結衣「ノアの箱舟」(134)

~娯楽部~


ザァザァザァザァザァ


京子「んー……蒸し暑いなあ」ゴローン

結衣「今日は雨だもん、しょうがないだろ」

ちなつ「はい、冷たいお茶ですよ~」

あかり「うわあ、ちなつちゃん、ありがとう」

京子「ちなちゅ、さんきゅっ♪」ゴクッ

ちなつ「あ、一気に飲みすぎですよ、京子先輩、量少ないんですから」

京子「だってー、暑いんだもん」プハー

結衣「やれやれ……雨が止めばもう少し凄くやすくなるんだろうけど……」


ザァザァザァザァザァ


≪世界人口 7037023434人≫




『雨は、一年間降り続いた』






≪世界人口 0000000004人≫



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あかり「ふあ…・…あれ、あかり、寝ちゃってた?」

あかり「……うわあ、凄い霧、周りがほとんど見えないや……」

あかり「みんな、何処に行っちゃったんだろ……」


あかりー


あかり「あれ、京子ちゃん?」


あかりちゃーん


あかり「ちなつちゃんも?」

あかり「京子ちゃーん!ちなつちゃーん!何処ー!」


ポーーーーーーー


あかり「……あれ、この音、汽笛……?」

あかり「あ……霧の中に、船が……船が見える」


あかりー

あかりちゃーん


あかり「京子ちゃん?ちなつちゃん?船に乗ってるの?」


ポーーーーー


あかり「あ、あ、船が、行っちゃう……待って、待ってよぉっ」

あかり「あかりを、あかりを置いてかないでっ!

あかり「京子ちゃん!」

あかり「ちなつちゃん!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あかり「置いてかないでっ!」ガバッ

あかり「……あ、あれ」ハァハア

あかり(こ、ここは……)

結衣「あかり、またうなされてたよ?大丈夫?」

あかり「あ……結衣、ちゃん……」

結衣「はい、お水……」

あかり「……ありがとう、結衣ちゃん」

あかり(そっか……ここは、ここは……)

あかり(あの、狭い廃墟の中だった……)


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

降り続いた雨は、大地を水没させた

今、私達は、水没から免れた廃墟の上層階で過ごしている

もう、何処にも行くことはできない

だって

だって


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ


この廃墟の周りは

全部

全部

海だから


結衣「また、あの夢見たの?」

あかり「……うん」

結衣「そっか……」

あかり「あ、あのね……おっきなお船に、京子ちゃんと、ちなつちゃんが乗ってるの……」

あかり「あかりは、それを追いかけるんだけど……だけど……」

あかり「追いつけなくて……」

あかり「それで、眼を覚ますの……」

結衣「……あかり、京子とちなつちゃんは」

あかり「う、うん、それは、判ってるんだ、判ってるの……」

あかり「あの日、あかり達の目の前で、京子ちゃん達、死んじゃったし……」

あかり「けど、けどどうしても、気になっちゃって……」

あかり「けど、けど、あかり、何となく予感がするんだ」

あかり「あの船は、きっと、あかり達の所に来てくれるって……」

結衣「……うん」ナデナデ

あかり「あ……」

結衣「そうだね、来てくれるって、希望を持とう……」ナデナデ

あかり「……結衣ちゃん」

結衣「ほら、あかり、寒いでしょ、おいで」

あかり「うん……」ギュッ

結衣「……」ギューッ

結衣「さっきね、あかりが寝てる間に、下の様子を見てきたんだ……」

あかり「……下の階?」

結衣「んー……まあ、そこまで行けなかったんだけどね」

あかり「じゃあ、水位が、また上がってきてるんだ……」

結衣「うん……もう、階段の所まで来てる」

あかり「……」

結衣「……」

あかり「結衣ちゃん……あかりたち、あかりたち……どうなっちゃうの」グスッ

結衣「もう、馬鹿だな、あかり、さっき言ったばかりじゃない……」ギュ

結衣「希望を持とうって」ナデナデ

あかり「けど、けどぉっ……」ヒック

結衣「お船がさ、きっと何時か来てくれるよ……きっと……」

結衣「さっ、落ち込んでても、仕方ない」ポンポン

結衣「そろそろお昼時だし、ご飯食べよ?」

あかり「……うん」

結衣「あかりは、コーンビーフとサバ味噌とどっちがいい?」

あかり「……さばみそ」

結衣「ん、それじゃ開けたげるね」キコキコ

あかり「……結衣ちゃん」

結衣「んー?」キコキコ

あかり「ありがとう……」

結衣「……うん」

あかり(結衣ちゃん、ずっとあかりを気遣ってくれてる……)

あかり(心配ばかりかけちゃ、駄目だよね……)

あかり(こんな事じゃ、結衣ちゃんのことを大好きだった京子ちゃんやちなつちゃんに、怒られちゃうよね)

あかり「……」ゴシゴシ

あかり「わ、わーい、あかり、さばみそ大好き!」

あかり「結衣ちゃん、いただきます、しよっ?」

結衣「あかりは現金だなあ、ご飯を貰ったら突然元気になって」クスクス

あかり「も、もう、ちがうよぉ!」プンプン


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

あかり「いただきますっ」

結衣「……いただきます」


モグモグモグ


あかり「結衣ちゃん、今日は何して過ごすの?」モグモグ

結衣「んー、本はもう全部読み終えちゃったし、ボードゲームとか、する?」モグモグ

あかり「うん、やろやろっ」

結衣「よし、それじゃ……」


コンッコンッ


あかり「……!」

結衣「……!」

あかり「……結衣ちゃん、いま、何か音立てた?」

結衣「ううん、私は何も……というか、扉の方から聞こえたような……」

あかり「……」

結衣「……」

あかり「お、お客さん、かな……」

結衣「そ、そんな訳ないよ……」

あかり「けど、けど、もしかしたら、私達以外に生き残ってる人が居たのかも……」

結衣「……仮にそうだとして……扉の向こうは、階段なんだよ?」

あかり「う、うん……」

結衣「階段は、もう水没してるんだ、だから……」

あかり「あ……」

あかり「……」

結衣「……」

あかり「……」

結衣「……よし」

あかり「ゆ、結衣ちゃん?」

結衣「こうしてても、仕方ない……扉を開いて、見てみようよ」

あかり「……けど、けど、お化けとかだったら」

結衣「もう、あかりは怖がりだなあ……」ナデナデ

あかり「ふあ……」

結衣「もし、お化けだったら、私が守ってあげるから」

あかり「結衣ちゃん……」

あかり「あ、あかりも、手伝うっ」

結衣「え、けど……」

あかり「あかりだって、あかりだって結衣ちゃんを守ってあげたいもん!」

結衣「あかり……」

あかり「だ、だめかな?」オドオド

結衣「……ううん、嬉しいよ、あかり」ニコ

あかり「あ……」

あかり(結衣ちゃん、ちゃんと笑ってくれるの久しぶりだな……)

あかり(何時もは、クスクスくらいしか笑ってくれないし……)

あかり(嬉しいな……)

結衣「じゃ、あかり、モップは持った?」

あかり「う、うんっ!」

結衣「じゃあ、開けるね?」

あかり「……」ドキドキ

結衣「……」カチャッ


キィィィッ

あかり「……」

結衣「……」

あかり「だ、誰も居ないね……」

結衣「うん……」

あかり「き、気のせいだったのかな?」

結衣「そうかも……」カチャッ

結衣「……あれ」

あかり「え、ど、どうしたの?」

結衣「いや……階段側のドアノブに……何かくっついてる」

結衣「これ、なんだろ……濡れた髪の毛?」

あかり「……え」ゾクッ

結衣「いや、違う、これ、海草だ」

あかり「な、なぁんだ……びっくりしたよぉ」ホッ

結衣「……」

あかり「結衣ちゃん、どうしたの?」

結衣「あ、うん……何でも無い」

結衣「扉、閉めるね?」

あかり「う、うん」


キィィィッ


カチャッ

あかり「結衣ちゃん、じゃあ、ボードゲームしようよっ」

結衣「あ、うん、そうだね」



この日は、何事も無く終わった

けど

次の日も

次の日も

ノックは続いた


扉の向こうには誰も居ないのに


コンッコンッ


あかり「……結衣ちゃん」

結衣「もういいよ、どうせ誰も居ないし……」

あかり「う、うん……」

結衣「……あかり」

あかり「なあに?」

結衣「私思うんだ……あのノックは」

あかり「うん」

結衣「私達を、呼んでるんじゃないかって……」

あかり「え、あ、うん、ノックだし、そうだと思うけど……」

結衣「……違うんだ、違うんだよ、あかり」

あかり「ゆ、結衣ちゃん?」

結衣「海は、海はもともと、死者が帰る場所だったんだ」

結衣「だから、死者と一番近い場所でもあるんだ」

あかり「ゆ、結衣ちゃん?落ち着いて……」

結衣「だから、だからさ」

あかり「結衣ちゃんっ……」ギュッ

結衣「だから、だから……死んだ、京子達が」





結衣「きっと、私達を呼んでるんだ、早く来いって」



結衣「あかり、あかり、わたし、怖い、怖くてたまらないよ、あかりっ……」ウルッ

結衣「ずっと、ずっと我慢してたけど、もう、もうわたしっ……」ヒック

あかり「結衣ちゃん、大丈夫、大丈夫だから、あかりが、守ってあげるって言ったでしょ……」ギュ

あかり「絶対、大丈夫だから、あかりが守ってあげるから……安心して……」ナデナデ

結衣「あかり……あかりっ」ギュ

あかり「結衣ちゃん……」ギュ

あかり(ごめんね、結衣ちゃん、今まで無理掛けさせて、ごめんね……)


トンットンッ


あかり「……もし、このノックが京子ちゃんたちなら……あかり、怒るから」

結衣「うう、ひっく……」


トンットンッ


あかり「結衣ちゃんを、こんなに怖がらせて……」

結衣「あかりっ……」ギュ


トンットンッ


あかり「……もう、もう……」

結衣「ぐすん……」


トンットンッ


あかり「いい加減にしてっ!」ブンッ



ガッ


ガサガサガサガサガサガサッ


あかり「……!?」ビクッ

結衣「な、なに、今の音っ……」ビクッ

あかり「う、うん、ノックがしつこいから、扉に缶詰投げたんだけど……」

あかり「そうしたら、扉の向こうからあんな音が……」

あかり「結衣ちゃん、夏休みに森に遊びに行った事覚えてる……?」

結衣「う、うん」

あかり「あの時、京子ちゃんが洞窟の中に飛び込んで……」

あかり「中に居た、虫を大量に追い出してきたでしょ……?」

結衣「あ、あったね……」

あかり「……あの音に似てた」

結衣「……!」

結衣「え、じゃあ、もしかして……」

あかり「……この廃墟に居たのは、あかり達だけじゃない……」

あかり「きっと、色んな場所から逃げてきた虫さん達も、居たんだと思う……」

結衣「そ、そうか……今までは、下の階に居たそいつらが……」

あかり「うん、水位の上昇に合わせて、上の階まで登ってきたんだと思う」

結衣「な、なんだ……虫なら、そんなに怖がること無いか」

あかり「……虫さん達って、何食べてるんだろ」

結衣「え?」

あかり「だって、下の階は水没しちっゃたんだから、食べるものなんてもう無いよね」

結衣「と、共食いとか?」

あかり「……それもするだろうけど」

ガサガサガサガサガサガサガサッ


結衣「……!」ビクッ

あかり「もし、ものすごくお腹が好いてるなら……もっと、大きな食べ物を狙ってくる可能性もあるかも……」

結衣「え、それって、もしかして……」

あかり「う、うん、あかり達とか……」


ガサガサガサガサガサガサガサッ

結衣「う、うわっ、通風口から虫が……!」バンバンッ

あかり「ゆ、結衣ちゃん、洗面台の排水溝からもっ……!」バンバンッ

結衣「ど、どうしていきなりこんなにたくさん出て来るんだっ」

結衣「さっきまで姿も見せなかったくせにっ!」

あかり「ご、ごめんね、きっとあかりが缶詰投げて脅かしたから、怒っちゃったんだと思うっ」

結衣「く、くそっ!」パンパンッ

あかり「ど、どんどん増えてるよ、結衣ちゃん、どうしようっ!」ペシヘシ゚ッ

結衣「くっ、こ、こいつら、噛みついてくるっ」パンパンッ

あかり「やっ!頭にっ!」

結衣「あかりっ!」タッ

結衣「あかり、大丈夫!?」ペシペシ

あかり「ゆ、結衣ちゃん、ありがとうっ」

結衣(だ、だめだ、このままじゃ、全身虫にたかられちゃうっ)

結衣(そうしたら、そうしたら……わたしたち、生きたまま、虫に……)ゾクッ

結衣(それだけは、嫌だ!絶対に!)ブルブル

結衣(どうしよう、どうすれば……)



『ものすごくお腹が好いてるなら……もっと、大きな食べ物を狙ってくる可能性もあるかも……』

『え、それって、もしかして……』

『う、うん、あかり達とか……』


結衣(……そうだ、食べ物を与えれば、そうすれば、しばらくは大人しくなるかも……)

結衣(たべもの……を……)

結衣「……あかり」

あかり「えっ、な、なにっ、結衣ちゃんっ」ペシッペシッ

結衣「……ごめんね、もう、こうするしか……」

あかり「ゆ、ゆいちゃん?なにを……」


ゴキンッ


バキンッ


ガキンッ



あかり「ゆ、結衣ちゃん!?それ、あかり達の缶詰だよ!?」

結衣「こうするしか、無いんだ、ごめんっ!」



ガキンッ


バチャッ


ガサガサガサガサガサガサガサッ



あかり「あ、む、虫さん達が、中身の飛び散った缶詰に……」

結衣「……こ、これで、アレを食べてる間は虫も大人しくなると思う……」

あかり「けど、けど、あかりたちの缶詰、なくなっちゃったよ?」

結衣「……うん」

結衣「……あかり、カッパ持ってるよね?」

あかり「え、うん……」

結衣「じゃあ……窓からビルの上まで登ろうか」

あかり「……雨、降ってるよ?」

結衣「うん、ここに居ると、また虫達に襲われる可能性あるしさ……」

結衣「それよりは、外の方がマシかなって……」

あかり「結衣ちゃん……」

あかり「……ん、わかった、あかりは」

あかり「あかりは、結衣ちゃんと一緒なら、どこででも平気だから」ニコ

結衣「……ありがとう、あかり」ニコ

あかり「じゃ、カッパ用意してくるね!」

結衣「うん……」

あかり「~♪」

結衣「……私も、あかりと一緒なら……」

結衣「平気だよ……」

結衣「例え、そこで終わっちゃうとしても……」


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

~ビル屋上~


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ


あかり「うわあ、やっぱり雨が強いねえ」

結衣「うん、高架水槽があるから、あそこの下に居ればまだマシかな……」

あかり「あかり、冷たいよぉっ」

結衣「……私の傍に、おいで」

あかり「うん!」


ギュー


結衣「……あったかい?」

あかり「うん、結衣ちゃん、凄く暖かい……」


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ


あかり(結衣ちゃんの身体から、結衣ちゃんの鼓動の音が聞こえる……)

あかり(凄く、安心するな……)

あかり(結衣ちゃん……)

あかり(……だいすき)

あかり(……)

あかり「……」zzzz


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


あかりー

あかりちゃーん


あかり「ふご……あれ、あかり、また寝てたの……」


ポーーーーーーーー


あかり「汽笛の音……あ、そっか……」

あかり「あかりはまた夢を……」


あかりー

あかりちゃーん


あかり「京子ちゃん、ちなつちゃん、待って……」タッ

あかり「あ、船から梯子が伸びてる……あかりも、あかりも乗せてくれるの?」


あかりー

あかりちゃーん


あかり「う、うん、京子ちゃんちなつちゃん、待っててね!今登るから……!」

あかり「……あれ」

あかり「結衣、ちゃんは……?」キョロキョロ

あかり「船には、乗ってないみたいだし……どこに……」

あかり「結衣ちゃーん!」


ポーーーーーーーーーーーー


あかり「あ、あ、船が、船が動いちゃうっ……」

あかり「今なら、今ならまだ乗れるけど……」

あかり「……」

あかり「……やだよ、結衣ちゃんを、残していきたくない……」

あかり「結衣ちゃんと、一緒じゃなきゃ、いやだよぉ……」ウルッ


ポーーーーーーー


あかり「船、行っちゃう……」

あかり「ばいばい、京子ちゃん、ちなつちゃん……」

あかり「ばいばい……」


『あかり』

『あかり!』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ


結衣「あかり!起きて!」ユサユサ

あかり「ん、結衣ちゃん……もう、船行っちゃったよぉ……」ムニャムニャ

結衣「船、行ってないよ!まだそこにあるよ!」

あかり「えぇー……」ゴシゴシ


ザァザァザァザァザァザァザァザァザァザァ

あかり「……ほ、ほんとだ、お船だ!」

結衣「うん!あかりが言ってた通り、船が来たんだ!」

あかり「……そ、それじゃ!」

結衣「うん、私達以外にも、生き残りが居たんだよ!」

結衣「あはははは!」バンバン

あかり「い、いたっ、結衣ちゃん、いたいよっ」

結衣「だって、こんなタイミングで来てくれるなんて!凄いよ!きっと奇跡だ!」

結衣「ほら、あかり、あそこに梯子が下りてるから、あそこからのぼろ?」

あかり(けど、この船、あかりが夢で見てた船と違うなあ……)

あかり(まあ、夢なんだから当たり前かもしれないけど……)

結衣「あかりー、行くよー」

あかり「あ、待ってよ、結衣ちゃんっ!」

結衣「はぁ……はぁ……さすがにこの高さまで登るのは疲れたなあ……」

あかり「あ、あかりも……」ハァハァ

結衣「あかりは、ちょっと休んでてよ、私はちょっと船の人探してくるから」

あかり「う、うん、ありがとう、結衣ちゃん」ハァハァ

結衣「船室は、あそこの扉かな……」トテトテ

あかり「ゆ、結衣ちゃん、もう息が整ってる、流石だなぁ……」ハァハァ

あかり(あ、あれ……)

あかり(床に落ちてるコレ、なんだろ……)

あかり(……あ、虫の死がいだ)

あかり(……どうしてここに)

あかり(よ、良く見ると、床のそこら中に……虫の死がいが……)

結衣「あれ、扉固いな、んーーーっ」グッ

あかり「あ、ゆ、結衣ちゃん……ちょっと待って……」


ガチャッ


結衣「開い……」


     ガサガサガサガサガサッ  
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ   
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ     
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
     ガサガサガサガサガサッ


     ガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
  「ガサガサガ 結衣 サガサガサッ」 
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
     ガサガサガサガサガサッ



あかり「……え」

あかり「ゆ、結衣ちゃん……?」


     ガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   「んぐっ、あかり、にげてっ」 
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
     ガサガサガサガサガサッ

あかり「う、うそ、結衣ちゃんが、結衣ちゃんが、扉から溢れてきた虫さん達に、虫さん達のなかに……」


     ガサガサガサガサガサッ  グチュッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ   グチュッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   「ガサガサガサガサガサガサッ」 グチャッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ     グチュッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ
   ガサガサガサガサガサガサガサッ グチャッ
     ガサガサガサガサガサッ


あかり「や、やだ、結衣ちゃん、食べられちゃ、やだよぉっ!」

ガサガサガサガサガサガサガサッ


あかり「ひっ、こ、こないで、やめてよっ……どうして、どうしてこんな所にまでっ……」ヒック

あかり「結衣ちゃん、助けてっ、助けてっ!京子ちゃん!ちなつちゃんっ!」


ガサガサガサガサガサガサガサッ


あかり「やっ、やぁぁぁぁっ!」フラッ



ヒュー


バシャンッ


あかり「ぷはっ……はぁ……はぁ、う、うみ?」

あかり「あ、あかり、船から落ちて……」

あかり「はぁ……はぁ……むしさん、ここまではこないよね……」

あかり「……ゆ、結衣ちゃん?」

あかり「結衣ちゃん?いるんでしょ?結衣ちゃん?」

あかり「結衣、ちゃん!」






≪世界人口 0000000003人≫




あかり「はぁ……はぁ……もう、やだよぉ」グスン

あかり「やだよ、結衣ちゃん、京子ちゃん、ちなつちゃん、誰か、誰か助けてよぉ……」

あかり「……」ヒック

あかり「ふ、ふねから、離れないと……お、泳いででも……」ヒック


バシャッ


あかり「うっぷっ……うええ、波が……」

あかり「けど、結衣ちゃん、逃げてって言ったし、頑張らないとっ……」バシャバシャ

あかり「え、えへへ、結衣ちゃん、あかり、約束守れるよ、偉いでしょ……結衣ちゃん……」バシャバシャ

あかり「あかりね、あかりね、結衣ちゃんとの約束、ちゃんと守るよ」バシャバシャバシャ

あかり「……ぷはっ」バシャバシャバシャ

あかり「だって、だって、あかり、結衣ちゃんのこと大好きだもん」バシャバシャ

あかり「……んぷっ」バシャバシャ

あかり「あ、あはは、あかり、ちょっと恥ずかしいなつ」バシャバシャ

あかり「……けほっ」バシャバシヤ

あかり「けど、ちょっと休みたいな……」バシャバシャ

あかり「何処かに、お休みできる所、ないかな」バシャバシャ

あかり「……けほっけほっ」バシャバシャッ

あかり「はぁ……はぁ……けほっ……」バシャバシャ

あかり「あ、お魚さんだ、おっきい……」バシャバシヤ

あかり「お願いしたら、背中にのっけてくれないかなあ」バシャバシヤ

あかり「けほっけほっ……」バシャバシャ

あかり「あ、あはは……息が……けほっけほっ」バシャバシャ

あかり「ね、ねえ、お魚さん、あかりを乗せてくれないかな、ちょっとでいいから」バシャバシャ

あかり「あ、来てくれるの?」バシャバシャ


ドンッ


あかり「あうっ……」バシャッ

あかり「も、もう、お魚さん、強くぶつかり過ぎだよぉ……」バシャッ

あかり「あ、あれ、海が、真っ赤だ、どうしたんだろ」バシャッ

あかり「お魚さん、怪我したの?」バシャッ

あかり「おさかなさん?」バシャッ


グイッ


あかり「……っ!」


バシャバシャバシャッ


あかり「ぷはっ……ひ、ひどいよ、お魚さん、ひっぱるなんて……」バシャ

あかり「あ、あしが、痛いよ……酷いよぉ……」バシャッ

あかり「あ、あれ?」

あかり「あかりの、脚、何処?」バシャッ

あかり「足がなかったら、結衣ちゃんとの約束、守れないよ……何処だろ……」バシャッ


グイッ


あかり「あぅっ……」


バシャバシャッ


あかり「ぷはっ、や、やめてよ、お魚さん、やめてよ、いじわるしないでよ……」バシャッ

あかり「あ……お魚さん、いっぱいだ」

あかり「いっぱい、あつまってきてくれてる……」

あかり「あかりを、あかりを助けてくれるんだよね……」

あかり「ありがとう、お魚さん、ありがとう……」


バシャバシャッ


ブチッ


バシャッバシャッ


ブチッブチッ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あかり「結衣ちゃん!ほら、お船だよ!」

結衣「やった!これで私達、助かったんだ!」


おーい、結衣ー、あかりー

ゆいせんぱーい、あかりちゃーん


あかり「ほら、京子ちゃん達も居るよ!」

結衣「京子、ちなつちゃん!無事だったのか!」


私がそう簡単に死ぬはずないじゃーん

そうですよー、ゆいせんぱーい


あかり「あはは、良かったね!結衣ちゃん!」

結衣「うん!」


ポーーーーー


あわわ、船が出ちゃう、二人とも、はやくはやく!


結衣「あかり!ほら、早く乗ろう!」

あかり「うん、けど、梯子、一人ずつしか登れないし、結衣ちゃん先に登って?」

結衣「わかった!あかりも早く来るんだぞ?」

あかり「うん!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



~海岸~


櫻子「おーい!向日葵!大変!あっちに人が流れ着いてる!」

向日葵「ええ!?櫻子!急ぎますわよ!」

櫻子「う、うん!」


タッタッタッ

向日葵「はぁ……はぁ……さ、櫻子、何処ですの?流れ着いた方は……」

櫻子「ほらほら、あそこ!」

向日葵「あれは……」

向日葵「はー……」

櫻子「ん?何で溜息ついてるの?」

向日葵「あれは、生首ではありませんか……」

櫻子「え、けど、人でしょ?」

向日葵「確かに、死体も人ではありますが……」

櫻子「で、どうする?」

向日葵「女の子の生首みたいですが……顔の皮がはがれていて、顔は識別できませんわね……」

向日葵「……海に、返しておきましょう」

櫻子「え、埋めてあげないの?」

向日葵「色んな所にある死体をいちいち埋葬していたら、それだけで日がくれてしまいすわ……」

櫻子「んー、判った」

向日葵「……ちょっと届かないので、この棒で……」ツンツン


コロンッ

ポシャンッ


向日葵「海に落ちましたわ」

櫻子「成仏してね、誰だか知らない子」ナムナム




≪世界人口 0000000002人≫




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あかり「みんな、お待たせー!」

京子「もー、あかり、船に登ってくるの遅いよ?」

ちなつ「お茶が覚めちゃいました」

あかり「あはは、ごめんね、ちなつちゃん!」

結衣「はい、あかり、髪が濡れてるよ」フキフキ

あかり「あ、う、うん、結衣ちゃん、ありがと///」

京子「え、なに、この二人、何時の間にか良い感じに……」

ちなつ「あ、あかりちゃん!結衣先輩と二人っきり時に、何したの!?」

あかり「ふえ、な、なにもしてないよぉっ!」

結衣「ふふふ、あかりは私のだ」

あかり「ゆ、結衣ちゃん///」

ちなつ「 」

京子「ちなつちゃん、死んでるのに気絶してる……」

京子「まあ、何はともあれ、娯楽部4人がやっと揃ったんだ、お茶で乾杯しよ?」

結衣「そうだね」

ちなつ「そ、そうですね!」

あかり「うん!」

京子「乾杯の音頭は、あかりがとってね?」

あかり「ふえ、あ、あかりが!?」

結衣「頑張れ、あかり」

あかり「う、うんっ!」

あかり「えっと、あかりね、頑張って、生きたよ」

あかり「辛い事も、悲しい事もあったけど」

あかり「それでも、最後まで、頑張って生きたよ」

あかり「えっと、実は最後の方良く覚えてないから頑張ったとはいえないかもしれないけど……」

あかり「けど」

あかり「あかりは、あかりは、結衣ちゃん達と過ごせて、幸せでした!」

あかり「だから、みんなの人生に、かんぱいっ!」

京子「かんぱーい!」

ちなつ「かんぱーい!」

結衣「乾杯」

京子「あかりー、頑張ったじゃん」

あかり「えへへ///」

あかり「あ、そういえば、京子ちゃんもこの船何処行くの?」

結衣「あかり、何言ってるの、私達が行くところなんて、決まってるでしょ」

あかり「え?」

ちなつ「そうそう、頑張って生きた子が最後に行くところは昔から決まってるんです」

あかり「え、どこかなぁ?」

京子「そりゃあ、ね?」

ちなつ「はい」

結衣「天国だよ」




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