春香「もしも君が迷ったなら」 (233)

━765プロ・レッスン室━

…………

The world is all one ♪

Unity mind ♪

先生「……はいっ、今度はバッチリね。じゃあ、今日のレッスンはここまでよ」

真美「やった—!」

春香「今の最後のところ、すっごく決まってたよね♪」

響「まぁ、自分たち完璧だからなっ」

P「ははっ、そうだな」

響「あっ、プロデューサー! 今バカにしたでしょ!」

真美「これはオシオキが必要だねっ!」

P「お、おい、落ち着けって」

春香「ふふっ」

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━同・談話室━

ガチャ

春香「ただいまー」

真美「ふぃー、ちかれたー」

小鳥「お疲れ様。あれっ、プロデューサーさんは?」

響「プロデューサーなら、いぬ美の下敷きになってるぞ」

あずさ「あらあら、仲良しねぇ。ビデオに撮っておこうかしら」

真美「今日は10分コースでもうすぐ終わるから、また今度お願いね、あずさお姉ちゃん」

小鳥「ビデオと言えば、千早ちゃんからビデオレターが届いたわよ」

春香「あっ、ホントですか?」

真美「やったぁ! ピヨちゃん、早く見ようよっ」

あずさ「うふふ、慌てない慌てない。春香ちゃん達が戻ってくるまで待ってたのよ」

春香「ありがとうございます、あずささん。んー、楽しみだなぁ♪」

響「それじゃあ、さっそくスタート! っと」ピッ

————————————————————————————————

ザー……

千早「……」

千早「……」

千早「……これ、ちゃんと録画はじまってるのかしら?」

千早「……」フリフリ

————————————————————————————————

真美「千早お姉ちゃんはどうして、カメラに向かって無言で手を振ってるの?」

小鳥「手を振ったってカメラが反応してくれるわけじゃないのに」

あずさ「かわいいわねぇ、千早ちゃん」

————————————————————————————————

千早「まぁいいわ、はじめましょう」

千早「……えっと、765プロのみんな、お久しぶりです。如月千早です」

千早「こちらに着いて、二週間が経ちました」

————————————————————————————————

響「相変わらず、千早はカタいなぁ」

春香「セルフ撮影だから、緊張してるんじゃないかな?」

小鳥「でも、向こうに行っても変わってなくて、ひとまず安心したわ」

真美「変わってないも何も、二週間しか経ってないときのビデオだよ、ピヨちゃん」

————————————————————————————————

……………

千早「こちらのマネージャーはちょっと軟派だけど、プロデューサーと
   雰囲気が似てて、すぐ馴染めそうよ。あと——」

……………

千早「マンションの隣の部屋に、遠山枝里子さんって人が住んでいるの。
   なんだか他人とは思えない感じの人だし、日本人が近くにいるって
   だけで、なんだか安心するものね」

————————————————————————————————

小鳥「今のところは、うまくやっていけそうな感じね」

あずさ「一人でアメリカに行くって決まったときは、どうなることかと思ったけど」

春香「……」

響「どうした、春香?」

春香「ううん、なんでもないよ」

————————————————————————————————

千早「——っと、こんなところかしら。続きはまた今度ね。
   それじゃあみんな、お返事待ってるわ」

千早「……それと、ここからは春香だけに見てもらいらいのだけど」

————————————————————————————————

春香「私だけ?」

真美「ピヨちゃん」ガシッ

小鳥「ええ」ガシッ

春香「ちょ、二人とも!?」

真美「今のは千早お姉ちゃんのフリだよ」

小鳥「千早ちゃんも、なかなか分かってきたじゃない」

春香「は、離して! あずささん、ビデオを止めてくださいっ」ジタバタ

あずさ「ごめんなさいね、リモコンさんが迷子になっちゃったわ〜」

響「まぁ、本当に見られたくなかったらビデオを分けるだろうし、大丈夫だよ」

ガチャ

P「ひ、ひどい目にあった……」

小鳥「プロデューサーさん、早く早く!」

真美「今までどこほっつき歩いてたのさ!」

P「お前は10分前のことを覚えていないのか?」

あずさ「プロデューサーさん。今、千早ちゃんのビデオレターを見てるところなんですよ」

P「えっ、どうして待ってくれなかったんですか?」

真美「だって兄ちゃん犬臭いし、一緒に見たくないもん」

P「だからお前は10分前のことを」

春香「プ、プロデューサーさん! 助けてくださいっ!」ジタバタ

P「どうしたんだ、春香?」

響「これから千早の『春香にだけ聞いてほしい話』がはじまるんだ」

P「そうか。千早もなかなか分かってきたな」

春香「みんなヒドいっ!」

————————————————————————————————

千早「あのね、春香からもらった荷物、すごく嬉しかったわ」

千早「日用品とか、こっちだとなかなか自分にあった物を揃えられないし、とても重宝しているのよ」

千早「でもね、春香? もらった荷物の中に、あなたの下着が一枚混ざっていたわ」

千早「人の趣味をとやかく言うつもりはないけれど、流石に高校生にもなってくまさ」

————————————————————————————————

春香「わーわーわー!」

真美「んっふっふー、これはいいことを聞いたよんっ♪」

響「あんまり言いふらすなよ、真美」

あずさ「あらあら」

春香「千早ちゃん、どうして同じビデオに……」

P「たぶん、普通に停止ボタンを押してくれると思ったんだろうな」

小鳥「千早ちゃんは、フリとかそういうことはしないものね」

春香「さっきと言ってることが真逆じゃないですかっ」

真美「まぁまぁ、はるるん落ち着いて」

春香「言っとくけど、私の中の『追いかけてマーメイしてやりたい人間』ランキングの
   暫定一位は真美だからね」

真美「ご、ごめんはるるん」

響「マーメイするってなんなんだ?」

————————————————————————————————

千早「それとね、一緒に入れてもらった、春香のレシピメモだけど——」

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あずさ「……うふふ」

春香「どうしたんですか、あずささん?」

あずさ「ううん、なんでもないわ。ただ、春香ちゃんに話しかけてるときの
    千早ちゃんの顔、すごく楽しそうだなぁって」

春香「……ひ、響ちゃん。は、はやくビデオとめてっ」

響「おっけー」ピッ

小鳥「うふふ、お顔が真っ赤になっちゃってるわよ、春香ちゃん?」

春香「ちなみに二位は小鳥さんですからね」

小鳥「すみませんでした」

━春香の家━

春香「ただいまー」

春香母「お帰りなさい、春香」

春香「ねぇお母さん、ビデオカメラある? 千早ちゃんにビデオレター送りたいんだけど」

春香母「えっと、確かそっちの引き出しの一番下にあるわよ」

春香「んーと……あった! ありがとう、お母さん」

春香母「ていうか、今ならパソコンのチャッピーとかでいつでもお話できるでしょう?
    どうしてわざわざビデオレターなの?」

春香「チャット、ね。千早ちゃんはパソコン苦手だし、向こうとは時差もあるから」

春香母「あらそう」

春香「それに、なんかこういうのって楽しいしね♪ 自分で自分のビデオを撮るなんて、はじめてかも」

春香母「物好きねぇ、撮影なんていつもされてるでしょうに」

春香「いいのいいの。とにかく、ご飯の前に部屋で撮っちゃうから、うるさくしないでね」

春香母「はいはい」

バタン

春香「さて、と。何を話そうかなぁ」

春香「(なんにせよ、まずは今日のビデオの件かな)」

春香「千早ちゃん、ああいうときはビデオを2つに分けなきゃダメだよ!」

春香「そういうところを横着してるから、いつまでたっても胸が……おっと、マズいマズい」

春香「(あとは、今度の新曲のことと、876プロとのコラボユニットのことと)」

春香「(それから、それから……いっぱい話したいことがあって迷っちゃうなぁ)」

春香「……」

春香「……話したいなぁ、いっぱい」

春香「久しぶりに千早ちゃんの顔を見たら、すごく寂しくなっちゃったよ」

春香「早く会いたいなぁ、千早ちゃん……」

春香母「春香、まだなのー? ご飯冷めちゃうわよー」

春香「わわっ!?」



第一話 終わり

ちょっww棒山さんってwww
完全に(´∀`|Д・)っ|)<中の人ネタジャマイカ!!

>>16
んあー

━第二話━

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春香「ビデオレター?」

千早「ええ。どうかしら?」

春香「電話とかメールじゃダメなの?」

千早「国際電話は高いし、時差があるからなかなか話せないと思うわ」

春香「メールは?」

千早「文字だけだと、姿が見れないし声も聞けないでしょう?」

春香「うーん……でも、やっぱりもっと頻繁に連絡取りたいなぁ」

千早「もちろん、業務報告は事務所間で定期的に行うはずだし、何か緊急のときはすぐに
   連絡をちょうだい。でも、私からの連絡は基本的にはビデオレターにしたいの」

春香「どうしてそんなに、ビデオレターにこだわるの?」

千早「……毎日連絡を取り合っていたら、私はいつまでも765プロから離れられないわ」

春香「……」

千早「遊びに行くんじゃないんだし、向こうにいる間はなるべく歌だけに集中したいの」

春香「……千早ちゃんは、765プロのことが嫌いになっちゃったの?」

千早「そんなことないわ、大好きよ。765プロのことも、春香のことも」

春香「だったらどうしてっ」

千早「大好きだからこそ、自分から距離を置かないとどこまでも依存してしまうわ。
   生半可な覚悟でいたら、向こうに行ってもすぐにダメになってしまうと思うの」

春香「……」

千早「だから、春香お願い、分かってちょうだい?」

春香「千早ちゃん、私——」

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————————————————————

ピピピピッ ピピピピッ

春香「んっ……」

春香「もう朝かぁ……今日も寒いなぁ」

春香母「春香ー」

春香「はーい、起きてるよー」

春香「おフトンから出られない……よしっ、こういうときは一気に飛び起きてっ!」

ピョン

ドンガラガッシャーン

ゴキッ

━765プロ━

春香「おはようございまーす」

美希「おはよう、春香☆」

春香「あれっ、美希? いつもこんな早かったっけ?」

美希「頑張ろうって決めたからね」

春香「頑張る?」

美希「千早さんが向こうで頑張ってるから、ミキも負けないくらい頑張ろうって。
   アメリカにいる千早さんに届くくらい、キラキラしたアイドルになるって決めたの」

春香「そっか……うん、そうだねっ」

美希「だから春香も、ミキを見習うといいの」

春香「ふふっ、そうだね。私も負けないよっ」

春香「それで、美希は事務所に早く来て何をしてたの?」

小鳥「ついさっきまで、応接室で二度寝してたわ」

美希「早起きしたら、眠くなっちゃったの」

春香「一体それになんの意味が……」

P「まぁ、春香が来る時間には起きてるから、十分大きな一歩だよ」

律子「甘いですよ、プロデューサーは」

美希「律子は相変わらず、アメとムチのアメが分かってないの。
   ムチとムチばっかりの、ムチムチさんなの」

律子「律子?」

美希「……さん」

P「ムチムチさん……」

小鳥「どこ見て言ってるんですか?」

美希「プロデューサーはセクハラさんなの」

律子「……プロデューサー殿?」

P「そ、そうだ美希、せっかく早起きしたんだし、今日は早めに出発するか」

美希「りょーかいなの。善は急げばゼンゼンOKなの☆」

P「それじゃ、いってきまーす!」

バタン

律子「……まったくもうっ」

小鳥「美希ちゃん、やる気が出てきたみたいでよかったわね」

律子「美希も千早については、色々思うところがあったみたいですしね。なんにせよ、いい傾向です」

春香「それなら、もっと褒めてあげればよかったのに」

律子「私は厳しくする係、プロデューサーが甘やかす係よ」

小鳥「まるでお父さんとお母さんみたいですね」

律子「からかわないでください」

律子「というか、美希に限らず、みんなの気が引き締まってきた感じがするわね」

春香「そうですか?」

律子「ええ。雪歩なんかも、おどおどすることが以前よりだいぶ少なくなってきたし」

小鳥「真美ちゃんも真面目にレッスンに取り組むようになったって、
   春香ちゃんも横で見てて思わない?」

春香「えぇ、それは思います。でも」

律子「?」

春香「あんまりそれを認めちゃうと、千早ちゃんがいなくなったから
   事務所のみんなが良くなったのかなぁって、そんな風に思えちゃって」

小鳥「春香ちゃん……」

律子「考え過ぎよ、春香」

春香「律子さん」

律子「千早がいなくなって良かっただなんて、誰も思ってないわよ。もちろん、私もね」

小鳥「本当は今すぐ戻ってきてほしいわ。でも、千早ちゃんは自分の夢の為に飛び立ったの」

律子「だから、私たちにできるのは、千早の夢の後押しをすることと、
   千早が戻ってきたときに最高の舞台を用意しておくことよ」

春香「最高の舞台?」

律子「決まってるでしょ。日本一のアイドル事務所、765プロのスペシャルライブよ」

小鳥「日本一かぁ、もっともっと頑張らないとね」

律子「言っとくけど、ライブのセンターの座まで用意しておくことはないからね」

春香「……はいっ!」

小鳥「ところで春香ちゃん。そろそろ出ないと時間的にマズくないかしら?」

春香「あっ! マズい、遅刻しちゃうっ」バタバタ

律子「あんまり急ぐと転ぶわよ」

春香「今日はもう一日分消費したから大丈夫ですっ! それじゃ行ってきまーす!」

バタン

律子「……一日分?」

小鳥「ちょっと心配ですね、春香ちゃん」

律子「千早が向こうに行って一ヶ月ですからね。一番寂しくなる時期ですよ」

小鳥「律子さんも、今が一番寂しいですか?」

律子「小鳥さんと同じ程度には」

小鳥「じゃあ毎晩シーツを濡らしてるのね」

律子「それを言うなら『枕を濡らしてる』ですよ……。
   シーツじゃ、涙じゃなくて別の液体になっちゃうじゃないですか」

小鳥「あら、違うの?」

律子「小鳥さんと一緒にしないでください」

小鳥「まぁ冗談は置いといて」

律子「絶対冗談じゃなかったですよね」

小鳥「私は寂しいっていうより、楽しみって気持ちの方が強いわね」

律子「今以上に歌に磨きをかけた千早、確かに楽しみですね」

小鳥「千早ちゃんもそうだし、他の子たちの成長していく姿もね」

律子「ええ、もちろん」

小鳥「他の子たちと言えば、竜宮小町のみんなはどうしたんですか?
   いつもは、この時間にはいるはずなのに」

律子「ああ、あの子たちなら今、千早への返事のビデオを撮影していますよ。
   とりあえず、いる子の分だけ先にメッセージ撮っちゃおうって」

小鳥「いる子の分って、三人だけですか?」

律子「いえ、真美と貴音も一緒です。撮影は伊織に一任しました」

小鳥「また伊織ちゃんのストレスが溜まっちゃいそうですね」

律子「大丈夫ですよ、自信満々で引き受けてくれましたから」

小鳥「そうなんですか?」

律子「『今どきのアイドルは歌って踊れるだけじゃなくて、セルフプロデュース力も
   なきゃダメよ』って言ったら『このスーパーアイドル水瀬伊織ちゃんに(略)』
   みたいなこと言ってました」

小鳥「律子さんも、だいぶ伊織ちゃんのあしらい方がうまくなりましたね」

律子「あら、セルフプロデュース力が必要って話は本音ですよ?
   特に伊織は、竜宮小町のリーダーですからね」

小鳥「今考えても、大抜擢だものね」

律子「あの子は、ある程度大きな役目を任せた方が伸びますからね」

小鳥「ビデオ撮影で、また一つ伸びるといいわね」

律子「その前に亜美と真美がノビるかもしれませんけどね。伊織の逆鱗に触れて」

小鳥「律子さんはどっちがいいんですか?」

律子「どっちも、ですかね」

━公園━

伊織「キィィィィ! アンタたち、ピョンピョン飛び跳ねてないで
   さっさとカメラの枠に収まりなさいよっ!」

亜美「亜美たちの高速ステップを捉えることができるかな?」ピョンピョン

真美「んっふっふ〜、これぞ忍法・影分身!」ピョンピョン

伊織「アンタたちはもともと二人でしょうが!」

貴音「落ち着きなさい、伊織。怒っては敵の思うつぼです」

亜美「今お姫ちん、敵って言わなかった?」

伊織「じゃあ貴音も、あいつらを捕まえるのを手伝いなさいよっ!」

貴音「おなかがすいて力が出ません」

伊織「何ケロッグのCMみたいなこと言ってんのよっ!」

あずさ「あらあら、懐かしいわねぇ」

真美「真美にはなんのことだかサッパリ分からないよ」

亜美「きっと大昔のCMなんだろうね」

あずさ「伊織ちゃん、二人を捕まえたわ〜」ガシッ ガシッ

真美「あずさお姉ちゃん、ごめんなさい!」ジタバタ

亜美「もう逃げないから、オシオキだけは勘弁してください!」ジタバタ

伊織「あ、ありがとう、あすさ」

貴音「それでは気を取り直して、撮影と参りましょう」

伊織「なんでアンタが仕切ってるのよ……まぁいいわ、はじめるわよ」ピッ

ジー……

真美「やっほー、千早お姉ちゃん、元気〜?」

亜美「亜美たちはちょー元気バリバリで、もう月まで飛んでっちゃいそうな感じだよっ!」

真美「そんな真美たちの、新作創作モノマネ!」

亜美「もしもいおりんが、ピカチュウだったら〜」

伊織「な、何よそれ……」

貴音「面妖な」

あずさ「でも最近どこかで、伊織ちゃんによく似た声のピカチュウを見かけた気がするわ」

伊織「ピカチュウは実在しないでしょうが……」

最新作のやつだっけ?

真美「ピカピ〜カ〜」

亜美「おデコピカピ〜カ〜」

伊織「ボルテッカー!」ドゴッ

亜美「ピカピッ!」バターン

真美「い、いおりん、ボルテッカーはかくとうタイプの技じゃないよ」ガクガク

伊織「あら、ごめんなさい。じゃあ真美はかみなりパンチでいいわね」

真美「いいワケないよっ! お姫ちん、助けて!」

貴音「かみなりぱんち! それは雷おこしとどのような関係にあるのですかっ!?」ワクワク

真美「あずさお姉ちゃん、助けて!」

あずさ「いい絵が撮れてるわよ〜」ジー

伊織「ち、ちょっとあずさ!? 何撮ってるのよっ」

真美「な、なんとか助かった……」

あずさ「伊織ちゃんたち三人の分は、これでバッチリね」

伊織「んなわけないでしょっ。撮り直しよ、取り直し」

あずさ「あら、どうして?」

貴音「三人とも、とても楽しそうでしたよ」

伊織「で、でも、もっとちゃんとしたアイドルらしい映像を」

あずさ「うふふ、PVじゃないんだから、そんなに気を張っちゃダメよ」

貴音「千早も、事務所のみんなの普段どおりの姿を見たがっているはずでしょう」

亜美「いおりんにボルテッカーを食らうのが日常風景だったら、亜美の命がいくつあっても足りないよ」

伊織「そう思うんなら、もう少し発言に気をつけなさい」

伊織「……まぁいいわ。あずさと貴音がそう言うなら、私たちの分は
   さっきのでOKってことにしてあげる」

あずさ「ありがとう。嬉しいわ、リーダー♪」

伊織「よしてよ、今はユニットは関係ないんだから」

あずさ「でも、撮影班のリーダーでしょう?」

伊織「まぁ、そうだけど」

真美「よーし! リーダー、この調子でバンバン撮影しちゃおうYO!」

亜美「次は、あずさお姉ちゃんとお姫ちんの悩殺ポーズをパパラッチだー!」

伊織「それは私が千早に殺されるからやめときましょう」

貴音「伊織、その前に私にかみなりぱんちを食べさせてくださいな」

真美「いおりん、やっちゃいなよ」

亜美「亜美は止めないよ」

伊織「うーん、貴音にパンチするのは気が引けるわね」

真美「ひ、ヒーキだ!」

亜美「亜美にはチューチョしなかったのに! 理不尽だ! オーボーだ!」

真美「ボーボーだ! イヤらしい毛がボーボーだ!」

伊織「貴音、かみなりパンチは目で見て味わうものなのよ」ガシッ

貴音「本当ですか!?」キラキラ

真美「いおりん、落ち着いて。話せば分かる」

あずさ「貴音ちゃんのその顔、とってもステキよ〜」ジー



第二話 終わり

>>37
そうです。くぎゅピカは天使です。

>>39
>伊織「んなわけないでしょっ。撮り直しよ、取り直し」

取り直し→撮り直し

失礼しました。

━第三話━

━765プロ付近━

タッタッタッ

雪歩「はっ……はっ……はっ……」

真「雪歩、大丈夫? 少し休むかい?」

雪歩「ううん、大丈夫。ごめんね真ちゃん、私のペースに合わせてもらっちゃって」

真「いいよ、ボクのことは気にしなくて」

真「(まぁ確かに、ボクのトレーニングには全然ならないけど)」

ガツッ

雪歩「きゃぁ!?」バタンッ

真「雪歩!」

雪歩「いたたたた……」

真「大丈夫? ちょっと足見せてくれる?」

雪歩「う、うん」

真「……平気そうだね。でも、念のためちょっとここで屈伸していこう」

雪歩「うん。ごめんね」

真「ところで、雪歩?」

雪歩「なに、真ちゃん?」

真「どうして急に、一緒にランニングしたいなんて言い出したんだい?」

雪歩「私、ひんそーでちんちくりんでダメダメだから……」

真「いつも言ってるけど、そんなことないって」

雪歩「ううん、いいの真ちゃん。私のことは、私が一番分かってるから」

真「そう?」

雪歩「でも『ダメダメだから』って言ってるだけじゃ、いつまでたっても変わらないから」

真「うん」

雪歩「あの日から、765プロのみんなが変わりはじめてる。
   私もここで動き出さないと、もう二度と変わるチャンスがなくなっちゃうと思うんだ」

真「雪歩……」

雪歩「特にダンスは、この前みんなにすごく迷惑かけちゃったし……」

真「……雪歩、いいかな?」

雪歩「ううん、いいの真ちゃん。慰めてくれなくても、あれは私のせいだから。
   だから、もう失敗しないように、まずは体作りからはじめようって思ったんだ」

真「いや、そうじゃなくてね」

雪歩「?」

真「みぎ、みぎ」

雪歩「右?」

犬「わふー」

雪歩「!」

雪歩「ワ、ワンちゃんがこんな近くに……」フラッ

真「雪歩ッ!?」ガシッ

雪歩「きゅぅ……」

真「……気絶してる。しょうがないなぁ……よっと!」

真「犬がこんなに近づいても気づかないなんて、よっぽど疲れてたのかな」

真「(いや、違うか。それだけ真剣に話してたってことなんだよね、雪歩)」

犬「わふー」

真「お前も近寄り過ぎだよ、まったく」

真「……このまま事務所まで走れば、ちょうどいいトレーニングになるかな」

真「よーし、行くぞー!」ダッ

━765プロ━

ガチャ

真「ただいまー」ハァハァ

亜美「まこちん、おかえりー」

小鳥「今日はいつもより遅かったわね」

真「ええ、ちょっと色々ありまして」

真美「色々ってなーに……あ、亜美!」

亜美「どったの、真美?」

真美「ま、まこちんが、ゆきぴょんをお姫様だっこしてるYO!」

小鳥「なんですって!」ガタッ

真「マズい」

真美「しかもしかも! 異様にハァハァ言ってるよ!」

真「いや、これは、ここまで走ってきたからであって」

小鳥「さては、雪歩ちゃんを萩原組からさらってきたってワケね」

亜美「お姫様だっこのまま、ここまで連れてくるなんて、まるでドラクエ�の勇者だよ」

真美「ぴよちゃん、アレやって、アレ!」

小鳥「ゆうべはおたのしみでしたね」キリッ

真「もー、なんなんだよ! ボクはなんとも思ってないよ!」

雪歩「そんな、ひどい……」

真「雪歩!?」

亜美「あーあ、ゆきぴょん起きちゃったね」

真美「あと少しだったのに、惜しかったね、まこちん」

真「いい加減にしないと怒るよ?」

雪歩「ご、ごめん真ちゃん……」

真「いや、雪歩に言ったんじゃなくてね」

小鳥「おお まこと! やりそこねてしまうとは なにごとだ!
   しかたのない やつだな。 おまえに もう いちど きかいを あた」

真「ベギラマ!」ドスッ

小鳥「スギヤンッ!」バターン

亜美「今のは仕方ないね」

真美「真美たちは、いおりんの一件で限度ってものを学んだからね」

真「まったくもう」

雪歩「ごめんね、真ちゃん。私、ランニングの途中で気絶しちゃうなんて……」

真「今朝は仕方ないよ。犬があんなに近くにいたら、ボクだってビックリするし」

亜美「それにしても、どうしてまこちんは、お姫様だっこしたまま走ってきたの?」

真美「フツーにおんぶして走ればよかったじゃん」

真「う、言われてみれば……」

亜美「やっぱり心の中では、ゆきぴょんをお姫様だっこしたいって気持ちがあったんじゃない?」

真美「新春シャンソンってヤツだね!」

雪歩「深層心理のことかな?」

真「そ、そんなワケないだろ! 大体、ボクはお姫様だっこするより
  白馬の王子様にお姫様だっこされたいよ」

亜美「白馬の王子様って、だれのこと?」

真「誰でもないよ。そういうイメージの人ってことっ」

真美「んっふっふ〜、怪しいですなぁ」

真「……ね、ねぇ雪歩、汗かいちゃったし、シャワー浴びてこない?」

雪歩「そうだね。あっ、でもその前に今日のスケジュールだけ確認していいかな?」

真「えっと、今日の予定はっと」

雪歩「私はこれから雑誌の取材だから、シャワー浴びたらすぐ出発するね」

真「ボクは午前は衣装あわせだけで、んーと午後は……」キョロキョロ

亜美「どったの、まこちん?」

真「いや、ちょっとね」キョロキョロ

小鳥「白馬の王子様なら、春香ちゃんのドラマ撮影について行ってるわよ」

真「いえ、プロデューサーじゃなくて律子に確認したいこと……が……」

雪歩「ま、真ちゃん?」

真美「あらあら、聞きました奥さん?」

亜美「ええ、もうバッチリと」

真「いや違うんだ、これはその」

真美「いやいや、もう言い逃れはできないっしょ」

亜美「ピヨちゃん、よくやった! ごほうびに、ミキミキが冷蔵庫に入れてた
   イケイケファンシーゼリーをあたえよう」

小鳥「まぁ嬉しい。ひと仕事したあとのスイーツは格別ね」モグモグ

雪歩「それって勝手に食べちゃダメなんじゃ……」

真「もー! 無視しないで聞いてよーっ!」



第三話 終わり

━第四話━

━TV局━

——————————————————————————————————————————

アイドル「えーそれではお便りご紹介します〜、『イニシャルG』さんっ」

アイドル「えりりん、ひよっち、おはようございまーす」

春香「おはよー」

アイドル「えー、この前、吉祥寺で演劇を観に行ってまいりました」

アイドル「役者さんの表情もバッチリ見える良い席で、演技を存分に堪能してきましたよ」

春香「まー、ありがとうございますー」

アイドル「歌あり笑いありの楽しい舞台だったのですが、一つ気になったことがあります」

春香「なにー?」

アイドル「それは、アイドルの格好で役者さんが歌ってるときに」

春香「うん」

アイドル「皆さん、あいた衣装の背中には、透明なブラひも(?)が確認できるのですが」

春香「うんうん」

アイドル「一人だけ、ブラひものない役者さんがおられました」

春香「うん?」

アイドル「その方は、おっぱいがちっさいから、支え不要ということだったんでしょうか」

春香「ハハハハハ」

アイドル「中村さん、教えてください」

春香「真顔で聞かれるとイラッとする」

——————————————————————————————————————————

P「(春香のやつ、大分演技が上達してきたな)」

P「(……撮影、ちょっと押してるな。事務所に連絡しておくか)」

ガチャ

P「うっ……通路は暖房が効いてないから冷えるな。さっさと済ませるか」

プルルルル プルルルル

P「……出ない」

P「(大方、亜美と真美と遊んでるんだろうな。律子がいないとこれだからなぁ)」

P「(仕方ない、後でかけ直すか。早いとこ撮影現場に戻っ……)」

P「……くしっ!」

黒井「やれやれ。くしゃみをする時は手を当てろと、小さい頃に教えられなかったか?」

P「……!」

黒井「まったく。プロデューサーからして低俗だな、765プロは」

P「……黒井社長」

P「何の用ですか、こんなところで?」

黒井「なに、TV局に寄ったついでにイモ臭いアイドルの顔でも見ていこうかと思ってね」

P「階段なら反対側ですよ」

黒井「君は電話をかけるのに、いちいち撮影現場と別の階に移動するのか?」

P「そうすべきだったと後悔しています」

黒井「相変わらず口の減らない男だな」

P「おかげ様で」

黒井「どうだね、如月千早のいない765プロは?」

P「ご心配いただかなくても、順調ですよ。事務所のみんなも、千早自身も」

黒井「ロクに連絡も取っていないくせに、よくそんなことが言えるな?」

P「業務報告は定期的にきています。そちらこそ、憶測でものを言わないでください」

黒井「フン、出会って間もないマネージャーからの報告を鵜呑みにするとはな」

P「もう用は済みましたか? そろそろ撮影が終わるのですが」

黒井「私のジュピターに土をつけたアイドルなんだ、中途半端をやられては困るのだよ」

P「そちらが勝手に転んだだけでしょう」

黒井「……ほう?」

P「それにあの三人は、もう自分の力で立ち上がって前に進んでいます。
  自分で立ち上がれず、転んだままなのは一人だけですよ」

黒井「……言ってくれるじゃないか」

タッタッタッ

春香「プロデューサーさーん!」

P「……ん、春香?」

春香「撮影終わりましたー! 今日はすごく良かったってみんな褒めて……わわっ!」

ドンガラガッシャーン

黒井「……」

春香「いたたたた……プロデューサーさん、起こしてくださいー」

P「頼むから自分で起き上がってくれ」

春香「そんな!?」

黒井「……あまり私を失望させてくれるなよ」

コツッコツッ

春香「よいしょっと……あれ、黒井社長?」

P「……」

春香「ごめんなさいプロデューサーさん、挨拶しそびれちゃいました」

P「いや、気にしないでいいよ。挨拶みたいなものはしたからな」

春香「もしかして、下着見えてました?」

P「どこでそんなこと覚えたんだ?」

P「それよりごめんな、最後まで見てなくて」

春香「しょうがないですよ、お話があったなら。何を話してたんですか?」

P「いや、いつもどおりさ。意味のない嫌味を聞かされただけだよ」

春香「そうなんですか。相変わらずですね」

P「ああ……本当にそうだな」

春香「?」

P「ところで、今日の演技はすごく良かったな」

春香「本当ですか? ありがとうございます♪」

P「というか、ほとんど素の自分のまま話してるような感じだったよ」

春香「もー、プロデューサーさん! 私あんなに腹黒くないですよっ」

P「ははっ、悪い悪い」

愛「あっ、春香さーん!」タッタッタッ

春香「あれ、愛ちゃん?」

P「こんにちは、日高さん」

愛「プロデューサーさん、こんにちは!」

春香「どうしたの、愛ちゃん?」

愛「さっきまで上の階で、バラエティー番組の収録があったんです」

P「あぁ、確か水谷さんたちと一緒に出てる番組だっけ?」

春香「今度やよいがゲスト出演するんだよね」

愛「はい! それで、スタッフさんから『この階で春香さんが
  ドラマ撮影をしてる』って聞いたので、見にきましたっ!」

P「そうか。でも、残念だけどもう撮影は終わっちゃったんだ」

愛「えー、そうなんですかぁ」

春香「来週放送されるから、そのときに是非見てね」

愛「はい! スーパー超天使アイドル・天海春香さんの活躍、しっかり目に焼きつけます!」

P「スーパー……なんだって?」

愛「スーパー超天使アイドル・天海春香さんです!」

P「日高さんは、春香のことを自発的にそう呼んでいるのかな?」

愛「そんなわけないじゃないですか」

P「やっぱりさっきの演技は素だったんだな」

春香「そんなことないですよー」

━Pの車の中━

P「相変わらず、日高さんは元気というか、すごい勢いだったな」

春香「ふふっ、そうですね。でも、あれでもちゃんと色々考えてるんですよ?」

P「そうなのか? ってか、さらっとヒドいこと言うなぁ……」

春香「だってプロデューサーさんがそう言うから」

P「俺は『元気で勢いがある』としか言ってないぞ」

春香「プロデューサーさんのいじわる」

春香「……そういえば、プロデューサーさん」

P「どうした?」

春香「さっきの黒井社長とのお話、もしかして千早ちゃんのことですか?」

P「……どうしてそう思うんだ?」

春香「乙女の勘ってやつです」

P「そうか」

P「まぁ、そうだな。柄にもなく心配していたよ」

春香「千早ちゃんにあんなことしておいて、随分と調子のいい人ですね」

P「……」

春香「千早ちゃんがアメリカに行ったのだって」

P「春香、そのへんにしとけ」

春香「……はい」

P「それより、事務所に連絡してくれないか? さっき、しそびれちゃってな」

春香「あっ、はい。わかりました」

P「あと、時間押してるから、お昼はコンビニでもいいか?」

春香「はい。私、ローソンがいいです」ピッピッ

プルルルル

ガチャ

春香「春香です、お疲れ様で……って亜美? なんで亜美が出てるの?」

P「ん?」

春香「お姫様だっこ? 新春シャンソン? ごめん亜美、さっぱり分からないよ」

P「なんかメンドくさいことになってるな」

ギェェェェェェェ

春香「!?」ビクッ

P「どうした!?」

春香「……切れちゃいました」

P「……やっぱり、外でお昼食べて帰るか」

春香「そうしましょう」



第四話 終わり

━第五話━

━レコードショップ━

…………

律子「ありがとうございまーす」

やよい「うっうー、完売でーす!」

律子「すごいじゃない、やよい。午前中に売り切れるなんて、私のサポートはいらなかったかしら?」

やよい「そんなことないですよ。みんな律子さんを見て『新人アイドルですか?』ってすっごく喜んでましたよ」

律子「やよいのファンは、優しい人が多いのね」

やよい「はい! みんな優しくていい人ですっ!」

律子「なんにせよ、やよいのソロデビューは順調な滑り出しね」

やよい「サイン会をやった甲斐がありましたね」

律子「やらなくても十分だったかもしれないけどね。今週スケジュールぎっしりだったけど、疲れてない?」

やよい「大丈夫です! それに、こうやってファンのみんなとお話するのって、なんか楽しいかなーって」

律子「あら、感心ね」

やよい「えへへ。私、千早さんみたいに歌がうまくないから、みんなに聴いてもらえるように
    色んなことをガンバらなきゃって思うんです」

律子「そう……ねぇ、やよい?」

やよい「なんですか?」

律子「やよいも、アメリカに行ってみたい?」

やよい「はい! 千早さんにもう一ヶ月も会ってないから、ちょっと寂しいです」

律子「いや、そうじゃなくてね」

やよい「?」

律子「千早みたいに、海外留学してみたい?」

やよい「どうしてですか?」

律子「急に千早の名前が出てきたから、やよいもそういうのに興味があるのかなって」

やよい「うーん、そうだなぁ……」

律子「まぁ、そうだとしても、今すぐって話にはならないけどね。
   やよいはまだ中学生だし、何より外に出すにはまだちょっと歌唱力がお粗末だし」

やよい「律子さん、ヒドいですー。私もちょっとは上手になったんですよっ」

律子「あはは、冗談よ冗談。ごめんなさいね」

律子「まぁ、それに限らず何かあったら遠慮しないで言ってね? 先行投資は惜しまないわ」

やよい「ありがとうございます。でも、私はずっと765プロでアイドル活動ガンバりたいです」

律子「そう?」

やよい「だって、アイドルになってみんなを元気にするのが私の夢ですからっ」

律子「ふふっ、そんなのどこにいたって出来るじゃない」

やよい「みんなっていうのは、私のお母さんも、お父さんも、弟も妹もみーんなです」

やよい「私のファンもだんだん増えてきましたけど、やっぱり一番のファンは
    家族のみんなだなーって思うんです」

律子「そう」

やよい「だから、家族みんなを元気にしたいから、一生懸命アイドル活動することも
    毎日家族と楽しく過ごすことも、どっちも大事かなって」

律子「……」

やよい「律子さん?」

律子「……偉いっ!」

やよい「はわわっ!?」

律子「まだ14なのに、しっかり考えてるわね。ウチのいとこに爪のアカでも煎じて飲ませてやりたいわ」

やよい「爪のアカだなんて、なんか汚いですよ」

律子「そんなことないわ。やよいの爪のアカだったら、末端価格でグラム3万はカタいわね」

やよい「なんか伊織ちゃんみたいなこと言いますね」

律子「ふふっ。まぁ冗談はこのくらいにして、そろそろ帰るわよ」

やよい「はいっ」











律子「ところで、伊織はどういう流れでさっきのセリフを言ったのかしら?」

やよい「ごめんなさい、最近記憶があいまいで」

律子「やっぱり今週ちょっと仕事を詰め過ぎたかしら」

やよい「そうかもしれません」

律子「まぁいいわ、車に乗ってちょうだい。事務所まで寝てていいわよ」

やよい「ありがとうございまーす」

バタンッ

律子「……家族、か」

律子「千早は……どう思ってるのかしらね」

やよい「律子さーん」

律子「ああ、ごめんごめん」

バタンッ

ブロロロロ

律子「……」

律子「あなたの声も、届くといいわね」

律子「……弟さんに」

━765プロ━

ガチャ

やよい「ただいま帰りましたー!」

春香「あっ、お帰りやよい」

やよい「あれ、春香さん?」

律子「どうしたの、事務所の入り口で止まっちゃって」

P「いや、それがな……」

春香「いぬ美が事務所の真ん中で伏せたまま動かないんです」

いぬ美「ばう」

ガチャ

真「ただいまー! あれ、みんなどうしたの?」

やよい「真さん」

律子「いぬ美が事務所の真ん中で、異様な威圧感を放っているのよ」

春香「しかも、こころなしかいつもより大きく見えるんだ」

真「ははっ、気のせいだよ」

美希「ねぇ、早く中に入ろ? ミキもうノドがカラカラなの」

真「そうだね。じゃ、お先に失礼しまーす」

P「ま、真!? 油断するな、食われるぞ!」

律子「それは流石に怖がり過ぎですよ……」

春香「あれ、でもいぬ美ったら全然動かないね?」

真「あと一時間は平気だよ」

やよい「どうしてですか?」

真「いぬ美の下には、亜美と真美と小鳥さんが下敷きになっているんだ」

P「またか」

美希「三時間コースなの」

はるるんの〜やら新しい命やらのぶっ飛んでる人なんだよな?
書き方似てるし所々垣間見える…

モモノキのネタそのまんまじゃん…

亜美「ねーねーまこちん、そろそろいいんじゃない?」

真美「このままじゃ、真美たちのおムネがペチャンコになっちゃうYO!」

亜美「千早お姉ちゃんの英語がペラペラになる前に、亜美たちの方がペラペラだよー」

律子「まだまだ元気そうじゃない」ジー

P「で、今度は何があったんだ?」

真「そっ、それだけは言えませんっ」

P「?」

春香「それより、さっきから小鳥さんの声が聞こえないんですけど、大丈夫ですか?」

やよい「小鳥さん、大丈夫ですか?」

小鳥「ええ、大丈夫よ」

P「よかった」

美希「小鳥、起きてるならちゃんと会話に参加しなきゃダメってミキ思うな」

小鳥「ごめんなさいね。ちょっと考え事してて」

やよい「どんなこと考えてたんですか?」

小鳥「こうしてアイロンみたいにプレスされてたら、お肌もパリッとするかなって」

春香「プロデューサーさん。私、涙が止まりません」

P「俺もだ」

律子「ねぇ真、もう許してあげたら?」ジー

真「そうですね、やりすぎました」

真美「ふぃー、助かったー」

亜美「ありがとピヨちゃん、お手柄だYO!」

真美「あれ、どったの? 涙なんか流して」

小鳥「泣いてないもんっ」

美希「じゃあどうしてほっぺたが濡れてるの?」

小鳥「これはいぬ美ちゃんのヨダレよ」

律子「どうせなら、もっとキレイな言い訳にしてくださいよ……」ジー

真美「いやはや、それにしても長かったですなぁ」

亜美「もー体中からメス犬のニオイがプンプンだよー」

P「亜美、メス犬だなんてイヤラシイぞ」

やよい「えっ?」

亜美「メス犬のどこがイラヤシイの?」

P「あれ?」

美希「プロデューサーは、いぬ美のことをエッチな目で見てる変態さんなんだね」

春香「プロデューサーさん……」

P「い、いや、誤解だ」

律子「ふふっ。違うわよ、みんな」ジー

P「律子……」

律子「プロデューサー殿は、亜美が自分自身のことをいやらしいメス犬と呼んだと勘違いしたのよ」ジー

P「律子殿?」

亜美「わー、兄ちゃんむっつりだー! むっつりスケベー」

P「い、いや、誤解だ」

小鳥「誤解じゃないですよね」

真美「……」

P「ま、真美?」

真美「……兄ちゃんのえっち」

P「ハフゥン」バターン

律子「真美ったらやるじゃない」ジー

小鳥「懐かしいわねぇ。私たちにもあんな頃があったのね」

美希「ずるいの! ミキもエッチって言ったのに、どうして真美のときだけ倒れるの!?」

真「美希はプロデューサーをどうしたいんだい?」

小鳥「美希ちゃんには恥じらいが足りないのよ」

美希「もー! こうなったらヤケ食いしちゃうからねっ」

律子「あっコラ! 明日グラビア撮影でしょ!」ジー

パカッ

美希「……あれ?」

やよい「美希さん、どうしたんですか?」

美希「ないの」

春香「ない?」

美希「ミキが冷蔵庫に入れておいた、イケイケファンシーゼリーがないの!」

律子「なんか前もこんなことがあった気がするわね」ジー

真美「実行犯はピヨちゃんだよ」

小鳥「企画・立案は亜美ちゃんよ」

亜美「責任者は真美だよ」

真美「実行犯はピヨちゃんだよ」

小鳥「企画・立案は亜美ちゃんよ」

亜美「責任者は真美だよ」

真美「実行犯はピヨちゃんだよ」

小鳥「企画・立案は亜美ちゃんよ」

亜美「責任者は真美だよ」

やよい「はわわ、目がまわりますぅ〜」クラクラ

春香「やよい!?」

美希「これは強敵なの」

真「またいぬ美を使ったらどう?」

いぬ美「ばう」

律子「でも三人ともこのあと仕事があるから、あんまり長めのコースはダメよ」ジー

春香「さっきから思ってたんですけど、なんで律子さんずっとカメラを持ってるんですか?」

律子「これ? 千早に送るビデオを撮影してるのよ」ジー

亜美「なんですと?」

真美「りっちゃんや、それってどこから撮ってるのかな?」

律子「『真美たちのおムネがペチャンコ〜』のあたりからよ」

亜美「OKOK、りっちゃん、話し合おう」

美希「律子さん、構うことはないの」

律子「アンタこういうときだけ『さん』づけして……」ジー

真美「そんなビデオ送りつけられたら、真美たちホントにペチャンコにされちゃうYO!」

亜美「りっちゃ〜ん」

真美「りっちゃ〜ん」

律子「うーん、じゃあ今日からレッスンを真面目に頑張るっていうなら考えてもいいわ」

亜美「考えるだけじゃダメだよー!」

真美「お願いだよりっちゃん!」

小鳥「ふふっ、律子さんにかかったら二人とも形無しね」

真「あれ、小鳥さんは随分余裕ですね」

小鳥「だって私は千早ちゃんを怒らせるようなことなんて言ってないもの」

美希「でも、さっきの『アイロンみたいにプレス』発言はビデオに一生残るよ?」

小鳥「ハフゥン」バターン

やよい「小鳥さん!?」

春香「美希、わざとでしょ?」

美希「ゼリーを食べちゃったから、オシオキなの」

真「やれやれ、じゃあ小鳥さん達を応接室に運ぼっか」

春香「そうだね」

真「ボクはプロデューサーを運ぶから、みんなは小鳥さんと荷物を頼むよ」

やよい「一人で大丈夫ですか?」

真「大丈夫、今朝もやったから……よいしょっと」

春香「わぁ、すごいね真っ」

美希「カッコイイの! まるで白馬の王子様なのっ」

真「……やよい、やっぱり手伝ってくれる?」

やよい「はぇ?」

…………

春香「よいしょ、っと」

やよい「プロデューサーも小鳥さんも、大丈夫かなぁ」

真「まぁ、殴られて倒れたわけじゃないから、すぐ起きると思うよ」

美希「なんか二人を見てたら、ミキまで眠く……あふぅ」

春香「ち、ちょっと美希っ」

美希「zzz……」

やよい「もう寝てます……」

春香「まだ三時なのに、いいのかなぁ」

真「さっき一緒に行ったボイトレで今日は終わりみたいだから、いいんじゃないかな」

やよい「……ふふっ」

真「やよい?」

やよい「なんだか、私たち家族みたいだなーって」

春香「家族?」

やよい「はいっ。私、いつも弟とか妹が寝付いた後に寝るんですけど、
    美希さんたちの寝顔を見てたら、それを思い出しちゃって」

真「確かに、単なる仕事仲間だったらこんな風にスキなんて見せないよね」

春香「プロデューサーさんと小鳥さんは、スキを見せたわけじゃないと思うけど」

真「まぁ細かいことはいいじゃない」

律子「あら、いい雰囲気ね」ジー

やよい「律子さん」

律子「ちょっと一休み、って感じかしら? たまにはこんなのもいいかもね」ジー

春香「あの、私たち出ますから、応接室の外で撮りません?」

律子「いいのよ。もともと小鳥さんの分だけ映像がなかったら撮り始めたんだし」

亜美「亜美たちはとんだとばっちりを食らっちゃったワケだね」

真美「おかげで真美たちは年末まで、ムショーでレッスンを受けるハメになっちゃったよ」

律子「お金もらって受けるレッスンなんてあり得ないでしょーが」

律子「さて、じゃあみんな最後に、千早に言っとくことある?」ジー

真「えーと、この前撮った分で色々喋っちゃったからなぁ」

やよい「千早さん、今日私、ソロシングル発売記念のサイン会に行ってきましたっ!」
    千早さんみたいに、たくさんの人に歌を聴いてもらえるようガンバりまーす!」

亜美「千早お姉ちゃん! 亜美たち、今度はいおりんに負けないように
   じめんタイプに生まれ変わるよっ!」

真美「目指すはタケシのイワークだねっ! でんきなんて効かないよっ」

亜美「あれ? でもいおりんは、かくとうタイプのわざも持ってるから……」

真美「うわぁぁぁ! イワークだめじゃぁぁぁん」

律子「千早に分かる話にしなさいよ……」ジー

美希「zzz……」

律子「春香はどうする?」ジー

春香「えっと、私は一人で一本撮っちゃったからいいです」

亜美「おおっ! はるるんのソロライブビデオだねっ」

真美「人には言えないラブラブメッセージが詰まってるんだねっ」

春香「そ、そういうのじゃないよっ」

真「じゃあどんな話をしたの?」

春香「別に、普通のお話だよ。色々お話してたら、気づいたら一本使い切っちゃったんだ」

やよい「わぁ、すごいですねっ」

春香「だから、あんまり私ばっかり喋っちゃうと悪いかなって」

律子「そんなことないと思うけどね。まぁいいわ」

真「で、肝心の小鳥さんはどうするの?」

律子「ここは普段の姿を映しておくということで妥協しましょう」ジー

亜美「別にピヨちゃんはいつもお昼寝してるわけじゃないよ?」

律子「仕事をしていないという点では一緒だから問題ないわ」ジー

真美「なるほど」

真「それは別の意味で問題な気がするなぁ」

春香「……」

やよい「春香さん?」

真「春香、どうかしたの?」

春香「ううん、なんでもない」





——千早ちゃん、元気?

765プロのみんなは、元気だよ。

プロデューサーさんも、アイドルのみんなも、律子さんも、小鳥さんも。

えっと、あと社長も。

私は……



私も……



私は、元気だよ。



第五話 終わり

>>91
そうです。

>>93
分かりづらくて申し訳ございません。
この場面は、春香さんが中村先生を演じている場面なので、あえてラジオの内容をそのまま書いています。

━第六話━

千早「はー、こうして、夜風に当たっていると、疲れが溶けて、
   消えていきます。気持ちがいいですね」

「——」

千早「あ、今後の進路についてなんですけど……私、決めました」

千早「しばらく、アイドル活動、続けていこうと思います。
   まだまだ引退するには、早いかと」

「——」

千早「ただ、同じような活動を繰り返す気もありません。これを機に、
   大きな挑戦もしてみようって」

「——?」

千早「はい。……活動の場を、海外に移します。私の力、世界で通用するか
   試してみたいんです」

「——!? ……——」

千早「そう言ってもらえて、心強いです。で、でも、私ひとりでは、多分ダメで……」

千早「……断られるの、承知の上で、聞きます。プロデューサー!
   私と、来てくれませんか?」

「——!? ——?」

千早「はい! 見知らぬ土地で、成功するためには、プロデューサーの力が、
   不可欠なんです」

千早「それに、もう今の私には、プロデューサーのいない生活なんて、
   ありえないから……」

P「……千早——」

————————————————————
—————————————————
——————————————

P「……んっ」

P「……夢、か」

P「(随分と、リアルな夢だったな……)」

P「っていうか、ここは……応接室? なんでこんなところで……」

〜♪

P「……歌?」

小鳥「……始まりとお終いなんて 繋がって巡るモノ♪」

小鳥「大事なのはやめない事と 諦めない事♪」

P「小鳥さん」

小鳥「あっ、プロデューサーさん。……起こしちゃいましたか?」

P「いえ、大丈夫です。小鳥さん一人だけですか?」

小鳥「ええ。だって、もう夜の九時ですよ?」

P「え、ええっ!?」

P「俺、どのくらい寝てたんですか?」

小鳥「真美ちゃんに気絶させられたのが三時頃ですから、六時間くらいですね」

P「仮眠どころか、もはや普通の睡眠じゃないですか……。
  どうして起こしてくれなかったんですか」

小鳥「だって、プロデューサーさん、最近すごく疲れてそうだったから……。
   今もまだ、目のクマが取れてませんよ?」

P「ははっ、大丈夫ですよ。クマ、できやすいんです。俺はいつだって十分元気です」

小鳥「でも、律子さんが帰る前にいくら揺すっても、全然起きませんでしたよ?」

P「えっと、それは、真美の言葉のショックが強すぎて」

小鳥「そうなんですか」

P「はい」

小鳥「じゃあプロデューサーさんは、13歳の小娘の『えっち』発言を真に受けて
   起きられないほどのショックを受けちゃう、真性のロリコンさんなんですね」

P「ごめんなさい疲れてたせいで起きられませんでした」

小鳥「もう。そんなウソなんてつかなくていいのに」

P「すみません。みんなが頑張ってるのに、俺だけ休んでたら情けないなって思っちゃって」

小鳥「私の前では、見栄なんて張らなくても大丈夫ですよ」

P「俺にとっては、アイドルも小鳥さんも律子も同じくらい大切ですから。
  小鳥さんにだけ甘えるわけにはいきません」

小鳥「まだまだカタいですね、プロデューサーさんは」

P「そういう性格なんで」

小鳥「そうだ。ずっと寝てたから、お腹すいちゃってません?」

P「ああ、そういえばちょっと減ってきましたね」

小鳥「私の仕事もキリがいいんで、これでも食べません?」

P「これ、イケイケファンシーゼリーじゃないですか」

小鳥「私が美希ちゃんの分を食べちゃったから、お詫びに全員分を買うハメになっちゃって」

P「なに亜美と真美みたいなことしてるんですか……」

小鳥「あら、いらないんですか?」

P「いえ、ごちそうになります」

小鳥「ふふっ。じゃあ、ちょっとお茶いれてきますね」

P「すみません、色々と」

小鳥「いいんですよ。ちょっと談話室で座っててくださいね」

P「ええ」

P「……」

P「(さっきの夢、なんだったんだろうな)」

コトッ

小鳥「はい、お待ちどおさま」

P「ありがとうございます。……でも、なんかゼリーに緑茶って変な感じですね」

小鳥「雪歩ちゃんの選んでくれたお茶だから、きっとなんにでも合いますよ」

ズズッ

P「……おいしい」

小鳥「でしょ?」

P「……」

小鳥「んー、おいしいっ。ひと仕事したあとのスイーツは格別ね」

P「あの、小鳥さん」

小鳥「なんですか?」

P「さっき、夢を見たんです」

小鳥「夢、ですか」

P「ええ。……千早と話してる夢です」

小鳥「千早ちゃんとの昔の思い出、みたいな感じですか?」

P「いえ。過去の思い出ではないですね。でも、妙にリアルな夢でした」

小鳥「そうなんですか。じゃあ、もしかして正夢だったりして」

P「正夢……かなぁ」

小鳥「もしくは、プロデューサーさんの強い願望の現れかもしれませんね」

P「願望……」

夢の中での千早は、国内でトップアイドルの座をつかんだようだった。

活動の場を海外に移し、そのパートナーとして自分を選んでくれた千早。

そのどれもが、現実とは違っていた。

千早が海外に向かったのは、トップアイドルになったからではない。

むしろトップアイドルになれる歌唱力を身につけるために、海外に向かったのだ。

そして、そのパートナーとして、俺が選ばれることはなかった。



俺の願望は、千早がトップアイドルの座をつかむことなのだろうか。

それとも、千早のパートナーとして選ばれることなのだろうか。

前者なら、構わない。

両者なら、まだいい。

後者なら……。

俺は、プロデューサー失格だ。

小鳥「……さん。……サーさんっ」

P「……」

小鳥「プロデューサーさん!」

P「……」

小鳥「ロリコンさん!」

P「失礼な! 俺は年上もOKです!」

小鳥「まぁ嬉しい」

P「あ、あれ?」

小鳥「どうしたんですか、急にボーっとしちゃって」

P「いえ、なんでもないです」

小鳥「そうですか」

P「……ねぇ、小鳥さん?」

小鳥「はい」

P「千早は、どうして一人で行ってしまったんですかね」

小鳥「プロデューサーさんは、一緒に行きたかったんですか?」

P「……自分でも、分かりません」

小鳥「……そう」

P「千早はあの時、何も言わずに旅立って行きました」

小鳥「『一緒に来て』って言ってほしかったってことですか?」

P「言われてたら、それはそれで困ってたと思いますけどね。春香たちを残して行けませんし」

小鳥「行けないのに言ってほしいだなんて、そんなのワガママですよ」

P「男ですから」

小鳥「私から見たら、まだ男の子ですね」

P「厳しいなぁ」

P「ただ、あの時の自分は、千早からそう言われるだけの信頼を
  得られていなかったのかなぁって」

小鳥「……」

P「俺は千早に、今まで何かしてあげられたのか。
  俺が千早と過ごした時間に、意味があったのか、って」

小鳥「意味なんて、後からついてくるものですよ」

P「小鳥さん?」

小鳥「今までやってきたことの意味や答えは、千早ちゃんが帰ってきたときに分かります。
   今は千早ちゃんを心から信じて、私たちにできることをするだけです」

P「強いですね、小鳥さんは」

小鳥「女ですから。甘えてもいいんですよ?」

P「じゃあ、ちょっとだけ甘えちゃおうかな」

小鳥「ええ、どうぞ」

P「さっきの歌、聴かせてもらえませんか?」

小鳥「歌、ですか?」

P「はい、さっき仕事しながら口ずさんでた歌です。誰の歌か分からないけど、すごく優しい歌でした」

小鳥「……ヒドいなぁ、プロデューサーさん」

P「えっ?」

小鳥「さっきの歌、私のアイドルデビュー曲ですよ?」

P「えっ! す、すみません、全然気づきませんでした……」

小鳥「ふふっ、別に怒ってないですよ。それじゃあご要望にお応えして、
   音無小鳥の数年ぶりのソロライブ、張り切っていっちゃいます!」

P「いよっ! 小鳥さんじゅうななさい!」パチパチ

小鳥「正座」

P「はい」

小鳥「私がいいって言うまで、正座を崩しちゃダメですからね」

P「崩したらどうなるんです?」

小鳥「プロデューサーさんが、やよいちゃんの妹のかすみちゃん狙いだということを
   事務所のみんなにバラします!」

P「狙ってませんよ!……まぁいいです。それなら、この体勢のまま微動だにしませんから」

小鳥「よろしい。……って、プロデューサーさん?」

P「なんですか?」

小鳥「ち、ちょっと近すぎませんか?」

P「この体勢のまま微動だにしません」

小鳥「……もうっ、ホントに変なトコロで子供っぽいんだから」

P「後ろに下がっちゃダメですよ」

小鳥「困ったなぁ。S席はお高いですよ?」

P「おいくらなんです?」

小鳥「今度、飲みに行きましょう。もちろんオゴリで」

P「二人きりで、ですか?」

小鳥「それはお任せします」

P「……こりゃ高くついたなぁ」

小鳥「ふふっ。それだけの価値のあるライブにしてみせますよ」

————————————————————————————————

小鳥「空になりたい 自由な空へ♪」

小鳥「翼なくて翔べるから 素敵ね♪」

…………

小鳥「始まりとお終いなんて 繋がって巡るモノ♪」

小鳥「大事なのはやめない事と 諦めない事♪」

————————————————————————————————



小鳥さんの歌声が、静かに優しく部屋中を包み込む。

たったひとりの観客のためのソロライブで

彼女は今までのどの瞬間よりも輝いていた。

現役時代の彼女を見てきたわけじゃないけれど、強く確信できた。

そう確信するのに十分過ぎるほど、彼女の歌に激しく心を揺さぶられた。

————————————————————————————————

小鳥「意味や答えと言うのは 後からついてくるモノ♪」

小鳥「必要なのはたったひとつ その心だけさ♪」

…………

小鳥「一日ずつ 一歩ずつ♪」

小鳥「きっかけは何だって大丈夫 続くレインボー♪」

————————————————————————————————



今まで、彼女の歌以上に心を揺さぶられることはなかった。

それは、彼女と、春香や千早たちとの間に

歌手としての、アイドルとしての力の差があるからではない。

自分はいつしか、こんな風に素直に歌を聴くことがなくなっていた。

音が外れてないか? 振り付けはちゃんと覚えたか? 観客へのアピールもしっかりな。

そんなことばかり考えながら、アイドルたちの歌を聴いていた。

P「(……そうだよな)」

P「(アイドルたちをトップに導くとか、パートナーとして支えるとか)」

P「(そういうことよりも、何よりも大切なのは)」

P「(アイドルたちの、一番のファンであることなんだよな)」

P「(そんな簡単な、そんな大事なことを、俺は今まで忘れてたんだな)」

小鳥「笑っていいよ 泣いていいよ♪」

小鳥「だって巡ってまた春は来るから 繋ぐレインボー♪」



小鳥「……はいっ、おしまいっ。いかがでしたか、プロデューサーさん?」

P「さっきの小鳥さんの言葉、この歌のフレーズだったんですね」

小鳥「もうっ、プロデューサーさんったら! そうじゃないでしょっ」

P「あははっ、すみません。……すごく、よかったです。ありがとうございます」

小鳥「どういたしまして。……あれ、プロデューサーさん?」

P「はい?」

小鳥「どうして、泣いてるんですか?」

P「な、泣いてませんっ」

小鳥「じゃあなんで顔伏せちゃうんですかっ。こっち向いてくださいよ」

P「ダメです! それより、そろそろ仕事に戻りません?」

小鳥「まだいいって言ってないから、正座崩しちゃダメですよ」

P「イジワルしないでくださいっ」

小鳥「うふふ、だって女ですから」

ガチャ

社長「ただいまー! いやー、接待で飲みに行ったはいいが、定期を
   事務所に忘れてしまってね。まったく、歳は取りたくないも……」

P「……」

小鳥「……」

社長「……」

社長「(深夜の事務所、二人きりのプロデューサー君と音無君)」



社長「(事務所の真ん中で向かい合い、何故か片方は正座)」



社長「(よく見ると、スカートの中が覗けそうなアングル)」



社長「(しかもプロデューサー君は不自然に前かがみ)」



社長「(そして、何故か上気して息が荒い音無君)」







社長「(合体!)」ピコーン

社長「ご、ごゆっくり……」

小鳥「ま、待ってください社長! 違うんですこれは!」ダッ

P「待ってください! 聞いて、話を聞いてください!」ダッ

小鳥「あっ、プロデューサーさん! いいって言ってないのに立っちゃダメですよ!」

P「そんなこと言ってる場合ですかっ!」

小鳥「しゃちょー! 聞いてください、プロデューサーさんは
   かすみちゃんを狙ってるペドフィリアなんです!」

P「だから狙ってませんって! そっちこそ、流れにかこつけて年下の俺を
  デートに誘ったくせにっ! しかも全オゴリで!」

小鳥「あら、二人きりなんて私は一言も言ってませんよ?」

P「ぐっ……」

小鳥「オホホ、お姉さんに勝とうなんて十年早くってよ!」

P「じゃあ今度の飲み、俺と小鳥さんと社長と善澤さんの四人でセッティングしておきますね」

小鳥「ちょ、それは……」

社長「あー、キミたち、夜中なんだからもう少し静かにだね……」

P・小鳥「社長はだまってて!」

社長「うう、ひどい〜」





…………

色々と言いたいことはあるけれど

とりあえず、一つだけ。

小鳥さん。

俺から見たら、あなたもまだ女の子です。



第六話 終わり

━第七話━

━アメリカ某所━

千早「……」テクテク

A「ハーイ、チハヤ!」

千早「あら、アマンダ。おはよう」

A「今日もいい天気でサイコーね。調子はどうかしら?」ボインボイン

千早「……くっ」

A「cook?」

千早「いえ、なんでもないわ」



彼女はアマンダ。

アーティストとしてデビューを目指して

ここで私とともに日夜レッスンに励んでいる。

ちなみに私は彼女のことをホルスタインと呼んでいる。

他意はない。

千早「……」テクテク

B「チハヤ—!」タッタッタッ

千早「今日も元気ね、ボニー」

B「ええ、私はいつだって元気いっぱいよ。あなたはどう?」ボヨヨンボヨヨン

千早「……くっ」

B「cook?」

千早「いえ、cool って言ったのよ」

B「まぁ嬉しい! あなたも so cool よ!」



彼女はボニー。

アーティストとしてデビューを目指して

ここで私とともに日夜レッスンに励んでいる。

ちなみに私は彼女のこともホルスタインと呼んでいる。

他意はまったくない。

千早「……」テクテク

C「チーハーヤー」ドスドスドス

千早「おはよう、クラウディア」

C「ハァハァ、階段を上りきった後のスムージーは格別ね。あなたもどう?」ゴクゴク

千早「いえ、私は遠慮しておくわ」

C「そう? ちゃんと栄養取らないと、私みたいに胸が大きくならないわよ?」バヒンバヒン

千早「……くっ」

C「cook?」

千早「いえ、fuck って言ったのよ」

C「それは穏やかじゃないわね」

千早「大丈夫、fucking great って意味だから」

C「あらそう? ならいいけど」



彼女はクラウディア。

アーティストとしてデビューを目指して

ここで私とともに日夜レッスンに励んでいる。

アーティスト?

おそらくオペラ歌手か何かだろう。

ちなみに私は彼女のことを不浄王キュクレインと呼んでいる。

他意はない。

多分ないと思う。

ないんじゃないかな。

まぁ、なんでも、いいですけれど。

━レッスン室━

ガチャ

千早「……ふぅ」

マネージャー「おや、どうしたんだいチハヤ? ため息なんかついて」

千早「いえ、なんでもないです」

マネ「そうかい。ところで、良いニュースと悪いニュースが
   あるんだ。どっちから聞きたい?」

千早「じゃあ、悪い方からお願いします」

マネ「キミがアメリカに来てそろそろ一ヶ月だけど、なかなか英語の
   発音がよくならないね。まるで日本のプレジデントみたいだよ」

千早「そうですか」

マネ「相変わらず淡泊だなぁ」

千早「会話なんて、意思の疎通ができれば十分なので」

マネ「こう見えて、ボクはなかなかキミとのコミュニケーションに苦慮してるんだがね」

千早「あなたはフランク過ぎるんです。もっと……」

マネ「765プロのダーリンを見習ってください、かな?」

千早「な、ダ、ダーリンじゃありませんっ!」

マネ「そうそう、そんな感じ。言葉はもっと感情的に、抑揚をつけて発しないとね?」

千早「……それで、良いニュースというのは?」

マネ「歌の発音と日常会話の発音はベツモノの様だね。先週の課題曲、サイコ—だったよ。
   もちろん、歌そのものの質も含めて、ね」

千早「ありがとうございます」

マネ「ああもう、淡泊だなぁ」

マネ「ボクたちとの会話も、歌うときのように心をこめて話してくれると助かるよ」

千早「私にとって、歌は特別ですから」

マネ「しかし、そう生真面目過ぎるとオーディションで苦労するよ?」

千早「そういうときの為に、マネージャーがいるのでは?」

マネ「ははっ、違いないね。こりゃ、来週は頑張らないとなぁ」

千早「ふふっ、頑張ってください」

千早「……」

千早「……」

千早「今、なんと?」

マネ「来週は頑張らないとなぁ、って言ったんだよ?」

千早「来週、何かあるんですか?」

マネ「だから、チハヤの初オーディションが」

千早「えっ、ええっ!? だって、私は歌のトレーニングの為にここに来たのに……」

マネ「ああ。でも、短期間で効果を狙うなら実戦が一番だよ」

千早「しかし、いくらなんでも急過ぎますよっ」

マネ「先週のキミの歌を聴いて思いついたからね。キミの歌のデキが良すぎたのさ。
   まぁ、キミがまだ自信がないって言うなら、今回は見送るけど?」

私はカチンと来た。

急なオーディションに対してではなく

私に、断る気がサラサラないことを分かっていて

あえてこういう言い方をしてくるマネージャーに対して。

そして

「こういうとき、プロデューサーなら——」

その言葉が脳裏をかすめた、自分自身に対して。

千早「もちろん受けます。受けて、結果を出してみせます」

マネ「OK! じゃあ、さっそく今日のレッスンといこうか」

千早「はい。では、邪魔なのでレッスン室から出てください」

マネ「もっとこう、別れを惜しむ素振りとかはないのかい?」

千早「一秒でも時間が惜しいですから。誰かさんのせいで、
   オーディションまで時間がないので」

マネ「厳しいなぁ。それじゃコーチ、よろしく頼みますね」

バタン

コーチ「それじゃ、はじめましょうチハヤ」

千早「はい」

千早「……」スゥ

千早「〜♪」

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━一方、その頃日本では━

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やよい「——それで、そのとき春香さんが……」

愛「や、やよいさん! ダメです!」

やよい「えっ?」

愛「春香さんのことは、スーパー超天使アイドル・天海春香さんって
  呼ばないといけないんです!」

絵理「スーパー……なに?」

愛「スーパー超天使アイドル・天海春香さんです!
 ちゃんと呼ばないと、マーメイされちゃいます!」

涼「愛ちゃん、落ち着いて。何を言ってるかさっぱり分からないよ」

愛「マーメイ、マーメイ……」ガクガク

亜美「愛ぴょん、大丈夫? マーメイってなんなの?」

絵理「とりあえず、CM?」

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━765プロ━

伊織「やよい、これって生放送じゃないわよね?」

やよい「うん。だって、私ここにいるし」

響「どうしてカットしなかったんだろうな」

P「まぁ、コラボユニットの宣伝になってるから、いいんじゃないか?」

春香「よくないですよっ!」

響「ところで春香、マーメイって一体なんなんだ?」

春香「うーん、口で説明するのは難しいかな」

P「今度、小鳥さんにでもやってみてくれ」

小鳥「そういうことは本人のいる前で言わないでください」

伊織「本人の前じゃなければいいの?」

小鳥「みんながいじめるわっ」

やよい「よしよし」

伊織「でもどうしてこの番組、やよいと亜美と一緒に春香が出てないの?」

やよい「愛ちゃん、すっごく残念がってましたよ」

P「ホッしてたんじゃなくてか?」

春香「もうっ、プロデューサーさんっ!」

響「春香は最近、ドラマの方が忙しくなってきたからなぁ」

小鳥「まぁそもそも、876プロとのコラボ自体が社長の急な思いつきだからね」

社長「はっはっ、心配しなくてもプロジェクトは無理なく進めるつもりだよ」

小鳥「あ、あら、社長?」

P「いつの間に……」

社長「あれ以来、音を立てずにドアを開けるよう心がけていてね」

響「あれ以来?」

やよい「あれってなんですかー?」

社長「うむ、あれは一週間以上前のことだったかな……」

小鳥「」バシャッ

社長「アヒィィィィィンッ!」

小鳥「あら、すみません。 ついうっかりわざとお茶をこぼしちゃいました」

P「ヤケドしたら大変です! 服を脱がしますので、応接室に行きましょう!」

社長「ま、待ちたまえ! 私にはまだそんな趣味は……」

ズルズル

バタンッ

春香「……まだ?」

伊織「深く考えちゃダメよ」

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涼「——というわけで、765プロと876プロのコラボユニット第一弾は」

愛「来年1月にCDリリースでーす! 皆さん、ぜひ聴いてくださいねー!」

絵理「私たちは、リストラ?」

涼「縁起でもないこと言わないでよ、絵理ちゃんっ。
  ちゃんと第二弾以降もありますから、ファンの皆さん、心配しないでくださいね」

絵理「第一弾がコケなければね」

涼「ちょ、だから」

亜美「んっふっふ〜。今のは、はるるんがよく転ぶこととカケたブラックジョークだねっ」

愛「そうだっ! ユニット名は、『スーパー超天使アイドル・天海春香さんと
  愉快な仲間たち』にしましょうっ!」

亜美「えー、どうせなら『スーパー超天使アイドル・天海春香とあわれなげぼくたち』
   の方がはるるんっぽくていいよー!」

やよい「か、勝手にユニット名変えちゃダメなんじゃ……」

涼「ていうか、下僕たちって」

絵理「CD買わないと、春香さんにマーメイされちゃう?」

愛「マーメイ、マーメイ……」ガクガク

涼「ああっ、また発作が!」

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伊織「なんかもう、春香の扱いがこれ以上ないってくらいヒドいわね」

春香「とりあえず、亜美は今度会ったらジワジワとなぶりマーメイしてやらないとね」

やよい「なんかフリーザさまみたいなこと言いますね」

響「だからマーメイって一体なんなんだ?」

小鳥「『なぶり』って単語が頭についてる時点で、楽しいことじゃないのは分かるわ」

春香「(あっ。そういえば、明日は久々に愛ちゃんたちと合同レッスンだっけ)」

春香「(今度の曲のメインボーカルは私だし、頑張らないとねっ)」

春香「……ふふっ」

響「うん?」

伊織「どうしたのよ、急に笑い出して」

春香「ううん、楽しみだなぁって」

やよい「亜美をジワジワとなぶりマーメイするのが、ですか?」

響「ピヨ子。マーメイってのは、楽しいことじゃないんじゃなかったのか?」

小鳥「春香ちゃんにとっては楽しいお遊戯なのよ、きっと」

やよい「うぅー、恐ろしいですー……」

春香「違いますっ!」

春香「そうじゃなくて、明日久々に愛ちゃんたちと
   歌のレッスンがあるから楽しみだなぁって言ったんだよ」

伊織「あぁ、そういうことね」

響「そういや、自分と春香と真美のユニットも、最近はシングル出してないしな」

小鳥「みんなソロ活動が忙しくなってきたしね」

やよい「春香さんは歌のお仕事が一番好きなんですか?」

春香「うーん、みんな好きだけどね。でも、千早ちゃんとデュオで
   動いてた時は歌の仕事ばっかりだったし、やっぱり思い入れはあるかな」

伊織「あの頃の千早、歌以外の仕事はなかなかやりたがらなかったからね」

響「千早かぁ、今頃何してるのかな」

伊織「そろそろ、この前送ったビデオレターが届いてる頃じゃない?」

小鳥「そうね。確かあの日に送ったから、今日あたり届いてるかも」

やよい「あの日ってなんですかー?」

春香「もしかして、さっき社長が言いかけたのと同じ日ですか?」

小鳥「しまった」

響「ねぇねぇ、何があったか教えてよー」

伊織「教えないと、春香がマーメイするわよ。にひひっ」

小鳥「心優しいスーパー超天使アイドル・天海春香ちゃんはそんなことしないわよね?」

春香「今思い出したんですけど、私の中の『追いかけてマーメイしてやりたい人間』
   ランキングの二位は小鳥さんですよ」

小鳥「えっ、亜美ちゃんは?」

春香「亜美が一位で、三位が真美です」

小鳥「私、真美ちゃんを追い抜いちゃったの?」

春香「追い抜いちゃいました」

伊織「さぁさぁ、キリキリ吐いちゃいなさい」

小鳥「えーと、その……この前、プロデューサーさんと
   夜の事務所で二人きりになってね」

春香「えっ?」

響「そ、それってもしかして、イヤラシイ話なのかっ!?」

伊織「……」

小鳥「ううん、違うの。プロデューサーさんのストライクゾーンは
   やよいちゃんの妹のかすみちゃんだって話よ」

やよい「」

春香「……」

響「……ピヨ子」

小鳥「……ごめん」

━応接室━

P「——申し訳ございませんでした、社長」フキフキ

社長「いや、私も口が軽かったよ。こちらこそ、すまなかったね」

P「いえ、そんなことは……」

社長「ところで、音無君とはその後どうなのかね?」

P「……ですから、彼女とは決してそのような間柄では」

社長「うーむ、そうなのかね?」

社長「しかし、下世話な話かもしれんが、
   キミたちがくっついてくれると私は安心なのだがね」

P「ご心配なさらなくても、小鳥さんならそのうちいい人を見つけますよ」

社長「音無君もそうだが、むしろ心配なのはキミの方だよ」

P「俺……ですか?」

社長「最近、特に如月君が向こうに行ってからのキミは、
   少しばかり仕事に熱が入り過ぎている気がしてね」

P「……」

社長「もちろん仕事熱心なのは大変結構なのだがね。ただ、今のような仕事の
   やり方ではいずれ体を壊してしまうよ。……さらに言えば、今のキミは
   むしろそれを望んでいる風にさえ見える」

社長「だから、奥さんとまではいかなくても、彼女の一人でもできれば
   もう少し自分の体を大事にするようになってくれるかと思ってね」

P「それに、アイドルに悪い虫がつくのも防げますしね」

社長「はっはっは! 大丈夫、それについてはまったく心配してないよ」

P「そんな。俺だって、男ですよ」

社長「誰か一人になんて絞れないくらい、ウチのアイドルはみんな魅力的だろう?」

P「ハーレムはダメなんですか?」

社長「日本中の男性を敵に回す覚悟があるなら、構わんよ」

P「それだけならいいんですが、アイドルたちも敵に回すことになりそうなのでやめておきます」

社長「うむ、それが賢明だろうね」

P「……社長」

社長「うむ?」

P「お気遣い、ありがとうございます」

社長「いやいや、気にしないでくれたまえ」

P「ちょっと前までは、社長の仰るとおりでした」

P「自分は本当にアイドルたちをトップに導くことができるのか。できないなら
  ここにいる意味がない。結果を出せないまま『プロデューサー』を名乗り続ける
  くらいなら、いっそ壊れてしまった方がマシだ。……そんな風に考えていました」

社長「……」

P「でもこの前小鳥さんと一緒にいた夜に、そんな考えは吹き飛びました。
  小鳥さんに、もっと大切なことを教わりましたから。だから……今は、大丈夫です」

社長「そうか。それは何よりだ」

P「はい」

社長「……」

社長「……」

社長「……」

社長「ということは、やっぱりキミと音無君は付き合っているんだね?」

P「えっ?」

P「いやいやいや! どうしてそうなるんですか!」

社長「いや、今までの流れとキミの発言を自然に解釈すれば、そうなるんだがね」

P「ち、違いますっ! 彼女は大切な仲間ですけど、そういう関係では……」

社長「そうか。まぁそれなら、そういうことにしておこう」

P「……」ホッ

社長「ではせめて、この前キミたちがしていたプレイの名前を教えてもらえないか?
   どちらが攻めか受けかもわからなくて、このままでは不眠症になってしまいそうだよ」

P「攻めも受けもありませんっ!」

社長「はっはっはっ、冗談だよ、冗談」

P「……そ、そろそろ仕事に戻ります。失礼します」

社長「あー、そうだ。最後に一つだけ、いいかな?」

P「……はい」

社長「音無君のパンツの色は何い……」

P「」バシャッ

社長「アヒィィィィィンッ!」

P「失礼します」

バタン

P「まったく……」

P「(確かに覗こうと思えば覗けたけれど)」

P「(あの時はそんな気分にならなかった)」

P「(なんというか、そんな事を考えることすら憚られるような)」

P「(厳かな……神聖ささえ感じられるような雰囲気だったんだ)」

P「……」

P「……」

P「……」





P「やっぱり覗いとけばよかった……」ズーン

律子「何をですか?」

P「はぅぁ!?」ビクッ

P「り、律子!? いつの間に……」

律子「少し前に、あずささんと貴音と帰ってきたんです」

あずさ「……あの、プロデューサーさん?」

P「なんです?」

あずさ「覗きは犯罪ですよ?」

P「な、なんですかいきなり!?」

律子「だって、『覗いとけばよかった』って」

P「いや、違うんだ。えーと、のぞくってのは『除外する』の方だよ」

貴音「なるほど、そういうことでしたか」

P「それなら、問題ないだろ?」

律子「確かに無駄な脂肪を除いた身体は美しいですもんね」

P「あぁ、そうそう」

律子「第二次性徴を迎える前の小学生女の子なんて、最高ですよね」

P「あぁ、そうそう。無駄な脂肪のないスラっとした……ってあれ?」

律子「1、1、0……」ピッピッ

P「ちょ、ちょっと待って!」

律子「119番の方がいいですか?」

P「救急車!? 俺はビョーキじゃないよっ!」

律子「いえ、消防車の方です。ホースで水でもかけてもらえば、
   頭が冷えて少しはマトモになるかと」

P「律子、今は12月だよ?」

律子「ええ、今年も残すところあと半月です。一年って早いですね」

P「そうじゃなくて、真冬に冷水なんて浴びたら死んじゃうよ?」

律子「じゃあ霊柩車も呼んでおきましょう」ピッピッ

貴音「まぁ! はたらくくるまが大集結ですねっ!」ワクワク

あずさ「おそらにたましい おとどけ れいきゅうしゃ〜♪」

P「不吉な歌を歌うのはやめてくださいっ!」

あずさ「うふふ、ごめんなさい」

P「まったく……。ホントそういうのじゃないですから。
  さっきのは、律子につい相槌を打っちゃっただけです」

貴音「本当ですか?」

P「ああ。大体、なんで律子はさっきあんな事言ったんだ?」

律子「あぁ、それなんですけどね」

P「うん」

律子「さっき小鳥さんたちがそっちで、プロデューサーは
   ペドフィリアだって言ってたので、それを確かめようと思いまして」

P「」

タッタッタッ

P「こ、小鳥さん!」

小鳥「あら、プロデューサーさん」

響「きたぞ、みんな……」

伊織「やよい、目を合わせちゃダメよ」

やよい「うぅー、恐ろしいですー……」

P「待ってくれ! 話を、話を聞いてくれ!」

P「かすみちゃんがどーのこーのってのは、小鳥さんが勝手に言っただけでしょ!
  俺はそんなこと、一言も言ってないですよ!」

小鳥「あら、そうでしたっけ?」

P「しっかりしてくださいよ……まだモーロクするような歳じゃないんですから」

小鳥「……」カチン

小鳥「そうですね、プロデューサーさんは真美ちゃんがストライクど真ん中ですもんね」

響「うわぁ」

律子「えーと、そうなるとペドじゃなくてロリコンになるのかしら」

貴音「れべるあっぷですね、あなた様」

伊織「ま、真美なんてまだ13歳じゃない! このロリコン! 変態! 犯罪者!」

P「お、落ち着け! ロリコンは犯罪じゃな……ってそうじゃなくて!」

貴音「どうして急に伊織は怒り出したのでしょうか?」

あずさ「かすみちゃん狙いって言うとまだ冗談っぽかったけど
    真美ちゃん狙いって言うとリアルさがぐんと上がるからだと思うわ」

やよい「(伊織ちゃんと真美って、2つしか違わないんだけどなぁ)」

響「春香、さっきから黙ったままだけど、どうしたんだ?」

春香「いま、頭の中でランキングを更新してるんだ」

小鳥「まぁステキ」

律子「初登場一位も夢じゃないかもしれませんね、プロデューサー殿」

P「俺はまだ死にたくないよ?」

春香「そんな物騒なことじゃないですよ?」

P「それなら俺も言わせてもらいますけどね」

小鳥「なんですか?」

P「小鳥さんこの前、『やよいちゃん家の長介君って、つぶらな瞳が
  とってもキュートだわ!』って俺に熱弁してましたよね」

貴音「小鳥嬢も、ろりこんだったのですね」

小鳥「甘いわね、貴音ちゃん。こういうのは、ロリコンじゃなくてショタコン
   って言うのよ。そもそもショタコンというのは金田正太郎という……」

律子「1、1、9……」ピッピッ

小鳥「ま、待って律子さん! 私は別にショタコンの説明をしてただけで
   私自身がショタコンというわけでは……。というかなんで救急車を?」

P「小鳥さん、消防車ですよ」

小鳥「消防車!?」

やよい「ねぇ伊織ちゃん。私、引っ越した方がいいかなぁ」

伊織「そうね。新しい住所、事務所に教えちゃダメよ」

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━アメリカ・千早のマンション━

カチャ

千早「……ふぅ」

千早「(今日の出来は、なかなかだったわね)」

千早「(今までも十分やる気を出していたつもりだけど、やっぱり
   差し迫った目標があると気が引き締まるものなのかしら)」

千早「さてと……明日はオフだし」

千早「事務所に届いた『これ』でも見ましょう」

千早「えっと、ビデオカメラとテレビをケーブルで繋いで……と」

千早「よしっ。あとはスイッチを押すだけね」

ピッ

千早「……」ワクワク

ザー……

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美希「響〜、ちゃんと撮れてる?」

響「おー、撮れてるぞー」ジー

美希「やっほー、ミキだよ☆ 千早さん、元気?」

美希「ミキはとっても元気なの。デコちゃんは?」

伊織「だからそのアダ名やめなさいって言ってるでしょっ!」

響「というわけで、伊織も元気だぞー。もちろん、自分もな!」ジー

—————————————————————————————————————

千早「あら、美希と水瀬さんと我那覇さんなんて、珍しい組み合わせね」

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美希「ミキね、この前学校で、百人一首のお勉強をしたの」

美希「それでね、こんなお歌を習ったの」

伊織「いきなり何の話よ……。」

美希「『ちはやふる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは』」

響「おー、ちゃんと覚えてるんだな」ジー

美希「うん。でもね、このお歌、ミキ的には全然ダメってカンジなの」

美希「ミキね、どうせなら千早さんじゃなくておにぎりが降ってくればいいのにって思うな」

美希「だって、千早さんがいっぱい降ってきたら、怒られてばっかりでストレス
   溜まっちゃうもん。ミキ、おデコがデコちゃんになっちゃうの」

伊織「アンタそのへんにしときなさいよ」

響「ていうか、『ちはやふる』ってそういう意味じゃないぞ」ジー

—————————————————————————————————————

千早「おデコがデコちゃん……」クスクス

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美希「それにね、ミキにとって千早さんは一人だけだから、他の千早さんはいらないの」

伊織「誰だってそうでしょうが……」

美希「ミキ、デコちゃんがいっぱいいたら嬉しいよ?」

響「おっ、ダイタン発言だな!」ジー

伊織「バ、バカ言ってんじゃないわよっ!」

美希「だって暗い夜道はピカピカのおデコが役に立つからね」

伊織「ピガァァァァァ!」ビリビリ

美希「ギエピー!」ビリビリ

—————————————————————————————————————

千早「すごいわ水瀬さん。ついに魅力ビームを撃てるようになったのね」

—————————————————————————————————————

響「というわけで、美希が何を言いたかったかというと」ジー

伊織「響、何か喋るならカメラ代わるわよ」

響「おっ、サンキュー」

伊織「それじゃ、続けて。美希が何を言いたかったかというと?」ジー

響「美希のことを叱ってくれる千早も、誰よりも真剣に歌に取り組んでる千早も」

響「一人しかいない、千早の代わりなんていない、ってことで」

響「だから、早くレベルアップして帰ってくるのを待ってるよ、ってことだぞ」

伊織「さっきのコントをどう解釈すればそうなるの?」ジー

響「付き合い長いからな。美希の言わんとしてることは大体分かるぞ」

伊織「私にはサッパリ分からないわ。ジェネレーションギャップってヤツね」ジー

響「いや、同い年でしょ……」

—————————————————————————————————————

千早「……」

千早「(代わりなんていない、か……)」

ザー……

千早「あら、場面が変わるのかしら」

—————————————————————————————————————

雪歩「えっと、千早ちゃん、元気かな? 私のことなんて、もう覚えてないよね……?」

真「いや、覚えてるに決まってるでしょ……」

亜美「ゆきぴょんは心配症ですなぁ」

真美「むしろまこちんの方が、千早お姉ちゃんのことを忘れてたりして」

真「そ、そんなわけないだろっ!」

小鳥「そんなに動揺しなくていいのに」

—————————————————————————————————————

千早「ふふっ。萩原さんったら、相変わらずね」

—————————————————————————————————————

真「ねぇ千早。最近、雪歩もボクと一緒に朝のランニングを始めたんだよ」

亜美「えっ、そうなの?」

真美「最近朝すっごく寒いのに、すごいねゆきぴょん!」

雪歩「そ、そんなことないよぉ。まだお腹だってプニプニしてるし……」

小鳥「まぁステキ」ジー

亜美「またピヨちゃんのよくないスイッチが入っちゃった」

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千早「私のお腹はプニプニ……じゃないわね……」サワサワ

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小鳥「ねぇ雪歩ちゃん、ちょっとだけお腹を触らせてもらえないかしら?」

雪歩「こ、困りますぅ」

真「やめてください小鳥さん、セクハラですよ」

小鳥「それじゃあ私が右のわき腹を触るから、真ちゃんは左のわき腹を触ったらどうかしら?」

真「と思ったけど、たまにはセクハラも悪くないかもしれませんね」

真美「あぁっ、まこちんまでよくないスイッチが!」

—————————————————————————————————————

千早「……ちょっとくらい柔らかい方が、可愛げがあるのかしら」サワサワ

—————————————————————————————————————

真「というわけで雪歩、ちょっと服をめくらせてもらうよ」

雪歩「優しくしてね、真ちゃん……」

亜美「なんかまんざらでもなさそうだよ」

小鳥「どうして私の時と、こんなにも態度が違うのかしら」ジー

真美「まこちんは天性の女たらしだからね」

亜美「ねぇ知ってる? まこちんの目を見るとニンシンしちゃうんだYO!」

真美「ヒェ〜〜〜!!!」

真「ボクは女だよっ!」

雪歩「真ちゃん、寒いから早く……」

真「ああ、ごめんごめん」

小鳥「ではさっそく……」ワクワク

雪歩「……」ドキドキ

真「……」ドキドキ

ガチャ

P「ただいまー」

雪歩「きゃぁぁぁぁぁ!」

P「ど、どうしたいきなり!」

—————————————————————————————————————

千早「プロデューサー……相変わらず間が悪いわね」

—————————————————————————————————————

亜美「あーあ、いいところだったのにー」

P「い、いいところ?」

真「ボクと小鳥さんで、雪歩のお腹を触ろうとしてたんです」

小鳥「あと少しで乙女の柔肌に触れることができたのに」

真美「なんか言い方がイヤらしいよピヨちゃん」

雪歩「プロデューサーにお腹見られちゃった……もうお嫁に行けない……」

P「だ、大丈夫だ雪歩! いつもグラビア撮影で見てるから!」

真「ということは、いつもプロデューサーはそういう目で雪歩のお腹を見てるんですね」

P「えっ?」

—————————————————————————————————————

千早「……」サワサワ

千早「私の胸も、そういう目で見てたりして」ボソッ

千早「……」

千早「……」

千早「……」

千早「……くっ」

—————————————————————————————————————

亜美「あー、兄ちゃんセクハラだー!」

P「え、ええっ!?」

小鳥「セクハラさんは牢屋で寝ててくださいね」

P「なに美希のマネしてるんですか! 誤解ですよ、誤解! なぁ、真美からも何か言って……」

真美「すみません、ちょっと近寄らないでもらえますかプロデューサーさん?」

P「ゲファ」バターン

雪歩「プ、プロデューサー!?」

小鳥「決まったわ! 思春期の女の子特有の、突き放す感じの敬語攻撃よっ!」

亜美「こうかはばつぐんだねっ!」

—————————————————————————————————————

千早「真美も、もう思春期なのね」

千早「(高槻さんの思春期はまだかしら)」

千早「(あんな風に、プロデューサーを冷たくあしらう高槻さん……)」

千早「……イケるわね」グッ

—————————————————————————————————————

ガチャ

響「ただいまー……あれ? みんな何してるんだ?」

亜美「お帰り、ひびきん」

小鳥「セクハラさんにお仕置きをしてるのよ」ジー

いぬ美「ばうあう」

P「グェェェェ」

ワニ子「がうがう」

響「なにこれ?」

真美「いぬ美 on プロデューサー on ワニ子だよ」

響「その英語、あってるの?」

P「英語とかどうでもいいから、早く助けてくれないか?」

真「いいじゃないですか。なんだかサンドイッチみたいですよ、プロデューサー」

P「サンドイッチみたいだからなんだって言うんだよっ!」

—————————————————————————————————————

千早「……」

千早「高槻さん on 私 on 春香……」

千早「……時が見えるわ」

—————————————————————————————————————

響「どうでもいいけど、ワニ子が大変そうだからそろそろやめてもらえる?」

P「俺も相当大変なんだけど」

小鳥「それって、いぬ美ちゃんが重たいってことですか?」ジー

亜美「兄ちゃん、それはレディーに失礼だよっ!」

真美「最低ですね、プロデューサーさんって」

P「ルピョロロロロロ……」バタンッ

真「今日の真美は絶好調だなぁ」

—————————————————————————————————————

千早「(それにしても、プロデューサー、こんなに打たれ弱かったかしら?)」

千早「(もしかして……真美に言われたから?)」

千早「……」

千早「……」

千早「……」

千早「まぁ、なんでも、いいですけれど」

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雪歩「ま、真ちゃん……。もう、終わったかな?」

真「ああ、ごめんごめん。今終わったよ、雪歩」

響「そっか、雪歩はいぬ美がダメだったな」

雪歩「うん……。ごめんね、響ちゃん」

響「気にすることないさー! 少しずつ慣れていけばいいと思うぞ」

亜美「ゆきぴょん、ワニ子の方は平気なの?」

雪歩「ワニ子ちゃんも怖いけど……お父さんがたまに仕事で使うから、少しは大丈夫だよ」

真美「し、仕事で?」

小鳥「聞かなかったことにしましょう」ジー

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千早「萩原さんのお父さん、何の仕事をしているのかしら?」

千早「気になるわね、今度聞いてみましょう」

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雪歩「ねぇ、これって千早ちゃんへのビデオレターの撮影だよね?」

真「あっ、そういえばそうだったね」

亜美「やっぱり忘れてる」

真美「まこちんは期待を裏切らないね」

真「ちょっと他のことに夢中になって忘れちゃっただけだよっ!」

小鳥「プロデューサーさんのお仕置きって、そんな夢中になるほどのことかしら」ジー

響「ピヨ子も相当ノリノリだったけどな」

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小鳥「それじゃ改めて、千早ちゃんへのメッセージをお願いね」ジー

響「千早ー、ちゃんとご飯食べてるかー?」

亜美「メンドくさいからってサプリメントばっかり飲んでちゃダメだよっ」

雪歩「千早ちゃん。私、久しぶりに千早ちゃんの歌が聴きたいなぁ」

真「うんうん! レベルアップした千早の歌、ボクも聴きたいよ」

響「今度ビデオ送るときに、千早の歌も一緒に撮っちゃうなんてのはどうかな?」

真美「いやいや、自分で撮影するくらいなら、むしろ向こうでTV番組に出ちゃいなYO!」

亜美「あっ、それチョーいいじゃん! そしたら亜美たち、youtubeとかですぐ千早お姉ちゃんを見れるし!」

真「いや、いきなりムチャ言うなよ……」

小鳥「ふふっ、いいじゃない。夢があって」ジー

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千早「すごいわね、真美ったら。エスパーなのかしら。マミだけに」

千早「(……『夢』、か)」

千早「(別にこっちでデビューするつもりで渡米したワケじゃないけれど)」

千早「(オーディションを受けるからには『夢』で終わらせたくなんかない)」

千早「みんなの為にも、頑張らないとね」

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……………

伊織「かみなりパンチ!」ドゴッ

真美「グェーッ!」バターン

……………

雪歩「穴掘って埋まってますぅぅぅ!」ザクッザクッ

春香「ただいまーっ! あー、今日も疲れ……きゃぁぁぁぁぁ!」ストーン

やよい「ああっ! また春香さんが事務所の穴に!」

……………

あずさ「貴音ちゃん、何してるの?」

貴音「ハム蔵のマネをして、食べ物をいぬ美のほお袋に詰め込んでいるのです」ギュウギュウ

いぬ美「ばう」

亜美「お姫ちん、いぬ美にほお袋はないよ」

響「あれ、ところでハム蔵は?」

美希「さっきまでミキのおっぱいに潜り込んでたの」

貴音「不埒なマネをした罰として、いぬ美のほお袋に詰め込んでいるのです」ギュウギュウ

ハム蔵「グェェェェ」

亜美「だからお姫ちん、いぬ美にほお袋はないよ」

響「ハ、ハム蔵ぅぅぅぅぅ!?」

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千早「ふふっ、みんな変わらないわね。懐かしいわ、本当に」

ザー……

千早「あっ、もう終わり……というか、もうこんな時間なのね」

千早「さてと……片付けましょう」ピッ

千早「(ビデオ、今度お隣さんにも見せてあげましょう)」

千早「女の子が大好きって言ってたから、きっと喜ぶわ……って、あら?」ガサッ

千早「……小包に、ビデオがもう一本?」

ピッ

千早「……」

ザー……

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春香「……」

春香「……」

春香「……これ、ちゃんと録画はじまってるのかなぁ?」

春香「……」フリフリ

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千早「春香?」

千早「(どうしてカメラに向かって無言で手を振ってるのかしら?)」

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