なずな「この本を読み終わったら」 (41)

ひだまり荘 103号室

なずな「ほんとに、今日夕飯もらっちゃっていいの?」

乃莉「気にしなくていいって」

乃莉「なずなも毎日出来合いの物じゃ飽きるでしょー?」

なずな「それはそうだけど……」

乃莉「てか、なずなも作るんだよ?」

なずな「あうぅ……」

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なずな「何作るの?」

乃莉「んーまあ、適当にあるもので」

乃莉「なずなは何か食べたいものある?」

なずな「えっと……」

なずな(そもそも私に作れるものがないんだけど……)

乃莉「あ、期限がヤバい豚肉がある」

乃莉「まあコレ炒めればいっかな、あとなんか野菜とか」

乃莉「それくらいならなずなもできるでしょ?」

なずな「……」

乃莉「えっ」

乃莉「……みそ汁は作れるよね?」

なずな「うん、前にゆのセンパイに習ったから」

なずな「たぶん」

乃莉「多分なのっ!?」

なずな「最近はインスタントのおみそ汁買っちゃってて」

乃莉(完全にラクなほうに逃げてるな……)

乃莉「せっかくだし、今日はちゃんと作りなよ」

乃莉「付け合せ作るのとかも、まあ、手伝ってくれればいいし」

乃莉「今日はちゃんと作ろうよ」

なずな「うん♪」

乃莉「あっ!」

なずな「!?」ビクッ

なずな「どうしたの乃莉ちゃん?」

乃莉「米が無い……」

なずな「なんだー、びっくりしちゃった」

なずな「うちから持ってこようか?」

乃莉「んー、いや、買ってくるよ。どうせ必要だし」

乃莉「すぐ戻ってくるから待ってて?」ガチャ

なずな「えと、乃莉ちゃん、だったら一緒に、って」

なずな「行っちゃった……」

なずな「乃莉ちゃんが戻ってくるまでにできることは……」

なずな「……やめといたほうがいいかな」

なずな「失敗しちゃうかもしれないし、どこに何があるかも分かんないし」

なずな「座って待ってよう」

なずな「マンガ、いっぱいあるな……」

なずな「あんまり乃莉ちゃんが本屋さん行くところとか見ないけど、いつ買ってるんだろ?」

なずな「えーっと……」

なずな「ささ……ささめきこと?どういう意味だろう?」

なずな「星川銀座四丁目……ゆるゆる?あ、ゆるゆりか……」

なずな「ちょっと読んじゃおうかな」

なずな「でも私、読むの遅いから読み終わる前に乃莉ちゃん帰ってきちゃうかも……」

なずな「乃莉ちゃんが帰ってきたらおすすめ聞いて読ませてもらおうかな」

なずな「……あ、ここらへんのマンガはすっごく薄い」

なずな「これなら私でもすぐ読めるかも」

なずな「でも、勝手に読んだら乃莉ちゃんに怒られちゃうかな……」

なずな「だ、大丈夫だよね」ガサッ

なずな「あ、表紙の絵すごく可愛い……」

なずな「えとせて・・・あ、エトセトラ、かな?」ペラッ

なずな「……」ペラッ

なずな「あれ?マンガっていうか、イラストばっかり??」

なずな「あ、マンガ始まった……」

なずな「この女の子、こっちの女の子のこと好きなのかな……」ドキドキ

なずな「……」ペラッ

なずな「キスしてる……女の子同士なのに……」///

なずな「友達でも、仲良しならキスしちゃったりするのかな……」

なずな「もう一冊くらい読んでみようかな」

なずな「このはじっこのを……」

なずな「……」

なずな「あれ?これも女の子のことが好きな女の子の話だ……」ペラ

なずな「……」ペラ

なずな「!?」パタン

なずな(咄嗟に本閉じちゃったけど)

なずな(い、いまの、見間違いじゃないよね……)

なずな(女の子同士なのに、え、え……)

なずな(……えっちなこと、なんて)///

なずな「よく見たら『成人向け』って書いてある……」

なずな「な、何で乃莉ちゃん、こういうのダメなんじゃ、ていうか、」

なずな「……」///

カチャ

なずな「ひぃ!!」バッ

バタン

乃莉「ただいまー」

なずな「お、おかえり……」

乃莉「はー疲れた」

乃莉「安かったから5キロの米買っちゃったけど、さすがに重くて」

なずな「そ、そうなんだ」

なずな(どうしよう)

なずな(つい服の中に隠しちゃった……)

なずな「の、乃莉ちゃん!」

乃莉「ん?どーかした?」

なずな「あ、えっと、エプロン忘れちゃった!私取ってくるね」

乃莉「エプロン?そんなん別になくても……」

なずな「すぐ戻ってくるから!」バタン

乃莉(行っちゃった……)

乃莉(でも、なんでちょっと顔赤かったんだろ?)


203号室

なずな「ふう……」

なずな「とりあえず、一旦うちに置いといて、あとで返せばいいよね……」

103号室

ガチャ

なずな「乃莉ちゃん、おまたせ」

乃莉「?」

乃莉「なずな、エプロンは?」

なずな「あっ……」

なずな「ごめん!ごめんなさい!もうちょっと待ってて!!」バタン


乃莉「……何しに部屋戻ったんだ?」

乃莉「今度はちゃんと取ってきた?」

なずな「うん……」///

乃莉「なんか紙くっついてない?」

なずな「あ、これはレシピ……」

なずな「お父さんとお母さんが来た時の」

乃莉(カンニングしてたのか……)

乃莉「ま、作ろうか」

乃莉「じゃ、なずなはごはん炊いて」

なずな「うん」

なずな「ごちそうさま、美味しかった♪」

乃莉「そう?じゃあ、これからもたまにはこうやって一緒に作ろうよ」

乃莉「その方がなずなも料理覚えられるでしょ?」

なずな「うん、でも……私、乃莉ちゃんに迷惑かけてばっかり」

乃莉「いいって、私も楽しかったし、それに……」

なずな「?」

乃莉「ううん、あ、洗い物しなきゃ」

なずな「洗い物なら私やるよ?料理の時は大したこと出来なかったから……」

乃莉「えー?一緒にやろうよ」

なずな「……うん、ありがとう乃莉ちゃん」

乃莉「べつに、お礼言われるようなことでもないし?」

乃莉「今度はちゃんと取ってきた?」

なずな「うん……」///

乃莉「なんか紙くっついてない?」

なずな「あ、これはレシピ……」

なずな「お父さんとお母さんが来た時の」

乃莉(カンニングしてたのか……)

乃莉「ま、作ろうか」

乃莉「じゃ、なずなはごはん炊いて」

なずな「うん」

>>17
ミスった
気にしないでください

なずな「じゃあ私、部屋戻るね」

乃莉「うん。また明日」

なずな「ばいばーい、乃莉ちゃん」バタン

なずな「……あれ?何か忘れてるような……」

203号室

ガチャ

なずな「ただいま……」

なずな「……あ」

なずな「乃莉ちゃんの本、持ってきたままなんだった……」

なずな「……どうやって返せばいいんだろ?」

103号室

乃莉「お風呂沸くまで、まだけっこうかかるなー」

乃莉「本でも読もうかな」

乃莉「……あれ?」

乃莉「あの本、どこやったんだろ?」

乃莉「たしか昨日使って……どっか置きっぱにしたのかな?」


203号室

なずな「うーん……」

なずな「早く返さないと勝手に持ってきちゃったこと気づかれちゃう」

なずな「でも、こんなの見ちゃったなんて言えないし」

なずな「乃莉ちゃんだって知られたくないことだと思うし」

なずな「どうしよう……」

なずな「……」

なずな(ちょ、ちょっとだけ……)ペラ

なずな「……」///

なずな「……乃莉ちゃんはこういうえっちなの、好きなのかな……?」

なずな「もしかして、女の子のことが好きなのかな……」

なずな「……じゃなくて、早く返さないと」

なずな「うーん……」

103号室

乃莉「……」ペラ

乃莉「……ふふっ」ペラ

ピンポーン

乃莉「あれ?誰だろ?」

乃莉「はーい!」

ガチャ

なずな「お邪魔しまーす……」

乃莉「なずな?どうかした?」

なずな「えっと、今日は乃莉ちゃんのお部屋でお泊りしたいな、って」

なずな「……ダメ?」

乃莉「それは構わないけど」

乃莉「あ、枕も持ってきたんだ」

なずな「うん」

なずな(枕の中にあの本を隠して持ってきたから)

なずな(乃莉ちゃんがお風呂かお手洗いの隙に元に戻せばいいよね)

乃莉「なずな、お風呂まだだよね?」

乃莉「もうすぐ沸くから先入っていいよ」

なずな「ううん、私は後でいいから、乃莉ちゃん先入って」

乃莉「そう?じゃあそうさせてもらうね」

なずな(よかった、返せそう)ホッ

乃莉「じゃあ私お風呂入ってくるから」

乃莉「適当にテレビでも見てて」

なずな「うん」

パタン

なずな(よしっ!今のうちに……!)ゴソゴソ

乃莉「あ、そうだなずなー」ガチャ

なずな「!?」

なずな「の、乃莉ちゃん、えっと……」

乃莉「あれ、その本、なんで……」

なずな(どどど、どーしよ!?勝手に読んだことバレちゃった)

乃莉(なな何でなずながその本持ってんの!?てか内容も見られた!?)

なずな「あの、乃莉ちゃん……」

乃莉「あ、えと、やっぱ何でもない!お風呂入るね!」バタン

なずな「あっ……」

なずな(……やっぱり乃莉ちゃん、怒ってたみたい)


乃莉(終わった……)

乃莉(よりによってなずなに知られた……)

乃莉(あれはドン引きだろうな……死にたい)

なずな(乃莉ちゃんがお風呂あがったらちゃんと謝ろう)

なずな(勝手に本棚漁っちゃったことも、本の中見ちゃったことも)

なずな(乃莉ちゃん、許してくれるかな……)


乃莉(お風呂、出たくないなー……)

乃莉(一人暮らしだからって油断しすぎだった……)

乃莉(さすがにのぼせてきた……)

乃莉(出るか……)

ガチャ

乃莉「なずなー……お風呂あいた……」

なずな「乃莉ちゃん、ごめんなさい!」

なずな「乃莉ちゃんの本、勝手に読んだり持ち出したりして……」

乃莉「……いや、そんなのは別にいいんだけど」

なずな「……乃莉ちゃん、やっぱり怒ってる?」

乃莉「全然怒ってはないけど、なんていうかさ」

乃莉「……気持ち悪くないの?」

なずな「何が?」

乃莉「何がって、私のこと……」

なずな「何で?」

乃莉「何でって……」

乃莉「だって、女の子が好きなんだよ!?私女なのに」

乃莉「それで年齢制限つきのそういうマンガ買ったりしてるの、気持ち悪いでしょ?」

乃莉「私のこと、軽蔑するでしょ……?」グスッ

なずな「乃莉ちゃん……」

ギュ

乃莉「なずな?」

なずな「どんな乃莉ちゃんでも、私は乃莉ちゃんのこと、大好きだよ」

なずな「乃莉ちゃんは乃莉ちゃんなんだから」

なずな「あっ、乃莉ちゃんせっかくお風呂入ったのに汚れちゃうかな」パッ

乃莉「ううん、いいから……」ギュ

乃莉「もうちょっとだけこうしてて……」

なずな「乃莉ちゃん?」

乃莉「ねえ、なずな……もうひとつ、気持ち悪いこと言っていい?」

なずな「えっ?」

乃莉「ごめんなずな、さっき、1つだけウソついた」

なずな「?」

乃莉「私は、別に女の子が好きってわけじゃなくて」

乃莉「その……」

乃莉「なずなだけだよ、私が好きなのは」

なずな「えっ……」

乃莉「私、なずなが好き……!」

なずな(乃莉ちゃん……)

乃莉「ごめん、困るよね、こんなこと言われても……」

なずな「……ありがとう、乃莉ちゃん」

乃莉「へ?」

乃莉「私、感謝されるようなことなんて……」

なずな「ううん、嬉しいの」

なずな「乃莉ちゃんに、好きって言ってもらえて」

乃莉「だって、あの本見たんでしょ?私、なずなのことそういう目で見てるんだよ?」

乃莉「何でそんなに……」

なずな「だって、私も乃莉ちゃんのこと、好きだから」

乃莉「でも、その好きと私の好きは違うっていうか……」

なずな「うーん……私にはよく分からないけど」

なずな「私が乃莉ちゃんのこと好きなのも、一緒に居たいって思ってるのも」

なずな「それは本当のことだから」

なずな「それだけじゃあ、ダメかな?」

乃莉「なずなぁ……」ウルッ

なずな「乃莉ちゃん」

乃莉「……?」

チュ

乃莉「え、な、なずな!?」

乃莉(いいい今、ほっぺにキス、ってか、えええええ!?)

なずな「やっぱりちょっと恥ずかしいかも……」

乃莉「今のって、え!?」

なずな「乃莉ちゃんとはずっと仲良しでいたいなって、そういう、その」

乃莉「ああ、そういう……」

なずな「えっ?私悪いことしちゃった?」オロオロ

乃莉「要するに……」

乃莉「……なずな」

チュ

なずな「あっ……」

乃莉「友だちのキスってことだよね」

なずな「う、うん、多分そうだけど……」

乃莉「……なんか、なずならしいね」

なずな「だ、ダメだった……?」

乃莉「ううん、なずなのそういうところが、私、好きだよ」

後日

乃莉「なずなー、あれ読み終わった?」

なずな「えっと、今半分くらい」

乃莉「まだ半分?なずな、読むの遅すぎ」

なずな「ごめん乃莉ちゃん……」

乃莉「まあいいけどさ」

なずな(あの後、乃莉ちゃんからいろんなマンガを貸してもらって読むようになりました)

なずな(乃莉ちゃんが貸してくれるのは、女の子同士の恋愛ものばっかり)

なずな(そういうのを、『百合』っていうことも最近知りました)

なずな(今までと変わらず、乃莉ちゃんとは仲良しです)

なずな(乃莉ちゃんが気を遣って普段通りに接してくれてるのかな?)

なずな(私の気持ちは……まだよく分からないけど)

なずな(いつかきっと、乃莉ちゃんにちゃんとした返事をしようと思います)

なずな(それまでは……)

なずな「……ねえ、乃莉ちゃん」

乃莉「何?」

なずな「この本を読み終わったら」

なずな「今日は乃莉ちゃんと、いっぱいお喋りしたいな」

乃莉「じゃあさ、夜、うちに泊まりに来てよ」

なずな「うん♪」


なずな(……それまでは、私の一番仲良しの友達でいてね)



おわり

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