P「春香もいつかはズッコンバッコンされるんだよな……」(123)

春香「……えっ?」

P「ん? どうした春香、質問か?」

春香「あの……プロデューサーさん、今何か言いませんでしたか?」

P「何かって言われても……悪い、教えてくれないか?」

春香「そ、それは……言えません」

P「どうした、言ってみてくれないと分からないぞ?」

春香「うう……やっぱり何でもないです」

P「それならいいけど……はあ、春香は誰にズッコンバッコンされちまうんだろうな……」

春香「そ、それ! それですよ!」

P「ん? ああ、ズッコンバッコンって言った事か」

春香「……はい、いきなり言い出すからびっくりしちゃいました」

P「そこまで気にするなよ。ただズッコンバッコンって言っただけじゃないか」

春香「な、何度も言わないでください!」

P「あ、ああ、悪かった。……でも、顔を赤らめるって事は意味は分かるみたいだな」

春香「あ、アイドルにそんな事聞かないでくださいよ……」

P「いい機会だ。春香、聞きたい事がある」

春香「何ですか?」

P「……ぶっちゃけ、ズッコンバッコンした事ある?」

春香「なっ……! ななな、何言ってるんですか!?」

P「いや、やっぱりプロデューサーとしては気になるだろ?」

春香「そ、そんな事言えません!」

P「まさか……お前、もう既に」

春香「ち、違います! ……その、まだ誰ともお付き合いした事が無いので」

P「……そうか。それは良かった、安心したよ」

春香「えっ? あの……安心したってどういう意味ですか?」

春香(もしかして……プロデューサさん、私の事を)

P「いや、春香がアイドルとして売れてきたら週刊誌とかが狙ってくるだろ?」

春香「……はい?」

P「そうなった時、過去に色々あると遠慮なくばらされるからな……春香も嫌だろ?」

春香「それは……そうかもしれませんけど」

春香(別に私の事が、って訳じゃないんですね……)

P「春香、もう一つ聞いても良いか?」

春香「……変な事以外だったら」

P「ぶっちゃけ、好きな人とかいるのか?」

春香「えっ? あ、あの……それは……いる、と言えばいるんですけど」

P「……春香、それってまさか」

春香(ぷ、プロデューサーさん……まさか、私の想いに気付いちゃった……?)

春香(ど、どうしよう……もしかしてこの後は二人で素敵なディナーとかになっちゃうの!?)

P「……芸能人、とかじゃないよな?」

春香「へっ?」

P「いや、その好きな相手が芸能人だとこれもまた面倒な事になるからな……」

春香(……期待して損しちゃった)

P「相手は有名か? それともまだ無名か?」

春香「だ、大丈夫ですよっ! ……芸能『人』では無いですから」

P「そうか、それだと一般人って事だな……気になるけど、これ以上の詮索はやめとくよ」

春香(……もう少し聞いてくれれば、もしかしたら。ちょっと残念……)

P「春香、お前もいつかは誰かと付き合っていずれは結婚したい、とか思うだろ?」

春香「は、はい。そうですね、素敵な人と結婚できたら……」チラッ

P「でもな、今お前はアイドルなんだ。そういうのは今は……申し訳ないけど困るんだよ」

春香「……やっぱり、そうなんですね」

P「ああ、恋愛禁止なんて馬鹿げてるかもしれないが……分かってくれると助かる」

春香(……こっそり想う位は、大丈夫だよね)

P「で、ここからが本題なんだけど」

春香「本題、ですか?」

P「ああ、今から十年後の事を考えてみてくれ」

春香「十年後……」

P「十年後、今と同じ衣装を着たり、今と同じ様な活動が出来ると思うか?」

春香「えっと……可愛い衣装とか、着ちゃダメなんですか?」

P「年齢ってのは残酷だからな……」

P「それで春香、お前は芸能界で長く活動したいか?」

春香「もちろんです、そのために今も頑張ってるんですよっ!」

P「いい心掛けだ。じゃあ、十年後はどういう芸能人になってると思う?」

春香「歌ったり、踊ったりとか、ですかね?」

P「春香が歌やダンスの才能を開花させればそれもありだな。でも、もしそれが上手く行かなかったら」

春香「上手く、いかなかったら……」

P「その時は別の道で頑張ればいい。例えば、演技、バラエティ、道は色々ある」

春香「ふむふむ」

P「その中には、必ず春香が輝ける場所があるはずなんだ。
  それを一緒に探すのもプロデューサーの役目だからな」

春香「プロデューサーさん……そこまで私の事を考えていてくれたんですね!」

P「ああ、全員の事をちゃんと考えているぞ。だから安心してくれ」

春香「ぜ、全員ですか……そうですよね、私だけじゃありませんよね」

P「ん? どうした春香?」

春香「……何でもありません」

P「さて、具体的な話に移るが。俺はこういうのを提案する」

春香「私のこれからの活動ですね!」

P「ああ、それは……」

春香「それは?」ワクワク

P「――平野レミと料理番組だ!」

春香「……へっ?」

P「春香の明るいキャラと平野レミなら、きっと面白い料理番組が出来ると思うんだ」

春香「そ、そうですか……」

P「料理番組は意外と長く続くからな。それで売れれば色々な番組に出る足掛かりにもなる」

春香「確かに私は料理はそれなりに出来るとは思いますが……」

P「ああ、大人になったらそれを生かしていくんだ。どうだ、春香?」

春香「えっと……悪くは無いと思いますけど、もっと色々探してみたいと思います」

P「そうだな、時間はある。一緒に探してみよう」

春香「はいっ! 頑張りましょう、プロデューサーさん!」

P「さて、話を戻すけど春香のズッコンバッコンの話だったな」

春香「ぷ、プロデューサーさん! もうその話はいいですよぉ……」

P「いや、これは聞いて欲しい。最近、こればかり考えててな……」

春香「あ、あの……それは、その……」

P「ん? どうした春香、言ってみろ」

春香「だ、だからどうしてそんな事を考えてるんですか?」

P「一言で言えば……父親の気持ちだな」

春香「父親……ですか?」

P「自分があれこれ考えて育ててるアイドルが、
  どこの馬の骨とも分からん男とズッコンバッコンするかもしれない……」

春香「だからその言い方はやめてください!」

P「そう考えると、こう……イライラ、というかムカムカ、というか」

春香「つまり、大切に育てた娘が嫁に行くお父さんの気持ちって事ですね」

P「そう、その通りだ。……春香、さっき好きな人がいるって言ってたが、変なヤツを選ぶんじゃないぞ」

春香「……変な人では、無いと思います」ボソッ

P「ん? なんか言ったか春香?」

春香「な、何でもありません!」

P「……やっぱり心配だな、いつ春香がズッコンバッコンするんじゃないか気になって気になって」

春香「そんな心配しなくて大丈夫です!」

P「お前な……だって春香だぞ? みんなのアイドル天海春香ちゃんだぞ?」

春香「何ですかその言い方……」

P「分かってないな……春香は可愛いんだぞ? 男が放っておくと思うか?」

春香「へっ!? わ、私が可愛いって言いました!?」

P「あ、ああ」

春香「本当ですか!? 嘘じゃありませんよね? お世辞でもありませんよね?」

P「嘘じゃないって、何をそこまで必死になってるんだ」

春香「な、何でもありません」

春香(プロデューサーさんが私の事を可愛いって……えへへ)

P「はあ……信じて芸能界に送り出した春香がズッコンバッコンされるなんて、って事になるのかな……」

春香「……そんなに心配だったら、私、誰ともお付き合いしません」

P「春香……?」

春香「それならプロデューサーさんも余計な心配しないで、私と一緒に頑張ってくれますよね?」

P「あ、ああ、それはそうだけど……いいのか、春香?」

春香「私は大丈夫です! だから私の事、よろしくお願いしますね!」

P「うーん……でもなぁ」

春香「まだ心配なんですか? だから私は」

P「いや、そうじゃないんだ……つまり」

春香「つまり?」

P「二十五を過ぎるまで誰とも付き合わず、処女ってのは……それはそれで心配なんだよ」

春香「……はい?」

P「女の子だから恋愛もしたいだろうし、そのまま出会いも無く歳を重ねるのもな……」

春香「ど、どっちなんですか!? 私は誰かと付き合えばいいんですか!?」

P「それは嫌だ! でもなぁ……」

春香「もう……じゃあ、プロデューサーさんは誰と私が付き合えばいいって思ってるんですか?」

P「うーん、それが今いないんだよな。お前の事を理解してくれて、
  上手くスキャンダルからも隠れてこっそり付き合ってくれて、俺が信頼できる人物……」

春香「かなりそれ、難しいですね……」

P「だよな……どこかにそんな男、いないだろうか」

春香(……あれ? ちょっと待って……)

春香(私の事を理解してくれて)

P「男性アイドル……いや、女のファンからもバッシングが凄いからな……」

春香(こっそり付き合ってくれて)

P「一般人……やっぱりサラリーマン、いや、弁護士とかの方が将来安泰か?」

春香(プロデューサーさんが、信頼できる人物――)

P「政治家? いや、大企業の社長……でも愛人とか作りそうだな……」

春香「ぷ、プロデューサーさん! あの……私にピッタリな人、見つけちゃいました!」

P「……何ィ?」

P「誰だ春香! 言ってみろ! いいか、冷静になるんだぞ!?
 俺が見極めて駄目だったら許さないからな! 場合によっては物理的に……」

春香「お、落ち着いてください! えっと、それは……」

P「そ、それは……」

春香「ぷ、プロデューサーさんです!」

P「……はい?」

春香「その……私の事をプロデュースするために、
    プロデューサーさんは私の事を理解してくれようとしていますよね?」

P「ま、まあ、それはそうだな」

春香「それで、プロデューサーさんと私は一緒に行動する事も多いから、
    こっそり付き合う事も出来ると思います。……多分」

P「確かに、一緒には行動するけど」

春香「そして、プロデューサーさんが信頼できる人物。つまり、自分自身なら信頼できるはずです!」

P「な、なるほど」

春香「結果として……私にピッタリなのはプロデューサーさんしかいません!」

P「…………」

春香「あ、あれ?」

春香(どうしよう……プロデューサーさん、黙っちゃった。せっかく勇気を出したのに……)

P「……春香、ありがとな」

春香「えっ? プロデューサーさん、それって……もしかして、私と」

P「俺の事を気遣ってくれて。すまん、アイドルに気遣われるなんてプロデューサー失格だな」

春香「き、気遣って?」

P「ああ、春香にピッタリだ、なんて言われて嬉しかったよ」

春香「あ、あの……まさか、冗談だって思ってます?」

P「当たり前だろ? アイドルとプロデューサーが付き合うなんて、流石に有り得ないからな」

春香「え、ええっ!?」

P「ん? 何をそんなに驚いてるんだ?」

春香「私とプロデューサーさんは……付き合う事なんて有り得ないんですか?」

P「ああ、それがどうかしたか?」

春香「……そ、そうなんですか……そうですよね」

P「春香? 急に落ち込んでどうしたんだ?」

春香「何でも……っ……ありません。だから……ほ、放っておいて……っ……」

P「な、泣いてるのか?」

春香「ないてなんか……ぐすっ……いませんよぉ……」

P「す、すまん……変な事を言ってばっかりだったな。悪かった……」

春香「ち、違います……プロデューサーさんは、悪くなんです。悪いのは、私です……」

P「いや、春香は何も……」

春香「……私が、勝手に盛り上がっちゃったのが悪いんです」

P「春香、ちゃんと話してくれ」

春香「……プロデューサーさんが私にピッタリだ、って思って……嬉しかったんです」

春香「でも、プロデューサーさんは私と付き合うなんて有り得ないって言われて……」

P「春香……」

春香「……どうせ有り得ないなら、今全部言っちゃいます。さっき、好きな人がいるって……言いましたよね?」

P「あ、ああ」

春香「それ……プロデューサーさんの事です」

P「俺の事って……お前」

春香「……はい。私は、プロデューサーさんが……好きです」

P「……本気で言ってるのか?」

春香「……こんな事、冗談で言うと思いますか」

P「……そうだよな、悪かった」

春香「でも、良かったです。もっと長い間言わずにいたら……もっと辛くなっていたかもしれませんから」

P「……春香、俺は」

春香「い、いいんです! 私……今日は帰ります」

P「ま、待ってくれ!」

春香「……止めないでください。有り得ないっていうのが、当然ですから」

P「……春香。俺、本当は……お前とズッコンバッコンしたいんだ!」

春香「ぷ、プロデューサーさん……?」

P「正直に言おう……春香が誰かと付き合ったり、誰かとズッコンバッコンするなんて嫌なんだ!」

春香「だ、だからその言い方は……」

P「でも、俺はお前のプロデューサーだ……だからズッコンバッコンは出来ないって思ってた」

春香「お、落ち着いてください……とりあえずその言い方を」

P「だが……お前も同じ気持ちなら、俺は我慢しない。春香、お前とズッコンバッコンしてもいいんだな!?」

春香「ち、違います! そこまでは……その」

P「えっ? ……好きな人と、ズッコンバッコンしたいって思ったら駄目か?」

春香「プロデューサーさん! まずはその言い方……あれ? 今……何か大事な事が」

春香「あの、プロデューサーさん……最後、何て言ったんですか?」

P「最後……ズッコンバッコンしたいって思ったら駄目かって言ったな」

春香「ううっ……その前です、その前をもう一度」

P「前……好きな人とズッコンバッコンって言ったけど」

春香「ず、ズッコ……はもういいです! その、好きな人って……」

P「ああ、俺は春香が大好きだからな」

春香「だ、大好き!? それ、本当ですか!?」

P「もちろんだ。だからズッコンバッコンしたいって事に」

春香「ズッコ何とかはもういいんですってばぁ……」

春香「つまり、私とプロデューサーさんは……両想いって事に、なりますよね」

P「あ、ああ……そうなるな」

春香「ぷ、プロデューサーさん! えいっ!」ギュッ

P「うおっ!? 急に抱き着いてきてどうしたんだ!?」

春香「だって、両想いですよ、両想い! つまりは恋人って事じゃないですか!」

P「お、落ち着けって」

春香「夢みたい……プロデューサーさんと想いが通じ合うなんて」

P「春香……」

P「……でもな、付き合う事は、やっぱり出来ない」

春香「えっ……?」

P「分かってくれ、お前はアイドルだ。そして俺はそのアイドルの……プロデューサーなんだ」

春香「そ、そんなのおかしいです! だって、両思いなのに、付き合えないなんて……」

P「……春香、アイドルになりたいんだろ? みんなで一緒に、楽しく歌いたいんだろ?」

春香「……はい」

P「だったら、今は自分のすべき事をやるんだ。分かってくれるよな?」

春香「……プロデューサーさん」

P「だけど、一度ズッコンバッコンするだけならいいよな?」

春香「……はい」

春香「……分かりました。私、今は我慢します」

P「俺も春香とズッコンバッコンするのを我慢する。五年でも、十年でも我慢する」

春香「もう言い方は諦めました……本当に、我慢できるんですか?」

P「ああ、お前が俺を好きでいてくれる間は我慢する。それと、その」

春香「どうしました? 最後まで言ってくださいよ」

P「いや……他の男が好きになったら、すぐに言うんだぞ?」

春香「プロデューサーさん……怒りますよ? 私はそんなに簡単に心が動く女の子じゃありません!」

P「……すまん、悪かった。って今日は謝ってばかりだな……」

春香「そうですね……ふふっ」

それから数週間 765プロ

小鳥「春香ちゃん、最近いい感じですね」

P「そうですか? そう言われると俺も嬉しいですよ」

あずさ「いい事でもあったんですかね~」

真「ほら、今日もテレビ出てますよ。……なんか、テレビの中の春香、可愛いですよね」

美希「確かに最近、春香は可愛くなった気がするの……」

P「何言ってんだよお前達、春香は前からメチャクチャ可愛いだろうが」

全員「えっ?」

P「いや、春香は今日も可愛いな……いつまでも見ていられるよな」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん……?」

P「ん? どうしました? ほら、この春香の笑顔! 最高ですよね!?」

美希「は、ハニー……どうしちゃったの?」

P「どうした? 春香が可愛いって言ってるだけだろ?」

真「い、いや……そうですけど」


春香『みなさんこんにちは! 天海春香です!』


P「はあ……春香とズッコンバッコンしたい」

あずさ「あ、あらあら……」


終わり

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