和久井留美「デイドリーム」 (81)



モバマスのお姉さん達のSSです。

前回

片桐早苗「署までおいでよ」




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—21:00PM 事務所会議室にて—



レナ「……」

真奈美「……」

美優「……」

麻理菜「……」

礼「……」

楓「……」ウツラウツラ

志乃「はふ……」フワァ〜…

礼子「……」イライライライラ…



ちひろ「あ、あのお〜…… 皆さんずっと黙ったままですが、誰か立候補してくれる人は
    いませんか〜……?」オロオロ

P(また徹夜になるかもしれないなこれは……)ハア





———



—同時刻・都内居酒屋にて—



早苗「夏美ちゃ〜ん、こっちこっち♪」ブンブン

夏美「遅くなってすみませ〜ん。あれ?早苗さんだけですか?」パタパタ

瑞樹「私もいるわよ」ヒョイ

のあ「……」ヒョコ

夏美「珍しい組み合わせですね。どうしたんですか今日は?」スミマセ〜ンナマヒトツ




早苗「事務所にモデルの依頼が来たらしくてさ。それで身長165センチ以上、25歳以上の
   アイドルは全員召集されてミーティングしてるんだって」グビ

夏美(25歳160)「え?それって確か6時のやつですよね?まだ終わってないんですか?」

瑞樹(28歳159)「一応終わったらおいでって美優ちゃんにも言ってるけど、多分無理ね。
       ウェディングドレスのモデルだし」グビ

夏美「あ〜、それってあれですか?婚期が遅れるみたいなジンクスみたいな。そんなの
   気にしてたら仕事なんて出来ませんよね」ケラケラ




早苗(28歳152)「それが笑い事じゃないのよ。本当にヤバイんだってその仕事」マジマジ

夏美「え?どういう事ですか?」キョトン

瑞樹「『A社の新作ドレス発表のモデル』って言えば分かるかしら?」ギラリ

夏美「うそ!? あの『呪われたモデル』ですか!? 何で私達アイドルに!? 」ギョッ



のあ(24歳168)「10年の縁切り…… 強力な呪いね…… 」




瑞樹「モデルが全員嫌がってやる人がいないから、こっちに来たみたい。A社は世界的な
   有名ブランドだし大きな仕事なんだけど、選ばれたモデルはその後10年間結婚
   出来ないという百発百中のジンクスがあるとねえ」

早苗「10年婚期が遅れるなんて聞いたら誰だって嫌よね。しかもA社も落ち着いた
   雰囲気の女性が良いって事で25歳以上ってエグい条件出すし、無理無理」グビ







夏美「うわ〜、そんなの断っちゃえばいいのに。でもウチの事務所の社長だったら絶対
   やりますよね。選ばれた真奈美達はお気の毒ということで、こっちはこっちで
   楽しくやりましょうか!」カンパイ!

早苗「そうね。それにウチには幸運の女神の茄子ちゃんもいるんだし、あの子に拝んで
   おけばジンクスなんて吹っ飛ぶでしょう。飲も飲も!」カンパ〜イ!

瑞樹「選ばれた子には一杯くらいおごってあげましょう。あ、でももし四天王だったら
   ヤケ酒になってまた潰されるかも……」カンパイ

のあ「ご愁傷様……」カンパイ





***



真奈美(25歳172)「(今、夏美の笑い声が聞こえた気がした)」ピク

レナ(27歳167)「(今頃早苗さん達と楽しくやってるでしょうね。いいなあ……)」ヒソヒソ

麻理菜(26歳166)「(瞳子と留美はどうしたのよ?あの子達も該当者でしょ?)」ヒソヒソ

美優(26歳165)「(瞳子さんはLiveバトルのレッスンが忙しくて、留美さんは大事な
        オーディションがあって今日は来られないそうです……)」ヒソヒソ




ちひろ「レナさん?何か意見がありますか?」

レナ「い、いえいえ!全然ありません!」アタフタ

レナ(何で私にふるのよ!真奈美達もしゃべってたでしょうが!鬼!悪魔!ちひろ!)キッ

ちひろ(聞こえてますよ?)ニヤリ

レナ(直接脳内に!? あんた一体何者!? )ビクッ




礼子(31歳167)「楓、志乃。寝たらあんた達のどっちかで決定だからね」ギロ

志乃(31歳167)「やあねえ礼子。何をそんなにカリカリしているの?」クスクス

礼(27歳171)「もう埒があかないし、いっその事あみだくじにしましょうよ」

楓(25歳171)「それは酷です礼さん。あみだくじがなみだくじになります」

礼子「つまらない事言ってるんじゃないわよ。いい加減帰りたいんだけど」イライラ




P「み、皆さん…… 何度も言ってますけど例の呪いはあくまで噂ですからね?何の根拠も
 ない話だし、そんなに深刻にならなくても……」オソルオソル

礼子「噂で過去に選ばれた10人のモデル全員が10年間結婚出来なかったのかしら」ギロ

P「ひっ……」ビクッ

楓「呪いにかかってのろい結婚……ふふ」

志乃「えっと、楓ちゃんが35で、私と礼子がよんじゅ…」礼子「黙りなさい志乃」

礼(礼子さんも志乃さんもまだ諦めてなかったのね)




レナ(隣も難航してるわね。礼子さんと志乃さんは外してもいいと思うけど……)チラ

礼子「余計なお世話よレナ」ギロ

レナ「す、すみません…… (私ってそんなに分かりやすいの?)」ビクッ





—さらに2時間が経過して—



志乃「のどが渇いたわぁ。ワイン空けてもい〜い?」ガサゴソ

礼子「あんたがこの仕事やるならいいわよ。いい加減腹立って来たわ。そもそも誰が
   得するのよこの仕事。A社ごと潰してやろうかしら……」ブツブツ

P「お、落ち着いてください礼子さん。どうか穏便に……」オロオロ




礼「(まずいわね。そろそろキングが限界だわ。レナ、何とかしなさいよ)」ヒソヒソ

レナ「(無茶言わないでよ。だったらあんたがやりなさいよ。タッパあるんだし、あんたの
    方がモデルに向いてるでしょうが)」ヒソヒソ

真奈美「(お前礼さんと仲が良かったのか。意外だな)」ヒソヒソ

レナ「(この事務所で唯一の同じ歳だし、色々話が合うのよ)」ヒソヒソ




礼「(なぁに真奈美、もしかして妬いてるの?安心しなさい、あんたの大事なパートナーを
   盗ったりしないから)」ニヤニヤ

真奈美「(勘違いしないでくれ。欲しいならいつでもくれてやるさ)」ムッ

レナ「(私は誰のものでもないわよ。女の三角関係なんてそれこそ誰が得するのよ)」

ちひろ「レナさん?何か意見がありますか?」

レナ「だからどうして私ばっかり当てるのよ!礼子さん達だって喋ってるじゃない!」クワッ





志乃「そういえばレナちゃん。前にレナちゃんの温泉撮影の仕事、代わりに私がやって
   あげたわよねえ?」ポツリ



レナ「え?ど、どうしてそんな話を急に……?」ビクッ

志乃「いいえ、あの時のおかえしをまだしてもらってないな〜って思っただけ……」ニッコリ

レナ「あ、あれは……!! だってあの時志乃さん寝ちゃってたし……」アセアセ




ちひろ「急なモデルの変更で私も苦労しましたよ。スタッフさんもカンカンだったし、
    あの時は本当に大変でした……」ホロリ

レナ「ウソつくんじゃないわよ!私次の日謝りに行ったけど、スタッフさん達全然怒って
   なかったじゃない!エナドリだってちゃんと1ダース買ったでしょ!」

ちひろ「お金を払えばそれで解決するんですか!! あなたそれでもプロですか!! 」バンッ!!

レナ「あんただけには言われたくないわよ!! 」バンッ!!

楓「でも借りは返さないと。志乃さんはレナさんに今返してほしーのです」ジロ

レナ「うぐ……(マ、マズイ……このままだと私に決まってしまう……!! )」




レナ「ま、麻理菜!あんたがやりなさいよ!この中であんたが一番後輩なんだし、先輩の
   言う事は聞きなさい!」ビシッ!

麻理菜「私この前みんな嫌がった体操服とブルマ着たでしょ!この歳であの恰好するのが
    どれだけキツかったか!実家の親から『辛いなら帰って来てもいいぞ』って電話
    来たんだからね!」バンッ!

レナ「ノリノリだったくせに…… じゃあ美優さん!美優さんこの前お嫁さんにしたい女性
   1位に選ばれたじゃないですか!美優さんなら大丈夫ですって!」アセアセ




美優「え!? こ、困ります…… 私だって30歳までには結婚したいし……」オロオロ

礼子「あら?それは私と志乃に対する宣戦布告かしら」ゴゴゴゴゴゴゴ…

美優「ひっ……!? そ、そんなつもりで言ったんじゃ……」ビクッ

礼「落ち着いて礼子さん。礼子さんも志乃さんもまだまだいけるから」ドウドウ





P「れ、冷静になりましょう皆さん。この仕事はただのモデルのお仕事ですよ?皆さん
  全員モデルの経験がおありですし、いつもの調子でやって戴ければ……」



全員「「「「「「「「ただのモデルぅ!? 」」」」」」」」ギロッ!!



P「す、すみません…… 失言でした……」シオシオシオ…

ちひろ「プロデューサーさんは黙っていてください。下手に刺激すると刺されますよ」




真奈美「一度整理しよう。今は志乃さんがレナに温泉撮影の時のお返しをして欲しいと
    言ってるんだ。つまりレナが今ここで志乃さんに借りを返すか、この仕事を
    引き受ければいい。そうだな志乃さん?」

志乃「ええそうね。さすが真奈美ちゃん、とっても分かりやすいわぁ……」ゴクゴク

レナ「ちょっと!? どっちにしても私がやる流れになるじゃない!! あんた私のパートナー
   じゃなかったの!? 」クワッ




真奈美「知らん。私は間違った事は何も言ってないはずだ。それに逆に考えてみろレナ。
    『10年間結婚出来ない』という事は、つまり『10年後には必ず結婚が出来る』と
    いう事だ。そう考えれば悪い話でも……」

レナ「ふざけんじゃないわよ!! 志乃さんもまだ飲んじゃダメ!! 話が終わっちゃう!! 」アタフタ

麻理菜「もう決定よレナさん。ここはギャンブラーらしく潔く諦めましょう」ポン

美優「だ、大丈夫ですよレナさん…… いざとなったら茄子ちゃんにお祈りして……」オロオロ




礼「あんたの理想の男ってギャンブルに強い人でしょ?そんな曖昧な条件じゃいつまで
  経っても結婚出来ないわよ。だったら10年後でも保証がついてる方がいいって」ニコ

楓「おめでとうございますレナさん。10年後でも式には呼んで下さいね」ニコ

礼子「往生際が悪いわよレナ。さっさと決めなさい。あんたが一言やると言えば、この
   くだらないミーティングは終わるの。これ以上長引くと美容にも悪いわ」ギロリ



レナ「ぐぬぬ…… もはやこれまでか……」ギリリ





留美(26歳168)「事務所に明かりが点いてると思えば…… まだやってたの?」ガチャ



P「留美さん!? 今日はオーディションだったんじゃ……」ギョッ

留美「二次で落ちたわ。報告なら明日でも良かったんだけど、ミーティングがあったのを
   思い出して寄ったの。遅くなったけど私も参加させてもらっていいかしら?」ストン

ちひろ「ど、どうぞ。これが資料です……」サッ




留美「ありがと。ふ〜ん、あのA社の新作ドレスのモデルねえ…… だからこんなに
   長引いてるのね。これを私達にさせるなんて、随分悪趣味じゃない?」ジロ

P「す、すみません…… 俺も反対したんですけど、でも社長がどうしてもウチでやるって
  聞いてくれなくて……」オロオロ

留美「まぁあなたに文句を言っても仕方ないわね。確かに大口の仕事だし、引き受ければ
   モデル業界からのリターンも大きいし……」ペラ、ペラ…



レナ(留美……?)




留美「ねぇP君。この腰のリボンなんだけど、一回り小さいのに変更出来ないかしら?
   もうちょっとスリムなシルエットにして、青いアクセントを付けて……」テキパキ

P「そ、それは大丈夫です。ここに載ってるのはあくまで見本ですので、細かい装飾なら
  あちらと相談してあまり大きな変更がなければ……」アセアセ





留美「わかったわ。じゃあ私がやるわこの仕事。みんなもいいわね?」サラリ



全員「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」ギョッ



ちひろ「い、いいんですか留美さん、そんな簡単に決めちゃって……」オソルオソル

留美「いいわよ別に。確かこの日はレッスンだけだったし。じゃあP君、今日は遅いから
   詳しい話は明日にしてね。お疲れ様」カツカツカツ……バタン





 シーン



レナ「た、助かったあ……」ヘナヘナ

真奈美「レナ…… お前……」ジト

美優「留美さん…… ただでさえ結婚に興味なさそうなのに、このままだと……」ホロリ

レナ「な、なによ…… 私が悪いっていうの……?」オロオロ

P「とりあえず今日は解散しましょうか。お疲れ様でした皆さん—————」





***



留美(終電間に合うかしら。タクシー拾って帰ろうかな……)カツカツ

真奈美「留美さん」ブロロン

留美「あら真奈美。何か用かしら?」

真奈美「家まで送ろう。この時間だとタクシーも混んでるぞ」




留美「ありがたいけど私のマンション○△町よ?ここからだと片道1時間以上かかるけど」

真奈美「そんなに遠くから通っていたのか。ならば今日は私のマンションに泊まらないか?
    着替えなら貸すぞ」ガチャ

留美「別に気を遣わなくていいわよ。例の呪いの事なら私は全然気にしてないし」サラリ




真奈美「そんなつもりはないと言えば嘘になるが、たまにはいいだろう。留美さんとは
    一度ゆっくり話をしたいと思っていたんだ」ニヤリ

留美「あなたも変わってるわね。私なんかと話しても面白くないわよ」バタン

真奈美「30分ほどで到着する。寝ててくれても構わないぞ」ブロロン





—真奈美のマンション—



留美「タワーマンションの40階って……すごい所に住んでるのねあなた……」ポカーン

真奈美「それほどでもないさ。ん?明かりがついているな。まだ起きていたのか」ガチャ

音葉「おかえりなさい真奈美さん…お客様ですか…?」パタパタ

真奈美「ただいま音葉。先に寝ていても良かったのに」




留美「この子は?」

真奈美「紹介しよう。梅木音葉だ。私が個人的に親交のある演奏家の娘さんで、先週
    アイドルを目指して上京して来たので、一時的に私が預かっている」

音葉「梅木音葉です…よろしくお願いします…」ペコリ

留美「真奈美の同僚の和久井留美よ。あなたもうちのアイドルになるのかしら?」

音葉「明後日に面接を受ける予定です…。がんばります…」ニコ

真奈美「もう少しハキハキ喋ってくれると言う事は無いのだが、おそらく大丈夫だろう。
    音楽の才能は十分あるし、のあよりはコミュニケーションが取れるしな」スタスタ




留美「不思議な雰囲気のある子ね。これからよろしくね」

真奈美「ほう、流石留美さんは鋭いな。音葉は少々特殊な力を持っているんだ。見た目に
    違わず妖精みたいな子だぞ」ニヤリ

音葉「妖精だなんて…留美さんもどうぞ…」モジモジ

留美「?」





———



音葉「どうぞ…コーヒーです…」コト、コト

留美「ありがとう。いただくわ」

真奈美「お前はもう休んでいいぞ。夜も遅いし休息はしっかり取れ」

音葉「わかりました。それではお先に失礼します…。留美さんもごゆっくり…」ペコリ





 スタスタスタ…バタン



留美「噂には聞いていたけど、本当に面倒見が良いのねあなた。千秋の為にも一肌脱いだ
   そうじゃない。それで私の事も放っておけなかったのかしら?」フフッ

真奈美「そうでもないさ。ただ留美さんはオフの日も休まずにオーディションを受けに
    行ってるみたいだし、いつか体を壊してしまうのではないかと心配していたんだ」

留美「大丈夫よ。休みを貰ってもどう過ごしていいのかよく分からなくてね。それで自分
   の仕事の幅を広げようと思って、色々な役のオーディションを受けているのよ。
   ケーキ屋とか花屋の役とか、結果はあまり良くないんだけどね」




真奈美「今の仕事に不満があるのか?留美さんはドラマのエキストラやモデルの仕事が
    順調じゃないか。この前の秘書役も好評だったぞ」

留美「元秘書の私が秘書役が出来て当然じゃない。モデルの仕事もフォーマルなスーツか
   パンツルックばかりだし、そんなの夢が無いわ。私達はファンに夢を見せるのが
   仕事でしょう?だったら私も夢のある仕事をしないと」

真奈美「それでウェディングドレスのモデルを引き受けたのか。確かに結婚は女の夢だと
    は思うが、それだけの理由で今回のモデルを引き受けて本当に良いのか?根拠の
    ない噂ではあるが、統計上のリスクは確かに存在するし……」




留美「構わないわ。ウェディングドレスなんて一生着る機会が無いと思っていたし、例の
   呪いで結婚出来なくても花嫁役になれたらそれで満足よ。私みたいな可愛気の無い
   仕事女なんて嫁の貰い手もないでしょうしね」フフッ



真奈美(留美さんは女性として十分魅力的だし、もっと自信を持っても良いと思うが……)






 カタン



留美「何の音かしら?」ピク

真奈美「起きていたのか音葉。そこで聞いているのだろう?」クルッ

音葉「すみません…盗み聞きをするつもりは無かったのですが……」ガチャ

留美「ごめんなさい。うるさくしてしまったかしら」





音葉「いえ…悲しい旋律が視えたので気になってしまって…。凛として強く…美しいけど
   寂しいルクレツィアのような……」
   


留美「旋律が……視える?」ピク



真奈美「面白いだろう?これが音葉の特殊な能力だ。この子は音を感知する様々な能力が
    極端に発達していて、言葉の裏にある感情を敏感に読み取る事が出来るらしい。
    この子には私達の声がただの音ではなく、旋律として『視える』らしいぞ」





留美「へぇ…… よく分からないけどあなたの前では嘘はつけないのね?」ジロ

音葉「すみません…心を読むような失礼な真似をしてしまって…」シュン

真奈美「音葉にも悪気は無かったんだ。許してやってくれくれないか?」

留美「そうね、この子は何も悪くないわ。これはあなたが仕組んだ事よね真奈美?」ギロ

真奈美「ばれていたか。しかしたまには自分を偽らず、心のままに話してみるのも良いと
    思うぞ。胸のつかえが取れて気持ちが楽になるはずだ」ニヤリ




留美「まあいいわ。じゃあこの子に聞いてもらおうかしら。ただしあなたは席を外して
   頂戴。全てあなたの思い通りというのも面白くないしね」フン

真奈美「では私はゆっくり風呂に入って来よう。音葉を虐めてやらないでくれよ?」スクッ

音葉「留美さんはそんな人ではありません…。優しくて可愛らしい人です…」ニコ

真奈美「知ってるさ。酔い潰れて美優さんに泣きついていた留美さんは可愛かった」ニヤリ

留美「……さっさと出て行きなさい。イス投げるわよ?」イラッ





***



音葉「若輩者なので…お話を聞く事しか出来ませんが…」

留美「いいわよ。でも真奈美には内緒よ?真奈美も聞き出したりはしないと思うけど」ジロ

音葉「秘密はお守りします」ニコ

留美「ありがと。話を聞いてもらいたいというか、どちらかと言うと私はあなたに聞きたい
   ことがあるのだけど、いいかしら?」

音葉「私に…ですか?」キョトン





留美「あなたの夢は何?あなたはアイドルになって何がしたいの?」



音葉「夢…ですか…。上手く伝えられるか分かりませんが…、私はアイドルになって
   美しい旋律を見つけて…、自分で奏でるのが夢です。私にとって世界は…旋律の
   集合で成り立っていますから……」

留美「絶対音感を持っている人は世の中の全ての音が音階で聴こえると聞いたことが
   あるけど、あなたはそれがもっと強いみたいね。あなたには夢も現実も、全てが
   旋律や音階で見えているのかしら……」フフッ



音葉「夢と現実…ですか?」





留美「私には自分の夢が分からないのよ。ただ目の前にある仕事をこなしているだけで、
   叶えたい夢や目標が無いの。だから仕事の幅は広がらないし、いつまでも秘書の
   頃の自分を引きずったままなのよ……」



音葉「……」



留美「誰かの夢を借りれば私にも分かるとかもしれないと思って今回の仕事も受けて
   みたけど、全然胸がときめかないの。私も人並みに結婚に夢や憧れを抱いていた
   はずだったのだけど、いつの間にか無くしてしまったのかしら?」


http://i.imgur.com/tENoeBal.jpg
http://i.imgur.com/mh4V4jdl.jpg
梅木音葉(19)




音葉「ふふ…留美さんの中では夢と現実は全く別物なのですね。留美さんの言葉は…
   しっかりした重厚な旋律の合間に…ふわっとした曖昧で軽やかな旋律が時々
   混ざっています。ここまではっきり分かれている人も珍しいです……」クスクス



留美「夢と現実はしっかり区別しないと足元を掬われてしまうわ。仕事のミスの大半は
   夢に現を抜かして現実を疎かにする事が原因だし、相容れないものなのよ」



音葉「そうでしょうか…。でも現実として分からない事は夢としてイメージ出来ません…。
   私は…一度聴いた曲は譜面を見ずに演奏出来ますが…一度は聴く必要があります。
   それと同じで…夢も現実の経験則で構成されているのではないでしょうか……」





留美「現実の経験則?」



音葉「私の世界は音色と旋律で出来ているので…とてもシンプルです。夢も現実も一枚
   の楽譜の上に並んでいて…後はどの音を使って美しい旋律で奏でるかで…」




留美「本当に不思議な子ねあなたは。私と同じ世界で生きているとは思えないわ」フフッ

音葉「す、すみません…えらそうな事を言って…」アタフタ

留美「いいのよ。何となくだけど理解出来たわ。確かに人間は自分の知識以上の事は想像
   出来ないわよね。知識と経験を密接につないで現実味を持たせれば、この仕事から
   何か掴めるかも……」ブツブツ





音葉「あの…お役に立てたでしょうか…?」オソルオソル



留美「ええ、期待以上の成果が得られたわ。本当にありがとう。それから……真奈美、
   もういいわよ」クルッ



 ガタンッ! アワワワ……




真奈美「コホン。は、話は終わったのか?偶然だな、私も今あがった所だ」ガチャ

音葉「激しい緊張と…動揺の旋律が視えます…プロコフィエフのような…」クスクス

真奈美「お、音葉!? 」ギョッ

留美「私でも分かるわよ。まあ良いわ、今回の仕事はあなたにも協力してもらわないと
   いけなくなりそうだし」ニヤリ



真奈美「協力?」キョトン





***



—そして撮影当日・都内結婚式場にて—



 ワイワイ ガヤガヤ



聖來「真奈美さ〜ん!こっちこっち!」ブンブン

千夏「あまりバタバタしないの聖來。セットが崩れるわよ?」

真奈美「二人とも来てくれたのか。すまんなオフの日なのに」スタスタ




聖來「いいっていいって。パーティーみたいで楽しいし♪千夏もウキウキしながらドレス
   選んでたんだよ☆」ニヤニヤ

千夏「余計な事言わないの。真奈美さん、その子が新しく入った子?」

真奈美「ああ、梅木音葉だ。そういえば千夏は北海道出身だったな。この子も同郷だから
    仲良くしてやってくれ」

音葉「よ、よろしくお願いします…」モジモジ

千夏「そうなの。はじめまして、相川千夏よ。よろしくね」ニコ

聖來「水木聖來で〜すっ!音葉ちゃん背高いね〜!ドレスもばっちり似合ってるし、
   まるでモデルさんみたい♪」アハハ




真奈美「音葉は外見も目立つから地味なドレスを選ぶのに苦労したよ。今日の主役は
    留美さんだから、私達は花嫁の引き立て役にならないとな」

千夏「でも撮影の為とはいえ、ここまで本格的にやる必要があったのかしら?新婦友人の
   エキストラだけで30人くらい集まっているわよ?しかも全員うちのアイドルだし、
   まるで本物の結婚式みたいだわ」




聖來「本番に近い状況で撮影がしたいって留美さんの要望だしね。キングも学生以外で
   仕事の入ってないアイドルは全員参加しろって命令出すし、これだけ集まれば例の
   呪いも薄まるでしょ。茄子ちゃんにもいっぱいお祈りしたしね♪」

真奈美「あれだけ嫌がっていたのに礼子さんも優しいな。私達も留美さん一人に今回の
    仕事を押し付けた事に罪悪感があったし、出来る事は協力するつもりだったが。
    どれ、私も茄子にお祈りをして来るかな。行こうか音葉」スタスタ





———



レナ「茄子様クラリス様イヴ様…… どうか呪いにかかりませんように……!! 」アーメン

瑞樹「大丈夫……私はまだ大丈夫……絶対に結婚出来るはず……!! 」チャリーン パン、パン

早苗「28で独身でも今時珍しくないわ……まだまだこれから……!! 」ナンマンダブナンマンダブ

茄子「あの〜、そんなに真剣に祈られても困るというか〜……」オロオロ

クラリス「そろそろ式の準備をしないといけないのですが……」チラチラ

イヴ「どうして私まで幸運キャラに〜?私のシーズンは12月ですよぉ?」キョトン




真奈美「いつまでやってるんだ。いい加減に解放してやれ」ビシッ

レナ「いた!? 」

真奈美「悪かったなクラリス、すぐに準備に向かってくれ。イヴもトナカイが寂しそう
    だったから様子を見に行ってやれ。茄子は音葉と先に教会に行ってくれないか?
    一応私も後で拝ませてくれ」

クラリス「有難う御座います」ペコ 

イヴ「は〜い☆」スタスタ 

茄子「わかりました〜 行きましょうか音葉ちゃん♪」トコトコ





レナ「あんた随分余裕ね。呪いにかかって結婚出来なくなっても知らないわよ?」ジト

真奈美「もう腹を括ったさ。それに私はお前より若いしな」ニヤリ

レナ「キ—————ッ!! ムカつく—————っ!! 」ジタバタ

瑞樹「真奈美ちゃんドレス似合ってるわよ。やっぱり背が高いと映えるわね」マジマジ

早苗「くそう、私もせめて160欲しかった……!! 」グヌヌ




真奈美「二人も素敵だぞ。そのドレスはもしかして自前か?」

瑞樹「当然。私が今まで何十人の花嫁を見送ってきたと思ってるのよ……」フフ…

早苗「先週も警察の後輩の結婚式に行ってきたばかりよ…… アイドルの私が行ったら主役
   を食ってしまわないか心配だったけど、ギャグ要員にされたわ……」ウフフ…

レナ「やめましょう早苗さん……さっき夏美を慰めたばかりじゃない……」ズーン

真奈美「どうやらエキストラで出演しても無傷では済まないらしいな。私も何も思わない
    事はないが、だがそこまで気にするか?」




レナ「留美は絶対確信犯よ…… あの子は花嫁役になって、惨めな私をバージンロードの
   上から嘲笑うつもりだわ……」ブツブツ

真奈美「邪推が過ぎるぞ。それにさっき美優さんと一緒に留美さんの楽屋に行ってきたが、
    留美さんもそんな余裕は無さそうだったしな」

早苗「へえ、留美ちゃんでも緊張する事があるのね。いかにもクールって感じで、いつも
   涼しい顔して仕事してるのに」




瑞樹「ようやく今回の仕事がどういうものか、鈍いあの子にも分かったかしら?たとえ
   仕事でもウェディングドレスは特別よ。世界中の女の夢だし、簡単に割り切って
   着られるものじゃないわ。ましてこれだけ本番に近づけるとねえ?」ニヤリ



真奈美「夢と現実は常に隣り合わせの位置に存在する。ふとした事がきっかけで、遠くに
    あると思っていた夢が一気に近づく事もあるんだ。留美さんは今頃、夢と現実の
    間で戸惑っているのかもな」







レナ「おまけにプロデューサーが新郎役だし、もうほとんど職場結婚よこれ。ファンが
   見たら卒倒するんじゃない?いや、年齢的に祝福されるかも……?」



早苗「さ、じゃあ私達も本気でやるわよ!留美ちゃんにばかり良い思いをさせないわ!
   女の夢も10年分の呪いも全員で山分けよ!」オー!


END


http://i.imgur.com/KZ0viCIl.jpg
http://i.imgur.com/NiqO3wUl.jpg
水木聖來(23)

http://i.imgur.com/UVoe7Rwl.jpg
http://i.imgur.com/GxLj2qwl.jpg
鷹富士茄子(20)

http://i.imgur.com/wEdusGzl.jpg
http://i.imgur.com/HGJdYHsl.jpg
クラリス(20)

http://i.imgur.com/2NXd0CHl.jpg
http://i.imgur.com/sCOhnJjl.jpg
イヴ・サンタクロース(19)




—おまけ—



—ライスシャワー&ブーケトスのシーン撮影—



 リ〜ン♪ ゴ〜ン♪ <オメデト〜! <オシアワセニ〜! <ルミサ〜ン! <Pサ〜ン!



礼子「おめでとーっ!! このやろーっ!! 」ビュッ! ビュッ!

志乃「落ち着きなさい礼子、これは撮影だからね?」ブンッ! ブンッ!

礼「志乃さんも力入り過ぎよ。お米でも当たったら痛いわよ」シュッ! シュッ!

楓「よめは〜そと〜、ふくは〜うち〜」ポイ、ポイ

麻理菜「留美〜!とってもキレイよ〜!」パッ、パッ




P「いて!? 一方向から銃弾のような激しい生米が。大丈夫ですか留美さん?」ビシビシビシ!!

留美「な、ななな何っ!? 」ビクッ!!

P「留美さんもそろそろ慣れましょうよ。表情が硬いと撮り直しになりますよ?」ヨシヨシ

留美「あ、あなたはどうして平然としてるの……?私が意識しすぎなの……?」ドキドキ

P「俺だって緊張していますよ。でもこれくらい、恥ずかしがってたらアイドルの
  プロデュースなんて出来ませんからね。すみません俺なんかが新郎役で」ニコニコ




留美「こ、こっちこそ私なんかが相手で悪かったわね…… もっと若くて可愛いアイドルの
   子もいっぱいいるのに……」シュン

P「とんでもない!今この場所に留美さん以上に美しい女性はいませんよ!そんな留美さん
  の夫役が出来るなんて俺は世界一の幸せ者です!」グワッ

留美「そ、そそそんな事はっきり言わないでよ!これは仕事!仕事なんだからね!」カアア




聖來「あははっ、留美さん顔真っ赤だよ〜♪」ケラケラ

美優「や、やめなさい聖來ちゃん…… これはお仕事なんだからね……?」アタフタ

千夏「プロデューサーも自重しなさい。中高生組が泣くわよ?」

のあ「夢は現実に、現実は夢に…… まるで白昼夢ね……」フフッ



留美(白昼夢ね…… まさか私が見るとは思わなかったわ。胸の高まりが止まらなくて、
   頭がぼんやりしていて、まるで宙に浮いてるみたい。でも不安や恐怖はなくて、
   とても幸せな気分。こういうのも悪くないわね……)クス




P「どうしましたか留美さん?何やら楽しそうですが」

留美「ふふっ、なんでもないわ。それよりP君、私がこの仕事で婚期逃したらどう責任を
   取ってくれるのかしら?あなたが私の事貰ってくれる?」ニヤリ

P「喜んで!留美さんならむしろこっちがお願いしたいぐらいです!」ニッコリ



留美 クラクラクラ……パタン



P「留美さん!? どうしたんですか急に!? まさか具合が悪かったんじゃ……!! 」ダキッ




レナ「いちゃついてんじゃねーぞコノヤローッ!! 」ブーブー

夏美「さっさとブーケよこせーっ!!」オラッ! オラッ!

真奈美「言ってる場合か!留美さん気絶してるぞ!撮影中止だ中止!」アタフタ



留美(もうダメ…… 明日からまともにこの人の顔見られないかも……)ウーン



おわり



ここまで。どこかでわくわくさんの事をポンコツ美人と言っていた人がいましたが、
可愛い響きでわりと好きですww 留美さんはクール可愛い。今更言うまでもありませんね。
今回登場しなかったお姉さんは次のお話に。では。


忘れていましたが画像先輩に感謝を。当方貼り付け方が分からないので感謝です。
厚かましいお願いですが、相川千夏さんを追加して頂けると有難いです。
支援を下さった方も有難うございました。

http://i.imgur.com/39iDPaYl.jpg
http://i.imgur.com/uP1S488l.jpg
相川千夏(23)

良かったよ乙

>>1

画像先輩は画像だけじゃなく名前と年齢書いてくれるのがすごい

乙です

毎度>>1のお姉さま'sはカッコ可愛い(コナミ感)

ただ、今後も連載するなら出来ればこのシリーズ投下用スレを立ててそこに投下してほしいかな?

スレタイが毎回変わって追っかけるのが大変+スレにまとめてもらえたらお気に入り登録できるのですごい助かる

>>76
ありがとうございました。ちなったんカッコイイ。

>>79
ご意見ありがとうございます。

前にそれをやった時「グダグダ長い」と不評だったので単発にしています。
大体1万文字程度でさっくり読めるように心がけて書いていますので、
ご理解戴けると幸いです。対策としましては、今後雑談スレに開始宣言を
行おうと考えております。残り3話の予定ですので、どうぞ最後までお付き合い
下さい。ちなみに次は礼さんです。

>>75
>>77
>>78
ありがとうございました。次回もお楽しみに。

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