美緒「基地内で賭博が横行しているようだ」エイラ「大変ダナー」 (77)

―格納庫―

「勝負」

エイラ「――フルハウス」

「が……!?」

エイラ「それじゃ、悪いけど貰っていくな」

「くそ……」

「馬鹿野郎。中尉に勝てるわけないって言っただろ」

エイラ「そんなの分からないだろ。魔法は使ってないんだ。お前らでも私に勝てるかもしれないって」

シャーリー「ふんふーん」

エイラ「そこのバニー。飲み物くれ。ミルクな」

シャーリー「りょーかーい」

エイラ「次、誰が私と勝負するんだ? 私に勝てば三年分の給料が手に入るんだ。かかってこいよー、ほらぁー」

シャーリー「ミルクもってきたぞー」テテテッ

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―別の日 食堂―

サーニャ「……」

ペリーヌ「サーニャさん、珍しいですわね。こんな時間から食堂にいるなんて」

サーニャ「おはようございます。ペリーヌさん。これを見ていて……」

ペリーヌ「これは……。ピアノのカタログ、ですか?」

サーニャ「はい」

ペリーヌ「欲しいのなら中佐に言うしかないと思いますけど」

サーニャ「そういうわけじゃ……」

芳佳「あ、ペリーヌさん。ここにいたんですか」

ペリーヌ「どうかしまして?」

芳佳「坂本さんが呼んでます。緊急招集だって」

ペリーヌ「わかりましたわ」

サーニャ「私も行きます」

―ブリーフィングルーム―

ミーナ「みなさん。最近、この基地で賭博が盛んであることは知っているかしら?」

サーニャ「賭博……?」

芳佳「知ってる、リーネちゃん?」

リーネ「ううん。聞いた事ないよ」

ルッキーニ「シャーリーはぁ?」

シャーリー「んー? しらないなぁ」

バルクホルン「賭博だと? ここの者達は何を考えているんだ。軍規違反だろうに」

エーリカ「バレないようにしないとねー」

バルクホルン「そういう問題ではない」

ペリーヌ「と、賭博……」

美緒「かなり横行しているしてるようでな。一晩で一月分の給与を無くしている者もいるようだ」

バルクホルン「それで賭博を行っている者は分かっているんだろう、少佐」

美緒「それが訊きたくてお前たちを呼んだ。誰でもいい。何か知っていることはないか?」

エーリカ「……」

サーニャ「エイラ、知ってる?」

エイラ「知るわけないだろ。そんなこと」

サーニャ「そうよね」

エイラ「どーせ、バカがやってんだろ。金を捨てて何が楽しんだろうな」

ペリーヌ「……」

美緒「予想はしていたが、やはり知っている者はいないか」

ミーナ「まぁ、知っていたら私たちも色々と訊かなきゃいけなくなるから良かったけど」

バルクホルン「賭博なのだから複数人が行っているのだろう? それなら虱潰しに探せばきっと見つかるはずだ」

美緒「現場を押さえない限りは難しいだろうがな」

バルクホルン「ならば、現場を押さえればいい。私も注意しておく」

美緒「助かる」

バルクホルン「ハルトマン。お前も施設内の見回りに参加しろ」

エーリカ「えー!? なんでー!?」

バルクホルン「何を言っているんだ!!! それでもカールスラント軍人か!!!」

芳佳「私たちも注意しよう」

リーネ「う、うん。でも、見かけても怖くて注意できないかも」

ルッキーニ「そのときは私を呼んで! パンチするから!!」

芳佳「わーい。ルッキーニちゃん、頼もしい!!」

ルッキーニ「にひぃ!!」

ペリーヌ「盛んに行われているなら……。わたくしも調べてみますわ」

エイラ「よし」

サーニャ「エイラも探すの?」

エイラ「サーニャ、一緒に寝よう」

サーニャ「……うんっ」

ミーナ「……はぁ」

美緒「エイラとシャーリーが正直に話すとは思ってなかったさ。まぁ、これでやめてくれるとありがたいが」

ミーナ「そうね。でも、このままでいいの? 一応、話ぐらいは……」

美緒「数人の衛兵から証言は得ているが、エイラとシャーリーが賭博行為に興じているとは信じられんしな。問い詰めてもあいつらが素直に答えるとも思えん」

―夜 格納庫―

「……」

エイラ「どうした? 勝負するのか? しないのか?」

「……」

エイラ「早くしろってー」

シャーリー「……! エイラ、誰か来たみたいだ。この足音は……バルクホルンだ」

エイラ「わかった。今日は終わりな」

「はぁ……たすかったぁ……」

エイラ「私はワンペアだったけどな」

「なぁ……!? か、かってたのか……」

シャーリー「いくぞ、エイラ!」ダダダッ

エイラ「よし」

バルクホルン「――誰かいるのか!?」

バルクホルン「……」

バルクホルン「ここでもないのか。本当に行われているのか……。次は風呂場でも確認するか」

―別の日―

ミーナ「美緒。いいかしら?」

美緒「どうした?」

ミーナ「賭博の件。参加者が多くなっているみたいよ」

美緒「そうか……。ということはまだエイラとシャーリーも……」

ミーナ「ええ。何度か格納庫や武器庫内から人の気配を感知できたけど、現場に行っても誰もいなくて」

美緒「シャーリーは耳がいい。エイラは未来が見える。気配を感知してから行っては遅いし、待ち伏せしては早すぎる」

ミーナ「このままだといつまで経っても……」

美緒「……」

ミーナ「やっぱり、やってみる?」

美緒「しかし、できるか?」

ミーナ「エイラさんは近い未来しか読み取れない。間諜には気がつけないはず」

美緒「警戒されなければいいがな」

ミーナ「とにかく、やってみましょう。間諜役は誰がいいかしら?」

美緒「エイラにはサーニャが適任だが、あからさますぎるしな……うーむ……」

―坂本の部屋―

美緒「悪いな、急に呼びつけて」

芳佳「いえ、それでなんですか?」

ペリーヌ「何でも仰ってください」

エーリカ「ふわぁぁ……賭博のことでしょ?」

美緒「そうだ。お前たち、何か分かったことはあるか?」

芳佳「いえ、何も。夜は早寝なんで」

美緒「ペリーヌは?」

ペリーヌ「生憎と。気をつけてはいるのですが……。証言も曖昧で……」

エーリカ「少佐とミーナはある程度掴んでるんでしょ? だから、裏で行われてることなのに横行してるなんて言ったんだろうし」

芳佳「えぇぇ!? そうなんですか!?」

美緒「ああ。ハルトマンの言うとおりだ。私とミーナは複数の証言を得ている」

ペリーヌ「では、どうして摘発できないのです?」

美緒「そのグループにエイラとシャーリーがいるからだ」

エーリカ「あー、そりゃ無理だよ。私でも捕まえられないね」

芳佳「ほ、本当なんですか!?」

美緒「無論、真相はまだわからん。直接現場を見たことがないからな」

ペリーヌ「エイラさんが……」

エーリカ「で、私たちを呼んだ理由は?」

美緒「……」

エーリカ「私はやらないよー」

美緒「まだ何を言っていないだろう」

エーリカ「じゃ、訓練あるから」

芳佳「ハルトマンさん……」

美緒「……仕方ない。宮藤、ペリーヌ。エイラとシャーリーに巧く近づき、賭博に参加できるかどうか訊いてくれ。そしてできるのなら、暫く賭博に付き合ってほしい」

芳佳「む、むりですよぉ……」

ペリーヌ「少佐。そんなこと、したくありませんわ」

美緒「衛兵や整備班からエイラとシャーリーが金を巻き上げていると報告もあった」

芳佳「な……エ、エイラさんが……」

美緒「頼む。協力してくれ」

―通路―

芳佳「どうしますか、ペリーヌさん?」

ペリーヌ「あそこまで言われては……やるしかありませんわねっ」

芳佳「でも、どうやって近づけばいいんですか!?」

ペリーヌ「うーん……」

芳佳「そうだ!! バルクホルンさんに相談を――」

ペリーヌ「ちょっと!! 何を言っていますの!!!」

芳佳「だ、だって、私たちだけじゃ……!!」

ペリーヌ「いいから落ち着きなさい。全く!」

芳佳「すいません。だって、私……エイラさんとシャーリーさんがそんなことをしているなら……」

ペリーヌ「わたくしだって許せませんわ。一刻も早く二人をとめたいと思っています」

芳佳「ですよね」

ペリーヌ「そんなことにお金を使うなら、ガリア復興に支援してほしいですわ……!!!」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「わたくしだって……楽に稼げるなら……稼ぎたい……のに……!!」

―エイラの部屋―

エイラ「んー……」ペラッ

シャーリー「エイラ、今暇だろ?」

エイラ「どうしたー?」

シャーリー「少佐が宮藤とペリーヌを遣わせたみたいだ。どうする?」

エイラ「そうかぁ……。少佐も本気だな」

シャーリー「もういいんじゃないか?」

エイラ「なにいってんだ。まだ足りない」

シャーリー「まぁ、いいけど」

エイラ「少佐たちを油断させるためにも宮藤たちは参加させてやるか」

シャーリー「おいおい」

エイラ「で、宮藤とペリーヌをこっちに引き込むんだ」

シャーリー「宮藤はともかく、ペリーヌは無理だろ。殺されたって少佐派だろうし」

エイラ「それじゃあ、宮藤だけ」

シャーリー「適当だな……」

―食堂―

シャーリー「ルッキーニ、あーん」

ルッキーニ「あー……」

ペリーヌ「あのぉ、シャーリー大尉……?」

シャーリー「なんだ?」

ペリーヌ「お、お話があるのですが……。できれば、二人きりで……」

ルッキーニ「ペリーヌ、見てわかんないのー? 今は食事中だよー?」

ペリーヌ「一人で食べられるでしょう!?」

シャーリー「はいはい。ルッキーニ、ちょっと行ってくる」

ルッキーニ「えー!?」

ペリーヌ「ありがとうございます」

シャーリー「――で、話って?」

ルッキーニ「なんなの?」

ペリーヌ「ルッキーニさんは、むこうで食事をなさってくださいな……!!」ググッ

ルッキーニ「ふにゃぁぁ……しゃーりゅぃー……」

シャーリー「――賭博?」

ペリーヌ「とある衛兵から話を聞きまして」

シャーリー「あははは。そんなの嘘に決まってるだろ」

ペリーヌ「で、ですが……!!」

シャーリー「私がバニースーツ着て、ウェイトレスみたいなことしてたっていうの? ありえないだろー」

ペリーヌ「あの、わたくしも賭博に参加したいのです!! ガリア復興資金はいくらあっても足りなくて……!!」

シャーリー「なるほどね……」

ペリーヌ「お願いします。少佐にも中佐にも秘密にいたしますから!!」

シャーリー「全員に対して秘密だ」

ペリーヌ「え?」

シャーリー「……」

ペリーヌ「は、はい!! 勿論ですわ!! 全員に秘密にします!!」

シャーリー「なら、今夜私の部屋に来てくれ。案内するからさ」

ペリーヌ「は、はぁい!! ありがとうございます!!」

シャーリー「ふふん……」

―夜 武器庫―

エイラ「で、宮藤。ポーカーは知ってるのか?」

芳佳「わかりません。あ、でも、ババ抜きと神経衰弱なら自信あります!!」

エイラ「……」

シャーリー「おーい。すまん、ちょっと遅れた」

エイラ「遅いぞ。お前目当てで来てる奴だって増えてきて――」

ペリーヌ「……あ、あら、エイラさんまでいらしたの?」

エイラ「なんで……」

シャーリー「新しい助っ人さ。もう一輪の花があってもいいだろ?」

エイラ「シャーリー、ちょっとまて」

シャーリー「味方は多いほうがいい」

エイラ「でもなぁ……」

ペリーヌ「なにか? それよりもあの、ルールのほうを……」

シャーリー「ペリーヌはこっち。衣装、貸してやるから」

ペリーヌ「へ? い、衣装って……?」

エイラ「宮藤はまず役を覚えろ、いいな?」

芳佳「は、はい……」

エイラ「そこのバニー、ミルクー」

シャーリー「りょーかーい」

「ま、まさか、宮藤軍曹とクロステルマン中尉まで参加しているなんて……」

エイラ「あそこのウサギに飲み物でも注文するといい」

ペリーヌ「うぅ……どうして……わたくしが……このような格好に……」

シャーリー「似合ってるぞ、バニー」

ペリーヌ「シャーリー大尉とは違うんですっ!!」

シャーリー「猫のほうがよかったか?」

ペリーヌ「そういう問題ではありませんわっ!!」

エイラ「さ、やるぞ」

「きょ、今日はこれだけもってきました」

エイラ「上々だな。始めるか」

芳佳(こんな大金を毎日……? エイラさん……)

エイラ「――Kのスリーカード」

「がぁぁ……」

エイラ「これで持ち金は0。終わりだ」

「まけた……」

「中尉、魔法使ってないですよね?」

エイラ「耳でてるか? ほら、尻尾もでてないだろ。言いがかりはやめろよ。クリーンな賭博しかしてないって」

ペリーヌ「あの……」

エイラ「なんだ?」

ペリーヌ「それだけのお金はどうしていますの?」

エイラ「すぐに使うと怪しまれるからな。貯めてる」

ペリーヌ「で、エイラさんに一度でも勝てば」

エイラ「私の貯蓄とこれで貯めた金は全部やる。そういうゲームだ。スリルあるだろ?」

芳佳「シャーリーさんはやらないんですか?」

シャーリー「流石に全額搾り取られるのは怖いからなぁ」

ペリーヌ「なるほど……。これだけのお金が……」

エイラ「やるか?」

ペリーヌ「わ、わたくしは……」

芳佳「やります!!」

ペリーヌ「み、宮藤さん!?」

芳佳「(これでエイラさんのお金がなくなれば、エイラさんはもう賭博ができなくなるじゃないですか)」

ペリーヌ「(そうかもしれませんけど。貴女、勝てる見込みはあるんですの?)」

芳佳「(ロイヤルストレートフラッシュが出れば勝てます!! ここに書いてました!!)」

ペリーヌ「バッ……いえ、もう勝手におやりなさい」

芳佳「エイラさん、やりましょう。私もお金欲しいですから!!」

エイラ「いいぞ。こい」

ペリーヌ「宮藤さん、がんばってください」

芳佳「はいっ!! がんばりますっ!!」

エイラ「……」

「大尉。写真、いいですか?」

シャーリー「いいぞ。ポーズはどうする? 胸よせるか?」

エイラ「……2のワンペアだ」

芳佳「これ、何かの役です!!」バッ

エイラ「ダメダナ」

芳佳「……」

ペリーヌ「宮藤さん。これで5敗目ですが、まだ軍資金は残ってまして?」

芳佳「……いえ。今月はもう……一個のお芋すら買えません……」

ペリーヌ「はぁ……」

エイラ「終わりだな。ペリーヌはどうするんだ?」

ペリーヌ「……お金、今はありませんので」

エイラ「まぁ、バニーやってくれたからギャラは出してやるぞ。ほら」

ペリーヌ「いりませんわ!」バシッ

エイラ「……」

ペリーヌ「あ……。申し訳ありません。終わりなら失礼します。少佐に見つかりたくはないので」

シャーリー「ペリーヌ。お前のバニー姿、写真におさめたいってやつがいるぞー? 一枚で結構な額になるけど、やらないか?」

ペリーヌ「お断りですわ!!」

芳佳「ペリーヌさーん、まってくださーい!!」

シャーリー「さーて、ねるかー」

エイラ「そうだな」

シャーリー「エイラも程々にしとけよ」

エイラ「シャーリーはいつ裏切ってもいいんだぞ? 別に私に付き合う必要なんてないしな」

シャーリー「私が来なくなったら客も来なくなるだろ?」

エイラ「まぁ、そうだけどなー」

シャーリー「バニーといえばシャーリー、シャーリーといえばバニーだ」

エイラ「これ、今日の分な」

シャーリー「サンキュ。それじゃ、おやすみ」

エイラ「おやすみ」

エイラ「えーと、今日はかなり儲かったな……」

エイラ「ふふ……」

シャーリー「エイラ、まずいっ。中佐だ。にげろ」

エイラ「おぉ。ありがとなー」

―翌日 サーニャの部屋―

エイラ「サーニャぁ」

サーニャ「……ん?」

エイラ「これ、新しいカタログ。こっちはアンティークだ。値打ち物もあるかもな」

サーニャ「エイラ、嬉しいけど……」

エイラ「いらないか?」

サーニャ「そういうわけじゃないの」

エイラ「よかった。私もさ、いい加減サーニャの演奏を聴きたいんだ」

サーニャ「今度、ミーナ隊長に買って欲しいって頼むから」

エイラ「前に無理だって言われただろ? でも、私の自腹なら問題ない」

サーニャ「ありがとう。だけど、エイラのお金なんだから自分で使ったほうがいいわ」

エイラ「サーニャのために使うんだ。惜しくない」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「サーニャ……ふふっ……」スリスリ

サーニャ「……」

―坂本の部屋―

美緒「ふんっ!!!」ゴンッ

芳佳「ぁう!?」

美緒「全額使うとは何をしている?」

芳佳「ペリーヌさん、坂本さんに言ったんですかぁ?」

ペリーヌ「当然でしょう。報告義務を果たしたまでですわ」

美緒「まぁ、いい。これでエイラとシャーリーが賭博に加担、いや、始めたのはわかった」

ペリーヌ「今すぐ、エイラさんとシャーリーさんを連れてきますわ」

美緒「証拠がない。シラを切られる」

芳佳「で、でも、私たちはこの目で!!」

美緒「現場の写真は?」

ペリーヌ「それは……」

美緒「取り押さえるのも今のお前たちでは無理だろう。だから、奴らに隙ができるまで暫くは付いていろ」

ペリーヌ「……わかりましたわ」

美緒「頼むな」

―食堂―

バルクホルン「一体、どういうことだ。情報が全く出てこないぞ……」

エーリカ「そりゃトゥルーデが怖いからじゃないの?」

バルクホルン「お前はもう少しやる気をだしたらどうなんだ!?」

エーリカ「めんどくさーい。ねむたーい。だるーい」

バルクホルン「……」チャカ

エーリカ「銃殺はやめてよぉ!?」

バルクホルン「全く、盛んに行われているんじゃないのか……」

エーリカ「……」

リーネ「――芳佳ちゃん、昨日の夜部屋に戻ってこなかったよね?」

芳佳「え!? そ、そんなことないよ?」

リーネ「嘘……だって……ベッドを見てもいなかったし……」

芳佳「ご、ごめん、リーネちゃん。昨日はお腹の調子がよくなくて……それで長い時間トイレに……」

リーネ「……そう。ごめんね」

芳佳「ううん。私のほうこそ、ごめんね」

―格納庫―

シャーリー「んー……。今日はこの辺にしとくかぁー」

ルッキーニ「シャーリー!!! あそぼー!!!」

シャーリー「おー。いいぞー」

ルッキーニ「んにゃ?」

シャーリー「ん……なんだ、サーニャ?」

サーニャ「あの……シャーリーさん……エイラのことで……」

シャーリー「エイラがどうかしたか?」

ルッキーニ「エイラなら部屋じゃないのー?」

サーニャ「いえ、最近エイラの様子が少しおかしいような気がして」

シャーリー「気のせいだろ?」

ルッキーニ「エイラはいつも変だしー」

シャーリー「あはは、いえてるなぁ」

サーニャ「そうですか……」

シャーリー「なにか違和感でもあったのか?」

サーニャ「違和感というか、妙に優しくて……」

シャーリー「サーニャにはいつも優しいだろ?」

サーニャ「ええ、はい……」

ルッキーニ「もー、はっきりいえー!!」グニーッ

サーニャ「ふぁふぇんふぁふぁい……」

ルッキーニ「どったの?」

サーニャ「ピアノを……買ってくれるって……」

シャーリー「そういえば欲しがってたな」

サーニャ「それもかなり高級のモノや価値のあるモノを勧めてくれるんです」

シャーリー「今までもなかったのか?」

サーニャ「枕とか小物はよく貰いますけど、ピアノなんて」

シャーリー「そうか……」

ルッキーニ「いいじゃん、もらっちゃえばー」

サーニャ「……そうね。考えてみるわ。ありがとう、ルッキーニちゃん」

ルッキーニ「にひぃ! サーニャ、ピアノもらったらきかせてねー!! あたしもサーニャの演奏だいすきだからー!!」

―エイラの部屋―

エイラ「……」ペラッ

シャーリー「――エイラ?」

エイラ「ノックぐらいしろー」

シャーリー「お前なら誰が来るのかは分かるだろ。それより、さっきサーニャから聞いたぞ」

エイラ「何をだ?」

シャーリー「ピアノの話だよ。私は聞いてないぞ」

エイラ「言ってないからな」

シャーリー「……降りるぞ?」

エイラ「勝手にしろ」

シャーリー「私の目を見ろ」

エイラ「なんだ?」

シャーリー「……わかった。もう少し付き合うよ」

エイラ「別にいいのに」

シャーリー「今、勝手にしろって言っただろ? だから、させてもらうよ」

―別の日 夜 武器庫―

「あー!!! だめだぁー!!!」

エイラ「はい。没収な」

芳佳「どんどん貯まってますね……」

エイラ「給料日のあとは儲け時だかんなぁ」

ペリーヌ「……」

エイラ「ペリーヌもどうだ? これだけの金だ。欲しいだろ?」

ペリーヌ「いりませんわ。そんな汚らわしいお金なんて」

エイラ「そうか?」

シャーリー「はーい。負けた人はこっちにこーい」

「うぅぅ……大尉……」

シャーリー「いくら負けた?」

「全額です……」

シャーリー「そうかそうか。残念だったな。撫でてやるから元気だせ」ナデナデ

「大尉……くっ……これがあるからまたきちゃうんだよなぁ……」

芳佳「エイラさん!!! 勝負してください!!!」

エイラ「お。給料日のあとだからやる気十分だな」

芳佳「はい!!」

ペリーヌ「み、宮藤さん?」

芳佳「まかせてください。必勝法を考えてきましたから」

ペリーヌ「ひ、必勝法……?」

エイラ「面白いな」

芳佳「エイラさん!! 神経衰弱で勝負してください!!!」

エイラ「……」

ペリーヌ「あ、あなた……」

芳佳「これでみっちゃんに負けたことはないんです!!」

エイラ「誰だ、それ?」

芳佳「さぁ、エイラさん!! 賭けてください!!」

エイラ「まぁいいけど。神経衰弱な。その前に……。バニー、ミルクー」

シャーリー「りょーかーい」テテテッ

―通路―

リーネ「よしかちゃーん」

リーネ「……芳佳ちゃん。芳佳ちゃーん。よーしーかーちゃーん」

リーネ「……」

リーネ「やっぱり、いない……。ここ最近、ずっと……」

ミーナ「リーネさん、何をしているの? もう消灯時間よ?」

リーネ「ミーナ中佐……。あの、芳佳ちゃんがいないみたいで……」

ミーナ「宮藤さん? 部屋で寝ているんじゃないの?」

リーネ「いえ、居ませんでした」

ミーナ「トイレじゃないの?」

リーネ「見ました。お風呂も、食堂も」

ミーナ「そ、そう……」

リーネ「芳佳ちゃん、夜遅くまで部屋に戻ってこないんです」

ミーナ「……」

リーネ「ミーナ中佐、芳佳ちゃんはどこにいるんですか?」

―武器庫―

エイラ「これでラストな」

芳佳「……」

ペリーヌ「宮藤さん、顎が外れましたの?」

芳佳「だ、だって……ペリーヌさん……わたしの番が一回しか……それでエイラさんが……全部……全部……」

ペリーヌ「神経衰弱なんてエイラさんの独壇場になるに決まっているでしょう?」

芳佳「エイラさん!! 魔法使ったんですか!?」

エイラ「使ってないっていってるだろ」

芳佳「こんなの変ですよー!!!」

エイラ「ほら、賭けた分よこせ」

芳佳「あぁ……また一個のお芋すら……あぁ……」

シャーリー「……エイラ、誰か来る」

エイラ「誰だ?」

シャーリー「中佐だ。逃げるぞ」

エイラ「わかった。今日は解散だ」

―通路―

エイラ「ふふーん。宮藤には悪いけど、今日はかなり――」

エイラ「……!?」

リーネ「……」

エイラ「なんだ、リーネか。びっくりさせるなよ」

リーネ「エイラさん、芳佳ちゃんのこと知っていますよね」

エイラ「宮藤? 部屋だろ?」

リーネ「嘘はつかないでください」

エイラ「なんだと?」

リーネ「遠くから見てました。シャーリーさんに気づかれないように」

エイラ「お、おま……」

リーネ「武器庫で何をしていたんですか?」

エイラ「……」

リーネ「芳佳ちゃんとペリーヌさんと一緒に何をしていたんですか? 教えてください」

エイラ「あー……それはー……」

―翌日 食堂―

リーネ「――といわけです」

バルクホルン「まさかエイラとシャーリーがそんなことをな……。道理で捕まらないわけだ」

エーリカ「リーネはよくバレなかったなぁ」

リーネ「一時間ほど前から見張っていましたから」

バルクホルン「それでエイラは止めるつもりはないと言っていたのか」

リーネ「はい」

エーリカ「どうする?」

バルクホルン「明らかに軍法会議ものだが、ミーナが黙認している時点でまたいつかの宮藤と同じような処分になるだろうな」

エーリカ「別にミーナは黙認してるわけじゃないでしょ?」

バルクホルン「エイラから口止めはされなかったのか?」

リーネ「エイラさんも分かっているみたいです。ミーナ中佐に知られていることは。だから、私には何も……」

バルクホルン「いい度胸だ。――ハルトマン」

エーリカ「ん?」

バルクホルン「行くぞ。愚かな衛兵はともかく、宮藤の給与は取り戻さなくてはな」

―坂本の部屋―

美緒「であぁ!!!」バシンッ

芳佳「ぃたぁぃ!!!」

美緒「宮藤。金は大切に使えと教えたはずだが?」

芳佳「……ごめんなさい。神経衰弱は自信があったんですよ。みっちゃんには負けたことなかったから……」

美緒「しかし、リーネが独断で動くとは予想外だったな」

ペリーヌ「ええ。ただ、宮藤さんが絡むと以前から後先を考えないところはありましたけど」

芳佳(リーネちゃん……怒ってたなぁ……)

美緒「生真面目なリーネのことだ。バルクホルンやハルトマンに報告しているだろう」

ペリーヌ「少佐……あの……」

美緒「この際だ。全員に打ち明けるか」

芳佳「えぇぇ!? でも、そんなことしたらもうエイラさんとシャーリーさんは私たちのこと信じてくれなくなりますよぉ」

美緒「お前たちは別だろう。今まで一緒にいたのだからな」

ペリーヌ「シャーリー大尉が気が付いてなければ、ですけど」

美緒「皆に説明をしてくる」

―夜 倉庫―

エイラ「はい。私の総取りな」

「あぁぁぁ……!!!」

エイラ「ふっふっふっふー」

シャーリー「おーし、負けた人は私が慰めてやるからーこっちこーい」

芳佳「えーん!! シャーリーさーん!!」

シャーリー「また負けたのか?」ナデナデ

芳佳「大切な貯金がぁー」

シャーリー「可愛そうな宮藤だな……よしよし……」ギュッ

芳佳「えーん……えへへ……」モミモミ

ペリーヌ「最近、宮藤さんがわざと負けているような気がしてきましたわ」

エイラ「……! シャーリー!! こらぁ!!」

シャーリー「なんだよ?」

バルクホルン「――まだやっているか?」

エーリカ「カジノ、はっけーん」

シャーリー「やべ……」

芳佳「バ、バルクホルンさん……」

ペリーヌ「あ、あの……これは……」

エイラ「シャーリー!! なんで言わないんだ!!!」

シャーリー「おかしいなぁ。宮藤、明日耳掃除してくれ」

エイラ「こういう裏切り方はやめろよぉ」

芳佳「み、耳掃除ですか? 私でよければ……」

シャーリー「膝枕でね」

バルクホルン「待て、シャーリー」

シャーリー「ん?」

バルクホルン「それは許さん。ミーナにしてもらえ」

シャーリー「中佐は怖いだろ」

バルクホルン「さてと、エイラ。何故、私が来たのかわかるな?」

エイラ「……私はなにもしてないぞ」

バルクホルン「言い訳するな。――これは私の給与だ。全額ベットする」

芳佳「え!?」

ペリーヌ「大尉、どうして!?」

バルクホルン「どうせ、お前を取り押さえられるのは無理だ。ならば、正面から勝負してやる」

エーリカ「かっこいいー」

エイラ「本気か?」

バルクホルン「一回勝負だ。早くしろ」

エイラ「バニー、カード配ってくれ」

シャーリー「了解っ」

バルクホルン「お前がどうしてこんなことをしていのかは知らないが、深い事情でもあるのだろう」

エイラ「……」

バルクホルン「だが、やり方を間違えているのは分かる。私はそれを正すつもりだ、エイラ」

エイラ「なら、どうしろっていうんだ? 善意でお金はくれないだろ?」

バルクホルン「……なに?」

シャーリー「――はい。どうぞ」

バルクホルン「……」

エイラ「……2枚チェンジ」

シャーリー「はい」

エイラ「……」

バルクホルン(8のスリーカードか……)

エイラ「怖いなら、降りてもいいぞ?」

バルクホルン「なに? しかし降りたら……」

エイラ「ここで降りたらベット分は返すって。今月宮藤みたいに貯金を切り崩す生活しなきゃいけなくなるんて、嫌だろ?」

バルクホルン「……」

バルクホルン(かなり強気だな……。いや、これは誘っているのか……)

エイラ「どうするんだ、大尉?」

バルクホルン(エイラは勝負して欲しくない……。つまり、役はできあがらなかったか、かなり弱い……)

バルクホルン「――勝負だ」

エイラ「マジか? まだ間に合う――」

バルクホルン「8のスリーカード」

エイラ「……4のフォーカード」

シャーリー「よしよし」ナデナデ

バルクホルン「クリスの……治療費がぁ……ちりょうひ……」ギュッ

シャーリー「そうだな、お前が悪いよな」ナデナデ

エイラ「だから、言ったのに」

エーリカ「私もやろうかなぁ」

エイラ「今日はもういいって。大尉の分ですごいことになったし」

エーリカ「なんだよー。やれよー」

エイラ「なら、やるか」

エーリカ「やったぁ」

エイラ「ツンツンバニー、カード頼む」

ペリーヌ「は、はい。――どうぞ」

エイラ「……」

エーリカ「……にひぃ」

バルクホルン「ハルトマン。その右手にあるカードはなんだ?」

エーリカ「な……!? なんでいうのー!!」

エーリカ「トゥルーデがしゃべったー!! かてたのにぃー!!!」ギュッ

シャーリー「不正はダメだろー」ナデナデ

エーリカ「かてたのに!! かてたのにー!!!」

エイラ「もういいか?」

ペリーヌ「エイラさん。もう終わりにしませんこと?」

エイラ「なんでだ?」

ペリーヌ「バルクホルン大尉にまで見つかってしまったんですわよ? もう言い逃れはできませんわ」

エイラ「証拠がないから何言われてもとぼけてればいいだけだろ」

ペリーヌ「そんなことで切り抜けられるとでも!?」

エイラ「切り抜ける」

ペリーヌ「どうしてそこまでするんですの?」

バルクホルン「エイラ。全額はいい。半分だけでも返金してくれ」

エイラ「いやだ」

バルクホルン「シャーリー!! エイラの態度をどう思う!! 微塵の慈悲もないとは!!」

シャーリー「だから、強気で攻めたお前の所為だろ?」

―翌日 坂本の部屋―

美緒「――話は以上だ」

サーニャ「……」

美緒「信じられないという顔だな」

サーニャ「はい……。エイラがそこまでしているなんて……」

美緒「止めるなら早いほうがいいかもしれないな」

サーニャ「……今晩の夜間哨戒は少し遅れます」

美緒「そうか」

サーニャ「ありがとうごさいました」

ミーナ「よかったの。サーニャさんにまで話して……」

美緒「エイラが何をしたいのか……」

ミーナ「それはサーニャさんへピアノを贈るためでしょう? シャーリーさんがそう……」

美緒「それだけなら、大金をかき集める必要などない。とっくに購入できるほどあるはずだ。そもそも本気で買うつもりならエイラの給与だけでも事足りるだろう」

ミーナ「違う何かを買おうとしているの?」

美緒「それしかあるまい。そしてすぐにでも大金が欲しかったのだろう。でなければ、エイラがこんなことを実行するわけがない」

―エイラの部屋―

エイラ「……」ペラッ

エイラ「もうちょっとかなぁ」

サーニャ「――エイラ?」

エイラ「どうした、サーニャ?」

サーニャ「……」

リーネ「エイラさん、芳佳ちゃんたちのお金、返してください。とっても困ってます」

エイラ「……参加したのは宮藤だ。返すわけないだろ。賭け事で勝っただけだ」

リーネ「そんな言い方……」

サーニャ「エイラ。私のためじゃないんでしょ?」

エイラ「なにいってんだ。ピアノをサーニャのために……」

サーニャ「そんなお金で買ったピアノを私が受け取るわけないって、分かってるくせに……」

エイラ「うっ……で、でも、もうこんなに集めたんだ!! もう私は引き返せない!!」

リーネ「そんなことありません。まだ全く使っていないなら返せるはずです」

エイラ「誰がどれだけ使ったかなんて覚えてるわけないだろ。いいから、出て行ってくれー。サーニャはいてもいいけどな」

―食堂―

ペリーヌ「はぁ……。エイラさんにも困ったものですわ」

シャーリー「ふんふーん」

ルッキーニ「シャーリー、なにしてんのー?」

シャーリー「んー。家計簿つけてる」

ルッキーニ「おぉぉー? いっぱありゅー。シャーリー、おかねもちだぁー」

シャーリー「だろー? 新しいストライカーユニットでも買えるぐらいある」

ルッキーニ「しゅごーい!! シャーリー、なに買うのー?」

シャーリー「そうだなぁ……。ペリーヌ」

ペリーヌ「は、はい? なんでしょうか?」

シャーリー「今、欲しいものとかある?」

ペリーヌ「欲しいものなんて山のようにありますわ。新しい橋や学び舎、それに家屋だって……。お金が空からふってこないかしら……」

シャーリー「そっか」

ルッキーニ「ペリーヌのほしいのこれで買える?」

シャーリー「そうだなぁ。足しにはなるんじゃないか?」

―ブリーフィングルーム―

芳佳「え? サーニャちゃんが?」

サーニャ「うん。私がみんなの分を取り戻すわ」

芳佳「でも、エイラさん強いよ?」

リーネ「作戦があるから大丈夫だよ」

芳佳「さ、作戦?」

リーネ「芳佳ちゃん。今日、賭博する場所は屋外にして」

芳佳「そ、そとで?」

リーネ「この地図を見て。私がこの位置で待機するから、芳佳ちゃんはエイラさんをこの位置に座らせてほしいの」

芳佳「それで?」

リーネ「魔法でエイラさんのカードを覗いて、サーニャちゃんに指示を出そうかなって」

芳佳「で、できるの!?」

サーニャ「大丈夫よ。バルクホルンさんやハルトマンさんも協力してくれるみたいだから」

芳佳「サーニャちゃん……リーネちゃん……」

リーネ「絶対に取り返すから。待ってて、芳佳ちゃん」

―夜―

エイラ「……なんで外なんだ? 見つかるだろ」

シャーリー「宮藤がどうしてもっていうから」

エイラ「宮藤……」

芳佳「いつも室内だと息がつまるじゃないですか!!」

ペリーヌ「……」チラッ

ペリーヌ(遠方にリーネさんが居ますわね……。エイラさんの手札を覗くおつもりですか。となればサーニャさんの耳に……やはりインカムがありますわね)

エイラ「まぁ、いいけど。で、今日は誰が相手になるんだぁ?」

バルクホルン「サーニャ」

サーニャ「……はい」

エイラ「サーニャか」

サーニャ「驚かないのね」

エイラ「昼のことを考えればサーニャが来てもおかしくないかんな」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「悪いけど。サーニャでも手加減はできないぞ」

エーリカ「私がくばるよー」

エイラ「……ダメダナ。サーニャの手札がロイヤルストレートフラッシュになるのが見えた」

エーリカ「魔法禁止だろー?」

エイラ「バニー、頼む」

シャーリー「オッケー」

エーリカ「ちっ」

バルクホルン(やはり、エイラは隙を見て魔法を行使していたな……。でなければ、いつかは負けるはずだ。監視しておくか)

シャーリー「はい」

サーニャ「……」

エイラ「……」

芳佳「すごい。表情が変わらない……」

ペリーヌ「宮藤さんはすぐに表情にでますからね」

エーリカ「トゥルーデもね」

バルクホルン「そんなはずはない。私は産まれたときからポーカーフェイスだ」

エイラ(流石、サーニャだな。何を考えているのかわからない……)

サーニャ「……」

サーニャ(ポーカーのルール、知らなかった……)オロオロ

エイラ「ドロー。1枚チェンジ」

シャーリー「ほい」

エイラ「……」

サーニャ(どうしたらいいんだろう……。確か同じカードが多いほど有利だったような……)

リーネ『サーニャちゃん。エイラさんの手札が見えたよ。えーと……7が2枚、Qが1枚、Kが2枚だよ』

サーニャ「……」

シャーリー「サーニャ、代えなくていいのか?」

サーニャ「え、あ……はいっ」

エイラ「なに……」

サーニャ「かえないよ、エイラっ」

バルクホルン「ほう……。これはハッタリか、それとも……」

エーリカ「わかんないねー」

ペリーヌ「サーニャさん、がんばって」

エイラ「……」

バルクホルン「どうした、エイラ? サーニャはベットし終えたぞ?」

エイラ(大尉と中尉が監視してる中で魔法は一瞬もつかえないな……)

サーニャ(ルールしらないこと……バレないで……)

エイラ(サーニャの目……めちゃくちゃ怯えてるな……。演技には見えないし……勝負してほしくないんだな……)

エイラ「ドロップだ」

バルクホルン「なに……?」

芳佳「エイラさんの負けってことですね!?」

エイラ「違う。全額は払わないぞ。場に出した分だけだ」

芳佳「えー!?」

エイラ「ちなみにツーペアだ」

サーニャ「私は……これ」

シャーリー「ファイブカード!? 初めてみた……」

エイラ「なに!?」

エーリカ「おいおい……サーにゃん、これは勝てるかも……」

エイラ(演技だったのか……!? サーニャ、本気だな……)

サーニャ(よかった。まだバレてない……)

エイラ「もう一回だ、バニー」

シャーリー「上手く逃げたな」

エイラ「たまたまだ」

バルクホルン「エイラのやつ、魔法を使ったか?」

エーリカ「いや、そんな様子はなかったけど」

バルクホルン「まさか、天性の勘も鋭いのか」

シャーリー「はいっ」

サーニャ「……」

エイラ(サーニャがそのつもりなら、私も本気でやるしかないな……)

サーニャ(これ、役になってるのかな……?)

エイラ「ドロー。2枚チェンジだ」

シャーリー「はい」

リーネ『サーニャちゃん、チャンスだよ! エイラさんの役はワンペアだよ!!』

エイラ「それで、全額レイズだ」

シャーリー「サーニャは?」

サーニャ「かえません」

ペリーヌ「……もしかして、サーニャさん。ルール知らないとか、ありませんわよね?」

芳佳「え? どうしてですか? そんなことないと思いますよー?」

エイラ「……勝負だ。サーニャ」

サーニャ「これっ」ドヤッ

エイラ「……」

サーニャ「……私の勝ちね。エイラ。みんなのお金、返してもらうわ」

エーリカ「サーにゃん?」

サーニャ「なんですか?」

バルクホルン「すまない。お前の手札、役はなんだ?」

サーニャ「ハートの柄が4枚あります」

芳佳「えーと……えーと……そんな役ないよ!! サーニャちゃん!!!」

シャーリー「よーし、おいでー、サーニャ」

サーニャ「……」ギュゥゥ

シャーリー「おしかったなぁ。あと1枚ハートがあればフラッシュっていう役だったのにな」ナデナデ

エイラ「他にいるか?」

バルクホルン「軍資金がもう……」

エーリカ「ないよね」

エイラ「それじゃ、今日は――」

ペリーヌ「わたくしがやります」

エイラ「なに?」

芳佳「ペリーヌさん!?」

エイラ「いいけど、金はあるのか?」

ペリーヌ「ズボンでも服でも持っていってくださいな」

エイラ「いらないけど」

ペリーヌ「サーニャさん?」

サーニャ「は、はい?」

ペリーヌ「あなたの仇は取りますわ。これを貸してください」

リーネ「サーニャちゃんが負けちゃった……」

ルッキーニ「みんなでなにしてんのー?」

リーネ「ポーカーを……って、ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「今日はここで寝ようと思ったんだけど、リーネも一緒にねる?」

リーネ「ご、ごめんね。今は忙しいから……」

ルッキーニ「そんな風に見えないけど。夜間射撃の訓練?」

リーネ「ルッキーニちゃんもきいてるよね? エイラさんがいけないことしてるの」

ルッキーニ「シャーリーが家計簿つけたやつ?」

リーネ「それは知らないけど……」

ルッキーニ「あれでね、家かうんだってー」

リーネ「家?」

ルッキーニ「あと橋とかー学校とかーノートもかわなきゃーなんていってたかもー」

リーネ「……え?」

ルッキーニ「シャーリー、今お金持ちだから、今度ねーあたしも新しい服買ってもらうんだぁー。にゃははは」

リーネ「それ、詳しく教えて!! ルッキーニちゃん!!」

ペリーヌ「(さぁ、リーネさん。お願いしますわよ……)」

エイラ「なにコソコソ話してんだ?」

ペリーヌ「な、なんでもありませんわ。さ、始めましょう」

エイラ「ふっ……後悔すんなよ。お前は明日から全裸で過ごせ」

ペリーヌ「……」

芳佳「大丈夫です!! 私の扶桑制服かしてあげますから!!」

シャーリー「全裸はないだろ。バニーになってればいいんだからさ」

バルクホルン「そんな姿で基地内を歩くつもりか。私は許さんぞ」

エーリカ「つまり、トゥルーデ的には裸で歩いてほしいってこと?」

バルクホルン「誰がそんなことを言った!?」

サーニャ(リーネちゃん、力を貸して……)

シャーリー「配るぞ」

エイラ「ふふん」

ペリーヌ「負けませんわ」

ペリーヌ(それにしてもリーネさんから応答がありませんわね……。まさか、もう部屋に戻ったなんてことは……)

―通信室―

美緒「まだ勝負はついていないようだな」

ミーナ「そろそろ夜間哨戒に出てもらわないと」

美緒「折角だ。今日は無しに――」

ルッキーニ『少佐ー』

美緒「ルッキーニ、どうした?」

ルッキーニ『シャーリーが言ってたことリーネに話しちゃったけど、いいのー?』

美緒「それで、リーネの様子は?」

ルッキーニ『んーとねぇ……悩んでる』

美緒「お前は見守ってやれ。事の成り行きをな」

ルッキーニ『あいっ』

美緒「勝負も決するようだし、行くか」

ミーナ「本人たちだけで解決できるかしら?」

美緒「エイラもペリーヌもいい子だ。心配はいらん。エイラの行為については叱ってやらねばならんがな」

ミーナ「そうね……」

ペリーヌ「うむむ……」

エイラ「ノーチェンジ。さらに全額ベットだ」

シャーリー「オッケー」

ペリーヌ(相当な自信ですわね……。リーネさん、早くエイラさんの役を……!!)

リーネ『サーニャちゃん、聴いて』

ペリーヌ(あ、あら……? インカムを付け替えたのに気づいてない……?)

リーネ『エイラさん、ガリア復興資金を集めたみたい』

ペリーヌ「え……」

エイラ「どうした? かえるのか?」

ペリーヌ「あ、あの……」

リーネ『きっとペリーヌさんが困ってるのを見てどうにかしたいって考えたと思うの。だから、あんなにも大金を……』

ペリーヌ「……」

リーネ『サーニャちゃん、どうしよう? エイラさんのやったことはいけないことだけど、私……私……』

ペリーヌ「……」

エイラ「なんだよ? 私の顔を見つめても、手札は見えないだろ」

シャーリー「ペリーヌ、どうした?」

芳佳「ペリーヌさん?」

バルクホルン「エイラのポーカーフェイスはその程度では破れないぞ。早く決断しろ」

エーリカ「……」チラッ

エーリカ(リーネの傍にルッキーニか……。何かあったかな?)

ペリーヌ「……」

エイラ「はやくしろってー」

リーネ『ペリーヌさんは絶対に受け取らないから、こっそり寄付するつもりだったのかもしれないね……』

ルッキーニ『シャーリーも言ってたけど、これは募金じゃ無理な額だーって』

リーネ『それにエイラさんは素直じゃないから、直接集めるのも恥ずかしかったんだと思うな。サーニャちゃんはどう思う?』

ペリーヌ「……」

リーネ『サーニャちゃん? あれ、聞こえてないのかな』

ルッキーニ『さーにゃぁ~にゃ~』

リーネ『サーニャちゃーん、応答して。やっぱり止めたほうがいいかな? ミーナ中佐は知ってるのかな?』

ペリーヌ「……いりませんわ」

エイラ「ノーチェンジか。よし、勝負だ」

ペリーヌ「いらないって言ってるでしょう!?」

芳佳「きゃ!?」ギュッ

シャーリー「おいおい。宮藤が驚いてるだろ。やめてやれよ」

芳佳「シャーリーさぁん……」ギュゥゥ

バルクホルン「どうしたんだ? そんなに激昂するほどいい手なのか?」

ペリーヌ「……」バンッ!!

エーリカ「えーと、ワンペアだね。エイラは?」

エイラ「……」

エーリカ「あれ? なーんにも揃ってないじゃん。なんで替えなかったのさ?」

ペリーヌ「言った筈ですわ。そのような汚らわしいお金など、いらないと」

エイラ「……なんの話だ?」

ペリーヌ「失礼しますっ!!」

芳佳「あぁ!! ペリーヌさーん!!! まってくださーい!!!」

シャーリー「あーあ……バレちゃったかぁ」

エイラ「……」

サーニャ「エイラ? どういうこと?」

バルクホルン「説明してくれるのか、シャーリー?」

シャーリー「あー……もういいか?」

エイラ「部屋に戻る。勝手にしてくれ」

エーリカ「サーニャ、ついていってあげて」

サーニャ「は、はい。エイラ、待って」

バルクホルン「……エイラはペリーヌにこの金を渡すつもりだったのか?」

エーリカ「さぁ……? 少なくとも負けるつもりではあったみたいだね」

シャーリー「エイラがこれを始めたのはつい最近さ」

バルクホルン「いつの話だ?」

シャーリー「ほら、丁度私、ルッキーニ、宮藤の三人で買出しに行っただろ? あの日ぐらいかな」

エーリカ「きっかけは?」

シャーリー「ペリーヌの貯蓄がないって聞いた瞬間じゃないか?」

バルクホルン「そういうことか。ならばシャーリーが言っていたサーニャのピアノは、それを隠すための嘘というわけか?」

美緒「恐らくな」

バルクホルン「少佐……」

美緒「サーニャのためにピアノを買うという名目で金をかき集めていたのだろう」

エーリカ「ミーナと少佐はいつ知ったのさ?」

ミーナ「今日よ。シャーリーさんが教えてくれたの」

バルクホルン「シャーリー……」

シャーリー「まぁ、エイラの名誉のためでもあるからさ。言わないわけにはいかないだろ?」

バルクホルン「分かっているのか? お前がしたことは……!!」

シャーリー「営倉でも降格でもいいよ。好きにしてくれ。エイラに協力するって決めたときに腹括った」

エーリカ「ふぅん」

バルクホルン「……最初から共謀していたのか?」

シャーリー「いや。エイラが賭博している現場を見た。それで取り押さえただけ」

美緒「お前がスピードを出せば、未来が読めても意味がないからな」

バルクホルン「何故、エイラの行為をそのときに止めようと考えなかった!?」

シャーリー「あのなぁ。何度も止めたに決まってるだろ? でも、エイラは金を貯めるって聞かなかったんだよ。で、事情を聞いて一人じゃ大変だから共犯になるって私が申し出たんだ」

バルクホルン「どうしてそのような発想をするんだ!! 一言相談してくれてもいいだろう!!!」

シャーリー「相談したらエイラの望みは叶えてくれたのかよ」

エーリカ「望みって?」

シャーリー「ガリアの完全復興だ」

ミーナ「……」

エーリカ「それはちょっと無理だね」

バルクホルン「時間がかかることだ。大金を集めたところで……」

シャーリー「だから、エイラはまずペリーヌが欲しがっているものを買おうとしてた。橋の材料だったり、学校を建てるために必要なものとかな」

美緒「どんな事情があるにせよ、エイラのしたことは軍規違反だ。そしてシャーリーもな」

シャーリー「はぁーい。反省しまーす」

ミーナ「シャーリーさん。バルクホルンの言うことも正しいわ。どうして何も言ってくれなかったの?」

シャーリー「言ってもエイラが納得するわけじゃないですから」

美緒「……ならば、納得いくまでやらせて罰を受けさせる。そう考えたのか?」

シャーリー「はい。まぁ、一人じゃ寂しいだろうから、私も一緒ってことにしてさ」

バルクホルン「馬鹿げているな。全く」

―エイラの部屋―

サーニャ「エイラ……」

エイラ「……」

サーニャ「どうして、言ってくれなかったの? 私も協力したのに……」

エイラ「サーニャにだけは迷惑をかけたくなかった」

サーニャ「……」

エイラ「あ、あ、でも、ピアノは絶対に買うからな。サーニャにプレゼントするから」

サーニャ「いらないわ」

エイラ「で、でも……」

サーニャ「それよりもあのお金、きちんと返して」

エイラ「だから、もう誰からいくら貰ったのかわかんないしさ」

サーニャ「それでも返して。話はそれからよ」

エイラ「サーニャ……ごめん……」

サーニャ「大丈夫……ペリーヌさんはわかってくれるわ……」ギュッ

エイラ「だと、いいな……」

―格納庫―

ペリーヌ「はぁ……」

芳佳「落ち着きましたか、ペリーヌさん?」

ペリーヌ「ええ。少しだけ」

芳佳「あはは。えっと……何があったんですか?」

ペリーヌ「後ろの方に訊いて下さいな」

芳佳「え?」

リーネ「はぁ……はぁ……ペ、ペリーヌさん……」

ルッキーニ「やっほーい。よしゅかー、ペリーニュぅ」

芳佳「二人ともどうしたの?」

リーネ「ルッキーニちゃんが話してくれたの。エイラさんがガリア復興のためにお金を集めてるんだって」

芳佳「えぇぇ!? ほ、本当なの!?」

ルッキーニ「うん! シャーリーが言ってた」

芳佳「そ、そうだったんだ……」

ペリーヌ「もっと早く気が付くべきでしたわ……。エイラさんの貯蓄まで全て賭けている時点で……どうして……気がつけなかったのかしら……」

芳佳「エイラさん、そこまでしてペリーヌさんのために……」

ペリーヌ「余計で大きなお世話ですわ」

リーネ「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「あんな、詐欺まがいなことをして得たお金で復興しても誰も喜びませんわよ!!」

ルッキーニ「そうだけどさー。エイラもそれだけ必死だったんでしょー?」

ペリーヌ「だからってこんなことに手を染めていいわけありませんでしょ!? 寄付してくれればそれでいいんです!! それだけで……」

ルッキーニ「あたしもガリア復興財団にちょっとは寄付してるよ」

リーネ「わ、わたしも」

芳佳「私もです!!」

ペリーヌ「そ、それはどうも」

芳佳「でも、エイラさんはそれだけじゃ足りないって思ったから、こうして……」

ペリーヌ「理由になりませんわね」

ルッキーニ「ペリーヌ、うれしいくせにぃー」

ペリーヌ「うれしくなんて、ありません。ありがた迷惑以外のなにものでもありませんわ」

リーネ「エイラさんのしたことは許されることではないかもしれません。だけど、エイラさんの優しさは本物のはずですよ」

ペリーヌ「……」

芳佳「エイラさんのところに行ってあげてください。きっと、エイラさんは嫌われたって思ってるかも」

ペリーヌ「はぁ? どうしてですの? こんなことで人を嫌いになるほど狭小な心は持ち合わせておりませんけど?」

ルッキーニ「それはペリーヌのことじゃん」

芳佳「ペリーヌさん、お願いします。このままじゃ……」

ペリーヌ「わかりましたわ。もう、面倒ですわね」

芳佳「よかったぁ!!」

ペリーヌ「ただし!!」

芳佳「は、はい?」

ペリーヌ「お礼などは言いません。エイラさんに懇々と説教するだけですから」

リーネ「それでいいとおもいますよ」

ルッキーニ「ペリーヌの得意分野じゃん」

ペリーヌ「誰が得意分野ですって!?」

芳佳「……いってらっしゃい、ペリーヌさん」

ペリーヌ「い……いってきますわ……ふんっ」

―通路―

ペリーヌ「とはいえ……どう入っていけば……」

ペリーヌ「ま、まぁ、普通でいいですわよね。普通にノックをしてから「エイラさん。入りますわよ」と言えば――」

エイラ「――なんだ?」ガチャ

ペリーヌ「おぉほわっ!? ど、どうしてあなたから出てきますの!?」

エイラ「入るか?」

ペリーヌ「え、ええ……もちろんですわ!」

エイラ「なら、さっさと入れ」

ペリーヌ「どうしてそう偉そうですの。貴女は」

エイラ「それで、何か用か?」

ペリーヌ「今回の騒動についてですわ」

エイラ「……」

ペリーヌ「結論から申しますと、貴女のしたことは軍規違反であってですね――」

エイラ「……悪いな。迷惑かけて。もうしない」

ペリーヌ「あ……ぇ……あー……その……反省しているなら、いいんですけど……」

エイラ「……」

ペリーヌ「……あの」

エイラ「勘違いすんな」

ペリーヌ「え?」

エイラ「お前だからこんなことをしたんじゃないぞ。サーニャは勿論、宮藤でもルッキーニでもリーネでもシャーリーでも、少佐だろうと中佐だろうと大尉だろうと中尉だろう……」

エイラ「私は同じ事をしたんだかんな!!! いいな!!! お前だけが特別なんかじゃないぞ!!! そこだけは言っておくぞ!!!」

ペリーヌ「……そ、そんなこと言われなくても分かっていますわよ!!! どーしてわたくしが貴女にとっての特別になりますの!!! はぁー!!! 気持ち悪い!! 虫唾が走ります!」

エイラ「そこまでいうなよ……」

ペリーヌ「あ、いえ、ちょっとだけ表現に誇張が過ぎましたわ……」

エイラ「あーあ……でも、これからが大変だなぁー」

ペリーヌ「どうしてですの?」

エイラ「だって、お前。私の貯蓄からしか寄付できないんだぞー? 結構すくないぞ、それって」

ペリーヌ「全額もいりませんわ。そうですわね。半分ほど、戴ければ」

エイラ「半分渡すぐらいなら全部やるよ。そのほうがすっきりするだろ」

ペリーヌ「いらないっていっているでしょう!! 自分のためにつかいなさいな!!」

エイラ「だから使ってるだろ!! 仲間のためなら別に惜しくなんて――」

ペリーヌ「もういいですわ。本当に」

エイラ「でも」

ペリーヌ「貴女の心だけで満たされましたから」

エイラ「なにかっこつけてんだ。そんなので復興できないだろ」

ペリーヌ「そんなことはありませんわ。確かにお金は必要です。それがなくては何もできない」

エイラ「だったら」

ペリーヌ「でも、心がなければ何も戻っては来ません。自然も人も……」

エイラ「どうして?」

ペリーヌ「その土地を愛する心、慈しむ心。想う気持ちがあってこそ、その大地は蘇るはずですわ。お金だけあっても、木は生えませんし、家も建ちませんでしょ?」

エイラ「詭弁だなぁ」

ペリーヌ「なんとでもおっしゃい」

エイラ「……もう私は寝る。用事が済んだならでていけー」

ペリーヌ「言われなくても出て行きますわ!! おやすみなさい!! エイラさんっ!!」

エイラ「べーっ。おやすみー」

―空き部屋―

サーニャ「……エイラ。ずっとこれを見てたのね」ペラッ

サーニャ「復興のためにどれだけかかるのか……」

「サーニャー」

サーニャ「どうぞ」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「どうしたの?」

エイラ「ペリーヌが……あの……寄付はいいって……」

サーニャ「そうなんだ」

エイラ「やっぱり、嫌われたか」

サーニャ「そんなことないわ」

エイラ「サーニャがそういうなら、安心だけどさ」

サーニャ「今日は一緒のベッドで寝ましょう?」

エイラ「ありがとな、サーニャ」

サーニャ「お金も返そうね。エイラ?」

―翌日 食堂―

シャーリー「んー。これ宮藤の分ね」

芳佳「わ、私……こんなに使ってたんですか……!?」

シャーリー「賭けた金ってこうしてみると怖いだろ?」

芳佳「は、はい……手が震えてます……」

エーリカ「わーい!! 私のお給料もどってきたー!!」

バルクホルン「シャーリー、お前は戻すつもりだったのか?」

シャーリー「なぁに。そういう展開もあるかもしれないだろ?」

ルッキーニ「シャーリーの家計簿、みんながどれだけ使ったか細かくのってるんだよねー」

エーリカ「だから、シャーリーは負けた人を一々慰めてたのか?」

シャーリー「あれはサービスだよ」

芳佳「でも、使った金額も毎回聞いていたような」

シャーリー「気のせいだって」

美緒「どうやら、返金もスムーズに終わりそうだな」

ミーナ「あとの問題は……」

―空き部屋―

ミーナ「では、暫くはここで謹慎ということで」

エイラ「いいのか? 禁錮処分程度で」

シャーリー「もっと厳しくてもいいよ? 501から離れるのは勘弁してほしいけど」

ミーナ「それはね……」

美緒「エイラの賭け事に付き合った連中から懇願されてな。あまり重い罰はやめてほしいとな」

エイラ「宮藤か?」

ミーナ「ペリーヌさんもバルクホルンもハルトマンもよ」

シャーリー「ふぅん」

美緒「リーネとルッキーニ、サーニャもだ。そして、賭博に参加した全ての者だ」

エイラ「なんでだ? お人よしの宮藤やリーネは分かるけど」

ミーナ「貴女がお金を集めた理由を聞いた人の中には返金しなくてもいいって言ってくれた人もいたわ」

エイラ「……そうか。でも、返してやってくれ。ペリーヌもそれを望んでたからな」

美緒「分かっている。そちらは任せろ。お前たちは大人しく罰を受けろ。いいな」

エイラ・シャーリー「「了解」」

シャーリー「あー。よかったな、エイラ。本当な銃殺刑もいいところだ」

エイラ「シャーリー、後始末までしてもらってありがとな」

シャーリー「んー。お礼を言われるほどのことじゃないよ。偶々つけていた家計簿が役に立ったってだけだしね」

エイラ「それでも、ありがとな」

シャーリー「……どういたしまして」

エイラ「でもさ、いい方法だっただろ? 短期間であんなに集まったんだから」

シャーリー「悪いことは悪いことだ。反省しような」

エイラ「わかってるってー」

シャーリー「しっかし、暇だなー」

エイラ「だなー」

シャーリー「ふっふっふっふ」

エイラ「なんだ? 何か秘策でもあるのか?」

シャーリー「じゃーん」

エイラ「おぉ!! 持ってきたのか!?」

シャーリー「暇つぶしにはこれだろ、やっぱり」

ペリーヌ「どうしてわたくしが食事を持っていかなくてはなりませんの……」

芳佳「いいじゃないですかー」

「だー!!!」

「あまいなーシャーリー」

ペリーヌ「賑やかですわね」

芳佳「シャーリーさーん、エイラさーん、食事をもって――」ガチャ

エイラ「ストレートフラッシュだー!! これで昼飯のおかず、私のものなー」

シャーリー「ま、待て。あー……よし、こうしよう。飲み物をベットする。それでいいだろ?」

エイラ「ふふふ。いいぞ。……ん?」

シャーリー「おぉー、宮藤、ペリーヌ。メシ、持ってきてくれたのか?」

ペリーヌ「あなたたちは……あなたたちは……ご飯抜きですわ!!! ふんっ!!!」

芳佳「ミーナ中佐には黙ってますから……あはは……」

シャーリー「それは困る!! こっちはお腹すいてるんだ!!!」

エイラ「まてよー!! 宮藤まで意地悪すんなぁー!!! もう賭けはしないってー!!! 許してくれー!!!」


おしまい。

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