怜「夏祭り一緒に行かへん?」(315)

竜華「夏祭り? 隣町の?」

怜「そ。今週の土曜にあるんやて。さっきクラスで班の子が言うてたわ」

竜華「へえー、何や珍しいなぁ。怜がそういうん行きたがるとか」

怜「そ、そう?」

竜華「そやそや。怜結構面倒がりやからな」

怜「それはほら、ウチ―――」

竜華「病弱やし、はナシやで」

竜華「けど、そやなー。インハイに向けた追い込みの時期やけど、土曜練習は昼過ぎには終わりやし…」

竜華「たまには息抜きもわるないな」

怜「! そやったら…」

竜華「ん、せっかく怜が誘ってくれたんやし行こか」

怜「えへへ、ありがとな竜華」

竜華「あはは、そんなお礼言うことやあらへんってもー」

竜華「そやけど今週の土曜かー。予定空いとるかな」

怜「? 竜華何かあるん?」

竜華「いや、ウチは何もあらへんけどな」

竜華「セーラ達の予定が空いてるか分からんやん」

怜「えっ」

竜華「土曜言うたらもう明後日やしな。もしかしたらもう先約入ってしもてるかもしれへん」

竜華「…そやったら善は急げやな。ちょっと皆に聞いてくる!」



怜「…竜華のアホ」

――――――
―――

怜(結局泉とフナQも一緒に行くことになってしもた…)

怜(セーラは家の用事で行かれへん言うてたらしけど)

怜(これじゃいつもと何も変わらへんやないか…)



泉(な、何でウチ睨まれとるんやろ…)

怜「ロン。清一三暗刻、25200」

泉「ひっ! …は、はいっ!」

怜「……」

泉(えぇぇ、ウチ先輩に何かしてもうたっけ?)

――――――
―――

竜華「―――ほな、お疲れさんでした!」

部員「「お疲れ様でしたー」」

浩子「結局、四人で行く流れかいな」

竜華「そやねー。セーラは親戚の手伝いする言うて部活にも来てへんし」

竜華「他の部員も何人か誘ったんやけど、用事とかで皆来れへんて」

怜(他にも誘っとったんか…竜華のドアホ…)

泉「まあそやったら、早速行きましょう!」

浩子「まあまあ待ちぃや。祭に制服で行くんか泉」

泉「あっ…でしたら一度帰って、一時間半後に千里山駅の西口に集合する感じでどないでしょ」

浩子「相変わらず仕切るねぇ」

泉「え、いやそのっ…」

竜華「まあええやんー、そうしよーやー」

――――――
―――

泉「んじゃ、ウチらはこの辺で」

浩子「ほな、後で駅でな」

竜華「うんー、お疲れー」

怜「……」



竜華「はー、今日はほんまに暑いなぁ」

怜「…そやなぁ」

竜華「…怜、元気あらへんみたいやけど大丈夫なん?」

怜「…大丈夫やで。ちょっと暑いなぁ思ただけやから」

竜華「そやったらええけど…」

竜華「あ、そや!」

竜華「怜、今からウチ来れへん?」

怜「え? でも着替えなあかんし」

竜華「ウチの家で着替えてけばええやん。な?」

怜「そやかて、着替え持ってきてへんよ?」

竜華「ふっふっふ。まあええからええから―――」

――――――
―――

怜「こ、これは…浴衣!」

竜華「そやでー。お祭りと言ったらやっぱりこれよー!」

竜華「ウチが前に着とったのが残ってるの思い出してな。多分怜にサイズぴったしやと思うでそれ」

怜「えぇ…でも浴衣て何や恥ずかしない?」

竜華「何言うてんの! むしろ浴衣やない方が恥ずかしいて」

怜「そ、そうなん?」

竜華「ほら、ウチも着るし。な、怜、一緒に着よ?」

怜「う、うん…」

竜華「ほな、ウチはちょっとシャワー浴びてくるで」

竜華「多分大丈夫やと思うけど、一応腰紐とか伊達締めとか揃っとるか見といてな」

怜「だ、だて? 何やて?」

竜華「よろしくなー」

怜「…さっぱり分からへん」



怜(まあ浴衣広げて見てみるくらいしよか…)

怜「えっと…これは帯やな。こっちの紐みたいなんは…さっき竜華が言っとったやつかな…」

怜(ん、この浴衣…)

怜「竜華の匂いがする…」

怜(竜華の家にあったから竜華の匂いがするんやろか)

怜(…竜華はいつ頃までこの浴衣を着とったんやろなぁ)

怜(ん…この匂いを嗅いどると…眠気が…)



竜華「ふー、さっぱりした…って」

竜華「寝とるー!」

竜華「こら怜! 起きてやー!」

怜「んぅ…竜華…?」

竜華「浴衣の上で寝たらあかんやろ! 今から着るのにシワになってまうやん」

怜「……?」

竜華「…寝ぼけとるな。まあええわ、ほらシャワー浴びといで」

怜「んー…」

――――――
―――

怜「竜華ー、上がったでー…ってうわ」

竜華「ちょ、開口一番『うわ』って怜ひどない!?」

怜「…や、まさか浴衣もう着てるとは思わへんかったんよ」

竜華「どお? ウチ似合うとる?」

怜(竜華、くるくる回るから…裾が…)

竜華「…怜?」

怜「…ん、似合うとるよ。可愛くてちょっとびっくりしてもうたわ」

竜華「ほんまに! 良かったぁ、似合わん言われたらもーどうしよかと思たわぁ」

ちょいと用事が出来たので行ってきます
すみません

帰宅 まさかこんなに遅くなるとは思わなかった
保守してくれた人ありがとう!

怜「竜華いつもと髪型違うねんな」

竜華「あ、これ? 何や浴衣着る時はこういう風に頭の上でまとめるんが良いって聞いてなぁ」

怜「へえぇ…」

怜(あ、うなじ見えとる…)

竜華「怜もやってみる?」

怜「いや無理やろ。ウチの長さじゃ」

竜華「あはは、そやな。ほな怜も着付けしよか」

※ 着付けシーンは省略


――――――
―――

竜華「お待たせー」

怜「遅れてごめんな」

浩子「ははぁ。えろう遅れたんはそれのせいですか」

泉「ほらー、言うたやないですか。お祭りは浴衣やって」

怜「泉もフナQも浴衣なんやな」

浩子「普通に私服で来るつもりやったんですけど、泉に電話されまして」

浩子「『浴衣どぉーしても着たいんやけど、一人だけやったら恥ずかしいんで先輩も着て来て!』言うて」

泉「そんな強調してませんて! けど電話して良かったやないですか、先輩一人だけ私服やったら寂しいですし」

浩子「しっかしお二人とも、ほんまによお似合うてんなぁ」

竜華「えへへー、そやろー?」

怜「泉もフナQもよお似合てるで」

泉「園城寺先輩、何や和服美人ーて感じですね」

浩子「ほう。泉は『胸がないな』て言いたいらしいで」

泉「ちょっ船久保先輩、その解釈悪意ありすぎですて!」

怜「…泉ー?」

泉「あっ、ほらほら電車来てますて! とりあえず行きましょ!」

怜「結構浴衣の人多いんやな」

浩子「そこそこ規模大きい祭やし、行く人も多いんやと思いますわ」

泉「ウチ毎年このお祭り行ってんですけど、公園の中は激混みですよほんまに」

怜「…ウチがそないな所行って、生きて帰れるんやろか…」

泉「真ん中あたりの丘にベンチがあるんで、疲れたらそこで休めますよ」

竜華「そやったら安心や! 今日は暑いし、怜も無理せんといてな」

―――「豊津ー、豊津ですー…」

泉「わ、めっちゃ人乗って来ましたね」

怜「ちょ…押されて…」



竜華「怜! …ど、どないしよ、怜が!」

浩子「そない深刻にならんでも、電車の奥に追いやられただけやないですか」

浩子「まあどうせ次でウチらも周りも皆降りるやろから我慢っちゅうことで」

竜華「そ、そやかて…痴漢にでもあったら大変やん!」

浩子「そないなのがおっても動けませんてどうせ」

――――――
―――

怜「…はぁ、えらい目にあったわ」

竜華「と、怜! 大丈夫やった!?」

浩子「しんどいんやったら少し休んでから行きます?」

怜「ん…そうさせてもらうわ」

竜華「ほら怜、寄りかかってええで」

泉「さすがに今の電車ほどやありませんけど、会場も結構混んでますしねー」

竜華「ほな怜、お祭り中は手ぇ放したらあかんよ?」

怜「そ、そやな」

浩子「別に今から握らんでもええんとちゃいますの」

怜「ま、まあええやん。な、竜華」

竜華「?」

浩子「しかしえっらい騒がしい祭やな」

怜「ここまで太鼓の音とか聞こえとるもんなぁ」

竜華「会場が近いだけとちゃうの?」

泉「いえ、結構ありますよ。歩いて十五分くらいなんで」

怜「十五分やて… 生きるんは辛いなぁ」

浩子「何言うてはりますの」

怜「…喉渇いたなぁ」

竜華「ウチ何か買うてこよか?」

怜「いやええよ、それくらい自分で行けるわ。…ぃしょっ、ととと」

竜華「もーほんまに大丈夫なん?」

怜「いやこの草履がな…」



泉「…何やめっちゃナチュラルに二人で買いに行きましたね」

浩子「まあまあええやないの、仲良きことは何とやらや。ほほほ」

――――――
―――

泉「やっと会場に着きましたね!」

怜「すまんな、時間掛けさせてしもて。この草履っちゅうんは歩きづらいなぁ」

竜華「サンダルとそない変わらへんと思うけどな」

怜「や、そもそもサンダル履かんしなウチ」

怜「人も多いしここまで来るだけで一苦労やでほんま」

浩子「確かにまだ夕暮れ時やっちゅうのに、えらい人の数やな」

泉「まだまだこんなもんやありませんよ。花火大会始まるくらいになるとこの倍くらいは人が…」

怜「倍とか、ウチ死んでまうて…」

怜「そやけど色んな出店があるんやなぁ」

竜華「怜ー! 見て見てあれ! 可愛いー!」

怜「…ただのお面やん」

竜華「うわ、冷たっ!」

泉「あはは、ウチもずーっと昔はこういうん好きでしたわ」

浩子「ま、子供っぽくて先輩らしいんちゃいます?」

竜華「酷っ! 皆ウチの扱いわるない!?」

泉「…結局買うたんですねお面」

竜華「え? だって可愛いやんこのミッキ―――」

浩子「ストーップ!」

浩子「それはあかん、言うたらあかんで!」

竜華「ちょ、浩子?」

浩子「滅多なこと言うもんやないてほんま…怖い人が出て来はるかもしれへん」

浩子「…と言うか先輩もそのチョイスなんなんですか。ここ遊園地ちゃいますで」

竜華「え、ええやろ別に! 可愛いんやから!」

怜「食べ物の匂い嗅いでるとお腹空いてくるなぁ」

浩子「そやったら何か食べましょうや。時間もちょうどええ感じですし」

竜華「怜、何食べたい?」

怜「んー…こんだけあると迷ってまうなぁ」

泉「そんなら、軽い物食べつつ考えるとかええんとちゃいます? りんご飴とかチョコバナナとか…」

怜「お、それええなぁ」

竜華「じゃあウチりんご飴食べたーい!」

浩子「ほなそこで買いましょか。すんませんおばちゃん、りんご飴4つで」

>>1って枕書いた人でしょ

怜「おお…赤い…」

竜華「何や怜、りんご飴見たことあらへんの?」

怜「あるわけないやんこんなん」

泉「結構一般的な物やと思いますけどねぇ。…はぐっ」

浩子「ま、縁日以外では目にせんわな」

竜華「~~っ! 甘酸っぱーい!」

怜(か、かぶりついて食べればええんやろか…)

怜(はぐっ…て硬っ!)

>>111 膝枕のなら書いた




怜「りゅ、竜華ー」

竜華「? 怜食べへんの?」

怜「いやこれ、硬すぎて食べられへんのやけど…」

竜華「あはは、ほんまに怜りんご飴食べたことなかったんやな」

竜華「これ外側に飴が付いとるから、それにヒビを入れる感じで食べるんやで」

怜「んっ…む、難しいて」

竜華「もー、ちょっと貸してみ?」

竜華「まず少し飴をなめて薄くしてから…」

竜華「はぐっ…っと。よっしゃ! 飴が砕けとるとこからかじれば食べられるで!」

怜「あ、ありがとな竜華」

怜「……」

怜(竜華がなめて、かじった飴…)



竜華「どう? おいしい?」

怜「…甘酸っぱい」

竜華「そこがええんやってー!」

竜華「病弱が治った?」
竜華「最近怜が膝枕させてくれへん」
の2つを書いた 他は別の人です 宣伝でごめんな




浩子「おっ、金魚すくいや」

怜「金魚すくいってほんまにあったんやな。フィクションの世界だけやと思てたわ」

泉「現実にもありますて。まあ確かに最近は金魚すくい、あまり見ませんけど…」

浩子「そないなことないで? 金魚すくいの全国大会なんてもんもあるし」

竜華「全国大会!? ほんまに?」

浩子「ほんまほんま。競技ルールもしっかりあるし、段位の認定もあるらしいで」

怜「何やすごそな世界やな…」

竜華「なあなあ、せっかくやし皆でやらへん? ウチ昔これ好きやったんよ」

泉「ええですよー。実はウチ結構得意なんですわ」

浩子「ほお、自信ありげやな。そやったら皆で掬った数で競争しましょうや」

竜華「望むところや」

泉「負けた人は罰ゲームっちゅうことで」

怜「え、ウチめっちゃ不利やん。金魚すくいやったことないで」

竜華「大丈夫やって、そんなに難しくあらへんよ」

竜華「ほなちょっと怜、巾着と飴持っといてや」

怜「ん」

竜華「よーし、沢山掬ったるで!」

泉「期待しとりますで先輩」

怜「竜華頑張れー」

竜華「ポイをあまり水に漬けへんように…よっ! …ってあれ!?」

浩子「あららら、ポイ破れてしもうてますね」

竜華「ええー! まだ一匹も掬ってへんのに!」

怜「何や竜華、へたくそやん…」

竜華「うぅ、怜にええとこ見せよ思ったんに…」

浩子「ほな、先輩方にウチがお手本お見せしましょか」

怜「フナQは金魚すくい得意なん?」

浩子「いや別に。とは言えポイの構造分かってれば、ある程度は素人でも行けますて」

竜華「うぐ…」



浩子「紙っちゅうんは濡れてる所と濡れてへん所の境目が一番破けやすいんや。そやから…」

浩子「ポイを水に漬ける時は全面を、抵抗が掛からんように漬ける!」

浩子「掬う時も水の抵抗に気を付けて…!」

怜「おお…ほんまに掬えたな」

浩子「ざっとこんなもんや」

泉「船久保先輩は結局二匹ですか…」

浩子「あっれー、もうちょい行ける気がしたんやけどなぁ」

怜「次は泉?」

泉「ええ。…ウチは自信ありますで」

泉「何しろ毎年この屋台来とりますし。な、おじさん」

竜華「じょ、常連かいな…」



泉「基本はさっきの船久保先輩のやり方でええんですけど…」

泉「それに加えて金魚の動きを読んで、最適な位置で…ほっ!」

泉「四匹掬えました!」

浩子「言うだけあるなぁ。なかなかの腕前やん」

竜華「後は怜やな。皆のは参考になった?」

怜「そやな。…竜華のは参考にならへんかったけど」

竜華「ああもう、言わんといてぇ…」

浩子「はいポイ、表こっちな」

怜「金魚の動きを読む、か…」

怜(……)

竜華「…怜?」

怜「…ここや!」


浩子「おお、めっちゃ綺麗に掬ったなぁ」

怜「次は…」

竜華「…怜…あんたまさか!」

怜「…こっちや!」



竜華「あかん、怜!」

怜「ちょっ、竜華、何や急に腕掴んで…ポイ破けてもうたやん」

竜華「えっ、だって…今怜、絶対見ようとしたやろ」

怜「? 何を?」

竜華「…金魚の一巡先」

怜「…何やそれ、金魚の一巡先て」

竜華「えっ…金魚の動きを読むとか言うてたから、麻雀みたいに未来を見ようとしたんかなーと思たんやけど…」

竜華「…あれっ、違うたの?」

この>>1の大阪弁には違和感が無い
本場か

怜「…竜華、前にも説明したと思うんやけど、ウチは未来予知できるわけやないで?」

怜「単に麻雀で一巡先が見えるだけや」

泉(十分未来予知ですやん…)

怜「そやから、日常生活で先が分かる…なんてことは出来へんよ」

竜華「な、何やそうやったんか…堪忍な怜!」


竜華(怜が未来を見る時いつもしんどそうやし…)

竜華(何もこんな遊びで使わんでも、と思てつい止めてしもたわ)

怜「ま、そしたら竜華の反則負けやな」

泉「と言うかそもそも、掬った数もドンケツですしね」

竜華「へっ?」

泉「最初に言いましたやん、掬った数競争、負けたら罰ゲームて」

竜華「えー! あれ本気やったん?」

浩子「望むところや言うてたやないですか。けど罰ゲームて何やらすん?」

泉「えーと…言うて何にも考えてませんでしたわ。園城寺先輩何か案あります?」

怜「んー、そやなぁ…」

竜華(う…心なしか怜の目線が冷たい…)

怜(何や知らんけど怯えてる竜華かわええな…)

疲れたので飯食って寝ますわ
明日の午前中には続き書き始めるので残していただけるとありがたいです

>>159
ありがとう、だが関東だ

寝坊した

怜「そやったら…泉、それ」

泉「え? りんご飴ですか?」

怜「そや。竜華それ好きみたいやし、ウチが没収てことで」

竜華「えー! まだ半分も食べてへんのに!」

怜「罰ゲームやししゃーないやろ竜華」

竜華「うぅ…くすん」



泉「あれ? 何で園城寺先輩が没しゅ―――痛っ!」

浩子「あー、りんご飴て味しつこいんでウチらは一つで十分ですわ。先輩で食べて貰えると助かります」

怜「そ、そやったら仕方ないなぁ、うん」

怜「ウチが言い出したことやし、責任持ってウチが食べることにするわ」

浩子「次どこ行こか」

泉「あっちの方とかどないでしょう。ヨーヨー釣りとか射的の屋台があるんですけど」



怜(竜華のりんご飴…りんごに歯型が付いとる)

怜「ん…」

怜(…これ舐めとると、何や竜華と……してるみたいやな…)

怜(…実際間接でしてるんやけど)

怜(はあ…かじるんがもったいないで)

竜華「…ほんまにおいしそうに食べよって…怜、恨むで」

浩子「まだ言うとるんですか? 飴一個で女々しいわ」

竜華「言うてもりんご飴て、こないな時しか食べられへんやん…」

怜「……」

怜「しゃーないな、竜華は。はい」

竜華「え? …これ貰てええの?」

怜「元々ウチが食べてた方やけどな。もう半分もあらへんけど」

怜「全部取り上げてしもたらちょっと可哀想やし、竜華にあげるわ」

竜華「怜…っ!」

怜「りゅ、竜華?」

竜華「怜は、ほんっまにウチのこと分かってくれとるな…! さすがはウチの嫁や…」

怜「ちょっ、竜華…こないな所で抱きついたら恥ずかしいて…」



泉(園城寺先輩もまんざらでもなさそうですね)

泉(ここやなければええみたいな感じですし…)

浩子(さりげなく飴も交換しとるしな。熱々やでほんま)

竜華「ふふーん♪」

怜「飴一つで機嫌変わり過ぎやろ竜華…」

竜華「ちゃうで怜。怜がウチのためにしてくれたことが嬉しいんや」

怜「竜華…」


浩子(何やもう口挟むのも躊躇われるなぁ…しばらく黙ってよか)

泉「あっ、先輩方、次あれとかやりません?」

浩子(…って泉…ある意味ツワモノやな)

怜「くじ引き?」

竜華「あ、ウチ昔大好きやったわー。これが結構当たり出るんよ」

泉「末等でも何かしら貰えるんが嬉しかったですよね」

怜「けど…賞品おもちゃばっかりやん。水鉄砲とか貰てもしゃーないて」

浩子「ま、そもそも物が欲しゅうてやるもんやあらへんと思うけどな。この歳になったら」

竜華「えー、そう? ウチ結構おもちゃ楽しみなんやけど」

浩子「先輩はまあ…子供っぽいですし」

竜華「えぇっ!?」

泉「目に留まったついでやし、また皆でやります?」

竜華「てことは、また負けた人は罰ゲームあるの?」

泉「いやいやいや、運だけのゲームに罰ゲームて、ちょっと理不尽やないですか?」

浩子「そやけど泉、こういうの得意そうやん」

泉「えっ、そないな持ち上げ方されても…と言うか得意不得意あるんですかこれ」

怜「ウチは何やあかん気がするわ…こういうのでまともなの当たった覚えがないで」

竜華「ネガティブにならんの、怜」

竜華「よっしゃ、ほな、せーので開くで!」

竜華「せーの…!」

泉「おっ、四等や」

浩子「ウチはあかん、末等やった」

竜華「ウチもやー。一等の筒子ぬいぐるみ九個セット、欲しかったなぁ」

浩子「いや、あんなん当たっても持って帰るの大変やろ…」

泉「末等はサイリウムみたいですね。四等はお祭りの金券かぁ」

竜華「あれ、怜は? 何等やったん?」

怜「…二等や」

竜華「えっ、すごいやん怜! 二等て何貰えるんやろ!」

泉「えーと二等は…」



泉「大型高性能水鉄砲らしいですわ…」

竜華「えっ…」

怜「何やせっかく当たったのに、全然嬉しないわ…」

――――――
―――

泉「ほんまに貰っとかんで良かったんですか? 水鉄砲」

竜華「持って帰ったらセーラとか喜びそうやけどな」

怜「あんなん持っとったら人混みの中まともに歩けへんて…」

怜「これやったら末等の方が良かったなぁ。それ何や綺麗やし」

竜華「サイリウムなー。これ何で光っとるんやろ」

浩子「化学物質か何かやろな」

竜華「これ、今綺麗に光っとるけど、明日の朝には消えてまうんよねぇ」

泉「そなんですよね。ウチ小っさい頃はそれが何や勿体のー思えて、これ貰ても使わずに取っておいてましたわ」

怜「こんなん家に置いといてもしゃーないやろ」

泉「や、今思えばその通りなんですけど…」

竜華「少し腹減ってきたなぁ」

浩子「結局飴しか食べてへんしな」

泉「一品重い物食べるよりは、軽い物いくつか食べたいとこですね。せっかく色んな屋台があるわけですし」

怜「そやったら…あれとかええんとちゃう?」

竜華「お、たこ焼き。一パックを皆で分ければちょうど良さそうやな」

泉「さっきのウチの金券も使えるみたいですね」

怜「はい、買うてきたで」

浩子「ほないただきますー」

泉「結構おいしいですね。生地もべちゃべちゃしてへんですし、外側もサクサクやし」

竜華「ほんまやなぁ。結構レベル高いでこれ」

怜「りゅ、竜華ー」

竜華「どないしたん? …ってああ、そっか」

竜華「パック持っとったら手ぇ塞がってて食べられへんな」

怜「そやから、ちょっとパック持ってくれると…って」



竜華「はい怜、あーん」

怜「!」

怜「え、でもそんな…」

竜華「ほらほら怜。たこ焼き冷めてまうで」

怜「うぅ…あ、あーん」

竜華「どお? おいしいやろ?」

怜「…そ、そやな」

怜(どきどきして味分からへんかった…)

竜華「はいもう一個、あーん」

竜華(目瞑って顔赤くして…怜、恥ずかしいんかな。ふふっ)

竜華(しっかし、首伸ばしてたこ焼き待っとる怜見とると…何やあかんことしてる気持ちになるな…)

――――――
―――

浩子「しっかし進むに連れて、ますます歩きにくなってきたな」

泉「ああ、真ん中の矢倉の周りで盆踊りやっとるんですよ。そのせいやと思います」

浩子「へぇ…泉踊ってきたらええんとちゃう? 金魚すくい上手いし」

泉「き、金魚すくいは関係ありませんて!」

浩子「…ん? あそこにおるんは…」

泉「どないしました?」



セーラ「焼きそば一つ? まいど! ちょっと待ってなおっちゃん!」



竜華「あれ? セーラやん!」

セーラ「おわ、竜華!?」

セーラ「な、何や皆して!」

竜華「いやセーラにも言うたやん。土曜遊ぼうて」

セーラ「ああ、あれ祭行こうっちゅう意味やったんか…」

竜華「セーラこそ何なん? 何でお店で焼きそば焼いとるんよ」

セーラ「俺は言ったやろ、親戚の手伝いやって」

セーラ「毎年伯父さんがここで店出しとるから手伝ってんねん」

浩子「看板娘っちゅうわけですね。えらい可愛らし浴衣着てもうて」

セーラ「!!!」

セーラ「ぐぁあ、しまった…今浴衣着とるんやった…!」

浩子「おほほ、お似合いでございますわよ」

竜華「可愛いやんセーラ」

セーラ「るっせーっ!!」

泉「まさか先輩の乙女モード、こんな所で見られるとは思いませんでしたわ」

怜「さっきの笑顔良かったで。『まいど!』ってもう一回やってや」

セーラ「だあああ! もう帰れやお前ら!」

泉「さて…どないします?」

怜「ウチはせっかくやし盆踊り見たいなぁ」

泉「そやったら、あの丘のあたり行きましょ。ちょっと登りますけど上から見えるんで」

竜華「ベンチがある所やったっけ、確か」

泉「そですね。あの辺りは出店もないんで、人もあんまおらんと思いますけど」

竜華「よーし、じゃ怜行くで!」


浩子「あー先輩。ウチと泉はここで焼きそば買ってから行くんで、先行っといて下さい」

セーラ「ちょっ、浩子てめっ!」

泉「えっ、ウチもですか?」

浩子「何や泉、ウチ一人で焼きそば買ってこいて? 先輩パシらすとは酷い後輩やなぁ」

泉「へっ? や、すすすすみません!」

浩子「まあそういうわけで先輩方。結構焼きそば列並んどるし、多分遅くなるんで」

竜華「何や浩子、すまんなぁ」

浩子「いえいえ、ウチもウチでやりたいことがあるんで」

泉(ちらっとデジカメが見えたんは…気のせいやなきっと。うん)

――――――
―――

竜華「浩子、写真撮るんやろうなぁ」

怜「そやろなぁ。獲物見付けたー言う感じやったしな」

竜華「セーラも災難やな」

怜「あれはあれで、本気で嫌がってるわけやないと思うで。相手フナQやしな」

竜華「あはは、確かにそやな」

竜華「なあ怜、喉渇かへん?」

怜「ん、渇いたなぁ。水分ある物りんごくらいやったしな」

竜華「そやったら、あれ飲まへん? ラムネ」

怜「ラムネって炭酸やろ? ウチあんまり炭酸好きやないんやけど…」

竜華「大丈夫やって、そんなきつないし」

怜「そうなん? そやったらええけど…」

怜「ラムネって、ほんまに蓋がビー玉になってるんやな…」

竜華「…ぷはぁ、生き返るわー!」

怜「竜華おっさんか。…て、どうやって開けたん? 固くて開かへんのやけど…」

竜華「あはは、指で押し込むのは無理やて」

竜華「この紐についてるやつを玉に当てて、上から体重掛けて押し込むねん」

怜「こう? んしょ…って、わわっ」

怜「な、何やめっちゃ溢れてきたやんこれ」

竜華「これはそういうもんなの。怜は反応おもろいなぁ」

少しだけ席外します
30分ほどで戻ってくる

怜「…ふぅ。確かにあんま炭酸きつないな。飲みやすいわ」

竜華「そやろー? お祭りの定番やでこれ」

怜「定番か…」


怜「…実はな、ウチ、お祭りって今まで来たことなかったんよ」

竜華「そやったん?」

怜「うん。人混みとか苦手やったしな」

怜「そやから浴衣もりんご飴も金魚すくいもくじ引きもラムネも、全部初めてやった」

竜華「で、どないやった? 初体験の感想は」

怜「うん…ええな。思たよりずっと楽しかった」

竜華「そっか、うんうん」

――――――
―――

怜「ふぅ…」

竜華「しんどそうやな…登るんは少し休んでからにしとく?」

怜「ううん、大丈夫やで」

竜華「そお? あんまり大丈夫そうに見えへんけど…」

怜「まあ、ちょっとは疲れたけどな。草履はやっぱウチには合ってへんかも」

竜華「そっか…ごめんな」

怜「別に竜華を責めてるんとちゃうで。ウチも浴衣着てみたい思てたし」

竜華「まあ歩きにくいんやったら…」

怜「!」

竜華「ウチの肩に寄りかかってええで。支えたげるから」

怜「…何や恥ずかしない、これ」

竜華「もう暗いし、別に誰も見てへんて」

怜(竜華に肩抱かれて、寄りかかってると…)

怜(…うん、何かええな。めっちゃ安心するわ)

竜華「なあ怜」

怜「ん…どしたん竜華」

竜華「ほら、あれ見てみ。池の辺り」

怜「…わぁ、蛍や。初めて見たわ…」

竜華「ウチも初めて。この辺にも蛍なんておったんやな」

怜「ほんまになぁ。蛍なんてフィクションの世界だけやと…」

竜華「ふふっ、またそれ? 怜はワンパターンやな」

怜「いや、別にボケとちゃうんやけど」

竜華「綺麗やなーほんま…幻想的でロマンチックっちゅうか…」

怜「確かに、写真やテレビで見るよりずっと綺麗やなあ。蛍の印象変わりそうや」

竜華「? 変わりそうって、前はどんなんだったん?」

怜「んー…、何や弱々しい生き物の代表、みたいな感じ?」

怜「ちょっとの環境変化でいなくなってしもたりとか」

竜華「ああ、確かにそういうんもあるなあ」

怜「写真で見ると、光もひ弱でそない綺麗やないしな」


怜「けど、そないな弱い生き物でも…こうやって一花咲かせられるんやなあ思たんよ」

竜華「何や怜、おもろいっちゅうか…変な見方するなぁ」

怜「そう?」

竜華「そや。難しいこと考えんと、素直に楽しめばええやん」

怜「素直に、か…」



怜(……)

怜「竜華」

竜華「ん?」

怜「ウチ、インハイ頑張るで!」

竜華「うん…え? 何でこのタイミングで?」

――――――
―――

怜「思てたより距離あるなこれ」

竜華「そやなぁ。道が遠回りになっとるみたいや」

竜華「けど、さっきから誰とも会わへんし、泉の言うように上には人あんまおらんのかもな」

怜「ああ…はよぉベンチに座りたいわ…」

竜華「んな年寄りみたいなこと言わんといて怜」

竜華「もうちょいの辛抱なんやから、頑張りや」

竜華「ん、あれ頂上やない?」

怜「ほんまやね。…ふぅ、やっと座れたわ」

竜華「矢倉に盆踊りに出店がぎょーさん…こっからならよお見えるな」

怜「眺め良い割に人少ないんは何でやろな」

竜華「結構ここまで登るのが面倒やからちゃう? ずっと歩いてるとお祭り気分が抜けてまうのかも」

怜「まあ下は騒がしゅうてちょっと疲れたし、このくらいがちょうどええわ」

竜華「あ、怜ちょいと詰めて。ウチも隣座る」

怜「そやったら竜華、膝枕お願い」

竜華「何や怜、膝枕やと下見えへんやろ」

怜「んー、ちょっと休憩ー」

竜華「ふふっ、しゃーないなぁ。お疲れさん、怜」

竜華「怜って意外と髪の毛サラサラなんよなぁ」

怜「意外と、って何やねん」

竜華「あはは、何となく…でもそやったら、髪もっと伸ばしてみてもええんとちゃう?」

竜華「ほらそしたら、気分次第でポニーテールとかお団子とか色々できるし」

竜華「それに今日のウチみたいに、上でまとめるのも出来るやん」

竜華「な! 怜なら絶対似合うで!」

怜「竜華…」

竜華「どお?」

怜「ウチの髪で遊びたいだけやろ」

竜華「…たはー、バレたかぁ」

怜「伸ばしたらお風呂の後乾かすのとか面倒やし…ええよ、ウチはこのままで」

竜華「あかんで怜ー、そういうの面倒くさがるんは」

竜華「女の子なんやからちゃんとお洒落に気ぃ遣わんと」

怜「…それ、ウチやのーてセーラに言うてや」

竜華「ほんまになー! セーラも元はええんやから、もっと可愛くすればええのに」

竜華「髪をもうちょい伸ばして、服装もええ感じにして、それから…」

怜「…くすっ」

竜華「―――でもやっぱり怜やなぁ」

怜「えっ? 何が?」

竜華「一番長いのが似合いそうなの。セーラも泉もええけど、やっぱ怜やて」

怜「そ、そんなに?」

竜華「そんなにや。ウチの目に狂いがなければ絶世の美少女の誕生や」

怜「……」

竜華「…怜?」

怜「りゅ、竜華がそない言うんやったら、伸ばすのも考えとこかな…」

竜華「ほんまに!? わあ、何や嬉しいなあ」

怜「よ、喜びすぎやって」

竜華「えへへー、ありがとなぁ怜ー」

怜「ちょ、竜華…くすぐったいて」

竜華「髪伸びたら、ウチに色々やらせてな!」

怜「…そんな半年やそこらで伸びるもんちゃうで」

竜華「? そらそうやろ?」

怜「いやそやから伸びる頃には…」

怜(その頃には、ウチらは…)

怜「…ごめん、何でもあらへん」

竜華「怜…」

怜「……」



竜華「…大丈夫やで怜」

竜華「何年経っても、怜の髪をいじれるような所におるから」

怜「竜華…」

竜華「肩も貸すし、膝枕だってしたるから…そんな顔せんで、な」

怜「…ありがと、竜華」

……

竜華「あ、花火始まったんや」

怜「ほんまやなぁ。…ぃしょっと」

竜華「あれ、怜、膝枕はもうええの?」

怜「うん、今は膝枕より…こうしてたいねん」

怜「肩枕、とでも言うんかな」

竜華「いや言わんやろ。肩に寄りかかってるだけや」

怜「そやな。でも、それがええんや」

竜華「…そか」

怜「……」

竜華「……」

怜「…花火綺麗やな」

竜華「ほんまにな。…このお祭りの名物らしいで」

怜「そないなこと泉が言うとったな」

竜華「そやな」

怜「……」

竜華「……」

怜「…なあ竜華」

竜華「ん?」

怜「ほんまはな、今日ウチ…竜華と二人で来たいな思てたんよ」

怜「フナQ達には悪いんやけどな」

竜華「えっ…そうだったん? 全然気付かへんかった」

怜「ちゃんとウチ『一緒に行かへん?』って誘ったのに…」

竜華「そっか…ごめんな、怜」

怜「別に謝ることちゃうで」

竜華「そやけど…」

竜華「…そや。…怜」

怜「?」

竜華「来年また、このお祭り行かへん?」

竜華「今度は、二人で」

怜「!」

竜華「いや、来年だけやない。再来年も、その次の年も、そのまた次も…」

竜華「ずっと先まで一緒に、な」

怜「竜華…」

竜華「またりんご飴食べたり、金魚すくいしたり、たこ焼き食べたり」

竜華「…こうやって並んで花火見たり」

竜華「な、絶対楽しいて!」

怜「…そやな、楽しみにしとくわ」

怜「竜華、―――…」



竜華「えっ? ごめん怜、花火の音で聞こえへんかったわ今」

怜「ふふっ、何でもあらへんよ」

竜華「何や気になるやん。教えてやー」

怜「内緒やもん」



怜(ありがとな、竜華。…大好きやで)



終わり

お疲れ様です、保守してくれた方々は本当にありがとう
どう終わらせるか考えてなかったから途中からすごい時間かかっちった

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