結衣「着信アリ」(69)

~結衣宅~

~23時~


プルルルー


結衣「あれ、電話だ……誰だろ、いまごろ」ピッ

結衣「もしもし?」


『はあはあ、お姉ちゃん、今どんな下着はいてるの?』


結衣「履いてないよ」


『ええ!?結衣って1人の時は下着はいてないの!?』


結衣「そんな訳ないだろ……で、何なの、京子、こんな時間に」

『なんだよー、ようがないと電話しちゃてけないの?迷惑だった?』


結衣「そんな事ないけどさ、何かあったのかなと思って」


『別に何もないよー、ただ、おやすみって言いたかっただけ!』


結衣「そっか……」


『おやすみ、結衣』


結衣「おやすみ、京子」


『今日はちょっと寒いから、ちゃんと布団かぶって寝るよーに』


結衣「判ってるよ……京子も、ちゃんと暖かくして寝てね」


『ほーい!』

『そういえばさー』


結衣「寝るんじゃないのかよ」


『いーじゃん、眠くなるまでお話してようよ~』


結衣「はぁ……しょうがないなあ、京子は」


『でね、でね!』

~1時~


『それでさ、その水族館の魚、凄く可愛いんだって!』


結衣「じゃ、今度見に行こうか……って、もう1時!?」


『うお、ほんとだ』


結衣「そろそろ寝ようか、明日も早いし」


『ん……じゃあ、そろそろ切るね~』


結衣「うん、おやすみ、京子」


『おやすみ、結衣』

『……』


結衣「……」


『……切らないの?』


結衣「え、京子から切るんじゃないの?」


『あ、うん……じゃあ、切るね~」


結衣「うん」


『……』


結衣「……」

結衣「……って、何時まで切らないんだよっ」


『えへへ、何か電話って自分から切りにくくない?』


結衣「はぁ……じゃあ、2人一緒に切ろっか」


『おう、ナイスアイデア!』


結衣「じゃあ、いちにっさんで切るね?」


『あー!その前に!』


結衣「え、なに?」

『明日の晩……って、もう今日の晩か、遊びに行ってもいーい?』


結衣「え、朝でもいいだろ、その話題」


『あ、それもそっか……』


結衣「……はぁ、別にいいよ」


『え?』


結衣「今夜、遊びに来るんだろ?」


『……うん!』

『じゃあ、いちにっさんで切るね!』


結衣「うん」


『いちっ』


結衣「にっ」


『さんっ』


プチッ


結衣「……」

結衣「おやすみ、京子」


プチッ

~翌日・夜~

~結衣宅~


ピーポーピーポーピーポー


結衣「あれ、何だろ、遠くの方でサイレンが……救急車?」


プルルルー


結衣「ん?着信音が……誰からだろ」

結衣「……番号は、非通知か」

結衣(うーん、どうしよう……まあ、いっか、出ちゃえ)ピッ

結衣「……もしもし、船見です」

『もしもし、わたし、京子』


結衣「京子?」


『いま、駅前に居るの』


結衣「は?何やってるのそんな所で、今日は泊りに来るんじゃ……」


プチッ


結衣「切れちゃった……」

結衣(そういえばご飯はいらないって言ってたし、駅前で何か食べてから来るつもりなのかな)

プルルルー


結衣「まただ……番号は……非通知」

結衣(また京子かな……というか、何で非通知にしてるんだ)ピッ

結衣「もしもし?」


『もしもし、わたし、京子』


結衣「京子、今どこに……」


『今、コンビニの前に居るの』


結衣「え、随分歩くの早いね、京子」

結衣「じゃあ、私も今からコンビニに行くから……」


プチッ


結衣「お、おい?」

結衣(また切れちゃった)

プルルルー


結衣「……」ピッ

結衣「もしもし、京子?」


『もしもし、わたし、京子』


結衣「今コンビニなんでしょ?なら私も……」


『今、貴女の家の前に居るの』


結衣「……は?」


プチッ


結衣「また切れた……というか、幾らなんでも早すぎだろ、駅前からここまで5分もかかってないし……」

結衣(一応、部屋の前見てみるかな……)カチャカチャ


キィィ


結衣(……部屋の前の廊下には誰も居ない)

結衣「おーい、京子~?」


シーーーーン


結衣(もう、何やってるんだよ、京子は)


プルルルー


結衣(まただ)

結衣「……」ピッ


『もしもし、わたし、きょうこ』


結衣「京子、いい加減にしなよ、今どこに……」


『いま、あなたのへやの、おふろばにいるの』


結衣「……え?」


プチッ


結衣「……はぁ」

結衣(これ、完全に京子に悪戯だな)

結衣「取りあえず、扉は閉めて、と」カチャッ

結衣(お風呂場になんて誰も居るはずが……)トコトコ


ジャーーーーーーー


結衣「……え」

結衣(嘘、シャワーの音がする、誰も居るはずないのに)

結衣(わたし、出しっぱなしにしちゃってたのかな……)

結衣(いや、それは無いよね、だって、玄関に来る時に、お風呂場の前通ったもん)

結衣(その時は、こんな水の音なんて……)


ジャーーーーーー


結衣「……」ゾクッ

結衣「きょ、京子?そこに居るの?」


ジャーーーーーーーー


結衣(わ、わたし、何聞いてるんだろ、居るはずないのに)

結衣(そ、そうだよ、きっと私が水を止め忘れてただけなんだ)

結衣(そうに決まってる……)

結衣(だから、お風呂場の扉を開けても、誰も居ないよね)

結衣(誰も……)カチャッ


キィィィ



ジャバーーーーーーーーーーー


結衣(……誰も居ない)


キュッキュッ


結衣「……ハンドル閉めたら水も止まった……故障って訳でもないのか」

結衣(……やっぱり、私の閉め忘れだよ)

結衣「そうにきまって……」


プルルルー


結衣「……!」ビクッ

プルルルルルルー


結衣(ま、また電話だ……)

結衣(番号は……非通知)

結衣(な、なんなんだよ、京子、いい加減にしてよ……)

結衣「……そ、そうだ、これは京子の悪戯電話、怖くない、怖くない……」


ピッ


結衣「……」ドキドキ


『もしもしわたしきょうこ』


結衣「きょ、京子、悪戯は止めてよ」


『いまだいどころのまえにいるの』


プチッ

結衣「……だ、台所の前って」

結衣「は、はは、そんな嘘、すぐ判るのに」

結衣「……」

結衣「……」トテトテトテ

結衣(台所の蛇口は絶対閉めた)

結衣(だから、水は出てるはずない……)

結衣(大丈夫、大丈夫なはず……)

結衣「ほ、ほら、大丈夫だった……ははは」

結衣「ちゃんと水は止まってる」

結衣「……」フゥ

結衣(別に怖がってなかったけどね、京子悪戯電話だってのは最初からわかってたし)

結衣(けど、脅かされたままっていうのはちょっと癪だな……)

結衣「……よし、京子の為に用意してたラムレーズン、半分食べちゃお」

結衣「京子、悔しがるだろうなあ」クスクス

結衣「えーと、今日帰りに買ったのが冷凍庫の中に……」


パカッ


結衣「……え」

結衣「ラムレーズンが……ない」

結衣「……え、うそ、さっき、さっきここに入れたのに……」ガサガサ

結衣「な、なんで、何でないの……」ガサガサ


プルルルルーーーー


結衣「……!」ビクッ


プルルルルーーーー


結衣「……」


プルルルルーーーー

結衣「……」ピッ


『もしもしわたしきょうこ』
「もしもしわたしきょうこ」


結衣(あれ……声が、二重に)


『いまふとんのなかにいるの』
「いまふとんのなかにいるの」


結衣(布団って……私の後ろに敷いてあるはず……)

結衣(というか……わ、わたしの、後ろ)

結衣(うしろから、声が)

結衣(した)

結衣「……」ソーッ

結衣(……うそ、布団が、盛り上がってる)

結衣(さっさきまでは、さっきまではあんなに盛り上がってなかったのに)

結衣(まるで、誰かか布団の中に居るみたいに、盛り上がってる……)


プルルルーーー


結衣(違う、これはきっと違うよ)


プルルルーーー


結衣(この中には誰も居ない、きっと布団がたまたまこういう形になっただけで……)


プルルルーーー


結衣(た、確かめないと……)

プルルルーーー


結衣「確かめないと……こんなの、ただの悪戯電話だって、確かめないと……」


プルルルーーーー


結衣「わたし、わたし、おかしくなっちゃう……」


プルルルーーーー


結衣(……布団の端を掴んで)ガシッ

結衣(い、いっきに……)




結衣「…………っ!」グイッ






京子「へろう!」ニコッ


結衣「……」

京子「……」テヘペロ

結衣「何やってるの……」

京子「いやあ、お布団の中で食べるラムレーズンって絶品だよね」

結衣「……どうやって入ったの」

京子「こないだ合鍵作ったから、そーっと入ったー、で、お風呂場に隠れてたの」

結衣「……じゃあ、さっきの電話は」

京子「電話で結衣を玄関までおびき出して、その隙に台所に行ってラムレーズンをゲットする作戦です!オス!」

~結衣宅~

~23時~


京子「ねー、結衣ー、いい加減、機嫌治してってば」クイクイ

結衣「……」プイッ

京子「私が悪かったって、ごめん!」

結衣「……」

京子「せっかく一緒の布団で寝てるんだし、こっち向いてよ~」クイクイ

結衣「……」

京子「もう……」シュン

結衣(……明日までは絶対口きかない)

結衣(ちょっとは懲りるといいんだ)

京子「……」

結衣(……完全無視はちょっとやり過ぎたかな……)

結衣(けど、今さら喋りかけるのも……何か、すぐに怒りを収めたみたいでやだし)

結衣(はぁ……)


プルルルーーーー


結衣(え、電話?)

結衣(番号は……また非通知か)

結衣(……)ピッ

『もしもし、わたし、京子』


結衣「……うん」


『いま、あなたの後ろに居るの』


結衣「……知ってる」


『あのね』


結衣「……なに」


『おやすみなさい』


結衣「……」プッ

『もう、何笑ってるの』


結衣「……それ言う為だけに、電話してきたの?」


『……うん』


結衣「……はぁ、もう、しょうがないなあ、京子は」


『……』


結衣「おやすみ、京子」


『う、うん!おやすみ!』パァッ


結衣「ちゃんと暖かくして寝なよ」


『結衣こそ、私に布団取られるなよ~?』


結衣「ふふふ、気をつけるよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ぷるるーーー

ぷるるーーー

もしもし、わたし、きょうこ

いま、ゆいといっしょに ゆめのなかにいるの

いっしょに、ひつじさん、かぞえてるの

あさまでにかぞえおわるかなあ

ひつじがいっぴき

ひつじがにひき

ひつじがさんびき

………

……




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ぷるるるーーー


結衣(んー、また電話だ……)

結衣(どうせ京子からだろうなあ……まあいいや、京子は私が抱っこしてるし、出なくても……)


ぷるるるるるるるるーーー


結衣(もう、京子しつこいなあ……わたし、もう怒ってないから、直接言えばいいのに……)

結衣(むにゃ……)ギュッ

京子「ふご……あれ、ゆい、目覚まし時計なってるよ……」ファー


ぷるるるるるるるるるるるるるるるるるーーー


京子「え」

京子「も、もうこんな時間!?ゆ、結衣起きて!」ユサユサ

結衣「ん……なに……」

京子「ほら、もうこんな時間!急いで学校行く準備しないと!」

結衣「え……ええ!?」ガバッ

京子「急いで急いで!」バタバタ

結衣「うわあ!目覚まし時計の音と電話の音間違えた!?」バタバタ

結衣「も、もう!京子のせいだよ!夢の中でまで電話してくるからっ!」バタバタ

京子「夢の中まで責任持てないって!」バタバタ

~結衣宅~

~夜~


結衣「はぁ……今日は遅刻はするわプリントは忘れるわで、散々だったなあ……」


プルルルーーー


結衣「ん、携帯だ……誰だろ」ピッ


『京子ちゃんでーす!』


結衣「なに?」


『今日、泊りに行ってもいーい?』


結衣「昨日の今日なのに……ま、まあ、いいよ」


『えへへ、ありがと、結衣大好き!』
「えへへ、ありがと、結衣大好き!」ギュ

完!

同じ布団の中に居る京子ちゃんが電話で『あなたの後ろに居るの♪』と伝えて来る


ってシュチがやりたかっただけのSSでしたー
ご飯行ってきますー

「本当の京子ちゃんは実は事故で死んでいて……」的なホラー要素は今回は無いのでー

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