春香「最大トーナメントですよッッ、最大トーナメントッッ!」(159)

高木「史上最強のアイドルを見たいかーーーーッ」


「「「オーーーーーーーーーーーッ!!!」」」


高木「私もだ! 私もだ、みんなッ!!」

高木「全アイドル入場ッ!! 」

P「全アイドル入場です!」

P「高槻家は生き残っていた!! 更なる不景気を越え庶民派アイドルが甦った!!!
もやし祭り!! 高槻やよいだァ――――!!!」


P「本土にうちなーを知らしめたい!! ちゅらかーぎー! 我那覇響だァ!!! 」


P「アイドルランクは3階級制覇だがツンデレなら全階級私のものだ!!
水瀬のご令嬢、水瀬伊織だ!!!」


P「全アイドルのベスト・ディフェンスは私の中にある!!
月面のお姫様が来たッ 四条貴音!!!」


P「タイマンなら絶対に敗けん!!
メインヒロインのケンカ見せたる! 普通の女の子、天海春香だ!!!」

P「バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
765プロの誇る一見ピュア・アイドル、双海亜美だ!!!」


P「歌いたいからアイドルになったのだ!!
プロの歌唱力を見せてやる!! 如月千早!!!」


P「ELLIEこそがネット最強の代名詞だ!!
まさかこの子がきてくれるとはッッ 水谷絵里!!!」


P「真美たちは二人で最強ではない、二人とも最強なのだ!!
御存知ソロデビュー、双海真美!!!」


P「デカァァァァァいッ説明不要!! 91cm!!! Fカップ!!!
三浦あずさだ!!!」

P「穴掘りに更なる磨きをかけ”削岩機”萩原雪歩が帰ってきたァ!!!」


P「今のボクに死角はないッッ!! 空手有段者、菊地真!!!」


P「秋月家のサラブレッドが今ベールを脱ぐ!! 876プロから秋月涼だ!!!」


P「ファンの前でなら私はいつでもアイドルだ!!
竜宮小町プロデューサー、秋月律子! ステージ衣装で登場だ!!!」


P「事務の仕事はどーしたッ 女としての意地、未だ消えずッ!!
歌も雑務も思いのまま!! 音無小鳥だ!!!」

P「特に理由はないッ! 日高が強いのは当たりまえ!!
事務所にはないしょだ!!! 豆タンク! 日高愛がきてくれた―――!!!」


P「ぶっつけ本番で磨いた実戦パフォーマンス!!
765プロのスリーピング・ライオン、星井美希だ!!!」


P「IU覇者が帰ってきたッ! どこへ行っていたンだッ 伝説のアイドルッッ!
俺達はあなたを待っていたッッッ 日高舞の登場だ――――――――ッ!!!」

P「加えてアクシデント発生に備え超豪華なリザーバーを4名御用意致しました! 」

P「バーニングブラッド! 天ヶ瀬冬馬 !!」

P「シンデレラボーイ! 伊集院北斗!! 」

P「ナチュラルアイドル! 御手洗翔太!!」

P「……ッッ どーやらもう一名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ!」

春香「という夢を見たんですよ!」

P「そりゃよかったな」

春香「……なんて話だったのに」

春香「なんで実現しちゃってるんですか!?」

P「いやあ、本当に東京ドームの地下に入れるなんてな」

春香「いやいやいや! おかしいでしょ、こんなの!」

春香「私たちアイドルですよ? 格闘大会なんてできるわけないですって! ね、みんな!?」


「「「……」」」


春香「えっ」

真「へへっ。ボクは空手の有段者だし、腕試ししてみたいとは思ってたんだよねー」

伊織「この水瀬伊織ちゃんが格闘技のひとつやふたつ、嗜んでないと思ってるわけ?」

亜美「んっふっふ→、特訓の成果を見せる時が来たようだね→」


春香「真はともかくとして亜美まで……!?」

春香「誰か、誰か反対してくれる人はいないの!?」

春香「ん」

小鳥「」ガクガクブルブル

春香「小鳥さん!」

小鳥「は、春香ちゃん……みんなの目がギラギラしてて、どう見ても私じゃレベルががが」ガクガク

春香「小鳥さん、気を確かに!」

春香「すぐに社長のところまで行ってやめさせてもらいましょう! 抗議ですよ、抗議!」

P「多額の優勝賞金、そして最強のアイドルの栄誉を手にするのは誰なのか……!」

小鳥「……」ピクッ

P「それではカードの発表に移ります」

P「Aブロック第一試合、天海春香 VS 音無小鳥!」

春香「小鳥さん、どうしたんですか? 早く抗議に行きましょう!」

小鳥「……」

小鳥「ピヨーーーッ!」ドンッ

春香「あいたっ!?」

小鳥「ふふふ……神は私を見捨てていなかった! 他のみんなには無理でも、ド素人の春香ちゃんになら勝てる!」

小鳥「何より賞金が手に入れば、しばらくはイベントの軍資金に困ることもなく……!」

春香「そんなあ!?」

P「ではスタッフのみなさん、二人を試合場までご案内お願いします」

春香「えっ、何ですかこの黒服の人たち? ちょっ、待って! まだ心の準備が! いやーーーっ!」

P「試合開始!」ジャーン!!


春香「どうしてこうなった」

小鳥「隙ありー!」ゲシッ

春香「痛っ!?」

小鳥「うふふ、美容と健康のために習い始めた通信空手がこんなところで役に立つとは」

春香「小鳥さん、考え直してくださいって! 私たちが戦ってもどうにもなりませんって!」

小鳥「問答無用! ピヨーッ!」

春香「きゃあああーーーっ!?」ダダッ

小鳥「あ、ちょっと! 待ちなさーい!」

P「おっと、これは無様! 春香、対戦相手に背を向けて逃げているー!」


伊織「レベル低いわね……」

律子「いえ、そうとも言えないわよ」

伊織「どう見ても怖気づいて逃げてるだけじゃないの」

律子「そうかもしれない。それでも春香は長時間のライブに耐える現役アイドル。対して小鳥さんはデスクワークが主の事務員」

律子「このまま追いかけっこが続けば」

小鳥「ま、待ちなさいってばぁ……」ゼイゼイ


P「おおっと、小鳥さん体力切れかー!? 息が上がって苦しそう!」


律子「春香、今がチャンスよ!」

春香「ひいいっ……へ?」

律子「勝てるチャンスだって言ってるのよ!」

春香「……勝てる? 私が?」

春香「……」

春香「うう……ヴぁーーーーいっ!!!」ダダッ


P「春香、助走をつけて突っ込んだー!」

小鳥「か、かかったわね……」ゼイゼイ サッ

伊織「構えた! カウンター……!?」

律子「いえ、あの息切れは演技じゃない。春香の方が有利なのは変わって……」

春香「ヴぁーーーーっ!!!」

真「春香のやつ、目つぶってる!? あれじゃ勢いはあるけど、隙だらけで……!」

小鳥「もらった!」ゼイ ブンッ

ズルッ

春香「えっ」

小鳥「えっ」スカッ


どんがらがっしゃーん!


春香「あ痛たたた……ん、あれ?」

小鳥「」


P「あーーっと、小鳥さん立てない! Aブロック第一試合、勝者は天海春香だー!」

春香「わ……わーい……?」

春香「な、なんとか生きて帰ってこれたー……」

律子「お疲れ様」

伊織「何というか、本当にレベルの低い試合だったわねー……どっちが勝っても意味ないんじゃないの?」

春香「そういうこと言わないでよ……だいたい戦う気なんてなかったんだから!」

春香「そうだ! こんなことしてる場合じゃ……早くこんな大会止めないと!」

律子「もう次の二人が試合場に出てるわよ」

春香「えっ……や、やよい!?」

P「Bブロック第一試合、菊地真 VS 高槻やよい! 試合開始!」ジャーン!!


やよい「真さん、よろしくお願いしまーす!」スッ

真「おっ? 試合前の握手ならぬハイタッチってわけか……へへっ、よーし」スッ

やよい「はいたーっち!」パアン!

真「やーり……えっ?」フワッ


ズダアンッ!!


真「ッッッ!?」


P「な、なんとぉ!? いつの間にか真が投げられているーッ!」

真「くっ……!?」ササッ


P「おっと、真もすぐに立ち上がって距離をとる! ダメージはないようです!」


春香「今のは……?」

律子「ハイタッチの瞬間、腕を極めながら投げたわね。やよい、いつの間にあんな技を……」


真(さっきのハイタッチは罠? まさか! やよいがそんな……)

やよい「……」

やよい「うっうー! さすが真さん! ダメージなしだなんて、すごいですー!」

真「……!」

やよい「そうだ! 真さん、私のやってる武術の師範代やりませんか!?」

真「……え?」

やよい「空拳道はすごいんですよ! 最初に少し入門料がいるんですけど、新しく入門した人がいたらその分お金が入ってくるんですー!」

真「やよい……あの、それって」

やよい「私と一緒に、日本の若者を指導してみませんかッ!」

真「うわあ……」

やよい「あ、大丈夫ですよ! 入門すれば『はじめての空拳道』全5巻がなんと送料無料で」

真「やよい! その武術は駄目だ、目を覚まして!」ガシッ


フワッ


真「あ」


ズダアアアンッ!!


真「~~~~~~ッッッ」


P「再び投げが決まったーーーッ!」

やよい「ごめんなさい、真さん」ガキッ

真「ぐっ!?」


P「おおっ! しかも今度は肩関節をがっちり極めているッ!」


やよい「優勝して、立派な道場を建ててから真さんを師範代にしてあげますね」グッ

真「うぐっ……うあああ!」バッ


P「真もまだ負けてはいない! 力ずくで跳ね除けて脱出だー!」

真「痛っ……!」


P「しかし真、強引な脱出の代償か!? 苦しそうに肩を押さえているー!」


真(強引な脱出? 冗談じゃない……あと少し遅れてたら肩を外されてた)

やよい「うー、ダメですよ真さん。あんなふうに逃げたら余計に痛くなっちゃいますよ?」

真「……!」ゾクッ

真(違う。あれはやよいだけど、やよいじゃない……手加減なんかしてたらボクが壊される……!)

真「やよい……そっちがその気なら、ボクも本気でいくぞ!」

やよい「え?」

真「ふうーっ……やああっ!」ダッ

やよい「う、うーっ!」ササッ

真「な……!?」ピタッ


P「おーっとやよい、真の迫力に怯えてしまったのか? 背中を向けてうずくまってしまった!」

P「これは真も止まらざるをえない!」


真「止まらざるをえない……じゃないですよ!」

真「これって明らかに戦意喪失でしょう? 早く勝ち名乗りしちゃってくださいよ!」

やよい「う? 攻撃が来ません……ということは」

真「え?」

やよい「うっうー! 勝った! 真さんに勝っちゃいましたー!」

真「え? え? ちょっと、なんでそうなるんだよ!?」

やよい「やったー! やりましたー!」ピョンピョン

真「おい、やよい!? 悪ふざけはいい加減に……!」

やよい「ご声援ありがとうございましたー!」ペコリッ ガルーン!!


ガゴッ!!


真「あ……?」ガクン


P「な……なんとー!? 後ろから近付いた真の顎を、ガルウィングアッパーが打ち抜いたーッ!」

P「真、膝から崩れるーッ!」

真(え、何、これ、目の前、揺れて)

真(ボク、負け……? 何もしてないのに……?)


「正拳100本! 始め!」

「セイッ!」「セイッ!」


真(……?)


響「うりゃっ! そりゃっ!」シュッ! シュッ!

亜美「せいっ! て→い!」ブンッ! ブンッ! 


真(響に、亜美……?)

響「つらいよなあ、空手もダンスも! 毎日毎日同じ型、同じステップ踏んでさあ!」シュッ! シュッ!

響「自分、何やってんだろーってよく思うぞ! でもやめらんないんだよなあ!」

響「それがアイドル! それが空手家ってもんさー! なあ真!」シュッ! シュッ!

亜美「まこちん、亜美に空手教えてくれたよね!」ブンッ! ブンッ!

亜美「亜美が強く、かっこよくなりたいって言ったらさ! 毎日、何があってもこれだけは続けるようにって!」

亜美「ねえまこちん! 空手は強いんだよね! かっこいいんだよね!」ブンッ! ブンッ!

真「あ……」

真「……」ググッ

真「すぅー……はぁー……こおおぉ……ッ!」


P「おおっ! 真、立ち上がったー!」


春香「真、何やってるんですか?」

律子「空手の三戦。それに息吹ね。狂った感覚を直して、体を戦闘体勢にしてるわ」

真「ふううぅーっ……」スゥ…

真「……やよい、ごめん」

やよい「え?」

真「正直、やよいのこと舐めてたよ。本気で殴ったりしていい相手じゃないって。でも、失礼だったね」

やよい「え、あの」

やよい(ダメ、背中向けなきゃ! 護身、背中の筋肉は5倍……あれ、体、動かな……)

真「……」スッ

やよい「……!!」ビリビリ


律子「気当たりね……やよい、実戦経験がなさすぎたわ」


真「せいッッッ!」ボッ

やよい(やば――――)

真「……なーんて」

真「さすがにね、まだ当てる覚悟はできなかったかな」

真「でも、これがボクの全力の空手だからね」


P「これは……す、寸止め! いや、しかし!」


やよい「」


P「やよい失神! Bブロック第一試合、勝者は菊地真ーッ!」

真「やよい、やよい」ユサユサ

やよい「はうあっ!?」ビクッ

やよい「あ、あれ? 真さん……もしかして私、負けちゃったんですか? ううー……」

真「はは……でもやよい、びっくりするくらい強かったよ」

やよい「本当ですか!? じゃあ真さん、入門書持ってきますんでサインと印鑑を」

真「いや、だから! それは無理っていうか駄目! 駄目だから!」

響「まったく真のやつ……完璧とは程遠い勝ち方だぞ」

春香「でもすごい応援だったね、びっくりしちゃった」

響「え? いや、それは……同じ空手家として、真とは決着つけたいからな! こんな所で負けてもらったら困るだけだぞ!」

亜美「またまた→、亜美のこと引っ張ってきて一緒にやってくれーってペコペコしてたのは誰だっけ?」

響「うぎゃーっ! 亜美、それは言わない約束だっただろ!?」

春香「あはははっ、響ちゃんらしいね!」

律子「春香……すっかり気楽になってるけど、いいの?」

春香「大丈夫ですよ、さっき試合したばっかりですし! 順番が来る前に抜け出しますから!」


P「それでは二回戦に移ります……Aブロック第一試合、天海春香 VS 秋月涼!」


春香「……」

春香「えっ」

春香「どどどっ、どういうことですかプロデューサーさん!? 私さっき試合したばっかりですよ!?」

P「どうしたも何も、そういう組み合わせだから仕方ないだろう」

春香「おかしいですよ、どういう片寄り方してるんですか!?」

P「春香……参加アイドルは総勢18名。トーナメント形式にすると二試合だけ一回戦が発生するんだ」

P「さっきのは一回戦、次のは二回戦」

春香「え、あの、でも……」

P「さあここでお待ちかね、トーナメント表の発表です!」

         【Aブロック】

                  ┏━  天海 春香
              ┌─┤
              │  └─  音無 小鳥
          ┌─┤
          │  └─  秋月 涼
      ┌─┤
      │  │  ┌─  三浦 あずさ
      │  └─┤
      │      └─  秋月 律子
  ┌─┤
  │  │      ┌─  双海 亜美
  │  │  ┌─┤
  │  │  │  └─  星井 美希
  │  └─┤
  │      │  ┌─  水谷 絵里
  │      └─┤
  │          └─  双海 真美

         【Bブロック】

  │              ┏━  菊地 真
  │          ┌─┤
  │          │  └─  高槻 やよい
  │      ┌─┤
  │      │  └─  萩原 雪歩
  │  ┌─┤
  │  │  │  ┌─  水瀬 伊織
  │  │  └─┤
  │  │      └─  我那覇 響
  └─┤
      │      ┌─  日高 愛
      │  ┌─┤
      │  │  └─  四条 貴音
      └─┤
          │  ┌─  如月 千早
          └─┤
              └─  日高 舞

真「ボクも連戦……雪歩が相手か」

雪歩「はう……真ちゃん、あの、お手柔らかに……」


春香「いやいやいや! やっぱりおかしいですよ、アンフェアですよ!」

春香「普通はインターバル挟んだりとか、別の試合からやったりとかするんじゃないんですか!?」

P「ではスタッフのみなさん、試合場までご案内お願いします」

春香「ちょっ……私まだ納得してなっ」

春香「黒服が、黒服が、いやーーーーっ!?」

P「試合開始!」ジャーン!!


春香「どうしてこうなった」

涼「同感です……」

春香「……って、あれ? 涼ちゃんも乗り気じゃないんだ?」

涼「はい……私も律子姉ちゃんに無理矢理参加させられちゃって」

春香「じゃあさ、二人で試合放棄ってことでやめてもらおうよ! 二人一緒に言えばきっと……」

律子「涼ー! 何を敵とヒソヒソ話してるのよー! さっさと決めちゃいなさい!」

涼「う……」

春香「ね? 律子さんには私からしっかり言っておくから!」

涼「そうですね……お互いのためにもそれが」

律子「涼ッ! ちょっと来なさい!」

涼「は、はいいっ!」


P「おっと試合中断!? さすがは秋月家のサラブレッド! 客席の最前列から律子がアドバイスを送るようだー!」


律子「ちょっと、何をモタモタしてるのよ? さっきの試合見てたでしょ、春香は素人なんだからさっさと決めちゃいなさいよ」

涼「律子姉ちゃん、やっぱり僕が参加してるのってまずいよ……アイドルとしてならまだしも、格闘なんだよ?」

律子「あんた、何を今さら……」

涼「とにかく! 僕、棄権するから……!」

律子「へえ……あんた、それでいいんだ?」

涼「……何がさ?」

律子「あんた、876で愛ちゃんとよく一緒に着替えてるでしょ?」

涼「そっ……それは、だって同じ事務所のアイドルだし、女の子同士ってことなんだから……!」

律子「で、その後によくトイレに篭っちゃうんだって?」

涼「ちょっ……!?」

律子「愛ちゃん、不思議がってたわよー? やけにトイレットペーパーの減りが早いって」

涼「ぎゃおおおおん!?」

律子「そういえば私がまだ現役の頃、あんた確か脱ぎっぱなしにしてた私の衣装」

涼「ぎゃ……ぎゃおおおおおんッッッ!」

春香「あ、戻ってきた……涼ちゃん、じゃあ二人一緒に」

涼「ぎゃおおおおおんッッッ!」

春香「えええっ!?」


P「おおおっと! 涼、春香に飛びかかった! マウントをとって……うおお! 殴る殴る!」


律子「ふふ、これぞ秋月流の調きょ……もとい、特訓の成果」

律子「精神的に追い詰められた涼には理性なんてない! 闘争本能がむき出しになる……!」


P「す、ストップ! ストーップ! 勝者、秋月涼ー!」

P「秋月涼ー! ちょ、終わりだって! スタッフのみなさん、止めて! 早く止めて!」

春香「ん……」

春香「あいたたた……私、負けたんですか?」

春香「はあ、もう……まあ戦わなくていいならもういいか」

「おい、試合終了だ!」「もう終わったって……うわあ!」

春香「え?」

涼「ぎゃおおおおおんッッッ!」

春香「きゃああああっ!?」

P「おお!? これはどうしたことか、試合終了にも関らず涼、執拗に春香を追い回すー!」

P「必死に逃げる春香! 追う涼!」

P「スタッフ! 何やってんだ早く止めろー!」


律子「ちょっと涼! 勝ったのよ、落ち着きなさい!」

律子「煽りすぎたかしら……!」


春香「ひい……ひ、あ、ああっ!?」

P「うああっ! 必死に逃げていた春香、転倒ーッ! 涼がすかさず襲いかかるーッ!」

涼「ぎゃおおおおおんッッッ!」

春香「ひっ……! いやああああッ!」ブンッ


メ シ ャ ア

春香「……!」

春香「……あ、あれ?」

涼「あ……お……」


P「こ、これは! 春香の苦し紛れの蹴りが、涼の股間にクリーンヒットォ!」

P「男性諸君は思わず鳥肌もののこの光景、女性とはいえ急所には変わりありません! 涼、大丈夫かー!?」

P「ん? 涼? 涼ー?」


涼「くぁwせdrftgyふじこlp!!」

涼「」ブクブク ガクガクガク


P「うおあああ!? 担架! 担架早くー!」

P「えー……コホン」

P「ドクターチェックの結果、秋月涼は試合続行不能!」

P「競技の結果、先ほどの攻防を有効とし、Aブロック第一試合の勝者は天海春香とします!」

春香「えええー!?」


律子「あちゃー……追い詰めすぎたみたいね」

律子「涼、これで心身ともに女性アイドルになっちゃうかもしれないわね……」

P「気を取り直して! Bブロック第一試合、菊地真 VS 萩原雪歩!」

P「試合開始ー!」ジャーン!!


雪歩「え!? もう始まっちゃったんですか、私まだ心の準備が」

雪歩「真ちゃん、ちょっと待って! 今深呼吸を……」

真「雪歩……悪いけど、速攻で決めさせてもらうから」

雪歩「え」

真「やよいと戦って教えられたんだ……手加減とか気遣いとか、そういうのはかえって失礼だってね」

雪歩「えっ、あの、真ちゃ」


ボッ

P「うおお!? 真、目にも止まらぬ早技! コンビネーションッ!」

響「正中線、胸椎、人中、両膝に目まで……はは、当ててたら三回くらい死んでるんじゃないか、これ……」


雪歩「ひいっ、あわわっ、ひゃあああっ」ドテッ

真「セイッッッ!」ズンッ!!


P「倒れた雪歩に追い討ちの下段突きー! これは……紙一重! 頬を掠めて地面に拳がめり込んでいるーッ!」


雪歩「」

真「……次は当てるよ」


P「雪歩、失神かー!? いや、かろうじて……?」

雪歩「……ひっ」

真「さ、雪歩……ギブアップするなら今のうちだよ」

雪歩「ひっ……ひっ……」ブルブル

真「雪歩?」

P「ん? 雪歩、どうやら失神はしていないものの、なにやら様子が……」


雪歩「ヒッ、ヒッ、フヒッ、フヒヒッ……!」ブルブルブルブル!!

真「な、何……!?」

P「震える雪歩、砂煙が巻き上がっていくーッ!」

真「けほっ……雪歩、だいじょ……」

ボッ バチバチッ!!

真「痛ッ!?」

雪歩「……」

真「雪歩……? 今、何かした……?」

雪歩「……」ブンッ バチバチッ

真「うぐあっ!? 痛い痛い痛いッ!?」

真(何だこれ!? 全身をなにか小さくて硬いものが……!)

雪歩「真ちゃん、この闘技場……いい砂地ですぅ」

真「雪歩……?」

雪歩「きっと、今までたくさんのアイドルがここで戦ったんだね……ほら、よーく見て?」

雪歩「砂だけじゃないんだよ、ビーズとか、ラメとか……衣装のかけらでキラキラしてるの」

雪歩「これを掬ってあげれば……」ヒュッ!! バチバチッ

真「痛あッ!?」

真(ビーズ? ラメ? 雪歩、砂に混じったそれを投げつけて攻撃してるのか? あんな小さなので……!?)

雪歩「痛いでしょ? ビーズって意外と硬いから……」

真「ぐ……」

雪歩「痛かったら、まいったしていいんだよ?」ヒュッ!!

真「!」バッ グルンッ


響「おお! 回し受け!」


真「悪いけど、この程度の痛さでギブアップはしてあげられないかな……!」

雪歩「そっか……残念」ヒュッ!!

真「無駄だよ! 回し受けは完璧な防御、もう飛び道具は通用しない!」グルンッ

「……」

真「ん? あれ?」

P「これは……どうしたことか!? さっきまでいたはずの雪歩が姿を消してしまったー!」

真「ど、どこだ……どこにいるんだ!?」


舞「砂に紛れたわね……擬態もここまでくると凄まじいものがあるわ」

愛「ママ、わかるの?」

舞「私でもかろうじて……ってところかしら」

雪歩「安心して、真ちゃん。もう痛いことはしないから」

真「何だって……?」

雪歩「その代わりね、まいったしてくれないと……これから10秒ごとに真ちゃんは困ったことになるよ」

真「はあ? それってどういう……」

雪歩「10、9、8、7、6……」

真「雪歩……?」

雪歩「5、4、3、2、1……」

雪歩「ゼロ」

真(何だ……? いや、でも飛び道具なら耐えられえる。直接攻撃なら当てさせてから捕まえれば……!)

雪歩「……」スゥーッ

雪歩「真ちゃんはッッッ!!!」

雪歩「ロッカーの中にフリフリのワンピースをいつも常備してますゥッッッ!!!」

真「……」

真「はあ!?」

雪歩「しかもッ! 誰もいない時を見計らって、ワンピース姿でプロデューサーの机の上に乗ってポーズとってましたあッッッ!!!」

真「ちょっ……待っ……ストーップ!」

雪歩「10、9、8、7……」

真「ちょっと待ってよ雪歩、困ったことってそういう……!?」

真「それは反則だろ!? 格闘大会だぞ、雪歩!?」

雪歩「6、5、4、3、2、1……」

真「くそっ、どこだ!? どこに隠れてるんだ雪歩!?」ブンッブンッ!!

雪歩「ゼロ」

真「……!」ゴクリ

雪歩「……」スゥーッ

雪歩「真ちゃんはッッッ!!!」

雪歩「作詞に挑戦してみてからポエムにはまっちゃってますゥッッッ!!!」

真「げ」

雪歩「事務所に誰もいない時、真ちゃんはおもむろにノートを開き、自作ポエムの朗読を始めますッッッ!!!」

雪歩「それも、必ずプロデューサーの席で!!!」

雪歩「きらめく無数の星屑の中 ボクを見つけてくれた もう離さないで アナタは白馬のプリンス プロ」

真「うわあああ! わーわーわーわーッ!」

真「雪歩ぉ……それは駄目なやつ、駄目なやつだよぉ……!」

雪歩「10、9、8、7……」

真「ひっ」

真(やだ……ボク、他に何したっけ?)

真(一時期やよいの物まね練習してて一日一回は『うっうー! まっこまっこりーん!』って姿見の前でやってたこととか)

真(あ、あずささんのロッカーが開いてたからその、ぶ、ブラジャーを着けてみて、胸を強調したポーズを研究してみたこととか)

真(それとも、小鳥さんに少女漫画だって騙されて読まされてから同人誌にどっぷりはまってることとか)

雪歩「6、5、4、3、2」

真(そ、そういえばプロデューサーが外回りでいないからって、着替え忘れた時にシャワーからロッカーまで裸で戻ったことも)

真(あと、プロデューサーのペンの匂い嗅いでみたこともあったっけ……!?)

真(それから!? ああ、それから!?)

雪歩「1」

真「あ、あああああああ――!」

雪歩「ぜ……」

真「まいったあ! まいりました! ギブアーップ!!!」


P「チッ……あ、いやいや! おっと真、さすがにここでギブアップ! 残念ながら精神はそう打たれ強くなかったー!」


雪歩「確実に来る苦痛……人はその時間にこそ恐怖する」

P「Bブロック第一試合、勝者! 萩原雪歩ォ!」

律子「よし……」グッ グッ

春香「律子さん、気合い入ってますね」

律子「まあね……涼がああなった手前、私がしっかり勝ち抜かないと」

春香「ええと、あの…・・・なんだかすいません」

律子「いいのよ。負けるのは負ける側に問題があるんだから。まあ、これで次の試合を棄権したりしたら怒るけどね」

春香「で、ですよねー」ギクッ

律子「ま、いいわ……いい機会だからよく見ておきなさい」

律子「見せてあげるわ、格闘だって所詮は分析と理論だってことをね」

P「Aブロック第二試合、三浦あずさ VS 秋月律子!」


あずさ「あらあら、律子さんが相手だったのね」

律子「相手だったのねって……トーナメント表見てなかったんですか?」

あずさ「それが、なかなか観客席までたどり着けなくって……さすが東京ドーム、通路が長いのね~」

律子「ああ……そういえば選手入場から見ないとは思ってましたけど……」

あずさ「うふふ、お手柔らかにお願いしますね~?」

律子「ええ、こちらこそ」


P「試合開始!」ジャーン!!

律子(さて、まずは戦闘スタイルの分析から始めないとね……真や響みたいにスタイルがわかってる相手ならやりやすかったんだけど)

あずさ「律子さん、真剣な目をしてるのね……私も頑張らないといけないかしら」スッ

律子(重心を低く、開いた腕を前にした構え……組み技ね)

律子(レスリング? いえ、これは)

あずさ「いくわよ~、それ~!」ブオンッ!!

律子「!!」ササッ


P「おおっ!? あずささん、スピードはないものの強烈なラリアット! 見るからに威力たっぷりだー!」


律子(プロレス……!)

あずさ「あら? 当たらなかったか~……」

律子(牽制のけの字もないわね……動きも遅いし、典型的なパワータイプだわ)

律子(得意なタイプね……!)ササササッ

あずさ「あら? あら?」


P「律子、流れるような動きであずささんの周りを回り始めたぞー! その円がどんどん狭くなっていくー!」


あずさ「ここかしら~!」スカッ

律子(まずは一段階!)パシッ

あずさ「きゃっ!?」

P「おおっ、律子の足払いがヒット! あずささんの重心が崩れていくぞー!」

律子(まだまだ! 袖! 左足! 右膝!)グイッ パシッ パシッ

あずさ「あら、あらあら?」グラッ

律子(前にぐらついた……! そこで間合いを詰めれば!)

あずさ「えいっ、捕まえた!」

律子(そう、倒れ込む勢いを利用して掴みにくる……そこを)

律子「投げる!」ガキッ グオッ

あずさ「おっとっと……!」

律子「!」グンッ

P「おおっと律子、極め投げにいったがあずささん腰が重い! 踏ん張ったー!」

律子(そう、でもそれも想定の範囲内!)ガシッ

あずさ「あっ」


舞「指取り……!」

律子(そう、組み技において最も重要な指……それは小指!)

律子(あずささんのスタイルが組み技主体である以上、小指の死は戦闘スタイルの死を表す)

律子(いくら粘り腰のあずささんでも、小指一本に背負い投げを仕掛けられるとは思わないでしょ……!)

律子「この指、もらった!!」


ガキイッ

グンッ

律子「!?」

律子(え? なんで、私が引っ張られ……!?)


舞「レスラーの指なんか取りにいくからでしょ……」

愛「え? どういうこと?」

舞「レスラーが相手を投げる時っていうのはね、相手を掴んでるっていうよりは、指に引っ掛けてるって感じなのよ」

舞「特に小指はその要……自分と相手の体重、さらに勢いによる重力にまで耐えられないといけない」

舞「100キロや200キロ……そのくらいは平然と耐えるほどに、レスラーの指は強いのよ」


律子「そんな、こっちは全部の力を使ってるのに、指一本に負け……!?」

あずさ「やっと捕まえたわ~」

律子「離し、離して……!」

あずさ「暴れたら余計に痛いわよ~」

P「あずささん、抵抗する律子を高々とリフトアップ! そして……!」

律子「えっ、ちょ、高っ、やめ……!」

あずさ「えーっい!」


ドキャアッ!!


P「投げたーっ! 超高層ボディスラムッ! 律子、激しくバウンドーーッ!」


律子「……ッ!!」

律子「か、体……バラバラになりそ……ッ」

あずさ「あらあら、ボディスラムで終わりだなんて華がないわ」

律子「え、何……痛い、痛……!」


ガキイッ!!


P「極まったーッ! 卍固めーーッ!」


あずさ「みなさんご一緒に~……だーーっ!!!」ミシミシ メキメキ ビキ!!

律子「」


P「あーっ! 律子、これはたまらず失神! Aブロック第二試合、勝者は三浦あずさだーっ!」

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