あずさ「プロデューサーさんは、どうして私に敬語なのかしら?」(164)

あずさ「どうしてなんですか?」

P「さぁ、どうしてでしょうね。でも、気にするほどのことじゃないと思いますけど」

あずさ「そうでしょうか?」

P「社長や音無さんには敬語なわけですし。特別、あずささんだけのものじゃないですよ?」

あずさ「目上の人や年上の人なら敬語もわかりますけど……その」

P「はい……」

あずさ「私、まだ21でプロデューサーさんより年……下なんですよ?」

P「えっ……あずささん、21なんですか!?」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「あっ、いや、そういう意味じゃないんです。とても21の女の人には見えないっていうか」

あずさ「……」シュン

P「あぁっ! 違います、違います。今のは言葉のあやです」

P「俺が言いたいのは、あずささんは21歳に見えないくらい大人っぽいということです」

あずさ「大人っぽい……私がですか?」

P「はい、とても」

あずさ「う~ん。自分では、あまりそうは思わないんですけど」

P「いえいえ、あずささんは大人っぽいですよ」

P「俺が21の時に周りにいた女の人は、うるさい人が多かったですよ。女子大生とか」

P「でも、あずささんはそういう人達に比べておっとりしてるからでしょうか。とても落ち着いているように見えるんですよ」

あずさ「だから、大人っぽく見えるんですか?」

P「少なくとも俺は」

あずさ「でも、どうしてそれが私に敬語を使うことに繋がるんですか?」

P「さっきも言いましたけど、大人っぽいからですよ。言い方は悪いですが、大人っぽいっていう表現は実年齢より高く見えるってことです」

あずさ「うぅ……はっきり言われると少し辛いです」

P「す、すみません……」

P「えっと、つまり、俺の中であずささんは年下のようには扱えない。かといって、友達感覚っていうのも仕事の関係上、違う気もします」

P「それで、あずささんには敬語を使っているというわけです」

あずさ「そうだったんですか……」



あずさ「でも、プロデューサーさん」

P「なんですか?」

あずさ「だとしたら、私よりも大人っぽい子もいると思いますけど」

P「例えば?」

あずさ「う~んと、そうですね。貴音ちゃんかしら」

P「貴音ですか。そうですね……貴音は四条の家の教えで立ち振る舞いとか上品ですし、物腰も穏やかですよね。確かに大人っぽいですね」

P「でも、貴音は何か違うんですよ」

P「異質っていうか、掴みどころがないっていうか、とにかく不思議な子ですよね。あの喋り方もあって」

P「そういう部分が強いですから、あまり大人っぽさを感じないんですよ」

P「むしろ、美味しそうに何かを食べてる時の貴音には子供っぽさを感じますよ」

あずさ「それじゃあ、千早ちゃんはどうでしょうか?」

P「千早ですか? 確かに千早のストイックさと歌への盲目的なまでの姿勢は、他の子達とはかけ離れてますね。同年代とは思えないくらいに」

あずさ「プロデューサーさん、そんな言い方」

P「あぁ、別に貶してるわけじゃありませんよ。職人気質って言いたいだけです」

P「凄いですよね。あの歳で、自分の中に「歌」っていう絶対的な柱を持っていて、おまけに目標に向かって足を止めることもしないで走り続けている」

P「本当に16の高校生ですか?」

あずさ「それなら、千早ちゃんは大人っぽいですね」

あずさ「プロデューサーさんは、千早ちゃんに敬語を使わないんですから」

P「そうですね。歳がそれなりに離れてますから、敬語に違和感が出てしまうのもありますけど……」

あずさ「けど?」

P「千早に敬語を使ったら、俺が媚びてる様に感じてしまう気がして。多分、千早はそれを凄く嫌がると思います」

P「千早は仕事上、対等な付き合いを望んでますから。なら、俺もそれに合わせるべきかと……」

あずさ「あの……プロデューサーさん」

P「はい、なんですか」

あずさ「千早ちゃんは、対等な付き合いを望んでいるから、プロデューサーさんはそれに合わせて敬語を使ってないんですよね?」

P「はい、あずささんの言う通りです」

あずさ「千早ちゃんの要望に合わせてるってことですよね?」

P「そうなりますね。まぁ、アイドルの要望を叶えるのもプロデューサーの仕事ですから。トップアイドルになりたいというなら、叶えてあげるわけですし」

あずさ「あの、それって私にも当てはまりますか?」

P「どういう意味ですか?」

あずさ「プロデューサーさんは、私のプロデューサーではないですけど、私の要望を叶えてくれますかということです」

P「あぁ、そういうことですか。構いませんよ、別に」

あずさ「ほ、ほんとですか!」ガシッ

P「えっ、えぇ。俺は、765プロのプロデューサーですから。765プロ所属のアイドルである、あずささんの要望を叶えるのは当然だと考えています」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「あっ、でも伊織みたいにジュース買ってこいみたいなのは勘弁してくださいね」

あずさ「ふふ、わかってます」

P「それで、あずささんの要望って何なんですか?」

あずさ「そうですね。私のプロデューサーさんへの要望は……」

あずさ「私に敬語を使わないことです!」

P「はい?」

P「すみません。敬語を使わないって、いまいち要領を得られないんですが」

あずさ「そんなに難しく考えなくていいですよ。プロデューサーさんは、普段私以外の女の子に使っている言葉使いで私に接してくれればいいですよ」

P「な、なるほど。でも、それだとあずささんに失礼な気が……」

あずさ「プロデューサーさん!」

P「は、はい!」

あずさ「私のお・ね・が・い聞いてくれないんですか?」

P「うっ、うぅ……わかりました」

あずさ(美希ちゃんの言う通り、本当に押しに弱いのね)

P「え~と、それじゃあやってみますね?」

あずさ「はい、お願いします」

P「……」

あずさ「プロデューサーさん?」

P「すみません。いざ、やろうとすると緊張して」

P「スーハーッ」

P「よし、OK。いきますよ?」

あずさ「は、はい。よろしくお願いします~」ドキドキ

P「おはよう、あずささん。今日の調子はどうだ?」

あずさ「……」ムスッ

P「あれ、どうしたんですか。あずささん?」

あずさ「……違います」

P「えっ……」

あずさ「プロデューサーさん、それ全然違います」

P「だ、ダメ出しですか」

あずさ「また敬語に戻ってますよ」

あずさ「それに、なんであずさ「さん」なんですか?」

P「えっと、あずささんはあずささんでs……だから」

あずさ「プロデューサーさんは、他の子に「さん」づけで呼んでますか?」

P「いや、違いま……違うぞ」

あずさ「それじゃあ、どうするべきか解りますね?」

P「……」コクッ

P「……お」

P「おはよう……」

P「あ、あ、あず……」

あずさ(……大事な場面で中々決めてくれないのよね)

あずさ「プロデューサーさん」ギュッ

P「……!」

あずさ「おはようございます」ニコッ

P「……」

P「あぁ……おはよう、あずさ」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「どうしたんだ、あずさ?」

あずさ「何でもありません。呼んでみただけです」

P「そうか……」

P「……」

あずさ「……」

P「あずさ……」

あずさ「はい、なんですか。プロデューサーさん」

P「呼んでみただけだよ……」

あずさ「ふふ……」

P「ははは…」



あずさ「プロデューサーさん……」

P「あずさ……」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「あずさ……」

P(なんでだろうな)

あずさ(ただお互いを呼び合っているだけなのに)

P(凄い恥ずかしいというか、こそばゆい)

P(でも……)

あずさ(不思議な感じ。暖かい何かが胸に流れ込んでくる)

P(目の前にいるこの人が)

あずさ(とても愛おしい……)

あずさ「プロデューサーさん……んっ」

P「っ!」

P(顔を突き出して……えっ、これってあれか。つまり、そういうことなのか)

あずさ「……」

P(あずさの唇……凄く艶やかだ)

P(っていうか、近づいてきてないか)

あずさ「んっー……」

P(お互い、この妙な空気に当てられて変になってる)

P(このままあずさとキスするのは簡単だ。あずさを受け止めるか、俺の方から重ねにいけばいい)

P(でも、それでいいのか? 運命の人を見つけるために、この世界に入った彼女の唇。それを俺が……)

あずさ「んっ~」

P(あぁ、無理だ。あずさの唇は、俺の葛藤をぶっ壊す位に魅力的だ)

P(かわせない……)

?「おはようございます」

あずさ「きゃあああああっ!」バッ

P「うおおおっ!」バッ

千早「おはようございます。プロデューサー、あずささん」

P「あっ、あぁ、千早か。おはよう、調子はどうだ?」

千早「そうですね、特に問題はありません」

P「そ、そうか、それなら今日の仕事もバッチリだな」

千早「はい、本日もよろしくお願いします」

千早「ところで、さっきお二人の悲鳴が聞こえたのですが。何かあったんですか?」

P&あずさ「ギクッ……」

P「いやぁ、ちょっとそこであれが出てな」

千早「あれ……ですか?」

P「そ、そうだ。こんなボロな事務所だからな。出たんだよ、茶色くてカサカサって動くあれ」

千早「あっ、な、なるほど……あれですか」

P「それを見て、驚いて声を上げたんだ。なっ、あずさ」

あずさ「えっ、えっと……そ、そうなのよ。私、怖くて思わず」

千早「そういうことだったんですね」

P(よし、上手くごまかせた。これぞ、パーフェクトコミュニケーション)

千早「あの、プロデューサー。ひとつ良いですか?」

P「あぁ、なんだ。今日のスケジュールについてか、それなら今日は午前から」

千早「いえ、そうじゃありません」

千早「プロデューサー、さっきあずささんのことをあずさって呼び捨てで呼んでましたよね?」

P「えっ……そ、そうだったか。驚いてたから、あまり覚えて」

千早「言ってました。私、耳には自信があります」

P(うっ……今だけは千早の耳ざとさが辛い)

千早「答えて下さい、プロデューサー。どうして、あずささんのことをいつもの様にあずささんではなく、あずさって呼び捨てで呼んでいたんですか?」

P「そ、それは……あれだよ、あれ。小学生の頃とかあったろ。先生のことをお母さんとか呼んじゃうやつ。あれと一緒だ」

千早「……」ジトッ

P(うわぁ、これ絶対に信じてないよなぁ)



P「本当に、深い意味はないからな。そうですよね、あずささん」

あずさ「……えぇ、そうですね。プロデューサーさん」

P(そこで意味深に寂しそうな顔しないでください、あずささん)

千早「……」ジトッ

P(ほらぁ、こうなるから)

P(ええい、こうなったら……)

P「千早……」

千早「……真剣な顔。やっと話す気になったんですね」

P「あぁ、その通りだ。俺は、千早に伝えなきゃいけないことがある」

千早「……」

P「千早……」

千早「はい……」

P「……」

P「足元にいるぞ。茶色いあれ」

千早「えっ?」

千早「いやぁあああっ!」ガシッ

P「ちょっ、千早!?」

千早「いや、いや、いやあああっ!」

P「ち、千早。落ち着いてくれ、もういないから」

千早「えっ……」

P「もういないよ。千早が驚いたおかげで直ぐに逃げたみたいだ」

千早「そ、そうですか……」

P「どうだ、千早。わかったろ?」

千早「な、何がですか?」

P「凄く驚いて余裕なかったろ。さっきの俺もそうだったんだ。だから、俺はあずささんのことをあずさって呼んじゃったんだよ」

千早「た、確かに自分で経験をするとどれだけ錯乱するか理解できました」

P「そうだ。つまり、そういうことだ」

千早「はい…」

P「ところで、千早そろそろ離れてくれないか」

千早「あっ、すみません///」

P(千早の体、細いけど柔らかかったなぁ。ごまかしの嘘で得するとは、ラッキーだな

あずさ「……」

P「……っ!」バッ

あずさ「……」

P「あっ、あずささん」

あずさ「あらあら~」

P「え~と、あずささん。わかっていますよね」

P「あれは、俺たちのことを誤魔化すためについた嘘が偶然……そう偶然起きたことなんです」

P「決して他意はないですよ?」

あずさ「……」

P「……参ったな。あの、どうしたら許してくれますか?」

あずさ「う~ん、そうですね」

P「うわぁ、食いついてきた。意外に現金なんですね」

あずさ「何か言いましたか、プロデューサーさん?」

P「いえ……なんでもありません」

あずさ「あっ、決めました」

P「そうですか。それで、何をして欲しいんですか?」

P(まぁ、あずささんなら常識の範囲で言ってくれるだろう)

あずさ「あの……プロデューサーさん」

P「はい……」

あずさ「プロデューサーさん、私にさっきの続きをしてくれませんか?」

P「……」

あずさ「……///」

P「本気で言ってるんですか」

あずさ「冗談でこんなこと言えません」

P「それもそうですね……」

あずさ「プロデューサーさん、私では嫌ですか」

P「……嫌なら、あの時に避けるなり突き放すなりしてますよ」

あずさ「プロデューサーさん……」

P「いいんですか、俺で?」

あずさ「プロデューサーさんじゃなきゃ嫌です」

P「あずささん……」

P「……」スタスタ

あずさ「……」ドキドキ

P「……」スッ

あずさ「あっ……」

あずさ(私の頬にプロデューサーさんの手……暖かい)

P「目……閉じて下さい」

あずさ「は……はい」

P「……」

あずさ「……」

チュッ……

あずさ「えっ……おでこ」

P「すいません、今の俺にはこれが精一杯みたいです」

あずさ「そんな酷いです、プロデューサーさん」

P「どこにキスするかは、言われませんでしたから」

あずさ「むぅ……」

P「不満そうですね」

あずさ「はい……」

P「すみません。本当のところ、俺自身もまだ気持ちが固まっていないんです。何せ突然のことですからね」

P「あずささんへの気持ちが、憧れなのか好きなのか。はっきりとは、わからないんです」

P「あずささんと一緒にいるときの心地よさが、他の子達にも同じ様に感じているんです」

あずさ「まぁ、プロデューサーさんって意外に節操がないんですね」

P「うぐっ……」グサッ

あずさ「それに、プロデューサーさん。敬語に戻ってます」

P「あっ、そういえばそうですね。やっぱり、あずささんにはこっちの方が良いですね」

あずさ「それじゃあ、最初と話が違います」

P「そう言わないで下さい。やっぱり自然に弾む会話が何より良いわけですから」

あずさ「それは、そうですけど……う~ん、何だか上手く誤魔化されただけのような気もします~」

P「そんなことありませんよ」

あずさ「それじゃあ、プロデューサーさんはどうしたら私に敬語を使うのを止めてくれるんですか?」

P「そうですね。俺が俺自身の意志であずささんを好きになって、あずささんを本当の意味で支えになれた時でしょうか」

P「俺の隣にあずささん。あずささんの隣に俺……そういう関係です」

あずさ「随分と先が長いんですね」

P「すみません。こういうのは、ちゃんと納得するまでやる性分なんです」

あずさ「ふふ、いいんです。私、待つのは得意ですから」

あずさ「でも、待つだけじゃいけませんよね」

P「えっ?」

あずさ「私も頑張らないとプロデューサーさんをとられちゃいますから」

P「??」

あずさ「私も頑張って、プロデューサーさんに合ういい女の人にならなきゃいけない……ということです」

P「そうですか……」

あずさ「あのプロデューサーさん。一つ約束をしてくれませんか?」

P「約束ですか……」

あずさ「はい。もし、プロデューサーさんが私のことを好きになって、私の隣にいたいって心から感じた。その時は……」

P「その時は……」

あずさ「……」

あずさ「やっぱり、いいです」

P「えぇ、あっ、あずささん!」

あずさ「ふふ、この続きが聞きたかったら……私のこと、好きになって下さい」

P「そ、そんなぁ……」

あずさ「ふふふ……」


プロデューサーさん。もし、プロデューサーさんが私のことを好きになって、私の隣にいたいって心から感じたその時は……


私のこと「あずさ」って呼んで、ちゃんと唇にキスしてくださいね♪


fin

少し前にあずさを糞ssで汚してしまって反省のつもりで立てたこのスレ。概ね好意的なレスで安心した

乙。もしもしから悪いがスピード以外は良かった
蛇足だけど、Pがあずささんに敬語の本当の理由は設定の段階ではあずささんは大卒後の25~26だったんだとか
「流石にそれは…」ってことで短大卒の20になって「私の方が年上なのに~」って台詞があるのはチェックミス
ソースは2chだから嘘かも分からんけど。今では社会人同士だから敬語ってされてる

>>159
なるほどな。次のあずさssに活かそう

っていうか、改めて読み返すと色々と広げられそうだったな。
Pとあずさのやりとりを見て、小鳥が自分にも敬語使わないでみたいなのや、千早や他の子達が自分たちにもチャンスあるって思ってPにアタックかけたり

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