フィリップ「翔太郎、太ったんじゃないかい?」 (78)

翔太郎「はっ!?」ビクッ

フィリップ「僕も以前、餅の検索に没頭して太ったからね。
      ダイエットするなら力になれると思うよ」

翔太郎「お、おお!そうそう、これは太ったんであって!決して!
    胸が出てるわけじゃないからな!」

亜樹子「おっはよー!ってあれ!?
翔太郎君に胸があるなんて、私聞いてない!」

翔太郎「おまっ……亜樹子ぉーー!!」

フィリップ「……?」キョトン


ってな感じで、翔太郎に異変が起こったSSです。
未だに初心者なので、至らないところは多いかと思いますがご容赦ください。

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亜樹子「だって!翔太郎君、その胸!ちょ、ちょっと、上着失礼しまーす!」ガバッ

翔太郎「わー!馬鹿!」

フィリップ「そういえば翔太郎、今日は妙に厚着だね」

翔太郎の上着が亜樹子に剥ぎ取られ、シャツ一枚にされた!

亜樹子「こ、この胸……それにくびれ!よく見ると顔つきも違う!?
    翔太郎君が美女なんて、そんなの私聞いてない!」

翔太郎(終わった……さよなら俺のハードボイルド……)

フィリップ「亜樹ちゃん、何を言っているんだい?
      翔太郎はカロリーの過剰摂取でメタボリックな体になったんだよ」

フィリップ「だが亜樹ちゃん、君の口ぶりだと翔太郎が美女に変身したみたいだ」

亜樹子「だからそうなんだってば!見てよ、このうらやま……ゴホン!
    けしからん胸を!ほら!」ムニュ

翔太郎「おいやめろ!おい!見てないで止めろフィリップ!」

フィリップ「翔太郎……胸が揉めるほどに太るとは……
      見たところ太ったのは胸だけのようだし、興味深い……ゾクゾクするね」

翔太郎「言ってる場合か!相棒がケダモノに襲われてるってのに!」

亜樹子「ちょっと、ケダモノって私のこと!?怒るわよ!」

あきこは スリッパを かまえた!

翔太郎「っ……!」

しょうたろう(びじょ)は めを つむった!

亜樹子「ちょ、ちょっとぉ……そういう反応されると、
    バシーン!といきにくいじゃないのよぅ……」

あきこは スリッパを おろした!

フィリップ「おや?らしくないね。いつもなら翔太郎の反応は無視して、
      思いっきりスリッパ攻撃を炸裂させているのに」

亜樹子「いくら翔太郎君って言っても、さすがに女の子は叩けないよ!」

フィリップ「亜樹ちゃん、目は大丈夫かい?翔太郎はどう見ても男じゃないか!」

亜樹子「フィリップ君こそ、しっかり見てよ!ほら、この胸!」

翔太郎「お、おい、やめろ!シャツの前を開けようとするな!」

フィリップ「面白い太り方だね、実に興味深いよ。
      翔太郎、近くで見てもいいかい?」

翔太郎「は?そそそんなのダメに決まって……っておい!
    答え聞く前に近寄ってくるんじゃねええええ!!」

フィリップ「ライダーの先輩も言っているよ。
      『答えは聞いてない!』ってね」

翔太郎「それとこれに関連性はないだろうが!」

亜樹子「ほらほら!ね?胸でしょ!?特盛でしょ!?」

フィリップ「確かに肥満が原因とは思えない脂肪のつき方だけど……
僕は翔太郎と変身の度に体を共有しているんだから
      翔太郎が女性ならとっくに分かっているよ」

亜樹子「それは……そうかもしれないけど!でも!
    現に女の子なんだもん!ね、翔太郎君?」

翔太郎「俺は男だ!」

フィリップ「ほらね。うーん、それにしても面白いね。
      腹部には余分な脂肪なんてほとんどないにも関わらず、
      胸部にこれだけの脂肪が集中するなんて」

翔太郎「……おいフィリップ、もういいだろ?いい加減離れろ」

フィリップ「触っても構わないかい?」

翔太郎「なっ……!」

亜樹子「こらーっ!!」バシーン

フィリップ「いてっ」

翔太郎「亜樹子……!」

亜樹子「勝手に胸を触ろうとするなんて、最低だよフィリップ君!」

翔太郎「お前が言うな」

亜樹子「私は女の子だからいいの!で、翔太郎君。
    いい加減ちゃんと話しなさい!これは所長命令よ!」

翔太郎「……ふ、太った」

亜樹子「……翔太郎君?」

あきこは スリッパを かまえた!

翔太郎「くそっ、分かったよ!話す!話すからその凶器はしまえ!」

亜樹子「分かったならよろしい。で、なになに?何があったの?」

翔太郎「お前、他人事だと思ってはしゃぎやがって……」

フィリップ「僕としても気になるね、どう太ればそうなるのか」

亜樹子「……」

翔太郎「……」

フィリップ「?」

翔太郎「フィリップ……本当に、なにも気付かないのか?
    こう、あるだろ、いつもと違う部分が」

フィリップ「うーん、そういえば……胸が太ったことに気を取られていたけど、
      よく見ると肩幅が縮んだみたいだね。声も少し高いようだし……おや?」

フィリップが首を傾げながら翔太郎に近寄る。

フィリップ「翔太郎、身長が縮んだのかい?
      僕が君を見下ろすことになっている気がするけど」

翔太郎「ぐっ……まあ、そういうことだ」

フィリップ「ふむ……?」

翔太郎「そろそろ、分かったよな?」

フィリップ「翔太郎、まさか……!?」

翔太郎「ああ、そのまさかだぜ……」

フィリップ「若返ったんだね!?」

翔太郎「そのまさかじゃねえよ!」

フィリップ「おや、おかしいね。体格や声質の変化から見て
『オールド』と逆の能力を持つメモリでこうなったのかと思ったんだが」

翔太郎「……はあ」

翔太郎(どうあがいても自分で言わなきゃならないってのか……)

亜樹子「翔太郎君、ファイト!」

翔太郎「ああ……フィリップ、よく聞け」

フィリップ「うん」

翔太郎「俺は……女にされたんだよ!」

フィリップ「」ポカーン

亜樹子「フィリップ君?」

フィリップ「……」

翔太郎「おい、フィリップ?」

フィリップ「はっ!ほ、本当かい翔太郎!?」

翔太郎「お、おう……本当だぜ」

亜樹子「フィリップ君、かーなーり、動揺してるわね!」

フィリップ「そりゃあ、動揺もするよ!つまり僕はWに変身する時、
      女の子の体に入ることになるんだよ?」

翔太郎「フィリップてめえ、相棒の心配より先にそれか!」

フィリップ「だって考えてもみてくれ翔太郎。
      僕は確かに囮捜査で女装もしたけど、心はれっきとした男だ」

翔太郎「俺だってガッチガチのハードボイルドだ!」

亜樹子「ハーフボイルドでしょ?」

翔太郎「ハードボイルドだ!」

フィリップ「ハーフボイルドだね」

翔太郎「お前らなぁ……!」

亜樹子「そんなことより!翔太郎君が女の子にされちゃったのはドーパントの仕業よね?」

翔太郎「そんなことって……お前……」

フィリップ「どうなんだい翔太郎。まあ、こんな奇妙な現象が起こるなんて
      ドーパント以外には考えられないけどね」

翔太郎「それが、俺もよく覚えてねえんだよ。
    朝起きたらこうなってた……っていうか」

亜樹子「なによそれ、自分のことでしょ?しっかりしなさいよ」

翔太郎「あのな、俺は被害者なんだぜ?もうちょっとこう、扱いってもんがあるだろ」

亜樹子「そうは言っても、女の子になっただけでしょ?
    いまいち危機感が足りないのよね~」

翔太郎「あーそうかよ、悪かったな!大した被害じゃなくて」

亜樹子「そんなこと言ってないじゃない!なによ、拗ねないでよね」

フィリップ「落ち着きたまえ、二人とも」

フィリップ「僕としても翔太郎がこの状態のまま変身するのは避けたい。
      事件解決のため、いがみ合っている暇はないよ」

亜樹子「ちょっとちょっと、フィリップ君?
変身しないでドーパント事件を解決なんて無理でしょ」

フィリップ「大丈夫さ。翔太郎一人でもジョーカーに変身できるからね」

翔太郎「それはあれか?俺に一人で戦えっていうのか?
    冗談きついぜ相棒」

フィリップ「翔太郎、僕は君を信じている。君ならきっとやれるさ」

翔太郎「いい話っぽくまとめようとするんじゃねえよ!
    自分が女の体を使いたくないだけじゃねえか!」

フィリップ「翔太郎……君も男なら分かるだろう?
      僕は自分が男であることを捨てたくはないんだ」

翔太郎「俺は現在進行形でその苦しみを背負ってるっつーの!
    相棒なら苦楽を共にする覚悟ぐらいあるだろうが!?」

フィリップ「まあ、いざとなれば照井竜も力を貸してくれるさ」

翔太郎「はあ!?照井にまでこんな姿を晒せっていうのかよ!」

亜樹子「そうだよフィリップ君!
竜君が翔太郎君に目を奪われたりしたらどうしてくれるのよ!」

翔太郎「心配するのはそっちじゃないだろうが!
    俺のプライドの方が大事だろ」

亜樹子「私と竜君の新婚生活がどうなってもいいって言うの!?
    この人でなし!冷血漢!」

翔太郎「そ、そこまで言ってないだろ、落ち着けよ」

フィリップ「とにかく、この事件を一刻も早く解決しなければ。
      翔太郎、早速本棚で検索しよう」

翔太郎「そうしたいのはやまやまだが、キーワードが揃ってない。
    情報を集めるのが先だ」

フィリップ「ああ、それもそうだね……」

亜樹子「フィリップ君が翔太郎君に注意されるなんて、珍しいね。
    そんなにショックなんだ?」

翔太郎「だからショックなのは俺だって……っていうかそれどういう意味だ亜樹子!
    珍しいってなんだよ、珍しいって」

亜樹子「でもでも、やっぱり大事な相棒が女の子になっちゃったら
    ショックなんじゃないの?ね、フィリップ君!」

翔太郎「無視すんなよ、おい」

亜樹子「もー!翔太郎君はちょっと黙ってて!」

翔太郎「は、はい……」

翔太郎(なんでこうなるんだ……)

亜樹子「フィリップ君としてはどうなの?翔太郎君……っていうか、
    ……翔太郎ちゃん?」

翔太郎「は!?」

フィリップ「そこはせめて翔ちゃんと呼ぶべきじゃないかな」

亜樹子「それじゃあ、翔ちゃん!ねえ、どうなのよー」

フィリップ「翔太郎は翔太郎だよ。僕のたった一人の相棒さ」

翔太郎「へっ……当たり前だ」

亜樹子「なーんだ、つまんないなあ」

翔太郎「なんだと!?おーいおいおい、亜樹子ぉ……
    つまんないってなんだ、つまんないって?」

亜樹子「さーて、そんなことより情報収集行ってみよう!おー!」ガチャ

翔太郎「おい亜樹子、そんなことってなんだよ、おい!亜樹子ー!」

二人のいなくなった事務所で……

フィリップ「……翔太郎が、女性に……」

フィリップ「女性と体を共有することに、興味がないわけではない。
      むしろ興味深いと思っているくらいなのに……」

フィリップ「それと同時に気恥ずかしさを覚えるこの感覚、
      これは一体何なんだ……?」

――街中

翔太郎「しかし、情報収集って言ってもな……
    現状、なんの目星もついてないわけだが」

亜樹子「って、翔たろ――じゃなくて、翔ちゃん!?
    その格好のまま飛び出して来ちゃったなんて、私聞いてない!」

翔太郎「あ?なんか問題でも……」

現在の翔太郎の服装
(亜樹子によって)乱れたシャツ、ちょっと大きいズボン、
サイズの合ってない靴、ちょっぴり大きな帽子

翔太郎「」

翔太郎(なんで気付かなかったんだ、俺……)

亜樹子「もう、しょうがないんだから!ほら、行くよ」

翔太郎「どこにだよ」

亜樹子「いいから、こっち!」

翔太郎「おい、引っ張んなよ!靴が脱げるだろうが!」

亜樹子「あっ、ごめん」

翔太郎「で、だ」

翔太郎「どうしてこうなった」

現在の翔太郎の服装
シャツ(レディース)、ジャケット(レディース)、ミニスカ(もちろんレディース)、
オーバーニーソックス(レディース)、ブーツ(レディース)

翔太郎「変わってないのは帽子だけじゃねえか……」

亜樹子「きゃー!かわいい!似合ってるよ、翔ちゃん!」

翔太郎(俺、何しに来たんだっけ……)

亜樹子「さて、翔ちゃんの服と下着は着替えたことだし、
    そろそろ情報収集、行ってみよー!」

翔太郎「……ようやく満足したか」

翔太郎(なんで結局着替えまで買ってるんだよ……
    両手がふさがるほど買っても、事件が解決すれば必要なくなるんだぞ?)

翔太郎(と言ってやりたいところだが、こいつなりに思うところがあるんだろう。
    何せ普段から周りにいるのが男ばっかりだからな)

翔太郎(どうせすぐに男に戻れるんだし、今くらいは付き合ってやるか)

亜樹子「翔ちゃん、ほら早く!」

翔太郎「分かったから引っ張るなって!
    あとお前も一つくらい荷物持てよ」

亜樹子「情報の手がかりっていうと、今のところ翔ちゃんだけだよね?」

翔太郎「ああ、そうだな……って、話をそらすな。
    ほら、せめてこれだけでも持てよ」

亜樹子「何よ、所長はこういう雑用はしないの!
    そんなことより、何かない?ドーパントに襲われたとか」

翔太郎「ドーパントに襲われて忘れるってことはないだろ」

亜樹子「うっ、それもそっか」

亜樹子「あ!じゃあ、変な人に会ったりしなかった!?
    ちょーっと変態的な目で見つめてくる人とか!」

翔太郎「そんな気持ち悪い奴がいたら気付くに決まってるだろ……」

亜樹子「どうかなー。翔ちゃんって抜けてるとこがあるし」

翔太郎「そんなことないだろ」

亜樹子「自分で気づいてないあたりがねー……
    とにかく、記憶を呼び起こして!ちょっとでもいいからヒント!」

翔太郎「あー……そうだな。
    そういえば、昨日の夜……」

亜樹子「昨日の夜?」

翔太郎「急にラーメンが食いたくなって、コンビニに行ったな」

亜樹子「ふむふむ、それで?」

翔太郎「……だけだ」

亜樹子「なによもう、役に立たないわね!」

亜樹子「ていうかだめじゃない!夜食はおいしいけど、美容の敵!」

翔太郎「健康にもよくないな」

亜樹子「夜食は以降控えるように!」

翔太郎「分かってても食いたくなるんだよな、これが」

亜樹子「翔ちゃんったら、それでも花の二十代の乙女なの!?
    もっと自分を美しくするために努力しないと!」

翔太郎「だから俺は……ああもう、反論するのも面倒だな。
    いいからさっさと情報収集だ」

亜樹子「その情報のヒントがないから困ってるんじゃない……」

ピピピ……

翔太郎「おっ、フィリップからか。俺だ」ピッ

亜樹子「なになに?もしかしてなんのメモリか分かっちゃったの?」

フィリップ『翔太郎、すまない』

翔太郎「は?」

フィリップ『君たちが昼食も用意せずに飛び出したものだから空腹でね。
      君が昨夜買っておいて結局食べずにいたカップラーメンを食べてしまった』

翔太郎「……は?」

フィリップ『醤油の味が麺に染み渡って、非常においしかったよ。
      思わず残った汁まで飲んでしまったからね』

亜樹子「ちょっと、どうしたの翔ちゃん。フィリップ君はなんて?」

フィリップ『僕の用事はこれだけだ。ごちそうさま』ガチャ……ツーツー

翔太郎「……亜樹子」

亜樹子「なに!?どんな情報だったの?」

翔太郎「昼飯、食うか……」

亜樹子「えっ?まあ、別にいいけどフィリップ君は?」

翔太郎「知るか!」

亜樹子(……なんの電話だったんだろ)

亜樹子「それで、どうしてコンビニなの?」

翔太郎「そういう気分なんだ!」

亜樹子「なんで怒ってるのよー」

店員「らっしゃーせー」

翔太郎「……あった、これだ。いや、ここは敢えて別のを食べて
    フィリップに自慢してやるか……?」

亜樹子「なーんかブツブツ言ってるけど、私はこれ!」

亜樹子の手にはほかほかおでんが!

翔太郎「もう買ったのか?」

亜樹子「うん。先に外で食べてるからねー」

翔太郎「ああ、すぐ行く」

翔太郎「……さて、どれを食うか」

翔太郎(選択肢は限りなく多いが、この場合フィリップが悔しがればいい。
    つまりあいつの興味を引きそうなもの……珍しいものだ)

翔太郎(けどあいつ金持ちだったな……意外と庶民の味を知らないってのも有り得る)

翔太郎(……どうする、俺)


――その頃の亜樹子

亜樹子「うーん、ほかほかでおいしーい!」

翔太郎「……よし、これだ!」

翔太郎の手にはほかほかおでんが!

翔太郎「ぶっちゃけ寒い」

店員「ありあとーざいやしたー」

翔太郎「さて、亜樹子は……いたいた」

翔太郎「って、もう食べ終わったのか?」

亜樹子「だって、翔ちゃんを待ってたらおでんが冷めちゃうし」

翔太郎「それはそうだけどな……」

亜樹子「早く食べて今度こそ情報収集よ!」

翔太郎「ああ、そうだな。……あっつ!?」

亜樹子「もー、ちゃんとふーふーして食べないと」

翔太郎「あちち……そうだな。ふー、ふー。
    ……ん、うまいしあったかい」

亜樹子「たまには外でっていうのもいいものだよね」

翔太郎「だな。今度はフィリップも誘って……」

翔太郎「いやいや、フィリップはほっとこう!そうしよう」

亜樹子「ほーんと、なにがあったの?」

翔太郎「大したこと……だけどな、気にするな」

亜樹子「教えてよー、翔ちゃーん」

翔太郎「おい押すな、おでんの汁が零れる……あっ」パシャ

地面に広がる水たまり(おでん)

亜樹子「あっ……ご、ごめん」

翔太郎「亜ぁー樹ぃー子ぉー……」

店員「お客さーん」

翔太郎「ああん?」

店員「ちょっ、睨まないで下さいよ~。まあいいや、はいこれ」

翔太郎「おでん?」

店員「零しちゃったんでしょ?これ、おごりっすよ」

翔太郎「なんでだよ」

店員「いやーそりゃ、下心っすね!」

翔太郎「」

店員「そんじゃ、今後ともごひいきに!」

亜樹子「今の、もしかしてナンパ?」

翔太郎「……お、俺は……男だぞ……」

亜樹子「どう見ても女の子だよ?」

翔太郎「ぐはっ……」

亜樹子「一々傷つかないの!こういうのはラッキー♪って思えばいいんだから。
    ほらほら、冷める前に食べて」

翔太郎「ナンパ……俺が……?男なのに?ナンパされた……?
    男がナンパ……俺を……俺は……」

亜樹子「翔ちゃんが食べないなら私が食べるからねー」フーフー

翔太郎「……俺は、男……だよな?」

――街中

亜樹子「翔ちゃん、街に異変が起こってないか皆に聞いてみない?」

翔太郎「ああ、そうだな……」

亜樹子「翔ちゃん?聞いてる?」

翔太郎「ああ、そうだな……」

亜樹子「……私と竜君ってラブラブのお似合い夫婦だよね?」

翔太郎「ああ、そうだな……」

亜樹子「風都一どころか、世界一の夫婦だよね!?」

翔太郎「ああ、そうだな……」

亜樹子「むふふ……じゃあ私って、事務所の誇る美少女所長だよね!」

翔太郎「馬鹿か」

亜樹子「あれー!?」

翔太郎「ったく……ふざけてる場合か」

亜樹子「乗ったのは翔ちゃんでしょうが!」スパーン

翔太郎「いてっ!……おい、叩かないんじゃなかったのか」

亜樹子「叩かないんじゃなくて叩けなかったの!
    でもって、勢いに乗ったら意外と叩けたの!」

翔太郎「なんかいい加減だな……まあいい、さっさと情報を集めるぞ」

亜樹子「ラジャー!」

翔太郎「って待てよ、おいおいおい、亜樹子」

亜樹子「うん?」

翔太郎「今の俺があいつらに会ってみろ、十中八九玩具にされるじゃねえか!」

亜樹子「そういえばそうだねー。うんうん、さ、行こう!」

翔太郎「おい!……悪いが、お前一人で行って来い」

亜樹子「えー?別にそれはいいんだけど、翔ちゃんは何するの?」

翔太郎「とりあえずこの荷物を事務所に置いて、それから……」

亜樹子「それから?」

翔太郎「……いいから行って来い!」

亜樹子「もー、さぼったりしないでよ?」

翔太郎「するわけねえだろ、お前じゃないんだから」

亜樹子「私だってさぼったりしませんー」

翔太郎「どの口が言うんだか……ま、気を付けろよ。
    何かあったら電話しろ、すぐに駆けつけてやる」

亜樹子「はいはーい、じゃあね!」

――鳴海探偵事務所

フィリップ「お帰り、翔太郎。亜樹ちゃんはどうしたんだい?」

翔太郎「あいつは情報収集だ。……おいフィリップ、分かってんだろうな?
    あれは楽しみにとってあったんだぞ」

フィリップ「そうは言っても翔太郎、君たち二人が何も用意していなければ
      僕は事務所にあるものを食べるしかない」

フィリップ「生憎残り物も見当たらなかったし、これは当然のことだ」

翔太郎「なんだと!?」

フィリップ「料理のできない僕を一人残していった君にも責任はあるんじゃないか?」

翔太郎「それは……まあ……」

フィリップ「ならこの話はもう終わりだ。翔太郎、お疲れ様」

翔太郎「あ、ああ……」

フィリップ「何か情報は……なさそうだね。だからこそ亜樹ちゃんと
      別行動をとったんだろう?」

翔太郎「……午前中はほとんど買い物だったからな」

フィリップ「そういえば、ずいぶんたくさんの買い物袋だね。
      あまり見かけないロゴだけれど……」

翔太郎「……」

フィリップ「それに翔太郎、服装が朝と変わっている。
      見たところ女性用の服に着替えたようだけれど……」

フィリップ「君の容姿は一般的に整っている部類に入るようだ。
      服装を整えると一層それが際立つね」

翔太郎「……もういい、黙ってろ」

フィリップ「おや、気分を害するようなことを言ったかい」

翔太郎「かもな」

フィリップ「一般論では気を悪くする人もいるからね。
      すまない、配慮が足りなかったよ」

翔太郎「いや、そういう問題じゃなくてだな」

フィリップ「僕個人の意見を言うと……
      すごくかわいいよ、翔太郎」

翔太郎「男に褒められても嬉しくねえよ!」

フィリップ「……そうなのかい?」

翔太郎「そうだ!分かったらもうそんな……馬鹿なことは言うな!」

フィリップ「そんなに嫌がるなんて……すまない」シュン

翔太郎「……そ、そこまで落ち込まなくてもいいぞ?」

フィリップ「大事な相棒を傷つけたんだ、当然だよ……」

翔太郎「フィリップ……」

翔太郎「別に傷ついてない」

フィリップ「それにしては、ずいぶんとショックを受けた表情じゃなかったか」

翔太郎「それは、女扱いに慣れてないんであってだな……
    あのな、普通に考えろ」

フィリップ「普通に?」

翔太郎「お前は褒められて悪い気がするか?」

フィリップ「……しない。はっ、つまりそうか!
      翔太郎は『かわいい』という褒め言葉に慣れていないから……」

フィリップ「照れていただけなんだね!」

フィリップ「それなら『かわいい』という言葉に慣れればいいということになる」

翔太郎「は!?」

フィリップ「翔太郎、『かわいい』よ」

翔太郎「お、おい」

フィリップ「女性らしい服装もよく似合っていて『かわいい』」

翔太郎「フィリップ?」

フィリップ「おや、少し頬が赤いね。林檎みたいで『かわいい』よ!」

翔太郎「や、やめろ!変な気分になるだろうが!」

その後、翔太郎はフィリップの『かわいい』攻撃を受け続けることとなり……

――夜

フィリップ「――それに、その帽子もいつもと違った趣で『かわいい』と
      ……おや、翔太郎、携帯が鳴っているよ」

翔太郎「ぜえ……はあ……た、助かった……」ピッ

翔太郎「もしもし……」

亜樹子『翔ちゃん?なーんか息が荒くない?』

翔太郎「気のせいだろ……それより何だよ?」

亜樹子『そうだ聞いてよ!あれからずっと異変がないか調べてたのに
    皆何も知らなくて!もーどうしたらいいのよ!』

翔太郎「……そうか。今日はもう切り上げていいぞ。
あんまり遅くなったら照井がうるさいからな」

亜樹子『わかった。それじゃあ、体のこととかいろいろ心配だったら電話してね!』プチッ

フィリップ「今の電話は亜樹ちゃんからかい?」

翔太郎「おう。亜樹子はもう家に帰らせた。収穫もなさそうだからな」

フィリップ「それが賢明だ。ところで翔太郎、そろそろ夕食の時間じゃないか?」

翔太郎「そうだな、とっとと作ってとっとと食うか」

フィリップ「ああ、楽しみにしているよ」

翔太郎(……よっしゃああああ!!やっと『かわいい』攻撃が終わったぜ!!)

フィリップ「?」

フィリップ(どうしてガッツポーズをしているんだろう……?)

その翌日も、そしてさらにその翌日も、一向に情報は集まらなかった……
――そうして迎えた一週間後

翔太郎「……はあ」

フィリップ「どうしたんだい、翔太郎?重いため息だね」

翔太郎「もう一週間も女なんだぜ……信じられるか?」

フィリップ「信じるも何も事実だからね」

翔太郎「はあ……」

翔太郎(最初は抵抗のあった風呂やトイレもすっかり慣れてきた……
    このままだと確実に男としての何かを失う気がするぜ)

翔太郎「おいフィリップ、本当に何も分からないのか?
    こんな能力のメモリ、そうそうねえだろ」

フィリップ「何度目だい、その台詞。検索の結果は変わらないよ」

翔太郎「ちくしょー、どうしろってんだよ……このままだと……」

フィリップ「いいじゃないか、君は君のまま何も変わっていない。
      ただ少し容姿が『かわいく』なっただけだよ」

翔太郎「はっ、もうその言葉にも慣れたぜ!……って、別に慣れたくないんだよ!
    むしろ無縁のままでいたいんだよ……」

フィリップ「うーん。どうしたものかな」

亜樹子「やっほー。どう?何か分かった?」

翔太郎「亜樹子ぉ……」

亜樹子「ちょっと、床に座り込んだらスカートが汚れちゃうよ?」

翔太郎「うわあああ!!なんで普通にスカート履いてるんだ俺!?」

フィリップ「これはちょっと重症かもしれないね」

亜樹子「うん、このままほっとくのは流石にかわいそうだけど……
    犯人の手掛かりがないんだもん、どうしようもないよ」

亜樹子「いっそのこと、身も心も女の子になる!っていうのは?」

翔太郎「馬鹿だろお前……本当に馬鹿だろ!くそっ!」ダッ

フィリップ「あっ、翔太郎!……行ってしまったね」

亜樹子「またナンパされて傷口を広げるだけじゃないかなあ」

フィリップ「翔太郎はそんなに男性を惹きつけるのかい?」

亜樹子「それはもう!だってあのスタイルだよ?ドラマかなにかか!
    ってくらいに人が寄ってきて大変なのよ~」

フィリップ「そうなのか……」

フィリップ(少し、変な気持ちだ……これは何なんだろう)

――公園

翔太郎「あいつら、好き勝手言いやがって……俺は……」

翔太郎(俺は男だ……男なんだ……例え体が女でも……!)

翔太郎「……勢いで飛び出しちまったが、ここで座ってても何にもならねえな。
    帰るか……おわっ!?」

翔太郎が尻餅をつく。

翔太郎「いってー……おい、ちゃんと前見て歩きやがれ!」

男「ククク……女の体はどうだ?」

翔太郎「なっ……まさかお前……!」

男「そのまさかだ!」

翔太郎「俺を女にした犯人!」

男「ご名答!一週間前、コンビニから出た時に俺の能力を使わせてもらった」

翔太郎「どうして俺にその記憶がないんだ……普通忘れないだろ」

男「直接会ったわけでなく、茂みから能力を使わせてもらったからな。
  ところが帰り道では女にならなかったので心配していてね……」

男「経過の観察に来たが、なかなかどうして、素晴らしいじゃないか!
  これで自信を持って君以外の男も女に変えられる!」

男「これならいけるかもしれないぞ……『風都ハーレム計画』!」

翔太郎「アホかーーー!!?」

男「何?貴様も男なら分かるだろう、ハーレムへの憧れが!」

翔太郎「こんな馬鹿に付き合ってられるか……」ピッ

フィリップ『翔太郎?』

翔太郎「よおフィリップ、間抜けがのこのこと現れやがったぜ」

フィリップ『そうか、じゃあ頑張ってくれ』

翔太郎「ああ、行くぜ相棒!……ん?」

フィリップ『僕は事務所で応援しているよ』ガチャ ツーツー

翔太郎「は?え?お、おい!?」

翔太郎(フィリップぅぅぅううう)

男「ふはは!聞いて驚け俺の持つ『ジェンダー』のメモリには、
  相手の性別を逆転させる能力がある!さらに……」

翔太郎「前置きが長いんだよ!」ゲシ

男「あべし!」

翔太郎「ったく……さっさとメモリブレイクして元に戻るとするか」

翔太郎(やっと……男に戻れるんだ)

カチッ ジョーカー

翔太郎「変身」

ジョーカー「さあ、お前の罪を数えろ!」

まずは軽く肩慣らしと、女としての生活で溜まった鬱憤を晴らさせてもらおう。
男が変身したドーパントにジョーカーは強烈な蹴りを繰り出した。

ドーパント「ひでぶ!」

楽勝。内心笑みを浮かべながらドーパントを見据える。
ドーパントの動きからは余裕が欠片も感じられない。それもそうだろう。
まさか自分が最初に狙った人間が風都を守る仮面ライダーだとは思うまい。

運のない男だ。

ジョーカー「これで終わりだ」

ドーパント「ま、待て!もしも今俺を倒したら……」

ジョーカー「悪いが、言い訳を聞く気はねえな」

ドーパントは何かを必死に訴えようとするも、ジョーカーの無情な一撃にかき消された。

ジョーカー「おらぁ!」

ドーパント「たわば!」

倒れたドーパントが男に戻り、『ジェンダー』のメモリはメモリブレイクされた。
こうして、風都を脅かす悪がまた一つ、仮面ライダーによって倒されたのである。

――一週間後

フィリップ「翔太郎、今日も『かわいい』ね」

翔太郎「……いい加減にしろよ、フィリップ?
    相棒って言っても、やっていいこと悪いことがあるだろうが」

フィリップ「うん、分かってるさ。でも……」

翔太郎「なんだよ」

フィリップ「そう言いながら頬を赤くしている君を見ると、つい」

翔太郎「……そうかよ」

亜樹子「翔ちゃん、すっかり諦めモードだね……」

照井「仕方がないだろう。まさか、こんなことになるとはな……
   そもそも俺は左が女になったことも話に聞いていただけだったが」

照井「まさか『ジェンダー』のメモリにあんな恐ろしい能力があるとは」

亜樹子「ひどいよね……性別が変わって一週間経っちゃったら、
    またメモリを使う以外に元に戻る方法がないなんて」

照井「ああ。おかげで左とフィリップが相棒というよりも……」

亜樹子「……うん……」

フィリップ「翔太郎、今日の夕食は肉じゃがにしてくれないか?」

翔太郎「別に構わねえが、どうした?」

フィリップ「肉じゃがとは愛情料理の代表らしいからね」

翔太郎「あー……そうでもないぜ」

フィリップ「それはどういう意味だい?」

翔太郎「……愛情なら、どの料理にも入ってる」

フィリップ「翔太郎……!」

照井「正直、直視できないんだが」

亜樹子「うん……冗談でも女の子になっちゃえば、なんて言わなきゃよかった……」

照井「元が左だと分かっていると、どうしてもな……
   見たままに受け止めれば……」

照井「くっ、俺には無理なのか……仲間の性癖を受け入れることが……」

亜樹子「竜君は悪くないよ……ううん、それどころか、誰も悪くない……
    きっと、皆が被害者なんだよ……」

翔太郎(俺は……男なのか?それとも……)

フィリップ「翔太郎」

翔太郎「何だ、フィリップ」

フィリップ「君は君だ。僕は君という人間を愛している」

翔太郎「なっ、あ、ああ、愛……してる……って……」

フィリップ「僕は君という人間の人格を愛しているんだ。
      唯一無二の相棒としてね」

翔太郎「フィリップ……」

翔太郎「……そうだな」

翔太郎(これからも迷うことはあるかもしれない。俺は男なのか、女なのか……
    けど、もう迷ったって心配はいらない)

翔太郎(俺には、俺自身を受け入れてくれる最高の相棒がいるんだから)

翔太郎「今日の肉じゃがは、愛情大盛りだな」

フィリップ「本当かい!?愛情という調味料のもたらす味……
      今から楽しみで仕方ないよ!」

翔太郎「ああ、期待は裏切らないぜ……相棒」


イイハナシカナー?ってとこで終了!ありがとうございました!

実は次にどの平成ライダーで書くか悩んでいて、
気付いた人もいるかもしれないんですが、前回初めてのSSでも女体化を書きました。

次も女体化の予定なんですが、皆さんの意見も聞いてみたいというか……

その1
世間知らずの僕っ娘ヴァイオリン職人

その2
口が悪けりゃ目つきも悪い、だけど根は優しい夢の守り人(女の子)

この二つで悩んでいます。
できればこの二つでどっちがいいか意見が欲しいなー……なんて。
気が向いたら答えてください。

仮面ライダーでTSモノ…嫌いじゃないわ!

どっちも見たいというのはダメ?ダメなら前者で

おはようございます。今日は休みの>>1です。

>>69どっちも書くつもりなんですが、どっちから書こうか迷ってます。


実はこういうやりとり入れたかったけど展開上無理だった。


ドーパント「お前ら、女になるってのは悪いことばかりじゃないんだぞ!?」

照井「何……?」

照井(俺が女になる……つまり所長とは女同士。不利益しか見つからんな……)

ドーパント「お前に嫁がいるなら、女同士だぞ?想像してみろ!」

照井「……ぐっ」

その時照井の脳内に不思議な声が……

悪魔『百合でしかできないあんなことやそんなこと……興味があるだろう?』

照井「俺に質問するな……!」

天使『心配するな、所長への愛さえ失わなければ何の問題もない』

照井「だが……」

悪魔『女の体で人生を楽しもうと誰も文句は言わない』

照井「それでも……俺は」

天使『所長だってお前の姿なんて気にせず愛してくれる』

照井「俺は……所長の愛した俺でいたいんだああああ!!」

照井「……振り切るぜ!」

フィリップ「ずいぶん盛り上がっているが、そもそも君の体質では
      メモリの影響を受けないんじゃないか、照井竜」

照井「」



こういう感じのシーン入れたかったです。
照井と亜樹子が好きなもので。

それと、とりあえず次回はキバでいこうと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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