P「悪夢のエレベーター?」伊織「悪夢よ」(103)

P「よぉ律子、今日はもう帰るのか?」

律子「あら、プロデューサー殿もですか?」

P「まぁな。そうだ、どっかで一杯やってかないか」ポチッ

ウィーン

律子「遠慮しておきます。私、まだ未成年ですから」

P「お固いなぁ。もうすぐ誕生日だし、問題ないだろー?」

伊織「そこのエレベーター、ちょっと待ちなさーい!」バタバタ

P「おいおい、若いんだから階段使えよ、階段を」ポチッ

ウィーン  ガチャ-ン

ゴゥゥゥン……

伊織「ジジ臭い事言うわねー。別にいいじゃない、この位」

律子「あ、丁度よかったわ伊織。明日のスケジュールなんだけど……」


ガコォン

フッ


P「うぉっ!?」グラッ

律子「きゃっ!?」フラッ

伊織「な、何!?」ビクッ

シーン

律子「照明が消えて、稼働音も聞こえなくなったわね……」

伊織「も、もしかして……止まった?」

P「まぁ落ち着け。こんな時の為に、エレベーターには緊急用の連絡ボタンが……」カチャカチャ



P「……ウンともスンとも言わないな」

律子「えっ……」

伊織「何よそれ!?」

P「照明は消えたが、普段なら付かない明かりは付いたな。停電か?」

律子「あっ」

伊織「何?」

律子「……計画停電の時間帯、すっかり忘れてたわ」

伊織「計画停電?」

律子「夏場は電力が足りなくなるから、それを補う為に意図的に数時間電気を止めるのよ」

P「あー、そういやCMでやってたな。『電気を大切にね♪ビリビリ☆』だっけ?」

P「……つー事は、今からか?」

伊織「どのくらい停電が続くわけ?」

律子「少なくとも3時間程度って聞いてるけれど」

伊織「3時間!?」

P「仕事終わらせといて良かったなぁ……」

伊織「で、でも大丈夫よね?このエレベーター」

P「何がだ?」

伊織「こういう時、エレベーターは最寄りの階まで自動で動いてくれるのよ」

伊織「止まってから10分程度経過すれば動くはず……」

律子「良く知ってたわね、そんな事」

伊織「スーパーアイドル伊織ちゃんは何でも知ってるんだから」フフン

~10分後~

伊織「………」

P「動かないな……おまけに暑くなってきた」パタパタ

律子「空調も止まってるみたいですね……」パタパタ

伊織「な、なんで動かないのよ!このポンコツエレベーター!」ガンッ

P「律子……ここ、築何年だっけ?」

律子「さぁ。ただ社長によれば、相当安い物件だったそうですけど」

P「じゃあ、エレベーターまで金が回らなかったって事か?」

伊織「じょ、冗談じゃないわよっ!3時間もここに居続けろって言うの!?」ジタバタ

P「あーもう暴れるなよ、余計暑くなるぞ」パタパタ

P「あぁそうだ、忘れてた……誰か、電話貸してくれないか?」

P「外にいる子達に連絡を取っておきたいんだが」

律子「……持ってないんですか?」

P「いや、持ってはいるんだが、恥ずかしながら電池切れでな」

伊織「はぁ?何でよ?」

P「……暇な時に2chを巡回してたら、あっという間に」

伊織「あんたバカァ?」

律子「仕方ないですね……」ポパピプペ

ガチャッ

春香『はい、もしもし』

律子「あ、春香?まだあなた、事務所に残ってる?」

春香『はい、やよいと一緒ですけど』

律子「小鳥さんはいる?」

春香『計画停電が始まってPC使えなくなるから帰りますって言ってましたよ』

律子「…」

伊織「…」

P「完全にネカフェ感覚だこれ」

春香『あれ、プロデューサーさんもそっちにいるんですか?』

律子「えぇ。実はね――」

~1時間後~

P「連絡が付いたとはいえ、動けないことに変わりはないな~」パタパタ

律子「そうですね……」パタパタ

P「……こないだの話になるんだが」

伊織「何よ?」

P「千早がな、携帯の充電器を事務所のコンセントに差し込もうとしてたんだ」

P「そこで俺は言ってやったわけよ。『それは盗電だぞ』って」

伊織「だから何よ?」





P「……東電から盗電、なんつって」

律子「…」

伊織「…」





P「あ、あれ?涼しくならなかったか?」

伊織「黙って」

P「いやでも、千早には大ウケだったs」

伊織「黙って」

P「……ハイ」

~1時間後~

伊織「あっつー……」パタパタ

律子「………」

P「……よ~しパパ、上着脱いじゃうぞぉ~」

伊織「は、はぁ!?ちょっとあんた、何言って……!」

P「暑いんだから仕方ないかな~って」ヌギヌギ

伊織「ば、バッカじゃないの!?この変態!ド変態っ!!」

P「変態で結構、我々の業界ではご褒美ですよ、ご褒美!……ってな。ハハッ」ヌギヌギ

伊織「ちょっと、律子!あんたからも何か言って……律子?」



律子「………」グッタリ

P「……律子。具合、悪いのか?」

律子「大丈夫です……ちょっと、気分が悪いだけ……」フラッ

伊織「な、何言ってんのよ!あんた顔、真っ青じゃない……」

P「……マズいな、こりゃアレか。噂の熱中症か」

伊織「熱中症って……ここ、ビルの中でしょ?」

P「別に外でしか起きないとは限らないぞ。屋内でも、こう蒸し暑い所にいると起こりやすい」

P「実際、一人暮らしの老人が家の中で熱中症で亡くなったりもしてるからな」

伊織「ど、どうしたらいいの……?」

P「幸い、症状はまだ軽い。水分補給やマッサージをすれば何とかなるぞ」

伊織「水分って言ったって、あたし何も持ってないけど」

P「例えば、生理食塩水とか」

伊織「せ、生理……食塩水?」

P「……そう、『生理』食塩水だ」ニヤリ

伊織「………」

伊織「い、イヤよ!絶対イヤなんだからっ!!」

P「はぁ?何がだ?」

伊織「ど、どうせ、あんたの事だから……それってイヤらしい液体とかなんでしょ!?」

P「いや、違うぞ。全然違う」

P「生理食塩水ってのは0.9%の食塩が入った、人間の体に適した液体の事で」

P「簡単に言ってみれば、スポーツ飲料と似たようなもんだ」

伊織「………」

P「で、スーパーアイドルの伊織ちゃんは一体ナニを想像してたのかな?」ニヤニヤ

伊織「う、うるさいうるさいうるさーいっ!」

伊織「って言うか、スポーツ飲料も持ってないし……どうすんのよ?」

P「ぶっちゃけポカリに似たようなものがあればいいんだが……あっ」

伊織「?」

P「……あぁ、あるじゃないか。ここに」カチャカチャ

伊織「……あんたは何ベルトを外そうとしてるわけ?」

P「いや、俺はただ、ポカリに似た液体を出そうと思ってだな」

律子「出したら、捻り潰しますよ……?」

P「」ゾクッ

P「ジョークだよジョーク。確かこのかばんの中に……」ゴソゴソ

伊織「人が大変な時によくボケをかませるわね、あんた」

P「あったあった。飲みかけのはくだくえき~」チャラリラーン

伊織「そろそろセクハラで訴えるわよ」

P「白濁液とはつまり白く濁った液体という意味でな。決していかがわしいものでは」

伊織「さっさとそれをよこしなさい!……はい、律子」

律子「………」ゴクゴク

P「あとは足を高くして、手足をマッサージすれば良いらしい」

伊織「へぇ」

P「という訳でだな、俺に」

伊織「あんたはダメよ、あたしがやる」





律子「……ありがとう、伊織……」

伊織「困った時はお互い様、でしょ?」モミモミ

律子「……ごめんなさい……こんな頼りない、プロデューサーで……」

伊織「……バカね、別に謝る事なんかじゃないわよ」モミモミ

~1時間後~

P「……かれこれ2時間経ってるな」

律子「………」グッタリ

P「(律子は『楽になった』とは言っていたが、あれはただの応急措置にすぎない)」

P「(本当は涼しい場所に移すのが一番なんだがな)」

伊織「………」ソワソワ

P「(律子の体力の方も限界に近いだろう。早く復旧してくれないと……)」

伊織「………」ソワソワ

P「……伊織、さっきから何ソワソワしてんだ?」

伊織「……と、トイレ……」ソワソワ

P「えっ」

P「……どっちだ?」

伊織「ど、どっちって……」モジモジ



P「大か?小か?」

伊織「……小……」ボソッ



P「(……せ、生理食塩水ィィィィィィッ!?)」

P「ま、待て!落ち着け伊織!」

P「もう3時間経ってるから!も、もうすぐ復旧するはずだっ!」

伊織「……ね、ねぇ、プロデューサー」モジモジ

P「な、何だ?」

伊織「あれって、何……?」スッ

P「天井?……あぁ、あれは上に出られるハッチだな」

伊織「あそこから、出られる?」モジモジ

P「いや、それは分からんが……お前まさか、そこから出るつもりか?」

伊織「さ、流石に、あたしも……ガマンの限界、だからっ……!」モジモジ

P「でも伊織じゃ届かないだろ、あそこは」

伊織「……肩車」

P「は?」

伊織「さっさとあたしを肩車しなさいって、言ってるの!」モジモジ

P「……マジでか」

伊織「大マジよっ!」モジモジ

伊織「う、上見たら……承知しないから……!」

P「お、重っ……伊織、お前プロフィールの体重サバ読んでるだろこれ!」

伊織「う、うっさいっ!」ボカッ

P「あいたっ!?」フラフラ

伊織「ちょっと、動かないでよ!?全っ然届かないじゃないっ!」

P「お、お前が叩くからだろうが!」

伊織「うぅぅ……げ、限界が、近いのにっ……!」ガチャガチャ

P「た、頼むからこの体勢で漏らさないでくれよ……」

伊織「グスッ……どうして……!どうして開かないの……!?」ガチャガチャ

P「……開かないなら、諦めも肝心じゃないかなーって」

伊織「あ、開けてよっ……!開けなさいよぉぉぉぉぉぉぉっ!!」ガンガン


ガコォン

パッ


P「うぉっ!?」フラフラ

伊織「えっ?……ちょ、あっ」グラッ



ドンガラガッシャーン

春香「プロデューサーさんによれば、律子さんが熱中症で倒れてるみたい……」

春香「やよい、準備は出来てる?」

やよい「はい!氷に汗ふきタオル、ポカリなら、ここに!」

やよい「エレベーターが開いたら、すぐに乗り込みましょう!」


チーン

ウィーン


春香「律子さん!大丈夫……です、か……?」

伊織「いたたた……」

P「んー!んー!」ジタバタ

春香「(……半裸のプロデューサーさんに、伊織ちゃんがシックスナイン……!?)」

やよい「……伊織ちゃん、何してるの……?」

伊織「あっ……やよい……こ、これには訳が」

P「ふがっ!ふごっ!?い、伊織!どいてくれ、早くっ」モガモガ

伊織「ひゃあっ!ちょ、しゃ、喋っ……ひああああっ!!?」ゾクゾクッ

春香「……やよい、見ちゃダメっ!」バッ

やよい「えっ……?」

チョロッ

P「っ!?」

伊織「あっ……あ、ぁ……」フルフル


プッシャアアアアアアアアアア


P「うぼあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」ビチャビチャ

伊織「い……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

律子「……んっ……」

春香「律子さん!」

律子「……あ、春香……?」

春香「良かったぁ、気が付いたんですね!はい、ポカリをどうぞ」

律子「あ、ありがとう……」チビリチビリ

春香「熱中症で倒れてたんですよ。エレベーターの中、相当暑かったんですね」

律子「そう……伊織と、プロデューサーは?」

春香「……えぇっと……」

伊織「グスッ……グスッ……」ポロポロ

やよい「げ、元気出して?伊織ちゃん……」ナデナデ

P「お、気が付いたか律子」フキフキ

律子「……雨にでも当たったんですか?」

P「ん、いや、まぁ……ちょっとな。ハハハ」フキフキ





P「……これは、柑橘系か……?」クンクン

ゲシッ

P「あいたぁっ!」

伊織「死ねっ!!」ゲシゲシ

P「ちょ、待て伊織っ!あれは不可抗力!不可抗力だからっ!!」

伊織「死ねっ!死ねっ!死ねぇぇぇぇぇっ!!」ゲシゲシ



律子「……何か、あったのね」

春香「あ、あはは……」

やよい「あ……春香さん、エレベーターの掃除はどうしましょう?」

春香「あぁっ!わ、忘れてた!誰も乗らないようにしておかないと!」ダッ

~翌日~

P「いやー、それで昨日はもう大変な目に遭った訳ですよ」

小鳥「そうだったんですかー」ポチッ

ウィーン

小鳥「はい、プロデューサーさん。お先にどうぞ」

P「?……いや、今日はエレベーターって気分じゃ」

小鳥「お先にどうぞ」

P「は、はぁ……」スタスタ

小鳥「………」ニヤッ

ガコォン

フッ


P「げっ!まさか、計画停電の時間帯だったのか!?」

小鳥「いやーん小鳥知りませんでしたぁーこわーいプロデューサーさーん」ダキッ

P「ちょっ、あんまりひっつかないでください小鳥さん!暑いから!」

小鳥「(……時間帯もバッチリ、誰にも邪魔される事のない、至福の3時間……)」

小鳥「(そんな中で男女二人っつったら、ヤるこたぁ一つでしょう!)」

小鳥「(……音無小鳥2X歳、据え膳食わぬは女の恥!)」

小鳥「(プロデューサーさん、いっただっきまぁすっ!!)」ジュルリ



ガコォン    ゴゥンゴゥンゴゥン……

チーン

ウィーン

小鳥「……あ、あれ?」

P「伊織の執事さんで、新堂さん、でしたっけ?」

P「その方が一晩でここのエレベーターを新調してくれたんです」

P「いやぁ、765プロにとってはありがたい話ですよ、全く」

小鳥「……………」

P「それじゃ、今日はお疲れ様でした。小鳥さん」ヒラヒラ





小鳥「あ、もしもし?壁殴り代行さんですか?……あ、はい、そうです……」



おわり

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