エイラ「じゃあ、私がサーニャのことを大好きだったとするだロ?」(70)

エイラ「どうすル?」

エイラ「どうするって、なにが?(裏声)」

エイラ「だかラ、私が告白したらサーニャはなんて返事するんダ?」

エイラ「……?」

エイラ「た、例えばの話だからナ。そんな真剣にならなくてもいいんだゾ」

エイラ「うーん……」

エイラ「……いや、なんか変なこと聞いたナ。忘れてくレ、もう寝ないと」

チュッ(自分の手の甲にキス)

エイラ「!!」

エイラ「……じゃあ、私がエイラのことを大好きだったとするでしょ? そうしたら、エイラは……(裏声)」

エイラ「さ…サーニャッ!」ガバッ(布団を抱きしめる)

エイラ「やっ、そんな、いきなりなんて……(裏声)」

エイラ「……」

エイラ「……はあ。何やってんダ、私は」

エイラ「まだ帰ってこないナ、サーニャ」

エイラ「時間は……午前3時カ」

エイラ「あと3時間以上も一人で悶々としているしかないなんテ」

エイラ「あア、私も一緒に行けば良かっタ……」

エイラ「ただいま、エイラ(裏声)」

エイラ「サーニャ!? もう帰ってきたのカ?」

エイラ「うん。昨日出現したばかりだし、レーダーでも感無しだったからって、特別に(裏声)」

エイラ「そ、そっカ。疲れただロ、何か飲むカ? 紅茶でも」

ギュッ(布団を抱きしめる)

エイラ「サーニャ?」

エイラ「……あったかいね、エイラ(裏声)」

エイラ「あ、ああ……そうだナ、ずっと毛布の中に潜ってたシ」

エイラ「違うの………うまく言えないけど、ベッドとは違う゛っ」

エイラ「えふっ、けふっ」

エイラ「……喉が痛くなってきタ」

エイラ「仕方ないナ、紅茶でも飲んデ寝るカ」

ドンドン!

エイラ「?」

エイラ「誰ダ?」

ペリーヌ(ちょっと中尉! さっきから一人でブツブツと、何をおっしゃっていますの!?)

エイラ「そんなにうるさかったカ?」

ペリーヌ「ええ。おかげさまで、今朝の朝礼には遅刻せずに済みそうですわ」

エイラ「ペリーヌ」

ペリーヌ「なんですの!?」

エイラ「みんな寝てるかラ、もう少し静かにナ」

ペリーヌ「――!」

エイラ「まあ立ち話もなんだシ、入れヨ。今お湯を沸かしてるかラ、お茶でも」

ペリーヌ「結構ですわ。私は部屋に戻ります」

エイラ「遠慮すんなっテ」

ペリーヌ「遠慮じゃありません。大体、夜中にそんなものを飲んでしまっては、眠れなくなってしまいますわ」

エイラ「お菓子もあるゾ、サルミアッキとか……」

ペリーヌ「っ、とにかく! 私はあなたに注意しにきただけですので。お休みなさい」

エイラ「そ、そっカ……ごめんナ」

ペリーヌ「……」

エイラ「……」

ペリーヌ「……はあ」

ペリーヌ「一杯だけ頂きますわ。飲み終わったら、体が冷えないうちにベッドに戻りますからね」

エイラ「……へへ、そうこなくっちゃナ」

シュンシュン

ペリーヌ「あら、ヤカンのお湯が沸いたようですわよ」

エイラ「みたいだナ。よっと」

エイラ「ぅ熱っ!? あっ、しまっ」

パタン(ヤカンの注ぎ口が閉じる)

ピィィ---------!!!

ペリーヌ「ちょ、ちょっと中尉!? なにをしてらっしゃいますの!?」

エイラ「いてて、水水みずみずみず! ペリーヌはヤカンを止めるんダ! 火を消セ!」

ペリーヌ「は、はいっ!」

ピュウウン……

ペリーヌ「な……何とか……」

エイラ「おイ、はやくここに隠れロ! すぐ人がくるゾ!」

ペリーヌ「え? でもそこは貴方のベッド……」

エイラ「ぐだぐだ言ってる場合カ? 見つかったら怒られるだけじゃ済まなイ! 急ゲ!」

ペリーヌ「で、では失礼します……」モゾモゾ

エイラ「……出てくるなヨ、ペリーヌ」

ペリーヌ「え?」

バタバタバタバタ

ガチャ

坂本「エイラ! 貴様夜中に何をしていた!」

ペリーヌ(少佐……!)

坂本「時計くらいは読めるだろう。今何時だ、言ってみろ」

エイラ「…3時、40分」

坂本「3時40分。ふむ、随分殊勝な心がけだな、エイラ。毎日こんな早起きを続けるつもりか?」

エイラ「いや……」

坂本「だがエイラ、軍規では原則として毎朝6時00分までは就寝時間と定められているんだ。これは知っていたか?」

エイラ「ん…」

坂本「……それをお前は、朝早くから何を騒いでいる! 眠れないなら眠れないなりに、静かにしていろッ!」

エイラ「……」

ペリーヌ(中尉……)

坂本「……朝礼が終わり次第、執務室に来るように。反省文を提出してもらう」

エイラ「……ん」

坂本「静かにしていろよ」

バタン

エイラ「……」

モゾモゾ

ペリーヌ「中尉」

エイラ「お湯」

ペリーヌ「え?」

エイラ「……冷めちまったナ。悪イ、また今度にしよウ。私も寝るかラ、もう部屋に戻ってくレ。見つからないようニ」

ペリーヌ「ですが……」

エイラ「はやく行けヨ!」

エイラ「……もう眠いんダ。グスッ、はやく行けっテ……ズズッ」

ペリーヌ「…泣いてらっしゃいますの?」

エイラ「ば、馬鹿カ! なんで怒られたくらいで私が泣くんだヨ……泣いてねーゾ!」モゾモゾ

ペリーヌ「怒られたから、ではなく、寂しかったから、でしょう? 私にもありますわ、何故だか急に人恋しくなる夜が」

エイラ「……」

ペリーヌ「やっと隣に人が来てくれたのに、あんな形で切り離されてしまって……今まで堪えていた寂しさが、溢れだしてしまったんですよね」

エイラ「そんなんじゃネー……」

ペリーヌ「くす、中尉も意外と可愛らしいところがありますのね」

エイラ「……ばっ、何言ってんダ」

ペリーヌ「……中尉がお休みになられるまでは、ここにいて差し上げますわ。安心して下さい」

エイラ「ん…」チラッ

ペリーヌ「ふふ」

エイラ「……ペリーヌ」

ペリーヌ「はい」

エイラ「……その…」

エイラ「……り……がと…」

ペリーヌ「え?」

エイラ「なっ、何でもねーヨ!」

ペリーヌ「やれやれですわね」

―翌朝―

パーパッパッパラッパ パッパッパラッパ

エイラ「う……ん」

サーニャ「あ、おはよう、エイラ」

エイラ「ん…サーニャ? もう帰ってきてたのカ?」

サーニャ「何言ってるのエイラ? もうみんな起床の時間よ」

エイラ「そ、そっカ」

サーニャ「……そうだ。今日の午後、時間が取れたらお茶しない? 確か今朝の定期便で、砂糖がたくさん入ってきたはずだから、お菓子を作っておくわ」

エイラ「ああ、いいゾ。でも一個だケ」

サーニャ「なに?」

エイラ「一人だけ、一緒にお茶飲みたいヤツがいるんダ。そいつも連れてきていいカ?」

サーニャ「もちろん構わないけど……エイラがそんなこと言うなんて、珍しいわね。誰なの?」

エイラ「そいつの名前は――」



ペリーヌ「ふえっ、くしゅん! うう……夜更かししたせいでしょうか……?」



おわり

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