向日葵「コミック百合姫……?」(76)

向日葵「よかったですわ。今日はお肉が安くて……」とことこ


向日葵「ん……河原の夕日は綺麗ですわね……」


キラキラ……


向日葵(? あれは……)

向日葵(何かしら、光って……)


向日葵「……あら、本? 雑誌のようですわ。かわいい女の子が描いてある……」

向日葵(誰かが落としたのかしら。でもついさっきって感じ……昨日の夜は確か少し降ったから、それを考えると保存状態が良すぎる)

向日葵「どういうものなのかしら」ぺらっ


向日葵「ん……?」ぱらぱら

向日葵「こ、これは……!」

向日葵「ま、まぁ……!/// 女の子同士でこんなことを……!?」


向日葵「この雑誌は……!」

向日葵「コミック百合姫……JUSTICE FOR GIRLS……」


向日葵「こんなものがあったなんて……!」


向日葵(…………うぅっ)

向日葵「えーいっ!」さっ

タタタタ……

――――――

向日葵(お、落ちてる本を拾ってしまうなんて……私ったらなんて恥ずかしいことを……///)

向日葵(でっ、でも! この本はきっと神様が私に与えてくれた贈り物なんですわ!)

向日葵(知らなかった……女の子同士のそれが、まさか本になっていたなんて)

向日葵(それって、女の子同士でもおかしくないってことですわよね!)


ソロソロ

向日葵「た、ただいま……」ソーッ

楓「あ、おねえちゃんおかえりなの!」

向日葵「か、楓……すぐご飯になりますからね。あははは……」


楓「?」

楓「おねえちゃん、食べ物お部屋にもっていっちゃったの……」



向日葵「……ふう」

向日葵(この本は……楓にも誰にも見られてはいけませんわね)

向日葵(ここに隠しておきましょう)スッ


向日葵(見るのはまだ……先にやることをやってからにしませんと)

向日葵「さ、ご飯の準備ですわ」

――――――

向日葵「楓……?」そーっ


楓「zzz…………」スゥスゥ

向日葵(……よし、ちゃんと寝てますわね)


サッ


向日葵「さ、さて……いったいどんなものなのか……///」

――――――

チュン……チュン……


向日葵「あ……わっ……こんなこと……///」ペラ


楓「ん……おねえちゃんおはようなの」

向日葵「ひゃあああああっ! か、楓……起きたんですのっ??」

楓「う、うん……おねえちゃん寝てないの? お勉強?」

向日葵「え、ええまぁ……///」

楓「すごいの……寝ないでお勉強なんてやっぱり中学生は大変なの!」

向日葵「あ、あははは……」



向日葵(ま、まさか朝になっていたとは……時計を見ることも忘れてしまってましたわ)

向日葵(でもこの本は……それ以上に……)


素晴らしい!!


向日葵(とりあえず『百合』という言葉を知ることができましたわ。こんな世界があったなんて……今日は早めに帰ってきてまた読み返したいですわね)

――――――

向日葵「櫻子おはよう」


櫻子「ん……? なにそのクマ」

向日葵「え、えっ? クマできてます?」

櫻子「うん……夜更かし? なんか忙しいことあったっけ?」

向日葵「いえ特には……///」


向日葵(なんでしょう……いつも通りなはずなのに、心なしか櫻子が優しいような気がしますわ……///)


向日葵「……し、心配してくれてますの?」

櫻子「なっ/// そ、そんなんじゃねーし!」

向日葵「…………」


向日葵(あ、あの本を読んだせいか、櫻子の行動ひとつひとつを深くとらえちゃってしまってますわね……///)


向日葵(ちょっと顔が緩んじゃう……いけないいけない)



櫻子(この顔……徹夜だな)

――――――

櫻子「おはよー!」

あかり「あっ、櫻子ちゃん向日葵ちゃんおはよ~♪」

向日葵「おはようございます」


ガラッ

ちなつ「んー……」

あかり「あ、ちなつちゃん、どうだった??」

ちなつ「どうなんだろう……」


櫻子「どしたの?」

ちなつ「わたし、もうダメなのかなぁ……」パタン

向日葵「な、何かありましたの?」

あかり「ちなつちゃん、最近結衣ちゃんを朝玄関で迎えてるんだって。毎日のアピールが大切ってことで」

向日葵(あぁ……吉川さん、本当に船見先輩のことを……/// ファイトですわ!)


ちなつ「私はただ結衣先輩ともっと一緒にいたいだけなのに、結衣先輩ったら私に「ごめんね、いつも大変でしょ?」って言うの……その優しさはもちろん嬉しいんだけど、それって気を使わせちゃってるってことだよね……」

あかり「ああ~、結衣ちゃん優しいもんねぇ」

ちなつ「でもいつも一緒にいるのに、京子先輩にはそんなこと言わないでしょ!? それって私よりも京子先輩との方が近い関係だってことに……」

あかり「う、うん……あの二人は……」

ちなつ「なんで~~~! それじゃ私いつまでたっても京子先輩には勝てないってこと……!?」

向日葵(吉川さん……)


あかり「だ、大丈夫だよ! ちなつちゃん頑張ってるもん! 結衣ちゃんだってちゃんとちなつちゃんのことを見てくれるときがくるよ!」

ちなつ「あ、あかりちゃん……」


ちなつ「…………はぁ」


ちなつ「あかりちゃんなら……よかったのかな……///」

向日葵「!!」

あかり「え? なに?」

ちなつ「ん、んーん! なんでもっ///」テヘッ

向日葵(こ、これは……!)


向日葵(ち、ちなあか! ちなあかですわ!)

向日葵(恋をするものと恋を応援するもの、その間には、その恋路が険しければ険しいほどの大きな愛が成長するのはもはや定番……)

向日葵(赤座さんは本当に純粋に吉川さんを応援している。でもそれが逆ににどんどん吉川さんに積もっていく……そして今、吉川さんがその積もった赤座さんの存在に気づき始めた!)

向日葵(強烈ですわ! これは吉川さんが完全に赤座さんにベクトルを向けるまでは時間の問題ですわね!)

向日葵(……でも、赤座さんが応援しているのは悪魔で船見先輩との恋路。赤座さんのことを考えると逆に吉川さんは簡単に諦められないことに……)

向日葵(一番の問題は赤座さんは恋愛そのものに疎いというところですわ! 吉川さんが赤座さんに切り替えたところで、その気持ちを受け取るどころかどういう風に捉えるかまで予測不能……!)


向日葵(こ、こんな強い百合成分がこんな間近にあったとは……!)


ちなつ「あかりちゃん、今度またうちに来ない?」

あかり「わぁい♪ いきたいな~」

向日葵(吉川さん、ファイトー!)キャー


櫻子「…………」

――――――

綾乃「あっ、歳納京子!」

京子「ん? おおー……こりゃ生徒会皆でどうしたことだ」

千歳「今日ごみ拾いの日なんよ。みんなで拾って回るんやでー」

結衣「大丈夫? 手伝おうか?」

綾乃「えっ? いやいいのよ船見さん……これは私たちの仕事だから」

京子「そうそう。仕事奪っちゃ悪いよ」ケラケラ

綾乃「まったくあなたって人は……」


千歳「…………」パッ

~~

京子『綾乃、いつも大変だね……』

綾乃『だって……これはみんなのために……』

京子『大丈夫。綾乃の陰の努力を私は全部見ているよ……?』

綾乃『えっ……??///』

京子『見えない努力を大切にする綾乃を見て、私は……!』ずいっ

綾乃『そ、そんな……きゃっ』クイッ


京子『綾乃……仕事だけじゃない、君の全てを奪っていいかな……!///』


綾乃『あ、あなたにだったら……私の全てを捧げても……///』

~~

千歳「…………///」どばー

結衣「わっ! 千歳鼻血!」

綾乃「うそっ! ティッシュどこやったかしら」


向日葵「!?」ピキーン


向日葵(な、なにこれ……!?)

向日葵(池田先輩の脳内映像が……流れ込んでくる……!?)

向日葵「…………///」どばー


櫻子「わーっ! 向日葵まで鼻血!?」

結衣「えっ!? 古谷さん大丈夫!?」


千歳(古谷さんも……こっちの世界に……?)


古谷(ま、まだまだ……先輩ほどハードではありませんでした……わ……)バタッ


櫻子「ひまわりー!」

千歳「あかん、古谷さんはまだ鼻血慣れしてへんみたいや! 大室さん、保健室に連れてこ!」

綾乃「だ、大丈夫なの……??」

向日葵(京綾……二人の愛に理由はいりませんわ……///)ドクドク


櫻子「杉浦先輩ティッシュもっとー!」

綾乃「も、もう二人の分で無くなっちゃったわよ!」

あかり「あかりティッシュ持ってるよ~」

櫻子「わおっ! あかりちゃんナイス!」


京子「……あれ?」

結衣「あかり、いたのか……」

あかり「最初からずっと二人の後ろにいたよぉ!?」ガーン

――――――


向日葵「…………んっ」


櫻子「あっ、目が覚めた!?」

向日葵「櫻子……私は……?」

櫻子「なんか急に鼻血出して……倒れちゃって、今こうしてるってわけ」


向日葵「あ、ああ……」



櫻子「………向日葵さ、今日やっぱりおかしいよ」

向日葵「えっ?」


櫻子「その目、徹夜なんでしょ……見ればわかる」

向日葵(あ、あら……?///)


櫻子「何があったのか知らないけど……朝からずっと、変だなーって見てたの」

櫻子「ちなつちゃんとあかりちゃんが話してるそばで、なんか思いつめた顔してたりさ……」


櫻子「さっきだって、急にあんなに鼻血出して……昨日寝てないのにあの出血量じゃ、倒れるに決まってるじゃん」


向日葵(……心配してくれてる?)


向日葵(こっ、このシーンは……!)

向日葵(私と櫻子、普段通りの日常の中で急に倒れる私を心配する櫻子……)



櫻子「一体どうしたの? なんか悩み? あるなら言って……?」


櫻子「抱え込んだりとか、だめだよ……?」ずいっ


向日葵(あっ………///)


向日葵(ふふふ……)


向日葵(私としたことが……自分も女の子であることを忘れていましたわ!)

向日葵(これってどう見てもチャンスですわよね!)

櫻子「……向日葵?」

向日葵「櫻子……」そっ


櫻子「な、なに……?///」


向日葵「…………」



向日葵(……あれ!? いざこっちの立場になってみるとどうしていいかがわからない!!)

向日葵(え、えーと……いきなりキスとか? いやいやそんなのダメに決まってるでしょまだ理由なきキスが許される関係ではありませんわ私と櫻子は)

向日葵(まずこの手は!? 可愛かったから思わず添えてしまったけどこの手はどうすれば……)

櫻子「……冷たい」ぱっ

向日葵「あっ……///」


櫻子「無理しないでよ……ボロボロの向日葵なんて見てたくない」

向日葵(な、なに……こんな櫻子見たことない……私そんなにボロボロ?)


櫻子「……おしえて? なんで徹夜だったの……?」

向日葵「そ、それは……」


向日葵「……ちょっと、本を読んでて……」


櫻子「……それだけ?」

向日葵「まあ、それだけのことですわ」(私間違ったことは言ってませんわよね……)

櫻子「よかったぁ……! ちょっと心配だったの……」ほっ

向日葵(わっ、この笑顔……見たの久しぶり……///)


櫻子「……もう落ち着いた? ごみ拾いはいいから、今日はもう帰った方がいいって先輩達言ってたよ」

向日葵「わかりました。私はもう大丈夫ですから、いきましょうか」



櫻子「それにしても……そんなに面白い本なの? 今度私も読みたいな」

向日葵「えっ!? い、いやあのそれは……///」


向日葵(はっ、というか……)

向日葵「あれ、今日って何日でしたっけ……?」

櫻子「え? んーと……18日」

向日葵(い、いきなり発売日に当たってしまいましたわー!!)


向日葵「櫻子、あの……」

櫻子「??」

向日葵「えっと、本屋行きませんっ?」


櫻子「…………」


櫻子「ほ、本のせいで倒れた人が何言ってんの……? 今日はダメ! 帰ってちゃんと寝ること!」

向日葵「うっ……仕方ないですわね……」

向日葵(売り切れてないといいんですけど……)

――――――

<その頃>


楓「花子おねえちゃんに、新しい世界を教えてあげるの……」

花子「か、楓! こんなの……///」

楓「大丈夫……全部楓に任せてほしいの」


楓「いっぱい、いっぱい、お勉強したの……///」

花子「あっ……んっ……そこはぁっ……!///」


~fin~

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