露伴「黒いセールスマン?」 (35)

杜王町カフェ『ドゥ・マゴ』


編集者「ええ、最近噂になってるんですよ、黒ずくめのセールスマンが」

露伴「なんだいそりゃあ。今時セールスマンなんてお目に掛かった事はないぞ。しかも黒ずくめ? 一体いつの話だよ」

編集者「私が聞いた話だと、ずっと前からいたそうなんですが」

露伴「ふぅん…。で、その時代錯誤のセールスマンが一体どんなネタになるってんだい。まさかとは思うが君、藤子不二雄A先生って知ってるかい?」

露伴「A先生は80歳にもなってジャンプSQで連載してるだけじゃ飽き足らず、ガンの手術からあっさり生還してすぐにテレフォンショッキングにも出ちまう、大御所通り越して最早化け物だぞ。
幾らなんでも『黒ィせぇるすまん』を知らないとか言い出したら、マンガの編集者としてどんなものかと思っちまうぜ」

編集者「流石にリアルタイムで読んではいませんが、ギミアぶれいくの笑ゥせぇるすまんは毎週見てましたよ。――で、その喪黒福造が実在するらしいんですよ」

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露伴「なんだって? 喪黒福造が実在するぅ~? おいおいおいおい、いくら何でもそりゃあ無理筋だろ。まさかとは思うが、伊東四朗が黒いスーツを着て歩いてたのが目撃されただけってオチじゃないだろうな」

編集者「笑ゥせぇるすまんが伊東四朗主演でドラマ化されたのを知ってる人なんて、今時どれだけいると思ってるんですか。そうじゃなくて……何と言えばいいんでしょうか。そう、笑ゥせぇるすまん風に言えば……『心のスキマを埋められた』人の情報がネットで広まってるんですよ」

露伴「『心のスキマを埋められた』だって? と言う事は、“太い枠線に囲まれたオチ”になるぐらい奇妙な結果になった『犠牲者』がいるって事か」

編集者「ええ、最近はネットやツイッターも普及してますからね。それも一人や二人ではないんです」

露伴「……つまり、『犠牲者』を撮った映像が複数あるって事かい?」

編集者「そう言うことです。見てみますか」

露伴「それが僕のマンガの参考になるかは判らないが……今から見れるのかい」

編集者「ネットに上がってる動画を幾つかブックマークしてます。ええと、まずはこれから……」

露伴「……ふぅん。他人が呼吸した空気が汚いからと宇宙服を着込んで生活する女。日本人よりもよっぽど日本人らしい白人。豪華客船のカジノでひたすら勝ち続けている男……か。なるほどな」

編集者「ご覧になってどう思いましたか?」

露伴「確かにこれは撮影したくもなるな。他人から見ればただ単に奇妙な振る舞いをしているだけだが、本人達の目は至って“充実”している。これを『心のスキマを埋められた』と称したヤツはなかなかいい着眼点だ。こうなると彼らを『犠牲者』と呼ぶのは面白くないな。黒ィせぇるすまん風に、『お客様』と呼んだ方がしっくり来る。面白い、ちょっと取材に行ってみよう」

編集者「そうですかッ! いやあ、先生にそう言って貰えるとは苦労して映像を集めた甲斐があるってものです! これで次のネームも――」

露伴「何を言ってるんだい君。これをネタにしたって藤子先生の二番煎じにしかならないじゃあないか。ネームはとっくに七本出来てる……君が気に入らないと言うなら、五分くれよ。もう一本作ってやる」

編集者「え!? は、拝見しますッ! ……全部通りますよコレ! どれを選んでいいものか……」

露伴「あのなあ、僕一人で描いていいなら幾らでも描いてやるさ。君も編集者だって言うなら、この岸辺露伴に意見を出さなくちゃあならないだろ。作家の仕事に頷くのが君の仕事じゃあないんだぜ」

編集者「す、すいません……」

露伴「まあ、君の話には興味が湧いた。次の打ち合わせの時に君が一番欲しい話を完成させて持って来る。その後でこの『黒ィせぇるすまん』の取材に行ってみるとしよう」

--東京


露伴「ヘヴンズドアーッッ!!」

露伴「ふむ、出雲若志、73歳。会社社長だったが、喪黒との約束を破った為に身体はヘラクレスの彫像の様に若々しいまま、顔がこんなに醜く老いさらばえたのか……これで八人目の『お客様』だが、やはりコイツも奴との約束を破ってこの有様か」

露伴「僕はとてもとてもこんなのにはなりたくないが、本人は実に幸せらしいな。さて、『今起こった事は全て忘れる』と書き込まなくちゃあいけないんだが……喪黒福造とやらは本当に腕は確かな様だ。ヘヴンズドアーで命令を書き込もうにも、『ココロのスキマ』が本人の欲望でびっしりと埋められてる」

露伴「僕も今までヘヴンズドアーで色々な人間の人生を読んできたが、僕が読んだ『お客様』の心は欲望やら何やら…そんなもので心が“隙間なく”“埋められている”。たかだかこれだけの文章を書き込む隙間を探すのに苦労するとはな……」

露伴「喪黒福造、かつては【もこくふくぞう】と名乗っていた時期もあったが、最近は【もぐろふくぞう】で統一されている。差し出す名刺のデザインも時期によって変わっている……が、そんなものは重要じゃあない」

露伴「喪黒福造の“外見”だッ! 外見が異なっている……! 喪黒福造に出会って破滅させられていても、マンガでよく見る顔だったり、誰かに似ている姿にしても大橋巨泉だったり伊東四朗だったり、果てはタモリだったりもする……ッ!」

露伴「ギミアぶれいくの企画内でタモリが喪黒福造役で出るはずだったが、スケジュールが合わずに結局実現していない……それなのに“タモリの姿をした喪黒福造”に破滅させられた奴がいる!」

露伴「人間の欲望に付け込んで破滅させて回る『黒ィせぇるすまん』は実在する……それが複数いるのか、それとも顔を変えられるのか、もしかすればスタンド使いなのか。今はまだ判らないが……」

露伴「一体何者だ、喪黒福造……好奇心が湧いてきたッ! ……と、何とか隙間を見つけたぞ。この技術を磨けば、米粒に一コマずつ描いてピンクダークの少年を一本完成させる事も出来てしまうな」「やりはしないけど」

露伴「今、奴に近付く為の手掛かりは『BAR 魔の巣』とか言う酒場だな……。『お客様』は喪黒福造と出会った後にそのバーに行き、悩みを告白した後で喪黒福造の術中に嵌っている。行ってみるか……『魔の巣』へ」

--東京、中央線沿線


露伴「……『BAR 魔の巣』。『お客様』が喪黒福造と出会う場所はマチマチだ……特定の場所でなければ出会えない、と言う事はない。しかし出会った後は、必ずそのバーへと辿り着いている」

露伴「『魔の巣』のモデルになったバーも実在するが、喪黒が『お客様』を連れて行くのはそこじゃあない。喪黒が連れて行くのは、『魔の巣』だ。一切の例外なく」

露伴「まるで『幽霊の小路』だな……どこからでも辿り着ける場所にありながら、招待されなければ辿り着く事すら出来ない。となれば……」

露伴「ヘヴンズドアーッ! 僕自身に書き込む、“『魔の巣』に辿り着く”とッ!」

露伴「よし、これで適当な路地裏にでも入れば『魔の巣』に行け――」


「おや、どちらへ行かれるつもりですか?」


露伴「!?」

喪黒「駅へ行かれるつもりならそちらではありませんよ。宜しければご案内致しま――」

露伴「ヘブンズドアーッッ! 本になれ、喪黒福造ッッッ!!」

露伴「よしッ! 本にしてしまえばどうって言う事はない……正体を見せてもらうぞ、喪黒福造……」

露伴「何だとッ!? “黒い”……“真っ黒”だ! どのページも“真っ黒”で何も読めない、書き込めもしない!」

露伴「一体どう言う事だ、こんな生物……いや、存在があると言うのか……」

喪黒「オーッホッホッホ、お気は済みましたか?」

露伴「うわぁッ!? ページに顔がッ! 喪黒の顔が浮かんで喋っているだとッ!?」

喪黒「やれやれ、この仕事も長いのですが『本にされる』なんていう経験は初めてのことですねぇ。ですがいけませんねえ、この様な為りをしていましても、初対面の方に私の秘密を明かす訳には参りませんので。よいしょ、と」

露伴「う、うう……じ、自分でページを閉じてヘヴンズドアーを解除しやがった……」

喪黒「おやおや、そんなに怖がらずともよろしいじゃありませんか。安心して下さい、私は見ての通りのセールスマンですよ。申し遅れました、私こう言う者です」

露伴「ああ……知ってるぞ。お前の名前は喪黒福造……人呼んで笑ゥせぇるすまん、ただのセールスマンじゃないんだろ……」

喪黒「ホッホッホ、そう言う貴方は漫画家の岸辺露伴先生ですね」

露伴「笑ゥせぇるすまんに名前を知られているとは、ゾッとしないな……」

喪黒「いえいえ、私の名前をご存知でしたら、私の取り扱う品物もご存知なのでしょう?」

露伴「ああ、そうだな……取り扱う商品はココロ。人間の心なんだってな……」

喪黒「そこまでご存知なら、私は岸辺先生にお売り出来る商品がない事もご存知ではありませんか。心のスキマをお持ちでないのに、心のスキマを埋める商品をお渡ししてもどうにもならないでしょう。心の寂しい人の手助けをするのが、私の仕事なのですから」

露伴「……ならどうして僕の前に姿を現したんだ」

喪黒「ええ、実はですねえ……私、『ピンクダークの少年』が大好きなんですよ」

露伴「……なんだって?」

喪黒「まったくこんな奇想天外、摩訶不思議なコミックがよく描けるもんだなあ! と読む度に感心しております。そしてつくづく<60年前手塚先生によって開拓された日本のコミックが今、すごく進化しているのだ!>と感動しているのですよ」

露伴「は、はは……それは有難いな。正直な話をすれば、僕にも心の隙間はある。若い時から変わらずにね。だが、そんな嬉しいセリフを言ってくれれば簡単に埋まる程度の隙間だ。……まさかとは思うが、これであんたとの契約が結ばれたりするなら、とんだ押し売りをされることになるな」

喪黒「ホッホッホ、岸辺先生に私の仕事を良く知って頂いている様で光栄です。せっかく私を訪ねて頂いたのですから、行き付けのバーで一杯やりませんか。大ファンの先生と向き合ってお酒を頂ける機会なんて、そう滅多にあるものじゃありません」

露伴「……ああ、いいぜ。実際、ここで逃げるのが賢い選択なんだろうが……本音を言えば、あの喪黒福造が目の前にいる。そう来れば、腰を据えて取材するしかないだろう」

喪黒「ホッホッホ、それじゃ行きましょう」

露伴「バーに着くまで黙ったままってのもつまらないから聞かせてもらうとしよう。率直に聞くが、あんたは一体何者なんだ」

喪黒「これまたストレートな質問ですねえ。しがないセールスマンですよ、なんて答えは期待されていないのがよく判る質問です」

露伴「あんたの行動パターンは、全く以って古典的な悪魔の取引だ。上手に人間の弱みに付け込んで、そいつの欲するものを与えた後で何もかも奪い取る……」

喪黒「いえいえ、私はそんな上等なものじゃあありません。困っている人を放っておけない、言わば親切の押し売りと言った所です」

露伴「そうかい? ヘブライ語の【破壊する(mephir)】と【嘘をつく(tophel)】って分詞を合成して出来上がる有名な悪魔がいるんだ。ファウストで有名なメフィストフェレスがそれだ」

露伴「少しばかり心に隙間を持っている小市民の心の隙間を探り当て、心を揺さ振る何かを与え、些細にでも約束を破れば人生を破壊する。八人ほど『お客様』だった連中の心を読んだが、正に悪魔的だ」

喪黒「ホッホッホ、私みたいにずんぐりむっくりしたのとメフィストフェレスを一緒にしたら、本物のメフィストフェレスの怒りを買う事になってしまいます」

露伴「悪魔が悪魔でございって顔して現れる方がレアだろ。あんたに関する前情報がなかったら、僕だってあんたがメフィストフェレスじゃないか、なんて思いもしないさ」

喪黒「それは一理ございます」

露伴「で、だ。取材を続ける内、『お客様』方の末路を見る度に何とはなしにピンと来た」

喪黒「ほほう、それは興味深い」

露伴「イスラム教では、サタンを“シャイターン”と呼ぶ。そのシャイターンには役割があるんだそうだ。人間を惑わし堕落させ、堕落した姿を神に見せ付けるらしい。『人間とはこの様に愚かで、神に救われる価値の無い存在だ』と証明する為に。あんたの仕事を見ていて、そんな連想が浮かんだよ」

露伴「あんたの正体をどうしても知りたいワケでもないし、あんたが悪魔かそうでないかも、今となってはどうでもいい。噂の笑ゥせぇるすまんが実在して、今から取材できるんだからどんな質問をすればいいかと言う事で頭が一杯だ」

喪黒「ホッホッホ、それでしたら藤子先生のマンガやアニメのDVDをお読みになったら宜しいではありませんか」

露伴「それでいいと僕が思ったなら、わざわざあんたを探し回ったりしないさ。マンガには『リアリティ』ってのが必要だ。今すぐにでも僕を破滅させるかもしれない相手におっかなびっくり立ち向かう心境とはどんなものか、と言うのを僕自身感じたいしな」

喪黒「またまたご謙遜を、おっかなびっくりと仰られながら私をそんなに興味津々で観察される方にお目に掛かった事はありませんよ」

露伴「そうでもないさ、いつどの時点で僕を破滅させる為にどんなうまい話が来るのか楽しみで楽しみで仕方が無いんだ」

喪黒「ホッホッホ、正直なのは美徳ですなあ。ですが岸辺先生、先程も言いましたがあなたにお売りする商品を私は持ち合わせておりません。あなたには『ココロノスキマ』がないどころか、一度や二度破滅したところで破滅を嬉々として味わい尽くしてから再び立ち上がるのは、火を見るより明らかです」

喪黒「物語にはそれぞれ相応しい登場人物が必要です。この喪黒福造の物語には、何の変哲も無い小市民がうまい話に引っかかり、本来は歩むはずの無かった人生を歩む事になる。その行程を描く物語だと言ってもいいでしょう」

喪黒「私の言葉や商品で揺らぎ、私の物語に出演する人生を貴方は持ち合わせていない。正にそう――」



喪黒「“岸辺露伴は動かない”」



喪黒「先生を破滅させてしまえば、しばらくピンクダークの少年が読めなくなってしまいます。最後のページに『来月は休載します』の文字がある時は、ガッカリしてしまいますからねえ」

露伴「僕は今まで一度しか休載した事はないぞ。それも止むに止まれぬ事情ってヤツだ」

喪黒「ホッホッホ、酒の席と言う事で、岸辺露伴休載事件の真相についてお聞かせ願いたいですねえ」

露伴「勘弁してくれよ、人に聞かせたい話でもない」

一週間後、再び杜王町カフェ『ドゥ・マゴ』

編集者「いいえ岸辺先生ッ、これでは読者への掴みが弱い! 最初の2ページで漫画を書く前の準備運動その2をやるべきですッ!」

露伴「あれは一発ギャグみたいなモンだぞ!? それをまたやるって君、読者がどう思うと思ってるんだ、いくらたまの読み切りだからって僕がいつもやってる準備運動なんか読んで何が面白いんだ! 僕だったらその2ページでジャンプをブン投げるねッ!」

編集者「読者の意表を突きます」

露伴「だから気に入った」

露伴(……なんだなんだ、一週間前とは比べ物にならないくらい積極的じゃないか。この岸部露伴に対してこれだけ忌憚のない意見を言うのは少々腹が立つが、悪い気分じゃない……)

露伴(だがおかしい。人間そんな簡単に大きく変わるはずがないッ)

露伴(考えられるとすればスタンド攻撃か、さもなくば--)

露伴「ヘヴンズドアーッッッッ!!」

露伴「……やっぱりだッ! こいつ……『喪黒福造』と契約しているッ!」

露伴「契約内容は……『自分の意見を隠さず言える様になりたい』か。……くそッ! ふざけやがって!」

露伴「ヘヴンズドアー! 『今起こった事は全て忘れる』ッ!!」

編集者「? どうかしましたか、岸辺先生。それじゃ次にこのページですが……」

露伴「この僕を舐めやがって、このド低能がーーーーーッッッ!!」

編集者「!? な、なんですかっいきなり--」

露伴「それは僕の台詞だ! お前、喪黒福造と出会ったな! 契約した人間がどうなるか知っていて!」

編集者「な……」

露伴「僕ぁ確かに一週間前言った! 『君も編集者だって言うなら、この岸辺露伴に意見を出さなくちゃあならないだろ。作家の仕事に頷くのが君の仕事じゃあない』ってな!」

編集者「そ、そうですよ! 岸辺先生にそう言われた後、喪黒さんに出会ったから千載一遇のチャンスだと思いましたから、自分の意見を自分で言える様にしてもらって……」

露伴「僕は君の意見が聞きたいと言った! 他人の力を借りなきゃ作家に意見も言えない意志薄弱な編集者の意見なんか聞きたかぁないねッ!」

編集者「そ、そんな勝手な事を言わないで下さいっ! だったら僕はどうすればいいんです!? もう喪黒さんと契約してしまったんですよ!?」

露伴「そんなのは君の勝手だろう、と言うのは簡単だ。だが君は『セールスマン』から『商品を受け取った』んだろう。少なくとも、一週間以内にだ」

露伴「そしてここは日本だ。今すぐ喪黒福造に連絡を取ってクーリングオフしてもらえッ!!」

編集者「えーーーーっっ!!? 笑ゥせぇるすまん相手にクーリングオフ!? そ、そんな無茶苦茶な事出来る筈が……」

露伴「うるさいッ! 出来るか出来ないとかそんなどうでもいい事を聞きたい訳じゃないッ! 君には言ってなかったが、喪黒福造にも会ってきた! 契約はしなかったさ、取材はこなしてきたがね!」

露伴「別に次の作品にすぐフィードバック出来る訳じゃないから取材費だって自腹さ! なんでそんな事をするか判るかッ! 僕は読んで貰う為に漫画を描いているッ!
その為にはリアリティが必要だ……自分を破滅させる存在と相対しながら酒を飲み、彼に破滅させられた人間達の話を聞きだす時の気持ちがどんなものなのかを理解する必要があるッ!」

露伴「そんな僕の編集者だと言うなら、ちょっとくらいの無茶苦茶ならやってみせろッ! あの笑ゥせぇるすまんからクーリングオフをもぎ取ってみせろ! 人を破滅させて歩いているヤツから生き延びてみせるくらいの事はしてみせろ! ……少なくともこの僕はやってのけたぞ」

編集者「う、うう……滅茶苦茶だ! 変人だって聞いていたけど、こんな有り得ない性格の人だったなんて……」

露伴「契約で自分の意見を言わざるを得ないからな。本人の目の前で、まるで僕が人格破綻者みたいな物言いをされるのが不愉快じゃないはずがないが……まあいいさ。ヤツから名刺を貰ってるんだろう」

露伴「今すぐヤツをここへ呼び付けて契約を解約させるんだ。それをしない限り、僕ぁ次の原稿を書かない。編集長から何か言われたら言ってやるさ、今の編集者が気に入らないから描く気が起こらなくて困っているってな!」

露伴「編集長から大目玉を食らうか喪黒福造と対決するか! 君が選べッ!!」

編集者「う、うう……なんて日だ、どうしてこんな事に……」

編集者「……もしもし、喪黒さんですか? 実は先日の契約を解約したいんですが……クーリングオフって出来ますか? ええ、はい……」

露伴「世の中にそんなうまい話なんてありゃしないさ。ま……ヤツをここに来させる段取りが出来たなら、ヤツが来るまで打ち合わせをしようじゃあないか。それまでどうせヒマだしな」

露伴「いずれ君が君自身の意思でこの岸辺露伴に意見出来る様になった時に、描かれるはずの読み切りの打ち合わせだ」

露伴「借り物の力でしか僕に意見を出来ない弱腰は腹が立つが、そのズケズケ物を言う姿勢を持った君と組んだ作品がどれだけの出来になるのかは、正直興味がある……」

露伴「全く漫画家ってのは、因果な商売だなあ!」

岸部露伴--取材終了

くぅ疲(ry

「岸辺露伴は動かない」単行本出版記念として書いてしまいました。
短いのは御容赦を、動かないシリーズも笑ゥせぇるすまんも一話簡潔の短編ですので(言い訳)

藤子A先生の黒ィせぇるすまんが先か喪黒福造が先かは御自身の想像にお任せする方向で。
喪黒のセリフには、藤子A先生がジョジョ25周年パーティに際してのコメントを所々引用しております。
お二人とも昔からのファンなので藤子A先生と荒木先生のキャラで何か書こうと思い立ち、この組み合わせはどうなるのかと妄想が走りました。
さて露伴が喪黒のお客様になる話を考えてみようかと思いつつ、ドーンさせてどうなるかを考えてみたら……「そもそもサザエにドラドラされて酷い目にあってるよな」と当たり前の結論に達したので、露伴が喪黒に取材して帰って来る所で終わろうかとも思いましたが、やはりそれではつまらないかなと。

で、笑ゥせぇるすまんのお約束に従い小市民がうまい話に引っかかるのを、露伴が無茶苦茶な手段で切り抜ける流れとなりました。

その為ドーンも不幸になる黒枠も無くなりましたが、そもそも露伴と関わった時点でいい目には遭えないのにろくでもない結果になってるのでそれでいいのではないかとww

とりあえずここで終わりにさせて頂きます。
オメーナメてんのかってくらい短いSSな上、最後に岸部と誤字ってしまいましたが大人はウソを(ry

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