北上「今度生まれ変わったら……重巡……いや、戦艦に」 (233)

大井「北上さん凄い!フラグシップを一撃で!」

北上「ふふふ~、大井っちの援護あってこその戦火だよ~」


フラグ「……」


北上「あ、あれ、あいつまだ生きて……」

大井「き、北上さん!危ない!」


チュドンッ


北上(あ、直撃食らった……)

大井「き、北上さん!?」

北上「うう、今度生まれ変わったら……重巡……いや、戦艦に……」ブクブクブク

大井「きたかみさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

~風呂~


北上「って、うおおおおおおっ!」ビクンッ

北上「……」

北上「……」

北上「はあ、なんだ夢かぁ……」ノビー

北上「はー、びっくりしたぁ」

赤城「北上さん?北上さんじゃないですか」

北上「ありゃ、赤城さんじゃない、また怪我したの?」

赤城「う……か、甲板を少し……」

北上「もー、まーた提督に怒られちゃうよ?」

赤城「もうしわけありません……」ショボン

北上「ま、私の入渠率は似たようなもんだから、あんまり言えた義理じゃないんだけどね~」

赤城「え?北上さんって良く怪我されるんですか?」

北上「なーに言ってんの、良く一緒にお風呂入ってるじゃん」

赤城「いえ、殆どお見かけした事ありませんけど……」

北上「またまたー」ザブーン

赤城「いえ、ほんとに」

赤城「北上さんは、ほら、私と違って頑丈じゃないですか」

北上「そう~?」

赤城「良くMVPも取られますし」

北上「へへへ、そりゃーね、私の酸素魚雷にかかればどんな旗艦もイチコロだしねっ♪」

赤城「もう、北上さん冗談ばっかり……北上さんの武器は46cm三連装砲じゃないですか」

北上「そうそう、あのおっきい砲が私の……」

赤城「はー、疲れが取れますねえ……」

北上「……」

赤城「……」

北上「ん?」

赤城「どうかしましたか?北上さん、もう少し、お湯たします?」

北上「い、いや、湯加減はこれで良いけど……え、今、赤城さん冗談言った?」

赤城「冗談?」

北上「いやあ、赤城さんって真面目な顔して冗談言うんだもん、びっくりしちゃったよ~」

赤城「え、何か変な事言いました?」

北上「うん、私があんなおっきい砲載せられる訳ないじゃん?」

赤城「え、何時も載せてらっしゃいますよね?」

北上「え……」

赤城「だって、ほら、北上さんは戦艦ですし」

北上「え」

赤城「大和型ですし」

北上「ええ」

赤城「46cm三連装砲を3門載せて9連続で放てるって何時もおっしゃってたじゃないですか」

北上「ええええええー!」

北上(赤城さん何言ってるの)

北上(これが一航戦流の冗談なのかな)

北上(いや、けど冗談にしてはしつこい気も……)

北上(……というか)

北上「ない」

赤城「え?」

北上「いつも足に着いてる酸素魚雷が無い!」

赤城「酸素……えーと、兵装なら脱衣室に置いて有りましたけど」

北上「ありがと!赤城さん!」タッ

赤城「はあ……」

北上「えーと、酸素魚雷酸素魚雷……無いなあ……」キョロキョロ

北上「というか、この脱衣室の真ん中に鎮座してるでっかい砲台誰んだ、邪魔だなあ」

北上「ちゃんと仕舞っといてよ……あ、名前が書いてある、よーし後で抗議に行っちゃろ」

北上「えーと……き・た・か・み……」

北上「北上さんのだったかあ、それじゃあ仕方ないなあ」

北上「仕方……」

北上「……ない」

北上「なあ……」

北上「……」

北上「……」

北上「……」ダッシュ

~提督のお部屋~


北上「うおおーーーい提督提督!」

提督「え、なに……というか、北上さん、何で全裸なの」

北上「大事件!大事件なんだよ!」

提督「はいはい、それより怪我はもういいの?」

北上「え、あ、うん、怪我はもう、治ったみたい」

提督「んー、そうみたいだね、お腹も何時もみたいに綺麗な肌に戻ってるし」ナデナデ

北上「もー、提督、体触るの止めてってば」

提督「女の子同士なんだし、別にいいでしょ?」

北上「まー、そうだけどさー」

提督「それで、大事件って?」

北上「あ、そ、そうだ!私!私が!」

提督「はいはい、落ち着いて……金剛、ちょっとお茶入れてくれる?」

金剛「はいデース」

提督「ほら、今金剛がおいしいお茶入れてくれるから」

提督「落ち着いて話してみて?」

北上「え、えっと……」

~数分後~


提督「……なるほど、重雷装艦だった自分が、眼が覚めたら戦艦になっていた……と」

北上「うんうん、そうなんだよ」

提督「んー……」

金剛「テイトク、北上さんはなに言ってるデースか?」

提督「あー、まあねー」

北上「ひょっとして、提督……私の身体に何かした?」

提督「性的に、してみたいなーと思ったことは何度か」

北上「うわあ、この人隠そうともしないから逆にすがすがしいわあ」

提督「けど、改装とかはしてないよ?」

北上「え、じゃあ何でこんな事に……」

金剛「前から、ソウだったじゃないデスか?」

北上「え?」

提督「……大和型戦艦五番艦北上……それが、私達が知ってる北上さんなんだ」

北上「は……?」

提督「だからね、私達としては北上さんの艦種が代ってるなんて、認識できないんだよ」

北上「え、え、ごめん、ちょっと何言ってるか判んない……」

提督「逆に、どうして北上さんが自分の事を「重雷装艦だ」とか言い出したのか、そっちの方が不思議に感じるの」

北上「……」

提督「まあ、先の戦闘はかなり激しかったから、そんな中でちょっと北上さんを酷使し過ぎちゃったのかも知れないね」

北上「……激戦のショックで私の記憶が、飛んじゃったって事?」

提督「今のところは、その可能性が一番高いと思う」

北上「……」

提督「北上さん?」

北上(そんな、私が、私が重雷装艦じゃなくなるなんて)

北上(酸素魚雷装備できなくなるなんて)

北上(その代わり、あの糞でっかい砲台担いで前線に出てばんばん撃ってしかも高い装甲まで持つことになるなんて)

北上(そんな……そんな……)

提督「おーい、北上さん~?」

北上「……そんなのって、ちょっと面白そうじゃない?」

提督「?」

北上「いやー、提督、ごめん、私の勘違いだったよ~」

提督「は?」

北上「私は大和型戦艦の5番艦北上……確かにそうだった、前からそうだったわ」

提督「えーと……」

北上「いやあ、ちょっと寝ぼけちゃったかなあ、はっはっはっ」

提督「……まあ、自覚してくれたんならいいけどね」

北上「勿論!自覚してますよ~!」

北上「って、わたし、全裸じゃん!寒っ!」

北上「ちょっと脱衣所戻って服着て来なくちゃ!」

北上「じゃ、またね~提督~」ピューッ

金剛「な、なんだったんでショーか」ポカン

提督「まあ、何時もの北上さんに戻ったみたいだから、いいんじゃない?」

北上「ふんふんふん~♪私は戦艦きたかみ~♪」

電「あ、き、北上さん!」

北上「うわ、出た、駆逐艦だ」

電「す、すみませんっ!」

北上「冗談冗談!今から演習?それとも遠征?」

電「え、演習の方なのですっ」

北上「そっか、まあ頑張って~」

電「は、はいっ!」トテトテトテ


北上(いやあ、可愛いもんだよねえ、駆逐艦も)

北上(健気に魚雷持って……って、あの子、魚雷じゃなくて連装砲装備してるわ、勿体なーい)

北上(今度、魚雷装備するように言っとこうっと)

~敵海域~


提督「よし、それでは作戦会議を開始する」

提督「作戦内容は皆に配った命令書の通りだ」

提督「第一艦隊の構成は……」

北上「……」ドキドキ

提督「大和、赤城、金剛、赤城、加賀」

提督「北上」

北上「やっ……たぁー♪」

提督「この6隻とする」

北上(初陣だ、初陣だ~♪)

北上(戦艦としての初陣だ~♪)

赤城「偵察機が敵影を捕らえました!」

加賀「空母1、重巡1、他は全て駆逐艦の模様」

赤城「航空部隊、交戦に入ります!」



ドーン、ドーン



北上「よーし!こっちも攻撃準備入るよ~!」

金剛「まだ早すぎデスよ?」

北上「あ、そっか」

北上(甲標的も魚雷もないから、先制の一撃できないのか……何かムズムズするぅっ)


赤城「制空権を得ました!敵旗艦、動きます!」

金剛「よーし、私達の出番ネー!」

北上「お、おう!」

北上「え、えーと、これどうやって撃つんだっけ、やばい撃ち方忘れた……」

金剛「ファイヤー!」ドーン

北上「というか、重っ、この砲台重っ」

長門「全主砲、斉射……うてー!」ドーン

北上「こ、これだ、この弾詰めて……」

大和「北上さん、行きますよ!」ドーン

北上「あ、あわわ、ちょっと待って……よ、よし、これで……」

北上「ぎったぎたにしてあげましょーかねぇ!」カチッ


ドゥドゥドゥドゥドゥーーーン


北上「げふーっ……」ピュー

金剛「き、北上さんが派手に吹き飛びましたネ!」

赤城「被弾!?被弾なの!?」

北上「……」フラ

大和「いや、あれは砲撃の衝撃で吹き飛んだだけみたいですね」

北上「あー、びっくりした……あ、そ、そうだ、敵は?」

金剛「北上さんの最後の一撃で、ちょうど旗艦が沈んだ見たいヨ」

北上「お、おおー……」

北上(凄い安定した火力、更に……)

北上「み、みんな怪我はないよね?割と敵の砲とか雷撃飛んできてたみたいだけど」

加賀「珍しく赤城さんも被弾しませんでしたし」

赤城「まっ!」

北上(多少の攻撃をものともしない防御力……)


北上「……いやあ、やっぱり時代は戦艦だよね!」

赤城「もう、北上さんったら」

金剛「自分の攻撃で吹き飛んでおいて、凄く元気ですネ~」

北上「それほどでも!」



「「「ははははは」」」

提督「はい、みんな御苦労さま、被害はないみたいだけど、汚れたり疲れたりしたでしょ?」

提督「ゆっくりお風呂に入って、疲れを落としてきて?」


「「「「「「はーーい!」」」」」」


北上「いやあ、それにしても私の一撃、凄かったでしょ~?」

金剛「はいはい、さっきから耳にタコができますネ」

赤城「まあ、けど実際凄かったですしね、斉射の時、思わず、耳塞いじゃいましたし」

北上「あー、あれは確かにね~、何とかしたいよねえ」


電「……」トボトボ

雷「……」


北上「お、あそこを歩いてるのは……」

赤城「北上さん?」

北上「あ、みんなは先行っといて?」

北上「おーい、そこの駆逐艦~」

電「あ、北上さん……こんばんわなのです」

雷「こんばんわ、北上さん」

北上「どうしたのさ、何か元気ないみたいだけど」

電「うー……」

雷「この子、演習でちょっとポカやらかしまして、負けちゃったんですよね」

北上「あー、そっかあ」

電「……どうしたら」

北上「え?」

電「どうしたら、北上さんみたいに強くなれるでしょうか……」

雷「いや、駆逐艦の事を戦艦の北上さんに聞いても仕方ないでしょ?畑が全く違うんだし」

北上「んー、2人とも、ちょっと聞いていい?」

雷「え?なんです?」

北上「どうして、2人ともその装備なの?」

雷電「「え??」」

北上「いや、2人とも連装砲を装備してるよね?」

電「なのです」

北上「駆逐艦は、雷撃能力が高めなんだから、そっちを伸ばした方が良くない?」

雷「……」

電「……」

北上「……あれ?私何か変な事、言った?」

雷「いや、けど私達って装甲薄いですし、雷撃は足が遅いですし……」

北上「ま、確かにそういう一面もあるけど……駆逐艦はチョロチョロ動けるんだし、相手の攻撃回避すれば……」

電「それは……難しいのです……」

北上「ん~?えっと、君達以外の駆逐艦で、魚雷装備してる子達、いるよね?」

北上「その子達に回避の仕方聞けば……」

雷「誰も居ないよ?」

北上「へ?」

電「……なのです」

北上「え、ちょっと待って?誰も居ないの?」

電「はい、魚雷を装備してる子は、誰も居ません……だって」

北上「だ、だって?」

電「だって、実際に活躍してらっしゃる皆様は、北上さんを筆頭に全員、火力重視なのですよ?」

北上「……!」

雷「そうそう、だから私達駆逐艦もそれを見習って……ね?」

電「は、はい……」

雷「魚雷なんて、役に立たないよ」

北上「……やくに……たたないって」

電「あ、そういえば……」

北上「な、なに?」

電「1人だけ、魚雷使ってらっしゃる方、見ました」

北上「え……」

雷「え?そんな子、居た?」

電「はい、えっと、確か先日来られた軽巡洋艦の方で……」

北上「……!」

電「名前は、オーイさん……だったかと……」

北上「……大井っち」

雷「え?」

北上「……」タッ

電「あ、き、北上さん!?」

北上(大井っち、大井っち、大井っち、そうだよ、大井っちだ)

北上(私が戦艦なら、てっきり大井っちも戦艦になってると思ってた)

北上(部隊編成の中に大井っちの名前は無かったから、何時かきっと出会えると思ってた)

北上(戦艦の大井っちと)

北上(け、けど、けど、大井っち……軽巡洋艦って……)

北上(い、いや、それはいい、それは置いておこう)

北上(大井っちがいるなら、会わないと)

北上(だって、私達は、この世に2隻だけの……)

北上(たった2隻だけの……)

~格納庫~


北上「……」ハァハァ

北上「……み、見つけた」

北上「見つけたよ、大井っち」


大井「……」


北上「……大井っち?」


大井「……」

北上(何だろう、大井っち、返事してくれない……)

北上(それどころか、振り返ってすら……)

北上(あ、ひっょとして、今まで私が会いに行かなかったの怒ってるのかな)

北上(だって、それは仕方ないじゃん、私、戦闘に出てて、大井っちが来たこと知らなかったんだし)

北上(仕方ないじゃん……)


大井「……酷い有様ですよね」

北上「……え?」

大井「魚雷達、ですよ」

北上「あ……う、うん、そうだね、何か保管の仕方も適当だし、ほこり被ってるし」

大井「……これじゃ、いざという時に、使えません」

北上「だ、だよね……」

大井「……」

北上「あ、ひょっとして、大井っち、魚雷達の掃除してくれてたの?」

大井「……」

北上「じゃ、じゃあ、私も……」

大井「……」

北上「お、大井っち、返事してよ?」

大井「……誰ですか、貴女」

北上「……え?」

大井「初対面だと思うのですが……この艦隊の方ですか」

北上「な、何言ってるの、大井っち、私だよ、北上だよ……」

大井「……ああ、貴女が」

北上「お、想いだしてくれた!?」

大井「……ご活躍は、聞いてますよ、大和型戦艦5番艦、き・た・か・み、さん」

北上「……!」

大井「そんな北上さんが、しがない軽巡洋艦である私に、何の用でしょうか」

北上「ち、違うよ」

大井「は?」

北上「わ、私は北上だよ、大井っちと一緒に作られた!重雷装艦の!」

大井「……」

北上「練習艦の時代から、2人で頑張ってきたじゃん!」

大井「……」

北上「お、大井っち!」

大井「……」チッ

北上「……!」

大井「……確かに、頑張れば重雷装艦に改装する事は可能ですね」

北上「う、うんうん!そうそう!」

大井「重雷装艦計画に付属して、姉妹艦が建設されるという話もあったようです」

北上「それ私!私!」

大井「……けど、なくなったんです」

北上「……え?」

大井「姉妹艦の建設は……なくなっちゃったんです」

大井「……だから」

大井「だからね」

大井「私は」

大井「この世で1人だけなんです」

大井「たった1人だけなんです」

大井「1人だけの、重雷装艦なんです」




大井「だから、貴女なんて知らないわ」

大井「じゃあ、出撃がありますから、私はこれで」

大井「北上さんも、頑張って下さいね」

大井「私には関係ない所で」

北上「おお……」

大井「じゃあ、失礼します」

北上「いっち……」

ああ、私は本当に馬鹿だ


戦艦になれて浮かれてた


魚雷の不遇さを見ても尚、浮かれてた


私が居なくちゃ、彼女が一人ぼっちになっちゃうって、判ってたのに


判ってたはずなのに、浮かれてた



ごめんね


ごめんね、大井っち



ごめんなさい


ごめんなさい


ごめんなさい

~敵海域~

大井「第一艦隊がこの海域を突破したけど、まだ深海棲艦達はこの海域に出没してるわ」

大井「私達の任務は、敵を牽制しつつ資材を持ち帰る事」

大井「判ったわね?」

電「りょ、了解なのです!」

雷「はいはい」

大井「返事は一度」

雷「はーい」

大井「伸ばさない」

雷「……はい」

雷「ううー、私何かあの人苦手……ずーっと怒ってるイメージしかない」

電「だ、駄目だよ、そんな事言っちゃ」

雷「だってー」

大井(……駆逐艦、ウザいわ)

大井(活用できるはずの魚雷を放置して、どうして火力を取るのかしら)

大井(重雷装艦の立場を奪う程度の雷撃能力を持ってる癖に)

大井(自分の適性を正しく理解できてないとしか思えない)

大井(この子達さえいなければ、私は……)

大井(私は……姉妹を得れていたかもしれないのに)

大井(そうすれば、ずっと1人で過ごす事も、無かっただろうに……)

雷「あれ?何か海に落ちてるよ?」

大井「はあ?海に何か落ちてるはずないでしょう」

雷「……」ムカッ

電「い、いや、確かにあるのです……なんだろ、これ」

大井「……待って」

電「わかめ?ゆらゆらして……」

大井「下がりなさい!」


ガッ


電「え……」

ねむいっちー

電「み、水の中から、手が……」

大井「潜水ヨ級!2人とも下がって!」

雷「け、けど、電が脚掴まれて!」

電「は、放してくださいっ!放してっ!」

大井「……だから駆逐艦は嫌いなのよ!」ボシュッ


ザシュッ



電「は、離れたのですっ!」パッ

大井「全員!対潜戦用意!」

電雷「「は、はい!」」


大井「海の藻屑になりなさい!」ボシュッボシュッ

電「え、えいっ!」ポシュッ

雷「やあっ!」ポシュッ

大井(クソ、全然当たらない……)

大井(けど、1隻だけなら撃破出来なくても何とかやり過ごして……)


ザワザワ


大井「……!」

電「お、大井さん!?」

大井「……囲まれてた、みたいね」

雷「ど、どうしよう!」

大井(ああ、私馬鹿だな、任務中に余計なイラつきとか私情をはさむから、こんな事になる)

大井(こんな連中に包囲されるまで気づかないなんて……まったく……)

大井(そんなだから……そんなだから、私は1人なのよね)

大井「ふ、ふふ……ふふふふ……」

電「お、大井さん?」

大井「……まったく、救いようがないわね」

電「……!」ビクッ

雷「……!」ビクッ

大井「……いいわ、やってあげる、最後まで、付き合ってあげるわ」

電「大井さん!」

雷「や、やるなら、私達も!」

大井「……いらない」

電「え……」

大井「貴女達、ウザいの」

雷「……!」

大井「ずっと、ずっと思ってたわ、駆逐艦ウザいって」

大井「最後の瞬間まで貴女達と一緒にいろっていうの?ごめんだわ」

大井「私は……私はこの世で1人の重雷装艦として逝きたいの」

大井「だから、貴女達は邪魔」

大井「死にたいのなら、何処か別の場所で、私の目の届かない所で死んで頂戴?」

雷「そ、そんな言い方って……!」

電「……わ、判ったのです」

雷「ちょ、電!?」

大井「ああ、貴女達駆逐艦にお礼を言う日が来るとは思わなかった……ありがとう、役立たずだって理解してくれて」

雷「このっ……!」

電「雷ちゃん!」

雷「け、けどこの人……!」

電「……行こう」

雷「……判ったわよ」

大井「道くらいは切り開いてあげるわ、だからその小さいスクリューを精いっぱい動かして惨めにお逃げなさい?」

雷「……」プクー

電「……大井さん」

大井「なにかしら」

電「……ごぶうんをなのです」

大井「……ええ、貴女達もね」

北上「あー……もー……」ダルー

赤城「北上さん、どうしたんですか?」

金剛「なんか、友達と喧嘩したらしいデスね」

北上「しっぱいしたー、ばかだったよぉー……」ゴローン

赤城「ダレまくってますね……まあ、敵海域突破した所だし、しばらくは戦闘もないでしょうからいいんですけど」

金剛「私達も、お風呂にでも浸かって来ますカー」

赤城「そうですね」ニコ

北上「……はあ、いっぱいダレたらお腹空いたなあ」

北上「提督の所にでも、タカりに行こうっと……」フラフラ

北上「おーい、ていとくー、何か奢れー」


提督「それで、敵の規模は?」

提督「それ多すぎない?見間違ってない?」

提督「確かにそうだけど……」

提督「いや、正直に言うと、対潜装備はまだ充実してない」

提督「駆逐艦の子達も、遠征主体の子が多いから練度に問題が……」


北上「ていとくー?」


提督「北上さんごめん、あとでね」


北上「ちぇーっ」

北上(通信終わるまで、寝て待ってよっと……)ゴロン


提督「それで、遠征に出てた子達はちゃんと帰還したんだよね?」

提督「は?2人だけ?残り1人は?」

提督「確か、大井って子が旗艦のはずだけど、その子に聞けば……」

提督「……戻ってきてない?」

提督「残った?なんで?」

提督「い、いや、確かにそうだけど……というか、それ緊急でしょ?」

提督「先にそれ言え殺すぞお前」

提督「ちょっと待って、今こっちから回せる子を至急……」


バンッ


ズダダダダダダダ


提督「……北上さん?」

ザッザザッ


「は、はい、大井さんだけ、私達を逃がす為に、残られました」

「すみません、私達も追いかけられて……まだ帰還で来てないんです、やっと」


ザザザザザザッ


「通信できる範囲に来れたので……だれか、だれか大井さんを助けてあげてください」

「お願いなのですっ」

「電!ラスト1体そっち行った!」

「は、はいなのです!」

「こ、こっちは、何とかなりそうですけど、大井さんの方は、たくさん、たくさん潜水艦が……」


ザザザザザザッ


「はい、大井さんの座標は……けど、移動している可能性も……」

大井「……」ハァハァ

大井「ふ、ふふ……随分、走り回っちゃったけど……そろそろ限界かしら……」

大井「こっちの様子も酷いけど……あっちも、随分削ってやれたわよね……」

大井「……あ、あはは」

大井「どう、これが……重雷装艦の力よ……」

大井「これで、本営の連中も、雷撃の力を理解してくれるかしら……」

大井「……無理か」

大井「きっと、それを理解できるのは……」

大井「多分、私と同じ……重雷装艦だけなんだわ……」

大井「……きたわね」



潜水ヨ級「……」プクッ

潜水カ級「……」プクッ

潜水カ級「……」プクッ



大井「……いいわ、沈んであげる」



潜水ヨ級:黄色「……」プクリ



大井「そこの黄色いの……貴女を道連れにね」

「大井っち、ちっょと聞いてよ、提督がまたさ~」

「あの糞女、また北上さんに触ったんですか?駄目ですよ気をつけないと」


「こないだ一緒に食べた間宮の甘菓子、美味しかったよねえ」

「私の分は北上さんが食べちゃいましたけどね」


「ねえ、大井っち、私達、こうやって一緒に練習艦やってるけど、同じ陣営に配置されるか判んないよね」

「その時は、私から北上さんのいる陣営に配属されるよう、頑張ってみますよ」


「はじめまして!わたし、きたかみ!あなた、おおいっていうんでしょ?おおいっちって、呼んでもいい?」

「は、はい、よろしくおねがいします、きたかみ……さん!」


……おおいっち


おおいっち……


おおいっち!

大井「……あ、あれ……わたし……」

北上「あ、大井っち、やっと目が覚めた」

大井「……北上、さん?」

北上「うん、北上だよ~」

大井(……なんだろう、何か、夢を見ていたような……)

大井(何か、懐かしい夢を……)

大井「……想いだせないけど」

北上「大井っち?」

大井「……北上さんが、どうしてここへ?」

北上「駆逐艦の子達の通信を聞いてね、助けにきたの」

大井「……そうですか」

大井(結局、私は生き残っちゃったか……)

大井(死に花咲かせて、皆を見返そうと思ってたのに……)

大井「……はぁ、それで、敵はどうなったんです?味方は?」

北上「いや、どうもなってないけど」

大井「は?」

北上「敵はあの通り、まだ沢山いて」



潜水ヨ級「……」プクプク

潜水ヨ級:黄色「……」プクプク

潜水カ級「……」プクプク



北上「味方は私1人ですが」

大井「え、1人できたんですか?」

北上「うん」

大井「ば……馬鹿ですか、北上さんは」

北上「ば、馬鹿じゃないよ?酷いね大井っち」

大井「1人で来てどうするの?え?提督とかは?」

北上「あー、多分、駆逐艦の方、助けに行ってるのかも」

北上「あの子たち助けだされたら、ここの座標が判明してみんな助けに来てくれるよ」

大井「……それまで、2人で持ちこたえろと」

北上「うん」

大井「北上さん、対潜装備とか、無いですよね?」

北上「うん」

大井「こ、この……」

北上「んー……まあ、けど、何とかなるんじゃない?」

大井「どうなるっていうんですか!」

北上「えー、だって……」

 




北上「私と大井っちがそろえば、無敵だよね?」




 

大井「……」ポカン

北上「お、感動した?」

大井「呆れてるんですけど……」

北上「ちぇーっ」

大井「……」クスッ

北上「大井っち?」

大井「……はあ、なんか、真面目に色々考えてた私が、馬鹿みたいですね」

北上「大井っちは、馬鹿じゃないよ?」

大井「……ありがとうございます」

潜水ヨ級「……」プク


北上「あー、何か呑気にお話してる雰囲気じゃなくなったみいたい」

大井「初めからそんな雰囲気じゃありませんよ、北上さんだけです」

北上「大井っちも笑ってた癖に~」

大井「笑ってませんよ?」

北上「笑ってた、凄く可愛い顔で笑ってました」

大井「なっ///」

北上「……私達ってさ、生まれも、育ちも、違ってたのかもしれない」

大井「と、当然ですよ、私は世界で1人の……」

北上「けど、だからって1人で居る必要は、無いと思う」

大井「……」

潜水ヨ級「……」パシュッ


大井「ろ、6時の方角、回避!」シュッ

北上「せっかく、艦隊にいるんだからさ、もっと色んな人と、一緒にいてもいいんじゃない?」

大井「そ、そんなの、私の勝手です」


潜水カ級「……」パシュッ

北上「3時の方角、かいひ~」

大井「それに……あの艦隊で、私と一緒にいたいって人なんていませんよ」

北上「……私はね、大井っち」


潜水ヨ級:黄色「……」パシュッ

大井「9時の方角!回避……間に合わない!?」

北上「生まれも育ちも艦種も全部違っても、大井っちと一緒にいたいと、思ってるよ」


ドガガッ

大井(直撃され……!)

大井「……てない?」

北上「いったぁぁ……」

大井「き、北上さん!?私を守って……!?」

北上「……好きな人を守るのは、当然でしょ?」

大井「きたかみ……さん……」

北上「私は大丈夫、戦艦だし、余程の事が無いと沈まないから……それより、反撃!」

大井「は、はい!」パシュッ


シュルルルル


潜水カ級「……!」ドスンッ



大井「や、やった、直撃!」

北上「はい、じゃあ次、あっちのヨ級行ってみようか」

大井「は、はい」

北上「相手の攻撃はできる限り私が盾になるから……その隙にね?」

大井「わかりました……」

大井(なんだろ、凄く安心する、北上さんが傍にいてくれるだけで……こんなに……)

大井(北上さんは、私と一緒にいたいって、言ってくれた)

大井(私とは全く違う、何の縁もない人なのに、一緒にいたいって……)

大井(世界で唯一の、重雷装艦である私だけど……)

大井(一人じゃなくても、いいのかな……)

大井(北上さんと一緒にいても……いいのかな……)

大井(私は……)

北上「いま!」

大井「は、はいっ!」ドシュッ

潜水ヨ級「……!」ドスンッドスンッ


北上「よ、よーし、あと、残るのはあっちの黄色いのだね」

大井「北上さん、あれ、エリート艦です……さっさきから、こっちの攻撃全然命中しません」

北上「うん……あれは、厄介だよねぇ」

大井「……北上さん?」

北上「……」

大井「北上さん!?お腹に穴が!?」

北上「ごめ、さっき当たったの、やっぱちょっと痛かった……」

大井「そんな……どうして言ってくれなかったんですか!」

北上「だ、だって、言うと大井っち、自分が囮になろうとするでしょ?」

大井「……そ、そんなことするはずが」

北上「だって、駆逐艦の子達、逃がす為に囮になったらしいし」

大井「……あれは、別に……本音を吐き散らしただけです」

北上「またまた……わたし、知ってるんだから」

大井「……何を知ってるって言うんですか」

北上「んー、大井っちの笑顔とか、怒ると怖いってとことか、優しい所とか」

大井「優しい?私が?」

北上「うん、大井っちはね……守る相手を見つけたら、その人を守る為に、凄く優しくなれる人なのです」

大井「……そんなはず、ないじゃないですか」プイッ

北上「えへへ、大井っちがいくら否定しても……私は知ってるんだな……」



潜水ヨ級:黄色「……」プクプク



北上「あー、こっち来たね……」

大井「はい……」

北上「じゃあ、私が盾、大井っちが攻撃……ね?」

大井「あ……」

北上「ん?」

大井「……わたし、まだ、返事してませんから」

北上「返事?」

大井「わ、私と一緒に、いたいんですよね?」

北上「……うん」

大井「……その、返事は、勝ってからしますから」

北上「……」

大井「だから……その……」

北上「……おおいっちー」

大井「は、はい?」

チュッ


大井「……ほ?」

北上「んー、相変わらずおおいっちの頬は、柔らかいなあ」

大井「ほほ……?」

北上「うん、頬」

大井「な、な、な、何をっ///」

北上「……約束の、証にね」

大井「え?」

北上「私、今度は死なないから」

大井「北上さん?」

北上「大井っちから、返事貰うまで、死なないから」

大井「……!」

北上「だから、一緒にいきのころ?」

大井「は、はい!」

ごうちん

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年08月04日 (火) 14:47:29   ID: D3VldQ_H

~敵海域~


提督「よし、それでは作戦会議を開始する」

提督「作戦内容は皆に配った命令書の通りだ」

提督「第一艦隊の構成は……」

北上「……」ドキドキ

提督「大和、赤城、金剛、赤城、加賀」

提督「北上」

北上「やっ……たぁー♪」

提督「この6隻とする」



あ、赤城さんが二人……?!

2 :  SS好きの774さん   2015年08月16日 (日) 14:46:15   ID: fSzodFHY

北上さんが五番艦で大井っちに姉妹艦がいないということは大和型は大和、武蔵、球磨、多摩、北上、木曾で六隻いるのかな

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