剣「お前は勇者か」 少女「違うよ」 (161)

地下の聖域

天井の岩盤に亀裂が走り、
そこから地上の光がわずかに漏れ出すので暗くはない


剣「……」

岩に突き立てられた、一振りの剣

剣「ヒマだ……」

少女「なんでこんな所にいるの?」

剣「勇者以外の人間に触れられたくないから、封印してもらったのだ」

少女「自分のせいじゃん」

剣「まあそうなんだが」

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少女「剣ってどうやって喋ってるの?」

剣「私も知らん」

少女「剣ってどうやって物を見てるの?」

剣「鍔の所にある宝石から物を見ている」

少女「ほうほう」グイ!

剣「もぎ取ろうとするんじゃない」

剣「また来たのか」

少女「うん」

剣「……」

少女「……」

少女「」ガシ!

剣「!!」

少女「フヌヌ……」

剣「」グググ……

少女「はー、抜けないや」

剣「当たり前だ、私は選ばれた勇者にしか抜けんのだ」ハーハー……

少女「剣、クッキー食べる?」

剣「くれるのか」

少女「はい」スッ

剣「」パク! モグモグ

少女「!??」

剣「どうした?」

少女「はぁ、お母さんってなんであんなにうるさいんだろ」

剣「お前の為を思って言っているのだろう」

少女「剣に何がわかるんだよぅ」

剣「わかるさ
  私だって、子供の時はいつまでも父や母に見守られていると思っていた……だが」

少女「ちょっと待って」

剣「なんだ」


少女「剣って勇者っていう人を待ってるんだよね?」

剣「そうだ」

少女「勇者ってどんな人なの?」

剣「えっ」

少女「え?」

少女「まさか、知らないの?」

剣「いや……魔王を倒す者が勇者だ」

少女「でもそれじゃ、魔王を倒した後に剣を手に入れるってこと?」

剣「……」


剣「数百年前、私は勇者の武器として魔王と戦った」

少女「おお、それってもしかしておとぎ話の?」

剣「おそらくそれであっているだろう
  だが魔王は自らの復活を予言し、闇へとその身を沈めたのだ」

少女「ふうん……じゃあ、剣はまた魔王と戦うためにここにいるんだ」

剣「そうだ」

少女「魔王の予言がハッタリだったらどうするの?」

剣「!!!!」


剣「私の人生は一体……」ブツブツ……

少女「(言っちゃいけないこと言っちゃったかな……)」


少女「埃かぶってるね」

剣「まあ、数百年はこの体勢だからな」

少女「拭いてあげる」キュキュ

剣「ひゃん」





剣「なぜ殴る」

少女「ごめん、なんかイラッときて……」


少女「なんかさ」

剣「?」

少女「剣の刺さってる岩って割れそうだよね」

剣「……そう簡単には割れんだろう」

少女「」トンカチー!

剣「」

少女「トウ」

ゴン!

ピシピシ!

少女「!?」

剣「!!」


岩「」ヤベェ ワレルワ……

剣「なんでそんなに脆いんだ!?」

岩「」ソリャ アンタガ スウヒャクネンモ ササッテタラネ……

剣「うんすまん」

少女「ど、どうしよう!?」

剣「おさえろ早く! 割れないように隙間はなにかでくっつけてくれ!」

少女「おにぎりしか無いよ!?」オベントウノ!

剣「くっつけば何でもいい!!」


後日

少女「剣ー」

剣「」

少女「アリがたかってる!!」

ご飯粒に


剣「えらい目にあった……」

少女「結局、岩割れちゃったね……」

アリ「!」

アリ「」オレガユウシャカ……

少女「」

プチ!

アリ「ギャアア!」


少女「ねえねえ」

剣「なんだ」

少女「今度、街のお祭りに行くことになったんだ」

剣「そうか」

少女「一緒に来る?」

剣「抜き身の剣を持ち歩くつもりか」



……

男「ここに勇者の剣が……」




男「無い!?」

……


剣「ど、どうも……」

母「まあ、あなたが剣さん?」

父「娘からしゃべる剣の話なんて聞いて、頭がアレになったのかと」

少女「やめてよぅ」

剣「」(こんな時どう受け答えすればいいかわからない)


……

男「誰かが入った跡がある……そいつが抜いたのか……」




男「俺は勇者じゃなかったのか……」トボトボ……

……



盗賊「へへへ、命が惜しかったら金目の物を出しな」

少女「ひいい、えらいこっちゃ」

剣「止むをえん、私を使え」

少女「これをあげるからお金は勘弁して下さい」

剣「待てい」


少女「使えって言われても……」

剣「いや逆だな、私が使わせてもらう」

少女「! 体の自由が効かない……?」スチャ

剣「私は持ち主の体を操り、達人レベルの剣士にする力を備えている」

少女「剣って呪われてない?」

剣「……一文字柄打ち!」

ゴス!

盗賊「ギャアァ!?」パタン

少女「(無視した!?)」


ワーワー!

剣「剣闘の見世物か」

少女「見たい?」

剣「ああ
  ……人が多くて私の位置では見づらい」

少女「」ヒョイ

頭の位置に持ち上げた


キン! ガキィン!

少女「おお」

剣「……」

少女「専門家から見てどんな感じ?」

剣「……」

少女「(神妙な、顔? で見入っちゃってまあ)」

剣「なんかムラムラしてきたな」

少女「ムラムラ!?」

剣「刃と刃が交わり熱を帯びる様はまるで男女の交わりのごとし!」

少女「そう思ってるの剣だけだよ」



結局祭りは剣闘を眺めるだけで終わったという


……

???「(ここか……たしかに、魔を寄せ付けぬ聖域の気配を感じる)」

???「(魔王様が倒れて数百年……
  しかし、もうじき復活の時がやってくる)」

???「(その前に、忌々しき「勇者の剣」を打ち砕き、前祝いにするとしよう!)」





???「ない!?」

???「(ここではなかったのか?
   いや、この破邪の気配……間違いなくここにあったはず!)」

魔王側近「……人間が侵入した跡が……まさか!
     勇者は、すでに誕生していたというのか!?」

……


少女「これとかどう?」

剣「もう少し平らになっている方がいいんだが」

少女「あんまり大きいと、私が剣でパワーアップしても運べないかもよ?」

剣「うーむ」

(割れた岩に代わる剣の台座岩探し)


少女「これなんていいんじゃない?」

剣「おお、苔むした感じがいいな……ちょっと突き立ててみてくれ」

少女「うん」グッ

ガッ!

バガン!

岩「」ギャアア!?

剣「……」

少女「……まっぷたつ……」


……

側近「聞け、我が同胞たる魔の血族たちよ!
  我らが主たる魔王様復活を前にして、あの忌々しき勇者がこの世に誕生した!」

側近「我らに魔王様の庇護なき今、今までどおり復活を待つことなどできぬ!
  現状の戦力で人間たちに戦いを仕掛け、最悪でも勇者だけは血祭りに上げるのだ!!」

オオオオオオオオオオオ!

……



トンテンカンテン!

少女「よし! この高級感あふれる木の箱に!」

剣「割と悪くないデキだな」


……

王「何! 魔王の軍勢が攻撃を開始した!?」

兵「すでに最接近領の砦において戦いが始まっております!」

将軍「なんということだ……神の予言にある勇者の誕生を待たずして、魔王が復活してしまったというのか!」

……


少女「聖域の真ん中辺りに置いて……」

コト

剣「……」

少女「……」

剣「レイアウトが寂しくないか?」

少女「うん……木箱が一個だけってなんか悲しいね……」


……

王「将軍、急ぎ兵を招集せよ!
  最接近領の砦が落とされれば、領内への魔族の侵入が自由になってしまう!」

将軍「お、お待ちください! 魔王がまとう闇の衣を打ち破れるは、勇者のみが扱えるという「勇者の剣」のみ!
   このままでは、我らに勝ち目はございませぬ!」

王「たわけが!」

メキ!

将軍「アゲフ!?」

王「いつから貴様は勝つだ負けるだで気を弱くする軟弱になった!?
  民はいかなる時も、心強き我らの戦いを求めているのだ!」

将軍「王……!」

王「さあ、剣を持て! 馬を引け!
  勇者などおらずともよい! たとえ負ける戦であろうとも、我らが一人でも多く魔族を倒せば!
  後の世の子たちが必ず魔を打ち払ってくれる!」

将軍「ははぁ!」

……


少女「」ペタペタ

剣「」

粘土を剣にくっつけて台座にする作戦


……

魔物「所詮は人間の軍勢よ……この砦さえ落とせば、後は雪崩れ込むのみ!」

兵士「く、このままでは……!」

王「ぬおおおお!」

バキャ!

魔物「オムラ!?」

兵士「お、王!?」

将軍「怯むな! 魔物の軍勢をなぎ払うのだ!」

兵士「将軍!」

王「聞け皆の者!
  この戦い、我々人間と魔族が争う最大のものとなるだろう!
  もはやここに勇者などいらぬ! この戦いに勝利し、人類を救ったここにいる全員が勇者となるのだ!」

オオオオオオオオオ!

……


少女「うん、わりとそれっぽい!」

剣「」グラ

少女「!」

剣「」パタン

剣の重さで徐々に変形してしまった


……

兵士「終わった、のか……?」

将軍「お、王! 王はどこに……」

王「案ずるな」

兵士「王!」

将軍「お喜び申し上げます、我が軍の勝利です!」

王「しかし、この戦い……これで終わりではあるまい」

将軍「はっ……未だ、魔王その人は姿を現しませんでした……」

王「長く、険しい戦いになろうな」

将軍「……」

王「そう深刻な顔をするな
  今日この戦を乗り越えた兵達の顔を見よ
  魔物の軍勢など、魔王など恐るるに足りぬ事だ」

将軍「ははぁ!」


―――後に神話として語られるその戦いの結末を知る者は、今は誰もいない……

FIN


少女「もう地面にそのまま刺しちゃおうか?」

剣「さすがにそれはな……」

少女「こうやってさ」

ザク!

剣「」(突き立てられた)

少女「こーゆうかんじで……」ガリガリ

少女「魔法陣っぽいものを周りに描けば……」ガリガリ

剣「ほう、なかなか……」

少女「でしょ!」


少女「この石も削ってドクロっぽくして……」

剣「(いかんなんか調子に乗り始めている!)」


側近「(クソ、なんということだ!
   勇者ではなくただの人間相手に敗北を喫するとは……)」

側近「(こうなれば、あの剣の場所から何か一つでも勇者の情報を得なくては!)」ザッ!


剣「ドクロをこんなに転がしてどうするつもりだ!?」

少女「えー、これとか剣の首? にかけたらそれっぽくない?」ドクロネックレス!

剣「やめろ」

少女「まあまあ」ジャラジャラ

剣「止めろというに!」





側近「(なんかすっごく禍々しくなっている!?)」


側近「」

少女「? 誰?」

剣「お前の知り合いではないのか?」

側近「(アレは紛れも無く勇者の剣! まさか、あの小娘が勇者!?)」

少女「あ、もしかして剣が待ってる勇者の人じゃない?」

剣「……いや、奴は見たところ魔族のようだが」

側近「(ゆ、勇者ではない!? いやしかし前回来た時に無かったのは一体!??)」

混乱している!


側近「おい! 貴様は勇者の剣か!?」

剣「そうだが」

少女「(剣に名前問いただす人初めて見た)」

側近「貴様!」

少女「え、私?」

側近「貴様が勇者だな!?」

少女「違うよ」

側近「ならば、以前ここから剣を持ちだしたのは誰だ!」

少女「私だけど」

側近「(くああぁ! わけがわからん!)」


剣「単に勇者でもない人間が私を持っているというだけの話だが」

少女「(それなのに「勇者の剣」っていうネーミングはどうなんだろ……)」

側近「ば、バカな! 貴様は気位が高く、
   認めた勇者以外の人間に触れられることさえ嫌っていたはず……!」

剣「ふん、数百年も一人きりにされたらもう誰が持ってもいいかな、なんて思い始めるわ」

少女「寂しかったんだ」

側近「……」


側近「……まあいい、この場で貴様を砕けば、魔王様が復活なされた時に人間たちに倒す術はなくなる!」

ビュン!

少女「」パシ

剣「」

チャキ!

ガキン!

側近「!?」

少女「」ヒュンヒュン!

側近「(ぶ、分身!?)」

剣「はああ!」

少女「ダークネスツインフロスティックブレード!」

側近「ギャアア!」



側近「」パタリ

少女「」

剣「」

剣「(なんだあの技名)」


少女「……終わった……」

剣「(そもそも何が始まっていたと言うのだろう)」


剣「しかし、コイツの言っていた……」

少女「(そういえば、この人誰なんだろ……)」

側近「」グッタリ

剣「魔王はまだ復活していないとなると……勇者が現れるのはまだまだ先か」

少女「そうなの?」

剣「考えてもみろ、魔王より先に現れる勇者がいるか?」

少女「まあ、いないかなぁ」

剣「やはり、私は当分ヒマなようだ」


少女「……なってみようかな、勇者」

剣「何?」

少女「だって、ある種私が抜いたようなものじゃない?」

剣「アレを抜いたというのか?」


アリ「ヌイタノハ オレノ アニキダ!」

少女「」

プチ!

アリ「ギャアア!?」

~~~~~~~



少女「と、いうわけで旅に出ようと思うの」

剣「(旅!?)」

父「何を考えているんだ!」

母「女の子が一人で、できるわけ無いでしょ!」

剣「(親の思考はまともでよかった……)」

少女「大丈夫! 剣もついてきてくれるから!」

父「なんだ、なら安心だな」

母「もう、それならそうと早く言いなさい」

剣「(私の何が二人の心を動かしたんだ!?)」


少女「じゃあ、行ってきます!」

剣「待て待て待て!
  私は行かんぞ!」

少女「なんで?」

剣「いいか、私は魔王が復活した時のため、勇者の武器として戦う使命を負っている!
  ここで勇者を待つことが」

少女「剣のバカ!」

剣「!?」

少女「そんな受け身でどうするの!
   今、国中の人たちが魔族の攻撃に怯えてるんだよ!?
   自分で「勇者」を探しに出るくらいしなきゃダメだよ!」

剣「! そ、そんな考えがあったのか」


剣「しかし、聖域に勇者が来たら……」

母「なら代わりに、ウチの包丁を置いといたらどうかしら」

少女「おお、いいアイディア!」

剣「……まあ、何もないよりはいいか」

いいのだろうか?


剣「しかし旅と言っても、行き先は決まっているのか?」

少女「うん、まずここから北にある商都に行くんだ」

剣「ほう」

少女「そこから馬車が出てるから、それに乗って王都まで。
   で、魔物と最接近の城塞都市から魔族の土地に入って魔王城を目指すの」

剣「なるほど」








剣「待ておい」

今日はここまでです
明日にはこのお話も終わる予定なので、最後まで読んでいただけると幸いです


剣「まさか、自分で魔王を倒そうなどとバカなことを考えてるわけではないだろうな?」

少女「違うよ!
   いい? 人の流れの多い商都なら、人がたくさんいるでしょ!」

剣「ああ」

少女「じゃあ、勇者がいるかもしれないじゃん!」

剣「まあ……そうだな」

少女「で、王都では今、腕利きの戦士を募ってるの!
   これまた勇者っていう人がいる可能性大!」

剣「まあ……正しいな」

少女「で、この2つにいなかったら、後は魔物の脅威に一番さらされてる城塞都市に勇者さんがいると考えるのは当然でしょ!」

剣「う……ん」

少女「で、そこまで行ってもいなかったら!
   あとは魔王城くらいしか無いじゃない!」

剣「まあ……そうなるのかな……?」





剣「……???」



……

側近「(バカなバカなバカな! この私が小娘ごときに……!
   いかに勇者の剣とはいえ! いかに人間の王と将軍にアバラ4本と内臓を持っていかれていたとは言え!」




将軍「王よ! 今です!」ガッチリハガイジメ!

側近「! く、貴様もただでは」

王「ぬおおおお!」

ボキゴキメキ!

側近
  「アゲホ!」
将軍


???「ふん、だらしないな」

側近「! き、貴様は幹部!」

幹部「魔王様も嘆かれるだろう、今のお前の姿を見ればな」

側近「黙れ! そもそも貴様、なぜ前の総攻撃に部隊を参加させなかった!」

幹部「これは異なことを言う
   魔王様がご不在の折に、お前が勇者が現れたなどと大騒ぎをしていただけだったではないか
   そんな戦に我が兵を使えるか」

側近「く……」

幹部「ふふ、おまえも、お前の兵たちも疲れきっているだろう……
   今後の人間への、勇者への対応は私が行う」

側近「(……謀られたか……完全ならともかく、今の私には手に余る……)」

側近「……たのんだぞ」

幹部「なかなか殊勝だな……まあ、期待して待っているがいい」

コツコツコツ

側近「(……奴は確かに私より若く、英気に溢れている……
   全快の状態で負けることはあるまい)」


剣の聖域

幹部「(くだらんな……ママゴトの魔法陣か
   しかしこの聖域の力は本物らしい……)」

木箱

幹部「(剣はこの中か……)」

ズバァ!

幹部「!」

剣士「その箱を……勇者の剣を渡すわけにはいかない!」

僧侶「ようやく見つけました、伝説の勇者の剣!」

幹部「ふん、人間にしてはなかなかの剣の冴えよ……だが、貴様らごときが「勇者」など、この剣を使おうなどと100年早い!」

剣士「うおお!」

幹部「ぬおお!」




母「新しい包丁はよく切れるわー」トントントン

父「前のは少し錆びてたもんなぁ」

……


少女「」テクテク

剣「」テクテク

少女「」テクテク

剣「」テクテク

少女「ちょっとまって」

剣「なんだ?」


……

剣士「ぐああああ!」

僧侶「剣士様!」

幹部「やはりこの程度か……
   今楽にしてやろう」

???「待て!」

ゴウ!

幹部「!? 火の呪文か!」

バフ!(手で火球を砕いた)

剣士「お前は……」

魔法使い「私は魔法使い! 説明は後、今は剣を!」

剣士「あ、ああ!」

幹部「雑魚が増えたところで!!」

……


商都

少女「よし、王都行きの馬車に……」

剣「………?」

少女「……」

剣「サイフを落としたのか」

少女「」コクリ


剣「というか勇者を探さんかい」

少女「えー、探さなきゃダメ?」

剣「当たり前だ」


……

魔法使い「く、コイツ強い!」

幹部「言ったはずだ、ザコが一人増えようと相手になどならん!」

???「もう一人増えたらどうかな!?」

幹部「何!?」

剣士「だ、誰だ!」

盗賊「オレは盗賊! セコい盗みしかできない男だが、協力させてもらうぜ!」

幹部「ち……身の程知らずが!」

……


少女「えーと……」

勇者求ム!
自分は強いと思っている人!
美しく穢れ無き心を持っている人!
誰にでも優しく、あらゆる生命を愛する人!
世界を救えるのは自分しかいないと思っている人!

噴水前少女まで連絡お願いします!

少女「こんな感じでどうかな」ポスター

剣「こんな広告で来る奴は嫌だ」


……

盗賊「ぐはあ!」

剣士「盗賊!」

幹部「そろそろ終わりにするとしようか……」メキメキ!

魔法使い「や、奴の姿が変わっていく!」

僧侶「なんて禍々しい気なの!?」

剣士「ここまで……なのか……」


盗賊「へっ、何情けない声出してんだ……」

剣士「! 盗賊!」

盗賊「コイツを、見ろ……」

木箱!

幹部「ゆ、勇者の剣!? いつの間に!」

盗賊「お前なら、使いこなせるはずだ……」ガク

剣士「と、盗賊!」

僧侶「盗賊さん!」

魔法使い「盗……賊……!」


幹部「(く……しまった!
   聞けば勇者の剣の与える力は絶大、あの側近が、アバラを4本失くしていたとはいえ倒されるほど……)」

剣士「勇者の剣よ、オレに力を!」

ガパァ!

包丁「」オッス!

剣士「」

僧侶「」

魔法使い「」

幹部「」

……


少女「あ、じゃあ、こういう作戦どう?」

剣「なんだ?」

少女「剣がそこら辺のガタイのいい男の体乗っ取って、私を人質にするの!
   助けに来て、剣が操る男を倒した人が勇者!」

剣「……いや、さすがにそれは……」


……

剣士「こ、これが勇者の剣……?」

幹部「(あ、アレが勇者の剣……なのか?)」

僧侶「こ、これって勇者の剣なんですか?」

魔法使い「ほ、ホントに……?」


幹部「(クソ、オレは側近のやつと違って魔王様と勇者の戦いを知らん……
   アレが勇者の剣なのかどうか……)」

僧侶「あ、そうです! これ、勇者の剣で間違いないですよ!」

魔法使い「え、そ、そうなの?」

幹部「(そ、そうなのか!?)」

僧侶「だってあの人、この箱指して「勇者の剣」って言ってましたもの!」

幹部「(オレ!?)」

剣士「た、たしかに! この剣を使うなど100年早いとか言ってたな!」

幹部「(言ったけど! 確かに言ったけども!)」

……


商人「ご、強盗だー!
   人質とって、立てこもりやがった!」

少女「!」

剣「!」


女「助けてぇ!」

強盗「ギャーギャー喚くんじゃねぇ!」

強盗B「ち、人が集まってきやがった!」

強盗C「てめえら近づくなよ!」


少女「」

剣「」

ヒュン!

強盗A「グフ!?」ゴス!

強盗B「ゴフ!?」ベキ!

強盗C「アゲ!?」メキ!

バタバタバタ……



町民「な、なんだあの女の子!
   傭兵くずれの強盗三人を一瞬で!!」


少女「ホイト」

剣「」

強盗「」シッカリ ニギラサレル

強盗「」ムク! ガシ!

少女「たすけてぇ!!」

町民「えええええ!?」


町民「ど、どうする!」

町民B「みたろ! あんなすごい動きができる女の子の剣をアッサリ奪って捕まえたんだぞ!
   俺達でどうこうできる相手じゃない!」

町民C「・・・いや、ダメだ!」

町民D「ああ、その通りだな」

町民E「あんな女の子が果敢にも強盗に挑んだんだ、俺達が黙っているわけにはいかねぇ!」

町民F「いくぞみんな!」

オオオオオオオオオ!

少女「え、ちょっと」

剣「」


町民「大丈夫だったか!?」ホラ ケン

少女「いえ私は大丈夫なんですが……」アリガトウゴザイマス

強盗たち「」ボコボコ……


……

剣士「言われてみると、なんか手にした途端力が湧いてくるような……」

僧侶「でしょう!」

魔法使い「もしかして、本当に?」

幹部「(な、なんかアレが本物の方向で話が進んでいる!?)」




剣士「いくぞ!」チャキーン!

幹部「(来るの!?)」

……


少女「えーと、じゃあ私はこれで!」

???「待て!」

少女「え」

騎士「私は王国に仕える騎士!
   今、我が国は魔族の危機にさらされている!
   先ほどの手並み、実に尋常ではない剣の腕を持っているらしい!」

少女「は、はあ……」

騎士「是非その力を、我が国のために使って欲しいのだ!」

少女「」

剣「」


王国行きの馬車

少女「なんかすごい話になったね」

剣「そうだな……」

少女「……王国って、やっぱり強い人とかいっぱいいるのかな」

剣「それはそうだろう」

少女「……」


……

剣士たち「」ボロボロ……

幹部「チッ! やはり偽物ではないか!」バキバキン!

包丁「」ギャアア!

幹部「まあいい、ここに剣があったのは間違いないんだ……過去視魔法!」




少女「この箱、捨てずに置いといてよかったぁ」コト

剣「(さすがに包丁のまま置いておくのは気が引けたか)」




幹部「このガキ……このオレをこんなもんで騙すとはバカにしやがって……!」シュンカンイドウ!


魔物「幹部様!」

幹部「いますぐアレの準備をしろ!
   人間の国に攻め入る!」

魔物「はっ!」

幹部「(過去視でやつらの動向をさぐった……
   日の経過を考えれば、今頃は王都……ふん、側近のヤツを倒したらしいが、目にもの見せてくれる!)」

……


騎士「! なんだあれは!」

少女「……王都が、燃えてる?」


ドラゴンゾンビ「オォォ……」

幹部「さあドラゴンゾンビよ、この国のものすべてを朽ち果てさせてしまえ!」


騎士「何があった!?」

兵士「魔王軍の攻撃です!
   突然、あのバケモノが……!」

騎士「くっ、王と将軍が最接近領へ応援に行かれた時を狙われるとは!」


剣「ドラゴンゾンビ! やつらはそんなものまで準備していたのか……」

少女「やばいの?」

剣「やばいどころではない
  竜が一匹いれば、人間の国一つを滅ぼすなど造作も無いことだ」

少女「弱点とか無いの?」

剣「竜に弱点など無いが、アレは見たところアンデッド……自然死した竜の躯でも使ったのだろう
  術者を倒すか、アレを操る魔力の源を奪えば……」


幹部「!」





少女「逃げる?」

剣「それしかあるまい、残念だが、竜は剣術が通用する相手ではない」





幹部「ようやく見つけたぞ、勇者!」


兵士「勇者?」

騎士「勇者だって!?」


幹部「」トン(竜の背から降りた)

幹部「小娘、あの時はナメた真似をしてくれたな……」

少女「え、私?」

幹部「……まあいい」

言っても恥にしかならなかったので黙る


少女「な、なんか勘違いされてない?」

剣「……この状況、見ようによっては都合がいいぞ……
  ドラゴンゾンビを操っているのはヤツで間違いあるまい
  奴さえ倒せば……」


幹部「側近を退かせたらしいが、コイツはどうかな!」

ドラゴンゾンビ「グオォォォ!」

ズン!

兵士「! お、尾の一撃で敷石があらかた吹き飛んだ!?」

騎士「あの少女は!? 潰されたのか!」

少女「」クルクル ストン!

騎士「飛んで躱していた!」

兵士「なんて身のこなしだ!」



幹部「ドラゴンゾンビ! ファイアブレスで焼き尽くせ!」

ドラゴンゾンビ「」ゴゥ!

少女「」シャッ!

兵士「あの炎を剣で切り飛ばした!」

騎士「な、何者なんだ一体!」


少女「うあっつっつ! かわしきれてないよ!!」

剣「チィ、竜を相手取りながらヤツを倒すのは無理があるか……!
  ヤツもうまいものだ、一撃一撃でお前との距離を離している」


幹部「ん?」

兵士「うおお!」

ガシ!

幹部「ふん、ゾンビを操るオレを倒そうというわけか……だが」

ドス!

兵士「」ガク!

幹部「知っているぞ、ここの戦力は多くが最接近領へと送られている……
   俺の相手になるヤツなどあの小娘以外残ってはいまい!」

騎士「くっ……」


少女「騎士さん!」





騎士「え?」


少女「パス!」

剣「」ビュン!



ヒュンヒュンヒュン!



騎士「え?」パシ!

幹部「!?」


騎士「!」ギュン!

幹部「何!?(う、動きが違…)」

ザン!


幹部「ぐうぅ!?」

騎士「???」

剣「戻るぞ!」

騎士「え?(な、なんで私は剣を振りかぶっているんだ!?)」

ビュン!


ガキィ!

剣「」(床石に突き刺さった)

少女「」アタフタ!

キャッチに失敗した

少女「」チャキ!

ドラゴンゾンビ「オオオオオオオ……!」

剣「よし、術者の混乱が竜の動きを鈍くしている」

少女「やああ!」

ザク!

ドラゴンゾンビ「グオォォォォォ……」

バタン!



兵士「あ、あの竜の首を、叩き斬った!」

幹部「(ば、バカな……こんな傷を負わされ、とっておきのドラゴンゾンビまで失っただと……
   く、このダメージではもうまともに戦えんか!)」シュン!

兵士「! 消えた……」

騎士「……勇者、か……」

兵士「? 騎士殿……?」

騎士「魔王蘇り、魔族の侵攻始まる時、勇者の剣を携え希望が現れる……」

兵士「ま、まさか!」

騎士「あの魔族も言っていただろう、あの少女こそ、勇者……!」


……

側近「な、何!
   人間たちに勇者が現れた!?」

魔物「はい!
   王城に現れたドラゴンゾンビを一刀の元に斬り伏せ、今は最接近領にいると!」

側近「ドラゴンゾンビ……幹部の奴、しくじったか!
   ヤツを呼び出せ!」

……


城塞都市行きの馬車

騎士「申し訳ない、休む間もなく移動させてしまって……」

少女「いえいえ」

騎士「是非とも勇者殿には、最接近領の砦におられる王に謁見していただきたいのです」

剣「……(結局、まともに勇者探しなどできなかったな……)」



王「お主が勇者か!
  私が留守の城を守ってくれたこと、いたく感謝するぞ!」

バッシバッシ! (肩を叩かれている

少女「(痛い!)」

将軍「ドラゴンゾンビ……そんなものまで使えるとは、魔族の戦力は底なしなのか……」

王「将軍よ、それは逆だ
  たやすく扱えるのなら、前回のこの砦の侵攻の時に使ったはず」

将軍「では……」

王「そう、魔族の戦力は、奥の手を使わねばならぬほど疲弊している!
  これは機だ!
  勇者が現れ魔族が疲弊した今! 今こそ魔王城へと攻めこむ時!」


幹部「……処分はなんなりと受けよう」

側近「殊勝だな」

幹部「虎の子のドラゴンゾンビを持ちだして失敗した……覚悟はできている」

側近「……今や、そんなことを言っている場合ではなくなった」

幹部「何?」

側近「人間の軍勢がこちらへ向かっている……
   「あの勇者」も共にな」

幹部「! あの女!」

側近「奴は自分は勇者などではないと言っていたが……とんだ寝言だな」

幹部「私を行かせろ!
   必ず首を討ち取ってみせる!」

側近「その怪我でか
   隠せているつもりなのかもしれんが、血臭はごまかせんぞ」

幹部「……ちぃ!」


側近「今すぐ命令を伝達、この城は捨てる
   魔人領の奥深くの樹海であれば、人間たちは踏み込めまい」

幹部「逃げるというのか!」

側近「たとえ魔王様が蘇ったとしても、軍が無くては意味が無い……
   城を失った責は私が受けよう」

幹部「そういう問題ではない!
   あんな小娘に好き勝手やられて、黙っていられるか!」

側近「時勢が見えんか愚か者が!」


???「騒がしいな」

側近「!」

幹部「!」


魔王「数百年ぶりの目覚めだというのに、頭に響くわ」

側近「魔王様!」

幹部「つ、ついにご復活を!」


魔王「側近、幹部、ずいぶんと短気を起こしたようだな
   私が復活するまで待てなかったか?」

側近「も、申し訳ございません! この手落ち、命を持ってしてでも償います!」

魔王「命などいらん、手柄によってのみ泥は拭えると思え」

側近「は、ははぁ!」


魔王「近くに寄れ」

側近「?」

部下「?」

ポウ!

側近「回復魔法……」

幹部「ここまでの怪我を、一瞬で……!」

魔王「兵達の元に案内せよ、もうじき人間の軍が近づく
   私も打って出よう」

側近「お待ちください! あちらには「勇者」が!」

魔王「勇者、あの小娘か」

幹部「(復活したばかりでありながら、この方はすべてをご存知なのか……?)」

魔王「私は運がいい、アレが相手なら負けることはない」

幹部「し、しかし……ドラゴンゾンビさえ奴には……」

魔王「ふふ、若いお前は知らんのだろうが……あのドラゴンを葬ったのは私だ」


魔王城制圧軍・行軍中

少女「なんかノンストップで大変な事に……」

剣「いや、王が言ったとおり、魔王軍はかなり疲弊しているはず
  私達の出る幕など無いかもしれんぞ
  魔王が復活していないのが幸いだな」


魔人領平原

兵「! 見えました、魔王軍です!」

王「……想定よりはるかに多いな」

将軍「怪我の深い負傷兵も駆り出したのでは?
   であれば恐るに足りませぬ」

王「……」



剣「……ハッ!」

少女「!?」

ガキィン!

魔王「ふふふ、よくぞ対応できたな
   側近や幹部と戦った時は半分ボケていたようだが、カンを取り戻したらしい」

剣「ま、魔王!?」

少女「え、この人が?」


将軍「魔王本人が陣内に現れただと!?」

兵「は、はい! 勇者様が相手をしておられます!」

王「ち、瞬間移動魔法か……お前たちは手を出すな!
  魔王と勇者の戦い、ヘタな者が加勢すれば逆に足を引っ張りかねん!
  勇者の援護には俺と将軍がつく!」

側近「そうは行かんぞ」

王「! 貴様は砦の時の!」

幹部「できれば、勇者を殺し汚名を濯ぎたかったがな」

側近「言うな、勇者とは魔王様が数千年前から先約だ」

将軍「ええい邪魔だ!」

側近「魔王様の戦いの邪魔はさせん!」




戦いが始まりわずか数十分で、人間の軍は敗色が見え始めた
魔王の魔法によりすでに魔王軍に負傷兵はおらず、逆に人間の軍には砦の防衛戦で傷が癒えていないものが未だ多かった
もともと、弱体化した魔王軍を素早く制圧するために編成された軍勢ということも大きく
何より……



ガキン!……ギャリィィ!

少女「(は、速い!
   剣を持ったら、雨の一滴が流れ落ちる形だって見切れるのに!)」

剣「(……恐らく復活したばかりだろうに、なんという力だ!
  いや、わかりきっていた……魔王には、私と少女ではまず勝てん!)」

魔王「勇者の剣よ、お前は確かに一級の腕を持ち手に与える……
   だが、たかが一級のウデごときで私は倒せん!」

バキ!

少女「っ……!」

剣「少女!」


剣「(く、この戦いについてくるには、少女の体は脆すぎる!)」

魔王「さあどうした!
   他の人間の体を奪え、幾人でも屍を築いてみせろ!
   勇者とは勇者の剣を持ちながらその力を使わぬ者、
   勇者の剣を勇者の剣として使うしかない者に私が負けることはない!」


側近「(さすが魔王様、あの勇者を完全に圧倒している!)」

ガキン!

王「(兵たちに動揺が広がっている……
  当然か、この俺とて魔王があそこまでの力を持つとは思ってもいなかった!)」


魔王「来ないか、ならばこちらから行くぞ!」

剣「!」

ガッ!

魔王「」ニィッ

剣「」ピシ!

少女「」ゾォッ

魔王「」グッ!

バキン!

少女「!!!」


将軍「勇者の剣が!」

幹部「(終わったな)」


少女「……え?」

剣「」


少女「剣……?」

剣「」

少女「剣!!」

剣「」

魔王「終わってみれば、アッサリとしたものだな
   お前には、勇者以上に……数千年の間、幾度と無く邪魔されたものだが」ポイ!

破片「」カラン……


少女「」ガク……

魔王「どうした、折れたとはいえ勇者の剣、私を倒せる唯一の武器を持っているのはお前なのだぞ」

少女「……」

魔王「……当然か、ただの小娘に過ぎないお前では、どうやっても私を倒すことなどできん」


少女「(……なんで、私が剣を見つけちゃったんだろう?
   もっと強い人が見つけてたら……ううん、私がもっと強い人に渡していたら……)」

少女「(でも、他の人に渡したくなかった……剣と一緒に、いろんなものを見たかった……)」

魔王「最後の勇者よ、せめて苦しまぬよう終わらせてやる」ジャリッ!


少女「(ごめん、剣……)」

魔王「これで、我ら魔族と人間の戦いは終わる!」

ビュン!

少女「」


剣「」カッ!

少女「え!?」グイ!

魔王「何!?」

ザン!

魔王「グゥ!」


魔王「ば、バカな、貴様、生きて……!」

剣「油断したな、魔王!」

ドス!

魔王「グブ!」ゲホ!

少女「剣!」

剣「……刀身が砕けたくらいでは、私は死なん」

少女「バカ! 心臓止まるかと思ったよ!」

剣「すまん、不安にさせたな……」


魔王「」ガシ!

少女「!」

剣「よせ、今の一撃で心臓を潰した
  今のお前には、もう力など残ってはいまい」

魔王「……ククク、まさか、こんな小娘が勇者になるとは、な……」

剣「小娘、か
  だからこそ、お前も油断したのだろう」

魔王「……ふふ、その通りだ……仮にもいっぱしの剣士が相手であれば、
   お前が本当に死んだとて、私が油断することなど無かっただろう……」ボロ……

少女「! 体が……」

魔王「私は、再び闇に沈むとしよう……
   だが、私が蘇る数百年後……再び勇者は現れるかな?」ボロボロ……

剣「……」

魔王「さらばだ、勇者の剣 ……また数百年か後、に……」ボロ……


側近「! 魔王様!?」

王「おお、やったのか!」


幹部「そ、そんな!」

将軍「よし、魔王を失い魔族は浮足立った! 残る敵は我々が殲滅するのだ!」

幹部「……勝手なことをぬかすな!」

ガッ!

側近「……退くぞ」

幹部「な、何をバカな!」

側近「奴らの言った通りだ、魔王様を失い我が軍は大きく動揺している!
   これ以上、軍に被害が出ることは許されん!」

幹部「だが!」

側近「幸いにして、現状兵の被害は人間のほうがはるかに深い!
   逃れるなら今しかないのだ!」

幹部「……ちぃ!」

側近「我らが全軍に告ぐ!
   今すぐ砦まで後退せよ! しんがりには我々が付く!」


将軍「逃すか!」

王「待て!」

将軍「王!?」

王「我々とて、もはや追討や持久戦ができる状況ではない
  残念だが、ここは退くしかあるまい」

将軍「く、あと一歩というところで……」




数百年ぶりの魔族と人間の戦いは、またもや痛み分けで終わった
数百年後の子供たちに、この戦いを、魔王の復活を伝えるための物語が、またひとつこの世界に作られた



~~~~~~~


商人「ふむふむ、次は靴のサイズを測りますので……」

少女「……」

将軍「しっかりと拵えてくれい、なにせ魔王を倒した勇者殿が祝賀に着るドレスなのだからな!」

商人「お任せください!」

少女「……」


王城・客室

少女「なんかすごいことになっちゃったなぁ」

剣「誇ってもいいと思うぞ」

少女「勇者だってさ」

剣「なにもおかしくないだろう、あの魔王と対峙し、倒したのだからな
  お前が勇者だ」

少女「違うよ」

剣「……?」


破片「」カチャン

少女「ねえ、剣って元に戻るの?」

剣「人間では無理だろうが……ドワーフの名工なら、治せるかもしれないな
  しかし私が知るのは数百年前のこと、ドワーフ族が同じ所に住んでいるかどうか……」


少女「……よし、じゃあ次は剣を治す旅だね! 出発!」

剣「い、今からか!?」

少女「うん! 剣だって早く治りたいでしょ!」

剣「まあそうだが……祝賀パーティーは?」

少女「すっぽかす」

剣「……」


窓「」カチャ

少女「よっと」

剣「」

ストン!(3階の高さ)


剣「やれやれ、城は居心地が悪かったのか?」

少女「だって、みんな私の事勇者様勇者様って言うんだよ?」

剣「何もおかしくないだろう?」

少女「違うよ
   私、本当の勇者を知ってるもん」

剣「?」

少女「わからないの? 「勇者様」!」

剣「!」


剣「……」

少女「あ、照れてる?」

剣「ち、違う! 表情もないのに何故わかる!」

少女「わかるよぉ、えっへっへ」


少女「じゃあ行こう、勇者サマ!」

剣「違う!」



おしまい


最後まで見ていただき、ありがとうございました
>>37でFINにしたのは、お昼で一旦切ろうと思ったのもあるのですが、
掲示板型投稿でああいうあからさまなニセエンド要素を入れて時間を空けると面白いかなぁ、
なんてふと思いついて、何も言わず一日放っておいてしまいました
不快に感じた方は申し訳ありません
そしてそんな目にあってもなお最後まで読んでくれた方、ありがとうございました
では

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月13日 (日) 22:09:12   ID: 8wN7I2FG

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