魔王「初めまして、私は優しい魔王です」勇者「はい?」 (24)



魔王「あなたが私を倒す為に選ばれた勇者なんですよね?」

勇者「あぁうん」

魔王「なら魔王として、魔族や魔物の平和の為に!私は戦います!」

勇者「ああいやちょっと待ってよ」

魔王「さあ!いざ尋常に勝負!」バッ

勇者「だから待ってって!ここ町の中!つうか俺の家の前!まだ旅立ってもない!」

魔王「てやあっ」ズバッ

勇者「まだっ王様にも……会ってないのに……」ガクッ

魔王「やりました!勇者を倒しました!」

ザワザワキャー

魔王「え?あれ?」キョロキョロ

兵士1「勇者を倒すなんて、貴様なんのつもりだ!」

兵士2「とっつかまえてやる!」

魔王「えっえっ、あっにっ逃げるが勝ちです!」タタタッ

兵士達「「「待てー!」」」

勇者「……」

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王様「……」

勇者「……」

王様「あー……おほん、勇者よ死んでしまうとは何事じゃ」

勇者「……」

王様「……あー、魔王討伐の為の軍資金じゃ、これで身支度を整えるがいい、さあゆけ勇者よ!見事魔王を倒してまいれ!」

勇者「……」

王様「……あー安心しろ勇者よ、先ほどの自称魔王は町の外に逃げたそうじゃ」

勇者「……」

王様「……大丈夫じゃ!さあゆけ勇者よ!」

勇者「……はい」スタスタ

王様「……大丈夫じゃよな?」

大臣「おそらくは」



勇者「とりあえず装備と、薬草かな?あとは……仲間か……、いやまずは1人で様子を見よう、危なくなったらすぐ帰ってこよう」スタスタ

 -----

勇者「町の外か……魔物め!さあ来い!」

魔王「はい!来ました!」

勇者「……はい?」

 魔王が現れた

魔王「性懲りもなく旅立つとは、でも私は負けません!さあ勝負です勇者!」

勇者「いや待ってまだザコ一匹も倒してないから!」バッ

 勇者は逃げ出した、しかし回り込まれてしまった

魔王「逃がしません!さぁ覚悟!」ボワァ

勇者「ぐああぁぁぁ」ドサッ

魔王「やりました!勇者を倒しました!」

見張り番「おい!お前なんのつもりだ!」

魔王「え?あっにっ逃げるが勝ちです!」タタタッ

見張り番「あっ待て!くそっしっかりしてください勇者さん!」

勇者「……」



王様「……」

勇者「……」

王様「……あー、勇者よ!死んでしまうとは何事じゃ!」

勇者「……」

王様「……」

勇者「……」

王様「おほん、まあ今回はさすがに仕方ない、気を取り直してさあゆけ勇者よ!」

勇者「……はい」スタスタ

王様「……今度は大丈夫じゃよな?」

大臣「えっええ」



勇者「……いないな?」キョロキョロ

見張り番「はい!さっきの自称魔王とやらは逃げていきました!」

勇者「ありがとう……よし、今度こそ!」スタスタ

魔王「また来ましたね勇者!」

勇者「何でだよ!何でいきなり魔王なんだよ!普通はスライムとか、凶暴な動物とかだろ!」

魔王「あなたに語る事は何もありません!さぁ覚悟!」バッ

勇者「待っ」

魔王「ていっ」ゴシャッ

勇者「こんなの……ありかよ?」ガクッ

魔王「やりました!勇者を倒しました!」

見張り番「勇者さん!くそっ誰か!」

魔王「あわっにっ逃げるが勝ちです」タタタッ

勇者「……」



王様「……」

勇者「……」

王様「……おほん、勇者よ死んでしまうとは何事じゃ!」

勇者「……」

王様「……いやまあ、ゆけ勇者よ!」

勇者「……はい」トボトボ

王様「今度こそ大丈夫か?」

大臣「おそらく大丈夫かと思いますが」



勇者「……いないな?今度こそいないな?……よし!」ダッピタッ

魔王「また来ましたね勇者!……あれ?」バッ

勇者「やっぱりいたか……」

魔王「なっ卑怯ですよ勇者!早く町から出てきなさい!」

勇者「いやだよ!出たらやられるだろ!」

魔王「くっそれでも勇者ですか!」

勇者「旅立つ前の勇者を狙った奴が言うな!」

魔王「くっこのままではいつまでたっても戦えませんね……」

勇者「さっきも聞いたが、何で魔王がこんな所にいるんだ!」

魔王「それは私が優しい魔王だからです!勇者!どうしても出て来ませんか?」

勇者「お前がいるうちは出ないよ!」

魔王「くっ仕方ありませんね、ならば勇者に死の呪い!」ズズズ

勇者「なっうわっくぁっ」バタッ

魔王「やりました!即時撤退します!」タタタッ

見張り番「勇者さん!勇者さん!」

勇者「……」



王様「……」

勇者「……」

王様「あー勇者よ「あの」なんじゃ?」

勇者「もういいですそういうの」

王様「ああうむ……、ゆけ勇者よ!」

勇者「……はい」トボトボ

王様「なあ大臣よ、なんとかならんのか?」

大臣「はあ……こればかりは」



勇者「今度はこの裏門から」キョロキョロ

勇者「よし!」ダッ

魔王「ちょっズルいですよ勇者!そんなに私を倒したいのですか!」

勇者「くそっ見つかったか!」

魔王「勇者のくせに裏門から旅立つなんて、そんな卑怯な相手には決して負けません!」バッ

勇者「何でだ!」

魔王「たあっ」ズバッ

勇者「あがっぐっ」ドサッ

魔王「やりました!勇者を倒しました!」

勇者「……」

魔王「……えっと、とりあえず……逃げます!」タタタッ

勇者「……」



王様「……」

勇者「王様」

王様「おっ!?なっなんじゃ?」

勇者「とりあえず行ってきます」トボトボ

王様「おっおおゆくのじゃ!」

大臣「……」

王様「のう大臣や、なんとかしてやれんのか?さすがにこれは不憫すぎる!」

大臣「あの自称魔王さえいなければよいのですが」



勇者(その後も町を出る度にアイツは現れた、正門も裏門も町外れの墓地から出ても現れた。
朝も昼も夜も、1人でも仲間がいても現れた。
もう何度目だろう?50を超えてからは数えていない)

勇者「はぁ……一体どうすれば旅に出れるんだ?」トボトボ

賢者「やあ勇者、久しぶりだね」

勇者「ん?何だ賢者か」

賢者「何だとはひどいな」

勇者「悪いが今はお前に構ってられないんだよ、俺は何とかアイツを出し抜いて、旅に出ないといけないんだ」

賢者「例の自称魔王かい?何でも勇者である君だけが狙われているらしいね、まあ君の仲間もやられたらしいけど」

勇者「ああ……ん?今何て言った?」

賢者「え?仲間もやられたって」

勇者「その前!」

賢者「勇者である君だけが狙われているらしいって」

勇者「……」

賢者「勇者?」

勇者「それだ!おい賢者!」

賢者「え?何?」

勇者「今すぐ服を寄越せ!」

賢者「……え?」



賢者「さて……旅に出るか……」スタスタ

賢者「……行くかなー」スタスタ

賢者「……」キョロキョロ

魔王「……」コソコソジー

賢者(めちゃくちゃ町の入口凝視してる……)

魔王「……ん?あっすみません!何か邪魔でしたか?」

賢者「いえ別に……」

魔王「あぁよかった」

賢者「あのー何をしてるんですか?」

魔王「え?あっその、勇者が旅立たないか見張ってるんです」

賢者「なぜ勇者を見張ってるんですか?」

魔王「あの……実は私、魔王をやってまして、勇者って私を倒しにくるんですよね?」

賢者「え?ええまあ」

魔王「でも私が倒されたら、魔族や魔物がみんな困るんです!だから私は負けられないんです!」

賢者「なるほど……でも何でここに自分から来てるんですか?」

魔王「だって……みんながやられちゃうから」

賢者「みんな?」

魔王「勇者って魔物を倒しながら、私の所に来るんですよね?私はそれがいやなんです、だから勇者が旅立ってすぐに私が倒せば、みんな無事かなって」

賢者「な……なるほど」



賢者(勇者)(理由は分かったが……どうしたもんか)

魔王「それでこうしてずっと見張ってるんです、みんなの為に!」

賢者「でもずっと見張ってなくても」

魔王「ダメですよ、勇者は裏門や墓地から出たり、夜に旅立とうとしたりするんですよ?こうしてずっと見張ってないと」

賢者「は……はあ(それはお前がずっといるからだろうが!)」

魔王「でも変ですね?今日はまだ1回しか出てこないんですよ、昨日までは少なくても6回は出てきたのに」

賢者「あはは……もしかしたら諦めたんでは?」

魔王「かもしれません、でも違ったらみんなが危険にさらされますから、私は見張り続けます、優しい魔王として!」

賢者(優しい!魔物にとって!俺にはいい迷惑!)



魔王「……あれ?あなたよく見ると……」ジー

賢者「何か?」

魔王「勇者に似てるような?……あのお名前は?」

賢者「ゆじゃない……賢者です」

魔王「賢者さんですか、すみません……勇者に似てたもので」

賢者(そりゃ似てるよ!つか本人ですからね!)

魔王「あっお時間取らせてしまいましたね、気を付けて下さいね」

賢者「あっはい(まあこれで旅立てるな)」クルッ

魔王「遅いなぁ……怪しいなぁ、こうなったらまた呪いで」

賢者(前言撤回!危なっかしくて旅立てるか!)



賢者「あー魔王さん?」

魔王「はい?何ですか賢者さん」

賢者「実はここだけの話なんですが、勇者はすでに旅立ったらしいですよ?」

魔王「えっ本当ですか!?くっ勇者め……」

賢者「ですからもうこの町を見張るのはやめて」

魔王「急いで魔王城に帰って、勇者の足取りを追わないと!移動魔法」キュイン

賢者「ん?」キュイン

魔王「あっしまった、間違って賢者さんまでいれちゃった、ごめんなさい!」ビュン

賢者「のわああぁぁぁ」ビュン

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魔王「到着!って違う!本当にすみませんでした!」

賢者「いや……大丈夫ですよ(ここが魔王城か)」

魔王「本当にすみません、お詫びにごちそうを用意しますので」

賢者「いっごちそう?いや別にそんなの」

魔王「悪いのは私なんですから、遠慮しないで下さい、さあ」ガシッ

賢者(力強!腕がピクリとも動かん!)

魔王「さあこっちです」グイグイ

賢者「はあ……(まあいい、これで魔王城の下調べが出来るな)」



魔王「ただいまー」

側近「魔王様!何日もどこに行ってたんですか!心配したんですよ!」

魔王「ごっごめんなさい!」

側近「まったく……あなたは魔王としての……ん?そちらは?」

魔王「あっ実は--

 -----

--と言う訳で」

側近「はぁ……魔王様?しっかりしてくださいよ、よく考えて下さい」

賢者(くっさすがにバレたか?)

側近「そんな所に1人で行って、何かあったらどうするんですか!まったく……ああ賢者さん、すみませんね魔王様が」

賢者「いや大丈夫ですよ(バレてないのか、よかった)」

魔王「とりあえず賢者さんへのお詫びに、ごちそうを用意して」

側近「分かりました、ではしばしお待ち下さい、なんなら城内を見て回っていても構いませんよ」

賢者「あっ分かりました」

魔王「じゃあ私が案内しますね」

賢者「あーいえ1人でも大丈夫ですよ(その方が動きやすいし)」

側近「城内には最上位の魔物や、沢山の罠があって少々危険ですが」

賢者「お願い出来ますか魔王さん」

魔王「任せて下さい!」

賢者(はぁ……まあ仕方ないよな)

今日はとりあえずこの辺で。
また来ます。

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