「Merry X'mas, xxx 」 (153)








プロデューサーと、キスをした。









いや、正しくはプロデューサー『に』キスをした、かな。
少し無理やりだったし。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386399704

・アイドルマスターシンデレラガールズの城ヶ崎 美嘉のSSです

・一部独自設定が有ります、ご了承ください
 ・事務所内でCute/Cool/Passionの3グループに別れ、
  それぞれ一人のPがいる
 
 ・イベントの日付設定
  1.アニバーサリーパーティーを現行のアイプロ最終日(12/9)に設定
  2.デレラジを前回(12/4)放送日に設定
  3.美嘉のSR関連のイベントを、ガチャ開催初日(7/12・1/22・12/1[実際は11/30 23:00~] )
    に設定した上で、ラブ★クリスマスのみ設定変更→打ち合わせ12/1,実際のイベント12/9 に調整
 

※地の文10割、美嘉の回想・独白の形を取るので、
 セリフがほぼありません。
 そういったものが苦手な方はそっ閉じしてください。申し訳ありません。


※またこのため、セリフによる特徴(★など)が出ないのでキャラ崩壊に見えるかもしれません。
 出来る限り気をつけますが、多少許容してくださると助かります。
 

※ラジオに関して、現実の"デレラジ"(卯月・凛・美嘉)と
 アンソロCDでの"ジェネラジ"(卯月・凛・未央)
 がありますが都合上デレラジを選択しました。
 


・ほぼ書き上げていますが、修正しながらゆっくり投下します
 (今日中には済ませます。)

よければお付き合いください。

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12/1(sun) 19:00

去年の冬に妹の莉嘉がやったクリスマスのお仕事。
ちょっとセクシーなサンタコスに身を包み、
笑顔でプレゼントを配る某社のプロモーション。

今年は、アタシがその役目を担うことになった。

http://i.imgur.com/O74dHXU.jpg

本番は来週の月曜日。

アニバーサリー企画のニュージェネレーション(NG)密着取材終了日で、
事務所全体でアニバーサリー&クリスマスパーティーがちひろさん主導で開催される日。

午後の仕事だから、終わり次第プロデューサーが迎えに来てくれて、
一旦事務所に荷物をおいてからパーティーに参加、ってカンジの日程になるらしい。


顔合わせと説明を受けた後で、家に帰って、
去年の莉嘉の時の映像をだらだら見ながら物思いにふける。

姉妹でいっしょにデビューした都合上、並べられたり、比べられることは多い。

一応アタシはアタシなりに特色を出しているつもりなのだけれど、
何千何万とライバルのいるこの業界で注目されるのは
『姉妹』という特徴のほうばっかり。

そもそも莉嘉はすぐにアタシの真似をしたがるので、
結局似たもの姉妹になっちゃう。

「姉より優れた妹は~」なんていうけれど、そんなことはない。
どれだけ頑張っても、どれだけすごくても、
大事なのはタイミング、なのだ。と思う。

アタシはそれを多分誰よりも痛感している。



いつだって、先にチャンスを上手く掴んだのは莉嘉のほうだった。

ウチの事務所が大きく発展するきっかけとなった(らしい)、
大型新人のデビューCDのラインナップ、
通称"CHINDERELLA MASTER"シリーズ。

社運をかけた第一弾のメンバーにpassionグループから選ばれたのは、莉嘉だった。


cuteグループから、異色のニートアイドルとして双葉杏・ふわふわ癒し系として三村かな子、の2人。
coolグループから、新世代の正統派アイドルとして渋谷凛・ミステリアスな美人と言う枠で高垣楓、の2人。

passionグループの枠は、色々な事情から1つしかなかった。
そして、その枠に莉嘉が抜擢された。



バランスを考えると、年少枠で元気あふれる子が欲しい。
との判断から、
莉嘉に白羽の矢が立ったんだよ、ってプロデューサーは言ってたっけ。

悔しいな、とは思ったけれど、誇らしさのほうが大きかった。
大好きな妹が有名になって嬉しくない姉なんていない。

アタシの努力が足りなかったわけじゃない、よね。
だって、4ヶ月後に出た第2弾のメンバーにアタシは実力で選ばれた訳だし。



こうやって莉嘉がウマくタイミングを掴んでいって何歩か先へ進んでも、
それを妬んだことはない。

そりゃーすこしは羨ましいけどね。
でも、たとえどれだけ先に行かれたって、アタシだって、きっといつかは追いついてやる。
ずっとそう思ってアイドルを続けている。

姉が妹を追うと言う構図は、世間では格好のウワサの種だけれど。

周りが何を言おうと、何を勘ぐろうと、
アタシは莉嘉が大好きで、莉嘉もこんなアタシを慕ってくれていて、

だから姉妹の仲はそんな簡単に崩れたりしないのだ。
当たり前じゃん、血は水よりも濃いんだから。

その後だって、アタシと莉嘉は姉妹であり、それでいてライバルだった。


先に他の子とユニットを組んでライブバトルに出演したのは莉嘉。
かな子と李衣菜と3人で、ロッキングガールというユニット名で、
確かイギリスツアーの頃だっけ。


ラジオのレギュラーという固定の仕事を得たのはアタシ。

当時すでにCDデビュー済で知名度のあったメンバーの中から、同世代の凛・卯月と一緒に選ばれ、
シンデレラガールズラジオ、略して"デレラジ"という名で、もうかれこれ70回近く放送している。

まあこれは、夜の生放送形式のラジオだからって言う条件のせいで、
そもそも莉嘉には向いてない話だったけど。


こうやって切磋琢磨してはいるけど、別に莉嘉と無理に競争するつもりはない。

むしろ、最近になって、バーターじゃなくてユニットとして、
〈姉妹アイドル〉での売り出しが復活してきたのがすごく嬉しい、かな。


単独の仕事でアタシがいい結果を残せば、妹である莉嘉も似た仕事をもらいやすくなる。
次は姉妹で一緒に、なんてことも増える。

多分、逆もまたおんなじ。
これは大きなアドバンテージだと思う。


学校の先生なんかが、
「お前らは学校の看板を背負って~」なんてセッキョ―してた気持ちがちょっとだけ分かる。

アタシだけの評価じゃない。
事務所の皆の、そして莉嘉のためにも、もらったお仕事はちゃんと頑張らなくちゃ。
そうやっていつも、アタシはアタシと、そして莉嘉のために、アイドル生活を頑張っている。



普段の生活にも、そういった面は出てたかも。

「お姉ちゃんなんだから、我慢しなさい」
きっとどこの家庭でもよく聴くセリフだろうな。

5歳下の莉嘉と、アタシはほとんどそんな喧嘩をしたことがない。
大体アタシがさっさと折れるから。

だからこのセリフをママから聞いたことは一度もない。
なんとなく分かっているし、よく弁えているつもり。


その分莉嘉を甘やかしすぎて、ワガママな子にしてしまった気もするケド。





だけど、一つだけ、たった一つだけ。

絶対に譲れない、負けたくない事がある。
莉嘉にだって、もちろん他の誰にだって。




プロデューサーが好きだってキモチだけは、誰にも負けたくない。






おかしな話かも知れないけど、
ウチの事務所のアイドル達はほとんど皆、自分の担当プロデューサーに恋している。


ファンのみんなが知ったら……発狂モノだろうな。
でもしょうがないことだよね、
だって、カッコイイんだもん、プロデューサー。
なんて、言い訳するように考える。



ウチの事務所はアイドルのタイプ別に、
Cute,Cool,Passion.の3つのグループに分かれている。

どういう基準かは明言されてないけど、
アタシの見たところ、

「カワイイ子はCute♡」
「澄ました子はCool.」
「元気な子はPassion★」

とか、そんな感じの振り分けじゃないかな?





そんな3つのグループそれぞれ60人程度に、一人ずつのプロデューサー。
たった三人のプロデューサーで、この事務所は回っている。




多くのアイドル達をほぼ一人で動かす敏腕さ。
自分たちの事を見出してくれて、輝く舞台へと導いてくれる存在。
それでいて、自分たちと親密に関わってくれる唯一無二の男性。

そりゃ、惚れないわけないっしょ。

もちろん、そうじゃない人だっていることにはいる。
年少組も、多くは父親のように慕っているだけ、
だと思うし。……だよね?



とは言えコレが現状。
ウチらのPassionプロデューサーも、いろんな子から狙われているみたい。

表立って宣言する子はいないけど、
そこはオンナの勘ってやつでだいたい分かっちゃう。





売れっ子だからーとかそんなことは大したアドバンテージにはならない。
むしろ、まだ売り出し中の子のほうが、レッスン後に事務所で会って話をしたり、
あわよくばご飯に連れてってもらったりなんて機会も多いみたいだし。いいなー。


それから、当たり前かも知れないけど、容姿は皆レベルが高いし、
アイドルとしての『魅せる』テクはほとんど効かない、トーゼンの如く。

どれだけ身に持った武器で普段からアプローチできるかが
勝負のカナメだとアタシは思う。



「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」、だっけ。

アタシにとって、主なライバルは誰だろう?
頭の中で思い浮かべ始める。



他の2グループに比べて、CuteグループにはU-15アイドルが多く、
Coolグループは少し年齢層が高い。


ならアタシの所属するPassionグループは?

アタシの主観も多少入っているけれど、JC・JK層が厚い、かな。

うーん、プロデューサーってじょしこーせー好きだったりするのかな。
もしそうだとしたら・・・

世間的にはアウト、だけどアタシにとってはラッキー★って感じ。



*参考1*

最新エリア(長崎)までのアイドルの年齢云々より、
総勢187名
cute 63名中 u-15 23名 成年(20歳以上)10名 平均年齢 16.5歳 
※安部菜々は17歳とする
cool 64名中 u-15 14名 成年(20歳以上)21名 平均年齢 18.8歳
passion 60名中 u-15 16名 成年(20歳以上)11名 平均年齢 16.6歳 
※トレーナー陣4名を除く

765組を抜くと…Cu 春香やよい響真(17/14/16/17)
 Co 千早あずさ貴音律子(16/21/18/19)
 Pa 美希雪歩亜美真美伊織(15/17/13/13/15)


総勢174名
cute 59名中 u-15 22名 成年 10名 平均年齢 16.5歳 ※
cool 60名中 u-15 14名 成年 20名 平均年齢 18.8歳
passion 55名中 u-15 12名 成年 11名 平均年齢 16.8歳 ※


*参考1続き*

12歳組のうちJS確定なのは
cute 小春(10進・〈制服&ランドセル〉)
cool ありす(〈ジューンブライド〉セリフ内で「小学生の私が…」)
 晴(〈バニーガール〉セリフ内で「小学生にコレ着せるなんて・・・」)
passion 梨沙(セリフ内で「今どきの小学生じゃ・・・」)

JC確定なのは 莉嘉のみ。
桃華は不明。

なので莉嘉を除く全員JSと仮定してます。

※誕生日はアイマス時空?とやらのせいで当てにしません。
当てにすると小春ちゃんが闇に飲まれる(4/1生まれ12才の小学生は存在しない)


*参考1続き*

また、18歳組のうちJK確定なのは
cute 仁美(制服コレクション)

cool 翠(弓道部部長。制服コレクション) 
  マキノ(初登場Rが制服姿) 
  涼(初登場Rが制服、【ロッキングスクール】収集の報酬)

passion 渚(バスケ部キャプテン。学園祭サバにて「知り合いに合いそう…」発言) 
    拓海(制服コレクション〈硬派乙女〉) 
    夏樹(制服コレクション)


※制服コレクション{新/2013含む}ガチャでの登場キャラは美波(撮影の為着用)と菜々(詐称疑惑)を除き全キャラJC・JKだと思われます

それ以外確定なのは
愛梨(CDのドラマパートより、大学1年生)のみ
不明…春菜 夕美 海 周子 雅 里奈 有香 早耶 
   の8名は大学生かそれ以外、と想定。


*参考1続き*


よって、JC・JKだと想定されるモバマスアイドルは
cute…35人 cool…24人 passion…32人

のはず。




なので同世代に思いを馳せてみる。JKならまあギリギリオッケーだけど、
それ以下に手を出したりしたらガチ犯罪だよね、
とか自分に都合のいい思考。

うーん、雫とか強敵だよねー。
あのおおらかさ、優しい雰囲気、そして何より……

いや、やめとこ。
アタシも形とか大きさとかソコソコ自信はあるつもりだけど、
雫にはカンパイかな。



16歳組なら、藍子もけっこー最近押せ押せみたい。
CDデビューが決まって以来プロデューサーといつも一緒にいるし、
何よりヤンチャな子の多いPassionグループでは雫と並んで数少ない癒やし系キャラ。




同い年なら、菜帆とかかなー……。
うーん、男のヒトって、
やっぱりゆるふわでぼいーんな子が好きなのかな……?
愛梨ちゃんとか、イヴさんとか。


そうなるとアタシに勝ち目はない。
アタシにとってのアドバンテージは、なんだろう?

付き合いの長さ?それなら未央が一番だね。
大胆さ……は茜ちゃんのほうがずっと上。


あれ、もしかして何もない?



あるとしたら、『カリスマギャル』っていうキャラ付けぐらいかな。
このキャラのおかげで、
少しセクシーな衣装を選んでユーワクすることだってできるし、
それに頻繁にアプローチしたって不思議じゃない。


でも、それはやっぱり『キャラ』なんだと思う。



ONのアタシは、ギャル達のファッションリーダー。
派手なメイクに煽情的な衣装を着て、ファンの皆をアゲアゲにする。
激しいダンスや大胆なポーズだってお手のもの。

でも、OFFのアタシにそんなことは出来ない。
どこにでもいる、ちょっと背伸びしたオンナノコ。
注目されるのが恥ずかしいし、恋バナだっていつも聞き手。


ナンパや合コンのお誘いも、いつも内心ビクビクしながらハネてるだけ。
ギャルだからって、そんなに軽くはないんだよ?


……もっと軽かったほうが良かった、かも。
経験も何もないアタシに、ライバルいっぱいの初恋なんてレベルが高すぎて。



だから、(だからっていうとオカシイかな?)
アタシは、プロデューサーの前ではできるだけ無理をせず、
でもちょっとだけ勇気をだして、
ONとOFFのまぜこぜのアタシをみせてるつもり。



時にはONのアタシのまま、ちょっと背伸びしてダイタン発言。
視線と気持ちを鷲掴み?

いつもはOFFのアタシで、藍子や雫をちょっと真似したり、
姉としてのスキルを活かして、皆のまとめ役を買って出て、
できるだけプロデューサーの負担を減らしてあげたい。

ギャップってやつ、狙ってるんだ。
……ウソだけどね。
アワアワしながら、ドキドキしながら、必死で生身のアタシを見せてる。


そうやってちょっとずつ、プロデューサーの心をつかめたらいいな、って。



現に少しは効果があるみたいで、
なんとなく上手くいってる気がする。

実感も、ちょっとだけ、あるかな。
最近は、このがんばりの成果か、頼られることも多くなった。
そうやって、自然とプロデューサーと一緒にいられる時間も増えてきて……



るのに。


色々きっちり調べてるな



やっぱり、最大のライバルは、莉嘉だった。


姉妹のキズナっていうのは本当に強いんだね。
アタシの行動がわかってるみたい。
特にプロデューサーとのこととなると、何でも。

上手く2人きりになれたと思ったら、莉嘉に見つかって……
って、毎回そんなカンジ。



あー、なんでこんなトコまで似ちゃったんだろ。
なんで同じヒトのこと好きになっちゃってんの、アタシたち。

莉嘉の前では、お姉ちゃんらしくしてなきゃいけない。
我慢しなくちゃいけない。
そんな理性に縛られて、いつもうまく立ち回れないでいる。



別に何かサガるわけじゃないけど、
頑張ってガンバって、
ついにイイカンジのフンイキになった、そんな時に。
いつも莉嘉からの横槍が入る。

「おねーちゃん、ナニしてるの?」
「あー、ヌケガケはだめだかんねー!」
「ずるいー!アタシもいっしょー!」

……ビックリするくらい、勘がいいのだ。
しかも多分、莉嘉のことだからゼンゼン悪気がない。



だからアタシも、莉嘉を怒れない。責められない。

でも、
本当はこのタイミングの悪さに、ちょっと救われてたりもする。

いきなりステップアップし過ぎそうになって、
心の準備ができてないときだってあるから。



それに、邪魔が入るぐらいで落ち着く気持ちなら、まだ伝わらないほうがいいし。



ホントに大事な、好きって気持ちは、最後のサイゴまでとっておく。


いざ伝えなきゃって思ったら、
邪魔があろうとなかろうとまっすぐ進んでぶつけたい、な。

……まだまだ、アタシには難易度が高いみたいだけど。

>>38
ありがとうございます。
地の文で書いてると、しっかりとキャラや背景を書くために、
ついつい調べこんだり、設定を厚くしすぎたりする癖があるみたいで。

セリフの掛け合い無しだと勢いで押し切ったりも出来ませんし。


ちょっと休憩します

専ブラ(chaika)で書いてるので、
文字化けとかに気づいてない部分があるかも知れません。
一応普通のブラウザでも開いてちょくちょく確認してますが、
変なのがあったらご指摘いただけると助かります。

再開します



---
12/4(wed) 18:30

デレラジの収録前に、スタジオ近くのカフェで集まった。
放課後なので3人とも制服姿のまま。コートは着てるけどね。
一応、メガネとマスクでちょっとだけ変装したりして。

http://i.imgur.com/V5zWW7Z.jpg
http://i.imgur.com/erlAyU3.jpg
http://i.imgur.com/sZvorWR.jpg





未央にはちょっと悪いけど、
NG組の二人と色々話せるこの時間は、アタシにとっては大事な時間だ。

違うグループに所属する仲いい子達との貴重なダンランの場。
同じグループの未央がいると、色々と話し辛いこともある。
特に恋バナなんて、ね。



だらだらだべっている中で、卯月が口火を切った。
皆のところのプロデューサーのご予定は、って。
〈予定〉と言うのはもちろん、
もうじきやってくるクリスマスのこと。


3人のプロデューサー+事務員のちひろさん、の少人数で回っている事務所だから、
当然他のプロデューサーの予定と言うのもトーゼン大事な情報になる。

社長?
いるってきいたことはあるケド、めったに見ないかな。



卯月の知ってる限りでは、
CutePさんの〈予定〉は、
24日は午後から通常業務と事務所番、
25日はクリスマス特番の付き添いで一日埋まっているらしい。



普段なら、大きなお仕事に各グループのプロデューサーが同行して、
他は成人組が年少組を担当したり、馴染みの仕事なら単体で行ったり。

だけどこの時期になるとグループを越えたユニットやその他の編成でのお仕事も多くて、
そんな時は担当がずれることもある。



だから、卯月が知らなくても、
別グループのアタシたちが知ってることもいくつかあったりする。

確か24日の午前は、アタシと美穂と李衣菜の17歳組3人での、
765プロさんとのお仕事にCutePさんがついてくれるハズ。
そうやって教えてあげる。

25日はわかんない。
ウチのグループはだいたい皆オフの日だったと思うし、
さすがに何もわかんなかった。



どうやらCuteグループは、23日が皆のオフなんだとか。
当然CutePさんもお休み。

今からお誘いしても大丈夫なんでしょうか、なんて卯月が呟く。
あ、オトメの顔してる。



今の卯月の表情を見たら、
たいていのオトコノコはころっと落ちちゃうんじゃないかな。
そんな素敵なはにかみ顔。

でも、素直に「大丈夫、イケるよ!」、って言ってあげられないのが、
残念というか、悲しい。

浮かれている卯月は気づいてないみたいだけど、
アタシは一つ重要な事に気づいている。


24日の事務所番は、ちひろさんと一緒だって事を。



千川ちひろさん。
ウチの事務所で唯一の事務員さん。
年齢は・・・ハタチは当然過ぎてるだろうけど、誰もはっきりとした年を知らない、
ちょっとミステリアスな人。

アイドルのいっぱいいるこの事務所の中で、負けず劣らずのカワイさを持ってると思う。
CutePさんがしょっちゅう「ちひろさんもアイドルやりませんか?」
って言ってるのも、きっとジョーダンじゃないんだろうな。



一つアタシから言える事があるとしたら……
ライバルじゃなくて良かった、色んな意味で。


いつも事務所に居て、プロデューサーたちの手伝いをしてるから、
当然一緒にいる時間も長い。
キョリも近い。
同じ業界で働いてるから、当然趣味やら話題やらも合うだろうしさ。



それになんといっても、
『アタシ達はアイドルで、相手はプロデューサー』
っていう最後の一線での葛藤が、あの人には関係ないのだ。

いや皆そんなの気にしない子ばっかりだけどね、アタシ含め。
なんてツッコミは置いといて。

事務員とプロデューサーとの恋。
なんともお似合いじゃん。
月9のドラマにだってなりそう。
世間の目だって全く気にしなくていい。



そんなちひろさんとCutePさんは、
アタシが見るにけっこーイイ関係になってしまっているような気がする。

多分、24日の夜は、2人でケーキとか食べるんだろうな。
事務所でこっそりと。



だから、卯月の恋はとてもとても分が悪い戦いなのだ。

Cuteグループ所属のアイドルの中ではきっと優位に立っているんだろうけど、
相手が悪すぎる。

そもそもCutePさんは、もしかしたら、
卯月ぐらいの年齢の子は『娘』のようにしか見ていないかもしれない、
ってこともありえるし。



だけどアタシはそんな卯月を応援している。
できるコトなら成就して欲しいのだ。

もし上手くいかなくっても、アタシたちがついてるから。
どんな形であれ、
芽生えた恋を、大事にして欲しい。

同じような境遇のナカマとして、
どうか上手くいきますように、って祈っている。



そんなフクザツな感情を飲み込んで、卯月のアプローチ計画に耳を貸す。
23日が上手く誘えたなら、
アタシの持ってるちょっと大胆なコーデを貸してあげようかな。
サイズが合わないかもだけど、それはそれで。

卯月のことだから、おめかししてもフツーなカンジになるだろうし(それが魅力ではあるけどね)。
そこそこイイカラダしてるんだから、こーゆー機会にアピールさせないとね。



卯月の話が終わりそうなので、隣で聞いていた凛にも水を向けてみる。
CoolPさんは…… まあ、いつも通り予定どっさりなんだろうけど。

CoolPさんの〈予定〉は。

23日に海外撮影組と一緒に帰還して、そのまま新年以降の営業。
時期的に接待なんかもしてくるのかな。
24日は莉嘉たち低年齢組の付き添いだっけ。
夜は?
……あ、そういえば大人組に強引に飲み会の予定入れられてるって早苗さんが言ってた。

淡々と話しながら、凛は呆れと心配が混ざったような表情。
そういえば、25日はNGの付き添いなんだっけ?
夜には事務所番も控えてるし。



過労で倒れないか心配だよ、といつも以上に深刻な雰囲気で私達に話す。
CoolPさんは3人のPの中では一番若手だから、
他の二人より連勤が多いんだって。

その若さゆえに、年上のお姉さまの多いCoolグループ内では、
色々と本気のお姉さま方も多い。

多分24日の夜は火花がバチバチなんだろうなー。
それでも次の日の仕事のために全部かいくぐって来るんだろうけど。



まあプロデューサーなら大丈夫だとは思うけど、
なんて自己完結している凛は、


ウチの事務所では珍しく、
プロデューサーの事を『パートナー』として信頼し、
恋ではなく、純粋な親愛の情を向けていたアイドルだったりした。

又聞きした話だと、
他のふたりのプロデューサーが社長と一緒に独立という形で作ったこの事務所に、
新人として登用されたCoolPさん。
そして、そのCoolPさんがある日街角でいきなりスカウトしてきた、
彼にとって初めてのアイドルである凛。

ほとんどが養成所上がりやオーディション等で集められたアタシたち1期生の中でも、
凛とCoolPさんとの仲は最初から少しトクベツだった。



「やるからには、中途半端は嫌」という完璧主義と、
持ち前の気の強さでガツガツと仕事をこなしつつ、

15歳ながら大人びた風格でリーダーシップを発揮して、
Coolグループの先鋒として名を広めるほどの活躍ぶり。



そんな凛と、二人三脚のように支えつつ、支えられつつ勢いに乗って進み、

新米だったCoolPさんはランクを他の二人に肉薄するところまで押しあげ、
負けじと意気込んだCutePさんとウチのプロデューサーも、
そしてアタシたちアイドルも、
他の事務所から恐れられるほどの急成長をとげ、

結果としてウチの事務所は一躍有名事務所へとのし上がった。らしい。



だいぶ誇張しちゃったかも知れないけど、
当初の2人はそれぐらいすごかった。

凛なんて鬼気迫った感じがあって、
もとからの無愛想さに拍車がかかっていたように見えて、
アタシたち別グループの子なんかは正直ちょっと近づき辛かった。

CDデビューをして、NGが結成されたあたりから丸くなり始めて、
デレラジで共演する頃にはだいぶん話しやすくなってたけど。

まあそんなカンジだったから、
凛はCoolPさんのことをパートナーと言って憚らず、
これまでグループ内での恋の鞘当てにも我関せず、ってカンジだった。

最初は一番CoolPさんに近しい存在にみえたけど、
そんなだからいつの間にかみんな安心しきってしまったみたい。



でも、この間の温泉ロケの頃からだろうか、
なんだかちょっとだけ怪しい。

CoolPさんのことを話すときの声の優しさ。
時折見せるちょっと恥ずかしそうな表情。


もしかして、少しずつ気付き始めちゃってるんじゃないかな。
自分の中で育ち始めた恋心に。



頑固な彼女のことだから、
きっと錯覚だーなんて思って頭の中で否定してるんだろうけど。
上手く隠して殺してるんだろうけど。

ちょっとはみ出た感情が、ブンブン尻尾を振っているようで。



違うのかもしれないけど、もしそうなら、
さっさと認めちゃいなよ、って思ってる。


だって多分、CoolPさんは凛のことが好きだから。



アタシと卯月との間で、散々長電話した中で培った見解だから、
他の子はまだ気づいてないと思うけど。
推測のカケラの幾つかは、見えるところに転がっている。


例えば、CoolPさんが凛のことをみるときの目は、他の子を見ている時の目とはなにか違う。

こんなことを言うのはヘンかもしれないけど、
まるで長年連れ添った妻を見るときのような、優しい瞳。



自分にとって最初のアイドル。
いつだってそばにいて、支えあってきたパートナー。

歳相応に見られないオトナびた佇まい、
何事も懸命に取り組む姿勢と凛々しさ、
それでいて周りに気を使い、調和させる統率力。

15のオンナノコだなんて信じられないような、そんな姿を見せるこの子に、
惚れないほうが難しいでしょ。


実際、CoolPさんは何かと凛を頼りにするし、
仕事での贔屓はしなくてもずっと気にかけている。

そう言えば今年の誕生日には、
アイオライトのネックレスを貰ったって言ってたっけ。

ちょっと気になって調べて見たけど……


アイオライト。8月10日の誕生日石。
一途な愛や意志を貫く人のお守り。「誠実・貞操・徳望」の象徴。
「愛と結婚の守護石」。

うわ、直球じゃん。



なのに凛ったら、なにも気づいてない。
似合うって言われたんだ、なんて。

少女漫画の主人公みたいに鈍感なんだから。
なんだかみてて甘酸っぱくて、ちょっとむず痒いカンジ。
いーなー。



凛が自分の気持ちに気づいて、ちゃんと向きあいさえすれば、
とは思うけど。
アタシも卯月も絶対に教えてあげない。

こーゆーのは、ちゃんと自分で気づかなきゃね。



電話のために凛が席を外した隙に、卯月にそっと耳打ちする。
25日には、未央と協力して、
少しでいいから2人の時間を作ってあげなよ、って。

多分CoolPさんは凛へのクリスマスプレゼントを用意してるだろうから。



お返しについてだって考えている。
凛が戻ってきたら、
「3人でそれぞれプロデューサー達にクリスマスプレゼントを選ばない?」
って誘うつもり。

そうやって言えば凛でも断れまい。
次の収録の日にだったら予定も合うだろうし。

大事な友達の恋路のためなら、オンナノコはなんだって気が回せるのだ。

※今更ですが、*参考*は流してくださって構いません。ほぼ自己満です。

*参考2*
アイオライト
画像 http://i.imgur.com/Uqlomd8.jpg

参照サイト
http://www.ishi-imi.com/2007/04/post_180.html
http://natural-style.biz/powerstone/iolite.html
http://誕生石.biz/8gatu10niti/
など。

*参考2の続き*

因みに美嘉(11/12)の誕生日石は
ヴァイオレット・サファイア
画像 http://i.imgur.com/qtzr4za.jpg

参照サイト(サファイアの一種のためか、細かい系統での説明少数)
http://bstone.biz/1/11/12.php

らしいです。





ふたたびの仕切り直し。
さあ、ここからがアタシにとっての本題だ。

ウチのプロデューサーの〈予定〉は、もちろん大半は把握している。

23日は事務所で年末年始のスケジュールの確認とか調整とかをして、
終わったらレッスン納めの見学に来てくれる。
夜はトレーナーさんたちと会合のあと、一人で事務所番のハズ。

24日は、年末ライブの最終打ち合わせに行ってから、社長に月一の報告、らしい。
夜は……CoolPさんと一緒で、大人組の飲み会に連れてかれるんだって。



問題は25日。
一部を除いてPassionグループのメンバーのほとんどがオフの日。
多分プロデューサーもオフ……なんだろうけど。

意気揚々とクリスマスデートのお誘いに行った子たちが、
ことごとく撃沈してしまっているのだ。



お姉さまがたの中には、
どーせ24日に飲みに行くからとそもそもアタックしてない人もいるけれど、

未成年組はそうは言ってられないから、
大体の子がちらちら予定を聞きに行ってはソファーでぐったり、
という構図がここのところ続いてた。



莉嘉も「Pくんウチにおいでよー!」と言ったらしいケド、
やんわり断られたんだとか。

全員かどうかはわからないし、
そもそもアタシは思うところがあって、
今はグループ内ではそういった話に意図的に関わらないよーにしてるけれど。

黙ってても察せることはあるし、
なにより莉嘉がペラペラとしゃべっているから大体は知ってしまっている。
我ながらちょっとズルい。

残りは……未央みたいに当日に仕事のある子だけ。
あと、アタシも。



アタシはまだプロデューサーを誘っていない。
そんな話をおくびにも出さないでいる。

断られたときのショックが、っていうのもあるけど、
まだ例の大きな仕事が控えてるし。

だから、今度の仕事が上手くいったら、その時は、って。
もしかしたらその時にはもう遅いかも知れないけどね。



だからこそ、そうならないようにこーやってこっそりと情報収集してるんだ。

もしかしたら他のグループの仕事の手伝いなのかも知れないし。
それに、当事者よりも卯月や凛みたいな別グループの子のほうが,
案外詳しかったりするから。



結果はNOだった。

つまりプロデューサーは25日オフだけど、
だれか心に決めた相手がいる可能性が高いってこと。
(わざわざ一人ぼっちで過ごしたりしないよね?)



彼女さんでもいるのかな、なんて話になったケド、
それはないかな。

プロデューサーがアイドル以外の女の子と一緒にいることなんてほぼないから。

あったとしてもきっと、その子は新しいアイドル候補生だ。



それは多分CutePさんもCoolPさんも一緒で、
魅力的な女の子を見つけたらアイドルにスカウトしないハズがないからね。
そーゆーところはヘンに信頼感がある。

だからこんなコトになっちゃってるんだけど。



それに、もし彼女さんがいたとして、
ウチのお姉さまがたが気づかないなんてありえない。

つまりこの線は無し。


だったら、なんで皆のお誘いを回避してるの?



……そう言えば、皆の誘いに対して、プロデューサーは
「まだ決められないんだけど、大体予定は考えちゃってるから。ごめんね」って言ってたらしい。

 "まだ"?

"もう決まってて"じゃないんだ。
てコトは……これからなにか、


混乱する思考の中で、
ふと一つの仮説がよぎる。

すっっっっごく自意識カジョ―な甘い想像だけど……




プロデューサーは、アタシがお誘いするのを待ってるのかも知れない。
なんて。

だって、
残りは多分アタシだけ。

未央だって午後からなら、って思ったけど、
卯月の家で凛と卯月と3人でパーティーだっていうから、違う。

だから、もしかしたら、もしかして。



いやきっと何か見落としている。
絶対落とし穴がどこかにあるハズ、そんなに素敵な事あるわけ……
必死に落ち着こうとするけど、

一度始まった甘い思考は、全然止まってくれそうにない。



顔の紅潮がはっきりわかる。
隣の凛が怪訝な顔をする。ちがうよ、熱があるわけじゃないの。
混乱は深まっていくばかり。

ああ、もうすぐ収録なのに。
切り替えなきゃ。

頭を冷やすためにトイレに逃げ込む。
顔を洗って、メイクを再度整える。




思考の連鎖が落ち着いてきた。
まだ甘い残滓は脳内にこびり付いているけれど、
これくらいなら残してても、平常を保てるハズ。


少しは、期待してもいいのかな。
いや、今はそれより目の前のお仕事。

この収録を終えて、今度のお仕事もきっちりやって、それから勝負に出よう。

なんでもなかったかのように2人のもとに戻って、
テーブルの上を片付ける。
いざスタジオへ。



収録は絶好調で終わって、
なんだかリスナーさんに逆に心配されちゃった。

……やっぱり、ちょっと浮かれてしまっている。

後半戦の前に一旦休憩します。
21時まで。
展開の修正とかしたいので。

だれもみてないかもですけど。

後半はちゃんと美嘉無双です

超見てる。後半も楽しみにしてます

処女乙女ヶ崎ちゃん最高です

>>101 >>102
ありがとうございます。
まだまだSS初心者ゆえ、コメントいただけると死ぬほど嬉しいです。

もちろん読んでもらえるだけで光栄ですが。

ちょっと遅れたけど再開します



---
12/9(mon) 19:25

のろのろと進む車の中。
渋滞にハマってしまったみたい、パーティーには途中参加かな。
事務所にも寄らなきゃいけないから。



すでにちひろさんに連絡を済ませたプロデューサーは、
ハンドルをコツコツ叩きながら思案にふけっているフリ。

気づいてるよ、時々こっちを見るエロい視線。
まあ、そのために着てきたよーなもんだけどね。

http://i.imgur.com/FHGE3Gd.jpg



男のヒトってわかりやすい。

今日の仕事だって、プレゼントを受け取りに来た来場者の方や、
遠目で見てたり写真を撮ったりしているファンのみんなの目線が,
どこに釘付けだったかなんてまるわかり。

意識して向けさせてるところもあるけどさ。

もう、みんなエロいなー。



見られる感覚って、どうしても完全には慣れないから、
まだ少し不快感や恥ずかしさもあるけど。
だけどアタシはアイドル。
それが仕事で、それが生きがい、になってるから。

まあ、ONの時のアタシにとっては,
注目を浴びるってことに気持ちのよさもあるから、あんまり問題ない。
その上で、見せてるのはアタシのほう、って意識をココロがける。



プロデューサーの視線だって、
本質はそれと違いはないハズなんだけど……

でもなんか、イヤじゃない。
むしろ、オンナだって見てくれてるのを実感して、嬉しい。



意中の相手に見られるなんて、
すっっごく恥ずかしいけど。

意識してくれてるんだなーって思うと、
そんなことどうでも良くなる。

寒さをガマンしてたのにも気づいてたみたいで、
なにも言わずに暖房の温度を高めにしてくれてたのに気付く。

そういう気遣いがまた、好きだな―ってキモチを再確認させてくれる。

そうだった、今がチャンスだよね。

仕事も無事成功したし、クリスマスのお誘いをしたいな。
2人っきりだし、この空気なら…… イケる、かも。

信号の手前で停まった隙に、
すこし乗り出して話しかけようとして……


お尻のポケットから転げ落ちたケータイが、鳴った。



予想通り、莉嘉からの電話。

「お姉ちゃーん?Pくんといっしょ?
 変なフンイキになったり二人っきりでどっか行ったりとかなしだかんねー?」

……やっぱり、勘付かれている。
本当に姉妹の縁ってのは、深いというか。
なんだかなあ。



せっかくの良いムードが少し落ち着いてしまった。

道路状況も改善してきて、少しづつだけど車が流れ始める。
プロデューサーは運転に意識をもどしちゃったみたい。

まだ顔はほんのり赤いようだけど。



ふと視線を横に向けると、
暖房の熱気で、助手席の窓がまっしろ。

なんだろ、見たことある光景。
記憶をたぐっていくうちに、昔流行ったドラマの1シーンだと思い出したから、
その通りに小指でガラスに落書きをしてみる。


"Merry X'mas, xxx" そして大きなハートで囲む。



「xxx」……kiss kiss kiss,だっけ。



キスを3回、か。

思えば、アタシは今までに2回、プロデューサーにキスをしたことがあった。



---
(回想1.《20XX/7/12》)

1回めはずーっと前の事。

CDの収録という初めての大仕事の後に
初めてワガママを言って連れて行ってもらった、

夜景の見える大観覧車の中で。


http://i.imgur.com/BMCiAxa.jpg




花火をバックに写メを撮ってから、向かいあわせで観覧車に乗った。
一周16分のゴンドラがゆるゆる登っていく中で、
景色キレーだね、って言おうとしたら、

疲れがたまってたのかな、プロデューサーはうとうとと夢の中。



最近忙しかったししょーがないかな、ちょっと休ませてあげなくちゃ、
なんてことも思ったけど、その前に。

オトメのトキメキを奪った罪は重い。
アタシだって、ちょっとは期待してたのに。



だから、起こさないように気をつけながら、隣に座ってそっと手を握って。
アタシだけ勝手にドキドキを高めてから、

ゴンドラが真上に来た時に、
ほっぺたに柔らかなキスをした。



起きるかな?起きないよね。
少し寄りかかってきたから、すこし離れて、頭をゆっくりひざに導く。

いつもなら躊躇してたけど、今ならできる気がしたから。


もう1周、もう2周出来ないかな。
気持ちよく眠るプロデューサーを起こしたくない。
無理なのはわかってるから、

せめて残り6分は静かに寝させてあげなきゃ。



疲れの見える寝顔を眺めていたら、

少し開いた唇に目が引き寄せられて。
うーん、やっぱりもう1回、
今度こそ……



ってカクゴを決めたその瞬間に、ケータイがブルブル震えた。



「きれいな夜景だねー もしかしてPくんとデート?」

莉嘉からの返信だった。なんてタイミングの悪い。



いや、写メを送ったのはアタシだった。
うかつ。
いつものクセで、キレイな写真だからって条件反射で送ってた。

今回だけは完全に、アタシの落ち度だ。



しどろもどろで返事を返す。
なんて打ったかわからないぐらいに。

慌てたせいで寝ていたプロデューサーを起こしてしまった。
あ……そういえば、膝枕、してたんだっけ。



急に恥ずかしくなってキョリをとり、
そっぽを向く。

なんてダイタンなことしてたんだろ、アタシ。
顔から火が出そう。

コトバなんて出てくるわけもなくて。
ああ、気まずい。

……だけど、イヤな気まずさじゃなかった、と思う。



---
回想2.《20XX/1/22》


2回めは、今年1月の、
初めての単独ミニライブの日。
偶然のことだったから、あんまりはっきりとは覚えてないけど。


アンコールを終えて、火照った体でステージを去った。
やりきった達成感と満足感がカラダをめぐる。
同時に、疲労感もどっと押し寄せてくる。

ステージ袖に入って落ち着くと急に力が抜けて、めまいに襲われる。
あっ、ヤバっ。



大きな腕に、アタシはしっかりと抱き留められていた。
プロデューサーの胸に、頭をうずめる形になって。

おどろきよりもドキドキよりも、安心が勝ってしまって、
しばらく離れられなかった。


そのままでいると、プロデューサーがそっと頭を撫でてくれる。
コトバなんていらなかった。
ああ、幸せ。



少し落ち着いたので、ゆっくりと離れる。

ずっと動かずにいたから、体が冷え始めて来て、ふるふると震える。
そっと差し出されたのは、
プロデューサーが着ていたコートだった。

http://i.imgur.com/UzI9cK0.jpg




ありがと、と言おうと思って顔をあげて、それに気づいた。

Yシャツの胸元、ちょっとネクタイがズレてしまったあたりに、
メイクのキラキラと一緒に、


ピンクのルージュがうっすら、唇の形に残っていた。



視線の先に気づいたのか、ハッとしたようにハンカチで拭おうとする。
ダメだよ、そんなんじゃ広がっちゃう。

片手で制して、それからネクタイを直してあげる。
んー、なんとかごまかせるかな。

支援。こういうしっかりしたss好き。



クリーニングに出さなきゃ落ちないかも、と思いながら、
コートをちゃんと羽織りなおす。
ふわっと広がる香り。

コレって、いつもプロデューサーがつけてる香水の……
なんだか、包まれてるみたい。




なんて考えて、顔が熱くなってきて、まともにそっちを見れなくなる。

プロデューサーもプロデューサーで、
なんだかわたわたしている。

この前と同じだ。
気まずいけど、なんかいいカンジ。



少し落ち着いて顔をあげると、プロデューサーはこっちをじっと見ていた。
見つめ合ったまま、沈黙が続いて……



バタン。
扉の音で我に返って、とっさに何もなかったふりをする。

「お姉ちゃんおつかれー!
 あれー、二人とも何やってんの?」



ママと一緒に客席に来ていた莉嘉が、
楽屋通路を通って入って来たみたい。

また絶妙なタイミングで。

すっかり冷静になってしまって、莉嘉の相手を適当にする。
プロデューサーも、ママに挨拶をしに行ってしまった。






ネクタイの下のキスマークは、気づかれずに済んだみたいだった。

>>131
ありがとうございます・・・!
四苦八苦した甲斐が。

らすとすぱーとー



---
12/9(mon) 19:40

2回のキスを思い出して浸っている間に、
車は渋滞を抜けていた。

気づけばすでに事務所の近く。




そっか、これからパーティーに混ざるんだっけ。
きっと会場では、みんながプロデューサーの事を待ってる。


今夜、2人きりでいられる時間は、
後すこししかない。



ドキドキがぶり返してくる。
抑えていた感情が、昂って来るのを感じる。

お誘いだとか、
そんなことよりもっと、

大事なキモチを伝えたくなった。



いっぱいいっぱいのキモチをなだめて、
気付かれないように呼吸を整える。


大丈夫、今なら言える。

今なら、まっすぐに伝えられる。



事務所の駐車場について、車が止まった。



扉を開けようとするプロデューサーの、
スーツの袖をキュッと引っ張る。



ねえ、こっちを向いて。



気づかれたのかも、しれない。

いや、プロデューサーもプロデューサーで、
カクゴを決めていたのかもしれない。

どっちが先かなんてわからないけど、
そんなことはもはやどうだってよかった。

振り返ったその表情を見ただけで、
わかってしまって、

もうとめられなくなって。



コトバより先に、カラダが動いた。



  3回めは…… 今。



こっちを向いたその肩に手をおいて、
座席から乗り出してキョリを縮めて……








アタシはプロデューサーに、キスをした。







~fin~

終了です。

ラブ★クリスマスの美嘉が書いた文字を見て、
xxxってkissのことだっけ(うろ覚え感)、
となったので勢いに任せて書き始めました。


手紙の最後にxxx…恋人への親愛の情(x=キスを表す)らしいです。
日本でいうところの「親愛なる◯◯へ」みたいな感じ。

xxが友人向けだとか、xoxoxoでkiss&hugだとか言うのもあるみたいです。


当初は後半だけ構想してましたがこんなかんじに。
中盤の膨らみは間違いなくアイプロの影響。
しぶにゃんこがカワイイのが悪い(言い訳)


すこししたらHTML申請出しに行きます。

乙、すごくよかった

後日談少し書かないかなーって

>>148
そういってもらえるだなんて思ってなかったので、
後日談を書く余力を全く残してませんでした…

(自分の中では)かっちりと作りすぎてしまって、
書いたそばから色々崩してしまいそうで怖いので、書けそうに無いです。
ごめんなさい。

次こういったのを書くときにはそういう隙を残して書くよう努めます。

読んでくださってありがとうございました。

落ちる前にちょっとだけ宣伝

「1-Cの白坂さん」
「1-Cの白坂さん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1385/13851/1385144425.html)


前回書いたSSです。
よければこちらも読んでいただければ嬉しいです

次こそは茄子さんを書きます・・・

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