恒一「本編で絡みがなかった人同士が対面させられる現象?」(181)

恒一「ここは……あれ、小椋さん?死んだはずじゃ……」

小椋「え、榊原君?何で?」

現象「本編中で絡みが無かった人達や絡みが少なかった人達に、会話をする機会を与
えようという現象さんのはからいです」

恒一「どこから声が!?」

小椋「現象!?」

現象「その人物については生者・死者を問いません。そして、この場所はそのために
用意しました」

恒一「(何だかよく分からないままどんどん話が進んでる……)」

現象「ある程度したら、この場所から放り出しますので、それまで御歓談ください」

現象「それでは」

恒一「……」

小椋「……」

恒一「(何が何だかさっぱり分からない)」

小椋「(どうしてこうなった)」

恒一「(そもそも、クラスを滅茶苦茶にした張本人の現象が、何でそんな要らない気を回しているのか。しかも、現象って人格あったんだ)」

小椋「(現象って多分私を殺した張本人だよね。何でそんなものに気を使われなきゃいけないんだろう)」

恒一「……」

小椋「……」

恒一「……小椋さん」

小椋「な、何!」

恒一「あの時はお腹を蹴ってごめんなさい」

恒一「それから、小椋さんが死んだことについては、僕にも責任があると思う。こんな言葉で済むことじゃないけど、本当にごめん」

小椋「え、いや、あの時は私も錯乱してたし、あの状況なら反撃して当然だと思う。それに、落ちたのは完全に私の自爆というか……」

小椋「兄貴の仇を討つぞと思ったら、気負いすぎて何だかよく分からないことになって、それで……」

小椋「私本当に死んだんだな……」

恒一「……」

小椋「ごめん、しばらく考えさせて……」

恒一「うん……」

小椋「ありがとう、少し落ち着いてきた」

恒一「小椋さん、つらいのなら無理に喋ろうとしなくてもいいよ。現象もある程度したら放り出すって言ってわけだから」

小椋「大丈夫、もう落ち着いたから」

恒一「きつくなったらいつでも言って」

小椋「うん」

恒一「……」

小椋「……急に話せと言われても中々話すことがないね」

恒一「あはは、そうだね」

小椋「あ、手元に紙がある」

恒一「何を書いてるの?」

小椋「ちょっと待ってね……私が死んでから現象が収まるまでの経過が書いてあるみたい」

小椋「ふむふむ……」

小椋「榊原君と見崎さんってやっぱりそういう関係なの?」

恒一「いきなり何を!?」

小椋「だって気になるじゃん。何かと一緒にいて、現象だって二人で止めたみたいだから」

恒一「いや、だからって……」

小椋「見崎さんとはどこまでしたの?」

恒一「お、小椋さん……」

小椋「せっかく話す機会が出来たんだから教えてよ」

恒一「う……えーと……見崎との間では特にまだ何もないです」

小椋「キスとか」

恒一「してません」

小椋「デートとか」

恒一「見崎の家に行くことはあるけど、特にデートとかは……」

小椋「見崎さんの家に行って何もないの?」

恒一「はい……」

小椋「榊原君、そんなことじゃ、そのうち別の男に見崎さんをとられるよ」

恒一「……頑張ります」

恒一「学校では赤沢さん達といることが多いけど、綾野さんとも仲が良いんだよね?」

小椋「うん。それがどうかしたの?」

恒一「小椋さんと赤沢さんと綾野さん、3人とも演劇部だけど、3人一緒にいるところをあまり見ないから、もしかして、赤沢さんと綾野さんって仲が悪いのかなと思って」

小椋「普通は聞きづらいことをズバッと聞いてくるなあ」

恒一「ごめん。やっぱり不味かった?」

小椋「別にそんなことはないよ。えーと、泉美と彩は別に仲が悪いってことはないかな。3人で遊ぶこともあるし」

小椋「教室内でのグループってのもあるから、榊原君が3人一緒のところを見かけるのが少ないんだと思う」

恒一「そういうものなんだ」

小椋「そういうものなのよ」

恒一「ところで」

小椋「うん」

恒一「小椋さんって多分見崎と同じくらいの身長だよね?」

小椋「……何で知ってるの?」

恒一「目測で」

小椋「見崎さんと並んだことなんてあまりないのによく分かったね。それにしても、聞きにくいようなことを次から次へと……」

恒一「ごめん、不味かったかな?」

小椋「別にそんなことはないけど、外見のことはやっぱりその……」

恒一「そうか、そうだよね。ごめん、無神経だったよ。小椋さんって小さくて可愛いなと思ったから」

小椋「うーん……」

恒一「どうしたの?」

小椋「榊原君ってもしかして小さい子が好きなの?」

恒一「何となく語弊のある言い方になってない?」

小椋「そう?」

恒一「まあいいや……別に小さい子が好きってわけでもないけど」

小椋「でも、榊原君がご執心の見崎さんも小さいし、それに、さっきその……私に小さくて可愛いって……」

恒一「別に小さいから見崎に近づいた」

恒一「小椋さんに言ったことも、小椋さんの可愛さの中で小ささが一番目についたからだよ」

小椋「可愛いって言われるのは嬉しいけど、小さいって言われるのは……うーん、複雑だな……」

恒一「別に小さいってことがなくても小椋さんは可愛いよ」

恒一「でも、小さいことは間違いなく小椋さんの良さで、それも含めての小椋さんだと思う」

小椋「そんな恥ずかしいことを……」

恒一「ごめん、気を悪くした?」

小椋「ううん、悪い気はしないよ。ただ、面と向かってそういうことを言われると、聞いてる方も恥ずかしくなるから」

小椋「見崎さんに積極的に話しかけたり、今のこの状況だったり、榊原君って無駄に度胸があるよね」

恒一「無駄って……」

小椋「何だかなあ……」

恒一「どうしたの?」

現象「そろそろ時間ですよ」

小椋「今何かほざいてた奴さえいなければ、こうして榊原君と普通に接することもできたのかなって」

小椋「そう思ったら、何とも言えない気持ちになって」

恒一「……そうだね」

現象「はい、終了」

小椋「じゃあね、榊原君」

恒一「うん……小椋さんのこと忘れないよ」

※以降のグループについては現象の説明済み
綾野「……」

杉浦「……」

綾野「(うう、気まずい……)」

杉浦「(気まずいなあ)」

綾野・杉浦「(まさか友達の友達と対面させられることになるなんて)」

綾野「……」

杉浦「……」

綾野「(この沈黙は不味い……何か話さないと……)」

綾野「えーと、その……」

杉浦「……」

綾野「えーと、えーとね……」

杉浦「うん」

綾野「そ……」

杉浦「うん」

綾野「そ、その眼鏡良いよね」

杉浦「は?」

綾野「ご、ご、ごめんなさい!!」

杉浦「あっ……」

綾野「(そうだよね……その眼鏡良いよねはないよね……)」

綾野「(は?とか言ってたよ。杉浦さん怒ってたよ……)」

杉浦「(あーしまった…)」

杉浦「(いきなり変なことを言われたから、は?とか言っちゃった)」

綾野「……」オロオロ

杉浦「(うわあ……綾野さん滅茶苦茶オロオロしてるよ。きっと怒ってると思われたな)」

杉浦「(あーこの空気何とかしないと……)」

杉浦「(……とりあえず、謝っておくか)」

杉浦「綾野さん」

綾野「は、はい!」ビクッ

杉浦「ごめんなさい、その……私は別に怒ってないから」

杉浦「今のはいきなり予想もしてなかった言葉がきて反射的に出てしまっただけよ」

綾野「な、なーんだ……良かった」

綾野「てっきり気を悪くさせちゃったのかと思って……」

杉浦「別にあのくらいで気を悪くしないわよ」

杉浦「(まあ、いきなり眼鏡を褒められても気が良くなりはしないけど)」

綾野「……」

杉浦「……」

綾野「(また沈黙……)」

杉浦「(手元に紙が来てる……私が死んでからの状況についてか)」

綾野「(あっ、私の手元にも紙が来てる……私が死んでからのことだ)」

杉浦「(うわあ……泉美報われないなあ……)」

綾野「(由美も泉美も死んだんだ……やっぱりこういっちゃんは見崎さんとくっついたのか……)」

綾野「(というか……)」

綾野「(杉浦さん怖い……)」

綾野「(そして、私はその怖い人と今まさに対面中)」

杉浦「(紙を見た後、怯えた表情でこちらを見た)」

杉浦「(あの紙の内容が私同様死後の状況についてならば、合宿での私の行動についても書かれているわけか)」

杉浦「……」

杉浦「(せっかく怯えているみたいだから、ちょっとからかってみようか)」

杉浦「殺せえええええええええええええええええええ!!!!!!」

綾野「!?」ビクッ

杉浦「と、私は言ったのよ合宿で。それが引き金で合宿所がパニック状態」

綾野「へ、へー」ビクビク

杉浦「(おお、びびってるびびってる)」

杉浦「それから、こうして見崎さんや榊原君に襲いかかったのよ」ドンッ←机を叩く音

綾野「ひっ!!」ビクッ

杉浦「残念ながら首にコードが絡んで死んじゃったけどね」

杉浦「こうグイッ!っと」

綾野「!!」ビクッ

綾野「そ、そうなんだ……」ビクビク

杉浦「(ビクビクしてくれて面白いなあこの子)」

綾野「(何!?一体何なの!?怖いよ杉浦さん)」ビクビク

杉浦「あなた面白いわー」

綾野「え、えっ?」ビクビク

杉浦「私のことを怖がってたみたいだから、ちょっとからかってみたけど、気持ち良いくらい反応してくれるから、こっちもやりがいがあるわ」

綾野「か、からかってみた……?」

杉浦「そう、からかってみたの」

綾野「ひ、ひどいよ杉浦さん……」

杉浦「(ひどいどころか、不謹慎にもほどがあるんだろうな。合宿のパニックは現象と私とババアと勅使河原と風見君あたりのせいだから)」

杉浦「ごめんなさい。せっかく怯えてくれていたから、ちょっと遊んでみようと思って」

綾野「でも、からかってるだけで良かった……」

杉浦「そこまで怯えなくてもいいじゃない。面と向かって話したことはないとはいえ、お互い知らない仲でもないんだから」

綾野「由美達がいるのといないのとじゃ大きいよ」

杉浦「そうかしら……まあ、そうね」

綾野「それに……気を悪くしたらごめんね。普段から杉浦さんのことは少し怖いなと思ってたから」

杉浦「私って怖そうなの?」

綾野「いつも不機嫌そうな顔をしているし、泉美の横で冷徹な参謀みたいにしてたから……」

杉浦「誰が冷徹な参謀よ……」

杉浦「……まあ、私もあなたに必ずしも好印象を持ってなかったから、あまり文句を言えたものじゃないか」

綾野「え?」

杉浦「あなたのことは、正直言って、ちょっとうざいなと思ってた」

綾野「うざい……」

綾野「うーん、他の女子にも少し避けられてるなと思うことはあったから、私ってやっぱりうざいのかな……」

杉浦「私があなたをうざいと思っていたのは、多分他の女子とはちょっと違う理由だと思うけどね」

綾野「え?」

杉浦「あなたが泉美と……」

綾野「えっ、泉美?」

杉浦「あなたが泉美と楽しそうにしてるから……」

綾野「は、はい?」

杉浦「だから、あなたがいつもの明るい調子で、部活やら教室やらで、泉美と楽しそうにしてるから……」

綾野「な、何でそれで!?それにその理由だと由美はどうなるの?」

杉浦「小椋は何だかんだでそこそこ付き合いが長いから……」

綾野「じゃあ、私は何でそんな理由でうざがられてたの?」

杉浦「……」

杉浦「はあ……」

杉浦「嫉妬してたんだろうな多分」

綾野「嫉妬?」

杉浦「あなたの性格や泉美が取られることに」

綾野「……」

綾野「杉浦さんって意外と可愛いんだね」

杉浦「……」

杉浦「はあ!?」

綾野「だって、何だか子供みたいな理由だから」

杉浦「子供みたい……」

杉浦「……反論できないか」

綾野「杉浦さんのことは、大人びてて冷たくて怖いと思ってたけど、少し印象が変わったかもしれない」

杉浦「悪かったわね……子供じみてて……」

綾野「悪くないよ、可愛いし、その方が親しみやすいよ」

杉浦「可愛いってあなたねえ……」

杉浦「……」

杉浦「はあ……」

杉浦「何か毒気を抜かれた気分」

綾野「杉浦さんのことたかちゃんって呼んでいい?」

杉浦「は?」ギロッ

綾野「ご、ごめんなさい、調子に乗ってました!」

杉浦「あなたはあなたで面白いと思うわ。基本的に明るいのに、実際は臆病で、小動物みたい」

綾野「しょ、小動物……」

現象「はい、終了」

杉浦「まあ、あなたといくらか腹を割って話せて、それなりに良かったかな」

綾野「うん、私も」

川堀「何だ、中尾か」

中尾「……」

中尾「(やばい、川堀と二人きりになった)」

中尾「(噂じゃこいつはホモで俺のケツを狙ってるらしいんだよな)」

中尾「(掘られる前に何とかしねえと……)」

川堀「お前と話せって言われてもな」

中尾「(話すのも面倒臭い、早く掘りたいってことなのか!?)」

中尾「(何とかして逃げねえと……)」

中尾「……」

中尾「(出口の見つからない個室。その中で机を挟んで川堀と二人きり……)」

中尾「(どうしろってんだ!!)」

中尾「(現象早くここから出してくれ!!)」

川堀「お前最近どうよ……って俺もお前も死んでるから、最近どうよも何もないか」

中尾「(ケツの具合を聞いてきたのか!?)」

中尾「(まずい、奴は臨戦態勢だ!くそっ!何か手はないのか!?)」

川堀「お前さっきから何で黙ってんだよ?」

中尾「い、いや何か話題がねえかなと思って(ここは奴を刺激しないように……)」

川堀「だよな。中尾と二人きりで何をしろってんだよ」

中尾「(ナニをする気なんだろお前は)」

川堀「あ、そういえば」

中尾「な、何だよ」

川堀「俺と中尾について何か変な噂が流れてるらしいな」

中尾「!?ど、どんな噂だ……?」

川堀「俺がホモで中尾のケツを狙ってるとかいう」

中尾「(まずい!!仕掛けてきた!!)」

川堀「ひでえ噂だよな。んな訳あるかっての」

中尾「(そう言ってこちらを油断させる気か!?)」

川堀「おい、中尾?」

中尾「な、何だよ……」

川堀「お前さっきから様子が変だけど、ひょっとしてその噂を信じてないだろうな?」

中尾「そ、そんなことねえよ……」

川堀「おい、俺はホモじゃねえぞ」ドンッ

中尾「ま、待て!それ以上近づくな!!」

川堀「お前やっぱり信じてんじゃねえか!!」

川堀「だから俺はホモじゃねえって!!」

中尾「わ、分かったから落ち着け。それ以上近づくな!!」

川堀「分かってねえだろ!!人の話を聞けよ!!」

中尾「や、やめろ!!来るな!!」

川堀「面倒くせえ!誰だよ変な噂を流したのは!?」

中尾「だ、誰か助けてくれ!!」

川堀「俺が助けて欲しいわ!!」

赤沢「あれ?見崎さん眼帯はどうしたの?」

未咲「たまには外してもいいかなって」

赤沢「ふーん……」

赤沢「私と見崎さんって結構絡みがあったよね……殺し合うくらい……」

未咲「(この人私を鳴と勘違いしてるのか。鳴のクラスの人かな?)」

未咲「(あ、手元に紙がある)」

赤沢「その紙何?」

未咲「今読んでるところだから、ちょっと黙ってて」

赤沢「あ、はい」

赤沢「(何で私の手元には紙がないんだろう)」

未咲「(なるほど。この人は赤沢さんか)」

未咲「(この人、鳴と取っ組みあったときに、鳴の左目を見てるんだ。何で私が鳴じゃないって思わないんだろう。髪の色だって違うのに)」

未咲「(人物関係としては赤沢さん⇒榊原君⇔鳴ね)」

未咲「(鳴の奴も隅に置けないな。私が死んだ後に彼氏ができるなんて)」

未咲「(さて、赤沢さんには私の正体を教えておくべきか……)」

赤沢「見崎さん?」

未咲「(でも、せっかく勘違いしてくれてるからなー……ここは一つからかってみようか)」

赤沢「見崎さーん」

未咲「(さっきの資料を見る限り、からかうネタはあれしかないよね)」

未咲「赤沢さん」

赤沢「何?」

未咲「この前榊原君とデートをしたよ」

赤沢「ヘ、ヘー」

未咲「私が遊園地に行きたいって言ったら、榊原君が連れて行ってくれたの」

赤沢「ソ、ソウナンダー」

未咲「お化け屋敷で私が怖がってたら、榊原君が抱き寄せてくれたな」

赤沢「ヨ、ヨカッタネー」

未咲「観覧車の中では榊原君とキスしちゃった」

赤沢「おいコラ!!」

未咲「どうしたの、赤沢さん?」

赤沢「どうしたもこうしたもあるか!!あの一件のおかげで私が恒一君をどう思ってたかはあなたも察しがついてるでしょ!!」

未咲「あの一件?」

赤沢「お前は殺されかけたことも忘れてるのか!!」

未咲「そのことかー、でも榊原君のおかげで助かったからなー」

赤沢「あの時殺りそこなったことを猛烈に後悔してるわ……」

未咲「あっ、そういえば」

赤沢「何よ」

未咲「榊原君の体はもう私のものになったから」

赤沢「」プツン

未咲「あの夜は熱かったなー」

赤沢「殺す!!今ここで殺す!!絶対に殺してやる!!」

未咲「落ち着きなよ赤沢さん。ここで私を殺しても、榊原君が赤沢さんのものになることはないよ」

赤沢「うるさい!!殺す!!殺してやる!!」

未咲「(あーやりすぎたなー)」

未咲「(それにしても、この人単純だなー。こうも私を鳴だと信じて疑わず、私の話にも疑問を持たないなんて)」

未咲「現象さーん、そろそろ終わりにしてくださーい」

現象「はーい」

赤沢「待てコラ!!畜生!!」

見崎「……」

佐藤「……」

佐藤「(あまり得意じゃない人と対面させられたなあ……)」

見崎「……」

佐藤「(ああもう!何を考えてるのかさっぱり分からない。どうしろってのよ)」

見崎「……佐藤さん」

佐藤「(このまま何もせずに時間切れまで待ってもいいかな)」

見崎「佐藤さん」

佐藤「えっ、な、何?(向こうから話しかけてきた!?)」

見崎「佐藤さんが腹黒いという噂を小耳に挟んだんだけど、本当?」

佐藤「……」

佐藤「仮に私が腹黒いとしたら、その腹黒い人に直接聞くことじゃないよねそれ?」

見崎「そうだね」

佐藤「……何でそんな質問をしてきたの?」

見崎「何か話題はないかなと思って考えてたら、とっさにこの噂を思い出したから」

佐藤「ああ、そう……」

佐藤「(何考えてるのか分からないけど、一応会話しようって気はあるのか……)」

佐藤「何でそんな噂が流れてるの?」

見崎「分からない、私も人伝に聞いただけだから」

佐藤「思い当たる節がないんだけど……」

見崎「火のないところに煙は立たないというけど、火がなくても火事だと騒ぎたがる人はいるからね」

佐藤「迷惑な話ね……」

見崎「一応、私の考えを言ってみてもいい?」

佐藤「何?」

見崎「一つ目は、佐藤さんの見た目の印象でそう思った」

佐藤「見た目の印象?」

見崎「おっとりしていると言う人もいるけど、冷めててキツそうだと言う人もいるから」

佐藤「そんな風に思われてるんだ」

佐藤「(的外れでもないから、反論しづらいなあ)」

見崎「後は、たまに思っていることをズバッというから、さっきの見た目の印象とギャップがあって、あるいは、相まって黒く見えるんじゃないかな」

佐藤「私そんなことしてる?」

見崎「たまに」

佐藤「気をつけた方がいいのかな……」

見崎「そのままでいいんじゃない?」

佐藤「でも、腹黒いとか言われるのはやだな」

見崎「今更変えるのは難しいと思うし、下手に変えるとまた変な噂が立つよ。それに、見た目の方はどうしようもないと思う」

佐藤「それもそうか……」

佐藤「……って、よく考えたら、何かとマイペースな見崎さんにそう言われても、あまりあてにならない気がする」

見崎「失礼なことを言われてる気がする」

見崎「何となく想像はつくけど、私って皆にどう思われてるの?」

佐藤「私の周りの意見でいい?失礼な意見だけど」

見崎「いいよ」

佐藤「変人」

見崎「そんな気はしてた……」

佐藤「自覚はあるんだ」

見崎「昔からよく言われてるから」

佐藤「ああ……何かごめん……」

見崎「言われ慣れてるから大丈夫」

佐藤「ところでさ」

見崎「うん」

佐藤「いくら絡みがなかったとはいえ、私と見崎さんは生き残ってるんだから」

見崎「そのうち話す機会がありそうなのに、何でわざわざこんな所に連れてこられたんだろう?」

佐藤「うん、そう」

見崎「卒業までまともに話さないだろうって判断されたんじゃない?」

佐藤「……今度からもう少し仲良くしようか」

見崎「うん」

恒一「……」

未咲「(この人が榊原恒一君か)」

未咲「何で私達が対面させられてるんだろうね、いつも会ってるのに」

恒一「未咲さんだよね?」

未咲「うん、見崎だけど、何でさん付けをするの?」

恒一「藤岡未咲さんだよね?」

未咲「あれ?バレてた?」

恒一「僕は見崎から未咲さんのことを聞いてるからね。髪の色が違って、目の色も違ってれば、気付くに決まってるよ」

未咲「あーそういえばさっきの資料に書いてたなー」

未咲「さっきの赤沢さんはこっちが引くくらい騙されてくれたのになー」

恒一「何やってんの……」

未咲「鳴のふりをして、恒一君とのイチャイチャ生活について語ってみました」

恒一「鬼だ……」

未咲「いやー向こうが勘違いしてくれてたからさー、からかうには絶好のチャンスだと思って」

恒一「だからって、酷なことを……」

未咲「マジ切れしたのを見て、さすがに私も反省したよ」

恒一「それって、もし見崎と赤沢さんが会うようなことがあったら、大変なことになるんじゃないの?」

未咲「んー?この現象は絡みが薄かった人同士が対面させられるんでしょ。だったら、あの二人が一緒になることはないでしょー」

未咲「赤沢さんはちょっと疑問に思ってたみたいなのに、結局、私を鳴だと信じたままだったけど」プッ

恒一「……本当に反省してるの?」

未咲「やりすぎたとは思ってるよ」

恒一「僕は何となく嫌な予感がするな……二人が対面させられるような……」

未咲「もー心配性だなー、ありえないって」

恒一「だといいんだけど……」

未咲「ところで、榊原君は鳴とはどこまでいってるの?とりあえず、赤沢さんにはヤることはヤったって言っておいたけど」

恒一「な、な、何てことを言ってるの!!僕はまだ見崎とそんな……」

未咲「あれ?そうなの?でも、キスくらいはしてるでしょ?」

恒一「まだだよ!!」

未咲「えーそうなの。そんなんじゃ、鳴が別の男の方に行っちゃうかもよ」

恒一「さっきも別の人に同じことを言われた……」

未咲「それで、最初は落ち込んでる榊原君だけど、何だかんだで普通に他の女と付き合いだすってことになっちゃうよ」

恒一「妙にリアルな話はやめて……」

未咲「プラトニックなのも結構だけどさー、いつまでも進展がないままなのは良くないよ」

恒一「はい……」

未咲「まー、応援してるから頑張ってね」

恒一「はい」

現象「はい、終了」

未咲「じゃあ、鳴のことをよろしくね。寝取られないでねー」

恒一「うっ……頑張ります」

勅使河原「……」

松井「杏子ちゃ~ん」イチャイチャ

金木「どうしたの亜紀?」イチャイチャ

松井「死んじゃったけど、そのおかげで杏子ちゃんと一緒にいられるのが嬉しいなって」イチャイチャ

金木「私もだよ。これからはずっと一緒だからね」イチャイチャ

勅使河原「(何でこの二人はセットで来てるんだ……)」

松井「杏子ちゃ~ん」イチャイチャ

金木「亜紀~」イチャイチャ

勅使河原「(俺完全に空気じゃねえか)」

勅使河原「(思い切って話しかけてみるか)」

勅使河原「なあ、金木、松井」

金木「亜紀の髪ふわふわしてて気持ちいい」

松井「くすぐったいよ杏子ちゃん」

勅使河原「(無視しやがった!)」

勅使河原「おい、金木、松井!!」

松井「お返しだよ、えい!杏子ちゃんの髪はさらさらでいいな」

金木「私は亜紀のふわふわした髪が羨ましいよ」

勅使河原「(畜生……)」

勅使河原「おい!!無視すんなよ!!」

金木&松井「うるさい」

勅使河原「すみませんでした……」

金木「そういえば、勅使河原って風見と仲良かったよね?あいつ結局どうなったの?」

勅使河原「……死んだよ」

金木「そうなんだ。ざまあみろ」

松井「ひどいよね、あの眼鏡。いきなり襲いかかって来るんだもん」

金木「でも、死んだおかげで、ずっと亜紀といられるようになったのは良かったかな。あの眼鏡は許さないけど」

松井「私もそこは嬉しいかな」

勅使河原「二人ともすまねえ……風見があんな風になったのは多分俺にも責任があるんだ」

金木「殺された側からしたら、殺した側の理由なんて関係ないよ」

松井「そうそう。私達があの眼鏡に殺されたことには変わりないんだから」

勅使河原「あいつは本当はそんなに悪い奴じゃないんだ。それなのに、俺は……」

金木「だからさあ、理由はどうあれ、それで無差別殺人をやっていいわけないでしょ」

松井「どんな理由があろうと、何を言われようと、私達があの眼鏡を許すことはないよ」

勅使河原「それでも、謝らせてくれ……」

金木「あのさぁ……結局あんたはどうして欲しいの?」

松井「後悔してるのは分かるけど、今更それをこっちにぶつけられても、こっちも困るよ」

金木「何度も言わせないでよ、私達が許せないのはあくまでもあの眼鏡」

松井「それでも、結果的に二人一緒にいられるようになったことだけは良かったと思ってる」

金木&松井「それでいいでしょ?」

勅使河原「……」

金木「言いたいことはあると思うけど、これでこの話は終わり」

松井「そこで大人しくしててね」

金木「亜紀~」イチャイチャ

松井「杏子ちゃ~ん」イチャイチャ

勅使河原「……」

前島「(何故だ……)」

沼田峯子「……」

前島「(僕とこの人は十分に絡みがあっただろ!というか、もう絡みたくない!)」

沼田「……」

前島「(僕はこの人に殺されかけたんだぞ!ああもう、ここから逃げ出したい)」

沼田「ねえ、あなた」

前島「は、はい!」

沼田「あの時はごめんなさいね」

前島「え?」

沼田「あの時は私もどうかしてて……あなたには本当に悪いことをしたと思ってるわ」

前島「え……」

前島「(あれ?普通に謝って来たぞ?この人実は良い人なのか?)」

沼田「本当にごめんなさいね」

前島「い、いえ、済んだことですし」

沼田「あなたって優しいのね」

前島「いえ、そんな……」

沼田「あなたを見ていると夫の若いころを思い出すわ」

前島「はい?」

沼田「夫も若い頃は、あなたみたいに恰好良くて、優しかったのよ」

前島「は、はあ……」

沼田「年甲斐もなくムラムラしてきたわ」

前島「は、はい!?」

沼田「ねえ、いいでしょ?」

前島「な、何がですか?」

沼田「とぼけちゃって」

前島「お、おい!!現象!!出せ!!ここから出してくれ!!」

沼田「ハァハァ……」

前島「誰か助けてー!!」

水野早苗「(猛のクラスの子かな?)」

望月「(誰だろうこのナースさん。あっ、ひょっとして)」

望月「水野君のお姉さんですか?」

早苗「えっ、何で知ってるの?」

望月「亡くなった水野君のお姉さんが看護婦だって聞いていたからです」

早苗「なるほど」

望月「僕は水野君のクラスメイトの望月優矢です」

早苗「よろしくね、望月君」

望月「!!」ドキッ

望月「(あれ?何かドキドキしてる。何だろうこの気持ち)」ドキドキ

早苗「どうしたの望月君?」

望月「な、何でもないです!!」

望月「(水野君のお姉さん綺麗だなあ)」ドキドキ

望月「(僕水野君のお姉さんのことが好きになったのかな?)」ドキドキ

望月「(あっ、でも、水野君のお姉さんはもう亡くなってるのか……)」

早苗「望月君?」

望月「な、な、何でもないです!!」

早苗「でも、顔が赤いよ?」

望月「大丈夫です!!」

早苗「体調が悪いなら、無理しちゃだめよ」

望月「本当に大丈夫だから気にしないで下さい!!」

早苗「う、うん……」

望月「(うわあ……滅茶苦茶動揺しちゃってるよ。お姉さん変に思ってないかな……)」

早苗「猛は……弟は元気にしてる?」

望月「あっ、はい。水野君なら元気にやってますよ」

早苗「そう、良かった。弟とはあまり仲が良くなかったけど、身内が死んだのはこたえてると思ったから」

早苗「でも、元気にしてるのなら、心配ないかな……」

望月「(しまった。お姉さんが亡くなったことにはショックを受けていたくらいは、言っておくべきだった)」

望月「で、でも、お姉さんが亡くなってすぐの頃は、すごく落ち込んでました!!」

早苗「望月君、もしかして私に気をつかってくれてる?」

望月「そ、そそ、そんなことは……」

早苗「ありがとう。優しいのね」

望月「(あわわわわわ)」

望月「(あ、あれ?結果的に好印象になってないか?よし!!)」

望月「(って、何を考えてるんだ僕は!!)」

早苗「望月君?」

望月「は、は、はい!!」

早苗「さっきから、何か変だけど大丈夫?」

望月「大丈夫です!!」

望月「(うわあ、やっぱり変だと思われてるよ!!どうしよう……)」

早苗「(望月君、面白い子だなあ)」

赤沢「……」イライラ

多々良「……」

多々良「(何で赤沢さんはあんなに不機嫌そうなんだろう)」

赤沢「チッ」イライラ

多々良「(すごく居心地が悪い……)」

赤沢「あの根暗眼帯め……」イライラ

多々良「(根暗眼帯……見崎さん?見崎さんと何かあったのかな?)」

赤沢「ああもう!!」イライラ

多々良「(思い切って聞いてみようか……)」

多々良「あ、赤沢さん」

赤沢「何?」ギロッ

多々良「え、えーと……」ビクッ

多々良「(やっぱりやめておこうか。でも、ここで何でもないって言ったらまた機嫌が悪くなりそうだな)」

多々良「(ここは思い切って……)」

多々良「な、何か嫌なことでもあった?」

赤沢「ええ、あったわよ!!」

多々良「見崎さんがそんなことを……」

赤沢「ええ、そうよ!!あの眼帯娘は私の気持ちを知っていながらあんなことを!!」

多々良「(見崎さんと榊原君の仲がそんなに進んでたなんて。普段の様子からは想像もつかないな)」

多々良「(もしその話が本当なら、見崎さんと榊原君はもうセ、セッ……)」

多々良「(ふわぁぁぁぁ///)」

赤沢「ああもう!!」ドンッ

多々良「!!」ビクッ

多々良「(でも、見崎さんが本当にそんなことを言ったのかな)」

多々良「(見崎さんのことはよく知らないけど、赤沢さんの気持ちを知っていてそんなことを言うのかな……)」

多々良「(元恋敵と再会して、思わず自慢してみたくなったから?)」

多々良「(あれ?そもそも、この現象って絡みの少なかった人同士が対面させられてるんじゃ)」

多々良「(赤沢さんと見崎さんの絡みが少なかったとは、ちょっと思えないしなあ……)」

多々良「(うーん、でも、これが現象の仕業なら、そんな意地の悪い事態が起こる可能性もなくはないか……)」

赤沢「あの眼帯め!!」イライラ

多々良「(何にせよ、赤沢さんが気の毒な事には変わりないか)」

赤沢「くそっ!くそっ!」イライラ

多々良「(赤沢さんと会うことはもうないんだろうな……)」

多々良「(赤沢さんへの手向けとして、せめて愚痴を聞いてあげるくらいはできるかな)」

多々良「赤沢さん」

赤沢「何!!」

多々良「言いたいことが色々と溜まってるんでしょ。私で良ければ聞いていくよ」

赤沢「……いいの?」

多々良「うん」

赤沢「……じゃあ、お言葉に甘えて」

久保寺「……」

中島「(よりによって、顔も見たくない人と……)」

中島「(私とこの人は思いっきり絡んでたと思うんだけど、軽くトラウマを作ってくれるぐらい)」

中島「(まずい、血の臭いが蘇ってきた……他のことを考えないと……)」

久保寺「教卓の前に座っている中島さんには悪いことをしてしまいましたね。あの時は本当にすみませんでした」

中島「(思い出すようなことを言わないで!!)」

久保寺「今際の際に、血にまみれている中島さんの姿が見えました。本当にあなたには何とお詫びをしてよいのやら……」

中島「(やめて!!)」

中島「い、いいですよもう。終わったことですし」

久保寺「しかし、私は教師として教え子にひどいことをしてしまいました」

久保寺「中学生の少女が頭から血をかぶるなんて、さぞやつらかったでしょうに」

中島「(その通りだからこれ以上喋るな!!)」

久保寺「私もまさかあそこまでひどいことになるとは思わず、あなたには本当に迷惑をかけてしまいました」

中島「(現在進行形で迷惑をかけられています)」

久保寺「血の汚れはちゃんと取れましたか?もし中々取れなかったのならば、本当に申し訳なく思います」

中島「……」プツン

中島「久保寺先生」

久保寺「何でしょう?」

中島「ちょっと黙ってください」

久保寺「しかし、私はあなたにひどいことを……」

中島「聞こえませんでしたか?だ・ま・れ」

久保寺「……」

中島「(今日の夕飯は何だろうな。あっ、恵に借りた本を返しておかないと)」

桜木「どうも」ペコッ

有田「あ、どうも」ペコッ

桜木「この紙に書いてありますが、私が死んでから色々なことがあったんですね」

有田「色々あったねえ、私も一度死にかけてるし」

桜木「有田さんは……本当ですね、よくこれで助かりましたね」

有田「爆発音が聞こえた時は絶対に死んだと思ったよ、まさかあれで外に出れるなんて」

桜木「私だったら絶対に死んでいたんでしょうね。傘で死ぬくらいなんですから……」

有田「ああ!桜木さんネガティブモードに入らないで!」

有田「でも、助かったのはいいけど、私もちょっと面倒くさいことになってるよ」

桜木「面倒くさいことですか?」

有田「私が助かった経緯を皆に話したら、あだ名が“開運 有田大明神”になりました……」

桜木「それはまた……」プッ

有田「今笑わなかった?」

桜木「何のことですか?」

有田「有田の運に肖れといって、皆に持ちあげられるようになって大変だよ」

桜木「いいことじゃないですか」

有田「全然良くないよ」

桜木「私なんて傘ですよ傘」

有田「あ、うん……それと比べたら贅沢な悩みだよね……」

桜木「でも、有田さんってそんなに運が良かったんですね。少し驚きました」

有田「うん、私も驚いてる」

桜木「交友関係が広い人だなとは思ってましたが、それ以外は割と普通な人だとばかり」

有田「あはは、普通とか私にぴったりの言葉だよね。ひょっとしたら、あの件で一生分の運を使ったのかも」

桜木「逆にこれからは“開運 有田大明神”としての人生が始まるかもしれませんよ」プッ

有田「ねえ、やっぱり馬鹿にしてない?」

桜木「はい?」

有田「でも、あの死の合宿から助かったって時点で、珊達も相当運が良いと思うんだ
けどな」

桜木「渡辺さん達ですか?」

有田「うん、参加者19人中11人が生き残ったんだけど、半分弱が死んだ中で生き残れ
るってのは、それだけでも強運だと思う」

有田「珊達はシャンデリアの下敷きになって生き残ったらしいから、運の良さじゃ私
と大差ないと思うんだけどなあ」

桜木「普段普通な有田さんだったからこそ、死亡確実と思われた状況で生き残ったこ
とに注目が集まっているんじゃないですかね?」

有田「普通のままでそっとしておいて欲しかった」

桜木「でも、普通のままだと普通に死んでいたかもしれませんよ。私みたいに傘で死
ぬなんてことはないと思いますが」

有田「うぅ……生き残っただけありがたいってことなのかな」

桜木「他の皆さんは有田さんのように変な扱いになっていないんですか?」

有田「うん、お互いに無事で良かったって言いあったり、不参加組に心配されたり」

有田「私も最初はそんな感じだったんだけどね……」

桜木「いつの間にか神様に」

有田「うん。発信源は誰なんだろう」

桜木「最初に誰に話したんですか?」

有田「皆で集まってる時に話したから、よく分からないよ」

桜木「そうですか。でも、助かったんだから、ポジティブに考えましょうよ」

有田「うん、そうだね」

有田「桜木さんと風見君って付き合ってたの?」

桜木「風見君ですか?別にそんなことはないですけど……」

有田「桜木さんの件で風見君がバーサーカーになったって聞いたから。それで、杏子
達が……」

桜木「私も資料を読んで驚きました。あの風見君がそんなことをするなんて……」

有田「風見君は桜木さんのことが大好きだったみたいだけど、桜木さんは風見君のこ
とをどう思ってたの?」

桜木「どう……ですか……真面目でよく気が回る人だなとは思っていましたが……」

有田「好きだった?」

桜木「そこは風見君のためにも伏せておきます」

王子「……」

柿沼「……」

王子「資料を見る限り、猿田は助かったのか。それと、多々良さん達合宿不参加組も
無事みたいだね、良かったよ」

柿沼「う、うん、そうだね」

王子「合宿参加組の中では、柿沼さんも助かったんだったね。怪我はなかった?」

柿沼「うん、大きな怪我はなかったよ」

王子「それは良かった。ところで、猿田は元気にやっているかい?」

柿沼「あ、うん。でも、まだ少し落ち込んでるみたい」

王子「そうか……」

王子「やっぱり、この一連の事件の傷跡は早々に癒えてはくれないか。早く元気に
なってくれるといいんだけど」

柿沼「……事件云々っていうよりは、王子君がいなくなったことのショックが大きい
みたい」

王子「猿田……それは悪いことをしたな」

柿沼「(やっぱり、この二人はそうだよね。川堀×中尾みたいに私の妄想の産物じゃ
ないよね)」

柿沼「(せっかく美味しい組み合わせだったのに、まさか王子君が死んじゃうなん
て)」

柿沼「(でも、悲恋っぽくてそれはそれで……)」

柿沼「(って、何不謹慎なことを考えてるんだ私は……)」

王子「どうしたの柿沼さん?」

柿沼「な、何でもないよ」

王子「猿田と多々良さんが生きているのなら、とりあえず、吹奏楽部は安泰かな」

柿沼「……さっきから人の心配ばかりだね」

王子「あんなことがあったんだから、当然心配するよ」

柿沼「でも、王子君は……」

王子「今更言っても仕方ないよ。今の僕に出来るのは、皆の無事を喜ぶことだけさ」

柿沼「(性格までイケメンだなこの人)」

柿沼「でも、皆王子君がいなくなって寂しがってるよ」

王子「もしそうなっているのなら、そのことについては申し訳なく思うよ。皆に余計
な心労をかけてしまうなんて」

柿沼「王子君は寂しくないの?」

王子「もちろん寂しいよ。でも、猿田達が無事だと聞いて少し元気が出たかな」

王子「これからは、皆が無事でいられることを祈り続けるよ」

柿沼「(この人は……)」

王子「猿田に会ったら、僕のことでいつまでもくよくよしないでと伝えておいてくれ
ないかな」

柿沼「……分かった」

王子「ありがとう、柿沼さん」

柿沼「(イケメンすぎるのも考えものか)」

藤巻「……」

高林「(うっ、藤巻さんだ。この人苦手なんだよな)」

藤巻「おい」

高林「は、はい!!」

藤巻「その、何だ……お前が死んじまって残念だったよ」

高林「はあ……」

藤巻「体の方はもう大丈夫なのか?」

高林「うん、死んでからはもう発作とかもなくなったよ」

藤巻「そうか、それは良かった」

高林「(あれ?普通に心配してくれてるぞ?)」

高林「(ヤンキーっぽかったから、てっきり怖い人だと思ってたけど、ひょっとして良い人なのか?)」

高林「藤巻さんって優しいんだね」

藤巻「か、勘違いすんなよ!!私はただ、お前や和久井みたいな弱い奴等を放っておけないだけだ!!」

藤巻「強い奴等は自分で何とかするけど、弱い奴等は誰かが何とかしないといけないだろ!!」

高林「(フェアだ……)」

赤沢「……」

見崎「(赤沢さん?何で赤沢さんが来たんだろう。私と赤沢さんは十分絡んでたと思うけど……)」

赤沢「またあんたか……」

見崎「えっ、また?」

赤沢「さっき散々自慢していったじゃない。もう忘れたのか、この鳥頭……」

見崎「(さっき?……あっ、未咲と会ったのか)」

見崎「(でも、髪の色が違うのにな。それに、赤沢さんって私の眼帯の下を見たことあるよね。未咲がいたずらで眼帯をつけてたのかな?)」

見崎「(散々自慢していったって、何を言ったんだろう……)」

赤沢「……」イライラ

見崎「(赤沢さんがイライラしてるってことは、ろくでもないことを言ったんだろうな)」

見崎「(ここはまず誤解を解いて、それから何を言われたのか聞いていこう……)」

見崎「赤……」

赤沢「恒一君と一緒にいられて嬉しい?」

見崎「え?」

赤沢「耳が詰まってるの?恒一君と一緒にいられて嬉しいかって聞いてんのよ?」

見崎「質問の意味がよく……」

赤沢「ふざけんな!!」

見崎「えっ……」

赤沢「イチャイチャしてんだろ!!ヤることヤってんだろ!!さっき散々自慢しておいて何とぼけてんだ!!」

見崎「(未咲め……何を言った……)」

見崎「赤沢さん、それは私じゃなく……」

赤沢「うるさいうるさい!!私が恒一君のことをどう思ってたか、あんたももう分かってるでしょ!!それなのに、あんたは……あんたは……」

見崎「だからそれは……」

赤沢「私がどれだけ悔しかったか分かる!?あんたなんかに……あんたなんかに恒一君をとられて……」

赤沢「死人に鞭打って楽しいか!!」

見崎「私の話を……」

赤沢「何!?今度は何を自慢する気なの!?」

見崎「だから、そうじゃなくて……」

赤沢「根暗!!チビ!!ブス!!」

見崎「(駄目だ……話が通じない、というか、話せない……)」

赤沢「あの時殺しておくべきだった!!何で……何で私の方が死ななきゃいけないの
よ!!」

見崎「(どうしよう……)」

未咲「うわー大変なことになってるなー」

恒一「何を人事みたいに……君のせいでこうなってるのに……」

未咲「さすがに私も反省してるよ。ほんの出来心でやったいたずらで、ここまでひどいことになるとは思わなかった」

恒一「大体、絡みがない人同士が対面させられる現象で、何であの二人が対面させられてるのさ?」

現象「面白いから」

恒一「それをわざわざ僕達を呼び出して見せているのは?」

現象「面白いから」

恒一「悪趣味だな……」

未咲「悪党相手にそんなことを言っても無駄だよ榊原君」

現象「お前も共犯みたいなものじゃないか」

未咲「うん、そうだね」

恒一「未咲さん……」

未咲「だから、共犯者から提案♪せっかくだから榊原君もあの中に入れてみようよ。今の二人なら取り合いを始めて、いっそうカオスなことになるかも」

恒一「未咲さん!?一体何を!?」

現象「なるほど……それも面白いかもしれないな。行ってこい、榊原」

恒一「ちょっ……」

未咲「ごめんね……頼んだよ、榊原君……」ボソッ

赤沢「ここで殺してやる!!こんな訳の分からない場所でも殺すことくらい!!」

見崎「赤沢さん……お願いだから話を……」

恒一「やめろ!!」

赤沢「恒一君!?」

見崎「榊原君?」

赤沢「そうか……二人して私を笑い物にするために送られてきたのか……」

赤沢「殺す!!二人とも殺してやる!!」

恒一「落ち着くんだ赤沢さん!!」ドンッ

赤沢「離して!!離してよ!!」

恒一「さっき赤沢さんが会った見崎は見崎じゃないんだよ!!」

赤沢「そんな話信じられるか!!」

恒一「さっき赤沢さんが会った見崎の目の色を思い出して!!」

赤沢「は?両目とも赤かったわよ」

恒一「合宿の時赤沢さんが取っ組みあった見崎の目の色は!?」

赤沢「そんなの……あれ?」

赤沢「眼帯をしてある方の目は青……あれ?」

恒一「それから、髪の色はどうだった?」

赤沢「えっ、あれ?何で?あれ?」

恒一「それは、赤沢さんが会ったのは見崎の従姉妹の藤岡未咲さんで……赤沢さんに見崎達のことを話してもいい?」

見崎「いいよ。この際、仕方ないから」


赤沢「見崎さんの双子の姉妹……」

見崎「あの子はちょっといたずら好きなところがあるから。でも、今回のはやりすぎだと思う。本当にごめんなさい」

赤沢「えーと……私も取り乱して、色々とひどいことを言ってその……ごめんなさい。」

恒一「(何とか収まってくれて良かった)」

赤沢「それで……恒一君と見崎さんはもうセッ……セックスしたの?」

恒一「ぶっ!!」

見崎「してないよ」

赤沢「じゃあ、遊園地でデートして観覧車でキスしたってのは?」

見崎「観覧車は嫌いだから……」

恒一「(未咲さん最悪だ……)」

赤沢「じゃ、じゃあ……二人の関係はどこまで進んでるの?」

恒一&見崎「……」

恒一「えーと……」

見崎「合宿の時からほとんど変わってないよ」

赤沢「ふーん、そうなんだ、へー」

恒一「赤沢さん?」

赤沢「ほっとしたような、少し残念なような……」ボソッ

赤沢「見崎さん、ちょっとこっちへ来て」

見崎「何?」

赤沢「あなたは私が手に入れられなかったものを手に入れたんだから、もっと頑張りなさいよ」ヒソヒソ

見崎「……うん」ヒソヒソ

赤沢「恒一君もね」

榊原「え?」

現象「何だこれ……」

未咲「おー丸く収まったねー」

未咲「やるなー榊原君。こんなにきっちりと収拾をつけてくれるなんて」

現象「お前……最初からこうなることが分かってたな?」

未咲「えー何のことだか分かんないなー」

現象「畜生!!騙しやがったな!!お前はこれから3組の災厄を起こすたびに、死者
として送りこんでやる!!」

未咲「やれるもんならやってみなよバーカ」

恒一「あれ?ここは……学校?」

見崎「現象の空間から出られたみたい」

恒一「結果から言えば、今回の現象は良かったのかな?」

見崎「そうだね」

恒一「皆のお墓参りには定期的に行こう」

見崎「うん」

恒一「それから……」

恒一「今度の日曜日にどこかへ遊びに行かない?」


終わり

猿が気がかりで仕方なかったので何でもいいからレスして下さった方々ありがとうございます、助かりました

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