男「寺生まれのTさんVS壁殴り代行」(170)

アパート 105号室

キィン キィン パァアン

男(まただ、となりの部屋から変な音がする…)

男(引っ越してきてからずっとなんだよな…)

男(いわゆるわけあり物件で、家賃が安いから入居したんだけど、さすがに怖いな…)

男(そういや、壁殴り代行って隣室のリア充のギシアンを静めさせることができるんだっけ…。
  この音に効果があるかは分かんないけど、一度呼んでみよう)

アパート 107号室

キィン キィン パァアン

女(ひっ、また横から変な音が響いてくる…。怖いよぉ…)ビクッ

女(…やっぱりお化けだよね、これ。不動産屋はちゃんと言ってくれなかったけど、部屋代が低いってのはそういうことだろうし…)

女(眠れなくなっちゃう日もあるから、一度相談するべきだよね…。私の友達の知り合いに、こういうのに詳しい人がいる)

女(寺生まれのTさんだっけ、一度話を聞いてもらおう)

壁殴り代行業 事務所

         ∧_∧ 
         (´・ω・`) _、_,,_,,,     
     /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ  お待ちしておりました。
    { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l  貴方が連絡をくれた男性ですね?
    '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ  詳しいご用件をおうかがいましょう。
     ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/   
      `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'   
        ,ノ  ヾ  ,, ''";l 


男(うわ、すごい筋肉だな…。なんて迫力…)

(´・ω・`)「アパートの隣室の音を静めて欲しいとのことでしたね? リア充のギシアンですか?」

男「いえ、隣室には誰も住んでいないんです。なのに音がするのが問題というか…」

(´・ω・`)「? どういうことですか?」

男「実は、いわゆるわけあり物件に住んでまして…。隣の音も、幽霊なんかのオカルトの類なのかもしれません…」

(´・ω・`)「それは大変ですね。私も一度現場を見ないと、この依頼を引き受けられるかどうかわかりません」

男「なら、来てくれませんか? 案内します」

(´・ω・`)「分かりました。今すぐにでも伺いましょう」

喫茶店

寺生まれのTさん「あんたはその部屋から、夜に変な音が出るのを聞く、と」

女「…そうなんです。それが怖くて怖くて…」

女友「ね、Tさん。一度きちんと見てやってよ。霊視っていうんだっけ? それをやってさ」

Tさん「分かった。俺もこんな話を聞いた以上、気になるからな。早速向かわせてもらおう」

女「…! あ、ありがとうございます!」

女友「Tさんはガチだよ。インチキなんかじゃない本物。現に私も助けてもらったことがあるから、安心できるよ」

アパート

Tさん「…なるほど、これは確かに厄介だな」

女「なにか、分かるんですか?」

Tさん「ああ。ここは冥界につながる、霊の通り道になってやがる。普通、こういった場所に住居を建てるときは、
その道をそらしたりする術を使うんだが…」

女「それが行われていないと」

Tさん「そうだ。でも、通り道だけじゃないぞ、これは。もっと別の感覚もする。地縛霊でもいそうな感じだ」

女「え…」

Tさん「お前の部屋に案内してくれ。それから対応を考える」

夜 アパート 105号室

男「代行さんが居てくれて助かりますよ、正直夜がすっかり苦手になっちゃって…」

(´・ω・`)「毎晩妙な音を聞かされては、仕方ありません。私の下に来るお客様も、
リア充やDQNの音に苦しめられている方が多いですし」

キィン ピィィィィン

男「出た、この音だ…!」ガクブル

(´・ω・`)「なるほど、確かに妙な音ですね、それに私の長掌筋が告げています…。ただの人間の仕業ではないと…!!」

男「代行さん、早く…!」

(´・ω・`)「では殴りましょう、隣室とここを隔てる壁を!! 音は立ててもいいですか?」

男「構いません!! 早くこれをやめさせて下さい!!」

(´・ω・`)「行きますよ、フウゥゥゥウン!!!!」

ドゴォオ!!!

キィン ピィィィィン

女「ほ、ほら、あの音がする…」ガクガクブルブル

Tさん「ラップ音…!! 間違いねえ、これは霊の仕業だ」

女「T、Tさん…」

Tさん「任せな、壁越しになるが俺の霊力を伝えてやる」バサッ

女「わあ、お札がいっぱい…」

Tさん「しかし、やはり通り道にいる浮遊霊だけじゃないな。それよりもっと強い存在感を放ってるやつがいる」

Tさん「行くぜ、破ぁ!!!!」

ドゴォオ!!!

Tさん「なんだ、この音は!? 隣の隣から、響いてくる!! ちぃ、作業の邪魔だ、文句を言ってくる!!」

女「あ、待って、Tさん!!」

(´・ω・`)「…ふむ」

男「どうしました、代行さん」

(´・ω・`)「どうやら、私の壁殴りを快く思っていない方がいるようですね。今、こちらの部屋に向かってきています」

男「え、それって幽霊じゃ…」ブルブル

(´・ω・`)「安心してください。双子筋で気配を探ったところ、人間と同じ雰囲気を感じます。しかしこの生命力、只者ではない…」

ピンポーン

(´・ω・`)「来たみたいですね。出てください」

男「え、でも危険な奴だったら…」

(´・ω・`)「安心してください、その時は私の全筋肉ををもってあなたをお守りします」

男「わ、分かったよ…」

女「こ、こんばんは…」

男「あ、確か隣の隣に住んでいる…」

女「ええ、何度かあいさつしましたね」

Tさん「あんたか、さっきから大きな音を立てているのは!?」

男「え、なんですか、あなた?」

Tさん「やめてくれないか。今この部屋の隣にいる霊の対策中なんだ。騒音は邪魔になる」

(´・ω・`)「これは失礼しました。音を出しているのは私です」

女「わあ、すごくマッチョな人…」

Tさん(これは…。筋肉の塊ってだけじゃない、なんて威圧感だ…。こいつ、只者じゃねえな)

(´・ω・`)(一見普通の男性ですが…。この漂ってくる雰囲気は隠せません。この人、只者じゃない…)

Tさん「そこの筋肉のすごい男、お前の出す音が邪魔なんだ」

(´・ω・`)「そうは言いますが、私は壁殴り代行です。隣室から響く怪しい音を静めるために、壁殴りで出る音は必要です」

Tさん「…壁殴り代行か、どおりですごい筋肉だ。だが、ここの音を出している霊は俺が何とかする」

(´・ω・`)「分かりました。やはり幽霊が出す音ですか…」

霊1「…」ジーッ

女「ね、ねえ、なんかもう一人、増えていない…?」

男「ほ、本当だ…。すごく顔色の悪い人がいる」

Tさん「出たな、こいつは浮遊霊だ。多分この道を通る途中の奴だろう。そいつがさっきの衝撃で姿を見せたんだ」

男「ひっ、ってことは本物の幽霊…」ガクガク

女「…うわぁ!!」ブルブル

Tさん「落ち着きな、そいつは通行中のただの霊だ。別に危害は加えてこねえよ」

(´・ω・`)「ですね。悪意を感じることはありません」

Tさん「ほれ、ラップ音がする部屋の前を見てみな」

男「え…」

霊たち「…」ゾロゾロゾロゾロ

女「…な、なんかいっぱいいるよぉ…。あれみんな幽霊?」ビクビク

Tさん「そうだ。俺が霊的な接触したことで、姿が見えるようになったみたいだな」

(´・ω・`)「多いですね。私も実際に幽霊を見たのは初めてですから、少し驚きましたよ」

Tさん「その割にはあんた、全然怖がってねえじゃないか。見上げた度胸だな」

(´・ω・`)「この仕事に就いている以上、DQNなんかに絡まれるのはしょっちゅうですからね。
       これぐらいで怖がってはいられませんよ。それに悪意のない霊の方々より、生きている悪い人間の方がよほど怖いです」

Tさん「ま、そうだわな。さて、本格的な霊視を行うか。この部屋に入るぞ」

男「い、いいんですか? 鍵はありませんよ?」

Tさん「問題ねえよ、破ぁ!!!」

女「す、すごい…。強引にドアを開けた…。いいのかな、こんなことして…」

(´・ω・`)「私たちも入りましょう。何か彼のお役にたてることがあるかもしれません」

Tさん「…いるな。強烈な存在感を持つ、地縛霊が」

(´・ω・`)「私も感じます。前頭筋がそれを告げています」

地縛霊「…」ブラーン

男「う、うわぁ…。首を吊った人が、こっちを見てる…」ガタガタ

女「ひぃいいい…。すごい目つきだよ…」ワナワナ

Tさん「死んだ時のままの姿で現れるか…。この世に未練がある証拠だな」

(´・ω・`)「ここにいたいという彼の気持ちが、ものすごく伝わってきますね」

Tさん「さて、まずは話を聞くか。そこのお前、どうしてここにいたい?」

地縛霊「…なんだ、お前たちは…。勝手に人の家にあがるんじゃない…」

Tさん「お前こそこんな場所にずっと留まってんじゃねえよ。お前の今いる場所は冥界に向かう霊の通り道になってるんだ」

Tさん「そこに地縛霊が居座ると、通行の邪魔になって、浮遊霊がここにたくさんここに居ついてしまう。
そしてそいつらがラップ音を立てたりするんだ」

(´・ω・`)「いわゆるボトルネックという奴ですね。地縛霊が通行を阻害するせいで、浮遊霊がこの場に留まり、
       余計なことをしてしまう」

Tさん「そのかっこうから察するに、お前は自殺者だろう? とっとと冥界へ行け」

地縛霊「…俺は、俺は…ここにいたい…。死にたくて死んだわけじゃない…」

Tさん「自分で死を選んでおいてそんなこと言うんじゃねえよ。早くいかねえと、こっちも強引な手段をとることになるぞ」

地縛霊「ああああああああああああ…」ズズズズズズズズズ

男「こ、こっちに向かって来る…!!」ブルブル

女「い、いやあ…」ガタガタ

(´・ω・`)「フウウウウウウン!!!!!!!」

地縛霊「あ…。ア…」

男「あ、あれ?」

女「凄い…。仁王立ちした壁殴り代行さんが、幽霊を止めている…」

(´・ω・`)「残念ですが、あなたの力では私の筋肉の壁を超えることはできません」

Tさん「霊能力を用いず、筋力であのレベルの地縛霊を止めるのか…。すごい漢だ…」

地縛霊「いやだ…。いやだ…。本当はまだ俺は生きていたんだ…」

Tさん「だったらなんで自殺なんかしたんだ。うじうじと往生際の悪い奴だな。この札で片づけてやる」

(´・ω・`)「待ってください。そう強引にことを進めることは無いでしょう。それにさっきからのあなたの口調、
       自殺者にかける言葉ではありませんよ」

Tさん「…素人は黙ってな。これほどの地縛霊なんだ。しかも浮遊霊までいやがる。このまま放っておくと、
   とんでもない悪霊になる可能性が高い。だからその前にけりをつけるんだ」

(´・ω・`)「…素人ですか。確かに、私は霊には詳しくありません。しかし私は仕事上、リア充やDQNに苦しめられ、
       自殺寸前にまで追い詰められた方々を数多く見てきました」

(´・ω・`)「そんな方々の思いを晴らすために、壁を殴るのが私たちの仕事です。ですから、いくら幽霊といえどあなたのように、
       力で自殺した人を排除しようとすることは、壁殴り代行として見過ごすわけにはいきません」

Tさん「やかましい。もういい、こっちでやる。破ぁ!!!」

(´・ω・`)「頂けませんね、その姿勢。その光弾で、いきなり地縛霊を消滅させるつもりですか?」

Tさん「!? こいつ、俺の攻撃を筋肉だけで防ぎやがった…! どういうつもりだ、地縛霊をかばいやがって…!!」


       /フフ         ム`ヽ
      / ノ)   ∧∧     ) ヽ
     ゙/ |  (´・ω・`)ノ⌒(ゝ._,ノ

     / ノ⌒7⌒ヽーく  \ /
     丶_ ノ 。   ノ、  。|/
        `ヽ `ー-'_人`ーノ 詳しい事情も聞かずに自殺者を排除しようとするその蛮行、
         丶  ̄ _人'彡ノ  私が許しません。この筋肉にかけてね。
         ノ  r'十ヽ/    私の肉体は、彼のような弱者を代弁するためにあるのですから 
       /`ヽ _/ 十∨


Tさん「…俺の邪魔をするっていうんなら、容赦はしねえぞ」

(´・ω・`)「いいでしょう。ここで退けば、私の大胸筋に後悔を残すだけですから」

Tさん「だったらまずはお前から倒す!! 破ぁ!!!!」

(´・ω・`)「この筋肉の鎧、破れるものなら破ってみなさい!!!! フウウウウウン!!!!!」

Tさん「食らえ!! 破ぁ!!!」ビュン ビュン

Tさんは青白い光弾を壁殴り代行に向けて放った。
それは壁殴り代行の筋肉にぶつかり、派手な音を立てる。

(´・ω・`)「ぐう…。見事な攻撃です。私の筋肉にここまでの痛みを与えたのは、社長以外ではあなたが初めてです」

壁殴り代行は一瞬、苦悶の表情を浮かべるものの、すぐにそれを消し去り、構えに入った。  

(´・ω・`)「今度は私の番です。壁を殴るための拳で、人を傷つけるのは不本意ですが…。それでもやらねばなりません。フン!!」

拳の一撃は、正確にTさんのみぞおちを襲った。
Tさんはとっさに結界を張り、パンチを防いだが、それを突破されてしまった。

Tさん「ぐお!! この結界を割ったのは、親父以外じゃお前だけだぜ!!」

痛みが少し残る中、Tさんは不敵な表情を浮かべ、壁殴り代行と対峙する。

(´・ω・`)「それは光栄です。私のパンチはまだありますよ!!」

Tさん「こっちのお札もまだまだあるぜ!!!」

札、光弾、拳撃、蹴撃の乱舞が、アパートの一室内に炸裂する。
Tさんはもはや地縛霊などどうでもいい。壁殴り代行を倒す為だけに、技を使い続ける。
それは多分、向こうも同様だ。
早く本業に戻って欲しいもんである。

ドン パチ パァン!! ドッカーン!! ボカァ!!!

男「筋力対霊能力…。まさに異種格闘スーパーバトルだな…」

女「いや、感心してる場合!? 喧嘩を止めないと、この部屋壊れちゃうよ!!!」

男「そ、そうだな。おい、二人ともやめてくれ!!」

女「っていうかすごい音ね…。霊のラップ音なんかより、この二人の方がよっぽど近所迷惑だわ…」

男「早く戦いをやめてもらわないと、いろんな人に怒られるぞ!!!」

地縛霊「…俺を無視するな…。あ゛あ゛あ゛あ゛」

男「あ、目の前の濃すぎる二人のせいで忘れてた」

女「もとはといえばこの幽霊のせいなんだよね、全部」

男さん「代行さん、助けてください!!」

(´・ω・`)「フゥゥウン!!!」

Tさん「破ぁ!!!!」

ドッカーン ボッカーン バッカーン!!!

女「ダメ。お互い自分たちの戦いに夢中で、全く気づいていない…」

男「壁殴り代行を呼んだの、間違いだったかなあ…」

地縛霊「う゛う゛う゛う゛」ススーッ

男「やばい!! こっちに来てる!!」ドン

女「きゃっ!!」ズコッ

女「ちょ、ちょっと…。いきなり押し倒して覆いかぶさってくるなんて…////」カァァァ

男「ご、ごめん…。こうしないとあいつにやられるから…」テレテレ

地縛霊「俺は、俺は…。好きでこうなったわけじゃないんだ…!!」

グラグラ メリメリ

(´・ω・`)「私の筋肉の前で、ここまで持ちこたえることができるとは…」

Tさん「こっちも驚きだぜ。ここまでやって倒せないとはな」

男「あの二人は無事そうだけど、この建物自体がやばいぞ!!」

女「さっきから地震みたいに揺れてるし、下手したら崩れちゃうよ!!」

地縛霊「お前ら…ここを壊すな!! ここは俺の居場所なんだ!! っていうか、微妙にフラグたててんじゃねえぞ、そこの男女!!」

Tさん「うるせえ! 戦いの邪魔をするな! 破ぁ!!」

男「うわぁ、地縛霊の方が常識人だ…」

女「…紹介してもらう人、間違えたかなあ…」

地縛霊「う、わ、わ、わ、わ…」

Tさん「ちぃ、地縛霊は倒し切れなかったか…。霊力も尽きかけているし、これ以上の戦いは無理だな」

(´・ω・`)「こちらも疲労がたまってきました」

Tさん「まあいいだろう。俺たちが暴れたせいで、地縛霊はしばらく活動できないだろうし」

(´・ω・`)「今日のところは、引き分けですね」

男「いやいやいや、おかしいですよ、その会話。あんな派手な喧嘩やる力があるんなら、しっかり霊の方の対策をしてくださいよ」

女「そうですよ、Tさん。あなたに来てもらったのは霊現象を何とかしてもらうためなのに…」

Tさん「じゃあな、俺は帰る。お前たちも今晩は気をつけて寝ろよ」スタスタ

(´・ω・`)「私も帰らせてもらいます。壁殴りの料金の方は後日ということで…」トテトテ

男「金とるの!? ここまでドンパチやっといて!?」

女「いったい何しに来たんだろ、あの二人…」

男「代行業者にクレームを入れてやる」

女「この部屋の鍵、Tさんに壊されたままだし、中はめちゃくちゃ…。私たちが怒られるのかなあ…」

別日 アパート

男「あ、こんにちは」

女「どうも。これからお出かけ?」

男「うん。あの夜の後、自分でネットとかで自殺事件のことを調べてたんだ。
  そしたらどうやらここで起こったらしいものの情報を見つけたから、詳細を知るために新聞を図書館で読もうと思ってる」

女「奇遇ね!! 私も自分でいろいろ調べた後、気になってたから新聞を読みに行こうとしてたの」

男「マジで!! だったら一緒に行く!?」

女「そうしましょう」

移動中――

男「しかし、あの後始末は大変だった…」

女「ホントよね…。あの二人のせいで、私たちが大家さんに怒られたし…。一応ラップ音は聞かなくなったけど…」

男「俺なんか親に出てきてもらって、なんとかことを治めてもらって、出ていかずに済んだんだ…。
  あの人、寺生まれのTさんっていうんだっけ?」

女「そう。見ての通り、霊能力は超一流みたいなんだけど…。あなたの呼んだ壁殴り代行もすごい人だったわね…。
  筋肉だけじゃなく、他のところも鍛えてほしいわ…」

図書館

男「えーと、この日付の新聞で間違いないな」

女「そうそうこれよ、これ。自殺した人は、元々教師だったみたいね」

男「それが、自分が担任していたクラスの女子児童が二人も死んだことを苦に、自ら命を絶ったんだっけ」

女「ネットで調べたら、そういう感じの情報がたくさん出てきたわね。…そういや、当時のこと、少し思い出したわ。
  テレビなんかでもこれ関連のニュースは結構やってたっけ」

男「…ああ、そういやそんなこともあったなあ。しかし、人の噂も七十五日っていうし、すっかり頭から抜け落ちてる」

女「私たちがあのアパートに入居することになって、この事件に関わるとはね…」

男「これより前の新聞も見よう。ほら、死んだ女子児童二人のうち、片方は自殺か…。この件はかなり大きく報道されているぞ」

女「うわ、一面じゃない。…クラスで起きたいじめが原因で自殺か…」

男「もう片方の女の子は、いじめの主犯格側で、1人目の子を自殺に追い込んだことに怒った両親によって、金属バットで撲殺か…」

女「…ホント、嫌な事件だったね。これじゃ担任の先生は自殺してもおかしくないわ…。心労は半端ないだろうし…」

男「あんな形で化けて出るのも、納得できるな…」

アパート

男「うん? あの部屋の前に人がいるぞ」

女「あ、大家さんじゃない!!」

大家「…なんだ、君達か。全く、こないだはろくでもない連中を呼んでくれたもんだ」

女「…あはは、ごめんなさい」

男「…壁殴り代行が、あんなのだとは思わなかったから」

大家「このアパートが無くなったら、それこそ私は路頭に迷わなきゃならない。君たちの両親は学生に一人暮らしをさせて、
   そのうえでトラブルにポンとお金を出して解決できる人だけど、こっちは脱サラでアパート経営してるんだ」

男「ご、ごめんなさい…」

女「そちらの方は?」

大家「私が呼んだ霊能力者だ。…一応、こっちとしてもきちんと対策するべきだと思ってな」

霊能力者「ええ。今日はここをしっかり霊視させてもらいます。しかし驚きましたねえ。ここは霊の通り道だし…」

霊能力者「前回の事の詳細を聞きたいので、霊視の際には彼ら二人にも同行してもらいます。よろしいですか?」

大家「私は構いません。君たちにも例の部屋に入ってもらうぞ」

男「…分かりました」

女「といっても、壁殴り代行と寺生まれのTさんが大喧嘩したって話なんですけどね。事の発端は――」

男女事情説明中――

霊能力者「分かりました。では私は地縛霊を何とかしましょう」

大家「じゃあ、部屋の鍵を開けますね」ガチャ スタスタ

霊能力者「…確かに今は力が封じられていますが、強力な地縛霊がいますね。封印が解けるのも時間の問題です」

男「ホントですか!? っていうことは、またラップ音がするようになるんですか?」

女「そんなあ…。せっかくきちんと寝られる日ができたのに…」

霊能力者「大丈夫ですよ、その為の私です」

霊能力者「では、この地縛霊を祓うための料金を言っておきましょう。大家さん、これぐらい必要です」

男「おいおい、マジかよ!? いくらなんでもその値段は高すぎませんか?」

女「そうですよ、Tさんなら無料で引き受けてくれたのに」

大家「むむむ…。さすがにこれはちょっと…」

霊能力者「サインをしてください、大家さん。でないと地縛霊の対処はできません。私はこれで生計を立てているんです。
     それなりのお金を頂くのは当たり前です」

大家「むう…。これで霊関連が無くなったら、変な風評が出ずに、入居者も増えるだろうしな…」

霊能力者「そうです、大家さん。そうやって長期的な観点でお金を投資するのが必要です。それに今ここできちんと決着をつければ、
     あのTとかいう寺生まれの男を関わらせずに済みます」

女「Tさんのこと、知ってるんですか?」

霊能力者「この業界では有名です。腕は超一流ですが、強力すぎて、かつ手段を択ばない面があるので、
     あたりに大きな被害を与える霊能者としてね」

男「…やっぱり、悪いうわさも伝わってるんだなあ。まあ、俺たちもあの喧嘩を目の前で見たし…」

Tさん「よく言うぜ、このボンクラ霊能力者が。口だけは相変わらず達者だな」

大家「誰だ、君は!? 勝手に部屋に入ってくるんじゃない!!」

女「Tさん! どうしてここに?」

Tさん「ここの地縛霊を祓いきれてないのが気になっていてな。また改めて来たんだ。今度こそケリをつけるためにな」

男「今日はもう暴れないでくださいよ、Tさん」

Tさん「スムーズにいけば、暴れる必要はないよ。あんた、ここの大家か? だったらこんな奴に金を渡すのはやめときな。
   損をするだけだぜ」

霊能力者「大家さん、彼がこの部屋をめちゃくちゃにしたTですよ」

大家「何!? お前のいうことなんか誰が聞くか!! 帰ってくれ!! こっちでもうきちんと霊能者は用意したんだ」

Tさん「そいつは霊能者じゃなく0能者だぜ。昔テレビに出ていたんだが、そこで霊を祓うのに失敗。悪霊に殺されかけたところを、
   俺の親父に助けられたっていう過去がある。能力面は甚だ疑問だな」

大家「そ、そうなのかね、君」

霊能力者「昔の話です。当時はまだ修行中でして、未熟ゆえにテレビに出てお金を稼いでいました。しかし今は違います。
     霊能力だけで食っていくだけの技量を身に着けました。なのでご安心頂いて結構です」

霊能力者「それに、私の実力を疑問視するのはあなたの自由ですが、だからといってアパートを壊しかけた男に、
     大事な霊対策を任せると言うのですか?」

大家「…一理ある。悪いがTさん、帰ってくれ」

Tさん「こっちとしても、関わった以上、決着はつけたいんだが…」

(´・ω・`)「しつこい男ですね、あなたも。呼ばれてもいなのに、勝手に関わる権利はないでしょう」

男「壁殴り代行さん!? どうしてここに!?」

(´・ω・`)「この間の件が私も気になっていましてね。だからアパートまで来たんです。
       そしたらこの部屋で話し声がしたので、様子を伺いに参りました」

女「全く、前の事件のメンバー勢ぞろいじゃないですか」

大家「壁殴り代行か…。私のような職業に就いているものとしては、もっとも会いたくないタイプの人間だな…」

Tさん「何しに来たんだ。お前じゃ役に立てんだろ」

(´・ω・`)「その言葉、そっくりあなたに返しますよ。さっきからそちらの霊能力者の方を咎める発言を繰り返してますが、
       前に地縛霊を祓えなかったのはあなたも同じでしょう? 実力はそう変わらないんじゃないんですか?」

★壁殴り代行始めました★
ムカついたけど壁を殴る筋肉が無い、壁を殴りたいけど殴る壁が無い、そんなときに!
壁殴りで鍛えたスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロン壁を用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くの家の壁を無差別に殴りまくります!

1時間\1200~ 24時間営業 年中無休!                           ∧_∧
      , ''二=-― -、                                     (´・ω・`)_.. ッ". -'''" ̄ ̄^ニv..........,、
    /,'"      )'ー、        ∧_∧                 ,.. -―'''';;]_,゙二二__,,/  _..-''" ゙゙゙̄''ー     `'-、
  / /''ー '    /'"`` ' 、      ( ・ω・.:.`)        ,,-'"゙゙,゙ニ=ー''''"゙゙シ'"_,゙,゙,,,,,,,_     `'''T゛                 \
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  ', | /   l|//     /::"  ::/ ̄ヽヽ、、、,,,::::  |  ',:::::  `'ー、,、-''"´    /     ヽ ヽ `'' 、/.:.:.:ヘ7ノ       (・ω・:.:.`)ハ=ー-、
  ',ノ,'' イ'  ::/ ィ   /    :/ ゙''':::::| ヽ;;;;; `゙;;'''';;ーi、,,、- '''''"彡゙ll|ソ , '" /  /   i l |ゝl|.__i´.:.:.:./-'       /:.`ニニ´彳`` _,,='"´.: ̄`ヽ
   { | l| /,,;イ   /    /   ::| ::」``ヽ;;;;;  ,、;;;ヽ、ヽ;; 、,,,ッ   ,、 '"ノ  / ノ  ,j lリ  j{=ー---‐' }    ,r'´ ̄`ヽ‐-=,_ゝY´.:.:.:.:.`゙ー-、,,.:.:}.::`ー、_
   ヽ  リ '"  }  /ノ l|  /     :|" 三三`' 、( );;  ヾ'、○}   {  r'  /  j  ,  |,,、 " `ー---‐'、 ,r='´`ー='"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'',,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ'´`ヽゝ、ハ
   ヽ  ヽ" :l    l l| /     :}、:::::     `' 、;;; ;;; ', ゙''、   j 、|.  y'  }. / / _,、,," ',.:.:.:.:.:.:.Y.:.:.:.:.:.:.r'´.:>、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノヽ、,,_,,/ハ.:.:.:.:.:`i.:.:`ヽ、
    ヽ  ヽ    {    " /  | リ:: ヽ:::      '' 、从 ',、 ミヽ  ゙' 、.|  ||.  ノ / /∧ _∧ .',.:.:.:.:ノハ,,='"´.:.:.::i´.:`ーt――"´-'ー--'彡/リ`ー=_ノ、.:.:.:)ヘ
    ヽ :: \  '、 ミ         / 、 ゙l:::       ゙ll ゙ll:',ヽ  ゙' 、, ゙{  jl,,,,/,z'ノノ/∧´・ω・)  ',.:.:.:.>.:.:.:_,,=-'ゝ、.:.:.:',ニ)_`i´.:_ノ、_)ー'/   /,r'.:.:.,,/.:)
     ヽ :::  ミ  '、 ミ        |:::  ヾ:::::       ゙ll ゙l|l::::゙、  {  |`"´  ,r=‐'"ノ /ノ >‐个Y´`ー=-‐'゙      `ヽ i、ヽ_ノ´.:.:.`ii´.:.:.ノ リ     j'.:./:/.:ノ
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      ゙l ゙ミ          /:l. :レ'::} ',         ノ、;;;;;;;ヽ l|/ヽ//´ ̄  / `ー-=x'´   ヽ' , o  `゙´。 o../ .}、 \}、_ノノ_ノi,/八`ヽ、 .`<
       |`-、ミ        /:::::::|   } |:::......    ,,、 '",、、゙゙''ー''´  ',Y    /      ヾ   ノゝ, ゚ _,r/.lヽ='../\\l.:.:.:.`.:´.:/_lr='´"`ヽ\ ヽ
       |゙、::::`' 、,_    _/:::::::/   :} /::::::::::::,,、-''" {○ ゙ll`' 、 ゙l|:  | `tチ"´`ヽ,,     ,ノゝ=='/ { `r/.// ノ7/_ ノハ `ー-=-‐' リ/,r/:.:.ノー='"
       | `'' 、:::::::::: ̄ ̄:::::::::::::/ :::   /:,、-''"   /  ヽ ゙ll ゙'、,,,,,、リ='´   /、 てー='<´_,,,,)、,,ノ、 >、..`ー‐'",/´" /l/`Y`ー=‐'´/l、ゝ'_//´
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Tさん「こんな奴と一緒にされるのは屈辱だな…。なんならこの間の喧嘩の続き、やってもいいんだぞ?」イラッ

(´・ω・`)「ほーう、懲りない人ですね、あなたも」ムキムキ

霊能力者「まあ、なんて乱暴な会話でしょう。これでわかったでしょう、大家さん。だれに仕事を頼むべきか」

大家「…サインをします」カキカキ

男「ま、仕方ないわな。Tさんも代行さんも今日は飛び入り参加なだけだし」

女「二人には前科があるし…」

Tさん「どうなっても知らんぞ。腕の無いやつがこのレベルの地縛霊を祓うなんて…」

(´・ω・`)「あなたが彼以上の成果を出せるとは限りませんけどね」

Tさん「…よっぽど俺と戦いたいみたいだな、お前は」イライラ

(´・ω・`)「変な解釈をして、苛立たないでください」

霊能力者「…コホン。では、地縛霊を祓いましょうか。テアッ!!」

ピキーン

ズズズズズズズ

男「な、なんだ!? あたりの風景がどんどんねじれて…」

女「く、空間が歪んでいるみたい…」

大家「それだけじゃない、闇が出てきて、どんどん暗くなっている!?」

Tさん「おい、てめえ!! これは明らかに霊に使う術式じゃないだろう!? 何しやがった!?」

霊能力者「く、地縛霊の力が強すぎて、術にひずみが…」

Tさん「嘘を言うな!! それでもこうはならん!! こうなったら俺が…」バサッ

(´・ω・`)「その取り出した札で何をする気です?」

Tさん「邪魔すんじゃねえよ!! 俺がこの部屋の空間異常を元に戻す!!」

(´・ω・`)「必要ないでしょう。私たちは危機が訪れるまで、事態を静観すべきです。何も頼まれていないのですから」

Tさん「やかましい!! おい、霊能力者!! この変な術の中心になっているお前を、まずは倒さなきゃなんねえ!! 破ぁ!!!」

霊能力者「ひっ…!!」

        _             iii
       / jjjj            l l
     / タ            /タj
    ,/  ノ           / /
     `、  `ヽ. ∧_∧ , ‐'`  ノ  
     \  `ヽ(´・ω・)" . /   
       `、ヽ.  ``Y"   r '   困った男ですね。 
        i. 、   ¥   ノ    すぐにそうやって暴力に訴えるのは、あなたの悪い癖です。 
        `、.` -‐´;`ー イ 自らの力を過信しすぎてるんじゃないでしょうか?


Tさん「また俺の攻撃の邪魔をするのか…。いいぜ、まずはてめえからぶっ潰す!!!! 破ぁ!!!」

男「ちょ、ちょっと、二人とも!! 喧嘩してる場合ですか!?」

女「そうですよ、Tさん!! 早くこの状況を何とかしてくださいよ!!」

大家「い、一体何が起こってるんだ!? 私のアパートは!?」

霊能力者「落ち着いてください、みなさん。先ほどは少し失敗してしまいましたが、すぐに何とかしましょう」

(´・ω・`)「私の短掌筋が光って唸る!! お前を倒せと轟き叫ぶ!! 必殺――」

Tさん「うるせえよ!! 破ぁ!!」ビシュッ ビシュッ バァン

(´・ω・`)「ぐぬ…。無粋ですね、必殺技の構えと口上の最中に攻撃するとは…」

Tさん「お前の事情になんてかまっていられないんだよ!! 破――」

(´・ω・`)「フゥウウン!!!」ブン ドコォ

Tさん「俺に『破ぁ!!』を言わせないだと!? てめえ、何のつもりだ!!」

(´・ω・`)「先ほどのお返しですよ。私もあなたに付き合うつもりはありませんから」

Tさん「決め台詞の最中に攻撃する奴はクズだな!! ロマンを分かってねえ!! 絶対にお前は倒す!!」

(´・ω・`)「それを言いたいのはこちらも同じですよ。
       ヒーローの変身中や、ロボットの合体変形バンク中に、攻撃をするような蛮行を働いたあなたはクズです!!」

ドカーン バリバリ

地縛霊「なんかすごく下らない理由で争ってるな、あの二人…」

男「って、いたのか地縛霊!?」

霊能力者「あなたが一連の事件の元凶ですか…」

地縛霊「そうだ…。俺の平和なアパートを返せ…。あ゛あ゛あ゛あ゛」

大家「何がお前の平和なアパートだ!! お前がいるせいで、私の脱サラ後の生活はめちゃくちゃになりそうなんだぞ…」ウルウル

女「大家さんからすごい哀愁が漂ってくる…」

Tさん「通常の単体攻撃では、お前は倒せないようだな! ならば連撃だ!! 破破破破破破破ぁぁっ!!」

Tさんの手のひらから放たれる、無数の青白い光弾は、壁殴り代行の肉体に殺到していく。

(´・ω・`)「なるほど、ならばこちらも連撃で対抗しますか。フンフンフンフンフンフンッッッ!!!」

壁殴り代行もパンチを光弾に向け、連続で放つ。
拳と光の弾幕は互いぶつかりながら、派手な音を立てる。

地縛霊「大体お前らが大暴れしたせいで、ここがとんでもないことになりそうなんだ!! 俺よりよっぽど有害だろ!!」

地縛霊の正論は、二人の耳には届かない。
ただ己の眼前の敵を倒す事だけに、彼らは没頭していく。

霊能力者「おっと、あなたの相手は私ですね。祓って差し上げましょう。テアァッ!!!」

地縛霊「ぐ、お、お、お、お、…」

男「やった、地縛霊が苦しんでいる!!」

女「これをなんとかすれば、事件は終わる!!」

大家「早くしてくれ…。このアパートが無くなったら、私の妻と子供はどうなるんだ…」

霊能力者「ご安心ください、大家さん。もうすぐですよ、もうすぐ地縛霊を祓えます。そしたらあの二人の戦いも止めますから」

Tさん「破ぁ!!」

(´・ω・`)「どこに撃ってるんです。下手なコントロールですね。フゥウン!!」

Tさんから放たれた光弾が、目標をそれた。

女「キャッ!! 流れ弾!?」

男「あ、危ない!?」

霊能力者「テアァッ!!!!!」

大家「霊能力者さん…。私たちをかばってくれたのか!?」

霊能力者「ぐう…。やってしまいました…。あなた方を守れたのはいいですが、地縛霊への術が不完全に…」

男「いい加減にしてくれ、二人とも!! そんな風に暴れられたら困るんだ!!」

女「そうよ!! Tさんも喧嘩はやめて!!」

(´・ω・`)「黙っててください!! あなたたちに口を挟まれる筋合いはありません」

Tさん「そうだ、これは俺たちの戦いだ。首を突っ込むじゃねえよ」

男「うるさい!! 壁殴り代行さん!! あなたの拳はリア充に苦しめられている人々を助けるためにあるんですよね!?
  それをこんな風に自分の喧嘩のためだけに使って、一般人に迷惑をかけていいんですか!?」

(´・ω・`)「私の、拳の、存在意義…」

女「Tさん!! 私友達から聞いたことがあります!! あなたは悪霊の被害から少しでも多くの人々を守れるように、
  強くなったんですよね!? その力で、こんな下らない喧嘩をしていいんですか!?」

Tさん「俺の、強くなった、理由…」

大家「二人の戦いが止まった…」

霊能力者「…ここの地縛霊への仕込みも終わったことですし、空間をもとに戻しますか…」ボソリ

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 {゙{. ( ヽ)          i ,'   i ノ   /   ',  リ ヽ、 ,' |
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               / 〉._,///       ∨:   }. /

ウニュニョウニョ

男「俺たち、元の部屋に帰れたんだな…」

大家「良かった…。今度はどこも壊れてはいない」

Tさん「おい、霊能力者。お前さっきなんて言った? やっぱりさっきの空間異常はお前が…!! それに地縛霊も…!!」ガシッ

霊能力者「私は何も言ってませんよ? 胸倉をつかまないでください」

(´・ω・`)「おやめなさい。もう今の私たちに、戦いを行う権利はありません…」

女「…そうですよ。Tさんは凄いって友達から聞いていたのに…。こんな無茶苦茶な人だとは思いませんでした。もう帰って下さい…」

男「代行さんも一緒です。もうこの件には関わらないでください」

Tさん「く、分かったよ。…どうやら俺も、興奮しすぎていたようだな…。じゃあな。頭を冷やしてくる」

(´・ω・`)「…私もそうします」

大家「やっとあの二人が帰ったか…。はた迷惑なやつらだった」

霊能力者「あの二人のせいで、地縛霊は完全に祓えませんでした。しかも下手に干渉したせいで、
     今後の活動が激しくなる恐れがあります。しかし今日は私の霊力も限界です…。また後日、改めて対応するという事で…」



Tさん(クソ、結局事件の解決はできなかった…!)

Tさんの父「帰ったぞ」

Tさん「お、親父!? 修行の旅は?」

T父「それが一段落したんでな。どうだ。ワシの留守はしっかり預かってくれたか?」

Tさん「すまん、親父…。それが実は…」

Tさん、事件の概要説明中――

T父「喝ッ!!!! この愚か者めが!!!!!! 戦いの相手を見誤るとは何事か!!!!!!」

Tさん「お、親父…」

T父「貴様が真に戦うべき相手は、その地縛霊であり、断じて壁殴り代行ではない!!!」

T父「相手を間違え、力をふるうなど言語道断だ!!!」

Tさん「お、俺はいったいどうすれば…」

T父「ついて来い!! 修行のやり直しだ!!! それが終われば迷惑をかけた方々に、謝りに行け!!!」

Tさん「…分かった。準備してくる」

T父「厳しくいくぞ!! 覚悟しておけ!!」

壁殴り代行業 事務所

代行業社長「お前の客から、かなり激しいクレームが来ているぞ」

   . . .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

        Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
       /:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄


(´・ω・`)「…やはり、私が間違えていたようですね」

社長「いったい何をやっているんだ、お前は!! お客様の下で喧嘩をするなど…!!!」

(´・ω・`)「…申し訳ありません」

社長「私に謝ったって仕方ないだろう!! 仕事先で暴力を振るうなど、社会人として失格だ!!!」

(´・ω・`)「おっしゃる通りです…」

社長「お前は壁殴り代行という仕事の職務を、分かっているのか!!!」

(´・ω・`)「職務、ですか…」

社長「そうだ。壁殴り代行とは、人々の晴らせぬ鬱憤を拳に込め、それを晴らす仕事だ!!」

社長「それが逆に人々に鬱憤を植えつけるとは何事だ!!!」

(´・ω・`)「そうですね…」

社長「また一から教育のし直しだな。筋トレを行え!!! そして心筋に誓え!! 二度とこのような暴挙はせぬと!!!」

(´・ω・`)「分かりました。私の心筋に誓って宣言します!! 次こそは必ず、あの人たちの鬱憤を晴らしてみせます!!」

アパート 105号室

浮遊霊1「…」ゾロゾロ

浮遊霊2「…」ワラワラ

浮遊霊3「…」ウジャウジャ

男(やばいやばいやばい、この部屋にも大量に幽霊が出るようになったぞ!)ビクビク

浮遊霊4「…」ジーッ

男(ものすごく視線を感じる…。布団の中から顔を出すのが怖い…)ギュッ

男(…やっぱり、幽霊が活性化しているのかな、この間の失敗のせいで…)

男(危害は加えてこないようだけど、それでも怖いものは怖い…)ガクガク


                  /  /     /
                /   .       /
              .     ./       .
                 /       / 壁殴り代行だったよ

              ______ 
 ゙"  "''"  "゙"  ゙"/::ヽ_____ ヾ"   あらゆる壁を
 ゙" ゙"  "  ゙"'' ゙" |ヽ/::         ヾ''"   殴るすごい奴だったよ
゙"  ゙'"  "゙"   ゙" .|:: |::: Kabe-naguri | ゙ "
  ゙" ゙  ゙"  ゙"''  |:: l:  Dai-Koh   |    
  ゙" ゙  ゙"  ゙"''  |:: l:          |    
 ゙"  ゙"   "゙" ゙"|: :|: Death by   |  ''゙"

゙"  ゙"  ゙""'"Wv,_|:: l:   overwork |、w"゙"

゙" ゙"''"  ".wWWlヽ::'ヽ|::::::_::_______:.|::\W/ ゙"゙''"
"'' ゙"''"゙"  V/Wヽ`―――――――――lV/W  "'
゙""'  ゙"''"  "゙"w''―――――――w'  ゙"゙''"

ピンポーン

男(誰だよ、このタイミングで来るなんて…)

ピンポーン

男(布団から出たくないんだよ、居留守を使うか…)

ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

男(ああ、もう、うるさいな! 出ればいいんだろう、出れば!!)

男(でも、幽霊じゃないだろうな…? 一応、ドア越しに確認と…)

女「…」

男(あれ、どうしてここに来たんだろう?)

ガチャリ

女「こ、こんばんは…」

男「な、何か用?」

女「…用ってほどでもなんだけど、うちの部屋に幽霊がいっぱい来て、すごく怖いの…。だから、一緒にいてくれない?」

男「う、うちにもいっぱいいるよ? それでもいい?」

女「う、うん。一人より二人の方がいいだろうし…」

男「…まあ、入って」

女「ふう、やっぱり二人だと安心だね…。幽霊が居ても、一人のときより怖くない」

浮遊霊5「…」ジーッ

男「まあな…(別の意味で緊張するけど)」

女「…」

男「…」

女「…」

男「…」

女(どうしよう…。会話が続かない…。前の図書館のときは話題があったから普通にお喋りできたけど…)

女(やっぱり、夜に男の人の部屋で過ごすってなると、意識しちゃうよ…///)

男「なんか、可愛いな…」

女「ひゃい!?」

男「い、いや、今のは不意に出た言葉で…」

女「そ、そう…」

男(…なんかフォローしないと、まずいぞ!!)

男「お、俺、女の子と一緒にこうやっているの、初めてなんだ…」

女「わ、私も男の人とこうやるのは初めてで…」

男(ま、まともにしゃべれない…。ドキドキしまくってるぞ、俺)

ピンポーン

女「あ、誰か来た」

男(…このタイミングでの来客は、ラッキーなのかな? それとも、残念?)

霊能力者「こんばんは。地縛霊を祓うめどがつきそうなので、来させてもらいました」

女「本当ですか!!」

霊能力者「ええ。今すぐにでも術を使いたいぐらいです。そうすれば、浮遊霊への対処もできます」

男「なら今すぐ、お願いします」

霊能力者「分かりました。私と一緒に、件の部屋に私と来てください」

男「あれ? 鍵とかは大丈夫なんですか?」

女「それに、大家さんは?」

霊能力者「大家さんも来ていますよ。あなた方にも、ぜひ立ち会って欲しいとのことです」

男(大家さんが? ちょっと変な感じもするけど、行ってみるか)

大家「…」

男「大家さん? どうしたんです?」

女「すごく顔色が悪いですよ?」

大家「…」

男「大家さんってば」

女「返事してくださいよ」

霊能力者「彼は私の計画のために、今は少し眠ってもらっています。このまま犠牲になってもらうつもりです。あなたたちと一緒にね」

男「え?」

女「どういうことですか?」

霊能力者「私があの寺生まれのTという男を倒すためには、必要な措置なのです」

地縛霊「あ゛あ゛…。苦しい、助けて…」ブラーン

浮遊霊たち「…」ゾロゾロ

霊能力者「上々ですね。あの地縛霊を中心に、たくさんの浮遊霊が集まっています」

男「じ、地縛霊!?」

女「何!? すごく苦しそう!?」

男「霊能力者さん、一体どうなってるんですか!?」

霊能力者「私がやったんですよ。Tに勝つためにね」

女「意味が分からないですよ。いきなりそんなことを言われても…」

霊能力者「分からないのなら説明して差し上げましょう。すべてはT、そして奴の父親に復讐するための私の策です」

男「いきなりそんな黒幕宣言されても…」

女「なんか、投げやりなゲームのシナリオ終盤みたいになってるし…」

霊能力者「最初にここの大家に、この事件解決の依頼で呼ばれたとき、Tがかかわってることを知った私は喜びました」

霊能力者「奴を殺し、Tの父親を引きずり出して復讐を果たすチャンスがついに来たとね」

女「ひょっとして、Tさんが言ってたテレビの件、あれを根に持ってて…」

霊能力者「その通りですよ。おかげで私の評価は地に落ち、収入は激減。今は何とかしのいでますが、
     Tの父は恨んでも恨み足りません」

男「復讐の為に、ここの幽霊を利用するつもりなのか?」

霊能力者「察しがいいですね。この霊の通り道という地理的条件、強力な地縛霊という人的条件、さらに大量の浮遊霊。
     これだけあれば、地縛霊を核とした怨霊集合体を作成することができます」

霊能力者「その怨霊集合体は、この土地に縁のある人間が、理不尽に取り込まれるとさらに強化されます。
     そのための適役が、大家とあなた方なんですよ」

男「前にこの部屋に入った時、ここの空間がおかしくなったのは…」

霊能力者「私がやりました。怨霊集合体を作るために、必要な過程ですのでね」

女「じゃあ、壁殴り代行とTさんの喧嘩にかこつけて、地縛霊を倒さなかったのも…」

霊能力者「無論、わざとです。あの時に必要な術を仕込みましたし」

男「じゃあ、ここに地縛霊を居つかせたのも…」

霊能力者「それも私だ、と言いたいところですが違います。それは偶然です。まあ、ここにいる以上利用させてもらいますが」

霊能力者「さて、お喋りはここまでです。怨霊集合体はこの世との接点が強いほど力が大きくなります。ですから、
     あなた方の内、一人は生霊、もう一人は死霊として取り込ませましょう」

男「おい、逃げるぞ!!」

女「うん!! のんきに話を聞いてる場合じゃなかったね!!」

霊能力者「馬鹿ですか、あなたは。テアァァ!!!」

男「ド、ドアが開かない…!」

女「そんな…」

???「そうでもないぜ。無理やりぶち開ける。破ぁ!!!」

女「T、Tさん!?」

Tさん「嫌な霊気を感じたから、来てみたんだ。どうやらそれで正解だったようだな」

霊能力者「見事な霊感ですね。それも父親譲りですか?」

Tさん「まあな。しかし、とんでもないことをしでかしてくれたな、お前も。こうなった以上は、全力で叩き潰さなきゃなんねえ」

ゴゴゴゴゴゴゴ

男「な、なんだ!? Tさんが光に包まれていく…」

霊能力者「そのオーラ…。あなたの寺に伝わる奥義でしたね。しかしその力を持ってしても、私の怨霊集合体は倒せませんよ」

怨霊集合体「…」

霊能力者「大家たちを取り込めなかったせいで、やや不完全ですが、仕方ありません。行きなさい、怨霊集合体よ!!」

Tさん「破ぁ!!!」

Tさんは札と光弾を、怨霊集合体に見舞った。

怨霊集合体「今期のアニメ、何がおすすめ?」

しかし、効いている様子はない。

Tさん「くっ、丈夫だな、おい」

怨霊集合体は、そのままTさんに突進した。

Tさん「ぐわぁぁぁ!!!!!」

Tさんはあっさり吹き飛ばされ、倒れこんでしまう。

男「T、Tさん!? 大丈夫ですか!?」

女「こんなに簡単にやられるなんて…」

霊能力者「所詮息子の能力はこの程度ですか。さっさととどめを刺して、そこの二人を取り込みなさい」

すまんな、さるってたみたいだ。もうすぐ終わるから、最後まで付き合ってくれ

――以下、本編――

怨霊集合体「ねえ、作画崩壊って、なんで起きるんだろうね?」

男「いや、そりゃアニメ作ってるのは人間だからだろう」

女「っていうか何なの、あいつ…。全く関係のない話しかしてこないし…」

Tさん「ハァ…。ハァ…。複数の人間の思念がこんがらがってんだ。その影響だろうな」

怨霊集合体「声優の露出っていつぐらいから大きくなったんだろうね?」

男「深夜アニメ全盛のころには、すでに色々出てきた印象だなあ」

怨霊集合体「顔面偏差値も最近は上がってきてるよね」

女「普通に話してる場合じゃないでしょ!」

Tさん「そ、そうだぞ。会話でこちらを取り込もうとしているのかもしれねえ。破ぁ!!!」ビシュッ ビシュッ

怨霊集合体「効ーかない!!」

Tさん「クソ、オーラを使ってもこの程度か…」

怨霊集合体「シーズンごとに二次元嫁を切り替えるオタはどうかと思うんだよね。男なら一つのキャラに尽くせよ」

女「Tさん、大丈夫ですか?」

男「すごくつらそうだけど…」

Tさん「ちょっとやばいな…。あいつは別格だ…」

霊能力者「フフフ。そうですよ。出ないと作った甲斐がありませんから」

怨霊集合体「大体シリーズもの中の一つの作品を黒歴史扱いにするってどういうことだよ」

Tさん「ぐっ、なんて攻撃だ…」

男「いや、アニメの話してるだけじゃん」

女「多分、私たちには分からない霊的な何かがあるのよ」

怨霊集合体「いくら休みだからといって土曜の深夜アニメ、ニチアサキッズタイムを通しで見て、
      それから寝て午後に起きる生活はやめろよ。絶対に健康に悪いから」

怨霊集合体から発せられるどす黒い波動が、Tさんを呑みこんでいく。

Tさん「ぐ、おぉ、お!!…」

男「やばい、やばいよ!!」

霊能力者「私の勝ちは決定ですね」

女「嘘でしょ!? こんなノリでやられてしまうの!?」

霊能力者「さあ、次はそこの二人です」

怨霊集合体「地方民は、ネットの公式配信ぐらいでしか深夜アニメに触れられないから辛いよな」

???「そうはさせません」

           ∧_∧ 
           (´・ω・`) _、_,,_,,,     
       /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ   
      { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l   
      '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ   
       ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/    間に合ったみたいですね
        `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'    みなさん、大きなけがはなさそうで何よりです

          ,ノ  ヾ  ,, ''";l      
         ./        ;ヽ 
        .l   ヽ,,  ,/   ;;;l      
        |    ,ヽ,, /    ;;;|   
        |   ,' ;;;l l ;;'i,   ;|      
        li   /  / l `'ヽ, 、;|    
       l jヾノ ,ノ  ヽ  l  ,i|     
       l`'''" ヽ    `l: `''"`i    
       .l ,. i,'  }     li '、 ;;' |     


男「だ、代行さん!?」

女「どうしてここに!?」

(´・ω・`)「私の上腕二頭筋が怪しげな反応を示したのでね。ここに駆け付けたのですよ」

Tさん「か、壁殴り代行…。助けてくれたのか…」

(´・ω・`)「ええ。ちょっと待ってください。フゥン!!」ボスッ

Tさん「これは…。体に力があふれてくる…!! しかも、痛みも消えたぞ!!」

(´・ω・`)「あなたのツボをつきました。これでしばらくは筋力が増加し、傷の痛みも消えます」

Tさん「ありがとう。…それと、この間はすまなかったな。いきなり喧嘩を吹っかけて…」

(´・ω・`)「…それに関しては、私も謝罪しなければなりません。申し訳ありませんでした」

Tさん「…ああ。本当に戦うべき敵は、今、向こうにいる。協力してくれるか?」

(´・ω・`)「もちろんです。ともに戦いましょう」

Tさん「よし! ならば俺の力も受け取れ!!」キュピーン

(´・ω・`)「これは…!! オーラが私にも!!」

Tさん「お前の中に眠る霊力を一時的に増幅した。二人でやれば、あいつに勝てるぞ!!」

怨霊集合体「和解イベント終わった? 空気読んでて待ってたんだから」

霊能力者「なぜこの隙に攻撃しなかったのです!?」

怨霊集合体「それってどうかと思うんだよね。どっちかというとこちら側はヒールだし、ある程度ヒーローに気を配らないと」

男「さすがだな。怨霊集合体なんて名前だけあって、悪役の鑑だ」

女「ええ!? 悪役なら卑怯な手を使うべきでしょ」

怨霊集合体「やっぱり、交流戦開幕五連敗は痛かったよね。今日も負けちゃったし、夏以降、盛り返してほしんだけど…」

男「いきなり話題が変わったな、おい」

怨霊集合体の攻撃は、Tさん、壁殴り代行の双方に向かった。

Tさん「破ぁ!! 霊能力に筋力を組み合わせれば、防げないことはない!!」

(´・ω・`)「負けるわけにはいきませんから、こちらも」

霊能力者「ええい!! 純粋なパワーはこちらの方が上なのです。一気にたたみかけてしまいなさい!!」

怨霊集合体「贔屓チームの有名選手がチャンスに弱くて、今不振だからって応援ボイコットや手ひどい批判はやめろよ。
      本当にファンをやってるのなら、そういう時こそしっかり励ませよ。ファンレター送ったりするのもいいぞ」

女「霊能力者は必死なのに怨霊集合体は…」

怨霊集合体「若手選手にはもっと活躍してほしいよな。いつまでも高齢のベテランには頼ってられないし」

怨霊集合体から、高密度の霊気が、弾丸として放たれた。

Tさん「ぐっ…!! 中々…!!」

(´・ω・`)「踏ん張りどころです!! 下半身の筋肉を使って!!」

Tさんと壁殴り代行は耐えたが、戦いを見ていた男女は吹き飛ばされてしまった。

男「うお、ごめん!! 上にのしかかっちゃって…」モミ

女「も、もう…。どこ触ってんのよ…////」

男「ご、ごめん…」

女「でも、あなたならちょっとはいいかな…」

男「え…?」

                    从⌒゙ヽ,  
             ,; |i    γ゙⌒ヾ,  |!  
                 _,.ノ'゙⌒';、人  l!   
               从~∧_∧ イ ,〉 k    戦闘中にいちゃつくのはやめなさい!!!!
             γ゙  (´・ω・)/ 〈,k_ノ    一番腹が立つんですよ、そういう行動は!!!
             (    ハ.,_,ノ~r         
             )'‐-‐'l   γ´⌒゙ヽ、
          ,、-ー''(    |!~、,il      ゝ、   
        γ    |!   〈   ヽ ミ、    丿
       ゝ (     |  ノ  _,,,..、,,ゝ、 _,.イ  /     
    \'´  γ゙ヽ.,_  ) ゙|! ̄    ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
    Σ    ゝ.,__゙゙'k{  ヾ /      !、,___丿 て
            > ゝ-ー'゙ <



ドカッ!!!!

男「ひっ!! すごい音…」

女「ごめんなさい…」

(´・ω・`)「私はこの職業から見て分かるように、ぼっち出身です。あなた方が不愉快なリア充になるのなら、容赦はしませんよ」

Tさん「同感だ。見ててイライラする」

怨霊集合体「全くだよ。アニメとかでもあるけど、バトル中にいちゃつく暇があるんなら、戦うか逃げるかしろよ」

霊能力者「何であなたまで普通に会話に入ってるんですか!! 戦いなさい!!」

男「不憫だな、おい」

女「一応、あの霊能力者が主人なのにね」

男「おっと、そういや大家さんは?」

女「向こうの方で、ずっと気を失ったままよ」

(´・ω・`)「それは危険ですね。私が起こしますから、あなた方は大家さんと一緒に行動してください」ボカッ

Tさん「気付けにはいい一発だな」

男「いや、やりすぎでしょ」

女「もろに顔面に拳が入ってるし」

(´・ω・`)「怪我しないように加減したから問題ありません」

大家「…はっ、ここは!?」

怨霊集合体「すまんな、大家。これから派手に暴れるから、アパートの保障はできん」

大家「な、なんだお前は…!! ひっ、来るな…!!」

男「大家さん、こっちへ!」

女「今戦ってる最中だから、危ないですよ!!」

霊能力者「謝ってる暇があるのなら、殺しなさい!!」

大家「れ、霊能力者さん? それに、Tさん、壁殴り代行も…」

男「簡単に言うと、あの霊能力者とすごいお化けが悪者で、Tさんと代行さんが戦ってくれてるんです!!」

女「大家さんはこっちへ!!」

大家「あ、ああ…」

Tさん「遠慮なくいくぜ!! 筋力と霊能力のハーモニーだ!! 破ぁ!!」

(´・ω・`)「私の拳で、砕け散りなさい!!」

怨霊集合体「選球眼が優れているあの遊撃手は、NPBでも屈指だと思うんだけどね。ショートに求められるのは、やっぱ守備でしょ」

Tさんと壁殴り代行は強烈な合わせ技を放つが、あっさりと怨霊集合体に避けられてしまう。
その余波は、アパートの壁に命中し、それを粉々に打ち砕いた。

Tさん「次は当てる!!」

(´・ω・`)「そう何度も外しませんよ!!」

怨霊集合体「死球ってのは、やっぱり避けないと」

Tさんと壁殴り代行の攻撃が外れるたびに、アパートがどんどん崩れていく。

大家「…やはり私には、アパートを壊すあの二人の方が悪者に見えるよ…」

霊能力者「大体ねえ、あなたも霊能者なら分かるでしょう? 所詮死者の霊魂など我々の飯のタネにすぎません」

霊能力者「それなのに、あなたとその父はこの事実を否定し、慈善事業で霊を祓う。
     そんなことをされては、私たちの業界に悪影響が出て、みんな儲けられなくなるんですよ」

Tさん「なんだと、貴様…!! 人の魂を、金のために弄んでいいわけがないだろう!!!」

(´・ω・`)「死者を利用するその態度、許しておくわけにはいきませんね」

怨霊集合体「やっぱり、好きなアニメが最終回を迎える前に死んでしまうのは、無念だよな」

霊能力者「この思想が理解できないようなら、やっぱりあなたは害悪です。私の思想に賛同すれば、いくらでも金が手に入るのに…」

Tさん「ふざけやがって…!! お前は自分の欲のために、こんな怨霊集合体を作ったのか!?」

霊能力者「当たり前でしょう? それ以外の何があるんです? あなたを殺して、その父を引きずり出し、そっちも殺す。
     そして私はまたテレビや雑誌に出て、大儲けするんです」

(´・ω・`)「あなたには職に関するプライドというものが感じられませんね。金だけが仕事ではありません」

怨霊集合体「しかしまあ、実際に天命を全うしたところで、生きているうちに週刊少年誌の長寿漫画は終わってたのかなあ?」

男「Tさんと代行さんは多分、いいことを言ってるんだろうけど…」

女「利用されてて、悲しい存在のはずの怨霊集合体がこれだからね…。緊張感のかけらもない戦いね」

大家「アニメや漫画の話なんてどうでもいいんだ!! アパートは壊さないでくれ!! 頼む!!」

Tさん「ここまで回避能力が高いのなら仕方ねえ。広範囲の攻撃で一気に片を付けるぞ」

(´・ω・`)「それしかないようですね」

大家「え!? そんなことしたら、アパートはどうなるの?」

Tさん「ほれ、お前達には結界を張っておく。これで傷つかないだろう」ピキーン

男「この光の壁が、それですね」

女「ありがとうございます」

大家「いや、私たちが無事なのは分かったけど、アパートは!?」

(´・ω・`)「では行きましょう。私たちの筋力と、霊力」

Tさん「そのすべてをつぎ込んだ、最大最強、全力全開の一撃だ!! 破ぁ!!!!」

怨霊集合体「あー、こりゃ無理だ。避けられないわ。俺精神コマンドとか使えないし。もしあったら、『ひらめき』かけたいけど」

霊能力者「ぐわぁー!! なんだ、この攻撃は!! わ、私の霊力が、奪われていく…!!!!」

Tさんと壁殴り代行を中心として広がる、圧倒的な光の波濤は、その場にあるものすべてを呑みこんでいく。
怨霊集合体、霊能力者の邪気を滅するが、大家たちにはあらかじめ張られた結界のおかげで、ダメージはなかった。
しかし、アパートはただでは済まない。一瞬のうちに倒壊し、瓦礫の山と化した。

またさるってた。後10レスも行かないうちに終わるから、最後まで付き合ってください

――以下、本編――

怨霊集合体「一つ聞きたいんだけどさ、どうしてこの二人が戦ってる隙にあんたらは逃げなかったの?」

男「あ」

女「あ」

怨霊集合体「ひょっとして忘れてたの? 仕方ないなあ…。そんなんじゃ長生きできないよ」

怨霊集合体「最後に一つ。死期を悟ったら、パソコンのHDDはぶっ壊せよ。でないと死後後悔するから。経験者だからわかるんだ」

霊能力者「怨霊集合体が、消えていく…。私の、苦心の傑作が…。下らない話をしただけだった…」

大家「アパートが…。どうすりゃいいんだ…。このままでは私の生活が…。他の住人はどうなったんだ…」

Tさん「終わったな…」

(´・ω・`)「我々の勝利です」

地縛霊「どうしたんだ、一体…。何か、すごくいい気分だ」

男「地縛霊…元に戻ったのか?」

Tさん「最後の攻撃が効いたんだ。聖なる気に中てられた奴は、無事冥界へ行けるだろう」

(´・ω・`)「最初に会った時のような、陰湿な感じがしませんね…」

女「なんか、優しい先生って感じ…」

地縛霊「私が冥界に行っても、死んでしまった子は…」

Tさん「それなら大丈夫だ。生前の業が大きいから、向こうで試練を受けなきゃなんねえが、輪廻を巡ることはできる」

(´・ω・`)「あの地縛霊の生前のこと、ご存じなんですか?」

Tさん「まあな。一応調べた」

地縛霊「ありがとう、君たち…」

男「地縛霊が暖かい表情になって…」

女「天に昇っていく…」

大家「いや、イイハナシダナー、で済まそうとしている所悪いが、状況は最悪だからな!! アパートが無くなったら、
   君たちが今夜寝る場所もないんだぞ!? 私にとってはもっと最悪だ!!!!」

大家「路頭に迷った私が自殺して幽霊になった場合、彼らは私のことを祓ってくれるのだろうか…」

Tさん「アパートの事なら任せろ。他の住人も、結界のおかげで無事だ」

(´・ω・`)「早く修復しましょう」

Tさんと壁殴り代行が、力を込めて術を使うと、瞬く間にアパートは元に戻った。

男「すげえ…。理屈はさっぱり分かんねえけど…」

Tさん「理屈なんて必要ねえよ。俺は寺生まれのTさんだからな」

(´・ω・`)「筋肉のちょっとした応用で建築物の修復ができないと、この仕事は務まりません。
       壁に穴をあけてしまうこともありますからね」

女「やっぱり寺生まれってすごい。壁殴り代行もね!!」

大家「一件落着、でいいのか? 私としてはもうこんなことは二度と経験したくない。心臓に悪すぎる」

霊能力者「れ、霊能力が使えない…。私はいったいどうすれば…」

Tさん「最後はこいつの処分だな…。これほどの悪行をしでかした奴だ。アパートにも迷惑をかけて…」

(´・ω・`)「不届き千万ですね」

大家「いや、アパート破壊の主犯はあんたらだからな!? 元に戻ったからいいものの…」

Tさん「こいつは冥界に送るか…」

(´・ω・`)「待ってください。それはやりすぎでしょう。もう霊能力を失ったようですし、ほっといてもいいんじゃないでしょうか」

Tさん「お前も甘いな…。だが、もうこいつには何もできないのも事実だ」

霊能力者「わ、私はこれからどうやって生きていけば…」

(´・ω・`)「もう悪事を働くだけの力もないでしょう」

Tさん「そうだな。とっとと失せな。それと、このアパートを修復するときに、霊の通り道は反らしておいたからな」

男「ホントですか!? じゃあ浮遊霊が出たりしないんですね!!」

女「枕を高くして寝れる夜が来るよ!! やった!!」

大家「…その点だけは感謝しておこう。あの部屋に入居者を呼べるしな」

数日後 河川敷

Tさん「こうやってランニングするのも悪くないな。修行になる」タッタッタッ

(´・ω・`)「あなたとは、仲良くなれて良かったです。霊能力の扱い方を教えてもらってから、
       壁殴りに磨きがかかりましたし」タッタッタッ

Tさん「こっちも筋トレを始めてから、霊を祓うのがうまくなったぜ」

男「あ、Tさん。それに壁殴り代行さんも…」

女「一緒にトレーニングですか?」

Tさん「そうだ。こいつとは一緒にいて、刺激になることが多いからな」

(´・ω・`)「あの事件の後、友人になれて何よりです。お二人はデートですか?」

男「ま、まあ、そんなところです…」

女「私達、あの事件の後、付き合うようになったんです////」

(´・ω・`)「そうですか。おめでとうございます」

女「あれ、怒らないんですか?」

男「代行さんは、仕事柄カップルを見たらマジ切れしそうなイメージがあるんですけど」

(´・ω・`)「節度を守るリア充に怒る理由はありませんよ。もっとも、そうでない場合、容赦はしませんがね」

Tさん「この間みたいに、戦闘中にいちゃつくのは論外ってことだな」

男「分かりました…」

女「お互い、ルールを守って付き合います…」

(´・ω・`)「そうするのが、世の中にも、あなた方二人にとってもためになります」

Tさん「ま、せいぜい末永く爆発しろよ、リア充カップルよ」


終わり

三回ぐらいさるったけど、無事ここで完結できてよかった。
読んでくれた人、支援をしてくれた人、感想を書いてくれた人、本当にありがとう。
これで俺の書いたSSは四本目。察しのいい人が気付いてたみたいだけど、
この話は俺が最初に書いたSS、教師「さて、作文を読むか」の続きになっている。
まあ、向こうを読まなくても何の問題もないけど。
じゃあ、またね。

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