トシ「これが六曜を超えるあなたの新技…啓蟄よ」豊音「!?」 (36)

胡桃「あの…トシさん?」

憩「んーっ!んーっ!」

トシ「何だい?」

塞「豊音に新しい技を教えるっていうから来たんですけど…何なんですか、これは」

憩「んーっ!んーっ!」

トシ「話の通りさ、これが六曜を超える豊音の新技…啓蟄よ」

豊音「意味がわかんないよー」

憩「んーっ!んーっ!」

トシ「大丈夫よ、豊音ならきっと使えるわ」

塞「いや、もっと根本的なこと聞きたいんですけど」

憩「んーっ!んーっ!」

トシ「何だい?」

塞「その目隠し猿ぐつわで後ろ手に縛られてる三箇牧の荒川憩は何なんですか」

トシ「皆まで言わせないで頂戴、啓蟄よ」

豊音「荒川さんが縛られてる意味がわかんないよー」

トシ「これがなくっちゃ始まらないわ。啓蟄なんだからね」

塞「だめですよ!そんな…けっ…けけゴニョゴニョなんて下品な!」

トシ「何を言ってるんだい。六曜と一緒さ、れっきとした暦の名前だよ」

エイスリン「ケーチツ?ケーチツ!」

胡桃「エイちゃん、連呼禁止ね」

エイスリン「?」

胡桃「…で?一応聞きますけどどんな技なんですか?」

トシ「もちろん名前の通り、彼女のおまたに牌を仕込んでおいてすりかえるのさ」

塞「うわあ直球だ、そして最悪だこの人」

トシ「啓蟄は立春や夏至と同じ、二十四節気のひとつ」

エイスリン「??」

トシ「冬の終わりにだんだん暖かくなって、土の下で冬眠していた虫が穴を開いて出てくる頃のことだよ」

胡桃「いや、それは知ってますけど…」

トシ「春を迎えた虫のように、彼女のおまたから牌が出てきてぽぽぽぽーん、ステキやん?」

塞「ちょっと何言ってるかわかんないです」

胡桃「シロ、救急車手配してくれる?黄色いの」

白望「……zzz」(既に考えるのをやめている)

トシ「まあ論より証拠、ロンよりツモよ。やってみればわかるわ」

塞「そのオヤジギャグはなんとかなりませんか」

トシ「やだねえ、あたしゃオヤジじゃなくてオバサンだよ」フフッ

胡桃「そういうのはいいですから」

トシ「いいからとりあえず入れてみましょ」スッ

塞「えっ、ちょっ」

グリグリッ

憩「んーっ!」

ブチュッ

塞「きゃぁぁぁぁ!本当にやりやがったよこのババア!」

胡桃「血が!血が出てるよ!」

トシ「ふたーつ、みーっつ…」グリグリッ

憩「んーっ!んーっ!」

塞「ちょっと!いくつ入れるつもりですか!?」

トシ「もちろん136個だよ、牌の数を揃えておかないとすぐバレるでしょ」

胡桃「そんなに入れたらおなかが凄いことになりますよ!妊婦にさせる気ですか!?」

トシ「あらあら、妊婦にさせたいなら牌じゃなくて男性のリー棒を突っ込むんだよ」ウフフ

塞「腹立つ!正論で諭されてるのがすごい腹立つ!!」

憩「んーっ!んーっ!」グリグリグリッ

エイスリン「AHAHAHAHA!ケーチツ!ケーツィトゥーwww」

胡桃「エイちゃん!詳細にスケッチしちゃダメ!!」

憩「…………」ビクンビクン

胡桃「荒川さんが失神しちゃったよ…」

塞「うわぁ…おなかがぽっこり膨らんでる…」

トシ「まだ途中なのに…。仕方ないわね、全国大会までにはできるようになってもらいましょう」

胡桃「いやいや!できたって無理ですって!大体、部外者を連れて対局できるわけないじゃないですか!」

トシ「長野の原村和はペンギンを持ち込んで打ったと聞いたわ。全国に行けば持ち込みくらい普通のことだよ」

塞「ぬいぐるみと人間じゃ天と地ほど差があるでしょう!」

トシ「注文の多い子たちだねえ…しかたないわね」ヤレヤレ

胡桃「なにこの私たちの方がワガママ言ってるみたいな感じ!?」

トシ「なら、豊音のおまたの中に彼女を入れましょう」

塞胡豊「……はあ!?」

トシ「大っぴらに持ち込めないなら、隠せばいいだけの話じゃないか」

豊音「ぜ、全然意味がわかんないよー」

トシ「荒川さんに豊音のおまたに入ってもらって、必要なときだけ豊音のおまたの中の彼女のおまたから牌を取り出すの」

塞「何その二度手間!もう荒川さんいらないじゃないですか!」

トシ「何を言ってんだい…それじゃ啓蟄にならないじゃないか」ヤレヤレ

塞「何言ってんだはこっちのセリフですよ!荒川さんサイズがおまたに入るわけないでしょ!!」

胡桃「ちょっとシロ!早く起きて救急車!黄色いの大至急!!」

白望「…………zzz」

胡桃「ひとまず荒川さんの拘束を解こう!」

豊音「そ、そうだね!」

パラッ

憩「ハァ…ハァ…」

塞「荒川さん大丈夫?早くおまたの牌を出さないと…」

憩「待って……そんなんええですから……」

胡桃「えっ?」

憩「……計画通り……」

塞胡豊「!?」

憩「姉帯さん…会いたかった…」

豊音「えっ?えっ?」

憩「私…、背の高い人ってめっちゃ好きやねん…」

塞「荒川さん?何を言って…?」

憩「一目見たときから思てました…姉帯さん…」ガシッ

豊音「ひっ!?」

憩「あなたに入りたい」

豊音「ひゃぁぁぁ!来ないで!」

憩「もう遅いで…。捕まえた…」ギュッ

グリグリグリッ

胡桃「ちょっと何してんの荒川さんまで!!」

憩「熊倉さんの…監督の指示やから…」ハァハァ

トシ「うんうん」

塞「荒川さん!ちょっと冷静になろう!?まずあなたに入ってる牌を出そうよ!!」

胡桃「黄色!じゃなくてシロぉ!!早く救急車!!2台!!」

憩「姉帯さん…姉帯さん…」ハァハァ

豊音「ひっ…いや…」

メリメリッ

ブチュッ

豊音「痛ーい!!」

塞「ああ!豊音からも血が!」

胡桃「手が!荒川さんの指が根元まで入っちゃった!!」

エイスリン「AHAHAHAHA!ケーティトゥ!ケィティトゥーwwwwww」

胡桃「いい加減にしろよコラ留学生!スケッチすんなつってんだろ!!」

塞「JAPANESE CULTUREってタイトルもやめなさい!全然違うから!!」

塞「とにかく二人を引き離すよ!胡桃、荒川さんの方持って!」

胡桃「う、うん!」

塞「せーのっ」

グイッ

塞「ふんっ…よいしょ…」

胡桃「固い…なかなか抜けない…」

グググッ

塞「ふぬぬぬぬ…」

胡桃「うーんとこしょ、どーっこいしょ」

ググググググ

胡桃「……えいっ!」


スポッ

胡桃「次の瞬間、私の目の前が真っ暗になった。」

胡桃「豊音から荒川さんを引き剥がして、反動で後ろに飛んで…。そこまでは覚えてるんだけど」

胡桃「そこから先は記憶も定かでない。」

胡桃「暗い海の中を彷徨っているようで、でも荒川さんを掴んでいる感触だけはずっとあって…」

胡桃「そして、長い時間が流れた気がした…」

実況「さあ、高額賞金をかけて争う岩手ローカル麻雀大会、女子シニアの部決勝も佳境に入ってきました!」

実況「急遽飛び入り参戦した元プロ、熊倉トシ選手が身重のお体ながら快進撃!」

実況「まったく他者を寄せ付けない!圧倒的強さを見せています!」

実況「失礼ながらご高齢で妊婦さんなのに、凄いですね!この強さの秘密は何なんでしょうか!?」

解説「いや、明らかに牌がすり変わってます…。間違いなくイカサマしてるんですが…」

解説「証拠がまったく掴めない…まさかあれは伝説の…!」

トシ(フフフ…)

トシ「ツモ。3000・6000だよ」

マダム雀士「また…こいつ…」

おばちゃん雀士「ちょっと!いい加減にしろよお前!絶対サマこいてんだろうが!」

トシ「おやおや、証拠でもあるっていうのかい?」

おばちゃん雀士「そ、それは……ないけど……」

初老雀士「ぬう……でかい腹して妊婦のくせに…」

トシ(フフフ…)

マダム雀士(…確実にイカサマやってるはずなのに…)

おばちゃん雀士(どうやってんだよ…クソッ)

初老雀士(わからないと止めさせることもできないね…)

トシ(さて、この局もやらせてもらおうかね…。啓蟄!)

ゴソゴソ

トシ(ん?)

グイッ

トシ(おや、やけに引っかかってるね…でてこない…)

グイグイッ

トシ(…まさか、お目覚めしちゃったかしら?)

トシ「ふんっ…」

グググググ

トシ「はあっ!」


ズルズルズルゥッ


マダム雀士「!?」

おばちゃん雀士「!?」

初老雀士「!?」

トシ「おやおや…出てきちゃったわね…」

実況「おーっとこれは!熊倉選手から女の子が出てきました!!」

実況「しかも二人!!双子のご出産です!おめでとうございます!」

解説「どうやってあれだけの体積が入ってたんだろう…」

憩「うーん…」

胡桃「はっ、ここは…?」

トシ「気がついたね、二人とも」

胡桃「トシさん…私、今までどうして?」

トシ「…安心なさいな、いい夢を見ていただけさ」

塞「胡桃!心配したよ!荒川さんも!!」

胡桃「塞…。一体何が起こってたの?」

塞「き、聞かないほうがいいんじゃないかな…荒川さんを引っ張ったはずみで一緒にトシさんに入ったなんて…」

トシ「やっぱり実演してあげた方がいいと思ってね。結局バレて失格になっちゃったけどさ」

塞「ごめん胡桃、止められなかった…」

トシ「間近で見た感想を話してやれば、豊音も安心するだろう。さ、豊音を一緒に説得しておくれ」

胡桃「いや、何も覚えてませんけど…」

塞「まだやる気なんですか!?それに胡桃まで巻き込まないでください!」

トシ「ん?胡桃じゃなくて私を使え?(難聴)あんたも私に入りたかったのかい?」

塞「違います!!もうやめ!!もうこの件は終了です!!」

トシ「やれやれ、豊音が上手くできたらみんなでやろうと思ってたのに」

塞「みんなって!私達にまでやらせる気だったんですか!?」

トシ「えっ?やりたくないのかい?」(想定外)

塞「やりたいわけあるか!!荒川さんだってそんなに酷使されたら怒りますよ!!」

トシ「あら、酷使なんてとんでもない。ちゃんと予備を用意してたわよ」

塞「予備?」

トシ「ほらこれ。越谷女子の大将、八木原さんだよ」ゴロン

景子「んーっ!んーっ!」


カン

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