八幡「あったかもしれない未来」 (70)

由比ヶ浜「ゆきのん、この書類なんだけど…」

雪ノ下「これは…由比ヶ浜さん、ここに判子するだけでいいのよ」

由比ヶ浜「あっそっか…えへへありがとゆきのん」

雪ノ下「これぐらい気にすることはないわ。由比ヶ浜さん、そこの書類を取ってくれるかしら」

由比ヶ浜「うん、はい。それにしても、今日は珍しく忙しいね」

雪ノ下「そうね…入学式も終わって、部活が本格的に始まったからかしら…庶務ヶ谷くんは大丈夫?」

八幡「その人権が無さそうな呼び方やめてくんない?」

小町「ほらほら、腐った目してないで手を動かしてよお兄ちゃん」

八幡「くっそ…お前臨時役員のくせに…」

雪ノ下「臨時でも立派な役員よ。それに、小町さんが会計をやると申し出たとき、あなたすごく嬉しそうだったじゃない」

由比ヶ浜「あのときのヒッキーはちょっと気持ち悪かったね」

八幡「そりゃお前、可愛い妹が学校でも一緒にいたいと申し出たら誰だってそうなるだろ」

小町「小町、そこまでは言ってないけどなぁ」

由比ヶ浜「でも小町ちゃんが入ってくれてホント助かったよー。あたし計算とか苦手だし」

八幡「計算どころか書類に判子もできてなかったと思うんだが」

由比ヶ浜「ヒッキーうっさい!」

小町「まぁまぁ二人とも。小町的には見ててとても面白いのですが、今は仕事がありますし頑張りましょうよ」

雪ノ下「小町さんの言う通りよ。由比ヶ浜さん、私が目を通した書類はそこにあるから、判子をお願い」

由比ヶ浜「ら、らじゃー!」

雪ノ下「比企ヶ谷くんは…じゃあ各委員会からの書類にサインをお願い」

八幡「お前今じゃあっつったろ。わざわざ仕事増やすのやめてくんない」

ガラッ

平塚「邪魔するぞ」

雪ノ下「平塚先生…ノックを…」

平塚「生徒会室だから問題なかろう」

雪ノ下「いえ、そんな問題では…それで、何か用ですか?」

平塚「時計を見たまえ」

八幡「時計…?うわっ下校時刻過ぎてるじゃん」

由比ヶ浜「ホントだ…気付かなかった」

雪ノ下「仕方ないわね…今日はこれで終わりにしましょう」

平塚「鍵は私が返しておこう。君たちは早く帰りたまえ」

八幡「んじゃ失礼します」


由比ヶ浜「いやー、今日は疲れたねー。帰りに甘いものでも食べていこうよ!」

小町「それいいですね!小町も大賛成です!」

八幡「じゃあ俺は先に帰るわ、疲れたし。小町、あまり食べ過ぎると太るから気をつけろよ」

小町「うわー…いくら妹とはいえ、女の子に太るとかどうなの」

由比ヶ浜「まぁ、ヒッキーらしいと言うか…ゆきのんはどうする?」

雪ノ下「私は…帰って残った仕事を片付けないといけないから…」

小町「何言ってるんですか雪乃さん。残った仕事はさっき平等に分けたじゃないですか」

由比ヶ浜「そうだよゆきのん。どうせならさ、食べながら一緒に仕事片付けちゃおうよ!」

雪ノ下「え、えっと…」

八幡「行ってきたらどうだ、雪ノ下。せっかく俺の妹が誘ってくれてるんだぞ」

由比ヶ浜「あたしも誘ってるよ!?」

雪ノ下「まぁ…少しだけなら」

小町「やったー!」

由比ヶ浜「じゃあどこ行こっか。この近くだったら確かドーナツ屋さんがあったような…」

小町「ドーナツですか。晩御飯前の軽い間食と考えると妥当ですね」

由比ヶ浜「ゆきのんもそれでいい?」

雪ノ下「ええ、かまわないわ。あなたたちが行くのなら」

由比ヶ浜「じゃあ決まりだね!ヒッキーももちろん来るよね?」

八幡「えっ、いやさっき疲れてるから行かないって言ったじゃん。それに、俺は一人の方が仕事捗るし」

小町「いや、お兄ちゃん最近は家に居ても艦これ…?っていうのしかしてないじゃん…」

八幡「結局連れてこられた…」

雪ノ下「家に居てゲームをするよりは有意義でしょ?」

八幡「………そうだな、ティータイムは大事にしないとネー…」


由比ヶ浜「さて、じゃあ始めよっか」

小町「甘いものを食べて、頭も冴えてきましたしねー」

雪ノ下「え、えっと…私たち、食べ終わってしまっているけれど、まだ店内にいていいのかしら…」

八幡「1、2時間ぐらいだったらいいんじゃねぇの。お客様は神様だしな」

雪ノ下「そ、そういうものなのね…」

小町「雪乃さん、あまりお兄ちゃんの言うこと鵜呑みにしないでくださいね」

由比ヶ浜「それにしてもさ、あたしたちが生徒会なんて想像もしなかったよね」

雪ノ下「そうね…私はともかく、比企ヶ谷くんまで役員とはね…」

八幡「正直自分でも意外だったわ。文実のときは逃げ出そうかなんて思っていたのにな」

小町「お兄ちゃんも少なからず成長しているんだね…小町嬉しいよ」

八幡「はいはい俺も嬉しいよ」

小町「うわー適当」

ネタバレ配慮してなくてごめんネ

八幡「とにかく、やるならさっさとやっちまおうぜ。早く帰りたいんだから」

雪ノ下「そうね。珍しくあなたと意見が合ったわね」

由比ヶ浜「2人ともどんだけ早く帰りたいの!?」

小町「成長したかと思いましたけど、こういうところは変わりませんねー」

八幡「あれ、言わなかったか?俺の辞書に成長という言葉はない、と」

雪ノ下「成長だけじゃないでしょ?そうね…向上心という言葉もないんじゃないかしら」

小町「あと思いやりという言葉もないと思います」

八幡「お前らには優しさという言葉がないよね本当」

八幡「最近の俺にやる気がないのはアレだな、戸塚成分が足りないからだ」

小町「急に変なこと言わないでよ、きもいちゃん」

八幡「いや、それはちょっと無理があると思うぞ…」

由比ヶ浜「まぁしょうがないよね、さいちゃんって確かテニス部の部長やってるんだっけ」

八幡「俺は反対したんだがなぁ…アイツが部長なんて向いてないにも程があるってのに」

雪ノ下「そうかしら、彼のテニスに臨む姿勢を見れば誰だって彼を推薦しそうだけれど」

八幡「ばっかわかってないなぁ本当。アイツは部長なんて向いてない。そんなの一目瞭然だ」

由比ヶ浜「どうして?」

八幡「戸塚は可愛いだろ?で、そんな可愛い奴が部長として頑張っていたらどうなると思う?そう、他の部員が見蕩れてしまって部が機能しなくなるんだよ!」

小町「……」

由比ヶ浜「そ、そっか…」

雪ノ下「はぁ……」

八幡「あれ?なにこの雰囲気」

小町「アホなお兄ちゃんはほっといて、作業を進めましょう」

雪ノ下「そうね。全く、時間の無駄だったわ」

由比ヶ浜「あはは…もうすぐ7時だもんね」

八幡「…くっそ、なんだよこの仕打ち…戸塚ァ…」

「よ、呼んだかな…?」

八幡「なんだ…幻聴か…?とうとう俺もその域に達したというのか…」

雪ノ下「何おかしなことを言っているのかしら、この男は」

小町「お兄ちゃん、それ幻聴じゃないよ。ほら」

戸塚「あはは…八幡、お疲れ」

八幡「と、ととっととつととつ…戸塚ァ!?」

由比ヶ浜「さいちゃん、やっはろー!」

戸塚「やっはろー」

八幡(結婚しよ)


由比ヶ浜「さいちゃんは部活帰り?」

戸塚「うん、そうだよ」

雪ノ下「こんな時間まで部活をしているのね…よく体力がもつわ…」

八幡「そこかよ…」

戸塚「八幡たちは…生徒会のお仕事かな?」

八幡「おふっ…お、おう、生徒会のお仕事をしているんだ」

戸塚「学校を出てもまだお仕事をしてるんだ…すごいなぁ」

めし

小町「さて、お兄ちゃん。これなら…」

八幡「あぁ…今の俺に不可能なぞない」

雪ノ下「単純なのね…」

由比ヶ浜「まぁ、ヒッキーがやる気出してくれるのはありがたいなぁ。何気に仕事できるし」

八幡「何気に、は余計だ」

八幡「はぁ…もうこんな時間か…」

由比ヶ浜「わわっ急いで帰らなきゃ」

雪ノ下「予想以上に進んだわね…これなら明日にでも終わりそう…」

戸塚「頑張ったね!八幡!」

八幡「おう…俺はやったぞ、戸塚…」

小町「お兄ちゃんが真っ白に燃え尽きてる…」

雪ノ下「それじゃあ、また明日」

由比ヶ浜「じゃねー!」

戸塚「じゃあね、八幡」


八幡「じゃあ、俺たちも帰るとすっか」

小町「そうだねお兄ちゃん」

八幡「晩飯どうするよ?」

小町「うーん…そうだねぇ、お兄ちゃんは何か食べたいものある?」

八幡「小町の手料理だったらなんでもいけるわ。今の八幡的にポイント高い」

小町「うわぁ…でも嬉しいな!今の小町的にポイント高い!」

翌日

八幡「うぇーす…」

雪ノ下「なにかしら…変な鳴き声が聞こえたような…」

八幡「鳴き声じゃねぇ、れっきとした挨拶だ」

雪ノ下「あら、比企ヶ谷くん。今変な鳴き声がしたのだけれど、何か身に覚えはないかしら」

八幡「とうとう俺の言葉まで無視するようになったのか…」

小町「お兄ちゃん、漫才してないで早く席に着いたらどうかな」

八幡「おう…」

八幡「それで、進行の具合は?」

雪ノ下「昨日、みんなが頑張ってくれたおかげでとてもスムーズに進んでいるわ。これなら今日中に終わるわね」

由比ヶ浜「ホント!?よーし頑張るぞー!」

小町「小町も頑張っちゃいますよー!」

八幡「じゃあまぁ…俺も頑張ってやるか…」

コンコン

八幡「出鼻を挫かれるとはこのことだな…」

雪ノ下「比企ヶ谷くん」

八幡「へいへい……誰ですかーっと」

城廻「ひ、久しぶり」

八幡「……」

雪ノ下「城廻先輩…?」

城廻「うん。後輩たちのことが気になって、来ちゃった」

八幡「いや、来ちゃったって…」

城廻「比企ヶ谷くん。先輩っていうのはね、後輩のことがどうしても気になっちゃう生き物なんだよ?」

八幡「はぁ…」

八幡「今日は俺たちの様子を見に?」

城廻「うん。生徒会の仕事にてんやわんやしていないかをね。困っているなら頼ってくれてもいいよ」

八幡「あ、それは大丈夫です」

城廻「そっか…」

雪ノ下「とりあえず、お茶でも入れましょうか?」

城廻「え、えっとそんなことして大丈夫…?なんて」

八幡「大丈夫ですよ。雪ノ下たちの働きのおかげで、かなり順調に仕事できてますんで」

城廻「そっか…すごいなぁ。さすが雪ノ下さんだ」

八幡「それに、生徒会って思ったほど忙しくないんですね」

城廻「うん、私もやってみて驚いたよ。忙しい時期があって、それ以外は結構暇なんだよね」

八幡「俺からしたらありがたいことですよ」

雪ノ下「あなたはいつだってサボってるようなものじゃない。城廻先輩、どうぞ」

城廻「ありがとう。紅茶なんてあるんだ」

由比ヶ浜「気がついたら一式置いてあったよね」

八幡「そういえばそうだな。あれ誰が持ってきたんだ?」

城廻「……」

八幡「由比ヶ浜、お前これ判子するとこ間違えてるぞ」

由比ヶ浜「うそ!あ、ホントだ…ごめん」

雪ノ下「気にすることはないわ。訂正は庶務ヶ谷くんにさせればいいのよ」

八幡「俺の扱い酷くね?昨日そこそこ頑張ったのに」

小町「まぁまぁ小町が褒めてあげるから」

八幡「わーい(棒)」

由比ヶ浜「いや、ヒッキーばかりに頼れないよ。これはあたしでなんとかするね、ゆきのん」

雪ノ下「そう…わかったわ」

八幡「由比ヶ浜も言うようになったな」

由比ヶ浜「なにその上から目線!」

雪ノ下「それじゃあこれもお願いできるかしら。由比ヶ浜さん、頑張ってくれたのはいいのだけれど、結構間違っているのよね…」

由比ヶ浜「え…こ、こんなに…?」

雪ノ下「頑張っていることは評価するわ…」

由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん…ううん、これぐらい一人でなんとかしなきゃ!」

八幡「じゃあこれも頼むわ。誤字が酷くてな」

由比ヶ浜「う…が、頑張る……」

城廻「……」

城廻「……ふふっ」

八幡「?…どうしました?」

城廻「いや…いいなぁと思って…」

八幡「はぁ…いいですか?」

城廻「うん、すっごくいい。奉仕部のみんながこうして生徒会活動をしていることが」

八幡「……」

城廻「憧れだったんだ、こういうの…」

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