不良「俺たちが」秀才「事件を」オタク「解決しよう!」(220)

<学校>

昼休み──

不良「あ~……メシ食ったら眠くなっちまった」ファ~

不良(五限は数学か……かったりーな)

不良「おい」

不良仲間A「あ?」

不良「俺、午後サボるわ」

不良仲間A「またサボりかよ。ホントどうしようもねぇな、オメェは」

不良仲間B「まぁコイツは授業出たって、なんも分からねぇからな!
      ヒャハハハッ!」

不良「うっせぇ」

<校舎裏>

この学校の校舎裏には、知られざるサボりスポットがある。
絶妙な広さの空きスペースがあり、昼寝をするのに持ってこいなのである。

不良(まったく我ながら、いい場所を見つけたもんだぜ)スタスタ

不良(夏は涼しく、冬は暖かいんだよな~あそこは)スタスタ

しかし──

今日は先客がいた。

不良「!?」ビクッ

不良「な、なんだ、お前ら!?」

秀才「ん?」カリカリ

オタク「うん?」ヌリヌリ

不良(たしか同じ学年の他のクラスのヤツらだったよな……なんでここに……)

不良「お前らここで何してんだよ!」

秀才「勉強だけど」

オタク「ボク、フィギュアを作ってるんだ」

不良(ちっ、ジャマくせぇな。どかすか……)

とりあえず、乙
前々から言おうと思ってたから言わせてもらう

もっと原作を読むべき、ないなら他作品を読む

何て言うか、登場人物がたまに「誰?」ってなる
それに加え、全体的な内容が中学生レベル
口調とか展開とか、もっと人の作品読んで、良いところは盗む(丸パクリは駄目だけど)

さらに補足すると、展開早すぎる
考えたり、想像してみると、そんな簡単に泣かないし、さっさと行動に移さない
例えるなら、前戯なしのセ○クス
まぁ、この例え方は微妙すぎる……
もぅ少し遠回りでもいいかな、って思った


あと、口調と擬音が変を通り越して、何か幼稚
使いすぎってわけでもないけど、これが雰囲気壊してるのは事実
チューとか「ふぇ」、強いて言うなら「//」も控えた方がいい

批判として受け取らず、自分のSSのステップアップとして受け取ってほしい
まだ成長できるから、頑張って書き続けてね!
次の作品に期待する

不良「おい、お前ら」

秀才「なんだい?」
オタク「なにかな?」

不良「ここは俺の昼寝場所なんだ。お前ら、どけや」

秀才「イヤだ」
オタク「今いいところなんだよねぇ~」グフフッ

不良「…………」イラッ

不良「さっさとどかねえと、ブチ殺すぞ! あぁ!?」

秀才「殺せるものなら殺してみるといい」

不良「ンだと!?」

秀才「ただし」

秀才「ただでさえ少年犯罪に対する風当たりが強くなっている昨今、
   君の処分も今までのような軽いものではすまないだろうね」

秀才「両親は悲しむだろうし、殺人者の親という汚名を着ることになるだろう。
   その覚悟があるなら、殺してみるがいいさ」

不良「(よく分からねえけど、反論できねえ……!)うぐぐ……!」

不良「だったらそっちのテメェ! 作ってる人形壊されたくなかったら、どけや!」

オタク「ボクをナメてもらっては困る!」

不良「!?」

オタク「たとえフィギュアが壊されても、ボクの魂までは壊せない!
    すぐ作り直してみせるさ!」キリッ

不良「(コイツ、なんてガンを飛ばしやがる……!)う、ぐぅ……!」

不良「……だいたい、テメェら、なんでこんなところにいるんだよ!」

不良「今は授業中だろうが!」

オタク「今の発言、すごいブーメランだね! 釣り針デカすぎ!」グフッ

不良「(ブ、ブーメラン……?)俺は釣りなんかやったことねえよ!」

秀才「いいだろう、答えてあげよう」

秀才「ぼくにとってはね、学校の授業なんか出るだけ無駄なんだよ。
   予備校でもっと難しいことをやっているからね」

秀才「ホントは授業なんか休んで受験勉強だけしていたいんだけどね。
   さすがにそうもいかないから、時折ここで勉強してるんだよ」

不良「(くっ、ムカつくヤツ……)──で、お前は?」

オタク「ここでフィギュアやプラモ作ってると、捗るんだよねぇ~」グフフ

不良「え、お前らってツルんでるんじゃねえのか?」

秀才&オタク「全然」

秀才「今までこの場所を知っているのはぼくだけだと思ってたんだけど、
   勉強してたらオタク君が来たんだ」

オタク「ボクも、ここを知ってるのはボクだけだと思ってたんだよね。
    そしたら、秀才君が勉強しててビックリしたよぉ~」

不良「…………」

不良「なるほど、つまりここを自分だけのスペースだと思ってた三人が
   偶然にも今日ここに集まったってワケか」

秀才「そういうことだね」

秀才「君、バカっぽそうだけど、意外と頭いいんじゃないの?」

不良「うるせえ!」

オタク「仲間が増えて嬉しいよぉ~」グフフ

不良「仲間じゃねえ!」

不良「……わぁーったよ!」

不良「じゃあ俺はここで寝るけど、ジャマすんじゃねーぞ!
   したらブン殴るからな!」

秀才「するわけないだろ。君こそ、イビキとかはやめてくれよ」

オタク「いい夢が見られるといいねぇ~」グフフ

不良「うるせえ!」

不良「…………」ゴロン

不良「…………」スースー

秀才(……あれだけわめいてたのに、寝息は静かなんだな)

オタク「じゃあボクらも作業を再開しようか」ヌリヌリ

秀才「そうだね」カキカキ

放課後──

不良「ふあぁ~あ、よく寝た……」ムクッ

オタク「いい夢見れたかい?」ヌッ

不良「のわっ!?」ビクッ

オタク「おっと失敬」

秀才「さて、ぼくはそろそろ帰ろうかな。予備校があるんでね」

オタク「ボクも、仲間とアニメショップに寄りたいから帰るよぉ~」

不良「──ったく、てめぇらのせいでよく眠れなかったぜ」

秀才&オタク(嘘をつけ)

不良「もう二度とここで出会いたくないもんだな、ケッ」

秀才(それはこっちのセリフだよ)
オタク「また会う日を楽しみしてるよぉ~」

翌日──

<校舎裏>

不良(昨日は午後に出会っちまったから、今日は午前中少しサボろう)スタスタ

不良(昨日の今日で、ヤツらもいないだろうし……)スタスタ

不良「!?」

秀才「また君か」カキカキ

オタク「やぁ~仲間よ!」グフッ

不良「なんでお前ら、またいるんだよ! せっかく午前中にしてやったのに!
   あと仲間じゃねえし!」

秀才「君の都合なんか知らないよ」

オタク「ボクたちは引力で引かれあってるのかもねぇ~」グフフッ

不良(くっ、俺コイツら苦手だ……)

不良「──にしてもよぉ」

秀才「なんだい?」

不良「なんでお前ってそんなに一生懸命勉強してるワケ?
   やっぱり政治家とかになって、日本を変えたいとか思ってんの?」

秀才「ぼくにそんな高尚な目的はないよ」

不良「えっ?(コショウ? え、料理の話?)」

秀才「勉強しとけばいい大学に入れる……。
   いい大学に入ればそれだけ将来の選択も広がるだろ?」

秀才「なにか壮大な動機を期待してたところ悪いけど、そんなものだよ。
   ぼくが勉強している理由なんて」

不良「ふうん」

秀才「逆に聞くけど、君はなんで不良をやってるんだ?
   いつも教師に逆らってるし、この通り授業もサボるし、
   たしかこの間も、他校の人と喧嘩をして停学になってたよね」

不良「……なんでだろうな」

不良「俺、出来ちゃった婚で生まれたガキらしくてよ。
   親父にもお袋にも『お前ができなきゃ』ってしょっちゅういわれててよ」

不良「とりあえずメシ食わせとけ、みたいな感じでろくに相手もしてくれなかった……」

不良「ンな時に色々俺を可愛がってくれた先輩がいてよ。
   その人の真似をしてたら……こうなってた、って感じかな」

不良「っつっても、いつまでもこんなんじゃヤベェよなぁ……。
   卒業した後のことなんか、なぁ~んも考えてねぇし……」

不良(──って、俺はなんでこんなことコイツらに話してんだ!)

秀才「なるほど。単なるバカというワケではなさそうだ」

不良「だろ? ……って結局バカにしてんじゃねえか!」

オタク「泣けるぅ~」グスッ

オタク「ボクが前ハマってたアニメのキャラにも、君みたいな境遇の子がいてさぁ~」グスッ

不良「アニメと一緒にすんな!」

オタク「じゃあ、次はボクの番だねぇ?」

秀才「えっ」
不良「えっ」

オタク「ボクはやっぱり将来的にはアニメ業界に進みたいと考えててね。
    世界のオタク、っていわれるようなアニメを作りたいんだぁ~」グフフッ

秀才(まったく聞いてないのに語り始めた!)

不良(コイツ……ホント恐ろしいヤツだぜ!)

読んでる

30分後──

オタク「──とまぁ、こんなとこかなぁ」コフゥ

秀才(途中から自分の話じゃなく、ほとんどアニメの授業みたいになってたぞ。
   しかもすごく分かりやすかったし……。
   彼、もしかしてぼくより頭いいんじゃなかろうか……)

不良(悔しいけど、コイツの話聞いてたらちょっとアニメ見たくなっちまった)

オタク「お? 不良君、俺もアニメ見たいって顔してるねぇ~」

不良「し、してねぇよ!」

オタク「まぁまぁ、さっきボクがいった君っぽいキャラが出るアニメのDVD、
    ……あげるよ!」スッ

不良「あげるって……もらえるワケねーだろ! 高けぇだろ、コレ!」

オタク「いいから、いいから。ほらっ」グイッ

不良(くっ……!)
  「すぐ売って金にしちまうからな!」

放課後──

<不良の家>

不良(暇だ……)

不良「せっかくだから、さっきオタクがくれたアニメでも見るか……。
   面白くなかったら、マジで売っちまおう」

テレビ『妹よ、愛してるぞぉ~!』

テレビ『なにぃ、ヤツは炎を操るというのか!?』

不良(くっだらねー……)

テレビ『アンタみたいなクソガキ、産まなきゃよかったよっ!』

テレビ『誰が産んでくれって頼んだよっ!』

不良(お、これが俺っぽいキャラってヤツか?)

不良「…………」ウルッ

不良(ゲ、俺なんでちょっと涙ぐんじまってんだ!?)

翌日──

<学校>

不良(やべぇ、結局徹夜して全部見ちまった……。何やってんだ、俺……)

不良仲間A「オメェ、今日はずいぶん眠たそうじゃんか。
      遅くまでシコってやがったのか?」

不良「ちげぇよ、アニ──」

不良仲間A「兄?」

不良「あ、兄貴と喧嘩しちまったんだよ」

不良仲間A「オメェ、兄貴なんかいたっけ?」

不良「いねぇよ!」

不良仲間A(ワケが分からん……)

不良「──ってワケで、眠いからサボるわ。じゃあな」

不良仲間A「お、おい……!」

<校舎裏>

不良「ちっ、今日は二人ともいねぇのか」

不良「よっしゃ、久々にここを独占できるぜ」

不良「…………」

不良「いっつもサボるワケにもいかねーしな」

不良「やっぱ今日はサボるのやーめたっと」スタスタ

二人との出会いは、不良の心に変化をもたらせていた。

<校舎裏>

ある時、不良と秀才は二人きりになった。

不良「いくらいい大学に入りたいっていってもよぉ……。
   いつもいつもそうやって勉強してて、楽しいか?」

秀才「楽しいよ」

不良「やっぱり成績いいとチヤホヤされるからか?」

秀才「そんなワケがないだろう。やっぱり君は頭が悪いな」

不良「ンだとぉ!?」

秀才「勉強をすることで、今まで解けなかった問題が解ける。
   読めなかった文章が読める。書けなかった文字が書ける……。
   こう考えるとけっこう楽しいと思うけど、勉強って」

不良「そういわれると……たしかに面白そうだ……」

秀才(ずいぶん単純だな)

不良「……なあ」

不良「もしよかったら……俺に勉強を教えてくれねーか?
   授業聞いててもサッパリだしよ、俺の仲間バカばっかだし……」

不良「なぁ~んてな、冗談だよ冗談」

不良「俺みたいなバカの相手してると、お前までバカになっちまうよ」

秀才「別にいいよ」

不良「へ?」

秀才「ここで君と知り合って分かったけど、君はバカだけど単なるバカじゃない。
   磨けば光るバカって感じがするからね。やる気があるんなら、教えるよ」

不良「マ、マジか!? ……でも、バカバカいいすぎ」

秀才「ゴメン」

秀才「その代わり、条件がある」

不良「なんだよ?」

秀才「喧嘩のやり方を……教えてくれないか?」

不良「え、お前だれかブン殴りたいのか?」

秀才「ち、ちがうよ。自分とベクトルの違う生き方をしている人から
   何かを教わるってのも悪くないなと思ってさ。
   さっきもいっただろ? こういうことも勉強のうちさ」

不良「ふぅ~ん……。そんなんでいいなら、お安いご用だ」

<校舎裏>

またある時、不良はオタクと二人きりになった。

オタク「やぁ、久しぶりだねぇ~」

不良「お、おう」

オタク「こないだ渡したアニメ、見てくれたかい?」

不良「……一応な。あとで返すよ」

オタク「律儀だなぁ、君も。で、どうだった?」

不良「別に、フツーだったよ」

オタク「よかったぁ~」

オタク「で、ボクがいった通り、君に似たキャラが出てきたろう?」

支援

不良「全然似てねーよ」

オタク「……え?」

不良「たしかに親が望んでない子で、全然可愛がってもらえず、
   グレちまったヤツだったがよ」

不良「最終的にはきっちりスジ通して、仲間と一緒に化け物相手に大活躍して、
   親とも和解しやがった」

不良「俺があんな風になれるワケねえよ……」

オタク「…………」

オタク「そんなことないよぉ~!」

不良「おわっ!?」

オタク「君はあのキャラよりずっとスゴイよ! ボクが保証するよ!」

不良「…………」

不良「お前に保障されても嬉しくもなんともねえよ。むしろ不安になるくらいだ」

オタク「たしかにそうだ! 常識的に考えて!」グフフッ

不良「……ホント変なヤツだな、お前って」

その夜、不良は不良仲間たちと町を遊び歩いていた。

不良仲間A「おう」

不良「あ?」

不良仲間A「オメェさ、最近変わったよな」

不良「なにも変わってねぇよ」

不良仲間A「いいや、変わった。なぁ?」

不良仲間B「お~たしかに変わったかもしれねえな」

不良「どこがだよ」

不良仲間A「授業イコール睡眠タイムだったオメェが、最近寝なくなったしよ。
      なんつうか、まともになったよな」

不良仲間B「停学喰らって、牙がなくなったんじゃねえのか?
      ヒャハハハッ!」

不良「うるせぇ、ブン殴るぞ!」

不良仲間B「わ、悪かったよ」

不良「……ふん」

不良仲間A「──ん、アレは予備校じゃねえか」

不良(予備校……)

不良仲間A「知り合いのハナシじゃ、あそこすげぇ厳しいトコらしくてよ。
      成績の良し悪しに応じて、露骨に対応が変わるらしいぜ」

不良仲間B「俺たちにゃ全く縁がないところだな」

不良「……なんか音が聞こえないか?」

ドスッ…… ドカッ…… ドゴッ……

音がした方に向かうと──

ドカッ! ドゴッ! バキッ!

暗がりで、数人が一人に対して寄ってたかって暴力を振るっていた。

不良仲間A「おぉ、すげぇ」

不良仲間A「ガリ勉どももやるこたァやってんだな。ちょっと見直したぜ」

不良仲間B「受験勉強のストレス発散ってヤツだろ?
      ああいうヤツらって手加減知らないっぽいから、俺らよりヤバイかもよ」

不良「どこにでもあるんだな、イジメってのは」

不良「…………」

不良「!」

予備校生A「ちょっと成績いいからってよ、澄ましすぎなんだよお前は!」ハァハァ

予備校生B「こないだの校内模試でトップだったからっていい気になりやがって……」ハァハァ

秀才「なるほど、勉強で勝てないからって暴力ってワケかい……。
   まぁ、そろそろこう来るだろうと思ってたけどね……」

秀才「こんなことしてる暇があったら、公式の一つでも覚えなよ。
   そんなんだから、いつまでも上のクラスに上がれないんだよ」

予備校生A「うるさいっ!」

ドボォッ!

秀才「ごふっ!」

不良(なんで秀才がボコられてんだよ……。
   少なくとも学校じゃ、わりかし人気者だってのに……)

不良「俺、ちょっと行ってくる」

不良仲間A「はぁ? あんなのほっとけって」

不良仲間B「ヒャハハッ! 正義の味方ってか?」

不良「ちげぇよ、ガリ勉どもに本当の喧嘩ってヤツを拝ませてやるんだよ。
   停学明けてから、すっかりご無沙汰だったしな」

不良仲間A「な~る、お前も鬼だねぇ。
      ここらのワルでさえ、お前の相手にゃならないってのに」

不良「ふん」

不良(アイツにゃ勉強教えてもらってる借りがあるからな。
   あのクソバカども、全員ブチのめしてやる!)

秀才「でも、ぼくだっていつまでもやられっ放しじゃないよ……」スッ

予備校生A「ふん、この人数相手に──」

バキィッ!

秀才の右ストレートが、キレイに顔面に入った。

予備校生A「ギャッ! ──ひぃぃっ!」

予備校生B「なんてことを!」

秀才「さぁ、次はだれが殴られたい……?」ゲホッ

予備校生A「うわぁぁぁっ!」ダッ
予備校生B「ま、待ってくれよぉっ!」ダッ

思わぬ反撃に面食らったのか、秀才を囲んでいた集団はあっさり逃げ出してしまった。

秀才「……げほっ、げほっ」

秀才(ふぅ、我ながらけっこういいパンチだったな。これも不良君のおかげ、か。
   やれやれ、彼に借りができてしまったな)

不良「…………」

不良(……やるじゃねーかよ、秀才。
   ったく、勉強できる上に喧嘩もできるようになるとはな。ホント尊敬するぜ)

不良「やっぱやめた。よそ行こうぜ、よそ」クルッ

不良仲間A「なんだよ、つまんねーの」

不良仲間B「ガリ勉相手に無双するとこ見たかったのによ、ヒャハハッ!」

不良「やっぱ喧嘩は同じ不良(バカ)相手に限るってもんよ」

翌日、不良のグループと秀才のグループが、学校の廊下でばったり出会った。

勉強仲間A(うわっ、不良だ。人間こうなったら終わりだよな~)
秀才「…………」

不良仲間A(ちっ、ガリ勉どもか。ビビった目でこっち見やがって)
不良「…………」

ちなみに、彼ら三人は校舎裏での交流を、仲間には秘密にしている。

しかし──

秀才「どうもありがとう」ボソッ
不良「こっちこそ」ボソッ

不良仲間B「え、今お前、あのガリ勉どもになんかいわなかったか?」

不良「さぁな」

勉強仲間B「秀才君、あの不良たちになにかつぶやかなかった?」

秀才「さぁね」

<校舎裏>

不良と秀才とオタク。三人の密かな交流は続いた。

オタク「これはねぇ~超オススメ!」

オタク「かっこいいヤンキーがいっぱい出てくるんだよ!」

不良「ふーん、よし貸してくれよ」

秀才「……アニメもいいけど、勉強もしなよ。二人とも」

オタク「あ、君にもお勧めのアニメがあるんだ!」グフフッ

オタク「大学受験をテーマにしたアニメなんだけどねぇ。
    アニメなのにけっこうシビアで、泣けるんだよねぇ~」

秀才「わ、分かった、見てみるよ」

不良(さすがの秀才も、オタクのマイペースぶりには敵わないらしいな)

wktk

秀才「ここがこうなると……こうだろ?」

不良「なるほど……」
オタク「なるほどねぇ~」ニィッ

秀才「…………」

秀才「君たちは理解が早くて、教えがいがあるよ。
   もし君らがぼくくらい勉強してたら、
   多分ぼくより成績がよかったんじゃないかな……」

不良「…………」

不良「バ~カ、おまえなにいってんだよ」

不良「俺は勉強してなかったからバカ、おまえは勉強してたから頭いい。
   勉強してた俺、なんてのはハナから存在しないんだよ。
   ──なぁ、オタク?」

オタク「うんうん、アニメにハマってないボクなんて考えられないね!」グフフッ

不良「どうしたんだ、らしくないじゃねぇか? 秀才」

秀才「ちょっとね……」

秀才「こないだ、ぼくなんか及びもつかないくらい頭いい人を知っちゃってね。
   少し自信を失いかけていたんだ」

不良「ふぅ~ん……」

不良「まぁ、分からんでもないな。
   俺たちの世界にも、絶対手を出しちゃダメなヤツってのがいるからな」

オタク「うんうん、どこにでもいるんだよねぇ~スゴイ人って」

不良「上を見てもキリねぇし、下を見てもしょうがねぇ。
   俺は俺って、気楽にやるのがイチバンだぜ」

秀才「フッ……まさか、君なんかに励まされるとはね」

不良「なんかは余計だろ、ボケ」

オタク「アニメだったらそういう強敵を倒せるようになるんだけどねぇ~」グフフッ

不良「現実はアニメのようにはいかねーんだよ、オタク」

それからしばらくしてのことだった。

<学校>

教師「えぇ~ここ最近、この地域の中高生をターゲットにした暴行事件が多発している。
   警察も動いているようだが、まだ捕まっておらん」

教師「みんなも気をつけるようにな!」

ザワザワ…… ガヤガヤ……

不良仲間A「オメェじゃねえの? 犯人」

不良「ンなわけねーだろ、ぶっ飛ばすぞ」

不良仲間A「ったく俺らを狙ってくれりゃ、返り討ちにしてやるんだけどな。
      だけど、ヤンキー連中にもけっこうやられたヤツがいるらしいぞ」

不良仲間B「ヒャハハッ! 犯人探しでもやってみっか?」

不良「くっだらねぇ……興味ねえや」

しかし、翌日──

<学校>

不良「!?」

不良仲間A「よ、よう……」ボロッ

不良「ひでぇケガじゃねえか! どうしたんだよ!」

不良仲間A「昨日、バイト帰りの夜道によ、いきなり襲われて
      ボッコボコにされちまった……」

不良「どんなヤツだったんだよ!?」

その頃教室の隅ではー。

ぼっち(俺)「Zzz・・・」

不良仲間A「覆面つけてて顔は分からなかった……」

不良仲間A「だが、すげぇパンチとキックだった。
      多分フツーにやっても、やられてただろう……ありゃ強いぜ」

不良「……カタキは絶対取ってやるぜ!」

不良仲間A「すまねぇ……が、ムチャすんなよ」

不良「ムチャしねえ不良なんかいねえよ」

不良(そういや今日、不良仲間Bが休んでるな……)

不良(まさか、アイツも──)

不良の予感は当たっていた。
不良仲間Bも、夜道で何者かに襲われ病院送りにされてしまっていた。

不良(正々堂々の喧嘩ならともかく、俺はこういう闇討ちみたいなのが
   一番キライなんだ!)

不良(どこのどいつか知らねーが、ふざけやがって……!)ギリッ

不良(絶対許さねぇ!)

不良(俺がブチのめしてやる!)

それから数日間、不良は夜道を当てもなくさまよったが、
結局犯人と遭遇することはなかった。

暴行事件の猛威は、秀才とオタクの周辺にも及ぶようになった。

<予備校>

講師「この地域で発生してる暴行事件に、ウチの生徒も巻き込まれています。
   受験を控える大事な時期、くれぐれも気をつけるようにしましょう!」

秀才「…………」

秀才(手当たり次第、って感じだな)

<アニメショップ>

オタク「なんだってぇ!?」

オタク仲間A「あぁ、ひどいことするヤツがいたもんだよ。
       散々殴られた上に、金とか全部奪われたんだってさ」

オタク仲間B「我々も気をつけましょうぞ」

オタク「うん……」

そして──

不良、秀才、オタク。
三人は、自然と校舎裏に集結していた。

ザッ

不良「よう」

ザッ

秀才「やぁ」

ザッ

オタク「久しぶり~」グフフッ

不良「……俺のダチがやられた。カタキを取ってやりてぇ。
   だが、俺一人じゃ犯人にはたどり着けない。お前らの力を借りてぇ」

秀才「ぼくの予備校もだいぶ被害に遭っているよ。
   落ち着いて勉強するためにも、犯人の蛮行を放っとくわけにはいかないね」

オタク「ボクもさ。アニメ好きな仲間が何人かやられてしまったよ……。
    絶対許せないよ、こんなの!」

不良「俺たちが」

秀才「事件を」

オタク「解決しよう!」

三人の志が一つとなった。

おお
ついに

不良「とはいっても、どうやって犯人を探す?
   警察のパトロールすらかいくぐるようなヤツなんだぜ?
   聞いた話じゃ、他校のヤンキーどもも餌食になってるらしい」

秀才「ああ、犯人はかなりの知能犯のハズだ。
   しかも腕っぷしも強く、武器を使うこともあるらしい……」

オタク「ハイスペックだねぇ」

秀才「でも優秀な犯人だからこそ、
   事件を起こす日時や場所に法則性を持たせている可能性が高い」

オタク「どうして?」

秀才「捜査している人たちを心の中であざ笑うためさ。
   法則性に気づけば防げるのにバカじゃないの、ってね」

秀才「とりあえず、この町の地図が欲しいな。
   今までの事件の情報を整理すれば、なにか分かるかもしれない」

不良「地図帳持ってくるか?」

秀才「地図帳にはこの町の地図はないよ。仕方ない、買って──」

オタク「よぉし、ボクに任せてくれよ!」

オタクはカバンからノートパソコンとプリンターを取り出した。

オタク「ネットに接続して、と……縮尺はこんなものでいいかな?」

秀才「う、うん」

オタク「よぉ~し、この辺の地図を印刷しちゃうよ、少し待っててねぇ~」カチャカチャ

不良(コイツ、こんなもん学校に持ってきてるのか……!)

秀才(う~む、恐ろしいほどの手際のよさだ)

まもなく地図が出てきた。

オタク「はい、オッケー」

秀才「ありがとう、オタク君。事件のことは先生に聞いてきたから、
   地図に覚えてる限りの犯行場所と時間を埋めていこう」

しかし──

不良「う~ん、法則性なんてないぜ? 日時も場所もバラバラだ」

オタク「うん、とにかく色んな場所でやってるってことは分かったけどねぇ~」

秀才「…………」

秀才「不良君」

不良「なんだ?」

秀才「もし君たち不良が、だれかにボコボコにやられたとして、
   それを警察や教師にいうかい?」

不良「アホな質問するなよ、いうワケねーだろ。んな情けないこと……。
   俺のダチも転んだ、とかバレバレの嘘ついたみたいだし」

秀才「うん、つまりこの地図には重要な情報が欠けている。
   君たちのような不良がやられた時の情報が……」

秀才「この地図は、あくまでぼくが先生から得た情報を書き込んだだけだから、
   ボコボコにされたことを恥じるような人たちの被害情報は欠けているハズだ」

不良「あ、そうか!」

不良「ようし、この辺の不良の連絡先はだいたい知ってるからな。
   すぐに聞いてやるよ」

不良は携帯電話で、不良仲間たちから情報を仕入れた。

不良「完璧じゃねーけど、不良どもの被害状況が分かったぜ」

秀才「……ありがとう。じゃあ、それを書き込んでみよう」

秀才は地図の中に、不良が得た情報を書き加えていく。

すると──

不良「あ……!」

オタク「おおお~っ! これはスゴイねぇ。
    三日おきに、この町をグルグル回るように犯行場所を変えているよ!」

秀才「やはり法則性を持たせていたね。
   おそらく犯人は、情報が欠けてしまうことも計算に入れてたんだろう。
   恐ろしいヤツだよ、まったく」

応援してんぞ

不良「つまりこの法則に乗っ取るとするなら──えぇと、次はいつだ?」

秀才「次に事件を起こすのは、明日の夜だ。場所はこの辺りだ。
   近くに大きい雑木林があるから、ここに連れ込む可能性が高い」

オタク「で、どうするんだい?」

不良「決まってんだろ。こんなクソヤロウは俺がこの手でブチのめす!
   警察なんかに任せてられっかよ!」

秀才「あまり気は進まないけど、ぼくも手伝うよ。
   君の強さを疑うワケじゃないけど、フォロー役がいた方がいいだろ?」

不良「なにぃ?」

オタク「ボクもやるよぉ~。なんだかワクワクしてきた」グフフッ

不良「……ちっ、お前ら足手まといになるなよな」

次の日の夜、三人は校門に集まった。

不良「わりぃ、遅れた」タタタッ

秀才「やれやれ、遅刻だ」

オタク「遅刻だよぉ~」コフゥ

不良「まぁ、多目に見てくれよ。で、オタク、お前なに持ってきてんだ」

オタク「エアガンと、犯人を捕まえるためのロープだよぉ~。
    あと張り込み中は暇だろうから、漫画も数冊持ってきてあるよ」

不良「──ったく、しょうもないモン持ってきやがって……。
   ま、俺だけでカタはつくと思うけどな」

三人は、秀才が予測した地点に到着した。

秀才「この辺りだね……」ビクビク

オタク「どっからでも来い!」オドオド

不良「お前ら不自然すぎだぜ、犯人に警戒されたらオトリ捜査にならねーぞ」

すると──

青年「あの~君たち、向こうに可愛い女の子がいるんだけど、興味ない?」

あからさまに怪しい青年が現れた。

不良「うわ、怪しい……コイツが犯人か?」ボソッ

秀才「仲間かもしれないね。とにかく従ってみよう」ボソッ

オタク「ボクは二次元にしか興味ないなぁ~」

青年「へ?」

不良「なんでもない、なんでもない! スッゲー興味あるから、連れてってくれ!」

予想通り、青年は三人を連れて雑木林の中に入っていった。

不良「おいおい、こんなところに女の子がいるのかよ?」

青年「変わり者の女の子でね。こういう中で楽しみたいんだってさ」

不良「ふぅ~ん」

オタク「野外プレイかぁ、マニアックだね!」グフフッ

しばらく歩くと、覆面をつけた男が立っていた。

青年「獲物を連れてきました!」

覆面「おう、ご苦労」

青年「こ、これで俺は見逃してもらえ──」

バキィッ!

青年「げぶぅ……」ドサッ

覆面のハイキックで、青年は倒された。

オタク「うわぁっ!?」
秀才「なっ……!」

不良(なんて蹴りだ……! コイツ……とてつもなく強いぞ!)

覆面「さぁ~て、テメェら三人ともボコらせてもらうぜ。
   なんも恨みはねぇが、俺っていわゆる暴力中毒者なもんだからさ」

覆面「人をボコるのが三度の飯より好きなんだよなァ、俺って」

秀才「なるほど……君が犯人か」

秀才「無関係な人を脅して誘い役にして、
   人目につかないところに獲物をおびき寄せてから暴行を楽しむってワケか」

秀才「どんどん犯行が巧妙化しているようだね」

覆面「!?」

覆面「もしかしてお前ら、ここに来たのは偶然じゃないな?
   犯行の法則性に気づいたってのか!?」

オタク「そうさ! ボクらが成敗してあげるから、覚悟するんだねぇ!
    この悪党め!」キリッ

不良「さぁ、観念しな。その薄汚い覆面を取れよ!」

覆面「クックック、いいだろう」バッ

覆面の下には、ピアスまみれの凶悪な人相が潜んでいた。

DQN「ジャ~ン、イケメンだろ?」

秀才(なんて顔だ……いかにもワルって感じだ!)
オタク(ひぃぃぃぃっ!)

不良の世界に免疫のない二人が怯えるのも無理はなかった。
しかし、DQNに対してもっとも恐れを抱いていたのは不良だった。

不良(コイツ……もしかしてDQNじゃねえのか!?
   やべぇ、コイツの噂は色々聞いてるが、俺なんかじゃとても敵わねぇ!)

不良(だが……喧嘩で勝てなくても逃げることはできるはず!)

不良「オイ、お前ら二人とも逃げ──」

DQN「お~い、一人で三人相手すんのはメンドイから、頼むわ」

不良「なっ!?」

エリート「やれやれ、仕方ないなぁ」ガサッ

キモオタ「ぐしゅしゅしゅ……こりゃあ面白そうな獲物でござるなぁ」ガサッ

不良(仲間がいたのか!? 俺たちと同じ三人組か……!)

秀才(彼は……エリート!?
   勉強しなくとも一流大学に余裕で受かるといわれる彼が、なぜこんなことを!?)

オタク(おおっ、あれはキモオタ君だねぇ。
    全国のオタクのカリスマ的存在にこんなところで会えるとはぁ~)グフフッ

DQN「コイツらけっこう頭がキレるぜ。
    エリート、お前の作った法則性に警察より先に気づきやがった」

エリート「ふうん、凡人にしてはけっこうやるみたいだね。
     ま、気づいたところで、この場をどうにかできなきゃ無意味だけどさ」

秀才「なるほど、君が裏で手を引いてたってワケかい。
   どうりで、なかなか警察に尻尾をつかまれないワケだよ」

秀才「でも、顔を晒したのは失敗だったね。
   ぼくらに警察に駆け込まれる前に、自首することを勧めるよ」

エリート「失敗? なんで?」

秀才「!?」

秀才「だ、だって、ぼくらは君らの顔を覚えたぞ!?」

エリート「おお、さすが凡人だ。なんて当たり前でつまらない答えなのだろうか。
     ──だったらさ、殺しちゃえばいいよね」

秀才「バカか!? 暴行するだけならともかく、殺したりしたら──」

エリート「うん、たしかにいくらぼくでも殺人の隠ぺいをするのは面倒だ。
     でもさ、行方不明にするのは簡単なんだよ。 
     今、この一瞬でぼくは君らを行方不明にする方法を72通り思いついた」

エリート「一方の君たちは、特に策を持ち合わせているワケでもなさそうだ」

エリート「君の中途半端な知能指数と正義感が、死を招く結果になったワケだ。
     悲しいねぇ……」

秀才「うぅっ……」ゾクッ

キモオタ「小生の相手は君でござるか?」

キモオタ「ぐしゅしゅっ、君のせこいエアガンで、小生の相手がどこまで務まるか、
     楽しみでござるなぁ~」

キモオタ「ボクはアニメやゲームだけでなく、武器マニアでもあるのでござる」

キモオタ「小生の改造エアガンはアルミ缶くらいなら軽く貫通するでござるよぉ~。
     ぐしゅしゅしゅ……」

オタク「いやぁ~こんな強敵と戦えるなんて光栄だよぉ!」

オタク「まるでアニメの主人公になったみたいだ!」グフフッ

オタク「──ねぇ、二人とも!」

不良&秀才「…………」

オタク「ん、どうしたんだい? 二人とも」

不良「ダメだ……勝てねぇ……」
秀才「うん……これはもう、どうしようもない……」

オタク「どうしてだい?」

不良「あのDQNってヤツは、とんでもないワルなんだ……。
   プロボクサーに勝ったとか、族をたった一人で潰したとか、
   それこそアニメみてーな武勇伝をいくつも持ってやがる……」

不良「俺ら不良の世界にも、手を出しちゃいけないヤツってのがいる。
   アイツはまさにそれだ。俺たちなんかが敵う相手じゃねえんだよ」

秀才「あっちのエリートもそうだ。
   いつだったかぼくがいった“ぼくなんかじゃ及びもつかない人”ってのが
   彼なんだよ……」

秀才「ぼくのせいだ……! まさか彼が犯人だったなんて予測もしなかった……」

DQN「ほぉ~分かってんじゃんか、ザコども。
    なんなら生かしておいてやって、舎弟にしてやってもいいぜ?」

エリート「それが凡人にできる、一番賢い選択だね」
    (いざという時、証拠をでっちあげて身代わりにもできるしね)

バチンッ! ベチンッ!

オタクが不良と秀才を叩いた。

秀才「うぐっ……!?」
不良「なにしやがんだ、テメェッ!」

オタク「戦いもせず、諦めるのかい?」

不良「あぁ!?」

オタク「自分たちより格上と戦うチャンス、しかも悪党から、逃げるのかい!?」

不良「……ざけんな! 現実はアニメみたいにいかねぇんだよ!
   現実とアニメの区別もつかねえテメェにゃあ、分からねぇかもしれねえけどよ!」

オタク「逆だよぉ~」

不良「あぁ?」

オタク「アニメはあくまでアニメだよ。
    アニメキャラがボクらより優れてるハズないだろう?」

オタク「だったら──」

オタク「ボクらにアニメキャラのようなことができないハズがないっ!」

不良&秀才「…………」

不良(オタク、ありがとよ……)
  「ケッ、まさかお前に目を覚ましてもらえるとはな!」

不良「やってやるぜ、クソども! ダチのカタキ討ちだ!」ザッ

DQN「死ぬルートを選択したワケね。あっそ」ザッ

不良「おりゃあっ!」

バキッ!

不良は腕力があり、喧嘩のセンスもある。
彼の拳をまともに喰らって、立っていられた者はいなかった。

──ただし今日までの話であるが。

不良「!?」

DQN「いいパンチだ。……でもまぁ、二流ってとこだな」

ガキィッ!

DQNのヒジ打ちが、不良の頭にヒットした。

不良「ぐぁっ……!」

秀才(こうなったら、やるしかない!
   ぼくだって不良君から、喧嘩のやり方を習ったんだ! やれるハズだ!)

エリート「なんだ結局そうくるの? 凡人未満だねぇ、君たちは」

秀才「うるさいっ!」

ブオンッ!

不良から習ったパンチで、エリートの顔面を狙う。
が、あっさりかわされる。

エリート「君もそこそこ頭はキレるようだけど、ま、そこそこだね。
     そこいくとぼくなんかホラ、なにやっても一流だからさ」

バキィッ!

エリートの右拳が、秀才の頬をえぐる。

エリート「DQN君ほどじゃないけど、ぼくもけっこう強いんだよ。
     いやぁ、才能ってのは恐ろしいねえ」

秀才(くっ、くそぉ……!)

オタク(マズイ……二人ともやられてる……!)

キモオタ「ぐしゅっ、しゅしゅしゅっ……!」

キモオタ「じゃあ小生たちも始めようか?」

ズパンッ!

キモオタの改造エアガンから飛び出したBB弾が、オタクの耳をかすめた。
まともに当たれば耳たぶをふっ飛ばしかねない迫力であった。

キモオタ「うひょぉ~! さすが小生、目に当たれば失明確定でござるな!」

オタク「うおあああっ!」ダッ

エアガンで応戦するかと思いきや、オタクはキモオタめがけて突っ込んだ。

キモオタ「おおっ、まさかの肉弾戦でござるか!?」

オタク(コイツはエアガンなしじゃ、大したことないはずだ。
    早くコイツをやっつけて、二人に加勢しないとぉ~!)

オタクの猛攻に、手こずるキモオタ。

キモオタ「うっとうしい……仕方ないでござるな」

ドスッ!

キモオタは隠し持っていたナイフを、オタクの腹に突き刺した。

オタク「うっ……!」

キモオタ「小生、ガンマンでありながらナイフ使いでもあるのでござる。
     ぐしゅしゅしゅ……」

キモオタ「今時、肉弾戦なんて流行らないでござるよ。
     やっぱり今の時代は、チート武器でズドン! でござる」

オタク「あぐぅぅぅ……!」ドサッ

不良「オッ……」

不良「オタクゥゥゥッ!」

DQN「さすがキモオタ!」

DQN「将来は、海外に行って死の商人をやりたいとかいってるだけあるわ!
    ちゅうちょなく刺しやがった、ギャハハハハッ!」

不良「ざっけんじゃねえ、ブッ殺す!」

バキッ! ドカッ! ドゴッ!

怒りに燃える不良が、DQN相手に盛り返す──が。

ドゴォッ!

DQNのボディブローが、不良の腹にめり込む。やはり地力の差は大きい。

不良「ぐお……っ!」

DQN「ザコが、調子に乗りやがって……。
    安心しろよ、すぐにテメェも送ってやるからよ」

秀才(くそっ、まさかオタク君が刺されるなんて……!)

秀才「君らは……そんなに恵まれた才能を持っていて、
   なぜこんな下らない事件を起こしたんだっ!?」

大声で怒鳴りつける秀才。

エリート「お、キレたふりして叫んで、助けを呼ぼうって作戦かい?
     無駄だよ、ここら辺は人通りがないからね」

秀才(バレたか……! しかし早く助けを呼ばないとオタク君が死ぬ!
   ──いや、みんな殺される!)

エリート「まぁせっかくだ、答えてあげよう」

エリート「ぼくのような一流にはねえ、やっぱり周囲の期待も大きいんだ。
     だから重圧から生じるストレスを解消するため……
     彼らと組んで人狩りをするようになったのさ」

秀才「天才ならではの悩みってヤツかい?」

エリート「…………」プッ

エリート「アハハハハハハハハハッ!」

エリート「──なぁんてねぇ、ぼくにとって周囲の期待なんてどうでもいいさ。
     なんでカスどもの期待なんかを気にする必要がある?」

エリート「というか、ぼくは適当にやってても周囲の期待以上になっちゃうんだよね」

秀才「!」

エリート「ぼくが人狩りをやったのはね、ヒマだったからだよ。
     それ以上でも、それ以下でもないさ」

エリート「ぼくって何でもできちゃうから、いっつも退屈しててねぇ」

エリート「そんな時、暴力の権化みたいなDQN君と、
     エアガンとかナイフが大好きなキモオタ君に出会ったのさ」

エリート「彼らもまた、ぼくとはちがう分野でのエリート。
     引かれ合うところがあったのかもしれないね」

エリート「ぼくが計画を立て、DQN君の暴力とキモオタ君の武器で、
     次々とカスどもを無差別に病院送りにしてやったよ」

エリート「君らもどうやらタイプのちがう三人がそろったトリオのようだが、
     まさにぼくらの下位互換って感じだね、アハハハハッ!」

秀才「……ぐっ!」

ムクッ

オタク「ボクらが君らの下位互換……? とんでもない思い上がりだねぇ~」グフフッ

腹をナイフで刺されたはずのオタクが、起き上がった。

キモオタ「おぅわっ! バカな……おぬし生きてたでござるか!?」

オタク(腹の中に漫画を隠し持っててよかったよ……。
    ちょっとだけ刺さったけど……これくらいなら平気だ)

オタク「ボクはね、あのサボりスポットで二人に会えたことを感謝してるよ。
    勉強教えてもらったり、アニメの話をしたり……楽しかった。
    今だって殺されかけてるけど、一緒に戦えて嬉しい」

オタク「ボクらはれっきとした仲間なんだ!
    それに引きかえ、君たちはただ人を傷つけたいだけの三人組だ!」

オタク「君たちなんかボクらの上位互換どころか、下位互換ですらない」

オタク「ただのどうしようもないダメ人間が、三人集まっただけじゃないかぁ~!」

DQN「この俺に向かって、ダメ人間だとぉ!?」ギロッ
エリート「ほう、ぼくに向かってそんな口を叩いたのは君が初めてだよ」ピクッ
キモオタ「ぐしゅしゅっ、小生を愚弄するとは……!」イラッ

オタクの言葉は三人の自尊心をひどく傷つけた。

秀才「────!」ハッ

秀才「二人とも、ぼくのところに集まってくれ!」

不良「……お、おう!」ダッ
オタク「分かったよ!」ダッ

秀才の号令で、三人が一ヶ所に固まる。

DQN「逃がすかよ、テメェらまとめて殺してやる!」ダッ
キモオタ「今度は首をサクッと切ってやるでござるよ!」ダッ

DQN「くたばれやぁっ!」ブオンッ

秀才「しゃがめっ!」

バッ!

秀才のところに集まった三人が一斉にしゃがむ。
すると、DQNの拳の前にはエリートがいた。

エリート「え?」
DQN「あっ」

ガツンッ!

エリート「ぶげぇっ……!」ドサッ

DQNのパンチで前歯を折られ、エリートが崩れ落ちた。

秀才(や、やった……マグレっぽいけど、うまくいった!)

DQN「ちぃっ、しまった……!」

しかし、DQNの次はナイフを振りかざしたキモオタが迫ってきた。

オタク「ここだっ!」パシュッ

オタクがエアガンを放つ。

BB弾が、キモオタの右手にヒットした。
その拍子にナイフが投げ出され、DQNの頬をかすめた。

DQN「!」

DQN「いってぇ……」

抑え役のエリートが退場したこともあり、ついにDQNがキレた。

DQN「…………!」ブチブチッ

DQN「なにしやがんだ、このクソがぁっ!」

ドゴッ!

キモオタ「ぐげ──っ!」

DQNの中段蹴りが、キモオタを吹っ飛ばした。

DQN「テメェら、殺してやる、殺してやるぜ!
    腹かっさばいて、内臓引きずりだしてやっからよォォォッ!」

目を血走らせ、DQNがキモオタのナイフを拾おうとする。
だがそこに、猛然とオタクと秀才が突っ込んだ。

秀才&オタク「うわあぁぁぁっ!」

ドガッ!

DQN「うごぉっ!?」

DQN「テメェらくっつくんじゃねえ、離れやがれ! ゴミどもがっ!」バッ

オタク「うひぃっ!」
秀才「ぐうっ!」

あっけなく振りほどかれる二人。

ここでDQNは次の行動をどうするか、一瞬悩んだ。
ナイフを拾うのが先か、あるいは二人にトドメを刺すのが先か。

だが──

不良「うおらあぁぁぁぁっ!!!」
DQN「!?」

DQNが行動を選択するよりも、不良が飛びかかるのが早かった。

ガゴォンッ!

全体重を乗せた捨て身の右ストレートが、DQNの顎を射抜いた。
いかにDQNといえど、無防備な状態でこの一撃に耐えられるはずもなく──

DQN「あぐぁ……っ」グラッ

ドザァッ……!

──白目をむき、ぶっ倒れた。

不良「よ……っ」

不良「よっしゃ、よっしゃあああっ!」

オタク「やったぁ~!」

秀才「……さてと、通報しようか」

不良「──ったく、相変わらずクールなヤツだな。もっと喜べよ」

オタク「そうだよ、ボクの頭の中でファンファーレが鳴ってるよ。
    きっと経験値がいっぱい手に入ったよ」

オタク「レベルアップしまくってるよ、きっと」

秀才「やれやれ、君たちは相変わらずだな」

気絶している犯人らをロープで縛り、一息つく不良たち。

不良「いてて……勝つには勝ったが、全身殴られまくっちまったぜ。
   お前らは大丈夫か?」

秀才「ぼくもあちこち殴られたけど、なんとか……」

オタク「ボクも刺されたけど、漫画のおかげで助かったよぉ~」

不良「ふぅ~……ま、よくやったよ、俺たち」

オタク「だからいったろう?
    アニメキャラにできることが、ボクらにできないハズがないって」グフフッ

不良「ハハ、どうせならもう少しかっこよく勝ちたかったがな」

秀才「オタク君の勇気と、不良君の喧嘩の強さがなきゃ……
   ぼくらは勝てなかっただろうね」

不良「オイオイ、らしくねーな。
   そこはぼくの頭脳があればこそ、とかいっとけよ」

オタク「うんうん、秀才君のおかげで彼らの仲間割れを誘えたんだからねぇ~」

秀才「オタク君が彼らに“ダメ人間”っていった時、
   彼らは自分がいわれたことについてだけ、怒っていた」

秀才「あれでピンときたんだ。彼らの間にチームワークも信頼関係もないって」

秀才「あの三人は本当に強かったよ」

秀才「ぼくらは個々の力では完全に負けていた……。
   でもなんていうのかな、ぼくらの結束の力が彼らを上回ったんだ」

不良「……だな!」

オタク「そうだねぇ~!」グフフッ

不良&秀才&オタク「ハッハッハッハッハ……!」

まもなく通報によって駆けつけた警官らによって、
連続暴行犯である、DQN、エリート、キモオタは捕まった。


彼ら三人はいずれも、各々の分野においてトップクラスの逸材であった。
本来なら、不良、秀才、オタクが束になっても敵う相手ではなかった。


しかし、勝ち目のなかった三つの力が、結束することで輝きを増し、
三つの才能の暴走を食い止めたのである。

数日後──

<学校>

彼らは一躍ヒーローとなっていた。

不良仲間A「さすがだぜ、まさかあのDQNを倒すなんてよ!
      これでお前の名前も一気に全国レベルになったんじゃねえか!?」

不良仲間B「ありがとよ~、俺のカタキを取ってくれて!
      お前はバカだけど最強だよ、ヒャハハハッ!」

不良「バ~カ、俺だけの力じゃねえよ。
   他の二人がいなかったら、まちがいなく俺は今頃あの世だったぜ」

不良仲間A「まっさか、お前があの秀才やオタクとつるんでたとはな。
      今までああいうヤツらをバカにしてたが、ヤツらもやるもんだな」

不良仲間B「ああ、今回ばかりはまいったよ」

不良(まったくだぜ……。こうしていられるのも、あの二人のおかげだ……)

三人はこれまで、交流していることを周囲には秘密にしていたが、
今回の件ですっかり公になってしまった。


しかし、彼らはそれに後ろめたさを感じることもなく、
人がいるところでも堂々とコミュニケーションを取るようになった。


彼らはそれぞれ不良であり、秀才であり、オタクであり続けたが、
生き方はちがえど彼らが結んだ友情はたしかなものであった。


やがて、彼らが校舎裏でサボることはなくなっていった……。

<学校>

不良「ようオタク、こないだ借りたアニメ、面白かったぜ!
   やっぱ俺はああいう単純な話のがいいな」

オタク「いや~気に入ってもらえてよかったよ!」

不良「秀才、お前のおかげで中間テスト全部平均点以上だったぜ。
   いっつも赤点の常連だったってのによ!」

秀才「まぁ、ぼくの教え方がヘタじゃなかったことで、よかったよ。
   君こそ、すごい飛び蹴りを教えてくれるって約束忘れてないだろ?」

不良「おう、任せとけ! ただし、使うんじゃねえぞ」

オタク「おっとボクにも教えてくれよぉ~」



彼ら三人はこの学校の名物トリオとして、末永く語り継がれることになったという──


                                   ~おわり~

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