千早「行けーマキバオー!」(256)

P「よっし、これで終わりっと!」

P「今日は一日オフのハズだったのに、社長から朝電話が掛かって来た時はどうなるかと思ったが、どうにか出来てホント良かった…」

響「何を一人でブツブツ言ってるんだ?プロデューサー」

伊織「仕事が終わったなら私の買い物の荷物持ちに付き合ってくれない?どうせ暇でしょアンタ」

春香「あ、ズルいよ伊織ー。プロデューサーさん、私美味しいパスタ屋さん見つけたんですけど一緒に…」

P「るっせえ!今日はお前達みたいなアバズレに構ってる暇は無えんだよ!」

P「有馬記念が俺を待ってるんだからな!」

P「俺は辛い激務に耐えながらも、ずっとこの日を励みに頑張って来たんだからな。邪魔する奴ははっ倒すぞ!」

春香「…担当アイドルにとんでも無い暴言吐いたのは流しますけど、何ですか?有馬記念?」

伊織「この伊織ちゃんのオフに同行出来る僥倖より、それが大事だって言うの?」

響「あばずれってどういう意味なんだ?」

P「何だお前達、有馬記念も知らないのか。日本最大のドリームレースだぞ?」

春香「レース…?」

伊織「あぁ、何か聞いた事あるわ。たしか競馬の大きなレースだったかしら?」

響「数少ないオフの日に競馬~?プロデューサー寂しい大人だなぁ」

P「フン、所詮女子供響には男のロマンは分かるまい…」

響「何で今自分、女子供にカテゴライズされなかったんだ!?」

伊織「まぁ響に寂しいって言われるのは心外ってのは分かるわね」

響「どういう意味さー!」ぷんすか

P「そういう訳で今日はお前達に付き合ってる暇は無い。俺はダッシュで中山に向かうからじゃあなっ!」ダッ!

春香「待って下さいよ~」アシヒッカケ

P「おぅっ!?」ズテッ!

P「何すんだ春香コラァッ!!」

春香「私も連れて行ってもらえませんか?一度競馬場って行ってみたかったんですよ」ニコッ

P「…何?」

春香「なかなか女子高生の身では入って行きにくい場所ですからね。プロデューサーさんに色々と教えて貰えたらなって」ウワメヅカイ

響(またそんな心にも無い事言って…)

伊織(魂胆見え見えね、まぁ乗るけど)

伊織「私も一緒に行ってあげるわ。上に立つ者として、庶民の娯楽がどんなものか知っておくのも有意義そうだしね。にひひっ」

響「自分も行ってみたいぞ!馬を間近で見る機会なんて早々ないしな!」

P「お前達………ったく、仕方無えなぁ」ニヤリ

春香(やった!チョロイッ!)

響(前に麻雀教えてくれっていった時も、何だかんだすっごく乗り気だったもんな)

伊織(にひひっ。人は趣味を分かち合える人を常に求めてるものだからね)

P「よし、そうと決まれば急いで準備を…

ガチャッ

千早「お疲れ様です。あら?プロデューサー居らしてたんですね。今日はオフだと聞いてましたけど…」

やよい「うっうー!お疲れ様です。皆さんどこにお出掛けするんですか?」

春香「丁度良かった!千早ちゃんもやよいも一緒に行こっ!」グイッ

千早「えっ?わ、私は荷物を置きに来ただけでこれから高槻さんと映画に…は、春香引っ張らないでって!」

・中山競馬場

千早「…で、どうしてこんな事に………」ずーん

伊織「流れってやつよ。あの場に帰って来た自分を恨みなさい」

春香「あはは、遊びは大勢の方が楽しいよ。ね、やよい?」

やよい「うっうー!遊園地に遊びに来たのは久しぶりです!嬉しいです!」

響「…遊園地?」

やよい「はいっ昔お父さんがよく連れて来てくれました。ここはお馬さんの遊園地だよ」

やよい「まぁ遊びはメリーゴーランドしかないけどな(笑)って言ってました」

やよい「いつも帰りは歩きなので大変でしたけど、お父さんとの楽しい思い出です!」ぺかー

5人「………………」

P「…強く生きろよ、やよい」ポンッ

やよい「?はいっありがとうございますっ」

春香「それにしても凄い人の数ですね…。いつもこんな感じなんですか?」

P「いや、流石にここまで入るのは有馬の時位だろうな。そこら中から溢れるギラギラした雰囲気がたまんねぇなぁ」

千早「真冬だというのに凄い熱気…高槻さん、大丈夫?」

やよい「はい。むしろこの雰囲気が懐かしいなーって思って、ちょっと楽しくなってました」

伊織「ダメ人間の巣窟って感じね。ていうかやけに唇が厚い人多いのは何なのかしら…」

響「プロデューサー、どこに行けば馬が見られるんだ?」

P「んーじゃあとりあえずパドック行ってみるか」

そして色々あって

P「だーっ!ミナセプリンセス全然来ねえじゃねえかっ!金返せ伊織っ!」

伊織「私に言われても知らないわよ!ていうか私の方が多く賭けてたんだから、アンタこそ責任取りなさいよね!」

春香「うーん、3番が思ったより直線で伸びなかったな。展開は悪く無かったけど…」

やよい「うっうー!やりました、今回も的中です!」

響「おぉ、単複とはいえ凄いじゃないか。これで元手の100円が260円に増えたな」

千早「…物凄い速さで順応したわね貴方達…本当に初めてなの?」

春香「まぁ要はギャンブルだからね。ルールさえ分かれば、後は勝負勘に身を任せるだけだよ」

P「っと、んな事言ってる間にもう有馬のパドックの時間だぞ!」

春香「うわっホントだ!」

響「パドックを制する者が競馬を制すだったよな?プロデューサー」

P「あぁ!行くぞ皆!」

千早「え?今から新幹少女のミニライブがあるのに見ないんですか?」

5人「そんなのどーでも良い(です)!」 ダダダッ!

千早「…そうえば、さっきやってたジュピターのトークショーもガラガラだったわね…」

実況「第41回有馬記念のパドックです。今年は15頭中10頭がGⅠホースという豪華な顔ぶれ!」

千早「はぁ、ここもまた人が多いですね…」

春香「プロデューサーさん、出て来る馬の紹介して下さいよ」

P「いいぞ。まず1枠①番がビリーバロニー。牡馬の6歳で春先に結構した馬だが、休養明けはイマイチだな」

P「こないだの天皇賞も14着だったし。オッズも単勝で718倍と今日出る中じゃ最低だ」

伊織「でもその分当たれば大きいって事よね?」

やよい「お父さんがとりあえず一番の大穴にはいくらか賭けとけって言ってました!」

ご飯食べます。

P「次が2枠②番『爆弾小僧』ニトロニクス。外国産の牡馬4歳。今年の四歳馬はタレント揃いと言われてるが、その一角だ」

響「なんかカッコ良いキャッチコピーが付いてるんだな」

伊織「『沖縄の爆弾小娘』我那覇響。意外と悪く無いんじゃない?」

P「重馬場に強いパワータイプの馬だな。この間あのフランスのカントナを倒してJCも奪ったし」

P「ポテンシャルはかなりのもの秘めてると俺は思う」

千早「あのカントナと言われても…」

P「気性が荒いトコがあるのが難点だが、上手くハマればそれも長所だろう」

春香「ふむふむ、チェック入れておきますね」

P「そして2枠③番は『ペースのマジシャン』アマゴワクチン。これも牡馬四歳馬で今年の菊花賞馬。そして『3強』の一人でもある」

伊織「長距離に滅法強く、自ら乱ペースを作りだしそれを操る曲者だ」

春香「おぉ、何か凄い風格を感じる馬ですね。渋いなぁ」

P「お、分かるか春香。ワクチンのカッコ良さが」

伊織「鼻に付けてるあれは何なの?」

P「シャドーロールだ。何の意味があるかは俺も知らんが、兄ピーターⅡも付けてたし伝統じゃないか?」

やよい「ピーターⅡといえば、去年皐月とダービーを奪りながらケガで引退しちゃったんですよね」

P「よく知ってるな、やよい」ナデナデ

響「へーそれで弟が代わりに菊花賞を取って、兄弟で三冠を達成したのか。何か浪漫があるな」

P「最近の三戦でGⅢGⅡGⅠと三連勝して今一番ノってる馬と言って良いだろうな」

P「今日もこのスター揃いの中で堂々の三番人気。間違い無く馬券に絡んで来るだろう」

伊織(偉大な兄を越えんとする弟…ちょっと応援したくなるわね)

P「そして三枠④番は牡馬5歳のドラゴ。去年の有馬記念を勝った馬だ」

P「調子の差が大きい馬だが、ニトロに勝った事もあるからな…穴狙いの候補としては面白いだろう」

響「上に乗ってる人の顔怖いな」

P「三枠⑤番は牝馬4歳のアンカルジア。今年の秋華賞馬だ」

P「桜花賞・オークスが共に2着でシルバーコレクターなんて言われてたが、秋華賞を奪ってそれを払拭したな」

春香「女の子なんですね。可愛いし応援してあげたいけど、馬券は買えないかな~」

千早「シビアな目で見てるわね…」

P「そして四枠⑤番は『将軍』トゥーカッター。古馬の最有力候補だ」

春香「怖い顔の馬ですね」

P「調整が遅れ、皐月とダービーには間に合わなかったが、出ていればピーターⅡを脅かしたとも言われる実力馬だ」

P「JCを見送ってまで、この有馬に万全で仕上げて来た。当然優勝候補だろうな」

伊織「オッズも今2番…あ、今抜いて一番人気になったわね。3.2倍…」

やよい「宝塚記念・天皇賞(秋)と中長距離のビッグタイトルを制して来てるもんね。安定感は凄いよ」

P「そしてこれが引退レースの四枠⑦番パペットランド。牝馬6歳」

P「一昨年のエリザベス女王杯馬だが、流石に厳しいだろうな。680倍だ」

春香「オールスターとはいえ、結構人気はバラけるものなんですね」

P「どの馬も他のレースなら上位に来るだろうけどな」

P「続いて、五枠⑧番の牡馬5歳ペインキラー」

P「オールカマーではあのトゥーカッターを破っている。今日も同じ中山だからその利を活かせるか…って感じだな」

やよい「逃げ馬はそういう一発があるのが怖いですよね」

P「続いて…おっ出て来たな」

たれ蔵「んあー皆気合い入ってるのねー」

春香「!?な、何ですかアレ!馬!?」

>>47訂正
春香「!?な、何ですかアレ!ロバ!?」

P「ロバて。まぁ気持ちは分かるけどなw」

P「5枠⑨番『白い奇跡』ミドリマキバオー。牡馬4歳だ」

P「『3強』の一角であり、今年のダービー馬だぞ?皐月2着、菊4着と安定した成績も残している」

響「ほ、ホントに馬なのか?骨格とか見るとそう言えなくも無いけど…」

伊織「仮に馬だとしても、本当にそんな成績を残してるの?全っ然速そうには見えないけど」

P「俺も最初はそんな反応だったよ。だが、事実だ」

P「あの小さな体で強敵を何度も倒していく姿に、俺も熱くさせられたものだよ。菊で20万スらせた事は許さんが」

春香「何かやけに落ち込んでる時あったのは、それが理由だったんですかw」

千早(何故だろう…あの馬に親近感を感じるのは)

ドンドンドドドン!

響「な、何だ!?」

春香「何かその筋っぽい人が太鼓鳴らしてるね…あんな事して良いんですか?」

P「いや駄目だろ。あ、警備員が来てつまみ出されたな」

伊織「ミドリマキバオーって書いた横断幕持ってたわね」

P「ま、まぁ幅広いファンが居るって事なんだろう」

P「気を取り直して、6枠⑩番のヘビーダイアリーア牡馬6歳」

P「前走で重賞を勝ったらしいが、この相手では下位必至だろうな」

P「そして……」

ザッザッ

カスケード「…………」

P「カスケードっ…!!!」わくわく

伊織「どうしたのよ、そんなにテンション上げて」

P「ばっかお前カスケードを生で見れたんだぜ?これでテンション上げなきゃ競馬ファンじゃねーよ」

春香「たしかにカッコ良い馬ですね。凄い雰囲気を持ってるっていうか…」

響「…………?」

P「6枠⑪番『漆黒の帝王』カスケード。牡馬4歳」

P「『3強』の一角にして、世界十傑にも残った文句無しの最強王者。戦績は8戦7勝で内GⅠが4つ。そして国内では未だ無敗を誇っている」

伊織「国内?」

P「カスケードは秋に凱旋門賞っていうフランスのレースに出たんだよ」

P「ちなみに凱旋門は世界最高峰のレースの一つだと言われている。結果は力及ばず6着だったけどな」

千早「海外にも競馬があるんですね」

P「むしろ海外の方が盛んだぞ。まだまだ欧州やドバイと比べれば日本は競馬後進国だ」

P「それだけにカスケードには期待していたんだが…」

やよい「海外の競馬は色々と慣れない面もあるから仕方無いですよ」

やよい「私は皐月とダービーを奪りながら三冠を捨てて、海外挑戦した事を凄いなーって思います」

P「まぁな。ま、凱旋門に出るチャンスは一度だけじゃ無いしカスケードなら来年やってくれるだろう」

春香「本当に好きなんですね。プロデューサーさん」

P「日程がなーJRAも菊の時期ズらしてくれれば良いのに…」ぶつぶつ

響「ていうかやよいが凄いな。詳し過ぎてびっくりだぞ」

やよい「あはは、新聞を読んでたら覚えちゃいました。他に見る物もあまり無いので…」

千早「今度一緒に本屋に行きましょう、高槻さん」

P「と、喋ってる内に残りも出て来てたな」

P「7枠⑫番は牝馬5歳のペティコート。エリザベス女王杯を勝って牝馬No1という呼び声もある」

P「個人的にはスーパースナッズが牝馬じゃ一番だと思ってるから、出て来て欲しかったけどな」

伊織「やっぱり女の馬が男に勝つのは難しいの?」

P「勝った例が全く無い訳じゃ無いが、厳しいな。ダービーももう何十年も牝馬が勝った例は無いし」

P「もしそんな馬が出てくれば盛り上がるとは思うけどな」

P「7枠⑬番は牡馬6歳パラサイト。カスケードが出る前の本多リッチファームのエースだった馬だ」

P「地味な印象だが、長距離のレースでは安定して好成績を出している」

P「8枠⑭番は牡馬5歳ビッグモスキート。逃げ馬だ」

P「そしてラスト8枠⑮番は牡馬5歳ブロッケイド。前走後に軽い熱発を発症したらしく、調整不足は否めないな」

春香「え?ラストですか?」

P「?あぁ、今年の有馬記念に出走するのは今言った15頭だぞ?」

春香「じゃあ…アレは何なんです?」

カッカッ

ベア(ふっふっふ。皆ワシの勇姿に注目しとるな…)ブラブラ

伊織「な、何だあのぶっさいくな馬」

千早「手書きのゼッケン付けてますけど、あの馬も出走馬なんですか?」

響「な、何か腫れて無いか?あの馬…」

春香「ん?響、何が腫れてるって?」ニヤニヤ

響「い、いやだから……な、何を言わせようとしてるんだ!///」うがー

P「…多分、勝手に来ただけだろう。今つまみだされてるし」

係員「こら!てめえどっから入った!」

ベア「な…何やねん!なんやっちゅうねん!」

ペア「スター抜きでどこがオールスターやねん!!勝っても賞金いらんから!大外の枠でええから出してくれ!!」ずるずる

やよい「引っ張られて行っちゃいましたね」

P「…あの貪欲さだけはお前達に見習って欲しいと…いや、やっぱいいや」

>>76訂正
伊織「な、何?あのぶっさいくな馬」

春香「あの馬、有名な馬なんですか?」

P「『史上最強の駄馬』ベアナックル。無名だった時代に、青葉賞でマキバオーを破るという金星を挙げて」

P「一流馬の仲間入りをしたんだが…あまり一流とは言いたくない馬だな」

P「ダービーではスタート時に顔をぶつけて鼻血を出しながら、最後の直線では一時トップに立つ等」

P「力があるのは間違い無い…ていうかめちゃくちゃあるんだが、それを帳消しにする絶望的にアホという稀有な馬だ」

響「たしかに筋肉を見ても、何かワケ分かんない感じだったぞ…」

P「…俺としては青葉賞の時に大損こかされた馬という苦い思い出もある。ガチガチだと思ってたのに…」

春香「プロデューサーさん向いてないんじゃないんですかw?」

・出走前

P「ふぅ、どうにか席を取れたな」

春香「雪が降って来たのは驚きましたね」

響「自分、雪って初めて見たから感激だぞ!」

伊織「席探してる時に社長と黒井が一緒に居たのは驚いたわね」

P「あのおっさん人に仕事押し付けて自分は競馬場に遊びに来てるとか…」

千早「ウチの事務所大丈夫なのかしら…」

やよい「黒井社長、カスケードに1000万円つぎ込むって言ってましたね」

P「…まぁ、好きだろうからなぁあの人は」

パーポロピーッポペピーッパラポピーッ!パパポピー!

観客「ウオオオオオーーーーッ!」

千早「す、凄い歓声…地面が揺れてますね」

P「数万人の競馬ファンの声だな。待ちに待った有馬だし、気合いが入るのは分かるよ」

P「この体の芯に響く感じ…これを味わえただけでも来た甲斐があったんじゃないか?」

千早「…そうですね。いつか私の歌で、これ以上の熱気を産んでみたいです」

春香「今だってそんなに負けてるつもりは無いですけどねっ」

実況「さぁ大歓声!!スターターが今台に上がります」

ワクチン「ケリをつけようぜ…」

カスケード「ああ…俺達のな」

マキバオー「んあ~~絶対絶対負けないのね!」

管助(次なんかいらない)

響「ピリピリした空気が伝わって来るぞ…」

P「何か俺達がパドックを離れる時にいざこざがあったみたいだが、心配なさそうだな」

実況「そして最後にトゥーカッターが入りまして…係員がゲートを離れます」

実況「1996年。今年の中央競馬の総決算。第41回有馬記念」

実況「スタートしました!!!」

ガシャコン

ワアアアアアーーッ!

P「うおおおおーーっ!」

伊織「始まったばかりで何叫んでんのよ。アンタはこのレースどうなると思ってんの」

P「勝つのは4歳の3強にニトロニクス、トゥーカッターの5頭の誰かになるだろうな」

P「4歳世代ファンとしてはアマゾンにも出て欲しかったが…」

響「アマゾン?」

やよい「サトミアマゾン。船橋の英雄ですよ。地方馬でありながらクラシック三冠全てで掲示板に載った凄い馬です」

千早「色々種類があるのね…」

ドドドドドドド

春香「スタートはヘビーダイアリーアがやや出遅れましたけど、他はまずまずですね」

P「マキバオーはたまにやらかすから、そこは安心したよ」

伊織「やっぱりペインキラーが前に出たわね。追うのは2、4、14…」

やよい「ワクチンが逃げに出るかと思いましたけど、今回は自重してますね」

やよい「代わりにニトロが飛ばしている…少し掛かり気味かも」

ペイン「どうした!?来いよ爆弾小僧!!」

ニトロ「…………」ググッ!


P「…確かにな。天才・滝川が抑えている。何が天才なのかはよく分からんけど」

春香「ペインキラーに対して熱くなってるんだとすれば、さっきのパドックの事が影響したのかもしれませんね」

P「むぅ最近の中山は重馬場だから、パワーのあるニトロは要注意だと思っていたが…」

伊織「ここでスタミナを浪費してる様じゃ期待ハズレね」

P「ニトロとワクチンは前。カスケードマキバオートゥカッターは後ろ…か」

響「それぞれ得意な位置に付けたって事だよね?」

P「あぁ、厳しいレースになりそうだな」

春香「カスケードはいつも最後の直線の末脚で勝負してるんですよね?」

P「あぁ黒い旋風のごぼう抜きはもはや代名詞だな。ダービーの時なんて最高にカッコ良かったぞ」

やよい「マキバオーも末脚タイプですから、このまま静かな流れになるかもしれませんね」

伊織「ワクチン・トゥカッター辺りが黙って見てるとは思えないけどね」

千早(どうしよう、話についていけない)

トゥカッター「どれ、ちょいと仕掛けてみるか…」ドドド

マキバオー(んあ?トゥカッターが出た!あの狭い所へ?)

ドガッ!!!


P「!」

春香「ペティコートがよろけた!そのあおりでブロッケイドが下がる!そしてその後ろには…」

千早「ま、マキバオーが!」

千早「行けーマキバオー!」

千早「んあーッ!」


で終わりかと思ったら、意外とまともにSSしていてワロタw

P「い、いや大丈夫だ。マキバオーは内に入っていた」

千早「よ、良かった…」ほっ

春香「あれ、知らない間に千早ちゃんも好きな馬が出来てたんだ?」

千早「そういう訳では無いのだけど…なんとなく、ね」

P「にしても危なかったな。運良く移動してて良かったが…」

響「…今のは運じゃ無いと思うぞ。マキバオーは見切ったのさ。トゥカッターが動いた後の流れを」

伊織「よく分かるわねんな事…」

実況「4コーナーをカーブして、一周目のスタンド前」

オオオオオオオ ワーワー!! ワーワー!!

高木「いくのだあああああっ!!!!!」

黒井「うおおおおおおおっ!くううううううろおおおおおっ!!黒い旋風を見せてやれカスケードぉぉぉっ!」

石川「オラオラオラーーー!チンタラ走ってんじゃないわよーっ!」

実況「物凄い歓声だ!」

P「たしかに、凄い歓声だな」

伊織「…何となくこの業界の末路が心配的な胸騒ぎがしてるんだけど、何なのかしら…」

やよい「一周終わっても、誰も動かない静かな流れですね」

伊織「ワクチンも罠を張ってる様子は無いし…各々が万全の位置をキープしてるって感じね」

響「誰かが動いた時、その流れを上手く掴む事が大事になりそうだぞ」

春香「このまま最後までいくはずないもんね」

P「だが、状況は誰にとっても悪くない、全員にチャンスがある状況だけに」

P「3コーナーから4コーナーあたりまでは膠着状態で行くかもしれないな」

春香「…もしあえてその状況を崩しに行く馬が現れるとすれば」

やよい「その馬が一番厳しい馬でしょうね」

千早(マキバオー頑張れー)

疲れたからお風呂入って来ます。
マキバオー知らない人は最後まで置いてきぼりですのでご了承をー

2部はあれはあれで嫌いじゃ無かった。リレー見てみたかったけどなー

実況「1000メートルの通過タイムは1分01秒3。決して速いタイムではありません」

実況「先頭のペインキラーは更に差を広げ5馬身差。このまま逃げ切りを狙いたいところ」

P「たしかにこの面子にしては随分平凡なタイムだな」

やよい「どの馬も相手の出方を伺っている以上当然ですけど、このままだと…」

伊織「ペインキラーが逃げ切られる事にもなりかねないわね。ワクチンそろそろ行きなさいよ!」

春香「一応オールカマーでトゥーカッターを破った馬だもんね。たしかに楽させるのは良く無いかも」

P「とはいえ先に仕掛けると後に控えるカスケードが怖い。難しい所だが…な!?」

ブオッ!

カスケード「…………」ドドドドドッ

実況「な…何と…カスケードだあ!!!」

>>127訂正
伊織「ペインキラーに逃げ切られる事にもなりかねないわね。ワクチンそろそろ行きなさいよ!」

実況「何と先に動いたのはカスケード!!第2コーナーから向こう正面」

実況「黒い馬体が外から上がって来ます!」

ウオオオオオーーーッ!

実況「スタンドからは大きなどよめき」

高木「ま、まさかここでカスケードが上がって来るとは…」

黒井「ハハハハッ!そうだ行けぇカスケード!その圧倒的な力で蹴散らしてしまぇっ!!!」

やよい父「ペインキラー気をつけろよ!!俺はお前に娘の給料預けてんだからな!!」

伊織「ほ、本当に凄いどよめきね」

響「一人の馬が上がっただけだぞ?どうしてこんなに…」

P「…それだけカスケードが存在感のある馬だって事だよ。実際俺も驚きだ、カスケードがこんなに早く仕掛けるなんて…」

P「半蔵の事だから何か考えがあるのかもしれないが」

千早「…たしかに、驚いたわね」

春香(千早ちゃん?)

マキバオー「ど…どうしよう管助くん…」

管助「…よし。僕らも行こう」

マキバオー「んあっ」ダッ!


春香「!マキバオーも合わせる様に、外に出して上がって行きましたね」

P「…明らかにまだ早い、とは思うが。カスケードが出た以上…」

響「そんなに一人の馬に振り回されて良いのか?」

伊織「そうよね。自分のペースを守った方が…」

実況「さあ向こう正面に入ってカスケード・マキバオーの二頭が外からぐんぐんと上がって行きます」

実況「後方13番手から7番手まで差を縮めます!」

トゥカッター「四歳馬は奇策に出るヤツが多い様だな。だが…それに引っ掛かるのもまた同じ四歳場…好きにしな」

春香「トゥーカッターは付き合いませんね」

P「古馬だからな。カスケードの事を特別意識もして無いんだろう。だが…」

実況「まだ上がって行く!アマゴワクチンもかわしてまだ上がって行く!!」

ワクチン「3コーナーあたりからの勝負になると思っていたが…とんでも無いレースになりそうだぜ!!」ドドドドッ!

伊織「ワクチンも上がったわ!」

P「そうなるよな。このレース、予想が付かねえ…!」

実況「カスケード ミドリマキバオー アマゴワクチン」

実況「4歳3強と呼ばれる馬達がつられる様にして先頭集団に襲いかかります!」

やよい「…先頭のペインキラー、それを追うカスケードら四歳勢、そしてトゥーカッターを含む後方集団の3つに分かれましたね」ギラリ

響(や、やよいが勝負師の顔をしてる…)

P「いや、もう2番手集団はペインキラーを捉えるぞ」

春香「静かなレースが突然動きだしましたね」ごくり

実況「静かだった流れがカスケードという馬によって、激流に変わった!!!」

ペインキラー「何だってんだ!」

実況「遂にその激流はペインキラーまでも飲み込んだ!」

ペインキラー「お前ら頭へんなんじゃねえのか!?まともじゃねえ!!」

ニトロ「気付くのが遅過ぎたな。とっとと下がって泣いてな」


P「ペインキラーが落ちたか…」

伊織「何かどこかから悲鳴が聞こえた様な気がしたんだけど…」

響「なるほど…こういう事だったんだな。プロデューサー」

響「カスケードっていう馬はただの15頭の中の1頭じゃなくて、特別な…」

P「あぁ、特に4歳のライバル達にとっては、全員の越えるべき目標だからな」

P「お前達で言う所の……ジュ…新か…まぁいいや」

千早「…マキバオーがこだわる訳ね」

やよい「1600メートルが…1分33秒!速過ぎますね…本当にとんでも無いレースになってますよ」

ドドドドドド

伊織「14番ビックモスキートと4番ドラゴも後退…これで」

実況「つ…遂に3コーナー手前で先頭は」

実況「4歳3…いや4歳4強の争いになりました!!」

P「4歳3強にニトロも付いていってるからな」

響「プロデューサー、なんでニトロも他の3人に負けない位実績あるのに、3強なんて呼ばれてたんだ?」

P「さぁ…何かかませっぽいからじゃないか。キャラが。後外国産だし」

響「…自分、ニトロを応援する事にするぞ」

春香「じゃあ私はトゥカッターさん応援するね。頑張れー将軍ー!」

P(閣下と将軍ってどっちが偉いんだろう)

実況「更にペースは上がって行く!これはとんでも無いペースだ!まだ3コーナー!このまま行くのか」

ペインキラー「バカ言ってんじゃねえよ。あのままいける訳ねえじゃねえか」

トゥーカッター「そうでもなさそうだぜ…」 ブオッ!!

ペイン「!?」


春香「きたぁーーーっ!トゥカッターですよ!トゥカッター!」

実況「さあ来たぞ!来た来た!!遂に『将軍』トゥカッターが討伐にやって来た!!」

P「もう第3コーナーに入った!」

響「レースはもう完全に5頭に絞られたな」

春香「カスケード、マキバオー、アマゴワクチン、ニトロニクスそしてトゥーカッターだね!」

千早「春香トゥカッターって言いたいだけじゃないの?」

伊織「後ろはもう見えない。遥か後方ね」

やよい「うっうー物凄いレースです」ニヤッ

ドドドドドドドドッ!

カスケード「…………」

本多社長「は…半蔵」

半蔵「くっ!」ガクッ

本多社長「半蔵ーーー~~~!!」

カスケード「ぐぅっ………」ガクッ

マキバオー「んあ!?」


P「な!?」

黒井「カスケード!?」

実況「なんとここでカスケード失速後退!!!!」

ウワアアアアアアー!

実況「故障発生か!?」

マキバオー「んあっ!!」


やよい「…いや大丈夫、少し下げただけ。競走中止は無さそうです」

P「そ、そうだな…。少し前が詰まってたから後退したのか?」

響「いや…そういう訳でも無さそうだぞ」

P「響?」

響「あの苦しそうな顔はただごとじゃない。パドックで見た時から気になってたんだ」

響「間違い無い。カスケードは…故障してる!!」

P「なにぃっ!?」

千早「!!!」

実況「さあ3コーナーから4コーナー。先頭集団は5頭から4頭へ」

実況「やはり早仕掛けがここに来てこたえたか!!」

半蔵「こんなレース耐えられんな…やはりあの時やめさせるべきだった。…無敗のうちに」

カスケード「ふざけるな…無敗で止めてそれが何だって言うんだ…」

カスケード「オレが残したいのはそんな記録じゃねえ」


P「ど、どういう事だ!カスケードは怪我してるのにレースに出たっていうのか!」

響「く、詳しい事は分からないけど、そういう事だと思うぞ…。あの様子、本人に兆候が無かったハズないのに…」

P「バカな…そんな状態で走ったら、命にかかわるぞ…!」

伊織「い、命ってどういう事?怪我してるのは分かったけど、脚なんでしょ?それなら…」

P「馬は脚を一本折っただけで、文字通り致命傷なんだよ。そうなったら大体の場合は安楽死を選ぶ事になる…予後不良って聞いた事無いか?」

P「カスケード程の馬。種牡馬価値も考えればその損失は莫大だぞ。本多リッチファームは何考えてんだ…」


実況「さあ第4コーナー。先頭争いはニトロ ワクチン トゥカッター」

実況「ミドリマキバオーはダッシュがつかないのか少し遅れました」

千早「くっ……」ヨロッ

春香「ど、どうしたの千早ちゃん!?胸を抑えて…」

千早「マキバオーを見ていたら…どうしてかは分からないけど、伝わって来るの。あの子の気持ちが……」

マキバオー「か…管助くんカスケードが!カスケードの様子が変だよ!!おかしいよ!!」

管助「後ろを見るな!!前を見ろ!!」

マキバオー「で…でもカ…カ…カスケードが…」

管助「…あいつは…体を悪くしてるんだ…も…もう引退なんだよ!!」

マキバオー「!!!」


P「マキバオーがまた失速した!」

伊織「どうしてマキバオーまで…」

千早「あの子は…これまでに二度、大事な人との別れを経験してる」

千早「そしてその一つは…永遠の別れ。その時にあの子の心は深く傷ついた」

千早「だからあの子は恐れてるのよ…ここでまた大事な人を亡くしてしまう事を」じわっ

春香「ち、千早ちゃん…」

マキバオー「GⅠとかグランプリだとか今年中に決着だとか…どうでもいいじゃないか」

マキバオー「来年でも…再来年でもいい。レースのグレードだってどうでもいい」

管助「いいかげんにしろ!!たれ蔵くん!!」

マキバオー「ぼくはもう…もういやだ…あんな想いをするのは…もういやなのねーーー!!」

カスケード「ミドリマキバオー」

マキバオー「んあ!」


カスケード「俺はきさまをかいかぶっていたようだ…きさまは最低の競走馬だ…」


実況「さあ最後の直線!!!」

半蔵「!!!」

カスケード「―――っ!」 ドッ!!!!!

実況「カ…カスケードだあああ!!!今年最後の黒い嵐だ!!」

P「なっ!?」

響「あ、あの脚で……!?」

伊織「し、信じられない…何なのあの馬!?」

実況「やはり来た!カスケードが外から一気!!」

実況「ミドリマキバオーは伸びない!!残り300メートル4頭の大激戦だ!!」

実況「やはりこの馬だ!!カスケードだ!!」

実況「今年最後も黒い疾風が吹き抜ける!!」

ワクチン「!!」

ニトロ「速い!!」


伊織「アマゴワクチンを…」

響「ニトロニクスを…」

春香「そしてトゥーカッターをも…一瞬で抜き去った!」

P「カスケード……」

千早「プロデューサー。さっき何故そんな脚でレースに出たのかって言ってましたよね」

千早「きっとカスケードにとってはあるんですよこのターフに…命を懸ける意味が」

ワクチン「そうだ…これだよ」

ワクチン「オレが一年間追い続けてきたのは、お前だあ!!!!」ドドドドドッ!

ニトロ「うおおおおおっ!」ドドドドドッ!

実況「しかしそう簡単には行かせない!!アマゴワクチンがいる!!ニトロニクスがいる!!」


伊織「そうよ!カスケードの居ない秋のクラシックを盛り上げたのはワクチンなんだから!」

響「外国馬から日本競馬を守ったのはニトロだ!黙っちゃいないぞ!」

実況「更に…トゥカッターだ!トゥカッターがその二人の間を突く」

春香「4歳最強世代が何だ!やっちゃえトゥカッター!」

実況「ミドリマキバオーは完全に離された!」

やよい「あぁ…どんどん離されていっちゃってます。後続馬にまで追いつかれて…」

P「さすがにもうマキバオーは無理…か?」

やよい「…普通に考えたら厳しいでしょうね。でも…」

千早「そう、マキバオーは奇跡の馬。これ位の逆境は勝負根性で何度も跳ね返して来た」

春香「千早ちゃん?」

千早「今あの子は悩んでいるのよ。何でこんな事に命を懸けなきゃいけないんだって」

千早「あの子は優しいから…命が懸かってると知ったらもうレースの事になんて集中出来ない」

千早「そんな相手に勝とうだなんて思えない」

千早「確かにそれが普通の、一般的な考え。でも…あの世界はそうじゃないのよ」


管助「たれ蔵…カスケードの言った通り。お前は最低だ」

マキバオー「……んあ!?」


千早「あの子は知らなければならない。ライバルの想いをそれがどんなに辛く、重い事でも」

千早「カスケードが命を賭してこのレースに参加した理由を…!」

千早(カスケードは、日本の競馬が世界に通用するという希望を見せに海外に行った)

千早(それを『夢』で終わらせては駄目。カスケードはその役目を渡しに来た)

千早(それを受け取らなくちゃいけないのは、ワクチンでもニトロでもトゥーカッターでも無い!)

千早(あなたが受け取らなくちゃいけないのよ!ミドリマキバオー!)


管助「これ以上あいつの顔を苦痛でゆがめさせるな!!」

管助「お前はあいつに唯一引き分けた馬なんだ!!ケリをつけるのはお前の役目だ!!」


千早「行けーーーーっ!!!マキバオー!!!」


マキバオー「…ん……んん」

マキバオー「んあーーーーーーーーーーーっ!!!!」ドッ!!!!!

千早「んあーーーーーーーーーーっ!!!!」

ウオオオオオオオオオオオオッ

千早「いやあああああああ!!!んあああああああ!!」

春香「千早ちゃんどうしたの!?大丈夫!?」

やよい「マスタングスペシャルです!一気に追いつきました!」

響「凄い…あの小さな体で何て切れ味だ」

伊織「伊達にダービー馬じゃ無いって事ね。にひひっ面白いじゃない」

P「頑張れカスケード!!頑張れマキバオーッ!!」

ワクチン「やっぱり違うじゃねえか。カスケードがいるとよ…」

トゥカッター(完全に脱落したってのに…どこにそんな力があるんだ…)

ニトロ「来ると思ってたぜ…マキバオー!」

実況「あっという間に3頭に並んだ!!これが奇跡のダービー馬!!カスケードの宿敵!!」

実況「ミドリマキバオーーーだ!!」


千早「んあーーー!!!」

春香「だから大丈夫なの千早ちゃん!意識ある!?」

伊織「カスケードの前にまずそいつからよ!やっちゃいなさいワクチン!」

響「負けるなニトローッ!」

やよい「トゥカッターも頑張れーっ!」

春香「なんで皆は流してるの!?私がおかしいの!?」

実況「カスケードへの挑戦権を懸けた4頭の争い!!誰だ!!誰が出るーーー!!!」

実況「カスケードに挑むのはどの馬だ!!」

P「残るは…200メートル」

やよい「中山の坂ですね。心臓破りの坂…!」

伊織「もうどの馬も限界ギリギリだってのにキッツイのが残ってるわねぇ…!」

P「!カスケードが内に寄れた!」

響「…ぐすっ…涙が出てくるぞ。あの体で…後ろの4頭に並ばせないなんて!」

P「これが…カスケードの帝王たる所以なのかもな。王者としての何よりも高い誇りを持っているから」

P「ニトロもワクチンもマキバオーも、あぁやって必死に追っている。追わせているんだ」

やよい「あの必死な表情…トゥカッターも想いの強さでは負けて無いですよ」

やよい「王者との対戦機会に恵まれず、折角勝っても次点扱いをされ続けた馬です」

やよい「それだけに卑怯者呼ばわりされてまで、万全に仕上げて来た、この有馬記念(王者との対戦機会)」

やよい「劣等感を払拭せんと懸ける想いは、決して他の馬に劣ってません!」

春香(あぁっ!私が言おうと思ってたのに!)

実況「まだ横一線!!まだ挑戦者は決まらない!!4頭並んだまま一歩も引かない!!一歩も譲らない!!」

実況「天才滝川のムチが唸る!山中が気迫で追う!ベテラン後藤ももの凄い形相!山本も必死で押している!」

実況「4人と一頭が目指すは…服部政人とカスケード!!!」

千早「カスケード…強いのね…絶対負けない凄い馬なのね」

春香「千早ちゃん意識が戻って…無いねコレは!」


マキバオー「ぼくはこれまで…何度も何度もカスケードと走って来たんだ」

マキバオー「だからカスケードが…走れない体なのだったら…」

マキバオー「ボクが…絶対負けずに走り続けて…カスケードの強さをみんなに教えてやるのね」


P「…そうだ、千早。それもお前の役目だ。そこまで分かって、こんな所でグズグズしてるのか?」

春香「Pさん何言ってるんですか!?それは完全に悪ノリですよね!」

P「何が心臓破りの坂だ!こんな坂が何だって言うんだ!」

P「こんな坂…お前が今迄歩んできた道に比べれば何でもないだろ!」

春香「いや言ってる相手が千早ちゃんだけに何かそれっぽいですけど!千早ちゃん今アレな目して叫んでるだけですからね!?」


管助「登れ~~~~っ!!たれ蔵っ!!」バッ!!

実況「山本管助が立ち上がった!キツツキ戦法からマキバオーを引っ張り上げる様な体勢」

実況「もの凄い気迫だ!!マキバオーと共に自らも坂をかけ上がる!!」

P「千早!!!」

千早「いやあああやああああんああああああ!!!」

春香「もうこっち見とけばマキバオー見なくていいから便利ですね!」

実況「ミドリマキバオーが抜けた!!!」

実況「挑戦者は決まった!!やはりこの馬だ!!」

実況「『白い奇跡』ミドリマキバオーだーーー!!!」

ワアアアアアアアアアーーーーッ!!

高木「いくのだマキバオー君っ!!!我が事務所の未来は君に預けてるのだよ!!!」

黒井「くうううううううろおおおおおおっ!漆黒の帝王を舐めるな!カスケードに勝てる馬など存在しないっ!!!」

やよい父「諦めるなペインキラアアアアッ!」

ベア「ワシより弱いおのれが勝てば…実質的な日本一はこのワシって事になる」ふふふ

オオオオオオオオーッ!ピヨッ

実況「スタンドは総立ち!!誰もこの一騎打ちに文句は無い!!」

実況「世紀の一戦だ!皐月賞ダービー」

実況「そしてこれが今年3度目の激突!!この世紀の一戦を目に焼き付けろ!!」

実況「第41回有馬記念残り100メートル!!今年の競馬を締めくくるのはこの2頭!!」

実況「『漆黒の帝王』カスケードと『白い奇跡』ミドリマキバオー!!!」

カスケード「…おせえんだよ…」

マキバオー「カ…カスケード。ぼ…僕は今日こそ」


千早「お前を超える!!」

響「残り100メートル…い、いよいよだな」ドキドキ

伊織「ふん、ワクチンを倒すなんてやるじゃない。どうせなら王者も越えちゃいなさい」

やよい「…言っても仕方が無い事ですけど、どっちも勝たせてあげたいですね」

P「違うな、やよい。このレースは勝つべき者は決まっている」

やよい「!…そう、かもです」

P(後はそれを…どんな形で示すか)

ドドドドドドドド

実況「さぁ並んだ並んだ内にカスケード外にマキバオー!!」

実況「マキバオーだマキバオーだ!!」

実況「カスケードが苦しい!!カスケードが苦しい!!」

実況「ミドリマキバオーだ!!」


千早(2歳で初めて会った時からーー)

千早(朝日杯3歳ステークス、皐月賞、そして日本ダービー)

千早(何度も何度もカスケードに挑んできたんだ…そしてその度に泣いて来た…)

マキバオー「だから僕が一番知ってるんだお前がどんなに凄い奴か…」

マキバオー「お前は世界最強の競走馬なんだ!!誰にも負けちゃいけない馬なんだ!!」ドドドドッ!

カスケード「そうさ!だからまだ貴様にも負けるわけにはいかねえんだよ!!!」ドドドドドッ!


ウオオオオオオオッ!

高木「ま、まだ伸びるのか…」

黒井「フハハハハハッ!これがカスケードの恐ろしい所だ!!いけええええっ!!!」

実況「漆黒の帝王と白い奇跡!!さぁどっちだ!!どっちだ!!!」

P「皐月賞はハナ差…ダービーはGⅠ史上初の同着」

P「今日こそ完全決着!白黒はっきり付ける時だろ!」

千早「んあ~~~っ!!!今日は僕が絶対勝つ!!!」

千早「お前のその体ではもうこれ以上走り続けるのは無理だ!!」

千早「今日を限りに引退するんだ!!安心して引退しろ!!」

春香「頑張れマキバオー!」(千早の方を向いて)

マキバオー「引退してもお前の伝説は語り継がれる!みんなの記憶に残り続ける!)


―――伝説は僕が引き継ぐんだ………


マキバオー「あのカスケードのライバルはこんなにも凄い奴なのかって」

マキバオー「そう世界中の競馬ファンに見せてやるんだ!!!」ドドドドドドッ!!!


カスケード「……………」フッ

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

実況「ミドリマキバオーだー!!!!!」

実況「坂を登って先頭はマキバオー!!!」

オオオオオオオオッ! バカナアアアア! イクノダアアアアッ! ペインキラアアアッ!

P「…決まったな」

やよい「そうですね。またマスタングきつつき戦法に戻して、2馬身、マキバオー計算で3馬身…」

響「まだ50メートルあるのに、どんどん差が開いてるぞ」

伊織「独走態勢って奴ね。…大したもんだわ」

実況「4度目の挑戦でミドリマキバオーがついに!ついに宿敵カスケードを超えた!!」

千早「…何を、言ってるのよ」ヨロッ

春香「千早ちゃん!?やっと意識が戻ったんだね!」

実況「そして何とカスケードはずるずると後退!後ろ3頭に並ばれた!」

実況「カスケード時代の終焉か!!カスケードの時代が終わろうとしている!!」

実況「黒い伝説もここまでか!!」

P「カスケード…」

響「…凄い馬だったな」

千早「だから…何を言ってるのよ!」

千早「朝日杯を…皐月賞を…ダービーを見て無かったの!?もう忘れたの!?」

春香(…千早ちゃんも見てないでしょ。って言ったら駄目なんだろうなぁ…言いたいけど)うずうず

千早「あのカスケードを…あのカスケードを忘れたって言うの!!」

千早「カスケードはこんなに簡単に独走を許したりしないわ!!」

千早「見えないの!?感じないの!?」

千早「伝説はここにある!!黒い風は吹いてる!!」

千早「んああああああ!!!」

P「……幻影、か?マキバオーの前を走るカスケードの姿が見えるのは…」ごしごし

やよい「どうでしょう…それ、私にも見えてますから…」

マキバオー「これがカスケードだ!!僕達が命懸けで追いかけて来たカスケードだ!!!」

うわあああああああっ!!! オオオオオオオッ!!!

実況「完全にミドリマキバオーだ!!文句無し!これは強い!!」

実況「まだ伸びる!!!まだ突き放す!!これは圧勝だ!!!」

P「何を言ってるのか…」

響「大接戦だぞ…残り10メートル無いっ!」

伊織「かわせる…!?」

千早「まだよ…まだあの子の前にはカスケードが居る。それを越えなければ勝った事にはならないわ!」

ドドドドドドド

マキバオー「さあ決着を付けようぜカスケード!!!」

マキバオー「んあああああっ!!!」

マキバオー「カスケーーーーードーーーー!!」

千早「これで…終わり。これで…」

マキバオー「終わりだああああ!!!!!」

ドンッ!!!

実況「ミドリマキバオー今1着でゴーーーーール!!!!!!」

実況「第41回グランプリ制したのはミドリマキバオーーーー!!!!!」

千早「…おめでとう、マキバオー」ポロポロ

高木「…2着はアマゴワクチンかトゥーカッターか、きわどい所だな」

高木「だがとりあえずは私には関係無い事だ。残念だったな黒井。1000万がフイになって」

黒井「フン……カスケードの最後の…最高のレースを見せて貰ったのだ」

黒井「その程度、見物料としては安過ぎる」クルッスタスタスタ

高木「…やれやれ、カッコつけおって」

やよい父「…俺もまた、やり直してみるかな。あの2頭の様に命懸けで取り組めば…」

やよい父「出来ない事なんて、そうは無い」

P「残った記録を見れば二着に4馬身差を付けてのコースレコードの圧勝、か」

千早「…決して圧勝では無かったですけどね」

P「まぁな。本当に良い…熱いレースだったよ。文句なしでマキバオーが日本一だ」

響「あ、マキバオーの騎手がガッツポーズして落馬したぞ!」

伊織「…そして号泣してるわね」

P「全く、あいつは泣き虫だな…」

伊織「アンタも目、潤んでんじゃないの」

やよい「伊織ちゃんもだよ?」

伊織「う、うっるさいわねぇ///!」

春香「そうえばプロデューサーさん、忘れてましたけど馬券の方はどうなったんですか?」

P「ハズレだよ。カスケード-マキバオーの連単に20万つぎ込んでたからな」

春香「あちゃーやっちゃいましたね」

P「ま、悔いは無えよ。こんなに熱い勝負を見させて貰ったんだからさ」

P「見物料としては妥当なトコだろ」

春香「おぉっ何かカッコ良い台詞ですね!…何か同時に台無し感も感じるのが気になる所ですけど」

P「あん?」

やよい「ふー本命の方では無かったですけど、何とかマイナスにならずに終える事が出来ました」ほっ

響「手堅いなぁやよいは。今度の時に参考にさせて貰うぞ」

春香「そうえば千早ちゃんも1000円だけ買ってたよね。どうだったの?」

千早「マキバオーの単勝?だから、8倍になるのかしら」

やよい「うわー凄いです千早さんっ初馬券で単勝をズバリ当てるなんて!」

春香「ねぇねぇ千早ちゃん。そのお金で美味しい物食べに行こうよ~」すりすり

千早「駄目よ。これはあの子が頑張った事で得たお金だもの」

千早「そんな事には使えない…というか、換金するつもりも無いのよ。記念に持っておくわ」

やよい「えーっ!勿体無いですよ千早さんっ」

P「…ま、良いんじゃないか。そういうのも」

千早「ふふふっ宝物にしようと思います」

P「…よし、カスケードもとりあえずは無事みたいだな」

P「よ~しじゃあすっからかんになったし、引き上げるぞ。伊織様、タクシー代貸して下さい」

伊織「そん位残しときなさいよ!はぁ、仕方ないわねぇ」

春香「千早ちゃん、帰るよ~」

千早「待って、もう少しだけマキバオーのウイニングランを…!」

マキバオー「…………」じっ

管助「どうしたんだい?たれ蔵君」

千早「んあー」

マキバオー「んあー」

マキバオー「…何でも無いのね。ほらほら管助くん、もっと大きく手を振らないと!」

千早(今日は貴方にとても大きな力を分けて貰えた様な気がするわ)

千早(ありがとう、マキバオー)

千早(私もいつか、貴方に負けない位観客を沸かせる事の出来るアイドルに、なってみせるわね!)

千早「今行くわ、春香」タッタッタ


ベア「…よくここまで来たな…次は…いよいよ俺の番だ!」

マキバオー「……………」

ベア「……………」


ベア「痛い痛いちょっとっ!!何でやねん!!」(つまみ出されながら)


千早「行けー!マキバオー!」END

終わりです。最後まで見て下さった皆さん、ありがとうございました。

このSSは昨今の安易に千早にんあーんあー言わせる風潮への警鐘であったり
最高に熱い少年漫画であるマキバオー布教活動であったり
たいようのマキバオー早くアニメ化しろよ活動の一環であったり(ファムちゃんの声は誰が良いか談義含む)
という事は無く、昨日読み返してる時に思いついたノリで、書いてみようと思いました。

全部行きあたりばったりでやってたので、おかしな所は山ほどあると思いますが
少しでもマキバオーの魅力を伝えられたのなら嬉しいです。

そうえば来週は日本ダービーですね。勝負師の皆さん、頑張って下さい。
折角だし書くならダービー舞台でも良かったなと今思いました。
内ラチギリギリを血を流しながら突っ込んで来るカスケードのカッコ良さは異常。
アマゾンの意地もかっけえですよね。

興味を持った方、是非みどりもたいようも読んでみて下さいねー。
たいようもめちゃくちゃ熱くて面白いですから。
…ちょっとショックな事もありましたが。

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