勇者「俺が死んでしまっただと……」(217)

王様「これより勇者の告別式を執り行う」

勇者「え」

「うえええええええん」

「勇者様……」

「まだお若いのに可愛そうに……」

「俺達のために身を犠牲にして……」

王様「皆の悲しみはよくわかる。だが、自信を犠牲にしてでも世界を救った勇者のためにも、安らかに天国へ送ってやろうではないか」

勇者「おい、俺死んでないよ?」

王様「それでは黙祷……」

勇者「だから死んでないって!」スカッ

勇者「あれ?王様に触れない……」スカッスカッ

勇者「まさか……残像か!?王様、いつのまにそんな技を……」

王様「それでは、勇者に別れを言いたいものは前へ」

勇者「あれ?」

戦士「うおおおおおおおおおおおん!勇者あああああああ!」

勇者「お、戦士!おーい」

戦士「一人でいっちまいやがって!逝く時は一緒だって誓い合ったじゃねーか!」ガンガンッ

戦士「くそぅ!」

戦士「だが、安心してくれ。お前の持っていたこの武器は俺が……」

勇者「あ、俺の光の剣」

戦士「俺が世界の平和のために使ってやるからな!」

勇者「おい、何を勝手に。返せ」

勇者母「ううっ、息子も喜ぶと思います。使ってください」

勇者「おい」

戦士「勇者、お前の代わりに世界を守ってやるからな」

勇者父「勇者、お前はいい友人を持ったな……」

勇者母「本当に……」

勇者「ちょっと、おやじ、お袋、何言ってんだ」

戦士「念願の光の剣を手に入れたぞ……」ボソッ

勇者「ちょっ!おやじ、お袋!こいつ今とんでもないこと言ったぞ!」

王様「ご両親には大変申し訳ないことをしました……大事な息子さんを危険な旅でしなせてしまい……」

勇者母「いえ……息子も本望だったと思います、ううっ」

王様「代わりにはなりませんが、補償はしっかりさせていただきますので……」

勇者父「あの親不孝者め……」

王様「申し訳ない。せめてもの気持ちです」スッ

勇者母「……」チラッ

王様「足りなければ後ほど……」

勇者母「勇者!あんた孝行息子だよ!」

勇者「おい!」

勇者父「お、おお!こんなに……」

「あ、俺、勇者の友人なんだけど」

「勇者に技教えたの僕なんだ」

「私勇者とは将来を約束した……///」ポッ

勇者「誰だよ、こいつら!」

勇者父「ありがとう、みな勇者と仲良くしてくれて……」

「当然です。お父さん」

「僕達大親友でした」

「お父様……私の中には勇者の子が……」

勇者「いや、俺友達なんでいなかったからね」

勇者「つーか、思い出した!こいつら子供のころから俺を化物扱いしてイジメてたやつらじゃねーか!」

勇者「何が友達だ!」

勇者「っていうか、こいつら俺が見えてない?」

僧侶「神聖な告別式で騒がしいですよ」

勇者「え」

僧侶「静かにしてください」

勇者「み、見えるか!?僧侶!俺俺、勇者」

僧侶「あ」

勇者「おい、僧侶、どうなっているんだ?」

僧侶「……」スイッ

勇者「目そらすな!おい!貴様!見えているな!」

僧侶「はぁ……なんで私に見えてしまったんでしょう///」

勇者「何顔赤くしてんだよ」

僧侶「あとで話聞いてあげますから今は黙祷を捧げましょう」

勇者「自分の葬式で黙祷とかねーから」

王様「勇者はわしが育てた!」

戦士「次の勇者はこの俺だ!」

勇者母「うふふ、旅行いってー、買い物してー、美味しいもの食べてー」

勇者父「新しいゴルフクラブが……」

ワイワイワイ

勇者「やっと終った……すげー人だったな」

僧侶「たぶん国民のほとんどが参加してるんじゃないですか?」

勇者「おおー、俺って人気者だったんだな」

僧侶「いえ、魔王を倒したってことで人気がでたんでしょう」

勇者「え、今なんて?」

僧侶「魔王を倒したって……」

勇者「え?俺魔王を倒したの!?」

僧侶「覚えてないんですか?」

勇者「いや、魔王城に入って黒い光に向かっていったところまでしか……」

僧侶「……」スッ

勇者「あ、また目そらした」

僧侶「そ、それでなんやかんやであなたは死んでしまったんです」

勇者「はしょるなよ。って……。え?」

僧侶「南無……」

勇者「いや、俺死んでねーし。ほらっ、ここに今いるし」

僧侶「あたなは勇者の幽霊……ってところですね、たぶん」

勇者「えっ、いや、うそだよ。俺まだ生きてるし!死んだ記憶ねーし」スッ

僧侶「物に触れないでしょう……」

勇者「ま、マジですか」

僧侶「マジです」

勇者「なんじゃあ!こりゃああああああああ!」

ジタバタ

勇者「うおおおおおおおおおおおお!」

僧侶「……」

勇者「はぁはぁ……」

僧侶「落ち着きましたか?」

勇者「ああ……」

勇者「それでなんで一緒に戦ったお前らは生きてんの?」

僧侶「……」フイッ

勇者「だから何で目をそらす」

僧侶「逃げましたので」

勇者「はぁ!?」

僧侶「いやぁ、あんな悪意と殺気の塊のような闇に向かっていくとは流石勇者です。感服しました」

勇者「逃げたって……お前ら全員?」

僧侶「あなただけ突っ込んでいっちゃいまして……戻ったら血まみれで。魔王は消えてしまっていました」

勇者「そ、蘇生魔法!蘇生魔法とかあるだろ!今からでも……」

僧侶「え?あなたは死んだ人間が生き返るとでも……?」

勇者「え?いや……だって死んだら教会で生き返るって……」

僧侶「教会がそんな神を冒涜するような真似をするわけがないでしょう」

勇者「え」

僧侶「いったい誰がそんなことを」

勇者「王様が……。え?あれ?」

僧侶「なるほど……それで……」

勇者「何納得してんの?」

僧侶「それであなたの死を恐れないような戦いぶりに納得いきました。死んでも生き返ると思ってたと」

勇者「それが?」

僧侶「死を恐れない勇気、それを武器にしたかったんでしょうね。王様は。おかげで魔王も倒せましたし」

勇者「なっ」

僧侶「そんな状態でさまようのも辛いでしょう。私が成仏させてあげます」

勇者「え?ちょっ、まっ」

僧侶「大いなる神よ……このさ迷える子羊に祝福を……」パァァ

勇者「NOOOOOOOOOOOOOO!」シューシュー

勇者「や、やめて!消える!」

僧侶「あ、はい」スッ

勇者「はぁはぁ、やばかった。今のはやばかった!」

僧侶「でも、そんな状態じゃ誰にも見えませんし、さまよって何をしようと……」

勇者「誰にも……見えない……?」

僧侶「ええ、それに壁とかも透けちゃいますし……」

勇者「壁を……透ける……」ムラムラ

僧侶「あ、なんか黒いオーラが……」

勇者「僧侶!また今度!また今度相談するから!じゃあ!」スイーッ

―――銭湯

カポーン

勇者「ここしかないよね!うん!」

勇者「誰がこの俺を責められよう。この死んでしまって可愛そうな俺を!」

勇者「さあ、いざ行かん!桃源郷へ!」

スゥ

勇者「お、おお……丸見えだ……」

勇者「ババア多いな……邪魔だどけ」スイッ

勇者「あの子おっきいな……はぁはぁ」

勇者「ちょ、ちょっと触って……」ツンッ

スゥ

勇者「ああ!触れねー!ちくしょう!」

勇者「見るだけか……ああ、あの子かわいいなぁ」

勇者「ちょっと僧侶に似てるな……」

僧侶「勇……者……ここで何を……」

勇者「なんでお前が……」

僧侶「いえ、普通にお風呂に入りに……」

勇者「き、奇遇だな。俺もなんだよ」

僧侶「ここ女風呂ですけど……」

勇者「あ、そうなんだ。あははは……」

僧侶「覗き……ですか」

勇者「いや、あのさ。僧侶……丸見えなんだけど……その、お前の……」

僧侶「!?」

僧侶「こ、この悪霊!」ブンッ

勇者「いや、透けちゃうから……」

僧侶「……」

スタスタッ

勇者「あのー、僧侶?」フワフワ

僧侶「……」ハキハキ

勇者「僧侶さーん」

僧侶「着替え見ないでください」

勇者「僧侶の……ピンクで綺麗だったな……」

僧侶「……」ブチッ

僧侶「あった」ゴソゴソ

勇者「え」

僧侶「聖水を食らいなさい!」バシャア

勇者「ギャアアアアアアアア!」ジュージュー

スゥ

僧侶「あっ、待ちなさい!」

―――教会

僧侶「まったく!勇者はまったく!」

神父「どうかしましたか?」

僧侶「い、いえ、すみません」

神父「独り言ですか?」

僧侶「え」

神父「告別式でもそうでしたが、まさか亡くなった方が現れたとか?」

僧侶「そ、そんなわけないじゃないですか」

神父「そうですか。あなたと勇者殿は仲がよかったからもしやと思ったのですが」

僧侶「ありえません」プイッ

神父「生きてる間に心が結ばれた相手は死んで魂となっても見れるといいますので、もしやと思ったまでです」

僧侶「あんな変態と心が結ばれたことなどありません!」

神父「変態?」

僧侶「い、いえ……はぁ……今日は疲れました……もう休ませていただきます」

神父「そうですか、お休みなさい」

―――翌日

チュンチュン

僧侶「うーん、夕べは良く眠れませんでしたね……肩が重いというか」

勇者「おっ、おはよう、僧侶」

僧侶「!?」

勇者「寝顔可愛かったぜ?」

僧侶「また出ましたね!」ゴソゴソ

勇者「ま、待って!昨日は悪かった!」

僧侶「謝ってすむと……」

勇者「俺、成仏することにしたからさ!」

僧侶「え」

勇者「俺、もう消えるから!」

僧侶「なんで突然」

勇者「やっぱ死んだままってのはよくねーよな。俺勇者だしさ」

僧侶「……」

勇者「だからさ、パッっと送ってくれよ、天国にさ」

僧侶「天国にいけるとでも?」

勇者「え」

僧侶「覗き魔……」

勇者「いや、あれは……その……」

僧侶「……」

勇者「駄目……かな」

僧侶「今日、あなたの遺体が埋葬されます」

勇者「あ、そういえば俺自分の死体まだ見てないわ」

僧侶「その後で送ってあげます。天に……」ウルウルッ

勇者「何お前涙ぐんでんの?」

僧侶「……」

僧侶「着替えるので出てってください!」

―――王国郊外

王様「勇者……この英雄をあの丘の上に奉ろうと思う!」

王様「勇者はあの丘から眺めが好きだった。自分の好きな王国が見渡せるあの丘が」

勇者「いや、別に好きじゃなかったぞ」

王様「子供のころからあの丘に登っては剣の修行をしていた。それを見ながらよく話をしたものじゃった」

勇者「あんたとは旅の前に1回あっただけじゃんか……」

王様「さあ、みなで勇者をあの丘まで運ぼうではないか」

「勇者様……やすらかに……」

ギィギィ

「英雄よ……永遠に……」

ギィギィ

「勇者を埋葬を手伝ったなんて将来の自慢になるな」

ギィギィ

魔法使い「爆裂呪文!!!」

ドゴオオオオオオン!

王様「」

「ぐあっ」

「きゃあ」

バタッ

魔法使い「勇者は死なせない!」

勇者「え?え?魔法使い!?」

勇者「そういえば葬儀に来てなかったな」

魔法使い「全員気絶したわね」

ギィ

魔法使い「勇者……こんなに冷たくなって……」

勇者「いや、俺死んでるからね」

魔法使い「とにかく体を家まで……」

ズルズルッ

勇者「見えてねーのか。こいつも……」

―――魔法使いの家

魔法使い「念願の勇者の体を手に入れたわ」

勇者「でも死なせないって言ってたな。もしかして……生き返る!?」

魔法使い「これが勇者の体……はぁはぁ」ナデナデ

勇者「魔法使い……まさかお前俺のこと……」

魔法使い「いい触媒になりそう」

勇者「え゛」

魔法使い「どこから細胞をいただこうかしら」ジャキン

勇者「ハ、ハサミ!?」

魔法使い「とりあえず……」

勇者「や、やめてえええええ!切らないで!そこだけは!」

ジョキジョキ

勇者「ギャアアアアアア!痛くないけど、ギャアアアアアア!」

魔法使い「やっぱり、細胞に魔力がこんなに大量に……すごい」

ジョキジョキ

勇者「やめろおおおおおおおお」

魔法使い「これだけ毛があればいいかしら」

勇者「ひどい……お嫁に行けない……」

魔法使い「これは触媒として採っておいてっと」

魔法使い「いよいよ、蘇生ね」

勇者「お」

魔法使い「このために儀式の準備をしておいたんだから……えっとイモリの黒焼きに……牛蛙の糞に……」

勇者「おお!魔法使い!やれるのか!お前はやれる子だったのか!」

魔法使い「これを勇者に飲ませて……」

ドロドロ

勇者「うぇ……気持ち悪い……けどこれで生き返るなら……」

魔法使い「魔方陣の上に寝かせてっと」

魔法使い「はぁぁぁぁ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

勇者「おっ、魔方陣が光はじめた」

魔法使い「さ迷える穢れた魂よ!」

勇者「穢れた魂って……」

魔法使い「破壊神の名の下に、今、地の底より蘇りたまえ!」

パァァァァ

勇者「おっ、これでもしかして俺が中に入れば生き返るとか!?」

勇者(死体)「……」ビクッ

勇者「あ、あれ?俺が入ってないのに動いた?」

勇者(死)「……」ビクッビクッ

魔法使い「さあ、黄泉がえりなさい!」

勇者(死)「ウボァアアアア」ズルズルッ

勇者「……」

魔法使い「やった……やったわ!」

勇者「なんか違うものが入ってる!」

魔法使い「勇者!あたしよ!分かる?」

勇者(死)「ウボアアア……オレ……オマエ……マルカジリ」

魔法使い「食べちゃいたいくらい可愛いって?キャアアア。もうっ、勇者ったら!」

ドンッ

勇者(死)「グゲ?」

勇者「いや、ちげーだろ!脳みそ沸いてんのか!こいつ」

魔法使い「やっぱあたしって天才ね。みんなに教えてあげよっと。蘇生に成功したって」

勇者「大失敗だから!やめろ」

魔法使い「さっ、行くわよ。勇者」

勇者(死)「ウボァ」

勇者「ウボァじゃねーよ!」

バターンッ

勇者「どうしてこうなった」

―――勇者の家

魔法使い「こんにちはー」

勇者(死)「グァ」

コンコン

勇者母「なんですか、私たち旅行の準備でいそが……え」

勇者父「どうした、客なんてほうって遊びに……な」

魔法使い「お子さんを生き返らせた天才魔法使いですがなにか」ニコニコ

勇者(死)「ウボァ」

勇者父「勇者ってこんなだったっけ……」

魔法使い「もっと喜んでくださいよー」

勇者母「た、確かにこんな感じだったわね」

勇者「おい!お袋!」

勇者父「あ、そういえばこんな死んだ魚みたいな目してたなぁ」

勇者「おやじひでぇ……」

勇者母「勇者!」ガバッ

勇者(死)「ウボァ?」

勇者母「いいのよ!そんなこと心配しなくて!生きてくれててよかったわ」

勇者「会話できてる!?」

勇者(死)「ウボァ!」

勇者父「ははは、さすが俺の息子だぜ。うれしいことを言ってくれる」

勇者「うそだろ!?なにこれ」

勇者母「でも、そうする?今更生きてたなんて……」

勇者父「だな……あれだけ盛大に葬式やっておいて……」

勇者「俺の両親が屑な件について……」

勇者母「とりあえず王様呼びましょうか」

勇者父「だな」

魔法使い「王様にもあたしの天才っぷりを見てもらえるのね。きゃー!ご褒美楽しみ!」

王様「いつつ……こんな時に何事だ」フラフラ

勇者母「ど、どうなされたんですか。その傷は」

王様「勇者の埋葬中に突然爆発が起こってな……ん?両親のおぬしたちはおらんかったのか?」

勇者母「あ」

勇者父「旅行の準備に夢中で……」

魔法使い「それは災難でしたねー。王様」ニコニコ

勇者「お前が言うな」

王様「お前は……葬式にもきておらんかった魔法使いがなんでここに……」

魔法使い「ふふふ、よくぞ聞いてくれました」

魔法使い「ジャーン!ご対面!こちらをご覧ください」

王様「げっ」

勇者(死)「ウボァアアア!」ズルズルッ

王様「勇者……確かに死んだはずでは……」

勇者「死んでます」

王様「ん?勇者ってこんなだったか?」

勇者(死)「グゲゲゲ」ゲラゲラ

魔法使い「こんな感じだったでしょ?」

王様「た、たしかに、こんな風にボーっとしたところがあったな」

勇者「ねーよ!」

王様「しかし、これはまずいぞ」

魔法使い「え?なんで?」

王様「今更、勇者は生きてましたでは国民が納得すまい」

王様「しばらく隠れててもらったほうがよい。その後のことは考えておこう」

勇者母「じゃあ勇者はお留守番ってことで」

勇者父「ではそろそろ行くか」

勇者「生き返ったばっかの息子ほうっておいて旅行行く気か!?」

勇者(死)「ウボァ!」

勇者父「そうか、任せても平気か。元気でな」

勇者「元気じゃねーよ!」

―――教会

魔法使い「ってことで、あなたにも自慢しに来ました」

勇者(死)「ウボァ」

僧侶「何これ」

勇者「いや、これは別に俺のせいじゃなくてな……俺は成仏しようと思ってたんだけど」

魔法使い「ふふふっ、あなたにできない蘇生にあたしは成功したのよ。勇者の蘇生に」

僧侶「これが勇者?」

魔法使い「すごいでしょ」

勇者「あの……僧侶」

僧侶「そうですね。この気持ち悪い変態的な目や話しかた、臭う体臭、勇者に間違いないですね」

魔法使い「でしょでしょ?」

勇者「僧侶さん……怒ってらっしゃる?」

僧侶「町のみんなも喜ぶことでしょうね」

魔法使い「あたしもみんなに自慢したいんだけど、王様に止まられちゃってねー」

僧侶「王様が?」

魔法使い「町のみんなが混乱するからとかなんとか言ってたけど」

僧侶「ふーん……魔法使い、あなた魔王と戦った時のこと覚えていますか?」

魔法使い「は?戦ってないじゃん。逃げちゃったし」

勇者「お前ら……」

僧侶「ではなくて逃げる時のこととその後のことです」

魔法使い「えーっと確か戦士がやばそうだから逃げるぞとか言って勇者がついてきてなくて……」

魔法使い「その後、戻ったら勇者が血まみれで倒れてて……」

ガシャ

兵「こちらにいましたか。探しました」

魔法使い「え?」

兵「そちらが勇者殿ですね。ご同行いただきます」ガシッ

勇者(死)「ウガッ?」

兵「魔法使い様もご一緒に」ガシッ

魔法使い「な、何?ご褒美?」

兵「ええ、それはもう」

魔法使い「やたっ!いくいくぅ!」

魔法使い「じゃ、またね!僧侶」

バタン

勇者「あのー……僧侶さん?」

僧侶「……」

勇者「怒ってる?」

僧侶「え?」

勇者「怒ってない?」

僧侶「あ、すみません。考え事をしていましたので。怒ってなんていませんよ」

勇者「じゃ、じゃあまた覗いても……」

僧侶「……」ゴゴゴゴゴゴゴッ

勇者「じょ、冗談ですよぉ~いやだなぁ僧侶さん、その手の聖水離してくださいよぉ~」フワフワ

僧侶「なんかおかしいと思いませんか?」

勇者「え?何が?」

僧侶「あなたが生き返ったのに隠すなんて」

勇者「いや、生き返ってないんだけど……」

僧侶「ええ、たぶんあれはゾンビですね」

勇者「俺ゾンビっす?」

僧侶「話を聞いてた限りではあなたの両親も王様も気づいているんじゃないですか?」

勇者「え?じゃあ何で生き返ったとかいってんの?」

僧侶「両親が報酬を失うのを恐れてでしょうけど……」

勇者「俺の両親って……」

僧侶「王様には何かありますね」

勇者「え?どういうことだ?」

僧侶「私にも詳しくはわかりませんが……たぶんあなたが死んだときのことが関係してるのではないのかと……」

勇者「俺が死んだとき?」

僧侶「本当に何も覚えてないんですか?」

勇者「えーっと、うーん、なんだっけ……」

僧侶「駄目ですか」

勇者「真っ暗だったからなぁ……」

僧侶「めった刺しにされてましたけど……」

勇者「ああ、なんか刺されたんだっけ?うーん」

僧侶「やっぱり謎は魔王城にあるみたいですね」

勇者「は?なんで?謎?調べてくれんの?」

僧侶「世界が平和になってもあなたが不幸じゃ寝覚めが悪いですからね」

勇者「不幸っていうか死んじゃってるんだけど……」

僧侶「魔王城……調べて見ますか」

スタスタ

僧侶「はぁ……はぁ……」

勇者「大丈夫か?」フヨフヨ

僧侶「あなたは楽そうですね……」

勇者「浮いてるからなー。楽チンだ」フヨフヨ

僧侶「これ一人旅みたいなものですね……」

勇者「何言ってんだ。魔物が出たら俺が守ってやるって」フヨフヨ

僧侶「透けちゃって攻撃できないでしょう……はぁはぁ」

ペタンッ

勇者「どうした」

僧侶「疲れました……よく考えたら変態のためにここまでやることなかったかもって……」

勇者「ちょっ」

―――魔王城

僧侶「ぜぃ……ぜぃ……」

勇者「なんだかんだ言ってここまで来てくれるのな」フヨフヨ

僧侶「べ、別にあなたのためじゃありません」

勇者「じゃあ、なんでここまでしてくれんの?」フヨフヨ

僧侶「そ、それは……」

勇者「それは?」

僧侶「魔物がいませんね……」

勇者「あ、ごまかした」

僧侶「もう魔物も全滅したんでしょうか……」

勇者「どうだろうな……お、もう魔王の部屋だぞ」

僧侶「あの後よく調べなかったですからね。ここに何かが……」

ギギィ

勇者「うおっ!血だ」

僧侶「これは前も見ました。あなたの倒れていたところです」

勇者「すげえ……こんなに血が出たのか」

僧侶「周りを調べてみますか」スタスタ

僧侶「ん?」

勇者「何かあったか?」

僧侶「足跡が……」

勇者「そりゃ足跡くらいあるだろう。魔物の巣窟だからな」

僧侶「これは人の足跡ですよ。それも……たくさん……」

勇者「は?捕虜かなんかか?」

僧侶「それに血がそこかしこに……これは……」

勇者「何かわかった?」フヨフヨ

僧侶「勇者……あなたって……」

勇者「ん?なになに?惚れた?」

僧侶「何の役にも立ちませんね……」

勇者「僧侶が冷たい……」

僧侶「ここはもういいです。勇者あなたも少しは役に立ってください」

勇者「な、なんでもやるぞ!」フヨフヨ

僧侶「……お手」

勇者「わんっ!って何をやらせる」

僧侶「犬みたいでしたので。では……」ゴニョゴニョ

勇者「ふむふむ」

僧侶「では、私はここから戻らないといけないので……先に行っててください。はぁ……」

勇者「任せろ!」ヒューンッ

僧侶「便利ですね……幽霊って……」

僧侶「帰ろ……」

スタスタ

―――戦士の家

戦士「がははははは。これが光の剣かー」ジャキンッ

戦士「すげー、やっと手に入れたぜ」

戦士「まぁ、そのうち手に入ることになってたんだけどな」

戦士「あんな化物に付き合わされた報酬としては妥当かもな」

戦士「でもまったく、王様もえげつないことするよなー」

戦士「ま、俺も地位と名声にこんないいものまで貰えちまって……」

勇者「そうか……戦士……」ゴゴゴゴゴゴッ

戦士「!?」ゾクゾクッ

戦士「うおっ!寒気が……」

勇者「初めて出来た友達だと思ってたんだけどな……」

ガタガタッ

戦士「なぁ!?地震!?いや……揺れてねぇ!?ポルターガイスト!?」

戦士「ま、まさか……」

―――王城

王様「まさか生きを吹き返すとはな。まったく」

大臣「今、兵に再度殺すよう命じましたので……」

王様「そうかそうか」

大臣「それで魔法使いはいかがいたしましょう。余計なことを話される前に処刑しますか」

王様「いや、なかなかいい女のようじゃからな。むふふっ」

大臣「王様も好きですねー」

王様「ふはは、お前にも貸してやるから楽しみにしていろ」

大臣「あざっす!」

王様「しかし勇者とは本当に化物だな」

大臣「まったくです、死んでまで迷惑をかけるとは」

王様「まぁ、あれはあれで役には立ったがな。魔物を殲滅させる程度にはな」

大臣「ええ、でもあの強さで町でも襲われたらと思うと……」

王様「ああ……よかった……本当に殺せてよかった……」

大臣「魔王がいるなんて話も作っちゃいましたしね」

王様「途中でやられて死んでくれるものと思っておったのだがな」

大臣「戦士を送り込んでおいて正解でしたね」

王様「まったくだ。あれの協力がなければ今頃は……」

勇者「……」ゴゴゴゴゴゴッ

オオーン

王様「!?」

大臣「!!?」

ゾクゾクソクッ

王様「なんか寒気が……」

大臣「わ、私も……」

ダダダッ

兵「お、王様!」

王様「なんじゃ」

大臣「お前は勇者の処刑を命じた……」

兵「勇者が……死にません」

大臣「なに?」

兵「心臓を貫こうと首を撥ねようと再生してしまって……」

兵「あ、あれはまさにゾン……」ガクブル

大臣「ええい!うろたえるな」

王様「死なぬか……化物め……魔法使いを尋問しろ!」

大臣「あ、それ私やってもいいですか?」

王様「……このエッチめ」

―――教会

僧侶「はぁはぁ……やっと戻ってきました」

僧侶「勇者ー?いますかー?」

勇者「……」オオーン

僧侶「!?」

僧侶「な、なんか死霊が取り巻いてますよ?ど、どうしたんですか?勇者」

勇者「俺は勇者じゃない……」

僧侶「え?」

勇者「もう消えたい……」

僧侶「何を言ってるんですか。戦士や王様から何か聞けましたか?」

勇者「俺は化物だ……」

僧侶「あなたは化物なんかじゃ……」

勇者「化物だったんだよ!みんな俺を殺すために全部……全部……」

僧侶「とにかく話を聞かせてください」

勇者「魔王なんていなかったんだ……僧侶、お前の言ったとおりだった」

僧侶「やっぱり魔王城の部屋にいたのは人間でしたか」

勇者「ああ……戦士にお前たちを逃がさせて俺一人だけにして……」

僧侶「闇の中から大勢で串刺しに……。それであの足跡と刺した剣から落ちた地がそこかしこにあったんですね」

勇者「お前は……知らなかったんだよな、なぁ僧侶」

僧侶「ええ、何も聞いてませんでした……」

勇者「魔法使いはどうなんだろうか」

僧侶「彼女は……そんなことに協力する性格には思えませんが……」

勇者「僧侶……俺は……憎い……」オオーン

勇者「憎くて憎くてしかたないんだ……俺はこのまま悪霊に……」

ガタガタガタッ

僧侶「ポルターガイスト……」

僧侶「なってしまうでしょうね……このままでは……」

勇者「俺はどうすれば……」

僧侶「がんばりすぎですよ、勇者」

勇者「え」

僧侶「いつでも正しくあろうとしすぎです。憎いなら憎いでいいじゃないですか」

勇者「だけど俺は……正しくなくては周りが……」

僧侶「化物と言われましたか?化物で何か悪いんですか」

勇者「そ、僧侶?」

僧侶「ふふっ、普通幽霊になってまでこんなに正気を保てませんよ」

勇者「お前はいったい何を言って……」

僧侶「私も憎いです……」

勇者「え?」

僧侶「勇者をこんな風にして……こんな風に……」ブルブル

ペタッ

勇者「ええ?俺の手……触れてる?」

僧侶「想いの通じた相手とは死後も見たり触れたりできるそうですよ」

勇者「なっ///」

僧侶「べ、別にあなたと私のことじゃないですけどね!」プイッ

勇者「……」オオーン

勇者「でも、俺はこのままじゃ……」

僧侶「じゃあ、行きましょうか」

ギュッ

勇者「は?」

僧侶「憎いんでしょう。苦しいんでしょう」

勇者「そ、そうだけど……」

僧侶「だったらやることは一つしかないじゃないですか!」

勇者「お、お前ほんとに神に仕える者かよ……」

僧侶「……」

僧侶「ぷっ……」

勇者「ははっ……」

僧侶「くすくすくすっ」

勇者「はははははは」

僧侶「わ、笑わせないでください」

勇者「はははっ、よしっ!行くか!」オオーン

―――牢獄

魔法使い「なんであたしが捕まっちゃうのよー」

魔法使い「出しなさいよー」ガタガタッ

大臣「まったくうるさい囚人だな」

魔法使い「あ、あんたは!」

大臣「ほほぅ、私を知っているのかね。まぁ私の知名度からすれば当然だがね」

魔法使い「誰?」

大臣「このアマ!」

ガシャンッ

魔法使い「あ、開けてくれるの!?」

大臣「ああ、私がお前の開いたことのないところをたっぷり開けてあげるよー」ワキワキッ

魔法使い「ちょっ、ちょっと……」

兵「大臣殿、それより勇者の……」

大臣「ちっ……お前いたのか……」

大臣「えー、おほん。お前が勇者を生き返らせたんだな?」

魔法使い「あのー口臭いんだけどー近づかないでくんない?」プイッ

大臣「なっ……」

兵「ぶほっ……」

大臣「兵、減給されたいのか!」

兵「し、失礼しました!」ザッ

大臣「えー、お嬢さん、お前が勇者を生き返らせたんだな?」

魔法使い「当然!あたし以外にそんなことできる天才がいると思うの?」

大臣「じゃ、じゃあまた死なせるにはどうしたらいいのだ?」

魔法使い「は?なんでそんなこと教えなきゃいけないの?」

大臣「死んだ人間が生き返るなど神に逆らう所業、許されるわけがないだろう」

魔法使い「別にいいじゃん。それにあたしが祈ったの神じゃなくて破壊神だし」

大臣「魔界の神に祈るな!ごほっ……ごほっ……」

兵「大臣殿、落ち着いて。はい、水」

大臣「ごくっごくっ……マズイ……もう一杯!」

魔法使い「うわ……おっさんくさ……」

大臣「やかましい!それにあれは生き返ったというよりゾンビではないのか?」

魔法使い「え?そうなの?」

大臣「分かってなかったのか!?」

魔法使い「そ、そんな……そんな……」

大臣「ショックか。そうであろうな。だが、それを成功させたお前なら殺し方も……」

魔法使い「そんなすごいことできちゃうなんて!やっぱあたしって天才!?」

大臣「こ、この……」

兵「落ち着いて、大臣殿」

大臣「で、でだ。あんな化物生かしておくわけにはいくまい?」

魔法使い「化物?誰が?」

大臣「勇者のことだ。お前は怖くないのか。あのような特殊な力をもった人間が」

魔法使い「別にー?面白いじゃない」

大臣「いいから言え!どうやったら奴を殺せる!」

魔法使い「人を化物扱いするような人には教えてやんない」

大臣「ふふふふっ……言わないなら……」ムニュッ

魔法使い「ちょっ!どこ触ってんのよ」

大臣「私は実はお前のような気の強い娘が好きでなぁ」ムニュムニュ

魔法使い「や、やめて!ちょっとそこの兵士止めなさいよ!」

兵「はぁはぁ」

魔法使い「こ、こいつ……」

大臣「誰も助けに来ないぞ。ここは密室だからな……ふふふふっ」

魔法使い「た、助けてー!勇者ー!」

勇者(死)「ウボァ」ガンガンッ

大臣「うわっ!びっくりした!」

大臣「って隣の牢獄か。驚かせおって……」

大臣「さーって、ではいただきまーす」ガバァ

魔法使い「いやあああああああああああ!」

僧侶「やめなさい!」

大臣「お前は……僧侶?」

兵「大臣殿は今お楽しみ中だ。後にしろ」

スタスタッ

兵「まったく、女一人でどうやってここまで……」

オオーンッ

兵「な、なんだ……寒気が……」ガタガタッ

ヒュオオオオオオオオッ

兵「き、気分が……ううっ」バタッ

大臣「な、何をした」

僧侶「怨念にあてられただけですよ。ねぇ、勇者」

僧侶「大丈夫ですよ。あなたの体ならすぐそこに」

大臣「お、お前誰と話しているんだ!」

魔法使い「僧侶!助けてよー。この変態があたしの胸を……」

僧侶「あなたのあるかないか分からない程度の胸なんてどうでもいいじゃないですか」

魔法使い「気にしてることを!」

僧侶「それにあなたともあろう人がなんで捕まってるんですか」

魔法使い「杖も触媒も取られちゃったのよ!」

大臣「ち、近づくな!それ以上近づいたらこの女の……」

オオオオーンッ

僧侶「ええ、許せませんよね。私も許せません」

大臣「だ、だからさっきから誰と……」

魔法使い「隙あり!」

キーン

大臣「ぎゃっ!つ、つぶれ……」バタッ

僧侶「あ……」

魔法使い「ふーっ、助かった……」

僧侶「私の活躍の場が……」ショボーン

魔法使い「僧侶ー、ここから出してー」

僧侶「別にあなたを助けに来たわけじゃないですからね」

魔法使い「もーツンデレなんだからー」

スタスタッ

僧侶「勇者、あなたの体ありましたよ」

勇者(死)「ウボァ!」

魔法使い「ちょ、ちょっと。あたしは?」

僧侶「だからあなたを助けに来たわけじゃありません」

魔法使い「ま、待って!だったら何をしにきたのよ。っていうか助けてよ」

僧侶「正しい心を持って天に向かおうとするあなたなら無理だったでしょうけど今の恨みに満ちたあなたなら……」

魔法使い「?」

僧侶「ええ、そうよ。勇者」

魔法使い「勇者?え?まさか……いるの?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

僧侶「ええ、いますよ。ここに……」

魔法使い「面白いわ!それに……この邪悪な気配は」

勇者(死)「ウボァ?ぐ、ぐぐぐぐぐぐぐぐ」ビクンビクンッ

僧侶「いよいよね……」

魔法使い「まさか勇者の魂が宿ってなかったなんてね。でも……これで……」

オオーンッ

勇者「ふははははははははは!俺復活!!」ブワッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

魔法使い「すごい……この邪悪な魔力は……」

僧侶「おかえり……勇者」ギュッ

勇者「僧侶……」ギュッ

勇者「では……行くか」

僧侶「そうですね。でももう少しこのままでも……」

魔法使い「ちょっ、ちょっと待って!何をする気?っていうか助けてよ」

勇者「何をする?」

魔法使い「ええ、そんな体で何を……」

勇者「そんな体?別に便利じゃないか。死なないし、この溢れる邪悪な力……」ゴゴゴッ

魔法使い「ええ、すばらしいわ!」

勇者「え?」

僧侶「へ?」

魔法使い「それで何かするんでしょう、あたしにも1枚かませなさいよ」

勇者「お前、俺が怖くないのか?」

魔法使い「怖い?面白いの間違いじゃないの?」キョトンッ

勇者「ふははははは!いいだろう!俺の力を見せてやる」

バキバキバキッ

勇者「ほらっ、出ろ」

魔法使い「おおー、素手で牢屋を……すごいわ!さすがあたしの作品」

魔法使い「で、何をするの?」

僧侶「……お邪魔虫が増えちゃいました……」

魔法使い「ん?僧侶。何か言った?」

僧侶「別に……」

勇者「あいつらの言ってた嘘を本当にしてやるんだよ」

魔法使い「嘘?」

勇者「ああ、俺もみんなも騙された嘘を本当にな……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

勇者「ふはははは……はははははは……はーっはっはっは!」バサァ

王様「遅いな……どうしたのじゃ大臣」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

王様「な、なんじゃこの揺れは……」

フッ

兵「お、王様!空が!」

王様「なっ……空が闇に……」

「聞け!愚かな人間ども!」

王様「あ、頭に声が……」

「我は魔王!お前たち人間を滅ぼす者だ!」

王様「なっ……」

「お前たちの王は死んだ!我が魔の軍団がお前たちを必ず滅ぼすであろう!」

王様「わしが死んだ?何を馬鹿なことを……」

兵「お、王様……」

王様「ん?お前なんでそんな背が高いのだ?」

兵「く、首が……」

王様「首?え?そ、そこにあるのはわしの体……」

グシャア

―――戦士の家

戦士「な、なんだ今の声は……それに空が真っ暗だ……」

ドンドンドン

戦士「や、やべ……俺が勇者になるとか言っちまったよ」

ドンドンドンッ

戦士「うるせえ!」

戦士「どうする俺、どうする」

1【勇敢な俺は魔王を倒して真の英雄となる】
2【魔王なんて本当はいない、これは夢だ】
3【ハンサムでカッコイイ俺は超名案を思いつく】

戦士「おれは2番を選びたいところだが……ここは3番だな……」

バキバキッ

勇者「呼んでるんだから出ろよ。戦士」

戦士「ゆ、勇者!?な、なんで生きてるんだ!?」

勇者「なんで?俺は死んだのか?なぁ戦士、俺がなんで死んだかお前知ってるか?」

戦士「へ?」

勇者「なぁ、教えてくれよ。戦士」

ゴゴゴゴゴゴゴッ

戦士「く、来るな!」ジャキンッ

勇者「おっ、俺の光の剣じゃないか。ちょっと貸してみろ」ガシッ

戦士「ぐぁ、な、なんて力だ……」

勇者「ははは、いてぇ!手が焼けるようだ」ジュージュー

戦士「お、お前……」

勇者「さすがに聖なる加護を受けた剣は持てそうにないな。ほらっお前にやるよ」ポイッ

戦士「な、なんなんだよ!なんなんだよ!お前は!」

勇者「ああ、忘れてた。これもやるよ」ポイッ

コロコロ

戦士「な、なんだ……ひぃ!く、首?」

勇者「王様の首だ。とっておけ」

戦士「お、お前がまさか……」

勇者「ああ、魔王だ」

戦士「ううううっ」ガタガタッ

勇者「どうした?震えているぞ?」

勇者「来ないのか?今はお前が勇者なんだろう?」

戦士「お、おおおおお俺を殺すのか」

勇者「いや、ころさねー」

戦士「へ?」

勇者「じゃあな……親友」バサァ

戦士「……」

戦士「た、助かった……」ヘニャア

―――魔王城

僧侶「なんで戦士を助けたんです?」

勇者「助けてねーよ。それに人間には希望が必要だ……」

僧侶「希望?」

勇者「やがて俺による絶望に塗りつぶされることになるがな。ふはははははは!」

僧侶「戦士は希望になるでしょうか?」

勇者「んー、あの調子じゃ無理っぽいかな。だが、周りからのプレッシャーはすごいだろうな。なんてったって新しい勇者様だからな」

僧侶「それにあなたの両親はいいんですか?」

勇者「邪悪な俺にそんな里心残ってるわけねーだろ。ったく何だよさっきから」


僧侶「いえ、一人で寂しくないのかなーっと……」

勇者「……」

勇者「一人じゃねーよ」

僧侶「え」

勇者「お前がいれば……誰もいらねー」ボソッ

僧侶「も、もう一度言ってください!」グッ

魔法使い「出来た!魔物の生成に成功したわよー!」バタバタッ

勇者「!」バッ

僧侶「!?」バッ

魔法使い「どうしたの?二人とも」

勇者「べ、別に……」

僧侶「あなたって人は……ちょっとは空気を……」

魔法使い「見てみて!勇者の細胞を触媒に……」

僧侶「いえ、そんな説明はいいですので、ちょっと二人きりに……」

勇者「ほほぅ、これはすごいな」

僧侶「ちょっ」

魔法使い「でしょでしょ?これで攻めれば人間なんてすぐに……」

勇者「いや、こちらからは攻めない」

魔法使い「えーなんでよー」

勇者「ほうっておけ、いずれ人間達がこの城を攻めにくる」

魔法使い「だからなんでー勇者、あんた欲しいものとかないの?」

勇者「もう勇者じゃない。魔王だ」

魔法使い「そんなのどっちでもいいじゃん」

勇者「魔王は自分で攻めて言ったりしない。それに欲しいものなんてあいつらは持っていない」

魔法使い「つまんないつまんないー」

勇者「魔王とはそういうものだ」

魔法使い「ブーブー」

勇者「それに……

魔法使い「それに?」

勇者「俺の欲しいものはこの城に全部あるからな」キュッ

僧侶「!」



おしまい

(´・ω・`)

エピローグですか……(´・ω・`)

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