村人「.......魔王倒すか」 (89)

ある村にある村人がいました


その村人は何事にも負けない無敵の村人でした


しかし、その村人は何を成しても認めて貰えず。挙句の果てには、迫害を受けるほどでした


それでも村人は人々の為に働き、人々の為に尽くして生きてきました

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村人には両親がいません


両親は幼いころに山賊たちに殺されてしまいました


村人はそのため、あまり両親の事を覚えていません


それぞれ、一言だけの言葉しか思い出せません


父親は人のために生きろと言っていました


母親は自分を貫きなさいと言っていました


そんな村人が住む村に、ある少女が来ることで物語は動き出します

ー酒場ー


村人A「おい、聞いたか?」


村人B「ああ、聞いたぞ」


村人C「なんでも、王国が魔王退治のために勇者を送り出したそうだな」


村人A「その勇者様はどんなお方なのかね」


村人B「きっと、山みたいな男に違いない」


村人C「まあ、これで安心だろうな。勇者様が来た時は、もてなすくらいの事はしてやろう」


村人A「そうだな」


少女「.....あのぉ」


村人B「ん?なんだ嬢ちゃん。ここは子供が来るところじゃあないぞ?」


村人C「迷子か?」


少女「いえ。この村の近くで恐ろしい魔物が暴れてるって聞いたんですけど、その割にはみなさん平和そうですね」


村人A「確かに3日前くらいまではおちおち眠りも出来なかったが、2日前にその魔物の死体があってな」


村人B「どこぞの誰かが倒してくれたんだろ」


少女「はぁ、倒した人が誰かはわからないんですか?」


村人C「わからないな。まあ、知ってるかもしれない奴ならいるが.....」


少女「誰ですか?」


村人A「村人っていう奴でな。この村の端っこの方に住んでるやつだが...」


村人B「あまり関わるのは勧めれねえなぁ」


少女「何でですか?」


村人C「何を考えているのかがわからない奴さ。笑いもしないし、泣きもしない。普段何してるのかも知らないし、何をしでかすかわかったもんじゃない」


村人A「噂だと、そいつが魔物をおびき寄せたとか言われてるけどな」


少女「....悪い人なんですか?」


村人ABC「知らん」


少女「はぁ...」

ー村中央部ー


少女は村人たちから、例の人物の家の場所を聞き出し、その場所に向かっている

腰に剣をさし、闊歩する少女に別段周りの村人たちは驚きもしない。

貧しい世界だ。生きていくために剣を持つ子供がいてもおかしくはない


そう思われているのだ


少女「それにしても、随分嫌われてる人なんだなぁ」


本来、村とは人と人が協力しあって生きていく事が前提の集まりだ。

その中で他人の協力も無く生きている村人という人物は異端なのだろう

そう思いながら歩いている少女の瞳に薬草と書かれた看板が映る


少女「っと、危ない人だったら怖いから、少し買い物してからいこうかな」


少女はその看板の近くで座っている男に近づいた


少女「薬草を売ってもらえますか?」


薬草屋「....一つ3G」


無駄な会話を一切しない店主に少女はこの人物が様々な物を売る商人ではなく、薬草しか売らない者だということに気付いた


少女「じゃあ、10個下さい」


薬草屋「.....30Gだ」


少女「はい。どうぞ」


30G...少女は軽いようにだしたが、これは決して安いものじゃない。

これだけあれば、3日は満足できる食事がとれるだろう

それだけの価値がこの薬草にはあるのだ


少女「ああ、そうだ。この先に村人っていう人の家があるのって本当ですか?」


少女は道を間違えていないかの確認の為に薬草屋に尋ねる。

薬草屋は何もいわずに首を縦に振り肯定する

少女はそれを見てニコリと笑うと身を翻した


少女「ありがとうございます」


ー村外れー


舗装されていない獣道、そこら中にある獣の血痕、枯れた花

そんな環境の中でぽつんと一つレンガで出来た小屋がある

こんな所に人が住んでいるのか?

住んでいるとしてもまともな人ではないのが明らかであろう


そう思いつつ少女はその小屋に近づく


壁は手入れされていないレンガ作り

ドアの木は少し腐っているが、風を通すほど壊れているわけではなさそうだ

屋根を見ると、空を見上げる男が一人

近くには斧が刺さった切り株と多数の薪



......


少女「!??」


まったく気配が無かった

そこに存在しているのを視認するまでわからないのに少女は驚いた。

少女は気配を読むことに関してはこの王国で右に出るものはいないほどの実力を持っている。

その自分が気配を察する事が出来なかった


少女(....この人、相当な実力者だ)


警戒して剣を掴み、今にも剣を抜きそうな少女に男は顔を少女に向ける


男「......客か」


そう呟き、男は屋根から飛び降りた

少女は未だ警戒を解かずに男を観察する

見たところ、10代後半から20代前半くらいだろう

その体つきは健康な一般男性ほどである

しかし、この男.....


少女(隙がない)


男「....何のようだ」


男は今にも剣を抜いて斬りかかっても可笑しくない少女を何も思わずに聞いた


少女「.....ここに村人という人物がいると聞いて」


男「.....村人は俺だ」


少女はそれを聞き、剣から手を離した

どれだけの手練でも、一応はこの村の一員なのだ。危険はないだろう

村人「....まあ、立ち話もなんだ」


村人は少し腐ったドアに付けられている青銅のドアノブを掴み、ドアを開けた


村人「...入りな」


少女「......」


少女は村人に示されるまま、家の中に入った。

家の中は外観に比べられないほど、温かかった


村人「特に何もないが、楽にしてくれ」


村人はそう言い、奥の台所のような場所に向かう

少女は小屋の中を見回す


暖炉には暖かな火が灯り、床には魔物の毛皮で出来た絨毯

こじんまりとしているが、生活するのには快適な環境であった


村人「で、いったいなんのようだい?」


台所から紅茶を持ってきた村人は少女に差し出す

少女はそれを受け取るが、一つ違和感を感じた


少女「さっきと、少し雰囲気が違いますね」


少女は村人の顔を下から覗きこんで問う

背の高さ的に上目遣いと自然となってしまうのだ


村人「外は空気が悪いからね。あまり話したくないんだ」


村人は頬を掻いてそう言った


村人「で、本題は?」


少女「この村の近くにいた魔物を倒した人物を貴方が知っていると聞いたので」


少女は酒場の村人たちから聞いた情報を元にここにやってきたのだ


村人「.....知らないんだが」


少女「え?」


しかし、答えはNO

村人はきっぱりと知らないと言った


村人「確かに、あの魔物は俺の家の近くにいたみたいだな。だけど俺は何も知らないな」



少女「....そうですか」


少女は少し残念に思う

もし、魔物がうわさ通りの強さだったのなら、それを倒した人物に是非会ってみたいと思っていたのだ

しかし、少女は思い出す。

先程、自分でも察知できない隠遁術を使った人物が目の前にいることを


少女「あの、話が変わるのですが、いいですか?」


村人「なんだい?」


少女「私と魔王を倒す旅についてきてくれませんか?」


村人「.....魔王?」


少女「はい。私は王様に勇者に選ばれました。
魔王討伐の為の仲間を探しているんです」


少女は王家の印を村人に見せる

村人はそれを一瞥すると、少女の目を見る

蒼く、真っ直ぐな目だ


村人「.......」


少女「.....ダメですか?」


人の汚い部分もろくに知らないのだろう...

酷く危なっかしい存在だと村人は評価した


村人「.....ああ。村人に魔王討伐なんて、責任がありすぎて出来ないな」


しかし、自身とは関係もない少女の旅に同行する義理も義務もない


少女「......ですが、あなたなら十分戦えると思えるのですが...」


少女は引き下がらない

年端もいかない少女もここまで一人で旅をするのに限界を感じていたのだ

だからこうして、仲間を探している


村人「....残念ながら。俺に戦闘能力は無い。勇者様に情報を与えるだけだ」


少女「.....そうですか....」


少女は意外にもあっさりと引き下がる

他人の事を考えられる少女なのだ。無理に誘うのを苦に思ったのだろう


少女「.....では、私はいきますので」


少女は村人に空になったカップを渡し、扉に向かう

村人「....最後に一ついいか?」


しかし、立ち去ろうとする少女を村人は引き止める


少女「...なんでしょう」


少女は断られた事もあり、少し落ち込みながら返事する


村人「....あんたは何故魔王を倒したいんだ?」


何をいっているのだ、この村人は...

少女はそう思う。


少女「人間の為に決まっているでしょう」


そう。人間のために自分は魔王討伐に選ばれたのだ


村人「.....本当にそんな大義のためか?」


大義.....何故ここでそんな言葉が出てくるのかが少女には謎だった


少女「......」


沈黙.....わからない

大義のためと言い、自分は数多くの生物を殺してきたのだ

少女の記憶の脳裏に過去の映像が流れる


少女「.....違いますね」


村人「......」


少女「....私が住んでいた村が幼い頃に魔王軍に滅ぼされたのが理由ですね....」


そう。これは復讐...両親たちの....親友たちの敵討ち

そこに大義などは存在しない

酷く個人的なものだ


村人「.....そうか....悪かったな引き止めて...ここから南の方に行った所の街に行くといい。仲間の一人や二人は見つかるだろう....」


少女「.....ご協力感謝します」


少女は少し期待していた

魔王討伐の理由を聞いてきた時に、もしかしたら考えなおしてくれたのではないかと思った...

しかし、そういうわけでもなく、ただ聞かれただけ

先程よりも落ち込んだ少女は村人の家から離れていった

少女が去った後、村人は椅子に座り、暖炉の火を見ていた

美しく燃えるその火は、先程の少女を表しているようで、すぐに消えてしまうような危うさを持っていながら、燃え続けている


村人「.....復讐か....」


復讐が悪いとは言わない

大義で行動するよりはよっぽど人間らしい

しかし、あのちっぽけな少女に一体何が出来るのだろう


村人「.....考えても仕方ないか」


村人は立ち上がる。

そして、当前のように...かつ気だるそうに口にした


村人「.....魔王倒すか」


そうと決まれば後は早い

食料を袋に詰め込み、金になりそうなものを別の袋に詰め込んで背負う


元来困った人や苦しそうな人をほっとけない性格なのだ

魔王を倒すという思考に至ったのも、人間のためなんかではなく、少女一人のためだ

未来のことをおびえている人間などは村人は救わない

過去に囚われている人間には手を差し伸べてしまう


全てを守ることなど、自分には出来ないと村人は知っている

だから、村人は立ち上がった

自分が守るのは、一人の少女だけなのだと


村人は歩き出す

自分の家から北に向かって....


魔王城に向かって.....

少女は歩いていた

村人から聞いた南の街に向かって...


その街は以前聞いたことがある

この村からもそう遠く離れておらず、このまま行っても日が落ちる前には街につくことが出来る


少女「それにしても...」


少女は思い出してしまった

魔王に対する憎しみを

黒い、黒い感情を...


少女「....魔王を倒すのには変わりないんだから、落ち着かないと」


そう言い聞かせる

散々師匠に言われた事だ

憎しみだけで戦ってもろくな目に合わないと


少女「仲間、できたらいいなぁ」


少女は歩く

その足取りは先程までよりは少し軽くなっていた

無理矢理にでも前向きになっているのだ...


村人の家から、村人が出て行くのにも気づかない程

魔王城に向かうまでに、いくつかの街や村を通ることになる

村人はそこで、食料を買いながら、まっすぐ魔王城に向かおうと考えている.....


そう、買えたらの話だが......




村人が最初についた街では殺人事件が起きたらしく、厳重体制が取られていたために、入る事が出来なかった

村人は持ってきた食料を食べ、飢えをしのいだ



次についた村では、魔物のせいで食料不足がつづいており、買うことが出来ず、さらに持っていた食料を村長に渡した

村人は食料不足の原因である魔物を食べ、飢えをしのいだ



次に村人は街についた.....


煙が立ち込める、壊れた街に.....

村人「.....酷いな」


周りからは煙が立ち込めている

人の肉が焼けて、鼻につく臭いがする


村人「......」


村人は歩く....誰か生きているものがいないのかを探すため


村人「.....見たところ、つい最近のようだけど....」


自分がもう少し早くついていればなんとか出来たのではないかと重い、悔やむ

どうしようもない事を悔やむ村人はお人好しとも言えるだろう


「.....うぅ...」


村人「生存者か!」


声の下ほうに村人は向かう

急げ

急げ


そう自分に言い聞かせ、向かった先には.....


「......うぅ........」


一人の女性がうずくまっていた


村人「大丈夫か!」


村人は駆け寄る

ところどころに火傷をおい、瓦礫にあたったのか青あざなどや切り傷が多くある


村人「今治療する」


村人は持っている薬草、薬を取り出す


「.....うぅ....い...ゃ」


しかし、女性はうずくまったまま動かない


村人「どうしたんだ」


「....わた.....の.....と....は.....い...から.......い....りや....を....」


女性は弱々しくそう言い、顔をあげる

女性の手には、赤ん坊が抱かれていた.....

女性の発言からイリヤというみたいだ

女性は懇願する

自分よりも、赤ん坊を助けてくれと

村人はそれを見て女性を見て微笑んだ


村人「安心してくれ、赤ん坊を先に治療するから」


女性はそれを聞くと、安心したのかその意識を手放した....


物言わぬ赤ん坊を抱いて......


村人はわかっていたのだ。赤ん坊にもう息が無いことを

村人はわかっていたのだ。今持っているものでは、女性を治療することしか出来ないことを


村人は手を握る

歯を食いしばる


それでも、涙が出てくる


村人は涙を流しながら、女性を治療した


そして、火のあたらない所に二人を移動させ、村人は向かう....


街の中央部へ.....

街の中央部では一人の男が立っていた

何を思っているのかがわからない、呆然と空を見上げている


村人「......」


その男の後ろで村人は立ち止まった


「.....美しいと思わないか?この光景」


男は両手をあげて言う

狂気を孕んだ笑みを浮かべる


見えない村人が感じるほどに禍々しい顔をしている


村人「.....お前がやったのか?」


「質問を質問で返されるのは嫌いなんだが.....今は気分がいい。答えはYESだ」


村人「そうか....」


「で、お前はそれを知って何をするんだ?」


男は村人の方を振り向く

燃えるような赤い目に、人のものではない肌をしている


村人「.....俺がやることは変わらないよ」


「へー、いったい何をするっていうんだ?」


村人「....お前を殺すよ」


当然のように

それがあたりまえかのように

村人は言った


それを聞いた男は顔を抑えて笑う

嗤う


無謀な人間を嘲笑う


「お前が俺を殺すってか。面白いことを言うやつだ。俺は魔王軍四天王の一人、火の四天王だ」


男がそう宣言すると、男は炎に包まれる


火の四天王「で、お前は何なんだ?」


村人「.....ただのしがない村人だ」


火の四天王「はっ!ただの村人が俺を殺すってか!
ははは、まったく......頭が高えぞ。人間!」

もうちょい書き溜めます

火の四天王は腕を振るう

それだけで人を焼き殺す程の炎が村人に襲いかかる

為す術もなく、村人は炎に身を包まれた


火の四天王「……なんだ、あっけなかったな」パキパキ


炎に包まれ、その生命の炎を消されたであろう村人を見て落胆する

魔王幹部に逆らった村人に少しばかり期待していた

魔王や他の四天王以来、自分と同等以上の敵と戦っていない

強敵と戦えるかもしれないから、自分はこの作戦に参加したのだ


自分よりも弱いものには興味が無い

それが火の四天王だった


火の四天王「とっととここらへん燃やして帰るか」パキパキ

ここで火の四天王はある異変に気付いた

通常、人間を焼けば、異臭が発せられる


確かに、辺りからは異臭が出ているが、こんな近くで燃やしているのにその異臭が強くなっていない

もしやと思い、再度村人を見た


村人「……これだけか?」パキパキ


炎に包まれてその表情は見えないが、確かに聞こえた


火の四天王「….ははは」パキパキ


やはり只者ではなかった。自分の炎に包まれていながら平気でいられる人間など、見たこともない


火の四天王「おもしれぇよ、お前。俺の炎なんかものともしないってか?」


一歩

村人は燃えている服を叩き、歩き出した


村人「いや、食らってるさ」


火の四天王「そうには見えないがな」


村人「服が燃えているし、火は熱い」


だが、と村人は続けた


村人「我慢できないほどじゃあない」


村人は更に一歩ふみ出す


火の四天王「上等、お前みたいな奴を待っていた」


村人「俺は待っていなかったさ」


両者は激突する


魔族は強者と戦うため

村人はその憎しみを晴らすため


――――――街に小さな太陽が生まれた

書き溜めがすべて消えるという悲しみ


今日はもう寝ます

少女「.....はあ」

男「ため息なんてついてどうしたんだ?勇者」


ここは、村人が住んでいた村から南へ下った場所にある街


若い冒険者に溢れているその街は商人も集まり、活気ある街であった


その街の酒場で勇者こと少女は、目の前に座る剣士の男を見上げた


勇者「どうしたもこうしたもありませんよ。レベルが上がらなくて悲しいんですよ」

剣士「はは。初めはそんなもんだろ」

剣士「ま、そろそろ次の街に出発してもいいとは思うけどな」

勇者「そうですねぇ。お金も随分と溜まりましたし」


このパーティーは慎重なのか、随分と鍛えても、まだ街を離れないでいた


あまり自信がなかったとも言えるだろう


勇者は、持っていた飲み物を飲んで剣を持とうとした


男「号外!号外!」


そう、酒場に叫びながら男が入ってきた


男「北の街が壊滅した!」


壊滅.....それを聞いて勇者は胸を痛めた


これまでにも魔王に滅ぼされた街があるのを勇者は知っている


こんな所で時間をくっていなければ、助けられたかもしれない


だが、今更それを悔やむのは、意味が無い


自分に出来る事はある

自分が、魔王を倒すんだ


そう、勇者が決意した時だった

男性が持っていた紙を広げたのは


男「犯人と思わしき顔がある!」


北の街を壊滅させた犯人


魔王の部下であろう者とはいつか戦う事になるだろう


勇者はそう思ってその顔を見る

他の客達も野次馬よろしく、群がった

勇者「.......え?」


勇者は驚いた

見たことのある顔だった

つい、数週間前に訪れた村の外れに住んでいた人物

強者だと感じた人物

パーティーを断り、この街を教えてくれた人物


剣士「なんだ。随分と地味な男だな」

「確かにそうだな。もっと強面な奴だと思ったのに」

「おうおう。こんな顔の奴なら俺でも倒せそうだぜ」

「やめとけ。殺されるのがオチだ」


勇者には周りの会話が聞こえていなかった


何故村人が北の街を壊滅させた犯人だと言うのか.....


勇者「......この人が本当に犯人だったのですか?」


勇者はそう聞かずにはいられなかった

男「ああ。本当らしいぞ、お嬢ちゃん。
何でも国王軍が駆けつけた時には、燃え盛る街の中でそいつが歩いていたらしい。それで、そのまま姿を消したらしいぞ」


勇者「.......」


とてもじゃないが、信じれなかった

あの、優しそうに笑った村人がそんな事をするなんて....


男「生存者もいる見たいでな。みんな王都で治療を受けているらしい。それで起きたら詳しい状況を聞くって話だ」

勇者「.....そう.....ですか...ありがとうございます」


勇者は群がる人混みから離れた

その足取りは重い


剣士「いったいどうしたんだ?勇者」

勇者「......なんでもないです」


言うわけにはいかない

まだ納得していない


自分には村人が悪い人だとは思えない


そう、勇者は思っていた


剣士「んじゃあ、そろそろ街を出るか。」

勇者「そうだね。買い物している魔法使いちゃんと僧侶ちゃんも呼ばないとね」

剣士「ああ。そうだな」


勇者は進む

自分の道を

村人は知っていた

自分の呪われた力を




村人は知っていた

どんな力を持っていても助けられない命を




村人は知った

多くの人が魔王に殺された事を








村人は決めた

魔王を殺すと

村人はあの街を出てから魔王城にまっすぐ向かっていた


道中、自分が賞金首にされていることを聞き、買い物は出来なくなった


それからは魔物を狩り、飢えを凌いでいた




その魔物達がずっと人間を苦しめて来た者たちだとは村人は知らない


いつの間にか消えた魔物達を誰が退治したかは人間は知らない



ただ、魔王達にはその村人が脅威になると、わかっていた

違う方向から迫り来る者たちよりも危険だと、わかっていた

暗雲立ち込める空

酷く淀んだ空気


瘴気に包まれた城、それが魔王城だ


「おい、この2つの敵を迎え撃つのはどうする?」

「火の四天王が殺されたんだ。この男にはいくら雑魚をぶつけても意味はないだろう」

「なら、私が行くわよ?」


ここは、魔王城の一角

そこには3体の魔物が集まっていた


「それは助かるな。だが、お前は火の四天王よりも強いとは言え、油断は出来ない相手だとわかっているな?水の四天王」

水の四天王「わかってるわよ。本気で殺すから」

「じゃあ、こっちの勇者達は俺が向かうとするか」

「ふむ、実力的にはお前がいいだろうな。油断はするなよ?土の四天王」

土の四天王「わかっているさ。それに、俺は火の四天王よりは弱い。その男には勝てないだろうしな」

「まあ、そう言うな。お前とて魔王軍四天王の一人なのだ。それに誇りを持て」

水の四天王「いい事言うわねぇ。風の四天王は」

風の四天王「では、私はこの魔王城にて待機する。二人とも、必ず帰ってくるのだぞ」

水の四天王「わかってるわよ」

土の四天王「了解した」


この者たち、今では3人となった四天王だが、その者たちには、驕りが無い

自身の力を理解し、それでいて相手との力量差を理解する

しかし、例え自身が勝てない相手だろうと諦める事はない


自身よりも強い敵がいるなど百も承知だ


だが、それが負けていい理由になどならないとこの者たちは知っていた

勇者一行は来る日も来る日も戦いに明け暮れ.......ていたわけではなく

着々と力をつけ、魔王城へ進んでいた


移動方法は概ね馬車であり、徒歩の村人よりも、進むスピードは速い



勇者「次の街へ付いたら、どうします?」

山道を行く馬車の中で勇者は聞く


剣士「そろそろ、武器を新調するか、強化してもらわないとな」


剣士は剣の手入れをしてそう話す


「私は新しい防具が欲しいですね。出来れば魔力があがるやつ」


青い瞳で話す少女は、僧侶だ

この僧侶の隣で眠りこけている少女は魔法使いである


この4人が勇者一行である

その実力は並の冒険者では太刀打ちできない程の力を持った集団であった


勇者「じゃあ、とりあえずは買い物ですかね」

剣士「異論は無い」

僧侶「賛成です」

魔法使い「.....zzZ」


馬車は進む

筆が進まない

テスト終わってから更新します

テストも終わったのでのんびり更新していきます

御者「あんたらはあの勇者様一行かい」


中の会話を聞いていたのであろう。
御者が馬車を動かしながらそう聞いてきた


勇者「はい、そうですよ」

剣士「まあ、まだそれらしいことはしていないのだがな」

僧侶
「魔王軍もここ最近はおとなしいですしね」


勇者たちは知らない。
魔王軍は決して進行の足取りを止めていないことに

ただ、知らないだけだった….


御者「まあ、北の街が襲われて以降被害も出ていないからねぇ」

剣士「それも、実際は人間の犯行らしいしな」


勇者にはそれを否定することは出来ない。
証拠なんかあるわけじゃあない。ただ自身の勘がそう告げているのだった。村人は悪く無いと….




「ほう、人間の間ではそうなっているのか」




「「「!!!?」」」


突然聞こえた声に勇者達は驚き、その剣を構える


御者「ん?どうしたんだい?」


中を確認できない御者はのんきにそう問うが、勇者達はそれどころではない。目の前の男に気配をまったく感じずに馬車内まで接近を許したのだ
男の見た目は黒いコートに身を包んでおり、その顔もフードのせいで確認することは出来ない


剣士「おい、あんたは何者だ?」

僧侶「て、敵ですか!?」

御者「ほ、本当にどうしたっていうんだ!」


中から険悪な雰囲気を出す勇者達に馬たちが怯えだし、その鼻息を荒くさせる


勇者「…...御者さんは先に行って下さい。私達はここでおります。」

御者「こ、こっちは金も貰ってるし別に構わないが、いいのか?」

勇者「はい」


勇者が淡々と告げる。その声は緊張しているのか、少し震えていた


「この馬車内で事をおこすのはお互いにやりにくいな。待っててやるから、早く出てきな」


男はそういい馬車から降りた。勇者たちは未だに眠りこけている魔法使いを起こすと馬車からでた

御者はそれを確認すると、一目散に馬を走らせて去っていった

「さて、まずは自己紹介と行こうか。俺は土の四天王だ。魔王軍の幹部を務めさせてもらっている」

勇者「…….」

土の四天王「やれやれ、いくら俺がそっちを知っているからって、無視するのは酷いな」


男はやれやれと首を振る。勇者達は、寝ぼけている魔法使いを除いて、その一挙一動に注視して、息を飲んでいた


剣士「…..さっき言っていた、人間の間ではってどういうことだ?」


剣士が切っ先を男に向けて問う。問いというよりも脅迫に近い問答だった


土の四天王「さぁてな。あんたらが勝ったら教えてやろう」

剣士「なら、そいつは聞けないみたいんだな。お前はもう話せなくなるんだから!」


疾走…一足で土の四天王の前まで接近し、その剣を振るう


土の四天王「やれやれ、せっかちだねぇ。火の四天王かよ、お前」


しかし、その剣は指で挟まれるということでいとも容易く
防がれる。
それに剣士は驚いた様子もなく、男に向かって蹴りを放つ


土の四天王「よっと」


男は身軽にそれを躱し、距離をとる
剣士は自由になった剣を持ち、勇者達のいる場所まで下がる


勇者「どうですか?」

剣士「ああ、強いな。これまで戦った、どの敵よりも」

僧侶「起きて下さい!魔法使いさん」

魔法使い「んーー」


一度の攻撃で、ある程度の力量を判断、それに対して様々な陣形をとるのが、この勇者達の定石となっていた
先程の攻撃で相手が格上だと知った一行は、剣士を前衛におく。
勇者は剣士の後ろで、遊撃とサポート
僧侶は魔法使いと自身を守りつつ、前衛二人のサポート
魔法使いは後方からの魔法での援護


土の四天王「ふむ、単純故に有効。いい陣形だとは思う….だが、無意味だ」


勇者たちは失念していた。剣士の攻撃を防いだ時点で、勝手に相手を近距離特化だと思い込んでいた

男の周りから、一つの魔法陣が出現した時点でそれは間違いだったと気付かされた。時間を与えすぎたのだ


土の四天王「『アースホール』」

魔法使い「っ!!下!!」


どういった魔法か気づいた魔法使いはそう叫ぶが、もう遅かった。地震がおこったように大地が揺れ動いた


土の四天王「落ちろ」


勇者たちが立っていた場所に深い深い穴が出現した

為す術もなく落下する勇者一行
それを見て、更に土の四天王は追撃する


この穴にあわせた巨岩...それを落下させて圧死させる…それが土の四天王の常套手段だ
土の四天王は詠唱する…勇者を押しつぶすための岩を創造するため…


土の四天王「…潰れろ『アース」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


勇者「みんな!」

僧侶「あわわわわわ」

剣士「そう、あわてるな。僧侶」

魔法使い「…」


数十メートルもの大穴の中を落下する勇者一行
勇者は皆の安全を確認する
僧侶は慌てふためく
剣士は僧侶を抱え、落下に備えている
魔法使いは、落下に備えながらも、上を睨んでいる


魔法使い「『ウインドレイヤー』」


魔法使いが魔法を発動させる。
大穴の底付近で風が巻き起こり、落下する勇者たちのスピードを徐々に落としていく

強すぎず弱すぎず
調整が難しい魔法を簡単にしてしまうのは、この少女が以下に凡才ではないということを証明している

勇者たちが地面につく頃には、落下速度も羽が落ちる程度の速度までになっていた


勇者「…ふぅ、ありがとね、魔法使い」


問題なく着地した勇者は、息を一つ吐き、隣で着地していた魔法使いにそう言った


魔法使い「……おかしい」

剣士「なにがだ?」


勇者の言葉に答えもせずに上を睨む魔法使い、それを見て不思議に思う剣士

勇者一行に少しばかりの余裕が出来たのであろう、空気はいくらか柔んでいた








魔法使いを除いて

魔法使いは気付いている。敵の狙いを
故に魔法使いは疑問に思う…何故追撃が来ないのかを

自分たちが落下している間に詠唱は十分に出来ていたであろう…もし、なにかが落ちてきたならば、それを打ち返すと考えていたのだ


しかし、いくら待っても攻撃がくる様子もない。

少し拍子抜けしたが、10分ほどたって魔法使いはやっと息を吐いた








剣士「で、どう登る?」

勇者「うーん…」


勇者たちが落とされた穴は一言で言うと、深い
数十を素手で登るのは不可能だと言える

ならばと思い魔法使いを見るが、頼みの魔法使いは上を睨むのをやめて、眠っている

どうしようもないと考えた勇者は、何か事態が変化することに期待するとともに、魔法使いが起きるまで待とうと告げると、その場に座り込んだ

事態が動いたのは10分後だった
魔法使いが突然目を覚まし、勇者一行を風の魔法で浮き上がらせたのだ

あまりにもいきなりだったので勇者は戸惑ったが、出口で待ち構えているであろう土の四天王に身構える

動けるようになったら、突撃する
あまりにもお粗末な作戦だが、何もしないよりはマシだと勇者は判断したのだ。


しかし、それは杞憂に終わった

穴から出た勇者たちを待ち受けていたのは、間違いなく土の四天王だった


そう





息絶えた、土の四天王だった


勇者たちは困惑する

いったい自分たちが穴の底にいる間に何が起こったのか

あたりには自分たちによる戦闘の跡しかない。いったい何がどうなって土の四天王という強敵が殺されたのか







勇者たちは疑念を抱いたまま先を進む。








そう、着々と魔王城に近づいていくのだった…

村人が辿り着いたのは港町だった
魔王城のある大陸に行くためには船にのるのが一番簡単だからだ

しかし、現在賞金首にされている村人が頼んでも船に乗れるわけもなく、村人はどうするか途方に暮れていた

町に入らずに、空を仰ぎ見る村人の耳に悲鳴が聞こえた







港町の中からだ

多くの人の悲鳴と怒号が聞こえる


船舶所の方向から聞こえる声を無視できるはずがない、村人は足早に向かった

津波と風波の違いを知っているだろうか

まず、大きさというのは一番わかり易いだろう。
しかし、津波サイズの風波は出来ないというわけではない。

これを差異とするのは間違いだと言えるだろう。


なら、本当の差異とは何か

単純な話である。根本から津波と風波は違うのだ。


津波は地震により、水全体が迫ってくるのに対し、風波は水面付近の水が迫ってくるのだ。

喩えるならば、川の流れと海の波の違いだ


川の流れを逆らって泳ぐのと、海で波に逆らって泳ぐのとでは明らかに川の流れの中を泳ぐ方が困難だ。

津波とは流れであり、風波はどこまで言っても波なのだ















人々は逃げる

突如出現した”津波”から逃げるため



優に20mを超えるそれは人々に恐怖と混乱を与えるのは容易く、港町はパニック状態になっていた

申し訳ありませんが、6月中旬まで更新出来ません、理由としては編入試験があるからなので、それが終わり次第更新します

村人「…これは…」


目の前に立ちはだかる大きな水の壁
この街を飲み込むには十分過ぎる大きさの波は視認出来る程度の所から近づいていた


村人「どうすれば…」


相手は災害、人間には何も出来る事などない。
ただ飲み込まれるのを待つだけ…


村人「……」


村人は歩き出した。海から遠ざかるのではなく、近付いていく
村人は聞いた、逃げる人達の言葉を


”逃げろ!ここにいたら死んじまう”
ーー逃げても死には抗えないだろう

”やめろ!死ぬつもりか!”
ーー毛頭死ぬつもりなどない

”はは、夢だ。これは”
ーー眠っていても構わないぞ、次に目を覚ます時はもう終わってるだろうから

”もう終わりだ”
ーー終わらせなどしない


そして…


”[ピーーー]、人間ども”
ーー見つけた

村人「…これは…」


目の前に立ちはだかる大きな水の壁
この街を飲み込むには十分過ぎる大きさの波は視認出来る程度の所から近づいていた


村人「どうすれば…」


相手は災害、人間には何も出来る事などない。
ただ飲み込まれるのを待つだけ…


村人「……」


村人は歩き出した。海から遠ざかるのではなく、近付いていく
村人は聞いた、逃げる人達の言葉を


”逃げろ!ここにいたら死んじまう”
ーー逃げても死には抗えないだろう

”やめろ!死ぬつもりか!”
ーー毛頭死ぬつもりなどない

”はは、夢だ。これは”
ーー眠っていても構わないぞ、次に目を覚ます時はもう終わってるだろうから

”もう終わりだ”
ーー終わらせなどしない


そして…


”死ね、人間ども”
ーー見つけた

見つけた、この中に潜む異物に
それは、女だった。青髪に黒いローブを着た女

それが、これの元凶、そう村人は感じた
理由は説明できない、確信もない。それでも、感じたんだ


村人「…あんたが、この騒ぎの元凶か」

「!!!」


女は声をかけられその場を飛び退く。その顔には驚愕が浮かべ、その後に笑った


「何のことかしら?」

村人「……」

「私も早く逃げたいのだけど、ダメかしら?」

村人「…それはすまなかった」


村人は道を譲る。女は村人を一瞥してその横を通り過ぎ、村人にナイフを突き刺した


「!!?」

村人「……」


しかし、その手は容易に掴まれ、村人の身に傷を付ける事は叶わない


村人「…あんたが人間じゃないのはわかっている。無駄な抵抗はやめることだ」

「…くっ!」


ギリギリと腕を締め上げるその握力に女は苦悶の声をあげる

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年08月22日 (火) 12:24:43   ID: p4-a3EhR

完結してなくね?

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