ・・・

神裂「お疲れの所申し訳ありませんが、次の駅に着きそうです。準備を」スタタタタッ・・・


抱えられているだけなのに何という体力勝負。その後も一回に100人近くの記憶を改竄したり、電車の上を走ったりと散々な目にあった。
私は肉体派じゃないのにと嘆きつつ秒単位でやってくる障害を泣く泣く駆除し、香ちゃんが乗る電車へ急いだ……―――


  ―――一方、香焼side・・・・・




我武者羅に逃げた。兎に角逃げた。
満員電車の中、出来るだけ急いで隣の車両へ逃げる。迷惑は承知の上で沢山の人にぶつかりながら別の車両へ逃げる。
ギュウギュウ詰めで走れない環境の中、僅かな隙間を縫い、今出せる最速の早足で後ろへ逃げた。


香焼「はぁ……はぁ……っ」ゴクリ・・・


気付けば残りは最後部車両のみ。何とか冷静さを装い、恐る恐る後ろを確認した。


香焼「大、丈夫……か」フゥ・・・フゥ・・・


人混みの所為で何が何だかよく分からないが、あの男の姿は見当たらない。多分巻いたのだろう。
皮肉なモノだが、今日程このちっこい身体に感謝した事はない。


香焼「っ……今、何処の駅だろう」チラッ・・・


落ち着いて電光掲示板に目を遣る。必死で移動していた所為で気が付かなかったが、既に5つ以上先の駅まで着ていた。
そろそろ降りねばなるまい。置いてきた鞄が気掛かりだが、あれだけ大きな荷物だ。きっと鉄道警察に届く筈だろう。

車内に次の駅への到着アナウンスが流れる。


香焼「……ふぅ」スッ・・・


軽く深呼吸。冷静になって気が付いたが、今の自分は相当変な子だ。
だがしかし今の羞恥よりも、先程の恐怖の方が圧倒的に心の中を占めている所為で、周りに気を使おう等とは考えられなかった。


香焼「降りなきゃ」フルフル・・・


到着。同時に降車の流れに乗って乗降口へ向かう―――


香焼「……っ!!?」ビクッ・・・


―――刹那、気付いた。


???「……ンフッ」ハァハァ・・・


何故か降り口に……いや、乗り口か。最早ドチラでも構わない。
自分の行く先に『アイツ』が居た。乗客列の末尾に立ち、確実に此方を見ている。軽く仕舞には手まで上げて気味悪く微笑んでいる。

パニック。

またもや何を思ったか、降車の波から外れ急いで最後尾車両の方へ移動してしまった。
普通に考えれば、袋の鼠。『詰み』の状態に嵌まったも同然。


香焼「なっ……ぇ……っ」ドクドク・・・


ミスに気付くも時既に遅し。
乗客は乗り終え、ドアは閉まり、列車は走り出している。そして勿論―――


???「―――……デュフ」ノソノソ・・・

香焼「ぁ……ひっ」ブルッ・・・

???「どうして、逃げるの、かな? ウィヒッ……誘ってる、のかも?」グッフッ・・・


―――すぐそこまで迫っていた。

何故アイツが『待ち伏せ』していたのか理解出来ない。
白井さんの様な空間移動能力(テレポート)を使用したのか、それとも何らかの加速能力を使用したのか。
そんな事考えたって無駄だとは分かっていても、頭が混乱して後先の事を考えられなかった。
兎に角逃げなきゃ拙い。でも一体何処へ?


香焼「ゃ……だっ」ゴクリ・・・


今すべき事を考える。
大声を上げるか? いや、今この距離で声を上げても意味が無い。ただのキチガイ扱いされて終わる。
じゃあアイツが近付いてから? しかし、果たしてヤツが行為に及ぶだろうか。現状冷静なのはアイツの方だ。
というか、本当に声を上げても良いのか? もしかしたらそれが原因で『香』の素性がバレるかもしれない。
いっその事、男だとカミングアウトしてしまう? いや寧ろ、戦ってしまおうか!

―――何を考えているんだ……僕はどんだけテンパってるんだ。


???「……クフッ」ノソノソ・・・


徐々に距離を詰めて此方へ近付いてくる変態。知らず知らず、此方も後ろの方へ下がってしまう。
もう……後は無いのに。気付けば、物理的に壁(オワリ)。


香焼「っ」ブルブル・・・


落ち着け。落ち着け。落ち着け。
多分、大丈夫だ。此処まで来れば大丈夫。壁を背にし、ヤツの方を向いたままなら、手出しは出来ない筈。
通路側を向いたこの向きで、ヤツが事に及べばそれこそ人が気付く。だから大丈夫。
それでももしヤツが痴漢を働けば即御縄だし、何も無いなら何も無いで次の駅で降りれば良い。


香焼「だいじょぶ……だいじょうぶ……っ」ガクガクッ・・・


その距離約1m。二歩も歩けば手が届く近さ。


???「……ハァハァ」ニター・・・

香焼「っ」ゾクッ・・・


怖い。


???「ンフッ……はぁい」ノソッ・・・

香焼「ぃ、なっ」ビクッ・・・


如何して、近付く。


???「……ムフッ」ハァハァ・・・

香焼「……、」ビクビクッ・・・

???「クフッ……うぉっと」グラッ・・・グイッ・・・

香焼「ひっ!」ビクンッ・・・

???「オハッ……をぅ。ごめん、ね。電車、揺れるね……グフッ」グイグイッ・・・

香焼「っ」ダラダラ・・・


電車の揺れに合わせて、此方に圧し掛かってきた。しかも過剰に。


???「ハァハァ・・・ウィフッ」グフフッ・・・


身長170程の小太りの男性。歳の頃はスーツっぽいカジュアルな服装の所為で、大学生にも見えるし中年オヤジにも見える。
汗臭いしヌメヌメする。息臭いし呼吸が荒い。体重重いし……何か嫌な『モノ』が当たってる。

ダメだ……早く逃げなきゃ。

次の駅まで後どれくらいだろう。時間が進むのが遅過ぎる。いや、距離が遠過ぎるのか。
恐怖の所為で感覚が麻痺し出した。早く逃げたいのに動けない。


香焼(お願い……もう、やめて)ビクビクッ・・・


身体を捩る。しかし、それに合わせてヤツも動く。態々『汚いモノ』を押し付ける様に動く。
いつの間にかヤツが壁に手を伸ばし、自分の顔の横に肘を置いて、顔を覆い被さっていた。所謂『壁ドン』状態。
より一層、ヤツの臭さとキモさ怖さが伝わる。

耐え切れずしかめっ面で顔を逸らす。もしかしたら隣の人間が気付いて助けてくれるかもしれない。


香焼「……、」ブルッ・・・


しかし現実は残酷。隣は隣で苦しそうな顔。所詮は満員電車内の混み合い程度にしか思われてないだろう。
両隣とも苦しそうな顔をしながらも器用にスマフォを弄っていた。


???「ハァハァ・・・ねぇ」ニマー・・・

香焼「っ!?」ビクッ・・・

???「ほら……ンフッ……忘れ物、だよ」グフッ・・・


何故か自分の鞄を手にしている変態。勘弁してくれ。如何しろってんだ。


???「はい……どうぞ」ウィヒッ・・・グイッ・・・

香焼「ぃ、ゃ」ビクッ・・・

???「ほら、ほら」グイグイッ・・・グニュウゥ・・・

香焼「ぁ、うっ!」ビクンッ・・・


お腹に押し当てる様に鞄を返す変態。同時に……少々スカートが捲れた。


香焼「やめっ……っ」ブルッ・・・


もう泣きそうだ。最早泣きたい。もしかして泣いてるかも。
思わず呼吸を止めて目を瞑る。そうして我慢に我慢を重ねて数分間―――やっと聞こえた車内アナウンス。


???「あっ」チラッ・・・

香焼「っ」グイッ・・・ドンッ・・・


当たり構わず飛び出した。周りの迷惑などお構い無し。兎に角急いで飛び降り、走ってプラットホームの壁際へ逃げる。


香焼「ハァハァ……ぅっ」ガクン・・・


思わず膝から崩れてしまった。緊張から解放され、糸が切れたのが自分でも分かった。
安堵と共に大きく深呼吸し、冷静さを取り戻す。

大丈夫だ……もうヤツは追って来―――


???「……、」ノソノソ・・・ジー・・・


―――……た。


香焼「ッッ!? な、ん……ぇ」ギョッ・・・ガクブル・・・

???「エフッ……あれぇ。どぉして、今日は此処で、降りるの? ねぇ、如何したの、かな?」ンフフッ・・・


悪夢は続く。

何故だ、分からない、何故追ってきた。
この前と同じ人物なら車内で留める筈。アイツはタダの痴漢じゃないのか? ストーカーまでするド変態なのか?

あぁだこぅだ考えても無意味なのは分かってる。だがこの不条理、考えずには居られない。


香焼「何、で」タラー・・・

???「フフッ……君こそ、如何したの?」ニヤァ・・・


ダメだ。気持ち悪い。我慢できない。逃げなきゃ。

急いで改札を出なければと思い地上出口階段を見遣ったが……ダメだ。あの込み具合では追い付かれる。
身体強化の魔術を使えば人混みくらい何とかなるかもしれないが、人の目が有り過ぎる。
この際線路側に飛び込んで逃げてしまおうかとも考えたが、後の事を考えるとあまりに無謀過ぎる。

この際何処でも良い。逃げ切れる場所。


香焼「っ!」バッ・・・


空いているのは……反対側の連絡通路。待合室。あとはトイレ。
どれもダメ。結局追い付かれるし袋小路だ。


???「ねぇ……ドゥフッ……ねぇってば。鞄、ほら」ノソノソ・・・

香焼「嫌っ」バッ・・・


もう考えるだけ時間の無駄だ。このままじゃ追い付かれる。一番近いのは……トイレ。
そうだ! 女子トイレなら安心だ!

思い立ったら何とやら。人の流れに逆らいトイレに直行。普段は極力入らない様にしている女子トイレへ一目散に逃げ込む。


香焼「っ……うぅっ」ゼエゼエ・・・


逃げ込んだ個室。やっとの思いで解放された。その反動からか思わず泣き出してしまった……なんて情けない。
しかし、とりあえずもう安心だ―――


香焼「でも、如何しよう」グスッ・・・


―――もし永遠と待ち伏せされていたら如何も出来ない。気持ちを落ち着かせて対処を考える。
最高の手段としては御坂さんか姉さんに連絡を取る事だが、案の定携帯は鞄の中。
加えて鋼糸(ワイヤー)も鞄の中に潜ませている為、天井を使っての移動は無理だろう。無茶をすれば可能だが、大きな音を立ててしまう。

募る所、未だ手詰まり。


香焼「せめて蛇さんが気付いてくれれば……そんな都合良く行く筈ないか」ムゥ・・・


GPS付きの携帯が手元に無い以上、高望みは出来ない。
但し、ヤツが自分の鞄を持っているのだとしたら……或いは救いが残ってるかもしれない。
兎に角今は時間が過ぎるのを待つしか―――


  コンコンッ・・・


―――……何だ。


  コンコンッ・・・


嫌な予感がする。


 コンコンッ・・・コンコンッ・・・コンコンコンコンコンコンッ・・・


冷や汗が止まらない。ダメだ……最悪を思い浮かべてしまう。

止まないノック音。恐ろしくて返事が出来ない。絶対鍵を開けられない。あまりの恐さに個室の奥の方へと身を追いやる。
そして一寸後、ノックが止み……声がした。


???「ハァハァ……大丈夫、かな?」ボソボソッ・・・


愕然。自分の全身から血の気が引くのが分かった。


???「ねぇ……如何したの? もしかして、此処で、一人で、シてるの?」ンフッ・・・

香焼「な、ぇ、ゃ」ガクブル・・・

???「ウェフッ……やっと、声、聞こえた」ハァハァ・・・


何で。如何して。


???「ンフッ……何処から、知りたい? 全部? ダメだよぅ。説明は……ケヒッ……負けフラグって、言うモンねっ」ハァハァ・・・


嫌だ。いやだイヤだ嫌だ。怖い。気持ち悪い。助けて。


???「まぁでも、ちょっとだけ、教えてあげるね……香『くん』」ニヤァ・・・

香焼「っ?!」ギョッ・・・

???「名前、合ってるよね……ンハッ……ノートに名前、書いてたから多分、そうなんだよね」ハァハァ・・・

香焼「まっ、や……ぇっ」ダラダラ・・・

???「ハァハァ……最近、増えてきたよね、女装っ子……デュフッ……俺の趣味、社会で認知されてきた、証拠かな?」ンフフ・・・


僕が『男』だって、分かってる。


???「誘ってたんでしょ……グフッ……何処のサイト、登録して活動してる? 教えて……ンフッ」ベタベタ・・・

香焼「い、意味、分かんない」ガクブル・・・

???「なぁにしらばっくれてるの? んー……アハッ……もしかして、無登録で、生粋の変態ちゃん、かな」ハァハァ・・・

香焼「何、で」ゴクッ・・・

???「前にも言ったけど……クンクンッ……『臭い』で、分かるよ……ィヒッ……強度(レベル)は低いけど、嗅ぎ分けが得意でね」ベタベタ・・・


やはり嗅覚強化の能力だったのか。


???「嗅ぎ分けられるのは『男か女か』だけ。でも、ね……フフッ……『女装っ子専』の、俺の趣味的には、それで充分、なの」グフフッ・・・

香焼「だから自分を、追跡出来た」ガタガタ・・・

???「そゆこと……ゲヒッ……まぁ女装っ子って、総じて変態、だもんね。文句言えない、よね」グヒグヒッ・・・

香焼「ち、違う。これは訳有って……だから誘ってなんかいない」ブルッ・・・

???「はいはい。言い訳、お疲れ……ニヒッ……とりあえず、君の『アレコレ』、俺の行き付けサイトにアップするから、後で見てね」ベタベタ・・・

香焼「止めてよ!」ビクッ・・・


拙い。もしそれが原因で諸方面にバレたら、今までの苦労が水の泡だ。


???「ウフッ……変態のクセに、如何して恥ずかしがるの? 純粋に女装が趣味だっただけ? 『プレイ』とか『置き』してないの?」ベタベタ・・・

香焼「何言ってるんだか分からない」タラー・・・

???「ま、良いや……ハァハァ・・・じゃあ、これを機に、覚えれば良いよ」ガチャッ・・・

香焼「っ?!」ギョッ・・・


何故、外側から、鍵が開いたんだ?

急いで握り辛い取っ手を掴む。しかし、純粋な体躯的に力では敵わなかった。


???「ウフッ……はぁい。沢山、逃げて疲れたでしょ……ニヒッ……まぁずっと近くに居たけど、さ」ニタァ・・・

香焼「い、嫌」バッ・・・


のらりくらりと個室に入る変態。驚きのあまり腰が抜けてしまった。


???「個室トイレに、閉じ込められた時の……フフッ……緊急マニュアルって、知ってる?」クイッ・・・

香焼「な、に……それ」ダラダラ・・・

???「災害時対策とかでね、うん。大抵は、扉壊して入るんだけど……デュフッ……中には駅員が『こういう道具』使って、開けたりする」スッ・・・


ステンレスの箆の様なモノにワイヤーの輪が付いた何か。
扉にモノが突っ掛かり押し戸が開かなくなった際に止むを得ず使用する十得道具の様なモノ。


???「何で持ってるか? それは、企業秘密……ヒヒッ……あと、静かに、女子トイレに入れたのは、簡単」ガチャッ・・・

香焼「っ」ガタガタ・・・

???「今、女子トイレからは『女の臭い』がしなかった。だから、ね……グヒッ……ちょちょいと、掃除の看板、立てたの」ニヤァ・・・


ダメだ。もうヤダ。


香焼「や、めて……お願い。嫌……いやだ」グッ・・・

???「うはぁ! たまんないねっ……ジュヒッ……ダイジョブ。痛い事とか、しないから。俺、ホモではないし」ハァハァ・・・

香焼「来ないで、ヤ、出てって」ブルッ・・・

???「写真とか、撮るだけ……あと、ちょっと、触ったり、臭い嗅いだりするだけ。ねっ!」クンクンッ・・・

香焼「どうして、っ、嫌だって言ってるでしょ! 帰って! 人呼ぶよ!」ガタガタ・・・

???「んー良いよ? でも、さっきからの様子見てるに、困るの『香くん』じゃないの、かな?」ニヤニヤ・・・


悔しいが、冷静なのはヤツの方だ。


???「電車の中逃げる時も、可愛かった……ハァハァ……一生懸命人混み、逃げてたけど、俺はスィーって停車駅で、電車の外側から、ね」クイッ・・・

香焼「……、」ビクンッ・・・

???「普通気付くと思うんだけど、さ。やっぱ誘ってる? それとも、ガチ焦りかな? まぁ……でも……ンフッ……どっちでも、いいや」スッ・・・

香焼「触らないで!」バンッ・・・

???「あぁ~……たまんないなぁ」ケヒッ・・・ベタベタ・・・

香焼「ひ、ぁ」ゾクゾク・・・

???「そぉれ」グイッ・・・ドスッ・・・


遂に襲ってきた。しかも小柄な僕が一番対処出来ない方法で。


???「はーい、お喋り禁止、ね……フゥフゥ」スッ・・・ジー・・・

香焼「ぐっ……ぎ、ぃっ! んぅっ!!」ブンブンッ・・・

???「デュフッ……涙目、最っ高です。いいよー……ウヒッ……やっぱ、女装っ子、良いわぁ……あ、カメラ回すよっ」カチャッ・・・

香焼「っ!? んんんっ!! んんんんんんっ!!」ジタバタッ・・・


全体重を乗せられている状態では振り解こうにも解けなかった。手を齧っても文字通り全く歯が立たず、痛がる素振りも見せない。
今は最後の抵抗として顔を引っ切り無しに動かし、カメラをブレさせる事くらいしか出来なかった。

誰でも良いから、早く、助けて……ください―――

 ―――さる翌々日、PM05:00、学園都市第7学区、学園メトロ南北線、第7学区最北部駅・・・食蜂side・・・




やっとの思いで電車を4台抜いた。
半ばグロッキーな私とは対照的に、未だにピンピンしているバケモノ二人。
停車中の電車の屋根を駆けたり、対向電車の側面部を蹴り上げて急カーブしたり……最早CGの世界だ。


神裂「―――食蜂さん、大丈夫ですか」スタタタタッ・・・チラッ・・・

食蜂「無暗に話しかけないでぇ……盛大にリバースするわよぉ」ウヘェ・・・

御坂「相変わらず貧弱ね」ヤレヤレ・・・ビリビリ・・・


だから貴女達と同類扱いするな。


食蜂「それより御坂さぁん……例の妹達から連絡は?」チラッ・・・

御坂「……あっ」タラー・・・

食蜂「忘れてたのねぇこんちくしょーっ!!」ウギギッ・・・

御坂「ま、待って! 急いでアンテナ張るから! えぇっと……―――」ビビビッ・・・

神裂「手遅れでなければ良いのですが」ムッ・・・


走りながら電波を受信しつつ、等間隔の監視カメラをジャミングする凄技をやってのける第3位様。


御坂「―――よしっ! 食蜂、携帯パスっ!」ヒョイッ・・・

食蜂「おわっとっとぁ!?」グラグラ・・・パシッ・・・


時速80㌔のスピードで並んで走っている隣の車の窓に物を投げ込む所業。危なく落とす所だった。
兎に角、手が空いているのは私だけという事で連絡は私の役に。一応、スピーカーをMAXにして……準備OK。


食蜂「んもーぅ滅茶苦茶よぉ。これもう繋がってるのかしら……もしもーし」ハァ・・・Pi!

御坂蛇『―――もし―――ま―――通じ……すか? 此方、蛇(ミサカ17600号)。御姉様!』ガガガ・・・

神裂「ふむ、ちゃんと繋がりましたね。食蜂さん通信を続けて下さい」コクッ・・・

食蜂「あー……もしもし。御姉様(オリジナル)じゃなくてゴメンなさい。隣走ってる同級生よん」ヤレヤレ・・・

御坂蛇『―――食蜂、さんか―――今何処ら辺に?』ガガガ・・・


単純計算、通り過ぎた駅を数えたら……10駅目に差し掛かる所だ。


神裂「香が乗っている電車はまだ先ですか! というかあの子と連絡は取れましたか!?」スタタタタッ・・・

御坂蛇『―――10……ダメだ、戻れ!』ガガッ・・・

食蜂「へっ?」キョトン・・・

御坂「な、何で! もしかして知らず知らずの内に追い越しちゃった!?」タラー・・・

御坂蛇『いや、当初の目標(電車)は目の前の駅です―――がしかし、香はその「前の駅」で降車した模様! とミサカは―――、』ガガガ・・・


突如、急ブレーキ。


食蜂「ひゃああぁああああぁ!?」グワングワン・・・

神裂「チィっ!!」キキイイイィ!!

御坂「反転か! 一つ前の駅ねっ!?」ビジバジジジ・・・


止まる時は事前に言えこのモンスターズ。ぶっちゃけ衝撃でちょっとチビる所だった!

反転の影響で御坂さんの電波(アンテナ)が乱れた。数秒ノイズが奔った後、再び妹達の声が聞こえる。


御坂蛇『―――が――――――です! プラットホ……の監視カメラに写っていました!』ガガガ・・・

御坂「何っ!? 何て言ったの!?」グルンッ・・・

御坂蛇『―――香を……見つけたと言ったんです。カメラをジャックした際、映り込んでいた!』ガガガ・・・


それを聞くや否や、急速逆走する。


神裂「それは何分前の映像ですか!」スタタタタッ・・・

御坂蛇『凡そ15分前―――ええ、例の「変態」と思われる男も映っている!』ガガガ・・・

御坂「マジで被害あってたのね……私がしっかり着いてれば」クッ・・・

神裂「過ぎた事を悔やんでも仕方ありません。今は急いで現場に着かねば……あの子が危ない!」スタタタタッ・・・


痴漢とかストーカーとか、この能力と地位の御蔭で無関係なモノと思っていた。
しかし実際、間近な人物がこういう目に在っていると聞かされると怒りが隠せないな。


食蜂「香ちゃんはちゃんと逃げたの?」チラッ・・・

御坂蛇『そこまでは映っていない……最後に確認できた映像は人混みの中で―――キョロキョロとその場に佇んでいる香の姿です』ガガガ・・・

御坂蛇『同時に、例のヤツの姿―――明らかにキョドる香の方へ歩み寄っていました、とミサカは―――……ます!』ガガガ・・・

神裂「……スピードを上げます」ドンッ・・・

食蜂「んをっ!?」ブルンッ・・・


結局、現状分かったのは一つ前の駅で降りたという事だけか。


御坂「それでも情報不足ね……因みに、改札付近の映像に香ちゃんの姿は映ってた? 外に逃げてたらまだ安全だと思うけど」ビリビリ・・・

御坂蛇『現在調べています。引き続きGPSの信号と共に、手掛かりが分かり次第連絡をします、とミサカは一旦通信を切ります―――』Pi!

神裂「兎角この先ですね……もう着きます。二人とも準備を!」スタタタタッ・・・


それから数分後……目的の駅に到着。不幸にも電車が停車していた。しかも上下双方。


御坂「ぐぅ……上り下り合わせてざっと5千人超えるわよ?!」ギョッ・・・

神裂「食蜂さん、やれますか!?」チラッ・・・

食蜂「やるっきゃないんでしょーもぅっ! 私の鞄落ちない様に抑えてて!!」ガシッ・・・

神裂「了解です―――ホームに登ります! 御坂さん、ジャミング!!」バッ!!

御坂「うぉりゃあぁ!!」ビジバジッ!!


多少、力んでショートさせたのか電灯が点滅する。その間にお姉さんは私を抱えて走り高跳び。勿論、四方八方から注目が集まるが―――


食蜂「うぇいやっ!!」Pi! Ppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppppp!!


―――普段の数百倍掛けて大改竄……とはいうものの、一定の『空間』に対象纏まってくれていた御蔭で『高速道路独占』した時より楽に済んだ。
改竄の注文(オーダー)は『私達への注目度』を0にする事という簡単なモノだったが、やはり『代脳』無しでこの人数を弄るのは流石に疲れる。
頭もだけど、主にリモコンを弄った指が痺れてる。暫く能力封印したい。


神裂「流石超能力者(レベル5)。モノの見事に『何も無かった』事になってますよ。パニックも0です」スタッ・・・

食蜂「うげぇ……二度と出来ないわよぅ。というかしたくない」グデェ・・・

御坂「相変わらずチートね―――っと、そんな事言ってる場合じゃない。食蜂、携帯返しなさい」パシッ・・・


乱暴に私から携帯を取り戻す御坂さん。いつもなら嫌がらせの一つでもしてやる所だが、今はそれどころではない。早く連絡を取ってくれ。

プラットホームの人の波と、上下電車は何事も無かったかの様に動き出した。
まぁ実際彼らの中では『無かった事』なのだから、そうなってくれなきゃ困る。

一方……『日常』に反して騒がしい事になっている我々。


御坂「―――早く出なさい……あ、もしもし!」Pi!

御坂蛇『―――……急かし過ぎです。現状私(ミサカ)一人だけで探してるんですから待って下さい』ガガガ・・・

御坂「他の子達(シスターズ)に協力要請出来ないの?」ムムム・・・

御坂蛇『出来る事ならとっくにやってる! しかしハード面で如何しても無理なモノは無理で―――』トミサカハ・・・

御坂「あーもぅ! じゃあ私も手伝うから指示して! 無暗矢鱈に探すよりは監視カメラジャックした方が早い―――」ギャーギャー!


電話越しでギャーギャー騒ぐ姉妹。私が注意を逸らしてなかったら即行で駅員呼ばれるレベルだ。


神裂「……時間が惜しい。上を探してきます」スッ・・・

食蜂「あ、ちょっとぉ。まだダメよん! 今御坂さんが何かしようとしてるみたいだし」チラッ・・・

神裂「では此処からは手分けして探しましょう」テクテク・・・

食蜂「だぁからー。当てずっぽうに探しても徒労に終わっちゃうでしょお……少し冷静になったら?」ジー・・・


腑に落ちない様だが正論を言っているのは私だ。何処の大海に落としたビー玉を拾うのに手探り素潜りは無謀も同然。
気持ちは分かるが、下手を打って更に遠ざかる危険性だって有り得る。


神裂「そう、ですね。しかし……こんな事なら麦野さんにお願いして滝壺さんの能力(チカラ)を借りるべきだったかもしれません」タラー・・・

食蜂「よく分かんないけど今からでも遅くないなら頼んだら? ただぁ……アイツ巻き込んじゃっても良いのぉ?」チラッ・・・

神裂「……、」ムゥ・・・


麦野沈利が如何絡んでいるかは分からないが、それはそれで都合が悪い様だ。


食蜂「とりあえず今は香ちゃんの電話に掛けてみるとか、他の協力者が情報掴んで無いか回ってみましょう」クイッ・・・

神裂「……貴女は冷静ですね」ポリポリ・・・

食蜂「貴女達と違って体力無い分、頭使わないとねぇ。さぁて御坂さんは……、」チラッ・・・

御坂「―――あぁ初春さん! ちょっと至急手伝って欲しい事がっ!」Pi!

食蜂「あらぁ。ボッチに見えて、そこそこ友達居るのねぇ」フフッ…

神裂「私も風紀委員の友人に連絡します……食蜂さんは如何します?」チラッ・・・


私は友達が少ないから……数少ない友達の『一人』にコールを続ける事にする。


神裂「……お願いします」コクッ・・・

食蜂「あいあい。あーっと、その前にぃ」チラッ・・・ポリポリ・・・

神裂「はい?」フム・・・

食蜂「急いでお手洗い行って来ても良いかしらぁ……誰かさんに振り回された所為で色々ピンチなのぉ」オホホホ・・・


正直限界。吐き気(リバースポイント)は収まったけど膀胱がヤバい。
あとさっきの急停止&急速逆走の『衝撃』でリアルにチビってないか確認したい……いや、してないと思うんだけどね! 一応ね!


神裂「え、えぇ構いません。何かあれば急いで伝えに行きます」コクッ・・・

食蜂「うん、宜しくぅ。じゃあ……失礼っ!」トコトコトコ・・・


多少早足でトイレに向かう。本当はメトロのトイレなんか使いたくはないが、背に腹は代えられない。
せめてそれなりに清掃が行き届いていれば良いのだが―――そんな事考えてる場合じゃないか。兎角、連絡に注意しながら先に進もう。

次発の列を避けながらプラットホームの端の方に在るトイレに向かう。
雰囲気的に広い感じはするのだが、綺麗か如何かは別物だろう。

ふと、中に入ろうととした矢先……『清掃中』の立て札に気付いた。


食蜂「……んー」ジー・・・


こういう看板が立ってると如何も入り辛い。
男子トイレの方では気にせずズカズカ入って行くのを見掛けるが、女子トイレでは気が引ける。


食蜂「まぁ私は関係無いけどねぇ」スッ・・・


リモコン一つで掃除のオバちゃんを追い出してしまえば気にもならない。
寧ろ、この看板が立ってる御蔭で他の利用者避けになるのでラッキーな事この上ない。
という訳で、ダルさは残るが能力を使う準備をし、トイレの中へ。

予想通り『駅のトイレ』といった感じの中身。ぶっちゃけ極力使用を控えたい。


食蜂「って、あれぇ」キョロキョロ・・・


おかしい。人っ子一人居ない。


食蜂「掃除のオバちゃんはぁ……ま、いっか」テクテク・・・


掃除用具の忘れ物でもしたのか、はたまた少々席を外しているのか……ドチラにしろ手間が省ける。
それではさっさと個室に入って用を足してしまおう―――


食蜂「うーん……やっぱ臭いがイヤねぇ」フゥ・・・


―――恥ずかしいので詳細は省く。


食蜂「……ん?」ジー・・・


便器に腰かけながら携帯を弄る。その最中……音がした。


食蜂「えっ」ドキッ・・・


 ―――ハァハァ……カワイイネェ……サイコォ……ンンッ……ガサガサ……ヤメッ……デュフフッ……ガタガタ……―――


食蜂「え、えぇっと」ハワワ・・・///


もしかして……何処かの個室でニャンニャン中!?


食蜂「ちょっとぉ……だから公衆トイレってヤなのよぉ」カアアァ・・・///


私の独り言、聞こえてなかっただろうか。


 ―――フヒヒッ……アバレナイノッ……イタイッ……ゴソゴソ……タスケッ……コラッ、シズカニッ……ゴトゴト……エフフッ……―――


場所考えろよ……ていうか男の方キモい。マジ悪寒。ちょいと無理矢理っぽい感じが超キモい。
何より男が女子トイレ(同じ空間)で盛ってるっていうのが、生理的に無理で―――


食蜂「……ぇ」ピタッ・・・


男?
女子トイレに?
何故丁度良く、この駅のこの場所で?

如何考えても変だ。都合と辻褄が合い過ぎる。


食蜂「……、」スッ・・・


未だ聞こえる物音、男の気持ち悪い息遣いとダミ声……それから、か細い嬌声。
個室を出て、急いで手を洗い、多少落ち着いた所で一言。


食蜂「……香、ちゃん?」ボソッ・・・


ダメ元で呟いてみた。もし違かったら急いでトイレから離脱すれば良いだけの事。
勿論というかやはりというか返事はない。その代わり―――物音が止んだ。

普通に考えれば、情事の最中『横やり』が入れったら、動きを止めざるを得ないだろう。
しかし、数分も静かにしておけば再び行為が始まる筈。決して出刃亀根性からではなく、確認の意味でその場に留まった。

そして一寸後―――


 ミサキ・・・サン・・・・・


―――聞こえた。


食蜂「っ!」バッ・・・


急いで唯一閉まっている個室の前に向かう。


食蜂「香ちゃん、居るの?」コンコンッ・・・


再度確認。もう間違いでも何でも良い。寧ろ聞き間違いであって欲しい。
だってそうだ。このシュチュエーション、冷静に考えたら、彼女は例の変態に―――


 『―――だっ……助け……ぃッ!』グンッ・・・ガッ・・・

???『ッ……す、すいません……すぐ片付けて、出ますから……どうも。人様に迷惑掛ける、つもりは、なかったんですよ』デュフフ・・・


食蜂「……、」ジー・・・


 『痛っ……やっ、んんっ……んぅ!』ズリズリ・・・

???「オトナシクシテッ! あぁ……ごめんなさい。ィヒヒ……お互い、好きモノでして、ね」ガシッ・・・


確信。


食蜂「……、」Pi!

???『いやぁ……もしかして、お姉さんもモノ好き、なのか……な―――・・・・・―――、』ピタッ・・・

 『ぷはっ……ぁ……ぅ……操祈、さん』ズリ・・・

食蜂「やっぱり香ちゃん、なのね……もう大丈夫よ。助けにきたの。遅くなってゴメンね」Pi!


リモコンを振るい男を操る。下の隙間から見えた男性モノのシューズで位置は特定出来た。


食蜂「さ、出ておいで。お姉さんとミサカさんも一緒に探してたのよん。もぅ心配したんだからぁ―――」

 『ぃ、ゃ……だ、め。ダメ…っす』グッ・・・

食蜂「―――……ぁ」ピタッ・・・

 『お願い……見ないで……お願いだから……帰って、ください』ウウゥ・・・


意味を理解した時にはもう遅い……全てが、遅かった。

偶然にも助ける事が出来た……そう思いきや、それはもう悲劇が起きてしまっている最中だった。
私は何も言えなかった。トイレには、ただただ、彼女の押し[ピーーー]様な嗚咽しか聞こえない。
私は如何したら良い。此処はやはり、彼女のお姉さんを呼ぶべきだろうか……それとも彼女が落ち着くまで待ってあげた方が良いのだろうか。


食蜂「っ」ギリッ・・・


頭がこんがらがって訳が分からない。冷静にならなきゃ。
私がパニくって如何する。一番辛いのは扉を挟んで向こうに居る彼女だ。声を殺して泣いている彼女なんだ。


食蜂「……、」フゥ・・・


一息吐き、落ち着いて考える……今すべき事は何か。位ま出来る事は何か。
きっと今の私では彼女を慰める事は出来ない。触れれば逆に傷つけてしまいかねないのだ。
では他に出来る事は……やはりまずは、お姉さんを呼んであげよう。私より身内の方が落ち着く筈。
それから風紀委員か警備員、それと駅員に連絡を―――


食蜂「……、」ムッ・・・


―――連絡する……何故?
犯罪が起きたから。

犯罪……具体的には?
私の大切な後輩・友人が痴漢にあい、ストーカーにあい、■■されたから。

■■……誰が?


食蜂「……香ちゃん」ボソッ・・・

 『っ……は、い』ヒック・・・ヒック・・・

食蜂「誰なの……ソイツ」ボー・・・


彼女が知る訳がない。そんなのお姉さんから聞いた事前情報で分かっている事―――でも、それで良いのか?


食蜂「……良くないわねぇ」Pi!

???『―――――、』スッ・・・ガチャッ・・・

 『ぇ……っ……いやっ……何で、開け……っ!』ビクッ・・・


無意識の内に、男を操り中から鍵を開けさせていた。
初めて見る『人形』の素顔―――気持ち悪い。妙に若々しい恰好をした中年の[ピザ]。携帯片手に……下半身露出させて。キモい。吐き気すらする。


食蜂「……、」チラッ・・・

香焼「っ……見ない、で……ぅ」ブルブル・・・


私の友人。愛しい後輩―――おませな化粧は泣きっ面で剥がれ、衣服はシワクチャ滅茶苦茶。タイツは破かれ……臭いニオイが着いちゃってる。
狭い個室の端っこで縮こまり、私に顔を見られない様、子犬みたいに震えてる。


食蜂「……、」フイッ・・・

???「―――――、」ピタッ・・・

香焼「っ……うぅ」ビクビクッ・・・


私の中で、何かが『切れた』。


食蜂「その上着……スカートも捨てなさい。私のブレザー着て良いから」スッ・・・

香焼「……ぁ」ファサッ・・・


頭はヤケに冷静で。心はそれ以上に冷ややかで……それはもう、氷の様な冷たさで―――


  ―――一方、神裂side・・・・・



隣で御坂さんが携帯を首に挟みながら、電子端末を弄っている。焦りながらも器用に情報収集を行っているのだろう。
私はというと……現状尽くせる手は尽くした。固法さんに連絡を入れ、五和と浦上にも助力を請い、後は御坂さん次第といったところ。

もどかしい。やはり上に行って脚を使って探そうか。


御坂「―――……お姉さん。気持ちは分かりますが、今は報告を待って下さい」カタカタ・・・

神裂「……やはり、情報戦には向きませんね」ムゥ・・・

御坂「得手不得手はあります。私だってどっちかっていったら行動派ですよ……ただ闇雲に動いても遠ざかる危険が」チラッ・・・

神裂「分かってます……しかし」ハァ・・・


こういう時、常人以下の自分を恥じる。


神裂「覚悟を決めるべきかもしれませんね」ジー・・・


諸処の責任を取る覚悟で土御門に連絡を取るか、もしくは滝壺さんの能力を借りるか。
事後処理の事も考えると早い段階で土御門に一報をすべきか……そう考えた刹那―――奥の方から悲鳴が聞こえた。


神裂・御坂「「っ!?」」バッ・・・


声の方を見遣る。何やら人集りが出来ていた。
時間が惜しいが一旦手を止め、二人で其方へ向かうと、そこには―――


御坂「んなぁっ?!」カアアァ・・・///

神裂「な、なんつー……破廉恥な」カアアァ・・・///


―――人集りの中心に『変態』が居た。
下半身を露出させ、気味の悪い笑みを浮かべながらブラブラとプラットホームを歩いている。
正義感を持った数名がその男に注意を促すが、まるで聞く耳を持っていない様子。雰囲気的に『心此処に非ず』といった感じだ。


御坂「ちょ、ちょっと! 駅員は!?」アタフタ・・・///

神裂「流石にすぐ駆けつける筈だと思いますが……ん?」チラッ・・・///


突如、男は叫び出した。


???「―――お、俺はー。☆★学院大学のぉ。牝形吸大(めがたきゅうた)ぁ……ヘンタイでぇす!」ペタペタ・・・


異常。もしや精神的にアレな類か。兎角、他人に害を及ぼす様であれば止めに入らなくてはならないだろう。
御坂さんにアイコンタクトを送るが……案の定、歳相応に恥ずかしがってしまってる。一応、私だって恥ずかしいですよ。


御坂「えぇっと、あの、うん……大丈夫! 目ぇ瞑ってても放電出来るし!」アハハ・・・///

神裂「……まぁ男の人に任せましょう。それより香の情報を」フイッ・・・


変態の方から目を背けた直後―――聞き慣れた声がした。


香焼「操祈さん! 止めて!」バッ・・・

神裂・御坂「「なっ!?」」ギョッ・・・

食蜂「―――、」ジー・・・


トイレから出てくる二人を見て、思考が止まる。
すっかり空気と化していた食蜂さん。そして何故かその後ろから―――大きめのブレザーを羽織った香焼(香)が姿を現した。

食蜂さんの表情はとても無機質な感じがしていて、その右手にはリモコンがあった。
水平に上げたその腕に、香焼が必死にしがみ付こうとしている。


御坂「ちょ、何やってんのよアイツ!?」アタフタ・・・

神裂「というか、香や……香っ!!」バッ・・・

御坂「ま、待って下さいよっ」スタッ・・・


急いで人混みの中心に向かい、二人に詰め寄る。


香焼「操祈さん! もう大丈夫だからっ! だから止めて!」グイッ・・・

食蜂「―――、」ジー・・・

御坂「食蜂っ! これ、アンタの仕業なの?!」ギョッ・・・///

香焼「御坂さん……姉さん」ウルウル・・・

神裂「……香」ジー・・・


今あの子羽織っている大きなブレザーは食蜂さんのモノだ。
そしてよくよく見ると……その下の制服がボロボロなのが分かる。タイツまで破かれて―――


神裂「っ」ギリッ・・・


―――あぁ……『そういう』事か。


御坂「えぇ!? な、ど、何なのよっ」タラー・・・

香焼「っ……食蜂さんを止めて下さい」ポロポロ・・・

神裂「……、」ジー・・・


野次馬が集まる。携帯で動画まで撮影されている。これはかなりヤバい状況。


神裂「……御坂さん」ボソッ・・・

御坂「分かってますよ。カメラ類ショートさせれば良いんでしょう……でも意味分かんないわ。何が如何なってんの!」アタフタ・・・

神裂「香の『あの姿』を見ても分かりませんか」チラッ・・・

御坂「だぁから『あの姿』が一番訳分かんないのよ! 何で、えっ……ハァ!?」ダラダラ・・・


納得できない、と。それは私も同じ。しかし現に―――『そう』なった。なってしまった。


御坂「……間に合わなかった、の」ダラダラ・・・

神裂「……、」ジー・・・

食蜂「―――、」Pi!

???「ウィヒッ……へ、ヘンタイでスィマセぇン! し、死んで、詫びまぁす!!」ペタペタ・・・

香焼「操祈さんっ!!」ガシッ・・・グググ・・・


先の貧弱さが嘘の様。香焼が幾ら体重を乗せても、食蜂さんの右手はピクリとも動かない。
自力で止める事を諦めたのか、私と御坂さんに視線を送る香焼。


香焼「姉さん! 御坂さん! 食蜂さんを止めて!」ポロポロ・・・

御坂「っ」グッ・・・

神裂「……、」ジー・・・


傷付いている筈のこの子が、己を傷付けた男を助け様としている。

ふと気が付いたが、男は線路の方へ向かっていた。このまま行けば落下防止の柵を越えて落ちてしまうだろう。
それは勿論……食蜂さんの能力(洗脳)によって。


香焼「御坂さん!」ガシッ・・・

御坂「ぇ……ぁ」ダラダラ・・・


御坂さんの顔が青くなった。
目の前で殺人が行われ様としている未来よりも、香が犯されたという過去にショックを受けているのだろう。そして、それは私も同じ気持ち。


香焼「っ! 姉さん!」バッ・・・

神裂「チッ……御坂さん。今は出来る事をして下さい」チラッ・・・

御坂「ぁ、ぅ……はい」コクッ・・・


だけど、私は彼女ほどウブではない。


神裂「香」チラッ・・・

香焼「ね、姉さん。早く食蜂さんを!」ポロポロ・・・

神裂「まずアナタが泣き止みなさい……今、終わらせますから」テクテク・・・


フェンスを乗り越えようとする変態を、数名の男性が止めようとしていた。
しかし途轍もない力で柵をよじ登っている。止めに入っている人までも巻き込んで落ちてしまいそうな勢い。


食蜂「―――、」Pi! Pi! Pi! Pi! Pi!


食蜂さんは確実に我を忘れていた。怒りに身を任せて冷静さを欠いている。


御坂「あぁもぅ……あーもーぉ!!」ビリバリッ!!

野次馬女性『ひゃっ!?』ビクッ・・・

野次馬男性『うをっ!? 携帯の電源飛んだぞ!』ゲッ・・・

御坂「チィ……香ちゃん! 今は食蜂を呼び止め続けなさい!」ギリッ・・・

香焼「ぇ、あ……はいっ」コクッ・・・


此方は大丈夫か。それでは、私の仕事―――


男性A「こらっ! 君! 馬鹿な真似は止めなさい!」グググ・・・

???「ブッヘッ……し、死んで、反省、しまーすぅ! イギッ……アヒャッ……ケヒッ……とめな、止めてっ、止めなぃ、たすけっ……タスッ」グイグイグイ・・・

男性B「馬鹿力なっ! もっと男の人手伝ってくれ!」グググ・・・

男性C「お、オレらまで落ちちゃうぞっ。あ、じょ、上半身落ちてる!?」グググ・・・


神裂「……失礼」ガシッ・・・


男性's『えっ』キョトン・・・


神裂「っ……ぬぅッッ!!!」グワンッ!!


男性's『おうぇ!?』ギョッ・・・


???「ウフェッ……あべひっ!! ガッ……ひゃっ……アヒャヒャヒャ……っ……、」ゴチンッ・・・ダラァ・・・


―――男を引き上げ、そのまま地面に叩き付け……気絶させた。多少強過ぎたのは許容範囲だろう。

件の犯人が泡を吐いて気絶した。これで一段落……と言いたいところだが、そうも安心してられない。
見渡す限りの野次馬。遠くから駆けてくる音を聞く限り駅員もやってきたのだろう。

こういう時、最も頼りになるのは食蜂さんなのだが―――


食蜂「……、」Pi! Pi! Pi! Pi! Pi!


―――彼女の中では、未だに終わっていないのだろう。


香焼「操祈さん、もう止めて! 終わったから!」ガシッ・・・

食蜂「……、」ギリリ・・・

御坂「食蜂! いい加減にしなさい!」ビリリ・・・


彼女の怒り(リモコン)は収まらない。
『操り人形』を壊してしまえば能力は効くまいと踏んだのだが、予想を上回っていた。彼女は『死体』にまで鞭を打つ事が出来る。
現に気絶状態の変態は首が据わらない状態でビクビクと奇妙な動きをしながら、這いずって柵の方へ向かおうとしていた。


御坂「あぁもぅ折角人目に付かない様行動してたってのに!」グイッ・・・

香焼「操祈さん! もう助かったんだよ……だから、お願い」ガシッ・・・

食蜂「……、」ギリギリ・・・

神裂「食蜂さん―――」ジー・・・


止むを得まい。


神裂「―――……失礼」ガバッ・・・

香焼「っ! 姉さん!?」ビクッ・・・


強引にリモコンを全て取り上げた。そして一寸後……男の動きは完全に消沈した。


御坂「ナイス! えぇい、食蜂!」ガシッ・・・

食蜂「絶対……許さない」ギリリ・・・

御坂「っ……こんのぉ……歯ぁ食い縛れ!」グンッ・・・

香焼「御坂さん!?」ギョッ・・・


ぱちんっ。


神裂「っ!」キョトン・・・

香焼「なっ」タラー・・・


乾いた音が響き渡り、その後、静寂が奔った。


食蜂「―――っ?」ピタッ・・・

御坂「頭冷やせ馬鹿! 周り見なさい!」グイッ・・・

食蜂「……ぁ」ピクッ・・・

野次馬's『―――――、』ジー・・・

香焼「……操祈さん」ウルウル・・・

食蜂「香、ちゃん」タラー・・・


香焼の顔を見詰めた後、私と御坂さんに申し訳なさそうな表情で目配せする食蜂さん。漸く我に戻った様だ。
一安心出来た事にホッとはしたが、感傷に浸っている場合ではない。早くこの場を何とかせねば。

端的にいうと、食蜂さんが平常運転に戻ってからはあっという間だった。
例の如く『大改竄』を行い、人々の記憶から私達の存在が『無かった事』になる。
ただし、件の変態が問題行動を起したという事実は消さずにしておく辺り、食蜂さんの怒りが完全消火していない事が窺えた。


香焼・食蜂「「……、」」ジー・・・

御坂「はぁ……ったく」ポリポリ・・・

神裂「香」チラッ・・・

香焼「僕は、もう大丈夫…です」コクッ・・・


空気が重い。止むを得まい。一人は殺人未遂、一人は……犯されたのだから。
さておき、男は気絶したまま駅員に御縄となり、駆け付けた風紀委員―――もとい、固法さんと白井さんに引き渡された。
食蜂さんが2人の記憶まで改竄しようとしたが、固法さんには話しておかねばならない気がしたので、それは引き留めた。


固法「―――何事かと思えば……神裂さん、ちゃんと説明してね」チラッ・・・

神裂「ええ。それよりプラットホームに長居は無用でしょう。地上に上がりませんか」クイッ・・・

御坂「そうですね……黒子。ソイツ、地上まで『転移』して連れてける?」ジー・・・

白井「言われなくてもそうするつもりでしたの。こりゃ一旦病院搬送しないと話聞けませんね」アラアラ・・・

神裂(ぶっちゃけ半分殺意を持って脳天から落としましたからね)フンッ・・・

香焼・食蜂「「……、」」ジー・・・


一同、改札口まで上がり人通りの邪魔にならない一角まで移動。白井さんは犯人に同行するらしく、救急車と共にその場から消えた。
一方我々は事情聴取へ。


固法「さてと。色々聞きたい事はあるんだけど、まずは―――」ジー・・・

神裂「固法さん、私から話を受けましょう。彼女らはかなり疲れている」チラッ・・・

固法「―――むっ……でも後で全員から話聞きますからね。特に、御坂さん」ジトー・・・

御坂「えっ」キョトン・・・

固法「逃げちゃダメよ」ポンッ・・・

御坂「い、いやいや! 何で!?」アタフタ・・・

固法「日頃の行い」ハァ・・・


手をブンブン振り『冤罪ですよー!』と慌てる御坂さん。普段どんだけ素行不良なんだ。
香焼と食蜂さんの挙動が気になりつつも、先に『保険』たる固法さんへ話をしておかねば。


神裂「……すいません、お手数お掛けします」ペコッ・・・

固法「んもぅ。電話掛って来た時はホント驚いたわよ……距離あるからバイクで飛ばしてきちゃったじゃない」ヤレヤレ・・・

神裂「だから革ジャンを……助かります。非常時でしたので」ハハハ・・・

固法「頼って貰えるのは嬉しいけど、警察沙汰で御世話はしたくなかったわね……で? 香焼くん、大丈夫なの?」ボソッ・・・

神裂「……遅かった様です」ジー・・・


目を見開き、香焼を見遣る固法さん。難しい顔をした後、再度小声で質問を続けた。


固法「……具体的には?」ムゥ・・・

神裂「まだ聞いていませんが、かなり乱暴されたみたいです。もしかしたら性別もバレたのやも」タラー・・・

固法「止むを得ないわね……というより何故女装を? 神裂さんには悪いけど、事と次第によってはそのまま顛末書を書かせて貰うわ」ジー・・・

神裂「ふむ。困りましたね」ポリポリ・・・


固法さんは『香』の正体を知る者の一人。下手に誤魔化すと拙い事になるが……はたして何と言ったものか。

返答に困っている最中、颯爽と此方に割り込んでくる人物―――


浦上「姉様!」スッ・・・

神裂・固法「「えっ」」ピタッ・・・

浦上「遅れてすいません。電車が遅延していたみたいで到着遅れました」ペコッ・・・


―――妹分。いつの間にか五和も到着していた。
五和はベンチに腰掛ける香焼に近付き、真面目な顔つきで、されど冷静に声を掛けていた。多少震え声なのは動揺している証拠だろう。


浦上「固法さん、お手数お掛けします……あの子、大丈夫なんですか?」タラー・・・

神裂「……遅かった様です」ジー・・・

浦上「なっ……そうですか」ムゥ・・・

固法「ハァ……やっぱり後から聞きましょうか? 今は事情聴取どころじゃないみたいね」ポリポリ・・・

神裂「いえ、公務でしょう。止むを得ません。それで……香焼が女装していた理由でしたね?」チラッ・・・


浦上に目配せを送る。こういう時、3姉妹の中で最も頭がキレるのはこの子だ。


浦上「(こんな非常時にまで演技しろってか……)んっ…―――…馬鹿香焼。だから止めろって言ったんですヨ、私は」ハァ・・・

固法「止めろ? 神裂さんに聞いてはいたけど、ストーカー云々の件でかしら?」フム・・・

浦上「まぁ……あの子、演劇の練習だか何だかで常盤台行くって。オープンサークルなのか分かんないですけど、稽古場が常盤台とか」ジー・・・

固法「オープンサークルの演劇? でも何で家から女装を? 普通に入れば良いじゃない」ウーン・・・

浦上「常盤台、セキュリティ厳しいですからネ。他校の制服だと、ましてや男じゃなかなか入れて貰えないみたいなんですヨ」クイッ・・・

固法「そりゃ普通はそうよね」コクッ

浦上「でもあの子、変なとこで賢いんで女装すれば通れるっての覚えちゃったみたいで……手続き面倒だからって、それで」ハァ・・・


よくもまぁ頭が回る子だ。話に多少疑わしい点はあるが、その分を表情やら声色の演技でカバーしている。
固法さんも変だとは思いつつも、この場に及んで嘘を吐く筈も無いと信じ込んでいる故、深くはツッコまない様子だ。


固法「分かった。因みに、そのオープンサークルっての確認できたりする?」チラッ・・・

浦上「常盤台の理事さん、海原さんですっけ? その人かお孫さんに聞けば分かりますヨ」コクッ

固法「ありがとう。後で連絡してみるわ……それにしても、何故御坂さん達が一緒に? しかもアレって第5位さんよね」クイッ・・・

神裂「友人、といいますか仲の良い先輩みたいですよ。ただ、性別はバレてないらしいですけど」ムゥ・・・

固法「何で話さないのかしら……疑う訳じゃないんだけど、もしかして」ジトー・・・

浦上「いやぁ、あの子に限ってそういう馬鹿な真似はないですって……逆に、以前馬鹿な事で悩んでましたネ」ハァ・・・

神裂「あぁ確か『何で女子扱いされるんだろう』って。実際彼女達は香焼の事を本気で女子だと思ってるらしい」ハァ・・・


何とか話を合わせる。此処を越えれば上手く騙せる筈。


固法「御坂さんや白井さんが香焼くん……というか『香』ちゃんの正体を知らない事は知ってる。現に支部でも会ったりしてるしね」ポリポリ・・・

神裂「騙すつもりはなかったのでしょう。ただ、数ヶ月続いてしまっている様なので後に引けないのかもしれませんね」ウーン・・・

浦上「固法さん。出来れば、その……あの子が自分の口から伝えるまで御坂さん達には内緒にしておいて貰えませんか」ペコッ・・・

固法「……、」ハァ・・・

神裂「『事件』が起きてしまってる中で頼むのは変な話かもしれませんが……お願いします」ペコッ・・・

固法「……ハァ」ポリポリ・・・


困り顔。渋々納得してくれたという感じだが……あとはあの子次第か。


  ―――一方、食蜂side・・・・・


頭が上手く回らない。元はといえば私の責任……一体何を、如何話していいのだろう。


香焼「……、」ジー・・・

五和「コウちゃ……香(カオル)」トンッ・・・

香焼「……んっ」コクッ・・・


頭から私のブレザーを被ったまま、終始俯いたままの香ちゃん。お姉さんの声にも空返事。
御坂さんの顔色を窺うも、多分、私と同じ表情をしている。

沈黙が苦しい。だけど、香ちゃんの声を聞くのはもっと苦しい。


固法「―――おまたせしました。それじゃあ香……ちゃん。いいかしら」テクテク・・・

香焼「……、」コクッ・・・

御坂「固法先輩……私達、外した方が良いですよね」ボソッ・・・

固法「そう、ね。ちょっとだけ良いかしら」コクッ


素直に指示に従う。正直、事の詳細なんか聞きたくない。
多分聞いてしまったら、私の怒りが再発する。その時はきっと、病院まであの男を追い駆けて今度こそ……殺してしまうかもしれない。

ベンチに座る香ちゃんに視線を合わせ、優しく問い掛ける風紀委員。私達は一寸離れた場所に移動する。


五和「あぁ……もぅ」ワシワシ・・・

浦上「お姉。気持ちは分かるけど、私達が荒れても仕方ないでしょ」ジー・・・

五和「でも……でもさぁ!」ギリッ・・・

神裂「落ち着きなさい。浦上の言うとおりです」コクッ・・・

五和「っ……何でそんなに冷静でいられるんですか」ギリリ・・・

神裂「……、」ジー・・・


姉妹間でのギスギス。止むを得まい。こんな雰囲気じゃ中てられてしまう。


御坂「ごめんなさい……私の所為です」ボソッ・・・

神裂「御坂さん、止めて下さい。悪いのはあの子です。私達はキツく忠告していました……それを破ったのはあの子です」コクッ・・・

御坂「でも」ムゥ・・・

五和「だから何でそんな言い方するんですか! あの子、被害者なんですよ!」ギロッ・・・

神裂「では御坂さんが、食蜂さんが悪いと言うのですか?」ギロリ・・・

五和「責任転嫁の問題じゃないでしょう! どうして姉さんはそういう見方しか出来ないんですか!」ギリリ・・・

浦上「ちょっと二人とも、少し冷静になってください……目立ちますよ」タラー・・・

神裂「っ……だそうです。黙りましょう、五和」チィ・・・

五和「冷静ぶんないでくださいよ! 動揺してるの姉さんも同じでしょうっ」ギリッ・・・


睨み合うお姉さん二人。私から見れば二人とも、というか、この場に冷静な人物などいない。
それから数分が経ち―――風紀委員さんが此方に歩いてきた。香ちゃんに対する事情聴取が終わったのだろう。


固法「―――当たり前だけど、心的外傷が大きいみたいね。あまり口を開かないわ……神裂さん、傍に居てあげて貰って良いかしら」ハァ・・・


無言で香ちゃんの元へ向かうお姉さん。そのまま何も言わず、静かに隣に座った。何の会話も無い様子。
その後、二番目のお姉さんが事情調査を受けた後、私と御坂さんの番になった。

固法という風紀委員は御坂さんの知人らしく、事務的ながらも多少フランクに接してきた。


固法「―――初めまして、食蜂さん。風紀委員第177支部の固法です。噂は兼々聞いてるわ」コクッ・・・

食蜂「……どうも」ペコッ・・・

固法「聞きたい事は……そうね。先程の男性に見覚えは?」ジー・・・

御坂「無いですよ。二度と顔も見たくない」ギリッ・・・

食蜂「同感」ジー・・・

固法「そうね……じゃあ別の質問。第一発見者は食蜂さん、貴女で間違いない?」チラッ・・・

食蜂「えぇ。詳細聞きたいの? 悪趣味ねぇ」ジトー・・・

固法「いえ。香……ちゃんの様子を見れば分かるわ。あとは直接犯人の口から供述させる。ところで、あの男の『奇行』に覚えは?」ジー・・・


私を疑っている目。


食蜂「変態ですもの。キチガイでもおかしくないんじゃないかしら」フイッ・・・

御坂「うん……そうですね」フイッ・・・

食蜂「気になるのであれば監視カメラでもチェックしてみたら如何です? まぁ何らかの『事故』で映ってないかもしれませんけどぉ」チラッ・・・

固法「ハァ……まぁ超能力者二人に口裏合わせられると『種も仕掛けもあるマジック』が成立しちゃうわよね」ポリポリ・・・


物分かりが良い風紀委員さんだ。


固法「でも、敢えて言わせて貰うわ。相手がどんな悪だろうと、殺しは『最悪』よ」ジトー・・・

食蜂「っ」チィ・・・

御坂「先輩……コイツ庇う訳じゃないですけど、強姦だって『最悪』だと思いますよ」ジー・・・

固法「ええ、それは同意。でもそれと同レベルまで成り下がる必要はないわ」ムゥ・・・


正義感たっぷりで甘ったれた台詞。腹が立つ事この上ないが、これ以上香ちゃんの前で醜態を晒したくないので我慢する。


固法「当事者にしか分からない気持ちはある。それは理解してるつもりよ……特に大事な人が傷付けられた姿なんて、ね」コクッ・・・

食蜂「……、」フンッ・・・

固法「ただ……気休めになるか如何かは分からないけど。一応『一線』は守れたみたいよ、香ちゃん」フフッ・・・

御坂・食蜂「「っ!」」ピクッ・・・


聞いた瞬間、大分肩の荷が下りた。勿論変態に対しての怒りは収まらないが、張りつめていたモノが幾らか和らいだ。
今、自分がどんな顔をしているか分からないが御坂さんの涙目を見る限り、同じ様な顔をしているだろう。


固法「以上よ。もしかしたら後日、改めて事情聴取させて貰うかもしれないけど、その時はまた協力宜しくね」コクッ・・・

食蜂「ええ……因みに、犯人の運ばれた病院は?」チラッ・・・

御坂「あ、アンタ」タラー・・・

食蜂「安心して。別にこれ以上馬鹿な真似はしないから……御見舞よ、『おみまい』」フフフ・・・

固法「残念ながら緊急搬送なので分かりません。頭の中調べても良いわよ」フフフ・・・

食蜂「……あっそ」チッ・・・

御坂「やっぱ復讐する気だったんかい」ハァ・・・

固法「まぁでも、多分頭か精神の病院に移されるかもね。貴女達が言うとおり、『変態』で『キチガイ』らしいもの」フフフ・・・


適当に誤魔化された。仕方ない、如何にかしてヤツの居所を突き止めよう。
とりあえず、これにて事情聴取は終了。後は……アフターケアか―――

 ―――さる翌々日、PM07:00、学園都市第7学区、学園メトロ南北線、第7学区北部駅・・・香焼side・・・




日が暮れた。辺りはボチボチLEDのネオンで照らされている。


固法「―――それじゃあ香……ちゃん。病院に行きましょうか。嫌でしょうけど一応検査受けないと」ジー・・・

香焼「……えっ」ピクッ・・・


確かにそうなんだろうけど、困る。


神裂「固法さん、外傷はない様ですし、家でゆっくり休ませてあげてください」ペコッ・・・

固法「うーん……でもなぁ」ポリポリ・・・

五和「診察させたいのは山々ですが、今日はお風呂に入れて寝かせてあげたいんです」ペコッ・・・

固法「……本当に大丈夫?」チラッ・・・


応える気力も無いので、適当に頷く。


固法「分かった。でも明日、ちゃんと病院に行く事。良いわね?」ジー・・・

浦上「ええ。ガッツリ引っ張ってでも連れてきますヨ」コクッ・・・


姉さん達が上手い事誤魔化してくれた。御蔭で固法さんは渋々バイクに跨り、颯爽と帰って行った。そして、六人が取り残され……沈黙。
無表情の姉さんと操祈さん。そして気拙そうな顔をする浦上と御坂さん。それから憤怒の表情を戻せない五和。

僕は……どんな顔をしてるのかな。

一寸後、姉さんは盛大な溜息を吐き、僕を睨んでサラリと告げた。


神裂「―――香……来なさい」クルッ・・・テクテク・・・

香焼「……、」コクッ・・・

浦上「えっとぉ。姉様?」タラー・・・

神裂「少々二人きりで話を―――あぁ食蜂さん、御坂さん。此度は大変ご迷惑をお掛けしました。このお詫びは何れ」ペコッ・・・

御坂「あっ、え、いや、その……こっちこそ、ごめんなさい」タラー・・・

食蜂「……、」ジー・・・


慌てる御坂さんとは裏腹、冷ややかな顔をする操祈さん。


五和「姉さん。何処に行くつもりですか」ギロッ・・・

神裂「五和……いつまで激昂してるんですか。さっさと帰りなさい」チラッ・・・

五和「コウちゃんを何処に連れていくつもりですかっ!!」グイッ・・・

浦上「お、お姉っ!?」アタフタ・・・


『香(カオル)』という単語を忘れる程、怒り心頭の五和。無機質な対応をする姉さんに喰ってかかる。
浦上同様、思わず僕もヒヤっとしたが……操祈さんと御坂さんは気にも留めていない様子。助かった。


神裂「……説教です」フイッ・・・

五和「貴女って人はっ!!」ガシッ・・・

浦上「お姉! ちょっと! あーもぅ……五和! 止めなさい!」スッ・・・


姉さんの胸倉を掴む五和。しかし、姉さんは表情を崩さない……オマエは何で、そんなに怒ってるんだ。
悪いのは僕だろう。説教されて当然なのに。

張り詰めた雰囲気。姉さんと五和が睨み合う。一方は怒りの眼、他方は見下げる様な目。
対応に困っている浦上と御坂さんを余所に、操祈さんがポツリと呟いた。


食蜂「―――ちょっと良いかしら」スッ・・・

御坂「あ、アンタ! 空気読めっ」タラー・・・

食蜂「知らないわよ、こんな姉妹喧嘩。それより……当初の目的」ジー・・・

一同『……、』シーン・・・


何を言ってるんだ。


神裂「五和、離しなさい……食蜂さん。確かに『当初』は香と会って、真剣に話をする予定でした。えぇ『当初』は」ジー・・・

食蜂「そうよねぇ。じゃあ香ちゃんとお話させて」ジー・・・

御坂「こんの……超弩級脳内お花畑お嬢様がっ! 空気を! というか状況を読め!」ダラダラ・・・


そういえば、あんな事があった所為で忘れていたが、そういう約束だった。


浦上「これが超能力者ですか。麦野さんといい、やっぱマジパねぇですネ」ハハハ・・・

御坂「こんなんとかあんなんと一緒にしないで!」ギリギリ・・・

五和「食蜂さん。すいません。今日は家族会議させて下さい。その件はまた後日」コクッ・・・

食蜂「嫌よ。私ねぇ。あくまで勘だけど、今此処でお別れしちゃったら……―――」



     『次』が無い気がするのよん。



3姉妹『……、』ピタッ・・・

御坂「はぁ? アンタさっきから何言ってんの?」タラー・・・

食蜂「―――……ねぇ香ちゃん。お話、しましょう」ジー・・・


僕も、多分、そんな気がする。


香焼「……姉さん」ボソッ・・・

神裂「ダメです」ジー・・・

香焼「……すいません」ペコッ・・・

神裂「帰ります。命令ですよ」ジー・・・

香焼「……ごめんなさい」テクテク・・・

神裂「っ」ギリッ・・・グイッ・・・


僕の腕を掴もうとする姉さん。しかし五和がそれを遮り、逆に姉さんの腕を取った。


五和「―――……姉さん。先に帰りましょう。私と、ウラと」ガシッ・・・

神裂「離しなさい!」ギロッ・・・

五和「コウ……香。帰りは私がバイクで迎えに来るから、話終わったら連絡頂戴ね」グイグイッ・・・

香焼「……ありがと」コクッ・・・

五和「食蜂さん。正直私、貴女の事が許せません……だからちゃんと、私が納得出来る答えをその子と話し合って下さい」チラッ・・・

食蜂「ええ。分かった」ジー・・・


言葉におふざけは無い。二人とも、いつになく真面目な顔で淡々と話していた。

しかし、今度は姉さんの気が収まらない。


神裂「貴女達! ふざけるのも大概にしなさいっ!」カッ・・・

五和「姉さん。帰るんでしょう? さっさと行きますよ」グイグイッ・・・

神裂「気は確かですか!? 香! いい加減になさい! 早くこっちに!」ギロリ・・・

浦上「あーぁもぉ今夜は荒れるなぁ。勘弁してヨ」テクテク・・・ガシッ・・・

神裂「浦上っ?!」ギョッ・・・


姉さんの両脇をホールド。中々見る事が出来ない光景だ。


五和「姉さん。もう私達じゃあの子に何も出来ないでしょう。昨晩、そう言ってたのは貴女です」ボソッ・・・

神裂「っ……しかし話が変わりました。状況が状況です」ギリッ・・・

五和「あの子を怒って何が解決します? 一番冷静じゃないのは姉さんだと思います」ジー・・・

神裂「こ、の」プルプル・・・

浦上「まぁまぁどぅどぅ。それにですネ……食蜂さんの言うとおり『最後』かもしれませんし」ボソッ・・・


その覚悟の上で、僕は残る。


神裂「……、」フーフー・・・

五和「あの子、滅多に反抗しないんですから許容してやって下さいよ……では失礼します」グイグイッ・・・

浦上「やれやれ。早く帰らないと空腹の麦野さんまで荒れちゃいますヨー」グイグイッ・・・


一礼して去っていく五和と浦上。姉さんは抵抗しているが、人目が多い場所故、全力で暴れる事が出来ず、ズルズル連れて行かれた。
そして、三人が残る。


御坂「台風一過ね。香ちゃん、貴女のお姉さん達インパクト強過ぎよ」タラー・・・

香焼「すいません」コクッ・・・

食蜂「……、」ポリポリ・・・


再び無言。これはこれで気拙い。


御坂「あー……私、ちょっと席外すわ。さっきの『妹』と連絡取るから」チラッ・・・

食蜂「構わないわよん。香ちゃんが良ければ」コクッ・・・

香焼「大丈夫…です」ジー・・・

御坂「ごめんね。なるべく早く戻って来るから……食蜂、この期に及んで変な真似したら電気椅子かけるからね」ジトー・・・

食蜂「分かってるから早くどっか行っちゃってー」ノ"

御坂「くっ! 香ちゃん、何かあったら大声上げなさいよ。今度こそ……助けるから」ニコッ・・・テクテク・・・


気を使わせてしまった。思えば御坂さんには迷惑掛けっ放しだ。


食蜂「……とりあえず、座りましょうか。何処が良いかしらね」テクテク・・・

香焼「何処でも」コクッ・・・

食蜂「そうねぇ。まぁ喫茶店でも入りたいけど人多そうだし……人払いすればそこらのベンチで良いかぁ」スッ・・・

香焼「……操祈さん、今、能力使わないで貰えると助かります」チラッ・・・

食蜂「え? あ、あぁそうね。身体に障るわねぇ……じゃあ適当に腰掛けましょう」コクッ・・・


本当に適当なベンチ。チラホラ道行く人の目に着く場所だが、女子校生が二人座ってても気に止めないだろう。

言葉が出ない。ぶっちゃけ、未だに半分くらい混乱状態から抜け出せていないのだ。
色々と話さなきゃいけない筈なのに……むず痒い。

黙って俯いている事数分、痺れを切らした操祈さんがポツりと溢した。


食蜂「―――さっきはありがとね」チラッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

食蜂「私の事、止めてくれたでしょ。まぁあの男に対しては絶対に謝罪なんかしてやらないけどさぁ★」ニコッ・・・

香焼「ぇ……あぁ」ポリポリ・・・


男を駅の線路へ落そうとした時か。


香焼「だって……人殺しなんて、して欲しくなかったから」ボソッ・・・

食蜂「そうね。ごめんなさい」コクッ・・・


いや、違う。操祈さんにあんな馬鹿な真似させてしまったのは僕の所為だ。
僕がもっとしっかりしてれば、こんな『事故』には繋がらなかった。


香焼「自業自得…ですから」コクッ・・・

食蜂「止めて」ジー・・・

香焼「……、」ピタッ・・・

食蜂「何もかも悪いのは私よ。一から十まで、全部私の所為」ジー・・・

香焼「そんな事」フルフル・・・

食蜂「ううん。お願い……全部私の所為にして。私の所為にしなさい」スッ・・・

香焼「操祈、さん」グイッ・・・


自然に、抱き寄せられた。操祈さんの肩に頭を預ける形になる。


食蜂「そうすれば楽なのよ。貴女も私も、変に悩まなくて済むもの」ポンッ・・・

香焼「無理…ですよ」ハハハ・・・

食蜂「……、」スッ・・・


操祈さんも此方に寄り掛ってきた。いつもの様な無理矢理ではなく、倒れる様に弱々しい。


食蜂「あぁもう。加減が分からないのよね」フゥ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

食蜂「難しいわねぇ友達って。とぉーっても面倒だしぃ」フフフ・・・

香焼「……、」ムゥ・・・

食蜂「こういうのって理屈じゃないんでしょうけどねぇ。やっぱり私ってコミュ障ね」クスッ・・・


やたらと自虐的だ。いつもの操祈さんらしくない。


食蜂「あら、私はこんな人間よぅ。究極のジコチュウで、究極に自分勝手で、究極な我儘女」クスクス・・・

香焼「……そんな人が、他人の為にあそこまで怒ったりしませんよ」チラッ・・・

食蜂「だから自分でも不思議なのよねぇ。もしかして香ちゃんて私? もしくは私のクローンだったり分身だったりする?」ジー・・・

香焼「はぁ」ポリポリ・・・


随分と哲学的な問い掛けだ。しかし、ツッコむ気力も無いのでサラッと否定しとく。

道行く人がチラホラ此方を見てくるが、あまり気にならない。僕も操祈さんも互いに寄り掛ったままだった。
きっと仲の良い友人か、先輩後輩か、そのくらいにしか見えないだろう。


食蜂「ねぇ」ボソッ・・・

香焼「はい」コクッ・・・

食蜂「泣いてもいいよ」ジー・・・

香焼「……もう泣きませんよ」ボー・・・

食蜂「ちぇっ」コロッ・・・

香焼「ふふっ。変なの」クスクス・・・

食蜂「お互い様」ツンッ・・・


苦笑し合う。


食蜂「香ちゃんは強いわねぇ」ハァ・・・

香焼「操祈さんの方が強い…ですよ」ジー・・・

食蜂「私ならきっと舌噛んで死んでたかなぁ」ボー・・・

香焼「……それ以前に、そんな状況まで追い込まれないでしょう」フフッ・・・

食蜂「分からないわよ。AIMジャマーとかCD(キャパシティダウン)とか。色々あるじゃない」ジー・・・

香焼「そしたら今度は僕が助けますから。友達…ですからね」ニコッ・・・

食蜂「っ」ギリッ・・・

香焼「僕だけじゃなく、きっと御坂さんや派閥の人達だって―――……操祈さん?」チラッ・・・


突然俯き、震える声で呟いた。


食蜂「心を読めない人って、やっぱり怖いわ」ボソッ・・・

香焼「……、」ピタッ・・・

食蜂「ねぇ……何処までが本当で、何処からが嘘なのかなぁ。香ちゃん、隠し事多過ぎるよねぇ」ジー・・・

香焼「操祈、さん」タラー・・・

食蜂「どうせ常盤台の一年生だとか、特別学級だとか、そういうの嘘なんでしょ……ちょっと調べれば分かる事」ジー・・・

香焼「……、」ムゥ・・・

食蜂「でも貴女が何者かなんて、そんなの如何でもいいわ。貴女は貴女。私は私」ジー・・・

香焼「じゃあ……僕の心、読みますか」ニコッ・・・

食蜂「もぅ……怖い子」フルフル・・・


矛盾。


食蜂「狡いわよ、香ちゃん。人の心にズカズカと土足で入り込んどいて……こんなにも私の心を揺らして」ジー・・・

香焼「心理掌握(メンタルアウト)らしからぬ発言…です」クスッ・・・

食蜂「卑怯……心の距離が近付き過ぎたわ。これじゃあ―――『正体』を知るのが怖くなる」ジー・・・

香焼「うん……僕は僕。操祈さんは操祈さん」ポリポリ・・・

食蜂「はぁ……だから友達作りたくないのよねぇ。こういう想い、したくないから」フイッ・・・

香焼「……ごめんなさい」ペコッ・・・


お互い謝ってばかり。どっちも腹黒くて、不器用で、甘い。
罪悪感に苛まれながらお互いの肩に寄り掛り、暫く周りの喧騒に耳を傾けた。

そろそろ最終下校時間が過ぎる。これ以上操祈さんを留まらせる訳にはいかない。
僕は思い切って、狡い質問を投げた。


香焼「操祈さん」ボソッ・・・

食蜂「んー」ポンッ・・・

香焼「これからも……友達で居てくれますか」ボー・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・


これでダメならキッパリ諦めよう。土御門や海原さん達に進言して、この任務を解いて貰おう。
正直、ここまで勘付いてる操祈さんを騙し続けるのは忍びなさ過ぎる。

それ以上に、友人として、心苦しい。


食蜂「香ちゃんは、良いの?」チラッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

食蜂「だって私、セクハラ魔人だし。我儘な人格破綻者だし。自分勝手な超能力者だし」ジー・・・

香焼「あはは。セクハラは止めて欲しいなぁ」タラー・・・

食蜂「それに……お姉さん達が私と付き合うなって言うんじゃないかしら」ジー・・・

香焼「姉さん達は『友達は選べ』なんて言うタイプの人じゃありませんよ」フフッ

食蜂「……そう」ジー・・・


空を仰ぐ。星の見えない空は深い紺色。


食蜂「じゃあ逆に……『偽り』でも、私の友達を続けてくれる? 演じてくれるのかしら?」ジー・・・

香焼「っ」ピクッ・・・

食蜂「誰かに命令されたり、嫌々付き合ってくれてるなら……バイバイで良いわよ。別に怒らないから」フフッ・・・

香焼「そんな事!」キッ・・・

食蜂「冗談よ。貴女がそういう子じゃないのは知ってる。『闇』はあっても、裏表はなさそうだもんね」クスクス・・・

香焼「もぅ。意地悪」ジトー・・・

食蜂「ふふふっ。やっといつもの香ちゃんっぽくなった」ニコッ・・・


臆病者の微笑み。


香焼「絶交なんて嫌…です」ボソッ・・・

食蜂「私も」ポンッ・・・


利害関係なんて如何でもいい。任務も糞も知ったこっちゃない。


香焼「友人を失う事程、怖いものはない…です」ジー・・・

食蜂「……卑怯な台詞。それ、どうせ他のお友達にも使ってる口説き文句なんでしょ?」フフフ・・・

香焼「えっ、いや、そんな事……無いかな?」ウーン・・・

食蜂「無意識なら尚性質が悪いわねぇ。こぉのぉ天然スケコマシぃ。上やん病ぉ」ブーブー!

香焼「な、なんすかそれ!」ムゥ・・・

食蜂「んふっ。怒ったー♪ あ、因みに―――私はその口調の方が好きよん。素なのかなぁ?」ニヤリ・・・

香焼「あっ……ぅ」カアアァ・・・///


ペースに飲まれる。あぁでも―――いつもの僕達だ。

覚悟はしていたが、最悪の方向へは向かわなかった。心底安心。


食蜂「ふふっ。兎に角、これからもよろしくね」ポンッ・・・

香焼「はい」ニコッ・・・

食蜂「あ、勿論これからは無理矢理に嫌がる様な事しないわ。その点は安心してね」アタフタ・・・

香焼「信じますよ」クスッ・・・

食蜂「うん……嫌われたくないもの」ポリポリ・・・


あぁ。そうか……この人に必要な『救い』が見つかった気がする。


香焼「臆病…ですね」ジー・・・

食蜂「むっ……まぁそうね。私は誰よりも臆病者」ハァ・・・


本心を読まなければ人を信用できない臆病さ。そして、心底信頼できる者の不在。
何より、裏切られる事への恐怖。まるでリメエア姫の様。


香焼「……信じて下さい」ニコッ

食蜂「やれやれ。『偽り』ばっかの香ちゃんがそれを言う?」ジトー・・・

香焼「あ、え、と……うーん」タラー・・・

食蜂「ふふっ。困った子ねぇ……大丈夫、貴女個人は信じてる。嘘じゃないわ」スッ・・・


今はそれでいい。何れは僕以外の人間に対しても開いてくれる様になれば―――幸せな事だ。


香焼「ありがとうございます。僕も操祈さんの事、信じますから」ニコッ

食蜂「っ……まったく。もし貴女が『男子』だったら、完璧タラシよねぇ」ムンッ・・・

香焼「えっ! あ、いやぁ……あははは」タラー・・・

食蜂「スカシおってぇ。このぅ―――ぁ」ピタッ・・・


僕の頭に伸びた手が途中で止まった。そのままワシャワシャ撫でられるのかと思ったが、どうしたのだろう。


食蜂「えっとぉ……触っていい?」チラッ・・・

香焼「へっ?」ポカーン・・・

食蜂「だからぁ。香ちゃんの身体に、お触りしていいかしら?」ジー・・・


態々頭を撫でるのに許可を取るとは……難とも律義。


香焼「ふふっ」クスクス・・・

食蜂「な、何よぅ。嫌ならやんないもん」ブーブー・・・

香焼「いえ。頭を撫でてくれるんですか?」ニコッ

食蜂「ええ」クスッ

香焼「ふふふっ、どうぞ。でも正直……臭い…ですよ。まだあの男の臭いが」ポリポリ・・・

食蜂「……えいっ」グイッ・・・

香焼「うわっ」ワシャワシャ・・・

食蜂「私の匂いで中和してくれるわー☆」ギュウッ・・・

香焼「み、操祈さん。オーバーだよ!」モゥ・・・フフッ///


人目を気にせずペットを弄るかの如く私を撫で回す。まったく……不器用だなぁ。

 ―――さる翌々日、PM08:15、学園都市第7学区、学園メトロ南北線、第7学区北部駅・・・御坂side・・・




『妹』の一人―――個体番号17600号と作業的な連絡を終え、食蜂達の元へ戻る。
仲睦まじくじゃれ合ってる姿を見る限り、どうやら仲直りしている様だ。一安心。
もう少し二人きりにさせてあげたいところではあるが、残念ながら時間も時間。


食蜂「―――えへへぇ♪」ギュッギュッ・・・

香焼「―――ちょ、ちょっと操祈さん……あっ」チラッ・・・

御坂「やれやれ。腹を割って話せば3日も経たずに元の鞘ってか」テクテク・・・

食蜂「あらぁ……もう戻って来ちゃったのん?」ブー・・・

御坂「空気読めなくて悪いわね。それより……そろそろ時間よ」クイッ・・・


完全に寮監の折檻コースだな。黒子が上手く誤魔化していてくれれば良いが。


食蜂「えぇ……そんなぁ」シュン・・・

香焼「仕方ない…ですよ。一応規則でしょう」ハハハ・・・

御坂「もう破ってるけどね。まぁ食蜂は私と同じ寮住んでんだかそうじゃないんだか分からないけど、制服的にこれ以上は拙いっしょ」ジー・・・

食蜂「そんなの能力使えば如何にでも」ムゥ・・・

御坂「それに」チラッ・・・


言葉には表わしていないが、香ちゃんはかなり疲れている筈だ。ぶっちゃけ私らも地下鉄内爆走の所為で疲労困憊だし。


食蜂「んー……そうねぇ」フム・・・

香焼「心配掛けてしまってすいません。ホント、お二人には何から何までご迷惑を……改めてお礼しますので」ペコッ・・・

御坂「そんなん要らないわよ。ねっ?」チラッ・・・

食蜂「うぃーっ☆」ニパーッ!


友達は見返りなんか求めない。


香焼「……ありがとう」フフッ・・・

食蜂「うんうん。あ、因みにお姉さんにはもう連絡したの?」ジー・・・

香焼「今からします。マンションは近いので、姉がバイクですぐ迎えに来てくれるかと」コクッ・・・


あのおっとり顔に似合わずイカついバイクか。固法先輩といいあの二番目のお姉さんといい……巨乳で真面目系はバイク女子なのか。


食蜂「それじゃあお迎え来るまでは一緒に居るわねっ」ポンッ・・・

香焼「お気持ちは嬉しい…ですけど、電車の時間大丈夫…ですか?」チラッ・・・

御坂「うーん。逸早く帰りたいところだけど、香ちゃん一人に出来ないわよ。現状『放っておけない系女子』第1位ね」ハハハッ

食蜂「流石に『前科』持ちだとねぇ」ジトー・・・

香焼「うっ……反論できません」タラー・・・

御坂「そゆ事。それに、今放置したらそれこそ固法先輩の説教食らう気がするわ。『最後まで責任持ちなさい!』ってね」ポリポリ・・・

香焼「何だそれ」ハハハ・・・

食蜂「御坂さんって頼られてるんだか目ぇ付けられてるんだか意味分かんない子よねぇ」フフフッ・・・


喧しい。お前よか優良児じゃ。
さておき……それから香ちゃんのお姉さんが来るまで、適当に駄弁り続けた。

それから十数分後、やたらと腹に響く様な重低音が聞こえた。どうやらお迎えが到着した御様子。


香焼「―――あっ……来ちゃいましたね」ポリポリ・・・

食蜂「うーん、あっという間ねぇ」ハァ・・・

御坂「まぁまぁ。今生の分かれって訳じゃないんだし、また数日後にゃ会えるっしょ」ハハハッ

香焼・食蜂「「……、」」ピタッ・・・


二人の動きが止まった。えっと……私、何か拙い事言った?


食蜂「ぁ……そう、ね」コクッ・・・

香焼「ええ……会えますよ」ニコッ・・・


言葉に覇気が無い。眉を顰める食蜂。対して、苦笑する香ちゃん。
一寸後、スッと立ち上がり、私達の前に立つ香ちゃん。


香焼「……今日は本当にありがとうございました。見返りとかじゃなくて、心からお礼申し上げます」ペコッ・・・

御坂「いやいや。こっちこそ、その……助けてあげられなくてゴメンね」ポリポリ・・・

香焼「ううん……助かりましたよ。ありがとう」ニコッ・・・


これ以上、ぶり返さない方が良いのかもしれない。


御坂「そっか。どういたしまして。それより、固法先輩が言ってた様に明日ちゃんと病院行くのよ」ビシッ・・・

香焼「ええ。お二人も今日はしっかり休んで下さいね」コクッ・・・

食蜂「……んっ」シュン・・・


やはりコイツのテンションが低いと調子が狂う……ふと気が付くと、お姉さんがロータリーにバイクを停車させ此方を見ていた。


五和「―――、」ペコッ・・・


何も言わず、深々と頭を下げるお姉さん。そろそろお別れの時間だ。


御坂「お姉さん、待ってるわよ」フフッ・・・

香焼「はい」コクッ・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・


何か言え、食蜂。アンタが何か言ってあげないと、この子は足を動かせない。


食蜂「香ちゃん…―――…またね」ニコッ・・・

香焼「ええ―――」ニコッ・・・


お互い悲しそうな笑み。何か含みがあるのを感じたが、それを察せたからといって私には何も出来ない。
一瞬、香ちゃんは視線を落としゆっくりと踵を翻した。


御坂・食蜂「「……、」」ジー・・・


背中を向け歩き出す間際、香ちゃんは静かに告げた。


香焼「―――必ず、会いに行きます。いつもの場所で、いつも通り待ってて下さいね……操祈さん」テクテク・・・


その時、下唇を噛みながら頑張って笑顔を保とうとしている食蜂の顔が、とてもとても印象的だった。

香ちゃんの姿が消えた後、私達も帰路に着いた。目の前の地下鉄改札を潜りプラットホームに降りる。
この時間帯、流石に人の混雑もなくなっている。次の電車が来るまでの数分間、壁に寄り添って待つ女子中学生二人組。


御坂・食蜂「「……、」」ジー・・・


やはり調子が狂う。その原因を問い詰めたい気もするが、そこまでコイツの心にズカズカ入り込む勇気はない。
無言のまま待つ事一寸……先のてんやわんやの際とは一転、ガラガラの電車がやってきた。

そそくさと乗り込む食蜂の後を歩き、隣に座る。


御坂「……はぁ」グデェ・・・


此処に来てドッと疲れが押し寄せた。そういえばまともに座って無かった。
それどころか能力使いっ放しで全身が痺れる様に痛い。


食蜂「……、」ジー・・・

御坂「……あのさぁ」チラッ・・・

食蜂「んー?」ジー・・・


虚空を眺めている食蜂。堪らず声を掛けてしまった。


御坂「何あったか知らないけど、解決したんでしょ?」フゥ・・・

食蜂「そうかなぁ……解決っちゃ解決。でも新しい問題発生的な」ハハハ・・・

御坂「何よ」ウーン・・・

食蜂「ないしょー」フフッ・・・

御坂「……あっそ」ヤレヤレ・・・


コイツはこういうヤツだ。偶に真面目になったりするが、基本的には相手するのが面倒な輩。
こんな調子だから構っても無駄だろうと思い、携帯に目を向けた―――


食蜂「あのさぁ。御坂さん」ボー・・・

御坂「んぁ?」ピタッ・・・


―――途端にコレだ。何だかんだで構ってちゃんなのが厄介だが……今日くらいは我慢してやろう。


食蜂「例えば……第4位とか、あのバケモノお姉さんとか。そんなんが知人ですっていう子が『普通な子』だと思う?」ボー・・・

御坂「はぁ? そりゃ……うーん」ポリポリ・・・

食蜂「『普通』ではないわよねぇ。ましてや、私や御坂さんまでも仲良し」ボー・・・

御坂「……何が言いたいの」ジー・・・

食蜂「他には、あの海原光貴と。あとは御坂さんの『妹達』の一人と。極めつけは……御坂さんの大好きな『あの人』とも知り合い」チラッ・・・

御坂「んなっ! あ、アンタ…―――…んっ?」カアアァ・・・?///?

食蜂「……ま、いっか」ボケー・・・


『アイツ』までも知り合いなのか。確かに、偶然にしては『濃』過ぎる。


御坂「アンタ、何か分かったの? というか知ってるの?」ジー・・・

食蜂「なーんにも。まぁあの子自体特に害は無いから何でも良いかなぁってね」ハハハ・・・グデェ・・・

御坂「ちょ、ひっつくなし……何よそれ」ジトー・・・


意味深な発言をするだけして、グッタリと寄り掛ってきた。モヤモヤするなぁ。

その後、お互い終始無言のまま何事も無く常盤台の女子寮付近の駅に到着。
コイツは何処で降りるのだろうと気になっていたが、結局、同じ駅で降りた。そしてそのまま同じ改札を出る。


御坂「それじゃあ私寮に帰るわ。アンタも寄り道せずに帰りなさいよ」スッ・・・

食蜂「……へっ?」キョトン・・・

御坂「へって、何よ」チラッ・・・

食蜂「何よもかによも、同じ寮なのに別個に帰る必要あるのん?」キョトン・・・


知らんかった。てか、寮内で顔合わせた事無いだろ。


食蜂「ひっどーい。私は何度も見かけてるわよぉ。まぁ面倒だから声掛けた事ないけど」テクテク・・・

御坂「……、」ハァ・・・


香ちゃんの手前我慢してたが、やっぱコイツ苦手だ。
そういう訳で、付かず離れずの距離を歩きながら寮前に到着。因みに、とっくに門限オーバータイム。寮監の鬼の表情が脳裏をよぎる……そうだ。


御坂「アンタ、寮監の記憶操作出来ないの?」チラッ・・・ヘヘヘ・・・

食蜂「……、」テクテク・・・ウィーン・・・

御坂「無視かい……こんにゃろ」トボトボ・・・


しかしコイツだって怒られるのは嫌な筈。何だかんだで上手い事やってくれるだろう―――


食蜂「……、」コソコソ・・・キョロキョロ・・・コソコソ・・・


―――そう思ってた頃が私にもありました。


御坂「何でコソコソしてんのよ」ジトー・・・

食蜂「こ、こらぁ! 静かにしないと見つかっちゃうでしょ!」アタフタ・・・

御坂「見つかるってアンタ。自慢の能力使えば問題無いでしょ。私と違ってこういうの向いてるんだから」ヤレヤレ・・・

寮監「確かにな。同じ超能力者でも、御坂と食蜂だと対処が難しいのは食蜂の方だ」ジー・・・

御坂「ほら。本人もこう言って……る…………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」ピタッ・・・

食蜂「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」ピタッ・・・


OMG。


寮監「おかえり」ジー・・・

御坂・食蜂「「……、」」ダラダラダラダラ・・・

寮監「……おかえり」ジトー・・・

御坂「た……ただ……、」ダラダラダラダラ・・・

食蜂「……いまぁ」ダラダラダラダラ・・・


首コキャ待ったなし。


御坂「ごごごごっごごおごごごごごごごっごぉめめめめっめめめめめえぇめめぇんんんんんんぁさぁbbbbbbbbbbッ!!」ガタガタ・・・

食蜂「」チーン・・・

寮監「喧しい不良児共ッ! 黙ってついて来い!!」ギロッ・・・クイッ・・・


死刑宣告。管理人室までの数十mは、絞首台までの十三階段……あぁもう、本当に食蜂に関わると碌な目に合わない。

私達三人以外の姿は見えない。柱時計の音と三人の足音だけがやたらと響き渡る廊下。
私はもう抵抗しても無駄だと悟っているのだが、食蜂も同じだというのか。というか私と同じで前科持ちなのか。


寮監「御坂と同じくらいの前科だぞ。尤も、食蜂のアリバイ操作は御坂より上だがな」ギロッ・・・

御坂「……やっぱアンタも不良児じゃない」ジトー・・・

食蜂「う、五月蠅いわねっ。御坂さん程大っぴらに悪い事してないわよぅ」フンッ・・・

寮監「黙れ。貴様らの悪行なんぞ常盤台の関係者全員が把握済みだ。最小限に揉み消してやってる私の身にもなれ」カツカツカツ・・・

御坂・食蜂「「うっ」」ダラダラ・・・


キツいお言葉。二弁も無い。


寮監「というかお前ら二人とも、日曜深夜に態々卸し立てのジャ○プの新刊をコンビニへ立ち読みしに行くのは止めろ」ギロッ・・・

御坂「アンタもかぃ……一週間の活力なので、それだけは無理です」グヌヌ・・・

食蜂「御坂さんのはバレバレなのよん……ブルーマンデー症候群を乗り切る為には必要ノルマなのぉ」ウググ・・・

寮監「……そのやる気をもう少し別の方向へ向けろ」ハァ・・・


因みに、最近は一方通行(妹の保護者)とどっちが先に『○ne piece』の最新話ネタバレをメールするかで勝負してます。
などと現実逃避してる間に……管理人室到着。『入れ』と促されるが、私も食蜂も足が進まなかった。


御坂・食蜂「「……、」」ダラダラダラダラ・・・

寮監「何をしている……さっさと入れ」クイッ・・・

御坂「あ、ぁあああぁあの! きょ、今日は、ど、どど、どぉいった、折檻をぅ!?」ガクガク・・・

食蜂「うううぅ……洗脳が効けばぁこんな売れ残り女なんかにぃ……ひいいぃ! ごめんなさいいいぃ!!」ブルブル・・・

寮監「チィ! あのなぁ―――説教なんかじゃない。良いからさっさと入れ。事の詳細は風紀委員と警備員から連絡がきた」カツカツ・・・

御坂・食蜂「「……へっ?」」ポカーン・・・


それを早く言ってくれ。寿命が5年は縮んだ。
とりあえず胸を撫で下ろし、寮監の後に続いた。相変わらず無機質な部屋だが、所々、可愛らしい小物が置いてある。『あすなろ園』の子達か。


寮監「まず座りなさい。コーヒーで……あぁ、食蜂は紅茶だったな。御坂も紅茶でいいか?」チラッ・・・

御坂「え、えぇ。何でも」ハハハ・・・

食蜂「あのぉ……お気持ちは嬉しいんですけど、今日はさっさと寝たいなぁとか言ってみたりしてぇ」ゴニョゴニョ・・・

寮監「まぁ付き合え」コトコト・・・


多くは語らず、黙々とティーセットを準備する寮監。私達は不安半分疑念半分で顔を顰めた。
そして一寸後、お湯が沸き……紅茶が出された。因みに、高級な茶葉ではなくリプトンの三角のアレ。


寮監「学食程良いモノは置いてないんだ。我慢してくれ」コトッ・・・

御坂「いえ。えっとそれで、説教じゃないなら何で私達は此処に」タラー・・・

寮監「順を追って話そう。まずは……大変だったな」ジー・・・

食蜂「……分かってるならさっさと帰して下さい」ムゥ・・・

寮監「話は最後まで聞け。数時間前、お前達が関わった事件だが、あの後警備員に引き継がれた」ジー・・・

御坂・食蜂「「……、」」フム・・・

寮監「ハッキリ言ってしまえば、今回のケース(強姦)は風紀委員(子ども)ではなく警備員(大人)が受け持つルールとなってる」コクッ・・・

食蜂「そうでしょうねぇ。色々と荷が重いもの」ジー・・・


確かに、黒子や初春さんなんかにはキツい話だろう。ぶっちゃけ私らだって未だにしんどい。

寮監は私達の顔色を窺った後、淡々と話を続けた。


寮監「此処からが本題だ。愛h……担当の警備員から連絡がきた。犯人が目を覚ましたらしい」コホンッ・・・

食蜂「へぇ。じゃあ『お見舞い』行かなきゃねぇ」ギリッ・・・

御坂「アンタ、まだ」ハァ・・・

寮監「何を考えているかは察せるがきっと徒労だぞ。その男……『左側』をヤってしまったらしい」クイッ・・・

御坂「えっ? 左、って?」ポカーン・・・

寮監「脳だ。強い『衝撃』の所為で運動機能がオシャカだそうだ」チラッ・・・

御坂「強い『衝撃』……あっ。(確実にお姉さんの『一発』だ。あとは、食蜂の能力酷使)」タラー・・・


目を細める寮監。それ私じゃないです。だから疑いの目止めてマジ怖い。


食蜂「ねぇ、そんな事が言いたいんじゃないんでしょう。まさかぁ私達をお縄に掛ける気ぃ?」ジトー・・・

寮監「……食蜂の言うとおりだな。要は、その男の口から『事の詳細』を聞けなくなったらしい」コクッ・・・

御坂「じゃあ、読心能力者(サイコメトラー)を使っての取り調べですか?」ウーン・・・

寮監「それも不可能だったらしい」ジー・・・

御坂「はぁ?」キョトン・・・

寮監「その時の『記憶』がスッポリ抜け落ちていたそうだぞ。食蜂」チラッ・・・

御坂「っ!? あ、アンタ!」タラー・・・

食蜂「さぁ。何の事やら」フーン・・・


コイツ、やらかしたな。でも……何故だ。


寮監「別に、私はお前を警備員に売るつもりはない。その男が後遺症を負ったのは自業の末だと思う」コクッ・・・

食蜂「ええ。『運』が悪いとはいえ、当然の報いよねぇ」フフフ・・・

寮監「その上で聞く。食蜂……何を『見た』?」ジー・・・


コイツが男の記憶を弄ったという事は、何かしら都合が悪い事態が生じたという事。
確かに私達の存在を見られたのは世間体的に拙いかもしれないが、これでは相手の罪の軽減に手を貸した様なモノだ。一体何があった?


食蜂「……寮監さん。その男の情報はそれだけ? 他にもあるんじゃないのん?」ジー・・・

寮監「むっ?」フム・・・

食蜂「名前とか年齢とか職業とか住みとか、趣味とか嗜好とか特技とか……能力とか」ジー・・・

寮監「待て……私としても話せる範囲が限られてる。一応最低限の個人情報は守らねば、情報提供者に申し訳が立たないからな」チラッ・・・

御坂「もしかしてアンタ、全部『見た』の?」タラー・・・

食蜂「……さぁ」グデェ・・・


知った上で、先程の香ちゃんとのやり取りか。それこそが『新しい問題』なのだろう。


食蜂「ま、前科持ちだってのは読んだわよん。勿論、一度も掴まった事は無いし訴えられた事も無いらしいけどぉ」ジー・・・

御坂「前科って、アイツ! 他の女の子にもストーカーとか痴漢とか、強姦、してたの!?」ギョッ・・・

寮監「まぁ……そんな感じだ。ヤツの携帯には『そういった』画像やら動画やらがあったらしい。所謂、自画撮りのな」ジー・・・

御坂「っ……最っ低」ギリッ・・・


やっぱりアイツ死んでも良かった。社会の屑だ。
やり場の無い怒りに手を震わせる私と対照的に、冷ややかな表面の寮監と食蜂。心の奥で何を思っているやら。

結局話はこれで終わりだった。肝心な部分が聞けてない気がするが、これ以上の詮索は無駄だろう。
多分……私には教えて貰えない。


御坂「話は以上ですか?」チラッ・・・

寮監「ん、そうだな。もう戻っても構わない―――最後に。あまり思い悩むなよ、御坂」コクッ・・・

御坂「……ええ」スッ・・・

寮監「オマエの『正義』は間違ってない。食蜂などとは違い、オマエは確実に『英雄』や『勇者』型の人間だ」クイッ・・・

食蜂「あらぁ酷い」ムムム・・・

御坂「買い被り過ぎですよ。現に―――」ムゥ・・・

寮監「完璧な勇者なんて有り得ない。『間に合う事』が英雄の条件と考える者もいるが、私は英雄だって『間に合わない事』もあると思う」ジー・・・


間に合わない英雄? 勇者?


食蜂「そうねぇ。そういう失敗とか、勿論成功とか、全部ひっくるめて経験力なんじゃなぁい? そんでレベルあっぷっぷ」フフッ

御坂「―――……言いたい事がよく分かりません」テクテク・・・

寮監「オマエの感情は正しいと言っている。割り切れなどとは言わない。ただし、それだけに囚われるな」コトッ・・・

食蜂「御坂さん、割と後ろ向きな時があるものねぇ。出来るだけ前向きで居た方が良いわよん」ジー・・・

御坂「余計なお世話……でもまぁ、ありがとうございます」ペコッ・・・テクテク・・・


誰も彼も、私は悪くないと言う。しかしそこで妥協して自分を甘やかしてはダメだ。
管理人室から出て、部屋に戻るまでの間、今日の事を振り返る……やはり『あの時』強引にでも香ちゃんの手を引いていれば何も起きなかった。


御坂「悩むなって言う方が無理よね」ハァ・・・


誰もいない廊下。時偶漏れる生活音。やたらと不気味な夜の寮を進み、自室へ辿り着く。
鍵は閉まっているが、電気は点いている。黒子はもう帰っていたのか。


御坂「……ただいま」ガチャッ・・・

白井「―――ムニャムニャ……ホネェサバァ……うぉ!?」ビクッ・・・


寝てたらしい。しかも、私のベットの上で。いつもなら『真っ黒子げ』コース直行なのだが、そういう気分じゃない。
アタフタ言い訳してる後輩をスルーして、逆にコイツのベットに寝そべってやった。


白井「お、お姉さま……誘ってやがる!?」グヘヘ・・・

御坂「喧しい。もう怒る気力も無いんだから」グデェ・・・

白井「あららぁ。確かに今日は災難でしたね。色々お聞きしました」コクッ・・・

御坂「まぁね。でも、アンタも大変だったんじゃないの?」チラッ・・・

白井「病院搬送の後は警備員との引き継ぎだけでしたから。しかし大声では言えませんけど……ああいうカスは、ああなって当然ですの」フンッ・・・


私と同じ考えか。二人して苦笑……因みに、この子も色々知ってそうだが『風紀委員』として教えてくれないだろう。
それにしても、私と違い後を引き摺ってる様子は無い。当事者と警察との違いはあるが、こういう『強さ』は素直に尊敬できる。


御坂「黒子は偉いね。私なんて後悔というか何というか……ぶっちゃけ心が重いよ」ハァ・・・

白井「お姉さま、時間は巻き戻りませんよ。『たら』とか『れば』とか言ってたらキリがない」ジー・・・

御坂「そう、ね。ごめん」フフフ・・・

白井「いえ。ただ……そんな調子だと次に香に会った時、更に不安にさせてしまいますよ」コクッ・・・


仰る通りだ。彼女も言っていたではないか……『またいつもの様に』と。
こんな筈じゃなかった未来を少しでも減らす為に、前を向いて頑張ろう。次にまた、同じ悔み方をしない為にも―――


    ―――一方、食蜂side・・・・・



御坂さんが帰った後も私は管理人室に残った。寮監も私に帰れとは言わない。
此処に通された時点で勘付いてはいたが、最初から私一人に用があった筈だ。


食蜂「―――……で、本題は?」チラッ・・・

寮監「まぁ待て。まずはノックレーベンからの連絡を伝える」ジー・・・

食蜂「Mr.カイツから?」キョトン・・・


というか何故彼を知っているのだ。
この女がタダモノではないのは知っているが、彼ほど裏方に徹している人物とまで繋がりがあるというのは驚きだ。


寮監「旧知の仲でね。そんな事は如何でもいい……今回の件、全て隠ぺいする事に決まったらしい」ジトー・・・

食蜂「ふーん……仕事が早いのねぇ」フンッ・・・

寮監「ったく。その所為か何故か色んな連中が私に連絡を寄越すんだ。御蔭で仕事が増えて堪らん」ハァ・・・

食蜂「忙しい事は良い事よん。それでぇ具体的には如何処理するの?」フム・・・

寮監「男の『自殺未遂』だけで片付けるらしい。その際、事情聴取で出てきた『余罪(ほこり)』については別の話だがな」フフッ・・・

食蜂「へぇえ。そう」ニヤリ・・・


まったく手際が良過ぎる……多分Mr.カイツだけではなく、香ちゃんのお姉さんの『派閥』もバックにあるのだろう。
しかし、これである程度安心して眠りにつける気がした。


寮監「警備員からしてみれば堪ったもんじゃないらしいぞ。何せ風紀委員にも知られてる情報なのに揉み消すんだからな」ヤレヤレ・・・

食蜂「まぁまぁ、そういうのが仕事でしょ。暗部まで動くレベルの話じゃないでしょうからOKよん」クスッ・・・

寮監「本部の後輩は隠ぺい処理で頭抱えてるし、現場の後輩は勘繰って私に連絡寄越すし……いつまで経っても私に甘えおって」ハァ・・・


この女の過去を完璧に暴く事は私でも無理だが、この『後輩』については調べる事が出来た。
多分、公安執務課の手塩恵未と機動部隊エース班班長の黄泉川愛穂の事だろう。ドチラも今や警備員にはなくてはならない人材。
確か大学時代の後輩だとか……他にも一線を退いた天才科学者の芳川桔梗や、今は亡き天井亜雄。
それから元警備員で爆弾魔(傭兵)のステファニー=Gなども後輩だという―――何者? もしかして元警備員?


寮監「私の事なんぞ如何でもいい。それより―――本題だ」チラッ・・・

食蜂「はいはい。やっとねぇ」コクッ・・・

寮監「さっきも御坂が問うたが、ヤツの頭の中を全部『見た』んだな?」スッ・・・

食蜂「っ……、」ジー・・・

寮監「奴は『普通(ノーマル)』ではない。所謂ゲイやホモの類……保持してる能力もお誂え向きに『男女を判別する嗅覚』ときた」ジー・・・

食蜂「それは、黄泉川警備員からの情報かしらん? 口が軽い警察組織もあったものねぇ」フイッ・・・

寮監「真面目な話だ。先程も言った通りお前を売り渡したり、この会話を警備員に流したりせん」クイッ・・・

食蜂「じゃあ、何でそんな事を」ムッ・・・

寮監「私は『寮』の風紀を守る義務があるからな。なぁ食蜂……『神埼香』という謎の常盤台生。アイツは―――」


それ以上は言うな。


寮監「―――……、」ジー・・・

食蜂「香ちゃんは『香ちゃん』よ……それ以外の何者でもない」ギリッ・・・


その先は聞きたくない。聞いたら、そして私の口から『それ』を溢したら……全てが終わってしまうだろう。
冷めた紅茶を一気に飲み干し無理矢理沈黙を作った。勿論、寮監の顔も冷めている気がした。

長い静寂。カメラモニターの電子音だけがヤケに大きく聞こえた。
これ以上話す事がないのであれば、さっさと自室に戻ろう。そう考え席を立とうとした途端―――突然、寮監が眼鏡を外した。


寮監「―――ねぇ食蜂」コトッ・・・

食蜂「何かしら。これ以上さっきの会話を続けるつもりなら帰らせて貰うわん」ジトー・・・

寮監「そう怒らないで。もう少しだけ話がしたいの」ニコッ・・・


先とは打って変わって優しい表情と言葉遣い。


寮監「その子、貴女にとってどういう存在?」フフッ

食蜂「……はい?」キョトン・・・

寮監「別に難しい事を聞いてるんじゃないのよ。ただ、貴女がそうまで固執する人間って珍しいなぁって思ったから」ジー・・・

食蜂「そんな事聞いて如何するの」ハァ・・・

寮監「純粋な興味よ。貴女って『女王蜂』とか言われてるけど、私からしたらタダの『一匹狼』だし」クスッ


喧しい。アンタとて能力さえ効けばそんな口聞けないぞ。


寮監「それで、その子はやっぱり貴女の『友達』なのかしら?」フフッ

食蜂「チっ。悪いの?」フンッ・・・

寮監「ふふふ。ううん、良い事だと思う。素敵じゃない」クスクスッ

食蜂「……、」ジー・・・

寮監「あら? 如何したの、そんな顔して」フム・・・

食蜂「いや。えっと……それだけ?」キョトン・・・

寮監「もう充分よ。話したくないんでしょう? じゃあ良い。その子が我々の日常にとって『害』が無いっていう事、信じるから」フフッ

食蜂「か、確証は無いわよん。あの子、隠し事だらけだし……それでも?」ハァ・・・

寮監「ええ。まぁ何から何まで知り尽くしてる存在なんて友達でも何でもないわ。貴女は『人を知り過ぎる』から丁度良いんじゃない?」ニコッ


急に、子どもへ話しかける保母さんの如く慈しむ様な目で私を見る寮監。何かむず痒い。


寮監「でもねぇ……もしかして『恋』だったりするのかなぁ、とか疑っちゃったのよ」フフフッ

食蜂「ハァ!? ち、違うわよっ!」アタフタ・・・///

寮監「あらあら、真っ赤よ。存外ウブね」クスクス・・・

食蜂「こ、のぅ…―――…ホントに、違うわよ。さっきも言った通り『彼女』は香ちゃんだから……私の大切なお友達なの」スッ・・・

寮監「『彼女』かぁ……そう、大事になさい。貴女のカリスマではなく『人となり』を気に入ってくれる子なんて貴重だからね」ジー・・・

食蜂「余計なお世話よ。ホント、余計」ハァ・・・

寮監「ごめんごめん。ただ……何か不安があるんじゃないの?」ジー・・・

食蜂「えっ」ピタッ・・・

寮監「終始そんな雰囲気してる。もしかして今回の件で彼…女と会うの気拙くなったとか?」チラッ・・・


貴女にそこまで話す義理はないんだが。


寮監「まぁまぁ。オバさんのお節介ついでに話して頂戴。私、恋愛に関しては滅法ダメ女だけど交友関係に関しては強いわよ」ハハハ・・・

食蜂「自分で言うのねぇ……まぁ、気拙いっていうか何ていうか」ウーン・・・


正直な話、二度と会えないかもとは思っている。
今回の件で、香ちゃんは周りから非難を受けるだろう。あの子は被害者でしかないのに……やっぱり、私の所為だ。

考えれば考える程、悪い未来しか浮かばない。
心の表面上では『香ちゃん』。しかし、深層心理では―――騙しきれない。


食蜂「単純に……離れたくないのよ」シュン・・・

寮監「らしくないわね。無理や道理をヒン曲げて現実にするのが超能力者(アナタ)じゃないのかしら」ジー・・・

食蜂「それは絶対能力者(カミサマ)の所業でしょ。というかそういう問題じゃないのよ……『壁』っていうのかなぁ」ハァ・・・

寮監「壁って、立場の? そんなの今まで通り好き勝手にすれば良いのに」フム・・・

食蜂「私じゃないわよぅ……まぁ私も確かに色々あるけど、そうじゃない」ムゥ・・・


あの子は『組織』の人間。あの子自身の人となりや想いなんて関係無い。
今回の件……あの子は『組織』に対して多大なる迷惑を掛けた、筈。つまりその責任―――『罰』が与えられる。


食蜂「何で、あの子、被害者なのに」ウゥ・・・

寮監「……、」ジー・・・

食蜂「その所為で、もう二度と会えないかもしれないのに。なのにどうして」グスッ・・・

寮監「不条理は、何処にだってあるわ」コクッ・・・

食蜂「おかしいわよ、そんなの!」ウルウル・・・


神様は如何して私から『友達』を奪っていくのか。


食蜂「あの子もあの子よ……ボロボロの心とズタズタの身体で、死んだ魚みたいな目をしながら……それでも如何して―――、」ポロポロ・・・


―――これからも……友達で居てくれますか。


食蜂「―――強がるの? いっそ泣いて助けを請うてくれれば……っ……私は―――、」ポロポロ・・・


―――絶交なんて嫌…です。


食蜂「―――あんなの……うぅ……卑怯、よぅ……ぇっ……狡いよぅ……ううぅ」ポロポロ・・・


―――必ず、会いに行きます。


寮監「確かに卑怯かな……待ち続けるのは辛いわね。ましてや、二度と会えないかもしれない人を待つのは心が折れる」ポンッ・・・

食蜂「っ……ご、ごめんなさい……私、みっともない」グスッ・・・アタフタ・・・


まるでヒステリックを起した様に、まるでメンヘラの様に泣いてしまった。私はそんなに心の弱い人間じゃない。


寮監「構わないわよ。その方が子供らしい。それに、一切涙を流さない人間が強者な訳が無いし……そんな人間、私は信用しない」フフッ・・・

食蜂「意味分かんないわ」グシグシ・・・

寮監「誰かを想って涙を流せる人間は、優しくて美しくて強い『精神』を持った人間だと思うわ」コクッ・・・

食蜂「……、」ムゥ・・・

寮監「待つのは『試練』。貴女は……打ち勝てるかしら?」チラッ・・・


立ち上がり眼鏡を掛ける寮監。聞きたい事は聞けたし、伝えたい事は伝えたという事だろう。


食蜂「ふんっ……私の『覚悟力』を嘗めないで頂戴……でも、ありがとね。寮監さん」スッ・・・ペコッ・・・

寮監「ふふっ……謂れが無いが、どういたしましてと言っておく。しっかり休め―――『いつもどおり』で居ろよ、食蜂」カツカツ・・・ガチャッ・・・


『試練』を『未練』に換えたりしない。今まで通り、あの子を待とう……それが今、私が出来る『戦い』だから……―――

 ―――時は遡り……PM08:30、学園都市第7学区、学園メトロ南北線、第7学区北部駅・・・香焼side・・・




二人を背にし、五和の方へ向かう。

名残惜しさに振り返ってしまいそうになったが、それでは決意が逸れてしまう。
覚悟はした……再び操祈さんに会う為に、姉さんと土御門とはトコトンやり合うつもりだ。


香焼「―――迎え、ありがとう」ペコッ・・・

五和「ううん……もう良いのね」ジー・・・

香焼「充分だよ。あとは、自分自身の問題だから」コクッ・・・


多くは語らず眉を顰める五和。コイツにも、かなり迷惑を掛けたな。


五和「私は何もしてないよ。それより、姉さんかな」ハハハ・・・

香焼「……うん」ムゥ・・・

五和「珍しく『プッツン』してるよ。今日はもうコウちゃんの顔見たくないって」ポリポリ・・・

香焼「ホテルに戻ったの?」タラー・・・

五和「分かんない。麦野さんが追っ駆けてくれてるけど……暫く口聞いてくれないかもよ」ヤレヤレ・・・


止むを得まい。完璧に悪いのは僕の方だ。
それに、あまりこういう言い方はしたくないが……正義は常に姉さん―――女教皇様の下にある。
そう考えれば僕は、反逆者と叩かれてもおかしくない。


五和「もう。二人して意固地な……でもコウちゃん、今回は完璧被害者なんだから良いの。自虐しない」メッ・・・

香焼「……ごめん」シュン・・・

五和「だからさぁ……まぁまず帰りましょう。いい加減、最愛ちゃん騙すのも大変なの―――」


ヘルメットを受け取った時、僕の携帯が鳴った。相手は……蛇さん。


五和「―――……妹達?」ジー・・・

香焼「……うん」チラッ・・・

五和「良いよ。出ておいで」コクッ・・・

香焼「ありがとう……―――もしもし」Pi!

御坂蛇『駐輪所わきのコインロッカー前だ。早く来い……とミサカは淡々と告げます』ガチャッ・・・


必要最低限の会話。詳しくは直接会って話す、といったところか。
一度、五和に了解を取り駐輪場へ向かう。まるで人影が無い場所……ふと、目を凝らすと物陰に彼女が居た。


御坂蛇「……、」スッ・・・テクテク・・・

香焼「蛇さん……この度はご迷惑を」ペコッ・・・

御坂蛇「別段私は何も被害を受けてはいない。今回の件は誰の所為でも無いだろう……違うか? とミサカは問います」ジー・・・

香焼「……仰る通りかと」コクッ・・・

御坂蛇「分かれば良い。しかし、御姉様(オリジナル)の説得には骨が折れたぞ……あの人は純粋に正義の味方だな、とミサカは呆れます」ハァ・・・

香焼「そうっすね。御蔭で助かりましたし」ハハハ・・・

御坂蛇「『助かった』か……ある意味ポジティブだな『香』」フフフ・・・


皮肉。でも、辛気臭い顔で言葉を選んだり、気を使われたりするよりはマシだ。
そういう意味でこの人とは嘘偽り無しで付き合えるので気が楽。多少、口が悪くてスパルタなのを我慢すればだけど。

とりあえず、と蛇さんは僕にボストンバックを投げつけた。


御坂蛇「着替えだ。男に戻ってから帰った方が良いだろう、とミサカは助言します」ポイッ・・・

香焼「そうっすね……あの」ジー・・・

御坂蛇「何だ」フム・・・

香焼「……海原さんと、土御門からは?」ムゥ・・・

御坂蛇「……、」ジー・・・


何も語らず僕を見据える。


香焼「……怒ってましたか?」タラー・・・

御坂蛇「気にするな。今回の件に関しては、私(ミサカ)はオマエの味方だ」コクッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

御坂蛇「どうも、こういう問題に対して男はドライだ。オマエの素性の所為もあるがな」ジー・・・

香焼「でも、二人が正しいと思います」コクッ・・・

御坂蛇「あの時、オマエは『女』だった。そうだろう?」キッ・・・


そこの所がアヤフヤなのだ。アイツは僕が男だと分かって行為に及んでいたし、かといって女装してなければ襲われなかった。
しかし、今回のこれを『仕方が無い』で片付けるには些か単純過ぎる。


御坂蛇「前向きに捉えろ。詭弁かもしれないが、幾分か『女の気持ち』が分かっただろう」フンッ・・・

香焼「えっ、あ、まぁ」タラー・・・

御坂蛇「糧にしろ。コレを機に、オマエはもっと上手くやれる様になる」フフッ・・・

香焼「でも、その……多分、二人がもう許さないんじゃ」ムゥ・・・

御坂蛇「かもな。現に『香は二度と使わない』と憤ってる」フンッ・・・

香焼「っ」グッ・・・


やっぱり、もう終わりか……でも僕はそれに抗いたい。


御坂蛇「安心しろ。例えあの二人が使わなくても私(ミサカ)が使ってやる」フフフ・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・

御坂蛇「私は……というより『私達』は仲間意識が強くてな。切ったり切られたりとか、そういうのは嫌なんだ」ポンッ・・・

香焼「……ありがとうございます。でも、それでは貴女が」ジー・・・

御坂蛇「だから気にするな。道化師(金髪グラサン)は色々言うかも知れんが、師匠は私を捨てたりしない。というか捨てれない」ククク・・・

香焼「そうかもしれませんが」ウーン・・・

御坂蛇「自分の事だけを気にしてろ。半人前のくせに私の事まで気に病むな。妹弟子に心配掛けられる程、私は落ちぶれちゃいない」ポンッ

香焼「蛇さん」ペコッ・・・

御坂蛇「とはいえ、当面は家族間の問題の方が大変だろう。私は其方には介入できないからな。自分で何とかしろ」ジー・・・

香焼「ええ。姉さんにはちゃんと謝って、分かって貰います」コクッ・・・

御坂蛇「その意気だ。兎角、これからは今まで以上に扱くぞ……色々課題も明確化された。私は甘くないからな」ニコッ・・・

香焼「はい、お願いします」ペコッ・・・

御坂蛇「よしっ……それじゃあ気を付けて帰れ。あぁ、その前に着替えを見つかるんじゃないぞ」テクテク・・・


そそくさと路地裏に消えていく蛇さん。あの人にもかなり迷惑を掛けたな。
その後、急いでトイレで着替え、五和の下に戻った。

時刻は九時を回っていた。そろそろ学生服だと補導の対象になってしまう時間帯。
ロータリーに戻ると、五和が面倒臭そうな男連中に囲まれていた……所謂、ナンパ。
アイツの事だから襲われても屁でも無いだろうが、色々と良い気分ではないので、さっさと帰路に着こう。


五和「―――だから私彼氏居るんで……っとぉ! あー、いもうt……弟来たのでコレで!」アタフタ・・・

香焼「……ごめん、お待たせ」ペコッ・・・


彼氏って誰だよ。
とか苦笑しつつ、ヘルメットを受け取る。男達もそこまでしつこくは無い様で、バイクのエンジン音を聞いた瞬間、去って行った。


香焼「相変わらずっすね」ハハハ・・・

五和「勘弁して欲しいですって……話、終わったの?」ジー・・・

香焼「うん。オマエの味方だ、って」ポリポリ・・・

五和「良かったじゃない。ま、私も味方よ」フフッ

香焼「別に、敵味方なんて無いっす」ジー・・・

五和「……そうね」コクッ・・・


姉さんだって、間違っていない。というか一番正しい。


五和「でも、私はさっきの姉さんの言動許せないわ」クイッ・・・

香焼「……ありがと」コクッ・・・

五和「別に謂れは無いわよ。とりあえず帰ろう……早くお風呂入りたいでしょ」ポンッ・・・


確かに、いい加減身体を洗いたい。思い出さないようにしてるが、未だに気持ち悪い感覚が残っている。それにお腹も空いた。あと、眠い。


香焼「っ……思い出すと、結構キツいっすね」ハハハ・・・

五和「明日、病院行かなきゃダメよ。嫌だっつっても姉ちゃんが引っ張ってくからね!」メッ!

香焼「分かってるよ。でも、今日は休ませて」ハハハ・・・


そしてバイクの後部座席に跨り、五和の腰に掴まった。
甚だ不本意ではあるが、あまりにダルいのでちょっと大きな、でも華奢い背中に寄り掛る。


香焼「……ねぇ」ボソッ・・・

五和「……、」brrrr・・・

香焼「五和は、如何したら良いと思う?」ギュッ・・・

五和「……如何って?」チラッ・・・

香焼「『香』」ジー・・・


エンジン音に掻き消されながらも、会話は続く。


五和「仮に私や姉さんが『もう止めて欲しい』って言っても……コウちゃんは続けたいんでしょ。『あの人』の為に」brrrr・・・

香焼「……、」ムゥ・・・

五和「だったら止めても無駄じゃん。例え教皇命令だって、貴方は勝手すると思うよ」フフフ・・・

香焼「そ、そんな事」タラー・・・

五和「でも良いじゃない。この件は……日常(プライベート)の問題。姉さんが教皇として口出しする方がおかしい」ジー・・・

香焼「詭弁だよ。実際、『香』は任務の一環だし」ウーン・・・


僕と操祈さんとの繋がりは個々のモノかもしれないが……立場は公のモノ。これは誤魔化せない。

薄着という事もあってか、バイクの上で浴びる夜風は肌寒い。心成しか、五和も震えている気がした。


五和「立場云々考え出したらキリ無いでしょ」brrrr・・・

香焼「そうだけど……『香』はあくまで仮面だから」ハァ・・・


問題はそれだけではない。多分、操祈さんは僕の『素性』に勘付いた。


五和「ネガティブね、今更だけど……だから会わないの?」チラッ・・・

香焼「……いや」ムゥ・・・

五和「コウちゃん、自分で『会いに行きます』って豪語したんでしょ。じゃあ貫きなさいよ」ジー・・・

香焼「……うん」ギュッ・・・

五和「それに、多分だけど。例えバレたとしても貴方は友達をやめないでしょ」フフッ

香焼「どう、かな」ウーン・・・

五和「その程度の根性だったら、マグヌスさんとか最愛ちゃんとかと友達してないって」ハハハ・・・

香焼「自分は、ね。でも操祈さんの方が如何思うか」シュン・・・

五和「そうね……でも、それを考えるのは香としての『最後』の仕事だと思うな」brrrr・・・


その通りだ。そして、まだ、その時ではない。


五和「さて、着いた。とりあえず、今日明日はしっかり休みなさい」ガチャン・・・

香焼「うん……ありがとう」コクッ・・・

五和「良いの良いの。さぁて、次は最愛ちゃんの送りかなぁ。浜面さん、迎えにくれば良いけど」スタッ・・・

香焼「何から何まで申し訳無いっすね。今度埋め合わせは―――」

五和「最愛ちゃんは家族みたいなものだし、コウちゃんの世話の延長じゃないわよ。でもまぁ埋め合わせは期待してる―――」


玄関に向かおうとした刹那だった。


香焼・五和「「―――っ!」」ピタッ・・・


物陰……背後から、威圧感。人払いの結界にも似た違和感。


神裂「……、」テクテク・・・

香焼「姉、さん」ジー・・・

五和「っ……何ですか」ジトー・・・


顔がよく見えないが、折角『普通』の服を着ていた筈なのに……所々破れている。何があった。


神裂「麦野さんと『色々』ありまして」テクテク・・・スッ・・・

香焼・五和「「なっ!?」」ギョッ・・・


明らかに喧嘩してきた後。しかも、麦野さんと!?


神裂「彼女は本当に滅茶苦茶な人ですね。私が悪いとか言いつつ、あの人は只単に喧嘩がしたかっただけでしょう」ハァ・・・

五和「な、何で……というか麦野さんは無事なんですか」タラー・・・

神裂「加減はしましたよ。互いにね……マジあのプッツン女イカれてる」ジトジト・・・


これは、これもまた、僕の所為か。

三者無言。姉さんが僕を見据え、五和が姉さんを睨む。そして僕は、戸惑うばかり。
張り詰めた空気が奔る。


五和「まだ、怒ってるんですか? いい加減しつこいですよ」ギロッ・・・

香焼「い、五和!」アタフタ・・・

神裂「それは貴女の方でしょう……まぁまだその子を許してはいませんが、先より熱くなってはいません」ジー・・・

五和「……、」ジトー・・・

神裂「五和、先に戻ってなさい。その子と話がしたい」チラッ・・・

五和「ダメです」キッパリ・・・


僕と姉さんの間に立ち、睨みを利かせる五和。些か憤り過ぎでは無かろうか。


五和「言っておきますが、コウちゃんは『被害者』です。貴女はそれを認めてないでしょう」ジー・・・

神裂「……ええ、認めてませんよ」コクッ・・・

五和「っ! コウちゃん、行こう!」グイッ・・・

香焼「待っ、うわっ!」タラー・・・


強引に僕の手を引きマンションへ入ろうとする。が、しかし―――


麦野「おっと、待て待て」スッ・・・ボロッ・・・

五和・香焼「「っ!?」」ビクッ・・・


―――自動ドアの前にヒョッコリ立ち塞がった……ボロボロの麦野さん。
姉さんと同じくらい衣服はズタボロ。左手は変に『発光』してるし、右目はいつもの義眼ではなく、何故か眼帯で隠してある。


五和「麦野、さん?」タラー・・・

麦野「ったくさぁ五和ぁ。アンタも過保護ねぇ。タダでさえ甘ちゃんなんだから、これ以上甘やかして如何すんのよ」ポンッ・・・

五和「なっ……べ、別に私は!」ムッ・・・

麦野「良いから、行くわよ。坊やなら大丈夫だから……ね?」クイッ・・・チラッ・・・

香焼「えっ」キョトン・・・

神裂「……、」コクッ・・・

五和「だ、大丈夫ってそんな! 何を根拠に!? というか何で麦野さんが口出しするんですか!」キッ・・・

麦野「そりゃあ火織の『ストレス発散』付き合ったんだ。あーだこーだ言う権利くらいあるでしょ」ボロッ・・・


成程。まぁ半分は『戦闘欲(バトルジャンキー)』故の楽しみってのもあったんだろう。


香焼「……五和。麦野さんと先戻ってて」チラッ・・・

五和「コウちゃん!」ギリッ・・・

香焼「大丈夫だから」ニコッ・・・

五和「何も大丈夫じゃないでしょう! その人はまだ貴方を―――」

麦野「はいはーい。戻ろうねー……手加減したとはいえ私と散々『ヤりあった』んだ……人殴る気力失せるくらいな」ボソッ・・・

五和「っ……、」グッ・・・

麦野「アレコレとセッティングした浦上(妹ちゃん)に感謝しろよ。ま、私も色々楽しかったけどな……んじゃ、ごゆっくり」ノシ"

五和「あ、ちょっ、待って! 私まだ納得してな…――…ぐべぇっ! む、麦野さっ、力、強っ?! ま、えっ、コウちゃあぁん!!」ズルズル・・・


駅の時とは一転、ズルズルと引き吊られて行く五和。麦野さんもケガ(?)してるのに力持ちだなぁ。流石、超能力者(バケモノ)。

五和の叫び声……という名の悲鳴が耳に残っているが、漸く二人っきりに。
元より、こうなる事を覚悟していた。というより、こうならなきゃいけなかったんだ。


香焼「姉さん、あの―――」チラッ・・・

神裂「まったく、揃いも揃って馬鹿ばかりです。地元やら英国で教皇扱いされてるのが嘘の様だ」ヤレヤレ・・・

香焼「―――……、」ジー・・・


揃いも揃って、対等。そこに『立場』という壁は無い。


神裂「正直、貴方の事、本気で一発ブン殴ってやろうと思いましたよ」チラッ・・・

香焼「っ」ゴクッ・・・

神裂「でもまぁ、先程麦野さんが言ってた通り……当分人を殴る気にはなれませんね。数年分は拳を振るった」ハァ・・・

香焼「……すいません」ペコッ・・・

神裂「ホントあの女郎ブッ飛んでるわ。ベイロープがプッツンした時よりも面倒……っと、何故謝るのです?」ジー・・・


全て、自業の末。


神裂「ええ、そうですね。その通りだと思いますよ」コクッ・・・

香焼「反省してます。ご迷惑をおかけしました」シュン・・・

神裂「大いに反省なさい」ジトー・・・


真っ直ぐな言葉。そこに慈悲慈愛の感情は無い……当たり前か。


神裂「時に、食蜂さんと話は付いたのですか?」フム・・・

香焼「はい。一応は」コクッ・・・

神裂「それ相応の『覚悟』も?」ジー・・・

香焼「してます……でも、自分は、それでも」グッ・・・

神裂「そうですか」フイッ・・・


罰は受ける。しかし、だからといって……諦める事は出来ない。信念は曲げられない。


香焼「身から出た錆だとは重々承知っす。でも、やっと打ち解け合えました……だから、その」ムゥ・・・

神裂「考えが甘いですよ。いや、私や五和達が甘やかし過ぎたという事もありますか」ジトー・・・

香焼「いえ……全部、自分が悪いんすよ」ギッ・・・

神裂「ふむ。では、これから下される罰を全て、大人しく、従順に受け入れるんですね?」テクテク・・・

香焼「……、」タラー・・・

神裂「そうですか…―――…ふざけるな。物分かりの良いフリをするのは止めなさい。私は、貴方のそういう態度が気に食わない!」ギロッ・・・

香焼「っ!」ビクッ・・・


姉さんに、本気で、睨まれた。


神裂「反抗するなら最後まで反抗しなさい! 何です、その中途半端な姿勢は。女々しいったらありゃしない!」グイッ・・・

香焼「っ……ごめん、なさい」ゴクッ・・・

神裂「だから謝るなっ! どうせ本気で悪い事しただなんて思ってないんでしょう?!」ギリリ・・・


姉さんに、詰め寄られた。姉さんに、怒鳴られた。姉さんに、胸倉を掴まれた。姉さんを……怒らせた。
今この人は、初めて、本気で、僕を叱っている。

人気が無いとはいえ、辺り構わず僕を怒鳴る姉さん。荒い呼吸が収まらない。


香焼「っ。本当に、反省してます」ドクドク・・・

神裂「……、」フーフー・・・

香焼「ごめんなさい」ダラダラ・・・


一方、僕は息を殺し、姉さんと目を合わせられなかった。怖かった。威圧感とか怒気とかそういう事ではなく。
この人が、泣き出しそうな目をしていたのが、怖かった。


神裂「っ……すいません、取り乱しました」パッ・・・

香焼「っ! い、いえ。その……はい」ハァ・・・ハァ・・・


いつの間にか、僕の背にはフェンスがある。気付かぬ内に押しやられていた。
正直このまま殴られると思っていた……いや、寧ろ殴られたかったのかもしれない。


神裂「殴られて済ませようだなんて甘いです。それで許されると思いますか」ジー・・・

香焼「ごめんなさい」タラー・・・

神裂「だから謝るなと」チッ・・・

香焼「ほ、本気で反省してますよ! でもただ、仰る通り納得いかない部分もあるだけっす」ムゥ・・・


でもそれはこの人の所為でも、操祈さんの所為でも、他人の所為でも、ましてや僕の所為でも無い。
不条理。これに限る。


香焼「言い訳かもしれませんが……間が、悪かったんすよ。日頃の行いが悪いからって言われればそれまでかもしれないっすけど」ハハハ・・・

神裂「……、」ジトー・・・

香焼「きっと、罰っすね。普段ダラダラ過ごしてるツケが回ってきたのかなぁ」ポリポリ・・・

神裂「なんで、そう、もぅ―――」ウルウル・・・

香焼「あははは……すいません。正直、何を言っても怒られる気がして」アタフタ・・・


無言の涙目で、僕に何かを訴える姉さん。でも僕はその意図を掴めない。
暫時、されど悠久にも感じられる数分間。僕は只、姉さんの言葉を待つしかなかった。


神裂「―――……『香』については、今まで通り土御門に一任します。どうせ私の意見は通りませんからね。もう何も言いませんよ」グシグシ・・・

香焼「……ぇ」ピタッ・・・

神裂「以上です」テクテク・・・


それだけ告げて、踵を翻す姉さん。あっさり過ぎる。


香焼「……それだけ?」キョトン・・・

神裂「だってこれ以上何を言ったって無駄でしょう? もう良いです」テクテク・・・

香焼「そん、な」タラー・・・

神裂「……私も、貴方と同じなんですよ。今何を言ってあげるべきか分からないんです」ジー・・・

香焼「ぁ、ぅ」ムゥ・・・

神裂「暫くホテルに戻ります。当分、此方には来ないかもしれませんので悪しからず」テクテク・・・

香焼「ま、待ってください! 姉さん!」アタフタ・・・

神裂「……、」チラッ・・・


やっぱり、これは罰だ。僕が散々姉さんや五和達に甘えてきた罰だ。

きっと、姉さんは僕に愛想を尽かしたんだ。だからこんなにも冷ややかで、呆れた口調になったんだ。


香焼「姉さん!」バッ・・・

神裂「っ」ピタッ・・・


無意識の内に腕を取ってしまった。頭の中は真っ白だけど、身体が勝手に動いた。


香焼「ごめんなさい……ごめんなさい、姉さん」グッ・・・

神裂「っ……離しなさい」ギリッ・・・

香焼「……ごめんなさい」ギュッ・・・

神裂「離しなさい、と言っている」チラッ・・・

香焼「嫌っす……ごめんなさい」フルフル・・・

神裂「この期に及んで何をっ」グッ・・・


何故こんな子供染みた真似をしてしまったか分からない。ただ、本能的に動いてしまった。


香焼「姉さん……許して下さい。だから、行かないで」ウルウル・・・

神裂「―――、」ギリッ・・・


怖かった。『こんな事』で、『日常』の一端が壊れてしまうのが、とても怖かった。


香焼「もう命令違反はしません。ちゃんと、言う事聞きます……だから、お願いします。ごめんなさい」ジー・・・

神裂「っ……まるで、子ども」グッ・・・

香焼「すいません。でも、そんなのヤだ」ギュッ・・・


操祈さんの事も、今回の件も……香の事も。自分じゃ、決められない。僕だけじゃ、無理なんだ。
半人前の僕は、如何しても人を頼ってしまう。僕は皆より弱いから、他人の力を借りてしまう。

特に、この人に―――姉さんに『母性』を求めてしまう。
一番信頼しているこの人の捨てられたら、僕を、今後、如何すれば良いか分からない。


神裂「ぁ、ぅ……ズルいんですよ、貴方は!」タラー・・・

香焼「っ、ごめ、なさ、ぃ」ポロポロ・・・

神裂「泣くなっ! 男子でしょう!」ギリリ・・・

香焼「すい、ませ」ポロポロ・・・

神裂「だから謝るなっ……くっ」ダラダラ・・・


姉さんは、泣き縋る僕の手を無理矢理解こうとはしなかった。


神裂「こ、っ……いつもなら、抱擁して甘やかしてるでしょうね」ハァ・・・

香焼「ううぅ」ポロポロ・・・

神裂「本当に、卑怯です」スッ・・・

香焼「ごめん、なさい」ポロポロ・・・

神裂「だぁからっ、もぅ。言っても無駄ですか……如何して貴方はそう。私を困らせないで」ハァ・・・

香焼「っ、は、はい」ウウゥ・・・

神裂「ったく……あぁ、もう。言うつもりはなかったんだけどなぁ」ジー・・・


今、この時、僕らの姿は宛ら本物の『姉弟』の様だった。

僕の手に軽く掌を乗せ、姉さんは屈んだ。そして涙いっぱいの僕の目を見詰めて、呟く。


神裂「『トラウマ』を、ぶり返しましたよ」ジー・・・

香焼「ぇ」ピクッ・・・

神裂「『辛い事』です……貴方が襲われて、それを助けられなかったのはね」ニコッ・・・

香焼「姉、さん」グスッ・・・

神裂「『香』のその姿は……まるで『救えなかったあの子』を模してるみたいで、見ているのが辛かった」フフッ・・・

香焼「『あの子』って、っ」グッ・・・


■■■■。


神裂「実際の姿や性格は全然違いますよ。でも、ね……五和や浦上とは違う『妹』という意味で、『あの子』の様な存在に思えてしまう」ハハハ・・・

香焼「……、」グシグシ・・・

神裂「最早貴方なのか『香』なのか、混同さえしている。そんな事は如何でも良いですね……そういう問題じゃないか」ジー・・・

香焼「それは、その」グスッ・・・

神裂「ただもう、か弱い『妹』なんて要らないんです。辛い思いはしたくなかったから」スッ・・・


助けられなかった、あの時。


神裂「そして、今回も間に合わなかった……まったく物笑いの種ですね」フフッ・・・

香焼「それは、違う」グスッ・・・

神裂「ううん。だから、自分を責めるのは『今のあの子』にも失礼だし、貴方にも失礼だと思った―――」ジー・・・


『でも』と姉さんは俯き、震える声で告げた。


神裂「―――……結局全部、私の我儘なんです。五和の言うとおり私は冷静じゃなかった」フルフル・・・

香焼「そんな! それでも姉さんは助けに来てくれたじゃないっすか」スッ・・・

神裂「……、」ギリリ・・・

香焼「自分はあの時充分、救われましたよ」ニコッ・・・

神裂「間に合わなかったんですよ! 私は、また!」ギッ・・・

香焼「っ」ビクッ・・・

神裂「これが事実で、これが全てなんです! 私は……っ……貴方を、守れなかった」グッ・・・


一転、鎧が剥がれたかの様に、弱々しくなる姉さん。こんな顔、させたくないのに。


神裂「香焼……間に合わなくて、ごめ―――」

香焼「姉さん」ジー・・・

神裂「―――ん……、」ピタッ・・・

香焼「ありがとう……本当に、助かりました」ペコッ・・・

神裂「……なっ」ピクッ・・・

香焼「姉さんが、貴女が来てくれただけで、僕は救われた。姉さんが来てくれたから、操祈さんは人殺しをせずに済んだ」ニコッ・・・

神裂「それは……でも!」ブンッ・・・

香焼「『香』はきっと、姉さんの『妹』で居れて良かったと思います」フフッ・・・


同じく、僕も、この人の『弟』であれて良かった。

自分が話を逸らしているし、卑怯な事を言っているのは重々承知だった。
だけど、それでも……姉さんを引き留めたかった。

始まりは些細な―――いや、結構重かったかな―――事だったのに、いつの間にか姉弟喧嘩(?)になってしまった。
でも『縁』が元に戻らなくなる程の喧嘩はしたくない。


香焼「女教皇様」ジー・・・

神裂「っ……何を」グッ・・・

香焼「もし、自分を許せないなら―――破門にしてください」ニコッ・・・

神裂「こ、のっ……卑怯者が」ギリリ・・・


知ってる。僕は誰より弱くて、姑息で、卑怯な男だ。


神裂「こんなの、首を縦に振れる訳無いでしょうに」ハァ・・・

香焼「……、」ジー・・・


今回の件で学んだ。
神埼香は『劇物』だ。仮面である筈の彼女は、最早一つの人格として大きくなってしまっている。
これではもう、香焼(僕)の『隠れ蓑』として機能しない。
姉さんにとっても、操祈さんにとっても、多分他の人達にとっても―――ある種の『個人』になってしまった。


香焼「いつか、必ず……自分の口から操祈さんに『告白』します」ジー・・・

神裂「香焼、貴方」ピタッ・・・

香焼「だから、その時まで、自分の我儘を許して下さい。お願いします……勿論タダでとは言いません。どんな罰も受けます」コクッ・・・

神裂「私は、別に……そういう」ムゥ・・・

香焼「土御門が如何こうではなく、姉さんが納得する罰も受けます。『姉さんからの』罰も受ける覚悟っす」ギュッ・・・

神裂「……、」ジー・・・


再び無言が奔った。僕は姉さんの腕から手を離さず、姉さんは僕から視線を逸らしている。
そして……姉さんの左手が僕の頭に伸び―――


神裂「……香焼」ポンッ・・・

香焼「……はい」ジー・・・

神裂「生意気」ガシッ・・・

香焼「えっ」ピタッ・・・


―――こめかみ辺りを掴んで、万力。


香焼「いいいいぃ痛だだだだだぁ!!」ジタバタ・・・

神裂「ふふふふ」ギリギリギリギリ・・・

香焼「なななぁ何でぇえぇ痛いいぃ!! ちょ、姉さあああぁん!!?」アbbbb・・・

神裂「撫でられるとでも思いましたか? いつもみたいに? 甘いですよ……いい加減になさい」ニコニコ・・・

香焼「ひいいいぃやああぁ!!」ガタガタ・・・

神裂「ったくもぅ……この子ときたら」ヤレヤレ・・・パッ・・・

香焼「をぅ!?」グデーン・・・

神裂「なぁにが『姉さんからの罰』ですか。調子に乗るな」ハァ・・・

香焼「う、ぅ」タラー・・・


ほんの数秒だけのアイアンクローだが、脳味噌はみ出るかと思った。

頭を抱えてしゃがみ込む僕に目線を合わせ、今度はちゃんと目を見て語りかけてきた。


神裂「言ったでしょう。私も負い目がある」ジー・・・

香焼「そんな、でも」ウー・・・

神裂「これ以上ぶり返さなくて良いですよ。もし、どうしても罰をというのであれば、私にも罰を与えなさい」トンッ・・・

香焼「なっ!?」ギョッ・・・

神裂「貴方にそれが出来ますか?」ジー・・・


そんな事出来る訳が無い。立場云々はさる事ながら、僕は本当に姉さんに救われたのだから。


神裂「では御相子です。良いですね? もし納得いかなければ、もう一度頭潰しましょうか?」フフッ・・・

香焼「うっ……そ、それで姉さんの気が済むなら」グッ・・・

神裂「マゾですか、貴方は」ハァ・・・

香焼「い、痛いのは嫌っすよ! でも、その……何かなぁ」ポリポリ・・・


こんなにも迷惑を掛けまくったのだ。無罪放免は、それはそれで、納得いかない。


神裂「まったく。はた面倒臭い子ですね……じゃあ目を瞑りなさい。デコピンします」スッ・・・


目と歯を食い縛る。そして一寸後―――


香焼「うぐっ……ぇ」ピクッ・・・


手を。


神裂「救いの手、です」ギュッ・・・


―――握られた。


香焼「姉、さん」キョトン・・・

神裂「確かに『私達』が甘やかしていたのは事実。でも、別に貴方が甘えてきた訳ではないよね」ニコッ・・・

香焼「……、」ジー・・・

神裂「貴方は『友人ら』に救いの手を伸ばそうと必死だった。その結果がコレです……救いが無い結末だ」ニギッ・・・

香焼「救いが無いって……自分がっすか」ポカーン・・・

神裂「気付いてないのですね。『友』という名の強迫観念。最早、呪いでしょうか……確実に『救済・守護』が必要ですよ」ムゥ・・・

香焼「えぇっと……意味が分からないっす」ウーン・・・

神裂「まぁ良いでしょう。兎に角、私達が貴方に注いでいる分の『愛情』を貴方も返して下さい。それで此度の件は不問にします」テクテク・・・

香焼「わっ、ちょ! 姉さん?!」アタフタ・・・///

神裂「それから当分地下鉄禁止ですよ。これは絶対ね。さぁ、では帰りましょうか―――我が家へ」クスッ

香焼「っ!」パアァ・・・


姉さんが言う事はとても哲学的で充分には理解できなかったけど……想いは伝わった。


香焼「ただいま、姉さん」ギュッ・・・ニコッ

神裂「ええ……おかえり、香焼」ギュッ・・・フフッ


『香』という危うい『鏡』に押し潰されないくらいの男になりたい。そうすれば、この人達の大き過ぎる愛にも応えられる。
そうすれば、この『日常』は、もっと楽しくなる筈だから……―――

とりあえず、第Ⅴ話終了です! 長らくお付き合い頂きありがとうございました。

今夜、おまけと後書き&アンケ投下するので、またその時! では!  ノシ"

    <おまけっ!>


     シーン・・・・・


土御門「―――……ったくもぉ! あんの糞ガキぁ」グデェ・・・

海原「知らない間にトンデモない事態になっていた様ですね」ハハハ・・・

御坂蛇「報告したくても繋がらなかった。とミサカはこの非常時にどっか言ってたアンタらに恨み辛身を込めて報告します」ジトー・・・

海原「辛辣ですね。まぁ我々も暇人では無いので……しかし、困りましたね。如何します?」ポリポリ・・・

土御門「……、」ムゥ・・・

海原「噂によると、かのカイツ=ノックレーベンが動いた様ですよ。真であれば、ばれてるものと考えるべきでしょう」チラッ・・・

土御門「ぶっちゃけ『詰み』だぜぃ。第5位との接触は、逆に情報を『喰われる』危険が伴うにゃー」ポリポリ・・・

海原「彼女は最早御坂さんや上条さんと繋がりがありますからね……やはり『香』は用済みでしょうか」ジー・・・

土御門「ふむ……17600号(プロスネーク)。オマエは如何思う? お目付役のオマエの意見を聞きたい」クイッ・・・

御坂蛇「ミサカの? そうですね……では率直に進言させて頂くと―――」


  にゃーん・・・・・


御坂蛇「―――……今『香』が消えたら、却って食蜂操祈の琴線に触れるやもしれない、とミサカは進言します」キッパリ・・・

海原「あはは……男と気付いて尚、お気に入りと?」ウーン・・・

御坂蛇「ええ。奴を見るからに明白だな、とミサカは意見を述べます」チラッ・・・

土御門「こりゃもう賭けだにゃー。まぁハズレを引いちまったら奴は明確な『敵』になっちまうぜぃ」ポリポリ・・・

海原「悩み所ですね。関与できないとはいえ、この現状、神裂さん達もお困りでしょう」フム・・・

土御門「だろうな……(しかも、浦上の密告書を読んだが―――『香』の人格が分離しちまったときたか)……無為に放置も出来ない」チッ・・・

御坂蛇「……、」フンッ・・・

海原「スネーク?」チラッ・・・

御坂蛇「もし……師匠達が香を捨てるのであれば、ミサカが私用で貰おう。とミサカは宣言します」サラッ・・・

土御門・海原「「はぃ?」」キョトン・・・

御坂蛇「アレは私の妹弟子だ。未だ半人前の『潜入員』だが、素質はある。もし用済みならミサカの『駒』として育てますよ」ジー・・・

土御門「……えっと」タラー・・・

海原「意味不」アハハ・・・

御坂蛇「要は『神埼香』をミサカが貰う、と言ってる。OK?」クイッ・・・

土御門「OKも何も、アイツは『香焼某(それがし)』だぜぃ。香の姿はあくまで」アタフタ・・・

御坂蛇「ミサカからしてみれば『香』は『香』だ。同じ師を持つ後輩。違いますか、師匠(マスター)?」ジー・・・

土御門「海原。如何したい?」クイッ・・・

海原「ハァ……確かにまだまだ半人前ですが、役には立ちます。彼の『変装』や『尾行』はそれなりに使えますからね」ポリポリ・・・

土御門「まぁな。特にこの学園都市向きに学生の潜入員として使える……『暗殺』は使えないが、それは追々で良いだろう」コクッ・・・

御坂蛇「っ! では、不問という事で―――」チラッ・・・

土御門「いや、それは甘いぜぃ。スネークちゃんよぉ」クイッ・・・

御坂蛇「―――……、」ムッ・・・

海原「そうですね。ケジメは必要でしょう」フフッ・・・

土御門「だな……アイツには今以上に働いて貰う。これからは『香』以外にも演じて貰うぜぃ……酷使覚悟だにゃー」フフフ・・・

海原「……ふふっ」ホッ・・・

  <おまけっ!!>


   にゃーん・・・・・


香焼?「―――行ってきまーす!」ガチャッ・・・バタン・・・


神裂「はい。気を付けて」コクッ・・・

浦上「……、」ハァ・・・

五和「ウラ? どったの、浮かない顔して」モグモグ・・・

浦上「いや、いやいや。コレ拙いんじゃないんですか」ジトー・・・

神裂「んー?」チラッ・・・

浦上「香焼ですヨ。香焼」ムゥ・・・

五和「だから、何でよ?」モグモグ・・・

浦上「あのですネ……あの事件から数週間経ちましたヨ。結果的には温情処置。確かに聞こえは良いし、万事解決した様に思えます」ジー・・・

神裂「実際そうですし。それで?」フムフム・・・

浦上「でもっ! 香焼のあの『症状』はヤバいですって! 如何する気なんですか!? もう―――」アーモー・・・

神裂・五和「「……、」」ウーン・・・



   ガヤガヤ・・・ザワザワ・・・キャッキャウフフムッキュンムッキュン・・・・・



香焼?「―――えっと、司書室に……あっ! 操祈さーん!」パタパタ・・・

食蜂「っ! 香ちゃーん♪ いらっしゃーい」ヒャッホー!

香焼?「えへへっ」ムギュッ・・・

食蜂「っ!?! こ、こらぁ……そんなにはしゃいでぇ! 此処図書館だぞっ」キャワワァ・・・///

香焼?「ふふっ。大丈夫だもーん。僕達しかいないもん。それに……『病気』も治ってきたっぽいしね」ギュッ・・・

食蜂「う、でもぉ……そんなベタベタしちゃダメよん。香ちゃんも立派なレディなんでしょ? (ヤベぇ可愛い! 食べたい!)」ギギギ・・・///

香焼?「むー。前は操祈さんの方がベタベタしてたでしょー。その時に比べたら僕なんて軽いくらいじゃん……それとも、嫌なの?」プクー・・・

食蜂「」プシュー・・・///

香焼?「……操祈さん?」キョトン・・・

食蜂「な、何でもないわよん。さ、さぁてと……今日は何して遊びましょうか! (アカン。理性ががががががが!)」アハハハ・・・//////////

香焼?「んん? 変な操祈さん」クスクス・・・



    ドヨドヨ・・・ワンヤワンヤ・・・カクカクシカジカ・・・・・



浦上「―――あの子、今じゃ『人格のスイッチ』を無意識で切り替えちゃってるんですヨ!? 無意識ってのが性質が悪い!」タラー・・・

神裂・五和「「……、」」フイッ・・・

浦上「何故目を逸らします?! アレってすんごい危険な状態なんですヨ?」ガーッ!

神裂「えっと……さて、仕事の時間ですね。今日の帰りは遅くなるかもしれませんので宜しく」テクテク・・・

五和「あー、私も学校だわ。ウラ、準備OK? もう行くよー」テクテク・・・

浦上「現実逃避しないで下さい! ってか、アンタら……『香(あの女)』に懐柔されましたネ!? デートか何かで!!」ギロッ・・・

神裂・五和「「ぎくっ」」ダラダラ・・・

浦上「んもー馬鹿っ! 凄く馬鹿!」ギャーギャー・・・

浦上「つーか、元は香焼なんですヨ!? 分かってます?」ジトー・・・

神裂「でも、そのぉ……ねぇ?」タラー・・・

五和「マジで可愛いんだもん。本当の『妹』みたいでさぁ」タラー・・・

浦上「姉馬鹿が行き過ぎて頭沸いたか……あの子、『香(あの女)』に人格乗っ取られてる(ジャック)されてるんですからネ!」ギロッ・・・

五和「だけど、別に悪事働こうとしてる訳じゃないみたいだし。『香焼』の生活に支障を及ぼす事してないっしょ」アハハ・・・

神裂「確かに最初は危険視していましたが、今じゃ香焼の下の『妹』みたいな感覚ですよ」ウンウン・・・

五和「あとほら。『香』の人格(心理状態)なら食蜂さんに心読まれても問題無いじゃん」ピンッ!

神裂「そうですね。あとは、未だにステイルや他の数名を騙し続けている以上、都合が良いかと」コクッ・・・

浦上「それは姉様達の都合でしょうに。如何なっても知りませんからネ」ハァ・・・

神裂「まぁまぁ……しかし珍しく怒ってますね。そんなに『香(あの人格)』が苦手ですか?」ハハハ・・・

五和「ウラ、今生理中なんでピリピリしてるんですよ。あと、この子典型的に猫被りしてる子が嫌いですから」チラッ・・・

浦上「猫被りされてるって分かってるなら止めさせて下さいヨ……因みに生理じゃない。生理不順で来ないからピリピリしてるんです」ジトー・・・

神裂「えっ……それ、本当に不順ですか?」チラッ・・・ボソッ・・・

五和「不順はフジュンでも、不純の方なんじゃ」チラッ・・・ヒソヒソ・・・

神裂「っ!? う、浦上、えっと……心の整理が出来たら、素直に告白してくださいねぃうぉい危なっ!?」ガンッ!!

五和「う、ウラ!? 此処では立場抜きとはいえ、仮にも姉さんは教皇だよ! 手ぇ上げるのは流石にぃ痛だぁ!!」ゴチンッ!!

浦上「コッチは真面目に話してんのに死にさらせぇ耳年増処女共がぁ!! もう許さん! 土御門と建宮さんに言い付ける!」ウガアアァ!!

神裂「ちょっ!? それは止めて下さい! せめて『香(あの子)』と次の買い物行くまでは、まだ!」アタフタ・・・

五和「姉さん! ローテーション的に次は私がデートの番ですよ! 『不順同性交遊』は禁止です!」キッ・・・

浦上「同性じゃないし普通のデートだそれは! 上条さんにも有る事無い事吹き込みますからネ!」アーモゥ!

五和「おまっ、ふざけんなっ!」ウギャー!

神裂「『香』は心が女性ゆえ、姉妹で同性なのでノーカンです!」ムムムッ!

浦上「言い訳無用! 今度『香(あのビッチ)』の姿見っけたら、またパンツひん剥いて現実戻してやる!」ガンッ!

神裂・五和「「止めてっ!!」」ウギャアアァ・・・




  ギャーギャーギャー・・・ウキャームキュー・・・イヤアアァ・・・・・



















白(ちょっと灰)色カブトムシくん『うーん……これって姉ショタ? 百合? それとも男の娘? ジャンル何なの?』キョトン・・・

801春「上条さんも入って四角関係の超複雑カップリングですね。まぁ何でもアリですよ。二次ですし」アッハッハ・・・




もあい「……なーぅ」オワレッ・・・

はい。以上です。

ホント亀スレですいませんでした。最後まで見て下さった方々、心から感謝します。
この後ですが、例の如く1000までお題安価するかも。今回は絹旗ちゃん主役かな。

因みに今のところ、『あまくさっ』シリーズの次スレ投下予定は未定です。
ただ、5部はアニェーゼ話&絹旗話メインで一端、『あまくさっ』シリーズに一区切りつけようかなとも考えてました。
あくまで考案段階ですけどね。



さて……では約束道理『アフター』を別スレ立てて書きます。その為のアンケート!



① サーシャ編・・・甘め?

② レッサー編・・・リアルっぽい恋愛?

③ 結標編・・・ドロドロ?



それではアンケート協力、今後の意見、リクエスト、質問、感想、罵倒を頂けると嬉しいです。
んじゃまた後ほど、アンケートが落ち着いたらお題安価について投下します! ノシ”

こんばんわ。ちょいとレスを。
>>939の『××アフター』のアンケート、今のところ・・・

①サーシャ――5票     ②レッサー――3票     ③結標――2票

・・・ですね。引き続きアンケ協力お願いします。



さておき残り50スレで、例の如くお題SSします。
今回主軸は絹旗ちゃんで! アイテムや香焼宅、黒妻家、黄泉川家、黒夜、⑦、などなど...絡ませます。

アンケ協力諸共、適当にお題提供宜しくお願いします。空いた時間でチラホラ書いてく。(予定)



まずは例題……『平日!』

      『平日』

     にゃーん・・・・・


絹旗「だってご飯食べて散歩して寝て、ご飯食べて公園出て、ご飯食べて散歩して、ご飯食べて、ご飯食べて、ご飯食べてるだけですよね」ジー・・・

禁書目録「酷い偏見を感じたんだよ」エー・・・カチャカチャ・・・

削板「だってそうなんじゃねぇの?」キョトン・・・カチャカチャ・・・

禁書「いやいや、そういうもあいやぐんぱだって、普段何もしてないでしょ?」ジトー・・・カチャカチャ・・・

絹旗「超心外ですね。一緒にしないでください。私こう見えて超絶忙しいんですけど……あと『もあい』言うなし」フンッ! カチャカチャ・・・

削板「夜更かしして昼過ぎに起きて、飯食って、昼寝して、ゲームして、偶に映画観て、飯食って、ゲームして……朝迎える人間が?」チラッ・・・

絹旗「うっさいバーカバーカ! 自警活動っていう名の超傍迷惑人間災害よか超々々ちょーーーーっマシですよーだ!」ベー! カチャカチャ・・・

ステイル「確かに、誰にも迷惑掛けずに黙ってた方が世の為だな」ジー・・・カチャカチャ・・・

削板「日に三箱ヤニ消費する空気汚染者に言われたかぁ無ぇわ。ていうか喫ってねぇのにヤニ臭ぇぞ」ケッ・・・カチャカチャ・・・

絹旗・禁書「「同意」」コクッ・・・カチャカチャ・・・

ステイル「」チーン・・・カチャカチャ・・・

絹旗「まぁこの年齢不詳ノッポは良いとして、実際のとこ、暴食シスターは学校とか行かなくて良いんですか?」チラッ・・・カチャカチャ・・・

禁書「うーん……色々あるんだよ。もあいだってそうでしょ?」チラッ・・・カチャカチャ・・・

絹旗「ま、まぁ。でも私は一応レポートとか提出してますし……学校には行かなくても、うん」ゴニョゴニョ・・・カチャカチャ・・・

削板「超が付く程のコミュ障の絹旗じゃ易々とクラスに馴染めなぉわぁいおっ!? ちょ、てっめぇ! スネ蹴んなっ!」ゴガンッ!! カチャカチャ・・・

絹旗「言わせておけばぁくそぅくそぅ……そういう削板だって、どうせ学校から来るなって言われた口でしょう! 超問題児!」キー! カチャカチャ・・・

削板「ぐっ! 否定はできない……でも俺だってレポートとか通信とかでやりくりしてんだよ。んな事よかそこのシスターだろ」チッ・・・カチャカチャ・・・

禁書「ハイスクールレベルの基礎学問は完璧に抑えてるんだよ。あくまで『基礎』だから、理系特化のもあい達と同レベルにしないでね」ムゥ・・・

ステイル「その代わり、彼女は文系分野は世界で指折りで、暗記力だけで言えば世界一の頭脳を持っているからね」ドヤァ・・・カチャカチャ・・・

削板「いつの間にか立ち直りやがった。そのまま寝てやがれ」ハァ・・・カチャカチャ・・・

絹旗「てか何で他人の説明でそんなに超キラキラしてるんですか? 何なの? 超キモいんですけど」ウヘェ・・・カチャカチャ・・・

ステイル「喧しい。ブラジルの場所も分からないクセに」ジトー・・・カチャカチャ・・・

絹旗「そ、そこまで馬鹿じゃないです!」ムキー! カチャカチャ・・・

削板「じゃあ言ってみろよ。正確に言えたらこれからちゃんと渾名以外で呼んでやるよ」フフフ・・・カチャカチャ・・・

絹旗「ぶ、ブラジルですよね! この前超教えて貰いましたもん! えっと……日本の超真逆の位置です!」ムンッ・・・カチャカチャ・・・

禁書「もうちょい詳しく」チラッ・・・カチャカチャ・・・

絹旗「え、ぅ……じゃ、ジャングル。アマゾン……サッカーして生活してる」タラー・・・カチャカチャ・・・

ステイル「サッカーして生活し……えっ? い、位置を言え。せめて何処大陸だとか南北半球のドチラ側だとか、あるだろ?」フンッ・・・カチャカチャ・・・

絹旗「暑い感じの所だから、えっと、南で……うーん……じゃ、ジャブロー地方!」バッ・・・カチャカチャ・・・

ステイル「何処だそこ? せめて南米大陸くらい浮かぶ様にしろ。小学生以下だぞ」ハァ?

禁書「やっぱ『もあい』なんだよ……勉強教えてるみぃ(美偉)とかこうやぎが浮かばれないんだよ」ヤレヤレ・・・

削板「ホンっト超残念な子だなぁオマエ。香焼の爪の垢煎じて飲ませて貰えよ……あ、そりゃ勿体無いか」ハハハ

絹旗「むきゃああああああああああああぁ!! 地理は苦手なだけなんですよおおおおおおぉ!」クソゥクソゥ!!


・最愛……職業:アレな仕事。 学校:名前だけ置いてる。    家:麦野さんとこに居候。
・ステイル……職業:魔術師。 学校:飛び級で博士号取得済み。 家:学園都市ではホテル住まい。
・軍覇……職業:なし。    学校:名前だけ置いてる。    家:研究所住まい。
・禁書目録……職業:ニーt・・・シスター。 学校:何それ?    家:上条さん家の居候。


香焼「―――ただいまー……って、まだゲームやってるし。8時間近くマ○カーやってたの? 平日なのに」ハァ・・・

   『ワールドカップ』

   ゴーーーーーーーーーーーーーーールッ!!  ワーワー!!  キャーキャー!!

麦野「―――このシーズンってコレばっかよね。何処のチャンネル回してもサッカーばっか」モグモグ・・・

滝壺「そういえば、はまづら。フットサルのチーム入ってるんだよね」チラッ・・・

浜面「あー。兄貴のチームな。昔のツレとかと色々やってるよ。朝野球とかバスケとか、そういうのも」コクッ・・・

フレメア「私観に行った事ある! 浜面キーパーやってた! 恰好良かった!」ニャー!

滝壺「……私、観に行った事無いんだけど」ジトー・・・

フレメア「ふっふっふ。正妻の余裕だにゃあぁあああ痛たたたたぁ!!」ギチギチギチ・・・

浜面「落ち着け滝壺。子守りん時に連れてっただけだから。他意は無いから……ところで」アワワワ・・・チラッ・・・


絹旗「ブラジル……なんべー……サッカー王国……日本の真逆……ジャングル……アマゾン……りおねじゃねーぞ……ねおなち」ブツブツ・・・


フレメア「ぐぬぬぅ痛いぃ……なぁにあれぇ」タラー・・・

浜面「今日色々あったんだとさ。だから勉強中?」ハハハ・・・

麦野「おチビ。アンタも真面目に勉強しないとアイツみたいに残念ガールになっちゃうわよ。もしくは浜面みたいにアホ面になる」クイッ・・・

浜面「うっせ。勉強っていうか一般教養だろ……まぁ今まで通り、ちゃんと学校通ってれば大丈夫だよ」コクッ・・・

滝壺「まぁまぁ―――きぬはた。そろそろ手を止めてご飯食べようよ。冷めちゃう」ジー・・・

絹旗「あっ……分かりました!」ピンッ!

あいてむっ『へっ?』キョトン・・・

絹旗「ウ○○レです! ウ○○レで国覚えれば良いんですよ!」ピカーン!

麦・浜・滝「「「……、」」」タラー・・・

絹旗「私ってば超頭良いですね! アレなら簡単に国名覚えられます! ふふふっ……自分のひらめきが恐ろしい」ニヤニヤ・・・

フレメア「あー。PS5のウ○○レ2XX4?」ニャハハ・・・

絹旗「既に殆どのクラブタイトルとか制覇しちゃってますし、WC王者なってますからね! これもう大勝利でしょう!」キラキラ・・・

浜面「絹旗さんや……仮にそのゲームを殆どクリアしてるとして、知識になってるのかい?」タラー・・・

絹旗「馬鹿にしないでください。超なってますし! ブルンジ共和国でFIFAランク1位取れるレベルですよ!」ドヤァ・・・

フレメア「ぶるn……何処?」キョトン・・・

浜面「知らね」ハハハ・・・

麦野「超マイナーな国よ。アンタ、そのブルンジが何処に在るか知ってるの?」ハァ・・・

絹旗「……、」ピタッ・・・

滝壺(中部アフリカの内陸に位置する国家。ルワンダ、コンゴ民主共和国、タンザニアと国境を接している)byウィキ!

麦野「ハァ……とりあえず、疑問に思ったら探してみなさい。携帯弄れば10秒足らずで調べられるでしょ。それも勉強よ」ヤレヤレ・・・

浜面「麦野がマトモな事言ってる」タラー・・・

フレメア「モアイは麦野と滝壺の言う事なら聞くからにゃー。麦野はオッカナくて逆らえないからだけど」ジー・・・

滝壺「二人とも。麦野が睨んでるよ。さておき、きぬはた。現実(リアル)でサッカーやった事あるの?」チラッ・・・

絹旗「えっ。あぁ、この前初めてボール蹴りましたよ。香焼はイマイチ上手くなかったですけど、似非神父(ステイル)は超上手でした」コクッ・・・

滝壺「(似非神父?) そう。どうだった? 楽しかった?」フフッ

絹旗「んー……微妙です。とりあえずボールがボーリング玉くらいの硬度無いと、私の超スーパーシュートに耐えられないみたいですよ」ニコッ

浜面「」ダラダラダラダラ・・・

フレメア「普段、そのキックに耐えてる浜面ってば実はマン・オブ・スチールかにゃ?」ハハハ

滝壺「そんな不幸なはまづらと、残念ガールなきぬはたを応援してるよ」ハハハ・・・

    『夕立』

  ドシャアアアアアアアアアアァ・・・・・


絹旗「―――うひゃぁ……やっと雨宿りできましたね。超ビシャビシャですよ」ダラーン・・・

もあい「なぅ」ブルルッ・・・

香焼「ね。もうそんな季節かぁ」ハハハ・・・

黒夜「いきなり降ってきた……くっそ、何でこんな目に。あんのバカ面野郎が余計な事言わなきゃズブ濡れにならなかったのによぉ」ビシャァ・・・

香焼「まぁまぁ。普段外出ないんだから偶には良いでしょ」ポリポリ・・・

黒夜「うっせ。なぁにが『引き籠ってばっか居ないで外の空気吸いなさい!』だ。テメェは私のオカンかっつの。私ら母親の顔知んねぇけど」フンッ

絹旗「ハァ……きっと黒夜が超雨女なんですよ。普段こんな事無いのに。まったく、浜面がコイツも連れてけなんて言わなければ」ブツブツ・・・

黒夜「へいへい、悪ぅござんしたねー。私が居る所為で二人っきりになれなくてさぁ。怨むなら浜ちゃん恨め―――」ケッ・・・ジトー・・・

絹旗「にゃ、だ、黙りゃ―――」グヌヌゥ・・・///


  ゴロゴロゴロゴロ・・・ピカッ・・・――・・・ドンガラガッシャーンッ!!


絹旗・黒夜「「―――ひゃんっ?!」」ビクッ・・・ガシッ!

香焼「をぁっ!?」グラッ・・・

黒夜「ぃ……っ! や、やーいやーい、絹旗ちゃんマジビビりー! おまけに真っ赤っかー!」バッ・・・ベー///

絹旗「う、うぅ五月蠅いボケぇ! 黒夜だって超赤いんですけどぉ! そんなに怖がるなんて超お子様ですねー!」バッ・・・フシャー///

絹旗「チっ……しっかし超絶土砂降りですね。これなら大人しくマンションで静かにしてた方が良かったかも……って、あっ」ピタッ・・・

香焼「どうしたの?」チラッ・・・

絹旗「い、いや! 何でも!」アハハハハ・・・チラッ・・・///

香焼「うん? 顔赤いけど大丈夫っすか?」ジー・・・

絹旗「だ、大丈夫大丈夫。超平気です。香焼こそ、その……風邪引かないで下さいよ」コホンッ・・・///

香焼「へっ?」キョトン・・・


黒夜「ん? (ぉぃ……どうした?)」ボソッ・・・

絹旗「ぁ……ゃぎ………てる」ゴニョゴニョ・・・

黒夜「あい?」キョトン・・・

絹旗「だから、その……香焼……透けて、ます……胸、が」ゴニョゴニョ・・・カアアァ///

黒夜「はぁ? 何が、ぇ……っ!!」カアアァ///


香焼「―――雨やまないねー」ボー・・・  ← 【今日に限って白系Tシャツ&ずぶ濡れ状態=TKBうっすら!】


黒夜(うにゃ!? な、お、おぉ、お、男のち、ちく、ちちち、く……胸なんて見たって、恥ずかしくも難とも無いしっ!)アタフタ・・・///

絹旗(じゃあ何で超真っ赤なんですかっ! ど、どうしよう。言った方が良いのかな!?)モンモン・・・///

黒夜(馬鹿っ。恥ずかしいに決まってんだろ! 此処は知らないフリをしてやるのが大人な対応で!)ブンブンッ・・・///

絹旗(でもでも! もし他の人に見られたらそれこそ超恥ずかしい思いしちゃいます……あ、ポッチが少し起ってる―――)アラー・・・///

黒夜(寒いのかなぁ……ってそうじゃねぇよ! ガン見すんなよ、あぁもぅ! 何で野郎のスケスケなんかで悩まなきゃなら―――)ウグゥ・・・///


もあい「……にゃっ」ツンッ・・・ツンッ・・・ガジッ!

香焼「んっ……ぁ……ひゃぅ……っ! こ、こらっ! もあい!」バッ・・・カアアァ・・・///


絹旗・黒夜「「―――っ!! (うひゃああぁ!? 乳首齧られて嬌声挙げたったあああぁ!!)」」ガタッ・・・ハァハァ////

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月09日 (金) 02:25:58   ID: Z9w9E4ZG

モブはいらん

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