江藤「おはよう榊原君!」 恒一「あ、おはよう江藤さん」(426)

江藤「いやぁ今日もいい天気だね」

恒一「……………………」

江藤「どうしたの? 黙っちゃって。早く教室行かないと予鈴鳴っちゃうよ?」

恒一「……いや、なんだか最近江藤さんに話しかけられること多いからさ」

江藤「もしかして嫌だった?」

恒一「そんなことないよ。でも、なんでかなー、って」

江藤「決まってるじゃない。榊原君のことが好きだからだよ」

恒一「え!?」ドキ

江藤さんメインか期待

江藤「なーんちゃって♪」

恒一「え?」

江藤「冗談だよ」

恒一「じょ、冗談……?」

江藤「何その反応? もしかして期待しちゃったとか?」クス

恒一「ぼ、僕は別に……」アセアセ

江藤「ごめんごめん。ちょっとからかってみただけだよ。それに榊原君は見崎さん一筋なんでしょ?」

恒一「!」

江藤「はいそこ驚かない。3組に籍を置く者にとったら常識です」

恒一「そうなの!?」

江藤「それに私は、他の子みたいに恋とか男の子とか興味ないから。今は受験にクラブに忙しいし。そこは安心して」


  キーンコーン

江藤「おっと、本当に予鈴が鳴っちゃった。急がないと」ダッ

恒一「あ」

江藤「ほらそこの少年! 突っ立ってても時間は過ぎてくばかりだぞ!? 駆け足駆け足!」タッタッタ

恒一「……行っちゃった」

恒一「……………………」

恒一「……って、僕も急がないと!」


  昼休み・屋上

恒一「ってなことが朝あったんだよ」モグモグ

鳴「ふーん、江藤さんがね」ムシャムシャ

恒一「正直、僕、江藤さんがどんな子なのかよく知らないからどう接したらいいか分からないんだよね……」

恒一「見崎はさ」

鳴「うん?」

恒一「江藤さんってどんな子か知ってる?」

鳴「3組で一番ショートカットが似合う女子生徒?」

鳴「――ぐらいしか私も知らない」

恒一「だよね」

鳴「……でも私は最近、江藤さんと話す機会が多いよ」モグモグ

恒一「見崎も?」

鳴「なんでか知らないけど、困ってる時とか江藤さんに助けてもらうことがよくあるの。体育でペア組む相手いない時に組んでもらったり、私物失くして探してる時に手伝ってもらったり……」ゴクゴク

恒一「ふーん……なんでだろ? 一学期中はほとんど話すことなかったし、〈いないもの〉扱いされてた時はあからさまに避けられてたよね」

鳴「……ま、一学期は災厄が終わってなかったからね」ガブガブアーンゴックン

恒一「でも、冗談でも江藤さんに告白された時はビックリしちゃったな。ちょっとドキッてしちゃったし」テヘヘ

鳴「……」ピタ

恒一「江藤さんって女子の中でも結構可愛い方じゃない? 彼氏とかいないのかな?」

鳴「………………」

恒一「って、あれ? どうしたの見崎? 急に手が止まっちゃったけど」

鳴「…………別に」ムスッ

恒一「……? そう」

鳴「……………………」ツーン

恒一「?」


  昼休み・教室

渡辺「ハァ……」

佐藤「ちょっとちょっと。ご飯食べてる時にいきなり溜息吐かないでよ。お弁当が不味くなっちゃうじゃない」

有田「珊ちゃんらしくないね」モグモグ

江藤「なんか悩み?」

渡辺「いや、それがさ。私、バンドやってるじゃん?」

佐藤「ああ、デスメタルバンドだっけ?」

渡辺「そう」

有田「あ、知ってる知ってる!」

有田「歌舞伎みたいな化粧して頭ドカーンって爆発させてヤンキーの真似してデゲデゲデゲデゲ!!って演奏するやつだよね!」

渡辺「全然違う」

有田「あれ?」

江藤「で、それがどうかしたの?」

渡辺「うん。実はファンの男の子に言い寄られてるんだよね」

佐藤「へぇ、やるじゃない珊」

有田「おおお、さっすが珊ちゃん!」

江藤「……………………」モグモグ

渡辺「いやいやこっちは迷惑してるんだって。面倒にならないようにファンとはそういう関係にならない、って仲間内で決めてるのにそれ説明しても理解してくれなくてさ」

佐藤「なるほど。それは厄介ね」

渡辺「ていうかそもそもその男、私のタイプじゃない」ドン

有田「そうなんだ。珊ちゃんってどんな男の子が好きなの?」

渡辺「どっちかというと年上かな? そもそも同年代は対象として見れないというか」

有田「えーじゃあクラスの子でいないの?」

渡辺「そうね。うちの男子、幼稚なの多いし」

佐藤「辛口評価ね」

有田「でもなんだか珊ちゃんらしいよね」

渡辺「そういう松子はどうなのさ?」

有田「え!? 私!? うーんそうだな……私より背が高くて、優しくて、できれば同年代で、守ってくれるような人だね!」

渡辺「何それ普通すぎでしょ」

佐藤「普通すぎね」

有田「ふ、普通で悪かったか!」プンスコ

渡辺「じゃあ、悠は?」

江藤「え?」モグモグ

渡辺「悠はどんなタイプの男が好きなの?」

江藤「好きな男の子……?」

渡辺「そ」

江藤「うーん…………」

有田「……」ワクワクドキドキ

江藤「どうだろ? 私あんまりそういうの興味ないからよく分かんないや」

佐藤「えー溜めといてそれか」

有田「あはは、悠ちゃんらしい答えだね」

渡辺「やっぱりね。まあ悠はクラブが恋人みたいなもんだからね。クラブ一筋! ってところあるし」

佐藤「そういや悠にはまるっきり男の噂とか聞かないね」

江藤「私は受験にクラブに忙しいから。あんまり恋人とか恋愛とかどうでもいいんだよね」

有田「おー言い切ったね。密かに悠ちゃんを狙ってる3組の男の子が聞いたら卒倒しそう」ワクワク

江藤「そんな男の子いるの?」

有田「またまたーご謙遜しちゃってー! 悠ちゃんぐらい可愛かったら一人や二人いるって」

江藤「そうかなー?」

相変わらずアナザーSSスレは細々してんなぁ

佐藤「うーん、なんかもったいない反応」

渡辺「悠ってばお洒落とかにはいまいち無頓着だからねぇ。素材はかなりいけてるのに」

有田「だよねだよね。着飾れば可愛くなるはずだよ!」

江藤「そう?」

佐藤「そういえば松子は最近可愛くなったよね」

有田「本当? まあ気をつけてる方かも、えへへ」

渡辺「何々? もしかして彼氏でもできたとか?」ニヤリ

有田「ち、違うよぉ!」

江藤「……」ガタッ

佐藤「どうしたの悠?」

江藤「ちょっと食べ足りなくてさ。購買部でなんか買ってくるね」

佐藤「ったく、色気が足りないな。太っちゃうぞ?」ツンツン

江藤「これぐらいでは太りません」ペシッ

恋愛ネタは飽和し尽くしたとか?

  ガラガラガラ……ピシャッ

江藤「ふぅ……」

江藤(好きな男の子ね……)チラッ

望月「えー恥ずかしいよこんなのー」

勅使河原「いいかいいから。お前も男だろ? 受け取っとけって」ガサゴソ

望月「こんなの貰っても、もしお姉さんに見つかったら変な目で見られちゃうよ」キョロキョロ

望月「!」

江藤「……」ジロッ

望月「////」カァァ

勅使河原「これでお前も一人前の男だ」フンス

望月「……あ、あの……勅使河原君。今度からはもっと人がいない所で渡してくれると助かるかも……////」チラッ

江藤(……やれやれ)ハァ

勅使河原「んじゃおまけでもう一つ」ガサゴソ

望月「あっ! そ、そんなの……! 恥ずかしいよ//// みんな見てるよ////」

江藤(珊の言ってることも理解できるかも)

江藤「!」

鳴「!」

江藤「見崎さん……」

鳴「江藤さん」

江藤「もしかして今、昼食から帰ってきたところ?」

鳴「…………」コクリ

江藤「そっか。私は食べ足りなくてさ。今から購買部に行こうとしてたんだ」

鳴「そうなの……」

江藤「見崎さんは何か購買部でお勧めのパンとかある?」

鳴「私は……コンビニしか利用しないから……」スッ

江藤「あ……」

鳴「…………」タッタッタ

江藤「もしかして嫌われてるのかな?」

江藤「……ま、無理もないよね」

江藤「じゃあ適当にサンドイッチでも買おうとするかな」フンフンフーン

――
―――
―――――

  放課後

恒一「ハァ……なんだか今日は見崎、素っ気なかったな。僕、何かしたかな?」

恒一「まあいいや。それより忘れ物早く取りに行かないと」

  ガラッ

恒一「ん?」

江藤「あれ? 榊原君じゃない」 

恒一「江藤さん……どうしたの? こんな時間に教室で」

江藤「うん。ちょっとクラブまで時間あるから暇潰してたところなんだ。榊原君は?」

恒一「僕は忘れ物取りに来たんだけど、偶然だね」

江藤「ふふ、そうだね」

恒一「えっと……確か机の中に置いてたはずだけど……」ガサゴソ

江藤「……………………」

支援

しえしえ

恒一「お、あったあった。これだ」

恒一「じゃあ江藤さん。忘れ物も見つかったし、僕は――」

江藤「ねぇ」

恒一「ん?」

江藤「良かったら、クラブまでの間、話相手になってくれないかな?」

恒一「え? ……僕と?」

江藤「うん」

恒一「………………」キョロキョロ

恒一「……二人きりで?」

江藤「ダメ?」

恒一「……! (う、上目遣いが……っ!)」

恒一「わ、分かった。僕なんかで良ければ……」

江藤「ありがと、榊原君」ニコッ

江藤さんスレとは……

有田さんと一緒の奴とシンクロの奴以来かな

江藤「ごめんね。なんだか無理言っちゃったみたいで」

恒一「いや、気にしないで。だけど江藤さん、まだクラブやってたんだね」

江藤「そうなんだよね。もうそろそろ引退だけど、できるだけやっておこうと思ってさ」

恒一「なんのクラブなの?」

江藤「水泳部だよ。今度、大きな大会があってね。今はそれに向けて特別メニュー組んで練習中」

恒一「へぇ、すごいね。水泳やってるんだ」

江藤「別にすごくないよ。水泳なんてやってる人、たくさんいるんだし」

恒一「そうかな? 僕、何か一つのことに打ち込める女の子って、素敵だし、かっこ良くて好きだけどな」 

江藤「……もしかしてそれって口説いてるのかな? それとも女の子には誰にでも同じこと言ってる?」ニヤリ

恒一「ええっ!? べ、別に僕はそんなつもりじゃ……っ!」

江藤「榊原君のことだから女の子には困ってなさそうだよね。きっと見崎さんも同じ手で抱き込んだのかな? そしてあわよくばこの私もと……」

恒一「ち、違うよ! 僕はそんな酷いことしないよ!」

江藤「きゃー誰か助けてー榊原君に狙われるー(棒)」

恒一「わっ、ちょっ、だ、誰かに聞かれたらどうすんの!?」

江藤「プッ」

恒一「へっ?」

江藤「ごめんごめん、冗談だよ冗談」ペロ

恒一「じょ、冗談……?」

江藤「そ。冗談。また引っかかっちゃったね。相変わらず純真だなー榊原君は」

恒一「ビックリするじゃないかーもう」

江藤「クスッ」

江藤「でもそういうところが榊原君の長所かもね」

恒一「長所って?」

江藤「うーん……すぐにからかいたくなるところとか?」

恒一「それって褒められてるんだろうか?」

江藤「どうだろ?」

恒一「江藤さんが言ったんじゃないか」

江藤「あははは、ごめんごめん。そうだったね」クスクス

恒一「………………」

江藤さんペロペロ

江藤「どうしたの? 何か言いたそうだけど」

恒一「いや、江藤さんって結構イメージしてたのと違う人なんだなー、って思って」

江藤「へぇ。興味深いね。榊原君は私のこと、どんな風にイメージしてたのかな?」

恒一「もっとこう、無口で淡々としてて、きつそうな感じ?」

江藤「あーなるほどねぇ。まあ一学期中はほとんど話したことなかったからね。無理ないかな」

恒一「だけど今はなんていうか、明るくて親しみやすい印象があるよ」

江藤「ありがと。そう評価してもらえると嬉しいです。ていうか元からこんなだったんだけどね」

恒一「じゃあ一学期、僕の前で冷たいようにしてたのはやっぱり……〈いないもの〉だったから?」

江藤「……あの時は、ね。言い訳なんてするつもりないし許してもらえるとは思わないけど、正直怖くて……」

恒一「そっか……」

江藤「ごめんね? 榊原君や見崎さんには酷いことしちゃったね」

恒一「いや、今更気にしてないよ。ただ、最近江藤さん、妙に見崎に話しかけてるみたいだから不思議でさ……」

江藤「ああ、それか……別に大した理由でもないんだけど」

恒一「何? もし良かったらその理由、教えてくれないかな?」

スク水江藤さんの画像はよ

江藤「自己満足、って言われればそれまでなんだけど、榊原君や見崎さんへのせめてもの罪滅ぼしかな?」

恒一「罪滅ぼし?」

江藤「うん。〈いないもの〉扱いしてあからさまに無視してたことのね」

恒一「……!」

江藤「本当は、いつかちゃんと見崎さんにも謝ろうとしてたんだけどさ。もし拒否されて嫌われちゃったら、って思うと普通に話しかけることぐらいしかできなくて……」

恒一「そんな理由だったんだ」

江藤「おかしいよね? 一学期、あんなに榊原君たちのこと無視してたのにさ……」

恒一「江藤さん……」

江藤「でも、ごめんなさい。本当にあの時は、災厄が怖かったの」

江藤「最初は私も半信半疑だったんだけど、3組の生徒たちが次々に死んでいって、いよいよ災厄の恐怖が実感できるようになると、次は私なんじゃないか、って不安になって……夜も眠れなかった。先生がみんなの前で自殺した時はもう本当に怖くて……怖くて……」

恒一「……そういえば江藤さん、あの時席で泣いてたね」

江藤「……うん。もう限界だったから。今でもたまに、夢で先生の自殺を繰り返し見るほどで、その度に災厄に悩まされてた時の恐怖が蘇ってくるの……」

江藤「合宿も、松子や珊に誘われたけど死ぬのが嫌でずっと家に篭ってた。合宿が終わって、しばらくして人づてに3組の災厄が終わったのを知った時は本当に嬉しかった」

江藤「これでもう死に怯えなくて済むんだ、普通に生きれるんだ、って一日中泣いてた……」

恒一「そうだったんだ……」

江藤「もう……嫌なの。昨日まで一緒に勉強していたクラスメイトたちが理不尽に死んでいくのも、死の恐怖に怯えるのも……っ!」ガタガタ

江藤「なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!」

恒一「江藤さん」ガッ

江藤「!!」ハッ

恒一「大丈夫?」

江藤「……さかき、ばら君」

恒一「安心して。災厄は終わったんだ。もう、江藤さんは怖がらなくていいんだよ」

江藤「……そうだね。ごめんなさい、ちょっと取り乱しちゃって……」グスッ

恒一「仕方がないよこればかりは。僕も、あの災厄で大切な人、たくさん亡くしちゃったからね……」

江藤さん(^ω^)ペロペロ

はよ

江藤「でも、どんな理由があれ、榊原君たちを無視しちゃったのは事実だから。こればかりは自分の中で決着着けときたくて」

恒一「それなら、いい方法があるよ」

江藤「え?」

恒一「江藤さんは〈いないもの〉の件で何かと見崎のこと気にかけてるようだけど」

江藤「うん」

恒一「それよりも見崎の友達になってあげてくれないかな?」

江藤「私が……見崎さんの友達に?」

恒一「そう。僕には勅使河原や望月がいるし、災厄が終わってほとんどの男子とも仲良くなれたけど、見崎はあの性格だし〈いないもの〉扱いされてた時の影響でどうも多くの女子とはまだ壁があるみたいなんだ」

恒一「それが可哀想でさ。良かったらこれを機に見崎と友達になってほしいんだ。江藤さんなら良い友達になれそうだし」

江藤「私はもちろんいいけど、見崎さんとしてはどうなんだろ?」

恒一「見崎は、あんまり顔には気持ち出さないけど、根は良い子だからきっと喜んでくれるよ」

江藤「そっか。特に見崎さんが嫌じゃなかったら、それでいってみようかな?」

恒一「うん。よろしく頼むよ」

江藤「でもその前に」

恒一「ん?」

江藤「榊原君は、私とは友達になってくれないの?」ニヤ

恒一「え? 江藤さんと?」

江藤「あら。何その反応? もしかして私みたいなとは友達になりたくないって?」

恒一「や、と、とんでもない! 江藤さんがいいならぜひ!」

江藤「ふふっ。ありがとう。よろしくね、榊原君」ニコッ

恒一「!」ドキッ

恒一「……う、うん、こちらこそよろしく江藤さん////」

江藤「……」クスッ

恒一「……、、、」

江藤さん可愛いなぁ

小悪魔やで 完全に翻弄されてる


  翌日・昼休み

恒一「ってわけで、江藤さんを昼食に誘ってみました」

江藤「誘われてみましたー」テヘヘ

鳴「……………………」

恒一「……………………」

江藤「……………………」

鳴「……………………」

恒一「……………………」

江藤「……………………」

鳴「………………そう」

恒一・江藤(何この間!?)

恒一「……あ、え、えっと、見崎?」

鳴「事情は理解したわ」

恒一「ほ、本当に?」

鳴「別にそんなこと気にする必要ないのに、江藤さんって変わってるのね」

江藤「う」

鳴「でも拒否する理由もないしね。好きにすればいいんじゃないかしら?」

江藤「……」ホッ

恒一「良かった。二人とも、仲良くなれたらいいね」

江藤「お、お手柔らかに……」

鳴「…………」スッ

江藤「!」

鳴「…………」モグモグ

江藤(あ、あれ? なんか素っ気ない……)

恒一「じゃあ僕たちもご飯食べようか」

江藤「あ、うん、そだね」

メーチャンカワイイ!

恒一「わぁ、江藤さんのお弁当、美味しそうだね」

江藤「榊原君のも美味しそうだよ」

鳴「………………」モグモグ

江藤「お、春巻き! このお弁当を作った人は分かってるね」

恒一「江藤さん、春巻き好きなの?」

江藤「うん、大好き」

恒一「じゃああげるよ」

江藤「いいの? やった! でも貰うだけじゃ申し訳ないから、私も何かあげるよ」

恒一「本当に? んーと、それじゃあから揚げとトレードしよう」

鳴「……………………」ムシャムシャ

恒一「はい、春巻きどうぞ」

江藤「ん。いただきました」

鳴「…………………………」モグモグムシャムシャ

江藤「じゃあこっちも。はい、から揚げね」

恒一「ありがとー。とても美味しそうだね」

江藤「ところでさ、まだ聞いてなかったんだけど」

恒一「ん? 何?」

江藤「榊原君はクラブとか入ってるの?」

恒一「僕は入ってないよ。もう3年だし。東京にいた頃は料理研究部とか入ってたけどね」

江藤「料理研究部? へぇ、榊原君、料理が得意なんだ?」

恒一「素人に毛が生えた程度だけどね。簡単なものは大体作れるよ」

江藤「すごいね。料理が得意な男の子ってなんだか憧れちゃうな」

恒一「そ、そう? なんだか照れるなぁ」テヘヘ

江藤「謙遜しない謙遜しない」

鳴「………………」バキベキッガブリ

恒一「江藤さんは料理とかしないの?」

江藤「するよー。榊原君ほど上手くないと思うけど」

江藤「でも以前、松子に振舞ってあげたら絶賛されちゃってさ。『悠ちゃんシェフになれるよ!』だって。もう、あの子ってば大袈裟だよね」

鳴ちゃん…頑張れ

恒一「大袈裟かな? 僕は、料理できる女の子って魅力的だと思うけどなぁ」

鳴「……………………」ガブガブゴクリ

江藤「またまたー。お世辞はいいって」

恒一「謙遜しない謙遜しない」

恒一・江藤「あはははは」

鳴「…………」グビグビグビグビプハー

恒一「江藤さんはクラブ、水泳部って言ってたっけ?」

江藤「うん。今度の大会が終わったら引退だけどね」

恒一「練習頑張ってね。僕、応援してるからさ」

江藤「ありがとう。そう言ってもらえると俄然やる気が出るよ」

恒一「ちなみに練習ってどんな風にやってるの?」

江藤「どんな風、って言われてもね。普通に学校のプールで、としか……あ、そうだ」

恒一「?」

江藤「なんなら今日の放課後、見学に来てみない?」

恒一「え? いいの?」

江藤「もちろん。邪魔したりクラブのみんなに迷惑かけなかったらね。どうかな?」

恒一「それなら一回見に行ってみようかな」

鳴「………………」モキュモキュゴクンカジカジ

江藤「じゃ、決まりだね」

恒一「うん。放課後、見崎と一緒に見学させてもらうね」

鳴「……」ピク

江藤「どうぞどうぞー。お待ちしてまーす」

バタフライする鳴ちゃん・・・アリだな

恒一「にしてもあれだな」

江藤「どうしたの?」

恒一「なんていうか江藤さんと話してると、会話が弾むね」

鳴「………………」ボリボリベキベキ

江藤「そう? 私としては普通に話してるつもりなんだけど」

恒一「それに懐かしい気がするんだ」

江藤「懐かしい……?」

恒一「まるで綾野さんと話してるみたいでさ。どことなく似てるところがあるんだよね、江藤さん」

江藤「……ああ、彩のことね……」

恒一「……? もしかして江藤さん、綾野さんと仲良かったの?」

江藤「うん。結構気が合ってさ。松子ほどじゃないけど、3組の女子の中では仲良かった方かな」

恒一「そっか。そうだったんだ。彼女のことは残念だったね……。もしまだ生きてたら、今も3組のみんなを元気付けてくれただろうに」

江藤「うん……」

恒一「あの災厄さえなければ、今頃3組のみんなで一緒に楽しい学校生活を送れてたのにな……」

鳴「……………………」

恒一「残念だな。綾野さんも、そして――」

江藤「ねぇ」

恒一「ん?」

江藤「今はこんな話、やめようよ。せっかく昼ご飯食べてるんだしさ……」

恒一「あ、そ、そうだね。ごめん、そこまで気が回らなくて……」

鳴「……………………」ムシャリ…

支援

江藤「それより榊原君、春巻き、美味しかったよ」

恒一「え、あ、そう? 喜んでもらえたなら何より。から揚げと交換した甲斐があるよ」

江藤「もしかしてだけど、このお弁当って榊原君の自作?」

恒一「そうだよ」

江藤「やっぱりぃ? すごいなぁ。機会があれば一度試しに榊原君の料理食べてみたいな」

鳴「……」ピタリ

恒一「それぐらいなら別に構わないよ。今度ごちそうしてあげようか?」

鳴「!」

江藤「いいの? 冗談で言っただけなんだけど」

恒一「もちろんいいよ。断る理由もないしね」

江藤「やった。それじゃあ、暇な時でいいのでお願いします」ペコリ

恒一「了解」ニコッ

鳴「……………………」

支援

江藤「それにしても屋上でご飯食べるのもいいもんだね。風も気持ちいいし」

恒一「でしょ? また近いうちおいでよ。一緒にお弁当食べよう」

江藤「ありがとう。普段は松子たちか奈緒美と食べてるからあまり来れないかもしれないけど、そうさせてもらうね」

鳴「ごちそうさま」スクッ

恒一・江藤「!」

恒一「あれ? 見崎、戻っちゃうの?」

鳴「そろそろ予鈴鳴りそうだしね」

恒一「もうそんな時間か。会話に夢中で気がつかなかった」

鳴「……じゃ、私、先に行ってるね」

恒一「あ、うん」

鳴「…………」スタスタスタ…

恒一「なんだろ? 今日の見崎、やけに素っ気ないな」

江藤「あ、しまった」

恒一「え?」

鳴ちゃんがまるで俺みたい(;_;)

根暗で気持ち悪いってことか

嫉妬深くてコミュ障ってことか

江藤「私ってば何やってるんだろ。そもそも見崎さんと仲を深めるために一緒に弁当食べに来たのに、ずっと見崎さんのこと忘れて榊原君とだけ話してた。やっちゃった……」

恒一「あ、そういえば僕も見崎のことすっかり忘れてて……」

江藤「どうしよう。嫌われちゃったかな?」

恒一「まさか。見崎はそんな子じゃないから大丈夫だよ」

江藤「でも彼女の場合、きっとそれだけじゃないと思うんだ」

恒一「……? どういう意味?」

江藤「榊原君、ずっと私と話してたでしょ? だからだよ」

恒一「?」

江藤「……榊原君って、もしかして鈍感?」

恒一「へ?」

江藤「あちゃぁ……こりゃみんな苦労したんだろうなー」

恒一「みんな???」

江藤「……」ヤレヤレ


 キーンコーンカーンコーン

  放課後

恒一「4時前か……」

恒一「そろそろ江藤さんのクラブ、見学に行こうかな?」

和久井「ゴホゴホッ」

恒一「!」

恒一「和久井君、大丈夫?」

和久井「あ、ごめん。心配しないで。今のはただの咳だから」

恒一「そっか、ならいいんだけど」

和久井「それに、最近は喘息、かなりマシになってきてるんだ」

恒一「本当に? それは良かったね。体大事にしてね」

和久井「うん、ありがとう」

恒一「ところで何読んでるの? 新聞?」

和久井「ああ、保健室の先生に貰ったんだ。喘息の記事が載ってるからって」

恒一「ふーん」チラッ

『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』

恒一「これ……また通り魔が出たんだ」

和久井「みたいだね。早く犯人、捕まるといいんだけど」

恒一「うん。確かにね……」

和久井「っと、ごめん。そろそろ帰らなきゃ。かかりつけの病院に行かなきゃならなくてさ」

恒一「そうなんだ。じゃあまた明日ね」

和久井「うん、またね」

恒一「……さて、僕もクラブの見学に行くとするか」


 美術室

恒一「お」ガララ

望月「あ」

恒一「望月」

望月「榊原君か。どうしたの?」

恒一「見崎に会いに来たんだけど」

望月「見崎さんなら中で絵を描いてるよ」

恒一「そっか」

望月「………………」

恒一「あ、いたいた」

望月「ねぇ、榊原君」

恒一「何?」

望月「今日、昼休み終わった時、江藤さんと教室に帰ってきてたけど一体どうしたの?」

支援

恒一「ああ、3人で一緒に屋上でご飯食べてたんだよ」

望月「へぇ、珍しい組み合わせだね」

恒一「そうかな?」

望月「でも見崎さん、榊原君たちより先に教室に帰ってきてたよね」

恒一「うん。なんだかご飯食べ終えたら1人だけそそくさと帰っちゃってさ」

望月「ふーん……勅使河原君が3人の関係を色々と勘ぐっちゃうのも無理ないか」

恒一「勘ぐるって? 勅使河原が何か言ってたの?」

望月「あ、ううん。気にしないで。いつもの勅使河原君の冗談だし」

恒一「?」

望月「それじゃあ僕ちょっと教室に用事あるから。またね」

恒一「あ、うん」


恒一「見崎!」

鳴「榊原君、どうしたの?」

恒一「江藤さんのクラブ、見学しに行こうよ」

鳴「……そういえばそんなこと約束してたわね」

恒一「行くでしょ?」

鳴「行かないわ」

恒一「え? なんでさ?」

鳴「私は別に江藤さんのクラブ、見学しに行くって約束したわけじゃないし」

恒一「でも……」

鳴「それに私は私で美術部があるんだから。榊原君1人で行ってきていいよ」

恒一「……えっと、見崎、なんか怒ってる?」

鳴「怒ってない」ツーン

恒一「僕、もしかして見崎に悪いことした? 昼休みもなんだか素っ気なかったし……」

鳴「別に素っ気なくない」ツンツン

恒一「…………、、、」

鳴ちゃんかわいい

鳴「それより早く行ってきてあげたら? 江藤さん、待ってるだろうし」

恒一「あ、そ、そうだね。それじゃあそうするよ」

鳴「………………」

恒一「えーっと、プールってどっちだったっけかな?」

鳴「ねぇ、榊原君」

恒一「うん? 何?」クルッ

鳴「江藤さん、ああ見えて災厄のことかなり引き摺ってるようだし、その辺りのこと気をつけてあげた方がいいよ」

恒一「災厄のこと……」



    ――『なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!』――



恒一「……………………」

鳴「明るく振舞ってるようだけど、彼女のような人ほどトラウマになりやすいからね」

恒一「……分かった。気をつけるよ」

  プール

恒一「お、やってるやってる。江藤さんはどこかな?」

部長「あら、どうしたの貴方? 部員じゃないようだけど」

恒一「あ、すいません。江藤さんに誘われて見学に来たんです。少し邪魔させてもらっていいですか?」

部長「江藤さんに? それならいいわよ。悪いけど今忙しいし、適当な所で見ててくれる?」

恒一「分かりました」

恒一「さて、と。江藤さんは……もしかして4番レーンで泳いでるのがそうかな?」

恒一「気持ち良さそうだな。ていうか速いな江藤さん」

江藤「ふぅ……」ザバッ

部長「すごいわね江藤さん、またタイム上がったわよ」

部員「今度の大会では優勝間違いなしですね!」

部員「さすが水泳部のエース!」

江藤「あはは、よしてよくすっぐったい。もう引退間近なんだし」

部長「江藤さん、ちょっと休憩したら? お友達も来てるようだし」

江藤「お友達? あ……」

恒一「やぁ江藤さん」

江藤「榊原君、本当に来てくれたんだ。嬉しい」

恒一「ふふ、頑張ってるね。にしても……江藤さん、競泳水着も似合ってるね」

江藤「え?」

恒一「…………」ジロジロ

江藤「ちょっと、何をジロジロ見てるの?」

恒一「あ、べ、別にそんなつもりじゃ////」アタフタ

江藤「榊原君って意外とムッツリ?」

恒一「ち、違うよ! なんか無駄がないスタイルでよく引き締まってるなー、って感心しただけで」

江藤「その発言、一歩間違えたらセクハラだよ?」

恒一「…………っ!!」

江藤「それに無駄がないスタイルってつまり、私が貧相な体だって言いたいの?」

恒一「ええっ!? ちがっ、そういう意味じゃなくて……っ!」

江藤「どうせ幼児体型ですよーだ」ベー

恒一「はわわ、ご、ごめん江藤さん……っ」

はわわ

江藤「もし悪いと思ってるなら、数分ほど私との会話に付き合いなさい」

恒一「え?」

江藤「嫌?」

恒一「そ、そんなことないよ! 僕、江藤さんに会いに来たんだし。いいよ、話そう」

江藤「ふふ、よろしい」

江藤「ところで、見崎さんはどうしたの?」キョロキョロ

恒一「見崎は誘ったんだけど、美術部で来れないんだって」

江藤「そっか、残念……。ま、来れない理由は多分クラブだけじゃないんだろうけど……」

恒一「……? どういうこと?」

江藤「さぁ? どういうことだろうね? 乙女心が理解できない榊原君にはちょっと難しいかもね」

恒一「乙女心? ……って?」

江藤「あーもういいや。この手の話題は先に進みそうにないから今はやめとこう」

恒一「えぇ~気になるなぁ」

江藤「そ・れ・よ・り」

江藤「見学してみてどうだった? 水泳部も面白そうでしょ?」

恒一「うん、そうだね。なんだか見てるだけで気持ち良さそうだし」

江藤「実際に泳いでみるとかなり気持ちいいんだよね、これが」

恒一「それにさ。江藤さんの水泳のフォーム、とても綺麗で驚いちゃったよ」

江藤「あはは、それはありがとう」

恒一「まるで人魚が泳いでるみたいだった」

江藤「それは褒めすぎ。そんなに大層なものじゃないって」

恒一「そうかな? 僕は感動したんだけどな。正直、目を奪われちゃったよ」

江藤「もう榊原君ってば。そういう口説き方ってどこで覚えるの? もしかして勅使河原君経由?」

恒一「な、そ、口説いてるわけじゃないって! 本当のことを言ったまでだし」

江藤「一応そういうことにしておいてあげますか」

恒一「ちょっ、ちょっとー」

江藤「ふふっ」

支援

誰かanother設定資料集にのってる江藤さんの(白黒の水着のじゃなくて立ち絵の)画像ハラディ

江藤「でも思い切り泳げるようになったのは良かったかな」

恒一「え?」

江藤「一学期は災厄が怖くて、水に近づけないことが多くてさ。たまに部活、休むこともあったし……」

恒一「あ……」

江藤「だけどさ、もう怖がらなくていいんだよね。自由に思い切り泳ぐことができる」

恒一「そうだね」

江藤「後は大会に向けて練習あるのみ。よーし頑張るぞ~!」ガッツポーズ

恒一「頑張って。応援してるからさ」

江藤「うん!」

部長「江藤さーん! そろそろいいかしらー?」

江藤「あ、部長が呼んでる。もう戻らなきゃ。榊原君はまだいる?」

恒一「僕はもうちょっとだけ見学させてもらうよ」

江藤「了解。それじゃあまた泳いでくるね!」ダッ

恒一「江藤さん、充実してそうで何よりだな」

  プルルルルル

恒一「ん? 電話? 勅使河原か」

恒一「はい、もしもし」

勅使河原『おーサカキ、今大丈夫か?』

恒一「ああうん。何か用事?」

勅使河原『いや、それがな、聞いてくれよ』

部員「よーいスタート!」

  ザブーン!

江藤(やっぱり水の中は気持ちいいな)スイー

江藤(にしても榊原君が本当に来てくれるなんて思わなかった)スイー

江藤(応援してくれてるし、大会で結果出せるように頑張らなきゃ)スイー

江藤(榊原君、見てくれてるかな……?)チラッ

江藤(って電話してるし!)スイー

江藤(もう、応援するって言ってくれたくせにぃ)スイー

江藤(とにかく今はたくさん泳いで――)

江藤(!?)

江藤(あ、足が……!)ゴボッ

江藤(足が……吊って……っ!)ガボゴボッ

支援

勅使河原『んじゃ明日、学校でな』

恒一「うん、また明日」ピッ

恒一「ったく……勅使河原の奴、なんで電話でエロビデオの感想語ってくるんだよ。どんだけ暇人なんだあいつは」

恒一「そういえば江藤さんはどうしてるんだろ?」

恒一「………………」キョロキョロ

恒一「あれ? おかしいな。江藤さん、どこのレーンにもいな……」

恒一「!!」

江藤「――――っ!!」ガボガボッ

恒一「江藤さん!!」ダッ

部員「だよねーw」ペチャクチャ

部員「あるあるw」ペチャクチャ

部長「ふふふふw」

恒一「おい! 人が溺れてるぞ!」ダダダ

部長「へ?」クルッ

  ザブーン!!

恒一「江藤さん!!」

江藤「――っ!!」ガブガブッ

恒一「江藤さん、しっかり!」ガシッ

江藤「ゲホッ! ゲホッ!!」

恒一「今、プールサイドまで連れてくからね」

部員「きゃー!! 江藤先輩が!!」

部長「江藤さん!!」

支援

恒一△

こりゃあ江藤さんルートやな


 ザワザワ

江藤「ゲホッ! ハァッ……ケホケホッ!」

恒一「江藤さん、大丈夫? 息はできる?」

江藤「ハァ……ハァ……」コクコク

恒一「良かった……」

部長「江藤さん、一体何があったの?」

恒一「多分、足を吊ったんだと思うよ。溺れかけてたし」

江藤「ハァ……ハァ……」

部員「そんな……江藤先輩が溺れかけるなんて」

部員「珍しいこともあるものなんですね」

ちっちゃいから足付かないのか

江藤「……よ」

恒一「え?」

江藤「……災厄よ」

恒一「!」

江藤「……3組の災厄は終わってなかったんだ……きっとそれで私が狙われて……」ガタガタ

部員「災厄?」

部長「って、なんのこと?」

恒一「……っ」

江藤「……きっとまた始まったんだ……死んだ3組のクラスメイトたちが……今度は私たちを狙って……っ」ブルブル

恒一「何を言ってるんだ江藤さん! そんなわけないじゃないか。災厄は終わったんだ」

江藤「終わってない!! じゃないと今の事故も説明がつかない! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない!! 災厄なんて嫌だ。死にたくない……っ!」ガタガタブルブル

恒一「江藤さん……」

今こそ抱きしめるんだ

―――
―――――

江藤「………………」ボー

恒一「どう? 少しは落ち着いた?」

江藤「………………うん」

恒一「そっか。良かった……」

江藤「…………ごめんね、迷惑かけて。せっかく見学に来てくれたのに」

恒一「ううん。気にしないで。僕は江藤さんの泳ぐ姿見れただけで満足だから」

江藤「…………榊原君は優しいね」

部長「江藤さん」

江藤「部長……」

部長「気分はどう?」

江藤「……一応大丈夫」

部長「もしまだ続けられるなら続けてもいいけど……。それとも今日は大事を取って帰る?」

江藤「じゃあ帰ろうかな。今日はこれ以上、泳げる気分じゃないから」

部長「分かったわ。気をつけて帰ってね」

江藤「………………」コクン

恒一「あ、僕、送るよ」


  下足箱

恒一(江藤さん、まだかな?)

江藤「ごめんね榊原君。ちょっと着替えるのに手間取っちゃった」

恒一「それじゃあ行こうか」

江藤「あの……別にそこまで気を遣わなくていいんだよ? 家なら一人で帰れるし」

恒一「いや、僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけないよ」

江藤「真面目だね榊原君は。それじゃあ今回は甘えちゃおうかな」

支援

しえ

最高や 江藤さんかわええ

江藤「遅くなったけどありがとうね榊原君。榊原君が助けてくれなかったら私、どうなってたか……」

恒一「礼はいらないよ。当然のことをしたまでさ」

江藤「ったく、かっこいい台詞真顔で言っちゃってくれちゃって」

恒一「僕は至って真剣だよ。もう目の前でクラスメイトが死ぬ姿は見たくないしね……」

江藤「そうだね……」

恒一「………………」

江藤「………………」

恒一(あ、しまった。気まずい空気になっちゃった。話題変えないと)

恒一「そ、そういえばさ」

江藤「ん?」

恒一「江藤さんは普段、家でどんなことしてるの?」

江藤「何それ? 女の子のプライベート聞いて何企んでるの?」クスッ

恒一「ええっ!? な、何も企んでないよ。ただちょっと聞いてみただけで……」

江藤「ふふ、そっかそっか。まあそんな期待するほどのものじゃないけどね。勉強したり、水泳のビデオ見たり、雑誌読んだり、とかが大半かな?」

恒一「へぇ、意外と普通」

これって合宿後の話?野暮なツッコミだが
それだと恒一・勅使河原・望月が明るすぎない?
3人と鬱になってもおかしくない体験したけど

江藤ちゃんはオナニーしてないと思う。
エロ娘は、鳴ちゃん、多々良さん、小椋ちゃん、綾野ちゃんあたりかしら。

江藤「残念でした。もしかして編み物とかぬいぐるみを愛でるとか、そういう女の子系の期待してた?」

恒一「うーん、どうだろ?」

江藤「ま、色気のない女の趣味なんてこんなもんです」

恒一「色気がないだなんて……」

江藤「松子や珊に言わせると、女の子オーラがいまひとつ足りないらしいです。ていうか男の榊原君から見ても実際そう思うでしょ?」

恒一「いや、僕は江藤さんは可愛いと思うけどな」

江藤「へ?」

恒一「江藤さん、十分可愛いよ」

江藤「えっと……も、もしかしてからかって言ってる?」

恒一「からかってなんかないよ。本当のこと言ったまでだし。江藤さんって3組の女の子の中じゃかなり可愛い方だと思うけどなぁ」

江藤「なっ、そっ、なぁっ!? ちょ、直球すぎでしょ……っ////」

恒一「直球って?」

>>96
ホント野暮なツッコミだな

江藤「そ、そういうのはもっと段階踏んで褒めるもので、い、いきなりストレートに『可愛い』だなんて言われてもくぁすぇdrftgyふじこlp……っ////」アタフタ

恒一「ごめん、何言ってるのかよく分からない」

江藤「バカぁ!!」ドンッ

恒一「ぷおっ!?」

江藤「……ったく、油断ならないなぁ榊原君は! 心臓に悪いっていうか。そっか、こういう手を使って見崎さんを落としたんだね?」

恒一「なんのこと?」

江藤「もういいです!」

恒一「もしかして江藤さん、まだ体調回復してない?」

江藤「………………」マッタクコノオトコハ…ヤレヤレ

江藤「まあいいや。そもそもこんなんで動じる私じゃないしね」

藤巻「おー悠じゃん。どうしたのこんな所で?」

江藤「い!?」

江藤さんやっと照れたな もはや陥落寸前

藤巻「ん? 一緒にいる男は例の……」

恒一「やぁ藤巻さんじゃないか。偶然だね」

藤巻「……ちょっとちょっと、これは一体どういうこと?」

恒一「何がだい?」

藤巻「もしかして二人、付き合ってんの?」

江藤「な!?//// そ、そんなわけないでしょ! ただ色々あって二人で帰ることになっただけ!」

藤巻「あ、そう」

江藤「もう、なんで狙ったかのように急に現れるかな奈緒美は」ブツブツ

藤巻「いや、私がどこにいようと私の勝手でしょ」

江藤「くっ……それはそうだけど」

藤巻「ていうか珍しい組み合わせだね。榊原君っていつも見崎さんと一緒にいるのに」

恒一「実は江藤さん、クラブ早退することになってね。見送ってあげてる最中なんだ」

藤巻「……何それ? 悠、どうかしたの?」

江藤「ううん、別になんでも。大したことじゃないから気にしないで」

藤巻「ふーん」

藤巻「でも……」チラッ

恒一「?」

藤巻「榊原君、悠を見送るってどこまで?」

恒一「僕は家までのつもりだけど」

江藤「え? そんなっ、そこまでしてもらったら悪いよ」

恒一「さっき言っただろ? 『僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけない』って。こればかりは中途半端は嫌なんだ」

江藤「だけど、わざわざ私の家まで送ってそこから自分の家まで帰るのってしんどくない?」

恒一「関係ないよ。僕の意思でやってることなんだ。万一、帰宅途中で江藤さんが倒れたりしたら大変だからね」

江藤「分かった。分かりました。ここまで真剣だと逆に断る方が申し訳ないね。じゃあお願いします」

恒一「ああ」

藤巻「ちょっとちょっと悠」ツンツン

江藤「ん? 何?」

藤巻「本当にいいの? 家まで送らせて」ヒソヒソ

江藤「……? だって榊原君がそう言うんだし、特に断る必要もないし」ヒソヒソ

藤巻「ハァ……悠ってば、男に興味ないくせにこういうのには無用心なんだね」ヒソヒソチラッ

>>97
江藤もしてるよ

恒一「?」ニコニコ

江藤「……どういうこと?」

藤巻「分かんない? 彼、悠の家に着いたら適当に理由つけて家に上がるつもりだよ」

江藤「そんなことしてなんの意味が?」

藤巻「決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ」

江藤「なっ!?」

恒一「?」

藤巻「そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!」

江藤「なっ、何言ってるの奈緒美!?//// 榊原君がそんなことするわけないでしょ……っ!//// ていうか誰が幼い体だ!」 

藤巻「いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって」

江藤「せ、せいよ……っ!?////」カァァ

藤巻「きっと悠の部屋に着いたら悠をベッドに押し倒して一気にセックs――」

江藤「わーわーわーわー!!!////」ジタバタジタバタ

恒一(二人でさっきから何やってんだろ?)

藤巻「ま、いいじゃん。男を知るにはいい機会でしょ。処女の一つや二つ彼にあげちゃえ☆」

江藤「しょ、しょじょ!?////」

恒一「しょしょじょ? ッテナニ?」ジッ

江藤「!」ハッ

江藤「ぅぅぅ……////」ボンッ

藤巻「まあそういうわけだから。応援してるよ悠」バンバン

恒一「えっと、二人ともなんの話してるの?」

藤巻「あ、榊原君も悠のこと優しくしてあげてね! 明日には結果聞かせてもらうからさ!」

恒一「はぁ?」

江藤「奈緒美!!!」

良いアシスト

藤巻「そんじゃお二人さん、頑張ってね~!」フリフリ

恒一「行っちゃった……。なんだったんだろう? ねぇ江藤さん、頑張るってなんのこと?」

江藤「し、知らない!!////」

恒一「なんか江藤さん、顔真っ赤じゃない?」

江藤「~~~~~っ////」

恒一「ていうか江藤さんって意外と落ち着かないところあるんだね」

江藤「う、うっさい!!//// 榊原君のバカ!! アホ!!」

恒一「えーなんでいきなり罵られてるんだ僕?」

江藤(も~う、奈緒美のせいで~////)ギリギリギリ

恒一「………………」トコトコ

江藤「………………」トコトコ

恒一「………………」チラッ

江藤「何?」

恒一「もう怒ってない?」

江藤「最初から怒ってません」

恒一「良かったぁ……」ホッ

恒一「江藤さんに嫌われたんじゃないかと思って心配しちゃったよ」アハハハ

江藤「……………………」

恒一「それで、江藤さんの家はまだなの?」

江藤「ここだよ」

恒一「え? あ、本当だ。表札に『江藤』って書いてあるね」

江藤「ま、しがないサラリーマンの一般家庭ですが」

江藤さんはスレンダーってだけで別に幼くはないだろ?

恒一「さてと、それじゃあ江藤さん」

江藤「!!!!!!」

江藤「い、言っとくけど家の中には上がらせないからね……っ!!」

恒一「……? う、うん。僕もそのつもりだけど……」

江藤「へ?」

恒一「なんでそんなことを……?」

江藤「べ、別になんでもないっ……!////」カァァ

恒一「そう。なら僕、このまま帰るけどいいよね?」

江藤「あ、待って」

恒一「どうしたの?」

江藤「その……ありがとね? プールで助けてもらった上に家まで送ってくれて……。本当感謝してる」

恒一「いいっていいって。困った時はお互い様さ」

江藤「あの時……私、本当に死ぬかと思って……。彩や死んだクラスメイトたちの死に際の気持ちが少しだけ分かった気がするの……」

恒一「江藤さん……」

江藤「災厄は終わったはずなのに……。まだ体は、恐怖から抜け出せてないみたい……」

江藤「ってごめんね。私ったらまたこんなことを……」

恒一「………………」

江藤「………………、、、」

恒一「江藤さん」スッ

江藤「!」

恒一「この紙、渡しとくよ」

江藤「これは?」

恒一「僕の携帯電話の番号。どんな些細なことでもいいから、何か悩んだり困ったりした時は気軽にかけてきて。相談に乗るからさ」

江藤「いいの?」

恒一「もちろん。僕たち友達だろ?」

江藤「榊原君……」ジワッ

江藤「……うん、ありがとう。私の携帯に登録しとくね」

恒一「ああ、電話待ってるからさ」

これは惚れる


  恒一の部屋

鳴『そう。そんなことがあったのね』

恒一「見崎も江藤さんに携帯の番号渡したら? また霧果さんに携帯、買ってもらったんでしょ?」

鳴『前にも言ったでしょ? 私、この機械好きじゃないって。だからあまり他人に番号教えたくないの』

恒一「でも、江藤さんとは友達になったんだろ?」

鳴『……ま、一応そういうことになってるんでしょうけど』

恒一「ならいいじゃないか」

鳴『……………………』

恒一「な、なんでそこで黙り込むのさ?」

鳴『それより』

恒一「ん?」

鳴『江藤さん、大丈夫だったの?』

恒一「ああ、大丈夫だよ。特に怪我もなかったし」

鳴『体じゃないわ。心の方よ』

恒一「心?」

鳴『プールで溺れて死に掛けて、かつてのトラウマが蘇ったのなら心に深い傷を負ってもおかしくないわ』

恒一「!」

鳴『また錯乱しなきゃいいけどね。江藤さん、ああ見えて精神的に弱いところありそうだし。先生が教室で自殺した時も一番ショック受けてたのは彼女でしょ?』

恒一「……そうだけど、そういう可能性もあるから携帯電話の番号渡したんだし、一応は大丈夫だと思うよ?」

鳴『言い切れる? あの災厄でクラスの3分の1が死んだのよ? まだ完全に立ち直ってない可能性が高いわ」 

恒一「それは……」

鳴『そもそも榊原君はどうなの?』

恒一「僕?」

鳴『あの合宿から一ヶ月以上経って死人は一人も出てないけど、榊原君は怖くないの? 災厄はまだ続いてるんじゃないか、って不安にならないの?』

恒一「それは……たまにはそういうことも考えるけど……」

鳴『なら江藤さんはもっと悩んでるはずよ。まだ油断はできないわね』

恒一「………………」

恒一「……それは……うん」

鳴『まあ、災厄は間違いなく終わってるはずなんだけどね』

霧果『鳴、ご飯の時間よ』

鳴『あ、霧果が呼んでる。ごめん、もう切るね』

恒一「分かったよ」

鳴『それじゃあ』

恒一「またね」ピッ

恒一「ふぅ……」

恒一「災厄か……」ゴロン

恒一「……………………」

―――――
―――
――

かっけえ

霧果さんがちゃんとお母さんしてる……!

支援

鳴「……………………」キョロキョロ

恒一「見崎!」

鳴「あ、榊原君」

恒一「ごめん。着替えるのに手間取って遅くなっちゃった」

鳴「ただ着替えてただけで15分も遅刻?」

恒一「本当にごめん!」

鳴「まったく……女の子を待たせるなんて」

鳴「でも、久しぶりのお出かけだし……」

恒一「?」

鳴「今日は特別に許します」

恒一「はは、そうしてもらえると助かるかも」

『まもなく2番線ホームに電車が参ります。危険ですので白線の内側に並んでお待ちください』

恒一「楽しみだね、美術展」

鳴「楽しみなのに遅刻するんだ」

恒一「……まだ怒ってる?」

鳴「冗談よ。もう怒ってないわ」

恒一「良かった……」ホッ

鳴「せっかくの機会なんだし、楽しまなきゃ損だもんね」

恒一「そうだね」

鳴「クスッ」

恒一「ふふ」

『電車がホームに参ります。電車がホームに参ります』

しえ

『電車がホームに参ります。電車がホームに参ります』

恒一「お、来た来た」






 「恒一君」






恒一「へ?」クルリ

  ドンッ!

鳴「!」


  キキィィィィィッ!!!! グシャァァァァァッ!!!!


恒一「……え?」ビチャッ

oh...

えええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!

「きゃあああああああ!!!」

「女の子が轢かれたぞ!!!」

「駅員呼べ!!!」

恒一「……みさ……き?」




「どうして……」




恒一「ハッ!」クルリ



「どうして私を……見殺しにしたの?」


恒一「!!!!!!!!!」


「痛いよ……恒一君……苦しいよ」


恒一「あ、う、わ……ああ……」


「許さない……殺してやる……恒一君も……3組のみんなも……絶対に」





「この私が、災厄になって3組を全滅させてやる……っ!!!!」





恒一「うわああああああああああああああああああ!!!!!!」

どういう事だ…

支援


  ガバッ!!!

恒一「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ」

恒一「………ハァ……ハァ……夢……?」

恒一「…………………………」

恒一「…………………………」

恒一「……………………はは……は」

恒一「夢、か……」

恒一「…………………………」

はいはい夢おち夢おち


  翌日・学校

望月「あ、榊原君。おはよう」

勅使河原「よーっす、サカキ!」

恒一「……おはよう二人とも」

勅使河原「なんだなんだ? やけに今日は元気ねぇな?」

望月「寝不足?」

恒一「気にしないで。なんでもないから」

恒一「ハァ……」トボトボ

望月「榊原君どうしちゃったんだろ? あんなに落ち込んじゃって」

勅使河原「深夜のアダルト番組見逃したんじゃねぇの?」

恒一「………………」

江藤「おっはよ! 榊原君!」

恒一「わっ!? 江藤さんか……ビックリした」

江藤「なんだか朝から憂鬱げだね。ダメだぞ、若い者がそんな溜息ばっかり吐いてたら」

恒一「あーうん、ちょっとね……」

江藤「?」

望月「あれ? 榊原君ってあんなに江藤さんって仲良かったっけ?」

勅使河原「おいおいサカキも隅に置けねぇな。鳴ちゃんとは倦怠期なのか?」

  ガララ

鳴「…………」

勅使河原「お、正妻の登場だ。これは修羅場だな」ニヒヒ

望月「やめなよ勅使河原君」

恒一「あ、見崎」

恒一「無事だよ、ね……?」

鳴「……?」

江藤「……?」


  昼休み・屋上

江藤「今日も誘われたので、昼食に同席させて頂いたんですが……」

鳴「……」モグモグ

江藤「何故か誘ってくれた張本人が暗い!」

恒一「……ハァ」

江藤「ねぇ見崎さん、榊原君どうしちゃったの?」ヒソヒソ

鳴「さぁ? 私も知らない」ゴクゴク

江藤「昨日はあんなんじゃなかったのに……」

鳴「寝不足かも」ガブリガブリ

江藤「いやいや、なわけないでしょ。あの落ち込みよう……」チラッ

恒一「…………」ボーッ

鳴「江藤さんは大丈夫なの?」ゴキュゴキュ

江藤「え? 何が?」

鳴「榊原君から昨日聞いたけど、プールで溺れかけたんでしょ?」モシャモシャ

江藤「あーそれ? 恥ずかしながらドジってしまいまして。でも体の方は大丈夫。この通り健康そのものです!」

鳴(体の方は、か)

鳴「ならいいんだけど……」ジュルジュルメコッ

江藤「だけど肝心の彼が朝からあんな感じで……」

鳴「家で何かあったのかもね」バキバキゴシャッ

江藤「なら一度ちゃんと訊いてみるべきだね」

恒一「…………」ボーッ

江藤「ねぇ、榊原君」

支援

鳴ちゃん何食べてるん?

恒一「……ん? 僕のこと呼んだ?」

江藤「呼んだよー。ちょっといいかな?」

恒一「……なんだい?」

江藤「榊原君、朝からずっと落ち込んでるようだけど一体どうしたの?」

恒一「……あー別になんでもないから。無視して二人でご飯食べてて」

鳴「……………………」

江藤「そういうわけにはいかないよ。そもそもお昼ご飯に誘ってくれたの榊原君じゃない」

恒一「……そういえばそうだったね」

江藤「何かあったの? もし良かったら話だけでも聞いてあげるよ?」

恒一「うん……じゃあ……」

>>144
何故か骨付き肉を思い浮かべた

鳴ちゃんの食事音恐ぇーよ

江藤「なるほど、そんな夢を見たんだ」

鳴「縁起でもないわね、ホームから落とされて轢死とか」

恒一「う、ごめん……」

江藤「それで、榊原君はその夢を見てからずっと罪悪感に苛まれてる、ってことでいいのかな?」

恒一「罪悪感というか……そもそも僕がもっと上手く立ち回れてたら、災厄の犠牲者も最小限に抑えられたんじゃないか、って思ってさ」

江藤「…………」チラッ

鳴「…………」チラッ

恒一「大切な人、たくさん死んじゃったから余計にね」

江藤「でもそれは榊原君が負い目を感じることじゃないよ。あんな常識が通じない状況で、例えどんなに優れた対策を立てても結局災厄の前では無意味だったかもしれないし」

鳴「そもそもは3組に起こる災厄という現象がすべての原因だからね。まともに対応できなかったのが悪い、って言って誰かを責めるならキリがない話だよ」

江藤「私も昨日あんな無様に錯乱しちゃったからね。色々と災厄のことでナーバスになっちゃう気持ちは分かるけど……」

鳴「それでも榊原君が気に病むことじゃない」

江藤「だね」

恒一「……分かっちゃいるんだけどさ」

恒一「…………ハァ」

支援ぬ

江藤「結構ショック受けてるみたいだね」ヒソヒソ

鳴「いつかこういう日が来るとは思ってたけど、意外と早かったかも」ヒソヒソモグモグ

江藤「このまま榊原君に落ち込まれたままでも困るしね」ヒソヒソ

鳴「彼のことだからすぐに立ち直ってくれるとは信じてるけど」ヒソヒソゴクゴク

恒一「………………」ボーッ

江藤「あ、そうだ。ならこんなのはどう?」ヒソヒソ

鳴「え?」モシャモシャ

江藤「ゴニョゴニョゴニョゴニョ」

鳴「!」

江藤「で、ゴニョゴニョゴニョゴニョ」

鳴「……それは別に構わないけどただ私……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」

江藤「そんなの関係ないって。なんなら私が見崎さんにゴニョゴニョゴニョ」

鳴「むー……じゃあそれならいいかも」

江藤「決まりだね」

さるよけ

江藤「ねぇ榊原君!」

恒一「……何?」

江藤「今日の放課後なんだけどさ!」

恒一「?」

―――――
―――

さるよけ


  放課後・下足箱

江藤「ごめんね榊原君、無理言っちゃってさ」

恒一「構わないけど……なんで二人していきなり、僕の家に行きたい、なんて言い出したの?」

江藤「まあまあ細かいことは気にしない。男の子なら素直に喜ぶもんだよ? 女の子二人も家に招待できるんだからさ」

恒一「うーん……」

江藤「ほらほら! 早く榊原君の家、行こ?」

恒一「……分かったよ」

恒一「でも見崎がいないようだけど?」

江藤「見崎さんはクラブで一時間ほど遅れるから『先に行ってて』だって」

恒一「ていうか江藤さんは水泳部どうしたの?」

江藤「今日は水泳部はお休み。また明日から猛特訓だけどね」

恒一「そうなんだ。じゃあ行こうか」

江藤「うん!」

さるよけ

支援

2人とも天使やな

江藤「ここが榊原君の家かぁ」

恒一「さ、上がって。部屋まで案内するよ」

江藤「あ、はーい。お邪魔しまーす」

恒一「にしても江藤さんが自分の家に来ることになるなんて、思ってもみなかったよ」

江藤「それは私も同じ。世の中分からないもんだね」

恒一「今日はお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、老人ホームの交流会で出かけてるから楽にしてくれていいよ」

江藤「りょーかい」

江藤「あ」ピタッ

恒一「どうかした?」

江藤「ここ、仏間だよね?」

恒一「そうだけど」

江藤「もし良かったら、線香上げていいかな?」

恒一「え? あ……」チラッ

恒一「もちろん。そうしてもらえると嬉しいよ」


  チーンチーン

江藤「……………………」

恒一「………………」

江藤「……はい、済んだよ」

恒一「わざわざありがとうね」

江藤「ううん。これぐらいはね」

恒一「それじゃあ、僕の部屋はこっちだから」

江藤「うん」



恒一「着いたよ。ここが僕の部屋だ」ガラッ

江藤「おーなんか意外とさっぱりしてる」

恒一「つまらない部屋だけど、適当にくつろいで」

江藤「ありがとー。ではお言葉に甘えて、適当にくつろいどきます」スッ

支援

江藤「…………」キョロキョロ

江藤「ここが榊原君の部屋か……」

江藤(なんだか榊原君の匂いがする……)

江藤「………………、、、」

江藤(……ていうか男の子の部屋、入ったの初めてなんだけど)

江藤(やっぱり女の子の部屋とは根本的に違うんだなー)

江藤(って! ちょっと待ってよ。よく考えたら私……榊原君の部屋で榊原君と二人きり!?)チラッ

恒一「?」

江藤(うわ、何気にすごいシチュエーションじゃん)

江藤(……どうしよう、こんなの慣れてないよ)ソワソワ

江藤(はっ!!)



    
    ――藤巻『決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ』――



江藤(な、なんでこんな時に奈緒美の言葉が!?)




    ――藤巻『そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!』――



江藤(ないないない! 絶対ないから!! そもそも私から榊原君の家に行きたい、って言ったんだし!)



    ――藤巻『いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって』――



江藤(そんな……そんなの……榊原君に限って……)チラッ

恒一「?」

江藤(わーわーわー!!//// どうしよう奈緒美!? 私そんなの無理だよ!! 心の準備もできてないのに……っ////)

恒一「江藤さん?」

江藤「!!!!!!」ビクゥッ

一応全裸になった

江藤「い、言っとくけど指一本触らせないからね……っ!!//////」

恒一「え? 何が?」

江藤「へ?」

江藤「あ」

江藤「//////」カァァァ

江藤(あああああああああ!!!! 私のバカ! アホ! カス!! 何一人で暴走してんのよおおおおおおおおお)

恒一「…………」

江藤(うううう……)

恒一「……………………」

江藤「………………、、、」

恒一「江藤さん」

江藤「…………なんでしょうか?」

恒一「飲み物持ってこようか?」

江藤「……お願いします」ズーン

江藤「…………」ゴクゴクゴク

江藤「……フゥ」

恒一「少しは落ち着いた?」

江藤「さ、最初から落ち着いてます……っ」

恒一「そう? さっき一人で怪人二十面相してたようだけど」

江藤「あ、あれは……っ! そんなんじゃなくて……っ!」

恒一「だけど僕、表情豊かな江藤さんも好きだけどな」

江藤「……え?」

恒一「なんか嘘偽りない、ありのままの江藤さんを見れるからかな? 仲良くなる前は江藤さん、クールな印象があったし」

恒一「それに江藤さんと話してると不思議と元気が沸いてくるんだよね」

江藤「榊原君……」

恒一「僕、江藤さんと友達になれて嬉しいよ。君みたいな子と一緒にいると人生楽しいんだろうな」

江藤「!」トクン

恒一「こんなことならもっと早く江藤さんと友達になっておけば良かったね」

江藤(なんだろう……この胸が熱くなる感じ……。それに、榊原君と話すようになってから日に日に増していくこの感覚……)

それが恋や

恒一「江藤さんもそう思わない?」ニコッ

江藤「………………、、、」

江藤「わ、私も……もちろん、そうだけど……」

江藤(彼のそばにいると、不思議と胸が心地良い……)ギュッ

  プルルルルルルル

江藤「!!!!!!」

恒一「あ、電話だ。出ていいかな?」

江藤「……ど、どうぞ」

恒一「もしもし? 見崎?」

江藤(……相手は見崎さんか)

恒一「え? うん。そうだよ。江藤さんも一緒にいるよ」

江藤「……………………」

恒一「そっか分かった。もうそろそろ着くんだね?」

江藤(あ、見崎さん、もう来ちゃうんだ……)

恒一「玄関開いてるし、勝手に入ってくれていいからね。僕の部屋、前に来たことあるから分かるでしょ?」

江藤(ふーん……見崎さん、前に榊原君の部屋来たことあるんだ。ま、当然だよね。以前から仲良かったんだから)

恒一「ははは、そうだね」

江藤(……榊原君、相手が見崎さんだとあんなに嬉しそうに……)ズキン

恒一「うん、うん。いいよそれぐらいなら。ふふ、分かってるって」

江藤(いつまで話してるんだろ? なんかつまんないなぁ……)チラッ

江藤(ん? あれ? なんだろあの布団の下からはみ出てるやつ)ゴソゴソ

江藤(え……こ、これってまさか////)

恒一「じゃあ待ってるからね。また後で」ピッ

恒一「ふぅ……」

江藤「さ・か・き・ば・ら・くん」

恒一「なんだい江藤さ……!?」

江藤「この本は何かなぁ~?」ニヤニヤ

恒一「ど、どこでそれを!?」

江藤「布団の下からはみ出してたよ~。ダメだぞ、大切なものはちゃんと隠しておかないと♪」

イケメンで天然タラシなんて落ちない方がおかしいじゃないですかー

江藤さん頑張れ

なんだよ江藤さんメインかよ





ふむ 素晴らしいSSだ 続けよ

恒一「……っ!」

江藤「榊原君もやっぱり男の子だね。こんな本持ってるなんて」

恒一「ち、違うんだ! それは勅使河原が無理やり僕にくれたやつで……っ!」

江藤「へぇ、そうなんだぁ?」

恒一「お願いだから返してくれないかな?」アセアセ

江藤「ふむふむ。この表紙を見る限り、榊原君は胸が大きくて眼鏡をかけた年上の看護婦さんが好きなんだね? うわぁ榊原君ってばムッツリ~」

恒一「あうう……////」

江藤「見崎さんが来たら言いつけちゃおっかな?」

恒一「そ、それだけはやめてくれ!!」

江藤「え~どうしよっかな~?」ニヤニヤ

恒一「この通りです!! どうか、どうかそれを返してください江藤様!!」

江藤「ふふ、だ~め」

恒一「くっ……」

おい、朝まで残しておいてくれよ

俺も寝るからあとは頼む

恒一「こうなれば仕方がない。実力行使だ」

恒一「とうっ!!」バッ

江藤「はいはい、ご苦労さん」シュバッ

恒一「ぬおおおおお」バッ

江藤「取れるものなら取ってみなさい」シュババッ

恒一「くぅ~……おりゃあああああああああ!!!!」

江藤「え? ちょっ」

江藤「きゃっ」

  ズダーン!

恒一「よし! 取り返したぞ!!」

恒一「って、あ……」

江藤「!」

  ※恒一君が江藤さんを押し倒した状態です

恒一「……あ……その……ごめん……」ドキドキ

江藤「……う、うん……」ドキドキ

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

パンツ吹き飛んだ

恒一「………………、、、」

江藤「………………、、、」

  ガラッ

鳴「榊原君、入るよ」

恒一「え?」

江藤「え?」

鳴「!?」

恒一「…………………………」

江藤「…………………………」

鳴「…………………………」

鳴「……ふぅん。榊原君と江藤さんって、そういう関係だったんだ」

恒一「ち、違うんだ見崎! これはただの事故なんだ!!」ババッ

江藤「そ、そう! 事故なの事故!!」ババッ

パンツが解散総選挙した

鳴「気にしなくていいよ。お邪魔そうだし、私、帰るから」

恒一「だーかーらー違うんだよ! ちょっとした弾みであんな態勢になっただけなんだ!! ねぇ江藤さん?」

江藤「うんうん! 私が悪ふざけで取った榊原君のエッチな本を榊原君が取り返そうとした末にああなっただけで……」

鳴「エッチな本?」

恒一「げ」

江藤「あ」

鳴「へぇ、榊原君ってそんなの持ってたんだ」

恒一「江藤さん!」

江藤「ご、ごめんなさい。つい……本当はバラすつもりじゃなかったんだけど、あはは……」

恒一「トホホ……」

GREAT

鳴「なるほど。そういうことだったのね」

江藤「そういうことだったんです。別に襲われてたわけじゃないから、榊原君を信じてあげて」

恒一「いや、その言い方なんかフェアじゃないよね?」

鳴「でも榊原君がエッチな本を隠し持ってたのは言い逃れのできない事実」

恒一「う……」

鳴「でしょ?」

恒一「そうだけど……別にエロ本の一冊持っててもいいだろ? 僕だってこれでも立派な男子中学生なんだ!!」ドン

江藤「私も最初は驚いたけど年頃の男の子だしね……そこまで責めることじゃないかも」

鳴「確かに言われてみれば……」チラッ

エッチな本『メガトン級おっぱい大特集! ビッグサイズは男のロマン』

鳴「やっぱり許さない」

恒一「なんでだよ!?」

江藤「まあその表紙見るとやっぱりそうなるよね」

恒一「どっちなの江藤さん!?」

鳴「ということでこのいかがわしい本は没収決定」

江藤「決定~♪」

恒一「チクショオオオオオオオオ!!」

鳴「うるさい」

恒一「……はい」ショボーン

鳴「江藤さん、買ってきたよ」ガサゴソ

江藤「お、ありがとー。ごめんね? 一人で行かせちゃって」

鳴「ううん。これぐらいはやっておきたかったから」

恒一「何やってるの二人で? ていうかその買い物袋は何?」

江藤「それなんだけどさ榊原君、ちょっとキッチン貸してくれる?」

恒一「キッチン? 別にいいけど、なんでまた……?」

恒一「あ、もしかして料理作るの!? それなら僕も――」

鳴「ダメだよ」

恒一「へ?」

鳴「今回は榊原君には作らせません」

恒一「え? え?」

恒一「どういうこと?」

母親いないもんね 愛情注いでやらんとね

恒一「ねぇ、僕なら色々と料理教えられるよ? 本当にダメなの?」

江藤「はいはい。榊原君はキッチンから退散する」グイグイ

恒一「えー僕の家なのにぃ。ていうか見崎って料理できないでしょ? 大丈夫なの?」

鳴「うるさい(怒)」グイグイ

江藤「榊原君に手伝ってもらうと意味ないんだよね。ごめんねぇ」

恒一「意味がない?」

江藤「じゃ、呼ぶまで待っててね」ピシャッ

恒一「あぁん」

江藤「そんなに榊原君、料理一緒に作りたかったのかな?」

鳴「元料理研究部の血が騒ぐのかも」

江藤「残念だけど、榊原君の手料理は次の機会ってことで。じゃあ始めようか?」

鳴「……本当にするの?」

江藤「一応キッチンの使用許可はもらったし、食材も見崎さんが買ってきてくれたからね」

鳴「……そうじゃなくて。榊原君も言ってたけど、私、料理なんてできないし……」

江藤「関係ないよ。私だって料理の腕なら榊原君の足元にも及ばないだろうしね。大切なのは料理に篭める気持ちじゃない?」

江藤「って、あはは。ちょっと臭かったかな?」

鳴「ううん。そんなことないよ。少し自信出たし。早く始めよう」

江藤「オッケー♪」

恒一良いキャラ

江藤「 」ピシャッ

恒一「あぁん」

恒一「なんだよあの二人。料理なら僕の方が得意なのに……」

恒一「あー僕も作りたい。二人に真の料理っていうものを教えてあげたい」

恒一「そもそも江藤さんはともかく、見崎は料理からっきしじゃないか」

恒一「食べるものもいつもサンドイッチやおにぎりばかり。栄養が足りてない」

恒一「飲み物だって紅茶以外ほとんど飲まないし」

恒一「……そういえばなんで見崎は紅茶しか飲まないんだろ?」

恒一「いつも紅茶だよなぁ。コーヒーとか嫌いなのかな?」

恒一「コーヒーも美味しいんだけどなぁ。特にハワイコナ・エクストラ・ファン――」

恒一「…………………………」

恒一「……昨日の夢、思い出しちゃった……」

恒一「……なんだよ、白けるなぁ……」

恒一「……………………」

赤沢さんがあの世でアップを始めました


  トントングツグツジュワァ

鳴「榊原君、喜んでくれるかな?」

江藤「大丈夫大丈夫。料理ってコツさえ掴めば意外と上手く作れるもんだよ」

鳴「そうかな? どっちにしろ江藤さんの方が私より美味しく作れそうだけど」

江藤「さぁー? 私の場合、他人に評価してもらったことあまりないからね。分かんないよ」

鳴「それでも江藤さんは料理だけでなく家事もできそうだし、全般的なスキルでは私はきっと敵わない」

江藤「それは褒めすぎ。正直、女の子の魅力としては私は見崎さんに負けてると思うな」

鳴「江藤さんが……? まさか」

江藤「私が普段、珊や和江からどう評価されてるか知ってる? 『色気がない』『ボーイッシュ』『この前、悠と間違えて望月君に挨拶しちゃった』だよ。失礼しちゃうよねぇ?」

江藤「そりゃ珊や和江は外見も内面も大人っぽいからそう見えても仕方がないけど、こっちだって成長しないものは成長しないんじゃチクショウめ!」プンスコ

鳴「……その気持ち、良く分かる」

もっちーは泣いて良い

赤沢さんが幸せそうで何より

江藤「あと、『ボーイッシュ』って言われるのも多分髪の短さのせいなんだろうけど、水泳をやってる身としてはこれ以上伸ばしたくないんだよね。それにこの髪型、結構気に入ってるし」

鳴「ロングは手入れが大変だから、ショートカットが一番いいよ」

江藤「だよねだよね。珊なんかはロング、似合うんだろうけどさ」

江藤「なーんて、愚痴ばっかり言ってるからいけないのかな? ま、所詮『クラブが恋人』の女の実態なんてこんなもんです」

鳴「江藤さんは今まで、男の人と付き合ったことはあるの?」

江藤「ないね。ていうかそんなこと興味なかったし、考える余裕もなかったからね」

鳴「ふーん」

江藤「って、こういう態度がやっぱりいけないんだろうな。やっぱり男の子って、もっと女の子らしい女の子の方が好きなのかな……?」

江藤「だとしたら私じゃ全然ダメ、だよね……」

鳴「…………………………」

江藤「あ、しまった! 見崎さん、火、止めて! 焦げちゃう焦げちゃう」

鳴「え? あ、うん!」

朝まで頼んだ

恒一「……………………」

   ヨッシャァァ!! カンセェェイ!!

恒一「……?」

   サッソクサカキバラクンヲヨビニイコウ!! ウン…

恒一「……なんだ? 今僕の名前が聞こえたような」

恒一「あ」

鳴「榊原君」ガララ

江藤「ごめんね、待たせちゃって」

恒一「どうしたの? 料理作り終わったの?」

江藤「うっふふ。まあね。来てくれるかな?」

恒一「分かったよ」スタスタ

江藤「じゃじゃーん!」

鳴「じゃじゃーん」

恒一「おおっ! これは……っ!」

恒一「パンケーキにスクランブルエッグ、これはヨーグルトソースか。二人で作ったの?」

江藤「そだよー。家庭科の教科書見ながらだけどね」

鳴「あまり味には自信ないんだけど……」

恒一「いやいやとても美味しそうだよ。元料理研究部の僕から見ても良くできてるし」

江藤「じゃあ早速食べてみてくれるかな?」

恒一「うん? 二人は食べないの?」

江藤「もちろん私たちの分も用意してるけど、最初は榊原君に食べてほしいんだ」

鳴「元々、榊原君を元気付けるために作ったものだしね」

恒一「え? 何それ? どういうこと?」

鳴「……」チラッ

江藤「……」チラッ

鳴「榊原君さ、今日一日、元気なかったでしょ? 昨晩見た夢のことで悩んでたらしいけど」

恒一「!」

鳴「昼休みに私たちがその話を聞いてからも、今までずっと落ち込んだままだったし」

江藤「だからさ、私と見崎さんで手作りのお菓子を作ることにしたの。榊原君に元気になってもらおうと思ってね」

支援

恒一「……そんな。そのためにわざわざ?」

江藤「うん。だって、榊原君の暗い顔なんていつまでも見ていたくないし」

鳴「榊原君には元気でいてほしいから」

恒一「………………、、、」

鳴「榊原君は、あの災厄で死んだ人たちに負い目を感じているようだけど、いつまでも引き摺っていたらダメだよ。本当の意味で災厄は終わらない」

江藤「榊原君はできるだけのことやったんでしょ? 罪を背負い込むよりも残りの半年を精一杯生きることが、死んでいった仲間たちのためにもなるんじゃないかな?」

恒一「……見崎……江藤さん……」

江藤「それでも、また辛くなった時は私たちが都度、榊原君の力になるからさ。ね、見崎さん?」

鳴「うん。だから、榊原君……」

恒一「分かった。二人とも、ありがとう。そこまで僕のことを考えていてくれたなんて、逆に申し訳ないよ」

恒一「でも、嬉しかった。これ、ありがたくごちそうさせてもらうことにするよ」ニコリ

江藤「良かった」

鳴「じゃあ、早く早く」

恒一「はは、そう焦らないで。今食べるからさ」アーン…パクッ

江藤「……」ドキドキ

鳴「……」ドキドキ

恒一「うん! 美味しいよ!」

江藤・鳴「……!」パァァ

恒一「これは元料理研究部の僕でも唸るほどだ。二人でお店開けるよ!」

江藤「またまたぁ」

鳴「でも良かった」ホッ

支援

―――
―――――

江藤「ん~自分で言うのもなんだけど甘くて美味しい~♪」

鳴「こんなに真剣に料理したの初めてかも」モグモグ

恒一「ふぅ。ごちそうさま」

江藤「お粗末さま。どうする? まだ食材残ってるけどまだ食べたい?」

恒一「じゃあお願いしようかな」

江藤「了解」スクッ

鳴「私も全然食べ足りないし手伝うよ」スクッ

恒一「……………………」

江藤「残り全部使っちゃう?」

鳴「当然」

恒一(二人とも、本当にありがとう……。お陰で立ち直れたよ。僕は幸せ者だな)

恒一(にしても……)

江藤「よし使っちゃえー」

鳴「行け行けぇ」

恒一(僕の家で女の子二人が料理作ってるって何気にすごいことだよな。しかも二人とも制服の上からエプロンだし。男なら誰でも憧れる光景だよなぁコレ)ニヘラ

恒一(ん? あ、ヨーグルトソース……二人とも手をつけてないのか)

恒一「ねぇ、見崎、江藤さん」ガタッ

鳴「何?」

江藤「どうかした?」

恒一「このヨーグルトソース使わないなら、冷蔵庫にほぞnどぉうわぁっ!!??」ガッ

鳴・江藤「!」

恒一「あ、ヨーグルトソースが!!」

  ヒューン……ベチャッ! ベチャッ!!

恒一「げ!」

鳴「………………」

江藤「………………」

恒一「ご、ごめん二人と――」

恒一「!?」

江藤「ちょっとぉ~何これ? ベトベトするんだけど」

鳴「ヨーグルトソース? 顔がベトベトして気持ち悪い」

恒一(見崎と江藤さんの顔に白くて粘り気のある液体が……っ! くっ)

鳴「榊原君、気をつけてよ」

江藤「うわ、髪にもついちゃってるし」

鳴「って、何前かがみになってるの榊原君?」

恒一「あ、な、なんでもない。なんでもないから。あとシャワー使ってくれていいから。それ洗い流してきたら?」アセアセ

えろ

ふぅ……

江藤「いいの?」

恒一「ど、どうぞどうぞ」

鳴「榊原君がああ言ってくれてるから、せっかくだし使わせてもらおっか」

江藤「もう。仕方がないな」

恒一「すんません。ホントすいません」

江藤「それじゃあ罰として、榊原君がパンケーキ作っておきなさい。オーケー?」

恒一「お、オッケーオッケー」

鳴「行こ」

江藤「はいはーい」

  ガラガラガラ……ピシャッ

恒一「……………………」

恒一「……女子中学生とヨーグルトソースって組み合わせ次第で最強の凶器になるんだな」フゥ

※俺らがやると通報されます


  風呂

江藤「……髪についたソース取れたかな? 臭いつかなきゃいいけど」

鳴「」

江藤「どうしたの?」

鳴「いや、一緒に入る意味あったのかな? って」

江藤「いいじゃんいいじゃん。水道代の節約になるし、一緒に入った方が手間もかからないでしょ。クラブでは女同士で学校のシャワー浴びるのはよくあることだよ」シャワー

鳴「わっぷ」

江藤「ふふふ」

鳴「……でもまぁ、こういうのも懐かしい感じがするしたまにはいいかもね」

江藤「懐かしい?」

鳴「ううん、なんでも」

江藤「?」

鳴「にしても……」ジロ

いいよーいいよー

良い

江藤「ん?」

鳴「………………」ジー

江藤「へっ? わっ、ちょっと、どこジロジロ見てるの見崎さん!?////」

鳴「私より……でかい……」

江藤「えええぇ? そうかなぁ? これでも小さい方なんだけど」

鳴「それでも私よりは……マシ。ずるい」

江藤「ず、ずるいって。見崎さん、貴女、珊や和江のサイズがどれぐらい現実離れしてるか知ってる?」

江藤「二年の時修学旅行で目撃したことあるけど、メロンとスイカレベルだったよ? それに比べれば私のなんて……」

鳴「こっちの深さは……そんなに変わらないか」チラッ

江藤「ちょちょちょちょーっ!! こっちは観察禁止!! セクハラ親父ですか貴女は!?////」バッ

鳴「セクハラ親父にもなりたくなるよ、こんな体前にしたら」

江藤「は、はあ!?////」

鳴「確かに胸はそこまで大したものじゃないけど……」

江藤「う、うっさい!////」

鳴「江藤さんって全体的にスタイル良いから」

江藤「え? そう?」

鳴「足は細いし、ウェスト引き締まってるし、全体的にスマートな体型してるし、肌も色白。多分、スタイルの良さで敵うのは3組の中では渡辺さんか多々良さんぐらいかも」

江藤「それは褒めすぎじゃないかな? あの二人に匹敵するほど理想的な体してるとは思えないけど」

鳴「一度鏡で全身像見てみたら? モデルでもできるんじゃない?」

江藤「モデルって……まあ、水泳やってるから余計な肉はないんだろうけどさ」

鳴「でしょ?」

江藤「うーん」

鳴「これだけお得な体型だったら、榊原君も喜んでくれそうだよね」フッ

江藤「ななななななんでそこで榊原君なの!!??////」

恒一はバスタオルと着替え持って突撃はよ

鳴「好きなくせに」ボソッ

江藤「は、はぁぁぁ!?//// 何をいきなり!? そ、それは見崎さんの方じゃない……っ!」

鳴「わ、私は別に榊原君のことなんて……っ」

江藤「………………、、、」

鳴「………………、、、」

江藤「…………………………」

鳴「…………………………」

鳴「……榊原君さ」

江藤「う、うん」ビクッ

鳴「元気になってくれて良かったね」

江藤「……そうだね」

鳴「こればかりは江藤さんのお陰だよ」

江藤「なんで? 二人で料理作ったのに。見崎さんのお陰でもあるでしょ」

鳴「だけど、初めに榊原君を元気付けるために料理ごちそうしてあげよう、って提案したのは江藤さんだよ」

江藤「まあそれはそうだけど」

鳴「榊原君にとっても、あの災厄は忘れられない嫌な思い出。いずれ、そのことで榊原君が悩まされる日が来るのは予想してた」

鳴「それを乗り越えられるかが今後の分かれ道だったんだけど、あの反応を見る限りどうやら大丈夫だったみたいね」

鳴「すべては江藤さんの提案がきっかけだよ。災厄に対して敏感だった江藤さんだからこそ、榊原君の複雑な気持ちを汲み取ることができたのかもね」

江藤「……そんな。私なんて、いまだ災厄のトラウマから抜け出せてない臆病者なのに」

江藤「昨日はプールであんなことがあったし、今日、クラブが休みでホッとしてるほどなんだよ? 大会も近いのに……」

鳴「大丈夫だよ。榊原君の元気を取り戻せたんだから。江藤さんもトラウマを乗り越えられる。だから水泳、頑張ってね」

江藤「見崎さん……」

鳴「……」コクコク

江藤(私ってば、バカだな。見崎さん、こんなに良い子なのに一学期中あんなに怖がって避けてたなんて……)

江藤「ありがとう見崎さん。私、頑張ってみるよ」

鳴「それがいい」

>>218
こっちの深さって何?

江藤「はぁ~! なんだか体も心もすっきりした気分。シャワー浴びて良かった」

鳴「でもそろそろ出ようか。風邪引いちゃうし、榊原君も待ってるだろうから」

江藤「そうだね」

  カサカサッ

江藤「!?」

江藤「な、何今の音?」

鳴「え?」

江藤「そっちから何かが這うような音聞こえなかった?」チラッ

鳴「這うような音?」チラッ
  
  カサカサカサッ!!

鳴・江藤「!!!???」

>>223
下の毛じゃね?

そこにはこういっちゃんのゴキブリ姿が!

恒一「あの二人、いつまでシャワー入ってんだろ? もう残りのパンケーキ出来ちゃったよ」

恒一「……ていうか今、僕の家の風呂で見崎と江藤さんがシャワー浴びてるんだよな?」ゴクリ

恒一「や、やばい。今日の夜は色んな意味で風呂に入り辛いぞ」

恒一「って、いかんいかん。最近私生活に女の子成分が多くてどうも気が緩んでるみたいだ。このままでは江藤さんの言うようにムッツリにな――」



   きゃああああああああああああああああああああああ>



恒一「……っ」

恒一「この悲鳴は江藤さん!? まさかあの二人に何か!?」

恒一「こうしちゃいられない!!」ダッ

恒一「見崎!!! 江藤さん!!!」ガラッ

鳴「え?」

江藤「え?」

恒一「!!!!!!!」

鳴「……………………」スッパ

江藤「……………………」ダカ

恒一「……………………」

江藤「きゃああああ榊原君の変態!!!////」

恒一「えええええ!!?? どういうこと!!??」

鳴「…………////」カァァ

江藤「いつまでそこで見てんの!?」

恒一「ご、ごめんなさぁい!!////」ピシャッ


  台所

恒一「そ、そうでしたか……。虫が……虫が出ただけなんすね……」

江藤「もう! どうしていきなり乗り込んでくるかな? 入浴中だって分かってるはずなのに!////」プンスコ

鳴「それを言ったら、たかが虫に驚いて悲鳴を上げた江藤さんも悪い」

江藤「う……。だって虫とか苦手なんだもん」

恒一「すんませんすんませんすんません。見崎と江藤さんに何かあったと思ってつい……」

鳴「ま、二人とも悪気があったわけじゃないし。おあいこ、ということで」

江藤「こればかりは……仕方ない、か……。私たちの身を案じてのことだし」

恒一「良かった……」ホッ

江藤「で・も!」

江藤「一つだけ聞いておきたいことがあるんだけど」

恒一「は、はい! なんでしょうか江藤様?」

江藤「見た?」

恒一「は? え? 何を!?」

当分オカズに困らないな

江藤「見たでしょ?」

鳴「見たね」

恒一「いやだから何を!?」

鳴「分かってるくせに……」

恒一「あーえっとつまり見崎と江藤さんの裸を見たか? ってこと?」

江藤「やっぱり見たんだね!?」

恒一「いやいやいや見てない見てないです!!!!」

江藤「本当に?」ジロリ

恒一(……なんかすっごく疑われてる。つってもそんな暇なかったしなぁ)

恒一(あ、でも……肝心な部分はざんねn……幸いなことに見えなかったけど、裸の二人は綺麗だったなぁ……)

恒一(あれが女の子の肌なのかぁ)ニヘヘ

恒一「はっ!!」

江藤「顔がニヤついてるんですけどぉ」ジローリ

鳴「ですけどぉ」ジローリ

恒一「な、なんのことでせう」

江藤「目を逸らされたんですけどぉ」

鳴「ですけどぉ」

恒一「……………………、、、」アセアセ

江藤「汗が尋常じゃないぐらい出てるんですけどぉ」

鳴「ですけどぉ」

恒一「……っ」

恒一「も、もう! 信じてよ!! 変な部分は見てないって!!」

江藤「変な部分?」ピクリ

恒一「うっ……」

鳴・江藤「……多分……だよ……きっと……」ヒソヒソボソボソ

恒一(なんか内緒話してるし。ていうかこの二人、急に仲良くなったような)

江藤「ま、いいでしょう。榊原君はそんな嘘吐く人じゃないし」

鳴「判決:無罪」

恒一「分かってくれたか……」

イケメン無罪

江藤「だけどもし嘘を吐いてたら……」

恒一「う、嘘を吐いてたら……?」

江藤「『榊原君の家に連れ込まれて服を脱がされて裸にされた挙げ句変な部分を見られた』って3組のみんなに言いふらす」

鳴「しかもあることないこと付け足して」

恒一「ちょちょちょちょぉぉっと!」

江藤「なーんて」

恒一「へ?」

江藤「そんなことするわけないでしょ、さすがに」ペロ

恒一「なっ……お、おどかさないでよ」

江藤「相変わらずこんな冗談に引っかかるなんて、榊原君は純粋だねぇ」

鳴「純粋だねぇ」

恒一「く、くそう」

江藤「あはは」

鳴「クスッ」

恒一(へぇ、やっぱりこの二人……)

江藤「色々あったけど、今日はお世話になりました」

恒一「こっちこそ。料理とても美味しかったよ。ありがとう」

江藤「どういたしまして。リクエストあったらまた作ってあげるからね」

恒一「それは嬉しいな。楽しみにしてるよ」

鳴「……」グイグイ

恒一「ん?」

鳴「私も……一生懸命料理勉強するから……また作ってあげる」

恒一「うん、見崎のも楽しみにしてる」ニコッ

江藤「それじゃあ今日は帰るね」

恒一「二人一緒に帰るの?」

江藤「何か変かな?」

恒一「あ、いや、いいんじゃない?」クスッ

江藤「じゃあね榊原君」

鳴「さよなら」

恒一「またね」フリフリ

江藤「今日は楽しかったね」

鳴「榊原君にお風呂覗かれたけどね」

江藤「うっ……それは言わないでよ」

江藤「でも、榊原君元気になってくれたし結果オーライでしょ」

鳴「……確かに」

江藤「普段は奈緒美とか、松子や珊、和江と遊んでるけど、たまにはこういう男の子交えて過ごすのもいいもんだね」

江藤「ホント、見崎さんと友達になれて良かったよ」

鳴「……………………」

江藤「ま、そろそろ受験にも本格的に取り組まなきゃいけないんだけど」

鳴「江藤さん」

江藤「ん? 何~?」

鳴「これあげる」

江藤「!」

江藤「この紙に書かれてある番号って……」

鳴「私の携帯電話の番号」

支援

江藤「いいの? もらっちゃって」

鳴「本当は……私、携帯電話とか好きじゃないから、今まで番号を教えたのも榊原君だけなんだけど……」

江藤「うん」

鳴「江藤さんなら……いいよ……////」

江藤「見崎さん……」

鳴「私なんかと、電波で繋がりたくないって言うなら……別に無理しなくてもいいけど……、、、」

江藤「まさか。そんなことないよ」スッ

鳴「あ」

江藤「むしろこちらとしては大歓迎」ポチポチ

  プルルルルル

鳴「……! 私の携帯が……」

江藤「はい。これで私の番号も分かるでしょ? ちゃーんと登録しておいてね」

江藤「ま、私からはそんな頻繁にかけたりしないからさ。そこは安心して」

鳴「……ありがとう、、、」

江藤「どういたしまして♪」

見崎をデレさせるとは、江藤さんやるな

鳴「……………………」

鳴「ねぇ……」

江藤「ん?」

鳴「これもあげる」

江藤「え? これって」

鳴「今週の日曜、夜見山の花火大会があるでしょ? その会場の特等席男女特別ペア券」

江藤「……なんで、これを私に?」

鳴「榊原君、誘ってみたらどうかな?」

江藤「私が? ちょっと待ってちょっと待って。これ見崎さんが持ってたってことは、見崎さんが榊原君を誘うつもりだったんでしょ?」

鳴「別に。元々私、人が多い場所好きじゃないから今回はあまり乗り気じゃなかったし」

江藤「そう言われても、こんなのタダで貰うわけには……」

鳴「福引でたまたま当てたものだし、そこは気にしないでいいよ」

江藤「だけど」

鳴「何か不満でも?」

江藤「私が……榊原君を誘うだなんて……」

福引きする鳴ちゃんきゃわわ

鳴「嫌なら嫌で私が榊原君を誘うだけだけどね。使わないのももったいないし」スッ

江藤「あ、ああ待って!」

鳴「どうするの?」

江藤「うっ……その……あの……」

鳴「聞こえないんだけど」

江藤「わた……私が榊原君を誘うから!!//// 良かったらそれ、貰えないかな……っ!?////」

鳴「よろしい」

鳴「日曜日だからね。もう今夜あたりにも誘っておいた方がいいよ」

江藤「でもさ見崎さん」

鳴「何?」

江藤「見崎さんはいいの? 本当は見崎さん、榊原君と一緒に行きたかったんじゃ……?」

鳴「行きたくない、って言ったら嘘になるかな? だけど今回は特別に江藤さんに  譲  っ  て  あ  げ  る  」

江藤「譲ってあげるぅ?」

鳴「榊原君との仲は、私がリードしてるし」

江藤「なっ!?」

鳴「せいぜい私に置いて行かれないよう頑張ることね」フフン

江藤「言ったなこのやろう。油断してると痛い目に遭うよ?」ニヤリ

鳴「それはどうかな?」

江藤「にゃろぉ」

江藤「でもまあ」

鳴「?」

江藤「ありがとね、見崎さん」

鳴「……別に。感謝されるほどのことじゃないし」

江藤「ったく、素直じゃないなぁ鳴ちゃんは!」ウリウリ

鳴「や、やめて」

江藤「あはははは」

素晴らしい

挑発的な鳴ちゃん可愛い


  江藤の部屋

江藤「さて。見崎さんから、花火大会の男女ペアチケットを貰えたのはラッキーだったんだけど……」

江藤「どうやって榊原君誘おう?」

江藤「なーんて悩んでる暇ないよね。花火大会は明後日だし。さっさと電話して約束を取り付けちゃえ」

  ピッピッピッ

江藤「……………………」

江藤(……って何躊躇ってるの? 普通に事情話して誘えばいいことじゃん)

江藤(くっ……後は発信ボタンを押すだけなのに、押せない)

江藤(押せ……押せ! 押せぇぇ……っ!)グヌヌヌ

江藤「やっぱ無理!」ポイッ

江藤「………………うう、情けない」

江藤「なんでこれぐらいできないの? 私って馬鹿なの?」

江藤「そうだ。ぶっつけ本番でやろうとするからダメなんだ。まずはイメトレしておこう」

江藤「オホン。ぷるるるるるる……がちゃっ『はい、もしもし榊原ですけど』」

江藤「あ、榊原君? ちょっと花火大会の特等席のペアチケット手に入れたんだけどさ、一緒に行かない?」

江藤「『いいよー。日曜日だよね? じゃあ学校の校門前で待ってるね!』」

江藤「うん。分かった。またねー……ぴっ、つぅーつぅーつぅー……」

江藤「…………………………………」

江藤「……何やってるんだろ私……orz」

江藤「なんか急に恥ずかしくなってきたし……っていうかこんな簡単にできたら苦労しないよ!」

江藤「やっぱり普通に電話かけてみよう」

  ピッピッピッ

江藤「……」ジー

  ポイッ

江藤「……」

江藤「……、、、」

江藤「……バカ」

佐藤「愛されるよりも~愛したいマジで~♪」

  ブーブーブーブー

有田「ん? 電話だ」

渡辺「誰から?」

有田「悠ちゃんみたい。私話してくるから、二人で続き歌ってて」

渡辺「りょーかーい」

渡辺「んじゃもう一曲デスメタル入れとくか」

  ガチャッ……バタン

有田「もしもし、悠ちゃん?」

江藤『松子? 今何してる?』

有田「今、珊ちゃんと和江ちゃんとカラオケ来てるよ」

江藤「そっか。じゃあ後の方がいいかな?」

有田『あ、ちょっと歌いすぎて疲れてたところだし、今なら大丈夫だよ。どうかしたの?』

江藤「うん……」

有田『悩み事?』

江藤「まあ、そう、えっと、そんな感じ……?」

有田『何々? 私でできることならなんでもするよ!』

江藤「あ、あのさ……松子なら、誰かとなんかのイベントに行きたい時、どうやって誘う?」

有田『イベント……? もしかして日曜日の花火大会のこと?』

江藤「うっ! まあ、花火大会でもいいかな?」

有田『花火大会に誰かを誘いたいの? あ! もしかして悠ちゃん、彼氏できたとか!?』

江藤「えええっ!? ち、違う違うまだそんなんじゃなくて……っ!」

有田『まだ? あーそっかぁ! 榊原君を花火大会に誘いたいんだね?』

江藤「ぎっくぅ!」

有田『やっぱりね。そんなことだろうと思った』

江藤「なななななななんで!?」

有田『ふっふっふ。3組の間で絶賛注目されてますよ、悠ちゃん。「男の気配がなかったあの江藤さんが、最近榊原君と怪しい仲になってる」ってね☆』

江藤「う、ウソ!?」

有田『あれぇ? 知らなかった? でも悠ちゃんも悠ちゃんだよ。あんなに堂々と榊原君と一緒にいるんだからさ?』

有田『普段は慎重な悠ちゃんも、男の子が関わると急に注意散漫になっちゃうんだねぇ』

江藤「ううう……////」

有田『ただ榊原君って見崎さんと仲良いでしょ? だから余計にみんな、3人の関係疑ってるみたいだよ?』

江藤「べ、べ、別に私が誰と付き合おうが私の勝手じゃない……っ! な、なんでみんなしてそんな詮索するの!?////」

有田『まあ、悠ちゃんのことだから理由あってのことなんだろうけどさ』

江藤「そ、そうだよ色々あるの!」

有田『それで悩みの内容なんだったっけ? 榊原君に告白するにはどうしたらいいか、だった?』

江藤「松子!!」

有田『にははーごめんごめん。花火大会に誘いたいんだよね?』

江藤「だから最初にそう言ったじゃん!」

有田『はいはい慌てない慌てない。まずは落ち着いて深呼吸』

江藤「お願いだよ……松子が頼りなんだからさ」

しえん

有田「!」

有田(私今、悠ちゃんに頼られてる? いつもは私の方が悠ちゃんに頼ってばかりなのに!)

有田(いいでしょう悠ちゃん。今回は私が貴女の人生の先生です! 頼りになる私が悠ちゃんの将来設計のためにアドバイスしてあげましょう!)

有田(って言っても私も男の子のこと、全然分からないんだけどね!)ペロ



江藤「……それで、何かいい誘い方あるかな? 電話しようにも恥ずかしくてさ」

有田『あるよ。とっておきの方法が。一つだけね。これなら成功間違いなし!』

江藤「え? どんなの!? どうすればいいの!?」

有田『それはね……』

江藤「それは……?」ゴクリ

有田『当たって砕けろだよ!!!』バーン

江藤「…………………………砕けたら失敗じゃない?」

有田「あ、それもそっか」

江藤「おい」

江藤(最初に榊原君に電話しようとしてからもう一時間……)


  
   ――有田『とにかく頑張ってね! 私、応援してるからね!』――



江藤(って松子は最後に言ってくれたけど、やっぱり勇気が出ない……、、、)

江藤「……………………」

江藤(ええい、ままよ!)フリフリ

江藤(このまま電話を見つめていても状況は変わらない。『当たって砕けろ』……いいじゃない。それぐらいの気持ちで挑むだけの価値はあるはず!)

江藤「ダメで元々。やってやる!」

  ピッピッピッピ

  プルルルルルルルル……

江藤「………………」ドキドキドキ

恒一『もしもし。江藤さん?』

江藤「あ、榊原君……あのね!」

がんばれ

―――
―――――

江藤母「~♪」

江藤「………………」スッ

江藤「ねぇ、お母さん……」

江藤母「あら悠ちゃん、何かしら?」

江藤「お出かけ用の服でさ、一番可愛いのどこに仕舞ってたっけ?」

江藤母「急にどうしたの? ようやく悠ちゃんもお洒落に目覚めてくれた?」

江藤「そ、そんなんじゃなくてさ……」モジモジ

江藤父「なんだなんだぁ? まさか好きな男でもできたかぁ?」ハッハッハ

江藤「///////」

江藤父「」

江藤母「まあそうなの!? あの悠ちゃんに彼氏が!?」

江藤「ち、ち、違うよ!! 彼氏とかじゃないって!!//// ただの友達だよ!! ただの友達とちょっとお出かけするだけ!!////」

とーちゃん…

江藤母「でも、ただの友達と出かけるだけで一番可愛い服着る必要あるのかな?」ニヤニヤ

江藤「そ、それは……っ!」

江藤弟「お姉ちゃん、かれしできたんだぁ!」

江藤「だ、だから違うっての……っ!」

江藤弟「かれしかれしーおねえちゃんにかれしぃ」

江藤「~~~~~~っ////」

江藤母「コラコラ、お姉ちゃんをからかうのもその辺にしときなさい。お父さんが立ち直れなくなる前にね」

江藤「え?」

江藤父「」

江藤母「それにしても、あの悠ちゃんにも好きな男の子ができたのね。まあもう中学三年生だし当然か」

江藤「別に好きじゃないってば~~!」

江藤母「はいはい」ウフフ

江藤「もぉ~!」

江藤父「」

ごめん、さすがに疲れた
しばらく休憩する

待ってるよ~

12時間か乙

おつー 待ってるで

眠いけど寝る前にちょっとだけ投下しておく

誰だオマエ


  そして日曜日――。

江藤「……………………」ドキドキドキ

江藤(榊原君、まだかな? ちょっと早く来すぎちゃったかも)

江藤(待ち合わせ場所、駅前の噴水で合ってるよね?)キョロキョロ

江藤(髪もちゃんと整えたし、服も一番可愛いの着てきたから準備は万端。問題はないはず)

江藤(ていうか男の子と二人でお出かけなんて初めての経験だから、緊張するな。でも……すごく楽しみ)

江藤(まだかなまだかな?)

「ねぇ」

江藤(来た!)

江藤「あ、榊原く……ん?」

男「君、こんな所で一人で何やってるの?」

江藤(誰……? 榊原君じゃないし)

江藤「えっと……なんですか? 私に何か用ですか?」

男「ふふっ、用ってほどでもないんだけどさぁ。もし一人で暇なら僕と一緒に遊ばない?」

江藤(ナンパ……? 今まで珊や和江といる時にしかナンパなんてされなかったのに……)

江藤「結構です。私、人を待ってるんで。迷惑なんで消えてくれます?」

男「そう言わずにさぁ~。楽しくてハイになれる刺激的なこと、一緒にしようよ?」

江藤「気持ち悪いです。あんまりしつこいと警察呼びますよ?」

男「警察とか、無能の集まりなんて怖くないし、ふふっ。ほら、行こうよ」ガシッ

江藤「!!!」

江藤「は、離して!!!」

「おい!」

男「!?」

江藤「!?」

恒一「江藤さんに何やってるんだ? 痛がってるじゃないか。手を離せ!」

江藤「榊原君!」パァァ

男「……チッ、男持ちだったのか。つまらないな」バッ

江藤「あ」

恒一「さ、行こう江藤さん」

江藤「うん」ササッ

男「……………………」

江藤「あの人、まだこっち見てる……」

恒一「気にしない方がいいよ、あんな奴。それよりも早くここから立ち去ろう」タッタッタ

イケメンすぎやろ…

恒一「ごめんね、もうちょっと早く着いてれば良かったんだけど。どこか怪我してない? 手とか大丈夫?」

江藤「大丈夫大丈夫。それよりも助けてくれてありがとね。白馬の王子様みたいで格好良かったよ」

恒一「や、やめてよ。照れるじゃないか……////」

江藤「クスッ、そこは素直に照れておきなさい。本当に私、助かったんだし」

恒一「最近は変な奴、増えてるからね。女の子には怖い世の中になったね」

江藤「確かに。さっきのナンパ男も榊原君に似てたしね」

恒一「それどういう意味? 僕は女の子に手を出すような男じゃないよ」

江藤「どうかなぁ? そんなジゴロの顔してるくせにぃ。東京では何人の女の子が犠牲になったのやら」

恒一「犠牲になんてなってないよ! ていうか僕ってそんなイメージある!?」

江藤「ある」

恒一「えええええ!?」

江藤「ウソウソ。榊原君がそんなことする人だったら、そもそも友達になってないしね。ふふっ」

恒一「なんだ、驚かせないでよー」

江藤さんおしゃれした来たからな 可愛くなってるってことや

残りはそんなに長くならないと思うけどさすがに限界だ
昼前後には戻って来れると思う
落ちてたらSS速報あたりに移るかもしれん
とりあえずここまで見てくれた人ありがとう

これからの鳴ちゃんの事を考えると心が痛い

ああ

あほし

多々良ッティ

江藤「でも、本当に良かったのかな?」

恒一「何が?」

江藤「今日のこと。なんだか無理やり誘っちゃったみたいで悪い気がしてさ……」

恒一「それなら大丈夫だよ。僕も暇だったしね。むしろ誘ってもらって嬉しいぐらいだよ」

江藤「そ、そっか……、、、……私も嬉しいよ? 榊原君と一緒に行――」

江藤「え?」

巨乳美女「ボウヤ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけどいい?」バイン

恒一「へ? は、はい? なんでしょうか?」

巨乳美女「私地元の人間じゃないからよく分からないんだけど、市役所へはこっちの道で合ってるかしら?」ボイン

恒一「そ、そうですね。この道を真っ直ぐ行って右に曲がってそれで……(うわ、このお姉さんの服、胸元がすっごい開いてる)」チラッチラッ

江藤「……………………」

巨乳美女「助かったわ。ありがとね、ボウヤ」ボインバイン

恒一「いやぁ、それほどでも」デレデレ

江藤(何さ。あんなにデレデレしちゃって)

支援

巨乳美女「またね~」バインボイン

恒一「気をつけて~!」フリフリ

恒一「ふぅ。急に道を尋ねられてビックリしちゃった。ごめんね江藤さん、それでなんの話だったっけ?」

恒一「って、あれ?」

江藤「……………………」

恒一「どうしたの江藤さん? なんか怒ってる……?」

江藤「別に。怒ってないけど」ムスッ

恒一「でも急に機嫌が悪くなったような……。僕何か気に障ることした?」

江藤「さぁ?」ツーン

恒一「せ、せっかくなんだしさ。もっと明るく楽しくいこうよ! それに、江藤さんに無愛想な顔は似合わないって。笑顔の方がよく似合うよ」

江藤「むぅ……」プクゥ

恒一「僕、これでも江藤さんと二人で出かけるのずっと楽しみにしてたんだからさ」

江藤「……! 本当……?」

中盤の榊原君が料理研究会に入ってたのをを鼻にかけててわろた

恒一「もちろん。じゃないと断ってるしね」

江藤「……それなら仕方がないなぁ」

恒一「え?」

江藤「今日は特別に許します」

恒一「はは、そうしてもらえるとありがたいけど、どっかで聞いたようなフレーズなのは気のせい……?」

江藤「た・だ・し!」

恒一「え?」

江藤「その分今日は一日楽しませてよね」ガシッ

恒一「わっ!(う、腕を組まれ……っ!////)」

江藤「オーケー?」

恒一「お、オーケーオーケー////」

江藤「ん。よろしい♪」ニコリ

江藤「さて、肝心の花火大会は夜だしまだちょっと時間あるんだよね」

恒一「どっかで暇潰す?」

江藤「そうだね。って言ってもあまり夜見山には見て周る所ないんだけど」

恒一「じゃあ小腹空いたし、どこか近くのファミレスでも入ろうか。デザートぐらいなら奢ってあげるよ」

江藤「いいの!?」

恒一「それぐらいならいいよ」

江藤「やった! それじゃあ早く行こ行こ!」


  ファミレス

店員「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」

恒一「二人です」

店員「あ」

恒一「?」

店員「現在キャンペーン中でして、カップル席ではカップル割引が適用されますがそちらになされますか?」

江藤「え」

恒一「あーじゃあそちらでお願いします」

店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」

江藤「さ、榊原君!?」

恒一「何?」

江藤「わ、私たちカップルだったっけ?////」ヒソヒソ

恒一「別に恋人じゃなくても男女のカップルなんだしいいんじゃないかな? それで割引もしてもらえるならお得じゃん」

しえ

江藤「た、確かにそうだけどさ……」

店員「ではご注文がお決まりになりましたらお呼びください」

 「○○はいつ見ても可愛いね」 「○○君もいつ見てもかっこいいよ」

 「ほら、あーんして」 「あーん♪」

 「キスしようぜキス!」 「バカ、みんな見てるでしょ////」

江藤(周り、本物の恋人同士ばっかりだし////)チラッ

恒一「僕はコーヒーでも飲もうかな。江藤さんは何頼む?」

江藤「え? あ、メニュー見せてくれる?」

恒一「はいどうぞ」

江藤「ありがとー。えーっと、せっかく奢ってもらえるんだし、そうだなぁ……何にしよう?」

恒一「……………………」

江藤「よし! きーめた!」

恒一「ねぇ江藤さん」

きてたか

江藤「ん?」

恒一「江藤さん、今日は私服なんだね」

江藤「ちょっとちょっとー今頃気づいたのー? ていうか休日なんだし当たり前じゃん」

恒一「はは、それもそうだね。でもいつもは制服姿の江藤さんばかり見慣れてるから、なんだか新鮮だよ。私服姿の江藤さんも可愛らしいね」

江藤「そ、そんな。照れちゃうよ//// (良かった。一番可愛い服着てきた甲斐があった)」

江藤「ちなみに榊原君は私服と制服、どっちが私に似合ってると思う?」

恒一「もちろんどっちも似合ってると思うよ。あ、でも競泳水着も江藤さんらしくていいかな?」

江藤「あー榊原君のエッチぃ」

恒一「ええっ!? そんな変な意味で言ったんじゃないよ!」

江藤「どうだか? 榊原君、ムッツリだし」

恒一「ムッツリじゃないって!」

勅使河原「あん?」

望月「どうしたの勅使河原君?」

猿田「何かあったぞな?」

勅使河原「いや、今、榊原って名前が聞こえたんだけど」

望月「本当に?」

猿田「もしかしたらこのファミレスにいるかもしれないぞな」

勅使河原「お! マジだ! いたぜ! 向こうの席だ!」

望月「え? どこ?」キョロキョロ

猿田「おいおいどういうことぞな。一緒にいるの、江藤だぞな」

 「僕は……だと思うな。江藤さんも……でしょ?」

 「だね、あははは」

しえん

猿田「しかもあそこはカップル席ぞな」

勅使河原「おいおいおいおい。サカキの奴、見崎がいるのに江藤と浮気か?」

猿田「やはり東京の色男は女関係も荒れてるぞな」

勅使河原「面白そうだし近くの席に移って盗み聞きしてやろうぜ!」

望月「ちょっ、やめなよ勅使河原君。何か事情があるのかもしれないし」

猿田「レッツゴーだぞな」ソロリソロリ

勅使河原「決定的瞬間を捉えてやるぜ」ソロリソロリ

望月「あ、もう。仕方がないなぁ」

店員「では、ごゆっくりどうぞ」

江藤「うはぁ! 来た来た! デラックスストロベリーチョコパフェ!」

恒一「おお、すごい迫力だね」

江藤「でしょ? じゃあ早速、いただきまーす!」パクッ

江藤「うーん、この口の中でとろける感触、最高~♪」

恒一「だけど太らないように気をつけてね。そういうの、カロリー多いから」

江藤「うっ……」ピクッ

江藤「こ、これぐらいでは太らないはず。水泳で無駄な肉は落としてるし……」

恒一「ならいいんだけどさ」

江藤「っていうか榊原君はコーヒーだけで足りるの?」

恒一「十分だよ。このコーヒー、ハワイコナ・エクストラ・ファンシーっていうんだけど、これがまた美味しいんだ」

江藤「へぇ、博識だね。初めて聞いたそんなの」

恒一「僕の好きな飲み物さ」

江藤「ん?」

江藤「…………?」キョロキョロ

てっしーはまさに中学生だな

恒一「どうかした?」

江藤「……ううん、気のせいみたい」

   ヤベェ、アヤウクバレルトコダッタゼ サスガニコノセキハチカスギナイ? コレイジョウハナレタラ、ナニモキコエナイゾナ 

江藤「そういえば榊原君はさ、受験どうするの?」

恒一「東京の高校に進学するつもりだよ」

江藤「あーやっぱり東京に帰っちゃうんだ。寂しくなるなぁ」

恒一「って思ってたんだけど、最近はこっちの高校に進むのもありかなぁって考えてるんだ」

江藤「そうなの?」

恒一「うん。良くも悪くもこっちとは色々と縁ができたしね」

江藤「そっかぁ。じゃあ私、榊原君と一緒の高校目指そうかな?」

恒一「いいね。僕も江藤さんが一緒だと高校生活楽しくなりそうだよ」

江藤「えへへ、ありがと。……ただ、残念なことに私の学力では榊原君と一緒の学校に行くのは難しそうなんだよねぇ」

恒一「江藤さんって成績はどんな感じなの?」

江藤「一学期はクラスで10番以内には入ってたかな? 榊原君は?」

恒一「僕は確か、2番とか3番辺りだったよ」

江藤「やっぱり……さすがだね。これじゃあ同じ高校は無理かなぁ?」

恒一「なら僕が勉強教えてあげるよ」

江藤「榊原君が?」

恒一「うん。それぐらいお安いご用さ。頑張って勉強して一緒の高校、行こう?」

江藤「榊原君……(私のためにそこまで……)」

恒一「見崎も同じ理由で先週から一緒に勉強してるんだよね。江藤さんも加わったら3人でより楽しくなるでしょ?」

江藤「え? 見崎さん?」

恒一「うん。見崎にも空いた時間で勉強教えてるんだ」

江藤(なぁんだ、見崎さんもだったのか。ま、よく考えれば当然だよね。とはいえ、ここでむざむざ引き下がる私ではないのだ)

恒一「どうかな?」

江藤「ぜひぜひ! よろしくお願いします!」

勅使河原「こいつは面白いことになってんな」ヒソヒソ

猿田「あの3人の関係はいまいち分からないけど、江藤がサカキにぞっこんなのは間違いないぞな」ヒソヒソ

望月「ねぇ2人とも、こんな近くだとすぐバレちゃうよ」ヒソヒソ

恒一「じゃあそろそろ出ようか」

勅使河原・望月・猿田「!!!!」

江藤「ごちそうさまでしたー!」ガタッ

勅使河原「やべ! 顔隠せ!!」サッ

恒一「まだ花火大会まで時間あるね。どうしようか?」

江藤「とりあえず適当にブラブラしてみようよ」

勅使河原「……………………」

猿田「……………………」

望月「……行ったみたいだよ?」ソー

猿田「どうやらそのようぞな」フー

勅使河原「ぃよっし! 尾行してみようぜ!」ガタッ

望月「えええええ!?」

猿田「賛成ぞな。こんなに面白そうなことは滅多にないぞな」

望月「2人も好きだね」

ブラブラがラブラブしようよに見えて遂に来たかと思った

恒一「こうして見ると、夜見山も結構良い所だよね」

江藤「あまり遊ぶ場所がないのは難点だけどね。夜見山生まれとしては東京出身の榊原君にそう言ってもらえるだけで嬉しいよ」

恒一「東京は逆にゴチャゴチャしすぎてるからなぁ」

江藤「そうなんだ。……あ」ピタッ

恒一「どうしたの? ショーウィンドウの前で立ち止まったりして」

江藤「んーちょっとね。良さそうな服が目についたからさ」

恒一「……へぇ。江藤さんもやっぱり女の子だね。意外とファッションのことも興味あるんだ」

江藤「ちょいとお兄さん、それはどういう意味ですかい? お洒落にはいまいち無頓着~、とか言われる私でも一応はお年頃の女子中学生なんですが?」

恒一「ごめんごめん、確かにそうだね」

江藤「どうも榊原君はファミレスでの『今日は私服なんだね』発言といい、私のファッション事情に対して妙な偏見を持ってる節があるようで」

恒一「あ、いや、別にそういうわけじゃ……」

江藤「こうなったら罰です。中でお洋服を見て回るので榊原君は付き合いなさい。アドバイスしてもらうよ?」

恒一「えええええ!? 僕、女の子の服のこととか全然分からないよ?」

江藤「いいからいいから。私が榊原君に見てほしいの。ほら行こう!」ガシッ

恒一「あ! (また腕組み、、、)」

江藤「で、どう?」

恒一「どうって言われても……」

江藤「ほら、私に似合いそうな服とかさ。なんかない?」

恒一「うーん……そうだね。選ぶだけじゃなんだし、何着か試着してみれば? そしたら分かるかも」

江藤「いいね、それ! じゃあ適当に着てみようかな」

江藤「えーっと試着室は、っと……お、あったあった」



多々良「……あら?」

中島「どうかしたの恵?」

   キガエルカラ、ノゾカナイデヨ? ノ、ノゾカナイヨ!

多々良「もしかしてあすこにいるのは江藤さんでは?」

中島「え? あ、本当ね」

多々良「どなたかと一緒にいるようですね……」

多々良さんが田舎っぺになってしまった

江藤「じゃーん、どうかな? まずはシックで決めてみました!」

恒一「うん。江藤さんらしくて似合ってるよ」

江藤「お、結構良い評価だね。とりあえずこれは保留で……次のに着替えるね」シャッ

江藤「着替えたよ! これはどう?」シャッ

恒一「そうだね……派手な感じもするけど明るくて江藤さんに似合ってるよ」

江藤「なるほど~。じゃあこれも保留で。さ、どんどん行くよ!」



多々良「まあ。一緒にいる男性、榊原君じゃありませんか?」

中島「へぇ……江藤さんと榊原君って、そういう仲だったのね」

多々良「てっきり見崎さんと仲が良いものかと思っていたのですが」

中島「江藤さんも隅に置けないわね。普段は男の子の気配はなかったのに」

多々良「ですが、男性にお洋服を選んでもらうのは、女性として憧れますよね」

中島「そうね。江藤さんも楽しんでるようだわ」

多々良さんwwww

江藤「ででーん!」シャッ

恒一「チュニックにレギンスか。女の子らしくて江藤さんに似合ってると思うよ」

江藤「ばばーん!」シャッ

恒一「今度はボーイッシュスタイルだね。江藤さんにはよく似合うね」

江藤「……ちょっとちょっと榊原君」

恒一「なんだい?」

江藤「さっきから同じようなことばかり言ってない? 結局どれ選んでも変わらないみたいじゃん」

恒一「あれ? そうだっけ? ごめん、僕あまりこういうの詳しくないからさ」

江藤「んもう」

中島「ただ随分と苦労してるようだけど」クスッ

多々良「面白そうですし、少しここから隠れて観察してみましょうか」

中島「いいわね。何か決定的瞬間に立ち会えるかもしれないし」

中島・多々良「……」ワクワク

勅使河原・望月・猿田「……」ソー

中島・多々良「ん?」

勅使河原・望月・猿田「え?」



   キャーチカン!! ゴ、ゴカイダ!! ッテ、ナカジマトタタラジャネェカ!?

   コ、コンナトコロデナニシテタンデスカ!? チカウンタ、゙タタラサン! ボクタチハテイサツヲシテタダケデ!
   
   ワタシタチノ、ナニヲテイサツスルキダッタノヨ!? ソウイウイミジャナイゾナ!!

江藤「よし、ここまでにしておこうかな。これ以上は榊原君も困るだろうしね。ただ次、服買いに行く時には今回の意見、参考にさせてもらうよ」

恒一「そうしてもらえると嬉しいよ」

江藤「そろそろ出ようか」

恒一「そうだね」

んもー

勅使河原「……ふぅ。一応言い訳して急いで逃げてきたが……中島と多々良、かなり怒ってたな」ゼェゼェ

猿田「部活で多々良と顔を合わせづらくなったぞな」ハァハァ

望月「……な、なんで僕が痴漢のレッテルを貼られなきゃいけないんだ……」ゼェハァ

勅使河原「っと、そういやサカキと江藤はどこ行ったんだ?」

猿田「店にはもういなかったぞな」

勅使河原「お! いたぞ! ゲーセンの前だ!」

猿田「よし! 追うぞな!」

望月「ま、まだやるの?」

江藤(あ、ゲームセンターだ……)

江藤「ねぇ榊原君」

恒一「どうしたの?」

江藤「ゲームセンター、寄ってかない?」

恒一「意外だね。江藤さんってゲームとかやるんだ?」

江藤「そうじゃなくてさ。ちょっと来てくれる?」グイ

恒一「あ……」タッタッタ

江藤「ほらこれ。一緒にプリクラ、撮らない?」

恒一「プリクラか……って、江藤さんと一緒に?」

江藤「うん……。せっかく二人で遊びに来たんだし、榊原君と一緒に撮りたいな……?////」モジモジ

恒一(どうしよう……女の子と一緒にプリクラとかなんだか恥ずかしい、、、)

江藤「いや?」ウワメヅカイ

恒一「うっ!」

恒一「わ、分かった。いいよ。一緒に撮ろう」

江藤「やった! ありがとう榊原君!」


   ホラ、ナカニハイロ ウン

望月「ファミレスでカップル席に座って、アパレルショップで一緒に服選んで、おまけにプリクラか」

勅使河原「完全にデートだなこれ」

猿田「羨ましくなってきたぞな」



江藤「ほらほら。もっと近づかないと写らないよ?」

恒一「あ、うん//// (え、江藤さんの顔がこんな近くに……っ! しかもなんか良い匂いするし////)」

江藤「……」チラッ

恒一「……」オドオド

江藤「……」クスッ

  ハイチーズ! カシャッ!

支援

江藤「良いの撮れたねー。でも榊原君、顔固くなりすぎ」

恒一「すんません」

江藤(本当は私も内心、緊張してたんだけどね。だけど、榊原君と一緒にプリクラ撮れて良かった……。これ、大事にしよう)ギュッ

江藤「ん?」

恒一「どうかした?」

江藤「今、そこのUFOキャッチャーの裏に誰かいたような……」

恒一「他のお客さんじゃないの?」

江藤「そうかな? (目が合ったんだけど)」

恒一「……ちょっと見てみるよ」トコトコ



   ヤベ、コッチキタゾ! ハヤクニゲルゾナ! モウ、マニアワナイヨ!

恒一「え?」

勅使河原「あ……」

江藤「!」

恒一「勅使河原? ……に、望月に猿田君?」

さるよけ

望月「や、やぁ榊原君」

猿田「き、奇遇ぞなこんな所で」

恒一「……まさか尾けてた?」

勅使河原「な、なんのことだかよく分からねぇな! 別にファミレスで榊原と江藤を見つけて面白そうだったからって尾行してたなんてことないぜ!」

恒一「は?」

望月「勅使河原君!」

勅使河原「ん? あ、い、今のなし! 今の聞かなかったことにしてくれ!」

恒一「てしがわらぁぁ」

猿田「バレてしまったぞな」

望月「ご、ごめん榊原君! ちょっと興味本位だったんだ。江藤さんもごめんね?」

江藤「あ、うん……」

勅使河原「ま、まあ終わったことだしいいじゃねぇの! 細かいことはこの際気にすんな!」

恒一「勅使河原が言える立場じゃないでしょ」 

勅使河原「それよりよぉ、サカキ! お前どういうことだよ?」ニヒヒ

恒一「何が?」

勅使河原「鳴ちゃんという決まった女がいながら江藤と浮気とは隅に置けねぇな?」ヒソヒソ

恒一「そ、そんなんじゃないよ……、、、」チラッ

江藤「?」

勅使河原「よし! ちょっくら事情聴取といきますか」

恒一「事情聴取?」

猿田「それはいいぞな。どんな経緯で江藤とこんな関係になったのか洗いざらい白状してもらうぞな」

恒一「待ってよ。僕たちこれから花火大会の会場行かなきゃならないんだけど」

勅使河原「なら俺たちが会場近くまで送ってやるから、道すがら話してもらうぜ?」

恒一「えええええ!?」

望月「うわ、勅使河原君も懲りないね」

勅使河原「大丈夫大丈夫。ちょっとそこまでだって。いいよな? サカキ!」

恒一「……じゃあそこまでだよ?」

勅使河原「よし決まり!」

猿田「話が分かる奴ぞな」

江藤「……………………」

―――
―――――

勅使河原「でよぉサカキ、いつも思ってたんだけどよぉ」

恒一「なんだよ?」

勅使河原「お前ってなんでそんなに女にモテるんだよ?」

恒一「……? 僕がモテる? 何かの勘違いじゃないの?」

勅使河原「おいおいどんだけ天然なんだ? 一学期だけでもお前、少なくとも2、3人には好意持たれてたと思うぞ?」

恒一「そんなまさか。僕に限ってありえないよ」

猿田「はぁ。これだから都会生まれの色男は困るぞな」

望月「僕が言うのもなんだけど、榊原君はもっと周囲の人たちの言動に敏感になった方がいいよ」

恒一「そう言われてもなぁ……」

勅使河原「そもそもサカキはよ、どんな女のタイプが好きなんだ?」

恒一「そんなこと訊かれても、特に決まったのなんてないよ。そういう勅使河原はどういう子が好きなのさ?」

勅使河原「そうだな……年上から年下までなんでもありだぜ。ただ俺ってM属性あるからさ、ツンツンした気が荒い女がベストだな。あ、もちろんおっぱいはビッグサイズで!」

望月「勅使河原君らしいなぁ」

こいつらじゃまだ!

勅使河原「望月はどうなんだよ? やっぱり年上の色っぽいお姉さんタイプか?」

望月「なっ!? 僕はそんなの別に……」

勅使河原「隠すな隠すな。俺も分かるぜ。あの年上独特の包容力。最高だもんな?」

望月「うう……////」

猿田「望月も意外と好きじゃのう。だが包容力というのには同意するぞな」

勅使河原「だよな? あの抱き締められた時の感覚。形容しがたいぜ」

恒一「なんか偉そうに語ってるけど、そもそもお前、女の子と付き合ったことすらないだろ?」

勅使河原「いいんだよ。妄想こそ男子中学生のエネルギー源じゃねぇか?」

猿田「その通りぞな。妄想が男を磨くもんじゃ」

望月「もう、みんなそういう話にすると元気になるんだから」

江藤「……………………」トボトボトボ

勅使河原「そういや先週見たか? あのアイドルが水着でバトる番組」

猿田「おうおう、見た見た。見たぞな!」

江藤(ハァ……なんだかつまんないな……)トボトボ

恒一「何それ?」

勅使河原「お、興味あるのかサカキ? あの番号は最高にエロいぜ!」

望月「勅使河原君、声が大きいよ。他の通行人の人に聞かれちゃうよ」

江藤(榊原君は勅使河原君たちと会話に夢中だし……。適当な理由つけて帰っちゃおっかな……?)

望月「あ、榊原君。あそこじゃない? 花火大会の会場って」

江藤「!」

恒一「え? あ、本当だ。みんな集まってるね」

勅使河原「っと、俺たちはここまでだな。後はサカキと江藤の二人で楽しんでくれ」

猿田「時間は大丈夫かのぅ?」

恒一「始まるのは18時だからまだ余裕あるね、江藤さん」

江藤「…………」プイ

恒一(あ、あれ? 江藤さん、なんか怒ってる……?)

支援

勅使河原「それとよ、サカキ」グイ

恒一「わっ! 何?」

勅使河原「もし江藤といい雰囲気になったら、迷わずやっちまえよ?」ヒソヒソ

恒一「はぁ? 何をだよ?」

勅使河原「チューだよチュー」

恒一「チュ……っ!?////」

猿田「女と二人きりになれるチャンス。男を見せる時ぞな」ヒソヒソ

恒一「な、何を言ってるんだよ……っ////」

望月「じゃあ花火大会楽しんでね。二人のところ邪魔して悪かったね、江藤さん」

江藤「……別に」

勅使河原「また学校でな!」

猿田「報告楽しみにしてるぞな」

俺「…………」プイッ

恒一「行っちゃった。マイペースだなあの3人も」

恒一「さ、江藤さん、もうすぐ花火大会始まるし会場入ろうか」

江藤「そうだね」

恒一「えっと……江藤さん、さっきからなんか怒ってない?」

江藤「いや? 気のせいじゃないの?」

恒一「ほらぁ! 絶対怒ってるって。もしかして僕また何かした?」

江藤「してない」

恒一「もし本当に何かしてたのなら謝るからさ」

江藤「…………」

恒一「江藤さん?」

江藤「……ないよ」

恒一「へ?」

江藤「謝る必要なんて全然ないよ」

江藤「いきなり現れた勅使河原君たちと合流してから30分近くずっと蚊帳の外に置かれてて一人ぼっちだったけど謝る必要なんて全然ないから!」グスッ

恒一「え……じゃあまさか江藤さん、それで……?」

嫉妬江藤さん可愛い

江藤「ま、男の子同士の方が話しやすいだろうしいいんじゃない? 代わりに私は30分も〈いないもの〉状態だったわけだけど」

恒一「そんな……それならどうしてそう言ってくれなかったの?」

江藤「……っ 榊原君のバカぁ!」

恒一「え、え? ええっ!?」

江藤「初めて男の子と2人で出かけるからって、一番可愛い服着て、髪整えて、お洒落して、柄にもないことしてワクワクして来たのに……これじゃ私、間抜けみたい」

江藤「もし見崎さんだったら、耐え切れず帰ってるかもね」

恒一「うっ」

江藤「……」グスッ

恒一(まずい。大変なことをしてしまった。女の子ってこういうの気にしちゃうんだ。ていうか江藤さん、涙目なんだけど)オタオタ

恒一「あう、その……あの……ごめん江藤さん。初めに勅使河原たちに事情話してそこで別れるべきだったよ。ごめん……、、、」

江藤「いいよもう……30分黙ってて何も言わなかった私も悪いんだし」

恒一「はうう……」

江藤「…………、、、」グスッ

恒一「…………江藤さん」

江藤「……何?」

恒一「言い訳のつもりはないんだけど、江藤さんを悲しませる気はなかったんだ。ただ僕、女の子との付き合い方とか慣れてなくて……」

江藤「………………」

恒一「だけど最初にも言ったけど、僕も今日、江藤さんと2人で出かけるのを楽しみにしてたのは本当だよ?」

江藤「……うん」

恒一「調子良すぎるかもしれないけどさ……もしまだ、こんな僕でも構わないのなら……一緒に花火、見てくれないかな?」

恒一「もう無視しないし。今日だけはずっと、江藤さんの隣にいるから」

恒一「……ダメかな?」

江藤「……………………」

江藤「……ダメな訳、ない」ボソッ

恒一「え?」

江藤「私も今日は、ずっと榊原君の隣にいるから……」ギュッ

恒一「あ……(手を……)」

江藤「二人で楽しもう?」

江藤「ね?」

恒一「うん……」


  ザワザワ

江藤「おー! いっぱいいるねぇ!」

恒一「もうそろそろ始まる時間だね」

江藤「あ! 榊原君、あそこあそこ!」

恒一「ん? どうかしたの? って、あれは……」

江藤「辻井君と柿沼さんだよね?」



辻井「この間さ、隣町に大きな本屋が出来たんだって。今度良かったらそこに行ってみない?」

柿沼「本当ですか? 辻井君と一緒に行けるなら嬉しいです」

辻井「はは、照れるなぁ」



江藤(へぇ。あの2人、あんなに仲が進んでたんだ)

恒一「お邪魔しちゃ悪いし、もっと離れた場所に座ろうか」

江藤「そうだね」


  ヒュゥゥゥゥ……ドーン!! ドドーン!! ドパーン!!

恒一「お、始まったね」

江藤「わぁ! 綺麗」

恒一「やっぱり来て正解だったね」

江藤「うん!」

  ドォォン!! ヒュゥゥ……パパパパパァン!!!

江藤「……………………」

恒一「……………………」

  ヒュゥゥゥ……ドドドドォオン!!!

江藤「……私さ」

恒一「ん?」

江藤「正直、こんな風景見れるとは思ってなかった。一学期は、もしかしたら災厄で自分が、なんてずっと考えてたから……」

恒一「そうだったんだ……」

江藤「本当のこと言うと、今でもまだ災厄が怖い。今でもまだ、あのトラウマから抜け出せてないけど……」

江藤「……けど、こうして榊原君と一緒に花火を見れてる。それだけでもとても嬉しいし安心するの」

恒一「江藤さん……」

江藤「ありがとね、榊原君。私、榊原君と友達になれてとても幸せだよ」

恒一「僕だって……江藤さんと友達になれて幸せだと思ってる。そしてそれは、これからも変わらない」

江藤「そっか……」

江藤「…………、、、」

江藤「……あのね榊原君」

恒一「なんだい?」

江藤「私、実は榊原君のことが……」

恒一「ん?」

 「お! 見ろ!」 「でかいのくるぞ!」

   ヒュゥゥゥ……ドドドドドドドドドパパパパパァァァン!!!!

 「おー!」 「きゃーすごーい!」

恒一「わぁ……これは迫力あるね」

恒一「っと、ごめんごめん。今何か言おうとしてたよね?」

江藤「……あ、いや、なんでもない」

青春だな

恒一「え? 何それ? 気になっちゃうじゃん」

江藤「いいの!//// やっぱりまだ早いし、もっと関係深めてからの方がいいしね!」

江藤「それに、強力なライバルもいることだし」ボソッ

恒一「一体なんのこと話してるの?」

江藤「いいからいいから!!//// ほら、今は花火見ようよ?」

恒一「あ、うん」

  ヒュゥゥゥゥ……ドドドォォン!!! ドォォン!! パァァァン!!!

江藤「榊原君」

恒一「ん?」

江藤「これからもよろしくね♪」

恒一「こちらこそよろしく」ニコッ

  ドドドドドドォン!!!! パパパパパァアン!!!! ドォォォン!!!!

あともう少しだけ続く
ちょっと休憩

休憩終わり

江藤さんだけでここまで来るとはw

支援、それにしてもanotherSSはすごいなwいろいろな可能性を開くことが出来る

落ちそう

落とさせない

任せろー

――
―――
―――――

  公園

江藤「あー面白かった! すごかったよね? 最後、花火が連続で打ち上げられたとことかさ!」

恒一「あれは僕も思わず見入っちゃったよ」

江藤「今日は本当にありがとね? とても楽しかったよ。それに、わざわざこんな所まで送ってもらっちゃって」

恒一「もう暗いし、良かったら家まで送ろうか?」

江藤「大丈夫大丈夫。ここからなら家はすぐだし」

恒一「そっか。それじゃあ……」

江藤「また学校でね」

恒一「ああ、また学校で」クルリ

恒一「…………」スタスタスタ

江藤「………………」

江藤「あ、あのさ榊原君!」

恒一「どうかした?」クルリ

江藤「えっと、その……お休み?」

恒一「うん、お休み」ニコッ

恒一「…………」スタスタスタ

江藤「……行っちゃった」

江藤「私も帰らないと」

江藤「そうだ。見崎さんにお礼の電話しようかな? 今日榊原君と楽しめたのも、見崎さんのお陰だしね」

江藤「見崎さんの電話番号は、っと……」ピッピッピ

  ザッ

江藤「え?」

男「ハァハァハァ……また、会ったね」ニヤァ

江藤「!!!!!!」

男「ふふっ、運命を感じない?」

江藤(こ、この人……っ! 夕方、駅前で榊原君と待ち合わせした時にナンパしてきた人だ!)

男「僕は運命を感じるよ。なんたって、一度逃がした獲物に再び出会えたんだからね!」ギラリ

江藤(……包丁!?) 

江藤(まさかこの人、初めからナンパ目的じゃなくて……)ゾッ

男「さぁ、おいで。ふふっ……僕と楽しいこと、しようよ」

頼むから友達エンドはやめてくれ

通り魔か

通り魔じゃ

くそっここに中尾が居れば……!

江藤「い、いや……」ズザッ

男「ほら、この包丁も君の美しくて美味しい血を吸いたがってウズウズしているよ?」

江藤「来ないで……」ザザッ

男「何人もの乙女の血を吸ってきたこの包丁が、君を新たな生贄に選んだんだ」

男「さぁ、僕に君の血を見せてくれ!!!」ダッ



   きゃああああああああああああああああ!!!!>



恒一「……っ」

恒一「今の……! 江藤さんの悲鳴!?」

恒一「江藤さん!!!」ダッ

江藤「いや……っ! 離して!! 誰か助け……ムグッ!?」

男「ふへへへへ。いいね。このスラリと伸びた細い足、白い肌……柔らかい体……最高の素材だよ」

江藤(くっ……押し倒されて動けない! 口も塞がれて声が出ない……!)

男「そして何より、恐怖に歪んだ若い女の顔! ああああ! 何度見てもやめられない快感だ!!」

江藤「むうううう!!!! んううううう!!!!」ジタバタ

男「でもね、僕が一番見たいのは若い女が痛みと苦しみで泣き叫ぶ顔なんだ」

男「僕のために、死んでくれ!!!」ギラリ

江藤(神様……っ!)

恒一「おおおおおおおお!!!!!」

  ドカッ!!

男「ぐふっ!?」

江藤「!?」

江藤「さ、榊原君!?」

恒一「僕がこいつを押さえてる間に逃げるんだ江藤さん!!」

男「ふふふ」ギラリ

恒一さんイケメン過ぎワロタ
さすが現象を止めた男だぜ

ピンチになると封印した酒鬼薔薇が覚醒しちゃうぞ

死ぬまで殴り続けちゃえ

江藤「危ない!!!」

恒一「!!!!」

  シャッ ブシュッ!!!

恒一「ぐあっ!?」

江藤「榊原君!!!!」

恒一(クソ!! 左腕を切られた!!)

江藤「さかき――」

男「ふふふふふふ。汚い男の血が包丁についちゃったじゃないか。どうしてくれるのさ?」ペロリ

江藤「……!!」ドクン!!





    ――『ンツッ……イ゛エ゛アァアァァァッアア゛ツァァッァアッツァゥ――ヴンッ!!!!!』――





江藤「あ……ああ」ガタガタ

現象に比べれば通り魔なんて赤ん坊みたいなもんだしな

風見の連続ナイフ全部避けた恒一に一発で当てるとかこいつ何者だよ

風見さんと対抗できた恒一さんなら・・・

でも杉浦さんにはフルボッコにされてたし

恒一「江藤さん!! 早く逃げるんだ!!」




    ――『ハァハァ……ぅぇぁぁあっ!!』ドスッ!!――




江藤「ああ……いや……いや」フルフル

恒一「江藤さん?」




    ――『ひゃげう!!!』ブシュウウウウ――




江藤「あ……うあ……」ガタガタ

恒一(クソッ、どうしたってんだ一体!? 江藤さんの様子がおかしい!)

>>378
女の子には紳士だから

>>378
アレは半ば不意打ちだったところもw

男「ほら! 当たると痛いよ? 刺されると血が出ちゃうよ?」

男「ほらほらほらほらほら!!!!」ブンブンブンブン

恒一「くっ!」サッサッサッ

男「早く死んじまえよ!!!」

恒一「わっ」ガッ

  ビターン!

恒一「うっ……(転んでしまった。早く起きないと!)」

男「ひぃやはぁぁぁぁぁあああっ!!!」ブンッ

恒一「クソッ!!」ガシッ

男「お前……生意気だな。僕が誰だか知ってるのか?」ググググ

恒一「し、知るかよそんなこと(ほ、包丁が目の前に……っ!)」ググググ

男「ここ数年、世間を騒がせてる大スターだぞ?」

恒一「何ぃ? ……くっ!」

男「新聞で読んだことないか? 『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』ってな」

恒一「ま、まさか!?」

怜子さんの敵討ち来たこれ

覚醒するのか

あの恒一似のイケメン通り魔か

男「その通り。絶賛、夜見山を恐怖で支配している史上最凶の通り魔、それが僕のことさ」ニヤァ

恒一「お前があの……」

恒一「あの通り魔なのか……?」

男「なんだ、ビビったか?」

恒一「お前が……」

男「良い冥土の土産になったろ? だが安心しろ。後でちゃんと、そこの彼女もお前の元に送ってやるからさ」

恒一「………………」

男「だからお前は、一足早くあの世に行ってろ!!!!」ブンッ

  ガシィィッ!!!

男「何!?」

恒一「……お前のせいで」ボソッ

男「くっ!?」グググ

恒一「お前のせいでどれだけの被害者が無念のうちに死んでいったか……どれだけ多くの人が辛い目に遭ったのか……分かってるのか?」

恒一「お前は夜見山に取り付くもう一つの災厄だ」

男「なんだと? 何を言ってやがる?」

恒一「もう、これ以上……この町で災厄は起こさせない!!」

男「こいつ!!」

恒一「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

  ドゴッ!!!!

男「ぷぎゃっ!?」

恒一「ハァ……ゼェ……今のは江藤さんを怖がらせた分」スクッ

男「お、お前えええええ!!!!」

恒一「もう一発はお前に殺された被害者たちの分だ!!!!」

   ドゴオオオオオオッ!!!!

男「ぐぇぁあああぁぁぁ……っ!!??」

恒一△

これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分
これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分
これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分
これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分これは江藤さんの分

俺らならサクッと刺されて死んでるんだろうな
ていうかその前に美少女とデートまでこぎつけられないんだろうな

恒一「ハァ……ハァ……」

男「か……はっ」バタッ

恒一「江藤さん!」

江藤「あ……ああ」ガタガタ

恒一「江藤さん!! 怪我はなかったかい!?」ユサユサ

江藤「!!!」ビクッ

江藤「い……いや……」

恒一「江藤さん?」

江藤「いや……いや! いやぁ!!」

恒一「どうしたんだ江藤さん? 落ち着いて! 僕だよ! 榊原だ!」

江藤「包丁が……」

恒一「包丁?」

江藤「血まみれの包丁……ああっ、やだ……先生が……先生の首が……っ! あああああ」

恒一「!」

恒一(まさか、血がついた包丁を見てトラウマが蘇ったのか!?)

もうやめて榊原くん!! もうそいつ死んでるから… かと思った…

江藤「血が……血があんなに出てる……顔についた血が取れないよ……やだ! やだやだやだ!! いや――」

恒一「江藤さん!」ダキッ

江藤「!!!!」

恒一「大丈夫だ江藤さん……もう、災厄は終わってるんだ」

江藤「はっ……あっ……さかき……ばら……くん」

恒一「ここは公園で、あの日の教室じゃない。災厄は終わったんだ。江藤さんが怖がる必要はないんだよ」

江藤「……終わった? 災厄、終わった、終わったの? 終わったんだよね……?」

恒一「そうだ。だから安心して。それに、通り魔も僕がやっつけたからさ。僕が江藤さんの傍についてる。僕が傍にいる限り、江藤さんを守ってあげるから……」

江藤「守る……榊原君が?」

恒一「うん」

江藤「……そっか……安心……私、安心した……榊原君が傍に……傍にいてくれる」

江藤「……榊原君……」

恒一「なんだい?」

江藤「……ありがとう」

恒一「ああ」

>>390
ていうかその前に美少女がいない

恒一「……どう? 落ち着いたかな?」

江藤「……うん。もう大丈夫。榊原君のおか――」

男「ハァ……ハァ」ギラリ

江藤「榊原君!! 後ろ!!」

恒一「え?」クルリ

男「し、死ねええええええ!!!!」

恒一(ナイフ!? まだ凶器を隠し持ってたのか!?)

男「えぇやぁぁああああああ!!!!!」

 「そうは問屋が卸さないんだなぁ」

  ガッ!!! 

男「ぐえっ!!」ズダーン

「決着は着いてるのに、往生際が悪いぜ?」

恒一「君は……」

水野「よう」

恒一「水野君!」

イケメンが増えた!

水野さんやないっすか

なんと

前島「二人とも、無事かい?」

江藤「あ、前島君も」

男「クソオ!! 離せ!! うあああああ!!!!」

水野「おとなしくしてろよ、犯罪者」

恒一「どうして君たちがここに?」

前島「どうしても何も、公園の外を歩いてたら変な雄たけびが聞こえてさ。見てみたら、君たちが包丁を持った男に襲われてるじゃないか」

水野「だから一緒にいた米村に近くの交番まで走ってもらって、俺たちはお前たちを助けるためにここまで来たんだよ」

恒一「そうだったんだ」

水野「もっとも、その前に榊原がこいつを一度のしちまったし、警察もすぐ来るだろうから俺たちはお邪魔にならないよう陰で見守ってたんだが……」

江藤「お邪魔って?」

前島「いや、こいつ倒した途端、ハリウッド映画のラストみたいにいきなり抱き合い始めたじゃないか君たち」チラッ

恒一・江藤「え?」 

恒一・江藤「……あ////」カァァ

恒一・江藤「~~~~っ////」ババッ

前島「まさか2人がそんな関係になってるとは知らなかったよ」

恒一「こ、これは別にそういうわけじゃ……!」

江藤「そ、そう! ちょっと事情があってあんな風になってただけで……!」

水野「ま、どうでもいいが油断してんじゃねぇぞ? 俺たちが近くにいたから事無きを得たものの」

恒一・江藤「……す、すいません、、、」

米村「おーい! 警官連れて来たぞー!」

前島「お、米村だ」

警官「凶器を持った男がいると聞いて来たんだが」

水野「こいつっす」

男「チクショウ!! 離せ!! この無能どもが!!」

恒一「この男、例の連続通り魔です。本人がそう名乗ってました」

水野・前島・米村「ええっ!?」

警官「お前がそうなのか? ふん、お前の悪事もここまでだな。ほら立て」

男「クソッ……」

前島「驚いたな。あいつが例の通り魔だったのか」

米村「まったくだよ」

水野「まさかこんな形で通り魔事件の犯人が終わるなんてな」

恒一「うん、終わったんだよ」

水野「あん?」

恒一「……これで本当に、すべてが終わったんだ」

恒一「ね? 江藤さん」

江藤「うん。そうだね……」

江藤「後は……」

―――――
―――
――

支援

後は?

――
―――
―――――

  それから一週間後・市内の市民プール

恒一「えーっと……」キョロキョロ

鳴「榊原君。こっちよ、こっち」

恒一「あ、見崎!」タッタッタ

鳴「遅いわよ。どこか行ってたの?」

恒一「うん。ちょっと、お墓参りにね」

鳴「お墓参り?」

恒一「ああ」

鳴「……なんでまた?」

恒一「良い機会だと思ってさ。今までずっと負い目があって行くのを避けてたんだけどね……」

恒一「謝罪して、あと江藤さんが大会で頑張れるよう見守ってほしいって頼んでおいたよ」

鳴「そう……」

支援

恒一「だからもう大丈夫。江藤さんなら……やり遂げられるはず」

『ただ今より、女子自由形100m決勝を行います』

鳴「あ、来たみたいよ。ほら、江藤さんもあそこに」

恒一「江藤さん……!」

『位置について、用意!』

恒一「……」ゴクリ

 パン!!!

『各選手、スタートしました! おおっと、5番レーンの江藤選手出だしから早い!!』

恒一「行け」

『しかし、後から2番の山田、続いて4番の田中追い上げてくる! これは接戦です!!』

恒一「行け!」

『あーっと、江藤選手抜かれました! しかし勢いは衰えてない!』

恒一「頑張れ!」

『2番、4番、5番、50mを超えて横一列に並びました!』

恒一「君ならできる江藤さん!」

『ここで4番、引き離されました! 2番の山田選手と5番の江藤選手、両者一歩も譲りません!』

見崎「………………」

『ゴール直前! 果たして優勝はどちらでしょうか?』

恒一「江藤さん!!」

『ゴオオオオオル!!!! 優勝は江藤選手です!!!」

恒一「やったああああああああああ!!!!」ガタッ

見崎「やったわね、江藤さん」

『優勝おめでとうございます、江藤選手! 一言お願いします!』

江藤『ハァ……ゼェ……』

江藤『じゃあ……ハァ……応援してくれた友達に……ハァ』

江藤『ありがとう!』ニコッ

恒一「江藤さん……」

見崎「……」フッ

恒一「おめでとう……」グスッ

鳴「あらあら。男の子が泣いちゃって」

恒一「な、泣いてないよ! 見崎の意地悪!」グスッ

鳴「ふふ」

―――
―――――

恒一「今日はよく頑張ったね、江藤さん」

鳴「お疲れ様」

江藤「えへへ、2人ともありがとう」

鳴「練習の成果が出て良かったわね」

江藤「うん。本当は……また溺れたりするんじゃないか、って不安も少しあったんだけど、どうやら完全に克服できたみたい」

恒一「じゃあもう、心配する必要もなさそうだね。これでまた好きに泳げるね」

江藤「うん楽しみ! って言いたいところなんだけど、その前に受験があるんだよねぇ」

鳴「あ、そっか。受験あるの忘れてた」

恒一「おいおい」

江藤「もういっそのこと受験諦めて、残りの半年遊びまくっちゃおうかな?」

鳴「それ名案かも」

恒一「ちょっと2人とも! 何言ってるの!? 将来がかかってるんだよ!?」

江藤「じゃあさ!」ガシッ

恒一「うおっ」

江藤「マンツーマンで勉強教えてよ? この前約束したよね? 一緒の高校行こって」チラッ

鳴「!」

恒一「あ、ああ、もちろんいいけど……(急に腕組まれてビックリした)」

鳴「…………」

鳴「私も」ギュッ

恒一「え? どわっ!?」

鳴「私も榊原君と同じ高校行くつもりだし、もっと勉強時間増やしてほしいな?」

恒一「そ、それも別に構わないけど……(急に手を握られてビックリした)」

恒一(ていうか僕今、何気に両手に花状態?)

うほ

鳴「ただ、江藤さんは頭良さそうだし、一人で勉強した方が捗るんじゃないかな?」

江藤「そういう見崎さんこそ、独学の方が伸びるタイプだと思うけど」

見崎・江藤「ぐぬぬ」

恒一「ちょっ、よく分からないけど睨み合うのはやめなよ。見崎も江藤さんもなんで僕と2人だけで勉強したがるの? 3人一緒の方が楽しいじゃない」

見崎・江藤「でも……」

恒一「そう思わない?」

鳴「ま、榊原君がそう言うなら……」

江藤「仕方ないかな?」

恒一「うんうん、分かればいいんだ。それが一番だよ」

恒一(にしても二人とも、いつまで僕にくっついてんだろ? なんか恥ずかしいんだけど////)

江藤「見崎さん」

鳴「?」

江藤「貴女とはこれから色んな意味で張り合うことになりそうだし、先に忠告しておくね」

鳴「……へぇ? 何かしら?」

江藤「トラウマを乗り越えた江藤悠は絶対無敵。勉強にしても恋にしても――」






江藤「私、絶対負けないからね!」






                                                      終わり

乙!

無駄に長くなってしまったけど、ここまで付き合ってくれた人ありがとう。
合宿不参加組のモブキャラとはいえ、江藤ちゃんも意外と魅力的な部分いっぱい
あるので今後何かと気にかけてくれると嬉しいです。

つまり何が言いたいかっていうと、江藤ちゃん可愛い。

乙! 江藤さん可愛い

乙~

乙!おもしろかった!

乙!

江藤さんかわいい
これは選ばなくてもハーレムでも良いな

乙。見崎と女子のクラスメイトが仲良くなるSSって意外と少ないから、そういう面でも良かった。

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