やよい「暗記するだけで10万円もらえるお仕事ですかぁ!?」(119)

いち

やよい「ぷぷぷプロデューサー!それ、ほんとうなんですかぁ!?」

P「ああもちろん、本当だよ」

P「10分間で、決められたテーマのものを10個、覚える」

P「その間に、邪魔が入るけど、その誘惑に打ち勝つ」

P「見事打ち勝って完璧に暗記できれば……賞金10万円!」

やよい「た、たったそれだけで……じゅ、10まんえん…………」

やよい「…………ホワ~」キラキラ

P「……やる気は十分みたいだな」

P「じゃあやよいは決定で……あと二人欲しいって言われてたな」

P「ストイックに暗記できそうで……それでいて…………」

P「…………」

P「……あの二人だな」

P「……」ニヤリ

P「よーしやよい、来週に収録があるから、それまでに物覚えのよくなる勉強法をガンガンやって行こう!」

やよい「は、はい!がんばっちゃいますよー!!」

―――

P「じゃあやよい、そのドアを開けてスタジオセットに入ったら、机とペン、ノート」

P「あと覚えるもののリストがあるから」

P「あとは10分間、誘惑に耐えながら、自分の好きなように暗記してくれ」

やよい「は、はい」ドキドキ

やよい「じゃあ……行ってきます!」

P「おう」

ガチャ!

……バタン!

P「……」

P「……楽しみだなぁ」ニヤリ

やよい「わ……なんかいつもの学校みたいなセットなんですね~」

やよい「あ、でもカメラ回ってる……」

やよい「……なんかテレビのお仕事っぽくないけど……10万円のためにがんばります!」

やよい「机……これですね。よーっし!」

―――

モニタールーム

小鳥「やよいちゃん張り切ってるわね~」

P「よし……後は俺も見守るのみですね」

小鳥「……プロデューサーさん、やよいちゃんの暗記のテーマは?」

P「えーと……やよいの『べろちょろ』にちなんで、『カエル10種類』だそうです」

小鳥「リストが…………けっこー難しそうですね」

P「ええ。しかも『アレ』がありますからね……」

①ニホンヒキガエル
②ハロウェルアマガエル
③ウシガエル
④イエアメガエル
⑤ベルツノガエル
⑥カジカガエル
⑦オオハナサキガエル
⑧トノサマガエル
⑨ミツヅノコノハガエル
⑩ナガレタゴガエル

やよい「あうぅ~、カエルさんってこんなにたくさんいたんですかぁ~」

やよい「でも長介たちにも『まかせて!』って言ってきちゃったし……」

やよい「…………」カリカリ

やよい「…………」カリカリ

―――

小鳥「とにかく書いて暗記する作戦みたいですね」

P「色々試しましたけど、これがやよいには一番合ってました」

小鳥「セットが教室っぽいのは……」

P「もちろん理由があります」

P「始まって1分……もうそろそろですね」

P「…………」

―――

ガラガラ

やよい「!」ビクッ

やよい「……」

やよい。番組側が、暗記中に気を逸らせるようなことをたくさんしてくる

でもそれを無視して、暗記するのが一番だ

番組の用意した誘惑に乗ってしまうと、覚えていたことも忘れちゃうからな

やよい(……ってプロデューサーが言ってました……)

やよい(そうです!べんきょうしないと!)

やよい「……」カリカリ

モブ子A「あーあ、かったり~な~」

モブ子B「授業なんてサボっちまおうかな~」

―――

小鳥「またえらくわかりやすい不良の女の子たちですね」

P「……ここからですよ」

―――

やよい「……」カリカリ

伊織「あんたたち、何勝手にサボろうとしてるわけぇ?」

やよい「!」チラッ

モブ子A「うわ、委員長に見つかっちゃったよー」

モブ子B「うぜー、委員長うぜーわー」

伊織「うるっさいわねぇ!次は美術室でしょ!?さっさとここから出なさいよ!」

モブ子B「あーはいはい」

モブ子A「かーっ!貧乏人のクセに言うことだけは立派なんだから」

やよい「!!???」チラッチラッ

やよい(……え?ど、どういうことですかぁ!?伊織ちゃんが貧乏……?)

伊織「うるさいうるさーい!家のことは今は関係ないでしょ!?」

モブ子B「はっはっは!そういや聞いたぜ委員長。委員長って、『もやしパーティ』とかするんだってなぁ!?」

やよい「!!!」チラッ

伊織「うぐっ!な、なんでそれを……!?」

モブ子B「近所のスーパーでもやし買ってる伊織委員長を偶然見ちゃってさぁ」

モブ子A「それでそれで?」

モブ子B「大量に買って、帰り道つけてみたら『今夜はもやしパーティーよ、にひひ!』とか言ってんの」

モブ子A「うわっ!ちょ~寒ぃじゃん!」

伊織「……」ワナワナ

伊織「いいじゃないの、私がもやしが好きだろうが嫌いだろうが!あんたたちに迷惑かけてないでしょ!?」

モブ子A「まぁ私たちはいいかもしれないけどぉ」

モブ子B「……やよい様が、どう思うかねぇ?」

やよい「!?」ビクッ

伊織「や……やよいは、そんなことで私を見限ったりしない!絶対そうよ!」

モブ子A「どうかなぁ~?」

モブ子B「委員長の方こそ、大金持ちのやよい様と仲良くして、あわよくばって魂胆なんじゃないの~?」

モブ子A「ああ有り得る有り得る~!」

伊織「違う!私はそんな理由でやよいに近づいてなんかない!」

―――

小鳥「なるほど~やよいちゃんと伊織ちゃんの経済状況が真逆の設定なんですねー」

小鳥「……にしても伊織ちゃんも熱演してるわねぇ」

―――

やよい「……あ、あうぅ~」チラッチラッ

やよい(ど、どうしよう……暗記しなきゃいけないのに……嘘だってわかってるのに……)

モブ子A「そもそも、あの高槻グループのやよい様が、委員長みたいな貧乏人と仲良くしてること自体がおかしいんだよ」

モブ子B「そうそう」

モブ子B「なぁ~んか裏があるんじゃないの~?」

モブ子B「『あの貧乏人に贅沢させてやるかわりに、委員長権限使わせてもらって好き勝手しよう』とかさぁ」

モブ子A「ああそういうことかぁ~」

伊織「ち、違う!違うったら違うってばぁ!」

モブ子A「ムキになるとこが怪しいって委員長~」

モブ子B「いいじゃんいいじゃん、やよい様のコバンザメでもさぁ」

モブ子A「そうだよ。やよい様の従順な犬になれば、おこぼれ貰えるもんね~」

伊織「そ、そんな……!私は一回だって、やよいにそんなこと望んだりしなかったわよ!」

モブ子A「でもやよい様の方はどうだかわからないじゃーん」

モブ子B「あっちは委員長のことなんて腰巾着くらいにしか思ってないかもよぉ~?」

伊織「そ、そんなこと……あるわけないじゃない……」

伊織「絶対ない……うそ……うそよ……そんなの……」

やよい(い、伊織ちゃん……)ハラハラ

モブ子A「どうしても違うってんなら……」

モブ子A「やよい様本人の口から『違う』って聞かないとね~」

モブ子B「そうそう」

やよい「!!!」

やよい(え……えっと……その……)

伊織「やよいは……違うって、絶対言ってくれるはずだわ……」

やよい(え、え、えぇ???)

やよい(ど、どうすればいいんですかぁ……)

―――

P「やよいー。みんなお芝居なんだから、無視していいんだぞー」

小鳥「……棒読みが過ぎますね」

P「テヘペロ」

P「この企画のキモと言ったら、まさにココのシーンですからね」

P「やよいには悪いけど……」

小鳥「本当ですよ……(困ってるやよいちゃんも可愛いけどねぇ~)」

―――

伊織「や、やよいだったらきっと……」

伊織「『伊織ちゃんは私の大切なお友達です!』って言ってくれるはずよ!」

モブ子A「だからぁ~、だったら実際にやよい様の口から聞かないとさー」

モブ子B「つっても……やよい様はここに居ないんだけどねー」

モブ子A「あっはっは超ウケル!」

モブ子A「居ないんだから確かめられないじゃん!」

やよい(…………)

やよい(………………)

モブ子B「やよい様がいきなり出てきて、そんなこと言うわけないじゃん」

伊織「い、言うわよ……やよいだったら、きっと言ってくれるはずよ……」

モブ子A「ムリムリ、あきらめなっていいんち

ガタガタガタ!

やよい「い、伊織ちゃんは……!


私の大切なお友達です!」

伊織「や、やよい……」

やよい「…………」ハァー、ハァー

モブ子A「…………」

モブ子B「…………」

やよい「…………た、大切な……お友達、です……」


―――


小鳥「……言っちゃいましたか」

P「まぁ、やよいのことだから言うとは思ってましたよ」

小鳥「プロデューサーさんも本当に人が悪いですね」

P「テヘペロ」


プァーーン

暗記タイム終了

メガネのMC「ではこの1分間を使って、暗記したカエルの種類、10個すべてお書きくださいどうぞ!」

プァーーン

やよい「えーーーーとぉ……」

やよい「ウシガエル……ウシガエルと……なんとかアマガエル……」

やよい「あううぅ……と、トノサマガエルと……」

やよい「カエル……カエルさんは、えっと……」


カンカンカーン


MC「しゅーりょー!」

やよい「だ、ダメでしたぁ……」グスッ

やよい「ぜんぜんおぼえられなかったです……」

MC「いやぁ残念でしたねぇ」

MC「でもま、10万円を失った代わりにね」

MC「こう、素晴らしい友情が生まれたんじゃないかなーっとw」

MC「思ったり思わなかったり」

伊織「……やよい」

やよい「……伊織ちゃん?」

伊織「…………」

やよい「?」

伊織「私も……」

伊織「私にとっても……やよいは、私の大切な友達、親友よ」

伊織「それだけ。いくら演技とは言え、心配させて悪かったわね」ニヒヒッ

やよい「伊織ちゃあん……」グスッ

やよい「うん……ありがとう、伊織ちゃん!」ダキッ

伊織「ふふふ、やよいってば…………」ナデナデ

やよい「伊織ちゃんありがとう。だいすきだよっ」

伊織「私も…………やよいのことが、大好きよ」



メガネのガヤ「なんかイチャつきだしましたね」

MC「とりあえずこの二人はほっときましょうか」

続いてのチャレンジャーは

如月千早!

P「千早は……ストイックだし、誘惑には強そうだよな」

千早「ええまあ、それなりには」

千早「プロデューサーも、それを見越してキャスティングしてくれたことでしょうし」

千早「賞金には興味ありませんけど……ストイックさを見極める企画ということで、楽しみではあります」

P「そうか、よし頑張ってこい!」

千早「はい」

ガチャ

バタン

P「……」

P「……とは言っても……」

P「千早のキャスティングの一番の理由は……」

P「『気の逸らせ方』がすぐに思い浮かんだからなんだけどなぁ~」ニヤリ

千早「私用の机はいいとして……あっちにあるのは……ロッカー?」

千早「……更衣室、ということ……?……まぁ、どうでもいいですけれど」フンッ

千早「……この紙が暗記の内容ね」スッ

ピラッ

暗記テーマ:胸の筋肉10種類
①大胸筋
②小胸筋
③前鋸筋
④鎖骨下筋
⑤肩甲拳筋
⑥項横筋
⑦広背筋
⑧大円筋
⑨肋骨筋
⑩大菱形筋


千早「…………」

千早「……くっ」ギリッ

―――

小鳥「…………w」

小鳥「いや、笑っちゃだめですけどぉ……w」

小鳥「こ、これが……プロデューサーさんの言ってた『気の逸らせ方』ですかw?」

P「小鳥さん笑いすぎでしょ……暗記テーマ自体は、他意はないですよ」

小鳥「いやありまくりでしょ」

P「……本番はここからですよ」

―――

千早「……大胸筋……小胸筋……」ブツブツ

千早「……広背筋……肋骨筋……」ブツブツカリカリ

―――

P「千早は言いながら書いて、覚えるタイプみたいですね」

P「……そろそろかな」

―――

ガラガラ

千早「……」

千早「……鎖骨下筋……肩甲拳筋……」ブツブツ

あずさ「あぁ~今日の収録は大変でしたぁー」

律子「あずささんお疲れ様です。貴音もお疲れ様」

貴音「いえいえ。そういう律子こそ、疲労が溜まっているのではないですか?」

あずさ「そうですよぉ。律子さんだって、私たちに負けないくらい頑張ってましたよぉ?」

律子「もう、二人とも~。褒めても何も出ないですよ?」

千早「…………」カリカリ

千早「…………」カリカリ

千早「……」チラッ

ドタプーン
プルーン
ボイーン

律子「しっかし……何もこんな運動に精通しないメンバーばっかり集めてアイドル水泳大会に参加させるなんて……」

貴音「プロデューサー殿には、独自のお考えがあってのことなのでしょう」

あずさ「あんなに全力で泳いだのなんて、久しぶりでしたぁ~」

千早「…………」

千早「……くっ」ギリッ

ポキッ

千早「……」カチカチ

千早(……集中……集中しないと……)カリカリ

千早「……」カリカリ

律子「……あずささん、また胸おっきくなったんじゃないですか?」

千早「……」ピタッ

あずさ「えぇ!?そ、そうですかぁ~?」

貴音「……わたくしの見た限りでは……」

貴音「一か月前よりも、微弱ながらに膨らみが大きくなっている、と思われます」

律子「あずささん、この歳で更に大きくなるなんて……」

あずさ「あ、あらあら~。二人とも、恥ずかしいですよぉ///」ドタプーン

律子「……何か、秘訣とかあるんじゃないですか?」

律子「例えば、普段何を食べてるか……とか」

千早「……」ピクッ

あずさ「ええとぉ……そう、ですねぇ……」

律子「今日の朝は、何食べました?」

あずさ「今日は……」

あずさ「ベーコンエッグと、トーストとサラダでした」

律子「……ふつーの朝食って感じだけど……そこに何か秘密があるのかしら」

千早(ベーコンエッグと……トースト……)カリカリ

律子「……貴音も胸は大きいけど、朝食は何だったの?」

千早「……」

貴音「わたくしの朝餉ですか?……それは、とっぷしぃくれっと故……」

律子「そう?残念ね」

千早「……」ハァ

―――

P「……千早、完全に暗記するのを忘れてますね」

小鳥「みんなの話しか聞いてないですよ……」

P「…………まさかここまで思う壺だったとは……」

貴音「朝餉については教えられませんが……」

貴音「わたくしが常日頃からしている、『すとれっち』ならばお教えできますよ」

律子「ストレッチ?どういうやつなの?」

貴音「わたくしはそれを食事を終えた後と、就寝の前に行うのですが……体が軽やかになる、すばらしいすとれっちなのです」

千早「……」フムフム

あずさ「貴音ちゃん、どういう風にやればいいのかしら?」

貴音「ふむ……まずは椅子に腰掛ける所からですね」

律子「椅子って……この更衣室のベンチとかでもいいの?」

貴音「ええ、問題ありません」

律子「……じゃあ学校にあるような普通の木の椅子でも?」

貴音「普段通りに座れるならば、どのような椅子でも問題はありません」

千早「……」ホッ

貴音「座った後は……背筋をぴんっと伸ばすのです」

千早「……」ピンッ

律子「……wの、伸ばしたわよ。この後は?」

貴音「背筋を伸ばし……今度は足を、地面と水平になるようにぴんっと伸ばすのです」

あずさ「か、体が……ちょ、直角に……これって、結構つらいんですね……」

千早「……」プルプル

貴音「手で椅子を支えても構いませんが……手も地面と水平になるように伸ばすと、さらに軽やかになります」

律子「……プハッ!あー私はもうダメだわー。……これやると体力つきそうねー」

貴音「ええ。……ですが、手を水平にするのは、始めのうちは控えた方がよろしいかと」

貴音「わたくしも、椅子から落ちそうになったことが何度かあります故」

あずさ「そうだったの~、気を付けなくちゃね」

貴音「ええ、ですから


ガタン!カララーン


千早「いっつつつつつ…………」

―――

P「うっひゃっひゃひゃひゃっひゃっひゃ!」

小鳥「あははははははは!」

―――

律子「……プ……グ……ゴホン……グッ……」

貴音「…………」

あずさ「あ、あらあら~……」

千早「…………」

律子「プグッ……グ、ゴホンゴホン……」

千早「…………」

千早(し、死にたい……)ズーン


プァーーン


暗記タイム終了

※ちなみに当然のごとく暗記は失敗でした

あずさ「ち、千早ちゃん……元気出して、ほら……ね?」

千早「…………はい」ズーン

貴音「千早……あのすとれっちは、何の効果も無い出鱈目なものです」

貴音「……今後は、やらないことを推奨致します」

千早「……………………はい」ズーン

律子「まぁまぁ、……千早」

千早「…………何?」

律子「一回恥をかいてみないと、わからないこともあるものよ?」

律子「今回のは良い経験だと思ってさ……」

千早「…………ハァ、そうね。逆にもう、これ以上恥ずかしいこともないでしょうし」

千早「わかったわ。このどん底の気持ち、忘れないようにする」

律子「……それでこそ如月千早ね」


メガネMC「……なんか良い感じにまとめてくれて良かったですね」

メガネガヤ「ていうかあんなのより恥ずかしいこといっぱいやって来てるよなぁ、俺ら」

メガネMC「いや、そうだけどw」

最後の挑戦者は

菊地真!

真「暗記は得意じゃないけど……集中力なら任せて下さい!」

P「ああ、真の集中力はかなりのものだからなぁ。期待してるぞ」

真「へへーん!何が来たって、かんっぜんに無視してやりますからね!?」

P「おう、その意気だ。よし行ってこい」

真「はい!」

ガチャ

……バタン!


P「…………さて……」

P「果たして……無視し続けられるのかなぁ……?」

P「ふっふっふ……」

真「お、机ってこれかぁ。……えーと何々?」


暗記テーマ:大相撲・第60~69代横綱
①双羽黒
②北勝海
③大乃国
④旭富士
⑤曙
⑥貴乃花
⑦若乃花
⑧武蔵丸
⑨朝青龍
⑩白鵬


真「……スポーツ繋がりってことかなぁ」

真「……にしても……知ってる名前の人も多いし、これはラッキーかも!やーりぃ!」

真「よーっし。10万円、10万円っと……」カリカリ

真「……」カリカリ

―――

小鳥「……真ちゃんの誘惑は何なんですか?」

P「……もう、そろそろ、はじまりますよ」

真「……」カリカリ


カシャン


真「!?」

真(ま、周りが真っ暗になった!……ってここだけ明るいや。スポットライトか)

真(……親切なんだか、そうじゃないんだか……)

真「……」カリカリ


―――もしも過去に戻れるなら

誰しもが一度は考える、そんな夢見事

しかし、もしそれが夢ではなく、現実に起こり得ることだとしたら

……あなたはその時、どうしますか?



真「……な、なんだ今のナレーション……」

真「……!」

雪歩「や、やめて下さいぃ……」

チンピラA「いーじゃねーかよ、ねーちゃん。俺たちとイイコトしようぜぇ……?」

チンピラB「ホラホラホラ、ちょーっと裏の路地の方に行くだけだからさぁ……」

雪歩「ひ、ひぃぃ……」グスッ

真「ゆ、雪歩……!」

真(だ、ダメダメ!……雪歩だって、お芝居だったら男性とも喋れるようになったんだ……あれは演技、演技なんだ……)

真(…………)チラッ

チンピラA「ホレホレぇ、いいから来いよぉ」

雪歩「い、いやですぅー!」

ダッ

チンピラB「あっ、このアマ逃げるんじゃねぇ!」


暗転


キキーッ!ガシャーン
通行人「うわぁー!じ、事故だー!男の人が跳ねられたー!!」

真「!?」

チンピラB「お、おい!お前!お前大丈夫か!?」

チンピラA「…………」

チンピラB「そ、そんな……ウソ……ウソだろぉ……!?」

雪歩「……ひ……あ、ああ……」ガクガク

雪歩「そ、そん……そんな………」ガクガク

「ドウシタンダ……?ナニガアッタ……?ヒ、ヒトガチダラケダ……!」

ワイワイガヤガヤ

チンピラB「……」ギリッ

チンピラB「こいつだ!……この女が、コイツを殺したんだ!」

雪歩「ひ、ひいぃ……」ブルブルブル……

雪歩「そん……な……ち、違っ……」

野次馬「お、俺は見たぞ!……女が、男の方を強引に突き飛ばしたんだ!」

野次馬「道路を走っているトラック目がけて……!」

雪歩「ち、違いますっ!ちが、ちがい、違いますぅっ!」

真(え?え?え?)

チンピラB「そうだ、この女は人殺しだ!」

野次馬「絶対に逃がすな!取り押さえるんだ!」


そんな……人殺し……?

あの子、可愛い顔して……

酷いことするもんだ……


雪歩「そ、そんな……ちょっと断っただけなのに……」

雪歩「ちょっと押しただけなのに……」

雪歩「私が……ひ、人殺し……?」

雪歩「そんな……そんなの嫌……」

雪歩「い、いやあああああああああああああああ!!!!」



暗転

真「…………」

真(え、ちょっとコレ……どうなるの?)

真(……あ、明るくなった)

……

雪歩「や、やめて下さいぃ……」

チンピラA「いーじゃねーかよ、ねーちゃん。俺たちとイイコトしようぜぇ……?」

チンピラB「ホラホラホラ、ちょーっと裏の路地の方に行くだけだからさぁ……」

雪歩「ひ、ひぃぃ……」グスッ

真(!?)

チンピラA「ホレホレぇ、いいから来いよぉ」

雪歩「い、いやですぅー!」

ダッ

チンピラB「あっ、このアマ逃げるんじゃねぇ!」

ダッ

雪歩「そ、そう……さっきは、この通りであの人を突き飛ばしたからあんなことに……」

雪歩「……だから……私が無理やり動くんじゃなくて、周りの人に助けを求めれば……」

雪歩「だ、誰か助けて下さい!お願いします!」

通行人「……」チラッ

野次馬「……」スタスタ

雪歩「あ、あの……お願いします!変な人たちに追われてるんです!……お願いします!」

ガシッ

チンピラA「へっへ~、捕まえたよねーちゃん」

雪歩「ひいいぃ!」

チンピラB「けっこー逃げ足早いんだなぁ」

チンピラB[……でもま、大声出して自分から教えてくれるなんて親切だねぇ」

雪歩「あの……だ、誰か!おね、お願いしますぅ!」グスッ

通行人「……」

チンピラA「うるせぇなぁ。いいからこっちに来るんだよ、おい!」

雪歩「い、いやぁ!」

グイッ

チンピラA「うおっ!」

チンピラB「あ、トラックが!」

キキーッ!ガシャーン

通行人「うわぁー!」

チンピラB「お、おい!お前!お前大丈夫か!?」

チンピラA「…………」

チンピラB「そ、そんな……ウソ……ウソだろぉ……!?」

雪歩「そんな……ま、また……なの……?」

「ドウシタンダ……?ナニガアッタ……?ヒ、ヒトガチダラケダ……!」

ワイワイガヤガヤ

チンピラB「……」ギリッ

チンピラB「こいつだ!……この女が、コイツを殺したんだ!」

雪歩「ひ、ひいぃ……」ブルブルブル……

雪歩「そん……な……ち、違っ……」

雪歩「ち、違います!……他の人も見てたはずですぅ!」

雪歩「わ、私は……無理やりこの人たちに連れて行かされそうになって……」

雪歩「それで手を振りほどいたら……」

雪歩「……そ、そうですよね!?」

通行人「…………」

雪歩「お、お願いします!そうだって言ってください!」

チンピラB「ふざけるんじゃねえ!人殺しが醜い言い訳しやがって!」


そんな……人殺し……?

あの子、可愛い顔して……

酷いことするもんだ……


雪歩「そ、そんな……また……また同じなの………?」

雪歩「いや……お願い……せめてもう一度だけチャンスを……もう一度だけ……」



暗転

真(ど、どうなるんだ…………?)ドキドキ


雪歩「や、やめて下さいぃ……」

チンピラA「いーじゃねーかよ、ねーちゃん。俺たちとイイコトしようぜぇ……?」

チンピラB「ホラホラホラ、ちょーっと裏の路地の方に行くだけだからさぁ……」

雪歩「ひ、ひぃぃ……」グスッ

チンピラA「ホレホレぇ、いいから来いよぉ」

雪歩「い、いやですぅー!」

ダッ

チンピラB「あっ、このアマ逃げるんじゃねぇ!」

ダッ


真(……ここまではさっきと一緒だ……問題はこの後、雪歩がどうするのか)


雪歩「ハァハァ……お、お願いします。悪い人たちに追いかけれてるんです、助けて下さい!」

通行人「え?……い、いやぁ……ちょっと……」

雪歩「そ、そうですか……」

雪歩「やっぱり、ここの人たちは助けに応じてくれない……」

雪歩「だ、だったら……!」

雪歩「…………スゥーッ」



雪歩「真ちゃん助けてーーーーーー!」



真「!!!!!」

チンピラB「お、あんなとこにいやがった」

チンピラA「はっは、誰に助けを求めたかしらねーけど、誰も助けになんかこねえよ!」

雪歩「……ま、真ちゃんは絶対助けに来ます!」

雪歩「真ちゃんお願い!助けて!」

真「……」バックンバックン

チンピラA「しつけーなぁ!真だか誰だか知らねーけど、誰も来るわけないだルォ!?」

雪歩「お、お願い!真ちゃん……真ちゃん!」

真「ゆ、雪歩……」

チンピラB「ははは、何だよ。『やめろぉーーーー!』とでも言って助けに来るってのかよ」

真「…………」

チンピラA「はっは、そりゃあいい傑作だ。……じゃあ真ちゃん、とやらのために……」

チンピラA「10秒だけ待ってやるよ」

雪歩「ハァ……ハァ……真ちゃんは……絶対、絶対ぜったいに来ます!」

チンピラA「はいはい。じゅーう!」

きゅーう!

はーち!

なーな!

真「……」

ろーく!

ごーお!

よーん!

さーん!

にーい!

いーち!

真「やめろぉーーーー!」ガタン!

雪歩「!」

チンピラA「!」

チンピラB「!」


―――

小鳥「キターーーーーーーーーーーー!これはキタわキタわーーーー!!!」

小鳥「ゆきまこ!ゆきまこ!まこゆき!まこゆき!リバース可、リーバス可よぉ!!!」

P(うるせぇ……)

―――


チンピラA「な、なんだテメェは……」

真「……悪党に名乗る名前など無い!」

ドゲシッ

チンピラA「うぐっ!」

チンピラB「あ、おいお前!……この野郎!」

真「……うるさい!」

ドガッ

チンピラB「ぐああっ!」

……バタン


真「……ふぅ、なんだ呆気ないなぁ」

雪歩「ま、真ちゃん……」

真「はは、雪歩……遅れてごめんね」

雪歩「……ううん」フルフル

雪歩「真ちゃんだったら、絶対来てくれるって……信じてたもん」

真「そ、そうかぁ……ははは……」

雪歩「あとね、真ちゃん……教えなきゃいけないことがあるの……」

真「何だい?」

雪歩「これってね……お芝居なんだ」

真「…………」

真「……………………は?」

雪歩「私は別に人殺しじゃないし、過去に行ったりも出来ないんだよ」

雪歩「それで、いま真ちゃんが蹴った人たちも、役者さんなの」

真「…………へ?」

真「………いやいやいや、それは………え?このタイミングでそれ言うの?」


メガネMC「……あのねぇ、もう暗記答え合わせもしないですよ」

真「うわ、全員スタジオに来てる……」

メガネガヤ「そりゃそうじゃん。『やめろぉーーーー!』じゃないよもう」

真「え、だってアレは……」

小鳥「……誘惑に乗らないでって企画なのに……むしろソレ待ちだったしねぇ」

P「まぁ、乗っかっちゃうのも仕方ないけどな。暗記は壊滅的だったけど」

真「え、ええぇ~…………」

メガネMC「ていうかもう、役者さんたちに謝って」

MC「真くんのはアレ『ただの暴力』だからね」

真「えーと…………あの、周り見えなくなっちゃってました。ごめんなさい///」

MC「そうそう」



雪歩「ふふふ、真ちゃん。……私の演技、どうだった?」

真「雪歩……」

真「…………ははは」

真「…………上手くなったね」グッ

雪歩「……うんっ!」



おわり

書いてて非常に楽しかった。見てくれてありがとう


照れカワは実はいつもの「若林・矢作」のパターンで、

ももクロみたいに「照れさせる側」でアイマスの娘らを使おうとか考えてたけど……

今回のでやっぱり「アイドル主体」の方が展開させやすいのがわかったんで

「照れカワアイドル更生プログラム」はいつかやるかも

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