男「僕と彼女と先輩達」(40)

.

  キーンコーンカーンコーン… キーンコーン…



男「………」スタスタ


生徒「でさ~~その人めっちゃ散らかしてて!髪が!」ギャハハ

生徒「ねー、先生今日会議だから遅れるってー」


男「………」スタスタ


生徒「いやいや無理だから!バカでしょ!」ゲラゲラ

生徒「すげえ腹減ったんだけど~~カレー食いたいんだけど~~」


男「………」トットットッ

男「………」トン トン トン


男「…フゥ…ハァ……まったく……なんで3階なんだ…」ヨロヨロ ガラッ

男「ハァ~……!!」ギクッ


担任「おう、どうした男」

女「……」

男(ぐわ、びっくりした先生か…と、女さん…?)

男「わ、忘れ物です」ゴソゴソ

担任「ん、そーか。んじゃ女、そういうことで、な」ガラガラ

女「はい」ピシャン

男(あっれおかしいな、ロッカーだったかな?)ゴソゴソ …コロン


男(いや机に入れてたはず…)ゴソゴソ

女「───ねえ、」

男(…僕、じゃないよな…)ゴソゴソ

女「男くん」

男「は、はいっ?(僕だった…)」

女「なんか落としたよ」

男「……えっ?あ、あ~!どうも…ありがとう、ございます(あったー!)」


女「………」ジー

男(……う…すごい見てる…)

女「趣味?」

男「えっ」

女「部活?」

男「………」

女「それ、カメラのフィルム」

男「あっ、ああ!うん、部活」


女「写真部?」

男「あ、いや……ちょっと違う、変な同好会」

女「…変な同好会?」

男(ああこれ、眉をひそめるってこういう事を言うんだなきっと…
ていうか話しかけられてるぞ僕、なんなんだろ…)

男「えっと、カメラ同好会っていうんだけど…あ、写真部はもっと立派なのが別にあるから」

女「カメラ同好会…」

男「うん」


女「写真とか動画撮ったり?」

男「………たまに」

女「たまに?」

男「なんていうか…浅ーく広ーくサブカル全般寄り……みたいな」

女「へえ…」

男「………」

女「そっか。じゃあね」

男「はいぃ…さよなら…」


女「」スタスタ

男「…ふぃー……」



先輩A『もう一人誰か連れてこい。出来なかったら一年間お前の名前はジョンウンだ。
正しい恩と書いてジョンウン……あと痩せろ』



男「ッ!────あ、あの!」


女「ん?」

光画部か


男(やばい反射的に引き留めてしまった)

男「かっ、帰るの?」

男(そりゃ帰るでしょなに言ってんだ!)

女「帰るよ」

男「ぶぶ部活やってますか!?」

男(はああああなに言っちゃってんだよおい!)

女「…いや」


男「……そ、そっか」

女「うん」

男(ほらなんか変な感じになっちゃったじゃない…どうすんだよこれ!)

女「えーと、学校あんまり来てないし」

男「ああ、うん…だよね」

男(戸惑ってる…当たり前!当たり前!)


女「うん、だからやってないよ」

男(!……やばい、すんごい目見ちゃった───…なんか、)

男「………あ、あの」

男(落ち着いた目を、してるなあ───)

女「?」

男「」ゴクッ

男「いやっその、もしよかったら見学とか、に、来ないかなーと思って」

女「……」

男「えっと、うち四人しかいなくてしかも一年は僕ひとりだからさ!」


男「……ああっでも忙しいんだよねきっと!!ごめんなさい!ほんと、ありがとう…」

男(や ば い)

男(汗やばい、暑い)

男(なに言ってるかわからん。すごい困ってる、引いてる、もうやばいなにやってんだオレぇ…)

女「変な同好会に?」

男「……しゃ、写真とかマンガとか映画とか、興味あったら…」

男「変だけど、お…………おも、面白いよ……」


女「………」

男「…あは、あはははは」

男(終わりだ……何もこんな勢いだけで玉砕しなくても…まだ高校生活始まったばかりじゃないか…)

女「いいよ」

男「………え」

女「暇だから。でもいいの?」

男「…いいんですか?!」

女「うん。いや、だから、いいの?私なんか誘って」

>>9
光画部からアグレッシブさを取っ払ったみたいな感じで

とりあえずここまで

支援

支援してくれる人がいるとは…ありがたい

気に入らなくて頭から書き直した
地の文多いから読みにくいかもしれないけどそのうち投下したい

以下リスタート↓


入学式の前日から高熱を出し、一週間してようやく登校したときにはなんというか、

もうすっかり緊張感など薄れてしまったこちらの気持ちと比例するごとく、

私抜きでそこそこクラスというものが出来上がっていた。


まあそんなものだ。

というかむしろ好都合だ。


別に何か素晴らしいことを期待して高校に進学したわけではない。

家から近く、公立校で、私服で、生徒数がそこそこ多い。

兄に勧められて受験したら受かったので、ありがたく通わせてもらうことにした。


恋人が欲しいとか将来の夢があるとか、

10代後半の三年間を無駄なく美しく輝かしいものにしたいとか、具体的な希望はなかった。


いまどき特に珍しいことではないと思う。


が、そんなわけで乗り遅れた登校初日。

級友たちの無遠慮な視線を浴びつつ交わした会話は教師との義務的なもののみ。


まあ注目されるのも最初で最後ってことでいいだろう。

自由で穏やかな高校生活を送るために明日からは埋没するのだ。


(しかし、────)


携帯電話の画面を見つめながら思う。


目立たず気負わずでしゃばらず、という以前の問題だった。


(なぜ決まった時間に起きれないのか…)


アラームが鳴っていたのは覚えている。時間も確かめた。
一旦止めて、10分後に再び鳴ることも知っている。


(ほんとに鳴ったか?)


鳴っただろうな。


今時ガラケーとはいえ現役バリバリ、付き合いが長ければ信頼も厚い。

悪いのは私だ。


そんなわけでようやく寝床を抜け出し用を足す。


とりあえず午後の授業には出たい…
などと心にもないことを思いついてみるが実際はというと…

(めんどくせー。ひたすらめんどくせー)

遅刻常習者としてはまだまだ駆け出し、罪悪感もある。

がしかし、私のやる気スイッチはバカになったか皮膚の下奥深く眠っているか

はたまた最初から存在しないのか。


こういう理屈っぽいことばかり考えているからだめなのだろうなと歯を磨きながら思う。

頭悪いくせに。



「いい身分だなT沢、羨ましいなあ」

「一年のうちからそんなんでどーーーすんだお前?」

「学校向いてないんじゃないか?無理して来なくてもいいんだぞ」

「ま、辞めたところで、だらしない人間はどこも使ってくれないだろうな」


そんな小言によって「またか」とうんざりした顔をするのは私ではなく級友達であり

溜めきったストレスを発散する場所のない一部の教師達──つまり発言の当事者だが。

新生活がスタートしてまだひと月あまり、級友達には時々申し訳なく思う。

思うことは思う。


「T沢、独りで暮らしてんだよな」

「はい」

「防犯とか平気か?」

「たぶん」

「お兄さんはどこだっけ」

「S県です」


「他に親戚いないんだっけ?」

「伯父がシンガポールにいます」

「…シンガポールね」

知っているはずのことを確かめるようにたずね終えると、担任教師は小刻みにうなずく。

「しょうがないよなあ、学校に住むわけにゃいかんし、自分に頼るしかないもんな」

学校に住んだところで起きれなければ意味はない。

「学校つまらんか」

「はあ」

「友達できたか」

「いえ」


「部活とか、どう?」

「さあ…」

「辞めて働くか?」

「兄が許しません」

「そおかー」

弱ったなーと口にはしないが彼はボールペンで頭を掻く。

この(恐らく)40代前半の男性教師は常に諦観をまとったような雰囲気で、

あまり笑ったり怒ったりせず、けれど怯みもせず背中を丸めてのらりくらりかわしていくタイプ。

私の数倍は嫌味を言われているであろうに、決してその事をぶつけてこない。

言葉や素振りどころかわずかな含みさえもチラつかせない、奇特な人物だ。

この人を見ていてもやはり申し訳なくなる。


「授業の方は問題ない?」

「はい」

ウンウンとまた彼は数回頷き、そこで初めて顔をこちらへ向けた。

たっぷり三秒ほど見つめ合う。

が、私が瞬きをした隙にフイと視線を戻し、一応できればきちんと授業に出たいという私の意思を確認したのち解放してくれた。

「すんません」

「気ぃ付けてな」

「はい」


空気の悪い職員室をようやく後にして、私は鞄を取りに教室へと階段を登った。


三階までの道のりは人気がなく、それでもどこからとも知れず

いかにも運動してますという掛け声や、賑やかな声が時折響く。

階段を登りきり、長く続く冷えきった廊下をなんとなしに眺める。

床の色が好きだ。
くすんだ深緑が目に優しい。


さて、古本屋にでも寄ってそれから商店街で買い物をし食材を…

いややっぱり今日は弁当でも買うかな。

いやいやもったいないから素麺で我慢するか。

などと考えていたらドンッと何かにぶつかって目の前が真っ暗になった。


壁にしては堅くない。
たぶん人だ。

鼻の付け根がすごく痛い。

二、三歩後ずさり、抵抗むなしく尻餅をついた。


「うわっごめんなさい!」

おお、なんだか心からしまった!どうしよう!というような声がするな。

「大丈夫ですか?」

声色はおっとりとしているがひどく慌てているようだ。

大丈夫大丈夫と鼻を押さえつつもう片方の手をヒラヒラと振ってみたが、

相手はしゃがみこんで「立てますか?」と心配そうに続ける。


滲み出るいい人オーラになぜか私も少し慌て出す。


彼の名前は知っていた。
同じクラスのS野君。


「鼻血とか…」

言われてギョッとするが、幸いそんな感覚はない。掌にも血はついていない。

(平常心、平常心)

私は速やかに立ち上がって彼を見上げ、大丈夫、こっちこそごめんと正直に告げた。

S野君はひどく驚いたような顔をしている。


細い目を見開いて、ついでに口も半開きだ。

草食動物みたいな愛嬌があるのでしばらく眺めていたい気もしたけれど、

何でもない風を装ってさっさと教室に入り、素早くリュックを背負ってきびすを返す。


出会い頭に身体の大きな男の子にはね飛ばされて尻餅をつく、というのは

自分のなかでそれなりに恥ずかしい体験だった。


教室に誰もいなくて良かった、マジで。


けれどS野君はまだいた。

ちょうど教室の後ろの扉、廊下に出てすぐのところで相変わらず突っ立っている。


なんだどうした、微動だにしないけど、ぶつかったはずみに電源でも切れたのか。

つまり、オフタイマーかなにかで。


「…大丈夫?」

私が聞くと彼ははっとしたようにこちらを向き、両手を胸の前でばたつかせて

「ごっごめん、なんでもないです」と頓狂な声をあげた。

と同時に、彼が右手に持っていた紙袋がビリビリとそれはもう思いきりよく破れ、

中に入っていた漫画がドサドサと床に落ちた。

「あ…」

漫画みたいですなあ。


うあー、マジかあー、ええー?みたいなことを小声で言いながら

S野君はしゃがみこみ散らばった『大長編ドラえもん』を丁寧に拾い集める。


「……へー」

足元に落ちていた『創世日記』を拾い上げてよくよく見ていると、それに気づいたS野君は

「あの、その、えーと、すみません…」と困ったように繰り返した。

(おっと、こりゃまずい)

この慌てよう、普通に考えたら尻餅つくよりよっぽど恥ずかしい思いを彼は今しているに違いない。
ドラえもんだし。


「はい、ごめんね」

「…ど、どうも」


かくいう私もドラえもんは好きだ。

何よりも原作が好きで単行本も持っている。

けれどここでそれを彼に話してどうなることだろう。


(………どうなるって、そりゃあ…もしかしたら……)


「どれが一番好き?」

「……えっ…!?」


うーん、S野君というひとは寡黙でおっとりとした人だと思っていたけれど、かなり表情が豊かだな。

しかし今日まで会話をしたこともなければ目が合ったことすらないわけで、なんつーか、

察するに人見知りってのは結構大変なんだろう。


「…なんか、ごめんね」

ずるい聞き方をしといて謝るのもどうかと思うけど、一応敵意がないことだけは伝えたくてうっすら笑いかけてみる。

「じゃあね」

私は立ち上がる。

帰ろう。早く彼を楽にしてあげたい。



「あ、あの!」

はい。

「宇宙開拓史が好きです」

おお。


「…っ、T沢さんは…?」

「無幻三剣士」


私の返答を聞き、彼は照れたように笑った。



思いがけずほっこりさせられた放課後。

階段の中腹でS野君と微笑み合いながら私は今目の前にいる彼の情報を整理する。


身の丈推定170cm、体重推定80kg。筋肉質とはほど遠い。

虫も殺さないようなやや色白の童顔、すっきりと短い髪の毛、更にはパステルカラーのボタンダウンシャツ。


これはくせ者だ。

>>19からここまで

これは女の視点?
男との出会い的な?

>>38
そうっす
わかりづらくてごめんね

相当デブってるな……

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom