恒一「最近レーチャンがやたら流暢に喋るんだけど」(216)

九官鳥「恒一くん!お願い!ここから出して!」

恒一「全く、誰がこんな物騒な言葉吹き込んだんだろう…」

九官鳥「恒一くんってば!」

恒一「はいはい、お前はもう少し静かだったらかわいいんだけどなぁ」


学校

赤沢「アー!レーチャン!ドーシテ!ドーシテ!」

勅使河原「赤沢の様子が変だぞ…」

綾野「泉美…?ど、どうしたの?」

赤沢「ゲンキダシテ!」




恒一くんと赤沢さんがイチャイチャする展開でお願いします

ガラッ

恒一「おはよう」

勅使河原「おうサカキ」

恒一「…ん?なんかみんなざわついてるみたいだけど…」

望月「それが実は……」

小椋「泉美!泉美ってば!どうしたっていうの?」

赤沢「アー!レーチャン!レーチャン!」バサバサ

恒一「赤沢さん……?朝から奇声発して一体どうしたの?それに両手もバタつかせて…」

赤沢「アー!アー!」

綾野「さっきからずっとこの調子なの……」

赤沢「アー!」バサバサ

恒一「演劇の練習か何かなの?」

綾野「違うよ…。こんな役ないもん」

杉浦「泉美……。もしかして対策係の重圧で精神に変調を来しちゃったんじゃ……」

中尾「そんな……!赤沢さんしっかりするんだ!いつもの強気な赤沢さんに戻ってくれ!」

赤沢「ギャア!ギャア!」ドリルクチバシ

中尾「いてっ!」

勅使河原「お、おい気をつけろ!こいつ凶暴だぞ!?」

赤沢「アー!」バサバサ

恒一「赤沢さん……」

杉浦「こんなになるまで一人で頑張って……ごめんね泉美……。力になれてなかったんだね私……」グスッ

綾野「泉美一人に任せすぎてたのかな……私達……」ウウ…

赤沢「アー!ゲンキダシテ!」

小椋「うう…こんな状態でも私達を気遣ってくれてるなんて…」ポロポロ

赤沢「アー…」ブリブリ

勅使河原「うおっ!?ウンコしてるぞオイ!?」

>赤沢「ギャア!ギャア!」ドリルクチバシ

>中尾「いてっ!」

赤沢さんが中尾にキスするなんて・・・

赤沢「アー」ビチャビチャ

高林「教室でウンコするなんてフェアじゃないよ!」

風見「酷い臭いだね」

猿田「意外といいもん食ってないぞな」

赤沢「ギャア」ブピピ

綾野「もうやめて泉美!これからは私も一緒に対策考えるから!」

有田「わ、私も!私も協力するから…!」

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!」

杉浦「泉美……。もう大丈夫だから……。これからはみんなあなたの力になるから……」ギュッ

赤沢「アー!」ツバサデウツ

杉浦「痛い!」

勅使河原「だから気をつけろって!迂闊に近づくと攻撃されるぞ!」

そういえば中の人が同じか

小椋「親友の多佳子の事もわからなくなってるなんて……」

風見「……確かに災厄は始まってしまって、これといって有効な対策も見つからないまま久保寺先生まで死んでしまって……でも誰も赤沢さんを責めたりなんてしてなかったはずなのに……」

杉浦「きっと泉美は自分を許せなかったんだ……。何も出来ない自分を責め続けていたのかも……」

綾野「泉美ぃっ!お願い、戻ってきて!泉美一人が背負いこむ事じゃないよ!」

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!」バサバサ

小椋「泉美……。どうしてって言いたいのはこっちだよ……」グスッ

杉浦「泉美は元々そんなに強い子じゃなかった……。災厄と戦うために強い人間を演じていただけなの……。私はわかっていたのに……まさかここまで思い詰めてたなんて……」

赤沢「レーチャン!オハヨウ!オハヨウ!」

綾野「バカ……。だからいつもやりすぎだって言ってたじゃん……。こんなになるまで自分を追い込むなんてバカだよ……」ポロポロ

恒一「……ねえ見崎、もしかしてこれも災厄……?」

見崎「わからない……。精神がおかしくなった事例は過去にあったみたいだけど、死に結びつかないケースは聞いたことがないわ……」

ガラッ

三神「みんなおはよう。……って臭っ!?何このニオイ!?」

望月「先生……実は赤沢さんの様子が……」

赤沢「レーチャン!オハヨウ!」

三神「え……?お、おはよう……。あの……私は教師だからそういう呼び方は……」イラッ

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!」

三神「ですから私は教師なので学校の中であだ名みたいな呼び方は……」イライラ

赤沢「アー!アー!」バサバサ

三神「赤沢さん……?」

勅使河原「さっきからずっとこんななんですよ。みんなの推測じゃ無理が祟っておかしくなっちまったって事なんだけど……。それとこのニオイは赤沢のウンコです」

三神「そんな……」

赤沢「アー!ドーシテ!」

三神(ウチの九官鳥みたいでむかつくわね……)イライラ

三神「とりあえず誰か赤沢さんを保健室に」

赤沢「ドーシテ!」

三神「うっさいわね!次それ言ったらぶつわよ!!」クワッ

望月「ひっ…!?」

杉浦「私が連れていきます……」

三神「お願いね杉浦さん。あと彼女の排泄物は……」

中尾「ウンコ掃除はまかせろー」

三神「そう、じゃあ中尾くんお願い。私はこの事を千曳先生に伝えてきます。みんなはそのまま教室に待機していて」

一同「……」

杉浦「ほら、行こう?泉美……」

赤沢「アー!オハヨウ!オハヨウ!」

……
…………
…………………………

勅使河原「大変な事になっちまったな……」

綾野「泉美、元に戻るかな……」

小椋「わかんない……」

一同「……」

中尾「うおー!赤沢さんのウンコだー!鼻に焼き付ける!」クンクン


第二図書室

三神「……というわけなんです。千曳先生、何かお心当たりはありますか?」

千曳「いや、そんな事例は過去の災厄にはないですね……。彼女は今どこに?」

三神「保健室です」

千曳「では一緒に様子を見に行きましょう。この目で確かめない事には何とも言いようがない」

三神「はい……。お手数おかけします……」

保健室
ガラッ

千曳「赤沢さんはいるかね」

杉浦「あ……」

赤沢「アー!オハヨウ!オハヨウ!」

千曳「……?元気そうに見えるが……」

赤沢「ドーシテ!レーチャンドーシテ!」バサバサ

赤沢「アー!アー!」バサバサ

赤沢「ギャアギャア!」バッサバッサ

千曳「……なるほど。これは尋常ではないね」

三神「先生、どうしたらいいんでしょうか……」

千曳「ううむ……」ウーン

千曳「彼女は……なんだ、その、鳥になってしまった、という解釈でいいのかな?」

杉浦「……言われてみれば……鳥みたいですね……」

三神「あ、私の家で九官鳥を飼っているんですがそれにかなり近い感じです……」

千曳「杉浦さん、彼女は鳥になりたい願望でも持っていたのかね?」

杉浦「そんな話は聞いたことありません……」

千曳「他の友人に話していた可能性は?」

杉浦「多分ありません。泉美が話すとしたら私だと思いますから……」

千曳「なるほど、君は彼女の親友というわけだね」

千曳「演劇部での彼女を見る限り、役に入り込みすぎる節があったからもしやと思ったがその線はないか……」

三神「やはり災厄でしょうか……?」

千曳「さっきも言いましたがこのような例は過去にありません。しかし災厄は未知の部分が多い。その可能性も十分にありますな……」

杉浦「泉美は元に戻るんでしょうか……」

千曳「わからない……。これは専門の医師に聞いたほうが良いかも知れないな……」

赤沢「アー!」

帰りのホームルーム

三神「というわけで、赤沢さんは千曳先生が医師に診せる事になりました。だからみんなはもう心配しないで」

綾野「医師って……大丈夫なんですか?災厄だったら医者にどうこうできる問題じゃないんじゃ……」

三神「……大丈夫よ。きっと赤沢さんは元に戻るはずだから……」

恒一(気休め、か……。怜子さんも立場上大変だな……)

勅使河原「なぁサカキ」ヒソヒソ

恒一「ん、何?」

望月「放課後、望月と見崎も呼んでお前んちで今後の事話し合おうぜ。俺らが話し合ってどうこうできる問題じゃないかもしれねーけどよ……」

恒一「……うん、わかった」

三神家

恒一「ただいま」

勅使河原「お邪魔しまーす」

望月「お邪魔します」

見崎「オジャマシマス」

九官鳥「あっ!やっと帰ってきた!……って何で望月くんと見崎さんと、それに勅使河原までいるのよ!」

勅使河原「なんだこの鳥」

恒一「ああ、ごめんごめん。気にしないで」

九官鳥「気にしないでじゃないわよ……。いい加減ここから出しなさいよ……」

望月「なんか……やけに流暢に喋るねこの九官鳥……」

恒一「最近色んな言葉覚えちゃったみたいでさ。うるさいんだよね」アハハ

勅使河原「じゃ、さっそく対策練るか」ドッコイショ

九官鳥「対策…?何?勅使河原アンタ何かいい案でもあったわけ?」

勅使河原「お?ははっ、なんだコイツ、会議に混ざるつもりか」

九官鳥「混ざるも何も私は対策係なんだから当然でしょ」

望月「あはは、赤沢さんみたいな事言ってるねこの子」

恒一「はいはい、人間の会議だからねー。お前は餌でも食べててね」ガサガサ

九官鳥「こ、こんな鳥の餌嫌よ!ていうかお願いだからここから出して!」

勅使河原「グルメな鳥だなー。つーか生意気じゃね?ちゃんと躾してんのかよサカキ」

九官鳥「生意気なのはアンタでしょ勅使河原!」

勅使河原「あ?なぁサカキ、こいつ焼き鳥にして食っちゃおうぜ」

九官鳥「な!?」

恒一「ほら、大人しくしてないと勅使河原に食べられちゃうぞ。静かにしててな」

九官鳥「う、うう……どうしてこんな事に……」

見崎「それで、会議って何をどうするの?」

勅使河原「そりゃもちろん赤沢を元に戻す方法を考えるんだよ」

勅使河原「先生は医者がどうにかしてくれるって言ってたけど、ありゃやっぱ災厄の一種だと思うんだ。だから医者任せじゃ赤沢は元に戻んねえ可能性が高い」

九官鳥「私…?え?私がどうしたって言うのよ」

恒一「うるさいな…。そろそろ静かにしててくれよ」

九官鳥「こ、恒一くん……」

見崎「……ちょっと待って」

勅使河原「お、どうした見崎」

見崎「さっきから疑問に思ってたんだけど、この鳥……明らかに赤沢さんのマネしてない?」

恒一「……みたいだね」

望月「声色も口調も赤沢さんそっくりだよね」

見崎「……」

九官鳥「ま、真似じゃないわ!私よ!いい加減気付きなさいよ!私が赤沢泉美なの!」

望月「ほら、本当にそっくり」

九官鳥「いや、だから……」

勅使河原「……?なんだよ見崎、それがどうしたんだ?」

見崎「九官鳥が赤沢さんの言葉を喋るって事は……」

見崎「まさかとは思うけど……」

恒一「見崎?」

望月「……?」



見崎「榊原くんは赤沢さんをよく家に連れ込んでいたって事になるわ」

恒一「え」

勅使河原「た、確かに……!赤沢がこの家に入り浸りでもしてなきゃここまで赤沢の言葉を覚えねえよな……」

望月「言われてみれば……」

恒一「え?え?」

見崎「榊原くん、説明してもらえる?」

勅使河原「サカキ…お前ひょっとして赤沢とデキてたのか……?」

恒一「ち、違うって!なんで僕と赤沢さんが……」

望月「でも赤沢さんはここによく来てたんでしょ……?」

恒一「赤沢さんを招いた事なんてないよ!」

見崎「嘘。じゃあ何でこの鳥は彼女のマネがこんなに上手いの?」

恒一「し、知らないよ!僕が聞きたいくらいだよ!」

九官鳥「いや、だからあんた達、真似じゃなくて私が……」

九官鳥(ん?待てよ……)ピーン

九官鳥「ア、アー!アー!アカザワサンダイスキ!アカザワサンダイスキ!」

恒一「!?」

勅使河原「うわ、こりゃ完全に黒じゃねえか」

恒一「お、おい!僕はそんな事言った覚えないぞ!?何言い出すんだよ!?」

九官鳥「アカザワサンカワイイ!アカザワサンダイスキ!」

望月「うわぁ///」

見崎「……ふうん、ずいぶん熱のこもった愛の言葉を囁いてるのね、サ・カ・キ・バ・ラ・くん」

恒一「違うってば!」

九官鳥「アカザワサンダイスキ!ケッコンシタイ!」

恒一「あああもう!何なんだよお前!誰だよこんな事吹き込んだのは!」

見崎「恒一くんの女関係が明るみに出たところで、会議を再開しましょう。この鳥はうるさいから私が鳥籠ごと他の部屋に移すけどいい?」

恒一「そうしてもらえると助かるよ……」ハァ…

見崎「さ、行きましょうか九官鳥さん」ヨイショ、スタスタ

九官鳥「アー!」

九官鳥(……)

九官鳥(って何やってんのよ私は…。既成事実まがいのものは出来たけどこれじゃ鳥と思われたままじゃない…)アー…

九官鳥(もういっそ鳥として生きて恒一くんと暮らす道を選ぼうかしら……)

見崎「それにしても鳥ってこんなに言葉覚えるものなのね。関心した」スタスタ

九官鳥「…アー」

見崎「他にはどんな言葉を喋るのかな」スタスタ

九官鳥「アー…オハヨウ…オハヨウ…」

見崎「……プッ」

九官鳥「オハヨウ…オハヨウ…アー…」

見崎「……ふふ、演劇部って鳥のモノマネの練習もするの?」

九官鳥「え」

見崎「あなた、赤沢泉美でしょう?」

九官鳥「な…!あんたやっぱり気付いてたんじゃない!」

見崎「だって、ただの声真似じゃなくて明らかに私達と会話してたから」

九官鳥「わかってたなら言いなさいよね…」

見崎「さっきのは何?アカザワサンダイスキとかなんとか」

九官鳥「い、いや、あれはその……///」

見崎「……もし私が今ここであなたをくびり殺しても鳥の身体じゃ何の抵抗もできない、のよね」

九官鳥「え……ちょ、ちょっとあんた何を言って……」

見崎「冗談よ」

九官鳥「っ……!なんなのよもう……」

九官鳥「ていうかわかってるならさっさと戻りなさいよ。みんなにもあなたから説明して」

見崎「そうね。良かったわ。あなたが鳥として生きるつもりだったらどうしようと思ってたから」

九官鳥「くっ…///」

……
………
……………

見崎「みんな、ちょっといい?」

勅使河原「ん?どうした?ていうかお前その鳥別の部屋に持って行くんじゃなかったのか」

見崎「どうやらこの鳥が赤沢さん本人みたいなの」

恒一「……はい?」

望月「いきなり何言い出すの見崎さん…」

九官鳥「信じられないでしょうけど本当よ」

勅使河原「あーちょっと鳥は黙っててくんねーかな。あとお前なんか臭いんだわ」

九官鳥「な…!だから私が赤沢泉美だって言ってるでしょ!いい加減にしなさいよ勅使河原!」

恒一「あ、赤沢さん…?嘘でしょ?」

九官鳥「本当よ。信じて。ほら、現にこうして会話してるでしょ?ただの鳥なら会話にはならないじゃない」

望月「……僕の姉が働いてる店のコーヒーは?」

九官鳥「ハワイコナエクストラファンシー」

望月「!!ほ、本物だ…!」

恒一「……第二図書室の主の名前は?」

九官鳥「千曳先生」

恒一「赤沢さんのうしろの席と隣の席は?」

九官鳥「渡辺と前島」

恒一「ほ、本物だ……」

勅使河原「赤沢泉美のスリーサイズは?」

九官鳥「そんなに殴られたいの?勅使河原」

勅使河原「うげ……本物だ……」

見崎「89267×20981=?」

九官鳥「え?ちょ、ちょっと待って、計算するから。えーと……えーと……」

見崎「ごめんなさい、やっぱりただの鳥みたいね。私の勘違いだったわ」

九官鳥「ちょっ!?」

見崎「嘘。……これでわかってもらえた?この鳥は赤沢さん本人よ」

恒一望月勅使河原「……」

九官鳥(くそっ…!見崎鳴……覚えてなさいよ……!)バサバサ

望月「ど、どういうことなの?なんで赤沢さんがこんな姿に……」

九官鳥「わからないわ。今朝目が覚めたらこうなってたの……」

恒一「そだから今朝から出して出してって言ってたのか……」

九官鳥「そうよ……。良かった……やっとわかってくれたのね……」

恒一「じゃあ籠から出すね」ガチャ

九官鳥「ふぅ」バサバサ

勅使河原「ん?待てよ?じゃあさっきのアレは何だったんだ?アカザワサントケッコンシタイとか言ってたのは……」

九官鳥「……」ヅンヅン

勅使河原「いててて!ツツくなよ鳥沢!」

九官鳥「誰が鳥沢よ!余計な事ばっかり言ってると今度は目をツツくわよ」

勅使河原「お前、鳥になってもそんなんなのな……」

望月「あれ?じゃあ今日学校に来てた赤沢さんは一体……?」

九官鳥「だから何なのよそれ。さっきも私の対策がどうとか言ってたけど」

勅使河原「お前、大変だったんだからな。赤沢がいきなりギャアギャア騒ぐわ教室でウンコするわで」

九官鳥「はぁ!?な、何よそれ……!」

勅使河原「おまけにやたら凶暴でさぁ。あ、それは普段通りか」

九官鳥「は?何?もう一度言いなさいよ」

勅使河原「あ、あぁ、ウソウソ……。ははは……」

見崎「恐らく、この鳥の魂とでも言うべきかしら、それが赤沢さんの魂と入れ替わったんだと思う。今日学校にいた赤沢さんはきっと中身がこの鳥だったのね」

望月「そんな事ってあるのかな……」

恒一「まぁ災厄が存在するくらいだし、有り得ないとも言い切れないかな……。現に鳥が赤沢さんとして喋れてるわけだし……」

九官鳥「つまり私の身体はちゃんと他にあるってこと?」

恒一「うん、今は病院で診察を受けてるはずだよ」

九官鳥「ホッ……」

勅使河原「……で、どうするよ?赤沢は元に戻れるのか?」

見崎「そもそも何でこんな事になったのかしら」

望月「赤沢さん、心当たりはある?」

九官鳥「あるわけないでしょ……こんなバカげた現象、何で起きたのか私が知りたいわ……」

勅使河原「サカキ、お前ホラー好きだったよな。こういうケースって覚えないか?」

恒一「うーん、これはホラーっていうかコメディなんじゃないかな……。僕の専門外だよ……」

九官鳥「全然コメディじゃないわよ……。最悪よ……」

見崎「ここで私達が話してても仕方ないと思う。一度鳥沢さんを三神先生に見せて事情を説明したほうがいいわ」

九官鳥「そうね。戻るまではこの身体で学校に行くしかないし。あとそのあだ名はやめて」

学校 職員室

恒一「失礼します」ガチャ

三神「あら、どうしたの?みんな揃って」

望月「赤沢さんの事でちょっとお話があるんです」

三神「そう……。あ、彼女、入院する事になったみたいよ。精神に重篤な変調があったみたいで……」

九官鳥「最悪ね……。もし元に戻れても異常者扱いか……」

三神「ちょ、ちょっと!何でその鳥連れてきてるのよ!私その鳥嫌いって言ったじゃない!」

恒一「怜……あ、いや、三神先生。実はこの鳥が赤沢さんなんです」

三神「……はい?」

九官鳥「私が赤沢泉美です」バサバサ

三神「」

……
………
…………………

三神「なるほど……。どうやら本当に赤沢さんみたいね……」

九官鳥「はい」

勅使河原「とりあえず、元に戻れるまでこの恰好で登校させてやって欲しいんですけど、校則違反ですかね?」

三神「まぁ中身が赤沢さんなら私物の持ち込みって事にはならないかもしれないけど……」

九官鳥「対策の事もありますし、クラスのみんなを不安にさせたくないので登校を許可して頂けると助かるのですが」

三神「……わかったわ。私が許可します。ただし他の先生には言っても信じてもらえるとも限らないから、美術の授業以外では教室の隅で大人しくしててくれると助かるわ。
  出席のほうは私がなんとかするから」

九官鳥「ありがとうございます」バサバサ

三神「学校のほうはそれでいいとして、お家の方にはどう説明しようかしら……。いきなりあなたの娘はこの鳥です、なんて言って大丈夫かしらね」

九官鳥「……」

三神「……赤沢さんが良ければ、身体はウチの鳥なんだししばらく私の家で預かってもいいんだけど」

九官鳥「えっ」ドキ

三神「恒一くんは?一応年頃の男の子だし、鳥とはいえクラスの女の子がいるのはやっぱり困る?」

恒一「状況が状況ですから……そんな事気にしてる場合じゃないです」

三神「そう。どうする?赤沢さんの身体は病院だし、元に戻る方法が見つかるまで私の家で匿ってたほうが色々と面倒が起きにくいと思うんだけど、やっぱり恒一くんがいると抵抗あるかしら?」

九官鳥「いえ、そんな事ありません。是非お邪魔させてください」キリッ

恒一「いいの?」

九官鳥「わ、私は平気よ。鳥籠に押し込められてなければ……」バサバサ

三神「じゃあ決まりね。千曳先生には私から言っておくから」

九官鳥「はい。ご迷惑おかけして申し訳ありません」ドキドキ

見崎「先生、この九官鳥からやましいオーラが出てますが」

九官鳥「で、出てないわよ!」バサバサ

その夜

恒一(はぁ……まさか鳥の夕飯まで作る事になるとは……)

恒一「赤沢さん、餌できたよ」

九官鳥「ありがとう」バサバサ スィーッ

九官鳥「って何?この小さい団子みたいなのは……」●

恒一「ん?だから餌だよ」

九官鳥「何よこれ……。まるで鳥の餌じゃない……」

恒一「だって鳥だし……」

九官鳥「やめてよ。中身は人間なのよ?恒一くんのその煮物美味しそうね。そっちがいいわ」ヅンヅン

恒一「あっ、ちょっと!啄まないでよ!」

九官鳥「ゲフ…。この身体じゃちょっと食べただけで満腹になっちゃうわね……」

恒一「はぁ……もう食べられないじゃないか。鳥の雑菌がついちゃったよ……」

九官鳥「酷い……。そんな言い方しなくてもいいじゃない……」

恒一「一応身体はペットなんだからさぁ……」

九官鳥「ペットって……」

九官鳥(ん?私が恒一くんのペット……?)

九官鳥(……あれ?悪くないかも……)

恒一「何?鳥の顔だと表情がわかんないから沈黙されると対応にしくいよ……」

九官鳥「う、ううん。仕方ないわね。居候の身だしあなたのペットってことでいいわよ」ドキドキ

恒一「まぁご飯だけ我慢して鳥用のを食べてくれればいいよ。人間の食べ物だと鳥の身体に合わないかもしれないから」

九官鳥「そ、そうね」ドキドキ

怜子「ただいまー」

恒一「あ、おかえりなさい。ご飯出来てますよ」

怜子「へへへ、いつもありがとうございます。お、赤沢さん大人しくしてるみたいだね」

九官鳥「はい。ペットですから。今日からお世話になります」

怜子「ペット……?まぁペットっちゃペットか。ふふ、どう?恒一くん、クラスメイトをペットにしたご感想は」

恒一「怜子さん、その言い方なんかいやらしいんですけど……」

九官鳥「そ、そうですよ。先生がそういう物言いはよろしくないかと……」ドキドキ

怜子「ふふふ、まぁ身体が鳥じゃあね。間違いを起こす事もないか」

恒一「冗談でもやめてくださいよ……」

九官鳥「ふ、ふふふ……///」アー

……
………
…………………

恒一「じゃあ、そろそろ僕は寝るよ」

九官鳥「恒一くん、意外と勉強時間少ないのね。それでよくあの成績維持できるわね」

恒一「ん、まぁ前の学校で終わった範囲だからね。ほとんど復習みたいなものだし」

九官鳥「そう。ところで私はどこで寝ればいいのかしら」

恒一「あ、そうか。鳥籠は?」

九官鳥「嫌よ。あそこ臭いのよ……」

恒一「じゃあそのへんで適当に寝ていいよ」

九官鳥「わかったわ。じゃ、恒一くんの机を借りさせてもらう事にするから」

恒一「うん。じゃあ、おやすみ」パチッ

九官鳥「……!」ギラリ

九官鳥(恒一くんの寝顔!寝顔を見れる!)アー

九官鳥(別にやましい気持ちからじゃないわ。これは、ええと、対策よ!そう、何かの対策!)バサッ

恒一「スヤスヤ……」

九官鳥(ふふふ、寝息もかっこいい……///ていうか寝つき早い///)

九官鳥(じ、じゃあ早速ご主人様の寝姿を拝見させてもらうわ……///)バサバサッ

九官鳥(……)

九官鳥(……!?)

九官鳥(み、見えない!)

九官鳥(鳥目だから何も見えないわ!)

九官鳥(もう!何なのよこの不便な身体は!)アー

翌朝

恒一「赤沢さん、朝だよ。学校行く準備して」

九官鳥「あ……朝……?」

恒一「あとこれ、餌ね」●

九官鳥「うん……」ヅンヅン

九官鳥(あれ?おいしい……)ヅンヅンヅンヅン

恒一「ふふふ、やっぱりその身体だとこっちのほうが口に合うみたいだね」

九官鳥「そ、そんなことないわよ」

恒一「じゃあ朝御飯も済んだし学校行くよ。早く準備して」

九官鳥「準備なんてないわよ……。服着る必要もないし髪もセットしなくていいし……」

恒一「それもそうか。じゃ、一緒に登校……って赤沢さん、何してんの!?」

九官鳥「え?」

恒一「何で僕の机にうんこしてるの!」

九官鳥「え?え?」ボタボタ

恒一「ああもう……白いのこびりついちゃうじゃん……」フキフキ

九官鳥「そ、そんな……恒一くん、私粗相をするつもりなんてなかったの!」バサバサ

恒一「はぁ……。鳥だから肛門から垂れ流しなのか……」

九官鳥「恒一くん……私……」アー

恒一「赤沢さん、トイレは鳥籠で頼むよ……」

九官鳥「ごめんなさい……。食事の後は鳥籠に入ります……」

教室

九官鳥「……というわけで、私が赤沢泉美よ。昨日は心配かけてごめんなさい。対策の事も今まで通り私に任せて」

綾野「な……な……」パクパク

小椋「やだ何これ泉美かわいい!榊原くん、私これ欲しいんだけど!」キャー

恒一「いや、一応赤沢さんだから欲しいとか言われても……」

杉浦「泉美……良かった……。心が壊れたわけじゃなかったのね……」

九官鳥「ええ、大丈夫よ。ごめんね多佳子。もう心配しなくていいから」バサバサ

中尾「なんてこった……俺は鳥に告白するしかないのか……」

綾野「ご、ごめん……私ちょっと鳥苦手なんだよね……。あの目とクチバシが……」

和久井「ウッ!胸がクルシイ!」バターン

風見「大変だ!和久井が鳥アレルギーで倒れたぞ!」

ナニー サイヤクダー キャー ワー フェアー

九官鳥「みんな、うろたえないで!」ビシッ

九官鳥「中尾、すぐに和久井くんを保健室へ!」バサッ

中尾「は、はい」マカセロー

勅使河原「はは……さすがだな……」

綾野「鳥になってもリーダーシップは相変わらずだね……」

九官鳥「クラスの事は私が責任を持つから、何かあったら今まで通り私に言いなさい!」ビシッ

小椋「ああん!この鳥すっごい偉そう!かわいいっ!欲しい!飼いたい!」

高林「くっ!鳥がクラスを支配するなんてフェアじゃないよ……!」

九官鳥「さあ、そろそろホームルーム始まるわよ。みんな席につきましょう」バサッ

一同「は、はい」

ガラッ

三神「み、みんな!大変よ!大変なことになったわ!」

勅使河原「な、なんすか先生……。もう既に色々と大変なんだけど……」

三神「そ、それが……その……さっきれ、れれれ連絡があって……!」

九官鳥「落ち着いて下さい先生。どうしたんですか?」

三神「病院から連絡があって……!」

三神「赤沢さんが脱走したらしいの!!」

綾野「泉美ってこの鳥ですよね?ここにいますけど」

三神「そうじゃなくて、鳥よ!中身が鳥のほうの赤沢さんが脱走したらしいの!!」

九官鳥「な、なんですってええええええええええええ!?」

勅使河原「おいおい、それってやばくねえか?中身が鳥で身体が赤沢ってことは……」

風見「奇声を発しながら夜見山市内を徘徊しているってことになるね……」

綾野「昨日みたいにところかまわずウンコしてるかも……」

九官鳥「ちょ、ちょっと!それじゃ私まるっきりプッツン少女じゃない!」

三神「今千曳先生と病院の人達が探し回ってるわ!異常行動もだけど、それよりもし赤沢さんの身体が車にひかれでもしたら……!」

恒一「そ、それは大変ですね…!僕達も探します!」

九官鳥「わ、私は上空から探すわ!」アー

二時間後

勅使河原「ダメだ!見つかんねえ!」ハァハァ

望月「こっちもいなかったよ……」ゼーハー

恒一「赤沢さん!そっちからは何か見える!?」

九官鳥「ダメだわ!空からも私の姿は見当たらない!」

勅使河原「クソッ!鳥沢のやつどこ行きやがったんだ!」

見崎「ひとつ、心当たりがあるわ……」

恒一「見崎?」

見崎「ついて来て。きっと鳥沢さんはあそこにいるはず」

三神家

赤沢「アー!レーチャン!オハヨウ!オハヨウ!」

見崎「やっぱりいたわね」

恒一「なるほど……。動物の帰巣本能で自分の家に帰ってたのか……」

勅使河原「よ、良かった……。マジで一時はどうなることかと……」

赤沢「アー!アー!」バタバタ

九官鳥「くっ!私の身体で変な声出してんじゃないわよ……」

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!」

……
………
…………………

千曳「なるほど……。自分の家に、か」

恒一「どうしたらいいんでしょうか……。病院に入れてもまた脱走して家に戻るんじゃ……」

九官鳥「じ、冗談じゃないわ……!あんな気狂いな振る舞いでそこらじゅう歩かれたんじゃ身体が戻っても私もう夜見山で生活できないじゃない!」

千曳「ううむ……」

三神「……中身が鳥のほうの赤沢さんを……私の家に置いたほうが良かったのかもしれませんね……」

千曳「……そうかもしれませんね。三神先生の家なら、鳥沢さんも留まったままで出歩く事もなさそうですし」

三神「申し訳ありません。私の判断ミスです……。最初から赤沢さんのご両親に事態を説明して身体が鳥のほうの鳥沢さんをご自宅に帰すべきでした……」

千曳「三神先生がご自分を責めることはありませんよ。この状況じゃ事前に正しい判断など出来るはずがない……」

三神「とりあえず、赤沢さんの身体は私の家に置きましょう。赤沢さんのご家族には私がきちんと説明します。赤沢さん、いいわね?」

九官鳥「はい……。父と母がわかってくれるといいですが……」

赤沢家

三神「じゃあ、インターフォン押すわよ」

九官鳥「はい」

ピーンポーン

『はい。どちらさまでしょうか』

三神「わたくし、夜見山北中学の教員の三神という者ですが、泉美さんのご両親はご在宅でしょうか」

『あ……三神先生。私が母です。いまそちらに伺います……!』

ガチャ

三神「赤沢さん、突然の訪問で申し訳ございません。実は泉美さんに事でお話が……」

赤ママ「三神先生!泉美は……!泉美は見つかったんでしょうか!?」ガシッ

三神「お、お母様、落ち着いて下さい。泉美さんは無事保護しましたから……」
三神(やべ、赤沢家に連絡するの忘れてた)

赤ママ「ううう……あんなにしっかりした子だったのに……どうしてこんな事に……」ポロポロ

三神「赤沢さん……実は泉美さんなんですけど……」

九官鳥「先生、私が話します……」

三神「え?で、でも……」

赤ママ「……!」ハッ

赤ママ「泉……美……?」

赤ママ「泉美!?泉美でしょ!?」

九官鳥「……!なんでわかるの……?」

赤ママ「わかるよぉ!!泉美のお母さんだもん!」ガシッ

九官鳥「お……お母さん……」

赤ママ「おかえり!おかえり泉美ィィィ!!」ポロポロ

三神(なにこれ)

……
…………
………………

三神「というわけですので、泉美さんの身体が元に戻るまでは私の家で保護させていただく形が一番被害が少ないかと……。今こちらにおられる泉美さんのほうはこのままご自宅で生活していただくということで」

赤ママ「はい……。先生にはご迷惑おかけしますが……」

三神「いえ、こちらこそ昨日の段階で説明するべきだったところをこのような形になってしまいまして申し訳ございません……」

赤ママ「それで……泉美は元に戻れるんでしょうか……」

三神「わたくしの口からは何とも申し上げる事が出来ません……。出来る限りの事はさせていただくつもりですが……」

赤ママ「そうですか……。でも、最悪身体が戻らなくても泉美は泉美ですよね……?」

三神「はい。それはもちろんです。身体がどうなろうとそれで泉美さん自身の価値が無くなるということは絶対にありません。わたくしども学校側としましても今まで通り一人の生徒としてきちんと対応して参りますので」

赤ママ「ありがとうございます……。三神先生が担任で本当に良かったです……」

三神「いえ、そんな……。お母様、どうかお気を落とさずに……」

ボーン、ボーン……

赤ママ「あ、もうこんな時間でしたか」

赤ママ「三神先生、お時間は大丈夫でしょうか?」

三神「そうですね、それでは私はそろそろ失礼させていただきますね……」

赤ママ「はい。三神先生、何から何まで本当にありがとうございます」

赤ママ「さ、泉美ちゃん。今日は泉美ちゃんのためにハワイクォナイクスツォラファンスィィィーのコーフィーを用意するからね」

九官鳥「わぁいハワイコナエクストラファンシー!私ハワイコナエクストラファンシー大好き!」

三神「あ、あの……一応身体は鳥ですのでコーヒーとかそういうのはちょっと……」

赤ママ「そんな!じゃあ夕飯のビフテキは……」

三神「食事も鳥の餌をお与えになられたほうがよろしいかと……」

赤ママ「コーフィーもビフテキもダメなんて……なんて可哀想な泉美ちゃん……!」

三神(なんだこの親)

三神家

赤沢「アー!レーチャン!ゲンキダシテ!」

恒一「……」

赤沢「オハヨウ!オハヨウ!」

恒一「……」

赤沢「アー!アー!」バタバタ

恒一「どうするんだよこれ……。どう世話すればいいんだ……」

恒一「鳥籠には入らないし……お爺ちゃんとお婆ちゃんには手に負えないだろうし……」

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!アァーーー!」

恒一「しかも身体が赤沢さんだから変に扱うわけにもいかないよな……」

赤沢「ギャア!ギャア!」

恒一「あ、れ、レーチャン?ご飯だよ……?」コトッ

赤沢「アー!」ヅンヅン ベチャベチャ

赤沢「アー!」ゲップ

恒一「くっ……!さすが鳥……!見事なまでに食い散らかしてくれるな……」フキフキ

恒一「これから毎日食事のたびに僕が掃除するのか……」ハァ

赤沢「ア、アー……」ブリブリ

恒一「うわっ!赤沢さん……じゃなくてレーチャン、ここでウンコしちゃダメだってば!」

恒一「くそっ!どっちにしろ赤沢さんのウンコを片付ける事になるのか……」ウゥ…

赤沢「ゲンキダシテ!」ベチャベチャ

恒一「ちょ……バカ!暴れるなって!ああもう!身体にウンコついちゃってるじゃないか」

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!」

恒一「ドーシテじゃないよもう……」

恒一「……って待てよ?身体が人間ってことは鳥みたいに不衛生なままじゃダメなんじゃ……」

赤沢「アー!」プーン

恒一「汚いままだとあっちの赤沢さんに怒られそうだしな……」

恒一「やっぱりお風呂に入れないとダメか……」

恒一「とはいえ、さすがに僕が入れるわけにもいかないし、怜子さん早く帰ってこないかな……」

~三時間後~

赤沢「ZZZ……」ブピッブピピ

恒一「遅いな怜子さん……。何してるんだよまったく……」ピポパ プルルルル プルルルル

怜子『もしもし恒一くん?どうしたの?』

恒一「どうしたじゃないですよ。もう夜の1時ですよ。何やってるんですか。こっちは大変なんですよ」

怜子『あぁ、ごめんごめん。今ね、千曳先生と一緒に他の先生の家に伺ってるのよ。赤沢さんが普通の学校生活を送れるように色々と話つけなきゃいけなくて。
  そっちはどう?赤沢さんの世話できてる?』

恒一「今は寝てますけど身体中ウンコだらけで……。早く帰ってきてくださいよ。僕がお風呂に入れるわけにもいかないですし」

怜子『……って言われてもあと四件はあるから今日はこのまま帰らないで明日もそのまま学校に出勤するしかないんだけど』

恒一「ええ?」

怜子『まぁ身体は赤沢さんでも中身はただの鳥なんだし、気にする事ないわよ。ちゃちゃっと洗ってあげなさい』

恒一「ちゃちゃっとって……」

怜子『あ、ごめん。もう次の先生の家に着くから切るね。じゃ』ピッ

ツー、ツー、ツー

恒一「……」

恒一「う、嘘だろ……。僕が身体洗わなきゃいけないのか……」

赤沢「グースカ」ブリブリ

恒一「いや、1日くらい洗わなくても、明日怜子さんに洗ってもらえば……」

赤沢「グースカピー」ブピョ

恒一「……ダメだ、臭すぎる……。やっぱり洗うしかないのか……」

恒一「はぁ……。何でこんな事に……」

恒一「ほら、レーチャン起きて。身体洗うよ」

赤沢「!」パチッ

赤沢「アー!アー!」バタバタ

恒一「ていうかこれ、お風呂場に連れて行くのも無理なんじゃ……」

赤沢家

赤ママ「じゃあ、泉美ちゃん。おやすみ」

九官鳥「うん、おやすみなさい」

パチッ

九官鳥(……)

九官鳥(はぁ……この身体だとさすがにベッドも広すぎるわ……)

九官鳥(……なんだか自分の家なのに自分の家じゃないみたい……)

九官鳥(……)

九官鳥(家に戻れたのは嬉しいけど……もう少し恒一くんの家で生活してみたかったな……)

九官鳥(今は私の身体があっちの家にあるのよね……。恒一くんが……私の身体と生活を……)モンモン

九官鳥(ハァ……入れ替わりたい……)

九官鳥(そう言えばあの時も同じようなこと思ってたわね)

~数日前~

恒一くん「赤沢さんって演劇部なんだよね。どんな役やるの?やっぱり赤沢さんなら女王様とかママハハとか?」

私「どういう意味よ……。お芝居の幅を広げるために色んな役をやるに決まってるじゃない」

恒一くん「色々?」

私「甲斐甲斐しい妹役、とかね」

恒一くん「甲斐甲斐しい赤沢さんってちょっと想像できないなぁ。赤沢さんってやっぱり強そうなイメージだから」

私「ふうん……ちょっとやってみせてあげようか?」

恒一くん「うん」

私『お姉ちゃ~ん?早く起きないと遅刻しちゃうよ~』

恒一くん「す、凄い!今の一言だけで一気に『バンドのギターボーカルをやってるグータラな姉を慕うショートポニーの似合うよく出来た妹』がイメージできちゃったよ!声色も普段と全然違うし赤沢さん凄いよ!」

私「演劇部のエースだからね、これくらいは朝飯前よ」

私(恒一くんに褒められた)

恒一くん「もしかして声帯模写もできるの?」

私「多少は、ね」

恒一くん「やってみてくれる?」

私『シュッシュッポッポシュッシュッポッポ……プァーーーーーーー!!』

恒一「……!す、凄い!西部開拓時代のアメリカの荒野を走る蒸気機関とそれに乗り仕事を求める屈強な労働者達の雄々しい肉体、山間に沈む夕陽とサボテンの陰影、コヨーテの鳴き声までもが今ありありと目に浮かんだよ!YES!ゴールドラッシュ!」

私(また褒められた)

私『ヴー…ン!ヴー…ン!!ギュイイイイオオオオガガガガガガリガリ』

恒一「うおっ…!殺人鬼が今宵もチェーンソーを唸らせる!バッサバッサと人体を断つ!泣き叫ぶ女子供!飛び散る肉片!削り落ちる血肉!しかし容赦はしない!そう、今日は13日の金曜日!凄い!本当に凄いよ赤沢さん!!」

私(また褒められた)

私「……コホン、とまぁ、こんな感じかしらね」フフフ

恒一「凄いなぁ……。じゃあ次は九官鳥のマネしてみてくれる?」

私「え?きゅ……九官鳥?」

恒一くん「うん。九官鳥。僕の家で飼ってるんだ。やってみせて」ワクワク

私(九官鳥のマネ……?マネも何も九官鳥自体が人のマネをする鳥でしょ……?)

私(つまり『人のマネをする九官鳥のマネ』をするってこと……?む、無理よ……。そんなの今の私にはとても……)

恒一くん「赤沢さん?」

私(うう……もっと恒一くんに褒められたい……。でも九官鳥のマネなんて出来ない……)

私「ご、ごめんなさい……。九官鳥は……レパートリーにないの……」

恒一くん「……そっか」ガックシ

私(う……ガッカリされた)

……夜……

私(九官鳥になりたい)

私(九官鳥になりたい九官鳥になりたい九官鳥になりたい九官鳥になりたい
  恒一くんの家の九官鳥になりたい九官鳥になって恒一くんに褒められたい
  九官鳥九官鳥九官鳥私は九官鳥……)

回想終わり

九官鳥(今思えばあれが原因だったのかしら……)

九官鳥(夜見山岬がいるものとして扱われて本当にそうなってしまったように、自分を恒一くんの家の九官鳥と思い込もうとしたら……)

九官鳥(……)

九官鳥(嫌……)

九官鳥(九官鳥なんて嫌よ……)

九官鳥(私は九官鳥なんかじゃない……。私は赤沢泉美……)

九官鳥(何の役でもない、赤沢泉美よ……)

九官鳥(私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は……)

三神家 風呂場

赤沢「ギャア!ギャア!オハヨウ!オハヨウ!」

恒一「こ、こら!暴れるなって!身体洗えないだろ!」ゴシゴシ

赤沢「ギャアアアア!アー!アー!」バタバタ

恒一「クッ……!赤沢さんの裸で恥ずかしがるとかもはやそういう問題じゃないぞこれは……。この鳥人間、扱いが難しすぎる……」ゴシゴシ

赤沢「アー!レーチャン!レーチャン!ギャア!」

恒一「よし、あとは股間か……。赤沢さんごめん……。これも赤沢さんのためなんだ……」

赤沢「ギャ!アギャア!ドーシテ!ドーシテ!」バタバタ

恒一「ごめん!本当にごめん赤沢さん!」グイッ

赤沢「ドーシテ!ドーシテ!レーチャンドーシテ!」バタバタ

赤沢「ギャア!アー!ドーシテ!ドー……」

恒一「ごめん……ごめんよ赤沢さん……」ゴシゴシ

赤沢「ひゃぁっ!?///」

恒一「ん?」ゴシゴシ

赤沢「あ、ちょっ……あ……///」

恒一「何だ?急に大人しくなったな……。まぁいいや、今の内に洗っちゃおう」ゴシゴシ

赤沢「やっ」「あっ///」「ひぁっ///」

赤沢「ど、どうして?なんでこんな……っ///」

恒一「はいはい、ドーシテだね」ゴシゴシ

赤沢「ちょっ……ま、待って!恒一くんストップ!私よ!わたっ……あ、ふあああっ///」

恒一「へ?」

赤沢「う……あ……ど、どうしてこんな事してるのよ恒一くん……」ヘナヘナ

恒一「え?え?あ、赤沢……さん……?」

……
…………
………………

赤沢「ふうん、じゃあ本当にいやらしい気持ちでああいう事してたわけじゃなかったのね?」

恒一「本当だよ……。信じて……。元々怜子さんに洗ってもらうつもりだったし……」

赤沢「どうかしらね。何でよりによってあんな場所を洗ってたのかしら。不自然じゃない」

恒一「それは赤沢さんが糞尿垂れ流してたから……あそこが汚くなってるんじゃないかと思って……」

赤沢「垂れ流してないわよ!垂れ流してたのはあの鳥じゃない!それに汚くなんてないわよ!」

恒一「わ、わかってるよ……」

赤沢「はぁ……いいわ。特別に信じてあげる。日頃の行いが良くて救われたわね。今までのあなたに感謝しなさい。勅使河原だったら警察に突き出してるところよ」

恒一「うん……助かるよ……。……ところで、何で急に戻れたんだろう?」

赤沢「え?さ、さぁ?鳥のほうが自分の身体が恋しくなったんじゃない?」

恒一「??」

恒一「まぁ、でもこれで解決……なのかな?」

赤沢「そうね。もうあの臭い身体ともお別れだし、今日からは普通の生活に戻れるわ」

恒一「言っておくけど、もし僕が洗ってなかったら戻った瞬間赤沢さんの身体は糞尿まみれだったんだからね」

赤沢「……わかったわよ。ありがとう、恒一くん」

恒一「はぁ……安心したよ。この先ずっと鳥人間の世話をしなきゃいけなくなったらどうしようかと思ってた。どうする?もう遅いけど家まで送っていこうか?」

赤沢「え?あっ……(しまった、鳥のフリしてれば……)」

赤沢「ぎゃ、ぎゃあ!ぎゃあ!おはよう!」バタバタ

恒一「はい……?」

赤沢「……」

恒一「……」

赤沢「いや……ごめんなさい……。帰るわ……。夜道だし送ってもらえる……?」

恒一「う、うん」

後日
三神家

勅使河原「しっかし、あの時の赤沢を写真に撮っておけばよかったな。あんな赤沢もう一生見れないぜ」

望月「ちょっと勅使河原くん……」

勅使河原「なんつってな。冗談冗談」

見崎「結局あれは何だったのかしら」

恒一「さぁ……。僕にもわからないままだよ」

九官鳥「レーチャン!ゲンキダシテ!アー!」

勅使河原「まぁ口うるささじゃ赤沢もこの鳥も実際大して変わんねえなー。赤沢のほうがおっかねえけどさ」

恒一「あはは……」

九官鳥「アトハコカン!アカザワサンゴメン!アカザワサンゴメン!」

恒一「!?」

勅使河原望月見崎「え」

勅使河原「お、おい……今のって……」

望月「さ、榊原くん……赤沢さんの身体に何を……」

恒一「ご、誤解だよ!鳥人間の時にあまりにも不衛生だったから仕方なく風呂に入れて洗ってあげただけで……!」

見崎「!!!!」

勅使河原「洗ったって……えええええ!?お前赤沢の身体洗ったのかよ!?」

恒一「だからそれは仕方なく……!」

勅使河原「うっわーマジかよ、役得にも程があるだろ……。で、どうだった?赤沢の身体は?」

恒一「教えるわけないだろ……。ていうか見崎もいるんだからそういう下品な話はやめてくれよ。……ごめん見崎、こういう話嫌だよね?」

見崎「……アー!」バタバタッ

恒一「え…」

九官鳥「……榊原くん、鳥籠開けてくれない?」

恒一勅使河原望月「」


HAPPY☆END

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