一夏「誰かを突然抱きしめたくなる病」(71)

一夏「とかいう病気を患ったらしいんだ」

千冬「そうか、早く治せ。ではな」

一夏「ちょ、千冬姉! 困ってるんだってば」

千冬「別に問題なかろう。ハグなど欧米では挨拶だぞ」

一夏「ここは日本だよ。どうしよう、セクハラで学園を退学になったりしないかな……」

千冬「治る見込みはあるのか?」

一夏「ああ、今日貰った薬を飲んでればその内治るらしい……けど」

千冬「抱きしめたくなること自体は抑えられない、というわけか」

一夏「うん。だから少しの間学校を休ませてほしいんだけど」

千冬「駄目だ、その程度で休むなど許さん」

一夏「千冬姉! 弟を性犯罪者にする気かよ!」

千冬「大丈夫だ、もし何かまずいことになったら私がフォローしてやる」

一夏「うーん……」

千冬「では、明日からもちゃんと授業は参加するように。また明日な」

一夏「あ、うん。おやすみ千冬姉」

一夏「ま、まあ千冬姉がフォローしてくれるならどうにかなるだろ」

一夏「今日はもう寝よう。出来るだけ人との接触は避けないとな」

一夏「朝起きた時、またラウラが裸でベッドに潜り込んでなければいいけど……」

一夏「いや、ラウラには何度も言い聞かせたしな。それはないそれはない」

一夏「……寝るか」



――――

――

一夏「うーん……朝、か」

ラウラ「Zzz...」

一夏「」

一夏(まずい! 今のラウラを抱きしめようものなら一発アウトだ!)

一夏(くそっ、腕の震えが……これが発症する時の前兆って言われたよな)

一夏(ああ、やばい。だんだん我慢できなくなってきた……) コンコン

シャル「一夏ー、起きてるー?」

一夏「っ、シャルか!」ガチャッ

シャル「あ、おはよう一夏。……一夏?」

一夏「シャル、すまんっ!」ギューッ

シャル「!?!?!?」

一夏(今のラウラを抱きしめるくらいだったら、シャルの方が後が怖くない……!)

一夏「ふぅ……ようやく震えが止まったか」

シャル「い、い、い、いちか? ど、どどどうしたの?」

一夏「ん? おっと、悪い悪い。ちょっとした事件になるところだったんだ」パッ

シャル「あ……う、ううん。それより事件って何のこと?」

一夏「それが、またラウラが俺のベッドに潜り込んでたんだよ」

シャル「そうだったんだ。いないなーと思ったらやっぱりここにいたんだねラウラ」

一夏「さっさと服着せて部屋に戻してくれないか? いつ発作が起こるともわからないし」

シャル「発作?」

一夏「ああ、後で話すよ。それよりラウラを頼んだ」

――食堂

箒「誰かを突然抱きしめたくなる病?」

一夏「ああ、そうらしい。さっきIS学園で最初の犠牲者が出たばかりだ」

鈴「それがシャルロットってわけね。妙に浮かれてるからおかしいと思ったのよ」

シャル「う、浮かれてなんかないよ。……でも、僕が初めてかぁ、えへへ」

ラウラ「むぅ。嫁よ、どうして私を抱きしめなかったのだ。一番近くにいたのは私だぞ」

一夏「さすがに自分の部屋で朝から裸のお前を抱きしめてたら、なあ?」

セシリア「色々とおかしなところがありますけれど、一夏さんは社会的に抹殺されますわね」

一夏「そういうわけで、あまり俺に近づかない方がいいぞ。なるべく我慢はするけどさ」

5人「……」

――教室

一夏(授業中に発作が起きたらどうすっかなぁ。考えてなかった)

千冬「お前ら席に着け。授業を始める前に一つ言っておかねばならんことがある」

一夏(……俺のことだろうな)

千冬「織斑が奇病にかかった。突発的に人を抱きしめたくなる衝動に駆られる病だ」

一夏(教室がざわついてる。そりゃ男にいきなり抱きつかれたら怖いよな)

千冬「なるべく私がサポートするつもりだが、私も常に織斑にかまけてはいられない」

千冬「織斑、とりあえず授業中に抱きしめたくなったら私を呼べ。いいな」

一夏「えっ」

千冬「生徒にこんな真似はさせられんだろう。それにお前は私の弟だ」

千冬「仕方ないからな。緊急事態だ。私も辛い。だが、お前のために一肌脱いでやると言っている」

一夏(なんかノリノリだな千冬姉)

千冬「そういうわけだ。では授業を始めるぞ」

――休み時間

一夏「……」

箒「急にやつれたな、一夏」

セシリア「注目の的でしたものね。織斑先生との熱い抱擁……羨ましいですわ」

ラウラ「心なしか織斑教官はまんざらでもなかったように見えたが」

シャル「う、うん。ずっと一夏のことばかり見てた気がする」

一夏「疲れた……。恥ずかしいってレベルじゃないぜこれは……」

セシリア「1組はしばらく授業どころではありませんわね」

箒「ふんっ、浮かれすぎだ。それと一夏、あまり鼻の下を伸ばすんじゃないぞ」

一夏「伸ばしてねーよ……っと、そろそろ次の授業だな」

ラウラ「発作は絶対に我慢できないのか?」

一夏「できたらしてるって。はぁ……」

――昼休み

一夏「ようやく束の間の休息を得ることができた――はずだった」

鈴「どうしたのよ、一夏も早く食べなさいよ」

セシリア「そうですわ。今日も一夏さんのためにお料理してきましたのよ?」

一夏「いや、そうじゃなくてだな。俺の病気のことはわかってるんだろう?」

箒「ああ。午前中に何度も見せつけられたからな」

一夏「じゃあ何で俺の周りに寄りつくんだ」

シャル「それは……だって、ねぇ?」

ラウラ「織斑教官ばかりずるいではないか。一夏、次は私を抱きしめるといい」

一夏「ずるいもずるくないもあるかよ」

一夏(くそっ、ここでまた抱きしめたくなったりしたら……どうすればいいんだ?)

一夏「……」モグモグ

鈴「一夏がセシリアのサンドイッチを平然と食べてる……」

箒「何を食べているのかわからないくらい、追い詰められていたんだな……」

セシリア「どういう意味です! 怒りますわよ!」

一夏(んー、誰を抱きしめたら被害が一番少なく済むんだろう?)

一夏(シャルは全然怒ったりしなかったよな。でも慌ててたし、本当は嫌だったのかもしれない)

一夏(ラウラは自分を抱きしめろと言ってくれたけど、自己犠牲の精神が眩し過ぎるぜ)

一夏(となると……くっ)

シャル「い、一夏? 腕、震えてるけど……」

鈴「これが前兆なのよね? ってことは」

箒「……この場の誰かが」

ラウラ「一夏に抱きしめられる」

セシリア「ということですわね……!」

一夏「うう……お前ら、早く逃げろ! ここは危険だ!」

ラウラ「問題ない。他の者に抱きしめられ役を任せるくらいならな」

鈴「あたしたちがやったげるわよ。ほら、来なさい一夏!」

セシリア「一夏さん、わたくし鈴さんよりは抱き心地が良いと思うのですけれどいかがでしょう?」

鈴「どういう意味よそれ!」

シャル「い、一夏? 僕だったらいつでもいいからね?」

箒「お、幼馴染のよしみだ。私が……適役だと思うのだが、一夏」

一夏「くそっ、どうしたらいいんだ……!」





?「あー、おりむーだ~」

一夏(あれは……のほほんさん?)

一夏(ま、まずい、油断した! もう耐えられない!)

のほほん「おりむー震えてるねぇ、ひょっとして織斑先生呼んだ方がいいのかな~?」

一夏「ご、ごめん、のほほんさん!」ギューッ

のほほん「ふぇっ? あれっ? よくわかんないけど私でいいの?」

一夏「後でいくらでも謝るから……ちょっとこのままでいいかな」

箒「よ、よくないだろう! 一夏、離れろ!」

鈴「というか何であたし達以外の子を抱きしめてんのよ馬鹿!」

一夏「し、知らねーよ! 目が合ったせいか、我慢の限界を超えちまったんだ」

セシリア「どういうことですの? 発作中に目が合った相手を抱きしめたくなるということなのですか?」

一夏「さ、さあ……。あ、もうそろそろ大丈夫そうだ。ごめんな突然」

のほほん「~♪」ギューッ

ラウラ「さっさと離れないか、一夏」

一夏「俺のせいかよ!」

のほほん「わ~い、みんなに自慢しちゃおっかなぁ♪」

一夏「……怒らないの?」

のほほん「んー? 私は楽しかったけどなぁ、またおりむーに抱きついてもいいかな~?」

一夏「それは構わないけど、ってそうじゃなくて!」

のほほん「それじゃ~また教室でね、おりむー♪」

一夏「……全然気にしてないみたいだな。助かった」

シャル「それはそうと、一夏?」

鈴「随分と楽しそうだったじゃない?」

ラウラ「夫の前で堂々と浮気とはな」

箒「また根性をたたき直してやる必要があるみたいだな、一夏!」

セシリア「そうですわ! 鍛え直してさしあげます!」

一夏「そして何でお前らが怒ってるんだよ!」

――放課後

一夏「終わった……。さっさと部屋に戻ろう。また明日な、みんな」

4人「……」



鈴「あれっ、一夏は?」 

セシリア「授業が終わるのと同時に、足早に自室へ戻られましたわ」

シャル「織斑先生ずっとご機嫌だったね」

箒「たしか8回だったな、一夏が授業中に発作を起こしたのは」

ラウラ「教官……」

鈴「今のところ、3人だけみたいね。一夏に抱きしめられたのは」

セシリア「シャルロットさんが羨ましいですわ……」

シャル「そんな病気にかかってただなんて知らなかったから、ビックリしちゃったよ……」

箒「一夏の病気は深刻なのか?」

ラウラ「薬を服用しているようだ。少しすれば治るらしい」

5人「……」

――自室

一夏「一人は気が楽だな。一人部屋でよかったぜ」

一夏(それにしても、どうしてあの中からのほほんさんに抱きついちまったんだろう)

一夏(やっぱり目が合ったからなのか? 意識がのほほんさんにいってたからか)

一夏(つまり心頭滅却してれば我慢できる、のかも?)

一夏「……よくわかんねーな。それより、シャワーでも浴びてこよう」





?「……」ガチャッ

――――――――

ラウラ「一夏は病気を治すために薬を服用している。だが、もしその薬がなくなってしまったら」

4人「!?」

ラウラ「……自然に完治するのか、それとも治らないのか。どう思う?」

シャル「どう思うって、そんな病気があるだなんて知ったの今日だからなぁ」

セシリア「わたくしも。でもあの腕の震えは異常でしたわね」

箒「病気であることは間違いないだろう。問題はどうしたら治るかだ」

鈴「少なくとも、薬をこのまま飲み続ければ早く治っちゃうんでしょ?」

ラウラ「ああ。飲み続ければ、な」

鈴「……ラウラ、変なこと考えてない?」

ラウラ「さあ、どうだろうな。だがお前たちと同じことを考えているとは思うぞ」

4人「……」

ラウラ「こちらラウラ。一夏の部屋に潜入した」

セシリア『ほ、本当に忍びこんじゃったのですか?』

シャル『今朝も一夏の部屋に勝手に入ってたもんね』

箒『一夏は今どうしてるんだ?』

ラウラ「シャワーを浴びているところだ。時間が惜しい、行動を開始する」

鈴『ねぇ、一夏が寝た後に忍びこめるならその時でよかったんじゃないの?』

ラウラ「善は急げ、だ」

シャル『これって善なのかなぁ……?』

箒『止めなかったのだから同罪だぞ、シャルロット。それで、見つかりそうか?』

ラウラ「薬を置いておくようなところ、か。……この辺か」

セシリア『どうですか? ありました?』

ラウラ「……これか? それっぽい物を入手。一旦引くぞ」

鈴『あたし達、何やってんだろう』

シャル「ど、どうだった?」

ラウラ「うむ。粉末タイプのようだ。朝夕に1回、それが一週間分ある」

箒「一週間? そんなに早く治る病気だったのか」

セシリア「危ないところでしたわね……」

鈴「ま、まあチャンスは多いにこしたことはないものね。一週間なんてあっという間だし」

箒「その薬って、どういう薬なのだ? 発作は抑えきれないみたいだったが」

ラウラ「……抱きしめたくなる衝動を抑制しやすくするものらしい。これがないと」

セシリア「どうなってしまいますの?」

ラウラ「最悪の場合、そのまま体を求めるようになる、とのことだ」

4人「」

鈴「か、からっ、体?」

ラウラ「文字通りだろう。抱きしめるだけでは足りなくなってしまうのかもしれない」

シャル「そ、それってかなりまずいんじゃ……?」

セシリア「最悪の場合、ですからね。必ずしもそうなるとは言えないようですけど」

箒「下手をすれば、一夏は性犯罪者だな。IS学園にもいられなくなる」

鈴「……やっぱり返す? 一夏がいなくなったら元も子もないし」

シャル「僕もそうした方がいいと思うな。一夏がいなくなったりしたら嫌だよ」

ラウラ「むぅ……」

セシリア「危険かもしれませんけど、一回分くらいなら様子を見てみてもよろしいのでは?」

箒「病気とはいえ、あの一夏が簡単に女に手を出すような真似はしないだろう。あの朴念仁が」

鈴「それもそうね。じゃあ、とりあえず明日の朝の一夏次第ってことにしない?」

ラウラ「決まりだな。ではこの薬は私が預かっておく。それでは解散しよう」

シャル「大丈夫かなぁ……」

――翌朝、一夏の部屋前

箒「……考えることは同じか」

セシリア「シャルロットさんは遠慮してくださいな、不公平ですわよ?」

シャル「だ、だって心配だよ……」

鈴「それより一夏は? まだ寝てるのかしら」

ラウラ「起こせばいい。一夏、起きてるか」コンコン

5人「……」

ラウラ「返事が無いな。中に入って直接起こそう」ガチャッ

セシリア「いつの間に鍵を……。い、一夏さーん?」

箒「一夏、具合はどうだ」

鈴「いちかー、起きなさーい!」

シャル「お、お邪魔しまーす……」

一夏「……」

ラウラ「なんだ、起きていたのか。返事くらいしないか」

鈴「なんか様子おかしくない?」

シャル「発作は起きてるの?」

箒「かすかに震えているように見える。腕、というか全身がだな」

セシリア「い、一夏さん? お体の具合はいかがですか――っ!?」

一夏「」ガバッ ギューッ

セシリア「あ、あう、あうあう……」

箒「い、一夏! セシリアを離せ!」

一夏「……はっ。あ、あれ? 俺は何してるんだ?」ギュー

鈴「いいから離れなさいよ!」

セシリア「ふ、不意打ちですわ……でも、これはこれで……♪」ギュー

ラウラ「意識がなかった?」

一夏「うん、なんかぼーっとしててさ。声がしたと思ったらセシリアがいて」

シャル「無意識に抱きしめてたってこと?」

セシリア「そうでしたか、それでしたら仕方ないですわねぇ、一夏さん♪」

鈴「嬉しそうな顔しちゃって……それで、発作は?」

一夏「今は何ともないな。けど、これじゃ昨日よりやばい。今日は休んで薬貰ってくるかな」

箒「く、薬がどうかしたのか?」

一夏「なくしたんだよ。どこにやったかなぁ、部屋に置いておいたはずなんだけど」

ラウラ「用心しないからだ。大事なものはちゃんとしまっておけ」

一夏「ああ、気をつけるよ。……なんだ、みんな変な顔して?」

シャル「そ、それより一夏は今日お休みするの? やっぱり薬がないとつらい?」

一夏「どうせ授業に集中できないしなぁ。それに病気だからっていきなり抱きしめるってのはまずいだろ」

鈴(ねぇ、どうする? これじゃ意味ないじゃない)

箒(素直に返してやるか? となると猶予はあと)

ラウラ(六日間、になるな)

思ったより長丁場になりそうだ。ここで区切ってやめておくか……

タイトルを2日目、3日目とかにして気が向いたらスレ立てる

……これだとパートスレになりそうだな。深夜VIPあたりで改めてやり直すか

スレタイの一夏の言葉に「~抱きしめたくなる病!」と!足していけばいい
立て直すなら待ってるぜ…
乙!

>>67
そんな感じで大丈夫なんかな? ならそうするか
保守を頼むのもあれだから立て直そう。気が向いた時にまたやるわ

とりあえずおつおつ

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