あずさ「たまには私が迎えに行くのはどうでしょう?」(218)

P「……」

P「……」

あずさ「あの、プロデューサーさん?」

P「あずささん。冗談を言っているつもりなら、あんまり面白くありませんよ」

あずさ「えぇ、私はそんな、冗談を言ったつもりじゃあ……」

P「いや、だって迷子になる人が人を迎えに行くって……」

P「どう考えてもミイラ取りがミイラになるオチしか見えないんですけど」

あずさ「そんなことありません。私だって、頑張ればきっと……」

P「……突然ですが、ここで問題です」

あずさ「えっ?」

P「俺が、オフの日に休日出勤している時に1本の電話が入ってきました」

P「その電話をかけてきた人は、いいました。」

P「今、旅行先の山にいるんですけど、その……道に迷ってしまったみたいなんです……っと」

あずさ「あらあら~」

P「俺は、ビックリしてその人の旅行先を聞き出して事務所を飛び出しました」

P「電車を乗り継いで、山を登って、遂にその人の元へ着きました」

P「さて、電話の人は誰だったのでしょうか?」

あずさ「う~ん」

P「そこで悩まないでくださいよ……」

あずさ「どうしてですか~とても難しいですよ?」

P「あずささんですよ。あずささん!」

あずさ「えぇ、わ、私!?」

P(マジで驚いている……)

P「忘れたんですか。花畑の時の話ですよ」

あずさ「あぁ、あの訪れた人には必ず幸せが訪れると言われてる幻の花畑ですね?」

P「そうですよ。山を降りた後に、地元の人に話を聞きに行ったじゃないですか」

あずさ「そうでした~」

P「普通、登山する山にはちゃんとした登山道がありますよね」

P「ただ、道に沿って歩いていけば頂上にたどり着けるのに……」

あずさ「えっと……」

P「あずささんは、何故か道に迷ってしまいました」

あずさ「それは、その~」

P「ちなみに、その時のあずささんは地図と方位磁石を持参してました」

あずさ「あぅ……」

P「そういうあずささんが、人を迎えに行くなんて……」

P「だいたい、何でそんなことを考えついたんですか? こう言ってはなんですが、あずささんを知っている人なら誰もあずささんに迎えなんて頼まないと思いますから、無駄だと思いますよ」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん! そんなはっきりと言わなくても……」

P「いや、さっきの問題を本気で悩んでましたし……自覚がないのかと」

あずさ「そんなことありませんよ。ちゃんと自覚しています」

P「それじゃあ、どうしてですか?」

あずさ「……待っているだけでは、ダメだと思ったんです」

あずさ「私には運命の人がいます。その人が私のことを見つけてくれるのを待っているんですけど、中々来てくれないんです」

P「それは災難ですね……」

あずさ「……」

P「どうしました、あずささん?」

あずさ「いえ、なんでもありません」


P「でも、それが何の関係があるんですか? いま、あずささんが言ったのは精神的な話であって、別に人を迎えに行くことには……」

あずさ「う~ん、私の心に、体をついていかせるという感じです」

P「体をついていかせる?」

あずさ「ほら、あるじゃないですか。頭で考えても、体が動いてくれない時って」

P「えぇ、緊張とかしちゃって」

あずさ「はい。だから、何度も人を迎えに行くことで」

P「運命の人に対する気持ちを、行動に移せるようになりたいってわけですね」

あずさ「はい」

P「でも、いきなり人を迎えに行くなんて無理だと思いますよ」

あずさ「そうでしょうか? 今は、ケータイの地図アプリとかありますし」

P「信用できませんね。アプリじゃなくて、あずささんが」

あずさ「むぅ……」

P「とりあえず、練習してみたらどうですか?」

あずさ「練習ですか?」

P「 目的地を設定して、そこに行く。行けたら、今度は別の場所へ挑戦する。そうやって、段階的にやっていけばいずれは……」

あずさ「何か宝探しみたいですね」

P「待ち人を宝に置き換えれば、そうなりますね」

あずさ「あの、プロデューサーさん。迷惑を承知で頼みたいことが……」

P「付き合いますよ」

あずさ「えっ?」

P「人を迎えに行く練習のことですよね。付き合いますよ。あずささんの迷子が無くなるのは、俺も心配の種が無くなって良いことですし」

あずさ「あの、どうして私の言いたいことが……」

P「今の話の流れで、気づけないほど鈍くないですよ」

あずさ「……」

P「どうしたんですか、あずささん」

あずさ「いえ、プロデューサーさんは鈍感だなって思っただけです」

P「どうしてですか?」

あずさ「さぁ、どうしてでしょう」

次の日から、あずささんの人を迎えに行く練習が始まった。最初は、事務所から歩いて5分のコンビニから。

あずさ「プロデューサーさ~ん」

P「あずささん、おめでとうございます。無事に迎えに来れましたね」

あずさ「よかったです~」

P「10分かかってますけど……まぁ、到着してるわけですし合格にしますね」

あずさ「やりましたーっ! プロデューサーさん、ぶいっ!」

P「こんなことで、はしゃがないで下さいよ」

あずさ「ふふ、わかってま~す」

P「どうだか……」

別の日

あずさ「プロデューサーさん」

P「あっ、あずささん。迎えに来てくれたんですね」

あずさ「ショッピングモールの何処かにいるプロデューサーさんを探すのが今日の練習」

P「そうです。そして、無事に見つけてくれて、迎えに来てくれました」

あずさ「服を見ていたんですね~」

P「えぇ、最近買ってなかったので……」

あずさ「プロデューサーさんなら、何を買っても似合いますよ」

P「おだてても、昼食を奢るくらいしかしませんよ」

あずさ「えぇ……いいんですか?」

P「ちゃんと迎えに来てくれたお礼ですよ」

あずさ「そんな……ふふ、プロデューサーさんたら」

また別の日

あずさ「見つけました、プロデューサーさん」

P「ちゃんと来れたみたいですね、駅前に」

あずさ「はい。バス、間違えないで乗れました~」

P「それは良かったです」

あずさ「あの、プロデューサーさん。結構、待ちましたか?」

P「そうですね、大体……いや」

あずさ「プロデューサーさん?」

P「今、来たばかりですよ」

あずさ「プロデューサーさん。その台詞は、女の子が言うものですよ」

P「あずささんなら、どれだけ待たしても言ってくれそうですね」

あずさ「私、そんなに都合のいい女じゃありませんよ」

P「ハハハ、違いないですね。それじゃあ、もう一度バスに乗って事務所に戻りましょう」



さらに別の日

P「遅いな、あずささん」

P「流石にまだ港はきつかったかな」

P「電車に乗り継いで、バスも乗らなきゃいけないし」

?「だ~れだ?」

P「んぉ……!?」

?「だ~れだ」

P「……あずささん」

あずさ「正解です~」

P「人で遊ばないで下さいよ」

あずさ「は~い、ふふ」

πが当たったのか当たってないのか
そこが重要だ

>>43
それはお前が決めろ

またまた別の日

P「あずささんも大分慣れたな」

P「前に比べて、迷子で呼ばれる機会も減っているし。良い傾向だ」

P「でも、今日の場所は大丈夫かな? あずささんが迷子になった場所だし、ちゃんと来れるだろうか」

P「心配だ……」

P「遅い……」

P「そりゃあ、今までの練習でも時間がかかったことは何度もあるけど……今日のは、今まで以上に遅い」

P「電話するかな……」

やりましたーっ! プロデューサーさん、ぶいっ!

P「……」

P「やめよう……」

P「ここで電話したら、あずささんを信用しなくなったってことだな。それって、あずささんに対する裏切りだよな」

P「そんなこと出来るわけない……」

P「今は、あずささんを信じて待とう」

ポツ……

P「ん?」

ポツポツ……

P「雨か……」

P「さて、どうするか」

P「雨宿りするのは簡単だ。少し遠くまで走っていけばいい」

P「でも、もしあずささんが来たら、そこにいない俺を心配して探すだろう。そこから、迷子に発展することは十分考えられる……そうなると」

ザーッ

P「待つしかないよなぁ……濡れるけど」

P「寒い……」

P「何て言うんだっけ。ほら、中学の時に習った……短い間に強く降って、気温が下がる雨」

P「あぁ……思い出した。寒冷前線だ。この雨、絶対に寒冷前線だ」

P「うっ……濡れてまとまった前髪の毛先から、雫になった雨が顔に。凄い不快だ」

P「あずささん、早くお願いします」

あずさ「プロデューサーさん!」

P「あっ、あずささん。遅かったですね」

あずさ「すみません。私、途中で道を間違えてしまって……」

あずさ「プロデューサーさん、こんなに濡れてしまって」

P「平気ですよ、これくらい」

P「それより、事務所に戻りましょうか。幸い、ここは道が複雑なだけで事務所自体からはそう離れてませんから」

あずさ「は、はい」

ザーッ

P「……」

あずさ「……」

P「あの……あずささん。そんなに寄ると服、濡れちゃいますよ」

あずさ「そうしないとプロデューサーさんが濡れちゃいます」

P「俺は、もう手遅れですよ」

あずさ「それ以上、濡らしてしまうわけにもいけません」

P「雨の中、傘をささずに踊るという選択肢も」

あずさ「ありません。こんな時に冗談を言わないでください」

P「帰ってきました、我らの765プロ」

あずさ「プロデューサーさん、タオルどうぞ」

P「ありがとうございます……っと」

P「ふぅ……。サッパリした……頭は」

あずさ「プロデューサーさん。服、凄い濡れてますよ。今だって、上着の袖からポタポタって……」

P「本当だ。濡れすぎて気づかなかった」

P「あずささん、外どうなってます?」

あずさ「今は、少し弱まってますね」

P「なら、今のうちに急いで帰ります……」

あずさ「だ、ダメですよ。プロデューサーさん、まだ雨は止んでないんですよ。私の傘を……」

P「あずささんが帰れなくなりますよ…それじゃ」ガチャ

バタン……

あずさ「プロデューサーさん……」

P「ただいま……って、誰も返さないけど」

P「うぅ……気持ち悪い。さっさとシャワー浴びて寝よう」



P「シャワー浴びて、サッパリしたけど。なんか、頭が痛い」

P「風邪でも引いたのか……」

P「とっとと寝よう……」

P「ダルい……物凄くダルい」

P「参ったな。今日は普通に仕事あるのに……」

P「でも、出社しちゃマズいよな。菌を自分から持ってくるわけにはいかないし」

P「大事をとって、今日は休もう」

P「1日くらいならみんなでフォローできるだろうし」

Prrr、Prrr

P「あっ、音無さんですか。実は……」

あずさ「おはようございます」

小鳥「おはようございます、あずささん」

あずさ「小鳥さんもおはようございます~。あら、プロデューサーさんはまだ来ていないのかしら?」

小鳥「あぁ、それなら今朝電話がありましたよ」

あずさ「えっ?」

小鳥「何でも体調が優れないらしくて、今日はお休みになるそうです」

あずさ「そう……ですか」

あずさ(プロデューサーさんが、体調を崩すなんて……)

あずさ(やっぱり昨日の雨が原因よね……)

あずさ(私のせいでプロデューサーさんが……)

小鳥「どうしたんですか、顔が暗いですよ?」

あずさ「あっ、いえ、何でもありません」

小鳥「心配ですね。プロデューサーさん」

あずさ「はい……」

仕事中……

律子「どうしたんですか、あずささん」

律子「普段でしたら、あんなミスなんかしないのに」

あずさ「すみません……」

伊織「しっかりしなさいよ、あずさ」

あずさ「伊織ちゃん……」

伊織「あずさの気持ちは、わからないでもないわ。アイツが心配なのは、よくわかる」

伊織「でも、私達が心配したからってアイツの体調がよくなるわけじゃないんだから」

伊織「私達は、私達のやるべきことをやりましょう」





亜美「そうだよ、あずさ姉ちゃん。亜美達がしっかりしなないと兄ちゃんに笑われちゃうよ」

あずさ「亜美ちゃんは、プロデューサーさんのこと心配ないの?」

亜美「んー、もっち心配だよ。でもさ~」

あずさ「でも?」

亜美「兄ちゃんだし、きっと平気だよーっ!」

あずさ「……っ!」

亜美「……どうしたの、あずさ姉ちゃん?」

あずさ「い、いえ、なんでもないわよ~」

あずさ「ちょっと亜美ちゃんが羨ましいって思っただけよ」

亜美「亜美が?」

あずさ「プロデューサーさんのことを、心から信じられるっていうことよ」

亜美「?」

あずさ(私、ダメね。伊織ちゃんみたいに割り切れないし。亜美ちゃんみたいに、信じることもできない……)

あずさ(プロデューサーさんの言葉とか笑顔がないと……)

あずさ(プロデューサーさん……)

Prrr、Prrr

あずさ「あら、私のケータイ。すみません、少し離れます」

あずさ「誰かしら……」

あずさ「えっ……これって」


プロデューサーさん

×××ー×××ー××××

あずさ「も、もしもし」

P「あずささんですか、俺です」

あずさ「ぷ、プロデューサーさん、どうして」

P「そりゃあ、俺があずささんに用があるからに決まってるじゃないですか」

あずさ「わ、私にですか?」

P「他の誰にかけるっていうんですか……」

あずさ「それで、プロデューサーさん。どうして、電話を体調が良くないって……」

P「あずささん、今日の仕事の調子はどうですか?」

あずさ「そ……それはボチボチです」

P「そんな暗い声で言っても、説得力ありませんよ」

あずさ「……流石ですね、プロデューサーさん」

P「あずささんがわかりやすいんですよ」

P「あずささん、今日の俺の休みのこと自分のせいだなんて考えないでください」

あずさ「えっ?」

P「あずささんが気に病むことじゃありませんよ」

あずさ「でも、プロデューサーさんは今苦しんでいるじゃないですか」

P「苦しんでいる? あぁ、それなら平気ですよ」

あずさ「どういうことですか?」

P「ちょっと寝たら体調元通りになってしまったんですよ。どうやら、風邪じゃなくて睡眠不足だったみたいです」

あずさ「えぇ~!」

P「だから言いましたよね、気に病むことじゃないって」

P「それに、昨日のあれは俺がしたくてしたことです」

あずさ「でも……」

P「信じてましたから。あずささんなら、きっと俺を迎えに来てくれるって……だから、待つことが出来ました」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「今だって、信じていますからね。あずささんが最高のお仕事をしてくれるって……」

あずさ「……」

P「明日、夜にでも事務所で待っていますよ……あずささんの仕事の報告を」

あずさ「はい……必ず迎えに行きます」

P「期待してますよ。それじゃあ、お仕事頑張ってください」

Pi……

あずさ「……」

あずさ「……」

あずさ「よしっ!」ギュッ

P「……うぅ」

P「電話越しで良かった。面と向かって話したら、絶対にバレてただろうし」

P「飯を食べる気にもなれない」

P「あぁ、ダル……」

P「薬飲んで、もう1回寝よう……その時には体調は少しはマシになってるだろ」

P「……んっ」

P「時計、時計……っと」

P「うん、大分寝たみたいだな……」

トントン……

P「あれ……何で包丁の音が。誰かいるのか?」

P「そんな訳ないか、俺の家なんだから……」

?「あっ、起きたんですね。プロデューサーさん」

P「そ、その声は……」


P「あずささん……」

あずさ「待ってて下さいね。もうすぐ、夕飯が出来ますから」

P「は、はぁ……」

P「あの……どうやって入ったんですか?」

あずさ「あぁ、それですか。いけませんよ、プロデューサーさん。カギはちゃんと閉めないと」

P「開いてたんですか。そういえば、昨日はさっさとシャワー浴びたくてカギのこと忘れてたかも……」

あずさ「気をつけてくださいね~」

お前ら、ピヨピヨ言い過ぎだろwww
Pを介抱する小鳥と、夕飯を作りにきたあずささんの修羅場を想像しただろうがwww

あずさ「それより、プロデューサーさん!」

P「はい、何でしょう……」

あずさ「プロデューサーさん、私に嘘をつきましたね?」

あずさ「体調、悪いままでした。寝ている時も辛そうでしたよ」

あずさ「私、プロデューサーさんのこと信じたのに……ヒドいです」

P「うっ……それは」

あずさ「ホントにもう……」

ギュッ……

あずさ「心配させないでください……」

P「あずささん……」



あずさ「プロデューサーさんが私のことを気にかけてくれるように、私もプロデューサーさんのこと心配しているんですよ」

P「それで、仕事を影響してはダメですよ」

あずさ「イジワル言わないでください……」

あずさ「私は、仕事が身に入らないくらいプロデューサーさんのことを」

P「……」

あずさ「いけませんか……」

P「ダメですよ。あずささん……」

あずさ「どうしてですか?」

P「だって、俺とあずささんは……」

あずさ「そういう理屈の話をしているんじゃないんです」

あずさ「プロデューサーさんが、私のことをどう思っているかが知りたいんです……」

P「そう……でしたね。すみません」

P「わからないんです。自分の気持ちが……」

P「あずささんに抱いてる気持ち。これが好きだって自信を自信をもって言えません」

あずさ「意気地なしです、プロデューサーさん」

P「すみません……」

P「でも、決して嫌な気持ちじゃないんです。あずささんと一緒にいると、優しくなれるっていうか、その穏やかな気持ちになれるっていうか……」

あずさ「……」

P「言ってて、何か恥ずかしくなってきた」 

P「つまり、俺は、あずささんのことを」

あずさ「ことを?」

P「何なんでしょう?」

あずさ「……」

P「あの、あずささん?」

あずさ「プロデューサーさんって、本当に鈍感なんですね」

あずさ「でも、いいです。プロデューサーさんの気持ち、少しはわかりましたから」

P「はぁ、そうですか」

あずさ「あの、プロデューサーさん。風邪って移すと治るらしいですよ?」

P「よく言いますよね」

あずさ「私は、移してくれても構わないんですよ?」

P「ちょ、あずささん!」

あずさ「ふふ……積極的になってみました」

P「……かないませんね」

あずさ「ふふっ……」


プロデューサーさん。まだプロデューサーさんは、その気持ちに気づいてくれていないですけど、きっと私が気づかせてあげます。
だから、それまで少し待っていてくださいね。私、必ず迎えに行きますから。


fin



そういえばさ。この間立てたスレにもあったんだけどさ。あずさの乳輪云々とかってレスがあったけど、あれ何だ?

>>212
そういうSSがあった前半は面白いよ

>>215
前半は? 途中で落ちたのか?

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