【微・欝】少女「今日泊めてくれませんか?」男「タダじゃね……」 (10)

とある都会の駅前の夜
1人でベンチに座ってる10歳ぐらいの少女を見掛けた

1時間後、同じ場所に戻ってくると、その子はまだ同じ場所に居た




男「お前何時までそんな所に座ってる気だ?」

少女「……え?」

男「もうすぐ10時越えるぞ?さっさと家に帰らないと補導されるぞ。」


少女「…………」


男「……もう1時間以上はそこで座りこんでるな。帰りの電車賃無くしたのか?」


少女「………」


男「………。」


スッ

少女「!?」

男「ほら、千円あれば十分だろ?」

少女「あ……あの……」

男「それとも千円以上もかかるぐらい遠い所にウチがあるのか?」


少女「…………」

男「………受け取るのか断るのか、どっちか決めてくれねーか?」


少女「………」



男「………お前、目立ってるぞ。」

少女「え?」

男「1時間前にここを通った時にベンチで1人座ってるお前を見たんだが、明らかに場違いな雰囲気を醸し出してた。
1時間経って戻ってきても、全く同じ姿でぼーっとしてるしさ……」


少女「…………」

男「家に帰らなくてもいいが、いい加減に場所かえろ。じきにお巡りが来るぞ。
……じゃあな。」



少女「………ま、待って!!」

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少女「あ、あの……」

男「……何?何か用でもあるのか?」

少女「い、いや……あの……」



男「特に急いでるわけでもないんだが、俺の帰路は電車だから。さっさと乗りたいんだ。
言いたいことがあるんなら、さっさと言ってくれ。」


少女「……べ、別にお金が無くて困ってたわけじゃないんです。」

男「そっか。なら行くあてが無いとかか?」

少女「………」


男「お前、どっから来たの?この辺じゃねぇだろ。」

少女「………」


男「……そうそう。赤の他人に対しては、それぐらいの警戒心で対処しないと。簡単に素性を明かすべきじゃないよな。」

少女「え?い、いや……あの……」



男「……電車賃奢るから、とりあえず一緒に駅へ……」


少女「あ……」

男「いいから、早く。」

少女「……うん……」

男「知らない兄ちゃんにホイホイ付いてくるとは、よほど行き詰まってるんだな?」

少女「………」


男「ちなみに、今あんたが大声あげれば、警官達がすぐに俺をハメるんだがな。
世の中は残酷だから……」

少女「………」


男「……黙ってばっかでもいいが、この後どうするとかは考えてるのか?」

少女「………」


男「お前、携帯とかはちゃんと持ってるんだよな?」

少女「ないよ。」

男「?……そっか。」



男(なんだ今の?即答?なんでこの質問だけに……)

男「飯はちゃんと食べたか?」

少女「………」

男「そっか。
じゃ、ちょっと待ってな。おにぎり買ってくるから。」

少女「え?……あ……ちょっ……」

一旦わざと彼女から離れてみた
彼女がどんな反応をするのか見たかったから





少女「…………」



少女はその場を動かずにじっとしていた
俺のことを待っているようだ

待ってて、と言ったのだから、待ってくれてて当然か……

ただ、たまに周りを見回しながら座り込んでいた
ただ単に周りを見ている様にも見えるし、何かを探している様にも見えるし、或いは誰かに怯えて周りを警戒している様にも見えた


ただ、さっき駅前で座り続けていた時には周りを見回す様な動作はしていなかった
ただ、ぼーっとしていただけだった

駅に入っていきなり警戒心が強くなったのか、或いは俺と出会ってから警戒心を保つようになったのか……



徐々に彼女の顔が不安げになっていく
あまり待たせてるのも、さすがに可哀想か……

男「お待たせ。待った?」

少女「!!……お、遅いよ……」

男「え?そうかな?悪い悪い。」


男(今にも泣きそうな顔してるな。
俺に置いてかれたとでも思ってたのか……)


少女「………」

男「ほら。とりあえず、これで我慢しろ。後でファミレスでも連れてってやるから。」

少女「え!?」


男「それとも赤の他人の好意なんかには甘えたくないのか?」


少女「………」



男(………家出かなんかだろうけど……。
なんか雰囲気が変だな。それに、さっきのがやっぱり気になる……)


男「それとも、あんまり遅くなると親が心配でもするのか?なら親に電話でもするか?」

少女「い、いや……それはいい……」

男「もっとも俺はお前ん家の番号なんか知らないけどな。
そっちは?携帯どころかアド帳も持ってないのか?」






少女「……スマホなんか……捨てた……」

男「捨てた?」

少女「……うん。」

男「捨てたって……持ってたのか?今まで……」

少女「……今日の……昼までは……」


男「昼まで?じゃあ今は、」

少女「川に捨てたから……。画面叩き割って……」



男「なんでまた……。携帯失ったら、家と連絡出来ないだろうに。」


少女「連絡なんか必要ないよ。あいつらなんかに………」



男「そっか。やっぱ家出か……」

少女「…………」


男「歳は?10代前半ってところだよな。」

少女「……じゅ……ろく。」

男「16って……嘘付くにしてももっと現実的にいけよ……」

少女「ほ、本当に16なの!!」


男「せいぜい中学生ぐらいにしか見えないぞ?そんな格好じゃ……」

少女「え……?だって、服とかもちゃんと流行りの着てるし、髪型やアクセサリーも………大人っぽいって……」


男「中学生が無理して着てる様にしか見えないな。背伸びしてるだけで、中身はただのガキ。
正直、パッと見は小学生にも見えたんだけどな。」


少女「……嘘……」

男「電車に乗ったらこれ系話はやめるぞ。
隣の人に変な目で見られたくないしな。」


少女「………」



男「……そだな。名前はメグとかでいい?」

少女「え?」

男「仮の名前。あった方が便利だろ。
電車ん中ではお互い兄妹的なのを装うんだよ。分かるだろ?」

少女「………分かった。」

男「俺のことは“真”とでも呼んでくれ。」


少女「真……」

男「あ、ちなみに本名じゃないからな。」


少女「………」


男「えっとなー。メグはポケモンはやる?」

少女「え?………少しなら……」

男「俺、新作はよく知らないんだけどさ。最初の三匹はどんなの?」

少女「………」

男「……適当でいいから……」


少女「……わ、分かってるけど。あんまり覚えてないから……確か草タイプのは……」

男「くだらないよな。兄妹を演じるお芝居とか。
もう二度とやりたくないな……」


少女「………」


男「………で?結局、ウチの近所まで付いてきたわけだけど。こっからどうするんだ?」

少女「………」






男「家出。携帯無し。小学生。
警察以外に行くあてなんかないぞ?今から警察にでも行く気か?」

少女「っ………」



男「それとも親切なホテルや優しいお兄さんにでも頼んで泊めて貰うのか?」

少女「……う…ぐ…」

男「ま、君みたいな可愛いお嬢さんなら優しいどこかのお兄さんが泊めてくれるだろうね。
まぁ、どんな見返りを要求されるかは知らないけどな。」



少女「う、……うぅ………ぐすん……」


男「え?」

少女「うわ゙ぁああああああ!!!!あ゙あ゙ああああああああっ!!!!!!」



男「お、おい!?何を……」

男「バカ!!こんな夜中に道端で大声出すなって……」

少女「だ……だっで……ひっぐ……」

男「と、とりあえず……ウチに来い!だから落ち着けって!」

少女「……ひっぐ……ひっぐ……」

男「な?ほら、早く……」

グッ

男「!?な、何やってんだ?早く来いって……」

少女「……」

男「………?」


少女「ぐすん………約束して……」

男「え?」

少女「あたしに……酷いことをしないって……約束して………」

男「……何?」

少女「………」

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