P「今日は1時00分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」 (71)

~社長室~

社長「おお、そうか!ついにイベントの仕事を決めてくれたか!うむ、それでこそ我が765プロのホープだな!」

P「はい、頑張って営業かけた甲斐がありました!」

律子「サポートは任せてください!」ビリビリ

社長「うむ、彼だけでは少々筋力が足りないようだから、是非物理的にも支えてやってくれ」

律子「ええ、プロデューサーも遠慮なく頼ってくださいね?」

P「ああ、その時は頼むよ律子」

少なくとも物理的な意味で遠慮する気など元から毛頭ないが。

P「・・・ん?」

何やら事務所が騒がしい。今度は何だ?

社長室から出ると、ちょうど雪歩が泣きながら窓から事務所に入ってくるところだった。

さらに窓の外からは春香と真の声が聞こえる。

興味本位で窓からチラリとのぞいてみると、春香と真が猛烈な勢いで壁をよじ登ってきていた。

ちなみにここは9階であり、命綱は無いが外壁にはボルタリング用の足場が取り付けてあるため彼女たちには安全だ。


春香と真は登りきると、すぐに雪歩の元へと駆け寄る。

雪歩「うぅ・・・ひっく・・・わたし・・・ごめんなさい・・・」

真「しょうがないよ、今日はたまたま男の先生だったんだから」

春香「ほら、鼻水が洋服についちゃうよ?」

つまりレッスンの担当が男の先生で、男性が苦手な雪歩がパニックになってしまいレッスンにならなかったということらしい。

雪歩「うう・・・こんな私なんか・・・私なんか・・・」

雪歩「穴掘って埋まってますぅーーー!!」ズゴン!

そういうと突然素手で床をぶち抜き、コンクリート塊をまき散らしながらビルを貫通させていく雪歩。

亜美「でたー!ゆきぴょんの765縦断貫通撃!」

真美「今日は床を何枚抜きできるのかー!」

P「見てないで止めてくれよ!俺には無理だから!」

繰り返すがここは9階であり、おそらくこれのせいであろう、このビルには765プロと1階のたるき亭以外は誰も入っていない。

穴掘りが止まったようなので4階まで迎えに行った。入り口に背中を向けて座り込んでいるので、近づいて声をかける。

P「なあ雪歩、とりあえず男の先生でも普通にレッスンが受けられるようにしていかないと・・・」

雪歩「ひっ!?男の人ぉ!」ブォン

P「あぶねっ!」バギャッ!

振り回された腕を間一髪で避けると、腕の軌道上にあった柱が一本砕け散った。

P「は、はは・・・ていうか、まず俺に慣れてもらわないとな・・・」

雪歩「うう・・・ごめんなさぁい・・・」

俺もはやく職場に慣れなきゃな・・・危険手当とかでないのかなこの仕事・・・

 

この番組は

P「今日は0時00分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」

から始まる一連の話の続きとなっていますが

とりあえず筋肉だということだけわかっておけばなんとかなるかもしれません


 

~CM~

THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST!

第2弾 SWEET&SMILE!

好評発売中!

~CM~

 

                第
                三
                話





本の筋線維から

 

~事務所~

律子「降郷村の夏祭りでのミニイベントへの参加が決まりました!歌のステージ付き!全員参加よ!」ビリビリ

うおー!わーい!やったー!ムキムキッ

久々の大きな仕事の発表に、口々に興奮して喋り出すアイドルたち。気のせいか筋肉が盛り上がる擬音すら聞こえてきた。

律子「それと、このイベントは彼が取ってきた初仕事です!」

P「が、頑張るからな!」

伊織「ちょっと、大丈夫なの?」

真美「兄ちゃんにはまだ荷が重いかなー?」

P「ねえそれ肉体的な意味?精神的な意味?どっちなの?」


雪歩(やった、ステージで歌えるんだ・・・!頑張らなきゃ・・・!)

~翌朝早朝事務所前~

P「衣装とか各自必要な荷物は車に乗せてけよー」

皆「はーい」



雪歩「・・・ふふっ」

真「ん?どうしたの?」

雪歩「真ちゃん、ステージで歌えるなんてすごいよね!私、緊張するけどすっごく楽しみ!」

真「うん、その意気だよ雪歩!」

春香「頑張ろう雪歩!」

P「お、雪歩気合入ってるな!いいぞ!」

雪歩「ひ、ひいっ!男の人!」ズゴン

アスファルトに拳大の穴が開きました。

あー・・・これ俺のせい・・・?

小鳥「まわりに気を付けて行ってきてくださいね」

P「はい・・・といってもみんなまだ車に乗ってないから出発はもう少し後ですけどね」

律子「何言ってるんですプロデューサー、乗るのはプロデューサーと美希だけですよ?」

P「・・・は?なんで?」

律子「なんでって・・・美希は寝てるじゃないですか、だからしょうがなく乗せるんです」

P「いやそっちじゃなくて、なんでみんな車に乗らないの?」

律子「え?」

P「え?」

どうやら俺と皆との間に、筋力の差による齟齬が生じているようだ。

数十分後、俺は車の中から、窓の外を流れる景色を眺めていた。

別に運転中によそ見しているわけではなく、そもそも俺は運転席に座っていない。

ならばなぜ車は動いているのか?

答えは簡単、




律子「765プロー!」ビリビリ

皆「ファイッオーファイッオーファイッオー!」




皆が担いで走っているからだ・・・!

~回想数十分前~

律子「そもそもこんな小さい車に全員が乗れるわけないじゃないですか」

律子「それに道によっては車より走ったほうが速いですし」

律子「皆もいいトレーニングになりますよ」

律子「あ、プロデューサーも一緒に担いでみます?」

~回想終わり~

~車外~

やよい「皆で出かけるなんて遠足みたいだよねー!」

春香「ほらほらこのパンフレット見て!降郷村は、びわが名産なんだって!」

真「本当だ、びわケーキ、びわジュース、びわ漬けなんてものあるんだって!」

律子「こらこら、片手で持ち上げない!筋肉かたよるわよー!」

春香真「はーい」

~車内~

P「びわ漬けか、そんなものまであるのか・・・帰りに買うか」

後部座席には美希が寝ているだけで、実質車中は俺一人。

外から漏れ聞こえてくる話に反応したところで、車の下で団結(オー!オー!)してる皆には聞こえやしない。

ちなみにどれくらい団結してらっしゃるかというと、複数人で車を担いでいるはずなのに俺は平坦な斜面を走ってる程度の揺れしか感じないほどだ。

アイドルってすごい。

そうしてアイドルたちが走り続けること1時間ちょっと。俺たちは降郷村に到着した。

山に囲まれて自然豊か、道路は土で田んぼや畑があちこちに見受けられる。

そして下見した会場は中学校のグラウンドのような広場で、向かって奥にはお手製感満載のステージ(製作途中)がある。

言葉を選ばなければ、ドが3、4個はつくほどの田舎だ。

皆「・・・・・・」

P「・・・と、とりあえず荷物をおろして移動しよう!あの学校の校舎を控室にしてもらってるらしいから」

            ノヘ,_
    ,へ_ _, ,-==し/:. 入
  ノ"ミメ/".::::::::::::::::. ゙ヮ-‐ミ

  // ̄ソ .::::::::::: lヾlヽ::ヽ:::::zU
  |.:./:7(.:::::|:::|ヽ」lLH:_::::i::::: ゙l   いぇい!
 ノ:::|:::l{::.|」ム‐ ゛ ,,-、|::|:|:::: ノ   道端に生えてる草は食べられる草です!

 ヽ::::::人::l. f´`  _  |:|リ:ζ    畑に生えている草は美味しく食べられる草です!
 ,ゝ:冫 |:ハ、 <´ノ /ソ:::丿
 ヽ(_  lt|゙'ゝ┬ イ (τ"      ホント 貧乏は地獄です! うっう~~はいたーっち!!!

       r⌒ヘ__>ト、
      |:  ヾ   ゞ\ノヽ:    __  .      ri                   ri
      彳 ゝMarl| r‐ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
       ゞ  \  | [,|゙゙''―ll_l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
        /\   ゞ| |  _|_  _High To

校舎前へ移動すると、青年団のお兄さんたちが出迎えをしてくれていた。

なかなかたくましい体をしてらっしゃるはずなのだが、うちのアイドルと比べると見劣りするのは否めない。なんということだ。

お兄さんたち「ようこそ降郷村へ!」

雪歩「ひっ!」

P「本日はお招きいただきありがとうございます」

お兄さん「お食事と控室ご用意してますんで、どうぞこちらへ!」

P「よし、みんな荷物持ったかー?行くぞー」

ぞろぞろと校舎に入っていく我が765プロ。

お兄さん「おおー、話には聞いてたけど筋力系アイドルってすごいんですねぇ・・・ちょっと腕触ってみてもいいですか?」

雪歩「ひっ!?あ、あのあの・・・」

P(さっそく注目されてるな・・・って、雪歩!?)

他のアイドルならともかく雪歩はヤバい!下手するとお兄さん方の命に関わる!

お兄さん「じゃあ失礼して・・・おお、すげぇ・・・見ろよほら、俺の腕より太いぞ!」

HAHAHAと笑っているお兄さん方。その後ろで顔が青くなっていく雪歩。

雪歩「・・・お・・・」

お兄さん「お?」

P「逃げて皆さん!」

雪歩「男の人ぉ!」ブォン

ガスッ!

千早「・・・ふぅ、危なかったわ」

ぶん回された雪歩の腕は、お兄さんに当たる前に千早の分厚い胸板で食い止められていた。

雪歩「は、はぅ・・・」バタリ

当の雪歩はといえば過度の緊張でへたり込んでしまった。

千早「大丈夫ですか皆さん」

お兄さん「あ、ありがとうございます・・・おや、あなたはひょっとして・・・?」

千早「・・・?私の事を知っているのですか?」

お兄さん「以前ネットでちょっとだけ見たような・・・たしか『絶壁』の如月さん?」

千早「くっ・・・『鉄壁』です!」グワッ!

お兄さん「うお!?す、すいません」

P(あまりビビらせてやるなよ千早・・・しかし助かった、グッジョブ!)

とりあえず雪歩もかついで控室へと運び込んだ。

控室となっていたのは、いかにも昭和然とした教室であった。

用意された料理も手作り感あふれる素朴なものである。

P「うーん・・・思ってたのとは違うなぁ・・・まあ最初から立派な箱を用意してもらえるとは思ってなかったが・・・」

P「いやいや、俺がテンション下げてどうする!せめて気持ちぐらい盛り上げていかないと!」

お兄さん「あのー、ちょっとよろしいですか?お祭りの準備なんですけどちょっと人手が・・・」

~家庭科室~

おばさん「へぇ、あんたたち野菜を上手に切りなさるねぇ」

あずさ「ありがとうございます~」

やよい「料理はいつもやってますから得意なんですー!あ、伊織ちゃんキャベツ取って!」

伊織「はいはい・・・まったくなんで私がこんなこと・・・これねキャベツって」ガシッ

バガンッ!

おばさん「あらあら、キャベツがバラバラになったわねぇ」

やよい「もー、伊織ちゃん強く握りすぎ!」

伊織「わ、悪かったわね、加減が効かなかったのよ・・・」

おばさん「大丈夫よ、やきそばの具だからそれぐらいでちょうどいいわぁ」

~グラウンド~

千早「くっ・・・なんで音響機材ってこんなに複雑なのかしら、私にはさっぱりだわ・・・」

貴音「いいではありませんか、歌は機材で歌うものではありませんから」



おばさん「もう少し会場の席用意したほうがいいかしらねぇ?」

亜美「んー、パイプイスだから亜美は片手で15個、一往復で30個ぐらい運べるけど」

真美「真美もそんぐらいだねー、60個でいい?」

おばさん「ええ、十分だわぁ」



お兄さん「すいません、アイドルの皆さんに手伝ってもらっちゃって」

P「いえいえ、彼女たちにとってもいい経験になりますし」

それにあれだけの労働力を余らせておくなんてそれこそとんでもない。

律子「ちょっといいですかプロデューサー?持ってきた衣装のことでお話が・・・」

~控室~

P「え゛・・・どうしてこれを持ってきたんだ?」

亜美「だって真美が赤いトランクのやつっていうから・・・」

真美「えー、亜美だってこれに決まってるっていったじゃん」

控室で衣装の確認を行おうとトランクを開けると、中にはランボーのような衣装が入っていた。つまりハチマキとタンクトップ、あとモデルガンだ。

というかやっぱりあるんじゃないかランボーセット。

P「戦争するならともかく、歌のステージでこれはないよなぁ・・・」

夕方。設営の手伝いを終えた俺たちは再び控室へと集まっていた。

律子「・・・えー、そういうわけで今日のステージは各自、今着ている服で出てもらいます」

P「この後リハーサルだから、各自自分の出番は確認しておくようにな!」

皆「・・・・・・はぁーい・・・」

テンション低っ!

まあ、色々イメージと違ったり準備がままならなかったからしょうがないか。

いくらガタイがよくても、彼女たちはまだ子供なのだ。

~ステージ~

雪歩「・・・うぅ・・・」

真「雪歩、どうかした?」

春香「緊張してるの?」

雪歩「う、うぅん、大丈夫・・・」

P「よーし、次お前らの番だから、ステージに上がれー」

律子「じゃあ一回通していきまーす」

雪歩「・・・ううう・・・」

お兄さん「よっ、待ってましたー!」

お兄さん「歌聞かせてくれー!」

お兄さん「期待してるからなー!」

雪歩「ひぃっ!」


<雪歩ビジョン>

お兄さん『へっへっへ、待ってたぜぇ・・・』

お兄さん『おらおら歌ってみろよ』

お兄さん『けっ、期待させやがって全然ダメじゃねえか・・・』


雪歩「うぅぅ・・・」

雪歩(まだリハなのに・・・男の人も少ししかいないのにぃ・・・)

雪歩「も・・・もう駄目・・・」

真「雪歩?」

雪歩「私なんて・・・私なんて・・・」

雪歩「穴掘って埋まってますぅーーー!!」ズゴン!

P「雪歩!?」

春香「わああ雪歩ー!せっかく作ったステージぶっ壊しちゃだめぇー!」

真「ああ、床板がのど越し滑らかな絹豆腐のようにあっさりと・・・!」

P「変なところだけ詳しい比喩はいいから止めろ!」

夜になり、夏祭り開始。

屋台が出ているため昼よりは閑散としたイメージが薄れ、また付近の住民がほとんど来ているのか人もそこそこ多く賑わっている。田舎の割には子供から大人まで幅広い層が暮らしているようだ。

そしてステージの前に用意した椅子は、休憩に腰を落ち着けている人や食事している人、さらには有りがたいことにこのステージを見るために集まってくれた人で、開始前だというのに半分ほど埋まっている。

あ、ステージはあれから急ごしらえで修理した。おかげで彼女たちの歌のリハーサルができなかったが。

そしてその原因を作った本人はというと、セット裏の端の方で春香や真と一緒に何やら話していた。



真「なるほど、青年団の人たちが怖かったんだね・・・」

春香「皆いい人そうだけどなぁ、背だってそんなに大きくないし」

雪歩「私、やっぱりダメなのかなぁ・・・」

雪歩「男の人が苦手だし、緊張するとすぐ穴掘っちゃうし・・・私だって、みんなと一緒に頑張りたいけど・・・」

デデンデンデデン!

春香「あ、あずささんとやよいのコーナー始まったみたいだよ?ちょっと一緒に見よう?」

―シブメンコンテスト―

あずさ「では次のエントリーはこのお方~」

おじさん「ねえちゃんねえちゃん、おめえさんほんとすげえ筋肉だな、うちんとこ働きにこねえか?」

あずさ「あら~、私なんかでよろしいんですか?」

やよい「ではー、ご自慢の一品をどうぞー!」

おじさん「ああ、おらの自慢はこの牛だ!でっけえだろ?そんで暴れ牛なんだ!」

牛「もおおおおおおお!!!」

やよい「わわ、暴れはじめましたー!」

おじさん「そりゃ暴れ牛だから当然だぁ」

やよい「はやく止めてくださいー!」

おじさん「そりゃ暴れ牛だから無理だぁ」

P「おいおいこのままじゃセットが壊れるぞ!こうなったらまた千早で・・・」

響「いや、自分にまかせるさー!」

牛「もおおおおおおおおおおおお!」

響「ふっふっふ・・・久しぶりにちょっと本気を見せてやるぞ・・・」

そういうと響はスタンスを前後に大きく取り、右手を腰だめに、左手を空へとまっすぐ伸ばす不思議な構えを見せた。

響「我が名は響!我那覇家に伝わりし秘奥義、その命尽きるまでとくと両目に焼き付け・・・」

ハム蔵「ジュッジュイッ」

響「なにさハム蔵、今名乗りの途中だぞ」

ハム蔵「ジュッジュジュッ」

響「え、相手は家畜だから傷つけちゃダメ?確かにそうだけど・・・」

ハム蔵「ジュジュジュジュイッ」

響「なになに、動物愛護法違反は1年以下の懲役または100万円以下の罰金になる?く、詳しいなハム蔵・・・」

響「しかしそうなるとどうやって止めればいいんさ・・・」

ハム蔵「ジュイッ」

響「5分で方法を考えるって?さすがハム蔵頼りになるぞ!」

牛「もおおおおおおおおおおお!」

美希「うるさいの」ベシッ

牛「もっ!?」

ハッと正気に返ったように落ち着きを取り戻す牛。

                _,. : : : ̄ ̄ ̄: : :- 、__ /: : : ヽ
           ,. : :´: : : : : : : : : : :--:、: :__/: : : : : : ハ

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         }: イ: : : : / l: : l:{    /   }:// } !: ; : : : :!:.
         l/ ∨: :/、_ Ⅵ!リ 、__/_   ,: { ' / |:/: :; : :.|::.
             Ⅳrtチテ从  伐テテ' }  |:/_,/  {: : / : : l: :.
            }ハ  ̄ ,    ` ̄    j:{/`ヽ. |: /: : :.:.|: :}
               }           /リ / },!イ: : : : :!: ;
              人  ー-、   ,..ィ   /  //: :!: : : : :|:/
             >---- ≦   / / / {:.ハ: : : :.j/
             /   /   __/ /  {/ l/  }: : :/

P「おおすげえ・・・あれだけ暴れてる牛を相手に、傷つけることなく正気に戻すとは・・・」

律子「響は何のために出ていったんでしょうね」

響「うがー!自分の見せ場がー!」

美希「うるさいの」ベシッ

響「はふん」バタッ

P「今度は意識を刈り取ったようだな」

律子「せっかくですからそのまま美希のコーナーに移りましょう」

美希のコーナーでは、座ってる人たちの中から適当な男性を選び、壇上に上がってもらった。

美希「美希はねー、どれだけ殴りかかられても全部避けちゃうの!すごいでしょ?」

美希「というわけでおじさん、1分間どこでもいいから好きに攻撃していいよ?」

律子「1発でも当てたら金一封贈呈します!」

おじさん「よしいくぞ、おりゃあ!」

最初は軽い感じで拳を振るっていたおじさんだが、美希のその図体に見合わぬ軽やかなフットワークと身のこなしに一発も当たらないとみると、表情を変えて本気で殴り掛かり始めた。しかし、

律子「はい1分です!」

おじさん「はぁっ・・・はあっ・・・本当にかすりもしねぇ・・・!」


その後も続けて3人ほど若いお兄さんがチャレンジしたが、水を泳ぐ魚のように軽やかに避ける美希にはついに誰一人触ることさえできなかった。

当然会場は大盛り上がり、美希も「またきてなのー!」と笑顔で言ってステージを降りた。

春香「相変わらずすごいね美希は」

真「僕でも美希にまともに一発入れたことないもん・・・」

雪歩「みんな、すごいな・・・私なんて男の人見ただけで怖くなっちゃうのに・・・」

雪歩「私はいっつも足を引っ張ってばかりで・・・やっぱり私にアイドルなんて・・・」

真「雪歩・・・どうしてそんなこというの?僕、雪歩がどんなトレーニングも一生懸命やってるのしってるよ?」

春香「そうだよ、甘くない普通のプロテインだって頑張って飲んでるじゃない」

春香「それに、不安なのは雪歩だけじゃないよ、私だってさっきから緊張で足が震えて・・・」ガクガク

真「あ、実は僕も・・・」ガクガク



律子「・・・ん?地震かしら・・・ああ、あの子たちが震えてるのか」

春香「緊張してるのは同じだよ、だから、三人で力あわせてステージを成功させようよ、ねっ?」

雪歩「・・・うん!」

真「じゃあほら、手を合わせて」

春香雪歩真「765プロー、ファイトー!」

P(よし、なんとかいい感じになれたみたいだな)

P「さ、そろそろ出番だぞ!」

雪歩(わあ、ステージの袖からでも人がいっぱいいるのが見える・・・)

雪歩(青年団の人も座ってるけど・・・大丈夫、怖くない、怖くない・・・っ!?)

真「どう雪歩、大丈夫そう?」

雪歩「い・・・犬が・・・!前の方の席に・・・!」

春香「犬ぅ!?」

雪歩「男の人は大丈夫でも・・・犬はダメェーーー!」ドスドスドスドス

真「雪歩ぉー!待ってー!」ドスドスドスドス



P「ん、地震か?って雪歩どこ行くんだ!?」

春香「プロデューサーさん!会場に犬がいて雪歩が!すぐ追いかけます!」

P「待て!・・・俺が行く!」

雪歩「うぅぅ・・・ひっく・・・犬までいるなんて・・・」

P「雪歩、大丈夫か?」

雪歩「ぷ、プロデューサー・・・」

P「行こう、みんな待ってるぞ?」

と近寄ってみるもやはり後ずさられる始末。

雪歩「す、すいません・・・私男の人と犬が苦手で・・・」

P「そうか・・・なあ雪歩、俺と犬ならどっちが怖い?」

雪歩「それは・・・プロデューサーは優しいし、同じ職場の人ですから、犬よりは怖くないですけど・・・」

P「・・・よし、わかった。じゃあ今から俺はいつもよりちょっとだけ怖くなるぞ」

P「そしたらきっと、犬のほうがマシだと思えるから、ステージに上がれるさ」

雪歩「優しくてひょろひょろのプロデューサーが怖くなるなんて、無理ですぅ・・・」

P「無理なことなんてない。いいか雪歩、プロデューサーってのはアイドルのためならなんだって出来るんだよ。ちょっとだけここで待っててくれ!」

そう言い残し俺は控室へと走り出す。

途中ですれ違った律子に、とりあえず春香と真だけ場繋ぎにステージに上げておいてくれと頼む。

控室に飛び込んだ俺は、使う予定のなかった赤いトランクを開ける。

中にあるのはタンクトップ、ハチマキ、モデルガンのランボーセットだ。

急いでシャツを脱ぎセットに着替え、適当なメイク道具でフェイスペイント。

鏡を見るとそこには色白のランボーが立っていた。

P「・・・・・・よし!」

無理矢理自分を納得させて雪歩の元へ走り出す。この程度の運動で脇腹が軋む俺はランボーには遠く及ばないのだと思い知った。

P「オラアァァァ!」

雪歩「キャアァァ!ってプロデューサー?」

P「怖いだろオラァ!ビビれオラァ!ぶっころ・・・あ、これはアイドルに言っちゃいけないな、えーと・・・」

雪歩「・・・ぷっ・・・ふふっ・・・」

P「笑うなオラァ!」

雪歩「ふふ、だって、おかしいんですもん・・・あははっ」

P「・・・ははっ、はははっ」

顔を見合わせて、あははははっと笑いあう俺たち。

P「・・・どうだ、俺の姿、犬より怖いか?」

雪歩「ふふっ、はい!今のプロデューサー、とっても怖いですよ!」

輝くような笑みで力強く断言された。

P「よし、じゃあ行って来い!」

雪歩「はい!」

~ステージ~

春香「だから私そのときこう、こういう感じでカウンターしかけたんですよ」

真「そしたらその時やよいはこんなふうに、それに更にカウンターを被せるっていう高等テクで・・・」

雪歩「皆お待たせ!」

春香「まってたよ雪歩おおお!」

真「もう僕たちの話じゃ繋ぐのも限界だったよ!」

雪歩「ごめんね、もう大丈夫だから・・・っ」

雪歩(やっぱりいる、最前列に犬が・・・でも)

雪歩(さっきのプロデューサーに比べたら、こんなのなんてことない!まずは気合いで負けないように!)

雪歩「スーッ・・・ハーッ・・・スーッ・・・せーのっ」










雪歩「オラアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




ボン!ボン!

いきなりの超音量で、スピーカーが二台ぶっ壊れた。

律子「ちょ、何なのよ一体!まさか961プロの妨害・・・!?」

P「律子、律子、それはまだ10話分ぐらい早いよ」

律子「あ、お帰りなさいプロデューサー・・・なんですかその恰好?」

P「気にすんな。それよりどうしようかな、機材壊れちゃったよ・・・」

貴音「いいではありませんかプロデューサー、歌は機材で歌うものではありませんから」

P「うん、俺が心配してるの機材のほうな」

雪歩「どどどどうしよう!なぜかわからないけどスピーカーが・・・!」

春香「落ち着いて雪歩!お客さんが戸惑っちゃう!」

真「そうだよ、それにマイクが使えなくても、地声で頑張ればいいだけだよ!」

雪歩春香真「せーのっ!」



雪歩春香真「オラアアアアアアアアアアアアア!!!!」パリーンパリーン



P「おいおいスポットライトも砕けたぞ」

貴音「いいではありませんかプロデューサー、歌は照明で歌うものではありませんから」

P「便利だねその言葉」

律子「うんうん、ボイストレーニングの成果が出てますね!」

P「出てるのは被害だ」

その後のライブはというと。

運よく満月であったことから、屋台以外の照明をほとんど消しての月明かりライブとなった。

声量はもともと問題がなく、ダンサブルな曲でもなかったため照明なしでも盛り上がって頂けたようだ。

月光の降り注ぐ下で歌う雪歩の姿は、とても輝いていて、綺麗に見えた。

―ライブ終了後―

お兄さん「いやー、今日は楽しいステージをどうもありがとうございました!」

お兄さん「特に、あの最後のパフォーマンス!あれは凄かったですねー!」

P「いえホントすいません・・・修理代金はお支払しますのであとで請求書を送ってください・・・」

お兄さん「とんでもない!もともとオンボロだったんだから構いませんよ!」

P「いえいえそこは社会人として・・・」

お兄さん「いえいえ・・・」

律子「じゃあこうしましょう、私たちがメジャーになったとき、もう一度こちらで無償でライブさせて頂きます。それでどうですか?」

お兄さん「こちらとしては大歓迎です!」

P「では、そういうことでよろしくお願いします・・・本日はありがとうございました」

P「よーしみんな車に荷物乗せたかー?乗るのはまた俺と美希だけか・・・」

雪歩「あ、あの、プロデューサー」

P「ん?どうした雪歩、雪歩も乗るか?」

雪歩「いえ、そうじゃなくて・・・」

雪歩「・・・プロデューサーって、ランボー知らないですよね?」

P「んあ、バレたか・・・格好とかは知ってるけど、実際には見たことなくてな・・・」

雪歩「だったらどうして・・・?」

P「犬を克服しようと頑張ろうとしてる雪歩を見てたら、俺にできることはこれぐらいしかないって、そう思ったからかな」

本当は衣装がそれしかなかったからだけど。

雪歩「『いいか雪歩、プロデューサーってのはアイドルのためならなんだって出来るんだよ』・・・ですよね?」

P「う、覚えられてたか、正直ちょっと恥ずかしいこと言ったと思ってるから忘れてほしいかも・・・」

雪歩「いーえ、忘れません!それに、私を励まそうと思って頑張ってくださったんですよね・・・だから、ありがとうございます」

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