『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 5 (993)

~ ごあいさつ ~

こちらは、『スマイルプリキュア!』の第2期を想定した自作のストーリーを SS形式で展開していくスレとなっています。
投稿の作法や文体などに至らない点がありましたら、随時ご指摘いただけますと幸いです。

作品の主なルールは下記の通りです。


・地の文無し(基本的にセリフと擬音のみ)

・内容はあくまで『プリキュア』シリーズっぽく作成します
 キャラ崩壊や、シリーズを著しく逸脱する内容 (エロとか残酷描写とか) はありません

・設定は基本的に原作『スマイルプリキュア!』を踏襲します
 ※意図的に崩す場合は注釈を入れます

・本作では原作終了後、中学3年生となったみゆき達を描いていきます
 新しい設定・キャラ・敵を盛り込んだ完全オリジナルストーリーとなります

・毎週日曜 AM 8:30 更新予定
 (本家『プリキュア』と同じ時間)


本シリーズの過去スレはこちら

・Part 1(第1話 ~ 第11話)
 『スマイルプリキュア!』第2期を SS で作るスレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360385907/)

・Part 2(第12話 ~ 第20話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366529393/)

・Part 3(第21話 ~ 第29話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373151336/)

・Part 4(第30話 ~ 第38話)
 『スマイルプリキュア レインボー!』 Part 4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379287447/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386467175

お待たせしました!

『スマイルプリキュア レインボー!』第39話

このあとすぐ!

~ 七色出版("週刊スマイル" 出版社) 待合室 ~

やよい「…………」ボーッ…


やよい「……梅沢さん、それ……、本当ですか……?」

やよい担当編集・梅沢「もちろん。こんなウソついたりしないよ」


梅沢編集「おめでとう、黄瀬さん! 今度、君の漫画が "週刊スマイル" に載ることになったんだ!」

梅沢編集「最初に投稿してもらってから、もうすぐ 1年……。君の成長をようやく編集長も認めてくれたんだ。黄瀬さんを "期待の新人" として後押ししていくことに決まったんだよ」


梅沢編集「漫画家デビューだよ! 本当におめでとう!」


やよい「……わたしが……漫画家……」ボーッ…


梅沢編集「ははは、"まだ信じられない" って顔だね」

やよい「は、はい……。ゆ、夢でも見てるみたいです……」


やよい「……あ、あの……、ホントに……夢じゃ、ないんですよね……?」

梅沢編集「うん。夢でも間違いでもないよ。おめでとう、黄瀬さん」

やよい「……!!」パァッ…!

やよい「……やっ……」

やよい「やったぁぁぁーーーっ!!」


やよい「あっ、ありがとう、ございます……、梅沢さんっ……! わたし……、わたし……っ! ぐすっ……!」

梅沢編集「おっとと、黄瀬さん、嬉し泣きにはまだ早いよ。雑誌に載せる作品についてこの間言ったこと、忘れてないよね?」


梅沢編集「ミラクルピースが最後の決戦に向かうシーンのセリフから、ラストシーン。もっともっと良くできるはずだから、もう少し練りこんでみよう」

梅沢編集「そこさえできれば、いよいよ漫画家デビューだよ! 最後までしっかり頑張って、できるだけいい作品にしよう!」

やよい「ぐすっ……、……はいっ!」

梅沢編集「いい返事だね! これなら大丈夫そうだ。期待してるよ!」

やよい「わかりました!」

~ 七色出版("週刊スマイル" 出版社) ロビー ~

オニニン「やよい……! やった……、やったオニ……! ついに、ついにデビューオニ! 信じられないオニ!」

やよい「わたしもだよ、オニニン! きっと、オニニンがいっしょにガンバってくれたおかげだね!」

オニニン「へへへ……、そう言われると、テレちゃうオニ……」


オニニン「でも、やよい、編集さんの言う通り、喜ぶにはまだ早いオニ! すぐ帰って、最後のキメシーン、仕上げちゃうオニ!」

やよい「うん! そうだね――」


男性漫画家「どうしてなんですか!? 僕の漫画が打ち切りって……、どうして……!?」

七色出版編集者「しっ、声が大きいよ……! 騒がないで……!」

男性漫画家「騒がずにいられませんよ! あんなに頑張ってきたのに……、なんでなんですか!?」


やよい「……!」ピタッ

オニニン「……? どうしたオニ、やよい? 行かないオニ?」

やよい「……うん……」

七色出版編集者「もちろん、僕だって反対したさ……! これから盛り上がる展開になるように、二人で一緒に考えてきたんだから……!」

七色出版編集者「でも、やっぱり人気が……同じジャンルの他の作品に比べて低かったから……、打ち切り候補として最後まで残ってしまったんだ……」

七色出版編集者「僕では、編集部を説得しきれなかった……! 本当にすまない……! 今回は……、あきらめてくれ……!」

男性漫画家「……そんな……」ガクッ


やよい「…………」

やよい(……あの人の漫画、終わっちゃうんだ……)


やよい(雑誌に連載できるなんて、きっとすっごくガンバったんだと思う……。やっと作品が載るようになったわたしなんかより、ずっと……)

やよい(でも……、それでも、続けられないで終わっちゃうことも……あるんだ……)

やよい(……わたしも、ああいう風になっちゃうこと……、あるのかな……。作品が雑誌に載っても、人気が出なかったら……)


やよい(そこから何もできずに終わっちゃうことも……あるのかな……)

オニニン「――い。やよい!」

やよい「(ハッ)! オ、オニニン……?」

オニニン「やよい、ぼーっとしてる場合じゃないオニ! 早く帰って、デビュー作仕上げるオニ!」

やよい「あ、う、うん……!」


やよい(……そうだ。今はこんなこと考えてる場合じゃないよ……!)

やよい(せっかくデビューできることになったんだもん……! せいいっぱい、ガンバらなきゃ……!)

~ 帰宅後 黄瀬家 やよい自室 ~

やよい「…………」

オニニン「やよい……? ペン持ったまま、ずーっとボーッとして、どうしたオニ……? 続き、描かないオニ……!? あとちょっとで完成なのに……!」

やよい「うん……、わかってる……。わかってるよ、オニニン……。でも……」


やよい「最後のセリフが思いつかないの……。ここから先のストーリーが全然思いつかないの……!」

オニニン「……!? や、やよい……!?」


やよい「…………」

やよい「どうしよう、オニニン……。わたし……、わたし……」


やよい「……続きが……、描けなくなっちゃった……」




スマイルプリキュア レインボー!

第39話「やよいの決意! さようなら、弱虫のわたし!」



~ 黄瀬家 やよい自室 ~

オニニン「やよい、続きが描けないって……、どうしてオニ……?」

やよい「…………」


コンコン


やよい「ノックの音……? ママ?」

千春(やよい母)「やよい、ちょっといい? お客さんが来てるから、開けるわよ?」

やよい「え、お客さん……?」


ガチャッ


みゆき達「やよいちゃん! 漫画家デビュー、おめでとーっ!」

やよい「あ……! みんな……!」

千春「うふふ、ごめんなさい、やよい。ビックリした?」

千春「ママね、やよいがデビューできるって聞いた時、もううれしくって……、色んなところに連絡しちゃったの」

あかね「その連絡もろたから、うちらもいてもたってもおられんでお祝いに来た、っちゅーわけや!」

れいか「やよいさん……、長い努力が、ついに実を結んだんですね……!」

なお「ホントにおめでとう!」

やよい「みんな……」


千春「それじゃ、皆さん。ごゆっくり」

みゆき達「はーい!」

ペロー「それで!? やよいさんのデビュー作はどこにあるペロ!? ぜひ見たいペロ!」

やよい「あ……、そこの机の上に置いてあるのがそうだけど……」

あかね「おっ、なんやペロー、ヒーローとかロボットだけじゃなくて、漫画も好きなん?」

はるか「ほしい、っていうから買ってあげたらいつの間にか、ね……。私の部屋、もう漫画だらけだよ……」

みゆき「でも、私も見たいっ! やよいちゃんが一生懸命ガンバって描いた漫画だもん! きっと面白いよ!」

やよい「……!」

れいか「ええ、私も見てみたいです! いいですか、やよいさん?」

やよい「あ、うん……、どうぞ……」

なお「やった! じゃあ、みんなで見よう!」


ワイワイワイ


やよい「…………」


ゆかり(……? やよいセンパイ……。なんだかあんまり元気ないみたい……。夢だった漫画家になれるのに……、うれしくないのかな……)

みゆき『人々が平和に暮らす世界……。しかし、そこに悪の手が迫りつつあった……』

みゆき『ワルーダ帝国幹部「ふっふっふ……、人間共よ、安心して暮らしていられるのも今日までだ。オレ達 "ワルーダ帝国" がその笑顔を恐怖に変えてやろう!」』

みゆき『ミラクルピース「待ちなさいっ!」 ワルーダ帝国幹部「何っ!? 誰だ!?」』


みゆき『ミラクルピース「歪んだ悪は逃さない! 正義の戦士、"ミラクルピース" 参上!」』


あかね達「おぉー……!」

ペロー「いい出だしペロ! 燃えるペロ!」キラキラ

はるか「ペロー君、興奮しすぎ……」


マティ「わぁ……! これが "マンガ" というものですのね……! 絵だけでなく、動きや言葉もいっしょに描くことで、まるで本当に目の前で起こっている出来事を見ているようですわ……!」

あかね「お、さすがマティ! わかっとるやん! そや、漫画はええもんやで、よう見とき! ほれ、みゆき、続き! 早よ!」

みゆき「う、うん!」

やよいの漫画『こうして、正義の戦士・ミラクルピースと、悪の侵略者・ワルーダ帝国との戦いが始まった!』

みゆき達「うんうん!」


やよいの漫画『ミラクルピースはその正義を愛する心と、仲間達との友情を力に変えて、次々とワルーダ帝国の強敵を打ち破っていく!』

みゆき達「うんうんっ!」


やよいの漫画『しかし、ついに現れた最大の強敵・ワルーダ帝王の前に、ミラクルピースと仲間達はなすすべもなく倒されてしまう! どうしようもない状況に、仲間達は絶望にとらわれてしまった……!』

みゆき達「えぇっ……!?」


やよいの漫画『しかし、それでもミラクルピースは一人立ち上がり、ワルーダ帝王との最後の決戦に挑もうとする!』

みゆき達「…………!」ドキドキ

みゆき『ミラクルピースの仲間の青年「ミ、ミラクルピース……? どこへ行こうというんだ……」』

みゆき『ミラクルピース「ワルーダ帝王を……、倒さなきゃ……!」』

みゆき『ミラクルピースの仲間の青年「ムチャだ……。そんなボロボロの体で、あの強いワルーダ帝王に何ができるっていうんだ……!」』

みゆき『ミラクルピースの仲間の青年「もう十分だ……、君はよく戦った……! 君のような女の子がこれ以上傷つくのを、誰も望まないよ……!」』

みゆき『ミラクルピース「……それでも行くの」』

みゆき『ミラクルピースの仲間の青年「……どうして……、どうして、君はそこまでして戦おうとするんだ……? 一体なんのために……?」』


みゆき『ミラクルピース「……それは――」』

あかね達「"それは――"……!?」


ペラッ


みゆき「……あれ……? 続きがない……。次のページ、真っ白だぁ……」

あかね達「ええーっ!?」

あかね「うあーっ、なんでや! こんなええところで! やよい、次のページどこや!?」

やよい「今できてるのはそこまでなの……。だから、その先のページはまだないんだ……」

ペロー「そ、そんなペロ……。や、やよいさん、せめてここからどうなるのかだけでも教えてほしいペロ……。気になるペロ……!」

やよい「…………」

みゆき「……? やよいちゃん? なんだか顔が暗いけど……どうかしたの……?」


やよい「……思いつかないの……」

れいか「え……?」

やよい「ここから先の展開が……、ミラクルピースの言葉が、思いつかないの……」

なお「思いつかないって……、どうして……? ここまでずっといい調子で描けてるのに……」

やよい「……わたしね、自分の漫画を見てもらうことで、みんなにガンバる気持ちをあげられたら、って思って描いてきたんだ……」

やよい「ツラくてもガンバるミラクルピースを見て、みんなに "ガンバろう" って思ってもらえたら……、みんなに喜んでもらえたらな、って思って描いてきたの」


マティ「ゆかりちゃんも、やよい様のマンガにはげましてもらったことがありましたね……」

ゆかり「そうだね……」


やよい「……でもね、デビューのことを聞いたその帰りに、わたし、見ちゃったんだ……。すごく、すごくガンバった漫画家さんが、自分の漫画、やめさせられちゃうところ……」

オニニン「……! やよい、もしかして、あの時見たことを気にして……」

やよい「……うん……」

やよい「わたしずっと、ガンバればきっといつか何とかなる、って思ってガンバってきた」

やよい「前にデビューがダメになっちゃった時も、ガンバり続ければみんなに楽しんでもらえるようになるって思って、ガンバったんだ……」

キャンディ「やよいの、"夢の絵の具" が初めて出た時クル……」


やよい「でも……、ガンバっても、みんなに楽しんでもらえない、っていうことも、あるんだよね……」

やよい「もし、自分がそうなっちゃったら……、わたしの漫画がみんなに楽しんでもらえなくなっちゃったら……。そう思ったら、コワくなっちゃって……」

やよい「その時、わたしはガンバれるのかな、って……、思っちゃったんだ……」

やよい「そうしたら……、わからなくなっちゃったの……。」

やよい「ミラクルピースが、何のために戦うのか……、あこがれのわたしは、どうしてガンバるのか……、わからなくなっちゃったの……」

れいか「それで、この先の言葉が描けなくなってしまった、と……?」

やよい「…………」コクン

なお「そんな……。ここまでずっとガンバってきたのに……。初めて漫画を描いた時も、デビューがダメになっちゃった時も、苦しくったって乗り越えてきたのに……」

やよい「…………」

みゆき「……もしかして、ジョーカーが言ってたことって、こういうことだったのかな……」

ポップ「ジョーカーがどうかしたでござるか、みゆき殿?」

みゆき「うん……。この間、私達の町を襲った時に、言ってたよね……」


ジョーカー(回想)『"不安"。それは、決して皆さんの心から消え去ることはありません』

ジョーカー(回想)『例えどんな大成功をしようとも、何度苦しいことを乗り越えようと、新しい困難にぶつかれば、必ず心の中に湧き上がってくる』

ジョーカー(回想)『その度に現れて、皆さんを苦しめる。そういうものです』


ウルルン「……そういやあ、言ってたウル……」

マジョリン「じゃあ、やよいは心に湧いてきた新しい不安のせいで、苦しんでる、ってことマジョ……?」

オニニン「そうオニ、やよい……?」

やよい「……たぶん、みゆきちゃんの言う通りだと思う……」


全員「…………」

ゆかり「…… "不安" ……」

はるか「……どんな時でも心に湧きあがってくる……」

れいか「なくしたくても、決してなくならず……」

なお「あたし達が行きたい未来に進むのを、ジャマする気持ち……」

あかね「……厄介やな……」


やよい「…………」

やよい「……でも、わたし、あきらめたくない……!」

やよい「みんなの言う通り、せっかくここまでやってきたんだもん……! なんとか、ガンバってみるよ……!」


みゆき「やよいちゃん……!」

なお「……うん、それでこそ、ガンバり屋のやよいちゃんだよ! そうこなくっちゃ!」

あかね「よっしゃ! ほんなら、うちらもいっしょにセリフ考えたるわ! こんだけおるんや! いいアイデアの一つや二つ、パパーっと――」

やよい「ありがとう、あかねちゃん。……でも、いいの」

あかね「へ……? ええ、って……なんで?」

やよい「さっき言ったよね。わたしは、ミラクルピースを通してみんなにガンバる力を分けてあげたい、って」

やよい「ミラクルピースは、どうして勝てそうにない戦いでも立ち向かうのか、どうしてガンバるのか……。それは、わたしが漫画家デビューっていうタイヘンな夢に向かって、ガンバるわけでもあると思うの」


やよい「だから、その答えはわたしが自分で見つけなきゃいけないと思うんだ」


れいか「……自分が頑張るわけ、ですか……」

はるか「確かにそれは、やよいちゃんにしかわからないことだよね」

やよい「はい……」


みゆき「……そっか。それならもう、何も言わないよ。私達は、やよいちゃんのことを見守ってる」

みゆき「でも、やよいちゃん、忘れないで! やよいちゃんの近くには、いつだって私達がいるってこと!」

ゆかり「わたしも……! ……あんまり、大したことはできないかもしれませんけど……、それでも、せいいっぱい応援しますから……! ガンバってください、やよいセンパイ……!」

やよい「みゆきちゃん……、ゆかりちゃん……、みんな……!」


やよい「ありがとう……! わたし、もっとガンバってみるよ! それで、絶対漫画家デビューするんだからっ!」

あかね「ええガッツやで、やよい! ガンバりや!」

なお「友達が漫画家さんだ、って、自慢させてね!」

みゆき「それじゃ、ジャマになっちゃったら悪いから、私達もう帰ることにするよ」

れいか「大変なところ、失礼しました。頑張ってくださいね、やよいさん!」

やよい「うんっ! 任せて!」ピース


バタンッ


やよい「…………」

オニニン「みんな、行っちゃったオニ……」

やよい「うん……」


オニニン「……やよい、顔色、悪いまんまオニ……。もしかして、カラ元気だったオニ……?」

やよい「……みゆきちゃんの言ってた通り、不安がいっぱいでたまらないけど……、せっかく応援してくれたみんなに心配かけたくなかったから……」

オニニン「やよい……」

オニニン「……だいじょうぶオニ、やよい。おれ様がついてるオニ」


オニニン「やよいのガンバるわけはやよいにしか見つけられないと思うけど……、それ以外のことだったら、おれ様だって手伝えるオニ!」

オニニン「だからドーンと任せて安心していいオニ! ガッハッハ!」

やよい「オニニン……、ありがとう……」

やよい(うれしいな。みんながわたしのことを応援してくれてる。そう考えると、力が湧いてくるような気がするよ)

やよい(……締め切りまでもうすぐ……。それまでに、絶対に見つけなくっちゃ。ミラクルピースが……、わたしが、どうしてガンバるのか、その理由を)


やよい(ガンバって、ガンバって……、やっと手が届きそうになった漫画家デビュー……、わたしの夢……)

やよい(絶対、かなえるんだから……!)

~ 翌日 3時限目・古文 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

国語教師・土田先生「さて、昔は 1月、2月といった月の呼び方が今とは違ったわけだが、わかるかな? 誰かに答えてもらうとしよう」

国語教師・土田先生「……お、これは丁度いい。黄瀬に答えてもらおうか。黄瀬、3月の昔の呼び方はなんという?」


やよい「…………」

国語教師・土田先生「ん……? 黄瀬、どうした? わからないのか? サービス問題だぞ?」

やよい「…………」

国語教師・土田先生「黄瀬!」

やよい「(ハッ) あ、は、はいっ!」

国語教師・土田先生「大丈夫か? さっきからぼーっとして……。3月の昔の呼び方はなんという? 答えなさい」

やよい「え……、あ、あの、その……、えっと……」

国語教師・土田先生「……うーん……」


国語教師・土田先生「弥生(やよい) だ、弥生。……黄瀬、自分の名前なのにわからなかったのか? もうそろそろ受験も近いぞ。しっかりせんとな」

やよい「……はい……すみません……」


みゆき「…………」

あかね(小声)「やよい、おかしいな……。そのこと、前に自分の名前について調べた時に知っとったはずなのに、答えられへんなんて……」

みゆき(小声)「うん……」

~ 4時限目・体育 七色ヶ丘中学校 グラウンド ~

ワー! ワー!


れいか「なおーっ! そのままドリブル!」

なお「任せて、れいか!」

体育教師・片野先生「おーい、みんなどうした! 緑川一人にいいようにされてるぞ!」

クラスメイト・尾ノ後 きよみ「そ、そんなこと言われても……!」

クラスメイト・岡田 まゆ「サッカー部エースでキャプテンの緑川さんにサッカーで勝てるわけないって!」

なお「ごめんね、みんな! このまま決めさせてもらうよ! よっ!」ヒラリ

クラスメイト・金本 ひろこ「……! 抜かれた……!」

なお「よぉっし! 後はゴールだけ――」


やよい「――――」フラッ…

なお「!? 金本さんの陰にやよいちゃんが……!?」

れいか「危ない、ぶつかる……! やよいさんっ!」

やよい「……え? あ――」

なお(やよいちゃん、今あたしに気づいたの!? ダメだ、今からじゃやよいちゃん、もうよけられない……っ!)

なお「くっ!」バッ


ドサァッ


体育教師・片野先生「……! 緑川、黄瀬をかばって自分から転んだのか……! 中止! 試合はいったん中止だ!」


れいか「なお! 大丈夫……!?」

なお「あたしは平気……。それより、やよいちゃんは……!?」

やよい「わ、わたしもだいじょうぶ……。ゴ、ゴメンね、なおちゃん……、わたしのせいで……」

なお「ううん、気にしないで。無事でよかったよ」ニコッ

やよい「なおちゃん……、ホントにゴメン……」


ポップ(デコル)「……それにしても、やよい殿……、心ここにあらずといった感じでござるな……」

れいか「ええ……」

~ 昼休み 七色が丘中学校 中庭 ~

マティ「ゆかりちゃん、その黄色いものはなんでしょう? とってもいい香りがしますわ……!」

ゆかり「あ、卵焼き……? ほしかったら、一個食べてみる……?」

マティ「よろしいのですか!」

ゆかり「うん、いいよ……。はい」

マティ「ありがとうございます! ……もぐもぐ……。……! 甘くてふんわり! とってもおいしいですわ!」

ゆかり「よかった……」


やよい「…………」ボーッ…

ゆかり「……? やよいセンパイ……? お弁当、食べないんですか……?」

やよい「…………」ボーッ…

マティ「やよい様!」

やよい「え……!? あ、ゴ、ゴメン、マティちゃん……、どうかした?」

ゆかり「お弁当……、食べないのかな、って思って……」

やよい「あ……、う、うん。そ、そうだよね、お昼休みだもんね。食べる、食べるよ。もぐもぐ……」

ゆかり・マティ「…………」

ゆかり(小声)「オニニンちゃん……、やよいセンパイ、ちょっと様子がおかしいみたいだけど……」

マティ(小声)「やっぱり、昨日のことで……?」

オニニン(小声)「……そうオニ。昨日も今日も、そのことばっかり考えて、ずーっとぼーっとしっぱなしオニ……」

ゆかり(小声)「そうなんだ……」


やよい「…………」

ゆかり(やよいセンパイ……、ツラそう……)


ゆかり(すごくガンバり屋のやよいセンパイでも、新しい不安が出てきて……、そのせいでツラい気持ちになってる……)

ゆかり(……ガンバる、って……、タイヘンなんだ……)

ゆかり(……何か、してあげられないかな……)

ゆかり(やよいセンパイには、わたしがガンバれない時、はげましてもらったから……、今度はわたしがはげましてあげられないかな……)


ゆかり(なにかわたしにできること……、ないかな……!)

~ 放課後 漫画研究部 部室 ~

やよい「(ガラッ)」


シーーーン…


やよい(……誰もいない……)

オニニン「やよい、どうしてここに来たオニ? 今日は確か、部活はお休みの日オニ」

やよい「うん、そうだったよね……。忘れちゃってた……」


やよい「でも、ここに来て、一生懸命漫画を描くみんなを見れば、何かヒントがもらえるんじゃないか、って思ったんだ……。わたしがガンバるわけのヒントが……」


ガラッ


やよい(小声)「!? だ、誰か来た!? オ、オニニン、デコルになって隠れて!」

オニニン(小声)「わ、わかったオニ!」ポンッ


漫研部員・美川 すず「……あれ? 黄瀬さん、どうしたの? 今日は部活お休みじゃ……」

やよい「あ、美川さん……。美川さんこそ、どうして……?」

漫研部員・美川 すず「ここに来て、ガンバる気持ちをもらおうと思ってたの。……わたしの夢を目指すために」

やよい「夢……、って……、美川さん、もしかして……!」

漫研部員・美川 すず「うん」


漫研部員・美川 すず「わたしも漫画家になりたい。デビューが決まった黄瀬さんみたいに」

漫研部員・美川 すず「だから、そのはじめの一歩として漫画賞に応募してみることにしたの!」

漫研部員・美川 すず「もうすぐ 2学期も終わっちゃうよね。冬休みに入ったら、本格的に受験勉強しなきゃいけないの……」

やよい「あ、そっか……。美川さんは、受験勉強といっしょに漫画描いてたんだっけ……」

漫研部員・美川 すず「うん。だからその前に一度、自分の力を試してみたいの。わたしがまだ七中漫画研究部員でいられるうちに」

漫研部員・美川 すず「ここで黄瀬さんやみんなといっしょにガンバってきてわたしがどう変われたか、知りたいから」

やよい「そうなんだ……」


漫研部員・美川 すず「……でも、そう思えるようになったのも全部、黄瀬さんのおかげなんだ」

漫研部員・美川 すず「わたし、3年生になったら受験勉強をする、ってお母さんと約束してたから、漫画を描くことをやめようとしてた」

漫研部員・美川 すず「自分の大好きなこと、やらないであきらめようとしてた……」


漫研部員・美川 すず「そんなわたしに、黄瀬さんが勇気をくれたの」

漫研部員・美川 すず「漫画研究部に中々人が集まらなくても、デビューがダメになっちゃっても、あきらめないでガンバる黄瀬さんの姿に、わたしは勇気をもらったんだよ」

漫研部員・美川 すず「だから、お母さんのことも説得できた。学校で、大好きな漫画を描き続けることもできるようになった」

漫研部員・美川 すず「……わたしも漫画家になりたい、って、ハッキリ思えるようになった」


漫研部員・美川 すず「みんなでいっしょに大好きな漫画を描いて……、はげまし合ったり、笑い合ったり……、夢に向かってガンバったり……。あの時あきらめちゃってたら、きっとこんなに楽しい 1年にはならなかったよ」

漫研部員・美川 すず「本当にありがとう、黄瀬さん!」ニコッ

やよい「……う、うん……」


やよい「…………」

やよい「……ゴメン、美川さん……。わたし、帰るね……」

漫研部員・美川 すず「あ、うん。そうだよね、デビュー用の作品、作らなくっちゃいけないんだもんね。ガンバって、黄瀬さん! わたし、応援してるから!」

やよい「……ありがとう、美川さん……」


ガラッ ピシャッ

~ 七色ヶ丘中学校 廊下 ~

やよい「…………」

やよい(美川さんの笑顔……、すごくまぶしかったな……。夢を、見つけられたからかな……)


やよい(……そんな美川さんが今のわたしのことを知ったら……、どう思うかな……)

やよい(前のわたしは、ちゃんとガンバれてたんだよね……。美川さんにガンバる元気をあげられるくらいに……)

やよい(……でも、今は……)


七色出版編集者(回想)『僕では、編集部を説得しきれなかった……! 本当にすまない……! 今回は……、あきらめてくれ……!』

男性漫画家(回想)『……そんな……』


やよい(……っ!)ブルッ


やよい(……デビューしても、うまくいかなかったら……。あの漫画家さんみたいに、ガンバってもガンバっても、うまくいかなかったら……。そう思うと、どうしても不安になっちゃう……)

やよい(前みたいに、ツラくってもガンバっていきたいのに……、気持ちがどんどん落ち込んできちゃう……)


やよい(わたし、どうしたらいいのかな……)

~ 夕方 七色が丘市 公園 ~

キコキコキコ…


やよい「…………」

オニニン「……やよい、帰らないオニ……?」

やよい「うん……。もう少しだけ……」


キコキコキコ…


オニニン「……でも、ずっとこうやってブランコに乗ってて、いいアイデアが出るオニ……?」

やよい「わたしにもわかんないよ!」

オニニン「!?」

やよい「……あ……! ゴ、ゴメン、オニニン……、怒鳴っちゃったりして……」

オニニン「やよい……」

やよい「…………」


キコキコキコ…


やよい「……苦しいよ、オニニン……。わたしの中で、不安がどんどん大きくなるの……。何も手がつかないくらいに……」

やよい「……それじゃダメだってわかってる……。どうにかして一歩を踏み出せないと、先に進めないってわかってる……」

やよい「でも……、でも……! その一歩が、すごく重いの……! どんなに悩んでも……、悩んでも……、悩んでも……! 先に進める気がしないの……!」

やよい「"どんなにガンバっても、もうわたしの行きたい未来にたどりつけないんじゃないか……"、そう思っちゃうの……!」

やよい「……それがとっても……苦しいの……!」


やよい「……オニニン、わたし本当に、どうしてガンバるのか、わからなくなっちゃった……」

やよい「どうして、こんなに苦しい気持ちになっても漫画を描くのか……、わからなくなってきちゃったよ……」

オニニン「…………」


オニニン「……とりあえず、帰るオニ。日も暮れてきたし、ここにいたらカゼ引いちゃうオニ」

やよい「……うん……」

~ 黄瀬家 玄関 ~

バタンッ


やよい「……ただいま……」

千春「あら、お帰り、やよ――、……!? ど、どうしたの、やよい……、ひどい顔よ……! 少しやつれてるみたいだし……」

やよい「え……? そ、そうかな……」

千春「もうすぐお夕飯だけど……、食べられそう?」

やよい「……あんまり……」

千春「わかった。食欲ないんだったら、ムリして食べなくてもいいわ」


千春「でも、なにも食べないのも良くないから、おかゆ作ってあげる。体もあったまるし、気持ちも落ち着くわ。すぐ準備してあげるから、待っててね」

やよい「……ありがとう、ママ……」

~ 黄瀬家 食卓 ~

やよい「…………」モグモグ

千春「……やよい、漫画、うまくいってないの?」

やよい「え……。どうしてわかるの? そのこと、ママには話してなかったよね……」

千春「わかるわよ。何年やよいのママやってると思ってるの? 顔を見たら、大体わかっちゃうのよ」


千春「……だいぶ、参ってるみたいね……」

やよい「…………」

千春「……ねえ、やよい。ちょっとだけ、ママの話をさせてもらってもいいかしら?」

やよい「……ママの話……?」

千春「そう。黄瀬 千春が、人生最大のピンチをどうやって乗り切ったか、っていう話」


千春「……ママの人生最大のピンチ……。……パパがいなくなった時の話」

やよい「……!!」

千春「今はもう、天国に行っちゃって、ここにはいないパパ。その瞬間のことは、昨日のことのように思い出せるわ……」

千春「まるで、一瞬で世界が変わっちゃったみたいだった……。……ううん、変わったの。"パパがいる世界" から "パパがいない世界" へ」

千春「"悲しい" って気持ちより、"何が起きたのかわからない" って気持ちの方が強かった……。そう、思い込もうとしてた」

千春「"パパともう会えない"、"もう話せない" 。……そのことを、認めたくなかったから……」


千春「……でもね、人生最大のピンチはそこからだったのよ。ママは、パパが残してくれた、この世で一番大切な宝物を守っていかなきゃいけなかったんだから」


千春「ママの一番大切な宝物。それはあなたよ、やよい」

やよい「…………」

千春「やよいがママのお腹に来てくれてから、大変だったのよ。産むのも大変だったし、育てるのも大変だった。特に赤ちゃんだった頃のやよいはやんちゃだったから、色々苦労させられたわ」

千春「おなかが空いては大さわぎ。タイクツになったら大さわぎ。よくわからないことでも大さわぎ。眠れない日なんかもあったりしてね……」

千春「それでも、パパといっしょに支え合いながら、一生懸命あなたを育ててきた。おかげで、ツラいことがあっても、何とかガンバって来られたわ」


千春「……でも、そのパパはもういない……。ツラくても、一緒に頑張ってくれる人は、いなくなっちゃったの……」

千春「不安だった……。すごく不安だった……。"私一人で、この子をちゃんと育てていけるのか" って……」

千春「パパがいなくなっちゃったことと、あなたを育てることの不安……。それを全部私が一人で背負うことになっちゃって……。苦しくて、胸が張り裂けそうだった……」

千春「そんな時、ママはね、ホントに、ホントにちょっとだけだったんだけど……、ある事を考えたの」


千春「"じゃあ、やよいを育てるの、やめちゃおうか" って」

千春「その時だったわ。ママは、今まで感じたことのない怖さを感じたの。怖くって、体中震えちゃって、涙があふれて止まらなくなっちゃった」

千春「それで、初めてわかったの。ママにとって一番怖いことって、なんだったのか」

やよい「……それって……」

千春「…………」


千春「"何もしないこと"」

やよい「何も……、しない……?」

千春「そう。何もしないこと」

千春「やよいを育てることが自分にできるかどうか、わからなかった……。すごく不安だった……」

千春「でも、だからって何もしなかったら、きっとママにとって最悪の未来になっちゃう、ってわかったの。"やよいが幸せになれない" っていう、最悪の未来に」

千春「だからママは頑張ったの。今までよりうーんと仕事を頑張った。うーんとやよいのお世話も頑張った」

千春「ママとパパにとって一番大切なやよいに、幸せになってほしかったから。やよいに、いつでもステキな笑顔でいてほしかったから」


千春「そしたらね、意外と何とかなっちゃった。ツラいこともたーくさんあったけど、あのちっちゃかったやよいがこーんなに大きくなって、毎日健康に過ごしてくれてる。今はちょっと元気がないみたいだけど、ね」

千春「そんなやよいを見る度に、ママは思うの」


千春「"あの時、あきらめないで本当によかった" って」

やよい「……ママ……っ!」

千春「ママには漫画のことはよくわからないわ。やよいが今、どんなピンチになってるのかもわからない」

千春「だけど、どんなピンチでも、何とかならないなんてことは絶対にない。ママはそう思うわ」


千春「だからやよい、ツラくっても、苦しくっても、あきらめないでやってみて」

千春「何が一番、自分にとって大事なことなのか。何が一番、自分にとってイヤなことなのか。あきらめないで、考えてみて」

千春「自分の本当に大切な気持ち。それがわかれば、きっとどんな時でも頑張れるわ!」

やよい「うん……、うん……っ!」


やよい「……ありがとう、ママ……!」

千春「どういたしまして」ニコッ

~ 黄瀬家 やよい自室 ~

オニニン「うぅっ……、うぅぅっ……! ママさんのお話、すごかったオニ……! おれ様、涙をこらえるので精一杯だったオニ……!」

やよい「……わたしは、ママがあきらめないでいてくれたから、こうして元気でいられるんだね……」

オニニン「そうオニ! そうオニ! だからやよい、負けちゃダメオニ! ママさんの言ったことを信じて、あきらめないでガンバるオニ!」

やよい「うん……!」


やよい(……わたしにとって一番大切なこと、わたしにとって一番イヤなこと……。それってなんだろう……。ママの言う通り、それがわかれば、どんな時でもガンバることができるのかな……)

やよい「ミラクルピース……、わたし達の答えって、なんなのかな……」


ミラクルピースの絵「――――」

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

怪物・デスペア『オォォォォォォォォォッ……!!』


ビリビリビリッ…!


大臣「おお……! "デスペア" の叫び声、日に日に強くなっているようで……!」

デスペア国王「"デスペア" はかなり力をつけてきた。今にも暴れだしそうなところを、私自らが抑えなければならないほどにな」

大臣「では……?」

デスペア国王「そうだ。"デスペア" が完成する日は近い。あとはこのまま時間をかけて、今ある闇の絵の具を与え続けるだけだ」

大臣「そうなりますと、もうリアルランドの人間達の濁った心の絵の具も必要ない、と?」

デスペア国王「うむ。お前が集めた闇の絵の具で十分足りるだろう。もう汚れた心を集める必要はない」

デスペア国王「しかし、お前達にはもう一つ重大な使命がある。忘れてはいまいな」

大臣「もちろんですとも、国王陛下。……わかっていますね、オーレン」

オーレン「当然だ。プリキュア達を倒し、奴らの持つ "夢の絵の具" を奪えばいいのだろう?」

デスペア国王「そうだ。人間の心を食う怪物・"デスペア"。そして、なくなった人間達の心を希望のみに塗り替える "夢の絵の具"。この二つがあって初めて我が目的は達成される」


デスペア国王「では行け。そして私の下に "夢の絵の具" を持ってくるのだ」

オーレン「わかった。任せておけ」シュバッ

~ 翌日 黄瀬家 リビング ~

梅沢編集(電話)『――え……!? デビュー用の原稿がまだできてないって……!? 本当かい……!?』

やよい「……はい……。最後の戦いの前のミラクルピースのセリフ、どうしても納得のいくものが思い浮かばなくて……」

梅沢編集(電話)『……大変だ……! 締め切りまでもう日がないっていうのに……! 何とかして、続きを作ることはできないのかい……?』

やよい「はい……。どうしても、手が動かなくって……」

梅沢編集(電話)『そうか……、弱ったな……。とりあえず、原稿を持って七色出版まで来てくれるかな。もう一度打ち合わせして、そこで何とか形にしよう』

梅沢編集(電話)『でも、いいかい、黄瀬さん。良く聞いてほしい』


梅沢編集(電話)『君もそうだったように、漫画家としてデビューしたい人はたくさんいるんだ。君はその中からやっと選ばれたんだよ』

梅沢編集(電話)『もし今回のチャンスを逃したら、次にデビューできるのはいつになるか……。いや、もしかしたらもうデビューできないかもしれない……』

梅沢編集(電話)『今回が最初で最後のチャンス、そのつもりでやるんだ。いいね』

やよい「……! ……わかりました……」

梅沢編集(電話)『僕だって、せっかくつかんだチャンスをなくしたくない。待ってるから、急いで来てね。二人で力を合わせて何とかしよう』

やよい「ありがとうございます……」


ガチャッ


やよい「…………」

千春「やよい、梅沢さんはなんて……?」

やよい「……これが、デビューできる最初で最後のチャンスかもしれないから、なんとかガンバろう、って……」

千春「そう……」

千春「……やよい、昨日ママが言ったこと、忘れないで。かなえたい夢があるなら、行きたい未来があるなら、最後の最後まで絶対あきらめちゃダメ。いいわね?」

やよい「……うん……!」

千春「じゃあ、行ってらっしゃい。……しっかりね」

やよい「はい……! 行ってきます……!」


ガチャッ

バタンッ


千春「…………」


千春(やよい……、出て行く時まで不安そうな顔をしていたわ……。まだうまくいってないのね……)

千春(でも、できることなら、あの子には夢をかなえて幸せになってほしい……! いつも笑顔でいてほしい……!)


千春(お願い、パパ……! やよいに力を貸して……!)


勇一(やよい父) の写真「――――」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

タタタタタッ


やよい「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……!」

オニニン「やよい! あんまり走ると、向こうに着いた時バテちゃうオニ! もう少しゆっくり――」

やよい「でも……! じっとしてられないの……!」


やよい「……昨日から一晩考えたけど……、やっぱり答えは出なかった……。ミラクルピースは……、わたしは……、なんのためにガンバるのか……」

やよい「もしうまくいかなかったら……、人気が出なかったりして誰にも望んでもらえなかったら……、わたしは、なんのためにガンバるのか……、わからなかった……!」

やよい「だから、こうして体を動かしてないと……、イヤな気分になっちゃうの……!」


やよい「不安に……、飲み込まれそうになっちゃうの……!」

オニニン「やよい……」

オーレン「不安、か。それはいいことを聞いた」


やよい「!? だ、誰……!?」

オニニン「やよい! 前の電柱の陰オニ! あいつ……、デスペアランドオニ!」

やよい「ホントだ……! 確か……、オーレンって人……!」


ザッ


オーレン「確かに、お前の言う通りのようだ。見えるぞ、お前の心が。これ以上ないくらい、不安に染まりきっているな。これならば、倒すのもたやすいだろう」

やよい「ど……、どうしてこんな時に……! どいてよ! 今急いでるんだから!」

オーレン「そう言ってどくと思うか? このチャンスは逃さん。まずはお前を倒す」

やよい「そんな……!」


オニニン「……やよい、こうなったら覚悟を決めるオニ」

オニニン「このまま梅沢さんのところには行けなかったら、もうデビューできなくなっちゃうかもしれないオニ……!」

オニニン「あいつがそのジャマをするなら、やっつけて前に進むオニ! もうそれしかないオニ!」

やよい「オニニン……! ……うん。そうだね、わかったよ。変身しよう!」

オニニン「ガッテンだオニ!」

オニニン「デコル・チェーンジオニ!」

パチンッ!

レディ!

やよい「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ピース!!


ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(チョキ) キュアピース!!」


オーレン「お前の心は大分弱っていたが、まだプリキュアになれる程度の力は残されていたか」

オーレン「ではこちらも行くぞ。覚悟しろ、キュアピース」

オーレン「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ! キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


オーレン「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」


オニニン(デコル)「オニ……!? あのアキラメーナ……!」

ピース「……続きの描いてない……、わたしの原稿……!?」


オーレン「お前の不安、この目で見抜かせてもらった。お前は、物語の続きが描けないことに不安を抱いているのだろう? この紙は今、お前が一番見たくないもののはずだ」

ピース「……!」

オーレン「お前が不安になればなるほど、お前の力は減る。それだけ、倒しやすくなるというわけだ」

オニニン(デコル)「それで、わざわざ白い原稿でアキラメーナを作ったオニ……!? イヤなヤツオニ……!」

ピース「……確かに、その通りだよ……。何も描いてない原稿を見てると、ちゃんと続きが描けるのか、不安でしょうがなくなっちゃうよ……!」

ピース「でも! わたしは、わたしの夢をあきらめたくないから! その不安はやっつけないといけないんだ!」


ダッ


ピース「行くよっ! たぁぁぁぁぁぁっ!」


オーレン「ムダな強がりだな。オレの目はごまかせん。言葉と違い、お前はまるで心の不安を消せていない」

オーレン「それでは、この "終末の黒い絵の具" から作り出されたアキラメーナの足元にも及ばん」


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」バッ

ピース「えっ!?」

オニニン(デコル)「は、速いオニ! い、いつの間に目の前に!?」


オーレン「やれ、アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

ピース「……! パ、パンチが……!」


ドカァァッ!


ピース「わぁぁぁぁぁっ!?」

オニニン(デコル)「ピースっ!」

オーレン「まだ終わらんぞ。アキラメーナ、やれ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


ドカァァッ!


ピース「うぁ……っ!?」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガガガガガァッ!」ブンッ ブンッ ブンッ ブンッ


ドカァァッ! ドカァァッ! ドカァァッ! ドカァァッ!


ピース「う……くぅっ……!」

オニニン(デコル)「やられっぱなしオニ……! ピース、何か反撃するオニ! このままじゃやられちゃうオニ!」

ピース「う……うんっ……!」


バッ


オーレン「む、キュアピース、手を上に掲げたか。雷の技を使う気だな」

ピース「プリキュア……! ピース――」


オーレン「だが動きが遅すぎる。そんな余裕を与えると思うか。アキラメーナ、パンチだ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ

ピース「……!?」


ドカァァァァッ!!


ピース「……ぁっ……!」


ドサァッ


オニニン(デコル)「ピースぅっ!」

オーレン「倒れたか。これまでのようだな」

オニニン(デコル)「何言ってるオニ! ピースは、どんな時でも立ち上がる根性があるオニ! すぐに立ち上がって――」

オーレン「ムリだ。キュアピースをよく見ろ。そんな力はもうないだろう」


ピース「…………」

オニニン(デコル)「ピース……! ホントに立てないオニ……!?」

オニニン(デコル)「ピースは……、ピースは……、おれ様達がバッドエンド王国にいた頃から、どんなにツラい目にあっても、何度も立ち上がってきたオニ……!」

オニニン(デコル)「おれ様とパートナーになってからも、いつだって歯を食いしばってガンバってきたオニ……!」


オニニン(デコル)「もう立てないなんて、そんなのウソオニ! そんなのイヤオニ!」

オニニン(デコル)「いつもみたいに立ち上がるオニ! ピースぅぅっ!!」


ピース「…………」


オーレン「ムダだ。もう何を言っても、キュアピースは立てん」

オーレン「キュアピースは負けたのだ。自分の不安と、絶望に」


オニニン(デコル)「うぐっ……! ひっく……! ピースぅ……!」


オーレン「さて、それではトドメをささせてもらおうか」

オーレン「(ピクッ) いや、待て、アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガ?」

オーレン「何かがこちらに来る。すぐ近くだ」


オニニン(デコル)「……! プリキュアのみんなオニ……! 来てくれたオニ!」

オーレン「どうやらそのようだな」

オニニン(デコル)「やったオニ! みんなが来てくれれば、お前なんてコテンパンにして、ピースを助けてくれるオニ!」

オーレン「ムリだとは思うが、今までのことを考えるとそう断言はできないな」

オーレン「ならば、より確実な手段を取らせてもらう。アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガ」グィッ

ピース「…………」

オニニン(デコル)「な、なんだオニ……!? ピースを持ち上げて、何をするつもりオニ……!?」

オーレン「7人揃わなければお前達プリキュアは恐れるに足らん」


オーレン「だから 6人にさせてもらう。キュアピースを、アキラメーナの中にある "デスペア空間" に放り込むことでな」

オニニン(デコル)「……! や、やめるオニ! こんなに弱ったピースが、心を弱らせるあの空間に入れられたら……!」

オーレン「自力では出られないだろうな。永遠に」

オニニン(デコル)「そ、そんな……! やめるオニぃぃぃっ!!」


オーレン「やれ、アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガ」ポイッ


ズズズズズ…


ピース「…………」

オニニン(デコル)「ピ、ピースが、おれ様ごとどんどん紙の中に吸い込まれて……!」


オニニン(デコル)「わぁぁぁぁぁー――」スゥゥゥゥッ


オーレン「絶望を味わい、終末を迎えろ、キュアピース」

ババババババッ


ハッピー「見つけたっ! デスペアランドの人!」

マーチ「キャンディの言う通りだったね!」

ノーブル「オーレン! また凝りもせず来て!」

ビューティ「あなた方の悪事は見過ごしません! お覚悟を!」


オーレン「来たか、プリキュア。しかし、遅かったな」


サニー「え……? 遅かった、って……、何が?」

ヴェール「……! み、みなさん、待ってください……! ピースセンパイは……!? いないんですか……!?」

ハッピー「あ……! そういえば……!」

マティ(デコル)「おかしいですわ……! キャンディに連絡をもらってから、皆さま全員に "手紙のキャンバス" でお知らせしたはずでしたのに……!」


オーレン「当然だ。キュアピースはもういない。この世界にはな。アキラメーナを見ろ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァ……!」


ボヤァァァァ…


6人「!!」


ビューティ「ピ、ピースの姿が……、アキラメーナの表面に浮かび上がって……!?」

ノーブル「じゃ、じゃあ、もしかしてピースはアキラメーナの中にいるってこと……!?」

マーチ「あの、何とか空間ってとこに!?」


オーレン「そう、キュアピースは今、デスペア空間の中にいる。不安を増大させ、絶望へと向かわせる、"終末" のデスペア空間の中にな」


ハッピー「遅かった、って……、そういうことなの……!?」

ヴェール「……ピースセンパイ……!」

オーレン「プリキュア、キュアピースの心配より、自分達の心配をしろ。行け、アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」バッ


マーチ「! 動きが速い! みんな、気をつけ――」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


ドカァァァッ!


ハッピー「わぁぁぁぁっ!?」

サニー「ハッピーっ! ……このっ! サニー・パァーンチッ!」バッ


ブンッ


サニー「……!? 速すぎて当たらへん……!」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガガガッ!」

サニー「笑っとるんか……!? バカにしよってっ……!」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


ドカァァァッ!


ビューティ「きゃぁぁぁぁっ!?」

ノーブル「ビューティ!」

ペロー(デコル)「ノーブル! このままじゃマズいペロ! "ノーブル・ミスト" ペロ! 霧を出して、ひとまず隠れるペロ!」

ノーブル「その方が良さそうだね……! 行くよ! "ノーブル"――」

オーレン「以前見た霧の力か。させん」


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」バッ

ノーブル「!? い、いつの間に目の前に……!? パンチが来る!」

ペロー(デコル)「あ、合気道で防ぐペロ!」

ノーブル「ダ、ダメ……! 霧を出そうとしてたから間に合わない……!」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」

ノーブル「……っ!」

ヴェール「"ヴェール・カーテン"っ!」バッ


パキィィィィンッ!

ガンッ!


ノーブル「……! ヴェール……、盾で守ってくれた……?」

ヴェール「だいじょうぶですか、ノーブルセンパイ……!」

ノーブル「う、うん……! ありがとう!」


オーレン「キュアヴェール、ジャマをされたか」

オーレン「だが、周りを見ろ。キュアノーブル一人守って何になる」


ハッピー「うぅっ……!」

ビューティ「くっ……!」

ヴェール「ハッピーセンパイ……! ビューティセンパイ……!」

サニー「二人とも、アキラメーナにやられてヘロヘロや……!」


オーレン「オレのアキラメーナの力は知っているだろう。6人でいる限り、全員倒れるのも時間の問題だ」

ノーブル「く……、またこんな展開に……! せめて、"レインボー・フォーム" に自由になれれば……!」

マーチ「でもあれは、あたし達の気持ちがめいっぱい高まらないとなれない、って、マティちゃんが……!」

マティ(デコル)「そうですわ……! 不安や絶望をはねのけるほどの強い心の力を出せなければ、奇跡は起こせません……!」

ヴェール「……! 強い、心の力……?」


オーレン「それならば、お前達にもはや勝ち目はないだろう。大人しくあきらめて、"夢の絵の具" を渡すんだな」

サニー「そんなこと、できるわけないやろ……! うちらはそうカンタンにあきらめへんで!」

オーレン「好きにすればいい。それなら、オレはお前達を倒し、力づくで "夢の絵の具" を奪うだけだ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァ……!」ズシンッ

マーチ「くっ……! 確かに、アイツの言う通り、キツイかも……! どうすれば……!」


ヴェール「…………」

ヴェール「……ねえ、マティちゃん。"レインボー・フォーム" って、不安を乗り越えられるプリキュアの人なら、みんななれるのかな……?」

マティ(デコル)「え……? ハ、ハッキリそう言えるわけではありませんが、おそらく……」

ヴェール「そうなんだ……」

マティ(デコル)「ヴェール……? そんなことを聞いて、どうかしたのですか……?」


ヴェール「……マティちゃん、わたし、やってみたいことがあるの。力を貸してもらえないかな……」

マティ(デコル)「は、はい。もちろん、わたくしにできることであれば、なんなりと。でも、一体何を……」

ヴェール「あのね――」

マティ(デコル)「――そんな……! ムチャですわ!」

ヴェール「でも、何とかするにはこれしかないって、思うんだ……」

マティ(デコル)「そうかもしれませんが……、でも、うまくいくかわかりませんし、ヴェールだってどうなるか……!」

ヴェール「それでも、やりたいの」


ヴェール「マティちゃんの言う通り、どうなるかわからない……。わたしも、ホントはコワいよ……」

ヴェール「でも、うまくいくって信じたい……! それは、わたしにとっての "希望" でもあるから……!」

マティ(デコル)「ヴェール……」


マティ(デコル)「……わかりました。他ならぬヴェールの頼みですもの。わたくしも、パートナーとして全力でお手伝いしますわ」

ヴェール「ありがとう……!」


ノーブル(……? ヴェール……? 何かするつもりなの……?)

ヴェール「キャンディちゃん……! "レインボー・パレット" を出して……!」

キャンディ(デコル)「クル……!? どうしてクル……!?」


マーチ「もしかして、ヴェールが "レインボー・フォーム" になるつもりなの……!?」

サニー「そんなことゆーたかて、ヴェール、まだ自分の "夢の絵の具" すら出てへんやん、ムリに決まっとるわ……! 何する気なんや……!」


マティ(デコル)「おねがいします、キャンディ! ヴェールに、"レインボー・パレット" を!」


ポンッ


キャンディ「よ、よくわからないけど、わかったクル! (ゴソゴソ) "レインボー・パレット"、受け取るクルぅっ!」ビュッ


パシッ


ノーブル「ありがとう、キャンディちゃん……!」


ヴェール「……それじゃ、行くよ、マティちゃん」

マティ(デコル)「はいっ!」

ダッ


ヴェール「わぁぁぁぁぁぁっ……!」ダダダダダッ


マーチ「!? ヴェール……、アキラメーナに向かって突っ込んでく……!」

サニー「ほ、ほんまにどないしたんや!? ヴェール、パンチとかキックとか、全然でけへんやろ……!? 忘れたんか!?」


オーレン「なんだか知らんが、戦う力のないキュアヴェールが "夢の絵の具" を持ってきてくれる。好都合だ」

オーレン「アキラメーナ、キュアヴェールを倒して "夢の絵の具" を奪え」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ブンッ


マティ(デコル)「ヴェール! アキラメーナのパンチが来ます!」

ヴェール「うん……! "ヴェール・カーテン・ハート"っ……!」


パキィィィィンッ!

ガキィィィィンッ!


アキラメーナ(白紙の原稿型)「ア、アガッ……!?」

オーレン「攻撃が防がれた? 大臣のアキラメーナの攻撃も防いだ、より強力な盾か」

オーレン「だが、それで攻撃を防いでどうする? アキラメーナにスキを作ったところで、攻撃できないのでは意味がないだろう」


ヴェール「それは……、こうするの……!」


バッ

ズズズズズッ…


マーチ・サニー・ノーブル・オーレン「!!?」


マーチ「ヴェ、ヴェールが……!」

サニー「ア、アキラメーナの中に自分から飛び込んだぁ!?」

オーレン「なんだと?」


ノーブル「……まさか、ヴェール……、ピースを助けるためにデスペア空間へ行くつもりなの……!?」

サニー・マーチ「えっ!?」


マーチ「そんな……、いくらなんでもムチャだよ……!」

サニー「ヴェール! 戻って来ぃ! ヴェールぅっ!」


ヴェール(ムチャでも……やらなきゃ……! コワくっても、やらなきゃ……!)

ヴェール(待っててください……、ピースセンパイ……っ!)

~ "終末" のデスペア空間 ~

オニニン(デコル)「――ス! ピース! 起きるオニ! ピースっ!」

ピース「……う……、……オニニン……?」

オニニン(デコル)「……! よかったオニ……! ピース、目が覚めたオニ……!」

ピース「……ここは……?」

オニニン(デコル)「デスペアランドのヤツらが何回か作った、"デスペア空間" ってとこオニ。おれ様達は、そこに入れられちゃったんだオニ」

ピース「それじゃあ、もしかして……、また気持ちがおかしくなるような、ヘンなことが起きたりするのかな……」

オニニン(デコル)「多分そうオニ……! 気をつけるオニ、ピース……!」


ピース「……それにしても、ここって……」


ズラッ


ピース「本がたくさん並んでる……。本屋……なのかな」

オニニン(デコル)「そうみたいオニ……」

オニニン(デコル)「あ……! ピース、ここ見るオニ! "週刊スマイル" の表紙!」

ピース「え……? あっ……!」


週刊スマイル『期待の新人登場! 黄瀬 やよい『ミラクル・ピース』32P』


ピース「……わたしの漫画が載ってる……? どういうこと……? うまく描けたのかな……」

オニニン(デコル)「で、でも、実際にはまだ完成してないはずオニ……。だから、この "週刊スマイル" もきっとニセ物オニ」

ピース「ニセ物……。……そうだよね、わたし、まだ何もできてないもんね……」


ピース「でも、ウソでも、こうやってわたしの漫画が雑誌に載ってるのを見ると……、やっぱりうれしいな……」

オニニン(デコル)「ピース……」


スタスタスタ


オニニン(デコル)「! ピース、誰か来るオニ! 何してくるかわからないから、隠れるオニ!」

ピース「あ、う、うん……!」ササッ

少年A「おっ、"週刊スマイル" 出てるじゃん!」

少年B「ホントだ! おれ、『ターゲット・ティーチャー』めっちゃ楽しみにしてたんだ! 前回いいとこで終わってたからさ!」

少年A「じゃ、ちょっと立ち読みしてくか!」


ペラッ ペラッ


ピース「あの子達、"週刊スマイル" 読み始めちゃった……」

ピース(……それなら、わたしの漫画も読むのかな……)


ペラッ ペラッ


ピース「…………」ドキドキ

バサッ


少年A「――あー、面白かった! んじゃ、行こっか」

少年B「うん。読みたいの大体読んだし、もういいや。行こ行こ」


ピース(え……!? もう読み終わっちゃったの……!?)

ピース(……『ミラクル・ピース』は……? わたしの漫画は、読んでくれたのかな……。読んで、どう思ったのかな……)

ピース(何か……、何か言ってくれないかな……!?)


少年A「そういえばさー、なんか新しい漫画載ってたな。読みきりのやつ」


ピース(! 『ミラクル・ピース』のことだ……!)


少年A「あれ、お前読んだ? どうだった?」


ピース(……どう、だったの……!?)ドキドキ

少年B「ああ、あのヘンな漫画な。ちらっとだけ読んだよ」


ピース「…………え……?」

ピース(…… "ヘン" ……? ヘン、って言われたの……? わたしの……わたしの漫画……)

少年A「ああ、やっぱヘンだよな、あの漫画。女の子ヒーローって……、女子が見るようなやつじゃないの、あれ? 朝にやってるアニメみたいなさ」

少年B「だよなー。載る雑誌間違えてんじゃないの、ってカンジ?」


少年A「それに、変身ヒーローだなんて、今時はやんないよなー。あんな子供っぽいの見てらんないよ」

少年B「だな!」

少年A「あ、でも読みきりってさ、人気が出ると連載されるようになるんだっけ。あれどうかな。イケると思う?」

少年B「ムリムリ! 話もなんかベッタベタで、内容もちょっと古いカンジだしさ。正直面白くなかったよ。人気なんて出ないって」

少年A「やっぱそうかな。載るのもこれっきりだな、きっと」

少年B「その方がいいんじゃないの? やっぱ面白い漫画が載ってた方がいいじゃん?」

少年A「そりゃそうだ!」


少年A「あははははっ!」

少年B「あははははっ!」


スタスタスタスタ…


ピース「…………」


オニニン(デコル)「な、なんてヒドいこと言うヤツらオニ……!」

オニニン(デコル)「ピース、気にしちゃダメオニ! あいつらはきっとこの空間に生み出されたまぼろしオニ! ピースを絶望させるためにわざとヒドいことを言わせてるんだオニ!」


ピース「…………でも……」

オニニン(デコル)「オニ……?」


ピース「でもこれって……、実際にあるかもしれないことなんだよね……」

ピース「わたしの漫画が雑誌に載っても……、デビューできても……、"つまんない" って言われちゃうことも、あるんだよね……」

オニニン(デコル)「ピ、ピース……? 何を言ってるオニ……!?」

ピース「梅沢さんみたいな編集者の人に "面白くない" って言われるのは、平気だよ……。だって、編集者さんは、わたしの漫画を良くしようとしてくれてるんだもん……。その分ガンバれば、認めてくれることだってあるかもしれない……」


ピース「でも、読んでくれる人には、"面白いか"、"つまらないか" しかないから……、わたしがどんなにガンバったかは……関係ないんだよね……」

ピース「そうやって、たくさんの人に "つまらない" って言われちゃったら……、人気が出なかったら……、せっかくデビューしても、もう次は載せてもらえないかもしれない……。ガンバっても……、ガンバっても……、いいことなんて起きないかもしれない……!」

ピース「あの、やめさせられちゃった漫画家さんみたいに……!!」


オニニン(デコル)「ピース……! こんなまぼろしに……、不安に負けちゃダメオニ! ママさんにも "あきらめちゃダメ" って、そう言われたオニ!? しっかりするオニ!」

ピース「…………」

オニニン(デコル)「ピースっ!」


ピース「……オニニン……、わたし、もうイヤになっちゃった……」

ピース「わたし、小さい頃からずっと弱虫で、泣き虫で……、でも、変われたと思ってた……」


ピース「校内美化ポスターコンテストの時、初めてみんなに絵を見てもらって……」

ピース「初めて、漫画賞に応募して、小さいけど賞をもらえて……」

ピース「ガンバって、漫画研究部も作って……」

ピース「デビューがダメになっちゃった時も、なんとかやる気を出して立ち直って……」


ピース「プリキュアになって……、みんなと出会えて、わたし……、変われたと思ってた……」

ピース「でも、本当は何にも変わってなかった!」


ピース「何かあるたびに不安になって、ビクビクして、くじけて……。前と同じ、弱虫のままだった!」

ピース「今まではたまたま何とかなってただけなんだよ! いつだって、ダメになっちゃうかもしれないんだ……! これから先、ずーっとそんなことばっかりなんだ……!」

ピース「いつかきっと、どこかで大失敗をしちゃうんだ……!」

ピース「……そんな風にいっつもビクビクするくらいなら……、コワがって苦しい思いをするくらいだったら……、もういっそ――」


???????『全部やめちゃいたい。……でも、本当にそれでいいの?』


ピース「……!? え……? オニニン、今何か言った……?」

オニニン(デコル)「いや……、おれ様じゃないオニ……。女の子の声だったオニ……」



ザッ


???????『言ったのは私だよ。やよいちゃん』

ピース「……うそ……」


ピース「……ミラクル……ピース……?」

ミラクルピース『(ニコッ)』

ピース「漫画の絵じゃない……。ちゃんと目の前にいる……!? でもどうして……!?」

ミラクルピース『ねえ、やよいちゃん。やよいちゃんは私のこと、"どんな時でもあきらめない、理想の自分" として描いてくれてたよね』

ピース「う、うん……」

ミラクルピース『それなら、私を最後まで描かないままでもいいの?』

ピース「え……?」


ミラクルピース『セリフがうまく思いつかないから……、展開がうまく思いつかないから……、できた作品が――私が、面白がられなかったりするのがコワいから……』

ミラクルピース『どんな理由で私を描かなかったとしても、あなたの理想のカッコイイ私は完成しないんだよ。やよいちゃんがあきらめちゃったら、永遠に』

ミラクルピース『だって、私をカッコイイスーパーヒーローとして完成させることができるのは、私を考えてくれたやよいちゃん、あなただけなんだから』

ミラクルピース『やよいちゃん、よく考えてみて。やよいちゃんにとって、今一番コワいことって、何?』

ミラクルピース『"つまらない" って言われて、今までの自分のガンバりがダメにされちゃうこと? ……ううん、きっと違う』

ミラクルピース『だって、誰に "つまらない" って言われても、私は消えないもの。やよいちゃんがガンバって作った私は、絶対に消えない。私は、やよいちゃんがガンバった証として残り続ける』


ミラクルピース『それなら、今、やよいちゃんにとって、"本当にコワいこと" って、なんだと思う?』

ピース「わたしの……、本当にコワいこと……?」


ピース「…………」

ピース(……そっか……、今、ミラクルピースに――理想の自分に言われて、初めてわかった気がするよ……。"わたしにとって一番大切なこと"、"わたしにとって一番イヤなこと" ……。それが、なんなのか……)

ピース(わたしの答えも……、ママといっしょだったんだ……!)


ピース「わたしが……、わたしが今一番コワいことは……、一番イヤなことは……!」


ピース「…… "何もしないこと" ……!」

ピース「人に何か言われるのがコワくって、今やめちゃったら……、何もしなかったら……、わたしは、自分の漫画を最後まで描けない……。"漫画家になる" っていう夢もかなえられない……」

ピース「わたしは "何もできなかったわたし" になっちゃう……。そうなることが、わたしにとって、本当に一番コワいことなんだ……!」


ピース「……それなら、"わたしにとって一番大切なこと" は……? ……やっとわかったよ。きっと、その反対なんだよね」


ピース「ミラクルピースは、どうして勝てそうにない戦いでも立ち向かうのか……」


ピース「わたしは、どうしてガンバって漫画を描くのか……」


ピース「それは……、それは……っ!」

ビュッ!

フワッ


ピース「わっ!? な、なに……!? 目の前に、何かが飛んできた……!」

オニニン(デコル)「これは……、ピクチャーランドの秘宝・"ホープブラッシュ" オニ!」

ピース「え……!? どうして、こんなところに……!?」


マティ(デコル)「それは、ヴェールがガンバって、ここまで持ってきてくれたからですわ、ピース様」

ピース「……! ヴェール……! マティちゃん……! どうしてここに……」

ヴェール「ピースセンパイを、助けにきたんです……」

ピース「わたしを、助けに……?」

ヴェール「……ピースセンパイは、わたしがガンバれないで落ち込んでいる時に、はげましてくれました……。そのおかげで、わたしはガンバれるようになったんです……。ガンバれたから、クラスのみんなとも、仲よくなれたんです……!」

ヴェール「そんなピースセンパイが……、わたしに、ガンバることの大切さを教えてくれたセンパイがガンバれないところを見てるのは……ツラかったんです……!」

ヴェール「だから、今度はわたしが何とかしてあげたかったんです……!」


ピース「ヴェール……。そのために……、わたしのために、ここまで来てくれたの……?」

ヴェール「はい……!」

ヴェール「ピースセンパイ。今、外ではタイヘンなことになってます……! プリキュアの皆さんがピンチなんです……!」

ピース「みんなが……!?」

ヴェール「はい……!」


ヴェール「ピースセンパイがいない今、何とかできるのは "プリキュア・レインボー・フォーム" だけ……」

ヴェール「でも、"レインボー・フォーム" は、不安も絶望もはねのける心の強さがないと……、夢と希望がめいっぱい高まらないとなれない……!」


ヴェール「そんな時、わたしはピースセンパイのことを思い出したんです」

ヴェール「ピースセンパイは今、とっても不安でツラいことになってるけど……、センパイならきっと、それを乗り越えられる心の強さがあるはずだ、って……!」

ヴェール「夢と希望の力で、プリキュアの皆さんを助けることができるはずだ、って……!」


ヴェール「だからわたしはここに来たんです……! ピースセンパイのことを信じたかったから……!」

ヴェール「"昔は弱虫だった" っていうピースセンパイがガンバることは……、おなじ弱虫のわたしにとっての "希望" だから……!」

ヴェール「ピースセンパイがガンバれるなら、わたしもガンバれる……。そう思えそうな気がするから……!」

ピース「ヴェール……」

ミラクルピース『……もう、出せたみたいだね、やよいちゃん。私達の答え』


スゥゥゥゥッ…


ピース「……! ミラクルピース……、体が薄くなって……、消えてっちゃうよ……!?」

ミラクルピース『私は長い間こうしてはいられないの。今みたいに漫画の外に出られるのは、マティちゃんの力が続いている間だけ……』

ピース「え……! それじゃあ……」

マティ(デコル)「はい、そのミラクルピース様は、わたくしがピース様の漫画から外にお出ししたのです。ミラクルピース様なら、きっとピース様のピンチを救ってくださると信じて……!」


オニニン(デコル)「そういえば、みゆき達が言ってたオニ……。マティは、短い間だけなら絵を外に出すことができる、って」

ピース「そうだったんだ……」

ミラクルピース『ほんのちょっとだったけど、お話ができてうれしかったよ、やよいちゃん』

ピース「わたしもだよ……! お話できて、うれしかった……!」

ミラクルピース『答えを見つけられた私達なら、もう先に進めるよね』


ミラクルピース『ガンバって、しっかり描いてね、やよいちゃん。私の活躍を。やよいちゃんの目指す未来を』

ピース「うん……! ありがとう、ミラクルピース……!」

ミラクルピース『(ニコッ)』


スゥゥゥゥゥッ…


ピース「…………」

オニニン(デコル)「ミラクルピース、消えちゃったオニ……」

ピース「ううん、消えてないよ。わたしの目の前からはいなくなっちゃったけど……、わたしの胸の中にミラクルピースはちゃんといる」


ピース「わたしの、"なりたいわたし" として!」

ヴェール「ピースセンパイ、センパイの "夢の絵の具" です。使ってください……!」


パカッ


ピース「"レインボー・パレット" ……! これも持ってきてくれたんだ……!」

ヴェール「センパイ……、わたしに見せてください……! わたしがあこがれる、どんな時でもガンバれるセンパイの姿を……!」

ピース「……うんっ!」


ピース「オニニン、わたしはもう迷わないよ。自分が今、何をしなくちゃいけないのか、ハッキリわかったから」

ピース「だからオニニン、未来に向かって進むための力を、わたしに貸して!」

オニニン(デコル)「ピース……っ! ……あったり前だオニ!」


ピース「行くよ、オニニンっ!」

オニニン(デコル)「おうオニ!」

バッ


ピース「"夢の絵の具" よ! "希望の絵筆" よ!」


ピース「わたしに、"未来を描く" 力を!!」


シュバァッ!!


ヴェール「"ホープブラッシュ" で描いた絵が、ピースセンパイの姿に……! あれが、ピースセンパイのなりたい未来の形……!」


スゥゥゥゥッ


マティ(デコル)「絵がピース様に重なっていきますわ……!」


バシャァァァァァンッ…!


ピース「……これがわたしの、"なりたいわたし"」


レインボーピース「"レインボーピース"っ!!」

カッ! バァァァァァッ!!


ヴェール「わっ……!? ピ、ピースセンパイの体から出る光が、どんどん強くなって……!」


ビシッ! ビシビシッ!


マティ(デコル)「空間にヒビが……!」

Rピース「ここから出るよ、ヴェール、マティちゃん! もうじっとしてなんていられない……! わたしは、未来に進むんだ!」

ヴェール「……! はいっ……!」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

バァァァァァァッ!!


アキラメーナ(白紙の原稿型)「ガッ……!? ガァァァァァッ!?」

オーレン「なんだ? アキラメーナの体から黄色い光が漏れている?」

ハッピー「この光……、もしかして……!」


ドバァァァァァァッ!


ストッ


Rピース「みんな、お待たせ!」

ハッピー・サニー・マーチ・ビューティ・ノーブル「ピースっ!」


ハッピー「ピース、そのカッコ……、もしかして、ピースも "レインボー・フォーム" に……!?」

ビューティ「それならば……、見つかったのですか……!? ピースが、未来に向かって頑張る答えが……!」

Rピース「うん! ……ずいぶん時間かかっちゃったけど、見つけられたよ、わたしだけの答え!」

Rピース「ヴェールとマティちゃんのおかげで、ね。二人とも、ありがとう!」

ヴェール「ピースセンパイ……! はいっ……!」


オーレン「これは、以前のキュアノーブルの時と同じ、"夢の絵の具" の真の力か」

オーレン「だが、先ほどまで不安に心を塗りつぶされていたお前に、どれほどの力を出せるものか。行け、アキラメーナ」

アキラメーナ(白紙の原稿型)「アキラメーナァッ!」ドスンッ ドスンッ


マーチ「ピース! アキラメーナが来るよ!」

Rピース「だいじょうぶだよ」ニコッ


バチィッ! バチバチッ!!


オーレン「これはなんだ。キュアピースが、雷に身を包んだ?」


バチィッ!


アキラメーナ(白紙の原稿型)「ア、アガッ……!?」

オーレン「アキラメーナが近づいただけで電撃がほとばしる。触れることさえもできないのか」


Rピース「もう、わたしは不安も近づけないようになれたんだ。わたしの答えが――ガンバるわけが、見つかったから」


Rピース「(ザッ)」


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガッ……!?」

オーレン「キュアピース、雷をまとったまま近づいてくる。アキラメーナが追い詰められている?」

Rピース「…………」


Rピース『ミ、ミラクルピース……? どこへ行こうというんだ……』

Rピース『ワルーダ帝王を……、倒さなきゃ……!』

Rピース『ムチャだ……。そんなボロボロの体で、あの強いワルーダ帝王に何ができるっていうんだ……!』


オーレン「? なんだ? キュアピースは、歩きながら何を言っている?」


サニー「……ハッピー、あれって、もしかして……」

ハッピー「うん……。やよいちゃんの、漫画のセリフだ……」

Rピース『もう十分だ……、君はよく戦った……! 君のような女の子がこれ以上傷つくのを、誰も望まないよ……!』

Rピース『……それでも行くの』

Rピース『……どうして……、どうして、君はそこまでして戦おうとするんだ……? 一体なんのために……?』

Rピース『……それは――』


Rピース「…………」


Rピース「――それは、私がいつでも笑顔でいたいから」

Rピース「私は今まで、みんなの笑顔が見たいから、そのためにずっとガンバってきた」


Rピース「でもそれは、みんなのためでもあったけど……、私のためでもあったの。私のやりたいことを精一杯ガンバれるから、私は笑顔でいられるの」


Rピース「今ここでやめたら、私は "何もできなかった私" になってしまう……。そうしたら、きっと二度と、今みたいには笑えなくなってしまうから……!」


Rピース「だから私はガンバるの! どんなことがあってもあきらめない、強い自分でいたいから! 私が、"なりたい私" でいたいから!」


Rピース「どんな時だって負けないで、笑顔でいたいから!!」

マーチ「……ピースの言葉……、もしかして、やよいちゃんが描けなかった漫画の続き……?」

ハッピー「多分そう……。でも、それだけじゃないと思う……」

ビューティ「それは一体……?」


ハッピー「あれは多分やよいちゃん自身の……、本当に大切な気持ちなんだと思う……」

Rピース「(ザッ)」


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガ、アガガッ……!?」

オーレン「アキラメーナ、手も足も出せないのか。近づいてくるキュアピースを前に、後ろに下がるしかできないのか」


Rピース「……だから私は、不安をやっつけて前に進むよ。もう、どんな時でも不安に負けたりしない」

Rピース「さようなら、弱虫だったわたし」


スッ

ピシャァッ! ドォォォォォンッ!!


オーレン「キュアピースが上げた手に雷が落ちた……!」


バチィッ! バチバチバチッ!!


オーレン「その雷が固まって、まるで金棒のように……!」

Rピース「プリキュア! ピースサンダー……・ストラァァァーーイクッ!!」ブンッ


ドバァァァァンッ!! バリッ! バリバリバリッ!!


アキラメーナ(白紙の原稿型)「アガッ――」ジュバァァァァッ…!!

オーレン「雷の金棒を叩きつけられて、アキラメーナが一撃で消えた……! キュアノーブルの時に続き、またも……!」


オーレン「なんなのだ、奴らの、プリキュアの力は。つい先ほどまで不安で身動きすらロクに取れなかったくせに、なぜこれほどの力が出せる?」

オーレン「……分からん」シュバッ

Rピース「…………」

オニニン(デコル)「やよい、ジャマ者はやっつけたオニ。もうこれで、やよいを止めるものは何もないオニ」

Rピース「うん……。あとは、まっすぐに進むだけだね」


Rピース「私が行きたい、未来に向かって」

~ その後 七色出版 待合室 ~

梅沢編集「…………」ペラッ

やよい「…………」


オニニン(……あの後すぐ、やよいが見つけた答えをミラクルピースのセリフとして書き込んだオニ)

オニニン(できはどうオニ……? うまくいってるオニ……? ドキドキするオニ……!)


梅沢編集「……黄瀬さん……」

やよい「はい……!」

梅沢編集「……すごくいいよ。漫画を通じて、君の気持ちが伝わってくるみたいだ。ガンバることが大切だ、っていう、君の強い気持ちがね」

やよい「……! それじゃあ……!」

梅沢編集「これで OK だよ! とてもいい出来になったと思う!」

やよい「あ、ありがとうございますっ!」


梅沢編集「でも、まだラストが残ってる……、ワルーダ帝王との決戦が……! もう締め切りも近いけど……間に合うかい…!?」

やよい「大丈夫です! 絶対に間に合わせますっ!」

梅沢編集「……わかった! 待ってるよ!」

やよい「はいっ!」

やよい(ナレーション)『こうして、何とかデビュー作『ミラクル・ピース』を完成させることができ、私は夢だった漫画家デビューができました!!』

やよい(ナレーション)『みゆきちゃん達や妖精のみんな、漫研のみんなや顧問の佐々木先生も大喜びしてくれて、私のことをお祝いしてくれました……!』

やよい(ナレーション)『ママなんてもうタイヘンで……。私の漫画が載った "週刊スマイル" をたくさん買ってきて、ご近所や会社の人達に配ってるみたい……。ちょっぴり恥ずかしいかな……』


やよい(ナレーション)『それから少ししたある日。私は梅沢さんに呼びだされました』

~ 1週間後 七色出版 待合室 ~

やよい「梅沢さん、こんにちは!」

梅沢編集「こんにちは。ごめんね、急に呼び出したりして」

やよい「それはだいじょうぶですけど……、何かあったんですか?」

梅沢編集「うん、たくさんね」ニコッ

やよい「……? たくさん?」


ドサッ


やよい「……! この紙袋に入ってるの、全部、お手紙ですか……? これって、もしかして……!」

梅沢編集「そう、君宛のファンレターだよ! 『ミラクル・ピース』を読んでくれた人が感想や応援の手紙を送ってくれたんだ」

やよい「こんなにいっぱい……!」

梅沢編集「さ、読んでごらん」

やよい「は、はい……!」

ペラッ


手紙A『『ミラクル・ピース』、読みました! とっても面白かったです!』

やよい「…………」


手紙B『中学生でこんなに描けるなんてすごいですね! 未来の大先生になれるよう、応援してます!』

やよい「…………」


手紙C『期待してます! これからもガンバってください!』

やよい「…………」


手紙D『ミラクルピース、かっこよかった! またよみたいです!』

やよい「…………」

ポタッ


やよい「…………ありがとう……!」

オニニン(……! やよい、泣いてるオニ……?)

手紙E『読みきりだったから、ちょっと駆け足だったのが残念。もっとしっかり読みたいな。連載、待ってます!』

やよい「……ありがとう……!」


手紙F『ミラクルピースの仲間もカッコよかった! 次描く時はもっと活躍させてあげてください!』

やよい「……ありがとう……!」


手紙G『ミラクルピースがガンバる姿に元気をもらいました! 私も学校でツラいことがあるけど……、あきらめないでガンバろうと思います!』

やよい「……ありがとう……っ!」


やよい「……私の漫画を読んでくれて……、面白いって言ってくれて……ありがとう……!!」

やよい(……ママの言う通りだった……)


千春(回想)『やよい、ツラくっても、苦しくっても、あきらめないでやってみて。自分の本当に大切な気持ち。それがわかれば、きっとどんな時でも頑張れるわ!』


やよい(私……、自分が何のためにガンバるのかわからなくなって……、とってもツラかった……、苦しかった……!)

やよい(でも、私はガンバれた……! ガンバれたからみんなに喜んでもらえて、今、こんなにうれしい気持ちでいっぱいになれた……!)

やよい(……私のことを見る時のママも、こんな気持ちなのかな……)


やよい(……あの時、あきらめないで本当によかった!)

やよい(私、これからどんなことがあってもガンバります! 自分のやりたいことをせいいっぱい!)


やよい(いつも笑顔でいるために!)ニコッ





つづく

次回予告

なお「いよいよ、女子サッカー部の大会が始まった! あたしにとってはこれが中学最後の大会……。れいかやみんなも応援してくれてる、ガンバらなきゃ!」

なお「でも、そんなあたしの試合をデスペアランドから守るため、れいかが人質にされちゃった……!」

なお「あたしの大切な友達を苦しめて……、そんなの絶対に許せない! たとえ相手がどんなに強くったって、絶対にれいかを救い出すんだ!!」


なお「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "なおの勇気! 守りたいものを守るために!"」


なお「みんな笑顔でウルトラハッピーだよ!」

スレまたぎでなんですが、
第38話にいただいたレスにお返事させていただきます!



> 乙くださった皆さま

いつもいつもありがとうございます!
ホントに励みになります。

このままのペースを保って最後までいきたい。。!
ハリキっていくんで、よろしくお願いします!



> プレゼさん

> 三週間ぶりと書かれていましたが、わたしとしては一週間空いたぐらいにしか感じていませんでした。

そうですか、、それは何よりでした。。

実は "二週空けた" ってのが自分の中で結構プレッシャーになっていたんですが、、
無事話をつなげられて、喜んでもらえたならよかったです!



> 前スレ 987さん

> 生徒会のネタとかれいかさんの悩みとかほんとよく一つの話にまとめられたなーっと驚いちゃうよ

ひい、うれしい。。! ありがとうございます!

自分だけだと面白いかどうかよくわかんなかったりすることも結構あるんですが、
こうしておホメいただくと、自信がついて励みになります!


> 個人的にははるかさんも活躍してくれたのも嬉しかった

はるか好きなんですか? こちらも地味にうれしい。。!

みゆきちゃん達は既存のキャラなんで魅力があるのは当たり前なんですが、
自分で作ったキャラはほぼ 0 からのスタートなんで、それで好いてもらえるのはホントにありがたいことだと思います。

これからも藍沢 はるかをよろしくお願いします!

> 前スレ 989さん

> スマイル43話を彷彿としました。

そうですねー。。
放送当時から思ってましたが、やっぱりれいかさんは崩してナンボ、という気がします。

優等生としてじゃなく、中学生女子としての素直な気持ちや欲求。
その辺りはきちん出そうと思ってたんで、ちゃんと表現できていたならよかったです!



> 前スレ 990さん

> 次回予告の内容のままだと何処がダメだったのか、どういう所が書きづらかったのか 等を教えてほしいです

ダメポイントですが、とりあえず大きく分けて以下の 2点だと思われます。

1. れいかさんが落ち込む板野くんを励まして、導く話だった
2. 板野くんが悩むシーンに尺を割きすぎた


最初は 1 の方向で進めていく気だったんですが、
「導く? なんかエラソーでヤだなぁ。。」とでも思ってしまったのか、れいかさん書いてて楽しくなかったんですね。
それで悩んだ挙句、"支えてるつもりが支えられてた" "これからも支えあっていきたい" という方向性にしたところ、なんとかうまいことまとまりまして、こうなりました。

"『プリキュア』のキャラは年相応に悩んだりガンバったりしてほしい" っていう自分の欲求に引っかかったのかもしれません。。


あと 2 ですが、予定では大分板野くんに尺を割いていて、
ちょうど 31話 ~ 34話のゆかりのようなポジションになってました。

が、その状態だと全然筆が進まなくって。。
れいかさんにスポットがうまく当たってなかったから、書いてて楽しくなかったってのもあるんでしょうかねー。。
"板野くん「ぼくは会長のようになれない」" という出発点からひっくり返すことで、ようやく話が書けたという感じです。

今にして思えば、まず最初がダメだったんでしょうね。。まるで、服のボタンを掛け違えてるように。
しかも、書いてる本人がそれに気付いてなくって。。
"なんだかよくわからないけど筆が進まない" という状態で、大分苦しかった記憶があります。

ホントになんとか話が進んでよかった。。!


長くなってしまいましたが、こんな感じです。
なにかの参考にでもなれば幸いです!



お返事は以上になります!
それではまた来週!

乙 

プリキュアで>>83のようなことをやってはいけなかった…と思う
数は少ないけどプリキュアが好きな男児もいるのに、「女の子ヒーローって女子が見るようなやつ」とか
小中学生でプリキュアを見ている人がいるかもしれないのに「(変身ヒーローに対して)子供っぽいのみてらんないよ」はちょっと…

スマプリの41話では中学生の男子3人がミラクルピースの漫画を読んで、真似をして遊んでいた。
それは「男が女ヒーロー見てても問題ない」「中学生がヒーロー好きでも大丈夫」みたいな配慮があったからじゃない?

少なくともプリキュア側から「女の子ヒーローを見るのは女子(男子は見ない)」「変身ヒーローは子供っぽい」
みたいなことを見てる人に感じさせたりはしないはず
話は普通に面白いので、こういう細かいところに気を付けるともっとよくなるかもしれないと思った

まことに遺憾ですが、確定事項なので、先にお知らせしておきます。

12/14(土), 15(日) に急な仕事が入りまして、第40話の作成が困難になりました。。
おそらく 12/15 のアップはムリだと思われるので、来週になってしまいそうです。
ここのところ更新が不定期になってしまいスミマセン。。

うー、、タダでさえ遅れてるのに、なぜこのタイミングで。。
社蓄に神はいないのか。。(´;ω;`)


そういうことなんで、
申し訳ないですが、来週までお待ちください。。

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ! 、、ではありません。。
先日ご連絡したとおり、今日はお休みさせてください。。

また来週、おねがいします!

2週間ぶりのご無沙汰でした! 今日はやります!

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 深夜 緑川家 床の間 ~

けいた(なお弟・長男)「……すー……すー……」

はる(なお妹・次女)「……すー……すー……」


なお「…………」


なお「……う……んん……っ!」

アキラメーナ(緑川家型)『アキラメーナァッ!』


ドカァァッ!


マーチ『うあぁぁぁぁぁっ!?』ドサァッ


マーチ『うっ……、く……!』


ジョーカー『ふふふっ。倒れて、もう起き上がることもできませんか。いいザマですねぇ、キュアマーチ』

ジョーカー『そこで見ていなさい。あなたの大切なものが目の前で消えてなくなるところをねぇ!』

マーチ『……! あ、あたしの家を狙う気……!? や、やめ―― (ズキッ) うっ……!』


ジョーカー『ひゃははははっ! さぁ、これでバッドエンドです!』

アキラメーナ(緑川家型)『アキラメーナァァッ!』グワッ


マーチ『……や……』

なお「やめてぇぇぇぇっ!!」ガバッ


なお「はぁっ……! はぁっ……!」

なお(……夢……? なに、今の……。この間、ジョーカーが町を襲った時の……?)

なお(あの時はハッピーがガンバってくれたおかげで、みんな無事に助かったのに……、なんでこんな夢見たんだろう……)


なお(……あ……、大声出しちゃった……。みんな、起きちゃったかな……?)チラッ


ひな(なお妹・三女)「……すー……すー……」

ゆうた(なお弟・次男)「……すー……すー……」

こうた(なお弟・三男)「……すー……すー……」


なお(よかった、寝てるみたい……)

なお(……でも、もしかしたらあの時……、さっきの夢みたいなことになってたかも……しれないんだ……)


なお(あの時……、ハッピーが助けてくれなかったら……? あたし自身にも、どうにもできなかったら……? そうなってたら、夢のようになってたかもしれないんだ……)

なお(みんなの寝顔も……、もうこうして見られなかったかもしれないんだ……!)


なお(……もしまた同じようなことになったら……。大切な誰かが危なくなった時、自分じゃどうにもならなくなったら……、……あたしは、どうすれば……)

なお(……! 何考えてるの、あたし……! こんなことしてる場合じゃないよ、早く寝なきゃ!)

なお(だって、明日はサッカー部最後の大会の初戦なんだから……! 3年間練習してきた成果を全部出さなきゃいけないんだから!)

なお(うん、そうだよ! あんな夢なんて忘れて、寝よう!)バフッ


なお(…………)

なお(……あたしの大切な誰かが、あたしの目の前からいなくなる……)


なお(どうかこれからも、そんな日は来ませんように……)




スマイルプリキュア レインボー!

第40話「なおの勇気! 守りたいものを守るために!」



~ 翌日 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 ~

ワー! ワー!


サッカー部員・フォワード・村田 ともか「キャプテンっ! パスっ!」

なお「ナイス、村田さんっ! よし、一気に上がるよ!」

サッカー部員・フォワード・村田・山中「はいっ!」


ドドドドッ!


相手校・ゴールキーパー「緑川選手は司令塔! 他のフォワードにパスあるよ! 警戒して!」

相手校・ディフェンダー達「はいっ!」


なお(……! フォワードの村田さんと山中さんにマークが……! ……それだったら!)


ダダダダダッ!


相手校・ゴールキーパー「えっ!? 緑川選手が自分でゴール前まで――」

なお「だぁぁぁぁぁっ!」バシッ

相手校・ゴールキーパー「シュートが速い! と、捕れな――」


バスッ!


審判「ゴーーールっ!」


なお「よっし!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「さすがです、キャプテン!」

サッカー部員・フォワード・村田 ともか「ナイスシュート、キャプテン!」

なお「気を抜かないで! このままの勢いでドンドンいくよ!」

サッカー部員・フォワード・村田・山中「はいっ!」

~ 数十分後 ~

ピーッ! ピーッ! ピーッ!


審判「試合終了! 3-0 で七色ヶ丘中学校の勝ち!」

なお「やったぁっ! まずは初戦突破!」


みゆき「なおちゃーんっ! やったねーっ!」

あかね「ええでーっ! その調子でガンガン行きやーっ!」


なお「みゆきちゃん……、みんな……!」


はる「なおねーちゃーん、おめでとーっ!」

こうた「おめでとーっ!」


なお「みんな……! ありがとう!」


なお(……うれしいな。みんなの応援のおかげで力が湧いてくる。これなら、きっといいところまで行けるはず――)

アキラメーナ(緑川家型)『アキラメーナァァッ!』グワッ

マーチ『やめてぇぇぇぇっ!!』


ドガァァァァァッ!!


なお(――っ!?)ビクッ

なお「…………」


サッカー部員・フォワード・村田 ともか「……? キャプテン、どうかしたんですか? 試合、終わりましたよ。帰りましょうよ」

なお「……え? あ、ああ、うん、そうだね! 明日以降の試合にも備えなきゃね!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「そうですよ! これから強豪もドンドン出てくると思いますし……、ガンバらないと!」

なお「う、うん! それじゃみんな、早速帰って作戦会議しよう!」

サッカー部員達「はいっ!」


なお(……今の何……? 今朝見たあの夢が頭をよぎって……、体が震えた……? なんで……?)

なお(……気のせいだよね、きっと! あんな夢見たから、ちょっとヘンな気持ちになっちゃっただけだよね! 山中さんの言う通り、大会に集中しないと!)


なお「……ファイトっ、オーっ!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「わっ、な、なんですか、キャプテン、急に……」

なお「ううん、別に! ただ気合入れただけ!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「は、はぁ……」


なお(そう、集中集中! 集中すれば、きっとこのなんかイヤな気持ちもどっかいっちゃうはず! ガンバろっと!)

~ 夕方 七色ヶ丘中学校 校門前 ~

なお「ふぅ……、ミーティング、結構かかっちゃったなぁ。すっかり暗くなっちゃった……。早く帰らないと――」


スタスタスタ


やよい「おぉーい! なおちゃーんっ!」

なお「あれ、みんな? どうしたの、おそろいで!」

はるか「なおちゃんの初戦突破のお祝いがしたくってね。みんなで出てくるの待ってたんだ!」

なお「え……、それだけのために、ですか……? こんなに寒いのに……」

ゆかり「確かに、ちょっと寒いですけど……、平気です。なおセンパイの試合見てたら、なんだか体がぽかぽかしてきましたから……」

みゆき「なおちゃんの試合見て、みんなで盛り上がったからだね、きっと!」

れいか「なお、試合、お疲れ様。なおにとっては、これが中学校での最後の試合でしょう? 悔いの残らないよう、頑張ってね」

あかね「せや。……うちはバレーの最後の試合、勝たれへんかったけど……、なお達なら絶対いけんで! うちらの代わりに、絶対優勝したってや!」

なお「れいか……、あかね……、みんな……! ありが――」


グーーーッ…


みゆき達「…………」

なお「あう……」


はるか「……今の、お腹の音、だよね。またすごい音したねぇ……」

あかね「せっかくええフンイキになっとったのに、しまらんなぁ……」

なお「だ、だってぇ、試合のせいでお腹空いちゃって……」

あかね「よっしゃ! ほんなら、これからウチの店来ぃ! あかねちゃん特製・スタミナお好み焼き、おごったる!」

なお「えっ!? いいの!? ホントに!?」ダラッ

マジョリン「なお、よだれ出てるマジョ」

なお「あっと……、お好み焼き思い浮かべたら、つい……。えへへ……」

れいか「なおは昔から食いしん坊だったものね」

マジョリン「まったく……、みっともないマジョ……」


みゆき達「あははははっ!」


なお「もう……、みんな、そんなに笑わなくったっていいのに……。……でも、そうと決まったら急いで行こう! お腹すいちゃったよ!」

あかね「ほんっまに食いしん坊やなぁ……。んじゃ、行こか! みんなも来てや! パーッとやろうやないの!」

みゆき「えっ、いいの! やったぁーっ!」

マティ「うふふ、にぎやかになりそうですわね!」

やよい「そうだね! 私もお腹空いてきちゃった!」


れいか「では、みなさんでお好み焼きパーティといきましょう!」

全員「おーっ!」

~ 夕食後 お好み焼き屋 "あかね" 前 ~

なお「あかね、ごちそう様! もう、大満足!」

あかね「にししっ、そんだけ喜んでもらえたんなら、腕の振るいがいがあったわ! これで元気つけて、今度の試合もガンバりや!」

なお「うんっ!」


ゆかり「あ、あの、あかねセンパイ……。わたし達までごちそうになっちゃって……、なんだか悪いような……」

あかね「ああ、気にせんでええて! その代わり、バッチリなおの応援したってや!」

ゆかり「はい……! ガンバります……!」

やよい「お好み焼きで元気100倍っ! めいっぱい応援しちゃうんだから!」

マティ「それではそろそろ失礼いたしますわ。みなさま、ごきげんよう!」


はるか「私達も行こうか、ペロー君」

ペロー「はいペロ! なおさん、サッカー、ガンバってペロ!」

なお「ありがとう、ペロー!」


れいか「私達も行きましょう、なお」

なお「うん! じゃあ、みんな、またね! 今度の試合も見に来てね!」

みゆき「もちろん行くよ! じゃ、おやすみなさーい!」

あかね「おやすみー! 帰り道暗いから気ぃつけてなー!」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

スタスタスタ


ポップ「それにしても、先ほどのお好み焼きパーティ、とってもにぎやかで楽しそうでござったな! 拙者達も参加したかったでござるよ」

れいか「ポップさんやマジョリンさんは普通の人に見られては大変ですからね。今度また、改めていっしょに食べましょう」

マジョリン「うー……、しょうがないマジョ! 残念だけど、今日のところはガマンしておいてやるマジョ!」

なお「ゴメンね、マジョリン」


なお(ホントに楽しかったなぁ、お好み焼きパーティ)

なお(……けど、なんだろう、この気持ち……。みんなに応援してもらって、おいしいものも食べられて、とっても楽しいはずなのに……、なんだか、胸がざわざわする……。どうして……?)


なお(あの夢のせいなのかな……)

れいか「私はこっちね。それじゃ、なお、おやすみなさい」

なお「え? あ……、い、いつの間にこんなところまで……」

れいか「……? なお、どうかした? なんだか少しぼーっとしていたみたいだけど……」

なお「そ、そんなことないよ! そ、それじゃあね、れいか! おやすみなさい!」

れいか「……ええ、おやすみなさい」


スタスタスタ…


なお「…………」ポツン

マジョリン「なお、あたし達も帰るマジョ。今日はサムいから、外はイヤマジョ……」

なお「…………」

マジョリン「? どうしたマジョ? 行かないマジョ?」

なお「…………」

マジョリン「なお……? ホントにどうかしたマジョ……? なんだか様子がヘンマジョ……」

なお「……さっきまで、すごくにぎやかだったから……。一人になるとなんだか……、さみしい気がして……」

マジョリン「なに言ってるマジョ! 明日になったらまたすぐみんなに会えるマジョ!」


マジョリン「それに、なおには家族がたっくさんいるマジョ! それと、その……、あ、あたしもいるし……」

マジョリン「……と、とにかく、なおは一人じゃないから、さみしいことなんて何にもないマジョ!」

なお「……そうだよね。ヘンなこと言っちゃってゴメンね、マジョリン」

マジョリン「わかればいいマジョ! さ、早く行くマジョ」

なお「うん」

~ 七色ヶ丘市 青木家 帰路 ~

れいか「…………」


れいか「……ポップさん、先ほどのなお、なんだか様子がおかしくなかったですか?」

ポップ「え? そうでござったか? 拙者は気付かなかったでござるが……」

れいか「そうですか……」


れいか(さっきのなおの顔……、どこか、さみしそうに見えたような……)

れいか(何かあったのかしら……)

~ 緑川家 玄関 ~

ガラッ


なお「ただい――」


ダダダダダッ


なおの弟妹達「なおねーちゃーん! おかえりなさーいっ!」

なお「わっ!? な、なに、どうしたの、みんなして……」


けいた「へへへ……、なおねーちゃん、早く上がって来てよ。見せたいものがあるんだ」

なお「え? 見せたいもの? なに?」

はる「見てのおたのしみ! ほら、行こう、なおねーちゃん!」

こうた「いこー!」

なお「わわっ、ちょ、ちょっと、引っ張らないでよ! なんなの、もう」

~ 緑川家 居間 ~

けいた「じゃーんっ! これだぜ!」

なお「ケーキ……? 見せたいもの、って、これ?」

はる「うんっ!」

なお「あ、このケーキ、よく見るとクリームで何か書いてある……」


なお「…… "なおねーちゃん がんばって!" ……」


なお「もしかして、これ……、あたしのために……?」

はる「えへへ……」

とも子(なお母)「そうだよ。そのケーキは、けいた達みんながなおのために作ったの」

なお「お母ちゃん。そうなんだ……。でも、いつの間に……」

とも子「なおが試合の準備をしている間に少しずつ、ね。私は見てただけで、スポンジからクリームから、ほとんどこの子達が作ったのよ」

とも子「"なおねーちゃんにはいつもお世話になってるから、ガンバるねーちゃんに何かしてあげたい" って言ってね……」

なお「…………」


ひな「ねぇねぇ、なおねーちゃん、見てみて! ここのイチゴ、わたしがならべたんだよ!」

なお「そうなんだ……。キレイに、並べられたね、ひな……」


ゆうた「あのね、字はね、みんなでちょっとずつかいたんだよ! うまくできたかな?」

なお「うん……。とっても上手だよ、ゆうた……!」

なお「(ポロッ)」


なおの弟妹達「!」

けいた「なおねーちゃん、泣いてる……?」

とも子「あらあら……」ニコニコ

はる「ど、どうしたの、なおねーちゃん……? ケーキ、イヤだった……?」

なお「ううん、逆だよ……、はる……!」


なお「うれしくって……! みんなが一生懸命、あたしのためにガンバってくれたのが、うれしくって……!」

けいた「なおねーちゃん……!」

源次(なお父)「てやんでぇ。今からそんな泣きっつらしててどーすんでぇ、なお」

なお「お父ちゃん……」

源次「まだ試合残ってんだろ? なんも終わっちゃいねぇじゃねえか。嬉し泣きは優勝した時まで取っときやがれ」


源次「いいか、なお。自分が "こう" と決めたことがあるんなら、真っ直ぐに、最後まで絶対やり抜け。それができるように、って願って "直(なお)" って名前にしたんだからよ。名前負けしたら承知しねえぞ」

なお「……もちろんだよ、お父ちゃん、みんな! 緑川 直、直球勝負でガンバるから、見ててね!」

源次「……へっ、それでこそ、俺の娘だ」

けいた「あ、そうだ! なおねーちゃん! もっと元気が出るように、"あれ" やろーぜ!」

なお「"あれ" ……? なにそれ?」

けいた「"あれ" だよ! ねーちゃん達もよくやってんじゃん! みんなで輪になって、手乗っけて、"おーっ!" ってやつだよ!」

なお「ああ、円陣のことかな」

はる「あ、いいなぁ! やろうよ、なおねーちゃん! ほら、手出して!」グイッ

なお「わっ、手引っ張らないでよ、はる!」


ひな「おとーちゃんもやろー!」

こうた「おかーちゃんもー!」

源次「ったく、しょうがねえなぁ」

とも子「うふふ、わかったわ」


ゆい(なお妹・四女)「あーぶーっ!」

とも子「あらあら、ゆいもやるの? そうよね。おねーちゃんの晴れ舞台だもんね。じゃあ、一緒に応援しましょうか」

ゆい「だーう!」

サッ


けいた「みんな、なおねーちゃんの手に自分の手乗っけたな! それじゃ、いくぞー! せーの!」


なおの家族達「ガンバれ、緑川 なお! おーっ!」

なお「おーっ!」


とも子「しっかりね、なお」

なお「うんっ!」

なお(本当にうれしい。みんなの気持ちがあったかいよ……)


なお(でも……、みんながあたしのことを想ってくれるたび、なんだか胸がざわざわしてくる……。さっきの、お好み焼きパーティの後みたいに……)

なお(うれしいはずなのに、どうして……? どうして、なんだか不安な気持ちになるんだろう……)


なお(胸騒ぎ、っていうのかな、こういうの……。なにもないといいんだけど……)

~ 後日 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 ~

ピーッ! ピーッ! ピーッ!


審判「試合終了! 2-0 で七色ヶ丘中学校の勝ち」


みゆき達「やったぁっ!」


やよい「すごいすごい! なおちゃん達、これで準決勝も突破だよ!」

ゆかり「ホントにすごいです……! わたし、なんだかドキドキしてきました……!」


はるか「次はいよいよ決勝戦……。これで優勝したら……、全国大会出場だよ!」

あかね「うちらはここであかんかったからな……。ガンバってほしいわ……!」

れいか「大丈夫ですよ、あかねさん。なお達ならきっとできるはずです」

あかね「……せやな!」


れいか(そう、なお達ならきっと大丈夫。……でも)

れいか(この間のパーティの後の夜、帰り道で見せたあの顔……。やっぱり少し気になるわ……)


れいか(…………)

~ 夕方 七色ヶ丘中学校 女子サッカー部 部室前 ~

サッカー部員・フォワード・村田 ともか「それじゃ、キャプテン、おつかれさまでした!」

サッカー部員達「おつかれさまでした!」

なお「うん! みんなもおつかれさま! 気をつけて帰ってね!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「はい! では、失礼します!」


ゾロゾロゾロ…


なお「……さて、決勝戦の相手、"村雨中" 対策のミーティングも済んだし、資料まとめたら、あたしも帰ろっと」

スタスタスタ


れいか「なお」

なお「あ、れいか! どうしたの、こんな時間に」

れいか「次はいよいよ決勝戦でしょう? 励まそうと思って来たの」

なお「また来てくれたんだ、なんだか悪いなぁ。今日はれいかだけ? みんなは?」

れいか「今日は私だけ。ふたりだけで話したいことがあったから」

なお「話したいこと……? なんだろ……」


なお「……あ、立ち話もなんだよね! 外じゃ寒いし、部室の中に入ってよ! 何かあるなら、そっちでゆっくり話そう!」

れいか「ありがとう。おじゃまします」

~ 七色ヶ丘中学校 女子サッカー部 部室 ~

コポコポコポ


なお「はい、あったかいお茶。ちょっと熱いかもしれないから、気をつけてね」

れいか「ありがとう、なお。いただきます」


なお「それで、話したいことってなに? 改まっちゃって」

れいか「ええ……。私の気のせいかもしれないけれど……」

れいか「……なお、今何か、悩んでいること、ないかしら?」

なお「! ……なんでそう思うの?」

れいか「この間、あかねさんのお店でのパーティの帰り、別れ際、なおの顔が少しさみしそうだったから……」

なお「あ……、あの時か……」


れいか「私も、よく悩んではなおに心配してもらったわね……。なおは、本当によく気がつくから」

なお「そうだったっけ……。自分じゃあんまり憶えてないけど……」

れいか「だから、もしなおが悩んでいるのなら、今度は私が力になりたい。そう思って来たの」

れいか「何かあるなら、話してもらえないかしら?」

なお「…………」

なお「確かに、れいかの言う通り、ここのところ胸がざわざわするんだ……」

なお「それは……、夢を見たせいかもしれない……」

れいか「夢……?」

なお「うん……」


なお「この間、ジョーカーが町を襲ってきた時……、ハッピーが助けてくれなくって、そのまま、あたしの大切な人達が……いなくなる夢」

れいか「……! それは……、イヤな夢ね……」

なお「うん……。ホントに、イヤな夢……」


なお「その夢を見た時に、思っちゃったんだ。"もしまた同じことになったら?"、"あたしが、みんなを守れなかったら?" って」

なお「デスペア国王も、ジョーカーの作ったアキラメーナも、すごく強かった……。あの人達ともいつかはちゃんと向かわないといけないから……、もしかしたら、これからそういうこともあるかもしれない……」


なお「ううん、それだけじゃない。あたしの夢――将来、町を守るお巡りさんになれたとしても、自分じゃどうしようもないことがあるかもしれない……」

なお「……今、れいかに話して、やっとわかったよ。どうして、自分がイヤな気分になってたのか」


なお「不安だったんだ。あたしの力でみんなを守れなかったら……、そんな時がこれからやってきたらどうしよう、って……」

なお「みんながあたしに優しくしてくれればくれるほど……、みんなのことを好きになればなるほど……、みんながいなくなったらどうしよう、って、どんどん不安になって……」

なお「あたしの大切な人が目の前からいなくなるなんて……、そんなことには、絶対になってほしくないから……」


なお「だから、どうなるかわからないこれからのことが……、未来のことが、コワくなっちゃったんだと思う……」

れいか「……そうだったのね……」


れいか「…………」

スッ

ギュッ


なお「れ、れいか? どうしたの、急にあたしの手を握って……」

れいか「……勇気が出るおまじない」

なお「え……?」

れいか「以前襲われた時、ふたりで閉じ込められて、怯えていた私になおがしてくれたこと」

れいか「なお。私の手の温かさ、わかる?」

なお「……うん、あったかいよ」

れいか「あの時、なおは言ってくれたわね」


れいか「"お互いの手が温かいってわかるなら、一人じゃない。一人じゃないなら、何も怖くない"」

れいか「"だからこうして手を握っていれば、どんな時でも大丈夫だよ" ……って」


れいか「あの時、私はなおに勇気をもらったわ。だから、今なおが不安になっていることがあるなら、今度は私が、それに立ち向かうための勇気をあげたい」

れいか「なおには、いつでも元気でいてほしいから」


なお「……れいか……」

なお「……でも、それ、元々あたしがれいかにしてもらったことだよ? 小さかったころのれいかが、"あたしを励ますために" ってしてくれたこと」

なお「あの時はそのお返しだったんだから、それをまたお返しされると、なんだかおかしな気持ちになるなぁ」

れいか「それなら、お返しのお返し、っていうことでいいじゃない」


れいか「お互いに励ましあって、勇気付けて……」

れいか「なおとはずっと、そんな関係でいたいと思うもの」ニコッ

なお「…………うん。あたしもだよ、れいか」

なお「れいか、ありがとう。れいかの手のあったかさで、不安もどっか行っちゃったみたいだよ。これならきっと、試合にも集中できると思う」

れいか「なお……。本当に大丈夫……?」

なお「うん、バッチリ!」

れいか「そう……。よかった」


なお「見てて! れいかにもらった勇気で、大会、絶対優勝して見せるから!」

れいか「ええ! 頑張って!」

なお「うんっ!」

なお(……本当は、まだ胸が少しざわついてる……。なかなかイヤな感じがなくなってくれない……!)

なお(でも、"もし誰かがいなくなったら" なんて、今そんなことを考えたってしょうがない。目の前のことをガンバらなきゃ……!)


なお(プリキュアのみんな……、家族のみんな……、れいか……、せっかく、あたしの大切な人達が勇気と元気をくれたんだ)

なお(みんなの気持ちに応えるためにも、不安になってる場合じゃない……! 精一杯やるんだ……!)

~ デスペアランド 王宮 玉座の間 ~

怪物・デスペア『オォォォォォォォォォッ……!!』


デスペア国王「"デスペア" の成長は順調だな。このまま育成が進めば、問題なく完成するだろう」


デスペア国王「……だが、プリキュアの打倒と "夢の絵の具" の入手は依然として達成できていないようだな。どういうことだ?」

大臣「……申し訳ございません、国王陛下。ここのところ、プリキュア達が "夢の絵の具" の真の力を使うようになったため、さらに手ごわく――」

デスペア国王「"プリキュアが手ごわい" という話は今までに何度も聞いた。ならば、どうにかせよ。それがお前達の使命なのだからな」

大臣「は、おっしゃる通りで……。我々も全力でやらせていただきます」

デスペア国王「うむ」

デスペア国王「……本来であれば、私自身が行けば済むところだが、私はデスペアランドを空けることはできん」

デスペア国王「"デスペア" 育成のための闇の絵の具の投与。日に日に力を増していく、"デスペア" の制御。それに――」

大臣「? それに? まだ他に何か理由があるのでしょうか」

デスペア国王「――いや、なんでもない。……それより大臣よ、自分の使命がわかっているのなら、すぐに取り掛かれ。よいな」

大臣「ははっ。この私、国王陛下とデスペアランドのために力を尽くしましょう。それでは、失礼いたします」


スタスタスタ…


デスペア国王「…………」


デスペア国王(……大臣――いや、ジョーカー……。素直だな、気味が悪いくらいに)


デスペア国王(元々ヤツはピクチャーランドの者ではない。口ではああ言っているが、我が目的――ピクチャーランドの復活のために行動する理由はないはずなのだ)

デスペア国王(ではヤツは、何が目的で私に仕えている? ヤツの本当の狙いはなんだ……?)

デスペア国王(出会った時から何を考えているのかわからない者だったが……、これだけ長く共にいても、ヤツのことはまるでわからん……)

デスペア国王(……まあいい。何を企んでいようと同じことだ。ヤツの力は私が封印しているのだから、滅多な事はできまい。私がここにいる限り)

デスペア国王(私がここにいるのはそのためでもある。ヤツに勝手なことをされては、この国がどうなるかもわからんからな)

デスペア国王(本当なら、あまり近くには置きたくない者だが……、私の目的を達成するには、ヤツの生み出す闇の絵の具が必要だ。注意しつつ扱うしかあるまい)


デスペア国王(それに、いざとなれば、すぐさま消滅させることもたやすい。せいぜい利用させてもらうとしよう)

~ デスペアランド 王宮 大臣自室 ~

大臣「――と、いうわけで、国王陛下からお叱りを受けてしまいました。あなた達がプリキュアを倒してくれさえすれば、このようなこともないのですがねぇ……」

オーレン「イヤミはいい。もっと力を尽くせと言いたいのだろう」

大臣「わかっているのなら、もっとガンバってもらえると助かりますよ。あなた方もそう永くはないのですから、今のうちに、ね」

イエロワ「アキラメーナとしての期限、ですな。もうじきにまで迫った期限を迎えれば、ワシらは消える。もちろん忘れてはおりませんとも」

イエロワ「……それであれば、もう手段は選ばなくてもよさそうですな。ワシが暖めていた作戦を使うといたしましょう」

大臣「ほう、作戦? そのようなものがあったのですね」

イエロワ「はい。これならば、プリキュア達を倒すこともカンタンにできるはずですじゃ」


イエロワ「なぜなら、その作戦で生み出されるアキラメーナには、プリキュアは絶対に勝てないのですから……!」

大臣「……何やら自信がありそうですね。いいでしょう、今回はイエロワ、あなたにお任せします。頼みましたよ」

イエロワ「お任せくだされ……! ふぇっふぇっふぇ……!」

~ 決勝戦当日 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 ~

審判「それではこれより、七色ヶ丘中学校と村雨中学校、地区大会予選の決勝戦を始めます!」

両校選手達「よろしくお願いします!」


あかね「うー、いよいよやな……! なんか見てる方もキンチョウしてくるわ……!」

はるか「ふふっ、あかねちゃんのバレーの試合を見に行った時も、みんなおんなじようなこと言ってたよ」

あかね「あ、そ、そうなんですか? 気持ちわかるわぁ……。何もでけへん分、自分で試合してた方がラクや……!」

やよい「あかねちゃんらしいね」


みゆき「でも、なおちゃんなら大丈夫だよ! きっと優勝できる! ……と、思う!」

マティ「そうですわね……。わたくし達は信じて見守りましょう……!」

れいか「ええ!」


れいか(頑張って、なお!)

サッカー部員・ディフェンダー「キャプテンっ!」バシッ

なお「いいパス! これなら抜け――」


村雨中・フォワード「はっ!」バシッ!

なお「えっ!? パスカットされた!?」

村雨中・フォワード「(ニヤッ)」

なお「さすが強豪・村雨中……、カンタンには行かないか……! このままじゃ攻め込まれちゃう……! ディフェンス、おねがい、止めて!」


あかね「あーっ! あかんあかん、ピンチやん!」

やよい「マズいよ、マズいよ! これじゃ攻め込まれちゃう!」

はるか「ファイトーっ! ピンチをしのげば、チャンスがあるよーっ!」

キャンディ「なおーっ! ガンバるクル――むぐっ!?」

みゆき「ゴ、ゴメン……、キャンディは静かに応援しててね」


れいか「頑張ってくださーいっ! ……ゆかりさんも応援お願いします!」

ゆかり「あ、は、はい……! ガ、ガンバれーっ……、七ちゅ――」

ゆかり「――え……!?」

れいか「? ゆかりさん。応援を途中でやめてしまって、どうかしましたか?」

ゆかり「……れ、れいかセンパイ、あそこ……」スッ

れいか「……? 指差しているのは試合場ではなく、反対側の観客席ですが……、一体――、……はっ!」


イエロワ「(ニヤニヤ)」


れいか「あれは……、デスペアランドのイエロワ……! どうしてここに……!?」

ゆかり「……もしかして、ここで悪さをするつもりなんじゃあ……」

れいか「……!」

ポップ「これは一大事でござる……! 今、暴れられては試合がメチャクチャに……! 止めなければ! 皆のしゅ――」

れいか(小声)「待ってください、ポップさん、ゆかりさん。皆さんにはまだ言わないでください」

ポップ「え……!?」

ゆかり「ど、どうしてですか……!? ポップちゃんの言う通り、早く止めないと大変なことになっちゃいます……!」

れいか(小声)「……本当にそうでしょうか。もし悪さをするつもりがあるのなら、すでにもうアキラメーナを出して、会場を襲っているのではないでしょうか」

ゆかり「あ……。た、確かにそうかも……」

れいか(小声)「今、私達が変身して戦おうとすれば向こうも対抗し、それこそ大変なことになってしまうように思えます」

れいか(小声)「皆さんにお教えすれば、きっとここにいる人々を守るために戦おうとするでしょう。ですが、それでは結局ここの人々を巻き込んでしまいます」

れいか(小声)「事を荒立てないためにも、今は皆さんには内緒にしておいてもらえませんでしょうか」

ポップ(小声)「むむ……、確かに、れいか殿の言う通りにした方がよさそうでござるな……」

ポップ(小声)「しかし、れいか殿、それではどうするのでござるか? 何もしていないとはいえ、きっと何か企んでいるに違いないでござる。このまま放ってもおけないでござるよ」

れいか(小声)「……私が、あの方を説得します。ここで悪さをしないように」

ゆかり・ポップ(小声)「え……!?」


ポップ(小声)「ム、ムチャでござる、れいか殿!」

ゆかり(小声)「そ、そうです……! あの人、話を聞いてくれないんじゃないでしょうか……!?」

れいか(小声)「お二人の言うこともごもっともです……」


れいか(小声)「ですが、今騒ぎを起こされては、試合が台無しになってしまいます。なおの、中学校最後の試合が……! ですから、例えうまくいかなくても、できるだけ穏便に済むよう、努力したいのです……!」

れいか(小声)「どうか、ここは私に任せてもらえないでしょうか」

ゆかり(小声)「……れいかセンパイ……」

ポップ(小声)「……わかったでござる。でも、拙者はいっしょにいくでござるよ。いざという時にキュアビューティになれなくては大変でござろう」

れいか(小声)「ありがとうございます、ポップさん」

れいか(小声)「それではゆかりさん、行ってまいります」

ゆかり(小声)「あ、れいかセンパ――」


スタスタスタ…


ゆかり(小声)「……行っちゃった……。ど、どうしよう……!?」

マティ「ゆかりちゃん、なにかれいか様とお話されていたようですが、どうかなさいましたか?」

ゆかり「え……!? あ、い、いや、その……、な、なんでもないよ……! ガ、ガンバれーっ、なおセンパーイっ……! ほ、ほら、マティちゃんも応援しよう……!?」

マティ「そうですわね! なお様ーっ! ガンバってくさだいませーっ!」


ゆかり(ど、どうしよう……。マティちゃんにはわけを話して、いっしょに行った方がいいのかな……? でも、騒がないように、って言われたし……)

ゆかり(わ、わたし……、どうしていいのかわからないよ……! ……とりあえず、ここは、れいかセンパイに任せよう……!)

~ 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 反対側の観客席 ~

スタスタスタ


イエロワ「おお、これはこれはキュアビューティ。こちらを見ていると思っていたら、やはり気付いておったか」

れいか「……どうしてあなたがここにいるのですか? 目的はなんですか?」

イエロワ「これは珍しいわ。お主にしては、いつになく鼻息が荒いのう。……何か、心配事でもあるのかな?」

れいか「……!」

イエロワ「(ジッ) …………なるほど、なるほど。そういうことか」


イエロワ「お主、キュアマーチのことを案じておるな? このサッカーとやらを、あやつの 3年間の努力を、ワシが台無しにしやしないか、と」

れいか「それは……!」

イエロワ「ゴマかしてもムダじゃ。言ったじゃろう、ワシらはお主達人間の不安を見抜くことができると。ワシの目に隠し事はできんわ」

れいか「…………」

イエロワ「それにしても、思わぬ拾い物じゃったわい! 実を言うと、ワシはお主らの様子を探りに来ただけだったのじゃが、こんな弱みがあるとはのう! これは都合がいい! ふぇっふぇっふぇ!」

イエロワ「キュアビューティ、一つ提案があるんじゃが、どうかな? それ次第では、何もせずにここを離れてもよいぞ?」

れいか「提案……? それは一体……」


イエロワ「キュアビューティ――いや、青木 れいか。お主はその身をワシに預けるのじゃ。そうすれば、今は何もしないでおいてやるわ」

れいか「!? 私の身を預ける……。人質、ということですか……?」

イエロワ「人質、のう。ちょっと違うんじゃが……、まぁ、似たようなものか」


ポップ「れいか殿! そのようなこと、ダメでござる! それでは、例えなお殿が無事でも、れいか殿がキケンに――」

イエロワ「ああ、ちっこいのは黙っておれ。やかましいわ。ワシは青木 れいかに言っておるんじゃよ」

イエロワ「さぁ、どうするのじゃ? 青木 れいか。ワシと共に来るのか、来ないのか?」


イエロワ「まぁ、来ないというのであれば、ここで一暴れでもしようかのう! そうなれば、ここにおる人間達がどうなるか、わからんなぁ! ふぇっふぇっふぇ!」

れいか「……なんて卑劣な……!」

ポップ「れいか殿! こうなれば変身して、この者を素早く会場の外に追い出すしか――」

イエロワ「できるかのう!? ワシは今回もこの "終末の黒い絵の具" を使わせてもらうぞ? コレで作られたアキラメーナの力は知っておろう? "夢の絵の具" の真の力無しに、お主一人でそれができるかな!?」

れいか「……っ!」


イエロワ「さぁ、どうする!?」

れいか「…………」

れいか(……私がこのまま行けば、少なくともここにいる人々の安全は守られる……)

れいか(でも、私が人質になってしまったら、プリキュアの皆さんに迷惑をかけてしまうかも……!)


れいか(一体どうすれば……!?)


なお(回想)『あたしの大切な人が目の前からいなくなるなんて……、そんなことには、絶対になってほしくないから……』


れいか(……!)

れいか(……ここには、なおの大切な人が大勢いるわ……)

れいか(町の人達……、応援に来てくれた学校の皆さん……、プリキュアの皆さん……、そして、なおのご家族も……)

れいか(…………)


れいか(……迷惑をかけてしまうかもしれないけれど……。なお、ごめんなさい……!)

れいか「……わかりました。あなたと共に行きます」

ポップ「!? れいか殿!?」

イエロワ「ほほっ! 良い返事がもらえて満足じゃ。では、行こうかのう」

れいか「はい。……ですが、ポップさんまで危険な目にあわせたくはありません。連れて行くのは私だけにしてもらえませんか?」

イエロワ「あぁ、かまわんかまわん。ワシが用があるのはお主だけじゃからのう。どこへでも行くがいいわ。むしろ、この事を他のプリキュア達に伝えてもらった方が手間が省けるのう」


イエロワ「ちっこいの。ワシらは裏山とかいうところに行っておる。助けを呼んで、他の連中をワシの前まで連れてくるがいい。そこで全員倒してやるわい」

れいか「……そういうことですので、ポップさんはここに残ってください」

ポップ「そんな……! 行っちゃダメでござる、れいか殿! それでは、れいか殿が……!」

れいか「これしかないのです……。なおの努力を無駄にしないためには……、なおの大切な人達を守るには、これしか……!」

れいか「それに、私はきっと皆さんが助けてくれると信じています。だから、大丈夫です」ニコッ


フルフル


ポップ(……! れいか殿の手、震えているでござる……! れいか殿、自らもコワい思いをしながら、みなのために平気なようにふるまって……!)


ポップ「……わかったでござる。必ず、皆の衆とともに助けにいくでござるよ!」

れいか「……お願いします」

れいか「お待たせしました。それでは参りましょう」

イエロワ「うむ、素直でよろしい。ふぇーっふぇっふぇふぇっ!」


スタスタスタ…


ポップ「……れいか殿……!」

~ 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 グラウンド ~

なお「(チラッ)」


なお(時間がもうない……! ロスタイムになっちゃった……! まだ点差は 0-0 ……、このままじゃ延長戦になっちゃう……!)

なお(村雨中は PK がうまいことで有名……。PK にまでなっちゃったらウチが不利……! ここで決めるしかない!)


なお「村田さんっ!」バシッ

サッカー部員・フォワード・村田 ともか「はいっ!」パシッ


サッカー部員・フォワード・村田 ともか(キャプテン、わたしにパスを……! ロスタイムでパスをくれるっていうことは……!)


サッカー部員・フォワード・村田 ともか「山中さん、行くよ! 合わせて!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「……! わかった!」

サッカー部員・フォワード・村田 ともか「センタリング! 行っけぇっ!」バシッ!

ダダダダダッ


サッカー部員・フォワード・山中 あきえ(あんなにたくさん練習してきた……。うまくいかないことも多かったけど、それでもキャプテンは信じてくれた……!)

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ(絶対できる! ううん、やるんだ!)


バッ


サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「たぁぁぁぁぁっ!!」バシィッ!

村雨中・キーパー「!? セ、センタリングをトラップしないで、そのまま蹴った!? ダ、ダメだ、キャッチが間に合わない――」


バスッ!


サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「はぁっ……! はぁっ……!」

なお「……入った……!」

ピーッ! ピーッ! ピーッ!


審判「タイムアップ! 試合終了! 1-0 で七色ヶ丘中学校の勝ち!」


なお「……やった……!」

なお「やったぁぁぁぁぁっ!!」


サッカー部員・フォワード・村田 ともか「キャプテン! やりました! 優勝! 優勝ですよ!」

なお「うんっ……! うんっ……! 山中さん……! 最後、決めてくれてありがとう……!」

サッカー部員・フォワード・山中 あきえ「わ、わたしの方こそ……ぐすっ……、ありがとうございます……! 失敗続きだったわたしを信じてくれた、キャプテンのおかげです……っ!」

なお「ううん……! 山中さんが、ツラい練習もあきらめないでガンバったからだよ……!」


なお「山中さんだけじゃない……。ピンチを押さえてくれたディフェンスのみんなも……! いいセンタリングを上げてくれた村田さんも……! 誰一人いなくてもムリだったよ……!」

なお「みんな、本当にありがとう!!」

サッカー部員達「はいっ!」

~ 試合終了後 七色ヶ丘市 サッカー試合会場 観客席 ~

タタタタタッ


なお「みんな! あたし……、あたしやったよ! みんなが励ましてくれたおかげでガンバれた……! ありがとう!!」


みゆき達「…………」

なお「……あ、あれ……? ど、どうしたの、みんな、暗い顔して……。喜んで、くれないの……?」

みゆき「……違うの、なおちゃん。なおちゃん達が優勝したのは、うれしかったよ……」

なお「じゃあ、どうしてそんなに落ち込んでるの……?」


はるか「……なおちゃん。落ち着いて、よく聞いてね」

なお「え……?」

なお「――!!? れいかが、デスペアランドにさらわれた……!? な、なんでそんなことに……!?」

みゆき達「…………」


なお「みんなは……、みんなは何してたの!? どうしてれいかだけ行かせたりしたの!?」

ポップ「なお殿……、皆の衆を責めないでくだされ……。"騒ぎを大きくしたくない" というれいか殿の判断で相談しなかったから、知らなかったのでござる……」

なお「ど、どうして……! あたしがいなくてもみんながいれば、デスペアランドが強くったってどうにかできるんじゃ……!」

ゆかり「そうしたら……、わたし達がプリキュアになったら……、なおセンパイの試合がめちゃくちゃになっちゃうから……」

なお「……!」


ポップ「れいか殿は、守りたかったのでござる……! なお殿の大切な試合を……、3年間の努力を……! ここにいる、なお殿の大切な人達を……!」

ポップ「それら全てを守るには……、れいか殿が行くしかなかったのでござる……っ!」

なお「……あたしの……ために……」


なお「……ゴメン、みんな……。怒鳴っちゃったりして……」

ゆかり「わたしこそ、ごめんなさい……! わたしは、この事を知ってたのに、何もできませんでした……! わたしが、もっとしっかりしてれば……っ!」

マティ「ゆかりちゃん……」

なお「……行かなきゃ……。れいかを、助けに行かなきゃ……!」

あかね「うん……! なおの試合が無事に終わったんなら、もう何もエンリョすることあらへん……! デスペアランドギッタンギッタンにして、れいかを取り返すんや!」

やよい「もちろんだよ! れいかちゃん一人に、コワい思いなんてさせない!」

ポップ「あのイエロワという者は、町の裏山で待っていると言っていたでござる!」

みゆき「わかった! みんな、行こうっ! れいかちゃんを助けよう!」


5人「うんっ!」

~ 七色ヶ丘市 裏山 ~

タタタタタタッ


キャンディ「みゆき! いたクル! デスペアランドクル!」

みゆき「ホントだ! ポップの言ったとおりだね!」

イエロワ「おお、来よったか、プリキュア! そっちのちっこいのがちゃんと連れてきてくれたようじゃのう」

ポップ「れいか殿はどこでござる! 姿を見せるでござるよ!」

イエロワ「まぁ、そう焦るでないわ。すぐに会わせてやるわい。ふぇっふぇっふぇ……!」

なお「それなら、早くれいかに会わせて……! れいかを返してっ!」


みゆき「なおちゃん……、なんだか焦ってる……?」

あかね「当たり前やな……。幼なじみが危ない目にあっとんのやから、じっとしておれへんのやろ……!」


なお「……みんな、行くよ! 変身して、れいかを取り返すんだ!」

5人「うんっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

サニー「太陽サンサン、熱血パワー! キュアサニー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」

ヴェール「そよそよさざめく、優しい木陰。キュアヴェール!!」

イエロワ「準備はできたようじゃな。それでは見せてやるわ、ワシが作る最強のアキラメーナをのう!」


イエロワ「ふんっ!」スボッ


ズブズブズブ


ピース「……! あのイエロワって人、キャンバスの中に入っていくよ……!」

ノーブル「これは……、もしかして……!」


イエロワ『実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!』


バッ ドスゥゥゥンッ!


アキラメーナ(氷の結晶型)「ア……、ガァァァァァァァッ!!」


サニー「あのじいちゃん、アキラメーナと合体しよった!」

ヴェール「この前の、ウィスタリアって子とおんなじ……!」

マティ(デコル)「では、やはりすごく強くなっているのでしょうか……!?」


イエロワ『その通りじゃ! アキラメーナとの合体はワシ自身の力も奪うが……、もうワシの目的はお主達を倒すことのみ! 構いやせんわ!』

イエロワ『"終末の黒い絵の具" と、ワシの力を合わせたこのアキラメーナ……。今までとは比べ物にならんと思え、プリキュア!』

イエロワ『それに、このアキラメーナにはヒミツがあるのじゃ。お主らにとって、最悪のヒミツがのう』

ノーブル「最悪の、ヒミツ……?」

イエロワ『そうじゃ。ホレ、このアキラメーナの中心にある氷を見るがいい』

ハッピー「え、氷……? 確かに、体の真ん中に大きい氷がくっついてるけど……」


スゥッ…


サニー「あ、氷の色が透けて、中が少しずつ見えてきたで」

ピース「……あれ? あの氷、中に何か入ってる……?」

ノーブル「……ちょっと待って……。何か、って……あれは……!!」


マーチ「……れいか……!!?」


イエロワ『そうじゃ! 氷の中に入っておるのは、お主らが助けたがっている青木 れいかじゃよ!』


ハッピー「れいかちゃんっ……! こんなこと……、ヒドい……、ヒドいよ!」

ポップ「これではうかつに手が出せないでござる……! やはり人質にするつもりでござったか……! なんとヒキョウな!」


イエロワ『ふぇっふぇっ! 確かにそういう目的もあるがのう、それだけではないのじゃ! 見るがいい、ワシの最強のアキラメーナの力を!』

イエロワ『"デスペア・ブリザァァーーード"!!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァッ!!」


ドバァァァッ!! ゴォォォォォォォッ!!


ノーブル「うっ……! これは……吹雪……!? あのアキラメーナが出してるの……!?」

サニー「な、なんちゅう吹雪や……! 前も見えへん……っ!」

マーチ「"ブリザード" って、これじゃまるでビューティの "ビューティ・ブリザード" みたいな――」

マーチ「――まさか!?」


バッ ドスンッ


イエロワ『そう、そのまさかじゃよ、キュアマーチ!』

マーチ「!? いつの間に目の前に……!?」

イエロワ『ワシのパンチ、食らうがいいわ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァッ!』ブンッ


ドカァァァァァッ!


マーチ「うあぁぁぁぁっ!?」ドサッ

ハッピー「マーチっ! やられちゃったの!? うっ……、吹雪がすごくてなんにも見えない……っ!」

ドカァァァァァッ!


サニー「うわぁぁぁぁぁっ!?」

ハッピー「サニー!?」


ドカァァァァァッ!

ピース「わぁぁぁぁぁっ!?」

ヴェール「ピースセンパイ!?」


ノーブル「吹雪で見えない中、みんなどんどんやられてっちゃう……!」

ヴェール「皆さんがどこにいるかわからないから……、"ヴェール・カーテン" でも守れません……!」


ドスンッ


イエロワ『それならまず、自分を守っておくべきじゃったなぁ、キュアヴェール』

ヴェール「……!? もう近くに……! ヴェール・カーテ――」

イエロワ『遅いわ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァッ!』ブンッ


ドカァァァァァッ!


ヴェール「きゃぁぁぁぁぁっ!」ドサァッ

ハッピー「ヴェールっ!」

ノーブル「手も足も出ない……! どうすれば……!?」

イエロワ『プリキュア……、今まで手を焼かされてきたが、それもここまでじゃ!』

イエロワ『なにせ、今回はアキラメーナの力に、"プリキュアの力" まで加わっておるのじゃからのう!』

ノーブル「プリキュアの力……!? それじゃ、さっきマーチが言いかけた通り……」


イエロワ『そう! この青木 れいかはタダの人質ではない! この者の心にある "夢の絵の具" の力を少しずつ吸い上げ、それをアキラメーナの力としておるのじゃ!』

イエロワ『……まぁ、"夢の絵の具" と闇の絵の具は真逆の力。あまり使いすぎるとワシにまでダメージが出るが……、目くらまし程度に使う分には問題ないわ!』


イエロワ『最強の闇の絵の具・"終末の黒"!』

イエロワ『それに加えるワシの力!』

イエロワ『さらに、人質としての青木 れいかと、そこから得られるキュアビューティの力!』

イエロワ『カンペキじゃ! 負ける理由が見当たらんわ!』


イエロワ『覚悟せい、プリキュア! 今日がお前達の最後の日じゃ! ふぇーっふぇっふぇふぇふぇっ!!』


ハッピー「どうしよう……! このままじゃ、みんなが……!」

マーチ「……おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


ドバァァァァァッ!!


ハッピー「……! 吹雪が、風で吹き飛んだ……!?」

イエロワ『これは……、キュアマーチがやっておるのか……!?』

マーチ「……まだ……、まだ希望はある……っ! あんたをやっつけて、れいかを助ける希望が……!」

マーチ「キャンディ! マティちゃん! あたしに、"夢の絵の具" と "ホープブラッシュ" を貸して!」

キャンディ(デコル)「クル……!?」

マティ(デコル)「マーチ様……、それでは……!」

マーチ「あたしが "レインボー・フォーム" になる! まだ 1回もなってないけど……、やってみせる!」


ノーブル「そうだ、"レインボー・フォーム"! あの力ならどうにかできるかも!」

ハッピー「うん! キャンディ、おねがい! 外に出て、マーチに "夢の絵の具" を届けて!」


ポンッ


キャンディ「わかったクルぅっ!」


ヴェール「う……、マ、マティちゃんも……、おねがい……! マーチセンパイを……、助けてあげて……!」

マティ(デコル)「わかりました!」


キャンディ「(ゴソゴソ…) マーチっ! "夢の絵の具" が入った "レインボー・パレット"、受け取るクルぅっ!」ブンッ

マティ(デコル)「"ホープブラッシュ" よ! ピクチャーランド王女・マティエールが命じます! マーチ様の下へ!」バシュッ


パシッ パシッ


マーチ「ありがとう、二人とも……! 受け取ったよ……!」


イエロワ『む……!? これは……、"夢の絵の具" の真の力を出す気か……!?』

マーチ(……そうだ……、あたしは、絶対に負けるわけにはいかない……)


れいか(回想)『なお』ニコッ


マーチ(……っ!)ブルッ


マーチ(れいかのあの優しい笑顔……。それが、二度と見られなくなっちゃうかもしれない……! あの日見た夢みたいに……!)

マーチ(大切な人があたしの前からいなくなるなんて……、それだけは……、それだけは絶対にイヤだ……っ!)

マーチ(おねがい……、あたしに、れいかを守れる力をちょうだい……!!)


マーチ「"夢の絵の具" よ! "希望の絵筆" よ!」


マーチ「あたしに、"未来を描く" 力を!!」

シーーーン…


イエロワ『…………』


ハッピー「…………」

ノーブル「…………」

マジョリン(デコル)「何も……、起きないマジョ……?」


マーチ「……そんな……、どうして……!?」


ガクッ


マーチ「……あの力があれば……、れいかを助けられるのに……。どうして……、どうして出てくれないの……!!?」

マーチ「このままじゃ、れいかが……、れいかが……っ!」

イエロワ『……ふっ……』

イエロワ『ふぇーっふぇっふぇっふぇっ! 残念じゃったのう、キュアマーチ! 大事な友達を助ける力が出せんで!』

イエロワ『じゃが、当然じゃな。今のお主では到底 "夢の絵の具" の真の力を出すことはできんわい。お主の抱えておる "不安" を見れば、そのことがよーくわかるわ』

ハッピー「不安……!? マーチの……!?」


イエロワ『キュアマーチはのう、未来を恐れておるんじゃよ』

マーチ「……!!」

ノーブル「未来が……、怖い……?」

イエロワ『そうじゃ。これから来るかもしれない最悪の未来――自分が、青木 れいかを助けられず、二度と会えなくなる未来。それを恐れておるのじゃ』

ポップ「それは……!? マーチ殿、もしや、それはれいか殿と話をしていた時の……?」

マーチ「…………」

サニー「な、なんやポップ……。あのじいちゃんが言うとること、なんか知っとるんか……!?」


マジョリン(デコル)「……あたしも聞いてたマジョ……。マーチは、以前、ジョーカーが町を襲った時、自分の力で家族を助けられなかったことを気にしてたマジョ……」

マジョリン(デコル)「だから、"もしまた、自分の力で誰かを守れない時が来たらどうしよう" って、不安になってたマジョ……」

ハッピー「マーチ……、そうだったの……!?」

ポップ「しかしマーチ殿……、その時れいか殿にはげまされ、勇気をもらったのではなかったのでござるか……!?」


イエロワ『ふぇっふぇっ、一度心に浮かんだ不安はそうカンタンには消えやせんわい』

イエロワ『仮にその場は元気になったとしても、いずれまた不安は心の中で大きくなる。押さえられないほどにのう!』

イエロワ『"夢の絵の具" の真の力は、未来への希望とやらで出るんじゃったなぁ? じゃが、不安を抱えたままで、真の力など出せるものなのかのう!?』

イエロワ『最悪の未来を恐れ、怯えているお主に、未来への希望が持てるのかのう!?』

イエロワ『ムリに決まっておるわ! さっきのお主は、不安をごまかすために "夢の絵の具" の力を求めたにすぎんのじゃから!』

イエロワ『今のお主には何にもありゃせんわい! 勇気も! 未来への希望も! 人を守るための力も! 何ものう!』


イエロワ『しょせんお主には何もできんのじゃ!!』

マーチ「……っ!!」

サニー「……黙って聞いとったら、スキほうだい言いよって……っ! マーチは……、マーチはそんなに弱ないわ! 言い返したり、マーチ!」

マーチ「…………」

ピース「……マーチ……? どうしたの、マーチ……!? 何か言ってよぉ!」

ハッピー「そうだよ! ツラくったって、ガンバらないと……! このまま、れいかちゃんが……、れいかちゃんが……!」

マーチ「…………」

ハッピー「マーチっ!」

イエロワ『ふぇっふぇっふぇ、あまりムチャを言うもんではないわ』


イエロワ『青木 れいかを助けようとガンバって……、それでもダメじゃったらどうなる? もう何もできず、大切な友達との未来がなくなる、という事実を受け止めるしかできなくなるではないか』

イエロワ『今のキュアマーチは、その "絶望" から目を背けようと必死なのじゃよ』


マーチ「…………」ブルブル…

マジョリン(デコル)「マーチ……!」

イエロワ『……さて、キュアマーチ、不安に苦しむのはツラいじゃろう? 今すぐラクにしてやるわ』

アキラメーナ(氷の結晶型)「アキラメーナァ……!」


ズンッ!


マーチ「っ!」ビクッ

イエロワ『ふぇっふぇっ、アキラメーナが近づいただけでそんなに震えて……、かわいそうにのう。じゃが、ここでやられてしまえば、もう苦しむ必要はなくなる』

イエロワ『そのまま大人しく、あきらめるがよいわ』


アキラメーナ(氷の結晶型)「アキラメーナァッ!」グワッ


ノーブル「アキラメーナが手を振り上げて……! マーチ、危ない! パンチが来るよ!」

マーチ「…………」

ノーブル「マーチっ!」

サニー「あかん……、ぼーっとして、聞こえてへんのか……!?」

ピース「な、なんとかしないと……! このままじゃ、マーチまで……!」

マーチ(……あの時見た夢が……ホントのことになっちゃった……)

マーチ(あたしは何もできない……。力がないから……、大切な友達も……守れない……)


マーチ(みんなの笑顔を守るあたしの未来……。その未来が……見えなくなっていく……)

マーチ(あたしの希望が……消えていく……)


イエロワ『ふぇっふぇっ! さぁ、これでバッドエンドじゃ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァッ!』ブンッ

マーチ「…………」


ハッピー「マーチィィィっ!」

バッ


ヴェール「"ヴェール・カーテン・ハート" っ!」


ガキィィィィンッ!


イエロワ『んむ!? キュアヴェール……、間に入ってアキラメーナのパンチを受け止めよったか……、ちょこざいな!』

ノーブル「……! 今だっ!」


ノーブル「"ノーブル・ミスト" っ!」


ブワァァァァァァッ…!


イエロワ『これは……霧……!? しもうた、霧が濃すぎて何も見えん……! さっきの吹雪の仕返しのつもりか……!?』

ノーブル「今のうちだよ! みんな、ここは一旦逃げよう!」

ハッピー達「え……!?」

ノーブル「誰も何にもできない今のままじゃ、どうにもならない……! とりあえずここを離れて、どうするか考え直そう!」

ハッピー「で、でも……!」

ピース「私達が逃げちゃったら……、れいかちゃんは、どうなるんですか……!?」

サニー「そうですわ! 何もでけへんでも、今こそきばらなあかんのやないですか!?」


ノーブル「落ち着いて! 私達がここでやられちゃったら、誰がれいかちゃんを助けるの!?」

ハッピー達「……!」

ノーブル「れいかちゃんを守るためにも、私達は絶対にやられるわけにはいかない……。だから、ここは逃げよう……! おねがい、わかって……!」


ハッピー達「…………」

ハッピー「……わかりました。行こう、みんな」

サニー「ハッピー……!? それでええんか……!? れいかが、あんな目にあわされとるのに――」

ハッピー「いいわけないよ! ないけど……! ノーブルの言う通りだから……!」

ハッピー「れいかちゃんのことが大好きなノーブルだって……、きっとツラい気持ちで言ってくれてるはずだから……!」

ノーブル「ハッピー……、ありがとう。それじゃ、行こう。マーチも。肩を貸すからしっかりして」グイッ

マーチ「…………」


ダッ


ピース「……くやしいよ……! なんにもできないなんて……!」

サニー「そのくやしさ……、後で一億万倍にしてあのじいちゃんに返したろ……! ほんで、れいかを助けるんや……!」

ハッピー「うんっ……!」


タタタタタッ…

イエロワ『"デスペア・ブリザァァーーード"!!』


ドバァァァッ!! ゴォォォォォォォッ!!


イエロワ『ふん! これしきの霧、吹雪で吹き飛ばしてしまえばよかったのじゃ! プリキュア! 何をしようとしていたのか知らんが、そろそろ覚悟を――』


シーーーーン…


イエロワ『――誰もおらん……。逃げよったか……!? あのままムリヤリ戦ってもらえれば、全員ラクに倒せたというに……、こしゃくなヤツらじゃ……!』


イエロワ『……まぁ、よいわ。ヤツらが青木 れいかをこのままにしておくはずがなかろう。きっとまた取り返しに来るはずじゃ。結局、ワシの勝利は変わらん!』

イエロワ『せいぜいガンバってやられにくるがよいわ! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!』

~ 七色ヶ丘市 裏山 小洞窟の中 ~

ピース「裏山にこんな洞窟があったんだね……。知らなかったよ」

ノーブル「隠れるにはちょうどいいね。ここで少し休もう」


マーチ「……ゴメン、みんな……。あたしのせいだ……。あたしが、あそこで "レインボー・フォーム" になれてれば……」

ノーブル「マーチ、自分を責めちゃダメだよ。誰も、……私も、何もできなかったんだから、マーチだけのせいじゃないよ」

マーチ「だけど、これまでみんなは、どんなに苦しい目にあっても、ガンバって立ち上がって、強くなれた……。……なのに、あたしにはそれができなかった……」


ハッピー「……でも、どうしてなのかな……。マーチだって、今までずっと、ツラくっても勇気を出してガンバってきたのに……」

サニー「せやな……。それも、よりによって、マーチにとっていっちゃん大事なれいかがピンチやっちゅう時に……」

マーチ「……だからだと思う……」

マーチ「れいかが……、弟達より長くいっしょにいたれいかが、いなくなったらと思うと……、あたしが、守れなかったらと思うと……、コワいの……!」

マーチ「前みたいな……、弟達がいなくなったと思った、あの時みたいな……、あんなことがれいかにあったらと思うと……、震えが止まらないの……っ!」


マジョリン(デコル)「……!!」


マジョリン(デコル)(……それって、あたしがマジョリーナだった時の――、マーチの家族を襲った時のことマジョ……)

マジョリン(デコル)(あたしはマーチに許してもらえたけど……、やっぱりマーチはあの時のことをずっと憶えて、気にしてたマジョ……!)

ピース「でも、だからって何もしなかったら、れいかちゃんが――」

マーチ「それもわかってる! でも……、でも……、コワいの……! 何もできる気がしないの……!」


マーチ「……イエロワの言う通りだよ……。あたしには、人を守るための力が足りない……。人を守ることができない……」

マーチ「そのことがわかった途端に、全部……コワくなっちゃった……。未来に向かうことも……、誰かを守るために、戦うことも……」

マーチ「れいかを助けなきゃいけないのに……! れいかのことを大切に思えば思うほど、いなくなった時のことが、自分が守れなかった時のことが、コワくてしかたないの……!」

マーチ「だから、"ホープブラッシュ" だって、あたしに力を貸してくれなかった……。あたしが、コワがってばかりいるから……!」


マーチ「あたしには……、誰かを守れる "勇気" なんてないんだ……っ!」


ハッピー「マーチ……」

ヴェール「…………」

ヴェール「……マーチセンパイ。センパイに "勇気がない" なんて、そんなこと……、ないと思います」

ヴェール「だって、さっきわたしは、マーチセンパイを守ることができたから」

ハッピー「ヴェール……? どういうこと?」


ヴェール「……前のわたしだったら、誰かを守るために、あんなにコワいオバケの前に飛び出すなんて、ムリだったと思います……」

ヴェール「でも、できました。マーチセンパイを守らなきゃ、って思ったら、勇気を出して、センパイを守ることができました……」


ヴェール「マーチセンパイ……。わたしが、誰かを守れるようになったのは、マーチセンパイのおかげなんです……! "誰かを想う気持ちが勇気になる"。そう、マーチセンパイに教えてもらったから……!」

ヴェール「だから、そんなマーチセンパイに "勇気がない" だなんて、わたしは思いません……!」

マーチ「…………」

スクッ

スタスタスタ


サニー「ヴェ、ヴェール? 立ち上がって、どこ行くんや……?」

ヴェール「……れいかセンパイを助けに行きます」

ヴェール「わたしだって、痛いのはやだし……、あのイエロワって人はコワいし……、……れいかセンパイを助けられないかもしれないけど……、でも……!」


ヴェール「でも、れいかセンパイに二度と会えないのは、もっとイヤだから! だから、コワくっても行きたいんです!」

ヴェール「それが、マーチセンパイにもらった、小さくても、わたしの大切な勇気だから……!」


マーチ「……!」

スクッ


サニー「……っちゅーても、ヴェール、戦ったりすんの、得意やないやろ。うちもいっしょに行くわ。二人なら何とかなるかもしれへんしな!」

ヴェール「サニーセンパイ……!」


スクッ


ピース「サニーだけじゃないよ。私もいっしょに行くよ」

ノーブル「私も行くよ。どうすればいいか思いつかなかったけど……、だからって何もしないわけにはいかないもんね!」

ハッピー「私も。だって、私達みんな、ヴェールとおんなじ気持ちだから……」


ハッピー「れいかちゃんが、大好きだから!」

ヴェール「みなさん……!」

スクッ


ポップ「……皆の衆、先ほどはお役に立てず、すまなかったでござる。今度は、拙者も共に戦うでござるよ」

ノーブル「え……!? ポップ君、気持ちはありがたいけど、あまりムリしない方が……」

ポップ「そういえば、ノーブル殿にはお見せしていなかったかもしれないでござるな。拙者も、変化の術で皆の衆のお手伝いくらいならできるでござるよ」

ノーブル「……ホントなの?」

ハッピー「はい! 前に何度も助けてもらったことがあるんです!」

ポップ「それに……、れいか殿は拙者の大切なパートナーでござる。皆の衆と同じように、見過ごしてはおけないでござるよ!」

ピース「ポップ……、そうだね!」


ハッピー「それじゃあ、行こう、みんな。今度こそ、れいかちゃんを助けなきゃ……!」

4人「うん!」


マジョリン(デコル)「……マーチは? マーチは、行かないマジョ……?」

マーチ「……あたしは……」

ハッピー「……ねぇ、マーチ。前にも似たようなことがあったよね。キャンディがバッドエンド王国に連れて行かれちゃった時のこと」

サニー「……あったな。ジョーカーに連れてかれてもーて、そのジョーカーにうちら手も足も出んで……、キャンディを助けるかどうかで迷った時のことやな」

ハッピー「うん」


ハッピー「あの時も、私達にはキャンディをちゃんと助けられるかどうかなんて、わからなかった」

ハッピー「でも、みんな一人になって、それぞれ考えて……。みんなが出した答えは、おんなじだった」

ハッピー「キャンディを……、大切な友達を助けたい、って」

キャンディ(デコル)「そんなことがあったクル……」


ハッピー「マーチだって、あの時は同じ答えを出して、ツラくってもガンバれた。みんながガンバれたから、私達は今こうしていっしょにいられる」

ハッピー「だから、今度だってきっと大丈夫! "れいかちゃんがいなくなる" っていう最悪の未来がどんなにコワくても、マーチはきっと立ち向かっていける! そう、信じてる」

マーチ「…………」

ハッピー「だから、先に行くね」

サニー「待っとんで」

ピース「ヒーローみたいに、後でカッコ良く来てね!」

ノーブル「れいかちゃんもきっと、マーチを待ってるよ」

ヴェール「それじゃ……、行ってきます」


スタスタスタ…


マーチ「…………」

マーチ(……キャンディを助けた時のこと、か……)

マーチ(そういえば、あの時、みんなで手を重ねて、ガンバろうって誓ったっけ……)


みゆき(回想)『……5つの光が導く未来』

みゆき(回想)『輝け……!』

5人(回想)『スマイルプリキュア……!』


マーチ(…………)


ギュッ


マーチ(……こうして、手を握ると思い出せる……。あの時のみんなの手、あったかかった……)

なおの家族達(回想)『ガンバれ、緑川 なお! おーっ!』

マーチ(この間、家族みんなに円陣を組んで手を重ねてもらった時も……)


れいか(回想)『あの時、私はなおに勇気をもらったわ。だから、今なおが不安になっていることがあるなら、今度は私が、それに立ち向かうための勇気をあげたい』

れいか(回想)『なおには、いつでも元気でいてほしいから』

マーチ(れいかに、手を握ってはげましてもらった時も……)


マーチ(……みんなの手が……、あったかかった……)


幼いれいか(回想)『だいじょうぶだよ、なおちゃん。おててあったかいからひとりぼっちじゃないよ。こわくないよ』


マーチ(…………)

マーチ(……あたしは……)


マーチ(……あたしは……っ!)

~ 七色ヶ丘市 裏山 ~

ドガァァァァッ!


ハッピー「わぁぁぁっ!?」ドサァッ

キャンディ(デコル)「ハッピーっ!」


イエロワ『ふぇーっふぇっふぇっふぇっ! 思ったとおり、青木 れいかを取り返しにまた来たようじゃが、ムダじゃムダじゃ! 今のワシには何をしようと通用せんわ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァッ!!」


ゴォォォォォォォッ!!


ノーブル「うっ……!? やっぱり、この吹雪をどうにかしないと……!」

サニー「うちの炎でも、こんな強い吹雪は消せへん……!」

ピース「……マーチがいてくれたら、さっきみたいに風で吹き飛ばしてくれるのに……!」


イエロワ『んむ? そういえば、キュアマーチがおらんのう。ふぇっふぇっふぇ! これはユカイじゃ! 今頃どこかで、怖くてふるえておるのかのう!?』


ハッピー「そんなこと……ない……! マーチは来るよ……、絶対……!」

ハッピー「だって……、私の知ってるマーチは、強くて……、カッコよくって……!」


ハッピー「どんな時だって真っ直ぐに進む、勇気の人なんだもん!」

ヴェール「ハッピーセンパイ……!」


イエロワ『……まったく、あやつに勇気などない、と教えてやったろうに……、わからんヤツじゃ』

イエロワ『まぁ、よかろう! それなら、来ないキュアマーチをいつまでも信じながらやられるがいいわ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「アキラメーナァッ……!」グワッ


キャンディ(デコル)「ハッピー! パンチが来るクル! よけるクルぅっ!」

ハッピー「うん……! (ズキッ) うっ……!? か、体が、動かない……っ!?」

イエロワ『ふぇっふぇっ! これはいい! 今の攻撃が効いたようじゃのう!? そのままじっとしておれ!』


ポップ「ハッピー殿が危ない……!? どこでござるか、ハッピー殿っ!?」

ヴェール「ハッピーセンパイ……! 守りたいのに……、吹雪でなんにも見えない……!」


イエロワ『これで最後じゃ! キュアハッピー!!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


キャンディ(デコル)「ハッピーぃぃぃぃっ!」

ハッピー「……っ!」

ブワァァァァァァッ!


イエロワ『むおっ!? な、なんじゃこれは……? 風……?』


サァァァァァッ…


ピース「吹雪が……晴れて……」

ノーブル「ハッピーとアキラメーナが見える……!」


バッ


イエロワ『むっ……!? なんじゃ……、何かがキュアハッピーを連れ去りよった……!』

ザァッ


ハッピー「あ……!」


5人「マーチっ!」


マーチ「ゴメン、みんな。遅くなっちゃった。ハッピー、だいじょうぶ?」

ハッピー「……うんっ! マーチが抱きかかえてくれたおかげで助かったよ! ありがとう!」

マーチ「うん……!」


アキラメーナ(氷の結晶型)「アキラメーナァッ……!」ズンッ

マーチ「っ……!」ビクッ

イエロワ『ふん、しょうこりもなく来おったか、キュアマーチ。大人しくふるえておればいいものを』


イエロワ『(ジッ) ……見えるぞ、お主の不安が……! 先ほどまでとまるで変わっておらんではないか! 相変わらず、大切な者を失うかもしれない、という不安で、お主の心は真っ黒じゃ!』

イエロワ『それではやはり力は出せまい!? わざわざやられに来おったか!? ご苦労なことじゃ!』


マーチ「…………」

マジョリン(デコル)「マーチ……!」

スッ

ギュゥッ…!


マーチ「…………」


イエロワ『……ん? なんじゃ? キュアマーチ、握りこぶしをじっと見つめて、何をしておる?』


マーチ「…………」


マーチ(……もしここでうまくいかなかったら、きっとれいかとはもう二度と会えない……)

マーチ(あたしには、れいかを助けるための力が足りない……。絶対うまくいくかどうかなんて……わからない……!)

ギュゥッ…!


マーチ(……でも、だいじょうぶ……。あたしの手はあったかい……!)

マーチ(あたしのことを応援してくれたみんなの手のあったかさを、ちゃんと憶えてる……。ちゃんと感じてる……!)


幼いれいか(回想)『だいじょうぶだよ、なおちゃん。おててあったかいからひとりぼっちじゃないよ。こわくないよ』


マーチ(……っ!)


マーチ(この手のあったかさをあたしが忘れない限り……、あたしは負けない……! 負けないんだ……っ!!)

マーチ「……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ブワァァァァァァッ!


イエロワ『む……! キュアマーチめ、風をまといおった……! これでは吹雪が通じん……!』


ダッ!


マーチ「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ノーブル「マーチ……!? そのまま突っ込んだ……!」

サニー「あかん! そいつ強いで! いくら吹雪がなくなっても、"レインボー・フォーム" でもないのに、一人じゃムチャや!」

マーチ「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ダダダダダッ


イエロワ『ふぇっふぇっ! キュアマーチ! 仲間の忠告くらい聞いたらどうじゃ!? そぉれ、返り討ちじゃ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


マジョリン(デコル)「マーチっ! アキラメーナのパンチが……!」

マーチ「……!」


ドガァァァァァッ!


マーチ「うあぁぁぁぁぁぁっ!?」


イエロワ『ふぇっーふぇっふぇっふぇっ! このパンチの鋭さでは避けることもできんじゃろう!? キュアマーチはこれで終わり――』


マーチ「……っ!!」ギリッ


ザァァァァァァァッ!


イエロワ『……!? なんじゃと……!? パンチで吹き飛ばしたのに、倒れず、踏みとどまりおった……!?』

ダッ!


マーチ「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


イエロワ『……!? また突っ込んで来よった……!?』

イエロワ『……まぁよいわ。やられに来てくれるなら、遠慮なく叩きのめしてやるわ! アキラメーナ、パンチじゃ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


ドガァァァァァッ!


マーチ「……ぅぁっ……!?」


イエロワ『ふぇっふぇっ! どうじゃ、今度こそおしまい――』


ザァァァァァァァッ!


イエロワ『……! またこらえよった……!』


マーチ「はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!」

イエロワ『……なんなんじゃ、お主は……!? 何もできんのに、なぜ突っ込んで来る!?』

イエロワ『自分の力のなさはもう十分わかっているじゃろう!? お主には青木 れいかを守ることなどできん!』

イエロワ『待っておるのは、友達のいない絶望の未来だけじゃぞ!? いいかげん、あきらめんか!』


マーチ「それでも! できるかどうかわからなくっても!!」


源次(回想)『いいか、なお。自分が "こう" と決めたことがあるんなら、真っ直ぐに、最後まで絶対やり抜け。それができるように、って願って "直(なお)" って名前にしたんだからよ。名前負けしたら承知しねえぞ』

マーチ(……そうだ、あたしは……、あたしは……!)


マーチ「あたしは! こうと決めたら絶対やり抜く、一直線の緑川 直! どんな時でも直球勝負だ!!」

マーチ「できるかどうかは関係ない! 絶対に、れいかを助ける!! それだけだよ!!」キッ


イエロワ『……うっ……』


ハッピー「……なおちゃん……!」

ヴェール「……なおセンパイ……!」


イエロワ(……いかん、ワシとしたことが、キュアマーチの迫力に一瞬だじろいでしもうた……!)

イエロワ(……本当に、なんなんじゃ、こやつは……!?)

イエロワ(ワシには、キュアマーチの心は手に取るようにわかる……! 変わらず、不安と恐怖で真っ黒じゃ……!)


イエロワ(……なのに、なぜそんな声が出せる……!? そんな強い目ができる……!? そんな気迫が出せる……!!?)

イエロワ(わからん……! まったくわからん……っ!)


ダッ!!


マーチ「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


イエロワ『……っ!?(ビクッ) また、突っ込んで来よる……!』


イエロワ『……えぇい、うっとうしいわぁっ! そんなにやられたいなら、渾身の一発で終わらせてやるわい!!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


マジョリン(デコル)「マーチっ! またパンチが来るマジョ!」


イエロワ『これで、終わりじゃぁぁぁぁっ!!』

ヴェール「"ヴェール・カーテン"っ!!」


パキィィィィンッ!

ガァァァァンッ!


イエロワ『!? パンチの出がかりを葉の盾で止められた!? おのれ、キュアヴェール……! またジャマしよるか……!?』


マーチ「ヴェール……!」


ヴェール「マーチセンパイ! 前へ行ってくださいっ! そのために、わたしにできることがあるなら何でもします!」

ヴェール「だから……、だかられいかセンパイを、助けてくださいっ! お願いします!!」


マーチ「……ありがとう……!!」


ダッ!


イエロワ『真っ直ぐにワシの方に向かって来よる……! どうあっても、青木 れいかを助ける気か……!』

イエロワ『じゃが、右のパンチが止められても、まだ左が残っておるわ! こちらで叩けば済むだけのことよ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


バッ


ポップ「盾変化の術っ!!」ドロンッ!


ガシッ


ハッピー・サニー「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ガキィィィィィンッ!


ポップ「くぅぅっ……!?」

ハッピー・サニー「うぅぅぅぅぅっ……!」グググッ…!


イエロワ『……!? こやつは、キュアビューティのパートナー妖精……!? 盾に変身してパンチを受け止めたところを、キュアハッピーとキュアサニーが支えておるのか……!?』


マーチ「ハッピー……、サニー……、ポップ……!」


ハッピー「行ってぇっ、マーチィィっ!!」

サニー「れいかを助けられるんは……、れいかのためにいっちゃん強い気持ちが出せるんは……、いっちゃん付き合いの長いマーチや! その気持ち、全部ぶつけたれぇぇっ!!」

ポップ「れいか殿を……、拙者の大切な友達を……、頼むでござる、マーチ殿っ!!」


マーチ「……うんっ!!」


ダッ!!


イエロワ『両手が……、動かん……! おのれ……!』

イエロワ『……だが、まだ勝ったと思うでないわぁぁぁっ!!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「アガ」カパッ


ズズズズズッ…!


マーチ「!」

ハッピー「な、何あれ……!? アキラメーナの口の奥から、何かがゆっくり出てくる……!?」

サニー「あれ、もしかして、めっちゃでっかいツララか!?」


イエロワ『そうじゃ! 両手が動かんでも、まだこれがあるわ!』

イエロワ『この特大ツララバズーカで、お主ら全員まとめて吹っ飛ばしてやるわぁっ!』

ノーブル「そんなことは!」

ピース「させないんだからっ!」


ビュルルルルッ! ビシィッ!


イエロワ『む……!? アキラメーナの体に何か巻きついてきよった……。これは……、水のムチ……!?』

ノーブル「"ノーブル・ウィップ" ……! マーチが吹雪を消してくれたおかげで、みんなが両手を止めてくれたおかげで、やっと届いた!」

イエロワ『だからどうした!? この程度のパワーで、ワシのアキラメーナを止められると――』

ノーブル「思ってないよ! だからこうするの! お願い、ピースっ!」

ピース「はいっ! ノーブル、ムチを離してくださいっ!」


イエロワ『なんじゃ……!? 何をするつもり……、はっ!』

イエロワ『キュアピースの力は、たしか雷……、まさか……!?』


ピース「プリキュア! (ピシャァン!) ……っ! ピース・サンダーァァッ!!」


ババババッ!


イエロワ『雷が……、水のムチを伝って……!』


バリバリバリバリッ!!


イエロワ『うおぉぉぉぉぉっ!?』


ピース「やったぁっ! 大成功!」

ノーブル「そのアキラメーナがどんなに強くても、これなら絶対にピースの雷を当てられる!」


イエロワ『お、おのれ、こ、こしゃくなぁぁぁっ……!』

イエロワ『じゃが、この程度の雷でワシのアキラメーナが倒せるとでも思うたか!? 大して効きはせんわ!』

ノーブル「それもわかってる! でも、これでいいんだ! ほんのちょっとでも、アキラメーナの動きがシビれて止まってくれれば!」

イエロワ『なんじゃと……!?』


バッ


マーチ「(ガシッ!)」


イエロワ『キュアマーチ……! いつのまにアキラメーナに飛びついた……!?』

イエロワ『しかも、あやつが掴まっておるのは……、青木 れいかの氷……! いかんっ……!』


れいか「――――」

マーチ「れいか……。今、助けるよ……!」

マーチ「……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ブンッ


ビシビシッ…!

バギャァァァッ!


イエロワ『……! パンチで氷を突き破って……、キュアマーチの手が中に……!』


ギュッ


マーチ「……!! れいかの手……、つかめた……! やっと……、やっと届いた……!!」

マーチ「後は、このまま……! んんんんんんんっ……!!」グィィィィッ…!


ビシビシッ…! バキッ…!


イエロワ『キュアマーチ……、青木 れいかを氷から引きずり出す気か……!?』


イエロワ『……じゃが、そううまくいくほど甘くはないわ!』ニヤァッ


パキパキパキパキッ…!


マーチ「!?」

マジョリン(デコル)「マーチ! 手が、氷に入れたところから、ドンドン凍っていくマジョ!」


イエロワ『ふぇっふぇっふぇっ! そのままお主も氷の中に取り込まれるがいいわ!』

イエロワ『そうすれば、このアキラメーナはキュアビューティの氷の力に加え、キュアマーチの風の力をも手に入れることができる! 誰も止めることのできん猛吹雪が使えるようになるじゃろう!』

イエロワ『その力をもって、残りのプリキュア達も全て倒してくれるわ!! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!!』


パキパキパキッ…!


マーチ「……っ!」

マジョリン(デコル)「マーチ、マズいマジョ! このままじゃ、あいつの言う通り、マーチまで氷づけに――」


マーチ「……心配いらないよ、マジョリン……。あたしは、こんな氷に……捕まったりしない……っ!」

マーチ「こんな氷……、ちっとも冷たくない……!」

マーチ「どれだけ、あたしの体が凍っても、寒くもないし、もう……コワくもない……!」


マーチ「……だって……」

マーチ「……だって……!」


ギュッ


マーチ「れいかとつないだ手が、こんなにもあったかいから!!」

グィッ!


マーチ「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


ビシビシビシィッ!


イエロワ『……自分が凍るのも構わず、青木 れいかを引きずり出しておる……。"夢の絵の具" の真の力を出したわけでもないのに、なんじゃ、このパワーは……! 一体どこから出ておる……!?』

イエロワ『このままでは……、このままでは……!』


マーチ「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


バリィィィィィィィンッ…!!

れいか「…………」フラッ

マーチ「……れいか……っ!」


ギュッ


ハッピー「……やった……、やったぁっ……!」

ポップ「マーチ殿……! 見事れいか殿を救い出し、抱きとめたでござる……!」


マーチ「……れいか……、れいか……っ!」ギュウッ…

れいか「…………な……お……」


マーチ「れいか……!? 気がついたの……!?」

れいか「……ええ……。……ずっと、聞こえてた……。私を……助けようと……してくれる……皆さんの声……」

れいか「……それに……、あきらめないで……頑張ってくれた……、なおの声も……!」

れいか「……ありがとう……、なお……!」ニコッ…


マーチ「れいか……! うん……っ!」

マーチ「でも、れいか、もうしゃべらないでいいよ。あんなヒドい目に合わされてたんだもん……、疲れてるでしょ? 今は、ゆっくり休んで」

れいか「……ええ……」カクッ

ポップ「……! れいか殿!」

マーチ「だいじょうぶだよ、ポップ。気を失っちゃっただけみたい」


マーチ「サニー、れいかをお願い。体が冷え切っちゃってる……! 暖めてあげて……!」

サニー「あ……、よ、よっしゃ! 任しとき!」

マーチ「ポップ。れいかを見ててあげて」

ポップ「心得たでござる!」

イエロワ『…………』

イエロワ『計算外じゃ……! よもや、"夢の絵の具" の真の力無しに、青木 れいかを奪われようとは……!』


イエロワ『……じゃが、まだじゃ……! まだ、ワシにはこのアキラメーナが残っておるわぁっ!!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァッ!!」


ズンッ!


ヴェール「……! あの人……、れいかセンパイをとられたのに、まだ……!?」

イエロワ『当然じゃ! 青木 れいかを失っただけでは、氷の力が使えなくなったにすぎん! アキラメーナ自体の力は変わってはおらんわ!』

イエロワ『青木 れいかを救い出すのにボロボロのお前達で、このアキラメーナを倒せるか!? ムリじゃろう!?』

イエロワ『キュアマーチ! せっかくガンバったのに、残念じゃったのう! どうあがいても、お主らには絶望の未来しか残されていないのじゃ! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!』


マーチ「……そんなことないよ」

イエロワ『ふぇ……?』

マーチ「……確かにさっきまでは、"れいかがいなくなっちゃうかもしれない" って、不安で……、コワくてしょうがなかった……」


マーチ「でも、大切な人達みんなの手のあったかさが……、れいかの手のあったかさが、あたしに教えてくれた。……本当の勇気を」

マーチ「だから希望は……、この手の中にあるっ!!」


バッ

パァァァァッ…!


マティ(デコル)「マーチ様が握っているあれは……、"ホープブラッシュ" !」

ヴェール「緑色に……光ってる……!」


マーチ「これが、あたしの希望の色……。勇気の光……!」


イエロワ『なんじゃと……!? さっきは使えておらんかったではないか……!』

マーチ「……さっきまでのあたしは、コワさのせいで、大事なことを忘れてた」

マーチ「未来がどんなにコワくったって……、それをどうにかできる力がなくったって……、それに立ち向かう勇気を出すだけならできるってことを!」

マーチ「力が勇気をくれるんじゃない……! 勇気が、力になるんだ!!」


マーチ「……もう、あたしは未来をコワがったりしない。どんなにツラいことがあったって、何度だってぶつかっていく! ただ真っ直ぐ行って、突き抜ける!」


マーチ「それが、みんなが教えてくれた、あたしの本当の勇気! あたしがなりたい、"希望のあたし" なんだ!!」


バァァァァァァッ!!


イエロワ『うっ……!? 絵筆の光がどんどん強く……!』


マーチ「今のあたしならきっとできる……! マジョリン、力を貸して……!」

マジョリン(デコル)「……やっぱり、マーチはそうでなくっちゃダメマジョ! マーチ! いつも通り、勇気リンリンで行くマジョっ!!」

マーチ「うんっ!!」

マーチ「"夢の絵の具" よ! "希望の絵筆" よ!」


マーチ「あたしに、"未来を描く" 力を!!」


シュバァッ!!


ハッピー「"ホープブラッシュ" から、マーチの絵が浮かんだ……!」


スゥゥゥゥッ


サニー「絵がマーチに重なってく……!」


バシャァァァァァンッ…!


マーチ「……これがあたしの、"なりたいあたし"」


レインボーマーチ「"レインボーマーチ"っ!!」

ピース「……やった……! やったよ、マーチ! マーチも、"レインボー・フォーム" になれたっ!」

ノーブル「……未来がコワくても、しっかり向き合って立ち向かう……。その姿が、マーチが見つけた希望なんだね……!」


イエロワ『……まさか、キュアマーチまで "夢の絵の具" の真の力を発揮するとはのう……!』


イエロワ『じゃが、その力、どれほどのものか! さっきまで怯えておったお主に、今のこの最強アキラメーナが倒せるか――』


キュンッ!


Rマーチ「倒せるよ」

イエロワ『……!? い、いつの間に後ろに……! 動きが全く見えんかった……!』


Rマーチ「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ブンッ


ドガァァァァァッ!!


イエロワ『うぉぉぉぉぉぉぉっ!?』


ズガァァァァァンッ!!


ハッピー「……マーチ、すごい……。キック一発で、あの強いアキラメーナが吹き飛ばされちゃった……」

イエロワ『ぐっ……、おのれ、キュアマーチ……! しかし、パワーならば負けてはおらんわぁっ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ドスンッ ドスンッ


ピース「マーチ、アキラメーナが来るよ! 気をつけ――」


Rマーチ「(キュンッ!)」


イエロワ『……! また消えよった……! 今度はどこに……!?』


Rマーチ「足元だよ。はぁっ!」


ドガァァァァァッ!


イエロワ『ぬぉぉぉっ!? お、おのれ、ちょこまかと! うっとうしいわ!』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ガァァァァァァァァァッ!!」ブンッ


キュンッ! ドガァァァァッ!


イエロワ『がっ……!? こ、今度は右から蹴られた……!? その上、速すぎて攻撃も当たらん……!』


キュンッ! ドガァァァァッ!

キュンッ! ドガァァァァッ!

キュンッ! ドガァァァァッ!


イエロワ『ぐっ、ぐおぉぉぉっ!? 見えないスピードで移動しながら、全く違う方向から攻撃してきよる……!』


イエロワ『なぜじゃ……、なぜじゃぁぁぁっ!? ワシの、最強のアキラメーナが、なぜ全く歯が立たんのじゃ!?』


Rマーチ「それは……、あんたが一人で戦ってるからだよ」

イエロワ『……なんじゃと……?』

Rマーチ「あたしのこの力は……、勇気は、あたしの周りのたくさんの人がくれたもの」

Rマーチ「あたしがれいかを助けられるようにしてくれたのは、プリキュアのみんな」


Rマーチ「あたしの力は、あたし一人のものじゃない! みんながいてくれて、初めて出せる力なんだ!」

Rマーチ「たくさんの人達に力をもらってるあたしと、たった一人で戦ってるあんた。力の差が出て当然だよ!」


Rマーチ「みんながあたしに力をくれること……。これって、すごい幸せなことだと思う……」

Rマーチ「その力で、みんながくれる力で、あたしはみんなの笑顔を守ってみせるっ!!」


Rマーチ「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


イエロワ『キュアマーチの体が……、竜巻に包まれていきよる……!』

バッ


Rマーチ「プリキュア! マーチシュート・トルネェェーーードッ!!」


ギュルルルルルッ!!


イエロワ『回転したまま、とび蹴り……!? こちらに向かって飛んで――』


ドガァァァァァァァッ!!


イエロワ『ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?』

Rマーチ「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ギュルルルルルッ!!


Rマーチ「……突き抜けるんだ……!」


Rマーチ「どんな困難があっても……、どんなコワい未来が待っていても……!」


Rマーチ「勇気を持って、ただ真っ直ぐに! 突き抜けるんだぁぁぁぁぁっ!!」


ドボァァァッ!!


イエロワ『……キュアマーチが……アキラメーナを貫きよった……』

アキラメーナ(氷の結晶型)「ア……ガァァァァァ……」シュワァァァァ…

イエロワ『アキラメーナが……消える……!? キュアマーチの風の力で浄化されておるのか……!?』


イエロワ『……バカな……。このアキラメーナは、ワシが作れる最強のアキラメーナ……。負ける要素は何一つなかったはずじゃ……!』

イエロワ『いかん、このままではワシまで消えてしまう……! 脱出じゃ……!』


バッ


イエロワ「…………」


イエロワ「……おのれ……、おのれ、おのれ、おのれぇぇっ、プリキュアぁぁぁっ!」

イエロワ「なんという屈辱じゃ……。この恨み、忘れんぞ! 次こそは、必ず全員絶望に落としてやるわ!」シュバッ

Rマーチ「……マジョリン、あたし、やったよ……! ちゃんと、れいかを守れた……! 大切な人達を守れたよ……!」

マジョリン(デコル)「うん……! やったマジョ……! マーチ、すごかったマジョ!」


Rマーチ「……あたし、もう未来のことをコワがったりなんてしない。勇気を持っていれば、どんなツラいことがあったって必ず前に進めるんだ」

Rマーチ「あたしは、真っ直ぐに進むよ。みんなからもらった勇気で、あたしの行きたい未来へ!」

~ 夕方 七色ヶ丘市 裏山 ふもと ~

はるか「それじゃ、なおちゃん。れいかちゃんのこと、おうちまで送ってあげてね」

なお「はい!」

れいか「……ごめんなさい、なお……。私が、動けないばっかりに、こうしておぶってまでもらってしまって……」

なお「れいか、そういうの言いっこなし! あたし達は、お互いに助け合っていくんでしょ? だから、今度はあたしが困った時に助けてくれればいいから!」

れいか「……ええ……」


なお「それじゃ、みんな、あたし達行くね! 今日は、ホントにありがとう!」

ゆかり「こちらこそ……、れいかセンパイを助けてくれて、ありがとうございました……!」

みゆき「れいかちゃん、ゆっくり休んで、早くよくなってね!」

れいか「はい……。ありがとうございます……。それでは、失礼します……」

やよい「また明日ね!」

なお「うん! また、明日!」

~ 七色ヶ丘市 青木家 帰路 ~

スタスタスタ


なお「……タイヘンな一日だったね……」

れいか「……ええ……」


なお「こうしておんぶしてると、れいかのあったかさがわかるよ。今日はちょっと寒いから、ちょうどいいかも」

れいか「ええ……、なおの背中も、あったかい……。氷の中にいたから……、余計にそう思うわ……。……なんだか、気持ちが落ち着くみたい……」

なお「……あたしもだよ、れいか。こうして、またれいかのあったかさを感じられて……、……ホントに……、……ホントに……」


ピタッ


なお「…………」

れいか「……? なお? どうして、足を止めて――」

なお「……ホントに……よかった……っ!」ポロッ


れいか「……!? なお……、泣いて、いるの……?」


なお「……ホントに……、うれしいの……! また、れいかのあったかさを感じられることが……、こうして、いつもどおりそばにいてくれることが……、ホントにうれしいの……!」

なお「もう、二度と会えないかもしれない、って思った……! それが、すごくコワかった……!」


なお「れいか……、本当に、無事で……、無事でよかった……っ!」ポロポロッ


れいか「なお……っ!」

れいか「……ありがとう、なお」

なお「うんっ……! れいかがピンチになったら、いつでもあたしが助けるよ……!」

れいか「……ううん。助けてもらったこともあるけれど、他にも、お礼を言いたいの」


れいか「私のために泣いてくれて、ありがとう。私も、そんななおがそばにいてくれて、本当にうれしい……!」


れいか「いっしょにいてくれて、ありがとう……!」


なお「……れいか……! うんっ……!」

なお(……そうだ。大切な人がそばにいてくれる。そのうれしさが、あたしの勇気になるんだ)

なお(もう、あたしはみんなを守ることを絶対にあきらめない。どんなピンチになっても、絶対何とかしてみせる)


なお(これから何があろうと、真っ直ぐな気持ちで、みんなを守り抜くんだ!)





つづく

次回予告

あかね「……みゆきとケンカしてもた……。最初は、ちょっとしたことやったのに……、今じゃ、気まずくて顔も合わせられへん……。なんでこんなんになってもーたんや……」

あかね「うちらは、いつだっていっしょにおった。いっしょにガンバってきた。……けど、それももう、ここまでなんか……?」

あかね「もうすぐ、うちらは進学せなあかん……。それで離れ離れになったら、うちらはもう……、前みたいにはなれへんのかな……。うちは、どないしたらええんや……!」


あかね「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "あかねの友情! うちの未来と、みんなの笑顔!"」


あかね「みんな笑顔でウルトラハッピーや!」

お返事タイムの前に、一つ告知を。


結構スケジュールパツンパツンですが、
うまくいったなら、近いうちに番外編をお届けします!

投稿日時は、12/24(火) の夜あたりになる予定です。

別スレで立てますので、よろしければこちらもお願いします!

それでは、前回までにいただいたレスへのお返事タイムとさせていただきます。


> HapeyRubbitさん

> でも次回デスペアランドの闇の描き手のうち誰が出撃してくるのかは
> 次回予告を見ていると大体予想がつきそうですね

今回はイエロワでした。当たってましたでしょうか?

今回もヒキョウな手を使った上で、ボッコボコに負けてくれました。
こういうテンプレ的な悪役も、描いててなかなか楽しかったりします。



> プレゼさん

いつもありがとうございます!

敵の口上が一番印象的、というのは確かに意外ですねw
アキラメーナ召喚シークエンスは毎回やるので、そのせいかもしれません
うまく印象付けられたのならよかったです!



> 126さん

ありがとうございます!

実は、おっしゃる通り、やよいちゃんは他のキャラクターに比べて、夢に向かって一歩先んじてるんですよね。
なので、ある意味では本作のテーマに一番関わりが深いキャラクターではありますね。

> 127さん

確かにおっしゃるとおりですね。。

"やよいちゃんを絶望させるための敵の攻撃の一部" ということでああいう展開にしたんですが、
とはいえ、作品ジャンルまで否定するのは浅慮が過ぎたかもしれません。。


とても参考になりました!
次からは気をつけていければ、と思います。
貴重なご意見、ありがとうございました!



> 128さん

ありがとうございます!
お楽しみいただけたのなら何よりです。

だんだん話も煮詰まっていく予定なので、よろしければもう少しお付き合いをお願いします!





お返事は以上になります!
それでは、また来週!

番外編、完成しましたので新スレ立てました!

こちらにもリンクを張っておきますので、
よかったらよろしくお願いします!


■『スマイルプリキュア レインボー!』スペシャル
『スマイルプリキュア レインボー!』 スペシャル - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387890265/)

そろそろ『スマイルプリキュア レインボー!』のお時間ですが、
またまたスミマセン、、本日もお休みさせてください。。
番外編作ったり、仕事納めが徹夜だったりして、ちょっと疲れてしまったのでございます。。

明日、もたぶんムリなので、
できれば明後日 8:30 に 41話を公開できればと思います。

スミマセンが、しばらくお待ちください。

『スマイルプリキュア レインボー!』第41話、
本日お届けする予定でしたが、思ったより時間がかかってしまい、まだ完成できていません。。
早ければ明日の朝、遅くとも今週中のどこかで上げられれば、と思います。

スミマセンが、もうしばらくお待ちください。。

あけましておめでとうございます!
どうか今年も、『スマイルプリキュア レインボー!』をよろしくお願いします。


と、いうわけで、お待たせしました!

『スマイルプリキュア レインボー!』第41話、このあとすぐ!

~ 業務終了後 お好み焼き屋 "あかね" ~

あかねの家族達「…………」モグモグ

あかね「……どや?」

あかねの家族達「…………」


げんき(あかね弟)「……うまい。姉ちゃん、めっちゃうまいで、これ……!」

あかね「……! ほんまか、げんき!?」

げんき「うん……。ビックリしたわ……。いつの間にこんなうまくなったん?」

正子(あかね母)「ふふ、あかね、父ちゃんと毎日毎日お好み焼きの修行、ガンバっとったもんなぁ」

正子「ほんまおいしいわ、あかね。味だけやない、あかねの "喜んでほしい" っちゅう気持ちがぎょーさん入っているのがわかるわ」

あかね「母ちゃん……!」


大悟(あかね父)「まったく……。母さん、げんき、あんま身内びいきでホメ過ぎるもんやないで」

げんき「せやけど父ちゃん、これ、ほんまにうまいやんか」

正子「そうやで。あかね、これまでガンバってきたんや。ちょっとはホメたってもええやないの」

あかね「……いや、父ちゃんの言う通りや。母ちゃんもげんきも、うちのやからそう思うのかもしれへんし」


あかね「……父ちゃんは、どう思う? ほんまのとこ、聞かせてほしいんや」

大悟「…………」

大悟「……うまくなったな、あかね」

あかね「……え……」

大悟「お前に本格的にお好み焼き教え始めてからもう半年くらい経つけども……、正直、ここまでなるとは思うてへんかった」

大悟「あんま調子乗られても困るからな。ホメすぎとうないんやけども……、わいもお好み焼き屋や。味にウソはつけへん」


大悟「あかね。このお好み焼きはええ味しとるで。よう、ここまでやれるようになったな」

あかね「……! 父ちゃん……!」


大悟「……せやけど、それでもわいから見たらまだまだや! のれん分けには程遠いで!」

大悟「これから先、お好み焼き屋としてやっていきたいんなら、もっともっと頑張るんやで。ええな!?」

あかね「……もちろんや! うちの夢は "世界一のお好み焼き屋" やで! いつかは父ちゃんだって抜いたるわ!」

大悟「ったく、さっそくチョーシに乗りよってからに……。そうはイカのゲソ焼きや! わいを抜くなんて 10年早いで!」

あかね「にっしっし! わからんでー? もしかしたら、明日にはもう抜いてもーてるかもしれへんで!」

大悟「こいつー! ええ加減にせいや!」


あかね・家族達「あははははっ!」

~ 日野家 あかね自室 ~

ガチャッ


ウルルン「お、帰ってきたウル。あかね、シショクカイだかってやつはどうだったウル?」

あかね「……ホメてもろた……」


あかね「あの、お好み焼きにはめっちゃキビしい父ちゃんまで……、うちのお好み焼き、"うまい" ゆーてくれたんや……!」

あかね「ウルルン……、うち、めっちゃうれしい……! うち、夢にちゃんと近づけとるんや……!」

あかね「……でも、だからこそ気ぃ抜けへん。もっともっとうまくなって、ほんまに "世界一のお好み焼き屋" になったる!」

ウルルン「そうか。……ま、ガンバるウル」ニッ

あかね「うん!」

バサッ


あかね「さーて。したら、この勢いで今日学校でもろたこれ、やってまうかな」

ウルルン「ん? あかね、机に置いたその紙、何ウル?」

あかね「これはなー、"進路相談票" っちゅーてな。これからどういう進路に進みたいかを書く紙やねん」

ウルルン「シンロ……? なんだそりゃウル?」

あかね「あー、つまり……、中学校出たらどうしたいか、っちゅー話や」


あかね「父ちゃんにも母ちゃんにも "高校は出とき" て言われとるから、うちの場合はどこの高校行くか、っちゅー話になるな」

ウルルン「そのコーコーってのが、あかねが次行くガッコウウル?」

あかね「せや。その高校っちゅうところはな、勉強がどんだけできるかで行ける学校が決まってくるんや」

あかね「れいかみたいに勉強バッチリならどこでも行けるんやろけど……、うち、あんまり成績ええ方やないからなぁ……。行けるところも限られるねん」

あかね「さて、ほんでどの学校行くか、この資料見て決めんとあかんのやけど……」ペラッ ペラッ


あかね「……お、ここええかも! "七色ヶ丘高校"! 家からも近いな! えーっと、偏差値は、っと……、……うぇ……! こんな高いん……!?」

あかね「こらあかんなぁ……。はるかさんに教えてもろて英語の成績は大分上がったけども、他が元々大したことなかったからなぁ……、今のうちじゃちーっとキツいで……」

あかね「しかも、"進学重視" とか書いてあるわ……。受験勉強大変なのはもちろんやろけど、入ったらきっと勉強漬けやな……」

あかね「そしたら、お好み焼き修行の時間も減ってまう……。近いのは惜しいけども、あきらめた方がええかもな……」


あかね「……しゃーない! 通学に電車乗らなあかんけど、こっちの "辺津野(べつの)高校" にするか! こっちなら勉強そんなせんでもよさそうやし!」

あかね「よっしゃ、決めたで! さっそく明日、先生に提出や!」


あかね(……そや、うちは絶対 "世界一のお好み焼き屋" になったるんや。そのために回り道はしてられへん)


あかね(うちのお好み焼きで、世界中のみんなを元気にしたるその日まで、うちは思いっきりガンバるんや!)

~ 翌日 朝 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

みゆき「あかねちゃーん、おはよーっ!」

あかね「おー、みゆき! おはよーさん!」


みゆき「ねぇねぇ、あかねちゃん、ちょっとお話あるんだけど、いいかなぁ?」

あかね「ん? なんや改まって。ええでー、何でも言い」

みゆき「あのね、昨日先生から言われた、進路相談のことなんだけど――」ゴソゴソ

あかね「ああ、それな! それならさっき先生に出してきたで」

みゆき「……え?」


みゆき「あかねちゃん、もう出しちゃったの?」

あかね「先生かて、"早めに出すように" 言うとったやろ? せやから、昨日のうちに決めて出したんや。うちは宿題とかよう忘れるけども、いっつもだらしないわけやないんやで、みゆきさん」

みゆき「そう、なんだ」


あかね「あ、ちなみにな、……みゆきが出そうとしたその資料、貸してくれるか?」

あかね「(ペラッ) うちが選んだのはここや。"辺津野高校"。電車乗らなあかんけど、そう遠ないし、何より偏差値もそんな高ないねん。そこならうちでも行けるかなーって思て決めたんや!」

みゆき「……そっか」

みゆき「……ねぇ、あかねちゃん。今からでも、別のところにしない?」

あかね「え……? なんでまた……」

みゆき「ほら、こことかどうかな? 七色ヶ丘高校! ここなら、今の学校と場所がほとんど変わらないから、近くていいよね!」

あかね「あー、そこな……。うちもちょーっと迷ったんやけど、そこ、結構偏差値高いやろ? うち、あんま成績良くないから、ちとキツいなーって、パスしたんや」

みゆき「でも、ちょっとくらいならガンバればどうにかなるよ! ね、どうかな?」

あかね「そうは言うけどな、そこ入ってまうと、きっともっと勉強せなあかんようになるねん。うち、お好み焼きの修行しとるの、知っとるやろ? そのための時間はあんまり減らしたくないんや」

みゆき「…………」


みゆき「だ、だいじょうぶだよ! きっとそんなに変わらないって! もし勉強の量が増えても、あかねちゃんならきっとガンバっていけるよ!」

あかね「うーん、そう言ってくれるのはうれしいけどなぁ……。やっぱ、今のうちには修行が一番大事やし……」

みゆき「いいじゃない、修行なんてちょっとくらい減らしても! だから、ね? ここに行こうよ!」


あかね「……え……?」

あかね「……みゆき、今なんちゅーた?」

みゆき「え? この七色ヶ丘高校に行こうよ、って――」

あかね「ちゃう。そこやあらへん」


あかね「"修行なんて" って言わへんかった、今? "なんて" ? "なんて" って言うたんか?」

みゆき「……? あ、あかねちゃん……? どうしたの……? 顔がコワいよ……?」

あかね「わからんの? じゃあ、大して考えもしないで言ったんか、今の」

あかね「……みゆき、うちの夢、知っとるよな」

みゆき「た、確か、"世界一のお好み焼き屋さん" だよね……?」

あかね「せや」


あかね「でっかい夢や。でっかすぎるくらい、でっかいわ……。自分で決めた夢やけど、ほんまにできるかどうか、正直うち自身にもわからへん……」

あかね「けどな、うちは本気なんや。本気で世界中のみんなを、うちのお好み焼きで元気にしたい、て思とる。せやから、うちは今も本気でお好み焼きの修行しとるんや」

あかね「その大事な修行のこと、"なんて" て言うたん? "なんて" て、大したことやないみたいに言うたん?」

あかね「それって……、うちの夢に対する気持ちも大したことない、って思とる、てことなん?」

みゆき「え……!?」


あかね「……みゆきは、うちのことわかってくれると思とった……。うちがどんなでっかい夢みても、応援してくれる。……そう、思とった」

みゆき「あ、あかねちゃん……、わ、私、そんなつもりじゃ――」

あかね「じゃあどんなつもりやねん!」

みゆき「…………」

みゆき「……あかねちゃんが、何も言ってくれなかったから……」

あかね「え……? うちが、なんて……?」

みゆき「進路のことだよ……」


みゆき「……あかねちゃん、どうして進路のこと、もう決めちゃったの……? どうして、何も言ってくれなかったの……?」

あかね「なんで、って……、うちのことやもん。うちが自分で決めて悪いことあるん?」

みゆき「そうだけど……、そうだけど……!」


みゆき「けど、ちょっとくらい話してくれてもいいじゃない! だから、私だってさっきみたいなこと言っちゃったんだよ!」

あかね「……なんやそれ……、意味わからへん……! したら何? うちが悪いっちゅーことなん?」

みゆき「そうじゃないけど!」

あかね「そう言うとるようなもんやんか!」


ザワザワザワ…


クラスメイト・岡田 まゆ「え、何……? どうしたの、あの二人……。ケンカ……?」

クラスメイト・野川 けんじ「日野と星空が……? いつもいっしょにいんのに……?」

あかね「大体、なんでみゆきがうちの行く学校にまで口出すねん!? これはうちの問題や! うちの夢のためなんや! 自分の将来くらい自分で決めるわ!」


あかね「うちがどこの学校行こうが、みゆきには関係ないやろ!?」

みゆき「!!」


みゆき「…………」

あかね「…………」

みゆき「……そうだよね。あかねちゃんがどこの学校に行くかは、あかねちゃんが決めることだもんね。私は……関係ないよね」

みゆき「……っ!」ダッ

あかね「みゆき!? ちょお、待ち! 急に走ってどこ行くねん!? まだ話終わってへんで!?」


ガラッ


やよい「あ、みゆきちゃん! おは――」

みゆき「(ダダダダダッ)」

なお「わっ!? な、何!? ……みゆきちゃん、走って教室出てっちゃった……」

れいか「今来た私達のことにも気付いていない様子でしたね……。何か、あったのでしょうか……?」


あかね「…………」


あかね「……なんやねん、みゆきのヤツ……!」




スマイルプリキュア レインボー!

第41話「あかねの未来! うちの夢と、みんなの笑顔!」



~ 放課後 ふしぎ図書館 ~

パァッ…


はるか「よっと。みんな、お待たせ! 今日は、和菓子屋さん "名花" で豆大福買ってきた……よ……」


やよい「…………」

なお「…………」

れいか「…………」

ゆかり「…………」

マティ「…………」


はるか「え、何この雰囲気……。どよーんとしちゃって……。何かあったの?」

ペロー「そういえば、みゆきさんとあかねさんがいないペロ。二人はまだ来てないペロ?」

れいか「……実は、そのお二人が問題なのです……」

はるか「――え!? みゆきちゃんとあかねちゃんがケンカ!?」

やよい「はい……」

はるか「ちょっと信じられないな……。あの二人は特別仲がいいイメージあるけど……」

なお「あたし達も驚いてます……」


はるか「それで、ケンカの原因はなんなの?」

やよい「それが、私達にもわからなくって……」

れいか「どうやらお二人が今朝、教室で言い争いをしていたようなのですが、私達が登校した頃には、すでに事が起きた後だったようで……」

なお「あたし達を押しのけるようにして教室を出て行くみゆきちゃんと、むすっとした顔で席にいるあかねしか見てないんです……」

れいか「その後、クラスメイトの方々にもお話を聞いたんですが、みなさんもお二人が怒鳴り合っていたことしか知らず、その経緯はわからないとのことでした……」

やよい「後でみゆきちゃんも戻ってきたんですけど……、二人とも話すどころか、目も合わせようとしなくって……」

なお「ちょっと、話を聞けるような雰囲気じゃなかったです……」

はるか「そうなんだ……」


ゆかり「……わたし、さっきそのお話聞いて……、ショックでした……」

ゆかり「みゆきセンパイとあかねセンパイはとっても仲良しで……、いつも笑っていられる、とってもステキな友達だと、思ってましたから……」

マティ「そのようなお二人がケンカなさっているのは……、なんだか……、悲しい気がします……」

はるか「そうだね……」

なお「……マティちゃんの言う通りだよ。なんとか、ならないかな」

れいか「なお……?」

なお「あたし、こんなのイヤだよ……。いつも仲が良かった二人がケンカだなんて……!」


なお「二人を会わせて仲直りさせてくる。きっと、ちゃんと話合えば元通りになるよ!」

れいか「ちょ、ちょっと待って、なお! 落ち着いて!」

なお「どうして止めるの、れいか!? れいかは二人がこのままでもいいの!?」

れいか「私だってお二人には仲よくしてほしい! ……けれど、あのお二人がケンカだなんて、よほどのことだと思うの……。たぶん、お二人にとって大事な問題があるのではないかしら」

はるか「うん……。なおちゃんの気持ちもわかるけど、そんな本人達の問題に、関係ない私達が首を突っ込むのもどうなのかな……」

なお「はるかさんまで……」

はるか「なおちゃん、ここは一度様子を見よう。私達がヘンに関わってもっとこじれたら、それこそ良くないよ」

はるか「それに、私達が解決できたとしても、それはあの二人のためにならないと思う。二人の問題なんだから、あくまで、自分達で何とかしないと」

はるか「もし二人がどうにもならなくなって、私達に助けを求めてきたら、その時が出番だよ。だから、ね? れいかちゃんの言う通り、ここは一度落ち着こう?」

なお「……わかりました……」


ポップ「とてもムズかしい問題でござるが……、はるか殿の言う通りでござるな」

オニニン「めんどくさい話オニ! ケンカなら、思いっきりやればスッキリしてすぐ仲直りできるオニ!」

マジョリン「何言ってるマジョ。あんた達とは違うマジョ。女の子同士だと色々複雑なんだマジョ」

オニニン「……よくわかんないオニ」

はるか「……さ、気を取り直して、お茶にしようよ! せっかくおいしい豆大福買ってきたんだからさ、みんなで食べよう!」

はるか「今、私達が出来ることは、二人が仲直りした時に戻って来られる場所を残しておくことだよ。だから、私達はできるだけいつも通りでいよう?」

れいか「……わかりました。それでは、お茶を入れてきますね、はるかお姉さん」

ゆかり「あ……、わたしもお手伝いします……!」

はるか「お願いね、二人とも!」


ワイワイワイ


なお「…………」

~ お好み焼き屋 あかね ~

ガラッ


あかね「ただいま」

大悟「おう、あかね、お帰――って、どないしたんや、その顔。むすーっとふくれて」

あかね「……別に、なんでもあらへん」


あかね「それより父ちゃん、夜のお客さん用の仕込み、手伝うで」

大悟「……いや、いらんわ。"なんでもない" とか言うて、ほんまはなんかあったんやろ? 今日はわい一人でやるから、お前は部屋戻っとき」

あかね「けど、父ちゃん一人や大変やんか。せやからうちも――」

大悟「いらん、っちゅーとるんや。そないむくれたヤツに手伝ってもろてもしゃーないわ」

あかね「うちは別にむくれてなんか――」

大悟「あかね、この店はわいんや。わいが決めたらその通りにせえ。今日のお前は鉄板の前に立たせられん。引っ込んどき。ええな」

あかね「……わかったわ」


スタスタスタ…

スタスタスタ


げんき「なぁ、父ちゃん。姉ちゃん、なんかあったん? 廊下ですれ違った時、なーんか、ミョーにカリカリしてたっぽいねんけど……」

大悟「知らんわ、そんなん。それよりげんき、ええとこ来たな。夜の仕込み、手伝いや」

げんき「えー!? なんでや! 姉ちゃんおるんやから、姉ちゃんにやらせたらええやん!」

大悟「文句言わんとやらんかい! 早よせんと、お客さん来てまうで!」

げんき「……はーい」


大悟(……珍しな、あいつがあんなにイライラしとんのは。ま、思春期ってヤツやろうから、色々あるんやろけどな)

大悟(何があったか知らへんけども、ちゃんと気持ちの整理でけへんようじゃ、まだまだ一人前には遠いで、あかね……)

~ 日野家 あかね自室 ~

あかね「…………」ムスッ

ウルルン「おい、あかね、いつまでむくれてるウル。今朝のみゆきとのこと、まだ気にしてんのかウル?」

あかね「……んなことないわ」

ウルルン「あるだろウル。口とんがらせて、何言ってるウル」

ウルルン「……あかね、みゆきに怒ってんのかウル?」

あかね「……別に怒っとるわけやないねん。どっちかっちゅーと……、悲しいんや……」

ウルルン「? どういうことウル?」

あかね「みゆきが言うたの聞いとったろ? お好み焼きの修行 "なんて" っちゅーたの。……まさか、みゆきにそんなこと言われるなんて、思っとらんかった……」


あかね「……別に根拠はないねんけども、他の誰がうちの夢をバカにしても、みゆきだけは認めてくれる、応援してくれる、……そんな風に思とった……」

あかね「せやから、ウソでも言いすぎでもなんでも、みゆきからあんなこと言われたのが……悲しいねん……」

ウルルン「それでついカッとなっちまった、と」

あかね「…………」

ウルルン「……あかね、お前の気持ちはわかったウル。けど、怒鳴ったのはやりすぎじゃねえかウル?」

ウルルン「お前はみゆきの言葉で傷ついたかもしんねぇけどよ、みゆきがお前を傷つけようと思って言ったようには見えなかったウル」

ウルルン「みゆきはそんなことするようなヤツじゃねえウル。それは、お前達が一番良く知ってるはずウル」


ウルルン「でも、そんなみゆきを、お前は怒鳴って傷つけちまったウル。わざとじゃなかったとしても、ウル」

ウルルン「それは、やっぱりよくねぇことなんじゃねえかウル?」

あかね「…………」

ウルルン「前に悪いことやってたおれが言うのもなんだけどよ、悪いことしたなら、やっぱり謝らねぇといけねえウル」

ウルルン「そうしねぇと、相手はもちろん、お前だってツラいままウル……。"悪いことしちまった" っていう気持ちをずっと抱えて、苦しむことになるウル」


ウルルン「そんな気持ちのままで、あかね、お前はみゆきの前でいつもみたいに笑えるウル?」

あかね「…………」

あかね「……あんたの言う通りかもな、ウルルン」

あかね「みゆきの言うたことはまだ引っかかっとるし、なんでみゆきがあんなこと言うたかもわからん。……けど、怒鳴ってみゆきを傷つけてもーたんは、間違いなくうちのせいや」

あかね「明日みゆきと話してみる。とりあえず、そっからや」

ウルルン「そうだな、そうしたらいいウル」


あかね「……にしても、まさかウルルンにお説教されるとは思っとらんかったわ」

ウルルン「へん! これでもおれは、お前達より長く生きてるウル。……だから、よ、なんかあったら相談に乗るくらいはできるウル」

あかね「そか。……おおきにな、ウルルン」

ウルルン「おうウル」

~ 翌朝 七色ヶ丘中学校 校門前 ~

スタスタスタ


あかね(……しかし、みゆきになんちゅーたもんやろな……。昨日の今日じゃ気まずいな……)


あかね("スマン、みゆき!"。……うーん……、真っ先に謝るっちゅーのも、ヘンな感じやなぁ……)

あかね("何であんなこと言うたん?"。……これじゃ、昨日と大して変わらんなぁ……)


あかね(うーん……)


あかね(……やっぱ、"おはよう" やな。朝やし、まずはあいさつからや)

あかね(うちらしく明るくあいさつすれば、みゆきも明るうなってくれるやろ! したら話もしやすいってもんやで!)

あかね(よっしゃ! そうと決まれば、本番に備えて元気をためて――)


みゆき「(スタスタスタ)」


あかね(……! みゆきや……、目の前、歩いとる。……さすがに、本物目の前にすると話しかけづらいなぁ……)


みゆき「(チラッ) ……!」

あかね「……!」

あかね(目が合った。向こうもうちのこと気付いたな)


あかね(……えぇーい、何ビビっとんねん! 今行かんで、いついくんや!? 行くで!)

あかね「み、みゆ――」

みゆき「……!」サッ

あかね(……え?)


みゆき「…………」スタスタスタスタ…

あかね(……え?)


あかね(……みゆき、うちが話しかけようとした途端、目ぇそらした……。そのまま、早足で行ってしもーた……。……まるで、逃げるみたいに……)

あかね(……え? なんやこれ……、どういうことや……? みゆき、うちのこと気付いとったよな……。気付いてて……、うちやとわかっとって、やったんか?)


あかね(みゆき、うちのこと、避けたんか?)


あかね(…………)

~ 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

ガラッ


あかね「…………」スタスタスタ ガタッ


あかね「…………」

みゆき「…………」


あかね(……何しとんねん、うち……。教室入って、席ついて、それで終わりか? みゆきに、明るくあいさつするんやなかったんか?)

あかね(……けど……)


みゆき(回想)『……!』サッ


あかね(さっき、なんでみゆきは目そらしたんや……? なんで、うちから逃げるみたいに早足で行ってもうたんや……?)

あかね(……あかん、みゆきの方見れへん……)

あかね(隣の席やのに……、ちょっと首を横にひねったらええ話やのに……、首が動かへん……)


あかね("また、目そらされてもうたら"。……そう思うと……、コワくて、みゆきのこと見られへん……)

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

キーン コーン カーン コーン


あかね「…………」

あかね(……結局、今日一日みゆきに声かけられへんかった……。それどころか、目も合わせられへんかった……)


みゆき「(ガタッ)」

あかね「!」ビクッ


スタスタスタ… ガラッ


あかね(……みゆき、帰ったんか……? みゆきの方見られへんから、ようわからんけども……)


あかね「…………」チラッ

あかね(隣の机、もう誰もおらん……。やっぱ帰ったんか……)


あかね(……ついさっきまで、そこにみゆきが座っとったんやな)

あかね("隣を見る" なんて、今はカンタンにできるのに……、"みゆきがおる" っちゅうだけででけへんかった)

あかね(なんでや……。いままでずーっとやってきたことのはずやのに……)

あかね(……なんやこれ……。なんでこんなことになっとるんや……)


あかね(朝、"おはよう" って、一言言えば、全部元通りになったはずなんや。……なのに、言えへんかった……)

あかね(元通り……。みゆきも笑って、うちも笑って……、そんな、いつもどおりの楽しい一日。……それが、今はえらい遠くに感じる……)

あかね(みゆき……、さっきまでこんなに近いところにおったのに……、まるで、どんなに手を伸ばしても届かんくらい遠くにいるみたいやった……)

あかね(ちょっと言い合っただけやのに……、なんでこんなことになってまうんや……)

あかね(せやけど、どうしたらええのかさっぱりわからん……。今朝のみゆきのことを思うと、声もかけられへん……)


みゆき(回想)『……!』サッ


あかね(……あの時、なんでみゆきは目そらしたんや……?)

あかね(うちは、みゆきと元の通り、仲ようできればええと思とるけど……、もしかして……、みゆきはそうは思うてへんのか……?)

あかね(……もしそうなら……、ずっとこのままなんか……?)


あかね(うちとみゆきで、楽しく笑い合ったり……、もう、できなくなってもうたりするんやろか……?)


あかね(このままどんどん……、離れていってしまうんやろか……)


あかね(…………)

あかね(……何考えとるんやろ、うち)

あかね(どないしたらええか、全然わからんけども……、ここでこのままじっとしとってもしゃーないな……)


あかね(……とりあえず、帰ろ)ガタッ


スタスタスタ…

やよい・なお・れいか「…………」


やよい「みゆきちゃんにあかねちゃん、二人とも帰っちゃった……。今日、一回も話さなかったね……」

なお「うん……」

れいか「はるかお姉さんも言っていましたが、あのお二人はいつでも楽しく笑い合っていました……」

やよい「あの二人が笑ってないと、なんだか明かりが消えちゃったみたいだね……」

なお「うん……」

なお「……ねぇ、二人とも。あかねとみゆきちゃんのあんなとこを見ても、まだ何もしない方がいいって思うの……?」

なお「あたしは……、やっぱりイヤだ……! こんな風に中途半端にギクシャクした関係、見てらんないよ……!」


なお「やっぱり、本人同士、一度話し合わせた方がいいと思うんだ」

なお「気持ちをちゃんとぶつけ合えば、きっと分かり合えると思うんだ。いつも仲が良かった、あの二人なんだから……!」

れいか「でも、なお……、はるかお姉さんに、あまり首を突っ込まない方がいいと……」

なお「そうだけど、このまんまじゃ何にも変わらないよ! れいかもやよいちゃんも、このままでいいの!?」


やよい・れいか「…………」

やよい「……でも、なおちゃん。話し合ってダメだったら……、どうなるの……?」

なお「え……?」

やよい「もし二人とも、お互いのことがホントにキライになっちゃってたら……、どうなるの……?」

なお「そ、それは……」

れいか「……もう二度と、元の関係には戻れないかもしれませんね……」

なお「……!」


れいか「なお。お二人を想うなおの気持ちはとても良くわかるわ」

れいか「けれど、今のお二人を無理に近づければ、やよいさんの言うようなことになってしまうかもしれない……」

れいか「やっぱり、はるかお姉さんの言う通り、私達は見守ることしかできないのではないかしら」


れいか「だからなお、お願い。もう少し様子を見ましょう」

なお「……うん……」


なお(……あたしには、なにもできないのかな……。なにも、してあげられないのかな……。ただ、二人に楽しく笑っていてほしいだけなのに……!)

なお(…………)

~ 駅前 繁華街 ~

ワイワイ ガヤガヤ


あかね「…………」スタスタスタ

ウルルン「おい、あかね。どうしてこっち来たウル? こっちはお前んちじゃねえウル」

あかね「うちかてわかっとるって」


あかね「……せやけど、今は部屋に戻りたくないねん。ちょっとでも、にぎやかなところにいたいんや……」

ウルルン「……それは、今日みゆきと一言も話せなかったからウル?」

あかね「…………」

ウルルン「あかね……」

~ 駅前 繁華街 ゲームセンター ~

ピー! ピキュンピキュン! ピコピコピコ!


ウルルン「うわっ、なんだここ! 音がでかくてやかましいウル!」

あかね「あ、そか。ウルルン、こういうとこ来るの始めてやったっけ。ここはゲームセンターっちゅーて、色んなゲームで遊べるとこや。音、キツいんか?」

ウルルン「前行ったユーエンチってとこみたいだけど、あそこよりもっとうるさいウル……。おれは耳がいいから、ちとこたえるウル……!」

あかね「ごめんな、ウルルン。けど、ちょっとガマンしてな。ちょっと気晴らしに付き合ってや」

ウルルン「……ったく、しょうがねえウル」

~ 駅前 繁華街 ゲームセンター もぐら叩きゲーム機 ~

バシンッ! バシバシバシバシッ!


もぐら叩きゲーム機『90てーん! まいったぁ!』


ウルルン「ほー、なかなかやるウル、あかね」

あかね「せやろ? お好み焼きのコテ振るう要領や。こんくらいは朝飯前や――」


『すごいよ、あかねちゃんっ!』


あかね「!?」バッ

ウルルン「ん? どうしたウル、あかね? 急に振り向いたりして」

あかね「……いや、なんでもないわ。……気のせいや……」

~ 駅前 繁華街 ゲームセンター バスケットボールゲーム機 ~

あかね「ほっ!」シュッ


ガンッ!


あかね「あちゃ……、リングに当たって外れてもーたな……」

ウルルン「ウルッフッフ、はずれウルー! おれももうちっと体がデカけりゃ、華麗なテクニックを見せてやれたのに、残念ウル!」

あかね「ほんなかいな。せやけどな、うちかてバレーのゲームがあったらきっと満点だったで!」


『そうだね! あかねちゃんならきっとうまくできるよ!』


あかね「……!」ハッ

ウルルン「こう見えても、おれはメルヘンランドじゃ結構スポーツがトクイな方で――、……あかね? 聞いてるウル?」

あかね「……あ、ああ、聞いとるで。ズボンがトクイなんやろ?」

ウルルン「ズボンじゃなくてスポーツウル……。聞いてねえじゃねぇかウル!」

あかね「あはは、スマンスマン」


あかね(…………)

~ 駅前 繁華街 ゲームセンター プリクラ機 ~

ウルルン「おー、なんだこりゃ! でっかい箱みたいなのがいっぱい並んでるウル!」

あかね「こらな、プリクラっちゅーもんや」

ウルルン「あ、なにウル? プリキュア?」

あかね「プ・リ・ク・ラや! ……けど、言われてみれば言葉の響きがちと似とんな……」


あかね「あのカーテンの中に入って、ちっこいシール写真捕るんや。女の子が仲のええ子といっしょに撮ることが多いんやで」

ウルルン「そんなことして面白いウル?」

あかね「そら、思い出になるからなぁ。女の子はそーゆーもんを大切にするもんや」

ウルルン「ふーん……。よくわかんねぇウル」

ウルルン「けど、そしたらあかねも撮ったことあるウル? ちょっと見てみてぇウル」

あかね「お、ええで。確かカバンの中にプリクラ用の手帳が……(ゴソゴソ)、……あったで。今開いたるから、見てみ」ペラッ

ウルルン「へー、こんなんなのかウル。ずいぶんいっぱいあるウル」

あかね「そやろ? いっぱい撮ったから、色んなのが――」

あかね「…………」

ウルルン「ん? どうしたウル、あかね? このプリなんとかじっと見て――、……あ」


ウルルン「あかね……、お前が見てるこれ……。……みゆきとクイーンといっしょに写ってるヤツウル……」

あかね「…………」


あかね(回想)『みんなでヘンな顔して撮ってみんか? その方がおもろいで!』

みゆき(回想)『んー……、しょうがないなぁ……』

みゆき・あかね・キャンディ(回想)『はっぷっぷ!』パシャッ!


あかね(……あん時のか……)

あかね(デスペアランドが来たばっかで、みゆきしかプリキュアになれへんかった時、みゆきに元気になってもらお、ってうちが連れ回した時の……)


あかね(……そういえば、このゲームセンター、あん時来たとこやな……。気づかへんかったわ……)


あかね(…………)

あかね「……ウルルン、そろそろ出よか」

ウルルン「お、ホントか!? そりゃ助かるウル! これで耳たたんでなくて済むウル!」

あかね「迷惑かけとったみたいやな。ほんまゴメンな」


あかね「せやけど、帰る前にもう一つ寄りたいとこあるんや。もうちょっと付き合ってや」

ウルルン「もう一つウル……? いいけどよ、どこ行くつもりウル?」

あかね「ウルルンも知っとるとこや。ほな行こか」

~ 七色ヶ丘市 河川敷 高架下 ~

あかね「ここや。うちが来たかったとこ」

ウルルン「ああ、なんだここかウル。あかねがよくバレーボールの練習してたとこウル」

あかね「そやな」


あかね「えーっと、確かこの辺の草むらに……(ゴソゴソ)、……お、あったあった。練習用に隠しとった、うちのバレーボール」

ウルルン「あかね、何しに来たウル? バレーボール辞めたから練習しなくてもいいんじゃねえかウル?」

あかね「中学バレー引退しただけで、別に辞めたわけやないって。今日は……、たまたまボールを叩いてみたくなったんや」

あかね「軽くトスして、っと。よっ」トッ


フワッ


あかね「アタックや! ふっ!」バシィッ!


バンッ!


あかね「……うん、引退して結構経つけども、パワー十分や。まだまだイケるな」


『ナイスアタック! あかねちゃん!』


あかね「…………」


あかね「……ここで時々、みゆきにバレーの練習、付き合ってもろとったな……」

ウルルン「! ……あかね、お前……」


あかね「……ずっと思うてたんや。さっきゲームセンターで遊んどった時も、今も。……1人やと、面白くないねん。ウルルンは人前に出せんし……」

あかね「誰かといっしょやないと……、何しても面白くないねん……」

ウルルン「……誰か、っつっても、誰でもいいわけじゃねえウル?」


ウルルン「みゆきと、ウル? あかね?」

あかね「…………」

あかね「……うちな、みゆきとの楽しい思い出、ぎょーさんあんねん」

あかね「ゲームセンター行ったのも、ここに来たのも……、そんな思い出を振り返ってみたくなったんかもしれへん」


あかね「……みゆきが転校してきてから、うちらはずっといっしょにおった」

あかね「色んなとこ遊びに行ったり、おいしいもん食べたり……。はげまし合ったり、いっしょに笑い合ったり……」

あかね「そんな日がこれからもずっと続くって、疑いもせんで思ってたんや……」

あかね「……けど、もうムリかもしれへん……。みゆきとはもう、今までみたいに楽しくいられんのかもしれへん……」

ウルルン「な、なに言ってるウル、あかね? そんなん、わかんねぇウル!」

あかね「だって! ……みゆき、目、そらしたんや……。今朝、うちがあいさつしようとした時、目、そらされてもーたんや……」

あかね「そんなこと、今まで一回もなかった……。せやから、思うんや……。思いたくないけど、思ってまうんや……」


あかね「みゆき……、うちのこと、キライになってもーたのかもしれへん……」

ウルルン「……!」


ウルルン「けど……、みゆきがそう言ったウル? もしかしたら、違うかもしれないウル。ただのあかねのカン違いかもしれないウル」

ウルルン「みゆきに聞いてみたらいいウル! みゆきはそう思ってないかもしれないウル!」

あかね「……それは、でけへん……」

ウルルン「なんでウル!?」

あかね「……コワいんや……」

あかね「うちは、みゆきに怒鳴ったこと、謝りたいっちゅう気持ちはある。今までどおり、仲良くやってきたい、っちゅう気持ちもある」

あかね「けどもし……、みゆきがうちのこと、"キライ" って言うたら……、うちはどないすればええんや?」

あかね「その時こそ、ほんまにみゆきといっしょにいられへんようになってまう……。もう二度と、いっしょに笑ったりできなくなってまう……」


あかね「そう思うたら……、コワくてしゃあなくって、なんもでけへん」

あかね「今のうちには……、なんにもでけへんのや……」


ウルルン「……あかね……」

~ 夜 日野家 あかね自室 ~

あかね「…………」ジッ…

あかね(みんなに作ってもらった、うちのマスコット……)


みゆき(回想)『あかねちゃんのために、ってみんなで作ったの! 明日の試合、ガンバってね!』


あかね(……あん時、めっちゃうれしかった。今でも、うちの大切な宝物や)

あかね(マスコットだけやない。これを作ってくれたみんなの気持ちが、うちの大切な宝物なんや)

あかね(それに……、うちのバレーボール最後の試合の時……)


みゆき(回想)『あかねちゃぁぁぁぁぁぁぁんっ!! ガンバれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』


あかね(プリキュアになった後で疲れとんのに、いつよりも大きい声で応援してくれた)


みゆき(回想)『……だっ……ひっく……、だって……だって……!』


あかね(最後の試合に負けて泣いとるうちといっしょに、泣いてくれた……。……うれしかった……)

あかね(ツラい気持ちを半分にしてくれたみゆきの気持ちがほんまに……うれしかったんや……!)

あかね(みゆきのこと思い出すと、楽しいことばっかや。うれしいことばっかや)

あかね(これからだって、たっくさん、たっくさん、楽しい思い出作っていきたい)


あかね(けど……、けど……!)


みゆき(回想)『……!』サッ


あかね「…………」

あかね(みゆきは避けた……。うちを、避けたんや……)

あかね(……もう、あかんのかな……)

あかね(このまま、なんもでけへんまま、どんどん離れていってまうんかな……)

あかね(うちとみゆき……、もう、笑い合えへんのかな……)


あかね(こんなことで、うちとみゆきの楽しい未来は……、なくなってまうんかな……っ!)ジワッ

あかね「…………っ」ポロッ


あかね「……うっ……、ひっく……」


あかね「……うぅっ……うぅぁぁぁぁぁっ……」

~ デスペアランド 王宮 大臣自室 ~

オーレン「イエロワ、またプリキュアに負けたか。自信満々の割りには大したことなかったな」

イエロワ「やかましいわい! ワシの作戦は完璧だったはずじゃ……! なんで負けたのか、いまだにわからんわ……!」

大臣「イエロワ。彼女達プリキュアの底力は、以前より侮れないものがありました。そこを計算に入れていなかったあなたのミスですね」

イエロワ「む……。大臣様にそうおっしゃられては、何も言えませんですじゃ……」

オーレン「それ以前に、こざかしい作戦などに頼ってばかりいるから負けるのではないのか」

イエロワ「な、何を……! よく言うわ! 自分とてプリキュアには負け続きのクセしよって!」

大臣「オーレン。では、あなたならプリキュア達を倒せると?」

オーレン「無論だ」

オーレン「ヤツらを倒すために必要なのは力だ。全てを倒すほどの大きな力。それがただ一つあればいい」

オーレン「イエロワ同様、オレも自らの力をアキラメーナに注ごう。そうすれば、今までとは比較にならん力が出せる」

オーレン「そして、今度こそ証明しよう。力さえあれば、作戦も、協力も、必要ないということを」

大臣「ふむ……。そこまで言うのならお任せしましょう。あなた方の "期限" も残り少ない。目いっぱいおやりなさい」

オーレン「任せておけ」シュバッ


イエロワ「……行きおったか。ふん、力押しだけで勝てたら苦労せんわ……!」

大臣「まぁまぁ、ここはお手並み拝見といこうじゃないですか」

イエロワ「……わかりましたですじゃ」

~ 翌日 3時限目・体育(バスケットボール) 七色ヶ丘中学校 グラウンド ~

クラスメイト・尾ノ後 きよみ「あかね、パスっ!」ビュッ

あかね「(バシッ) 任しとき! このまま、ドリブルで突破や!」


クラスメイト・岡田 まゆ「そうはいかないから!」バッ

あかね「っと……! ディフェンス早いな……! 誰かフリーなのおらへんか……?」チラッ


みゆき「……!」

あかね「……!」


クラスメイト・金本 ひろこ「まゆ! 星空さんフリー! パスあるよ、気をつけて!」

クラスメイト・岡田 まゆ「あ……! わかったわ!」

あかね「…………」


ダッ


クラスメイト・岡田 まゆ「えっ……!? パスしないでそのままドリブル……!?」

あかね「ほっ!」シュッ


バスッ


体育教師・片野先生「ゴール! 日野、いいドリブルだ! パスと見せかけて意表をついたな! レイアップシュートも良かったぞ!」

あかね「……どーも」


みゆき「…………」


やよい・なお・れいか「…………」

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

ゆかり「…………」ジッ…


ゆかり(あかねセンパイ、今、どうしてみゆきセンパイにパスしなかったんだろう……。いつもだったら、きっとすぐにパスしてたよね……)

ゆかり(やっぱり、センパイ達の言う通り、二人がケンカしてるから、なのかな……)


ゆかり(……なんか、やだな……。みゆきセンパイもあかねセンパイも、ちっとも楽しそうじゃない……)

ゆかり(二人が笑顔じゃないのは……やだな……)


マティ(小声)「――ちゃん! ゆかりちゃん!」

ゆかり「……えっ!? な、なに、マティちゃん?」

1-3 担任教師「なに、じゃないぞ、木下ー。窓の外のグラウンドばっかり見てないで、先生の方も見なさい。ほら、89ページの問題を答えなさい」

ゆかり「あ、は、はい……。すみません……」

~ 翌日 放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

キーン コーン カーン コーン


3-1 担任・佐々木 なみえ先生「――はい、それでは今日の授業はここまで。みなさん、気をつけて帰ってくださいね」

クラスメイト達「はーい!」


みゆき「(ガタッ)」


スタスタスタ… ガラッ


あかね「…………」ガタッ


スタスタスタ… ガラッ


やよい・なお・れいか「…………」


やよい「……今日も何にもしゃべらなかったね……」

れいか「ええ……。そのまま、お互いの方を見もせずに帰ってしまいました……」

なお「…………」


なお「……こんなことで、ホントにどうにかなるのかな……」

れいか「え?」

なお「はるかさんの言うことを疑うわけじゃないけど……、今の二人を見てると、このまま放っておいても良くなるようには思えないよ……!」

なお「(ダッ)」

れいか「なお!? どこへ行くの!?」

なお「あたし、やっぱりあかねと話してくる! もっとヒドくなるかもしれないけど……、このままよりはずっといいよ!」

れいか「待って、なお!」


ダダダダダッ…


やよい「なおちゃん、行っちゃった。ど、どうしよう、れいかちゃん……」

れいか「……仕方ありません。私はなおを追いかけて、一緒にあかねさんとお話します」

やよい「じゃ、じゃあ私もいっしょに行くよ! 私だって……、このままでいいなんて思ってないもん……!」

れいか「ありがとうございます、やよいさん。よろしくお願いします」

~ 七色ヶ丘中学校 校門前 ~

みゆき「…………」スタスタスタ


タタタタタッ


ゆかり「みゆきセンパイ……! やっぱり、みゆきセンパイだった……!」

みゆき「あ、ゆかりちゃん……。マティちゃんも……。今帰り?」

マティ「はい。途中でみゆきセンパイらしき方をお見かけしたものですから、追ってまいりましたの」

みゆき「そっか……」


ゆかり「……みゆきセンパイ……、なんだか、元気ないみたいです……。だいじょうぶですか……?」

みゆき「え……、そ、そうかな。そんなことないよ?」

ゆかり「ホントですか……?」

みゆき「…………」

ゆかり「……やっぱり、あかねセンパイとのことで、元気ないんでしょうか?」

みゆき「……!」

マティ「ゆかりちゃん……!? そのことは言わないように、って――」

ゆかり「でも、やっぱりやだよ! みゆきセンパイが元気がないのも、あかねセンパイと仲良くないのも……!」

ゆかり「わたし……、楽しく笑ってるセンパイ達が好きなんだもん……!」

マティ「ゆかりちゃん……」


ゆかり「みゆきセンパイ、わたし、聞いたんです。みゆきセンパイが、あかねセンパイとケンカしちゃった、って……」

ゆかり「今日の体育の授業、教室から見てましたけど……、二人とも、チームが勝ったのにちっともうれしそうじゃなかった……。いつもならきっと、二人で喜ぶはずなのに……」

ゆかり「それって、二人がケンカしちゃってるからなんですか……?」

みゆき「…………」


ゆかり「どうして……、どうしてそんなことになっちゃったんですか……!? あかねセンパイと仲直りって……できないんでしょうか……!?」

ゆかり「いつもみたいに、楽しそうに笑い合ったりできないんでしょうか……!?」

みゆき「…………」


キャンディ「……みゆき……」

キャンディ「(ピクッ) クル……!?」

マティ「キャンディ? どうかなさいましたか?」

キャンディ「た、タイヘンクル……! デスペアランドクル!」

ゆかり「ほ、本当、キャンディちゃん……!?」

キャンディ「クル! あっちの方クル! みんな、急いで行くクル!」

マティ「わかりましたわ! それでは、みなさまに "手紙のキャンバス" を送って、このことをお知らせいたします――」


みゆき「……待って、マティちゃん!」

マティ「え……!? あ、は、はい、なんでしょう、みゆき様?」

みゆき「あかねちゃんには、送らないで」

ゆかり「え……!?」

マティ「ど、どうしてでございますか、みゆき様!? プリキュアの皆様がそろわなければ、タイヘンなことに――」

みゆき「お願い」

マティ「……わかりました、そこまでおっしゃるのなら……」


ゆかり「みゆきセンパイ……!? どうして……、どうしてなんですか……!? どうして、あかねセンパイだけ……!?」

ゆかり「あかねセンパイのこと……、キライになっちゃったんですか!?」

みゆき「…………」

ゆかり「みゆきセンパイっ!」

みゆき「…………」

~ 七色ヶ丘中学校 昇降口 ~

あかね「…………」


タタタタタッ


なお「あかねっ! ちょっと待って!」

あかね「なお……? どないしたん、そんなに慌てて」

なお「"どうしたの" はこっちのセリフだよ……!」


なお「あかね、みゆきちゃんと何があったの? 何で二人とも、あんな態度取ってるの……!?」

あかね「……! ……別に、なんも変わったことなんてあらへんで」

なお「ヘンなごまかし方しないで! 見たらすぐにわかるよ、二人がなんだかギクシャクしてることくらい!」


なお「……ねえ、あかね。ホントのこと言って。みゆきちゃんと……ケンカ、したんでしょ?」

あかね「!」

なお「なんでそんなことになっちゃったの……? あかねとみゆきちゃん、いつだっていっしょにいたじゃない……!」


なお「あたし、もうイヤだよ……! 笑ってない、ツラそうなあかね達を見るの……!」

なお「二人には……、いつだって仲良くしててほしいんだ……!」

あかね「……なお……」

パァッ フワッ…


なお「わっ!? こ、これって……、マティちゃんの "手紙のキャンバス" ……? 急に出て来るんだもん、慣れないなぁ……」


タタタタタッ


れいか「なおーっ!」

やよい「あかねちゃーんっ!」

なお「れいか! やよいちゃん! 二人とも、追っかけてきたの?」

れいか「本当は、なおと一緒にあかねさんにお話を聞くつもりでした。ですが……!」

やよい「マティちゃんから "手紙のキャンバス" が来たでしょ? きっとデスペアランドだよ!」

なお「そうみたいだね……! "キャンディがデスペアランドを見つけました。学校の近くのコウジゲンバというところだそうです。よろしくお願いいたします。 マティより" ……だって……!」

なお「あかね、さっきの話は後で聞くよ! 今は先にデスペアランドをどうにかしないと! 行こう!」

あかね「…………」

れいか「……あかねさん? どうかしたのですか?」

やよい「早く行かないと、町の人達が危ない目にあっちゃうよ!?」

あかね「……うちは行かん……。みんなで行ってや……」

なお「な、何言ってるの、あかね……!? もしかして、みゆきちゃんといっしょに戦うことを気にしてるの? でも、町のピンチなんだから急がなきゃ――」


あかね「……来てないねん」

やよい「え? 何が……?」

あかね「"手紙のキャンバス"、うちにだけ来てないねん」

やよい・なお・れいか「!」


れいか「……本当、ですね……。あかねさんの手元に "手紙のキャンバス" がありません……」

なお「どうして……?」

あかね「……たぶんみゆきや。"キャンディが見つけた" て手紙に書いてあるちゅうことは、マティといっしょにみゆき達もおるんやろ」

あかね「みゆきがマティに言って、うちにだけキャンバス出させなかったんとちゃうか?」


あかね「みゆき、うちに来てほしくないんやないか?」

やよい・なお・れいか「…………」

なお「……き、きっとなにかの間違いだよ! あかねにだけ出し忘れちゃっただけだって――」

あかね「そんなわけないやろ! 今までそんなこと、一回でもあったか!? マティ、しっかりしとるから、毎回ちゃんとみんなに連絡しとったやんか! それがなんで今回に限ってうちだけ来ないねん!?」

あかね「……他の理由が、思いつかんわ……!」

なお「…………」

あかね「……スマン、みんな。やっぱ、うち行かれへん……」


あかね「こんなことされてもうたら、うち……、ガンバれへんわ……」

やよい・れいか「…………」

なお「……わかった。あたし達だけ先に行くよ」

やよい「なおちゃん!? いいの、あかねちゃん置いてっちゃって……!?」

なお「あかねが "行きたくない" っていうんだもん。しょうがないよ……」


あかね「…………」

なお「……でも、あかね。あたし、待ってるから」

なお「人一倍友達思いのあかねだもん。みゆきちゃんとうまくいってなくっても、絶対に助けに来る。あたし、信じてるから」

あかね「なお……」


れいか「私も、待っています。あかねさんの太陽のような笑顔が、もう一度見られるのを」

れいか「だって、沈んだ日は必ずまた昇るのですから」

あかね「れいか……」


やよい「私も信じてるよ。私の中のあかねちゃんとみゆきちゃんは、いつだって二人で笑ってる」

やよい「こんなことくらいで二人の仲がどうにかなっちゃったりなんてしないよ! ね、あかねちゃん!」

あかね「やよい……」


なお「……行こう、れいか、やよいちゃん!」

れいか「ええ!」
やよい「うんっ!」


タタタタタッ…


あかね「…………」

~ 七色ヶ丘市 七色ヶ丘中学校近くの工事現場 ~

ダダダダダダッ


はるか「キャンディちゃんがアキラメーナを見つけたのってここ!?」

キャンディ「そうクル! ここにいるはずクル!」


アキラメーナ(重機合体型)「アキラメーナァ……!」


なお「いた! ……けど、何あれ……!?」

れいか「大きい……! それに、色々な工事用の重機がくっついているようです……!」

やよい「足がブルドーザーで、右手がショベル、左手がクレーン……! まるでロボットみたい……!」


オーレン『来たか、プリキュア。待っていたぞ』


みゆき「え……!? この声……、デスペアランドのオーレンって人……!? いないのに、声だけ聞こえる……!」

ゆかり「じゃあ、もしかしてまた、他の人達みたいにアキラメーナとくっついたんでしょうか……!?」


オーレン『そうだ。今のオレはこのアキラメーナの中にいる。オレの力を直接加えるためにな』

オーレン『しかし、それだけではないぞ。周りを見ろ』

やよい「周りって……、あ……!」


作業員A「――――」

作業員B「――――」

作業員C「――――」


みゆき「工事現場の人達が倒れてる……!」

なお「いつもみたいに心を吸ったの!?」

オーレン『その通りだが、いつもと同じではない』


オーレン『もう、闇の絵の具のために心を集める必要はすでになくなった。だから、集めた心は全てこのアキラメーナの力にしている』

オーレン『終末の黒い絵の具に、オレの力。さらに人間達の濁った心を直接エネルギーとして加えたのだ。今までと同じだと思うなよ、プリキュア』

れいか「では、やはり強力になっているのですね……!」


はるか「……ちょっと待って。"心を集める必要はない" って言ったの? どうして? あなた達はみんなの濁った心から闇の絵の具を作って、"デスペア" っていう心を食べる怪物を生み出すのが目的じゃなかったの!?」

オーレン『それについてお前達が知っても仕方がないことだ。お前達は誰一人として、ここから帰ることはできないのだからな』

ゆかり「すごい自信です……! あのアキラメーナ、そんなにスゴいんでしょうか……」

みゆき「でも、だからってこのままになんてしておけないよ!」


みゆき「みんな、行くよ!」

5人「うんっ!」

妖精達「デコル・チェーンジ!」

パチンッ!

レディ!

6人「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー! ゴーゴー! レッツゴー!!


ハッピー「キラキラ輝く、未来の光! キュアハッピー!!」

ピース「ぴかぴかぴかりん♪ じゃん・けん・ポン!(グー) キュアピース!!」

マーチ「勇気リンリン、直球勝負! キュアマーチ!!」

ビューティ「しんしんと降り積もる、清き心。キュアビューティ!!」

ノーブル「さらさら流れる気高きせせらぎ! キュアノーブル!!」

ヴェール「そよそよさざめく、優しい木陰。キュアヴェール!!」

オーレン『ん? プリキュア、今気がついたが、一人足りないのではないか?』

ハッピー「……!」

ノーブル(……サニーがいないんだ……。そうか、みゆきちゃんとあかねちゃん……、二人とも、まだ……)


マーチ「関係ないでしょ! あんたなんて、6人で十分なんだから!」

オーレン『なめられたものだな。まあいい、全員で来なかったことを後悔するんだな。行くぞ』

アキラメーナ(重機合体型)「アガッ……! ガァァァァァァァァッ!!」

ビューティ「すごい雄たけび……! 来ます!」

ガッ! ガリガリガリッ!


ピース「え……、何してるのかな……。右腕のショベルで、近くの地面をすくってる……?」


オーレン『ふんっ』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ!


バァッ!


ノーブル「えっ……!? すくった土を投げて――」


ドバァァッ!


ノーブル「うぁぁぁぁぁぁっ!?」


ガシャァァァンッ!


ビューティ「ノーブルっ!」

マーチ「近くにあった車が、ノーブルごとぺしゃんこに……! すごいパワー……!」

オーレン『よそ見をしているヒマはないぞ、キュアビューティ』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ!

ビューティ「こ、今度は左腕のクレーンが私めがけて……!」

ポップ(デコル)「危ない! かわすでござる、ビューティ殿!」

ビューティ「だ、だめです……! もう間に合いません……!」


バッ


ヴェール「"ヴェール・カーテン・ハート" っ!」パキィィィィンッ!


ガァァァァンッ!


オーレン『キュアヴェール、クレーンを受け止めたか』


ヴェール「だいじょうぶですか、ビューティセンパイ……!」

ビューティ「はい……! ありがとうございます、ヴェール!」


オーレン『だが、その盾は一枚しか出せないのだったな。ならばこれはかわせまい』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ!


バァッ!


マティ(デコル)「ヴェールっ! 土がヴェールの方に飛んできますわ!」

ヴェール「え……!?」


ドバァァッ!


ヴェール「きゃぁぁぁぁっ!?」

ハッピー「ヴェールっ!」

ノーブル「う……うぅ……」

ヴェール「…………」


オーレン『いい具合にキュアノーブルとキュアヴェールが近くにまとまったな。では、まず二人をこのまま押しつぶさせてもらうとしよう』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」


ドルンッ! ドルンッ!


ピース「あ、足のブルドーザーが煙を吐いてる……!」

マーチ「突っ込んで来る気!?」


アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」


ガガガガガガッ!


ビューティ「地面を削りながら突進してきます!」

ハッピー「このままじゃノーブルとヴェールが危ない……! 止めなきゃ!」

バッ

スタッ


ハッピー「みんなでアキラメーナを受け止めるよ!」

ピース・マーチ・ビューティ「うんっ!」


ドシンッ!

ガガガガガガッ!


ピース「……!? す、すごいパワー……!」

マーチ「全然……、止まらない……っ!」

オーレン『それしきの力で止まると思っているのか。かえって好都合だ。このまままとめて押しつぶさせてもらう』


ガガガガガガッ!


ハッピー「うぅぅぅぅぅっ! 止まってぇぇぇっ!」

ビューティ「こ、このままでは、私達の後ろのノーブル達まで危ない……っ!」


ビューティ「……うまくいくかわかりませんが、仕方ありません……!」

ビューティ「プリキュア! ビューティ・ブリザァァードッ!!」


バキバキバキッ!


オーレン『む? アキラメーナの下の地面を凍らせた?』


ツルルルルッ!


アキラメーナ(重機合体型)「ガ……!? アガ……!?」

ピース「やったぁ! アキラメーナのキャタピラがすべって、どんどんズレてく!」

マーチ「さすがビューティ!」


オーレン『こざかしいマネを。ならば、まずはお前からだ、キュアビューティ』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ!


バァッ!


ビューティ「!? 土がこちらに……!」


ドバァァッ!


ビューティ「きゃぁぁぁぁぁっ!?」

マーチ「ビューティっ!」


オーレン『キュアビューティは倒れた。これで同じ手は二度と使えんな。次こそ押しつぶしてやろう、プリキュア』

アキラメーナ(重機合体型)「アキラメーナァッ……!」ドルンッ! ドルンッ!


マーチ「くっ……、ホントに強い……! 口だけじゃなかった……!」

ピース「どうしよう……、このままじゃ……!」


ハッピー「……でも、負けられないっ……!」

ハッピー「ガンバらなきゃ……。私が、ガンバらなきゃ……っ!」

キャンディ(デコル)「ハッピー……!」

~ 七色ヶ丘中学校 花壇 ~

あかね「…………」

ウルルン「あかね、いつまでそうやってぼーっとしてるつもりウル? 行かなくていいウル?」

あかね「そんなこと言うたかて、"来るな" 言われてるんやから行ってもしゃあないやろ……」

ウルルン「……お前、それ本気で言ってるウル? みゆきに "やめろ" って言われたら、お前はプリキュアやめるウル?」

ウルルン「そういうことじゃねえだろウル……! じゃあ、お前は今まで何のために戦って――」

あかね「あんたにはわからへんわ!」

ウルルン「!」


あかね「……確かに、あんたの言う通り、うちはみゆきのためだけにガンバってきたわけやあらへん」

あかね「みんなを笑顔にするために……、みんなの笑顔を守るために……、うちはプリキュアとしてやってきたんや……」

あかね「けど……、けどな……、うちは "来るな" って言われてもうたんや……!」

あかね「みゆきにやで……? プリキュアになってからずっと、いっしょにやってきたみゆきにやで……?」

あかね「苦しい時も……、ツラい時も……、ずっといっしょにガンバってきた……みゆきに……っ!」


あかね「そんなみゆきに "来るな" 言われたんやで!? ショックに決まっとるやろ!」

あかね「なんでみゆきは、うちに "いっしょに行こう" て言うてくれんのや!? 言うてくれたんなら、いくらでもガンバったるのに! ……なんで……っ!」

あかね「……きっとみゆきはもう、うちのこと仲間やと……、友達やと思うてへんのや……」

あかね「うちがいっちゃん大切にしてきた宝物……、みんなとの友情……。それが……、壊れてしもた……」

あかね「ウルルン、あんたにわかるか……? 今まで自分を支えてきたものがなくなってもうた、今のうちの気持ちが……」

あかね「それが悲しゅうて……、悲しゅうて……、もう頭グチャグチャなんや……」


あかね「こんな気持ちじゃもう……、ガンバれへんわ……!」


ウルルン「…………」

ウルルン「……ああ、わかんねーな。たったそれだけでぐちぐち言って、こんなところで何もせずじっとしてる、お前の気持ちなんてよ……!」

あかね「……なんやて……? ウルルン、"たったそれだけ" っちゅうたんか……!?」

ウルルン「言ったがどうした」

あかね「何てこと言うねん! 友達はなぁ、うちにとっていっちゃん、いっちゃん大事なんやで!? それを――」


ウルルン「そんなに大事ならなんで守らねぇんだ!!?」

あかね「っ!?」


ウルルン「このままお前が行かねぇでみゆきがやられちまったら、キライだなんだどころの騒ぎじゃねえだろ!?」

ウルルン「本当にもう二度と、みゆきに会えなくなっちまうんだぞ!? それでいいのかよ、あかね!?」

ウルルン「大体、お前は何言ってんだよ!?」


ウルルン「"みゆきが来るなって言った" !? "みゆきが自分のことキライになった" !?」

ウルルン「"みゆきが" ! "みゆきが" ! "みゆきが" ! お前が言ってんのは、全部みゆきの考えじゃねえか!」

ウルルン「お前はどうなんだよ!? お前の考えはどうなんだよ!?」


ウルルン「お前は! みゆきといっしょにいてぇんじゃねえのかよ!!?」

あかね「!!」


あかね「…………」

あかね「……いたい……」

ウルルン「あぁ!? 聞こえねぇぞ!?」

あかね「……っ!」


あかね「うちはみゆきといっしょにいたい! ずっといっしょにいたいんや!!」

あかね「ずっといっしょにガンバったり! はげましあったり! 笑い合ったりしたいんや!!」


ウルルン「あかね……!」

ウルルン「……そう思うならこんなところでぼーっとしてる場合じゃねえだろ!?」

ウルルン「ホントかどうかもわかんねぇ相手の気持ちなんか気にしてんじゃねえ!! ダメだった時のことばっか気にしてんじゃねえよ!!」

ウルルン「今言ったこと、全部みゆきにぶつけてやれ!! お前のホントの気持ちをよ!!」


ウルルン「わかったら行け、あかね!! 走れぇぇぇぇっ!!」

あかね「……っ!!」


ダッ

ダダダダダッ


あかね(……もう知らん……、知らんわ……!)


あかね(みゆきがうちの夢をバカにするようなこと言うたことも……!)

あかね(あいさつしようとした時、そっぽ向いたことも……!)

あかね(さっき、うちだけ呼んでくれへんかったことも……! もうなんもかんも知らん……っ!)


あかね(うちはみゆきといっしょにいたい!! 今大事なのはそれだけや!! ほんまにあかんかったら……そん時はそん時や!!)

あかね(だって……、だって……)


あかね(うちはみゆきが……、みゆきが……っ!!)


ダダダダダッ…

~ 七色ヶ丘市 七色ヶ丘中学校近くの工事現場 ~

マーチ「はぁっ……、はぁっ……」

ノーブル「く……」


ピース「はぁっ……、はぁっ……」

ヴェール「…………」


ハッピー「はぁっ……、はぁっ……」

ビューティ「うぅ……」


オーレン『傷ついた仲間を抱えたままよく逃げる。だが、もう限界も近いだろう』

オーレン『どの道、その状態では何もできまい。じっとしていれば長く苦しまずに済むぞ』


ハッピー「……イヤだよ……!」

オーレン『何だと?』


ハッピー「絶対……、絶対負けないんだから……!」

ハッピー「もっと……、もっとガンバって……、絶対勝つの……! 勝たなきゃ……いけないんだからぁっ!」


オーレン『大した意地だな。ならばそのまま意地を張り続けていればいい』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ


キャンディ(デコル)「ハッピー! クレーンが来るクル!」

ハッピー「くっ!」バッ


ズガァァァァァァンッ!


オーレン『跳んでクレーンをかわしたか。だが、空中ではこれは避けられんな』


ガッ! ガリガリガリッ!


ピース「! ショベルで土をすくってる!」

マーチ「また土投げ攻撃が来る! ハッピー、危ないっ!」

ハッピー「……!」

ハッピー「……マーチっ! ビューティをお願いっ!」ブンッ

マーチ「え!? ビューティをこっちに投げた!? (ガシッ) わっとと!」

ビューティ「う……。ハッピー……、もしかして……あの攻撃を一人で受ける気では……!?」

マーチ「……! ビューティを巻き込まないために……!?」


オーレン『あくまで仲間をかばうか、愚かだな。それで自分が倒れては何の意味もないだろう』

オーレン『まあいい。その愚かさ、身をもって思い知れ』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ!


バァッ!


キャンディ(デコル)「ハッピー、土が飛んで来るクルぅっ!」

ハッピー「……っ!」

ダダダダダダダッ!


サニー「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」バッ


ギュッ


ハッピー「えっ……?」

キャンディ(デコル)「サニーが、ハッピーを抱きしめて――」


ドバァァッ!


サニー「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


ドサァッ


オーレン『キュアサニー、キュアハッピーをかばったのか』

サニー「っく……! ……無事か、ハッピー」

ハッピー「……! サ、サニー……」


ハッピー「…………」サッ

サニー「!」

サニー(……また、目そらされてもた……か)

サニー(……でも、ええねん)


サニー「無事、みたいやな。……よかった」ニカッ

ハッピー「……!!」

サニー「……ハッピー。うちな、ハッピーに謝らんとあかんねん」

サニー「この間、怒鳴ったりして、ほんまゴメンな。……イヤ、やったよな。怒って当たり前や」

ハッピー「え……?」


サニー「うち、そん時のことで、ここんところずっと悩んでてん。"ハッピーにキラわれてもた" って」

サニー「せやけど……、ええねん。ハッピーが、どんだけうちのことがキライでも構わへん。ハッピーが元気で……、笑顔でおってくれれば……、別にええんや」

サニー「だってうちはハッピーが……、……みゆきが……」

サニー「みゆきのことが、大好きなんやもん」

ハッピー「!!」


サニー「せやから……、安心し……!」

サニー「ハッピーもみんなも……、まとめてうちが守ったるから……!」フラッ

ハッピー「サニー……!」

ハッピー「……違う……。……違うの、サニー……!」

ハッピー「……っ!」


ハッピー「違うの! 謝らなきゃいけないのは、私の方だよ! ……あかねちゃんっ!!」

サニー「! ……ハッピー?」

ハッピー「私……、私……っ、あかねちゃんのこと……、キライになんて……なってないよ……っ!」

サニー「……え……?」

オーレン『…………』


オーレン『何だ? キュアサニー、遅れてきたと思えば、キュアハッピーとごちゃごちゃと、何をしている? このオレを前にして、随分と余裕だな』


ガッ! ガリガリガリッ!


オーレン『今、自分達がどこにいるのか、思い出させてやろう』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」


マーチ「……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」バッ


ドカァァァァァッ!!


アキラメーナ(重機合体型)「ガァッ!?」

オーレン『! キュアマーチ、ショベルを蹴ってすくった土を落とした?』


マーチ「二人の……ジャマはさせない……っ!」

オーレン『ジャマだと? 一体何のジャマだというのだ。あの二人が反撃をしようとしているようには見えんぞ』

オーレン『それとも、あの二人が話すことが、オレとの戦いより大事だとでも言うのか?』

マーチ「そうだよ!!」


マーチ「……ケンカし始めてから目も合わせなかった二人が……、やっとお互いのホントの気持ちを話そうとしてるんだ……! そのジャマは、絶対にさせないっ!」

マーチ「あの二人のためにあたしができることは……、それくらいだから!!」


オーレン『……!? 何を、言っているのだ、お前は。わからん……!』

ザッ


ノーブル「……マーチの……言う通りだよ……!」

ビューティ「あなたに、お二人のジャマは……させません……っ!」


オーレン『……なんなんだ、お前達は……!? なぜ、あの二人のためだけにそこまでする……!? 自分達が傷ついてまで……、体を張ってまですることか……!?』


ピース「うん……! だって……、二人とも、私達の大切な友達なんだもん!」

ヴェール「センパイ達には……いつも笑顔でいてほしいから……!」


オーレン『……くだらん。そんなにやられたいのならば、まずお前達からだ』


マーチ「来いっ! ここは……、絶対通さない!!」

サニー「……みゆき、うちのことキライやないって……、ほんまか?」

ハッピー「うん……」

サニー「……そか」


サニー「けど、せやったら、なんでうちが次の朝にあいさつしようとした時、避けるように行ってしもたん……? あれ、結構ショックだったんやで……?」

ハッピー「……あかねちゃんに、ヒドいこと言っちゃったから……、顔合わせづらくって……」

サニー「ヒドいことって……、うちのお好み焼き修行のこと、大したことないように言ったことか?」

ハッピー「うん……」

ハッピー「私、あの時、進路のことで頭がいっぱいで……、だから、ついそんなようなこと言っちゃって……!」

サニー「え……、進路……? ……そういえば、進路の話から言い合いになったんやっけ……」

ハッピー「……ショックだったの。あかねちゃんが、進路についてなんにも言ってくれないまま、自分で決めちゃったのが……」


ハッピー「だって……、だって、私――」

ハッピー「――あかねちゃんと、同じ学校に行きたかったから……」


サニー「!!」

ハッピー「……私ね、先生に進路のことを言われてから、ずっと考えてたんだ。"みんなで、いっしょに同じ学校に行けたらいいなぁ" って……」

ハッピー「だから、今の学校からも近い "七色ヶ丘高校" に行きたかったの。そこなら、今みたいにまたみんなと通えるから」

ハッピー「……でも、それって、私のワガママだよね……。いっしょに同じ学校に通うより、自分の夢の方が大事なことだってあるよね……。あかねちゃんみたいに……」

サニー「…………」


ハッピー「けど私……、それがなんだか悲しくって……。"あかねちゃんは、私と離れ離れになっても平気なのかな" って思ったら……すごく……、すごく、悲しくなっちゃって……!」

ハッピー「それで、なんとか同じ学校に行ってほしかったから、ついムリにあかねちゃんのこと誘おうとしちゃったの……!」

ハッピー「だから……、あかねちゃんの夢のことを考えないで……、あんなこと言っちゃったの……!」

サニー「…………」


ハッピー「私……、あの日から、ずっとあかねちゃんに謝りたかった……。ヒドいこと言っちゃったこと、謝りたかった……!」

ハッピー「でも、できなかった……! "許してもらえなかったらどうしよう"、"キラわれちゃってたらどうしよう" って思っちゃって、私、なんにも言えなかった……!」

サニー「…………」

ハッピー「それから……、ずっとツラかった……!」


ハッピー「あかねちゃんに謝らなきゃいけないのに……、あかねちゃんと、もう仲良くできなくなるかもしれないのがイヤで謝れなくって……」

ハッピー「あかねちゃんとはずっと、ずっと、今までみたいに楽しいことしたり、笑い合ったりしていきたいのに……、それができなくなるかもしれないのがコワくって……!」

ハッピー「それで……、それで私……、何にもできなかった……っ!」

ハッピー「だからせめて、プリキュアくらいはあかねちゃんに頼らないでガンバろう、って思ったの……。それくらいしか、あかねちゃんのためにできることが思いつかなかったから……」


サニー「…………」

ハッピー「……でも、違うよね。そんなことしたって、何の意味もないよね」

ハッピー「あかねちゃんに悪いことしたんだったら、あかねちゃんにちゃんと謝らないといけなかったんだ……!」


ハッピー「ゴメンね……、ゴメンね、あかねちゃん……! ヒドいこと言っちゃって、ゴメンね……!

ハッピー「ずっと謝れなくって……ゴメンね……っ!」ポロポロッ


サニー「…………」


サニー(…… "もう仲良くできなくなるかもしれないのがコワかった"、か)

サニー(みゆき、うちに対して怒っとったわけやなかったんやな。うちと……、おんなじやったんやな……)

サニー(みゆきも、苦しい思い、しとったんやな……)


サニー「……みゆき、もうええ。謝らんでええ。……やっぱ、ほんまに謝らなあかんのは、うちの方や……!」

ハッピー「え……?」

サニー「うち、ほんまアホや……。自分の夢のことばっかり考えとって……、進学した後のことなんて、全然考えてへんかった……」

サニー「進学する学校が違うっちゅうことは、みんなと離れ離れになるっちゅうことなのに……、そんなこと、これっぽっちも思わへんかった……」


サニー「それなのに、うちはみゆきにあんなこと言うてもうたんやな。"自分がどこの学校に行こうが関係ない" って」


サニー「……ヒドすぎるわ……。"高校もうちと同じとこに行きたい" って思うてくれとるみゆきに向かって、なんてヒドいこと言うたんや、うちは……! そんなん、傷ついて当たり前や……!」

サニー「しかも、今の今までうちはそれに気付いてへんかったんや……。自分がどうしてみゆきを傷つけたんか、わかってもおらんかったんや……! 自分でも呆れるわ……!」


サニー「笑ってまうな……。なにが "世界一のお好み焼き屋" や……。なにが、"自分のお好み焼きで世界中のみんなを元気にしたい" や……」

サニー「その "世界中のみんな" に含まれとる、いっちゃん身近でいっちゃん大切な友達すら元気にでけへんでどないすんねん……!」


サニー「大好きな友達一人笑わせられんで、どないすんねん……っ!」

ハッピー「……あかねちゃん……」

サニー「……みゆき、お願いがあるんや。聞いてくれるか?」

ハッピー「え……、なに……?」

サニー「…………」


サニー「こんなアホなうちやけど、これからも友達でいてくれるか?」

サニー「さっきも言うたけど、うち、みゆきのこと大好きやねん。みゆきには、いつだって笑顔でいてほしい。そんなみゆきの笑顔を、ずっと見てたい」

サニー「せやから、これからもずっと、いっしょに助け合ったり、笑い合ったり、してくれへんか……?」


ハッピー「……!!」

ハッピー「……もちろんだよ、あかねちゃん!」

ハッピー「だって、私にとってあかねちゃんは、優しくって、面白くって……!」


ハッピー「ずっとずっといっしょにいたい、大好きな友達なんだもん!!」

サニー「……っ!」


サニー「……みゆき……、ありがとう……!!」ニコッ

ハッピー「うんっ……!」ニコッ

ドガァァァァッ!


マーチ「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」ドサァッ

ハッピー「! マーチっ!」


オーレン『何をしたかったのか知らんが、手間を増やした程度にしかならなかったな』


ピース「うぅ……」

ビューティ「うっ……」

ノーブル「くぅっ……」

ヴェール「う……ぁ……」


ハッピー「みんな……!」

サニー「マーチ! だいじょぶか!? しっかりしぃ、マーチっ!」

マーチ「……サニー……。ハッピーと……、仲直り、できた……?」

サニー「え……?」


サニー「……ああ、できたで。バッチリや」

マーチ「そっか……。なら、よかった……!」


マーチ「サニーも……、ハッピーも……、あたしの、大好きな友達だから……、二人には、笑顔でいてほしかったんだ……!」

マーチ「ちゃんと話して……、元通り、仲直りしてほしかったんだ……!」

サニー「……! マーチ、もしかして、そのために今までアイツを引き受けて……?」

マーチ「(ニコッ)」

サニー「……そか。マーチやみんなにも、心配かけてもうてたんやな……。……なら……!」


ザッ


サニー「みんなの気持ちに応えるためにも、ガンバらんとあかんな」


ハッピー「サニー……、それなら、私も……!」フラッ

サニー「だいじょぶやで、ハッピー。あんなの、うち一人で十分や。だって――」


サニー「ちゃんと見つけられたんやから。"うちがなりたいうち" を」

ハッピー「え……!? それって……!」

バシュゥッ!


ヴェール「……えっ……!?」

マティ(デコル)「"ホープブラッシュ" が飛び出して……!」


フワッ


ハッピー「サニーの目の前に……!」

オーレン『……! これはまさか、今までと同じ……!?』


サニー「……キャンディ、うちの "夢の絵の具"、出してくれるか?」


ポンッ


キャンディ「わかったクル! (パカッ) はい、あかね、絵の具、出したクル。……あかね、みゆきの分も、みんなの分も、ガンバるクル」

サニー「うん、任しとき」


ピトッ

バァァァァァァァッ!!


アキラメーナ(重機合体型)「ア……アガガッ……!?」

オーレン『む……! キュアサニーが筆を絵の具につけた途端、強い橙色の光が……!』


サニー「……行くで!」

サニー「"夢の絵の具" よ! "希望の絵筆" よ!」


サニー「うちに、"未来を描く" 力を!!」


シュバァッ!!


ハッピー「"ホープブラッシュ" で描いたサニーの絵が……」


スゥゥゥゥッ


キャンディ「サニーに重なっていくクル……!」


バシャァァァァァンッ…!


サニー「……これがうちの、"なりたいうち"」

サニー「いつでもみんなを明るう照らして、元気な笑顔にできるうち」


レインボーサニー「"レインボーサニー"っ!!」

オーレン『キュアサニー、 "夢の絵の具" の真の力を発揮したか』


オーレン『しかし、くだらんな』

Rサニー「なにがや?」

オーレン『"みんなを笑顔に" だと? それがくだらんと言ったのだ』


オーレン『他の者を気にするのは、弱いからだろう。本当に強ければ、自分一人十分なはずだ』

オーレン『"人のため" などと言うこと自体が、お前が弱いという証拠だ』

Rサニー「…………」


オーレン『見せてやろう。本当の力を。本当の強さを』

アキラメーナ(重機合体型)「アキラメーナァァァッ……!」


ドルンッ! ドルンッ!


ハッピー「……! サニー、あのアキラメーナ、すごいパワーで向かってくるよ! 気をつけて!」

オーレン『気をつけたところで無駄だ。つぶれるがいい』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」


ガガガガガガッ!!


Rサニー「…………」

ハッピー「え……、サニー、どうして動かないの……!? 危ないっ、サニーっ!」

Rサニー「(スッ)」


ガァァァンッ!!


オーレン『!? なんだと? オレのアキラメーナの突進を止めた? 片手で?』

ハッピー「……うそ……。私達 4人がかりでも全然ダメだったのに……」


オーレン『……そんなバカなこと、あるはずがない』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」


ギャルギャルギャルギャルッ!


Rサニー「…………」グググッ

オーレン『全く動かん、だと? 空回りするばかりで、前に進めん』

オーレン『ならば、これならどうだ』


ガッ! ガリガリガリッ!


キャンディ「土をすくってるクル! また投げてくるつもりクル!」


オーレン『くらえ、キュアサニー』

アキラメーナ(重機合体型)「ガァァァァァァァァッ!」ブンッ


バァッ!


Rサニー「(バシィッ!!)」

オーレン『何?』


バキャァァッ!!


アキラメーナ(重機合体型)「ガァッ……!? ガァァァァッ!」

オーレン『土を、アキラメーナの右腕に向かってはじき返した。また、片手で』


バチィッ バチバチッ


オーレン『右腕が動かん、だと? 今ので動かなくなったのか』

オーレン『だが、まだ左腕が残っている』

アキラメーナ(重機合体型)「ガッ、ガァァァァァッ!」ブンッ

ハッピー「左手のクレーンが、サニーに!」


Rサニー「(ガシィィッ!)」

オーレン『受け止めた? またしても、片手で?』


ボゥゥッ!!

ドロッ…!


オーレン『キュアサニーの手から炎が出ている。触れたアキラメーナの左腕が、熱でとけた?』

オーレン『バカな。なんだこれは。今のオレが、何もできんだと?』


Rサニー「どないしたん? もう終わりか?」


オーレン『……!』

オーレン『……なぜだ? なぜだ!? 今のオレは強いはずだ! 誰の助けも必要ないほど!』

オーレン『それがなぜ、他人に助けてもらわないと何もできないほど弱いお前達人間などに手も足も出ない!? なぜだ!!?』


Rサニー「……そや。うちらは弱いんや」

Rサニー「あんたの言う通り、助けてもらわんと一人じゃ大したこともでけへんし、ちょっとしたことですぐ不安になったり、ヘコんでもうたりしてまう」

Rサニー「うちらはそんな、弱いもんなんや」

Rサニー「……けど、だからこそ強くなれるんや」

Rサニー「弱いから助け合う。弱いから励まし合う。そうやって、みんなで力を合わせられるから、どこまでも強くなれるんや」


Rサニー「うちのこの力かて、うち一人のもんやあらへん」


Rサニー「うちのこと、心配してくれたみんなの気持ち」

Rサニー「うちのこと、大好きや言うてくれたみゆきの気持ち」


Rサニー「その気持ちが、友情が、うちに力を与えてくれるんや」


オーレン『……なんだそれは……。弱いから強い? そんなバカなこと、あるはずがない!』


Rサニー「ほんなら見せたる。うちが、うちらが持っとる "本当の強さ" を!」

グッ… グググググッ…


オーレン『なんだと……!? このアキラメーナを持ち上げた……!?』

Rサニー「よしっ、トスやっ!」


バシィッ!


オーレン『お、おぉぉぉっ!?』


ハッピー「すごい……! あのおっきいアキラメーナが、あんな高いところまで……!」


Rサニー「行くで」パチンッ


ボワァァァッ!!

ダンッ!!


ピース「サニーが指を鳴らしたら、体中が燃えだした……!」

マーチ「そのまま……、アキラメーナに向かって跳んでいく……!」

Rサニー(そや、うちはなるんや)


Rサニー(いつでもどこでも、どんな時でも、みんなを照らせる太陽になるんや)


Rサニー(ほんでサンサンと輝いて、一人残らず元気な笑顔にするんや!!)


ギュゥゥゥゥッ!


オーレン『キュアサニー、真っ直ぐ向かってくる……! かわせん……っ!』


Rサニー「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

Rサニー「プリキュア! サニーファイヤー・ライジングっ!!」


ドカァァッ!!

ドゴォォォォォォンッ!!


ノーブル「跳び上がったサニーがパンチを当てた途端、大爆発が……!」

ビューティ「空で炎が輝いて……!」

ヴェール「まるで……お日さまみたい……!」

アキラメーナ(重機合体型)「ア……ガァァァァァ……」シュワァァァァ…

オーレン『キュアサニーの炎が……、アキラメーナを浄化していく……!? くっ!』


バッ

シュワァァァァ…


オーレン「アキラメーナが消える。脱出しなければ、オレも浄化されていた」


オーレン「なんだというのだ、ヤツらは。オレは闇の描き手なのだ。ヤツら弱い人間よりもずっと強いはずだ。そのオレが、全力を出して負けた……」

オーレン「…… "弱いから強い" だと? そんなことがあってたまるか」


オーレン「……次こそ、オレの力を証明してやる。覚悟しておけ、プリキュア……!!」シュバッ

~ 夕方 七色ヶ丘市 工事現場近くの道 ~

みゆき「…………」

あかね「…………」


やよい(小声)「二人とも、さっきから何も話さないね……」

ゆかり(小声)「仲直り、うまくいかなかったんでしょうか……」

なお(小声)「だいじょうぶだよ、きっと。あかねが自分で "仲直りできた" って言ってたんだもん」

はるか(小声)「……私達がいると話しづらいこともあるかもしれないね。ここは二人にしてあげよっか」

れいか(小声)「ええ、そうですね」


スタスタスタ…


みゆき「…………」

あかね「…………」

あかね「……なぁ、みゆき。進路相談用の学校資料、今持っとる?」

みゆき「え? あ、うん、あるよ。はい」

あかね「おおきに」


ペラッ


あかね「……うーん……、英語はやっぱどうにかなりそうやけど……、問題は他やな……。こら相当ガンバらんとあかんで……」

みゆき「あかねちゃん? 一人で何言って――、……って、あかねちゃん、そのページ……!」

あかね「…… "七色ヶ丘高校"、うちも受けてみようかと思てな」

みゆき「……! ホントに!?」

あかね「うん」


みゆき「あ……、でも、あかねちゃん、お好み焼きの修行はいいの? 勉強すると時間が減っちゃう、って……」

あかね「ん……、まぁ、そのへんはどうにかするわ。それより、もっと大事なことがあるってわかったからな。そっちの方を優先したいんや」

みゆき「大事なこと……?」

あかね「今回のことで、わかったことがあんねん。近くで誰かが笑っててくれへんとな、うち、どーも調子が出えへんねん」

あかね「うちにとって、みんなの笑顔はガソリンみたいなもんなんやな、きっと。未来に向かうために必要な燃料なんや」

あかね「せやから……、その、な、あの……」


あかね「"世界一のお好み焼き屋" になるっちゅー、うちの夢。笑顔のみゆきに、応援してほしいんや。そしたらきっと力が湧いてきて、うまいこと行くような気がすんねん」

あかね「うまく同じ学校に行けたら、それ……頼んでもええか?」

みゆき「あかねちゃん……!」


みゆき「うんっ! 任せて、いくらでも応援しちゃうんだから!」

あかね「……ははっ、おおきに!」

あかね「……ところでみゆき、うちのことより、自分はだいじょうぶなん?」

みゆき「え? なにが?」

あかね「なにが、やないわ。受験や受験。みゆき、確か全教科ニガテなんやなかったか? そんなんでこの学校行けるん?」

みゆき「う……、そ、それはー、ガ、ガンバれば、なんとか……」

あかね「ほんまかー? みゆきの方から誘ったくせに、うちだけ受かってみゆきは落ちてまう、なーんてのはカンベンやで?」

みゆき「だ、だいじょうぶだよ、きっと! 私だって、やる時はやるんだから!」

あかね「そやな。そう祈っとるわ」


みゆき「……あ。あかねちゃん信じてないでしょ! ひどいよー!」

あかね「そんなことあらへんで? 信じてますともー」

みゆき「心がこもってなーい! はっぷっぷー!」

あかね「あはははっ! なら、ちゃんと信じさせてみ! ガンバりや!」ニカッ

みゆき「うん!」ニコッ


ウルルン「…………」


ウルルン「……まったく、やーっと二人で笑えるようになったウル」

ウルルン「ホント、世話の焼けるパートナーだウル」ニッ

あかね(……やっぱこれや。うちにはこれが必要なんや。友達の笑顔、みゆきの笑顔が。世界中の人を笑顔にするのも大切な夢やけど……、この笑顔を忘れたらあかんかったんや)

あかね(この笑顔といっしょなら、どんな未来でも行けそうな気がするわ)


あかね(……そういうわけやから、これからもよろしくな、みゆき!)

あかね(いっしょに、ガンバっていこな!)ニカッ





つづく

次回予告

みゆき「今度、私達 3年生のみんなで卒業アルバムを作ることになりました!」

みゆき「卒業かぁ……。卒業したら、みんなそれぞれ違う道を行くことになるんだよね……。クラスのみんなはもちろん、……プリキュアの、みんなとも……」

みゆき「でも、さみしがってばかりもいられない! 私達は未来に向かって進んでいくんだから! よぉーっし、サイコーの卒業アルバムを作るぞーっ!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "卒業アルバム! 私達の絆のカタチ!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

それでは、新年一発目のお返事タイムとさせていただきます!


> 乙くださったみなさま

去年はご愛読いただき、ありがとうございました!
本年もよろしくお願いいたします!

……って言っても、もうすぐ終わりそうですけども。
最後までお付き合いいただけるとありがたいです!



> プレゼさん

> なおがれいかを助ける辺りから頭の中にスマイルプリキュアのOPが流れ始めてただでさえ迫力のある戦いがさらに迫力のある戦いになってました。

いいですね、そういうの!
この作品はアニメと違って文字しかないので、皆さま好きなように楽しんでいただけると嬉しいです。

ちなみに、自分の頭の中ではマーチのキャラソン2『SMILE FOREVER』を流してました。
実はサブタイトルもこちらの歌詞からこっそりお借りしています。



> HapeyRubbit さん

> 実は40話の次回予告を見た時点でイエロワが出てくるとは思っていました。

はい、見事に大当たりでした。
41話もオーレンで当たりですね。

でもそろそろ、若干相手が予想しづらくなってくるかもしれません。
今後をお楽しみに!

> 277 さん

> 展開的に安々とRフォームになれないからアキラメーナ戦はいつもギリギリの戦いになってて面白いね

お楽しみいただけたならよかったです!

実はここまでキャラを追い込むのは色んな理由で結構しんどかったりするんですが、
ご満足いただけたならやった甲斐があるというものです!


あ、よければ番外編もヨロシクです!



> 278 さん

> >>1は絶対なおれい好きだよね

ええまあ、好きは好きなんですが、
"幼なじみ" という設定を活かしたい、という気持ちの方が強いです。

だって、こんなオイシイ設定放っておいたらもったいないじゃないですか!
ガッツリやらせていただいておりますとも。

……なんで原作ではほとんどやらなかったんだろう、幼なじみ話……。
『5』のこまち・かれんくらいガッツリ掘り下げても良さそうなもんですけどねー。。


> そして次回はみゆあか…NISSANコンビが好きな人からバッドエナジーが溢れそう

予想された通りガッツリみゆあかで行く気だったんですが、
気がついたらちょろっと NISSAN(あかね・なお)コンビ要素が入ってました。

これでバッドエナジー出ないで済むかな?

> 280 さん

> 泥臭い展開で燃えました。

ありがとうございます。"泥臭い"、いいお言葉をいただきました。

悩んで、苦しんで、歯を食いしばって、泥まみれになりながら、それでも進む。
そんな展開が自分も大好きなので、うまく描けていたなら良かったです!


気が向いたら番外編もよろしくお願いします!





お返事は以上になります!
それでは、今年もよろしくお願いいたします!

もうそろそろ『スマイルプリキュア レインボー!』のお時間ですが、
現在、第42話の最終調整中でございます。

もうちょっとできると思いますので、しばらくお待ちください。。

お待たせしました!

『スマイルプリキュア レインボー!』

このあとすぐ!

~ 七色出版("週刊スマイル" 出版社) 待合室 ~

やよい担当編集・梅沢「――よし、今日の打ち合わせはここまでにしようか。次の作品も楽しみに待ってるよ。今のうちにどんどん描いて、実力をつけていこう!」

やよい「はい! ありがとうございました!」

梅沢編集「それじゃ、僕は別の仕事があるからこれで失礼するよ――」


ドンッ

バササッ


梅沢編集「わっ……! つまずいた拍子に原稿が落ちちゃった……! いかんいかん、拾わないと……!」サッ サッ

やよい「あ、お手伝いします!」

梅沢編集「すまないね、黄瀬さん」


やよい「……それにしても、すごく絵が上手ですね、この原稿……。でも、こんな漫画、週刊スマイルに載ってたかな……?」

梅沢編集「ああ、それは……、……見られちゃったんならしょうがないか。僕が見せたってことは内緒にしておいてよ」

やよい「え……? あ、はい」

梅沢編集「その漫画、持ち込みなんだ。君より一つ上の高校生の子の作品なんだけどね」

やよい「え……!? それじゃあ、プロの先生の漫画じゃないんですか……!? 背景とか、こんなにキレイで上手なのに……」

梅沢編集「その子、元々美術が好きだったみたいで、小さい頃から写生をずっと繰り返してたそうなんだよ。だから画力もすごく高くてね。今、編集部でも注目を集めているんだ」

梅沢編集「黄瀬さんにとってはライバル、ってことになるのかな。負けないように頑張らないとね」

やよい「……はい……」


やよい(……本当に、すごくキレイな絵……。一つしか違わないのに、私よりずっと上手……。こんな人もいるんだ……)


やよい(……私、今のままでいいのかな……)

やよい(もっともっと、ガンバらなくっちゃいけないんじゃないのかな……)


やよい(…………)

~ 七色ヶ丘中学校 職員室 ~

ガラッ


れいか「失礼します」

3-1 担任・佐々木 なみえ先生「あら、いらっしゃい、青木さん。ごめんなさいね、急に呼び出したりして」

れいか「いえ、大丈夫です。それで、ご用というのはなんでしょうか? 大事なお話、ということでしたが……」

佐々木先生「ええ。そのことなんだけどね」


佐々木先生「前に青木さんに相談された件、何とかなりそうなの」

れいか「! 本当ですか……!?」

佐々木先生「担当の方も青木さんのことを随分と気にかけてくださっていてね。本人が希望するのであれば是非に、と言ってもらえたわ」

れいか「そうですか……! ありがとうございます!」

佐々木先生「いいわよ、お礼なんて。生徒の望みを叶えてあげるのが先生の役目なんだから」

れいか「はい……!」

佐々木先生「……けどね、青木さん。このことについては、もう一度良く考えてみてほしいの」

れいか「え……」

佐々木先生「青木さん、去年一度この話をお断りしているでしょう? その時の理由は "まだお友達と一緒に過ごしていたいから" ということだったわね」

佐々木先生「今回は青木さんからの希望だったけれど、今、その時と同じことを思ってはいないかしら? この道を選んで、その後で後悔はしないかしら? とても大切なことだから良く考えてほしいの」

れいか「…………」

佐々木先生「その上で希望する、と言うのであれば、あちらの方にオーケーのお返事をするわ。先生もできる限りの応援をします」


佐々木先生「どちらにしても、よく考えて、自分の納得の行く道を選んでね。それが、青木さん自身のためだから」

れいか「……はい、わかりました。ご心配、ありがとうございます」ペコリ

佐々木先生「しっかりね」ニコッ

~ 夜 黄瀬家 やよい自室 ~

やよい「…………」


やよい(……やっぱり、このままじゃダメだよ……)

やよい(もっと上手に絵とか漫画が描けるようになるには、ちゃんとした勉強をしないといけないんじゃないのかな……。それなら、そういうことを教えてくれる学校に行かないと……)


やよい(……でも、そうしたら、みんなと……)


オニニン「やよい……」

~ 夜 青木家 れいか自室 ~

れいか「…………」


れいか(佐々木先生にしていただいたお話に応えれば、私にとって大きな一歩になるはず。"教師" という夢のための大きな一歩に)


れいか(……けれど、そのためには、皆さんと……)


ポップ「れいか殿……」

やよい(……それでも、やらなきゃ。私、もっともっとガンバって、自分の夢をかなえたいから……!)


れいか(誰のためでもない、私自身のために)

~ 翌日 朝 ホームルーム 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

佐々木先生「皆さんが 3年生になってから随分と経ちましたね。しばらくすれば皆さんはこの学校を卒業し、それぞれの道を歩んで行く事になります」

佐々木先生「その前に、七色ヶ丘中学校で過ごした 3年間を忘れないよう、卒業アルバムを作りましょう! アルバムの制作リーダーは、青木さん、よろしくお願いしますね」

れいか「わかりました。それでは皆さん、力を合わせて、楽しいアルバムを作りましょう!」

クラスメイト達「はーい!」


みゆき「…………」


みゆき(……卒業、かぁ……。いつの間にか、もうそんなに時間が経っちゃってたんだなぁ……)

みゆき(私達、これからどうなっていくのかな……)


みゆき(みんなそれぞれ、自分のやりたいこと――夢を見つけられた。どんな自分になりたいかも思い描けるようになった)

みゆき(でも、自分達の行きたい未来に進もうとすれば、いつまでも今とおんなじまんまじゃいられない……。……離れ離れになったりも、するかもしれないんだよね……)

みゆき(この間のあかねちゃんの時は私のカン違いだったからよかったけど、そんな時が実際に来たら、どうなるんだろう……)


みゆき(そうなったら私は……、笑顔でいられるのかな……)




スマイルプリキュア レインボー!

第42話「卒業アルバム! 私達の絆のカタチ!」



~ ふしぎ図書館 ~

はるか「――そっか、それでみんなで卒業アルバムを作ることになったんだね」

みゆき「はい、そうなんです」


ゆかり「……卒業、ですか……。そうしたら、センパイ達みんな、学校からいなくなっちゃうんですよね……。なんだか、さみしいです……」

あかね「ゆーかーり! なに落ち込んどんねん! まだもうちょっとあるんやし、気ぃ早いで!」

ゆかり「そうですけど……、やっぱり……」

なお「あかねの言う通りだよ、ゆかりちゃん。元気出して行こう? それに、ゆかりちゃんにはマティちゃんがいるじゃない! さみしいことなんてないよ!」


あかね「……あれ? けど、そういえば、そのマティがおらへんな。どっか行っとるん?」

ゆかり「マティちゃんは、"何か大切な用事がある" って言って、このおうちの外に出かけていきました……」

はるか「そっか。マティちゃんもいないから、なんだかちょっとさみしい気持ちになっちゃったのかな」

ゆかり「……そうかもしれません……」

なお「……まぁ、ホント言うと、あたし達もさみしい気持ちがないわけじゃないけどね」

みゆき「でも、卒業したって会えなくなるわけじゃないんだから! またいつでも会えるよ! ね?」

やよい・れいか「……!」

ゆかり「……そう、ですね」


やよい・れいか「…………」

やよい「……ねぇ、みんな。そういえば、卒業後の進路、ってもう決まったの?」

みゆき「あ、うん! 私はね、今の学校からも近い "七色ヶ丘高校" を受験するつもり!」

あかね「うちも、みゆきとおんなじとこや! ……やっぱまだみんなと離れとうないし。なー、みゆき」

みゆき「うん!」

やよい「……そっか」


みゆき「あ、なおちゃんも "七色ヶ丘高校" に行くんだよね」

なお「うん、そのつもり! みゆきちゃんの言う通り、家からも近いしね。あたし、この町と町の人達が好きだから……、離れたくないんだ」

あかね「なおの夢はこの町を守るおまわりさんやもんな! うぅ、その地元愛……、泣けるでぇ……」

なお「ちょっと、あかね! 茶化さないでよー! あたし真剣なんだから!」

あかね「にししっ! スマンスマン!」

なお「もう! あかねったら!」

れいか「…………」

はるか「……あれ、でも確かあそこって、結構学力高い方じゃなかったっけ? みんな、正直なところ……勉強あんまり得意じゃなかったよね? 大丈夫なの?」

みゆき・あかね・なお「ギクっ!」


みゆき「……あー、そのー……」

あかね「もしよかったら、なんですけども……」

なお「はるかさんやれいかに勉強、教えてもらえたらいいなぁ……、なんて思ってるんですけど……。えへへ……」

はるか「つまり、自信はない、と」

みゆき・あかね・なお「……はい」


はるか「……わかった! 大丈夫、任せて! 私がみんなのことバッチリサポートするから! みんなでおんなじ学校に行けるよう、お勉強頑張ろう!」

みゆき「あ……、ありがとうございますぅー……!」

なお「はるかさんが輝いて見える……!」

あかね「れいかはともかく、うちらはほんまにガンバらんとあかんからなぁ……。けど、はるかさんが手伝ってくれるんなら安心やな、やよい!」


やよい「…………」

れいか「…………」


あかね「……ん? どないしたん、やよい? 黙ってもーて。はるかさんに手伝ってもろてもまだ不安なん?」

なお「れいかまでなんか暗い顔してない? どうかしたの?」


やよい「……あのね、進路のことなんだけど……、みんなに言っておかなきゃいけないことがあるの」

みゆき「な、なに、改まって」

やよい「…………」

やよい「私、みんなとおんなじ学校には行かないつもり……なの……」

みゆき「……え……?」


シーーーン…


あかね「……きゅ、急に言われたもんやから、ビックリしてもたわ! 悪いけど、もいっぺん言ってもらえへん?」

やよい「……私、あかねちゃん達とは違う学校に行くつもりなんだ」

なお「……聞き間違えじゃ、ないんだ……。ホントなの、やよいちゃん……?」

やよい「うん……」


あかね「……やよい。うち、こないだ進路のことでみゆきと大ゲンカやらかしたからあんまり強く言えへんけども……」

あかね「わかっとるん? その学校に行く、っちゅうことは――」

やよい「もちろんわかってるよ。みんなとは……お別れすることになるよね……」


やよい「でもね、私、いっぱい考えたの。いっぱい考えて、それで決めたことなんだ」

なお「そうなんだ……。でも、どうしてなの、やよいちゃん。そこまで言うからには、何か理由があるんだよね?」

やよい「うん……」

やよい「この間ね、漫画の打ち合わせをしに行った時、そこですごく絵が上手な人が持ち込んだ漫画を見ちゃったの……。プロの先生かと間違えちゃうくらい上手で、今の私には全然描けないくらいキレイだった……」

やよい「それを見て、私思ったんだ。"こんなにスゴい人がいるんなら、もっともっとガンバらないと" って」


やよい「だからね、だから、私……、絵をしっかり教えてくれる学校に行きたいの」

はるか「それって例えば、美術科みたいな、専門の学科がある高校ってこと?」

やよい「はい」

やよい「……ホントは、私もみんなとおんなじ学校に行きたい……。みんなと、ずーっといっしょにいたいよ……」

やよい「でも、でもね、それじゃダメなんだ……。せっかく漫画家としてデビューできたんだもん。もっともっとたくさんの人に私の漫画を見てもらいたい……」

やよい「そのためには、今よりもっとガンバらないといけないと思ったの。それでみんなと……、離れ離れになることになっても……」

あかね「……本気、なんやな」

やよい「うん」


みゆき達「…………」

れいか「……やよいさんのお気持ち、とても良くわかります。実は、私もここ数日、同じようなことを考えていました」

みゆき「……え?」

あかね「ちょ、ちょお待って……。その言い草やと、もしかして、れいかまで……」

れいか「……黙っていてすみません……」


れいか「私、留学しようと思っています。ですから私も、皆さんと同じ学校には……行けません」

みゆき達「……!」

なお「え……」


あかね「留学って、海外留学? それって、去年行こうとしとった……?」

れいか「はい。以前から佐々木先生にお願いしていて、同じ留学プログラムに再び選んでいただくことができました」

みゆき「……ホントなの、れいかちゃん……? だって、去年はれいかちゃんも "本当は行きたくない" って……!」

れいか「確かに、みゆきさんの言う通り、一度は取り止めました。ですが、今度こそは本当に留学をするつもりです」

れいか「……私は、これまでずっと "道" に迷ってきました」

れいか「どうして自分が色々なことをやるのか、私は本当は何がしたいのか、それが、ずっと見つけられないでいました」

れいか「そんな私が初めて見つけた自分だけの "道"、初めてのわがまま。それが、去年留学をやめた時の私の素直な気持ち、"皆さんと共に過ごし、一緒にいる今を大切にしたい" という想いでした」


れいか「そして、私はその後皆さんと過ごし、はっきりと自分の進みたい "道" を見つけることができました」

れいか「私のように "道" に迷う人達のために何かをしてあげたい。悩める人達と共に "道" を歩み、成し遂げる喜びを分かち合いたい」

れいか「それができる "学校教師" という職業になりたい。そう、思えるようになったのです」

れいか「ですがそのためには、やよいさんと同じく、今のままではいけないと思いました」


れいか「人の心は十人十色――十人の人がいれば、十通りの心の色があり、それはみんな違うものです。私達 7人の心の色がそれぞれ違うように」

れいか「ですから私は、より多くの人と共に "道" を歩くためには、より多くの人を知るべきだと思ったのです」

れいか「文化、習慣、考え方……。様々な人と出会うことで、より多くの経験を得るために、改めて留学をしたいと思ったのです」


れいか「今度は他の誰かに言われて、ではありません。私の行きたい "道" を行くために、私自身が望んで留学をしたいのです」

あかね「れいか……」

はるか「……れいかちゃん、やよいちゃん、二人とも立派だね」

れいか「はるかお姉さん……?」

はるか「私は、さっきれいかちゃんが言ってたみたいに、ずっと人に流されてきた。留学も、陸上競技のことも。もう少しで、自分が本当にやりたいことができなくなるところだった……」

はるか「でも二人は、自分とちゃんと向き合って行きたい未来のために行動しようとしてる。すごいことだよ」

はるか「ガンバって、二人とも。私は、二人を応援するよ」

やよい「はるかさん……」


はるか「……でも、他のみんなはどうかな……」


みゆき・あかね・なお・ゆかり「…………」


やよい・れいか「…………」

みゆき「……私も、はるかさんと同じ気持ちだよ。二人のこと、応援したい」

やよい・れいか「……!」

あかね「みゆき……! ……ええんか……?」

みゆき「うん」


みゆき「あかねちゃん、この間私に言ってくれたよね。"私のことが好きだから、笑顔でいてくれれば十分だ" って」

あかね「あ、うん……、言うたな」

みゆき「私もそう思う。だから、二人が笑顔になれる未来に進んでほしい。二人がハッピーなら私もハッピーだもん」

みゆき「私、やよいちゃんとれいかちゃんが、大好きだから!」ニコッ

あかね「……そか」


あかね「うちも、みゆきと同じ気持ちや。まぁ、さみしいっちゃさみしいけどな……」

あかね「けど、そこまで真剣な気持ちをちゃんと話してくれたのが、なんだかうれしいわ。そんだけ気にしてくれとるっちゅーことやもんな」

あかね「ガンバりや、やよい、れいか! うちも応援しとんで!」ニカッ


やよい「みゆきちゃん……」

れいか「あかねさん……」

あかね「……ということやから、うちらはまぁええわ。問題は……」チラッ


なお「…………」


みゆき「あ、そっか……。なおちゃんとれいかちゃんは、小さいころからずっといっしょだったんだよね……」

はるか「そうだね。幼稚園、小学校、中学校と、ずっと同じところに通ってた」

あかね「それなのに、別れなあかんのやな……。うちらとは比べもんにならんくらい、さみしいんとちゃうか……」


なお「…………」

れいか「…………」

なお「……行ってきなよ、れいか」

れいか「……! なお……」


なお「さっき、れいかの本当に真剣な気持ち、話してくれたでしょ? それを聞いたから、引き止めたくはないんだ」

なお「みゆきちゃんも言ってた通りだよ。れいかがやりたいことを思いっきりやったらいいと思う。それでれいかがうれしいなら、あたしもうれしいから」


なお「だから、精一杯ガンバってよ、れいか! あたしはいつだって、れいかのことを応援してるから!」ニコッ

れいか「なお……! ……ありがとう……!」


みゆき「……なおちゃん……」

みゆき「……そうだ! いいこと閃いたーっ!」

あかね「わっ!? な、なんやねん、急に大声出して!?」

やよい「何を閃いたの、みゆきちゃん?」

みゆき「卒業アルバムのアイデアだよ! 夢に向かってガンバろうとしてるやよいちゃんとれいかちゃんを見てたら思いついたの!」

れいか「アイデア、ですか? それはどういうものでしょう?」

みゆき「あのね、みんな耳貸して。……ごにょごにょごにょ……」


あかね・やよい・なお・れいか「……!」


なお「いいアイデアだね、それ!」

やよい「うんうん! すっごくいいアルバムになりそう!」

みゆき「でしょでしょー!? どうかな、れいかちゃん!?」

れいか「とても素敵だと思います! 早速明日、そのアイデアを提案してみます!」

みゆき「お願いね、れいかちゃん!」


あかね「よっしゃ! いつまでもうじうじしててもしゃーない! ひとまず、今を精一杯ガンバったろうやないの!」

みゆき・やよい・なお・れいか「おーっ!」

はるか「みんな、やる気いっぱいだね! 踏ん切りがついたのかな」

ゆかり「……ホントに、そうでしょうか……」

はるか「ん? どうしたの、ゆかりちゃん。まだ暗い顔しちゃって」

ゆかり「わたし、センパイの皆さんとお別れするのがさみしいです……。けど、センパイ達は、お互いがお別れすることになって、もっとさみしいんじゃないか、って思うんです……」

ゆかり「もしわたしがマティちゃんやクラスのみんなとお別れすることになったら、あんな風に元気でいられないと思うから……」


ゆかり「だから、もしかしたら皆さん、……ムリしてるんじゃないか、って……思うんです……」

はるか「……そうかもしれないね」

はるか「でも、ゆかりちゃん。みんな、わかってると思うよ。それぞれの未来に進むためには、いつかはお別れしなきゃいけないってこと」

はるか「それでも、何とかガンバって前に進もうとしてるんだと思う」

ゆかり「…………」


はるか「だから、ゆかりちゃん! みんながガンバってるのに、私達が暗い顔してたらダメだよ! ツラいかもしれないけど、精一杯明るくして、みんなを応援しよう? ね?」

ゆかり「……わかりました……!」


タタタタタッ


ゆかり「あ、あの……! わたしにも何かお手伝いできること、ありませんか……?」

みゆき「え、ホントに!? ゆかりちゃん、手伝ってくれるの!? ありがとう!」

れいか「それでは、やよいさんといっしょにページの飾りつけをお願いできますでしょうか」

やよい「よろしくね、ゆかりちゃん!」

ゆかり「は、はい……!」

~ 翌日 朝 ホームルーム 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

れいか「――それでは、卒業アルバムの企画について説明します」


れいか「皆さんには、それぞれ仲良しの方と集まって、集合写真を撮ってきてもらいたいと思います」

クラスメイト・木村 さとし「集合写真? ただ写真撮るだけ? フツーすぎない?」

れいか「そうですね。ですので、その写真についてのアイデアを考えました」


れいか「写真を撮る時、皆さんの将来の夢を連想させるものを持って、一緒に撮ってください」

クラスメイト・金本 ひろこ「将来の……夢?」

れいか「はい」

れいか「皆さんそれぞれ、将来はああなりたい、こうなりたい、と、思い描いている未来があるかと思います」

れいか「ですが、そのためにはツラく、苦しいこともあるでしょう。もしかしたら、くじけてしまうこともあるかもしれません」


れいか「そんな時のために、今の強い気持ちを写真にして残しておくといいのではないか、と思いました。夢に向かうのが苦しくなった時、自分を支えてくれた友達と、夢に対する強い気持ちを思い出せるように」

れいか「ツラい時に開けば、七色ヶ丘中学校の思い出が未来に向かう元気をくれる。そんな卒業アルバムがいいのではないか、と考えました。どうでしょうか?」


クラスメイト達「…………」

クラスメイト・豊島 ひでかず「いーんじゃねえの、それ?」

クラスメイト・尾ノ後 きよみ「うん! とってもステキ!」

クラスメイト・野川 けんじ「でも、ちょっとテレくさいなぁ……」

クラスメイト・岡田 まゆ「いいじゃない! 青木さんの言う通り、そんな卒業アルバムだったらきっと元気が出るよ!」


ワイワイワイ


れいか「それでは、このアイデアでいいでしょうか?」

クラスメイト達「オッケー!」

れいか「ありがとうございます! それでは皆さん、写真ができたら私のところまで持ってきてください。よろしくお願いします!」

~ ホームルーム終了後 ~

れいか「ありがとうございました、みゆきさん。おかげで、皆さんに気持ちよく協力してもらえそうです」

みゆき「ううん! みんな喜んでくれたみたいでよかったよ!」


なお「その写真、あたし達もどこかで撮らないとね」

やよい「でもなおちゃん。私達、れいかちゃんのお手伝いで、別のページも作らなくっちゃ」

なお「わかってるって。まずはそっちをやっちゃってからだね」


れいか「それでは皆さん、放課後、アルバム制作作業、よろしくお願いします!」

みゆき・あかね・やよい・なお「はーいっ!」

~ 放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

みゆき「よぉーし、それじゃどんどんページ作っていこう!」

れいか「私達が担当するのは "3年間の思い出" というページです。昨日、やよいさんとゆかりさんでページの構成を考えてもらったので、それに合わせて写真を貼り付けていってください」

なお「オッケー、れいか!」

あかね「うん、それはええんやけども……」


ゴチャァッ…


あかね「……なんちゅう数の写真や……。机埋まっとるやんか……」

れいか「その中から、生徒の皆さんに偏りがないよう、いい写真を選んでください」

あかね「言うのはカンタンやけど……、結構しんどいでこれ……」


ピョンッ


キャンディ「みんな、タイヘンクル? キャンディもお手伝いするクル!」

みゆき「ありがとう、キャンディ! それじゃ、写真選んで渡してくれる?」

キャンディ「ガッテンクル!」

ガサガサガサ…


やよい「(ヒョイッ) 次はこの写真がいいんじゃないかな」

みゆき「って、やよいちゃん、これ尾ノ後さんがメインだよ。さっき使ったばっかりだから、別の写真にしようよー」

やよい「あ、そっか……。みんなのバランスを良くしないといけないんだもんね。うぅー……、けっこう難しいなぁ……」

あかね「なんかクジみたいになってきよったなぁ。したら、いっそ目つぶったらアタリ引けるかもしれへんな。やってみるか。……んんー……、これやっ!」ヒョイッ

なお「どう、あかね? いい写真取れた?」

あかね「…………」ジーッ…

れいか「あかねさん? 取った写真をじっと見て、どうかしましたか?」


あかね「……ぷっ、あははははっ!」

みゆき「わっ!? あ、あかねちゃん、どうしたの、急に笑って……」

あかね「いやな、"クジみたい" とか言うてたら、それっぽいの引いてもーたから、おかしくてつい……!」

やよい「え? "それっぽい" ?」

あかね「ほれ、見てみぃこれ」ピラッ

みゆき達「…………」ジーッ

みゆき「……あーっ! これ、2年の修学旅行で京都行った時の写真だぁ! 私ジャージで写ってるー!」

なお「あはははっ! なるほど、"クジみたい" ってそういうことかぁ!」

れいか「あの時、みゆきさんがクジで "大凶" 引いて、散々な目にあってしまったんでしたね」

やよい「そうそう! 確か池に落っこちちゃって、ずぶ濡れになっちゃったんだよね、みゆきちゃん!」

あかね「おかげでその後ずっとジャージで回るハメになったんやったな! あははっ、懐かしなぁ!」

みゆき「うー……、それあんまりいい思い出じゃなーい……。はっぷっぷー」

あかね「(ゴソゴソ) ……おおっ、また懐かしい写真が出てきたな! ほれ、見てみ!」

なお「これって……、確か生徒会で絵本の読み聞かせ会をやった時のだね!」

れいか「思い出深いですね……。私が初めてプリキュアになった時だったでしょうか」

みゆき「私にとっても思い出のある会だったなぁ……」

あかね「せやな。みゆきなんて、今じゃ自分で絵本描いて子供達に読んであげるようになったんやもん。そう考えると、みゆき、大きゅうなったなぁ……」シミジミ

やよい「ふふふっ、何それ、あかねちゃん。なんだかお父さんみたい」

キャンディ「みゆき、みゆき! こんなのもあったクル!」

みゆき「え? これって……、あ! 去年の文化祭の時の写真だぁ! これも懐かしいなぁ!」

なお「メルヘンのキャラクターの服を着てファッションショーをやったんだっけ」

れいか「メルヘンの仮装をするのはみゆきさんのアイデアでしたね。とても楽しかった覚えがあります」

あかね「うちもや! 確かあん時は、みゆきがみんなをまとめようとガンバったんやったな。ええ仕事したで、みゆき!」

みゆき「えへへ、なんだかテレるなぁ」

やよい「よぉーし、それじゃ私もどんどん色んな思い出探そっと! 次は……これだっ!」ヒョイッ

やよい「……!」

オニニン「ん? やよい、取った写真をじっと見て、どうかしたオニ?」

やよい「…………」


やよい「ねぇ、れいかちゃん。この写真、貼ってもいいかな。私にとって、すごく大切な写真なんだ」

れいか「もちろんです。ですが、どんな写真ですか?(チラリ) ……! これは……」

あかね「ん? なになに、どしたん?」

れいか「やよいさんが掲載を希望している写真なんですが……」

みゆき「あ……、これって……!」


なお「……去年の体育祭の時の写真……!」

やよい「うん……」

やよい「……みんな、憶えてる? 去年の体育祭のリレーのこと」

あかね「……忘れるわけあらへんやろ」

みゆき「うん……。私にとっても、大切な思い出だもん……」


ポップ「そんなに大事な思い出なのでござるか? 拙者はその時のことを詳しく知らないのでござるが……」

れいか「去年の体育祭の時、私達 5人でリレーを走ることになったのです。皆さん、とても頑張って練習をして、本番でもそれぞれが力を出し切って走りました。……ですが……」

なお「……アンカーだったあたしが、最後の最後で転んじゃったんだ」

ポップ「なんと……! それでは結果は……」

なお「……あたし達のビリ」

みゆき「そうだったね……」

オニニン「でも、やよい。それが大切な思い出オニ? ビリだったんなら、イヤな思い出なんじゃないかオニ?」

やよい「ううん、違うのオニニン。順位は関係ないの。この時ね、私、ホントに大切なことを教えてもらったから」

オニニン「大切なことオニ?」

やよい「うん」


やよい「"ガンバることって、本当に大切なんだ" ってこと」

やよい「……そういえば、みんなには話したことなかったよね」

やよい「私ね、リレーに出ることになった後、クラスのみんなにこっそりバカにされてたんだ。"黄瀬なんて足が遅いから、リレーに出てもしょうがないのに" って」

みゆき「え……!? ……そうだったの……?」

あかね「初めて聞いたわ、その話……」

やよい「うん。私、たまたまその話聞いちゃって……。……すごくショックだった……」


やよい「私、その時 "リレーに出るのやめよう" って思った。"どうせうまくいかないし、こんな風に言われるんならやめよう" って」

やよい「ガンバることを、あきらめようとしてた」

やよい「……でもね、そんな私をはげましてくれたのが……なおちゃんだったんだ。"ダメでもいいから、一生懸命やってみよう" って。"力を合わせれば、なんだってできる" って」

やよい「だから、私はガンバれたの。みんなからもらったリレーのバトンを、ちゃんとなおちゃんにつなげられた」

やよい「結果は……、さっきなおちゃんが言ったみたいにビリだったけど……、もし私があそこでガンバれなかったら、ビリにもなれなかった……」

やよい「ビリでもよかったの。だって私には、バトンを最後までつなげられたことがゴールだったから」

やよい「それが……、自分の力でガンバりきれたのがすごくうれしくて……」


やよい「それで私、わかったんだ。"ガンバることって、本当に大切なんだ" って」

なお「やよいちゃん……」


やよい「だから、みんなで走ったリレーの時のことは、私にとってホントに大切な思い出なの」

やよい「ここでガンバれてなかったら、漫画のこともガンバれなかったかもしれない……。今の私も、いなかったかもしれないから……」

やよい「だから、この写真は卒業アルバムにのせたいんだ」


やよい「たぶんこれから、ツラいこともたくさんあると思う……。苦しいこともあると思う……。でも、この写真を見れば、またガンバろうって思えるはずだから……」


やよい「……この写真が……、みんなと……、ガンバったこの写真が……」


やよい「私を……、私を……、元気にしてくれる……はずだから……っ」ジワッ


ポロッ


みゆき達「!」


みゆき「やよいちゃん……、泣いてるの……?」


やよい「……ごめん……。みんなとのことを思い出してたら……、……なんだか……ツラくなっちゃって……」

やよい「大好きなみんなと……お別れするのが……、……ツラくなっちゃって……っ!」

やよい「私……、自分の夢のために……みんなと違う学校に行くって……決めたの……」

やよい「でもやっぱりさみしい……! さみしいよ……!」


やよい「みんなとの……楽しい思い出を見るたびに……、お別れしなくっちゃいけないのが……、どんどんツラくなって……!」

やよい「泣いちゃダメなのに……! 笑って、夢に向かって進んでいかないといけないのに……! すごくさみしくなっちゃって……! 私……、私……っ!」ポロポロッ


みゆき「やよいちゃん……」

れいか「…………」

れいか「皆さん、今日の作業はここまでにして、続きはまた明日にしましょう」

なお「……うん、その方がいいかもね……」


れいか「……やよいさん。もしツラいようでしたら、言ってくださいね。アルバムの作業は私達でやりますから」

やよい「……ごめんね、れいかちゃん……。迷惑かけて……」

れいか「……いえ……」

~ 夕方 七色ヶ丘中学校 校門 ~

れいか「それでは皆さん、おつかれさまでした。また明日、よろしくお願いします」

みゆき「うん、また明日」


あかね「やよい、今日はいっしょに帰ろか」

みゆき「私も行くよ。一人じゃ、さみしいもんね……」

やよい「……ありがとう、あかねちゃん、みゆきちゃん……」


スタスタスタ…


れいか「…………」

なお「……あたし達も行こうか、れいか」

れいか「ええ……」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

スタスタスタ


なお「やよいちゃん、だいじょうぶかな……。心配だね……」

れいか「ええ……。やよいさんには、つらい思いをさせてしまったかもしれません……」

なお「やよいちゃんのためにあそこで作業を切り上げたのは正解だったね」

れいか「…………」


ピタッ


なお「? れいか、どうしたの、立ち止まって」

れいか「……本当は、作業を切り上げたのは、やよいさんのためだけではないの……」

なお「え……? それってどういう……」

れいか「…………」


れいか「……あのまま続けていたら……、私も……泣いてしまいそうだったから……」

なお「……! れいか……」

なお「……やっぱり、れいかもツラいの?」

れいか「……ええ」


れいか「さっき、アルバムのために写真を整理していた時……、私も、やよいさんと同じ気持ちだった……」

れいか「写真の中の思い出が楽しいものであればあるほど、今の学校での生活が恋しくなってしまって……」

れいか「どうしても、皆さんとの別れが、惜しくなってしまって……」

なお「……れいか……」


なお「…………」

なお「……それでも、れいかは自分の "道" を行かなくちゃ」

れいか「え……」

なお「だって、"留学したい" って自分で決めたんだよね。立派な先生になるために」

れいか「……ええ……」

なお「だったら、ツラくっても負けちゃダメだよ」


なお「悩んで、悩んで、やっと見つけた自分だけの "道" なんだから、迷わないで真っ直ぐに進んでほしい」

なお「あたしは、れいかにはそんな強い人でいてほしいな」

れいか「……なお……」

なお「あ。あたしの家こっちだ」

なお「ガンバって、れいか。自分の "道"、見失わないようにね」

れいか「ええ……。ありがとう、なお」

なお「うん。じゃあね、また明日」


スタスタスタ…


れいか「…………」


れいか(なおの言う通りね……。私が選んだ私の "道" なのだから、迷ってはダメだわ……)

れいか(強く、強く気持ちを持って進まないと……)

~ 七色ヶ丘市 緑川家 帰路 ~

スタスタスタ


なお「…………」


なお(……ダメだ、あたし……。もう少しで言っちゃうところだった。…… "行かないで" って)

なお(でも、今度は去年の時とは違う。れいかが自分で選んだことなんだ。……なら、ジャマになっちゃいけない)


なお(引き止めたら、ダメなんだ……。どんなに、どんなにさみしくても……、ちゃんと送り出してあげなきゃ、ダメなんだ……)

~ 黄瀬家 玄関前 ~

あかね「着いたで、やよい」

みゆき「やよいちゃん、だいじょうぶ……?」

やよい「うん……。気持ちも落ち着いてきたみたい。ありがとう、二人とも」


やよい「……私、もっと強くなるよ。一人でもガンバれるように」

やよい「だって、自分で決めたことなんだもん。ちゃんと、やりきらなきゃ」

あかね「……それでこそ、やよいやで。ツラいかもしれへんけど、ガッツでガンバらなな」

やよい「うん」


みゆき「それじゃあ、やよいちゃん、私達も帰るね」

やよい「うん、送ってくれてありがとう。気をつけてね」

あかね「うん。ほなな」

~ 七色ヶ丘市 道路 ~

スタスタスタ


みゆき「…………」

あかね「…………」


あかね「……なぁ、みゆき」

みゆき「なに、あかねちゃん」

あかね「うちな、みんなと楽しく遊んだりしとる時、たまーにぼんやり考えたことあんねん。"こんなに楽しくても、いつかは離れ離れになってまうんやろな" って」

あかね「そんなの、もっとずっと先のことやと思とった。けど……」


あかね「いざそうなってみると……、……結構しんどいな」

みゆき「うん……、そうだね……」


みゆき「…………」

あかね「…………」

~ デスペアランド 王宮 大臣自室 ~

大臣「さて、オーレンにイエロワ。ちょっと困ったことになりましたねぇ」


大臣「二人とも、最高のアキラメーナを使ったにもかかわらず、プリキュア達を倒せなかった」

大臣「その上、7人いるプリキュアのうち 6人までが "夢の絵の具" の真の力を引き出してしまいました」

大臣「これは困りました! プリキュアが強くなってしまっては、デスペアランドの一大事! はてさて、どうしたものやら!」


オーレン「相変わらず回りくどいヤツだ。プリキュア達を倒せさえすれば問題ないだろう」

大臣「まったくもってその通りなんですがね。それができていないから困った、という話をしているのですよ。どうにかできないもんですかねぇ」

イエロワ「……大臣様。ワシに考えがありますですじゃ」

大臣「ほう、聞かせてもらいましょうか」

イエロワ「ワシは考えたのですじゃ。なぜワシらはプリキュアどもよりずっと強い力があるにもかかわらず、こうも勝てないのか」

イエロワ「そのヒントは、ワシがこの間キュアマーチに言われたことにある、と気付いたのです」

大臣「と、言うと?」


イエロワ「キュアマーチが言うには、ワシらを倒した時の力は "自分一人の力ではない" そうですじゃ。"みんなが力をくれる" のだそうで」

オーレン「キュアサニーも同じようなことを言っていたな」

イエロワ「で、あれば、もしその "みんな" がいなくなれば、あやつらは力を出せないのではないか、と考えたのですじゃ」


イエロワ「もうそのための作戦は用意してあります。これならばきっと、プリキュアを倒し、"夢の絵の具" を奪うことができるはず! 今度こそ、大臣様のご希望にお応えできるはずですじゃ!」

大臣「ふむ……、何やら自信がありそうですね。それではイエロワ、今回はあなたにお任せしましょう」

イエロワ「ありがたき幸せ! 見ていてくだされ、大臣様! ふぇっふぇっふぇっ!」

~ 翌日 放課後 七色ヶ丘中学校 3-1教室 ~

れいか「…………」

なお「…………」

やよい「…………」

あかね「…………」

みゆき「…………」


みゆき(……みんな、なんにも言わないで作業してる……。やっぱり、さみしいのかな……)

みゆき(私もさみしいよ……。このアルバムができていくたびに、やよいちゃん、れいかちゃんとのお別れが近づいて来てるような気がして……)

みゆき(ホントはもっと楽しく作りたいのに……、どうしても落ち込んだ気持ちになっちゃう……。どうしたらいいんだろう……)


みゆき(どうしたら、離れ離れになっても笑っていられるのかな……)

~ 七色ヶ丘中学校 校庭 ~

イエロワ「……ふむ、この辺りで良かろう。ここなら画題もよう見える。うまいこと描けそうじゃわい」

オーレン「おい、イエロワ。なぜオレまで連れてきた。オレはお前と協力などする気はないぞ」

イエロワ「言っとる場合ではないじゃろうが! そうやって一人で行って、何度負けたか忘れたか!?」

オーレン「む……」

イエロワ「ワシとてシャクじゃが、ここはワシとお主とで力を合わせるのじゃ。そうすれば、より強力な力が出せることじゃろう」


イエロワ「いいか、オーレン。その力をもって、ワシらはプリキュアどもをバラバラにするのじゃ。あやつらが協力し合えんようにな」

イエロワ「ワシらは二人分の力。対して、プリキュアは一人ずつ。これならば、あやつらなど恐れるに足らんわい」


イエロワ「この作戦なら負けるはずがないわ。負けっぱなしでいたくなければ、大人しくワシの言うことを聞くんじゃな、オーレンよ」

オーレン「……いたしかたないな」

イエロワ「ふぇっふぇっ、素直でよろしい。では、始めようかのう! オーレン、ワシと同じキャンバスに描くのじゃ。よいな?」

オーレン「わかった」

イエロワ「闇の絵の具よ!」

オーレン「闇の絵筆よ!」

イエロワ・オーレン「キャンバスに絶望を描き出せ!」


シュババババッ


イエロワ・オーレン「実体を持ってキャンバスから現れよ、アキラメーナ!」


ズズズズズズ…

ドスゥゥゥゥン…!


アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」

イエロワ「ふぇっふぇっふぇ。初めての "合作" にしてはうまくいったわい」

オーレン「では、アキラメーナよ。ここにいる者達の心を吸い取れ。お前自身の力にするのだ」

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」


ドワァァァッ!


男子生徒「――――」バタッ

女子生徒「――――」バタッ


イエロワ「ふぇっふぇっ、吸い取った心のおかげで、アキラメーナに力がみなぎっていくわい……!」

イエロワ「覚悟せい、プリキュア……! 今度こそ、今度こそお前達の最後じゃ……!」

キャンディ「(ピクッ) クル……!」

みゆき「キャンディ? 耳が立って……、って、もしかして、デスペアランド……!?」

あかね「……いや、もしかせんでもそうや……! 窓の外見てみぃ……!」

みゆき「え? 窓の外って……」


アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」ズゥゥゥンッ…


なお「……! な、なにあれ……!? 校舎のアキラメーナ……!?」

やよい「すごいおっきいよ……! ど、どうしよう……!?」

れいか「今はマティさんが今はいませんから、はるかお姉さんもゆかりさんも呼べません……。ですが、かといってアキラメーナを放ってもおけません……!」

なお「……あたし達だけでやるしかないみたいだね……!」

イエロワ「……ん? おお、見つけたぞ、プリキュア! そんなところにおったか!」

オーレン「5人しかいないようだが、まあいいだろう。数が少ない分、好都合だな」


やよい「あ! 校舎のアキラメーナの屋上にいるのって……!」

なお「オーレンとイエロワ!」

あかね「また来よったんか! あんだけコテンパンにしてやったのに、こりんやっちゃな!」

イエロワ「何とでも言えい! 今度はこれまでのようにはいかんぞ、覚悟するんじゃな!」

れいか「何やら自信がありそうですが……、この学校での悪事は許しませんっ!」

みゆき「変身しよう、みんな! 妖精のみんなもお願い!」

4人「うんっ!」

キャンディ「任せるクルぅっ!」

妖精達「デコル・チェー――」


オーレン「させんぞ。やれ、アキラメーナ」

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」


バァァァァァァッ!


れいか「えっ!? こ、校舎の別々の窓から、黒い光が出て、私達をそれぞれ照らしている……!?」

なお「か、体が吸い込まれる……! これって、もしかして……!?」


オーレン「そうだ。お前達にはデスペア空間に入ってもらう」

イエロワ「それも、お主らの力を最大限に奪う、特別な空間じゃ! そこでゆっくりと絶望を味わうがいいわ!」


みゆき「んっ、んんーーっ……! ふ、踏ん張りきれない……!」

やよい「窓に向かって……吸い込まれちゃう……!」


みゆき達「わぁぁぁぁぁぁぁ――」


スゥゥゥゥッ…

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

ゆかり「……! セ、センパイ達が、あの校舎のアキラメーナの窓に吸い込まれちゃった……!」

ゆかり「無事なのはわたしだけなのに……、今日はマティちゃんも欠席だったから変身できない……! どうしよう……、どうしよう……!?」オロオロ


ガラッ


マティ「ゆかりちゃん、いますか!?」

ゆかり「マティちゃん……!? 今までどうしてたの……!?」

マティ「申し訳ありません! 急ぎでやらなければならないことがありましたので、しばらくそちらに取り組んでおりました!」


マティ「そちらが終わったので学校の方に顔を出してみれば、アキラメーナがいるではありませんか……! ですから、ゆかりちゃんと合流しようと、急いで教室に来たのです!」

ゆかり「た、助かるよ……! それじゃあマティちゃん、はるかセンパイを呼んでくれる……!? みゆきセンパイ達はみんなアキラメーナに吸い込まれちゃって、もうわたししか残ってないの……!」

マティ「本当ですか……!? タイヘンな状況になっているようですわね……! わかりました! はるか様と力を合わせて、皆さまをお救いしましょう!」

ゆかり「うんっ……!」

~ デスペア空間 ~

キャンディ「みゆき! みゆき! 起きるクル!」

みゆき「……う……。……キャンディ……? 私……どうしたんだっけ……」

キャンディ「デスペア空間、ってところに閉じ込められたクル! しっかりするクルぅ!」

みゆき「……はっ、そ、そうだった! あの校舎のアキラメーナに吸い込まれちゃったんだっけ!」


みゆき「……それにしても、ここなんだろう……。暗い、教室……?」

キャンディ「誰もいないクル……」

みゆき「なんだろう……。よくわかんないけど、なんだかすごく……さみしい気がする……」


みゆき「……とにかく、変身しよう! このままじゃなんにもできないもん! いくよ、キャンディ!」

キャンディ「わかったクル!」

キャンディ「デコル・チェーンジ! クル!」

パチンッ!

レディ!

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」


シーーーン…


みゆき「…………あれ……!? へ、変身できない……!? どうして……!?」

キャンディ(デコル)「もう一回やってみるクル!」

みゆき「う、うん……!」


みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」


シーーーン…


みゆき「……やっぱりダメだ……! なんで……!?」

イエロワ『ふぇっふぇっふぇ……! まんまとハマっているようじゃのう、プリキュアども』


みゆき「この声……」

キャンディ(デコル)「デスペアランドのイエロワクル!」

イエロワ『なぜプリキュアに変わることができないのか、不思議じゃろう? 種明かししてやるわい』


イエロワ『お主らがいるそこはな、"孤独" のデスペア空間なのじゃよ』

みゆき「孤独……?」

イエロワ『ワシらは、これまでさんざんお主らに負け続けてきた。だから、その理由を考えた。そして、ある一つの答えにたどり着いたのじゃ』


イエロワ『それは、お主ら自身が持つ "夢の絵の具" の力の他に、互いに助け合う、いわゆる "絆" とかいうものを持っておるから、じゃとな』

イエロワ『ワシらにはその "絆" などというものはさっぱりわからんが、その力は認めよう。実際、お主らが協力し合う事によって、強い力を発揮しておったからのう』


イエロワ『そこでワシは考えたのじゃ。プリキュア、お主らを倒すためには、その "絆" を取り除けばよい、と!』

イエロワ『そのために用意したのが、今お主らがいる "孤独" のデスペア空間じゃ』

イエロワ『そこはのう、お主らの心に不安を与え続けるのじゃよ。一人でおること――"孤独" の不安をのう』

イエロワ『すでにその影響はお主らに出ておる。プリキュアに変わることができないのがその証拠じゃ。孤独の不安がお主らの心を黒く染め、力を奪っておるのよ』


みゆき「……! 孤独の……不安……」ブルッ


イエロワ『今までお主らはこのような危機になった時、互いにはげましたりして力を出してきたじゃろう』

イエロワ『じゃが! この "孤独" のデスペア空間ではそれはできん! どんなに不安になろうが、誰も近くにおらんのだからなぁ!』

イエロワ『声をかける者もおらん! 触れてくれる者もおらん! その不安がお主らの心を黒く塗りつぶしていき、しまいには絶望へと変わる!』


イエロワ『"誰も助けてくれない" という絶望になぁ!』

イエロワ『プリキュアにも変われんお主らに希望なぞないわ! その上、今度は助けてくれる仲間もおらん!』

イエロワ『その "孤独" の苦しみをゆっくり味わえ、プリキュア! そして、絶望の中に沈むがよいわ! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!』


みゆき「…………」ガクッ

キャンディ「みゆき……!? ど、どうして座りこんじゃうクル……!? ガンバって立たないとダメクルぅっ!」

みゆき「……うん……。わかってるよ、キャンディ……、わかってる……」


みゆき「……でも……、ダメなの……。体に……力が入らない……!」

キャンディ「みゆき……!」

ギュッ


キャンディ「みゆき……? キャンディを抱きしめて、どうしたクル……?」

みゆき「…………」ブルブル

キャンディ「……! みゆき、ふるえてるクル……?」

みゆき「……寒いよ、キャンディ……。なんだか、とっても寒い……」


みゆき「今までは、ツラくなった時……、苦しくなった時……、みんながそばにいてくれた……」

みゆき「笑顔ではげましてくれて、とっても……あったかかった……」


みゆき「でも、ここには私とキャンディしかいない……。誰も、私に笑いかけてくれたりしない……。それがとっても不安に感じるの……」

キャンディ「それはこのデスペア空間のせいクル! ここにいるせいでおかしくなってるだけクル!」

みゆき「……ホントに……そうかな……」

キャンディ「クル……!?」

みゆき「七色ヶ丘中学校を卒業したら、やよいちゃんとれいかちゃんは私のそばからいなくなっちゃうんだよ……」

みゆき「やよいちゃんの楽しい笑顔も……、れいかちゃんの優しい笑顔も……、もう見られなくなっちゃう……。私を、はげましてくれなくなっちゃう……」


みゆき「二人だけじゃないよ……。このまま時間が過ぎていって、高校も卒業する時になったら……、大人になったら……、どうなっちゃうの……?」

みゆき「なおちゃんも、きっといなくなっちゃう……。あかねちゃんだって……!」

みゆき「それで……、最後にはきっと……一人になっちゃうんだ……」


みゆき「わかってる……、わかってるの……。私達は、それぞれの未来に行かなきゃいけない……。そうなったら、いつまでもいっしょにはいられない……、いつかは離れ離れにならなきゃならない、って……」

みゆき「でも、やっぱりツラいよ……! お別れなんてしたくない……! いつまでも、みんなでいっしょにいたい……! みんなの、あったかい笑顔といっしょにいたい……!」

みゆき「……キャンディ……、さみしいよ……。私一人じゃ、笑顔になれないよ……」

みゆき「未来に進む気持ちが……わいてこないよ……」


キャンディ「みゆき……」

~ 七色ヶ丘中学校 校庭 ~

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」ブンッ


ノーブル「ヴェールっ、パンチ、来るよ!」

ヴェール「はいっ……! "ヴェール・カーテン"っ……!」


パキィィィィンッ!

ガァァァァンッ!


イエロワ「ふん! ワシら二人の力を注いだこのアキラメーナのパンチを、そんなちびっちゃい盾なんぞで受けきれると思うたか!」

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」ググッ…!


ビシッ! ビシビシッ!

バリィィィィィンッ!


ヴェール「……! "ヴェール・カーテン" が割れて……!」


ズドォォォォォォンッ!


ノーブル「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

ヴェール「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


オーレン「手も足も出ないか。無様だな、プリキュア」


ノーブル「う……っ、さ、さすがに二人じゃ……ちょっとキツいかも……!」

ペロー(デコル)「ノーブル、あきらめちゃダメペロ! ガンバるペロ!」

ノーブル「もちろんだよ、ペロー君……! きっとみんなが助けてくれる! だから、私達だけじゃツラくても、それまでは何とかガンバらなきゃ……!」

イエロワ「…… "みんなが助けてくれる" じゃと?」


イエロワ「……ふっ、ふふふっ……!」

イエロワ「ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!」

ノーブル「……! 何がおかしいの……!?」

イエロワ「おかしいわ! お主らの待っとるプリキュア達は、今まさに "誰も助けてくれない" 状態にあるんじゃからな!」

ヴェール「え……? どういうこと……?」

イエロワ「せっかくじゃから、お主らにも教えてやるわい。キュアハッピー達はのう、今 "孤独" のデスペア空間の中にいるんじゃ」

イエロワ「そこでは誰も助けてくれん。はげましてもくれん。その孤独の苦しみで心を不安に染め上げる空間なのじゃよ」

ノーブル「……!」


イエロワ「ワシにはわかるわ。今、あやつらはデスペア空間の中で孤独に負けそうになっておる」

イエロワ「さみしくて、ツラくて、誰かに助けてほしいのに、そばに誰もいない。そんな苦しみで心がいっぱいになっておるのじゃ!」

イエロワ「自分達が助けてほしいくらいなのじゃから、助けになぞ来れるはずもないわ!」

イエロワ「すでにお主らに希望なんぞない! 今度こそワシらの勝ちじゃ! 大人しくあきらめるんじゃな! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!」


ヴェール「……ひどい……、ひどいよ……! センパイ達は、お別れしなきゃいけなくてさみしい思いをしてるのに、もっとツラい気持ちにするなんて……!」

ノーブル「みんな……!」

~ "孤独" のデスペア空間 ~

シーーーン…


みゆき「…………」


みゆき(……こうやって、ひざを抱えてうずくまっても、なんにもならないってわかってる……)

みゆき(でも、こうしてないと寒くて……、さみしくて……。ツラさに負けそうになっちゃう……)

みゆき(みんなの声が聞きたい……。みんなの笑顔が見たい……)


みゆき(みんなと、いっしょにいたいよ……)


キャンディ「みゆき……」


ガサッ


キャンディ「クル……? 足元に何かあるクル。こりは……」ヒョイッ


キャンディ「……! そうクル、こりクル!」

キャンディ「みゆき! こりを見るクル!」

みゆき「え……、これ、って……?」


みゆき「……! これ……、修学旅行の時の写真……? 私が、大凶のおみくじ引いちゃった時の……。私といっしょに吸い込まれてきたのかな……」

みゆき「…………」ジッ…


なお(回想)『ふふふっ……! みゆきちゃん、清水寺で転ぶ話をした途端に転ぶんだもん……! おかしくって……!』

みゆき「…………」


れいか(回想)『ふふっ。みゆきさん、池に落ちた時、鯉が驚いて飛び上がってましたよ』

みゆき「…………」


あかね(回想)『みんな制服やのに、一人だけジャージで集合写真やなんて、ついてないなぁ。ぷぷっ』

みゆき「…………」


やよい(回想)『ソフトクリームが顔にべちゃってなっちゃって……! ぷぷぷっ……!』

みゆき「…………」


みゆき「……あの時は、ホントについてなかったなぁ……。色んな良くないことが次から次に起きちゃって……。みんなにも笑われちゃうし……」

みゆき「……でも、今思い出すと……なんだかおかしいな……!」


キャンディ「……! みゆき……!」

みゆき「え……? どうしたの、キャンディ……。ビックリした顔して……」

キャンディ「自分で気付いてないクル……?」


キャンディ「みゆき、その写真見てる時、笑ってたクル! 楽しそうに、ニコって笑ってたクル!」

みゆき「え……!? ホントに……?」

キャンディ「ホントクル!」

みゆき「…………」

みゆき「(ジッ…)」


写真のれいか『みゆきさん!』ニコッ

写真のなお『みゆきちゃん!』ニコッ

写真のやよい『みゆきちゃん!』ニコッ

写真のあかね『みゆき!』ニコッ


みゆき「……!」


みゆき「……キャンディ……。今、みんなの声が聞こえたよ……」

キャンディ「クル……?」

みゆき「この写真を見てたらね、みんなが、私を呼んでくれたの。私に、笑いかけてくれたの……!」


みゆき「……そっか……、そうだったんだ……!」

~ "孤独" のデスペア空間 あかねの教室 ~

ウルルン「写真が、笑いかけてくれたウル?」

あかね「せや。……いや、ほんまはちょっとちゃうな」


あかね「笑いかけてくれたんは写真やない。うちの中にいるみんなや」

あかね「……なんでこんなことに気付かなかったんやろな……。みんなはうちの中にちゃんとおる」

あかね「離れ離れになったって、みんなと過ごした思い出は……、楽しかった気持ちは、絶対消えへんのや」

~ "孤独" のデスペア空間 やよいの教室 ~

やよい「そうだよ。いつだって、私の中のみんなは、変わらないで私をはげましてくれる」


なお(回想)『やよいちゃん、あきらめないで一生懸命やってみよう!』

やよい「あの、体育祭の時のなおちゃんみたいに……」


みゆき(回想)『やよいちゃんがその気なら、ガンバってやってみようよ!』

あかね(回想)『うちらもめいっぱい応援すんで!』

やよい「私が初めて人に絵を見せたポスターコンクールの時の――私に、最初の一歩を踏み出させてくれた時の、みゆきちゃんとあかねちゃんみたいに……!」

~ "孤独" のデスペア空間 なおの教室 ~

なお「…………」ギュッ


なお「手を握った時のあったかさが、あたしにいつでも思い出させてくれるんだ。れいかやみんなとつないだ手が、どんなにあったかかったか」

なお「みんなと過ごした時間が、どんなに楽しかったか」

~ "孤独" のデスペア空間 れいかの教室 ~

れいか「…………」キュッ


れいか「この握った手の温かさが、なおや皆さんと過ごした思い出が、私に勇気をくれる。私に、自分の "道" を真っ直ぐに行くための勇気を」

れいか「だからもう、私は一人でも未来に向かって進んでいける。さみしいことなんて……つらいことなんて、何もない」

~ "孤独" のデスペア空間 みゆきの教室 ~

みゆき「そうだよ……。もし一人ぼっちになっちゃったって、何もさみしいことなんてないんだ……」

みゆき「私の中のみんなが笑ってくれれば……、私はいつだって笑顔でいられるんだ!」


パァァァッ…!


キャンディ「みゆき! スマイルパクトが光ってるクル……!」

みゆき「うん。パクトも教えてくれてる。私の中のみんなの笑顔が、私の希望になるんだって」


みゆき「行こう、キャンディ。私は……、私達は、みんなの笑顔の思い出といっしょに、未来に向かって進むんだ!」

みゆき「笑顔で、未来へ!」

キャンディ「クルぅっ!」

みゆき「プリキュア! スマイルチャージ!!」


あかね「プリキュア! スマイルチャージ!!」


やよい「プリキュア! スマイルチャージ!!」


なお「プリキュア! スマイルチャージ!!」


れいか「プリキュア! スマイルチャージ!!」

~ 七色ヶ丘中学校 校庭 ~

ノーブル「くぅ……っ……!」

ヴェール「う……ぁ……!」


オーレン「這いつくばって、いいザマだな、プリキュア。やはり二人だけでは何もできんか」

イエロワ「ふぇっふぇっふぇっ! デスペア空間に取り込むまでもないわ! このまま一気に叩きつぶしてくれる!」


ヴェール「……できることは……あるよ……」

イエロワ「は? なんじゃと?」

ヴェール「アキラメーナには……勝てなくっても……、……センパイ達を信じることはできるよ……!」グググッ…!

オーレン「キュアヴェール、まだ立てるのか」


ヴェール「……センパイ達は、わたしにいろんなことを教えてくれた……ホントに……ホントにすごい人達だから……!」


ヴェール「だから、どんなに苦しくっても、センパイ達はぜったい負けないよ! ぜったい笑顔で、かけつけてくれるんだから!」

ノーブル「ヴェール……!」


イエロワ「……ふん、今にも泣きそうな顔で何を言っておるんじゃ」

ノーブル「……ありがとう、ヴェール。ヴェールの言葉で元気が出たよ……!」グググッ…!

オーレン「キュアノーブルも立ち上がったか。無駄だというのがわからないのか?」

ノーブル「ムダなことをしてるのは、あなた達の方だよ……!」

イエロワ「何? 何を言うとる?」


ノーブル「私の知ってるみんなは、どんなツラいことがあっても、最後には必ず笑顔になれる強い子達だよ……! だから、あなた達がみんなを引き離しても、きっと笑顔で帰ってくる!」

ノーブル「ヴェールみたいに、私もみんなを信じることをあきらめない! 絶対に!」

ヴェール「ノーブルセンパイ……!」


イエロワ「全く、わからんやつらじゃ。お主らに希望なぞないと言うたじゃろうが」

オーレン「勝手に言っているがいい。どの道お前達には絶望しかないのだ。今、それを思い知らせてやる」


アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」グワッ


マティ(デコル)「ヴェール……! ノーブル様……! アキラメーナが、手を振り上げましたわ……! パンチが来ます……!」

ノーブル・ヴェール「……っ!」

アキラメーナ(校舎型)「……アガ……?」ピタッ


ヴェール「え……?」

ノーブル「アキラメーナの動きが……止まった……?」


イエロワ「む……!? どうしたアキラメーナ、なぜ動かんのじゃ!」

アキラメーナ(校舎型)「アガ……、アガガッ……!?」

オーレン「何だ? 苦しんでいるのか?」


バァァァァァッ!


イエロワ「な、なんじゃこれは!? アキラメーナの窓から光が……!」

オーレン「それも一つではない? 5つの窓から同時に光が出ている」


ノーブル「……5つの光……。ピンク、オレンジ、黄色、緑、青……。これって……!」

ヴェール「はい、ノーブルセンパイ……! きっとそうです……!」

アキラメーナ(校舎型)「ガガ……、ガァァァァァァァッ!?」


バリィィィィィンッ…!

バッ


オーレン「! プリキュアが、窓から飛び出しただと?」

イエロワ「バカな……! "孤独" のデスペア空間を、破ったというのか……!?」


ヴェール「……やっぱり……!」

ノーブル「みんなぁっ!」


スタッ


ピース「ごめんなさい! 遅くなりました!」

ビューティ「ノーブル、ヴェール! 大丈夫ですか……?」

サニー「こんなにボロボロになってもて……。すんません、うちらがもたくさしとったせいで……!」

ノーブル「気にしないで! こうして無事に戻ってきてくれたんだもん。このくらい何てことないよ!」

マーチ「ノーブル……!」


ヴェール「……それより、センパイ達は、だいじょうぶですか……?」

ハッピー「え……?」

ヴェール「あのデスペアランドの人達から、センパイ達は一人ぼっちにさせられて、すごくさみしい思いをさせられてるって聞きました……。だいじょうぶなんですか……?」


ハッピー達「…………」

ハッピー「……サニー」チラッ

サニー「……! ……ピース」チラッ

ピース「……マーチ」チラッ

マーチ「……ビューティ」チラッ

ビューティ「……ハッピー」チラッ


ハッピー達「(ニコッ)」


ヴェール「……! センパイ達が……笑った……!」

マティ(デコル)「お互いを見て、楽しそうに……!」

ノーブル「……大丈夫、みたいだね」

イエロワ「プリキュア! 何を笑っておるか!」

オーレン「もう勝った気でいるのか? 状況は何も変わっていないぞ」

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」ズゥンッ…!

ハッピー達「……!」


イエロワ「ワシとオーレンの力を合わせて作り出した、このアキラメーナ! その強さは、お主らでは到底太刀打ちできんぞ!?」

オーレン「"夢の絵の具" の真の力でもあれば別だが、あれは都合よく出るものではないのだろう? ならば、もうお前達に打つ手はないな」

イエロワ「そうじゃ! 何をしようが、お主らの未来には絶望しかないのじゃよ! ふぇーっふぇっふぇっふぇっ!」


ハッピー達「…………」


サニー「……ああ言うとるけど、どうする、みんな」

ビューティ「……わかっていただく必要があるようですね」

マーチ「うん、そうだね。見せてやろう、あたし達の絆の強さを!」

ピース「私達の、未来に向かう気持ちの強さを!」

ハッピー「行こう、みんな! ノーブルもお願いします!」

ノーブル「うんっ! わかった、任せて!」


ハッピー「キャンディ、お願い!」


ポンッ


キャンディ「わかったクルぅっ!」

パカッ

キラキラキラキラ


キャンディ「"夢の絵の具" よ……、プリキュアのみんなに、未来に進む力を!!」


ブワァァッ!


6人「6つの夢を、今こそ一つに!!」


6人「未来へ届け! 希望の架け橋!!」


6人「プリキュア!! レインボー・アーチっ!!!」


ブワァァァァァァァァッ!!


イエロワ「ふんっ! 以前ならいざ知らず、その程度の光でこの終末のアキラメーナがやられるものか!」

オーレン「受け止めろ、アキラメーナ」

アキラメーナ(校舎型)「アァーキラメーナァ……!」


ドバァァァァァァッ!!


ヴェール「……! "レインボー・アーチ" が……!」

マティ(デコル)「みなさまのお力が、受け止められてしまいました……!」


イエロワ「このまま光をかき消してやろう! それで終わりじゃぁぁっ!!」

ハッピー「……まだだよ……! こんなことじゃ、私達の希望の光は消えない……!」

ハッピー「みんなといっしょにいた時間が……、私達に未来を進むための力をくれる……!」


ハッピー「それで最後は……、みんな笑顔で、ウルトラハッピーになるんだからぁぁぁぁっ!!」


バァァァァァァァァァァァッ!!!


アキラメーナ(校舎型)「ガ……!? アガ……ッ!?」

オーレン「これは……! 光が、さらに強く……!?」


6人「行っけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


アキラメーナ(ブランコ型・イエロワ作)「アガ……、ガァァァァァァァァッ!?」

イエロワ「アキラメーナが……光に飲み込まれていく……!」


6人「ハッピー……エンド!!」


ドガァァァァァァァァァン!!


アキラメーナ(校舎型)「アガァァァァァ……」シュワァァァァ…

イエロワ「……なんと……なんということじゃ……。ワシらの合作アキラメーナさえも、浄化されてしもうた……」

オーレン「ここまでしても、プリキュア達は倒せんというのか……」


イエロワ・オーレン「…………」


イエロワ「……ならば、ワシらに残された手段は、もはや "アレ" しかあるまいな」

オーレン「……そうだな。"最後の手段" を使う時が来たようだ」


サニー「……あれ? 帰らんのかな……。いつもやったら、アキラメーナやっつけたんなら帰ってくのに」

ノーブル「……? なんだろう、あの人達の表情、いつもと違う……」

ビューティ「何かする気なのでしょうか……?」

イエロワ「……プリキュアども、よくもやってくれよったな!! こうなれば、ワシらの真の力を見せてくれるわ!!」

オーレン「そして後悔しろ!! 絶望しろ!! 圧倒的な力の前に!!」


ヴェール「(ビクッ) ……! すごい迫力……!」

マティ(デコル)「真の力……? 一体何をするつもりなのでしょうか……!?」

大臣の声『お待ちなさい、二人とも!』


オーレン「! 大臣……!」


ピース「この声……!」

ハッピー「……ジョーカー……!」


大臣の声『落ち着きなさい。今はまだその時ではありません。その力は、私がいいと言うまで取っておきなさい』

イエロワ「しかし、大臣様……! このまま負けっぱなしではおさまりがつきませんですじゃ……!」

大臣の声『命令です。逆らうことは許しません。いいですね?』

オーレン「……! そう言われては仕方がない……」


イエロワ「……お主ら、運が良かったのう。今日のところは見逃してやるわい」シュバッ

オーレン「だが、憶えておけ。今まで受けた借り、いずれ全て返してやる。必ずな」シュバッ


ハッピー「……行っちゃった」

ノーブル「あの人達も手が無くなってきてるみたい。近いうちに決着をつけることになりそうだね」

ビューティ「そうですね……」

サニー「……それよりみんな。タイヘンなことになっとるで……!」

ピース「えっ……、タイヘンって何……!? もしかして、まだアキラメーナが……!?」

サニー「ちゃうちゃう! あっち見てみ! アルバム用の写真が!」


ヒュゥゥゥゥゥ…

バサバサバサッ


ハッピー達「!? 風で飛んでってるーっ!?」


ハッピー「そっか! 私達といっしょにデスペア空間に吸い込まれた写真が、アキラメーナが消えたから出てきちゃったんだ!」

ピース「ホントにタイヘンだーっ! 早く拾わないと!」

ビューティ「待ってください、みなさん! 先に変身を解かなくては! このままでは、学校の皆さんに見つかって、それこそ大変なことになってしまいます!」

マーチ「でも! あっ、あっ、写真がどんどん飛んでっちゃう!」


ノーブル・ヴェール「…………」ポカーン…


ヴェール「ノーブルセンパイ……」

ノーブル「なに、ヴェール?」

ヴェール「さっきのデスペアランドの人達、すごい迫力で……、わたし、震えちゃいました……」

ヴェール「わたしはプリキュアになったばっかりですけど……、なんとなくわかります。そのうち、すごい戦いをしなきゃいけないんだって」

ヴェール「……でも」


サニー「そや! マーチ、風や! 風起こして、写真集めるんや!」

マーチ「そんな器用なことできないよ! もっとバラバラになっちゃうって!」

ハッピー「二人ともー! 早く拾わないと写真なくなっちゃうよー! 手伝ってよーっ!」


ヴェール「……ふしぎなんですけど、今のセンパイ達を見てると、なんだか……、何とかなりそうな気がしてくるんです」

ノーブル「うん、そうだね。私もおんなじ気持ちだよ」

ノーブル「今回の戦いは、みんなにとってホントにツラかったと思う。大好きな友達と離れ離れにさせられちゃったんだから……」

ノーブル「でも、それを乗り越えて、ああやって楽しそうにしていられる。その強さが、笑顔が、私達にも希望をくれてるんじゃないかな」

ヴェール「希望……。……そうですね……!」


ピース「あ、写真がノーブルの方に……! ノーブル、写真を拾ってくれませんかーっ!?」

ノーブル「オッケー、任せて! ……じゃ、私はみんなを手伝うから、ヴェールは倒れちゃった人達の心を元に戻してあげてね」

ヴェール「わかりました……! よろしくね、マティちゃん」

マティ(デコル)「はいっ!」

~ 数日後 ふしぎ図書館 ~

みゆき「――それじゃ、最後にこの写真を貼って、っと……。……できたーっ! "3年間の思い出"、完成ーっ!」

れいか「ありがとうございます、みなさん! おかげで、とても素敵なページになりました!」

あかね「いやー、それにしてもタイヘンやったなぁ……。はるかさんや、ゆかりや、妖精のみんなまで手伝ってくれたのに、こんなにかかってまうなんて……」

なお「それだけ、七色ヶ丘中学校の思い出がたくさんあるってことだよね」

やよい「……うん……」


みゆき達「…………」


やよい「……ねぇ、みんな。聞いてほしいことがあるの」

れいか「……私もです」

やよい「私、やっぱり絵の勉強ができる学校に行くよ」

みゆき「……! やよいちゃん……!」


れいか「私も、海外留学に行きます。今度こそ、迷わずに」

なお「れいか……」

やよい「この間、写真を見てた時は思わずさみしくて泣いちゃったけど……、デスペアランドに一人ぼっちにさせられた時に、わかったんだ。私がガンバれるのは、私の心の中にいるみんながはげましてくれるからなんだ、って」

やよい「だから、離れ離れになっても、さみしくなることなんてないんだよね。だって、いつでもみんながそばにいてくれるんだから!」


やよい「私、自分の夢に向かって進むよ! みんながくれたガンバれる気持ちと、思い出と……、笑顔といっしょに!」ニコッ


みゆき「やよいちゃん……!」

あかね「ええ笑顔やで、やよい。もう心配ないみたいやな!」

ゆかり「わたしも、やよいセンパイを見習って、さみしがらないようにガンバります……! だから、センパイもガンバってください!」

やよい「うんっ! ありがとう、みんな!」

れいか「……私は今、心から思っています。"去年、留学に行かなくてよかった" と」

れいか「みなさんともう 1年過ごしたおかげで、とてもたくさんのものをいただくことができたのですから」


れいか「皆さんからは、心からの笑顔を」

れいか「はるかお姉さんからは、私の "道" を見つけるための気持ち――人を想う、優しさを」

れいか「そしてなおからは、自分が決めた "道" を行く勇気を」


れいか「私も、やよいさんと同じように自分の "道" を進みます。皆さんからもらった大切なものと共に」ニコッ


はるか「……強くなったね、れいかちゃん。なんだか、大きくなったように見えるよ」

なお「……うん、やっぱりれいかはそうでなくっちゃ! 昔っから、結構ガンコなところあったからね」

なお「行ってらっしゃい、れいか。あたし、れいかが立派になって帰ってくるの、待ってるよ。この町で、ずっと」

れいか「ええ!」

みゆき「よぉーっし、そしたら最後の仕上げだぁーっ! "あれ"、やろうよ!」

あかね「おっ、"あれ" やるんやな! いつでもええで!」


はるか「あ、それって、もしかしてこの間話してた、アルバムのアイデア? 自分の "将来の夢" を連想させるものを持って、仲のいい子と写真を撮るっていう?」

れいか「はい! ……そうだ。せっかくですから、はるかお姉さんとゆかりさんもいっしょに撮りませんか?」

ゆかり「え……? いいんですか? センパイ達の卒業アルバムなのに……」

なお「いいっていいって! その方が楽しいよ!」

やよい「ほらほら! 並んで並んで!」

ゆかり「あ、は、はい……!」

マティ「えーっと……、この "かめら" というものの "しゃったー" というところを押せば、写真が撮れるんですのね」

みゆき「うん! ゴメンね、マティちゃん、カメラマンやらせちゃって」

マティ「とんでもございませんわ! 皆さまの世界のことなのですから、皆さまだけでお撮りになった方がいいと、わたくしも思います」

キャンディ「ぶー……、キャンディもいっしょに写りたかったクル……」

マティ「ガマンしましょう、キャンディ。その代わり、大好きな皆さまの思い出の写真を、わたくしといっしょに撮りましょう!」

キャンディ「……わかったクル!」


みゆき「それじゃみんな、自分の将来の夢に関係あるもの、準備できた?」

あかね「オッケーや!」

あかね「うちの夢は、世界一のお好み焼き屋や! このコテ使ておいしいお好み焼きぎょーさん焼いて、世界中のみんなを元気な笑顔にしたんで!」


やよい「私の夢は、大人気の漫画家さん! このペンでたっくさん漫画を描いて、みんなに楽しんでもらうんだから!」


なお「あたしの夢は、お巡りさん! 今かぶってる帽子は松原さんからの借り物だけど……、いつか絶対本物をかぶって、この町にいる、あたしの大好きな人達の笑顔を守るんだ!」


れいか「私の夢は、学校の先生です! この教科書に載っていないことも含めて、多くの方々と共に "道" を歩む喜びを分かち合いたい。それこそが、私の見つけた "道" です!」


はるか「それじゃ、私も。私の夢は、落語家! もう、周りの期待と違う自分の夢を恥ずかしがったりしない。自分に胸を張って、たくさんの人を楽しませてみせる!」


ゆかり「あ、ええと、えっと……、わ、わたし、夢とかは……その……、まだ、ありませんけど……、見つけられるように、ガンバります……!」

みゆき「それじゃ、私で最後だね! 私の夢は……」

みゆき「…………」

あかね「……ん? どしたん、みゆき? みゆきの夢、絵本作家なんちゃうのん?」

みゆき「うん、そうなんだけど……」


みゆき「……あのね、みんな。今までナイショにしてたんだけど、実は私、絵本作家の他に……もう一つ夢があるの」

あかね「え……」

あかね「……って、なんや、みゆきもか。それやったら、うちにもあるで」

みゆき「え……? 私も、ってことは、あかねちゃんにも他の夢があるの?」


やよい「私もあるよ!」

れいか「私もです」

なお「みゆきちゃん、多分みんな、考えてることおんなじだと思うよ」

ゆかり「わたしも、センパイ達を見てると……、なんだかわかるような気がします」

みゆき「みんな……」


はるか「それじゃあさ、みんなでその "もう一つの夢" も一緒に思い浮かべながら、写真を撮ろうよ。きっと素敵な写真になると思うよ!」

みゆき「……はいっ!」

マティ「それでは、お写真を撮りますわ!」

キャンディ「みんな、スマイルクルぅっ!」


みゆき達「(ニコッ)」


パシャッ!

みゆき(絵本作家とは違う、私の夢。ぜったい、ぜったいかなえたい、もう一つの大切な夢)


みゆき(離れ離れになっても……、どんなに時間が経っても……)


みゆき(みんなと、ずーっと仲良しでいられますように)




つづく

次回予告

みゆき「最近、ゆかりちゃんとマティちゃんの様子がヘンなの。二人で、どこかにこっそり出かけてるみたい。何してるんだろう……」

みゆき「でも、ゆかりちゃん、なんだかとっても楽しそう! 新しいお友達でもできたのかな? そうだったらうれしいな!」

みゆき「私達と出会ってから、まだ笑顔を見せてくれたことのないゆかりちゃん……。明るいスマイルができるようになるといいね!」


みゆき「次回、『スマイルプリキュア レインボー!』 "大きな木の下で! 木陰が結ぶ縁!"」


みゆき「みんな笑顔でウルトラハッピー!」

それでは、お返事タイムとさせていただきます!


> 乙くださったみなさま

新年早々、ありがとうございました!
今年もよろしくお願いいたします。



> 417さん

> 喧嘩の起承転結が実にプリキュアらしくて面白かったなあ…

ありがとうございます!

ケンカ回、地味に結構苦労したんですが、
喜んでもらえたなら何よりです!



> プレゼさん

あけましておめでとうございます!


おっしゃってる通り、ウルルンがあかねちゃんを激励するシーンは、
"ウルルン" としてではなく、"ウルフルン" として描きました。
そちらの方がパワーが出ると思ったので。

開始当初から彼には "いいアニキ" みたいなことをやらせたかったので、
今回でうまく描けていたならよかったです!

> 419さん

貴重なご意見、ありがとうございます!

確かに、キャラクターの関係性が一部突出しているのは、
原作『スマイル』とは異なっているかもしれませんね。。
ヒドく違和感を感じてしまったのならスミマセン。。

ただ、特定キャラクター同士の仲を進展させたのは意図あってのことですので、
本作『レインボー!』の作風だとご理解していただけるとうれしいです。





お返事は以上となります!
それでは、また来週!

『スマイルプリキュア レインボー!』のお時間ですが、今日ももう少しだけ時間をください。。!
毎度毎度安定しなくってスミマセン。。

8割くらいはできてるので、今日中にはアップできると思います。
もうしばらくお待ちくださいませ。。

すぐ上げる、と言いつつ半日経過。。
お待たせしましてスミマセンでした!

「スマイルプリキュア レインボー!」

このあとすぐ!

~ 放課後 七色ヶ丘市 公園近くの道路 ~

スタスタスタ


マティ「ゆかりちゃん、後藤様達に紹介していただいた "ぱふぇ" というもの、とってもおいしかったですわね!」

ゆかり「うん、そうだね……」

マティ「……? ゆかりちゃん? なんだか浮かないお顔ですが……、あまり楽しくなかったですか?」

ゆかり「あ、ううん、そうじゃないの……。ただちょっと……、とまどっちゃって……」

マティ「え……、どうしてですの?」


ゆかり「わたし、マティちゃんやプリキュアのセンパイ達に会うまで、友達って、いなかったから……」

ゆかり「だから、その……、クラスのお友達といっしょにいたりするの……、あんまり、慣れてなくって……」

マティ「……でも、楽しかったんですわよね?」

ゆかり「……うん」

マティ「それなら、笑いましょう、ゆかりちゃん?」

ゆかり「え……?」

マティ「長くお一人でいたゆかりちゃんは、笑うのがニガテだということはわかっていますわ」


マティ「でも、お友達といっしょにいて楽しかったのなら、もう笑うことができるのではないでしょうか?」

マティ「そうやってみんなで笑顔になれば、きっとお友達といることも素直に楽しむことができると思いますわ!」

ゆかり「そ、そうかな……」

マティ「ええ、きっと!」

マティ「ですから、ほら! 笑いましょう、ゆかりちゃん!」ニコッ

ゆかり「あ、う、うん……。こ、こうかな……?」ググッ…

マティ「……なんだか、すごくムリヤリですわね……」

ゆかり「……やっぱり、うまくいかないみたい……」

マティ「そうですか……」


マティ「でも、気にすることはありませんわ! もう、ゆかりちゃんはお一人ではないのですもの! みなさんと仲良くしていれば、そのうちきっと笑顔になれますわ!」

ゆかり「うん、ありがとう、マティちゃん」

マティ「(ニコッ)」

ゆかり(……笑顔、かぁ……)

ゆかり(わたし、小さい頃から、家でも学校でもずっとひとりぼっちで、楽しいってことがなんなのかもよくわからなくなってた……)


ゆかり(でも、今はちがうんだよね)

ゆかり(プリキュアのセンパイ達……、クラスのみんな……、それに、マティちゃん……)

ゆかり(みんなと出会って、みんなが仲良くしてくれて……。なんだか毎日が……楽しく感じる気がする)


ゆかり(……マティちゃんの言う通り、わたしもそのうち……、センパイ達みたいにキレイな笑顔で笑えるようになれるのかな……)

ポツッ


ゆかり「ひゃっ……!?」

マティ「どうかしましたか、ゆかりちゃん?」

ゆかり「あ、うん……、急に冷たいものが顔に当たって――」


ポツッ ポツポツッ

ザァァァァァァァァァッ…


マティ「あ、雨ですわ!」

ゆかり「ええ……!? 天気予報じゃ晴れるって言ってたのに……! カサ、持ってきてないよ……、どうしよう……!?」


マティ「(キョロキョロ) ……あ、ゆかりちゃん! 公園の中に大きな木がありますわ! あそこで雨宿りというのはいかがでしょうか!?」

ゆかり「ホントだ……! そ、そうしよう……、このままじゃおうち帰る前にカゼ引いちゃうよ……!」

マティ「では参りましょう! ダッシュですわ!」

ゆかり「う、うん……!」


タタタタタッ…

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

マティ「ふぅ……、ここまで来ればもう安心ですわね」

ゆかり「すぐに着いたから、あんまり濡れないですんだね……。ここで雨がやむの待ってようか……」

マティ「そうですわね」


「にゃーん……」


マティ「……? ゆかりちゃん、今、何か言いました? "にゃーん" とか」

ゆかり「え……? わたし、そんなこと言ってないよ……?」

マティ「でも、確かに――」


「にゃーん……」


マティ「ほら! 聞こえましたでしょう!?」

ゆかり「あ、ホ、ホントだ……! なんだろ……?」

トテトテトテ


子猫「にゃーん」


ゆかり「……! 子猫だ……」

マティ「まぁ……、なんてかわいらしいんでしょう!」

ゆかり「この子も雨宿りに来たのかな……」

子猫「にゃーん」

マティ「うふふ。"うん" って言ってるようですわね」

ゆかり「そうだね……」

マティ「(キョロキョロ) ……それにしても、この子の他には見当たりませんわね……? お仲間やご家族はいないのでしょうか?」

ゆかり「そうみたい……。ひとりぼっち、なのかな……」


子猫「にゃーん……」フルフル

ゆかり(……! この子、ふるえてる……)

ゆかり(……そうだよね。ひとりだけじゃ寒いよね……。さみしいよね……)

ゆかり(わかるよ……。たくさんの人といっしょにいられるようになったおかげで、わたしにも気持ちがわかるよ)


ゆかり(わたしも、前はこうだったんだ……。自分で気付かなかっただけで、この子みたいにずっと、寒がってたんだ……)

ゆかり(一人で、さみしくて、どうしてツラいのかもわからないで、ただ寒がってたんだ……)


ゆかり(…………)

ポツッ… ポツッ…


マティ「あら。雨、やんできましたわね」

ゆかり「通り雨だったのかな……」


子猫「(ダッ)」


マティ「あ、ネコちゃんが!」


タタタタッ…

ガサッ


マティ「……茂みの中に行ってしまいましたわ」

ゆかり「うん……」


ゆかり「……ねぇ、マティちゃん。わたし、思ったことがあるんだ……」

マティ「え? なんでございましょう?」

ゆかり「わたし、あの子の面倒を見てあげたい」


ゆかり「寒そうにふるえてたあの子のこと、あったかくしてあげたいんだ」




スマイルプリキュア レインボー!

第43話「大きな木の下で! 木陰が結ぶ縁!」



~ 翌日 放課後 ふしぎ図書館 ~

みゆき「――へぇー! それで、その子猫ちゃんをお世話してあげたい、って思ったんだ」

ゆかり「そうなんです……」

はるか「なるほどね。"猫の飼育本を貸してくれ" って頼んできたの、そういうことだったんだ。はい、ゆかりちゃん。これでいい?」

ゆかり「ありがとうございます、はるかセンパイ……!」

はるか「それ、持って行っていいよ。ホントはペロー君といっしょに暮らすために買ったものなんだけど、ペロー君、普通の猫とは違くて、あんまり役に立たなかったからさ」

ゆかり「ホントですか……!」

マティ「やりましたわね、ゆかりちゃん!」

ゆかり「うん……!」

ペロー「確かにぼくは猫とは違うけど、猫のお友達は多いから、色んなことを知ってるペロ! わからないことがあったら、何でも聞くペロ!」

ゆかり「ありがとう、ペローちゃん」

やよい「子猫かぁ、いいなぁ……! ねぇ、ゆかりちゃん、私も見てみたい! いっしょに行ってもいいかな?」

ゆかり「あ……、えっと、それは……」

あかね「え? なんや、ダメなん? そんなカワイイ子ならうちも会いたいわぁ」


ゆかり「あの……、あんまりたくさんで行くと……、あの子、ビックリしちゃうかな、って思って……」

ゆかり「だから、できればわたしとマティちゃんの二人だけでやりたいんです……」

なお「ああ、そっか……。それはそうかもね」

ゆかり「ごめんなさい、センパイ……」

やよい「あ、ううん、謝ることなんてないよ、ゆかりちゃん! こっちこそごめんね」

れいか「それでは、私達は陰ながら応援させていただくことにしましょう」

マティ「では、ゆかりちゃん! さっそくその本を見ながら、必要なものをお買い物しましょう!」

ゆかり「うん……! それじゃ、みなさん、行ってきます……!」

みゆき「ガンバってね、ゆかりちゃん!」

ゆかり「はい……! ありがとうございます……!」


パァッ…


キャンディ「ふたりとも、行っちゃったクル。なんだか楽しそうクルぅ!」

みゆき「うん、そうだね!」


あかね「……にしても、ゆかり、何だか大きゅうなったなぁ……。誰かの面倒が見たい、だなんて、初めて会うた時は言えへんかったんとちゃう?」

なお「そうだね……。前は言いたいことも言えなかったりしたのにね。プリキュアになってから、すごく変わったと思う」

やよい「私達も何度も助けてもらってるしね!」

れいか「ええ。今やゆかりさんは、私達に欠かせない大切な仲間です」

はるか「……この分だと、もうすぐかもしれないね」

みゆき「え? 何がですか?」

はるか「"夢の絵の具" だよ。ゆかりちゃんのだけ、まだ出てないでしょ?」

キャンディ「そうクル。まだ、最後の絵の具が残ってるクル」ゴソゴソ


パカッ


ポップ「うむ。キャンディの出したこの "レインボーパレット" にある、最後に一つのくぼみ。ここに、ゆかり殿の "紫の夢の絵の具" が入るのでござろう」

みゆき「そっか。ゆかりちゃんが自分の夢を見つけられたら、それで "夢の絵の具" が全部そろうんですね」

はるか「うん。ゆかりちゃんは少しずつだけど、確実に成長してる。だから、もうすぐ夢も見つかるかな、って思ったんだ」

ポップ「……ところで皆の衆。前に拙者がお話した、"夢の絵の具" の言い伝えのこと、憶えているでござるか?」

れいか「はい、もちろんです」


れいか「"七つの色が一つになる時、全ての闇を払う光とならん"。……ですね」

ポップ「その通りでござる」

ウルルン「ってことは、だ。その "夢の絵の具" が 7つ全部そろったら……」

あかね「その力使て、デスペアランドをどうにかせんとあかんな」


オニニン「……また、あのデスペア国王やジョーカーとも戦うことになるオニ……?」

やよい「ちょっとコワいよ……。前は何にもできなかったし……。……でも」


なお「それでもあたし達は、勇気を出してやらなきゃいけないんだ」

マジョリン「そうマジョ! 国王だろうがジョーカーだろうが、こてんぱんにしてやるマジョ!」


はるか「それが、私達の最後の戦いになるかもしれないね」

みゆき「はい……! 私達の未来に進む気持ちの強さ、今度こそ国王さんにわかってもらおう!」

全員「うん!」

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

マティ「たくさん買えましたわね、ゆかりちゃん!」

ゆかり「うん。猫ちゃんのごはん、毛並みを整えるためのブラシ、おもちゃのねこじゃらし、ノミよけスプレー……、この本に書いてあるものは大体用意できたね」

マティ「これならきっと、猫ちゃんもよろこんでくれますわね!」

ゆかり「……そうだといいね」


マティ「……ですが、肝心の猫ちゃんが見当たりませんわね……」キョロキョロ

ゆかり「ホントだ……。今日はここには来てないのかな……」

マティ「残念ですわ……。色々準備をしてきましたのに……」

マティ「……あら?」

ゆかり「どうしたの、マティちゃん?」

マティ「この木の根元に何か置いてあるようです」


ヒョイッ


マティ「これは……、たしか、"はんばーが" という食べ物でしたでしょうか。どうしてこんなところに置きっぱなしになっているのでしょう?」

ゆかり「え……、ハンバーガー!? ね、ねぇ、マティちゃん、それ、かじった跡ってある……!?」

マティ「ゆ、ゆかりちゃん……? い、いえ、キレイなままですわ。誰も食べてはいないようです」

ゆかり「……そっか、よかったぁ……」ホッ

マティ「どうしたんですの、そんなに慌てて……」

ゆかり「マティちゃん、はるかセンパイにもらった本の、このページ見て」ペラッ

マティ「本、ですか? ええと……、"猫にあげてはいけない危険な食べ物" とありますわね」

ゆかり「その中に、玉ねぎっていう野菜、あるよね……。実は、そのハンバーガーの中には、玉ねぎが入ってるんだ……」

ゆかり「玉ねぎを食べると、中の成分が猫の体をすごくおかしくしちゃうから、絶対にあげちゃいけないんだって……」

マティ「まぁ……!? それでは、この "はんばーが" を、もしあの猫ちゃんが食べてしまっていたら……!」

ゆかり「……あぶなかったかもしれないね……」

マティ「そ、それはよかったですわ……。今日、猫ちゃんがいなくてよかったですわね……」

ゆかり「うん……」


マティ「……それにしても、どうしてこんなところにこの "はんばーが" があるのでしょう? わたくし、まだリアルアンドのことはわからないことが多いですが、これは草のように生えてくるものではないのですよね?」

ゆかり「う、うん、それはそうだよ……」

ゆかり「もしかしたら、誰かがあの猫ちゃんのために置いていったのかもしれない……」

マティ「わたくし達の他にごはんをあげている方がいる、ということでしょうか?」

ゆかり「決まったわけじゃないけど……、たぶん……」

マティ「ですが、そうだとすると、その方はこれが猫ちゃんにとってキケンだということを知らないのですね」

ゆかり「うん……。やっちゃいけないことをちゃんと知ってもらわないと、猫ちゃんがあぶないかもしれない……」


マティ「それでは、帰る前にここに書置きを残していきましょう。もしその方がまたここに来れば、猫ちゃんにとってよくないことを伝えられるかもしれません」

ゆかり「あ、そうだね……。そうした方がいいかも……。お願いできるかな」

マティ「はい、もちろんですわ! それでは、やります!」


シュバッ


ゆかり「わっ! な、何にもないところからキャンバスと筆が出てきた……!」

マティ「ピクチャーランドの王女たるもの、このくらいはカンタンですわ!」エッヘン

ゆかり「やっぱりすごいね、マティちゃん……。それじゃあ、"人用の食べ物は猫にあげないでください" "猫用の食べ物をあげてください" って書いてくれるかな」

マティ「お任せくださいませ!」

~ 翌日 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

スタスタスタ


マティ「昨日の書置き、ちゃんと伝わりましたでしょうか? ちょっと心配ですわ……」

ゆかり「うん、そうだね……。……あ……!」


子猫「(ガツガツガツ)」


マティ「今日はいましたわ、猫ちゃん!」

ゆかり「何か食べてる……! もしかして、また昨日の人があげてくれたのかな……?」

マティ「だいじょうぶなものなのか、気になりますわね……! どうでしょう、ゆかりちゃん……!?」

ゆかり「み、見てみるよ……」ジッ…


ゆかり「……だいじょうぶみたい。食べてるの、猫用のカンヅメだよ」

マティ「まぁ、よかったですわ……! それなら安心ですわね」

ゆかり「うん……! 猫ちゃん、おいしそう……」


子猫「(ガツガツガツ)」

マティ「……あ! ゆかりちゃん、見てくださいませ! キャンバスにお返事が書かれています!」

ゆかり「え……!?」


キャンバスの文字『わかった、気をつける。今日もあげてみたけど、これならいい?』


ゆかり「ホントだ……」

マティ「ちゃんと伝わっていたようで、よかったですわ……。どうやら、この方も猫ちゃんのことをしっかり考えてくれる方のようですわね」

ゆかり「うん……! マティちゃん、またお返事おねがいしてもいい? "だいじょうぶです。ありがとうございます" って」

マティ「わかりましたわ!」


ゆかり(……なんだかうれしいな。猫ちゃん、ひとりぼっちじゃなかったんだ……。ちゃんと、大切にしてくれる人がいるんだ……)


ゆかり「よかったね、猫ちゃん」


子猫「にゃーん」

~ 翌日 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

ゆかり「あ……、これ……! 穴の開いたダンボールが置いてある……!」

マティ「これは……、ひょっとして、猫ちゃんのおうちでしょうか……!?」

子猫「……にゃーん?」

ゆかり「みたいだね……。猫ちゃん、中で寝ころんでる……」

マティ「あ、またキャンバスにお返事がありますわ!」


キャンバスの文字『なんか寒そうだったから拾った箱で作っといた』


ゆかり「こんなのまで……。優しい人なんだね、この人……」


トテトテトテ


子猫「にゃーん」


マティ「あ、猫ちゃん、おうちから出てきましたわ! ゆかりちゃん、わたくし達もこの方に負けていられませんわね! 今日はめいっぱい遊んであげましょう!」

ゆかり「うん……! ほら、猫ちゃん、ねこじゃらしだよ」ヒョイッ ヒョイッ


子猫「にゃっ!? にゃっ、にゃっ!」ピョンッ ピョンッ


マティ「まぁ! ゆかりちゃんのおもちゃを追いかけて跳びはねています! 楽しそうですわね!」

ゆかり「……よかった……!」

~ 3日後 七色ヶ丘中学校 校門前 ~

スタスタスタ


マティ「さぁ、ゆかりちゃん! 今日もあの木のところに行きましょう!」

ゆかり「うん……!」


タタタタタッ


あかね「おーい、ゆかりーっ!」

ゆかり「あ……、あかねセンパイ……、みゆきセンパイ……!」

みゆき「ふたりとも、今帰り? もしかしてこれから猫ちゃんのところに行くの?」

マティ「そうなのです!」

あかね「その分だと、うまくいっとるみたいやな!」

ゆかり「はい……!」


ゆかり「それじゃ、失礼します……!」

みゆき「うん! 気をつけてねーっ!」

マティ「ご心配ありがとうございますわ! それでは、ごきげんよう!」ペコリ


スタスタスタ…


あかね「……めっちゃ楽しそうやな、あの二人」

みゆき「うん」

みゆき「……ねぇ、あかねちゃん。キャンディも、ウルルンも……、ゆかりちゃんが笑ったところって、見たことある?」

あかね「え……? 何や急に。……けど、そういやないなぁ。あの子、うれしそうな時でも困ったような顔するし……」

ウルルン「おれも見たことねぇウル」

キャンディ「マティはニコニコしてるけど、ゆかりはあんまりしないクル」

みゆき「そうだよね。私も、ゆかりちゃんの笑顔ってまだ見たことないの。初めて会った時からずっと」


みゆき「……私ね、思うんだ。はるかさんやポップの言う通り "夢の絵の具" も大事なんだけど……、何より、ゆかりちゃんが笑顔になってほしいな、って」

みゆき「ひとりぼっちでさみしくて、うまく笑えなかったゆかりちゃんが笑えるようになったら、それはきっと、ウルトラハッピーなことだから」

あかね「……せやな!」

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

スタスタスタ


ゆかり「今日はどんなことして遊ぼうか……?」

マティ「そうですわね。昨日はこのボールを転がして遊びましたから、またあのねこじゃらしというのがいいのでは――」


子猫「(ガツガツガツ)」

少女「……ほんっとによく食べるね。そんなにいいの? この "カンヅメ" とかいうの」


ゆかり・マティ「!」


ゆかり(小声)「木の下に誰かいる……! 猫ちゃんにごはんあげてるのかな……?」

マティ(小声)「もしかして、わたくし達といっしょにあの猫ちゃんをお世話してくださっていた方でしょうか……?」

ゆかり(小声)「そうかも……。……それだったら、あいさつした方がいいよね……。猫ちゃんのために色々してくれたんだもん……」

マティ(小声)「そうですわね……」

スタスタスタ


ゆかり「あ、あの……、もしかして、この猫ちゃんのお世話をしてくれてる人ですか……?」

少女「え……? ……あ! それ知ってるってことは、あんた達? あたしのしてたことにケチつけてたのは――」


ゆかり・マティ・少女「……え……?」


マティ「そ、そんな……、どうして "あなた" がここに……!?」

少女「"あんた達" こそ……!」

マティ「あなたは、デスペアランドの闇の描き手……、ウィスタリアさん……!?」

ゆかり「……どうして……!?」


ウィスタリア「プ、プリキュア……!? な、なんでこんなとこにいんのよ……!?」

マティ「と、とにかく、このままではキケンですわ! ゆかりちゃん、変身しましょう!」

ゆかり「う、うん……!」


ウィスタリア「なに、やる気……!? なら、こっちも……!」


マティ「デコル・チェンジ! ですわ!」ポンッ


ゆかり「プリキュア、スマイル――」
ウィスタリア「闇の絵の具よ! 闇の絵筆よ――」


子猫「にゃーん」


ゆかり「…………」
ウィスタリア「…………」

ゆかり「プリキュア――」
ウィスタリア「闇の絵の具よ――」


子猫「にゃーんっ!」


ゆかり「…………」
ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……やめた」

ゆかり「え……? やめた、って……、悪いこと、しないの……?」

ウィスタリア「なんか、そいつのせいで気が抜けた。やる気なくなっちゃった」

マティ(デコル)「そいつ……、この子猫さんのことですか?」


マティ(デコル)(小声)「ど、どうしましょう、ゆかりちゃん……? みなさまをお呼びした方がいいんでしょうか……?」

ゆかり「…………」

ウィスタリア「…………」クルッ


スタスタスタ


マティ(デコル)「……! わたくし達に背を向けて歩いていきますわ……」

ゆかり「ど、どこに行くの……?」

ウィスタリア「どこだっていいでしょ。あんた達のいないとこだよ」


ウィスタリア「あんた達の仲間が来たら、どうせ勝てないし……。それに、もうデスペアランドのために仕事する気もないし……」

ウィスタリア「だから、他の連中が集まってくる前にあたしがどっか行く。何もする気ないから……、もうほっといて」

ゆかり「え……。あ、あの……」

ウィスタリア「…………」スタスタスタ

トテトテトテ


マティ(デコル)「あ……、猫ちゃんがあの方に近づいて……」


子猫「にゃーん……?」

ウィスタリア「……何よ、こいつ……! ほっといて、って言ってるでしょ……! あたしに構わないでよ……!」

子猫「にゃーん……」トテトテ

ウィスタリア「ったく……、近寄るなって言ってんのに……!」


ゆかり「…………」

ゆかり(……あの人……)

ゆかり「……待って! 行かないで!」

ウィスタリア「……何よ、あんたまで呼び止めて。そんなにあたしをやっつけたいの……!?」

ゆかり「違うよ、そうじゃないの……!」


ゆかり「……わたし、あなたとお話がしたい」

マティ・ウィスタリア「……!?」

マティ(デコル)「ゆ、ゆかりちゃん……!? 急に何を……!? あの方は、デスペアランドの闇の描き手で、とってもキケンな方なのですわよ!?」

ゆかり「……ホントにそうかな……」

マティ(デコル)「え……?」

ゆかり「わたし、あの人がそんなに悪い人には思えないんだ……」

ウィスタリア「あんた何言ってんの……!? 今までさんざん痛めつけてやったのに……! おかしいんじゃないの!?」

ゆかり「……だって……」


ゆかり「あなたは、猫ちゃんにあんなに優しくしてたんだもん」

ウィスタリア「……!!」

ゆかり「最初のハンバーガーって、あなたが置いたんだよね……? 猫ちゃんがおなか空かないように」

ゆかり「そのハンバーガーが良くない、ってわたし達が言ったら、ちゃんと聞いてくれた。猫ちゃんがあぶなくないように」

ゆかり「猫ちゃんのおうちを作ってくれたのもあなただよね……? 猫ちゃんが寒そうだからって、作ったんでしょ……?」


ウィスタリア「……それは……」

ゆかり「……あなたの言う通り、わたしはいっぱい、痛かったり、コワかったりすることをされたよ……」

ゆかり「でも、わたし、あなたが猫ちゃんのためにしたことを見て思ったんだ。"この人は、猫ちゃんのことを気にしてくれる、優しい人なんだな" って」

ゆかり「だから、もしあなたがさっき言ったみたいに悪いことする気がないんだったら……、いっしょに、この猫ちゃんのお世話、できないかな……」


ゆかり「わたし達、傷つけあうのやめて、仲良くできないかな……?」


ウィスタリア「……!」


マティ(デコル)「……ゆかりちゃん……」

ポンッ


マティ「…………」

ウィスタリア「元に……戻った……?」

マティ「わたくしがデコルになっていなければ、ゆかりちゃんはキュアヴェールにはなれません。ですから、安心してください。わたくし達は、あなたに何もいたしませんわ」


マティ「……ゆかりちゃんの言う通りですわ。あなたが本当に悪い方でしたら、猫ちゃんにあれほど優しくすることはできないと思います」

マティ「ですから、わたくしもあなたのことを信じますわ。あなたは、他の方を思いやれる心がある方だと」

ゆかり「マティちゃん……」

ウィスタリア「……ふん、そろいもそろって何言ってんの……? バッカみたい……」

トテトテ


子猫「にゃーん……」スリスリ

ウィスタリア「あんた……、何で頭をあたしの足にすりつけてんのよ……」

ゆかり「猫ちゃんも、あなたが行っちゃうとさみしいんじゃないかな……」


ゆかり「あなたといっしょにいたいんだよ、きっと」

ウィスタリア「……あたしと……いっしょに……?」

子猫「にゃーん……」

ウィスタリア「…………」


ウィスタリア「(スタスタスタ)」


ゆかり「あ……! ……やっぱり、行っちゃうの……?」

ウィスタリア「……カンヅメ」

ゆかり「え……?」

ウィスタリア「カンヅメってやつ、なくなったの。さっきあげたやつで最後。……だから、買ってくる」

マティ「……! では……?」


ウィスタリア「……ちょっとだけ、こいつの世話、付き合ってあげる」


ウィスタリア「でも、ちょっとだけだから。あんた達、口ではあんなこと言ってたけど、結局他のプリキュア呼ぶかもしんないし。ちょっとしたらどっか行くから」

マティ「そんな……! わたくし達はそんなこと――」

ゆかり「……それでもいいよ。……ありがとう」

ウィスタリア「……なんで "ありがとう" なの……」

ゆかり「……なんとなく……」

ウィスタリア「……ふん」

ゆかり「あれ……、でも、そういえば猫ちゃんのごはんを買うお金は……? どうしてるの……?」

ウィスタリア「オカネ? って、これのこと?」ピラッ

ゆかり「あ、お札……。ちゃんと持ってるんだ……」

マティ「いえ、違いますわ。それは……」


ドロッ


ゆかり「わっ……! お、お金が溶けちゃった……!? これ……絵の具……?」

マティ「やっぱり……! わたくしにはわかりますわ。それは、絵を実体化させたニセモノですわね?」

ウィスタリア「これでいいんでしょ? 今までの人間達は、これと交換でカンヅメくれたよ?」

ゆかり「ダ、ダメだよ、そんなの……! お店の人、困っちゃうよ……!」

ゆかり「わ、わたしも、いっしょに行くよ……。ちゃんとお金払って買わなきゃ」

ウィスタリア「なんかめんどくさいなぁ……。……じゃあ、勝手についてくれば?」

ゆかり「……! うん……! じゃあ、マティちゃん、猫ちゃんのこと、見ててくれる……?」

マティ「わかりましたわ! 二人とも、行ってらっしゃいませ!」


スタスタスタ…


マティ「……二人並んで歩いて……、ホントにお友達みたいですわ」

マティ「このままうまくいけばいいですわね……。ね、猫ちゃん」

子猫「にゃーん」

~ 数日後 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

マティ「ほらほらー! こっちですわよー、猫ちゃーん!」ヒョイッ ヒョイッ

子猫「にゃっ! にゃにゃっ!」ピョンッ ピョンッ

マティ「うふふっ! 猫ちゃん、とっても楽しそう! ウィスタリアさんもどうですか? いっしょに遊んであげてみませんか?」

ウィスタリア「え? あたしはいいよ。別にそいつと遊びたいわけじゃないし」

マティ「あら、ちゃんと遊んで運動させてあげるのも、大事なことなんだそうですよ? ですわよね、ゆかりちゃん?」

ゆかり「うん……。本にもそう書いてあるよ……」

マティ「ほら! お世話するんでしたら、しっかり遊んであげないとダメですわ!」

ウィスタリア「……んー、しょーがないな……。じゃあ、そのねこじゃらし? だかってやつ、貸してよ」


ウィスタリア「……で、これを頭の上で振ったらいいわけ?」フリフリ

子猫「! にゃにゃっ!」ピョンッ ピョンッ

ウィスタリア「わっ……! すごい勢いで飛びついてくる……!」

ゆかり「あ……、いいカンジ……! そのまま、もっと振って……!」

ウィスタリア「こ、こう……?」ブンブンッ

子猫「にゃっ! にゃっ! にゃっ!」ピョンッ ピョンッ ピョンッ

マティ「上手ですわ、ウィスタリアさん! 猫ちゃんも大喜びですわ!」

ウィスタリア「……そう、なんだ」

ゆかり「……うーん……」

マティ「あら……? ゆかりちゃん、何やら考え込んで……、どうかしたのですか?」


ゆかり「……実はね、この子の名前を考えてたの……。ちゃんとした名前を考えてあげたら、この子ともっと仲良くなれるような気がするんだ……」

マティ「言われてみれば、"猫ちゃん" では、なんだかこの子のことではないようですわね」

ウィスタリア「別にいいじゃん、"こいつ" とかでさぁ」

ゆかり「……じゃあ、自分が名前じゃなくって "こいつ" って呼ばれたら、うれしい……?」

ウィスタリア「む……。……確かに、そう言われるとちょっとムカつくかも……」

ゆかり「でしょ……? だから、名前を考えて、みんなで呼んであげようよ。ね?」

ウィスタリア「……好きにしたら」


ゆかり「……でも、なかなかいい名前が浮かばなくて……。周りに、なにかヒントでもあるといいんだけど……」キョロキョロ


ゆかり「……あ……」

マティ「ゆかりちゃん? 茂みをじっと見て、どうかしましたか?」

ゆかり「…… "スミレ"」

マティ「え……? スミレ? それって、あそこの茂みにあるお花の名前ではなかったでしょうか」

ゆかり「うん。その花を見て思いついたの……。この子の名前…… "スミレ" でどうかな……?」


ゆかり「わたし達、みんな紫色に関係してるよね……。わたしとマティちゃんは、"紫" のプリキュア・キュアヴェールだし……」

マティ「そういえば……。ウィスタリアさんも、髪の毛の色が紫色ですわね」

ウィスタリア「……あたしは、紫色の闇の絵の具で描かれたみたいだからね」

ゆかり「それに、この子猫ちゃんの毛も、ほとんど黒だけど、ちょっと紫色っぽいし……」


ゆかり「だから、紫色の花から名前をもらって "スミレ"。……どうかな?」

マティ「スミレちゃん……。いいと思いますわ! とってもステキ!」

子猫「にゃーん!」

マティ「うふふ! この子も喜んでいるようですわね! いい名前ですわ、ゆかりちゃん! ねぇ、ウィスタリアさんもそう思いませんか?」

ウィスタリア「……スミレ、かぁ……」

子猫のスミレ「にゃーん!」

マティ「……あ。名前といえば、わたくしもちょっと考えていたことがありますの」

ゆかり「え……? スミレちゃんの名前じゃなくて……?」

マティ「はい」


マティ「……"ウィスタリアさん" って、ちょっと呼びづらいので、別の名前で呼んでもいいでしょうか?」

ウィスタリア「……え? なに? 名前って、あたしの?」

マティ「そうですわ」

マティ「お名前がちょっと長いので……、縮めて "タリアちゃん" というのはどうでしょう!?」

ウィスタリア「…………は? はぁぁぁぁ!?」


ウィスタリア「タ、"タリアちゃん" って……、それ、あたしのこと!?」

マティ「ええ! わたくしも本名は "マティエール" というのですが、やっぱり長いので、皆さまからは "マティ" と呼んでもらっているんですのよ!」

ウィスタリア「知らないし! あんたがそうだからって、あ、あたしまでそんな風に呼ぶの、やめてよね! なれなれしい!」

マティ「ええー……。ダメでしょうか……。かわいらしいと思うのですが……。わたくしのことも "マティ" と呼んでかまいませんから!」

ウィスタリア「呼ばないよ! だから、あんた達もそんな風に呼ばないでよね! わかった!?」

マティ「わかりましたわ、タリアちゃん……」

ウィスタリア「呼ぶなってのに!」

ゆかり「…………」

ウィスタリア「……? なに、あんた、ぼーっとこっち見て……。どうかしたの?」

ゆかり「……なんだかにぎやかで、……楽しいな、って……」


ゆかり「わたし達、なんだか友達みたいだな、って……思ったの……」

ウィスタリア「……! ……友達……?」

マティ「あら、わたくしはスミレちゃんをいっしょにお世話する時からそのつもりでしたわ。タリアちゃんもそうじゃないですの?」

ウィスタリア「……それこそやめてよね。あたし、別にそんなの……いらないんだから……」

マティ「……? タリアちゃん……?」


ゆかり(……どうしたんだろう……? なんだか、さみしそうな顔してるような気がするけど……)

~ 数十分後 ~

子猫のスミレ「……くぅ……くぅ……」


マティ「あら……、スミレちゃん、寝てしまいましたわね。かわいらしいですわ……」ニコニコ

ウィスタリア「そいつさぁ、寝てばっかりなんだよね。ごはん食べるとすぐ寝ちゃうの」

ゆかり「本に書いてあるよ……。猫ってすごくよく寝るみたい……。"寝る子" だから "寝子(ネコ)" って呼ばれだしたのかもしれないんだって」

マティ「まぁ、そうなんですのね」

ウィスタリア「ふーん……。寝てばっかりか、うらやましいな……」


子猫のスミレ「……くぅ……くぅ……」

ウィスタリア「気持ちよさそうな顔しちゃってさ……。……悩みとかなんて、ないんだろうな……」

ゆかり「…………」

ゆかり「……あなたにはあるの……? 悩み……」

ウィスタリア「は……? なんでそんなこと聞くの?」

ゆかり「だって、なんだか時々、さみしそうな顔してるから……」

ウィスタリア「……あたしは、別に……」


マティ「……ですが、確かに気になることはありますわ」

マティ「タリアちゃんは、あの大臣――ジョーカーという者が襲ってくる前に現れて以来、ぜんぜん姿を見せませんでしたわね」

マティ「その間はどちらにいらっしゃったのですか? どうしていらっしゃったのですか?」

ウィスタリア「……どうしてあんた達にそんなことしゃべらなきゃなんないのよ」

ゆかり「……もっと、仲良くなりたいから」

ウィスタリア「え……」


ゆかり「さっきも言ったけど、なんだか時々さみしそうな顔をしてるのが、気になって……」

ゆかり「わたし達にできることがあれば、してあげたいな、って……、思うんだ……」

ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「あの後――大臣に "ジャマ" って言われて追い払われた後、あたしはずっとこの町をぶらぶらしてた」

ゆかり「え……!? ……じゃあ、おうちに……帰ってないの……?」

ウィスタリア「……あんなところ、家じゃない!!」

ゆかり・マティ「!?」ビクッ


ウィスタリア「……あんた達、知らないでしょ。あたしが、デスペアランドでどういう扱いを受けてたか」

ウィスタリア「あたしね、あんた達プリキュアには負け続けるわ、心の絵の具は他の二人より集められないわで、毎回毎回しかられてたの」

ウィスタリア「……一番エラい王様からは、"役立たずはいらない" って言われてた……」

ゆかり「"役立たず" ……? ひどい……」

マティ「お兄様……。……昔は、そんなことを言う方ではなかったのに……」


ウィスタリア「……とにかく、そんなこんなで、あたしはぜんぜんデスペアランドじゃ気にされてなかったわけ」

ウィスタリア「今言ったとおり、あたしはずーっとこの町にいたけど、その間だーれも探しに来なかったし」

ウィスタリア「だからあたし、ハッキリわかったんだ。"ああ、あの人達にとっては、あたしのことなんてホントにどーでもいいんだな" って」


ウィスタリア「……そんなところに誰が帰るもんか……!!」

ゆかり「…………」

ウィスタリア「で、デスペアランドのために仕事する気もなくなったあたしは、人間達の心も集めず、ずっとぶらぶらしてた」

ウィスタリア「ぼーっとしながら、ぶらぶら、ぶらぶらしてた」


ウィスタリア「そんな風にしてて……、いつだったかな、雨が降ったんだ。濡れるのヤだから、ちょうど近くにあったこの木の下に入ったの」

ウィスタリア「そしたらこいつが……スミレがいたの」


ゆかり「あなたも、雨宿りしにここに来たんだ……」

マティ「スミレちゃんとの出会いは、わたくし達と似ていたんですのね……」

ウィスタリア「でさぁ、スミレったら、何を思ったのか、雨宿りしてるあたしにすりよってきたの」

ウィスタリア「うっとうしくってさ、何度も何度も突き飛ばしたんだけど、そのたびにこっちに寄ってくるの」


ウィスタリア「……でもそのうちに、そんなスミレがさ、なんだか自分みたいに見えてきたんだ」

ウィスタリア「どこにも行き場所がなくって、ひとりでぶらぶらしてる、自分みたいに……」

ゆかり「……!」


ウィスタリア「で、あんまり近づいてくるもんだから、ちょっと面倒見てやってたら、たまたまあたしがいなかった時にあんた達がスミレの世話を始めだした、ってわけ」

マティ「そうだったのですね……」


ゆかり「…………」

ゆかり(……同じだ、わたしと……)

ゆかり(わたしも、スミレちゃんと初めて会った時、"自分みたいでさみしそうだな" って思った……)


ゆかり(じゃあ、この人も……、わたしと、同じなのかな……。平気な風にしてるけど……、ホントはさみしいんじゃないのかな……)

ゆかり(ひとりで……、誰も近くにいてくれなくて……、寒くて、さみしくて……、苦しんでるんじゃないのかな……)

ゆかり(だから、口ではああ言っても、スミレちゃんといっしょにいたかったんじゃないのかな……)

ゆかり(……それなら、なんとかしてあげたい……。ひとりぼっちのさみしい思いだなんて、誰にもさせたくない……。そのツラさは……わたしがよく知ってるから……)


ゆかり(なんとか……、なんとかしてあげられないかな……!?)

~ デスペアランド 王宮 大臣自室 ~

大臣「――ふむふむ、なるほど……。しばらく姿を見ないと思ったら、このようなことになっていたのですか……」

大臣「くくくっ、これは面白くなりそうですねぇ……!」


ギギギギッ…


オーレン「入るぞ、大臣」

大臣「おや、これはこれはオーレンにイエロワ。二人そろってどうしました?」

イエロワ「どうした、ではありませんわ……! なぜ、この間のプリキュアとの戦いで、ワシらに "最後の手段" を使わせてくれなかったのです!?」

オーレン「そうだ。"あの力" さえ使えば、オレ達が合体したアキラメーナより遥かに強い力を出せる。なのに、なぜ止めた」

大臣「言ったでしょう。まだその時ではない、と」

イエロワ「その時、とはいつですじゃ!? ワシらとて、プリキュアに負け続けでは気持ちがおさまりません――」

大臣「イエロワ。それにオーレン。……私に口答えをするつもりですか?」ギロリ

オーレン・イエロワ「……!」


イエロワ「……いえ、出すぎたまねをしましたですじゃ……。お許しください、大臣様」

大臣「わかればいいのです」

大臣「二人とも、焦らずとも、あなた方がプリキュアに恨みを晴らす時は近そうですよ。このキャンバスを見なさい」

オーレン「これは、リアルランドの様子が映っているのか?」

イエロワ「……! こやつ、ウィスタリアではありませんか……!? しかも、いっしょにいるのは……キュアヴェール……!? あやつ……、何をしておるんじゃ……! 裏切ったか!?」

大臣「さぁ? ウィスタリア様が何を考えていようが、私にはどうでもいいことです」


大臣「ですが、この状況は利用できそうです。ですから、今回は私が直接リアルランドへ行きます。私の "計画" を一気に進めるために、ね」

大臣「あなた方にはその後、存分に力を発揮してもらいますよ。ですから、今は大人しく待っていなさい。いいですね?」

オーレン「わかった」

大臣「ふふ、よろしい。では、行ってきます。留守番、頼みましたよ」シュバッ


オーレン「計画、か。大臣は何を企んでいるのだ? 知っているか、イエロワ」

イエロワ「いや、ワシにもわからんわ……。が、ワシらは大臣様によって産み出された存在。大人しくしたがっておればよいのじゃ」

オーレン「そうだな」

~ 夕方 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

ゆかり「それじゃ、わたし達、そろそろ帰るね……」

マティ「タリアちゃん、スミレちゃんのこと、よろしくお願いしますわ!」

ウィスタリア「だから! その名前で呼ぶなってのに!」


ウィスタリア「……それに、カン違いしてるようだから言っとくけど、あたし、別にスミレの面倒見るわけじゃないから。スミレがあたしに寄ってくるから、しょーがなくやってるだけだから」

マティ「うふふ。タリアちゃんはいじっぱりですわね」

ゆかり「それでいいよ……。お願いね」

ウィスタリア「……うん」

マティ「それでは、失礼しますわ。ごきげんよう」ペコリ


スタスタスタ…


ウィスタリア「…………」

子猫のスミレ「にゃーん……」

ウィスタリア「……ん? なに、あんた、ヘンな鳴き方して。あの二人がいなくなって、さみしいの?」

子猫のスミレ「にゃーん……」

ウィスタリア「あっそ……」


ウィスタリア「……まぁ、確かにいなくなると、静かにはなるよね」


マティ(回想)『わたくしのことも "マティ" と呼んでかまいませんから!』

ゆかり(回想)『……なんだかにぎやかで、……楽しいな、って……』


ウィスタリア「…………」


ウィスタリア「……スミレとおんなじで、あいつらもうっとうしいけど……、とりあえず、タイクツはしない……かな……」

??「それは結構なことですねぇ、ウィスタリア様」

ウィスタリア「……!? 誰っ!?」


スタスタスタ


大臣「私ですよ、私」

ウィスタリア「大臣……! ……何しに来たの」

大臣「おやおや、何しに、とはごあいさつですねぇ。久しぶりにお会いしたというのに」

ウィスタリア「何言ってんの……!? 前会った時は "ジャマだからどっか行け" とか言ったくせに……。その後、探しにも来なかったくせに……!」

大臣「そうでしたか? まぁ、昔のことはいいじゃないですか」

ウィスタリア「……あんた、ホンットムカつく……!」

大臣「それより、ウィスタリア様。あなたの様子、見させてもらいましたよ。ずいぶんキュアヴェールや、ピクチャーランド王女・マティエール様と仲がおよろしいようですね」

ウィスタリア「……! ……別に、あいつらとあたしは……そんなんじゃ……」

大臣「ほう、そうなのですか? いやぁ、それを聞いて安心しましたよ! よかったよかった!」

ウィスタリア「は……!? 何がよかったの……!?」

大臣「実は、あなたに一つ頼みごとをしたいと思っていたものですからね。頼みやすくてよかった、ということです」

ウィスタリア「頼みごと……?」

大臣「はい」

大臣「ウィスタリア様。あなたの力で、キュアヴェールを倒してはいただけませんか?」

ウィスタリア「……! あたしが……!?」

大臣「はい。キュアヴェールとなるあの二人は、どうやらあなたに気を許しているようです。ですから、あなたであればカンタンにやっつけられるはずですよ」

ウィスタリア「あんたの頼みなんて聞くと思ってんの?」

大臣「おやぁ? イヤなんですか? 別にキュアヴェールのことはどうでもよいのでは?」

ウィスタリア「……そうじゃないよ! ムカつくあんたの頼みなんて聞きたくない、って言ってんの!」

大臣「……やれやれ。キラわれたものですねぇ」

大臣「では、キラわれついでに、一つ条件を出すとしましょうか」

ウィスタリア「条件?」


大臣「あなたが引き受けてくだされば、私はその子猫ちゃんに何も手出しはしません。……これでいかがでしょうか?」

ウィスタリア「!! ……それって……、あたしが言うこと聞かなかったら……スミレを……!?」

大臣「まぁ、あくまで協力していただけなかった場合のことですよ」


ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……やめて……」

大臣「はい? 何か言いましたか?」


ウィスタリア「やめて……! スミレには手を出さないで……! それだけはやめて……!」

子猫のスミレ「にゃーん……」

大臣「おやおや。そっけない態度を取っていたから、大して気にしていないのかと思えば……、ずいぶんと必死ですねぇ?」

ウィスタリア「…………」

大臣「いいですとも。その子猫ちゃんの安全は保障しましょう」


大臣「ですが、それにはどうしたらいいんでしたっけねぇ、ウィスタリア様?」ニヤリ

ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……わかった、やる。キュアヴェールは……あたしが倒す」

大臣「はい、大変結構です! 期待しておりますよ、ウィスタリア様!」

ウィスタリア「…………」


スタスタスタ…


大臣「……行きましたか。意外とカンタンに乗ってくれましたねぇ」


大臣「さて、準備はできました。はてさて、どうなることやら」

大臣「大して期待はしていませんが、ウィスタリア様がうまくキュアヴェールを倒せるでしょうか? それとも……?」

大臣「まぁ、どちらに転んでも、私の "計画" が一歩進むことは間違いありませんがね……!」


大臣「楽しみですねぇ……! ……くくっ……、ふひひひっ……! ひゃははははっ!」

~ 翌日 昼休み 七色ヶ丘中学校 中庭 ~

みゆき「――え? 元気のない人を元気にするにはどうしたらいいか、って?」

ゆかり「はい……。その人、なんだかさみしそうで……、元気にしてあげたいんです。なんとかならないでしょうか……」

5人「うーん……」


みゆき「……あ。それならゆかりちゃん。とびっきりの方法があるよ!」

ゆかり「とびっきり……? それって……?」

みゆき「ゆかりちゃんの笑顔だよ」

ゆかり「……! 笑顔……」

みゆき「最初に会った時にも言ったっけ、憶えてるかな? 笑顔ってね、見ただけで人を元気でハッピーにしてくれる、すごい力があるんだよ」

ゆかり「それは……、センパイ達を見てたら、わかります……」

みゆき「でしょ?」


みゆき「だから、もし誰かを元気にしてあげたいなら……、ゆかりちゃんの笑顔が一番のプレゼントだと思う」

みゆき「ゆかりちゃんが笑顔になれれば、それを見たその人も元気な笑顔になって、きっとみんなでウルトラハッピーになれるよ!」ニコッ

ゆかり「……そうですね」

キーン コーン カーン コーン


マティ「あら、チャイムですわ。そろそろ戻らないと」

あかね「ん、せやな。遅れたら先生に怒られてまう」

ゆかり「ありがとうございます、みなさん……! わたし……ガンバってみます……!」ペコリ

みゆき「うん!」

ゆかり「じゃあ、行こう、マティちゃん」

マティ「ええ! それではみなさま、ごきげんよう!」


スタスタスタ…


なお「……ゆかりちゃん、張りきってたね」

やよい「うん。うまくいくといいね」

みゆき「だいじょうぶだよ! ゆかりちゃんなら、きっと!」

れいか「ええ、そうですね」

~ 七色ヶ丘中学校 1-3教室 ~

マティ「ゆかりちゃん、先ほどみなさまに相談していた "元気にしたい方" というのは、もしかして……タリアちゃんのことですか?」

ゆかり「うん……。おうちにも帰れないし……、こっちの世界の人にも頼れないし……。平気そうだったけど、きっと、さみしい思いをしてると思うんだ」

マティ「そうですわね……。わたくしにはゆかりちゃんやみなさまがいらっしゃいますけど、もしそうでなかったら……ひとりだったら、きっとさみしいと思います」


ゆかり「……さみしいのなんて、イヤだよね……」

マティ「……はい」

マティ「……ゆかりちゃん! わたくし達で、タリアちゃんのことを元気にしてあげましょう!」

マティ「みゆき様の言う通り、わたくし達の笑顔をプレゼントしてあげたら、きっと元気になってくれますわ!」

ゆかり「笑顔、かぁ……。……わたし、できるかな……」

マティ「できますわ! タリアちゃんのことを思えば、きっと!」


ゆかり「……そうだね。わたし、やってみる。ガンバって、笑顔をプレゼントしてみるよ」

マティ「はい!」

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木の下 ~

マティ「……と、意気込んで来たのはいいものの……、今日はタリアちゃん、いませんわね……」

ゆかり「うん……。スミレちゃんはいるのに……。どこかに行ってるのかな……?」

子猫のスミレ「……にゃーん……」


ポツッ ポツポツッ

ザァァァァァァァァァッ…


ゆかり「あ、また雨……」

マティ「この木の下なら安心ですわね。とっても大きくって、雨もよけてくれますもの」


マティ「……ですが、タリアちゃんが心配ですわね……。どこかで雨に降られていないといいのですが……」

ゆかり「うん、そうだね……」

スタスタスタ


ウィスタリア「…………」

マティ「あ、タリアちゃん! お待ちしていましたわ!」

ウィスタリア「…………」

ゆかり「……? 木の下に来ないの……? そこにいたら、雨で濡れちゃうよ……」


ゆかり「……それに、どうしたの……? なんだか、顔がコワいよ……?」

ウィスタリア「……当たり前だよ。あたしは、あんた達と戦うつもりで来たんだから」

ゆかり「……え……?」


ウィスタリア「決闘だよ。あたしは、あんた達を倒す。……キュアヴェール」

ゆかり「…………」

マティ「ちょ、ちょっと待ってくださいませ……! な、何をおっしゃっているのかわかりませんわ……!」

ゆかり「そ、そうだよ……。もう、悪いことはしない、って言ってたじゃない……。なのに、どうして急に……!?」

ウィスタリア「……いいから早くプリキュアになりなよ! さもないと……!」ブンッ


ドガァァッ!

バキバキバキッ ドスゥゥゥン…


マティ「近くにあった小さな木が……、タリアちゃんのパンチ一回で折れてしまいました……!」

ウィスタリア「次はあんた達をこうするよ」

ゆかり「……!? な、なんで……、どうして……!?」

マティ「……ゆかりちゃん、変身しましょう」

ゆかり「マ、マティちゃん……!?」

マティ「理由はわかりません……。ですが、タリアちゃんは本気のようです……! 変身しないと、アブないですわ……!」

ゆかり「……わたし……、わたしやだよ……! どうして……? せっかく仲良くなれそうだったのに、どうしてそんなことしないといけないの……!?」


マティ「……わたくしだって、イヤですわ!」

ゆかり「!」ビクッ

マティ「……ですが、わたくし達は、みなさまの笑顔を守るプリキュア……。ここでやられてしまうわけにはいかないのです……!」

ゆかり「……マティちゃん……」

ゆかり「……わかった。なんだかよくわからないけど……、やらなきゃいけないってことは、わかったよ。変身しよう、マティちゃん」


ゆかり「……でも、きっとなにか理由があるんだと思う……。スミレちゃんを大切にしてたあの人が、悪い事をするようには思えないから……!」

ゆかり「だから、わたし達で何とかあの人を止めよう。それで……、もう一度、あの大きな木の下でお話しよう」

マティ「……ええ!」

マティ「デコル・チェンジ! ですわ!」ポンッ


パチンッ!

レディ!

ゆかり「プリキュア! スマイルチャージ!!」

ゴー!

ゴーゴー! レッツゴー、ヴェール!!


キュアヴェール「そよそよさざめく、優しい木陰。キュアヴェール!!」

ウィスタリア「やる気になったみたいだね。……行くよ!」ダッ


マティ(デコル)「タリアちゃんが拳を振り上げて向かってきます! ヴェール、防御を!」

ヴェール「うん……! "ヴェール・カーテン"!」


パキィィィィンッ!


ウィスタリア「……そんなものっ!」ブンッ


ガァァァァンッ!


ビシビシッ!

バリィィィィィンッ!


ヴェール「……! "ヴェール・カーテン" が、割れちゃった……!?」

マティ(デコル)「タリアちゃん……、自分の力もこんなにすごかったんですの……!?」


ウィスタリア「スキあり! もらったぁっ!」ブンッ

ヴェール「!? わぁっ!」バッ

ウィスタリア「……! あたしのパンチが……、外れた……?」

ヴェール「……よ、よけられた……?」

マティ(デコル)「すごいですわ、ヴェール! きっと、たくさんプリキュアとしてガンバってきたおかげで、ヴェール自身もちょっとずつ強くなってるんですわ!」

ヴェール「そ、そうなのかな……」


ウィスタリア「……だから何? 前にも言ったけど、どうせあんたは守るだけしかできないんでしょ?」

ウィスタリア「何もしてこないなら……、いつかは絶対捕まえられるよ」スタスタ


マティ(デコル)「タリアちゃんが近づいてきますわ……! 気をつけて……!」

ヴェール「う、うん……!」


ヴェール(……あの人の言う通りだよ……。わたしは、守る以外になんにもできない……! あの人を止めてお話したいのに、できることがないよ……!)

ヴェール(どうしよう……。どうしたら……!?)

~ 七色ヶ丘中学校 校門 ~

キャンディ「……! クル……!? みんな、イヤなカンジがするクル……!」

やよい「キャンディ、イヤなカンジって、もしかして……!」

あかね「デスペアランドなんか……!?」

キャンディ「クル!」


みゆき「ちょ、ちょっと待って……! 私達 3年生は、みんなここにいるよね……!? ってことは……!」

れいか「……! はるかお姉さんか、ゆかりさんが戦っているのでしょうか……!?」

なお「タイヘンだ……! あたし、ひとっ走りしてはるかさんの "イリス学園" に行ってくるよ! 確認ついでに、いたら来てもらってくる!」

あかね「ほんなら、うちは学校内でゆかりとマティ探すわ! みんなは先に現場に行っててや!」

みゆき「わかった! 二人とも、お願いね! 行こう、キャンディ! 案内して!」

キャンディ「クルぅっ!」

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木付近 ~

バリィィィィィンッ!


ヴェール「ま、また "ヴェール・カーテン" が割れて……!」

ウィスタリア「何回やってもいっしょだよ!」ブンッ

ヴェール「わっ!」バッ

ウィスタリア「……! また、あたしのパンチをよけた……!? ったく、ちょこまかと……!」

ヴェール「はぁ……、はぁ……」

ウィスタリア「もう疲れてんじゃん。……さっさとやられちゃいなよ」


ヴェール「……やだよ」

ウィスタリア「……なに……?」

ヴェール「わたし、やられない……! やられたくない……!」

ヴェール「あなたともう一度お話するまで、やられたりなんてしたくない!!」


ヴェール「"ヴェール・カーテン・ハート" っ!!」バッ


パキィィィィンッ!


ウィスタリア「それ……! あたしが前に割れなかった盾……!」


ヴェール「……わたしはこれしかできないけど……、あなたを止めるような力はないかもしれないけど……!」

ヴェール「でも、あきらめたくない! わたしは、わたしにできることをせいいっぱいやりたいんだ!」


ヴェール「マティちゃんと、スミレちゃんと、……あなたと! もう一度楽しく遊びたいから!!」

ウィスタリア「……っ!」

ウィスタリア「……言ってなよっ!」ダッ


マティ(デコル)「ヴェール! またパンチが来ます!」

ヴェール「……っ!」グッ


ウィスタリア「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ブンッ

ヴェール「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」バッ


ガキィィィィィンッ!!


ウィスタリア「…………割れない……っ!?」

マティ(デコル)「防げます、ヴェール! "ヴェール・カーテン・ハート" なら、タリアちゃんのパンチを防げますわ!」

ヴェール「うん……!」

ウィスタリア「……なに喜んでんのよ……! 一発でムリなら、何発でもたたくだけだよ!」


ウィスタリア「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ドガガガガガガッ!!


ヴェール「……っ! すごい勢い……!」

マティ(デコル)「ですが、このまま防ぎ続ければ、疲れてくれるかもしれません! そうすればきっと、お話するチャンスもできますわ!」

ヴェール「うん……、そうだね……! ガンバるよ――」


ウィスタリア「たぁぁぁぁっ!」


ガキィィィィィンッ!!


ウィスタリア「……!? 痛っ……!」

ヴェール「……!?」

ヴェール(痛がってる……? もしかして、盾をたたいてる手が痛いの……?)


ウィスタリア「くっ……、まだまだぁぁぁっ!!」


ドガガガガガガッ!!


ヴェール(……よく見たら、手が真っ赤……)


ヴェール("ヴェール・カーテン・ハート" なら、たぶん防ぎきれると思う……)

ヴェール(でも……、でも……、このままじゃ……あの人の手が……!)

ウィスタリア「くぅっ……! 割れろぉぉぉぉぉっ!!」ブンッ


ヴェール「…………」スッ

マティ(デコル)「!? ヴェール!? どうして盾を支える手を下ろすのです……!?」


フッ…


マティ(デコル)「……"ヴェール・カーテン・ハート" が消えて――」


ドガァァァァッ!!


ヴェール「……ぅぁっ……!」バシャァァァッ

マティ(デコル)「ヴェールっ!」

ウィスタリア「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。た、倒れた……? ……でも……」

ウィスタリア「……なにしてんの、あんた……? 今、あたし、盾、割ってないよね……? あんた、自分で盾を消したの……!?」


ウィスタリア「どういうつもり!? なんでわざとあたしのパンチをくらったりしたのよ!?」

マティ(デコル)「そうですわ……! ヴェールは他のみなさまのように頑丈ではないのに、どうしてそのようなことを……!?」


ヴェール「……痛そうだったから……」

ウィスタリア「……は……?」

ヴェール「盾をたたくあなたの手が……痛そうだったから……」

ウィスタリア「……!?」

マティ(デコル)「ヴェール……、では、タリアちゃんのことを気づかって盾を消したのですか……?」


ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……ふっ……」

ウィスタリア「あははははっ! 何それ、バッカみたい! あんたを痛めつけるあたしを気づかってくれるわけ!?」


ウィスタリア「……そういうことなら、遠慮なくやらせてもらうよ」ブンッ


ドカァァァッ…!


ヴェール「……っ……!」バシャァァァッ

マティ(デコル)「ヴェール!」

ウィスタリア「まだまだ。こんなんじゃ終わらないよ」ブンッ


ドカァァァッ…!


ヴェール「くっ……!」バシャァァァッ

ウィスタリア「ラクなもんだよね! 倒そうとしてんのに、そっちからわざわざやられてくれるっていうんだからさ!」ブンッ


ドカァァァッ…!


ヴェール「うぁっ……!」バシャァァァッ

マティ(デコル)「……もう……やめて……。やめて……ください……!」

マティ(デコル)「……やめてぇぇぇぇぇっ!!」

ウィスタリア「……!」ピタッ


マティ(デコル)「……ひどい……、ひどいですわ……、タリアちゃん……!」

マティ(デコル)「何もしないどころか、あなたを気づかうヴェールを――ゆかりちゃんを、一方的に傷つけて……、あなたはなんとも思わないのですか!?」

ウィスタリア「……そいつが勝手にやってるだけじゃん。そんなこと、知らないよ……」

マティ(デコル)「……! ……本気で、言っているのですか……?」

マティ(デコル)「今だけじゃない……。ゆかりちゃんは、あなたのことを気づかっていたのですよ……? あなたがツラそうだから、なんとかしたい、って……」

マティ(デコル)「スミレちゃんを大切にしていた、優しいあなたを元気づけてあげたい、って……!」


マティ(デコル)「もちろん、わたくしも同じ気持ちですわ……! あなたとは、仲良くできるかもしれないと思っていました……!」

マティ(デコル)「それなのに……、それなのに……、こんなにひどいことを……っ!」


ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……さい……!」

ウィスタリア「うるさい、うるさい、うるさい……! うるさぁぁぁぁいっ!!」


ウィスタリア「あんた達には、あたしの気持ちなんてわかんないよ! いつも誰かに助けてもらえる、あんた達にはさぁ!」


ヴェール「……え……?」

ウィスタリア「……いいよね、あんた達は。ピンチになったら、誰かが助けに来てくれるんだもんね」

ウィスタリア「でもね、あたしの時には……誰も来ないんだよ。あんた達に負けてツラい時も……、誰も助けに来てくれなかった……。たったの…… 1回も……」


ウィスタリア「別にいいよ、あんたの仲間みたいに、体を張って助けてくれなくっても……。そこまではしてくれなくってもよかった……」

ウィスタリア「でも……、でもさ……!」


ウィスタリア「1回でいいから、誰かにはげましてほしかった……。誰かに……ほめてもらいたかった……!」


ウィスタリア「それすらなかったんだよ、あたしには……!!」

ヴェール「……!」

ウィスタリア「……あたしと仲良くなる? ……あはっ、笑っちゃうよ」

ウィスタリア「あたしの味方にすらできないことが、敵のあんた達にどうしてできんのよ!!?」


ウィスタリア「あたしはデスペアランドの闇の描き手! あんた達はプリキュア! 敵同士なの! いつかは戦わなきゃいけないの! 今みたいに!」

ウィスタリア「だったら、……仲良くなんてなったって、意味ないよ!!」


マティ(デコル)「そんな……、そんなこと、ありませんわ……! だって、わたくし達、ついこの間まで仲良く過ごしていたではありませんか……!」

ウィスタリア「……もう、事情が違うんだよ……」

ヴェール「事情……?」

ウィスタリア「……実はね、あたし昨日、大臣に言われたんだ」

ウィスタリア「"キュアヴェールを倒せなかったら、スミレをどうするかわからない" って」


ヴェール・マティ(デコル)「!!?」


マティ(デコル)「じゃ、じゃあ……、もしかして……、タリアちゃんがわたくし達を襲うのは……」

ヴェール「……スミレちゃんを……守るため……?」

ウィスタリア「……そうだよ」

ウィスタリア「大臣……、あいつ、何をしてくるかホントにわかんない……。スミレをあいつから守ろうとしても、ずっとなんてムリだよ……」

ウィスタリア「だから、スミレを守るには、あたしがあんた達をやっつけるしかないんだ……」


ウィスタリア「……あたしといっしょにいてくれるのはもう……スミレしかいないんだから……」

ウィスタリア「味方でも敵でもない、スミレしか……!」


マティ(デコル)「……タリアちゃん……」

ウィスタリア「あたしは、……スミレが大事。で、あんた達をやっつけないと、スミレがあぶない」

ウィスタリア「あんた達、あたしの事を気にしてくれてんだよね? そしたら、どうすんの? あたしの事を気づかって、やられてくれるの?」

ヴェール「……それは……」

ウィスタリア「ほら、できない」


ウィスタリア「……だったら言わないでよ!! できもしないことなんてさぁ!!」ブンッ


ドカァァァッ…!


ヴェール「きゃぁぁぁっ……!?」バシャァァァッ

ウィスタリア「はぁっ……! はぁっ……!」


ウィスタリア「……わかったでしょ? あたし達は、敵同士なんだよ」


ウィスタリア「……仲良くなんて……できないんだよ……!」

ウィスタリア「……じゃあ、そろそろ終わらせてもらうよ」ギュゥッ…

マティ(デコル)「タリアちゃん……、手にすごい力を込めてますわ……! ヴェール、防御してください!」

ヴェール「……でも、そんな強い力を受け止めちゃったら……、あの人の手が……!」

ウィスタリア「まだそんなこと言ってんの? ……好きにすれば」


ウィスタリア「じゃあね、……キュアヴェール」ブンッ


ヴェール「……っ!」

子猫のスミレ「(トテトテトテ)」


ウィスタリア「……っ!?(ピタッ) スミレ……!?」

マティ(デコル)「スミレちゃん……、わたくし達の間に入って……。口にくわえてるのは……ねこじゃらしのおもちゃですの……?」

ヴェール「何してるの、スミレちゃん……。雨で……濡れちゃうよ……」


ポトッ


子猫のスミレ「にゃーん」

ヴェール「……え……? スミレちゃん、おもちゃで、遊んでほしいの……?」

子猫のスミレ「にゃーん」


ウィスタリア「どいてよ、スミレ……! キュアヴェールをやっつけないと、あんたが――」

子猫のスミレ「にゃーっ!」

ウィスタリア「……!? な、なによ……、怒ってんの……?」

マティ(デコル)「どうしても、遊んでほしいのでしょうか……」


ウィスタリア「……ったく! しょーがないなぁ!」

ウィスタリア「ほら、これでいい?」フリフリ

子猫のスミレ「にゃっ! にゃっ、にゃっ!」ピョンッ ピョンッ

ウィスタリア「……なによ、気楽に喜んじゃって……。あんたのために苦労してるってのに、そんなこと知りもしないでさ……」フリフリ

子猫のスミレ「にゃっ、にゃっ!」ピョンッ ピョンッ

ウィスタリア「…………」


ウィスタリア「……ホンット、しょーがないんだから……」


ヴェール「…………」

ヴェール「……くっ……! くぅぅっ……!」グググッ…

ウィスタリア「……!? キュ、キュアヴェール、立ち上がった……?」


ヴェール「はぁっ……、はぁっ……」ズルッ ズルッ

ウィスタリア「ボロボロの体引きずって、こっちに来る……!? ……なによ、なにするつもり……!?」

ヴェール「…… "ヴェール・カーテン"」


パキィィィィンッ!


マティ(デコル)「ヴェール……! タリアちゃんとスミレちゃんの上に、"ヴェール・カーテン" を……」


パシャパシャパシャッ


ウィスタリア「盾が、雨を受け止めてる……。……雨を……よけたの……? なんでこんなことを……」

ヴェール「……わたし、これくらいしかできないから……」


ヴェール「あなたの言う通り、わたしはなんにもできないよ……。スミレちゃんを守りきってあげることも……、そのためにやられてあげることもできない……」

ヴェール「でも、だからって、何もしないでいたくないんだ。わたしは、わたしが今やれることをせいいっぱいガンバりたいの」


ヴェール「せめて、今のあなたとスミレちゃんを――楽しそうなふたりを、冷たい雨で寒がらせたくないの……」

ヴェール「……あなた、さっき言ってたよね……。"わたしは、誰かがいつも助けてくれるんだから、ひとりぼっちの自分の気持ちなんてわからない" って……」

ヴェール「でもね、わたしも、最初っから誰かに助けてもらえてたわけじゃないんだ……。そうなれたのは、つい最近なんだ……」


ヴェール「……それまでずっと、わたしもひとりぼっちだったんだよ……」

ウィスタリア「え……」


ヴェール「わたし……、小さい頃からお父さんもお母さんもほとんど家にいなかったの……。それに、気も弱いから、学校で友達もできなくって……、ずっと、ひとりぼっちだった……」

ヴェール「広い家でひとりきりじゃ、何もすることないし……、誰も何も言ってくれない……。……さみしかった……」

ヴェール「でも、わたしはマティちゃんに出会えた」

ヴェール「みゆきセンパイに出会えた。プリキュアのセンパイのみんなに出会えた」


ヴェール「みんな、さみしいのに人をコワがって避けてたわたしに、すごく優しくしてくれた……。それがとっても、あったかかった……」

ヴェール「それでやっと、自分の気持ちに素直になれたから……、"助けてほしい" って言えるようになったから、みんながわたしのことを助けてくれるようになったんだ……」


ヴェール「そんなみんなは……、わたしにとっては、この大きな木みたいだったんだよ……」

ウィスタリア「木……?」

~ 七色ヶ丘市 公園 入り口 ~

タタタタッ


なお「みんな、お待たせ! はるかさん、学校にいたから連れてきたよ!」

はるか「またデスペアランドが出たってホントなの!?」

れいか「はい! キャンディが見つけたようです!」


みゆき「ねぇ、キャンディ、デスペアランドは!? この近くにいるの?」

キャンディ「クル! すぐ近くにいるクル!」


タタタタッ


あかね「みんな! ゆかりとマティがおらん! 学校中探したんやけど、見つからんかったわ!」

やよい「え……!? それじゃあ、ヴェールがひとりで……!?」

みゆき「急ごう、みんな!」

~ 七色ヶ丘市 公園 ~

ダダダダッ


なお「! いた! あそこ、大きな木の近くにいるの、そうじゃない!?」

やよい「ホントだ! ヴェールと……、あ、いっしょにいるの、ウィスタリアって子じゃない!?」

あかね「最近ぜんぜん出てきとらんかったから、えらい久しぶりな気ぃするな……! 何しとったんやろか……!?」

みゆき「…………」


みゆき(……? なんだろ、あの二人……。何してるんだろう……)

れいか「何にせよ、このままではヴェールが危険です! 皆さん、ヴェールを助けましょう――」


みゆき「……ちょっと待って!」

はるか「な、なに、みゆきちゃん? なんで止めるの? れいかちゃんの言う通り、ヴェールを助けないと!」

みゆき「そうなんですけど……」


みゆき「……あれって、戦ってるのかな……?」

あかね「何言うとんの……? 変身しとるんやから、そうなんちゃうんか?」

みゆき「……私には、そうは見えないんだ……」

みゆき「足元のウィスタリアって子の近くでヴェールが手を上げて、上に向かって "ヴェール・カーテン" を張ってる……。今降ってる雨を受けるみたいに」


みゆき「なんだかヴェールが、カサを忘れちゃった子を自分のカサの中に入れてあげてる。そんな風に、見えるんだ……」

~ 七色ヶ丘市 公園内 大木付近 ~

ヴェール「あなたにスミレちゃん……。わたしとマティちゃん……。みんな最初は、雨宿りするためにここに来たんだよね」

ヴェール「すごく大きくて、たくさんの葉っぱが、冷たい雨から守ってくれるから……」


ヴェール「わたしにとってセンパイ達は、この大きな木みたいだったの」

ヴェール「わたしを、"さみしさ" っていう冷たい雨から守ってくれる、優しくて、大きな木……」

ヴェール「……わたしも、そうなりたい」


ヴェール「あなたやスミレちゃんみたいにさみしがってる人に、わたしみたいな思いをさせたくない。さみしさから守って、安心させてあげたい」


ヴェール「わたし、あんな大きな木みたいな人に、なりたいんだ」ググッ…


マティ(デコル)「ヴェール……」

ウィスタリア「…………」

ウィスタリア「……ねぇ、キュアヴェール」

ヴェール「なに……?」ググッ…


ウィスタリア「なんでそんな変な顔してんの?」

ヴェール「ヘ、ヘン……!? ……笑ってるつもりだったんだけど……」

ウィスタリア「え……、それで……? なんか、顔が歪んでるようにしか見えないんだけど……」

ヴェール「そ、そう……」


ヴェール「わたし……、ずっとひとりぼっちだったから、あんまり笑うことってしてなくって……、うまく、笑えないんだ……」

ヴェール「でもセンパイがね、教えてくれたの。"人に元気をあげるには、笑顔が一番" って」

ヴェール「だから、あなたが安心できるといいな、と思って笑ってみたんだけど……。……ダメだったかな……」

ウィスタリア「うん、ダメすぎ。ぜんぜん笑えてないよ。楽しいどころか、なんだか苦しそうだもん」

ヴェール「…………」シュン…

ウィスタリア「……でも、寒くはなくなった……かな。あんたが盾で雨をよけてくれてるおかげで、さ」

ヴェール「え……」

子猫のスミレ「にゃーん」

ウィスタリア「ほら、スミレもそう言ってるんじゃない?」


ウィスタリア「あんた、その大きな木みたいにはぜんぜんなれてないかもしれないけど、葉っぱ一枚分くらいにはなれてると思うよ。ちょうど、その葉っぱの盾みたいに」


ウィスタリア「だから、ちょっとだけだけど……、あったかくなったよ」

ヴェール「……!」

マティ(デコル)「タリアちゃん……」

ウィスタリア「その呼び方は――、……まぁ、いいか」

ウィスタリア「……あーあ! なんだかやる気なくなっちゃった。スミレも、あんた達もうるさいしさ」

ウィスタリア「だから、もうやめる。もう、あんた達には何もしないよ」

ヴェール「え……。ホントに……!?」

ウィスタリア「ウソついてどーすんのよ」


マティ(デコル)「それは、とてもうれしいことですが……、タリアちゃん、スミレちゃんのことはどうするのですか?」

ウィスタリア「うん、……問題はそれだよね」

ウィスタリア「……ねぇ、お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

ヴェール「お、お願い……? なに……?」


ウィスタリア「あたし、スミレのことを守りたい。最初はうっとうしいと思ってたけど……、さみしいあたしのそばにいてくれる大切な……友達なんだ」

ウィスタリア「でも、あの大臣からひとりで守るのはムリだと思う。……だから……」


ウィスタリア「あたしといっしょにスミレを守って。ひとりじゃムリでも、ふたり――じゃないか、三人だったらできる気がするんだ。そしたら、あんた達とも戦わなくていいから……」

ウィスタリア「……あたしもホントはあんた達と……いっしょにいたいから……」


ウィスタリア「だから、お願い。力を貸してほしいんだ」


ヴェール・マティ(デコル)「……!!」

ヴェール「もちろんだよ!」
マティ(デコル)「もちろんですわ!」


ウィスタリア「……ぷっ、ふたりとも、声がかぶっちゃってんの。おっかしぃ」


ウィスタリア「……でも、ここには、あたしの他に三人もいるんだね……」

ウィスタリア「あたし、もう、ひとりじゃないんだ……」

ヴェール「……うん……!」

スタスタスタ


みゆき「おめでとう、ヴェール――、……ううん、ゆかりちゃん、マティちゃん。それに、ウィスタリア……ちゃんも」

ウィスタリア「(ビクッ) プリキュア……!? どうしてここに……!?」


ヴェール「みなさん……! 来てくれたんですか……!?」

れいか「ええ。キャンディがそこのウィスタリアさんの力を感じ取ったので、駆けつけました」

なお「でも、安心していいよ。あたし達、戦うつもりはないから」

ウィスタリア「え……」


はるか「悪いとは思ったんだけど……、途中から聞いてたんだ、あなた達の話」

やよい「みんな、お友達になれたんだよね?」

あかね「せやからおめでとー、っちゅーわけや!」


ウィスタリア「……あきれた。あんた達って、ホンットに人がいいんだ。あたし、デスペアランドの闇の描き手なんだよ? 信用しちゃっていいわけ?」

はるか「どうってことないよ。だって私達、あなたと同じ闇の描き手と友達になったことがあるんだから」

はるか「ゆかりちゃんには前に話さなかったっけ? 遊園地に行った時だったかな」

ヴェール「あ……! そういえば……」

ウィスタリア「……あっそ」

みゆき「でも、ゆかりちゃんが言ってた "元気にしたい人" って、このウィスタリアちゃんのことだったんだね」

あかね「んー……、今まで戦ってきたから、仲良うするのもなんかヘンなカンジやけど……。とりあえず、今までコテンパンにしてもーてゴメンな」

ウィスタリア「あやまってんの、それ……? なんかムカつく……」

マティ(デコル)「ま、まぁまぁ、落ち着いて、タリアちゃん」


なお「でも、仲良くなれたんなら、うまくいったんだね! やったね、ゆかりちゃん!」

ヴェール「ありがとうございます、センパイ……」

ヴェール「……でも、わたし、まだまだみたいです。まだわたしには、一番大切なことができてないから……。さっきも、"ぜんぜんダメダメ" って言われちゃいましたし……」

ヴェール「それでも、そんなわたしのおかげで "あったかくなった" って言ってもらえて……、それがすごく、うれしかったです……」


ヴェール「……だからわたし、もっと他の人にあったかくなってもらうために、やりたいことができました」

ヴェール「わたし、笑えるようになりたいです」


ヴェール「他の人が安心できるような……、楽しくなれるような……、そんな笑顔ができるように、なりたいです」


ヴェール「それで、周りのみんなと楽しい時間が過ごせるように……なりたいです!」


みゆき「ゆかりちゃん……!」

パァッ…


ヴェール「えっ……!?」

マティ(デコル)「こ、これは……、ヴェールの体が、紫色に光って……!?」

れいか「これは……、もしかすると……!」

なお「うん、きっとそうだ……! 出るよ!」


ポンッ

フワフワ…


ヴェール「これって……!? わたしの体から、光の玉が出た……?」

マティ(デコル)「キレイですわ……」


みゆき「その光の玉が、ゆかりちゃんの "夢の絵の具" だよ!」

ヴェール「……! これが、わたしの夢……?」


ヴェール「で、でもわたし、別に夢があるわけじゃないのに……、どうして……?」

みゆき「そんなことないよ! ちゃんとあるじゃない、ゆかりちゃんの夢。さっき自分で言ってたよ」

ヴェール「え……」

みゆき「"みんなといっしょに笑えるようになりたい"。……ステキな夢だ