やよい「伊織ちゃんの泥棒猫っ!!」(160)

やよい「おはようございまーす!あ、伊織ちゃんだ!」

伊織「おはよう、やよい。あれ?今日はお料理さしすせその収録の日じゃなかったっけ?」

やよい「うん。でも収録はお昼からだから、その前に事務所の掃除やっておこうかなーって思って」

伊織「相変わらず働き者ねぇ。やよいも大分仕事が増えて来てるんだから、そんなのは社長に任せときなさいよ」

やよい「そんな事ないよー。まだテレビのレギュラーは一つだけだし、伊織ちゃんと比べれば全然忙しく無いよ」

伊織「そりゃ私と比べたらちょっと分が悪いけど、さしすせそはかなり数字良いって聞いてるわよ?」

伊織「この調子ならやよいもすぐに売れっ子アイドルの仲間入りね」

やよい「あはは、ありがとう伊織ちゃん」

やよい「さしすせそは私にとって、初めてアイドルとしてしっかりやれてるって思えた」

やよい「すっごーく大事な番組だから、上手くいってるのはホントに嬉しいよ」

伊織「にひひっトーゼンの結果よ。この間はこの伊織ちゃんが出演してあげたんだしね」

伊織「ゆくゆくはゴールデンも…

ガチャッ

P「お、伊織。先に来てたのか」

伊織「遅いわよ!アンタこの伊織ちゃんを呼び出しといて30分も遅れるなんて良い度胸ねぇ…」

P「悪い悪い」

P(時間通りに来たんだけどなぁ)

やよい「プロデューサー、おはようございます!」

P「っ!や、やよいも来てたのか。随分早いな」

やよい「はい、時間まで事務所のお掃除をしようと思って」

P「そうか、やよいはえらいなぁ」

伊織「アンタからも言ってあげなさいよ。やよいは忙しいんだからそんな事しなくて良いって」

P「…………」

伊織「………?」

小鳥「Pさん。頼まれていた書類出来ましたよ」

P「ありがとうございます小鳥さん」

P「じゃあ伊織、ちょっと奥の部屋に来て貰えるか?」

伊織「?どうしてよ。話ならここですれば良いじゃない」

P「ま、まぁ気分作りみたいなもんだよ。大事な事だから、伊織と二人きりで話したくてな」

小鳥「うわーなんだか愛の告白みたいですねw」

やよい「こ、告白ですか!?Pが伊織ちゃんに!?」

伊織「!?な、何馬鹿な事言ってんのよ!///」

P「ははは、じゃ、ちょっと付き合って貰えるか?」

やよい「つ、付き合うって…///」

伊織「変な悪ノリしてんじゃないわよ!もう、しょーもない話だったら許さないわよ!」ぷんぷん

P「…あぁ、そこは安心してくれて構わないよ」

バタンッ

やよい「どんなお話なんでしょうね。ま、まさか本当に…///」

小鳥(…頑張って下さい、Pさん)

・奥の部屋

伊織「で、な、なんなのよ。私も暇じゃないんだから、さっさと言いなさいよね」

P「……………」

伊織(この部屋に来てからずっとこんな調子…らしくもなくキリッとした顔してるし)

伊織(も、もしかして、ホントに…?)ドキドキ

P「………伊織」

伊織「ひゃ、ひゃい!」

P「伊織に大事な話が二つあるんだ。一つ目は…」

伊織「…………」ドキドキ


P「やよいの番組の、打ち切りが決まった」


伊織「―――――え?」

伊織「ど、どういう事?や、やよい?何が?え?」

P「落ち着け、伊織」

伊織「これが落ち着いていられもがっ!」

P「だから落ち着けっての」イオリノクチヲオサエル

伊織「むーーーっ!///むーーーーっ!!///」

P「…やよいに聞こえる」ボソッ

伊織「!」

P「手、離すぞ」スッ

伊織「ぷはぁっ!もう、いきなり口を抑えないでよ」

P「すまんすまん」

伊織「それで……本当なの?」

P「…あぁ。どうにかならないかと粘ったんだが…もう決まった事だの一点張りだ」

伊織「どうしてよ。数字は良いってアンタ言ってたじゃない!」

P「あれは…嘘だったんだよ」

伊織「嘘?」

P「今迄見せていたのは俺が作った偽物の視聴率票。そして、これが本物だ」ピラッ

伊織「なっ!?これ……」

伊織(最初の数回こそ良かったけど、後はずっと右肩下がり!?)

伊織(この時間帯とはいえ、これじゃあ……)

P「…正直、二カ月前からいつ打ち切られても仕方がない数字だった」

伊織「なんであんな嘘ついてたのよ!アンタの見せてた紙じゃ、ずっと10%越えてたじゃない!」

P「…この事をやよいに伝えても、委縮してしまって、良い結果にはならないと思ったんだよ」

P「それに、さしすせそはやよいの魅力が全面に出た良い番組だ」

P「一時期悪い時があっても、放っておけばすぐに回復すると思っていた」

伊織「そんなの嘘!やよいの傷つく顔が見たくなかっただけでしょ!逃げてただけじゃない!」

P「伊織、声」

伊織「あっ………」

P「…たしかに、伊織の言う通りなのかもしれない。ゴメンな」

伊織「…いいわよ、私も言い過ぎたわ」

伊織「ていうか、それを私に謝ってどうするのよ。早くやよいの所に行って土下座してきなさい」

P「いや、話はもう一つあるんだ」

伊織「何よ。またヤな事聞かせるんじゃないでしょうね?」

P「いや、良いニュースだよ。伊織に新番組のレギュラーが決まった。しかも冠番組だ」

伊織「えっ!?」

それを聞いた瞬間、私は愚かにも喜んでしまった。
念願だった冠番組!これで私もトップアイドルの仲間入りね!
そんな浮かれた事を。やよいの事も忘れて。

伊織「ホ、ホント!?やったわ!これで私のアイドルランクも―――!」

言いかけて、気付く。その残酷な可能性に。
改編期でも無いこの時期に、やよいの番組が終わり、新たに私の番組が始まる。
その事が意味するのは…

伊織「ね、ねぇ…。ま、まさかとは思うけどそれって…」

P「…今日は『伊織』に大事な話が二つあったんだ。良い話と、悪い話が」

P「良い話は伊織に新番組の仕事が決まった事」

いやだ。聞きたく無い。
私がそう思ってるのに、プロデューサーは口を開くのを止めてくれない。
…とても辛そうな顔で、話を続ける。

P「そして悪い話は…それがやよいの後番組な事、だ」

伊織「な、何を言ってんのよ…そんなの、どっちも悪い話じゃないの……」

P「…これで伊織の知名度と人気はまた上がるだろうし、アイドルとしてもっと上にいける」

P「悪い話って事は無いだろう」

伊織「ふざけた事ぬかしてんじゃないわよ!こんなの、まるで私がやよいの仕事を奪ったみたいじゃない!」

P「みたい、じゃない。奪ったんだよ」

伊織「は………?」

P「新番組の名前は『水瀬伊織のお料理さしすせそ』」

伊織「!?」

pcおっもいので再起動してきます。

P「厳密には新番組って事でも無いんだ。リニューアル、司会?がやよいから伊織に変わるだけのな」

伊織「そ、そんな……な、何でそんな事になってんのよ!料理番組じゃ数字が取れ無かったから打ち切りになったんでしょ!?」

P「さっきの視聴率票、もう一度見てみてくれ。一度だけ数字が初回並に良かった回があるだろ?」

伊織「え、えぇ…」

P「この回は、伊織がゲスト出演した回だ。評判も良く、番組の公式サイトの掲示板にもいつもの10倍以上の書き込みがあった」

伊織「い、良い事じゃない…」

P「あぁ…だが、その書き込みの大半は『伊織がやよいの代わりにやった方が面白い』という内容のものだった」

伊織「な………」

P「あの掲示板には検閲があるから、それ等の書き込みは反映されてないけどな」

伊織「そ、そんなの何のアテにもならないわよ!同じ奴が何回も書き込んだのかもしれないし」

伊織「それにたった一度数字が良かった位で、番組が決まるなんておかしいわ!」

伊織「二人でやるのが目新しかっただけで、私以外の子が出たって同じ結果だったかもしれないじゃない」

P「いや、伊織の後に春香が出た事あったろ?でもその時は数字は上がらず、むしろより悪かった」

伊織「そ、そんなの、春香が人気無いだけよ!」

P「…………ごほっごほ」ウツムキ

P「いいや、あれは紛れも無く伊織の力だよ。竜宮ファンが見た事もあるだろうが、実際あの回は面白かったしな」

伊織「…嬉しく無いわよ。そんな事言われたって…」

P「そして、その回を見ていた局のお偉いさんが、伊織を推してくれたらしいんだ」

P「会議でさしすせその存続が議題になった時に、司会を変えてみてはと提案したそうだ」

伊織「――っ!?そ、そんな……それじゃあ!」

P「そうだ、それが無ければもしかしたら番組はそのまま続いていたかもしれない」

P「だから、やよいの番組を奪ったのは比喩でもなんでも無く…伊織、お前なんだよ」

伊織「う、嘘よ…………」

P「勿論、伊織が気に病む必要は無いぞ。この世界は弱肉強食。他人のミスは自分のチャンスだ」

P「それは事務所が同じでも関係無い。やよいの仕事を喰って、伊織が上に行く」

P「…正々堂々やった結果だ。それを責める権利は誰にも無い…ただ、勝者の責任だけは胸に留めて置いてくれ」

伊織「い……嫌。嫌よ…私、絶対そんな仕事受けないから!」

P「そんな事出来る訳無いだろ。○○テレビさんはウチが弱小の頃から仕事を回してくれてたんだ」

P「この世界、仁義を欠いた事をすればすぐに潰されてしまう」

P「ウチみたいな小さな事務所なら尚更だ。そんな事、言わなくても伊織なら分かってるだろ?」

伊織「だったら水瀬の力で番組を続けさせるわ!お金を積めば○○テレビだって…」

P「伊織………」

伊織「………分かってるわよ。そんな事したって、どうにもならないって」

伊織「でも、じゃあどうすればいいって言うのよ…こんな事、やよいが知ったら…」

伊織「せ、せめて私とやよいの二人で、とか出来ないの?」

P「…無理だ。向こうは司会を入れ替えてのリフレッシュを望んでいる」

P「やよいがたまにゲストとして出る、という形なら出来るかもしれないが…」

やよい「そ、そんなの駄目!余計にやよいが傷ついちゃうわ」

P「そうだな。だから、ヘタな希望は与えずに、ひと思いに事実を言ってしまった方が良いと思う」

P「それで、伊織にお願いがあるんだが…この事、伊織からやよいに伝えてくれないか?」

伊織「はぁっ!?な、何で私がそんな事…」

P「…デリケートな問題だからな」

P「他人から聞かされるより、いっそ本人から聞いた方があとあと遺恨を残さないんじゃないかと思うんだ」

伊織「そ、それはそうかもしれないけど…でも、そんなの……」

P「気が重いのは分かる。だけど、いつかは誰かがやらなくちゃいけない事なんだ」

P「やよいの心を傷つけずに伝えられるのは、やよいの一番の親友の伊織しか居ないと、俺は思う」じっ

伊織(………私が言わないと、Pから言う事になるのよね)

伊織(P…よく見ると目に隈があって、肌が荒れてる)

伊織(ただでさえ9人の面倒を見てて忙しいのに、こんな心労まで抱えてたら尚更よね)

伊織(それでもいつもなら泣き言一つ言わないPが、今回は私に頼って来た。それを私は……)

P「…悪い、無茶な事言ってるよな。伊織だって辛いのに、馬鹿な事言っちまってた」

P「やよいには俺から伝えるよ。伊織、この事は忘れてくr

伊織「…いいわよ」

P「え?」

伊織「引きうけるって言ったの!やよいには…私から伝えるわ」

P「そうか……ありがとう、伊織」ナデナデ

伊織「フン…この貸しは高くつくんだからね。覚悟しときなさいよ」

P「…いかほどで?」

伊織「今日、やよいが事務所に帰って来たら伝えるから…その後、私と一緒に居なさい」

P「あぁ、分かった。ちゃんと予定開けておくよ」

伊織「……フン」

・別の部屋

春香「いや~wなかなか良い映像が録れたね、美希」

美希「うん。デコちゃんの葛藤が見えて、すっごく面白かったの。仕掛け人も面白かったけど、こっちも楽しいね」

美希「最後のでデコちゃんも油断ならないって事も分かったし…」

やよい「も~春香さんも美希さんも酷いですよ。伊織ちゃんがあんなに困ってるのに」

ガチャッ

P「うぃ~っすwww」

春香「来ましたねド外道がw」

美希「なかなかの演技力だったの。ハニー」

P「はははそう褒めるな褒めるなw」

春香「これから私達もお芝居の仕事も増えて来るだろうから、レッスンの一環だって事で納得しましたけど」

春香「ドッキリの内容は完全にプロデューサーさんの趣味ですよねw」

P「芝居だけじゃなくて、バラエティでのドッキリを受ける事も今後考えられるからな」

P「最初にドぎついのを受けて慣れておくのも悪く無いだろう」フフン

美希「でもホントよく思いつくよね。こんな設定。流石ハニーなの」

P「伊織は鋭いからな。リアル感のある話にしないと勘付かれると思って頑張ったよ」

やよい「リアル感…うぅっそう言われるとちょっとショックです」

P「っと。ゴメンな、やよい。でもまぁ実際のさしすせそは絶好調なんだから良いじゃないか」

春香「今度15分拡大されるんだっけ?凄いな~やよい」

やよい「はいっ!ファンの皆さんのおかげです」ぺかー

P「実は結構ヒヤヒヤしてたんだけどな。まぁでもやよいの事だから伊織も冷静な判断が出来なかったみたいでほっとしたよ」

春香「結構設定荒いトコも多いですもんね」

春香「水瀬伊織のさしすせそって、テレビ局がそんなあてつけみたいな事する訳無いでしょw」

美希「良い話と悪い話があるの言い回しは、カッコ良かったって思うな」

やよい「伊織ちゃんが私の仕事を奪ったって言い方は、ちょっと酷いと思います…」

春香「最後もワケ分かんない事言ってましたよねw何で仕事奪った当人が伝えたら上手くいくんですかwそれはPさんの仕事でしょうww」

P「そんな総ツッコミすんなよw俺だって一生懸命やってたんだから」

やよい「最後って言えば、プロデューサー最後やっぱり俺から言うって言ってましたよね?どうしてですか?」

P「イケると思ったとこで一歩引くのは詐欺の常套手段だ」キリッ

春香「wwwホント外道ですねww」

P「いや~実は昨日の晩にしっかり台本作ろうと思ってたんだけど、ついつい徹夜でゲームしちまってな。ポテチ食いながら」

P「結局半分位は考えながら喋ってたなぁw」

美希「あぁ、だからハニー今日眠そうなんだ。ニキビも出来てるし」

やよい「もう、プロデューサーも大人なんですから、そんな荒れた生活送っちゃ駄目ですよ」めっ

P「たはは…本来は今日俺オフなんだから良いじゃんw」

春香「貴重なオフをこんな事に費やすプロデューサーさんが大好きですw」

春香「この視聴率表も良く出来てますよね。小鳥さんが作ったんでしたっけ?」

P「あぁ、朝に仕事の書類風な感じで渡してもらった。伊織の目の前で」

春香「変なトコでリスク犯さないで下さいよww」

やよい「あ、小鳥さんも仕掛け人だったんですね」

美希「リスクといえば、春香の出た回の話の時ハニーちょっと危なかったよね?」

P「あぁアレなwww正直かなりヤバかったわww」

春香「酷いですよっ!あそこで小ボケ入れる必要は別に無かったですよね!」ぷんぷん

やよい「あ、でも実際に春香さんに出て頂いた回は、ちょっと数字低かったです」

春香「えぇっ!?」

美希「春香www」

P「っと、話し過ぎたな。そろそろ事務所に戻らないと怪しまれるぞ、やよい」

やよい「あ、そうですね。それじゃあ失礼します」

春香「頑張ってねやよい~」

美希「デコちゃんの涙目楽しみにしてるの」

やよい「はいっ精一杯演じてみせます」

バタンッ

P「最初は断られるか心配だったけど、意外とやよいも乗り気で助かったな」

春香「まぁこないだ私達に騙されたばかりですからねw」

春香「私も騙してみたいって気持ちがあるんでしょう」

美希「純粋なやよいといえど、ドッキリを仕掛ける快感には抗えないものなのw」

P「まぁお前達程ノリ気じゃ無いだろうけどなwドン引きだったぞ俺。やよいはマジ泣きだし」

美希「あれはミキはもうちょっと抑えようと思ったのに、春香が暴走するから…」

春香「私は女優系アイドル目指してますからね」キリッ

P「春香はバラエティで一生食っていけるよ」

ガチャッ

小鳥「あら、伊織ちゃん。Pさんの愛の告白は終わったのw?」

伊織「だからそんなんじゃないってのに」

伊織「そんな事だったら、どれだけ良かったか…」ボソッ

小鳥「え?何か言った?」

伊織「何でも無いわ。やよいはどうしたの?小鳥」

小鳥「やよいちゃんなら上の階をお掃除してると思うけど…」

ガチャッ

やよい「あ、伊織ちゃん。お話もう終わったの?」

伊織「っ!え、えぇ」

やよい「それってもしかして、そのお話って私が聞いちゃ駄目な話かな?」

伊織「え!?そ、そそそそんな事無いわよ?」

やよい「あはは冗談だよ。プロデューサーの伊織ちゃんだけの秘密の話なんでしょ?」

伊織「え、あ、ま、まぁそうね…」

やよい「それじゃあ私が聞く訳にはいかないね。伊織ちゃん、何か相談したい事があったら私に言ってね」

やよい「私じゃあ良い答えを返せないかもしれないけど、話を聞く事位は出来るから」ぺかー

伊織「う、うん………」

やよい「じゃあ私収録があるから、○○テレビ行ってくるね。夕方には事務所に帰って来るから」

伊織「そ、そうなんだ。行ってらっしゃい、やよい」

やよい「うん!行ってきまーす!」

バタンッ

小鳥「ウフフいつにもまして元気いっぱいね、やよいちゃん」

小鳥「きっと大好きな番組の収録に行くのが、楽しくて仕方がないんでしょうね」

伊織「…………………」

ねっむいので寝ます。
残してくれたら嬉しいです。

伊織(…誰かに言えれば、もう少し楽なのかもしれないけど)

伊織(Pが部屋を出る時に言ってた事)

P『あ、言うまでも無いと思うけど、この事は絶対他言無用だからな』

P『伊織がやよいに伝えるまで、俺と伊織の二人だけの秘密だ』

P『もしこの事が他の人間からやよいに漏れたりしたら、やよいは教えて貰えなかった事にショックを受けるだろうからな…』

伊織(確かにその通り…これは私が解決しなきゃいけない問題なんだから、私が頑張らないと!)

※この事は春香達も当然聞いてます。この発言の時の春香のツッコミ。
 春香「だからwwその理屈なら伊織から知らされるのも駄目でしょww」

ガチャッ

春香「おはようございます」

美希「おはようなの。あふぅ」

小鳥「あら、春香ちゃんと美希ちゃんが一緒に来るなんて珍しいわね」

春香「そこのコンビニの前で偶然会ったんですよ」

美希「あ、デコちゃんだ。おはようなのっ」

伊織「…おはよう、春香に美希」

美希「?何かデコちゃんテンション低く無い?」

春香「え?何かあったの?伊織」

伊織「…別になんでも無いわよ。ちょっと考え事してただけで」

春香「そう?何か困った事があるなら、何でも相談してね?」

美希「うんうん。困った時はお互い様なのっ」ダキッ

伊織「ひっつくなっての!なんでも無いって言ってるでしょーが!」

伊織(…ありがとう、春香、美希)

そして夕方

伊織(…もうすぐやよいが帰って来る。だ、大丈夫よ、大丈夫…やよいならきっと分かってくれるわ)

亜美「じゃあ伊織ん、亜美達は帰るね→」

あずさ「また明日ね、伊織ちゃん」

律子「伊織、体調管理も仕事の内よ?明日はオフだからしっかり休んどきなさいね」

伊織「だから心配要らないって言ってるでしょ。私を誰だと思ってるのよ」

亜美「あははそーだよね。それじゃあね~」

バタンッ

亜美「ホントに伊織ん大丈夫かなぁ?」

あずさ「レッスン中もいつも通り一生懸命だったけど、何か無理してる様子だったわね。心配だわ~」

律子「いつもなら何かあっても悟らせない様にする伊織の事だけに心配ですよね。何とか元気づけてあげないと…」

美希「あ、竜宮小町なの」

亜美「ミキミキ。珍しいね~こんな時間に事務所に来るなんて」

美希「ちょっと楽しみな事があったから、頑張って速く仕事を終わらせたの」

律子「楽しみな事?」

美希「あ。な、何でもないの。そ、そうえばデコちゃんは一緒じゃないの?」

律子「それが、ちょっと用があるから事務所に残るって言ってて」

あずさ「私達にも居て欲しくなさそうだったから、先に帰る事にしたのよ。心配だったけど…」

亜美「ミキミキ、伊織ん今日ずっと暗い顔で考え事してたんだけど、何か知らない?」

美希「見当もつかないの。あのデコちゃんが…」

律子「そう…。ねぇ美希、今から事務所に行くなら伊織を元気付けてあげてくれない?」

律子「そっとしておいた方が良いのかもしれないけど、今は美希の能天気さが功を奏すかもしれないわ」

美希「むー何か微妙に馬鹿にしてない?」

美希「でも分かったの。デコちゃんの事はミキに任せておいて、きっと明日までには元気になってるの」

律子「何よその根拠の無い自信は…でも、美希が言うとホントに大丈夫な気がするわね」

亜美「亜美達のリーダーを頼んだぞミキミキっ!」

あずさ「頑張って…というのもおかしいかもしれないけど、頑張ってね。美希ちゃん」

美希「うん。それじゃあね~」ひらひら

美希「…ま、実際にあとちょっとしたら元気になるんだから嘘は言って無いの」ニヤリ

・社長室

P「小鳥さん、もう少しカメラ右に傾けて貰えますか?そうそうそんな感じ…バレないようにさりげなく…」

美希「ハニー!ただいまなのっ」

P「お、美希。早かったなもしかしたら間に合わないかと心配してたんだが」

美希「今日はずっとこの時を励みにしてお仕事頑張ったの。褒めて褒めて~」

P「おぅ偉い偉い。いや良かったよ。ドッキリはワクワク感を分かち合う人が居ないと楽しさ半減だからな」

美希「そうえば何で社長室なの?」

P「社長今日居ないからな。これの事さっき電話で話してたら、その動画を見せてくれるなら私の部屋を使っても良いぞって言われて」

美希「社長もなかなかの畜生なの」

美希「やよいは今どうしてるの?」

P「カメラとかの最終調整をしたかったから、コンビニで待って貰ってる」

P「今終わったから、今から迎えに行くよ」

美希「いよいよって事だね。うわ~すっごくドキドキするのw」

P「俺もだwじゃあ俺が戻るまでの録画よろしくな」

美希「デコちゃんの事はミキに任せて、なのw」

P「?あぁ、頼んだぞ」

数分後

春香「天海春香ただいま戻りましたっ!まだ始まってませんよね!?」ぜぇぜぇ

美希「ギリギリセーフなの、春香。多分もうすぐハニーがやよいを連れて帰って来る所なの」

春香「良かった~全力でダッシュした甲斐があったよ」

美希「ミキも他人の事言えないけど、春香よくあのスケジュールで間に合ったよね」

春香「そこは気合いだよ気合い。芸人さんが引く位の勢いで場を回したからね」フフン

美希「春香のせいで、765プロのバラエティにおけるハードルがガン上がりしてるのはどうにかしてほしいの…」

春香「あはは何かゴメンねwあ!美希、ドアが開いたよ!」

美希「ポチっとな、なの」

春香「楽しみだねっ楽しみだねっ」わくわく

ガチャッ

P「ただいま戻りました」

やよい「ただいまですっ」

伊織「!」ビクッ

伊織「お、おかえりなさい、やよい」

P「おいおい、俺は?」

伊織「う、うるっさいわねぇ。視界に入って無かっただけよ」


美希「デコちゃん、微妙に声裏返ってるねw」

春香「何度も頭の中でシミュレーションしたんだろうけど、いざ目の前にするとねw」

小鳥「お疲れ様です。どうでした?収録は」

P「いつも通りですよ。な、やよい」

やよい「はいっ一生懸命頑張りました!」

伊織「…………」

やよい「スタッフさんも、今日は特に良かったよって言ってくれて」

やよい「とっても嬉しかったです!」

伊織「……………」


美希「うわぁデコちゃんの気持ちが手に取る様に分かるのw」

春香「絶対、『最後だから優しくして貰ってるのね…そんな同情余計に辛いだけよ!』とか思ってるよねw」

春香「やよいは頑張って演技してるだけで、悪気は無いんだろうけどそれが逆に切れ味を増してるよw」

P「それじゃあ俺は春香の所に行って来ますね、それが終わったら今日は直帰します」

小鳥「分かりました。お疲れ様です、プロデューサーさん」

P「二人もあまり遅くならない内に帰るんだぞ」

やよい「はい、お疲れ様ですプロデューサー」

伊織「お疲れ様」

P「……………」じっ こくっ

伊織「!…………」こくり


春香「何あのアイコンタクトww」

美希「ハニーよくあの真剣なデコちゃんの表情見て吹き出さないねw」

・社長室

ガチャッ

P「だっはっはっはwww」

春香「やっぱり我慢してたんですねww」

美希「お疲れ様なの、ハニー」

P「いや正直マジで危なかったw伊織のあの覚悟を決めた表情見てるとww」

春香「伊織は真剣なんですから、笑っちゃマズいですよw」

やよい「ただいま、伊織ちゃん」

伊織「う、うん。おかえりなさいやよい」

やよい「伊織ちゃんは今日ずっとレッスンだったよね。上手くいった?」

伊織「と、当然よ。今度の新曲はちょっと複雑なダンスだけど、私にかかれば楽勝ね」

やよい「へー流石伊織ちゃんだね。凄いよっ」

伊織「私の事よりやよいの方はどうだったのよ?」

やよい「え?さっきPが言ってたけど、いつも通り上手くいったよ?」

伊織「あ、そ、そうだったわね。じゃ、じゃなくて、今日はどんな料理を作ったの?」


P「テンパってるなぁw」

春香「とりあえず会話の中からペースを作りたいんでしょうね」

やよい「えっとね。今日は~~~」

伊織「そ、それでそれで?」

やよい「最初はお塩を使おうと思ってたんだけど~~」

伊織「確かパリで食べた料理に、似た様な物があったわ。あれは~~」

やよい「そうなんだぁ。私も食べてみたいな」


美希「なかなか本題に入ろうとしないの」

春香「必要以上に相槌を打って、会話を長引かせようとしてるよね」

P「言おうとはしてるんだけど、直前でビビって別の話題に逃げてる感じだな」

伊織(うぅっわ、私は何をやってるのよ)

伊織(時間が経つと言い辛くなるから、早めに言おうと思ってたのに…私ってこんなに意気地無しだったの!?)

伊織(そんな訳無い、私はスーパーアイドル伊織ちゃんよ。ドラマの台詞だと思って…)

伊織「ね、ねぇやよい」

やよい「!何?伊織ちゃん」じっ

伊織「…………お、お菓子食べない?」


春香「あー惜しいっ!今言えそうだったのに」

P「いや、あれはやよいも悪いな。あんなあどけない顔でじっと見られたら言い難いだろw」

美希「これは長期戦になりそうなの。あふぅ」

やよい「うわ~これすっごく美味しいよ!外がサクサクなのに中はトロっとしてて」

伊織「ま、まぁまぁの味ね」


春香「伊織、絶対味分かって無いよねw」

P「まぁこれは悪い手じゃないと思うけどな」

P「先に幸せを与えておいて、あとの不幸を少しでも軽減するという狙いだろ」

P「…それが裏目に出ないとは限らないがな」ニヤリ

春香「うわ~悪い顔してますねw」

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