恒一「ウォーターボーイズ」(195)

赤沢「多数決の結果、文化祭での3組の出し物は男子だけのシンクロをやる事に決定しました」キリッ

綾野「いえー!」

小椋「FOOOOOOO!!」

見崎「……」パチパチ

杉浦「これも泉美のためこれも泉美のためこれも泉美のためこれも泉美のため……」ボソボソ

風見「」

勅使河原「まさか女子が結託して票を固めてくるなんて……」

望月「男子は事前の相談とか考えてもなかったからコスプレ喫茶とかジャズ発表とか色々に割れちゃったからね……」

恒一「はは……。でも男だけのシンクロって何が面白いんだろ……」

赤沢(面白いわよ! 別に恒一くんの裸体を鑑賞できればそれで)

綾野(いいんだよ! むしろこういっちゃん一人だけでもいいんだよ!)

江藤「……」

勅使河原「でもシンクロってどうやるんだ?」

恒一「うーん、東京に居た頃もスイミングとかあんまり興味なかったし、イメージ的にあまり女性の競技という事しか……」

勅使河原「だよなー……」

望月「やっぱりプロとか映像とか見て勉強したほうがいいのかな?」

風見「そうだね。それをお手本にしてみたほうがいいね」

勅使河原「なあ、俺ら男はシンクロをするとして、女子はやっぱり裏方とかやるのか?」

赤沢「ええ、モギリとか観客の誘導とかもしなくちゃいけないし。当然よ!」

勅使河原「ふぅん」

赤沢(まあ、開幕したら特等席で見るんだけど)

杉浦(男の裸なんて見て何が面白いのかしら……。見るならやっぱり泉美の……)

金木(! 同類の臭い!)ピクッ

松井(こら。見るのは私だけでしょ)

金木(///)

風見「とりあえず、男子は放課後にでも集まってビデオでも見てみよう」

勅使河原「千曳先生から借りてきた!」

望月「あの人何でも持ってるよね」

勅使河原「図書室勤務って暇なんだな」

中尾「ビデオの再生はまかせろー!」ピッ

恒一「あ、始まった」

勅使河原「お、一人か?」

猿田「まだ競技前の様子ぞなね。水着は着ているけど椅子にこしかけて……」

王子「? 何か様子が変だね」

風見「……?」

勅使河原(あれ、これ……)

水野「?……」

辻井「……」

勅使河原(シンクロって最初、AVのインタビューみたいな事するのか……?)

望月「ていうかこれ完全AVだよね」

勅使河原「今度こそちゃんとしたの借りてきた!」ギンギン

米村「図書室で何やってるんだよあの人……」ギンギン

前島「それ以上言うな……」ギンギン

辻井「女優はキレイ系な人だったな」ギンギン

川掘「俺としては男優は好みじゃなかったがな。女じゃ抜けねえし」

猿田「すごかったぞな……///」ギンギン

王子「まさか裏モノだったなんて驚きだよね」ギンギン

勅使河原「よーし、今度こそ再生するぞー!」ギンギン

風見「今度こそしっかり頼むぞ」ギンギン

ピッ

恒一「あ、いきなりプールからなのか」ギンギン

赤沢「男子達しっかり見てるのかしら」

小椋「さあ」

綾野「どうする? 様子見に行く?」

赤沢「そうね! 文化祭対策委員も兼ねてるからには失敗させるわけにはいかないしね!」

綾野「わーい」

小椋(ホント泉美は『対策』って名前のついたものにはこだわるわね)

綾野「行くとしたら千曳先生が今のうちだね」

小椋「それにしてもさっき先生勅使河原に呼ばれて青い顔してたけど何かあったのかな?」

綾野「さあ、でもまあ行けば分かるって」

赤沢「ほら、早く行かないと置いていくわよ!」ワクワク

綾野「浮かれてるなぁ」

恒一「」

勅使河原「」

望月「」

水野「」

高林「」

ガラッ

赤沢「ほら、様子見に来たわよ……って何この臭い」

小椋「いやだ、男クサイというか生臭いというか……」

綾野「それで何で男子はビデオ見たまま固まってるの?」

赤沢「??」

赤沢「ちょっ、どうしたのよ一体……」

勅使河原「」

勅使河原「む、ムリだろ……」

望月「あれだけ水中を自在に泳ぎまわるとか不可能に近いよね」

辻井「正直レベルが違うというか……」

赤沢「ちょっと、あんた達一体何を見たのよ?」

川掘「……あれは学生ができるレベルじゃねえよな」

恒一「……」

勅使河原「悪い赤沢、ちょっと考えさせてくれねえか……?」

赤沢「何よ! クラスの決め事は絶対なのよ!?」

勅使河原「わかってるけどよ……」

勅使河原「あんなパフォーマンス見せられたら俺達もどうしていいか分からなくてよ……」ダッ

ソーダヨナ ヤッパリムボウダッタンダヨ アンナノヲヤレナンテフェアジャナイヨネ サスガニコレハオレニハマカセラレナイナー ザワザワ

綾野「」

小椋「」

赤沢「……一体、何を見たっていうの?」

小椋「」ハッ

小椋「ちょ、とりあえずビデオを巻き戻して見てみようよ」

綾野「……そ、そうだね。何がそこまで男子を追い込んだのか分かるかもしれないし」

赤沢「そうね、百聞は一見にしかずなんていうし」

赤沢「ただ、私たちもあの様子からすると、見るのに覚悟が居るという事は分かるわね」

赤沢「……」

赤沢「よし、じゃあ再生するわよ?」ピッ

赤沢「……」

綾野「……」

小椋「……!」

赤沢「こ、これは――」

勅使河原「じゃあまた明日な……」

恒一「うん……」

恒一(ああ、そういえば教室に水着忘れてたっけ)

恒一(ホントなら今日、ビデオ見終わった後に市民プールで練習する予定だったから……)

恒一(気が重いけど、最近私物んの紛失とか特に酷くなってるし盗まれないうちに持って帰るか)

恒一「ハア……」

恒一(気が重いなぁ……)

ファイトー ピー モットシッカリー

恒一「? 水泳部?」

恒一「そういえば、江藤さんも水泳部なんだっけか。もしかしたら水泳部の人たちならあの程度余裕なのかもしれないし、ちょっとのぞいていこうかな……」

恒一「……」

恒一「あー、やってるやってる」

ピー

江藤「……!」ダッ

恒一「お、江藤さんのクロール綺麗だなぁ!」

恒一(そういえば東京の学校は男子校だったし、同い年の女子のちゃんとした泳ぎを見るのは始めてかも……)

バシャバシャ

恒一「おー、早い早い……」

恒一「……」

恒一(それでもやっぱり、さっき見たビデオみたいな事はできないんだろうなぁ……)ハア

江藤「……」ハアハア

恒一「ぶっちぎりでゴールしたなあ」

江藤「! ……榊原くん?」

恒一「!」ドキ

江藤「ごめんね、部活終わるまで待たせちゃって」

恒一「いやいや、僕が勝手に残っただけだから……」ハハ

恒一「それにしても江藤さんのクロール、思わず見惚れちゃったよ。あんな綺麗なフォームは初めて見た」

江藤「えへ、まあ毎日練習してるしね」

恒一「大会はいつなの?」

江藤「……大会は終わっちゃったけど高校でも続ける予定だし、ちょくちょく顔出してるんだ」

恒一「あ、ごめん」アセ

江藤「……それにしてもどういう風の吹き回し?」

恒一「?」

江藤「何かあったんでしょ。今日は男子、ビデオ見た後市民プール集合だったし」

恒一「はは、まあいろいろとあってね……」

江藤「ふぅん。まあ言いたくないならそれ以上は聞かないけど」

恒一「……」

恒一「江藤さんってさ、プールのなかでカンフーとかできる?」

江藤「!? ……カンフー?」

江藤「動きだけならできると思うけど」

恒一「いや、例えばブルース・リーみたいに奇声をあげながら目にも止まらぬ拳法なんだけど……」

江藤「……水の抵抗とかあるからそんな動きはムリだと思うけど……」

恒一「いや、できないならいいんだけど……、あ! じゃあ水面走りは?」

江藤「」

恒一「インド映画見たいなダンスしながら近接格闘とか……」

江藤「」

江藤「マンガとか話?」

恒一「いや、シンクロナイズドスイミングの話」

江藤「」

恒一「?」

江藤「そんな動きはシンクロ云々とか以前の話だと思うんだけど……」

恒一「……ビデオだと中国人の人たちがそうやってシンクロしてたけど……」

恒一「何が一体どうなってるんだ……」

江藤「ビデオ?」

赤沢「」

綾野「」

小椋「」

千曳「おや、部室の方にいないと思ったらここにいたのか」

千曳「……?」

千曳「どうしたんだい、そんな顔して」

赤沢「」

赤沢「もしかしたら私たちはとんでもない事を恒一くん達に要求したかもしれません」

綾野「まさかシンクロの競技がここまでハードなものだったなんて……」

千曳「確かにシンクロはハードだが、言うほどのものでもないはずだが?」

小椋「……」

小椋「でもビデオには……」

千曳「ビデオ……?」

千曳「」

千曳「これは私のZ級映画コレクションの一つじゃないか……」

赤沢「映画……」

綾野「あれが、ですか……?」

千曳「ああ、中国系のパロディー映画でね。ドキュメンタリー調の作りなんだが、そうか君達はこれを見たのか」

千曳「そもそもこのドキュメンタリー形式自体がすでにウディ・アレンのカメレオンマンのパロディーでね」

千曳「燃えよドラゴンとかレモ第1の挑戦とか色々取り入れた雑食系の映画なのだが」

千曳「いかんせん中途半端にリアリティーを求めたせいか中途半端となった映画でね」

千曳「私の趣味の一つというわけさ」

赤沢「……」

綾野「……」

小椋「……」

千曳「はてしかし、なぜこれがここにあるのかな?」

江藤「だから、シンクロってのはそんなものじゃないんだって!」

恒一「でも僕の見たドキュメンタリーではシンクロは格闘を取り入れた水中舞踏の一つだって字幕が……」

江藤「だーかーらー!!」

恒一「ドキュメンタリーの定義自体”実在の出来事に、虚構等を含めることなく記録し構成した映像作品”だし、あれがシンクロの姿なんだって!」

江藤「もー!!」バタバタ

江藤「シンクロはそんな物騒なものじゃないのー!!」

恒一「……!」

江藤「……」

江藤「わかった」

恒一「……?」

江藤「ほら、榊原くん脱いで!」

恒一「!? え、どういう……」

江藤「水着持ってきてるんでしょ? 私が一からシンクロについて教えるから!」

江藤「ほら脱いだ脱いだ!」

恒一「」

恒一「いいのかな、学校のプールに忍びこんで……」

江藤「まあ、大会前だと普通のこれくらいの時間まではやってたし、いつもは終わった後でもクールダウンで残って子とかいるし大丈夫でしょ」

恒一「……はあ」

江藤「シンクロナイズドスイミングってね、クロールとかバタフライとか自由型みたいな時間の勝負とかじゃなくてね、ダンスしているみたいに音楽に合わせて体を動かして、技の完成度とか芸術性とか表現力とかで争うの」

恒一「格闘は?」

江藤「パフォーマンスとしていれてもいいだろうけど、そういうのは普通は見ないね」

恒一「へえ、じゃあ僕らが見たのは中国版のシンクロって事なのかな」

江藤「……」

江藤「まあ、そう思ってる方が気が楽になるなら……」

恒一「そっか、なるほど。僕らは日本式を目指せばいいのか」

江藤(シンクロに日本式とかないとは思うけど、まあ気が紛らわせられるならそれで……)

江藤「そうだね!」

恒一「なんだかまたヤル気が沸いてきたぞ」

江藤「……」

江藤「ねえ、もし良かったらこの後家に来ない」

恒一「?」

江藤「ほら、榊原くんはちゃんとしたシンクロを見た事ないんでしょ?」

江藤「私個人が今やろうと思えばできるけど、文化祭の出し物は団体の方だから……」

恒一「もしかして、江藤さん参考になりそうなのを持ってるの?」

江藤「……」

江藤「い、一応」

恒一「へえ、楽しみだなぁ。三度目の正直ってこのことだったのか」

江藤「……」

江藤「……///」

江藤さん支援
http://i.imgur.com/lBBud.jpg
http://beebee2see.appspot.com/i/azuY2aC2Bgw.jpg
http://beebee2see.appspot.com/i/azuY4O-5Bgw.jpg

恒一「お邪魔します……っと」

江藤「どうぞどうぞ///」

恒一「へえ、女の子の部屋は何人か行った事があるけど、江藤さんのもまた個性的だね」

江藤「……」

江藤「何人かねぇ……」ボソッ

恒一「ポスターとか水泳選手とは分かるけど名前までは分からないし、それにトレーニング機器とかここまで充実してるのは同性の家でもなかなか見た事ないよ」

江藤「トレーニングとかはしっかりしたものを使ってるからね」

江藤「クロールとかは大胸筋とか三角筋、上腕筋や腹斜筋とか腹筋回り、体幹も鍛えなきゃいけないしね」

江藤「自慢じゃないけど腹筋は八つに割れてるよ」フフ

恒一(ああ、そういえば、さっきの水着姿の時、スレンダーだったけど必要な所に筋肉がしっかりついてる印象だったっけ……)

恒一「まあ健康的な事にこしたことはないよね」

ちょっと席を離れるわ

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

恒一「それよりシンクロの映像って?」

江藤「え、あ、うん。ちょっと待ってて……あった」

恒一「ずんぶんホコリのかぶったビデオだね」

江藤「もう最近はしまいっぱなしだったから。今セットするから」ピッ

恒一「……」

江藤「……」

恒一「この画面の感じ……ホームビデオ?」

江藤「うん、私の小学生の頃のやつ」

恒一「へえ、江藤さんってシンクロもやってたんだね」

江藤「高学年ぐらいまでだけどね。競泳のクラスと平行してシンクロのコースをやってたんだ」

恒一「あ、もしかしてあれが江藤さん?」

江藤「そうそう」

恒一「ははっ、やっぱり江藤さんだ。面影があるよ」

江藤「そ、そう?……///」

江藤(なんでだろう。榊原くんとさっきプールに入ったときは恥ずかしさとかなかったのに……。昔の私を見られているというこの羞恥心は///)

恒一「へえ、ゆったりとした音楽だね」

江藤「小学生だから、一応童謡をアレンジしたものなんだけどね」

恒一「それでも凄い参考になるよ。ありがとう江藤さん!」ジー

江藤「いえいえ」

江藤(見せる前は特に抵抗とかなかったのに……、小学生の私、ものすごく見られてるよ///)

恒一「あ、今の動きって何……?」

江藤「えっ? 何って?」アセ

恒一「ほら、この倒立の姿勢で片方の足が水面と平行に開いているやつ」

江藤「あ、ああ。それはクレーン姿勢だね」

恒一「ふぅん。そうなんだー」マジマジ

江藤(そんな股関節をマジマジと見られても……/// うぅ……)

恒一「ねえ、江藤さん。このビデオ借りていってもいいかな?」

江藤「え!? え、何で?」

恒一「うん。家でじっくり研究したいのもそうなんだけど、勅使河原とか他の男子も、中国式のシンクロにカルチャーショック受けちゃってブルーになってるんだ」

恒一「でも、これなら頑張れば文化祭までに形ぐらいはできそうだし何とかものにできると思うんだよ」

江藤「う、うん。榊原くんがそこまでいうなら……いいよ」

恒一「ありがとう!」

江藤「あ! じゃあダビングする? それならいつでもビデオ見られるでしょ?」

恒一「いいのかい!? ありがとう江藤さん! それならクラス全員に配って各自家の方で見られるようにできるよ!!」

江藤「」

江藤「え、クラス全員?」

恒一「やっぱり全員それぞれが教材となる資料を持っておいたほうがいいだろうしね」

江藤「え……えっと」

江藤「」

江藤「えっと」

江藤「さ、榊原くんだけじゃ、ダメ、かな?」

恒一「あ、やっぱり全員はマズかったかな……?」

江藤「う、ん。やっぱり恥ずかしいっていうか……。その榊原くんだけなら……」

恒一「ごめんね無茶な事ばかり言って……」

恒一「わかった。とりあえず明日クラスの皆で見たら研究は僕だけの方でするよ!」

江藤「うん……、うん?」

江藤「明日、全員で見るの?」

恒一「うん、やっぱり男子とかシンクロについてまるで分かってなかったから、そうしても参考程度に一回ぐらいは見せたいんだ」

江藤「……」

江藤「わかりました。じゃあその一回だけなら……」

恒一「ありがとう! ありがとう、江藤さん!」

江藤「……」

江藤「」

久保寺母「クサッ!」

勅使河原「おおっ! これが日本のシンクロか!」

猿田「別にソドムの市みたいに這いつくばらなくてもいいんぞなね!」

王子「時計じかけのオレンジみたいに集団リンチしなくてもいいんだね!」

米村「ターミネーターばりのスタント演技は必要なんだな!」

杉浦「……ねえ泉美、こいつら一体何を見たの?」

赤沢「……」

久保寺「なるほど、大変参考になりますね」

久保寺(小学校の教員免許は諦め、中学校の先生となった私だが)

久保寺(しかしまさか合法的にこんないいものを拝めるなんて……)

久保寺(眼福眼福)

江藤「」

恒一「見てよ江藤さん! 皆がまたやる気になってるよ!」ハハハ

江藤「」

風見「しかし、これなら僕達にもできそうだね」

水野「だな! 早速放課後市民プールで練習だ!」

和久井「胸が躍るね」

高林「とりあえず僕らは体を第一に考えないと皆とフェアに渡り合えないからね」

勅使河原「見てろよ赤沢! 男の意地ってやつを見せてやるよ!」

赤沢「はいはい」

綾野「ねえ、泉美、泉美」ボソボソ

赤沢「何?」ボソボソ

綾野「私たちも市民プールの方、行かない」ボソボソ

赤沢「!」

小椋「? 何話してんのよ」ボソボソ

綾野「こういっちゃん達の様子を見に行くって話」ボソボソ

小椋「ふーん」ボソボソ

綾野「由美もいくでしょ?」ボソボソ

小椋「当然」ボソボソ

赤沢「ちょっ、待ちなさい!」ボソボソ

綾野「? 泉美は行かないの?」ボソボソ

赤沢「行きたいわよ! でも練習の邪魔にならないかどうか……」ボソボソ

小椋「いいじゃないの、ちゃんとやってるかどうかの監視とかいっておけば」ボソボソ

赤沢「……」ボソボソ

綾野「ね、行くでしょ?」ボソボソ

赤沢「……うん」ボソボソ

綾野「はい決まり」ボソボソ

小椋「じゃあ、一旦家に戻って水着取ってこなきゃ……」ボソボソ

見崎「……」

見崎「……」ニヤ

勅使河原「うわ! 何で女子までいんだよ」

高林「僕らは練習として来てるのにフェアじゃないよね」

赤沢「」

綾野「」

小椋「」

見崎「がんばって。これ、ポカリ」

恒一「うん、ありがとう」

中尾(赤沢さんの前でアピールするチャンス!!)

杉浦「どうなるやら」

桜木「さぁ。どうでしょう」

風見(見ててねマイスイートエンジェルゆかり!)

前島「これじゃクラスの面子とほぼ変わりがないなぁ」

水野「男子だけのはずなのに、なんで女子がいんだろうなぁ」

川掘(前島の細身だが、筋肉のついた二の腕、水野の逞しい腹筋……///)ハアハア

ザワザワ

赤沢(私たちだけのはずがなんでほぼ全員……)

見崎「……」

見崎「出し抜けると思ったか、無能め」

赤沢「!?」

見崎「ニヤニヤ」

赤沢「くっ……眼帯お化けが。せめてプールでぐらいはずしなさいよ……!」

綾野(……とりあえず気持ちを切り替えて)

綾野「こういっちゃんがんばってー!!」

赤沢「!?」

恒一「うん、ありがとう」

恒一「……」

恒一(江藤さんは来てないみたい……残念だな)

赤沢「ちょっと! ギャラリーがいるんだから朝見てたようなシンクロをやりなさいよ!?」

勅使河原「ちょっ、お前、素人に無茶言うなよ!!」

風見「……」

風見「いや、一回通しでやってみよう! その方が今の実力が分かるし」

勅使河原「風見、お前……いきなりはないだろ!」

風見(みてるかい? ゆかり。このリーダーシップ溢れる僕を)ニヤニヤ

猿田「いきなりやるなんて中々無茶するぞなな」

王子「そうだね、文化系の運動神経の低さをもっと理解してほしいよね」

望月「年中室内で絵を描いてる人間なんて、ただ立ってるだけでつらいのにね」

猿田「それはさすがに体力不足ぞなよ……」

王子「まあ吹奏学部もある種体育会系なんだけどね」

風見「とりあえず、列を組むんだ。ほら急げ! ノロノロするなカス共が」

勅使河原「どうしたんだよ……お前」

恒一「……」

恒一(何かイヤな予感……)

中尾「おい、音楽は!?」

風見「大丈夫、用意してある!!」

中尾「お、おう……」

小椋「いきなり本番とか大丈夫かな?」

綾野「とりあえずこういっちゃんの裸を見てるだけで眼の保養になるよ」

赤沢「ほらしっかりー!」

杉浦「中尾に向かってボートが!」

~♪

風見「」

勅使河原「」

望月「」

恒一「」

赤沢「」

綾野「」

小椋「」

見崎「……」

佐藤「ふええ、無様だよぅ」

杉浦「ものの見事に数分で崩れたわね……」

中尾「……」

中尾「な、何が起こったんだ?」パチクリ

杉浦「まず先頭を走っていた風見が、飛び込む瞬間足を引っ掛けて腹を打った」

見崎「その次に勅使河原くんが巻き込まれるように風見くんに直撃、二人とも沈む」

杉浦「あとは勅使河原が溺れて望月の足を引っ張ったり」

見崎「望月くんが苦し紛れに榊原くんの鳩尾と顎に拳を入れたり」

杉浦「川掘が危機を察知して飛び込んだり」

佐藤「ふええ、慌てた赤沢さんが全く関係なしに転んだり」

杉浦「中尾がドサクサに紛れて誰かに水着を下ろされたり」

中尾「!?」

見崎「阿鼻叫喚」

杉浦「クラシックの音色がよりシュールさを醸し出してるわね」

見崎「……」

中尾「」

恒一「あれから中尾くんは泣きながらどっかいっちゃうし」

恒一「風見くんとか白目むいてうわ言を言ってるし」

恒一「なぜか勅使河原は吐き気がして、僕が背中をさすろうとすると青ざめて尻を気にしだすし……」

恒一「ハア。散々だったなぁ」

江藤「ああ、今終わったところ?」

恒一「……やあ江藤さん」

江藤「どうしたの? また暗そうな雰囲気出して……」

恒一「またちょっといろいろあってね……」

江藤「?」

恒一「……」

川堀何人襲ったんだよ…

江藤「あー、それはダメダメだったねー」

恒一「ハハ……」

江藤「でも初めからそれだけ失敗しといてよかったじゃない?」

恒一「?」

江藤「最初それだけダメなら後にやつは、それ以下のものはなさそうだし、後はどんどん上手くなってくだけでしょ」

恒一「……うん、そうだね」

江藤「一番最初から挫折なんか経験しとかなかったら絶対風見くんとか調子乗ってただろうし、よかったじゃない?」

江藤「あっ! これが怪我の功名ってやつかも!!」

恒一「うーん。それはどうか分からないけど」

恒一「……」

恒一「うん、元気出たよ」ニコ

江藤「ならよかった」ニッ

恒一「よーし! もうすぐ夏休みだし、そこで一気に伸ばすぞー!!」

江藤「……」

江藤「ねえ、榊原くん」

恒一「?」

江藤「よかったらさ」

恒一「うん」

江藤「よかったらなんだけど!」

恒一「う、うん。何かな?」

江藤「その……」

恒一「……?」

江藤「夏休みの期間中、私がコーチ、してあげてもいいよ?」

恒一「!?」

江藤「いや、その……」

江藤「よかったら、だけど……」

恒一「……」

風見「僕はもうだめだ……もうゆかりの顔をまともに見れない……」ブツブツ

風見「ゆかりに格好悪いところを見られた見られた見られた見られた見られた見られた……うおー!! もうお終いだー!!!」

風見「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

榊原「風見くん!!」

風見「!! 榊原……!! 僕を笑いに来たのかい!? この道化と成れ果てた僕を!!」

榊原「シンクロやろう!!」

風見「……!! 何を莫迦な、貴様にこの僕の気持ちが分かるかい!?」

榊原「一度や二度の失敗がなんだ! あんなのただの練習じゃないか! 本番で成功すればいいだろ!?」

風見「僕にとってはゆかりの見ている時全てが本番なんだ! 後はただの道楽さ!」

榊原「……! そうやって本番も出ない気かい?」

風見「ああ、あんな無様な姿、二度とゆかりに見せられるかけがないだろう……」

榊原「でも、君の心の内ではシンクロをやりたいはずさ!」

風見「何を根拠に……」

榊原「……、だって桜木さんは頑張る男がタイプなんだろ? いつも勅使河原に語ってるじゃないか」

榊原「今の君は愚痴を垂れてるだけで、一体何をしてるっていうんだい?」

風見「……ほっといてくれ!」

風見「最初から努力できる人間が、努力できない僕にそんな偉そうな事を言うなよ!」

榊原「夏休み! 市民プールで待ってるから!」ダッ

榊原「次、次は心に傷を負った勅使河原……」

風見「……」

風見「市民プールか……」

風見(夏休みの期間中に市民プールだって)

風見(そんなの家族連れやカップル達のせいで満員に決まってるじゃないか)

風見「……」

風見「……全く、僕がいなきゃはじまらないって訳か……」

恒一「……」

風見「……」

勅使河原「……」

望月「……」

水野「……」

和久井「……」

前島「……」

恒一「そういえば他の学校とかも夏休みなのか……」

江藤「」

江藤(いや、確かにコーチするっていったけど、まさか全員だなんて。あの場には榊原くんしかいなかったし、なんかマンツーマンな雰囲気だったけど……)

猿田「人が……アベックが……ぞな」

王子「何だかとても腹が立つよね」

中尾「……よし、今日はちゃんと紐を結んで脱げないようにしてあるぞ……」

望月「急遽、イノヤに集まったけど」

恒一「冷房があるからね」

風見「練習場所を確保しなくちゃね」

勅使河原「でもよー、ここらが海と近いならそこでできるけど、川とかもロクにねえ田舎だしなぁ」

辻井「あるのは山だけだしね」

勅使河原「どうするよ、サカキー?」

恒一「うーん。合宿といっても学生の身で何泊も旅館とかに泊まれるお金もないしなぁ」

猿田「困ったぞななあ」

赤沢「ちょっとあんた達、何、辛気臭い顔してんのよ?」

綾野「?」

小椋「? どったの? 練習は?」

江藤「……」

赤沢「……何で江藤さんもいるわけ?」

恒一「……」

赤沢「なるほど、コーチに練習場所の捜索ってわけね」

綾野「ふーん、水泳部の助っ人とは非常に的確な人選ですなぁ」

勅使河原「まあなー」

赤沢「なら私のパパの知り合いで漁業を生業にしている人だったり、水族館とか湖付近のロッジで会社をしている人がいるから、住み込みの短期バイトみたいな感じでできないか相談してみるわ」

赤沢「それならあんた達も集中して朝とか練習もできるでしょ?」ニヤ

赤沢(そうして私も一緒に行けば夏休みの期間中、ずっと恒一きゅんと一緒に……///)

恒一「ありがとう、赤沢さん。じゃあお願いできるかな?」

赤沢「まかせなさい!!」

恒一「僕の方も当てがないわけじゃないから、聞いてみるよ」

赤沢「へ?」

恒一「やっぱり一箇所に集中的に押し付けるのは相手の人に迷惑だから、各自電子メールで連絡を取りつつ、練習していくようにしようと思うんだ」

赤沢「え、あ、へ?」

恒一「とりあえず、何人かづつ分割していって、夏を過ごそうと思うんだけど……どうかな?」

勅使河原「まあ、小旅行と思えばどっちでもOKだぜ!」

赤沢「」

江藤「私はどうしたらいいの?」キョトン

恒一「ああ、江藤さんは僕と行動してもらえるとうれしいな」

赤沢「」

恒一「」

江藤「え、それって……」

恒一「正直な所、風見くんや勅使河原とかじゃ全員の状態を管理できそうにないし、なるべく僕を基準にメールでの受け答えを回したいから」

恒一「江藤さんが一緒にいてくれると助かるなって」

江藤「……」

江藤「そう」

赤沢「え、私は?」

恒一「赤沢さんは文化祭対策委員としての仕事もあるだろうし、そっちの方に集中してもわれば……」

赤沢「」

恒一「とりあえず、早い内に赤沢さんのお父さんに聞いてみてもらえるかな? 僕も大学関係に電話してみるから」

赤沢「はい……」

赤沢「」

綾野(泉美、不憫な子……)

小椋(まあ楽しみは文化祭までのお楽しみってことかー)

怜子「荷物準備した?」

恒一「ええ」

怜子「手荷物と分けた?」

恒一「はい」

怜子「パスポートは?」

恒一「持ちました」

怜子「……」

怜子「何で私を見捨てるのー!!」

恒一「あーもー! 料理ぐらい僕やお祖母ちゃんに頼らないでも一人で作れるようになってください!!」

怜子「何でインドなのよー!」

恒一「父さんが無理やり話を進めた結果です」

怜子「おのれ、あの男……」

恒一「じゃあ、もう行きますよ」

怜子「いってきますのチューは?」

恒一「」

恒一「お待たせ……」

江藤「あ、榊原くん!」

勅使河原「おう、やっと来た。どうしたんだよ、出発前から疲れた様子で」

恒一「怜子さんを振りほどいてくるのが大変でさ……」

望月「むしろ連れてくればよかったのに。榊原くんのお母さん……三神先生のお姉さんも向こうに滞在してるんでしょ?」

恒一「まあね……、あの夫婦いつになってもベッタリだから息子残してインドにいるんだけど……」

風見「とりあえずゆかりには何のお土産がいいかな?」

勅使河原「さあ、向こうの傘とかは?」

風見「傘かー。ベトナムだったらアオザイ買っていくんだけど、インドの民族衣装のサリーなんてどうかな」

勅使河原「もうそれでいいんじゃね?」

望月「三神先生のサリー……」

江藤「ハハ……」

恒一「じゃあ、そろそろ電車が来る時間だろうし、歩こうか」

前島「俺らが向かう場所は漁村かぁ」

水野「まあ、体力が特に有り余ってる選抜だしな。和久井とかだったら初日に喘息でぶっ倒れちまうだろうな」

川掘「帰る頃にはどれだけ体ができあがってるかだな」

川堀(それに俺にとっては格好の場所……)

水野「いつまで落ち込んでだよお前。赤沢の紹介だぞ?」

中尾「うるせー! もしかしたら赤沢さんも来てくれるかもっていう淡い期待があってよー。うぅ……」

前島「お、海!」

水野「海だー!!」

中尾「うおー!!!!! やってやるー!」

川掘「犯ってやるぜー!!!!!! うおー!!」

米村「大学の寮を間借りして練習かあ」

王子「あそこの大学は音楽でも有名だし、コネ作りとしても素晴らしいと思うよね」

猿田「どうせなら音楽の勉強に多々良も誘えばよかったぞななあ」

王子「はは、無茶な事言うなって。本当なら今頃僕らも受験勉強しなきゃいけない頃だからね」

米村「いやな事思い出させてくれるなよ」

猿田「まあこの面子なら和気藹々といけそうぞなな」

王子「どうせなら楽器も持って来ればよかったかなぁ」

猿田「なんなら向こうで借りればいいぞなよ」

米村「楽器かー……、これを期に始めてみようかな……」

和久井「……」ゴホゴホ

高林「心臓が……」コーホー

辻井「夏の日差しが……苦しい、苦しいよぉ」ジリジリ

和久井「それにしてもこのチームの面子からいって、運動する人間じゃないよね」ゴホッ

高林「そうだね。僕らは人より少しフェアではない様子だからね」コーホー

辻井「チーム虚弱といった感じだよね……。ああ、日陰で本が読みたい」ジリ

高林「本当ならここに榊原くんも入りそうなんだけどね」コーホー

辻井「しょうがないさ。彼は父親がいるインドで練習だし」ジリジリ

和久井「僕らは水族館近くの研究所だっけ? 身が持つかな?」ゴホゴホ

高林「榊原くんが熱心に探してくれた場所だし、療養的な環境はいいと思うけど……」コーホー

風見「インド!!」

望月「暑い!」

勅使河原「洒落になんねえくれえ暑いぞ……」

恒一「インドでは雨季にあたるし、蒸し蒸しするね」

江藤「暑い……」

陽介「どうだ恒一、口では暑い暑い言ってても対した事ないと思ってたろ。それがいざ来てみたら大惨事ってわけだ!」ハハハ

恒一「……」

理津子「久しぶりに会うのに、からかっちゃだめよ? 全く」

陽介「いやいや、すまんすまん!」ハハハ

恒一「いいよ、別に……」

陽介「まあ、俺ら夫婦が大学の研究費で暮している所にいくわけだが……」

勅使河原「イエーイ!」

陽介「それよりも恒一。ちょっと俺についてこい!」

恒一「……?」

勅使河原「大分都市部から離れたな」

風見「さっきまで空気が酷かったのに、大分自然豊かな所まで来たね」

江藤「? 恒一くんは?」

望月「ああ、何やら気胸の治療でインドのアーユルヴェーダ? だっけかを受けにいったよ」

理津子「正確にはアーユルヴェーダと全く別物だけど、地方によって民間医療が異なったりして、その中に恒一に効きそうなものがあったから受けにいったのよ」

勅使河原「それってバカは直せますか!?」

理津子「うーん……。インド式のドリルを毎日やれば、あるいは……」

勅使河原「何だか俺希望が持ててきた!」

風見「やめとけ、後悔するだけだ」

望月「だね」

理津子「ここが、今私たちが滞在しているところよ」

望月「豪邸だね」

勅使河原「すっげー、何建築っていうんだ、こういうの!」

風見「自然豊かだし練習もはかどりそうだね」

風見「インドは水が悪いって聞いてたけど、やっぱりこういう家に住む人間には関係ない話なんだね……」

江藤「だね。プールの方も凄い澄んでるし」

理津子「あなた達が来るから大急ぎで洗浄したのよ? 誰も使ってなかったから」

勅使河原「何か、やる気が出てきたぞー!」

風見「単純だなお前」

望月「バカだから」

恒一「やあ、お待たせ」

勅使河原「おう、どうだった?」

恒一「何か呼吸が楽になった感じ。カセがないみたいだ」

陽介「だろ? だろ?」

恒一「……さ、練習を始めようか……」

恒一「文化祭なんてあっという間だろうからね」

風見「だね」

望月「うん」

江藤「……」

江藤「教えるのに、手加減はしないからね?」ニコ

恒一「うん。よろしく頼むよ」

勅使河原「うわっ! 足がつる!!」

風見「落ち着け! 暴れるよ余計沈むぞ!」

・・・

望月「ここのターンってどうしたらいいのかな?」

江藤「ここの場合は体全体を使うイメージで捻るの」

望月「ふぅん、なるほどね」

・・・

陽介「ほら、飯だぞ! カレーだ!」

恒一「あれ、インドじゃスプーン使わないんじゃ?」

陽介「何言ってんだ。俺らは別にインド人でも料理屋にいってるわけでもないのに何でわざわざ手で食べるんだ」

恒一「いや、郷に入れば郷に従えって……」

・・・

恒一「あっ、水野くんたちからメールだ」

恒一「フフッ、中尾くんの顔が死に掛けだなぁ」クスクス

望月「洒落になってない顔色だね」

・・・

江藤「柔軟するから手伝ってって……」

江藤「ちょっと! もっと優しく優しく!」

恒一「ご、ごめん!」

恒一(思ってた以上に柔らかくて力が入り過ぎちゃったのか)

・・・

恒一「? 何か米村くんがギターを始めたみたい」

風見「?? 何を考えてるんだか」

・・・

勅使河原「見たか!? 今の俺のフラミンゴ!!」

風見「え? 悪いフィッシュテールやってて見てなかった」

望月「フロントパイク姿勢だったからなんとも……」

恒一「円姿勢試してから……ごめん」

江藤「スプリットやってて……」

勅使河原「 (´・ω・`) 」

・・・

恒一「辻井くんの肉体が……!」

勅使河原「もうなんもいえねえよ」

・・・

恒一「キック・キック・ターン」

江藤「はいそこでバレーレッグで20分間キープ!」

恒一「!?」

江藤「ふふっ」

・・・

勅使河原「運動した後の飯って上手いな」

風見「食いすぎて腹壊すなよ?」

望月「バカだし。ちゃんと管理しとかないと」

勅使河原「……」フフッ

勅使河原「密かにサカキの父ちゃんにインド式の勉強見てもらってんだ! これで受験も怖くねえぜ!」

風見「計算系はともかく、歴史とか暗記系のやつはどうするんだよ……」

・・・

江藤「そろそろ上がらない?」

恒一「あと少し。もう少し有酸素運動してから上がるよ」

江藤「そう?」

恒一「……」

江藤「……」

江藤「もうすぐ、だね」

恒一「……そうだね。でもまずは帰国からだよね」

江藤「うん。最初の頃は舌が料理に合わなかったけど、今では問題なく食べられるし」

江藤「ガンジス川にも肌に触れたしブッダガヤも見に行った……。ダージリン・ヒマラヤ鉄道も見たし、食べ歩きもしたよね」

恒一「そうだね。まさか勅使河原がガンジス川でフラミンゴをして、さらに流されるとは思わなかったけど」

江藤「フフッ、そうだね」

恒一「……」

江藤「……」

江藤「ねえ、いい雰囲気だと思わない?」

恒一「確かに夕日をバックに広大な自然と江藤さんを独り占めなんて贅沢だと思うよ」

江藤「もー……、茶化さない!」

江藤「……」

江藤「ここでキスしたら素敵だと思わないかな?」

恒一「多分贅沢なキスになるだろうね」

江藤「……ちなみに榊原くんはキスの経験は?」

恒一「見栄をはってあるっていいたいところだけど、残念ながら無縁だよ」

江藤「そっか……、ふふ、そっか」

江藤「女の子の部屋に入るのは経験豊富なのに、キスは経験無しなのか」

恒一「女の子の部屋に入ってもだいたいは友達感覚だったからね」

江藤「私とも?」

恒一「さて、それはどうだろうね」

江藤「いいんだよ? しても?」

恒一「……」

恒一「……」

恒一「……じゃあ」

恒一「……」ズイ

江藤「!……」ピク

江藤「……」

江藤「! あっ、待って!」

恒一「?」

江藤「えい!」ドン

恒一「え、うわ!」ザバーン

江藤「とう!」ザパーン

恒一「」

恒一「え、どうしたの!? 急にプールの中に落として……!」

江藤「しー! あれあれ」

恒一「……? あ!」

勅使河原「……///」ドキドキ

恒一「あいつ……。いつから見られてたのかな?」

江藤「さあ、でもやっぱり邪魔されたくないよね」

恒一「どうする? やめておく」

江藤「えー……、ヤダ」

恒一「でも見せつけるのもシャクでしょ?」

江藤「うん」

恒一「……」

恒一「わかった」

江藤「?」

恒一「水の中なら関係ないよね」

江藤「? ただ潜るだけ?」

恒一「ううん。垂直姿勢でそのまま抱き合いながらなんてどう?」

江藤「!」

江藤「……」

恒一「……いくよ」

勅使河原「あわわわわ///」

江藤「」ケホケホ

恒一「」ゴホッ

江藤「けっこう水飲んじゃった」ケホ

恒一「僕も」フーフー

恒一「初めてって何事も痛いんだね」

江藤「例えば?」

恒一「転校も、シンクロも、そしてキスも」

江藤「この続きは?」

恒一「痛いだけかもしれないよ?」

江藤「でもその先は楽しいかもね」

江藤「今は転校もシンクロもキスも楽しいでしょ」

恒一「……だね」

恒一「でもその前に、あれを何とかしないと」

勅使河原「はわはわわわわ///」

勅使河原「殴られた」

風見「当然だよ」

望月「人の恋路を邪魔するヤツはガンジス川にまた流されればいいんだ」

望月「ちなみにガンジス川って神聖な川なんだけど」

望月「飲用水であると同時に沐浴や洗濯、用を足すのや水葬も行うからね」

望月「勅使河原くんガブガブ飲んでたけどあれは正直よく体壊さなかったと思うよ」

勅使河原「」

風見「だからシンクロはやめとけっていったのに。下手したら病原菌の巣窟だぞ」

風見「でもまあ、お前の体じゃ、毒を持って毒を制すみたいな事が行われてるのかもな」

勅使河原「」

望月「正直、不安だよね」

風見「やれる事はやったさ。けれど、やるならみんなで歩幅を合わせながらやりたかったな」

勅使河原「確かにもう日はわずかなのに、全体練習があまりできないってのが痛いよな」

望月「でも個人競技とするなら、なぜだろう。自信しかない」

風見「正直、あそこまで泳げると楽しいよな」

勅使河原「最近数学への苦手意識がなくなったんだ。むしろ楽しいっていうか」

望月「皆メールの動画でこそ、姿を見るけどどれくらい成長してるのか……」

風見「最近、瞑想でゆかりを生み出す事に成功したんだ。ヴァイシャリを訪れて以来体が自分のように感じないんだ」

勅使河原「ああ、インドに来てカレーで手を使う事が上手くなったっけ。今なら何でも右手で食えそうだ」

望月「絶対成功させようね! シンクロ」

風見「だね!」

勅使河原「ああ!!」

勅使河原「お世話になりました!!」

風見「ご迷惑おかけしました」

望月「ありがとうございました!」

江藤「ありがとうございます」

陽介「いやいや、久しぶりに息子やその友達や彼女さんと過ごせて楽しかったよ」

江藤「///」

恒一「ちょっ、バカ親父!」

理津子「帰りも油断せずに気を着けるのよ。特に空港とか」

恒一「分かってるよ、母さん」

恒一「……」

恒一「じゃあ、冬になったらまた来るから!」

陽介「おう! インドは冬もホコリが凄いぞ!」

恒一「……いってきます!」

赤沢「お土産!」

勅使河原「おう! サカキの父ちゃんが持たせてくれた人形!」

赤沢「何、このデザイン……サル?」

勅使河原「おう! こっちは小椋!」

小椋「象……よね?」

綾野「ねー、私にはー?」

勅使河原「ほれ、置物!」

綾野「え、何この変な顔の置物……」

勅使河原「しかし、皆日焼けしてんなー。人の事言えねえけど」

風見「そりゃ日中裸だったんだししょうがないさ」

赤沢「ねえ、それより……」

勅使河原「?」

赤沢「あれって……」

恒一「――」イチャイチャ

江藤「――」イチャイチャ

赤沢(そりゃ、ひと夏男女が一日中一緒にいればああなる事は予想できたけど……)

綾野(勅使河原かもっちーあたりとくっついてくれればと淡い期待があったんだけど、やっぱこういっちゃんの磁力には敵わないか)

小椋(ま、当然の結果よね……)

赤沢「」

望月「夏の終わり辺りでやっとくっついたらいいんだけど、もうそこから桃色空気全開で」

勅使河原「飛行機の中とかホント居づらいったりゃありゃしねえ」

風見「最初の頃は人目を気にする素振りはあったんだけど、今はもう所かまわずだよね」

風見(僕もゆかりと……。まずい、ゆかり成分が切れてきた、瞑想で補充しなければ……!)

赤沢「」

勅使河原「しかし、俺らが一番だなんてな。てっきり王子んとこが最初に帰郷すると踏んでたんだが」

風見「まあ、まだ夏休みは終わってないし、気長に市民プールで練習でもしようよ」

望月「だね。それか榊原くんの家にいって三神先生と談笑するか」

勅使河原「……あー、早く合同で練習してー!」

水野「やあ、お待たせ……って、まだこれだけしかいないのか?」

勅使河原「! 水野!?」

水野「やれやれ、こんな事ならもう少し村に留まればよかったな」

中尾「だな。そうすればあの主も一本釣りにしてやったのに」

川掘「おいおい、お前みたいにベンチプレス100kg未満の男があれを釣り上げられっかよ」

中尾「なんだよー!」

前島「喧嘩はよせって! 中尾は背筋の方が強いんだから分からないだろ?」

中尾「へっへー!」

川掘「何だよ、中尾の味方かよお前!」

前島「中尾の味方だとか川掘の味方だとか関係ねえよ」

前島「俺は筋肉の味方さ!」

水野「ハッハッハ! こいつは一本とられたな? なあ川掘」

勅使河原「」

勅使河原(何してきたんだこいつら。骨格から何かローマ人みてえに変わってるじゃねえかよ……)

望月「うわ、すごい筋肉……」

中尾「おっす! 久しぶり、風見に望月、赤沢さんや綾野、小椋、勅使河原、榊原と江藤も」

勅使河原(こいつ今、赤沢をまるでその他みてえに言わなかったか?)

勅使河原(前までなら必ずいの一番に名前を出してたのに……何が……?)

恒一「皆凄い筋肉だね。どういうトレーニングをしてたの?」

中尾「別にトレーニングなんてしてねえよ」

川掘「ただ寝て食って仕事して、また疲れて寝て……それの繰り返しさ」

水野「気づいたらこうなっててよ。次第に運動量も増えていって」

前島「ためしに筋力測定をしたらまあまあな体になってたんだ」

望月「へえ、仕事はどんなのをしてたんだい」

水野「ただ漁の手伝いやモリを持って素潜りしたり、魚と喧嘩したり、祭に参加したり」

前島「その程度さ」

中尾「はっはっはっはっ!」

勅使河原「」

勅使河原(眼が、澄んでやがる……!)

王子「ただいまー……って、まだ全員じゃないのかな?」

猿田「ぞなー!」

米村「よっ、青春してるかい?」

勅使河原(よかった、こいつらはそこまで変わってねえ)

勅使河原(むしろ動画からは変化は感じ取れなかったのはどのグループでも同じだが、こいつらはせいぜい日焼けして少し体格が良くなった程度だ)

勅使河原(……むしろ俺らも体格とかよくなってんだけどな)

風見「練習の成果は?」

猿田「ばっちりぞな!」

王子「まさかクラビコードまで触らせてもらえるなんて感激したよ」

猿田「あそこまであれを弾きこなせる人がいるなんてびっくりぞなよ」

米村「教授の演奏はさすがに聞き惚れたよ」

勅使河原「ん」

勅使河原「んん?」

勅使河原「え、お前ら何の修行してきたの?」

王子「何って、シンクロだけど?」

風見「何聞いてんだよお前。普通そうだろ」

望月「インド式の計算術をマスターしても勅使河原くんは勅使河原くんのままだね」

勅使河原「いや、うん、あれ?」

王子「確かに音楽もほんのちょっぴり習ってきたけど」

猿田「それ以上に楽器を吹く事によってとんでもない肺活量を得てきたぞな」

米村「ギターが弾けるようになりました!」

勅使河原「そ、そうなのか」

望月「バカだなー」

風見「そこがお前のいいとこでもあるよ」

勅使河原「??? おう?」

和久井「僕達が最後みたいだね」

辻井「まったく、高林くんがモタモタしてるから」

高林「人のせいにするなんてフェアじゃないよね」

勅使河原「よ! 待ってたぞ!!」

和久井「それにしてもこれほどまでに健康的な肉体が素晴らしいなんて」

高林「ほんと、いまならフェアに戦えそうだよ」

辻井「まったく。しかし、現代の科学っていうのはスゴイよね。脳をいじるだけでここまでの潜在能力を引き出せるなんて」

高林「僕の場合は心臓をメインに補強したんだけどね」

和久井「フフフ……」

勅使河原(こいつらはマジで聞かないほうがよさそうだな……)

恒一「全員揃ったはいいけれど、もう文化祭まで時間はない! とりあえず合同練習を中心にやろう!」

風見「文化祭までノンストップ! 絶対成功させるぞ!!」

オー!

赤沢「これは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よこれは夢よ」

赤沢「恒一くんは今頃私とハワイコナエクストラファンシーで乾杯してるのよフフフフ」

赤沢「やっぱり泉美と飲むハワイコナエクストラファンシーは格別に美味しいよ」

赤沢「もう一杯おかわりをもらえるかな?」

赤沢「なら、口移しなんて、ど・う・か・し・ら?」チュッ

綾野「」チュッ

綾野「……」

綾野「あかん泉美が現実逃避の末、壊れた」

小椋「むしろこの状態で勝てると思ってたのが不思議だよね」

小椋「見崎さんなんてこの恒一くんに見切りをつけて別世界から恒一くんを召還しようって黒魔術に励んでるのに」

綾野「見崎さん努力型だから」

霧果「鳴ー? 今日は文化祭でしょ? 見に行ってもいい?」

見崎「いい……」

見崎「無能に文句言われるのもシャクだし仕事だけしてとっとと帰ってきて錬金術に挑戦してみよう」

見崎「水35?・アンモニア4?・石灰1.5kg・リン800g・塩分250g・硝石100g・硫黄80g・フッ素7.5g・鉄5g・ケイ素3g・その他少量の15の元素……」

見崎「集めるのが大変そう……いってきます」

未咲「鳴!」

見崎「!」

未咲「鳴のクラス、何やるのー?」

見崎「シンクロ……」

未咲「えー! 鳴がシンクロー? ウケル!!」

見崎「……」

見崎「私じゃなくて、男子」

未咲「? 男子? 男子のシンクロなんて見て面白いの?」

見崎「さあ、でも……」

見崎「見ないと面白いかつまらないかは分からない」

勅使河原「できる!」

デキル!

勅使河原「やれる!」

ヤレル!

勅使河原「絶対成功!」

ウオー!

勅使河原「うおー!!!」

恒一「……」

恒一「やっぱり本番前は緊張するね……」

江藤「分かるよ。手が震えてるもん」ギュ

恒一「……」

江藤「そんなに緊張するなら私が変わりに出ようか?」

恒一「!?」

江藤「ふふ、冗~談」

恒一「全く……。大丈夫、心配しないで、やれるから」

江藤「あー、残念」

恒一「?」

江藤「できないって弱音吐いたら頑張れるおまじないしようと思ったのに」

恒一「……」

恒一「できない」

恒一「やれない。もう緊張してガチガチ! 一歩も動けない!」

江藤「……んも~、恒一はしょうがないなぁ」チュッ

江藤「ん……」ヌル

恒一「……もっと」

江藤「だーめ……、続きは帰ってきてから」

恒一「だめ、我慢できないよ」

江藤「じゃあさっさといってさっさと帰ってくる」

勅使河原「はわわああわわあ///」

久保寺「あわわあうぁわあわ///」

怜子「」

風見「! 音楽が!」ダッ

勅使河原「先行ってるぞ!」ダッ

猿田「ぞな」ダッ

中尾「オープニングのダンスはまかせろー!!」ダッ

恒一「じゃあ、ここで待ってて」

恒一「飛んで帰ってくるから」

江藤「しょうがないなぁ……」

恒一「うん」

恒一「じゃあ、いってきます」ダッ

江藤「はい、いってらっしゃい」

江藤「……」

江藤「……頑張って!」

ダダダダダダッ

ウォーターボーイズ!!

柿沼「」ワクワク

佐藤「ふええ」

佐藤(この女なんでプールにスケッチブック持ち込んでんだよ)

杉浦「始まったわね」

赤沢「僕の前に道はない」

赤沢「僕の後ろに道は出来る」

多々良「この音楽……ベンチャーズ?」

中島「へえ、本格的だね」

金木「」イチャイチャ

松井「」イチャイチャ

勅使河原(と、ここでフラミンゴ!)

水野(おう!)

中尾(フラミンゴならまかせろー!)

オォー

勅使河原(よし、決まった。移動移動!)

水野(ん、あ! 中尾お前!)

中尾(! 水着が! どこだ!?)

中尾「……」

水野(お前っ!)

中尾(大丈夫。旦那がくれたふんどしをこんな事があろうかと口に含めといたんだ、こいつを……)ハキハキ

水野(……なんてヤツだよ! お前!)

中尾「へへっ」

望月(うっ! 足をあげるタイミングがズレた)

風見(望月!)

望月「……!」

望月(落ち着け、落ち着けー!)

望月(インドの頃を思い出せ! あの広大な大地を!)

望月(まったくあそこを思い出すたび人間のちっぽけさを思い知らされる)

望月(この程度のミスがなんだ! それよりももっと大きく動くんだ!!)

風見(! よし、立て直した)

風見(イメージするんだ! ゆかりだけじゃなく、成功している自分の姿も!!)

風見(……っ!)

王子(まだ飛び込んでから一回も顔を出してないのに苦しくない……)

米村(これが)

猿田(これが修行の成果ぞな)

王子(でも、僕らはこれだけじゃないよね)

猿田(ぞな)

米村(ああ!!)

王子「行くぞ!」

猿田「ぞな!」

米村「うぉおお!」

多々良「曲が終わると同時に猿田くんたちがプールサイドに……!」

多々良「!!」

多々良「生演奏! しかもヘルプに渡辺さんも入ってるし」

多々良「王子くんも猿田くんも上手くなってる」

多々良「米村くんも楽器なんか弾いた事なかったはずなのに……あそこまで……」

多々良「……」

多々良「私……」

多々良「私だって!!」ダッ

高林(体を動かすことがこんなに気持ちいいことだなんて!)

和久井(いままでは体が受け付けなかったけれど……!)

辻井(今なら跳べる!)バシャ!

オオー

辻井(見てるかい柿沼さん。君の同士である腐男子の僕は今、飛翔しているよ)

柿沼「」カキカキカキ

佐藤「ふええ、人間の顎の骨はそんなに細くないと思うよぅ」

柿沼「!?」

恒一(いまならできるかもしれない……)サッ

王子(榊原くんのサイン!)

猿田(待ってたぞな)クイ

渡辺「!? 曲を変えるって事」

多々良「この曲は……」

米村(燃えよドラゴンのテーマさ!)

勅使河原(いけるのか? サカキ?)

恒一(大丈夫! 最初僕らにトラウマを植えつけたあの中国式シンクロ!)

恒一(見事に演じきってやる!)

川掘(まず一人目)

恒一「アター!」ガッ

中尾(二人目)

恒一「フー・・・・・・アチョー!」バキ

風見(僕が三人目)

恒一「アタタタタタ」ガガガガ

勅使河原(すげぇ。水中なのにサカキの声が響いてるぜ!)

望月(水中であそこまで動けるなんて。インドに行った意味はあったんだね)

前島(俺でラスト!!)

恒一「アーチャーォ!」ドゴ

小椋「まさかあの映画の中身をやっちゃうなんて……」

綾野「こういっちゃん、輝いてるよ!!」

未咲「スゴイスゴイ!!」

見崎「だね。すごいね」

見崎(ホント大した人。榊原くんは)

見崎(だから私も本気になってたんだけど、ね)

赤沢「もう秋か。――それにしても、何故、永遠の太陽を惜しむのか、俺達はきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、??季節の上に死滅する人々からは遠く離れて」

見崎「しっかりしろ! 無能!!」

赤沢「!!」

見崎「何してるの。夢ならベッドの中だけで見なさい」

赤沢「」ジワ

猿田(最後の曲! いくぞなよ!)

王子(OK!)

多々良「FOOOOOOOOO!!」

渡辺「WOOOOOOOOOOO!!」

米村(……っ!)

水野(一段目!)ガシッ

前島(二段目!)ガシッ

和久井(三段目!)ガシッ

川掘(いけっ!)ガシッ

勅使河原(いけっ!)ガシッ

いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ! いけっ!

「「「「「「「「「「「「「上れ! タワーのてっぺん!!」」」」」」」」」」」」」

恒一「……」スッ

恒一「う……」

恒一「うぉおおおおおおおお!!」ガッ

勅使河原「うおー! やったー!!」

風見「整列だ!!」

中尾「……ウウ」

高林「……グウ」

水野「よしよし」

川掘「おっしゃー!!」

望月「ひぃ……」ハアハア

恒一「……」ハアハア

恒一「……せーの」

「「「「「「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」」」」」」

パチパチパチパチパチ

パチパチパチパチパチパチパチパチ……

タタタタタタタ……

恒一「ん……」チュッ

江藤「……ん」ヌル

恒一「……ただいま」

江藤「おかえり」

恒一「どうだった?」

江藤「んー。七十五点?」

恒一「ははっ、手厳しいなあ」

江藤「大丈夫、次は百点取れるから」

恒一「次?」

江藤「ほら」

アンコール! アンコール! アンコール! アンコール!

赤沢「アンコール!」

見崎「アンコール!」

江藤「ほら、さっさと応えてきなよ? 大丈夫、私は逃げないから」

恒一「……ダメ」グイ

江藤「? え、ちょっと、何?」

勅使河原「うおおおおうおお!!」

久保寺「帰ってきて早々お姫様だっことはいい度胸ですね……」

恒一「このまま連れてく。言ったろう? 我慢できないって」

江藤「……」

江藤「しょうがないなぁ……」ニコ

恒一「うん……。僕はしょうがないヤツだから」ニッ

勅使河原「よーし!」

勅使河原「いくぞ野郎ども!!」

ウォー!! ウォーターボーイズ!!






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