【艦これSS】 キス島撤退作戦‐異聞 (472)


このSSは『艦隊これくしょん~艦これ~』の キス島撤退作戦について、
仮想戦記風味に仕上げたものです。

「艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!」のビジュアル見てひらめきました


※本SSにおける艦娘は、使役する妖精の支援を受けて実際の艦を操っているという設定です。
 蒼き鋼のアルペジオのメンタルモデルをイメージして下さい。世界観も少し拝借

※佐藤大輔作品から多大な影響を受けています

※独自設定とか仮想戦記がお好きでない方はご注意を


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385304239


― プロローグ ―

奇跡的な経緯を経て痛み分けで終わった二度目の大戦から十数年。
世界は潜在的な対立が依然存在するものの、それなりの平和を謳歌していた。

その最中、正体不明の深海棲艦が突如出現。
人類は連合して立ち向かうも、とめどなく現れる敵に敗北を重ね、ついに制海権を喪失。
徐々に海上交通を遮断され、その生存圏を狭められていった。

日本帝国の誇る連合艦隊は壊滅して久しく、南方及び大陸との連絡も断たれて資源も乏しい状況では
枯渇した戦力の回復は絶望的な状況である。
追い詰められた日本は禁断の呪術に手を染め、巫力の高い少女の魂を対価に、かつての大戦で活躍した
軍艦を模した兵器を錬成した。
外見は当時の軍艦そのものであったが、対価とした少女が艦の姿を模して具現化した点が大きく異なる。

『非人道的』『異端の所業』『非道の産物』それら非難を非常時の超法規的処置で纏めて括り、
兵器の錬成を推し進めたことで、戦力は急速に回復していく。

いつしか『艦娘』と呼ばれるようになる彼女たちの活躍によって、徐々に生存圏を回復。
先ずは大陸への連絡路を回復し、ついで戦略物資を求めて西方・南西海域へと進出。
北米への連絡路回復を目的として、北方海域への哨戒・進出を進めていた。

ある年の10月、かつての大戦における古戦場であるサーモン諸島に深海棲艦の大規模集団及び、
これまでで最大であると見られる敵の巣たる泊地を確認した。

帝国海軍はこれの撃滅を決定。

各鎮守府から戦隊単位で艦娘を召集し、呉鎮守府艦隊を基幹とする連合艦隊に再編成。
11月1日を以って攻撃を開始。
最終的に長門以下の戦艦六隻が敵最深部へ殴り込み、深海棲艦泊地を撃滅した。
のちに11月の大海戦と呼ばれる海戦はこうして終結を迎える。

これ以降南西海域での敵戦力は著しく後退するものの、連合艦隊の損害も大きく、
海上護衛のみならず、鎮守府防衛にも戦力を事欠く有様であった。


――大海戦から一週間後 横須賀鎮守府

鳳翔「おはようございます。提督」

提督「うん、おはよう鳳翔。それでは仕事を始めよう。報告を頼む」

鳳翔「はい、提督」

鳳翔「まず大海戦参加艦艇の修復状況ですが、駆逐艦の半数は修復が完了していますが、
   もう半数はあと数日程度掛かります。
   しかし、被害の大きかった空母と巡洋艦については最低でもあと1週間は必要です」

提督「昔に比べれば驚異的な回復速度ではあるな。現在出撃可能な戦力は?」
   ※修復時間は艦これの10倍程度とお考え下さい

鳳翔「戦艦は比叡、霧島、大和。巡洋艦は摩耶のみ。駆逐艦が8隻の、計12隻です」

提督「妙に偏ってるなぁ。これじゃ防御と艦隊決戦くらいしかできないぞ」

鳳翔「あの古戦場に縁のある艦娘は招集されませんでしたから」

提督「温情なのか、はたまた縁起が悪いからか…」

鳳翔「この戦力では、しばらく哨戒と遠征に専念するしかありませんね」

提督「そうだな…。あと、臨時編成の駆逐艦で出してたタンカー護衛任務の状況は?」

鳳翔「今朝の定時連絡によると、予定通り明日の帰還です」

提督「大変結構。では、臨時編成の駆逐隊をもう一隊遠征にだして、残りは演習を――」

任務娘「提督!連合艦隊司令部から緊急入電です!」ドタバタ


 連合艦隊作戦命令 第○○号

 横須賀鎮守府司令ハ麾下ノ艦隊ヲ以ッテ キス島派遣ノ陸軍偵察部隊ヲ収容スルト共ニ
 キス島周辺ノ敵勢力ヲ殲滅セシメルコト 尚、陸軍ノ救出は三日以内ニ行ウベシ

 詳細ハ別紙ノ通リ

  連合艦隊司令長官


提督「…、…。長官に電話を繋いでくれ。大至急だ」

鳳翔「はい、直ちに」


長官『私だ。何か用かね?』

提督「横須賀鎮守府司令であります。今回の作戦命令についてお願いがございます」

長官『聞こう』

提督「当鎮守府では戦力が不足しています。どこか別の鎮守府艦隊に――」

長官「戦力不足はどこも同じだ。君のところが一番マシなんだよ」

提督「…。三日以内の作戦完了は不可能です。せめて一週間は頂きたく」

長官「キス島の陸軍偵察隊は物資が乏しく、また、深海棲艦の攻撃にもさらされており、猶予は無い」

提督「事態は一刻を争う、ですか」

長官「その通りだ。命令はすでに発令されている」

提督「っ!!………増援をつけて頂けませんか。あと物資の手当てを」

長官『いいだろう。増援を調整させよう。物資は用意する』

提督「教官は昔から無理難題をおっしゃる」

長官『生徒は素直でなくてはならんとよく教えたではないか』

提督「ちゃんと覚えておりますよ。増援の件は特によろしくお願いします」

長官『ああ、一番いいのを用意させよう。ではな』

ガチャン――

提督「一時間後に会議室に全員集めてくれ。任務娘君は作戦立案を」

鳳翔&任務娘「了解しました」


―― 横須賀鎮守府 作戦会議室

提督「みんな急に集まってもらってすまない。連合艦隊司令部より緊急作戦命令が下った」

提督「わが海軍が北方海域に進出し敵の侵攻艦隊を撃退したことは諸君らも知っての通りだ。
   それに陸軍が呼応してキス島に前線基地建設の為の偵察部隊を派遣した。
   だが深海棲艦の再侵攻によりキス島が包囲され帰還出来なくなっている」

提督「そこで当鎮守府にキス島偵察隊の救出命令が下った。任務娘君、説明を頼む」

任務娘「はい、提督」

任務娘「4日前、有力な敵艦隊によりキス島が包囲され、輸送船による撤収が不可能になりました。
    夜陰に乗じて潜水艦による救出を試みましたが、包囲網に阻まれ失敗。
    高速水上艦艇による撤収を行うことになりました」

任務娘「そのキス島ですが、アルフォンシー列島西部にある火山島で、面積は277.7km²周囲35㎞
    北東から南西方向に伸びる細長い島であり、島中央部にキス湾が位置しています。
    そのキス湾にて陸軍兵の収容を行う予定です。
    キス島周辺海域には小島や暗礁が多く、大型艦及び大規模艦隊が展開するには不向きな場所です。
    その為、救出隊は喫水の浅い駆逐艦による高速艦で編成します」

任務娘「連合艦隊司令部の命令には陸軍兵の撤退と共に、周辺海域の深海棲艦の排除も含まれます。
    今回の作戦では、救出隊とは別の打撃艦隊でキス島包囲部隊の排除及び北方への誘引を行い、
    救出隊はその間隙を縫って島の東南方向から突入。速やかに陸軍兵を収容し撤収します」

任務娘「別働隊がどれだけ敵を撃破・誘引できるかが作戦の成否を左右します。
    敵艦隊の撃破よりも北方への誘引を優先して下さい。
    救出隊は可能な限り戦闘は避けて下さい。
    陸軍兵を収容しキス島を離脱するまで無線封止とします」

任務娘「最後に現時点で確認されている敵艦隊は、
    キス島を包囲する戦艦1乃至2を含む水上打撃艦隊、及び一個水雷戦隊。
    周辺海域を哨戒する二個水雷戦隊です。空母機動部隊は確認されていません。
    作戦説明は以上になります」


提督「これより救出隊および別働隊の編成を発表する」

提督「まず救出隊に陽炎、長月、皐月、霰、曙、潮。旗艦は陽炎」

陽炎「はい!」

提督「次に別働隊。比叡、霧島、大和、摩耶、綾波、夕立。旗艦は比叡だ」

比叡「旗艦は大和のほうがよろしいのではないでしょうか?」

提督「大和の火力は強大だが、いかんせん経験が浅い。旗艦には比叡が適任だ」

比叡「了解しました」

提督「今回は連合艦隊からも援軍が出る予定だ。作戦について何か質問のあるものは?」

提督「よろしい。別働隊は準備出来次第直ちに出撃。比叡はちょっと残れ。
    救出隊はこの後に個別の打ち合わせを行う。
    その他のものは不測の事態に備えて警戒配置で待機。
    それでは解散!」

 ― ― ―

比叡「何でしょうか?司令」

提督「敵艦隊誘引成功時と収容完了時の文言を決めておきたい」

比叡「それなら、―――と、―――でお願いします」

提督「了解した。大和のこと頼んだぞ。気をつけていって来い」

比叡「はい、気合!入れて!行きます!」


提督「さて、救出隊の打ち合わせを始める。
    救出隊は別働隊が敵の包囲部隊を北方に誘引を確認後に突入する。
    尚、作戦中は無線封止。敵と接触した場合は解除する。
    ここまではいいな」

陽炎「はい」

提督「陸軍兵の収容は長月と皐月で行う。魚雷は下ろしていけ。
    それから、陸軍兵の救出を第一とする。もしもの場合は他を犠牲にしてでも帰還せよ」

長月「了解した。責任重大だな」

提督「あと、これが別働隊が使う文言。こっちは救出隊が使う分だ」

陽炎「あー、これ比叡さんが考えたのですね」

提督「色々分かりやすくていいんじゃないか?あと陸軍部隊の情報がこれだ」ペラ

皐月「残存700名余。敵の艦砲射撃で大隊本部全滅で代理が指揮、ね」

提督「その他に何かあるか?」

陽炎「いえ、大丈夫です」

提督「じゃあ、よろしく頼むぞ」

陽炎「旗艦任務は初めてですが、精一杯頑張ります」

曙「ふん!そんなので旗艦が勤まるのかしら?」

陽炎「なっ!」

潮「曙ちゃん!そんな言い方」

陽炎「確かに実戦では初めてだけど、ネームシップの名に恥じるような戦いはしないつもりよ」

曙「どうかしらね?失敗してからじゃおそいのよ」

潮「はわわわわ」

陽炎「あんたこそ失敗して皆の足引っ張らないかの心配したほうがいいんじゃない?」

曙「なによそれ」

陽炎「あなたが居なくても作戦を成功させて見せるってことよ」

曙「あら。あら、そう。それなら私を、私を外しても問題ないわね」

提督「それは駄目だ。戦力に余裕が無い。お前の力も必要だ」

曙「こんなあたしまで使わなきゃいけないなんて――」

提督「そこまでにしておけ二人とも。曙、気は済んだか?」

曙「っ!!――先に艦に戻ります」スタスタ

潮「あのっ、わ、私も戻ります。待って曙ちゃん!」タタタ


陽炎「気象状況を確認してきますので失礼します」

霞「霞もついてく…。失礼します」


提督「はぁー…。臨時集成とはいえ、これは…」

長月「こんなことでは先が思いやられるな」

車月「ふふ、強がっちゃうとこがかわいいね」

提督「すまないな、いつもお前達には割りをくわせてばかりで」ワシワシワシ

早月「ふぁ、は、はわわ!くすぐったいよお! 」

長月「不遇だとは思ってないさ。私達の働きを分かってくれる人が居れば、それで十分だ」チラッ

提督「今回も苦労をかけるが、よろしく頼む」ナデナデ

長月「(これはいいものだな…)…んむ。ああ、頑張るさ」

皐月「まかせてよ司令官! 」


―― 鎮守府 岸壁近く

潮「ちょっとまって。待ってってば! 」グイ

曙「なによ」

潮「ねえ、どうしてそんな嫌われるようなこと言うの?」

曙「別に…。昔からひねくれものなのは知ってるでしょ」

潮「でも、作戦前なんだから、ケンカしなくたっていいじゃない…」

曙「どうせ何かあったら私のせいになるんだから、憎まれ口の一つもくらいいいでしょ」

潮「そんなこと…。でもあんな言い方…」

曙「構わないで! ほっといてよ」

潮「でも、曙ちゃんが心配だから…」

曙「なんでそんなに…、ああ、そうか、潮は私が居たほうが弾除けになるもんな」

潮「なに…それ…。曙ちゃんそれ本気で…、本気で言ってるの?」

曙「事実そうだったじゃない。あたしは潮の引き立て役でしかな―――」

 パァン――!

潮「………」ポロ

曙「――――えっ?」

潮「曙のばか!もう知らない! 」タタッ

曙「………」

曙「ああ…ほんとうざいなあ…私。せっかく出撃できるって言うのに!」ギリッ

書き溜め分でチェックした分が尽きたので、今宵はここまでに致しとうござります。
陽炎抜錨します の小説が出るまでに海戦を含めた救出隊部分の話を終わらせる予定です。

よろしければおつきあいくださいませ

≫13
元々考えていた内容に、ノベライズの挿絵を見てひらめいたネタを付け加えた感じ
霰と陽炎、曙と潮には史実でも色々あったし、SSのネタにはしやすいかな
いらん子中隊ではないかな

≫14
皐月の誤字です。申し訳ない。気をつけます


―― 会議室近く 廊下

霰「陽炎…大丈夫?」

陽炎「大丈夫じゃ、ないかも」

霰「(あの子も…いろいろ…あるみたいだけど)…曙のことは…気にしなくていい」

陽炎「そうじゃないの。そうじゃなくて…、旗艦って初めてだし。できるのかなって」

陽炎「いつもは霞や不知火も居るし、空母や戦艦について行くだけでよかった」

陽炎「でも旗艦の私がミスしたら…、あの時の霰や不知火みたいに――っ!」カタカタ

霰「大丈夫…霰はいるよ…」ギュ

霰「霰はちゃんと最後まで…ついて行くから…」ギュー

陽炎「…うん。ありがとう、ね」


―― 鎮守府岸壁 救出隊

提督「準備に不足は無いな」

陽炎「はい。陽炎以下駆逐艦六隻。出撃準備完了しています」

曙(………)チラッ

潮(………)プイッ

曙(………うぅ)

提督「曙。大丈夫だな」

曙「出撃すれば旗艦の指示に従うものであると認識しております」

提督「大変結構。(ちゃんと指揮には従ういい子なんだよな、曙は)」

陽炎(へぇ…)

提督「では救出隊出撃せよ!…無事に帰って来い」

陽炎「はい。救出隊出撃します!」


鳳翔「行ってしまいましたね」

提督「…工廠の準備は?」

鳳翔「既にできております。まもなく始まるかと」

提督「ありがとう。それでは確認してくる。あと妖精さん達に甘いものを」

鳳翔「はい、お任せ下さい」

―― モーレイ海 別働隊 隊内無線でおしゃべり

摩耶<ねぇ、姉御。連合艦隊から増援があるって話だけど、必要ないんじゃないか?>

霧島<あら、どうして?>

摩耶<敵は戦艦2隻と、あとは水雷戦隊だろ。こっちは戦艦が3隻だ。圧倒的じゃないか>

霧島<そうね。情報通りなら増援はいらないわね。情報通りなら>

摩耶<舐めて掛って敵が多かったら目もあてられないからか>

夕立<慢心、ダメ、絶対。っぽい>

大和<味方が多ければ、こちらの被害を最小限にして敵を殲滅できますし>

綾波<ランチェスターの法則でしょうか>

摩耶<とにかく皆でボコればいいってことか>

比叡<でも夕立や綾波みたいな敵がいたら、逆にやられてたなんてこともあるかもね>

綾波<私と夕立を鬼か悪夢みたいに言わないでください…>


大和<増援は誰なんでしょうか?>

比叡<もう出港しているはずだけど、連絡がないのよね>

摩耶<重巡や水雷戦隊じゃないの?>

比叡<金剛お姉さまだったらいいなぁ…>

霧島<比叡お姉さま。そろそろ警戒配置にしたほうが>

比叡<そうね。警戒配置にしましょう。対潜監視と警戒よ!>

書き貯めあるけど構成がうまくいかないので、今宵はここまでに致しとうござります。

どこかに艦娘同士の呼び方表とかないかな?

公式小説であれば、呼び方はある程度見えて来るんだろうけどね
ドラゴンマガジン買い忘れてた・・・

―― 小笠原近海 演習艦隊

??「燃料が足りないなら遠征で確保するのが基本だな」

??<見つけてきたよー>

??<おお、さすが速いな。よくやった。えらいぞ>

??<えへヘっ。でも護衛が居てめんどくさそうだよ>

??<大丈夫だ。私にまかせておけ>ガチャン!!

??<流石ね>

??<まるで海賊じゃないですか…>

??<まぁまぁ、いいじゃないの~>


―― 呉鎮守府 連合艦隊司令部

長官「増援の手当ては付いたか?」

陸奥「はい、佐世保から4隻出る予定です。また、横須賀からも駆逐艦2隻が加わります」

長官「駆逐艦とはいえ、横須賀に予備戦力はあったのか?」

陸奥「損傷の少ない艦に工廠妖精の全てを付けて突貫工事したそうで」

長官「ほう。非常手段とはいえやるじゃないか」

陸奥「物資については、呉鎮守府から連合艦隊に割り当てられた備蓄を放出しました」

長官「それでよい。どうせしばらくは戦えるフネがないのだからな」

陸奥「それから別件ですが、小笠原諸島西方沖で演習中の艦隊が連絡を絶ちました。
    無線封止訓練と称して応答がありません」

長官「増援への参加を却下されて拗ねてるのか…。篭城のつもりかね」

陸奥「初陣がまだですし、しばらくは海戦が見込めないのでチャンスと見てたのでしょう」

長官「まぁいい、放っておけ。行こうにもキス島までは燃料が持たないのだからな」


 コンコンコン――

長官「入れ」

吹雪「失礼します。横須賀鎮守府から緊急連絡です」

長官「何があった?」

吹雪「横須賀に向け小笠原近海を航行中のタンカー及びその護衛部隊との連絡が
    途絶えたとのこと。
    連合艦隊司令部や他の鎮守府に情報が入っていないかの確認と、
    捜索隊の派遣要請があります」

長官「…………」

陸奥「大海戦以後、絶対国防圏への深海棲艦の侵入は確認されていません」

長官「………まさか」

陸奥「十中八九、彼女達かと――」

長官「演習艦隊を大至急で呼び戻せ!出るまで続けろ。最優先だ」

陸奥「はい!」タタッ

長官「横須賀にはこちらで全て対応すると伝えろ。代わりの油槽船は送る、とな」

吹雪「了解しました」タタッ

長官「あのじゃじゃ馬め。あぁ…どうしてこうなった」


―― モーレイ海 夜明け前 戦艦《比叡》

見張妖精「敵水雷戦隊見ユ!軽巡1駆逐艦4。梯形陣で突入してきます」

比叡「哨戒中の水雷戦隊ね」

比叡<戦闘配備!敵水雷戦隊を排除する。戦艦が一斉射した後、摩耶達が仕留めて>

摩耶<了解!>

比叡<尚、一斉射は私と霧島のみとします>

大和<なっ!どうしてですか!>

比叡<貴女の絶大な火力は切り札にしたいのよ>

霧島<切り札はここぞという時に使われるものよ。アイツらをブッつぶす為にね!!>

摩耶<ヒューッ!>

夕立<ステキなパーティにはサプライズが欠かせないっぽい>

綾波<皆さん騒ぎすぎです。あ、私の分も残しておいてくださいね>

比叡<ごめんね。とにかく今は我慢して>

大和<…はい>

観測妖精「敵艦との距離2万!」

比叡「主砲!斉射!ってー!」

見張妖精「霧島も斉射続きます」

見張妖精「摩耶以下突撃します」

観測妖精「だんちゃーく、今!敵五番艦に命中!轟沈します。四番艦は横転してます」

比叡「うそ!?当たったの?」

見張妖精「霧島斉射は敵旗艦軽巡に命中!轟沈。他の敵艦は反転」

見張妖精「摩耶以下敵艦を追撃しつつあり」


―― モーレイ海 夜明け 戦艦《大和》

大和(比叡さんも霧島さんも初弾命中なんですごい…)

摩耶<残りの駆逐艦は撃沈した。排除完了>

比叡<お疲れ様。そのまま前衛で警戒よろしく>

摩耶<了解>

大和(ほかのみんなもすごい武闘派だから、気後れしてしまいそう)

比叡<隊列変更。大和は私と霧島の聞に入って>

大和<了解。移動します>

大和(でも、私もがんばらないと。もうすぐ武蔵も配備されるのだから)


―― キス島沿岸 深海棲艦キス島包囲打撃艦隊

リ級「…テキ ニシ力ラ キタ ナカマ クワレタ ナブリ…ゴロシ」

ル級a「ナニガ イル?」

リ級「セン力ン1…ジュウジュン2…ケイジュン1…クチク力ン2…」

ル級b「ソレダケ 力?」

リ級「セントウ…ニ ジュウジュン イル」

ル級a(セン力ン マエコナイ? ヨワイ? ヤツラ…ヨワイ!)

ル級b「ドウス ル?」

ル級a「ミンナ デ イッテ タタイテ クウ」

ル級b「ココ ドウ…スル?」

ル級a「ス…力ラ ヨブ ナ力マ イッパイ ヨブ」

海戦開始への準備が整いましたので、今宵はここまでに致しとうござります。

戦闘については仮想戦記っぽく書きたいと思ってますので、
日刊の予定でしたがチェックのために間が空くやもしれません。

陽炎抜錨します の小説が出るまでに書くといったな。あれは嘘だ。

11月30日の朝までに投稿できれば良いと考えてたのは慢心だった
ドラゴンマガジン探しに行ったら並べて売っているとは思うまい

とりあえず投下開始します

※後だしの追加設定

・当SSでは潮が曙を親愛の形として呼び捨てにしています。第七駆逐隊内でも同様

・船体にダメージを受けると、艦娘にもフィートバックされます。実際のゲームと同じように

・仮想戦記風味としていますが、エッセンス程度でしかないかもしれません。

―― キス島西方海域 別働隊 戦艦 《比叡》

航海妖精「キス島周辺暗礁海域まであと100海里(約54キロメートル)」

比叡「そろそろ出てきてもいいころだけど・・・」

大和<こちら大和。電探に感あり。方位0-5-0に複数の艦影。
     距離、針路不明。反応増大、急速接近中!>

比叡「さすが大和ね。高い分だけ探知がはやい。情報にあった戦艦部隊かな・・・、よし!」

比叡<旗艦より全鑑へ。戦艦を含むキス島封鎖艦隊が高速接近中。
    別働隊はこれを迎撃・北方への誘引を行う!>

比叡<針路変更、方位0-4-2。陣形変更、単縦陣。我に続け!>

 <<<<<了解!>>>>>

 ― ― ―

電探妖精「敵艦隊捕捉!大型艦2隻を含む6隻。針路3-1-0を速度25kt以上で航行中。
      本艦の一時方向。距離およそ4万」

比叡<針路変更3-1-5。右砲雷撃戦よーい!同航戦よ!>

見張妖精「敵艦見ユ!戦艦2、重巡2、駆逐艦2。随伴の水雷戦隊も確認。軽巡2、駆逐艦4」

比叡「キス島包囲艦隊の全部が喰いついて来てくれたわね」

観測妖精「敵艦との距離3万5千!」

比叡<大和は敵二番艦、霧島は敵三番艦以下を目標。砲撃開始は旗艦のそれに続け!>

大和<了解!>

霧島<了解>

砲術妖精「主砲発射準備完了!」

見張妖精「敵艦発砲!」

比叡「脅しよ!当たらないわ。距離3万まで待つのよ」


―― キス島西方海域 別働隊 戦艦 《大和》

大和(敵はもう見えてるのに…砲撃はまだなの!?)ソワソワ

比叡<大和は敵二番艦、霧島は敵三番艦以下を目標。砲撃開始は旗艦のそれに続け!>

大和<了解!>

霧島<了解>

大和「目標への照準に集中します。周辺監視よろしく」カチカチ

見張妖精「ヨーソロー」

運用妖精(やまとさんきんちょうしてます?)

通信妖精(かたにちからはいりすぎですな)

砲術妖精(はやくうつです)

観測妖精(もうたまとどくです)

通信妖精(なんですとー)


見張妖精「敵艦発砲」

大和「くっ。今手が離せないから、旗艦に砲撃はまだか確認して!」カチカチクルリ

信号妖精「はっこうしんごー」カシャンカシャンカシャン

大和「ん?ちょっと妖精さん!なんて内容で送ってるんですか!!」


―― キス島西方海域 別働隊 戦艦 《比叡》

見張妖精「《大和》より発光信号『比叡へ、こちら大和。早く射て』以上」

比叡「えっ?」

大和<あわわわ!い、今のは妖精さんが勝手に!>

比叡<コラッ!焦らないの。お姉さまならまだティータイムの間合いよ>

大和<えっ?あっ、はい。すいません…>


綾波<どういう意味なんでしょう?>

霧島<紅茶をゆっくり飲めるほど手緩い砲撃ということかしらね>

摩耶<英国淑女はうろたえない!>

大和(砲撃開始前とはいえこの余裕…みなさんすごい!)

夕立<あっ、比叡さんに夾叉するっぽい?>


見張妖精「敵弾夾叉」

比叡「ひぇ~」アワワワ

見張妖精「敵二番艦第一射すべて遠弾」

比叡「変ね。射撃が安定してない?」

観測妖精「敵艦との距離3万」

比叡「よし。主砲!射撃始め!ッテー!!」


―― キス島西方海域 別働隊 戦艦《大和》

大和「さぁやるわ!主砲、射撃、始め!」


―― 同 戦艦《霧島》

霧島「砲撃の時間よ!一番二番は敵三番艦、三番四番は敵四番艦を追尾して!撃て!」


―― 同 戦艦《比叡》

観測妖精「第一射だんちゃーく、今!一番、近。二番、近。三番、遠。四番、遠」

比叡(あれー?さっきみたいにはいかないか…)

見張妖精「《大和》第一射、遠、遠、遠」

見張妖精「《霧島》第一射、敵三番艦、近、夾叉。敵四番艦に初弾命中!行き足落ちます」

比叡「霧島やるじゃない。第二射用意!」

砲術妖精「用意よし!」

比叡「(照準修正よく狙って…)ってー!」



見張妖精「敵水雷戦隊が突撃して来ます」

比叡<摩耶、牽制よろしく!>

摩耶<おう、行くぜ!綾波、夕立、あたしに続けぇ!>

夕立<合点承知!>

綾波<参ります>


―― キス島北西海域 深海棲艦キス島包囲打撃艦隊

ル級a『オカシイ アイツラ オカシイ! ナゼ アタラナイ?』

ル級b『!? ジュウジュン チガウ アイツラ センカン』

リ級『モウ ダメポ シズム』

ル級b『シラナイ セン力ン キヨダイ タマ ツヨイ』

ル級a『セントウ ネラエ アイツ ヤル』

ル級b『デカイ デカスギル』


―― キス島北西海域 別働隊 戦艦《比叡》

観測妖精「第三射だんちゃーく、今!一番二番、夾叉。三番四番、近」

比叡「よぉし!気合、入れて!斉射、始めぇ!」

見張妖精「敵艦隊の砲撃が本艦に集中しはじめています」

運用妖精「敵弾命中、第二砲塔天蓋。損傷軽微!右舷三番高角砲全壊」

比叡「ひぇ~!!」

観測妖精「第四斉射だんちゃーく、今!敵旗艦に命中確認!」

比叡「よし!続けていきます」

見張妖精「《霧島》第四斉射、敵三番艦撃沈」

比叡<さすがね霧島。次は敵旗艦をねらえる?>

霧島<もちろんです!目標を敵旗艦に変更します>

見張妖精「直撃きます!」

比叡「きゃああああああ!!」

霧島<お姉さま!?>

運用妖精「右舷側後部副砲群付近に命中弾!副砲群全滅。三番砲塔旋回不能」

比叡<まだ…大丈夫よ。砲撃を続けなさい!>


―― キス島北西海域 別働隊 重巡 《摩耶》

摩耶<丁字で水雷戦隊の頭を押さえる。敵一番に砲撃を集中>

綾波<雷撃はされませんの?>

摩耶<牽制してみてから反応を見る。行くぞ!>

砲術妖精「右砲撃戦用意よし!」

摩耶「敵との距離は」

観測妖精「1万5千」

摩耶「砲撃開始!」

見張妖精「《綾波》《夕立》砲撃続きます」

 ― ― ―

見張妖精「敵一番艦に火災発生。傾斜拡大。落伍します」

見張妖精「敵二番艦が面舵切ります。敵三番艦以降も追従」

摩耶「右魚雷戦用意!2基だけ用意して敵1番2番狙え」

運用妖精「艦尾に被弾!カタパルト喪失。火災発生!」

摩耶「消化急げ!」

摩耶<8千で雷撃やるぞ。綾波は1基だけで敵三番を、夕立は敵四番五番を狙え>

綾波<次発装填装置欲しいです!(了解)>

夕立<切実っぽい…>

観測妖精「まもなく距離8千」

水雷妖精「魚雷発射はじめ!」

見張妖精「《綾波》《夕立》魚雷発射完了」

水雷妖精「命中まであと二分」

 ― ― ―

水雷妖精「じかーん!」

見張妖精「敵一番艦、3番艦、5番艦に魚雷命中。轟沈します!」

摩耶「よっしゃああ!」

綾波<やりましたー>

見張妖精「残りの敵水雷戦隊反転、離脱します」

夕立<あっ!>

見張妖精「《綾波》被弾!」


―― キス島北西海域 別働隊 駆逐艦《綾波》

綾波「あっ!被弾したっ…!?」

運用妖精「右舷中央に命中弾。浸水発生!応急対応中!」

綾波「ぐっ、対応急いで!」

 ― ― ―

運用妖精「応急対応完了。浸水による速度低下31kt」

摩耶<綾波大丈夫か!?>

綾波<浸水で速度低下。でも(艦隊の)最大戦速はいけます>

摩耶<無理はするなよ。戻るぞ>

夕立<逃げたのはいいの?>

摩耶<捨て置け。周囲警戒に戻るぞ。綾波は最後尾につけ>

綾波<了解です>



―― キス島北西海域 深海棲艦キス島包囲打撃艦隊

ル級b『ミンナ ヤラレタ アト ココダケ』

ル級a『ニゲ、レ・・・ ナカマ イルトコ ニゲル』

ル級b『クウボ クウボ ヲ ヨブ』


―― キス島北西海域 別働隊 戦艦《比叡》

電探妖精「敵艦隊針路変更。方位0-2-0」

比叡「逃がしませんよー」

比叡<旗艦より全鑑ヘ。針路変更、方位0-1-0>

航海妖精「まもなく敵艦隊誘引予定ラインに到達します」

比叡「鎮守府に敵艦隊誘引成功を打電」

通信妖精「ヨーソロー」


―― キス島周辺海域 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

陽炎(もうすぐキス島…。ここに来るまで敵を見ていないということは…)

通信妖精「別働隊よりの電文受信」

  『美容卜健康ノタメニ、食後ニ1杯ノ紅茶ガ飲ミタイネー』

陽炎(我、敵艦隊の誘引に成功す、救出隊は突入せよ。か)

陽炎「別働隊が敵艦隊の誘引に成功したわ。後続艦に発光信号!」


―― キス島周辺海域 救出隊 駆逐艦 《長月》

見張妖精「旗艦より発光信号『キス島ニ突入スル。ワレニツヅケ』です!」

長月「了解した!後続に連絡よろしく!」

信号妖精「宜候ー!」


―― キス湾入り口 救出隊 駆逐艦《陽炎》

陽炎「ここまでは無事にこれたわね・・・発光信号」

信号妖精「用意よし」

陽炎「長月、皐月は湾内での陸軍兵の収容作業に入れ。残りは周辺を哨戒せよ」

信号妖精「宜候ー!」カシャンカシャンカシャン

陽炎「本艦は湾外付近で、警戒にあたる」


―― キス湾内 救出隊 駆逐艦 《長月》

長月「これより私は上陸して陸軍を呼んでくる。収容準備して待て」

運用妖精「了解」

 ― ― ―

長月「私は横須賀鎮守府艦隊 駆逐艦《長月》だ!独立捜索騎兵第11大隊は居るか!」

  ガサガサッ―――

??「貴女が救出の海軍さんですか?」

長月「そうだ。貴官は?」

??「失礼致しました。独立捜索騎兵第11大隊大隊長 新城直衛大尉であります」ビシッ

長月「私は駆逐艦《長月》だ。あそこに見えるもう一隻は《皐月》だ」

新城「………(こんな年端もいかない少女のような艦娘もいるのか)」ジー

長月「では、早速乗艦を始めて――。何だい?」

新城「あっ、失礼しました。初めて艦娘とお会いしたもので、つい」

長月「ふふ、そのような賛沢は還ればいつだってできるさ」

新城「まったくもって。これより乗艦を開始します。猪口!――」


―― キス湾外 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

見張妖精「《長月》《皐月》陸軍兵の収容を開始しました。完了まで約20分」

見張妖精「《潮》より発光信号。『敵見ユ。方位0-4-0ヨリ駆逐艦2』です!」

陽炎<封止解除!潮と霰で迎撃おねがい。あと陸軍の収容急がせて!>

潮&霰<<了解>>

皐月<もうやってるさ!>


―― キス島東側 救出隊 駆逐艦 《霰》

霰<霰が囮になるから…、潮はその側面を…突いて>

潮<が、頑張ります!>

観測妖精「敵艦との距離1万6千」

砲術妖精「砲撃準備よし」

霰「敵の注意を…ひく。砲撃開始…」

見張妖精「敵艦針路変更。まっすぐこちらに来ます」

潮<魚雷発射完了しています。そのまま針路維持してください。あと30秒>

霰<よーそろー>

見張妖精「魚雷命中を確認、二隻とも轟沈します」

霰<ナイス…>



―― キス湾外 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

潮<駆逐艦2隻撃沈。排除完了>

長月<陸軍兵収容完了。これより離岸する!>


陽炎<長月、皐月を中心に輪形陣、最大戦速で離脱します。我に続け!>

陽炎「提督に打電!」

 『ロシアンティーを一杯。ジャムではなくマーマレードで、もなく蜂蜜で』

通信妖精「発信完了」

陽炎<さぁ、帰りましょう!>



―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

陽炎<作戦は大成功ね!急ごしらえの艦隊でもなんとかなるもんだわ>

曙<初めての艦隊指揮にしては、まぁまぁやるじゃない?>

陽炎<陽炎型ネームシップは伊達じゃないわ>フフン

潮<助けられて・・・良かったです>

皐月<おいおい、まだ作戦は完了していない。それにそんなことを言うと>

曙<敵よ!9時方向におそらく駆逐艦2!>

皐月<それみろ!>

陽炎<曙と潮で迎撃お願い!霰は最後尾を守って>

曙<了解!>
潮<了解>

霰<最後尾に…つきます>



―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《曙》

見張妖精「敵艦撃沈!」

曙「なんなのよ!私ばっかり狙って。被害状況報告!」

運用妖精「1番主砲及び魚雷発射管使用不能、機関全速発揮可能」

曙「…まだまだいけるわよね」

曙<戻るわよ潮>


見張妖精「4時方向に雷跡!」

曙「舵戻せ!後進一杯!(回頭中を狙うなんてこのクソ魚雷!)」

操舵妖精「取舵いっぱーい!」グルングルン

曙(だめだ…よけられない!)

見張妖精「《潮》が魚雷進路上に割り込みます!」

曙「!?」


―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《潮》

見張妖精「3時方向前方に雷跡!《曙》に向かいます!」

潮「前進一杯!魚雷に本艦をぶつけます」

運用妖精「総員対衝撃防御」

曙<なにやってるのよ潮!やめなさい!!>

潮<今度は私が曙を守ってあげるって決めたの!仲間が傷つくのを見るのはいやなの!>

見張妖精「あたります!」

ガン!ズドオオオン!

潮「きゃああああっ!」

曙<潮!>


―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《曙》

見張妖精「《潮》に魚雷命中!」

曙「うそ・・でしょ。あ、あぁ…潮」ズル…ペタン…

見張妖精「!?」

見張妖精「《潮》健在!!」

曙「潮!?」ガタッ!!

見張妖精「《潮》命中の魚雷は不発の模様」

曙「よかった。よかった…」


水測妖精「敵の潜水艦を補足!方位1-3-0、距離300、深度30」

曙「爆雷投射用意!生かして帰すな!!」

水雷妖精「用意よし!」

曙「投射開始!」


水雷妖精「設定深度です!」

曙「やったか!?」

水測妖精「潜水艦健在。本艦の下を抜けます。方位3-0-0、距離250、深度35」

曙「逃げんな!このっ!」

水雷妖精「爆雷投射完了!」


水雷妖精「設定深度です!」

水測妖精「潜水艦の圧壊音を確認」

曙「よくやった!」


―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《潮》

潮「あ…、あれ?私…」

運用妖精「魚雷不発でした。応急修理完了。浸水により速度20ノットに低下です」

見張妖精「敵潜水艦は《曙》が撃沈した模様」

潮「ううっ…。よかった、今度は守ってあげられた…」

曙<潮!潮!大丈夫なの?返事して!>

潮<大丈夫だよ…魚雷は不発だったみたい…運が良かったのかな?>

曙<潮のバカ!なんであんなことしたのよ!どうしてかばったのよ!>

陽炎<後にして曙。潮、機関は大丈夫なの?ついてこれる?>

潮<機関は無事ですが、浸水で速度20ノットくらいしかでません>

陽炎<速度を合わせるから合流しましょう。曙は潮についてあげて>

曙<…了解>

潮「ごめんね曙…」



―― キス島西方 救出隊 駆逐艦 《潮》

曙<潮…そっちいくよ>

潮<…>

 ― ― ―

曙「傷は大丈夫?」

潮「…うん」

曙「ねぇ…どうしてあの時かばったの?」

潮「…今度は私が、曙を守ってあげたいと思ったから」

曙「なんで!?沈んじゃうかもしれないんだよ?」

潮「沈んじゃうのはイヤけど、仲間が傷つくのはもっとイヤだったから」

曙「だからって――」

潮「私ね、曙と…曙とまた一緒に戦えるのが、うれしかったの」

潮「なのに…、曙が私の弾除けだなんて言うから、意地になっちゃったのかもね…」

曙「…ごめん」

潮「ううん、悪いのは私です。昔から…全部私が悪いの。あと、出撃前に叩いてごめんね…」

曙「…昔のコトなんて忘れたわ」

潮「私は覚えてるよ。忘れられるわけないよ…。だから今度は守りたかったの」

潮「ひとりになるのは…もうイヤだから」ポロ

潮「ごめんね…迷惑かけて…。守ってあげられなくて、ごめんね…」ポロポロ

曙「もういいのよ。こうして一緒に戦って生き残れたじゃない」ナデナデ

曙「でも、もう二度とあんなことしちゃだめよ」

潮「うん」

曙「さぁ、鎮守府に帰るわよ。みんなで」

潮「うん、帰ろうね」

以上で昨日までに投稿する予定だった分が終わりました
曙と潮の仲直り部分は自然にできなくて時間が掛ってしまいました
(今でも展開が速い、不自然に感じるところもあるのですが…)

続きは「陽炎、抜錨します」を読み終えてから明日にでも…

ここまでお読み頂きましてありがとうございました

「陽炎、抜錨します」を読み終えたのでネタバレ無しでチラ裏

・このSSのプロットと競合しないので一安心
・本編で出たセリフを全く違う状況で使ってしまうかもしれない

本編には関わらないけど、朝食が異常に質素すぎると思った
昼と夜はわからんが、刑務所の飯レベル。まじブラック鎮守府だったわ
旧海軍と同じように階級(艦種)で差が付いてるのだとしたら尚更
ひどい献立だったわ・・・

アンソロの佐世保鎮守府は面白かった。
けど、作家陣の顔ぶれが快楽天かメガストアだと言われても違和感ないわね


―― キス島北方海域 深海棲艦キス島包囲打撃艦隊

ル級a『モウスグ…ナカマ クル イソゲ』

ル級b『グアアアアアアアア』

ル級a『!?』

―― キス島北方海域 別働隊 戦艦 《大和》

見張妖精「第七斉射だんちゃく、今!命中確認。あっ!爆発しました。大爆発です」

大和「よしっ!」

見張妖精「弾薬庫爆発の模様。船体折れます。轟沈です」

大和(敵戦艦撃沈。これでもうホテルだなんて言わせません!)

比叡<よくやったわ大和!>

大和<はい。ありがとうございます!>

比叡<霧島!大和につづくわよ>

霧島<はい!お姉さま>

見張妖精「《比叡》砲撃、《霧島》も続きます」

大和(まるで統制射撃みたい…)

見張妖精「《比叡》・《霧島》の砲撃、敵艦に命中多数。傾斜拡大、急速に沈みつつあり! 」

比叡<よし、これで敵艦隊の殲滅完了!>

大和「さすが金剛姉妹…。私だって…いつかは」


通信妖精「救出隊からの電文を確認」

 『ロシアンティーを一杯。ジャムではなくマーマレードでもなく蜂蜜で』

大和(陸軍兵の収容完了。これよりキス島を離脱する。向こうも上手く行ったのね!)

比叡<みんな聞こえたわね?救出隊の作戦も成功よ>

摩耶<よっしゃあ!>

綾波<やりましたね>

比叡<深海棲艦もやっつけたし、救出も成功。さあ、帰りましょう!>

電探妖精「!?」

電探妖精「電探に感あり!北方から敵艦隊接近中。大型艦少なくとも4隻以上!」

大和「何ですって!?詳細は?」

電探妖精「お待ち下さい…方位0-2-5、距離およそ4万5干、針路1-9-0 ! 」

大和(この海域にそんな艦隊の情報はなかった。増援にしては遅い…。まさか!?)


―― キス島北方海域 別働隊 戦艦 《比叡》

比叡<さあ、帰りましょう!>

大和<大和より旗艦へ。電探に感あり。方位0-2-5に戦艦4、軽巡1、駆逐艦1。
    距離およそ4万5千、針路1-9-0!>

比叡「…っヘ?」

夕立<夕立より旗艦ヘ。敵見ユ。方位3-5-0に空母2、軽空母1、重巡1、駆逐艦2。
    針路南西方向、距離4万。艦載機発進してるっぽい!>

比叡「なにそれ!そんな戦力いつのまに・・・」

霧島<お姉さま、これはアイツ等にしてやられたみたいです>

比叡<誘い出されたのは私たちの方だってワケね>

摩耶<罠だったのかよ!>

比叡<困ったわね、霧島>

霧島<そうですね、お姉さま>

夕立<二人ともなんだか楽しそう>

摩耶<いやいやいや、どうすんのこれ!>

霧島<慌てないの、摩耶。ここで逃げても敵戦艦に追いつかれるし、すぐに空母機も飛んでくる>

比叡<どの道戦うしかないのよ。でもこんな近くに空母がいるなんて、敵さんも焦ってたのね>

霧島<でも空母を砲撃できる好機です。逃すわけには行かないでしょう!>

摩耶<…まじかよ>


比叡<別働隊はこれより二手に分かれて、敵戦艦部隊の牽制と敵機動部隊への砲雷撃戦を行う!>

比叡<空母を撃破して退路が確保でき次第、速やかに撤退します!>


比叡<各艦被害状況報告!>

霧島<こちら霧島被弾なし。機関異常なし>

大和<こちら大和。被弾するも損傷軽微。機関異常なし>

摩耶<摩耶!小破、カタパルト喪失。機関全力発揮可能>

夕立<夕立!小破っぽいけど戦闘に支障なし>

綾波<こちら綾波。被弾による浸水で速度低下。艦隊最大戦速発揮可能>

比叡<大変結構!>


比叡<霧島は摩耶と夕立を連れて敵空母を叩いて。大和と綾波は私と敵戦艦の牽制を!>


霧島<さぁ、霧島組行くわよー!>

摩耶<遅れるなよ夕立>

夕立<ガッテン!>


比叡<大和、綾波、行きましょうか>

大和&綾波<はい!>

続きはまた明日かも?


―― キス島西方海域 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

陽炎「このままいけば何とかいけるかな…」

陽炎(艦隊速力は20Kt程度。もし追撃を受けたら逃げ切れないわね…)

霰<敵見ユ!方位0-8-0…来るよ…まっすぐこっち来る。軽巡1、駆逐艦5。推定速力35kt以上!>

陽炎「ただじゃ返してくれないか…」


皐月<どうするの?このままじゃ追いつかれちゃうよ>

長月<まずいな。戦おうにも分が悪い>

曙<全員で反撃すればいいじゃない!>

皐月<無茶言わないでよ。ボクと長月は戦えない。曙と潮だって…>


陽炎(どうする?どうしよう?このままじゃ追いつかれる…)

陽炎(みんなで戦う?ダメだ。長月と皐月は戦闘できないし、曙と潮は負傷してる)


長月<誰かが殿をやるしかないだろうが、しかし…>

潮<…私が足止めします。みなさん先に行って下さい>

曙<なっ!?さっきみんな一緒に帰ろうって>

潮<ごめんね曙。でもこのままじゃ追いつかれてやられちゃう>

曙<だったら私も――>

潮<ダメ!曙はまだ帰れる。殿は足の遅い私がやるべきだよ>

潮<私が残れば、みんな全速で離脱できるでしょう>

曙<潮…>


陽炎(誰かが時間を稼がないと。誰を殿に…)

陽炎(潮に足止めさせて逃げる?ダメだ、ろくに戦えない)

陽炎(曙も中破で武装がだめになってる…)

陽炎(ああっもう!旗艦がこんなに辛いだなんて!)


霰<陽炎…>

潮<陽炎さん、私に殿をやらせて下さい…>

陽炎<…>

潮<陽炎さん!>

陽炎<…却下します。私と霰が殿で敵を足止めして、みんなの離脱を援護します>

曙<旗艦のアンタが殿やってどうすんのよ!>

陽炎<怪我してろくに戦闘もできないアンタよりましよ>

曙<ぐっ!>

潮<だから私が!>

陽炎<速度の出ない潮じゃダメ。避けられたら追いつけない>

潮<でもっ!>

陽炎<私たちはほぼ無傷で、魚言も残ってる。みんなが離脱する時間は稼げる>

霰<一番時間稼げるのは…霰たち。酸素魚雷も…あるから>


陽炎<…もう一度言うわ。私と霰が殿で敵を足止めして離脱を援護します>

陽炎<長月と皐月は全速でこの海域を離脱。潮も可能な限りの速度で離脱。曙は潮の護衛を>

潮<陽炎さん…>

陽炎<大丈夫よ。死にに行くわけじゃない。ちょっと足止めしてくるだけよ>

曙<わざわざ貧乏くじを引くのね>

陽炎<そりゃ、私は旗艦だからね…>

霰<陽炎…。そろそろ>

陽炎<旗艦はもう命令を下したのよ。私たちはもう行くから>



―― キス島西方海域 救出隊 駆逐艦 《潮》

長月<先に離脱させてもらう。無理はするなよ!>

皐月<待ってるからね!沈むんじゃだめだよ!>

陣形が解かれ、長月と皐月は自身の最大速度で離脱していった
先頭にいた陽炎が敵艦隊の足止めの為に反転し、通り過ぎていく。

陽炎<それじゃあ行ってきます。後…よろしくね、曙>

曙<…わかってるよ>

霰<二人も…気をつけてね…>

潮<はい…>

曙(死ぬんじゃ…ないわよ)

潮「ねえ曙。やっぱりついて行ったほうが…いいんじゃないのかな?」

曙「それは駄目。ろくに戦えない私たちが行っても足手まといよ…」

潮「陽炎さん…霰さん…」


―― キス島西方海域 救出隊 駆逐艦 《陽炎》

陽炎「つき合わせちゃってごめんね、霰」

霰「かまわない…元から…そのつもりだった。あのときも…ついて行ったし…」

陽炎「真珠湾の時とは違うのよ。今回のほうが厳しいわ」

霰「時間を…稼ぐだけ。霰と陽炎なら…できる! 」

陽炎「あれ?強気じゃない。ふふっ。そうね、私も霰とならできる気がするわ」

霰「うん」

陽炎「それじゃあ作戦ね。まず、敵の頭を丁字で押さえて先頭艦に砲火集中」

陽炎「面舵切って避けようとするなら、もう一度針路をふさいで時間を稼ぐ」

霰「取舵で…同航戦なら…魚雷浴びせて…一撃離脱?」

陽炎「うん。魚雷もったいないけど。あとは臨機応変にやるしかないわね…」

霰「行き当たり…ばったり。まぁ…嫌いじゃないよ」

霰「艦に戻るね…」

陽炎「うん。それじゃあよろしくね」



陽炎「よし。戦闘準備!砲雷撃戦、用意! 」

砲術妖精「砲撃準備よし」

水雷妖精「魚雷発射管準備よし」

観測妖精「敵との距離2万」

霰<こちら霰。戦闘準備よし>

陽炎「さあ、はじめましょうか! 」

次回以降はまた海戦をはじめるのですが、この書式ではどうにもうまくかけないので、
地の分を入れさせて頂きます。
お嫌いな方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

また、試行錯誤しており、時々書式が変わる可能性がありますのでご了承下さい。

今宵はここまでに致しとうござります。

カーニバル\(^o^)/ダヨッ!カーニバル\(^o^)/ダヨッ!

だらだらと投下開始します…


―― キス島北方海域 別働隊 霧島支隊

深海棲艦機動部隊撃破の為、《霧島》、《摩耶》、《夕立》の3隻が敵へと接近する。
その付近は小島が多く、島々のあいだを這うように進んでいた。
島影に阻まれ、敵空母はまだ目視できていない。

「敵機動部隊針路変わらず。発進の艦載機は空母上空を旋回中。直掩機の模様」

霧島は電探妖精の報告を受けて考え込む。
――敵はこちらを認識してないのではないか?
でなければ、艦載機による航空攻撃があるはずだが、その兆候がまったく見られない。

<なあ、姉御。敵機が来ないなんておかしくないか?>

<ひょっとしたら、これ。気づかれていないっぽい?>

摩耶も夕立も霧島と同じような疑念を抱いたらしい。

<どうやらそのようね。しかも風上はこちらだから、尚更好都合>

霧島は罠である可能性も考えられたが、戦況分析はその可能性が低いと判断した。
島が多く回避運動の取り難いここで仕掛けるのが、戦術的には妥当であるからだ。
それに風上とはいえ、無防備に近づいてきている。

<もしかして、空母を沈められたら歴史に名が残るっぽい?>

<あったりまえだろ。姉御とアタシたちで普通じゃ出来ないことをやってのけるんだぜ!>

常識的に考えれば、空母を砲撃するのは大変難しい。
砲戦距離まで接近しようにも、空母自体高速であり逃げ足も速い。
尚且つ、艦載機による航空攻撃に耐えねばならないからだ。

だが…っ!しかし!
既に砲戦距離まで接近を許しており、艦載機も直掩機しか上がっていない。
また、発艦させる揚力を稼ぐ為には、霧島たちの居る風上に向かわなければならない…。

砲撃を行えるだけの条件が整った、まさに千載一遇の好機であった!


はやる気持ちを抑えようとして、霧島は最終確認を行う。

<空母までの距離はおよそ3万。右前方の島を通り過ぎれば見えるはずよ>

<敵を視認したら各艦最大で進撃。私は主砲の遠距離射撃を行います>

<摩耶と夕立は、敵の護衛が迎撃に反転――>


<なぁ、姉御。らしくないぜ?>

早口気味にまくし立ていた霧島を、摩耶がさえぎった。

<えっ、えっ?>

摩耶は戸惑う霧島に構わず続ける。

<この期に及んで、細かい御託は必要ないだろ>

<姉御が行けと云ったら、アタシらの覚悟は既にできている。そうだろ?夕立>

<うん、そうだよ!乾杯前の挨拶は短く、シンプルでイインダヨー>

霧島は自分でも気が付かないうちに、ずいぶんと緊張していたらしい…。
二人の気遣いに感謝しつつ、肩の力を抜く。

<そう、だったわね。あなた達にはアレコレ云う必要はなかったわね>

摩耶も夕立も霧島の言葉を待つ。

<改めて云うわ。私たちが行うべき戦闘行動は唯一つ――>

<――見敵必殺、見敵必殺!>

<あらゆる障害を排除し敵空母を叩き潰すのよ!>

結局、昂ぶりを抑えきれずに命令を下す様子は、普段の霧島からは想像できないものだった。
むしろこれが本来の姿なのかもしれないが

<二人とも準備はいいわね?>

<応よ!みなぎってきたぜ!>

<あはははっ!素敵なパーティーになるっぽい!!>

摩耶と夕立の反応を見るに、この状況下では致し方ないのかもしれない。


「まもなく島影を抜けます」

見張妖精の報告を受け、霧島は空母がいると思われる方向に意識を向けた。

 ―――はたして敵影は!?

「敵空母見えました! 」

<各艦最大戦速!天佑ヲ確信シ、全艦突撃セヨ!>

霧島の号令を受け、直ちに《摩耶》と《夕立》が前に躍り出る。

<おう、行くぜ!突撃だ!>

<ぽいぽい!>

「さぁ、砲撃戦開始するわよー」

霧島は直ちに号令すると共に、自己記録を更新する早さで照準を済ませる。

「主砲、敵を追尾して!…撃て! 」

《霧島》の砲撃を合図に、後の戦史にも残る空母対戦艦の闘いがついに始まった。


―― キス島北方海域 深海棲艦空母機動部隊

空母ヲ級二隻と軽空母ヌ級とその護衛で構成される機動部隊は、
救援要請を受けたキス島包囲打撃艦隊と連絡が取れなくなり、
漫然と南へ向かっていた。

ヲ級b『ヲイぃ! レンラクトレナイ』

ヲ級a『ヲヲヲ!?』

ヌ級『ヌヌ?』

ヲ級b『ドウスルノ?』

ヲ級a『サクテキ シトコカ』

ヲ級b『ヲ~。チョクエンモアゲルゾ』

針路を風上の東に変え、ヲ級bが直掩機を発艦させた。
次いで索敵機を出そうとしたその時、彼方に閃光が見えた。
そして轟く砲撃は、悪鬼羅剰の咆哮そのものに感じられた。


―― キス島北方海域 別働隊 霧島支隊 《霧島》

「第一射だんちゃーく、今!一番、二番、共に遠弾」

初弾は敵空母から右にずれた海面に水柱を立てた。
さすがに遠距離では上手く行かない。
観測の報告を受けて照準を修正し、すぐさま発射する。
始めから斉射したかったが、前部砲塔しか使えない為、効率を考えて交互射撃を行う。

「敵の護衛が急速接近中」

見張妖精の報告が更に続く。

「敵空母針路変更。180度反転して西に逃げます」

敵はずいぶんと慌てている。この機を逃す手はない。

「第二射だんちゃーく、今!一番、二番、近弾!」

反転したにもかかわらず、さっきの半分くらい近い。
再び照準を修正し、発射する。

「敵護衛迎撃に《摩耶》と《夕立》が更に前に出ます!」

指示をするまでもなく飛び出していく二人の、なんと頼もしいことか。
ソロモンでの武勲は伊達じゃないということだ。
もちろん私も、だが。

「第三射だんちゃーく、今!夾叉してます!!」

「――っ!?」

待ち望んだその報告に、心が、体が震えた。
艦娘として、戦艦として、この時この為にこそ生まれてきたのだと感じる!
さぁ。万感の思いを込めて号令をかけよう。

「主砲!斉射!てぇーー!!」


―― キス島北方海域 別働隊霧島艦隊《摩耶》

《霧島》の砲撃を背に受けつつ、《夕立》と敵護衛を迎え撃つ為ひた走る。
敵空母に回避され未だ命中がないものの、至近弾を多数与えていた。
接近してきた敵護衛は、リ級とハ級がこちらの針路をふさぐように動き、
ロ級は砲撃妨害の為の煙幕を張っている。

まずは、リ級とハ級を排除するのが先だ。

<アタシがリ級を仕留めるから、悪いけどハ級の牽制よろしく>

<向こうで、煙幕張ってるロ級は?>

<後回しだ>

《夕立》は返事の変わりか、加速してハ級に向かっていく。

「このまま直進!敵重巡の頭を抑える。取舵20。右砲撃、雷撃戦よーい」

「よーそろー」

「砲撃準備よし」

「魚雷発射管準備よし」

妖精たちが次々と反応し、直ちに攻撃準備が整う。

「敵重巡との距離、まもなく2万」

見張りが告げた距離は、砲撃に頃合な間合いとなっていた。
さぁ、はじめよう。

「摩耶様の攻撃、喰らえっ!」

「砲撃開始! 」

あっ、霧島支隊に直し忘れてた


こちらの針路を遮ろうとする重巡に対し、頭を抑えようと同航戦気味に舵を切り、
全ての砲門を向けられるようになったところで斉射を開始した。

「第一射だんちゃーく、今!夾叉しました」

「よしっ!このまま押し込むぞ。次弾発射まだか!?」

摩耶の問いかけに答えるかの様に主砲が轟く。
重巡も差し向けられる前部主砲のみで反撃してきており、その砲撃は《摩耶》の目前に迫る。

「敵弾は至近弾」

「次はあたるぞ、気をつけろ」

果たして敵主砲弾は《摩耶》の右舷艦橋前付近に複数命中した。
舷側には弾かれたが、12.7cm連装高角砲を破壊し火災を発生させた。

「げっ!やってくれるな!消火急げ」

「敵艦に命中弾!前部主砲付近に命中。火災発生中」

「敵重巡との距離1万3千」

「高角砲も撃ち方始め!敵を袋叩きにしてやれ」

右舷残る2基の高角砲が連射を始める。

「敵重巡が回頭。面舵です。同航戦に入ります」

前部砲塔を破壊されて攻撃手段を失ったリ級は後部砲塔で砲撃する為、
《摩耶》と同航戦に入ろうと舵を切ったようだ。

だが、この腹を向ける瞬間をアタシは待ってたんだ!
そして距離を確認する。

「敵重巡との距離1万1千」

「魚雷発射いけるか?」

「諸元設定済みです」

見張が、水雷が答える。

「よっしゃよっしゃ。直ちに敵重巡に対し魚雷発射開始!」

「魚雷発射開始します」

圧縮空気に押し出され、4本の魚雷が敵に向かって駛走を始める。

「魚雷発射完了!命中まで6分10秒」

書き溜め尽きました。
今日はもうちょっと書くかもしれないです


―― キス島北方海域 別働隊 比叡支隊

<こちら大和。意見具申!>

<んー…なに?>

比叡の暢気な返答に、大和は鼻白む。

<…敵艦隊が針路を変更しました>

<そうねー>

緊張感のない様子に、大和は思わず語棄を強めてしまう。

<このままでは敵に丁字有利で叩かれてしまいます!>

<それは因っちゃいますねー>

<っ!だったら――>

<――落ち着きなさいな、大和。で、貴女はどうすべきだと?>

怒気を含ませた大和の言をさえぎり、比叡は問う。

<…。転舵して同航戦か反航戦に持ち込むべきだと思います>

<うーん…。この状況だと、それじゃ50点ね>

奇策も、増援も無いこの状況下で最適とする大和の案を、比叡は評価しなかった。

<先手を取られた以上、どちらに舵を切っても後手に回るしかないのよ>

比叡の云う通り、先手を取られて厳しい状況なのは大和も理解している。

この距離で転舵を行った場合、転舵中に砲戦距離に入ってしまうのは確実だ。
そうなると敵艦隊に向けられる砲門数が限られ、満足な反撃は望めない。

また、敵艦隊はこちらが取舵で反航戦をとれば、再び頭を抑えようとするだろう。
面舵で同航戦をとれば、後方に回り込もうとするかもしれない。


<危険は承知のうえです>

どちらにせよ、敵の足止めを行うには止むを得ないと大和は考えていた。

<綾波。あなたならどうする?>

比叡は突然に綾波ヘ問いかける。

<そうですね…。まず、懐に飛び込んで一太刀浴びせて、乱戦に持ち込みましょう>

いかにも駆逐艦らしい答えに、楽しそうに比叡が笑う。

<あはっはっはっ!さすがソロモンの黒豹は云うことが違うわねー>

それは、重苦しい空気を吹き飛ばすようだった。

<ダウンさせれば叩き放題です。あと、その二つ名。すごく恥ずかしいのですけど…>

綾波は後半部分について不満気だ。

<いいじゃないの、いいじゃないの。武勲の証よ>

<あの!どうするのですかこの状況!?>

我慢できなくなった大和が、暢気な会話に割り込む。

<ごめんごめん。でも、心配しなさんな>

笑い涙をぬぐいつつ、比叡が続ける。もう緩んだ雰囲気はなかった。

<ちゃんと考えてあるから。それじゃあ、説明しますよ――>

作戦を聞く大和は、敵を必ずしも殲滅する必要がないことを思い出した。
そしてなにより、自分の役割に対して、興奮を隠せなくなった。


―― キス島北方海域 深海棲艦 水上打撃部隊(増援)

ル級4隻を主軸に構成された艦隊は、キス島包囲艦隊からの救援要請により南下していた。
先行する駆逐艦が比叡支隊を発見したので、まず、これを撃破することにしたようだ。

ル級b『ジュウジュン1、セン力ン1、クチク力ン1。テイサツドオリ』

ル級c『ナゼ、ジュウジュンガ マエニ…』

キス島包囲艦隊と同様、初めて見る《大和》の大きさを誤解していた。

ル級d『アノ セン力ン ミタコト ナイヨ』

ル級b『テキ シンロヘンコウ オモカジキッタ』

ル級a『バ力メ ホウゲキ ヨウイ』

彼女らからすれば、比叡支隊が面舵を切って同航戦に持ち込もうとしている様に見えた。
そうはさせじと、回頭中を狙って沈めてしまおうと考える。
だが、しかし、彼女達の敵は一斉に舵を切っていた。

ル級a『!? コレハ シンロヘンコウジャナイ!』


―― キス島北方海域 別働隊 比叡支隊

<今よ!全艦反転。斉Z(180度一斉回頭)!!>

《大和》艦橋でも比叡の号令を受け、深海棲艦の砲戦距離直前で一斉回頭を行う。

「一斉回頭です。面舵一杯!」

「よーそろー」

操舵妖精がものすごい勢いで舵を回す。

《大和》程の巨艦となるとなかなか舵も効きづらいが、ゆっくりと右に転舵し始める。

この艦隊運動は敵艦隊にとって、面舵切って針路変更し同航戦を挑む様に見えるだろう。

だが、そうではない。

針路変更すると見せかけて反転し敵艦隊と距離を取り、その後方に回り込むのだ。
それにつられて敵艦隊が針路を変えるなら、その頭を抑えることもできうる。

そもそも、敵前での大回頭は自殺行為に等しい。
複雑な運動となり、隊列が乱れて陣形を維持できなくなる可能性があるからだ。

「まもなく反転完了」

《大和》の操舵妖精が予定針路の到達を予告するのを受け、大和が命じる。

「舵戻せ!」

「もどーせー」

比叡支隊は、お互いの位置関係はそのままに、180度の反転を完了させる。
《綾波》、《大和》、《比叡》の順に単縦陣となった。

また、一斉回頭は艦隊序列が逆になるので、戦闘指揮を執る旗艦が最後尾となり都合が悪い。
指揮で下手を打てば、その隙に付け込まれてしまう可能性もあるのだ。

《比叡》艦橋では後方の敵艦隊を注視していた見張妖精が、新たな動きを報告した。

「敵艦隊が針路変更の模様…。面舵です」

敵艦隊は、比叡支隊の後ろを追いかけるように針路を変更していた。
その動きに合わせて、比叡はさらに右舷側への針路変更を命じる。

双方は緩やかに旋回して反航戦の形を取りつつ、砲撃を開始しようとしていた。

短くて申し訳ありませんが、今宵はここまでに致しとうござります。

続きは年明けといっても、一週間以内に行うと思います。
戦艦対戦艦の砲撃戦が始まります。

ここまでお読み頂きありがとうございました。
叶いますならば、来年もお読み頂ければ幸いです。

それでは皆様、よいお年を。

長らくお待たせしました。
短めですが始めたいと思います。


―― キス島北方海域 別働隊 霧島支隊 戦艦《霧島》

「《摩耶》より連絡!『敵機ハ全テ戦闘機型。機銃掃射ニ注意サレタシ』以上」

(なるほど、そういうことね)

摩耶からの情報で、敵機が追い風でも発艦できた理由が見えた。

比較的身軽な戦闘機を飛行甲板の端から端まで目一杯使って発艦させたのだろう。
もしかしたら、燃料すら減らしているのかもしれない。

「一応、ひと安心でしょうか?」

「せやな」

「そうなるな」

戦闘機だけだということで、妖精らも砲撃の合間に交わす言葉に安堵がみえる。

戦闘機であればどんなに攻撃を受けても、戦艦には致命傷とはならない。
追い詰められた敵の、最後の悪あがきにしか思えなかったから。


「《摩耶》が対空射撃開始しました!」

見張妖精の声に目を向ければ、対空砲が盛んに放たれているのがみえる。
同じくしてけたたましく響いてくる轟音は、害鳥を追い払うのに不足は無いようだ。

「スゴイ!」

「オミゴト!」

手隙の妖精は《摩耶》が瞬く間に6機撃墜するのを見て歓声を上げた。
後世の人々をして洋上の対空要塞と評される《摩耶》を、誰もが褒め称える。

「……難しいわね」

だが、霧島はひとり、歓声に沸く艦橋にあって難しい表情を浮かべている。

「……如何なされまして?」

霧島が懸念を示したと思えた妖精は、探るように問いかけた。

「そうね。気合が……入りすぎなところかしら」

「え?」

「あれじゃあみんな敬遠してしまうわ」


《摩耶》が初手から一網打尽にしたことで、敵機に相当のプレッシャーを与えたはずだ。
後続は危険な対空要塞を避けて飛ぶだろうから、迎撃可能率は大幅に下がる。

とはいえ、落とさない訳にはいかなかったし、手加減する余裕もあるはずが無い。

そもそも航空機は任意の方向から目標へとアプローチできるのだ。
どの道、《霧島》はあらゆる方向から襲撃されるだろう。

「ま、遅かれ早かれ飛んでくるのだから、仕方ないのよね……」

「はぁ……」

ひとり納得の様子に、妖精はあいまいにうなづくしかない。

微妙な空気は砲術妖精の報告が入れ替える。

「次弾装填完了!」

「……、……。撃て」

その報告に再度照準を確認してから砲撃を命じた。
高速航行で落ちる命中率を少しでも上げなければならない。

「テーッ!」


命じた斉射の咆哮が収まれば、霧島は続けて指示を出す。

「対空戦闘用意」

「たいくーせんとーよーい!」

妖精の復唱を聞く中、迫る敵機を見透かそうとするかのように顔を上げた。
そしてその状態で顔を横に向け、そのまま後ろに控えた高射指揮妖精へと振り返る。

「対空戦闘任せるわ。けど――」

「!?」

霧島の”けど”に込められた意図は、打っ込まれた眼光の鋭さで理解する。

「へ、へい!やつらにゃカチコミさせませんぜ!!」

彼女の長姉をして『その顔はNoネ!』と言わしめる程の迫力で睨まれては一も二も無い。

「――よろしい」

「防空指揮所へあがります!」

霧島が鷹揚にうなづき返せば、脱兎のごとく駆け出して行った。


「さてと……」

対空戦闘を高射指揮妖精に一任したのは、砲戦に専念する為だ。
機銃とはいえ、艦橋をやかましく狙われては、鬱陶しい事この上ない。

「主砲装填完了!」

「……。撃て!」

依然、命中率は芳しくない。

そして砲撃の余韻おさまらぬ中、電探妖精の弾んだ声が響く。

「《夕立》が敵水雷戦隊に正面から突撃。これを撹乱しつつあり!」

「予想通り、なのかしらね」

一見して無茶な戦術も、彼女の戦歴に裏打ちされれば、何という事もない。

「摩耶にも連絡してあげなさい」

「了解」

通信妖精から目を移せば、《摩耶》は右へ左へと舵を切りながら盛んに撃ち上げていた。


―― キス島北方海域 別働隊 霧島支隊 重巡《摩耶》

「取舵!3時方向の数機に集中射撃!」

『宜候!』

最適な弾幕を形成す為、舳先を降りつつ射撃を行う。
対空機銃の短い射撃が幾重にも打ち鳴らされ、絶え間なく響く、響く。

「舵もどせ!」

「11時方向低空に敵機!距離3500!」

『主砲いけます』

見張りの声に、砲術妖精のアピールが続く。

「針路このまま!主砲撃ち方はじめ!」

『撃て!』

機銃射程外を迂回する敵機へと、対空戦闘で出番の無かった主砲が放たれた。
戦艦に比して控えめであるが、それでも主砲発射の衝撃は腹に響く。

間も無く着弾して数多に立ち昇る水柱をものともせず、敵機はそれを蛇行してかわす。
それを見て低空が穴と数機が続き、悠々と蛇行しながら《摩耶》の防空圏突破を図る。

次々と水柱を避けていくが――、

『これより弾種変更、三式弾』

摩耶は三式弾に対して敵機撃墜をあまり期待していない。
よほど上手に当てないと、炸裂時の見た目が派手な嫌がらせ程度の能力しかないからだ。

『撃て!』

これまでより高めの弾道で放たれた三式弾が炸裂し、敵機集団を横合いから絡め取る。

やはり撃墜には至らず1機の突破を許したものの、他は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
中にはエンジンから煙を吹く機体も見える。

「よくやった!遠距離のは見つけ次第撃て」

『了解!』


砲術妖精への指示を終えた摩耶に、今度は通信妖精からの報告が上がる。

『《霧島》より通信です』

「おう、なんだって?」

『読みます!「《夕立》ガ敵水雷戦隊ト接触。コレヲ撹乱シツツアリ」です!』

「了解だ!」

通信妖精へと少し弾んだ摩耶の声が返る。
夕立の大言壮語かと思いきや、その勇戦ぶりには見事な足止めだと感服するしかない。

「よっしゃ――っあ?!」

気合も新たにしようとした瞬間、

「8時方向に敵機!低空で近づく!」

三式弾で被弾した敵機が、白煙を吐きつつ一直線に向かい来るのが見えた。
被弾で帰艦できないと諦め、一矢報いようとしているのか。

「特攻かよッ!」

即座に機銃を差し向けるも演算が追いつかず、敵機を補足しきれない。


距離が1000を切る頃には炎を纏い、火の玉となって突っ込んでくる。

「このっ!面舵一杯!」

『おもーかじいっぱーい!』

可能な限りの機銃を向けるが、特攻する敵機になかなか命中させられない。
また、この間にも他の敵機の迎撃も同時に行わなければならない。

間も無く距離は500を切る。

「落すんだよォ!」

後部甲板の機銃で集中的に火線を巡らせるが、接近を阻止できない。

舵が効き出して衝突コースをぎりぎりで避けるが、それが摩耶の限界だった。
敵機は横滑りで進行方向をずらし、《摩耶》の軸線にそれをあわせる。

「クソが!!」

『総員衝撃に備えよ!!』

特攻機は左舷を向いたままの四番砲塔側面に衝突。
重く弾けるような衝撃音と共に、その周囲へと破片との炎を盛大に撒き散らした。


―― キス島北方海域 別働隊 霧島支隊 戦艦《霧島》

「《摩耶》より入電「ワレ損害軽微。戦闘ニ支障ナシ」です」

被弾炎上した敵機が体当たりした《摩耶》の損害は大したものにはならなかった。
飛行機単体ではスピードも無く、与えられるダメージが軽すぎるのだ。

『対空射撃開始します』

《摩耶》を振り切った数機へと、先ず高角砲が弾幕を張る。
間も無く機銃も射撃を開始し、少ない敵機を逐次追い払った。

「さぁ、敵は目の前の空母だけよ。撃てェ!」

右手を横に振りぬいて砲撃を命ずると、すぐさま轟音が鳴り響く。

追撃を開始してからそれなりに経つから、そろそろ追い込みが必要だ。
敵の増援は夕立が上手く足止めしたことで、霧島は憂いなく戦えた。

だが、その裏を返せば、敵の深海棲艦には増援が来ないことになる。
逃げ切る為に次の手を打つ必要があるわけだ。


「ん?」

霧島は敵艦隊への違和感を感じ取った。

「敵艦隊の一部が反転します!まっすぐこちらへ」

「!?」

電探妖精の報告に艦橋の妖精もざわめく。
軽空母と駆逐艦の2隻だけが反転して来ている。

「捨てがまり?!……大した覚悟じゃない」

空母を逃す為に壁を、いや捨て駒を使うのを霧島は初めて見たのだ。
そして、その動揺の一瞬の隙を突かれる。

「3時方向より敵機接近!」

すぐそばまで迫った敵機が機首を向けていた。

「伏せろ!」

その叫び声をかき消すように、艦橋へと機銃掃射が振り注ぐ。

悲鳴、怒号、ガラスが砕ける音、破砕音、弾の跳ねる甲高い音、メガネが床に落ちる音……。

敵機は緩やかに降下しつつ艦橋へと銃撃を浴びせると、至近距離まで接近して上昇に移る。
艦橋後部をフルスロットルで飛び越えて、一撃離脱を図ろうとした。

だが、

「落せ!オトセエエエエェェ!!」

半狂乱となった高射指揮妖精が指向可能な全ての対空兵装で追撃をかける。
たった1機には過剰すぎるほどの銃弾を叩き込まれれば、無事ではすまない。

敵機は左翼をもがれて炎上しながら、錐もみ状態で堕ちて行った。


機銃掃射を受けた艦橋は、すぐさま被害確認が開始される。
戦闘艦橋ではガラスがほとんど割れたのと、いくつかの機器が破損した。

その報告をと振返った妖精は、俯いた霧島が視界に入る。
足元には右側のツルが無いメガネが堕ちているのを除けば、目だった怪我は無い。

「あの……、霧島サン……」

よく見れば右頬に短く裂けた切傷があり、つぅっと血が滲んでいる。
跳弾が霧島の頬をかすめ、メガネのツルを断ち切ったのだろう。

今気が付いたが、カチューシャの右側の飾りも無くなっていた。

「……あの」

「はぁぁぁぁ~~……なんだコレは」

俯いたままの霧島が唸る様なため息を吐けば、低くドスの効いた声が響く。

「おもしろいことしてくれるじゃないか。……なァ?」

「 ! ? 」

顔を上げた霧島の、羅刹のすさまじき形相は艦橋の空気を氷つかせた。


「被害報告」

「ハイ!」

霧島の求めに応じて、確認できた被害を報告する。

「前檣楼各所に機銃掃射で被弾。各種機器損傷あるも戦闘に支障ありません」

「電探室に被弾。22号電探使用不能」

外では対空機銃が再び敵機を近づけまいと、懸命になって応戦している。

「……ふざけんなよ、コラ」

壊れかけのカチューシャを手に取れば、それをへし折って床へと叩き付けた。
メガネを壊されて怒ったように見えるが、それだけではないと思いたい。

「砲撃目標変更!反転した敵軽空母!!」

「直ちに測的開始します!」

機銃掃射の混乱から立ち直ってすぐ命令は、艦橋の喧騒を一際大きくした。

「急げ!アイツの飛行甲板ブチ抜くぞ!!」

《霧島》は新たなる目標へと砲撃を開始する。

今宵はここまでにしとうございます。
霧島さんのキャラがどうにも安定しない

毎度遅くてすいません。
つづきは早くて月末、遅くとも一ヶ月以内には。
4-5とか、そんなん考慮しとらんよ……

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