モバP「出会いと始まりと物語」 (175)

※このSSにはシンデレラガールズ内に存在する属性に対応した3人のPが出てきます。苦手な方はご注意ください。又基本的に普通のSSと同じ台本形式ですが、そうじゃない部分も混じってます。読み辛ければすいません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385650752

11月・秋

「はぁー…これからどうしよ…」

大学4年生の秋、就活を始めてはや数ヶ月
周りの友人は次々と内定を決めている中、自分はまだ一つも無し

「……皆早すぎるんだよなぁ…」

将来のビジョンやなりたい職業も特に無い自分は、早くも道に詰まり始めていた
本当ならまだそこまで急ぐ時ではないのかもしれない。でも自分以外の友人が次々と内定をもらい遊び始めている状況に、どうしても引け目や焦りを必要以上に感じてしまうのである

「将来…かぁ…」

――正直、そんなもの考えた事もなかった

(……今日は特にツイてなかったな…朝から…)

目覚ましのアラームが鳴らなかった
正確には携帯の充電が切れていてならなかった
昨日は電車で地方の会社の説明会を受け、帰ってきてすぐバイトに向かい遅くに帰り、そのまま風呂にも入らず布団へダウンしてしまったのが原因だった
おかげで今日は寝坊し、午前中にあった別の会社の面接に遅刻しかけた
その面接では、身嗜みも崩れ息も絶え絶え、悪目立ちして正直散々だった

そういえば自宅にカードを忘れていたので財布の中身も補充するのを忘れていた為昼飯も抜いていた
余裕が無かった訳ではないが交通費カツカツで遠くまで移動したくは無かったのだ

今は帰路の電車の中。空は夕暮れに染まり始めていて、電車の中も空と同じ色に塗られているようだった

「……したい事なんてものすらないのに、就活なんて…」

親を安心させたい。就職の理由がそれしかなかった俺には、人が将来を考える上で大切な『何がしたいか』、『どうなりたいか』というビジョンや想いなどの、致命的なものが欠如していた

「……ん?」

電車の窓に自分の顔が写っていた。酷くしんどそうな、見てる方が気が滅入りそうな顔をしていた

(――ははっ、こりゃダメだよな)

心の中で自嘲気味に笑う。今の俺の笑顔は、それはもう酷いものなんだろう
こんな顔で面接を受けていたんだろうか…誰がこんな奴と同じ職場で働きたいと思うだろう…

「……はぁ…」

ため息が出た。幸せが逃げるというばあちゃんの言葉が頭に浮かんだ
違うんだ、ばあちゃん…幸せじゃないからため息が出るんだよ……

(あと3つで降りる駅だな…切符切符……)

パサッ

(……あ、やば)

ポケットから切符がこぼれ落ちる。拾おうと身を屈ませようとした時、隣のお客さんにカバンがぶつかり、振り返ってすいませんと謝った。切符を追おうと向き直ると、今度はさっきまでその場所にはいなかった筈の、ブレザーの学生服を着た女の子にぶつかりそうになった

「あ、ごめ…」


少女「ハイこれ!落としましたよ!」

目の前の女の子が、そう言って笑顔で俺が落とした切符を渡してくれた
思わず魅入ってしまうような、とても眩しく、愛らしい笑顔だった


少女「ハイ、どうぞ!」

「……あ、ああ…ごめんよ、ありがとう」

少女「いえいえ!どういたしまして!」

「……」

『次はー、○○―!次はー、○○―っ!』

少女「あ、私次で降りないと!お兄さん、もう落とさないように気をつけないとダメですよ!なんて!」

そう言って邪気のない顔でにっこり女の子が笑った。正直、どきりとした

「あ、うん。ゴメンよ、拾ってくれてありがとう」

少女「いえいえ!あ、じゃあこれで!」

電車が駅に着き、彼女が人の群れに紛れて降りていく。なんとなく目で追い、なんとなく目で送り、そしてなんとなく下を見た


「……?」


手帳のようだった。それが、そこに落ちていた
拾って中を見るとさっきの女の子の写真が貼ってあった。間違いない、これはあの子の学生証だ

「ちょっ…」

追おうとして、少しだけ躊躇してしまった。この後はバイトがあるから遅れるわけにはいかない、ここでは降りれない
彼女はもう階段の手前まで行ってるのが見えた。恐らく声も届かない
車掌に預けるか、降りた駅で駅員に預けるか……


(――でも、今さっき俺は彼女に親切にしてもらったじゃないか…)


車椅子のお客さんを入れようとスロープを駅員が用意してるのが見えた
ドアはいつもより長く開いている


「……っ」

「ねぇ!ちょっと待って!」

人を掻き分け電車から急いで降りて、そのままさっきの少女を追いかけて階段に向かった
もう階段の上には彼女の姿は見えなかった
改札に向かったのかもしれない
見失ってはいけないと、急いであの子を追いかけた

……あの時初めて会った、見ず知らずの女の子を追いかけた事

小さな親切と、俺とは正反対の元気をくれる眩しい笑顔


それを追いかけて走ったのが、全ての始まりだった

「ゼェ…ハァ……えーっと、あの子はどっちだ!?」

バス停のある方の改札に向かってるさっきの少女の背中が見えた

「!! あっ…ちょ…ちょっと待って!!」



改札を抜けるあの子が見えた

「あ、すいません!ちょっあっごめんなさい、大丈夫ですか!?あっと…ねぇ!待って!」

ガコンッ ドスッ

「ゴフッ!?」

急ぎすぎて改札で捕まった際に、鳩尾を強打してしまった

駅員「あーあー兄ちゃん急がずにちゃんと切符入れて出ないと…」

「す…すいません…ウッフ…」

よろめきながら切符を通し、流れを詰めたせいで周りから起こる冷たい目線を浴びながら再びあの子を追いかけた

バス停の列に並ぶ少女が見える

「あっいた!……ん?」

バスが丁度停まったタイミングのようだった

「」

(嘘だろ…っ)

他のお客さんに続いてあの子もバスに乗っていく

「な…んで…っ」

本当に今日はツイてない
とにかく全速力で駆けて、ドアが閉まる直前になんとかバスに追いつき飛び乗る事ができた

何とか間に合ったようだった。そうしてバスはそのまま走り出した

(あああああ間に合った…っ!……特に重労働をした訳でもないのになんだこの疲労感は…)ゼェ…ハァ…


息を整えながら、顔を上げてあの子の姿を探した


彼女は、すぐに見つけることができた

とりあえず、一度ここで切ります
読んでる方がいらっしゃれば、一応今はCuPの話で進んでいます

需要如何に関わらず3人分完結だけはさせますので、よければお付き合い下さい

丁度入り口を昇ってすぐ、目の前の座席にあの少女は座っていた

二人用の椅子に一人で座っていて、空いてる隣の席にカバンを置いている

耳にイヤホンを付けて目を閉じて、音楽か何かに聞き入っているようで、今さっき電車の中で別れた筈の男が飛び乗ってきた事にも気付いていないようだった

バスの中はまばら、と言った感じで彼女の周りに座ってる人もおらず、何故か少し安心した

(……まぁ、なんにせよ追いつけて良かった…)ゼェ…ゼェ…

息を整えてから話しかけようとして、相手の目と耳が塞がってる事に改めて気付いた

少し迷いながら、結局座椅子の肩近くの部分を軽く何回か叩いてみた

少女「……?」

少女「…あれ?あの、さっきのお兄さんですよね?……ぇと、どうしてこんな所に?」

少女が耳からイヤホンを抜いて身体ごとこっちに向き直ってくれる。その真っ直ぐにこっちを見据えてくれる姿が妙に好ましく映った

「あ…やぁ、さっきはありがとう。……ごめん、驚かせたかもね。…さっき俺の切符を拾ってくれた時にこれを落としたみたいだったから、渡そうとしたんだけど…コレ」

そういって電車の中で拾った彼女の手帳を差し出す

少女「あ…アレ?え?なんでぇ!?」

「ゴメン、多分俺の切符を拾ってくれた時にポケットから落ちたんだと思う。電車の中に落ちてたんだ」

少女「え…そうだったんですか……すいません、わざわざありがとうございます!」

少女がお礼を言いながら手帳を受け取る。そして、切符を拾ってくれた時に見せた以上の眩しい笑顔を返してくれる


「……」


また、見惚れてしまった

色々な意味で心身ともに疲れていた筈なのに、まるで本当に元気を分けてもらったような…じんわりとした、なんとも形容しがたい感覚だった

「いや、いいよ。それに…親切にしてもらったらちゃんと返せって俺のばあちゃんがよく言ってるし」

少女「あ、ここ座りますか?」

彼女が自分の隣の席に置いてるカバンをどかし俺に席を譲ってくれる

「あ……ありがとう…じゃあ、お言葉に甘えて……」

少女「はい!どうぞ!」

「まぁ、次で降りるんだけどね」

少女「あ、じゃあ次に停まるまで結構長いですし、良かったら一緒におしゃべりしませんか?」

「ん?ああ、全然いいよ……じゃあ少しだけ……」


「ん?長い?」

「……はい…すいません…え?クビ?!?ちょ……え?代わりが見つかった?間に合わない?えっあのっ」

プツッ ツーツー

「……」

少女「……あのー、大丈夫ですか?」

「……」チーン

少女「……っ」アワアワ

「……」

少女「……」



「……」ズーーーン

少女「……あの…すいません、私のせいで」

「……」

「え?」ハッ

少女「いえ、私にこれを届けようとしたからお兄さんに酷い迷惑を……」

「……っ いや、君が気にする事じゃないよ!ホントに!俺が馬鹿やっただけだから!うんホントホント!!」

少女「でも……」ショボーン…

「いやいや!ホントに違うから!それに俺は普段から遅刻多かったし、仕方なかったんだよ!君のせいじゃない!」

少女「……」

「……あはは……」

なんてことだ……遅刻でバイトをクビに……?こんな…え?
いや、確かに俺が悪いんだけど…殆ど問答無用だったじゃないか……
一回の遅刻で?ありえるのかこんなこと……折角見つけた良いバイトだったのに……

(さっきため息ついたからなのか……?ばあちゃん…ホントに幸せ逃げてたよ……)ズーン

少女「……っ」





少女「あ……あの!えっと……この後、お時間ありますか?」

「……え?」

少女「あっいえ…えっと……お時間出来てしまったっていうか私のせいっていうか……あの、私これからある場所に向かう事になってまして、良かったら一緒に来ませんか?」

「……え?」

少女「お茶もお菓子もありますし…もしかしたらゆっくりできて気分も晴れるかも……」

「……?気分?」

少女「はい!」



少女「……あの、ずっと元気、無さそうだったから」

「……っ」

窓に映った自分の顔を見ると、なるほど、酷い顔だった

「……そっか…俺ずっとこんな顔してたんだね……」

少女「え?」

「……ハハッ…ホントに酷いや……」

少女「……」

少女「……良かったら、ホントに来てください」

少女「ちょっとでもゆっくりして……それで笑顔になれたら、きっと幸せな気持ちになれますから!」



少女「笑顔は幸せを呼ぶんですよ!」

……こじんまりした建物だった。何かの事務所だろうか?こんな子がこんな場所でどんな用で何をしているんだろうか……?

「なんの会社なんだろう……」ボソッ

少女「えへへー!どうぞどうぞ上がって下さい!」

「あ、ハイ。失礼します」


ガチャッ


少女「お疲れ様でーーーす!!」

???「あら、卯月ちゃん、お疲れ様!こんにちは」

少女「ハイ!お疲れ様です!」


(卯月……?この子の名前か……そういえば今初めてこの子の名前を聞いたなぁ)



卯月「島村卯月、ただいま到着しました!!」



???「ふふっ、ありがとうございます。コーヒーどうぞ」

「あ、すいません…いただきます。ありがとうございます」


とても綺麗な女性だった。三つ編みをおさげにして、なんだか妙に目立つ黄緑の制服を着ている。事務員さんか何かだろうか?それにしても変わった制服だ
名札に平仮名で「ちひろ」と大きく目立つように書かれている
本当になんの会社なんだろう?


卯月「これもどうぞ!すっごく美味しいですよこのお菓子!」

「へぇ……ホントに美味しそうだなぁ……いいの?ありがとう」

卯月「いえいえ!」

「あの、すいません……なんか色々と……」

ちひろ「いえいえ、卯月ちゃんのお知り合いなら全然気にしなくて大丈夫ですよ。ゆっくりしていってくださいね」

「……本当に、ありがとうございます」

ちひろ「いえいえ」

(なんか落ち着くなぁここ……ホントに気分が良くなりそうな気がしてきた)

「じゃあ、お言葉に甘えます。あ、このお菓子もしかして有料なんて事……なんて」

ちひろ「うふふふふふ」ニッコリ

「」

卯月「だ、大丈夫です!無料です!お腹いっぱいになるまでどうぞ!」

「あ…あはは、そっか。いやービックリしt」

ちひろ「……あら、そういえば卯月ちゃんは知らずにずっと食べてたのよね……」トオイメ

「!?」

卯月「!?」

ちひろ「冗談です」ニッコリ

二人「……」ホッ

「焼き菓子かぁ…美味しそうだなぁ……いただきます」

卯月「ハイ!召し上がれ♪」ニコッ

(可愛いな)

ちひろ(可愛い)


パクッ

「!!」 

モグモグゴクンッ

「~~~っ!!」

「すごい美味い!!」


卯月「!!」

卯月「ですよね!美味しいですよねこれ!これ食べると笑顔になれるんですよ!レッスンの後とかに食べると元気100倍です!」

ちひろ(地味に結構高いものですからね美味しくて当然なんですけどね)フッ…

「甘いものなんて久しぶりだ……いや、これ本当に美味しい」モグモグ

卯月「えっへん♪お菓子を食べる舌には自信がありますので!オススメは外しません!」ドヤァ

(可愛い)

ちひろ(可愛い)

ちひろ「おかげでつまみ食いしたり食べ過ぎにならないように皆に注意しなきゃならないからこっちも大変だけどね」クスクス

卯月「元気が無い時は甘いものが一番です!どんどんどうぞ!」

「(……皆?)いいのかな?ありがとう、じゃあお言葉に甘えて…」

パサッ モグモグモグモグ…

卯月(……それにしても……)

ちひろ(この人……)

「……~♪」モグモグモグモグ


卯月&ちひろ(本っ当に美味しそうに食べるなぁ……)



ちひろ「来た時の暗い顔とは別人みたいね……」ボソッ

卯月「そうですね…元気になりそうで良かったです!」ヒソヒソ

ちひろ「そうね……あと、ちょっと思ったんだけどこの人……」ヒソヒソ


「あ、これ色で味違うんだ……スゴイな…ホントにどれも美味しいですよ!」モッグモッグ ニッコニッコ




二人「……」

二人(すっごく表情に出やすいんだ……)

「これ、コーヒーもすごい美味しいです!いやぁ~なんか本当に元気が出てきましたよ!」ニッコニッコ

ちひろ「そうですか?ありがとうございます」

ちひろ(そっちは特売のインスタントですけど……)

卯月「元気になったみたいで良かったです!おかわりまだまだありますからね!」

ちひろ(コーヒーならね)

「……本当に、どうもありがとう」

卯月「いえいえ♪」

ちひろ「ゆっくりしていってくださいね。……そういえば、もうすぐ社長が帰ってくる時間帯ね……」

卯月「そうですね!」

「……」モグモグ


……ん?社長?
そういえば……食べるのに夢中で忘れてたけど、ここは何かの会社だったっけ……
この卯月って子が在籍?所属?してるみたいだけど……高校生…だよな?
子供が入ってる会社…やけに黄緑が目立つ制服……
ん?制服?制服だよなコレ……一体なんの仕事してる所なんだろうっていうか、今更だけど平日の夕方に俺みたいな奴が来てもこんな対応してくれたり、本当にどういう場所なんだ?

……っていうかいくら関係者の知り合い?で合ってるのか?が来てるからってこんな応対するんだろうか…?
ホントになんなんだろうここ……少なくとも普通の会社じゃないみたいだけど……

そういえばこの建物看板みたいなのはなかったような……

卯月「……」

ちひろ「……」


「……」ウーン

モグモグモグモグ


卯月「急に難しい顔して静かになっちゃいましたね……」

ちひろ「食べる事はやめてないですけどね……」

卯月「そうですね……美味しそうに食べてます」

ちひろ「愛嬌があるっていうのかしら……得するタイプかもしれませんね」

卯月「なんとなく食べ物あげたくなりますね」

ガチャッ


???「やぁー今帰ったよキミ達ィ!」

ちひろ「あ、社長!お疲れ様です!お帰りなさい!」

卯月「お疲れ様です!社長さん!」

「!!」ゴクンッ

社長「うむ、お疲れ様!卯月君も、相変わらず元気そうだね!」

卯月「ハイ!島村卯月、元気と笑顔100パーセントです!」

社長「うむ、大いに結構!その調子で頑張ってくれたまえ!」

卯月「ハイ!島村卯月、頑張ります!」

「……っ」ゲホゲホ

この人が社長か……50代ぐらいかな?なんだか優しそうな、好い人だ
この人が……この子達とどんな仕事をしてるんだろうか……

社長「む?おっと失礼、お客人かね?」

「あっあのっすいません!お邪魔しています!」ガタタッ

ちひろ「あ、ハイ。卯月ちゃんのお知りあいらしくて……あ、そういえばお名前まだ……」

卯月「あ!そういえば私もそうでした!」

ちひろ&社長「 え ? 」

「!! そういえばそうでした……すいません……」


「あ……あの、俺……じゃない、えっと…私の名前は――」



「××××です!Cuで、いいです。よろしくお願いします!」

社長「ほう…!学生なのかねキミは!今何年生だい?あ、どうぞ遠慮なく食べたまえ」モッシャモッシャ

Cu「あ、ハイ。今大学四年で……卒業論文書きながら就職活動をしています。……失礼します」モグモグ

社長「ほぅ……それは大変だな……良い所は見つけられたのかい?」

Cu「……いえ、まだ……」ズーン

社長「……」

Cu「……」ズーン

社長「そ…そうか、まぁ食べたまえ」

Cu「……ありがとうございます」

パクッ

Cu「美味しいです」ジンワリ…

ちひろ(一口食べたら一瞬で生気が戻ったわ……なんてわかりやすい人……)

社長「そうかそうか!良かった!若い者は遠慮せずどんどん食べたまえ!」

卯月「ハイ!わかりました!いただきます!」モグモグ

社長「……アレ?うん?」

ちひろ「じゃあ私も若いのでいただきますね♪」ヒョイッ パクッ

社長「え?皆で食べるのかい?で……でも流石に皆で食べたら(地味に高い)お菓子の残りがだね……」

ちひろ「でも、社長許可ですから♪」モグモグ

卯月「皆で食べた方が美味しいですよ♪」ニッコニッコ

社長「うっ…その笑顔で言われては……仕方ないな。よし、今日はもうここでゆっくりしてしまおう!」

Cu(いいのかな……ここ…なんの仕事してるのかは知らないけど……)モグモグ

社長「うん、そうしてしまおう!この会社を建てたのも社長なのも私なんだし、私が許可してるのだから良し!」

ちひろ「どうせ今はお仕事ありませんしできませんしね」

社長「ウッ…」サクッ

Cu「……」



Cu「あの……すいません、一つだけお尋ねして良いでしょうか?」

社長「うむ?なんだい?」

Cu「あの……ずっと気になっていたんですが…」

Cu「ここは、どういう会社なんですか?」

社長「……おや?言ってなかったかね?」

社長「ここはね」








社長「アイドルプロダクションなんだよ」

Cu「」

社長「お、ビックリしてるね!所でなんの会社だと思ってたんだい?」

Cu「あ、すいません。いや、正直見当も付きませんでした」

社長「はっはっは無理も無いよキミィ!一見ウチはホントになんの会社かわからないからねぇ!建てたばかりで看板もまだ無い!」

Cu「……そういえば外にそれっぽいものはありませんでしたね」

社長「名前は決まってるんだがね!」

社長「改めて自己紹介をしようか、彼女がわが社のアシスタントの千川ちひろくんだ」

ちひろ「よろしくお願いします」ペコリ

Cu「あ、どうも…アシスタント?」

ちひろ「ハイ!何でもやらされますし何でもやりますよ!」

Cu「……すごいなぁ」

社長「そしてこの子がウチのアイドル候補生の一人の……」

卯月「はい!島村卯月、17歳です!」ニコッ

Cu「うん、よろしく!」ニコッ

釣られて自分も笑顔で返す。なんだかこの子の笑顔はホントに不思議な力があるようだった
魅力…というのだろうか?

社長「ウチのアイドル候補生は全部で3人いてね、彼女はその一人なんだ」

Cu「へぇ……」

卯月「えへへ、Cuさん!笑った顔すっごい素敵でしたよ!そっちの方が私好きです!」

Cu「えっ…あはは、ありがとう。なんか照れるな…」

社長「……」

Cu「……?」

社長「……」ジーッ


Cu「……?」

社長「!」

社長「おっとイカン!私の自己紹介がまだだったな!ウォッホン!私はこのプロダクションの社長の」

ボーーンッボーーーンッ

社長「~~だ!……って、む?時計の音?」

社長「あっ!いかん、もうこんな時間だったか……今日は私が車で卯月君を送るんだったね……申し訳ない、この後予定が入っていてね、残念ながら今日はここまでだ」

Cu「あ、えっと、ハイ!えと、気にしないで下さい!あの、大丈夫ですから!」

Cu「こちらこそ色々あの……ホントになんて言っていいか……」

社長「うむ、すまないね」


社長「……」



社長「千川君、資料と荷物と卯月君を車の方へ頼む。私も用意してすぐに行くよ」

ちひろ「……?」

ちひろ「はい、わかりました」

卯月「……!あ、あの!」

Cu「?」

卯月「元気、出ましたか?」

Cu「……っ」







Cu「……ああ、すごく元気になったよ」

Cu「本当にありがとう」

社長「……とびっきりの笑顔だったねぇ……どうだい?ウチのアイドルは?候補生だがね」

Cu「アイドルって……俺生で初めて見ました。すごいですね」

社長「候補生だけどね。……彼女は特別だよ。何せ私が見込んだ子だからね」

Cu「え?」

社長「これからきっとすごいアイドルになる。そう確信してる。私はね、一目見てティン!と来たんだよ。そしてそういう人間には必ず声をかけてスカウトするようにしてるんだ」

Cu「『ティン!』……ですか?」

社長「ああ。私の友人で芸能プロダクションをやっとる男もね、同じ様な事を言っていたよ。……人生は一期一会という言葉もあるからね、出会いは特に大切にしたいんだ」

Cu「……」

社長「運命や人生とは奇妙なものでね……本来接点がある筈がなかった人間が出会う事もある。そうしてその出会いが人を結びつけ新しい事が始められるようになる」

Cu「……出会い、ですか」

社長「……」


今日ここで、あの子と出会って、よくわからないままお茶をもらって、美味しいものを食べて……
気が付けば酷い顔をしてたのに、また笑えるようになってた
あの子に会えなかったら、多分……


Cu「一期一会、か……」

社長「卯月君は、どうだった?とても魅力的な子だろう?良いアイドルになると思う」

Cu「……っはい!俺もそう思います!」

社長「なぜそう思った?」

Cu「えっ…それは……」

Cu「……」


卯月『笑顔は幸せを呼ぶんですよ!』


Cu「……俺、笑顔になれたんです。なんだかよくわからないけど、あの子の笑顔を見てると笑顔になれたんです。まるで本当に元気を分けてもらったみたいに……」

社長「……」



社長「そうだね。その通りだ」

社長「その笑顔を見て、私もティン!と来たんだ」

社長「……でもね、今のままじゃあの子はデビューすることが出来ない」

Cu「!!?」

Cu「なっ…なんでですか!?」

社長「……ウチにはね、プロデューサーがいないんだよ。つまり彼女達を売り出そうにも、それを示す人間もいない。今はそれができない。まぁ、セルフプロデュースという手もあるが……アレはかなり難しい。やはり助けてくれる人間が必要なのだよ」

Cu「……プロデューサー?」

社長「とても重要な事だ。厳しい芸能界で道を示し共に歩んでくれる存在だからね」

社長「私も知己の友人の会社を頼ったりしてはいるもののまだティン!とくる人間に出会えなくてね……そういう人間に限ってもう皆持っていっちゃってるからね!非常に困っていたんだよ」

Cu「……っ」

Cu(そんな……あの子がデビューできない……?)

Cu「あの子が……そんなk……ん?」



Cu「困って…『いた』?」



社長「ああ、『いた』だ。やっとね、その人材を今日見つけたんだよ」

Cu「……っ!ホントですか!?じゃあ、あの子はデビューできる!?」

社長「ああ!ああ!ああ!ああ!これで大丈夫!もう解決したんだ!プロデューサーは見つかった!」

Cu「じゃあ……あの子はアイドルになれるんですね!」

社長「ああ!きっと!」

Cu「!」

社長「たぶん!」

Cu「!!」

社長「おそらく!!」

Cu「……大丈夫、なんですよね?」

社長「私は見る目だけは自信がある!うむ!」

Cu「ハハ!とにかくやった!やりましたね!!」

社長「ほぅ……あの子がデビューできるのをそんなに喜んでくれるのかい?」

Cu「あっ……はは、すいません、なんだか嬉しくて」



Cu「……」

Cu「多分、ファンになったんでしょうね、俺」

社長「……そうか」

Cu「……自分がアイドルのファンになるなんて、想像もしませんでした」

社長「ふむ、ならば君がアイドル、・島村卯月のファン一号というわけだな!」

Cu「え?」

社長「良いファンが出来たじゃないか!心強い!」

Cu「あはは」テレテレ

Cu「……っそういえば、そのプロデューサーっていうのはどんな人なんです?」

社長「む?そうそうそれで大切な話があった!キミは明日から時間はあるかい?」

Cu「うっ……ハイ、時間は、それなりに……あ、でも週明けになったら一度大学に……」

社長「ああ、そんなこと構わないよ!実はね、キミにお願いしたいことがあるんだ」

Cu「?はい」

社長「ちょっと真剣な表情になってくれたまえ」

Cu「?」

Cu「こ……こうですか?」グッ…

社長「そうそう!ほう、何といい面構えだ」

Cu「ど……どうも」ググッ

社長「うむ!ティンときた!」









社長「キミ、ウチでプロデューサーとして働きなさい!」

Cu「……」ググッ…


Cu「……」







Cu「え?」



Cu「 う え ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ っ ! ! ! ! ! ? 」






【CuP編終わり】

ココまででCuP編を終わります。すいません、最近まで入院してたのでかなり滞ってました
今は眠れないので書きあがってる分だけ投下しときます。読んで下さった方、本当にありがとうございましたm(_)m
あと、レスしてくれてた方、本当にすいません、感謝です

酉付けてみました
あと、色々と申し訳なかったです……すいません

11月・秋



「……お前、不良か?」

少女「……何?アンタ」

「……子供がこんな時間にうろつくもんじゃない」

少女「……」

「だから……」




「とっとと 帰れ」

コンビニ・夜


「「ありがとうございましたー」」

時計は9時半を過ぎた辺りで、客足も落ち着いていた

店内にいる人はレジの中にいる俺と顔馴染みの先輩の二人だけ

先輩「やー外寒いねー。肉まんもおでんも売れ売れだね」

「……そうですね」

気さくそうに先輩が話しかけてくる

それに対して低めのテンションで返す。いつもの職場の風景だった

先輩「あ、什器の中、確認しといてねー!あと出入り口のゴミ箱さ、あそこ最近ガラ悪い奴がたむろしてグッチャグチャだから掃除もしといてねー。ちょい前の酷かったって!」

「……またですか」

先輩「うん。まただね。あー肉まんやらなんやらちゃんは補充したの大分前だから……このままだと残ってるのは廃棄しなきゃだねぇ……」

「……そうですね」

この人は普段もそうだが、雑務をよく俺に押付ける
今もそうだ。そうやって大抵は掃除するフリをしたりスマホをイジって携帯ゲームをしたり彼氏とメールやラインばかりしてる
よくここのバイトをクビにならないものだ

というかなんでクビにならないんだ

もっとも、今日はある事情でいつもと比べ仕事はしっかりやってる方だったが……

先輩「どうかね?肉まん隊の様子は?」

「……そうですね……コイツらはまだ頑張れると思います」

先輩「……ホントに?もう限界なんじゃないの?」

「……いえ、俺はコイツらを信じます」

先輩の言う通りに什器の中の肉まんやらなんやらを確認し報告する
まだいける、コイツらはきっとまだ戦える筈だ

コンビニの肉まんやらなんやらは、その見た目もそうだが特に衛生上の関係で一度出すと長い間機械の中に置いてはいられない

時間がくれば残ってる分は全て廃棄しなくてはいけなかった

……我ながら貧乏臭いが、この手の話は心底勿体無いといつも思う

先輩の彼氏「うわー……いつも思うけど勿体ねー!」

先輩「やーんダーリンもそう思うー?アタシもいっつもそう思うんだー!
でもホラ、こないだ話した新店長!アイツがめっちゃ厳しくて全部廃棄以外認めないーって!」

彼氏「えー!やだ~~~!勿体無い勿体無いー!」

「……余所でやってくれませんかね」

レジを挟んで先輩とイチャついてる派手な外見の男は先輩の彼氏だ

サングラス、金髪、刈り上げ剃り込み、そしてデカイピアス……そしてI★ROVE★YOU!と書かれたタトゥー
わざとでない限り多分LOVEと彫りたかったのだろう

……初めて見た時はあまりにベタ過ぎて持ちネタか何かにしか見えなかった。周りもそう思ってるらしく、タトゥーの文字を指摘している人を見た事がなかった

普段はバンドをやっていて近くのライブハウスで定期的に演奏をしているらしい
実際に演奏を見た事は無いが、演奏自体は割りと好評らしく、顔もかなり広い

今日は出番の後にそのまま抜けて店に来たそうで、事前に彼氏が会いに来るとメールで聞いていた先輩はメールが来た瞬間一気に上機嫌になり、その結果普段と比べて驚くほど仕事をしてくれた

ROVEの力は偉大だな

彼氏「や~ん!コレただで譲って?ダメ?」

不快な上目遣いはやめろ

「ダメに決まってるじゃないですか」

肉まんは確かに勿体無い。だが、廃棄する分をパチるのもよくはない

前は、ぶっちゃけ皆パチっていた。勿論、棄てる分をだ
だがこのコンビニは少し前に店長が変わり元々いたスタッフも何人か入れ替わり、その結果こういうのに特に厳しくなってしまった

つまり、もうこれらはこのままだと廃棄以外にない
俺も皆に混じって前はいくつか廃棄分を頂戴していたので、実は食費が地味に大きい痛手を被っていた。この人の気持ちはわかる

飲食店でバイトした事もあるが、こういうのはやはり慣れないものだ

先輩「ホントねー……勿体無いよねー」

彼氏「なー……」

先輩「……にー」

彼氏「……ぬー」

先輩「ねー」


「……」


彼氏&先輩「「……」」

「……?」

彼氏&先輩「「……」」チラッチラッ


「……」


……なんだこのノリは。誰が言うものか

彼氏「……なぁなぁ、二人ともバイトもうすぐ上がりだろー?終わったらウチでの飲まねぇ?」

先輩「あーいいねー。どうする?来る?ウチ来ちゃう?」

「……そうですね」

「……俺は遠慮しときます」

この人達はよく俺に気をかけてくれる。俺が一人暮らしで、収入もバイトをいくつかやることで賄ってる奴だと知ってからは何かシンパシーのようなものを得たらしく、こうして色々と誘ってもらったりしていた

見かけや仕事ぶりはともかく、間違いなく良い人達ではあった

そしてこの二人は半分同棲に近い生活を送ってる。加えて彼のバンド仲間の人に聞いた話によればもしかしたら近々結婚するかもしれない、との事だった

だから、今日は空気を読んでお邪魔しない事にする

彼氏「……そっかー」

先輩「……残念」

「……」

本当に残念そうに言うな……というか、前から思ってたが俺がいて良いのか?
イチャつけないだろう

先輩「……見せ付けたかったねぇ」

彼氏「ね。独りモンの目の前で鬱陶しい位イチャイチャしてやりたかったね」

「……」

なんて嫌な奴らだ。コイツらの顔面を肉まん用のゴミ箱にしてやろうか……

ん?……肉まんで憎まん……

いや、違う

これは違う、なんでもない。これはない

彼氏「でもよ、帰ったってオメー寝るだけだろ?お前ン家テレビもねぇし、ラジオもねぇし、車もそれほど走ってねぇし」

「あんま面白くないですね」

彼氏「なんかごめん」

先輩「おーよしよし!……相変わらず、やってることもやりたいことも、好きなこともなーんも無い感じ?」

「……そうですね」

……普通の人なら俺ぐらいの歳だと大学に通ってたりするんだろうか?

だとしたら今は就活の時期か……そいつらは皆、何を考えて生きてるんだろうか

「……今の俺には、そういうのはないですね」

彼氏「ウチのバンドやっぱ入らねぇ?いいぞーバンドは!あの一体感!!
最近だとウチのライブハウスで涼っつースッゲーイカした奴が歌っててさ、一回聞いてみ?ハート全部持ってかれるぞ!」

「……有り難い話ですが、すいません」

彼氏「そう?今ちょうどモヒカンのメンバー募集しててさ、お前目つき悪いからイケると思うんだけど……」

「お断りします」

モヒカン限定か。狭き門だな

先輩「ウチのお兄ちゃんが働いてるゲイバー、あそこ今人手が足りないって言ってたけど……どう?」

どう?どうって何が?何が検討されると思って聞いたんだ?

「……お店の防犯カメラにこうやって喋ってる所ばっか映ってるのはマズイですよ。仕事しましょう仕事」

先輩「あ、やべ」

「……あと、そろそろメンバーの人迎えにいく時間じゃないですか?送るって言ってたんでしょ?」

彼氏「いっけね!行って来るわ!送ったらすぐ戻るよマイハート!」

先輩「うん、戻ったら裏の方に車回しといて!いつも通りそっから出るから!」

彼氏「オウ!いやー今日は皆に無理言って片付けやら手伝いやらぜーんぶ頼んで来ちゃったからアッシー君になんねーといけなくてさ!」

「……それでこんな早くに来れたんですか」

彼氏「そう!……さっきも言ったがよ、やっぱいいぜ?バンドは!ってかチームか?まぁいいや!
楽しいんだよ!聞くのも歌うのもな!そんで一生懸命歌って皆にソウルを届ける、この感覚!!それがいいんだ!」

「……」

本当に楽しそうに笑うな

こういう人間は本当に眩しく見える

……俺は、色々あって人より働き始めるのが早かったのもあるが、バイトに限らず割と色んな仕事をしてきた

特に不得意もなく、何処でもある程度仕事はこなせたが……いつも虚しく空っぽな感じだった

……この職場もたまたまいたこの人達のおかげで居心地は良いが、もしかしたらまた気まぐれにあっさりとやめようとするかもしれない



バンドか……いや、俺にバンドはないな

ないない

「……」

先輩「……あ、むつかしい顔してる」

彼氏「お、ホントだ」

「……」

先輩「……」

先輩「……前から思ってたけどさー」

「……?」

「なんですか?」

先輩「うん、君は本当になんというか……顔が悪いよね」

「」

酷いな……しかも前から思ってたのか

彼氏「いや、顔っつーか雰囲気?表情だ。表情が悪いね」

先輩「あー、それだね。雰囲気だね。突っこむとホントに愛想が無いよね」

彼氏「だな。総合すると愛想がないよね」

「」

急にダメ出しが始まったぞ

なんだこれ……どういう流れだ?

先輩「君さ、これからずっとバイトマンって訳にもいかないわけでしょ?……どうすんの?色々大丈夫なの?あとホント目つき悪いよ?」

「……最後のに至っては本当にどうしろって話なんですが」

目つきはともかくこれからについては痛い所を突かれたような気になる
丁度そんな事考えてたからか

……愛想が無いコンビニ店員は結構致命的なんじゃないだろうか

「……そんなに悪いですか?」

先輩「うん。あと隈も酷いよ?寝不足?割かし無口だしそれが雰囲気の悪さに拍車をかけてるね」

「暖房が壊れて寒くて寝不足に……」

彼氏「わかる!ウチも隙間風とか寒くてさー!
……愛想は……そうだなぁ、一緒に飲んでる時とかはお前おもろいし、愚痴とかめっちゃ聞き上手ではあるけどなー……」

「……」

先輩「それお酒の席でしかわかんないじゃん?今はコミュ力の時代っていうし、最初のとっかかりが大事だと思うのよね!
なんだっていつだって第一印象は大事でしょ?
アタシ思うんだけど、そんな殺し屋や呪術師みたいな目つきと隈取じゃ誰も雇ってくれないよ?多分」

「……」

肉まんの什器に映る自分の顔を見る

言われるとなんだか目つきが悪い気がしてきた

どうやら、今まで自覚はなかったが俺は愛想がなかったらしい

……この歳になって新しい発見だ。そして全く嬉しくない

先輩「あとアタシがボケても全然笑わないよね。アタシがアホの新店長のカツラをこっそりイジって10円ハゲ作っといた時も全っ然スルーしてたし」

彼氏「何それちょー気になる」

「……それは笑ったらバレるじゃないですか」

先輩「まぁそうだけど……ハッキリ言ってアタシ君のそういう所直した方がいいと思うなー
ユーモアや余裕がないと将来女の子いっぱいの職場で働く事になった時とかで人気になれないよ?無愛想な感じはレディ相手にはよくないと思うしね」

「……そういう所で働くつもりも予定も、俺はありませんので」

彼氏「僕はそういう所でなら働いてもいいかもと思っています」

先輩「あ?」

彼氏「ごめんウソ。君だけを愛してる」

先輩「うふ♪アタシも☆……何はともあれ君、夢とか打ち込めるものとかまず探してみたらー?若いんだしさー」

先輩「それに男はさ、何かに一生懸命な方がカッコ良いよー?君みたいなのが何かに一生懸命になってたら女の子は案外コロッとオチちゃうかも!」

彼氏「マジで!?」

マジか

先輩「ゴメン適当」

そうか……

……。



……俺はただ、目標もゴールもなかっただけだ

だが……ずっとこのまま惰性で生きるのだけは……確かに嫌だ

……じゃあ何に夢中になれっていうんだ?まずそれが俺にはわからない

……どうなるんだろうか……

何もなく、バイトで食い繋ぎ、年を取り仕事も出来なくなりクビになり、そのまま野垂れてダンボールに包まって公園で凍死する未来……

正直それだけは避けたいものだが

先輩「見た目は頭良さそうだよねー。なんとなく。ただ愛想が無い」

「……俺はそんなに愛想がないですかね」

彼氏&先輩「「うん」」

先輩「んー……でもやっぱ最近新しく入ったあの茶髪のガキ、アイツの方が愛想の無さはMAXだね!うん!やっぱ気にすんな!」

いや、気にするだろう

彼氏「あーあのアイドルみたいな顔したやる気無さそーなイケメン?俺アイツ嫌いだわーバンドにいたらファン取られちゃうもん」

先輩「も~あんたには……アタシがいるでしょ?(上目遣い)」

罰ゲーム?

彼氏「そっかぁ~!じゃあ気にしない☆」デレデレ

……お幸せに

茶髪の……

思い出した、最近入ったアイツか
あまり同じシフトに入った事は無いが……わずらわしいことを嫌いそうなタイプのよくいそうな兄ちゃんに見えたが

「俺は下がいたら安心するタイプでもないんですがね……」

先輩「あっはっは!アレと同列はショックだったか!?気にすんな!細かい事を気にする男はロックじゃないってこの人も言ってたよ!」

彼氏「あ、そういや明日ゴミの日だ。分別してあと牛乳パックも干しとかないと。本棚作りたいんだよ俺」

……なるほど、コイツぁロックじゃないな

彼氏「じゃあそろそろ行くわ!……可愛い子が来たらアドレス聞いといて俺にも教えてね!」ボソッ

先輩「んふふ~♪聞こえてるゾ!」パキポキッ

彼氏「も…も~冗談に決まってるだろハニー!!じゃあ!」

先輩「ん、また後でね~!」

彼氏「おう!あ、そだ!最後にお前、これ俺からアドバイス!」

「……?」

彼氏「……もっと笑ってみろ。笑顔は幸せを呼ぶってな!そうすりゃ福なんぞいくらでも湧いて出る!!」

「……」

先輩「ダーリン……素敵!」

彼氏「テレビのCMで女優かなんかが言ってた」

先輩「そんな飾らない貴方が好き……!」

余所でやれ余所で

「……」

……笑顔か……

「……」


















「……」ニタッ

彼氏&先輩「「ぅ わ 気 持 ち 悪 っ っ っ ! ! ! ?」」

「――っ」ガガーンッ

先輩「もうすぐだね。引継ぎ準備よろー」

「……はい」ズーン

先輩「……さて、アタシらもそろそろ上がりだねー。アレだよ、ゴミとかやんなきゃ!」

「……そうですね」ズーン

先輩「もーゴメンってば!でもアレだね!アンタ笑顔ヘッタクソだねー!爆笑だよ!」

先輩「……でもアタシあんなんゲーセンの人形で見たことあるよ!緑のクソブッサイクな奴!なんつったけなー……」

知るか

遠回しに俺がブサイクだと言いたいのかコイツは

「……ブサギョロ太とか、どうせそんな名前でしょう」

先輩「あーなんかそんな感じだったような……まぁどうでもいいや」

「……」

先輩「あ、やべぇ袋ないわ。奥からゴミ袋とかチリトリとか、全部取って来て。んで外のゴミ片してちょ」

「……了解です」





店内奥:スタッフルーム


「……今思えば俺が客に笑顔を向けたときも反応が変だった気がする」ガサガサ

後輩「マジすか。つか今まで気付いてなかったんスか……にしても気の毒っすねー」

新入り「……」

「……気の毒ってのは笑顔がか?なら多分俺はもう二度と笑顔になることはないだろうな」

新入り「違いますよ。つーか普通に意識しすぎてわざとらしくなってるとか、もしくは単純に引き攣ってるだけだと思いますよ多分……あ、引継ぎであと他に何かありますか?」

「いや、特にはもうないな。あとはいつも通りだ」

後輩「了解ッス。んじゃ、着替え終わったらレジ入ります」

新入り「……」

「……ああ、頼む」

……愛想がないか……この新入りみたいな感じか?

確かに人から見ると良いものじゃないな



<ピロリロリロリロ……

先輩『いらっしゃいませー』

「……ん……客か……俺も外のゴミを片したら上がる。あと先輩に聞いてくれ。任せる」

後輩「へーい」

コンビニ・店内


<ピロリロリロリロ…

先輩「あああありがとうございましたー!!」ガクガクガク

「……?」

なんだろう……痙攣みたいになってるぞ

先輩「やべーなんかめっちゃドキドキしたー!」

「……どうしたんですか?芸能人でも来たんですか」

確か大分前にジュピターだかなんだったかの、何とかいう名前のアイドルが来店した時もこんな感じだったな

なんだったか……何ヶ島なんたらだったか……一番くじを買いに来てたのだけは覚えてる

先輩「え?いやいや女の子だよ!なんかジャージでウォークマンかなんかシャカシャカ聞きながら来た女の子なんだけどさ、女の子っていうかもう女子!ちょー可愛いの!アタシのセンサーにビンビン来たね」ハァハァ

「犯罪者みたいな顔になってますよ」

先輩「オメーが言うんじゃネェよ人殺しみてぇなツラしやがって!いやホント可愛いンだって!しかも哀れな肉まんちゃん達も買っていってくれちゃったんだって!」

今さりげに酷かったな

「ああ、売れたんですか。良かったじゃないですか」

先輩「ね、それはそうだね……。ん~なんか運動でもしてたのかな?もうね、アップにした髪と少し上気した頬がSoキュートで、無愛想そうな顔とピアスがちょい悪っぽくチャームポイントになってて!」ハァハァハァハァ

……キモイな
今、この人は女性としてしてはいけない顔になっている

「そうですか。……ちなみに俺とどっちが無愛想でした?」

先輩「は?もう何かを比べる事すらおこがましいわ死ね」

「」

先輩「でも大丈夫かなー?一人で来てたっぽいし……」

「……?」

「……いくつ位の子だったんですか?」

先輩「んー……背高かったし大人っぽい雰囲気だけど……アタシの勘だと……」





先輩「中学生か……高校一年生ぐらいだったかもね……」

コンビニ前・駐車場



「……地味に寒いな」ボソッ

秋も終わる頃だ。当然店の外は肌寒い。本当に随分と肌寒くなったもんだ
ちょうど肉まんでも食いたくなる寒さだった

「……酷いな」

最近ガラの悪い奴らが集まるとは聞いていたが……ゴミやタバコの吸殻が散乱し酷い有様になっていた
先輩が道理で俺に押付けたがった訳だ。正直見てるだけで気乗りしない

「……さっさとやって上がるか……」

早速ゴミ掃除に取り掛かる。早く終わらせて早く帰りたくて仕方ない

「……こんなもんか」

まぁ、これで見れたものにはなっただろう。あとはゴミ箱の中身も……




「……?」

影になってて気付かなかった

コンビニの壁に誰かがもたれかかってる

女だ……女にしては背は高いが……雰囲気的には子供か?

ここで買った奴だろう、肉まんを頬張っている様だ

時折お茶を口に運びながら物思いにでも耽っているのかぼぉっと突っ立っている

どうやらずっといたらしい

「……」

見た感じ高校生ぐらいの少女だろうか。恐らくさっき先輩が言ってた子だろう

だとすればなるほど、確かに足も長く背も同年代より高く見える。モデル体型、という奴か

遠目だが、確かに顔立ちは整っていそうだった。そして、多分不機嫌そうな、無愛想な顔をしている

少女「……っ」ガサガサ

どうやら肉まんを食べ終わったらしい。残ったゴミをどうしようかと、ゴミ箱を探してるようだった。本当にぼぅっと食っていただけらしい

「……オイ」

少女「……っ」

俺の存在に気付いてなかったのか。驚いたようにこちらを見ている

少女「……何?アンタ?」

とても無愛想な声で、ソイツはそれだけ呟いた



この声だけは、どれだけ後になっても決して忘れる事はなかった

「……」

初対面の人間にアンタか。どうやら礼儀やマナーはなってないらしい
いや、これぐらいの歳だとコレが普通か……もしくは強く警戒しているのかもしれん

……ツラのせいだとは思いたくない

「……」ハァー

少女「……?」

少女「……何?」ジッ…

「……」

不審者を見るような目だな……

店員の制服着てるだろう。ここの人だ

「……ゴミがあるなら、ここに入れろ」

少女「……えっ」

「他にもあるなら、今まとめて棄てる」

少女「……」

少女「……えっ…と……」

少し戸惑ってるようだったが、やがてゆっくり近寄ってきて、おそるおそる、といった感じでゴミ袋にゴミを棄てる

少女「……どうも」ペコッ

無愛想だが礼は言えるらしい

「……他にはないのか?」

少女「……大丈夫」

近くで見るとなるほど、やはりというか、確かにかなり整った顔をしていた
あの変態が発狂したのもわかる

キリッとした意思の強そうな吊り目、アップにしてる長い茶髪、耳が出てるおかげかそこにあるピアスが特に目を惹く

自分の外見をよく理解して映える物を身に付けれるタイプなのか……それとも元が良いから何でも映えるのか……

少女「……何か用?」

「……いや」

ジャージは学校指定か何かのだろうか。ポケットからイヤホンのようなものが伸びていて片耳に刺さっている
服の上からでもわかるほどすらりとしているモデル体型、本当に雑誌か何かのモデルをしていてもおかしくはないと思った



だが……

「……」

「……お前、こんな時間に何してるんだ?」

少女「……っ」

近くで見るとハッキリわかる

コイツは子供だ

少なくともこんな時間にうろついてていい年齢には見えなかった

少女「……何?アンタ……急に」

「……今何時だと思ってる。お前みたいなのが出歩いてていい時間じゃない。……警察を呼んで補導でもしてもらうか?」

少女「……っ」

目の前の少女が『後ろめたい部分を突かれた』という顔と、『なんで見ず知らずの奴に偉そうに説教なんか』というのを合わせたような、そんな表情を見せる

「……友達と約束か?それとも家出か?」

少女「……そんなんじゃないよ」

バツが悪そうに目を逸らす
完全にタメ口か。まぁ、それはどうでもいい

「……なんにせよガキが出歩いてて良い時間でも場所でもない」

少女「……っ」

『ガキ』という単語に反応したのか……こちらをキッと睨みつけてくる

歳の割には大した眼力というか、不思議な力のようなものを持ってるようだった
役者か何かでもすれば大成するんじゃないか?

「……」

「そのピアス……お前、不良か?」

少女「……っ」ギロッ

怒ったようだ
当然だな……今のは明らかに偏見まみれの言葉だ

……俺は別にピアスをしてるから不良だ、なんて思っちゃいない。普段あんな人達と付き合ってればそんな偏見も消える
だが、ここは何か言って怒らせてでもさっさと帰らせるべきだろう

少女「……何なの?アンタ」

「……男と待ち合わせか?いや、ホントは小遣い欲しさに悪い大人でも探してたのか?」

少女「なっ……」

……酷いな……今の言葉は相当酷い

「違うのか?ならこんな所にいつまでもいるな」

少女「……っ」

「……子供が、こんな時間にうろつくもんじゃない」

少女「……」



「だから……とっとと帰れ」

一方的にそれだけ言って、ゴミを纏めて店内に戻った

自分で言うのもなんだが、かなり感じが悪かっただろう。俺なら相当不愉快になったと思う。だがまぁ、これでコイツもさっさと立ち去りたくなっただろう

礼が言える辺り悪い奴でもなさそうだったし、放っておくのも警察を呼ぶのもどっちも冷たく感じた
ジャージで出歩ける距離なら多分近所に住んでいるんだろう

肉まん食いたさに出歩いたのかダイエットか何かで走ってたのか……
なんにせよ心配する義理はないが、放っておくのも大人として気が引けた
だから、とりあえず帰るように仕向けようとしただけだ

……さっきから誰に言い訳してるんだ俺は




店の中に戻るまで、ずっと刺さるような視線が向けられている気がした

少し言い過ぎたかもしれないな

先輩「さいってーだね」

「……そうですか」

先輩「初対面なのにピアスだけで不良認定してエンコー少女呼ばわりして……アンタひっどい男だね」

「……」

正論だ。言葉や言い方については少し後悔してる

先輩「あの年頃の女の子はね、一人で出歩きたい気分にもなるしコンビニで肉まん食べたくなったりするの!
やってるかどうかわかんないのに見た目で犯罪者認定されたらどんな気持ちになると思う?見た目だけならアンタだって犯罪者よ」

……返す言葉がないな、

「……すいません」

先輩「アタシに謝ってどうすんのよ?……もっと上手く口回らせないとダメよ?とりあえず、アンタも早く着替えなよ。上がりでしょ?」

「……」

まぁ、確かに使っていい言葉と悪い言葉がある
俺のは後者だ。大人に一方的に偏見もたれるのは、どう考えてもアウトだ

先輩「まぁ帰そうって気持ちはわかるけどね。でも今回のはダメ。初対面の年下相手に否定から入るなんて言語道断よ?」





先輩「……でもやっぱ心配にはなるわよね……ホラ、最近ここ物騒でしょ?」

コンビニ前・駐車スペース


不良「なーいいじゃん?俺らと一緒にドライブしようぜ?」

不良2「絶対楽しいからさー」

少女「……すいません、通してもらえます?」

不良3「そんな怖い顔しなくてもいいじゃーん!こんな時間に歩いてたら警察に補導されちゃうよ~?」

不良4「そうそう、見つかる前に俺らと一緒にどっか行こうよ~!」







「……」

言わんこっちゃ無い……

というか、何故まだこんな所にいるんだコイツ……

不良2「なー?いいじゃんちょっとぐらいさー」

少女「……っ」



……俺が店に戻ってから、上がって着替えて出てくるまでで10分ぐらいか?
ずっとコンビニの前にいたのか……

相手は複数でしかも車のようだ

いきなり拉致されるような危険に遭わなかっただけマシと見るべきなのか……

わざわざ車を降りて囲んでナンパしてるのは……拉致だと防犯カメラのあるコンビニの前でマズイと思ったからか?

「……」

不良3「荷物持つからさ~」バッ

少女「あっ!ちょっと!返してよ!」

不良4「何買ったの~?袋チェ~~ック!ん?絆創膏?どっかケガしてんのかなー?」

少女「……関係ないでしょ」

無意識なのか右足を後ろにずらす。どうやらそれでコンビニの前にずっといたらしい
なにかあってケガをし、足が痛くて絆創膏やら食べ物やらを買い休んでいた、という所か

「……ハァー…」

……そういえば、何も知らずに随分とアイツに酷い事を言った奴がいたな



「……」チッ

不良「なー?ホラホラ早く乗ろうよー?」グイッ

少女「なっ……イヤ!やめ……」


パコンッ


少女「あたっ」

不良達「「「「!!?」」」」


少女「……?」クルッ

「……」

少女「……え」

「……」

「……」



「……何してんだ花子……帰るぞ」

不良「……なんだコイツ」

不良2「……兄貴かなんかか?」

不良3「……確かに無愛想な感じは似てるかも……」

突然現れた俺に驚き不良達がざわついている
まぁ、当然か……顔見知りのような事を言いながら現れた目つきの悪い男がいきなり目の前でナンパしようとしてた小娘の頭を引っぱたいたんだから

……思ったより音は出たが、痛くはしてない……筈だ


少女「……っ!?!?」

……後で謝るか

「……親父はまだキレてるし、お袋も泣きまくって警察呼ぶだの捜索願い出すだの騒いでる。……喧嘩するのは結構だが……いい加減俺を巻き込むのはやめろ」

少女「……えっと……」ポカン

「帰るぞ」

グイッ

少女「えっ――」

不良達「「……」」ポカーン


不良3「ってオイ!ちょっと待……」

「……」

ギロッ

不良達「「……っ」」ビクッ

……何でビビってるんだ

お前らの方が数多いだろ


不良3「オイオイ……コイツの目やべーよ……」ボソッ

俺をなんだと思ってんだ。やばくない。優しさに満ちている

不良「ああ……俺にはわかるぜ……あの隈を見ろ……コイツヤクとかキメてる目だ……」ヒソヒソ

ただの寝不足だ。暖房が壊れて寒くて寝れないんだ

不良2「コイツは間違いねぇよ……出会い頭に躊躇いもなく人を刺し殺すタイプのツラだ……!」ヒソヒソ

だったらとっくにお前ら全員刺している

不良4「どうすんだよオイ……俺この前あの拓海とかいう走り屋どもににボコられた傷まだ治ってねぇぞ……」ヒソヒソ

……

コイツらひょっとして喧嘩弱いのか?

「……」


不良「……」

不良2「……」

不良3「……」

不良4「……」


「……」



ニタッ



不良達「「「「ヒ ィ ィ ッ ! ! ! ?」」」」ビクッッッ




少女「……?」←見えてない

「……」

……俺は今日心に癒えない傷を負った

こんな経験は初めてだ

「……」スタスタ

少女「……」テクテク

「……」スタスタ

「……」テクテク






……。

なんだこれ

俺は今、夜道をさっきの女子高生と並んで歩いている

……どうしてこうなった?決まってる。勢いであの場から連れ出して、そのままこの状況というわけだ

あの時適当に引っ張った方向の道、そこをそのまま真っ直ぐ……何処に向かってるんだ?コレ

少女「……ねぇ」

「……」ウーン…

少女「……ねぇってば」

「!」

「……なんだ?」

少女「……アンタもこっちの道なの?」

「……お前の家はこっちで合ってるのか?」

少女「……そうだけど」

「……なら、偶然だな」

少女「……」

「……」

偶然なものか。俺の家は逆だ。つーかなんで俺はこっちに向かったんだ

……まぁ、コイツの家はこっちで合ってるみたいだし、そこはまだマシか
あのコンビニの前は……さっきの奴らがまだいたとしたらちょっとまだ通れないしな

……そういえば、もしかしたらさっきの奴らが車で後ろから追って来るかもしれん

少女「……?」

「……いや」

……コイツはこのまま車道側を歩かせないようにしとくか

「……」

少女「……」チラッ

「……家は近いのか?」

少女「……アンタは?」

「……とりあえず、適当に大丈夫そうな所まで送る。さっきの事もある。ガキをこんな時間に一人で歩かせる訳にはいかんだろう」

少女「……」

少女「……うん、わかったよ」

「……?」

いやに素直だな……

今更だが、コイツはコイツでもうちょっと俺を警戒すべきだろう

……いや、俺は善良だが

少女「……」

少女「……あのさ」

「……?」

少女「……っ」


少女「……さっきは、助けてくれてありがとう」

「……!」

……なんだ、可愛らしい所もあるじゃないか

さっきの暴言の事もあるし『何勝手に余計な事してんの?』ぐらいは言うかもしれんと思ってたが……

少女「……私、こんなんで誤解されやすいけどさ」

「……!」

少女「……恩知らずじゃ、ないつもりだから……」

「……」

……見透かされたのか?

それともコンビニで俺が言った余計な言葉を気にしてしまってたのか……

「……」

「……お前、ランニングか何かでもしてたのか?」

少女「……」

少女「うん……少し、走ってた」

「……こんな時間にか」

少女「……っ」

少女「……私……こう見えて目指してるものがあってさ。今、同じ目標持った……仲間と一緒に」

「……目指してるもの?」

少女「……うん」





少女「私……アイドル目指してるんだ」

「」

……コイツマジか?

……アイドル?あのアイドルか?

少女「……笑ってもいいよ?……でも、本当に真剣なんだ」

「……いや」

外見はかなり良いからな。まぁ、自分に自身があるのは良い事だ

少女「私……その仲間の子達と比べてさ、ちょっとスタミナが不安だったから。それで、走って体力付けようかなって。思ったらもう、我慢できなくてさ」

「……」

少女「……でも……靴代えたばっかだったからかな?靴擦れしちゃってさ、ははっ」

「……なるほどな」

少女「……うん」

「……」

XPがダメになるようなので、スマホに切り替えます
多分書き込めると思います…

どうやら、本気で目指して頑張ってるタイプらしい
?
……なんだよ……俺なんか足元にも及ばない真っ直ぐな奴だったんじゃないか
?
夢か……見かけによらず随分と熱い奴だ
?
「……走るなら夜じゃなくて朝にしろ。あと、お前みたいな子供が一人でするのは危ない。今日みたいにな
……犬でも買って散歩がてらにでも走ればいいんじゃないか?」
?
少女「……うん……今度は、そうする」
?
「……犬、買うのか?」
?
少女「……いや、っていうかウチ……」
?
少女「……」
?
少女「ねぇ、さっきの『花子』って名前……」
?
「……咄嗟に出た名前だ……流石に安直過ぎたか?」
?
少女「……」
?
少女「……別に安直じゃ、ないと思う」
?
「……?」

どうやら、本気で目指して頑張ってるタイプらしい

……なんだよ……俺なんか足元にも及ばない真っ直ぐな奴だったんじゃないか

夢か……見かけによらず随分と熱い奴だ

「……走るなら夜じゃなくて朝にしろ。あと、お前みたいな子供が一人でするのは危ない。今日みたいにな。……犬でも買って散歩がてらにでも走ればいいんじゃないか?」

少女「……うん……今度は、そうする」

「……犬、買うのか?」

少女「……いや、っていうかウチ……」

少女「……」

少女「ねぇ、さっきの『花子』って名前……」

「……咄嗟に出た名前だ。……流石に安直過ぎたか?」

少女「……」

少女「……別に安直じゃ、ないと思う」

「……?」

すいません、>>135はミスです
なかったことにしてください

「……コンビニでは、悪かったな」

少女「……いいよ。心配して、帰そうとしてくれたんでしょ?」

「……頭も殴った」

少女「……あー……」

「……」

少女「……」ジーッ

少女「……アンタ、以外と真面目なんだね」

「……お前が言うな。生意気なガキだ」

少女「……口も悪いんだね」

「……お互い様だ。お前に言われたくない」

少女「……」ムッ

「……あまり親に心配はかけるなよ」

少女「……っ」

少女「……そうだね……少しでも早く、と思ってこっそり抜けて来ちゃったから……バレてたらすごく心配してると思う」

……どうやら割りと本気で気にしてるみたいだな

「……バレてたら、とりあえず思いっきり怒られとけ。怒ってくれる親がいるのは幸せな事だ」

少女「……わかってる。今度は、ちゃんとそうするよ」

「……」

少女「……」

少女「……ん?」

「……?」


道の反対側から、肩を組んだ二人組みの男が歩いてきた
見たところ50代ほどの中年男性が二人、千鳥足でかなり酔ってるようだった

大声でやんややんやと騒ぎながらこっちに向かっている

「……」チッ

面倒くさいな……あの酔っ払いっぷりはかなり飲んでる様子だった
絡まれたりするのは避けたい

「……お前、少し俺の後ろ側に下がれ」

少女「……うん」

思ったより素直に俺の背中に隠れるように移動するな

やはりというか、根は悪い奴じゃないようだ

中年男性「いやぁ~!やっとなんだ!やっと一人目なんだよ高木ィッ!祝!一人目!めでたい!!とってもめでたいよ!!」ヒック

中年男性2「ワハハハ!もう聞いたよ何回も!お前がティン!ときたのは久しぶりじゃないか!どんな青年なのか……今度絶対私にも会わせてくれよ!!」ヒック




……声のでかいオッサンだな

……そんなに酔ってるならタクシーで帰れタクシーで

少女「……?今の声……」

「……?」

中年男性2「ウチも今プロデューサーの彼や律子君達が頑張ってくれてるが……人手が全然足りないんだよ……
その青年、もし会って見所があればウチで少しレンタルを……なんてダメか?」

中年男性「ああ!それぐらい良いとm……いやいやダメだダメだ!私が先に見つけたんだぞ!?
ノセられる所だった!レンタルも引き抜きも絶対ダメだ!騙されんぞ!」

中年男性2「オイオイ……騙すって何をだ……黒井じゃあるまいし私はそんなことしないよ!」

中年男性「ハッハッハ!それもそうか!でもそれアイツが聞いたら怒るぞぉ!!」


バカ笑いしながらこっちに近づいてくる

顔も真っ赤……高そうなスーツも皺くちゃになってるじゃないか

良いご身分だな

一体どんな仕事をしてりゃああんな風になれるのやら……


少女「社長!」


そうか、社長か……やっぱ社長ともなれば……


……?

「……社長?」

今社長って言ったのは……コイツか?

中年男性「はれ?今誰か私を呼んだかな?」

中年男性2「……いや、私が呼ばれたのかもしれん」
 
少女「……こっちです、社長!」

中年男性(社長?)「……?」

社長「……おお!?凛くんじゃないか!どうしてこんな時間にこんな所に!?」

中年男性2「……ああ、お前の所の候補生の子か!」

……候補生?

ということはこの社長と呼ばれた方のオッサンは芸能事務所かなんかの『社長』か

社長「ああ!そうだよ高木、この間紹介したあの子だ。私たちのプロダクションの期待の新星!だが……何故こんな所に?」

少女「……それは」

中年男性2(高木?)「……う~む、君のような子供がこんな時間に出歩くのは感心しないよ?何か、事情でもあったのかな?」

少女「……高木さんも、お久しぶりです……私、最近レッスンで思うところがあって、それで走り込みでもって……」


「……」

状況はわからんが、社長とやら達はボロ酔いというわけでもないようだ
意外と冷静に頭が回るようだし、保護者が来たなら俺はお役ゴメンだな

後を任せられるようなら帰るか

社長「そうだったのか……だがね、さっきも言ったが君のような子供が出歩いていていい時間じゃない」

高木「うむ、そうだよ。言ったのは私だがね。タクシーを呼ぼう。それで家まで送るよ」ピッポッパッ

少女「……ハイ」

少女「……あっ」クルッ

思い出したようにこっちを振り向く

別に忘れてても良かったんだがな



「……知り合いか?」

少女「……うん。信頼できる人だよ」

社長「……?彼は……誰だね?」

高木「……知り合いかい?」

少女「……えっと……」

「……」

説明に困ってるんだろう。だが急に黙ったりするから二人が警戒するような目でこっちを見始めたぞ

マズイな……通報は勘弁してもらいたいが……

少女「……足ケガして……不良に絡まれてた所を助けてもらったんだ」

高木「!オイオイ……」

社長「……それはホントかね?」

少女「……うん」

社長「……そうか。後でキミには色々と言わなくてはならないことができたが、それは後にしよう」

社長「……」クルッ

「……?」

社長と呼ばれている方の人がこっちへ向き直りじっと俺を見ている
……なんだか、まるで何かを見定めようとしてるようで居心地が悪くなる視線だった

社長「……いや、失礼。重ね重ね本当に申し訳ない。私は、彼女の知り合いでね。危ない所だったのを助けてくれたようで、本当にどうもありがとう」ペコッ

「……!」

「頭を上げてください。たまたま(?)通りかかって、少し助けただけです。本当に気にしないで下さい」

社長「……いや、とにかく本当にありがとう。そうだ、これ、名刺を君に。彼女は我々にとって大切な仲間でね……いくら感謝してもしきれないよ。どう言葉を尽くせば良いのか……」

……『仲間』か……失礼だが、なんとなく芸能事務所のイメージには少し合わない言葉な気がした

「……いえ。……もう安心なようなので、俺はこれで失礼します」ペコッ

少女「……!」

社長「ああ、待ってくれ!すまない、今度是非お礼がしたい!連絡先か何か教えてもらえはしないかい?」

「……じゃあ、家の電話番号で良ければ。すいません、生憎フリーターなので名刺のようなものは……」

社長「……! ほう!そうかい!」

「はい。……何か書くものでもあれば……」

高木「ああ、なら私の携帯にメモしておこう」

「お願いします。番号は……」

芸能事務所のお礼か……想像もできんな
タレントのサイン色紙とかか?

まぁ、どんなタレントがいるかは知らんが……

高木「お、タクシーが来たぞ。よし、まずアレで彼女を家まで送ろう」

社長「うむ。そうだな。……また連絡するよ、ありがとう」

「……いえ」

少女「……ねぇ」

「……?」

少女「……私からも、本当にありがとう」

「……」

「……もう下手に夜出歩くなよ」

少女「……うん」

「……あと、お前はもっと愛想良くしろ」

少女「!」ムッ

少女「そういうの、アンタにだけ言われたくないよ」

「俺もお前には言われたくないな」

少女「……」

少女「……ねぇ、そのお前ってのやめて」

「……お前がそのアンタってのを」


少女「渋谷凛」




「……?」

少女「……私の名前」

凛「渋谷 凛」



凛「それが、私の名前だよ。……芸名じゃないよ?」

「……」

「……そうか。いつかTVに出たら応援してやる。覚えとくよ」

凛「……うん。わかった」


高木「……ハイ、行き先はそこで。オーイ!凛君!乗りたまえ!帰ろうか!」

凛「ハイ、今行きます!」


「……」

社長「……」

「……」

アイドルの候補生か……もう会うことはないだろうな……



社長「……」

社長「……ああ、申し訳ない!すっかり忘れていたよ!名前を聞いても良かったかな?いやぁ~一番大切な事だったのに私ときたらもう……」

……しまった

そういえばまだ名乗ってなかったな

Co「ああ……すいません、確かにそうでしたね」

「……」

アイドルの候補生か……もう会うことはないだろうな……



社長「……」

社長「……ああ、申し訳ない!すっかり忘れていたよ!名前を聞いても良かったかな?いやぁ~一番大切な事だったのに私ときたらもう……」

……しまった

そういえばまだ名乗ってなかったな

「ああ……すいません、確かにそうでしたね」

「俺の名前は……」



「※※※※※です。Coでいいです」

すいません、>>150もミスです
忘れてください

社長「Co君か……ありがとう。ところで、失礼を承知で君に少し質問をしてもいいかな?」

Co「……?ハイ」

社長「……君はさっき……職業をフリーターだと言っていたね?つまり……定職についていないのは、何か理由があるのかな?……気分を害したら申し訳ない」

Co「……いえ」

Co「……俺の場合は、どこにでもあるくだらない理由ですよ。たまたまやりたいことも何も無かったんです。心の中にゴールも道標もないというか……」

社長「……」

Co「……だから、適当に色々とバイトやらなんやら、そういうのを転々としている方が楽だったんですよ」

社長「……ふむ……なるほど……」

Co「……流石に、もう止めようと思ってますけどね。こんな生活は。ただ、その為にまず何をすればいいのか」

社長「つまり、現状に強い思い入れや拘りは無いという訳かい?」

Co「……?」

Co「……ええ。ないですね。……すいません、余計な事まで喋りすぎました」

社長「いや、私が聞いた事だからね。喋らせてるのは私だよ」

社長「……君は今日、関わりの薄い凛君を助けてくれたね。……様子からして特に下心もなかったように見えたが……何故か聞いても良いかい?」

Co「……見かねただけだと思います。後は、まぁ個人的に色々と事の前にあったもので」

社長「……そうか。君は年齢の割に落ち着いているね」

……まるで探られているようだ。そしてこれは俺が老けているということだろうか

社長「ああ、すまない……そういう訳じゃないんだ」

……しまった、露骨に顔に出てたか

社長「……もしも……もしもの話だが、さっきの凛君のように、誰かが君の目の前で困難に陥っていたら……君は今日のように手を差し伸べてくれるかい?」

Co「……?」

……どういう質問だ?というか、そもそもアイドル事務所の社長なんかが俺に何を聞きたいんだろうか?

Co「……どういう質問なのかが正直よくわかりませんが……相手による、としか言えません。ただ、顔見知りや子供相手なら、少なくとも素通りすることは絶対に無いと思います」

社長「……ほぅ」

Co「……俺は貴方から見れば若造ですが、自分が子供の甘えが通じる年齢じゃないのはわかってます。……生意気かもしれませんが、大人としてできることをすると思います」

……なんだろう……俺は今すごく調子に乗ったことを言った気がする

社長「そうか!つまり助けてくれるのか!いやぁ君がそういう人で良かった!!」

Co「……?」

社長「……おっとイカン、まだ肝心な事を聞いてなかった!……うむ、一人相撲になってはいけないからね!」

社長「……すまないが少しだけ耳を貸してくれないかね?」

Co「……?」

社長「……君に、助けて欲しいことがあるんだ。実はね、話してる内にティン!ときた!」

ティン!ってなんだ?助け?

社長「もし、君さえ良ければなんだが……」

Co「……?」

ゴニョゴニョ……

Co「……」

Co「……」








Co「……は?」

Co「……俺をアイドル事務所の……プロデューサーに?」


CoP編終わり

今回の投下ここまでです。色々とあって更新滞ってました。すいませんでした
あと、前回も今回までのも、読んでくださった方もレスくださった方も本当に感謝です。ごめんなさい
途中ですがここで一度ageておきます

本田未央「『私、本田未央!アイドル目指して日々頑張ってる元気が取り柄の高校一年生!でも、最近自分に自信が持てなくて、少し落ち込み気味……こんなの未央ちゃんらしくない!
これじゃ、折角の可愛い未央ちゃんの魅力も半減の半減だよっ……!あ~ん!どうしたらいいの~!?』」








友人A「……」

友人B「……」

未央「……」


※ファーストフード店・店内


友人A「……」

友人B「……」

未央「……」




友人A「何か言うことある?」

未央「ちょっと後悔してる」

友人B「座ろっか」

未央「うん」

友人A「どうしたの急に」

友人B「そういえば最近ため息よく吐いてるよね。珍しい。ポテトいる?」

未央「……うん、1本ちょうだい」

友人B「うん。じゃあナゲット1個貰うね」

未央「……? あれ?」

友人A「……なんかあったの?」

未央「実は……ちょっとね」

友人A「そっか……まぁ生きてれば色々あるよ」

友人B「うん、あると思うよ。とりあえず食べよっか」

友人A「そうだね。で、食べたらゲーセン行かない?」

友人B「いいね。行こっか。そういや体育の時間にまたコングマンがさー」

未央「……」



未央「……え?聞いてくれないの?」

友人A「え?」

友人B「え?」

未央「え?」

友人A「……冗談だよ、聞くよ」

未央「……二人には話してるよね?私が今養成所に通って、アイドル目指してること」

友人A「うん」

友人B「聞いてる聞いてる」

未央「……そこでね、同期?っていうのかな?一緒にデビュー目指してるすっごく仲良い子が二人いるんだけど……」

友人A「あ、それも前聞いたね」

友人B「カッコ良いクールな子と可愛いキュートな子だっけ」

友人A「誰とでも友達になるよね未央は」

友人B「素直にすごいと思うよ」

未央「えへへ……いや~それほどでも……じゃなくて、そう!でね、それで、最近一緒に組んだり組まされたりして、色んなレッスン受ける機会が特に多くて色んなところ改めてね、見るようになったんだけど……ふとね……気付いちゃったんだ」

友人A「……何に?」

友人B「『私がやっぱりとっても可愛いってことに……』とか言い出したらチョキで殴るけど」

未央「チョキで!?いや、違う違う、違うよ!?真面目な奴だよ!」

未央「……ゴホン、あのね、ふと気付いちゃったの……」

友人A&B「……」

未央「……二人と改めて比べたり、見て思ったの……」

未央「私の魅力って……私がアイドルにもし成れたときの一番の強みって……何処なのかな?……って」



友人A「……」

友人B「……」



友人A「あ、真面目な悩みなんだ」

友人B「真剣なアレだったんだね」

未央「いや真面目だよ!?すっごく真面目だよ!!」

友人A「……ごめん。正直未央がこんな風に真剣に弱味見せてくるとは思ってなかったから」

友人B「寧ろ、クラスの子とかの悩み聞いたり励ましたりしてるタイプだもんね」

友人A「珍しくって面食らったというか、ね」

未央「……ごめん」

友人A「いや、なんで未央が謝るのよ」

友人B「そうだよ。ウチらで良かったら聞くぐらいしたげるよ。寧ろ聞くぐらいしかしないし出来ないけど」

未央「……グスッ……ありがとう……二人とも……!」

友人A「……ううん、全然良いよ」

友人B「……ね。気にする必要ないよ。だってアタシ達……」

友人A「……」コクッ

未央「……」コクッ



未央「友達だもんね!」 友人A&B「「……」」



未央「いや言ってくれないの!!?」

友人A「相変わらずリアクションが良いよね未央は」

友人B「ね。可愛い」

未央「え?そう?えっへっへ~☆」テレテレ

友人A&B「ちょろい」

未央「口に出しちゃうんだ!?」

友人A「っていうか、アイドルになれるかじゃなくてなったあとの強みを気にしてるって結構大物だよね」

友人B「そういやそうだね。何気にすごい自信かも。デビュー出来る自信はあるんだね」

未央「え?いや、そういうわけでもないんだけど……」

未央「……いや、でも、なんとなくね!その二人と……一緒に頑張ってる二人といると、絶対デビューは出来る!なんとかなる!って……不思議とそんな気持ちになるの」

未央「ごめん!ちょっと解りづらいっていうか、伝えづらいけど、そこはあんまり気にならないんだよね。傲慢とか自惚れとかじゃなくて、この二人とならなんとかなる!みたいな……アレ?さっきも言った?コレ?なんにも変わってない?」

友人B「いや、大丈夫だよ。言いたいことはわかるから……でもなんかいいなーそういうの」

友人A「なんていうか、多分ほら、励まし合ったり高めあったり……って感じなのかなって印象受けたよ。だからそこがデビューに関する自信に繋がってるのかな?みたいなさ。……アイドルの養成所っててっきり漫画やドラマみたいにドロドロしてるって私は思ってたけど」

未央「んー……他はどうか知らないけど、ウチの所はそんな感じじゃなかったなぁ……」

友人A「ふーん……そっか……でも、きっとそれってすごい幸せなことだと思うよ」

友人B「うんうん」

未央「……うん、そうだね」

未央「そこは、私ってすっごく幸せなんだと思う」

友人A「まぁ、でも今の未央はその恵まれてる良い子な仲間達に自信やエネルギーを貰いつつ、内心でこの子達に勝てないかも……みたいな引け目を感じちゃって、それで自分の長所に悩んでる感じなんだよね?」

友人B「『この子達はすごい!それに比べて私はどうなんだろ……』みたいな感じかな?」

未央「……うん。そうなんだー……仲間相手にこんなことで悩むのなんて……馬鹿な悩みかもしんないけど……」

友人A「馬鹿じゃないよ!」ダンッ

未央「!」

友人B「そうだよ!未央は馬鹿かもしんないけど、その悩み自体は馬鹿じゃないよ!」ダンッ

未央「え?」

友人A「オイ」

友人B「ごめんなさい」

友人A「よし、許す」

未央「あ……私が許すんじゃないんだ」

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