美緒「基地内で賭博が横行しているようだ」エイラ「大変ダナー」 (106)

―格納庫―

「勝負」

エイラ「――フルハウス」

「が……!?」

エイラ「それじゃ、悪いけど貰っていくな」

「くそ……」

「馬鹿野郎。中尉に勝てるわけないって言っただろ」

エイラ「そんなの分からないだろ。魔法は使ってないんだ。お前らでも私に勝てるかもしれないって」

シャーリー「ふんふーん」

エイラ「そこのバニー。飲み物くれ。ミルクな」

シャーリー「りょーかーい」

エイラ「次、誰が私と勝負するんだ? 私に勝てば三年分の給料が手に入るんだ。かかってこいよー、ほらぁー」

シャーリー「ミルクもってきたぞー」テテテッ

―別の日 食堂―

サーニャ「……」

ペリーヌ「サーニャさん、珍しいですわね。こんな時間から食堂にいるなんて」

サーニャ「おはようございます。ペリーヌさん。これを見ていて……」

ペリーヌ「これは……。ピアノのカタログ、ですか?」

サーニャ「はい」

ペリーヌ「欲しいのなら中佐に言うしかないと思いますけど」

サーニャ「そういうわけじゃ……」

芳佳「あ、ペリーヌさん! ここにいたんですか」

ペリーヌ「どうかしまして?」

芳佳「坂本さんが呼んでます。緊急招集だって」

ペリーヌ「わかりましたわ」

サーニャ「私も行きます」

―ブリーフィングルーム―

ミーナ「みなさん。最近、この基地で賭博が盛んであることは知っているかしら?」

サーニャ「賭博……?」

芳佳「知ってる、リーネちゃん?」

リーネ「ううん。聞いた事ないよ」

ルッキーニ「シャーリーはぁ?」

シャーリー「んー? しらないなぁ」

バルクホルン「賭博だと? ここの者達は何を考えているんだ。軍規違反だろうに」

エーリカ「バレないようにしないとねー」

バルクホルン「そういう問題ではない」

ペリーヌ「と、賭博……」

美緒「かなり横行しているしてるようでな。一晩で一月分の給与を無くしている者もいるようだ」

バルクホルン「賭博行為を行っている者は分かっているのか、少佐」

美緒「それを訊きたくてお前たちを呼んだ。誰でもいい。何か知っていることはないか?」

バルクホルン「賭博行為を行っている者は分かっているのか、少佐」

バルクホルン「賭博を行っている者は分かっているのか、少佐」

サーニャ「エイラ、知ってる?」

エイラ「知るわけないだろ。そんなこと」

サーニャ「そうよね」

エイラ「どーせ、バカがやってんだろ。金を捨てて何が楽しんだろうな」

ペリーヌ「……」

美緒「予想はしていたが、やはり知っている者はいないか」

ミーナ「まぁ、知っていたら私たちも色々と訊かなきゃいけなくなるから良かったけど」

バルクホルン「複数人が行っているのだろう? それなら虱潰しに探せばきっと見つかるはずだ」

美緒「現場を押さえない限りは難しいだろうがな」

バルクホルン「ならば、現場を押さえればいい。私も注意しておく」

美緒「助かる」

バルクホルン「ハルトマン。お前も施設内の見回りに参加しろ」

エーリカ「えー!? なんでー!?」

バルクホルン「何を言っているんだ!!! それでもカールスラント軍人か!!!」

芳佳「私たちも注意しよう」

リーネ「う、うん。でも、怖くて注意できないよぉ」

ルッキーニ「そのときは私を呼んで! パンチするから!!」

芳佳「わーい。ルッキーニちゃん、頼もしい!!」

ルッキーニ「にひぃ!!」

ペリーヌ「盛んに行われているなら……。わたくしも調べてみますわ」

エイラ「よし」

サーニャ「エイラも探すの?」

エイラ「サーニャ、一緒に寝よう」

サーニャ「……うんっ」

ミーナ「……はぁ」

美緒「エイラとシャーリーが正直に話すとは思ってなかったさ。まぁ、これでやめてくれるとありがたい」

ミーナ「そうね。でも、このままでいいの? 一応、話ぐらいは……」

美緒「数人の衛兵から証言は得ているが、エイラとシャーリーが賭博行為に興じているとは信じられんしな。問い詰めてもあいつらが素直に答えるとも思えん」

―夜 格納庫―

「……」

エイラ「どうした? 勝負するのか? しないのか?」

「……」

エイラ「早くしろってー」

シャーリー「……! エイラ、誰か来たみたいだ。この足音は……バルクホルンだ」

エイラ「わかった。今日は終わりな」

「はぁ……たすかったぁ……」

エイラ「私はワンペアだったけどな」

「なぁ……!?」

シャーリー「いくぞ、エイラ!」ダダダッ

エイラ「よし」

バルクホルン「――誰かいるのか!?」

バルクホルン「……」

バルクホルン「ここでもないのか。本当に行われているのか……。次は風呂場でも確認するか」

―別の日―

ミーナ「美緒。いいかしら?」

美緒「どうした?」

ミーナ「参加者は多くなっているみたいね」

美緒「そうか……。ということはまだエイラとシャーリーも……」

ミーナ「ええ。何度か格納庫や武器庫内から人の気配を感知できたけど、現場に行っても誰もいなくて」

美緒「シャーリーは耳がいい。エイラは未来が見える。気配を感知してから行っては遅いし、待ち伏せしては早すぎる」

ミーナ「これじゃあいつまで経っても……」

美緒「……」

ミーナ「やっぱり、やってみる?」

美緒「しかし、できるか?」

ミーナ「エイラさんは近い未来しか読み取れない。間諜には気がつけないはず」

美緒「警戒されなければいいがな」

ミーナ「とにかく、やってみましょう。間諜役は誰がいいかしら?」

美緒「エイラにはサーニャが適任だが、あからさますぎるしな……うーむ……」

―坂本の部屋―

美緒「悪いな、急に呼びつけて」

芳佳「いえ、それでなんですか?」

ペリーヌ「何でも仰ってください」

エーリカ「ふわぁぁ……賭博のことでしょ?」

美緒「そうだ。お前たち、何か分かったことはあるか?」

芳佳「いえ、何も。夜は早寝なんで」

美緒「ペリーヌは?」

ペリーヌ「生憎と。気をつけてはいるのですが……。証言も曖昧で……」

エーリカ「少佐とミーナはある程度掴んでるんでしょ? だから、裏で行われてることなのに横行してるなんて言ったんだろうし」

芳佳「えぇぇ!? そうなんですか!?」

美緒「ああ。ハルトマンの言うとおりだ。私とミーナは複数の証言を得ている」

ペリーヌ「では、どうして摘発できないのです?」

美緒「そのグループにエイラとシャーリーがいるからだ」

エーリカ「あー、そりゃ無理だよ。私でも捕まえられないね」

芳佳「ほ、本当なんですか!?」

美緒「無論、真相はまだわからん。直接現場を見たことがないからな」

ペリーヌ「エイラさんが……」

エーリカ「で、私たちを呼んだ理由は?」

美緒「……」

エーリカ「私はやらないよー」

美緒「まだ何を言っていないだろう」

エーリカ「じゃ、訓練あるから」

芳佳「ハルトマンさん……」

美緒「……仕方ない。宮藤、ペリーヌ。エイラとシャーリーに巧く近づき、賭博に参加できるかどうか訊いてくれ。そしてできるのなら、暫く賭博に付き合ってほしい」

芳佳「む、むりですよぉ……」

ペリーヌ「少佐。そんなこと、したくありませんわ」

美緒「衛兵や整備班からエイラとシャーリーが金を巻き上げていると報告もあった」

芳佳「な……エ、エイラさんが……」

美緒「頼む。協力してくれ」

―通路―

芳佳「どうしますか、ペリーヌさん?」

ペリーヌ「あそこまで言われては……やるしかありませんわねっ」

芳佳「でも、どうやって近づけばいいんですか!?」

ペリーヌ「うーん……」

芳佳「そうだ!! バルクホルンさんに相談を――」

ペリーヌ「ちょっと!! 何を言っていますの!!!」

芳佳「だ、だって、私たちだけじゃ……!!」

ペリーヌ「いいから落ち着きなさい。全く!」

芳佳「すいません。だって、私……エイラさんとシャーリーさんがそんなことをしているなら……」

ペリーヌ「わたくしだって許せませんわ。一刻も早く二人をとめたいと思っています」

芳佳「ですよね」

ペリーヌ「そんなことにお金を使うなら、ガリア復興に支援してほしいですわ……!!!」

芳佳「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「わたくしだって……楽に稼げるなら……稼ぎたい……のに……!!」

―エイラの部屋―

エイラ「んー……」ペラッ

シャーリー「エイラ、今暇だろ?」

エイラ「どうしたー?」

シャーリー「少佐が宮藤とペリーヌを遣わせたみたいだ。どうする?」

エイラ「そうかぁ……。少佐も本気だな」

シャーリー「もういいんじゃないか?」

エイラ「なにいってんだ。まだ足りねえ」

シャーリー「まぁ、いいけど」

エイラ「少佐たちを油断させるためにも宮藤たちは参加させてやるか」

シャーリー「おいおい」

エイラ「で、宮藤とペリーヌをこっちに引き込むんだ」

シャーリー「宮藤はともかく、ペリーヌは無理だろ。殺されたって少佐派だろうし」

エイラ「それじゃあ、宮藤だけ」

シャーリー「適当だな……」

―食堂―

シャーリー「ルッキーニ、あーん」

ルッキーニ「あー……」

ペリーヌ「あのぉ、シャーリー大尉……?」

シャーリー「なんだ?」

ペリーヌ「お、お話があるのですが……。できれば、二人きりで……」

ルッキーニ「ペリーヌ、見てわかんないのー? 今は食事中だよー?」

ペリーヌ「一人で食べられるでしょう!?」

シャーリー「はいはい。ルッキーニ、ちょっと行ってくる」

ルッキーニ「えー!?」

ペリーヌ「ありがとうございます」

シャーリー「――で、話って?」

ルッキーニ「なんなの?」

ペリーヌ「ルッキーニさんは、むこうに……!!」ググッ

ルッキーニ「うにゃぁぁ……しゃーりゅぃー……」

シャーリー「――賭博?」

ペリーヌ「とある衛兵から話を聞きまして」

シャーリー「あははは。そんなの嘘に決まってるだろ」

ペリーヌ「で、ですが……!!」

シャーリー「私がバニースーツ着て、ウェイトレスみたいなことしてたっていうの? ありえないだろー」

ペリーヌ「あの、わたくしも賭博に参加したいのです!! ガリア復興資金はいくらあっても足りなくて……!!」

シャーリー「なるほどね……」

ペリーヌ「お願いします。少佐にも中佐にも秘密にいたしますから!!」

シャーリー「全員に対して秘密だ」

ペリーヌ「え?」

シャーリー「……」

ペリーヌ「は、はい!! 勿論ですわ!! 全員に秘密にします!!」

シャーリー「なら、今夜私の部屋に来てくれ。案内するからさ」

ペリーヌ「は、はぁい!! ありがとうございます!!」

シャーリー「ふふん……」

―夜 武器庫―

エイラ「で、宮藤。ポーカーは知ってるのか?」

芳佳「わかりません。あ、でも、ババ抜きと神経衰弱なら自信あります!!」

エイラ「……」

シャーリー「おーい。すまん、ちょっと遅れた」

エイラ「遅いぞ。お前目当てで来てる奴だって増えてきて――」

ペリーヌ「……あ、あら、エイラさんまでいらしたの?」

エイラ「なんで……」

シャーリー「新しい助っ人さ。もう一輪の花があってもいいだろ?」

エイラ「シャーリー、ちょっとまて」

シャーリー「味方は多いほうがいい」

エイラ「でもなぁ……」

ペリーヌ「なにか? それよりもあの、ルールのほうを……」

シャーリー「ペリーヌはこっち。衣装、貸してやるから」

ペリーヌ「へ? い、衣装って……?」

エイラ「まずは役を覚えろ、いいな?」

芳佳「は、はい……」

エイラ「そこのバニー、ミルクー」

シャーリー「りょーかーい」

「ま、まさか、宮藤軍曹とクロステルマン中尉まで参加しているなんて……」

エイラ「あそこのウサギに飲み物でも注文するといい」

ペリーヌ「うぅ……どうして……わたくしが……このような格好に……」

シャーリー「似合ってるぞ、バニー」

ペリーヌ「シャーリー大尉とは違うんですっ!!」

シャーリー「猫のほうがよかったか?」

ペリーヌ「そういう問題ではありませんわっ!!」

エイラ「さ、やるぞ」

「きょ、今日はこれだけもってきました」

エイラ「上々だな。始めるか」

芳佳(こんな大金を毎日……? エイラさん……)

エイラ「――キングのスリーカード」

「がぁぁ……」

エイラ「これで持ち金は0。終わりだ」

「まけた……」

「中尉、魔法使ってないですよね?」

エイラ「耳でてるか? ほら、尻尾もでてないだろ。言いがかりはやめろよ。クリーンな賭博しかしてないって」

ペリーヌ「あの……」

エイラ「なんだ?」

ペリーヌ「それだけのお金はそどうしていますの?」

エイラ「すぐに使うとバレるからな。貯めてる」

ペリーヌ「で、エイラさんに一度でも勝てば」

エイラ「私の貯蓄とこれで貯めた金は全部やる。そういうゲームだ。スリルあるだろ?」

芳佳「シャーリーさんはやらないんですか?」

シャーリー「流石に全額搾り取られるのは怖いからなぁ」

ペリーヌ「なるほど……。これだけのお金が……」

エイラ「やるか?」

ペリーヌ「わ、わたくしは……」

芳佳「やります!!」

ペリーヌ「み、宮藤さん!?」

芳佳「(これでエイラさんのお金がなくなれば、エイラさんはもう賭博ができなくなるじゃないですか)」

ペリーヌ「(そうかもしれませんけど。貴女、勝てる見込みはあるんですの?)」

芳佳「(ロイヤルストレートフラッシュが出れば勝てます!! ここに書いてました!!)」

ペリーヌ「バッ……いえ、もう勝手におやりなさい」

芳佳「エイラさん、やりましょう。私もお金欲しいですから!!」

エイラ「いいぞ。こい」

ペリーヌ「宮藤さん、がんばってください」

芳佳「はいっ!! がんばりますっ!!」

エイラ「……」

「大尉。写真、いいですか?」

シャーリー「いいぞ。ポーズはどうする?」

エイラ「……2のワンペアだ」

芳佳「これ、何かの役です!!」バッ

エイラ「ダメダナ」

芳佳「……」

ペリーヌ「宮藤さん。これで5敗目ですが、まだ軍資金は残ってまして?」

芳佳「……いえ。今月はもう……一個のお芋すら買えません……」

ペリーヌ「はぁ……」

エイラ「終わりだな。ペリーヌはどうするんだ?」

ペリーヌ「……お金、今はありませんので」

エイラ「まぁ、バニーやってくれたからギャラは出してやるぞ。ほら」

ペリーヌ「いりませんわ!」バシッ

エイラ「……」

ペリーヌ「あ……。申し訳ありません。終わりなら失礼します。少佐に見つかりたくはないので」

シャーリー「ペリーヌ。お前のバニー姿、写真におさめたいってやつがいるけどー? 一枚で結構な額になるけど、やらないか?」

ペリーヌ「お断りですわ!!」

芳佳「ペリーヌさーん、まってくださーい!!」

シャーリー「さーて、ねるかー」

エイラ「そうだな」

シャーリー「エイラも程々にしとけよ」

エイラ「シャーリーはいつ裏切ってもいいんだぞ? 別に私に付き合う必要なんてないしな」

シャーリー「私が来なくなったら客も来なくなるだろ?」

エイラ「まぁ、そうだけどなー」

シャーリー「バニーといえばシャーリー、シャーリーといえばバニーだ」

エイラ「これ、今日の分な」

シャーリー「サンキュ。それじゃ、おやすみ」

エイラ「おやすみ」

エイラ「えーと、今日はかなり儲かったな……」

エイラ「ふふ……」

シャーリー「エイラ、まずいっ。中佐だ。にげろー」

エイラ「おぉ。ありがとなー」

―翌日 サーニャの部屋―

エイラ「サーニャぁ」

サーニャ「……ん?」

エイラ「これ、新しいカタログ。こっちはアンティークだ。値打ち物もあるかもな」

サーニャ「エイラ、嬉しいけど……」

エイラ「いらないか?」

サーニャ「そういうわけじゃないの」

エイラ「よかった。私もさ、いい加減サーニャの演奏を聴きたいんだ」

サーニャ「今度、ミーナ隊長に頼むわ」

エイラ「前も言ったけど、無理だって言われただろ? でも、私の自腹なら問題ない」

サーニャ「ありがとう。でも、エイラのお金なんだから自分で使ったほうがいいわ」

エイラ「サーニャのために使うんだ。惜しくない」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「サーニャ……ふふっ……」スリスリ

サーニャ「……」

―坂本の部屋―

美緒「ふんっ!!!」ゴンッ

芳佳「ぁう!?」

美緒「全額使うとは何をしている?」

芳佳「ペリーヌさん、坂本さんに言ったんですかぁ?」

ペリーヌ「当然でしょう。報告義務を果たしたまでですわ」

美緒「まぁ、いい。これでエイラとシャーリーが賭博に加担、いや、始めたのはわかった」

ペリーヌ「今すぐ、エイラさんとシャーリーさんを連れてきますわ」

美緒「証拠がない。シラを切られる」

芳佳「で、でも、私たちはこの目で!!」

美緒「現場の写真は?」

ペリーヌ「それは……」

美緒「取り押さえるのも今のお前たちでは無理だろう。だから、奴らに隙ができるまで暫くは付いていろ」

ペリーヌ「……わかりましたわ」

美緒「頼むな」

―食堂―

バルクホルン「一体、どういうことだ。情報が全く出てこないぞ……」

エーリカ「そりゃトゥルーデが怖いからじゃないの?」

バルクホルン「お前はもう少しやる気をだしたらどうなんだ!?」

エーリカ「めんどくさーい。ねむたーい。だるーい」

バルクホルン「……」チャカ

エーリカ「銃殺はやめてよぉ!?」

バルクホルン「盛んに行われているんじゃないのか……」

エーリカ「……」

リーネ「――芳佳ちゃん、昨日の夜部屋にいなかったよね?」

芳佳「え!? そ、そんなことないよ?」

リーネ「私、部屋に行ったんだよ? 何度呼んでも出てきてくれなくて……」

芳佳「ご、ごめん、リーネちゃん。昨日は早く寝たんだ。だから出れなかったの」

リーネ「……そう。ごめんね」

芳佳「ううん。私のほうこそごめんね」

―格納庫―

シャーリー「あー!! 今日はこの辺にしとくかぁー」

ルッキーニ「シャーリー!!! あそぼー!!!」

シャーリー「おー。いいぞー」

ルッキーニ「んにゃ?」

シャーリー「ん……なんだ、サーニャ?」

サーニャ「あの……シャーリーさん……エイラのことで……」

シャーリー「エイラがどうかしたか?」

ルッキーニ「エイラなら部屋じゃないのー?」

サーニャ「いえ、最近エイラの様子が少しおかしいような気がして」

シャーリー「気のせいだろ?」

ルッキーニ「エイラはいつも変だしー」

シャーリー「あはは、いえてるなぁ」

サーニャ「そうですか……」

シャーリー「なにか違和感でもあったのか?」

サーニャ「違和感というか、妙に優しくて……」

シャーリー「サーニャにはいつも優しいだろ?」

サーニャ「ええ、はい……」

ルッキーニ「もー、はっきりいえー!!」グニーッ

サーニャ「ふぁふぇんふぁふぁい……」

ルッキーニ「どったの?」

サーニャ「ピアノを……買ってくれるって……」

シャーリー「そういえば欲しがってたな」

サーニャ「それもかなり高級のモノや価値のあるモノを勧めてくれるんです」

シャーリー「今までもなかったのか?」

サーニャ「枕とか小物はよく貰いますけど、ピアノなんて」

シャーリー「そうか……」

ルッキーニ「いいじゃん、もらっちゃえばー」

サーニャ「……そうね。考えてみるわ。ありがとう、ルッキーニちゃん」

ルッキーニ「にひぃ! サーニャ、ピアノもらったらきかせてねー!! あたしもサーニャの演奏だいすきだからー!!」

―エイラの部屋―

エイラ「……」ペラッ

シャーリー「――エイラ?」

エイラ「ノックぐらいしろー」

シャーリー「誰が来るのかは分かるだろ。それより、さっきサーニャから聞いたぞ」

エイラ「何をだ?」

シャーリー「ピアノの話だよ。私は聞いてないぞ」

エイラ「言ってないからな」

シャーリー「……降りるぞ?」

エイラ「勝手にしろ」

シャーリー「私の目を見ろ」

エイラ「なんだ?」

シャーリー「……わかった。もう少し付き合うよ」

エイラ「別にいいのに」

シャーリー「今、勝手にしろって言っただろ? させてもらうよ」

―別の日 夜 武器庫―

「あー!!! だめだぁー!!!」

エイラ「はい。没収な」

芳佳「どんどん貯まってますね……」

エイラ「給料日のあとは儲け時だかんなぁ」

ペリーヌ「……」

エイラ「ペリーヌもどうだ? これだけの金だ。欲しいだろ?」

ペリーヌ「いりませんわ。そんな汚らわしいお金なんて」

エイラ「そうか?」

シャーリー「はーい。負けた人はこっちにこーい」

「うぅぅ……大尉……」

シャーリー「いくら負けた?」

「全額です……」

シャーリー「そうかそうか。残念だったな。撫でてやるから元気だせ」ナデナデ

「大尉……くっ……これがあるからまたきちゃうんだよなぁ……」

芳佳「エイラさん!!! 勝負してください!!!」

エイラ「お。給料日のあとだからやる気十分だな」

芳佳「はい!!」

ペリーヌ「み、宮藤さん?」

芳佳「まかせてください。必勝法を考えてきましたから」

ペリーヌ「ひ、必勝法……?」

エイラ「面白いな」

芳佳「エイラさん!! 神経衰弱で勝負してください!!!」

エイラ「……」

ペリーヌ「あ、あなた……」

芳佳「これでみっちゃんに負けたことはないんです!!」

エイラ「誰だ、それ?」

芳佳「さぁ、エイラさん!! 賭けてください!!」

エイラ「まぁいいけど。神経衰弱な。その前に……。バニー、ミルクー」

シャーリー「りょーかーい」テテテッ

―通路―

リーネ「よしかちゃーん」

リーネ「……芳佳ちゃーん。芳佳ちゃん。よーしーかーちゃーん」

リーネ「……」

リーネ「やっぱり、いない……。ここ最近、ずっと……」

ミーナ「リーネさん、何をしているの? もう消灯時間よ?」

リーネ「ミーナ中佐……。あの、芳佳ちゃんがいないみたいで……」

ミーナ「宮藤さん? 寝ているんじゃないの?」

リーネ「いえ、居ませんでした」

ミーナ「トイレじゃないの?」

リーネ「見ました。お風呂も、食堂も」

ミーナ「そ、そう……」

リーネ「芳佳ちゃん、夜遅くまで部屋に戻ってこないんです」

ミーナ「……」

リーネ「ミーナ中佐、芳佳ちゃんはどこにいるんですか?」

―武器庫―

エイラ「これでラストな」

芳佳「……」

ペリーヌ「宮藤さん、顎が外れましたの?」

芳佳「だ、だって……ペリーヌさん……わたしの番が一回しか……それでエイラさんが……全部……全部……」

ペリーヌ「神経衰弱なんてエイラさんの独壇場になるに決まっているでしょう?」

芳佳「エイラさん!! 魔法使ったんですか!?」

エイラ「使ってないっていってるだろ」

芳佳「こんなの変ですよー!!!」

エイラ「ほら、賭けた分よこせ」

芳佳「あぁ……また一個のお芋すら……あぁ……」

シャーリー「……エイラ、誰か来る」

エイラ「誰だ?」

シャーリー「中佐だ。逃げるぞ」

エイラ「わかった。今日は解散だ」

―通路―

エイラ「ふふーん。宮藤には悪いけど、今日はかなり――」

エイラ「……!?」

リーネ「……」

エイラ「なんだ、リーネか。びっくりさせるなよ」

リーネ「エイラさん、芳佳ちゃんのこと知っていますよね」

エイラ「宮藤? 部屋だろ?」

リーネ「嘘はつかないでください」

エイラ「なんだと?」

リーネ「遠くから見てました。シャーリーさんにバレないほど遠くから」

エイラ「お、おま……」

リーネ「武器庫で何をしていたんですか?」

エイラ「……」

リーネ「芳佳ちゃんとペリーヌさんと一緒に何をしていたんですか? 教えてください」

エイラ「あー……それはー……」

―翌日 食堂―

リーネ「――といわけです」

バルクホルン「まさかエイラとシャーリーがそんなことをな……。道理で捕まらないわけだ」

エーリカ「リーネはよくバレなかったなぁ」

リーネ「一時間ほど前から見張っていましたから」

バルクホルン「それでエイラは止めるつもりはないと言っていたのか」

リーネ「はい」

エーリカ「どうする?」

バルクホルン「明らかに軍法会議ものだが、ミーナが黙認している時点でまたいつかの宮藤と同じような処分になるだろうな」

エーリカ「別にミーナは黙認してるわけじゃない?」

バルクホルン「エイラから口止めはされなかったのか?」

リーネ「エイラさんも分かっているみたいです。ミーナ中佐に知られていることは。だから、私には何も……」

バルクホルン「いい度胸だ。――ハルトマン」

エーリカ「ん?」

バルクホルン「行くぞ。愚かな衛兵はともかく、宮藤の給与は取り戻さなくてはな」

―坂本の部屋―

美緒「であぁ!!!」バシンッ

芳佳「ぃたぁぃ!!!」

美緒「宮藤。金は大切に使えと教えたはずだが?」

芳佳「……ごめんなさい。神経衰弱は自信があったんですよ。みっちゃんには負けたことなかったから……」

美緒「しかし、リーネが独断で動くとは予想外だったな」

ペリーヌ「ええ。ただ、宮藤さんが絡むと以前から後先を考えないところはありましたけど」

芳佳(リーネちゃん……怒ってたなぁ……)

美緒「生真面目なリーネのことだ。バルクホルンやハルトマンに報告しているだろう」

ペリーヌ「少佐……あの……」

美緒「この際だ。全員に打ち明けるか」

芳佳「えぇぇ!? でも、そんなことしたらもうエイラさんとシャーリーさんは私たちのこと信じてくれなくなりますよぉ」

美緒「お前たちは別だろう。今まで一緒にいたのだからな」

ペリーヌ「シャーリー大尉が気が付いてなければ、ですけど」

美緒「皆に説明をしてくる」

―夜 倉庫―

エイラ「はい。総取りな」

「あぁぁぁ……!!!」

エイラ「ふっふっふっふー」

シャーリー「おーし、負けた人は私が慰めてやるからーこっちこーい」

芳佳「えーん!! シャーリーさーん!!」

シャーリー「また負けたのか?」ナデナデ

芳佳「大切な貯金がぁー」

シャーリー「可愛そうな宮藤だな……よしよし……」ギュッ

芳佳「……えへへ……」モミモミ

ペリーヌ「最近、宮藤さんがわざと負けているような気がしてきましたわ」

エイラ「……! シャーリー!! こらぁ!!」

シャーリー「なんだよ?」

バルクホルン「――まだやっているか?」

エーリカ「カジノ、はっけーん」

シャーリー「やべ……」

芳佳「バ、バルクホルンさん……」

ペリーヌ「あ、あの……これは……」

エイラ「シャーリー!! なんで言わないんだ!!!」

シャーリー「おかしいなぁ。宮藤、明日耳掃除してくれ」

エイラ「こういう裏切り方はやめろよぉ」

芳佳「は、はい」

シャーリー「膝枕でね」

バルクホルン「待て、シャーリー」

シャーリー「ん?」

バルクホルン「それは許さん。ミーナにしてもらえ」

シャーリー「怖いだろ」

バルクホルン「さてと、エイラ。何故、私が来たのかわかるな?」

エイラ「……なにもしてないぞ」

バルクホルン「私の今月の給与だ。全額ベットする」

芳佳「え!?」

ペリーヌ「大尉、どうして!?」

バルクホルン「どうせ、お前を取り押さえられるのは無理だ。ならば、正面から勝負してやる」

エーリカ「かっこいいー」

エイラ「本気か?」

バルクホルン「一回勝負だ。早くしろ」

エイラ「バニー、カード配ってくれ」

シャーリー「了解っ」

バルクホルン「お前がどうしてこんなことをしていのかはよく知らないが、深い事情でもあるのだろう」

エイラ「……」

バルクホルン「だが、やり方を間違えている」

エイラ「なら、どうしろっていうんだ? 善意でお金はくれないだろ?」

バルクホルン「……なに?」

シャーリー「――はい。どうぞ」

バルクホルン「……」

エイラ「……二枚かえる」

シャーリー「はい」

エイラ「……」

バルクホルン(8のスリーカードか……)

エイラ「怖いなら、降りてもいいぞ?」

バルクホルン「なに?」

エイラ「ここで降りたらベット分は返すって。今月宮藤みたいに貯金を切り崩す生活しなきゃいけなくなるんて、嫌だろ?」

バルクホルン「……」

バルクホルン(かなり強気だな……。いや、これは誘っているのか……)

エイラ「どうするんだ、大尉?」

バルクホルン(エイラは勝負して欲しくない……。つまり、役はできあがらなかったか、かなり弱い……)

バルクホルン「――勝負だ」

エイラ「マジか? まだ間に合う――」

バルクホルン「8のスリーカード」

エイラ「……4のフォーカード」

シャーリー「よしよし」ナデナデ

バルクホルン「クリスの……治療費がぁ……ちりょうひ……」ギュッ

シャーリー「そうだな、お前が悪いよな」ナデナデ

エイラ「だから、言ったのに」

エーリカ「私もやろうかなぁ」

エイラ「今日はもういいって。大尉の分ですごいことになったし」

エーリカ「なんだよー。やれよー」

エイラ「なら、やるか」

エーリカ「やったぁ」

エイラ「ツンツンバニー、カード頼む」

ペリーヌ「は、はい。――どうぞ」

エイラ「……」

エーリカ「……にひぃ」

バルクホルン「ハルトマン。その右手にあるカードはなんだ?」

エーリカ「な……!? なんでいうんだよぉー!!」

エーリカ「トゥルーデがしゃべったー!! かてたのにぃー!!!」ギュッ

シャーリー「不正はダメだろー」ナデナデ

エーリカ「かてたのに!! かてたのにー!!!」

エイラ「もういいか?」

ペリーヌ「エイラさん。もう終わりにしませんこと?」

エイラ「なんでだ?」

ペリーヌ「バルクホルン大尉にまで見つかってしまったんですわよ? もう言い逃れはできませんわ」

エイラ「証拠がないから何言われてもとぼけてればいいだけだろ」

ペリーヌ「そんなことで切り抜けられるとでも!?」

エイラ「切り抜ける」

ペリーヌ「どうしてそこまでするんですの?」

バルクホルン「エイラ。全額はいい。半額だけ返金してくれ」

エイラ「いやだ」

バルクホルン「シャーリー!! エイラの態度をどう思う!! 微塵の慈悲もないとは!!」

シャーリー「だから、強気で攻めたお前の所為だろ?」

―翌日 坂本の部屋―

美緒「――話は以上だ」

サーニャ「……」

美緒「信じられないという顔だな」

サーニャ「はい……。エイラがそこまでしているなんて……」

美緒「止めるなら早いほうがいいかもしれないな」

サーニャ「……今晩の夜間哨戒は少し遅れます」

美緒「そうか」

サーニャ「ありがとうごさいました」

ミーナ「よかったの。サーニャさんにまで話して……」

美緒「エイラが何をしたいのか……」

ミーナ「それはサーニャさんへピアノを贈るためでしょう? シャーリーさんがそう……」

美緒「それだけなら、大金をかき集める必要などない。とっくに購入できるほどあるはずだ。そもそも本気で買うつもりならエイラの給与だけでも事足りるだろう」

ミーナ「違う何かを買おうとしているの?」

美緒「それしかあるまい。そしてすぐにでも大金が欲しかったのだろう。でなければ、エイラがこんなことを実行するわけがない」

―エイラの部屋―

エイラ「……」ペラッ

エイラ「もうちょっとかなぁ」

サーニャ「――エイラ?」

エイラ「どうした、サーニャ?」

サーニャ「……」

リーネ「エイラさん、芳佳ちゃんたちのお金、返してください。とっても困ってます」

エイラ「参加したのは宮藤だろ」

リーネ「そんな言い方……」

サーニャ「エイラ。私のためじゃないんでしょ?」

エイラ「な、なにいってんだ。ピアノをサーニャのために……」

サーニャ「そんなお金で買ったピアノを私が受け取るわけないって、分かってるくせに……」

エイラ「うっ……で、でも、もうこんなに集めたんだ!! もう私は引き返せない!!」

リーネ「そんなことありません。まだ全く使っていないなら返せるはずです」

エイラ「誰がどれだけ使ったかなんて覚えてるわけないだろ」

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