あかね「うち、日野あかね!17歳!みゆきの車椅子かっこええなあ」(208)

あかね「なーみゆきー、今日もええ天気やなぁ」

みゆき「うー」

あかね「見てみ、太陽の光でみゆきの車椅子めっちゃキラキラやで」

みゆき「んっ!あー!うー!」

あかね「なー、きれいやなー」

あかね「……坂道は押すのキツいわ、あはは」ヨイショヨイショ

みゆき「うー」

あかね「えーんやでみゆき、うちこれでダイエットしとるんやから」

あかね「みゆきと散歩できて楽しーし、痩せてべっぴんになれて一石二鳥や」

みゆき「うー!」

あかね「え?これ以上べっぴんにならへんくらいべっぴんやって?ほんまみゆきは嘘つけへんやっちゃなぁ」

みゆき「あ!あ!」

あかね「なんや、自販機かいな。欲しいんか?ジュースか?」

みゆき「ん、んー」

あかね「しゃーない、このあかねさんがおごってあげよー。感謝すべし」

みゆき「ん!んぅ!」

あかね「はいはい、ファンタなー。うちコーラにしよー」

 チャリンチャリン ポチッ ガタゴトッ

あかね「ちょい待ってなー、今蓋開けたるから」カシュッ

あかね「あいよ、お客さん、ご注文のファンタですー」

みゆき「っ」ゴクゴク

あかね「うまいかー?急いで飲みなや、炭酸やから。あーほら、こぼしてもうとるやん、ちょいストップストップ」フキフキ

あかね「ほい、これでみゆきもべっぴんさんや」

みゆき「ううー!ん!!」

あかね「んー?どうしたんやみゆきー。ああ、映画のポスターか」

みゆき「んー、ふう」

あかね「映画なんてしばらく行ってへんなぁー、うちら花の女子高生やっちゅうのになー」

あかね「……行こか」

みゆき「んぅ?」

あかね「もうガッコも終わったし、ちゃちゃっと家帰って準備して、映画行ったろか。な、みゆき!」

みゆき「えーあ?」

あかね「せや!見たことあるやろ?でっかい画面ででっかい音で、ドガガガーでドカーンや!」

みゆき「えーあ!えーあ!うー!」

あかね「そうやでー!ギューン、バリバリーで、最後はムッチューでラブラブのハッピーエンドや!」

みゆき「あっぴい」

あかね「思い立ったら即行動や!さぁ、飛ばすでー!しっかりつかまっときー!」

【みゆき家】

あかね「おばちゃーん!ただいまぁ!みゆき、ほら、ただいまー?」

みゆき「あーい」

育代「ああ、あかねちゃん、ごめんねぇ、いつもいつも」

あかね「えーんですよぉ、うちが好きでやってることですし」

育代「今日学校どうだった?問題なかった?」

あかね「いつも通りや、問題なんてあらへん、みゆきはええ子にしとったで、なー?」

みゆき「っ……」ゴクゴク

あかね「あぁ、またファンタこぼしとるでー?」フキフキ

育代「あかねちゃんがジュース買ってくれたの?ごめんなさいね、今お金を……」ゴソゴソ

あかね「いやいや、ジュース一本くらいええですって、みゆきの笑顔でお釣りがきますし、なんちて」

育代「ごめんなさいねぇ」

あかね(……おばちゃん、謝ってばっかりや……)

あかね「あ、おばちゃん!今日これからみゆきと映画見にいこかと思っとるんやけど、ええかな?」

育代「映画……?みゆき、大丈夫かしら……」

あかね「大丈夫です!うちがしっかりエスコートしますから!」

育代「そう……?みゆき、映画行きたい?」

みゆき「えーあ!えーあ!」

育代「……じゃあ、お願いできる……?」

あかね「まかせてください!やったな、みゆき!映画行けるで!」

みゆき「うー!」

育代「……あかねちゃん、もし何かあったら、すぐに連絡ちょうだいね。あと、これ……少ないけど」スッ

あかね「いや、ええて!ええて!たかが映画やん、それくらいうちが出しますて!」

育代「いいから。私にできるのは、これぐらいだから……!」クシャ

あかね「……はい、ありがとうございます」

あかね「ほな、行こかみゆき」

みゆき「う?」

あかね「映画やで」

みゆき「う!えーあ!」

あかね「ほら、お母ちゃんに行ってきますー、て」

みゆき「あーい!」

育代「うん、行ってらっしゃい、気をつけてね」

みゆき「ん。ん」

育代「あかねちゃんも。ごめんなさいね」

あかね「はい、行ってきます。夜までには戻りますんで」


  ガチャ  バタン


あかね(……おばちゃん、白髪多なったなぁー)

【電車】

 ガタンゴトン ガタンゴトン

あかね「あと二駅やから降りる準備しとこか」

あかね(電車の中、ちらほらとうちの学校の生徒がおるなー)

みゆき「うー!んん、ん」

  ヒソヒソ ヒソヒソ

みゆき「んんー、んっ!んっ!」

あかね「どしたー、みゆき?電車の中では静かになー」

みゆき「あー!ん!ああ!」

 ヒソヒソ クスクス

あかね「……」

みゆき「あー!ううー!」

 ガタンゴトン ガタンゴトン



やよい「……あれ?『日野』さん?」

やよい「やっぱり『日野』さんだ!」

あかね「あれ!?やよ……、『黄瀬』さんやんかー、家、こっちやっけ?」

やよい「ううん、ちょっと見たい映画があって……日野さんは?」

あかね「偶然やな!うちも映画やで。お姫様と一緒になー」

みゆき「うー!」

やよい「二人はいつもいっしょだね」

あかね「せやで、うちら一心同体やからなー」

やよい「ふふふ」

あかね「黄瀬さんは何の映画見るん?うちらまだ決まらんくってさー」

やよい「私は仮面ラ……、あー、……『宇宙兄弟』見ようかなって、もうすぐ公開終了だし」

あかね「はー、なるほどなぁ、うちらもそうしよっか。な、みゆき。『宇宙兄弟』でええか?」

みゆき「うー!」

やよい「……」

 【映画館】

あかね「着いたで、みゆき!映画館や!人がいっぱいや!」

みゆき「うー!」

あかね「大丈夫か、みゆき。疲れてへんか?」

みゆき「あー、うー!」

あかね「そかそか。黄瀬さんは買い物あるらしいから別れたけど。んー、とりあえずチケット買おか」

あかね「えーっと、『宇宙兄弟』は、と。……あと10分で上映か、時間ぴったしや」

あかね「ん?『劇場版仮面ライダー』ってのもやっとるんか。やよい、……黄瀬さんこれ好きそうやなぁ」

あかね「しかし、黄瀬さん遅いなあ、先入っとこか。な、みゆき」

みゆき「んっ、んっ!」

あかね「よし、行こかー!はーい、すんません、通してくださーい、すんませーん」

あかね「人、いっぱいやな」

みゆき「うー……」

あかね「せやなー、暗いなー、静かにしいやー」

みゆき「……」

あかね(ガラガラやなー、ま、もうすぐ公開終了らしいし、こんなもんか)

あかね(黄瀬さんもまだ来てへんみたいやなー)

みゆき「うっ!んー!」

あかね「静かにし」ポコッ

みゆき「……」

あかね「ええ子」

  ビーーーーーーーー

あかね「始まるで」

みゆき「……」

あかね(あー、宇宙飛行士の話かー)

あかね(うち宇宙とかSFは苦手やわー)

あかね(ま、みゆきも静かに見とるみたいやし……)チラッ

みゆき「……」フンフン

あかね(映画終わったら、みゆきの車椅子押して、また電車に乗って、降りて)

あかね(みゆきんちまでみゆきを送って、うちに帰って、あ、課題あるん忘れとった。予習もせな)

あかね(あー、けっこう疲れそうやな)ウトウト

あかね(あかん、もうすでに疲れとるわ……)ウトウト

あかね(みゆき、は)ウトウト

みゆき「……」フンフン

あかね(大丈夫、そうやな……)ウトウト

あかね「……zzz」グースカピー



みゆき「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

あかね「っ!!」ビクッ

みゆき「あああああああ!!ああっ!!」

あかね「み、みゆき!?どないしたんや!?静かにせんと……!」オロオロ

 ザワザワ

みゆき「いいいいいいい!!んっ!ああああああああああああああ!」

あかね「あかん、あかん、落ち着いて、一旦外でよ?な?」オロオロ

 ザワザワ ザワザワ

あかね「すんません、ほんますんません」

みゆき「ああああああああ!!ああああ!」

あかね「静かに、な?ええ子やから、ええ子やから、な、たのむで」

あかね「すんません、すんません、もう出ます」

みゆき「ああぅ!ああああああ!」

 ザワザワザワ



あかね「……みゆき、落ち着いたか?」

みゆき「……」

あかね「ほら、ファンタや、飲み。みゆき、ファンタ好きやろ?」

みゆき「……」

あかね「い、いらんか?ほな、飴ちゃんやろ、何味がええかな?」ゴソゴソ

みゆき「……」

あかね「……別に、ええんやで。映画なんていつでも見えるし。レンタルショップ行けば、もっと安く見えるしな」

みゆき「ああーぅ」

あかね「見とる最中、ちょーっと気に入らへんことあったんやろ?気にいらへんからイーッってなってもうたんやろ?」

あかね「みゆきは純粋やねん。しゃーないねん。悪いのはあの映画や。なんや全っ然おもろなかったなぁ」

あかね「みゆきが怒るのも当然や!みゆきが怒らなんだら、うちが怒っとったわ!」アハハ

あかね「……帰ろか。疲れたろ、みゆき?」




あかね「あれ……?黄瀬さん、今頃映画館入って……」

あかね「ああ、……そか。『仮面ライダー』見るんか……」

みゆき「うー?」

あかね「……何でもない何でもない。さ、帰ろ。行くでー」

あかね「星空みゆき号、出発しんこーや!」

みゆき「うー!」キャッキャッ

あかね「夕焼けキレイやなー」

みゆき「んー」

あかね「夕焼けの色はうちの色なんやでー?」

みゆき「んー?」

あかね「太陽サンサン、熱血パワーや」

みゆき「ぱー?」

あかね「誰がパーやねん!パワーやパワー!」

みゆき「ぱぁー!ぱぁー!」キャッキャッ

あかね「あはは!ぱっぱっぱーや!」

みゆき「あーい!んっ!んっ!」キャッキャッ

あかね「あー……、ほんま、夕焼けキレイやなー」

みゆき「んー?」

あかね「え?うちのほうがキレイやって?……ホンマみゆきは正直やなぁ」

あかね「……もうすぐ着くでー。明日も迎えに行くからガッコ行こな」


【翌日】

あかね「みゆき!おはよーさん!ガッコいこか!」

みゆき「うー!ん!」

あかね「朝から元気いっぱいやな、みゆきは」

みゆき「んん!んっ」

あかね「ほな行こかー」

みゆき「うー」

あかね「今日もええ天気やなぁ」

あかね(……あー結局寝てもうて課題できへんかったわ。どないしよー)

あかね「ん?あれは……」




なお「ああ、『日野』さん、それと『星空』さん」

あかね「おはよーさん。珍しいやん。『緑川』さんがこの時間に登校なんて」

なお「うん、今日は朝練がない日なんだ。星空さん、おはよう」

みゆき「あーい」

あかね「しっかし毎日毎日朝練とは大変やなー。しんどいやろ」

なお「慣れればどうってことないよ。それに強くなるためだしね」

あかね「ほー。さっすが二年生にしてサッカー部のエースは言うことが違いますなぁ」

なお「日野さんだって、中学の頃はバレーやってたでしょ?もうやらないの?」

あかね「あー……」

みゆき「んっ、うー」

あかね「うん……もうやめた。もうやらへん」

なお「そう……残念だな。日野さんならきっと名プレイヤーになれたのに」

あかね「うちは緑川さんみたいに運動神経ようないし、それにバレーしとるよりみゆきと一緒におったほうが楽しいからな。なー、みゆき?」

みゆき「う?」

なお「……」

あかね「あ、せや。れい……『青木』さんは元気にしとるん?」

なお「うん。元気みたい。あっちの高校はすごいよ。もうセンター問題とか受験対策やってるらしいよ」

あかね「ほえー。県下トップの進学校はやっぱ違うなー」

なお「日野さんは進路決めた?」

あかね「え?うち?あー……、専門学校行こかなーて」

なお「あれ?たしか日野さんちってお好み焼き屋だったよね?継がないの?」

あかね「あー、あれな、うん。ま、弟もおるし、長男が継いだ方が格好もつくやろー思て、うん。うちはええわ」

なお「……何の専門に行くつもり?」

あかね「……福祉の」

なお「そう……」

みゆき「うー、んんぅ」

なお「……」

なお「日野さんはさ」

あかね「ん?」

なお「日野さんは、もっと自分のやりたいことをした方がいいと思う」

あかね「は?」

なお「自分がしたいこととか、やりたいこと、できてる?無理してるんじゃない?」

あかね「な、何ゆーとるんや。うちは今、むっちゃ楽しいで?うん」

なお「肩の力抜いてさ。楽になった方がいいよ」

あかね「い、意味分からんわー。肩の力?抜きまくっとるでー?これ以上抜いたら脱臼してまうわー、スポーンて、はは」

なお「……なら、いいんだけど」

あかね「……はは」

なお「わたし、先行くね」

みゆき「……うー?」

あかね「……こっち見なや、何でもあらへん」

あかね(ほんま、相変わらず直球なやっちゃで)

あかね(……無理してる、やって?楽になれ、やって?)

あかね(そんなら、みゆきの世話、手伝ってぇや……なんて)

あかね(言えるわけ、ないやん……)








あかね(……あれは、中学三年の終わり頃やったな)

あかね(うちらのプリキュアとしての、最後の戦いは)

あかね(決戦の日、敵の三幹部をピースとマーチとビューティが足止めして)

あかね(うちとハッピーで復活したピエーロの元へ向かった)

あかね(そこにジョーカーが邪魔しに来よって、うちが止めるはめになって)

あかね(……ハッピーを一人で行かせてしまって……)

あかね(……ハッピーは、一人でピエーロを倒したんやと思う。……バッドエンド王国が消滅したんがその証拠や)

あかね(でも、ピエーロの最後の抵抗で)

あかね(……みゆきは、ダメになってもうた)

あかね(ピエーロから離れていたやよいや、なお、れいかも記憶を飛ばしてしまうくらいの強烈な攻撃やった)

あかね(みんなプリキュアだった頃の記憶をなくして)

あかね(ピエーロの一番近くにいたみゆきは、心がおかしなってしもうた……)

あかね(何でうちだけ無事だったかは、今でもわからへん)

あかね(だって敵はもうおれへんし、プリキュアのことを覚えとるのも、もう、うちだけなんやから……)

あかね(みんな、新しい生活を始めとる)

あかね(……それやのに、『うちら、プリキュアの仲間やったんやから、みゆきの世話手伝って』なんて)

あかね(言えるわけ、ないやろ……っ!)



みゆき「……あー?んぅ?」

あかね「……そない困った顔しなや。安心し。うちがずっとそばにいたるから」ナデナデ

みゆき「んー!」

あかね「せやでー、いつまでもいっしょや。まるで絵本の終わりやなー」

あかね「『王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしましたとさ』や」

みゆき「あっぴい」

あかね「頑張って敵を倒したんや。ハッピーエンドやないと、報われんやんか」

あかね「みゆきー、お昼休みやでー。お弁当食べよかー」

みゆき「う!」

あかね「中庭行こ、せっかくええ天気なんやから、お日様の下でピクニックや」

みゆき「ん!」

 ヒソヒソ ヒソヒソ

あかね「……」

みゆき「うー、うー、ん」

あかね「……はよ行こ」

 ヒソヒソ ヒソヒソ クスクス

あかね(……ホンマ、みゆきの教室の連中、感じ悪いわ)

あかね「ほら、みゆき口あけや、あーん」

みゆき「あー」パク 

あかね「うまいかー?」

みゆき「んむんむ」モグモグ

あかね「あー、よだれよだれ」フキフキ

みゆき「んっ、あー」

あかね「ちょい待ちーや。野菜も食べなあかんでー、ほい、あーん」

みゆき「あー」パク

みゆき「べぇ」ペッペッ

あかね「あっ、コラーみゆきぃ。食べ物粗末にしたらバチ当たるでー」

みゆき「あーい」

あかね「好き嫌いも直さんとなぁ」

あかね「今日も完食!お弁当箱も空っぽや。お腹いっぱいか?」

みゆき「うー!」

あかね「そか、そらよかった」

あかね(みゆきに食べさせて、うちも食べとったらだいぶ時間かかってしもたわ)

あかね「そろそろ教室戻ろか」

みゆき「んー」

あかね「えーっとみゆきのクラスの時間割は、と。次は体育やな、ほな保健室で見学や」

あかね「一旦、教室戻って、と……ん?」

 ポツポツ

あかね「雨……さっきまでええ天気やったのに……」


 クスクス クスクス

あかね(……なんやっちゅーねん、みゆきの教室入ったとたん、ジロジロ見よって)

あかね(いつもやったら、目ぇ逸らして知らんふりするくせに……)

みゆき「んー、んっ、んー」

 クスクス クスクス

あかね「……っ!」

あかね「な、なんや、これ……!?」ブルブル

 クスクス クスクス

あかね「だ、誰やっ!!みゆきの机に落書きしたんはっ!!」

あかね「よ、ようこんなひどいこと書けるなぁっ!!誰や!出てこいっ!!!」

 クスクス クスクス

あかね「笑うな!!笑うなぁああああああ!!!」

みゆき「あー、うー?」

 クスクス クスクス 

みゆき「うー?」

あかね「見るなみゆき!机も、ここにいるアホウも!目ぇ腐る!!」

みゆき「あー!んっ」キャッキャッ

あかね「笑うなぁ……」ポロポロ

 クスクス クスクス

あかね「なんで、なんでこんなことができるんや……」ポロポロ

あかね「なんでみゆきがこんな目にあわんといかんのや……」ポロポロ

あかね「みゆきは、世界を救ったんやで……?あんたらクズどもを守るために、一生懸命戦ったんやで……?」ポロポロ

あかね「あんたら普通に生きていけるやんか……。普通に幸せになれるやんか……。なのに、なんでこんなことができるんや……」ポロポロ

 クスクス クスクス

あかね「あんたらもう死ねやっ!!不幸になれっ!不幸になって死ねやぁ!!」

 ガシッ

なお「落ち着いて!!日野さんっ!」グググ

あかね「離せやっ!なおっ!離せーっ!」

なお「騒ぎがあるって聞いて飛んできたら……。日野さん、とりあえず落ち着いて」

あかね「『日野』さんて呼ぶなぁ!!うちはあかねや!なおっ!!うちはサニーなんやぁ!!」

なお「と、とにかく深呼吸しよう、ね?」

あかね「ハッ、ハッ、ハッ」

みゆき「うーうー」

なお「ひとまず移動しよう。ここじゃダメだ。星空さんも」スッ

あかね「みゆきに触るなぁああああああああああああ!!」ドンッ

なお「いたた……」

あかね「誰にも触らせへん……みゆきは、誰にも……誰にもっ……!」ギュ

みゆき「んー!んっ!」キャッキャッ

なお(これ……星空さんの机……?ひどい……。だから日野さんは……)

なお「これ、誰がやったの?」

 ヒソヒソ コソコソ

なお「誰がやったの!!!?」バンッ

 ビクッ

あかね「……誰でもええ。誰がやったって一緒や。うちとみゆき以外はみんな敵や」

なお「日野さん……そんなこと……」

あかね「突き飛ばしたのは謝る。でも、それ以外は死んでも謝らへんで……『緑川』さん」

なお「……」

あかね「……」

あかね「……もう帰ろ、みゆき」

みゆき「んー?」

あかね「みゆきの帰る準備、カバンを……」

あかね「っ!」

あかね(……ご丁寧に教科書にも書かれとるわ、あんな短時間で、よーこんだけビッシリと)

あかね(そんなに楽しかったんか、みゆきを呪うんが、そんなに……)

あかね「こんなんもういらん、みゆき、帰るで」

みゆき「うー!」

あかね(教科書なんていらん、みゆきは勉強なんてせんでええ。これからはうちが一生守ったる……!)

あかね(誰にも頼らへん、うちがみゆきのピーターパンになるんや!)

あかね(そうや!誰もうちらのことを知らん遠くへ行って)

あかね(二人で『末永く幸せに暮らす』んや……!

あかね(まずは病院や。みゆきの薬をもらいに行かな)

あかね(それからうちに帰って貯金あるだけ持ってきて)

あかね(電車でもバスでも何でもええ、できるだけこの町から離れるんや)
 
 ザーザー

あかね(あ、そうや……雨降っとったんやった、傘持ってきてへん……どないしよ)

あかね(盗んでまうか……?いや、そんなこと、でも……) 

 スッ

なお「……日野さん、傘、ないなら貸すけど?」

あかね「……緑川さん……何しに来たんや」

なお「日野さんこそ、何しに行くの?授業始まってるよ」

あかね「あんたには関係あらへん」

なお「関係ない、ね。本当にそう思ってる?」

あかね「あ、あんたとは……と、友達でも何でもないんやから、言うことはないわ……!」

なお「……うん。そうかもね。でも、私は日野さんと星空さんともっと仲良くなりたいと思ってるよ」

あかね「っ」

なお「……どこ行くの?」

あかね「……遠くや」

なお「具体的には?」

あかね「と、遠い場所や!まだ決めてへん!」

なお「ふうん。遠くに行ってどうするの?」

あかね「み、みゆきと二人で暮らすんや」

なお「日野さん……それ、本気で言ってる?」

なお「親には了承を得たの?星空さんの親と日野さんの親、両方に」

あかね「……うるさい」

なお「住む場所はどうするの?言いたくないけど、星空さんがいるから、かなり制限されてくると思うけど」

あかね「……うるさいうるさい」

なお「そもそもお金はどうするの?相当必要だと思うよ」

あかね「うるさいゆうとるやろ!」

なお「……ハァ」

なお「日野さん、いつまでバカのふりしてるの?本当は気づいてるでしょ、そんなのできない、って」

あかね「知らへん!うちホンマもんのバカやもん!そんなん知らん!」

なお「いい加減にしなよ。来年は受験だってのに」

あかね「は……?」

なお「星空さんの、机。あれ、やった奴らに話を聞いたよ」

あかね「……」

なお「そいつらは言ってた」

なお「『そういう枠』で入学できたからって、授業を妨害されるのは迷惑だ、って」

あかね「……」

なお「星空さんは頻繁に授業中騒いでるんだってね、知ってた?」

あかね「……」

なお「……来年は受験だし。みんなのピリピリする気持ちも分からなくないよ」

あかね「……だからって、あんなひどいことしてええとは」

なお「うん。あんなことは絶対やっちゃいけない。だから、ひっぱたいてやったよ」

あかね「え……?ひっぱたい、え?」

なお「……あいつら、筋が通ってないんだよ、筋が」プンプン

あかね「は……、はは」

あかね(なおは、やっぱりなおなんやな……)

なお「先生には私から説明しておくよ」

あかね「……おおきに。でも、うちらは」

なお「うん。今日は帰った方がいい。はい、傘」

あかね「……緑川さん」

なお「私は、私の言ったことを訂正する気はないよ」

なお「日野さんは、自分のやりたいことをするべきだと思うし、もっと楽になった方がいいと思う」

なお「自分の幸せを、もっとちゃんと考えて欲しいんだ」

あかね「……」

あかね「……もう、行くわ」

みゆき「うー?」

あかね「行こ」ザッ

なお「『あかね』ーっ!」

あかね「!」

なお「傘、貸したんだからね!絶対返しに来てね!」

あかね「……うん」テクテク

なお「もうひとつ!大切なことっ!」

なお「私!『あかね』と『みゆき』と仲良くなりたいと思ってる!もっと二人のこと知りたいって思ってる!!」

なお「これも!訂正する気はないよ!明日、学校で会ったら!友達になろう!!」

あかね(……ほんま、恥ずかしいくらいド直球なやっちゃで)テクテク


 ザーザー


みゆき「うー?」

あかね「泣いてへん……!泣いて……」ポロポロ

あかね(……ゴメン、それでもうち、もう帰らへん……!)


【病院】

医者「あぁ、あかねちゃん、久しぶりだね。どうしたの?今日はみゆきちゃんの付き添い?」

あかね「せんせ、みゆきの薬、出してください」

医者「……?まだ一週間分はあると思うんだけど?」

あかね「なくしたんです」

医者「なくした……?」

あかね「なくしました」

医者「……ふーん、ま、別にいいですけど。それじゃあ来月の分もまとめて出しておきますから」

あかね「あっ……ありがとうございます!」

医者「それで、しばらく調子はどうだった?変わりない?頭痛がするとか、そのほか体の不調はないかな?」

あかね「はぁ。大丈夫やと思いますよ。みゆきはいつも通りです」

医者「あー、違う違う」

医者「あかねちゃん、君のことだよ」

あかね「うちのこと……?」

医者「まあ、その様子からすれば、もう大丈夫そうだね」

医者「若いんだし、昔のことはいくらでも取り戻せるよ」

医者「大切なのは、これからのことだから」

医者「自分のやりたいことを見つけて、未来を見据えて」

あかね「ちょちょ、ちょっと待ってください」

あかね「せんせ、何の話をしとるんですか……?まるでうちが、病人やったみたいに……」

医者「あぁ、そうか。『覚えてない』んだったね……」







医者「あかねちゃん、君は事故に遭ったんだよ。中学三年の終わりに」


 【電車】

 ガタンゴトン ガタンゴトン

あかね「はっ、はっ……」

みゆき「んー?」


―――『あかねちゃんとみゆきちゃんは学校の帰り道』


あかね「はっ、はっ……」


―――『脇に逸れた乗用車にはねられてしまって』


あかね「はっ、はっ、はっ……」


―――『みゆきちゃんは、あかねちゃんを庇って』


みゆき「うーぅ?」

あかね「……大丈夫や、心配あらへん」

Ω ΩΩ< な、なんだってー!!

 ガタンゴトン ガタンゴトン

あかね(うちを庇ったみゆきはダメージが大きく、足と脳に障害が残った)

あかね(うちはほぼ外傷はなかった。けど、打ち所が悪かったらしく)

あかね(病名はなんや長ったらしい漢字の多いもんやったけど、簡単に言えば)

あかね(……記憶障害)

 ガタンゴトン ガタンゴトン

みゆき「んぅー?」

あかね「そない顔で見なや。大丈夫やて」

あかね(……信じられるかい、そんな話)

あかね(きっとピエーロの最後の攻撃で世界の記憶ごと変えてしもうとるんや)

あかね(そうに決まっとる……!)

あかね(そうやないと、うちは……いったい今まで、何を信じて……)

見てなかったプリキュアを見ようかと思うぐらい面白い。
続けてくれ

>>87
おもしろいよ

 ガタンゴトン ガタン……キキィー

あかね(くそ、電車、止まるな。うちらは早く、遠くへ行かんと……)

みゆき「あー」

あかね(みゆきと一緒に、遠くへ……)

みゆき「んぅ……」

あかね(遠く、とにかく遠くへ……急がへんと……)

 ドアガヒラキマス 

 プシュー

あかね「……っ!?」

みゆき「あーっ!んっ!まー」キャッキャッ

あかね「なんでっ……」ポロポロ





育代「みゆき……あかねちゃん……」

育代「……病院の先生が連絡くれたの。様子がおかしかったから、って」

あかね「うぅ……うっ、うっ」ポロポロ

育代「……帰るわよ、みゆき」

みゆき「あー」

あかね「あかん!おばちゃん!みゆき連れて行かんといて!!」

育代「あかねちゃん……みゆきと、どこへ行くつもりだったの?」

あかね「……と、遠くへ」ポロポロ

あかね「みゆきが誰にも傷つけられんくらい遠くの場所です……」ポロポロ

育代「……」ハァ

あかね「もうしません!もうしませんから、みゆきを連れて行かんといてぇ……!」ポロポロ

育代「あかねちゃん……よく聞いて?よく見て?一番傷ついてるのは、誰でもない、あなた自身じゃない」

あかね「……っ!」ポロポロ

みゆき「あっ、あー、うー」

育代「みゆきはね、傷つかないわ。傷つかないの。そういう子なの、そういう子になっちゃったのよ……」

あかね「でも……そんなん、みゆきが惨めやないですか……。笑われて、『役立たず』って思われて、『死ね』って言われて……」ポロポロ

育代「そうね……。でも、もしみゆきが傷つくとしたら、あなたが『惨め』と思うことが一番みゆきは傷つくと思うわ」

あかね「!……ち、違うんです!うちは、そんなこと……っ、思って……っ」ポロポロ

育代「もういいの、もういいのよ、あかねちゃん」

あかね「……」ポロポロ

育代「今までごめんなさいね、いっぱい迷惑かけちゃったね」

あかね「……うちはっ、……み、みゆきのことが、好きでっ……」ポロポロ

育代「……みゆきを、施設に預けることにしたの」

あかね「……」ポロポロ

俺が救いになればいい

育代「もう、迷惑かけられないもの、学校の人たちや、あかねちゃん、あなたに」

あかね「そんなっ……こと」ポロポロ

育代「成績、落ちてるんでしょ?大好きなバレー、やめちゃったんでしょ?」

あかね「みゆきのほうが大事なんです……大切なんです」ポロポロ

育代「私はね、怖いのよ。私たちは親子だからみゆきのことを見捨てたりしない、絶対に」

育代「でも、あかねちゃんはいつか、イヤになるかもしれない。みゆきのこと、捨てていくかもしれない。……私はそれが怖いの」

あかね「そんなこと!」

育代「ない、って言い切れる?ずっとよ?これから先、ずっと」

あかね「……うちとみゆきは仲間やったんです……プリキュアの……!」

育代「やめて、あかねちゃん。今になって、アニメの話をするのは」

あかね「あぁ……」ポロポロ

育代「ゴメンね、あかねちゃん。あなたはもう、みゆきとは会わない方がいいと思うの」

育代「そのほうがみんな、幸せになれると思うの」

育代「……みゆき」

みゆき「んっ、まー」

あかね「みゆきっ、みゆきっ……」ポロポロ

みゆき「んー?」

あかね「みゆきは、うちがおらんなったらダメやろ?寂しいやろ?な?」

あかね「うちと一緒におろ?そのほうが楽しいやろ?お好み焼きも焼いたるで?みゆきスペシャルや」

あかね「だから、うちと一緒に行こ、みゆき?ほら。なんか……」

あかね「なんか言ってやぁ!みゆきぃ……!」ポロポロ

みゆき「んー?」

育代「あかねちゃん、もう、みゆきにすがるのはやめてちょうだい」

育代「……行きましょ、みゆき」

みゆき「あっ、ん?んー」」

あかね「あっ、あぁ……待っ……まだ」

育代「今まで本当に『ありがとう』ね。あかねちゃん……」

あかね「っ」




あかね「あ」


あかね「ああ」




あかね「あああああああああああああああああああああああああああああ」


oh...

【あかね家】


あかね「うち、何しとるんやろ……?」

あかね「あれから何時間経ったんやろ……?」

あかね「うちはみゆきと遠くへ行こ思て……」

あかね「そや。みゆき、どこや?おれへんのか……?」

あかね「ああ、ここ、自分ちやん。みゆきおるわけないやん」

あかね「うち、何しとるんやろ……?」

あかね「みゆきー?」

あかね「あはは、せやからここ自分ちやって。みゆきはおれへんて」

あかね「……これで良かったんかもな。ピーターパンのウェンディも、ラストシーンには自分の家族のところへ帰るんやから……」

あかね「あーあ、みゆき、おれへんのか……」

あかね「……じゃあ、うちは何をしたらええんやろ?」

あかね「うち、もうできることあらへんやん……」

あかね「ずっと……ずっと考えとった」

あかね「ピエーロの攻撃で、みゆきは心をなくして、なおたちは記憶をなくして」

あかね「うちは何でなんともなかったんやろ、って」

あかね「……あはは」

あかね「ちゃんとなくしとったやんか、うちも」

あかね「一番大事なもん、なくしとったやんか……」

あかね「……みゆきぃ」ポロポロ




あかね「うち、何しとるんやろ……?」

あかね「みゆきー?」

あかね「そうや、みゆきと遠くへ行くんや」

あかね「貯金あるだけ取りにうちへ来たんやったな。そやったそやった」

あかね「お金、お金、どこやー?押し入れに隠しとったんがあったはず……」ゴソゴソ

あかね「ん?ノート……?」


 ペラッ


あかね「あぁ」

あかね「これ、みゆきとうちの字やんか……」

あかね「……何でやろ。何でこんな大切なこと忘れとったんやろ……?」

あかね「あぁ、全部思い出したわ……」

あかね「……そうや、みゆきは、うちの初めての友達やった」


あかね(大阪から七色ヶ丘町に転校して、引っ込み思案なうちは友達ができんまま一年が経ってもうて)

あかね(中学二年の時、みゆきが転校してきた)

あかね(明るいやつやったなぁ。うちと友達になってくれたなぁ。キラキラした光みたいなやつやったなぁ……)

あかね(あいつは中学生やのにアニメのプリキュアが大好きで)

あかね(うちと一緒にオリジナルのプリキュアを想像して、ノートに書いて)

 ペラッ

あかね「ああ、そうや、敵の幹部の名前はウルフルン、アカオーニ、マジョリーナ……」

あかね「絵本が大好きなみゆきがつけた、みゆきらしい名前や」

あかね「敵のバッドエンド王国、妖精のキャンディ、みんなうちらが創り上げたもんやったな……」

…………

………

……

みゆき『あかねちゃんが熱血パワーのキュアサニーで』

あかね『熱血て……、なんやうちとキャラ違わんか?それ』

みゆき『いいのいいの!必殺技はサニーファイアー!バレーのスパイクみたいにバシーっと!炎がブワーっと!』

あかね『はいはい。で、みゆきはキュアハッピー。年中頭がハッピーなみゆきにぴったしやな』

みゆき『もー、ひどいよあかねちゃん。はっぷっぷー』

あかね『あはは、褒めとるんや。……しかしプリキュア二人だけかー。なんや寂しない?』

みゆき『あかねちゃんあかねちゃん!じゃあ、なおちゃんなんかプリキュアにぴったりじゃない?』

あかね『なおちゃんて、緑川さんのこと?あー、そうやな。まっすぐやし、運動神経抜群やし、ヒーローっぽいもんな』

みゆき『あとね、あとね、やよいちゃん!』

あかね『黄瀬さん……?えぇー?ちょっと気弱すぎへん?すぐ泣くし。プリキュアっぽいかなぁ?』

みゆき『やよいちゃんはね、実は私見ちゃったんだよね―』

あかね『何をや?』

みゆき『やよいちゃんの下敷き、仮面ライダーだったの!ファイルは昔の戦隊ものだったし、やよいちゃん、絶対ヒーローもの好きだよ!』

あかね『へー、意外やな。でも、それならプリキュアいけるかもなぁ』

みゆき『うんうん!それでね、五人目はやっぱりれいかちゃん!』

あかね『青木さんかぁ。勉強できるし、委員長やもんな』

みゆき『うんうん!それにれいかちゃんって……』

みゆきあかね『『水の妖精さんみたい!!』』

みゆき『……あはは!』

あかね『あははは!みゆき、青木さんの話になったらそればっかりや』


……

………

…………

あかね(五人のプリキュアとバッドエンド王国の敵……)

あかね(みんな嘘やった……)

あかね(うちだけが、事故で混乱した記憶でホンマもんと思ってただけで……)

あかね(……みゆきは、世界なんて救ってなかったんや)



あかね「は、はは……。うち、バカみたいやん」

あかね「嘘もんのヒーロー気取って」

あかね「みゆきを守る王子様気取って……」

あかね「なんも、なんもできてへんやん……」

うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あかね「うちらはプリキュアなんかと違った」

あかね「ただの女の子で、なんもできへん、ただの子どもで」

あかね「それでも……」


――――『みゆきちゃんはあかねちゃんを庇って』


あかね「……それでもっ」


――――『わたし、星空みゆき!あかねちゃん、友達になろう?』


あかね「救ってくれた……っ!」ポロポロ

あかね「みゆきは、うちの世界を救ってくれたやんか……!」

あかね「……みゆきぃ!」





      プルルルルル

あかね「携帯……?育代さん、おばちゃんから!?」ピッ

育代『あかねちゃん!?みゆきどこへ行ったか知らない!?』

あかね「みゆきになんかあったんですか!?」

育代『みゆきが部屋にいないの……!車椅子もないし、玄関が開いてて……みゆき、……みゆき』

あかね「探してみます!うちも探してみます!!」ピッ

あかね「……行かな!待っとれ、みゆき!うちが見つけたるから!」

あかね「わかっとる!うちはみゆきを遠くへ連れては行かれへん!」

あかね「みゆきは施設に行くんが、誰にとっても、みゆきにとっても一番ええことかもしれん!」

あかね「おばちゃんの言うように、うちらはもう会わへんほうが幸せになれるんかもしれん!」

あかね「……それでもうちは、まだ……みゆきに……!」

あかね「……まだ、お別れも言ってない!」

あかね「大好きやって!ありがとうって!伝えてへんのや!!」

あかね「だからっ!!!!」

あかね「どこや、みゆき!みゆきはどこへ行ったんや?」

あかね「家を出て、右に行けばええのか左に行けばええのかすらわからん……!もう夕方。暗くなったら大変や!」

あかね「考えるんや……みゆきの行きそうな場所。みゆきの行きたい場所……!車椅子やから、そない遠くには……!」

あかね「行かれへん、はずや……」

あかね「行かれへん、はずやのに……」

あかね「何でやろ……夢かな……?」

あかね「みゆきが、おる……」



 キコキコ キコキコ



みゆき「あー……」フゥフゥ

みゆき「あ、かねちゃ」フゥフゥ

みゆき「あかねちゃ……!」フゥフゥ

みゆき「あー、ふぅ、ふぅ」

あかね「……みゆき、一人でここまで来たんか……?」

みゆき「うぅ!うー!」

あかね「遠かったやろ……?坂道もあったやろ……?」

みゆき「んぅ、あー」

あかね「あぁ、手、すりむいてしもうとるやん……痛かったろ?しんどかったろ……?」

みゆき「うー?あ、かねちゃ……?」

あかね「あかん……泣いてまう。泣いてまうわ……」ポロポロ

みゆき「んー?」

あかね「最近うち、泣いてばっかりやなぁ……あかんなぁ」ポロポロ

あかね「みゆきぃ……」ギュ

みゆき「……」ギュ

あなやっこ・・・?

あかね「ゴメンな、みゆき。今までの大切な思い出、忘れとって。うち、ちゃんと思い出したから」ポロポロ

みゆき「んー?」

あかね「ありがとうな、うちと友達になってくれて」ポロポロ

みゆき「んー」

あかね「ゴメンな……お別れ言うつもりやったけど、あかんわ」

あかね「みゆき……?うち、もう一度みゆきのピーターパンになってもええかなぁ……?」

みゆき「あー」

あかね「遠くへは連れて行かれへんけど、でも……ずっとそばにいたるから……」ポロポロ

あかね「うち、みゆきのことが好きなんよ、大好きなんよ……一緒におったら幸せなんよ……だから」

あかね「みゆき……うちを幸せにして……?」ポロポロ

みゆき「うー!」

あかね「あはは、いつのまにかみゆきが王子様やなぁ」ポロポロ

あかね「見てみ、みゆき。雨も上がって、綺麗な夕焼けや……」

みゆき「あー!あっ!」

あかね「ん?あー……初めて見たわ、夕焼けの虹や。綺麗やなぁ」

みゆき「あかね、ちゃ」キャッキャッ

あかね「うん。そやでー、夕焼けはうちの色なんや」

みゆき「あー」

あかね「太陽サンサン、熱血パワーや」

みゆき「うぅー?」

あかね「みゆきぃ?そこはな、また『パー』ゆうてくれんと、うちツッコミできへんやんか」

みゆき「ぱぁー」キャッキャッ

あかね「誰がパーや!って、遅いねん!!あはは!」

あかね「あー!」キャッキャッ

あかね「あはは!あー……そろそろ家に帰るで、みゆき。おばちゃん安心させたらんと」

あかね「ほんま……この町ってこんなに綺麗やったんやな……」

みゆき「うー?」

あかね「何回でも、見ような?一緒に、綺麗な景色」

あかね「みゆき」

みゆき「んー?」

あかね「……ありがとうな」


…………

………

……

     ___        ___
   __〕 〔___      .〕   〔                             __ __
  ゙l      /   .___ 二二二   . /'''7'''7       ./''7__(O)         / // /
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   ̄ ̄ ノ  /| || ,レ|  ゙l  .ノ ノ _ノ / i  i__ ロロ/7./ /___ / ̄ ̄ ̄/ /_//_/
     /  / ノノL__ノ| ,|゙ // /__,/  ゝ、__| <ノ i___/  ̄ ̄ ̄ ○ ○
       ̄ ̄ ´    '⌒゙  ̄

      〃    r-'´ ̄l _
     〃      ̄Fヨ ┘
             /⌒\
               {     l         /⌒ヽ --、
                ,   |        /    |   ',
             ',   |         _/ |/⌒ レ-- |
              ',  |_    rく:/   V ⌒ V ⌒|    ギュルルルルッ
               r 、',  {/_    _j/::|    V  ! |
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                              トイ⌒l:|
                                  V  ヽ       ))
                               l\、rーヽ     〃
                              `ーヘ __ノ



【みゆき家】

あかね「みゆきー、来たでー!久しぶりやなー、会いたかったわー!」

みゆき「あー!あかね、ちゃ」

育代「久しぶりってあかねちゃん。毎日来てくれてるじゃない」フフフ

あかね「うち、あかねと離れると調子出ないんですわー。ほら、みゆき、差し入れ!お好み焼きのみゆきスペシャルや!」バァーン

みゆき「あー!ん!」キャッキャッ

あかね「おばちゃん、みゆきとお好み焼き食べてもええかな?」

育代「いいわよー、その代わり……」

あかね「もちろん忘れてませんよ!じゃーん、お好み焼き、育代スペシャル!カロリー控えめや!」バァーン

育代「あはは、ありがとうね、それじゃ、みんなで食べましょうか」

   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|

   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ


みゆき「んっ!んっ!」キャッキャッ

TV「プリキュアー!」

あかね「ほんま、みゆきはプリキュア好きやなー」

TV「スタープリキュア!カガヤクホシノキラメキ!キュアペガサス!!」

あかね「スタープリキュア……?たしか、星座をモチーフにしたプリキュアで、総勢十二人のプリキュアが出るんやっけ?」

あかね「主人公はキュアペガサスで、初のプリキュア同士が戦って、十二人の中から頂点を決めるっていう……」

あかね「……ってそれ、セイント星矢と何が違うん?」

あかね「みゆき、これセイント星矢と一緒やで!?おばちゃん、これ星矢や!」

育代「そうねー」

TV「クラエ!ペガサスシューティングスターアターック!!」

みゆき「あー!」キャッキャッ

あかね「……ま、みゆきも喜んどるし、ええか」


みゆき「現実は いつも私に選択を迫る 私には それがたまらなく嫌なのだならば逃げよう その先に何があろうともその現実からも 逃げてみせよう私には この生き方しかできない」

あかね「!!!!?」

TV「ライシュウモマタミテネ!」

みゆき「あー……」シュン

あかね「今週の分、終わってもたなぁ。みゆき、そない落ち込みなや、来週もあるって」

育代「みゆきったら毎週こうなのよ」

あかね「……よっしゃ、ほな、散歩行こか、みゆき!」

みゆき「ん!あー!」

育代「あらあら、もう機嫌直っちゃった」

あかね「ほら、行こ、みゆき!おばちゃん!行ってきます!」

みゆき「いていまー」

育代「行ってらっしゃい。気をつけてね」

あかね(結局おばちゃんはみゆきを施設に預けることはしなかった)

あかね(おばちゃんは理由を言わなんだし、うちも聞かなくてええと思っとる)

あかね(学校は特別学級を近いうちに作ってくれるって言っとった)

あかね(最近は、なおもみゆきんちによく来てくれとって、だんだんみゆきの周りも賑やかになってきた)

あかね(病院の先生が言うに、みゆきの心は少しずつ、ほんの少しずつだけど成長しているらしい)



あかね「……今日も晴れたなぁ、ええ天気や」

みゆき「うー!あ、かねちゃ」

あかね「んー?なんやー?」

みゆき「うっ!うー!」

あかね「あぁ、ホンマやなぁ、みゆきの車椅子、太陽の光でキラキラやなぁ」

あかね「みゆきの車椅子かっこええなぁ、みゆきのお気に入りやもんなぁ」

みゆき「うー!」ニコニコ

あかね「……なぁ、みゆき。プリキュア、好きか?」

みゆき「ぷいきゅあ!うー!」

あかね「みゆき、ここだけの話。うちな、世界でいっっっちばん面白いプリキュア知ってんねんで?」

みゆき「うー?」

あかね「みゆきだけに教えたる、内緒やで……?」

みゆき「あーい!」

あかね「あんな、スマイルプリキュアっていってな」

あかね「キュアハッピー、星空みゆきが主人公で――――――――」







     オワリ

               ,  -‐====‐- 、
             , '´ . . : : : : : : : : : : : : . .丶-―- 、
            / . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .\   \
          /. . : : :/: : :!: : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ  )

         __/: : : : : |: : : |: : {: : :|: : {: : : : : : }: |: :|: : :',_
      / // ⌒\: :|: : : |: : |、: |: : |: :/: : :、:|: |: :| : : :! ヽ

     /  ∧!ヘ   >:!: : : !: : |ヘ:|ヘ:.|ヘ: : : :/ /、/!:| : |  〉 おっつっつ~
     \./: :{   イ.: :|: : : |\j  _   )/ _/ レ! : !.ノ
      /: : :.\__/; -.ハ : : !―t::::r ┬    ┬r┬!| : |

      {: :ヽ: : : :/ へ.∧: :|   ゞ-- '    ,  ゞ-'〈 | : |
      /:\: :\ {  〈 ∧ ', ' ' '      _   ' ' '}j : :!
      \: :.\: :.ゝ、  ∧:',         )   /j: :/
      く:丶 : : ノ   ̄入ヘ:.、      、_)  / /:/
          丶フ     ( r┴゚\  ____/ /'
           , -―⊆> 、  \   / !⊇―- 、
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